JP2005000310A - テーパー用毛およびこれを用いた歯ブラシ - Google Patents
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Abstract
【課題】毛先のソフトな当たり心地と、用毛としての耐久性を維持しながら、歯垢掻き出し効果と掻き出し実感に優れたテーパー用毛およびこのテーパー用毛を用いた歯ブラシを提供すること。
【解決手段】少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛11において、テーパー部14および/またはストレート部の表面に研磨粒子13からなる微細凸部を形成した。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛11において、テーパー部14および/またはストレート部の表面に研磨粒子13からなる微細凸部を形成した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯間清掃力と研磨性能に優れたテーパー用毛とこれを用いた歯ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術】
▲1▼特許文献1
両端をテーパー形状とされ、先端部から1mm、3mm、5mm、8mmの各部位における刷毛径が基部の刷毛径に対し、25〜35%、55〜70%、80〜90%、90〜100%とされたモノフィラメントからなるテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの合成樹脂からなる。毛先が適度に柔らかく、隙間への進入性が高いが、テーパー部表面が平滑な構造となるため、歯面歯垢の掻き出し能力には研究の余地があった。
【0003】
▲2▼特許文献2
用毛表面のすべてまたはその一部に凹凸が形成され、用毛体積をV、表面積をAとするとき、A/V≧0.20としたテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、歯間や歯と歯茎の境目の歯垢除去効果が高く、歯茎への当たり心地がソフトで使用感と耐久性に優れる。このテーパー用毛は、先鋭テーパー用毛としての用毛体積に対する表面積比や断面積に対する外周比の最適値について新しい観点から研究したものであるが、本発明のようにテーパー用毛の毛先の歯垢掻き取り能力の強化に焦点を当てた開発はなされておらず、毛先部分の歯垢掻き取り能力に関しては改良の余地があった。
【0004】
▲3▼特許文献3
表面に100μm程度の痘痕または蛇腹状の凹凸を持つテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、表面や極狭い部位に付着した異物の除去効果に優れるが、100μm程度の凹凸であるため、口腔内の隙間に毛先を進入させるには毛先が太くなり過ぎ、歯ブラシとしてその長所を十分に発揮できない。
【0005】
▲4▼特許文献4
表面に多数の凹部(ウォータースポット)を形成したポリエステル系繊維が示されている。この繊維は、獣毛の風合いを再現することを目的としたものであり、口腔清掃用の用毛ではない。たとえ歯ブラシ用の用毛として用いたとしても、表面に凹部を形成した構造のため、刷掃による用毛の折れや耐久性の低下などの問題が発生する。また、表面に凸部を形成した構造に比べて汚れの掻き出し能力も劣り、凹部への歯垢や汚れの滞留による衛生上の問題も発生する。
【0006】
▲5▼特許文献5
テーパー部表面に1〜15μmの微細凹部を多数形成したテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、用毛表面が凹構造のため、凸構造のテーパー用毛よりも刷掃力が弱い。また、用毛表面に多数の微細な穴が形成されるため、毛のへたりも早いという問題を有する。また、微細凹部には歯垢や食べカスが溜まりやすく、衛生上好ましいとはいえない。さらに、実際の使用に関しても、1〜15μm程度の微細凹部では、表面が滑らかなテーパー用毛との違いを実感することが難しい。
【0007】
▲6▼特許文献6
クレーまたはシリカなどの粒子状添加物を含むテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、ペイントブラシや化粧用ブラシなどのための用毛であり、歯ブラシなどの口腔清掃用には向かない。また、用毛のベース樹脂はポリアミドであり、溶解などの化学処理には不向きであるため、例えば特許文献1のように毛先を鋭く先鋭化(テーパー先端径約20μm程度)することは難しい。また、モノフィラメントに研磨粒子を含ませたオーソドックスな製造手法であるため、適正な粒子添加量は0.1〜10重量%と非常に少なく、効率のよい研磨・清掃には不充分である。
【0008】
▲7▼特許文献7
エチレン−2,6−ナフタレート単位を60モル%以上含有するポリエステル樹脂100重量部に対し、研磨粒子を10〜50重量部含有せしめた研磨ブラシ用の用毛が示されている。この用毛は、従来の研磨用毛の欠点であるヘタリ耐久性を向上させるためのものであるが、一般的な手法として既に知られている。母材となるフィラメント材質を改質したものであるが、研磨粒子の含有量を多くしたり、研磨粒子の粒径を大きく(30μm程度)したりすると、用毛としての耐久性が低下するという欠点がある。
【0009】
▲8▼特許文献8
粒子径が約0.1〜約10μmの磨き剤を含有する、直径が均一なフィラメント(ストレート毛)を用いた歯ブラシが示されている。このフィラメントは、コア領域と鞘領域を有し、鞘領域に磨き剤を含むとともに、コア領域にも前記磨き剤を0〜約25%含むものである。しかしながら、このフィラメントのように、含有する磨き剤の粒子径が0.1〜10μm程度では充分に高い清掃・研磨効果を得るには不充分である。特に、ストレート毛でヤスリのような高い研磨効果を得るには、10μmより大きな磨き粒子部を持つことが望ましい。また、用毛径が全体的にストレート(同一径)のため、毛先が狭い隙間に入りにくく、歯間部などの狭い部位の清掃力・研磨力には不足がある。さらに、コア領域に磨き剤を含ませて毛先に高い研磨力を有するフィラメントを製造する場合、コア領域と鞘領域ともに磨き剤を含むため、用毛の耐屈曲性が低下するという欠点がある。
【0010】
▲9▼特許文献9
研磨材として炭化ケイ素を含有したナイロン6−10を芯糸とし、研磨材を含まないナイロン6−66を芯糸のまわりに側糸として螺旋状などの形態で巻き付けた研磨用毛が示されている。この用毛は、芯糸を側糸でカバーすることで耐久性を向上させたものであるが、構造が複雑なため製造が難しく、専用設備が必要なためコスト高となる。また、芯糸を側糸で被ってしまうため、研磨力が低い。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−141923号公報(全頁、全図)
【特許文献2】
特開2001−178543号公報(全頁、全図)
【特許文献3】
特開平8−47423号公報(全頁、全図)
【特許文献4】
特開昭49−47618号公報(全頁、全図)
【特許文献5】
特開平10−313949号公報(全頁)
【特許文献6】
特表2003−500555号公報(全頁、全図)
【特許文献7】
特開平2003−39335号公報(全頁、全図)
【特許文献8】
特表平10−513083号公報(全頁、全図)
【特許文献9】
実開平5−5356号公報(全頁、全図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の用毛の場合、次のような問題があった。
(1)研磨性能を向上させるためには、研磨粒子の含有量の増加や粒子サイズの大型化などの手法があるが、単一樹脂からなるモノフィラメントの場合、ベース樹脂を改質しても研磨粒子の含有量が30%程度を越えると耐屈曲性の著しい低下が見られる。また、粒子サイズの大型化についても同様に耐屈曲性の著しい低下が見られる。
