JP2005015950A - 製紙用嵩高パルプ及びこれを配合した嵩高紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明が解決しようとする第1の課題は、嵩高性を有する製紙用漂白化学パルプの提供にあり、第2には、該漂白化学パルプを原料として抄紙して得られる嵩高の紙の提供にある。
【解決手段】原料木材チップとしてユーカリプタスデバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)を全チップに対して30〜90固形分重量%混合し、この混合チップを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプを原料として抄紙する。あるいは、ユーカリプタスデバーシカラーのチップのみを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプと、他のパルプとの混合比を、30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%として抄紙する。
【解決手段】原料木材チップとしてユーカリプタスデバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)を全チップに対して30〜90固形分重量%混合し、この混合チップを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプを原料として抄紙する。あるいは、ユーカリプタスデバーシカラーのチップのみを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプと、他のパルプとの混合比を、30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%として抄紙する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の属する技術分野は、第1に嵩高性を有する製紙用漂白化学パルプに関するものであり、第2に該漂白化学パルプを原料として抄紙して得られる嵩高の紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境保護気運の高まりに伴い、森林資源から製造される製紙用パルプを有効に活用する上でも紙の軽量化は避けられない問題であり、紙への品質要求として軽量化は大きな流れとなってきている。ここで、紙の軽量化とは、紙の厚さは維持した上での軽量化、すなわち紙の低密度化(嵩高化)のことである。
【0003】
紙の低密度化(嵩高化)に関する従来の技術としては、原料パルプの選択、パルプ叩解度の抑制、抄紙時のプレス処理やキャレンダー処理の線圧低下、嵩高性填料の使用、嵩高剤の使用などが挙げられる。
【0004】
原料パルプの選択に関しては、まずパルプの種類が挙げられる。一般的に製紙用パルプには木材パルプが使用されているが、化学薬品により繊維中の補強材料であるリグニンを抽出した化学パルプ(CP)よりも、薬品は使用せずグラインダーで木材を磨り潰す砕木パルプ(GP)やリファイナーで木材を解繊して得られるサーモメカニカルパルプ(TMP)のような機械パルプ(MP)の方が剛直な繊維を得られるため、低密度化には効果的であることは公知である。特に砕木パルプは低密度化の効果が大きい。
【0005】
しかし、上質紙の場合、砕木パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプを原料パルプとして使用することは規格上の問題があり、また経時による退色などの品質上での問題もあるため、上質紙の原料パルプは化学パルプのみとなる。この化学パルプは、その原料木材の樹種や産地により繊維の形状が異なってくる。従って、上質紙の密度は、使用する化学パルプの原料木材の樹種や産地の違いの影響を大きく受ける。パルプ繊維自体が粗大(嵩高)な方が、紙の低密度化に効果がある。上質紙には主に広葉樹材パルプが配合されているが、広葉樹材で比較的低密度化が可能な樹種としてはガムウッド、メープル、バーチ、マングローブなどが公知である。樹種を特定した例としては、カナダ標準フリーネス(以下、CSFと記述する)が500 ml 以上のフタバガキ類広葉樹の漂白パルプを使用する方法が開示されているが、密度は0.60〜0.65g/cm3の範囲にとどまっており、嵩高化の効果がまだ不十分である(特許文献1参照)。
【0006】
一方、中質紙あるいは下級紙においては機械パルプを配合するため、通常、上質紙より低密度な紙となるが、剛直な繊維を配合することは、印刷時の紙ムケ(機械パルプ由来の結束繊維が多い)や強度低下をもたらすことになり、さらに漂白化学パルプより白色度の低い機械パルプの増配は白色度を低下させるので、その配合量は制限される。
【0007】
また、近年の環境保護気運の高まりや資源保護の必要性から、中質紙あるいは下級紙への古紙パルプの配合増が求められている。古紙パルプは上質紙、新聞紙、雑誌、チラシ、塗工紙等の品種に応じて明確に分別してパルプ化される場合は少なく、混合されたままパルプ化されるため、パルプの性質としては、バージンの機械パルプより密度が高くなる傾向がある。この理由として古紙パルプの繊維分は化学パルプ、機械パルプの混合物であることがその原因の一つとして考えられる。また、古紙中に含まれる填料分あるいは塗工紙塗工層の顔料分であるタルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウムなどはパルプに比較して密度が高いので、古紙の配合により紙の密度が高くなるという問題がある。
【0008】
通常、製紙用パルプは叩解され、この処理によって繊維は柔軟となり、短繊維化やフィブリル化が進行するが、叩解処理によって紙の嵩は低下する傾向であるので、できるだけ叩解を行なわないことが嵩高化のためには望ましい。しかしながら、叩解処理が不十分であると紙の強度が低下してしまうという問題がある。
【0009】
紙抄造時における低密度化の方法としては、抄造時にプレス工程でプレス線圧を低くすること、また、紙の表面に平滑性を付与するために行われるカレンダー処理はなるべく低線圧にすることが挙げられる。
【0010】
さらに、印刷時の紙の表面強度を付与する目的で行われる澱粉等の水溶性高分子の表面塗工はできる限り低塗布量にすることが望ましい。
【0011】
このようなパルプの種類、抄造時の工夫の他に、紙に対してパルプに次いで多く配合される填料の検討も行われている。例えば、填料分として中空の合成有機物のカプセルを配合することにより低密度化を達成する方法が開示されている(特許文献2参照)。また、抄造機のドライヤー部の熱にて膨張することにより、嵩高化を達成する合成有機発泡性填料(例えば商品名:EXPANSEL、日本フィライト株式会社製)も提案されている。しかしながら、これらの合成有機発泡性填料を用いる方法では抄紙時の乾燥条件の設定が難しい上、表面強度が弱く、印刷光沢度も低下するなどの問題がある。
【0012】
また、シラスバルーンを用いる方法(特許文献3参照)が提案されているが、製紙用パルプとの混合性が悪く、また、その配合された用紙も印刷ムラが発生するなどの問題がある。
【0013】
また、微細フィブリル化セルロースを添加する方法(特許文献4参照)が開示されているが、微細フィブリル化セルロースを特別に調製する必要があり、さらに抄紙時にパルプのCSFを400ml以上、好ましくは500ml以上に調整する必要があり、機械パルプを多く配合した紙料ではフリーネスを調整することが困難であり、中質紙、下級紙では実施は困難である。
【0014】
最近、紙の嵩高剤の技術が開発されている。嵩高剤として、高級アルコールのエチレン及び/またはプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン界面活性化剤(特許文献5参照)、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物(特許文献6参照)、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、あるいは脂肪酸ポリアミドアミン(特許文献7参照)などが報告されている。しかしながら、これらの嵩高剤は紙力の低下が著しく、また、サイズ剤の種類によってはそのサイズ効果を阻害する場合があり、サイズ度低下の問題がある。
【0015】
【特許文献1】特開平10−204790号公報
【特許文献2】特開平5−339898号公報
【特許文献3】特公昭52−39924号公報
【特許文献4】特開平8−13380号公報
【特許文献5】WO98/03730号公報
【特許文献6】特開平11−200284号公報
