JP2005012407A - 画像投射装置および画像処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】演算処理系で処理するアドレスの量を減らした場合においても、高精度な合わせ込み調整が可能な画像投射装置および画像処理方法を提供する。
【解決手段】表示画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求め、この代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成するCPU2aと、代表点アドレスである基底アドレスと相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る補間アドレス生成部2bと、補間アドレスに画素データを生成するデータ補間部2cとを有する。
【選択図】 図5
【解決手段】表示画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求め、この代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成するCPU2aと、代表点アドレスである基底アドレスと相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る補間アドレス生成部2bと、補間アドレスに画素データを生成するデータ補間部2cとを有する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示装置に画像を表示し、その表示画像を投射面に光を利用して投射する画像投射装置、および表示画像を生成する際の画像処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆるプロジェクターと称される画像投射装置は画像表示装置、たとえば液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)を有している。画像投射装置(プロジェクター)は、画像表示装置に画像を表示させ、その表示画像を外部の投射面、たとえばスクリーンの面に投射する。
【0003】
このとき、スクリーンに対するプロジェクターからの画像の投射角度が斜めであると、本来、矩形状であるはずの画像がスクリーン上で台形状に歪む。このため、スクリーン上の画像の台形歪みを補正するいわゆるキーストン補正機能を備えた液晶プロジェクターが知られている。
【0004】
鉛直または水平のキーストン歪み補正では、スクリーン上の投影画像と逆方向に意図的に歪ませた画像を液晶パネル上で生成する。正矩形の入力画像を意図的に歪ませる画像変換は、通常、プロジェクターが有する画素数変換機能を利用して行う。たとえば、鉛直のキーストン歪み補正では、元画像の1フレーム内の単数または複数の水平ラインデータに対して、補間処理や間引き処理をディジタル的に施すことにより台形歪みの逆変換を実行する。
【0005】
この画像変換を、座標変換式を用いて行う方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
この方法では、液晶パネル上の整数座標に対応する実数座標を座標変換式によって算出し、実数座標の周囲にある画素データをフレームメモリから読み出して、補間演算により整数座標に書き込む画素データの値を求めることによって、台形歪みが補正された画像を液晶パネル上に形成する。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−29714号公報(第3−第4頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この特許文献1に開示された方法では、鉛直方向の歪み補正と、水平方向の歪み補正を同時に行うことができない。また、特許文献1には、鉛直方向の変換式は示されているが、水平方向の変換式が開示されていない。水平方向の変換は、一般的に、複数ラインの画素データの変換であるため、より複雑な式となると考えられる。このため、特許文献1に記載されたキーストン歪み補正方法が適用されたプロジェクターでは使い勝手が悪くなり、製品としての魅力に乏しい上、トータルの処理時間が長くなり処理効率が悪いという課題がある。
【0008】
また、プロジェクターを斜め方向から投射した場合に必要となる画像処理では、毎補間画素においてキーストン補正のための補間アドレスを算出すれば実用上問題ないレベルで画像を投影することができる。
しかしながら、図21(A)〜(C)に示すように、一枚の画像を分割し、複数のプロジェクターPGの画像をシームレスにつなぎあわせて表示することで任意のサイズのスクリーンSCRNを実現する「マルチ画面投射」や、複数のプロジェクターPGの画像をスクリーンSCRN上に重ねてダイナミックレンジを改善する「スタック投射」のような特殊な投影スタイルを実現しようとした場合、画像の位置を高精度に合わせ込む必要がある。
画像が少しでもずれると、つなぎ目が非連続になる、あるいは重なった画像ににじみを生じるという現象が起きてしまう。
【0009】
また、画像の任意の位置を調整するためには、キーストン補正を行うために算出した補間アドレスを所望の位置にずらせばよい。全ての補間アドレスをずらすような処理では規模が大きくなりすぎるため、一定間隔ごとに算出された補間アドレスをずらし、その間の画素については周辺の保持している補間アドレスから算出して用いることで現実的な規模にできる。
このとき、算出する補間アドレスの間隔が狭いほど高精度に調整が可能となるが、その一方で保存しておくアドレスの量が増えるのでCPUが処理するデータ量が多くなるという不利益がある。CPUで処理するデータ量は、プロジェクターを設置してから画像が映るまでの処理時間や設置設定を変化させたときの応答速度に大きくかかわるため、実際には補間精度の高い補間方法であるスプラインなどの高次数の関数を用いて算出する補間アドレスの間隔を広くする、あるいは、例えばCPUでキーストン補正用のパラメータだけ計算し、ハードウェアで一定間隔ごとに補間アドレスを計算といったハードウェアによる高速化が行われており、狭い間隔で補間アドレスをずらすことができないため高精度な合わせ込みが困難になっている。
【0010】
本発明の目的は、鉛直方向と水平方向に歪んだ画像の補正が可能であり、かつ、その補正時の処理の負担を軽減することができることはもとより、演算処理系で処理するアドレスの量を減らした場合においても、高精度な合わせ込み調整が可能な画像投射装置および画像処理方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点は、画像表示手段で形成した表示画像を投射面に光を利用して投射する画像投射装置であって、前記表示画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求め、当該代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成する演算手段と、前記代表点アドレスである基底アドレスと前記相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る補間アドレス生成手段と、投射したときに前記投射面上で歪みが補正される表示画像の画素データを、上記補間アドレスに基づいて入力画像の複数の画素データから補間により生成し、生成した画素データを、前記歪み画像のアドレスと所望の画像のアドレスとの対応関係から決められる前記画像表示手段の位置に出力するデータ補間手段とを有する。
【0012】
好適には、前記補間アドレス生成手段が、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間手段を有し、前記補間手段で算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
また、好適には、前記補間アドレス生成手段が、前記演算手段で生成された代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するアドレス生成手段と、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間アドレス算出手段と、を有し、前記補間アドレス算出手段で得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
【0013】
好適には、前記補間アドレス生成手段が、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間手段を有し、前記補間手段で算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る第1の補間アドレス生成回路と、前記演算手段で生成された代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するアドレス生成手段と、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間アドレス算出手段と、を有し、前記補間アドレス算出手段で得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る第2の補間アドレス生成回路と、を有する。
好適には、前記第1の補間アドレス生成部が行う補間では、前記第2の補間アドレス生成部が行う補間に用いる関数より高次の関数を用いる。
【0014】
好適には、前記サンプル間隔は、所定の補間関数で各補間画素のアドレスを算出した場合に、補間した位置精度が満足できる間隔である。
【0015】
本発明の第2の観点は、投射面に光を利用して投射する表示画像を画像表示手段に生成するために、少なくとも補間アドレスに基づいて入力画像を補正処理する画像処理方法であって、前記入力画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求める第1のステップと、第1のステップで求めた代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成する第2のステップと、前記代表点アドレスである基底アドレスと前記相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る第3のステップと、上記補間アドレスに基づいて入力画像の複数の画素データから補間により、前記表示画像が前記投射面上に投射された際の歪みが相殺されるように補正する第4のステップとを含む。
【0016】
好適には、前記第2のステップは、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出するステップを有し、算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
また、好適には、前記第2のステップは、前記演算手段で生成された代表点化の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するステップと、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出するステップと、を有し、前記得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
【0017】
好適には、前記第2のステップにおいて、補間に用いる関数が高次の関数の場合、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出し、算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得、補間に用いる関数が前記高次の関数より低次の関数の場合、代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力し、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出し、算出して得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
【0018】
本発明によれば、歪み画像の代表点アドレスおよびこの代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを演算手段により生成する。そして、補間アドレス生成手段が、代表点アドレスである基底アドレスと相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る。これら2つの手段によって生成されたアドレスが歪み画像のアドレスを形成する。この歪み画像のアドレスと所望の画像のアドレスとの対応関係にもとづいて、歪み画像と所望の画像のアドレス対応関係が一義的に決まる。歪み画像というのは、もともと正矩形の画像を斜めに投射したときに投射面上に映し出された画像であることから、この関係が求まれば、逆に正矩形の画像を投射面上で得るための補正後の画像のアドレスがわかる。したがって、データ補間手段は、このアドレスの対応関係にもとづく画像表示手段の位置に、表示画像の新たな画素データを補間により生成する。以後、生成した表示画像を画像表示手段が投射すると、歪みが補正された所望の画像が投射面上に現出する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像投射装置(プロジェクター)と、それに用いる画像変換方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に、フロントプロジェクターをスクリーンの正面に配置した場合に、これらを上方から見た図を示す。図1のプロジェクター1において、101はスクリーンを、OAは光軸を、PCNTはプロジェクター本体の中心を、SCNTはスクリーン中心を、LCNTはレンズ中心をそれぞれ示している。
図1に示す配置において、プロジェクター1の投射光の軸と映像が映るスクリーン101とが、上から見ると直交するように配置される。プロジェクター1で投射する映像はテレビ信号やコンピュータ画面の信号である。これらの信号に重畳された映像の表示領域の形状は、テレビやコンピュータディスプレイを見れば分かるように、信号によって画素数に違いはあるものの映像全体として4:3や16:9などの辺の比(アスペクト比)をもつ長方形である。プロジェクター1のLCDパネルに表示された長方形の映像は、まっすぐに投射しなければ投射された映像も長方形にならず、本来の映像の形をゆがめてしまう結果になる。
【0021】
