JP2004533992A - フレデリカマイシンA化合物を用いたPin1関連状態の阻害方法 - Google Patents
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Abstract
本願発明は、フレデリカマイシンA化合物をPin1関連状態を治療するために有効な量、対象に投与するステップを含む、対象におけるPin1関連状態を治療する方法を提供する。別の態様では、本願発明は、上述の方法であって、当該方法においてPin1関連状態が高サイクリンD1状態、新生物形質転換、および/または腫瘍成長である方法を含む。ある実施態様では、本願発明は上述の方法であって、当該方法においてPin1関連状態が、結腸癌、乳癌、肉腫、悪性リンパ腫、および/または食道癌である方法を提供する。本願発明はまた、フレデリカマイシンA化合物と過形成阻害物質の組み合わせを、サイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量、対象に投与するステップを含む、対象におけるサイクリンD1過剰発現を治療する方法も提供する。
Description
【関連出願】
【0001】
本出願は2001年12月20日に出願された米国仮特許出願第60/XXX,XXX号「フレデリカマイシンA化合物を用いたPin1関連状態の阻害方法」、および2000年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/257,412号の優先権を主張する。本出願は2000年11月29日に出願された米国特許出願第09/726,464号、1997年12月11日に出願された米国特許出願第08/988,842号、および1999年3月8日に公開された第WO 99/12962号に関連する。前述の各出願の内容全体は引用をもってこれを援用する。
【0002】
発明の背景
サイクリン依存性キナーゼ(cdk)は細胞周期の中心的役割を果たしている。cdkは低タンパク質(〜34-40 kD)キナーゼ触媒サブユニットに構造的に関連するファミリーであり、その活性はサイクリン調節サブユニットとの関連を必要とする。ほとんどの場合、完全な活性には、キナーゼ活性部位の近隣にあるトレオニンのリン酸化も必要である。cdkの機能は進化の過程で十分に保存されてきた。たとえば、酵母菌細胞のcdk1遺伝子をヒトcdk1遺伝子と交換しても、酵母菌細胞は正常に分裂することができる。cdkはサイクリンとともに特有の複合体を形成し、その複合体は、細胞周期における様々な変化が確実に進行するように細胞周期に依存して特定の基質をリン酸化することによって細胞増殖を促進する。細胞周期中におけるサイクリン-cdk活性の正確なタイミングによって、細胞周期が続行するか遮断されるかが決定される。Morgan 1997. Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. 13:261-291。
【0003】
哺乳類のサイクリンは少なくとも11種類あり、サイクリンA、B1、B2、C、D1、D2、D3、E、F、G、およびHが含まれる。細胞周期中に各サイクリンが活性のピークに達する時期はそれぞれ異なる。サイクリンD1は、染色体11q13上のPRAD1遺伝子、CCND1遺伝子、またはbcl-1遺伝子に由来するタンパク質である。サイクリンD1遺伝子は、長さが約15kbでエキソンを5個有する。その上流領域にはSp1結合サイト、潜在性E2F結合モチーフがあり、明らかなTATAボックスはない。サイクリンD1の活性は、G1期中盤に活性が最大となり、S期に減少し、周期中の残りの期間は低いままである。サイクリンD1は、細胞周期のG1期からS期への変化を調節する際に出現する。Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。正常な細胞では、サイクリンD1タンパク質は外部の刺激に反応して変動する。反対に、形質転換細胞株では発現が不定期で細胞周期中のいつでも発現しうる。
【0004】
サイクリンD1の大量発現は、各種の原発性ヒト腫瘍に広く見られる。サイクリンD1の大量発現は遺伝子増幅、サイクリンD1 RNAの大量発現、サイクリンD1タンパク質の大量発現として検出されている。サイクリンD1遺伝子増幅とサイクリンD1発現を比較した臨床研究の大半では、遺伝子の増幅が見られるケースよりもRNAとタンパク質の両方の過剰発現が見られるケースが多いことが明らかになっている。サイクリンD1において、遺伝子増幅せずにRNAおよび/またはタンパク質が大量発現するということは、pRbなど他の細胞遺伝子がサイクリンD1の発現に影響している可能性を示唆している。サイクリンD1の大量発現が認められたヒト腫瘍には、副甲状腺腺腫、外套細胞リンパ腫、乳癌、頭頸部扁平上皮細胞癌(すなわち、口腔部、鼻咽頭部、咽頭部、下咽頭部、および喉頭部における扁平上皮癌)、食道癌、肝細胞癌、大腸癌、泌尿生殖器癌、肺癌(すなわち、肺の上皮細胞癌)、皮膚癌(すなわち、上皮細胞癌、黒色腫、および悪性線維性組織球腫)、肉腫、および中枢神経系悪性腫瘍(すなわち、星状細胞腫およびグリア芽腫)、胃腺癌、膵腺癌、胆嚢の扁平上皮癌が含まれる。Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。サイクリンD1遺伝子は、約20%の乳癌に増幅し、タンパク質は約50%の乳癌に過剰発現する。Barnes, et al. 1998. Breast Cancer Research and Treatment. 52:1-15。多くの腫瘍において、サイクリンD1は他の発癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子と連携して作用すると考えられている。
【0005】
発明の概要
本願発明は、対象のPin1関連状態を治療する方法を提供し、当該方法には、Pin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物を対象に投与するステップが含まれる。
【0006】
別の態様では、本願発明には、上述の方法であって、当該方法においてPin1関連状態が高サイクリンD1状態、新生物形質転換、および/または腫瘍成長である、方法が含まれる。
【0007】
本願発明はまた、上述の方法であって、当該方法において、治療のステップには腫瘍成長を阻害するステップ、対象における腫瘍成長の発生を防止するステップ、または対象に既存の腫瘍の成長を低下させるステップが含まれる方法も包含する。ある実施態様では、本願発明は上述の方法であって、その方法において、Pin1関連状態が、たとえば結腸癌、乳癌、肉腫、悪性リンパ腫、および/または食道癌などの癌である方法を提供する。
【0008】
本願発明はまた上述の方法であって、当該方法においてPin1関連状態がPin1の過剰発現、DNA損傷、発癌性タンパク質、および/またはHa-Rasによって引き起こされる、方法も包含する。
【0009】
本願発明にはさらに、対象におけるサイクリンD1過剰発現の治療方法が含まれ、当該方法には、サイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物を対象に投与するステップが含まれる。
【0010】
本願発明はまた上述の方法であって、当該方法においてサイクリンD1過剰発現が新生物形質転換および/または腫瘍成長を引き起こす、方法を特徴とする。
【0011】
本願発明はまた上述の方法であって、当該方法において治療には腫瘍増殖を阻害するステップ、対象における腫瘍成長の発生を予防するステップ、または対象に既存の腫瘍の成長を低下させるステップが含まれる方法を提供する。
【0012】
本願発明はさらに上述の方法であって、当該方法においてサイクリンD1過剰発現が結腸癌、乳癌、肉腫、悪性リンパ腫、および/または食道癌を引き起こす、方法を包含する。
【0013】
本願発明にはまた上述の方法であって、当該方法においてサイクリンD1過剰発現がPin1の過剰発現、DNA損傷、発癌性タンパク質、および/またはHa-Rasによって引き起こされる、方法も含まれる。
【0014】
別の態様では、本願発明はまた、対象における腫瘍成長の治療方法であって、当該方法には、化学式VI
(化学式VI)
【化30】
を有するフレデリカマイシンA化合物であって、
当該化合物において点線は任意の二重結合を示し、
XはN、O、S、またはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、およびR9は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシであって、
R2、R3、およびR7は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、もしくは何もないか、または薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、またはエステルである化合物を、腫瘍成長を治療するために有効な量対象に投与するステップが含まれる、方法も包含する。
【0015】
ある実施態様では、本願発明はまた、パッケージ化されたPin1関連状態の治療であってよく、当該治療にはPin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物の使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物が含まれる。
【0016】
本願発明にはさらに、パッケージ化されたサイクリンD1過剰発現治療であって、当該治療にはサイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物の使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物が含まれる。
【0017】
本願発明にはまた、パッケージ化された癌治療であって、当該治療には癌を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物の使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物も特徴とする。
【0018】
ある実施態様では、本願発明は対象におけるPin1関連状態を治療する方法であって、当該方法にはPin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物および増殖阻害物質の組み合わせを対象に投与するステップが含まれる、方法を提供する。
【0019】
ある実施態様では、本願発明は上述の方法であって、当該方法において過形成阻害物質はタモキシフェン、パクリタキセル、ドセタキセル、インターロイキン2、リツキシマブ、トレチノイン、および/またはメトトレキセートである、方法を包含する。
【0020】
別の態様では、本願発明はさらに、対象における癌を治療する方法であって、当該方法には癌を治療するために有効量のフレデリカマイシンA化合物および過形成阻害物質の組み合わせを対象に投与するステップが含まれる、方法が含まれる。
【0021】
本願発明にはまた、対象におけるサイクリンD1過剰発現を治療する方法であって、当該方法にはサイクリンD1過剰発現を治療するために有効量のフレデリカマイシンA化合物および増殖阻害物質の組み合わせを対象に投与するステップが含まれる、方法も提供する。
【0022】
本願発明はまた、上述の方法であって、当該方法においてフレデリカマイシンA化合物が化学式IX
(化学式IX)
【化31】
であって、
当該化学式においてCの周りの点線はCが5または6員環であってよいことを示し、
当該化学式においてCの周りではない点線は任意の二重結合を示し、
R1はアルキル、アルケニル、アルカノイル、アルクニルであって、
R2は水素またはアルキルであって、
R9およびR10は両方とも水素であるか、またはともに以下の構造を有する環を形成し、
(構造)
【化32】
R3、R5、R6、R11、およびR12は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もないか、R4、R7、R8、R13は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、または薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、
化学式を有する、方法を特徴とする。
【0023】
本願発明は上述の方法であって、当該方法においてフレデリカマイシンA化合物がフレデリカマイシンAである、方法を提供する。
【0024】
発明の詳細な説明
化学用語
「アルキル」という用語には、直鎖アルキル基(たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、第3ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基が含まれる。アルキルという用語はさらに、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含む原子をさらに含んでもよいアルキル基を含む。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキルはその骨格に10個以下の炭素原子(たとえば直鎖の場合C1-C10、分岐鎖の場合はC3-C10)、さらに好ましくは6個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルはその環構造に4乃至7個の炭素原子、さらに好ましくはその環構造に5または6個の炭素原子を有する。
【0025】
さらに、アルキルという用語には、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方が含まれ、後者は炭化水素骨格の1個以上の炭素に結合している水素を置換する置換基を有するアルキル部分を意味する。このような置換基には、たとえばアルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素環式芳香族基が含まれてよい。シクロアルキルをさらに、たとえば上述の置換基で置換してもよい。「アルキルアリール」基または「アラルキル」基はアリールで置換したアルキル(たとえばフェニルメチル(ベンジル))である。「アルキル」という用語にはまた、天然または非天然アミノ酸の側鎖が含まれる。ハロゲン化アルキル基の例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペルフルオロメチル、ペルクロロメチル、ペルフルオロエチル、ペルクロロエチルなどが含まれる。
【0026】
「アリール」という用語には、0乃至4個のヘテロ原子を含んでよい5および6員単環芳香族基を含む基で、たとえばベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどの基を含む。さらに、「アリール」という用語には、たとえば3環式または2環式などの多環式アリール基で、たとえばナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンが含まれる。環構造にヘテロ原子を有するこのようなアリール基は、「アリール複素環」、「複素環」、「複素アリール」、または「複素芳香族」と呼ばれることもある。芳香環は、環における1つ以上の位置が、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドなど)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素芳香族基など、上述の置換基で置換されていてよい。アリール基はまた、脂環式または複素環式環で融合または架橋されて多環構造(たとえばテトラリン)を形成してもよい。
【0027】
「アルケニル」という用語には、上述のアルキルに長さおよび置換可能な位置が類似しているが、少なくとも1つの二重結合を含有する不飽和脂肪族が含まれる。
【0028】
たとえば、「アルケニル」という用語には、直鎖アルケニル基(たとえばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基が含まれる。アルケニルという用語にはさらに、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄またはリンなどの原子を含むアルケニル基が含まれる。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルケニル基はその骨格に6個以下の炭素原子を有する(たとえば直鎖の場合はC2-C6、分岐鎖の場合はC3-C6)。同様に、シクロアルケニル基はその環構造に3乃至8個の炭素原子を有してもよく、さらに好ましくはその環構造に5または6個の炭素を有する。C2-C6という用語には、2乃至6個の炭素原子を含むアルケニル基が含まれる。
【0029】
さらに、アルケニルという用語には、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方が含まれ、後者は炭化水素骨格の1つ以上の炭素に結合する水素を置換する置換基を有するアルケニル基を意味する。このような置換基には、たとえばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基、または複素芳香族基が含まれてよい。
【0030】
「アルキニル」という用語には、上述のアルキルに長さおよび置換可能な位置が類似しているが少なくとも1つの三重結合を含有する不飽和脂肪族が含まれる。
【0031】
たとえば、「アルキニル」という用語には、直鎖アルキニル基(たとえばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分岐鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基が含まれる。アルキニルという用語にはまた、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄、またはリンなどの原子を含むアルキニル基が含まれる。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキニル基はその骨格に6個以下の炭素原子を有する(たとえば直鎖の場合はC2-C6、分岐鎖の場合にはC3-C6)。C2-C6という用語には、2乃至6個の炭素原子を含むアルキニル基が含まれる。
【0032】
さらに、アルキニルという用語には「非置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方が含まれ、後者は炭化水素骨格の1つ以上の炭素に結合する水素を置換する置換基を有するアルキニル基を意味する。このような置換基には、たとえば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素芳香族基が含まれてよい。
【0033】
炭素数を特に指定しない限り、本願明細書で用いる「低級アルキル」は、上述の通りであるがその骨格構造に1乃至5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、たとえば炭素原子2乃至5個などの鎖長を有する。
【0034】
「アシル」という用語には、アシルラジカル(CH3CO-)またはカルボニル基を含む化合物また基を含む。「置換アシル」という用語には、1個以上の水素原子を、たとえばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基、または複素芳香族基で置換したアシル基が含まれる。
【0035】
「アシルアミノ」という用語には、アシル基がアミノ基に結合している基が含まれる。たとえば、この用語には、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基が含まれる。
【0036】
「アロイル」という用語には、カルボニル基に結合したアリール基または複素芳香族基を有する化合物および基が含まれる。アロイル基の例には、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが含まれる。
【0037】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、および「チオアルコキシアルキル」という用語には、上述のアルキル基で、さらに炭化水素骨格の1個以上の炭素を置換する酸素、窒素、または硫黄原子を含むアルキル基が含まれる。
【0038】
「アルコキシ」という用語には、酸素原子に共有結合した置換および非置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基が含まれる。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が含まれ、シクロペントキシなどの環状基も含まれてよい。置換アルコキシ基の例にはハロゲン化アルコキシ基が含まれる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素芳香族基などの基で置換してよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例には、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシなどが、それらに限定されずに含まれる。
【0039】
「アミン」または「アミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも1個の炭素またはヘテロ原子に共有結合する化合物が含まれる。「アルキルアミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも1つの別のアルキル基に結合している基および化合物が含まれる。「ジアルキルアミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも2つの別のアルキル基に結合している基が含まれる。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」という用語は、それぞれ窒素が少なくとも1つまたは2つのアリール基に結合している基が含まれる。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、または「アリールアミノアルキル」という用語は、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基に結合するアミノ基を意味する。「アルクアミノアルキル」という用語は、アルキル基に結合している窒素原子に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する。
【0040】
「アミド」または「アミノカルボキシ」という用語には、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含有する化合物または基が含まれる。この用語には、カルボキシ基に結合したアミノ基に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を含む「アルクアミノカルボキシ」基が含まれる。その用語には、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアリールまたはヘテロアリール基を含むアリールアミノカルボキシ基が含まれる。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」という用語は、それぞれアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基が窒素原子に結合し、その窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している基が含まれる。
【0041】
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語には、二重結合で酸素原子に結合した炭素を含有する化合物および基、およびそれらの互変異性型が含まれる。カルボニルを含む基の例には、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などが含まれる。「カルボキシ基」または「カルボニル基」とは、アルキル基がカルボニル基と共有結合している「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基と共有結合している「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基と共有結合している「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基と共有結合している「アリールカルボニル」基などの基を意味する。さらに、この用語はまた、1つ以上のヘテロ原子がカルボニル基に共有結合している基も意味する。たとえば、この用語には、たとえばアミノカルボニル基(当該基において窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している、たとえばアミドなど)、カルボニル基の炭素に酸素と窒素原子の両方が結合しているアミノカルボニルオキシ基(たとえば「カルバマート」とも呼ばれる)などの基が含まれる。さらに、アミノカルボニルアミノ基(たとえば尿素)も、ヘテロ原子(たとえば窒素、酸素、硫黄など、および炭素原子)に結合しているカルボニル基のそのほかの組み合わせとともに含まれる。さらに、ヘテロ原子は1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシルなどの基でさらに置換されていてもよい。
【0042】
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という用語には、二重結合で硫黄原子に結合している炭素を含む化合物および基が含まれる。「チオカルボニル基」という用語には、カルボニル基に類似している基が含まれる。たとえば、「チオカルボニル」基には、アミノ基がチオカルボニル基の炭素原子に結合しているアミノチオカルボニルが含まれ、さらに別のチオカルボニル基には、オキシチオカルボニル基(酸素が炭素原子に結合している)、アミノチオカルボニルアミノ基などが含まれる。
【0043】
「エーテル」という用語には、2つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合している酸素を含む化合物または基が含まれる。たとえば、この用語には、別のアルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する「アルコキシアルキル」が含まれる。
【0044】
「エステル」という用語には、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合した炭素またはヘテロ原子を含有する化合物および基が含まれる。「エステル」という用語は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのアルコキシカルボキシ基が含まれる。アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は上述の通りである。
【0045】
「チオエーテル」という用語には、異なる2つの炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含有する化合物および基が含まれる。チオエーテルの例には、アルクチオアルキル、アルクチオアルケニル、およびアルクチオアルキニルが、それらに限定されずに含まれる。「アルクチオアルキル」という用語には、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を有する化合物が含まれる。同様に、「アルクチオアルケニル」およびアルクチオアルキニル」という用語は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基が、アルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合している化合物または基を意味する。
【0046】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語には、-OHまたは-O-を有する基が含まれる。
【0047】
「ハロゲン」という用語には、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などが含まれる。「過ハロゲン化」という用語は一般に、すべての水素がハロゲン原子に置換された基を意味する。
【0048】
「多環式(ポリシクリル)」または「多環式ラジカル」には、たとえば「融合環」などのように隣接する2つの環が2つ以上の炭素を共有する2つ以上の環を有する基(たとえばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロシクリル)が含まれる。隣接しない原子を介して結合している環は、「架橋」環と呼ばれる。多環基(ポリサイクル)の各環は、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、芳香族基、またはヘテロ芳香族基など、上述の置換基で置換されてもよい。
