JP2005010329A - 偏光板及び液晶表示素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性が高く、かつ、薄型の偏光板を得る。
【解決手段】本発明の偏光板4は、偏光子2と、偏光子2上に配置された保護膜3とを有しており、保護膜3は光重合性化合物が重合した硬化物と、紫外線吸収剤とを含有している。保護膜3の膜厚を40μm以下に薄くした場合でも、紫外線吸収剤によって紫外線が吸収され、偏光子2が保護される。また、光重合性化合物の硬化物は、湿気等を遮断する能力に優れているだけではなく、堅牢性にも優れているので、偏光子2は紫外線だけではなく、湿気や物理的衝撃からも保護されるので、本発明の偏光板4の耐久性は高い。従って、本発明の偏光板4を用いた表示装置9の信頼性は非常に高い。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板に関し、少なくとも偏光子の片面に保護膜が形成された偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶表示素子、有機EL表示素子、眼鏡等をはじめとする光学素子には、偏光板が用いられているが、このような用途に用いられている偏光板としては、ポリビニルアルコール系樹脂の一軸延伸フィルムをヨウ素で染色した偏光子の両面に、その強度及び耐水性や耐湿性等を向上させるために、保護膜を接着剤で貼り合わせたものが一般的である。
【0003】
このような偏光板における保護膜は、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムのように、光学的透明性に優れた酢酸セルロース系樹脂フィルムが多用され、また貼り合わせるための接着剤としては、偏光子及び保護膜が共に親水性であるため、親水性のものがよい。
【0004】
ところで、上述したような偏光子は、発色しているポリヨウ素イオン(I 、I 等)がポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸の結果として偏光能を発揮しているため、偏光子に湿気(水蒸気)が供給されるとポリヨウ素が分解してヨウ素イオン(I)となり、ポリヨウ素イオンによる発色は減じる。この現象は、高温環境下では更に顕著となる。その結果、偏光子の光透過率が増大し、偏光子の偏光能は経時的に失われると考えられている。従って、偏光板の保護膜には、外部の湿気等から偏光子を保護することが求められている。
【0005】
しかしながら、従来の偏光板において使用されるTACフィルム及び接着剤も親水性であるため、TACフィルムが外部の湿気の影響から偏光子を保護するために、その厚さを80μm程度以上の厚みにすることが行われていた。
【0006】
また、偏光板の保護膜において、その波長が380nm以下の紫外線の透過率が40%を超えると、偏光子や液晶を紫外線から保護する能力が十分ではなく、偏光板を液晶表示装置に組み込んだ場合に表示品質の低下をもたらすことがある。従って、波長380nm以下の紫外線の透過率は40%以下に制限され、好ましくは20%以下、さらに好ましくは5%以下である(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
保護膜の膜厚を小さくすると、紫外線の透過率が高くなるため、保護膜の薄膜化は紫外線防止の観点からも困難である。このように、従来の偏光板では、近年の光学表示素子用の偏光板の保護膜に要求されている薄膜化(例えば、保護膜の厚さを40μm以下に薄膜化)という要請に対応が困難という問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−249600号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、偏光板の保護膜を薄膜化した場合であっても、外部の湿気や紫外線から偏光子を保護できるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、偏光子と、前記偏光子上に配置された保護膜とを有し、前記保護膜は光重合性化合物が重合した硬化物を含有する偏光板であって、前記硬化物は紫外線透過性の物質で構成され、前記保護膜に紫外線吸収剤が添加された偏光板である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の偏光板であって、前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物を含有する偏光板である。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の偏光板であって、前記光重合性化合物は1又は2以上のアクリレートを含有する偏光板である。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の偏光板であって、前記光重合性化合物は、ネオペンチルグリコール基を有する第一のアクリレートと、トリメチロールプロパン基を有する第二のアクリレートと、ペンタエリスリトール基を有する第三のアクリレートと、ビスフェノール基を有する第四のアクリレートと、有橋炭化水素基を有する第五のアクリレートとからなる群より選択される少なくとも1種類のアクリレートを含有する偏光板である。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の偏光板であって、前記保護膜の膜厚は40μm以下である偏光板である。
