JP2005005188A - プラズマディスプレイパネルおよびその駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】画像表示に使用されるプラズマディスプレイパネルにおいて、隣接するセルの間でのクロストークを防止し、安定した書き込み放電を実現することを目的とする。
【解決手段】走査電極、維持電極の組において、維持電極のみ放電ギャップに近い部分と遠い部分の2つに分割し、維持電極のうち放電ギャップに近い部分と走査電極との間で壁電圧を調整し、ここで書き込み放電が起るようにすることにより、より安定で誤放電のない書き込み放電を起こすことができ、表示不良のないプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】走査電極、維持電極の組において、維持電極のみ放電ギャップに近い部分と遠い部分の2つに分割し、維持電極のうち放電ギャップに近い部分と走査電極との間で壁電圧を調整し、ここで書き込み放電が起るようにすることにより、より安定で誤放電のない書き込み放電を起こすことができ、表示不良のないプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、AC型のプラズマディスプレイパネルおよびその駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のAC面放電型のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の斜視図を図9に示す。図9に示すように、従来のパネル1では、ガラス製の表面基板2とガラス製の背面基板3とが対向して配置されているとともに、その間隙には放電によって紫外線を放射するガス、例えばネオンおよびキセノンが封入されている。表面基板2上には、誘電体層6および保護層7で覆われた対を成す帯状の走査電極4と維持電極5とからなる電極群が互いに行方向に平行配列されている。
【0003】
走査電極4および維持電極5はそれぞれ、導電性を高めるための金属母線4A、5Aと透明電極4B、5Bとから構成されている。透明電極4B、5Bは、放電を広げ、より大きな容量で放電が起こるようにする働きを有している。
【0004】
背面基板3上には、走査電極4および維持電極5と直交する列方向に第2誘電体層10に覆われた帯状の書き込み電極11が互いに平行配列されており、またこの各書き込み電極11を隔離し、かつ放電空間を形成するための帯状の隔壁8が書き込み電極11の間に設けられている。また、誘電体層6上から隔壁8の側面にわたって蛍光体層9が形成されている。
【0005】
このパネル1は表面基板2側から画像表示を見るようになっており、放電空間内での走査電極4と維持電極5との間の放電により発生する紫外線によって、蛍光体層9を励起し、この蛍光体層9からの可視光を表示発光に利用するものである。
【0006】
走査電極4と維持電極5、書き込み電極11それぞれ1本ずつを1組として、1つの放電セルが形成される。1つの放電セルは、1つの表示画素のうち、1色を表現する単位を表しており、通常、赤を表現する放電セル、青を表現するセル、緑を表現するセルの3つの放電セルを1組として1つの表示画素を形成する。
【0007】
図10に、放電セルの構造を表面基板側から見た図を示す。簡単のため、誘電体層6、保護層7、蛍光体層9を省略している。図10に示すように、従来のパネルは平行に形成された走査電極4と維持電極5と、それらと垂直に形成された書き込み電極11、隔壁8とが交わり、1つの放電セルを形成している。
【0008】
隔壁8は井桁型構造をさせる場合もある。その場合、隔壁8に、図の上下方向に隣接する放電セルを隔離する部分を設けることにより、隣接する放電セルとの干渉による不良表示を防止することができる。
【0009】
次に、従来のPDPの駆動方法について図11および12を用いて説明する。従来のプラズマディスプレイパネルの駆動方法は、図11に示すように1フィールドを複数のサブフィールドに分割する。それぞれのサブフィールドで表示できる明るさが異なり、これらのサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う。例えば、1つのフィールドを8つのサブフィールドに分割し、各サブフィールドがそれぞれ1,2,4,8,16,32,64,128の明るさを表現するものとすれば、その組み合わせによって、256階調の表現が可能である。
【0010】
各サブフィールドは、それぞれ初期化期間、書き込み期間、維持期間から構成されていて、維持期間の長さでそのサブフィールドの表示する明るさが変わる。
【0011】
図12(a)〜(d)に、走査電極4、維持電極5、書き込み電極11の各電極に印加される電圧波形の一例、およびそれによる放電発光を示す。図12(a)は走査電極4、図12(b)は維持電極5、図12(c)は書き込み電極11にそれぞれ印加する電圧波形の例である。図12(d)は、この駆動波形によって起こる放電発光の強度を模式的に表す。
【0012】
図12において、まず走査電極4に初期化パルスVsetを印加し、パネルの放電セル内の電荷状態を初期化し、さらに維持電極5に電圧Veを印加するとともに走査電極の電位を徐々に−Vaまで変化させることによって、誘電体層6、蛍光体層9に蓄積された電荷を続く書き込み期間に向けて調整する。
【0013】
PDPにおいては、この誘電体層6や保護層7、蛍光体層9に蓄積された電荷を壁電荷と呼び、蓄積された電荷が放電空間に作る電界が外部から印加した電界に重畳することで放電を起こしたり起こさなかったりといった制御を行う。したがって、この壁電荷の適切な制御が、安定な駆動のために必要である。
【0014】
初期化期間において、このような傾斜した電圧を印加することによって、壁電荷をわずかずつ変化させ、セル内の電圧を放電開始電圧に近い状態に調整、保持することができる。このような壁電荷調整方法は、特許文献1に示されている。
【0015】
次に選択するセル以外の走査電極4にバイアス電圧Vscanをかけておき、選択するセルにはバイアス電圧Vscanを取り除くと同時に書き込み電極11に書き込みパルスVdを印加して書き込み放電を起こす。この書き込み放電によって、誘電体層6、保護層7、および蛍光体層9表面に維持動作を行うための電荷が蓄積される。同様の書き込み動作をパネル全面にわたって順次行い、表示するセルを選択する。
【0016】
次に維持期間において、書き込み電極11を接地し、走査電極4と維持電極5に交互に維持パルスVsを印加することによって、書き込み期間に壁電荷が蓄積されたセルでは放電が起こる。走査電極4と維持電極5の間の電位差に、蓄積された壁電荷による電位を重畳したものが放電開始電圧を上回ることによって放電が発生し、維持期間の間維持放電が繰り返し行われる。例えば、維持期間の始まりにおいては、維持電極5に印加されていた電圧Veを接地電位に変化させ、続いて走査電極4に正の電圧Vsを印加するが、これらの電圧と、走査電極4付近に蓄積されている正の壁電荷、維持電極5付近に蓄積されている負の壁電荷による電界を重畳した電界によって放電が行われる。書き込み期間に、書き込み放電が起こらなかったセルにおいては、この重畳する分の壁電荷が存在しないため、放電空間中の電界が放電開始に不足し、放電は起こらない。
【0017】
所定の維持パルスが印加されたあとは、続くサブフィールドの初期化期間に入り、再び初期化放電が行われる。
【0018】
これを順次各サブフィールドについて行うことで、従来のパネルは駆動することができる。
【0019】
【特許文献1】
特表2000−501199号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
このようなPDPは、セルピッチの小さい高精細なパネルを作ろうとした場合、隣接セルとの間の距離が小さくなり、セル間の放電が干渉しあい、誤点灯(点灯してはいけないセルが点灯する)や不灯(点灯しなくてはならないセルが点灯しない)などの表示不具合に到る課題がある。この現象を、クロストーク現象と呼ぶ。例えば、放電が隣のセルにまで到ってしまったり、放電による電荷がドリフトして隣接するセルにまで到達し、蓄積されている壁電荷を変化させてしまったりすることがその原因である。
