JP2005012699A - 誘電体共振器が形成された誘電体導波管線路と導波管との接続構造並びにその構造を用いたアンテナ装置及びフィルター装置 - Google Patents

誘電体共振器が形成された誘電体導波管線路と導波管との接続構造並びにその構造を用いたアンテナ装置及びフィルター装置 Download PDF

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直行 志野
Hiroshi Uchimura
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Abstract

【課題】誘電体基板内に形成される積層型の誘電体導波管線路と方形導波管とを、ほぼ直角に接続することができる接続構造を提供する。
【解決手段】誘電体基板の両面に形成された一対の導体層2,3と、高周波信号の伝送方向に、前記導体層2,3間を電気的に接続して形成された2列の貫通導体群4とを具備する誘電体導波管線路6を設け、前記誘電体導波管線路6の一端部に、前記一対の導体層2,3と貫通導体群6とで囲まれるキャビティ共振器11を形成し、共振器11上の導体層2に結合用窓7を設け、この結合用窓7に、高周波信号の伝送方向が異なるように開口端面を対向させた方形金属導波管8を接続している。
【効果】低損失で、広帯域の信号透過特性が得られる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はマイクロ波帯やミリ波帯等の高周波信号を伝達するための誘電体導波管線路と導波管との接続構造に関し、特に高周波信号の伝送方向がほぼ直交する場合に、信頼性が高く、低損失に接続することができる誘電体導波管線路と導波管との接続構造、並びにその構造を用いたアンテナ装置及びフィルター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロ波帯やミリ波帯等の高周波信号を用いた移動体通信及び車間レーダ等の研究が盛んに進められている。これらの通信を扱う高周波回路において、高周波信号を伝送するための伝送線路には小型で伝送損失が小さいことが求められている。特に、伝送線路を、高周波回路を構成する基板上または基板内に形成できると小型化の面で有利となることから、従来、そのような伝送線路として、ストリップ線路やマイクロストリップ線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路等が用いられてきた。
【0003】
これらのうちストリップ線路・マイクロストリップ線路・コプレーナ線路は誘電体基板と線路導体層とグランド(接地)導体層とで構成されており、線路導体層とグランド導体層の周囲の空間又は誘電体基板中を高周波信号の電磁波が伝搬するものである。これらの線路は30GHz帯域までの信号伝送に対しては良好に伝送できるが、30GHz以上では伝送損失が生じやすいという問題点がある。
これに対して導波管型の伝送線路は30GHz以上のミリ波帯域においても伝送損失が小さい点で有利である。
【0004】
このうち方形導波管は、断面が方形の金属壁で囲まれた空気中を電磁波が伝搬する構造となっており、誘電体による損失がないため30GHz以上のミリ波帯域においても伝送損失が非常に小さいものである。
しかし、線路断面の長手方向の長さを、伝搬する信号波長の2分の1以上とする必要があるため、寸法が大きく高密度での配線が困難であるという問題点がある。また、金属壁で構成されるため、高精度な加工が困難であり加工コストが高いという問題点もある。
【0005】
これに対し、導波管の優れた伝送特性を活かした、誘電体多層基板内に形成可能な伝送線路である誘電体導波管線路は、導体壁あるいは擬似的な導体壁で囲まれた領域の内部に誘電体が満たされた構造となっているため、誘電体による伝送損失があるものの、損失の小さい誘電体を用いれば伝送損失を実用上問題ない程度に小さくすることができる。方形導波管と同じ周波数範囲で信号を伝搬させようとすると、誘電体の比誘電率をεr としたときに線路の断面のサイズを1/√εr と小型にできるメリットがある。
【0006】
例えば、特開平6−53711 号公報において、誘電体基板を一対の主導体層で挟み、さらに主導体層間を接続する2列に配設された複数のビアホールによって側壁を形成した誘電体導波管線路が提案されている。この誘電体導波管線路は誘電体材料の四方を一対の主導体層とビアホールによる疑似的な導体壁で囲むことによって導体壁内の領域を信号伝送用の線路としたものである。このような構成によれば、構成がいたって簡単となって装置全体の小型化も図ることができる。
【0007】
さらに、特開平10−75108号公報において、誘電体基板中に形成した多層構造による誘電体導波管線路が提案されている。これは積層型導波管と呼ばれるものであり、前述のような誘電体導波管線路を、誘電体層と一対の主導体層と貫通導体群とで形成し、さらに貫通導体群に加えて副導体層を形成することにより、電気的な壁としての側壁を強化したものである。前述の誘電体導波管線路では導波管内に貫通導体に平行でない電界が存在すると側壁から電界の漏れが発生するおそれがあるが、この積層型導波管では副導体層があるためにこのような電界の漏れが発生しにくい、優れたものとなる。
【0008】
【特許文献1】特開平6−53711 号公報
【特許文献2】特開平10−75108号公報
【特許文献3】特開2000−196301号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、誘電体導波管線路を用いて構成された高周波回路について、例えば高周波特性を測定・評価するためにネットワークアナライザ等の測定装置へ接続するためには、誘電体導波管線路を直接接続することが困難であり、方形導波管を介すると容易に接続することができてより正確な測定が可能になる。
