JP2004537316A - 低温殺菌卵の改良 - Google Patents

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Abstract

スタック(1)で運ばれる殻付き鶏卵(2)の低温殺菌方法であって、約128°F〜145°F(約53.3℃〜62.8℃)の温度を有する加熱流体浴(4)中に卵を入れ、卵を加熱流体浴中に、卵内のサルモネラ菌が少なくとも4.6の対数減少を生じるまで、滞留させ、卵を加熱液体浴から、ガス雰囲気(26)中に取り出し、卵に抗菌剤を含有する抗菌性流体(28)を接触させることによる方法を提供する。好ましくは、その後に、卵に例えばワックスのような封止剤を接触させる。ガス雰囲気中で、卵内の残留熱によって、卵は細菌が少なくとも5対数減少するまでさらに低温殺菌される。ガス雰囲気における冷却中に、卵は抗菌性流体を卵中に卵殻の内側と卵膜との間に吸収して、卵内に抗菌性バリヤーを生じる。
【選択図】図1

Description

【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/271,726号(2001年2月28日出願);第60/271,746号(2001年2月28日出願);第60/314,631号(2001年8月27日出願)及び第60/335,031号(2001年11月2日出願)の優先権を主張し、これらの継続出願であり、また、米国通常特許出願第09/954,462号(2001年9月14日出願)の一部継続出願であり、出願第09/954,462号自体は、通常出願第09/613,832号(2000年7月11日出願)、現在は米国特許6,322,833(2001年11月27日発行)の一部継続出願であり、この特許は、米国通常出願第08/962,766号(1995年8月25日に最終的出願)及び現在の米国特許5,843,505(1998年12月1日発行)の最終的分割出願である。
発明の背景
【0002】
低温殺菌卵は、合衆国において及び実際に世界中で、比較的新しい商品である。当該技術分野は、米国特許第5,843,505号(この特許は本明細書に援用される)に詳述されているような、卵を低温殺菌する効果的な方法を考案することを以前から追求してきたが、この特許に記載され、主張される方法が出現するまでは、卵の低温殺菌は、商業の観点からも機能性の観点からも成功していなかった。機能性とは、卵黄インデックス、ハウユニット(Haugh unit)、卵黄強度、エンゼルケーキ体積(angel cake volume)、スポンジケーキ体積(sponge cake volume)、気泡安定性、ホイップ可能性及びリゾチーム特性(lysozyme properties)を包含する、卵の性質の集まりを意味する。これらの機能性の全ては、当該技術分野に周知であり、上記特許に詳述されているので、本明細書では簡明さのために、これらについて詳述しない。しかし、例えば、エンゼルケーキ体積は卵白のタンパク質損傷に敏感である。該タンパク質に対する熱損傷は、ホイップ時間を増加させ、ケーキ体積を減少させる。気泡安定性は、ホイップした卵白の気泡体積の尺度である。熱損傷した卵白タンパク質は、小さい気泡体積を生じるので、メレンゲ等の製造には望ましくない。ハウユニットも、ホイップした卵白の気泡安定性を表し、ベーキング(baking)及びケーキング(caking)のための卵の多くの使用に重要である。卵黄インデックスは、卵黄の幅に対する卵黄の高さの尺度である。新しい卵をフライパンに割りいれたときに、卵黄インデックスが不適当であるならば、目玉焼きに焼かれた卵の場合に、卵黄は平たく、非魅力的に見える。卵黄強度は、卵黄を維持するための卵黄膜の強度の尺度であり、卵を目玉焼きにする場合に重要である。
【0003】
上記米国特許は、卵内のサルモネラ種(Salmonella species)を少なくとも5対数に等しい量だけ減ずるという必要条件を包含する、米国食品医薬品局の低温殺菌卵の比較的新しい定義に沿って卵を低温殺菌することができる方法を記載し、特許請求している。これらの方法はまた、低温殺菌卵が、特にハウユニット、並びに卵黄インデックス及び卵黄強度に関する機能性の実質的な低下を有さないように、実施される。
【0004】
該特許に記載され、特許請求されている方法の結果として、低温殺菌卵の実質的な商業化が現在行なわれている。
【0005】
これらの方法は、非常に基本的には、該特許に示されたグラフトのある一定のパラメーターライン内のある一定の温度において、卵内に存在しうるサルモネラ種が少なくとも5対数だけ減少するために充分な時間、原料卵を伝熱媒質中で加熱することを必要とする。該特許の1実施例では、卵黄の内部温度を133°F(56.1℃)にして、低温殺菌装置に加熱された又は冷却された水を加えて、卵内のサルモネラ菌が少なくとも5対数だけ減少するまで、この温度に維持する。特定の低温殺菌装置、低温殺菌される原料卵の履歴、低温殺菌装置に入る原料卵の温度とそれらのサイズ、低温殺菌装置の周囲の周囲温度、並びにその他の要因に依存して、約64分間以上の総低温殺菌温度が必要である。もちろん、低温殺菌される卵の卵黄中央部分の滞留時間は、該特許のグラフトのパラメーターラインA及びBに従う場合よりもかなり短い。しかし、低温殺菌のために該特許によって必要とされる温度に卵黄が達するために必要な時間を含めた、総処理時間と呼ばれる64分間は、低温殺菌卵の生産コストを実質的に高める。このような低温殺菌のために必要な総処理時間をかなり短くすることは、もちろん、当該技術分野にとって実質的な利益であろう。
【0006】
さらに、該特許に従って商業的に低温殺菌された卵は、該特許の実施例で低温殺菌された卵の長い貯蔵寿命を有さないことも発見された。実際に、卵の商業的な低温殺菌では、低温殺菌卵の実質的な割合が適当な伝統的貯蔵条件によってさえも、該低温殺菌卵に腐敗が現れ始める前に、僅か約21日間という貯蔵寿命を予想外に有することが発見された。このことは、もちろん、商業的運転に関して重要であり、このことが、卵の商業的な低温殺菌方法における欠点であり、商業的な低温殺菌卵の貯蔵寿命をかなり延ばすことが当該技術分野にとって実質的な利益であると考えられることは、充分に認識された。
【0007】
上記特許はさらに、低温殺菌プロセス中に卵を低温殺菌するための伝熱媒質を2種類以上の温度に加熱することができることを開示している。しかし、実際問題として、異なる温度の伝熱媒質、例えば水を有することは、利益とより大きい効率を与えるが、別々の低温殺菌タンクの系列を、資本コストの追加と共に必要とする。このことはまた、1つのタンクに多量の卵を入れて、このタンクから取り出し、後続タンク(単数又は複数)に入れて、そのタンクから取り出すことを必要とする。複数個のタンクの使用と、これらのタンクに卵をいれて、取り出すための装置とは低温殺菌方法を複雑にするのみでなく、そのコストを実質的に高めることが判明した。この後者に関して、卵を低温殺菌することの危険を惹起する要因の1つは、取り扱い中に卵が低温殺菌タンク内で破損した場合に、食品安全性の理由から、プロセスを停止して、タンクを空にし、充分に清掃して、熱水を再び満たさなければならないことである。それ故、該低温殺菌プロセスを複数の温度において、但し複数個のタンクの使用を必要とせずに、実施することが実質的に有利であることが、認められた。このことは、複数の低温殺菌温度が低温殺菌のために必要な総時間を減じ、したがって、低温殺菌コストを実質的に減ずることができるという、上記特許に開示された利益を生じると考えられる。
【0008】
さらに、先行技術は、卵内のサルモネラ菌が5対数減少に達するや否や低温殺菌装置から卵を取り出すことが重要であると考えていた。このことは、好ましくない余分な低温殺菌、即ち、低温殺菌卵の機能性に不利な影響を及ぼすと考えられる、5対数という安全性要件の超過を防止するためである。しかし、低温殺菌における、このかなり形式的な要件は、当該技術分野によって看取されたように、費用のかかる大規模な制御デバイスによって、低温殺菌プロセスを非常に細心に制御することなしには、新しい原料卵の機能性を同時に維持しながら、該5対数減少を正確に達成することを困難にした。もちろん、このような費用のかかる制御なしに卵を低温殺菌することは、当該技術分野にとって有利であると考えられる。
発明の概要
【0009】