【0021】
また、特許第3010658号などのように、発光効率の改善などの目的で、走査電極4や維持電極5の形状を変形したり、面積を小さくしたりする提案がなされているが、これらのような構成をとった場合、放電が不安定になるという課題が生じていた。これは、書き込み放電が起こしにくくなるということであり、書き込み放電が起きないことによる不灯セルの発生という表示不良となる。
【0022】
さらに、従来のPDPにおいては、書き込み放電の時に走査電極4と維持電極5との間に流れる電流は、1回の維持放電の際に流れる電流とほぼ同等であるが、書き込み期間に各走査電極4に順次印加する走査パルスを作り出す回路素子の負荷を高め、コスト増大の一因となるとともに、消費電力の増大を招いていた。
【0023】
本発明はこれらの課題を解決するためになされるものであり、セルピッチが小さくなってもクロストークが起きにくく、安定した書き込み放電を実現し、さらに書き込み放電のときに走査電極と維持電極との間に流れる電流を小さくすることを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、誘電体に覆われかつ行方向に伸びた走査電極および維持電極が放電ギャップを挟んで平行に形成された第1の基板と、この第1の基板に放電空間を挟んで対向配置されかつ列方向に伸びた書き込み電極と放電空間を形成するための隔壁および紫外線を可視光に変換する蛍光体が形成された第2の基板とを有し、維持電極は、放電ギャップに近い部分と、遠い部分に分割した構成としたものである。
【0025】
これにより、クロストークが起きにくく、また書き込み放電の放電電流が小さいPDPを提供することができる。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の駆動方法は、初期化期間、書き込み期間、維持期間を有する駆動方法であって、初期化期間には、走査電極と維持電極の全体を放電させる第1ステップと、前記走査電極と前記維持電極の放電ギャップに近い部分のみで放電を起こす第2ステップとを有するものとする。これにより、クロストークが起きにくく、また書き込み放電による電流が小さいPDPを提供することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図1〜図8を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1によるAC型PDPの表面基板側から見た構造を示す図であり、図1は図10と同様、誘電体層6、保護層7、蛍光体層9を省略している。
【0029】
本発明のパネル1は、図9に示される従来のパネルと同様、ガラス製の第1の基板である表面基板2とガラス製の第2の基板である背面基板3とが放電空間を挟んで対向して配置されている。表面基板2上には、誘電体層6で覆われ行方向に伸びた走査電極4と維持電極5とからなる電極の組が複数配列されている。走査電極4と維持電極5の間を放電ギャップと呼ぶ。
【0030】
走査電極4と維持電極5とは、誘電体層6で覆われており、誘電体層6上には保護層7として、酸化マグネシウム(MgO)等の耐スパッタ性が高く、二次電子放射係数の大きい材料による膜が形成されている。
【0031】
背面基板3上には、列方向に伸びる書き込み電極11が配列されており、この書き込み電極11は第2誘電体層10に覆われている。さらに放電空間を形成するための隔壁8が帯状に形成されていて、各放電セルに相当する部分の内側には、蛍光体層9が形成されている。
【0032】
放電空間には、放電ガスとしてたとえばキセノン(Xe)とネオン(He)との混合ガスが封入されている。このガスは、放電によって紫外線を放射する。
【0033】
このパネル1は表示面側である表面基板2側から画像表示を見るようになっており、放電空間内の放電により発生する紫外線によって、蛍光体層9を励起し、発生する可視光を表示発光に利用するものである。
【0034】
蛍光体層9として、書き込み電極11に平行な方向には同色の蛍光体材料を用い、書き込み電極11と直交する方向には、例えば赤、緑、青の順に三原色の蛍光体材料を順次用いている。
【0035】
本実施の形態のパネルは、図1に示すように、維持電極5を放電ギャップに近い部分51と、遠い部分52に分割する。一方、走査電極4は分割せず、従来と同じ帯状とする。
【0036】
この形状により、本実施の形態のPDPは、書き込み放電を走査電極4と維持電極5のうち放電ギャップに近い部分51との間で起こすことができる。これによって、書き込み放電は従来に比べて小さい容積で起こることとなるため、放電電流が小さくなる上に、放電が隣接まで広がらず、クロストークも発生しにくい。
【0037】
従来のパネルにおけるクロストーク現象のうち、書き込み期間に起こるクロストークは、書き込み放電が起きなくなったり、本来選択すべきでないセルの書き込み放電を起こしてしまったりすることで表示不良の原因となる。
【0038】
ここで、従来のパネルにおける書き込み放電について、図2(a)〜(d)を用いて説明する。
【0039】
従来のパネルの駆動方法は、図2(a)に示すように、書き込み放電に到る前までに走査電極4と書き込み電極11、走査電極4と維持電極5との間がそれぞれ放電開始電圧Vfに近くなるように壁電荷を調整している。そこへ、書き込み電極11に正の書き込みパルスを印加することによって、図2(b)に示すように書き込み電極11と走査電極4との間で、走査電極4を陰極とする放電が開始される。放電開始の際には、放電をより安定して起きるようにするために、陰極表面の正イオンの衝突に対して電子を放出する量、すなわち2次電子放出係数が大きい必要がある。したがって、この書き込み放電の始まりは、走査電極4側、すなわち保護層7を陰極、書き込み電極11、すなわち蛍光体層9を陽極とする放電を起こすことが、安定な放電を起こす1つの条件である。
【0040】
走査電極4と書き込み電極11との間で放電が始まると、走査電極4と維持電極5との間もほぼ放電開始電圧Vfの状態で待機しているため、図2(c)に示すようにここでも放電が開始する。
【0041】
このとき、維持電極5は陽極であり、プラズマ中では維持電極5の方へ向かって、電子が移動する。電子はイオンに比べて移動度が大きく、数十ナノ秒の間に維持電極5全体に広がり、維持電極5を覆っている誘電体層6の上に壁電荷として蓄積する。
【0042】
書き込み放電の時に起こるクロストークは、電極の配置のし方によって現象に差はあるものの、基本的にこの電子の高速な移動によるものと考えられる。
【0043】
AC面放電型と呼ばれるPDPにおいては、電極の配列のし方に2つの種類が提案されている。図3(a)、(b)に、それを示す。図3では、簡単のため走査電極4、維持電極5、隔壁8のみを示す。電極配列方法の1つが図3(a)に示すような配列で、この場合、走査電極4と維持電極5の配列順がどの行も同じ(この場合、走査電極4が上、維持電極5が下)となっている。一方、図3(b)に示すように、行ごとに走査電極4と維持電極5との配列順を反転させているような配列方法もある。これらの配列方法は、それぞれに利点と欠点を持っている。
【0044】
図3(a)に示すような走査電極4と維持電極5とがすべて同じ方向に隣り合って配列されている場合には、書き込み放電におけるクロストークは、走査電極4と、隣接セルの維持電極5との間で放電が起こってしまうような現象となる。走査電極4と書き込み電極11との間の放電で発生した電子の一部が、隣接セルの維持電極5による電界に引き寄せられ、隣接セルの方へ移動してしまう場合である。放電にまで到らなくても、この電子の移動だけで蓄積されている壁電荷が変化し、本来意図した壁電荷の制御による点灯、非点灯と異なる動作をしてしまう場合がある。
【0045】
一方、図3(b)に示すような走査電極4と維持電極5とが交互に入れ替わって配列されている場合には、維持電極5どうしが隣り合うこととなる。すると、書き込み放電の際に走査電極4から維持電極5へ向かって電子が移動した場合、隣接セルの維持電極5も同じ電位が与えられているため、電子が一部その電極にまで到ってしまうことがある。
【0046】
