JP2004339490A - 吸水性樹脂複合体およびその堆積物の製造方法 - Google Patents

吸水性樹脂複合体およびその堆積物の製造方法 Download PDF

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Shunichi Himori
俊一 檜森
Kiichi Ito
喜一 伊藤
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義昭 森
Yasunari Sugiyou
保成 須堯
Taisuke Ishii
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Abstract

【課題】 乾燥時だけでなく吸水膨潤時においても繊維が吸水性樹脂に安定に固定化され、吸水性樹脂を繊維に対して高含量で均一に固定可能であり、柔軟でかつ薄型化が可能であり、さらには複合体自身が開繊可能であり、他の資材と均一混合も可能な、吸水性樹脂と繊維の複合体を効率よく製造する方法を提供すること。特に繊維が吸水性樹脂粒子に包埋したり、接触したりしやすい条件を選定し、製造工程中における繊維と吸水性樹脂粒子との親和性を改善すること。
【解決手段】 水との接触角が0〜60゜である1本以上の繊維と重合性モノマーを気相中で接触させ、前記重合性モノマーの重合を進行させることにより、吸水性ポリマーと1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体を製造する方法。
【選択図】 図9

Description

本発明は、吸水性樹脂複合体及びその堆積物の製造方法に関するものである。本発明によって製造される吸水性樹脂複合体の堆積物は、薄くて柔軟性が有り且つ開繊可能である。本発明によって製造される吸水性樹脂複合体およびその堆積物は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、産業用資材等のような吸水性物品の製造に用いるのが好適である。
従来、大量の水を吸収する吸水性樹脂は衛生材料、産業用資材等に広く用いられてきた。紙おむつのように吸水性樹脂を他の素材との複合体として用いる場合、吸水性樹脂の吸水前の固定性、吸水後の固定性、複合体としての薄型化、柔軟性、吸水性樹脂の高含量化等の向上が求められている。
特開昭63−63723号公報(特許公報1)には、吸水性樹脂に水あるいは含水溶剤を吸収膨潤させた状態で親水性繊維と混練分散させた後に乾燥粉砕させるか、あるいは水溶性エチレン性不飽和モノマーを親水性繊維と混合させながら重合させた後に乾燥粉砕させることにより、繊維の少なくとも一部分が埋め込まれた親水性基材からなる複合体が開示されている。この手法により、吸水性樹脂と繊維とからなる複合体を得ることができる。しかしながら、この手法により得られた複合体を使用に供するためには粉砕しなければならない。そのため繊維の破断や破砕品の発生が避けられず、繊維屑、吸水性樹脂細粒の発生、非固定吸水性樹脂の発生等の問題を生じていた。さらに、混練分散の際の機械的衝撃により、吸水性樹脂の分子鎖切断による吸水能の低下が避けられない。加えて、混連分散の際に空気を巻き込むことにより、吸水性樹脂内部に空隙(ボイド)の発生による、加圧下吸水能の低下および嵩密度の低下も避けられない。またこの手法で製造する限りは、繊維の少なくとも一部が吸水性樹脂に包埋されたものしか得られず、本発明のように吸水性樹脂表面に一部が接着した繊維を含む複合体は得られない。
特公平5−58030号公報(特許公報2)には、少なくとも一部が疎水性繊維で構成されている繊維状基材と、基材に付着した吸水性樹脂とからなる吸水性物品が記載されている。この吸水性物品は、吸水性樹脂の少なくとも一部が略球状になって基材繊維を包み込み、かつ不連続に付着していることを特徴とする。この技術は基材が繊維であるため、複合体の柔軟性を確保することができる。また吸水性樹脂も固定化されている。しかしながら、吸水性樹脂が繊維を包み込んでいるために、繊維が吸水性樹脂の膨潤を阻害してしまうことが避けられない。また吸水性樹脂を繊維に対して不連続に付着させるために、吸水性樹脂/繊維の比を小さくしなければならない。もっとも、同一繊維上で吸水性樹脂同士が不連続であっても、樹脂間の距離が小さい場合は膨潤阻害を起こしてしまうため、その面を考慮すると吸水性樹脂/繊維の比を大きくすることはできない。さらに吸水性樹脂のモルフォロジー制御のため、使用基材が疎水性繊維に限られるという制約もある。
特開平11−93073号公報(特許公報3)には、非成形繊維の表面に略球状の吸水性樹脂が不連続に固定化されており且つ該非成形繊維が堆積されてなる吸水性樹脂と繊維の複合体、あるいは非成形繊維同士が前記吸水性樹脂を介して結合している複合体が開示されている。なるほど吸水性樹脂と繊維が接着している点から言えば、吸水性樹脂の固定化は実現しているといえる。しかしながら、接着が繊維の表面である以上、接着形態は点接着ないしは線接着にならざるを得ず、乾燥状態での接着強度は充分とは言えない。そのために乾燥状態での固定保持性が不十分であるという問題がある。加えて吸水性樹脂が吸水し表面が膨潤、伸展する状態では、吸水性樹脂が容易に剥離して移動してしまうという問題がある。
この公報には、吸水性樹脂により繊維が包み込まれている態様についても記述されているが、上述の特公平5−58030号公報(特許公報4)と同様に、繊維による吸水性樹脂の膨潤阻害が避けられないという欠点がある。さらに繊維同士が吸水性樹脂を介して結合しているため、この組成物の開繊は困難であり、強いて開繊すると吸水性樹脂自体を破損してしまい、吸水性能の低下や非固定吸水性樹脂の発生等の問題を生じる。従ってこの複合体を含む組成物を開繊後、他の資材と均一混合することは困難である。
特開昭63−63723号公報 特公平5−58030号公報 特開平11−93073号公報 特公平5−58030号公報
本発明は、上記公報に記載されている従来技術の問題点を解決するためになされたものである。即ち、本発明は、乾燥時だけでなく吸水膨潤時においても繊維が吸水性樹脂に安定的に固定化され、吸水性樹脂を繊維に対して高含量で均一に固定可能であり、柔軟でかつ薄型化や開繊が可能であり、他の資材との均一混合も可能な、吸水性樹脂と繊維の複合体およびその堆積物を効率よく製造する方法を提供することを目的とする。特に、吸水性樹脂複合体を製造する際に、繊維が吸水性樹脂粒子に包埋したり、接触したりしやすい条件を選定し、製造工程中における繊維と吸水性樹脂粒子との親和性を改善することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下に記載する特定の工程を有する吸水性樹脂複合体およびその堆積物の製造方法により目的を達成し得ることを見出した。
すなわち本発明は、重合することによって吸水性ポリマーを形成する重合性モノマーと繊維から、1個の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体を反応器内で製造する方法であって、前記吸水性樹脂複合体は、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維が前記樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着しており、前記方法は、水との接触角が0〜60゜である1本以上の繊維(本明細書中において「親水性繊維」と呼ぶことがある)を気相中で重合性モノマーと接触させ、前記重合性モノマーの重合を進行させることにより、吸水性ポリマーと1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体を製造する各工程を含むことを特徴とする、吸水性樹脂複合体の製造方法を提供する。
また本発明は、この方法で得られる吸水性樹脂複合体を堆積させて堆積物を製造する工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂複合体の堆積物の製造方法も提供する。
本発明の製造方法によれば、乾燥時だけでなく吸水膨潤時においても繊維が吸水性樹脂に安定に固定化されており、吸水性樹脂を繊維に対して高含量で均一に固定可能であり、柔軟でかつ薄型化が可能であり、さらには複合体自身が開繊可能であり、他の資材との均一混合も可能な、吸水性樹脂と繊維の複合体を含む組成物を効率よく製造することができる。
発明の実施の形態
以下において、本発明の吸水性樹脂複合体およびその堆積物の製造方法について好ましい態様を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の製造方法は、特徴的な構造を有している新規な吸水性樹脂複合体(以下「複合体A」)およびその堆積物を製造する方法である。
I.複合体A
1.構造と構成要素
複合体Aは、1個の略球状の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含むものである。複合体Aに含まれる1本以上の繊維は、繊維の一部が吸水性樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が吸水性樹脂粒子より露出している。また、複合体Aに含まれる1本以上の繊維は、繊維が吸水性樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が吸水性樹脂粒子の表面に接着している。すなわち、複合体Aの必須構成要素は以下の3種である。
i) 吸水性樹脂粒子
ii) 吸水性樹脂粒子に一部が吸水性樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が吸水性
樹脂粒子より露出している繊維(以下「部分包埋繊維」)
iii) 吸水性樹脂粒子の表面に接着しているが吸水性樹脂粒子に包埋されていない繊
維(以下「表面接着繊維」)
なお以下、複合体A中で吸水性樹脂粒子と結合している繊維、即ちii)部分包埋繊維およびiii)表面接着繊維を「結合繊維」と総称することがある。複合体Aにおける結合繊維と吸水性樹脂粒子の乾燥重量比は、1:1〜1:1,000,000であることが好ましく、1:2〜1:100,000であることがより好ましく、1:3〜1:10,000であることがさらにより好ましい。
2.各構成要素
1)吸水性樹脂
吸水性樹脂は、複合体Aにおいて、水、尿、血液、経血等の液体を使用目的に応じて吸収する役割を果たすものである。
(化学組成)
複合体A中の吸水性樹脂は通常、水、尿、血液、経血等の液体を常温常圧下で自重の1〜1,000倍程度吸収しうる飽和吸水能を有する高分子である。これらの液体を吸収するためには、これらの液体と親和性の高い官能基を高分子鎖に有する必要がある。そのような官能基としては、(部分)中和カルボン酸、カルボン酸、(部分)中和スルホン酸、スルホン酸、ヒドロキシを挙げることができる。この中で、部分中和カルボン酸が好ましい。このような高分子鎖中に部分中和カルボン酸を与えるモノマーとしては不飽和カルボン酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
この高分子の分子構造は直鎖状でも差し支えないが、所望の液体を吸収し膨潤した後も形状を維持する必要がある。そのために、通常高分子鎖が溶解しないように高分子鎖同士の架橋構造を有する重合物架橋体が好ましい。この架橋は、共有結合あるいはイオン結合等の化学架橋ないしは高分子鎖の絡み合いによる物理架橋のいずれであってもよい。化学的安定性の面から、化学架橋が好ましく中でも共有結合がより好ましい。
従って、好ましい吸水性樹脂は不飽和カルボン酸重合物架橋体であり、より好ましくはアクリル酸重合物架橋体である。
(形状)
複合体A中の吸水性樹脂は略球状の粒子である。ここで略球状とは、全体として真球および楕円体の形状を有するものであり、表面に細かな凹凸(即ち、しわ、突起、陥没等)を有していても差し支えない。また、表面や内部に、細孔やクラック等の空隙を有していても差し支えない。この吸水性樹脂粒子の粒径は50〜1,000μmが好ましい。粒径は100〜900μmがより好ましく、200〜800μmが特に好ましい。
従来の粉砕した吸水性樹脂のように、不定形で鋭利な切断面を有していると、皮膚への刺激が大きくて、機械的付加に対して鋭利な切断面が欠損して細粒が生じるという欠点がある。しかしながら、本発明で用いる略球状の吸水性樹脂粒子はこのような欠点がない。また不定形品に比して、最密充填ができるため高密度化が可能であるという利点も有する。
2)結合繊維
前記のように結合繊維は部分包埋繊維および表面接着繊維とからなる。以下、各繊維について詳述する。
(繊維種)
