JP2005011695A - 直接型燃料電池およびそれを搭載した機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】排出ガス中に含まれる燃料成分および副反応により生成した有害化学物質を除去することが可能な直接型燃料電池を提供する。
【解決手段】アルコール類、エーテル類、メトキシ基含有化合物、および水素化物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む燃料を燃料極に供給し、空気を空気極に供給して発電する直接型燃料電池であって、
前記燃料極から排出されたガスを大気中に放出する第1の経路、および前記空気極から排出されたガスを大気中に放出する第2の経路を有する。
【選択図】 図15

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタノール、ジメチルエーテル、水素化ホウ素ナトリウム等によってそれぞれ代表されるアルコール類、エーテル類、メトキシ基含有化合物および水素化物から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む燃料と、空気や酸素等を含む酸化剤とを供給することにより発電する直接型燃料電池に関し、特に燃料極側から排出される燃料成分および燃料極における副反応により生成した副生成物が大気中に直接放出されることを防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素や各種炭化水素などの燃料を燃料極に供給し、空気など酸素を含有する酸化剤(場合によっては過酸化水素等が使用される)を酸化剤極に供給して、これらを電気化学的に反応させて、電力を発生する。その種類は電解質、動作温度、使用燃料等によって各種存在する。本発明は、その中で有機燃料を直接燃料として使用し、常温域またはこれよりも若干高い温度領域で動作する、いわゆる直接型燃料電池に関する。
【0003】
上述の直接型燃料電池としては、メタノールを燃料とする直接型メタノール燃料電池(略称DMFC)が良く知られている。このほかにも、ジメチルエーテルを燃料に用いるタイプ、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン等を燃料に用いるタイプ、または水素化ホウ素ナトリウム等の水素化物の溶液を燃料として用いるタイプなどが考えられている。これらの燃料は、燃料極表面において電極触媒等の働きにより直接電気化学的に反応することができる。この燃料極と酸化剤極との反応により発電が行われる。常温付近で動作し、さらに直接型で改質器などを必要とせず、小型化できることからポータブル機器用電源としての開発が進められている。
【0004】
以下、例として直接型メタノール燃料電池を取りあげ、本発明の背景にある技術的状況について説明する。直接型メタノール燃料電池では通常、燃料極にメタノール水溶液を供給して反応させる方式が主である。メタノール水溶液の供給方法としては、燃料タンクに純粋なメタノールを補給しておき、これと別に得た水とを適度に混合して得られたメタノール水溶液を燃料極に燃料を供給する場合がある。また、燃料タンクに当初から所定濃度のメタノール水溶液を補給し、これを燃料極に供給する場合がある。燃料極上ではメタノールと水が関与した電気化学反応が起こる。この反応により発生した水素イオンは、燃料極と酸化剤極との間に配された水素イオン伝導性電解質膜を通って酸化剤極側に移動する。なお、極性としては燃料極が負極となる。
【0005】
一方、酸化剤極側では、空気中の酸素を酸化剤として用いる場合、電極上で酸素の還元反応が起こり、電解質膜を通過した水素イオンとともに全体として水を生成する反応が起こる。この反応に関与した電子が両電極を結ぶ外部回路を移動することにより発電装置として機能する。ここで、例えば、燃料としてメタノールが燃料極で完全に理想的な反応を生じた場合、反応生成物は炭酸ガスのみとなり、燃料極から排出されるガスも炭酸ガスのみとなる。しかし、実際には副反応が起こったり、反応途中の物質が発生し、これが排気ガス中に混入することがある。また、反応に関与せずに気化したメタノールが排気ガス中に混入することも確認されている。
【0006】
このため、燃料極から排出されるガスの主成分は炭酸ガスであるが、種々の化学物質が混入している。これらの化学物質の成分や濃度等は、反応条件や燃料電池の運転条件等によって異なるが、その成分としては、主に燃料であるメタノールをはじめ、副生成物のホルムアルデヒドや蟻酸等が含まれる。なお、燃料が変われば副生成物とその量も当然変化するが、アルコール類、エーテル類、メトキシ基含有化合物を燃料に使用する場合では、燃料以外に、ホルムアルデヒド、蟻酸等が排出ガスに含まれると考えられる。
【0007】
特に、メタノール直接型燃料電池では、燃料極周囲がメタノール水溶液で満たされる場合が多い。このため、反応生成物である炭酸ガスが燃料極表面から発生してくる際、炭酸ガスがメタノールと水の蒸気でほぼ飽和に近い状態となることが避けられない。燃料電池の温度が高くなると蒸気圧が高くなり、例えば60℃でのメタノールの12M水溶液におけるメタノール蒸気圧は240mmHgとなる。さらに、炭酸ガスの発生状況によっては、炭酸ガスを含む気泡の破裂時に発生するメタノール水溶液の微小な液滴が、気流に乗って排気ガス中に混入する場合がある。また空気極側に関しても、現在、イオン伝導性膜として使用している電解質膜は、メタノールを若干透過させてしまう性質を有する。このため、燃料極側に供給されたメタノールが空気極側からも排出されてしまうことが判明している。空気極側に透過したメタノールの一部は空気極触媒上で、空気中の酸素により酸化されるが、運転条件によっては相当量のメタノール蒸気が空気極側から大気中に排出される。
【0008】
