JP2004531250A - 慢性痴呆疾患の検出方法、関連ペプチドおよび検出試薬 - Google Patents

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Abstract

本発明は、アルツハイマー病に罹患している患者からの生物学的サンプル中で定義されたペプチドおよびそれらの濃度を、対照群中の前記ペプチドの濃度と比較する定量方法に関する。本発明はさらに、治療を目的とする前記ペプチドの使用に関する。本発明によるペプチドは、対応する遺伝子を備えるタンパク質前駆体から発生し、特殊な方法で処理されて、翻訳後方法で修飾されている。これらのペプチドの濃度変化はアルツハイマー病の存在を示唆する。濃度変化の方向は、これらのペプチド各々に特異的である。アルツハイマー病はこれらのペプチドを個別にまたは組み合わせて同定することによって検出される。本発明はさらにまた、アルツハイマー病の経過を管理するため、その予後診断のため、およびアルツハイマー病に有効な治療薬を開発するためにも使用できる。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性痴呆疾患、または慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病または例えばレヴィー小体痴呆もしくは血管性痴呆のような関連神経疾患に関する素因の存在を検出する方法に関する。さらに本発明は、これらの疾患の存在を検出するため、これらの疾患および疾患の重症度の経過を管理するために見いだされたペプチドに関する。さらに本発明は、例えば抗体や核酸およびその均等物のような検出試薬であって、これらのペプチドないし対応する核酸を検出できる検出試薬に関する。さらに本発明は、神経疾患、特にアルツハイマー病を治療または予防するための、VGF、VGFペプチド、VGF抗体、VGF核酸、VGFタンパク質アンタゴニスト、VGFタンパク質アゴニスト、VGFペプチドアゴニストまたはVGFペプチドアンタゴニストを含む薬学的用途に関する。さらに本発明は、神経疾患、特にアルツハイマー病を有し、従って該疾患の臨床試験に組み込むのに適合した患者を確定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明におけるペプチドは、「神経内分泌特異的タンパク質VGF」とも称されるタンパク質VGFのフラグメントに関する。文献では、略語VGFはタンパク質である「ワクシニア成長因子(vaccinia growth factor)」もしくは「ワクシニアウイルス成長因子(vaccinia virus growth factor)および「血管透過性因子(Vascular Permeability Factor)」についても使用されるが、これらのタンパク質は本発明の対象であるVGFタンパク質には対応していない。
【0003】
痴呆疾患は、先進国では平均余命が長いためにますます大きな問題となっている。痴呆疾患はその大部分は治癒不能であり、患者の長期間に及ぶ介護を必要とする。これらの患者のほぼ半数は入院介護を受けている。痴呆症状を伴う疾患を含めると、60種を超える痴呆疾患が知られている。
【0004】
しかし、それらのうち約65%はアルツハイマー病(Alzheimer’s Disease、アルツハイマー疾患、AD)に分類されるので、この疾患を診断および治療することには重要な価値がある。アルツハイマー病以外に、特に次のような非アルツハイマー病が知られている:血管性痴呆、レヴィー小体痴呆、ビンスヴァンガー痴呆、並びに例えばパーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインガー病、クロイツフェルト・ヤコブ病等のような他の疾患の随伴症状として発生する痴呆疾患。
【0005】
アルツハイマー病は、知的能力の低下、意識混濁および自己保存能力や自立能力の低下症状が顕著な神経変性疾患である。アルツハイマー病では、特に短期的記憶の強度の制限が特徴的であり、例えば自分の子供時代について記憶のような患者の昔の記憶が侵害されることは遥かに少ない。形態学的には脳の変化が発生するが、これらは特にアミロイドアミロイド沈着および神経細胞変性の形で現れる。これらの形態学的変化は、患者の死後に組織学的に診断することができ、これまではこの疾患の唯一の確実な検出法であった。これらの組織病理的診断は、「アルツハイマー病登録簿を確立するためのコンソーシウム(CERAD)」が確定した基準に基づいて行われている。アルツハイマー病の診断には、現在は次の基準に基づく診断システムが使用されている:「国際疾病分類第10版(ICD−10)」、「米国精神医学会」発行の「精神障害の診断および統計マニュアル、第4版(DSM−IV)」、および「米国国立神経伝達傷害卒中研究所(NINCDS−ADRDA)」が定めた「作業部会基準」。
【0006】
これらのシステムは、アルツハイマー病の診断を行うことができるように一連の神経精神学的検査を使用するが、客観的に測定可能な臨床検査パラメータは存在しない。
【0007】
このためアルツハイマー病の診断は困難であるが、それは他の痴呆疾患と同様にこの疾患が緩慢に始まり、脳内の神経細胞の緩徐に進行する破壊が付随するためである。
【0008】
現在、アルツハイマー病を治療するために利用できる原因療法はない。この疾患は、例えばアセチルコリンのような神経伝達物質の投与のように、対症的にしか治療されていない。その他に可能性がある治療戦術として、現在は抗酸化物質、ラジカル・スカベンジャー(遊離基捕捉剤)、カルシウムチャネル遮断薬、抗炎症薬、セクレターゼ阻害薬、抗アミロイド抗体等の投与、並びにアミロイド−ペプチドに対する免疫が試みられている。しかし、現在至るまで、この疾患の原因療法はまだ可能にはなっていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、現在の技術水準におけるアルツハイマー病の診断における短所を回避して、慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を検出するための短時間でかつ高信頼性の方法を使用できるようにすることである。さらに本発明のもう1つの課題は、従来アルツハイマー病を治療するための満足できる治療アプローチがなかったので、アルツハイマー病を治療するための新規治療法を利用できるようにすることである。
