JP2004143629A - リグノセルロース物質の蒸解助剤によるパルプ製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リグノセルロース物質の蒸解助剤によるパルプ製造方法において、パルプの歩留と品質(特に、比引裂強度)の向上を図ること。
【解決手段】リグノセルロース物質の蒸解助剤によるパルプ製造方法において、有機還元性物質(好ましくは、チオ尿素またはチオ尿素誘導体)を蒸解助剤として使用することにより、パルプの歩留と品質(特に、比引裂強度)の向上を図ることができる。蒸解助剤が、キノン系物質、ポリサルファイド、界面活性剤等から任意に選択された他の蒸解助剤と併用されることは何ら差し支えない。
【解決手段】リグノセルロース物質の蒸解助剤によるパルプ製造方法において、有機還元性物質(好ましくは、チオ尿素またはチオ尿素誘導体)を蒸解助剤として使用することにより、パルプの歩留と品質(特に、比引裂強度)の向上を図ることができる。蒸解助剤が、キノン系物質、ポリサルファイド、界面活性剤等から任意に選択された他の蒸解助剤と併用されることは何ら差し支えない。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、新規な蒸解助剤を使用したリグノセルロース物質のパルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、リグノセルロース物質の蒸解助剤としてキノン物質、ポリサルファイド、ノニオン性界面活性剤等が使用されている。キノン系物質およびノニオン性界面活性剤の蒸解助剤においても歩留の向上が見られるがパルプ品質の向上は確認しにくい。ポリサルファイド蒸解は歩留が向上するが、パルプ品質、特に比引裂強度が低下する傾向が見られる。
【0003】
木材、非木材(ワラ、竹、ケナフ、アサ、ミツマタ、バガス等)のリグノセルロース材料をパルプ化する方法に小量のキノン化合物を添加する蒸解法が広く知られている。従来のソーダ蒸解法、クラフト蒸解法、亜硫酸塩蒸解法等のキノン系蒸解助剤として、アントラキノンスルホン酸塩を使用する方法(東ドイツ特許第98549号)、アントラキノンを使用する方法(特公昭55−1398号)、ジヒドロジヒドロキシアントラセンまたがそのナトリウム塩を使用する方法(特公昭53−13002号)等が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、上記公知例とは異なる方法によって、パルプ歩留(収率)及びパルプ品質(特に、比引裂強度)を向上させることのできる新規な蒸解助剤を使用したリグノセルロース物質のパルプ製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、上記の目的を達成するためになされたもので、リグノセルロース物質のパルプ製造において、有機還元性物質を蒸解助剤として用いる少なくとも1つの処理段階を含むことを基本思想とする。その場合に、蒸解助剤としては、チオ尿素またはチオ尿素誘導体を採用することが推奨される。
【0006】
蒸解助剤の添加率は、経済性及び効果の理由からリグノセルロース物質絶乾重量に対して0.001〜5.00重量%とすることが推奨される。
【0007】
蒸解助剤としての上記有機還元性物質は、次のような一般式で表わすことができる。
【0008】
<一般式>
(X)aN−(CS)m−N(Y)b
ここで、m,a,bは1または2;Xは H,CH3, C6H6;Yは H,CH3を示す。
【0009】
さらに、本願発明を実施するに際しては、上記のような各条件に加えて、蒸解助剤となる有機還元性物質として、還元性糖類(好ましくは、澱粉類及び/または糖みつ類)を使用することも推奨される。
【0010】
また、上記チオ尿素またはチオ尿素誘導体等の有機還元性物質からなる蒸解助剤が、キノン系、ポリサルファイトあるいは界面活性剤等から任意に選択された他の蒸解助剤と併用されることは何ら差し支えない(なお、以下においては、上記併用される他の蒸解助剤を「併用助剤」といい、単に「蒸解助剤」という場合は「請求項1」に記載の「蒸解助剤」又はその下位概念としての「蒸解助剤」を意味するものとする)。
【0011】
