JP2005008955A - 銅箔の表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の設備等をそのまま利用でき、簡便で生産性が高く低コストな方法で、粗化処理された銅箔表面の銅電着層から銅粉が剥離することを防止する。
【解決手段】銅めっき液中で銅箔を陰極として電解処理を行い、銅箔の表面に突起状の銅電着物からなる粗化処理層を形成した後、銅箔を酸性溶液中に浸漬する処理を行う。
【選択図】 なし
【解決手段】銅めっき液中で銅箔を陰極として電解処理を行い、銅箔の表面に突起状の銅電着物からなる粗化処理層を形成した後、銅箔を酸性溶液中に浸漬する処理を行う。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅箔の表面処理方法に係り、特に、粗化面が均一で回路のファインパターン化が可能なプリント配線板用銅箔、活物質との密着性にすぐれたLiイオン二次電池の負極集電体用銅箔等を提供できる銅箔の表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子回路基板用やLiイオン二次電池の負極集電体用の分野で、現在銅箔が大量に使用されている。例えば、電子回路基板の分野ではガラスエポキシ基材と熱プレスしたり、接着剤付きのポリイミドフィルムとラミネートしたり、あるいはポリイミドワニスを塗布後キュアして基板としたりして、プリント配線板の基本的な構成要素となる。またLiイオン二次電池の負極集電体の場合、銅箔表面に活物質と呼ばれる黒鉛とバインダーを混合したものが塗布されるが、最近ではSn或いはSn系合金を銅箔表面に被覆する検討が行われている。
【0003】
前記において、銅箔と樹脂あるいは銅箔と電池用活物質との間の密着性を向上させるため、銅箔にはいわゆるトリート処理と称する表面粗化処理が施される。銅箔には電解銅箔と圧延銅箔があるが、表面粗化処理についてはいずれも同様の方法がとられる。すなわち銅イオンを含有する電解液中で銅箔を陰極電解し、銅箔表面に樹枝状や米粒状の銅電着層を形成する。最適な表面状態を得るため電解液中には微量の塩素イオン、ゼラチンあるいは複数の金属イオンが共添されることがある。このようにして形成された凹凸を持った銅電着層は樹脂などと接着されるときアンカー効果により密着性を向上させることになる。
【0004】
しかしながら、このように表面粗化処理された銅箔は、特に表面粗さが大きい場合は表面に形成した銅電着層から銅粉が脱落したり、プリント配線板として銅箔にエッチングにより所定の回路を形成する際、基板側に食い込んでいる銅粉が残存しやすくなることがあった。銅粉が残存すると絶縁抵抗が減少したり、回路間の短絡につながる恐れがあるためエッチング時間を長くする必要が出てくる。これは回路として残存すべき部分を幅方向にエッチングしてしまういわゆるサイドエッチにつながり、ファインパターンを形成することが出来なくなってしまう。
【0005】
このため、銅粉の脱落を防止する目的で、酸洗いされた銅箔に対して硫酸酸性浴中で正負の交番パルス電解又は交流電解を行って銅箔表面の活性化処理を施した後、陰極電解により銅箔の粗面化を行う銅箔の表面処理方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、電解銅箔の粗化処理前に形成されている表面凹凸の凸部に粗化処理時の電流が集中して銅粉が脱落するほど形成されてしまうとし、凹部にも均一に粗化される様に粗化面側にタングステンやモリブデンなどの複合金属層を設け、その上に銅からなる粗化層を設ける銅箔の表面処理方法も提案されている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−168596号公報
【特許文献2】