図2は、正面に配置したプロジェクターの位置をP0としたときに、本発明の実施の形態におけるプロジェクター1の配置可能な範囲を示す図である。
プロジェクター1は、正面位置P0を含む水平面Ph内に配置でき、また、正面位置P0を含む垂直面Pv内に配置できる。さらに、プロジェクター1は、2つの平面Ph,Pvによって区切られる第1象限P1、第2象限P2、第3象限P3、第4象限P4のいずれにおいても任意に配置できる。
プロジェクター1は、その内部のLCDパネルの表示画像を、上述した範囲内であればどの位置からでも投射可能である。
本実施形態に係るプロジェクター1は、投射位置に応じた画像の歪みを補正する機能を有しているので、この機能を働かせれば恰も正面から投射したときと同じアスペクト比をもった正四角形の画像をスクリーン101上に映し出すことができる。この補正を、キーストン歪み補正という。
【0022】
図3(A)に、水平面内でスクリーンに向かって左横からの画像投影イメージを示す。図3(B)に入力画像イメージを、図3(C)にプロジェクターに内蔵されたLCDパネル面上での画像イメージを示す。
図3(A)に示すように、スクリーン101に向かって左横にプロジェクター1を配置して投射しているが、スクリーン101上の映像は正面から投射しているときと同じように見える。本来であれば、投射された画面は図中の斜線部を含め全体が台形に歪んだように変形するはずである。これを横キーストン変形といい、横キーストン変形を補正することを横キーストン補正という。
このように横に置いたプロジェクター1から画像を投射して、それが正面から投射したかのようにスクリーン101上で映るには、あらかじめプロジェクター1の投射位置によって画像がどのように歪むかを計算しておく必要がある。このとき、あらかじめプロジェクター1側で投射により変形する形状によって、パネル上で逆方向に変形するような補正処理を行うことにより、投射したときに歪む形に対して逆の方向に歪ませた画像を作り、それを投射することで横方向から投射しても画像を正面から投射した時と同じように見せることができる。
上記具体例で図3(A)のような投射映像を得るためには、図3(B)の入力画像を図3(C)のようにLCDパネル面上で変形させて表示させ、この表示画像をスクリーン101に投影する。これにより、スクリーン101上での変形と相殺されて歪まない画像となる。
【0023】
図4(A)に、図2における第3象限P3からの画像投影イメージを示す。また、図4(B)に入力画像イメージを、図4(C)にLCDのパネル面上での画像イメージを示す。
図3(A)の横キーストン歪みは台形歪みであったが、これに垂直方向の歪み成分が加わった図4(A)の場合、さらに歪み形状が複雑になる。図4(A)に示す正四角形の補正後の投影画像を得ようとすると、LCDパネル表示画像は、図4(C)に示すように画像をLCDパネル面内で回転させたようにする必要がある。
図4(C)および図3(C)のいずれの場合でも、補正前の投影画像形状と逆に歪ませた画像をLCDパネル面の有効表示領域一杯に表示すれば、解像度、明るさの低下が極力抑えられた正四角形の投影画像がスクリーン上に得られる。
【0024】
以下、入力画像をLCDパネルの表示画像に変換することによって、このような補正が可能な画像投射装置と画像変換方法の実施の形態を、より詳細に説明する。この画像変換では、図4(A)のように第3象限P3からの投射の場合を例に水平および垂直の歪みを同時に補正可能なアドレス生成の一般式を求める。水平のみ、あるいは垂直のみの歪み画像は、この一般式において水平または垂直の投射角度がゼロの場合で表現できる。また、第3象限以外の他の象限からの投射は、式が異なるのみで考え方は同じである。
【0025】
[第1の実施の形態]
図5に、本発明に係る画像投射装置としてのプロジェクターの基本構成を示す。
プロジェクター1は、図5に示すように、映像信号(入力信号)IMに種々の信号処理を施す回路、各種駆動系の回路を含む回路部2を有する。回路部2は、信号処理回路内の一部に、制御手段および演算手段として中央演算処理部(CPU)2a、補間アドレス生成部2b、および、データ補間部2cを含む。
【0026】
プロジェクター1は、入力信号に各種信号処理を施した信号が示す入力画像を画像変換して得られた表示画像3aを表示する画像表示装置3、たとえばLCDパネルを有する。また、プロジェクター1は、表示画像3aを外部に投射するための光源を含む投光部4と、各種レンズを含む光学部5とを有する。LCDパネル3は透過型と反射型の何れでもよいが、いずれにしても表示画像3aが、光学部5を通って投射面としてのスクリーン101に投影画像101aとして映し出される。
演算手段としてのCPU2aは、画像変換に必要な歪み画像のアドレスのうち、任意のサンプリングレートでサンプリングされた代表点アドレスを演算により算出する。CPU2aは、アドレス同士の相対関係を求める手段(以下、マッピング手段という)としても機能する。CPU2aは、他の構成を制御する役目もある。代表点アドレスの演算およびアドレスの対応付け(マッピング)についての詳細は後述する。
【0027】
プロジェクター1は、LCDパネル3の表示画像とスクリーン101との相対的な関係を示す相対関係情報を取得する相対関係取得部6を有する。
相対関係取得部6は、たとえば、少なくとも、表示画像のスクリーン101までの距離と、光学部5の光軸とスクリーン面とのなす角度とを取得する。
相対関係取得部6としては、外部から相対関係情報を入力する入力部、ボタンスイッチ等の外部の操作パネル部、想定される相対関係情報をあらかじめ記憶した記憶装置(たとえば、ROM/RAM)、あるいは相対関係を自ら検出する検出系など、種々の形態がある。
【0028】
液晶などの固定画素のパネルを用いるプロジェクターでは、入力された入力画像の画素数と出力画像の画素数とが異なる場合がある。そのため、プロジェクター1は、画素数を変換するための信号処理機能を備えている。これをスケーリング機能と呼ぶが、この処理では、本来画素データの無い位置でのデータが必要になり、画素の補間演算が行われる。
補間演算では、周辺の画素のデータを用いて目的の位置の画素データを作り出す。この機能は、たとえば、イメージプロセッサと称される画像処理回路内に、スケーラと呼ばれる回路ブロックを内蔵させることにより実現される。
なお、本実施形態においては、補間アドレスの算出法として、後で詳述するように、プロジェクター1の投射角度設定に対して、キーストン補正のための計算を行って得られる補間アドレスからの水平方向と垂直方向へのオフセット(隔たり)をもつ相対アドレスをもたせることによって間接的に最終的な補間アドレスを示し、このオフセットを調整することによって画像の任意の位置をずらすような調整ができるように構成される。
【0029】
図6は、図5の回路部2に含まれる画像処理回路、すなわちイメージプロセッサとその周辺の回路ブロックの一構成例を示す図である。
図解した画像処理回路は、コムフィルタ(Comb Filter)21、クロマデコーダ(Chroma Decoder)22、セレクトスイッチ(SW)23、アナログ−ディジタル・コンバータ(A/D)24、イメージプロセッサ(Image Processor)25、SDRAM等からなる画像メモリ26、および、CPU2aを有する。このうち、イメージプロセッサ25とCPU2aが、画像変換の機能を実現するための一実施態様に該当する。なお、これらの画像メモリ26やCPU2aの機能をイメージプロセッサ25内に一体化させてもよい。
【0030】
図解した画像処理回路は、コンポジットビデオ信号(以下、Video信号)、Y/C信号、RGB信号の何れの映像信号にも対応している。Video信号はコムフィルタ21に、Y/C信号はクロマデコーダ22に、RGB信号はセレクトスイッチ23に、それぞれ入力される。いま、Video信号が入力されている場合を考えると、コムフィルタ21でY/C信号に変換され、続くクロマデコーダ22でYUV信号に変換される。セレクトスイッチ23によって選択された信号がA/D24により変換されてディジタル信号になる。この信号がイメージプロセッサ25に入力され、所望の信号処理が行われる。このとき、イメージプロセッサ25の処理がCPU2aにより制御され、処理中に、適宜画像メモリ26が使用される。所望の信号処理が行われた後は、処理後の信号がたとえばLCDパネル3に送られ、この信号に基づいてLCDパネル3に投射する画像が表示される。
【0031】
図7に、イメージプロセッサ内部の回路ブロックの一構成例を示す。
イメージプロセッサ25は、IP(Interlace−Progressive)変換部251、スケーラ252、CPUインターフェース253、メモリ制御部254、および記憶装置255を有する。スケーラ252は、補間アドレス生成部2b、係数発生部257、およびフィルタ演算部258を有する。このうち、係数発生部257とフィルタ演算部258が図5におけるデータ補間部2cの一実施態様に該当する。
【0032】
イメージプロセッサ25に入力された映像信号はIP変換部251に送られ、ここでインターレース信号がプログレッシブ化される。この処理では画像メモリ26を用いるが、メモリインターフェースとしてのメモリ制御部254にIP変換部251が接続されることによって、IP変換部251は画像メモリ26との間で画像データのやり取りを行う。プログレッシブ化された信号は、スケーリング処理を行うためにスケーラ252に送られる。
【0033】
スケーラ252の内部では、補間アドレス生成部2bにおいて、歪み補正に必要なアドレスのうち、前述した代表点アドレスの代表点基底アドレスと代表点相対アドレスに基づいて絶対アドレスを生成し、生成したアドレスを補間アドレスとする。
フィルタ係数を係数発生部257で発生させ、発生させたフィルタ係数をフィルタ演算部258に供給する。フィルタ演算部258が、与えられたフィルタ係数を用いた補間演算処理を行い、入力した映像信号が示す入力画像が、所定の大きさと形状を有したLCDパネルの表示画像に変換される。この変換後の表示画像の信号が出力され、LCDパネル3に送られる。この補間演算に用いるアドレスやフィルタ係数などのデータを保持する記憶装置255がスケーラ252に接続され、これら一連の処理を含むイメージプロセッシングを制御するCPU2aのインターフェース253がIP変換部251、スケーラ252および記憶装置255に接続されている。
【0034】
図6に図解した例において、相対関係取得部6(図1)からの相対関係情報がCPU2aに入力される。CPU2a自身によって、さらに、CPU2aに制御されながらイメージプロセッサ25内の補間アドレス生成部2bによって、入力画像を表示画像に効率よく変換するための歪み画像データのアドレスが生成される。本実施の形態の画像変換では、アドレス生成手法に大きな特徴の1つがある。
【0035】
以下、アドレス生成手法の実施の形態を、図面を用いて詳しく説明する。
また、以下の説明では、フロントプロジェクターの表示画像を、スクリーンに対して正面の位置を基準に、垂直方向にα度上向きで、水平方向ではスクリーン正面から左にβ度回転した位置から斜めに投射する場合を主に説明する。角度αおよびβが正の場合、投射位置は図2の第3象限P3に属する。他の象限からの投射時の補正は、ほぼ同じような考え方、方法で行える。このとき入力信号としてVGA(640画素×480ライン)の解像度をもつ映像信号が入力され、これをSVGA(800画素×600ライン)に解像度変換し、また斜め方向から投射する場合のスクリーン上の投影画像の歪みをとる補正も画像変換処理で行う場合について説明する。
【0036】
図8(A)に、正面投射の場合の右手座標系におけるプロジェクター1とスクリーン101の位置関係を示す。また、それに対応したyz平面図を図8(B)に、xy平面図を図8(C)に、それぞれ示す。このとき、プロジェクター1の位置座標を(Px,Py,Pz)、スクリーン101上の任意の点の位置座標を(Sx,Sy,Sz)で表す。位置座標(Px,Py,Pz)と(Sx,Sy,Sz)により決まるスクリーン101とプロジェクター1の距離、および、前記斜め投射角度αとβが、前述した相対関係情報である。
図8(B)および図8(C)に示すように、正面投射ではスクリーン面と光軸が直交する。ただし、光軸はスクリーン中央ではなく下寄り位置、ここではスクリーン下辺中央付近でスクリーン面と交差している。フロントプロジェクターは机の上に配置し、あるいは天井から吊るような配置を取る場合、レンズの中心とスクリーンの中心を結ぶ線が地面と平行にはならないように両者を配置させるためである。これはプロジェクターを机に置いて投射したときなどに、投射する画像の下端部分が机に映ってしまわないようにするための仕様であり、光学オフセットと称される。
【0037】
図9(A)に、垂直方向にα度上向きで、水平方向については向かって左手からスクリーンに対しβ度の角度で斜めに投射する場合、右手座標系におけるプロジェクターとスクリーンの位置関係を示す。また、yz平面図を図9(B)に、xy平面図を図9(C)に、それぞれ示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向にα度、水平方向に(−β)度となる。
【0038】
ここで、キーストン歪み補正を考えやすくするために相対的な視点を変えることを考える。図9(A)〜図9(C)ではプロジェクター1の位置を動かして斜め方向から投射していたが、ここでは、相対的な位置関係を維持したままでプロジェクター1は動かさずに、スクリーン101を、その場で軸回転させることを想定する。
図10(A)〜図10(C)に、スクリーンを軸回転させた場合の図9(A)〜図9(C)と等価的な斜め投射の位置関係を示す。このとき、右手座標系で表現するとスクリーンを、その下辺(x軸)を中心に直立位置からy方向(背面側)に(−α)度傾かせ、向かって左側の辺(z軸)を中心に左回転方向にβ度回転させる。つまり、図10(B)と図10(C)に示す傾きおよび回転の角度は、図9(A)〜図9(C)に示すプロジェクターの設置位置からの投射角度に対して符号が逆になる。
【0039】
以下、図10(A)〜図10(C)のように、正面の位置にプロジェクター1があり、この位置から傾いたスクリーン(以下、101tと表記)に映像を投射した場合に、投射された映像(投影画像)がどのように変形しているかを考える。
プロジェクター1が投射する光は、図9(A)でスクリーン101のあったzx平面上を通過して傾いたスクリーンに映る。傾いたスクリーン101tがある平面は、原点を中心に垂直に(−α)度、水平にβ度回転しているので、原点を中心とした回転行列を用いて表現することができる。本実施の形態では水平と垂直の回転なので、先に水平方向に回転させた後に、次に垂直方向の回転を行う手順によって回転行列が定義される。具体的には、zx平面の法線ベクトル(nx,ny,nz)が、回転によって次の行列式(1)で表現される。
