JP2005005208A - 非水電解質二次電池および非水電解質二次電池用正極の製造方法 - Google Patents
非水電解質二次電池および非水電解質二次電池用正極の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【目的】マンガン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、出力特性を向上させ、サイクル経過に伴う出力低下を改善する。
【解決手段】正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、前記マンガン酸リチウムは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを含み、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、前記マンガン酸リチウムは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを含み、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池および非水電解質二次電池用正極の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
非水電解質二次電池は、従来の電池と比較して高いエネルギー密度を有するため、携帯電話、ノート型パソコンなど主に小型化、軽量化を必要とするポータブル機器の電源として用いられている。非水電解質二次電池では、負極材料にリチウム金属またはリチウムの吸蔵/放出が可能なリチウム化合物、正極活物質にリチウムと遷移金属との複合酸化物、電解質にリチウム塩を支持塩とする非水電解質が用いられている。
【0003】
一方、非水電解質二次電池は高エネルギー密度を有するため、ポータブル機器の電源のみならず、その用途は多様化していくことが予想される。そのひとつとして電気自動車等の電源に用いられる大形電池が挙げられ、現在では大形電池の実用化に向けて多くの研究、開発が行われている。
【0004】
上記のポータブル機器等の電源として用いられる小形電池では、正極活物質として層状岩塩型構造をもつコバルト酸リチウムが主に用いられている。コバルト酸リチウムを用いた電池では過充電時などの電池異常時の熱安定性が悪く、電池の安全性に問題がある。
【0005】
一方、スピネル構造を有するマンガン酸リチウムは熱安定性に優れ、他の正極活物質と比較して電池の安全性を確保することができる。また原材料となるマンガン金属の埋蔵量も豊富であり、他の正極活物質と比較して価格的にもメリットがある。電池の安全性、価格の観点から大形電池の正極活物質としてはマンガン酸リチウムが適している。
【0006】
しかしマンガン酸リチウムを用いた電池の問題点として、サイクル経過時における容量低下、出力低下が挙げられる。大形電池ではその用途が多様化しているため、小形電池よりも使用温度範囲が広く、優れたサイクル寿命特性および優れた出力特性を要求される用途が多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、正極活物質としてマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池の場合、サイクル寿命特性および出力特性は使用温度の依存性が高く、高温下における容量低下、出力低下は顕著である。
【0008】
このような、高温下における容量低下や出力低下の抑制の改善策として、スピネル構造内のマンガンの一部を他の金属と置換する方法が一般的に用いられているが、金属の置換により初期放電容量の減少が観測される。非水電解質二次電池は高エネルギー密度を特徴としているため、放電容量の減少等を伴わない手段により出力特性の向上、サイクル経過時における容量低下、出力低下を抑制する必要がある。
【0009】
出力特性を向上させるためには、電解液と正極活物質の接触面積、つまりリチウムイオンの脱挿入反応に対応する面積を大きくすることである。一方、サイクル経過における出力特性の低下を抑制するためには、正極活物質の表面積を小さくし、正極合剤中および正極合剤と正極集電体との密着性を保持し、正極板内の導電性を確保することである。
【0010】
本発明は、マンガン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、マンガン酸リチウム粒子の比表面積を適切な値とすることにより、出力特性を向上させ、サイクル経過に伴う出力低下を改善することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、前記マンガン酸リチウムは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを含み、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明によれば、出力特性に優れ、しかもサイクル経過に伴う出力低下を改善した、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池を提供することができる。
【0013】
請求項2の発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法において、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合する工程を含み、前記二次粒子Aは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満であり、前記二次粒子Bは、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下であり、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明によれば、出力特性に優れ、しかもサイクル経過に伴う出力低下を改善した、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池を製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。ここでは本発明の好適な実施形態を説明するものであり、本発明の趣旨を超えない限り、以下に限定されるものではない。
【0016】
本発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、マンガン酸リチウムが、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを含み、この2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下とすることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法において、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合する工程を含み、二次粒子Aは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満であり、前記二次粒子Bは、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下であり、この2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とするものである。
【0018】
このように、平均粒径の異なる一次粒子からなる2種類のマンガン酸リチウムの二次粒子を混合して用い、マンガン酸リチウム粒子の比表面積を適切な値に調整することにより、出力密度の向上およびサイクル経過に伴う出力低下を抑制するものである。
