JP2005008288A - 吊荷旋回制御装置および吊荷旋回制御方法 - Google Patents
吊荷旋回制御装置および吊荷旋回制御方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】吊荷の旋回を自動化することにより、吊荷旋回に係る作業者の労力を軽減させる吊荷旋回制御装置およびその方法を提供すること。
【解決手段】ブームの旋回角φを取得するブーム旋回角取得手段と、吊荷Gの旋回角ξを取得する吊荷旋回角取得手段21と、旋回モータ16の回転角θを取得する旋回モータ回転角取得手段と、予め設定されている目標吊荷旋回角ξrefとブーム旋回角φとの差ζrefと、吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζとの差ζref−ζがゼロとなり、かつ吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζの微分値がゼロとなるように、旋回モータ16を駆動するためのモータ回転指令値uを算出する制御演算手段50と、前記モータ回転指令値uに基づいて旋回モータ16を駆動する旋回モータ制御手段と、を具備することを特徴とする。
【選択図】 図3
【解決手段】ブームの旋回角φを取得するブーム旋回角取得手段と、吊荷Gの旋回角ξを取得する吊荷旋回角取得手段21と、旋回モータ16の回転角θを取得する旋回モータ回転角取得手段と、予め設定されている目標吊荷旋回角ξrefとブーム旋回角φとの差ζrefと、吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζとの差ζref−ζがゼロとなり、かつ吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζの微分値がゼロとなるように、旋回モータ16を駆動するためのモータ回転指令値uを算出する制御演算手段50と、前記モータ回転指令値uに基づいて旋回モータ16を駆動する旋回モータ制御手段と、を具備することを特徴とする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吊荷の旋回振れを低減させながら速やかに吊荷を旋回させることが可能な吊荷旋回制御装置およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによって、ロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるようなモバイルハーバクレーンにおいて、船上の岸壁と垂直方向に置かれたコンテナを陸上に岸壁と並行に陸揚げすることが要求された場合、コンテナの旋回制御は、クレーンの運転手が手動操作で旋回モータを制御することにより行う(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−246170号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、旋回モータを回転させると、吊荷を旋回させる反力により吊具が旋回振れを起こしてしまう。そして、その吊具の振れが吊荷に作用してしまうことにより、吊荷も旋回振れを起こしてしまう。
このように、吊具と吊荷とが、ともに旋回振れを起こしている状況下での吊荷の旋回制御は、熟練したクレーンの運転手でも非常に困難なものであり、労力を要する作業であった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、吊荷の旋回を自動化することにより、吊荷旋回に係る作業者の労力を軽減させる吊荷旋回制御装置およびその方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の吊荷旋回制御装置によれば、ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによって、ロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるクレーンに用いられる吊荷旋回制御装置であって、ブームの旋回角(φ)を取得するブーム旋回角取得手段と、吊荷の旋回角(ξ)を取得する吊荷旋回角取得手段と、旋回モータの回転角(θ)を取得する旋回モータ回転角取得手段と、予め設定されている目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなるように、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)を算出する制御演算手段と、前記モータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータを駆動する旋回モータ制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
このような吊荷旋回制御装置によれば、目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなる、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)が算出され、このモータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータが駆動されることにより、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられることとなる。
【0008】
請求項2に記載の吊荷旋回制御装置によれば、前記旋回モータは、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータであることを特徴とする。
【0009】
このような吊荷旋回制御装置によれば、旋回モータとして、比較的安価でかつ単純構成を有する速度制御機能のないモータが採用されている。
【0010】
請求項3に記載のクレーンによれば、請求項1または2に記載の吊荷旋回制御装置と、複数のアウトリガを備えたキャリアフレームと、前記キャリアフレームに載上された旋回フレームおよび本体フレームと、本体フレームに取り付けられたブームと、を具備することを特徴とする。
【0011】
このようなクレーンによれば、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられる吊荷旋回制御装置を有することとなる。
【0012】