請求項6記載の発明は、液晶パネルと、前記液晶パネル上に配置された請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の偏光板とを有する液晶表示素子である。
【0011】
尚、本発明で紫外線とは、紫外線中の波長380nm以下の領域のものであり、紫外線透過性の物質とは、膜厚40μmのフィルム状に成形した場合に、波長380nmの紫外線の透過率60%を超えるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の偏光板は、偏光子上に保護膜が形成されたものである。保護膜は、光重合性化合物と、紫外線吸収剤とを含有する保護膜用組成物に、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射し、光重合性化合物を重合させて形成される。
【0013】
光重合性化合物が重合するときに、紫外線吸収剤は殆ど反応しないので、結局保護膜は光重合性化合物が重合した硬化物と、紫外線吸収剤とを有する。光重合性化合物であるアクリレートの硬化物は水蒸気を遮断する能力が高いだけでなく、堅牢性にも優れているので、保護膜を膜厚40μm以下に薄膜化した場合でも、外部の湿気等の影響から偏光子を保護することが可能であり、また、偏光子の支持体としても機能することが可能である。上述したようなアクリレートの硬化物は可視光を透過する光学的透明性に優れているため、波長380nm以下の紫外線の透過性も高い。
【0014】
図2は透過率と波長との関係を示すグラフであり、図2の符号Lt、LaはそれぞれTACフィルムと、アクリレートの硬化物からなるフィルムを用いた場合の、透過率の変化を示している。
【0015】
アクリレートの硬化物からなるフィルムは、波長380nmの紫外線の透過率が約80%であり、TACフィルムに比べて紫外線の透過率が高く、紫外線透過性であることがわかる。
【0016】
本発明では、保護膜は光重合性化合物の硬化物だけではなく、紫外線吸収剤を含有しており、保護膜に入射した紫外線は紫外線吸収剤によって吸収されるので、可視光の透過性は高いが、紫外線の透過性が低くなる。
【0017】
このように、本発明の偏光板に用いられる保護膜は、膜厚を40μm以下と小さくした場合であっても、湿気に対する遮断性が高く、堅牢性にも優れているだけではなく、紫外線に対する遮断性も高いので、偏光子がダメージを受け難い。
【0018】
本発明に用いることのできる紫外線吸収剤は特に限定されないが、
▲1▼光重合性化合物の重合反応を阻害しない、▲2▼少ない配合量で高い紫外線吸収能力を持つ、▲3▼偏光板の性能(偏光度、可視光の透過率、耐久性)に影響を与えない、等の特性を考慮すると、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0019】
また、光重合性化合物として、ネオペンチルグリコール基を有する第一のアクリレート、トリメチロールプロパン基を有する第二のアクリレート、ペンタエリスリトール基を有する第三のアクリレート、ビスフェノール基を有する第四のアクリレート又は有橋炭化水素基を有する第五のアクリレートを用いれば、より堅牢で、湿気に対する遮断性の高い保護膜が得られる。
第一のアクリレートのネオペンチルグリコール基は下記式(1)で表される。
【0020】
【化1】
Figure 2005010329
【0021】
第二のアクリレートのトリメチロールプロパン基は下記式(2)で表される。
【0022】
【化2】
Figure 2005010329
【0023】
第三のアクリレートのペンタエリスリトール基は下記式(3)で表される。
【0024】
【化3】
Figure 2005010329
【0025】
第四のアクリレートのビスフェノール基は下記式(4)で表される。
【0026】
【化4】
Figure 2005010329
【0027】
第五のアクリレートの有橋炭化水素基を有する基としては、ジシクロペンタニル基又はジシクロペンテニル基が挙げられ、それらの基は下記式(5)で表される。
【0028】
【化5】
Figure 2005010329
【0029】
また、有橋炭化水素基のその他の例としては、イソボルニル基が挙げられる。本発明でアクリレートとは、重合に寄与する主要部としてアクリロイル基、又はメタクリロイル基を有するものであって、それら主要部である基がネオペンチルグリコール基、ペンタエリスリトール基、トリメチロールプロパン基、ビスフェノール基、ジシクロペンタニル基、又はジシクロペンテニル基に対して、酸素(−O−)を介して(即ち(メタ)アクロイルオキシ基として)結合してもよく、また、両者の間にオキシアルキレンオキシ基(−O(CHO−、−O(CHO−(ここでn及びmはそれぞれ1〜10の整数である))を介して結合してもよい。
【0030】
また、EO(エチレンオキサイド)変性基やPO(プロピレンオキサイド)変性基、あるいはエポキシ変性基、それらを組み合わせた変性基を介して結合してもよい。例えば、(メタ)アクリロイル基は、ビスフェノール基に対して、−O(CHCHO)−、−O(CH(CH)CHO)−、−O(CHCHO)−、又は−O(CH(CH)CHO)−を介して結合してもよい。ここで、n及びmはそれぞれ1〜10の整数である。
【0031】
ネオペンチルグリコール基を有する第一のアクリレートの好ましい例としては、下記化学式(1)〜(3)で示される化合物が挙げられる。