(2)用毛の耐屈曲性低下防止のために側糸などで研磨用の芯糸をカバーする場合、製造工程が複雑化するばかりでなく、側糸が芯糸を被う構造のために研磨力が充分に発揮されない。また、側糸くずなどが製造設備に悪影響を及ぼすことがある。
(3)一般に、テーパー用毛は隙間進入性が高いが、毛先が柔らかいため、用毛の毛先や毛腹で磨く場合などにおいては研磨力が充分でなく、汚れ除去実感などに不満が出ることがある。改善方法としては、テーパー先端径を大きめにしたり、基部径を太くしたりするなどの方法があるが、ソフトで優しい当たり心地というテーパー用毛の長所は犠牲になってしまう。
(4)研磨粒子練り込みタイプの用毛では、紡糸過程で研磨粒子がベース樹脂中に埋没してしまうため、用毛表面に露出しにくく、研磨効果を発揮させるには大きなサイズの粒子を配合するなどの必要がある。また、テーパー用毛において、テーパー先端径と同等以上の粒子サイズの研磨粒子を配合すると、毛先部分の耐久性の著しい低下や脆さという問題が発生しやすい。
(5)表面に凹部を形成した用毛の場合、その構造上、歯垢掻き出し実感が低い、毛先がへたりやすいなどの問題がある。また、凹部内に汚れが滞留しやすく、不衛生になりやすいという問題もある。
【0013】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、毛先のソフトな当たり心地と、用毛としての耐久性を維持しながら、歯垢掻き出し効果と掻き出し実感に優れたテーパー用毛およびこのテーパー用毛を用いた歯ブラシを提供することを課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような手段を採用した。
すなわち、第1の発明に係るテーパー用毛は、少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛において、テーパー部および/またはストレート部の表面に研磨粒子からなる微細凸部を形成したものである。また、第2の発明に係るテーパー用毛は、少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛において、該テーパー用毛を2層以上の多層構造とし、該多層構造になるテーパー用毛のいずれかの層に研磨粒子を混練することにより、テーパー部および/またはストレート部の表面に微細凸部を形成したものである。さらに、本発明の歯ブラシは、ヘッド部に植毛された刷毛の全部または一部に、前記本発明のテーパー用毛を用いたことを特徴とするものである。なお、前記テーパー用毛の多層構造としては、製造の容易さなどの点から、2層構造(いわゆる二重芯鞘構造)とすることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記のような手段を採用したので、研磨粒子からなる微細凸部をテーパー部表面に形成した場合、毛先のソフトな当たり心地を確保しながら、テーパー部表面の微細凸部によって歯間部などの狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。また、研磨粒子からなる微細凸部をテーパー部以外のストレート部表面に形成した場合、毛先のソフトな当たり心地を確保しながら、ストレート部表面の微細凸部によって歯面の汚れなどを効果的に除去することができる。また、研磨粒子からなる微細凸部をテーパー部表面とストレート部表面の両方に形成した場合、毛先のソフトな当たり心地を維持しながら、歯間部などの狭い隙間の歯垢や汚れ、歯面の汚れなどを効果的に除去することができる。さらに、テーパー用毛を多層構造とした場合には、目的に応じて研磨粒子の形成場所と各層の使用樹脂を選択することができるので、従来のテーパー用毛に比べて毛先の耐屈曲性や耐摩耗性も向上することができる。
【0016】
(1)用毛の材質と構成
本発明のテーパー用毛は、全体が単一の樹脂で構成されるか、あるいは2層(以上の多層構造とされた用毛であり、狭い隙間への高い進入性を実現させるために、少なくともその一端を毛先にいくほどその径が小さくなるテーパー形状とした用毛である。歯ブラシ用の場合、テーパー部の開始位置は毛先先端から5〜10mm程度の部位から始まり、テーパー先端径は5〜90μm程度、基部径(テーパーの施されていないストレート部の径)は140〜250μm程度とすることが望ましく、より望ましくはテーパー先端径10〜60μm程度、基部径150〜220μm程度(いずれも、微細凸部の突起部分を含まないベース樹脂部分の径)である。
【0017】
毛先のソフトな当たり心地を維持しながら、歯間部などの狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出したい場合には、研磨粒子からなる微細凸部はテーパー部表面に形成することが望ましい。また、毛先のソフトな当たり心地を維持しながら、歯牙の根元にある柔らかい象牙質を傷めることなしに歯面の汚れを刷掃したい場合には、研磨粒子からなる微細凸部はテーパー部を除いたストレート部のみに形成することが望ましい。より効率的に歯面を刷掃したい場合には、ストレート部表面により多くの大きな微細凸部を形成することが望ましい。なお、用毛の断面形状は円形が基本であるが、多角形など他の断面形状でもよく、特に制限されるものではない。
【0018】
用毛先端を溶解処理(加水分解反応)することによってテーパーを形成する場合は、用毛基体部を構成するベース樹脂としては、薬品加工性と加工品の安全性の点から、ポリエステル系樹脂などを用いることが望ましい。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびこれらのブレンド樹脂などを挙げることができる。ポリアミドは薬品加工性と加工品の安全性の点で溶解処理には適しないが、テーパー形成を溶解処理によらず研磨処理などによって行なう場合には、用毛材質には特に制限はなく、前記各樹脂に加え、ポリアミドも用いることができる。
【0019】
(2)微細凸部の材質と構成
研磨用の微細凸部は、ベース樹脂に混練した研磨粒子によって形成される。研磨粒子は、目的に合わせて種々のものを用いることができるが、歯ブラシの場合、歯のエナメル質などを傷つける恐れのないものがよく、硬すぎるものは好ましくない。また、微細凸部を有するテーパー部が歯周ポケットなどに入り込んで歯の根元まで磨けるようにした歯ブラシの場合には、研磨粒子は歯の象牙質を損耗させない程度で硬いことが望ましい。一方、研磨粒子は、ブラッシングによるストレスなどで崩れてしまうほど柔らかいものも適さない。さらに、研磨粒子は使用中に用毛基体部から脱落する可能性もあることを考慮し、安全性の確保されるものが望ましい。このような研磨粒子としては、例えば、ポリマー粒子、クルミや樫の木などの植物片、ゴム粒子、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、シリカ、クレーなどを挙げることができる。
【0020】
用毛先端をアルカリ溶液に浸漬してテーパー加工を施す場合には、研磨粒子がアルカリ溶液によって溶解・消失しないように、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、シリカ、クレー、あるいは耐酸性・耐アルカリ性の高いポリアミドなどのポリマー粒子を用いることが望ましい。また、酸によるテーパー加工を施す場合には、酸で溶解・消失しない研磨粒子を用いる必要がある。
【0021】
単一樹脂からなるテーパー用毛の場合、ベース樹脂に混練する研磨粒子のサイズは、毛先の耐屈曲性・耐摩耗性の点から、テーパー先端径よりもかなり小さくする必要がある。通常、歯ブラシ用のテーパー用毛におけるテーパー先端径は5〜90μm程度、好ましくは10〜60μm程度であるから、混練する研磨粒子の径は1〜30μm程度、好ましくは5〜15μm程度とすることが望ましい。
【0022】
