JP2005013724A - 吸収性物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 吸水性樹脂粒子および繊維を含有する吸収性物品であって、JIS L−1096規定のハートループ法により求められる剛軟性が5.0〜9.5cmである吸水性樹脂複合体組成物を含むことを特徴とする吸収性物品。
【選択図】 図3
Description
すなわち本発明は、吸水性樹脂粒子および繊維を含有する吸収性物品であって、JIS L−1096規定のハートループ法により求められる剛軟性が5.0〜9.5cmである吸水性樹脂複合体組成物を含むことを特徴とする吸収性物品。を提供する。また本発明は、この吸収性物品を用いた衛生材料、工業資材および農業資材も提供する。
本発明の吸収性物品は剛軟性が5.0〜9.5cmである吸水性樹脂複合体組成物を含むことから、適度なしなやかさを有している。このため、例えばおむつとして加工した場合には、でん部に適度にフィットして良好な装着感を与えることができる。剛軟性が9.5cmを上回ると、柔らか過ぎて吸収性物品の形状を保持しにくくなって好ましくない。また、剛軟性が5.0cm未満であると、柔軟性が悪いために、形に個人差があるでん部など体型にフィットしにくくなる。
剛軟性が5.0〜9.5cmである吸水性樹脂複合体組成物を含む吸収性物品は、繊維が3次元にネットワークを組まず、吸水性樹脂同士がぶつかっても滑るような略球状であるような構造を採用することにより提供することができる。例えば、以下に記載する吸水性樹脂複合体を用いれば、本発明の条件を満たす吸収性物品を提供することができる。
(吸水性樹脂複合体の構造および構成要素の役割)
本発明の吸収性物品に含まれる吸水性樹脂複合体は、1個の略球状の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含むものである。複合体に含まれる1本以上の繊維は、繊維の一部が吸水性樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が吸水性樹脂粒子より露出している。また、複合体に含まれる1本以上の繊維は、繊維が吸水性樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が吸水性樹脂粒子の表面に接着している(以下、「本発明の吸水性樹脂複合体」と呼ぶ)。すなわち、本発明の吸水性樹脂複合体の必須構成要素は、吸水性樹脂粒子、吸水性樹脂粒子に部分的に包埋されている繊維、吸水性樹脂粒子の表面に接着しているが吸水性樹脂粒子に包埋されていない繊維の3種である。本発明の吸水性樹脂複合体における繊維と吸水性樹脂粒子の乾燥重量比は、1:1〜1:1,000,000であることが好ましく、1:2〜1:100,000であることがより好ましく、1:3〜1:10,000であることがさらにより好ましい。
吸水性樹脂は、本発明の吸水性樹脂複合体において、水、尿、血液等の液体を使用目的に応じて吸収する役割を果たす。
本発明の吸水性樹脂複合体に用いられる吸水性樹脂は略球状の粒子である。ここで略球状とは、全体として真球および楕円体の形状を有するものであり、表面に細かな凹凸(即ち、しわ、突起、陥没等)を有していても差し支えない。また、表面や内部に、細孔やクラック等の空隙を有していても差し支えない。従来の粉砕した吸水性樹脂のように、不定形で鋭利な切断面を有していると、皮膚への刺激が大きくて、機械的付加に対して鋭利な切断面が欠損して細粒が生じるという欠点がある。しかしながら、本発明で用いる略球状の吸水性樹脂粒子はこのような欠点がない。また不定形品に比して、最密充填ができるため高密度化が可能であるという利点も有する。
吸水性樹脂に部分的に包埋されている繊維は、吸水性樹脂の固定性を確保する役割を果たす。この繊維は吸水前および吸水後の吸水性樹脂の固定性をも向上させる。即ち吸水性樹脂表面から伸長する繊維が、押圧時の吸水性樹脂の回転運動や並進運動を防止する。この繊維の一部は吸水性樹脂に包埋されていて、吸水後も吸水性樹脂から脱離することがないので、吸水後の固定性に重要な役割を発揮しうる。用いる繊維の形状は、導水性を高めるために中空やサイドバイサイド型等であってもよい。
さらに吸水性樹脂に部分的に包埋されている繊維は各吸水性樹脂複合体の独立性を確保する役割も持つ。複合体前駆体の重合過程において、この繊維はたがいの立体障害により吸水性樹脂同士の融着を防止する。即ち吸水性樹脂表面から伸長する繊維が、重合進行中の吸水性樹脂同士が互いに接触するのを妨害し、吸水性樹脂同士の融着を防止する。その結果、各吸水性樹脂複合体(前駆体)は独立性を保ち、製造工程、処理工程における反応器壁への付着を防止し、後述する開繊性も確保できる。
更に加えるに、吸水性樹脂複合体を構成する繊維が柔らかな感触を与えることと、複合体に含まれる吸水性樹脂が略球状であることがあいまって、複合体は乾燥状態に於いても押圧時に非常に柔らかであり、衛生材料等に好適である。
吸水性樹脂表面に接着しているが吸水性樹脂に包埋されていない繊維は、吸水前の吸水性樹脂の固定性を確保する効果がある。更に膨潤後は、吸水性樹脂表面の繊維が吸水性樹脂同士の間に間隙を作り、水の流路を確保する作用がある。この作用を得るためには、必ずしも該繊維が吸水後も吸水性樹脂に接着していなくても良いが、少なくとも該繊維が吸水性樹脂表面に緊密に配置されていることが好ましい。そのために、本発明のように吸水前に繊維が吸水性樹脂表面に接着していることは好都合である。また、吸水性樹脂同士の間に間隙を作り、水の流路を確保するためには一定の剛性を備えた繊維を用いることが好ましい場合がある。また、上述の吸水性樹脂に包埋されている繊維とあいまって、吸水前における吸水性樹脂の固定性を確保する効果もある。用いる繊維の形状は、拡散性を高めるために中空やサイドバイサイド型等であってもよい。
本発明に用いる吸水性樹脂粒子の平均粒径は50〜1,000μmが好ましい。平均粒径は100〜900μmがより好ましく、200〜800μmが特に好ましい。また後述するが、本発明に用いる繊維として好ましいものは繊維長が50〜50,000μmのものである。より好ましくは100〜30,000μm、さらに好ましくは500〜10,000μmである。更に本発明の形状を得るためには粒径:繊維長比率は2:1〜1:1,000が好ましい。より好ましくは1:1〜1:500特に好ましくは1:2〜1:100である。
一般的に吸水性樹脂の固定性確保と保持能や加圧下吸水能等の吸水能力確保とは両立しない。即ち吸水前だけでなく吸水後も十分な固定性を確保しようとすると、吸水後においてもなお、吸水膨張力を凌駕する吸水性樹脂同士の強固な接着力を必要とする。このことはとりもなおさず、吸水性樹脂自体の吸水膨潤阻害をもたらし、十分な吸水能を与えない。一方、保持能や加圧下吸水能等の吸水能力を確保しようとして、接着面が自由に膨潤できるようにすると、接着面の破壊を伴うことになり、十分な固定性を与えない。