本発明のパネルは、このようなクロストークを抑えるために、書き込み放電の起こる領域を小さくし、走査電極4と維持電極5のうち放電ギャップに近い部分51との間のみで放電が起こるようにするものである。これにより、電子の移動は、維持電極5のうち放電ギャップから遠い部分52の存在によって、その外側へは移動しにくくなり、さらに放電電流自体が小さいため、電荷が多く隣接セルに流れ込むこともない。また、図3(a)のような配列の場合においても、隣接するセルの維持電極5も、放電ギャップから遠い部分52の存在によって、電子の流入による壁電荷の変動を防ぐことができる。
【0047】
次に、そのような小規模の書き込み放電を起こすための駆動方法について説明する。
【0048】
本発明の駆動方法のポイントは、このように維持電極5を分割し、2つの部分に分けて、それぞれに同じ駆動波形を印加しながらそれぞれの壁電荷を独立した形で制御することにある。そのために、パルス波形の印加による「強い放電」と、傾斜波形を用いた「弱い放電」の使い分けが必要である。この現象について図4(a)〜(e)を用いて説明する。
【0049】
AC面放電型PDPは、各電極が誘電体層に覆われていて、放電によってそこへ蓄積された壁電荷が、放電空間内に電界を作り、それと電極に外部から印加される電圧との重畳によって放電を操作することで駆動している。ここでAC型とは、走査電極4と維持電極5とがそれぞれ絶縁体(誘電体)で覆われていることであり、面放電型とは、走査電極4と維持電極5とが同一平面内にあるような位置関係にあることを表す。
【0050】
このような面放電型の場合、走査電極4と維持電極5との間の電界分布は、両者が対向して配置している場合と異なり不均一なものとなる。図4(a)に示すように、走査電極4と維持電極5とを結ぶ経路のうち、最も距離の短い経路、X部においては電界は強く、最も距離の遠い経路、Y部においては電界は弱くなる。走査電極4と維持電極5との間に印加する電圧と放電との関係という視点で見ると、X部が放電を始める放電開始電圧と、Y部が放電を始める放電開始電圧とが異なると言うことができる。
【0051】
走査電極4と維持電極5との間で放電が開始するのに必要な走査電極4と維持電極5とに印加する電圧差を放電開始電圧Vfと呼ぶこととすると、Vfは図4(a)のX部が放電を始める電圧と考えることができる。
【0052】
図4(b)に示すように、走査電極4と維持電極5との間にVfよりも十分高い電圧V1>>Vfを印加すると、X部とともにY部も放電を起こすことができる。実際には、Y部はX部と連続しているため、X部における放電が空間的に広がって、Y部に到る。この放電が、「強い放電」である。
【0053】
「強い放電」において、電荷は放電空間内の電界を打ち消すところまで移動し、図4(c)に示すように放電の結果放電空間の電界はほぼ0となる。このとき、走査電極4全体、維持電極5全体が放電に寄与するため、走査電極4全体と維持電極5全体に渡って壁電荷が蓄積されることとなる。
【0054】
維持期間における放電は、このような「強い放電」を利用している。図4(c)に示す放電が終了した状態から、走査電極4と維持電極5とに図4(b)と反対の極性の電圧を印加すれば、壁電荷の分布と印加電圧とが同極性となるため、こんどは走査電極4と維持電極5との極性が反転した放電が開始する。これを繰り返しながら、所定の回数放電を行うのが維持期間における放電である。
【0055】
一方、走査電極4と維持電極5との間に、放電開始電圧Vfよりをわずかに超えた電圧V2を印加した場合、図4(d)に示すように、放電ギャップに近い部分(X部)でのみ放電が起こり、そこでの電荷の移動で電界が弱まると、その時点で放電がストップしてしまう。つまり、電界が放電開始電圧を下回った時点で放電が止まるため、走査電極4と維持電極5との間は、放電開始電圧よりわずかに低い電圧で止まることとなる。これが、「弱い放電」である。
【0056】
走査電極4と維持電極5との間の電位差を、時間とともにゆっくり大きくしていくと、この電位差が放電開始電圧Vfをわずかに超えた時点でこの「弱い放電」が開始し、すぐに止まろうとするが、それとともに外部印加電圧をさらに大きくすれば、「弱い放電」が持続する。これにより、走査電極4と維持電極5の間の放電空間における電界が放電開始電圧に近い状態になるように壁電荷の調整が可能となる。
【0057】
これを初期化期間の駆動波形に利用したのが、特許文献1に示される駆動方法である。セルごとに放電開始電圧がばらついていても、書き込み放電を行うための壁電荷調整を適正に行うことができる点で優れた駆動方法である。
【0058】
AC面放電型PDPにこの傾斜波形による壁電荷調整方法を適用すると、もう1つ特徴的なことがある。それは、印加する電位差を広げていくと、徐々に放電の範囲が広くなっていく点である。すなわち、ここにおける放電は、放電ギャップ近傍で開始しているが、図4(a)におけるY部のように、放電ギャップから遠い部分は、X部にくらべて放電開始電圧が高いため、この「弱い放電」の開始時には放電に関与しない。走査電極4と維持電極5に外部から印加する電圧を徐々に大きくするに従って、放電の領域が広がり、最終的にはY部も放電するようになる。すなわち、どこまで電位差を広げるかによってどれだけの領域を放電させるかを制御することができる。
【0059】
本発明は、この性質を利用し、維持電極5のうち放電ギャップに近い部分51と遠い部分52との壁電荷を制御する。その方法について、図5(a)〜(e)を用いて説明する。
【0060】
まず、図5(a)のように、分割された維持電極5全体にわたって負の壁電荷が形成されているように、あらかじめ強い放電によって壁電荷を調整しておく。ここで走査電極に与える電圧をVset3、維持電極に印加している電圧をVeとする。この状態から、走査電極4に印加する電圧を徐々に低くしていき、−Vaまで変化させる。図5(b)に示すように、走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間が放電開始電圧を超えると、放電が開始する。また、同様に走査電極4と書き込み電極11との間でも同様の放電が起こる。走査電極4と維持電極5との間では、放電ギャップから徐々に外側に放電が広がる。それに伴い、放電ギャップに近い部分から壁電荷が調整されていく。なお、このとき、電圧の変化は10V/マイクロ秒以下程度にすることがこの「弱い放電」を安定に起こすために必要である。
【0061】
本発明のパネルの場合、維持電極5が放電ギャップに近い部分51と遠い部分52とに分割されているため、このような弱い放電は放電ギャップから遠い部分52に到りにくく、壁電荷の調整は、走査電極4と維持電極の放電ギャップに近い部分51との間のみで行うようにすることができる。すなわち、この一連の放電が終了した時点で、図5(c)に示すように走査電極4と書き込み電極11、走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間は放電開始電圧Vfに近い状態に調整されているが、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分52上には負の壁電荷が蓄積されたままとなる。
【0062】
この状態から、書き込み放電を起こすと、維持電極5の放電ギャップから遠い部分52は、負の壁電荷が蓄積されており、書き込み放電へは寄与できないため、書き込み放電は図5(d)に示すように走査電極4、書き込み電極11、維持電極5の放電ギャップに近い部分51の3電極間での放電となる。書き込み放電に関わる維持電極5の面積が小さくなるため、放電電流も小さくなる。また、放電の規模が小さくなり、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分52に負の壁電荷が存在することから、隣接する放電セル間を電子(負電荷)が移動することも抑えることができる。
【0063】
また、書き込み放電の結果の壁電荷の状態は、図5(e)に示すように、図2(d)と同様の状態であり、維持期間に移行することができる。
【0064】
本発明の駆動方法を実現する具体的な電圧波形の例を、図6(a)〜(d)に示す。
【0065】
