JP2005002027A - 異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート化合物 - Google Patents
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Abstract
【課題】二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、異種元素を導入した化合物を提供する。
【解決手段】ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン、バナジウム、およびニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、ポリ原子以外の二種類の元素(B)が欠損部位に組み込まれていることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
【選択図】 なし
【解決手段】ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン、バナジウム、およびニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、ポリ原子以外の二種類の元素(B)が欠損部位に組み込まれていることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート化合物に関する。より詳しくは、ポリ原子と異なる二種類の元素を欠損部位に組み込んだヘテロポリオキソメタレート化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヘテロ原子を中心とし、ポリ原子がヘテロ原子に酸素を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレートが、酸塩基反応や酸化反応の触媒として使用できることが広く知られている。特に環境問題に対する配慮から、酸化反応においては、近年最もクリーンで原子効率の高い分子状酸素や過酸化水素を酸化剤として用いた研究が活発になされ、結晶構造中にあるべき原子が一つないしは三つ欠けている欠損構造を有し、その部位に一種類以上の金属元素を含有するもの、すなわちポリ原子が一種類以上の他の金属元素により一つもしくは三つ置換されたヘテロポリオキソメタレートが触媒活性を示すことが広く知られている。しかしながら、これらは工業的レベルでの酸化反応触媒として性能の面で好適に適用できるものではなかった。
【0003】
一方、二欠損構造部位に単一元素を組み込んだ二置換型ポリオキソメタレートが開示されている。二欠損型ポリオキソメタレートに、2個の鉄を導入し,エチレン性二重結合を酸素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。ターンオーバー数は高いものの、非常に長い反応時間を要することから、工業レベルでエポキシ化合物を製造することができるようにするための工夫の余地があった。
【0004】
二欠損型ポリオキソメタレートに、バナジウム、鉄、マンガン、銅、モリブデン、パラジウム、ニッケル、コバルト、クロム、銀、金、亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、ルテニウム、ランタニド、チタン、レニウム、ロジウム、イリジウムの群から選ばれる一種類の元素を欠損部位に導入し、エチレン性二重結合を過酸化水素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、異種元素で置換されたヘテロポリオキソメタレートの合成例は開示されていない。
【0005】
二欠損型ポリオキソメタレートに、希土類、4族、5族、6族、7族、および9、10族のニッケル、パラジウム、イリジウム、白金からなる群から選ばれた元素を欠損部位に導入し、エチレン性二重結合を酸素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、目的のエポキシ化合物の収率および選択率は低く、工業レベルでエポキシ化合物を製造することができるようにするための工夫の余地があった。また、異種元素で置換されたヘテロポリオキソメタレートの合成例は開示されていない。
【非特許文献1】
Y.Nishiyama、Y.Nakagawa、N.Mizuno、「アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angew.Chem.,Int.Ed.)」(独国)、2001年、第40巻、p.3639
【特許文献1】
国際公開第02/072257号(2002)
【特許文献2】
日本国特許公開第2003−64007
このように、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートの欠損部位に同種の元素は比較的容易に導入することができるものの、異なる元素を欠損部位に一つずつ導入する技術はその困難さから未だ確立されておらず、また同種元素置換型ヘテロポリオキソメタレートは、酸化反応における触媒としての活性も不十分であるため、酸化反応活性により優れたヘテロポリオキソメタレート化合物が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、酸化反応に好適に適用することができる触媒として、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートの欠損部位に異種元素を導入した化合物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有機化合物を酸化剤により酸化させて含酸素有機化合物を製造するための触媒について種々検討するに際し、工業的に有用なヘテロポリオキソメタレート化合物に着目し鋭意検討を重ねた結果、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートの欠損部位に、ポリ原子と異なる二種類の元素を導入できることを見出した。また、このような異種元素を導入した該ヘテロポリオキソメタレート化合物が、同種元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物に比較して、上記酸化反応における触媒としての作用効果をより十分に発揮し、上記課題を見事に解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、モリブデン、タングステン、バナジウムおよびニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種以上からなるポリ原子を有する二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、ポリ原子と異なり、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、および15族からなる群より選ばれる二種類の元素(B)を必須とするヘテロポリオキソメタレート化合物である。
【0009】
本発明はまた、前記(A)の欠損構造部位に前記元素(B)を組み込む際に、pHが0.5〜7.5に設定された溶媒に(A)および(B)を共存させることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であり、該ヘテロポリオキソメタレート化合物の酸化反応用触媒としての使用方法でもある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、二種類の元素(B)とを必須として構成される異種元素置換ヘテロポリオキソメタレートを酸化反応用触媒として用いる場合、気相や液相での酸化反応に好適に適用されることになる
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、結晶構造中で、あるべきポリ原子が二つ欠けている二欠損構造部位を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンであって、ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン・タングステン・バナジウム・およびニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種以上のものである。このようなヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、ヘテロ原子に酸素を介してポリ原子が10個配位した結晶構造を有するものである。
【0011】
本発明におけるヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、下記一般式(1);
[QM10Oj]k− (1)
(式(1)中、Qは珪素もしくはリン原子を表す。Mはポリ原子を表す。jとkは正の整数であり、QとMの価数によって決まる。)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。より好ましくは、Qが珪素であり、Mがタングステンであるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンである。
【0012】
上記必須元素(B)としては、酸化反応触媒として適用される反応の種類や、用いる酸化剤の種類等に応じて適宜選択すればよいが、周期律表3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、および15族の元素の群から選ばれる二種類の元素が好ましい。より好ましくは、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、および11族の元素の群より選ばれる少なくとも二種類の元素である。更に好ましくは、チタン、バナジウム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、銅、銀、金から選ばれる二種類の元素である。また、異種元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物の混合物を合成する場合には、上記元素(B)より選ばれる少なくとも二種類以上の元素を使用することになる。