総低温殺菌時間を減ずることの上記利益に関して、低温殺菌プロセスにおける多重温度のある一定の使用によって、総低温殺菌時間を減ずることができることが発見された。これらのある一定の多重温度は少なくとも3つの異なる温度又は温度範囲を包含し、特に、この場合に、卵が遭遇する第1温度(単数又は複数)は比較的高温(単数又は複数)であり、卵が遭遇する第2温度(単数又は複数)は好ましい低温殺菌温度(単数又は複数)であり、卵が遭遇する第3温度(単数又は複数)は再び、比較的高温(単数又は複数)である。より正確には、第1温度(単数又は複数)は約139°F〜146°F(約59.4℃〜63.3℃)であるべきであり、第2温度(単数又は複数)は約130°F〜135°F未満(約54.4℃〜57.2℃未満)であるべきであり、第3温度(単数又は複数)は約135°F〜138°F(約57.2℃〜58.9℃)であるべきである。しかし、これに関する従属的な発見として、該3つの異なる温度又は温度範囲に卵が滞留する時間は異ならなければならず、比較的高い第1温度(単数又は複数)における時間は短く、より好ましい第2低温殺菌温度(単数又は複数)における時間は長く、比較的高い第3温度(単数又は複数)における時間は短くなければならないことが判明した。
【0010】
これに関する他の発見として、当該技術分野の認識に反して、卵を低温殺菌装置において、例えば低温殺菌水浴において、サルモネラ菌の少なくとも5対数減少まで、低温殺菌する必要がないことが見出された。本発明の前には、卵が低温殺菌水浴においてサルモネラ菌の5対数減少に達すると、5対数減少後に、該卵を直ちに該低温殺菌水浴から取り出して、急冷水浴に入れて、さらなる加熱、低温殺菌及び、さらなる低温殺菌によって生じる機能性の劣化を防止することが、絶対不可欠だと考えられた。これに反して、サルモネラ菌の僅か約4.6対数減少、例えば4.8対数減少、特に約4.75対数減少に達したときに、卵を低温殺菌浴から取り出すことができ、卵を低温殺菌装置から取り出した後に卵内の残留熱がサルモネラ菌の5対数減少を達成することが見出されている。低温殺菌装置から取り出した後に、該卵を直ちにガス雰囲気、例えば空気中に入れると、該卵が約128°F(約53.3℃)未満の温度に達するまで低温殺菌が生じ続ける。したがって、該ガス雰囲気中のこの滞留中に、付加的な低温殺菌が行なわれ、サルモネラ菌の少なくとも5対数減少に達する。
【0011】
他の重要な発見として、慣用的な細長い低温殺菌タンクにおいて、該タンク内の水が一体の水であるとしても、上記温度が実現されうるように、該タンクの主軸に沿って異なる温度帯を設けることが可能であることが見出された。この理由は、該タンク内の局限された帯に生じる熱が、タンク内の水の垂直対流のために、異なる温度帯を形成することができるからである。
【0012】
これに関する他の重要な発見として、該異なる温度帯を、該タンクの主軸に沿って間隔を置いて配置された複数の横断ジェット系列の使用によって、異なる温度を有する、別個の温度帯に実質的に明確にすることができることが見出された。これらのジェットは、ジェット流体を該タンクの底部から該タンクの頂部へ通過させて、異なる温度の水を封じ込めるためのちょっとしたジェット流体壁を生じる。
【0013】
さらに、卵を低温殺菌装置で低温殺菌した後に、該卵が上記ガス雰囲気中に存在するときに、該卵に抗菌剤を含有する抗菌性流体を接触させるべきであることが見出された。したがって、ガス雰囲気での冷却中に卵に浸透しうる、例えば腐敗菌及び空気浮遊病原菌のような、好ましくない細菌は、抗菌性流体中の抗菌剤によって実質的に殺されるか、又は数を非常に著しく減少されて、卵が長期間の冷蔵保存中に腐敗しないようになる。実際に、このことは、加熱された状態にある、少なくとも部分的に低温殺菌された卵を腐敗菌から保護するために、即ち、該卵に殺菌剤を含有する抗菌性流体を塗布するために適用可能である。
【0014】
したがって、簡単に説明すると、1点では、本発明は、約128°F〜146°F(約53.3℃〜63.3℃)の温度を有する加熱流体(heated fluid)中に殻付き卵を入れることによる殻付き鶏卵の低温殺菌方法を提供する。該卵を該加熱流体中に、卵内のサルモネラ菌の少なくとも4.6の対数減少が生じるまで、滞留させる。該卵を該加熱流体から取り出して、ガス雰囲気中に入れる。その後に、簡単に上述し、以下でさらに詳しく説明するように、該卵の腐敗を防止するために、抗菌剤を含有する抗菌性流体を該卵に接触させる。
【0015】
より好ましくは、約139°F〜146°F(約59.4℃〜63.3℃)の第1温度(単数又は複数)、約130°F〜135°F未満(約54.4℃〜57.2℃未満)の第2温度(単数又は複数)及び約135°F〜138°F(約57.2℃〜58.9℃)の第3温度(単数又は複数)を有する加熱流体中に卵を入れる。該加熱流体の第1、第2及び第3温度は、該加熱流体の別々の帯に維持される。卵内のサルモネラ菌の少なくとも4.6、好ましくは少なくとも4.75の対数減少を惹起する時間に、卵を第1,第2及び第3温度に通して通過させる。該卵を該加熱流体から取り出して、ガス雰囲気中に入れ、ここで該卵を冷却させ、少なくとも5.0の対数減少に達するようにさらに低温殺菌させる。
【0016】
本発明の好ましい形では、加熱流体は水であり、該水はタンク、特に、細長いタンク中に含有され、該タンクを通って、卵は該タンクの入口端部から該タンクの中央帯に及び該タンクの出口端部に移動する。タンクの底部近くに、複数個のジェットが散在し、それらをジェット流体が通過する。ジェット流体が少なくともタンクの頂部近くまで、垂直に上昇して、間隔を置いたジェット系列の各々の近くにジェット流体壁を生じるように、ジェットの幾つかはタンクの主軸を横断するように配置され、間隔を置いて配置される。これによって、特に、低温殺菌の速度及びとりわけ正確さを高め、機能性の低下を減ずるために、タンクの主軸に沿って、より明確に画定された、異なる温度が得られる。
【0017】
本発明の他の好ましい形では、抗菌性流体を、卵が低温殺菌タンクを出た後に、卵に接触させるのみでなく、卵が低温殺菌タンクを出た後に卵を処理する機械的装置にも、抗菌性流体を接触させる。これによって、機械的装置上の細菌の生存可能な量が卵に侵入することが避けられる。
【0018】
本発明の他の形では、卵が抗菌性流体と接触した、例えば、抗菌性流体を吹き付けられた後に、該卵に、処理後の卵中に細菌が侵入するのを防止するために、封止剤を少なくとも部分的に塗布する。
【0019】
本発明の他の形では、卵を加熱流体中に、サルモネラ菌の少なくとも6及び12までの対数減少を惹起するために充分な時間滞留させる。これは、部分的に凝固した又は調理された(cooked)卵を生じるが、このような卵は潜在的なサルモネラ菌が高度に減少するのみでなく、例えば目玉焼き卵の製造において非常に迅速に調理されるので、ファーストフード産業及びナーシング(nursing)産業において有用である。
発明の詳細な説明
【0020】
上述したように、本発明の幾つかの異なる態様が存在し、これらの態様の各々が重要であるが、これらの態様は共に、卵の低温殺菌に必要な時間及びコストの重要な減少を生ずるのみでなく、同様に重要なことには、卵の貯蔵寿命をかなり延長させ、本発明のこの後者の特徴が最も重要である。上記特許に記載され、特許請求された方法では、実施例において、単一水タンクを用いて低温殺菌が行なわれた。水タンク内で複数個の卵を低温殺菌した各回後に、食品の安全性のために、さらなる低温殺菌に対して、該タンクを空にして、清掃して、水を再充填して、再加熱する。その結果、低温殺菌からの該タンク内の水の細菌汚染は、さらなる低温殺菌でのさらなる処理の前に除去されると考えられる。しかし、例えば3,000〜4,000ガロンを含有する商業的サイズのタンクによって該方法を商業的に運転する場合に、卵のロットを低温殺菌した各回後に、このようなタンクを空にすることは非常に費用がかかり、非実用的である。実際に、商業的運転では、商業的実行可能性のために、低温殺菌タンク内の水を多くの連続的低温殺菌に適するように維持しながら、一連の卵ロットを該低温殺菌タンクに通さなければならない。
【0021】
商業的タンク内の水が、比較的高温に加熱されたとしても、それにも拘わらず、ある一定の細菌、特に腐敗原因菌の増殖を支持することができることが発見された。さらに、該先行技術方法では、低温殺菌タンクを出る前に、卵はサルモネラ菌の5対数減少まで低温殺菌されているので、該低温殺菌タンクを出た直後に、卵の機能性の劣化が生じると考えられる温度未満に、一般的に述べると、約128°F(約53.3℃)未満に卵の内部温度を下げるために、卵を冷却水タンクに入れることが必要であった。この場合にも再び、商業的運転のための冷却タンクの冷水は、卵の各ロット毎に交換されない。これは、多くの低温殺菌及び冷却のために、本質的に再使用される。腐敗菌が冷却水タンクにおいても増殖することが発見された。卵は冷却水タンク内で冷却されるので、腐敗菌を含有する低温殺菌浴からの水及び腐敗菌を含有する冷却浴からの水が、卵の多孔質殻を通して、卵自体の中に吸収される。この理由は、低温殺菌装置の温度において、卵殻の天然封止剤,即ち、卵殻の孔をシールする封止剤の大部分が除去されるからである。低温殺菌の少なくとも一部中及び冷却中に孔は開くので、これらの暴露された孔は低温殺菌浴及び冷却浴からの水を、冷却浴で冷却中の卵に吸収させる。これらの水は腐敗菌を含有するので、貯蔵時に、低温殺菌卵はかなりの早期腐敗を起こし易かった。