【0019】
本発明の非水電解質二次電池の正極活物質は、スピネル構造を有するマンガン酸リチウムを用いる。なお、正極活物質としてスピネル構造を有するマンガン酸リチウム以外の活物質が含まれていてもよい。
【0020】
スピネル構造を有するマンガン酸リチウムとしては、一般式Li1+aMbMn2−a−bO4(0≦a≦0.2、0≦b≦0.15、MはMn以外の1種以上の金属)で表されるものが用いられる。この一般式におけるMは、Mn以外の1〜3種からなる金属が好ましく、サイクル寿命特性の向上、出力低下の抑制の観点から、Mは3価安定のAl、Cr、Coが含まれることが好ましい。本発明において複数のマンガン酸リチウムを混合して用いてもよいが、各マンガン酸リチウムの組成および初期放電容量については特に限定しない。
【0021】
正極板密度すなわち正極活物質の充填密度向上の観点から、マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒径を示すD50は、5〜30μmが好ましい。D50は積算粒子数50%における粒子径を意味する。マンガン酸リチウムの二次粒子の形状は多面体形状を有する一次粒子が凝集して、平均粒径が5〜30μmの球状の二次粒子を形成しているのが望ましいが、この粒子形状に限定されるものではない。
【0022】
なお、以下では、特に断らない限り、「マンガン酸リチウムの比表面積」は「マンガン酸リチウムの二次粒子の比表面積」を意味するものとする。
【0023】
本発明におけるマンガン酸リチウムの一次粒子の平均粒径は0.1〜5.0μmの範囲にあることが好ましい。一次粒子の平均粒径が小さくなるに伴い、二次粒子の比表面積が増大する傾向にあり、比表面積と一次粒子の平均粒径には相関関係が見られる。そのため、一次粒子の平均粒径が異なる2種以上のマンガン酸リチウムを混合することによっても、正極合剤の密着性および出力特性において同様の効果が認められる。
【0024】
本願の正極活物質に用いるマンガン酸リチウムとしては、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合したマンガン酸リチウム二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合したマンガン酸リチウムの二次粒子Bとの混合が適している。一次粒子の平均粒径は、SEM観察によって観察される一次粒子の多面体の最長部位を計測して算出した。
【0025】
すなわち、二次粒子の比表面積の大きいマンガン酸リチウムを用いることにより、電解液と正極活物質の接触面積が大きくなり、リチウムイオンの脱挿入反応が円滑に行われるため、出力密度の増加が観測される。一方、二次粒子の比表面積の小さいマンガン酸リチウムを用いることにより、正極合剤内および正極合剤/正極集電体との密着性が保持されるため、サイクル経過に伴う出力低下を抑制することができる。よって比表面積の異なる2種類のマンガン酸リチウムを最適の混合比で混合して用いることにより、正極活物質としてのマンガン酸リチウムの比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下とすることにより、これら2つの作用を同時に得ることができる。場合によっては、比表面積の異なる3種類以上のマンガン酸リチウムを混合することにより、正極活物質の比表面積を最適の値に調整することも可能である。
【0026】
すなわち、マンガン酸リチウムの二次粒子の比表面積と電池の高率放電特性には相関関係がみられ、比表面積が大きくなるにしたがって出力特性が向上する傾向にある。出力特性を重視した場合、マンガン酸リチウムの比表面積は0.5m2/g以上、1.0m2/g以下が良く、より好ましくは0.6m2/g以上、0.8m2/g以下である。比表面積が1.0m2/gより大きいマンガン酸リチウムを用いても、高率放電特性についてはそれ以上の効果の改善はみられない。
【0027】
しかし、比表面積が0.5m2/g以上のマンガン酸リチウムだけでは、結着剤との接触面積が大きくなり、極板全体の粒子間および集電体との密着性を保持するための結着剤の不足が生じる。その結果、電極製作時、サイクル経過時に正極集電体からの正極合剤剥離などが観測される。
【0028】
一方、正極合剤内および正極合剤/正極集電体の密着性、サイクル経過の導電性保持を考慮した場合、マンガン酸リチウムの二次粒子の比表面積は0.2m2/g以上、0.5m2/g以下が良い。
【0029】
正極合剤内および正極合剤/正極集電体の密着性を保持するためには、結着剤の重量比率を増加させる必要がある。しかし結着剤の重量比率を増加させることによって、正極活物質の重量比率の減少に伴う放電容量の低下、結着剤の絶縁成分の増加による高率放電特性の低下、また結着剤増加に伴う正極合剤の硬化による極板割れなどが観測される。
【0030】
二次粒子の比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/gの範囲にあるマンガン酸リチウムでは、比表面積の大きいマンガン酸リチウムと比較して出力特性は劣る。しかし、比表面積の小さいマンガン酸リチウムでは正極合剤内の結着剤の不足が生じることなく、正極合剤内および正極合剤/正極集電体の密着性が向上し、サイクル経過による導電性保持は良好である。
【0031】
そこで、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/gの範囲にあるマンガン酸リチウムを用いることにより、電池作製時の極板割れや、サイクル経過に伴う正極合剤剥離などは観測されることなく、サイクル経過に伴う出力低下が抑制される。また正極合剤中の結着剤量を低減できることにより、正極活物質の重量比率増加に伴う電池容量の増加、結着剤の絶縁成分の低減に伴う高率放電特性の向上が見込まれる。
【0032】
このようにマンガン酸リチウムの比表面積によって、電池の出力密度およびサイクル経過による出力保持率が大きく変化する。そこで、二次粒子の比表面積の異なる2種以上のマンガン酸リチウムを混合して用いることにより、各比表面積をもつマンガン酸リチウムのデメリットを改善することが可能である。
【0033】
そこで本発明は、正極活物質であるマンガン酸リチウムとして、二次粒子Aおよび二次粒子Bの2種類のマンガン酸リチウムを含み、この2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下の範囲とするものである。また、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法において、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合する工程を含むものである。そして、二次粒子Aは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合した、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満とし、二次粒子Bは、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合した、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下とするものである。
【0034】
以上より、二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムでは、高率放電特性の向上および出力密度の増加という効果が得られ、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムでは、正極合剤内、正極合剤/正極集電体の密着性の保持およびサイクル経過による出力低下の抑制の効果が得られる。これら比表面積の異なる2種類のマンガン酸リチウムを混合して用いることにより、それぞれの優れた効果を同時に得ることができる。