繊維としては、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維などを用いることができる。各繊維は吸水前および吸水後とも吸水性樹脂と強固に接着していることが吸水性樹脂の固定性の面から好ましい。
一般に異物質間の接着力は両者の親和性が大きいほど、大きいことが知られている。吸水性樹脂は最も親水性の大きな物質の一つであり、この意味から親水性の大きな繊維ほど接着力が大きいと言える。この繊維の親水性の定量的な尺度として水の接触角を用いることができる。即ち、この接触角が小さいほど(つまり親水性が大きいほど)、接着力が大きく、逆に接触角が大きいほど(つまり親水性が小さいほど)接着力が小さい傾向がある。本発明では、水の繊維素材表面上における接触角が60°以下の繊維を用いて吸水性樹脂粒子1個に対して少なくとも2本の繊維を含む特殊形状の吸水性樹脂複合体を製造する。繊維の吸水性樹脂粒子への接着強度の観点から、水の繊維素材表面上における接触角は50°以下がより好ましく、40°以下が最も好ましい。このような親水性の大きな繊維いわゆる親水性繊維として、パルプ、レーヨン、木綿、再生セルロース、等のセルロース系繊維、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系等の繊維を挙げることができる。このような親水性繊維を用いると、吸水性樹脂との接着力が強化されるだけでなく、親水性繊維の持っている他の作用、例えば水を吸水性樹脂に誘引する作用(いわゆる導水性)も高めることができる。特に衛生材料の用途には、皮膚に対する低刺激性、柔軟な感触の面から、親水性繊維の中でもパルプを選択することが好ましい。
なお、接触角は測定する繊維素材の形状や表面の平滑度等に依存するが、本発明における接触角は、繊維素材をフィルム状に成形し、その平滑な表面における蒸留水の接触角を後述する装置を用いて測定した値である。
(形状)
ブロッキング防止の観点からは、後述する繊維の剛性や径を考慮して繊維を選択することも重要である。
本発明において結合繊維として好ましいものは、平均繊維長が50〜50,000μmのものである。より好ましくは100〜30,000μm、さらに好ましくは500〜10,000μmである。繊維長が長すぎると、繊維が複数の吸水性樹脂と接着して各吸水性樹脂複合体の独立性が確保できず、この複合体を含む組成物の開繊が困難になる傾向がある。逆に繊維長が短すぎると吸水性樹脂への包埋や接着が困難になる傾向がある。
複合体Aが所望の形状を得るためには吸水性樹脂粒径:繊維長比率は2:1〜1:1,000が好ましい。より好ましくは1:1〜1:500、特に好ましくは1:2〜1:100である。
本発明で用いる結合繊維は、繊維径が0.1〜500デシテックスである繊維が好ましく、0.1〜100デシテックスである繊維がより好ましく、さらにより好ましくは1〜50デシテックス、特に好ましくは1〜10デシテックスである。繊維径が大きすぎると繊維の剛性が大きすぎて吸水性樹脂への包埋、接着が困難になるばかりではなく、圧縮成型が困難になり、薄型化に好ましくない場合がある。また生理用品等の用途に対してはごわごわしたりちくちくしたりして、感触も好ましくない。逆に繊維径が細すぎると導水性や拡散性が確保できないことがある。また、剛性が不足するため、ブロッキング(ままこ)現象が防止できない場合がある。
繊維の外観は直線状でもけん縮等の縮れを有していても差し支えない。
以上の諸観点から繊維種、繊維長、繊維径、外観が適宜選択される。
(部分包埋繊維)
部分包埋繊維は、吸水性樹脂の固定性を確保する役割を果たす。この繊維は吸水前および吸水後の吸水性樹脂の固定性をも向上させる。即ち吸水性樹脂表面から伸長する繊維が、押圧時の吸水性樹脂の回転運動や並進運動を防止する。この繊維の一部は吸水性樹脂に包埋されていて、吸水後も吸水性樹脂から脱離することがないので、吸水後の固定性に重要な役割を発揮しうる。用いる繊維の形状は、導水性を高めるために剛性の高い中空やサイドバイサイド型等であってもよい。
部分包埋繊維が親水性繊維で構成されている場合は、繊維が吸水性樹脂への水の導水性を高める作用を示す。即ち繊維を通じて水を吸水性樹脂の内部へ直接導水することができる。この機能をより効果的に発揮させるためには、前述の導水性の高い繊維を選択して用いることが好ましい。
さらにこの繊維は各吸水性樹脂複合体の独立性を確保する役割も持つ。後述の複合体前駆体重合過程においてこの繊維はたがいの立体障害により吸水性樹脂同士の融着を防止する。即ち吸水性樹脂表面から伸長する繊維が、互いの複合体前駆体内の重合進行中に吸水性樹脂同士の接触を妨害し、吸水性樹脂同士の融着を防止する。その結果、各吸水性樹脂複合体(前駆体)は独立性を保ち、製造工程、処理工程では反応器壁への付着を防止し、後述する組成物に開繊性を持たせることもできる。
一方、この繊維は各吸水性複合体同士に適度な物理的絡み合いを与え、複合体を複数個集めて塊状にしたときに、自重程度では容易にばらばらにならないという形態保持性も与える。即ち複合体Aは自由繊維等を加えなくてもそれ自体で形態保持性を持つ。従って、複合体Aは組成物にした場合に開繊性を付与しうるうえ、形態保持性も併せ持つという際立った特徴を有する。さらに加えるに、この繊維は複合体Aに柔らかで滑らかな感触を与える。吸水性樹脂が略球状であることとあいまって、複合体Aは乾燥状態においても押圧時に非常に柔らかな感触を与えることから、衛材等の用途に好適である。
(表面接着繊維)
表面接着繊維は、吸水前の吸水性樹脂の固定性を確保する効果がある。さらに膨潤後は、吸水性樹脂表面の繊維が吸水性樹脂同士の間に間隙を作り、水の流路を確保する作用がある。この作用を得るためには、必ずしも該繊維が吸水後も吸水性樹脂に接着していなくても良いが、少なくとも該繊維が吸水性樹脂表面に緊密に配置されていることが好ましい。そのために、本発明のように吸水前に繊維が吸水性樹脂表面に接着していることは好都合である。また、吸水性樹脂同士の間に間隙を作り、水の流路を確保するためには一定の剛性を備えた繊維を用いることが好ましい場合がある。また、上述の部分包埋繊維とあいまって、吸水前における吸水性樹脂の固定性を確保する効果もある。用いる繊維の形状は、拡散性を高めるために中空やサイドバイサイド型等であってもよい。
表面接着繊維が親水性繊維で構成されている場合は、繊維が吸水時の吸水性樹脂の膨潤により吸水性樹脂同士が接触し水の流路を妨害するブロッキング(ままこ)現象を防止する効果を示す。即ち、吸水時には水を各吸水性樹脂表面に満遍なく輸送拡散させる役割を果たす。一方、表面接着繊維が疎水性樹脂で構成されている場合は、繊維が吸水性樹脂間の水の拡散性を向上させる機能を発揮する。
さらにこの繊維は前述の部分包埋繊維同様の作用により各吸水性樹脂複合体の独立性、形態保持性、柔らかで滑らかな感触を確保する役割を持ち、同様の効果を与える。
3.特徴
1)固定性と吸水能力の両立(各繊維の複合効果)
一般的に吸水性樹脂の固定性確保と保持能や加圧下吸水能等の吸水能力確保とは両立しない。即ち吸水前だけでなく吸水後も十分な固定性を確保しようとすると、吸水後においてもなお、吸水膨張力を凌駕する吸水性樹脂と繊維の強固な接着力を必要とする。このことはとりもなおさず、繊維による吸水性樹脂自体の吸水膨潤阻害をもたらし、十分な吸水能を与えない。逆に、保持能や加圧下吸水能等の吸水能力を確保しようとして、吸水性樹脂と繊維との接着面が自由に膨潤できるようにすると、吸水性樹脂と繊維との接着面が破壊され、十分な固定性を与えない。
本発明の複合体Aには、部分包埋繊維および表面接着繊維が、ともに必須である。即ち、部分包埋繊維のみを有する吸水性樹脂複合体では吸水時のブロッキング(ままこ)現象を防止する効果が十分でない。一方、表面接着繊維のみを有する吸水性樹脂複合体では吸水後の吸水性樹脂の固定性が十分ではない。よって、吸水前後を通じて上述の作用を発揮するためには、両者の繊維がともに必須である。両者の繊維が共存することによって本来矛盾する関係の吸水性樹脂の固定性確保と吸水能力確保との両立が可能となった。即ち、複合体Aは吸水前だけでなく吸水後も十分な固定性を確保しながら、保持能だけでなく、加圧下吸水能をも確保する際だった特徴を有する。なお、両者の繊維の種類は同一でも異なっていても差し支えなく、使用目的、それぞれの効果発現のため適宜選択される。
2)開繊性
複合体Aの特徴の一つは、複合体Aの集合体が開繊性を有しているばかりでなく、複合体Aを含む吸水性樹脂複合体組成物に開繊性を持たせることができる点にある。このような特徴は、各複合体が実質的に独立していることから確保される。即ち、1つの複合体を構成する繊維が他の複合体と実質的な接着をしていないことが望まれる。そのためには、製造条件にもよるが、用いる繊維の繊維長を前記のように適宜選択することにより得られる。開繊性は、後述のように、梳毛のしやすさおよび梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損状況で評価することができる。
3)形態保持性
さらに複合体Aは、複合体Aの集合体が形態保持性を有しているばかりでなく、複合体Aを含む吸水性樹脂複合体組成物に形態保持性を持たせることができる点にも特徴がある。前記のように複合体A中の結合繊維は各吸水性複合体同士に適度な物理的絡み合いを与え、複合体Aを含む吸水性樹脂複合体組成物を塊状にしたときに自重程度では容易にばらばらにならないという形態保持性を与える。
II.吸水性樹脂複合体組成物
1.構造
本発明の製造方法により得られる吸水性樹脂複合体組成物(以下「本発明の組成物」)は、上記の複合体Aを含むことを特徴とし、以下の複合体B、複合体Cおよび自由繊維等の他の構成成分を含有してもよい。また本発明の組成物は、全繊維(結合繊維+自由繊維)と吸水性樹脂の乾燥重量比が、通常70:30〜2:98であり、好ましくは50:50〜5:95、さらに好ましくは30:70〜5:95である。また結合繊維の全繊維に対する比率は通常3〜100%である。
さらに本発明の組成物は、嵩密度が0.20〜0.85g/cm3であることが好ましく、0.30〜0.85g/cm3であることがより好ましく、0.40〜0.85g/cm3であることがさらにより好ましい。本発明の組成物に含まれる各成分はそれ自体独立しており開繊性を有するため、組成物自体も開繊性を維持している。
2.構成成分
1)複合体A
本発明の組成物は、上記の複合体Aを重量分率で通常1以下含み、0.1以上含むことが好ましく、0.2以上含むことがより好ましく、0.3以上含むことがさらに好ましい。本発明の組成物に含まれる複合体Aを構成する吸水性樹脂の平均粒径は50〜1,000μmが好ましく、100〜900μmがより好ましく、200〜800μmが特に好ましい。また、本発明の組成物に含まれる複合体Aを構成する繊維の平均繊維長は50〜50,000μmであることが好ましく、100〜30,000μmであることがより好ましく、500〜10,000μmであることが特に好ましい。さらに、本発明の組成物に含まれる複合体Aを構成する繊維の平均繊維径は0.1〜500デシテックスであることが好ましく、0.1〜100デシテックスであることがより好ましく、1〜50デシテックスであることがさらにより好ましく、1〜10デシテックスであることが特に好ましい。
2)複合体B
「複合体B」は「1個以上の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子の表面に接着していない吸水性樹脂複合体」である。複合体Bの吸水性樹脂に結合している結合繊維のうち1本以上は部分包埋繊維であり、表面接着繊維は含まれない。すなわち、複合体Bの必須構成要素は以下の2種であり、かつ表面接着繊維は構成要素ではない。
i) 吸水性樹脂粒子
ii) 部分包埋繊維
複合体B中の繊維は、複合体Aの結合繊維の項で前述した繊維と同様に選択することができる。本発明の組成物における複合体Bの重量分率は、通常0〜90重量%である。複合体Bが多すぎると、吸水前の吸水性樹脂の固定性が損なわれる傾向がある。
3)複合体C
「複合体C」は「1個以上の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子内に包埋されていない吸水性樹脂複合体」である。複合体Cの吸水性樹脂に結合している結合繊維のうち1本以上は表面接着繊維であり、部分包埋繊維を含まれない。すなわち、複合体Cの必須構成要素は以下の2種であり、かつ部分包埋繊維は構成要素ではない。
i) 吸水性樹脂粒子
ii) 表面接着繊維
複合体C中の繊維は、複合体Aの結合繊維の項で前述した繊維と同様に選択することができる。本発明の組成物における複合体Cの重量分率は、通常0〜90重量%である。複合体Cが多すぎると、吸水後のゲル固定性が損なわれる傾向がある。