燃料極および空気極から排出された燃料成分をはじめとする各種有機化合物を含有するガスは、最終的に大気中に排出させる必要がある。しかし、燃料成分については、極力、炭酸ガス等の反応生成物と分離し回収することが発電効率向上の観点から望ましい。さらに重要なことは、安全衛生の観点から燃料として用いる化合物は人体に影響を及ぼす可能性が高いことである。特に、メタノールは劇毒物であるため、これを含む排気ガスをそのまま大気中に放出することは抑制する必要がある。
【0009】
また、ホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(VOC)については人体に吸収されると悪影響を及ぼすため、その濃度を低く抑える必要性が広く認識されている。ホルムアルデヒドについては、シックハウス症候群等を予防する観点から厚生労働省よりその室内濃度指針は0.08ppmと提示されている。メタノールに関しては物質名を明示した基準として室内濃度指針は示されていない。しかし、総揮発性有機化合物(TVOC)暫定目標値が400μg/mとされており、他の有機化合物とも合わせて、当然この指針を遵守する必要がある。この総揮発性有機化合物暫定目標値をメタノールに換算すると約0.28ppmとなり、直接型メタノール燃料電池を、排気ガスを何ら処理しない状態で室内において使用した場合、これら基準を満たさないことは明らかである。このため、直接型燃料電池を搭載した電子機器等を室内において長時間使用した場合に、室内でのメタノールをはじめとする総揮発性有機化合物およびホルムアルデヒド等の濃度が指針値を超えないようにすることが必須の課題となっている。
【0010】
しかしながら、直接型燃料電池の技術の現状は、例えばメタノールに関していえば、炭酸ガスとメタノールを有効に分離する手法は完成されているとはいえない状況にある。現在試みられている手法としては、蒸気となったメタノールと炭酸ガスとの混合ガスを冷却してメタノールの大部分を凝縮させる方法や、分離膜を用いて両者を分離し、炭酸ガスのみを排出する方法がある。しかしながら、直接型燃料電池の主な用途と考えられる携帯機器では、前者の手法によりメタノールの蒸気圧を充分低くできる程度まで排出ガスを冷却することは現実には極めて困難である。後者の手法については、優れた特性を有する分離膜が開発されれば有効な手法と考えられるが、現状では、炭酸ガスとメタノールの分離係数が充分に大きく、かつ、炭酸ガスの透過速度が充分な膜は得られていない。このほかメタノール吸収剤を利用するなどの手法も考えられるが、交換を要するなどやはり実用的とは言えない。このように、現状では有効なメタノール分離手段が無く、メタノールを排気ガスから分離することは困難である。他の燃料を使用する場合にも同様の状況にあるといえる。
【0011】
一方、他の技術分野をみると、例えば燃焼排ガス中のアルデヒドや、室内・冷蔵庫内における悪臭源としてのアルデヒド類の浄化に関しては、悪臭防止等の観点から従来より関心が高い。前者については、例えば、特許文献1において、燃焼排ガス中の微量アルデヒドを、酸化触媒を用いて酸化除去する技術が開示されている。また、後者については、特許文献2において、臭気ガスを含む室内の空気を、吸着剤層と紫外線によって励起した光触媒層を用いて除去する技術が開示されている。また、特許文献3では、メタノール燃焼器からの排ガス中に含有される未燃焼メタノールを、トラップ触媒に捕捉させて、さらに酸化浄化処理する技術が開示されている。しかし、燃料電池への利用に関しては、従来あまり関心が向けられておらず、現実的かつ有効な手法が考案されていなかった。
【0012】
【特許文献1】
特開平9−206596号公報
【特許文献2】
特開平6−31133号公報
【特許文献3】
特開2001−17835号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題を解決することにより、排出ガス中に含まれる燃料成分および副反応により生成した有害化学物質を除去することが可能な直接型燃料電池を提供することを目的とする。また、直接型燃料電池を搭載した機器を室内において長時間使用した場合に、燃料極から発生する燃料ミストや燃料成分の蒸気、ホルムアルデヒド、蟻酸などの副反応により生成した有害化学物質の室内濃度を低レベルに抑制し、日常生活の中でも安全に利用することのできる直接型燃料電池を搭載した機器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の直接型燃料電池は、アルコール類、エーテル類、メトキシ基含有化合物、および水素化物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む燃料を燃料極に供給し、空気を空気極に供給して発電する直接型燃料電池であって、
前記燃料極から排出されたガスを大気中に放出する第1の経路、および前記空気極から排出されたガスを大気中に放出する第2の経路を有することを特徴とする直接型燃料電池。
【0015】
前記第1の経路に酸化触媒が配置されることが好ましい。
前記第2の経路に酸化触媒が配置されることが好ましい。
前記第1の経路に、細孔または微小間隙を有する部材からなり、前記ガス中に含まれる微小な液滴を捕集する液滴捕集部と、前記液滴捕集部で捕集された液滴を前記燃料極に戻す液体輸送手段とを有することが好ましい。
【0016】
前記第1の経路に、アルデヒド酸化除去触媒またはアルデヒド吸収剤が配置されることが好ましい。
前記酸化触媒を加熱する手段を有することが好ましい。
前記第1の経路に、空気を取り入れる空気供給手段が設けられることが好ましい。
【0017】
前記空気供給手段に前記空気極より排出されたガスを送り込む第1のガス輸送手段を有することが好ましい。
