JP2004538004A - メチロトローフ酵母のrDNA部位への異種DNA配列の部位特異的組み込みのためのベクター - Google Patents

メチロトローフ酵母のrDNA部位への異種DNA配列の部位特異的組み込みのためのベクター Download PDF

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Abstract

本発明は、多重コピーの異種DNA配列のメチロトローフ酵母への部位特異的な組み込みのためのプラスミドベクターに関する。本発明のベクターを用いた形質転換から誘導される、本発明のベクターおよび微生物の使用に基づく組み換えタンパク質の発現のためのプロセスがまた、記載される。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、酵母形質転換、および組み換え異種タンパク質の産生のために用いられるベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
(メチロトローフ酵母)
Hansenula polymorphaは、通性メチロトローフ酵母であり、すなわちこの酵母はまた、メタノールが唯一の炭素源であり、かつエネルギー源である培地中で増殖ができる。
【0003】
メチロトローフ酵母は、4つの属である、Hansenula、Plchia、Candida、およびTorulopsis属に属する、少数の種であって、動物への供給用ためにメタノールからのバイオマスを得るために、1970年代初頭に存在した多大な関心を受けて単離された。全ての単離された種のなかでも、特に2つの分類学的に高度に関連するH.polymorpha、およびP.pastorisは、発酵技術、およびメタノール代謝の生化学、およびメタノール代謝の生理学について集中的に研究された。実際、これらの研究の2つの主要な目的は、重要な細胞小器官(ペルオキシソーム)の生物発生に関与する機構の将来性の在る事業への適用、および知識を得ることからなる。この細胞小器官は、酵母からヒトにおよぶ全ての真核生物において偏在するが、特にメタノールの存在下で成長している細胞には豊富である(そしてより良好に研究することができる)(Gleeson MA、およびSudbery PE,1988,Yeasts,:1〜15)。
【0004】
いくつかのメタノール代謝の重要な酵素であるメタノールオキシダーゼ、またはアルコールオキシダーゼ(これは、メタノールをホルムアルデヒド、および過酸化水素に転化する)(H.polymorpha、またはP.pastorisを参照する場合、それぞれ、MOX、またはAOXと呼ばれる)、デヒドロキシアセトンシンターゼ(DHAS)、およびカタラーゼ(CAT1)は、ペルオキシソームに位置される。メタノールでの増殖の間、この代謝経路の重要な酵素、詳細にはMOX、DHAS、および細胞質酵素であるギ酸脱水素酵素(FMD)は、高レベルで産生され、そして総細胞内タンパク質の約1/3を示す(Sudbery PE,1994,Yeast 10:1707〜1726)。
【0005】
これらの酵素の産生は、転写レベルで、かつ個々の遺伝子のプロモーター(酵母H.polymorpha、およびP.pastorisにおいて単離された)によって制御され、強力にかつ精密に調節される(Gleeson MA、およびSudbery PE,1988)。
【0006】
非常に強度であり、かつ調節可能でもあるプロモーターの存在によって、メタノール、および/またはグリセロールのような安価な基質を用いて、高い細胞密度(培養基1リットルあたり約150グラムの乾燥細胞重量)で増殖する能力と一緒になって、異種タンパク質の大規模産生のためのサッカロマイセス・セレヴィシエに対する別のシステムとしてのメチロトローフ酵母の研究が、過去15年にわたって促進された(Gellissen G、およびHollenberg CP,1997,Gene 190:87〜97)。
【0007】
メチロトローフ酵母における異種タンパク質の発現
H.polymorpha、およびP.pastorisにおいて得られた発現系は、FMDプロモーター、および頻繁に、MOXプロモーター(PichiaにおいてAOXと呼ばれる)を利用する。これらの生物体の両方において、これらのプロモーターは、メタノールによる強力な誘導、およびグルコースによる抑制に供される。
【0008】
P.pastorisにおいて、プロモーター活性は、メタノールの存在によってのみ誘導され、従って、発酵プロセスは、以下の2つのステップを必要とする:グルコースでの増殖、およびメタノールを用いたそれに続く誘導;グルコースでの増殖は、実際にプロモーター活性を抑制し、その結果、発現されるべき産物(メタノールの存在下で極めて高レベルで合成される)は、プロデューサー微生物の増殖を妨害しない(すなわち、良好なバイオマスレベルの達成を伴う)が、増殖が生じた後(培養培地中のグルコースが枯渇され、かつメタノールが誘導される場合)にのみ発現される。
【0009】
逆に、H.polymorphaにおいては、グリセロールの存在下、またはグリセロール/メタノール混合物の存在下でさえ、高収率がさらに迅速に得られるように、ワンステップ発酵を得ることが可能である:Hansenulaにおいては、実際に、グリセロールでの増殖は、せいぜい20%の最大誘導レベルが得られるまで、メタノール誘導性プロモーターの抑制を誘発し、従ってプロデューサー微生物の増殖を妨害することがない(Hollenberg CP、およびGellissen G,1997,Current Opinion in Biotechnology :554〜560)。
【0010】
H.polymorphaにおいて達成可能な収率は、実際、酵母に基づく系で得られた収率の中で最高であり;さらにこの種は、培養基においてわずかなタンパク質しか分泌しないので、分泌された異種産物はしばしば、主な細胞外タンパク質に相当する。
【0011】
最近の研究においては(Mayer A Fら、Biotechnology and Bioengineering(1999)63:373〜381)、著者らは、H.polymorpha組み換え株の構築を記載している。この組み換え株は、培養基中で活性である、例外的に高濃度のフィターゼを分泌することができる(13.5g/L)が、ここで異種酵素は、蓄積された総タンパク質の97%より多くに相当する。
【0012】
別のH.polymorphaの有利な特徴は、発酵プロセスに関する以外に、耐熱性であることである。すなわち、30〜42℃の温度範囲、最適には37℃で適切に増殖することが可能であるが、P.pastoris、およびS.cerevisiaeは両方とも最適には30℃において最適な増殖を有する(Sudbery PE,1994)。現在、H.polymorphaは、その好適な発酵特徴、すなわち、詳細には、耐熱性、およびワンステップ高収率発酵(メタノールの不可避の使用を必要としない)に起因して、工業的用途に主に用いられている。H.polymorphaにおいて作製された多くの産物が、食品医薬品局(Food and Drug Administration)の認可を受けており、そしてこの酵母で産生されたB型肝炎ワクチンは既に、市場に持ち込まれている(Hollenberg CP、およびGellissen G.,1997)。
【0013】
(Hansenula、およびPichiaの発現ベクター)
現在まで、H.polymorpha、およびP.pastorisから単離された内因性プラスミドはないが、これらの2つの酵母において用いられる複製的なベクターは、S.cerevisiaeゲノム配列(例えば、S.cerevisiae LEU2、およびURA3遺伝子は、Hansenula、およびPichiaにおいて異なる程度のARS活性を有する)から得られるARS配列(自律増殖配列:autonomous replication sequences)に起因してエピソーム状態で維持されるか、またはHansenula、およびPichiaのゲノムから単離されている。
【0014】
これらの2つの酵母における発現系(「複製的」ベクター、および「組み込み」ベクターの両方に基づく)は、以下を利用する:ロイシン、およびウラシル(H.polymorpha)、またはヒスチジン栄養要求性変異体(H.polymorpha、およびP.pastorisの両方)をホストとして;それに相当するものとして、形質転換のために用いられるベクターであって、各々の変異を補完する遺伝子(ura,オリチジン5’リン酸脱水素酵素;leu,βイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素;his,ヒスチジノール脱水素酵素)を保有するベクター。ほとんどの場合、H.polymorphaを形質転換するために構築されたプラスミドは、S.cerevisiae LEU2、またはURA3遺伝子を含む:この目的のために、Bogdanova、およびcoll(Bogdanova Al.ら、Yeast,1995 11:343〜353)は、H.polymorpha LEU2遺伝子(HLEU2)を含む複製型のベクターが、非常に不安定な形質転換体、または安定であるがHansenulaゲノムの異なるフラグメントの組み込みのせいで異種である形質転換体のいずれかを生じたことを報告した。
【0015】
主要な選択系がまた、ベクター中でアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ細菌遺伝子を挿入すること、およびG418抗生物質に対する耐性について形質転換体を選択することによって、P.pastoris、およびH,polymorphaにおいて調製された(Hollenberg CP、およびGellissen G,1997)。
【0016】
自律的に複製可能なプラスミドを含む形質転換体は、一定の選択圧を必要とし、かつ異種タンパク質の大規模産生については有糸分裂的に不安定であることが証明されている。発現カセットの組み込まれたコピーを含む株が、もう一方で生じたが、これは、プラスミドマーカーのための選択がなくても一般に、より安定である。さらに発現カセットの多重コピー組み込みは、生じる異種産物を増大させる。