【特許文献7】特開平11−350380号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする第1の課題は、嵩高性を有する製紙用漂白化学パルプの提供にあり、第2には、該漂白化学パルプを原料として抄紙して得られる嵩高の紙の提供にある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
原料木材チップとしてユーカリプタスデバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)を全チップに対して30〜90固形分重量%混合し、この混合チップを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプを原料として抄紙する。あるいは、ユーカリプタスデバーシカラーのチップのみを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプと、他のパルプとの混合比を、30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%として抄紙する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、嵩高性を有し、かつ製紙適性に優れた漂白化学パルプを製造できる広葉樹木材チップの樹種について鋭意検討した結果、ユーカリプタスデバーシカラー(以下、E.diversicolorと記述する)を見出し、本発明を完成するに至った。E.diversicolorから製紙用パルプを得る方法としては、2通りがある。E.diversicolorのチップと他の広葉樹種チップとを混合して蒸解する方法と、E.diversicolorのみのチップを蒸解する方法である。
【0019】
まず、E.diversicolorのチップと他の広葉樹種チップとを混合して蒸解する方法については、全チップ中にE.diversicolorを30〜90固形分重量%配合させることが好ましい。E. diversicolorチップの配合量が30固形分重量%未満であると嵩高性を有するパルプが得られず、90固形分重量%を越えると紙の強度低下および平滑性悪化のため、紙用のパルプとして使用することが困難である。チップの混合方法は、チップ輸入先のチップ積み出し時点でも良いし、国内のパルプ工場のチップヤードで混合しても良いし、蒸解装置へチップを詰める時点で混合しても良い。E.diversicolorと混合されるチップは他の広葉樹種チップが好ましい。
【0020】
このE.diversicolorを30〜90固形分重量%混合した混合チップあるいはE.diversicolorのみからなるチップは、通常の条件(活性アルカリ添加量、硫化度、液比、最高温度、保持時間、Hファクターなど)でアルカリ性薬剤による蒸解により製造される。この蒸解としてはアルカリ蒸解、クラフト蒸解、更にMCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正クラフト蒸解が挙げられる。また、1ベッセル液相型、1ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル気相型などの蒸解型式なども特に限定はない。蒸解を終えた未漂白パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの装置で洗浄する。洗浄後の未漂白パルプのカッパー価は14〜22にすることが好ましい。15〜20が更に好ましい。
【0021】
次いで、洗浄パルプを酸素脱リグニン処理する。酸素脱リグニン処理の反応条件は従来から実施されている条件であれば良く、特に限定はないが、例えば、パルプ濃度は1〜30固形分重量%、より好ましくは8〜15固形分重量%、温度は80〜120 ℃、より好ましくは80〜105 ℃、酸素圧は3〜9 kg/cm3、より好ましくは4〜7 kg/cm3、処理時間は30〜180分、より好ましくは60〜90分で実施される。酸素脱リグニンにおけるアルカリ薬剤添加量も従来から実施されている量であれば良く、特に限定はないが、例えば、アルカリ溶液のpHは11〜14、より好ましくは12.0〜13.5である。使用されるアルカリ薬剤は水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられるが、好適には水酸化ナトリウムである。酸素脱リグニン後のパルプのカッパー価は、5〜15の範囲が良く、好ましくは7〜15、更に好ましくは8〜12である。
【0022】
次いで、所定のカッパー価の未漂白パルプをTCF漂白あるいはECF漂白シーケンスで処理し、漂白化学パルプを得る。TCF漂白、ECF漂白は公知のシーケンスで行えば良く、特に限定はない。具体的には、TCF漂白シーケンスとしては、Z−E−P、Z−E/O−P、E/OP−POなどが挙げられ、ECF漂白シーケンスとしては、D−E−D、D−E/P−D、D−E/O−D、E/O−D、E−O−D、E−D−E/P−D、Z−Dなどが挙げられる。また、これらの漂白シーケンスの初段でヘキセンウロン酸の除去を目的とした公知の酸処理を施しても良い。この酸処理では硫酸が好適に使用される。漂白処理が完了した化学パルプのハンター白色度は特に限定はないが、通常範囲である80〜90%である。
【0023】
以上の方法で、E.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した、あるいはE.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である、嵩高性を有する製紙用の漂白化学パルプを製造することができる。
【0024】
前述の嵩高性を有する漂白化学パルプから、嵩高な紙を製造する方法について説明する。本発明の低密度な紙を抄造する場合、上記のE.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した漂白化学パルプでは、未叩解あるいはCSF500ml以上の軽度の叩解処理を行い、他の抄紙原料や薬品などと混合後、抄紙機に供給される。CSF500ml未満では、本発明の紙の嵩高化効果(低密度効果)が得られない。
【0025】
E.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である漂白化学パルプは未叩解で使用することが好ましい。E.diversicolor100%の漂白化学パルプ/他のパルプ=30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%の範囲で配合し、他の抄紙原料や薬品などと混合後、抄紙機に供給される。E. diversicolor100%の漂白化学パルプの配合量が30重量%未満であると嵩高化の効果が不十分であり、90重量%を越えると強度の低下および平滑性の悪化のため、特に印刷用紙として使用することが困難である。
【0026】
E.diversicolor100%より得られる未叩解LBKPと併用される他のパルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)等の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、脱墨パルプ(DIP)のうちの少なくとも1種類が使用される。
【0027】
本発明のパルプを使用することにより十分な嵩高性は得られるものの、未叩解あるいはCSF500ml以上の軽度の叩解であるため、フィブリル化による十分な繊維間結合が形成しにくく、紙力が低下する傾向がある。従って、抄紙に際しては、パルプ繊維間結合を向上させるために紙力増強剤を添加することが望ましい。紙力増強剤としては、澱粉、加工澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素・ホルマリン系樹脂、メラミン・ホルマリン系樹脂、ポリエチレンイミンなどが挙げられ、これらの少なくとも1種類が添加される。紙力増強剤の総含有量としては、パルプ絶乾重量当たり0.1〜2.0固形分重量%が好ましい。
【0028】
抄紙は、酸性抄紙でも、中性〜アルカリ抄紙のいずれでもよい。また、本発明の紙は填料が無配合でも配合でもよい。配合する填料としては、酸性抄紙では、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、合成樹脂填料などの公知の填料を単独または組み合わせて使用することができる。中性〜アルカリ抄紙では、酸性抄紙の填料に加えて、重質炭酸カルシウム、炭酸ガス吹き込み法による軽質炭酸カルシウム、パルプの苛性化工程で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムも使用できる。
【0029】
更に、本発明の紙の抄造においては、必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、消泡剤等を添加してもよい。