【用語の定義】
【0010】
<受託番号NM_003378およびY12661に対応するVGFタンパク質もしくはペプチド>:
核酸配列NM_003378およびY12661から誘導されるペプチドはVGFタンパク質とも称され、VGFタンパク質のすべての自然に発生する対立遺伝子、突然変異体および多形体並びに組織特異的に発現したVGF変種を含んでいる。特に、疾患を原因として、または神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病の結果として発生するVGF変種も含まれている。さらにまたシグナル配列を備えたものおよび備えていないものを含むVGFタンパク質、未だプロセッシングされていないVGFタンパク質のプロ体、並びに既にプロセッシングされたVGFタンパク質、溶解性VGFタンパク質および膜安定性VGFタンパク質も含まれる。膜安定性VGFタンパク質は、膜貫通型アミノ酸配列を介して細胞膜もしくはオルガネラ膜と結合されていても、翻訳後修飾を介して例えばグリコシル−ホスファチジル−イノシトール(GPI)アンカーと結合されていてもよい。さらに選択的スプライシング、選択的翻訳開始点および翻訳終止点、RNA編集、選択的翻訳後修飾によって、並びに自然に発生するメカニズムによって発生した他のVGFタンパク質変種であるVGF配列の変形も含まれている。
【0011】
<VGFARPペプチド>:
下記では、VGFペプチドおよびVGFペプチド変種を、VGFARP(「VGFアルツハイマー関連ペプチド」)ペプチドと称する。VGFARPペプチドは、最初に挙げたVGF配列(NM_003378およびY12661)および自然に発生し得るその他のVGFタンパク質変種のどちらからも誘導することができる。さらにまた、VGFARPペプチドは2つの点突然変異した、2つの欠失した内部アミノ酸または2つの追加の内部挿入アミノ酸、並びにN末端および/またはC末端延長部を含有していてよい。しかし、このときVGFARPペプチドは、VGFタンパク質配列からの少なくとも8アミノ酸を含有していなければならない。N末端またはC末端延長部としては、VGFタンパク質配列においてVGFタンパク質のこの配列位置に存在するアミノ酸だけが考慮の対象となる。さらに、自然に発生するVGF多形および自然に発生するVGF突然変異体からのペプチドもまた、VGFARPペプチドと称される。VGFARPペプチドは、例えばグリコシル化およびリン酸化のような翻訳後修飾とともに、および/または好ましくは酸化ペプチドとしての化学修飾形で存在していてよい。例えば、VGFARP−12は非酸化ペプチドとしても酸化ペプチドとしても同定された。
【0012】
<化学修飾もしくは翻訳後修飾されたペプチド>:
化学修飾もしくは翻訳後修飾されたペプチドは、D−アミノ酸またはL−アミノ酸から構成されてもよく、またD−アミノ酸とL−アミノ酸との組み合わせから構成されてもよい。さらに、これらのペプチドには、珍しいアミノ酸、すなわち20種の標準アミノ酸に属さないアミノ酸が含まれていてもよい。珍しいアミノ酸の例としては特に、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、β−アラニン、β−アミノイソ酪酸、ノルバリン、ホモセリン、ノルロイシン、γ−アミノ酪酸、チオプロリン、4−ヒドロキシプロリン、α−アミノアジピン酸、ジアミノ酪酸、4−アミノ安息香酸、ホモシステイン、α−アミノペニシラン酸、ヒスタミン、オルニチン、グリシン−プロリンジペプチド、ヒドロキシリシン、プロリン−ヒドロキシプロリンジペプチド、シスタチオニン、エチオニン、セレノシステインがある。翻訳後修飾または化学修飾としては、特に次の構造、即ち、ペプチド配列中のシステインへの遊離システインの結合部、メチル基、アセチル器、ファルネシル基、ビオチニル基、ステアロイル基、パルミチル基、リポイル基、C−マンノシル基、リン基、サルフェート基、グリコシル化物、アミド化物、脱アミド物、ピログルタミン酸、シトルリン等によるアミノ酸配列の修飾が考えられる。
【0013】
<核酸>:
核酸は、自然起源からのものも、合成もしくは組換えで作製されたものも含むDNA、RNAおよびDNA−RNAハイブリッド分子であると見なされる。さらに含まれるのは、例えばホスホチオエートのような高いin vivo(生体内)安定性を備えた修飾ヌクレオチドを含有する化学修飾された核酸である。このような安定化された核酸は、リボザイム技術、アンチセンス技術およびトリプレックス核酸技術を使用する場合に既に利用されている。
【0014】
<有意性>:
有意という概念は、統計学における有意性の概念の意味で使用する。本特許出願明細書では、90%、好ましくは95%、より好ましくは99%未満の確率値を有意であると定義する。
【0015】
<感度>:
感度とは、疾患の診断において陽性診断結果が得られる、すなわち診断がその疾患の存在を正確に示唆する罹患患者の比率であると定義する。
【0016】
<特異性>:
特異性とは、疾患の診断において陰性診断結果が得られる、すなわち疾患が全く存在しないことを診断が正確に示唆する健常者の比率であると定義する。
【発明の概要】
【0017】
驚くべきことに、アルツハイマー病に罹患した患者の体液サンプル中でのみ、特に脳脊髄液中では、一定のペプチドの濃度が対照サンプル中のペプチド濃度に比較して変化するので、このためアルツハイマー病の検出が可能であることが見いだされた。対照群における濃度と比較したこれらのペプチドの変化は、アルツハイマー病の存在を示唆するので、したがって高い感度および特異性でこの疾患を検出するために適している。したがって患者を正常なVGF値もしくはVGFARP値へ調節する目的でVGFタンパク質またはVGFARPペプチド濃度を調節することを治療的に使用できる。
【0018】
