JP2005014148A - 研磨工具及びこれを用いた研磨方法並びに研磨加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】常に新しい砥粒を作業面の表面に均一に吸着させることができることに加え、煩雑な張り替え作業などのメンテナンス作業が不要な研磨工具及びこれを用いた研磨方法並びに研磨加工装置を提供する。
【解決手段】駆動軸を中心として回転することにより、該駆動軸と垂直に形成された研磨面に磁性体砥粒4を介して当接した被加工物2の研磨面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具1であって、非磁性材料で構成されている該研磨面の下にリング状強磁性体12が配置されると、リング状強磁性体12を励磁又は消磁することにより、磁性体砥粒4を該研磨面に吸着又は該研磨面から解放する電磁石13を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】駆動軸を中心として回転することにより、該駆動軸と垂直に形成された研磨面に磁性体砥粒4を介して当接した被加工物2の研磨面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具1であって、非磁性材料で構成されている該研磨面の下にリング状強磁性体12が配置されると、リング状強磁性体12を励磁又は消磁することにより、磁性体砥粒4を該研磨面に吸着又は該研磨面から解放する電磁石13を有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンやガラスなどといった高硬度脆性材料や、鉄鋼やアルミニウム等の金属材料を仕上げ加工するための研磨工具及びそれを用いた研磨方法に関し、特に、加工の高品位化、高能率化を行うと同時に、作業能率を向上することによる加工プロセスの簡略化に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光学素子(レンズ、プリズム及びミラー等)や基板などは、ガラス又は金属等の材料をある寸法に加工した後、さらに研磨することにより、表面粗さや面形状精度などを所望される仕様に適合させている。
研磨加工においては、遊離砥粒を用いた研磨方法か固定砥粒を用いた研磨方法かが採用される。
【0003】
遊離砥粒を用いる研磨方法は、液体中に砥粒を分散させ、この液体を工具と加工対象物との界面に供給しながら工具と加工対象物とを摺動させることで、加工対象物を研磨する方法である。遊離砥粒を用いる研磨方法の一例としては、特許文献1に開示される「研磨装置及び研磨方法」がある。
【0004】
遊離砥粒を用いる研磨方法の場合は、研磨工具の表面精度が比較的低くても研磨条件を適宜設定することにより被研磨物の表面精度を比較的良好なものとすることができる一方で、研磨条件を適切に設定するためには、長年に亘る経験が必要とされる。換言すると、遊離砥粒を用いる研磨方法は、研磨作業に熟練した者でなければ研磨条件を適切に設定することは困難である。
【0005】
また、固定砥粒(工具に固定された砥粒)を用いる研磨方法は、所定の面精度を有する研磨工具の基材表面に砥粒を固定させておき、該工具を被研磨物に対して押し当てながら摺動させることで、主として砥粒によるひっかきを利用して研磨を行うものである。一般に、固定砥粒を用いた研磨方法では、被研磨物の表面形状の精度を所望の精度とすることが容易である。
固定砥粒を用いた研磨工具の一例としては、特許文献2に開示される「研磨具及び研磨具の製造方法」に記載されている研磨工具がある。
【0006】
しかし、固定砥粒の研磨工具は、主に研磨フィルム(ラッピングフィルム)、研磨パッドが主流であるため、加工物の加工面の精度を高めるためには、工具(フィルム又はパッド)を定期的に交換する(張り替える)必要がある。
この作業は煩雑な作業であるため、張り替えの前後で加工特性が変化しないようにするためには、長年の経験が必要とされる。
【0007】
また、固定砥粒の研磨工具の製造方法の一例として、研磨フィルムの場合には、砥粒を分散させたバインダを基材(例えば、PETフィルム)上にコーティングすることによって得られる。また、研磨パッドの場合には、砥粒を樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)に分散させ、これを硬化させることによって形成される。
【0008】
加工面形状の精度を高めるためには、砥粒をなるべく均一分散させることが好ましいが、上記の手法で固定砥粒の研磨工具を製造する場合には、砥粒を均一に分散させることは難しい。
【0009】
また、上記のような固定砥粒の研磨工具は、ある砥粒の先端は突出しており、ある砥粒の先端は引っ込んでいるため、巨視的に被加工物を所望の形状に近づけることができたとしても、微視的には、加工面にキズを生じさせやすくなるという問題がある。
【0010】
このような問題を解決するための従来技術として、特許文献3に開示される「研磨工具」が知られている。
特許文献3に記載された発明においては、研磨工具のポリシャに所定の方向に磁性を帯びた磁性体粒子を一様に分散させている。その結果、ポリシャの内部には、磁性体粒子の磁性によって磁区構造が形成されるため、ポリシャは磁気的勾配を有することとなる。
よって、磁性を帯びた砥粒及び遊離砥粒を含む研磨液を研磨加工に用いた場合には、ポリシャの作業面に形成された磁極の影響により、この面には磁性を帯びた砥粒及び遊離砥粒が吸着される。すなわち、磁性を帯びた砥粒や遊離砥粒がポリシャの作業面に保持される。
【0011】
【特許文献1】
特開2003−100669号公報
【特許文献2】
特開2003−062754号公報
【特許文献3】
特開平9−254022号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献3に記載の発明においては、磁性粒子によってポリシャの内部に発生する磁界が微弱であるため、ポリシャの加工面に砥粒を吸着させるのに十分な力が得られない可能性が高い。さらに、仮に砥粒を吸着できたとしても、ポリシャ自体の構成は従来と同様であるため、砥粒や切り屑などが原因で発生する目詰まりは回避できない。