また、MMIC(マイクロ波モノリシック集積回路)等の能動回路に誘電体導波管線路を接続する場合にも、方形導波管を介することによって接続が容易となり、回路全体の小型化が可能となる。
【0010】
そのため、良好な伝送特性を有する、方形導波管と誘電体導波管線路との接続構造が求められていた。
これを解決する手法として特開2000−196301号において方形導波管と誘電体導波管線路との接続構造が提案されているが、その構造では、接続部における信号の方向変換のために反射損失が発生しやすく、このため広い帯域において十分な信号透過特性が得られなかった。
【0011】
また、前記構造では、方形導波管が接続される誘電体導波管構造の厚みがλb/(4・√εr) (ただし、λb:方形導波管の管内波長、εr:誘電体基板の比誘電率)と規定されており、このため設計自由度が小さく、特に基板の厚みをこれ以上薄くすることが難しくなる。
本発明の目的は、信号透過特性が広帯域にわたって優れた、誘電体導波管線路と導波管との接続構造を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、誘電体基板の厚みを薄くすることができ、接続構造の設計自由度を上げることのできる、誘電体導波管線路と導波管との接続構造、並びにその構造を用いたアンテナ装置及びフィルター装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造は、誘電体基板と、誘電体基板の両面に形成された一対の導体層と、高周波信号の伝送方向に信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔で、かつ前記伝送方向と直交する方向に所定の幅で、前記導体層間を電気的に接続して形成された2列の貫通導体群とを具備する誘電体導波管線路を設け、前記誘電体導波管線路の一端部に、前記一対の導体層と貫通導体群とにより共振器を形成し、共振器上の一方の導体層に結合用窓を設け、この結合用窓に、高周波信号の伝送方向が異なるように開口端面を対向させた導波管を接続していること特徴とするものである。
【0014】
この誘電体導波管線路は、前記一対の導体層及び前記貫通導体群で囲まれた伝送領域によって高周波信号を伝送するが、誘電体導波管線路の終端部に、共振器を形成することにより、一方の導体層に設けられた結合用窓を介して、導波管に高周波信号を受け渡しことができる。このような構造によって、広帯域にわたって結合効率に優れた、信頼性の高い、しかも簡単な構造の誘電体導波管線路と導波管との接続を実現することができる。
【0015】
前記共振器を、前記一対の導体層と貫通導体群とで囲まれる1つのキャビティで形成することにより、シンプルな構造の共振器を作成できるので、信頼性を一層高くすることができ、製造コストもより下げることができる。
前記誘電体基板の比誘電率をεrとすると、前記共振器構造の厚み(単位mm)は、300/(f・√εr)の1/5以上1/2以下(fは信号周波数、単位はGHz)とすることができる。このように、共振器構造の厚みを広範囲にわたって設定できるので、設計の自由度が向上する。従来よりも薄い誘電体基板を用いることもできる。
【0016】
また、前記共振器構造の長手方向の長さ(単位mm)が300/(f・√εr)の1.15倍以上2.85倍以下(fは信号周波数、単位はGHz)、かつ前記共振器構造の短手方向の長さ(単位mm)が300/(f・√εr)の0.6倍以上1.21倍以下(fは信号周波数、単位はGHz)の広い範囲で良好な透過特性を満足することができる。したがって、これにより設計の自由度が向上する。
またさらに、前記誘電体導波管線路に、高周波信号の伝送時の反射を低減する電磁界整合部を含むこととすれば、共振器および誘電体導波管で発生する電磁界の中間に相当する電磁界分布を発生させることができるために、接続部における反射をさらに低減でき、高周波伝送特性のさらなる向上を図ることができる。
【0017】
電磁界整合部の具体的な形状として、誘電体導波管線路の断面の高さが異なる構造、誘電体導波管線路の断面の幅が異なる構造、誘電体導波管線路の断面の幅をテーパ状に変えた構造、誘電体導波管線路とは異なる誘電率材料を含む構造、又は誘電体導波管線路内にピン導体を配置した構造があげられる。いずれかの構造又はこれらの2種以上を組み合わせた構造を設けることにより、接続部における反射を抑制し、他の回路や素子への悪影響を低減し、さらに高周波特性を向上できる。
【0018】
なお、前記誘電体基板は、低温焼成セラミックスとすることによって、銅や銀など低抵抗の金属を用いて各種導体層を形成することができるために、高周波信号の伝送に対して低損失にでき、好適である。
前記導波管はどのような構造の導波管であっても、本発明は適用できるが、例えば方形導波管であってもよい。
前記誘電体導波管線路と導波管との高周波信号の伝送方向は、任意の角度で交差させることができるが、この角度は例えばほぼ90°としてもよい。
【0019】
また本発明のアンテナ装置は、アンテナ基板に、前記誘電体導波管線路を設け、誘電体導波管線路の上下に形成された一対の導体層のうち、一方の導体層に結合用窓を設け、この結合用窓に、誘電体層を介して、高周波信号の伝送方向が異なるように開口端面を対向させた給電用導波管を接続しているものである。
また、本発明のフィルター装置は、フィルター基板に、前記誘電体導波管線路を設け、誘電体導波管線路の上下に形成された一対の導体層のうち、一方の導体層に結合用窓を設け、この結合用窓に、誘電体層を介して、高周波信号の伝送方向が異なるように開口端面を対向させた給電用導波管を接続しているものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に用いる誘電体導波管線路の構造例を説明するための概略斜視図である。