【0040】
【数1】
【0041】
プロジェクター1の位置とスクリーン101の位置していたzx平面上の点を結ぶ直線を考え、この直線と行列式(1)の法線ベクトルをもつ平面との交点を求めれば、傾いたスクリーン101tの平面に映る座標点が求まる。この傾いた座標点に対して、図9(A)のように視点をスクリーンの正面において見る場合には、再び反対向きの回転として原点を中心に垂直にα度、水平に(−β)度回転させればよい。すると、斜め方向から投射した場合に歪む形が求められる。このような方法によって導出されたx方向、y方向、z方向の座標を、それぞれ次式(2−1)、(2−2)、(2−3)に示す。
【0042】
【数2】
【0043】
これらの式で表される(Kx,Ky,Kz)は、図9(B)に示すようにプロジェクター1を垂直にα度上向きで、図9(C)のように水平方向にスクリーン101に対して左から(−β)度の角度で投射するとき、キーストン歪みによって変形された座標である。
図11(A)および図11(B)に、座標関係についてまとめて示した。これらの図で(Sx,Sy,Sz)はスクリーンの座標であり、正面投射の場合にスクリーン上に正四角形に映し出される入力画像の座標に相当する。また、座標(Kx’,Ky’,Kz’)は図10(B)および図10(C)のように斜めに傾いたスクリーン101tの平面上に投射された座標である。上述のように(Kx,Ky,Kz)はキーストン歪み変形座標である。
このように、前述した3つの式(2−1)、(2−2)、(2−3)により、任意の方向からの投射によってもたらされるキーストン歪変形座標が与えられる。
【0044】
つぎに、出力信号(表示画像)の解像度に合わせた座標の、式(2−1)、(2−2)、(2−3)による変形座標を求める。つまり、SVGA出力の場合、歪む前の画像のx座標Sxは0から799まで変化し、z座標Szは0から599まで変化するが、このときのキーストン歪み後のx座標Kxとz座標Kzを求める。なお、y座標SyとKyは、画像がzx平面にあるのでゼロである。
【0045】
図12(A)に正面投射のSVGA出力画像のアドレスマップのイメージPIOUT、図12(B)にα=10、−β=−30として座標変換したキーストン変形後のSVGA出力画像のアドレスマップのイメージ(以下、歪み画像イメージ)PIKを示す。ここでは、図示の都合上すべての画素位置のサンプルリング点を示さず、33画素ごとに1つのドットでサンプリング点を代表させている。
式(2−1)および式(2−3)を用いて実際に座標変換によって生成された代表点アドレスは、33画素ごとのアドレスのうち(33×3)画素ごとに示す白丸印のアドレスである。図5および図7に示すCPU2aが代表点アドレスを生成する。
代表点アドレス間に存在する、黒丸のアドレスを含む他のアドレスは、式を用いた演算により生成しないで、図5および図7に示す補間アドレス生成部2b、たとえば複数タップの補間回路から生成される。この最終的なアドレスを、以下、画素データの補間処理に用いるアドレスという意味で、「補間アドレス」という。補間方法に限定はなく、たとえば、バイリニア補間を含む線形補間方法、スプライン補間などの非線形補間方法のいずれを採用してもよい。線形補間を採用すると、補間アドレス生成部2bの構成が簡単になる利点がある。ただし、アドレスの変換精度を高く維持しようとすると代表点アドレスのサンプリングレートを余り低くしないようにすることが望ましい。
【0046】
ここで、本実施形態に係る補間アドレス生成部2bの具体的な構成および機能について、図13、図14、および図15に関連付けて説明する。
【0047】
なお、本実施形態においては、補間アドレスの算出法として、前述したように、プロジェクター1の投射角度設定に対して、式(2−1)、(2−2)、(2−3)にあるように、キーストン補正のための計算を行って得られる補間アドレスからの水平方向と垂直方向へのオフセット(隔たり)をもつ相対アドレスをもたせることによって間接的に最終的な補間アドレスを示し、このオフセットを調整することによって画像の任意の位置をずらすような調整ができるようになる。
【0048】
最初に、設定された投射角度に対してキーストン補正を行うための補間アドレスを算出する。このとき、実際に補間関数として使用する関数で各補間画素のアドレス算出した場合に、補間した位置精度が満足できる間隔をサンプル間隔とする。この条件を満足するサンプル間隔で必要な部位の補間アドレスを水平方向と垂直方向にそれぞれ算出する。
【0049】
補間アドレス生成部2bは、図13に示すように、算出する補間点の間隔をスプラインやキュービック関数などの非線形な補間を行う場合に補間精度の高い、一般的に高次数の補間関数を用いることを想定したサンプル間隔が広い場合と、図14に示すように、さらに簡易的な手法である線形補間などの線形な補間を行う場合に補間精度の低い、一般的に低次数の補間関数を用いることを想定したサンプル間隔が狭い場合で異なる構成を取ることが可能である。
【0050】
サンプル間隔が広い場合の補間アドレス生成方法
この場合、図13の回路(第1の補間アドレス生成回路)構成が採用される。
スプラインやキュービック関数などの非線形な補間を行う場合に補間精度の高い、一般的に高次数の補間関数を用いる場合のサンプル間隔は広くなる。いまこの最初に求める補間精度の高い補間関数を想定したサンプル間隔の補間アドレスを「代表点基底アドレス」と呼ぶことにする。
この「代表点基底アドレス」に対して、さらに間隔を細かくした代表点を求める。このときの補間関数は代表点基底アドレスで定めたサンプル間隔で想定した補間手法よりも簡易的な手法を用いる。つまり、サンプル間隔は線形補間のようなキーストン補正にとって補間精度の低い補間で補間した場合でも所望の精度が満足できる程度の間隔であるとする。
この条件を満足するサンプル間隔で必要な部位の補間アドレスに対して水平方向と垂直方向にずらすためオフセットをもつアドレスを「代表点相対アドレス」と呼ぶことにする。ここで相対アドレスとしてあるのは、オフセットのデータだけ操作すれば画面上の微妙な位置合わせができるので調整が容易であり、さらに保持するデータ量を減らすことができるためである。
算出された代表点基底アドレスは、図13のように補間代表点アドレス用のテーブルに垂直方向と水平方向のアドレス値を書き込んで保持しておく。また、代表点相対アドレスも同様に代表点相対アドレス用のテーブルに垂直方向と水平方向のオフセット値を書き込んで保持しておく。
次に、代表点基底アドレスと代表点相対アドレスに対して、代表点と代表点の間を埋める補間回路で、すべてのポイントを求め絶対アドレス化したものを最終的な補間アドレスにする。
【0051】
図13の第1の補間アドレス生成回路2b−1は、補間代表点アドレステーブルを記憶する記憶回路201、補間代表点相対アドレステーブルを記憶する記憶回路202、代表点から個別点への補間回路203,204、および絶対アドレス生成回路205を有する。
この場合は、CPU2aは、設定した投射角度で代表点のみキーストン歪みのアドレス計算を行い、これを代表点アドレスとして記憶回路201に記憶する。CPU2aは、代表点のみの位置調整の相対アドレステーブルを作成し、代表点相対アドレスとして記憶回路202に記憶する。記憶回路201には、キーストン補間アドレスの代表点のみのテーブルが記憶され、記憶回路202には、位置調整オフセットの代表点のみのテーブルが記憶される。
そして、記憶回路201に記憶された補間代表点アドレスが代表点基底アドレスとして補間回路203に供給される。同様に、記憶回路202に記憶された補間代表点相対アドレスが補間回路204に供給される。
補間回路203は、代表点基底アドレスに基づいて代表点から個別点への補間処理を行い、その結果を補間基底アドレスとして絶対アドレス生成回路205に出力する。補間回路204は、代表点相対アドレスを受けて代表点から個別点への補間処理を行い、その結果を補間相対アドレスとして絶対アドレス生成回路205に出力する。
そして、絶対アドレス生成回路205は、補間基底アドレスおよび補間相対アドレスに基づいて絶対アドレスを生成し、これを補間アドレスとして出力する。
【0052】
サンプル間隔が狭い場合の補間アドレス生成方法
この場合、図14の回路(第2の補間アドレス生成回路)構成が採用される。
簡易的な手法である線形補間などの線形な補間を行う場合に補間精度の低い、一般的に低次数の補間関数を用いる場合は、補間アドレスのサンプル間隔は狭くなる。
このとき、CPU2aが処理するデータ量が多くなるため、図14のようにCPU2aから与えられたキーストン補正用パラメータから狭い間隔の補間アドレスを生成する補間代表点アドレス生成回路211が実装されている。
いまこの補間代表点アドレス生成回路211が算出する補間精度の低い補間関数を想定したサンプル間隔の補間アドレスを「代表点基底アドレス」と呼ぶことにする。この「代表点基底アドレス」に対して、水平方向と垂直方向にずらすためオフセットをもつアドレスを「代表点相対アドレス」と呼ぶことにする。
代表点相対アドレスは補間代表点相対アドレス用のテーブルに垂直方向と水平方向のオフセット値を書き込んで保持しておく。
次に、補間代表点アドレス生成回路により算出された代表点基底アドレスと代表点相対アドレスから絶対アドレス化した代表点アドレスに対して、代表点と代表点の間を埋める補間回路で、すべてのポイントでの補間アドレスを求めたものを最終的な補間アドレスにする。
【0053】
図14の第2の補間アドレス生成回路2b−2は、補間代表点アドレス生成回路211、補間代表点アドレステーブルを記憶する記憶回路212、絶対アドレス生成回路213、および代表点から個別点への補間回路214を有する。
この場合は、CPU2aは、設定した投射角度で代表点のみキーストン歪みのパラメータ計算を行い、これを代表点パラメータとして補間代表点アドレス生成回路211に供給する。CPU2aは、代表点のみの位置調整の相対アドレステーブルを作成し、代表点相対アドレスとして記憶回路202に記憶する。記憶回路201には、キーストン補間アドレスの代表点のみのテーブルが記憶され、記憶回路202には、位置調整オフセットの代表点のみのテーブルが記憶される。
そして、補間代表点アドレス生成回路211は、CPU2aから与えられたキーストン補正用パラメータに基づいて、狭い間隔の補間アドレスを生成し、代表点基底アドレスとして絶対アドレス生成回路213に出力する。また、記憶回路212に記憶された補間代表点相対アドレスが絶対アドレス生成回路213に供給される。
そして、絶対アドレス生成回路213は、補間基底アドレスおよび補間相対アドレスに基づいて絶対アドレスを生成し、これを代表点アドレスとして補間回路214に出力する。
補間回路214は、代表点アドレスに基づいて代表点から個別点への補間処理を行い、その結果を補間アドレスとして出力する。
【0054】
具体的な処理内容を図15に関連付けて説明する。
図15にはキーストン補正用の代表点基底アドレスB0〜B3、位置調整用の代表点相対アドレスR0〜R3と各補間アドレスについての関係を示した。ここでは例として、補間間隔が狭い場合の補間アドレス生成方法で、代表点基底アドレスと代表点相対アドレスの間隔を32画素おきの間隔の関係を持っていると想定する。これは図示上の都合で選んだサンプル間隔であり、実際にはもっとサンプルを粗くすることができる。また、各補間アドレスを求める際の補間に線形補間を用いる場合を想定している。
通常の投射スタイルであれば、画像の合わせ込みは必要ないので、代表点基底アドレスB0〜B3と代表点相対アドレスR0〜R3は重なった状態である。
ここで、特殊な投射スタイルで画像の合わせ込みが必要になった場合で、たとえば、代表点基底アドレスB0に近い画像の位置を右下にずらしたいような場合では、代表点基底アドレスB0に対して代表点相対アドレスR0を右下にずらすことにより、各補間アドレスも同様に右下にずれることになり、結果として画像上の任意の位置をずらすことが可能となる。
以上の操作により、キーストン歪み補正と高精度な位置調整に必要となる全画素の補間アドレスを求める補間アドレス生成部2bとしての機能が果たされる。
【0055】
つぎに、図16(A)のように、補正により得たい画像のイメージ(スクリーン上に実現したい投影画像の仮想のイメージ、以下、投影画像イメージという)PIを、図12(B)に示す歪みによって変形した座標空間上に重ねる。これにより歪み画像イメージPIKに投影画像イメージPIがマッピングされ、両画像のアドレスの対応関係が決まる。このとき、入力した入力画像はVGAだが、画像の大きさと位置を調整するために、投影画像イメージPIを任意の大きさ(たとえば、SVGAの大きさ)で、変形したアドレス空間(歪み画像イメージPIK)内の任意の位置に配置することができる。ただし、投影画像イメージPIが歪み画像イメージPIK内に完全に収まるようにしないと、次に行う補間後に画像の一部が欠けてしまう。したがって、望ましくは、所望のアスペクト比(本例では、4:3)の投影画像イメージサイズが歪み画像のアドレス空間内で最大限となることを規定しておく。すると、この投影画像イメージPIの位置と大きさは単なる図形問題に帰結し、たとえば図16(A)のような位置とサイズで、投影画像イメージPIと歪み画像イメージPIKとの関係が一意に決まる。
【0056】
このようなマッピング(アドレスの対応付け)は、歪み画像イメージPIKのアドレス分布がすでに前記した式(2−1)、(2−2)、(2−3)から求められているので、実際の物理メモリ(記憶資源)を用いずとも、たとえばCPU2a内で仮想メモリ空間を想定して実行できる。このため、マッピング自体が高速な上に物理メモリとのデータのやり取りがなくて効率がよく、数回やり直しても、その処理の合計時間が画像変換全体の時間に占める割合は極めて小さい。もちろん、CPU2aが容量的に不足する場合は、たとえば記憶装置255を用いて適宜マッピングを行っても構わない。
【0057】
マッピングにより得られたアドレスの対応関係は、歪み画像と、歪みがなくスクリーン上で正四角形となる所望の投影画像とのアドレス対応関係であるが、歪み画像というのはもともと歪みがない正四角形のLCDパネル上の画像の投影の結果である。したがって、上記アドレスの対応関係を利用して、歪みがないスクリーン上の投影画像を得るためのLCDパネル3の表示画像が生成できる。
