JP2005003469A - 気液分離器およびそれを用いた分析装置 - Google Patents

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Masahiko Endo
正彦 遠藤
Takuji Ikuta
卓司 生田
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Abstract

【課題】気液の分離を確実に行うことができる簡易かつコンパクトな気液分離器およびそれを用いた分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】気液が共存する試料を導入する入口、試料が通過する所定の容積を有する空間部、気体を主成分とする試料を排出する出口、及びドレンを排出するドレン出口を有する気液分離器であって、水の気化熱を利用して前記空間部を冷却することを特徴とする。ここで、前記空間部の周囲の一部あるいは全部を水分保持部材によって覆うこと、あるいは、前記空間部と該空間部に対して所定の方向から風を当てる手段との間に、水分保持部材を設けることが好適である。さらに、前記水分が、試料に共存する液状物あるいは前記ドレンの一部であることが好適である。また、本発明は、以上のような気液分離器を搭載する分析装置であって、試料の前処理を行うことが好適である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気液分離器に関するもので、例えば、燃焼排気ガス中の特定成分分析装置の前処理部等として特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、発生源用測定装置や環境大気用測定装置あるいは自動車排気ガス測定装置などの大気汚染測定装置においては、図5に示すように、試料採取点から分析計Aまでの間に試料流体中の除湿や除塵あるいは定流量化などを目的として、フィルタF、導管B、気液分離器1及び1’、切換弁V、圧力スイッチPs、吸引ポンプPなどが設けられるとともに、各部材を配管で接続した試料流路を形成している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このとき、試料中の凝縮水や飛沫などの水分は分析計等に種々の悪影響を及ぼすことから、気液分離器1によって確実に除去する必要がある。一般に気液分離器としては、図6に示すように、気液が共存する試料を導入する入口2、試料が通過する所定の容積を有する空間部3、気体を主成分とする試料を排出する出口4、及び分離液(ドレン)を排出するドレン出口5を有する構造体が用いられる(例えば非特許文献1参照)。しかし、水分の除去効率を上げるために、さらに外部から冷却風を当てたり、配管や気液分離器の取り付け位置等に対する工夫・提案がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−101721号公報
【非特許文献1】
日本工業規格 JIS K0095−1999
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の気液分離器は、常温で気液分離を行うために、完全に分離するためには空間部が所定の容積を有する必要があり、気液分離器が大きくなりがちである。また、屋外や炉壁に設置された装置では、夏季など高温状態で気液分離器が使用されることも多く、気液分離器を経由した後の試料が局部的に低温化されたり加圧状態になると露結することがある。さらに、気液分離器の容積を小さくするために、電子冷却器のように空間部を冷却する方法も考えられるが、基材が大掛かりになりコスト面での負担が大きくなる。また、急激な冷却は、試料中の水溶性成分の凝縮水への溶解による損失の増大を招き、測定精度の面からも好ましくない。つまり、通常、気液分離器によって常温より少し低い露点でドレンを分離し、その後電子冷却器や半透膜除湿器によってドライな状態で分析計に試料を導入することが好ましい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、気液の分離を確実に行うことができる簡易かつコンパクトな気液分離器およびそれを用いた分析装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、気液分離器について鋭意研究したところ、下記の気液分離器によって上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、気液が共存する試料を導入する入口、試料が通過する所定の容積を有する空間部、気体を主成分とする試料を排出する出口、及び分離液(ドレン)を排出するドレン出口を有する気液分離器であって、水の気化熱を利用して前記空間部を冷却することを特徴とする。こうした気液分離器によって、常温より少し低い温度でドレンを分離し、簡易かつコンパクトな構造で気液の分離を確実に行うことができる。
【0009】
ここで、前記空間部の周囲の一部あるいは全部を水分保持部材によって覆うことが好適である。水分保持部材から蒸散する水分の気化熱を利用することによって、常温より少し低い温度でドレンを分離し、簡易かつコンパクトな構造で気液の分離を確実に行うことができる。
【0010】
また、前記空間部と、該空間部に対して所定の方向から風を当てる手段との間に、水分保持部材を設けることが好適である。水分保持部材から蒸散する水分の気化熱によって生じる、常温より少し低温風によって気液分離器の空間部を冷却することができることから、簡易かつコンパクトな構造で気液の分離を確実に行うことができる。