【0032】
【化6】
Figure 2005010329
【0033】
【化7】
Figure 2005010329
【0034】
【化8】
Figure 2005010329
【0035】
トリメチロールプロパン基を有する第二のアクリレートの好ましい例としては、下記化学式(4)、(5)で示される化合物が挙げられる。
【0036】
【化9】
Figure 2005010329
【0037】
【化10】
Figure 2005010329
【0038】
ペンタエリスリトール基を有する第三のアクリレートの好ましい例としては、下記化学式(6)、(7)で示される化合物が挙げられる。
【0039】
【化11】
Figure 2005010329
【0040】
【化12】
Figure 2005010329
【0041】
ビスフェノール基を有する第四のアクリレートの好ましい例としては、下記化学式(8)、(9)で示される化合物が挙げられる。
【0042】
【化13】
Figure 2005010329
【0043】
【化14】
Figure 2005010329
【0044】
尚、上記化学式(8)はビスフェノールA基を有する第四のアクリレートであって、上記化学式(9)はビスフェノールF基を有する第四のアクリレートである。
【0045】
有橋炭化水素基を有する第五のアクリレートの好ましい例としては、下記化学式(10)、(11)、(12)で示される化合物が挙げられる。
【0046】
【化15】
Figure 2005010329
【0047】
【化16】
Figure 2005010329
【0048】
【化17】
Figure 2005010329
(上記式(10)〜(12)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは−O−、−O(CHO−、−O(CHCHO)O−、又は−O(CH(CH)CHO)−であり、Yは−O−、−O(CHO−、−O(CHCHO)O−、又は−O(CH(CH)CHO)−であり、n及びmはそれぞれ1以上10以下の整数である。)
これら第一〜第五のアクリレートはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
本発明に用いられるアクリレートは上述した第一〜第五のアクリレートに限定されるものではなく、エチレン性不飽和モノマーを用いることができる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトールアクリレート、ベンジルアクリレート、アリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、アクリロキシエチルフォスフェート、2−ビニルピリジン、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(#200、#400、#600)ジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、メチルトリグリコール、アクリロイルモルフォリン、1、9−ノナンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1、3−プロパンジオールジアクリレート等が挙げられる。また、これらのオリゴマーも使用することが可能である。
【0050】
あるいは、光重合性化合物としてウレタン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、イソプレンアクリレート、エポキシアクリレート等も使用することができる。
【0051】
これらのアクリレートと、上述した第一〜第五のアクリレートとをアクリレートを併用することもできる。光重合性化合物が重合して硬化するためには、光重合性化合物として用いられるアクリレートのうち、いずれかが多官能であること、例えば、一分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。また、必要に応じて、公知の架橋剤、例えばポリイソシアネート系架橋剤を併用することができる。
【0052】
また、光重合性化合物には、光重合開始剤を添加することができる。このような光重合開始剤としては、例えば、オクテン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクテン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tーブチルパーベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、アントラキノン、ナフトキノン、ヒバロインエチルエーテル、ベンジルケタール、1,1−ジクロロアセトフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、2−クロロチオキサントン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ミヒラーケトン、2,2−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−メチルチオキサントン、フェニルグリオキシレート、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、ベンゾフェノン−アミン系(N−メチルジエタノール、トリエチルアミン等)、ベンジルジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノサルファイト、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォニノ−1−プロパノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンメチルベンゾイルフォルメート等を用いることが可能である。使用する光重合開始剤は、エネルギー線の種類に応じて適宜選択することができ、また、2種類以上の光重合開始剤を添加することもできる。
