JP2004538252A - シクロヘキサンジカルボン酸およびその誘導体を製造する方法 - Google Patents

シクロヘキサンジカルボン酸およびその誘導体を製造する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ジエン/無水マレイン酸混合物、特にブタジエン/無水マレイン酸混合物または無水マレイン酸およびC5ジエンの混合物を反応させ、アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成し、エステルを形成し、引き続き水素化して相当するシクロヘキサンジカルボン酸誘導体を形成することからなるシクロヘキサンジカルボン酸またはエステルおよび/または無水物のようなその誘導体の製造方法および本発明により製造したシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体のプラスチックの可塑剤としての使用に関する。

Description

【0001】
本発明は、ジエン/無水マレイン酸混合物、特にブタジエン/無水マレイン酸混合物または無水マレイン酸と少なくとも1個のC5ジエンの混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成することからなる、シクロヘキサンジカルボン酸またはエステルおよび/または無水物のようなその誘導体を製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、更に、本発明により製造されたアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体、これらの1個以上を有する混合物、および本発明により製造された反応生成物、すなわち得られたアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸化合物、特にシクロヘキサンジカルボン酸エステルの、プラスチック、特にポリ塩化ビニル(PVC)およびポリビニルブチラール(PVB)の可塑剤としての使用に関する。
【0003】
フタル酸エステル、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレートまたはジイソノニルフタレートは、フランス特許第2397131号明細書から明らかなように、これまでPVCのようなプラスチックに可塑剤としてきわめて頻繁に使用されてきた。しかしフタル酸エステルは近年健康に有害であると主張され、プラスチック、例えば玩具の製造におけるその使用は批判が増加し、現在一部の国では使用が禁止されている。動物実験によりフタル酸エステルがマウスおよびラットでの長期間の研究で生じる肝臓の腫瘍の原因であるペルオキシソームの増殖を生じることが示された。
【0004】
可塑剤としての一部のシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルの使用は同様に技術水準から公知である。例えばプラスチックの可塑剤としてのジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートまたはジエチルシクロヘキサンジカルボキシレート(ドイツ特許第2823165号明細書)およびジ−2−エチルヘキシルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート(ドイツ特許第1263296号明細書)の使用は記載されている。
【0005】
PCT/EP98/08346号にはシクロヘキサンポリカルボン酸およびその誘導体を可塑剤として使用できることが記載されている。この関係でシクロヘキサンポリカルボン酸およびその誘導体の密度および粘度が、これまで可塑剤として主に使用されたフタル酸エステルの密度および粘度より低く、更にこれらの化合物が、特に可塑剤として相当するフタル酸エステルを使用して比較した場合に、特にプラスチックの良好な低温柔軟性を生じることが記載されている。PCT/EP98/08346号にはシクロヘキサンポリカルボン酸およびその誘導体の乾燥混合物処理特性が相当するフタル酸エステルの特性より良好であり、従ってこれらの化合物は明らかに低い粘度を介して製造速度の増加およびプラスチゾル処理に関する利点を有することが記載されている。
【0006】
欧州特許第0603825号明細書は担持されたパラジウム触媒を使用してテレフタル酸を水素化することによりシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸を製造する方法に関し、使用される担体は酸化アルミニウム、二酸化珪素または活性炭である。
【0007】
ドイツ特許第19977977.2号はプラスチックの可塑剤としてシクロヘキサンポリカルボン酸またはその誘導体の使用を記載し、これは生物的に重要なペルオキシソームの増殖を生じることがなく、すなわち毒性的に有害でないと見なされる。
【0008】
ドイツ特許第19927978.0号は、担体に被覆された、単独でまたは元素周期表のIまたはVII亜族の少なくとも1個の金属と一緒に、活性金属として元素周期表のVIII亜族の少なくとも1個の金属を有する触媒の存在で、水素含有ガスと接触することによる、相当するイソフタル酸エステルおよびテレフタル酸エステルの水素化により製造される、選択されたシクロヘキサン−1,3−および−1,4−ジカルボン酸エステルに関する。
【0009】
選択されるノルボルナン−2.3−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸および3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のジエステルは原則的に、例えば特開平12−034492号、特開昭45−11074号、特開昭46−73342号、特開昭52−95025号または特開昭46−38205号から公知である。6〜28個の炭素原子を有するアルコールをベースとするメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルは現在まで、例えば特開昭63−06252号に、ポリオレフィンの可塑剤としてのみ記載されている。PVCに関して、アルコール成分としてn−オクタノールまたは2−エチルヘキサノールを有するノルボルナン−2,3−ジカルボン酸のエステルのみが記載されている(S.マツダ、S.キッカワ、工業化学雑誌(1959)62、1838−1841)。
【0010】
毒性的に問題がない可塑剤の使用は、日常使用するための製品を製造するために使用される可塑剤にとって特に重要である。特にポリ塩化ビニルは、子供のおもちゃを含む日常的な使用に多くの製品を製造するために使用される。
【0011】
シクロヘキサンカルボン酸を製造するために今日まで利用されるすべての方法は基礎となるフタル酸エステルの水素化にもとづく。これは可塑剤を製造する反応に1つの工程を加え、生成物をより高価にする。
【0012】
従って本発明の課題は、まず、アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造することができ、大量に容易に入手できる安い原料を使用する方法を提供することである。
【0013】
前記課題は、アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法により解決され、前記方法は以下の連続工程(1)〜(3):
(1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(2)アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