本願発明の方法は、上記のように、リグノセルロース物質のパルプ製造時の蒸解助剤として、有機還元性物質(特に、チオ尿素又はチオ尿素誘導体)を使用し、該蒸解助剤を蒸解工程中の蒸解液(白液、苛性ソーダ溶液等)に混入し、リグノセルロース物質を蒸解するものであり、それによって、パルプの歩留(収率)と品質(特に、比引裂強度)の向上を図ることを可能にしたものである。
【0012】
本願発明の方法は、バッチ蒸解法及び連続蒸解法のいずれでも使用することができる。バッチ蒸解法及び連続蒸解法共蒸解液(苛性ソーダ溶液または白液)をリグノセルロース物質に添加する時点で有機還元性物質(チオ尿素又はチオ尿素誘導体)を導入することができる。
【0013】
本願発明の方法では、有機還元性物質(チオ尿素又はチオ尿素誘導体)の蒸解系への添加方法は、一般的に水または蒸解液(苛性ソーダ溶液または白液)の水性媒体に必要量を溶解してポンプ等により圧入する方法等公知の供給方法が使用可能である。
【0014】
本願発明の方法は、有機還元性物質(チオ尿素又はチオ尿素誘導体)の使用により比引裂強度の高いリグノセルロース物質は比引裂強度の低いものとの置き
換えが可能で且つコート紙が要求する強度である比引裂強度が維持できる。
【0015】
以下、本願発明をクラフトパルプ蒸解法に応用したいくつかの実施例と、本願発明の技術的優位性を示すための比較対象となる比較例を示す。各実施例では、白液中に、本願発明の趣旨にしたがい、蒸解助剤としてチオ尿素等が混合される。
【0016】
【実施例】
以下の実施例1〜17及び比較例1〜17で実施した蒸解後パルプ処理法、蒸解後カッパー価、パルプ歩留(収率)、比引裂強度、裂断長、比破裂強度の測定方法を下記に示す。
【0017】
<蒸解後パルプの処理法>
試験用においては、蒸解が終了したパルプは6カット(0.15mm)のフラットスクリーン(熊谷理機工業社製)にてパルプを洗浄しながらノット(未蒸解結束繊維)を除去し、遠心分類器によりパルプ濃度25〜35%になるまで脱水を行って、パルプ繊維をバラバラにしたものを試験用パルプとした。
【0018】
実機生産において、カミヤ連続蒸解釜からブローしたパルプ(実機生産ブローパルプという)は、▲1▼ スクリーンやクリーナーという前精選工程、▲2▼ 酸素と苛性ソーダ(または酸化白液)を使用する酸素脱リグニン工程、▲3▼ 後精選工程の順序で処理して漂白工程で漂白される。漂白工程は塩素漂白(例:塩素単独または二酸化塩素を含む塩素段(C段またはC/D段)−酸素を含むアルカリ抽出段(Eo段)−ハイポ段(H段)−二酸化塩素段(D段)の4段塩素漂白シーケンス)または無塩素漂白(例:二酸化塩素段(D0段)またはオゾン段(Z段)−酸素及び/または過酸化水素を含むアルカリ抽出段(E、Eo、EpまたはEop段)−過酸化水素段(P段)−二酸化塩素段(D1段)の3段(D0−Eop−D1またはZ/D−Eop−D1)または4段(D0−Eo−P−D1またはZ/D−Eo−P−D1)の無塩素漂白シーケンス)。漂白されたパルプは、実機生産パルプとした。
【0019】
試験用パルプ、実機生産パルプは、「JIS P8221−2」記載のPFIミルにより、「JIS P8121」記載のカナダ標準濾水度で、500mLに調製した後、「JIS P8222及びJIS P8223」記載の方法で、手抄シートを作成し、紙質試験に供した。
【0020】
<カッパー価の測定法>
試験用パルプ、実機生産ブローパルプは、「JIS P8211」記載の方法により、カッパー価を測定した。
【0021】
<裂断長の測定法>
試験用パルプ、実機生産パルプの裂断長は、「JIS P8113」記載の方法で測定した。
【0022】
<比破裂強度の測定法>
実機生産パルプを使用し、「JIS P8112」記載の方法で比破裂強度を測定した。
【0023】
<比引裂強度の測定法>
試験用パルプ、実機生産パルプの裂断長はを、「JIS P8116」記載の方法により、比引裂強度を測定した。
【0024】
<パルプ歩留(収率)の測定法>
試験用パルプにおいて、蒸解前の使用チップの絶乾重量と、蒸解後得たパルプの絶乾重量及び未蒸解結束繊維絶乾重量の65%の合計重量を測定し、後者を前者で除した数を重量%で表記して、パルプ歩留(収率)とした。パルプ歩留中に未蒸解結束繊維絶乾重量の65%を考慮したことは、文献による理由である(AiVan Tran, Tappi Journal,1, No.4(6月号),13頁〜19頁(2002)。)実機生産において、月頭から月末までの一ヶ月間の抄紙機で使用した実機生産パルプを連続蒸解釜で使用したチップの絶乾重量で除した数を重量%で表記して、実機生産パルプ歩留(収率)とした。