一方、多層構造、例えば2層構造(二重芯鞘構造)のテーパー用毛の場合、芯部(内層)を研磨粒子なし層、鞘部(外層)を研磨粒子含有層とした場合、芯部で構成される毛先部分(テーパー部)には研磨粒子を含ませる必要がないため、鞘部にはテーパー先端径よりも径の大きな研磨粒子、例えば鞘部厚さの2倍以下、より好ましくは1.5倍以下の径からなる研磨粒子を混練することが可能である。逆に、芯部を研磨粒子含有層、鞘部を研磨粒子なし層とした場合は、前述したように歯ブラシ用のテーパー用毛におけるテーパー先端径は5〜90μm程度、好ましくは10〜60μm程度であるから、芯部に混練する研磨粒子の径は、前述した単一樹脂からなるテーパー用毛の場合と同じく、1〜30μm程度、好ましくは5〜15μm程度とすることが望ましい。
【0023】
一般的に、鞘部に混練される研磨粒子のサイズは、押出し成形機の口金を問題なく通れば、鞘部厚みの仕上がり寸法より大きくても構わない。大きな研磨粒子であっても口金から押し出された時点では鞘部内に埋没している。そして、延伸工程を経て用毛径が細く伸ばされるにつれ、埋没していた研磨粒子が表面に露出するようになるので、研磨効果が非常に高く、しかもベース樹脂から剥がれにくいテーパー用毛となる。なお、粒子サイズが小さ過ぎる場合には高い研磨実感を得ることが難しく、逆に大き過ぎる場合には耐屈曲性などの品質が損なわれるばかりでなく、押出し成形機の口金詰まりなどのトラブルが発生しやすくなり、好ましくない。したがって、鞘部に混練する研磨粒子のサイズは、前述したように鞘部厚さの2倍以下、より好ましくは1.5倍以下の径とすることが望ましい。
【0024】
研磨粒子の含有量は5〜60重量%程度がよいが、より好ましくは10〜50重量%程度がよい。多層構造のテーパー用毛の場合、芯部が存在するため、通常の研磨用毛よりも含有量が多い場合でも、従来の研磨用毛ほどには耐久性の低下は起こらない。研磨粒子の量が少な過ぎると、高い研磨効果が得られず、逆に多過ぎると鞘部が脆くなり、耐屈曲性などの品質に悪影響を及ぼす。
【0025】
(3)本発明のテーパー用毛の製造法
単一樹脂からなるテーパー用毛の場合、ベース樹脂に研磨粒子を混練した後、通常の押出し成形機で押し出し、また、多層構造になるテーパー用毛の場合には、所定の層に研磨粒子を混練した後、共押出し成形機で押し出すことにより、単一樹脂または多層構造になる用毛を製糸する。このようにして得られた単一樹脂または多層構造になる用毛を所定本数束ねて定寸にカットした後、このカットピースの端部を薬品(高温・高濃度の水酸化ナトリウムなどの加水分解溶液)で溶解処理することにより、用毛先端部にテーパー部を形成する。このテーパー加工時、樹脂が溶解して消失するにつれ、樹脂内に混練されている研磨粒子が露出し、テーパー部表面に研磨粒子からなる微細凸部が形成される。このようにして得られたテーパー用毛を必要に応じて中和、洗浄、乾燥処理した後、歯ブラシヘッド部に植毛する。
【0026】
また、テーパー用毛の外層表面(ストレート部)に研磨粒子からなる微細凸部を形成したい場合には、前記単一樹脂または多層構造になる用毛を製糸した後、製糸された用毛を延伸処理すればよい。延伸処理によって用毛が細く伸ばされるにつれ、押出し成形時に口金によって樹脂内部に押し込まれた研磨粒子が表面に露出し、最終的にテーパー用毛の外層表面に研磨粒子からなる微細凸部が形成される。この後、前記溶解処理によって用毛先端にテーパーを形成すればよい。
【0027】
なお、テーパー部に微細凸部を形成するには、カットピースを歯ブラシヘッド部に植毛した後、用毛先端を一度に溶解薬品中へ浸漬することにより、形成してもよい。また、テーパー用毛を植毛した歯ブラシは、必要に応じて刷毛先端を所定の形状(例えば、山切り、平切り、波形カットなど)にトリミングし、あるいは毛先の丸め加工を施してもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係るテーパー用毛の第1の実施の形態を示す。(a)は毛先部分の模式拡大側面図、(b)はその縦断面図である。
この第1の実施の形態に係るテーパー用毛11は、用毛全体を単一樹脂で構成したもので、用毛本体を構成するベース樹脂12としてポリブチレンテレフタレートを用いるとともに、ベース樹脂12に混練する研磨粒子13として炭酸カルシウムを用い、研磨粒子13を混練した用毛先端をアルカリ溶液で溶解処理することにより、毛先先端を細く鋭く尖らせてテーパー部14を形成するとともに、溶解したテーパー部14の表面に研磨粒子13を凸状に露出させて微細凸部としたものである。この例の場合、用毛の基部径(ストレート部の径)は190μm、テーパー部14の開始位置は毛先先端から8mm位置、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径は20μm、混練した研磨粒子13のサイズは10μmである。
【0029】
この第1の実施の形態に係るテーパー用毛11は、テーパー部14の先端が細く鋭く尖っているので、極めて歯間進入性に優れるとともに、テーパー部14の表面に露出した研磨粒子13からなる微細凸部によって狭い歯間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。また、研磨粒子3を混練したベース樹脂12を溶解することによりテーパー部14を形成しているため、毛先先端に行くほど研磨粒子3の露出面積が大きくなる。このため、先端側ほど歯垢掻き取り効果が高くなり、狭い隙間の奥にある歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。
【0030】
図2に、本発明に係るテーパー用毛の第2の実施の形態を示す。
この第2の実施の形態に係るテーパー用毛21は、第1の実施の形態(図1)と同様の構成において、テーパー部24の先端を完全に尖らすことなく台形状としたものである。この例の場合、テーパー用毛21の基部径200μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径60μm、研磨粒子23のサイズは5〜20μmと幅を持たせ、色々な大きさのものを混練した。
【0031】
この第2の実施の形態に係るテーパー用毛21は、テーパー部24の先端が台形状とされているので、歯間進入性については前記第1の実施の形態(図1)のものに比べて若干劣るが、テーパー先端が台形状をしているので、歯茎などに当たった時のチクチク感を無くすことができる。また、研磨粒子23のサイズを5〜20μmと幅を持たせ、種々の大きさのものを混練したので、テーパー部表面から露出した研磨粒子23の大きさもいろいろなものとなる。このため、いろいろな大きさの微細凸部によって歯垢や汚れを掻き出すことができるので、優れた掻き取り効果を発揮することができる。
【0032】
図3に、本発明に係るテーパー用毛の第3の実施の形態を示す。
この第3の実施の形態に係るテーパー用毛21は、用毛を二重芯鞘構造(2層構造)とし、芯部(内層)35の材質としてポリブチレンテレフタレートを、鞘部(外層)36の材質としてポリエチレンテレフタレートを用いるとともに、鞘部36に研磨粒子33としてシリカを混練したもので、ストレート部を構成する鞘部36の表面に研磨粒子33からなる微細凸部を形成したものである。この例の場合、用毛の基部径190μm、芯部35の直径140μm、鞘部36の厚み25μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー部径20μm、研磨粒子33のサイズ25μmとした。
【0033】