(3)工程(2)のアルキル置換または非置換のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
(1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(3)アルキル置換または非置換のシクロヘキセン無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
(2)アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
からなる。
【0014】
本発明の枠内で、アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸無水物は脂肪族環にアルキル置換基を有するシクロヘキサン誘導体またはアルキル残基と橋かけした、すなわち双環構造のシクロヘキサン誘導体である。
【0015】
本発明の枠内で、シクロヘキサンジカルボン酸が置換されていないかまたはメチル置換基を有する場合が有利である。本発明によりメチル置換基はメチレン橋であってもよい。
【0016】
ジエンは有利には10個より少ない炭素原子、特に6個より少ない炭素原子を有するジエンであり、特に有利にはブタジエンまたは5個の炭素原子を有するジエンである。本発明により適当なジエンは、共役二重結合を有するジエンである。単離した二重結合を有するジエンは本発明の反応条件下で反応しない。
【0017】
従って本発明の特に有利な実施態様において、本発明はシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法に関し、前記方法は以下の連続工程(1)〜(3):
(1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(2)シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
(3)工程(2)のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
(1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(3)シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
(2)シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
からなる。
【0018】
本発明の方法の利点は、工程(1)の反応に粗製無水マレイン酸溶液および粗製ブタジエン混合物を使用することであり、この場合にこれらは副生成物および不活性成分、例えば窒素、酸素またはn−ブタンまたはイソブタンからなり、従って純粋なブタジエンおよび純粋な無水マレイン酸を得る1つの処理工程を節約できる。
【0019】
他の有利な実施態様において、本発明は、アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法に関し、前記方法は、以下の連続工程(1)〜(3):
(1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンの混合物を反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(2)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
(3)工程(2)のアルキル置換シクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
(1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンの混合物を反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(3)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
(2)アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
からなる。
【0020】
本発明により、シクロヘキサンジカルボン酸およびその誘導体はそれぞれのシクロヘキサンジカルボン酸自体およびその誘導体を含み、シクロヘキサンジカルボン酸のモノエステル、ジエステルおよび無水物を特に記載すべきである。使用されるエステルはアルキルエステル、シクロアルキルエステル、およびアルコキシアルキルエステルであり、アルキル基、シクロアルキル基およびアルコキシアルキル基は一般に1〜30個、有利には2〜20個、特に3〜18個の炭素原子を有し、直鎖状または分枝状である。
【0021】
適当な粗製ブタジエン混合物は大部分が炭化水素からなるブタジエン含有混合物であり、ブタジエン以外の炭化水素は前記方法の工程(1)の条件下で不活性である。
【0022】
これらの不活性炭化水素の例は、アルカン、モノアルケン、シクロアルカン、ベンゼンおよびジアルキルベンゼンであり、例えばプロパン、n−ブタン、2−メチルプロパン、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、イソブテン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびキシレンである。
【0023】
この粗製ブタジエン混合物中のブタジエンの割合の下限は一般に存在しないが、例えば本発明の方法の工程(1)の空−時収率の理由から、これらの混合物中のブタジエン含量ができるだけ高いことが一般に好ましい。粗製ブタジエン混合物中のブタジエン含量を調節できる他の要因は本発明の方法の工程(1)の後に残留する炭化水素流の意図的な作成である。例えば本発明の方法の工程(1)の反応後に炭化水素流がブタジエンをほとんど含まないように意図する場合は、使用される混合物中のブタジエン含量を相当して調節すべきである。
【0024】
これらの粗製ブタジエン混合物は、有利にはブタジエン20〜95質量%、特に40〜50質量%を含有する。
【0025】
特に安い粗製ブタジエン混合物は、ブタジエン含量が一般に40〜50質量%である粗製C4留分として知られているものである。この留分は工業的に大量に製造される(例えばK.Weissermel、H.J.Arpe.Industrielle Organische Chemie、VCH Weinheim 第5版、1998、およびフランス特許第1343169号、ドイツ特許第1443362号およびドイツ特許第1468843号参照)。粗製C4留分を使用して、得られる炭化水素流がブタジエンをほとんど含まないように本発明の方法の工程(1)を実施することが可能である。この炭化水素流の組成は、分解装置のC4留分からブタジエン抽出によりその他の一般な方法に得られるラフィネートIとして知られているものと同じ組成であり、従ってこの流れはラフィネートIの代用物として使用することができる。
【0026】
一般に知られているように、C4留分からのブタジエンの分離は、C4留分の他の成分と共沸混合物を形成するために、一般に蒸留を使用することを不可能にし、従ってこれらのC4留分からブタジエンを抽出するために一般に複雑な方法が必要である。
【0027】
従って本発明の方法の工程(1)はそれ自体ブタジエン含有炭化水素混合物、特にC4留分からブタジエンを除去する新しい方法を提供する(K.Weissermel、H.J.Arpe.Industrielle Organische Chemie、VCH Weinheim 第5版、1998)。
【0028】
従って本発明の方法の工程(1)は、ブタジエン含有炭化水素流からブタジエンを分離する方法であり、炭化水素流を無水マレイン酸と反応させ、得られたシクロヘキサンジカルボン酸無水物を残留する炭化水素流から分離する。
