JP2005008570A - 角膜疾患治療剤 - Google Patents

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Masatane Nakamura
雅胤 中村
Shinichiro Hirai
慎一郎 平井
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Santen Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

【課題】PPARαアゴニストとしての機能を有する化合物の角膜疾患に対する薬理作用を検討すること。
【解決手段】PPARαアゴニスト(α型ペルオキシソーム増殖剤活性化物質)は、ドライアイ、角膜潰瘍、角膜炎などの角膜疾患の治療剤として有用である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PPARαアゴニスト(α型ペルオキシソーム増殖剤活性化物質)を有効成分とするドライアイ、角膜潰瘍、角膜炎などの角膜疾患の治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
角膜は、直径約1cm、厚さ約1mmの透明な無血管の組織であり、角膜の透明性は、視機能に重要な影響を与える。角膜潰瘍、角膜炎、ドライアイ等の種々の疾患により引き起こされた角膜障害は、何らかの理由で修復が遅延したり、あるいは修復が行われずに遷延化すると、上皮の正常な構築に悪影響を与えるのみならず、実質や内皮の構造や機能まで害する。近年、細胞生物学の発展に伴い、細胞の分裂・移動・接着・伸展・分化等に関与する因子が解明されており、角膜障害の修復には、これらの因子が重要な役割を担っていることが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
一方、PPAR(peroxisome proliferator−activated receptor:ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)は、リガンド依存性ホルモンレセプター群に属する転写調節因子であって、PPARのサブタイプとして、α、β(=δ)、γの3つが知られている。
【0004】
PPARαは、肝臓、心臓、腎臓などのエネルギー消費臓器に分布し、脂質代謝・輸送に作用することが知られている。PPARαのアゴニストとしては、例えば(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)−ドコサヘキサエン酸、2−[4−クロロ−6−(2,3−ジメチルフェニルアミノ)ピリミジン−2−イルスルファニル]酢酸などがある。PPARβについては、未だその機能は解明されていない。PPARγは、白色脂肪組織などのエネルギー蓄積臓器に分布し、脂肪細胞の分化や増殖に作用することが知られている。非特許文献3には、PPARγの機能を低下させる薬物を投与することにより、インスリン抵抗性の糖尿病を改善できることが記載されている。また、特許文献1には、PPARγアゴニストやPPARγ/PPARαデュアルアゴニストが例示されており、同文献は医薬用途に関しては視神経炎、網膜炎、網膜症、黄斑変性などの内眼部疾患の患者に対する作用に言及している。
【0005】
しかしながら、上記のいずれの文献にも、PPARαアゴニストを単独で角膜上皮剥離、角膜潰瘍、ドライアイ等の角膜障害に代表される外眼部疾患に適用することは全く記載されておらず、示唆もされていない。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第02/13812号パンフレット
【0007】
【非特許文献1】
臨眼,46, 738−743 (1992)
【0008】
【非特許文献2】
眼科手術,5, 719−727 (1992)
【0009】
【非特許文献3】
医学のあゆみ,198, 747−754 (2001)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、PPARαアゴニストとして機能する化合物の角膜疾患に対する作用、特に角膜障害に対する作用を検討することは興味のある課題である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、PPARαアゴニストの角膜疾患への関与を検討するために、PPARαアゴニストとして機能する化合物を用いて角膜障害の治癒効力試験を実施したところ、角膜障害に対する優れた治療効果を見出し、本発明に至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、PPARαアゴニストを有効成分とする角膜疾患治療剤である。
【0013】
本発明におけるPPARαアゴニストは、α型ペルオキシソーム増殖剤活性化物質であれば特に制限されず、例えば(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)−ドコサヘキサエン酸、2−[4−クロロ−6−(2,3−ジメチルフェニルアミノ)ピリミジン−2−イルスルファニル]酢酸、2−[4−(2,2−ジクロロシクロプロピル)フェノキシ]−2−メチルプロピオン酸、2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチルプロピオン酸イソプロピルエステル、2−[4−[2−[3−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−ヘプチルウレイド]エチル]フェニルスルファニル]−2−メチルプロピオン酸、2−[4−[2−[3−シクロヘキシル−1−(4−シクロヘキシルブチル)ウレイド]エチル]フェニルスルファニル]−2−メチルプロピオン酸、2−(4−クロロフェノキシ)−2−メチルプロピオン酸エチルエステル、(R)−(−)−2−[4−メトキシ−3−[N−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]カルバモイル]ベンジル]酪酸、(S)−(+)−2−[4−メトキシ−3−[N−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]カルバモイル]ベンジル]酪酸、cis−2−メチル−5−[5−[4−メチル−2−(4−メチルフェニル)オキサゾール−5−イル]ペンチル−1,3−ジオキサン−2−カルボン酸、2−メチル−2−[4−[3−[1−(4−メチルベンジル)−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]プロピル]フェノキシ]プロピオン酸、12−(4−クロロフェニル)−2,2−ジクロロドデカン酸などが挙げられる。より好ましいPPARαアゴニストは、2−[4−クロロ−6−(2,3−ジメチルフェニルアミノ)ピリミジン−2−イルスルファニル]酢酸である。