【0025】
<実施例1〜5及び比較例1〜7>
広葉樹(ユーカリ、オーク、カバ、ブナ等)チップ450g(絶乾)を4.5L回転オートクレープ(熊谷理機工業製)に詰め、蒸解助剤を含んだ実機生産用白液(活性アルカリ112g/L as Na2O,硫化度31.0%)を液比6で加えた後、170℃で60分蒸解を行った。本願発明の蒸解助剤チオ尿素、比較の蒸解助剤のキノン物質1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン(KAQという)、アントラキノン(AQという)及び界面活性剤TH257−S(ノニオン界面活性剤)、TH70−CM(アニオン界面活性剤)を、下記の表1に示した添加量で白液に添加した。
【0026】
評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
備考:TU:チオ尿素
【0028】
<実施例6〜10及び比較例8〜10>
針葉樹(ダグラスファー、ラジアータパイン等)チップ450g(絶乾)を4.5L回転オートクレープ(熊谷理機工業製)に詰め、蒸解助剤を含んだ実機生産用白液(活性アルカリ112.0g/L asNa2O,硫化度28.9%)を液比6で加えた後、170℃で60分蒸解を行った。針葉樹パルプ歩留には、経験により未蒸解結束繊維絶乾重量の50%が含んでいた。本願発明の蒸解助剤チオ尿素、比較の蒸解助剤のキノン物質KAQ及び界面活性剤SK−750(ノニオン界面活性剤)を、下記の表2に示した添加量で白液に添加した。評価結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
<実施例11〜15及び比較例11〜15>
ユーカリユーロフィラ10%,オーク15%,その他の樹種75%の配合広葉樹チップを使用し、カミヤ連続蒸解釜にて未晒パルプを生産し、次いで前精選工程、酸素脱リグニン工程、後精選工程を処理して漂白工程で白色度85〜86%ハンタ−のパルプを製造した。本願発明の蒸解助剤チオ尿素とKAQを併用し、比較の蒸解助剤のキノン物質KAQを、下記の表3に示した添加量で白液に添加した。評価結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
<実施例16〜17及び比較例16〜17>
ユーカリユーロフィラはオークに比べ比引裂強度が約1/2のためオークをユーカリユーロフィラと置き換えると実機晒パルプの比引裂強度が低下する。比引裂強度は、コート紙の1つの重要な強度であり、チオ尿素の使用によりユーカリユーロフィラを増配しても実機晒パルプの比引裂強度が維持できる実施例を示す。この場合、ユーカリユーロフィラ20%(10%増),オーク5%(10%減),その他の樹種75%の配合広葉樹チップを使用し、カミヤ連続蒸解釜にて未晒パルプを生産し、次いで前精選工程、酸素脱リグニン工程、後精選工程を処理して漂白工程で白色度85〜86%ハンタ−のパルプを製造した。本願発明の蒸解助剤チオ尿素とKAQを併用し、比較の蒸解助剤のキノン物質KAQを、下記の表4に示した添加量で白液に添加した。評価結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
【発明の効果】
本願発明の方法は、リグノセルロース物質のアルカリ蒸解において有機還元物質(チオ尿素またはチオ尿素誘導体)を蒸解助剤として用いることにより、以下の通りの効果が得られる。
【0035】
(1)パルプ歩留及びパルプ物理特性(特に比引裂強度)が向上する。
【0036】
(2)キノン物質及び界面活性剤の蒸解助剤よりパルプ歩留とパルプ物理特性が優れる。
【0037】
(3)パルプ物理特性が低いチップ材種を使用・増配またはパルプ物理特性の高いチップ材種との置き換えても元のパルプ物理特性の維持ができる。
【0038】
(4)有機還元物質(チオ尿素またはチオ尿素誘導体)の蒸解助剤の溶解作業及び蒸解液(苛性ソーダ、白液)への添加作業は極めて単純で且つ溶解設備(タンク等)、添加ポンプは公知の供給もので作業性及び保全性が従来の通りと同等になる。
【0039】