この第3の実施の形態に係るテーパー用毛31は、鞘部36のみに研磨粒子33を混練したので、ストレート部を構成する鞘部36の表面にのみ研磨粒子34が露出する。このため、テーパー用毛31の毛腹で歯面を刷掃する際などに、この鞘部表面の微細凸部によって歯面の歯垢や汚れを効果的に除去することができる。また、歯の根元にある柔らかい象牙質部分に届くテーパー部34部分には研磨粒子が存在しないため、従来のテーパー用毛と同様に柔らかく優しい当たり心地を確保することができる。また、芯部35に屈曲性に優れた樹脂を使用することにより、鞘部36に大きな研磨粒子33を混練しても、毛先の屈曲性が犠牲になるようなことも防ぐことができる。
【0034】
図4に、本発明に係るテーパー用毛の第4の実施の形態を示す。
この第4の実施の形態に係るテーパー用毛41は、前記第3の実施の形態(図3)と同様の二重芯鞘構造において、研磨粒子43を芯部45のみに混練するとともに、テーパー部44の先端を極限まで尖らせることなく台形状としたものである。この例の場合、用毛の基部径200μm、芯部45の直径100μm、鞘部46の厚み50μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径70μm、研磨粒子43のサイズ25μmとした。
【0035】
この第4の実施の形態に係るテーパー用毛41は、芯部45のみに研磨粒子43を混練し、テーパー部44の先端側のみに研磨粒子43からなる微細凸部を形成したものである。したがって、テーパー部になんら微細凸部を有しない従来のテーパー用毛に比べ、テーパー部44の先端部分で歯の狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができるようになる。また、鞘部46に耐屈曲性や耐摩耗性に優れた樹脂を採用することにより、従来のテーパー用毛よりも耐屈曲性、耐摩耗性を向上することができる。なお、研磨粒子43の粒径は、テーパー部44の先端の径との関係で決定することが望ましく、その硬度は研磨目的に応じたものとするが、歯ブラシに用いる場合は、象牙質より柔らかい硬度とすることが望ましい。
【0036】
図5に、本発明に係るテーパー用毛の第5の実施の形態を示す。
この第5の実施の形態に係るテーパー用毛51は、前記第4の実施の形態(図4)と同様の二重芯鞘構造において、芯部55に粒径の小さな研磨粒子53を混練するとともに、鞘部56に径の大きな研磨粒子57を混練し、テーパー部54と、鞘部56(ストレート部)の表面の両方に微細凸部を形成したものである。この例の場合、用毛の基部径200μm、芯部55の直径100μm、鞘部56の厚み50μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径70μm、芯部55に混練した研磨粒子53のサイズ25μm、鞘部56に混練した研磨粒子57のサイズ30μmとした。
【0037】
この第5の実施の形態に係るテーパー用毛51は、芯部55と鞘部56の両方に粒径の異なる研磨粒子53,57をそれぞれ混練したので、テーパー部54に形成される微細凸部と鞘部56に形成される微細凸部の大きさを異なったものとすることができ、歯の狭い隙間や歯面を、それぞれの場所に応じた微細凸部によって効果的に刷掃することができる。
【0038】
図6に、本発明のテーパー用毛を用いて作製した本発明の歯ブラシの例を示す。図示の歯ブラシは、前記第1の実施の形態(図1)に係るテーパー用毛を用いて作製した歯ブラシの例を示すもので、(a)は刷毛の先端を平切りとした場合の例、(b)は刷毛の先端を山切りとした場合の例をそれぞれ示すものである。いずれの歯ブラシの場合も、歯ブラシヘッド部31に植毛されたテーパー用毛11の毛先部分だけに研磨粒子13が露出し、微細凸部を形成しているので、この研磨粒子13からなる微細凸部によって歯間などの狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。他のテーパー用毛の場合も同様にして作製することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変形ならびに変更が可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施の形態では、単一樹脂からなるテーパー用毛の場合と、2層構造(二重芯鞘構造)のテーパー用毛の場合について例示したが、三層以上の多層構造とすることもできる。三層以上の多層構造とした場合には、用毛の製造自体は面倒になるが、研磨粒子を配合する層の組み合わせと使用する樹脂をいろいろと変えることができるので、目的に応じてより効果的な研磨作用と清掃効果を実現することができる。また、前記実施の形態では、本発明のテーパー用毛を歯ブラシに用いた場合について例示したが、歯ブラシなどの口腔洗浄用具の他、工業加工用の研磨用ブラシ、清掃ブラシなど、他の用途にも広く利用することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏することができる。
(1)従来のテーパー用毛と同じく隙間進入性が高いだけでなく、これまでは得られなかったテーパー毛先部分での高い歯垢掻き取り能力を実現することができる。
(2)テーパーの形状や用毛径を従来と同様に維持しながら、毛先刷掃性能を向上させることができるため、テーパー用毛独特の長所を損なうことがなく、優しくソフトな当たり心地を維持することができる。
(3)その構造上、用毛の表面に凹部を持たないため、従来より知られている表面に微細な凹部を有するテーパー用毛のように凹部内に歯垢や滓などが溜まって不衛生になるようなことがない。また、凹部のために径が細くなって折れるようなことがないため、刷毛のへたり耐久性を犠牲にすることがなく、長期間の使用においても、その清掃効果を充分に維持することができる。
(4)多層構造とした場合、従来の研磨用毛のように研磨粒子の含有量を増加させたり、大きい粒径の研磨粒子を配合しても、内層に屈曲性に優れた樹脂を用い、外層に摩耗性に優れた樹脂を用いるなどすることにより、高い研磨作用と清掃力を確保しつつ、耐屈曲性・耐摩耗性に優れた高品質のテーパー用毛を提供することができる。
(5)多層構造になるテーパー用毛の各層の組成を任意に設定することで、毛先および/またはストレート部の研磨力の強化を刷掃目的に合わせて自由に設計することができる。
(6)本発明のテーパー用毛の製造には、特別な工程・特別な設備が不要であり、従来用いられているテーパー用毛の製造設備をそのまま利用することができるので、高機能なテーパー用毛を低コストで安定的に製造することができる。
(7)本発明のテーパー用毛を用いて歯ブラシを作成すれば、ソフトな当たり心地と耐久性を維持しながら、歯垢掻き出し効果に優れ、かつ、歯垢掻き出し実感も充分な歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るテーパー用毛の第1の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大側面図、(b)はその縦断面図である。
【図2】本発明に係るテーパー用毛の第2の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大側面図、(b)はその縦断面図である。
【図3】本発明に係るテーパー用毛の第3の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大横断面図、(b)はその縦断面図である。
【図4】本発明に係るテーパー用毛の第4の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大横断面図、(b)はその縦断面図である。
【図5】本発明に係るテーパー用毛の第5の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大横断面図、(b)はその縦断面図である。
【図6】本発明のテーパー用毛を用いて作成した歯ブラシの例を示すもので、(a)は刷毛先端を平切り加工した本発明に係る歯ブラシの側面図、(b)は刷毛先端を山切り加工した本発明に係る歯ブラシの側面図である。
【符号の説明】
11,21,31,41,51 テーパー用毛