【0030】
本発明の紙は、表面強度やサイズ性の向上の目的で、水溶性高分子を主成分とする表面処理組成物を塗工することが望ましい。水溶性高分子としては、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の表面処理剤として通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理組成物の中には、水溶性高分子の他に、耐水化・表面強度向上を目的とした紙力増強剤や、サイズ性付与を目的とした外添サイズ剤などを添加することができる。表面処理組成物は、2ロールサイズプレス、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ゲートロールコーター等の塗工設備も用いて塗布することができるが、表面処理組成物が紙表面に留まったほうが紙の密度増加が少なくなるため、被膜転写方式の塗工機を使用することが好ましく、その意味で2ロールサイズプレスよりはブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーターが好ましく、更にゲートロールコーターが最も好ましい。表面処理組成物の塗布量としては、紙の片面当たり0.1〜3.0g/m2が好ましい。
【0031】
紙の密度に影響する抄紙機におけるプレス圧やキャレンダー圧は、公用の運転条件の範囲内で、紙の密度以外に平滑性や強度を考慮して決定されるが、なるべく低線圧が好ましい。
【0032】
以上のように、E.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した、あるいはE.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である、嵩高性を有する漂白化学パルプをパルプ原料として使用することにより、嵩高軽量の紙が得られる。これらのE.diversicolor由来のパルプを配合した紙は、書籍用紙の他、オフセット印刷用紙、凸版印刷用紙、グラビア印刷用紙、電子写真用紙として使用できる。また、塗工紙、インクジェット記録用紙、感熱記録紙、感圧記録紙等の原紙としても使用することができる。
【0033】
本発明のE.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した、あるいはE.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である、嵩高性を有する漂白化学パルプをパルプ原料として使用して抄造した紙が低密度化し易いこと、低密度の割に紙力低下が少ないこと、およびカレンダー耐性に優れる原因は、今のところ明らかにはなっていないが、密度が低くなる原因としては他の広葉樹由来の未叩解パルプに比べてファイン量が少ないこと、低密度の割に紙力低下が少ない原因としては他の広葉樹由来の未叩解パルプに比べて繊維長が長いことが考えられる。カレンダー耐性に優れる原因としては紙が硬く、カレンダー処理で潰れ難いこと、あるいは紙の圧縮弾性率が高く、応力緩和に優れるためカレンダー処理時に圧縮された紙厚が初期の紙厚に戻りやすいことが考えられる。X線回折および固体13C−NMR分析からセルロース1型の結晶化度が他の広葉樹由来のパルプ繊維と大差ないことから、紙の硬度に優れるのではなく、応力緩和に優れるものと推測される。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.木材チップの蒸解方法
以下の実施例、比較例で使用したチップの蒸解方法は次の通りである。供試チップをそれぞれジャイロシフタを用いて篩い分け、粗大チップとチップダストを除去し、9.5〜25.4mmφのチップとした。このチップを2.4L容の回転型オートクレーブを用いてクラフト蒸解を行った。蒸解条件は、活性アルカリ添加率:16%、硫化度:25%、液比:2.5L/kg、最高温度:160℃、保持時間:94分、Hファクター:834である。
2.蒸解パルプの酸素脱リグニン処理方法
酸素脱リグニンは上記蒸解で得られた未漂白クラフトパルプを絶乾重量30.0g採取し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを2.0%添加し、次いで希釈水をパルプ濃度が10%となるように加えた。Quantum Technology社のHigh Intensity Mini Mixerを用いて酸素脱リグニンを行った。その際、酸素圧:6kg/cm2、温度:95℃、反応時間:60分である。
3.ECF漂白方法
酸素脱リグニン処理後、得られたパルプを洗浄、脱水し、漂白に使用した。漂白にはD0(初段二酸化塩素)−E/P(過酸化水素を併用したアルカリ処理)−D1(2段目二酸化塩素)シーケンスのECF漂白を行った。漂白はすべてプラスチック袋にパルプスラリー(パルプ濃度10%)を入れてウォーターバス中で行った。各漂白段における条件は以下のとおりである。
(1)D0段 二酸化塩素添加率:4.0kg/風乾パルプT、温度:60℃、処理時間:20分
(2)E/P段 水酸化ナトリウム添加率:4.5kg/風乾パルプT、過酸化水素添加率:3.6kg/風乾パルプT、温度:70℃、処理時間:75分
(3)D1段 二酸化塩素添加率:5.0kg/風乾パルプT、温度:70℃、処理時間:150分
4.配合する広葉樹クラフトパルプ叩解品の調製方法
実施例1〜実施例4、比較例1、比較例3〜9で配合する叩解広葉樹クラフトパルプ(実施例、比較例において単に叩解LBKPと記述する)の調製方法は次の通りである。国内広葉樹種チップの混合品を蒸解した。カッパー価は13.7であった。これを漂白処理した後、PFIミルでCSF435mlまで叩解処理した。
5.紙質の測定方法
実施例及び比較例にて作成した紙について、下記の項目の紙質について測定した。これらの紙質の測定方法は以下の通りである。
・カッパー価:JIS P 8211に従った。
・坪量:JIS P 8124(1998)に従った。
・紙厚、密度:JIS P 8118(1998)に従った。
・裂断長:JIS P 8113(1998)に従い、実施例1〜8、比較例1〜12の紙の抄紙方向について測定した。
【0035】
【実施例1】
E.diversicolor(老齢木)のチップを蒸解した。カッパー価は16.0であった。これを漂白処理(酸素脱リグニン処理を含む。以下、単に漂白処理と記述する。)し未叩解漂白パルプを得た。CSFは665mlであった。このパルプ90部とCSF435mlの叩解LBKP10部を混合後、JIS P 8222(1998)に従い、配向性抄紙機(熊谷理機工業社製)を用いて、坪量64g/m2の紙を抄紙した。この紙質の結果を表1に示した。
【0036】
【実施例2】
E.diversicolor(若齢木)のチップを蒸解した。カッパー価は14.0であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは680mlであった。このパルプ90部とCSF435mlの叩解LBKP10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0037】
【実施例3】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の未叩解漂白パルプ40部と叩解LBKP(CSF435ml)60部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0038】
【実施例4】
実施例2のE.diversicolor(若齢木)由来の未叩解漂白パルプ40部と叩解LBKP(CSF435ml)60部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0039】
【実施例5】
チップの絶乾配合比率が、E.diversicolor(若齢木)/アカシア=90/10の混合チップを蒸解した。カッパー価は14.0であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは685mlであった。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0040】
【実施例6】
実施例5のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=90/10の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF500mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0041】
【実施例7】
