JP2005002915A - 蒸発燃料処理装置のリーク診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】蒸発燃料処理装置のリーク診断において、診断時間の短縮を図りつつ、診断精度を維持できるようにする。
【解決手段】閉塞した診断区間をエアポンプで加圧し、該加圧による圧力上昇特性に基づいてリークの有無を診断する装置において、大径リーク穴診断用として比較的速い加圧速度を設定し、このときの圧力上昇から大径リーク穴の有無を診断する。大径リーク穴無しと判断されたときには、小径リーク穴診断用の比較的遅い加圧速度に切り換え、このときの圧力上昇から小径リーク穴の有無を診断する。
【選択図】 図2
【解決手段】閉塞した診断区間をエアポンプで加圧し、該加圧による圧力上昇特性に基づいてリークの有無を診断する装置において、大径リーク穴診断用として比較的速い加圧速度を設定し、このときの圧力上昇から大径リーク穴の有無を診断する。大径リーク穴無しと判断されたときには、小径リーク穴診断用の比較的遅い加圧速度に切り換え、このときの圧力上昇から小径リーク穴の有無を診断する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に供給する燃料を貯留する燃料タンクにて発生する燃料蒸気を捕集して処理する蒸発燃料処理装置におけるリークを診断する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、蒸発燃料処理装置のリーク診断装置としては、特許文献1に開示されるようなものがあった。
【0003】
このものは、診断対象とする閉塞区間に機関の吸気管負圧を導入して減圧し、このときの圧力変化量に基づいてリークの有無を診断する構成である。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−343927号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、加圧又は減圧による圧力変化からリーク診断を行なう場合、リーク穴の径が大きいと、圧力変化速度が遅くなるため、加圧又は減圧を継続させる診断時間が長くなる。
【0006】
しかし、診断時間が長くなると、温度条件の変化などの外乱によって診断精度が低下し、また、診断途中で診断条件を外れてしまい診断頻度が低下するなどの問題が発生するため、診断時間を短くすることが望まれる。
【0007】
ここで、加圧又は減圧の速度を速めて圧力変化速度が速くすれば、診断時間の短縮を図れるが、単に加圧又は減圧の速度を速めると、リーク穴が小さい場合に、リーク穴無しの場合に対する圧力変化特性の相違が小さくなり、診断精度が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、診断時間の短縮を図りつつ、診断精度を維持できる蒸発燃料処理装置のリーク診断装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1に係る発明は、診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう構成において、前記閉塞区間内の圧力変化特性に応じて前記加圧又は減圧の速度を変更する構成とした。
【0010】
かかる構成によると、閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化から、リーク穴による圧力漏れを診断するが、圧力変化特性、即ち、リーク穴径の大小による圧力変化特性の違いに応じて、加圧又は減圧の速度を変更する。
【0011】
従って、リーク穴が大きい場合に診断時間の短縮を図り、また、リーク穴が小さい場合に診断精度の向上を図ることが可能となる。
請求項2記載の発明では、診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう構成において、前記加圧又は減圧の速度として、診断する複数のリーク穴径それぞれに対応する複数の速度を予め設定し、診断するリーク穴径に応じて加圧又は減圧の速度を切り換える構成とした。
【0012】
かかる構成によると、診断する複数のリーク穴径それぞれに対応する加圧又は減圧速度が設定されるから、例えば診断対象のリーク穴が大きく、リークがあると圧力変化速度が遅くなるときには、加圧又は減圧速度を大きくして圧力変化速度がより大きくなるようにし、また、診断対象のリーク穴が小さく、リーク穴の有無による圧力変化速度の相違が小さくなる場合には、加圧又は減圧速度を小さくして圧力変化速度がより小さくし、圧力変化の検出分解能を確保する。
【0013】
従って、リーク穴が大きい場合の診断時間を短縮でき、また、リーク穴が小さい場合に精度良く診断することができる。