特開2001−226795号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示す銅箔の表面処理方法では、陰極電解により銅箔の粗面化を行う前に、硫酸酸性浴中で正負の交番パルス電解又は交流電解を行って銅箔表面の活性化処理を行う必要があるため、処理工程が増加し、設備的に複雑となるという不都合があった。また、特許文献2に示す銅箔の表面処理方法では、粗化の前に複合金属層を設ける必要があるため、特許文献1に示す方法と同様に設備的に複雑となり、新たにめっき液の管理が必要となり量産する上では極めて煩雑となる不都合があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、従来の設備等をそのまま利用でき、簡便で生産性が高く低コストな方法で、粗化処理された銅箔表面の銅電着層から銅粉が剥離することを防止することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、粗化処理された表面を適度な条件で酸性溶液に浸漬することにより通常の粗化処理をされた銅箔であっても銅粉が脱落することのない粗化面とすることが出来ることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明の銅箔の表面処理方法は、銅めっき液中で銅箔を陰極として電解処理を行い、銅箔の表面に突起状の銅電着物からなる粗化処理層を形成した後、銅箔を酸性溶液中に浸漬する処理を行うことを特徴とする。
【0012】
前記酸性溶液は、H2SO4とK2S2O8との混合溶液とすることができる。
【0013】
前記酸性溶液中に浸漬する処理は、前記電解処理後の銅箔表面の表面粗さ(Ra)が0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように行うことが好ましい。
【0014】
また、前記酸性溶液中に浸漬する処理は、前記電解処理後の銅箔表面のRaが1.0μm以下の場合はH2SO4:50g/lとK2S2O8:10g/lからなる混合溶液中に3秒以上浸漬し、1.0μmを超える場合は当該混合溶液に10秒以上浸漬して行うことが好ましい。
【0015】
更に、前記酸性溶液中に浸漬する処理後、銅箔表面にNiめっき処理、Znめっき処理、クロメート処理、シランカップリング処理のうちのいずれか、もしくはこれらのうち2処理以上を組み合わせて行うこともできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の銅箔の表面処理方法の一例について詳しく説明する。
【0017】
本表面処理方法において、銅めっき液中の銅箔を陰極とした電解処理の条件としては、従来行われているいわゆる焼けめっきの条件、即ち電流密度を極めて大きくした条件が用いられる。従って、表面粗さ(Ra)が0.3μm以上では樹枝状の電着表面を呈するようになる。このような条件でのめっきは全面にわたって均一にめっき厚さが増大していくわけではなく、部分的に電流が集中するところが形成されやすく、そのような部分では樹枝状の結晶が大きく成長することになる。この様に局部的に成長したものが前述した銅粉脱落の原因となり得る。
【0018】
このような樹枝状の結晶の局部的な成長は通常の焼けめっき条件では避けることが出来ない。従って本処理方法では、粗化処理後、銅箔を酸性溶液に浸漬する処理を行うことにより局部的に成長した部分を除去することとしている。酸性溶液としては、めっき前処理段階において、通常酸洗浄のために用いられる希硫酸溶液に酸化剤が添加されたもの、例えば50g/lのH2SO4と10g/lのK2S2O8との混合溶液等を用いることができる。この場合、酸性溶液に室温で10秒程度浸漬するだけでよい。粗化処理後に酸性溶液に浸漬する処理を行うと、局部的に大きく成長した樹脂状の結晶を除去することになるためRaは低下する。
【0019】
酸性溶液に浸漬する処理条件は、表面粗さRaの測定を行うことにより決定することができる。即ち、後述する実施例からも明らかなように、Raが0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は、80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように処理条件を選ぶと、銅粉の脱落が改善されるものとなる。浸漬処理後の表面のRaがこれらの条件より大きいと、処理不足となり銅粉の脱落を防止することができない。一方、浸漬処理後の表面のRaは処理前のRaの50%以上であることが好ましい。50%未満では全面的に処理過剰となり基板表面の凹凸が減少し過ぎて、基板との接着強度を向上させる効果が薄れてしまうためである。
【0020】