なお、両者の繊維の種類は同一でも異なっていても差し支えなく、使用目的、それぞれの効果発現のため適宜選択される。
本発明の吸水性樹脂複合体の特徴の一つは、当該複合体の集合体が開繊性を有しているばかりでなく、当該複合体を含む吸水性樹脂複合体組成物に開繊性を持たせることができる点にある。このような特徴は、各複合体が実質的に独立していることから確保される。即ち、1つの複合体を構成する繊維が他の複合体と実質的な接着をしていないことが望まれる。そのためには、製造条件にもよるが、用いる繊維の繊維長を前記のように適宜選択することが好ましい。開繊性は、後記する試験例に示すように、梳毛のしやすさおよび梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損状況で評価することができる。
さらに、本発明の吸水性樹脂複合体の特徴は、当該複合体の集合体が形態保持性を有しているばかりでなく、当該複合体を含む吸水性樹脂複合体組成物に形態保持性を持たせることができる点にもある。前記のように当該複合体中の結合繊維は各吸水性複合体同士に適度な物理的絡み合いを与え、当該複合体を含む吸水性樹脂複合体組成物を塊状にしたときに自重程度では容易にばらばらにならないという形態保持性を与える。
用途等必要に応じて、上記吸水性樹脂複合体に更に繊維を加えて吸水性樹脂複合体組成物を製造することもできる。この組成物においてこの繊維は吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維である。この繊維を加えることにより、柔軟性、ソフト感、導水性、通水性、水の拡散性、通気性等がさらに向上させることができる。また、加える繊維を適宜選択することにより、組成物自体の開繊性を確保することもできる。
この組成物は一般的には製造された上記吸水性樹脂複合体に対して適宜、繊維を混合、分散させることにより製造できる。あるいはまた、重合進行中の吸水性樹脂あるいは吸水性樹脂複合体中の吸水性樹脂と実質的に接触しない方法で吸水性樹脂複合体製造時に繊維を供給、混合、分散させることによっても得られる。
本発明で用いる吸水性樹脂は、以下の重合性モノマーおよび開始剤を用いて製造することができる。
使用する重合性モノマーは、吸水性樹脂を与えるものである限りその種類を問わない。レドックス系開始剤によってその重合が開始される重合性モノマーを使用することが特に好ましい。この重合性モノマーは通常、水溶性のものが好ましい。
アクリル酸モノマーの中和には、アルカリ金属の水酸化物や重炭酸塩等または水酸化アンモニウム等が使用可能であるが、好ましいのはアルカリ金属水酸化物であり、その具体例としては水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。
なお、これらの重合性モノマーのうち吸水性樹脂を与えるものは、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩に対する補助成分としてではなく、「吸水性樹脂を与える重合性モノマーの水溶液」の主要モノマ−として使用することもできる。
さらに、アゾ化合物として知られている開始剤も用いることができる。例えばある程度水溶性を示す、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド等が挙げられる。
重合はラジカル重合開始剤の分解により開始される。通常よく知られている手法は熱分解である。しばしば、予め重合開始剤の分解温度に昇温させた反応液の重合性モノマーに対して加熱していない重合開始剤を添加して重合開始させる場合があるが、この場合も熱分解の範疇に属する。
酸化剤としては、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、第二セリウム塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩等が挙げられる。この中でも過酸化水素が特に好ましい。これら酸化剤の使用量は、重合性モノマーに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
繊維としては、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維などを用いることができる。
用いる繊維は、吸水性樹脂複合体の使用目的、吸水性樹脂複合体を構成する各繊維の役割に応じて選択される。例えば、複合体を吸水性物品に使用するときには、パルプ、レーヨン、木綿、再生セルロースその他のセルロース系繊維のような親水性が高い繊維を選択することが好ましい。また導水性の面からも親水性が高い繊維が好ましい。特に衛生材料用途にはパルプが感触が良好という点からも好ましい。パルプ種として特に限定はないが、機械パルプとして砕木パルプ等;化学機械パルプとしてセミケミカルパルプ、ケミカルグラウンドパルプ等;化学パルプとして亜硫酸パルプ、硫酸パルプ、ソーダパルプ、硝酸法パルプ、塩素法パルプ等;再生パルプとして例えばいったん製紙して作った紙の機械的破砕又は粉砕物、又は古紙の機械的破砕又は粉砕物である再生古紙パルプ等が例示できる。
また、環境問題などを考慮して生分解性がない合成繊維の代わりに、生分解性のあるポリ乳酸繊維、脂肪族ポリエステルのような合成繊維を用いても構わない。
本発明で用いる繊維として好ましいものは、平均繊維長が50〜50,000μmのものである。より好ましくは100〜30,000μm、さらに好ましくは500〜10,000μmである。50,000μmよりも繊維長が長くなると、繊維が複数の吸水性樹脂と接着して各吸水性樹脂複合体の独立性が確保できず、この複合体を含む組成物の開繊が困難になる傾向がある。逆に50μmより小さな繊維長では吸水性樹脂への包埋や接着が困難になる傾向がある。
また、吸水性樹脂複合体が所望の形状を得るためには、吸水性樹脂粒径:繊維長の比率は2:1〜1:1000が好ましい。より好ましくは1:1〜1:500、特に好ましくは1:2〜1:100である。
さらに、環境問題などを考慮して生分解性がない合成繊維の代わりに、生分解性のあるポリ乳酸繊維、脂肪族ポリエステルのような合成繊維を用いても構わない。
以上の諸観点から繊維種、繊維長、繊維径、繊維形状が適宜選択される。
具体的な手法としては「繊維便覧(加工編)」(繊維学会編、丸善、1969)18頁以下に紹介されている、綿紡式、梳毛式、紡毛式、麻紡式、絹紡式あるいはまた回転羽式粉砕機、ハンマー式粉砕機、パルプ解繊機等を適宜用いることができる。またフロック加工として知られている繊維を帯電させ、繊維間の静電反発を利用して事実上、繊維一本一本を独立させ、均一分散させることも可能である。
