JP2005015439A - セロビイトール一水和物結晶及びその製造方法、並びにその用途 - Google Patents
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Abstract
【構成】本発明は、従来、無水結晶としてのみ知られていたセロビイトールに、新たに分子中に一分子の水分子を有する、セロビイトールの一水和物結晶である。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なセロビイトール一水和物結晶及びその製造方法、並びにその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
セロビイトール(cellobiitol)は、2個のグルコース分子がβ−1,4−グルコシド結合したセロビオース(cellobiose)を水素化して得られる二糖類の糖アルコールである。セロビイトールの分子式はC12H24O11であり、その結晶は無水物として既に知られている。
【0003】
セロビイトール(セロビトールとも呼ばれることもある)は、クセやくどさのないサラリとした良質な甘味を有し、その甘味度は砂糖よりも低く、メイラード反応を生じにくい、熱に安定である、吸湿性が低い、人の消化器官により消化されにくい、口腔細菌により発酵されにくい、糖類よりもう蝕誘発性が低い、等の性質を有する物質である。また、セロビイトールの原料となるセロビオースは、セルロースの基本骨格を構成する物質であり、自然界に最も多く存在する天然物の一つである。
【0004】
セロビイトール無水物結晶の構造を報告した文献によると、含水メタノールから再結晶して得られたセロビイトール無水物結晶の格子パラメータは、a= 5.295(1)Å、b=7.770(1)Å、c=35.514(6)Å,単位格子体積V=1461.2Å3であると報告されている(非特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、分子式がC12H24O11で表わされるセロビイトール無水物結晶を調製し、それを各種食品中に添加するバルク剤として利用することを報告している。
【0006】
特許文献2には、セロビイトール無水物結晶を錠剤の賦形剤として利用することを報告している。
【0007】
【非特許文献1】
ゲイケーマとカンタース(W. P. J. Gaykema and J. A. Kanters)著、論文名「The Crystal and Molecular Structure of 4−O−β−D− Glucopyranosyl−D−glucitol」、刊行物名「アクタ クリスタログラフィカ(Acta Crystallographica)」、発行国(デンマーク)、発行年1979年、B35巻、p.1156−1162
【特許文献1】
特表平2−504582号公報
【特許文献2】
特開2001−89395号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
セロビイトールは、植物細胞壁を構成するセルロースの基本構造体であるセロビオースを由来とする糖アルコールであり、その原料は自然界に豊富に存在しているにも関わらず、具体的な研究開発や種々の用途への利用報告は、その他の糖アルコール類と比較しても非常に少なく、必ずしも有効に利用されているとは言えなかった。
【0009】
本発明者は、セロビイトールの利用価値を高めるため、製造方法やその利用方法について様々な研究を行っていた。そのような中、従来のセロビイトール結晶とは異なる挙動を示す物質が得られたため、各物性について詳細に調べたところ、それがセロビイトール一水和物結晶であることが確認された。
【0010】
即ち、本発明者によると、市販のセロビオースを用いて水溶液を調製し、これをスポンジニッケル触媒を用いた公知の方法で水素化してセロビイトール水溶液を調製した。次に、得られたセロビイトール水溶液について、濾過、活性炭処理、脱塩処理、クロマト分画処理を行い、最終的に固形物質中のセロビイトール純度が98.5%であるセロビイトール水溶液を調製した。次に、この高純度セロビイトール水溶液を、ブリックス計による測定で固形分濃度56.5%になるまで濃縮を行い、ガラス容器に移し替えた。セロビイトール水溶液が入ったガラス容器を、室温20℃の部屋に二週間静置したところ、ガラス容器内部の壁面に固形物の存在が確認された。この固形物を注意深く採取し、20℃で一週間デシケータ内に静置して常圧乾燥を行い、固形物を得た。
この固形物について、理化学的性質を調べたところ、従来全く知られていなかった、セロビイトールの一水和物結晶であることを確認し、さらにその製造方法及び各種用途への利用方法を開発し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