【0022】
さらに、これらの水中の腐敗菌数を実質的に減ずるために、例えば過酸化水素のような、殺菌剤を低温殺菌浴中及び冷却水中に入れるとしても、これらの細菌を完全には除去することができず、長期間貯蔵時に、低温殺菌卵の腐敗の顕著な経歴が約3週間で生じることが見出された。したがって、低温殺菌水及び冷却水中の殺菌剤の使用は有用ではあるが、問題を完全には解決していない。
【0023】
したがって、本発明の比較的広範囲な態様の1つは、長期間冷蔵貯蔵時の低温殺菌卵の腐敗の可能性を回避するためには、冷却浴を除去しなければならないという発見である。しかし、冷却浴を除去すると、卵の機能性、特に卵白の機能性の劣化を高めると考えられる、5対数を越えるさらなる低温殺菌を停止させる機能も除去される。問題は、この機能性のさらなる劣化を冷却浴なしに、如何にして、迅速にかつ効果的に停止させることができるかになった。
【0024】
本発明の他の発見として、冷却浴を除去しても、さらなる低温殺菌及び機能性低下を停止させるために、卵をガス雰囲気、例えば周囲空気中で充分に冷却することができることが判明した。しかし、これに関する従属的発見として、空気中で卵を冷却して、低温殺菌のサルモネラ菌の5対数減少を実質的に越えないためには、当該技術分野が容認した方法に反して、5対数減少に達する前に、卵を低温殺菌装置から取り出さなければならないことが見出された。より詳しくは、およそ133°F(56.1℃)の通常の低温殺菌温度によって、少なくとも約4.6対数に達した後に、卵を低温殺菌装置から取り出すことができ、ガス雰囲気に滞留中に該卵の残留熱が、少なくとも5対数減少に達するように低温殺菌を続けるであろうことが見出された。このことは、有害で、費用のかかる冷却浴の必要性を除いたのみでなく、次に、同様に重要なことには、低温殺菌装置での卵の低温殺菌に必要な時間をかなり短縮した、これは確かに商業的な利益である。
【0025】
これに関する、さらに他の広範囲な発見として、卵をガス雰囲気中に滞留させ、上述したように、さらなる低温殺菌のために冷却する場合に、卵が冷却浴の冷却水を吸収すると丁度同様に、卵はガス雰囲気を卵中に吸収することが見出された。ガス雰囲気は、例えば、オゾン、塩素、臭素等の使用によって、抗菌性雰囲気になることができるが、このアプローチは費用がかかり、一貫した結果を得ることが困難であり、一貫した結果に関して信頼できないことが見出された。したがって、これに関する従属的な発見として、例えば空気のようなガス雰囲気が、周囲の腐敗菌及び/又は病原菌で幾らか汚染されたとしても、それにも拘わらず、卵が低温殺菌装置の加熱流体からガス雰囲気中に取り出されたときに、そしてこれらの卵の内部熱(温度)が周囲温度よりも高い間に、卵を抗菌剤を含有する抗菌性流体と接触させる限り、受容されることが見出された。このようにして、卵がガス雰囲気中で冷却され、周囲雰囲気を卵中に吸収し始めるときに、抗菌性流体が卵中に入る。この抗菌性流体は卵殻の内側と卵の外膜との間に、特に、卵の大きい方の端部のエア・ポケット(サック)中に配置される。低温殺菌中に、エア・ポケットはかなり縮小するが、冷却時に再び膨張する。したがって、卵が冷却すると、抗菌性流体は卵のエア・ポケット中に引き込まれる。周囲ガス雰囲気中に存在すると考えられる、如何なる腐敗菌及び/又は病原菌も、抗菌性流体中の抗菌剤によって実質的に殺されるか又は成長不能(non-viable)にされる。
【0026】
さらなる広範囲な発見として、上述したように、低温殺菌中の卵の天然封止剤の損失は、低温殺菌後及び貯蔵中に周囲腐敗菌又は病原菌が多孔質殻を通って卵に侵入する機会を与える。したがって、さらなる発見として、抗菌性流体が適用された後に、低温殺菌中に失われた卵の天然封止剤に代わる封止剤、例えばワックスを卵に少なくとも部分的に塗布することが好ましいことが見出された。これは、周囲細菌が貯蔵中の卵に侵入するのを防止する。
【0027】
さらに、広範囲な発見として、封止剤が好ましくは抗菌剤をも含有し、低温殺菌中に失われる卵の天然封止剤を代用するために用いられる、該封止剤、例えばワックスが周囲腐敗菌及び/又は病原菌に対するバリヤーを形成するのみでなく、該細菌に対する抗菌性バリヤーをも形成することが見出された。
【0028】
なお、さらなる広範囲な従属的発見として、冷却浴は除去されなければならないので、このことが、上述したように、低温殺菌浴から僅かに少なくとも約4.6という低い対数減少を示す卵を取り出すことによって、低温殺菌卵の対数減少を変化させる機会を生じることが見出された。しかし、さらに、卵を例えば6、8、9対数減少又は12対数減少さえものような、非常に高度な対数減少にまで低温殺菌することができることが見出された。このことは、非常に安全な卵を生じるが、このような高度な対数減少は卵の機能性低下を実質的に高める。このような高度な対数減少中に、卵は少なくとも部分的に調理される。しかし、約12対数減少までは、まだ、卵を実質的に流動状態にしていた、即ち、卵を割って、慣用的な方法でスクランブルする又は油で焼くことができるようにしていた。しかし、このような卵は、非常に短時間で、例えば、通常の調理時間の約1/2で、慣用的な方法で調理される、例えばスクランブルされる又は油で焼かれる。このことは、卵料理の経済性にとって調理時間が重要であり、卵の安全性向上が責任のために重要であるファーストフード・レストランにとって特に有用であると見出された。このことはまた、患者によるサルモネラ菌の摂取が災害を招きうる、ヘルスケア施設、例えばナーシング・ホームにとっても重要である。
【0029】
全体的な総合方法を図1によって図式的に説明する。この図では、多くの卵を含有しうる、卵2のスタック1は低温殺菌装置、例えば、タンク、一般的に4の方向3に運ばれる、タンク4は、図1の例では、主軸7及び短軸8を有する細長いタンクとして示される。卵2のスタック1は、矢印9のよって示すように、低温殺菌装置4に運び込まれ、低温殺菌装置4を主軸7に沿って通過する。以下で詳細に説明する、本発明の好ましい形では、低温殺菌装置4は3つの帯又は区画を有し、これらは図1に入口帯又は区画11、中央帯又は区画12、及び末端帯又は区画13として示され、これらの全ては以下でさらに詳細に説明する。これらの3帯又は区画11、12及び13は、複数のそれぞれの加熱手段によって加熱される。この図は典型的なヒーター14、15及び16を示すが、より多くのヒーターが通常用いられると考えられる。これらのヒーターは、例えば熱水ヒーター、ガスヒーター、電気ヒーター等のような、種々な形をとることができる。
【0030】
さらに、低温殺菌装置4内には、低温殺菌装置4の底部19近くに配置されたジェット18が存在する。これらのジェットの幾つかは主軸7を横断し、短軸8に並行になるように配置され、以下でより詳しく説明するように、別々の帯又は区画11、12及び13を形成することができるように、間隔を置いて配置される。
【0031】
スタック1は、矢印21が示すように、末端帯又は区画13において低温殺菌装置4を出る。該方法の1つの形では、コンベヤー25上に卵2を載せるために、卵のスタックを、非常に概略的に22として示す、慣用的なディスタッカー装置によって、矢印23で示す動作で降ろす。これは、周囲空気でありうるガス雰囲気26中で行なわれる。該方法の1つの形では、卵が該ガス雰囲気中にある間に及びコンベヤー25に載せられる前又は後に、これらの卵に抗菌性流体28を接触させる、例えば吹き付ける、そして同じ抗菌性流体28をディスタッキング装置(destacking apparatus)22上に接触させる、例えば吹き付ける。抗菌性流体28はスプレー・デバイス(単数又は複数)29から吹き付ける。抗菌性流体を他のやり方で、例えば、浸漬、又はロール塗り、又は塗装によって、卵に塗布することができるが、吹き付けが好ましい。
【0032】
卵はコンベヤー25に沿って移動するにつれて、卵はガス雰囲気26中で、その温度未満で低温殺菌が行なわれ、機能性のさらなる劣化が停止するような温度にまで冷却される。しかし、貯蔵中の腐敗菌再汚染を回避するために、卵1に分配デバイス(単数又は複数)31からの封止剤30を接触させる、例えば吹き付ける。封止剤、例えばワックスは、卵が該封止剤の温度よりも高温又は低温であるような箇所で卵に塗布されることができるが、以下でさらに詳細に述べるように、卵殻の全表面にわたる封止剤の一様な流れを保証して、卵殻の孔の大部分をシールするように、卵が封止剤よりも高温である間に、卵に封止剤を塗布することが有利である。