【0017】
P.pastorisにおいて(ここでは、H.polymorphaから別々に由来するAOX遺伝子の2つの対立遺伝子が存在する)、AOX1遺伝子座への相同組み込みのための組み込みベクターを調製した(付加または挿入のいずれか、またはInvitrogen系の場合のように、置換または交換);あるいは、いくつかの系は、HIS4遺伝子座への組み込みを認識する。両方の場合とも、P.pastorisへの組み込みは、頻繁に生じ、そして安定であり、かつ一般に単一コピーで生じる;しかし、AOX1構造遺伝子の状況では、メタノール上でゆっくり増殖する株を生じる。
【0018】
P.pastorisで発生するものとは違って、H.polymorpha(Faber KN,ら、1992,Journal of General Microbiology 138:2405〜2416)では、標的部位への相同組み換えによって達成可能な標的化組み込みが、低い頻度で起こる:MOX遺伝子またはアミノオキシダーゼ遺伝子を用いて、1〜22%以下の組み込み頻度が得られ、そして標的を置き換えない挿入型の組み込みが達成された(Faber KNら、1992)。これとは逆に、非相同組み換え機構のおかげである、複製型プラスミドの頻繁な組み込みは、相同組み換えが低頻度であるのと反対に、H.polymorphaの特異的な特徴に相当する。非相同組み換えによって生じる組み込みは標的されず、すなわち、その組み込みは、そのゲノムにおけるランダムな部位を含む:これは欠点である。なぜなら、組み込み事象の一部は、適切でない部位に生じ得、これによって発現収率の低い、それほど生存能がなく、安定でもない形質転換体が生じるからである。さらに、ランダムな組み込み事象に従って得られる形質転換体は、組み込まれたカセットの数、特に位置が異なっており、最高のクローンの選択は困難であり、そしてその遺伝的解析は、不可能ではなくともかなり面倒である。
【0019】
さらに、H.polymorphaにおいては、組み込まれたプラスミドのコピー数は、選択培地、および非選択培地における数回の交互の増殖サイクルの後に、増幅される(組み込み遺伝子座でのタンデム増幅)ことが証明されている(Faber KNら、1992; Gatzke R,ら、1995,Applied Microbiology and Biotechnology 43:844〜849)。
【0020】
P.pastorisにおいては、多重組み込み(3〜18コピー)が、得られた。これは、発現構築物において、細菌のアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼをコードし、かつ高レベルのG418耐性をスクリーニングする遺伝子を含む(Scorer CA,ら、1994,Bio/Technology 12:181〜184);しかしまた、この場合には、組み込みはランダムな部位で生じる。
【0021】
H.polymorphaにおいて、やはり、ゲノムに組み込まれた複製型プラスミドのコピー数は、形質転換体を選択するために用いたプラスミドマーカーに依存し、従って選択圧の強度に依存し得るということを、同様のストラテジーを用いて、数名の著者が実証した。H.polymorphaへの組み込み事象の結果の変動の例は、Gatzke Rら、1995.において記載されるS.cerevisiaeから得られるURA3遺伝子の組み込みである。URA3遺伝子は、H.polymorpha中に低レベルで発現され、その結果、このマーカーを含む複製ベクターを用いてUra株を形質転換した場合、Ura形質転換体の選択プロセスは、複数のコピー(ランダムな部位に組み込まれた)のプラスミドを有する細胞を助ける。
【0022】
他の著者ら(Agaphonov MOら、Yeast(1999)15:541〜551)は、以下の様式で非相同組み換えによる多重組み込み(100コピーを超える)を得た:彼らは、プロモーター領域(HLEU2−d)を欠失したH.polymorpha LEU2遺伝子を含有する複製ベクター(HARS36配列の存在の結果)を使用して、Leu株を形質転換した;しかし、彼らの用いた受容株は、ほとんど完全に破壊され、欠失したHLEU2構造遺伝子を担持しており、この方法では、HLEU遺伝子座への相同組み換え(および単一コピーでの組み換え)によるプラスミド組み込みは、妨げられる。この技術を用いて、著者らは、以下の2種類の形質転換体を得る:1)選択培地上でゆっくり増殖できる形質転換体であって、このプラスミドに組み込まれた多数のコピー(100〜120)を含み、破壊されたHLEU遺伝子を保有する株において、不十分ではあるが、完全な原栄養性を回復することが同じ著者らに観察されている、形質転換体;または2)選択培地上で迅速に複製可能であるが、ただし不安定であり、そして遅い増殖速度で集団をゆっくりと生じさせる、形質転換体。
【0023】
この不安定性がなぜ生じるかという理由は、明確でない;ある場合には、その理由は、組み込み遺伝子座に帰せられており、他の場合には、組み込まれた配列の型または寸法に帰せられている。異なる仮設が提唱されている、例えば、Lopes、およびcoll(Lopes TSら、:Yeast(1996)12:467〜477)が、ある研究において提唱しているように、100ユニットを上回る組み込まれたコピーの反復(繰り返し)は、不安定である。この研究では、S.cerevisiaeのrDNA(リボソームDNA)遺伝子座への多重プラスミド組み込みが記載されている。しかし、この場合に記載されたベクターにおいては、外因性DNAは、一端でのみ酵母rDNA配列(その長さは、数キロベースにおよぶ)に隣接しており、これは、標的に隣接する位置における染色体へのプラスミド全体の組み込み(標的に付加されて、それを複製しない、挿入型であり、かつ置換でない組み込みを用いる)を指示する。これらのベクターを用いて、Lopes、およびcollは、高コピー数(100〜200に及ぶ組み込みコピー)の組み込みを得るが、そのいくつかは不安定である。このような著者らによって提唱された仮説の1つは、高コピー数の大型プラスミド(12kbにおよぶ)における挿入組み込みが、染色体の遺伝子座サイズを、それによって不安定になる程度まで増大させるということである;この種類の事象において全体として組み込まれたプラスミドにおいて含まれる、高コピー数の細菌配列における同じ組み込みは、さらなる不安定な理由に相当し得る。
【0024】
リボソーム遺伝子座はまた、部位特異的組み込みを得るために、非メチロトローフ酵母である、Kluyveromyces lactisにおいても用いられている(Rossolini GMら、:Gene,1992,119:75〜81)。
【0025】
H.polymorpha(ここでは、部位特異的組み込み事象が一般に、低い効率で生じる)において、Sohn、およびcoll.(Sohn J−Nら、:Applied Microbiology and Biotechnology,1999,51:800〜807)は、組み込み系に対するデータを示した。ここでは、組み込まれたコピーの数は、制御され得、そして多重組み込みを選択するための手順が以前の系に比べて、簡便化され得る。実際に、Sohn、およびcollは、テロメアのHARS、および細菌のアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)の遺伝子を含むベクターを、異なる位置を欠いた、H.polymorphaプロモーター(グリセルアルデヒド−3−ホスフェート脱水酵素)の制御下で、用いる。欠損プロモーターの制御下の選択マーカーの存在は、APH発現の減少を意味し、従って、選択培地中で用いるG418の濃度を漸増させる方法で、コピー数50におよぶ多重組み込みを迅速に選択することを可能にする。この系では、組み込みは、ベクターHARSと、ゲノムHARS(このテロメアHARSは現実にこの種類の組み込みを促進する)との間の相同組み換えの後に、Hansenulaの染色体の末端領域で生じる。しかし、同じ著者は、このテロマー(短縮重合体)が、染色体の安定性および複製に必須の領域に相当しており、その結果、これらの領域への多重コピーのプラスミドの組み込みは、染色体、および導入された遺伝子の両方の不安定性を容易に決定し得るということを観察している。
【0026】
Janowicz ZAら、(Yeast,1991,:431〜443)によって、B型肝炎ウイルスのL抗原、およびS抗原を発現するために、H.polymorphaで開発された系において同様のアプローチが使用された。しかし、この場合、著者らは、組み込まれたコピーの数を制御できるが、L抗原およびS抗原の遺伝子の組み込まれたコピーの最適の数を含む形質転換体を選択できる系は使用していない。
【0027】
結論として、メチロトローフ酵母では、詳細には、H.polymorpha、およびP.pastorisでは、部位特異的組み込みによって、多重組み込みが、高コピー数で得られる頻度は、この理由のために、かなり低くかつ、予測可能性に乏しく、多重組み込みを得るために現在までに設定された手順は、かなり複雑な方法を必要とする。この理由は、極めて高いコピー数の形質転換体を選択および解析する必要性、ならびに選択培地および非選択培地における増殖サイクルによる最適化の必要性のためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、メチロトローフ酵母株への異種DNA配列の部位特異的組み込みのためのベクターについて言及する。このようなベクターを用いることによって、組み込み標的が、反復によって、そしてこの標的ゲノム全体にわたる多重コピーユニットによって構築される限り、異種DNA配列は、高頻度で複数の部位に組み込まれる。異種DNA配列は、選択マーカーを含み、そして好ましい実施形態では、異種遺伝子についての発現カセットを含み、これから対応する組み換えタンパク質が得られる。異種DNA配列は、酵母リボソームRNAをコードする遺伝子(好ましくは、S.cerevisiaeの)の非連続フラグメント内に含まれ、その最小の長さは50bpであって、下流および上流に組み込まれている。異種DNA配列に存在する選択マーカーは好ましくは、LEU2、URA3、およびHIS3遺伝子のなかから選択される。さらに、リボソームRNAをコードする配列に隣接する異種DNA配列を含む組み込みカセット、規定されたベクターまたは組み込みカセットを用いて形質転換された微生物、およびCNMCコレクション(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur)に、I−2705番として、2001年7月18日に寄託されたpRIMY−1ベクターが、本発明の目的である。