【0013】
本発明は、係る問題に鑑みてなされたものであり、常に新しい砥粒を作業面の表面に均一に吸着させることができることに加え、煩雑な張り替え作業などのメンテナンス作業が不要な研磨工具及びこれを用いた研磨方法並びに研磨加工装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、駆動軸を中心として回転することにより、該駆動軸と垂直に形成された研磨面に砥粒を介して当接した加工対象物の研磨面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具であって、砥粒を研磨面に吸着させる手段と、該吸着させた砥粒を該研磨面から除去する手段とを有することを特徴とする研磨工具を提供することを目的とする。このようにすれば、研磨工具の表面に常に新しい砥粒を供給し、摩耗した砥粒を除去できる。さらに、研磨加工時における目詰まりなどの不具合も解消できる。
【0015】
上記本発明の第1の態様においては、砥粒は磁性体粒子又は少なくとも磁性体粒子を含んだ複合粒子であり、該砥粒が磁界によって研磨面に吸着されることが好ましい。これに加えて、研磨面の表層は非磁性材料で形成され、研磨面表層の下には、回転軸を中心とする同心円上に、直径の異なる略リング状の強磁性体が等間隔に複数個埋設され、該リング状の強磁性体の下には電磁石が配置されており、磁界は、電磁石によって生じさせられることがより好ましい。このようにすれば、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着させることができることに加え、基材やバインダが不要となるため副資材を大幅に削減できる。さらに、砥粒の粒径や必要な吸着力に応じてリング状の強磁性体を磁化する度合を調整することが可能となる。なお、リング状の強磁性体は、軟磁性体であることが特に好ましい。
【0016】
また、さらに加えて、磁化されたリング状の強磁性体及び砥粒を消磁することにより、研磨面に吸着した砥粒を該研磨面から解放することがより好ましい。このようにすれば、研磨加工中に摩耗した砥粒を確実に研磨工具の表面から解放し、除去可能な状態とすることができる。
【0017】
なお、上記のリング状の強磁性体を有する構成においては、リング状の強磁性体のそれぞれは飽和磁化が0.8T以上であることがより好ましい。これにより、電磁石に供給する電流が小さくても大きい磁束密度を発生させることが可能となるため、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着できる。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、回転軸を中心として回転することにより、該回転軸と垂直に形成された研磨面に砥粒を介して当接した加工対象物の加工面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具であって、研磨面が回転軸を枢軸として一回転する間に、砥粒を研磨面に吸着させ、該吸着した砥粒を該研磨面から除去する手段を有することを特徴とする研磨工具を提供するものである。このようにすれば、研磨工具の表面に常に新しい砥粒を供給し、摩耗した砥粒を除去できる。さらに、研磨加工時における目詰まりなどの不具合も解消できる。
【0019】
上記本発明の第2の態様においては、砥粒は磁性体粒子又は少なくとも磁性体粒子を含んだ複合粒子であり、該砥粒が磁界によって研磨面に吸着されることが好ましい。これに加えて、研磨面の表層は非磁性材料で形成され、研磨面表層の下には、回転軸を中心とする同心円上に、直径の異なる不連続なリング状の強磁性体が等間隔に複数個埋設され、該不連続なリング状の強磁性体の下には電磁石が配置されており、磁界は、電磁石によって生じさせられることがより好ましい。このようにすれば、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着させることができることに加え、基材やバインダが不要となるため副資材を大幅に削減できる。さらに、砥粒の粒径や必要な吸着力に応じて不連続なリング状の強磁性体を磁化する度合を調整することが可能となる。なお、不連続なリング状の強磁性体は、軟磁性体であることが特に好ましい。
【0020】
また、さらに加えて、磁化された不連続なリング状の強磁性体及び砥粒を消磁することにより、研磨面に吸着した砥粒を該研磨面から解放することがより好ましい。このようにすれば、研磨加工中に摩耗した砥粒を確実に研磨工具の表面から解放し、除去可能な状態とすることができる。
【0021】
なお、上記の不連続なリング状の強磁性体を有する構成においては、不連続なリング状の強磁性体のそれぞれは飽和磁化が0.8T以上であることがより好ましい。これにより、電磁石に供給する電流が小さくても大きい磁束密度を発生させることが可能となるため、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着できる。
【0022】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第3の態様として、回転軸と垂直に形成された研磨面を有する研磨工具と加工対象物の加工面とを砥粒を介して当接させ、回転軸を中心として研磨工具を回転させることにより、該研磨工具と加工対象物の加工面とを摺動させ、該加工面を研磨する研磨方法であって、磁性体粒子からなる砥粒を研磨工具の研磨面に吸着させる第1工程と、研磨面に吸着した砥粒によって加工面を研磨する第2工程と、加工面を研磨した後の砥粒を研磨面から除去する第3工程とを有し、研磨加工中に第1〜第3の工程を繰り返し実行することを特徴とする研磨方法を提供するものである。この研磨方法によれば、加工物の表面に常に新しい砥粒を供給することができる。また、従来の固定砥粒加工工具では問題となっていた目詰まりの発生を回避できるため、加工面の品質をより高くすることができる。