【0033】
封止剤が固まった後に、卵は慣用的な包装機33に送られ、そこで卵は慣用的な方法で包装される。
【0034】
上記は本発明の総合方法の概要であり、以下では該総合方法に関連して、さらに詳述する。
【0035】
殻付き鶏卵の低温殺菌方法では、卵を、約128°F(約53.3℃)〜146°F(63.3℃)の温度(単数又は複数)を有する加熱流体中に入れる。約128°F(約53.3℃)未満の温度では、実質的な低温殺菌が行なわれず、146°F(63.3℃)を越える温度では、機能性の低下が絶対に許容されない。しかし、以下でさらに詳しく説明するように、該範囲内には非常に好ましい温度が存在する。
【0036】
加熱流体は、重要であるのは流体ではなくて、熱が該流体から卵に転移することであるので、任意の好ましい流体であることができる。したがって、該流体は水蒸気から、流動化した固体粒状床、空気を通って移動するマイクロ波、空気を通して放射する加熱ランプ、空気を通過する光線までの範囲でありうるが、通常は、グリコール/水の溶液、水/アルコールの溶液等を包含する、水である。実用的な商業的物質として、該加熱流体は通常は、例えばグリコール、殺菌剤、塩等のような添加剤を含む又は含まない水であり、本出願では明瞭さ及び簡明さのために、詳細に言及する際に、該加熱流体を水として記載する。
【0037】
卵内のサルモネラ菌が少なくとも4.6の対数減少、好ましくは4.75又は4.8の対数減少するまで、卵を加熱流体、例えば水中に滞留させる。これは、卵の実質的な、但し完全ではない低温殺菌を生じる。次に、卵を加熱流体からガス雰囲気中へ取り出す。この場合にも、重要な機能は卵をさらに低温殺菌して、冷却するという機能であるので、特定のガス雰囲気が重要であるのではない。該雰囲気はオゾン若しくは塩素若しくは臭素、又は他の食品使用殺菌剤のいずれかでありうる、或いは該雰囲気は窒素又は酸素でありうるが、この場合にも、商業的運転における実用性のために、ガス雰囲気は通常は空気である。卵は、ガス雰囲気中に存在する間に、抗菌剤を含有する抗菌性流体と接触する。さらに、卵がガス雰囲気中に存在する間に、例えば約133°F(約56.1℃)の温度の卵の残留熱が、約128°F(約53.3℃)未満、特に125°F(51.8℃)未満にまでの冷却中に、該卵をさらに低温殺菌させる。したがって、該ガス雰囲気中にあるとき及び冷却中に、卵の対数減少は約5対数又はそれをやや越えるまでに上昇する。少なくとも約5対数減少を達成するために、低温殺菌装置を出る卵の温度、ガス雰囲気中での時間、並びにガス雰囲気の温度を調整する。
【0038】
しかし、簡単に上述したように、卵の完全な調理、例えば、スクランブルエッグ又は目玉焼きのための時間を短縮する、及び/又は卵の安全性を改良するために、卵の部分的な予備調理が望ましい、慣習的な食品使用のためには、低温殺菌装置を出る卵の対数減少は約8、9又は12対数程度の高さであることができる。このような対数減少では、卵の若干の増粘(thickening)が生じるが、他方では、重要なことには、卵は依然として流動性である。それ故、例えば、ファーストフード・レストランでは、直ちに供するために、卵をフライパン上に通常のやり方で割り入れて、目玉焼きとして焼くことができる。しかし、卵は少なくとも6又は8又は12対数減少しているので、これらの卵は、商業的レストランの客又はヘルスケア施設の患者のために非常に安全であり、不利な結果を実質的に心配せずに目玉焼きとして供することができる。このことは、サルモネラ菌感染が老齢の人々にとって非常に危険であると考えられ、原料卵の軟らかい調理(soft cooking)がFDAによってもはや認可されないナーシング・ホームにおいて特に有用である。さらに、この高度な対数減少を有する卵は、新しい卵の調理時間の約1/2で調理される。このことは、商業的なレストラン、例えばファーストフード・レストランにとって非常に重要である、これらのレストランは、卵を不利な結果なしで、例えば目玉焼きとして、供することができ、さらに、卵を非常に迅速に調理して、供することができることを保証されうるからである。この結果は、本発明によると、冷却浴が除去されるので、可能になる。
【0039】
上述したように、低温殺菌装置4における卵2が、サルモネラ菌の少なくとも4.6の対数減少に達するために必要な時間が、低温殺菌装置における加熱流体が異なる温度である場合には、実質的に短縮されることも、さらに発見された。このことは、卵が周囲温度から少なくとも128°F(53.3℃)の低温殺菌温度を越えるまで、例えば133°F(56.1℃)に加熱されるときに、一般的には、約128°F(約53.3℃)を越える温度当りの時間に直接関係して、1対数減少に達するまで、機能性低下が殆ど生じないという発見に基づく。その後、卵タンパク質への熱によって惹起される機能性劣化の率(rate)は、約133〜134.5°F(約56.1℃〜56.9℃)の温度範囲では、約4対数減少が達成されるまで、低い。したがって、この温度範囲では、機能性プラトーのようなものに達する。上記4対数減少後に、135〜138°F(57.2〜58.9℃)の範囲の温度上昇によっても、4〜4.6対数減少の次のプラトー中に最小の機能性低下が生ずるにすぎない。これらのプラトーの発見によって、上記で定義した温度範囲を用いて対数減少を高めることが、最小の機能性低下で可能になった。
【0040】
この発見によって、卵が基本的に入口帯又は区画11で比較的高温(単数又は複数)の水にさらされ、次に帯又は区画12で比較的低温(単数又は複数)の水にさらされ、次に末端帯又は区画13で比較的高温(単数又は複数)の水にさらされるならば、水浴で卵を低温殺菌するために必要な時間を実質的に短縮することができることが見出された。スタック1の卵2は矢印3及び9の方向に移動して、低温殺菌装置4に、一般に、例えば冷蔵温度(40又は45°F(4.4又は7.2℃))までの、周囲温度以下で入るので、加熱流体34(図1)から卵2への伝熱は、卵温度と加熱流体34の温度との温度差が大きいときには、非常に大きい。これによって、卵を非常に迅速に、低温殺菌温度近くまで、卵の機能性の劣化なしに加熱することができる、この理由は、卵への伝熱が外側アルブミンの損傷を回避するほど迅速であるからである。該比較的高温帯又は入口帯又は区画11では、卵は、上述したような、1対数減少プラトーに達しない。卵と加熱流体との間の該高い温度差を用いることによって、卵は所望の低温殺菌温度に加速された時間で達する。その後に、卵は中央帯又は区画12に入る、この帯又は区画の温度(単数又は複数)は入口帯又は区画11の温度よりも低く、例えば130°F〜135°F未満(54.4℃〜57.2℃未満)、特に133°F〜135°F未満(56.1℃〜57.2℃未満)である。卵をこの温度において、約4対数における第2プラトーに達するまで、実質的な機能性低下なしにより高度な低温殺菌を果たすために、しばらくの間加熱することができる。これに関連して、安全な、低コスト低温殺菌された卵を公衆に提供するために、低温殺菌装置の水の温度範囲及びこの水への卵の暴露時間を、卵がアルブミンタンパク質への損傷なしに生じうる最大伝熱率(the maximum rate of heat transfer)に関連づけなければならないことが認識された。
【0041】
上述したように、本発明では冷却装置を省略して、低温殺菌装置から取り出した後の卵をガス雰囲気中でさらに低温殺菌するために、卵の残留熱を利用する。該残留熱を高めるために、卵を中央帯又は区画12の温度よりも高い温度に加熱することが、非常に有利である。それ故、末端帯又は区画13では、ガス雰囲気中の卵により大きい残留熱を与えるために、温度を再び、例えば135°F〜138°F(57.2℃〜58.9℃)に高める。しかし、該末端帯又は区画における時間は非常に短く、卵が4対数減少を超えて、次のプラトーに達したとしても、時間が非常に短いので、機能性の付加的な劣化は殆ど生じない。
【0042】
もちろん、低温殺菌装置を2帯又は3より多い帯(more than 3zones)に、上述したように分割することもできるが、2帯はあまり効果的ではなく、3より多い帯は不必要に複雑になる。それ故、3帯、即ち、比較的高温の入口帯、所望の低温殺菌温度の中央帯、及び付加的な残留熱の出口帯への分割が、卵の好ましい多重温度低温殺菌形式である。
【0043】
この後者に関して、加熱流体の温度が好ましくは、加熱流体の第1温度として約139°F〜146°F(約59.4℃〜63.3℃)、第2温度として約130°F〜135°F未満(約54.4℃〜57.2℃未満)及び第3温度として約135°F〜138°F(約57.2℃〜58.9℃)であることが見出されている。もちろん、加熱流体が水であり、該水が細長いタンク4に含有され、該タンクを通って卵がタンクの入口からタンクの中央帯に移動し、タンクの出口帯から出る場合に、これらの温度は入口帯区画11、中央帯区画12及び末端帯区画13に対応する。上記特許が処理を卵黄の中心温度に関係づけることに、注目すべきである。この温度は、卵が3帯又は区画を有するタンクを移動するにつれて、連続的に変化する。