複合体A〜Cの重量比は、通常A:B:C=10〜100:0〜90:0〜90である。
4)自由繊維
「自由繊維」は「吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維」である。本発明の組成物は自由繊維を1本以上含んでいてもよい。自由繊維を加えることにより柔軟性、ソフト感、導水性、通水性、水の拡散性、通気性等をさらに向上させることができる。
繊維としては、結合繊維と同様に、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維などを用いることができる。用いる繊維は、吸水性樹脂複合体組成物の使用目的に応じて選択される。例えば、組成物を吸水性物品に使用するときには、親水性繊維を選択することが好ましい。親水性繊維として、パルプ、レーヨン、木綿、再生セルロース等のセルロース系繊維、ポリアミド系、ポリビニルアルコール系等の繊維が選ばれる。このような親水性繊維を用いると、組成物への導水性を高めることができる。特に衛生材料の用途には、皮膚に対する低刺激性や柔軟な感触の面から、親水性繊維の中でもパルプを選択することが好ましい。
一方、自由繊維として疎水性繊維を使用することもできる。例えば、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビリニデン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ尿素系、ポリウレタン系、ポリフルオロエチレン系、ポリシアン化ビニリデン系繊維を選択することができる。これら疎水性繊維を用いることにより、組成物における通水性や水の拡散性を向上させることができる。
結合繊維と異なり、自由繊維の吸水性樹脂との親和性、あるいは吸水性樹脂複合体との親和性については、特に制限はない。
自由繊維として用いる繊維種は、上記の複合体A、複合体B、あるいは複合体Cに含まれる結合繊維と同一であっても異なっていても差し支えない。例えば、結合繊維として親水性繊維を選択し、自由繊維として疎水性繊維を選択することができる。このような態様を採用すれば、疎水性繊維が吸水性樹脂複合体間の水の拡散性を向上させる機能を発揮する。また、ブロッキング防止の観点からは、後述する繊維の剛性や径を考慮して繊維を選択することも重要である。
本発明の組成物に用いる自由繊維として好ましいものは、繊維長が50〜100,000μmのものである。より好ましくは100〜50,000μm、さらに好ましくは500〜20,000μmである。繊維長が長すぎると組成物の開繊が困難になる場合がある。逆に繊維長が短すぎると繊維自体の易動性が大きいため、組成物から繊維が漏れる等の問題が生じることもある。
本発明の組成物に用いる自由繊維は、繊維径が0.1〜500デシテックスである繊維が好ましく、0.1〜100デシテックスである繊維がより好ましく、さらにより好ましくは1〜50デシテックス、特に好ましくは1〜10デシテックスである。繊維径が大きすぎると繊維の剛性が大きすぎて吸水性樹脂複合体との混和が困難になるばかりではなく、圧縮成型が困難になり、薄型化に好ましくない場合がある。また生理用品等の用途に対してはごわごわしたりちくちくしたりして、感触も好ましくない。逆に繊維径が小さすぎると、繊維が細すぎるため上述の導水性や拡散性が確保できないことがある。また、剛性が不足するため、ブロッキング(ままこ)現象を防止できない場合がある。
自由繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比は通常95:5〜0:100であり、95:5〜5:95であることが好ましい。自由繊維の比率が高すぎると、実質的に吸水性樹脂の効果が発現しにくくなり、また嵩密度が小さくなるという欠点を有する場合がある。本発明の組成物中の自由繊維は、通常90重量%以下である。
III.製造法
IIIA.複合体Aの製造方法
原料
1)モノマー
(種類)
複合体Aの吸水性樹脂粒子を調製するために使用する重合性モノマーは、吸水性樹脂を与えるものである限りその種類を問わない。レドックス系開始剤によってその重合が開始される重合性モノマーを使用することが特に好ましい。このモノマーは通常、水溶性のものが好ましい。
このようなモノマーの代表例であって、しかも本発明で使用するのにも好ましいものは、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩である。具体的には、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸またはその塩等の不飽和モノカルボン酸またはその塩;或いはマレイン酸またはその塩、イタコン酸またはその塩等の不飽和ジカルボン酸またはその塩を例示することができ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。この中で好ましいのは、アクリル酸またはその塩、およびメタクリル酸またはその塩であり、特に好ましいのはアクリル酸またはその塩である。
本発明で用いる吸水性樹脂を与える重合性モノマーとしては、上記の如く脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩が好ましいので、この重合性モノマ−の水溶液としては脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を主成分とする水溶液が好ましい。ここで、「脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を主成分とする」とは、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩が重合性モノマーの全量に対して50モル%以上、好ましくは80モル%以上含まれることを意味する。
脂肪族不飽和カルボン酸の塩としては、水溶性の塩、たとえば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が通常用いられる。また、その中和度は、目的に応じて適宜定められるが、アクリル酸の場合には、カルボキシル基の20〜90モル%がアルカリ金属塩またはアンモニウム塩に中和されたものが好ましい。アクリル酸モノマーの部分中和度が低すぎると、生成する吸水性樹脂の吸水能が著しく低下する傾向がある。
アクリル酸モノマーの中和には、アルカリ金属の水酸化物や重炭酸塩等または水酸化アンモニウム等が使用可能であるが、好ましいのはアルカリ金属水酸化物であり、その具体例としては水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられる。
また、本発明においては、前記の脂肪族不飽和カルボン酸以外に、これらと共重合可能な重合性モノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、または低水溶性モノマ−ではあるが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル類等も、生成する吸水性樹脂の性能を低下させない範囲の量で共重合させても差し支えない。本明細書中「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」および「メタクリル」の何れをも意味するものとする。
なお、これらの重合性モノマーのうち吸水性樹脂を与えるものは、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩に対する補助成分としてではなく、「吸水性樹脂を与える重合性モノマ−の水溶液」の主要モノマーとして使用することもできる。
(モノマー濃度)
上述の脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を主成分として含む重合性モノマー水溶液の重合性モノマーの濃度は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上である。濃度が20重量%より少ないと重合後の吸水性樹脂の吸水能が十分に得られない場合がある。上限は重合反応液の取り扱い上から80重量%程度とするのが良い。
2)架橋剤
脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩、特にアクリル酸またはその塩は、それ自身で自己架橋ポリマーを形成することがあるが、架橋剤を併用して架橋構造を積極的に形成させることもできる。架橋剤を併用すると、一般に生成する吸水性樹脂の吸水性能が向上する。架橋剤としては、前記重合性モノマーと共重合可能な多価ビニル化合物、例えば、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールポリ(メタ)アクリレート類等、ならびにカルボン酸と反応し得る2個以上の官能基を有する水溶性の化合物、例えばエチレングリコールジグリシジルエ−テル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が好適に使用される。この中で特に好ましいのは、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。架橋剤の使用量は、モノマーの仕込み量に対して0.001〜1重量%、好ましくは、0.01〜0.5重量%である。
3)重合開始剤
本発明で用いられる重合開始剤は、水溶液ラジカル重合で用いられるものを用いることができる。このような重合開始剤としては、無機および有機過酸化物が挙げられ、例えばアンモニウムやアルカリ金属、特にカリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルパ−オキシドやアセチルパ−オキシド等が挙げられる。
さらに、アゾ化合物として知られている重合開始剤も用いることができる。例えばある程度水溶性を示す、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド等が挙げられる。
重合はラジカル重合開始剤の分解により開始される。通常よく知られている手法は熱分解である。しばしば、予め重合開始剤の分解温度に昇温させた反応液のモノマーに対して加熱していない重合開始剤を添加して重合開始させる場合があるが、この場合もここでいう熱分解の範疇に属する。
本発明で用いられる重合開始剤として好ましいのは、ある程度水溶性のレドックス系をなす、酸化剤と還元剤の組み合わせである。
酸化剤としては、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸塩、t−ブチルハイドロパ−オキシド、クメンハイドロパーオキシドその他、第二セリウム塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩等が挙げられる。この中でも過酸化水素が特に好ましい。これら酸化剤の使用量は、重合性モノマーに対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%である。
還元剤は、前記酸化剤とレドックス系を形成しうるものであり、具体的には亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、酢酸コバルト、硫酸銅、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸アルカリ金属塩等を挙げることができる。中でも、L−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸アルカリ金属塩が特に好ましい。これらの還元剤の使用量は、重合性モノマーに対して0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜2重量%である。
4)繊維
繊維種や形状等については前述のように適宜選択される。
繊維はなるべくミクロ的にも均一に分散されていることが好ましい。一般に繊維は、からみあいによる繊維塊をなす傾向があるが、そのみかけ繊維塊径が20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下が最も好ましい。もちろん一本、一本の繊維に独立していることが好ましいことは言うまでもない。一般に均一性を確保するために開繊という手法が用いられる。なお、「開繊」とは解繊と繊維化の両方の概念を含むものである。解繊には、ナイロン等のシート状物を短冊状や繊維状に裂くこと等が含まれる。また、繊維化には、原紙状のセルロースを切り裂いてパルプにすること等が含まれる。