(構成)
本発明の吸水性樹脂複合体組成物は、上記の吸水性樹脂複合体を含むことを特徴とする。例えば、上記の堆積した吸水性樹脂複合体あるいは上記の開繊され独立した吸水性樹脂複合体と繊維とを混合することにより吸水性樹脂複合体と繊維が任意の組成で混合した吸水性樹脂複合体組成物を製造することができる。混合する繊維は特に制限されない。例えば、本発明の吸水性樹脂複合体組成物は、吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維を1本以上含んでいてもよい。
繊維としては、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維などを用いることができる。
用いる繊維は、吸水性樹脂複合体組成物の使用目的に応じて選択される。例えば、組成物を吸収性物品に使用するときには、パルプ、レーヨン、木綿、再生セルロースその他のセルロース系繊維のような親水性が高い繊維を選択することが好ましい。また導水性の面からも親水性が高い繊維が好ましい。特に衛生材料用途にはパルプが感触が良好という点で好ましい。
一方、疎水性繊維を使用することもできる。例えば、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビリニデン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ尿素系、ポリウレタン系、ポリフルオロエチレン系、ポリシアン化ビニリデン系繊維である。これら疎水性繊維を用いることにより、組成物における通水性、水の拡散性を向上することができる。
用いる繊維種は上記の「吸水性樹脂に包埋あるいは接着される繊維」と同一でも異なっていても差し支えない。例えば、「吸水性樹脂に包埋あるいは接着される繊維」として親水性繊維を選択し、「吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維」として疎水性繊維を選択することができる。このような態様を採用すれば、疎水性繊維が吸水性樹脂複合体間の水の拡散性を向上させる機能を発揮する。
2種以上の繊維種を組み合わせて使用する場合の混合比は、吸収性物品中の通水性を阻害しない範囲内で選択することが好ましい。2種類の繊維の混合比にグラデーションを付けたり、各繊維を偏在させて使用しても構わない。
吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維として好ましいものは、繊維長が50〜100,000μmのものである。より好ましくは100〜50,000μm、さらに好ましくは500〜20,000μmである。100,000μmよりも繊維長が長くなると組成物の開繊が困難になる場合がある。逆に50μmより小さな繊維長では繊維自体の易動性が大きいため、組成物から繊維が漏れる等の問題がある。
以上の諸観点から繊維種、繊維長、繊維径が適宜選択される。
本発明の吸水性樹脂複合体の製造方法は、請求の範囲に記載される条件を満たす吸水性樹脂複合体を製造し得る方法であれば特に制限されない。
気相中での液滴を重合させる好ましい一つの方法は、レドックス系重合開始剤を構成する酸化剤と還元剤の一方を含む重合性モノマー水溶液からなる第1液とレドックス系重合開始剤の他方および所望により重合性モノマーを含む水溶液からなる第2液を気相中で混合することにより重合を開始させることからなる。
このように、ノズルから噴出されたそれぞれの水溶液は、液柱状態で衝突させて両液を合体させる。合体後は液柱を形成していて、その状態がある時間保持されるが、その後この液柱は解体して液滴となる。生成した液滴は気相中で重合が進行する。
液滴と繊維を接触させる際の液滴中の重合性モノマー転化率は0〜90%の範囲が好ましい。より好ましくは0〜70%で、最も好ましくは0〜60%の範囲である。90%以上の転化率では用いる繊維が吸水性樹脂に包埋も接着もされない可能性がある。
上記の構造を有する本発明の吸水性樹脂複合体は、重合性モノマーの転化率の等しい段階の反応場で繊維を供給することによっても製造できるが、重合性モノマーの転化率の異なる2段階以上の反応場で繊維を供給することによって製造することが好ましい。そのためには複数の供給口から繊維を供給することが好ましい。即ち繊維を吸水性樹脂に部分的に包埋しようとする場合は、重合性モノマーの転化率が相対的に低い段階で接触させることが望まれ、繊維を吸水性樹脂に包埋されず吸水性樹脂表面に接着させようとする場合は、重合性モノマーの転化率が相対的に高い段階で接触させることが望まれる。
重合進行中の液滴と接触させるために繊維を供給する方法として、一般に知られている搬送方法を用いることができる。反応器内の繊維の空間密度は、繊維を吸水性樹脂に部分的に包埋させる場合は0.005〜1000g/m3の範囲が好ましい。この上限を超えると吸水性樹脂複合体に包埋されない繊維が生成し、この下限以下だと繊維を包埋しない吸水性樹脂が生成して吸水性樹脂複合体の収率が相対的に低下する問題が生じる。繊維をできるだけ細かく均一に供給するためには、繊維を気体との混相流として供給することが好ましい。ここで用いる気体としては、上述の反応場を与える気相の気体として挙げたものを用いることができる。そのなかでも経済的観点、環境負荷軽減の観点から空気が好ましい。
混相流として供給する気体の温度は、重合を著しく阻害しない範囲内で選択することが望まれる、その意味から具体的には室温以上150℃以下、望ましくは100℃以下である。繊維搬送の観点からは、気体中の湿度は低い方が好ましいが、あまり湿度が低いと反応器内の湿度を下げ、重合が進行する前に重合性モノマー水溶液中の水分が蒸発して重合性モノマーが析出し、その結果、重合速度が著しく低下、あるいは重合が途中で停止する可能性がある。
吸水性樹脂複合体は、堆積物として回収される。各吸水性樹脂複合体は互いに独立しているため、容易に開繊可能である。開繊には、繊維の説明で述べた開繊方法を同様に適宜用いることができるが、機械的衝撃により吸水性樹脂が破損しない装置、条件が好ましい。
本発明の吸水性樹脂複合体の製造において、その他の付加的工程として、残存モノマー処理工程、表面架橋工程、他の機能を付与するために触媒、還元剤、消臭剤、人尿安定剤、抗菌剤等の添加剤添加工程を加えてもよい。
残存モノマーを処理する方法としては、1)残存モノマーの重合を進行させる方法、2)残存モノマーを他の誘導体へ導く方法、3)残存モノマーを除去する方法が挙げられる。
該吸水性樹脂複合体をさらに加熱する方法は、該吸水性樹脂複合体を100〜250℃で加熱処理し、該吸水性樹脂複合体に残存するモノマーを重合させるものである。