【0044】
これらの帯又は区画の温度を維持する、幾つかの方法が存在する。1つの方法は、入口ヒーター14、中央ヒーター15及び末端ヒーター16の異なる熱入力、それ故、異なる温度、即ち、入口ヒーター14における比較的高い温度、中央ヒーター15における比較的低い温度、及び再び、末端ヒーター16における比較的高い温度を有することである。該ヒーターのこれらの異なる温度は、例えば、卵2のスタック1(及び後続スタック)が主軸7の方向にタンク4に沿って移動するにつれて、低温殺菌浴の水の全体に渡って異なる温度の3帯を生じる。この理由は、スタックの卵がタンクを移動するにつれて、タンク4の底部19からタンク4の頂部35まで自然の対流が生じるからである。これは、垂直対流の形状を生じる。一般に、タンクのヒーターはタンク4の底部19近くに配置される。したがって、卵が連続的にタンクを通過し、該水が一般に垂直にタンク4の頂部35方向に上昇するので、個別に制御されるヒーターはタンク4の底部19において水(加熱流体34)を加熱し、該水34は各スタックの卵2に接触する。このことは、局部的帯、例えば帯11、12及び13において頂部から底部へ、再び頂部へ等の環状対流を効果的に生じる。これらの帯の明確な温度はタンク4の底部19近くに配置された、複数個のジェット(jets)18によって補助され、これらのジェットを通って、ジェット流体が該ジェットからタンクの水中に入る。このジェット流体は水中で垂直に上昇して、タンクの垂直方向に沿ったより均一な温度を維持することに非常に有用である。ジェット流体は、例えば空気又は水のような、ガス又は液体でよい。それ故、これらのジェットは、帯の間の温度差をある程度維持するための、帯における水の垂直対流に役立つ。
【0045】
しかし、該温度差は鋭敏な差ではなく、1つの帯から次の帯へ多少段階的である(graduate)。このことは必ずしも不利なことではなく、これによって、卵の非常に満足すべき低温殺菌が生じる。しかし、ある一定の状況では、できるだけ正確な、好ましい対数減少まで、できるだけ最短時間で卵を低温殺菌することが、重要である。この場合に、該帯がより明確であるならば、正確な対数減少への低温殺菌のより良好な制御を達成することができる。ジェット18の幾つかを主軸7を横断して、短軸8に並行であるように配置する場合に、これらの帯をより明確に形成することができる。横断ジェットの1系列は、横断ジェットの他の系列から、主軸に沿って間隔を置いて配置される。ジェットを通過するジェット流体は、水中で、水の少なくとも頂部近くまで垂直に上昇するので、これは、間隔を置いて配置されたジェット系列の各々において水中にジェット流体壁を生じる。これらのジェット流体壁は、ジェット流体壁の間にジェット流体壁に囲まれた区画11、12及び13を形成する。この配置によって、主軸に沿った、少なくとも2個の、ジェット流体壁に囲まれた区画がかなり明確に異なる温度に維持されうる。好ましい実施態様では、もちろん、3つの異なる温度、即ち、比較的高い入口温度、比較的低い又は中央温度及び比較的高い出口温度に対して3区画が用いられる。
【0046】
ジェット流体は、低温殺菌タンクから簡単に再循環される水であることができる、又はジェット流体は、別に加熱されて、ジェット18を通過する水であることができる。或いは、ジェット流体は、別に加熱されて、ジェット18を通過する空気であることができる。ジェット流体が低温殺菌装置からの水であり、ジェットを通って簡単に再循環される場合には、タンク内の加熱流体は、タンク内に配置されたヒーター系列、例えばヒーター14、15及び16によって加熱されるので、該水は、本質的に特定の区画の温度を有する。しかし、実際には、多くのヒーター、例えば40〜100個のヒーターを用いることができる。
【0047】
さらに、各区画内の水の温度を均一にするために、上述したように、水を動揺させるためのジェット流体が通過する第2ジェット系列が、タンク4の底部19近くに通常配置される。
【0048】
卵2のスタック1は、通常、低温殺菌タンク4を一定の速度で通過するので、スタック1の卵が異なる温度において費やす時間は、タンク4内の区画11、12及び13の長さに依存する。これらの長さは、低温殺菌タンクを出る卵の所望の対数減少、及び該3区画、即ち、入口区画、中央区画及び出口区画の各々内の温度に依存して、変化することができる。しかし、一般的に述べると、タンクの主軸7に沿った長さは、入口区画では該タンク長さの約0.1〜0.3、中央区画では該タンク長さの約0.3〜0.7、及び出口区画では該タンク長さの約0.1〜0.3である。好ましくは、これらの比率は、それぞれ、0.1〜約0.2、0.2〜約0.6、及び0.1〜約0.2である。該区画長さのこれらの比率は、上記区画の温度、即ち、入口区画の139°F〜146°F(59.4℃〜63.3℃)、中央区画の130°F〜135°F未満(54.4℃〜57.2℃未満)及び出口区画の135°F〜138°F(57.2℃〜58.9℃)にとって特に有用である。しかし、好ましくは、入口区画の長さは該タンク長さの約0.3〜約0.35であり、中央区画の長さは約0.5〜0.6であり、出口区画の長さは約0.2〜0.26であり、それぞれの温度範囲は約141°F〜143°F(約60.6℃〜61.7℃)、132°F〜135°F未満(55.6℃〜57.2℃未満)、及び136°F〜138°F(57.8℃〜58.9℃)である。最も好ましい温度は、それぞれ、142°F(61.1℃)、133°F(56.1℃)及び137°F(58.3℃)である。しかし、これらの温度及び/又は区画長さの比率は、上述したように、卵内のサルモネラ菌の望ましい対数減少に依存して変化することができ、該対数減少は、低温殺菌タンク自体内で達成される4.6程度の低さから12.0までであることができる。対数減少は、該低温殺菌タンクを通る卵スタックの速度にも依存する。
【0049】
これまでに記載した、本発明の改良の一般的な比較として、低温殺菌タンクが例えば133°F(56.1℃)の一定温度である、より慣用的な方法では、該先行技術方法において必要であるような5対数減少に達するための該温度における滞留時間は64分間に近く、理想的な結果を伴うとしても、少なくとも約63分間であった。この方法を2つのみの帯又は区画によって、例えば136°F(57.8℃)の1つの入口区画及び133°F(56.1℃)の1つの区画によって実施するならば、該方法は約52〜56分間を要する。しかし、上述した、最も好ましい温度での3帯又は区画を有する本発明によっては、該方法は39〜41分間程度で実施されうる。したがって、先行技術方法と比較して、本発明の方法はかなり短い時間で実施されうる。このことは、商業的な見地から非常に実質的な改良である。
【0050】
抗菌性流体28に含有される抗菌剤は、塩素、臭素、オゾン、過酸化水素及び第4級アンモニウム化合物を包含する、FDA食品使用認可殺菌剤のいずれかでありうる。これらの全ては周知であり、詳細に記述する必要はない。抗菌性流体は、上記殺菌剤を含有しうる任意の流体、例えば、空気、窒素、アルコール等であることができるが、好ましくは、抗菌性流体は水である。この用途及び以下で詳述する用途、即ち、装置と接触させる用途及び封止剤の用途に用いられる抗菌剤は全て、FDAが規定する濃度で抗菌剤を用いる。例えば、以下でさらに詳細に説明する特定の第4級アンモニウム化合物は、約100ppmの濃度で用いられる。卵2は抗菌性流体28と任意の好ましい方法で接触することができるが、図1に示すように、抗菌性流体を卵2上に吹き付けることが、最も便利である。また、図1に示すように、抗菌性流体を任意の機械的装置22、例えば、卵が加熱流体を出た後に卵を扱うディスタッカー上に接触させる、例えば、吹き付ける。より好ましくは、低温殺菌装置4の加熱流体を出た後に卵が機械的装置22と接触する前に、該機械的装置22上に抗菌性流体を接触させる(吹き付ける)。したがって、卵が加熱流体を出た後に卵と接触する機械的装置は、該機械的装置上の如何なる細菌も抗菌性流体によって殺されるか又は非常に実質的に減少させられるように、抗菌性流体と予め接触されている。このようにして、該装置及び卵には抗菌性流体が吹き付けられているので、卵内に、特に膜と卵殻の内側との間に吸収されるガス雰囲気中の腐敗菌及び/又は病原菌は、抗菌性流体と遭遇して、殺されるか、又は腐敗若しくは他の好ましくない結果が卵内に生じないような、低い数にまで減少される。卵が約100°F(約37.8℃)未満の温度に達する前に、卵を扱う機械的装置及び卵に抗菌性流体を吹き付けることが好ましい。該温度において卵は充分に冷却するので、さらなる冷却中に付加的な物質が卵中に吸収されることは殆どなく、したがって、以下で考察する抗菌性バリヤーは実質的に達成されない。さらに、この温度までに、封止剤を塗布すべきである。