【0023】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第4の態様として、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る研磨工具を用いて加工対象物の加工面を研磨することを特徴とする研磨方法を提供するものである。この研磨方法によれば、高い品質の加工面が得られるとともに、従来の固定砥粒加工工具を用いた研磨方法において必要とされていた煩雑な張り替え作業が不要となる。よって、研磨作業の能率を極めて高くすることができる。
【0024】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第5の態様として、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る研磨工具を備えた研磨加工装置を提供するものである。この研磨加工装置によれば、高い品質の加工面が得られるとともに、従来の固定砥粒加工工具を用いた研磨加工装置において必要とされていた煩雑な張り替え作業が不要となる。よって、極めて高い能率で研磨作業を行える。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
以下に説明する各実施形態においては、砥粒として磁性体粒子が用いられている。磁性体粒子の組成としては、FeO・Fe3O4やFe2O3やNiやCoなどがあげられる。これらの磁性体粒子は、平均粒径が5μm以下の微細粉末であることが好ましい。また、これらの磁性体粒子をベースに、CeO2 、Al2O3、SiO2 、ZrO2 などの金属酸化物を添加した凝集顆粒や複合粒子を適用することも可能である。
【0026】
〔第1の実施形態〕
本発明を好適に実施した第1の実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る研磨工具を示す。研磨工具1は、作業面にリング状強磁性体12が配置されている。リング状強磁性体12は、軟磁性体であることが特に好ましい。研磨工具1の作業面は、非磁性材料(石英やSUS304など)によって構成されており、所定の表面形状精度及び表面粗さを有する。
【0027】
研磨作業を行う際の動作について図2を用いて説明する。
研磨作業を行う際には、磁性体砥粒搬送用ベルト3を移動し、研磨工具1の作業面に磁性体砥粒4(以下、単に砥粒ともいう)が供給される状態にする。磁性体砥粒搬送用ベルト3は、研磨工具1と所定の間隔を保っており、接触はしてはいない。磁性体搬送ベルト3のベルト裏面にはフェライトなどの磁性体が配置されているため、磁性体砥粒4はベルト上に保持される。
【0028】
次に、電磁石13に直流電流id1を供給してH1 の磁界を発生させることにより、リング状強磁性体12と同様に同心円状に分布する磁束(磁束密度B1 )を形成する。
そして、研磨工具1を回転主軸を枢軸として回転させるとともに、磁性体砥粒搬送ベルト3をコンベヤとして作動させることによって、ベルト上に保持されている磁性体砥粒を研磨工具1の作業面に搬送する。研磨工具1の作業面上に搬送された磁性体砥粒4は、同心円状に分布する磁束に応じて作業面上に吸着する。
【0029】
同心円状に分布する磁束に応じて作業面上に吸着する磁性体砥粒の量は、研磨工具1と磁性体砥粒搬送ベルト3との間隔や電磁石13に供給する直流電流Id1を調整することで制御される。それ以外に、図2で示したように、研磨面の上にブレード6が配置され、ブレード6の設置位置を調整することによって研磨面に吸着された磁性体砥粒4の量、あるいは高さがさらに制御される。
【0030】
研磨工具1の作業面に所望の量の磁性体砥粒4を吸着させた後は、直ちに磁性体砥粒搬送用ベルト3を研磨工具1から引き離す。そして、電磁石13に供給する直流電流をid2(id1<id2)に増やし、磁性体砥粒4を研磨工具1の作業面により確実に吸着固定させる。
【0031】
また、研磨工具1の作業面の表面を形成する非磁性材料の下には、高飽和磁性を有する軟磁性材が等間隔のリング状に設けられている(すなわち、リング状強磁性体12が設けられている)ため、研磨面においては容易に減磁されない。
【0032】
また、磁性体砥粒4の粒径に応じて、電磁石13に供給する電流iを調整したり、リング状強磁性体12を飽和磁化及び透磁率が異なる軟磁性体に入れ替えたりすることによって、磁場の大きさは簡単に調整できるため、粒径が小さくても研磨工具1の作業面表面に磁性体砥粒4をしっかりと吸着させることができる。
【0033】
なお、磁性体砥粒4は、細長い形状であることが好ましい。長手方向長さl1 と短手方向長さl2 との比(l1 /l2 )が大きければ大きいほど、反磁界係数が小さくなって研磨工具1の作業面の表面に確実の保持されるとともに、砥粒層の厚さがより均一に揃う。
【0034】
研磨工具1の作業面に磁性体砥粒4を吸着させたのち、被加工物2を研磨工具1の作業面に当接させ、従来のラップ盤による研磨加工と同様の方法で研磨加工を行う。この際、被加工物2の材質に応じて、研磨工具1の作業面と被加工物2との間に純水や界面活性剤を供給する。
【0035】
所望の研磨時間が経過したら、被加工物2を研磨工具1の作業面から引き離し、電磁石13のコイルに高周波の交流電流を供給して研磨工具1の作業面に吸着した磁性体砥粒4及びリング状強磁性体12の磁性を消失させる。その後、不図示のブラッシによって研磨工具1の表面から砥粒を除去するが、砥粒及びリング用強磁性体12は磁性を失っているため、研磨工具1の表面から簡単に除去できる。
【0036】
砥粒を除去した研磨工具1の作業面には、上記同様にして新しい磁性体砥粒4を吸着させることができるため、被加工物を研磨する際に常に新しい砥粒を用いることができる。また、従来の固定砥粒工具では発生を防止することが困難であった目詰まりを防止できるため、被加工物の加工面の精度を高品位に保てる。さらに、従来の研磨フィルムや研磨パッドのように煩雑な張り替え作業を行う必要もない。