課題を解決するために、本発明はジーンバンク(Gene Bank)受託番号NM_003378もしくは日本DNAデータバンク(DDBJ)の受託番号Y12661を備える配列から誘導された1つ以上のVGFペプチドを、個人の1つの生物学的サンプル中で同定することによって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病またはこのような疾患の素因を検出する方法を含んでいる。これらのVGFペプチドは当該疾患とおそらく因果関係があるので、本発明はアルツハイマー病もしくは関連神経疾患の治療のためのこれらのペプチドの使用も含んでいる。これらのペプチドまたはペプチドフラグメントは「VGF由来アルツハイマー病関連ペプチド」(VGFARP)と称され、VGFARP−1からVGFARP−38までナンバリングされている。2つのVGFタンパク質変種であるNM_003378およびY12661は、アミノ酸配列の13位しか相違しておらず、これら2つのVGFタンパク質からアルツハイマー病と対照群との区別を可能にするVGFペプチドが同定された。VGFARPペプチドであるVGFARP−11および−32は、受託番号Y12661を備えるVGF変種に由来し、またVGFARPペプチドであるVGFARP−25、−30、−31、−36および−37は、受託番号NM_003378を備えるVGF変種に由来する。残り全部のVGFARPペプチドは、それらのアミノ酸配列に基づくとどちらのVGF変種にも由来する可能性がある。これまでに既に2つの相違するVGF変種に由来するVGFARPペプチドが同定されたので、これらもしくはその他のVGF変種に由来するまた別のVGFARPペプチドが存在すると考えることができる。これらのVGFARPペプチドもまた同様に本発明の対象である。
【0019】
課題を解決するために、本発明は患者の生物学的サンプル中の少なくとも1つのマーカーペプチドを測定し、これを対照サンプル中の該マーカーペプチドの濃度と比較してアルツハイマー病を検出する方法を提供するが、このとき下記のポイントが満たされなければならない:1.マーカーペプチドとして、少なくとも1つのVGFARPペプチドまたは受託番号NM_003378もしくはY12661もしくは相同配列を備える核酸から誘導される1つのペプチドが使用される;2.患者のサンプル中における特定マーカーペプチドに対して特異的な該マーカーペプチドの対照サンプル中の該マーカーペプチドの濃度に比較した濃度上昇もまたは濃度低下が発生する;3.上記の方法における該マーカーペプチドの有意な濃度変化が、神経疾患、主としてアルツハイマー病に対する陽性検出結果であると評価される。
【0020】
このとき、一定のVGFARPペプチドの1つについて、基本的にアルツハイマー病患者では該ペプチド濃度の上昇しか発生しないか、またはこのVGFARPペプチドについて、基本的にアルツハイマー病患者では該ペプチド濃度の低下しか発生しない可能性がある。定義された1つのVGFARPペプチドについて、対照群に比較して1人の個別アルツハイマー病患者では上昇し、別のアルツハイマー病患者では低下したVGFARPペプチド濃度が同時に発生することはあり得ない。ほぼすべての疾患の医学的診断におけると同様に、基本的に偽陽性もしくは偽陰性の結果が出る、すなわち少数例では誤診が発生す可能性があるが、それはアルツハイマー病患者におけるVGFARPペプチドは対照群サンプルにおけるVGFARPペプチド濃度と100%の確率で相違するのではないためである。しかし、この問題は検査を複数回実施することで取り除ける。
【0021】
本発明においては、VGF配列のフラグメントであると解釈できるペプチドをVGFARPペプチドと称する。これらにはVGF由来の相同ペプチドが含まれる。これらには、これらのペプチドの自然に発生する対立遺伝子誘導体および好ましくは3つ以上のVGFが相違していないアミノ酸を備える相同突然変異体、特に点突然変異体が含まれる。本発明による好ましいマーカーは配列表に挙げられており、配列番号1〜35に対応してVGFARP−1〜VGFARP−38と指定されている。VGFARPペプチドの配列は、図1および表1に表示した。各々の配列番号に従ったVGFARPペプチドの分類は表1に示した。
【0022】
本発明による方法は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病においてその濃度が変化しており、極めて早期にある疾患および疾患リスクの上昇を早期に示唆する特異的バイオマーカーを確認する方法である。これは、当該疾患を診断するための信頼できる臨床マーカーを利用できるようにするために重要である。
【0023】
主として、サンプル中のVGFARPペプチドの濃度、さらに一定の複数のVGFARPペプチドの発生の特徴的なパターンも、疾患の重症度と相関している可能性がある。したがって、これらの新規マーカーは、経過および場合によっては治療に基づいて始まった治癒成果または疾患の進行低下を確認することができるので、アルツハイマー病を治療するための療法の開発および付随する管理を可能にする。アルツハイマー病の効果的治療法は現時点では不可能であり、治療法を開発するための前提条件は疾患を確実に検出できることであるので、アルツハイマー病の確実な検出方法を提供することが緊急に必要である。
【0024】
さらにVGFARPペプチドを検出できれば、アルツハイマー病を治療するための新規療法を開発するための臨床試験においてアルツハイマー病に罹患しているが、他の疾患には罹患していない患者だけを高度の特異性で選択することが可能になる。これは、試験結果の高度の信頼性を獲得するために重要である。間違ってアルツハイマー病と診断された患者を含むことは、アルツハイマー病の治療法に関する試験の結果の質にマイナスの影響を及ぼす。さらにVGFARPペプチドを検出できれば、患者の階層化が可能になり、それによって一定のアルツハイマー病治療戦術または臨床試験のために特に適合するアルツハイマー病患者のサブグループを適切に選択することができる。
【0025】