【0051】
この後者に関して、卵に(好ましくは、機械的装置にも)抗菌性流体を接触させた後に、上記で簡単に説明したように、卵に卵孔封止剤を接触させる。好ましくは、卵孔封止剤は抗菌剤を含有し、この場合にも、抗菌剤は、例えば、塩素、臭素、オゾン、過酸化水素及び第4級アンモニウム化合物のような、FDA食品使用認可殺菌剤である。該封止剤30(図1)を分配デバイス(単数又は複数)31から卵上に、取り扱い装置、例えばコンベヤー25上に卵があるときに、接触させる、好ましくは吹き付ける。
【0052】
卵孔封止剤は任意の食品用封止剤でありうるが、好ましくは、食品用ポリマー又はワックス又は溶解性タンパク質、例えばゼラチンである。美観的な目的のために、該封止剤は、卵に塗布したときに、少なくとも透明であることが好ましい。通常のワックスがこれらの要件を満たすので、ワックスが好ましい封止剤である。
【0053】
封止剤を卵上に吹き付ける場合に、封止剤を卵の表面に沿って迅速に拡散させるために、封止剤が、熱い封止剤液体形であることが好ましく、封止剤と接触する卵の温度を超える温度であることが好ましい。
【0054】
また、簡単に上述したように、低温殺菌中に卵の天然の保護封止剤が実質的にこの低温殺菌中に失われ、卵殻の孔は冷却中に物質が侵入するように開かれる。卵殻の開いた孔の全てを確実に封鎖することは実質的に不可能であるが、封止剤を細心に吹き付けることによって、吹き付け後に卵上に残存する封止剤量は、低温殺菌に卵及び加熱流体が滞留する間に卵から除去される天然卵孔封止剤の少なくとも50%に等しいことを保証することができ、好ましくは、該量は少なくとも70%、例えば85%若しくは90%以上である。
【0055】
上記で簡単に考察したように、本発明のプロセスは、先行技術の実施に反して、5対数減少に達する前に低温殺菌装置から卵を取り出すことによって、短縮される。卵がガス雰囲気中にあるときに、卵の残留熱が付加的な低温殺菌を惹起し、該付加的な低温殺菌が卵のサルモネラ菌の対数減少を少なくとも5までに高めさせる。この高められた対数減少に達するために卵がガス雰囲気中に滞留する必要な時間は、低温殺菌装置を出る卵の温度、該ガス雰囲気の温度、卵に吹き付けられる抗菌性流体の温度と量、並びに卵のサイズに依存する。しかし、一般的に述べると、ガス雰囲気中の約1.5〜3分間の滞留時間が、該対数減少を約4.6又は4.8から必要な5対数減少までに高めるために充分である。しかし、該時間は必ずしも浪費される時間ではない。本発明では、該滞留時間中に機械的取り扱い装置及び卵に抗菌性流体が吹き付けられ、幾つかの実施態様では、卵はさらに少なくとも部分的にスタック1からディスタックされる(destacked)、又はコンベヤー25に載せられる若しくは包装機33に入れられる、これは、いずれにせよ、卵が適当に包装されうるために行なわれなければならない。
【0056】
このようにして、殻付き鶏卵を低温殺菌するための本発明の方法では、128°F〜146°F(53.3℃〜63.3℃)の温度を有する加熱流体中に卵を入れる、該加熱流体は、139°F〜146°F(59.4℃〜63.3℃)の第1温度、130°F〜135°F未満(54.4℃〜57.2℃未満)の第2温度、及び135°F〜138°F(57.2℃〜58.9℃)の第3温度を有する。加熱流体のこれらの第1、第2及び第3温度は、該加熱流体の別々の帯に維持され、卵は第1、第2及び第3温度において、卵内のサルモネラ菌の少なくとも4.6又は少なくとも4.75又は少なくとも4.8対数減少を生じる時間で低温殺菌される。その後、卵は加熱流体から取り出され、直ちに、ガス雰囲気に送られ、そこで卵は冷却され、ガス雰囲気での冷却中に卵は、必要な5対数減少に達する。卵がガス雰囲気中に存在する間に、卵は、抗菌剤を含有する抗菌性流体と接触する。さらに、好ましくは、卵が抗菌性流体と接触した後に、卵を、好ましくは抗菌剤を含有する卵孔封止剤と接触させる。
【0057】
上述したような、最も好ましい方法によって低温殺菌した卵の腐敗活性に関して行なわれた試験では、卵は、例えば約40°F〜45°F(約4.4℃〜7.2℃)の温度の低温貯蔵庫に6か月間まで、卵に腐敗の徴候なしに維持されている。これは、上述したような先行技術方法によって処理された卵に生じる腐敗の発生までの最大約21日間に比較される。限定された、但し、まだ有意義な長期間冷蔵貯蔵試験では、卵は1年間まで腐敗無しに残存した。このような長期間貯蔵中に、上記特許に記載されているように、機能性に関して卵に変化が生じるが、腐敗発生のために卵が販売不能になることはない。したがって、このことは、当該技術分野における非常に実質的な利益である。
【0058】
図2は、本発明の方法を実施し、より詳細に説明するための典型的な低温殺菌タンク4を示す。典型的に、例えば、このタンクは多分、主軸7では25〜40フィート(8〜13m)長さ、短横軸8では3〜6フィート(1〜3m)幅、及び約3〜6フィート(1〜3m)高さであろう。このようなタンクは8〜15位置に分断することができ、3個の位置40、48及び49を図2に示す。この図は、2と1/2の位置41の細部を示す。典型的なタンクは11位置を有することができる。卵2のスタック1(図1)はタンク4を連続的に、停止又は中断なく、通過することができるが、このことは、正確な温度で正確な滞留時間を達成するために必要な長さよりも非常に長いタンクを要すると考えられる。それ故、通常は、卵2の各スタック1は、次の位置(単数又は複数)に移動する前に、在る一定の長さの時間、特定の位置に滞留する。例えば、卵の各スタックは、次の位置(単数又は複数)に移動する前に、1つの位置に4分間滞留することができる。したがって、帯11、12及び13が、それぞれ、例えば142°F(61.1℃)、133°F(56.1℃)及び137°F(58.3℃)の温度を有する場合に、帯11における滞留時間は、図2において矢印42によって示すように、2と1/2位置、40、41を必要としうる。例えば、帯11における位置の数は、帯11に入る卵の温度、該帯の温度(単数又は複数)、及び該帯における卵の滞留時間によって決定される。しかし、一般的に述べると、上記で説明したように、帯11における水と卵との温度の間に実質的に差があることが好ましい。例えば、4〜10°F(−15.6℃〜−12.2℃)、例えば、おおよそ、6°F(−14.4℃)かそこらの範囲内の差が好ましい。このことは、卵の機能性の如何なる実質的な劣化もなしに、低温殺菌温度、例えば、約128°F(約53.3℃)までの非常に迅速な加熱を生じる。その後に、卵は、例えば133°F(56.1℃)の帯12に移動する、約133°F(56.1℃)は最も好ましい低温殺菌温度であるので、帯12はその中に幾つかの位置を有する。このことは、卵の機能性の可能な限り小さい低下で、より完全な低温殺菌を可能にする(対数減少を高める)。しかし、帯13は位置48、49(図2)を有しうる。これらの2位置は、卵が低温殺菌装置4からガス雰囲気に移動した後に付加的低温殺菌を達成する、卵の残留熱のための高い温度に達するために、上述したように、低温殺菌装置4を通るスタック1の速度を考慮して必要である。しかし、この場合にも、帯13における卵と水との温度差は大き過ぎるべきではない、さもなければ、卵の機能性の若干の低下が生じる恐れがある。したがって、上述したように、帯13の温度は約135°F〜138°F(約57.2℃〜58.9℃)、より好ましくは約137°F(約58.3℃)であるべきである。
【0059】
ジェット18(図1参照)は、図3に示す配置のように、多様な配置によって設けることができる。この図では、上記で説明したように、流路が、ガス又は液体でありうるジェット流体46を、開口47又はスロット48又はスリット49によって、加熱流体34(図1参照)中に通す、該スリットは流路45の全長に及んで存在する。
【0060】
流路45内のジェット流体46の圧力は、関与するジェットが開口47又はスロット48又はスリット49のいずれであるかにも依存するが、ジェット流体がタンク4の頂部35方向にかなり迅速に上昇するほど充分でなければならない。このことは、上記で説明したように、帯内の温度の均一化を達成するために必要であるのみでなく、温度帯11、12及び13の形成を容易にするためにも必要である。さらに、ジェットが上記ジェット流体壁を形成するために充分であるときに、これらのジェットは帯より多くの区画を形成し、これらの区画間の温度差は一層明確になる。上記で説明したように、これを達成するために、タンクの主軸7を横断して、短軸8に並行にジェット系列が存在して、それらの間に温度区画を形成する。