即ち、本発明の第一は、分子式がC12H26O12で表わされるセロビイトール一水和物結晶である。
本発明の第二は、結晶系が単斜晶系に属し、結晶格子パラメータが、a=9.927±0.008Å、b=8.676±0.008Å、c=18.830±0.016Åである、第一に記載のセロビイトール一水和物結晶である。
本発明の第三は、融点が102〜110℃である、第一又は第二に記載のセロビイトール一水和物結晶である。
本発明の第四は、100℃の温度条件下で17時間減圧乾燥した後、DSCによって吸熱ピークが観察されない、第一〜第三の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶である。
本発明の第五は、第一〜第四の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶を含有する、セロビイトール一水和物結晶含有組成物である。
本発明の第六は、セロビイトール一水和物結晶の含有割合が、乾燥固形物当り50重量%以上である、第五に記載のセロビイトール一水和物結晶含有組成物である。
本発明の第七は、セロビイトール水溶液中に、第一〜第六の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶又はセロビイトール一水和物結晶含有組成物を添加する、セロビイトール一水和物結晶の製造方法である。
本発明の第八は、第一〜第六の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶又はセロビイトール一水和物結晶含有組成物を用いる、飲食物又は医薬化粧品類の製造方法である。
【0012】
本発明に係るセロビイトール一水和物結晶は、以下の理化学的性質を有する物質である。
(1)分子式:C12H26O12
(2)分子量:362.328(原子量:炭素=12.011、水素=1.008、酸素=15.999とする)
(3)含水率:4.70〜5.20%(理論含水率:4.97%)
(4)元素分析
測定値:C=39.72% ,H=7.18% ,O=53.10%
理論値:C=39.78% ,H=7.23% ,O=52.99%
(5)結晶の融点
融点=102〜110℃
融点の測定には、融点測定計(装置名:Mettler FP61、METTLER INSTRUMENTE AG製)を用いて、1℃/分の昇温速度で測定し、融解を示すランプが点灯した時の温度を融点とした。
(6)物性、物質の色
無色透明な結晶である。微結晶は白色粉末状で甘味を有し、臭いはない。吸湿性はなく潮解しない。水溶液は中性から微酸性を示す。
(7)X線結晶構造解析
本発明に係るセロビイトール一水和物の単結晶について、X線による結晶構造解析を行ったところ、下記の格子パラメータを有する、単斜晶系に属する結晶であることが明らかとなった。X線測定では、回折計としてRigaku/MSC Mercury CCDを用い、X線源としてMoKα(λ=0.71070Å)を用いた。なお、a,b,c,βは格子定数を、Vは格子体積を表わす。
a=9.927±0.008Å
b=8.676±0.008Å
c=18.830±0.016Å
β=102.261±0.010°
V=1584±2Å3
(8)結晶構造の立体図
セロビイトール一水和物結晶について、立体ORTEP図を図1に示す。
【0013】
本発明に係るセロビイトール一水和物結晶は、高純度セロビイトール水溶液を調製し、そこから晶出させることも可能であるが、好ましくは、高純度セロビイトール水溶液の過飽和溶液を調製し、そこにセロビイトール一水和物結晶を加えて冷却攪拌することで多量の結晶状物質を得ることができる。多量の結晶状物質を含有し、マスキット状となったものは、必要に応じ少量の水を噴霧しながら遠心分離を行ってマスキット中の蜜を振り分け、残った固形物を乾燥させることで、高純度セロビイトール一水和物結晶を得ることができる。
【0014】
本発明に係るセロビイトール一水和物結晶含有組成物は、セロビイトール一水和物結晶を含むものであれば特に制限はなく、セロビイトール一水和物結晶を乾燥固形物当り50重量%以上含むものが好ましい。
【0015】
本発明に係るセロビイトール一水和物結晶含有組成物の形態には、セロビイトール一水和物結晶とその他の種類の粉末物との混合物、セロビイトール一水和物結晶を含有する含蜜結晶、セロビイトール一水和物結晶とセロビイトール一水和物結晶を含有する含蜜結晶との混合物、セロビイトール一水和物結晶を含有する含蜜結晶とその他の種類の粉末物との混合物、等が挙げられる。
【0016】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、各種飲食品や医薬化粧品などの用途に使用することができ、利用形態は、そのまま甘味料として利用することや、増量剤、賦形剤、結合剤、糖衣製剤、保形剤、保湿剤、崩壊剤等、種々の用途に使用することができる。