また、本発明は、上述の前記空気供給手段を有する直接型燃料電池を搭載した機器であって、前記空気供給手段に、前記機器から発生した気流からのガスを送り込む第2のガス輸送手段を有することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の直接型燃料電池では、燃料極または空気極からの排気ガス中に含まれる気化した燃料や、ホルムアルデヒド、蟻酸等の副生成有害化学物質を触媒を用いて酸化することによって無害化し、また、燃料極からの排気ガス中に含まれる燃料ミストに関してもミスト捕集手段により除去することができる。その基本的構成は、燃料極または空気極からの排気ガスを大気へ放出する経路の開口部近傍に、有機物の酸化反応を促進する酸化触媒を配置するものである。酸化触媒としては、例えばアルミナ系の担体に白金触媒を担持したものが用いられる。そして、この触媒層を排気ガスが通過する際に、大気中から拡散する酸素により排気ガスに含有される気化燃料や副生成有害化学物質が酸化されることにより無害化することができる。さらに、酸化触媒の直近には、加熱手段を配することにより、酸化触媒部分での有害化学物質の酸化を速やかにかつ完全に進行させることができる。
【0019】
また、前記経路に、細孔または微小間隙を有する部材で構成される液滴捕集部を配置する。この捕集部としては、細孔または微小間隙を有する部材、例えば目の細かい金属メッシュを複数枚積層した部材や、繊維を一方向に束ねたフィルター状の部材等が用いられ、排気ガスのほぼ全量がこれらの狭い間隙を通過するように構成される。これにより、排気ガス中に浮遊する微小液滴が部材に付着し、捕捉することができる。捕集された燃料を含む液体は、液体輸送手段として例えば、配管またはウィック等からなる経路を設置することで燃料極または燃料供給系に戻し、燃料として再利用する。この構成により、ミストによる無駄な燃料の逸散を予防できる。また、この捕集部を上述の酸化触媒よりも上流側に配置することにより、触媒がミストで濡れてしまい、その能力を失うような事態を予防することもできる。
【0020】
さらに、燃料極からの排気ガスを放出する経路にアルデヒドに特化したアルデヒド酸化除去触媒または吸収剤を配置することにより、アルデヒド類の除去を完全なものとすることができる。さらに、排ガス経路に空気を取り入れる手段を配置することで酸化反応に必要な酸素を供給し、有害化合物の円滑な酸化除去を可能にできる。また、ここで取り入れる空気の少なくとも一部を空気極からの排気ガス、または燃料電池を搭載する機器から発生した気流により供給することで、排ガスに含有される有害化学物質の酸化除去を促進させることができる。
この場合、燃料は、アルコール類、エーテル類、メトキシ基含有化合物、および水素化物からなる群より選択された少なくとも一種であればよい。
【0021】
実施の形態1
直接型燃料電池には、燃料の供給方式として幾つかの方式が考えられている。本実施の形態では、燃料をポンプ等により循環させる方式の一例を示す。その構成を図1に示す。ここでは、燃料としてメタノールを用いた場合を示す。
本実施の形態の直接型燃料電池は、単電池を積層してなる燃料電池1、燃料を送り出すポンプ3、前記ポンプ3と前記燃料電池1とを連結し、前記燃料を燃料電池1に供給する燃料供給配管4、前記燃料電池1より排出されたガスを含む燃料を排出する燃料戻り配管5、前記配管5と連結し、前記排出されたガスおよび燃料を分離する気液分離タンク2、前記タンク2で分離された燃料をポンプ3に戻す配管6、前記タンク2上部に連通し、分離されたガスを大気中に放出する排出管7より構成される。そして、排出管7中には、酸化触媒8が配置されている。したがって、排気管7は、上記第1の経路に相当する。
【0022】
ここで、上述の燃料電池1の構成を図2を参照しながら説明する。
燃料電池1は、電解質膜/電極接合体9とバイポーラ板13とを交互に積層することにより構成されている。電解質膜/電極接合体9は、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜10、ならびに前記電解質膜10を挟持する白金系の貴金属触媒からなる燃料極11(図2における電解質膜10の裏側に配置)および空気極12より構成されている。この電解質膜/電極接合体9に接する状態で、導電性を有し、かつガスを通さないカーボン等の素材からなるバイポーラ板13が配置されている。バイポーラ板13の表面には、燃料(または空気)を燃料極(または空気極)に均一に供給するための流路14が形成されている。また、前記燃料供給配管4と連通し、燃料を燃料極に供給する供給穴15、および燃料極で生成した反応生成物のガスとともに未反応の燃料を外部に排出する排出穴16が配置されている。図面では省略しているが、バイポーラ板13は、その裏面においては、表面と同様に空気を給排するための構造を有する。なお、燃料電池には、所定のガスケットが配置されている(図示しない)。
【0023】
燃料として用いるメタノール水溶液からなる燃料は、ポンプ3により燃料供給配管4を経由して燃料電池1に供給される。燃料電池1内で燃料の一部が反応した後、燃料は燃料戻り配管5および6を通り、気液分離タンク2に送られる。
すなわち、バイポーラ板13の供給穴15から供給された燃料は、流路14を流れることにより、燃料極において電極反応が進行する。このとき、反応生成物として炭酸ガス等のガスが発生し、これが燃料に気泡として混入する。そして、このガスを含む燃料が、排出穴16から外部に排出される。この排出流が図1の配管5から気液分離タンク2に送られ、ここで流れが滞留する。このため、反応生成物のガスが気液分離タンク2内上部に溜まり、燃料とガスとが分離される。
【0024】
ガスを分離した後の燃料は燃料戻り配管6を通り、再びポンプ3により燃料電池1に供給される。一方、分離されたガスは、酸化触媒8が配置された排出管7を通り、大気中に放出される。
このとき、分離されたガスには、人体に有害なものが含まれている。しかし、酸化触媒により分解されることにより、大気中には、無害なものとして放出することができる。