具体的な方法としては、SVGA出力の場合、LCDパネル3の有効表示領域の座標は800×600個になるが、このすべての点について、マッピングされた画像のアドレスで補間を行う。このとき800×600個の各点での補間のうち、図16(A)に示す歪み画像イメージPIKと投影画像イメージPIとが重なる領域のすべてのアドレスでの補間では、投影画像のように画像データを再現できるようにフィルタ係数が選択され、その画像再現に必要な原画像の複数の画素データを上記フィルタ係数で重み付けして新たな画素データを合成する。合成後の画素データは、マッピングにより求めた上記アドレス対応関係に基づいて、4:3のアスペクト比の正四角形画面であるSVGA画面内のどの位置に配置するかを一意に決めるアドレスに割り当てられる。一方、図16(A)に示す投影画像イメージPI周囲の歪み画像イメージPIK内領域の補間では、画像データがない黒色画素同士の合成となり、したがって補間後も黒色の画像データがSVGA画面内の対応位置に割り当てられる。
【0058】
図16(B)に、このような画像変換手順により生成されたSVGA出力画像を示す。この画像がキーストン歪み補正を行った画像である。この画像を図4(C)のようにLCDパネルに表示させ、図4(A)のように投影すると、スクリーン上で正四角形の投影画像が得られる。マッピングにより得られたアドレスの対応関係は、上述したようにイメージサイズ同士の重なる面積が最大となるように決められていることから、スクリーン上の投影画像は明るさおよび解像度の低下が最小に抑えられている。
【0059】
なお、代表点アドレス間の他のアドレスを補間により生成する場合、周囲の代表点アドレスの座標を用いて新たにアドレスを生成する。したがって、この場合、図17に示すように、周囲に余分に代表点アドレスを予め生成することが望ましい。この図17では、(33×5)画素ごとに代表点アドレスを生成している。
【0060】
前述した図12(A)および図12(B)の説明では、出力画像イメージPIOUTを出力画像(SVGA画像)の大きさに合わせて600×800個のアドレスで与え、これを変形させて歪み画像イメージPIKを生成した。そして、図16(A)に示すように、歪み画像イメージに対し、投影画像イメージPIの大きさと位置を変えながら重ね、重ねた後の両画像イメージから、歪み補正に必要なアドレス対応関係を求める手法を採った。
これと同じアドレス対応関係は、次の手法でも求めることができる。
図12(A)において出力画像イメージPIOUTを入力画像(VGA画像)と同じ640x480個のアドレスで与え、これを変形させて歪み画像イメージPIKを生成し、図16(A)では、歪み画像イメージPIKの大きさを変える一方で、投影画像イメージPIの大きさは最初からSVGA対応として変化させず、その位置のみを変えて両画像イメージの最適な重ね合わせを行う。このような手法でも、結果は図16(A)と同じとなる。
【0061】
以上は、スクリーンに向かって左下位置(第3象限P3)からの投射時の歪み補正を述べたが、他の位置からの投射の場合、歪み座標を求める式が異なるのみで、上述した補正方法の手順は同じである。
【0062】
図18(A−1)と図18(B−1)に、スクリーン101に向かって右下位置(第4象限P4)からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図を示す。また、プロジェクター1の投射位置は正面投射から動かさないとしたときに、同じ相対関係となるようにスクリーン101を軸回転させた場合のxy平面図とyz平面図を、図18(A−2)と図18(B−2)に示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向に(−α)度、水平方向に(−β)度となる。
傾いたクリーン101tに投射されたキーストン歪み座標を求める式を、次式(3−1)、(3−2)、(3−3)に示す。
【0063】
【数3】
【0064】
図19(A−1)と図19(B−1)に、スクリーン101に向かって左上位置(第2象限P2)からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図を示す。また、プロジェクター1の投射位置は正面投射から動かさないとしたときに、同じ相対関係となるようにスクリーン101を軸回転させた場合のxy平面図とyz平面図を、図19(A−2)と図19(B−2)に示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向にα度、水平方向にβ度となる。
傾いたスクリーン101tに投射されたキーストン歪み座標を求める式を、次式(4−1)、(4−2)、(4−3)に示す。
【0065】
【数4】
【0066】
図20(A−1)と図20(B−1)に、スクリーン101に向かって右上位置(第1象限P1)からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図を示す。また、プロジェクター1の投射位置は正面投射から動かさないとしたときに、同じ相対関係となるようにスクリーン101を軸回転させた場合のxy平面図とyz平面図を、図20(A−2)と図20(B−2)に示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向にα度、水平方向に(−β)度となる。
傾いたスクリーン101tに投射されたキーストン歪み座標を求める式を、次式(5−1)、(5−2)、(5−3)に示す。
【0067】
【数5】
【0068】
本実施の形態では、このようにキーストン歪み変形座標をスクリーンとの相対関係情報を用いた式で求め、歪みがない所望の画像とキーストン歪み画像とのマッピングによりアドレスの相対関係を求め、アドレス相対関係にもとづいた補間処理によりLCD表示画面を生成する。マッピングは仮想メモリ空間で実行できるので、実際の画像メモリをこの処理のために占有することなく、効率がよい。また、上記式(または歪み計算のアルゴリズム)は、たとえば相対関係情報に基づいて適した式(またはアルゴリズム)をCPU2aが記憶装置255から読み出すことによって切り換えることができる。したがって、本実施の形態にかかるプロジェクター1は、スクリーン面が見える位置なら任意の位置からの投射であっても効率良くキーストン歪み補正が可能で、設置自由度が高い。また、マッピング時に解像度変換を自由に行え、また出来る限り最大の解像度となるような設定が可能なため、その点でも効率が良く、出来るだけ高い解像度で明るい画像が容易に得られる。
さらに、CPU2aの負荷が大きい、式を用いたアドレス計算の対象を代表点に絞り、他のアドレスは補間により生成しているため、この点でも効率がよい。
【0069】
また、本実施形態によれば、キーストン補正の処理と位置調整の処理を切り離して考えられるので、歪み補正代表点のサンプル間隔が荒い場合やサンプル間隔が細かくても歪み補間代表点をCPU2aから直接設定できないような場合においても画面上の調整ポイントを多くもち、微調整することが可能となる。
また、CPU2aで処理するデータの量を少なくすることができ、かつ調整用のデータを相対的にもつことでデータそのものも小さくできるので、プロジェクターを設置してから画像が映るまでの処理時間や設置設定を変化させたときの応答速度を高速化できる。
以上の効果により、プロジェクターで高精度な位置合わせが要求される「マルチ画面投射」や、「スタック投射」のような特殊な投影スタイルにおいても容易に設置調整することができるようになる。
なお、本発明の信号処理は、ハードウェアを含めた形で実現することを前提としているが、ソフトウェアで実現することも可能である。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、アドレス計算点の増加または計算式の複雑化によって増大するアドレス計算の負担が軽減され、処理の高速化を図ることができる。またアドレス生成を回路により実現する場合は、その回路規模を縮小することが可能となる。
また、本発明によれば、キーストン補正の処理と位置調整の処理を切り離して考えられるので、歪み補正代表点のサンプル間隔が荒い場合やサンプル間隔が細かくても歪み補間代表点をCPUから直接設定できないような場合においても画面上の調整ポイントを多くもち、微調整することが可能となる。
また、CPUで処理するデータの量を少なくすることができ、かつ調整用のデータを相対的にもつことでデータそのものも小さくできるので、プロジェクターを設置してから画像が映るまでの処理時間や設置設定を変化させたときの応答速度を高速化できる。
以上の効果により、プロジェクターで高精度な位置合わせが要求される「マルチ画面投射」や、「スタック投射」のような特殊な投影スタイルにおいても容易に設置調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態におけるフロントプロジェクターをスクリーンの正面に配置した場合に、これらを下方から見た図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるプロジェクターの配置可能な範囲を、正面配置の位置を中心として示す図である。
【図3】(A)は横からの画像投影時の図、(B)は入力画像イメージを示す図、(C)はLCDパネル面上での画像イメージ図である。
【図4】(A)は正面位置から水平と垂直の双方の方向にずれた位置からの斜め投射時の図、(B)は入力画像イメージ、(C)はLCDのパネル面上での画像イメージである。
【図5】本発明の実施の形態におけるプロジェクターの基本構成を示す図である。
【図6】第1の実施の形態のプロジェクターにおいて、図1の回路部に含まれる、イメージプロセッサとその周辺の回路の一構成例を示すブロック図である。
【図7】イメージプロセッサ内部の回路の一構成例を示すブロック図である。
【図8】(A)は正面投射の場合の右手座標系におけるプロジェクターとスクリーンの位置関係を示す図である。(B)はyz平面図、(C)はxy平面図である。
【図9】(A)は垂直投射角α度、水平投射角β度の場合に、右手座標系におけるプロジェクターとスクリーンの位置関係を示す図である。(B)はyz平面図、(C)はxy平面図である。
【図10】(A)〜(C)は、スクリーンを軸回転させた場合の図9(A)〜図9(C)と等価的な斜め投射の位置関係を示す図である。
【図11】(A)および(B)は座標関係についてまとめて示す図である。
【図12】(A)は正面投射のSVGA出力画像のアドレスマップのイメージ図、(B)はキーストン変形による歪み画像イメージ図である。
【図13】本実施形態に係る第1の補間アドレス生成回路の構成例を示すブロック図である。
【図14】本実施形態に係る第2の補間アドレス生成回路の構成例を示すブロック図である。
【図15】本実施形態に係る補間アドレス生成部の具体的な処理を説明するための図である。
【図16】(A)はマッピング時に2つの画像イメージを重ねた図、(B)は補間演算により生成したLCDパネルの表示画面である。
【図17】代表点アドレスの取り方の変形例を示す、マッピング時の画像イメージ図である。
【図18】(A−1)〜(B−2)は、スクリーンに向かって右下からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図、およびそれらと等価な平面図である。
【図19】(A−1)〜(B−2)は、スクリーンに向かって左上からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図、およびそれらと等価な平面図である。
【図20】(A−1)〜(B−2)は、スクリーンに向かって右上からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図、およびそれらと等価な平面図である。
【図21】プロジェクターの特殊な投射スタイルを説明するための図である。
【符号の説明】
1…プロジェクター、2…回路部、2a…CPU、2b…補間アドレス生成部、2b−1…第1の補間アドレス生成回路、2b−2…第2の補間アドレス生成回路、2c…データ補間部、3…LCDパネル、3a…表示画像、4…投光部、5…光学部、6…相対関係取得部、21…コムフィルタ、22…クロマデコーダ、23…セレクトスイッチ、24…アナログ−ディジタル・コンバータ、25…イメージプロセッサ、26…画像メモリ、27,28…記憶手段、101,101t…スクリーン、101a…投影画像、251…IP変換部、252…スケーラ、253…CPUインターフェース、254…メモリ制御部、257…係数発生部、258…フィルタ演算部、PI…投影画像イメージ、PIK…画像イメージ、PIOUT…出力画像イメージ、α,β…投射角度。
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示装置に画像を表示し、その表示画像を投射面に光を利用して投射する画像投射装置、および表示画像を生成する際の画像処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆるプロジェクターと称される画像投射装置は画像表示装置、たとえば液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)を有している。画像投射装置(プロジェクター)は、画像表示装置に画像を表示させ、その表示画像を外部の投射面、たとえばスクリーンの面に投射する。
【0003】
このとき、スクリーンに対するプロジェクターからの画像の投射角度が斜めであると、本来、矩形状であるはずの画像がスクリーン上で台形状に歪む。このため、スクリーン上の画像の台形歪みを補正するいわゆるキーストン補正機能を備えた液晶プロジェクターが知られている。
【0004】
鉛直または水平のキーストン歪み補正では、スクリーン上の投影画像と逆方向に意図的に歪ませた画像を液晶パネル上で生成する。正矩形の入力画像を意図的に歪ませる画像変換は、通常、プロジェクターが有する画素数変換機能を利用して行う。たとえば、鉛直のキーストン歪み補正では、元画像の1フレーム内の単数または複数の水平ラインデータに対して、補間処理や間引き処理をディジタル的に施すことにより台形歪みの逆変換を実行する。
【0005】
この画像変換を、座標変換式を用いて行う方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