【0037】
〔第2の実施形態〕
本発明を好適に実施した第2の実施形態について説明する。図3に、本実施形態に係る研磨工具を示す。研磨工具1は、第1の実施形態と同様に、主軸を枢軸として回転する回転体の作業面に等間隔に強磁性体が配置されている。ただし、本実施形態においては、リング状強磁性体12は、完全な円環状ではなく不連続な円環状に配置されている。この他については、第1の実施形態と同様である。
【0038】
研磨工具1を用いて研磨作業を行う際の動作について説明する。
図4に示すように、磁性体砥粒搬送用ベルト3は、第1の実施形態と同様に、研磨工具1の作業面と所定の間隔を空けて、作業面上に配置される。また、磁性砥粒搬送用ベルト3の真下に位置する電磁石13aには直流電流id1を供給し、被加工物2の真下に位置する電磁石13bには、直流電流id2(id1<id2)を供給し、洗浄ブラシ5の真下に位置する電磁石13cには、高周波交流電流を供給する。
すなわち、本実施形態においては、各電磁石に一様の電流を供給するのでは無く、配置された場所に応じて供給する電流の強さや、直流及び交流のいずれを供給するかを変える。
【0039】
磁性体砥粒搬送用ベルト3の真下に位置する電磁石13aには、直流電流id1が供給されているため、第1の実施形態と同様に、磁性体砥粒4は、研磨工具1の加工面の表面に吸着する。吸着される磁性体砥粒4の量は、研磨工具1と磁性体砥粒搬送ベルト3との間隔や電磁石13に供給する直流電流Id1を調整することと、ブレード6と研磨工具1の研磨面とのギャップとで制御される。
【0040】
また、被加工物2の真下に位置する電磁石13bには、id1よりも強い直流電流id2が供給されているため、研磨工具1の表面に付着した磁性体砥粒4がより強固に保持される。
【0041】
研磨工具1の作業面は、被加工物2の加工面を研磨した後に洗浄ブラシ5が配置されている位置へ移動するため、リング状強磁性体12のうち洗浄ブラシ5の真下に移動してきた部分、及びここに吸着している磁性体砥粒4は、高周波交流電流によって電磁石13cのコイルが発生させる磁界(消磁磁界)によって磁性が消去される。磁界が消去された砥粒は、洗浄ブラシ5によって研磨工具1の表面から除去される。
【0042】
洗浄ブラシ5によって磁性体砥粒4が除去された研磨工具1の表面部分は、主軸の回転に伴って再び磁性体砥粒搬送用ベルト3が配置された位置に移動移動する。これにより、この部分には磁性体砥粒4が新たに吸着させられる。新たに磁性体砥粒4が吸着させられた研磨工具1の表面部分は、主軸の回転に伴って被加工物2と接触し、加工面を研磨する。
【0043】
このように、研磨加工のプロセスにおいて、研磨工具1には磁性体砥粒4の吸着と除去とが同時に(換言すると、並行して)行われ、被加工物2の加工面は常に新しい磁性体砥粒4によって研磨される。これにより、被加工物2の加工面の精度を極めて高くできるとともに、研磨作業を中断することなく連続して行えるため、作業能率を高めることができる。
【0044】
なお、上記各実施形態は、本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれらに限定されることはない。
例えば、研磨工具の表面に砥粒を供給する方法は、上記のように搬送手段としてベルトを用いる構成に限定されることはない。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように、本発明によれば、常に新しい砥粒を作業面の表面に均一に吸着させることができることに加え、煩雑な張り替え作業などのメンテナンス作業が不要な研磨工具及び研磨方法並びに研磨加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を好適に実施した第1の実施形態に係る研磨工具の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る研磨工具を用いた研磨加工時の状態を示す図である。
【図3】本発明を好適に実施した第2の実施形態に係る研磨工具の構成を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る研磨工具を用いた研磨加工時の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 研磨工具
2 被加工物
3 磁性体砥粒搬送用ベルト
4 磁性体砥粒
5 洗浄ブラシ
6 ブレード
11 研磨工具表面非磁性材料部分
12 リング状強磁性体
13 電磁石
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンやガラスなどといった高硬度脆性材料や、鉄鋼やアルミニウム等の金属材料を仕上げ加工するための研磨工具及びそれを用いた研磨方法に関し、特に、加工の高品位化、高能率化を行うと同時に、作業能率を向上することによる加工プロセスの簡略化に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光学素子(レンズ、プリズム及びミラー等)や基板などは、ガラス又は金属等の材料をある寸法に加工した後、さらに研磨することにより、表面粗さや面形状精度などを所望される仕様に適合させている。
研磨加工においては、遊離砥粒を用いた研磨方法か固定砥粒を用いた研磨方法かが採用される。
【0003】
遊離砥粒を用いる研磨方法は、液体中に砥粒を分散させ、この液体を工具と加工対象物との界面に供給しながら工具と加工対象物とを摺動させることで、加工対象物を研磨する方法である。遊離砥粒を用いる研磨方法の一例としては、特許文献1に開示される「研磨装置及び研磨方法」がある。
【0004】
遊離砥粒を用いる研磨方法の場合は、研磨工具の表面精度が比較的低くても研磨条件を適宜設定することにより被研磨物の表面精度を比較的良好なものとすることができる一方で、研磨条件を適切に設定するためには、長年に亘る経験が必要とされる。換言すると、遊離砥粒を用いる研磨方法は、研磨作業に熟練した者でなければ研磨条件を適切に設定することは困難である。