【0013】
二種類の上記元素(B)を二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に導入することにより得られたヘテロポリオキソメタレート化合物は、(1)酸化還元性(2)電気陰性度(3)磁性(4)双極子モーメント(5)酸塩基性 等の性質が、従来の単一の元素(B)を欠損部に導入したヘテロポリオキソメタレート化合物と比較して大きく異なることが挙げられ、その結果、酸化反応における触媒活性の改善が期待されることになる。
【0014】
ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)への二種類の上記元素(B)の導入は、pHが0.5〜7.5に設定されたヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の溶媒中に、元素(B)を含む塩、もしくはその塩を溶かした溶液を添加して行うことになり、二欠損構造部位に異種元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物の混合物を合成する場合には、二種類以上の元素(B)を含む塩、もしくはその塩を溶かした溶液を使用することになる。元素(B)の添加に伴いpHが変化する場合には、酸もしくは塩基により適宜最適値に設定することもできる。
【0015】
二種類以上の元素(B)を含む塩を添加する順序としては、全て一緒に添加しても良いし、別々に添加しても良い。別々に添加する場合には、その添加順序を選ぶことにより、ヘテロポリオキソメタレート化合物の組成を設計することがより簡便になる。
【0016】
上記元素(B)を含む塩としては、無機塩でも有機塩でも良いが、中でも酢酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、プロトン塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩が好適である。また、導入する元素(B)を二種類以上含む多核錯体のような複合型の塩を用いることも可能である。
【0017】
合成に使用する元素(B)を含む塩のモル量としては、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1モルに対して、0.0001モル以上であることが好ましい。より好ましくは0.001モル以上であり、更に好ましくは、0.01モル以上である。また、3モル以下であることが好ましい。より好ましくは2モル以下であり、更に好ましくは、1.9モル以下である。
【0018】
上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、水や含水有機溶媒および有機溶媒を用いることができる。有機溶媒は水に溶解するものでも溶解しないものでも良いが、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、クロロホルムが好適である。
【0019】
また上記溶媒の体積は、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1ミリモルに対して、0.5mL以上であることが好ましい。より好ましくは1mL以上であり、更に好ましくは1.5mL以上である。また、300mL以下であることが好ましい。より好ましくは200mL以下であり、更に好ましくは、180mL以下である。
【0020】
上記pHは元素(B)の種類や組み合わせ等により適宜設定することになるが、より好ましいpHは、0.8〜7.0である。pHの測定には、HORIBA製pHメーターF−22およびHORIBA製電極6366−10Dを使用する。上記pHは、水もしくは含水有機溶媒を溶媒として用いる場合には、その液温が25℃の時の値であり、また有機溶媒を溶媒として用いる場合には、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A) 1ミリモルを共存させた調製有機溶媒に水を1mL添加した時の、その液温が25℃の時の値である。
【0021】
本発明の化合物における元素(B)の合計含有量としては、触媒として用いる酸化反応の種類によって適宜設定することになるが、化合物中のヘテロ原子1個に対して、零個を超えることが好ましい。より好ましくは、0.0001個以上であり、更に好ましくは、0.01個以上である。また、5個以下であることが好ましい。より好ましくは3個以下であり、更に好ましくは、2個以下である。
【0022】
本発明の化合物における元素(B)とヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)との形態としては、元素(B)がヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の二欠損部位に組み込まれて存在することになる。この場合、元素(B)が互いに隣接していることが好ましい。元素(B)が互いに隣接する異性体としては、α、β、γ、δ、ε体等が存在するが、α、β体は角を共有した異性体である。より好ましくは、二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンの骨格中に元素(B)が陵を共有して組み込まれる形態であり、それはγ、δ、ε体である。この中でももっとも好ましくはγ体である。このようなヘテロポリオキソメタレート化合物の構造は、X線結晶構造解析、元素分析、UVやFT−IR分光測定等から決定または推定される。
【0023】
上記化合物は塩を形成していてもよく、ヘテロポリオキソメタレートアニオンの塩を形成する対カチオンとしては、例えば、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類カチオン、亜鉛イオン、ランタニドイオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、錫イオン、鉛イオン、鉄イオンや、第四級アンモニウム塩(アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩)、第四級ホスホニウム塩(テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩)等の有機カチオンが好適である。カチオンは一種類または二種類以上用いることができる。
【0024】
本発明の化合物を酸化反応触媒として使用する場合の使用量としては、触媒を用いる反応の種類等により適宜設定することになるが、例えば、反応基質に対するモル比(基質のモル数/触媒のモル数)が100000/1以下となるようにするのが好ましく、より好ましくは、10000/1以下である。また1/10以上にすることが好ましく、より好ましくは1/1以上である。また、触媒の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0025】
なお本発明の化合物は、上述した二欠損構造部位を有し、ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、ポリ原子を有するヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、元素(B)とを必須成分とし、これを主成分とすることが好ましいが、本発明の作用効果を奏する限り、触媒調製過程で生じる不純物や他の成分を含有していてもよい。
【0026】
本発明の酸化反応用触媒の使用形態としては、気相反応で用いる場合、触媒自体を固相として反応を行う形態、触媒を担体に担持して反応を行う形態が可能である。触媒担体としては、各種イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、チタニア、シルコニア、酸化錫や他の酸化物等の一般的に気−固反応に使用される担体を用いることができる。
【0027】
触媒自体を固体として使用する場合、好ましい対カチオンは、プロトン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ランタニドイオン、鉄イオン、銅イオン、パラジウムイオン、白金イオン、コバルトイオン、ニッケルイオンである。
【0028】
液相反応で用いる場合には、触媒を溶解させて均一系で反応させる形態、触媒を溶媒に溶解させずに液相に懸濁させて反応を行う形態が挙げられる。触媒を固相として反応を行うことも可能である。この時、対カチオンを変更することで触媒自体を固体として使用することができ、反応後の触媒と生成物の分離が容易になる。
【0029】
また、触媒を担体に担持することによっても、触媒を固相として使用することができる。触媒担体としては、各種イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、チタニア、シルコニア、酸化錫や他の酸化物等の一般的に不均一系反応に使用される担体を用いることができる。触媒自体を固体として使用する場合、好ましい対カチオンは、プロトン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、ランタニドイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、パラジウムイオン、白金イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、テトラブチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリセチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩である。