図1において、1は高周波信号の伝送方向Aに延びる所定の厚みaを有する誘電体基板である。2及び3は、誘電体基板1の上下面に形成された一対の導体層であり、4は誘電体基板1の中に形成され、高周波信号の伝送方向Aに沿って配列された2列の貫通導体群である。
【0021】
貫通導体群4は、一対の導体層2,3間を電気的に接続するものであり、1本1本の貫通導体は、スルーホール導体やビアホール導体等により形成される。これら多数の貫通導体により2列の貫通導体群4を形成している。貫通導体群4は、図示するように、高周波信号の伝送方向Aすなわち線路形成方向に信号波長の2分の1未満の所定の繰り返し間隔cで、かつ同伝送方向Aと直交する方向に所定の一定の間隔(幅)bをもって形成されている。これにより、この誘電体導波管線路6に対する電気的な側壁を形成している。
【0022】
これら、一対の導体層2,3、及び貫通導体群4によって、誘電体基板1の一部に高さa、幅bを有する誘電体導波管線路6が形成される。
また、5は貫通導体群4の各列を形成する貫通導体同士を電気的に接続するため、誘電体基板1の中に導体層2,3と平行に形成された補助導体層であり、必要に応じて適宜設けられる。なお、補助導体層5を設ける場合は、例えば誘電体基板1をそれぞれ半分の厚さの2枚の誘電体基板で構成し、それらの誘電体基板の間に、かつ誘電体導波管線路6の非形成部分に金属層を形成して両者を貼り合わせることにより、補助導体層5を形成することができる。
【0023】
このように誘電体導波管線路6を、一対の導体層2,3と貫通導体群4と(補助導体層5があればそれも含めて)で囲まれた領域において形成することにより、誘電体導波管線路6の内部から見ると、その上下壁は一対の導体層2,3によって囲まれ、その側壁は貫通導体群4によって囲まれる。この構造により、様々な方向の電磁波が遮蔽される。さらに補助導体層5を形成していれば、その側壁は補助導体層5によってさらに細かな格子状に区切られて、電磁波の遮蔽効果は増大する。
【0024】
なお、前記導体層2,3は、図1に示したように誘電体基板1の上下全面にわたって形成されているが、必ずしも誘電体基板1の上下全面にわたって形成されている必要はなく、少なくとも誘電体導波管線路6の形成部を挟む上下面に形成されていればよい。また、この誘電体導波管線路6は、多層誘電体基板の中に部分的に設けられていてもよい。
なお、図示していないが、誘電体導波管線路6の終端面には、側壁と同様の貫通導体群4が終端面を取り囲むように同じピッチcで配列されている。これによって、誘電体導波管線路6の終端面が電気的に閉じられた構造を作ることができる。
【0025】
誘電体基板1の厚みa、すなわち一対の導体層2,3間の間隔に対する制限は特にないが、厚みaは、誘電体導波管線路6をシングルモードで用いる場合には間隔bに対して2分の1程度または2倍程度とすることがよい。図1の例では間隔bに対して厚みaが2分の1程度となっており、誘電体導波管線路6のH面に当たる部分が導体層2,3で、E面に当たる部分が貫通導体群4及び補助導体層5でそれぞれ形成される。また、間隔bに対して厚みaを2倍程度とすれば、誘電体導波管線路6のE面に当たる部分が導体層2,3で、H面に当たる部分が貫通導体群4及び補助導体層5でそれぞれ形成されることになる。
【0026】
また、貫通導体群4の各列における貫通導体の間隔cは、信号波長の2分の1未満の間隔に設定されることで貫通導体群4により電気的な壁が形成できる。この間隔cは、望ましくは信号波長の4分の1未満であればよい。
間隔cが信号波長λの2分の1(λ/2)よりも大きいと、平行に配置された一対の導体層2,3間にはTEM波が伝搬できるため、この誘電体導波管線路6に電磁波を給電しても電磁波は貫通導体群4の間から漏れて、ここで作られる誘電体導波管線路に沿って伝搬してしまう。貫通導体群4の間隔cがλ/2よりも小さければ、電気的な側壁を形成することができ、電磁波は誘電体導波管線路6に対して垂直方向に漏洩することがなく、反射しながら誘電体導波管線路6の信号伝送方向に伝搬される。
【0027】
その結果、図1のような構成によれば、一対の導体層2,3と2列の貫通導体群4及び補助導体層5とによって囲まれる断面積a×bのサイズの誘電体領域が誘電体導波管線路6を規定する。
なお、図1に示した態様では貫通導体群4は2列に形成したが、この貫通導体群4を4列あるいは6列に配設して、貫通導体群4による導体壁を2重・3重に形成することにより導体壁からの電磁波の漏れをより効果的に防止することもできる。
【0028】
このような誘電体導波管線路6は、誘電体による伝送線路となるので、誘電体基板1の比誘電率をεr とすると、その導波管サイズは通常の導波管の1/√εrの大きさになる。従って、誘電体基板1を構成する材料の比誘電率εr を大きいものとするほど、導波管サイズを小さくすることができて、高周波回路の小型化を図ることができる。したがって、高密度に配線が形成される多層配線基板、半導体素子収納用パッケージ又は車間レーダの伝送線路としても好適に利用できる。
【0029】
なお、貫通導体群4を構成する貫通導体は、前述のように信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔cで配設されており、この間隔cは良好な伝送特性を実現するためには一定の繰り返し間隔とすることが望ましいが、信号波長の2分の1未満の間隔であれば、適宜変化させたりいくつかの値を組み合わせたりしてもよい。
このような誘電体導波管線路6を構成する誘電体基板1の材質は、誘電体として機能し高周波信号の伝送を妨げることのない特性を有するものであればとりわけ限定されるものではないが、伝送線路を形成する際の精度及び製造の容易性の点からは、誘電体基板1はセラミックスから成ることが望ましい。
【0030】