更に、電子回路基板用銅箔として使用する場合、樹脂との密着性を向上させたり、長期間にわたって密着性が低下するのを防止するために、酸洗後にNiやZnめっきまたクロメート処理やシランカップリング処理を行うことができる。クロメート処理はクロム酸を用いる電解クロメートでもよいが、最近は環境面を考慮し例えば3価のクロムイオンで処理する代替クロメートが推奨される。上記したような銅粉が脱落しないよう処理された粗化面に、これらの処理を組合せることによりはじめて実用的な銅箔として供することが出来るようになる。
【0021】
【実施例1】
板厚18μmの圧延銅箔を用意し、NaOH:40g/l、Na2CO3:20g/lからなる溶液中で6A/dm2の条件で10秒間電解脱脂後、H2SO4:50g/lとK2S2O8:10g/lからなる溶液中に10秒間浸漬して前処理の酸洗浄を行った。次に(株)山本鍍金試験器「ハルセル」を用い、陰極に前記の100×50mm角の銅箔、陽極に68×50mm角の白金板をセットし、CuSO4・5H2O:150g/lとH2SO4:100g/lとからなる電解液中で30℃、5Aの条件で電解を行った。表1に示すように、電解時間を10及び20秒とし、焼けめっき側からの距離を20〜30mmの間で変化させたサンプルNo.1〜4の表面粗さRaをAFM(Atomic Force Microscope)を用いて測定した。次に同じサンプルを前処理で用いた酸性溶液に3秒および10秒浸漬した後再びRaを測定し比較した。また前記サンプルにおいて5mm角の部分を切り出し、セロテープ貼り付けによる銅粉付着状況を浸漬処理前後で比較した。表1に試験結果を示す。
なお、表中、○はセロテープを剥がした後テープに銅粉が付着しないもの、△は部分的に付着したもの、×は全面的に付着したものを示している。また、Ra変化率は、(浸漬処理後のRa/めっき後のRa)×100により算出した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示した通り、いわゆる焼けめっき状態で4種類の異なる表面粗さをもつサンプルを作製した場合、めっき上がりの状態ではいずれも焼けめっき条件であるため銅粉の脱落がみられる。しかし、サンプルNo.1では3秒以上、サンプルNo.2では3秒以上、好ましくは10秒以上、サンプルNo.3、4では10秒以上の浸漬処理条件により銅粉の脱落が改善されることが分かった。また、表面粗さの観点からは、Raが0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は、80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように浸漬処理条件を選ぶと、銅粉の脱落が改善されることが分かった。
【0024】
【実施例2】
板厚18μmの圧延銅箔を実施例1と同じ前処理条件で脱脂、酸洗した後、同じ電解液を用い実施例1のNo.2に相当する電流密度で粗化処理を行った。この後10秒間の浸漬処理を行ったものと行わないものにつき、ZnCl2:40g/lとKCl:210g/lとホウ酸30g/lとからなるめっき液でpH5、30℃、1A/dm2の条件で厚さ30nm相当のZnめっきを行った。さらにこの後、無水クロム酸3g/l、pH10、1A/dm2の条件で5秒間電解クロメートを行いサンプルとした。
【0025】
これらサンプルの樹脂との接着強度を測定するため、FR−5相当ガラス・エポキシ樹脂含浸基材にサンプルの粗化面側を積層し銅張積層板とした。次にエッチングにより銅箔幅1mmとしJIS C6481に準拠し接着強度を測定した。
このときの接着強度は、浸漬処理を行わないサンプルでは0.61N/mm、浸漬処理を行ったサンプルでは0.95N/mmであった。
【0026】
これより、粗化条件は同じであるものの浸漬処理を行ったものがはるかに高い接着強度を示した。これは浸漬処理しないものでは脱落しやすい銅粉が表面に残存していたこと、また電解のZnめっきおよびクロメート処理を行った際、粗化面に局部的に成長していた樹枝状の脱落しやすい部分に電流が集中し均一な処理が出来なかったためと考えられる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の銅箔の表面処理方法は、銅箔の表面に突起状の銅電着物からなる粗化処理層を形成した後、銅箔を酸性溶液中に浸漬する処理を行っているので、局部的に大きく成長した樹脂状の結晶を除去することが可能となり、簡便で生産性が高い方法で銅粉脱落の少ない粗化銅箔を製造することが出来るものとなる。従って、例えばプリント配線板として使用される場合も回路のエッチング後に樹脂中に銅粉残存が少ない信頼性のより高い製品とすることが出来る。また、Liイオン二次電池の負極集電体用として活物質との密着性にすぐれたものとすることができる。