【0030】
本発明の異種元素置換ヘテロポリオキソメタレートは、種々の酸化反応に触媒として適用することができるものであるが、中でも酸化反応を液相で行う際に好適に適用することができるものである。上記酸化反応の具体例としては特に限定されず、例えば、(1)不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化)、(2)水酸基の酸化、(3)ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子等の酸化)、(4)飽和炭化水素部位の酸化、(5)芳香環の酸化、(6)これら(1)〜(5)以外の酸化反応等が挙げられる。このような酸化反応により被酸化性官能基が酸化され、酸化された有機化合物が製造されることになる。
【0031】
上記(1)不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化)において、アルケンの不飽和二重結合の酸化としては、例えば、エポキシ化、ワッカー酸化、アルケンからジヒドロキシ化合物が生成する反応、アルケンからα−ヒドロキシケトンが生成する反応、アルケン開裂、酸化的開裂、アンモ酸化等が挙げられる。またアルキンの不飽和三重結合の酸化としては、例えば、アルキンからα,β−エポキシケトンが生成する反応、アルキンからジケトンが生成する反応等が挙げられる。
【0032】
上記(2)水酸基の酸化としては、例えば、カルボニル化合物が生成する反応が挙げられ、具体的には第一級アルコールからアルデヒドやカルボン酸が生成する反応、第二級アルコールからケトンが生成する反応等が挙げられる。
【0033】
上記(3)ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子等の酸化)において、硫黄原子の酸化としては、例えば、スルフィドからスルホキシドやスルホンが生成する反応、チオールからジスルフィドが生成する反応等が挙げられる。また窒素原子の酸化としては、例えば、第一級アミンからヒドロキシルアミンが生成する反応、ヒドロキシルアミンからニトロソ化合物またはアゾキシ化合物が生成する反応、ニトロソ化合物からオキシムまたはニトロ化合物が生成する反応、第二級アミンからヒドロキシルアミンが生成する反応、ヒドロキシルアミンからナイトロンが生成する反応、第三級アミンからアミンオキシドが生成する反応等が挙げられる。
【0034】
上記(4)飽和炭化水素部位の酸化としては、例えば、アルカンに水酸基、ヒドロペルオキシ基、アルキルペルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基が導入される反応、アリル位酸化、芳香族側鎖酸化、アンモ酸化等が挙げられる。
【0035】
上記(5)芳香環の酸化としては、例えば、芳香環に水酸基が導入される反応等が挙げられる。
【0036】
上記(6)これら(1)〜(5)以外の酸化反応等としては、例えば、バイヤービリガー酸化、酸化的カップリング、酸化的脱水素等が挙げられる。
【0037】
本発明の異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート触媒は、上述した中でも、液相での不飽和二重結合の酸化や飽和炭化水素部位の酸化に好適である。以下では、本発明の好ましい実施形態として上記触媒を用い、飽和炭化水素部位を酸化剤により酸化してアルコールおよびカルボニル化合物の製造を行う場合における反応基質、酸化剤、製造条件等について説明する。
【0038】
本発明において使用する飽和炭化水素部位を持つ反応基質としては、非環式であっても環式有機化合物であってもよく、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、アダマンタン等のアルカン類;プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、イソプレン、ジイソブチレン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、プロピレンのトリマーおよびテトラマー類、1,3−ブタジエン等の末端にエチレン性二重結合を有するアルケン;2−ブテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン等の分子内部にエチレン性二重結合を有するアルケン;シクロペンテン、シクロヘキセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロデカトリエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の環式アルケン;トルエン、エチルトルエン、ジエチルトルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、イソプロピルエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、プロピルベンゼン、4,4’−ジメチルビフェニル、4−t−ブチル−1−メチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン等の側鎖を持つ芳香族化合物が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、アダマンタン、炭素数3〜12のアルケン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレンが好適である。基質の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0040】
上記飽和炭化水素部位を持つ化合物はまた、例えば、−CHO、−COOH、−CN、−COOR、−OR(Rは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリルアルキル置換基を表す)等の官能基や、アリール基、アリルアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボニル基、水酸基等を有していても良い。
【0041】
このような化合物としては、例えば、アリルメチルエーテル、アリルビニルエーテル、ジアリルエーテル、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0042】
上記酸化反応における酸化剤としては、例えば、酸素イオンや酸素ラジカル、ペルオキシドやスーパーペルオキシドを生成しうるものを用いることができ、例えば、分子状酸素や過酸化水素、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、過酢酸等の有機過酸化物、酸素と水素の混合ガス、酸素と水素と窒素の混合ガス、一酸化二窒素、ヨードシルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、分子状酸素や過酸化水素が好適である。
【0043】
分子状酸素を酸化剤として使用する場合、酸素圧力は0.0001atm以上150atm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01atm以上50atm以下である。過酸化水素を酸化剤として使用する場合、過酸化水素の使用形態としては、実用的には0.01〜70質量%の水溶液、アルコール類の溶液が好適であるが、100%の過酸化水素も使用可能である。使用量としては、反応基質と過酸化水素のモル比(反応基質のモル数/過酸化水素のモル数)が100/1以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは10/1以下である。また、1/100以上となるようにすることが好ましく、より好ましくは、1/50以上である。
【0044】
上記ヘテロポリオキソメタレート触媒の使用量としては、反応基質100重量部に対して、0.0001重量部以上とすることが好ましく、また、3000重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.01重量部以上であり、また、1500重量部以下である。また、触媒の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0045】
上記反応方法としては、飽和炭化水素部位を持つ化合物および酸化剤に酸化反応用触媒を接触させることにより反応を行うことが好ましい。気相反応もしくは液相反応のいずれの反応方法にも、本発明の酸化反応用触媒を使用することが可能であるが、飽和炭化水素部位を持つ化合物と酸化剤を溶媒に溶解させて液相中で反応を行うことが反応活性の面でより好ましい。
【0046】
上記反応を液相中で行う場合、用いる溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることになり、有機溶媒としては一種または二種以上用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、ベンゾニトリル等の窒素化合物、リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0047】
上記溶媒の中でも、水、炭素数1〜4のアルコール類、ジクロロメタン、ヘプタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等や、これらの混合物を用いることが好ましい。なお、飽和炭化水素部位を持つ基質化合物が反応条件で液体の場合には、上記溶媒を使用することなくニートで反応を行うことも可能である。
【0048】