【0029】
本発明の1つの有利な実施態様において、n−ブテンまたはブタジエンまたはこれらの混合物を有する流れの酸化を含む方法により工程(1)による反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物が得られる。
【0030】
本発明の目的のために、有利に使用されるブタジエンは1,3−ブタジエンである。本発明により、n−ブタンを有する流れの酸化を含む方法により、工程(1)による反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物を取得することができる。
【0031】
本発明の目的のために、n−ブテンまたはブタジエンまたはこれらの混合物を有する流れは有利にはラフィネート流のC4留分である。この流れの例は以下の組成を有する混合物である。ブタン10〜90質量%、ブテン10〜90質量%。ブテン留分は以下の組成を有する。1−ブテン0〜100質量%、特に0〜80質量%、特に有利には0〜50質量%、シス−2−ブテン0〜100質量%、特に0〜80質量%、特に有利には0〜50質量%、トランス−2−ブテン0〜100質量%、特に0〜80質量%、特に有利には0〜50質量%、イソブテン0〜10質量%、この場合にこの流れが少量の、例えば0〜20質量%、特に0〜10質量%の他の炭化水素、特にC5炭化水素を有することが可能である。更に純粋なn−ブテンまたは純粋なn−ブテンとブタジエンの混合物を使用することが可能である。
【0032】
使用される特に有利な出発物質は、ラフィネートIIとして知られている物質、すなわち多くのイソブテンを分離した後の分解装置からのC4留分から得られる、n−ブテン含有C4炭化水素混合物である。しかしブタジエンの除去は本発明の方法の必須の要件ではない。従って他の精製工程は必要でない。
【0033】
本発明の目的のために、特にn−ブテン少なくとも60質量%、特に少なくとも80質量%および比較的少量のn−ブタンおよびイソブタンおよび他の炭化水素を有する、n−ブテンの多い流れを使用する。
【0034】
n−ブテンまたはブタジエンまたはこれらの混合物を有する流れの酸化の実質的な制御は種々の触媒の使用および反応条件の選択により達成することができる。
【0035】
本発明により、工程(1)の反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物を取得するために使用される方法の1つの例は、n−ブテンを酸化してブタジエンを生じることからなる。本発明により、工程(1)の反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物を得るために、粗製ブタジエンに無水マレイン酸(MA)を添加することに続いて酸化することが可能である。
【0036】
1つの有利な実施態様において、本発明はシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の製造方法を提供し、この方法は以下の反応式(I)により進行する。
【0037】
【化1】
Figure 2004538252
【0038】
式(I)中でEはn−ブテン(ラフィネート)であり、Lは空気であり、catAは触媒系Aであり、catBは触媒系Bであり、Pはシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルである。
【0039】
本発明の方法の工程(1)〜(3)は反応式に示され、反応式は以下のとおりである。
【0040】
ブタジエンを生じるための、触媒系A(catA)、例えば組成が(Fe、Co)−Mo−O+Bi−W−Oである触媒でのブテンの反応は85〜90%の高いブタジエン収率で行うことができる。米国特許第4595788号明細書および米国特許第4547615号明細書にはブタジエンまたは共役ジオレフィンの製造方法が記載されている。n−ブテンを有するC4混合物の反応中にモリブデン、ビスマスまたはニッケルをベースとする触媒を使用することにより80%より高い収率でブタジエンが得られる。比較例に示されるように、この反応はブタジエンと並んで少量の無水マレイン酸(1〜10%)を生じる。
【0041】
ブタジエンは工程(1)の反応に使用されるので、ブタジエン中のMA成分は分解しない。例えば反応式(III)の方法により、高いブテン変換率を有しておよびMAの付加的な収率を含んで、特に費用の安い方法で運転する引き続く反応のための原料としてブタジエンを得るために脱水素が可能である。
【0042】
本発明の1つの有利な実施態様において、n−ブタンを有する流れの酸化を含む方法により、ブタジエン/無水マレイン酸混合物を製造するためのn−ブテンが得られる。
【0043】
ブタジエンおよびMAを適当な混合比で有する混合物を得るために直鎖状ブテンまたはブテン含有出発物質から出発することが可能である。
【0044】
従って本発明は、n−ブテンを酸化してブタジエン/無水マレイン酸混合物を生じることからなる方法により工程(1)による反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物を取得する、シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の製造方法を提供する。
【0045】
他の有利な実施態様において、本発明はシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の製造方法を提供し、この方法は以下の反応式(II)により進行する。
【0046】
【化2】
Figure 2004538252
【0047】
式(II)中でEはn−ブテン(ラフィネート)であり、Lは空気であり、catCは触媒系Cであり、Pはシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルである。
【0048】
この触媒系C(catC)はブタジエン/無水マレイン酸混合物を生じるためのn−ブテンの反応に触媒作用するために適した触媒系である。
【0049】
MAとブタジエンの粗製混合物を引き続き工程(1)でMAの吸収剤として使用される高沸点の不活性溶剤中で反応させることができる。
【0050】
無水マレイン酸(MA)およびブタジエン中間生成物の混合物は温和な反応条件下で多様な不均一触媒上で不飽和n−C4炭化水素の酸化により取得することができる。反応条件と触媒の適当なバランスによりブタジエンおよびMAを得ることが可能になる。適当な条件および触媒の説明の例は、K.Weissermel、H.J.Arpe.Industrielle Organische Chemie、VCH Weinheim 第4版、1994に記載されている。
【0051】
無水マレイン酸を生じる他のブタジエンの反応は、第2触媒系B(catB)、例えばSbMo3.06Ti0.6Nb0.1Sn0.8/TiO上で行う。供給物に存在する無水マレイン酸は分解せず、生成物流中に分解せずに存在し続ける。従ってブテンを第1触媒系Aで反応させ、ブタジエンを生じ、引き続き第2触媒系Bで反応させる工程を使用することにより、高い全体的収率が得られ、従って生成物流中のブタジエンおよびMAの比を調節することができる。
【0052】
例としてドイツ特許第2813424号明細書は、アンチモンおよびモリブデンの酸化物を有する触媒を使用して無水マレイン酸を生じるためのブタジエンの酸化に適した条件を記載する。
【0053】
高沸点の不活性溶剤中の吸収により反応器流出物からの粗製溶液の形でMAが得られる。MA(融点55℃)の結晶化を避けるために、吸収温度は有利には55℃より高い。低沸点成分(ブタジエン、副生成物、燃焼室の水、二酸化炭素)はほとんど吸収せず、これらの成分は排出ガスから、例えば圧力変動吸収/温度変動吸収(PSA/TSA)により容易に回収することができる。