請求項4に記載の吊荷旋回制御方法によれば、ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによってロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるクレーンに用いられる吊荷旋回制御方法であって、ブームの旋回角(φ)を取得する過程と、吊荷の旋回角(ξ)を取得する過程と、旋回モータの回転角(θ)を取得する過程と、予め設定されている目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなるように、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)を算出する過程と、前記モータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータを駆動する過程と、を具備することを特徴とする。
【0013】
このような吊荷旋回制御方法によれば、目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなる、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)が算出され、このモータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータが駆動されることにより、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられることとなる。
【0014】
請求項5に記載の吊荷旋回制御方法によれば、前記旋回モータは、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータであることを特徴とする。
【0015】
このような吊荷旋回制御方法によれば、旋回モータとして、比較的安価でかつ単純構成を有する速度制御機能のないモータが採用されている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。本発明の一実施形態に係る吊荷旋回制御装置が適用されるクレーンとして、モバイルハーバクレーンを例に挙げる。
【0017】
(1)モバイルハーバクレーンの概要
図1はモバイルハーバクレーン全体の概略図である。
図1において、符号1は港湾設備として用いられて好適なモバイルハーバクレーン(以下、単に「機体」ともいう。)を示している。このモバイルハーバクレーンの機体1は、複数のアウトリガ12を備えたキャリアフレーム11と、該キャリアフレーム11に載上された旋回フレーム13および本体フレーム14と、本体フレーム14に取り付けられたブーム2とを主たる要素として構成されたものである。
【0018】
キャリアフレーム11は、このほぼ両端側から長手方向に対して直角となる方向に各アウトリガ12を張り出して機体1の安定を確保している。
そして、アウトリガ12がキャリアフレーム11に格納された場合は、図示しない走行タイヤ等によって港湾の構内を移動可能としている。
【0019】
キャリアフレーム11のほぼ中央部には、円環状の旋回ベアリング(図示せず)が設けられ、これを介して旋回フレーム13が載上されている。旋回ベアリングの周部にはラック状の歯が形成され、旋回駆動装置(図示せず)に取り付けられたピニオン(図示せず)が噛み合わされている。なお、旋回駆動装置は旋回フレーム13側に取り付けられている。
【0020】
従って、旋回フレーム13は、ピニオンの回転によって旋回ベアリングの中心で360度回転可能とされている。なお、旋回ベアリングの中心は旋回中心Oをいうものであり、クレーンでの荷役作業を行う上での作業半径の中心を意味している。
また、旋回フレーム13の旋回中心O付近には、キャリアフレーム11に対して旋回フレーム13の旋回方向、すなわちキャリアフレーム11に対するブーム2の相対角度であるブーム旋回角φを検出する旋回角検出装置(ブーム旋回角取得手段)5aが設けられている。旋回角検出装置5aは、制御部10の一部に設けられた後述する制御装置(制御演算手段)50と点線で示されるケーブルによって接続されており、このケーブルを介して検出したブーム旋回角φ信号が制御装置50へ送信されるようになっている。
【0021】
旋回フレーム13上には、ブーム2の基端部を回動可能に支持する本体フレーム14と、吊具15に繋がる2本のロープ3,3b(「ワイヤ」ともいう)をそれぞれ巻き取るウインチ4a,4b(図示せず)と、ブーム2を起伏させるシリンダ6と、運転手が搭乗してクレーン操作を行う運転室(図示せず)とが主として設けられている(ロープ3bについては、図2を参照)。
なお、ロープ3bはロープ3と並行に、ウインチ4bはウインチ4aと並行にそれぞれ図の奥方向に設けられている。また、ウインチ4aおよび4bには、ロープ3、ロープ3bの繰り出し状態を検出するエンコーダ4A1、4A2(図示せず)が設けられている。
【0022】
本体フレーム14は、棒状の部材が複数組み合わされたトラス構造として形成されている、この本体フレーム14のほぼ中間に当たる位置には、ブーム2の基端部(図において左側)がブームフートピン(図示せず)を介して取り付けられている。
ブーム2は、トラス構造の長尺な形状で形成されており、この一端である基端部は上述したように本体フレーム14に回動可能に支持されている。また、ブーム2の基端部からわずかに先端側に位置した下側には、シリンダ6のロッド側端部が図示しないピンを介して回道可能に取り付けられ、ブーム2の支持がなされている。このシリンダ6のボトム側端部は旋回フレーム13の前部にピン(図示せず)を介して回動可能に取り付けられている。
ブーム2は、該シリンダ6の伸縮動作によってブームフートピンを中心に起伏動作がなされ、ブーム先端Hにおける荷役作業の作業半径が規定されることになる。
【0023】
続いて、図2および図3を参照することにより、ブーム先端Hから吊具15、吊荷Gまでの構成について説明する。ここで、図2は、ブーム先端Hからコンテナ19までを図1のS方向から見たときの図であり、図3は旋回モータ16の制御系を示す概略図である。
【0024】