【0017】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、例えば、砂糖、ブドウ糖、乳糖、蜂蜜、粉飴、異性化糖、麦芽糖、マルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、水飴、トレハロース、セロビオース、パラチノース、メープルシュガー、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、マルトテトライトール、キシロビイトール、キシロトリイトール、キシロテトライトール、還元パラチノース、還元澱粉加水分解物、還元麦芽糖水飴、還元キシロオリゴ糖等の各種糖・糖アルコール類、ステビオシド、ジヒドロカルコン、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース等の各種高甘味剤、羅漢果エキス、グリシン、アラニン等を初めとする種々の甘味料の1種又は2種以上について、適量を任意の割合で混合して使用することも可能である。
【0018】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉、加工澱粉、デキストリン、分岐デキストリン、サイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、各種デキストリンの水素化物、ポリデキストロース等、各種の澱粉類や加工澱粉類と混合して使用することも可能である。
【0019】
本発明のセロビイトール一水和物結晶を粉末状にしたものは、各種の増量剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤等と混合して顆粒状、球状、錠剤、棒状、板状等、各種立体形状に成形して使用することも可能である。
【0020】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、他の糖アルコール類と同様にインシュリンの分泌を促さず、消化吸収されにくいので、本発明のセロビイトール一水和物結晶を使用した飲食物のカロリーを低下させることが可能である。
【0021】
従って、本発明のセロビイトール一水和物結晶は、糖尿病患者、肥満者等のカロリー制限をしている人のための低カロリー飲食物、美容食、健康食、ダイエット食などに利用することも可能である。
【0022】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、腸内有用細菌の生育を活性化する作用があるために、整腸剤などの医薬品、健康食品として、さらに有益菌を製剤化するための賦形剤、甘味剤、呈味改良剤、安定化剤などに利用することも可能である。
【0023】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、食品中の水分活性を低下させる目的で使用することや、菌類の増殖による食品の腐敗進行を抑制する目的で、リゾチーム、ソルビン酸、クエン酸、酢酸ナトリウム等の各種日持ち向上成分と任意に組合せて、食品の日持ち向上剤として利用することも可能である。
【0024】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、口腔内細菌によって発酵されにくいことなどにより、虫歯を起こしにくい甘味料として飲食物や医薬品等の用途に利用することも可能である。
【0025】
例えば、チューインガム、チョコレート、キャラメル、クッキー、ビスケット、ヌガー、キャンディー、ケーキ、クリーム等の菓子類、コーラ、サイダー、ジュース、コーヒー、乳飲料、乳酸菌飲料、茶飲料等のう蝕誘発性の低いことが望まれる飲食物の甘味付や不快味のマスキング剤としても好適であり、更にうがい薬、練り歯磨き等のような虫歯を予防する医薬品や化粧品などへの甘味付けとしても好適である。
【0026】
本発明のセロビイトール一水和物結晶の甘味は、酸味、塩味、辛味、渋味、旨味、にがみ等の他の呈味を有する各種物質ともよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きいので今まで述べた特殊な用途だけでなく、普通一般の飲食物の甘味付け、呈味改良に、また品質改良などに利用することも可能である。
【0027】
例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、各種ふりかけ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、丼つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のたれ、カレールウ、シチューの素、スープの素、だしの素、すき焼き用割下、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガー等の各種調味料として使用することも可能である。