なお、図1では省略しているが、実際のシステムにおいては、燃料電池での燃料消費により減少したメタノールを補給し、前記燃料循環系のメタノール濃度を所定の濃度に保つべく、別途メタノールタンクおよびメタノール補給のための機構を具備しているのが一般的である。
【0025】
実施の形態2
本実施の形態は、実施の形態1と同様に排出管に酸化触媒を配置させる構成であるが、燃料を循環させることなく動作させる非循環型の直接型燃料電池に適用した場合の一例を示す。非循環型でよく採用される燃料供給方式には、例えば毛細管等による液の移動作用を利用して燃料を供給する方式があるが、この方式によると必要量の燃料を逐次連続的に燃料極に供給することが可能であり、排出ガスの排出状況も先例と若干異なってくる。この方式の直接型燃料電池システムの構成を図3に示す。
【0026】
本実施の形態の非循環式の直接型燃料電池は、燃料電池21、燃料が貯蔵された燃料タンク20、前記燃料電池21と燃料タンク20とを連結し、前記燃料電池21に燃料を供給する燃料供給配管22、前記燃料電池より排出されたガスを大気中に放出する排出管23より構成される。そして、燃料電池の側面には、各素電池からの排出口29より排出されたガスを補集し大気中に放出するための、一部マニホルドの機能も兼ねた排出管23が設けられている。また、排出管23における出口直近には、酸化触媒24が配置されている。したがって、排出管23は、上記第1の経路に相当する。
【0027】
ここで、燃料電池21の構成を図4を参照しながら説明する。
燃料電池21は、実施の形態1と同様の電解質膜/電極接合体9とバイポーラ板26とを交互に積層することにより構成される。そして、電解質膜/電極接合体9における燃料極11側とバイポーラ板26との間には、導電性を有しかつガスと液体を通す多孔部材(背面部材)27が配置されている。この部材27は、例えば、カーボンペーパーやカーボン布または、導電性の材料と毛管を有する材料との混合物等で形成されている。燃料は供給口25から毛管現象等によって供給され、さらに背面部材27の毛管部を伝って背面部材27全面に行き渡り、燃料極11に浸透・供給される。また、背面部材27は燃料に占有されない空間を有するため、その空間を通って排出されたガスが移動することができる。背面部材27は、バイポーラ板26の窪んだ部分に収納される。バイポーラ板26の燃料極側には流路はなく、平坦である。一方、空気極側には、流路が形成されている(図示しない)。背面部材27の上部には切り欠き部28があり、バイポーラ板26の切り欠き部28に対応する位置には、ガスを排出するための排出口29が設けられている。
【0028】
燃料は、燃料タンク20から燃料供給配管22を経由して燃料電池21に供給される。そして、燃料電池21内で供給された燃料の全量が反応・消費される。このため、実施の形態1のような循環型燃料電池の場合に用いられる燃料の戻り配管は不要となる。
このとき、燃料極から反応により炭酸ガスをはじめ微量の副生成物を含むガスが生じる。これらのガスは、酸化触媒が配置された排出管を通り、大気中に排出される。
【0029】
実施の形態3
本実施の形態は、空気極を経由して排出されたガスの処理方法の一例を示す。
本実施の形態の直接型燃料電池を図5および6に示す。
バイポーラ板37を用いた外部マニホルド方式での適用を示している。バイポーラ板37の空気極側には並行するリブ38が多数設置してあり、空気は図6のリブ38の間を奥手から手前側に流れるように構成されている。このバイポーラ板37と図2と同様の電解質膜/電極接合体9とを交互に積層することにより燃料電池31が構成されている。この燃料電池31の両側面に空気供給用マニホルド32と排出用マニホルド33がそれぞれ取り付けられている。空気供給用マニホルド32には、空気を燃料電池に送るための空気ブロアー36が接続されている。一方、排出用マニホルド33では、空気極を通り、酸素の一部が消費されて排出された空気が集められる。排出用マニホルド33には、酸化触媒が配置された排出管34が連結され、この排出管34を通り排出ガスが大気中に放出される。したがって、排出管34は、上記第2の経路に相当する。
【0030】
ただし、この触媒の大きさは燃料極からの排出ガスを処理するための酸化触媒に比べて大きなものが用いられる。これは処理すべき空気の量が毎分2〜4リッターと燃料極側からの排出ガスよりも大きく、反応を充分行わせるためには触媒の容積を大きくして空間速度を下げる必要があるためである。燃料は実施の形態2と同様の非循環型で燃料タンク30からウィック作用によって供給されている。
【0031】
実施の形態4
本実施の形態では、燃料極から排気されたガス中に含まれる燃料ミストの捕集と燃料としての再利用に関する一例を示す。直接型燃料電池では、上述した循環形、非循環形のいずれの燃料電池においても、その排出ガス中には量の多少はあるが燃料のミストが含有される。特に、循環形では気液分離部の液面で気泡がはじけ飛ぶ際に微小な飛沫を発生するため、これが相当量のミストになって排気気流に乗る。非循環形でかつ毛管現象で燃料を供給するような場合には、燃料極は燃料に浸漬された状態にはなく、さらに気液分離部が無い。このため、大きさが1mm程度またはそれ以上の気泡の発生および消滅により生じるミストはほとんどない。しかし、燃料極表面を微視的に見れば、微小な気泡の発生、消滅は起こるため、排出ガス中には微量ながら燃料のミストが含有される。
【0032】
図7は循環形の場合の極めて単純な適用例で、図2における排出管に相当する部分を拡大した図である。本実施の形態は、実施の形態1と同様の構成であるが、図7のように排出管40内には、微小間隙を有する部材で構成された液滴捕集部41が配置され、さらに前記液滴捕集部41で捕集された液体を燃料電池における燃料極に戻す液体輸送手段42が、排出管40および気液分離タンク43内に設けられている。
