JP2005016327A - 船外機 - Google Patents

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Hiroki Tawa
寛基 田和
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Abstract

【課題】クランクケースの重量の増加を抑えつつ、クランクケースの剛性を高くし、クランクケースの共振を抑えてエンジン騒音の低減、防振上有利である船外機を得たい。
【解決手段】クランク軸を概ね縦置きに収容するクランク室と、該クランク軸によって駆動されるカム軸を概ね縦置きに収容するカム室とを有し、クランク室が船の推進方向前方(船体側)に配置され、カム室が船の推進方向後方に配置されたエンジンを備える船外機において、クランク室の推進方向前方(船体側)を構成するクランクケース30の壁面32に、クランクケースの厚さ程度の凹凸42…を設けたとを特徴とする船外機。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクケースの重量増加を抑えつつ、その剛性を高め、クランクケースの共振を抑えてエンジン騒音低減を図ることができる船外機に関する。
【0002】
【従来の技術】
船外機は、船尾にスターンブラケットを介して取り付けたエンジンの出力でプロペラを回転駆動し、船体を推進させる船外エンジンである。
以上の船外機は、エンジンは、クランクシャフト縦置きのバーチカルエンジンで、エンジン下方に垂下された駆動軸でギヤボックスの後部に設けたプロペラを駆動し、推進力を得るものである。
船外機の外観は、上部のエンジンカバー、中間部のアンダーカバー、下位のエクステンションケース、下部のギヤボックス等からなり、スターンブラケットを介して船の船尾に操舵自在、且つ必要に応じて上下動(チルト動)可能に取り付けられる。
【0003】
ところで、船外機のエンジンはクランクシャフト縦置きのバーチカルエンジン形式で、シリンダが横向きで、クランクシャフトが縦置きであり、クランクシャフトを収納するクランク室は船体側(船尾側、従って船の推進方向前方)に位置し、船尾側と対面し、一方、シリンダヘッドカバーを含むカム軸を収容するカム室は、推進方向後方に位置する。
従って、エンジン振動やこれに起因する共振による騒音、或いはエンジンの透過音等の騒音は、クランク室を透過してこれと向かい合う船体側に放射され、運転騒音の原因となり、また、エンジン振動は船体に伝播することとなる。
そこで、上記の対策としてクランク室を構成するクランクケースの剛性を高める技術が提案される。(例えば特許文献1)
【0004】
【特許文献1】
実公平7−21851号公報(
【第1図】、
【第5図】)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上の特許文献1では、クランクケース26内に、クランクケース26と一体に設けられる軸受半部29e,29m,29m間をリブ32a,32b,32cで繋ぎ、クランク室内壁に付着したオイルを環流させるようにしたものであるが、リブ32a,32b,32cはクランクケースの剛性アップにも寄与する。
【0006】
ところで、上記したリブは軸受半部29e,29m,29m間を繋ぎ、これらを一体化するので、クランクケースの剛性アップに寄与するが、クランクケースの母材の肉厚にリブを追加したものであるから、その分素材重量が付加され、エンジンの重量増、コスト増の繋がる。
【0007】
本発明は、船外機の以上の課題を解決すべくなされたもので、その目的とする処は、クランクケースの重量の増加を抑えつつ、クランクケースの剛性を高くし、クランクケースの共振を抑えてエンジン騒音の低減、防振上有利である船外機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、クランク軸を概ね縦置きに収容するクランク室と、該クランク軸によって駆動されるカム軸を概ね縦置きに収容するカム室とを有し、前記クランク室が船の推進方向前方(船体側)に配置され、カム室が船の推進方向後方に配置されたエンジンを備える船外機において、前記クランク室の推進方向前方(船体側)を構成するクランクケースの壁面に、該クランクケースの厚さ程度の凹凸を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項1では、クランクケースの船体側を向く壁面に凹凸を設けたので、凹凸によって壁面の剛性が平坦面のものに比較し飛躍的に高まり、クランクケースの共振を抑えてエンジン騒音の低減、防振を効果的に図ることができる。
また、クランクケースの壁面の凹凸は、クランクケースの厚さ程度の凹凸なので、クランクケースの壁面の肉厚が大きくなることがなく、クランクケースの重量増加を抑えつつ、クランクケースの剛性アップ、騒音低減、効果的な防振効果を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は、船外機の要部を破断した縦断側面図である。この図に従って、船外機の概略を説明する。
なお、図において、Frは船外機の推進方向前方で船体側を、Rrは同推進方向後方を示す。