12,22 ベース樹脂
13,23,33,43,53,57 研磨粒子
14,24,34,44,54 テーパー部
35,45,55 芯部(内層)
36,46,56 鞘部(外層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯間清掃力と研磨性能に優れたテーパー用毛とこれを用いた歯ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術】
▲1▼特許文献1
両端をテーパー形状とされ、先端部から1mm、3mm、5mm、8mmの各部位における刷毛径が基部の刷毛径に対し、25〜35%、55〜70%、80〜90%、90〜100%とされたモノフィラメントからなるテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの合成樹脂からなる。毛先が適度に柔らかく、隙間への進入性が高いが、テーパー部表面が平滑な構造となるため、歯面歯垢の掻き出し能力には研究の余地があった。
【0003】
▲2▼特許文献2
用毛表面のすべてまたはその一部に凹凸が形成され、用毛体積をV、表面積をAとするとき、A/V≧0.20としたテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、歯間や歯と歯茎の境目の歯垢除去効果が高く、歯茎への当たり心地がソフトで使用感と耐久性に優れる。このテーパー用毛は、先鋭テーパー用毛としての用毛体積に対する表面積比や断面積に対する外周比の最適値について新しい観点から研究したものであるが、本発明のようにテーパー用毛の毛先の歯垢掻き取り能力の強化に焦点を当てた開発はなされておらず、毛先部分の歯垢掻き取り能力に関しては改良の余地があった。
【0004】
▲3▼特許文献3
表面に100μm程度の痘痕または蛇腹状の凹凸を持つテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、表面や極狭い部位に付着した異物の除去効果に優れるが、100μm程度の凹凸であるため、口腔内の隙間に毛先を進入させるには毛先が太くなり過ぎ、歯ブラシとしてその長所を十分に発揮できない。
【0005】
▲4▼特許文献4
表面に多数の凹部(ウォータースポット)を形成したポリエステル系繊維が示されている。この繊維は、獣毛の風合いを再現することを目的としたものであり、口腔清掃用の用毛ではない。たとえ歯ブラシ用の用毛として用いたとしても、表面に凹部を形成した構造のため、刷掃による用毛の折れや耐久性の低下などの問題が発生する。また、表面に凸部を形成した構造に比べて汚れの掻き出し能力も劣り、凹部への歯垢や汚れの滞留による衛生上の問題も発生する。
【0006】
▲5▼特許文献5
テーパー部表面に1〜15μmの微細凹部を多数形成したテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、用毛表面が凹構造のため、凸構造のテーパー用毛よりも刷掃力が弱い。また、用毛表面に多数の微細な穴が形成されるため、毛のへたりも早いという問題を有する。また、微細凹部には歯垢や食べカスが溜まりやすく、衛生上好ましいとはいえない。さらに、実際の使用に関しても、1〜15μm程度の微細凹部では、表面が滑らかなテーパー用毛との違いを実感することが難しい。
【0007】
▲6▼特許文献6
クレーまたはシリカなどの粒子状添加物を含むテーパー用毛が示されている。このテーパー用毛は、ペイントブラシや化粧用ブラシなどのための用毛であり、歯ブラシなどの口腔清掃用には向かない。また、用毛のベース樹脂はポリアミドであり、溶解などの化学処理には不向きであるため、例えば特許文献1のように毛先を鋭く先鋭化(テーパー先端径約20μm程度)することは難しい。また、モノフィラメントに研磨粒子を含ませたオーソドックスな製造手法であるため、適正な粒子添加量は0.1〜10重量%と非常に少なく、効率のよい研磨・清掃には不充分である。
【0008】
▲7▼特許文献7
エチレン−2,6−ナフタレート単位を60モル%以上含有するポリエステル樹脂100重量部に対し、研磨粒子を10〜50重量部含有せしめた研磨ブラシ用の用毛が示されている。この用毛は、従来の研磨用毛の欠点であるヘタリ耐久性を向上させるためのものであるが、一般的な手法として既に知られている。母材となるフィラメント材質を改質したものであるが、研磨粒子の含有量を多くしたり、研磨粒子の粒径を大きく(30μm程度)したりすると、用毛としての耐久性が低下するという欠点がある。
【0009】
▲8▼特許文献8
粒子径が約0.1〜約10μmの磨き剤を含有する、直径が均一なフィラメント(ストレート毛)を用いた歯ブラシが示されている。このフィラメントは、コア領域と鞘領域を有し、鞘領域に磨き剤を含むとともに、コア領域にも前記磨き剤を0〜約25%含むものである。しかしながら、このフィラメントのように、含有する磨き剤の粒子径が0.1〜10μm程度では充分に高い清掃・研磨効果を得るには不充分である。特に、ストレート毛でヤスリのような高い研磨効果を得るには、10μmより大きな磨き粒子部を持つことが望ましい。また、用毛径が全体的にストレート(同一径)のため、毛先が狭い隙間に入りにくく、歯間部などの狭い部位の清掃力・研磨力には不足がある。さらに、コア領域に磨き剤を含ませて毛先に高い研磨力を有するフィラメントを製造する場合、コア領域と鞘領域ともに磨き剤を含むため、用毛の耐屈曲性が低下するという欠点がある。
【0010】
▲9▼特許文献9
研磨材として炭化ケイ素を含有したナイロン6−10を芯糸とし、研磨材を含まないナイロン6−66を芯糸のまわりに側糸として螺旋状などの形態で巻き付けた研磨用毛が示されている。この用毛は、芯糸を側糸でカバーすることで耐久性を向上させたものであるが、構造が複雑なため製造が難しく、専用設備が必要なためコスト高となる。また、芯糸を側糸で被ってしまうため、研磨力が低い。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−141923号公報(全頁、全図)
【特許文献2】
特開2001−178543号公報(全頁、全図)
【特許文献3】
特開平8−47423号公報(全頁、全図)
【特許文献4】
特開昭49−47618号公報(全頁、全図)
【特許文献5】
特開平10−313949号公報(全頁)
【特許文献6】
特表2003−500555号公報(全頁、全図)
【特許文献7】
特開平2003−39335号公報(全頁、全図)
【特許文献8】
特表平10−513083号公報(全頁、全図)
【特許文献9】
実開平5−5356号公報(全頁、全図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の用毛の場合、次のような問題があった。
(1)研磨性能を向上させるためには、研磨粒子の含有量の増加や粒子サイズの大型化などの手法があるが、単一樹脂からなるモノフィラメントの場合、ベース樹脂を改質しても研磨粒子の含有量が30%程度を越えると耐屈曲性の著しい低下が見られる。また、粒子サイズの大型化についても同様に耐屈曲性の著しい低下が見られる。
(2)用毛の耐屈曲性低下防止のために側糸などで研磨用の芯糸をカバーする場合、製造工程が複雑化するばかりでなく、側糸が芯糸を被う構造のために研磨力が充分に発揮されない。また、側糸くずなどが製造設備に悪影響を及ぼすことがある。
(3)一般に、テーパー用毛は隙間進入性が高いが、毛先が柔らかいため、用毛の毛先や毛腹で磨く場合などにおいては研磨力が充分でなく、汚れ除去実感などに不満が出ることがある。改善方法としては、テーパー先端径を大きめにしたり、基部径を太くしたりするなどの方法があるが、ソフトで優しい当たり心地というテーパー用毛の長所は犠牲になってしまう。