具体的な手法としては「繊維便覧(加工編)」(繊維学会編、丸善、1969)18頁以下に紹介されている、綿紡式、梳毛式、紡毛式、麻紡式、絹紡式あるいはまた回転羽式粉砕機、ハンマー式粉砕機、パルプ解繊機等を適宜用いることができる。またフロック加工として知られているように、繊維を帯電させ、繊維間の静電反発を利用して事実上、繊維一本一本を独立させ、均一分散させることも可能である。

2.製造工程
本発明の製造方法は、水との接触角が0〜60゜である1本以上の繊維と重合性モノマーを気相中で接触させる工程(工程A)と、前記重合性モノマーの重合を進行させることにより、吸水性ポリマーと1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体を製造する工程(工程B)を必須工程として含む。本発明の製造方法は、これらの2工程以外の工程を含んでいてもよい。
1)工程A
工程Aでは、水との接触角が0〜60゜である1本以上の繊維と重合性モノマーを含む気相中で接触させることができるものであれば、その具体的な態様は特に制限されない。典型的な態様は、重合前および/または重合中の前記重合性モノマーと溶媒とを含有する液滴と、水との接触角が0〜60゜である1本以上の繊維を気相中で接触させるものである。
液滴に含まれる重合性モノマーは、工程Aにおける繊維との接触時において、重合前または重合中でなければならない。繊維との接触時のモノマー転化率は、0〜90%の範囲が好ましい。より好ましくは0〜80%で、最も好ましくは0〜70%の範囲である。転化率が高すぎると、接触させる繊維が吸水性樹脂に包埋も接着もされない可能性がある。繊維との接触時において、重合性モノマーは重合中であることがより好ましい。
液滴には、架橋剤や重合開始剤などが含まれていてもよい。重合性モノマーに対する架橋剤や重合開始剤の添加量は上記のとおりである。
液滴の形成方法は特に制限されない。好ましい液滴形成法として、吸水性ポリマ−を与える重合性モノマーの水溶液、例えば、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を主成分とする重合性モノマーの水溶液にレドックス系重合開始剤を配して当該モノマーの重合を開始させ、反応開始後のモノマ−および生成ポリマーを含む重合進行中の反応混合物を気相中で液滴とする方法を例示することができる。また、別のより好ましい液滴形成法として、レドックス系重合開始剤を構成する酸化剤と還元剤の一方を含む重合性モノマー水溶液からなる第1液とレドックス系重合開始剤の他方および所望により重合性モノマーを含む水溶液からなる第2液を気相中で混合することにより液滴を形成する方法を挙げることができる。
後者の方法は、例えば、第1液および第2液をノズルから流出する液同士の交差角度が15度以上の角度で、しかも液柱状態で衝突するようにそれぞれ別個のノズルより噴出させることにより実施することができる。このように両液に交差角度を持たせて互いに衝突させることにより、ノズルからの流出エネルギーの一部を混合に利用するのである。それぞれのノズルから流出する第1液と第2液の交差角度は、使用する重合性モノマーの性状、流量比等に応じ適宜選定する。例えば、液の線速度が大きければ交差角度は小さくすることができる。
なお、この場合、第1液の温度は通常常温〜約60℃、好ましくは常温〜約40℃であり、また、第2液の温度も通常常温〜約60℃、好ましくは、常温〜約40℃である。
このように、ノズルから噴出されたそれぞれの水溶液は、液柱状態で衝突させて両液を合体させる。合体後は液柱を形成していて、その状態がある時間保持されるが、その後この液柱は解体して液滴となる。生成した液滴は気相中で重合が進行する。
液滴の重合が進行し、繊維に接触して適当な吸水性樹脂複合体を形成するには、液滴の大きさが特に50〜1,000μmの範囲とするのが好ましい。反応器内の液滴の空間密度は0.1〜10,000g/m3であることが好ましい。この上限を超えると繊維と接触しない吸水性樹脂が生成し、この下限未満だと吸水性樹脂に接触しない繊維が生成して、吸水性樹脂複合体の収率が相対的に低下する問題が生じる。
このような重合の開始および重合進行中の液滴の形成を行う反応場を与える気相の気体としては、窒素、ヘリウム、炭酸ガス等の重合に不活性なものが好ましいが、空気でもよい。また、水蒸気のみの場合を含め、気体中の湿度には特に制限はないが、あまり湿度が低いと重合が進行する前にモノマー水溶液中の水分が蒸発してモノマーが析出し、その結果、重合速度が著しく低下、あるいは重合が途中で停止する可能性がある。気体の温度条件は、室温以上150℃以下、望ましくは100℃以下である。気体の流れ方向は液柱および液滴の進行方向に関して向流、並流のどちらでも良いが、液滴の気相中滞留時間を長くする必要がある場合、すなわち重合性モノマーの重合率を上げ、ひいては液滴の粘度を高める必要がある場合には向流(反重力方向)の方がよい。
形成された液滴は、工程Aにおいて繊維と接触する。繊維との接触回数は特に制限されない。好ましいのは液滴が複数の繊維と接触する場合である。
液滴と接触させる繊維の中には、少なくとも親水性繊維(水との接触角が0〜60°の繊維)が含まれていなければならない。反応器に供給される繊維の中で親水性繊維は、全繊維の5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、反応器に供給される繊維がすべて親水性繊維であっても構わない。
親水性繊維は、液滴に含まれている水などの水性溶媒に対する親和性が高い。このため、親水性樹脂が液滴に接触したときに、液滴と繊維の接合体が比較的速やかに形成される。また、接合体を形成した繊維は、液滴表面にとどまらずに液滴の中心部へ取り込まれやすい。中心部へ取り込まれた繊維は、重合性モノマーの重合が進行するのに伴って、重合ポリマーに部分的に包埋された繊維として固定されて行く。また、液滴中の重合性モノマーの転化率が比較的高い場合は、液滴と繊維の接合体を形成した後、繊維が液滴中心部へ取り込まれる前に重合が完了し、繊維は重合ポリマーの表面に接着した状態で固定される。このように、本発明の製造方法にしたがって親水性繊維を用いることによって、特定の構造を有する本発明の吸水性樹脂複合体を効率よく製造することができる。
重合進行中の液滴と接触させるために繊維を供給させる方法として、一般に知られている搬送方法を用いることができる。反応器内の繊維の空間密度は、繊維を吸水性樹脂に部分的に包埋させる場合は0.005〜1,000g/m3の範囲が好ましい。この上限を超えると吸水性樹脂複合体に包埋されない繊維が生成し、この下限以下だと繊維を包埋しない吸水性樹脂が生成して吸水性樹脂複合体の収率が相対的に低下する問題が生じる。繊維をできるだけ細かく均一に供給するためには、繊維を気体との混相流として供給することが好ましい。ここで用いる気体としては、上述の反応場を与える気相の気体として挙げたものを用いることができる。そのなかでも経済的観点、環境負荷軽減の観点から空気が好ましい。
混相流として供給する繊維と気体の重量混合比は1:1以下、気体の線速は1〜50m/秒の範囲が好ましい。気体の線速が50m/秒を超えると反応場の重合進行中の反応混合物の軌跡を乱し、反応器の内面への付着が問題になる場合がある。一方、下限未満では繊維の均一性が確保できない場合がある。
混相流として供給する気体の温度は、重合を著しく阻害しない範囲内で選択することが望まれる、その意味から具体的には室温以上150℃以下、望ましくは100℃以下である。繊維搬送の観点からは、気体中の湿度は低い方が好ましいが、あまり湿度が低いと反応器内の湿度を下げ、重合が進行する前にモノマー水溶液中の水分が蒸発してモノマーが析出し、その結果、重合速度が著しく低下、あるいは重合が途中で停止する可能性がある。
上記の構造を有する本発明の吸水性樹脂複合体は、モノマーの転化率の等しい段階の反応場で繊維を供給することによっても製造できるが、モノマーの転化率の異なる2段階以上の反応場で繊維を供給することによって製造することが好ましい。そのためには複数の供給口から繊維を供給することが好ましい。即ち繊維を吸水性樹脂に部分的に包埋しようとする場合は、モノマーの転化率が相対的に低い段階で接触させることが望まれ、繊維を吸水性樹脂に包埋されず吸水性樹脂表面に接着させようとする場合は、モノマーの転化率が相対的に高い段階で接触させることが望まれる。
吸水性樹脂に部分的に包埋される繊維と、包埋されず吸水性樹脂表面に接着される繊維の双方を生成するためには、それぞれの繊維とモノマーとの接触場におけるモノマーの転化率の差は10%〜80%の範囲が望ましい。より好ましくは10〜70%で、最も好ましくは10〜60%の範囲である。それぞれの接触場での転化率は、モノマー種や繊維種等に応じて適宜決定される。
なお、複合体Bの構造をより多く得るためには、重合率が比較的低い段階(例えば0〜60%の範囲)で繊維を供給することが好ましく、複合体Cの構造をより多く得るためには、重合率が相対的に高い段階(例えば30〜90%の範囲)で繊維を供給することが好ましい。
2)工程B
工程Bは、工程Aで繊維と接触した液滴中に含まれる重合性モノマーの重合を進行させる工程である。重合開始剤としてレドックス系重合開始剤を用いた場合は、液滴中における重合性モノマーの重合速度が極めて速い。このため、液滴が繊維と接触した後に落下している間に重合性モノマーの重合が進行する。液滴中の重合性モノマーの重合速度が遅い場合は、重合反応促進させるための手段を施してもよい。例えば、加熱ゾーンを通過させるなどの方法により、液滴に熱をかけて重合反応を促進してもよい。
なお、重合性モノマーの重合は、液滴が気相中にある間に完了しなくても構わない。すなわち、反応器中を液滴が落下している間に重合が完了せず、落下後も重合が進行する態様も本発明に含まれる。ただし、特徴的な構造を有する本発明の吸水性樹脂複合体が、落下後の条件によって特徴的な構造を損なうことがないように注意する。通常は、そのまま堆積させて堆積物として回収することができる。このとき、吸水性樹脂複合体が堆積する反応器底部にメッシュを設置しておき、そのメッシュの下から吸気することが好ましい。このとき、メッシュ上下の圧力差は100〜10,000Paであることが好ましい。また、メッシュがベルト状になっていて、次々と堆積してくる吸水性樹脂複合体が連続的に反応器から抜き出すことができるようになっていることがより好ましい。すなわち、液滴や繊維についても反応器に連続的に供給し、製造された吸水性樹脂複合体の堆積物を連続的に抜き出すことにより効率よく堆積物を得ることができる。
堆積物において各吸水性樹脂複合体は互いに独立しているため、容易に開繊可能である。開繊には、繊維の説明で述べた開繊方法を同様に適宜用いることができるが、機械的衝撃により吸水性樹脂が破損しない装置、条件が好ましい。
3)その他の付加的工程
本発明の製造方法には、上記の2工程の他に付加的工程を行ってもよい。例えば付加的工程として、残存モノマー処理工程、表面架橋工程、他の機能を付与するために触媒、還元剤、消臭剤、人尿安定剤、抗菌剤等の添加剤添加工程を加えてもよい。
(残存モノマー処理工程)
残存モノマーを処理する方法としては、1)モノマーの重合を進行させる方法、2)モノマーを他の誘導体へ導く方法、3)モノマーを除去する方法が挙げられる。
1)のモノマーの重合を進行させる方法としては、例えば吸水性樹脂と繊維との複合体をさらに加熱する方法、吸水性樹脂にモノマーの重合を促進する触媒ないしは触媒成分を添加した後に加熱する方法、紫外線を照射する方法、電磁放射線または微粒子性イオン化放射線を照射する方法などが挙げられる。
該吸水性樹脂複合体をさらに加熱する方法は、該吸水性樹脂複合体を100〜250℃で加熱処理し、該吸水性樹脂複合体に残存するモノマーを重合させるものである。
吸水性樹脂複合体にモノマーの重合を促進する触媒ないしは触媒成分を添加する方法は、例えばレドックス系重合開始剤を用いて重合を行った場合には、ラジカル発生剤が残存していることが多いので吸水性樹脂に還元剤溶液を付与すればよい。還元剤としては、レドックス系重合開始剤として用いる亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸等を用いればよく、通常はこれらを0.5〜5重量%水溶液として該吸水性樹脂複合体に付与する。還元剤の付与量は乾燥樹脂基準で0.1〜2重量%がよい。還元剤溶液の付与は、噴霧器を用いてスプレーしたり、還元剤溶液中に浸漬するなど、任意の方法で行うことができる。還元剤を付与した吸水性樹脂複合体は次いで加熱してモノマーを重合させる。加熱は例えば100〜150℃で10〜30分間程度行えばよい。この加熱により吸水性樹脂複合体の含水率は低下するが、もし含水率が高い場合にはさらに乾燥機で乾燥して製品の吸水材とする。