船外機1は、エンジン支持ケースであるマウントケース2上にエンジン3を支持してなり、エンジン3は図の左右方向中間部のシリンダブロック4、図の左側の推進方向後方に位置するシリンダヘッド5及びこれの後方に配設されたシリンダヘッドカバー6を備える。
【0011】
シリンダブロック4には、図では上下に軸線を横向きとした4つのシリンダ4a(4a,4a,4a,4a)以下4a…(…は複数を表す。以下同じ)を備える複数気筒エンジン(図では4気筒エンジン)であり、各シリンダ4a…内には夫々4個のピストン4b,4b,4b,4b(ピストン4b…)が嵌装されており、ピストン4b…はシリンダブロックの後方でありる。シリンダヘッド5には、各シリンダ4a…に対応する燃焼室5a,5a,5a,5a(5a…)を有する。燃焼室5a…は、シリンダブロック4の後方にある。
各ピストン4a…は、縦置きに配置したクランク軸7にコンロッド4c…を介して連結され、シリンダブロック4の前端部にはクランクケース30を固着し、該クランクケース30内に縦置きクランク軸7を収容し、クランク軸7はクランクケースとは別体のベアリングキャップ4d,4d,4d,4d,4d(4d…)で支持される。ベアリングキャップ4d…は前部で5カ所を軸支するが、一体型のロアブロックとすることもできる。
クランク軸7は、クランクケース30内でクランク室8を形成し、該クランク室8はシリンダブロック4の前方で、船体側(推進方向前方)に配置される。
【0012】
図の左側で、船外機1の推進方向後方に位置するシリンダヘッド5及びこれの後方に配置したシリンダヘッドカバー6内にはカム軸9をクランク軸7と平行するように縦向きに配置し、内部にカム室10を形成する。
マウントケース2の後部には、エンジン3のシリンダヘッド5の燃焼室5aと連通する排気マニホールドに繋がる排気接続管11が垂下、設置され、排気管11はマウントケース2を縦通する下向きの排気管12に連通、接続されている。
尚、図2及び図3において、クランクケース30に設けた30a及び30bは息抜き孔及び通路であり、息抜き孔の前方近傍に例えば電装部品等の配板を設置して被水しにくくしている。
【0013】
また、マウントケース2の前後方向(図の左右方向)中間部〜前部には、オイルパン13が垂下、設置されており、内部にオイルストレーナ14が収容され、オイル交換時にオイルを排出する図示しないドレン部が一側方に設けられている。
エンジン3及びマウントケース2並びにオイルパン13等は樹脂製のカバーで覆われる。該カバーは、エンジン3の主要部を覆う上部のエンジンカバー15と、エンジン3の下部〜オイルパン14等を覆う樹脂製のアンダーカバー16とからなる。
【0014】
アンダーカバー16の下端部には、アルミ合金等で形成した金属製のエクステンションケース17を連結、設置し、エクステンションケース17の下部にはギヤボックス18を配設し、前記したクランク軸7の下端部の出力部7aを、アンダーカバー16及びエクステンションケース17を縦通する縦置きの駆動軸19に連結し、ギヤボックス18内のギヤ機構18aを介して配設されたプロペラ20をエンジン3で駆動する。
なお、図中21は副排気管で、通常時は排気膨張管12で水中にエンジン排気を排出するが、エンジンの低回転時には排気圧が小さいので、マウントケース2で仕切られた排気膨張室22内の排気を、副排気管21を介して大気に放出する。
また、23はスイベル軸で、図示しない船体側に取り付け、船外機本体を支持するスターンブラケット25のスイベルケース24内を縦通し、船外機1を操行自在に支持するもので、またスターンブラケット25は、船体側にチルト軸25aを介してチルト動自在(上下動自在)に取り付け、支持される。
【0015】
以上において、前記したクランクケース30の船体側の壁面、即ち、図1のFrで示した推進方向前方である右側の壁面を以下の通り構成する。
図2は、クランクケース単体の前面を示す外観斜視図、図3は、クランクケース単体の正面図、図4は、クランクケース単体の側面図、図5はクランクケース単体の背面図(裏面図)である。
クランクケース30は深皿状をなし、アルミ合金等で形成されている。エンジンはクランク軸縦置きのバーチカルエンジンなので、クランクケース30の下端部にマウントケース2へ取り付ける横向きの取付フランジ部31を備える。
【0016】
上記したクランクケース30の船体側を向く前面の前面壁32の上縁及び両側縁部には、後方(エンジンのシリンダブロック方向)を向いて突出する枠状の上枠片部33、左右の側枠片部34を備える。
該枠片部33,34の端部には、前記したエンジン3のシリンダブロック4へクランクケース30を取り付けるための縦向きの取付フランジ部35を備える。該取付フランジ部35は、クランクケース30の内面、即ちシリンダブロック側の周縁部を囲繞するように設けられている。
【0017】
クランクケース30の上枠片部33と側枠片部34の一方のコーナー部には、オイル注入口36を上方に開口するように設け、注入口36を開閉するフィラーキャプ37を鎖線で示した。
また、クランクケース30の下端部で、前面壁32の下端部(取付フランジ部31の前面)には図示しないセンターハウジングへの固定用ボス部38,38を突設した。なお、図中39は、エンジンハンガー用固定ボルトのネジ孔である。