まず、ロープ3および3bは、一端部が吊具15に固定されており、他端部が図1に示した旋回フレーム2上に設置されたウインチ4a,4bによってそれぞれ巻き取られるようになっている。このように、ウインチ4a,4bによってロープ3,3bがそれぞれ巻き取られることにより、吊具15が上方に移動することになる。また、ウインチ4の逆回転動作によって吊具15は下方に移動することになる。さらに、この吊具15の上下移動に伴い、吊具15の下方にロープ30を介してつり下げられているスプレッダ18およびコンテナ19(以下、これらをまとめて「吊荷G」とする)も上下移動する。
【0025】
吊具15の下側には、旋回モータ16が設けられており、更に、旋回モータ16の下側には、フック17が設けられている。また、フック17によってロープ30を介してスプレッダ18が吊り下げられている。
旋回モータ16には、旋回モータ回転角取得手段であるエンコーダ(図示せず)が取り付けられており、このエンコーダが吊具15に対する吊荷の相対角度である旋回相対角(旋回モータ回転角)θを検出する。そして、検出した旋回相対角θを制御装置50へ、たとえばケーブルなどを介して送信する。
【0026】
また、スプレッダ18の上面には、吊荷旋回角取得手段であるジャイロ21が設けられており、このジャイロ21が吊荷Gの吊荷旋回角ξを検出する。そして、検出した吊荷旋回角ξを制御装置50へ、たとえばケーブルなどを介して送信する。
【0027】
制御装置50は、旋回角検出装置5aによって検出されたブーム旋回角φと、ジャイロ21によって検出された吊荷旋回角ξと、旋回モータ16に取り付けられたエンコーダによって検出された旋回相対角θと、クレーンの運転手によって入力された目標吊荷旋回角ξrefとを入力信号として受け取る。つぎに、目標吊荷旋回角ξrefとブーム旋回角φとの差ζrefと、吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζとの差ζref−ζがゼロとなり、かつ吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζの微分値(一回微分値)ζ’がゼロとなるようなモータ回転指令値uを求め、このモータ制御指令値uを旋回モータ16の旋回モータ制御手段(図示せず)へ出力する。これにより、旋回モータ16の旋回モータ制御手段がモータ回転指令値uに基づいて旋回モータ16を駆動する。実際には、図4(a)に示したように、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータの回転方向と作動時間を制御する。
また、図5に示すように、吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζの微分値(一回微分値)ζ’がゼロとなるようにするには、この微分値ζ’に、負の定数、たとえば−k(kは正)を乗じることにより容易に求めることができる。kの値は、コンテナ19の長さ(たとえば、20ftあるいは40ft)で決められているが、より詳細に決める場合には、ロープ3,3bの長さや、コンテナ19の重量を考慮して決めることが望ましい。
【0028】
このようにモータ回転指令値uに基づいて旋回モータ16が回転することにより、この回転に伴って、旋回モータ16に取り付けられているフック17により支持されているロープ30の吊具側の支持端が回転し、吊荷Gを自動的に旋回させることができる。
たとえば、吊荷Gをブーム先端H側から見て反時計方向(CCW)に90度回転させようとする場合、モータ回転指令値uに基づいて、旋回モータ制御手段が図4(a)に示すように作動させられて、図4(b)のように回転していくこととなる。図4(b)からわかるように、この場合、約30秒で90度、反時計方向に回転させられている。ちなみに、特開平11−246170号公報に記載されている、クレーンの運転手が手動操作で旋回モータを制御することにより同様の操作を行った場合、熟練した者が操作したとしても40〜50秒かかることが実際の試験により明らかとなっている。
【0029】
なお、図3において、本実施形態における吊荷旋回制御装置は、ブーム旋回角φを検出するブーム旋回角取得手段としての旋回角検出装置5aと、吊荷Gの吊荷旋回角ξを検出する吊荷旋回角取得手段としてのジャイロ21と、旋回モータ16の回転角θを検出する旋回モータ回転角取得手段としてのエンコーダと、制御装置50と、旋回モータ16の駆動制御を行う旋回モータ制御手段と、を主たる構成要素とするものです。
【0030】
(2)各種パラメータの定義について
ここで、図6を参照して、上述したブーム旋回角φ、旋回相対角θ等の定義付けを行う。なお、図6では、簡単のため、ロープ30を省略している。
【0031】
今、ブーム先端Hにおけるロープ3、ロープ3bのそれぞれの端部をE1,E2とし、一方、吊具15側のロープ3,3bの端部をE3,E4と定めた場合、ブーム先端Hの上辺(これを基準線qとする)と端部E1と端部E2とを結ぶ線とがなす角を支点角Φとする。また、このとき、端部E1と端部E2とを結ぶ線と端部E3と端部E4とを結ぶ線とがなす角を吊具角βとする。また、端部E3と端部E4とを結ぶ線と吊荷Gの長手方向の辺とがなす角を旋回相対角θとする。すなわち、この旋回相対角θは、吊具15と吊荷Gとの相対角度である。
また、ブーム先端から吊具15までのロープの長さをロープ長lとする。すなわち、ロープ長l=端部E1から端部E3までの距離=端部E2から端部E4までの距離とする。また、吊具の質量を吊具質量m、吊荷の質量を吊荷質量Mとする。ここで、吊荷質量Mは、スプレッダ18の質量とコンテナ19の質量との和である。また、ブーム先端Hにおける2本のロープ間の距離、すなわち端部E1から端部E2までの距離を距離2dとする。
【0032】
なお、本実施形態においては、ブーム先端Hにおいて、ロープ3,3bは、ほぼ固定されている状態と代わらない。従って、支点角Φ=0とすることができる。これにより、吊具角βは基準線qに対する吊具の角度と見なすことができる。また、基準線qに対する吊荷の角度、すなわち吊荷旋回角度ζは、吊具角βと旋回相対角θとの和(ζ=β+θ)で表すことができる。
【0033】
(3)制御装置50の制御ロジックについて
次に、図7に制御装置50の制御ブロック図を示す。
まず、吊荷旋回角目標値ξrefを算出する。算出方法は、制御開始時の吊荷旋回角ξ(ジャイロ検出値)をラッチ(制御開始時の現在値をとらえてホールドすること)し、これに90°または−90°または180°または0°を足して求める。どの角度を選択するかは、陸上と船上の各々で定められたコンテナの扉の向き(コンテナ積付方向)に応じて、例えばオペレータが操作卓のスイッチで選択する。
【0034】