チップの絶乾配合比率が、E.diversicolor(若齢木)/アカシア=30/70の混合チップを蒸解した。カッパー価は13.8であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは695mlであった。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0042】
【実施例8】
実施例7のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=30/70の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF500mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0043】
【比較例1】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の未叩解漂白パルプ25部と叩解LBKP(CSF435ml)75部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0044】
【比較例2】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の未叩解漂白パルプ100部で、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0045】
【比較例3】
E.diversicolorチップを含有しておらずE.sieberi主体のユーカリ混合材チップを蒸解した。カッパー価は14.5であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは680mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0046】
【比較例4】
比較例3のユーカリ混合材チップとカバ材チップを固形分重量比で1:1で混合後、蒸解した。カッパー価は14.9であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは680mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0047】
【比較例5】
E.diversicolorチップを含有しておらずE.obliqua主体のユーカリ混合材チップを蒸解した。カッパー価は15.0であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは625mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0048】
【比較例6】
アカシア材チップを蒸解した。カッパー価は13.8であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは730mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0049】
【比較例7】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の漂白パルプをPFIミルで叩解し、CSF435mlの叩解パルプを得た。この叩解パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0050】
【比較例8】
叩解LBKP(CSF435ml)に、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液をパルプ濃度が5%となるように加え、20℃で30分間浸漬して得られたマーセル化パルプ(セルロース2型の含有率は100重量%)30部と叩解LBKP(CSF435ml)70部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0051】
【比較例9】
叩解LBKP(CSF435ml)の100部で、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0052】
【比較例10】
実施例5のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=90/10の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF450mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0053】
【比較例11】
実施例7のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=30/70の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF450mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0054】
【比較例12】
チップの絶乾配合比率が、E.diversicolor(若齢木)/アカシア=25/75の混合チップを蒸解した。カッパー価は13.8であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは700mlであった。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
通常、叩解パルプのみからなる紙の密度は高くなる(比較例9)が、未叩解パルプでは大幅に密度が低下する。表1に示されるように、本発明のE.diversicolorのみの未叩解漂白パルプを30〜90部の範囲で配合した実施例1〜4の紙の密度は、他の広葉樹由来の未叩解パルプ配合紙(比較例3〜6)に比べ大幅に低下することが解る。この嵩高効果はE.diversicolorの樹齢にかかわらず発現する。一方、E. diversicolorのみの未叩解漂白パルプを25部配合した比較例1の紙では十分な嵩高効果が得られなかった。、E. diversicolorのみの未叩解漂白パルプを100部とした比較例2の紙では密度が低下するが、紙力が著しく低下する。さらに、E.diversicolorのみの漂白パルプを叩解し、これを90部配合した紙は高い密度を有し、嵩高効果は見られなかった。ほぼ同一密度で比較すると(実施例4と比較例6,8)、E.diversicolorのみの未叩解漂白パルプを配合した紙では紙力低下が小さいことが解る。
【0057】
一方、E.diversicolorと他の広葉樹種との混合チップを蒸解して得られた漂白パルプの場合、実施例5〜8と比較例10〜12の結果から、E.diversicolorチップの配合率は30〜90固形分重量%、且つ、未叩解ないしCSF500mlまでの程度の叩解で、低密度で強度も高い紙が得られることがわかる。
【0058】
以下の実施例9〜12と比較例13〜16では、前記の配向性抄紙機で抄紙した紙について、カレンダー処理を行った後、密度を測定した。カレンダー線圧は30、90kg/cmとした。カレンダー処理後の紙質結果を表2に示した。
【0059】
【実施例9】
実施例1で得られた紙をカレンダー処理した。
【0060】
【実施例10】
実施例2で得られた紙をカレンダー処理した。
【0061】
【実施例11】
実施例6で得られた紙をカレンダー処理した。
【0062】
【実施例12】
実施例8で得られた紙をカレンダー処理した。
【0063】
【比較例13】
比較例3で得られた紙をカレンダー処理した。
【0064】
【比較例14】
比較例4で得られた紙をカレンダー処理した。
【0065】
【比較例15】
比較例5で得られた紙をカレンダー処理した。
【0066】
【比較例16】
比較例6で得られた紙をカレンダー処理した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例9〜12と比較例13〜16の結果から、E.diversicolorのみの未叩解漂白パルプを配合した紙、およびE.diversicolorを全チップに対して30〜90固形分重量%混合したチップから得られた漂白パルプを配合した紙は、カレンダー耐性に優れ、カレンダー処理後も十分な低密度を保持していることが解る。
【0069】
【発明の効果】
原料木材チップとしてユーカリプタスデバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)を全チップに対して30〜90固形分重量%混合し、この混合チップを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプを原料として抄紙することにより、嵩高紙を製造できる。また、ユーカリプタスデバーシカラーのチップのみを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプと、他のパルプとの混合比を、30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%として抄紙することにより、嵩高紙を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明の属する技術分野は、第1に嵩高性を有する製紙用漂白化学パルプに関するものであり、第2に該漂白化学パルプを原料として抄紙して得られる嵩高の紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境保護気運の高まりに伴い、森林資源から製造される製紙用パルプを有効に活用する上でも紙の軽量化は避けられない問題であり、紙への品質要求として軽量化は大きな流れとなってきている。ここで、紙の軽量化とは、紙の厚さは維持した上での軽量化、すなわち紙の低密度化(嵩高化)のことである。
【0003】
紙の低密度化(嵩高化)に関する従来の技術としては、原料パルプの選択、パルプ叩解度の抑制、抄紙時のプレス処理やキャレンダー処理の線圧低下、嵩高性填料の使用、嵩高剤の使用などが挙げられる。
【0004】
原料パルプの選択に関しては、まずパルプの種類が挙げられる。一般的に製紙用パルプには木材パルプが使用されているが、化学薬品により繊維中の補強材料であるリグニンを抽出した化学パルプ(CP)よりも、薬品は使用せずグラインダーで木材を磨り潰す砕木パルプ(GP)やリファイナーで木材を解繊して得られるサーモメカニカルパルプ(TMP)のような機械パルプ(MP)の方が剛直な繊維を得られるため、低密度化には効果的であることは公知である。特に砕木パルプは低密度化の効果が大きい。
【0005】
しかし、上質紙の場合、砕木パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプを原料パルプとして使用することは規格上の問題があり、また経時による退色などの品質上での問題もあるため、上質紙の原料パルプは化学パルプのみとなる。この化学パルプは、その原料木材の樹種や産地により繊維の形状が異なってくる。従って、上質紙の密度は、使用する化学パルプの原料木材の樹種や産地の違いの影響を大きく受ける。パルプ繊維自体が粗大(嵩高)な方が、紙の低密度化に効果がある。上質紙には主に広葉樹材パルプが配合されているが、広葉樹材で比較的低密度化が可能な樹種としてはガムウッド、メープル、バーチ、マングローブなどが公知である。樹種を特定した例としては、カナダ標準フリーネス(以下、CSFと記述する)が500 ml 以上のフタバガキ類広葉樹の漂白パルプを使用する方法が開示されているが、密度は0.60〜0.65g/cm3の範囲にとどまっており、嵩高化の効果がまだ不十分である(特許文献1参照)。
【0006】
一方、中質紙あるいは下級紙においては機械パルプを配合するため、通常、上質紙より低密度な紙となるが、剛直な繊維を配合することは、印刷時の紙ムケ(機械パルプ由来の結束繊維が多い)や強度低下をもたらすことになり、さらに漂白化学パルプより白色度の低い機械パルプの増配は白色度を低下させるので、その配合量は制限される。
【0007】
また、近年の環境保護気運の高まりや資源保護の必要性から、中質紙あるいは下級紙への古紙パルプの配合増が求められている。古紙パルプは上質紙、新聞紙、雑誌、チラシ、塗工紙等の品種に応じて明確に分別してパルプ化される場合は少なく、混合されたままパルプ化されるため、パルプの性質としては、バージンの機械パルプより密度が高くなる傾向がある。この理由として古紙パルプの繊維分は化学パルプ、機械パルプの混合物であることがその原因の一つとして考えられる。また、古紙中に含まれる填料分あるいは塗工紙塗工層の顔料分であるタルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウムなどはパルプに比較して密度が高いので、古紙の配合により紙の密度が高くなるという問題がある。
【0008】
通常、製紙用パルプは叩解され、この処理によって繊維は柔軟となり、短繊維化やフィブリル化が進行するが、叩解処理によって紙の嵩は低下する傾向であるので、できるだけ叩解を行なわないことが嵩高化のためには望ましい。しかしながら、叩解処理が不十分であると紙の強度が低下してしまうという問題がある。
【0009】
紙抄造時における低密度化の方法としては、抄造時にプレス工程でプレス線圧を低くすること、また、紙の表面に平滑性を付与するために行われるカレンダー処理はなるべく低線圧にすることが挙げられる。
【0010】
さらに、印刷時の紙の表面強度を付与する目的で行われる澱粉等の水溶性高分子の表面塗工はできる限り低塗布量にすることが望ましい。
【0011】
このようなパルプの種類、抄造時の工夫の他に、紙に対してパルプに次いで多く配合される填料の検討も行われている。例えば、填料分として中空の合成有機物のカプセルを配合することにより低密度化を達成する方法が開示されている(特許文献2参照)。また、抄造機のドライヤー部の熱にて膨張することにより、嵩高化を達成する合成有機発泡性填料(例えば商品名:EXPANSEL、日本フィライト株式会社製)も提案されている。しかしながら、これらの合成有機発泡性填料を用いる方法では抄紙時の乾燥条件の設定が難しい上、表面強度が弱く、印刷光沢度も低下するなどの問題がある。
【0012】
また、シラスバルーンを用いる方法(特許文献3参照)が提案されているが、製紙用パルプとの混合性が悪く、また、その配合された用紙も印刷ムラが発生するなどの問題がある。
【0013】
また、微細フィブリル化セルロースを添加する方法(特許文献4参照)が開示されているが、微細フィブリル化セルロースを特別に調製する必要があり、さらに抄紙時にパルプのCSFを400ml以上、好ましくは500ml以上に調整する必要があり、機械パルプを多く配合した紙料ではフリーネスを調整することが困難であり、中質紙、下級紙では実施は困難である。
【0014】
最近、紙の嵩高剤の技術が開発されている。嵩高剤として、高級アルコールのエチレン及び/またはプロピレンオキサイド付加物、多価アルコール型非イオン界面活性化剤(特許文献5参照)、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物(特許文献6参照)、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物のエチレンオキサイド付加物、あるいは脂肪酸ポリアミドアミン(特許文献7参照)などが報告されている。しかしながら、これらの嵩高剤は紙力の低下が著しく、また、サイズ剤の種類によってはそのサイズ効果を阻害する場合があり、サイズ度低下の問題がある。
【0015】
【特許文献1】特開平10−204790号公報
【特許文献2】特開平5−339898号公報
【特許文献3】特公昭52−39924号公報
【特許文献4】特開平8−13380号公報
【特許文献5】WO98/03730号公報
【特許文献6】特開平11−200284号公報
【特許文献7】特開平11−350380号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする第1の課題は、嵩高性を有する製紙用漂白化学パルプの提供にあり、第2には、該漂白化学パルプを原料として抄紙して得られる嵩高の紙の提供にある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
原料木材チップとしてユーカリプタスデバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)を全チップに対して30〜90固形分重量%混合し、この混合チップを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプを原料として抄紙する。あるいは、ユーカリプタスデバーシカラーのチップのみを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプと、他のパルプとの混合比を、30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%として抄紙する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、嵩高性を有し、かつ製紙適性に優れた漂白化学パルプを製造できる広葉樹木材チップの樹種について鋭意検討した結果、ユーカリプタスデバーシカラー(以下、E.diversicolorと記述する)を見出し、本発明を完成するに至った。E.diversicolorから製紙用パルプを得る方法としては、2通りがある。E.diversicolorのチップと他の広葉樹種チップとを混合して蒸解する方法と、E.diversicolorのみのチップを蒸解する方法である。
【0019】