【0053】
光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、光重合性化合物の合計重量である樹脂固形分100重量部に対し、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。
【0054】
保護膜用組成物には必要に応じて有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族系溶剤、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。
【0055】
また、保護膜用組成物には、必要に応じて、添加剤として顔料、充填剤、レべリング剤、消泡剤、熱可塑性樹脂等を添加してもよい。
【0056】
本発明において、保護膜は、以上説明した保護膜用組成物を、公知の塗工方法、例えば、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピングコーティング法等により、後述する偏光子の表面に塗布し、必要に応じて40〜100℃の温度で有機溶剤を蒸発除去した後に、エネルギー線、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、プロトン線、中性子線等を照射して、光重合性化合物を重合させることにより形成できる。
中でも、皮膜形成速度(組成物の硬化速度)、エネルギー線照射装置の入手のし易さ、価格等から、エネルギー線として紫外線を採用することが有利である。
【0057】
光重合性化合物の重合に用いる紫外線は、150〜450nm波長域の光を主体としたもので、ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等から発生させることができる。
【0058】
保護膜の厚さとしては、特に制限はないが、上述したように、本発明では保護膜の薄膜化が可能であることから、薄膜化という観点からは好ましくは40μm以下、より好ましくは25μm以下である。
【0059】
保護膜用組成物を偏光子の表面に直接塗布し、光重合性化合物を重合させて硬化させれば、粘着剤や接着剤を介さずに、偏光子の表面に直接保護膜が形成されるので、偏光板をより薄膜化することができる。
【0060】
また、保護膜は、偏光子に保護膜用組成物を直接塗工して形成される場合だけでなく、保護膜用組成物を剥離シートの表面に塗工し、エネルギー線を照射し、光重合性化合物を剥離フィルム上で重合させて、保護膜用組成物の塗布膜をフィルム化し、そのフィルムを偏光子に公知の接着剤や粘着剤で粘着させることにより形成してもよい。
【0061】
本発明の偏光板に用いる偏光子としては、特に限定されず、従来より公知の偏光子を使用することができるが、特に、ポリビニルアルコール系樹脂の一軸延伸フィルムをヨウ素で染色したものを好ましく使用することができる。
【0062】
ここで、ポリビニルアルコール系樹脂は通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをけん化して製造されるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂における平均ケン化度は好ましくは85〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%が実用的である。また、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度としては任意のものが使用可能である。
【0063】
偏光子の具体的製法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を、水、有機溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリンなどの多価アルコール類、エチレンジアミンなどのアミン類等)又はそれらと有機溶媒との混合溶媒(水分約5〜30重量%)に約5〜20重量%で溶解した原液を製膜してフィルム化し、
【0064】
(a)そのフィルムを延伸した後にヨウ素溶液又は二色性染料溶液に浸漬して染色し、その後でホウ素化合物処理する方法、
(b)そのフィルムをヨウ素溶液又は二色性染料溶液に浸漬しながら延伸を行うことにより延伸と染色を同時に行い、その後でホウ素化合物処理する方法、
(c)そのフィルムをヨウ素溶液又は二色性染料溶液に浸漬して染色した後に延伸し、その後でホウ素化合物処理する方法、また、
(d)そのフィルムをヨウ素溶液又は二色性染料溶液に浸漬し染色した後、ホウ素化合物溶液中で延伸する方法等が挙げられる。
【0065】
偏光子の製造に用いるポリビニルアルコール系樹脂の製膜方法としては、キャスト法、押出法、ゲル製膜法等の公知の方法で製膜することができる。