このようなセラミックスとしては、これまで様々な比誘電率を持つセラミックスが知られているが、本発明に係る誘電体導波管線路によって高周波信号を伝送するためには、常誘電体であることが望ましい。これは、一般に強誘電体セラミックスは高周波領域では誘電損失が大きく、したがって導波管線路の伝送損失が大きくなるためである。
誘電体基板1を構成する常誘電体の比誘電率εr は4〜100 程度が適当である。
【0031】
一般に多層配線基板や半導体素子収納用パッケージ、あるいは車間レーダに形成される配線層の線幅は最大でも1mm程度である。このことから、誘電体導波管線路6の幅bを1mmとし、比誘電率εrが100 の常誘電体を用い、上部がH面、すなわち磁界が上側の面に平行に巻く電磁界分布になるように用いた場合は、使用することのできる最小の周波数は15GHzと算出される。したがって、マイクロ波帯の領域で十分利用可能となる。
【0032】
一方、誘電体基板として一般的に用いられる樹脂からなる誘電体は、比誘電率εr が2程度であるため、線幅が1mmの場合は約100 GHz以上でないと利用することができないものとなる。
また、全ての常誘電体セラミックスが利用可能であるわけではない。誘電体導波管線路の場合は導体による損失はほとんどなく、信号伝送時の損失のほとんどは誘電体による損失で決まる。その誘電体による損失α(dB/m)は次のように表わされる。
【0033】
α=27.3×tanδ/〔λ/{1−(λ/λc )1/2 〕 (1)
式(1)中、tanδは誘電体の誘電正接、λは誘電体内の波長、λcは遮断波長である。規格化された矩形導波管(WRJシリーズ)形状に準ずると、上式中の{1−(λ/λc )1/2 は0.75程度である。
従って、実用に供し得る伝送損失である−100 dB/m又はそれ以下を実現するには、次の関係が成立するように誘電体を選択することが必要である。
【0034】
f×√εr ×tanδ≦0.8 (2)
式(2)中、fは使用する高周波信号の周波数(GHz)である。
例えば、使用する高周波信号の周波数を10〜100GHzとした場合、前記の不等式を満たす常誘電体材料としては、アルミナセラミックスや窒化アルミニウムセラミックス、ガラスセラミックスなどの低温焼成セラミックス(後述)から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0035】
これらの常誘電体材料により誘電体基板1を形成するには、例えば常誘電体材料のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤・溶媒を添加混合して泥漿状になすとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用してシート状となすことによって複数枚のセラミックグリーンシートを得る。しかる後、これらセラミックグリーンシートの各々に適当な打ち抜き加工を施すとともにこれらを積層し、アルミナセラミックスの場合は1300〜1700℃、低温焼成セラミックスの場合は850 〜1050℃、窒化アルミニウムセラミックスの場合は1500〜1900℃の温度で焼成することによって、誘電体基板1を製作する。
【0036】
また、一対の導体層2,3は、例えば誘電体基板1がアルミナセラミックスから成る場合には、タングステン等の金属粉末に適当なアルミナ、シリカ、マグネシア等の酸化物や有機溶剤・溶媒等を添加混合してペースト状にしたものを用いて厚膜印刷法により、少なくとも伝送線路部分を完全に覆うようにセラミックグリーンシート上に印刷する。しかる後、グリーンシートとともに約1600℃の高温で焼成して形成する。なお、金属粉末としては、低温焼成セラミックスの場合は銅、金、銀が、窒化アルミニウムセラミックスの場合はタングステン、モリブデンが好適である。また、導体層2,3の厚みは5〜50μm程度とする。
【0037】
また、貫通導体群4を構成する貫通導体は、例えばビアホール導体やスルーホール導体等により形成すればよい。その断面形状は製作が容易な円形の他、矩形や菱形等の多角形であってもよい。これら貫通導体は、例えばセラミックグリーンシートに打ち抜き加工を施して作製した貫通孔に導体層2,3と同様の金属ペーストを埋め込み、しかる後、誘電体基板1と同時に焼成して形成する。なお、貫通導体の直径は50〜300 μmが適当である。
【0038】
特に誘電体基板1は、低温焼成セラミックスを用いて作製されることが望ましい。低温焼成セラミックスは、焼成温度が低いため、導電率の高い銅、あるいは銀を導体に用いることができる。このため導体損を低減できる利点があり、接続部のメッキが不要なためコストを低減できる。また低温焼成セラミックスは、一般的な有機基板に比べて誘電率を高く調整できるため、構造をコンパクトにできるメリットもある。さらに、信頼性の観点から有機基板と異なり耐水蒸気性が高いため高信頼性が得られる。
【0039】
低温焼成セラミックスとしては、SiOを必須成分とし、Al、アルカリ土類酸化物(BaO,CaO,SrO,MgOなど)、アルカリ金属酸化物(LiO,NaO,KOなど)、Fe,B,CuOの群から選ばれる少なくとも一種を組み合わせた酸化物混合系、また、酸化物の混合物を溶融後、急冷して作成されたガラス系、又はこのガラスに、石英(SiO)、Al、アルカリ土類酸化物(BaO,CaO,SrO,MgOなど)、アルカリ金属酸化物(LiO,NaO,KOなど)、Fe,B,CuOなどの単独酸化物、又は2種以上の複合酸化物、AlN、窒化珪素、炭化珪素の群から選ばれる少なくとも1種のセラミックフィラーを添加混合した、いわゆるガラスセラミックスなどがあげられる。なお、前記ガラスとしては、焼成後も非晶質のままである非晶質ガラス、または焼成後に結晶化する結晶化ガラスのいずれでもよい。
【0040】