また、吸水性能を向上させる目的で、吸水性樹脂の表面を架橋剤により架橋させることも可能である。一般に、粉末状の吸水性樹脂粒子の表面に架橋剤とともに適量の水分を付与した後、加熱して表面を架橋することにより樹脂粒子の特性を改良することは公知であり、表面に選択的に架橋構造が形成される結果、吸水して膨潤するに際し、膨潤を阻害せずにその形状を維持することができるものと考えられている。この工程ではまず吸水性樹脂複合体に表面架橋剤の溶液を付与する。表面架橋剤としてはN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性モノマーと共重合し得る多官能化合物や、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のカルボン酸基と反応し得る官能基を複数個有する化合物が用いられる。これらの表面架橋剤は、通常、吸水性樹脂複合体に対して0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%となるように用いられる。なお、これらの表面架橋剤は、吸水性樹脂複合体全体に均一に付与されるように、水、エタノール、メタノールなどで希釈して0.1〜1重量%、特に0.2〜0.5重量%の溶液として用いるのが好ましい。架橋剤溶液の付与は通常は噴霧器を用いて架橋剤溶液を吸水性樹脂複合体にスプレーしたり、ロールブラシで架橋剤溶液を塗布する方法により行うのが好ましい。なお、架橋剤溶液を過剰に付与した後、圧搾ロールで樹脂粒子がつぶれない程度に軽く圧搾したり、風を吹き付けたりして、余剰の架橋剤溶液を除去するようにしてもよい。この架橋剤溶液の付与は室温で行えばよい。架橋剤溶液を付与された吸水性樹脂複合体は、次いで加熱して架橋反応を進行させ、吸水性樹脂表面に選択的に架橋構造を形成させる。架橋反応の条件は用いる架橋剤により適宜選択すればよいが、通常は100℃以上の温度で10分間以上反応させる。本発明では、吸水性樹脂として不飽和カルボン酸重合物架橋体が好ましく、部分中和アクリル酸重合物架橋体が特に好ましい。
吸水性樹脂複合体、あるいは吸水性樹脂複合体組成物には、目的とする用途に応じて所望の機能を付与するために各種の添加剤を加えることができる。これら添加剤としては、吸収する液体によるポリマー分解、変質を防止する安定剤、抗菌剤、消臭剤、脱臭剤、芳香剤、発泡剤等を挙げることができる。
混合機としては粉体同士、粉体と繊維、あるいは繊維同士を混合できる固体混合装置を用いることができる。固体混合装置の具体例として、「化学工学II」(大山義年、岩波全書、1963,229頁)に詳述されている円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、正立方体型混合機等の回転型混合機、スクリュー型混合機、リボン型混合機、回転円板型混合機、流動化型混合機等の固定型混合機等が挙げられる。
圧密処理時に加熱する場合は、使用する繊維の溶融点以下の温度に加熱することができる。溶融点以上の温度に加熱すると、繊維同士が結着してネットワークを形成して、複合体の機能が損なわれるおそれがあるので好ましくない。圧密処理時に加湿する場合は、通常は、蒸気を用いて加湿することができる。加湿条件を適宜選択することにより、吸水性樹脂複合体組成物の密度を向上させ、吸水性樹脂粒子の繊維への固着性を向上させることができる。
(構成)
本発明の吸収性物品は、1個の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含んでおり、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、前記2本以上の繊維のうち、1本以上は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維が前記樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着している吸水性樹脂複合体を含有することを特徴とする。
特にいわゆる紙おむつや生理用ナプキンなどには、使用時に体液などの拡散性を良くするためにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性繊維不織布の拡散層を使用しても良い。吸水性複合体は自由にフラッフパルプ等と混合使用しても良い。
また、市販されているような粉体吸水性樹脂などを混合しても良い。混合する場合は、後述する吸水性樹脂脱落率測定法にしたがって測定した吸水性樹脂脱落率が好ましくは5%以下になる範囲で、混合使用できる。
さらに、吸収性物品にフラッフパルプのような嵩高性を与える素材を挿入しておくことにより、肌への感触を改善し、身体への適用性を高めることができる。嵩高性を与える素材の目付量は80〜250g/m2であることが好ましく、100〜220g/m2であるのがより好ましい。嵩高性を与える素材は、吸水性樹脂複合体組成物24と、水不透過性ポリエチレンシート21などの基材の間に設けることが好ましいが、吸水性樹脂複合体組成物24を上下から挟むようにしても構わない。ただし、上下から挟むようにする場合は、下側の目付量の方が大きくなるようにするのが好ましい。
薄型の吸収性物品を製造する場合は、本発明の吸水性樹脂複合体組成物を薄型化しておくことが好ましい。具体的には、本発明の吸水性樹脂複合体組成物の嵩密度を0.20〜1.10g/cm3の範囲内にすることが好ましく、0.20〜0.85g/cm3の範囲内にすることがより好ましい。薄型化後の密度は、吸水性樹脂複合体組成物に対する加圧、加熱、加湿等の条件により調整することができる。薄型後の厚みは、0.2〜20mmが好ましく、0.2〜10mmがより好ましく、0.2〜5mmがさらに好ましい。
薄型化する方法として、例えば、プレス機を用いて加圧処理する方法が挙げられる。プレス機としては、平板プレス機、ロールプレス機等が使用できる。圧力は吸水性樹脂が割れない範囲内で選択する。吸水性樹脂が割れると、繊維から離脱して吸収性物品から漏れたり、膨潤時に吸水ゲルが繊維から外れて漏れたり、移動したりして、吸収性物品の性能を低下させることとなる。
本発明の吸収性物品は、JIS Z−8815の図4に示される振とう機を用いて振動数165回/分、回転数290回/分で60分振とうした後に吸水性物品から離脱する吸水性樹脂粒子の重量が、振とう前の前記吸水性物品中の全吸水性樹脂重量の5重量%以下であることが好ましい。この試験の詳細については、後述する吸水性樹脂脱落率測定の記載およびJIS Z−8815を参照することができる。
本発明の吸収性物品は、子供用紙おむつ、大人用紙おむつ、失禁用パッド、生理用品などの衛生材料、廃水などの吸収シート、保持シート、保冷剤、止水材、シーリング材、建築用結露防止剤等の工業資材、土壌保水剤、育苗用保水シート、野菜などの鮮度保持剤、保水剤等の農業資材に好適に使用できる。