【0028】
また、酸性溶液としてH2SO4とK2S2O8との混合溶液を用いることにより、通常のめっき前処理段階において酸洗浄のために用いられる溶液と同じものとすることができるので、新たな設備等が不要で低コストなものとすることができる。
【0029】
また、酸性溶液中に浸漬する処理を、前記電解処理後の銅箔表面のRaが0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように行うことより、銅粉の脱落を防止しつつ、基板との接着強度を良好に維持できるものとなる。
【0030】
更に、酸性溶液中に浸漬する処理を、電解処理後の銅箔表面のRaが1.0μm以下の場合はH2SO4:50g/lとK2S2O8:10g/lからなる混合溶液中に3秒以上浸漬し、1.0μmを超える場合は当該混合溶液に10秒以上浸漬して行うことによっても、銅粉の脱落を防止しつつ、基板との接着強度を良好に維持できるものとなる。
【0031】
また、酸性溶液中に浸漬する処理後、銅箔表面にNiめっき処理、Znめっき処理、クロメート処理、シランカップリング処理のうちのいずれか、もしくはこれらのうち2処理以上を組み合わせて行うことにより、電子回路基板用やLiイオン二次電池の負極集電体用の分野において実用的な銅箔として供することができるものとなる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅箔の表面処理方法に係り、特に、粗化面が均一で回路のファインパターン化が可能なプリント配線板用銅箔、活物質との密着性にすぐれたLiイオン二次電池の負極集電体用銅箔等を提供できる銅箔の表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子回路基板用やLiイオン二次電池の負極集電体用の分野で、現在銅箔が大量に使用されている。例えば、電子回路基板の分野ではガラスエポキシ基材と熱プレスしたり、接着剤付きのポリイミドフィルムとラミネートしたり、あるいはポリイミドワニスを塗布後キュアして基板としたりして、プリント配線板の基本的な構成要素となる。またLiイオン二次電池の負極集電体の場合、銅箔表面に活物質と呼ばれる黒鉛とバインダーを混合したものが塗布されるが、最近ではSn或いはSn系合金を銅箔表面に被覆する検討が行われている。
【0003】
前記において、銅箔と樹脂あるいは銅箔と電池用活物質との間の密着性を向上させるため、銅箔にはいわゆるトリート処理と称する表面粗化処理が施される。銅箔には電解銅箔と圧延銅箔があるが、表面粗化処理についてはいずれも同様の方法がとられる。すなわち銅イオンを含有する電解液中で銅箔を陰極電解し、銅箔表面に樹枝状や米粒状の銅電着層を形成する。最適な表面状態を得るため電解液中には微量の塩素イオン、ゼラチンあるいは複数の金属イオンが共添されることがある。このようにして形成された凹凸を持った銅電着層は樹脂などと接着されるときアンカー効果により密着性を向上させることになる。
【0004】
しかしながら、このように表面粗化処理された銅箔は、特に表面粗さが大きい場合は表面に形成した銅電着層から銅粉が脱落したり、プリント配線板として銅箔にエッチングにより所定の回路を形成する際、基板側に食い込んでいる銅粉が残存しやすくなることがあった。銅粉が残存すると絶縁抵抗が減少したり、回路間の短絡につながる恐れがあるためエッチング時間を長くする必要が出てくる。これは回路として残存すべき部分を幅方向にエッチングしてしまういわゆるサイドエッチにつながり、ファインパターンを形成することが出来なくなってしまう。
【0005】