該吸水性樹脂複合体に紫外線を照射する方法では、通常の紫外線ランプを用いればよく、照射強度、照射時間等は用いる繊維の種類、残存モノマー含浸量等によって変化するが、一般的には紫外線ランプ10〜200W/cm、好ましくは30〜120W/cm、照射時間0.1秒〜30分、ランプ−複合体間隔2〜30cmである。また、この時の吸水性樹脂複合体中の水分量としては、一般的には重合体1重量部に対して0.01〜40重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部が採用される。0.01重量部未満又は40重量部超過の水分量は、残存モノマーの低減化に著しい影響を及ぼすので好ましくない。紫外線を照射する時の雰囲気としては、真空下または窒素、アルゴン、ヘリウム等の無機ガス存在下、または空気中のいずれも使用できる。また照射温度は特に制限はなく、室温で充分その目的を達成することができる。用いる紫外線照射装置にも特に制限はなく、静置状態にて一定時間照射する方法、あるいはベルトコンベヤーにて連続的に照射する方法等、任意の方法を用いることができる。
該吸水性樹脂複合体に放射線を照射する方法には、加速電子やガンマー線の様な高エネルギー放射線が用いられる。照射されるべき線量は、複合体中の残存モノマー量や、水分量等により変化するが、一般的には0.01〜100メガラド、好ましくは0.1〜50メガラドである。100メガラド超過の線量では吸水量が極めて小さくなり、また0.01メガラド未満では本発明で目的とする吸水能や吸水速度が大きく、残存モノマーが特段に小さいものが得られ難い。また、この時の吸水性樹脂複合体水分量としては、一般的には重合体1重量部に対して40重量部以下、好ましくは10重量部以下が採用される。40重量部超過の水分量では吸水速度改良効果が少なく、特に未重合モノマーの低減化に著しい影響を及ぼすので好ましくない。前記複合体に高エネルギー放射線を照射する時の雰囲気としては、真空下または窒素、アルゴン、ヘリウム等の無機ガス存在下、または空気中のいずれも使用できる。好ましい雰囲気は空気であって、空気中で照射を行なうと吸水能や吸水速度の大きくかつ残存モノマーが特段に小さくなる。また、照射温度には特に制限は無く室温で十分にその目的を達成することができる。
2)のモノマーを他の誘導体へ導く方法としては、例えばアミン、アンモニア等を加える方法、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩等の還元剤を加える方法が挙げられる。
3)のモノマーを除去する方法としては、例えば有機溶媒による抽出、留去する方法が挙げられる。有機溶媒により抽出する方法では、吸水性樹脂複合体を、含水有機溶媒中に浸漬して、残存モノマーを抽出除去する。含水有機溶媒としてはエタノール、メタノール、アセトン等を用いることができ、その含水率は10〜99重量%、特に30〜60重量%であるのが好ましい。一般に含水率が高いほど残存モノマーの除去能が高いが、含水率の高い含水有機溶媒を用いると後続する乾燥工程でのエネルギー消費が多くなる。複合体を含水有機溶媒に浸漬する時間は通常5〜30分間程度で十分であり、複合体を揺動させるなど残存モノマーの抽出を促進する手段を採用するのも好ましい。浸漬処理後は通常乾燥機で処理して乾燥する。
また、モノマーを留去する方法としては、複合体を過熱水蒸気または水蒸気含有ガスで処理する方法がある。例えば110℃の飽和水蒸気を120〜150℃に加熱して過熱水蒸気として複合体に接触させることにより、吸水性樹脂中の残存モノマーを低減させることができる。この方法では、吸水性樹脂中の水が水蒸気となって蒸発する際に、残存モノマーも同時に気化して吸水性樹脂から抜け出るものと考えられる。この方法によれば、残存モノマーの除去と製品の乾燥とを兼ねることができる。
(表面架橋工程)
また、吸水性能を向上させる目的で、吸水性樹脂の表面を架橋剤により架橋させることも可能である。一般に、粉末状の吸水性ポリマー粒子の表面に架橋剤とともに適量の水分を付与した後、加熱して表面を架橋することにより樹脂粒子の特性を改良することは公知であり、表面に選択的に架橋構造が形成される結果、吸水して膨潤するに際し、膨潤を阻害せずにその形状を維持することができるものと考えられている。この工程ではまず吸水性樹脂複合体に表面架橋剤の溶液を付与する。表面架橋剤としてはN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールビス(メタ)アクリレート等の重合性モノマーと共重合し得る多官能化合物や、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のカルボン酸基と反応し得る官能基を複数個有する化合物が用いられる。これらの表面架橋剤は、通常、吸水性樹脂複合体に対して0.1〜1重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%となるように用いられる。なお、これらの表面架橋剤は、吸水性樹脂複合体全体に均一に付与されるように、水、エタノール、メタノールなどで希釈して0.1〜1重量%、特に0.2〜0.5重量%の溶液として用いるのが好ましい。架橋剤溶液の付与は通常は噴霧器を用いて架橋剤溶液を吸水性樹脂複合体に噴霧したり、ロールブラシで架橋剤溶液を塗布する方法により行うのが好ましい。なお、架橋剤溶液を過剰に付与した後、圧搾ロールで樹脂粒子がつぶれない程度に軽く圧搾したり、風を吹き付けたりして、余剰の架橋剤溶液を除去するようにしてもよい。この架橋剤溶液の付与は室温で行えばよい。架橋剤溶液を付与された吸水性樹脂複合体は、次いで加熱して架橋反応を進行させ、吸水性樹脂表面に選択的に架橋構造を形成させる。架橋反応の条件は用いる架橋剤により適宜選択すればよいが、通常は100℃以上の温度で10分間以上反応させる。本発明では、吸水性樹脂として不飽和カルボン酸重合物架橋体や部分中和アクリル酸重合体架橋体を好ましく用いることができる。
(添加剤添加工程)
吸水性樹脂複合体、あるいは吸水性樹脂複合体組成物には、目的とする用途に応じて所望の機能を付与するために各種の添加剤を加えることができる。これら添加剤としては、吸収する液体によるポリマー分解、変質を防止する安定剤、抗菌剤、消臭剤、脱臭剤、芳香剤、発泡剤等を挙げることができる。
安定剤)
このうち吸収する液体によるポリマー分解、変質を防止する安定剤としては排泄物(即ち人尿、糞便)、体液(人血、経血、分泌液等の体液)による吸水性樹脂の分解、変質を防止する安定剤が挙げられる。特開昭63−118375号公報にはポリマー中に含酸素還元性無機塩および/または有機酸化防止剤を含有させる方法、特開昭63−153060号公報には酸化剤を含有させる方法、特開昭63−127754号公報には酸化防止剤を含有させる方法、特開昭63−272349号公報には硫黄含有還元剤を含有させる方法、特開昭63−146964号公報には金属キレート剤を含有させる方法、特開昭63−15266号公報にはラジカル連鎖禁止剤を含有させる方法、特開平1−275661号公報にはホスフィン酸基またはホスホン酸基含有アミン化合物またはその塩を含有させる方法、特開昭64−29257号公報には多価金属酸化物を含有させる方法、特開平2−255804号公報、特開平3−179008号公報には重合時水溶性連鎖移動剤を共存させる方法等が提案されている。これらはすべて本発明にて使用することができる。また、特開平6−306202号公報、特開平7−53884号公報、特開平7−62252号公報、特開平7−113048号公報、特開平7−145326号公報、特開平7−145263号公報、特開平7−228788号公報、特開平7−228790号公報に記載される材料および方法を使用することもできる。具体的にはたとえばシュウ酸チタン酸カリウム、タンニン酸、酸化チタン、ホスフィン酸アミン(またはその塩)、ホスホン酸アミン(またはその塩)、金属キレート等挙げられる。このうち特に人尿、人血、経血に対する安定剤をそれぞれ人尿安定剤、人血安定剤、経血安定剤と呼ぶことがある。
抗菌剤)
吸収した液による腐敗を防止するためには抗菌剤が用いられる。抗菌剤として例えば、「殺菌・抗菌技術の新展開」17〜80頁(東レリサーチセンター(1994))、「抗菌・抗カビ剤の検査・評価法と製品設計」128〜344頁(エヌ・ティー・エス(1997))、特許第2760814号公報、特開昭39−179114号公報、特開昭56−31425号公報、特開昭57−25813号公報、特開昭59−189854号公報、特開昭59−105448号公報、特開昭60−158861号公報、特開昭61−181532号公報、特開昭63−135501号公報、特開昭63−139556号公報、特開昭63−156540号公報、特開昭64−5546号公報、特開昭64−5547号公報、特開平1−153748号公報、特開平1−221242号公報、特開平2−253847号公報、特開平3−59075号公報、特開平3−103254号公報、特開平3−221141号公報、特開平4−11948号公報、特開平4−92664号公報、特開平4−138165号公報、特開平4−266947号公報、特開平5−9344号公報、特開平5−68694号公報、特開平5−161671号公報、特開平5−179053号公報、特開平5−269164号公報、特開平7−165981号公報に紹介されているものを適宜選択できる。
例えばアルキルピリジニウム塩、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ピリジオン亜鉛、銀系無機粉体等が挙げられる。四級窒素系の抗菌剤の代表的な例としては、メチルベンズエトニウムクロライド、ベンズアルコニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイドおよびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを挙げることができる。ヘテロ環四級窒素系の抗菌剤としては、ドデシルピリジニウムクロライド、テトラデシルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド(CPC)、テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロライドおよびテトラデシル−4−メチルピリジニウムクロライドを挙げることができる。
他の好ましい抗菌剤として、ビス−ビグアニド類を挙げることができる。これらは、例えば、米国特許第2,684,924号明細書、同2,990,425号明細書、同第2,830,006号明細書および同第2,863,019号明細書に詳細に記載されている。最も好ましいビス−ビグアニドとしては、1,6−ビス(4−クロロフェニル)ジグアニドヘキサンであり、クロロヘキシジンおよびその水溶性塩として知られているものである。特に好ましいのは、クロロヘキシジンの塩酸塩、酢酸塩およびグルコン酸塩である。
他のいくつかのタイプの抗菌剤も有用である。例えば、カルバニリド類、置換フェノール、金属化合物および界面活性剤の希土類塩を例示することができる。カルバニリドとしては、3,4,4’−トリクロロカルバニリド(TCC,トリクロカルバン)および3−(トリフルオロメチル−4,4’−ジクロロカルバニリド(IRGASAN)が含まれる。置換フェノールとしては、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール(IRGASAN DP−300)を挙げることができる。金属化合物としては、黒鉛およびすずの塩、例えば塩化亜鉛、硫化亜鉛および塩化すずが含まれる。界面活性剤の希土類塩は、欧州特許公開第10819号公報に開示されている。このタイプの希土類塩としては、直鎖のC10〜18アルキルベンゼンスルホン酸塩のランタン塩などを例示することができる。
消臭剤、脱臭剤、芳香剤)
また、吸収した液の不快な臭気を防止あるいは緩和するものとして消臭剤、脱臭剤、芳香剤が用いられる。消臭剤、脱臭剤、芳香剤は例えば「新しい消臭・脱臭剤と技術と展望」(東レリサーチセンター(1994))、特開昭59−105448号公報、特開昭60−158861号公報、特開昭61−181532号公報、特開平1−153748号公報、特開平1−221242号公報、特開平1−265956号公報、特開平2−41155号公報、特開平2−253847号公報、特開平3−103254号公報、特開平5−269164号公報、特開平5−277143号公報に紹介されているものを適宜選択できる。具体的には消臭剤、脱臭剤としては鉄錯体、茶抽出成分、活性炭が挙げられる。芳香剤としては例えば香料系(シトラール、シンナミックアルデヒド、ヘリオトピン、カンファ、ボルニルアセテート)木酢液、パラジクロルベンゼン、界面活性剤、高級アルコール、テルペン系化合物(リモネン、ピネン、カンファ、ボルネオール、ユカリプトール、オイゲノール)が挙げられる。