1)複合体A: 1個の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維が前記樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着している構造の吸水性樹脂複合体。
2)複合体B: 1個以上の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記1本以上の繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子の表面に接着していない吸水性樹脂複合体。
3)複合体C: 1個以上の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記1本以上の繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子内に包埋されていない吸水性樹脂複合体。
アクリル酸100重量部に、水3.3重量部を加え、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液133.3重量部を25℃以下に冷却のもと添加して、モノマー濃度50重量%、中和度60モル%の部分中和アクリル酸水溶液を調製した。
該部分中和アクリル酸水溶液100重量部に架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.14重量部と、更に酸化剤として31重量%の過酸化水素水溶液4.55重量部を加えて溶液Aを調製した。
これとは別に該部分中和アクリル酸水溶液100重量部に対して、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.14重量部と更に還元剤としてL−アスコルビン酸0.57重量部を加えて溶液Bを調製した。
溶液Aおよび溶液Bは、それぞれのノズル対のノズルを出たところで合流し、それぞれ約10mmほど液柱を形成した後、液滴となって重合を進行させながら気相中(空気中、温度50℃)を落下した。一方、ノズル先端より下方1.6mの液滴落下途上(重合率40%)で、開繊されたパルプ繊維(平均長2,500μm、平均太さ2.2デシテックス、水の接触角0°)を23g/分の速度で、空気との混相流(繊維:空気=1:100)として、線速10m/sで供給した。液滴は気相中でパルプ繊維と衝突混合して複合体を形成し、ノズルの先端より下方3mに設置したポリエステル網上に堆積した。
この生成物を顕微鏡で観察したところ、複合体A(吸水性樹脂粒子は略球状;図3に走査顕微鏡写真を示す)と複合体C(吸水性樹脂粒子は略球状)からなる組成物であることが確認できた。繊維を包埋も接着もしていない吸水性樹脂粒子は見られなかった。
製造例1の手順において、繊維の材質、平均繊維長、平均繊維径を表1に示すとおりに変更したこと以外は全て同じ方法で、吸水性樹脂複合体を含む生成物を得た。
なお、製造例5では、繊維径が1.7デシックス、長さが0.9mmで水の接触角が80゜であるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を用いた。製造例6では、繊維径が1.7デシックス、長さが0.9mmで水の接触角が50゜であるナイロンと、同一の繊維径及び長さを有し、水の接触角が0゜であるレーヨンとの重量比が1:1の繊維混合物を用いた。
この生成物を顕微鏡で観察したところ、複合体Bを確認することができたが、複合体Aおよび複合体Cは確認できなかった。
製造例1の手順において、パルプ繊維を23g/分の供給速度で空気とともにノズル先端より下方0.8mの位置(重合率15%)に供給し、ノズル先端より下方1.6m(重合率40%)の位置でポリエステル網上での捕集する点を変更したこと以外は全て同じ方法で吸水性樹脂複合体を含む生成物を得た。
この生成物を顕微鏡で観察したところ、複合体Bからなることが確認できた。また、その複合体は繊維が吸水性樹脂粒子を介在して3次元にネットワークを組んだシート状になっていることが確認できた。一方、複合体Aおよび複合体Cは確認できなかった。
製造例1の手順において、ノズルの先端より下方0.8mに設置した繊維供給口から繊維を供給したこと以外は全て同じ方法で吸水性複合体を製造し、吸水性樹脂複合体を含む生成物を得た。
この生成物を顕微鏡で観察したところ、複合体A(吸水性樹脂粒子は略球状)および複合体Bからなる組成物であることが確認できた。
製造例3で得られた組成物47.5重量部、製造例9で得られた2種類の吸水性樹脂複合体からなる組成物47.5重量部、および製造例1で用いたものと同一の繊維5重量部を回転羽根式混合機で均一に混合し、生成物を得た。
この生成物を顕微鏡で観察したところ、複合体A(吸水性樹脂粒子は略球状)、複合体B、複合体Cおよび自由繊維からなる組成物であることが確認できた。顕微鏡観察の結果、合計重量中の複合体Aの重量比率は0.24であった。
上記製造例で得られた各吸水性樹脂複合体の重量比および各吸水性複合体を構成する結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比を用い、吸水性樹脂目付量および繊維(結合繊維+自由繊維)と吸水性樹脂の乾燥重量比が所定の値となるように吸水性樹脂複合体および自由繊維を混合した。
例えば複合体A、複合体Bおよび複合体Cの乾燥重量比がそれぞれa、b、c(a+b+c=1)、各複合体を形成する繊維の乾燥重量比率がα、β、γである吸水性樹脂複合体×[g/m2]と自由繊維y[g/m2]から、吸水性樹脂目付量がP[g/m2]、自由繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比がF[w/w]である高密度化吸水性樹脂複合体組成物を製造するとき、
[a(1−α)+b(1−β)+c(1−γ)]x = P[g/m2]
と
y
――――――――――――――――――――――― = F[w/w]
[a(1−α)+b(1−β)+c(1−γ)]x
の関係が成立し、a、b、c、α、β、γおよびP、Fが与えられれば、x,yは計算することができる。ただしここではP=300g/m2(一定値)とした。
この混合物が、40cm×10cmとなるようにステンレス板上に均一に敷き詰め、さらにその上にステンレス板を重ね、両側から0.6MPaの荷重をかけ、20分間放置後、圧力を開放し、高密度吸水性樹脂複合体組成物を得た。
さらに、高密度化吸水性樹脂複合体組成物を用いて、以下の手順で14種類の吸収性物品であるおむつを製造した(実施例1〜13および比較例1)。