次に、このような誘電体導波管線路を用いた、本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造の形態例を図2及び図3に示す。
図2では、誘電体導波管線路6の終端部において、一対の導体層2,3の幅を広げ、それら一対の導体層2,3の周囲を貫通導体群4によって電気的に終端させてなる誘電体共振器11を設けている。さらに、誘電体共振器11の上側導体層2に、高周波信号の結合用の開口として結合用窓7を設けている。上側導体層2の、結合用窓7を含む部分の上に、高周波信号の伝送方向が直交するように、内部が中空の金属壁で構成された方形導波管8の開口端面9を当接させている。また図3(a)は、同接続構造を示すW−W線側断面図である。
【0041】
なお、表示を簡単にするために誘電体導波管線路6は、上下一対の導体層2,3及び貫通導体群4から構成される輪郭で表示し、この輪郭外部に存在する誘電体基板1の図示は省略している。なお誘電体導波管線路6の終端面も、前述したように貫通導体群4が配置されているが、これも輪郭で表示している。また方向を説明するためにxyz座標を付した。
この構造では、誘電体導波管線路6において導体層2,3がH面となり、貫通導体群4による疑似的な導体壁がE面となる。
【0042】
また、図2に示される番号8は内部が中空の金属壁で構成された方形導波管であり、その開口端面9が、高周波信号の伝送方向が直交するように誘電体共振器11の導体層2に隙間なく密着するように当接させて配置されている。
方形導波管8より電磁波が入射した時を考える。シングルモードの場合、図3(b)に示すように、方形導波管8内では、電界は断面の短手方向に平行なベクトルV1が発生しているが、それが結合用窓7を介し誘電体導波管線路6内に入射した後は、誘電体導波管線路6の短手方向に平行なベクトルV2に方向変換される。この際、誘電体共振器11で共振が作用し、電界方向が変わることによって乱れた位相が共振器11内で調整され、そろった位相で誘電体導波管線路6へ伝送することができる。このため、方向変換時の反射が減り、信号透過特性が向上する。
【0043】
図4は、誘電体共振器11を示す平面図である。誘電体共振器11は、同図に示すように、誘電体導波管線路6の終端部近くで、一定の長さdにわたって貫通導体群4の幅bをb′(b′>b)に広げて配置し、終端を閉じることによって形成される。この誘電体共振器11の厚みa、長辺の幅b′、短辺の幅dとし、結合用窓7の長辺の長さをe、短辺の長さをgとしている。この誘電体共振器11の共振特性は、厚みa、幅b′及び幅dを調整することによって制御できる。
【0044】
自由空間の信号波長λは、
λ=c/f(f:信号周波数GHz,c:光の速度)
で計算される。これに1/√εrをかけて誘電体内の波長に換算した波長λは、
λ=c/(f・√εr)
となり、波長の単位をmm、周波数fの単位をGHzとすると、c=3×10m/sなので、
λ=300/(f・√εr)
で表わされる。
【0045】
誘電体共振器11の厚みaは、この誘電体内の波長λの1/5以上1/2以下であることが好ましい。
この理由は、次のとおりである。誘電体共振器11ではY方向の電界は、図3(b)に示すように、導体層3で0となり結合用窓7で最大に近くなるという共振モードが発生する。そのため誘電体共振器11の厚みaは、一般にはλ/4以上であることが求められる。しかし、実際にはY方向の電界最大部は結合用窓7の位置よりもZ方向に沿って上にシフトする。そのため誘電体共振器11の厚みaはλ/4よりも、一定量薄くても問題はない。厚みaはλ/5以上であればよい。また、厚みaがλ/2よりも厚いと誘電体導波管線路6に接続する際に、誘電体導波管線路6にTE10以外のモードを励起し伝送効率が低下するため、厚みaはλ/2以下であることが好ましい。
【0046】
また誘電体共振器11内において、効率よく共振を発生させ電界の方向と位相をそろえるには、誘電体共振器11の長手方向の長さb′が1.15λ以上2.85λ以下、短手方向の長さdが0.6λ以上1.21λ以下であることが好ましい。
以上のように、この接続構造では、誘電体導波管線路6の厚みa、長さb′、長さdのとりうる範囲が広いので、接続構造の寸法設計の自由度が増えるという利点がある。
【0047】
結合用窓7の位置、形状及び大きさについては、接続構造に要求される周波数特性、結合量及び反射量が複雑に関与する。このため、要求される周波数特性を満足するように電磁界解析により繰り返し計算することによって、所望の接続特性を有する結合用窓7の位置、形状及び大きさ等が決定されることとなる。
なお、以上では誘電体共振器11として、1つのキャビティを有するタイプを示したが、これ以外に複数のキャビティを有するタイプを採用してもよい。ただし、接続構造を簡便、小形化するためには、1つのキャビティで共振器を構成することが最も好ましい。
【0048】
さらに、本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造の他の形態例をいくつか説明する。
本発明の誘電体導波管線路6と方形導波管8との接続構造においては、接続構造で発生した反射が、誘電体導波管線路6の先に接続される回路部分、あるいは方形導波管8の先に接続される回路部分に悪い影響を与える可能性がある。そこで、以下の例では、本接続構造では、誘電体導波管線路6に電磁界整合部を備えている。
【0049】
図5は、誘電体導波管線路6と方形導波管8との他の接続構造を示す斜視図であり、図2と同様の箇所には同じ符号を付してある。
この実施形態によれば、共振器11の後段側に電磁界整合部20が設けられている。誘電体導波管線路6の高さを誘電体導波管線路6の高さから変更した部分(この例では、高さを低くしている。)が、電磁界整合部20に相当する。この電磁界整合部20は、誘電体共振器11からの電磁界モードを、誘電体導波管線路6で伝送する電磁界モードにあわせることにより、誘電体導波管線路と方形導波管との接続部における反射を低減するために機能する部分である。