アルツハイマー病患者では、VGFARPペプチドの濃度が健常者に比較して著明に変化している。そこで、本発明の別の態様は、アルツハイマー病患者におけるVGFARP濃度を正常濃度にすることである。この方法はアルツハイマー病または関連神経疾患の治療のために使用できる。VGFタンパク質もしくはVGFARPペプチドの濃度が上昇している場合、これらの物質の濃度は、例えばVGFタンパク質もしくはVGFARPペプチドに特異的な抗体またはVGFに特異的なアンチセンス核酸、リボザイムもしくはトリプレックス核酸またはVGFARPペプチドアンタゴニスト、VGFタンパク質アンタゴニストの治療的投与によって低下させることができる。治療のためにはVGFタンパク質の内因性の発現またはVGFタンパク質からVGFARPペプチドへのプロセッシングを抑制する物質を投与することもできる。VGFタンパク質もしくはVGFARPペプチドの不足が疾患の原因である場合は、VGFタンパク質、VGFARPペプチド、VGFARPペプチドアゴニストまたはVGFタンパク質アゴニストの治療的投与を行うこともできる。VGFタンパク質もしくはVGFARPペプチドの内因性の産生は、例えばNGF、BNDFもしくはNT−3のような物質またはその他の適切な物質の治療的投与によって上昇させることができるが、それはこれらの物質がVGFの発現を上昇させるためである。例えばPC1、PC2もしくはPC3のようなプロホルモンコンバターゼのような、VGFタンパク質からVGFARPペプチドへのプロセッシングを促進する物質もまた治療的に使用できる。当然ながら、様々な治療戦術の組み合わせも可能であり、状況によっては有意義である。
【0026】
したがって本発明は、神経疾患、特にアルツハイマー病を治療する目的でVGFタンパク質およびVGFARPペプチドの濃度を直接的または間接的に調節するために、VGFタンパク質、VGFARPペプチド、VGFARPペプチドアゴニストおよびアンタゴニスト、VGFタンパクアゴニストおよびアンタゴニスト、抗VGFタンパク質抗体、抗VGFARPペプチド抗体、NGF、BNDF、NT−3、抗NGF抗体、抗BNDF抗体、抗NT−3抗体および上記のタンパク質の受容体に対する抗体の使用を含んでいる。抗体の代わりに、抗体フラグメント、抗体融合タンパク質、またはVGFタンパク質、VGFARPペプチド、NGF、BNDFもしくはNT−3に選択的に結合するその他の物質を使用することもできる。上記のタンパク質およびペプチドの代わりに、上記のタンパク質の融合タンパク質を使用することもできる。さらに、本発明は上記のタンパク質およびペプチドの発現を調節するアンチセンス核酸、トリプレックス核酸およびリボザイムの使用を含んでいる。さらにまた本発明は、上記のタンパク質の活性を調節するアゴニストおよびアンタゴニストを含んでいる。
【0027】
本発明のさらにまた別の実施形態は、上記のペプチドおよび核酸が血液脳関門および/または血液髄液関門を効果的に通過することを可能にする方法による、それらの製剤学的処方または化学的修飾である。それによってそれらは特に治療的使用のために適合する。これを達成するために、例えばVGFペプチド、VGFタンパク質、核酸、アゴニストまたはアンタゴニストがクモ膜下腔への通過に好都合であるように、例えば脂肪親和性になるようにそれらを修飾することができる。これは疎水性分子成分を挿入することによって、または例えばリポソームのような疎水性物質中にこれらの物質を「封入」することによって達成できる。さらに、これらのペプチド、タンパク質、核酸、アゴニストまたはアンタゴニストに例えばペプチド配列を付着させて、クモ膜下腔内への通過を好都合に、或るいは逆にクモ膜下腔からの通過を困難にさせることもできる。
【0028】
さらにまた、本発明は例えば静脈内注射、経口投与物質、吸入可能な気体もしくはエアロゾルとして、またはクモ膜下腔内または筋肉、脂肪、脳等のような組織への直接注射の形態での投与のような様々な経路を通しての、上記の治療薬の投与も含んでいる。それによって、これらの治療薬のバイオアベイラビリティおよび有効性の上昇を達成できる。例えば、経口投与されるペプチドまたはタンパク質は酸抵抗性カプセルによって、胃におけるタンパク質分解性分解から防御できる。強度の疎水性物質は、適切な製剤学的調製により親水性にして、例えば静脈内注射に適合するようにすることができる。
【0029】
本発明のまた別の実施形態は、VGFARPペプチドまたはVGFタンパク質へ選択的に結合する受容体を同定するための、これらの分子の使用である。これらの受容体も、神経疾患、特にアルツハイマー病の治療に適合するアゴニストまたはアンタゴニストの投与によって調節することができる。
【0030】
本発明において新たに同定された多数のVGFペプチドを使用すると、in vivoでVGFタンパク質のプロセッシングが行われるVGFタンパク質の位置を初めて検出することができる。これらのプロセッシング部位は、NM_003378のVGFタンパク質配列と関連付けると下記の配列位置である:371/372、418/419、479/480、480/481、481/482、482/483および483/484。Y12661のVGFタンパク質配列と関連付けると、次のプロセッシング部位である:371/372、419/420、480/481、483/484、484/485および485/486。実験により同定されたすべてのプロセッシング位置は、二塩基位置、すなわち正電荷アミノ酸側鎖(アルギニン=R、リシン=K)を備える連続するアミノ酸である。このような配列モチーフは、例えばプロホルモンコンバターゼによって認識されて切断されるが、このとき追加して両方の塩基性アミノ酸がエンドプロテアーゼ活性により除去される。プロホルモンコンバターゼという名称が意味するように、プロホルモンコンバターゼはプロホルモンをホルモンに転換させ、それによって新規の生物活性物質(ペプチド・ホルモン)が発生する。それらのプロ形態から、この方法で発生する生物活性ペプチドの例は、プロNGF/NGF、プロBDNF/BDNF等である[1]。したがって、本発明によるVGFARPペプチドは神経疾患、好ましくはアルツハイマー病と関連する治療薬のための攻撃点として適切なペプチド・ホルモンである。したがってVGFARPペプチド濃度の調節は、神経疾患、特にアルツハイマー病を治療するために使用できる。
【0031】
<VGF−生物学>:
本発明において同定されたVGFタンパク質(VGFペプチドの前駆体分子)は約68kDaの大きなタンパク質として、神経内分泌細胞およびニューロン細胞中で合成されるが、それらの発現は加齢とともに低下する[2]。VGF−遺伝子欠損マウスの試験では、重要な機能がエネルギー代謝に関係していることが明らかになった[3]。VGF−遺伝子欠損マウスは低体重を示し、代謝過剰性かつ活動過剰性である。VGFは膵臓のインスリンを産生するランゲルハンス島細胞中でも合成される。
【0032】