次に、ブームからの相対角度であるζと、これの目標値であるζrefを算出する。算出方法は、各々、ξとξrefから、ブーム旋回角検出値φ(ブーム旋回軸に取り付けられたエンコーダの信号)を差し引いて、つまり以下の式で算出する。
ζ=ξ−φ、ζref=ξref−φ
【0035】
そして、ζrefとζの偏差をとってζerrとし、これを微分してゲインkdを掛けて、θref2とする。θref2は、ζ’err(なお、’は一回微分を示す)をゼロにするための、すなわち吊荷の振れ止めのためのθの目標値である。
【0036】
もう一方で、制御開始時のζをラッチしてζ0とし、θをラッチしてθ0とし、これらの差(θ0−ζ0)をζrefに足して、ζref−ζ0+θ0を求めている。これは何をしているかというと、θとζのゼロ点が必ずしも一致していない(例えば、θがゼロの時に、必ずしもζはゼロでない)ので、ζがζrefとなる時のθはいくらであるか、というのを求めたものである。つまり、こうして求めたθが、ζをζrefにするための、すなわち吊荷の位置決めのためのθの目標値θref1である。
【0037】
そして、θref1とθref2を足し合わせて、ζをζrefにしζ’errをゼロにするべく、θの目標値θrefを算出している。ここまでが、ブロック図の破線より左側の説明文である。
【0038】
これより先(ブロック図の破線より右側)は、θをθrefに追従させるための、目標角度制御のブロック図である。まず、θrefとθの偏差をとってPゲインを掛けて、目標角速度θ’refを算出する。例えば、偏差がプラスであれば、プラスの目標角速度を出力して、θをθrefに近づけるという、一般的な角度制御の式である。
【0039】
そして、次にθ’refとθ’の偏差を算出する。θ’はθを微分計算して求めたものである。例えば、偏差がプラスの場合は、θ’refの方がθ’より大きく、角速度θ’を速める必要があるので、CCW(加速方向である左回転指令)を出力する。偏差がマイナスの場合は、θ’refの方がθ’より小さく、角速度θ’を遅くする必要があるので、CW(減速方向である右回転指令)を出力する。偏差がゼロであれば、目標角速度と一致しているので、フリーランを出力する。
【0040】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の吊荷旋回制御装置および吊荷旋回制御方法によれば、以下の効果を奏する。
請求項1に記載の吊荷旋回制御装置または請求項4に記載の吊荷旋回制御方法によれば、目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなる、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)が算出され、このモータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータが駆動されることにより、迅速かつ自動的に吊荷旋回角を目標吊荷旋回角に一致させることができ、荷役に要する時間を大幅に短縮させることができて、吊荷の旋回に係る作業者の労力を著しく軽減させることができる。
また、クレーンの運転士は、目標吊荷旋回角を選択し、それを制御演算手段に入力するだけで自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致することとなるので、特別な技能を有する必要がなく、誰でも簡単に操作することができる。
【0042】
請求項2に記載の吊荷旋回制御装置または請求項5に記載の吊荷旋回制御方法によれば、旋回モータとして、比較的安価でかつ単純構成を有する速度制御機能のないモータが採用されることとなるので、設備費およびメンテナンス費を低減させることができる。
【0043】
請求項3に記載のクレーンによれば、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられる吊荷旋回制御装置を有することとなるので、荷役に要する時間を大幅に短縮させることができて、吊荷の旋回に係る作業者の労力を著しく軽減させることができる。
また、クレーンの運転士は、目標吊荷旋回角を選択し、それを制御演算手段に入力するだけで自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致することとなるので、特別な技能を有する必要がなく、誰でも簡単に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なモバイルハーバクレーンの概略図である。
【図2】ブーム先端からコンテナまでを図1のS方向から見たときの図である。
【図3】旋回モータの制御系を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る吊荷旋回制御装置の実機によるシミュレーション結果を示す図であって、(a)はモータ回転指令値、すなわち旋回モータの回転方向と作動時間を示す図であって、(b)は吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致していく様子を示す図である。
【図5】吊荷旋回角とブーム旋回角との差の微分値がゼロとなることを説明するための図である。
【図6】各種パラメータを定義するための吊荷と吊具との関係を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る吊荷旋回制御装置の制御ブロック図である。
【符号の説明】
1 モバイルハーバクレーン
2 ブーム
3 ロープ
3b ロープ
5a 旋回角検出装置(ブーム旋回角取得手段)
11 キャリアフレーム
12 アウトリガ
13 旋回フレーム
14 本体フレーム
15 吊具
16 旋回モータ
21 ジャイロ(吊荷旋回角取得手段)
30 ロープ
50 制御装置(制御演算手段)
G 吊荷
H ブーム先端
u モータ回転指令値
ξ 吊荷旋回角
ξref 目標吊荷旋回角
φ ブーム旋回角
【発明の属する技術分野】