上記の効果により本願発明の有機還元物質蒸解助剤は、パルプ製造用高価な木材チップ、非木材原料等の使用量の低減が図れ、更に、パルプ品質が向上し、極めて経済的・実用的に使用でき、コストダウンを解決できる。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、新規な蒸解助剤を使用したリグノセルロース物質のパルプ製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、リグノセルロース物質の蒸解助剤としてキノン物質、ポリサルファイド、ノニオン性界面活性剤等が使用されている。キノン系物質およびノニオン性界面活性剤の蒸解助剤においても歩留の向上が見られるがパルプ品質の向上は確認しにくい。ポリサルファイド蒸解は歩留が向上するが、パルプ品質、特に比引裂強度が低下する傾向が見られる。
【0003】
木材、非木材(ワラ、竹、ケナフ、アサ、ミツマタ、バガス等)のリグノセルロース材料をパルプ化する方法に小量のキノン化合物を添加する蒸解法が広く知られている。従来のソーダ蒸解法、クラフト蒸解法、亜硫酸塩蒸解法等のキノン系蒸解助剤として、アントラキノンスルホン酸塩を使用する方法(東ドイツ特許第98549号)、アントラキノンを使用する方法(特公昭55−1398号)、ジヒドロジヒドロキシアントラセンまたがそのナトリウム塩を使用する方法(特公昭53−13002号)等が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、上記公知例とは異なる方法によって、パルプ歩留(収率)及びパルプ品質(特に、比引裂強度)を向上させることのできる新規な蒸解助剤を使用したリグノセルロース物質のパルプ製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、上記の目的を達成するためになされたもので、リグノセルロース物質のパルプ製造において、有機還元性物質を蒸解助剤として用いる少なくとも1つの処理段階を含むことを基本思想とする。その場合に、蒸解助剤としては、チオ尿素またはチオ尿素誘導体を採用することが推奨される。
【0006】
蒸解助剤の添加率は、経済性及び効果の理由からリグノセルロース物質絶乾重量に対して0.001〜5.00重量%とすることが推奨される。
【0007】
蒸解助剤としての上記有機還元性物質は、次のような一般式で表わすことができる。
【0008】
<一般式>
(X)aN−(CS)m−N(Y)b
ここで、m,a,bは1または2;Xは H,CH3, C6H6;Yは H,CH3を示す。
【0009】
さらに、本願発明を実施するに際しては、上記のような各条件に加えて、蒸解助剤となる有機還元性物質として、還元性糖類(好ましくは、澱粉類及び/または糖みつ類)を使用することも推奨される。
【0010】
また、上記チオ尿素またはチオ尿素誘導体等の有機還元性物質からなる蒸解助剤が、キノン系、ポリサルファイトあるいは界面活性剤等から任意に選択された他の蒸解助剤と併用されることは何ら差し支えない(なお、以下においては、上記併用される他の蒸解助剤を「併用助剤」といい、単に「蒸解助剤」という場合は「請求項1」に記載の「蒸解助剤」又はその下位概念としての「蒸解助剤」を意味するものとする)。
【0011】
本願発明の方法は、上記のように、リグノセルロース物質のパルプ製造時の蒸解助剤として、有機還元性物質(特に、チオ尿素又はチオ尿素誘導体)を使用し、該蒸解助剤を蒸解工程中の蒸解液(白液、苛性ソーダ溶液等)に混入し、リグノセルロース物質を蒸解するものであり、それによって、パルプの歩留(収率)と品質(特に、比引裂強度)の向上を図ることを可能にしたものである。
【0012】
本願発明の方法は、バッチ蒸解法及び連続蒸解法のいずれでも使用することができる。バッチ蒸解法及び連続蒸解法共蒸解液(苛性ソーダ溶液または白液)をリグノセルロース物質に添加する時点で有機還元性物質(チオ尿素又はチオ尿素誘導体)を導入することができる。
【0013】
本願発明の方法では、有機還元性物質(チオ尿素又はチオ尿素誘導体)の蒸解系への添加方法は、一般的に水または蒸解液(苛性ソーダ溶液または白液)の水性媒体に必要量を溶解してポンプ等により圧入する方法等公知の供給方法が使用可能である。
【0014】
本願発明の方法は、有機還元性物質(チオ尿素又はチオ尿素誘導体)の使用により比引裂強度の高いリグノセルロース物質は比引裂強度の低いものとの置き
換えが可能で且つコート紙が要求する強度である比引裂強度が維持できる。
【0015】
以下、本願発明をクラフトパルプ蒸解法に応用したいくつかの実施例と、本願発明の技術的優位性を示すための比較対象となる比較例を示す。各実施例では、白液中に、本願発明の趣旨にしたがい、蒸解助剤としてチオ尿素等が混合される。