【0050】
誘電体導波管線路6の高さの変更は、例えば図1に示した誘電体基板1として、2枚の誘電体基板を用意し、電磁界整合部20以外の部分は2枚の誘電体基板を重ね合わせて構成し、電磁界整合部20の形成部分のみ1枚の誘電体基板で構成することにより、実現することができる。電磁界整合部20の高さは、用いる誘電体基板の厚さを選定することにより、任意に設定することができる。
電磁界整合部の例として、図5に示すような誘電体導波管線路6の高さを変えた構造の他に、図6に示すような誘電体導波管線路6の幅を変えた電磁界整合部26の構造を採用してもよい。図6の例では、電磁界整合部26の幅を、誘電体共振器11の幅よりも狭く、かつ誘電体導波管線路6の幅よりも大きくしている。幅の変更は、貫通導体4のスルーホールやビアホールの形成位置を変更することにより、簡単に実現できる。
【0051】
また、図7のように誘電体導波管線路6の一部分に、幅がテーパ状に変化する電磁界整合部27を形成してもよい。このテーパは、貫通導体4のスルーホールやビアホールの形成位置を斜め線上に設定することにより、簡単に実現できる。また、図8のように誘電体導波管線路6の一部分22を、誘電体導波管線路6で用いている誘電体とは異なる誘電率をもつ材質で構成してもよい。この構造は、例えば、誘電体基板の電磁界整合部分を除去し、代わりに異なる誘電率の誘電体を接合したり、誘電体基板を形成するセラミックスグリーンシートの電磁界整合部分に所定の孔を設け、その中に異種誘電体ペーストを埋め込み、積層し、同時焼成することによって製造することができる。
【0052】
また、図9のようにピン導体15を誘電体導波管線路6の中に配置した構造の電磁界整合部23を採用しても、電磁界整合効果が得られる。なお、図9でピン導体15の高さは誘電体導波管線路6と同じ高さであってもよいが、必ずしも同じ高さである必要は無く、たとえば誘電体導波管線路6の高さの半分でもよい。半分の高さのピン導体を形成するには、例えば図1に示した誘電体基板1として、2枚の誘電体基板を用意し、そのうち1枚の誘電体基板のみに対してスルーホールやビアホールを形成し、その中に金属ペーストで埋めて、その上から2枚目の誘電体基板を重ね合わせることにより実現することができる。
【0053】
さらに、以上の異なる構造の複数の電磁界整合部を組み合わせた構造も効果があり、例えば図10に示すように、誘電体導波管線路の高さを変えて構成される電磁界整合部20と、ピン導体15をもって構成される電磁界整合部23とを両方有する構造なども、反射防止と高周波特性向上に効果がみられる。
図9、図10に示した誘電体導波管線路6に設けたピン導体15は、信号が誘電体導波管線路6から伝搬してきた場合、方形導波管8との接続構造で発生した反射波を打ち消す働きを担っている。つまり、方形導波管8との接続構造で反射された波と180度位相の異なる反射波をピン導体15で発生させ、反射波を抑える構造となっている。そのため基本的には、ピン導体15は、結合用窓7の中心から1波長内に設ければ機能する。ただし、その箇所から波長の整数倍離れた箇所に設置しても同様の働きが期待でき、必ずしも設置場所を一波長内に特定する必要はない。
【0054】
以上の電磁界整合部20,21,22,23,26,27は、放射を伴わない受動素子として機能するため、上記に示した反射低減効果は、電磁波が誘電体導波管線路6から方形導波管8に伝搬するときのみならず、電磁波が方形導波管8から誘電体導波管線路6に伝搬するときも成立する。
次に、本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造の応用例を説明する。
図11は、アンテナ基板1aと、方形導波管からなる給電線とを具備したアンテナ装置に関するもので、誘電体導波管線路6をアンテナ基板1a内に内蔵し、方形導波管8からアンテナへの給電を行う場合の、誘電体導波管線路6と方形導波管8の接続構造を示す透視斜視図である。この接続構造により信頼性が高く反射損失の少ないアンテナ装置を作成できる。なお、この図11では誘電体導波管線路6の片側の導体層に切り欠き24aを設けたスロットアンテナ24を示したが、スロットあるいはビア導体を介して給電するパッチアンテナを用いても問題は無く、アンテナ形態には依存しない。
【0055】
また、図12は、フィルター基板1bと方形導波管8とを具備したフィルター装置に関するもので、フィルター基板1bに本発明の誘電体導波管線路6と方形導波管8の接続構造を適用した例を示す透視斜視図である。この構成においても、本発明の誘電体導波管線路6と方形導波管8の接続構造により、高信頼性が得られフィルター反射損失を低減できる。フィルター基板1bに形成されるフィルター25の形態は、図12に示した誘電体を用いるものには限らず、ストリップラインなどを用いたフィルターでもよい。
【0056】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更・改良を施すことは何ら差し支えない。
【0057】
【実施例】
図2に示した構成の誘電体導波管線路と導波管との接続構造を作製し、以下のように電磁界シミュレーションを行い、本発明品の高周波特性を評価した。
高周波信号の伝送方向に垂直な断面の寸法が2.54×1.27mmである方形導波管WR−10を、誘電体基板に設けた本発明の接続部につなげる構造とした。誘電体基板1には比誘電率εr が4.9 の銅導体同時焼成ガラスセラミックスを用い、貫通導体はφ0.2mmのビアで形成した。
【0058】