【0029】
組み換えタンパク質発現のためのプロセス、およびメチロトローフ酵母(特に好ましいのはHansenula属に属するもの)への異種DNA配列の組み込みのためのプロセスが、本発明のさらなる特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
(発明の詳細な説明)
メチロトローフ酵母株への異種DNA配列の部位特異的組み込みのためのベクターが、本発明の目的である。
【0031】
メチロトローフ酵母は、発酵の適用に特に有利である。なぜなら、メチロトローフ酵母は、唯一の炭素源としてメタノール、または他の単純な炭素源を用いて増殖できるからである。
【0032】
酵母である、Pichia、Hansenula、Candida、およびTorulopsis属は、メチロトローフ酵母に属する。Hansenula属(詳細には、H.polymorpha)が、本発明の実施形態に特に好ましい。酵母においては、異種タンパク質を生成するために一般に用いられるプロモーター、例えば、MOX、FMD、DHASプロモーター(Faber KNら、1995,Yeasts)の活性は、メタノールの存在によって強力に誘導された、そして部分的にはグリセロール、もしくはグリセロール/メタノール混合物の存在によって誘導された(抑制された)グルコースによって、または限られた濃度のグルコースによっても抑制される。これらの特徴によって、単純でかつ安価な炭素源、例えば、グリセロール(またはメタノール)の存在下で、H.polymorphaにおいてワンステップ発酵を実行することが可能になり、これによって、他の酵母(例えば、P.pastoris)(ここでは、逆にツーステップ発酵が必要である)における同じ誘導レベルについて必要であるよりも迅速に、高い産生収率が得られる。
【0033】
さらに、Hansenulaは、自然には、細胞外腔に2〜3のタンパク質しか分泌しないので、そこに指向された異種のタンパク質は、一般に、最も豊富で、かつ精製することが容易である。
【0034】
この酵母属の別の特徴(発酵のプロセスにおいて非常に有利である)は、耐熱性である。実際に、H.polymorphaは、30〜42℃の温度範囲、最適には37℃でよく増殖するが、P.pastoris、およびS.cerevisiaeの両方とも、おもに30℃付近でよく増殖する。
【0035】
驚くべきことに、本発明の著者らは、メチロトローフ酵母のための組み込みベクターであって、本発明の主な目的に相当し、そして異種DNA配列(「組み込みユニット」)の上流および下流に隣接するリボソーム配列を含むベクターが、酵母の形質転換に用いられる場合、このような異種配列は、高頻度で、そしてリボソーム遺伝子座のような、染色体における複数の部位に組み込まれ、そして結果として組み込み標的部位が、反復ユニットによって形成されるということを見出した。
【0036】
多重組み込み事象の後に、選択培地、および非選択培地(これはさらに、組み込まれたコピー数を増大させる)における増殖サイクル後の、組み込まれた配列の複製(二倍化)事象が続く。結果として、このような組み込みはさらに、多重コピー組み込みとして規定される。
【0037】
本発明の目的に関して、異種DNA配列とは、酵母ゲノムに対して多重コピーで、かつ高頻度で組み込まれることを意図しており、かつ好ましくは酵母とは異なる生物体に由来しており(異種配列)、ただしまた酵母自体に由来する配列でもある(同種配列)、任意のDNA配列を意味する。異種配列は、リボソームRNA、またはそのフラグメントをコードする配列(組み込みボックスとも呼ばれる)であって、そしてさらに形質転換されたクローンの選択を可能にする方式で酵母における発現のための適切に調節された選択マーカーを含む配列に、上流(5’)および下流(3’)で隣接する場合、組み込みユニットに相当する。
【0038】
好ましい実施形態において、異種DNA配列は、選択マーカーの側に、異種遺伝子のための発現カセットを含み、この異種遺伝子からは、相当する組み換えタンパク質が得られることを意図している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明において記載された組み込みユニットおよび組み込みベクターの1実施形態のスキームを図1に示す。
【0040】
本発明による組み込みユニット(異種DNA配列を含む)は、酵母宿主を形質転換するために公知の技術に従って用いられる場合、リボソーム遺伝子座における標的配列を置換するリボソーム隣接配列と一緒に、酵母ゲノム中へ、複数の部位に、かつ多重コピーで安定して組み込まれる。
【0041】
従って、この種類の組み込みは、挿入的な組み込み(ここでは、ベクター全体からなる異種配列が標的部位に沿って追加される)に代わって置換的組み込みとして規定される。置換的な組み込みは、挿入的組み込みに比べて有利である。なぜなら、酵母ゲノムに組み込まれる異種DNAは、リボソームDNA配列に含まれるもののみであり、その結果、細菌起源のプラスミド配列(これは、酵母には同様に無駄でありかつ有害であり、そしてこれは、組み込みユニットが、プラスミドベクター(複製起点、および耐性遺伝子)中にクローニングされるとき存在し得る)が、組み込みから排除されるからである。
【0042】
好ましい実施形態において、組み込みユニット(直線状DNA分子である)は、プラスミドベクターであって、細菌におけるその増幅を可能にするために有用な遺伝子エレメント(例えば、複製起点)の全てを含むプラスミドベクター中にクローニングされる。このようなベクターは環状DNAである。
【0043】
本発明に従って、このベクターは、メチロトローフ酵母、好ましくは、H.polymorphaのマルチシストロンのrDNAからなる、リボソーム遺伝子座中への標的された部位特異的組み込みを可能にする。
【0044】
H.polymorphaは、rDNA遺伝子の約25の反復ユニットを担持する。これは、Saccharomyces cerevisiaeにおいてと同様、同じ染色体上の群、すなわち「クラスター」中に組織化されている。H.polymorphaにおけるrDNAクラスターが、S.cerevisiaeに比べて少ないユニット数(S.cerevisiaeについての約100に比べて25)で示されているという事実にもかかわらず、標的部位への組み込みカセットの組み込み頻度は、酵母ゲノムにおいて単一または二重コピーでのみ存在する標的(例えば、MOX遺伝子座、またはAOX遺伝子座など)に関して、顕著に増大し、そして異なるリボソーム遺伝子へ組み込まれる組み込みユニットは、第一の「増幅」を受ける。
【0045】
後で、安定型の組み込み的ユニットを含む形質転換体は、当業者に公知の手順および増殖培地(選択培地、または非選択培地)によって、最小培地および完全培地を交互にしながら増殖され、そして組み込みユニットはさらに、あらゆる組み込み部位中で引き続くタンデム複製によって増幅され、安定な多重コピーを生じる。
【0046】
H.polymorphaにおいては、25ユニットの各々が、8.1kb長であり、そして18S、5.8S、25S、および5SのRNAをコードする。
【0047】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、これらのDNA遺伝子の非連続セグメントであって、異なる種の酵母に由来し、そして、異種DNA配列の上流および下流に挿入された場合、その最小長が50bpであるセグメントが、メチロトローフ酵母における標的リボソーム遺伝子座におけるこのような配列の相同組み換えを達成するのに十分であるということに気付いた。詳細には、Hansenula属における、安定でかつ高頻度の部位特異的組み換え事象は、特に驚くべきである。
【0048】
25S RNAをコードする配列は、特に、組み込み標的部位として、従って、このベクター上の異種DNA配列または発現カセットに隣接する配列(組み込みボックス)として、好ましい。このリボソーム遺伝子座は、酵母において高度に保存されている。例えば、約90%の相同性が、サッカロマイセス・セレヴィシエをコードするリボソーム配列と、Hansenula polymorphaの25S RNA(ただし、これは系統的にかなり異なる)との間に存在する。これらの酵母配列の間の高い相同性の程度によって、本発明によるベクターまたは組み込みカセットの相同組み換えによる組み込みが、これまでに研究された全ての酵母中に生じるように提供される。従って、本発明のベクターまたは組み込みユニットは、全ての酵母において(メチロトローフでなくても)用いられるが、これは例えば、プロモーターのような特定の調節配列が、特定の形質転換された酵母宿主における発現に適切な配列で置換されているという条件下である。
【0049】
しかし、標的部位への高頻度の組み込み事象、およびその組み込みカセットの引き続く複製(増幅)は、Hansenula属の酵母においては特に有利であり、これによって、この宿主は本発明の適用に特に好ましくなる。
【0050】