【0049】
「ヘテロ原子」という用語には、炭素または水素以外のいずれの元素原子も含まれる。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、およびリンである。
【0050】
「複素環(ヘテロサイクル)」または「複素環式」という用語には、1つ以上のヘテロ原子を含む飽和、非飽和、芳香族(「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」)および多環式環が含まれる。複素環(ヘテロサイクル)の例には、たとえばベンゾジオキサゾール、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、デアザプリン、フラン、インドール、インドリジン、イミダゾール、イソオキサゾール、イソキノリン、イソチアゾール、メチレンジオキシフェニル、ナプトリジン、オキサゾール、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、テトラゾール、チアゾール、チオフェン、およびトリアゾールなどが含まれる。そのほかの複素環には、モルホリン、ピプラジン、ピペリジン、チオモルホリン、およびチオアゾリジンが含まれる。複素環は置換または未置換であってよい。置換基の例には、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、芳香族基、またはヘテロ芳香族基が含まれる。
【0051】
本願発明のいくつかの化合物の構造には、非対称炭素原子を含むことが特筆されるだろう。従って、このような非対称性から生じる異性体(たとえばすべての鏡像異性体およびジアステレオマー)は、特に記載のない限り本発明の範囲内に含まれる。このような異性体は従来の分離技術および立体科学的に制御された合成法によって実質的に純粋な形状で得ることができる。さらに、本願明細書で検討した構造、並びにそのほかの化合物および基も、そのすべての互換体に含まれる。
【0052】
フレデリカマイシンA化合物
「フレデリカマイシンA」には、フレデリカマイシンAならびにフレデリカマイシンAおよび/またはフレデリカマイシンAの類似体と同様の構造をもつ化合物が含まれることが意図される。「フレデリカマイシンA化合物」という用語はまた、「模倣体」または「フレデリカマイシンAの阻害物質」も含んでよい。「模倣体」は、構造はフレデリカマイシンAと似ていないが、フレデリカマイシンAまたはin vivoにおける構造がフレデリカマイシンAに似ている化合物の治療上の活性を模倣する化合物を含むことを意図する。「フレデリカマイシンAの阻害物質」とは、フレデリカマイシンAの活性を阻害する化合物である。本願発明のフレデリカマイシンA化合物は、対象(患者)におけるPin1の阻害に有用な化合物である。フレデリカマイシンA化合物という用語はまた、この化合物の薬学的に許容な塩も含むことを意図する。フレデリカマイシンA化合物は、天然に存在するか、または化学的に合成されてよい。
【0053】
フレデリカマイシンAは、ストレプトマイセス・グリセウス株から分離することができる。粗フレデリカマイシンAの分離のある手順では、様々な発酵から得られた全ブロスを遠心分離してブロスからマイセリウムを分離する。濾過したブロスのpHは希硫酸で2.0に調節する。4℃で96時間放置し、沈殿したフレデリカマイシンAを濾過して取り出す。それから、濾液を酢酸エチルで2回抽出する。マイセリウムを水に懸濁させ、ブレンダーでホモジナイズする。この混合物のpHを希硫酸で2.0に調節し、酢酸エチルで抽出する。この混合物を濾過して、酢酸エチル抽出物を分離し、水相を捨てる。ストレプトマイセス・グリセウスから得たフレデリカマイシンAの抽出および精製は、Pandey, et. al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1389-401に詳述されている。
【0054】
フレデリカマイシンAの合成方法は、Kita, et al. 1998. J. Synth. Organic Chem. Jpn. 56:963-974、Boger. 1996. J. Heterocyclic Chem. 33:1519-1531、Boger, et al. 1995. J. Am. Chem. Soc. 117:11839-11849、Clive, et al. 1994. J. Am. Chem. Soc. 116:11275-11286、Wendt, et al. 1994. J. Am. Chem. Soc. 116:9921-9926、Rao, et al. 1994. Heterocycles. 37:1893-1912、Saintjalmes, et al. 1993. Bulletin de la Societe Chimique De France. 130:447-449、Clive, et al. Oct. 15, 1992. J. Chem. Soc. Chem. Comms. N20 pp. 1489-1490、Wendt., et al. 1994. J. Am. Chem. Soc. 116:9921-6、Kelly, et al. 1988. J. Am. Chem. Soc. 110:6471-80、Rama, et al. 1994. Heterocycles 37:1893-1912、Kelly, et al. 1988. J. Am. Chem. Soc. 110:6471-6480、Rama, et al. 1984. J. Chem. Soc. Chem. Comms. N16 pp. 1119-1120、Clive, et al. 1995. Stud. Nat. Prod. Chem. 16:27-74、and Kelly, et al. 1986. J. Am. Chem. Soc. 108:7100-7101を含む、多数の文献に記載されている。
【0055】
フレデリカマイシンAの誘導体である「フレデリカマイシンA化合物」およびその合成方法は、Yokoi, et al, 米国特許第4,584,377号、Kelly, et al., 米国特許第5,166,208号、 Clive, et al. 1996. Tetrahedron 52:6085-6116、Evans, et al. 1988. J. Org. Chem. 53:5519-27、Clive, et al. 1987. J. Org. Chem. 52:1339-1342、Clive, et al. 1987. J. Heterocylic. Chem. 24:509-511、Bennett, et al. 1986. J. Chem. Soc. Chem. Comms. N11 pp. 878-880、Braun, et al. 1986. Tetrahedron Letters 27:179-182、Kita, et al., 日本特許出願第98246347号、Hasegawa, et al., 日本特許出願第84166283号、and Yokoi, et al., 日本特許出願第85152468号に記載されている。
【0056】
これらの参考文献は、引用した特許および特許出願の対応外国特許および特許出願とともに、その内容全体を引用によりここに明示的に援用し、上述の参考文献で検討されているすべてのフレデリカマイシンA化合物並びにその合成方法および選択は、特に記載のない限り、本願発明の一部であることを意図する。
【0057】
フレデリカマイシンAの例を以下に記載する。フレデリカマイシンA化合物を数クラスの化合物に分けて、以下に記載する。
【0058】
クラス1のフレデリカマイシンA化合物(Yokoi et al., 米国特許第4,584,377号に記載)
式Iに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式I)
【化30】
当該誘導体においてRは水素原子またはC-アシル基であって、Aは下記の基
(基)
【化31】
を表し、式中の点線は、Aが下記の基
(基)
【化32】
の場合に任意の二重結合を示すか、または任意の二重結合が式中に存在する場合、R基は水素原子以外の基である、フレデリカマイシンA誘導体。
【0059】
クラス2のフレデリカマイシンA化合物(Kelly, et al., 米国特許第5,166,208号)
式IIに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式II)
【化33】
当該誘導体において
R1およびR2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、6乃至10個の炭素原子を有するアリールチオ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルチオ、1乃至8個の炭素原子を有し独立に置換可能な位置が1つ以上のヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノで置換されているアルキルチオ、1乃至8個の炭素原子を有するアルコキシ、アミノ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルアミノ、C1-8アルコキシカルボニルアミノ、グアニジノ、ウレイド、C1-8アルキルウレイレン、アルカノイルアミノ、C1-8アルコキシカルボキシル、2乃至6個の炭素原子を有するアルケニル、2乃至6個の炭素原子を有するアルキニル、3乃至7員環を有するシクロアルキル、5乃至7員環および式-S-S-R’という基であってR’が1乃至8個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される基を有するシクロアルケニル、3乃至7員環を有するシクロアルキル、アルカノイルアミノ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルによって置換された6乃至10個の炭素原子を有するアリール、および式-N(R7)R8という基であって、当該基においてR7およびR8がそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至6個の炭素原子を有するアルケニル、2乃至6個の炭素原子を有するアルキニル、1乃至8個の炭素原子を有するアルコキシ、C1-8アルコキシカルボニル、アルカノイル、3乃至7員環を有するシクロアルキル、6乃至10個の炭素原子を有するアリール、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルで置換された6乃至10個の炭素原子を有するアリール、C6-10アリールカルボニル、アミジノ、および3乃至12個の炭素原子を有するジアキルアミノカルボニルからなる群から選択される基、からなる群からそれぞれ独立に選択され、
R3は水素、ヒドロキシ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、および1乃至8個の炭素原子を有するアルコキシからなる群から選択され、
R4およびR5は共に、以下の式IIAおよびIIB
(式IIA、IIB)
【化34】
であって、R13が水素、および1乃至8個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、R14が1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至8個の炭素原子を有するアルケニル、アルカノイル、および2乃至8個の炭素原子を有するアルキニルからなる群から選択され、R15が水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、およびアルカノイルからなる群から選択される式IIAおよびIIBからなる群から選択される環を形成し、
R6は水素、アルカノイル、C6-10アリールカルボニル、および薬学的に許容なカチオンからなる群、並びに薬学的に許容なそれらの塩から選択される、フレデリカマイシンA誘導体。
【0060】
クラス3のフレデリカマイシンA化合物(Clive, et al. 1996. Tetrahedron 52:6085-6116)
式IIIに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式III)
【化35】
当該誘導体において、点線は任意の二重結合であって、
R1は1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至8個の炭素原子を有するアルケニル、アルカノイル、または2乃至8個の炭素原子を有するアルキニルであって、
R2は水素または1乃至8個の炭素原子を有するアルキニルであって、
R3、R5、R6、R9、およびR10は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、アルカノイルであるか、または何もなく、
R4、R7、R8、R11は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、またはアルカノイルである、フレデリカマイシンA誘導体。
【0061】
式IIIのフレデリカマイシンA誘導体(クラス3)の例は、式IVであって、
(式IV)
【化36】
当該式において点線は任意の二重結合を示す。
【0062】
クラス3のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式Vであり、
(式V)
【化37】
当該式において点線は任意の二重結合を示す。
【0063】
クラス4のフレデリカマイシンA化合物(プルプロマイシン関連化合物)
式VIに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式VI)
【化38】
当該誘導体において点線は任意の二重結合を示し、
XはN、O、S、またはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8またはR9は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシであって、
R2、R3、およびR7は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もない、フレデリカマイシンA誘導体。
【0064】
式VIのフレデリカマイシンA誘導体(クラス4)は、式VII(プルプロマイシン)である。
(式VII)
【化39】
【0065】
クラス4のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式VIII(ヘリキノマイシン)である。
(式VIII)
【化40】
【0066】
クラス5のフレデリカマイシンA化合物
式IXに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式IX)
【化41】
当該式においてCの周りの点線は、Cが5または6員環であってよいことを示し、
当該式においてCの周りではない点線は、任意の二重結合を示し、
R1はアルカリ、アルケニル、アルカノイル、アルキニルであって、
R2は水素またはアルキルであって、
R9およびR10は両方とも水素、または共に以下の構造を有する環を形成し、
(構造)
【化41】
R3、R5、R6、R11、およびR12は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もなく、
R4、R7、R8、R13は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシである、フレデリカマイシンA誘導体。
【0067】
式VIIIに記載のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式X(フレデリカマイシンA)
(式X)
【化42】
である。
【0068】
クラス6のフレデリカマイシンA化合物
式XIのフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式XI)
【化43】
当該誘導体において、点線は任意の二重結合を示し、
XはN、O、S、またはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、R9、およびR11は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはアルコキシカルボニルオキシであるか、またはR9およびR11が共にエポキシド環を形成し、
R2、R3、R7、およびR10は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もない、フレデリカマイシンA誘導体。
【0069】
式VIに記載のフレデリカマイシンA誘導体(クラス4)の例は、式VII(プルプロマイシン)である。
(式VII)
【化44】
【0070】
クラス6に記載のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式VIII(ヘリキノマイシン)である。
(式VIII)
【化45】
【0071】
クラス6に記載のフレデリカマイシンAの他の例には、以下の式の化合物がそれらに限定されずに含まれる。
(式)
【化46】
【0072】
疾患または障害の治療
本願発明のフレデリカマイシンA化合物は、いずれの対象でもよいが特にヒトにおける、望ましくない細胞成長、新生物形成、および/または癌の治療、阻害、および/または予防に用いることができる。本願発明のフレデリカマイシンAは、対象におけるPin1活性を阻害するために用いることができる。本願発明のフレデリカマイシンAは、対象におけるサイクリンD1発現を阻害するために用いることができる。
【0073】
新生物および細胞成長異常の治療
「過形成阻害物質」という用語は、増殖する細胞または組織であって、このような細胞または組織の成長が望ましくない細胞または組織の成長を阻害する物質を含むことを意図する。たとえば、その阻害とは、新生物中などの悪性細胞または成長が適切ではない組織中などの良性細胞の成長の阻害であってよい。使用可能な物質の種類の例には、化学療法剤、放射線療法治療剤、および関連する放射性化合物および方法、並びに免疫毒素複合体が含まれる。
【0074】
「化学療法剤」という用語は、増殖する細胞または組織であって、このような細胞または組織の成長が望ましくない細胞または組織の成長を阻害する化学試薬を含むことを意図する。化学療法剤は当業に公知であり(たとえばGilman A.G., et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Sec 12:1202-1263 (1990)参照)、特に新生物疾患の治療に使用する。一般に用いられる化学療法剤のリストを、以下の表1に記載する。
【0075】
化学療法剤のそのほかの同様の例には、ブレオマイシン、ドセタキセル(タキソテール)、ドキソルビシン、エダトレキセート、エトポシド、フィナステリド(プロスカー)、フルタミド(ユーレキシン)、ゲムシタビン(ジェムザール)、酢酸ゴセレリン(ゾラデックス)、グラニセトロン(カイトリル)、イリノテカン(カンプト/カンプトサール)、オンダンセトロン(ゾフラン)、パクリタキセル(タキソール)、ペガスパルガーゼ(オンカスパー)、塩酸ピロカルピン(サラジェン)、ポルフィマーナトリウム(フォトフリン)、インターロイキン2(プロロイキン)、リツキシマブ(リツキサン)、トポテカン(ヒカムチン)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、トレチノイン(レチンA)、トリアピン、ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビン(ナベルビン)が含まれる。
【0076】
【表1】
【0077】
「放射線療法」という用語は、不必要な細胞成長に伴う症状および状態を阻害、低減、または予防するために、遺伝子的および身体的に安全なレベルのX線を局所的および非局所的に対象に適用することを含むことを意図する。X線という用語は、臨床学的に許容な放射性元素およびその同位体、並びにそれらから放出される放射線を含むことを意図する。放射線の種類の例には、?線、硬?線を含む?線、高エネルギー電子、および?線が含まれる。放射線療法当は、当業に公知であって(たとえばFishbach, F., Laboratory Diagnostic Tests, 3rd Ed., Ch. 10: 581-644 (1988)参照)、一般には新生物性疾患の治療に用いられる。
【0078】
「免疫毒素複合体」という用語には、急速に増殖する不必要な細胞を選択的に破壊するために用いられる、細胞傷害性T細胞および/またはモノクローナル、ポリクローナル、ファージ抗体またはそれらの断片などの抗体を用いる免疫療法用物質が含まれる。たとえば、免疫毒素複合体には、抗体-毒素複合体(たとえばAb(抗体)-リシン、およびAb-ジプテリア毒素)、抗体-放射標識複合体(たとえばAb-I135)および腫瘍細胞における補体の抗体活性などが含まれてよい。新生物性疾患に関連する症状または状態を阻害、低減または予防するための免疫毒素複合体の使用は、当業に公知である(たとえばHarlow, E. and Lane, D., Antibodies, (1988)参照)。
【0079】
Pin-1関連状態およびそのほかの状態
「Pin-1関連状態」には、細胞成長異常、細胞増殖異常、またはPin-1マーカーの異常値に関連する疾患または状態(たとえば疾病状態)が含まれる。Pin1関連状態には、サイクリンD1および/またはPin1の発現の上昇に起因する状態が含まれる。Pin1関連状態にはまた、c-Junのリン酸化レベル、特にS63/73-Pのリン酸化の上昇、または細胞に存在するc-Junアミノ末端キナーゼ(JNK)のレベルの上昇に起因する状態も含まれる。Pin1関連状態には、新生物、癌、不必要な細胞成長および/または腫瘍成長が含まれる。Pin1関連状態には、DNA損傷、発癌性タンパク質(すなわちHa-Ras)、腫瘍抑制因子発現(すなわちBrcal)の欠損または減少、および/または成長因子によって引き起こされる状態が含まれる。
【0080】
Pin1はサイクリンD1発現の重要な調節因子である。Pn1にはサイクリンD1の発現を調節する役割があるために、サイクリンD1の作用を引き起こす数多くの腫瘍をPin1が調節することができる。特に、Pin1の阻害因子を用いて、いずれの対象でもよいが特にヒトにおける望ましくない細胞成長、新生物形成、および/または癌を治療、阻害および/または予防することができる。
【0081】
Pin1は細胞成長に必須で、Pin1が欠乏または突然変異すると成長が停止し、細胞周期のチェックポイントに作用して、ヒト腫瘍細胞、酵母菌、またはアフリカツメガエル抽出物において未熟な状態での細胞分裂の開始、分裂停止または細胞死を誘発する。Lu, et al. 1996. Nature 380:544-547. Winkler, et al. 2000. Science 287:1644-1647. Hani, et al. 1999. J. Biol. Chem. 274:108-116。Pin1はヒト癌試料において劇的に過剰発現し、Pin1量は腫瘍の攻撃性に相関する。さらに、Pin1阻害因子、Pin1アンチセンスポリヌクレオチド、または遺伝子欠乏を含む各種のアプローチによるPin1の阻害によって、未熟な状態での細胞分裂の開始および細胞死が誘導され、ヒトおよび酵母菌の分裂細胞が死滅する。Pin1は結腸癌細胞株、ヒト乳癌細胞株、および乳癌細胞組織の75%において過剰発現する。さらに、Pin1量は乳腫瘍の核異型度およびそれらのサイクリンD1発現に相関する。これらの結果は、酵素のPin1サブファミリーが、制御されていない細胞増殖、主に悪性腫瘍によって特徴づけられる疾患の新規の診断および治療標的として有望であることを示唆している。
【0082】
Pin1は高度に保存されたタンパク質で、結合して、Pro標的キナーゼによってリン酸化されたタンパク質の特定のサブセットの機能を調節する。Yaffe, et al. 1997. Science 278:1957-1960. Shen, et al. 1998. Genes Dev. 12:706-720. Lu, et al. 1999. Science 283:1325-1328. Crenshaw, et al. 1998. Embo J. 17:1315-1327. Lu, et al. 1999. Nature 399:784-788. Zhou, et al. 1999 Cell Mol. Life Sci. 56:788-806。Pin1はNH2末端WWドメインおよびCOOH末端ペプチジル-プロリルイソメラーゼ(PPIase)ドメインを含有する。WWドメインは、特定のpS/T-Pモチーフに結合して、Pin1をそのリンタンパク質基質に向かわせ、そこでPPIaseドメインが、おそらく特定のpS/T-P結合を異性化することによってコンホメーションおよび機能を調節する。
【0083】
Pin1は内因性サイクリンD1の過剰発現を引き起こすことがある。Pin1はc-Junと協調的に作用することによってサイクリンD1の発現を活性化し、サイクリンD1プロモータを活性化させると考えられている。サイクリンD1の発現を活性化するために、c-Junはリン酸化されなければならない。Pin1とc-Junの結合は、主にリン酸化S63/73モチーフを介する。Pin1はリン酸化c-Junを活性化し、c-Junのリン酸化S-Pモチーフのコンホメーションを調節することによってサイクリンD1の発現を誘発する。
【0084】
c-Junの活性はまた、成長因子、発癌性タンパク質、DNA損傷、またはストレス条件によって誘発されるリン酸化によっても増強される。異なる経路が関与している可能性もあるが、最終的にはS63/73-Pのc-Junをリン酸化するPro標的キナーゼJNKの活性化を引き起こし、転写活性を増強する。Binetruy, et al. 1991. Nature 351:122-127。Smeal, et al. 1991. Nature 354:494-496。Derijard, et al. 1994. Cell. 76:1025-1037。したがって、S63/73-Pのc-Junのリン酸化は、各種のシグナル経路からサイクリンD1遺伝子発現における変化へのインプットを変換する主要な調節機序である。
【0085】
発癌性および腫瘍抑制経路もまた、Pin1の活性に作用することがある。発癌性Rasによって活性化した経路は、Pin1の上方調節に寄与することがある。野生種Brca(腫瘍抑制因子)はPin1の発現を抑制する。
【0086】
「サイクリンD1の大量発現」または「サイクリンD1過剰発現」または「サイクリンD1発現の上昇」には、正常レベルを超えるサイクリンD1を有する細胞が含まれる。顕著なサイクリンD1過剰発現には、正常レベルと比較したサイクリンD1レベルの大幅増および微増のいずれも含まれる。好ましくは、サイクリンD1の過剰発現は、細胞周期との関連で考慮される。活発に増殖する正常細胞の場合、サイクリンD1はG1中期で最大となり、S期に減少し、その他の細胞周期中は低いままである。それに対し、形質転換した細胞では、サイクリンD1のレベルはもっと変化しやすい。したがって、サイクリンD1の過剰発現には、細胞のある特定の細胞周期に異常に高いレベルになるサイクリンD1の発現が含まれる。サイクリンD1の過剰発現は、腫瘍成長または癌として現れることがある。当業者は、正常細胞および癌状態を有する細胞のサイクリンD1発現量を測定する研究が行われていることを認識しているだろう。
【0087】