接続部の結合用窓7の大きさe、gはそれぞれ1.54mm×1.00mm、誘電体共振器と誘電体導波管線路の高さaは0.5mmとし、高さ0.25mmの箇所に補助導体層5を設けた。誘電体共振器の大きさb′、dはそれぞれ2.74mm、1.5mm(貫通導体の中心間距離)であり、誘電体導波管線路の幅bは1.5mm(貫通導体の中心間距離)、貫通導体にはφ0.2mmのものを用いた。
このような誘電体導波管線路6の結合用窓7を覆うように、方形導波管8の開口端面9を導体層2に当接させた。
【0059】
[例1]
この接続構造について、方形導波管8から誘電体導波管線路6へ高周波信号を伝送したときの高周波信号の伝送特性を図13に示す。
図13はSパラメータの周波数特性を示す線図であり、横軸は周波数(GHz)を、縦軸はSパラメータの値(dB)を表わしている。図中の特性曲線は、Sパラメータのうち反射係数(S11)及び透過係数(S21)の周波数特性を示している。破線が反射係数(S11)、実線が透過係数(S21)である。
【0060】
これからわかるように反射係数(S11)において73GHzと76GHzに二つの極小値があり、反射係数(S11)が−15dB以下となる帯域が約10GHzと、広帯域での信号透過がみられる。76.5GHzにおける方形導波管の管内波長λbは6.17mmであリ、その1/4√εr倍は0.7mmである。誘電体導波管線路の高さaは0.5mmであるので、0.7mmよりもさらに高さを低くできていることがわかる。
[例2]
さらに誘電体共振器寸法の影響を見るために、共振器寸法を変化させたシミュレーションを行った。
【0061】
【表1】
Figure 2005012699
【0062】
表1に共振器寸法と76.5GHzにおけるS21の結果を示す。表1では、共振器寸法b′、dをmm単位で表わすとともに、誘電体内の波長λで割って規格化した値を示した。波長λは
λ=300/(f・√εr)
で表わされ、信号の周波数fは76.5(GHz)、εr =4.9であるので、λ=1.77mmとなる。
【0063】
この表1に示すように、サンプル1が、透過係数(S21)が−0.01dBと0dBに近く、最適な例である。
透過係数(S21)が−2dB以上であることを許容範囲として、シミュレーション結果の検討を行った。
サンプル2,3,4は、共振器短辺の寸法d/λをサンプル1と同じ値にして、共振器短辺の寸法b′/λを1.30まで変化させている。サンプル3と4を比べると、透過係数(S21)が−1.91dBから −4.17dBに大きく落ちているので、長辺の寸法b′は1.21λ以下であることが好ましいことが分かる。
【0064】
サンプル5,6,7,8は、共振器長辺の寸法b′/λを一定にして、共振器短辺の寸法d/λを2.11から2.90まで変化させている。サンプル7と8を比べると、透過係数(S21)が−1.99dBから−2.14dBに落ちているので、短辺の寸法dは2.85λ以下であることが好ましいことが分かる。
サンプル9と10は、共振器短辺の寸法d/λを一定にして、共振器長辺の寸法b′/λを0.60から0.56まで変化させている。サンプル9と10を比べると、透過係数(S21)が−0.89dBから−6.66dBと大きく落ちているので、長辺の寸法b′は0.6λ以上であることが好ましいことがわかる。
【0065】
またサンプル11と12は、共振器長辺の寸法b′/λを一定にして、共振器短辺の寸法d/λを1.15から1.10まで変化させている。サンプル11と12とを比べると、透過係数(S21)が−1.91dBから−2.18dBと落ちているので、短辺の寸法dは1.15λ以上であることが好ましいとわかる。
以上の結果より、透過係数(S21)が−2dB以上であるためには、長辺の寸法b′は0.6λ以上、1.21λ以下であることが好ましく、短辺の寸法dは1.15λ以上、2.85λ以下であることが好ましい。したがって、*の付いたサンプルは本発明の請求項4の範囲外となる。
【0066】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、誘電体導波管線路の端部に、誘電体導波管線路の貫通導体とそれを挟む一対の導体層を用いて共振器を形成し、その導体層に設けた結合用窓に、誘電体層を介して高周波信号の伝送方向が異なるように開口端面を対向させた導波管を接続することにより、電界の方向変換および位相調整が共振器で行えるので、反射を低減でき、信号透過特性の優れた誘電体導波管線路と方形導波管との接続構造を得ることができる。
【0067】
また、前記共振器構造をひとつのキャビティからなる構造とすることにより、高周波特性を維持しかつコンパクトで構成の簡単な接続構造が得られる。
前記共振器構造の厚みを、300/(f・√εr)の1/5以上1/2以下とすることができるので、設計自由度が高くなり、誘電体基板及び共振器の厚みを従来より薄くすることもできる。
また前記共振器構造の長手方向の長さが300/(f・√εr)の1.15倍以上2.85倍以下であり、かつ前記共振器構造の短手方向の長さが300/(f・√εr)の0.6倍以上1.2倍以下とすることができるので、設計自由度が高くなる。
【0068】
また、前記誘電体導波管線路に、高周波信号の伝送時の反射を低減するための電磁界整合部を形成することにより、信号伝送損失が低減可能となり、高周波伝送特性がさらに向上した接続構造を実現することができる。
また誘電体基板に低温焼成セラミックスを用いることにより、導電率の高い銀や銅導体層を用いることができるため電気特性の向上が図れる。
また、本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造をアンテナ装置及びフィルター装置に用いることにより、信頼性が高く、かつ製造コストの低いアンテナ装置及びフィルター装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる誘電体導波管線路の内部構造を説明するための概略斜視図である。