【0035】
各比表面積をもつマンガン酸リチウムの重量比率は、電池の使用用途によって異なるが、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムの、二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムに対する重量比率は、3:7〜7:3の範囲が適している。
【0036】
本発明における導電助剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイトなどを用いることができ、これらを混合したものを用いてもよい。導電助剤としては、特にアセチレンブラックが好ましいが、これに限定されるものではない。導電助剤の重量比率は正極合剤重量(正極活物質、導電助剤および結着剤の重量和)に対して3〜5重量%が適している。
【0037】
本発明における結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などの重合体が用いられ、これらを混合したものをも含む。特にポリフッ化ビニリデンが好ましいが、これに限定されるものではない。結着剤の重量比率は正極合剤重量(正極活物質、導電助剤および結着剤の重量和)に対して4〜8重量%が適している。
【0038】
本発明における負極にはリチウム金属、リチウム合金またはリチウムイオンの脱挿入が可能な炭素材料を用いる。炭素材料としては結晶化度の高い人造黒鉛、天然黒鉛、低結晶性である昜黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素などを単独又は混合して用いる。
上記の正極合剤、負極材料を用いて電池を作製する場合、電解質には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)などリチウム導電性の支持塩とともに、複数の有機溶媒が混合して用いられる。高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが、低粘度溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメトキシエタン(DME)などが用いられる。
【0039】
【実施例】
本発明における非水電解質二次電池の断面構造を模式的に図1に示す。図1において、1は非水電解質二次電池、2は電極群、3は正極板、4は負極板、5はセパレータ、6は電池ケース、7はケース蓋、8は安全弁、9は正極端子、10は正極リードである。非水電解質電池1の構成は、正極板3、負極板4、セパレータ5からなる渦巻き状の電極群2および電解液(図示せず)が電池ケース6に収納された角形リチウム二次電池である。
【0040】
電池ケース6は、厚さ0.3mm、外寸33.9×67.9×6.2mmの鉄製本体の表面に厚さ5μmのニッケルメッキを施したものであり、側部上部には電解液注入孔(図示せず)が設けられている。また、正極板3は正極リード10を介してケース蓋7に設けられた正極端子9と接続されており、負極板4は電池ケース6の内壁と接触により接続されている。そしてこの電池はケース6に蓋7をレーザー溶接して封口されている。なお、ケース蓋7には安全弁8が設けられている。
【0041】
電池作製に用いた正極活物質のマンガン酸リチウムは、組成式Li1.10Mn1.805Al0.095O4で示され、リチウム原材料に水酸化リチウム、マンガン原材料に二酸化マンガン、置換金属であるアルミニウムの原材料にはアルミニウム酸化物を用いた。各原材料を組成式のモル数に対応させて湿式混合を行い、スラリー状のものを、スプレードライ法を用いて成型し、焼成温度600〜900℃で電気炉中にて焼成することにより、3種類の二次粒子Aと3種類の二次粒子Bを作製した。焼成温度の違いにより、一次粒子の結晶成長の度合いおよび集合数が異なるため、結果的に二次粒子の比表面積が異なるマンガン酸リチウムを作製することができる。
【0042】
得られたマンガン酸リチウムのX線回折測定では、スピネル構造に起因するピークのみが観測され、不純物などに起因するピークは観測されなかった。粒度分布測定には島津製作所製SLAD2000Jを用いた。「粒径」は、この装置で測定した平均粒径D50(積算粒子数50%における粒径)を意味するものとする。また、BET比表面積測定には島津製作所製ジェミニ2370を用いた。「比表面積」は、この装置で測定したBET比表面積を意味するものとする。作製したマンガン酸リチウムの内容を表1にまとめた。
【0043】
【表1】
【0044】
記号A2のマンガン酸リチウムのSEM観察写真を図2に、また、記号B2のマンガン酸リチウムのSEM観察写真を図3に示す。図2および図3から、比表面積の小さい図2のマンガン酸リチウムでは、一次粒子の平均粒子径が大きく、比表面積の大きい図3のマンガン酸リチウムでは、一次粒子の平均粒子径が小さいことが示される。
【0045】
[実施例1]
表1のA1とB2とを重量比1:1で混合したマンガン酸リチウムを正極活物質とし、導電助剤にアセチレンブラック、結着剤にポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いて正極板を作製した。正極合剤重量(正極活物質、導電助剤および結着剤の重量和)に対する導電助剤の重量比率は4重量%、結着剤の重量比率は6重量%とした。マンガン酸リチウム、アセチレンブラックおよびPVdFを上記の割合で混合し、真空中にて混練した後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて粘度調整を行い、正極合剤ペーストとした。この正極合剤ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の両面に塗布し、真空乾燥後、圧延することにより正極板を作製した。得られた正極板は、幅30mm、長さ800mm、合剤層の片面当たりの厚さは90μmとした。
【0046】
負極板は、グラファイト92重量%と、結着剤としてのPVdF8重量%とを混合してなる負極合材に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えてペースト状に調製した後、この負極合材ペーストを厚さ15μmの銅箔集電体の両面に塗布、乾燥し、圧延することにより作製した。得られた負極板は、幅31mm、長さ840mm、合剤層の片面当たりの厚さは55μmとした。
【0047】
そして、正極板と負極板との間にセパレータを挟んで巻回して発電要素を構成し、さらにこれを電池ケースに挿入して蓋板を取り付けた後、さらに注液孔から非水電解質を注入し、開口部をレーザー溶接により封口して、図1に示す構造の非水電解質二次電池を作製した。
【0048】
セパレータには、ポリエチレン製微多孔膜を用いた。電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチレンカーボネートを体積比4:4:2の混合溶媒に、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解した非水電解液を用いた。
【0049】
ここで作製した非水電解質二次電池の初期放電容量は約800mAhであった。これらの電池を用いて充放電サイクル特性および出力特性を測定した。
【0050】
[実施例2〜4および比較例1〜5]
正極活物質として、二次粒子A1〜A3と二次粒子B1〜B3とを混合して用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4、比較例1〜5の非水電解質二次電池を作製した。表2〜表4に、実施例1〜4、比較例1〜5の非水電解質二次電池の内容をまとめた。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