このため、銅粉の脱落を防止する目的で、酸洗いされた銅箔に対して硫酸酸性浴中で正負の交番パルス電解又は交流電解を行って銅箔表面の活性化処理を施した後、陰極電解により銅箔の粗面化を行う銅箔の表面処理方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、電解銅箔の粗化処理前に形成されている表面凹凸の凸部に粗化処理時の電流が集中して銅粉が脱落するほど形成されてしまうとし、凹部にも均一に粗化される様に粗化面側にタングステンやモリブデンなどの複合金属層を設け、その上に銅からなる粗化層を設ける銅箔の表面処理方法も提案されている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−168596号公報
【特許文献2】
特開2001−226795号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に示す銅箔の表面処理方法では、陰極電解により銅箔の粗面化を行う前に、硫酸酸性浴中で正負の交番パルス電解又は交流電解を行って銅箔表面の活性化処理を行う必要があるため、処理工程が増加し、設備的に複雑となるという不都合があった。また、特許文献2に示す銅箔の表面処理方法では、粗化の前に複合金属層を設ける必要があるため、特許文献1に示す方法と同様に設備的に複雑となり、新たにめっき液の管理が必要となり量産する上では極めて煩雑となる不都合があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、従来の設備等をそのまま利用でき、簡便で生産性が高く低コストな方法で、粗化処理された銅箔表面の銅電着層から銅粉が剥離することを防止することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、粗化処理された表面を適度な条件で酸性溶液に浸漬することにより通常の粗化処理をされた銅箔であっても銅粉が脱落することのない粗化面とすることが出来ることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明の銅箔の表面処理方法は、銅めっき液中で銅箔を陰極として電解処理を行い、銅箔の表面に突起状の銅電着物からなる粗化処理層を形成した後、銅箔を酸性溶液中に浸漬する処理を行うことを特徴とする。
【0012】
前記酸性溶液は、H2SO4とK2S2O8との混合溶液とすることができる。
【0013】
前記酸性溶液中に浸漬する処理は、前記電解処理後の銅箔表面の表面粗さ(Ra)が0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように行うことが好ましい。
【0014】
また、前記酸性溶液中に浸漬する処理は、前記電解処理後の銅箔表面のRaが1.0μm以下の場合はH2SO4:50g/lとK2S2O8:10g/lからなる混合溶液中に3秒以上浸漬し、1.0μmを超える場合は当該混合溶液に10秒以上浸漬して行うことが好ましい。
【0015】
更に、前記酸性溶液中に浸漬する処理後、銅箔表面にNiめっき処理、Znめっき処理、クロメート処理、シランカップリング処理のうちのいずれか、もしくはこれらのうち2処理以上を組み合わせて行うこともできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の銅箔の表面処理方法の一例について詳しく説明する。
【0017】
本表面処理方法において、銅めっき液中の銅箔を陰極とした電解処理の条件としては、従来行われているいわゆる焼けめっきの条件、即ち電流密度を極めて大きくした条件が用いられる。従って、表面粗さ(Ra)が0.3μm以上では樹枝状の電着表面を呈するようになる。このような条件でのめっきは全面にわたって均一にめっき厚さが増大していくわけではなく、部分的に電流が集中するところが形成されやすく、そのような部分では樹枝状の結晶が大きく成長することになる。この様に局部的に成長したものが前述した銅粉脱落の原因となり得る。
【0018】
このような樹枝状の結晶の局部的な成長は通常の焼けめっき条件では避けることが出来ない。従って本処理方法では、粗化処理後、銅箔を酸性溶液に浸漬する処理を行うことにより局部的に成長した部分を除去することとしている。酸性溶液としては、めっき前処理段階において、通常酸洗浄のために用いられる希硫酸溶液に酸化剤が添加されたもの、例えば50g/lのH2SO4と10g/lのK2S2O8との混合溶液等を用いることができる。この場合、酸性溶液に室温で10秒程度浸漬するだけでよい。粗化処理後に酸性溶液に浸漬する処理を行うと、局部的に大きく成長した樹脂状の結晶を除去することになるためRaは低下する。