サイクリンD1発現の増加は多様な原発性ヒト腫瘍に認められている。サイクリンD1の大量発現は、遺伝子増幅、サイクリンD1 RNAの大量発現、およびサイクリンD1タンパク質の大量発現の形で検出されている。サイクリンD1遺伝子増幅とサイクリンD1発現を比較する臨床研究の大半で、RNAおよびタンパク質の過剰発現が共に認められるケースの方が遺伝子の増幅が認められるケースよりも多いことが明らかになっている。サイクリンD1において遺伝子増幅のないRNAおよび/またはタンパク質の大量発現が認められるということは、pRbなどの他の細胞遺伝子がサイクリンD1発現に作用している可能性があることを示唆している。サイクリンD1の大量発現が認められたヒト腫瘍には、副甲状腺腺腫、外套細胞リンパ腫、乳癌、頭頸部扁平上皮細胞癌(すなわち口腔、鼻咽頭、咽頭、下咽頭、および喉頭における扁平上皮細胞癌)、食道癌、肝細胞癌、大腸癌、泌尿生殖器癌、肺癌(すなわち肺の扁平上皮細胞癌)、皮膚癌(すなわち扁平上皮細胞癌、黒色腫、および悪性線維性組織球腫)、肉腫、および中枢神経系悪性腫瘍(すなわち星状細胞腫およびグリア芽腫)、胃腺癌、膵腺癌、胆嚢の扁平上皮癌が含まれる。Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。サイクリンD1遺伝子は乳癌の約20%で増幅され、タンパク質は乳癌の約50%に過剰発現する。Barnes, et al. 1998. Breast Cancer Research and Treatment. 52:1-15。外套細胞リンパ腫におけるサイクリンD1の過剰発現についてはEspinet, et al. 1999. Cancer Genet Cytogenet. 111(1):92-8 and Stamatopoulous, et al. 1999. Br. J. Haematol. 105(1):190-7に記載されている。乳癌におけるサイクリンD1の過剰発現についてはFredersdorf, et al. 1997. PNAS 94(12):6380-5に記載されている。頭頸部癌におけるサイクリンD1の過剰発現についてはMatthias, et al. 1999. Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 8(9):815-23; Matthias, et al. 1998. Clin. Cancer Res. 4(10):2411-8; and Kyomoto, et al. 1997. Int. J. Cancer. 74(6):576-81に記載されている。喉頭癌におけるサイクリンD1の過剰発現についてはBellacosa, et al. 1996. Clin. Cancer Res. 2(1):175-80に記載されている。骨髄腫におけるサイクリンD1の過剰発現についてはHoechtlen-Vollmar, et al. 2000. Br. J. Haematol. 109(1):30-8; Pruneri, et al. 2000. Am. J. Pathol. 156(5):1505-13; およびJanssen, et al. 2000. Blood 95(8):2691-8に記載されている。多くの腫瘍において、サイクリンD1はそのほかの発癌性遺伝子または腫瘍抑制遺伝子と協調して作用すると考えられている。
【0088】
サイクリンD1発現は多くの因子によって制御されている。成長因子(すなわちCSF1、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子、ステロイドホルモン、プロラクチン、および血清刺激)はサイクリンD1の合成を促進し、成長因子を除去するとサイクリンD1レベルが急落して細胞がG1期で停滞するだろう。Hosokawa, et al. 1996. J. Lab. Clin. Med. 127:246-52。低リン酸化pRbはサイクリンD1遷移を刺激する。サイクリンD1活性は、トランスフォーミング成長因子?-1、p53、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CKI)によって阻害される。高レベルのCKIがcdkに結合し、サイクリンのcdk活性化能を低減する。CKIには2種類あり、それはp21、p27、およびp57を含むKip/Cipファミリー、並びにp15、p16、18、およびp19を含むINK4ファミリーである。Kip/Cipファミリーのメンバーはほとんどのサイクリン-cdk複合体に結合し阻害する能力があるが、INK4ファミリーのメンバーはサイクリンD1-cdk複合体に特異的な阻害因子のようである。. Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。pRbおよびE2FはCKIp16の活性化因子である。TGF-β、cAMP、接触阻害、および血漿欠乏によってp27レベルが上昇する。Barnes, et al. 1998. Breast Cancer Research and Treatment. 52:1-15。
【0089】
サイクリンD1はpRBのリン酸化によって活動すると考えられている。pRBはG1期には低リン酸化されているが、S期の直前でリン酸化され、分裂後期までリン酸化された状態を維持する。低リン酸化pRBは、DNA結合タンパク質のE2Fファミリーと複合体を形成することによって、細胞をG1期に停滞させる。E2F転位因子はDNA複製に関連する遺伝子を転写する(細胞周期のS期)。
【0090】
サイクリンD1はcdk4またはcdk6とともに複合体を形成し、活性化cdk4またはcdk6を形成することができる。活性化cdk4またはcdk6は、pRbをリン酸化して、E2F転写因子に結合してこの転写因子を不活化する低リン酸化状態から、結合もE2F転写因子の不活化もしないリン酸化pRbへの変化を誘導する。Dサイクリンを過剰発現するいくつかのマウスリンパ腫細胞のpRbでは、Dサイクリンを過剰発現しない細胞のpRbと比較して、低リン酸化されている。サイクリンD1はpRbのリン酸化を開始するために必要であり、その現象が、細胞が分裂しようとする段階における制限ポイントを介して細胞を駆動していると考えられる。
【0091】
「新生物形成」または「新生物形質転換」は、新生物、組織塊、または腫瘍の形成および成長を生じる病理学的なプロセスである。このようなプロセスには、良性または悪性腫瘍のいずれかを含む、制御されていない細胞成長が含まれる。新生物には、異常な組織塊、正常組織の成長を上回り、正常組織との協調が見られず、変化を誘発した刺激が停止しても同様の過剰な状態で持続する成長が含まれる。新生物は、構造的な組織および正常組織との機能的な協調性が部分的にまたは完全に欠損していることがあり、通常、独特な組織塊を形成する。新生物形成の一因は、細胞周期機構の制御不全である。
【0092】
新生物は正常組織の成長および機能を制御する恒常性維持機構とは独立に成長および機能する傾向がある。しかし、新生物には、正常組織の成長および機能を制御する恒常性維持機構の制御下にあるものもある。たとえば、ある新生物はエストロゲンに感受性があり、抗エストロゲン療法で停止させることが可能である。新生物のサイズは直径1cm未満から6インチ超までである。直径1cmの新生物であっても、ファーター膨大部に生じてそこを閉塞すると、胆道閉塞および黄疸を生じることがある。
【0093】
新生物は、形態的および機能的に発生部位の組織に似る傾向がある。たとえば、膵臓の島組織内に発生した新生物はその島組織に似ており、分泌顆粒を含有してインスリンを分泌する。新生物の臨床的な特徴は、発生部位の組織の機能に起因することがある。たとえば、島細胞新生物が過剰量のインスリンを産生して低血糖症を生じ、頭痛およびめまいを引き起こすことがある。しかし、新生物には、形態的にまたは機能的に発生部位の組織にあまり似ないものもある。ある新生物は、悪液質、感染症への高感受性、および発熱などの非特異的な全身作用を生じる。
【0094】
新生物の組織学的およびそのほかの特徴を評価することによって、新生物が良性か悪性かを決定することができる。浸潤および転移(新生物の遠位部位への拡散)は悪性であることを決定する条件である。良性新生物は巨大化することはあるが、分散しており近隣の非新生組織とは異なる。良性腫瘍は一般に限局性で円形であり、莢膜があり、灰色または白色で、肌目が均一である。反対に、悪性腫瘍は一般に指状の突起、不規則な縁部を有し、限局性ではなく、色も肌目も様々に異なる。良性腫瘍は近隣組織を圧迫しながら成長する。良性腫瘍は拡大するにつれて近隣組織を圧迫し、時に萎縮を生じる。良性腫瘍と周囲組織の境界線は線維性連結組織莢膜に転換することがあり、そのため良性腫瘍の外科的除去は容易である。これに対し、悪性腫瘍は局所的に浸潤し、近隣組織に入り込んで成長するため、一般に不規則な縁部を生じる。この縁部は莢膜化していないため、悪性腫瘍を外科的に除去するためには正常組織の縁部を広く除去する必要がある。良性新生物は悪性腫瘍よりもゆっくりと成長する傾向がある。良性新生物はまた、悪性腫瘍よりも自律性が低い傾向がある。良性新生物は、組織学的に発生部位の組織に非常に似る傾向がある。高度に分化した癌で、発生部位の組織に似ている癌の方が、あまり分化していない癌よりも予後がよい傾向がある。悪性腫瘍は良性腫瘍よりも異常な機能(すなわち異常量または過剰量のホルモン分泌)を有する確率が高い。
【0095】
癌の組織学的特徴は「退形成」という用語に要約される。悪性新生物は、多数の分裂細胞を含有していることが多い。これらの細胞は一般に異常である。このような分裂異常は、大半の癌に認められるある種の核型異常が原因である。異常な多核細胞も、一部の癌、特に高度に退形成している癌に見られる。
【0096】
「形成異常」とは、組織が正常と退形成の中間の組織学的および細胞学的特徴を示す、前悪性状態を意味する。形成異常は可逆性であることが多い。
【0097】
「退形成」とは、癌の組織学的な特徴を意味する。これらの特徴には、正常組織の構造の異常、細胞の密集、極性異常と呼ばれる細胞の配向性の欠損、「多形性」と呼ばれる細胞の大きさおよび形状の不均一性が含まれる。退形成の細胞学的な特徴には、核-細胞質比の高値(核-細胞質比は悪性化細胞の場合50%を超えることがある)、核多形性、核膜の核染色質の凝集、核染色質の染色度の増加、小胞体の簡略化、遊離リボソームの増加、ミトコンドリアの多形性、細胞小器官のサイズの縮小および数の減少、核小体の肥大および数の増加、ならびに時として中間フィラメントの存在が含まれる。
【0098】
本願明細書で用いられる「癌」という用語には、たとえば癌腫、肉腫、白血病、およびリンパ腫などの、無秩序なまたは制御されていない細胞成長を特徴とする悪性腫瘍が含まれる。「癌」という用語には、原発性悪性腫瘍(たとえば、細胞が対象の体内において腫瘍の発生部位以外の部位に移動していないもの)、および続発性悪性腫瘍(たとえば転移、つまり腫瘍の発生部位とは異なる続発的な部位に腫瘍細胞が移動して生じたもの)が含まれる。
【0099】
「癌腫」という用語には、呼吸器系癌、消化器系癌、泌尿生殖器系癌癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、黒色腫、絨毛癌、並びに子宮頸部、肺、頭頸部、結腸および卵巣癌を含む、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍が含まれる。「癌腫」という用語にはまた、癌性組織および肉腫性組織からなる悪性腫瘍を含む癌肉腫も含まれる。「腺癌腫」とは、腺組織または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する腫瘍に由来する癌腫を意味する。
【0100】
「肉腫」には、たとえば骨、脂肪、および軟骨組織など中胚葉結合組織の悪性腫瘍が含まれる。
【0101】
「白血病」および「リンパ腫」という用語には、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍が含まれる。白血病は単細胞として増殖する傾向があるが、リンパ腫は充実性腫瘍塊として増殖する傾向がある。白血病の例には、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病、混合系統白血病、急性単芽球白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性非リンパ芽球性白血病、芽球性外套細胞白血病、骨髄異形成症候群、T細胞白血病、B細胞白血病、および慢性リンパ球白血病が含まれる。リンパ腫の例には、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、上皮親和性リンパ腫、混合リンパ腫、退形成大細胞リンパ腫、胃および非胃粘膜関連リンパ系組織リンパ腫、リンパ滲出性疾患、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、外套細胞リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、多発性骨髄腫が含まれる。
【0102】
たとえば、本願発明の治療方法は、たとえば肉腫(たとえば腺肉腫、粘液肉腫、リオサルコーマ(liosarcoma)、軟骨肉腫、骨原性肉腫もしくは脊索肉腫、血管肉腫、内皮リオサルドコーマ(endotheliosardcoma)、リンパ管肉腫、滑膜性肉腫またはメソセリソサルコーマ(mesothelisosarcoma))、顆粒球性白血病、単球白血病、リンパ球白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網細胞肉腫、またはホジキン病などの白血病およびリンパ腫、平滑筋肉腫または横紋筋腫などの肉腫、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、汗腺癌、脂腺癌、腺癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌腫、気管支癌、黒色腫、腎細胞癌、肝臓癌-肝細胞癌、胆管癌、胆管癌、乳頭癌、移行上皮癌、コリオアエンシノーマ(chorioaencinoma:絨毛上皮腫?)、セモノーマ、または胎児性癌などの上皮由来の腫瘍、およびギオーマ(gioma)、メニゴーマ(menigoma)、髄芽腫、神経鞘腫、またはエピディモーマを含む神経系の腫瘍を産生する癌細胞など、間葉細胞由来の癌細胞に適用することが可能である。本願明細書に記載の方法に従った治療に感受性がある細胞の種類には、さらに、乳癌、結腸癌などの消化器癌、膀胱癌、前立腺癌、および頭頸部の扁平上皮細胞癌を生じる細胞が含まれる。本願明細書に記載の方法に従った治療法に感受性がある癌の例には、膣、子宮頸部、および乳癌が含まれる。
【0103】
「望ましくない細胞成長の阻害」という文言には、望ましくない、または不適切な細胞成長の阻害を含むことを意図する。阻害には、急速な増殖を含む増殖の阻害が含まれることを意図する。たとえば、細胞成長の結果良性塊になることもあり、細胞成長の阻害によって悪性腫瘍を生じることもある。不適切な細胞成長、または血管新生に起因する良性の状態とは、糖尿病性網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、乾癬、血管線維腫、リューマチ様関節炎、血管腫、カポジ肉腫、および調節不全の内皮細胞分裂を特徴とするそのほかの状態または機能不全である。
【0104】
「腫瘍成長の阻害」または「新生物形成の阻害」には、対象における腫瘍の成長の予防、または対象に既存の腫瘍の成長の低減が含まれることを意図する。阻害はまた、腫瘍のある部位から別の部位への転移の阻害であってもよい。特に、「腫瘍」という用語は、対象のいずれかの臓器または身体部分に形成されるin vitro腫瘍およびin vivo腫瘍の両方を包含することを意図する。腫瘍は、好ましくは本願発明のフレデリカマイシンA化合物に感受性がある腫瘍である。本願発明が包含する腫瘍の種類の例には、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳癌、喉頭癌、胆嚢癌、食道癌、膵癌、直腸癌、副甲状腺癌、甲状腺癌、副腎癌、神経組織癌、頭頸部癌、結腸癌、胃癌、気管支癌、腎癌に関連する腫瘍が含まれる。特に、本願発明によって成長速度が阻害される腫瘍には、基底細胞癌、潰瘍型および乳頭型の扁平上皮細胞癌、転移皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、ベティキュラム(veticulum)細胞肉腫、骨髄腫、巨大細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性リンパ球および顆粒球腫瘍、毛様細胞腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸管ガングロ神経腫(intestinal ganglloneuroma)、過形成角膜神経腫瘍、マルファン様体質腫瘍、ウィルム腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋肉腫、子宮頸部異形成および上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟組織肉腫、悪性カルチノイド、局所性皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫などの肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性多血症、腺癌腫、多形性神経膠芽腫、白血病、リンパ腫(すなわち悪性リンパ腫、外套細胞リンパ腫)、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、扁平上皮癌、およびそのほかの癌腫および肉腫が含まれる。
【0105】
フレデリカマイシンAの投与
「対象」という用語は、たとえば原核生物および真核生物など、生きている生物を含むことを意図する。対象の例には、たとえばヒト、イヌ、雌ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物などの哺乳類が含まれる。最も好ましくは、その対象はヒトである。
【0106】
化合物の「有効な量」という文言は、たとえばPin1関連状態の形態的および身体的各種症状を予防するなど、Pin1関連状態を治療または予防するのに必要なまたは十分な量である。ある例では、フレデリカマイシンA化合物の有効な量とは、対象における望ましくない細胞成長を阻害するのに十分な量である。別の例では、フレデリカマイシンA化合物の有効な量とは、対象に既存の良性細胞塊または悪性腫瘍の大きさを減少させるのに十分な量である。有効な量は、対象の大きさおよび体重、疾患の種類、または特定のPin1結合化合物などの因子によって変化することがある。たとえば、Pin1結合化合物の選択は、「有効な量」の構成要素に影響することがある。当業者は、前述の因子を研究し、必要以上の実験をすることなくPin1結合化合物の有効な量に関して決定を行うことができるだろう。ある可能なアッセイでは、フレデリカマイシンA化合物の有効な量の決定は、サイクリンD1の発現をアッセイし、サイクリンD1レベルを非癌状態に関連するレベルに低減するのに十分なフレデリカマイシンAの量を決定することによって可能になる。
【0107】
投与方法が、有効な量の構成要素に影響することもある。Pin1結合化合物は、Pin1関連状態の開始前または後に対象に投与してよい。さらに、数回に分割した投与量および時差的な投与量を毎日または順次投与してもよく、または連続的に注入するか、もしくはボーラス投与してもよい。さらに、Pin1結合化合物の用量は、治療的または予防的な状況の緊急度によって示されるように比例的に増加または減少させてよい。
【0108】
「治療した」、「治療する」または「治療」という用語には、治療中の状態、障害または疾患に関連するまたはそれらによって引き起こされた少なくとも1つの症状の消失または緩和が含まれる。たとえば、治療とは、障害の1種類または数種類の症状の消失、または障害の完全な根絶であってよい。
【0109】
「薬学的組成物」という用語には、たとえばヒトなどの哺乳類への投与に適切な製剤が含まれる。本願発明の化合物がたとえばヒトなどの哺乳類へ医薬品として投与される場合、それらはそれ自体として、または0.1乃至99.5%(さらに好ましくは0.5乃至90%)の活性成分を含有する薬学的組成物を薬学的に許容な担体と併用して投与してよい。
【0110】
「薬学的に許容な担体」という文言は当業に公知で、本願発明の化合物を哺乳類に投与するのに適している薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を含む。担体には、目的の薬剤をある臓器または身体部分から別の臓器または身体部分へ輸送または送達することに関与する、液状または固体状充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル封入物質が含まれる。各担体は、製剤のそのほかの成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容」でなければならない。薬学的に許容な担体として使用することが可能な物質の例には、ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖類、コーンスターチやバレイショデンプンなどのデンプン、セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、粉末状トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオバターおよび坐剤用ろうなどの賦形剤、ピーナツ油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチル、およびラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含有しない水、等張食塩水、リンガー液、エチルアルコール、リン酸緩衝溶液、ならびに薬学的な製剤に用いられる無毒で適合性のある物質が含まれる。
【0111】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、並びに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、着香剤、および芳香剤、保存料および抗酸化剤もまた、組成物中に存在してよい。
【0112】
薬学的に許容な抗酸化剤の例には、水、アスコルビン酸、塩酸システイン、二硫化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、?-トコフェロールなどの脂溶性抗酸化剤、およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
【0113】
本願発明の製剤には、経口、経鼻、局所、経皮、口腔内、舌下、直腸内、経膣および/または非経口投与に適する調剤が含まれる。製剤は、使いやすいように単回投与剤形にしてよく、薬学の当業に公知のいずれかの方法で調製してもよい。単回投与剤形を作るために担体物質と混合してよい活性成分の量は、一般に治療上の効果が得られる化合物の量であろう。一般にこのような量は、100%のうち、活性成分は約1%乃至約99%、好ましくは約5%乃至約70%、最も好ましくは約10%乃至約30%の範囲であろう。
【0114】
これらの製剤および組成物の調製方法には、本願発明の化合物と担体、および任意に1種類以上の副成分を混合するステップが含まれる。一般にこの製剤は、本願発明の化合物と液体状担体または十分に分割した固体状担体を均一によく混合し、必要であればその産生物を成形する。
【0115】
経口投与に適する本発明の製剤の形状は、カプセル(capsule)、カプセル(cachet)、丸剤、錠剤、トローチ剤(通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの着香基剤を用いる)、粉剤、顆粒、または水性液もしくは非水性液を用いた溶液もしくは懸濁液、または水中油もしくは油中水液体状乳剤、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤、またはトローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を用いる)、および/または洗口剤などでよく、それぞれ本願発明の化合物を活性成分としてあらかじめ定めた量含有する。本願発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤、または泥膏として投与してもよい。
【0116】
経口投与用の本願発明の固体状投与剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤、顆粒など)の場合、活性成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または以下に記載するもの、つまり、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、たとえばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤、グリセロールなどの保湿剤、寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、パラフィンなどの液体緩染剤、第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、たとえばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体状ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤、並びに着色剤のいずれか1種類以上の薬学的に許容な担体と混合する。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、薬学的組成物はまた、緩衝剤も含んでよい。同様の種類の固体状組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。
【0117】
錠剤は、1種類以上の副成分と共に、圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(たとえばゼラチン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、錠剤分解物質(たとえばデンプングリコール酸ナトリウム、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製してよい。成形錠剤は、不活性液体状希釈剤で湿潤させた粉末状の化合物の混合物を、適切な機械で成形して作製してよい。
【0118】
本願発明の薬学的組成物の錠剤および糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒などのそのほかの固体状剤形には、任意に刻印してもよく、腸溶コーティングおよび製剤業者に公知のそのほかのコーティングなど、コーティングおよびシェルで調製してもよい。それらはまた、たとえば望ましい放出プロフィールを提供するための様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、そのほかのポリマー基質、リポソームおよび/またはマイクロスフェアなどを用いて、活性成分の持続放出または制御放出を提供できるように調剤してもよい。それらは、たとえば細菌保持性フィルターで濾過するか、または滅菌水に溶解することができる滅菌個体組成物状の滅菌剤を組み入れるか、もしくはそのほかの滅菌注射可能溶媒を使用直前に組み入れるかすることによって、滅菌してよい。これらの組成物はまた、選択的に不透明化剤を含有してもよく、選択的に徐放的に消化管の特定の部分に優先的に、活性成分のみを放出する組成物であってよい。使用可能な埋包組成物の例には、高分子物質およびロウが含まれる。活性成分はまた、適宜、1種類以上の上記賦形剤を用いたマイクロカプセル封入剤形であってもよい。
【0119】
本願発明の化合物の経口投与用の液体状剤形には、薬学的に許容な乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。液体状剤形は、活性成分に加えて、たとえば水またはそのほかの溶媒、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚種油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタン脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物などの可溶化剤または乳化剤など、当業で一般に用いられる不活性希釈剤を含有してよい。
【0120】
経口組成物はまた、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、着香剤、着色剤、芳香剤、および保存剤などのアジュバントを含んでもよい。
【0121】
懸濁液は、活性化合物に加えて、たとえばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、並びにそれらの混合物を含有してよい。
【0122】
直腸内投与または膣内投与用の本願発明の薬学的組成物の製剤は、本願発明の1種類以上の化合物と、たとえばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ロウ、またはサリチル酸塩などを含む、1種類以上の適切で刺激性の少ない賦形剤または担体を混合して調製されていてもよく、室温では固体状だが体温では液体状であって、直腸または膣内で溶解して活性化合物を放出する坐剤であってもよい。
【0123】
膣内投与に適切な本願発明の製剤にはまた、適切であることが当業に公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤も含まれる。
【0124】
本願発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。活性化合物は、滅菌条件下で、薬学的に許容な担体、および保存剤、緩衝剤、または必要であれば高圧ガスと混合してよい。
【0125】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本願発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、ならびにそれらの混合物などの賦形剤を含有してよい。