【0061】
図4は、卵に抗菌性流体を塗布するための他の方法を示す。この図に示すように、卵2のスタック1はオープン・キャリヤー50に含有される。この図に示すように、該キャリヤー50は下部シェルフ51上に横に3スタック、奥行き2スタックを有することができ、上部シェルフ52上に同量を有することができる。各スタック2は5又は6フラット53を有することができ、各フラット上に2〜4ダースの卵を有することができる。このように負荷したキャリヤーを低温殺菌装置4から取り出した後に、該キャリヤーを低温殺菌装置の上方に吊るして、該キャリヤー上の卵に複数個のスプレイヤー57から抗菌性流体のミストを吹き付ける、図にはスプレイヤーのうちの4個を示すが、実際には、さらに多くの、例えば6〜20個のスプレイヤーが用いられる。抗菌性流体のミストは、上記で説明したように、卵が低温殺菌され続けることができるように卵の温度を実質的に低下させないような、温度及び量であるが、この量は、卵がガス雰囲気、この場合には空気中に滞留する間に腐敗菌を実質的に殺すために充分な量である。上記で説明したような後続の処理中に、例えば、ディスタッキング若しくはキャンドリング(candling)又は他の慣用的な取り扱い及び包装プロセス中に、卵に付加的な抗菌性流体を塗布することができる。
【0062】
このことは、抗菌性流体が卵内に吸収されて、卵膜と卵殻の内側との間に滞在することを保証する。このことは、卵が卵孔封止剤の塗布によってさらに保護されるまで、生存能力のある腐敗菌の侵入から卵を完全に保護する。これに関して、好ましい細菌は、FDA食品使用認可第4級アンモニウム化合物、EPA No.1677−43(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド)である。この化合物は、この化合物が比較的短時間で無害な化合物に分解するという意味で一時的である。しかし、この時間は、卵が冷却されて、次に卵孔封止剤を塗布されるために充分に長い。したがって、本発明の重要な特徴は、卵膜と卵殻の内側との間に抗菌性流体が配置された低温殺菌卵を提供することである。
【0063】
さらに、これに関して、本発明の重要な特徴は、殻付き鶏卵の低温殺菌装置であって、卵サポート及び、該サポートの近くの、少なくとも部分的に低温殺菌された卵に抗菌性流体を塗布するための塗布デバイスを有する低温殺菌装置を提供することである。
【0064】
上述した本発明は、特許請求項の要旨及び範囲によって包含されるように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、総合方法の概略図である。
【図2】図2は、図1の低温殺菌装置の拡大概略図である。
【図3】図3は、低温殺菌液体中に流体ジェットを形成するための装置の概略図である。
【図4】図4は、卵に抗菌性流体を接触させる1つの方法の例示である。

Claims (87)

  1. 殻付き鶏卵の低温殺菌方法であって、(1)約128°F〜146°F(約53.3℃〜63.3℃)の温度を有する加熱流体中に卵を入れる工程;(2)該卵内のサルモネラ菌が少なくとも4.6の対数減少を生じるまで、該卵を該加熱流体中に滞留させる工程;(3)該加熱流体から、ガス雰囲気中へ該卵を取り出す工程;並びに(4)該卵に、抗菌剤を含有する抗菌性流体を接触させる工程を含む方法。
  2. 対数減少がほぼ4.75を越える、請求項1記載の方法。
  3. 対数減少が約6〜12対数である、請求項2記載の方法。
  4. 加熱流体が種々な温度である、請求項1記載の方法。
  5. 加熱流体の第1温度が約139°F〜146°F(約59.4℃〜63.3℃)であり、加熱流体の第2温度が約130°F〜135°F未満(約54.4℃〜57.2℃未満)であり、加熱流体の第3温度が約135°F〜138°F(約57.2℃〜58.9℃)である、請求項4記載の方法。
  6. 加熱流体が水であり、該水が細長いタンクに含有され、該タンクを通って、卵が該タンクの入口端部から該タンクの中央帯に及び該タンクの出口端部に移動する、請求項4記載の方法。
  7. タンクの底部近くに、複数個のジェットが散在し、それらを通ってジェット流体が該ジェットから水中に入る、請求項6記載の方法。
  8. ジェットの幾つかがタンクの主軸を横断するように配置され、該横断ジェットの1系列が該横断ジェットの他の系列から主軸に沿って間隔を置いて配置される、請求項7記載の方法。
  9. ジェット流体が水中で、少なくとも水の頂部近くまで、垂直に上昇して、水中で間隔を置いたジェット系列の各々の近くにジェット流体壁を生じ、このようなジェット流体壁の2つの間にジェット流体壁に囲まれた区画が形成される、請求項8記載の方法。
  10. 主軸に沿って少なくとも2個の、ジェット流体壁に囲まれた区画が存在し、該区画の少なくとも2個が異なる温度に維持される、請求項9記載の方法。
  11. ジェット流体がガス又は液体である、請求項10記載の方法。
  12. ガスが空気であり、液体が水である、請求項11記載の方法。
  13. 少なくとも3個の区画が異なる温度に維持される、請求項10記載の方法。
  14. 入口区画、中央区画及び出口区画が存在し、該入口区画の、タンクの主軸に沿った長さが該タンク長さの0.1〜0.3であり、該中央区画の長さが該タンク長さの0.3〜0.7であり、該出口区画の長さが該タンク長さの約0.1〜0.3であり、該入口区画内の温度が139°F〜146°F(59.4℃〜63.3℃)であり、該中央区画内の温度が132°F〜135°F未満(55.6℃〜57.2℃未満)であり、該出口区画内の温度が135°F〜138°F(57.2℃〜58.9℃)である、請求項13記載の方法。
  15. 該入口区画の長さが該タンク長さの約0.1〜約0.2であり、該中央区画の長さが該タンク長さの約0.2〜0.6であり、該出口区画の長さが該タンク長さの約0.1〜0.2であり、それぞれの温度が約141°F〜143°F(約60.6℃〜61.7℃)、133°F〜134.5°F(56.1℃〜56.9℃)、及び136°F〜139°F(57.8℃〜59.4℃)である、請求項14記載の方法。
  16. 抗菌剤がFDA食品使用認可殺菌剤のいずれかである、請求項1記載の方法。
  17. 殺菌剤が塩素、臭素、オゾン、過酸化水素、及び第4級アンモニア化合物から選択される、請求項16記載の方法。
  18. 抗菌性流体が水である、請求項16記載の方法。
  19. 抗菌性流体が卵と接触し、該抗菌性流体がさらに、卵が加熱流体から出た後に該卵を処理する機械的装置とも接触する、請求項1記載の方法。
  20. 抗菌性流体が卵及び機械的装置上に、該卵が該機械的装置に接触する前に、吹き付けられる、請求項19記載の方法。
  21. 卵が抗菌性流体と接触した後に、該卵に卵孔封止剤を接触させる、請求項1記載の方法。
  22. 卵孔封止剤が抗菌剤を含有する、請求項21記載の方法。
  23. 抗菌剤がFDA食品使用認可殺菌剤である、請求項22記載の方法。
  24. 卵孔封止剤が食品用のポリマー、ワックス及び溶解性タンパク質から選択される、請求項21記載の方法。
  25. 封止剤がワックスである、請求項24記載の方法。
  26. 封止剤が卵上に吹き付けられる、請求項21記載の方法。
  27. 卵を封止剤と接触させた後に、該卵上に残留する該封止剤量が、加熱流体中の該卵の滞留中に該卵から除去される天然の卵孔封止剤の少なくとも90%に等しい、請求項21記載の方法。
  28. 卵が加熱流体を出るときのサルモネラ菌の対数減少が少なくとも約4.6であり、該卵がガス雰囲気中に存在する間に、該卵中の残留熱が該対数減少を少なくとも5に高める、請求項1記載の方法。
  29. 卵がガス雰囲気中に約1.5〜3.5分間存在する、請求項28記載の方法。
  30. 殻付き鶏卵の低温殺菌方法であって、(1)卵を加熱するために、約128°F〜146°F(約53.3℃〜63.3℃)の温度を有する加熱流体中に卵を入れる工程であって、前記加熱流体が約139°F〜146°F(約59.4℃〜63.3℃)の第1温度、約130°F〜135°F未満(約54.4℃〜57.2℃未満)の第2温度、及び約135°F〜138°F(約57.2℃〜58.9℃)の第3温度を有し、該加熱流体の第1温度、第2温度及び第3温度が、該加熱流体の別々の帯に維持される工程;(2)該卵内のサルモネラ菌の少なくとも4.6の対数減少を惹起する時間中に、該卵を第1温度、第2温度及び第3温度に通して通過させる工程;並びに(3)該加熱流体から、ガス雰囲気中へ該卵を取り出して、該卵を冷却させる工程を含む方法。