実際、リボソーム遺伝子座に存在する多数の標的部位に起因する高い組み込み頻度は、富化培地および最小培地を交互にしながら形質転換体クローンを増殖させることによって得られた異種DNAコピーの複製事象(タンデム増幅)に加えて、一方では、組み込まれたコピー数を増大させ、そして一方では形質転換体の下流の手順(これは、多重コピーのクローンを選択するために当該分野で公知のベクターにおいて、代わりに必要である)を減少させる。
【0051】
さらに、リボソーム遺伝子座の異なる標的部位への組み込み事象によって、形質転換体クローンの安定性が増大し、従って、本発明のさらなる特に有利な特徴を意味する。
【0052】
本発明のベクターを用いて得られるような、高い組み込み頻度はさらに、Hansenulaについて全く予期しない事象に相当する:実際、文献において広範に証明されているとおり、この酵母への組み込み事象は、一般にまれであり、かつ低頻度で生じる。実際、Hansenulaへの多重コピー組み込みは、通常、ランダムな組み込み事象を伴っており(部位特異的でない)、他の非メチロトローフ酵母において生じるものとは反対であることが公知である。
【0053】
本発明によるベクターにおいて利用されるリボソーム配列によって媒介される組み込み事象は、任意の異種DNAおよび非異種のDNAの配列型について用いられる。従って、本発明の異種DNA配列の定義には、対応する組み換えタンパク質の産生が得られることを意図しており、従ってメチロトローフ酵母に特異的な配列によって適切に調節される、遺伝子または異種cDNAを含む、DNA配列として規定された発現カセット(例えば、プロモーターなど)、ならびに任意の異種酵母DNA配列であって、タンパク質をコードする必要性がない場合でさえ、酵母ゲノム中へ多重コピーとして通常組み込まれるDNA配列、の両方が包含される。
【0054】
異種DNA配列に存在する選択マーカーは、好ましくは、LEU2、URA3、およびHIS3遺伝子のなかから選択され、これらの遺伝子は、それぞれ、ロイシン、ウラシル、またはヒスチジンについての栄養要求性酵母株において原栄養株表現型を回復することができる。他の遺伝子または選択マーカーが、本発明によるベクターまたは組み込みユニットにおいて用いられ得る。例えば、主要な選択マーカーであって、これは、例えば、G−418抗生物質に対する耐性を付与するマーカー(また、G−418、または細菌のアミノグリコシド3’ホスホトランスフェラーゼ、APHとして示される)か、またはプレオマイシン耐性をコードするマーカー(Hollenberg CP、およびGellissen G,1997)である。形質転換体の選択手順は、当業者に公知の方法に従って、選択された選択マーカーに依存する。特定の抗生物質に対する耐性を付与する選択マーカーを用いて形質転換される生物体の場合、この選択培地は、公知の方法に従って、耐性が付与された抗生物質を含む培地、例えば、G−418含有培地などから構成される。好ましい実施形態において、そしてマーカーが、LEU2、またはURA3、またはHIS3遺伝子のなかから選択される実施形態に従って、形質転換によって、原栄養性が回復されることが意図される成分(ウラシル、ロイシン、またはヒスチジン)を含まない、最小培地で、当該分野で公知の方法に従って、選択は実施される。従って、このタイプの適用において、最小培地は、「選択培地」に相当する。URA3、およびLEU2選択マーカーは、特に好ましい。また、選択マーカーは、適切な転写プロモーターおよびターミネーター(選択された酵母の属におけるその転写を調節できる)によって調節される。
【0055】
本発明の好ましい実施形態に相当する、発現カセットを含む組み込みユニットの場合、これは、少なくとも以下の機能的領域を含む:a)誘導的な様式、または構成的な様式で、異種配列の転写を調節する、メチロトローフ酵母において活性なプロモーター;b)目的のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする異種DNA配列;c)例えば、S.cerevisiaeの2μmのプラスミドFLP遺伝子に由来する転写ターミネーターのような、適切な転写終止配列。
【0056】
MOXプロモーター、およびFMDプロモーターは、本発明の特に好ましい実施形態において、異種遺伝子、またはDNA配列発現を調節するプロモーターである。なぜなら、それらは、特に効率的な方法でメタノールによって転写を誘導されるからである。しかし、メチロトローフ酵母に特異的な他のプロモーター、例えば、CAT1(カタラーゼ−1)、およびDHAS(ジヒドロキシアセトンシンターゼ)などが有用である(Gleeson MA、およびSudbery PE,1988)。そのメタノールによる誘導レベルは、MOX、およびFMDに匹敵する。好ましくは、このプロモーターは、H.polymorphaのメタノールオキシダーゼプロモーターであって、配列番号3に相当する。
【0057】
異種のタンパク質、またはペプチド、またはオリゴペプチドは、好ましくは、目的のタンパク質をコードするDNA配列の5’側に、単一の配列(好ましくは酵母の配列)をクローニングすることによって、分泌型で発現される、このようなシグナル配列(リーダーペプチド)は、好ましくは、以下のなかから選択される:K.Lactis、およびS.cerevisiaeキラー毒素のもの、S.cerevisiae MFα1(接合因子1)因子リーダー配列のもの、Aspergillus nigerグルコアミラーゼのもの、およびSchwanniomyces occidentalisグルコアミラーゼ−1遺伝子、GAM1由来のプレプロ配列(Gellissen G、およびHollenberg CP,1997;Hollenberg CP、およびGellissen G,1997)。K.Lactisキラー毒素シグナル配列(登録番号:X00762)が、特に好ましい。
【0058】
標的部位への組み込みユニットの組み込みは、好ましくは、適切な制限酵素を用いることによってベクター全体から切断され、組み込みユニットを破壊しないような方法で選択された、発現カセットのみを用いた形質転換によって生じる。その好ましい実施形態において、これは、CNMCコレクション(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur)に、I−2705番として、2001年7月18日に寄託されたpRIMY−1ベクターであり、その組み込みユニットは、その組み込みボックスの各々の側を切断するClaI酵素を用いた制限によって抽出される。その組み込みカセットは、必要に応じて、酵素による制限後に、当該分野で公知の方法に従って、例えば、アガロースゲルでの電気泳動分離によって、精製され得る。あるいは、このベクターはまた、酵素消化なしにそのまま用いられてもよいし、1つの位置での直線化する消化後に、組み込みユニットに対して外側に提供されてもよい。
【0059】
本発明のベクターによれば、組み込みユニットの末端のrDNAフラグメント(組み込みボックス)は、Saccharomyces cerevisiaeのrDNAをコードする遺伝子座から得られる配列から構成される。このような遺伝子座は、全てが等しく「組み込みボックス」として用いることができる、25S、18S、5.8S、および5S RNAをコードするDNAを含む。異種DNA配列の下流、および上流に挿入された最小50bpの長さの遺伝子の非連続セグメントは、標的リボソーム遺伝子座におけるこのような異種配列に対する相同組み換えを達成するのに十分である。25S RNAをコードする遺伝子から得られる配列は、特に好ましいが、なおさらに好ましいのは、配列番号1に相当する1−548 EcoRI−BclIフラグメント(0.55kb)、および配列番号2に相当する1545〜2651のBglII−EcoRIフラグメント(1.1kb)を含む配列であって、それらは、GenBank登録番号J01355と同一の配列に属し、異種DNA配列のそれぞれ5’側および3’側に位置する(図2を参照のこと)。隣接するフラグメント、またはそれらと同一の配列、またはそれらと異なる配列を含むフラグメントであって、ただしとにかく、S.cerevisiae、または他の酵母の25S、18S、5.8S、および5S RNAをコードする遺伝子から得られるフラグメントは、いかなる場合でも本発明において用いられ得る。
【0060】
好ましい実施形態とは別に、類似の機能を有する他の配列(転写ターミネーター、プロモーター、シグナルペプチドをコードする配列、選択遺伝子)であって、酵母、および他の生物体の両方に由来する配列を、発現カセットにおいて用いて、当該分野で公知の方法に従い、目的の遺伝子、または選択マーカーの発現を達成することができる。1つ以上の発現カセットを含む組み込みユニットであって、一般に以下:酵母リボソームRNAまたはそのフラグメントをコードする配列であって、その遺伝子の発現カセットの上流および下流に、当該分野で公知の方法に従って挿入された配列、組み換え型で発現されることを意図しているcDNA、またはcDNAフラグメント、から構成され、そして以下:プロモーター、リボソーム結合部位、必要に応じて目的の遺伝子の同じリーディングフレームに融合されたシグナル配列、転写ターミネーター、および当業者に公知の他のもの、などの発現に必要な調節配列の全てを担持する、全ての組み込みユニットが、従って、本発明の範囲内に包含される。
【0061】
細菌中で増幅できるベクターであって、そこにクローニングされた目的の遺伝子とは独立して、記載に従ったメチロトローフ酵母のリボソーム遺伝子座に特異的な組み込みユニット、および例えば、細菌における増幅のために有用な、この組み込みユニットとは別の配列を含む全てのベクターが、本発明の範囲内に含まれる。
【0062】