本発明の駆動方法は、従来と同様、図11に示すように1フィールドをいくつかの明るさを表現するサブフィールドに分割し、その組み合わせによって階調を表現する。図6に示したのは、そのうちの1つのサブフィールドにおいて各電極に印加する電圧波形の例で、図6(a)〜(c)はそれぞれ走査電極4、維持電極5、書き込み電極11に印加する電圧波形を表す。図6(d)は、印加された電圧に対して起こる放電による紫外発光の強度を模式的に示す。
【0066】
図6に示す本発明の駆動方法の特徴は、2つのステップからなる初期化期間にある。
【0067】
時刻t1で示す初期化期間の第1ステップは、走査電極4と、維持電極5全体の間で強い放電を起こし、誘電体層6のうち走査電極4を覆う部分に正の壁電荷を、維持電極5を覆う部分に負の壁電荷を蓄積する。ここでのポイントは、走査電極4と維持電極5の全体に渡って壁電荷を蓄積し、図5(a)の状態にすることにある。
【0068】
次に、時刻t2で示す期間は、第2ステップへの移行期間である。走査電極4に正の、維持電極5には負の方向へ緩やかに変化する電圧波形を印加する。ここでは、次の第2ステップにおいて走査電極4を陰極、維持電極のうち放電ギャップに近い部分51を陽極とする放電を起こすことができるように電圧を調整する。t1の状態から、さらに走査電極4を負の方向、維持電極5を正の方向へ変化させれば、そのような放電は実現するが、駆動波形全体の振幅が大きくなってしまうため、一旦壁電荷を戻すのがここの役割である。このとき、上述したように、放電は一気にすべての領域で起こる訳でなく、放電ギャップに近い部分、すなわち走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間でのみ起こるため、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分52上の負の壁電荷は維持される。
【0069】
時刻t3に示す第2ステップにおいては、走査電極4に負の方向、維持電極5に正の方向へ変化する電圧波形を印加し、弱い放電を発生させる。これによって、走査電極4側が陰極、維持電極のうち放電ギャップに近い部分51が陽極となる極性で、弱い放電が起こる。このとき、これらの電極間は、ほぼ放電開始電圧に保たれたまま印加電圧が変化することになる。
【0070】
初期化期間が終わった時刻t4においては、図5(c)に示すように、走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間、および走査電極4と書き込み電極11との間がほぼ放電開始電圧に保たれ、このあと書き込み電極11に正の電圧が印加されれば、走査電極4と書き込み電極11との間で走査電極4側を陰極とする放電が開始し、その放電を引き金に走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間で、同じく走査電極4を陰極とする放電が起こる。このとき、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分には、初期化期間の第1ステップにおいて負の壁電荷が蓄積されているので、陽極として働くのは維持電極のうち放電ギャップに近い部分のみである。これは、放電が大きな領域に広がりにくいため、放電電流が小さく、また、隣接セルに放電が広がらないため、クロストークなどの誤放電を起こしにくいことを表す。
【0071】
図6に示した駆動波形は、本発明の駆動方法を実現するための1つの例であり、特に緩やかに変化する傾斜波形の形状などについては、応用例が考えられる。
【0072】
例えば、t2において、緩やかに変化する波形を印加する場合、本来の意図から考えれば、図7(b)のように、走査電極4、維持電極5にそれぞれ緩やかに変化する波形を印加するべきであるが、実際には、両電極の間の電位差と壁電荷による電位差の和が、放電開始電圧を超えるまでは放電が開始しないため、図7(a)に示すように、ある程度の電圧は急激に電圧を変化させてもよい。また、その部分は、走査電極4側でも、図7(c)のように維持電極5側でもよい。
【0073】
さて、本発明においては、走査電極4と維持電極5とが非対称な形状となるが、走査電極4は維持電極5とは異なり、分割はしない。それは、書き込み放電を安定に起こすためである。
【0074】
これまで説明してきた通り、書き込み放電は、走査電極4と書き込み電極11との間で始まる。走査電極4と書き込み電極11との間の静電容量は、できるだけ大きい方が放電開始が安定する。つまり、走査電極4の面積は、あまり小さくならないほうがよい。図5(d)に示すように、走査電極4と書き込み電極11との間の面積は大きく確保されていた方が、電界が強くなるとともに、放電に到る際に、陰極として働く走査電極4から電子が供給される量が大きいため、放電を速やかに開始することができる。
【0075】
書き込み放電の際、走査電極4は陰極として働くので、走査電極4に向かって放電空間中を移動するのは、正イオンである。イオンは、電子に比べて移動度が低く、この移動はクロストークの原因になりにくいため、本発明のように分割することでクロストークを抑制する効果は、維持電極5側を分割することで十分得られる。
【0076】
(実施の形態2)
図8(a)、(b)に本発明の実施の形態2によるPDPの電極構造を示す。図8のように、維持電極5を、行方向に伸びたライン状の部分で放電ギャップから遠い部分52と、そこから放電ギャップの方向へ突出した放電ギャップに近い部分51A、51Bにより構成したものである。このような構造をとった場合、実施の形態1の構成と比較して、走査電極4と維持電極5の間で近接する部分の長さが短くなるため、走査電極4と維持電極5との間の静電容量が削減できるという利点がある。この静電容量は、走査電極4または維持電極5にパルスが印加されたとき、変位電流として流れる電流に影響する。駆動の方法や実施の効果などについては、実施の形態1と同様である。
【0077】
なお、図1では、隔壁8の構造はストライプ型の構造を示したが、本発明は隔壁の構造には依存しないため、井桁型の構造としてもよい。
【0078】
【発明の効果】
以上のように本発明は、走査電極と維持電極のうち、維持電極のみを放電ギャップに近い部分と遠い部分に分割し、走査電極は分割せず、さらにそれぞれの電極全体を放電させるステップと走査電極と維持電極のうち放電ギャップに近い部分のみで放電を起こすステップを備えた駆動方法で駆動することにより、クロストークを抑制し、書き込み放電の電流を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるプラズマディスプレイパネルの電極構造を示す正面図
【図2】プラズマディスプレイパネルにおける書き込み放電についての説明図
【図3】電極配列の種類を示す正面図
【図4】強い放電と弱い放電の説明図
【図5】本発明における放電の説明図
【図6】本発明の駆動方法を実現する電圧波形を示す波形図
【図7】図6の駆動波形の応用例を示す波形図
【図8】本発明の実施の形態2によるプラズマディスプレイパネルの電極構造を示す正面図
【図9】従来のパネルの構造を示す斜視図
【図10】従来のパネルの構造を示す正面図
【図11】プラズマディスプレイパネルのサブフィールドによる駆動方法を示す説明図
【図12】従来の駆動方法を示す波形図
【符号の説明】
1 パネル
2 表面基板
3 背面基板
4 走査電極
5 維持電極
6 誘電体層
7 保護層
8 隔壁
9 蛍光体層
10 誘電体層
11 書き込み電極
4A、5A 金属母線
4B、5B 透明電極
51 放電ギャップに近い部分
52 放電ギャップから遠い部分
【発明の属する技術分野】
本発明は、AC型のプラズマディスプレイパネルおよびその駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のAC面放電型のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)の斜視図を図9に示す。図9に示すように、従来のパネル1では、ガラス製の表面基板2とガラス製の背面基板3とが対向して配置されているとともに、その間隙には放電によって紫外線を放射するガス、例えばネオンおよびキセノンが封入されている。表面基板2上には、誘電体層6および保護層7で覆われた対を成す帯状の走査電極4と維持電極5とからなる電極群が互いに行方向に平行配列されている。