【0126】
粉末およびスプレーは、本願発明の化合物に加えてラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはそれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。スプレーはさらに、クロロフルオロ炭化水素、およびブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素など、通例の高圧ガスを含んでもよい。
【0127】
経皮パッチには、本願発明の化合物を体内に制御送達するというもう一つの利点がある。このような剤形は、適切な溶媒中に化合物を溶解または分散させて作製することができる。吸収促進剤も、化合物の皮膚への流動を増加させるために用いることができる。このような流動の速度は、速度制御膜を備えるか、またはポリマー基質またはゲル中に活性化合物を分散させることによって制御することができる。
【0128】
眼製剤、眼軟膏、粉末、溶液なども、本願発明の範囲内であることを意図する。
【0129】
非経口投与に適切な本願発明の薬学的組成物は、1種類以上の薬学的に許容な滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液または乳剤、または使用直前に注射可能な滅菌溶液もしくは分散液に再構築してよい滅菌粉末であって、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を対象のレシピエントの血液と等張にするための溶質、懸濁剤または増粘剤を含んでよい滅菌粉末と混合した本願発明の1種類以上の化合物を含む。
【0130】
本願発明の薬学的組成物に用いてよい適切な水性担体および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが含まれる。適切な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合は所要の粒子サイズの維持、および表面活性剤の使用などによって維持することができる。
【0131】
このような組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含んでもよい。微生物の活動を確実に防ぐために、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの各種抗菌剤および抗真菌剤を含んでもよい。さらに、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含ませることが望ましい。さらに、注射可能な剤形の吸収を持続させるために、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収持続剤を含んでもよい。
【0132】
あるケースでは、薬物の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶またはアモルファス物質の液体状懸濁液を使用することで実現してもよい。薬物の吸収速度は溶解速度に依存し、したがって結晶サイズおよび結晶の形状に依存することがある。代替的には、非経口投与剤形の吸収は、薬物を油状賦形剤に溶解または懸濁させると遅延させることができる。
【0133】
注射可能なデポー剤形を作製するには、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーに入った対象化合物のマイクロカプセル封入基質を形成する。薬物対ポリマーの比、および使用した特定のポリマーの性質によって、薬物の放出速度を制御することができる。そのほかの生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。注射可能なデポー製剤はまた、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンの中に薬物を封入して調製する。
【0134】
本願発明の製剤は、経口、非経口、局所、または直腸内に投与してよい。もちろんそれらは、各投与経路に適切な形状で投与される。たとえば、錠剤またはカプセル剤形にしたり、注射、吸入、眼ローション、軟膏、坐剤などによって投与され、経口、非経口の場合は注射、点滴、または吸入によって、局所の場合はローションまたは軟膏で、直腸の場合は坐剤で投与する。経口投与が好ましい。
【0135】
本願明細書に記載の「非経口投与」および「非経口に投与した」という文言は、経腸および局所投与をのぞく投与形態で通常は注射による投与を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、眼窩内、嚢内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜内、クモ膜下、脊髄内、および胸骨内注射および輸液が、それらに限定されずに含まれる。
【0136】
本願明細書に用いられる「全身投与」、「全身に投与した」、「末梢投与」および「末梢に投与した」という文言は、直接中枢神経系に到達しない化合物、薬物、またはそのほかの物質が患者の全身に入り、代謝およびたとえば皮下投与などそのほかの同様のプロセスを経るような投与を意味する。
【0137】
これらの化合物は治療のために、経口、たとえばスプレーなどによる経鼻、直腸、膣内、非経口、嚢内および局所を含む適切な投与経路によって、粉末剤、軟膏または口腔内および舌下を含むドロップ剤として、ヒトおよびそのほかの動物に投与されてよい。
【0138】
選択された投与経路にかかわらず、適切な水和状で用いられてよい本願発明の化合物、および/または本願発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容の剤形に製剤する。
【0139】
本願発明の薬学的組成物の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与形態に望ましい治療応答を達成するために有効でありながら、その患者に有毒ではないような活性成分量を得られるように、変化させてよい。
【0140】
選択された用量レベルは、本願発明に用いられる特定の化合物またはそのエステル、塩、もしくはアミド、投与経路、投与時間、使用された特定の化合物の排出速度、治療の持続時間、特定の化合物とともに用いたそのほかの薬物、化合物、および/または物質、治療対象患者の年齢、性別、体重、症状、健康状態、および既往歴を含む各種要因、ならびに医療関連業者に公知の同様の各種要因に依存するだろう。
【0141】
当業の医師または獣医師は、有効量の所要の薬学的組成物を容易に決定し処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、望ましい治療上の効果を達成するために、薬学的組成物に用いられる本願発明の組成物の投与量を所要レベルよりも少量から開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0142】
一般に、本願発明の化合物の適切な一日投与量は、治療上の効果を生ずるために有効な最低投与量であろう。このように有効な投与量は、一般に、上述の因子に依存するであろう。一般に、患者への本願発明の化合物の静脈または皮下投与量は、指示された鎮痛効果のために使用する場合、1日当たり体重1kg当たり約0.0001乃至約100mgであって、さらに好ましくは1日当たり体重1kg当たり約0.01mg乃至約50mgであって、よりさらに好ましくは1日当たり体重1kg当たり約1.0乃至約100mgであろう。有効な量とは、Pin1関連状態を治療する量である。
【0143】
望ましい場合には、活性化合物の有効一日用量を、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上のサブ用量に分割して、一日のうちに適切な間隔をおいて、選択的に単回投与剤形にして投与してよい。
【0144】
本願発明の化合物のみを投与することも可能であるが、化合物を薬学的組成物として投与することが好ましい。
【0145】
本願発明は、さらに以下の実施例で具体的に説明されるが、それらがさらなる制限であると解釈されてはならない。本願明細書に引用されているすべての参考文献、係属出願および公告済み特許の内容は、引用をもってここに明示的に援用する。実施例全体において使用された動物モデルは、公認の動物モデルであり、これらの動物モデルにおける有効性の実証はヒトにおける有効性を予測するものである。
【0146】
腫瘍阻害アッセイ
フレデリカマイシンA化合物は強力な抗腫瘍剤である。フレデリカマイシンAの膠芽細胞種細胞に対する抗腫瘍活性は、最も強力な臨床用抗腫瘍剤の1種である1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア(BCNU)に匹敵する。Misra, et al. 1982. J. Am. Chem. Soc. 104: 4478-4479。
【0147】
フレデリカマイシンA化合物のin vitroにおける抗腫瘍活性は、フレデリカマイシンA化合物の腫瘍細胞の殺傷能力を測定することによってアッセイすることができる。まず、適切な細胞株を24時間成長させる。適切な細胞株の例には、ヒト肺(A549)、低トポII活性抗ヒト肺(A549-VP)、マウス黒色腫(B16)、ヒト結腸腫瘍(HCT116)、高p170値ヒト結腸腫瘍(HCTVM)、低トポII活性ヒト結腸腫瘍(HCTVP)、p388マウスリンパ白血病細胞、およびヒト結腸癌細胞株(Moser)が含まれる。細胞をプレート(つまり96穴平底プレート)に付着させるために24時間おいた後、その細胞を連続希釈濃度のフレデリカマイシンA化合物とともに72時間インキュベートする。これらのデータから、50%の細胞が死滅する化合物の濃度を決定する。Kelly, et al., U.S. Patent No. 5,166,208 and Pandey, et. al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1389-401。
【0148】
フレデリカマイシンA化合物のin vivoにおける抗腫瘍活性は、哺乳類(すなわちマウス)の腫瘍細胞の減少、およびその結果生じた非処理の腫瘍を有する哺乳類と比較した生存時間の増加によって、アッセイすることができる。たとえば、CDF1マウスに、P338マウスリンパ白血病細胞、エールリッヒ癌細胞、B16黒色腫細胞、またはMeth-A線維肉腫細胞の懸濁液を腹腔内注射する。一部のマウスはフレデリカマイシンA化合物で腹腔内処理する。そのほかのマウスは食塩水で処理する。この化合物のin vivoにおける活性は、処理群の平均生存時間と食塩水処理群の平均生存時間の比を100倍した% T/Cについて決定する。Yokoi, et al, 米国特許第4,584,377号; Kelly, et al., 米国特許第5,166,208号; Warnick-Pickle, et al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1402-7; and Pandey, et. al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1389-401。
【0149】
フレデリカマイシンA化合物のin vivoにおける抗腫瘍活性はまた、ヒト腫瘍クローニングシステムにおいて成長させた卵巣腫瘍に対する阻害因子としてアッセイすることもできる。Tebbe, et al. 1971 J. Am. Chem. Soc. 93:3793-3795。
【0150】
本願発明は、さらに以下の実施例で具体的に説明されるが、それらがさらなる制限であると解釈されてはならない。本願明細書に引用されているすべての参考文献、係属出願および公告済み特許の内容は、引用をもってここに明示的に援用する。
【実施例】
【0151】
例1:フレデリカマイシンAによるPin1のPPIase活性の阻害
1.材料および方法
PPIase活性の測定は、Fischer et al.(1984)によって開発されたプロテアーゼ結合PPIaseアッセイによって行った。hPin1活性の測定には、ウシトリプシン(最終濃度0.21 mg/mL、シグマ社)を異性体特異的プロテアーゼとして、およびAc-Ala-Ala-Ser(P)-Pro-Arg-pNA(ジェリニ社、ドイツ)を基質として使用した。hFKBP12(シグマ社)およびhCyp18(シグマ社)のPPIase活性は、ペプチド基質Suc-Ala-Phe-Pro-Phe-pNA(バッヘム社)およびプロテアーゼ?-キモトリプシン(最終濃度0.41mg/mL、シグマ社)を用いて決定した。10℃における遊離4-ニトロアニリドをヒューレットパッカード8453UV-vis分光器で390nmで測定して、テストを行った。適切な容量の酵素入り35mM HEPES(pH7.8)およびエフェクター溶液を混合して反応容量の合計を1.23mLに調節した。フレデリカマイシンA(バイオリーズ社、ドイツ)を、1mg/mLのストックDMSO溶液から新たに希釈した。他に指示がない限り、フレデリカマイシンA(0乃至6 ?M)を酵素と共に5分間(10℃)、あらかじめインキュベートした。各プロテアーゼを添加して反応をスタートさせる前に、ペプチド基質ストック溶液2mL(DMSOに10mg/mL)を加えた。有機溶媒の量は各実験ごとに一定に保った(<0.1%)。PPlaseの存在下でのシス/トランス異性化の擬1次速度定数kobsおよび触媒なしのシス/トランス異性化の擬1次速度定数k0は、ヒューレットパッカード動力学ソフトウェアおよびウィンドウズ6.0用シグマプロット2000(SPSS)を用いて計算した。基質が一定濃度の場合のフレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性の阻害のためのKi値([S0]<<KM)は、シグマプロット2000を用いて、競合的な「強結合」阻害因子用の方程式に従って、データをフィッティングして計算した。
【0152】
2.結果
2.1 Ki値の決定
フレデリカマイシAによるhPin1のPPIase活性の阻害について、(820 ± 608) nMのKi値を求めた(図1)。
【0153】
図1:フレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性阻害のKi値
PPIase活性の測定は、材料および方法に記載の通り行った。6.0nMのPin1を、10℃で5分間、35mM HEPESに溶解した0乃至4.8mMフレデリカマイシンAとともにあらかじめインキュベートした。Ac-Ala-Ala-Ser(P)-Pro-Arg-pNA (21.9 μM)を基質として使用した。トリプシンを加えて反応を開始させた。
【0154】
2.2 フレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性阻害の時間依存性
0および1mM のhPin1を加えた場合のPin1(6.0nM)のPPIase活性の時間依存性変化を、30分間隔で追跡した。図2に示すように、酵素活性の漸減は見られず、30分間における阻害の時間依存性はなかった。
図2:フレデリカマイシンAによるPin1 PPIase活性阻害の時間依存性。PPIase活性の測定は、材料および方法に記載されたとおりに行った。6.0 nM hPin1を0、5、10、15、20、25、および30分間、それぞれ0(黒丸)および1mM(黒菱形)のフレデリカマイシンとともにインキュベートした。
【0155】
2.3 フレデリカマイシンAによるhPin1のPPlase活性の阻害の可逆性
hPin1およびフレデリカマイシンAの相互作用の可逆性(図3)は、0.16mMのフレデリカマイシンを加えて残りの活性が23%になるまで阻害したhPin1(209nM)を、半透膜(ミクロコン10)を通してマイクロ濃度にして、行った。遠心分離の間、反応緩衝液を35mM HEPES(pH7.8)で3回交換した後、残りの活性をPPIaseアッセイで評価した。同じように処理した阻害因子のない酵素の対照と比較すると、hPin1の反応性は97.5%まで認められ、フレデリカマイシンAのhPin1への結合の可逆性を示唆した。
【0156】
図3:hPin1とフレデリカマイシンAの間の相互作用の可逆性。209nMのhPin1を0(黒四角)および0.16(白四角)mMのフレデリカマイシンAとともにインキュベートし、hPin1の残りのPPIase活性を、材料および方法に従ったプロテアーゼ結合PPlaseアッセイを用いた半透膜を通した微小分離(micro-separation)の前および後で測定した。
【0157】
2.4 フレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性の阻害の特異性
表2に、フレデリカマイシンAが3種類の既知のPPIaseファミリー、パルブリン(hPin1)、シクロフィリン(hCyp18)およびFKBP(hFKBP12)の酵素活性に与える作用を示す。プロテアーゼ結合PPIaseアッセイでは、フレデリカマイシンは、テストしたすべてのPPIaseを阻害したが、中でもパルブリンhPin1については約6乃至7倍の効力を示した。
【表2】
【0158】
例2:フレデリカマイシンのDU-145前立腺腫瘍を有するscid(重症複合免疫不全症)マウスへの効果
フレデリカマイシン(FredA)のscid(重症複合免疫不全症)マウスヒト前立腺腫瘍モデルの腫瘍成長への効果を研究した。まず、scidマウス44匹の免疫グロブリン産生について、ELISAでスクリーニングした。その後、そのマウスに、滅菌食塩水中に溶解した皮下側腹注射でDU-145前立腺癌細胞株を、第0日に接種した。
【0159】
第16日に、腫瘍が確立した(〜40mm3)マウス40匹を選択し、そのマウスを10匹ずつ4つの群に分けた。第1群には、第16、17、18、19、および20日に賦形剤対照(DMSO)を投与した。第2および第3群には、第16、17、18、19、および20日にFredAをそれぞれ0.33および0.67mg/kg投与した。陽性対照の第4群にも、第16、17、18、19、および20日にミトックス(Mitox)を0.34 mg/kg投与した。それぞれ、腹腔内注射で投与した。
【0160】
第1乃至56日は、マウスの腫瘍を週2回測定し、腫瘍の体積を式{(幅)2 x 長さ}/2に従って推定した。マウスの体重は実験を開始する前に測定し、その後は毎週測定して毒性の兆候をチェックした。
【0161】
研究に用いられミトックスまたはDMSO担体のみを投与されたマウスで32日後に死亡したものはいなかった。FredAを0.67 mg/kg投与されたマウスはすべて、第17日までに死亡した。FredAを0.34 mg/kg投与されたマウスのうち2匹のみ、第32日まで生存した。
【0162】
図4は、試験期間中の各4群の平均腫瘍体積(cm3)を示す線グラフである。この図は、FredAがDMSOまたはミトックス対照と比較して体積を50%減少させることができたことを示す。表3に、平均腫瘍体積のデータをまとめる。
【表3】
【0163】
図5は、試験期間中の各4群のマウスの平均体重を示す線グラフである。この図は、各4群のマウスの平均体重が、実験期間全体を通して、概して一定値を維持したことを示す。表4には平均腫瘍体積のデータをまとめる。
【表4】
【0164】
等価物
当業者であれば、ごく普通の実験を用いるのみで、ここに説明した本願発明の特定の実施例の等価物を数多く認識し、または確認できることであろう。このような等価物は、添付の請求の範囲の包含するところである。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】実施例に記載の通りのhPin1活性(%)対フレデリカマイシンA濃度(?M)のプロットを示す。
【図2】実施例に記載の通りのhPin1活性(BE)対時間(分)のプロットを示す。
【図3】実施例に記載の通りの半透膜を通した微小分離前および後に測定したhPin1のPPIase活性を有する0(黒四角)および0.16(白四角)mMフレデリカマイシンAでインキュベートした209nM hPin1のhPin1活性(%)のグラフを示す。
【図4】フレデリカマイシンのDU-145前立腺腫瘍を有するscidマウスへの効果を示す平均腫瘍体積(cm3)の線グラフである。
【図5】フレデリカマイシンのDU-145前立腺腫瘍を有するscidマウスへの効果を示すマウスの平均体重の線グラフである。
【0001】
本出願は2001年12月20日に出願された米国仮特許出願第60/XXX,XXX号「フレデリカマイシンA化合物を用いたPin1関連状態の阻害方法」、および2000年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/257,412号の優先権を主張する。本出願は2000年11月29日に出願された米国特許出願第09/726,464号、1997年12月11日に出願された米国特許出願第08/988,842号、および1999年3月8日に公開された第WO 99/12962号に関連する。前述の各出願の内容全体は引用をもってこれを援用する。
【0002】
発明の背景
サイクリン依存性キナーゼ(cdk)は細胞周期の中心的役割を果たしている。cdkは低タンパク質(〜34-40 kD)キナーゼ触媒サブユニットに構造的に関連するファミリーであり、その活性はサイクリン調節サブユニットとの関連を必要とする。ほとんどの場合、完全な活性には、キナーゼ活性部位の近隣にあるトレオニンのリン酸化も必要である。cdkの機能は進化の過程で十分に保存されてきた。たとえば、酵母菌細胞のcdk1遺伝子をヒトcdk1遺伝子と交換しても、酵母菌細胞は正常に分裂することができる。cdkはサイクリンとともに特有の複合体を形成し、その複合体は、細胞周期における様々な変化が確実に進行するように細胞周期に依存して特定の基質をリン酸化することによって細胞増殖を促進する。細胞周期中におけるサイクリン-cdk活性の正確なタイミングによって、細胞周期が続行するか遮断されるかが決定される。Morgan 1997. Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. 13:261-291。
【0003】
哺乳類のサイクリンは少なくとも11種類あり、サイクリンA、B1、B2、C、D1、D2、D3、E、F、G、およびHが含まれる。細胞周期中に各サイクリンが活性のピークに達する時期はそれぞれ異なる。サイクリンD1は、染色体11q13上のPRAD1遺伝子、CCND1遺伝子、またはbcl-1遺伝子に由来するタンパク質である。サイクリンD1遺伝子は、長さが約15kbでエキソンを5個有する。その上流領域にはSp1結合サイト、潜在性E2F結合モチーフがあり、明らかなTATAボックスはない。サイクリンD1の活性は、G1期中盤に活性が最大となり、S期に減少し、周期中の残りの期間は低いままである。サイクリンD1は、細胞周期のG1期からS期への変化を調節する際に出現する。Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。正常な細胞では、サイクリンD1タンパク質は外部の刺激に反応して変動する。反対に、形質転換細胞株では発現が不定期で細胞周期中のいつでも発現しうる。
【0004】
サイクリンD1の大量発現は、各種の原発性ヒト腫瘍に広く見られる。サイクリンD1の大量発現は遺伝子増幅、サイクリンD1 RNAの大量発現、サイクリンD1タンパク質の大量発現として検出されている。サイクリンD1遺伝子増幅とサイクリンD1発現を比較した臨床研究の大半では、遺伝子の増幅が見られるケースよりもRNAとタンパク質の両方の過剰発現が見られるケースが多いことが明らかになっている。サイクリンD1において、遺伝子増幅せずにRNAおよび/またはタンパク質が大量発現するということは、pRbなど他の細胞遺伝子がサイクリンD1の発現に影響している可能性を示唆している。サイクリンD1の大量発現が認められたヒト腫瘍には、副甲状腺腺腫、外套細胞リンパ腫、乳癌、頭頸部扁平上皮細胞癌(すなわち、口腔部、鼻咽頭部、咽頭部、下咽頭部、および喉頭部における扁平上皮癌)、食道癌、肝細胞癌、大腸癌、泌尿生殖器癌、肺癌(すなわち、肺の上皮細胞癌)、皮膚癌(すなわち、上皮細胞癌、黒色腫、および悪性線維性組織球腫)、肉腫、および中枢神経系悪性腫瘍(すなわち、星状細胞腫およびグリア芽腫)、胃腺癌、膵腺癌、胆嚢の扁平上皮癌が含まれる。Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。サイクリンD1遺伝子は、約20%の乳癌に増幅し、タンパク質は約50%の乳癌に過剰発現する。Barnes, et al. 1998. Breast Cancer Research and Treatment. 52:1-15。多くの腫瘍において、サイクリンD1は他の発癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子と連携して作用すると考えられている。
【0005】
発明の概要
本願発明は、対象のPin1関連状態を治療する方法を提供し、当該方法には、Pin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物を対象に投与するステップが含まれる。
【0006】
別の態様では、本願発明には、上述の方法であって、当該方法においてPin1関連状態が高サイクリンD1状態、新生物形質転換、および/または腫瘍成長である、方法が含まれる。
【0007】
本願発明はまた、上述の方法であって、当該方法において、治療のステップには腫瘍成長を阻害するステップ、対象における腫瘍成長の発生を防止するステップ、または対象に既存の腫瘍の成長を低下させるステップが含まれる方法も包含する。ある実施態様では、本願発明は上述の方法であって、その方法において、Pin1関連状態が、たとえば結腸癌、乳癌、肉腫、悪性リンパ腫、および/または食道癌などの癌である方法を提供する。
【0008】
本願発明はまた上述の方法であって、当該方法においてPin1関連状態がPin1の過剰発現、DNA損傷、発癌性タンパク質、および/またはHa-Rasによって引き起こされる、方法も包含する。
【0009】
本願発明にはさらに、対象におけるサイクリンD1過剰発現の治療方法が含まれ、当該方法には、サイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物を対象に投与するステップが含まれる。
【0010】
本願発明はまた上述の方法であって、当該方法においてサイクリンD1過剰発現が新生物形質転換および/または腫瘍成長を引き起こす、方法を特徴とする。
【0011】
本願発明はまた上述の方法であって、当該方法において治療には腫瘍増殖を阻害するステップ、対象における腫瘍成長の発生を予防するステップ、または対象に既存の腫瘍の成長を低下させるステップが含まれる方法を提供する。
【0012】
本願発明はさらに上述の方法であって、当該方法においてサイクリンD1過剰発現が結腸癌、乳癌、肉腫、悪性リンパ腫、および/または食道癌を引き起こす、方法を包含する。
【0013】
本願発明にはまた上述の方法であって、当該方法においてサイクリンD1過剰発現がPin1の過剰発現、DNA損傷、発癌性タンパク質、および/またはHa-Rasによって引き起こされる、方法も含まれる。
【0014】
別の態様では、本願発明はまた、対象における腫瘍成長の治療方法であって、当該方法には、化学式VI
(化学式VI)
【化30】
を有するフレデリカマイシンA化合物であって、
当該化合物において点線は任意の二重結合を示し、
XはN、O、S、またはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、およびR9は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシであって、
R2、R3、およびR7は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、もしくは何もないか、または薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、またはエステルである化合物を、腫瘍成長を治療するために有効な量対象に投与するステップが含まれる、方法も包含する。
【0015】
ある実施態様では、本願発明はまた、パッケージ化されたPin1関連状態の治療であってよく、当該治療にはPin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物の使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物が含まれる。
【0016】
本願発明にはさらに、パッケージ化されたサイクリンD1過剰発現治療であって、当該治療にはサイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物の使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物が含まれる。
【0017】