【0005】
また、固定砥粒(工具に固定された砥粒)を用いる研磨方法は、所定の面精度を有する研磨工具の基材表面に砥粒を固定させておき、該工具を被研磨物に対して押し当てながら摺動させることで、主として砥粒によるひっかきを利用して研磨を行うものである。一般に、固定砥粒を用いた研磨方法では、被研磨物の表面形状の精度を所望の精度とすることが容易である。
固定砥粒を用いた研磨工具の一例としては、特許文献2に開示される「研磨具及び研磨具の製造方法」に記載されている研磨工具がある。
【0006】
しかし、固定砥粒の研磨工具は、主に研磨フィルム(ラッピングフィルム)、研磨パッドが主流であるため、加工物の加工面の精度を高めるためには、工具(フィルム又はパッド)を定期的に交換する(張り替える)必要がある。
この作業は煩雑な作業であるため、張り替えの前後で加工特性が変化しないようにするためには、長年の経験が必要とされる。
【0007】
また、固定砥粒の研磨工具の製造方法の一例として、研磨フィルムの場合には、砥粒を分散させたバインダを基材(例えば、PETフィルム)上にコーティングすることによって得られる。また、研磨パッドの場合には、砥粒を樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)に分散させ、これを硬化させることによって形成される。
【0008】
加工面形状の精度を高めるためには、砥粒をなるべく均一分散させることが好ましいが、上記の手法で固定砥粒の研磨工具を製造する場合には、砥粒を均一に分散させることは難しい。
【0009】
また、上記のような固定砥粒の研磨工具は、ある砥粒の先端は突出しており、ある砥粒の先端は引っ込んでいるため、巨視的に被加工物を所望の形状に近づけることができたとしても、微視的には、加工面にキズを生じさせやすくなるという問題がある。
【0010】
このような問題を解決するための従来技術として、特許文献3に開示される「研磨工具」が知られている。
特許文献3に記載された発明においては、研磨工具のポリシャに所定の方向に磁性を帯びた磁性体粒子を一様に分散させている。その結果、ポリシャの内部には、磁性体粒子の磁性によって磁区構造が形成されるため、ポリシャは磁気的勾配を有することとなる。
よって、磁性を帯びた砥粒及び遊離砥粒を含む研磨液を研磨加工に用いた場合には、ポリシャの作業面に形成された磁極の影響により、この面には磁性を帯びた砥粒及び遊離砥粒が吸着される。すなわち、磁性を帯びた砥粒や遊離砥粒がポリシャの作業面に保持される。
【0011】
【特許文献1】
特開2003−100669号公報
【特許文献2】
特開2003−062754号公報
【特許文献3】
特開平9−254022号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献3に記載の発明においては、磁性粒子によってポリシャの内部に発生する磁界が微弱であるため、ポリシャの加工面に砥粒を吸着させるのに十分な力が得られない可能性が高い。さらに、仮に砥粒を吸着できたとしても、ポリシャ自体の構成は従来と同様であるため、砥粒や切り屑などが原因で発生する目詰まりは回避できない。
【0013】
本発明は、係る問題に鑑みてなされたものであり、常に新しい砥粒を作業面の表面に均一に吸着させることができることに加え、煩雑な張り替え作業などのメンテナンス作業が不要な研磨工具及びこれを用いた研磨方法並びに研磨加工装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、駆動軸を中心として回転することにより、該駆動軸と垂直に形成された研磨面に砥粒を介して当接した加工対象物の研磨面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具であって、砥粒を研磨面に吸着させる手段と、該吸着させた砥粒を該研磨面から除去する手段とを有することを特徴とする研磨工具を提供することを目的とする。このようにすれば、研磨工具の表面に常に新しい砥粒を供給し、摩耗した砥粒を除去できる。さらに、研磨加工時における目詰まりなどの不具合も解消できる。
【0015】
上記本発明の第1の態様においては、砥粒は磁性体粒子又は少なくとも磁性体粒子を含んだ複合粒子であり、該砥粒が磁界によって研磨面に吸着されることが好ましい。これに加えて、研磨面の表層は非磁性材料で形成され、研磨面表層の下には、回転軸を中心とする同心円上に、直径の異なる略リング状の強磁性体が等間隔に複数個埋設され、該リング状の強磁性体の下には電磁石が配置されており、磁界は、電磁石によって生じさせられることがより好ましい。このようにすれば、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着させることができることに加え、基材やバインダが不要となるため副資材を大幅に削減できる。さらに、砥粒の粒径や必要な吸着力に応じてリング状の強磁性体を磁化する度合を調整することが可能となる。なお、リング状の強磁性体は、軟磁性体であることが特に好ましい。
【0016】
また、さらに加えて、磁化されたリング状の強磁性体及び砥粒を消磁することにより、研磨面に吸着した砥粒を該研磨面から解放することがより好ましい。このようにすれば、研磨加工中に摩耗した砥粒を確実に研磨工具の表面から解放し、除去可能な状態とすることができる。
【0017】
なお、上記のリング状の強磁性体を有する構成においては、リング状の強磁性体のそれぞれは飽和磁化が0.8T以上であることがより好ましい。これにより、電磁石に供給する電流が小さくても大きい磁束密度を発生させることが可能となるため、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着できる。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、回転軸を中心として回転することにより、該回転軸と垂直に形成された研磨面に砥粒を介して当接した加工対象物の加工面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具であって、研磨面が回転軸を枢軸として一回転する間に、砥粒を研磨面に吸着させ、該吸着した砥粒を該研磨面から除去する手段を有することを特徴とする研磨工具を提供するものである。このようにすれば、研磨工具の表面に常に新しい砥粒を供給し、摩耗した砥粒を除去できる。さらに、研磨加工時における目詰まりなどの不具合も解消できる。