[比較例6〜11]
二次粒子A1〜A3および二次粒子B1〜B3を単独で用いた以外は実施例1と同様にして、比較例6〜11の非水電解質二次電池を作製した。表5に比較例17〜26の非水電解質二次電池の内容をまとめた。
【0055】
【表5】
【0056】
[試験条件]
実施例1〜4および比較例1〜11の電池に用いた正極板について、集電体からの合剤層の剥離の程度と、合剤層の割れの程度を目視で観察し、電池について、次のような条件で、充放電サイクル試験と出力特性評価試験をおこなった。
【0057】
充放電サイクル試験は、試験温度を45℃とし、1CA定電流で4.1Vまで、さらに4.1V定電圧で、合計3時間充電し、1CA定電流で2.75Vまで放電し、これを1サイクルとして充放電を300サイクル繰り返した。
【0058】
出力特性評価は、充放電サイクル試験前と300サイクルの充放電サイクル試験後の上記電池を用いて行った。出力特性については以下の方法で算出した。放電深度50%におけるI−V測定結果(10秒目電圧)から開路電圧の2/3の電圧に低下する放電電流値を測定データの外挿により求め、この電流値と開路電圧の2/3となる電圧との積により電池の出力を算出した。初期の出力に対する充放電300サイクル繰り返し後の出力の割合を出力保持率(%)とした。
【0059】
各正極板における合剤層の剥離の程度、合剤層の割れの程度、各電池の初期出力の比較(実施例2の電池の場合を100とする)および45℃で300サイクル充放電を行った後の出力保持率を表6〜9にまとめた。
【0060】
なお、合剤層の剥離の程度は、10cm×10cmの打ち抜きにより極板を採取し、極板の端部において合材部と集電体部の剥離の度合い観察し、剥離が見られない場合を「無」、一部に剥離が見られた場合を「若干有」、全体に剥離が見られた場合を「有」の3段階に区別した。
【0061】
また、合剤層の割れの程度は正極板の圧延後に行った。正極板の圧延は極板内の空孔が極板体積に対して32%になるように調整し、得られた正極板に対して内部半径が0.5mmとなるように直角になるまで曲げ試験を行い、外側の合剤層を観察し、合剤層にき裂が見られない場合を「無」、数箇所以下にき裂が見られた場合を「若干有」、多数のき裂が見られた場合を「有」の3段階に区別した。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
これらの結果から、つぎのようなことが明らかとなった。
【0067】
二次粒子Aと二次粒子Bとを混合して用いた実施例1〜4および比較例1〜5のうち、比較例1〜3にて合剤層の剥離と割れが共に観察された。また、比較例4、5の場合には初期出力が95未満の小さい値となり、また、比較例1〜3の場合は出力保持率が80%未満と小さい値となった。したがって、比較例1〜5には、合剤層の剥離も割れもなく、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を同時に満たすものはなかった。
【0068】
一方、本願発明の、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを混合し、二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下である実施例1〜4の場合には、合剤層の剥離や割れが若干有があったものの、すべて、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を満たしていた。
【0069】
二次粒子Aまたは二次粒子Bを単独で用いた比較例6〜11のうち、比較例9〜11の場合に、合剤層の剥離と割れが共に観察された。また、比較例6〜8の場合には初期出力が95未満の小さい値となり、また、比較例9〜11の場合は出力保持率が80%未満と小さい値となった。したがって、比較例6〜11には、合剤層の剥離も割れもなく、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を同時に満たすものはなかった。
【0070】
本発明の、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと、二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合して用いることにより、合剤剥離および極板割れを抑制することができ、さらに、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上の非水電解質二次電池を得ることができる。
【0071】
つまり合剤剥離、極板割れの現象はマンガン酸リチウムの比表面積に大きく影響しており、比表面積が既知のマンガン酸リチウムを混合し、その混合比を調整することによって合剤剥離および極板割れのない密着性に優れた正極板を作製することが可能となる。そして極板内の密着性を低下させることなく、極板内の正極活物質の比表面積を全体的に大きくすることができたためである。
【0072】
[実施例5、6]
正極活物質として、二次粒子A2と二次粒子B2とを混合して用い、混合比を変化させた以外は実施例2と同様にして、実施例5、6の非水電解質二次電池を作製した。そして、実施例2と同様の試験を行った。作製した電池の内容を表10に、試験結果は表11にまとめた。なお、表10および表11では、比較のため、実施例2、比較例7および比較例10のデータも示した。
【0073】
【表10】
【0074】
【表11】
【0075】
表10および表11の結果から、二次粒子A2と二次粒子B2との混合比を変化させた場合、二次粒子A2と二次粒子B2とを合わせた比表面積が0.4〜0.8m2/gの範囲にある、実施例2、5、6の電池では、合剤層に若干の割れが観察されたものの、初期出力は95以上、出力保持率は80%以上の優れた特性を示したのに対し、比較例7、10の電池には、合剤層の剥離も割れもなく、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を同時に満たすものはなかった。
【0076】
なお、ここでは二次粒子A2と二次粒子B2との混合比を変化させたが、二次粒子A1、A2のいずれかと、二次粒子B2、B3のいずれかとを混合し、混合比を変えた場合も、二次粒子A2と二次粒子B2とを混合した場合と同様の結果が得られた。
【0077】
【発明の効果】
マンガン酸リチウムを主体とする正極活物質を用いた非水電解質二次電池において、平均粒径が異なる一次粒子からなり、比表面積が異なる2種類のマンガン酸リチウムを混合し、正極合剤層内の2種類のマンガン酸リチウムを合わせた比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下に調整することにより、非水電解質二次電池の出力密度の増加および出力保持率に優れた実用的な非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる非水電解質二次電池の断面図。
【図2】比表面積が0.28m2/gのマンガン酸リチウム(A2)のSEM観察写真。
【図3】比表面積が0.88m2/gのマンガン酸リチウム(B2)のSEM観察写真。
【符号の説明】
1 非水電解質二次電池
2 電極群
3 正極板
4 負極板
5 セパレータ
6 電池ケース
【発明の属する技術分野】
本発明は正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池および非水電解質二次電池用正極の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