液滴捕集部41としては、例えば、150メッシュのステンレス金網を、一枚毎に30℃前後ずつ角度を変えながら数十枚積層したもので、厚さ約7mmのものが用いられる。
【0033】
また、液体輸送手段42は、例えば、上記で得られた液滴捕集部41としてのメッシュ積層体周囲を数カ所接着剤で固定し、さらにその周囲を親水性の不織布で巻き、一部を気液分離タンク43内に延ばすことにより得られる。このとき、液体輸送手段42としての前記不織布は、タンク内に溜められた燃料に接触している。
気液分離タンク43内で分離され、燃料ミストを含有する排出ガスは排出管40内に入る。このとき、排気ガス中に含まれる燃料ミストは、液滴捕集部41の金属メッシュに付着することにより捕捉される。捕捉された燃料は金属メッシュを伝わり金属メッシュ周囲の不織布に至り、さらに同不織布からなる液体輸送手段42を伝って気液分離タンク43内の燃料に戻る。
【0034】
また、本実施の形態の他の一例として、実施の形態2と同様な直接型燃料電池において適用した例を図8に示す。
各素電池のガス排出口と連通し、ガスを捕集・排出する排出管44内に液滴捕集部45として平均20μmの開口を持つ厚さ5mmの焼結金属フィルターが設置されている。焼結金属フィルターの周囲は親水性の不織布で巻かれている。不織布側面には、液体輸送手段として液体輸送配管46が設けられ、その端面は液絡がとれる状態で不織布に接続されている。また、液体輸送配管46は燃料タンク20から燃料電池21に燃料を供給する燃料供給配管47に接続されている。
ここで、液体輸送配管46の構造を簡単に図9に示す。
液体輸送配管46は、液体不透過性の材質からなる管外壁48、および前記管外壁48中に内包された長手方向に規則的に親水性繊維がそろったウィック部材49より構成されている。この配管46はウィックの働きによって、液滴捕集部45で集められた燃料を燃料供給配管47にまで運搬することができる。
【0035】
実施の形態5
本実施の形態を図10に示す。実施の形態2と同様の構成であるが、排出管51内には、アルデヒドの酸化に特化したアルデヒド酸化除去触媒52が配置されている。これにより、大気中に排気ガスが放出される前に、排気ガス中に含まれる人体に有害なアルデヒドを酸化触媒により分解することができる。
なお、この触媒以外に、アニリン/活性炭系のアルデヒド吸収剤を用いてもよい。ただし、この場合、吸収量に限度があるため一定量を吸収した後には交換する等の処置が必要となる。
【0036】
実施の形態6
本実施の形態では、実施の形態1〜3で用いられる酸化触媒の反応速度をさらに上げ、有害有機物の除去能力を向上させる方法の一例を図11に示す。
実施の形態2と同様の構成において、排出管64内に配置された酸化触媒61の上流側に白金線ヒータからなる加熱手段62が設置されている。加熱手段62には燃料電池システムから必要に応じで随時または常時電流が供給される。これにより、赤熱し、近接する酸化触媒61の温度を上昇させて、メタノールその他有機物の酸化を促進する。この場合では、白金線ヒーターと酸化触媒が接していないため、酸化触媒自体の温度は70℃前後となる。ただし、白金線ヒーターに面した部分の表面温度は輻射で加熱されるため、これよりもかなり温度が高いと想定され、活発に酸化が行われるものと想像される。なお、この加熱手段には白金線ヒータを使用しているため、加熱手段自身もその表面で酸化することができるメリットがある。加熱手段としては、他の材料を用いても良く、酸化触媒の直近にあって酸化触媒の温度を多少とも上昇させる機能があれば基本的にその機能を果たすことができる。
【0037】
本実施の形態の他の一例を図12に示す。排出管64内に配置された酸化触媒61の周囲に加熱手段63として直接電熱線(極細のニクロム線)が巻かれている。この場合も、電熱線には燃料電池システムから必要に応じで随時または常時電流が供給され、酸化触媒の温度を上昇させることにより、メタノールその他有機物の酸化が促進される。
【0038】
実施の形態7
本実施の形態では、燃料極から発生した排気ガスを大気中に放出する経路に、酸化触媒の酸化反応に用いられる空気を取り入れる空気供給手段が設けられている。その一例を図13に示す。実施の形態2と同様の構成において、上記第1の経路である排出管70内に配置された酸化触媒71の近くに微小な空気取り入れ口72が設置されている。排出管70の内寸は15mm角であり、酸化触媒71がある部分の4つの面に直径1mmの空気取り入れ口72を各々1個ずつ開けてある。この空気取り入れ口72から空気中の酸素が拡散によって酸化触媒71に供給され、酸化触媒71における上流側でも酸化反応が円滑に進行する。したがって、空気取り入れ口72は、上記空気供給手段に相当する。これ以外にも、空気供給手段として、排出管における酸化触媒が配置された部分またはその上流部分に細管を取り付けてもよい。また、排出管の壁面の少なくとも一部を酸素透過性の膜、または多孔性の部材で構成してもよい。
【0039】
実施の形態8
空気極より排出された空気を上記第1の経路に配置された酸化触媒に送り込む第1のガス輸送手段の一例を図14に示す。
ここでは、酸化触媒に必要な空気として、燃料電池の空気極側から排出された空気が用いられる。実施の形態2と同様に燃料電池80および上記第1の経路として酸化触媒84が配置された排出管85が備えられている。燃料電池80には、さらに空気を送る空気ポンプ81、空気極を経由した空気を排出する空気排出配管82が接続されている。そして、前記空気排出配管82と排出管85とを連結し、前記空気を排出管85に送り込む空気輸送配管83が設けられている。したがって、空気輸送配管83は、上記の第1のガス輸送手段に相当する。
【0040】