本発明は、吊荷の旋回振れを低減させながら速やかに吊荷を旋回させることが可能な吊荷旋回制御装置およびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによって、ロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるようなモバイルハーバクレーンにおいて、船上の岸壁と垂直方向に置かれたコンテナを陸上に岸壁と並行に陸揚げすることが要求された場合、コンテナの旋回制御は、クレーンの運転手が手動操作で旋回モータを制御することにより行う(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−246170号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、旋回モータを回転させると、吊荷を旋回させる反力により吊具が旋回振れを起こしてしまう。そして、その吊具の振れが吊荷に作用してしまうことにより、吊荷も旋回振れを起こしてしまう。
このように、吊具と吊荷とが、ともに旋回振れを起こしている状況下での吊荷の旋回制御は、熟練したクレーンの運転手でも非常に困難なものであり、労力を要する作業であった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、吊荷の旋回を自動化することにより、吊荷旋回に係る作業者の労力を軽減させる吊荷旋回制御装置およびその方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の吊荷旋回制御装置によれば、ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによって、ロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるクレーンに用いられる吊荷旋回制御装置であって、ブームの旋回角(φ)を取得するブーム旋回角取得手段と、吊荷の旋回角(ξ)を取得する吊荷旋回角取得手段と、旋回モータの回転角(θ)を取得する旋回モータ回転角取得手段と、予め設定されている目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなるように、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)を算出する制御演算手段と、前記モータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータを駆動する旋回モータ制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
このような吊荷旋回制御装置によれば、目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなる、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)が算出され、このモータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータが駆動されることにより、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられることとなる。
【0008】
請求項2に記載の吊荷旋回制御装置によれば、前記旋回モータは、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータであることを特徴とする。
【0009】
このような吊荷旋回制御装置によれば、旋回モータとして、比較的安価でかつ単純構成を有する速度制御機能のないモータが採用されている。
【0010】
請求項3に記載のクレーンによれば、請求項1または2に記載の吊荷旋回制御装置と、複数のアウトリガを備えたキャリアフレームと、前記キャリアフレームに載上された旋回フレームおよび本体フレームと、本体フレームに取り付けられたブームと、を具備することを特徴とする。
【0011】
このようなクレーンによれば、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられる吊荷旋回制御装置を有することとなる。
【0012】
請求項4に記載の吊荷旋回制御方法によれば、ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによってロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるクレーンに用いられる吊荷旋回制御方法であって、ブームの旋回角(φ)を取得する過程と、吊荷の旋回角(ξ)を取得する過程と、旋回モータの回転角(θ)を取得する過程と、予め設定されている目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなるように、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)を算出する過程と、前記モータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータを駆動する過程と、を具備することを特徴とする。
【0013】
このような吊荷旋回制御方法によれば、目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなる、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)が算出され、このモータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータが駆動されることにより、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられることとなる。
【0014】
請求項5に記載の吊荷旋回制御方法によれば、前記旋回モータは、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータであることを特徴とする。
【0015】
このような吊荷旋回制御方法によれば、旋回モータとして、比較的安価でかつ単純構成を有する速度制御機能のないモータが採用されている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。本発明の一実施形態に係る吊荷旋回制御装置が適用されるクレーンとして、モバイルハーバクレーンを例に挙げる。
【0017】
(1)モバイルハーバクレーンの概要
図1はモバイルハーバクレーン全体の概略図である。
図1において、符号1は港湾設備として用いられて好適なモバイルハーバクレーン(以下、単に「機体」ともいう。)を示している。このモバイルハーバクレーンの機体1は、複数のアウトリガ12を備えたキャリアフレーム11と、該キャリアフレーム11に載上された旋回フレーム13および本体フレーム14と、本体フレーム14に取り付けられたブーム2とを主たる要素として構成されたものである。