【0003】
走査電極4および維持電極5はそれぞれ、導電性を高めるための金属母線4A、5Aと透明電極4B、5Bとから構成されている。透明電極4B、5Bは、放電を広げ、より大きな容量で放電が起こるようにする働きを有している。
【0004】
背面基板3上には、走査電極4および維持電極5と直交する列方向に第2誘電体層10に覆われた帯状の書き込み電極11が互いに平行配列されており、またこの各書き込み電極11を隔離し、かつ放電空間を形成するための帯状の隔壁8が書き込み電極11の間に設けられている。また、誘電体層6上から隔壁8の側面にわたって蛍光体層9が形成されている。
【0005】
このパネル1は表面基板2側から画像表示を見るようになっており、放電空間内での走査電極4と維持電極5との間の放電により発生する紫外線によって、蛍光体層9を励起し、この蛍光体層9からの可視光を表示発光に利用するものである。
【0006】
走査電極4と維持電極5、書き込み電極11それぞれ1本ずつを1組として、1つの放電セルが形成される。1つの放電セルは、1つの表示画素のうち、1色を表現する単位を表しており、通常、赤を表現する放電セル、青を表現するセル、緑を表現するセルの3つの放電セルを1組として1つの表示画素を形成する。
【0007】
図10に、放電セルの構造を表面基板側から見た図を示す。簡単のため、誘電体層6、保護層7、蛍光体層9を省略している。図10に示すように、従来のパネルは平行に形成された走査電極4と維持電極5と、それらと垂直に形成された書き込み電極11、隔壁8とが交わり、1つの放電セルを形成している。
【0008】
隔壁8は井桁型構造をさせる場合もある。その場合、隔壁8に、図の上下方向に隣接する放電セルを隔離する部分を設けることにより、隣接する放電セルとの干渉による不良表示を防止することができる。
【0009】
次に、従来のPDPの駆動方法について図11および12を用いて説明する。従来のプラズマディスプレイパネルの駆動方法は、図11に示すように1フィールドを複数のサブフィールドに分割する。それぞれのサブフィールドで表示できる明るさが異なり、これらのサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う。例えば、1つのフィールドを8つのサブフィールドに分割し、各サブフィールドがそれぞれ1,2,4,8,16,32,64,128の明るさを表現するものとすれば、その組み合わせによって、256階調の表現が可能である。
【0010】
各サブフィールドは、それぞれ初期化期間、書き込み期間、維持期間から構成されていて、維持期間の長さでそのサブフィールドの表示する明るさが変わる。
【0011】
図12(a)〜(d)に、走査電極4、維持電極5、書き込み電極11の各電極に印加される電圧波形の一例、およびそれによる放電発光を示す。図12(a)は走査電極4、図12(b)は維持電極5、図12(c)は書き込み電極11にそれぞれ印加する電圧波形の例である。図12(d)は、この駆動波形によって起こる放電発光の強度を模式的に表す。
【0012】
図12において、まず走査電極4に初期化パルスVsetを印加し、パネルの放電セル内の電荷状態を初期化し、さらに維持電極5に電圧Veを印加するとともに走査電極の電位を徐々に−Vaまで変化させることによって、誘電体層6、蛍光体層9に蓄積された電荷を続く書き込み期間に向けて調整する。
【0013】
PDPにおいては、この誘電体層6や保護層7、蛍光体層9に蓄積された電荷を壁電荷と呼び、蓄積された電荷が放電空間に作る電界が外部から印加した電界に重畳することで放電を起こしたり起こさなかったりといった制御を行う。したがって、この壁電荷の適切な制御が、安定な駆動のために必要である。
【0014】
初期化期間において、このような傾斜した電圧を印加することによって、壁電荷をわずかずつ変化させ、セル内の電圧を放電開始電圧に近い状態に調整、保持することができる。このような壁電荷調整方法は、特許文献1に示されている。
【0015】
次に選択するセル以外の走査電極4にバイアス電圧Vscanをかけておき、選択するセルにはバイアス電圧Vscanを取り除くと同時に書き込み電極11に書き込みパルスVdを印加して書き込み放電を起こす。この書き込み放電によって、誘電体層6、保護層7、および蛍光体層9表面に維持動作を行うための電荷が蓄積される。同様の書き込み動作をパネル全面にわたって順次行い、表示するセルを選択する。
【0016】
次に維持期間において、書き込み電極11を接地し、走査電極4と維持電極5に交互に維持パルスVsを印加することによって、書き込み期間に壁電荷が蓄積されたセルでは放電が起こる。走査電極4と維持電極5の間の電位差に、蓄積された壁電荷による電位を重畳したものが放電開始電圧を上回ることによって放電が発生し、維持期間の間維持放電が繰り返し行われる。例えば、維持期間の始まりにおいては、維持電極5に印加されていた電圧Veを接地電位に変化させ、続いて走査電極4に正の電圧Vsを印加するが、これらの電圧と、走査電極4付近に蓄積されている正の壁電荷、維持電極5付近に蓄積されている負の壁電荷による電界を重畳した電界によって放電が行われる。書き込み期間に、書き込み放電が起こらなかったセルにおいては、この重畳する分の壁電荷が存在しないため、放電空間中の電界が放電開始に不足し、放電は起こらない。
【0017】
所定の維持パルスが印加されたあとは、続くサブフィールドの初期化期間に入り、再び初期化放電が行われる。
【0018】
これを順次各サブフィールドについて行うことで、従来のパネルは駆動することができる。
【0019】
【特許文献1】
特表2000−501199号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
このようなPDPは、セルピッチの小さい高精細なパネルを作ろうとした場合、隣接セルとの間の距離が小さくなり、セル間の放電が干渉しあい、誤点灯(点灯してはいけないセルが点灯する)や不灯(点灯しなくてはならないセルが点灯しない)などの表示不具合に到る課題がある。この現象を、クロストーク現象と呼ぶ。例えば、放電が隣のセルにまで到ってしまったり、放電による電荷がドリフトして隣接するセルにまで到達し、蓄積されている壁電荷を変化させてしまったりすることがその原因である。
【0021】
また、特許第3010658号などのように、発光効率の改善などの目的で、走査電極4や維持電極5の形状を変形したり、面積を小さくしたりする提案がなされているが、これらのような構成をとった場合、放電が不安定になるという課題が生じていた。これは、書き込み放電が起こしにくくなるということであり、書き込み放電が起きないことによる不灯セルの発生という表示不良となる。
【0022】
さらに、従来のPDPにおいては、書き込み放電の時に走査電極4と維持電極5との間に流れる電流は、1回の維持放電の際に流れる電流とほぼ同等であるが、書き込み期間に各走査電極4に順次印加する走査パルスを作り出す回路素子の負荷を高め、コスト増大の一因となるとともに、消費電力の増大を招いていた。
【0023】
本発明はこれらの課題を解決するためになされるものであり、セルピッチが小さくなってもクロストークが起きにくく、安定した書き込み放電を実現し、さらに書き込み放電のときに走査電極と維持電極との間に流れる電流を小さくすることを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、誘電体に覆われかつ行方向に伸びた走査電極および維持電極が放電ギャップを挟んで平行に形成された第1の基板と、この第1の基板に放電空間を挟んで対向配置されかつ列方向に伸びた書き込み電極と放電空間を形成するための隔壁および紫外線を可視光に変換する蛍光体が形成された第2の基板とを有し、維持電極は、放電ギャップに近い部分と、遠い部分に分割した構成としたものである。
【0025】