(4)研磨粒子練り込みタイプの用毛では、紡糸過程で研磨粒子がベース樹脂中に埋没してしまうため、用毛表面に露出しにくく、研磨効果を発揮させるには大きなサイズの粒子を配合するなどの必要がある。また、テーパー用毛において、テーパー先端径と同等以上の粒子サイズの研磨粒子を配合すると、毛先部分の耐久性の著しい低下や脆さという問題が発生しやすい。
(5)表面に凹部を形成した用毛の場合、その構造上、歯垢掻き出し実感が低い、毛先がへたりやすいなどの問題がある。また、凹部内に汚れが滞留しやすく、不衛生になりやすいという問題もある。
【0013】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、毛先のソフトな当たり心地と、用毛としての耐久性を維持しながら、歯垢掻き出し効果と掻き出し実感に優れたテーパー用毛およびこのテーパー用毛を用いた歯ブラシを提供することを課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような手段を採用した。
すなわち、第1の発明に係るテーパー用毛は、少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛において、テーパー部および/またはストレート部の表面に研磨粒子からなる微細凸部を形成したものである。また、第2の発明に係るテーパー用毛は、少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛において、該テーパー用毛を2層以上の多層構造とし、該多層構造になるテーパー用毛のいずれかの層に研磨粒子を混練することにより、テーパー部および/またはストレート部の表面に微細凸部を形成したものである。さらに、本発明の歯ブラシは、ヘッド部に植毛された刷毛の全部または一部に、前記本発明のテーパー用毛を用いたことを特徴とするものである。なお、前記テーパー用毛の多層構造としては、製造の容易さなどの点から、2層構造(いわゆる二重芯鞘構造)とすることが好ましい。
【0015】
本発明は、上記のような手段を採用したので、研磨粒子からなる微細凸部をテーパー部表面に形成した場合、毛先のソフトな当たり心地を確保しながら、テーパー部表面の微細凸部によって歯間部などの狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。また、研磨粒子からなる微細凸部をテーパー部以外のストレート部表面に形成した場合、毛先のソフトな当たり心地を確保しながら、ストレート部表面の微細凸部によって歯面の汚れなどを効果的に除去することができる。また、研磨粒子からなる微細凸部をテーパー部表面とストレート部表面の両方に形成した場合、毛先のソフトな当たり心地を維持しながら、歯間部などの狭い隙間の歯垢や汚れ、歯面の汚れなどを効果的に除去することができる。さらに、テーパー用毛を多層構造とした場合には、目的に応じて研磨粒子の形成場所と各層の使用樹脂を選択することができるので、従来のテーパー用毛に比べて毛先の耐屈曲性や耐摩耗性も向上することができる。
【0016】
(1)用毛の材質と構成
本発明のテーパー用毛は、全体が単一の樹脂で構成されるか、あるいは2層(以上の多層構造とされた用毛であり、狭い隙間への高い進入性を実現させるために、少なくともその一端を毛先にいくほどその径が小さくなるテーパー形状とした用毛である。歯ブラシ用の場合、テーパー部の開始位置は毛先先端から5〜10mm程度の部位から始まり、テーパー先端径は5〜90μm程度、基部径(テーパーの施されていないストレート部の径)は140〜250μm程度とすることが望ましく、より望ましくはテーパー先端径10〜60μm程度、基部径150〜220μm程度(いずれも、微細凸部の突起部分を含まないベース樹脂部分の径)である。
【0017】
毛先のソフトな当たり心地を維持しながら、歯間部などの狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出したい場合には、研磨粒子からなる微細凸部はテーパー部表面に形成することが望ましい。また、毛先のソフトな当たり心地を維持しながら、歯牙の根元にある柔らかい象牙質を傷めることなしに歯面の汚れを刷掃したい場合には、研磨粒子からなる微細凸部はテーパー部を除いたストレート部のみに形成することが望ましい。より効率的に歯面を刷掃したい場合には、ストレート部表面により多くの大きな微細凸部を形成することが望ましい。なお、用毛の断面形状は円形が基本であるが、多角形など他の断面形状でもよく、特に制限されるものではない。
【0018】
用毛先端を溶解処理(加水分解反応)することによってテーパーを形成する場合は、用毛基体部を構成するベース樹脂としては、薬品加工性と加工品の安全性の点から、ポリエステル系樹脂などを用いることが望ましい。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびこれらのブレンド樹脂などを挙げることができる。ポリアミドは薬品加工性と加工品の安全性の点で溶解処理には適しないが、テーパー形成を溶解処理によらず研磨処理などによって行なう場合には、用毛材質には特に制限はなく、前記各樹脂に加え、ポリアミドも用いることができる。
【0019】
(2)微細凸部の材質と構成
研磨用の微細凸部は、ベース樹脂に混練した研磨粒子によって形成される。研磨粒子は、目的に合わせて種々のものを用いることができるが、歯ブラシの場合、歯のエナメル質などを傷つける恐れのないものがよく、硬すぎるものは好ましくない。また、微細凸部を有するテーパー部が歯周ポケットなどに入り込んで歯の根元まで磨けるようにした歯ブラシの場合には、研磨粒子は歯の象牙質を損耗させない程度で硬いことが望ましい。一方、研磨粒子は、ブラッシングによるストレスなどで崩れてしまうほど柔らかいものも適さない。さらに、研磨粒子は使用中に用毛基体部から脱落する可能性もあることを考慮し、安全性の確保されるものが望ましい。このような研磨粒子としては、例えば、ポリマー粒子、クルミや樫の木などの植物片、ゴム粒子、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、シリカ、クレーなどを挙げることができる。
【0020】
用毛先端をアルカリ溶液に浸漬してテーパー加工を施す場合には、研磨粒子がアルカリ溶液によって溶解・消失しないように、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、シリカ、クレー、あるいは耐酸性・耐アルカリ性の高いポリアミドなどのポリマー粒子を用いることが望ましい。また、酸によるテーパー加工を施す場合には、酸で溶解・消失しない研磨粒子を用いる必要がある。
【0021】
単一樹脂からなるテーパー用毛の場合、ベース樹脂に混練する研磨粒子のサイズは、毛先の耐屈曲性・耐摩耗性の点から、テーパー先端径よりもかなり小さくする必要がある。通常、歯ブラシ用のテーパー用毛におけるテーパー先端径は5〜90μm程度、好ましくは10〜60μm程度であるから、混練する研磨粒子の径は1〜30μm程度、好ましくは5〜15μm程度とすることが望ましい。
【0022】
一方、多層構造、例えば2層構造(二重芯鞘構造)のテーパー用毛の場合、芯部(内層)を研磨粒子なし層、鞘部(外層)を研磨粒子含有層とした場合、芯部で構成される毛先部分(テーパー部)には研磨粒子を含ませる必要がないため、鞘部にはテーパー先端径よりも径の大きな研磨粒子、例えば鞘部厚さの2倍以下、より好ましくは1.5倍以下の径からなる研磨粒子を混練することが可能である。逆に、芯部を研磨粒子含有層、鞘部を研磨粒子なし層とした場合は、前述したように歯ブラシ用のテーパー用毛におけるテーパー先端径は5〜90μm程度、好ましくは10〜60μm程度であるから、芯部に混練する研磨粒子の径は、前述した単一樹脂からなるテーパー用毛の場合と同じく、1〜30μm程度、好ましくは5〜15μm程度とすることが望ましい。
【0023】