【0019】
上記本発明の第2の態様においては、砥粒は磁性体粒子又は少なくとも磁性体粒子を含んだ複合粒子であり、該砥粒が磁界によって研磨面に吸着されることが好ましい。これに加えて、研磨面の表層は非磁性材料で形成され、研磨面表層の下には、回転軸を中心とする同心円上に、直径の異なる不連続なリング状の強磁性体が等間隔に複数個埋設され、該不連続なリング状の強磁性体の下には電磁石が配置されており、磁界は、電磁石によって生じさせられることがより好ましい。このようにすれば、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着させることができることに加え、基材やバインダが不要となるため副資材を大幅に削減できる。さらに、砥粒の粒径や必要な吸着力に応じて不連続なリング状の強磁性体を磁化する度合を調整することが可能となる。なお、不連続なリング状の強磁性体は、軟磁性体であることが特に好ましい。
【0020】
また、さらに加えて、磁化された不連続なリング状の強磁性体及び砥粒を消磁することにより、研磨面に吸着した砥粒を該研磨面から解放することがより好ましい。このようにすれば、研磨加工中に摩耗した砥粒を確実に研磨工具の表面から解放し、除去可能な状態とすることができる。
【0021】
なお、上記の不連続なリング状の強磁性体を有する構成においては、不連続なリング状の強磁性体のそれぞれは飽和磁化が0.8T以上であることがより好ましい。これにより、電磁石に供給する電流が小さくても大きい磁束密度を発生させることが可能となるため、砥粒を研磨工具の表面に確実に吸着できる。
【0022】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第3の態様として、回転軸と垂直に形成された研磨面を有する研磨工具と加工対象物の加工面とを砥粒を介して当接させ、回転軸を中心として研磨工具を回転させることにより、該研磨工具と加工対象物の加工面とを摺動させ、該加工面を研磨する研磨方法であって、磁性体粒子からなる砥粒を研磨工具の研磨面に吸着させる第1工程と、研磨面に吸着した砥粒によって加工面を研磨する第2工程と、加工面を研磨した後の砥粒を研磨面から除去する第3工程とを有し、研磨加工中に第1〜第3の工程を繰り返し実行することを特徴とする研磨方法を提供するものである。この研磨方法によれば、加工物の表面に常に新しい砥粒を供給することができる。また、従来の固定砥粒加工工具では問題となっていた目詰まりの発生を回避できるため、加工面の品質をより高くすることができる。
【0023】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第4の態様として、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る研磨工具を用いて加工対象物の加工面を研磨することを特徴とする研磨方法を提供するものである。この研磨方法によれば、高い品質の加工面が得られるとともに、従来の固定砥粒加工工具を用いた研磨方法において必要とされていた煩雑な張り替え作業が不要となる。よって、研磨作業の能率を極めて高くすることができる。
【0024】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第5の態様として、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る研磨工具を備えた研磨加工装置を提供するものである。この研磨加工装置によれば、高い品質の加工面が得られるとともに、従来の固定砥粒加工工具を用いた研磨加工装置において必要とされていた煩雑な張り替え作業が不要となる。よって、極めて高い能率で研磨作業を行える。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
以下に説明する各実施形態においては、砥粒として磁性体粒子が用いられている。磁性体粒子の組成としては、FeO・Fe3O4やFe2O3やNiやCoなどがあげられる。これらの磁性体粒子は、平均粒径が5μm以下の微細粉末であることが好ましい。また、これらの磁性体粒子をベースに、CeO2 、Al2O3、SiO2 、ZrO2 などの金属酸化物を添加した凝集顆粒や複合粒子を適用することも可能である。
【0026】
〔第1の実施形態〕
本発明を好適に実施した第1の実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る研磨工具を示す。研磨工具1は、作業面にリング状強磁性体12が配置されている。リング状強磁性体12は、軟磁性体であることが特に好ましい。研磨工具1の作業面は、非磁性材料(石英やSUS304など)によって構成されており、所定の表面形状精度及び表面粗さを有する。
【0027】
研磨作業を行う際の動作について図2を用いて説明する。
研磨作業を行う際には、磁性体砥粒搬送用ベルト3を移動し、研磨工具1の作業面に磁性体砥粒4(以下、単に砥粒ともいう)が供給される状態にする。磁性体砥粒搬送用ベルト3は、研磨工具1と所定の間隔を保っており、接触はしてはいない。磁性体搬送ベルト3のベルト裏面にはフェライトなどの磁性体が配置されているため、磁性体砥粒4はベルト上に保持される。
【0028】
次に、電磁石13に直流電流id1を供給してH1 の磁界を発生させることにより、リング状強磁性体12と同様に同心円状に分布する磁束(磁束密度B1 )を形成する。