これにより、クロストークが起きにくく、また書き込み放電の放電電流が小さいPDPを提供することができる。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の駆動方法は、初期化期間、書き込み期間、維持期間を有する駆動方法であって、初期化期間には、走査電極と維持電極の全体を放電させる第1ステップと、前記走査電極と前記維持電極の放電ギャップに近い部分のみで放電を起こす第2ステップとを有するものとする。これにより、クロストークが起きにくく、また書き込み放電による電流が小さいPDPを提供することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図1〜図8を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1によるAC型PDPの表面基板側から見た構造を示す図であり、図1は図10と同様、誘電体層6、保護層7、蛍光体層9を省略している。
【0029】
本発明のパネル1は、図9に示される従来のパネルと同様、ガラス製の第1の基板である表面基板2とガラス製の第2の基板である背面基板3とが放電空間を挟んで対向して配置されている。表面基板2上には、誘電体層6で覆われ行方向に伸びた走査電極4と維持電極5とからなる電極の組が複数配列されている。走査電極4と維持電極5の間を放電ギャップと呼ぶ。
【0030】
走査電極4と維持電極5とは、誘電体層6で覆われており、誘電体層6上には保護層7として、酸化マグネシウム(MgO)等の耐スパッタ性が高く、二次電子放射係数の大きい材料による膜が形成されている。
【0031】
背面基板3上には、列方向に伸びる書き込み電極11が配列されており、この書き込み電極11は第2誘電体層10に覆われている。さらに放電空間を形成するための隔壁8が帯状に形成されていて、各放電セルに相当する部分の内側には、蛍光体層9が形成されている。
【0032】
放電空間には、放電ガスとしてたとえばキセノン(Xe)とネオン(He)との混合ガスが封入されている。このガスは、放電によって紫外線を放射する。
【0033】
このパネル1は表示面側である表面基板2側から画像表示を見るようになっており、放電空間内の放電により発生する紫外線によって、蛍光体層9を励起し、発生する可視光を表示発光に利用するものである。
【0034】
蛍光体層9として、書き込み電極11に平行な方向には同色の蛍光体材料を用い、書き込み電極11と直交する方向には、例えば赤、緑、青の順に三原色の蛍光体材料を順次用いている。
【0035】
本実施の形態のパネルは、図1に示すように、維持電極5を放電ギャップに近い部分51と、遠い部分52に分割する。一方、走査電極4は分割せず、従来と同じ帯状とする。
【0036】
この形状により、本実施の形態のPDPは、書き込み放電を走査電極4と維持電極5のうち放電ギャップに近い部分51との間で起こすことができる。これによって、書き込み放電は従来に比べて小さい容積で起こることとなるため、放電電流が小さくなる上に、放電が隣接まで広がらず、クロストークも発生しにくい。
【0037】
従来のパネルにおけるクロストーク現象のうち、書き込み期間に起こるクロストークは、書き込み放電が起きなくなったり、本来選択すべきでないセルの書き込み放電を起こしてしまったりすることで表示不良の原因となる。
【0038】
ここで、従来のパネルにおける書き込み放電について、図2(a)〜(d)を用いて説明する。
【0039】
従来のパネルの駆動方法は、図2(a)に示すように、書き込み放電に到る前までに走査電極4と書き込み電極11、走査電極4と維持電極5との間がそれぞれ放電開始電圧Vfに近くなるように壁電荷を調整している。そこへ、書き込み電極11に正の書き込みパルスを印加することによって、図2(b)に示すように書き込み電極11と走査電極4との間で、走査電極4を陰極とする放電が開始される。放電開始の際には、放電をより安定して起きるようにするために、陰極表面の正イオンの衝突に対して電子を放出する量、すなわち2次電子放出係数が大きい必要がある。したがって、この書き込み放電の始まりは、走査電極4側、すなわち保護層7を陰極、書き込み電極11、すなわち蛍光体層9を陽極とする放電を起こすことが、安定な放電を起こす1つの条件である。
【0040】
走査電極4と書き込み電極11との間で放電が始まると、走査電極4と維持電極5との間もほぼ放電開始電圧Vfの状態で待機しているため、図2(c)に示すようにここでも放電が開始する。
【0041】
このとき、維持電極5は陽極であり、プラズマ中では維持電極5の方へ向かって、電子が移動する。電子はイオンに比べて移動度が大きく、数十ナノ秒の間に維持電極5全体に広がり、維持電極5を覆っている誘電体層6の上に壁電荷として蓄積する。
【0042】
書き込み放電の時に起こるクロストークは、電極の配置のし方によって現象に差はあるものの、基本的にこの電子の高速な移動によるものと考えられる。
【0043】
AC面放電型と呼ばれるPDPにおいては、電極の配列のし方に2つの種類が提案されている。図3(a)、(b)に、それを示す。図3では、簡単のため走査電極4、維持電極5、隔壁8のみを示す。電極配列方法の1つが図3(a)に示すような配列で、この場合、走査電極4と維持電極5の配列順がどの行も同じ(この場合、走査電極4が上、維持電極5が下)となっている。一方、図3(b)に示すように、行ごとに走査電極4と維持電極5との配列順を反転させているような配列方法もある。これらの配列方法は、それぞれに利点と欠点を持っている。
【0044】
図3(a)に示すような走査電極4と維持電極5とがすべて同じ方向に隣り合って配列されている場合には、書き込み放電におけるクロストークは、走査電極4と、隣接セルの維持電極5との間で放電が起こってしまうような現象となる。走査電極4と書き込み電極11との間の放電で発生した電子の一部が、隣接セルの維持電極5による電界に引き寄せられ、隣接セルの方へ移動してしまう場合である。放電にまで到らなくても、この電子の移動だけで蓄積されている壁電荷が変化し、本来意図した壁電荷の制御による点灯、非点灯と異なる動作をしてしまう場合がある。
【0045】
一方、図3(b)に示すような走査電極4と維持電極5とが交互に入れ替わって配列されている場合には、維持電極5どうしが隣り合うこととなる。すると、書き込み放電の際に走査電極4から維持電極5へ向かって電子が移動した場合、隣接セルの維持電極5も同じ電位が与えられているため、電子が一部その電極にまで到ってしまうことがある。
【0046】
本発明のパネルは、このようなクロストークを抑えるために、書き込み放電の起こる領域を小さくし、走査電極4と維持電極5のうち放電ギャップに近い部分51との間のみで放電が起こるようにするものである。これにより、電子の移動は、維持電極5のうち放電ギャップから遠い部分52の存在によって、その外側へは移動しにくくなり、さらに放電電流自体が小さいため、電荷が多く隣接セルに流れ込むこともない。また、図3(a)のような配列の場合においても、隣接するセルの維持電極5も、放電ギャップから遠い部分52の存在によって、電子の流入による壁電荷の変動を防ぐことができる。
【0047】
次に、そのような小規模の書き込み放電を起こすための駆動方法について説明する。
【0048】
本発明の駆動方法のポイントは、このように維持電極5を分割し、2つの部分に分けて、それぞれに同じ駆動波形を印加しながらそれぞれの壁電荷を独立した形で制御することにある。そのために、パルス波形の印加による「強い放電」と、傾斜波形を用いた「弱い放電」の使い分けが必要である。この現象について図4(a)〜(e)を用いて説明する。
【0049】
AC面放電型PDPは、各電極が誘電体層に覆われていて、放電によってそこへ蓄積された壁電荷が、放電空間内に電界を作り、それと電極に外部から印加される電圧との重畳によって放電を操作することで駆動している。ここでAC型とは、走査電極4と維持電極5とがそれぞれ絶縁体(誘電体)で覆われていることであり、面放電型とは、走査電極4と維持電極5とが同一平面内にあるような位置関係にあることを表す。
【0050】
このような面放電型の場合、走査電極4と維持電極5との間の電界分布は、両者が対向して配置している場合と異なり不均一なものとなる。図4(a)に示すように、走査電極4と維持電極5とを結ぶ経路のうち、最も距離の短い経路、X部においては電界は強く、最も距離の遠い経路、Y部においては電界は弱くなる。走査電極4と維持電極5との間に印加する電圧と放電との関係という視点で見ると、X部が放電を始める放電開始電圧と、Y部が放電を始める放電開始電圧とが異なると言うことができる。