この方法では、液晶パネル上の整数座標に対応する実数座標を座標変換式によって算出し、実数座標の周囲にある画素データをフレームメモリから読み出して、補間演算により整数座標に書き込む画素データの値を求めることによって、台形歪みが補正された画像を液晶パネル上に形成する。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−29714号公報(第3−第4頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この特許文献1に開示された方法では、鉛直方向の歪み補正と、水平方向の歪み補正を同時に行うことができない。また、特許文献1には、鉛直方向の変換式は示されているが、水平方向の変換式が開示されていない。水平方向の変換は、一般的に、複数ラインの画素データの変換であるため、より複雑な式となると考えられる。このため、特許文献1に記載されたキーストン歪み補正方法が適用されたプロジェクターでは使い勝手が悪くなり、製品としての魅力に乏しい上、トータルの処理時間が長くなり処理効率が悪いという課題がある。
【0008】
また、プロジェクターを斜め方向から投射した場合に必要となる画像処理では、毎補間画素においてキーストン補正のための補間アドレスを算出すれば実用上問題ないレベルで画像を投影することができる。
しかしながら、図21(A)〜(C)に示すように、一枚の画像を分割し、複数のプロジェクターPGの画像をシームレスにつなぎあわせて表示することで任意のサイズのスクリーンSCRNを実現する「マルチ画面投射」や、複数のプロジェクターPGの画像をスクリーンSCRN上に重ねてダイナミックレンジを改善する「スタック投射」のような特殊な投影スタイルを実現しようとした場合、画像の位置を高精度に合わせ込む必要がある。
画像が少しでもずれると、つなぎ目が非連続になる、あるいは重なった画像ににじみを生じるという現象が起きてしまう。
【0009】
また、画像の任意の位置を調整するためには、キーストン補正を行うために算出した補間アドレスを所望の位置にずらせばよい。全ての補間アドレスをずらすような処理では規模が大きくなりすぎるため、一定間隔ごとに算出された補間アドレスをずらし、その間の画素については周辺の保持している補間アドレスから算出して用いることで現実的な規模にできる。
このとき、算出する補間アドレスの間隔が狭いほど高精度に調整が可能となるが、その一方で保存しておくアドレスの量が増えるのでCPUが処理するデータ量が多くなるという不利益がある。CPUで処理するデータ量は、プロジェクターを設置してから画像が映るまでの処理時間や設置設定を変化させたときの応答速度に大きくかかわるため、実際には補間精度の高い補間方法であるスプラインなどの高次数の関数を用いて算出する補間アドレスの間隔を広くする、あるいは、例えばCPUでキーストン補正用のパラメータだけ計算し、ハードウェアで一定間隔ごとに補間アドレスを計算といったハードウェアによる高速化が行われており、狭い間隔で補間アドレスをずらすことができないため高精度な合わせ込みが困難になっている。
【0010】
本発明の目的は、鉛直方向と水平方向に歪んだ画像の補正が可能であり、かつ、その補正時の処理の負担を軽減することができることはもとより、演算処理系で処理するアドレスの量を減らした場合においても、高精度な合わせ込み調整が可能な画像投射装置および画像処理方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点は、画像表示手段で形成した表示画像を投射面に光を利用して投射する画像投射装置であって、前記表示画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求め、当該代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成する演算手段と、前記代表点アドレスである基底アドレスと前記相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る補間アドレス生成手段と、投射したときに前記投射面上で歪みが補正される表示画像の画素データを、上記補間アドレスに基づいて入力画像の複数の画素データから補間により生成し、生成した画素データを、前記歪み画像のアドレスと所望の画像のアドレスとの対応関係から決められる前記画像表示手段の位置に出力するデータ補間手段とを有する。
【0012】
好適には、前記補間アドレス生成手段が、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間手段を有し、前記補間手段で算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
また、好適には、前記補間アドレス生成手段が、前記演算手段で生成された代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するアドレス生成手段と、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間アドレス算出手段と、を有し、前記補間アドレス算出手段で得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
【0013】
好適には、前記補間アドレス生成手段が、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間手段を有し、前記補間手段で算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る第1の補間アドレス生成回路と、前記演算手段で生成された代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するアドレス生成手段と、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間アドレス算出手段と、を有し、前記補間アドレス算出手段で得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る第2の補間アドレス生成回路と、を有する。
好適には、前記第1の補間アドレス生成部が行う補間では、前記第2の補間アドレス生成部が行う補間に用いる関数より高次の関数を用いる。
【0014】
好適には、前記サンプル間隔は、所定の補間関数で各補間画素のアドレスを算出した場合に、補間した位置精度が満足できる間隔である。
【0015】
本発明の第2の観点は、投射面に光を利用して投射する表示画像を画像表示手段に生成するために、少なくとも補間アドレスに基づいて入力画像を補正処理する画像処理方法であって、前記入力画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求める第1のステップと、第1のステップで求めた代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成する第2のステップと、前記代表点アドレスである基底アドレスと前記相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る第3のステップと、上記補間アドレスに基づいて入力画像の複数の画素データから補間により、前記表示画像が前記投射面上に投射された際の歪みが相殺されるように補正する第4のステップとを含む。
【0016】
好適には、前記第2のステップは、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出するステップを有し、算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
また、好適には、前記第2のステップは、前記演算手段で生成された代表点化の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するステップと、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出するステップと、を有し、前記得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
【0017】
好適には、前記第2のステップにおいて、補間に用いる関数が高次の関数の場合、代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出し、算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得、補間に用いる関数が前記高次の関数より低次の関数の場合、代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力し、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出し、算出して得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る。
【0018】
本発明によれば、歪み画像の代表点アドレスおよびこの代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを演算手段により生成する。そして、補間アドレス生成手段が、代表点アドレスである基底アドレスと相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る。これら2つの手段によって生成されたアドレスが歪み画像のアドレスを形成する。この歪み画像のアドレスと所望の画像のアドレスとの対応関係にもとづいて、歪み画像と所望の画像のアドレス対応関係が一義的に決まる。歪み画像というのは、もともと正矩形の画像を斜めに投射したときに投射面上に映し出された画像であることから、この関係が求まれば、逆に正矩形の画像を投射面上で得るための補正後の画像のアドレスがわかる。したがって、データ補間手段は、このアドレスの対応関係にもとづく画像表示手段の位置に、表示画像の新たな画素データを補間により生成する。以後、生成した表示画像を画像表示手段が投射すると、歪みが補正された所望の画像が投射面上に現出する。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の画像投射装置(プロジェクター)と、それに用いる画像変換方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に、フロントプロジェクターをスクリーンの正面に配置した場合に、これらを上方から見た図を示す。図1のプロジェクター1において、101はスクリーンを、OAは光軸を、PCNTはプロジェクター本体の中心を、SCNTはスクリーン中心を、LCNTはレンズ中心をそれぞれ示している。
図1に示す配置において、プロジェクター1の投射光の軸と映像が映るスクリーン101とが、上から見ると直交するように配置される。プロジェクター1で投射する映像はテレビ信号やコンピュータ画面の信号である。これらの信号に重畳された映像の表示領域の形状は、テレビやコンピュータディスプレイを見れば分かるように、信号によって画素数に違いはあるものの映像全体として4:3や16:9などの辺の比(アスペクト比)をもつ長方形である。プロジェクター1のLCDパネルに表示された長方形の映像は、まっすぐに投射しなければ投射された映像も長方形にならず、本来の映像の形をゆがめてしまう結果になる。
【0021】
図2は、正面に配置したプロジェクターの位置をP0としたときに、本発明の実施の形態におけるプロジェクター1の配置可能な範囲を示す図である。
プロジェクター1は、正面位置P0を含む水平面Ph内に配置でき、また、正面位置P0を含む垂直面Pv内に配置できる。さらに、プロジェクター1は、2つの平面Ph,Pvによって区切られる第1象限P1、第2象限P2、第3象限P3、第4象限P4のいずれにおいても任意に配置できる。
プロジェクター1は、その内部のLCDパネルの表示画像を、上述した範囲内であればどの位置からでも投射可能である。
本実施形態に係るプロジェクター1は、投射位置に応じた画像の歪みを補正する機能を有しているので、この機能を働かせれば恰も正面から投射したときと同じアスペクト比をもった正四角形の画像をスクリーン101上に映し出すことができる。この補正を、キーストン歪み補正という。
【0022】
図3(A)に、水平面内でスクリーンに向かって左横からの画像投影イメージを示す。図3(B)に入力画像イメージを、図3(C)にプロジェクターに内蔵されたLCDパネル面上での画像イメージを示す。
図3(A)に示すように、スクリーン101に向かって左横にプロジェクター1を配置して投射しているが、スクリーン101上の映像は正面から投射しているときと同じように見える。本来であれば、投射された画面は図中の斜線部を含め全体が台形に歪んだように変形するはずである。これを横キーストン変形といい、横キーストン変形を補正することを横キーストン補正という。
このように横に置いたプロジェクター1から画像を投射して、それが正面から投射したかのようにスクリーン101上で映るには、あらかじめプロジェクター1の投射位置によって画像がどのように歪むかを計算しておく必要がある。このとき、あらかじめプロジェクター1側で投射により変形する形状によって、パネル上で逆方向に変形するような補正処理を行うことにより、投射したときに歪む形に対して逆の方向に歪ませた画像を作り、それを投射することで横方向から投射しても画像を正面から投射した時と同じように見せることができる。
上記具体例で図3(A)のような投射映像を得るためには、図3(B)の入力画像を図3(C)のようにLCDパネル面上で変形させて表示させ、この表示画像をスクリーン101に投影する。これにより、スクリーン101上での変形と相殺されて歪まない画像となる。
【0023】
図4(A)に、図2における第3象限P3からの画像投影イメージを示す。また、図4(B)に入力画像イメージを、図4(C)にLCDのパネル面上での画像イメージを示す。
図3(A)の横キーストン歪みは台形歪みであったが、これに垂直方向の歪み成分が加わった図4(A)の場合、さらに歪み形状が複雑になる。図4(A)に示す正四角形の補正後の投影画像を得ようとすると、LCDパネル表示画像は、図4(C)に示すように画像をLCDパネル面内で回転させたようにする必要がある。
図4(C)および図3(C)のいずれの場合でも、補正前の投影画像形状と逆に歪ませた画像をLCDパネル面の有効表示領域一杯に表示すれば、解像度、明るさの低下が極力抑えられた正四角形の投影画像がスクリーン上に得られる。
【0024】
以下、入力画像をLCDパネルの表示画像に変換することによって、このような補正が可能な画像投射装置と画像変換方法の実施の形態を、より詳細に説明する。この画像変換では、図4(A)のように第3象限P3からの投射の場合を例に水平および垂直の歪みを同時に補正可能なアドレス生成の一般式を求める。水平のみ、あるいは垂直のみの歪み画像は、この一般式において水平または垂直の投射角度がゼロの場合で表現できる。また、第3象限以外の他の象限からの投射は、式が異なるのみで考え方は同じである。