そして、図5で明示した通り、前記取付フランジ部31及び35の裏面にはシリンダブロック4の取付座面と接合する取付座面40が形成されており、取付座面40には、該座面40の内外を貫通する取付孔41…が形成されており、該取付孔41…は図2及び図3にも表われている。該取付孔41…を介してクランクケース30は、シリンダブロック4にボルトで結合、固着される。
【0018】
図6は、図3の6−6線断面図、図7は、図3の7−7線断面図である。
以上のクランクケース30の前面壁32の壁面に、図2、図3及び図5に明示したように凹凸部42…を形成する。
凹凸部42…は、実施の形態では矩形で、複数個の矩形凹凸部42…が相互に隣接し、近接して並置して連設されている。凹凸部42…の配置は以下の通りである。
【0019】
凹凸部42…は、図2及び図3に示すように前壁面32の壁面の外側(船体側の面)に、矩形の凹部42a…(図6及び図7参照)として格子模様のように配設され、凹部42a…間は前面壁32の外面と面一となって矩形凸部42b…として形成される。
この矩形凸部42b…の裏面側は、図5及び図6、図7で明らかなように前面壁32の裏面が外方に潜って凹部として形成されている。
【0020】
以上のクランクケース30の凹凸部42…は、凹部42aと凸部42bとは略々肉厚である。またクランクケース30の前壁面32における前目の産42aの後面(クランク室内面)から前面凸部42bの前面(クランク室外面)までの寸法は、凹凸部の設けられていないクランクケース前壁面32の他の部分の壁部の肉厚の略2倍以内となるように、凹凸の引き込み及び出っ張り度合いが設定されている。
これにより、連設した複数の凹凸部42…で高いリブ効果が得られ、クランクケース30の船体と対峙する前壁面32の肉厚を他の部分に比較して厚くすることなくその剛性を高めることができる。
【0021】
以上により、クランクケース30の剛性は高められ、クランク軸受がクランクケースと一体であるか、否かを問わず、エンジン振動に起因する共振、これに起因するエンジン騒音の低減、クランクケース前壁面32を透過する透過音の低減を図ることができ、トータルとして船外機のエンジン騒音を可及的に低減することができる。
ところで、クランクケース30は、前記した特許文献1で示した従来例のように、リブを設けて剛性アップを図ったクランクケースにも適用することができる。前記したリブと本発明の凹凸部との併用で、クランクケースの基本的な剛性を向上させた上に更に、一層の剛性アップを図ることができ、従って一層の騒音低減を図ることができるであろう。
【0022】
以上、図示した実施の形態について説明したが、凹凸形状は図示したように矩形に限られず、また凹凸の配置は、図示した格子模様式に必ずしも配置する必要はなく、凹凸形状、配置は任意である。
【0023】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、クランク軸を概ね縦置きに収容するクランク室と、該クランク軸によって駆動されるカム軸を概ね縦置きに収容するカム室とを有し、クランク室が船の推進方向前方(船体側)に配置され、カム室が船の推進方向後方に配置されたエンジンを備える船外機において、クランク室の推進方向前方(船体側)を構成するクランクケースの壁面に、該クランクケースの厚さ程度の凹凸を設けた。
【0024】
請求項1では、クランクケースの船体側を向く壁面に凹凸を設けたので、凹凸によって壁面の剛性が平坦面のものに比較し飛躍的に高まり、クランクケースの剛性を高めてエンジン振動等に起因する共振を抑えてエンジン騒音の低減、防振を効果的に図ることができる。
また、クランクケースの壁面の凹凸は、クランクケースの厚さ程度の凹凸なので、クランクケースの壁面の肉厚が大きくなることがなく、クランクケースの重量増加を抑えつつ、クランクケースの剛性アップ、騒音低減、効果的な防振効果を得ることができる。
また、以上をクランクケースの船体側の壁面に、クランクケースの厚さ程度の凹凸を形成するので、構造が簡素で、成形も簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】船外機の要部を破断した縦断側面図
【図2】クランクケース単体の前面を示す外観斜視図
【図3】クランクケース単体の正面図
【図4】クランクケース単体の側面図
【図5】クランクケース単体の背面図(裏面図)
【図6】図3の6−6線断面図
【図7】図3の7−7線断面図
【符号の説明】
1…船外機、 3…エンジン、 7…クランク軸、 8…クランク室、 9…カム軸、 10…カム室、 Fr…船の推進方向前方、 30…クランクケース、 32…壁面、 42,42a,42b…凹凸。

Claims (1)

  1. クランク軸を概ね縦置きに収容するクランク室と、該クランク軸によって駆動されるカム軸を概ね縦置きに収容するカム室とを有し、前記クランク室が船の推進方向前方(船体側)に配置され、カム室が船の推進方向後方に配置されたエンジンを備える船外機において、
    前記クランク室の推進方向前方(船体側)を構成するクランクケースの壁面に、該クランクケースの厚さ程度の凹凸を設けた、
    ことを特徴とする船外機。
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