発泡剤、発泡助剤)
また吸水性樹脂の吸水性能向上のために多孔化、広表面積化を図るべく、発泡剤、発泡助剤を併用することができる。発泡剤、発泡助剤としては例えば「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社、1989、259〜267頁)に紹介されているものを適宜選択できる。例えば重炭酸ナトリウム、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルフォニル・ヒドラジド等が挙げられる。
これらの添加剤は吸水性樹脂複合体の製造各工程で目的、作用機構に応じ適宜加えられる。例えば発泡剤は、吸水性樹脂の製造工程では重合工程前乃至重合工程途中で添加するのが適当である。人尿安定剤、人血安定剤、抗菌剤、消臭剤、芳香剤は吸水性樹脂複合体製造工程、吸水性樹脂複合体組成物製造工程、吸水性物品製造工程の各工程で添加可能である。もちろん予め繊維に施すことも可能である。
IIIB.吸水性樹脂複合体組成物の製造方法
1.原料および製造工程
本発明の組成物は、一般的には、製造された上記複合体Aに対して適宜、別途調製された複合体Bおよび/または複合体Cおよび/または自由繊維を混合・分散させる方法(後混合法)あるいは、複合体Aの重合工程で同時に組成物を得る方法(同時混合法)等で調製後、必要に応じ圧密等の処理を加えることで製造される。
1)後混合法
例えば、上記の堆積した複合体Aあるいは上記の開繊され独立した複合体Aと複合体Bおよび/または複合体Cおよび/または自由繊維とを混合器で混合することにより任意の組成で混合した吸水性樹脂複合体組成物を製造することができる。この際、混合機としては粉体同士、粉体と繊維、あるいは繊維同士を混合できる固体混合装置を用いることができる。具体的には「化学工学II」(大山義年、岩波全書、1963、229頁)に詳述されている、たとえば、円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、正立方体型混合機等の回転型混合機、スクリュー型混合機、リボン型混合機、回転円板型混合機、流動化型混合機等の固定型混合機等が挙げられる。
2)同時混合法
繊維の供給位置を工夫することにより、実質的に本発明の組成物を得ることができる。即ち重合率が低い段階で液滴を繊維と接触させると複合体B含有組成物が得られ、重合率が高い段階で液滴と接触させると複合体C含有組成物が得られる。
あるいはまた、重合進行中の吸水性樹脂あるいは吸水性樹脂複合体中の吸水性樹脂と実質的に接触しない方法で吸水性樹脂複合体製造時に繊維を供給、混合、分散させることによっても自由繊維を含有する組成物が得られる。
3)圧密法
圧密は、圧力、温度、湿度等の条件を適宜調整しながら行う。例えば、プレス機は、平板プレス機、ロールプレス機等を使用することができる。圧力は、吸水性樹脂粒子が割れない範囲内であれば構わない。吸水性樹脂粒子が割れると、割れた粒子片が繊維から離脱して最終製品である吸収性物品から漏れたり、膨潤時に吸水ゲルが繊維から外れて漏れたり移動したりして、吸収性物品の性能を低下させることとなる。
また、圧密過程で加熱する場合は、使用する繊維の溶融点以下の温度に加熱することができる。溶融点以上で加熱すると、繊維同士が結着してネットワークを形成して、複合体の機能が損なわれる。
圧密過程で加湿する場合は、通常は蒸気を用いて加湿する。加湿条件により、組成物の密度を向上させ、吸水性樹脂粒子の繊維への固着性を改善することができる。
2.吸水性樹脂複合体組成物の開繊
吸水性樹脂複合体組成物は、構成成分自体が互いに独立しているため、前記の複合体Aの集合体と同様に容易に開繊可能である。開繊には、前記の繊維の説明で述べた開繊方法を同様に適宜用いることができるが、機械的衝撃により吸水性樹脂が破損しない装置や条件を採用することが好ましい。
IV.測定法および評価法
1.繊維
1)水の接触角
(1)用いた繊維を溶解または分散可能な溶媒を用いて濃度が1〜10重量%の溶液を調製した。
(2)その溶液を薄くシャーレに展開し、室温で、乾燥空気により穏やかに溶媒を蒸発させて十分に乾燥することにより、薄く展開したフィルム状成型物を得た。
(3)そのフィルム状成型物の空気表面に対する、25℃での蒸留水の接触角を求めた。接触角は自動接触角計CA−V型(協和界面科学(株)製)を用いて測定した。
2)空間密度
繊維が混相流として共に供給される空気の流れにのって、上から下に移動すると仮定することにより繊維の反応場における滞留量を計算し、さらにその滞留量を全反応場の体積で割ることで反応場における繊維の空間密度を計算した。
2.液滴
1)液滴径
後述する3.2)の方法にしたがって測定した、吸水性樹脂複合体を構成する吸水性樹脂粒子の平均粒径dpおよびモノマー濃度Cmから下記式に従い計算した。
液滴径dd = dp /( Cm )1/3
2)空間密度
液滴が、ノズルからの下向き吐出速度を初速度として、反応場を落下すると仮定することにより、液滴の反応場における滞留量を計算し、さらにその滞留量を全反応場の体積で割ることで反応場における液滴の空間密度を計算した。
3)重合率(繊維との接触位置における重合率)
(1)繊維を導入する位置にメタノールの液面が位置するように約150gのメタノールの入ったビーカーを設置し、重合を開始させた反応混合物の液滴を気相中で形成し、ビーカー中のメタノールへ約1gの重合進行中の液滴が落下するようにした。
(2)メタノール中のモノマー量を液体クロマトグラフィーで測定した。
(3)メタノール中のポリマーを130℃で3時間減圧乾燥した後、重量を測定した。
(4)それぞれの重量から以下の式により重合率を計算した(Mpはポリマー重量、Mmはモノマー重量)。

Mp
重合率(%) = ――――――――― x 100
Mm + Mp
3.吸水性樹脂複合体
1)吸水性樹脂複合体の形態確認
(1)吸水性樹脂複合体を走査型電子顕微鏡により20〜20,000倍に拡大して観察することにより繊維の一部が該樹脂内部に包埋され、その繊維の一部が該樹脂より露出している構造、あるいは繊維の該樹脂表面への接着状況を確認した。
(2)さらにミクロトーム等の精密切削装置により連続的に断面を切削し、その断面を20〜20,000倍に拡大して観察することによって、繊維の一部が該樹脂内部に包埋され、その繊維の一部が該樹脂より露出している構造、あるいは繊維の該樹脂表面への接着状況を確認した。
2)吸水性樹脂粒子の平均粒径
吸水性樹脂複合体の光学顕微鏡写真を撮影し、複合体を構成する100個の吸水性樹脂粒子(本明細書中で測定対象とした吸水性樹脂粒子はいずれも略球状であった)を任意に選定してそれらの直径を測定し、その個数基準の平均値を平均粒径とした。
3)各吸収性樹脂複合体の乾燥重量比
約1gの吸水性樹脂複合体を、光学顕微鏡を用い、複合体A、複合体Bおよび複合体Cに分類した。各複合体の重量を精密天秤で測定し、各吸水性複合体の乾燥重量比を得た。
4)各複合体を構成する結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比
前項3)各吸水性樹脂複合体の乾燥重量比の測定で分類された各吸収性樹脂複合体について、複合体中の吸水性樹脂を選択的に分解させる薬剤を用い繊維を単離し、繊維重量を秤量することによって求めた。
具体的には、例えば吸水性樹脂複合体Aに関して、
(1)3)で得られた吸水性樹脂複合体Aの重量をWcとした。50mlの密閉ガラス容器にこの吸水性樹脂複合体Aを仕込み、25gの蒸留水に0.03gのL−アスコルビン酸を溶解させた水溶液を加えて膨潤させ、40℃で24時間保持した。
(2)その後、80℃で3時間減圧乾燥した恒量値になった濾紙でガラス容器の内容物を到達真空度10〜25mmHgのアスピレーターで吸引濾別し、濾紙上の繊維を十分水洗し、100℃で5時間乾燥して精秤し、その値をWfとした。
(3)下記式により吸水性樹脂複合体Aを構成する結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比を得た。
Wf
結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比 = ――――――――
Wc − Wf
5)開繊性
(1)約5gの吸水性樹脂複合体をアッシュフォード社製の1対のハンドカーダー(22cm×12.5cm)の間にはさみ、手動により5回梳毛した。
(2)梳毛のしやすさと、梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損状況により以下の様に3段階で評価した。
○: 梳毛しやすく、かつ梳毛後の吸水性樹脂粒子にほとんど破損がない。
△: 梳毛に抵抗感があり、梳毛すると梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損がある。
×: 梳毛できない程度に抵抗感が強いか、あるいは梳毛に強い抵抗感があり、
梳毛すると梳毛後の吸水性樹脂粒子の破損が著しい。
6)保水能
(1)あらかじめ必要量の生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を調製した。
(2)吸水性樹脂複合体中の結合繊維と吸水性樹脂の比率を上記3.3)と同様の方法で求め、吸水性樹脂複合体中の吸水性樹脂の重量が約1gとなるように吸水性樹脂複合体を集め、その重量(W1)を測定した。また吸水性樹脂と繊維の比率から吸水性樹脂複合体中の繊維の重量(W2)を計算で求めた。
(3)この吸水性樹脂複合体を250メッシュのナイロン袋(20cm×10cm)に入れ、室温の生理食塩水500ml中に30分間浸漬した。
(4)次いでナイロン袋を引上げ、15分間懸垂して水切りしたのち、遠心分離機を用いて90Gで90秒間脱水した。
(5)脱水後の吸水性樹脂複合体を含むナイロン袋の重量W3を測定した。
(6)製造に用いたものと同一の繊維を上記複合体に含まれる重量(W2)と同一重量分、同様に250メッシュのナイロン袋(20cm×10cm)に入れ、室温の生理食塩水500ml中に30分間浸漬した。
(7)次いでナイロン袋を引上げ、15分間懸垂して水切りしたのち、遠心分離機を用いて90Gで90秒間脱水した。脱水後の繊維を含むナイロン袋の重量W4を測定した。
(8)生理食塩水の保水能Sは以下の式にしたがって算出した。ここでW1〜W3の単位はすべてgである。
W3 − W4
保水能S = ――――――――
W1 − W2
7)加圧下吸水能
加圧下吸水能(AUL)は、吸水性材料が負荷を受けているときに、液体を吸収する能力の指標である(図1参照)。
(1)吸水性樹脂複合体中の吸水性樹脂の重量が約0.16gとなるように吸水性樹脂複合体を集め、重量を測定した。金網11付き円筒管12(金網#100、内径25.4mmφ)の重量を測定した。これらの重量をそれぞれ、吸水性樹脂複合体重量Sd(g)および円筒管重量Td(g)とする。
(2)シャーレ13(100mmφ)に人工尿(組成後述)を25g入れた。
(3)吸水性樹脂複合体を金網付き円筒管に均一に仕込んだ。
(4)荷重14(100g)を吸水性樹脂複合体の上に乗せた。なおこの荷重14と円筒管12の間には、抵抗や摩擦がないようにしなければならない。
(5)吸水性樹脂複合体の入った円筒管12を、金網を下にしてシャーレ13の中の人工尿に静かに浸した。
(6)その状態で1時間吸水させた。
(7)円筒管12をシャーレ13から静かに取り出した。
(8)円筒管12を濾紙(#424)の上に静かに乗せて円筒管底部(金網部)の余剰水をぬぐい取った。
(9)荷重14を取り除き、荷重に付着した吸水性樹脂は円筒管側へ移した。
(10)円筒管12の重量を測定した。この重量を吸水後円筒管重量Tw(g)とする。
(11)吸水後試料重量Sw(g)を以下の計算により求めた。
Sw = Tw−(Sd+Td)
(12)吸水性複合体製造に用いたのと同一の繊維単独の加圧下吸水能を測定した。即ち用いた繊維についても1)〜11)の操作を実施し、2)で繊維の重量をNd(g)とし、11)で得られた繊維単独の吸水量に対応する吸水後繊維重量Nw(g)を求めた。
(13)加圧下吸水能は以下の計算で求めた。
吸水量A(g) = Sw−Nw
加圧下吸水能(AUL)(g/g) = A/(Sd−Nd)
4.高密度化吸水性樹脂複合体組成物
1)高密度化吸水性複合体組成物の作製
3.で得られた各吸水性樹脂複合体の重量比および各吸水性複合体を構成する結合繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比を用い、吸水性樹脂目付量および繊維(結合繊維+自由繊維)と吸水性樹脂の乾燥重量比が所定の値となるように吸水性樹脂複合体および自由繊維を混合した。