非水電解質二次電池は、従来の電池と比較して高いエネルギー密度を有するため、携帯電話、ノート型パソコンなど主に小型化、軽量化を必要とするポータブル機器の電源として用いられている。非水電解質二次電池では、負極材料にリチウム金属またはリチウムの吸蔵/放出が可能なリチウム化合物、正極活物質にリチウムと遷移金属との複合酸化物、電解質にリチウム塩を支持塩とする非水電解質が用いられている。
【0003】
一方、非水電解質二次電池は高エネルギー密度を有するため、ポータブル機器の電源のみならず、その用途は多様化していくことが予想される。そのひとつとして電気自動車等の電源に用いられる大形電池が挙げられ、現在では大形電池の実用化に向けて多くの研究、開発が行われている。
【0004】
上記のポータブル機器等の電源として用いられる小形電池では、正極活物質として層状岩塩型構造をもつコバルト酸リチウムが主に用いられている。コバルト酸リチウムを用いた電池では過充電時などの電池異常時の熱安定性が悪く、電池の安全性に問題がある。
【0005】
一方、スピネル構造を有するマンガン酸リチウムは熱安定性に優れ、他の正極活物質と比較して電池の安全性を確保することができる。また原材料となるマンガン金属の埋蔵量も豊富であり、他の正極活物質と比較して価格的にもメリットがある。電池の安全性、価格の観点から大形電池の正極活物質としてはマンガン酸リチウムが適している。
【0006】
しかしマンガン酸リチウムを用いた電池の問題点として、サイクル経過時における容量低下、出力低下が挙げられる。大形電池ではその用途が多様化しているため、小形電池よりも使用温度範囲が広く、優れたサイクル寿命特性および優れた出力特性を要求される用途が多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、正極活物質としてマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池の場合、サイクル寿命特性および出力特性は使用温度の依存性が高く、高温下における容量低下、出力低下は顕著である。
【0008】
このような、高温下における容量低下や出力低下の抑制の改善策として、スピネル構造内のマンガンの一部を他の金属と置換する方法が一般的に用いられているが、金属の置換により初期放電容量の減少が観測される。非水電解質二次電池は高エネルギー密度を特徴としているため、放電容量の減少等を伴わない手段により出力特性の向上、サイクル経過時における容量低下、出力低下を抑制する必要がある。
【0009】
出力特性を向上させるためには、電解液と正極活物質の接触面積、つまりリチウムイオンの脱挿入反応に対応する面積を大きくすることである。一方、サイクル経過における出力特性の低下を抑制するためには、正極活物質の表面積を小さくし、正極合剤中および正極合剤と正極集電体との密着性を保持し、正極板内の導電性を確保することである。
【0010】
本発明は、マンガン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、マンガン酸リチウム粒子の比表面積を適切な値とすることにより、出力特性を向上させ、サイクル経過に伴う出力低下を改善することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、前記マンガン酸リチウムは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを含み、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明によれば、出力特性に優れ、しかもサイクル経過に伴う出力低下を改善した、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池を提供することができる。
【0013】
請求項2の発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法において、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合する工程を含み、前記二次粒子Aは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満であり、前記二次粒子Bは、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下であり、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明によれば、出力特性に優れ、しかもサイクル経過に伴う出力低下を改善した、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池を製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。ここでは本発明の好適な実施形態を説明するものであり、本発明の趣旨を超えない限り、以下に限定されるものではない。
【0016】
本発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、マンガン酸リチウムが、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを含み、この2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下とすることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明は、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法において、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合する工程を含み、二次粒子Aは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満であり、前記二次粒子Bは、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下であり、この2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とするものである。
【0018】
このように、平均粒径の異なる一次粒子からなる2種類のマンガン酸リチウムの二次粒子を混合して用い、マンガン酸リチウム粒子の比表面積を適切な値に調整することにより、出力密度の向上およびサイクル経過に伴う出力低下を抑制するものである。
【0019】
本発明の非水電解質二次電池の正極活物質は、スピネル構造を有するマンガン酸リチウムを用いる。なお、正極活物質としてスピネル構造を有するマンガン酸リチウム以外の活物質が含まれていてもよい。
【0020】
スピネル構造を有するマンガン酸リチウムとしては、一般式Li1+aMbMn2−a−bO4(0≦a≦0.2、0≦b≦0.15、MはMn以外の1種以上の金属)で表されるものが用いられる。この一般式におけるMは、Mn以外の1〜3種からなる金属が好ましく、サイクル寿命特性の向上、出力低下の抑制の観点から、Mは3価安定のAl、Cr、Coが含まれることが好ましい。本発明において複数のマンガン酸リチウムを混合して用いてもよいが、各マンガン酸リチウムの組成および初期放電容量については特に限定しない。
【0021】
正極板密度すなわち正極活物質の充填密度向上の観点から、マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒径を示すD50は、5〜30μmが好ましい。D50は積算粒子数50%における粒子径を意味する。マンガン酸リチウムの二次粒子の形状は多面体形状を有する一次粒子が凝集して、平均粒径が5〜30μmの球状の二次粒子を形成しているのが望ましいが、この粒子形状に限定されるものではない。