VGFは、ラットのクロム親和性細胞系(PC12−細胞系)の試験でも発見されており、「神経成長因子(NGF)」によるこの細胞の刺激は、VGFの濃度の12〜14倍の上昇を引き起こす[4,5]。NGFは、抹消神経系と中枢神経系の分化を調節する重要な成長因子である。その他のVGF発現を調節している因子は、「脳由来神経栄養因子(BDNF)およびニューロトロピン−3(NT−3)である[6]。In vivoではVGF−mRNAはニューロン活性、ニューロン損傷および生物リズム(生物時計)によって調節される[2,7〜9]。
【0033】
VGFは、おそらく塩基性アミノ酸を認識するニューロン特異的に発現したエンドプロテアーゼを介してニューロン細胞の分化の増加を伴ってタンパク質分解性でプロセッシングされる。Traniらが証明できたように、20、18および10kDaの質量を備えるC末端が発生する[10]。このVGF−プロセッシングは、後小胞体細網内で行われる。これらのペプチドは分泌小胞中に堆積し、好ましくは膜解重合後に遊離し、場合によってはニューロン伝達において重要な役割を果たすことができる[10]。例えばPC1、PC2もしくはPC3のようなプロホルモンコンバターゼは、文献からは二塩基配列部位でタンパク質前駆体分子をタンパク質分解性で分解するエンドプロテアーゼの例として知られている。しかし、我々が同定したVGFARPペプチドは、驚くべきことに10〜20kDaより顕著に少ない分子量を備えたフラグメントであり、したがってTraniらが報告しているVGFペプチドとは相違している。さらにTraniらはこれらのVGFペプチドを検出するために、VGFARPペプチドの配列とは相違するVGF−エピトープを認識する抗VGF抗体を使用している。我々はVGFARPペプチドをアルツハイマー病患者においても対照群患者においても検出した。我々が同定したペプチドは、VGFの新規のこれまでに報告されたことのないプロセッシング産物である。VGFARPペプチドの濃度は、各ペプチドに対して特異的な方法で、患者群中では対照群と比較して一貫して上昇しているか、または一貫して低下している可能性がある。これまでは、VGFタンパク質のC末端領域由来の未知の配列を有し且つ我々が新規に同定して初めて配列決定したペプチドより著明に大きな分子量を有する、他のVGFペプチドしか知られていなかった [10]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明による方法によって検出される慢性痴呆疾患は、好ましくはアルツハイマー病である。現在までに、アルツハイマー病患者において、本発明によるペプチドおよびペプチドフラグメントの濃度変化を検出することができた。その結果、本発明によるペプチドは、アルツハイマー病および関連神経疾患の検出および治療に援用できると結論付けることができる。
【0035】
同定は、主としてGene Bank受託番号NM_003378、またはDDBJ受託番号Y12661を備えるVGFタンパク質の一定のペプチドフラグメント、すなわちこれらのVGFタンパク質の部分配列を含んだペプチドに集中している。これらのVGFペプチド(VGFタンパク質フラグメント)は「VGF由来アルツハイマー病関連ペプチド(VGFARP)」と称され、VGFARP−1〜VGFARP−38まで通し番号が付けられている。VGFタンパク質とVGFARP−1〜VGFARP−38までとの関連は図1に示した。我々が確認したこれらのペプチドの配列は、配列表に記載されている。
【0036】
我々は生物学的サンプル中において、2種類のVGFタンパク質変種由来の様々なVGFタンパク質を初めて検出した。VGFARP−1〜VGFARP−38と名称を付けたこれらのペプチドは、VGFタンパク質の確定されたフラグメントである。これらのフラグメントは自然界で自然な方法で発生するが、これまでは文献には報告されていなかった。これらのフラグメントは文献中ではしばしば(例えばトリプシンのようなプロテアーゼを添加することで)in vitroタンパク質分解によって発生させられるペプチドとは相違している。したがって、これらは新規の従来知られていなかった物質である。これらのペプチドは、最初に逆相クロマトグラフィーを介して生物学的サンプルから濃縮し、精製し、引き続いて質量分析によって付随する他のペプチドから分離したので、その結果として、これらのVGFARPペプチドのシーケンシング(塩基配列決定)を行うことができた。
【表1】
Figure 2004531250
【0037】
Figure 2004531250
【0038】
Figure 2004531250
【0039】
*r1はアミノ酸49〜23のVGFタンパク質の配列もしくは配列の一部に対応する配列を表しており、VGFタンパク質のアミノ酸50に由来するr1は0〜27アミノ酸長であってよい。これに相応してr2はアミノ酸58〜64のVGFタンパク質配列もしくはその一部を表しており、VGFアミノ酸57に由来するR2は0〜7アミノ酸長であってよい。その他のペプチド鎖r3〜r16は上記に典型的に解説した図に相応してまとめられている。
【0040】
**VGFARP−12は酸化されていない、および単純に酸化されたペプチド(約16ダルトンの分子量の増加)として同定された。
【0041】
<適切なペプチド>:
ペプチドは、翻訳後修飾形または化学修飾形で存在している可能性がり、このような形態はそれらの質量、並びに質量分析による同定、さらに例えば逆相クロマトグラフィーにおけるようなクロマトグラフィーにおける溶出挙動に影響を及ぼす。特にこれらのペプチドは、検査されるサンプル中でグリコシル化、リン酸化、硫酸化、アミド化、酸化等がなされた状態で存在する可能性がある。例えば、非修飾ペプチドとしても酸化ペプチドとしても同定されたペプチドVGFARP−12のように、修飾ペプチドは主として酸化ペプチドとして存在している。
【0042】
これらのペプチドは、特に小数のアミノ酸がVGFタンパク質の対応する配列とは相違している場合、特に最高2アミノ酸がVGFタンパク質配列とは相違する場合に、VGFARPペプチドであると見なされる。加えて、VGFARPペプチド配列が当該VGFタンパク質のアミノ酸配列と比較して保存されている、すなわち変化していない少なくとも8アミノ酸を含有している限り、アミノ酸の点突然変異、欠失、挿入、並びにN末端およびC末端の延長が許容される。
【0043】