一般的に、鞘部に混練される研磨粒子のサイズは、押出し成形機の口金を問題なく通れば、鞘部厚みの仕上がり寸法より大きくても構わない。大きな研磨粒子であっても口金から押し出された時点では鞘部内に埋没している。そして、延伸工程を経て用毛径が細く伸ばされるにつれ、埋没していた研磨粒子が表面に露出するようになるので、研磨効果が非常に高く、しかもベース樹脂から剥がれにくいテーパー用毛となる。なお、粒子サイズが小さ過ぎる場合には高い研磨実感を得ることが難しく、逆に大き過ぎる場合には耐屈曲性などの品質が損なわれるばかりでなく、押出し成形機の口金詰まりなどのトラブルが発生しやすくなり、好ましくない。したがって、鞘部に混練する研磨粒子のサイズは、前述したように鞘部厚さの2倍以下、より好ましくは1.5倍以下の径とすることが望ましい。
【0024】
研磨粒子の含有量は5〜60重量%程度がよいが、より好ましくは10〜50重量%程度がよい。多層構造のテーパー用毛の場合、芯部が存在するため、通常の研磨用毛よりも含有量が多い場合でも、従来の研磨用毛ほどには耐久性の低下は起こらない。研磨粒子の量が少な過ぎると、高い研磨効果が得られず、逆に多過ぎると鞘部が脆くなり、耐屈曲性などの品質に悪影響を及ぼす。
【0025】
(3)本発明のテーパー用毛の製造法
単一樹脂からなるテーパー用毛の場合、ベース樹脂に研磨粒子を混練した後、通常の押出し成形機で押し出し、また、多層構造になるテーパー用毛の場合には、所定の層に研磨粒子を混練した後、共押出し成形機で押し出すことにより、単一樹脂または多層構造になる用毛を製糸する。このようにして得られた単一樹脂または多層構造になる用毛を所定本数束ねて定寸にカットした後、このカットピースの端部を薬品(高温・高濃度の水酸化ナトリウムなどの加水分解溶液)で溶解処理することにより、用毛先端部にテーパー部を形成する。このテーパー加工時、樹脂が溶解して消失するにつれ、樹脂内に混練されている研磨粒子が露出し、テーパー部表面に研磨粒子からなる微細凸部が形成される。このようにして得られたテーパー用毛を必要に応じて中和、洗浄、乾燥処理した後、歯ブラシヘッド部に植毛する。
【0026】
また、テーパー用毛の外層表面(ストレート部)に研磨粒子からなる微細凸部を形成したい場合には、前記単一樹脂または多層構造になる用毛を製糸した後、製糸された用毛を延伸処理すればよい。延伸処理によって用毛が細く伸ばされるにつれ、押出し成形時に口金によって樹脂内部に押し込まれた研磨粒子が表面に露出し、最終的にテーパー用毛の外層表面に研磨粒子からなる微細凸部が形成される。この後、前記溶解処理によって用毛先端にテーパーを形成すればよい。
【0027】
なお、テーパー部に微細凸部を形成するには、カットピースを歯ブラシヘッド部に植毛した後、用毛先端を一度に溶解薬品中へ浸漬することにより、形成してもよい。また、テーパー用毛を植毛した歯ブラシは、必要に応じて刷毛先端を所定の形状(例えば、山切り、平切り、波形カットなど)にトリミングし、あるいは毛先の丸め加工を施してもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明に係るテーパー用毛の第1の実施の形態を示す。(a)は毛先部分の模式拡大側面図、(b)はその縦断面図である。
この第1の実施の形態に係るテーパー用毛11は、用毛全体を単一樹脂で構成したもので、用毛本体を構成するベース樹脂12としてポリブチレンテレフタレートを用いるとともに、ベース樹脂12に混練する研磨粒子13として炭酸カルシウムを用い、研磨粒子13を混練した用毛先端をアルカリ溶液で溶解処理することにより、毛先先端を細く鋭く尖らせてテーパー部14を形成するとともに、溶解したテーパー部14の表面に研磨粒子13を凸状に露出させて微細凸部としたものである。この例の場合、用毛の基部径(ストレート部の径)は190μm、テーパー部14の開始位置は毛先先端から8mm位置、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径は20μm、混練した研磨粒子13のサイズは10μmである。
【0029】
この第1の実施の形態に係るテーパー用毛11は、テーパー部14の先端が細く鋭く尖っているので、極めて歯間進入性に優れるとともに、テーパー部14の表面に露出した研磨粒子13からなる微細凸部によって狭い歯間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。また、研磨粒子3を混練したベース樹脂12を溶解することによりテーパー部14を形成しているため、毛先先端に行くほど研磨粒子3の露出面積が大きくなる。このため、先端側ほど歯垢掻き取り効果が高くなり、狭い隙間の奥にある歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。
【0030】
図2に、本発明に係るテーパー用毛の第2の実施の形態を示す。
この第2の実施の形態に係るテーパー用毛21は、第1の実施の形態(図1)と同様の構成において、テーパー部24の先端を完全に尖らすことなく台形状としたものである。この例の場合、テーパー用毛21の基部径200μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径60μm、研磨粒子23のサイズは5〜20μmと幅を持たせ、色々な大きさのものを混練した。
【0031】
この第2の実施の形態に係るテーパー用毛21は、テーパー部24の先端が台形状とされているので、歯間進入性については前記第1の実施の形態(図1)のものに比べて若干劣るが、テーパー先端が台形状をしているので、歯茎などに当たった時のチクチク感を無くすことができる。また、研磨粒子23のサイズを5〜20μmと幅を持たせ、種々の大きさのものを混練したので、テーパー部表面から露出した研磨粒子23の大きさもいろいろなものとなる。このため、いろいろな大きさの微細凸部によって歯垢や汚れを掻き出すことができるので、優れた掻き取り効果を発揮することができる。
【0032】
図3に、本発明に係るテーパー用毛の第3の実施の形態を示す。
この第3の実施の形態に係るテーパー用毛21は、用毛を二重芯鞘構造(2層構造)とし、芯部(内層)35の材質としてポリブチレンテレフタレートを、鞘部(外層)36の材質としてポリエチレンテレフタレートを用いるとともに、鞘部36に研磨粒子33としてシリカを混練したもので、ストレート部を構成する鞘部36の表面に研磨粒子33からなる微細凸部を形成したものである。この例の場合、用毛の基部径190μm、芯部35の直径140μm、鞘部36の厚み25μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー部径20μm、研磨粒子33のサイズ25μmとした。
【0033】
この第3の実施の形態に係るテーパー用毛31は、鞘部36のみに研磨粒子33を混練したので、ストレート部を構成する鞘部36の表面にのみ研磨粒子34が露出する。このため、テーパー用毛31の毛腹で歯面を刷掃する際などに、この鞘部表面の微細凸部によって歯面の歯垢や汚れを効果的に除去することができる。また、歯の根元にある柔らかい象牙質部分に届くテーパー部34部分には研磨粒子が存在しないため、従来のテーパー用毛と同様に柔らかく優しい当たり心地を確保することができる。また、芯部35に屈曲性に優れた樹脂を使用することにより、鞘部36に大きな研磨粒子33を混練しても、毛先の屈曲性が犠牲になるようなことも防ぐことができる。
【0034】
図4に、本発明に係るテーパー用毛の第4の実施の形態を示す。
この第4の実施の形態に係るテーパー用毛41は、前記第3の実施の形態(図3)と同様の二重芯鞘構造において、研磨粒子43を芯部45のみに混練するとともに、テーパー部44の先端を極限まで尖らせることなく台形状としたものである。この例の場合、用毛の基部径200μm、芯部45の直径100μm、鞘部46の厚み50μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径70μm、研磨粒子43のサイズ25μmとした。