【0025】
[第1の実施の形態]
図5に、本発明に係る画像投射装置としてのプロジェクターの基本構成を示す。
プロジェクター1は、図5に示すように、映像信号(入力信号)IMに種々の信号処理を施す回路、各種駆動系の回路を含む回路部2を有する。回路部2は、信号処理回路内の一部に、制御手段および演算手段として中央演算処理部(CPU)2a、補間アドレス生成部2b、および、データ補間部2cを含む。
【0026】
プロジェクター1は、入力信号に各種信号処理を施した信号が示す入力画像を画像変換して得られた表示画像3aを表示する画像表示装置3、たとえばLCDパネルを有する。また、プロジェクター1は、表示画像3aを外部に投射するための光源を含む投光部4と、各種レンズを含む光学部5とを有する。LCDパネル3は透過型と反射型の何れでもよいが、いずれにしても表示画像3aが、光学部5を通って投射面としてのスクリーン101に投影画像101aとして映し出される。
演算手段としてのCPU2aは、画像変換に必要な歪み画像のアドレスのうち、任意のサンプリングレートでサンプリングされた代表点アドレスを演算により算出する。CPU2aは、アドレス同士の相対関係を求める手段(以下、マッピング手段という)としても機能する。CPU2aは、他の構成を制御する役目もある。代表点アドレスの演算およびアドレスの対応付け(マッピング)についての詳細は後述する。
【0027】
プロジェクター1は、LCDパネル3の表示画像とスクリーン101との相対的な関係を示す相対関係情報を取得する相対関係取得部6を有する。
相対関係取得部6は、たとえば、少なくとも、表示画像のスクリーン101までの距離と、光学部5の光軸とスクリーン面とのなす角度とを取得する。
相対関係取得部6としては、外部から相対関係情報を入力する入力部、ボタンスイッチ等の外部の操作パネル部、想定される相対関係情報をあらかじめ記憶した記憶装置(たとえば、ROM/RAM)、あるいは相対関係を自ら検出する検出系など、種々の形態がある。
【0028】
液晶などの固定画素のパネルを用いるプロジェクターでは、入力された入力画像の画素数と出力画像の画素数とが異なる場合がある。そのため、プロジェクター1は、画素数を変換するための信号処理機能を備えている。これをスケーリング機能と呼ぶが、この処理では、本来画素データの無い位置でのデータが必要になり、画素の補間演算が行われる。
補間演算では、周辺の画素のデータを用いて目的の位置の画素データを作り出す。この機能は、たとえば、イメージプロセッサと称される画像処理回路内に、スケーラと呼ばれる回路ブロックを内蔵させることにより実現される。
なお、本実施形態においては、補間アドレスの算出法として、後で詳述するように、プロジェクター1の投射角度設定に対して、キーストン補正のための計算を行って得られる補間アドレスからの水平方向と垂直方向へのオフセット(隔たり)をもつ相対アドレスをもたせることによって間接的に最終的な補間アドレスを示し、このオフセットを調整することによって画像の任意の位置をずらすような調整ができるように構成される。
【0029】
図6は、図5の回路部2に含まれる画像処理回路、すなわちイメージプロセッサとその周辺の回路ブロックの一構成例を示す図である。
図解した画像処理回路は、コムフィルタ(Comb Filter)21、クロマデコーダ(Chroma Decoder)22、セレクトスイッチ(SW)23、アナログ−ディジタル・コンバータ(A/D)24、イメージプロセッサ(Image Processor)25、SDRAM等からなる画像メモリ26、および、CPU2aを有する。このうち、イメージプロセッサ25とCPU2aが、画像変換の機能を実現するための一実施態様に該当する。なお、これらの画像メモリ26やCPU2aの機能をイメージプロセッサ25内に一体化させてもよい。
【0030】
図解した画像処理回路は、コンポジットビデオ信号(以下、Video信号)、Y/C信号、RGB信号の何れの映像信号にも対応している。Video信号はコムフィルタ21に、Y/C信号はクロマデコーダ22に、RGB信号はセレクトスイッチ23に、それぞれ入力される。いま、Video信号が入力されている場合を考えると、コムフィルタ21でY/C信号に変換され、続くクロマデコーダ22でYUV信号に変換される。セレクトスイッチ23によって選択された信号がA/D24により変換されてディジタル信号になる。この信号がイメージプロセッサ25に入力され、所望の信号処理が行われる。このとき、イメージプロセッサ25の処理がCPU2aにより制御され、処理中に、適宜画像メモリ26が使用される。所望の信号処理が行われた後は、処理後の信号がたとえばLCDパネル3に送られ、この信号に基づいてLCDパネル3に投射する画像が表示される。
【0031】
図7に、イメージプロセッサ内部の回路ブロックの一構成例を示す。
イメージプロセッサ25は、IP(Interlace−Progressive)変換部251、スケーラ252、CPUインターフェース253、メモリ制御部254、および記憶装置255を有する。スケーラ252は、補間アドレス生成部2b、係数発生部257、およびフィルタ演算部258を有する。このうち、係数発生部257とフィルタ演算部258が図5におけるデータ補間部2cの一実施態様に該当する。
【0032】
イメージプロセッサ25に入力された映像信号はIP変換部251に送られ、ここでインターレース信号がプログレッシブ化される。この処理では画像メモリ26を用いるが、メモリインターフェースとしてのメモリ制御部254にIP変換部251が接続されることによって、IP変換部251は画像メモリ26との間で画像データのやり取りを行う。プログレッシブ化された信号は、スケーリング処理を行うためにスケーラ252に送られる。
【0033】
スケーラ252の内部では、補間アドレス生成部2bにおいて、歪み補正に必要なアドレスのうち、前述した代表点アドレスの代表点基底アドレスと代表点相対アドレスに基づいて絶対アドレスを生成し、生成したアドレスを補間アドレスとする。
フィルタ係数を係数発生部257で発生させ、発生させたフィルタ係数をフィルタ演算部258に供給する。フィルタ演算部258が、与えられたフィルタ係数を用いた補間演算処理を行い、入力した映像信号が示す入力画像が、所定の大きさと形状を有したLCDパネルの表示画像に変換される。この変換後の表示画像の信号が出力され、LCDパネル3に送られる。この補間演算に用いるアドレスやフィルタ係数などのデータを保持する記憶装置255がスケーラ252に接続され、これら一連の処理を含むイメージプロセッシングを制御するCPU2aのインターフェース253がIP変換部251、スケーラ252および記憶装置255に接続されている。
【0034】
図6に図解した例において、相対関係取得部6(図1)からの相対関係情報がCPU2aに入力される。CPU2a自身によって、さらに、CPU2aに制御されながらイメージプロセッサ25内の補間アドレス生成部2bによって、入力画像を表示画像に効率よく変換するための歪み画像データのアドレスが生成される。本実施の形態の画像変換では、アドレス生成手法に大きな特徴の1つがある。
【0035】
以下、アドレス生成手法の実施の形態を、図面を用いて詳しく説明する。
また、以下の説明では、フロントプロジェクターの表示画像を、スクリーンに対して正面の位置を基準に、垂直方向にα度上向きで、水平方向ではスクリーン正面から左にβ度回転した位置から斜めに投射する場合を主に説明する。角度αおよびβが正の場合、投射位置は図2の第3象限P3に属する。他の象限からの投射時の補正は、ほぼ同じような考え方、方法で行える。このとき入力信号としてVGA(640画素×480ライン)の解像度をもつ映像信号が入力され、これをSVGA(800画素×600ライン)に解像度変換し、また斜め方向から投射する場合のスクリーン上の投影画像の歪みをとる補正も画像変換処理で行う場合について説明する。
【0036】
図8(A)に、正面投射の場合の右手座標系におけるプロジェクター1とスクリーン101の位置関係を示す。また、それに対応したyz平面図を図8(B)に、xy平面図を図8(C)に、それぞれ示す。このとき、プロジェクター1の位置座標を(Px,Py,Pz)、スクリーン101上の任意の点の位置座標を(Sx,Sy,Sz)で表す。位置座標(Px,Py,Pz)と(Sx,Sy,Sz)により決まるスクリーン101とプロジェクター1の距離、および、前記斜め投射角度αとβが、前述した相対関係情報である。
図8(B)および図8(C)に示すように、正面投射ではスクリーン面と光軸が直交する。ただし、光軸はスクリーン中央ではなく下寄り位置、ここではスクリーン下辺中央付近でスクリーン面と交差している。フロントプロジェクターは机の上に配置し、あるいは天井から吊るような配置を取る場合、レンズの中心とスクリーンの中心を結ぶ線が地面と平行にはならないように両者を配置させるためである。これはプロジェクターを机に置いて投射したときなどに、投射する画像の下端部分が机に映ってしまわないようにするための仕様であり、光学オフセットと称される。
【0037】
図9(A)に、垂直方向にα度上向きで、水平方向については向かって左手からスクリーンに対しβ度の角度で斜めに投射する場合、右手座標系におけるプロジェクターとスクリーンの位置関係を示す。また、yz平面図を図9(B)に、xy平面図を図9(C)に、それぞれ示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向にα度、水平方向に(−β)度となる。
【0038】
ここで、キーストン歪み補正を考えやすくするために相対的な視点を変えることを考える。図9(A)〜図9(C)ではプロジェクター1の位置を動かして斜め方向から投射していたが、ここでは、相対的な位置関係を維持したままでプロジェクター1は動かさずに、スクリーン101を、その場で軸回転させることを想定する。
図10(A)〜図10(C)に、スクリーンを軸回転させた場合の図9(A)〜図9(C)と等価的な斜め投射の位置関係を示す。このとき、右手座標系で表現するとスクリーンを、その下辺(x軸)を中心に直立位置からy方向(背面側)に(−α)度傾かせ、向かって左側の辺(z軸)を中心に左回転方向にβ度回転させる。つまり、図10(B)と図10(C)に示す傾きおよび回転の角度は、図9(A)〜図9(C)に示すプロジェクターの設置位置からの投射角度に対して符号が逆になる。
【0039】
以下、図10(A)〜図10(C)のように、正面の位置にプロジェクター1があり、この位置から傾いたスクリーン(以下、101tと表記)に映像を投射した場合に、投射された映像(投影画像)がどのように変形しているかを考える。
プロジェクター1が投射する光は、図9(A)でスクリーン101のあったzx平面上を通過して傾いたスクリーンに映る。傾いたスクリーン101tがある平面は、原点を中心に垂直に(−α)度、水平にβ度回転しているので、原点を中心とした回転行列を用いて表現することができる。本実施の形態では水平と垂直の回転なので、先に水平方向に回転させた後に、次に垂直方向の回転を行う手順によって回転行列が定義される。具体的には、zx平面の法線ベクトル(nx,ny,nz)が、回転によって次の行列式(1)で表現される。
【0040】
【数1】
【0041】
プロジェクター1の位置とスクリーン101の位置していたzx平面上の点を結ぶ直線を考え、この直線と行列式(1)の法線ベクトルをもつ平面との交点を求めれば、傾いたスクリーン101tの平面に映る座標点が求まる。この傾いた座標点に対して、図9(A)のように視点をスクリーンの正面において見る場合には、再び反対向きの回転として原点を中心に垂直にα度、水平に(−β)度回転させればよい。すると、斜め方向から投射した場合に歪む形が求められる。このような方法によって導出されたx方向、y方向、z方向の座標を、それぞれ次式(2−1)、(2−2)、(2−3)に示す。
【0042】
【数2】
【0043】
これらの式で表される(Kx,Ky,Kz)は、図9(B)に示すようにプロジェクター1を垂直にα度上向きで、図9(C)のように水平方向にスクリーン101に対して左から(−β)度の角度で投射するとき、キーストン歪みによって変形された座標である。
図11(A)および図11(B)に、座標関係についてまとめて示した。これらの図で(Sx,Sy,Sz)はスクリーンの座標であり、正面投射の場合にスクリーン上に正四角形に映し出される入力画像の座標に相当する。また、座標(Kx’,Ky’,Kz’)は図10(B)および図10(C)のように斜めに傾いたスクリーン101tの平面上に投射された座標である。上述のように(Kx,Ky,Kz)はキーストン歪み変形座標である。
このように、前述した3つの式(2−1)、(2−2)、(2−3)により、任意の方向からの投射によってもたらされるキーストン歪変形座標が与えられる。
【0044】
つぎに、出力信号(表示画像)の解像度に合わせた座標の、式(2−1)、(2−2)、(2−3)による変形座標を求める。つまり、SVGA出力の場合、歪む前の画像のx座標Sxは0から799まで変化し、z座標Szは0から599まで変化するが、このときのキーストン歪み後のx座標Kxとz座標Kzを求める。なお、y座標SyとKyは、画像がzx平面にあるのでゼロである。
【0045】
図12(A)に正面投射のSVGA出力画像のアドレスマップのイメージPIOUT、図12(B)にα=10、−β=−30として座標変換したキーストン変形後のSVGA出力画像のアドレスマップのイメージ(以下、歪み画像イメージ)PIKを示す。ここでは、図示の都合上すべての画素位置のサンプルリング点を示さず、33画素ごとに1つのドットでサンプリング点を代表させている。
式(2−1)および式(2−3)を用いて実際に座標変換によって生成された代表点アドレスは、33画素ごとのアドレスのうち(33×3)画素ごとに示す白丸印のアドレスである。図5および図7に示すCPU2aが代表点アドレスを生成する。
代表点アドレス間に存在する、黒丸のアドレスを含む他のアドレスは、式を用いた演算により生成しないで、図5および図7に示す補間アドレス生成部2b、たとえば複数タップの補間回路から生成される。この最終的なアドレスを、以下、画素データの補間処理に用いるアドレスという意味で、「補間アドレス」という。補間方法に限定はなく、たとえば、バイリニア補間を含む線形補間方法、スプライン補間などの非線形補間方法のいずれを採用してもよい。線形補間を採用すると、補間アドレス生成部2bの構成が簡単になる利点がある。ただし、アドレスの変換精度を高く維持しようとすると代表点アドレスのサンプリングレートを余り低くしないようにすることが望ましい。