疾患の陽性検出のために、本発明の別の態様では、さらにこれらペプチド各々について1以上の同定されたペプチドの濃度を特異的方法で対照サンプル中の各々のペプチドの濃度と比較することにより、疾患の重症度を測定するために援用できることが予定されている。各ペプチド濃度と対照サンプル濃度との関係は、患者の重症度の決定を可能にする。
【0044】
対照サンプルとは、様々な対照からのプールサンプルである。検査対象のサンプルもまたプールサンプルであってよいが、このときに陽性結果が得られた場合には、引き続き個別検査が実施される。
【0045】
<適切な生物学的サンプル>:
生物学的サンプルは、好ましくは脳脊髄液(CSF)、または例えば血清、血漿、尿、便、涙液、滑液、喀痰等のようなサンプルであってよい。これは特に選択された検出方法(質量分析法、ELISA等)の感度に依存する。場合によっては、ホモジナイズされた組織サンプル、組織切片および生検標本もまた使用できる。したがって、本発明の別の実施形態では、検査すべきサンプルを調製するために、生検において入手された例えばヒトの組織サンプルから組織ホモジネートを作製することも予定されている。これらの組織は、例えば手動式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーまたは例えばウルトラトゥラックス(Ultraturrax)のような電動式ホモジナイザーを用いて粉砕し、引き続いて当業者によく知られている方法で、例えば0.1〜0.2M酢酸を含む酸性水溶液中で10分間煮沸する。引き続き、抽出物については、例えば質量分析法のような特定検出方法を実施する。サンプルは、例えば場合によっては通常の方法で希釈もしくは濃縮することで予備調製して保存することができる。
【0046】
<診断薬を作製するためのVGFARPペプチドの使用>:
さらに本発明は、本発明によるVGFARPペプチドまたは1つのVGFタンパク質のうちの少なくとも1つを、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を診断するために使用すること含み、またVGFARPペプチド特異的結合特性に基づいて、これらの疾患を検出するための診断試薬を開発するために適合する抗体もしくは他の薬剤を入手するために、VGFARPペプチドを使用することを含んでいる。本発明はさらに、これらのペプチドに特異的に結合することにより、または逆にそれ自身の表面上にVGFARPペプチドを発現させることにより、例えばVGFタンパク質もしくはVGFARPペプチドの受容体のような結合パートナーの同定を可能にするような、ファージ粒子を入手するためのVGFARPペプチドの使用をも含んでいる。
【0047】
<VGFARPペプチドの検出方法>:
本発明では、VGFARPペプチドを検出するための様々な方法を使用できる。患者のサンプル内でVGFARPペプチドを特異的に検出することを可能にするすべての方法が適切である。適切な方法は、特に、例えば質量分析法もしくは液体クロマトグラフィーのような物理的方法、例えば逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)のような分子生物学的方法、または例えば「酵素免疫吸着法(ELISA)」のような免疫学的検出方法である。
【0048】
<物理的検出方法>:
本発明の1つの実施形態は、本発明によるペプチドを定量または定性的に表示できる物理的方法の使用である。これらの方法には、特に質量分析法、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR(核磁気共鳴)分析等が含まれる。これらの方法では、検査すべきサンプルからの定量結果が、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、主としてアルツハイマー病に罹患している患者の集団および対象集団から入手された測定値と比較される。これらの結果から神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病の存在および/またはこの疾患の重症度を引き出すことができる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によると、サンプル中のペプチドは同定の前に、クロマトグラフィーによって、より詳細には、好ましくは逆相クロマトグラフィーによって分離されるが、特に好ましいのは高分解能の逆相高速クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いたサンプル中のペプチドの分離である。本発明のまた別の実施形態は例えば硫酸アンモニウム、ポリエチレングリコール、トリクロロ酢酸、アセトン、エタノール等のような沈殿剤を使用してサンプルを分別する沈殿反応の実施である。こうして得られたフラクションは、その後、例えば質量分析法のような特定の検出方法に個別にかけられる。本発明のまた別の実施形態は、液相抽出の使用である。このために、サンプルは、例えばポリエチレングリコール(PEG)のような有機溶媒および生理食塩水の混合物と混合される。その後はそれらの物理的特性に基づいて、サンプル中の一定の内容物は有機相に、他の物質は水相に沈積するので、相互に分離し、引き続いてさらなる分析を行なうことができる。
【0050】
<逆相クロマトグラフィー>:
本発明の特に好ましい実施形態には、ヒト髄液中のペプチドを分離するための逆相クロマトグラフィー、特にトリフルオロ酢酸とアセトニトリルから構成された展開液を使用する、C18逆相クロマトグラフィーの使用が含まれる。例えば、その都度、使用した展開液容量の各1/100を含有するフラクションが収集される。こうして入手したフラクションは質量分析、好ましくは例えばアセトニトリル、水、トリフルオロ酢酸およびアセトンの混合液中に溶解させたL(−)フコースおよびα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸から構成されるマトリックス液を使用し、MALDI−質量分析計(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)を用いて分析され、一定の質量の存在が確認され、有意性を定量される。これらの質量は、本発明によるペプチドVGFARP−1〜VGFARP−38の質量に対応する。
【0051】