【0016】
【実施例】
以下の実施例1〜17及び比較例1〜17で実施した蒸解後パルプ処理法、蒸解後カッパー価、パルプ歩留(収率)、比引裂強度、裂断長、比破裂強度の測定方法を下記に示す。
【0017】
<蒸解後パルプの処理法>
試験用においては、蒸解が終了したパルプは6カット(0.15mm)のフラットスクリーン(熊谷理機工業社製)にてパルプを洗浄しながらノット(未蒸解結束繊維)を除去し、遠心分類器によりパルプ濃度25〜35%になるまで脱水を行って、パルプ繊維をバラバラにしたものを試験用パルプとした。
【0018】
実機生産において、カミヤ連続蒸解釜からブローしたパルプ(実機生産ブローパルプという)は、▲1▼ スクリーンやクリーナーという前精選工程、▲2▼ 酸素と苛性ソーダ(または酸化白液)を使用する酸素脱リグニン工程、▲3▼ 後精選工程の順序で処理して漂白工程で漂白される。漂白工程は塩素漂白(例:塩素単独または二酸化塩素を含む塩素段(C段またはC/D段)−酸素を含むアルカリ抽出段(Eo段)−ハイポ段(H段)−二酸化塩素段(D段)の4段塩素漂白シーケンス)または無塩素漂白(例:二酸化塩素段(D0段)またはオゾン段(Z段)−酸素及び/または過酸化水素を含むアルカリ抽出段(E、Eo、EpまたはEop段)−過酸化水素段(P段)−二酸化塩素段(D1段)の3段(D0−Eop−D1またはZ/D−Eop−D1)または4段(D0−Eo−P−D1またはZ/D−Eo−P−D1)の無塩素漂白シーケンス)。漂白されたパルプは、実機生産パルプとした。
【0019】
試験用パルプ、実機生産パルプは、「JIS P8221−2」記載のPFIミルにより、「JIS P8121」記載のカナダ標準濾水度で、500mLに調製した後、「JIS P8222及びJIS P8223」記載の方法で、手抄シートを作成し、紙質試験に供した。
【0020】
<カッパー価の測定法>
試験用パルプ、実機生産ブローパルプは、「JIS P8211」記載の方法により、カッパー価を測定した。
【0021】
<裂断長の測定法>
試験用パルプ、実機生産パルプの裂断長は、「JIS P8113」記載の方法で測定した。
【0022】
<比破裂強度の測定法>
実機生産パルプを使用し、「JIS P8112」記載の方法で比破裂強度を測定した。
【0023】
<比引裂強度の測定法>
試験用パルプ、実機生産パルプの裂断長はを、「JIS P8116」記載の方法により、比引裂強度を測定した。
【0024】
<パルプ歩留(収率)の測定法>
試験用パルプにおいて、蒸解前の使用チップの絶乾重量と、蒸解後得たパルプの絶乾重量及び未蒸解結束繊維絶乾重量の65%の合計重量を測定し、後者を前者で除した数を重量%で表記して、パルプ歩留(収率)とした。パルプ歩留中に未蒸解結束繊維絶乾重量の65%を考慮したことは、文献による理由である(AiVan Tran, Tappi Journal,1, No.4(6月号),13頁〜19頁(2002)。)実機生産において、月頭から月末までの一ヶ月間の抄紙機で使用した実機生産パルプを連続蒸解釜で使用したチップの絶乾重量で除した数を重量%で表記して、実機生産パルプ歩留(収率)とした。
【0025】
<実施例1〜5及び比較例1〜7>
広葉樹(ユーカリ、オーク、カバ、ブナ等)チップ450g(絶乾)を4.5L回転オートクレープ(熊谷理機工業製)に詰め、蒸解助剤を含んだ実機生産用白液(活性アルカリ112g/L as Na2O,硫化度31.0%)を液比6で加えた後、170℃で60分蒸解を行った。本願発明の蒸解助剤チオ尿素、比較の蒸解助剤のキノン物質1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン(KAQという)、アントラキノン(AQという)及び界面活性剤TH257−S(ノニオン界面活性剤)、TH70−CM(アニオン界面活性剤)を、下記の表1に示した添加量で白液に添加した。
【0026】
評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
備考:TU:チオ尿素
【0028】
<実施例6〜10及び比較例8〜10>