また、製膜したポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸は、好ましくは40〜170℃の温度で一軸方向に、一回でもしくは複数回で3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが望ましい。この際、前記と直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度あるいはそれ以上の延伸)を行ってもよい。
【0066】
製膜したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対する染色は、そのフィルムにヨウ素溶液あるいは二色性染料を含有する液体を接触させることによって行われる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/1、ヨウ化カリの濃度は10〜50g/1、ヨウ素/ヨウ化カリの重量比は20〜100が適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。染色浴の温度は5〜50℃が好ましい。水以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。接触手段としては浸漬、塗布、噴霧等の任意の手段が適用できる。
【0067】
染色処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対するホウ素化合物処理は、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物の水溶液又は含水有機溶媒溶液(0.5〜2モル/1程度)を、少量のヨウ化カリの共存下、50〜70℃の温度で、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに浸漬、塗布、噴霧などの手段により接触させればよい。必要に応じてホウ素化合物処理中にフィルムの延伸操作を行ってもよい。
【0068】
本発明の偏光板は、偏光子の少なくとも片面に、上述したように保護膜を形成することにより製造できる。本発明の偏光板の片面又は両面には、本発明の効果が損なわれない範囲で、従来のTACフィルムを接着剤により貼り合わせてもよいし、必要に応じて公知の透明な感圧性接着剤層を常法により設けてもよい。
【0069】
感圧性接着剤層としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルと、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα−モノオレフィンカルボン酸との共重合物(アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチロールの如きビニル単量体を添加したものも含む)を主体とするものが、偏光子の偏光特性を阻害することがないので特に好ましい。その他、透明性を有する粘着剤、例えば、ポリビニルエーテル系、ゴム系等の接着剤を使用することができる。
【0070】
本発明の偏光板には、必要に応じて、アンチグレア層、ハードコート層、アンチリフレクション層、ハーフリフレクション層、反射層、蓄光層、光拡散層、エレクトロルミネッセンス層等の機能層を1層以上、粘着剤や接着剤で積層してもよい。
【0071】
本発明の偏光板は、従来公知の構造の液晶パネルや、有機ELパネル等の表示パネルの少なくとも片面に粘着されるべき偏光板として、あるいはサングラス、視力矯正用メガネ等の眼鏡用レンズの少なくとも片面に粘着されるべき偏光板として好ましく適用される。
【0072】
図1の符号9は、本発明の偏光板を用いた表示装置である液晶表示素子の一例を示している。表示装置9は液晶パネル1と、第一、第二の偏光板4、12とを有している。
【0073】
第一の偏光板4は板状の偏光子2と、偏光子2の表面に形成された保護膜3とを有しており、第一の偏光板4の保護膜3とは反対側の面にはλ/2位相差膜5と、λ/4位相差膜6が粘着剤層7をそれぞれ介して積層されて積層体が構成され、該積層体のλ/4位相差膜6が配置された側の面が、粘着剤層8を介して液晶パネル1の表面に貼り付けられている。
【0074】
他方、第二の偏光板12は、板状の偏光子10と、偏光子10の表面にそれぞれ形成された保護膜11とを有しており、第二の偏光板12の表面には、λ/2位相差膜13とλ/4位相差膜14と視野角向上膜15とが粘着剤層16を介して積層されて積層体が構成され、該積層体の視野角向上膜15が配置された側の面が、粘着剤層17を介して液晶パネル1の裏面に貼り付けられている。
【0075】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
<実施例1〜17、比較例>
光重合性化合物であるアクリレートと、添加剤であるシランカップリング剤と、紫外線吸収剤と、光重合開始剤とを下記表1〜3の「保護膜の組成」の欄に記載された配合比率で配合して実施例1〜17、比較例の保護膜用組成物を作製した。
保護膜用組成物に用いた、アクリレートと、シランカップリング剤と、紫外線吸収剤と、光重合開始剤の商品名と配合比率とを下記表1〜3に記載する。
【0076】
【表1】
Figure 2005010329
【0077】
【表2】
Figure 2005010329
【0078】
【表3】
Figure 2005010329
【0079】