まず、E.diversicolorのチップと他の広葉樹種チップとを混合して蒸解する方法については、全チップ中にE.diversicolorを30〜90固形分重量%配合させることが好ましい。E. diversicolorチップの配合量が30固形分重量%未満であると嵩高性を有するパルプが得られず、90固形分重量%を越えると紙の強度低下および平滑性悪化のため、紙用のパルプとして使用することが困難である。チップの混合方法は、チップ輸入先のチップ積み出し時点でも良いし、国内のパルプ工場のチップヤードで混合しても良いし、蒸解装置へチップを詰める時点で混合しても良い。E.diversicolorと混合されるチップは他の広葉樹種チップが好ましい。
【0020】
このE.diversicolorを30〜90固形分重量%混合した混合チップあるいはE.diversicolorのみからなるチップは、通常の条件(活性アルカリ添加量、硫化度、液比、最高温度、保持時間、Hファクターなど)でアルカリ性薬剤による蒸解により製造される。この蒸解としてはアルカリ蒸解、クラフト蒸解、更にMCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正クラフト蒸解が挙げられる。また、1ベッセル液相型、1ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル気相型などの蒸解型式なども特に限定はない。蒸解を終えた未漂白パルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの装置で洗浄する。洗浄後の未漂白パルプのカッパー価は14〜22にすることが好ましい。15〜20が更に好ましい。
【0021】
次いで、洗浄パルプを酸素脱リグニン処理する。酸素脱リグニン処理の反応条件は従来から実施されている条件であれば良く、特に限定はないが、例えば、パルプ濃度は1〜30固形分重量%、より好ましくは8〜15固形分重量%、温度は80〜120 ℃、より好ましくは80〜105 ℃、酸素圧は3〜9 kg/cm3、より好ましくは4〜7 kg/cm3、処理時間は30〜180分、より好ましくは60〜90分で実施される。酸素脱リグニンにおけるアルカリ薬剤添加量も従来から実施されている量であれば良く、特に限定はないが、例えば、アルカリ溶液のpHは11〜14、より好ましくは12.0〜13.5である。使用されるアルカリ薬剤は水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられるが、好適には水酸化ナトリウムである。酸素脱リグニン後のパルプのカッパー価は、5〜15の範囲が良く、好ましくは7〜15、更に好ましくは8〜12である。
【0022】
次いで、所定のカッパー価の未漂白パルプをTCF漂白あるいはECF漂白シーケンスで処理し、漂白化学パルプを得る。TCF漂白、ECF漂白は公知のシーケンスで行えば良く、特に限定はない。具体的には、TCF漂白シーケンスとしては、Z−E−P、Z−E/O−P、E/OP−POなどが挙げられ、ECF漂白シーケンスとしては、D−E−D、D−E/P−D、D−E/O−D、E/O−D、E−O−D、E−D−E/P−D、Z−Dなどが挙げられる。また、これらの漂白シーケンスの初段でヘキセンウロン酸の除去を目的とした公知の酸処理を施しても良い。この酸処理では硫酸が好適に使用される。漂白処理が完了した化学パルプのハンター白色度は特に限定はないが、通常範囲である80〜90%である。
【0023】
以上の方法で、E.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した、あるいはE.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である、嵩高性を有する製紙用の漂白化学パルプを製造することができる。
【0024】
前述の嵩高性を有する漂白化学パルプから、嵩高な紙を製造する方法について説明する。本発明の低密度な紙を抄造する場合、上記のE.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した漂白化学パルプでは、未叩解あるいはCSF500ml以上の軽度の叩解処理を行い、他の抄紙原料や薬品などと混合後、抄紙機に供給される。CSF500ml未満では、本発明の紙の嵩高化効果(低密度効果)が得られない。
【0025】
E.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である漂白化学パルプは未叩解で使用することが好ましい。E.diversicolor100%の漂白化学パルプ/他のパルプ=30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%の範囲で配合し、他の抄紙原料や薬品などと混合後、抄紙機に供給される。E. diversicolor100%の漂白化学パルプの配合量が30重量%未満であると嵩高化の効果が不十分であり、90重量%を越えると強度の低下および平滑性の悪化のため、特に印刷用紙として使用することが困難である。
【0026】
E.diversicolor100%より得られる未叩解LBKPと併用される他のパルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)等の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、脱墨パルプ(DIP)のうちの少なくとも1種類が使用される。
【0027】
本発明のパルプを使用することにより十分な嵩高性は得られるものの、未叩解あるいはCSF500ml以上の軽度の叩解であるため、フィブリル化による十分な繊維間結合が形成しにくく、紙力が低下する傾向がある。従って、抄紙に際しては、パルプ繊維間結合を向上させるために紙力増強剤を添加することが望ましい。紙力増強剤としては、澱粉、加工澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、尿素・ホルマリン系樹脂、メラミン・ホルマリン系樹脂、ポリエチレンイミンなどが挙げられ、これらの少なくとも1種類が添加される。紙力増強剤の総含有量としては、パルプ絶乾重量当たり0.1〜2.0固形分重量%が好ましい。
【0028】
抄紙は、酸性抄紙でも、中性〜アルカリ抄紙のいずれでもよい。また、本発明の紙は填料が無配合でも配合でもよい。配合する填料としては、酸性抄紙では、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、合成樹脂填料などの公知の填料を単独または組み合わせて使用することができる。中性〜アルカリ抄紙では、酸性抄紙の填料に加えて、重質炭酸カルシウム、炭酸ガス吹き込み法による軽質炭酸カルシウム、パルプの苛性化工程で生成する苛性化軽質炭酸カルシウムも使用できる。
【0029】
更に、本発明の紙の抄造においては、必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、消泡剤等を添加してもよい。
【0030】
本発明の紙は、表面強度やサイズ性の向上の目的で、水溶性高分子を主成分とする表面処理組成物を塗工することが望ましい。水溶性高分子としては、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の表面処理剤として通常使用されるものを単独、あるいはこれらの混合物を使用することができる。また、表面処理組成物の中には、水溶性高分子の他に、耐水化・表面強度向上を目的とした紙力増強剤や、サイズ性付与を目的とした外添サイズ剤などを添加することができる。表面処理組成物は、2ロールサイズプレス、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ゲートロールコーター等の塗工設備も用いて塗布することができるが、表面処理組成物が紙表面に留まったほうが紙の密度増加が少なくなるため、被膜転写方式の塗工機を使用することが好ましく、その意味で2ロールサイズプレスよりはブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーターが好ましく、更にゲートロールコーターが最も好ましい。表面処理組成物の塗布量としては、紙の片面当たり0.1〜3.0g/m2が好ましい。
【0031】
紙の密度に影響する抄紙機におけるプレス圧やキャレンダー圧は、公用の運転条件の範囲内で、紙の密度以外に平滑性や強度を考慮して決定されるが、なるべく低線圧が好ましい。
【0032】