【0018】
キャリアフレーム11は、このほぼ両端側から長手方向に対して直角となる方向に各アウトリガ12を張り出して機体1の安定を確保している。
そして、アウトリガ12がキャリアフレーム11に格納された場合は、図示しない走行タイヤ等によって港湾の構内を移動可能としている。
【0019】
キャリアフレーム11のほぼ中央部には、円環状の旋回ベアリング(図示せず)が設けられ、これを介して旋回フレーム13が載上されている。旋回ベアリングの周部にはラック状の歯が形成され、旋回駆動装置(図示せず)に取り付けられたピニオン(図示せず)が噛み合わされている。なお、旋回駆動装置は旋回フレーム13側に取り付けられている。
【0020】
従って、旋回フレーム13は、ピニオンの回転によって旋回ベアリングの中心で360度回転可能とされている。なお、旋回ベアリングの中心は旋回中心Oをいうものであり、クレーンでの荷役作業を行う上での作業半径の中心を意味している。
また、旋回フレーム13の旋回中心O付近には、キャリアフレーム11に対して旋回フレーム13の旋回方向、すなわちキャリアフレーム11に対するブーム2の相対角度であるブーム旋回角φを検出する旋回角検出装置(ブーム旋回角取得手段)5aが設けられている。旋回角検出装置5aは、制御部10の一部に設けられた後述する制御装置(制御演算手段)50と点線で示されるケーブルによって接続されており、このケーブルを介して検出したブーム旋回角φ信号が制御装置50へ送信されるようになっている。
【0021】
旋回フレーム13上には、ブーム2の基端部を回動可能に支持する本体フレーム14と、吊具15に繋がる2本のロープ3,3b(「ワイヤ」ともいう)をそれぞれ巻き取るウインチ4a,4b(図示せず)と、ブーム2を起伏させるシリンダ6と、運転手が搭乗してクレーン操作を行う運転室(図示せず)とが主として設けられている(ロープ3bについては、図2を参照)。
なお、ロープ3bはロープ3と並行に、ウインチ4bはウインチ4aと並行にそれぞれ図の奥方向に設けられている。また、ウインチ4aおよび4bには、ロープ3、ロープ3bの繰り出し状態を検出するエンコーダ4A1、4A2(図示せず)が設けられている。
【0022】
本体フレーム14は、棒状の部材が複数組み合わされたトラス構造として形成されている、この本体フレーム14のほぼ中間に当たる位置には、ブーム2の基端部(図において左側)がブームフートピン(図示せず)を介して取り付けられている。
ブーム2は、トラス構造の長尺な形状で形成されており、この一端である基端部は上述したように本体フレーム14に回動可能に支持されている。また、ブーム2の基端部からわずかに先端側に位置した下側には、シリンダ6のロッド側端部が図示しないピンを介して回道可能に取り付けられ、ブーム2の支持がなされている。このシリンダ6のボトム側端部は旋回フレーム13の前部にピン(図示せず)を介して回動可能に取り付けられている。
ブーム2は、該シリンダ6の伸縮動作によってブームフートピンを中心に起伏動作がなされ、ブーム先端Hにおける荷役作業の作業半径が規定されることになる。
【0023】
続いて、図2および図3を参照することにより、ブーム先端Hから吊具15、吊荷Gまでの構成について説明する。ここで、図2は、ブーム先端Hからコンテナ19までを図1のS方向から見たときの図であり、図3は旋回モータ16の制御系を示す概略図である。
【0024】
まず、ロープ3および3bは、一端部が吊具15に固定されており、他端部が図1に示した旋回フレーム2上に設置されたウインチ4a,4bによってそれぞれ巻き取られるようになっている。このように、ウインチ4a,4bによってロープ3,3bがそれぞれ巻き取られることにより、吊具15が上方に移動することになる。また、ウインチ4の逆回転動作によって吊具15は下方に移動することになる。さらに、この吊具15の上下移動に伴い、吊具15の下方にロープ30を介してつり下げられているスプレッダ18およびコンテナ19(以下、これらをまとめて「吊荷G」とする)も上下移動する。
【0025】
吊具15の下側には、旋回モータ16が設けられており、更に、旋回モータ16の下側には、フック17が設けられている。また、フック17によってロープ30を介してスプレッダ18が吊り下げられている。
旋回モータ16には、旋回モータ回転角取得手段であるエンコーダ(図示せず)が取り付けられており、このエンコーダが吊具15に対する吊荷の相対角度である旋回相対角(旋回モータ回転角)θを検出する。そして、検出した旋回相対角θを制御装置50へ、たとえばケーブルなどを介して送信する。
【0026】
また、スプレッダ18の上面には、吊荷旋回角取得手段であるジャイロ21が設けられており、このジャイロ21が吊荷Gの吊荷旋回角ξを検出する。そして、検出した吊荷旋回角ξを制御装置50へ、たとえばケーブルなどを介して送信する。
【0027】
制御装置50は、旋回角検出装置5aによって検出されたブーム旋回角φと、ジャイロ21によって検出された吊荷旋回角ξと、旋回モータ16に取り付けられたエンコーダによって検出された旋回相対角θと、クレーンの運転手によって入力された目標吊荷旋回角ξrefとを入力信号として受け取る。つぎに、目標吊荷旋回角ξrefとブーム旋回角φとの差ζrefと、吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζとの差ζref−ζがゼロとなり、かつ吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζの微分値(一回微分値)ζ’がゼロとなるようなモータ回転指令値uを求め、このモータ制御指令値uを旋回モータ16の旋回モータ制御手段(図示せず)へ出力する。これにより、旋回モータ16の旋回モータ制御手段がモータ回転指令値uに基づいて旋回モータ16を駆動する。実際には、図4(a)に示したように、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータの回転方向と作動時間を制御する。
また、図5に示すように、吊荷旋回角ξとブーム旋回角φとの差ζの微分値(一回微分値)ζ’がゼロとなるようにするには、この微分値ζ’に、負の定数、たとえば−k(kは正)を乗じることにより容易に求めることができる。kの値は、コンテナ19の長さ(たとえば、20ftあるいは40ft)で決められているが、より詳細に決める場合には、ロープ3,3bの長さや、コンテナ19の重量を考慮して決めることが望ましい。