【0011】
さらに、前記水分が、試料に共存する液状物あるいは前記ドレンの一部であることが好適である。当該あるいは他の気液分離器からの分離液を上記の空間部の冷却用として利用することによって、別途冷却水を準備する必要がなくなり、分離液の処理の負荷も低減することができる。
【0012】
また、本発明は、以上のような気液分離器を搭載する分析装置であって、試料の前処理を行うことが好適である。常温より少し低温で気液分離を行うことによって、試料の前処理初段の確実な気液分離を行い、後段での前処理を容易にすることができ、その結果測定精度の高い分析装置の供給が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
すなわち、本発明は、気液が共存する試料を導入する入口、試料が通過する所定の容積を有する空間部、気体を主成分とする試料を排出する出口、及びドレンを排出するドレン出口を有する気液分離器であって、水の気化熱を利用して前記空間部を冷却することを特徴とする。本発明者は、水の気化熱を利用して、直接的あるいは間接的に気液分離器を冷却することによって、気液の分離を確実に行うことができることを見出したもので、簡易かつコンパクトな構造で非常に効率のよい気液分離器を提供することができる。
【0014】
つまり、例えば、図1に示す本発明の第1の構成例のように、気液分離器1を冷却ファン7によって強制空冷を行うとともに、その中間部に水分を所定量保持することができる部材(以下「水分保持部材」という。)6を設けることによって、従来の冷却ファン7のみによる強制空冷では限界であった、周囲温度以下の露点での凝縮および気液分離が可能となったものである。
【0015】
具体的には、こうした構成によって、図2の実線に示すような風量に対する露点の変動特性を確保することができる。破線で示す冷却ファンのみによる強制空冷と比較し、所定の風量以上において、周囲温度以下の状態を作り出すことができることを表している。本発明者の知見として、例えば、周囲温度25℃、風量約1m /minの条件において、3〜5℃の露点低下の効果を確認している。
【0016】
気液分離器は、通常、金属、樹脂やガラスなどを素材とするが、腐蝕性のない試料の場合は熱伝導性の高いアルミニウム等が用いられ、腐蝕性の試料の場合には、ステンレス鋼やチタンなどの耐蝕性金属、塩化ビニルやポリエチレンなどの耐蝕性樹脂あるいは耐熱ガラスや強化ガラスなどが用いられる。また、内容積は極力小さいことが好ましく、試料の滞留による遅れのない構造が好適であるが、気液の分離には却って不利な条件となる場合があり、本発明の構成はこうした不利を十分カバーし、さらに効率的な気液の分離を可能にしたものである。
【0017】
ここで、前記空間部の周囲の一部あるいは全部を水分保持部材によって覆うことが好適である。水分保持部材から蒸散する水分の気化熱によって、部材表面の温度が周囲温度よりも低くすることができることを利用したもので、水分保持部材によって被覆された気液分離器の空間部の周囲の一部あるいは全部を直接冷却することができる。これによって、空間部における凝縮を促進し、簡易かつコンパクトな構造で、常温より少し低い露点でドレンを分離し気液の分離を確実に行うことができる。水分保持部材としては、通常、ポリエステル系、レーヨン、アクリル系やアクリレート系などの吸湿性繊維製の織布あるいは綿や紙を利用した網状体などを利用することが可能である。
【0018】
例えば、図3に示す本発明の第2の構成例のように、気液分離器1の空間部3を水分保持部材6によって覆う構成が挙げられる。気液分離器1に導入される試料の潜熱の一部が、空間部3の外壁を介して水分保持部材6に伝わり、水分保持部材6に保持されている水分の蒸発を促すとともに、蒸発に伴う気化熱として、さらに多くのエネルギーを試料から奪うことで、表面温度を常温以下にすることができる。このとき、蒸発を補助するために、ファンによって強制的に風流を形成することも有効である。あるいは、現場設置型の分析装置のように、装置の風袋を形成する架台に設けられている換気用のファンによる風流の利用し、その風路に、水分保持部材6によって覆われた気液分離器1を設けることも有効である。
【0019】
また、前記空間部と、該空間部に対して所定の方向から風を当てる手段との間に、水分保持部材を設けることが好適である。水分保持部材に風を当てることによって該部材から蒸散する水分の気化熱によって、部材表面の温度が周囲温度よりも低くするとともに、部材を通過する風の温度も低温化することができることを利用したもので、気液分離器の空間部を低温風によって間接的に冷却することができる。これによって、空間部における凝縮を促進し、簡易かつコンパクトな構造で、常温より少し低い露点でドレンを分離し気液の分離を確実に行うことができる。
【0020】
具体的には、上述の図1に示すような構成のように、気液分離器1の空間部3に対する強制冷却用の風路に水分保持部材6を設けることによって、効率よく低温風を作り出すことができる。従って、凝縮およびドレンの分離を従来に比べ大幅に小さな容積の空間部3において効率よく行うことが可能となる。このとき、試料中の水分等は、低温風によって冷却された空間部3において凝縮し、ドレンを形成して自然落下によってドレンポット8に溜まり、試料は該低温の飽和蒸気圧の気体として気液分離器1の出口4から導出される。また、水分保持部材6への水分給補は、別途工業用水や上水などを準備して行うことも可能であるが、後述する共存する液状物あるいは前記ドレンの一部を利用することも可能である。
【0021】