【0046】
ここで、本実施形態に係る補間アドレス生成部2bの具体的な構成および機能について、図13、図14、および図15に関連付けて説明する。
【0047】
なお、本実施形態においては、補間アドレスの算出法として、前述したように、プロジェクター1の投射角度設定に対して、式(2−1)、(2−2)、(2−3)にあるように、キーストン補正のための計算を行って得られる補間アドレスからの水平方向と垂直方向へのオフセット(隔たり)をもつ相対アドレスをもたせることによって間接的に最終的な補間アドレスを示し、このオフセットを調整することによって画像の任意の位置をずらすような調整ができるようになる。
【0048】
最初に、設定された投射角度に対してキーストン補正を行うための補間アドレスを算出する。このとき、実際に補間関数として使用する関数で各補間画素のアドレス算出した場合に、補間した位置精度が満足できる間隔をサンプル間隔とする。この条件を満足するサンプル間隔で必要な部位の補間アドレスを水平方向と垂直方向にそれぞれ算出する。
【0049】
補間アドレス生成部2bは、図13に示すように、算出する補間点の間隔をスプラインやキュービック関数などの非線形な補間を行う場合に補間精度の高い、一般的に高次数の補間関数を用いることを想定したサンプル間隔が広い場合と、図14に示すように、さらに簡易的な手法である線形補間などの線形な補間を行う場合に補間精度の低い、一般的に低次数の補間関数を用いることを想定したサンプル間隔が狭い場合で異なる構成を取ることが可能である。
【0050】
サンプル間隔が広い場合の補間アドレス生成方法
この場合、図13の回路(第1の補間アドレス生成回路)構成が採用される。
スプラインやキュービック関数などの非線形な補間を行う場合に補間精度の高い、一般的に高次数の補間関数を用いる場合のサンプル間隔は広くなる。いまこの最初に求める補間精度の高い補間関数を想定したサンプル間隔の補間アドレスを「代表点基底アドレス」と呼ぶことにする。
この「代表点基底アドレス」に対して、さらに間隔を細かくした代表点を求める。このときの補間関数は代表点基底アドレスで定めたサンプル間隔で想定した補間手法よりも簡易的な手法を用いる。つまり、サンプル間隔は線形補間のようなキーストン補正にとって補間精度の低い補間で補間した場合でも所望の精度が満足できる程度の間隔であるとする。
この条件を満足するサンプル間隔で必要な部位の補間アドレスに対して水平方向と垂直方向にずらすためオフセットをもつアドレスを「代表点相対アドレス」と呼ぶことにする。ここで相対アドレスとしてあるのは、オフセットのデータだけ操作すれば画面上の微妙な位置合わせができるので調整が容易であり、さらに保持するデータ量を減らすことができるためである。
算出された代表点基底アドレスは、図13のように補間代表点アドレス用のテーブルに垂直方向と水平方向のアドレス値を書き込んで保持しておく。また、代表点相対アドレスも同様に代表点相対アドレス用のテーブルに垂直方向と水平方向のオフセット値を書き込んで保持しておく。
次に、代表点基底アドレスと代表点相対アドレスに対して、代表点と代表点の間を埋める補間回路で、すべてのポイントを求め絶対アドレス化したものを最終的な補間アドレスにする。
【0051】
図13の第1の補間アドレス生成回路2b−1は、補間代表点アドレステーブルを記憶する記憶回路201、補間代表点相対アドレステーブルを記憶する記憶回路202、代表点から個別点への補間回路203,204、および絶対アドレス生成回路205を有する。
この場合は、CPU2aは、設定した投射角度で代表点のみキーストン歪みのアドレス計算を行い、これを代表点アドレスとして記憶回路201に記憶する。CPU2aは、代表点のみの位置調整の相対アドレステーブルを作成し、代表点相対アドレスとして記憶回路202に記憶する。記憶回路201には、キーストン補間アドレスの代表点のみのテーブルが記憶され、記憶回路202には、位置調整オフセットの代表点のみのテーブルが記憶される。
そして、記憶回路201に記憶された補間代表点アドレスが代表点基底アドレスとして補間回路203に供給される。同様に、記憶回路202に記憶された補間代表点相対アドレスが補間回路204に供給される。
補間回路203は、代表点基底アドレスに基づいて代表点から個別点への補間処理を行い、その結果を補間基底アドレスとして絶対アドレス生成回路205に出力する。補間回路204は、代表点相対アドレスを受けて代表点から個別点への補間処理を行い、その結果を補間相対アドレスとして絶対アドレス生成回路205に出力する。
そして、絶対アドレス生成回路205は、補間基底アドレスおよび補間相対アドレスに基づいて絶対アドレスを生成し、これを補間アドレスとして出力する。
【0052】
サンプル間隔が狭い場合の補間アドレス生成方法
この場合、図14の回路(第2の補間アドレス生成回路)構成が採用される。
簡易的な手法である線形補間などの線形な補間を行う場合に補間精度の低い、一般的に低次数の補間関数を用いる場合は、補間アドレスのサンプル間隔は狭くなる。
このとき、CPU2aが処理するデータ量が多くなるため、図14のようにCPU2aから与えられたキーストン補正用パラメータから狭い間隔の補間アドレスを生成する補間代表点アドレス生成回路211が実装されている。
いまこの補間代表点アドレス生成回路211が算出する補間精度の低い補間関数を想定したサンプル間隔の補間アドレスを「代表点基底アドレス」と呼ぶことにする。この「代表点基底アドレス」に対して、水平方向と垂直方向にずらすためオフセットをもつアドレスを「代表点相対アドレス」と呼ぶことにする。
代表点相対アドレスは補間代表点相対アドレス用のテーブルに垂直方向と水平方向のオフセット値を書き込んで保持しておく。
次に、補間代表点アドレス生成回路により算出された代表点基底アドレスと代表点相対アドレスから絶対アドレス化した代表点アドレスに対して、代表点と代表点の間を埋める補間回路で、すべてのポイントでの補間アドレスを求めたものを最終的な補間アドレスにする。
【0053】
図14の第2の補間アドレス生成回路2b−2は、補間代表点アドレス生成回路211、補間代表点アドレステーブルを記憶する記憶回路212、絶対アドレス生成回路213、および代表点から個別点への補間回路214を有する。
この場合は、CPU2aは、設定した投射角度で代表点のみキーストン歪みのパラメータ計算を行い、これを代表点パラメータとして補間代表点アドレス生成回路211に供給する。CPU2aは、代表点のみの位置調整の相対アドレステーブルを作成し、代表点相対アドレスとして記憶回路202に記憶する。記憶回路201には、キーストン補間アドレスの代表点のみのテーブルが記憶され、記憶回路202には、位置調整オフセットの代表点のみのテーブルが記憶される。
そして、補間代表点アドレス生成回路211は、CPU2aから与えられたキーストン補正用パラメータに基づいて、狭い間隔の補間アドレスを生成し、代表点基底アドレスとして絶対アドレス生成回路213に出力する。また、記憶回路212に記憶された補間代表点相対アドレスが絶対アドレス生成回路213に供給される。
そして、絶対アドレス生成回路213は、補間基底アドレスおよび補間相対アドレスに基づいて絶対アドレスを生成し、これを代表点アドレスとして補間回路214に出力する。
補間回路214は、代表点アドレスに基づいて代表点から個別点への補間処理を行い、その結果を補間アドレスとして出力する。
【0054】
具体的な処理内容を図15に関連付けて説明する。
図15にはキーストン補正用の代表点基底アドレスB0〜B3、位置調整用の代表点相対アドレスR0〜R3と各補間アドレスについての関係を示した。ここでは例として、補間間隔が狭い場合の補間アドレス生成方法で、代表点基底アドレスと代表点相対アドレスの間隔を32画素おきの間隔の関係を持っていると想定する。これは図示上の都合で選んだサンプル間隔であり、実際にはもっとサンプルを粗くすることができる。また、各補間アドレスを求める際の補間に線形補間を用いる場合を想定している。
通常の投射スタイルであれば、画像の合わせ込みは必要ないので、代表点基底アドレスB0〜B3と代表点相対アドレスR0〜R3は重なった状態である。
ここで、特殊な投射スタイルで画像の合わせ込みが必要になった場合で、たとえば、代表点基底アドレスB0に近い画像の位置を右下にずらしたいような場合では、代表点基底アドレスB0に対して代表点相対アドレスR0を右下にずらすことにより、各補間アドレスも同様に右下にずれることになり、結果として画像上の任意の位置をずらすことが可能となる。
以上の操作により、キーストン歪み補正と高精度な位置調整に必要となる全画素の補間アドレスを求める補間アドレス生成部2bとしての機能が果たされる。
【0055】
つぎに、図16(A)のように、補正により得たい画像のイメージ(スクリーン上に実現したい投影画像の仮想のイメージ、以下、投影画像イメージという)PIを、図12(B)に示す歪みによって変形した座標空間上に重ねる。これにより歪み画像イメージPIKに投影画像イメージPIがマッピングされ、両画像のアドレスの対応関係が決まる。このとき、入力した入力画像はVGAだが、画像の大きさと位置を調整するために、投影画像イメージPIを任意の大きさ(たとえば、SVGAの大きさ)で、変形したアドレス空間(歪み画像イメージPIK)内の任意の位置に配置することができる。ただし、投影画像イメージPIが歪み画像イメージPIK内に完全に収まるようにしないと、次に行う補間後に画像の一部が欠けてしまう。したがって、望ましくは、所望のアスペクト比(本例では、4:3)の投影画像イメージサイズが歪み画像のアドレス空間内で最大限となることを規定しておく。すると、この投影画像イメージPIの位置と大きさは単なる図形問題に帰結し、たとえば図16(A)のような位置とサイズで、投影画像イメージPIと歪み画像イメージPIKとの関係が一意に決まる。
【0056】
このようなマッピング(アドレスの対応付け)は、歪み画像イメージPIKのアドレス分布がすでに前記した式(2−1)、(2−2)、(2−3)から求められているので、実際の物理メモリ(記憶資源)を用いずとも、たとえばCPU2a内で仮想メモリ空間を想定して実行できる。このため、マッピング自体が高速な上に物理メモリとのデータのやり取りがなくて効率がよく、数回やり直しても、その処理の合計時間が画像変換全体の時間に占める割合は極めて小さい。もちろん、CPU2aが容量的に不足する場合は、たとえば記憶装置255を用いて適宜マッピングを行っても構わない。
【0057】
マッピングにより得られたアドレスの対応関係は、歪み画像と、歪みがなくスクリーン上で正四角形となる所望の投影画像とのアドレス対応関係であるが、歪み画像というのはもともと歪みがない正四角形のLCDパネル上の画像の投影の結果である。したがって、上記アドレスの対応関係を利用して、歪みがないスクリーン上の投影画像を得るためのLCDパネル3の表示画像が生成できる。
具体的な方法としては、SVGA出力の場合、LCDパネル3の有効表示領域の座標は800×600個になるが、このすべての点について、マッピングされた画像のアドレスで補間を行う。このとき800×600個の各点での補間のうち、図16(A)に示す歪み画像イメージPIKと投影画像イメージPIとが重なる領域のすべてのアドレスでの補間では、投影画像のように画像データを再現できるようにフィルタ係数が選択され、その画像再現に必要な原画像の複数の画素データを上記フィルタ係数で重み付けして新たな画素データを合成する。合成後の画素データは、マッピングにより求めた上記アドレス対応関係に基づいて、4:3のアスペクト比の正四角形画面であるSVGA画面内のどの位置に配置するかを一意に決めるアドレスに割り当てられる。一方、図16(A)に示す投影画像イメージPI周囲の歪み画像イメージPIK内領域の補間では、画像データがない黒色画素同士の合成となり、したがって補間後も黒色の画像データがSVGA画面内の対応位置に割り当てられる。
【0058】
図16(B)に、このような画像変換手順により生成されたSVGA出力画像を示す。この画像がキーストン歪み補正を行った画像である。この画像を図4(C)のようにLCDパネルに表示させ、図4(A)のように投影すると、スクリーン上で正四角形の投影画像が得られる。マッピングにより得られたアドレスの対応関係は、上述したようにイメージサイズ同士の重なる面積が最大となるように決められていることから、スクリーン上の投影画像は明るさおよび解像度の低下が最小に抑えられている。
【0059】
なお、代表点アドレス間の他のアドレスを補間により生成する場合、周囲の代表点アドレスの座標を用いて新たにアドレスを生成する。したがって、この場合、図17に示すように、周囲に余分に代表点アドレスを予め生成することが望ましい。この図17では、(33×5)画素ごとに代表点アドレスを生成している。
【0060】
前述した図12(A)および図12(B)の説明では、出力画像イメージPIOUTを出力画像(SVGA画像)の大きさに合わせて600×800個のアドレスで与え、これを変形させて歪み画像イメージPIKを生成した。そして、図16(A)に示すように、歪み画像イメージに対し、投影画像イメージPIの大きさと位置を変えながら重ね、重ねた後の両画像イメージから、歪み補正に必要なアドレス対応関係を求める手法を採った。
これと同じアドレス対応関係は、次の手法でも求めることができる。
図12(A)において出力画像イメージPIOUTを入力画像(VGA画像)と同じ640x480個のアドレスで与え、これを変形させて歪み画像イメージPIKを生成し、図16(A)では、歪み画像イメージPIKの大きさを変える一方で、投影画像イメージPIの大きさは最初からSVGA対応として変化させず、その位置のみを変えて両画像イメージの最適な重ね合わせを行う。このような手法でも、結果は図16(A)と同じとなる。
【0061】
以上は、スクリーンに向かって左下位置(第3象限P3)からの投射時の歪み補正を述べたが、他の位置からの投射の場合、歪み座標を求める式が異なるのみで、上述した補正方法の手順は同じである。
【0062】
図18(A−1)と図18(B−1)に、スクリーン101に向かって右下位置(第4象限P4)からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図を示す。また、プロジェクター1の投射位置は正面投射から動かさないとしたときに、同じ相対関係となるようにスクリーン101を軸回転させた場合のxy平面図とyz平面図を、図18(A−2)と図18(B−2)に示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向に(−α)度、水平方向に(−β)度となる。