【0028】
また、例えば、煎餅、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、餡類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子類、パン、パイ、ビスケット、クラッカー、クッキー、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ヌガー、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー等の各種洋菓子類、アイスクリーム、シャーベット等の氷菓類、果実のシロップ漬け、氷蜜等のシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト等のペースト類、ジャム、マーマレード等のジャム類、果実や野菜等の加工食品類、パン類、麺類、米飯類、人造肉等の穀物の加工食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬、たくあん漬等の漬物類、各種漬物の素や浅漬けの素等の漬物の素類、ハム、ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、てんぷら等の魚肉製品類、うに、いかの塩辛、酢コンブ、さきするめ、魚のみりん干等の各種珍味類、のり、山菜、するめ、小魚、貝等で製造される佃煮類、煮豆、ポテトサラダ、昆布巻き、肉じゃが、筑前煮、すき焼き、等の惣菜食品類、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜の瓶詰め、缶詰類、合成酒、果実酒、洋酒などの酒類、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料等の清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス等のプレミックス粉類、即席ジュース、即席コーヒー、即席しるこ、即席スープ等の即席飲食品などの各種飲食物への甘味料として、また、呈味改良剤、品質改良剤として利用することも可能である。
【0029】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、吸湿性が低く、流動性が良好であるため、例えば、チューインガム、酢コンブ等の表面を被覆するなどして内容物表面と包装紙の付着防止、滑り改良剤として利用することも可能である。
【0030】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、例えば糖衣ガムや糖衣錠等、噛んだ時のパリパリとしたクランチ性の付与や、芯剤の保護、表面の艶出し、等を目的としたハードコーティングやソフトコーティング等の原料として利用することも可能である。
【0031】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、粉末状にしたものを直接圧縮成形するか、もしくは水分を添加したり造粒操作を行うなどの加工処理を施して圧縮成形することで、優れた性質を有した錠剤品として利用することができる。また、低圧圧縮成形処理により、サイコロ状や花、動物等、各種の形状に自由に成形することも可能である。
【0032】
コーティング剤や錠剤の原料として使用する際には、セロビイトール一水和物結晶の他に、例えば各種の糖・糖アルコール類や人工甘味料などを含有させ増甘させること、各種食用色素で着色すること、フレーバー類を含有させること、ビタミン類や抗生物質をはじめとする薬効成分を含有させること、乳酸菌や酵母を含有させること等も可能である。
【0033】
本発明のセロビイトール一水和物結晶は、家畜、家禽、その他ミツバチ、蚕、魚等の飼育動物のために飼料、飼料等の嗜好性を向上させる目的や動物の腸内有用細菌の成育を活性化させる目的で使用することも可能である。
【0034】
その他、たばこ、練り歯磨き、口紅、リップクリーム、内服薬、トローチ、肝油ドロップ、口中清涼剤、口中香剤、うがい薬等に使用でき、形状も固形状、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状等用途に応じ選択が可能であり、嗜好品、化粧品、医薬品等への呈味改良剤、品質改良剤として利用することも可能である。
【0035】