【0028】
このようにモータ回転指令値uに基づいて旋回モータ16が回転することにより、この回転に伴って、旋回モータ16に取り付けられているフック17により支持されているロープ30の吊具側の支持端が回転し、吊荷Gを自動的に旋回させることができる。
たとえば、吊荷Gをブーム先端H側から見て反時計方向(CCW)に90度回転させようとする場合、モータ回転指令値uに基づいて、旋回モータ制御手段が図4(a)に示すように作動させられて、図4(b)のように回転していくこととなる。図4(b)からわかるように、この場合、約30秒で90度、反時計方向に回転させられている。ちなみに、特開平11−246170号公報に記載されている、クレーンの運転手が手動操作で旋回モータを制御することにより同様の操作を行った場合、熟練した者が操作したとしても40〜50秒かかることが実際の試験により明らかとなっている。
【0029】
なお、図3において、本実施形態における吊荷旋回制御装置は、ブーム旋回角φを検出するブーム旋回角取得手段としての旋回角検出装置5aと、吊荷Gの吊荷旋回角ξを検出する吊荷旋回角取得手段としてのジャイロ21と、旋回モータ16の回転角θを検出する旋回モータ回転角取得手段としてのエンコーダと、制御装置50と、旋回モータ16の駆動制御を行う旋回モータ制御手段と、を主たる構成要素とするものです。
【0030】
(2)各種パラメータの定義について
ここで、図6を参照して、上述したブーム旋回角φ、旋回相対角θ等の定義付けを行う。なお、図6では、簡単のため、ロープ30を省略している。
【0031】
今、ブーム先端Hにおけるロープ3、ロープ3bのそれぞれの端部をE1,E2とし、一方、吊具15側のロープ3,3bの端部をE3,E4と定めた場合、ブーム先端Hの上辺(これを基準線qとする)と端部E1と端部E2とを結ぶ線とがなす角を支点角Φとする。また、このとき、端部E1と端部E2とを結ぶ線と端部E3と端部E4とを結ぶ線とがなす角を吊具角βとする。また、端部E3と端部E4とを結ぶ線と吊荷Gの長手方向の辺とがなす角を旋回相対角θとする。すなわち、この旋回相対角θは、吊具15と吊荷Gとの相対角度である。
また、ブーム先端から吊具15までのロープの長さをロープ長lとする。すなわち、ロープ長l=端部E1から端部E3までの距離=端部E2から端部E4までの距離とする。また、吊具の質量を吊具質量m、吊荷の質量を吊荷質量Mとする。ここで、吊荷質量Mは、スプレッダ18の質量とコンテナ19の質量との和である。また、ブーム先端Hにおける2本のロープ間の距離、すなわち端部E1から端部E2までの距離を距離2dとする。
【0032】
なお、本実施形態においては、ブーム先端Hにおいて、ロープ3,3bは、ほぼ固定されている状態と代わらない。従って、支点角Φ=0とすることができる。これにより、吊具角βは基準線qに対する吊具の角度と見なすことができる。また、基準線qに対する吊荷の角度、すなわち吊荷旋回角度ζは、吊具角βと旋回相対角θとの和(ζ=β+θ)で表すことができる。
【0033】
(3)制御装置50の制御ロジックについて
次に、図7に制御装置50の制御ブロック図を示す。
まず、吊荷旋回角目標値ξrefを算出する。算出方法は、制御開始時の吊荷旋回角ξ(ジャイロ検出値)をラッチ(制御開始時の現在値をとらえてホールドすること)し、これに90°または−90°または180°または0°を足して求める。どの角度を選択するかは、陸上と船上の各々で定められたコンテナの扉の向き(コンテナ積付方向)に応じて、例えばオペレータが操作卓のスイッチで選択する。
【0034】
次に、ブームからの相対角度であるζと、これの目標値であるζrefを算出する。算出方法は、各々、ξとξrefから、ブーム旋回角検出値φ(ブーム旋回軸に取り付けられたエンコーダの信号)を差し引いて、つまり以下の式で算出する。
ζ=ξ−φ、ζref=ξref−φ
【0035】
そして、ζrefとζの偏差をとってζerrとし、これを微分してゲインkdを掛けて、θref2とする。θref2は、ζ’err(なお、’は一回微分を示す)をゼロにするための、すなわち吊荷の振れ止めのためのθの目標値である。
【0036】
もう一方で、制御開始時のζをラッチしてζ0とし、θをラッチしてθ0とし、これらの差(θ0−ζ0)をζrefに足して、ζref−ζ0+θ0を求めている。これは何をしているかというと、θとζのゼロ点が必ずしも一致していない(例えば、θがゼロの時に、必ずしもζはゼロでない)ので、ζがζrefとなる時のθはいくらであるか、というのを求めたものである。つまり、こうして求めたθが、ζをζrefにするための、すなわち吊荷の位置決めのためのθの目標値θref1である。
【0037】
そして、θref1とθref2を足し合わせて、ζをζrefにしζ’errをゼロにするべく、θの目標値θrefを算出している。ここまでが、ブロック図の破線より左側の説明文である。
【0038】
これより先(ブロック図の破線より右側)は、θをθrefに追従させるための、目標角度制御のブロック図である。まず、θrefとθの偏差をとってPゲインを掛けて、目標角速度θ’refを算出する。例えば、偏差がプラスであれば、プラスの目標角速度を出力して、θをθrefに近づけるという、一般的な角度制御の式である。
【0039】
そして、次にθ’refとθ’の偏差を算出する。θ’はθを微分計算して求めたものである。例えば、偏差がプラスの場合は、θ’refの方がθ’より大きく、角速度θ’を速める必要があるので、CCW(加速方向である左回転指令)を出力する。偏差がマイナスの場合は、θ’refの方がθ’より小さく、角速度θ’を遅くする必要があるので、CW(減速方向である右回転指令)を出力する。偏差がゼロであれば、目標角速度と一致しているので、フリーランを出力する。
【0040】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の吊荷旋回制御装置および吊荷旋回制御方法によれば、以下の効果を奏する。