そして、研磨工具1を回転主軸を枢軸として回転させるとともに、磁性体砥粒搬送ベルト3をコンベヤとして作動させることによって、ベルト上に保持されている磁性体砥粒を研磨工具1の作業面に搬送する。研磨工具1の作業面上に搬送された磁性体砥粒4は、同心円状に分布する磁束に応じて作業面上に吸着する。
【0029】
同心円状に分布する磁束に応じて作業面上に吸着する磁性体砥粒の量は、研磨工具1と磁性体砥粒搬送ベルト3との間隔や電磁石13に供給する直流電流Id1を調整することで制御される。それ以外に、図2で示したように、研磨面の上にブレード6が配置され、ブレード6の設置位置を調整することによって研磨面に吸着された磁性体砥粒4の量、あるいは高さがさらに制御される。
【0030】
研磨工具1の作業面に所望の量の磁性体砥粒4を吸着させた後は、直ちに磁性体砥粒搬送用ベルト3を研磨工具1から引き離す。そして、電磁石13に供給する直流電流をid2(id1<id2)に増やし、磁性体砥粒4を研磨工具1の作業面により確実に吸着固定させる。
【0031】
また、研磨工具1の作業面の表面を形成する非磁性材料の下には、高飽和磁性を有する軟磁性材が等間隔のリング状に設けられている(すなわち、リング状強磁性体12が設けられている)ため、研磨面においては容易に減磁されない。
【0032】
また、磁性体砥粒4の粒径に応じて、電磁石13に供給する電流iを調整したり、リング状強磁性体12を飽和磁化及び透磁率が異なる軟磁性体に入れ替えたりすることによって、磁場の大きさは簡単に調整できるため、粒径が小さくても研磨工具1の作業面表面に磁性体砥粒4をしっかりと吸着させることができる。
【0033】
なお、磁性体砥粒4は、細長い形状であることが好ましい。長手方向長さl1 と短手方向長さl2 との比(l1 /l2 )が大きければ大きいほど、反磁界係数が小さくなって研磨工具1の作業面の表面に確実の保持されるとともに、砥粒層の厚さがより均一に揃う。
【0034】
研磨工具1の作業面に磁性体砥粒4を吸着させたのち、被加工物2を研磨工具1の作業面に当接させ、従来のラップ盤による研磨加工と同様の方法で研磨加工を行う。この際、被加工物2の材質に応じて、研磨工具1の作業面と被加工物2との間に純水や界面活性剤を供給する。
【0035】
所望の研磨時間が経過したら、被加工物2を研磨工具1の作業面から引き離し、電磁石13のコイルに高周波の交流電流を供給して研磨工具1の作業面に吸着した磁性体砥粒4及びリング状強磁性体12の磁性を消失させる。その後、不図示のブラッシによって研磨工具1の表面から砥粒を除去するが、砥粒及びリング用強磁性体12は磁性を失っているため、研磨工具1の表面から簡単に除去できる。
【0036】
砥粒を除去した研磨工具1の作業面には、上記同様にして新しい磁性体砥粒4を吸着させることができるため、被加工物を研磨する際に常に新しい砥粒を用いることができる。また、従来の固定砥粒工具では発生を防止することが困難であった目詰まりを防止できるため、被加工物の加工面の精度を高品位に保てる。さらに、従来の研磨フィルムや研磨パッドのように煩雑な張り替え作業を行う必要もない。
【0037】
〔第2の実施形態〕
本発明を好適に実施した第2の実施形態について説明する。図3に、本実施形態に係る研磨工具を示す。研磨工具1は、第1の実施形態と同様に、主軸を枢軸として回転する回転体の作業面に等間隔に強磁性体が配置されている。ただし、本実施形態においては、リング状強磁性体12は、完全な円環状ではなく不連続な円環状に配置されている。この他については、第1の実施形態と同様である。
【0038】
研磨工具1を用いて研磨作業を行う際の動作について説明する。
図4に示すように、磁性体砥粒搬送用ベルト3は、第1の実施形態と同様に、研磨工具1の作業面と所定の間隔を空けて、作業面上に配置される。また、磁性砥粒搬送用ベルト3の真下に位置する電磁石13aには直流電流id1を供給し、被加工物2の真下に位置する電磁石13bには、直流電流id2(id1<id2)を供給し、洗浄ブラシ5の真下に位置する電磁石13cには、高周波交流電流を供給する。
すなわち、本実施形態においては、各電磁石に一様の電流を供給するのでは無く、配置された場所に応じて供給する電流の強さや、直流及び交流のいずれを供給するかを変える。
【0039】
磁性体砥粒搬送用ベルト3の真下に位置する電磁石13aには、直流電流id1が供給されているため、第1の実施形態と同様に、磁性体砥粒4は、研磨工具1の加工面の表面に吸着する。吸着される磁性体砥粒4の量は、研磨工具1と磁性体砥粒搬送ベルト3との間隔や電磁石13に供給する直流電流Id1を調整することと、ブレード6と研磨工具1の研磨面とのギャップとで制御される。
【0040】
また、被加工物2の真下に位置する電磁石13bには、id1よりも強い直流電流id2が供給されているため、研磨工具1の表面に付着した磁性体砥粒4がより強固に保持される。
【0041】
研磨工具1の作業面は、被加工物2の加工面を研磨した後に洗浄ブラシ5が配置されている位置へ移動するため、リング状強磁性体12のうち洗浄ブラシ5の真下に移動してきた部分、及びここに吸着している磁性体砥粒4は、高周波交流電流によって電磁石13cのコイルが発生させる磁界(消磁磁界)によって磁性が消去される。磁界が消去された砥粒は、洗浄ブラシ5によって研磨工具1の表面から除去される。
【0042】
洗浄ブラシ5によって磁性体砥粒4が除去された研磨工具1の表面部分は、主軸の回転に伴って再び磁性体砥粒搬送用ベルト3が配置された位置に移動移動する。これにより、この部分には磁性体砥粒4が新たに吸着させられる。新たに磁性体砥粒4が吸着させられた研磨工具1の表面部分は、主軸の回転に伴って被加工物2と接触し、加工面を研磨する。
【0043】
このように、研磨加工のプロセスにおいて、研磨工具1には磁性体砥粒4の吸着と除去とが同時に(換言すると、並行して)行われ、被加工物2の加工面は常に新しい磁性体砥粒4によって研磨される。これにより、被加工物2の加工面の精度を極めて高くできるとともに、研磨作業を中断することなく連続して行えるため、作業能率を高めることができる。