セロビイトール一水和物結晶を原料とした化学反応により、極めて容易に、エーテル誘導体、エステル誘導体等の各種誘導体を製造することが可能である。これらセロビイトール一水和物結晶の誘導体は、界面活性剤、乳化剤、酵素反応用試薬、各種糖・糖アルコール含有化合物の合成基剤などに利用することも可能である。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。また、以下の実施例において%は特に断らない限り全て重量%を表す。
【0037】
【実施例1】セロビイトール一水和物結晶の製造
市販のセロビオースを用いて水溶液を調製し、これをスポンジニッケル触媒の存在下で水素化してセロビイトール水溶液を調製した。次に、得られたセロビイトール水溶液について、脱塩処理、クロマト分画処理を行い、最終的に固形物質中のセロビイトール純度が98.5%であるセロビイトール水溶液を調製した。次に、このセロビイトール水溶液を、ブリックス計による測定で固形分濃度56.5%になるまで濃縮を行い、ガラス容器に移し替えた。セロビイトール水溶液が入ったガラス容器を、室温20℃の部屋に二週間静置したところ、ガラス容器内部の壁面に付着した固形物が確認された。この固形物を注意深く採取し、20℃で1週間デシケータ内に静置する常圧乾燥を行い、セロビイトール一水和物結晶を得た。
【0038】
【実施例2】セロビイトール一水和物結晶の製造
固形物質中のセロビイトール含有量が98.1%であるセロビイトール水溶液を加熱濃縮し、ブリックス屈折計による測定で固形分濃度66.0%に調製した。次に、濃縮液を攪拌羽を取りつけたセパラブルフラスコに入れ、液温60℃を保ちながら、毎分30回転の速度で攪拌羽を回転させた。次に、実施例1で得られたセロビイトール一水和物結晶を添加し、24時間かけて30℃まで降温させて結晶化操作を行った。セロビイトール濃縮液中に発生した結晶は、遠心濾過機を用いて固液分離し、更に霧吹きで水を噴霧しながら遠心分離を続けた。遠心分離により振り分けられた固形物をデシケータに入れ、20℃に調節された室温内に一週間静置して常圧乾燥させ、セロビイトール一水和物結晶を得た。
【0039】
【参考例】
実施例2で得られたセロビイトール一水和物結晶の理化学的性質について、以下の分析例に従って分析を行い、物性値を求めた。
【0040】
【分析例1】
セロビイトール一水和物結晶のX線による結晶構造解析を行った。X線測定では、回折計としてRigaku/MSC Mercury CCDを用い、X線源としてMoKα(λ=0.71070Å)を用いた。解析の結果、本発明品は単斜晶系に属し、以下の通りの格子パラメータを有することが分かった。a,b,cは格子定数を、βは格子間の角度を、Vは格子容積を表す。
a=9.927±0.008Å、b=8.676±0.008Å、c=18.830±0.016Å、β=102.261±0.010°、V=1584±2Å3。
【0041】
【分析例2】
セロビイトール一水和物結晶の元素分析を行った。
セロビイトール一水和物の分子式C12H26O12より求められる理論値に対して、本品の分析値は下記の通りであり、本品の分子式がC12H26O12であることが確認された。
測定値:C=39.72% 、H=7.18% 、O=53.10%
理論値:C=39.78% 、H=7.23% 、O=52.99%
【0042】
【分析例3】
セロビイトール一水和物結晶の含水率について、カールフィッシャー法により測定を行った。測定の結果、水分含有量は5.16%であった。なお、セロビイトール一水和物結晶の理論水分含有量は4.97%(水1分子の分子量÷セロビイトール一水和物結晶の分子量)であり、本発明品は一水和物分の結晶水を含有する理論値に合致するものであった。
【0043】
【分析例4】
セロビイトール一水和物結晶の融点について、融点測定計(装置名:Mettler FP61、METTLER INSTRUMENTE AG製)を用いて測定を行った。融点の測定では、1℃/分の昇温速度で測定を行い、融解を示すランプが点灯した時の温度を融点として3回の測定を行った。測定結果の平均値は106.5℃であった。
【0044】
【分析例5】
本発明のセロビイトール一水和物結晶と市販のセロビイトール(試薬、シグマ社製)について、減圧状態で100℃に加熱処理した際の結晶状態の変化をDSCにて観測した。
セロビイトール一水和物結晶と市販のセロビイトールは、それぞれ100℃に設定した乾燥機内(装置名:VACUUM OVEN VOS−450SD、東京理化機械株式会社製)に、真空ポンプで減圧状態を維持した状態で17時間静置し、その後、室温まで冷却したものをサンプルとした。
DSCの測定には、示差走査熱量測定計(装置名:DSC−50、島津製作所製)を用いて、1℃/分の昇温速度で測定を行った。加熱処理したセロビイトール一水和物結晶のDSCチャートを図2に、加熱処理した市販のセロビイトールのDSCチャートを図3に示した。