針葉樹(ダグラスファー、ラジアータパイン等)チップ450g(絶乾)を4.5L回転オートクレープ(熊谷理機工業製)に詰め、蒸解助剤を含んだ実機生産用白液(活性アルカリ112.0g/L asNa2O,硫化度28.9%)を液比6で加えた後、170℃で60分蒸解を行った。針葉樹パルプ歩留には、経験により未蒸解結束繊維絶乾重量の50%が含んでいた。本願発明の蒸解助剤チオ尿素、比較の蒸解助剤のキノン物質KAQ及び界面活性剤SK−750(ノニオン界面活性剤)を、下記の表2に示した添加量で白液に添加した。評価結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
<実施例11〜15及び比較例11〜15>
ユーカリユーロフィラ10%,オーク15%,その他の樹種75%の配合広葉樹チップを使用し、カミヤ連続蒸解釜にて未晒パルプを生産し、次いで前精選工程、酸素脱リグニン工程、後精選工程を処理して漂白工程で白色度85〜86%ハンタ−のパルプを製造した。本願発明の蒸解助剤チオ尿素とKAQを併用し、比較の蒸解助剤のキノン物質KAQを、下記の表3に示した添加量で白液に添加した。評価結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
<実施例16〜17及び比較例16〜17>
ユーカリユーロフィラはオークに比べ比引裂強度が約1/2のためオークをユーカリユーロフィラと置き換えると実機晒パルプの比引裂強度が低下する。比引裂強度は、コート紙の1つの重要な強度であり、チオ尿素の使用によりユーカリユーロフィラを増配しても実機晒パルプの比引裂強度が維持できる実施例を示す。この場合、ユーカリユーロフィラ20%(10%増),オーク5%(10%減),その他の樹種75%の配合広葉樹チップを使用し、カミヤ連続蒸解釜にて未晒パルプを生産し、次いで前精選工程、酸素脱リグニン工程、後精選工程を処理して漂白工程で白色度85〜86%ハンタ−のパルプを製造した。本願発明の蒸解助剤チオ尿素とKAQを併用し、比較の蒸解助剤のキノン物質KAQを、下記の表4に示した添加量で白液に添加した。評価結果を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
【発明の効果】
本願発明の方法は、リグノセルロース物質のアルカリ蒸解において有機還元物質(チオ尿素またはチオ尿素誘導体)を蒸解助剤として用いることにより、以下の通りの効果が得られる。
【0035】
(1)パルプ歩留及びパルプ物理特性(特に比引裂強度)が向上する。
【0036】
(2)キノン物質及び界面活性剤の蒸解助剤よりパルプ歩留とパルプ物理特性が優れる。
【0037】
(3)パルプ物理特性が低いチップ材種を使用・増配またはパルプ物理特性の高いチップ材種との置き換えても元のパルプ物理特性の維持ができる。
【0038】
(4)有機還元物質(チオ尿素またはチオ尿素誘導体)の蒸解助剤の溶解作業及び蒸解液(苛性ソーダ、白液)への添加作業は極めて単純で且つ溶解設備(タンク等)、添加ポンプは公知の供給もので作業性及び保全性が従来の通りと同等になる。
【0039】
上記の効果により本願発明の有機還元物質蒸解助剤は、パルプ製造用高価な木材チップ、非木材原料等の使用量の低減が図れ、更に、パルプ品質が向上し、極めて経済的・実用的に使用でき、コストダウンを解決できる。
Claims (7)
- 有機還元性物質をリグノセルロース物質の蒸解助剤として用いることを特徴とするパルプ製造方法。
- 蒸解助剤が、チオ尿素またはチオ尿素誘導体であることを特徴とする請求項1記載のパルプ製造方法。
- 蒸解助剤の添加率がリグノセルロース物質絶乾重量に対して0.001%から5.00%であることを特徴とする請求項1または2記載のパルプ製造方法。
- 請求項1において、蒸解助剤が、下記一般式で構成されていることを特徴とするパルプ製造方法。
<一般式>
(X)aN−(CS)m−N(Y)b
ここで、m,a,bは1または2;Xは H,CH3, C6H6;Yは H,CH3を示す。 - 請求項1において、蒸解助剤が、還元性糖類であることを特徴とするパルプ製造方法。
- 請求項5において、還元性糖類が、澱粉類及び/または糖みつ類であることを特徴とするパルプ製造方法。
- 蒸解助剤が、キノン系物質、ポリサルファイド、界面活性剤等から任意に選択された他の蒸解助剤と併用されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のパルプ製造方法。
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