2001年7月18日に、CNMCコレクション(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur)に、1−2705番として寄託されたpRIMY−1ベクターにおいては、目的の遺伝子は、K.Lactis毒素シグナルペプチド配列とインフレームで融合された、ヒトリゾチーム(データバンク)登録番号:M19045,68−464フラグメント)をコードする配列である。このように、組み換えリゾチームは、細胞の外側に分泌され、ここで、プレート上での細菌溶解性活性アッセイ、すなわち「リゾプレートアッセイ」(Castanon MJ,ら、1988,Gene 66:223〜234)を用いて、容易に検出されて測定され得る。従って、ヒト組み換えリゾチーム(このベクター中にクローニングされ、そしてH.polymorpha中に分泌される)は、最終産物の検出の容易さのためにだけ利用される唯一のレポーター遺伝子である。しかし、産生されたヒトリゾチームは、多く存在するなかでも特定の実施形態の単なる1例に相当するだけであることは明白である。酵母中で効率的に発現される、ホルモン、酵素、ペプチド、薬学的に活性な物質、ワクチン、または一般に全てのタンパク質は、本発明によるベクターの使用によって生成される組み換えタンパク質の例であり、従ってこれらは本発明の範囲内に包含される。
【0063】
さらに、本発明は、細菌中で増幅できるベクターであって、目的のクローニングされた遺伝子とは独立して、規定されたメチロトローフ酵母についての増幅ユニット、および細菌中でのこのベクターの増幅に必要である組み込みカセットの外側の配列(一般に、少なくとも以下を含む:E.coli複製起点、E.coli耐性遺伝子、および一連の固有のクローニング部位、ポリリンカー部位、またはマルチクローニング部位)を含む、全てのベクターを包含する。
【0064】
本発明のさらなる実施形態によれば、これはさらに、以前に記載されたベクターで形質転換された微生物、詳細には、E.coli、および酵母のような細菌を含む。このEcoliについての好ましい実施形態は、2001年7月18日に、CNMCコレクション(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur)に、1−2705番として寄託されたpRIMY−1ベクターを用いて形質転換された株である。CNMCコレクションでは、このベクターは、目的の配列のクローニング手順を実行するために維持されている。そして上記の酵母は、好ましくは、当業者に公知の方法に従って、本発明のベクターまたは組み込みユニットで形質転換された、Pichia、Hansenula、Candida、およびTorulopsis属のようなメチロトローフ酵母である。本発明のベクターもしくは組み込みユニットを用いて、またはpRIMY−1ベクター(2001年7月18日に、CNMCコレクション(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur)に、1−2705番として寄託された)を用いて形質転換される場合、酵母の中でも、Hansenula属のメチロトローフ酵母、詳細にはH.polymorphaが、特に好ましい。本発明によるベクター、または精製された組み込みユニットは、当該分野で公知の技術に従って実行された形質転換の手段によって、酵母または細菌によって取り込まれる。本発明の好ましい実施形態に従って、酵母形質転換は、Faberら、Journal of General Microbiology(1992)138:2405〜2416)に記載の方法によって生じる。
【0065】
本発明のさらなる目的は、以下:Pichia、Hansenula、Candida、およびTorulopsisのメチロトローフ酵母のリボソーム遺伝子座へのこのような配列の相同(部位特異的)組み込み、置換的組み込み、および多重コピー組み込みのための方法である。このような組み込みは、50〜70世代より長く安定であり、高頻度で生じる。
【0066】
本発明によるプロセスによって、25S、または18S、または5.8S、または5S
のRNA、好ましくは25SをコードするDNA配列のレベルで、組み込みユニットを組み込むことが可能になり、そしてこのプロセスは、このようなrRNAをコードするDNA配列の上流および下流の組み込みユニットを含む、本発明によるベクターの使用によって特徴付けられる。
【0067】
詳細には、本発明のベクターを用いて、適切に調節された遺伝子またはDNA配列またはcDNAによって、H.polymorphaを形質転換する。この形質転換体株は、例えば、グリセロール、およびメタノールのような単純でかつ安価な炭素原を利用して、ワンステップ発酵によって発酵され得、これによって、P.pastoris(ここでは、ツーステップ発酵を必要とする)のような別の酵母における同じ発現レベルについて必要であるよりも迅速に、高収率で産物を得る。
【0068】
本発明の好ましい実施形態においては、組み込みユニットは、上記に規定されたような発現カセットを少なくとも含み、かつ目的の遺伝子を含むので、本発明はさらに、メチロトローフ酵母、好ましくはHansenula属、より好ましくはH.polymorphaにおける組み換えタンパク質の発現のためのプロセスに関する。このプロセスは、本発明において記載された異なる実施形態に従う、ベクター、もしくは組み込みユニット、またはこのようなDNA配列で形質転換された酵母株を使用するという点で特徴付けられる。
【0069】
このようなプロセスは、本質的に以下の工程を包含する:本発明のベクターまたは組み込みユニットを用いた酵母株の形質転換、選択培地上での形質転換体の選択、選択培地、および非選択培地上での交互の増殖による、この組み込みユニットの増幅、生産性について最高の株の選択、当該分野で公知であり、かつグリセロールまたはグリセロール/メタノール混合物のような単純な炭素原を含む培養培地中でのワンステップ発酵、ならびにこのタンパク質が分泌されるかまたは組み換え産物が精製されないかに依存して、消費された培養ブロス、または酵母の回収。過剰生産するクローンの選択工程を、小規模の発酵、または遺伝的解析のいずれかによって実施して、ゲノムに組み込まれたユニットのコピー数を確認することができる。この発酵工程は、従来、30℃〜42℃、好ましくは34℃〜39℃、より好ましくは36.5℃〜37.5℃の温度で実行される。より詳細には、異種組み換えタンパク質の発現のためのプロセスは、Faberらによって記載され、簡略に言及された酵母形質転換プロセス以外に、以下の工程を包含する:
−形質転換コンピテント細胞の調製、
−キャリアDNAが存在する場合、直線化されたベクター、または組み込みユニットを用いた形質転換、
−選択培地上へプレートする工程、および形質転換された酵母の28℃〜32℃、好ましくは30℃の温度で、少なくとも48時間、好ましくは72時間のインキュベーション、
−28℃〜42℃、なおより好ましくは36.5℃〜37.5℃の間の温度における、選択培地、および非選択培地上での交互の増殖、
−最高の生産性特徴を有する形質転換体の表現型解析
−単純な炭素源上での最高の株のワンステップ発酵。
【0070】
組み換え産物の回収工程は二者択一的に、タンパク質が酵母によって細胞内で生成される場合は酵母の回収を、またはタンパク質が分泌される場合は上清の回収を、意図し得る。
【0071】
さらなる特徴によれば、本発明は、異種タンパク質の発現のためのキットを包含し、このキットは、組み込みユニットを含むベクターDNA、好ましくはpRIMY−1 DNA(制限酵素を用いて事前に消化されてもよい)(これによって、リゾチーム遺伝子を含有するものを置き換えることによって目的の発現カセットのクローニングが可能になる)、ならびに酵母株の場合には、好ましくはH.polymorphaを、必要に応じて凍結乾燥型で含む。必要に応じて、このキットは、適切な制限酵素を含む。
【実施例1】
【0072】
pRIMY−1ベクターの構築
本発明によるベクター、または組み込みユニットの組み込み標的は、H.polymorphaのマルチシストロンのrDNAであり:この酵母では25の反復ユニットのrDNA遺伝子が同定されており、これはSaccharomyces cerevisiaeにおいてと同様に、同じ染色体上のクラスターに組織化される。
【0073】
2001年7月18日に、CNMCコレクション(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur)に、1−2705番として寄託された、組み込みpRIMY−1ベクターは、置換型のベクター(置き換えベクター)であり、そしてrDNA遺伝子座におけるHansenula染色体と組み換わることができるDNAセグメント内にクローニングされた、発現カセットおよび選択マーカーを含む:標的染色体の両方の末端上の相同アニーリング(二重交差)によって、組み込まれた外因性のDNAが、組み込みマーカーまたは標的として機能する染色体セグメントを置き換える。
【0074】
H.polymorphaにおいては、あらゆるr−DNAユニットが、8.1kbの長さであり、そして18S、5.8S、25S、および5SのリボソームRNAをコードする配列(その配列は、Blandin G、ら、FEBS Letters(2000)487:76〜81に公開されている)を含む。本発明のベクターにおいて、組み込みボックス(組み換え配列)は、S.cerevisiae 25S rDNAの2つの非連続の、それぞれ0.55kb、および1.1kb長のフラグメントであり、これは、1〜548 EcoRI−BclIフラグメント(0.55kb長)、および1545〜2651 BglII−EcoRIフラグメント(1.1kb長)に相当し、そして登録番号J01355(GenBank)として同定された配列に属する。
【0075】