請求項1に記載の吊荷旋回制御装置または請求項4に記載の吊荷旋回制御方法によれば、目標吊荷旋回角(ξref)とブーム旋回角(φ)との差(ζref)と、吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)との差(ζref−ζ)がゼロとなり、かつ吊荷旋回角(ξ)とブーム旋回角(φ)との差(ζ)の微分値がゼロとなる、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値(u)が算出され、このモータ回転指令値(u)に基づいて旋回モータが駆動されることにより、迅速かつ自動的に吊荷旋回角を目標吊荷旋回角に一致させることができ、荷役に要する時間を大幅に短縮させることができて、吊荷の旋回に係る作業者の労力を著しく軽減させることができる。
また、クレーンの運転士は、目標吊荷旋回角を選択し、それを制御演算手段に入力するだけで自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致することとなるので、特別な技能を有する必要がなく、誰でも簡単に操作することができる。
【0042】
請求項2に記載の吊荷旋回制御装置または請求項5に記載の吊荷旋回制御方法によれば、旋回モータとして、比較的安価でかつ単純構成を有する速度制御機能のないモータが採用されることとなるので、設備費およびメンテナンス費を低減させることができる。
【0043】
請求項3に記載のクレーンによれば、迅速かつ自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致させられる吊荷旋回制御装置を有することとなるので、荷役に要する時間を大幅に短縮させることができて、吊荷の旋回に係る作業者の労力を著しく軽減させることができる。
また、クレーンの運転士は、目標吊荷旋回角を選択し、それを制御演算手段に入力するだけで自動的に吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致することとなるので、特別な技能を有する必要がなく、誰でも簡単に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なモバイルハーバクレーンの概略図である。
【図2】ブーム先端からコンテナまでを図1のS方向から見たときの図である。
【図3】旋回モータの制御系を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る吊荷旋回制御装置の実機によるシミュレーション結果を示す図であって、(a)はモータ回転指令値、すなわち旋回モータの回転方向と作動時間を示す図であって、(b)は吊荷旋回角が目標吊荷旋回角に一致していく様子を示す図である。
【図5】吊荷旋回角とブーム旋回角との差の微分値がゼロとなることを説明するための図である。
【図6】各種パラメータを定義するための吊荷と吊具との関係を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る吊荷旋回制御装置の制御ブロック図である。
【符号の説明】
1 モバイルハーバクレーン
2 ブーム
3 ロープ
3b ロープ
5a 旋回角検出装置(ブーム旋回角取得手段)
11 キャリアフレーム
12 アウトリガ
13 旋回フレーム
14 本体フレーム
15 吊具
16 旋回モータ
21 ジャイロ(吊荷旋回角取得手段)
30 ロープ
50 制御装置(制御演算手段)
G 吊荷
H ブーム先端
u モータ回転指令値
ξ 吊荷旋回角
ξref 目標吊荷旋回角
φ ブーム旋回角
Claims (5)
- ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによって、ロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるクレーンに用いられる吊荷旋回制御装置であって、
ブームの旋回角を取得するブーム旋回角取得手段と、
吊荷の旋回角を取得する吊荷旋回角取得手段と、
旋回モータの回転角を取得する旋回モータ回転角取得手段と、
予め設定されている目標吊荷旋回角とブーム旋回角との差と、吊荷旋回角とブーム旋回角との差との差がゼロとなり、かつ吊荷旋回角とブーム旋回角との差の微分値がゼロとなるように、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値を算出する制御演算手段と、
前記モータ回転指令値に基づいて旋回モータを駆動する旋回モータ制御手段と、を具備することを特徴とする吊荷旋回制御装置。 - 前記旋回モータは、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータであることを特徴とする請求項1に記載の吊荷旋回制御装置。
- 請求項1または2に記載の吊荷旋回制御装置と、
複数のアウトリガを備えたキャリアフレームと、
前記キャリアフレームに載上された旋回フレームおよび本体フレームと、
本体フレームに取り付けられたブームと、を具備することを特徴とするクレーン。 - ブーム先端から吊具をつり下げ、該吊具からロープを介して吊荷を吊り下げ、該吊具に設けられた旋回モータによってロープの吊具側の支持端を回転させて吊荷を旋回させるクレーンに用いられる吊荷旋回制御方法であって、
ブームの旋回角を取得する過程と、
吊荷の旋回角を取得する過程と、
旋回モータの回転角を取得する過程と、
予め設定されている目標吊荷旋回角とブーム旋回角との差と、吊荷旋回角とブーム旋回角との差との差がゼロとなり、かつ吊荷旋回角とブーム旋回角との差の微分値がゼロとなるように、旋回モータを駆動するためのモータ回転指令値を算出する過程と、
前記モータ回転指令値に基づいて旋回モータを駆動する過程と、を具備することを特徴とする吊荷旋回制御方法。 - 前記旋回モータは、正回転あるいは逆回転する速度制御機能のないモータであることを特徴とする請求項4に記載の吊荷旋回制御方法。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP2465807A1 (de) * | 2010-12-14 | 2012-06-20 | Wolfgang Wichner | Verfahren und Vorrichtung zur Positionierung einer an einer Seilaufhängung einer Krananlage hängenden Kranlast in Rotationsrichtung um deren vertikale Achse |
-
2003
- 2003-06-16 JP JP2003170976A patent/JP2005008288A/ja active Pending
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