本願発明にはまた、パッケージ化された癌治療であって、当該治療には癌を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物の使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物も特徴とする。
【0018】
ある実施態様では、本願発明は対象におけるPin1関連状態を治療する方法であって、当該方法にはPin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物および増殖阻害物質の組み合わせを対象に投与するステップが含まれる、方法を提供する。
【0019】
ある実施態様では、本願発明は上述の方法であって、当該方法において過形成阻害物質はタモキシフェン、パクリタキセル、ドセタキセル、インターロイキン2、リツキシマブ、トレチノイン、および/またはメトトレキセートである、方法を包含する。
【0020】
別の態様では、本願発明はさらに、対象における癌を治療する方法であって、当該方法には癌を治療するために有効量のフレデリカマイシンA化合物および過形成阻害物質の組み合わせを対象に投与するステップが含まれる、方法が含まれる。
【0021】
本願発明にはまた、対象におけるサイクリンD1過剰発現を治療する方法であって、当該方法にはサイクリンD1過剰発現を治療するために有効量のフレデリカマイシンA化合物および増殖阻害物質の組み合わせを対象に投与するステップが含まれる、方法も提供する。
【0022】
本願発明はまた、上述の方法であって、当該方法においてフレデリカマイシンA化合物が化学式IX
(化学式IX)
【化31】
であって、
当該化学式においてCの周りの点線はCが5または6員環であってよいことを示し、
当該化学式においてCの周りではない点線は任意の二重結合を示し、
R1はアルキル、アルケニル、アルカノイル、アルクニルであって、
R2は水素またはアルキルであって、
R9およびR10は両方とも水素であるか、またはともに以下の構造を有する環を形成し、
(構造)
【化32】
R3、R5、R6、R11、およびR12は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もないか、R4、R7、R8、R13は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、または薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、
化学式を有する、方法を特徴とする。
【0023】
本願発明は上述の方法であって、当該方法においてフレデリカマイシンA化合物がフレデリカマイシンAである、方法を提供する。
【0024】
発明の詳細な説明
化学用語
「アルキル」という用語には、直鎖アルキル基(たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、第3ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基が含まれる。アルキルという用語はさらに、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含む原子をさらに含んでもよいアルキル基を含む。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキルはその骨格に10個以下の炭素原子(たとえば直鎖の場合C1-C10、分岐鎖の場合はC3-C10)、さらに好ましくは6個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルはその環構造に4乃至7個の炭素原子、さらに好ましくはその環構造に5または6個の炭素原子を有する。
【0025】
さらに、アルキルという用語には、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方が含まれ、後者は炭化水素骨格の1個以上の炭素に結合している水素を置換する置換基を有するアルキル部分を意味する。このような置換基には、たとえばアルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素環式芳香族基が含まれてよい。シクロアルキルをさらに、たとえば上述の置換基で置換してもよい。「アルキルアリール」基または「アラルキル」基はアリールで置換したアルキル(たとえばフェニルメチル(ベンジル))である。「アルキル」という用語にはまた、天然または非天然アミノ酸の側鎖が含まれる。ハロゲン化アルキル基の例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペルフルオロメチル、ペルクロロメチル、ペルフルオロエチル、ペルクロロエチルなどが含まれる。
【0026】
「アリール」という用語には、0乃至4個のヘテロ原子を含んでよい5および6員単環芳香族基を含む基で、たとえばベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどの基を含む。さらに、「アリール」という用語には、たとえば3環式または2環式などの多環式アリール基で、たとえばナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフトリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンが含まれる。環構造にヘテロ原子を有するこのようなアリール基は、「アリール複素環」、「複素環」、「複素アリール」、または「複素芳香族」と呼ばれることもある。芳香環は、環における1つ以上の位置が、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドなど)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素芳香族基など、上述の置換基で置換されていてよい。アリール基はまた、脂環式または複素環式環で融合または架橋されて多環構造(たとえばテトラリン)を形成してもよい。
【0027】
「アルケニル」という用語には、上述のアルキルに長さおよび置換可能な位置が類似しているが、少なくとも1つの二重結合を含有する不飽和脂肪族が含まれる。
【0028】
たとえば、「アルケニル」という用語には、直鎖アルケニル基(たとえばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分岐鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基が含まれる。アルケニルという用語にはさらに、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄またはリンなどの原子を含むアルケニル基が含まれる。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルケニル基はその骨格に6個以下の炭素原子を有する(たとえば直鎖の場合はC2-C6、分岐鎖の場合はC3-C6)。同様に、シクロアルケニル基はその環構造に3乃至8個の炭素原子を有してもよく、さらに好ましくはその環構造に5または6個の炭素を有する。C2-C6という用語には、2乃至6個の炭素原子を含むアルケニル基が含まれる。
【0029】
さらに、アルケニルという用語には、「非置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方が含まれ、後者は炭化水素骨格の1つ以上の炭素に結合する水素を置換する置換基を有するアルケニル基を意味する。このような置換基には、たとえばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基、または複素芳香族基が含まれてよい。
【0030】
「アルキニル」という用語には、上述のアルキルに長さおよび置換可能な位置が類似しているが少なくとも1つの三重結合を含有する不飽和脂肪族が含まれる。
【0031】
たとえば、「アルキニル」という用語には、直鎖アルキニル基(たとえばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分岐鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基が含まれる。アルキニルという用語にはまた、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換する酸素、窒素、硫黄、またはリンなどの原子を含むアルキニル基が含まれる。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキニル基はその骨格に6個以下の炭素原子を有する(たとえば直鎖の場合はC2-C6、分岐鎖の場合にはC3-C6)。C2-C6という用語には、2乃至6個の炭素原子を含むアルキニル基が含まれる。
【0032】
さらに、アルキニルという用語には「非置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方が含まれ、後者は炭化水素骨格の1つ以上の炭素に結合する水素を置換する置換基を有するアルキニル基を意味する。このような置換基には、たとえば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素芳香族基が含まれてよい。
【0033】
炭素数を特に指定しない限り、本願明細書で用いる「低級アルキル」は、上述の通りであるがその骨格構造に1乃至5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、たとえば炭素原子2乃至5個などの鎖長を有する。
【0034】
「アシル」という用語には、アシルラジカル(CH3CO-)またはカルボニル基を含む化合物また基を含む。「置換アシル」という用語には、1個以上の水素原子を、たとえばアルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基、または複素芳香族基で置換したアシル基が含まれる。
【0035】
「アシルアミノ」という用語には、アシル基がアミノ基に結合している基が含まれる。たとえば、この用語には、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基が含まれる。
【0036】
「アロイル」という用語には、カルボニル基に結合したアリール基または複素芳香族基を有する化合物および基が含まれる。アロイル基の例には、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが含まれる。
【0037】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、および「チオアルコキシアルキル」という用語には、上述のアルキル基で、さらに炭化水素骨格の1個以上の炭素を置換する酸素、窒素、または硫黄原子を含むアルキル基が含まれる。
【0038】
「アルコキシ」という用語には、酸素原子に共有結合した置換および非置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基が含まれる。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が含まれ、シクロペントキシなどの環状基も含まれてよい。置換アルコキシ基の例にはハロゲン化アルコキシ基が含まれる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、芳香族基または複素芳香族基などの基で置換してよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例には、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシなどが、それらに限定されずに含まれる。
【0039】
「アミン」または「アミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも1個の炭素またはヘテロ原子に共有結合する化合物が含まれる。「アルキルアミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも1つの別のアルキル基に結合している基および化合物が含まれる。「ジアルキルアミノ」という用語には、窒素原子が少なくとも2つの別のアルキル基に結合している基が含まれる。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」という用語は、それぞれ窒素が少なくとも1つまたは2つのアリール基に結合している基が含まれる。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、または「アリールアミノアルキル」という用語は、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基に結合するアミノ基を意味する。「アルクアミノアルキル」という用語は、アルキル基に結合している窒素原子に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する。
【0040】
「アミド」または「アミノカルボキシ」という用語には、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含有する化合物または基が含まれる。この用語には、カルボキシ基に結合したアミノ基に結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を含む「アルクアミノカルボキシ」基が含まれる。その用語には、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合したアリールまたはヘテロアリール基を含むアリールアミノカルボキシ基が含まれる。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」という用語は、それぞれアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基が窒素原子に結合し、その窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している基が含まれる。
【0041】
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語には、二重結合で酸素原子に結合した炭素を含有する化合物および基、およびそれらの互変異性型が含まれる。カルボニルを含む基の例には、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などが含まれる。「カルボキシ基」または「カルボニル基」とは、アルキル基がカルボニル基と共有結合している「アルキルカルボニル」基、アルケニル基がカルボニル基と共有結合している「アルケニルカルボニル」基、アルキニル基がカルボニル基と共有結合している「アルキニルカルボニル」基、アリール基がカルボニル基と共有結合している「アリールカルボニル」基などの基を意味する。さらに、この用語はまた、1つ以上のヘテロ原子がカルボニル基に共有結合している基も意味する。たとえば、この用語には、たとえばアミノカルボニル基(当該基において窒素原子がカルボニル基の炭素に結合している、たとえばアミドなど)、カルボニル基の炭素に酸素と窒素原子の両方が結合しているアミノカルボニルオキシ基(たとえば「カルバマート」とも呼ばれる)などの基が含まれる。さらに、アミノカルボニルアミノ基(たとえば尿素)も、ヘテロ原子(たとえば窒素、酸素、硫黄など、および炭素原子)に結合しているカルボニル基のそのほかの組み合わせとともに含まれる。さらに、ヘテロ原子は1つ以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、アシルなどの基でさらに置換されていてもよい。
【0042】
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という用語には、二重結合で硫黄原子に結合している炭素を含む化合物および基が含まれる。「チオカルボニル基」という用語には、カルボニル基に類似している基が含まれる。たとえば、「チオカルボニル」基には、アミノ基がチオカルボニル基の炭素原子に結合しているアミノチオカルボニルが含まれ、さらに別のチオカルボニル基には、オキシチオカルボニル基(酸素が炭素原子に結合している)、アミノチオカルボニルアミノ基などが含まれる。
【0043】
「エーテル」という用語には、2つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合している酸素を含む化合物または基が含まれる。たとえば、この用語には、別のアルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を意味する「アルコキシアルキル」が含まれる。
【0044】
「エステル」という用語には、カルボニル基の炭素に結合している酸素原子に結合した炭素またはヘテロ原子を含有する化合物および基が含まれる。「エステル」という用語は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのアルコキシカルボキシ基が含まれる。アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は上述の通りである。
【0045】
「チオエーテル」という用語には、異なる2つの炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子を含有する化合物および基が含まれる。チオエーテルの例には、アルクチオアルキル、アルクチオアルケニル、およびアルクチオアルキニルが、それらに限定されずに含まれる。「アルクチオアルキル」という用語には、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を有する化合物が含まれる。同様に、「アルクチオアルケニル」およびアルクチオアルキニル」という用語は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基が、アルキニル基に共有結合している硫黄原子に結合している化合物または基を意味する。
【0046】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語には、-OHまたは-O-を有する基が含まれる。
【0047】
「ハロゲン」という用語には、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などが含まれる。「過ハロゲン化」という用語は一般に、すべての水素がハロゲン原子に置換された基を意味する。
【0048】
「多環式(ポリシクリル)」または「多環式ラジカル」には、たとえば「融合環」などのように隣接する2つの環が2つ以上の炭素を共有する2つ以上の環を有する基(たとえばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロシクリル)が含まれる。隣接しない原子を介して結合している環は、「架橋」環と呼ばれる。多環基(ポリサイクル)の各環は、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、芳香族基、またはヘテロ芳香族基など、上述の置換基で置換されてもよい。
【0049】
「ヘテロ原子」という用語には、炭素または水素以外のいずれの元素原子も含まれる。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、およびリンである。
【0050】
「複素環(ヘテロサイクル)」または「複素環式」という用語には、1つ以上のヘテロ原子を含む飽和、非飽和、芳香族(「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」)および多環式環が含まれる。複素環(ヘテロサイクル)の例には、たとえばベンゾジオキサゾール、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、デアザプリン、フラン、インドール、インドリジン、イミダゾール、イソオキサゾール、イソキノリン、イソチアゾール、メチレンジオキシフェニル、ナプトリジン、オキサゾール、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キノリン、テトラゾール、チアゾール、チオフェン、およびトリアゾールなどが含まれる。そのほかの複素環には、モルホリン、ピプラジン、ピペリジン、チオモルホリン、およびチオアゾリジンが含まれる。複素環は置換または未置換であってよい。置換基の例には、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、芳香族基、またはヘテロ芳香族基が含まれる。
【0051】
本願発明のいくつかの化合物の構造には、非対称炭素原子を含むことが特筆されるだろう。従って、このような非対称性から生じる異性体(たとえばすべての鏡像異性体およびジアステレオマー)は、特に記載のない限り本発明の範囲内に含まれる。このような異性体は従来の分離技術および立体科学的に制御された合成法によって実質的に純粋な形状で得ることができる。さらに、本願明細書で検討した構造、並びにそのほかの化合物および基も、そのすべての互換体に含まれる。
【0052】
フレデリカマイシンA化合物
「フレデリカマイシンA」には、フレデリカマイシンAならびにフレデリカマイシンAおよび/またはフレデリカマイシンAの類似体と同様の構造をもつ化合物が含まれることが意図される。「フレデリカマイシンA化合物」という用語はまた、「模倣体」または「フレデリカマイシンAの阻害物質」も含んでよい。「模倣体」は、構造はフレデリカマイシンAと似ていないが、フレデリカマイシンAまたはin vivoにおける構造がフレデリカマイシンAに似ている化合物の治療上の活性を模倣する化合物を含むことを意図する。「フレデリカマイシンAの阻害物質」とは、フレデリカマイシンAの活性を阻害する化合物である。本願発明のフレデリカマイシンA化合物は、対象(患者)におけるPin1の阻害に有用な化合物である。フレデリカマイシンA化合物という用語はまた、この化合物の薬学的に許容な塩も含むことを意図する。フレデリカマイシンA化合物は、天然に存在するか、または化学的に合成されてよい。
【0053】
フレデリカマイシンAは、ストレプトマイセス・グリセウス株から分離することができる。粗フレデリカマイシンAの分離のある手順では、様々な発酵から得られた全ブロスを遠心分離してブロスからマイセリウムを分離する。濾過したブロスのpHは希硫酸で2.0に調節する。4℃で96時間放置し、沈殿したフレデリカマイシンAを濾過して取り出す。それから、濾液を酢酸エチルで2回抽出する。マイセリウムを水に懸濁させ、ブレンダーでホモジナイズする。この混合物のpHを希硫酸で2.0に調節し、酢酸エチルで抽出する。この混合物を濾過して、酢酸エチル抽出物を分離し、水相を捨てる。ストレプトマイセス・グリセウスから得たフレデリカマイシンAの抽出および精製は、Pandey, et. al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1389-401に詳述されている。
【0054】
フレデリカマイシンAの合成方法は、Kita, et al. 1998. J. Synth. Organic Chem. Jpn. 56:963-974、Boger. 1996. J. Heterocyclic Chem. 33:1519-1531、Boger, et al. 1995. J. Am. Chem. Soc. 117:11839-11849、Clive, et al. 1994. J. Am. Chem. Soc. 116:11275-11286、Wendt, et al. 1994. J. Am. Chem. Soc. 116:9921-9926、Rao, et al. 1994. Heterocycles. 37:1893-1912、Saintjalmes, et al. 1993. Bulletin de la Societe Chimique De France. 130:447-449、Clive, et al. Oct. 15, 1992. J. Chem. Soc. Chem. Comms. N20 pp. 1489-1490、Wendt., et al. 1994. J. Am. Chem. Soc. 116:9921-6、Kelly, et al. 1988. J. Am. Chem. Soc. 110:6471-80、Rama, et al. 1994. Heterocycles 37:1893-1912、Kelly, et al. 1988. J. Am. Chem. Soc. 110:6471-6480、Rama, et al. 1984. J. Chem. Soc. Chem. Comms. N16 pp. 1119-1120、Clive, et al. 1995. Stud. Nat. Prod. Chem. 16:27-74、and Kelly, et al. 1986. J. Am. Chem. Soc. 108:7100-7101を含む、多数の文献に記載されている。
【0055】
フレデリカマイシンAの誘導体である「フレデリカマイシンA化合物」およびその合成方法は、Yokoi, et al, 米国特許第4,584,377号、Kelly, et al., 米国特許第5,166,208号、 Clive, et al. 1996. Tetrahedron 52:6085-6116、Evans, et al. 1988. J. Org. Chem. 53:5519-27、Clive, et al. 1987. J. Org. Chem. 52:1339-1342、Clive, et al. 1987. J. Heterocylic. Chem. 24:509-511、Bennett, et al. 1986. J. Chem. Soc. Chem. Comms. N11 pp. 878-880、Braun, et al. 1986. Tetrahedron Letters 27:179-182、Kita, et al., 日本特許出願第98246347号、Hasegawa, et al., 日本特許出願第84166283号、and Yokoi, et al., 日本特許出願第85152468号に記載されている。
【0056】
これらの参考文献は、引用した特許および特許出願の対応外国特許および特許出願とともに、その内容全体を引用によりここに明示的に援用し、上述の参考文献で検討されているすべてのフレデリカマイシンA化合物並びにその合成方法および選択は、特に記載のない限り、本願発明の一部であることを意図する。
【0057】
フレデリカマイシンAの例を以下に記載する。フレデリカマイシンA化合物を数クラスの化合物に分けて、以下に記載する。
【0058】
クラス1のフレデリカマイシンA化合物(Yokoi et al., 米国特許第4,584,377号に記載)
式Iに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式I)
【化30】
当該誘導体においてRは水素原子またはC-アシル基であって、Aは下記の基
(基)
【化31】
を表し、式中の点線は、Aが下記の基
(基)
【化32】
の場合に任意の二重結合を示すか、または任意の二重結合が式中に存在する場合、R基は水素原子以外の基である、フレデリカマイシンA誘導体。
【0059】
クラス2のフレデリカマイシンA化合物(Kelly, et al., 米国特許第5,166,208号)
式IIに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式II)
【化33】
当該誘導体において
R1およびR2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、6乃至10個の炭素原子を有するアリールチオ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルチオ、1乃至8個の炭素原子を有し独立に置換可能な位置が1つ以上のヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノで置換されているアルキルチオ、1乃至8個の炭素原子を有するアルコキシ、アミノ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルアミノ、C1-8アルコキシカルボニルアミノ、グアニジノ、ウレイド、C1-8アルキルウレイレン、アルカノイルアミノ、C1-8アルコキシカルボキシル、2乃至6個の炭素原子を有するアルケニル、2乃至6個の炭素原子を有するアルキニル、3乃至7員環を有するシクロアルキル、5乃至7員環および式-S-S-R’という基であってR’が1乃至8個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される基を有するシクロアルケニル、3乃至7員環を有するシクロアルキル、アルカノイルアミノ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルによって置換された6乃至10個の炭素原子を有するアリール、および式-N(R7)R8という基であって、当該基においてR7およびR8がそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至6個の炭素原子を有するアルケニル、2乃至6個の炭素原子を有するアルキニル、1乃至8個の炭素原子を有するアルコキシ、C1-8アルコキシカルボニル、アルカノイル、3乃至7員環を有するシクロアルキル、6乃至10個の炭素原子を有するアリール、1乃至8個の炭素原子を有するアルキルで置換された6乃至10個の炭素原子を有するアリール、C6-10アリールカルボニル、アミジノ、および3乃至12個の炭素原子を有するジアキルアミノカルボニルからなる群から選択される基、からなる群からそれぞれ独立に選択され、