空気極を経由し、酸素の一部が消費された空気は、空気排出配管82により、大部分が大気中に放出される。その一部は、配管83を経由して排出管85に配置された酸化触媒84の上流側に取り入れられる。このため空気と燃料極から排出されたガスは混合されて酸化触媒における酸化処理が円滑に進行する。なお、空気排出配管82および空気輸送配管83の空気流量の配分は、空気排出配管82と空気輸送配管83の内径を変えることにより調整できる。また、燃料電池の出力に応じて空気供給量を変化させるような燃料電池システムにおいては、燃料電池への出力要求が大きく燃料排出ガスの流量が多くなる時には、同時に燃料電池に供給する空気量も多くなるため、自動的に酸化触媒へ供給される空気量が増加する。このように自律的な動作が可能であるという利点も有する。
【0041】
次に、燃料電池を電源等として搭載した機器が上記第1の経路に配置された酸化触媒に空気を送り込む第2のガス輸送手段の一例を図15に示す。
ノートパソコンには、燃料電池90、前記燃料電池90における燃料極側からの排気ガスを大気中に放出し、酸化触媒(図示しない)が配置された排出管91が取り付けられている。一方、ノートパソコンに設置された冷却ファン付きCPU92には、一体化した冷却用ファンが取り付けられている。そして、空気を取り入れる第2のガス輸送手段として、CPU92と排出管91とを連結する空気搬送配管93が設けられている。この冷却ファンからの送風の一部を受ける形で空気搬送配管93の一端が開口しており、他端は排出管91における酸化触媒が配置された部分よりも上流側に接続されている。排気管91内はほとんど大気圧であるため、冷却ファンからの微弱な圧力によっても空気が排気管91内に送り込まれ、酸化触媒には充分な量の酸素が供給され、酸化処理を円滑に行うことができる。
【0042】
なお、本実施の形態ではノートパソコンの冷却ファン付きCPUからの送風を空気の供給源としているが、このような空気の供給源としては他の機能または機構を利用して、そこから空気を分取してもよい。例えば、一般的に電子回路全体の冷却に用いられる軸流ファンからの送風の一部を利用してもよい。また、燃料電池を搭載する機器であればノートパソコンに限らず他の種類の機器で適用してもよい。
【0043】
上述した実施の形態は、それぞれ単独で適用しても効果を得ることができるが、現実には、直接型燃料電池システムの状況に合わせて複数の構成を組み合わせて用いることが望ましい。例えば、実施の形態1、4および5を組み合わせた形態、すなわち循環型の直接型燃料電池の気液分離タンクに設けた排出管に開口部から気液分離タンクに向かって順にアルデヒド酸化触媒、酸化触媒、液滴捕集部と3つの機能を並べてもよい。このような複合的適用を行った場合、まず液滴捕集部でミストが捕捉され燃料回収が行われると共に、後段へのミストの飛散を抑制することができる。これにより、多量のミストによって酸化触媒が濡れてしまい、活性を失うような事態や、大気中にミストとして燃料が放出され、雰囲気中の燃料濃度を著しく高めてしまうような事態を避けることができる。
【0044】
また、アルデヒド酸化触媒の前段に酸化触媒が配置されているために、燃料極からの排ガス中に多量に含まれる燃料蒸気やアルデヒドの多くの部分をこの酸化触媒で処理し、しかる後にアルデヒド酸化に特化した触媒の作用によって、より高度の除去処理を行うことができる。また、こうした複合的構成をとった場合、中段に位置した酸化触媒付近は開口部から距離がある上、開口部との間にアルデヒド酸化触媒があるために大気中からの酸素の拡散による補給はほとんど得られない状況となる。このため、実施の形態7で示したような空気を取り込む空気供給手段を配置することにより、このような場合においても酸化触媒に十分な量の酸素を供給することが可能となり、円滑な酸化反応を行うことが可能となる。このように本発明においては、個々の燃料電池システムの方式および構成に従って、各機能を組み合わせ、補完し合うことにより最適な有害化学物質除去機能をもたせることが可能である。
【0045】
また、別の実施の形態としては、図15に示したような機器に搭載された燃料電池システムにおいて、排出管における開口部から燃料電池に向かって順に、例えば防塵用フィルター、アルデヒド酸化触媒、酸化触媒、空気取り入れ口、液滴捕集部と各構成要素を並べて使用し、排出ガスを可能な限り浄化する構成としてもよい。
なお、上述では特定の触媒系についてのみ取りあげて記載しているが、これは目的に合致する他の触媒系を用いてもよい。例えば、アルデヒド酸化触媒に関しては、マンガンと他の元素との混合系や、酢酸塩以外のカルボン酸塩または硝酸塩等を用いた触媒であってもよい。酸化触媒についてもまた他の貴金属系の触媒を用いてもよく、担体には何を使用していてもよい。また、上述した実施の形態ではメタノールを燃料とした直接型燃料電池の場合について記載しているが、これは他の燃料を用いた燃料電池であってもよい。例えば、エタノール、ジメチルエーテルその他の有機物でもよい。また、水素化ホウナトリウム等の水素化物を用いてもよい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図を参照して具体的に説明する。
【0047】
《実施例1および比較例1》
実施の形態1と同様の構成の直接型燃料電池を作製した。燃料電池1には、電極面積20cmの素電池を16セル積層し、出力が約13Wのものを用いた。バイポーラ板13の大きさは約6cm角とした。また、気液分離タンク2は20mm角、高さ40mmの直方体で、ポンプ3に接続される燃料戻り配管6は気液分離タンク2の底付近に配置され、上部の天蓋部には排出ガスを大気中に放出するための排出管7として内径15mm、高さ40mmの管が接続された。そして、その管内に酸化触媒8を配置し、排出ガスはすべてこの触媒を通過してから大気中に放出される構成とした。酸化触媒には、目の大きさ約1mm角のアルミナ−シリカ系のハニカム状押し出し成形品を骨格構造体としたものを用い、その表面にディップ法により白金/アルミナ系の触媒を担持させた。酸化触媒の大きさは、直径15mm、厚さ10mmとした。なお、通常このような酸化触媒は調製後のそのままの状態では触媒の活性が低く、メタノール等の酸化反応を起こしにくいため、事前に1%前後の水素を混合した空気を流通させた状態で100℃に保ち、触媒の還元・活性化を行ってから排出管に設置した。