【0051】
走査電極4と維持電極5との間で放電が開始するのに必要な走査電極4と維持電極5とに印加する電圧差を放電開始電圧Vfと呼ぶこととすると、Vfは図4(a)のX部が放電を始める電圧と考えることができる。
【0052】
図4(b)に示すように、走査電極4と維持電極5との間にVfよりも十分高い電圧V1>>Vfを印加すると、X部とともにY部も放電を起こすことができる。実際には、Y部はX部と連続しているため、X部における放電が空間的に広がって、Y部に到る。この放電が、「強い放電」である。
【0053】
「強い放電」において、電荷は放電空間内の電界を打ち消すところまで移動し、図4(c)に示すように放電の結果放電空間の電界はほぼ0となる。このとき、走査電極4全体、維持電極5全体が放電に寄与するため、走査電極4全体と維持電極5全体に渡って壁電荷が蓄積されることとなる。
【0054】
維持期間における放電は、このような「強い放電」を利用している。図4(c)に示す放電が終了した状態から、走査電極4と維持電極5とに図4(b)と反対の極性の電圧を印加すれば、壁電荷の分布と印加電圧とが同極性となるため、こんどは走査電極4と維持電極5との極性が反転した放電が開始する。これを繰り返しながら、所定の回数放電を行うのが維持期間における放電である。
【0055】
一方、走査電極4と維持電極5との間に、放電開始電圧Vfよりをわずかに超えた電圧V2を印加した場合、図4(d)に示すように、放電ギャップに近い部分(X部)でのみ放電が起こり、そこでの電荷の移動で電界が弱まると、その時点で放電がストップしてしまう。つまり、電界が放電開始電圧を下回った時点で放電が止まるため、走査電極4と維持電極5との間は、放電開始電圧よりわずかに低い電圧で止まることとなる。これが、「弱い放電」である。
【0056】
走査電極4と維持電極5との間の電位差を、時間とともにゆっくり大きくしていくと、この電位差が放電開始電圧Vfをわずかに超えた時点でこの「弱い放電」が開始し、すぐに止まろうとするが、それとともに外部印加電圧をさらに大きくすれば、「弱い放電」が持続する。これにより、走査電極4と維持電極5の間の放電空間における電界が放電開始電圧に近い状態になるように壁電荷の調整が可能となる。
【0057】
これを初期化期間の駆動波形に利用したのが、特許文献1に示される駆動方法である。セルごとに放電開始電圧がばらついていても、書き込み放電を行うための壁電荷調整を適正に行うことができる点で優れた駆動方法である。
【0058】
AC面放電型PDPにこの傾斜波形による壁電荷調整方法を適用すると、もう1つ特徴的なことがある。それは、印加する電位差を広げていくと、徐々に放電の範囲が広くなっていく点である。すなわち、ここにおける放電は、放電ギャップ近傍で開始しているが、図4(a)におけるY部のように、放電ギャップから遠い部分は、X部にくらべて放電開始電圧が高いため、この「弱い放電」の開始時には放電に関与しない。走査電極4と維持電極5に外部から印加する電圧を徐々に大きくするに従って、放電の領域が広がり、最終的にはY部も放電するようになる。すなわち、どこまで電位差を広げるかによってどれだけの領域を放電させるかを制御することができる。
【0059】
本発明は、この性質を利用し、維持電極5のうち放電ギャップに近い部分51と遠い部分52との壁電荷を制御する。その方法について、図5(a)〜(e)を用いて説明する。
【0060】
まず、図5(a)のように、分割された維持電極5全体にわたって負の壁電荷が形成されているように、あらかじめ強い放電によって壁電荷を調整しておく。ここで走査電極に与える電圧をVset3、維持電極に印加している電圧をVeとする。この状態から、走査電極4に印加する電圧を徐々に低くしていき、−Vaまで変化させる。図5(b)に示すように、走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間が放電開始電圧を超えると、放電が開始する。また、同様に走査電極4と書き込み電極11との間でも同様の放電が起こる。走査電極4と維持電極5との間では、放電ギャップから徐々に外側に放電が広がる。それに伴い、放電ギャップに近い部分から壁電荷が調整されていく。なお、このとき、電圧の変化は10V/マイクロ秒以下程度にすることがこの「弱い放電」を安定に起こすために必要である。
【0061】
本発明のパネルの場合、維持電極5が放電ギャップに近い部分51と遠い部分52とに分割されているため、このような弱い放電は放電ギャップから遠い部分52に到りにくく、壁電荷の調整は、走査電極4と維持電極の放電ギャップに近い部分51との間のみで行うようにすることができる。すなわち、この一連の放電が終了した時点で、図5(c)に示すように走査電極4と書き込み電極11、走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間は放電開始電圧Vfに近い状態に調整されているが、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分52上には負の壁電荷が蓄積されたままとなる。
【0062】
この状態から、書き込み放電を起こすと、維持電極5の放電ギャップから遠い部分52は、負の壁電荷が蓄積されており、書き込み放電へは寄与できないため、書き込み放電は図5(d)に示すように走査電極4、書き込み電極11、維持電極5の放電ギャップに近い部分51の3電極間での放電となる。書き込み放電に関わる維持電極5の面積が小さくなるため、放電電流も小さくなる。また、放電の規模が小さくなり、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分52に負の壁電荷が存在することから、隣接する放電セル間を電子(負電荷)が移動することも抑えることができる。
【0063】
また、書き込み放電の結果の壁電荷の状態は、図5(e)に示すように、図2(d)と同様の状態であり、維持期間に移行することができる。
【0064】
本発明の駆動方法を実現する具体的な電圧波形の例を、図6(a)〜(d)に示す。
【0065】
本発明の駆動方法は、従来と同様、図11に示すように1フィールドをいくつかの明るさを表現するサブフィールドに分割し、その組み合わせによって階調を表現する。図6に示したのは、そのうちの1つのサブフィールドにおいて各電極に印加する電圧波形の例で、図6(a)〜(c)はそれぞれ走査電極4、維持電極5、書き込み電極11に印加する電圧波形を表す。図6(d)は、印加された電圧に対して起こる放電による紫外発光の強度を模式的に示す。
【0066】
図6に示す本発明の駆動方法の特徴は、2つのステップからなる初期化期間にある。
【0067】
時刻t1で示す初期化期間の第1ステップは、走査電極4と、維持電極5全体の間で強い放電を起こし、誘電体層6のうち走査電極4を覆う部分に正の壁電荷を、維持電極5を覆う部分に負の壁電荷を蓄積する。ここでのポイントは、走査電極4と維持電極5の全体に渡って壁電荷を蓄積し、図5(a)の状態にすることにある。
【0068】
次に、時刻t2で示す期間は、第2ステップへの移行期間である。走査電極4に正の、維持電極5には負の方向へ緩やかに変化する電圧波形を印加する。ここでは、次の第2ステップにおいて走査電極4を陰極、維持電極のうち放電ギャップに近い部分51を陽極とする放電を起こすことができるように電圧を調整する。t1の状態から、さらに走査電極4を負の方向、維持電極5を正の方向へ変化させれば、そのような放電は実現するが、駆動波形全体の振幅が大きくなってしまうため、一旦壁電荷を戻すのがここの役割である。このとき、上述したように、放電は一気にすべての領域で起こる訳でなく、放電ギャップに近い部分、すなわち走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間でのみ起こるため、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分52上の負の壁電荷は維持される。
【0069】