(1)水不透過性ポリエチレンシート(目付量18g/m2)21上に、ティッシュ22(目付量14g/m2)、高密度化吸水性樹脂複合体組成物24(吸水性樹脂が300g/m2となる量かつ10cm×40cmの大きさ)、ティッシュ25(目付量14g/m2)、および水透過性ポリエステル繊維不織布26(目付量23g/m2)の順に図1に示すように重ね、両側からステンレス板で挟み0.6MPaの圧をかけ、20分間放置し、密着させた。
(2)圧力を開放し、吸水性物品の4辺を熱圧着させた。
(3)圧着部分の外端を切り出し、約10cm×約40cmの吸水性物品を作成した。
ただし、実施例10では、ステンレス板を重ねる前に蒸留水を10g/m2になるようにスプレーしてから、0.6MPaの圧力をかけて20分間処理した。実施例11では、吸水性樹脂複合体組成物に面するステンレス板に1mmφの孔が等間隔であいたステンレス製ボックスを重ねた後に、0.6MPaの圧力をかけて、150℃のスチーム(STM)をステンレス製ボックス内に50kg/hr/m2で供給しながら、20分間処理した。
実施例1〜13および比較例1で製造された吸水性樹脂複合体について、形態観察、吸水性樹脂の平均粒径、各複合体の乾燥重量比、各複合体を構成する結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比、保水能、吸水速度を測定した。また、各吸水性樹脂複合体と自由繊維から調製された高密度化吸水性樹脂複合体組成物について、厚み、嵩密度、剛軟性、復元率、開繊性を測定、評価した。尚、高密度化吸水性樹脂複合体組成物を構成する各複合体と自由繊維の重量構成比率、自由繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比は、高密度化処理により変化しないものと考えた。さらに高密度化吸水性複合体組成物を用い、吸収性物品を製造し、吸収速度、放水量、吸水性樹脂脱落率、ゲル脱落率を測定した。それぞれの測定結果及び評価結果を表1に示す。
また、本発明における各物性の測定方法、評価方法を以下に示す。
1−1)水の接触角
(1)繊維を溶解または分散可能な溶媒を用いて、濃度が1〜10重量%の溶液を調
製した。
(2)その溶液を薄くシャーレに展開し、室温で、乾燥空気により穏やかに溶媒を蒸
発させて十分に乾燥することにより、薄く展開したフィルム状成型物を得た。
(3)そのフィルム状成型物の空気表面に対する、25℃での蒸留水の接触角を求め
た。接触角は自動接触角計CA−V型(協和界面科学(株)製)を用いて測定
した。
繊維が混相流として共に供給される空気の流れにのって、上から下に移動すると仮定することにより繊維の反応場における滞留量を計算し、さらにその滞留量を全反応場の体積で割ることで反応場における繊維の空間密度を計算した。
2−1)液滴径
後述する3−2)の方法にしたがって測定した、吸水性樹脂複合体を構成する吸水性樹脂粒子の平均粒径dpおよびモノマー濃度Cmから下記式に従い計算した。
液滴径dd = dp /( Cm )1/3
液滴が、ノズルからの下向き吐出速度を初速度として、反応場を落下すると仮定することにより、液滴の反応場における滞留量を計算し、さらにその滞留量を全反応場の体積で割ることで反応場における液滴の空間密度を計算した。
(1)繊維を導入する位置にメタノールの液面が位置するように約150gのメタノ
ールの入ったビーカーを設置し、重合を開始させた反応混合物の液滴を気相中
で形成し、ビーカー中のメタノールへ約1gの重合進行中の液滴が落下するよ
うにした。
(2)メタノール中のモノマー量を液体クロマトグラフィーで測定した。
(3)メタノール中のポリマーを130℃で3時間減圧乾燥した後、重量を測定した。
(4)それぞれの重量から以下の式により重合率を計算した(Mpはポリマー重量、
Mmはモノマー重量)。
Mp
重合率(%) = ――――――――― × 100
Mm + Mp
3−1)吸水性樹脂複合体の形態確認
吸水性樹脂複合体を走査型電子顕微鏡により20〜20,000倍に拡大して観察することにより繊維の一部が該樹脂内部に包埋され、その繊維の一部が該樹脂より露出している構造、あるいは繊維の該樹脂表面への接着状況を確認した。
さらにミクロトーム等の精密切削装置により連続的に断面を切削し、その断面を20〜20,000倍に拡大して観察することによって、繊維の一部が該樹脂内部に包埋され、その繊維の一部が該樹脂より露出している構造、あるいは繊維の該樹脂表面への接着状況を確認した。
吸水性樹脂複合体の光学顕微鏡写真を撮影し、複合体を構成する100個の吸水性樹脂粒子(本明細書中で測定対象とした吸水性樹脂粒子はいずれも略球状であった)を任意に選定してそれらの直径を測定し、その個数基準の平均値を平均粒径とした。
約1gの吸水性樹脂複合体を、光学顕微鏡を用い、複合体A、複合体Bおよび複合体Cに分類した。各複合体の重量を精密天秤で測定し、各吸水性複合体の乾燥重量比を得た。
前項3−3)で分類された各吸水性樹脂複合体について、複合体中の吸水性樹脂を選択的に分解させる薬剤を用いて繊維を単離し、繊維重量を秤量することによって求めた。
具体的には、例えば吸水性樹脂複合体Aに関して、
(1)3−3)で得られた吸水性樹脂複合体Aの重量をWcとした。50mlの密閉
ガラス容器にこの吸水性樹脂複合体Aを仕込み、25gの蒸留水に0.03g
のL−アスコルビン酸を溶解させた水溶液を加えて膨潤させ、40℃で24時
間保持した。
(2)その後、80℃で3時間減圧乾燥した恒量値になった濾紙でガラス容器の内容
物を到達真空度10〜25mmHgのアスピレーターで吸引濾別し、濾紙上の
繊維を十分水洗し、100℃で5時間乾燥して精秤し、その値をWfとした。
(3)下記式により吸水性樹脂複合体Aを構成する結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量
比を得た。
Wf
結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比 = ―――――――――
Wc − Wf
(1)あらかじめ必要量の生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を調
製した。
(2)吸水性樹脂複合体中の結合繊維と吸水性樹脂の比率を上記3−3)と同様の方
法で求め、吸水性樹脂複合体中の吸水性樹脂の重量が約1gとなるように吸水
性樹脂複合体を集め、その重量(W1)を測定した。また吸水性樹脂と繊維の
比率から吸水性樹脂複合体中の繊維の重量(W2)を計算で求めた。
(3)この吸水性樹脂複合体を250メッシュのナイロン袋(20cm×10cm)
に入れ、室温の生理食塩水500ml中に30分間浸漬した。
(4)次いでナイロン袋を引上げ、15分間懸垂して水切りしたのち、遠心分離機を
用いて90Gで90秒間脱水した。
(5)脱水後の吸水性樹脂複合体を含むナイロン袋の重量W3を測定した。