【0048】
上述の燃料電池を用いて動作試験を行った。燃料として濃度12Mのメタノール水溶液を用い、これをポンプにより180ml/分で供給し、また、空気極側にはブロアーを用いて空気を供給した。この燃料電池を定格出力13W(約40mW/cm)で動作させると毎分およそ80mlの炭酸ガスが発生した。また発電中、発熱により燃料電池の温度は次第に上昇し60℃前後となった。
試験ではまず、上記の酸化触媒を取り付けない状態で行った(比較例1)。排出管からは気液分離タンクから出てきた排出ガスがそのまま排出されるが、この組成を調べたところ、主成分である炭酸ガス以外に、メタノール蒸気を約16%含有し、さらに副反応によるホルムアルデヒドを40ppm、蟻酸を60ppm含有していることが判明した。メタノールの含有が多いのは、循環する燃料の温度も60℃近くなっているためにメタノールの蒸発が盛んに起こるためである。排気ガスにはメタノールの臭気が感じられる程であり、このような高濃度のメタノールを長時間、直接室内に排出することは人体その他への影響が心配される。
【0049】
次に、上記の酸化触媒を排気管の開口部付近に設置して、その効果を調べた(実施例1)。排出ガスの流量は前記のように80ml/分前後で少ないことから、酸化触媒には拡散等によって大気側から空気が充分に供給され、酸化触媒により排出ガス中に含まれるメタノールが酸化された。試験中、酸化触媒において若干ではあるが発熱が観測された。酸化触媒を経た排出ガスを捕集して組成を分析したところ、メタノールの含有量は0.8%にまで低減していることが分かった。また、ホルムアルデヒド、蟻酸の含有量についても分析したところ各々5ppm、8ppmと大きく減少していることが分かった。この程度の濃度であれば、排出量としては微量であり、通常の室内で連続的に使用しても上述の室内濃度指針に定めた濃度以上に濃度が上がることは考えにくく、人体に影響を及ぼすこともないとみられる。
【0050】
《実施例2および比較例2》
実施の形態2と同様の構成の直接型燃料電池を作製した。燃料電池の定格出力は10Wで、積層数およびサイズは実施例1と同様とした。排出管23は各素電池のガス排出口29をすべて覆ってガスを捕集できるように製作されており、排出管の大気への出口近傍のサイズは15×15mmとした。酸化触媒も実施例1と同様の方法で作製し、15mm角、厚さ10mmに切り出したものを用いた。
濃度12Mのメタノール水溶液を燃料タンクに供給し、空気極側にはブロアーを用いて空気を供給して約30mW/cmの出力密度で動作試験を行った。
【0051】
まず、上記の酸化触媒を取り付けない状態で試験を行い、大気中に放出された排出ガスの組成を調べた(比較例2)。主成分である炭酸ガス以外に、メタノール蒸気を14%含有し、さらに副反応によるホルムアルデヒドを20ppm、蟻酸30ppm含有していた。
次に、上記の酸化触媒を排出管に設置して、その効果を調べた(実施例2)。メタノールの含有量は、0.6%にまで低減していることが分かった。また、ホルムアルデヒド、蟻酸の含有量についても分析したところ各々4ppm、6ppmと大きく減少していた。
【0052】
《実施例3および比較例3》
実施の形態3と同様の構成の直接型燃料電池を作製した。そして、濃度12Mのメタノール水溶液を燃料タンクに供給し、ブロアーから空気を供給して約30mW/cmの出力密度で動作試験を行った。
まず、酸化触媒を取り付けない状態で試験を行い、大気中に放出された排出ガスの組成を調べた(比較例3)。このとき、排出ガスは、空気以外にメタノール蒸気を約2%含有していた。また、副反応によるホルムアルデヒド、蟻酸等の含有量は検出下限0.1ppm以下であった。
次に、実施例1と同様の酸化触媒を排気管34に設置して、その効果を調べた(実施例3)。このとき、メタノールの含有量は0.2%にまで低減していることが分かった。
【0053】
《実施例4》
実施の形態5と同様の直接型燃料電池を作製した。ここで用いたアルデヒド酸化除去触媒52は以下のようにして調製した。まず、日本カイノール(株)製フェノール(商品名:カイノール)を、窒素80%、炭酸ガス10%、水蒸気10%の雰囲気下900℃で賦活処理して繊維状活性炭を得た。次いで、酢酸マンガンを0.2wt%含む水溶液100mlに活性炭20gを入れ数時間放置後、100℃で乾燥してアルデヒド酸化除去触媒52を得た。このアルデヒド酸化除去触媒52を、15×15mmの排出管51の内部に金属メッシュを用いて適度に圧縮・固定し、長さ約30mmの触媒層として配置した。
燃料電池を実施例2と同様の条件で動作させて排出管51より放出される排出ガスの組成を調べたところ、メタノールに関しては変化がなかったが、ホルムアルデヒドについては25ppm含有であったものが0.5ppmにまで減少していた。
【0054】
《実施例5》
実施の形態6における図11と同様の構成の燃料電池を作製し、実施例2と同様の試験を行い、排出ガス中のメタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸の濃度を測定した。なお、触媒の調製法、大きさ、燃料電池の出力等は実施例2と同じであり、試験の際は酸化触媒の内部温度が120℃前後で平衡となるように加熱手段62である白金線ヒーターに供給する電力を調節した。この温度は燃料電池システムが携帯機器に内蔵された場合に許容される上限に近い温度として選定した。