尚l、上記表1〜3中の「BP−4EA」はEO変性ビスフェノールA型ジアクリレートであり、「MANDA」はヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬(株)社製)であり、「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートであり、「DPHA」はジペンタエリスリトールヘキサアクリレートであり、「FA−512M」はジシクロペンテニルオキシエチルメタアクリレート(日立化成工業(株))である。
【0080】
「KBM」は信越シリコーン製のγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランであって、ここでは等量の水と混合し、加水分解したものを用いた。「Irgacure 819」はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製のアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤である。
【0081】
「TINUVIN384−2」、「TINUVIN1130」、「TINUVIN928」、「TINUVIN400」はそれぞれチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製の紫外線吸収剤であり、「Visorb100」は共同薬品(株)社製の紫外線吸収剤である。
【0082】
「TINUVIN384−2」と、「TINUVIN1130」と、「TINUVIN928」の主成分であるベンゾトリアゾール系化合物の化学式を下記化学式(13)〜(15)に、「TINUVIN400」の主成分であるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の主成分を下記化学式(16)に、「Visorb100」の主成分であるベンゾフェノン系化合物の化学式を下記化学式(17)に示す。
【0083】
【化18】
Figure 2005010329
【0084】
【化19】
Figure 2005010329
【0085】
上記化学式(14)中のオキソエタンジイル基(OCHCH)の重合度は6又は7である。
【0086】
【化20】
Figure 2005010329
【0087】
【化21】
Figure 2005010329
【0088】
上記化学式(16)中のオキシプロピル基(CHCHCHO)に結合するアルキル基はドデシル基(C1225)又はトリデシル基(C1327)又である。
即ち、上記化学式(16)は2−[4−[(2−ヒドロキシ−3―ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン又は2−[4−[(2−ヒドロキシ−3―トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンである。
【0089】
【化22】
Figure 2005010329
【0090】
これら実施例1〜17と、比較例の保護膜用組成物を用い、下記に示す「紫外線透過率」試験と、「偏光板耐久性」試験を行った。
【0091】
<紫外線透過率>
実施例1〜17、比較例の保護膜用組成物を、それぞれ剥離フィルム上に塗布し、膜厚20μmの塗布膜と、膜厚40μmの塗布膜をそれぞれ形成し、メタルハライドランプにより、各塗布膜に400mJ/cmの積算光量で紫外線(波長365nm)を照射して光重合性化合物を重合させて塗布膜をフィルム化し、各保護膜用組成物について2種類のアクリレートフィルムを作製した。
【0092】
これら34種類のアクリレートフィルムについて、フィルム化後の膜厚と、波長380nmの紫外線の透過率とを測定し、透過率が10%未満の場合を「○」、10%以上の場合を「×」として判定した。その結果を、上記表1〜3の「評価結果、20μmフィルム、40μmフィルム」の欄に記載した。
【0093】
<偏光板耐久性>
けん化度99.5モル%のポリビニルアルコールフィルム(75μm厚)を、純水に浸漬して十分に膨潤させた後に、ヨウ素染色液(ヨウ素/ヨウ化カリウム/ホウ酸/純水=0.2g/30g/30/1リットル)に35℃で4分間浸漬して染色した。
【0094】
染色したポリビニルアルコールフィルムを延伸用溶液(ヨウ化カリウム/ホウ酸/純水=30g/30g/1リットル)中で、その長さが5倍以上になるまで一軸延伸を行った。
【0095】
延伸したポリビニルアルコールフィルムを、固定用溶液(ヨウ化カリウム/ホウ酸/純水=40g/40g/1リットル)に、40℃で3分間浸漬してポリビニルアルコールフィルム中にヨウ素を固定した後に、固定用溶液から取り出し、乾燥炉(65℃、5分)中で乾燥することにより偏光子を作製した。
【0096】
該偏光子の両面に、上述した実施例1〜17、比較例の保護膜用組成物をそれぞれ塗布して膜厚20μmの塗布膜を形成し、メタルハライドランプにより400mJ/cmの積算光量で紫外線(波長365nm)を照射して硬化させて保護膜を形成し、17種類の偏光板を得た。
【0097】
各偏光板について可視光(400〜700nm)の透過率と、偏光度をそれぞれ測定した後、60℃、90%RHの高温高湿環境下に各偏光板を100時間放置した(エージング)。各偏光板のエージング後の可視光の透過率と偏光度をそれぞれ測定し、エージング前の透過率と偏光度から、透過率の変化率と、偏光度の変化率をそれぞれ求め、各変化率が10%未満であった場合を「○」とし、一方又は両方の変化率が10%以上であった場合を「×」として判定した。その結果を上記表1〜3に記載した。