【0054】
しかしC4炭化水素からMAを製造する工業的方法と異なり、この流れはMA収率を高める気相酸化への供給物として使用されない。その代わりに、本発明の目的のために、大部分がブタジエンからなり、他のオレフィンおよびブタンを有する低沸点物の粗製混合物が、粗製MA溶液とのディールスアルダー反応である工程(1)の反応の適当な原料である。粗製混合物を、MA吸収に使用される不活性溶剤中でMAと反応させることができる。得られるディールスアルダー生成物はシクロヘキサンジカルボン酸無水物である。工程(1)の反応を実施するための適当な条件は、例えばOrganic Syntheses、Coll.Vol.IV、1963、J.Wiley and Sons、New Yorkに記載されている。
【0055】
本発明の方法の他の実施態様は、実質的にブタジエンからなり、MA副生成物の一部の収量を有する流れを生じるn−ブテン含有混合物の酸化脱水素を含む。ブタジエンおよび少量のMAを有する混合物のうちの側流が第2酸化で反応してMAを生じ、側流比は工程(1)の反応に要求される量である。他の反応で処理されない第1反応からの側流が、工程(1)で凝縮相で第2酸化からの生成物流と反応し、シクロヘキサンジカルボン酸無水物を生じる。第1酸化反応からの排出物は気体の形で第2酸化に供給され、ここで更に酸化される。第2酸化に続いて高沸点の不活性溶剤中の吸収により反応流出物から粗製溶液としてMAが得られる。第1酸化から生じ、更に反応しない気体のブタジエンを有する側流を引き続き高沸点溶剤中のMAの粗製溶液に導入することができる。工程(1)の反応を直ちに粗製生成物の得られた混合物と実施することができる。
【0056】
本発明の他の実施態様は、特に、シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の製造方法を提供し、この方法は以下の反応式(III)により進行する。
【0057】
【化3】
Figure 2004538252
【0058】
式(III)中でEはn−ブテン(ラフィネート)であり、Lは空気であり、catAは触媒系Aであり、catBは触媒系Bであり、Pはシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルである。
【0059】
本発明のもう1つの実施態様において、ブタジエン/無水マレイン酸混合物を工程(1)の反応の前に処理する。本発明の目的のための処理の1つの例は副生成物の除去または工程(1)の反応に適した成分の化学量論の比を得るための1つの成分の蓄積である。
【0060】
しかし本発明によりブタジエン/無水マレイン酸混合物を工程(1)の反応の前に処理しないことも同様に可能である。
【0061】
本発明により工程(1)の反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物を粗製ブタジエンおよび粗製無水マレイン酸から得ることも可能である。本発明の目的のために粗製ブタジエンおよび粗製無水マレイン酸は、有利にはブタジエンおよび無水マレイン酸をそれぞれ少なくとも60質量%、特に少なくとも80質量%含有する流れである。
【0062】
本発明によるその場のブタジエンの製造および工程(1)での直接反応は、例えば、容易に重合する純粋な形のジエンの使用を避けるためにデポー化合物の使用が必要である事例を記載するドイツ特許第1082908号明細書に記載されるような反応のために使用される均一反応媒体中でジエンを排出する排出が調節されたデポー化合物の複雑な使用を避けることができる。
【0063】
本発明の枠内でブタジエンと並ぶジエンはC5ジエン、すなわち炭素原子5個を有するジエンであってもよい。純粋なC5ジエンのほかに種々のジエンの混合物を使用することができる。本発明により、例えばC5留分を工程(1)によりディールスアルダー反応に挿入する。C5留分は、例えば長鎖炭化水素のクラッキングから得られる種々のC5炭化水素の混合物である。C5留分の使用の利点は、個々のC5ジエンの時間を消費する、高価な精製が回避されることである。従って本発明は、1つの有利な実施態様において、C5ジエンとして接触分解法からのC5留分を使用する、アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の製造方法に関する。
【0064】
工程(1)による無水マレイン酸(MA)とのディールスアルダー反応において、単なるジエン、シクロペンタジエン、イソプレンおよびピペリレン、すなわち共役ジエンは反応するC5留分のC5炭化水素である。例えば分解装置からのC5留分に5〜30質量%、有利には10〜25質量%、特に15〜20質量%のシクロペンタジエンが含まれ、これは部分的にジシクロペンタジエンの形で存在することができ、有利には17質量%であり、5〜25質量%、有利には10〜20質量%、特に12〜18質量%イソプレン、有利には15質量%、およびほぼ5〜25質量%、有利には10〜20質量%、特に8〜12質量%ピペリレン、有利には10質量%が含まれる。更にC5留分は本発明の反応条件下で不活性な他の化合物を含有してもよい。C5留分は、例えばn−ペンタン、イソペンタン、イソペンテン、2−ペンテン、またはメチルブテンを含有してもよく、すべての成分の合計は100質量%になる。
【0065】
C5留分とMAのディールスアルダー反応は本発明の枠内でラジカル重合阻害剤の存在で無圧でまたは反応系の自己圧下で40〜250℃の温度で熱的に実施する。C5留分がシクロペンタジエンのほかにジシクロペンタジエンを含有し、これが反応する場合は、本発明によるディールスアルダー反応に2工程法を使用することができる。その際最初にモノマージエンを、低温、例えば40〜140℃でMAと反応させる。引き続きジシクロペンタジエンを反応させるために温度を150〜250℃に高める。しかし本発明により温度を段階的に高めることにより反応器中で不連続的に反応を行うことが可能である。しかし異なる温度で運転する連続する反応器または反応器部分中で反応を連続的に行うことも同様に可能である。ディールスアルダー反応のための適当な反応器は、例えば攪拌反応器または管形反応器である。
【0066】
本発明により、工程(1)によるC5留分とMAの反応をジシクロペンタジエンとして存在するシクロペンタジエンが反応しないように実施することも可能である。従ってディールスアルダー反応中に温度を140℃未満に保つ。この反応工程は減少する生成物混合物中の5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の部分を生じる。
【0067】
無水マレイン酸と反応しないC5留分のC5炭化水素原子は工程(1)の反応後に、例えば蒸留により容易に分離することができる。
【0068】
工程(1)によるC5留分の反応において種々の無水物の混合物が得られる。5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(エンド化合物とエクソ化合物の混合物)、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物および3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が得られる。その際、例えば5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(エンド化合物とエクソ化合物の混合物)0〜30質量%、有利には10〜25質量%、特に15〜20質量%、有利には17質量%、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物0〜25質量%、有利には10〜20質量%、特に12〜18質量%、有利には15質量%、および3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物0〜25質量%、有利には10〜20質量%、特に8〜12質量%、有利には10質量%が混合物に存在する。