【0022】
なお、以下では、特に断らない限り、「マンガン酸リチウムの比表面積」は「マンガン酸リチウムの二次粒子の比表面積」を意味するものとする。
【0023】
本発明におけるマンガン酸リチウムの一次粒子の平均粒径は0.1〜5.0μmの範囲にあることが好ましい。一次粒子の平均粒径が小さくなるに伴い、二次粒子の比表面積が増大する傾向にあり、比表面積と一次粒子の平均粒径には相関関係が見られる。そのため、一次粒子の平均粒径が異なる2種以上のマンガン酸リチウムを混合することによっても、正極合剤の密着性および出力特性において同様の効果が認められる。
【0024】
本願の正極活物質に用いるマンガン酸リチウムとしては、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合したマンガン酸リチウム二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合したマンガン酸リチウムの二次粒子Bとの混合が適している。一次粒子の平均粒径は、SEM観察によって観察される一次粒子の多面体の最長部位を計測して算出した。
【0025】
すなわち、二次粒子の比表面積の大きいマンガン酸リチウムを用いることにより、電解液と正極活物質の接触面積が大きくなり、リチウムイオンの脱挿入反応が円滑に行われるため、出力密度の増加が観測される。一方、二次粒子の比表面積の小さいマンガン酸リチウムを用いることにより、正極合剤内および正極合剤/正極集電体との密着性が保持されるため、サイクル経過に伴う出力低下を抑制することができる。よって比表面積の異なる2種類のマンガン酸リチウムを最適の混合比で混合して用いることにより、正極活物質としてのマンガン酸リチウムの比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下とすることにより、これら2つの作用を同時に得ることができる。場合によっては、比表面積の異なる3種類以上のマンガン酸リチウムを混合することにより、正極活物質の比表面積を最適の値に調整することも可能である。
【0026】
すなわち、マンガン酸リチウムの二次粒子の比表面積と電池の高率放電特性には相関関係がみられ、比表面積が大きくなるにしたがって出力特性が向上する傾向にある。出力特性を重視した場合、マンガン酸リチウムの比表面積は0.5m2/g以上、1.0m2/g以下が良く、より好ましくは0.6m2/g以上、0.8m2/g以下である。比表面積が1.0m2/gより大きいマンガン酸リチウムを用いても、高率放電特性についてはそれ以上の効果の改善はみられない。
【0027】
しかし、比表面積が0.5m2/g以上のマンガン酸リチウムだけでは、結着剤との接触面積が大きくなり、極板全体の粒子間および集電体との密着性を保持するための結着剤の不足が生じる。その結果、電極製作時、サイクル経過時に正極集電体からの正極合剤剥離などが観測される。
【0028】
一方、正極合剤内および正極合剤/正極集電体の密着性、サイクル経過の導電性保持を考慮した場合、マンガン酸リチウムの二次粒子の比表面積は0.2m2/g以上、0.5m2/g以下が良い。
【0029】
正極合剤内および正極合剤/正極集電体の密着性を保持するためには、結着剤の重量比率を増加させる必要がある。しかし結着剤の重量比率を増加させることによって、正極活物質の重量比率の減少に伴う放電容量の低下、結着剤の絶縁成分の増加による高率放電特性の低下、また結着剤増加に伴う正極合剤の硬化による極板割れなどが観測される。
【0030】
二次粒子の比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/gの範囲にあるマンガン酸リチウムでは、比表面積の大きいマンガン酸リチウムと比較して出力特性は劣る。しかし、比表面積の小さいマンガン酸リチウムでは正極合剤内の結着剤の不足が生じることなく、正極合剤内および正極合剤/正極集電体の密着性が向上し、サイクル経過による導電性保持は良好である。
【0031】
そこで、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/gの範囲にあるマンガン酸リチウムを用いることにより、電池作製時の極板割れや、サイクル経過に伴う正極合剤剥離などは観測されることなく、サイクル経過に伴う出力低下が抑制される。また正極合剤中の結着剤量を低減できることにより、正極活物質の重量比率増加に伴う電池容量の増加、結着剤の絶縁成分の低減に伴う高率放電特性の向上が見込まれる。
【0032】
このようにマンガン酸リチウムの比表面積によって、電池の出力密度およびサイクル経過による出力保持率が大きく変化する。そこで、二次粒子の比表面積の異なる2種以上のマンガン酸リチウムを混合して用いることにより、各比表面積をもつマンガン酸リチウムのデメリットを改善することが可能である。
【0033】
そこで本発明は、正極活物質であるマンガン酸リチウムとして、二次粒子Aおよび二次粒子Bの2種類のマンガン酸リチウムを含み、この2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下の範囲とするものである。また、正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法において、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合する工程を含むものである。そして、二次粒子Aは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合した、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満とし、二次粒子Bは、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合した、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下とするものである。
【0034】
以上より、二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムでは、高率放電特性の向上および出力密度の増加という効果が得られ、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムでは、正極合剤内、正極合剤/正極集電体の密着性の保持およびサイクル経過による出力低下の抑制の効果が得られる。これら比表面積の異なる2種類のマンガン酸リチウムを混合して用いることにより、それぞれの優れた効果を同時に得ることができる。
【0035】
各比表面積をもつマンガン酸リチウムの重量比率は、電池の使用用途によって異なるが、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムの、二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムに対する重量比率は、3:7〜7:3の範囲が適している。
【0036】
本発明における導電助剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイトなどを用いることができ、これらを混合したものを用いてもよい。導電助剤としては、特にアセチレンブラックが好ましいが、これに限定されるものではない。導電助剤の重量比率は正極合剤重量(正極活物質、導電助剤および結着剤の重量和)に対して3〜5重量%が適している。
【0037】