例えば複合体A、BおよびCの乾燥重量比がそれぞれa、b、c(a+b+c=1)、各複合体を形成する繊維の乾燥重量比率がα、β、γである吸水性樹脂複合体×[g/m2]と自由繊維y[g/m2]から、吸水性樹脂目付量がP[g/m2]、自由繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比がF[w/w]である高密度化吸水性樹脂複合体組成物を作製するとき、
[a(1−α)+b(1−β)+c(1−γ)]x = P[g/m2]


――――――――――――――――――――――― = F[w/w]
[a(1−α)+b(1−β)+c(1−γ)]x
の関係が成立し、a、b、c、α、β、γおよびP、Fが与えられれば、x,yは計算することができる。ただしここではP=300g/m2(一定値)とした。
この混合物が、40cm×10cmとなるようにステンレス板上に均一に敷き詰め、さらにその上にステンレス板を重ね、両側から0.6MPaの荷重をかけ、20分間放置後、圧力を開放し、高密度吸収性樹脂複合体組成物を得た。
上記手順で作製した高密度化吸水性樹脂複合体組成物を以下の手順でそれぞれ評価、測定した。
2)厚み
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を5cmX5cmに切りだし、JIS l−1096に準拠して、高密度化吸収性樹脂複合体組成物の厚みを測定した(図2)。
(1)レオメーター(FUDOH社製品、型番:NRM−2003J)に直径30mmのアダプター1を取り付けてサンプル台2が2cm/minの速度で上昇し、0.2psiの圧力がかかった時点で停止するようにセットした。
(2)サンプル3を測定台にセットしてサンプル台2を上昇させて0.2psiの圧力になって停止した位置でのアダプター1の上面からサンプル台2の下面までの距離4をノギスを用いて測定した。
(3)サンプルは5枚測定し、その平均値を求めた。
(4)サンプルをサンプル台2に乗せずにブランク測定も同時に行った。
(5)厚みは下記式から求めた。
厚み(mm) = サンプル測定値(mm)−ブランク測定値(mm)
3)嵩密度
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を5cmX5cmに切り出し、その重量を測定し、下記式から嵩密度を求めた。サンプルは5枚測定し、その平均値を求めた。
サンプル重量(g)
嵩密度(g/cm3)= ――――――――――――――――――――――
サンプル厚み(cm)Xサンプル面積(cm2
4)剛軟性
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を2cmX25cmに切りだし、温度25℃、湿度50℃に一昼夜保管後、図3に示すJIS L−1096の比較的柔らかい織物に使用されるハートループ法を用いて剛軟性を測定した。
(1)図3に示される水平棒のつかみ51にサンプル片52をハートループ状に取り付け、サンプル片の有効長が20cmとなるようにした。
(2)1分間経過してから水平棒の頂部とループの最下点との距離L(cm)を測定した。ここではLを剛軟性と定義した。サンプルは5枚測定し、その平均値を求めた。
5)復元率
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を5cm×5cmに切り出し、10MPaの圧力を10分間かけて圧縮し、4.2)厚み測定法に基づき、圧縮直後および温度25℃、湿度50℃ の条件下で30日間保管した後の厚みを測定し、下記式によって算出した。サンプルは5枚測定し、その平均値を求めた。
圧縮30日後の厚み−圧縮直後の厚み(mm)
復元率(%)= ―――――――――――――――――――――― X 100
圧縮直後の厚み(mm)
5.吸収性物品
(吸水性物品の作製)
高密度化吸水性樹脂複合体組成物を用いて下記の手順で吸水性物品であるおむつを作製した。
(1)水不透過性ポリエチレンシート(目付量18g/m2)21上に、ティッシュ22(目付量14g/m2)、高密度化吸水性樹脂複合体組成物24(吸水性樹脂が300g/m2となる量かつ10cmX40cmの大きさ)、ティッシュ25(目付量14g/m2)、および水透過性ポリエステル繊維不織布26(目付量23g/m2)の順に図4に示すように重ね、両側からステンレス板で挟み0.6MPaの圧をかけ、20分間放置し、密着させた。
(2)圧力を開放し、吸水性物品の4辺を熱圧着させた。
(3)圧着部分の外端を切り出し、約10cmX約40cmの吸水性物品が作成された。
上記手順で作製した吸収性物品を、以下の手順で測定し、評価した。
1)吸水性樹脂脱落率
(1)吸水性物品を10cmX10cmの大きさに切り出し(4辺とも開放)、重量を測定した。吸水性樹脂複合体中の吸水性樹脂の重量割合から、全吸水性樹脂量を求めた。JISZ8801で規定された標準網篩(内枠の寸法が、内径150mm、深さ45mm、20メッシュ)に切りだした吸水性物品をテープで中央に固定した。
(2)(株)東京篠原製作所製、型番SS−S−228型ロータップ型震とう機を用意し、JIS Z8815の図(図5)における最上段にのみ吸水性物品を固定した。
(3)衝動数165回/分、回転数290回/分にセットし、振とう60分後に吸水性物品から離脱する吸水性樹脂粒子の重量を測定し下記式から脱落率を求めた。
脱落吸水性樹脂量(g)
吸水性樹脂脱落率(%)= ――――――――――――――― X 100
振とう前全吸水性樹脂量(g)
2)ゲル脱落率
吸水性物品をこするように作用する力が反復して加わったときの、吸水性物品の吸水ゲルの脱落量を以下の手順で測定した。
(1)面平滑台上に吸水性物品31を置き、中央に内径40mmの上方が開放された円筒32が取付けられており、かつ円筒32で囲まれた部分に、直径5mmの7箇の貫通孔33がほぼ等間隔となるように設けられているアクリル板34(100×100×10mm、全重量150g)を図6に示すように置いた。
(2)人工尿(組成後述)150mlを円筒内に入れ、吸水性物品に吸水させた。
(3)完全吸水後30分間室温下に放置して、図7に示すように吸水性物品の中心41から5cmずつのところ42を切り取った。切り取った部分の重量を測定した。
(4)測定後、20cmX20cmのアクリル板の中心に載せた。切り取ったサンプルと同じ大きさの底面積(10cmX10cm)の荷重(3Kg)を形状に合わせてはみ出さないように載せた。
(5)一体サンプルを振とう機(井内盛栄堂社製品、型番MS−1)の移動方向に対してサンプルの切り口が垂直になるようにセットし、振幅50mm、振動数80回/分で、30分間振とうさせた。
(6)振とう後荷重を取り除き、サンプルから脱落した吸水ゲルの重量を測定し、下記式を用いてゲル脱落率を計算した。
押し出されたゲル量(g)
ゲル脱落率(%) = ―――――――――――――――― X 100
押し出される前の全ゲル量(g)
6.その他
5.1)吸水速度および放水量測定と、5.2)ゲル脱落率測定には、以下の組成の人工尿を用いた。
尿素 1.94重量%
塩化ナトリウム 0.80重量%
塩化カルシウム 0.06重量%
硫酸マグネシウム 0.11重量%
蒸留水 97.09重量%
以下に実施例、比較例、試験例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の具体例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
実施例1
アクリル酸100重量部に、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液133.3重量部、蒸留水3.3重量部を加え、モノマー濃度50重量%、中和度60モル%の部分中和アクリル酸水溶液を調製した。該部分中和アクリル酸水溶液100重量部に対して架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.14重量部とさらに酸化剤として31重量%の過酸化水素水溶液4.55重量部を加えて溶液Aを調製した。
これとは別に該部分中和アクリル酸水溶液100重量部に対して架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.14重量部とさらに還元剤としてL−アスコルビン酸0.57重量部を加えて溶液Bを調製した。
調製した溶液Aと溶液Bを、図8に示したノズルを用いて混合した。図8のノズルの内径は0.13mmであり、各溶液用のノズルは5本ずつ1cm間隔で配置されている。ノズルから流出する溶液Aと溶液Bとの交差角度は30度、ノズル先端の距離は4mmに調節した。溶液Aおよび溶液Bはそれぞれ液温を40℃に加温して、それぞれ流速5m/秒となるようにポンプで供給した。
溶液Aおよび溶液Bは、それぞれのノズル対のノズルを出たところで合流し、それぞれ約10mmほど液柱を形成した後、液滴となって重合を進行させながら気相中(空気中、温度50℃)を落下した。反応器の空間容量とモノマー供給量および液滴の落下速度から見積もられる反応器内の液滴の空間密度は2g/m3であった。
一方、ノズルの先端より下方0.8mおよび1.6mに設置した供給口より開繊された繊維を空気との混相流で供給した(繊維:空気=1:100)。その際、混相流中の空気の温度は室温であり、線速度は10m/秒であった。また、ノズルの先端より下方0.8mおよび1.6mにおける、重合率はそれぞれ15%および40%であった。用いた繊維は、繊維径が2.2デシテックス、長さが2.5mmで、水の接触角が0°のパルプであった。供給量はそれぞれ11.5g/分であった。反応場の空間容量と繊維供給量および繊維の落下速度から見積もられる反応場の繊維の空間密度は8g/m3であった。
液滴は気相中で繊維と衝突して吸水性樹脂複合体前駆体を形成しノズルの先端より下方3mに設置した搬送部分がメッシュベルトであるベルトコンベアー上に堆積物として回収した。なお、メッシュ下はブロワーで吸引することで、メッシュ上下の圧力差が1,000Paとなるようにコントロールした。さらに回収物を乾燥後ふるいにかけ、吸水性樹脂と結合しなかった自由繊維を除去し、吸水性樹脂と繊維とからなる製造物を得た。
この製造物を顕微鏡で観察したところ、樹脂粒子は略球状であり、1個の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体であって、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維が前記樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着している構造の吸水性複合体であることが確認できた。(図9中の略図、写真101および102)
実施例2
繊維として用いたパルプの代わりに、繊維径1.7がデシテックス、長さが0.9mmで、水の接触角が50°であるナイロンを用いる以外は実施例1と同様に製造し、製造物を得た。その製造物は実施例1と同様の構造の吸水性樹脂複合体であることが確認できた。(図10中の写真105および106)
実施例3
繊維として用いたパルプの代わりに、繊維径が1.7デシテックス、長さが0.9mmで水の接触角が50°であるナイロンと、同一の繊維径および長さを有し、水の接触角が0°であるレーヨンとの重量比が1:1の繊維混合物を用いる以外は実施例1と同様に製造し、製造物を得た。その製造物は実施例1と同様の構造の吸水性樹脂複合体であることが確認できた。(図11中の写真107および108)
実施例4
ノズルの先端より下方0.8mに設置した繊維供給口からのみ繊維を供給した以外は実施例1と同様に製造し、製造物を得た。この製造物を顕微鏡で観察したところ、以下の2種類の吸水性樹脂複合体からなる組成物であることが判明した。
(1)実施例1と同様の構造の吸水性複合体
(2)1個の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む略球状の吸水性樹脂複合体であ
って、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるととも
に一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂
粒子の表面に接着していない吸水性樹脂複合体(図12中の略図、写真109
および110)
顕微鏡観察の結果、(1)の全体における比率は0.3であった。
実施例5
ノズルの先端より下方1.6mに設置した繊維供給口からのみ繊維を供給した以外は実施例1と同様に製造し、製造物を得た。この製造物を顕微鏡で観察したところ、以下の2種類の吸水性樹脂複合体からなる組成物であることが判明した。
(1)実施例1と同様の構造の吸水性複合体