【0069】
本発明により工程(1)から得られるアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物の混合物をMAと少なくとも1個のC5ジエンの反応を介して処理することが可能である。本発明の枠内で工程(1)によりMAと少なくとも1個のC5ジエンの反応により得られる混合物を更に直接反応させるかまたは、例えば蒸留工程により純粋な化合物に分離することができる。本発明により純粋な化合物との引き続く反応を行うことが可能である。工程(1)による反応で得られた混合物を更に反応させることも可能である。
【0070】
以下にシクロヘキセンまたはシクロヘキサンジカルボン酸誘導体に関する説明は、工程(1)で得られるアルキル置換および非置換のジカルボン酸誘導体または混合物に関する。
【0071】
本発明により工程(1)で得られるシクロヘキセンジカルボン酸無水物を引き続き精製するかまたは粗製溶液の形で直接反応させることができる。
【0072】
本発明の目的のために、得られたシクロヘキセンジカルボン酸無水物の粗製溶液を工程(2)でエステル化してシクロヘキセンジカルボン酸エステルを形成することができる。この場合にエステルの形成は、アルキル基、シクロアルキル基およびアルコキシアルキル基が一般に1〜30個、有利には2〜20個、特に3〜18個の炭素原子を有し、分枝または直鎖であるアルキル基、シクロアルキル基またはアルコキシアルキル基を有するアルコールまたはこれらの2個以上の混合物でエステル化することにより行うことができる。特に1〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝状、飽和アルコールまたはこの種の2個のアルコールの混合物を用いて反応を行う。反応を、例えばOrganikum,18th edition,1990,Deutscher Verlag der Wissenschaften,Berlinに記載されるような当業者に周知の方法で行う。
【0073】
本発明により、エステル化を、特に1〜18個、有利には4〜13個、特に8〜10個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルコールを使用して行うことができる。アルコールはメタノール、エタノール、直鎖または分枝状プロパノール、直鎖または分枝状ブタノール、直鎖または分枝状ペンタノール、直鎖または分枝状ヘキサノール、直鎖または分枝状ヘプタノール、直鎖または分枝状オクタノール、直鎖または分枝状ノナノール、直鎖または分枝状デカノール、直鎖または分枝状ウンデカノール、直鎖または分枝状ドデカノール、直鎖または分枝状トリデカノール、直鎖または分枝状テトラデカノール、直鎖または分枝状ペンタデカノール、直鎖または分枝状ヘキサデカノール、直鎖または分枝状ヘプタデカノール、直鎖または分枝状オクタデカノールおよびこれらのアルコールの混合物であってもよい。
【0074】
アルコールは、例えばオキソアルコール、C5〜C12アルケンのヒドロホルミル化生成物およびダイマー、トライマーおよびオリゴマーのエテン、ダイマー、トライマーおよびオリゴマーのプロペン、ダイマー、トライマーおよびオリゴマーのn−ブテンまたはイソブテン、ダイマー、トライマーおよびオリゴマーのn−ペンテンまたはイソペンテン、およびダイマー、トライマーおよびオリゴマーのn−ヘキセンまたはイソヘキセンのヒドロホルミル化生成物であってもよい。
【0075】
例えばChemical Abstracts Number(以下にCASno.と記載する)68526−79−4を有するヘキサノール混合物、CASno.51774−11−9を有するヘプタノール混合物、CASno.68526−83−0を有するオクタノール混合物、CASno.91994−92−2を有するオクタノール混合物、CASno.68526−84−1を有するノナノール混合物、CASno.3452−97−9を有するノナノール混合物、CASno.27458−94−2を有するノナノール混合物、CASno.93821−11−5を有するデカノール混合物、CASno.25339−17−7を有するデカノール混合物、CASno.90604−37−8を有する2−プロピルヘプタノール ウンデカノール混合物、CASno.90604−37−8を有するドデカノール混合物、CASno.27458−92−0を有するトリデカノール混合物、およびCASno.68526−86−3を有するトリデカノール混合物が特に有用である。
【0076】
本発明の1つの選択的実施態様において、工程(2)でのエステルの形成をシクロヘキセンジカルボン酸無水物上のジエンの二量化により行うことができる。これはC8側鎖を有するエステルを形成する。これはこの方法のこの部分のためにラフィネートの予備酸化からのブタジエンを利用する有効な手段を提供する。フランス特許第1579244号および特開昭50−005737号はブタジエン二量化によりエステル側鎖を形成する反応のための適当な条件を記載する。
【0077】
本発明の目的のために、工程(2)でのエステルの形成をシクロヘキサンジカルボン酸無水物または相当するカルボン酸上のジエンの付加反応により行うことも可能である。この方法は特にC4側鎖を有するエステルの製造を可能にする。
【0078】
工程(3)でのシクロヘキセン環の水素化は有利には反応の1つの工程で富飽和側鎖の水素化と一緒に行うことができる。相当するシクロヘキサンジアルキルエステルが反応生成物として得られる。
【0079】
工程(3)の水素化は有利には水素含有ガスを使用して触媒の存在で行う。適当な触媒の例は、多孔質担体材料に結合した白金または白金触媒である。工程(3)の水素化反応の他の条件はOrganikum,18th edition,1990,Deutscher Verlag der Wissenschaften,Berlinに例示されている。本発明の水素化のために、例えばHouben−Weyl Methods of organic chemistry,4/1cに記載されるように、固定床触媒、懸濁触媒および均一水素化触媒を使用することができる。水素化は触媒に依存して常圧または高めた圧力で20〜250℃の温度で行うことができる。
【0080】
本発明の目的に特に適した他の水素化触媒はWO99/32427号およびドイツ特許第19927978.0号に記載されている触媒である。
【0081】
本発明の他の有利な実施態様のために、以下の工程(1)をシクロヘキセンジカルボン酸無水物の水素化で開始して工程(3)でシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成することも可能である。本発明により前記の工程(2)でのエステルの形成によりシクロヘキサンジカルボン酸を形成する。
【0082】
本発明の方法により一方で純粋な化合物を製造することが可能であり、他方で種々のアルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の混合物を製造することができる。特に工程(1)の反応に1個より多くのC5ジエンの混合物を使用する場合に、製造工程の任意の位置で、例えば蒸留による分離工程を使用して純粋な化合物を製造することが可能である。しかし分離工程なしに前記工程を実施し、種々のアルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の混合物を得ることも可能である。