本発明における結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などの重合体が用いられ、これらを混合したものをも含む。特にポリフッ化ビニリデンが好ましいが、これに限定されるものではない。結着剤の重量比率は正極合剤重量(正極活物質、導電助剤および結着剤の重量和)に対して4〜8重量%が適している。
【0038】
本発明における負極にはリチウム金属、リチウム合金またはリチウムイオンの脱挿入が可能な炭素材料を用いる。炭素材料としては結晶化度の高い人造黒鉛、天然黒鉛、低結晶性である昜黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素などを単独又は混合して用いる。
上記の正極合剤、負極材料を用いて電池を作製する場合、電解質には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)などリチウム導電性の支持塩とともに、複数の有機溶媒が混合して用いられる。高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが、低粘度溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメトキシエタン(DME)などが用いられる。
【0039】
【実施例】
本発明における非水電解質二次電池の断面構造を模式的に図1に示す。図1において、1は非水電解質二次電池、2は電極群、3は正極板、4は負極板、5はセパレータ、6は電池ケース、7はケース蓋、8は安全弁、9は正極端子、10は正極リードである。非水電解質電池1の構成は、正極板3、負極板4、セパレータ5からなる渦巻き状の電極群2および電解液(図示せず)が電池ケース6に収納された角形リチウム二次電池である。
【0040】
電池ケース6は、厚さ0.3mm、外寸33.9×67.9×6.2mmの鉄製本体の表面に厚さ5μmのニッケルメッキを施したものであり、側部上部には電解液注入孔(図示せず)が設けられている。また、正極板3は正極リード10を介してケース蓋7に設けられた正極端子9と接続されており、負極板4は電池ケース6の内壁と接触により接続されている。そしてこの電池はケース6に蓋7をレーザー溶接して封口されている。なお、ケース蓋7には安全弁8が設けられている。
【0041】
電池作製に用いた正極活物質のマンガン酸リチウムは、組成式Li1.10Mn1.805Al0.095O4で示され、リチウム原材料に水酸化リチウム、マンガン原材料に二酸化マンガン、置換金属であるアルミニウムの原材料にはアルミニウム酸化物を用いた。各原材料を組成式のモル数に対応させて湿式混合を行い、スラリー状のものを、スプレードライ法を用いて成型し、焼成温度600〜900℃で電気炉中にて焼成することにより、3種類の二次粒子Aと3種類の二次粒子Bを作製した。焼成温度の違いにより、一次粒子の結晶成長の度合いおよび集合数が異なるため、結果的に二次粒子の比表面積が異なるマンガン酸リチウムを作製することができる。
【0042】
得られたマンガン酸リチウムのX線回折測定では、スピネル構造に起因するピークのみが観測され、不純物などに起因するピークは観測されなかった。粒度分布測定には島津製作所製SLAD2000Jを用いた。「粒径」は、この装置で測定した平均粒径D50(積算粒子数50%における粒径)を意味するものとする。また、BET比表面積測定には島津製作所製ジェミニ2370を用いた。「比表面積」は、この装置で測定したBET比表面積を意味するものとする。作製したマンガン酸リチウムの内容を表1にまとめた。
【0043】
【表1】
【0044】
記号A2のマンガン酸リチウムのSEM観察写真を図2に、また、記号B2のマンガン酸リチウムのSEM観察写真を図3に示す。図2および図3から、比表面積の小さい図2のマンガン酸リチウムでは、一次粒子の平均粒子径が大きく、比表面積の大きい図3のマンガン酸リチウムでは、一次粒子の平均粒子径が小さいことが示される。
【0045】
[実施例1]
表1のA1とB2とを重量比1:1で混合したマンガン酸リチウムを正極活物質とし、導電助剤にアセチレンブラック、結着剤にポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いて正極板を作製した。正極合剤重量(正極活物質、導電助剤および結着剤の重量和)に対する導電助剤の重量比率は4重量%、結着剤の重量比率は6重量%とした。マンガン酸リチウム、アセチレンブラックおよびPVdFを上記の割合で混合し、真空中にて混練した後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて粘度調整を行い、正極合剤ペーストとした。この正極合剤ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の両面に塗布し、真空乾燥後、圧延することにより正極板を作製した。得られた正極板は、幅30mm、長さ800mm、合剤層の片面当たりの厚さは90μmとした。
【0046】
負極板は、グラファイト92重量%と、結着剤としてのPVdF8重量%とを混合してなる負極合材に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えてペースト状に調製した後、この負極合材ペーストを厚さ15μmの銅箔集電体の両面に塗布、乾燥し、圧延することにより作製した。得られた負極板は、幅31mm、長さ840mm、合剤層の片面当たりの厚さは55μmとした。
【0047】
そして、正極板と負極板との間にセパレータを挟んで巻回して発電要素を構成し、さらにこれを電池ケースに挿入して蓋板を取り付けた後、さらに注液孔から非水電解質を注入し、開口部をレーザー溶接により封口して、図1に示す構造の非水電解質二次電池を作製した。
【0048】
セパレータには、ポリエチレン製微多孔膜を用いた。電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチレンカーボネートを体積比4:4:2の混合溶媒に、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解した非水電解液を用いた。
【0049】
ここで作製した非水電解質二次電池の初期放電容量は約800mAhであった。これらの電池を用いて充放電サイクル特性および出力特性を測定した。
【0050】
[実施例2〜4および比較例1〜5]
正極活物質として、二次粒子A1〜A3と二次粒子B1〜B3とを混合して用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4、比較例1〜5の非水電解質二次電池を作製した。表2〜表4に、実施例1〜4、比較例1〜5の非水電解質二次電池の内容をまとめた。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
[比較例6〜11]
二次粒子A1〜A3および二次粒子B1〜B3を単独で用いた以外は実施例1と同様にして、比較例6〜11の非水電解質二次電池を作製した。表5に比較例17〜26の非水電解質二次電池の内容をまとめた。
【0055】
【表5】
【0056】
[試験条件]
実施例1〜4および比較例1〜11の電池に用いた正極板について、集電体からの合剤層の剥離の程度と、合剤層の割れの程度を目視で観察し、電池について、次のような条件で、充放電サイクル試験と出力特性評価試験をおこなった。
【0057】
充放電サイクル試験は、試験温度を45℃とし、1CA定電流で4.1Vまで、さらに4.1V定電圧で、合計3時間充電し、1CA定電流で2.75Vまで放電し、これを1サイクルとして充放電を300サイクル繰り返した。
【0058】