(6)製造に用いたものと同一の繊維を上記複合体に含まれる重量(W2)と同一重
量分、同様に250メッシュのナイロン袋(20cm×10cm)に入れ、室
温の生理食塩水500ml中に30分間浸漬した。
(7)次いでナイロン袋を引上げ、15分間懸垂して水切りしたのち、遠心分離機を
用いて90Gで90秒間脱水した。脱水後の繊維を含むナイロン袋の重量W4
を測定した。
(8)生理食塩水の保水能Sは以下の式にしたがって算出した。ここでW1〜W4の
単位はすべてgである。
W3 − W4
保水能S = ――――――――
W1 − W2
上記3−5)の測定法における生理食塩水中の浸漬時間(30分)を5分に変更したこと以外は3−5)と同じ方法によりW1〜W4を求めた。3−5)と同じ計算式にしたがって、吸水性樹脂複合体組成物の吸水速度(=5分間の保水能)を算出した。
4−1)厚み
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を5cm×5cmに切りだし、JIS l−1096に準拠して、高密度化吸水性樹脂複合体組成物の厚みを測定した(図4)。
(1)レオメーター(FUDOH社製品、型番:NRM−2003J)に直径30m
mのアダプター1を取り付けてサンプル台2が2cm/minの速度で上昇し、
0.2psiの圧力がかかった時点で停止するようにセットした。
(2)サンプル3を測定台にセットしてサンプル台2を上昇させて0.2psiの圧
力になって停止した位置でのアダプター1の上面からサンプル台2の下面まで
の距離4をノギスを用いて測定した。
(3)サンプルは5枚測定し、その平均値を求めた。
(4)サンプルをサンプル台2に乗せずにブランク測定も同時に行った。
(5)厚みは下記式から求めた。
厚み(mm) = サンプル測定値(mm)−ブランク測定値(mm)
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を5cm×5cmに切り出し、その重量を測定し、下 記式から嵩密度を求めた。サンプルは5枚測定し、その平均値を求めた。
サンプル重量(g)
嵩密度(g/cm3)= ――――――――――――――――――――――
サンプル厚み(cm)×サンプル面積(cm2)
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を2cm×25cmに切りだし、温度25℃、湿度50%に一昼夜保管後、図5に示すJIS L−1096の比較的柔らかい織物に使用されるハートループ法を用いて剛軟性を測定した。
(1)図5に示される水平棒のつかみ51にサンプル片52をハートループ状に取り
付け、サンプル片の有効長が20cmとなるようにした。
(2)1分間経過してから水平棒の頂部とループの最下点との距離L(cm)を測定
した。ここではLを剛軟性と定義した。サンプルは5枚測定し、その平均値を
求めた。
なお、比較例1のサンプルは、柔軟性がなくてハートループ状にならず、途中で折れたために測定することができなかった(測定不能)。
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を5cm×5cmに切り出し、10MPaの圧力を10分間かけて圧縮し、4−2)厚み測定法に基づき、圧縮直後および温度25℃、湿度50%の条件下で30日間保管した後の厚みを測定し、下記式によって算出した。サンプルは5枚測定し、その平均値を求めた。
圧縮30日後の厚み−圧縮直後の厚み(mm)
復元率(%)= ――――――――――――――――――――― × 100
圧縮直後の厚み(mm)
(1)約5gの吸水性樹脂複合体組成物をアッシュフォード社製の1対のハンドカー
ダー(22cm×12.5cm)の間にはさみ、手動により5回梳毛した。
(2)梳毛のしやすさと、梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損状況により以下の様に3段
階で評価した。
○: 梳毛しやすく、かつ梳毛後の吸水性樹脂粒子にほとんど破損がない。
△: 梳毛に抵抗感があり、梳毛すると梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損がある。
×: 梳毛できない程度に抵抗感が強いか、あるいは梳毛に強い抵抗感があり、
梳毛すると梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損が著しい。
5−1)吸収速度および放水量
吸収性物品について、人工尿の吸収速度及び加圧による人工尿の放出量を以下の方法で測定した。平面平滑台上に吸収性物品31を置き、中央に内径40mmの上方が開放された円筒32が取付けられており、かつ円筒32で囲まれた部分に、直径5mmの7箇の貫通孔33がほぼ等間隔となるように設けられているアクリル板34(100×100×10mm、全重量150g)を図6に示すように置いた。更にこれに直径100mmで中央部に直径45mmの穴のある金属製円板(500g)を円筒32に挿通して載せた。円筒32に人工尿を25ml入れ、これが吸収されるまでの時間をストップウオッチで測定し、これを吸収速度(秒)とした。10分後に円板及び円筒32付きアクリル板34を取除き、濾紙(東洋濾紙社製品、ADVANTEC No.424,100×100mm)を20枚重ねたものを、吸収性物品31の上でアクリル板34があった位置と同じ位置に載せ、更に濾紙上に底面積(10cmx10cm)の4kgの荷重を載せた。5分後に荷重を取除き、濾紙の重量を測定して濾紙に吸収された人工尿量を測定して放水量(g)とした。上記の測定を3回反復し、その平均値をもって吸収速度と放水量とした。
(1)吸水性物品を10cm×10cmの大きさに切り出し(4辺とも開放)、重量
を測定した。吸水性樹脂複合体中の吸水性樹脂の重量割合から、全吸水性樹脂
量を求めた。JISZ8801で規定された標準網篩(内枠の寸法が、内径1
50mm、深さ45mm、20メッシュ)に切りだした吸水性物品をテープで
中央に固定した。
(2)(株)東京篠原製作所製、型番SS−S−228型ロータップ型震とう機を用
意し、JIS Z8815の図(図7)における最上段にのみ吸水性物品を固
定した。
(3)衝動数165回/分、回転数290回/分にセットし、振とう60分後に吸水
性物品から離脱する吸水性樹脂粒子の重量を測定し下記式から脱落率を求めた。
脱落吸水性樹脂量(g)
吸水性樹脂脱落率(%)= ――――――――――――――― × 100
振とう前全吸水性樹脂量(g)
吸水性物品をこするように作用する力が反復して加わったときの、吸水性物品の吸水ゲルの脱落量を以下の手順で測定した。
(1)面平滑台上に吸水性物品31を置き、中央に内径40mmの上方が開放された