【0083】
特に本発明の方法を使用して、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸および3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはこれらの誘導体を純粋な化合物として、すなわち90質量%より多い含量で製造することが可能である。同様に、本発明の方法を使用してノルボルナン−2,3−ジカルボン酸またはその誘導体0〜70質量%、有利には10〜65質量%、特に15〜60質量%、特に有利には20〜55質量%、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはその誘導体0〜70質量%、有利には10〜65質量%、特に15〜60質量%、特に有利には20〜55質量%および3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはその誘導体0〜70質量%、有利には10〜65質量%、特に15〜60質量%、特に有利には20〜55質量%を有する混合物が製造され、この場合に混合物の個々の成分の合計は100質量%になる。
【0084】
従って本発明は、以下の工程(1)〜(3):
(1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(2)アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
(3)工程(2)のアルキル置換または非置換のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
(1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(3)アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化して相当するシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
(2)アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
からなる方法により得られる、アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体に関する。
【0085】
本発明の他の実施態様において、本発明は、以下の工程(1)〜(3):
(1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(2)シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
(3)工程(2)のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサン誘導体を形成する工程、または
(1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(3)シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
(2)シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
からなる方法により得られる、アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体に関する。
【0086】
他の有利な実施態様において、本発明は以下の工程(1)〜(3):
(1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンを反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(2)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
(3)工程(2)のアルキル置換シクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサン誘導体を形成する工程、または
(1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンを反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
(3)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
(2)アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
からなる方法により得られる、アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体に関する。
【0087】
更に本発明は、少なくとも1個のアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体からなる混合物に関する。
【0088】
特に本発明は、少なくとも1個のノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸および3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはこれらの誘導体からなる混合物に関する。これらの混合物は、例えば可塑剤として使用するための特に有利な特性を有する。
【0089】
このうちシクロヘキサンジカルボン酸のイソノニルエステルまたは2−エチルヘキシルエステルが特に適当であり、エステルの製造に使用されるイソノナノールはCASナンバー27458−94−2を有する。従って本発明は、他の実施態様において、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル0〜70質量%、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル2〜70質量%および3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル2〜70質量%からなる混合物およびノルボルナン−2,3−ジカルボン酸−ビス−(イソノニル)エステル0〜70質量%、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ビス−(イソノニル)エステル2〜70質量%および3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ビス−(イソノニル)エステル2〜70質量%からなる混合物に関する。
【0090】
本発明は更に本発明によるアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体またはこれらのシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を有する混合物のプラスチック、特にポリ塩化ビニル(PVC)またはポリビニルブチラール(PVB)の可塑剤としての使用を提供する。
【0091】
可塑剤に添加される、本発明により製造されるシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体の割合は1〜80質量%、有利には5〜55質量%、特に10〜50質量%、特に有利には15〜45質量%である。
【0092】
本発明の目的のために、可塑剤は添加してプラスチックの硬度を低下する物質である。
【0093】
本発明のエステルは低い密度および粘度を有する。低い密度は本発明の可塑剤を使用して製造したプラスチックの有利な体積費用を生じる。低い粘度は乾燥ブレンドを製造する際に加工特性を改良し、ペーストを製造する際に低い開始時のプラスチゾル粘度を生じる。