上記反応における反応系は、中性〜酸性であることが好ましく、反応系中に酸性物質を加えても良い。酸性物質としては、例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸等が挙げられ、一種または二種以上を用いることができる。ブレンステッド酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸や酢酸、安息香酸、蟻酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、ゼオライト類、混合酸化物類等の無機酸類が好適であり、ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化ホウ素化合物、塩化第二錫、フッ化アンチモン、塩化亜鉛、チタン化合物、ゼオライト類、混合酸化物等が好適である。更に無機、有機酸性塩を用いることもできる。
【0049】
上記反応における反応系において水が存在する場合には、場合によっては相間移動触媒や界面活性剤を共存させることができる。また光照射下での反応を行うことも可能である。
【0050】
上記反応における反応条件としては、例えば、反応温度は、液相反応の場合には、0℃以上が好ましく、より好ましくは室温以上である。また250℃以下が好ましく、より好ましくは、180℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また150時間以内が好ましい。より好ましくは、48時間以内である。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、50atm以下である。また、減圧下で反応を行うこともできる。気相反応の場合には、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。また600℃以下が好ましく、より好ましくは、500℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また1000時間以内が好ましい。より好ましくは、800時間以内である。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、100atm以下である。
【0051】
上記反応において、本発明の異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として使用することにより、アルコールやカルボニル化合物を製造することができ、各種工業製品の製造において用いる中間体や原料として有用な化合物であるこれら化合物を供給するための製造方法として好適に適用することができる。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、「部」とあるのは、特に断りのない限り、全て質量基準であり、「%」は「モル%」を意味するものとする。
【0053】
二欠損型ケギン型ポリオキソメタレートK8[γ−SiW10O36]・12H2Oは、以下の文献に従い合成した。A.Teze、G.Herve、「インオーガニック シンセシーズ(Inorg.Synth.)」(米国)、1990年、第27巻、p.85。
【0054】
(調製方法1):(TBA)xHy[γ−SiFe0.93(OH2)0.93Mo0.7W10O38.7]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiFeMoW10]と記述する。
【0055】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、ここに酢酸/酢酸ナトリウム緩衝溶液10mLを加えて、pH=5の均一の溶液とした。
【0056】
(2)(1)の溶液にNa2MoO4・2H2O 0.12g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて5分間攪拌した。
【0057】
(3)(2)の溶液にFe(NO3)3・9H2O 0.2g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0058】
(4)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、0.8gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はFe/Mo/Si/W=0.93/0.7/1/10であった。
【0059】
(調製方法2):(TBA)xHy[γ−SiFe0.42(OH2)0.42Mo0.61V0.94W10O39.6]混合物の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiFeMoVW10]と記述する。
【0060】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、ここに酢酸/酢酸ナトリウム緩衝溶液10mLを加えて、pH=5の均一の溶液とした。
【0061】
(2)(1)の溶液にNa2MoO4・2H2O 0.12g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて5分間攪拌した。
【0062】
(3)(2)の溶液にFe(NO3)3・9H2O 0.20g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0063】
(4)(3)の溶液にNaVO3 0.061g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加え、65℃で15分間攪拌。
【0064】
(5)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した混合物をICPにより分析したところ、元素比率はFe/Mo/V/Si/W=0.42/0.61/0.94/1/10であった。
【0065】
(調製方法3):(TBA)xHy[γ−SiFe0.82(OH2)0.82Ti0.95(OH2)0.95W10O38]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiFeTiW10]と記述する。
【0066】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、溶液のpHを濃硝酸により1.5に設定した。
【0067】
(2)(1)の溶液にTi(O)SO4 0.078g(0.50mmol)を加えて10分間攪拌した。
【0068】
(3)(2)の溶液が透明になった後、Fe(NO3)3・9H2O 0.20g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0069】
(4)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はFe/Ti/Si/W=0.82/0.95/1/10であった。
【0070】
(調製方法4):(TBA)xHy[γ−SiV0.88Ti1.11(OH2)1.11W10O38.9]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiVTiW10]と記述する。
【0071】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、溶液のpHを濃硝酸により1.5に設定した。
【0072】
(2)(1)の溶液にTi(O)SO4 0.078g(0.50mmol)を加えて10分間攪拌した。
【0073】
(3)(2)の溶液が透明になった後、NaVO3 0.061g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0074】
(4)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はV/Ti/Si/W=0.88/1.11/1/10であった。
【0075】
(調製方法5):(TBA)4 [γ−Mo2W10O40]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。以下(TBA)[γ−Mo2W10]と記述する。
【0076】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、溶液のpHを濃硝酸により1.5に設定した。
【0077】
(2)(1)の溶液にNa2MoO4・2H2O 0.24g(1.0mmol)を溶かした水溶液を、溶液のpHを硝酸水溶液で1.5に保ちながら加えて5分間攪拌した。
【0078】
(3)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はMo/Si/W=2/1/10であった。
【0079】
上記で調製した化合物を触媒に用いて、下記の反応条件で酸化反応を行った。
(1)シクロヘキサンの酸素酸化反応
基質:シクロヘキサン:3.5mmolもしくは9mmolもしくは14mmol
溶媒:ベンゾニトリル:3mL
触媒:50mg
反応温度:100℃
反応時間:48時間
結果を表1に示す。なお、収率は、基質として用いたシクロヘキサンを100(mol%)としたときの収率(mol%)である。
【0080】
【表1】
2)シクロオクテンの酸素酸化反応
基質:シクロオクテン:1mmol
溶媒:ベンゾニトリル:2mL
触媒:60mg
酸素:1atm
反応温度:100℃
反応時間:24時間
結果を表2に示す。なお、収率(mol%)は、表1におけるのと同様である。