R3は水素、ヒドロキシ、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、および1乃至8個の炭素原子を有するアルコキシからなる群から選択され、
R4およびR5は共に、以下の式IIAおよびIIB
(式IIA、IIB)
【化34】
であって、R13が水素、および1乃至8個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、R14が1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至8個の炭素原子を有するアルケニル、アルカノイル、および2乃至8個の炭素原子を有するアルキニルからなる群から選択され、R15が水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、およびアルカノイルからなる群から選択される式IIAおよびIIBからなる群から選択される環を形成し、
R6は水素、アルカノイル、C6-10アリールカルボニル、および薬学的に許容なカチオンからなる群、並びに薬学的に許容なそれらの塩から選択される、フレデリカマイシンA誘導体。
【0060】
クラス3のフレデリカマイシンA化合物(Clive, et al. 1996. Tetrahedron 52:6085-6116)
式IIIに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式III)
【化35】
当該誘導体において、点線は任意の二重結合であって、
R1は1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至8個の炭素原子を有するアルケニル、アルカノイル、または2乃至8個の炭素原子を有するアルキニルであって、
R2は水素または1乃至8個の炭素原子を有するアルキニルであって、
R3、R5、R6、R9、およびR10は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、アルカノイルであるか、または何もなく、
R4、R7、R8、R11は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、またはアルカノイルである、フレデリカマイシンA誘導体。
【0061】
式IIIのフレデリカマイシンA誘導体(クラス3)の例は、式IVであって、
(式IV)
【化36】
当該式において点線は任意の二重結合を示す。
【0062】
クラス3のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式Vであり、
(式V)
【化37】
当該式において点線は任意の二重結合を示す。
【0063】
クラス4のフレデリカマイシンA化合物(プルプロマイシン関連化合物)
式VIに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式VI)
【化38】
当該誘導体において点線は任意の二重結合を示し、
XはN、O、S、またはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8またはR9は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシであって、
R2、R3、およびR7は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もない、フレデリカマイシンA誘導体。
【0064】
式VIのフレデリカマイシンA誘導体(クラス4)は、式VII(プルプロマイシン)である。
(式VII)
【化39】
【0065】
クラス4のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式VIII(ヘリキノマイシン)である。
(式VIII)
【化40】
【0066】
クラス5のフレデリカマイシンA化合物
式IXに記載のフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式IX)
【化41】
当該式においてCの周りの点線は、Cが5または6員環であってよいことを示し、
当該式においてCの周りではない点線は、任意の二重結合を示し、
R1はアルカリ、アルケニル、アルカノイル、アルキニルであって、
R2は水素またはアルキルであって、
R9およびR10は両方とも水素、または共に以下の構造を有する環を形成し、
(構造)
【化41】
R3、R5、R6、R11、およびR12は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もなく、
R4、R7、R8、R13は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシである、フレデリカマイシンA誘導体。
【0067】
式VIIIに記載のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式X(フレデリカマイシンA)
(式X)
【化42】
である。
【0068】
クラス6のフレデリカマイシンA化合物
式XIのフレデリカマイシンA誘導体であって、
(式XI)
【化43】
当該誘導体において、点線は任意の二重結合を示し、
XはN、O、S、またはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、R9、およびR11は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはアルコキシカルボニルオキシであるか、またはR9およびR11が共にエポキシド環を形成し、
R2、R3、R7、およびR10は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、または何もない、フレデリカマイシンA誘導体。
【0069】
式VIに記載のフレデリカマイシンA誘導体(クラス4)の例は、式VII(プルプロマイシン)である。
(式VII)
【化44】
【0070】
クラス6に記載のフレデリカマイシンA誘導体の例は、式VIII(ヘリキノマイシン)である。
(式VIII)
【化45】
【0071】
クラス6に記載のフレデリカマイシンAの他の例には、以下の式の化合物がそれらに限定されずに含まれる。
(式)
【化46】
【0072】
疾患または障害の治療
本願発明のフレデリカマイシンA化合物は、いずれの対象でもよいが特にヒトにおける、望ましくない細胞成長、新生物形成、および/または癌の治療、阻害、および/または予防に用いることができる。本願発明のフレデリカマイシンAは、対象におけるPin1活性を阻害するために用いることができる。本願発明のフレデリカマイシンAは、対象におけるサイクリンD1発現を阻害するために用いることができる。
【0073】
新生物および細胞成長異常の治療
「過形成阻害物質」という用語は、増殖する細胞または組織であって、このような細胞または組織の成長が望ましくない細胞または組織の成長を阻害する物質を含むことを意図する。たとえば、その阻害とは、新生物中などの悪性細胞または成長が適切ではない組織中などの良性細胞の成長の阻害であってよい。使用可能な物質の種類の例には、化学療法剤、放射線療法治療剤、および関連する放射性化合物および方法、並びに免疫毒素複合体が含まれる。
【0074】
「化学療法剤」という用語は、増殖する細胞または組織であって、このような細胞または組織の成長が望ましくない細胞または組織の成長を阻害する化学試薬を含むことを意図する。化学療法剤は当業に公知であり(たとえばGilman A.G., et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Sec 12:1202-1263 (1990)参照)、特に新生物疾患の治療に使用する。一般に用いられる化学療法剤のリストを、以下の表1に記載する。
【0075】
化学療法剤のそのほかの同様の例には、ブレオマイシン、ドセタキセル(タキソテール)、ドキソルビシン、エダトレキセート、エトポシド、フィナステリド(プロスカー)、フルタミド(ユーレキシン)、ゲムシタビン(ジェムザール)、酢酸ゴセレリン(ゾラデックス)、グラニセトロン(カイトリル)、イリノテカン(カンプト/カンプトサール)、オンダンセトロン(ゾフラン)、パクリタキセル(タキソール)、ペガスパルガーゼ(オンカスパー)、塩酸ピロカルピン(サラジェン)、ポルフィマーナトリウム(フォトフリン)、インターロイキン2(プロロイキン)、リツキシマブ(リツキサン)、トポテカン(ヒカムチン)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、トレチノイン(レチンA)、トリアピン、ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビン(ナベルビン)が含まれる。
【0076】
【表1】
【0077】
「放射線療法」という用語は、不必要な細胞成長に伴う症状および状態を阻害、低減、または予防するために、遺伝子的および身体的に安全なレベルのX線を局所的および非局所的に対象に適用することを含むことを意図する。X線という用語は、臨床学的に許容な放射性元素およびその同位体、並びにそれらから放出される放射線を含むことを意図する。放射線の種類の例には、?線、硬?線を含む?線、高エネルギー電子、および?線が含まれる。放射線療法当は、当業に公知であって(たとえばFishbach, F., Laboratory Diagnostic Tests, 3rd Ed., Ch. 10: 581-644 (1988)参照)、一般には新生物性疾患の治療に用いられる。
【0078】
「免疫毒素複合体」という用語には、急速に増殖する不必要な細胞を選択的に破壊するために用いられる、細胞傷害性T細胞および/またはモノクローナル、ポリクローナル、ファージ抗体またはそれらの断片などの抗体を用いる免疫療法用物質が含まれる。たとえば、免疫毒素複合体には、抗体-毒素複合体(たとえばAb(抗体)-リシン、およびAb-ジプテリア毒素)、抗体-放射標識複合体(たとえばAb-I135)および腫瘍細胞における補体の抗体活性などが含まれてよい。新生物性疾患に関連する症状または状態を阻害、低減または予防するための免疫毒素複合体の使用は、当業に公知である(たとえばHarlow, E. and Lane, D., Antibodies, (1988)参照)。
【0079】
Pin-1関連状態およびそのほかの状態
「Pin-1関連状態」には、細胞成長異常、細胞増殖異常、またはPin-1マーカーの異常値に関連する疾患または状態(たとえば疾病状態)が含まれる。Pin1関連状態には、サイクリンD1および/またはPin1の発現の上昇に起因する状態が含まれる。Pin1関連状態にはまた、c-Junのリン酸化レベル、特にS63/73-Pのリン酸化の上昇、または細胞に存在するc-Junアミノ末端キナーゼ(JNK)のレベルの上昇に起因する状態も含まれる。Pin1関連状態には、新生物、癌、不必要な細胞成長および/または腫瘍成長が含まれる。Pin1関連状態には、DNA損傷、発癌性タンパク質(すなわちHa-Ras)、腫瘍抑制因子発現(すなわちBrcal)の欠損または減少、および/または成長因子によって引き起こされる状態が含まれる。
【0080】
Pin1はサイクリンD1発現の重要な調節因子である。Pn1にはサイクリンD1の発現を調節する役割があるために、サイクリンD1の作用を引き起こす数多くの腫瘍をPin1が調節することができる。特に、Pin1の阻害因子を用いて、いずれの対象でもよいが特にヒトにおける望ましくない細胞成長、新生物形成、および/または癌を治療、阻害および/または予防することができる。
【0081】
Pin1は細胞成長に必須で、Pin1が欠乏または突然変異すると成長が停止し、細胞周期のチェックポイントに作用して、ヒト腫瘍細胞、酵母菌、またはアフリカツメガエル抽出物において未熟な状態での細胞分裂の開始、分裂停止または細胞死を誘発する。Lu, et al. 1996. Nature 380:544-547. Winkler, et al. 2000. Science 287:1644-1647. Hani, et al. 1999. J. Biol. Chem. 274:108-116。Pin1はヒト癌試料において劇的に過剰発現し、Pin1量は腫瘍の攻撃性に相関する。さらに、Pin1阻害因子、Pin1アンチセンスポリヌクレオチド、または遺伝子欠乏を含む各種のアプローチによるPin1の阻害によって、未熟な状態での細胞分裂の開始および細胞死が誘導され、ヒトおよび酵母菌の分裂細胞が死滅する。Pin1は結腸癌細胞株、ヒト乳癌細胞株、および乳癌細胞組織の75%において過剰発現する。さらに、Pin1量は乳腫瘍の核異型度およびそれらのサイクリンD1発現に相関する。これらの結果は、酵素のPin1サブファミリーが、制御されていない細胞増殖、主に悪性腫瘍によって特徴づけられる疾患の新規の診断および治療標的として有望であることを示唆している。
【0082】
Pin1は高度に保存されたタンパク質で、結合して、Pro標的キナーゼによってリン酸化されたタンパク質の特定のサブセットの機能を調節する。Yaffe, et al. 1997. Science 278:1957-1960. Shen, et al. 1998. Genes Dev. 12:706-720. Lu, et al. 1999. Science 283:1325-1328. Crenshaw, et al. 1998. Embo J. 17:1315-1327. Lu, et al. 1999. Nature 399:784-788. Zhou, et al. 1999 Cell Mol. Life Sci. 56:788-806。Pin1はNH2末端WWドメインおよびCOOH末端ペプチジル-プロリルイソメラーゼ(PPIase)ドメインを含有する。WWドメインは、特定のpS/T-Pモチーフに結合して、Pin1をそのリンタンパク質基質に向かわせ、そこでPPIaseドメインが、おそらく特定のpS/T-P結合を異性化することによってコンホメーションおよび機能を調節する。
【0083】
Pin1は内因性サイクリンD1の過剰発現を引き起こすことがある。Pin1はc-Junと協調的に作用することによってサイクリンD1の発現を活性化し、サイクリンD1プロモータを活性化させると考えられている。サイクリンD1の発現を活性化するために、c-Junはリン酸化されなければならない。Pin1とc-Junの結合は、主にリン酸化S63/73モチーフを介する。Pin1はリン酸化c-Junを活性化し、c-Junのリン酸化S-Pモチーフのコンホメーションを調節することによってサイクリンD1の発現を誘発する。
【0084】
c-Junの活性はまた、成長因子、発癌性タンパク質、DNA損傷、またはストレス条件によって誘発されるリン酸化によっても増強される。異なる経路が関与している可能性もあるが、最終的にはS63/73-Pのc-Junをリン酸化するPro標的キナーゼJNKの活性化を引き起こし、転写活性を増強する。Binetruy, et al. 1991. Nature 351:122-127。Smeal, et al. 1991. Nature 354:494-496。Derijard, et al. 1994. Cell. 76:1025-1037。したがって、S63/73-Pのc-Junのリン酸化は、各種のシグナル経路からサイクリンD1遺伝子発現における変化へのインプットを変換する主要な調節機序である。
【0085】
発癌性および腫瘍抑制経路もまた、Pin1の活性に作用することがある。発癌性Rasによって活性化した経路は、Pin1の上方調節に寄与することがある。野生種Brca(腫瘍抑制因子)はPin1の発現を抑制する。
【0086】
「サイクリンD1の大量発現」または「サイクリンD1過剰発現」または「サイクリンD1発現の上昇」には、正常レベルを超えるサイクリンD1を有する細胞が含まれる。顕著なサイクリンD1過剰発現には、正常レベルと比較したサイクリンD1レベルの大幅増および微増のいずれも含まれる。好ましくは、サイクリンD1の過剰発現は、細胞周期との関連で考慮される。活発に増殖する正常細胞の場合、サイクリンD1はG1中期で最大となり、S期に減少し、その他の細胞周期中は低いままである。それに対し、形質転換した細胞では、サイクリンD1のレベルはもっと変化しやすい。したがって、サイクリンD1の過剰発現には、細胞のある特定の細胞周期に異常に高いレベルになるサイクリンD1の発現が含まれる。サイクリンD1の過剰発現は、腫瘍成長または癌として現れることがある。当業者は、正常細胞および癌状態を有する細胞のサイクリンD1発現量を測定する研究が行われていることを認識しているだろう。
【0087】
サイクリンD1発現の増加は多様な原発性ヒト腫瘍に認められている。サイクリンD1の大量発現は、遺伝子増幅、サイクリンD1 RNAの大量発現、およびサイクリンD1タンパク質の大量発現の形で検出されている。サイクリンD1遺伝子増幅とサイクリンD1発現を比較する臨床研究の大半で、RNAおよびタンパク質の過剰発現が共に認められるケースの方が遺伝子の増幅が認められるケースよりも多いことが明らかになっている。サイクリンD1において遺伝子増幅のないRNAおよび/またはタンパク質の大量発現が認められるということは、pRbなどの他の細胞遺伝子がサイクリンD1発現に作用している可能性があることを示唆している。サイクリンD1の大量発現が認められたヒト腫瘍には、副甲状腺腺腫、外套細胞リンパ腫、乳癌、頭頸部扁平上皮細胞癌(すなわち口腔、鼻咽頭、咽頭、下咽頭、および喉頭における扁平上皮細胞癌)、食道癌、肝細胞癌、大腸癌、泌尿生殖器癌、肺癌(すなわち肺の扁平上皮細胞癌)、皮膚癌(すなわち扁平上皮細胞癌、黒色腫、および悪性線維性組織球腫)、肉腫、および中枢神経系悪性腫瘍(すなわち星状細胞腫およびグリア芽腫)、胃腺癌、膵腺癌、胆嚢の扁平上皮癌が含まれる。Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。サイクリンD1遺伝子は乳癌の約20%で増幅され、タンパク質は乳癌の約50%に過剰発現する。Barnes, et al. 1998. Breast Cancer Research and Treatment. 52:1-15。外套細胞リンパ腫におけるサイクリンD1の過剰発現についてはEspinet, et al. 1999. Cancer Genet Cytogenet. 111(1):92-8 and Stamatopoulous, et al. 1999. Br. J. Haematol. 105(1):190-7に記載されている。乳癌におけるサイクリンD1の過剰発現についてはFredersdorf, et al. 1997. PNAS 94(12):6380-5に記載されている。頭頸部癌におけるサイクリンD1の過剰発現についてはMatthias, et al. 1999. Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 8(9):815-23; Matthias, et al. 1998. Clin. Cancer Res. 4(10):2411-8; and Kyomoto, et al. 1997. Int. J. Cancer. 74(6):576-81に記載されている。喉頭癌におけるサイクリンD1の過剰発現についてはBellacosa, et al. 1996. Clin. Cancer Res. 2(1):175-80に記載されている。骨髄腫におけるサイクリンD1の過剰発現についてはHoechtlen-Vollmar, et al. 2000. Br. J. Haematol. 109(1):30-8; Pruneri, et al. 2000. Am. J. Pathol. 156(5):1505-13; およびJanssen, et al. 2000. Blood 95(8):2691-8に記載されている。多くの腫瘍において、サイクリンD1はそのほかの発癌性遺伝子または腫瘍抑制遺伝子と協調して作用すると考えられている。
【0088】
サイクリンD1発現は多くの因子によって制御されている。成長因子(すなわちCSF1、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子、ステロイドホルモン、プロラクチン、および血清刺激)はサイクリンD1の合成を促進し、成長因子を除去するとサイクリンD1レベルが急落して細胞がG1期で停滞するだろう。Hosokawa, et al. 1996. J. Lab. Clin. Med. 127:246-52。低リン酸化pRbはサイクリンD1遷移を刺激する。サイクリンD1活性は、トランスフォーミング成長因子?-1、p53、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CKI)によって阻害される。高レベルのCKIがcdkに結合し、サイクリンのcdk活性化能を低減する。CKIには2種類あり、それはp21、p27、およびp57を含むKip/Cipファミリー、並びにp15、p16、18、およびp19を含むINK4ファミリーである。Kip/Cipファミリーのメンバーはほとんどのサイクリン-cdk複合体に結合し阻害する能力があるが、INK4ファミリーのメンバーはサイクリンD1-cdk複合体に特異的な阻害因子のようである。. Donnellan, et al. 1998. J. Clin. Pathol: Mol. Pathol. 51:1-7。pRbおよびE2FはCKIp16の活性化因子である。TGF-β、cAMP、接触阻害、および血漿欠乏によってp27レベルが上昇する。Barnes, et al. 1998. Breast Cancer Research and Treatment. 52:1-15。
【0089】
サイクリンD1はpRBのリン酸化によって活動すると考えられている。pRBはG1期には低リン酸化されているが、S期の直前でリン酸化され、分裂後期までリン酸化された状態を維持する。低リン酸化pRBは、DNA結合タンパク質のE2Fファミリーと複合体を形成することによって、細胞をG1期に停滞させる。E2F転位因子はDNA複製に関連する遺伝子を転写する(細胞周期のS期)。
【0090】
サイクリンD1はcdk4またはcdk6とともに複合体を形成し、活性化cdk4またはcdk6を形成することができる。活性化cdk4またはcdk6は、pRbをリン酸化して、E2F転写因子に結合してこの転写因子を不活化する低リン酸化状態から、結合もE2F転写因子の不活化もしないリン酸化pRbへの変化を誘導する。Dサイクリンを過剰発現するいくつかのマウスリンパ腫細胞のpRbでは、Dサイクリンを過剰発現しない細胞のpRbと比較して、低リン酸化されている。サイクリンD1はpRbのリン酸化を開始するために必要であり、その現象が、細胞が分裂しようとする段階における制限ポイントを介して細胞を駆動していると考えられる。
【0091】
「新生物形成」または「新生物形質転換」は、新生物、組織塊、または腫瘍の形成および成長を生じる病理学的なプロセスである。このようなプロセスには、良性または悪性腫瘍のいずれかを含む、制御されていない細胞成長が含まれる。新生物には、異常な組織塊、正常組織の成長を上回り、正常組織との協調が見られず、変化を誘発した刺激が停止しても同様の過剰な状態で持続する成長が含まれる。新生物は、構造的な組織および正常組織との機能的な協調性が部分的にまたは完全に欠損していることがあり、通常、独特な組織塊を形成する。新生物形成の一因は、細胞周期機構の制御不全である。
【0092】
新生物は正常組織の成長および機能を制御する恒常性維持機構とは独立に成長および機能する傾向がある。しかし、新生物には、正常組織の成長および機能を制御する恒常性維持機構の制御下にあるものもある。たとえば、ある新生物はエストロゲンに感受性があり、抗エストロゲン療法で停止させることが可能である。新生物のサイズは直径1cm未満から6インチ超までである。直径1cmの新生物であっても、ファーター膨大部に生じてそこを閉塞すると、胆道閉塞および黄疸を生じることがある。
【0093】
新生物は、形態的および機能的に発生部位の組織に似る傾向がある。たとえば、膵臓の島組織内に発生した新生物はその島組織に似ており、分泌顆粒を含有してインスリンを分泌する。新生物の臨床的な特徴は、発生部位の組織の機能に起因することがある。たとえば、島細胞新生物が過剰量のインスリンを産生して低血糖症を生じ、頭痛およびめまいを引き起こすことがある。しかし、新生物には、形態的にまたは機能的に発生部位の組織にあまり似ないものもある。ある新生物は、悪液質、感染症への高感受性、および発熱などの非特異的な全身作用を生じる。
【0094】
新生物の組織学的およびそのほかの特徴を評価することによって、新生物が良性か悪性かを決定することができる。浸潤および転移(新生物の遠位部位への拡散)は悪性であることを決定する条件である。良性新生物は巨大化することはあるが、分散しており近隣の非新生組織とは異なる。良性腫瘍は一般に限局性で円形であり、莢膜があり、灰色または白色で、肌目が均一である。反対に、悪性腫瘍は一般に指状の突起、不規則な縁部を有し、限局性ではなく、色も肌目も様々に異なる。良性腫瘍は近隣組織を圧迫しながら成長する。良性腫瘍は拡大するにつれて近隣組織を圧迫し、時に萎縮を生じる。良性腫瘍と周囲組織の境界線は線維性連結組織莢膜に転換することがあり、そのため良性腫瘍の外科的除去は容易である。これに対し、悪性腫瘍は局所的に浸潤し、近隣組織に入り込んで成長するため、一般に不規則な縁部を生じる。この縁部は莢膜化していないため、悪性腫瘍を外科的に除去するためには正常組織の縁部を広く除去する必要がある。良性新生物は悪性腫瘍よりもゆっくりと成長する傾向がある。良性新生物はまた、悪性腫瘍よりも自律性が低い傾向がある。良性新生物は、組織学的に発生部位の組織に非常に似る傾向がある。高度に分化した癌で、発生部位の組織に似ている癌の方が、あまり分化していない癌よりも予後がよい傾向がある。悪性腫瘍は良性腫瘍よりも異常な機能(すなわち異常量または過剰量のホルモン分泌)を有する確率が高い。
【0095】
癌の組織学的特徴は「退形成」という用語に要約される。悪性新生物は、多数の分裂細胞を含有していることが多い。これらの細胞は一般に異常である。このような分裂異常は、大半の癌に認められるある種の核型異常が原因である。異常な多核細胞も、一部の癌、特に高度に退形成している癌に見られる。
【0096】
「形成異常」とは、組織が正常と退形成の中間の組織学的および細胞学的特徴を示す、前悪性状態を意味する。形成異常は可逆性であることが多い。
【0097】
「退形成」とは、癌の組織学的な特徴を意味する。これらの特徴には、正常組織の構造の異常、細胞の密集、極性異常と呼ばれる細胞の配向性の欠損、「多形性」と呼ばれる細胞の大きさおよび形状の不均一性が含まれる。退形成の細胞学的な特徴には、核-細胞質比の高値(核-細胞質比は悪性化細胞の場合50%を超えることがある)、核多形性、核膜の核染色質の凝集、核染色質の染色度の増加、小胞体の簡略化、遊離リボソームの増加、ミトコンドリアの多形性、細胞小器官のサイズの縮小および数の減少、核小体の肥大および数の増加、ならびに時として中間フィラメントの存在が含まれる。
【0098】
本願明細書で用いられる「癌」という用語には、たとえば癌腫、肉腫、白血病、およびリンパ腫などの、無秩序なまたは制御されていない細胞成長を特徴とする悪性腫瘍が含まれる。「癌」という用語には、原発性悪性腫瘍(たとえば、細胞が対象の体内において腫瘍の発生部位以外の部位に移動していないもの)、および続発性悪性腫瘍(たとえば転移、つまり腫瘍の発生部位とは異なる続発的な部位に腫瘍細胞が移動して生じたもの)が含まれる。
【0099】
「癌腫」という用語には、呼吸器系癌、消化器系癌、泌尿生殖器系癌癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌、黒色腫、絨毛癌、並びに子宮頸部、肺、頭頸部、結腸および卵巣癌を含む、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍が含まれる。「癌腫」という用語にはまた、癌性組織および肉腫性組織からなる悪性腫瘍を含む癌肉腫も含まれる。「腺癌腫」とは、腺組織または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する腫瘍に由来する癌腫を意味する。
【0100】
「肉腫」には、たとえば骨、脂肪、および軟骨組織など中胚葉結合組織の悪性腫瘍が含まれる。