【0035】
この第4の実施の形態に係るテーパー用毛41は、芯部45のみに研磨粒子43を混練し、テーパー部44の先端側のみに研磨粒子43からなる微細凸部を形成したものである。したがって、テーパー部になんら微細凸部を有しない従来のテーパー用毛に比べ、テーパー部44の先端部分で歯の狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができるようになる。また、鞘部46に耐屈曲性や耐摩耗性に優れた樹脂を採用することにより、従来のテーパー用毛よりも耐屈曲性、耐摩耗性を向上することができる。なお、研磨粒子43の粒径は、テーパー部44の先端の径との関係で決定することが望ましく、その硬度は研磨目的に応じたものとするが、歯ブラシに用いる場合は、象牙質より柔らかい硬度とすることが望ましい。
【0036】
図5に、本発明に係るテーパー用毛の第5の実施の形態を示す。
この第5の実施の形態に係るテーパー用毛51は、前記第4の実施の形態(図4)と同様の二重芯鞘構造において、芯部55に粒径の小さな研磨粒子53を混練するとともに、鞘部56に径の大きな研磨粒子57を混練し、テーパー部54と、鞘部56(ストレート部)の表面の両方に微細凸部を形成したものである。この例の場合、用毛の基部径200μm、芯部55の直径100μm、鞘部56の厚み50μm、毛先先端から0.1mm位置のテーパー径70μm、芯部55に混練した研磨粒子53のサイズ25μm、鞘部56に混練した研磨粒子57のサイズ30μmとした。
【0037】
この第5の実施の形態に係るテーパー用毛51は、芯部55と鞘部56の両方に粒径の異なる研磨粒子53,57をそれぞれ混練したので、テーパー部54に形成される微細凸部と鞘部56に形成される微細凸部の大きさを異なったものとすることができ、歯の狭い隙間や歯面を、それぞれの場所に応じた微細凸部によって効果的に刷掃することができる。
【0038】
図6に、本発明のテーパー用毛を用いて作製した本発明の歯ブラシの例を示す。図示の歯ブラシは、前記第1の実施の形態(図1)に係るテーパー用毛を用いて作製した歯ブラシの例を示すもので、(a)は刷毛の先端を平切りとした場合の例、(b)は刷毛の先端を山切りとした場合の例をそれぞれ示すものである。いずれの歯ブラシの場合も、歯ブラシヘッド部31に植毛されたテーパー用毛11の毛先部分だけに研磨粒子13が露出し、微細凸部を形成しているので、この研磨粒子13からなる微細凸部によって歯間などの狭い隙間の歯垢や汚れを効果的に掻き出すことができる。他のテーパー用毛の場合も同様にして作製することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変形ならびに変更が可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施の形態では、単一樹脂からなるテーパー用毛の場合と、2層構造(二重芯鞘構造)のテーパー用毛の場合について例示したが、三層以上の多層構造とすることもできる。三層以上の多層構造とした場合には、用毛の製造自体は面倒になるが、研磨粒子を配合する層の組み合わせと使用する樹脂をいろいろと変えることができるので、目的に応じてより効果的な研磨作用と清掃効果を実現することができる。また、前記実施の形態では、本発明のテーパー用毛を歯ブラシに用いた場合について例示したが、歯ブラシなどの口腔洗浄用具の他、工業加工用の研磨用ブラシ、清掃ブラシなど、他の用途にも広く利用することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏することができる。
(1)従来のテーパー用毛と同じく隙間進入性が高いだけでなく、これまでは得られなかったテーパー毛先部分での高い歯垢掻き取り能力を実現することができる。
(2)テーパーの形状や用毛径を従来と同様に維持しながら、毛先刷掃性能を向上させることができるため、テーパー用毛独特の長所を損なうことがなく、優しくソフトな当たり心地を維持することができる。
(3)その構造上、用毛の表面に凹部を持たないため、従来より知られている表面に微細な凹部を有するテーパー用毛のように凹部内に歯垢や滓などが溜まって不衛生になるようなことがない。また、凹部のために径が細くなって折れるようなことがないため、刷毛のへたり耐久性を犠牲にすることがなく、長期間の使用においても、その清掃効果を充分に維持することができる。
(4)多層構造とした場合、従来の研磨用毛のように研磨粒子の含有量を増加させたり、大きい粒径の研磨粒子を配合しても、内層に屈曲性に優れた樹脂を用い、外層に摩耗性に優れた樹脂を用いるなどすることにより、高い研磨作用と清掃力を確保しつつ、耐屈曲性・耐摩耗性に優れた高品質のテーパー用毛を提供することができる。
(5)多層構造になるテーパー用毛の各層の組成を任意に設定することで、毛先および/またはストレート部の研磨力の強化を刷掃目的に合わせて自由に設計することができる。
(6)本発明のテーパー用毛の製造には、特別な工程・特別な設備が不要であり、従来用いられているテーパー用毛の製造設備をそのまま利用することができるので、高機能なテーパー用毛を低コストで安定的に製造することができる。
(7)本発明のテーパー用毛を用いて歯ブラシを作成すれば、ソフトな当たり心地と耐久性を維持しながら、歯垢掻き出し効果に優れ、かつ、歯垢掻き出し実感も充分な歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るテーパー用毛の第1の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大側面図、(b)はその縦断面図である。
【図2】本発明に係るテーパー用毛の第2の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大側面図、(b)はその縦断面図である。
【図3】本発明に係るテーパー用毛の第3の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大横断面図、(b)はその縦断面図である。
【図4】本発明に係るテーパー用毛の第4の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大横断面図、(b)はその縦断面図である。
【図5】本発明に係るテーパー用毛の第5の実施の形態を示すもので、(a)はテーパー用毛の毛先部分の模式拡大横断面図、(b)はその縦断面図である。
【図6】本発明のテーパー用毛を用いて作成した歯ブラシの例を示すもので、(a)は刷毛先端を平切り加工した本発明に係る歯ブラシの側面図、(b)は刷毛先端を山切り加工した本発明に係る歯ブラシの側面図である。
【符号の説明】
11,21,31,41,51 テーパー用毛
12,22 ベース樹脂
13,23,33,43,53,57 研磨粒子
14,24,34,44,54 テーパー部
35,45,55 芯部(内層)
36,46,56 鞘部(外層)
Claims (3)
- 少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛において、テーパー部および/またはストレート部の表面に研磨粒子からなる微細凸部を形成したことを特徴とするテーパー用毛。
- 少なくとも毛先の一端をテーパー形状とされた用毛において、該テーパー用毛が2層以上の多層構造になり、該多層構造になるテーパー用毛のいずれかの層に研磨粒子を混練することにより、テーパー部および/またはストレート部の表面に微細凸部を形成したことを特徴とするテーパー用毛。
- ヘッド部に植毛された刷毛の全部または一部に、前記請求項1または2に記載のテーパー用毛を用いたことを特徴とする歯ブラシ。
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