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明の異種元素置換ポリオキソメタレート化合物は、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、二種類のポリ原子と異なる元素を導入した新規化合物であり、例えば飽和炭化水素部位を酸化し、アルコールやカルボニル化合物を製造するための触媒として好適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート化合物に関する。より詳しくは、ポリ原子と異なる二種類の元素を欠損部位に組み込んだヘテロポリオキソメタレート化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヘテロ原子を中心とし、ポリ原子がヘテロ原子に酸素を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレートが、酸塩基反応や酸化反応の触媒として使用できることが広く知られている。特に環境問題に対する配慮から、酸化反応においては、近年最もクリーンで原子効率の高い分子状酸素や過酸化水素を酸化剤として用いた研究が活発になされ、結晶構造中にあるべき原子が一つないしは三つ欠けている欠損構造を有し、その部位に一種類以上の金属元素を含有するもの、すなわちポリ原子が一種類以上の他の金属元素により一つもしくは三つ置換されたヘテロポリオキソメタレートが触媒活性を示すことが広く知られている。しかしながら、これらは工業的レベルでの酸化反応触媒として性能の面で好適に適用できるものではなかった。
【0003】
一方、二欠損構造部位に単一元素を組み込んだ二置換型ポリオキソメタレートが開示されている。二欠損型ポリオキソメタレートに、2個の鉄を導入し,エチレン性二重結合を酸素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。ターンオーバー数は高いものの、非常に長い反応時間を要することから、工業レベルでエポキシ化合物を製造することができるようにするための工夫の余地があった。
【0004】
二欠損型ポリオキソメタレートに、バナジウム、鉄、マンガン、銅、モリブデン、パラジウム、ニッケル、コバルト、クロム、銀、金、亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、ルテニウム、ランタニド、チタン、レニウム、ロジウム、イリジウムの群から選ばれる一種類の元素を欠損部位に導入し、エチレン性二重結合を過酸化水素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、異種元素で置換されたヘテロポリオキソメタレートの合成例は開示されていない。
【0005】
二欠損型ポリオキソメタレートに、希土類、4族、5族、6族、7族、および9、10族のニッケル、パラジウム、イリジウム、白金からなる群から選ばれた元素を欠損部位に導入し、エチレン性二重結合を酸素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、目的のエポキシ化合物の収率および選択率は低く、工業レベルでエポキシ化合物を製造することができるようにするための工夫の余地があった。また、異種元素で置換されたヘテロポリオキソメタレートの合成例は開示されていない。
【非特許文献1】
Y.Nishiyama、Y.Nakagawa、N.Mizuno、「アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angew.Chem.,Int.Ed.)」(独国)、2001年、第40巻、p.3639
【特許文献1】
国際公開第02/072257号(2002)
【特許文献2】
日本国特許公開第2003−64007
このように、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートの欠損部位に同種の元素は比較的容易に導入することができるものの、異なる元素を欠損部位に一つずつ導入する技術はその困難さから未だ確立されておらず、また同種元素置換型ヘテロポリオキソメタレートは、酸化反応における触媒としての活性も不十分であるため、酸化反応活性により優れたヘテロポリオキソメタレート化合物が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、酸化反応に好適に適用することができる触媒として、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートの欠損部位に異種元素を導入した化合物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有機化合物を酸化剤により酸化させて含酸素有機化合物を製造するための触媒について種々検討するに際し、工業的に有用なヘテロポリオキソメタレート化合物に着目し鋭意検討を重ねた結果、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートの欠損部位に、ポリ原子と異なる二種類の元素を導入できることを見出した。また、このような異種元素を導入した該ヘテロポリオキソメタレート化合物が、同種元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物に比較して、上記酸化反応における触媒としての作用効果をより十分に発揮し、上記課題を見事に解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、モリブデン、タングステン、バナジウムおよびニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種以上からなるポリ原子を有する二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、ポリ原子と異なり、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、および15族からなる群より選ばれる二種類の元素(B)を必須とするヘテロポリオキソメタレート化合物である。
【0009】
本発明はまた、前記(A)の欠損構造部位に前記元素(B)を組み込む際に、pHが0.5〜7.5に設定された溶媒に(A)および(B)を共存させることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法であり、該ヘテロポリオキソメタレート化合物の酸化反応用触媒としての使用方法でもある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、二種類の元素(B)とを必須として構成される異種元素置換ヘテロポリオキソメタレートを酸化反応用触媒として用いる場合、気相や液相での酸化反応に好適に適用されることになる
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、結晶構造中で、あるべきポリ原子が二つ欠けている二欠損構造部位を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンであって、ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン・タングステン・バナジウム・およびニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種以上のものである。このようなヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、ヘテロ原子に酸素を介してポリ原子が10個配位した結晶構造を有するものである。
【0011】
本発明におけるヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、下記一般式(1);
[QM10Oj]k− (1)
(式(1)中、Qは珪素もしくはリン原子を表す。Mはポリ原子を表す。jとkは正の整数であり、QとMの価数によって決まる。)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。より好ましくは、Qが珪素であり、Mがタングステンであるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンである。
【0012】
上記必須元素(B)としては、酸化反応触媒として適用される反応の種類や、用いる酸化剤の種類等に応じて適宜選択すればよいが、周期律表3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、および15族の元素の群から選ばれる二種類の元素が好ましい。より好ましくは、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、および11族の元素の群より選ばれる少なくとも二種類の元素である。更に好ましくは、チタン、バナジウム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、ニッケル、銅、銀、金から選ばれる二種類の元素である。また、異種元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物の混合物を合成する場合には、上記元素(B)より選ばれる少なくとも二種類以上の元素を使用することになる。
【0013】
二種類の上記元素(B)を二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に導入することにより得られたヘテロポリオキソメタレート化合物は、(1)酸化還元性(2)電気陰性度(3)磁性(4)双極子モーメント(5)酸塩基性 等の性質が、従来の単一の元素(B)を欠損部に導入したヘテロポリオキソメタレート化合物と比較して大きく異なることが挙げられ、その結果、酸化反応における触媒活性の改善が期待されることになる。
【0014】
ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)への二種類の上記元素(B)の導入は、pHが0.5〜7.5に設定されたヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の溶媒中に、元素(B)を含む塩、もしくはその塩を溶かした溶液を添加して行うことになり、二欠損構造部位に異種元素を導入したヘテロポリオキソメタレート化合物の混合物を合成する場合には、二種類以上の元素(B)を含む塩、もしくはその塩を溶かした溶液を使用することになる。元素(B)の添加に伴いpHが変化する場合には、酸もしくは塩基により適宜最適値に設定することもできる。
【0015】