【0014】
本発明において、角膜疾患とは、種々の要因により角膜が損傷を受けた状態にあるものをいい、例えばドライアイ、角膜潰瘍、角膜炎などが挙げられる。
【0015】
本発明のPPARαアゴニストは、後述する角膜障害の治癒促進試験の結果より、ドライアイ、角膜潰瘍、角膜炎などの角膜疾患を治療する効果を発揮することが期待できる。
【0016】
本発明の角膜疾患治療剤は、経口でも、非経口でも投与することができる。投与剤型としては、点眼剤、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。これらは汎用されている技術を用いて調製することができる。例えば、点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤等を必要に応じて用いて調製することができる。pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。
【0017】
眼軟膏は、白色ワセリン、流動パラフィン等の汎用される基剤を用いて調製することができる。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤は、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤などを必要に応じて加えて調製することができる。
【0018】
投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤は0.0001〜1%(w/v)、好ましくは0.001〜1%(w/v)のものを1日1〜数回点眼すればよい。また、経口剤は通常1日当り0.1〜5000mg、好ましくは1〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。
【0019】
以下に、製剤例および薬理試験の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0020】
【実施例】
[製剤例]
2−[4−クロロ−6−(2,3−ジメチルフェニルアミノ)ピリミジン−2−イルスルファニル]酢酸(以下「化合物A」とする)を用いた代表的な製剤例を以下に示す。
【0021】
実施例1
100ml中
化合物A 10mg
塩化ナトリウム 900mg
滅菌精製水 適量
【0022】
化合物Aの添加量を変えることにより、化合物Aの濃度0.01%(w/v)、0.03%(w/v)、0.1%(w/v)、0.3%(w/v)、1.0%(w/v)、3.0%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【0023】
実施例2
100ml中
化合物A 100mg
塩化ナトリウム 800mg
リン酸水素二ナトリウム 100mg
リン酸二水素ナトリウム 適量
滅菌精製水 適量
【0024】
化合物Aの添加量を変えることにより、化合物Aの濃度0.1%(w/v)、0.3%(w/v)、0.5%(w/v)、1.5%(w/v)、3%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【0025】
実施例3
100g中
化合物A 0.3g
流動パラフィン 10.0g
白色ワセリン 適量
【0026】
化合物Aの添加量を変えることにより、化合物Aの含有量1%(w/w)、3%(w/w)の眼軟膏を調製できる。
【0027】
[薬理試験]
角膜障害の治癒効力試験
雄性SDラットを用い、Fujiharaらの方法(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci 42(1):96−100 (2001))に準じ、角膜障害モデルを作製した。この角膜障害モデルを用いて、宮下らの方法(Jpn J. Clin. Ophthalmol. 48(2):183−188 (1994))に準じ角膜障害の治癒率を判定した。
【0028】
(実験方法)
雄性SDラットを用い、その腹腔内にネンブタールを35mg/kgの割合で投与して全身麻酔を施した。ついで眼窩外涙腺を摘出し、2ヶ月かけて角膜障害を誘発させた。
【0029】
つぎに、化合物Aの0.01%生理食塩水溶液を片方の目に、また、生理食塩水(コントロール)を他方の目にそれぞれ1日6回、7日間点眼した。
【0030】
点眼開始7日後、角膜の障害部分をフルオレセインにて染色した。角膜の上部、中間部および下部のそれぞれについて、フルオレセインによる染色の程度を下記の基準に従って判定し、それらの数値の合計値から角膜障害の治癒率を算出した。
【0031】
(判定基準)
0:染色されていない。
【0032】
1:染色が疎であり、各点状の染色部分は離れている。
【0033】
2:染色が中程度であり、点状の染色部分の一部が隣接している。
【0034】
3:染色が密であり、各点状の染色部分は隣接している。
【0035】
(結果)
生理食塩水点眼群の合計値を基準(治癒率:100%)にして得た、化合物Aの0.01%点眼群の治癒率を表1に示す。なお、治癒率は各8例の平均値である。
【0036】
【表1】
Figure 2005008570
【0037】
【発明の効果】
上記の薬理試験の結果から明らかなように、PPARαアゴニストである化合物A:2−[4−クロロ−6−(2,3−ジメチルフェニルアミノ)ピリミジン−2−イルスルファニル]酢酸は、角膜障害の治癒を促進する。
【0038】
したがって、PPARαアゴニストは、ドライアイ、角膜潰瘍、角膜炎などの角膜疾患の治療剤として有用である。

Claims (4)

  1. PPARαアゴニストを有効成分とする角膜疾患治療剤。
  2. PPARαアゴニストが、2−[4−クロロ−6−(2,3−ジメチルフェニルアミノ)ピリミジン−2−イルスルファニル]酢酸である請求項1記載の角膜疾患治療剤。
  3. 角膜疾患が、ドライアイ、角膜潰瘍または角膜炎である請求項1〜2記載の角膜疾患治療剤。
  4. 剤型が、点眼剤または眼軟膏である請求項1〜3記載の角膜疾患治療剤。
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