請求項3記載の発明では、診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう構成において、前記閉塞区間を第1速度で加圧又は減圧し、該加圧又は減圧時に所定の圧力変化が検出されなかったときに大径リーク穴有りを判定し、所定の圧力変化が検出されたときには、第1速度よりも遅い第2速度で前記閉塞区間を加圧又は減圧し、該加圧又は減圧時に所定の圧力変化が検出されなかったときに小径リーク穴有りの判定を行なう構成とした。
【0014】
かかる構成によると、閉塞区間を比較的速い第1速度で加圧又は減圧することで、大径リーク穴があっても圧力変化が大幅に遅くならないようにし、このときの圧力変化から大径リーク穴の有無を診断する。大径リーク穴が診断されなかったときには、続いて、閉塞区間を前記第1速度よりも遅い第2速度で加圧又は減圧することで圧力変化速度を遅くし、圧力変化の違いを高い分解能で検出できるようにする。
【0015】
従って、大径リーク穴を短い時間で診断できると共に、小径リーク穴を精度良く診断できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すシステム図である。
【0017】
図1において、内燃機関1の吸気系には、スロットル弁2が設けられていて、これにより吸入空気量が制御される。
また、スロットル弁2下流の吸気管3のマニホールド部には、気筒毎に電磁式の燃料噴射弁4が設けられている。
【0018】
前記燃料噴射弁4は、コントロールユニット20から機関回転に同期して出力される駆動パルス信号により開弁して、燃料噴射を行い、噴射された燃料は機関1の燃焼室内で燃焼する。
【0019】
また、蒸発燃料処理装置としては、燃料タンク5にて発生する蒸発燃料を蒸発燃料導入通路6により導いて一時的に吸着するキャニスタ7が設けられている。
前記キャニスタ7は、容器内に活性炭などの吸着材8を充填したものである。
【0020】
前記キャニスタ7には、新気導入口9が形成されると共に、パージ通路10が導出されている。
前記パージ通路10は、パージ制御弁11を介して、スロットル弁2下流の吸気管3に接続されている。
【0021】
前記パージ制御弁11は、コントロールユニット20から出力される信号により開弁するようになっている。
従って、機関1の停止中などに燃料タンク5にて発生した蒸発燃料は、蒸発燃料導入通路6によりキャニスタ7に導かれて、ここに吸着される。
【0022】
そして、機関1が始動されて、所定のパージ許可条件が成立すると、パージ制御弁11が開制御され、機関1の吸入負圧がキャニスタ7に作用する結果、新気導入口9から導入される新気によってキャニスタ7に吸着されていた蒸発燃料が脱離され、この脱離した蒸発燃料を含むパージガスがパージ通路10を通って吸気管3内に吸入され、この後、機関1の燃焼室内で燃焼処理される。
【0023】
蒸発燃料処理装置のリーク診断のために、キャニスタ7の新気導入口9側に、大気開放口12が設けられると共に、電動式エアポンプ13が設けられる。
そして、キャニスタ7の新気導入口9を、大気開放口12と、エアポンプ13の吐出口13aとに選択的に接続する電磁式の切換弁14が設けられる。
【0024】
また、エアポンプ13の吐出口13aから切換弁14をバイパスしてキャニスタ7の新気導入口9に至るバイパス通路15が設けられ、このバイパス通路15には基準口径(例えば0.5mm)を有する基準オリフィス16が設けられる。
【0025】
前記大気開放口12とエアポンプ13の吸入口13bとには、エアフィルタ17が設けられる。
尚、切換弁14はOFF状態で大気開放口12側、ON状態でエアポンプ13側に切換えられるようになっており、通常はOFFで大気開放口12側に切換えられ、キャニスタ7の新気導入口9を大気開放口12に連通させている。
【0026】
コントロールユニット20は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インターフェイス等を含んで構成されるマイクロコンピュータを備え、各種センサから信号が入力される。
【0027】
前記各種センサとしては、機関1の回転に同期してクランク角信号を出力するクランク角センサ21、吸入空気量を計測するエアフローメータ22、車速を検出する車速センサ23、燃料タンク内5の圧力を検出する圧力センサ24、燃料タンク5内の燃料残量を検出するタンク残量センサ(燃料計)25、エアポンプ13の作動電流値を検出する電流センサ26が設けられている。
【0028】
ここにおいて、コントロールユニット20は、機関運転条件に基づいて燃料噴射弁4の作動を制御し、また、機関運転条件に基づいてパージ制御弁11の作動を制御する。
【0029】
更に、前記エアポンプ13及び切換弁14の作動を制御して、蒸発燃料処理装置のリーク診断を行う。
次に、コントロールユニット20による蒸発燃料処理装置のリーク診断を、図2のフローチャートに従って説明する。
【0030】
ステップS1では、前記パージ制御弁11及び切換弁14を制御して、パージ制御弁11〜キャニスタ7〜燃料タンク5の診断対象区間を閉塞し、該閉塞区間をエアポンプ13で加圧できる状態とする。