二種類以上の元素(B)を含む塩を添加する順序としては、全て一緒に添加しても良いし、別々に添加しても良い。別々に添加する場合には、その添加順序を選ぶことにより、ヘテロポリオキソメタレート化合物の組成を設計することがより簡便になる。
【0016】
上記元素(B)を含む塩としては、無機塩でも有機塩でも良いが、中でも酢酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、プロトン塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩が好適である。また、導入する元素(B)を二種類以上含む多核錯体のような複合型の塩を用いることも可能である。
【0017】
合成に使用する元素(B)を含む塩のモル量としては、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1モルに対して、0.0001モル以上であることが好ましい。より好ましくは0.001モル以上であり、更に好ましくは、0.01モル以上である。また、3モル以下であることが好ましい。より好ましくは2モル以下であり、更に好ましくは、1.9モル以下である。
【0018】
上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、水や含水有機溶媒および有機溶媒を用いることができる。有機溶媒は水に溶解するものでも溶解しないものでも良いが、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、クロロホルムが好適である。
【0019】
また上記溶媒の体積は、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1ミリモルに対して、0.5mL以上であることが好ましい。より好ましくは1mL以上であり、更に好ましくは1.5mL以上である。また、300mL以下であることが好ましい。より好ましくは200mL以下であり、更に好ましくは、180mL以下である。
【0020】
上記pHは元素(B)の種類や組み合わせ等により適宜設定することになるが、より好ましいpHは、0.8〜7.0である。pHの測定には、HORIBA製pHメーターF−22およびHORIBA製電極6366−10Dを使用する。上記pHは、水もしくは含水有機溶媒を溶媒として用いる場合には、その液温が25℃の時の値であり、また有機溶媒を溶媒として用いる場合には、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A) 1ミリモルを共存させた調製有機溶媒に水を1mL添加した時の、その液温が25℃の時の値である。
【0021】
本発明の化合物における元素(B)の合計含有量としては、触媒として用いる酸化反応の種類によって適宜設定することになるが、化合物中のヘテロ原子1個に対して、零個を超えることが好ましい。より好ましくは、0.0001個以上であり、更に好ましくは、0.01個以上である。また、5個以下であることが好ましい。より好ましくは3個以下であり、更に好ましくは、2個以下である。
【0022】
本発明の化合物における元素(B)とヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)との形態としては、元素(B)がヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の二欠損部位に組み込まれて存在することになる。この場合、元素(B)が互いに隣接していることが好ましい。元素(B)が互いに隣接する異性体としては、α、β、γ、δ、ε体等が存在するが、α、β体は角を共有した異性体である。より好ましくは、二欠損ケギン型ポリオキソメタレートアニオンの骨格中に元素(B)が陵を共有して組み込まれる形態であり、それはγ、δ、ε体である。この中でももっとも好ましくはγ体である。このようなヘテロポリオキソメタレート化合物の構造は、X線結晶構造解析、元素分析、UVやFT−IR分光測定等から決定または推定される。
【0023】
上記化合物は塩を形成していてもよく、ヘテロポリオキソメタレートアニオンの塩を形成する対カチオンとしては、例えば、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類カチオン、亜鉛イオン、ランタニドイオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、錫イオン、鉛イオン、鉄イオンや、第四級アンモニウム塩(アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩)、第四級ホスホニウム塩(テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩)等の有機カチオンが好適である。カチオンは一種類または二種類以上用いることができる。
【0024】
本発明の化合物を酸化反応触媒として使用する場合の使用量としては、触媒を用いる反応の種類等により適宜設定することになるが、例えば、反応基質に対するモル比(基質のモル数/触媒のモル数)が100000/1以下となるようにするのが好ましく、より好ましくは、10000/1以下である。また1/10以上にすることが好ましく、より好ましくは1/1以上である。また、触媒の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0025】
なお本発明の化合物は、上述した二欠損構造部位を有し、ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、ポリ原子を有するヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、元素(B)とを必須成分とし、これを主成分とすることが好ましいが、本発明の作用効果を奏する限り、触媒調製過程で生じる不純物や他の成分を含有していてもよい。
【0026】
本発明の酸化反応用触媒の使用形態としては、気相反応で用いる場合、触媒自体を固相として反応を行う形態、触媒を担体に担持して反応を行う形態が可能である。触媒担体としては、各種イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、チタニア、シルコニア、酸化錫や他の酸化物等の一般的に気−固反応に使用される担体を用いることができる。
【0027】
触媒自体を固体として使用する場合、好ましい対カチオンは、プロトン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、ランタニドイオン、鉄イオン、銅イオン、パラジウムイオン、白金イオン、コバルトイオン、ニッケルイオンである。
【0028】
液相反応で用いる場合には、触媒を溶解させて均一系で反応させる形態、触媒を溶媒に溶解させずに液相に懸濁させて反応を行う形態が挙げられる。触媒を固相として反応を行うことも可能である。この時、対カチオンを変更することで触媒自体を固体として使用することができ、反応後の触媒と生成物の分離が容易になる。
【0029】
また、触媒を担体に担持することによっても、触媒を固相として使用することができる。触媒担体としては、各種イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、チタニア、シルコニア、酸化錫や他の酸化物等の一般的に不均一系反応に使用される担体を用いることができる。触媒自体を固体として使用する場合、好ましい対カチオンは、プロトン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、ランタニドイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、パラジウムイオン、白金イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、テトラブチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリセチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩である。
【0030】
本発明の異種元素置換ヘテロポリオキソメタレートは、種々の酸化反応に触媒として適用することができるものであるが、中でも酸化反応を液相で行う際に好適に適用することができるものである。上記酸化反応の具体例としては特に限定されず、例えば、(1)不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化)、(2)水酸基の酸化、(3)ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子等の酸化)、(4)飽和炭化水素部位の酸化、(5)芳香環の酸化、(6)これら(1)〜(5)以外の酸化反応等が挙げられる。このような酸化反応により被酸化性官能基が酸化され、酸化された有機化合物が製造されることになる。
【0031】
上記(1)不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化)において、アルケンの不飽和二重結合の酸化としては、例えば、エポキシ化、ワッカー酸化、アルケンからジヒドロキシ化合物が生成する反応、アルケンからα−ヒドロキシケトンが生成する反応、アルケン開裂、酸化的開裂、アンモ酸化等が挙げられる。またアルキンの不飽和三重結合の酸化としては、例えば、アルキンからα,β−エポキシケトンが生成する反応、アルキンからジケトンが生成する反応等が挙げられる。
【0032】
上記(2)水酸基の酸化としては、例えば、カルボニル化合物が生成する反応が挙げられ、具体的には第一級アルコールからアルデヒドやカルボン酸が生成する反応、第二級アルコールからケトンが生成する反応等が挙げられる。
【0033】