水分保持部材の水分として、試料に共存する液状物あるいはドレンの一部を利用する場合を、図4に示す構成例を参考に説明する。このように、気液分離器からの分離液を気液分離器の空間部の冷却用として利用することによって、別途冷却水を準備する必要がなくなり、分離液の処理の負荷も低減することができる。
【0022】
具体的には、図4に示すように、気液分離器1の空間部3に対する強制冷却用の風路に水分保持部材6を設けるとともに、水分保持部材6の一端がドレンポット8’内部のドレンに浸漬した構成が挙げられる。水分保持部材6内の水分は、冷却ファン7の風によって蒸散するとともにドレンポット8’内部のドレンの一部が吸い上げられて補給される。通常、試料が燃焼排ガスなどの場合には、試料中に10〜30%水分が存在するため補給量は無視できる程度であり、それ以下の場合には、こうした気液分離器1の機能の必要性は少ないことから、別途補給用水路を必要とすることは少ないが、むろん水の補給を行うことも可能であることはいうまでもない。(例えば、10%の水蒸気を含む試料を、10L/min処理すると、1日に約1.2Lの凝縮水が溜まる。)このとき、試料中の水分等は、強制冷却用の風路に水分保持部材6を設け低温風によって冷却された空間部3において凝縮し、ドレンを形成して自然落下によってドレンポット8に溜まり、試料は該低温の飽和蒸気圧の気体として気液分離器1の出口4から導出される。従って、凝縮およびドレンの分離を従来に比べ大幅に小さな容積の空間部3において効率よく行うことが可能となる。
【0023】
また、本発明は、以上のような気液分離器を搭載する分析装置であって、試料の前処理を行うことが好適である。燃焼排気ガス中の特定成分分析装置など、試料中の水分量が非常に多く、かつ、現場設置型の分析装置にあっては、特に夏季において気液分離が困難な状況が生じるおそれがある。本発明によれば、こうした条件下においても、常温より少し低温で気液分離を行うことによって、試料の前処理初段の確実な気液分離を行い、後段での前処理を容易にすることができ、その結果測定精度の高い分析装置の供給が可能となる。具体的には、例えば、上述の図5の気液分離器1に代え、本発明の構成例の気液分離器を適用する装置構成が挙げられる。
【0024】
以上は、主に燃焼排気ガス中の特定成分分析装置の前処理部などについて述べたが、同様の技術は、半導体等各種プロセス用分析装置などについても適用されるものであり、上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、水の気化熱を利用して気液分離器の空間部を冷却することによって、常温より少し低い温度でドレンを分離し、簡易かつコンパクトな構造で気液の分離を確実に行うことができる。
【0026】
ここで、前記空間部の周囲の一部あるいは全部を覆う水分保持部材から蒸散する水分の気化熱を利用することによって、常温より少し低い温度でドレンを分離し、簡易かつコンパクトな構造で気液の分離を確実に行うことができる。
【0027】
また、前記空間部と該空間部に対して所定の方向から風を当てる手段との間に水分保持部材を設け、水分保持部材から蒸散する水分の気化熱によって生じる低温風によって気液分離器の空間部を冷却することによって、簡易かつコンパクトな構造で気液の分離を確実に行うことができる。
【0028】
さらに、試料に共存する液状物あるいは前記ドレンの一部を上記の空間部の冷却用として利用することによって、別途冷却水を準備する必要がなくなり、分離液の処理の負荷も低減することができる。
【0029】
また、以上のような気液分離器を搭載する分析装置において、常温より少し低温で気液分離を行うことによって、試料の前処理初段の確実な気液分離を行い、後段での前処理を容易にすることができ、その結果測定精度の高い分析装置の供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の気液分離器の第1の構成例を示す説明図
【図2】本発明の気液分離器を利用した時の冷却ファンの風量と出口試料の露点との関係の一例を示す説明図
【図3】本発明の気液分離器の第2の構成例を示す説明図
【図4】本発明の気液分離器の第3の構成例を示す説明図
【図5】燃焼排気ガス中の特定成分分析装置の一例を示す説明図
【図6】従来の気液分離器の一例を示す説明図
【符号の説明】
1 気液分離器
3 空間部
6 水分保持部材
7 冷却ファン
8、8’ ドレンポット

Claims (5)

  1. 気液が共存する試料を導入する入口、試料が通過する所定の容積を有する空間部、気体を主成分とする試料を排出する出口、及び分離液(ドレン)を排出するドレン出口を有する気液分離器であって、水の気化熱を利用して前記空間部を冷却することを特徴とする気液分離器。
  2. 前記空間部の周囲の一部あるいは全部を水分保持部材によって覆うことを特徴とする請求項1に記載の気液分離器。
  3. 前記空間部と、該空間部に対して所定の方向から風を当てる手段との間に、水分保持部材を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の気液分離器。
  4. 前記水分が、試料に共存する液状物あるいは前記ドレンの一部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気液分離器。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の気液分離器を搭載し、試料の前処理を行うことを特徴とする分析装置。
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