【0101】
「白血病」および「リンパ腫」という用語には、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍が含まれる。白血病は単細胞として増殖する傾向があるが、リンパ腫は充実性腫瘍塊として増殖する傾向がある。白血病の例には、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病、混合系統白血病、急性単芽球白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性非リンパ芽球性白血病、芽球性外套細胞白血病、骨髄異形成症候群、T細胞白血病、B細胞白血病、および慢性リンパ球白血病が含まれる。リンパ腫の例には、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、上皮親和性リンパ腫、混合リンパ腫、退形成大細胞リンパ腫、胃および非胃粘膜関連リンパ系組織リンパ腫、リンパ滲出性疾患、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、外套細胞リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、多発性骨髄腫が含まれる。
【0102】
たとえば、本願発明の治療方法は、たとえば肉腫(たとえば腺肉腫、粘液肉腫、リオサルコーマ(liosarcoma)、軟骨肉腫、骨原性肉腫もしくは脊索肉腫、血管肉腫、内皮リオサルドコーマ(endotheliosardcoma)、リンパ管肉腫、滑膜性肉腫またはメソセリソサルコーマ(mesothelisosarcoma))、顆粒球性白血病、単球白血病、リンパ球白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網細胞肉腫、またはホジキン病などの白血病およびリンパ腫、平滑筋肉腫または横紋筋腫などの肉腫、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、汗腺癌、脂腺癌、腺癌腫、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌腫、気管支癌、黒色腫、腎細胞癌、肝臓癌-肝細胞癌、胆管癌、胆管癌、乳頭癌、移行上皮癌、コリオアエンシノーマ(chorioaencinoma:絨毛上皮腫?)、セモノーマ、または胎児性癌などの上皮由来の腫瘍、およびギオーマ(gioma)、メニゴーマ(menigoma)、髄芽腫、神経鞘腫、またはエピディモーマを含む神経系の腫瘍を産生する癌細胞など、間葉細胞由来の癌細胞に適用することが可能である。本願明細書に記載の方法に従った治療に感受性がある細胞の種類には、さらに、乳癌、結腸癌などの消化器癌、膀胱癌、前立腺癌、および頭頸部の扁平上皮細胞癌を生じる細胞が含まれる。本願明細書に記載の方法に従った治療法に感受性がある癌の例には、膣、子宮頸部、および乳癌が含まれる。
【0103】
「望ましくない細胞成長の阻害」という文言には、望ましくない、または不適切な細胞成長の阻害を含むことを意図する。阻害には、急速な増殖を含む増殖の阻害が含まれることを意図する。たとえば、細胞成長の結果良性塊になることもあり、細胞成長の阻害によって悪性腫瘍を生じることもある。不適切な細胞成長、または血管新生に起因する良性の状態とは、糖尿病性網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、乾癬、血管線維腫、リューマチ様関節炎、血管腫、カポジ肉腫、および調節不全の内皮細胞分裂を特徴とするそのほかの状態または機能不全である。
【0104】
「腫瘍成長の阻害」または「新生物形成の阻害」には、対象における腫瘍の成長の予防、または対象に既存の腫瘍の成長の低減が含まれることを意図する。阻害はまた、腫瘍のある部位から別の部位への転移の阻害であってもよい。特に、「腫瘍」という用語は、対象のいずれかの臓器または身体部分に形成されるin vitro腫瘍およびin vivo腫瘍の両方を包含することを意図する。腫瘍は、好ましくは本願発明のフレデリカマイシンA化合物に感受性がある腫瘍である。本願発明が包含する腫瘍の種類の例には、乳癌、皮膚癌、骨癌、前立腺癌、肝癌、肺癌、脳癌、喉頭癌、胆嚢癌、食道癌、膵癌、直腸癌、副甲状腺癌、甲状腺癌、副腎癌、神経組織癌、頭頸部癌、結腸癌、胃癌、気管支癌、腎癌に関連する腫瘍が含まれる。特に、本願発明によって成長速度が阻害される腫瘍には、基底細胞癌、潰瘍型および乳頭型の扁平上皮細胞癌、転移皮膚癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、ベティキュラム(veticulum)細胞肉腫、骨髄腫、巨大細胞腫瘍、小細胞肺腫瘍、胆石、島細胞腫瘍、原発性脳腫瘍、急性および慢性リンパ球および顆粒球腫瘍、毛様細胞腫瘍、腺腫、過形成、髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫、腸管ガングロ神経腫(intestinal ganglloneuroma)、過形成角膜神経腫瘍、マルファン様体質腫瘍、ウィルム腫瘍、精上皮腫、卵巣腫瘍、平滑筋肉腫、子宮頸部異形成および上皮内癌、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、軟組織肉腫、悪性カルチノイド、局所性皮膚病変、菌状息肉腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫などの肉腫、悪性高カルシウム血症、腎細胞腫瘍、真性多血症、腺癌腫、多形性神経膠芽腫、白血病、リンパ腫(すなわち悪性リンパ腫、外套細胞リンパ腫)、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、扁平上皮癌、およびそのほかの癌腫および肉腫が含まれる。
【0105】
フレデリカマイシンAの投与
「対象」という用語は、たとえば原核生物および真核生物など、生きている生物を含むことを意図する。対象の例には、たとえばヒト、イヌ、雌ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物などの哺乳類が含まれる。最も好ましくは、その対象はヒトである。
【0106】
化合物の「有効な量」という文言は、たとえばPin1関連状態の形態的および身体的各種症状を予防するなど、Pin1関連状態を治療または予防するのに必要なまたは十分な量である。ある例では、フレデリカマイシンA化合物の有効な量とは、対象における望ましくない細胞成長を阻害するのに十分な量である。別の例では、フレデリカマイシンA化合物の有効な量とは、対象に既存の良性細胞塊または悪性腫瘍の大きさを減少させるのに十分な量である。有効な量は、対象の大きさおよび体重、疾患の種類、または特定のPin1結合化合物などの因子によって変化することがある。たとえば、Pin1結合化合物の選択は、「有効な量」の構成要素に影響することがある。当業者は、前述の因子を研究し、必要以上の実験をすることなくPin1結合化合物の有効な量に関して決定を行うことができるだろう。ある可能なアッセイでは、フレデリカマイシンA化合物の有効な量の決定は、サイクリンD1の発現をアッセイし、サイクリンD1レベルを非癌状態に関連するレベルに低減するのに十分なフレデリカマイシンAの量を決定することによって可能になる。
【0107】
投与方法が、有効な量の構成要素に影響することもある。Pin1結合化合物は、Pin1関連状態の開始前または後に対象に投与してよい。さらに、数回に分割した投与量および時差的な投与量を毎日または順次投与してもよく、または連続的に注入するか、もしくはボーラス投与してもよい。さらに、Pin1結合化合物の用量は、治療的または予防的な状況の緊急度によって示されるように比例的に増加または減少させてよい。
【0108】
「治療した」、「治療する」または「治療」という用語には、治療中の状態、障害または疾患に関連するまたはそれらによって引き起こされた少なくとも1つの症状の消失または緩和が含まれる。たとえば、治療とは、障害の1種類または数種類の症状の消失、または障害の完全な根絶であってよい。
【0109】
「薬学的組成物」という用語には、たとえばヒトなどの哺乳類への投与に適切な製剤が含まれる。本願発明の化合物がたとえばヒトなどの哺乳類へ医薬品として投与される場合、それらはそれ自体として、または0.1乃至99.5%(さらに好ましくは0.5乃至90%)の活性成分を含有する薬学的組成物を薬学的に許容な担体と併用して投与してよい。
【0110】
「薬学的に許容な担体」という文言は当業に公知で、本願発明の化合物を哺乳類に投与するのに適している薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を含む。担体には、目的の薬剤をある臓器または身体部分から別の臓器または身体部分へ輸送または送達することに関与する、液状または固体状充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル封入物質が含まれる。各担体は、製剤のそのほかの成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容」でなければならない。薬学的に許容な担体として使用することが可能な物質の例には、ラクトース、グルコース、スクロースなどの糖類、コーンスターチやバレイショデンプンなどのデンプン、セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、粉末状トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオバターおよび坐剤用ろうなどの賦形剤、ピーナツ油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチル、およびラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含有しない水、等張食塩水、リンガー液、エチルアルコール、リン酸緩衝溶液、ならびに薬学的な製剤に用いられる無毒で適合性のある物質が含まれる。
【0111】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、並びに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、着香剤、および芳香剤、保存料および抗酸化剤もまた、組成物中に存在してよい。
【0112】
薬学的に許容な抗酸化剤の例には、水、アスコルビン酸、塩酸システイン、二硫化ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、?-トコフェロールなどの脂溶性抗酸化剤、およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
【0113】
本願発明の製剤には、経口、経鼻、局所、経皮、口腔内、舌下、直腸内、経膣および/または非経口投与に適する調剤が含まれる。製剤は、使いやすいように単回投与剤形にしてよく、薬学の当業に公知のいずれかの方法で調製してもよい。単回投与剤形を作るために担体物質と混合してよい活性成分の量は、一般に治療上の効果が得られる化合物の量であろう。一般にこのような量は、100%のうち、活性成分は約1%乃至約99%、好ましくは約5%乃至約70%、最も好ましくは約10%乃至約30%の範囲であろう。
【0114】
これらの製剤および組成物の調製方法には、本願発明の化合物と担体、および任意に1種類以上の副成分を混合するステップが含まれる。一般にこの製剤は、本願発明の化合物と液体状担体または十分に分割した固体状担体を均一によく混合し、必要であればその産生物を成形する。
【0115】
経口投与に適する本発明の製剤の形状は、カプセル(capsule)、カプセル(cachet)、丸剤、錠剤、トローチ剤(通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの着香基剤を用いる)、粉剤、顆粒、または水性液もしくは非水性液を用いた溶液もしくは懸濁液、または水中油もしくは油中水液体状乳剤、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤、またはトローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を用いる)、および/または洗口剤などでよく、それぞれ本願発明の化合物を活性成分としてあらかじめ定めた量含有する。本願発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤、または泥膏として投与してもよい。
【0116】
経口投与用の本願発明の固体状投与剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤、顆粒など)の場合、活性成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または以下に記載するもの、つまり、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、たとえばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤、グリセロールなどの保湿剤、寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、パラフィンなどの液体緩染剤、第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、たとえばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体状ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤、並びに着色剤のいずれか1種類以上の薬学的に許容な担体と混合する。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、薬学的組成物はまた、緩衝剤も含んでよい。同様の種類の固体状組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。
【0117】
錠剤は、1種類以上の副成分と共に、圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(たとえばゼラチン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、錠剤分解物質(たとえばデンプングリコール酸ナトリウム、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製してよい。成形錠剤は、不活性液体状希釈剤で湿潤させた粉末状の化合物の混合物を、適切な機械で成形して作製してよい。
【0118】
本願発明の薬学的組成物の錠剤および糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒などのそのほかの固体状剤形には、任意に刻印してもよく、腸溶コーティングおよび製剤業者に公知のそのほかのコーティングなど、コーティングおよびシェルで調製してもよい。それらはまた、たとえば望ましい放出プロフィールを提供するための様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、そのほかのポリマー基質、リポソームおよび/またはマイクロスフェアなどを用いて、活性成分の持続放出または制御放出を提供できるように調剤してもよい。それらは、たとえば細菌保持性フィルターで濾過するか、または滅菌水に溶解することができる滅菌個体組成物状の滅菌剤を組み入れるか、もしくはそのほかの滅菌注射可能溶媒を使用直前に組み入れるかすることによって、滅菌してよい。これらの組成物はまた、選択的に不透明化剤を含有してもよく、選択的に徐放的に消化管の特定の部分に優先的に、活性成分のみを放出する組成物であってよい。使用可能な埋包組成物の例には、高分子物質およびロウが含まれる。活性成分はまた、適宜、1種類以上の上記賦形剤を用いたマイクロカプセル封入剤形であってもよい。
【0119】
本願発明の化合物の経口投与用の液体状剤形には、薬学的に許容な乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。液体状剤形は、活性成分に加えて、たとえば水またはそのほかの溶媒、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚種油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタン脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物などの可溶化剤または乳化剤など、当業で一般に用いられる不活性希釈剤を含有してよい。
【0120】
経口組成物はまた、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、着香剤、着色剤、芳香剤、および保存剤などのアジュバントを含んでもよい。
【0121】
懸濁液は、活性化合物に加えて、たとえばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、並びにそれらの混合物を含有してよい。
【0122】
直腸内投与または膣内投与用の本願発明の薬学的組成物の製剤は、本願発明の1種類以上の化合物と、たとえばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ロウ、またはサリチル酸塩などを含む、1種類以上の適切で刺激性の少ない賦形剤または担体を混合して調製されていてもよく、室温では固体状だが体温では液体状であって、直腸または膣内で溶解して活性化合物を放出する坐剤であってもよい。
【0123】
膣内投与に適切な本願発明の製剤にはまた、適切であることが当業に公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤も含まれる。
【0124】
本願発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。活性化合物は、滅菌条件下で、薬学的に許容な担体、および保存剤、緩衝剤、または必要であれば高圧ガスと混合してよい。
【0125】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本願発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、ならびにそれらの混合物などの賦形剤を含有してよい。
【0126】
粉末およびスプレーは、本願発明の化合物に加えてラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはそれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。スプレーはさらに、クロロフルオロ炭化水素、およびブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素など、通例の高圧ガスを含んでもよい。
【0127】
経皮パッチには、本願発明の化合物を体内に制御送達するというもう一つの利点がある。このような剤形は、適切な溶媒中に化合物を溶解または分散させて作製することができる。吸収促進剤も、化合物の皮膚への流動を増加させるために用いることができる。このような流動の速度は、速度制御膜を備えるか、またはポリマー基質またはゲル中に活性化合物を分散させることによって制御することができる。
【0128】
眼製剤、眼軟膏、粉末、溶液なども、本願発明の範囲内であることを意図する。
【0129】
非経口投与に適切な本願発明の薬学的組成物は、1種類以上の薬学的に許容な滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液または乳剤、または使用直前に注射可能な滅菌溶液もしくは分散液に再構築してよい滅菌粉末であって、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を対象のレシピエントの血液と等張にするための溶質、懸濁剤または増粘剤を含んでよい滅菌粉末と混合した本願発明の1種類以上の化合物を含む。
【0130】
本願発明の薬学的組成物に用いてよい適切な水性担体および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが含まれる。適切な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合は所要の粒子サイズの維持、および表面活性剤の使用などによって維持することができる。
【0131】
このような組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含んでもよい。微生物の活動を確実に防ぐために、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの各種抗菌剤および抗真菌剤を含んでもよい。さらに、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含ませることが望ましい。さらに、注射可能な剤形の吸収を持続させるために、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収持続剤を含んでもよい。
【0132】
あるケースでは、薬物の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶またはアモルファス物質の液体状懸濁液を使用することで実現してもよい。薬物の吸収速度は溶解速度に依存し、したがって結晶サイズおよび結晶の形状に依存することがある。代替的には、非経口投与剤形の吸収は、薬物を油状賦形剤に溶解または懸濁させると遅延させることができる。
【0133】
注射可能なデポー剤形を作製するには、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーに入った対象化合物のマイクロカプセル封入基質を形成する。薬物対ポリマーの比、および使用した特定のポリマーの性質によって、薬物の放出速度を制御することができる。そのほかの生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。注射可能なデポー製剤はまた、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンの中に薬物を封入して調製する。
【0134】
本願発明の製剤は、経口、非経口、局所、または直腸内に投与してよい。もちろんそれらは、各投与経路に適切な形状で投与される。たとえば、錠剤またはカプセル剤形にしたり、注射、吸入、眼ローション、軟膏、坐剤などによって投与され、経口、非経口の場合は注射、点滴、または吸入によって、局所の場合はローションまたは軟膏で、直腸の場合は坐剤で投与する。経口投与が好ましい。
【0135】
本願明細書に記載の「非経口投与」および「非経口に投与した」という文言は、経腸および局所投与をのぞく投与形態で通常は注射による投与を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、眼窩内、嚢内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜内、クモ膜下、脊髄内、および胸骨内注射および輸液が、それらに限定されずに含まれる。
【0136】
本願明細書に用いられる「全身投与」、「全身に投与した」、「末梢投与」および「末梢に投与した」という文言は、直接中枢神経系に到達しない化合物、薬物、またはそのほかの物質が患者の全身に入り、代謝およびたとえば皮下投与などそのほかの同様のプロセスを経るような投与を意味する。
【0137】
これらの化合物は治療のために、経口、たとえばスプレーなどによる経鼻、直腸、膣内、非経口、嚢内および局所を含む適切な投与経路によって、粉末剤、軟膏または口腔内および舌下を含むドロップ剤として、ヒトおよびそのほかの動物に投与されてよい。
【0138】
選択された投与経路にかかわらず、適切な水和状で用いられてよい本願発明の化合物、および/または本願発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容の剤形に製剤する。
【0139】
本願発明の薬学的組成物の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与形態に望ましい治療応答を達成するために有効でありながら、その患者に有毒ではないような活性成分量を得られるように、変化させてよい。
【0140】
選択された用量レベルは、本願発明に用いられる特定の化合物またはそのエステル、塩、もしくはアミド、投与経路、投与時間、使用された特定の化合物の排出速度、治療の持続時間、特定の化合物とともに用いたそのほかの薬物、化合物、および/または物質、治療対象患者の年齢、性別、体重、症状、健康状態、および既往歴を含む各種要因、ならびに医療関連業者に公知の同様の各種要因に依存するだろう。
【0141】
当業の医師または獣医師は、有効量の所要の薬学的組成物を容易に決定し処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、望ましい治療上の効果を達成するために、薬学的組成物に用いられる本願発明の組成物の投与量を所要レベルよりも少量から開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。
【0142】
一般に、本願発明の化合物の適切な一日投与量は、治療上の効果を生ずるために有効な最低投与量であろう。このように有効な投与量は、一般に、上述の因子に依存するであろう。一般に、患者への本願発明の化合物の静脈または皮下投与量は、指示された鎮痛効果のために使用する場合、1日当たり体重1kg当たり約0.0001乃至約100mgであって、さらに好ましくは1日当たり体重1kg当たり約0.01mg乃至約50mgであって、よりさらに好ましくは1日当たり体重1kg当たり約1.0乃至約100mgであろう。有効な量とは、Pin1関連状態を治療する量である。
【0143】
望ましい場合には、活性化合物の有効一日用量を、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上のサブ用量に分割して、一日のうちに適切な間隔をおいて、選択的に単回投与剤形にして投与してよい。
【0144】
本願発明の化合物のみを投与することも可能であるが、化合物を薬学的組成物として投与することが好ましい。
【0145】
本願発明は、さらに以下の実施例で具体的に説明されるが、それらがさらなる制限であると解釈されてはならない。本願明細書に引用されているすべての参考文献、係属出願および公告済み特許の内容は、引用をもってここに明示的に援用する。実施例全体において使用された動物モデルは、公認の動物モデルであり、これらの動物モデルにおける有効性の実証はヒトにおける有効性を予測するものである。
【0146】
腫瘍阻害アッセイ
フレデリカマイシンA化合物は強力な抗腫瘍剤である。フレデリカマイシンAの膠芽細胞種細胞に対する抗腫瘍活性は、最も強力な臨床用抗腫瘍剤の1種である1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア(BCNU)に匹敵する。Misra, et al. 1982. J. Am. Chem. Soc. 104: 4478-4479。
【0147】
フレデリカマイシンA化合物のin vitroにおける抗腫瘍活性は、フレデリカマイシンA化合物の腫瘍細胞の殺傷能力を測定することによってアッセイすることができる。まず、適切な細胞株を24時間成長させる。適切な細胞株の例には、ヒト肺(A549)、低トポII活性抗ヒト肺(A549-VP)、マウス黒色腫(B16)、ヒト結腸腫瘍(HCT116)、高p170値ヒト結腸腫瘍(HCTVM)、低トポII活性ヒト結腸腫瘍(HCTVP)、p388マウスリンパ白血病細胞、およびヒト結腸癌細胞株(Moser)が含まれる。細胞をプレート(つまり96穴平底プレート)に付着させるために24時間おいた後、その細胞を連続希釈濃度のフレデリカマイシンA化合物とともに72時間インキュベートする。これらのデータから、50%の細胞が死滅する化合物の濃度を決定する。Kelly, et al., U.S. Patent No. 5,166,208 and Pandey, et. al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1389-401。
【0148】