【0031】
ステップS2では、所定の大径リーク穴の診断に適合された比較的大きな加圧速度を設定し、次のステップS3では、前記設定された加圧速度に見合う吐出量とすべくエアポンプ13を制御し、前記閉塞区間を加圧させる。
【0032】
ステップS4では、大径リーク穴の存在が認められない圧力上昇が得られたか否かを判別する。
前記圧力上昇の判断は、圧力が所定圧に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の圧力と、大径リーク穴診断用の閾値との比較によって行うことができる。
【0033】
また、エアポンプ13によって吐出された空気が、前記基準オリフィス16を通った後、切換弁14を逆流して大気開放口12に放出される状態としたときの、エアポンプ13の電流(負荷)に基づいて、電流に基づく大径リーク穴診断の閾値を設定し、電流が所定値に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の電流と、前記閾値との比較によって、大径リーク穴の有無を診断させることができる。
【0034】
ここで、リーク穴がないときに予測される圧力上昇に対して実際の圧力上昇速度が遅く、大径リーク穴の存在が推定される場合には、ステップS5へ進んで、大径リーク穴有りの判定を下し、これを警告する処理を行なう。
【0035】
大径リーク穴が存在する場合には、加圧による圧力上昇が遅くなり、大径リーク穴の存在を確認するには、長い加圧時間(診断時間)を要するが(図3参照)、本実施形態のように、加圧速度を予め大きく設定してあれば、短い時間で大径リーク穴の有無を診断させることができる。
【0036】
また、大径リーク穴の有無を診断する場合、たとえ加圧速度を速くしても、大径リーク穴の有無による圧力上昇特性の違いが明確であるため、診断精度が低下することもない。
【0037】
但し、加圧速度を大きく設定してあると、小径リーク穴の診断においては、圧力の上昇が速すぎ、小径リーク穴の有無による圧力変化に大きな差が出ないため、診断精度が低下する(図3参照)。
【0038】
そこで、ステップS4で、大径リーク穴が無いと判断され、小径リーク穴の有無を診断させるべく、ステップS6へ進むと、小径リーク穴の診断に適合された、前記ステップS2で設定される加圧速度(第1速度)よりも小さい加圧速度(第2速度)を設定する。
【0039】
そして、次のステップS7では、前記設定された加圧速度に見合う吐出量とすべくエアポンプ13を制御し、前記閉塞区間を加圧させる。
尚、小径リーク穴診断用の比較的遅い速度での加圧は、大径リーク穴診断用の比較的速い速度での加圧によって到達した圧力を初期圧として行なわせる構成の他、大径リーク穴診断用の比較的速い速度での加圧によって到達した圧力を、一旦大気圧にリセットしてから行なわせることができる。
【0040】
ステップS8では、小径リーク穴の存在が認められない圧力上昇が得られたか否かを判別する。
前記圧力上昇の判断は、圧力が所定圧に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の圧力と、小径リーク穴診断用の閾値との比較によって行うことができる。
【0041】
また、前記基準オリフィス16を通過させるときのエアポンプ13の電流(負荷)に基づいて小径リーク穴診断の閾値を設定し、電流が所定値に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の電流と、前記閾値との比較によって、小径リーク穴の有無を診断させることができる。
【0042】
ここで、圧力の上昇速度が、リーク穴が無い場合に比べて遅く、ステップS8で小径リーク穴の存在が推定されると、ステップS9へ進んで、小径リーク穴有りの判定を下し、これを警告する処理を行なう。
【0043】
リーク穴の径が小さい場合には、リーク穴が無い場合に比べて、圧力上昇速度の差が僅かとなるが、加圧速度を遅く設定してあるので、前記僅かの差を分解能良く判断することができ、小径リーク穴の有無を精度良く診断できる。
【0044】
一方、ステップS8で小径リーク穴の存在が推定される程の圧力上昇速度の低下が認められなかった場合には、ステップS10へ進んで、リーク穴無しの判定を下す。
【0045】
尚、上記実施形態では、リーク穴を大径リーク穴と小径リーク穴の2種類に判別する構成としたが、3種類以上に判別すべく、加圧速度を3段階以上に切り換える構成とすることができる。
【0046】
また、加圧による圧力上昇からリークを判断する代わりに減圧による圧力降下からリークを判断する構成として、減圧速度を、診断するリーク穴径毎に切り換える構成とすることができる。
【0047】
更に、診断するリーク穴径毎に加圧又は減圧速度を段階的に切り換えるのではなく、診断開始初期の比較的速い加圧又は減圧速度から徐々に速度を遅くする構成とし、そのときの加圧又は減圧速度と、実際の圧力変化速度との相関から、リーク穴径を区別して診断させることもできる。