円筒32が取付けられており、かつ円筒32で囲まれた部分に、直径5mmの
7箇の貫通孔33がほぼ等間隔となるように設けられているアクリル板34
(100×100×10mm、全重量150g)を図6に示すように置いた。
(2)人工尿(組成後述)150mlを円筒内に入れ、吸水性物品に吸水させた。
(3)完全吸水後30分間室温下に放置して、図8に示すように吸水性物品の中心
41から5cmずつのところ42を切り取った。切り取った部分の重量を測定
した。
(4)測定後、20cm×20cmのアクリル板の中心に載せた。切り取ったサンプ
ルと同じ大きさの底面積(10cm×10cm)の荷重(3Kg)を形状に合
わせてはみ出さないように載せた。
(5)一体サンプルを振とう機(井内盛栄堂社製品、型番MS−1)の移動方向に対
してサンプルの切り口が垂直になるようにセットし、振幅50mm、振動数
80回/分で、30分間振とうさせた。
(6)振とう後荷重を取り除き、サンプルから脱落した吸水ゲルの重量を測定し、下
記式を用いてゲル脱落率を計算した。
押し出されたゲル量(g)
ゲル脱落率(%) = ―――――――――――――――― × 100
押し出される前の全ゲル量(g)
上記5−1)吸収速度および放水量測定と、5−3)ゲル脱落率測定には、以下の組成の人工尿を用いた。
尿素 1.94重量%
塩化ナトリウム 0.80重量%
塩化カルシウム 0.06重量%
硫酸マグネシウム 0.11重量%
蒸留水 97.09重量%
2 サンプル台
3 サンプル
4 距離
21 水不透過性ポリエチレンシート
22 ティッシュ
24 吸水性複合体組成物
25 ティッシュ
26 水透過性ポリエステル繊維不織布
31 吸収性物品
32 円筒
33 貫通孔
34 アクリル板
37 標準網篩
38 テープ
41 中心
42 切断線
45 荷重
46 切り取ったサンプル
47 アクリル板
51 つかみ
52 サンプル片
Claims (22)
- 吸水性樹脂粒子および繊維を含有する吸収性物品であって、JIS L−1096規定のハートループ法により求められる剛軟性が5.0〜9.5cmである吸水性樹脂複合体組成物を含むことを特徴とする吸収性物品。
- 1個の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体を含有する吸収性物品であって、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維が前記樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着していることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
- 前記繊維と前記吸水性樹脂粒子の乾燥重量比が1:1〜1:1,000,000である請求項1または2に記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂粒子の平均粒径が50〜1,000μmである請求項1〜3のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記繊維の平均繊維長が50〜10,000μmである請求項1〜4のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記繊維の平均繊維径が0.1〜500デシテックスである請求項1〜5のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記2本以上の繊維のうちの1本以上が水との接触角が60°以下の繊維である請求項1〜6のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記繊維がセルロースである請求項7に記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂が不飽和カルボン酸重合物架橋体である請求項1〜8のいずれかに記載の吸収性物品。
- 吸水性樹脂と繊維から主としてなり、前記吸水性樹脂複合体を含む吸水性樹脂複合体組成物を含む請求項1〜9のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂複合体組成物中に前記吸水性樹脂複合体を重量分率で0.1以上含む請求項10に記載の吸収性物品。
- 1個以上の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子の表面に接着していない吸水性樹脂複合体を、前記吸水性樹脂複合体組成物中に含む請求項10または11に記載の吸収性物品。
- 1個以上の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子内に包埋されていない吸水性樹脂複合体を、前記吸水性樹脂複合体組成物中に含む請求項10〜12のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂複合体組成物中に、吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維を1本以上含む請求項10〜13のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂複合体組成物中における、吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比が90:10〜5:95である請求項14に記載の吸収性物品。
- 吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維の長さが50〜50,000μmである請求項14または15に記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂複合体組成物の嵩密度が0.2〜0.85g/cm3である請求項10〜16のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂複合体組成物の厚みが0.2〜5.0mmである請求項10〜17のいずれかに記載の吸収性物品。
- 前記吸水性樹脂複合体組成物が開繊可能である請求項10〜18のいずれかに記載の吸収性物品。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の吸収性物品を用いた衛生材料。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の吸収性物品を用いた工業資材。
- 請求項1〜19のいずれかに記載の吸収性物品を用いた農業資材。
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