図3のDSCチャートより、市販のセロビイトールを加熱処理したものは、144℃に吸熱ピークを有しており、サンプルがセロビイトール無水物結晶であることが確認された。
一方、本発明品のセロビイトール一水和物結晶を加熱処理したものは、図2のDSCチャートが示す通り、吸熱ピークが得られなかった。これは、セロビイトール一水和物結晶中の結晶水が、加熱処理中にセロビイトール一水和物結晶を徐々に融解させ、最終的に非晶質化してしまったものと考えられる。
【0045】
【実施例3】キャンディー
実施例2と同一の方法で得られたセロビイトール一水和物結晶420gを、180℃に加熱して溶融させた。その後150℃になるまで室温下で冷却し、クエン酸4.2g(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)、アップルオイル1.68g(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、シュガーフレーバー0.42g(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、ステビア0.42g(商品名:スィートFZ、日本製紙株式会社製)をそれぞれ添加した。その後、各成分を添加した溶融物を型枠に流し、常温になるまで冷却し、溶融物が凝固後、型枠から取り出し、2〜3g/個のキャンディーを得た。
得られたキャンデーは、さわやかな甘味を有し、吸湿が少なく、フレーバーの発ちの良いキャンディーであった。
【0046】
【実施例4】チューインガム
実施例2と同一の方法で得られたセロビイトール一水和物結晶120g、50℃に加温したガムベース80g(カネボウ化成株式会社製)、アスパルテーム0.7g(味の素株式会社製)を、55℃に加温したガム用ニーダー(機種名:SO.5−0.5 GH−S、森山製作所製)に添加し混錬を開始した。混錬開始後、実施例2と同一の方法で得られたセロビイトール一水和物結晶120gと還元澱粉糖化物60g(商品名:PO−60、東和化成工業株式会社製)を、交互に少量づつ添加し、混錬終了の1分前にブルーベリーオイル7g(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、合計30分間混錬を行った。
混錬されたガムベースは、二本ローラー圧延装置(入江商会株式会社製)で圧延し、圧延されたガムベースをビニール袋に密封して、18時間室温で静置したものを、2.5×20×70mmの大きさに成型し、チューインガムを得た。
得られたチューインガムについて、製造直後と製造後三週間デシケータ内で保存したものの切断強度を、レオメーター(機種名:RE−33005、山電株式会社製)、プランジャー(番号:No.21)、圧縮スピード1.0mm/mmの条件で測定した。チューインガム10検体の切断強度の平均値は、製造直後で1.15kg、三週間保存したものは0.95kgであった。
以上のように、得られたチューインガムは柔らかく、そのまま放置しておいても硬さの経時変化がなく、適度な噛み心地と甘味を有していた。
【0047】
【実施例5】硬質糖衣ガム
とうもろこし蛋白質(商品名:昭和ツエインDP、昭和産業株式会社製)、エタノール(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)、水、以上を1:4:1の重量割合で良く混合し、皮膜剤溶液を調製した。
次いで、実施例2と同一の方法で得られたセロビイトール一水和物結晶60.0%、アラビアガム3.0%(試薬特級、関東化学株式会社製)、水37.0%の割合からなる水溶液を、50℃に加温して良く混合し、糖衣液を調製した。
硬質糖衣ガムの芯剤として俵状の粒ガム(20×13×6mm)を用い、この粒ガム200gを小型糖衣機(装置名:16−DS型、菊水製作所株式会社製)に入れ、25rpmの速度で回転を開始した。次いで、糖衣機内の芯剤に皮膜剤溶液2gを添加し、25℃の空気を送風し芯剤表面を乾燥させた。
芯剤表面が乾燥後、50℃に加温した糖衣液2.6gを芯剤に添加し、その直後に、実施例2で得られたセロビイトール一水和物結晶の粉末2gを芯剤表面に均一に噴霧した。糖衣液の乾燥が即座に進行しないよう、糖衣液及び粉末を添加して最初の5分間は糖衣機内の芯剤に送風を行わず、その後、回転する糖衣機内の芯剤に25℃の空気を1〜2分間送風し、芯剤を乾燥させた。この糖衣液添加、粉末の噴霧から芯剤を乾燥させるまでを1サイクルとする糖衣層形成工程を5サイクル実施した。
6サイクル目以降は、芯剤に対し糖衣液2.6gを添加し、その後5分間は送風を行わない状態を維持し、最後に、糖衣機内の芯剤に25℃の空気を1〜2分間送風して芯剤を乾燥させるまでの工程を1サイクルとして、合計101サイクル実施した。