【0019】
酸性溶液に浸漬する処理条件は、表面粗さRaの測定を行うことにより決定することができる。即ち、後述する実施例からも明らかなように、Raが0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は、80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように処理条件を選ぶと、銅粉の脱落が改善されるものとなる。浸漬処理後の表面のRaがこれらの条件より大きいと、処理不足となり銅粉の脱落を防止することができない。一方、浸漬処理後の表面のRaは処理前のRaの50%以上であることが好ましい。50%未満では全面的に処理過剰となり基板表面の凹凸が減少し過ぎて、基板との接着強度を向上させる効果が薄れてしまうためである。
【0020】
更に、電子回路基板用銅箔として使用する場合、樹脂との密着性を向上させたり、長期間にわたって密着性が低下するのを防止するために、酸洗後にNiやZnめっきまたクロメート処理やシランカップリング処理を行うことができる。クロメート処理はクロム酸を用いる電解クロメートでもよいが、最近は環境面を考慮し例えば3価のクロムイオンで処理する代替クロメートが推奨される。上記したような銅粉が脱落しないよう処理された粗化面に、これらの処理を組合せることによりはじめて実用的な銅箔として供することが出来るようになる。
【0021】
【実施例1】
板厚18μmの圧延銅箔を用意し、NaOH:40g/l、Na2CO3:20g/lからなる溶液中で6A/dm2の条件で10秒間電解脱脂後、H2SO4:50g/lとK2S2O8:10g/lからなる溶液中に10秒間浸漬して前処理の酸洗浄を行った。次に(株)山本鍍金試験器「ハルセル」を用い、陰極に前記の100×50mm角の銅箔、陽極に68×50mm角の白金板をセットし、CuSO4・5H2O:150g/lとH2SO4:100g/lとからなる電解液中で30℃、5Aの条件で電解を行った。表1に示すように、電解時間を10及び20秒とし、焼けめっき側からの距離を20〜30mmの間で変化させたサンプルNo.1〜4の表面粗さRaをAFM(Atomic Force Microscope)を用いて測定した。次に同じサンプルを前処理で用いた酸性溶液に3秒および10秒浸漬した後再びRaを測定し比較した。また前記サンプルにおいて5mm角の部分を切り出し、セロテープ貼り付けによる銅粉付着状況を浸漬処理前後で比較した。表1に試験結果を示す。
なお、表中、○はセロテープを剥がした後テープに銅粉が付着しないもの、△は部分的に付着したもの、×は全面的に付着したものを示している。また、Ra変化率は、(浸漬処理後のRa/めっき後のRa)×100により算出した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示した通り、いわゆる焼けめっき状態で4種類の異なる表面粗さをもつサンプルを作製した場合、めっき上がりの状態ではいずれも焼けめっき条件であるため銅粉の脱落がみられる。しかし、サンプルNo.1では3秒以上、サンプルNo.2では3秒以上、好ましくは10秒以上、サンプルNo.3、4では10秒以上の浸漬処理条件により銅粉の脱落が改善されることが分かった。また、表面粗さの観点からは、Raが0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は、80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように浸漬処理条件を選ぶと、銅粉の脱落が改善されることが分かった。
【0024】
【実施例2】
板厚18μmの圧延銅箔を実施例1と同じ前処理条件で脱脂、酸洗した後、同じ電解液を用い実施例1のNo.2に相当する電流密度で粗化処理を行った。この後10秒間の浸漬処理を行ったものと行わないものにつき、ZnCl2:40g/lとKCl:210g/lとホウ酸30g/lとからなるめっき液でpH5、30℃、1A/dm2の条件で厚さ30nm相当のZnめっきを行った。さらにこの後、無水クロム酸3g/l、pH10、1A/dm2の条件で5秒間電解クロメートを行いサンプルとした。