【0094】
更に本発明による可塑剤はこれらの可塑剤を使用して製造したプラスチックの低温弾性特性の改良を生じ、熱安定性を高める。低温弾性特性の特性化は有利にはいわゆる低温亀裂温度により行うことができる。これは、プラスチックが機械的力を作用した場合に冷間で最初に光学的に認められる損傷を示す温度である。低温亀裂温度の決定はDIN53372により行う。熱安定性の特性化は、例えばPVCを使用していわゆるHCl残留安定性により行う。これは、可塑化したPVCが200℃の温度でHCl形成に結びつく分解を示さない間隔である。HCl残留安定性の決定はVDE規格0472、614により行う。
【0095】
本発明により製造したシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体は、種々のプラスチック、例えばポリ塩化ビニルまたはポリビニルブチラールとエチレン、プロピレン、ブタジエン、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、または分枝または非分枝のC1〜C10アルコールのアルコール成分を有するアクリレートまたはメタクリレート、スチレンまたはアクリロニトリルを基礎とするホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択された他のプラスチックの混合物の可塑剤として使用することができる。
【0096】
本発明により製造されたシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体で可塑化されたプラスチックの使用の例には、台所機器またはコンピュータのような電気装置の容器、管、装置、ケーブル、線材被覆物、窓用部品、内装部品、自動車部品、家具、床被覆、ガスケットの製造、フィルム、複合フィルム、積層安全ガラス用フィルム、特にHT−Troplast社のPVBフィルム、TROSIFOL、音響ディスク、合成皮革、玩具、包装容器、接着テープシート、衣服、被覆物および織物用繊維の例が含まれる。
【0097】
以下に本発明を実施例により説明する。
【0098】
実施例
例1:C5留分と無水マレイン酸のディールスアルダー反応
無水マレイン酸98g(1.0モル)およびシクロペンタジエン17質量%(シクロペンタジエン約2質量%およびジシクロペンタジエン約15質量%の混合物として存在する)、イソプレン約15質量%およびピペリレン約10質量%を含有するC5留分180gの混合物を、ラジカル重合阻害剤としてフェノチアジン1000ppmと一緒にオートクレーブ中で最初に3時間かけて70℃まで加熱し、引き続き5時間で180℃まで加熱した。引き続き反応しない炭化水素を常圧で、最後に真空で蒸留した。以下のジカルボン酸無水物の混合物が得られた。ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(エンド化合物とエクソ化合物の混合物)約35%、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物約39%および3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物約26%。
【0099】
例2:水素化
例1からの反応混合物110gをTHF400mlに溶解した。引き続き活性炭上のパラジウム(Pd10%)300mgを添加し、室温、水素圧100バールで水素化した。引き続き触媒を濾過し、溶剤を回転蒸発機中で蒸留分離した。5−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物約35%、4−メチル−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物約39%および3−メチル−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物約26%の混合物112gが得られた。
【0100】
例3:エステル化
例2からの反応混合物106gを水沈殿装置で2−エチルヘキサノールおよびチタンテトラブチレート0.16gと一緒に水がもはや形成されなくなるまで煮沸した。引き続き触媒をソーダ溶液(含量0.5%)を用いて加水分解し、水相を分離し、有機相を再び水で洗浄した。最後に過剰のエチルヘキサノールを蒸留分離し、最後に残留するアルコールを蒸気でのストリッピングにより除去した。5−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル約35%、4−メチル−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル約39%および3−メチル−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ビス−(2−エチルヘキシル)エステル約26%の混合物166gが得られた。
【0101】
例4および5
例3と同様にイソノナノールおよび2−プロピルヘプタノールを使用してエステル化を行った。相当するエステル混合物が得られた。

Claims (14)

  1. 以下の連続工程(1)〜(3):
    (1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (2)アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
    (3)工程(2)のアルキル置換または非置換のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
    (1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (3)アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
    (2)アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
    からなるアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法。
  2. 以下の連続工程(1)〜(3):
    (1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (2)シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
    (3)工程(2)のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
    (1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (3)シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
    (2)シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
    からなる請求項1記載のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法。
  3. n−ブテンまたはブタジエンまたはこれらの混合物を有する流れの酸化を有する方法によりまたはn−ブテンからブタジエンを生じる酸化を有する方法によりまたはn−ブテンからブタジエン/無水マレイン酸混合物を生じる酸化を有する方法により、工程(1)による反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物が得られる請求項1または2記載のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法。