以上のように、E.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した、あるいはE.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である、嵩高性を有する漂白化学パルプをパルプ原料として使用することにより、嵩高軽量の紙が得られる。これらのE.diversicolor由来のパルプを配合した紙は、書籍用紙の他、オフセット印刷用紙、凸版印刷用紙、グラビア印刷用紙、電子写真用紙として使用できる。また、塗工紙、インクジェット記録用紙、感熱記録紙、感圧記録紙等の原紙としても使用することができる。
【0033】
本発明のE.diversicolor由来のパルプが30〜90固形分重量%混合した、あるいはE.diversicolor由来のパルプが100固形分重量%である、嵩高性を有する漂白化学パルプをパルプ原料として使用して抄造した紙が低密度化し易いこと、低密度の割に紙力低下が少ないこと、およびカレンダー耐性に優れる原因は、今のところ明らかにはなっていないが、密度が低くなる原因としては他の広葉樹由来の未叩解パルプに比べてファイン量が少ないこと、低密度の割に紙力低下が少ない原因としては他の広葉樹由来の未叩解パルプに比べて繊維長が長いことが考えられる。カレンダー耐性に優れる原因としては紙が硬く、カレンダー処理で潰れ難いこと、あるいは紙の圧縮弾性率が高く、応力緩和に優れるためカレンダー処理時に圧縮された紙厚が初期の紙厚に戻りやすいことが考えられる。X線回折および固体13C−NMR分析からセルロース1型の結晶化度が他の広葉樹由来のパルプ繊維と大差ないことから、紙の硬度に優れるのではなく、応力緩和に優れるものと推測される。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.木材チップの蒸解方法
以下の実施例、比較例で使用したチップの蒸解方法は次の通りである。供試チップをそれぞれジャイロシフタを用いて篩い分け、粗大チップとチップダストを除去し、9.5〜25.4mmφのチップとした。このチップを2.4L容の回転型オートクレーブを用いてクラフト蒸解を行った。蒸解条件は、活性アルカリ添加率:16%、硫化度:25%、液比:2.5L/kg、最高温度:160℃、保持時間:94分、Hファクター:834である。
2.蒸解パルプの酸素脱リグニン処理方法
酸素脱リグニンは上記蒸解で得られた未漂白クラフトパルプを絶乾重量30.0g採取し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを2.0%添加し、次いで希釈水をパルプ濃度が10%となるように加えた。Quantum Technology社のHigh Intensity Mini Mixerを用いて酸素脱リグニンを行った。その際、酸素圧:6kg/cm2、温度:95℃、反応時間:60分である。
3.ECF漂白方法
酸素脱リグニン処理後、得られたパルプを洗浄、脱水し、漂白に使用した。漂白にはD0(初段二酸化塩素)−E/P(過酸化水素を併用したアルカリ処理)−D1(2段目二酸化塩素)シーケンスのECF漂白を行った。漂白はすべてプラスチック袋にパルプスラリー(パルプ濃度10%)を入れてウォーターバス中で行った。各漂白段における条件は以下のとおりである。
(1)D0段 二酸化塩素添加率:4.0kg/風乾パルプT、温度:60℃、処理時間:20分
(2)E/P段 水酸化ナトリウム添加率:4.5kg/風乾パルプT、過酸化水素添加率:3.6kg/風乾パルプT、温度:70℃、処理時間:75分
(3)D1段 二酸化塩素添加率:5.0kg/風乾パルプT、温度:70℃、処理時間:150分
4.配合する広葉樹クラフトパルプ叩解品の調製方法
実施例1〜実施例4、比較例1、比較例3〜9で配合する叩解広葉樹クラフトパルプ(実施例、比較例において単に叩解LBKPと記述する)の調製方法は次の通りである。国内広葉樹種チップの混合品を蒸解した。カッパー価は13.7であった。これを漂白処理した後、PFIミルでCSF435mlまで叩解処理した。
5.紙質の測定方法
実施例及び比較例にて作成した紙について、下記の項目の紙質について測定した。これらの紙質の測定方法は以下の通りである。
・カッパー価:JIS P 8211に従った。
・坪量:JIS P 8124(1998)に従った。
・紙厚、密度:JIS P 8118(1998)に従った。
・裂断長:JIS P 8113(1998)に従い、実施例1〜8、比較例1〜12の紙の抄紙方向について測定した。
【0035】
【実施例1】
E.diversicolor(老齢木)のチップを蒸解した。カッパー価は16.0であった。これを漂白処理(酸素脱リグニン処理を含む。以下、単に漂白処理と記述する。)し未叩解漂白パルプを得た。CSFは665mlであった。このパルプ90部とCSF435mlの叩解LBKP10部を混合後、JIS P 8222(1998)に従い、配向性抄紙機(熊谷理機工業社製)を用いて、坪量64g/m2の紙を抄紙した。この紙質の結果を表1に示した。
【0036】
【実施例2】
E.diversicolor(若齢木)のチップを蒸解した。カッパー価は14.0であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは680mlであった。このパルプ90部とCSF435mlの叩解LBKP10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0037】
【実施例3】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の未叩解漂白パルプ40部と叩解LBKP(CSF435ml)60部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0038】
【実施例4】
実施例2のE.diversicolor(若齢木)由来の未叩解漂白パルプ40部と叩解LBKP(CSF435ml)60部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0039】
【実施例5】
チップの絶乾配合比率が、E.diversicolor(若齢木)/アカシア=90/10の混合チップを蒸解した。カッパー価は14.0であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは685mlであった。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0040】
【実施例6】
実施例5のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=90/10の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF500mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0041】
【実施例7】
チップの絶乾配合比率が、E.diversicolor(若齢木)/アカシア=30/70の混合チップを蒸解した。カッパー価は13.8であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは695mlであった。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0042】
【実施例8】
実施例7のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=30/70の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF500mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0043】
【比較例1】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の未叩解漂白パルプ25部と叩解LBKP(CSF435ml)75部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0044】
【比較例2】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の未叩解漂白パルプ100部で、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0045】
【比較例3】
E.diversicolorチップを含有しておらずE.sieberi主体のユーカリ混合材チップを蒸解した。カッパー価は14.5であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは680mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0046】
【比較例4】