【0048】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置において、
前記閉塞区間内をエアポンプで加圧する構成であり、該エアポンプの吐出量を制御することで加圧速度を変更することを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
【0049】
かかる構成によると、診断対象の閉塞区間にエアポンプから吐き出された空気を送り込むことで加圧し、このときの圧力上昇特性からリークを診断するが、加圧速度を、前記エアポンプの吐出量を制御することで変更する。
【0050】
従って、所望の速度での加圧を、任意のタイミングで容易に行なわせることができる。
(ロ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置において、
前記閉塞区間内をエアポンプで加圧する構成であり、該エアポンプからの吐き出し空気を基準口径のオリフィスに通過させたときの圧力状態を基準に、リーク診断の閾値を設定することを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
【0051】
かかる構成によると、エアポンプからの吐き出し空気を、基準口径のオリフィスに通過させることで、前記基準口径のリーク穴が存在する場合の圧力状態をシミュレーションでき、リーク診断の閾値を適切に設定して、精度の良い診断が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における機関のシステム構成図。
【図2】実施の形態におけるリーク診断を示すフローチャート。
【図3】リーク穴径による圧力上昇特性の違いを示す線図。
【符号の説明】
1…内燃機関,2…スロットル弁,3…吸気管,4…燃料噴射弁,5…燃料タンク,6…蒸発燃料導入通路,7…キャニスタ,8…吸着材,9…新気導入口,10…パージ通路,11…パージ制御弁,12…大気開放口,13…エアポンプ,14…切換弁,17…エアフィルタ,20…コントロールユニット,21…クランク角センサ,22…エアフローメータ,23…車速センサ,24…圧力センサ,25…タンク残量センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に供給する燃料を貯留する燃料タンクにて発生する燃料蒸気を捕集して処理する蒸発燃料処理装置におけるリークを診断する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、蒸発燃料処理装置のリーク診断装置としては、特許文献1に開示されるようなものがあった。
【0003】
このものは、診断対象とする閉塞区間に機関の吸気管負圧を導入して減圧し、このときの圧力変化量に基づいてリークの有無を診断する構成である。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−343927号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、加圧又は減圧による圧力変化からリーク診断を行なう場合、リーク穴の径が大きいと、圧力変化速度が遅くなるため、加圧又は減圧を継続させる診断時間が長くなる。
【0006】
しかし、診断時間が長くなると、温度条件の変化などの外乱によって診断精度が低下し、また、診断途中で診断条件を外れてしまい診断頻度が低下するなどの問題が発生するため、診断時間を短くすることが望まれる。
【0007】
ここで、加圧又は減圧の速度を速めて圧力変化速度が速くすれば、診断時間の短縮を図れるが、単に加圧又は減圧の速度を速めると、リーク穴が小さい場合に、リーク穴無しの場合に対する圧力変化特性の相違が小さくなり、診断精度が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、診断時間の短縮を図りつつ、診断精度を維持できる蒸発燃料処理装置のリーク診断装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1に係る発明は、診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう構成において、前記閉塞区間内の圧力変化特性に応じて前記加圧又は減圧の速度を変更する構成とした。
【0010】
かかる構成によると、閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化から、リーク穴による圧力漏れを診断するが、圧力変化特性、即ち、リーク穴径の大小による圧力変化特性の違いに応じて、加圧又は減圧の速度を変更する。
【0011】
従って、リーク穴が大きい場合に診断時間の短縮を図り、また、リーク穴が小さい場合に診断精度の向上を図ることが可能となる。