フレデリカマイシンA化合物のin vivoにおける抗腫瘍活性は、哺乳類(すなわちマウス)の腫瘍細胞の減少、およびその結果生じた非処理の腫瘍を有する哺乳類と比較した生存時間の増加によって、アッセイすることができる。たとえば、CDF1マウスに、P338マウスリンパ白血病細胞、エールリッヒ癌細胞、B16黒色腫細胞、またはMeth-A線維肉腫細胞の懸濁液を腹腔内注射する。一部のマウスはフレデリカマイシンA化合物で腹腔内処理する。そのほかのマウスは食塩水で処理する。この化合物のin vivoにおける活性は、処理群の平均生存時間と食塩水処理群の平均生存時間の比を100倍した% T/Cについて決定する。Yokoi, et al, 米国特許第4,584,377号; Kelly, et al., 米国特許第5,166,208号; Warnick-Pickle, et al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1402-7; and Pandey, et. al. 1981. J. Antibiot. 34(11):1389-401。
【0149】
フレデリカマイシンA化合物のin vivoにおける抗腫瘍活性はまた、ヒト腫瘍クローニングシステムにおいて成長させた卵巣腫瘍に対する阻害因子としてアッセイすることもできる。Tebbe, et al. 1971 J. Am. Chem. Soc. 93:3793-3795。
【0150】
本願発明は、さらに以下の実施例で具体的に説明されるが、それらがさらなる制限であると解釈されてはならない。本願明細書に引用されているすべての参考文献、係属出願および公告済み特許の内容は、引用をもってここに明示的に援用する。
【実施例】
【0151】
例1:フレデリカマイシンAによるPin1のPPIase活性の阻害
1.材料および方法
PPIase活性の測定は、Fischer et al.(1984)によって開発されたプロテアーゼ結合PPIaseアッセイによって行った。hPin1活性の測定には、ウシトリプシン(最終濃度0.21 mg/mL、シグマ社)を異性体特異的プロテアーゼとして、およびAc-Ala-Ala-Ser(P)-Pro-Arg-pNA(ジェリニ社、ドイツ)を基質として使用した。hFKBP12(シグマ社)およびhCyp18(シグマ社)のPPIase活性は、ペプチド基質Suc-Ala-Phe-Pro-Phe-pNA(バッヘム社)およびプロテアーゼ?-キモトリプシン(最終濃度0.41mg/mL、シグマ社)を用いて決定した。10℃における遊離4-ニトロアニリドをヒューレットパッカード8453UV-vis分光器で390nmで測定して、テストを行った。適切な容量の酵素入り35mM HEPES(pH7.8)およびエフェクター溶液を混合して反応容量の合計を1.23mLに調節した。フレデリカマイシンA(バイオリーズ社、ドイツ)を、1mg/mLのストックDMSO溶液から新たに希釈した。他に指示がない限り、フレデリカマイシンA(0乃至6 ?M)を酵素と共に5分間(10℃)、あらかじめインキュベートした。各プロテアーゼを添加して反応をスタートさせる前に、ペプチド基質ストック溶液2mL(DMSOに10mg/mL)を加えた。有機溶媒の量は各実験ごとに一定に保った(<0.1%)。PPlaseの存在下でのシス/トランス異性化の擬1次速度定数kobsおよび触媒なしのシス/トランス異性化の擬1次速度定数k0は、ヒューレットパッカード動力学ソフトウェアおよびウィンドウズ6.0用シグマプロット2000(SPSS)を用いて計算した。基質が一定濃度の場合のフレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性の阻害のためのKi値([S0]<<KM)は、シグマプロット2000を用いて、競合的な「強結合」阻害因子用の方程式に従って、データをフィッティングして計算した。
【0152】
2.結果
2.1 Ki値の決定
フレデリカマイシAによるhPin1のPPIase活性の阻害について、(820 ± 608) nMのKi値を求めた(図1)。
【0153】
図1:フレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性阻害のKi値
PPIase活性の測定は、材料および方法に記載の通り行った。6.0nMのPin1を、10℃で5分間、35mM HEPESに溶解した0乃至4.8mMフレデリカマイシンAとともにあらかじめインキュベートした。Ac-Ala-Ala-Ser(P)-Pro-Arg-pNA (21.9 μM)を基質として使用した。トリプシンを加えて反応を開始させた。
【0154】
2.2 フレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性阻害の時間依存性
0および1mM のhPin1を加えた場合のPin1(6.0nM)のPPIase活性の時間依存性変化を、30分間隔で追跡した。図2に示すように、酵素活性の漸減は見られず、30分間における阻害の時間依存性はなかった。
図2:フレデリカマイシンAによるPin1 PPIase活性阻害の時間依存性。PPIase活性の測定は、材料および方法に記載されたとおりに行った。6.0 nM hPin1を0、5、10、15、20、25、および30分間、それぞれ0(黒丸)および1mM(黒菱形)のフレデリカマイシンとともにインキュベートした。
【0155】
2.3 フレデリカマイシンAによるhPin1のPPlase活性の阻害の可逆性
hPin1およびフレデリカマイシンAの相互作用の可逆性(図3)は、0.16mMのフレデリカマイシンを加えて残りの活性が23%になるまで阻害したhPin1(209nM)を、半透膜(ミクロコン10)を通してマイクロ濃度にして、行った。遠心分離の間、反応緩衝液を35mM HEPES(pH7.8)で3回交換した後、残りの活性をPPIaseアッセイで評価した。同じように処理した阻害因子のない酵素の対照と比較すると、hPin1の反応性は97.5%まで認められ、フレデリカマイシンAのhPin1への結合の可逆性を示唆した。
【0156】
図3:hPin1とフレデリカマイシンAの間の相互作用の可逆性。209nMのhPin1を0(黒四角)および0.16(白四角)mMのフレデリカマイシンAとともにインキュベートし、hPin1の残りのPPIase活性を、材料および方法に従ったプロテアーゼ結合PPlaseアッセイを用いた半透膜を通した微小分離(micro-separation)の前および後で測定した。
【0157】
2.4 フレデリカマイシンAによるhPin1 PPIase活性の阻害の特異性
表2に、フレデリカマイシンAが3種類の既知のPPIaseファミリー、パルブリン(hPin1)、シクロフィリン(hCyp18)およびFKBP(hFKBP12)の酵素活性に与える作用を示す。プロテアーゼ結合PPIaseアッセイでは、フレデリカマイシンは、テストしたすべてのPPIaseを阻害したが、中でもパルブリンhPin1については約6乃至7倍の効力を示した。
【表2】
【0158】
例2:フレデリカマイシンのDU-145前立腺腫瘍を有するscid(重症複合免疫不全症)マウスへの効果
フレデリカマイシン(FredA)のscid(重症複合免疫不全症)マウスヒト前立腺腫瘍モデルの腫瘍成長への効果を研究した。まず、scidマウス44匹の免疫グロブリン産生について、ELISAでスクリーニングした。その後、そのマウスに、滅菌食塩水中に溶解した皮下側腹注射でDU-145前立腺癌細胞株を、第0日に接種した。
【0159】
第16日に、腫瘍が確立した(〜40mm3)マウス40匹を選択し、そのマウスを10匹ずつ4つの群に分けた。第1群には、第16、17、18、19、および20日に賦形剤対照(DMSO)を投与した。第2および第3群には、第16、17、18、19、および20日にFredAをそれぞれ0.33および0.67mg/kg投与した。陽性対照の第4群にも、第16、17、18、19、および20日にミトックス(Mitox)を0.34 mg/kg投与した。それぞれ、腹腔内注射で投与した。
【0160】
第1乃至56日は、マウスの腫瘍を週2回測定し、腫瘍の体積を式{(幅)2 x 長さ}/2に従って推定した。マウスの体重は実験を開始する前に測定し、その後は毎週測定して毒性の兆候をチェックした。
【0161】
研究に用いられミトックスまたはDMSO担体のみを投与されたマウスで32日後に死亡したものはいなかった。FredAを0.67 mg/kg投与されたマウスはすべて、第17日までに死亡した。FredAを0.34 mg/kg投与されたマウスのうち2匹のみ、第32日まで生存した。
【0162】
図4は、試験期間中の各4群の平均腫瘍体積(cm3)を示す線グラフである。この図は、FredAがDMSOまたはミトックス対照と比較して体積を50%減少させることができたことを示す。表3に、平均腫瘍体積のデータをまとめる。
【表3】
【0163】
図5は、試験期間中の各4群のマウスの平均体重を示す線グラフである。この図は、各4群のマウスの平均体重が、実験期間全体を通して、概して一定値を維持したことを示す。表4には平均腫瘍体積のデータをまとめる。
【表4】
【0164】
等価物
当業者であれば、ごく普通の実験を用いるのみで、ここに説明した本願発明の特定の実施例の等価物を数多く認識し、または確認できることであろう。このような等価物は、添付の請求の範囲の包含するところである。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】実施例に記載の通りのhPin1活性(%)対フレデリカマイシンA濃度(?M)のプロットを示す。
【図2】実施例に記載の通りのhPin1活性(BE)対時間(分)のプロットを示す。
【図3】実施例に記載の通りの半透膜を通した微小分離前および後に測定したhPin1のPPIase活性を有する0(黒四角)および0.16(白四角)mMフレデリカマイシンAでインキュベートした209nM hPin1のhPin1活性(%)のグラフを示す。
【図4】フレデリカマイシンのDU-145前立腺腫瘍を有するscidマウスへの効果を示す平均腫瘍体積(cm3)の線グラフである。
【図5】フレデリカマイシンのDU-145前立腺腫瘍を有するscidマウスへの効果を示すマウスの平均体重の線グラフである。
Claims (91)
- Pin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンA化合物を対象に投与するステップを含む、対象のPin1関連状態を治療する方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が高サイクリンD1状態である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が新生物形質転換である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が癌である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が腫瘍成長である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記治療が腫瘍成長を阻害するステップを含む、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記治療が前記対象における腫瘍成長の発生を予防するステップを含む、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記治療が前記対象に既存の腫瘍の成長を低下させるステップを含む、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が結腸癌である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が乳癌である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が肉腫である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が悪性リンパ腫である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が食道癌である、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態がPin1の過剰発現によって引き起こされる、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態がDNA損傷によって引き起こされる、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態が発癌性タンパク質によって引き起こされる、方法。
- 請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記Pin1関連状態がHa-Rasによって引き起こされる、方法。
- 請求項1乃至17のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式IXであって、
(式IX)
当該式において、Cの周りではない点線は任意の二重結合であって、
R1はアルキル、アルケニル、アルカノイル、アルクニルであって、
R2は水素或いはアルキルであって、
R9およびR10は両方とも水素或いはともに以下の構造を有する環を形成し、
(構造)
- 請求項1乃至17のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物はフレデリカマイシンA或いは薬学的に許容なそれらの塩、エステル、或いはプロドラッグである、方法。
- 請求項1乃至17のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式IIIであって、
(式III)
R1は1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至8個の炭素原子を有するアルケニル、アルカノイル、或いは2乃至8個の炭素原子を有するアルキニルであって、
R2は水素或いは1乃至8個の炭素原子を有するアルキルであって、
R3、R5、R6、R9、およびR10は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、アルカノイルであるか、或いは何もなく、
R4、R7、R8、R11は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、もしくはアルカノイル、或いは薬学的に許容なそれらのそれらの塩、エステル、もしくはプロドラッグである、方法。 - 請求項1乃至17のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式XIであって、
(式XI)
XはN、O、S、或いはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、R9、およびR11は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、もしくはアルコキシカルボニルオキシであるか、或いはR9およびR11がエポキシド環を形成し、
R2、R3、R7、およびR10は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、もしくは何もないか、或いは薬学的に許容なそれらの塩、エステル、もしくはプロドラッグである、方法。 - 請求項1乃至17のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物がグリセオロージン、或いは薬学的に許容な塩、プロドラッグ、およびエステルである、方法。
- サイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量のフレデリカマイシンAを対象に投与するステップを含む、対象のサイクリンD1過剰発現を治療する方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法において前記サイクリンD1の過剰発現が新生物形質転換を引き起こす、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法において前記サイクリンD1の過剰発現が腫瘍成長を引き起こす、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法において前記治療が腫瘍成長を阻害するステップを含む、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法において前記治療が対象における腫瘍成長の発生を予防するステップを含む、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法において前記治療が対象に既存の腫瘍の成長を低下させるステップを含む、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が結腸癌を引き起こす、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が乳癌を引き起こす、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が肉腫を引き起こす、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が悪性リンパ腫を引き起こす、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が食道癌を引き起こす、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が、Pin1の過剰発現によって引き起こされる、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が、DNA損傷によって引き起こされる、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が、発癌性タンパク質によって引き起こされる、方法。
- 請求項28に記載の方法であって、当該方法においてサイクリンD1の過剰発現が、Ha-Rasによって引き起こされる、方法。
- 請求項28乃至42のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式IXであって、
(式IX)
当該式において、Cの周りではない点線は任意の二重結合であって、
R1はアルキル、アルケニル、アルカノイル、アルクニルであって、
R2は水素或いはアルキルであって、
R9およびR10はいずれも水素或いはともに以下の構造を有する環を形成し、
(構造)
- 請求項28乃至42のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物がフレデリカマイシンAであるか、或いは薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、方法。
- 請求項28乃至42のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式IIIであって、
(式III)
R1は1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至8個の炭素原子を有するアルケニル、アルカノイル、或いは2乃至8個の炭素原子を有するアルキニルであって、
R2は水素或いは1乃至8個の炭素原子を有するアルキルであって、
R3、R5、R6、R9、およびR10は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、アルカノイルであるか、或いは何もなく、
R4、R7、R8、R11は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、もしくはアルカノイル、或いは薬学的に許容なそれらのそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、方法。 - 請求項28乃至42のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式XIであって、
(式XI)
XはN、O、S、或いはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、R9、およびR11は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、もしくはアルコキシカルボニルオキシであるか、或いはR9およびR11がともにエポキシド環を形成し、
R2、R3、R7、およびR10は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、もしくは何もないか、或いは薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、方法。 - 請求項28乃至42のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物がグリセオロージンである、方法。
- 式VIであって、
(式VI)
XはN、O、S、或いはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、およびR9は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシであって、
R2、R3、およびR7は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、もしくは何もないか、或いは薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、式を有するフレデリカマイシンA化合物を腫瘍成長を治療するのに有効な量、対象に投与するステップを含む、対象の腫瘍成長を治療する方法。 - 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記治療が腫瘍成長を阻害するステップを含む、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記治療が対象における腫瘍成長の発生を予防するステップを含む、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記治療が対象に既存の腫瘍の成長を低下させるステップを含む、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長が結腸癌である、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長が乳癌である、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長が肉腫である、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長が悪性リンパ腫である、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長が食道癌である、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長がPin1の過剰発現によって引き起こされる、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長がDNA損傷によって引き起こされる、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長が発癌性タンパク質によって引き起こされる、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長がHa-Rasによって引き起こされる、方法。
- 請求項53に記載の方法であって、当該方法において前記腫瘍成長がBrcalの欠損或いはBrcalの突然変異によって引き起こされる、方法。
- 請求項53乃至66のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法においてフレデリカマイシンA化合物がグリセオロージンである、方法。
- Pin1関連状態を治療するために有効な量のフレデリカマイシンAの使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物を含む、パッケージ化したPin1関連状態の治療。
- サイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量のフレデリカマイシンAの使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物を含む、パッケージ化したサイクリンD1過剰発現の治療。
- 癌を治療するために有効な量のフレデリカマイシンAの使用説明書を添付したフレデリカマイシンA化合物を含む、パッケージ化した癌の治療。
- フレデリカマイシンA化合物と過形成阻害因子の組み合わせを、Pin1関連状態を治療するために有効な量、対象に投与するステップを含む、対象のPin1関連状態の治療方法。
- 請求項72に記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式IXであって、
(式IX)
当該式において、Cの周りではない点線は任意の二重結合であって、
R1はアルキル、アルケニル、アルカノイル、アルクニルであって、
R2は水素或いはアルキルであって、
R9およびR10はいずれも水素或いはともに以下の構造を有する環を形成し、
(構造)
- 請求項72に記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物がフレデリカマイシンAであるか、或いは薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、方法。
- 請求項72に記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式IIIであって、
(式III)
R1は1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、2乃至8個の炭素原子を有するアルケニル、アルカノイル、或いは2乃至8個の炭素原子を有するアルキニルであって、
R2は水素或いは1乃至8個の炭素原子を有するアルキルであって、
R3、R5、R6、R9、およびR10は独立に水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、アルカノイルであるか、或いは何もなく、
R4、R7、R8、R11はそれぞれ水素、1乃至8個の炭素原子を有するアルキル、もしくはアルカノイル、或いは薬学的に許容なそれらのそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、方法。 - 請求項72に記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物が式XIであって、
(式XI)
XはN、O、S、或いはCであって、
R1、R4、R5、R6、R8、R9、およびR11は独立に水素、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、もしくはアルコキシカルボニルオキシであるか、或いはR9およびR11がともにエポキシド環を形成し、
R2、R3、R7、およびR10は独立に水素、アルキル、アルカノイルであるか、もしくは何もないか、或いは薬学的に許容なそれらの塩、プロドラッグ、およびエステルである、方法。 - 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において前記フレデリカマイシンA化合物がグリセオロージンである、方法。
- 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において過形成阻害物質がタモキシフェンである、方法。
- 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において過形成阻害物質がパクリタキセルである、方法。
- 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において過形成阻害物質がドセタキセルである、方法。
- 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において過形成阻害物質がインターロイキン2である、方法。
- 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において過形成阻害物質がリツキシマブである、方法。
- 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において過形成阻害物質がトレチノインである、方法。
- 請求項72乃至81のいずれか1つに記載の方法であって、当該方法において過形成阻害物質がメトトレキセートである、方法。
- フレデリカマイシンA化合物および過形成阻害物質の組み合わせを、癌を治療するために有効な量、対象に投与するステップを含む、対象における癌を治療する方法。
- フレデリカマイシンA化合物および過形成阻害物質の組み合わせを、サイクリンD1過剰発現を治療するために有効な量、対象に投与するステップを含む、対象におけるサイクリンD1過剰発現を治療する方法。
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