図2において、pRIMY−1ベクターの地図(マッピング)を例示する。この組み込みユニット(すなわち、組み込むベクターの一部)は、発現カセット、および選択遺伝子を含む。この発現カセットは以下を含む:DL1株 H.polymorpha MOXプロモーター(図2におけるPMOX;参照.Ledeboer AM、Edens L、Maat J、Visser BJW、Verrips CT、Eckart M、Roggenkamp R、およびHollenberg CP:Nucleic Acids Research(1985)13:3063〜3082)、K.lactisキラー毒素シグナル配列とインフレームで融合した成熟型のヒトリゾチームをコードするcDNA配列(HLZ)、およびS.cerevisiae FLP転写ターミネーター()(HLZ、およびFLP Baldari C、Murray JAH、Ghiara P、Cesareni G、およびGaleotti CLEMBO Journal(1987):229〜234)。形質転換体を選択するための発現カセットおよび遺伝子マーカー(S.cerevisiae URA3遺伝子、Rose M、Grisafi P、およびBotsein D、Gene(1984)29:113〜124)は、S.cerevisiae 25S rDNA遺伝子の2つの配列に隣接するが、この配列は、以前に言及されたように、Hansenulaのゲノムにおける相同配列と、二重交差によって組み換わることができる領域に相当する。この構築物において、ヒトリゾチームcDNAは、Hansenulaゲノムへの発現カセットの多重コピー組み込みを確証するために、レポーター遺伝子として含まれた:実際に、リゾチームの酵素(細菌溶解性)活性は、形質転換体の選択を実行することを容易にする、プレート上での迅速法によって容易に測定され得る。
【0076】
このベクターは、Sambrook J、Fritsch EF、およびManiatis T:Molecular Cloning.A Laboratory Manual.第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.1989において組み換えDNAについて記載された方法を利用して、Escherichia coli DH5α株において、その後の工程で調製された;従って、このベクターは、組み込みユニットの外に、複製起点、およびアンピシリン耐性遺伝子(図2には示していない)を含む。
【0077】
pRIMY−1ベクターは、例えば上記のマニュアルにおいて報告された遺伝子操作技術に従って、本明細書中、以降において系統的に記載された一連の工程を通して調製された。
【0078】
URA3遺伝子(ヌクレオチド3−1166)を、この遺伝子の両方の末端にBamHI部位を、そして3’末端にXbaIをBamHIに対してより内部に付加して、以下のプライマー:
URA3−for:5’GCGGGGATCCTTTTCAATTCAATTCATCAT3’;および
URA3−rev:5’GAGGGATCCTCTAGAGCTTTTTCTTTCCAATTTT3’を用いるPCRによって、サッカロマイセス・セレヴィシエ(登録番号:K02207;Roseら、1984)から増幅した;このようにして得た増幅産物(1186塩基対)を、BamHIで消化して、サッカロマイセス・セレヴィシエ25SrDNA遺伝子の2.6kbのEcoRIフラグメント(配列J01355のヌクレオチド1〜2651)としてクローニングされた25S RNAをコードするDNA配列の内側に、pScr25プラスミド(Rossoliniら、1992)の適合するBclI−BglII部位に挿入して、これによってpScr25−URA3プラスミドを得た。
【0079】
この構築物のEcoRIフラグメントであって、2つのrDNA組み込みボックス(すなわち、25SrDNA遺伝子の2つの非連続セグメント、それぞれ、0.55kbのEcoRI−BclI、および1.1kbのBglII−EcoRI、それぞれ、配列番号1および配列番号2として配列表に並べられた)、および内部的にURA3遺伝子を含有する構築物を、次にpSP70プラスミド(Promega、Madison、WI)のEcoRI部位にサブクローニングした(これによって、pSP70−25S−URA3プラスミドを得た)。
【0080】
Hansenula polymorphaのMOXプロモーターを、MOXP−for(5’GGGAAGAACCGCGACATCTC3’)およびMOXP−revプライマー(後者のプライマーはさらなるSacI部位(5’GGGAGCTCTTTGTTTTTGTACTTTAG3’)を誘導する)を利用して、文献において公知のDL1株からPCRによって増幅した;増幅された産物をpBluescript SKベクターポリリンカー(Stratagene、La Jolla、CA)のSmaI部位にクローニングして、SK−PMOXプラスミドを得た。その配列を決定して、配列番号3として配列表に挙げている。この構築物のSacIフラグメントを、取り出して、Kluyveromyces lactisキラー毒素シグナル配列の上流、YIprD1−LYSプラスミド(Rossoliniら、1992)のSacI部位に挿入して、YIprD1−MOX−LYSプラスミドを得た。
【0081】
最終的に、pRIMY−1ベクターを得て、YIprD1−MOX−LYSプラスミドの1.9kbのXbaIフラグメントをサブクローニングする。(このプラスミドは、MOXプロモーターに加えて、発現カセットを含み、この発現カセットは、ヒトリゾチームをコードするcDNAとインフレームで融合されたK.lactisキラー毒素シグナル配列、およびpSP70−25S−URA3プラスミドのXbaI部位におけるS.cerevisiaeの2μmのプラスミド(Rossoliniら、1992)から得られる転写ターミネーターから構成される(図1)。
【実施例2】
【0082】
pRIMY−1ベクターを用いたH.polymorpha LR9株の形質転換、および組み換えタンパク質リゾチームの発現
(用いた増殖培地、および培養培地)
SD最小培地:0.67%(p/v)Yeast Nitrogen Base w/oアミノ酸(Difco)、これは、2%グルコース(p/v)(SDD)、または1%メタノール(SDM)を含有し、そして必要に応じて、ウラシル(50μg/ml)を補充されている。
【0083】
YP培地:1%(p/v)酵母抽出物(Difco)、2%(p/v)ペプトン(Difco)、これは、2%グルコース(YPD)、または1% メタノール(YPM)を含有する。
【0084】
いくつかの発現実験において、炭素源は、2%グリセロール、または1%メタノール+1%グリセロールであった。
【0085】
細菌溶解活性発現レベルの測定を目的とした実験において(これには、数日間の間の培養ブロスにおける増殖を含む)、毎日、0.25%のメタノールを添加した。
【0086】
ベクターからの組み込みユニットの抽出は、ClaI酵素を用いた消化によって達成した。ClaIは、組み込みボックスの末端で切断して、組み込みユニットに相当する4.7kbのフラグメント(図2を参照のこと)を生成したが、このフラグメントはその末端にrDNA組み込みボックスを、そしてその内部に発現カセットおよびURA3遺伝子を含有した。酵母ゲノム上で相同な領域のレベルで組み換えを容易にするために、ベクターの組み込みユニットの抽出を実行した。組み込みユニットは、H.polymorpha 25S rDNA遺伝子を含む、染色体の遺伝子座へのこのようなユニットの標的化された組み込みを可能にする。
【0087】
pRIMY−1ベクターの全部で約5μgを、ClaI酵素を用いて消化して、H.polymorpha UraLR9株(Roggenkamp R、Hansen H、Eckart M、Janowicz S、およびHollenberg CP、Molecular、およびGeneral Genetics(1986)202:302〜308)を形質転換するために用いた。これは、Faber KNら、J.Gen.Microbiol.(1992)138:2405〜2416に記載の方法に従って行った。ここでは、以下のように報告されている:H.polymorpha酵母LR9(Ura)株の「スターター(starter)」培養物を、10mlのYPD培地中に単一のコロニーを接種すること、および300r.p.m.の回転のもとで37℃で一晩培養することによって調製した。酵母細胞を、OD600が0.1に達するまで、100mlの新鮮なYPD培地におけるこの培養物の連続希釈によって、適格にさせて、OD600が0.8に達するまで、同じ条件下で培養した。次いで、細胞を収集して、50mlの溶液A[1.0M ソルビトール、10mM ビシン、pH 8.35、および3%(v/v)エチレングリコール]を用いて洗浄し、最終的に4mlの溶液Aに再懸濁した。
【0088】
このようにして得たH.polymorphaコンピテント細胞を含有する0.2mlのアリコートを、形質転換に直接用い、この形質転換は、総容積20μl中で、5μgの直線化したベクターと一緒に、40μgのキャリアDNA(断片化され、そして変性されたサケ精子DNA)を用いて実行した。
【0089】
この混合物を37℃に5分間置き、1.5mlの溶液B[40% PEG4000、200mM ビシン pH 8.35]を用いて希釈して、穏やかに撹拌しながら30℃で60分間インキュベートした。次いで、この細胞を3000gで5分間遠心分離し、1.5mlの溶液C[150mM NaCl、10mM ビシン、pH8.35]を用いて洗浄し、再度遠心分離して、0.2mlの溶液Cの中に再懸濁した。
【0090】
次いで、適切に希釈した形質転換混合物をSDD最小培地上にプレートして、30℃で3〜4日間インキュベートした。
【0091】
30℃での3〜8日間の増殖期間後(Hansenula形質転換体は、ゆっくり増殖して、組み換えを、従って外因性DNA組み込みを簡単にするように、最初は至適温度より低い、37℃に等しい温度で培養した)50個の形質転換体を得て、ウラシルを含まない最小培地上で増殖する能力について直接選択した。
【0092】
形質転換体、すなわち、URA3遺伝子を含有する組み込むユニットを受け取っていないため、Uraになるクローンは、安定であった。すなわち、完全培地中での50〜70世代の増殖期間後でさえ、Ura表現型を維持できた。
【0093】