糖衣層形成工程が終了した後、40℃の空気を送風して糖衣ガム表面を乾燥させ、硬質糖衣ガム製品を得た。
得られた硬質糖衣ガムは、噛むと心地よいパリパリとしたクランチ性のある食感を有しており、好ましい糖衣ガムであった。
【0048】
【実施例6】チョコレート
実施例2と同一の方法で得られたセロビイトール一水和物結晶1665g、全脂粉乳740g(明治乳業株式会社製)、カカオマス555g(日新化工株式会社製)、ココアバター700g(日新化工株式会社製)を、捏和機(装置名:RN−5、高村理化株式会社製)に入れ、混合速度の目盛を5に設定し、50〜60℃の温度で20分間混合した。得られた混合物は、三本ローラーミル(機種名:S−4 3/4×11、井上製作所製)に2回かけ、混合物の微粉化を行い、チョコレートパウダーを調製した。
調製したチョコレートパウダー2800g、ココアバター107.7g(日新化工株式会社製)、レシチン11.6g(日新化工株式会社製)、バニリン1.5g(日新化工株式会社製)、をコンチングマシン(機種名:5L CONCH、井上製作所製)に入れ、ローラー速度の目盛を7に設定し、55℃の温度で4時間コンチングを行い、チョコレートペーストを得た。
チョコレートペーストが31℃になった時点で、テンパリング剤0.3g(商品名:クイックテンパNK−1、日新化工株式会社製)を加えてチョコレートペーストのテンパリングを行い、型枠に流し込んで冷却し、チョコレートを得た。
得られたチョコレートは、穏やかな甘さとなめらかな舌触りを有した、食べ易いチョコレートであった。
【0049】
【実施例7】ビタミンC顆粒製剤
実施例2と同一の方法で得られたセロビイトール一水和物結晶15gとビタミンC35g(東和化成工業株式会社製)をビニル袋に充填し、その中に70(v/v)%に調製したエタノール水溶液5.4mlを噴霧し、袋内の粉体と液体が均一に混ざるよう十分に混合操作を行った。次いで、目開き840μmの篩(Tokyo Screen Co., LTD)上に混合された粉末を入れ、スパーテルを用いて篩上の混合粉末を押し出した。押し出された混合粉末は、50℃で45分間送風乾燥(装置名:熱風乾燥機A−3、株式会社高杉製作所製)を行い、ビタミンCの顆粒製剤を得た。
得られたビタミンC顆粒製剤は、ビタミンC由来の酸味がセロビイトールによってマスキングされ、心地よい甘酸っぱさを感じるものであった。また、顆粒製剤は着色が無く、固着が少なく、流動性も優れていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】セロビイトール一水和物結晶の二分子分の立体ORTEP図である。
【図2】セロビイトール一水和物結晶を100℃で17時間、減圧下で加熱処理し、それをサンプルとしてDSC測定を行った結果、得られたチャート図である。
【図3】市販のセロビイトールを100℃で17時間、減圧下で加熱処理し、それをサンプルとしてDSC測定を行った結果、得られたチャート図である。
Claims (8)
- 分子式がC12H26O12で表わされるセロビイトール一水和物結晶。
- 結晶系が単斜晶系に属し、結晶格子パラメータが、a=9.927±0.008Å、b=8.676±0.008Å、c=18.830±0.016Åである、請求項1に記載のセロビイトール一水和物結晶。
- 融点が102〜110℃である、請求項1又は2に記載のセロビイトール一水和物結晶。
- 100℃の温度条件下で17時間減圧乾燥した後、DSCによって吸熱ピークが観察されない、請求項1〜3の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶。
- 請求項1〜4の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶を含有する、セロビイトール一水和物結晶含有組成物。
- セロビイトール一水和物結晶の含有割合が、乾燥固形物当り50重量%以上である、請求項5に記載のセロビイトール一水和物結晶含有組成物。
- セロビイトール水溶液中に、請求項1〜6の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶又はセロビイトール一水和物結晶含有組成物を添加する、セロビイトール一水和物結晶の製造方法。
- 請求項1〜6の何れか一つに記載のセロビイトール一水和物結晶又はセロビイトール一水和物結晶含有組成物を用いる、飲食物又は医薬化粧品類の製造方法。
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- 2003-06-27 JP JP2003185927A patent/JP2005015439A/ja active Pending
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