その結果、排出口でのメタノールの含有量は0.1%にまで低減し、ホルムアルデヒド、蟻酸の含有量についても各々2ppm、3ppmと大きく減少していた。酸化触媒の温度が高くなり酸化が迅速に行われるため、実施例2の場合に比べこれら物質の濃度を半減できることがわかった。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、排出ガス中に含まれる燃料成分および副反応により生成した有害化学物質を除去することが可能な直接型燃料電池を提供することができる。また、直接型燃料電池を搭載した機器を室内において長時間使用した場合に、燃料極から発生する燃料ミストや燃料成分の蒸気、ホルムアルデヒド、蟻酸などの副反応により生成した有害化学物質の室内濃度を低レベルに抑制し、日常生活の中でも安全に利用することのできる直接型燃料電池を搭載した機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料電池の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における燃料電池の一部を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態2における燃料電池の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2における燃料電池の一部を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態3における燃料電池の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3におけるバイポーラ板の斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態4における燃料電池の一部を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態4における他の燃料電池の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態4における液体輸送配管の断面図である。
【図10】本発明の実施の形態5における燃料電池の一部を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態6における燃料電池の一部を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態6における他の燃料電池の一部を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態7における燃料電池の一部を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態8における燃料電池の構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態8における燃料電池を搭載した機器の一例を示す図である。
【符号の説明】
1、21、31、80、90 燃料電池
2、43 気液分離タンク
3 ポンプ
4、22、47 燃料供給配管
5、6 燃料戻り配管
7、23、34、40、44、51、64、70、85、91 排出管
8、24、35、52、61、71、84 酸化触媒
9 電解質膜/電極接合体
10 高分子電解質膜
11 燃料極
12 空気極
13、26、37 バイポーラ板
14 流路
15 供給穴
16 排出穴
20、30 燃料タンク
25 供給口
27 背面部材
28 切り欠き部
29 排出口
32 空気供給用マニホルド
33 空気排出用マニホルド
36 空気ブロアー
38 リブ
41 液滴捕集部
42 液体輸送手段
45 液滴捕集部
46 液体輸送配管
48 管外壁
49 ウィック部材
52 アルデヒド酸化除去触媒
62、63 加熱手段
72 空気取り入れ口
81 空気ポンプ
82 空気排出配管
83 空気輸送配管
92 冷却ファン付きCPU
93 空気搬送配管

Claims (9)

  1. アルコール類、エーテル類、メトキシ基含有化合物、および水素化物からなる群より選択された少なくとも1種の化合物を含む燃料を燃料極に供給し、空気を空気極に供給して発電する直接型燃料電池であって、
    前記燃料極から排出されたガスを大気中に放出する第1の経路、および前記空気極から排出されたガスを大気中に放出する第2の経路を有することを特徴とする直接型燃料電池。
  2. 前記第1の経路に酸化触媒が配置されたことを特徴とする請求項1記載の直接型燃料電池。
  3. 前記第2の経路に酸化触媒が配置されたことを特徴とする請求項1記載の直接型燃料電池。
  4. 前記第1の経路に、細孔または微小間隙を有する部材からなり、前記ガス中に含まれる微小な液滴を捕集する液滴捕集部と、前記液滴捕集部で捕集された液滴を前記燃料極に戻す液体輸送手段とを有することを特徴とする請求項1記載の直接型燃料電池。
  5. 前記第1の経路に、アルデヒド酸化除去触媒またはアルデヒド吸収剤が配置されたことを特徴とする請求項1記載の直接型燃料電池。
  6. 前記酸化触媒を加熱する手段を有することを特徴とする請求項2または3記載の直接型燃料電池。
  7. 前記第1の経路に、空気を取り入れる空気供給手段が設けられたことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の直接型燃料電池。
  8. 前記空気供給手段に前記空気極より排出されたガスを送り込む第1のガス輸送手段を有することを特徴とする請求項7記載の直接型燃料電池。
  9. 請求項7記載の直接型燃料電池を搭載した機器であって、前記空気供給手段に、前記機器から発生した気流からのガスを送り込む第2のガス輸送手段を有することを特徴とする直接型燃料電池を搭載した機器。
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