出力特性評価は、充放電サイクル試験前と300サイクルの充放電サイクル試験後の上記電池を用いて行った。出力特性については以下の方法で算出した。放電深度50%におけるI−V測定結果(10秒目電圧)から開路電圧の2/3の電圧に低下する放電電流値を測定データの外挿により求め、この電流値と開路電圧の2/3となる電圧との積により電池の出力を算出した。初期の出力に対する充放電300サイクル繰り返し後の出力の割合を出力保持率(%)とした。
【0059】
各正極板における合剤層の剥離の程度、合剤層の割れの程度、各電池の初期出力の比較(実施例2の電池の場合を100とする)および45℃で300サイクル充放電を行った後の出力保持率を表6〜9にまとめた。
【0060】
なお、合剤層の剥離の程度は、10cm×10cmの打ち抜きにより極板を採取し、極板の端部において合材部と集電体部の剥離の度合い観察し、剥離が見られない場合を「無」、一部に剥離が見られた場合を「若干有」、全体に剥離が見られた場合を「有」の3段階に区別した。
【0061】
また、合剤層の割れの程度は正極板の圧延後に行った。正極板の圧延は極板内の空孔が極板体積に対して32%になるように調整し、得られた正極板に対して内部半径が0.5mmとなるように直角になるまで曲げ試験を行い、外側の合剤層を観察し、合剤層にき裂が見られない場合を「無」、数箇所以下にき裂が見られた場合を「若干有」、多数のき裂が見られた場合を「有」の3段階に区別した。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
これらの結果から、つぎのようなことが明らかとなった。
【0067】
二次粒子Aと二次粒子Bとを混合して用いた実施例1〜4および比較例1〜5のうち、比較例1〜3にて合剤層の剥離と割れが共に観察された。また、比較例4、5の場合には初期出力が95未満の小さい値となり、また、比較例1〜3の場合は出力保持率が80%未満と小さい値となった。したがって、比較例1〜5には、合剤層の剥離も割れもなく、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を同時に満たすものはなかった。
【0068】
一方、本願発明の、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを混合し、二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下である実施例1〜4の場合には、合剤層の剥離や割れが若干有があったものの、すべて、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を満たしていた。
【0069】
二次粒子Aまたは二次粒子Bを単独で用いた比較例6〜11のうち、比較例9〜11の場合に、合剤層の剥離と割れが共に観察された。また、比較例6〜8の場合には初期出力が95未満の小さい値となり、また、比較例9〜11の場合は出力保持率が80%未満と小さい値となった。したがって、比較例6〜11には、合剤層の剥離も割れもなく、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を同時に満たすものはなかった。
【0070】
本発明の、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと、二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合して用いることにより、合剤剥離および極板割れを抑制することができ、さらに、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上の非水電解質二次電池を得ることができる。
【0071】
つまり合剤剥離、極板割れの現象はマンガン酸リチウムの比表面積に大きく影響しており、比表面積が既知のマンガン酸リチウムを混合し、その混合比を調整することによって合剤剥離および極板割れのない密着性に優れた正極板を作製することが可能となる。そして極板内の密着性を低下させることなく、極板内の正極活物質の比表面積を全体的に大きくすることができたためである。
【0072】
[実施例5、6]
正極活物質として、二次粒子A2と二次粒子B2とを混合して用い、混合比を変化させた以外は実施例2と同様にして、実施例5、6の非水電解質二次電池を作製した。そして、実施例2と同様の試験を行った。作製した電池の内容を表10に、試験結果は表11にまとめた。なお、表10および表11では、比較のため、実施例2、比較例7および比較例10のデータも示した。
【0073】
【表10】
【0074】
【表11】
【0075】
表10および表11の結果から、二次粒子A2と二次粒子B2との混合比を変化させた場合、二次粒子A2と二次粒子B2とを合わせた比表面積が0.4〜0.8m2/gの範囲にある、実施例2、5、6の電池では、合剤層に若干の割れが観察されたものの、初期出力は95以上、出力保持率は80%以上の優れた特性を示したのに対し、比較例7、10の電池には、合剤層の剥離も割れもなく、初期出力が95以上、出力保持率が80%以上という条件を同時に満たすものはなかった。
【0076】
なお、ここでは二次粒子A2と二次粒子B2との混合比を変化させたが、二次粒子A1、A2のいずれかと、二次粒子B2、B3のいずれかとを混合し、混合比を変えた場合も、二次粒子A2と二次粒子B2とを混合した場合と同様の結果が得られた。
【0077】
【発明の効果】
マンガン酸リチウムを主体とする正極活物質を用いた非水電解質二次電池において、平均粒径が異なる一次粒子からなり、比表面積が異なる2種類のマンガン酸リチウムを混合し、正極合剤層内の2種類のマンガン酸リチウムを合わせた比表面積を0.4m2/g以上、0.8m2/g以下に調整することにより、非水電解質二次電池の出力密度の増加および出力保持率に優れた実用的な非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる非水電解質二次電池の断面図。
【図2】比表面積が0.28m2/gのマンガン酸リチウム(A2)のSEM観察写真。
【図3】比表面積が0.88m2/gのマンガン酸リチウム(B2)のSEM観察写真。
【符号の説明】
1 非水電解質二次電池
2 電極群
3 正極板
4 負極板
5 セパレータ
6 電池ケース
Claims (2)
- 正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、前記マンガン酸リチウムは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満の二次粒子Aと、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下の二次粒子Bとを含み、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする非水電解質二次電池。
- 正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法において、二次粒子Aからなるマンガン酸リチウムと二次粒子Bからなるマンガン酸リチウムとを混合する工程を含み、前記二次粒子Aは、平均粒径が2.0〜5.0μmの範囲にある一次粒子aが集合し、比表面積が0.2m2/g以上、0.5m2/g未満であり、前記二次粒子Bは、平均粒径が0.1〜1.0μmの範囲にある一次粒子bが集合し、比表面積が0.5m2/g以上、1.0m2/g以下であり、前記2種類の二次粒子Aと二次粒子Bとを合わせたマンガン酸リチウムの比表面積が0.4m2/g以上、0.8m2/g以下であることを特徴とする正極活物質にマンガン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池用正極の製造方法。
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