比較例3のユーカリ混合材チップとカバ材チップを固形分重量比で1:1で混合後、蒸解した。カッパー価は14.9であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは680mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0047】
【比較例5】
E.diversicolorチップを含有しておらずE.obliqua主体のユーカリ混合材チップを蒸解した。カッパー価は15.0であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは625mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0048】
【比較例6】
アカシア材チップを蒸解した。カッパー価は13.8であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは730mlであった。この未叩解漂白パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0049】
【比較例7】
実施例1のE.diversicolor(老齢木)由来の漂白パルプをPFIミルで叩解し、CSF435mlの叩解パルプを得た。この叩解パルプ90部と叩解LBKP(CSF435ml)10部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0050】
【比較例8】
叩解LBKP(CSF435ml)に、濃度15%の水酸化ナトリウム水溶液をパルプ濃度が5%となるように加え、20℃で30分間浸漬して得られたマーセル化パルプ(セルロース2型の含有率は100重量%)30部と叩解LBKP(CSF435ml)70部を混合後、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0051】
【比較例9】
叩解LBKP(CSF435ml)の100部で、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0052】
【比較例10】
実施例5のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=90/10の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF450mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0053】
【比較例11】
実施例7のE.diversicolor(若齢木)/アカシア=30/70の混合チップを蒸解して得られたパルプをPFIミルでCSF450mlまで叩解した。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0054】
【比較例12】
チップの絶乾配合比率が、E.diversicolor(若齢木)/アカシア=25/75の混合チップを蒸解した。カッパー価は13.8であった。これを漂白処理し未叩解漂白パルプを得た。CSFは700mlであった。このパルプを使用して、実施例1と同様にして手抄き紙を作成し、紙質の結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
通常、叩解パルプのみからなる紙の密度は高くなる(比較例9)が、未叩解パルプでは大幅に密度が低下する。表1に示されるように、本発明のE.diversicolorのみの未叩解漂白パルプを30〜90部の範囲で配合した実施例1〜4の紙の密度は、他の広葉樹由来の未叩解パルプ配合紙(比較例3〜6)に比べ大幅に低下することが解る。この嵩高効果はE.diversicolorの樹齢にかかわらず発現する。一方、E. diversicolorのみの未叩解漂白パルプを25部配合した比較例1の紙では十分な嵩高効果が得られなかった。、E. diversicolorのみの未叩解漂白パルプを100部とした比較例2の紙では密度が低下するが、紙力が著しく低下する。さらに、E.diversicolorのみの漂白パルプを叩解し、これを90部配合した紙は高い密度を有し、嵩高効果は見られなかった。ほぼ同一密度で比較すると(実施例4と比較例6,8)、E.diversicolorのみの未叩解漂白パルプを配合した紙では紙力低下が小さいことが解る。
【0057】
一方、E.diversicolorと他の広葉樹種との混合チップを蒸解して得られた漂白パルプの場合、実施例5〜8と比較例10〜12の結果から、E.diversicolorチップの配合率は30〜90固形分重量%、且つ、未叩解ないしCSF500mlまでの程度の叩解で、低密度で強度も高い紙が得られることがわかる。
【0058】
以下の実施例9〜12と比較例13〜16では、前記の配向性抄紙機で抄紙した紙について、カレンダー処理を行った後、密度を測定した。カレンダー線圧は30、90kg/cmとした。カレンダー処理後の紙質結果を表2に示した。
【0059】
【実施例9】
実施例1で得られた紙をカレンダー処理した。
【0060】
【実施例10】
実施例2で得られた紙をカレンダー処理した。
【0061】
【実施例11】
実施例6で得られた紙をカレンダー処理した。
【0062】
【実施例12】
実施例8で得られた紙をカレンダー処理した。
【0063】
【比較例13】
比較例3で得られた紙をカレンダー処理した。
【0064】
【比較例14】
比較例4で得られた紙をカレンダー処理した。
【0065】
【比較例15】
比較例5で得られた紙をカレンダー処理した。
【0066】
【比較例16】
比較例6で得られた紙をカレンダー処理した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例9〜12と比較例13〜16の結果から、E.diversicolorのみの未叩解漂白パルプを配合した紙、およびE.diversicolorを全チップに対して30〜90固形分重量%混合したチップから得られた漂白パルプを配合した紙は、カレンダー耐性に優れ、カレンダー処理後も十分な低密度を保持していることが解る。
【0069】
【発明の効果】
原料木材チップとしてユーカリプタスデバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)を全チップに対して30〜90固形分重量%混合し、この混合チップを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプを原料として抄紙することにより、嵩高紙を製造できる。また、ユーカリプタスデバーシカラーのチップのみを蒸解、漂白して得られる漂白化学パルプと、他のパルプとの混合比を、30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%として抄紙することにより、嵩高紙を製造することができる。
Claims (4)
- 製紙用漂白化学パルプであって、原料木材チップとしてユーカリプタスデバーシカラー(Eucalyptus diversicolor)を全チップに対して30〜90固形分重量%含有した混合チップを蒸解、漂白して得られることを特徴とする製紙用漂白化学パルプ。
- 請求項1記載の漂白化学パルプをパルプ原料として抄紙して得られることを特徴とする紙。
- 製紙用漂白化学パルプであって、原料木材チップがユーカリプタスデバーシカラーのみのチップを蒸解、漂白して得られることを特徴とする製紙用漂白化学パルプ。
- 請求項3記載の漂白化学パルプと、他のパルプとの混合比が、30〜90固形分重量%/10〜70固形分重量%であるパルプをパルプ原料として抄紙して得られることを特徴とする紙。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003182248A JP2005015950A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 製紙用嵩高パルプ及びこれを配合した嵩高紙 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003182248A JP2005015950A (ja) | 2003-06-26 | 2003-06-26 | 製紙用嵩高パルプ及びこれを配合した嵩高紙 |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112281531A (zh) * | 2020-11-19 | 2021-01-29 | 马鞍山市康辉纸箱纸品有限公司 | 一种瓦楞纸用纸浆制备方法 |
-
2003
- 2003-06-26 JP JP2003182248A patent/JP2005015950A/ja active Pending
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