  31. 卵がガス雰囲気中に存在する間に、該卵に抗菌剤を含有する抗菌性流体を接触させる、請求項30記載の方法。
  32. 卵が抗菌性流体と接触した後に、該卵に卵孔封止剤を接触させる、請求項31記載の方法。
  33. 封止剤が抗菌剤を含有する、請求項32記載の方法。
  34. 卵がサルモネラ菌の少なくとも約5の最終的対数減少に達するまで、該卵がガス雰囲気中に留まる、請求項30記載の方法。
  35. 最終的対数減少が約12までである、請求項34記載の方法。
  36. 加熱流体が水であり、該水が細長いタンクに含有され、該タンクを通って、卵が該タンクの入口端部から該タンクの中央帯に及び該タンクの出口端部に移動し、該タンクの底部近くに、複数個のジェットが散在し、それらを通ってジェット流体が該ジェットから水中に入る、請求項30記載の方法。
  37. ジェットの幾つかが該タンクの主軸を横断するように配置される、請求項37記載の方法。
  38. 横断ジェットの1系列が横断ジェットの他の系列から主軸に沿って間隔を置いて配置される、請求項38記載の方法。
  39. ジェット流体が水中で、少なくとも水の頂部近くまで、垂直に上昇して、水中で間隔を置いたジェット系列の各々の近くにジェット流体壁を生じ、このようなジェット流体壁の2つの間にジェット流体壁に囲まれた区画が形成される、請求項39記載の方法。
  40. 主軸に沿って少なくとも3個のジェット流体壁に囲まれた区画が存在し、該3個の区画が第1温度、第2温度及び第3温度に維持される、請求項40記載の方法。
  41. ジェット流体がガス又は液体である、請求項41記載の方法。
  42. 入口区画、中央区画及び出口区画が存在し、該入口区画の、タンクの主軸に沿った長さが該タンク長さの0.1〜0.3であり、該中央区画の長さが該タンク長さの0.3〜0.7であり、該出口区画の長さが該タンク長さの0.1〜0.3である、請求項41記載の方法。
  43. 入口区画の長さがタンク長さの約0.1〜約0.2であり、中央部分の長さが該タンク長さの約0.2〜0.6であり、出口区画の長さが該タンク長さの約0.1〜0.2であり、それぞれの温度が約141°F〜143°F(約60.6℃〜61.7℃)、133°F〜135°F(56.1℃〜57.2℃)、及び136°F〜137°F(57.8℃〜58.3℃)である、請求項43記載の方法。
  44. 抗菌剤がFDA食品使用認可殺菌剤のいずれかである、請求項31記載の方法。
  45. 抗菌性流体が卵と接触し、該抗菌性流体がさらに、卵が加熱流体から出た後に該卵を処理する機械的装置とも接触する、請求項31記載の方法。
  46. 卵及び機械的装置に抗菌性流体が吹き付けられ、該機械的装置が卵ディスタッキング装置を包含する、請求項46記載の方法。
  47. 卵孔封止剤が抗菌剤を含有する、請求項32記載の方法。
  48. 抗菌剤がFDA食品使用認可殺菌剤である、請求項48記載の方法。
  49. 卵孔封止剤が、食品用のポリマー、ワックス及び溶解性タンパク質から選択される、請求項32記載の方法。
  50. 封止剤がワックスである、請求項50記載の方法。
  51. 封止剤が卵上に吹き付けられる、請求項31記載の方法。
  52. 卵がガス雰囲気中に存在する間に、該卵中の残留熱が対数減少を少なくとも5に高める、請求項40記載の方法。
  53. 卵がガス雰囲気中に約1.5〜3.5分間存在する、請求項53記載の方法。
  54. 殻付き鶏卵の低温殺菌方法であって、(1)加熱流体の別々の帯において異なる温度の加熱流体を含有するタンクに通して卵を通過させる工程であって、前記異なる温度が第1帯における約139°F〜146°F(約59.4℃〜63.3℃)、第2帯における約130°F〜135°F未満(約54.4℃〜57.2℃未満)、及び第3帯における約135°F〜約138°F(約57.2℃〜58.9℃)である工程;及び(2)該卵が、該卵内のサルモネラ菌の少なくとも約4.6の対数減少に達したときに、該加熱流体から該卵を取り出す工程を含む方法。
  55. 対数減少が約4.8である、請求項55記載の方法。
  56. 対数減少が12までである、請求項56記載の方法。
  57. 加熱流体が水であり、タンクを通って、卵が該タンクの入口端部から該タンクの中央帯に及び該タンクの出口端部に移動し、第1温度帯、第2温度帯及び第3温度帯がこれらの部分にそれぞれ対応する、請求項55記載の方法。
  58. タンクの底部近くに、複数個のジェットが散在し、それらを通ってジェット流体が該ジェットから水中に入る、請求項58記載の方法。
  59. ジェットの幾つかが該タンクの主軸を横断するように配置される、請求項59記載の方法。
  60. 横断ジェットの1系列が、横断ジェットの他の系列から主軸に沿って間隔を置いて配置される、請求項60記載の方法。
  61. ジェット流体が水中で、少なくとも水の頂部近くまで、垂直に上昇して、水中で間隔を置いたジェット系列の各々の近くにジェット流体壁を生じ、このようなジェット流体壁の2つの間にジェット流体壁に囲まれた区画が形成される、請求項61記載の方法。
  62. 主軸に沿って少なくとも2個の流体壁に囲まれた区画が存在し、該少なくとも2個の流体壁に囲まれた区画が異なる温度に維持される、請求項62記載の方法。
  63. ジェット流体がガス又は液体である、請求項59記載の方法。
  64. ガスが空気であり、液体が水である、請求項64記載の方法。
  65. 入口区画、中央区画及び出口区画が存在し、該入口区画のタンクの主軸に沿った長さが該タンク長さの0.1〜0.3であり、該中央区画の長さが該タンク長さの0.3〜0.7であり、該出口区画の長さが該タンク長さの0.1〜0.3であり、該区画の各々における温度がそれぞれ異なる温度に対応する、請求項63記載の方法。
  66. 入口区画の長さがタンク長さの約0.1〜約0.2であり、中央区画の長さが該タンク長さの約0.2〜0.6であり、該出口区画の長さが該タンク長さの約0.1〜0.2であり、それぞれの温度が約141°F〜142°F(約60.6℃〜61.1℃)、133°F〜135°F未満(56.1℃〜57.2℃未満)、及び136°F〜137°F(57.8℃〜58.3℃)である、請求項66記載の方法。
  67. 卵が加熱流体から取り出された後に、該卵がガス雰囲気中に入る、請求項55記載の方法。
  68. 卵がガス雰囲気中に入った後に、該卵に、抗菌剤を含有する抗菌性流体を接触させる、請求項68記載の方法。
  69. 抗菌剤がFDA食品使用認可殺菌剤のいずれかである、請求項69記載の方法。
  70. 抗菌性流体が卵上に接触し、さらに、該卵を処理する機械的装置上にも接触する、請求項69記載の方法。
  71. 卵が機械的装置に接触する前に、抗菌性流体が該卵上及び該機械的装置上に吹き付けられる、請求項71記載の方法。
  72. 卵に抗菌性流体を接触させた後に、該卵に卵孔封止剤を接触させる、請求項69記載の方法。
  73. 卵孔封止剤が抗菌剤を含有する、請求項73記載の方法。
  74. 抗菌剤がFDA食品使用認可殺菌剤である、請求項73記載の方法。
  75. 卵孔封止剤が食品用のポリマー、ワックス及び溶解性タンパク質から選択される、請求項73記載の方法。
  76. 封止剤が、卵に塗布されたときに、少なくとも半透明である、請求項73記載の方法。
  77. 封止剤がワックスである、請求項73記載の方法。
  78. 封止剤が卵上に吹き付けられる、請求項73記載の方法。
  79. 卵を封止剤と接触させた後に、該卵上に残留する該封止剤量が、加熱流体中の卵の滞留中に卵から除去される天然卵孔封止剤の少なくとも85%に等しい、請求項73記載の方法。
  80. 残留量が少なくとも90%である、請求項80記載の方法。
  81. 卵がガス雰囲気中に存在する間に、該卵中の残留熱が対数減少を少なくとも約5に高める、請求項68記載の方法。
  82. 卵がガス雰囲気中に約1.5〜3.5分間存在する、請求項82記載の方法。
  83. 卵膜と卵殻の内側との間に配置された抗菌性流体を有する低温殺菌卵。
  84. 卵サポート及び、該サポートに近接した、少なくとも部分的に低温殺菌された卵に抗菌性流体を塗布するための塗布デバイスを含む、殻付き鶏卵の低温殺菌装置。
  85. 少なくとも部分的に低温殺菌された卵を、該卵が加熱状態にあるときに、腐敗菌から保護する方法であって、該卵に、抗菌剤を含有する抗菌性流体を接触させることを含む方法。
  86. 抗菌剤がFDA食品使用殺菌剤である、請求項86記載の方法。
  87. 殺菌剤が第4級アンモニウム化合物である、請求項87記載の方法。
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