時刻t3に示す第2ステップにおいては、走査電極4に負の方向、維持電極5に正の方向へ変化する電圧波形を印加し、弱い放電を発生させる。これによって、走査電極4側が陰極、維持電極のうち放電ギャップに近い部分51が陽極となる極性で、弱い放電が起こる。このとき、これらの電極間は、ほぼ放電開始電圧に保たれたまま印加電圧が変化することになる。
【0070】
初期化期間が終わった時刻t4においては、図5(c)に示すように、走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間、および走査電極4と書き込み電極11との間がほぼ放電開始電圧に保たれ、このあと書き込み電極11に正の電圧が印加されれば、走査電極4と書き込み電極11との間で走査電極4側を陰極とする放電が開始し、その放電を引き金に走査電極4と維持電極のうち放電ギャップに近い部分51との間で、同じく走査電極4を陰極とする放電が起こる。このとき、維持電極のうち放電ギャップから遠い部分には、初期化期間の第1ステップにおいて負の壁電荷が蓄積されているので、陽極として働くのは維持電極のうち放電ギャップに近い部分のみである。これは、放電が大きな領域に広がりにくいため、放電電流が小さく、また、隣接セルに放電が広がらないため、クロストークなどの誤放電を起こしにくいことを表す。
【0071】
図6に示した駆動波形は、本発明の駆動方法を実現するための1つの例であり、特に緩やかに変化する傾斜波形の形状などについては、応用例が考えられる。
【0072】
例えば、t2において、緩やかに変化する波形を印加する場合、本来の意図から考えれば、図7(b)のように、走査電極4、維持電極5にそれぞれ緩やかに変化する波形を印加するべきであるが、実際には、両電極の間の電位差と壁電荷による電位差の和が、放電開始電圧を超えるまでは放電が開始しないため、図7(a)に示すように、ある程度の電圧は急激に電圧を変化させてもよい。また、その部分は、走査電極4側でも、図7(c)のように維持電極5側でもよい。
【0073】
さて、本発明においては、走査電極4と維持電極5とが非対称な形状となるが、走査電極4は維持電極5とは異なり、分割はしない。それは、書き込み放電を安定に起こすためである。
【0074】
これまで説明してきた通り、書き込み放電は、走査電極4と書き込み電極11との間で始まる。走査電極4と書き込み電極11との間の静電容量は、できるだけ大きい方が放電開始が安定する。つまり、走査電極4の面積は、あまり小さくならないほうがよい。図5(d)に示すように、走査電極4と書き込み電極11との間の面積は大きく確保されていた方が、電界が強くなるとともに、放電に到る際に、陰極として働く走査電極4から電子が供給される量が大きいため、放電を速やかに開始することができる。
【0075】
書き込み放電の際、走査電極4は陰極として働くので、走査電極4に向かって放電空間中を移動するのは、正イオンである。イオンは、電子に比べて移動度が低く、この移動はクロストークの原因になりにくいため、本発明のように分割することでクロストークを抑制する効果は、維持電極5側を分割することで十分得られる。
【0076】
(実施の形態2)
図8(a)、(b)に本発明の実施の形態2によるPDPの電極構造を示す。図8のように、維持電極5を、行方向に伸びたライン状の部分で放電ギャップから遠い部分52と、そこから放電ギャップの方向へ突出した放電ギャップに近い部分51A、51Bにより構成したものである。このような構造をとった場合、実施の形態1の構成と比較して、走査電極4と維持電極5の間で近接する部分の長さが短くなるため、走査電極4と維持電極5との間の静電容量が削減できるという利点がある。この静電容量は、走査電極4または維持電極5にパルスが印加されたとき、変位電流として流れる電流に影響する。駆動の方法や実施の効果などについては、実施の形態1と同様である。
【0077】
なお、図1では、隔壁8の構造はストライプ型の構造を示したが、本発明は隔壁の構造には依存しないため、井桁型の構造としてもよい。
【0078】
【発明の効果】
以上のように本発明は、走査電極と維持電極のうち、維持電極のみを放電ギャップに近い部分と遠い部分に分割し、走査電極は分割せず、さらにそれぞれの電極全体を放電させるステップと走査電極と維持電極のうち放電ギャップに近い部分のみで放電を起こすステップを備えた駆動方法で駆動することにより、クロストークを抑制し、書き込み放電の電流を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるプラズマディスプレイパネルの電極構造を示す正面図
【図2】プラズマディスプレイパネルにおける書き込み放電についての説明図
【図3】電極配列の種類を示す正面図
【図4】強い放電と弱い放電の説明図
【図5】本発明における放電の説明図
【図6】本発明の駆動方法を実現する電圧波形を示す波形図
【図7】図6の駆動波形の応用例を示す波形図
【図8】本発明の実施の形態2によるプラズマディスプレイパネルの電極構造を示す正面図
【図9】従来のパネルの構造を示す斜視図
【図10】従来のパネルの構造を示す正面図
【図11】プラズマディスプレイパネルのサブフィールドによる駆動方法を示す説明図
【図12】従来の駆動方法を示す波形図
【符号の説明】
1 パネル
2 表面基板
3 背面基板
4 走査電極
5 維持電極
6 誘電体層
7 保護層
8 隔壁
9 蛍光体層
10 誘電体層
11 書き込み電極
4A、5A 金属母線
4B、5B 透明電極
51 放電ギャップに近い部分
52 放電ギャップから遠い部分
Claims (4)
- 誘電体に覆われかつ行方向に伸びた走査電極および維持電極が放電ギャップを挟んで平行に形成された第1の基板と、この第1の基板に放電空間を挟んで対向配置されかつ列方向に伸びた書き込み電極と放電空間を形成するための隔壁および紫外線を可視光に変換する蛍光体が形成された第2の基板とを有し、前記維持電極は、前記放電ギャップに近い部分と、遠い部分に分割したことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
- 誘電体に覆われかつ行方向に伸びた走査電極および維持電極が放電ギャップを挟んで平行に形成された第1の基板と、この第1の基板に放電空間を挟んで対向配置されかつ列方向に伸びた書き込み電極と放電空間を形成するための隔壁および紫外線を可視光に変換する蛍光体が形成された第2の基板とを有し、前記維持電極は、行方向に伸びたライン状の部分と、そこから前記放電ギャップの方向へ突出した放電ギャップに近い部分とで構成したことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
- 請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネルを駆動するために初期化期間、書き込み期間、維持期間を設けた駆動方法であって、前記初期化期間には、前記走査電極と前記維持電極の全体を放電させる第1ステップと、前記走査電極と前記維持電極の放電ギャップに近い部分のみで放電を起こす第2ステップとを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
- 初期化期間の第2ステップは、所定の割合で電圧を変化させる電圧波形を走査電極または維持電極に印加することを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
Priority Applications (1)
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WO2011096191A1 (ja) * | 2010-02-08 | 2011-08-11 | パナソニック株式会社 | プラズマディスプレイパネル |
-
2003
- 2003-06-13 JP JP2003169092A patent/JP2005005188A/ja active Pending
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JPWO2011096191A1 (ja) * | 2010-02-08 | 2013-06-10 | パナソニック株式会社 | プラズマディスプレイパネル |
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