上記(3)ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子等の酸化)において、硫黄原子の酸化としては、例えば、スルフィドからスルホキシドやスルホンが生成する反応、チオールからジスルフィドが生成する反応等が挙げられる。また窒素原子の酸化としては、例えば、第一級アミンからヒドロキシルアミンが生成する反応、ヒドロキシルアミンからニトロソ化合物またはアゾキシ化合物が生成する反応、ニトロソ化合物からオキシムまたはニトロ化合物が生成する反応、第二級アミンからヒドロキシルアミンが生成する反応、ヒドロキシルアミンからナイトロンが生成する反応、第三級アミンからアミンオキシドが生成する反応等が挙げられる。
【0034】
上記(4)飽和炭化水素部位の酸化としては、例えば、アルカンに水酸基、ヒドロペルオキシ基、アルキルペルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基が導入される反応、アリル位酸化、芳香族側鎖酸化、アンモ酸化等が挙げられる。
【0035】
上記(5)芳香環の酸化としては、例えば、芳香環に水酸基が導入される反応等が挙げられる。
【0036】
上記(6)これら(1)〜(5)以外の酸化反応等としては、例えば、バイヤービリガー酸化、酸化的カップリング、酸化的脱水素等が挙げられる。
【0037】
本発明の異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート触媒は、上述した中でも、液相での不飽和二重結合の酸化や飽和炭化水素部位の酸化に好適である。以下では、本発明の好ましい実施形態として上記触媒を用い、飽和炭化水素部位を酸化剤により酸化してアルコールおよびカルボニル化合物の製造を行う場合における反応基質、酸化剤、製造条件等について説明する。
【0038】
本発明において使用する飽和炭化水素部位を持つ反応基質としては、非環式であっても環式有機化合物であってもよく、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、アダマンタン等のアルカン類;プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、イソプレン、ジイソブチレン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、プロピレンのトリマーおよびテトラマー類、1,3−ブタジエン等の末端にエチレン性二重結合を有するアルケン;2−ブテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン等の分子内部にエチレン性二重結合を有するアルケン;シクロペンテン、シクロヘキセン、1−フェニル−1−シクロヘキセン、1−メチル−1−シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン、シクロペンタジエン、シクロデカトリエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンシクロプロパン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の環式アルケン;トルエン、エチルトルエン、ジエチルトルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、イソプロピルエチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、プロピルベンゼン、4,4’−ジメチルビフェニル、4−t−ブチル−1−メチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン等の側鎖を持つ芳香族化合物が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、アダマンタン、炭素数3〜12のアルケン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレンが好適である。基質の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0040】
上記飽和炭化水素部位を持つ化合物はまた、例えば、−CHO、−COOH、−CN、−COOR、−OR(Rは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリルアルキル置換基を表す)等の官能基や、アリール基、アリルアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボニル基、水酸基等を有していても良い。
【0041】
このような化合物としては、例えば、アリルメチルエーテル、アリルビニルエーテル、ジアリルエーテル、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0042】
上記酸化反応における酸化剤としては、例えば、酸素イオンや酸素ラジカル、ペルオキシドやスーパーペルオキシドを生成しうるものを用いることができ、例えば、分子状酸素や過酸化水素、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、過酢酸等の有機過酸化物、酸素と水素の混合ガス、酸素と水素と窒素の混合ガス、一酸化二窒素、ヨードシルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、分子状酸素や過酸化水素が好適である。
【0043】
分子状酸素を酸化剤として使用する場合、酸素圧力は0.0001atm以上150atm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01atm以上50atm以下である。過酸化水素を酸化剤として使用する場合、過酸化水素の使用形態としては、実用的には0.01〜70質量%の水溶液、アルコール類の溶液が好適であるが、100%の過酸化水素も使用可能である。使用量としては、反応基質と過酸化水素のモル比(反応基質のモル数/過酸化水素のモル数)が100/1以下となるようにすることが好ましく、より好ましくは10/1以下である。また、1/100以上となるようにすることが好ましく、より好ましくは、1/50以上である。
【0044】
上記ヘテロポリオキソメタレート触媒の使用量としては、反応基質100重量部に対して、0.0001重量部以上とすることが好ましく、また、3000重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.01重量部以上であり、また、1500重量部以下である。また、触媒の種類としては、一種類または二種類以上用いることができる。
【0045】
上記反応方法としては、飽和炭化水素部位を持つ化合物および酸化剤に酸化反応用触媒を接触させることにより反応を行うことが好ましい。気相反応もしくは液相反応のいずれの反応方法にも、本発明の酸化反応用触媒を使用することが可能であるが、飽和炭化水素部位を持つ化合物と酸化剤を溶媒に溶解させて液相中で反応を行うことが反応活性の面でより好ましい。
【0046】
上記反応を液相中で行う場合、用いる溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることになり、有機溶媒としては一種または二種以上用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルまたはイソプロパノール、第三級ブタノール等の炭素数1〜6の第一、二、三級の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキシド、プロピレンオキシドが開環したオリゴマー類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、ベンゾニトリル等の窒素化合物、リン酸トリエチル、リン酸ジエチルヘキシル等のリン酸エステル等のリン化合物、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0047】
上記溶媒の中でも、水、炭素数1〜4のアルコール類、ジクロロメタン、ヘプタン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等や、これらの混合物を用いることが好ましい。なお、飽和炭化水素部位を持つ基質化合物が反応条件で液体の場合には、上記溶媒を使用することなくニートで反応を行うことも可能である。
【0048】
上記反応における反応系は、中性〜酸性であることが好ましく、反応系中に酸性物質を加えても良い。酸性物質としては、例えば、ブレンステッド酸、ルイス酸等が挙げられ、一種または二種以上を用いることができる。ブレンステッド酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸や酢酸、安息香酸、蟻酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、ゼオライト類、混合酸化物類等の無機酸類が好適であり、ルイス酸としては、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化ホウ素化合物、塩化第二錫、フッ化アンチモン、塩化亜鉛、チタン化合物、ゼオライト類、混合酸化物等が好適である。更に無機、有機酸性塩を用いることもできる。
【0049】
上記反応における反応系において水が存在する場合には、場合によっては相間移動触媒や界面活性剤を共存させることができる。また光照射下での反応を行うことも可能である。
【0050】
上記反応における反応条件としては、例えば、反応温度は、液相反応の場合には、0℃以上が好ましく、より好ましくは室温以上である。また250℃以下が好ましく、より好ましくは、180℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また150時間以内が好ましい。より好ましくは、48時間以内である。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、50atm以下である。また、減圧下で反応を行うこともできる。気相反応の場合には、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。また600℃以下が好ましく、より好ましくは、500℃以下である。反応時間は、数分以上が好ましく、また1000時間以内が好ましい。より好ましくは、800時間以内である。反応圧力は、常圧以上が好ましく、また、150atm以下が好ましい。より好ましくは、100atm以下である。