請求項2記載の発明では、診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう構成において、前記加圧又は減圧の速度として、診断する複数のリーク穴径それぞれに対応する複数の速度を予め設定し、診断するリーク穴径に応じて加圧又は減圧の速度を切り換える構成とした。
【0012】
かかる構成によると、診断する複数のリーク穴径それぞれに対応する加圧又は減圧速度が設定されるから、例えば診断対象のリーク穴が大きく、リークがあると圧力変化速度が遅くなるときには、加圧又は減圧速度を大きくして圧力変化速度がより大きくなるようにし、また、診断対象のリーク穴が小さく、リーク穴の有無による圧力変化速度の相違が小さくなる場合には、加圧又は減圧速度を小さくして圧力変化速度がより小さくし、圧力変化の検出分解能を確保する。
【0013】
従って、リーク穴が大きい場合の診断時間を短縮でき、また、リーク穴が小さい場合に精度良く診断することができる。
請求項3記載の発明では、診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう構成において、前記閉塞区間を第1速度で加圧又は減圧し、該加圧又は減圧時に所定の圧力変化が検出されなかったときに大径リーク穴有りを判定し、所定の圧力変化が検出されたときには、第1速度よりも遅い第2速度で前記閉塞区間を加圧又は減圧し、該加圧又は減圧時に所定の圧力変化が検出されなかったときに小径リーク穴有りの判定を行なう構成とした。
【0014】
かかる構成によると、閉塞区間を比較的速い第1速度で加圧又は減圧することで、大径リーク穴があっても圧力変化が大幅に遅くならないようにし、このときの圧力変化から大径リーク穴の有無を診断する。大径リーク穴が診断されなかったときには、続いて、閉塞区間を前記第1速度よりも遅い第2速度で加圧又は減圧することで圧力変化速度を遅くし、圧力変化の違いを高い分解能で検出できるようにする。
【0015】
従って、大径リーク穴を短い時間で診断できると共に、小径リーク穴を精度良く診断できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すシステム図である。
【0017】
図1において、内燃機関1の吸気系には、スロットル弁2が設けられていて、これにより吸入空気量が制御される。
また、スロットル弁2下流の吸気管3のマニホールド部には、気筒毎に電磁式の燃料噴射弁4が設けられている。
【0018】
前記燃料噴射弁4は、コントロールユニット20から機関回転に同期して出力される駆動パルス信号により開弁して、燃料噴射を行い、噴射された燃料は機関1の燃焼室内で燃焼する。
【0019】
また、蒸発燃料処理装置としては、燃料タンク5にて発生する蒸発燃料を蒸発燃料導入通路6により導いて一時的に吸着するキャニスタ7が設けられている。
前記キャニスタ7は、容器内に活性炭などの吸着材8を充填したものである。
【0020】
前記キャニスタ7には、新気導入口9が形成されると共に、パージ通路10が導出されている。
前記パージ通路10は、パージ制御弁11を介して、スロットル弁2下流の吸気管3に接続されている。
【0021】
前記パージ制御弁11は、コントロールユニット20から出力される信号により開弁するようになっている。
従って、機関1の停止中などに燃料タンク5にて発生した蒸発燃料は、蒸発燃料導入通路6によりキャニスタ7に導かれて、ここに吸着される。
【0022】
そして、機関1が始動されて、所定のパージ許可条件が成立すると、パージ制御弁11が開制御され、機関1の吸入負圧がキャニスタ7に作用する結果、新気導入口9から導入される新気によってキャニスタ7に吸着されていた蒸発燃料が脱離され、この脱離した蒸発燃料を含むパージガスがパージ通路10を通って吸気管3内に吸入され、この後、機関1の燃焼室内で燃焼処理される。
【0023】
蒸発燃料処理装置のリーク診断のために、キャニスタ7の新気導入口9側に、大気開放口12が設けられると共に、電動式エアポンプ13が設けられる。
そして、キャニスタ7の新気導入口9を、大気開放口12と、エアポンプ13の吐出口13aとに選択的に接続する電磁式の切換弁14が設けられる。
【0024】
また、エアポンプ13の吐出口13aから切換弁14をバイパスしてキャニスタ7の新気導入口9に至るバイパス通路15が設けられ、このバイパス通路15には基準口径(例えば0.5mm)を有する基準オリフィス16が設けられる。
【0025】
前記大気開放口12とエアポンプ13の吸入口13bとには、エアフィルタ17が設けられる。
尚、切換弁14はOFF状態で大気開放口12側、ON状態でエアポンプ13側に切換えられるようになっており、通常はOFFで大気開放口12側に切換えられ、キャニスタ7の新気導入口9を大気開放口12に連通させている。
【0026】
コントロールユニット20は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インターフェイス等を含んで構成されるマイクロコンピュータを備え、各種センサから信号が入力される。