(2)1個の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む略球状の吸水性樹脂複合体であ
って、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着しており
かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子内に包埋されていない吸水性樹脂複合
体(図13中の略図、写真111および112)
顕微鏡観察の結果、(1)の全体における比率は0.2であった。
実施例6
実施例4で得られた組成物47.5重量部、実施例5で得られた組成物47.5重量部および、実施例1で用いた物と同一の繊維5重量部を回転羽根式混合機で均一に混合し、製造物を得た。
この製造物を顕微鏡で観察したところ、以下の3種類の吸水性樹脂複合体および繊維からなる組成物であることが判明した。
(1)実施例1と同様の構造の吸水性複合体
(2)1個の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む略球状の吸水性樹脂複合体であ
って、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるととも
に一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂
粒子の表面に接着していない吸水性樹脂複合体
(3)1個の吸水性樹脂粒子と1本以上の繊維を含む略球状の吸水性樹脂複合体であ
って、1本以上の前記繊維は繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着しており
かつ、前記繊維はいずれも前記樹脂粒子内に包埋されていない吸水性樹脂複合

(4)吸水性樹脂に包埋も接着もされることのない繊維
顕微鏡観察の結果、(1)の合計重量における比率は0.24であった。
比較例1
特開平11−93073号公報の実施例に準拠して、以下の実験を行った。
80重量%アクリル酸水溶液125重量部および30重量%水酸化ナトリウム水溶液133重量部を混合して、中和度72モル%、濃度47重量%の部分中和アクリル酸水溶液を得た。該部分中和アクリル酸水溶液に、架橋剤N,N'―メチレンビスアクリルアミド0.04重量部と、開始剤2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.3重量部とを、蒸留水13重量部に溶解したものを加え、窒素にて脱気し、モノマー水溶液とした。
実施例1のノズルの代わりに一液型スプレーノズルを用い、液温を25℃に保持し、流速40ml/分となるようにポンプで供給した。
モノマー溶液は液滴となって重合を進行させながら気相中(空気中、温度25℃)を落下した。反応器の空間容量とモノマー供給量および液滴の落下速度から見積もられる反応器内の液滴の空間密度は3g/m3であった。
一方、ノズルの先端より下方0.8mに設置した供給口より開繊された繊維を空気との混相流で供給した(繊維:空気=1:100)。その際、混相流中の空気の温度は25℃であり、線速度は10m/秒であった。また、ノズルの先端より下方0.8mの重合率は1%未満であった。用いた繊維は、繊維径が1.7デシテックス、長さが0.9mmで、水の接触角が80°のポリエテレンテレフタレート(PET)であった。供給量は11.5g/分であった。反応場の空間容量と繊維供給量および繊維の落下速度から見積もられる反応場の繊維の空間密度は8g/m3であった。
液滴は気相中で繊維と衝突して吸水性樹脂複合体前駆体を形成し、ノズルの先端より下方3mに設置した搬送部分がメッシュベルトであるベルトコンベア上で堆積物として回収された。なお、メッシュ下にブロワーで吸引することでメッシュ上下の圧力差が1,000Paとなるようにコントロールした。さらに回収物を80℃のオーブンに入れて、付着しているモノマー水溶液の重合を30分間行い、その後140℃で熱風処理をして吸水性樹脂複合体を得た。
さらに回収物をふるいにかけ、自由繊維を除去しようと試みたが吸水性樹脂が繊維間の接着剤ともなっており、事実上自由繊維はなかった。このようにして吸水性樹脂と繊維とからなる製造物を得た。
この製造物を顕微鏡で観察したところ、繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着している構造が確認できた。しかしながら繊維の一部が吸水性樹脂に包埋されている構造は見られなかった。(図14中の略図、写真115および116)
試験例
実施例1〜6および比較例1で製造された吸水性樹脂複合体およびその集合体に関して、形態観察、吸水性樹脂の平均粒径、複合体A中の繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比、開繊性、保水能、加圧下吸水能を測定した。
また、実施例1〜6および比較例1で製造された吸水性樹脂複合体を用いて、吸水性樹脂複合体組成物を調製し、高密度化処理前に各複合体と自由繊維の重量比率および自由繊維と吸水性樹脂の乾燥重量比を測定した。なお、この比は引き続いて行った圧密処理により変化しないと考えた。また、吸水性樹脂複合体組成物の圧密処理により得られた高密度化吸水性樹脂複合体組成物について、厚み、嵩密度、剛軟性、復元率を測定した。
さらに高密度化吸水性樹脂複合体組成物を用い、吸収性物品を作製し、吸水性樹脂脱落率とゲル脱落率を測定した。
それぞれの測定、評価結果を表1にまとめた。
なお、比較例1の吸水性樹脂複合体は開繊した際、破砕部分が発生した。
本発明の方法によって製造される吸水性樹脂複合体およびその組成物は、紙おむつ、生理ナプキンのような衛材および他の吸水性物品のような工業材料として好適に用いられる。特に本発明の方法によって製造される吸水性樹脂複合体およびその組成物には、特開昭63−267370号公報、特開昭63−10667号公報、特開昭63−295251号公報、特開昭63−270801号公報、特開昭63−294716号公報、特開昭64−64602号公報、特開平1−231940号公報、特開平1−243927号公報、特開平2−30522号公報、特開平2−153731号公報、特開平3−21385号公報、特開平4−133728号公報、特開平11−156188号公報等に提案されているシート状吸水材に利用されている技術を適宜目的に応じて用いることもできる。
加圧下吸水能測定具を説明するための横断面図である。 厚み測定具を説明するための横断面図である。 ハートループ法による剛軟性を測定する治具を説明するための概略図である。 吸水性物品の構成を示す横断面図である。 ロータップ型震とう機を示す概略図である。 ゲル脱落率を測定する治具を説明するための横断面図である。 ゲル脱落率測定におけるサンプルの切断線を示す図である。 吸水性樹脂複合体を作製するために用いたノズルを説明するための該略図である。 実施例1で得られた試料の略図、走査型電子顕微鏡写真(101および102)である。 実施例2で得られた試料の走査型電子顕微鏡写真(105および106)である。 実施例3で得られた試料の走査型電子顕微鏡写真(107および108)である。 実施例4で得られた試料の略図、走査型電子顕微鏡写真(109および110)である。 実施例5で得られた試料の略図、走査型電子顕微鏡写真(111および112)である。 比較例1で得られた試料の略図、走査型電子顕微鏡写真(115および116)である。
符号の説明
1 アダプター
2 サンプル台
3 サンプル
4 距離
11 金網
12 円筒管
13 シャーレ
14 荷重
21 水不透過性ポリエチレンシート
22 ティッシュ
24 高密度化吸水性樹脂複合体組成物
25 ティッシュ
26 水透過性ポリエステル繊維不織布
31 吸水性物品
32 円筒
33 貫通孔
34 アクリル板
41 中心
42 切断線
51 つかみ
52 サンプル片

Claims (16)

  1. 重合することによって吸水性ポリマーを形成する重合性モノマーと繊維から、1個の吸水性樹脂粒子と2本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体を反応器内で製造する方法であって、
    前記吸水性樹脂複合体は、前記吸水性樹脂粒子が略球状であり、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維の一部が前記樹脂粒子内に包埋されるとともに一部が前記樹脂粒子より露出しており、かつ、前記2本以上の繊維のうちの1本以上は繊維が前記樹脂粒子内に包埋されることなく、その繊維の一部が前記樹脂粒子の表面に接着しており、
    前記方法は水との接触角が0〜60゜である1本以上の繊維と前記重合性モノマーを気相中で接触させ、前記重合性モノマーの重合を進行させることにより、吸水性ポリマーと1本以上の繊維を含む吸水性樹脂複合体を製造する各工程を含むことを特徴とする、吸水性樹脂複合体の製造方法。
  2. 重合前および/または重合中の重合性モノマーと溶媒とを含有する液滴と、水との接触角が0〜60゜である1本以上の繊維を気相中で接触させる請求項1に記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  3. 前記液滴の粒径が50〜1,000μmである請求項2に記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  4. 前記繊維の平均繊維長が50〜50,000μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  5. 前記繊維の平均繊維径が0.1〜500デシテックスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  6. 前記重合性モノマーが前記重合後に部分中和アクリル酸重合体架橋体を与えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  7. 前記繊維との接触時における液滴中のモノマー転化率が0〜90%であることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  8. 前記繊維を空気との混相流として前記反応器内に供給することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  9. 水との接触角が0〜60゜である2本以上の繊維を反応器内の気相中に供給することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  10. 前記反応器内の前記繊維の空間密度が0.005〜1,000g/m3である請求項9に記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  11. 前記反応器内の前記液滴の空間密度が0.1〜10,000g/m3である請求項9または10に記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  12. 前記液滴および前記繊維を前記反応器内に連続的に供給すると共に、製造される吸水性樹脂複合体を前記反応器から連続的に抜き出すことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の吸水性樹脂複合体の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の方法で得られる吸水性樹脂複合体を堆積させて堆積物を製造する工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂複合体の堆積物の製造方法。
  14. 前記吸水性樹脂複合体を反応器内で堆積させ、得られた堆積物を反応器から抜き出すことを特徴とする請求項13に記載の吸水性樹脂複合体の堆積物の製造方法。
  15. 前記反応器底部に設置したメッシュ下から吸気して、吸水性樹脂複合体をメッシュ上に堆積させることを特徴とする請求項13または14に記載の吸水性樹脂複合体の堆積物の製造方法。
  16. メッシュ上下の圧力差が100〜10,000Paであることを特徴とする請求項15に記載の堆積物の製造方法。
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JP2017515005A (ja) * 2014-04-30 2017-06-08 ユニベルシテ・ピエール・エ・マリー・キユリー 線形要素の特性、特に線形要素の2つの終端部を分離する距離、を変更する方法及びデバイス

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