【0044】
なお、上記各実施形態は、本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれらに限定されることはない。
例えば、研磨工具の表面に砥粒を供給する方法は、上記のように搬送手段としてベルトを用いる構成に限定されることはない。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように、本発明によれば、常に新しい砥粒を作業面の表面に均一に吸着させることができることに加え、煩雑な張り替え作業などのメンテナンス作業が不要な研磨工具及び研磨方法並びに研磨加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を好適に実施した第1の実施形態に係る研磨工具の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る研磨工具を用いた研磨加工時の状態を示す図である。
【図3】本発明を好適に実施した第2の実施形態に係る研磨工具の構成を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る研磨工具を用いた研磨加工時の状態を示す図である。
【符号の説明】
1 研磨工具
2 被加工物
3 磁性体砥粒搬送用ベルト
4 磁性体砥粒
5 洗浄ブラシ
6 ブレード
11 研磨工具表面非磁性材料部分
12 リング状強磁性体
13 電磁石
Claims (13)
- 駆動軸を中心として回転することにより、該駆動軸と垂直に形成された研磨面に砥粒を介して当接した加工対象物の研磨面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具であって、
前記砥粒を前記研磨面に吸着させる手段と、
該吸着させた砥粒を該研磨面から除去する手段とを有することを特徴とする研磨工具。 - 前記砥粒は磁性体粒子又は少なくとも磁性体粒子を含んだ複合粒子であり、該砥粒が磁界によって前記研磨面に吸着されることを特徴とする請求項1記載の研磨工具。
- 前記研磨面の表層は非磁性材料で形成され、
前記研磨面表層の下には、前記回転軸を中心とする同心円上に、直径の異なる略リング状の強磁性体が等間隔に複数個埋設され、
該リング状の強磁性体の下には電磁石が配置されており、
前記磁界は、前記電磁石によって生じさせられることを特徴とする請求項2記載の研磨工具。 - 磁化された前記リング状の強磁性体及び前記砥粒を消磁することにより、前記研磨面に吸着した砥粒を該研磨面から解放することを特徴する請求項3記載の研磨工具。
- 前記リング状の強磁性体のそれぞれは、飽和磁化が0.8T以上であることを特徴とする請求項3又は4記載の研磨工具。
- 回転軸を中心として回転することにより、該回転軸と垂直に形成された研磨面に砥粒を介して当接した加工対象物の加工面と摺動し、該加工面を研磨する研磨工具であって、
前記研磨面が前記回転軸を枢軸として一回転する間に、前記砥粒を前記研磨面に吸着させ、該吸着した砥粒を該研磨面から除去する手段を有することを特徴とする研磨工具。 - 前記砥粒は磁性体粒子又は少なくとも磁性体粒子を含んだ複合粒子であり、該砥粒が磁界によって前記研磨面に吸着されることを特徴とする請求項6記載の研磨工具。
- 前記研磨面の表層は非磁性材料で形成され、
前記研磨面表層の下には、前記回転軸を中心とする同心円上に、直径の異なる不連続なリング状の強磁性体が等間隔に複数個埋設され、
該不連続なリング状の強磁性体の下には電磁石が配置されており、
前記磁界は、前記電磁石によって生じさせられることを特徴とする請求項7記載の研磨工具。 - 磁化された前記不連続なリング状の強磁性体及び前記砥粒を消磁することにより、前記研磨面に吸着した砥粒を該研磨面から解放することを特徴する請求項8記載の研磨工具。
- 前記不連続なリング状の強磁性体のそれぞれは、飽和磁化が0.8T以上であることを特徴とする請求項8又は9記載の研磨工具。
- 回転軸と垂直に形成された研磨面を有する研磨工具と加工対象物の加工面とを砥粒を介して当接させ、前記回転軸を中心として前記研磨工具を回転させることにより、該研磨工具と前記加工対象物の加工面とを摺動させ、該加工面を研磨する研磨方法であって、
磁性体粒子からなる砥粒を前記研磨工具の研磨面に吸着させる第1工程と、
前記研磨面に吸着した砥粒によって前記加工面を研磨する第2工程と、
前記加工面を研磨した後の砥粒を前記研磨面から除去する第3工程とを有し、研磨加工中に前記第1〜第3の工程を繰り返し実行することを特徴とする研磨方法。 - 請求項1から9のいずれか1項記載の研磨工具を用いて加工対象物の加工面を研磨することを特徴とする研磨方法。
- 請求項1から9のいずれか1項記載の研磨工具を備えた研磨加工装置。
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JP2003181902A JP2005014148A (ja) | 2003-06-25 | 2003-06-25 | 研磨工具及びこれを用いた研磨方法並びに研磨加工装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106053170A (zh) * | 2016-05-25 | 2016-10-26 | 山西大学 | 一种纳米压痕实验混凝土试件剖光装置 |
WO2018136269A1 (en) * | 2017-01-23 | 2018-07-26 | 3M Innovative Properties Company | Magnetically assisted disposition of magnetizable abrasive particles |
-
2003
- 2003-06-25 JP JP2003181902A patent/JP2005014148A/ja not_active Withdrawn
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