【0027】
前記各種センサとしては、機関1の回転に同期してクランク角信号を出力するクランク角センサ21、吸入空気量を計測するエアフローメータ22、車速を検出する車速センサ23、燃料タンク内5の圧力を検出する圧力センサ24、燃料タンク5内の燃料残量を検出するタンク残量センサ(燃料計)25、エアポンプ13の作動電流値を検出する電流センサ26が設けられている。
【0028】
ここにおいて、コントロールユニット20は、機関運転条件に基づいて燃料噴射弁4の作動を制御し、また、機関運転条件に基づいてパージ制御弁11の作動を制御する。
【0029】
更に、前記エアポンプ13及び切換弁14の作動を制御して、蒸発燃料処理装置のリーク診断を行う。
次に、コントロールユニット20による蒸発燃料処理装置のリーク診断を、図2のフローチャートに従って説明する。
【0030】
ステップS1では、前記パージ制御弁11及び切換弁14を制御して、パージ制御弁11〜キャニスタ7〜燃料タンク5の診断対象区間を閉塞し、該閉塞区間をエアポンプ13で加圧できる状態とする。
【0031】
ステップS2では、所定の大径リーク穴の診断に適合された比較的大きな加圧速度を設定し、次のステップS3では、前記設定された加圧速度に見合う吐出量とすべくエアポンプ13を制御し、前記閉塞区間を加圧させる。
【0032】
ステップS4では、大径リーク穴の存在が認められない圧力上昇が得られたか否かを判別する。
前記圧力上昇の判断は、圧力が所定圧に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の圧力と、大径リーク穴診断用の閾値との比較によって行うことができる。
【0033】
また、エアポンプ13によって吐出された空気が、前記基準オリフィス16を通った後、切換弁14を逆流して大気開放口12に放出される状態としたときの、エアポンプ13の電流(負荷)に基づいて、電流に基づく大径リーク穴診断の閾値を設定し、電流が所定値に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の電流と、前記閾値との比較によって、大径リーク穴の有無を診断させることができる。
【0034】
ここで、リーク穴がないときに予測される圧力上昇に対して実際の圧力上昇速度が遅く、大径リーク穴の存在が推定される場合には、ステップS5へ進んで、大径リーク穴有りの判定を下し、これを警告する処理を行なう。
【0035】
大径リーク穴が存在する場合には、加圧による圧力上昇が遅くなり、大径リーク穴の存在を確認するには、長い加圧時間(診断時間)を要するが(図3参照)、本実施形態のように、加圧速度を予め大きく設定してあれば、短い時間で大径リーク穴の有無を診断させることができる。
【0036】
また、大径リーク穴の有無を診断する場合、たとえ加圧速度を速くしても、大径リーク穴の有無による圧力上昇特性の違いが明確であるため、診断精度が低下することもない。
【0037】
但し、加圧速度を大きく設定してあると、小径リーク穴の診断においては、圧力の上昇が速すぎ、小径リーク穴の有無による圧力変化に大きな差が出ないため、診断精度が低下する(図3参照)。
【0038】
そこで、ステップS4で、大径リーク穴が無いと判断され、小径リーク穴の有無を診断させるべく、ステップS6へ進むと、小径リーク穴の診断に適合された、前記ステップS2で設定される加圧速度(第1速度)よりも小さい加圧速度(第2速度)を設定する。
【0039】
そして、次のステップS7では、前記設定された加圧速度に見合う吐出量とすべくエアポンプ13を制御し、前記閉塞区間を加圧させる。
尚、小径リーク穴診断用の比較的遅い速度での加圧は、大径リーク穴診断用の比較的速い速度での加圧によって到達した圧力を初期圧として行なわせる構成の他、大径リーク穴診断用の比較的速い速度での加圧によって到達した圧力を、一旦大気圧にリセットしてから行なわせることができる。
【0040】
ステップS8では、小径リーク穴の存在が認められない圧力上昇が得られたか否かを判別する。
前記圧力上昇の判断は、圧力が所定圧に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の圧力と、小径リーク穴診断用の閾値との比較によって行うことができる。
【0041】
また、前記基準オリフィス16を通過させるときのエアポンプ13の電流(負荷)に基づいて小径リーク穴診断の閾値を設定し、電流が所定値に到達するまでの時間、又は、所定時間が経過した時点の電流と、前記閾値との比較によって、小径リーク穴の有無を診断させることができる。
【0042】
ここで、圧力の上昇速度が、リーク穴が無い場合に比べて遅く、ステップS8で小径リーク穴の存在が推定されると、ステップS9へ進んで、小径リーク穴有りの判定を下し、これを警告する処理を行なう。
【0043】