【0051】
上記反応において、本発明の異種元素置換ヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として使用することにより、アルコールやカルボニル化合物を製造することができ、各種工業製品の製造において用いる中間体や原料として有用な化合物であるこれら化合物を供給するための製造方法として好適に適用することができる。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、「部」とあるのは、特に断りのない限り、全て質量基準であり、「%」は「モル%」を意味するものとする。
【0053】
二欠損型ケギン型ポリオキソメタレートK8[γ−SiW10O36]・12H2Oは、以下の文献に従い合成した。A.Teze、G.Herve、「インオーガニック シンセシーズ(Inorg.Synth.)」(米国)、1990年、第27巻、p.85。
【0054】
(調製方法1):(TBA)xHy[γ−SiFe0.93(OH2)0.93Mo0.7W10O38.7]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiFeMoW10]と記述する。
【0055】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、ここに酢酸/酢酸ナトリウム緩衝溶液10mLを加えて、pH=5の均一の溶液とした。
【0056】
(2)(1)の溶液にNa2MoO4・2H2O 0.12g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて5分間攪拌した。
【0057】
(3)(2)の溶液にFe(NO3)3・9H2O 0.2g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0058】
(4)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、0.8gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はFe/Mo/Si/W=0.93/0.7/1/10であった。
【0059】
(調製方法2):(TBA)xHy[γ−SiFe0.42(OH2)0.42Mo0.61V0.94W10O39.6]混合物の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiFeMoVW10]と記述する。
【0060】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、ここに酢酸/酢酸ナトリウム緩衝溶液10mLを加えて、pH=5の均一の溶液とした。
【0061】
(2)(1)の溶液にNa2MoO4・2H2O 0.12g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて5分間攪拌した。
【0062】
(3)(2)の溶液にFe(NO3)3・9H2O 0.20g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0063】
(4)(3)の溶液にNaVO3 0.061g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加え、65℃で15分間攪拌。
【0064】
(5)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した混合物をICPにより分析したところ、元素比率はFe/Mo/V/Si/W=0.42/0.61/0.94/1/10であった。
【0065】
(調製方法3):(TBA)xHy[γ−SiFe0.82(OH2)0.82Ti0.95(OH2)0.95W10O38]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiFeTiW10]と記述する。
【0066】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、溶液のpHを濃硝酸により1.5に設定した。
【0067】
(2)(1)の溶液にTi(O)SO4 0.078g(0.50mmol)を加えて10分間攪拌した。
【0068】
(3)(2)の溶液が透明になった後、Fe(NO3)3・9H2O 0.20g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0069】
(4)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はFe/Ti/Si/W=0.82/0.95/1/10であった。
【0070】
(調製方法4):(TBA)xHy[γ−SiV0.88Ti1.11(OH2)1.11W10O38.9]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。xとyは0から6までの正数である。以下(TBA)[γ−SiVTiW10]と記述する。
【0071】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、溶液のpHを濃硝酸により1.5に設定した。
【0072】
(2)(1)の溶液にTi(O)SO4 0.078g(0.50mmol)を加えて10分間攪拌した。
【0073】
(3)(2)の溶液が透明になった後、NaVO3 0.061g(0.50mmol)を溶かした水溶液を加えて、さらに5分間攪拌した。
【0074】
(4)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はV/Ti/Si/W=0.88/1.11/1/10であった。
【0075】
(調製方法5):(TBA)4 [γ−Mo2W10O40]の調製方法。TBAはテトラブチルアンモニウムを表す。以下(TBA)[γ−Mo2W10]と記述する。
【0076】
(1)水20mLにK8[γ−SiW10O36]・12H2O 1.5g(0.50mmol)
を加え、溶液のpHを濃硝酸により1.5に設定した。
【0077】
(2)(1)の溶液にNa2MoO4・2H2O 0.24g(1.0mmol)を溶かした水溶液を、溶液のpHを硝酸水溶液で1.5に保ちながら加えて5分間攪拌した。
【0078】
(3)臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)1.5gを加え、析出した沈殿を濾過して空気下で乾燥した。得られた固体を3mLのアセトニトリルに溶かして不溶物を濾過した後、200mLの水を加えて30分間攪拌した。得られた固体を濾過して空気下で乾燥した。得られた収量は、1.0gであった。
調製した化合物をICPにより分析したところ、元素比率はMo/Si/W=2/1/10であった。
【0079】
上記で調製した化合物を触媒に用いて、下記の反応条件で酸化反応を行った。
(1)シクロヘキサンの酸素酸化反応
基質:シクロヘキサン:3.5mmolもしくは9mmolもしくは14mmol
溶媒:ベンゾニトリル:3mL
触媒:50mg
反応温度:100℃
反応時間:48時間
結果を表1に示す。なお、収率は、基質として用いたシクロヘキサンを100(mol%)としたときの収率(mol%)である。
【0080】
【表1】
2)シクロオクテンの酸素酸化反応
基質:シクロオクテン:1mmol
溶媒:ベンゾニトリル:2mL
触媒:60mg
酸素:1atm
反応温度:100℃
反応時間:24時間
結果を表2に示す。なお、収率(mol%)は、表1におけるのと同様である。
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明の異種元素置換ポリオキソメタレート化合物は、二欠損型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの欠損構造部位に、二種類のポリ原子と異なる元素を導入した新規化合物であり、例えば飽和炭化水素部位を酸化し、アルコールやカルボニル化合物を製造するための触媒として好適である。
Claims (4)
- ヘテロ原子が珪素もしくはリンであり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン、バナジウム、およびニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種以上の元素である二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と、ポリ原子以外の二種類の元素(B)が前記(A)の欠損構造部位に組み込まれていることを特徴とするヘテロポリオキソメタレート化合物。
- 前記元素(B)が、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、および15族からなる群より選ばれる元素であることを特徴とする請求項1記載のヘテロポリオキソメタレート化合物。
- 前記(A)の欠損構造部位に前記元素(B)を組み込む際に、pHが0.5〜7.5に設定された溶媒に(A)および(B)を共存させることを特徴とする請求項1または2記載のヘテロポリオキソメタレート化合物の製造方法。
- 酸化反応用触媒に用いることを特徴とする、請求項1〜3記載のヘテロポリオキソメタレート化合物の使用方法。
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