【0025】
これらサンプルの樹脂との接着強度を測定するため、FR−5相当ガラス・エポキシ樹脂含浸基材にサンプルの粗化面側を積層し銅張積層板とした。次にエッチングにより銅箔幅1mmとしJIS C6481に準拠し接着強度を測定した。
このときの接着強度は、浸漬処理を行わないサンプルでは0.61N/mm、浸漬処理を行ったサンプルでは0.95N/mmであった。
【0026】
これより、粗化条件は同じであるものの浸漬処理を行ったものがはるかに高い接着強度を示した。これは浸漬処理しないものでは脱落しやすい銅粉が表面に残存していたこと、また電解のZnめっきおよびクロメート処理を行った際、粗化面に局部的に成長していた樹枝状の脱落しやすい部分に電流が集中し均一な処理が出来なかったためと考えられる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の銅箔の表面処理方法は、銅箔の表面に突起状の銅電着物からなる粗化処理層を形成した後、銅箔を酸性溶液中に浸漬する処理を行っているので、局部的に大きく成長した樹脂状の結晶を除去することが可能となり、簡便で生産性が高い方法で銅粉脱落の少ない粗化銅箔を製造することが出来るものとなる。従って、例えばプリント配線板として使用される場合も回路のエッチング後に樹脂中に銅粉残存が少ない信頼性のより高い製品とすることが出来る。また、Liイオン二次電池の負極集電体用として活物質との密着性にすぐれたものとすることができる。
【0028】
また、酸性溶液としてH2SO4とK2S2O8との混合溶液を用いることにより、通常のめっき前処理段階において酸洗浄のために用いられる溶液と同じものとすることができるので、新たな設備等が不要で低コストなものとすることができる。
【0029】
また、酸性溶液中に浸漬する処理を、前記電解処理後の銅箔表面のRaが0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように行うことより、銅粉の脱落を防止しつつ、基板との接着強度を良好に維持できるものとなる。
【0030】
更に、酸性溶液中に浸漬する処理を、電解処理後の銅箔表面のRaが1.0μm以下の場合はH2SO4:50g/lとK2S2O8:10g/lからなる混合溶液中に3秒以上浸漬し、1.0μmを超える場合は当該混合溶液に10秒以上浸漬して行うことによっても、銅粉の脱落を防止しつつ、基板との接着強度を良好に維持できるものとなる。
【0031】
また、酸性溶液中に浸漬する処理後、銅箔表面にNiめっき処理、Znめっき処理、クロメート処理、シランカップリング処理のうちのいずれか、もしくはこれらのうち2処理以上を組み合わせて行うことにより、電子回路基板用やLiイオン二次電池の負極集電体用の分野において実用的な銅箔として供することができるものとなる。
Claims (5)
- 銅めっき液中で銅箔を陰極として電解処理を行い、銅箔の表面に突起状の銅電着物からなる粗化処理層を形成した後、銅箔を酸性溶液中に浸漬する処理を行うことを特徴とする銅箔の表面処理方法。
- 前記酸性溶液が、H2SO4とK2S2O8との混合溶液であることを特徴とする請求項1記載の銅箔の表面処理方法。
- 前記酸性溶液中に浸漬する処理は、前記電解処理後の銅箔表面の表面粗さ(Ra)が0.5μm未満の場合は95%以下のRaとなるように、0.5〜1.0μmの場合は80%以下のRaとなるように、1.0μmを超える場合は70%以下のRaとなるように行うことを特徴とする請求項1記載の銅箔の表面処理方法。
- 前記酸性溶液中に浸漬する処理は、前記電解処理後の銅箔表面のRaが1.0μm以下の場合はH2SO4:50g/lとK2S2O8:10g/lからなる混合溶液中に3秒以上浸漬し、1.0μmを超える場合は当該混合溶液に10秒以上浸漬して行うことを特徴とする請求項1記載の銅箔の表面処理方法。
- 前記酸性溶液中に浸漬する処理後、銅箔表面にNiめっき処理、Znめっき処理、クロメート処理、シランカップリング処理のうちのいずれか、もしくはこれらのうち2処理以上を組み合わせて行うことを特徴とする請求項1記載の銅箔の表面処理方法。
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