リーク穴の径が小さい場合には、リーク穴が無い場合に比べて、圧力上昇速度の差が僅かとなるが、加圧速度を遅く設定してあるので、前記僅かの差を分解能良く判断することができ、小径リーク穴の有無を精度良く診断できる。
【0044】
一方、ステップS8で小径リーク穴の存在が推定される程の圧力上昇速度の低下が認められなかった場合には、ステップS10へ進んで、リーク穴無しの判定を下す。
【0045】
尚、上記実施形態では、リーク穴を大径リーク穴と小径リーク穴の2種類に判別する構成としたが、3種類以上に判別すべく、加圧速度を3段階以上に切り換える構成とすることができる。
【0046】
また、加圧による圧力上昇からリークを判断する代わりに減圧による圧力降下からリークを判断する構成として、減圧速度を、診断するリーク穴径毎に切り換える構成とすることができる。
【0047】
更に、診断するリーク穴径毎に加圧又は減圧速度を段階的に切り換えるのではなく、診断開始初期の比較的速い加圧又は減圧速度から徐々に速度を遅くする構成とし、そのときの加圧又は減圧速度と、実際の圧力変化速度との相関から、リーク穴径を区別して診断させることもできる。
【0048】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置において、
前記閉塞区間内をエアポンプで加圧する構成であり、該エアポンプの吐出量を制御することで加圧速度を変更することを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
【0049】
かかる構成によると、診断対象の閉塞区間にエアポンプから吐き出された空気を送り込むことで加圧し、このときの圧力上昇特性からリークを診断するが、加圧速度を、前記エアポンプの吐出量を制御することで変更する。
【0050】
従って、所望の速度での加圧を、任意のタイミングで容易に行なわせることができる。
(ロ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の蒸発燃料処理装置のリーク診断装置において、
前記閉塞区間内をエアポンプで加圧する構成であり、該エアポンプからの吐き出し空気を基準口径のオリフィスに通過させたときの圧力状態を基準に、リーク診断の閾値を設定することを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
【0051】
かかる構成によると、エアポンプからの吐き出し空気を、基準口径のオリフィスに通過させることで、前記基準口径のリーク穴が存在する場合の圧力状態をシミュレーションでき、リーク診断の閾値を適切に設定して、精度の良い診断が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における機関のシステム構成図。
【図2】実施の形態におけるリーク診断を示すフローチャート。
【図3】リーク穴径による圧力上昇特性の違いを示す線図。
【符号の説明】
1…内燃機関,2…スロットル弁,3…吸気管,4…燃料噴射弁,5…燃料タンク,6…蒸発燃料導入通路,7…キャニスタ,8…吸着材,9…新気導入口,10…パージ通路,11…パージ制御弁,12…大気開放口,13…エアポンプ,14…切換弁,17…エアフィルタ,20…コントロールユニット,21…クランク角センサ,22…エアフローメータ,23…車速センサ,24…圧力センサ,25…タンク残量センサ
Claims (3)
- 診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう蒸発燃料処理装置のリーク診断装置であって、
前記閉塞区間内の圧力変化特性に応じて前記加圧又は減圧の速度を変更することを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。 - 診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう蒸発燃料処理装置のリーク診断装置であって、
前記加圧又は減圧の速度として、診断する複数のリーク穴径それぞれに対応する複数の速度を予め設定し、診断するリーク穴径に応じて加圧又は減圧の速度を切り換えることを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。 - 診断対象の区間を閉塞し、該閉塞区間内を加圧又は減圧したときの圧力変化に基づいてリーク診断を行なう蒸発燃料処理装置のリーク診断装置であって、
前記閉塞区間を第1速度で加圧又は減圧し、該加圧又は減圧時に所定の圧力変化が検出されなかったときに大径リーク穴有りを判定し、所定の圧力変化が検出されたときには、第1速度よりも遅い第2速度で前記閉塞区間を加圧又は減圧し、該加圧又は減圧時に所定の圧力変化が検出されなかったときに小径リーク穴有りの判定を行なうことを特徴とする蒸発燃料処理装置のリーク診断装置。
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