  4. 工程(1)による反応のためのブタジエン/無水マレイン酸混合物を製造するためのn−ブテンが、n−ブタンを有する流れの酸化を有する方法により得られる請求項3記載のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法。
  5. 以下の連続工程(1)〜(3):
    (1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンの混合物を反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (2)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
    (3)工程(2)のアルキル置換シクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
    (1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンの混合物を反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (3)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
    (2)アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
    からなる請求項1記載のアルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を製造する方法。
  6. C5ジエンとして接触分解法からのC5留分を使用する請求項5記載の方法。
  7. 以下の工程(1)〜(3):
    (1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (2)アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
    (3)工程(2)のアルキル置換または非置換のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
    (1)ジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてアルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (3)アルキル置換または非置換のシクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
    (2)アルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
    からなる方法により得られるアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体。
  8. 以下の工程(1)〜(3):
    (1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (2)シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
    (3)工程(2)のシクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
    (1)ブタジエン/無水マレイン酸混合物を反応させてシクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (3)シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
    (2)シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
    からなる方法により得られるアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体。
  9. 以下の工程(1)〜(3):
    (1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンの混合物を反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (2)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程、
    (3)工程(2)のアルキル置換シクロヘキセン誘導体を水素化して相当するシクロヘキサンの誘導体を形成する工程、または
    (1)無水マレイン酸および少なくとも1個のC5ジエンの混合物を反応させてアルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を凝縮相で形成する工程、
    (3)アルキル置換シクロヘキセンジカルボン酸無水物を水素化してシクロヘキサンジカルボン酸無水物を形成する工程、
    (2)アルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸無水物からエステルを形成する工程
    からなる方法により得られるアルキル置換シクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体。
  10. 請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により得られる少なくとも1個のアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体または請求項7から9までのいずれか1項記載のアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体を有する混合物。
  11. 少なくともノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸および3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸またはこれらのジカルボン酸の誘導体が含まれている請求項10記載の混合物。
  12. プラスチックの可塑剤としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により製造されたアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体または請求項7から9までのいずれか1項記載のアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体または請求項10または11記載の混合物の使用。
  13. プラスチックがポリ塩化ビニルまたはポリビニルブチラールである、プラスチックの可塑剤としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により製造されたアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体または請求項7から9までのいずれか1項記載のアルキル置換または非置換のシクロヘキサンジカルボン酸またはその誘導体または請求項10または11記載の混合物の使用。
  14. 炭化水素流を無水マレイン酸と反応させ、その際形成されるシクロヘキセンジカルボン酸無水物を残留する炭化水素流から分離することを特徴とする、ブタジエン含有炭化水素流からブタジエンを分離する方法。
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