傾いたクリーン101tに投射されたキーストン歪み座標を求める式を、次式(3−1)、(3−2)、(3−3)に示す。
【0063】
【数3】
【0064】
図19(A−1)と図19(B−1)に、スクリーン101に向かって左上位置(第2象限P2)からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図を示す。また、プロジェクター1の投射位置は正面投射から動かさないとしたときに、同じ相対関係となるようにスクリーン101を軸回転させた場合のxy平面図とyz平面図を、図19(A−2)と図19(B−2)に示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向にα度、水平方向にβ度となる。
傾いたスクリーン101tに投射されたキーストン歪み座標を求める式を、次式(4−1)、(4−2)、(4−3)に示す。
【0065】
【数4】
【0066】
図20(A−1)と図20(B−1)に、スクリーン101に向かって右上位置(第1象限P1)からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図を示す。また、プロジェクター1の投射位置は正面投射から動かさないとしたときに、同じ相対関係となるようにスクリーン101を軸回転させた場合のxy平面図とyz平面図を、図20(A−2)と図20(B−2)に示す。このとき、右手座標系の回転角度は垂直方向にα度、水平方向に(−β)度となる。
傾いたスクリーン101tに投射されたキーストン歪み座標を求める式を、次式(5−1)、(5−2)、(5−3)に示す。
【0067】
【数5】
【0068】
本実施の形態では、このようにキーストン歪み変形座標をスクリーンとの相対関係情報を用いた式で求め、歪みがない所望の画像とキーストン歪み画像とのマッピングによりアドレスの相対関係を求め、アドレス相対関係にもとづいた補間処理によりLCD表示画面を生成する。マッピングは仮想メモリ空間で実行できるので、実際の画像メモリをこの処理のために占有することなく、効率がよい。また、上記式(または歪み計算のアルゴリズム)は、たとえば相対関係情報に基づいて適した式(またはアルゴリズム)をCPU2aが記憶装置255から読み出すことによって切り換えることができる。したがって、本実施の形態にかかるプロジェクター1は、スクリーン面が見える位置なら任意の位置からの投射であっても効率良くキーストン歪み補正が可能で、設置自由度が高い。また、マッピング時に解像度変換を自由に行え、また出来る限り最大の解像度となるような設定が可能なため、その点でも効率が良く、出来るだけ高い解像度で明るい画像が容易に得られる。
さらに、CPU2aの負荷が大きい、式を用いたアドレス計算の対象を代表点に絞り、他のアドレスは補間により生成しているため、この点でも効率がよい。
【0069】
また、本実施形態によれば、キーストン補正の処理と位置調整の処理を切り離して考えられるので、歪み補正代表点のサンプル間隔が荒い場合やサンプル間隔が細かくても歪み補間代表点をCPU2aから直接設定できないような場合においても画面上の調整ポイントを多くもち、微調整することが可能となる。
また、CPU2aで処理するデータの量を少なくすることができ、かつ調整用のデータを相対的にもつことでデータそのものも小さくできるので、プロジェクターを設置してから画像が映るまでの処理時間や設置設定を変化させたときの応答速度を高速化できる。
以上の効果により、プロジェクターで高精度な位置合わせが要求される「マルチ画面投射」や、「スタック投射」のような特殊な投影スタイルにおいても容易に設置調整することができるようになる。
なお、本発明の信号処理は、ハードウェアを含めた形で実現することを前提としているが、ソフトウェアで実現することも可能である。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、アドレス計算点の増加または計算式の複雑化によって増大するアドレス計算の負担が軽減され、処理の高速化を図ることができる。またアドレス生成を回路により実現する場合は、その回路規模を縮小することが可能となる。
また、本発明によれば、キーストン補正の処理と位置調整の処理を切り離して考えられるので、歪み補正代表点のサンプル間隔が荒い場合やサンプル間隔が細かくても歪み補間代表点をCPUから直接設定できないような場合においても画面上の調整ポイントを多くもち、微調整することが可能となる。
また、CPUで処理するデータの量を少なくすることができ、かつ調整用のデータを相対的にもつことでデータそのものも小さくできるので、プロジェクターを設置してから画像が映るまでの処理時間や設置設定を変化させたときの応答速度を高速化できる。
以上の効果により、プロジェクターで高精度な位置合わせが要求される「マルチ画面投射」や、「スタック投射」のような特殊な投影スタイルにおいても容易に設置調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態におけるフロントプロジェクターをスクリーンの正面に配置した場合に、これらを下方から見た図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるプロジェクターの配置可能な範囲を、正面配置の位置を中心として示す図である。
【図3】(A)は横からの画像投影時の図、(B)は入力画像イメージを示す図、(C)はLCDパネル面上での画像イメージ図である。
【図4】(A)は正面位置から水平と垂直の双方の方向にずれた位置からの斜め投射時の図、(B)は入力画像イメージ、(C)はLCDのパネル面上での画像イメージである。
【図5】本発明の実施の形態におけるプロジェクターの基本構成を示す図である。
【図6】第1の実施の形態のプロジェクターにおいて、図1の回路部に含まれる、イメージプロセッサとその周辺の回路の一構成例を示すブロック図である。
【図7】イメージプロセッサ内部の回路の一構成例を示すブロック図である。
【図8】(A)は正面投射の場合の右手座標系におけるプロジェクターとスクリーンの位置関係を示す図である。(B)はyz平面図、(C)はxy平面図である。
【図9】(A)は垂直投射角α度、水平投射角β度の場合に、右手座標系におけるプロジェクターとスクリーンの位置関係を示す図である。(B)はyz平面図、(C)はxy平面図である。
【図10】(A)〜(C)は、スクリーンを軸回転させた場合の図9(A)〜図9(C)と等価的な斜め投射の位置関係を示す図である。
【図11】(A)および(B)は座標関係についてまとめて示す図である。
【図12】(A)は正面投射のSVGA出力画像のアドレスマップのイメージ図、(B)はキーストン変形による歪み画像イメージ図である。
【図13】本実施形態に係る第1の補間アドレス生成回路の構成例を示すブロック図である。
【図14】本実施形態に係る第2の補間アドレス生成回路の構成例を示すブロック図である。
【図15】本実施形態に係る補間アドレス生成部の具体的な処理を説明するための図である。
【図16】(A)はマッピング時に2つの画像イメージを重ねた図、(B)は補間演算により生成したLCDパネルの表示画面である。
【図17】代表点アドレスの取り方の変形例を示す、マッピング時の画像イメージ図である。
【図18】(A−1)〜(B−2)は、スクリーンに向かって右下からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図、およびそれらと等価な平面図である。
【図19】(A−1)〜(B−2)は、スクリーンに向かって左上からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図、およびそれらと等価な平面図である。
【図20】(A−1)〜(B−2)は、スクリーンに向かって右上からの投射時における右手座標系のxy平面図とyz平面図、およびそれらと等価な平面図である。
【図21】プロジェクターの特殊な投射スタイルを説明するための図である。
【符号の説明】
1…プロジェクター、2…回路部、2a…CPU、2b…補間アドレス生成部、2b−1…第1の補間アドレス生成回路、2b−2…第2の補間アドレス生成回路、2c…データ補間部、3…LCDパネル、3a…表示画像、4…投光部、5…光学部、6…相対関係取得部、21…コムフィルタ、22…クロマデコーダ、23…セレクトスイッチ、24…アナログ−ディジタル・コンバータ、25…イメージプロセッサ、26…画像メモリ、27,28…記憶手段、101,101t…スクリーン、101a…投影画像、251…IP変換部、252…スケーラ、253…CPUインターフェース、254…メモリ制御部、257…係数発生部、258…フィルタ演算部、PI…投影画像イメージ、PIK…画像イメージ、PIOUT…出力画像イメージ、α,β…投射角度。
Claims (10)
- 画像表示手段で形成した表示画像を投射面に光を利用して投射する画像投射装置であって、
前記表示画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求め、当該代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成する演算手段と、
前記代表点アドレスである基底アドレスと前記相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る補間アドレス生成手段と、
投射したときに前記投射面上で歪みが補正される表示画像の画素データを、上記補間アドレスに基づいて入力画像の複数の画素データから補間により生成し、生成した画素データを、前記歪み画像のアドレスと所望の画像のアドレスとの対応関係から決められる前記画像表示手段の位置に出力するデータ補間手段と、
を有する画像投射装置。 - 前記補間アドレス生成手段が、
代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間手段を有し、
前記補間手段で算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る
請求項1記載の画像投射装置。 - 前記補間アドレス生成手段が、
前記演算手段で生成された代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するアドレス生成手段と、
前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間アドレス算出手段と、を有し、
前記補間アドレス算出手段で得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る
請求項1記載の画像投射装置。 - 前記補間アドレス生成手段が、
代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間手段を有し、前記補間手段で算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る第1の補間アドレス生成回路と、
前記演算手段で生成された代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するアドレス生成手段と、前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出する補間アドレス算出手段と、を有し、前記補間アドレス算出手段で得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る第2の補間アドレス生成回路と、を有する
請求項1に記載の画像投射装置。 - 前記第1の補間アドレス生成部が行う補間では、前記第2の補間アドレス生成部が行う補間に用いる関数より高次の関数を用いる
請求項4に記載の画像投射装置。 - 前記サンプル間隔は、所定の補間関数で各補間画素のアドレスを算出した場合に、補間した位置精度が満足できる間隔である
請求項1記載の画像投射装置。 - 投射面に光を利用して投射する表示画像を画像表示手段に生成するために、少なくとも補間アドレスに基づいて入力画像を補正処理する画像処理方法であって、
前記入力画像を前記投射面に対し斜めに投射したときに投射面上で生じる歪み画像の任意のサンプル間隔の代表点アドレスを求める第1のステップと、
第1のステップで求めた代表点アドレスを基底アドレスとする所定のオフセットを含む相対アドレスを生成する第2のステップと、
前記代表点アドレスである基底アドレスと前記相対アドレスに基づいて所望の画素の補間アドレスを得る第3のステップと、
上記補間アドレスに基づいて入力画像の複数の画素データから補間により、前記表示画像が前記投射面上に投射された際の歪みが相殺されるように補正する第4のステップと
を含む画像処理方法。 - 前記第2のステップは、
代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出するステップを有し、算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る
請求項7記載の画像処理方法。 - 前記第2のステップは、前記演算手段で生成された代表点化の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力するステップと、
前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出するステップと、を有し、
前記得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る
請求項7記載の画像処理方法。 - 前記第2のステップにおいて、補間に用いる関数が高次の関数の場合、
代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出し、算出した補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得、
補間に用いる関数が前記高次の関数より低次の関数の場合、
代表点間の補間アドレスを算出し代表点基底アドレスとして出力し、
前記代表点基底アドレスと代表点相対アドレス間の補間アドレスを算出し、算出して得られた補間アドレスから前記所望の画素の補間アドレスを得る
請求項7に記載の画像処理方法。
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