炭素源としてメタノールまたはグルコースを含有し、基質としてMicrococcus luteus細胞を含有する完全培地、および最小培地上での増殖を通じて、得られたクローンを最初に、異種タンパク質(リゾチーム)の産生について解析して、細菌溶解活性を検出した(リゾプレートアッセイと呼ばれるアッセイ(Castanon MJら、1988)に従って)。コロニーの周囲の溶解リングの形成によって実証されたとおり、全ての形質転換体は、活性なリゾチームを分泌することができた(図3を参照のこと)。
【0094】
プレートアッセイにおいて最高の直径を有するリングを生成するもののなかから選択したいくつかの形質転換体を、培養培地中に分泌されたそれらの溶解活性を定量する目的で解析した:炭素源としてメタノールを含有する、最小培地、または完全培地中での37℃で4日間の増殖後、培養上清のアリコートを、リゾプレートアッセイによって解析し、その結果を表1に示す。産生されたリゾチームの量は結果として、種々の解析されたコロニー中で変動しており、各々のクローンについての組み込まれたコピーの数に関連していた(実施例3の遺伝的解析を参照のこと)。
【0095】
これらの予備的実験において得られた結果から、この系において生成された活性なリゾチームの量が、組み込みベクターを用いてK.lactisにおいて以前に得られた量、そして複製型ベクターを用いてS.cerevisiaeにおいて以前に得られた量よりも高いことが観察できた(Rossolini GMら、Gene,1992,119:75〜81)。さらに、類似の発現試験によって、リゾチーム生成に関して、与えられたグリセロール、またはグリセロール/メタノール混合物の存在下で増殖するHansenula組み換えクローンを調製した。これは、メタノールのみの存在下で増殖する株によって得られた結果に相当する結果であり、従って、ワンステップ発酵を用いて、単純な炭素源において、本発明の方法および組み込みベクターに従って得られたH.polymorpha形質転換体を発酵させる可能性を実証する。解析されたクローンの収率は、大規模発酵によってさらに(最大の大きさまで)最適化された。
【0096】
表1
組み込み的なpRIMY−1ベクターを用いた、H.polymorpha LR9形質転換を通して得られたクローンから分泌されたヒトリゾチーム
Figure 2004538004
【0097】
従って、これらの結果は、本発明に従って設定された系によって、従来技術の酵母組み換え系において得られた産生レベルよりも高い、異種タンパク質の産生レベルを得ることが可能になることを示す。この系では、最小培地中で、およびメタノールまたはグリセロールのような安価な炭素源の存在下で細胞を増殖させる。この収率は、発酵槽中で形質転換体を増殖することによってさらに最適化された。
【実施例3】
【0098】
(実施例3.形質転換体株の遺伝的解析)
本発明による組み込みベクターは、置換型のベクター(置き換えベクター)であり、rDNA遺伝子座中に、Hansenula染色体で組み換えることができるDNAセグメント内にクローニングされた、発現カセットおよび選択マーカーを含む:標的染色体の両端における相同アニーリング(二重交差)によって、組み込まれた外因性DNAが、組み込み標的として機能する染色体フラグメントを置き換える。
【0099】
形質転換後に生じる組み換え事象の解析を、12のクローンで行った。この解析のために、各々の形質転換体の総DNA(約2μg)を、図2にみることができるようなBamHI酵素を用いて消化して、組み込みユニットに相当する位置で、pRIMY−1プラスミドを一旦切断し(より正確には、BamHIは、MOXプロモーターのすぐ上流に位置する固有の部位を認識する、図2を参照のこと)、そして、反対に、H.polymorpha rDNA部位はそのままにする:種々のクローンの消化されたDNAを、アガロースゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース上に転写して、適切なプローブとハイブリダイズさせた。図4において、12のクローンのいくつかのハイブリダイゼーションパターンを例示する。このパターンはプローブとしてMOXプロモーターを用いて得られた。参照ポイントとしてLR9株を用いて得られた、位置、およびハイブリダイゼーションのシグナル強度を考慮すれば、解析された形質転換体の全てが、多重タンデム組み込みを示すことが観察できる:これらは、4.7kbの陽性のバンドとして同定され得る。その強度はLR9に存在する単一のバンドよりもかなり高く、このことは、Hansenulaゲノムフラグメントが、1コピーのみのMOXを有することを示す。LR9に存在するバンドの強度と比べた、このようなバンドの強度の比較解析(デンシトメーターによって実施した)によって、あらゆるクローンに存在する組み込みユニットのコピーの定量が得られた(図6を参照のこと)。
【0100】
組み込み部位の分布を決定するため、同じサンプル(BamHI消化物)を、ヒトリゾチームcDNA(h−LYSプローブ)と、そしてS.cerevisiaeの1.1kbの25S rDNAフラグメント(rDNAプローブ)とハイブリダイズさせた。図5において、種々の組み込み状況の代表として選択した、8つのクローンで実行した解析を示す。Hansenula rDNA遺伝子座は、BamHI部位を含まないので、拡散したハイブリダイゼーションシグナル(最高の分子量のものに相当する)であって、消化されていないゲノムDNAと同時遊走され、そしてやはりLR9株におけるrDNAプローブとのハイブリダイゼーション中に存在するシグナルは、非常に離れたrDNAユニットにおける組み込み事象に相当する。クローンH13、およびH17を除く全ての場合に、より強度の4.7kbのバンドが存在しており、このことは、ヘッドツーテイル配向での多重タンデム組み込みを示す。さらに、クローンH17、H18、およびH23において、8.3kbのバンドが存在する。これは、おそらくヘッドツーヘッド配向でのコピーの多重挿入に帰せられ得る。他方では、クローンH13は、h−LYSプローブとハイブリダイズされた場合、単一の6.1kbのハイブリダイゼーションシグナルを示し、そして1.1kbの25S rDNAフラグメントとハイブリダイズされた場合、別個のバンドはなく:このことは組み込みユニットの、そしてヘッドツーヘッド配向での多重タンデムコピーの存在(ただしこれは1.1kbの組み込みボックスを欠く)を示唆する(図6における組み込み事象のスキームを参照のこと)。さらに、全てのクローンにおいて、強度の小さいバンドが存在し、その高さは、10kbより多くに相当する。これは、異なるrDNAユニットにおける組み込み(連続、または交互)事象によっておそらく説明され得る。コントロールLR9株に存在する組み込まれたコピー数であって、単一コピーについての参照としてMOXプローブシグナルについて陽性と仮定して算出したコピー数は、8(クローンH1)と45(クローンH5)との間で変化した;さらに、より多数の組み込まれたコピーを有するクローンは、ヘッドツーテイル配向で組み込みユニットコピーを含んだ。最終的に、種々のクローンの染色体全体で、類似のハイブリダイゼーション実験を実行したが、全ての形質転換体において、組み込み事象が、rDNA遺伝子を含有する染色体で生じ、従って部位特異的組み込み事象の結果であることがさらに確認された。
【0101】
結果として、本明細書に示した結果によって、本発明によるベクターの組み込みユニットは、H.polymorpha rDNAの異なるユニットにおいて異種遺伝子を含む発現カセットの安定でかつ多重コピーの組み込みを指向できることが実証される。
【0102】
さらに、全ての形質転換体は、培養培地中で高い活性のリゾチーム濃度を、異なる程度、で産生した。そしてこの生産性は、各々のクローンに組み込まれたコピーの数に関連しており、これによって、プロデューサー株を得るために多数のクローンを解析する必要はなく、従って、本発明によるベクターによって指向された多重コピーの組み込み事象が生じる可能性は高いことが示される。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明による組み込みユニット、およびベクターの模式図。この図は、ベクターであって、A)組み込みユニットを含み、B)異種DNA配列から構成され、C)25SリボソームRNAコード配列からなる2つの組み込みボックス内に包含される、ベクターを示す。本発明の好ましい実施形態に従って、異種DNA配列は、発現カセットから構成される。選択マーカーは常に異種DNA配列に含まれる。
【図2】pRIMY−1プラスミドベクターの制限酵素地図。この図は、ベクター構築物において利用される主な制限部位を示す。黒い点で記したゾーンは、S.cerevisiae 25S rDNA(25S)の配列を示す。この図において示され得る、XbaI−XbaIセグメントは、1.9kbにまたがり、そしてMOXプロモーターによって形成される発現カセット(pMOX、XbaI−SacIセグメント)、およびヒトリゾチームcDNA(HLZ)を含む。これはK.lactisキラー毒素シグナル配列によって先導され(SacI−XbaI)、そしてその後ろに2μmのプラスミド(SacI−XbaIセグメント)に由来する転写ターミネーター(T)が続く。この図に例示されるように、ClaIを用いた切断によって、4.7kbのClaI−ClaIフラグメントとして組み込みカセットが遊離される。
【図3】H.polymorphaの形質転換体がヒトリゾチームを生成する能力についての定量的解析。リゾプレートアッセイと呼ばれるこのアッセイを、アガーYPM培地プレートで実施した。このプレートには、1:100希釈されたMicroccocus luteusの細胞の懸濁物が、溶解活性の基質として、含まれていた(M.luteus細胞のストック溶液は、70mMのリン酸緩衝液(pH6.3)において調製され、そして細胞(70〜80のO.D.600が得られるまで再懸濁した)を2回のオートクレーブサイクルによって殺傷する)。細胞溶解物のリングが、本発明のベクターによって形質転換されたコロニーの周囲に証明され、これは、リボザイム細菌溶解性活性の存在を示す。