【図2】本発明の、誘電体共振器が形成された誘電体導波管線路と導波管との接続構造の一例を示す透視斜視図である。
【図3】同接続構造を示すW−W線側断面図(a)及び電界ベクトルを示す図(b)である。
【図4】誘電体導波管線路に形成される誘電体共振器を示す平面図である。
【図5】誘電体導波管線路の断面の高さを変えた電磁界整合部が形成された、誘電体導波管線路と、導波管との接続構造を示す斜視図である。
【図6】誘電体導波管線路の断面の幅を変えた電磁界整合部が形成された、誘電体導波管線路と導波管との接続構造を示す斜視図である。
【図7】誘電体導波管線路の断面の幅をテーパ状に変えた電磁界整合部が形成された、誘電体導波管線路と導波管との接続構造を示す斜視図である。
【図8】誘電体導波管線路の誘電体材料を変えた電磁界整合部が形成された、誘電体導波管線路と導波管との接続構造を示す斜視図である。
【図9】誘電体導波管線路内にピン導体を配置した電磁界整合部が形成された、誘電体導波管線路と導波管との接続構造を示す斜視図である。
【図10】誘電体導波管線路の断面の高さを変えた電磁界整合部と、誘電体導波管線路内にピン導体を配置した電磁界整合部とが形成された、誘電体導波管線路と導波管との接続構造を示す斜視図である。
【図11】本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造を内蔵するアンテナ装置の例を示す斜視図である。
【図12】本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造を内蔵するフィルター装置の例を示す斜視図である。
【図13】本発明の誘電体導波管線路と導波管との接続構造におけるSパラメータの周波数特性を示す線図である。
【符号の説明】
1 誘電体基板
1a アンテナ基板
1b フィルター基板
2、3 導体層
4 貫通導体群
5 補助導体層
6 誘電体導波管線路
7 結合用窓
8 方形導波管
9 開口端面
11 誘電体共振器
15 ピン導体
20〜23 電磁界整合部
24 スロットアンテナ
25 フィルター
26,27 電磁界整合部

Claims (11)

  1. 誘電体導波管線路と導波管とを接続する構造において、
    前記誘電体導波管線路は、誘電体基板と、誘電体基板の両面に形成された一対の導体層と、高周波信号の伝送方向に信号波長の2分の1未満の繰り返し間隔で、かつ前記伝送方向と直交する方向に所定の幅で、前記導体層間を電気的に接続して形成された2列の貫通導体群とを具備してなリ、
    前記誘電体導波管線路の一端部に、前記一対の導体層と貫通導体群とにより共振器を形成し、
    共振器上の、一方の導体層に結合用窓を設け、
    この結合用窓に、高周波信号の伝送方向が異なるように開口端面を対向させた導波管を接続していること特徴とする誘電体導波管線路と導波管との接続構造。
  2. 前記共振器は、前記一対の導体層と貫通導体群とで囲まれる1つのキャビティにより形成されることを特徴とする請求項1記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造。
  3. 前記誘電体基板の比誘電率がεrであり、前記共振器構造の厚み(単位mm)が、300/(f・√εr)の1/5以上1/2以下(fは信号周波数、単位はGHz)であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の誘電体導波管線路と方形導波管との接続構造。
  4. 前記誘電体基板の比誘電率がεrであり、前記共振器構造の長手方向の長さ(単位mm)が300/(f・√εr)の1.15倍以上2.85倍以下(fは信号周波数、単位はGHz)であり、かつ前記共振器構造の短手方向の長さ(単位mm)が300/(f・√εr)の0.6倍以上1.21倍以下(fは信号周波数、単位はGHz)であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の誘電体導波管線路と方形導波管との接続構造。
  5. 前記誘電体導波管線路に、高周波信号の伝送時の反射を低減する電磁界整合部を形成していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造。
  6. 前記電磁界整合部が、次の(a)から(e)までのいずれかの構造、又はこれらの構造の2種以上の組合せで形成されていることを特徴とする請求項5記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造。
    (a)誘電体導波管線路の断面の高さが異なる構造、
    (b)誘電体導波管線路の断面の幅が異なる構造、
    (c)誘電体導波管線路の断面の幅をテーパ状に変えた構造
    (d)誘電体導波管線路とは異なる誘電率材料を含む構造、
    (e)誘電体導波管線路内にピン導体を配置した構造。
  7. 前記誘電体基板が、低温焼成セラミックスからなることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造。
  8. 前記導波管が方形導波管であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造。
  9. 前記誘電体導波管線路と前記導波管との高周波信号の伝送方向が、ほぼ直交していることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造を有するアンテナ装置。
  11. 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の誘電体導波管線路と導波管との接続構造を有するフィルター装置。
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