【0098】
上記表1〜3を見ると、紫外線吸収剤を添加しない比較例では、紫外線の透過率が膜厚20μmで80%を超え、また膜厚40μmの場合でも80%と近かったのに対し、紫外線吸収剤が添加された実施例1〜17は比較例に比べて紫外線の透過率が低くなった。
【0099】
実施例1〜17の中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤を用いた実施例15、16は、膜厚20μm、40μmのいずれの場合も、紫外線の透過率が40%を超えていたのに対し、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を用いた1〜14、17は、膜厚20μm、40μmのいずれの場合も紫外線の透過率が25%未満と低かった。
【0100】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量を検討すると、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量が、光重合性化合物であるアクリレート100重量部に対して2重量部であった実施例13は、フィルム膜厚が40μmと厚い場合も紫外線透過率が10%を超えていたが、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量3重量を超えた実施例1〜12、14はフィルム膜厚が40μmの場合は、紫外線透過率が10%未満となっており、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量が5重量部以上15重量部以下であった実施例3〜12、14はフィルム膜厚が20μmと薄い場合であっても紫外線透過率が10%未満と低かった。
【0101】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量が、光重合性化合物であるアクリレート100重量部に対して20重量部以上であった実施例14は、紫外線吸収能力が高かったが、偏光板耐久性の結果を見るとエージング前の可視光の透過率が低かった。これは、紫外線吸収剤の添加量が多すぎたため、保護膜中で紫外線吸収剤が相分離の状態になったため、可視光の透過率が低下したと推測される。
【0102】
以上のことから、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量が、光重合性化合物100重量部に対して2重量部以上20重量部未満、より好ましくは5重量以上15重量部以下であれば、保護膜の膜厚が薄い場合であっても、高い紫外線遮断性を有し、かつ、可視光の透過率も高くなることが分かる。
【0103】
尚、参考例としてTACフィルムの紫外線透過率を測定したところ、その透過率は低く、TACフィルムが紫外線遮蔽性に優れていることがわかるが、その膜厚は80μmと厚いため、偏光板の薄膜化という課題を考慮すると好ましくない。
【0104】
【発明の効果】
本発明の偏光板によれば、保護膜が薄膜化された場合でも、保護膜が外部の湿気等の影響から偏光子を保護する能力が高く、かつ、その紫外線吸収能力が高いので、偏光板の耐久性が非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏光板を適用した液晶表示素子の概略断面図
【図2】透過率と波長との関係を示すグラフ
【符号の説明】
1……液晶パネル 2、10……偏光子 3、11……保護膜 4、12……偏光板 5、13……λ/2位相差膜 6、14……λ/4位相差膜、7、8、16、17……粘着剤層 15……視野角向上膜 9……液晶表示素子

Claims (6)

  1. 偏光子と、前記偏光子上に配置された保護膜とを有し、
    前記保護膜は光重合性化合物が重合した硬化物を含有する偏光板であって、
    前記硬化物は紫外線透過性の物質で構成され、
    前記保護膜に紫外線吸収剤が添加された偏光板。
  2. 前記紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール化合物を含有する請求項1記載の偏光板。
  3. 前記光重合性化合物は1又は2以上のアクリレートを含有する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の偏光板。
  4. 前記光重合性化合物は、ネオペンチルグリコール基を有する第一のアクリレートと、トリメチロールプロパン基を有する第二のアクリレートと、ペンタエリスリトール基を有する第三のアクリレートと、ビスフェノール基を有する第四のアクリレートと、有橋炭化水素基を有する第五のアクリレートとからなる群より選択される少なくとも1種類のアクリレートを含有する請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の偏光板。
  5. 前記保護膜の膜厚は40μm以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の偏光板。
  6. 液晶パネルと、前記液晶パネル上に配置された請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の偏光板とを有する液晶表示素子。
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