【図4】本発明に従って、H.polymorphaに組み込まれた組み込みユニットのコピー数解析。LR9株(コントロールとして用いられる受容株)、およびいくつかの形質転換体から抽出された同量(2μg)の総DNAを、BamHIで消化して、アガロースゲル電気泳動に供した(0.8%アガロース)。電気泳動後、このゲルをニトロセルロースに転写して、MOXプロモーターによって形成されたプローブとハイブリダイズさせた。次いで、この図に報告されたハイブリダイゼーション結果を、濃度測定解析に供して、あらゆる形質転換体クローン中に組み込まれたコピーの数を規定した(LR9コントロール株バンドは、1ユニットに等しいとみなされる)。図6における要約したスキームと比較のこと。
【図5】いくつかの形質転換体における組み込み部位の分布解析。組み込み部位の分布を、形質転換体H1、H11、H13、H17、H18、H20、およびH23において解析した:LR9株を、コントロールとして挿入した。総DNAサンプル(BamHIで消化された)を、アガロースゲル上で溶解して、ニトロセルロース上に転写した。ヒトリボザイムcDNAからなるプローブを用いて得られたハイブリダイゼーションシグナルを、Aに示し、そしてS.cerevisiae 25S rDNA EcoRI−BglIIフラグメントからなるプローブを用いて得られたシグナルを、Bに示す。
【図6】異なる形質転換体における組み込み部位の分布の模式的な再構築。この図においては、図4、および5において得られた結果を、模式的に解釈して提示した。矢印は、組み込まれたユニットの長さおよび配向を示す。灰色の長方形は、ヒトリボザイムに加えてURA3遺伝子についての発現カセットを示す。一方、点で記した長方形(2つの異なる長さ)は、2つの0.55kb、および1.1kbの「組み込みボックス」を示す。形質転換体のバンドの強度の比較解析は、LR9(1つのpMOXコピー)に存在するものと比較して、デンシトメーターによって行い、あらゆるクローンに存在する組み込みユニットコピー数の定量を可能にした。A)、B)、およびC)は、3つの異なる組み込み事象を示す:A)ヘッドツーテイル配向;B)ヘッドツーヘッド配向;C)ヘッドツーテイル配向であって、組み込みボックスが欠失している。
【図7】本発明に用いた配列の配列表。

Claims (40)

  1. メチロトローフ酵母への異種DAN配列の多重コピー部位特異的組み込みのためのプラスミドベクター。
  2. 前記組み込みが多重である、請求項1に記載のプラスミドベクター。
  3. 前記メチロトローフ酵母が、Pichia属、またはHansenula属に属する、請求項1に記載のプラスミドベクター。
  4. 前記部位特異的な組み込みが、リボソーム遺伝子座中へ生じる、請求項1に記載のプラスミドベクター。
  5. 前記リボソーム遺伝子座が、25SRNAをコードする遺伝子座である、請求項4に記載のプラスミドベクター。
  6. 前記異種DNA配列が、酵母リボソームRNAをコードするDNA配列、または少なくとも50塩基対の長さを有する該DNA配列のDNAフラグメントをコードするDNA配列に隣接する、請求項4に記載のプラスミドベクター。
  7. 前記リボソームRNAが、25S RNAである、請求項6に記載のプラスミドベクター。
  8. 前記25S RNAが、S.cerevisiae 25S RNAである、請求項7に記載のプラスミドベクター。
  9. プラスミドベクターが、S.cerevisiae 25SリボソームRNA(GenBank登録番号J01355)をコードする配列の配列番号1に相当する0.55kbのEcoRI−BclIフラグメント、および配列番号2に相当する1.1kbのBglII−EcoRIフラグメントを含むという事を特徴とする、請求項8に記載のプラスミドベクター。
  10. 前記異種DNA配列が、酵母選択マーカーを含む、請求項1〜9に記載のベクター。
  11. 前記選択マーカーが、URA3、LEU2、HIS3、G−418遺伝子をコードする配列から選択される、請求項10に記載のプラスミドベクター。
  12. 前記異種DNA配列が、発現カセットをさらに含む、請求項10に記載のベクター。
  13. 前記発現カセットが、以下の機能的領域:
    −メチロトローフ酵母における異種タンパク質をコードするDNA配列の転写のためのプロモーター
    −目的の遺伝子をコードする配列
    −転写終止配列、
    に相当するDNA配列を少なくとも含む、請求項12に記載のベクター。
  14. 前記プロモーターが、以下:MOX、CAT1、FMD,DHAS、
    からなる群において選択される、請求項13に記載のベクター。
  15. 前記MOXプロモーターが、配列番号3、またはそのフラグメントである、請求項14に記載のベクター。
  16. 異種タンパク質の分泌のためのシグナル配列をさらに含む、請求項13に記載のベクター。
  17. 前記シグナル配列が、以下:
    K.Lactisキラー毒素シグナル配列、S.cerevisiaeキラー毒素シグナル配列、MFα1因子シグナル配列、Aspergillus nigerグルコアミラーゼシグナル配列、およびSchwanniomyces occidentalisグルコアミラーゼプレプロ配列、からなる群において選択される、請求項16に記載のプラスミドベクター。
  18. 前記転写終止配列が、2μmのプラスミドのFLPフラグメントである、請求項13に記載のプラスミドベクター。
  19. メチロトローフ酵母における異種DNA配列の多重コピー部位特異的組み込みのための、プラスミドベクターpRIMY−1であって、2001年7月18日にI−2705番として、CMMCコレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes,Institut Pasteur)に寄託された、プラスミドベクターpRIMY−1。
  20. 配列番号3の少なくとも500ヌクレオチドを含む、メチロトローフ酵母における組み換えタンパク質の発現のための、MOXプロモーター。
  21. メチロトローフ酵母のための組み込みユニットであって、酵母リボソームRNAをコードするDNA配列、または該配列のフラグメントによって、上流および下流で隣接される異種DNA配列を含む、組み込みユニット。
  22. 前記リボソームRNAが、S.cerevisiae 25S RNA(genbank登録番号J01355)であるという事を特徴とする、請求項21に記載の組み込みユニット。
  23. J01355配列のフラグメントを含み、かつ少なくとも50塩基対の長さを有するという事を特徴とする、請求項22に記載の組み込みユニット。
  24. 前記上流配列、および下流配列が、配列表の配列番号1、および配列番号2に相当するという事を特徴付とする、請求項23に記載の組み込みユニット。
  25. 前記異種DNA配列が、選択マーカー、および発現カセットを含むという事を特徴とする、請求項21に記載の組み込みユニット。
  26. 請求項1〜19に記載のベクターを用いて、または請求項21〜25に記載の組み込みユニットを用いて形質転換された微生物。
  27. 前記微生物が、メチロトローフ酵母であるという点で特徴付けられる、請求項26に記載の微生物。
  28. 前記メチロトローフ酵母が、Hansenula属に属する、請求項27に記載の微生物。
  29. 前記酵母が、Hansenula polymorphaである、請求項28に記載の微生物。
  30. 前記微生物が、細菌E.coliであるという点で特徴付けられる、請求項26に記載の微生物。
  31. 請求項1〜19に記載のベクター、または請求項21〜25に記載の組み込みユニットが用いられるという事を特徴とする、メチロトローフ酵母における異種DNA配列の組み込みのためのプロセス。
  32. 前記組み込みが、メチロトローフ酵母のリボソーム遺伝子座における相同組み換えによって生じる、請求項31に記載のプロセス。
  33. 前記リボソーム遺伝子座が、25S RNAをコードする、請求項32に記載のプロセス。
  34. 前記メチロトローフ酵母が、Pichia属、および/またはHansenula属に属する、請求項32に記載のプロセス。
  35. 前記酵母が、Hansenula polymorphaである、請求項34に記載のプロセス。
  36. 請求項12〜19に記載のベクター、または請求項21〜25に記載の組み込みユニットが用いられるという事を特徴とする、メチロトローフ酵母における組み換え異種タンパク質の産生のためのプロセス。
  37. 前記メチロトローフ酵母が、Hansenula polymorphaであるという事を特徴とする、請求項36に記載のプロセス。
  38. 請求項37に記載のプロセスであって、該プロセスが、以下の工程:
    −酵母形質転換コンピテント細胞の調製、
    −必要に応じて、キャリアDNAの存在下で、請求項12〜19に記載のベクターを用いたHansenula polymorpha株の形質転換、
    −選択培地上へプレートする工程、および形質転換された酵母の28℃と32℃との間の温度で、60〜80時間の時間のインキュベーション、
    −28℃と42℃の間の温度における、選択培地、および非選択培地上での交互の増殖、
    −最適の生産性特徴を有する形質転換体の表現型解析
    −単純な炭素源上での選択された形質転換体のワンステップ発酵、
    を包含するという事を特徴とする、プロセス。
  39. 請求項12〜19に記載のベクターが、酵素消化によって消化されるという事を特徴とする、請求項38に記載のプロセス。
  40. 酵母における、組み換えタンパク質の発現のためのキットであって、請求項12〜19に記載の組み込みベクターDNA、および酵母株、好ましくはH,Polymorphaを、必要に応じて凍結乾燥型で含み、かつ必要に応じて適切な制限酵素を含む、キット。
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