<質量分析法>:
本発明の好ましい実施形態によると、VGFARPペプチドの同定は質量分析測定法、好ましくはMALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)質量分析法を用いて行うことができる。質量分析測定は、さらに好ましくは、その都度適切なペプチドの理論単一同位体質量を手掛りに計算される連続する質量信号の少なくとも1つを含んでいる。このとき実験誤差および自然アイソトープ分布を原因として、理論単一同位体質量からの軽度の偏差が発生する可能性がある。さらに測定方法に基づくMALDI質量測定では、ペプチドに1つのプロトンが添加され、それによって質量が1ダルトン上昇する。以下の質量は、我々が同定したペプチドの、適切なソフトウェア(ここではGPMAW4.02)を用いて計算した理論単一同位体質量に対応する。これらの理論単一同位体質量は、1つのサンプル中で個別に、または組み合わせて発生する可能性がある:VGFARP−1=3666,8278/VGFARP−2=3950,9875/VGFARP−18=3567,7594/VGFARP−3=3595,7907/VGFARP−4=3879,9504/VGFARP−5=3401,6852/VGFARP−6=3614,8077/VGFARP−7=3685,8448/VGFARP−19=3302,6167/VGFARP−20=3173,5741/VGFARP−21=3955,9889/VGFARP−10=1336,6735/VGFARP−22=2503,1827/VGFARP−15=≧727,3501/VGFARP−23=≧851,4137/VGFARP−24=≧730,3246/VGFARP−25=3745,7343/VGFARP−26=1235,5782/VGFARP−27=≧833,4395/VGFARP−11=7518,2744/VGFARP−28=2031,8981/VGFARP−29=2418,0419/VGFARP−30=4806,0408/VGFARP−31=3456,5513/VGFARP−32=4806,0408/VGFARP−33=4058,7043/VGFARP−12=5776,6294/VGFARP−13=6618,0363/VGFARP−34=1380,7249/VGFARP−35=≧946,4468/VGFARP−16=≧862,3192/VGFARP−17=≧961,4063/VGFARP−36=3903,0180/VGFARP−37=3787,9911/VGFARP−38=≧920,4828。
【0052】
記号≧(〜以上)は、当該VGFARP−ペプチドに対して任意の大きな質量ではなく、単に、このペプチドの末端に追加して存在するアミノ酸に基づいて生じる可能性がある質量であると理解しなければならない。これらペプチドの末端には、任意のアミノ酸が追加して存在するのではなく、VGFタンパク質の配列に基づいてこの配列位置に存在する可能性があるようなアミノ酸だけが存在する可能性がある。
【0053】
<VGFARPペプチドの配列の質量分析測定>:
さらに、この実施形態を実際に使用する場合は、適切なペプチドの質量の同一性を確認することによって検出結果を保全することが可能であり、そうするのが賢明であるが、このときには1つのVGFタンパク質から誘導できるペプチド信号だけを考慮に入れる。この保全は好ましくは、例えばMS/MS分析のような質量分析法を用いてペプチド信号の同定を介して行う[11]。
【0054】
本発明の方法によって、VGFタンパク質の新規の特異的ペプチド(VGFARPペプチド)を同定し、その重要性を認識した。これらのVGFARPペプチドおよびそれらの誘導体を、ここではVGFARP−1〜VGFARP−38と称する。それらの配列は配列表に記載されている。VGFARPペプチドであるVGFARP−15、−16、−17、−27、−35およびVGFARP−38は、Nおよび/またはC末端において、関連するVGFタンパク質の対応する配列に相応して追加のアミノ酸を含んでいる可能性がある。本発明は、未修飾形、化学修飾形または翻訳後修飾形の、組換えまたは合成によって作製された、並びに生物学的サンプルから単離されたVGFARPペプチドをも含むものである。その差異、VGFARPペプチドが、ペプチド配列内の同一性および位置においてVGFタンパク質と一致する少なくとも8アミノ酸を有している限りにおいて、2つの点突然変異並びにその他の偏差も可能である。
【0055】
<分子生物学的検出法>:
最後に、本発明はさらに、VGFARPペプチドに対応し、特に本発明によるVGFARPペプチドに対応した核酸、並びに関連するVGFタンパク質およびVGFペプチドを間接的に測定および定量するためのそれらの使用も含んでいる。この中にはさらに、例えばmRNAの5’−もしくは3’−非翻訳領域のような非コード化配列を示す核酸、または特異的ハイブリダイゼーション実験のために十分なVGFの核酸配列との配列対応を示す関連タンパク質、特にVGFARPペプチドを間接的に検出するために適してた核酸も含まれる。
【0056】
このための1つの実施例には、例えば生検標本のような患者からの組織サンプルの入手およびそれに引き続くGeneBank受託番号NM_003378またはDDBJの受託番号Y12661を備える遺伝子に対応する、またはホモログVGF変種に対応するRNA転写産物の濃度の測定が含まれる。このとき試験されるサンプルからの定量結果(強度)がアルツハイマー病患者の集団および対象集団から入手された測定値と比較される。定量のためには、当業者に周知の方法で、例えば逆転写酵素・ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、定量リアルタイムPCR(ABI PRISM(R)7700配列検出システム、アプライド・バイオシステムズ[Applied Biosystems]社製、フォスターシティ、CA、米国)、in situハイブリダイゼーション法もしくはノーザンブロット法のような方法を使用できる。その結果から、慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病の存在および/またはその重症度を引き出すことができる。
【0057】
<免疫学的検出法>:
本発明のさらに別の好ましい実施形態によると、VGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質の同定は免疫学的検出法、好ましくはELISA(酵素免疫吸着法)を使用して実施することができる。この免疫学的検出法は、少なくとも1つのVGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質を確認する。特異性を上昇させるために、さらに好ましくは、VGFARPペプチドの検出が同一分子内の相違するエピトープを認識する2つの抗体の特異性に依存する、いわゆる「サンドイッチELISA」を使用することができる。しかし、VGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質を検出するためには、また別のシステム、例えば直接もしくは競合ELISAのようなELISAシステムを使用することもできる。さらにまた例えばRIA(ラジオイムノアッセイ)、EIA(酵素免疫測定法)、ELI−スポット法等のようなELISAに類似する別の検出法も、免疫学的検出法として適している。定量のための標準物質としては、生物学的サンプルから単離されたか、組換え作製されたか、または化学合成されたVGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質を使用することができる。1つ以上のVGFARPペプチドの同定は、例えば、一般にVGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質に対して生じた抗体を用いて実施できる。このような検出のために適した別の方法は、特にウェスタンブロッティング法、免役沈降法、ドットブロット法、プラズモン共鳴分析法(BIACORE(R)−Technologie、バイオコア・インターナショナル[Biocore International AB]社製、ウプサラ、スウェーデン)、ファージ粒子法、PNAs(ペプチド核酸法)、親和性マトリックス法(例、ABICAP−Technologie、ABION Gesellschaft fuer Biowissenschaften und Technik mbH、ユーリッヒ、ドイツ)等である。一般に、特異的検出系を構成できるすべての物質/分子は、特異的にVGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質に結合するので、検出試薬として適している。
【0058】
<VGFARPペプチドおよび抗VGFARPペプチド抗体の入手>:
本発明の別の実施形態は、当業者にはよく知られている組換え発現系、クロマトグラフィー法および化学合成プロトコルを使用して、VGFARPペプチドを得ることである。このようにして入手したVGFARPペプチドは、特に、特定のVGFARPペプチドを定量するための標準物質として、またはVGFARPペプチド抗体を作製するための抗原として使用することができる。VGFARPペプチドを単離および入手するための当業者に周知の適切な方法には、ペプチドの組換え発現が含まれる。VGFARPペプチドを発現させるためには、特に例えば大腸菌のような細菌、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母細胞、例えばハスモンヨウ近似種(Spodoptera frugiperda、Sf−9)のような昆虫細胞、または例えば「チャイニーズハムスター卵巣(CHO)」細胞のような哺乳類細胞等の細胞系を使用できる。これらの細胞は、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション)から入手できる。VGFARPペプチドを組換え発現させるためには、例えば分子生物学的方法を用いて、プロモーターや抗菌性選択マーカー等のような適切な調節核酸配列と組み合わせて、VGFARPペプチドをコードする核酸配列が発現ベクター内に挿入される。このために適した1つのベクターは、例えばInvitrogen(インビトロゲン)社製のベクターpcDNA3.1である。このように入手したVGFARPペプチド発現ベクターは、その後、例えばエレクトロポレーション法によって適切な細胞中に挿入することができる。このように作製したVGFARPペプチドは、C末端もしくはN末端に、例えばポリ−ヒスチジン配列、ヘマグルチニン−エピトープ(HA−タグ)のようなペプチド、または例えばマルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)のようなタンパク質、または例えばGAL−4 DNA結合ドメインもしくはGAL4−活性化ドメインのようなタンパク質ドメインの非相同配列と融合させることができる。化学合成によるVGFARPペプチドの作製は、例えば様々な製造業者から入手できる全自動合成装置を使用して、メリフィールド(Merrifield)の固相合成法によって行うことができる。
【0059】
本発明の別の実施形態は、逆相クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過法、等電点電気泳動法等、または例えば予備免疫沈降法、硫酸アンモニウム沈殿法、有機溶媒による抽出法等のようなその他の方法を用いた、生物学的サンプルまたは組換え発現系の細胞培地もしくは細胞溶解液からのVGFARPペプチドの単離である。本発明のさらに別の実施形態は、VGFARPペプチドを使用しての、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体の入手である。抗体の入手は、通常は当業者が精通している方法で行われる。1つの好ましい実施形態は、VGFARPペプチド特異的抗体の作製および入手であり、特に好ましい実施形態は、ネオエピトープ、つまりVGFタンパク質には存在せず、VGFARPペプチド上にしか存在しないエピトープを認識するVGFARPペプチド特異的抗体の作製である。このような抗VGFARPペプチド抗体は、VGFタンパク質の存在下でVGFARPペプチドの特異的な免疫学的検出を可能にする。ポリクローナル抗体は、例えばマウス、ラット、ウサギもしくはヤギのような実験動物の免疫によって作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば実験動物の免疫と、引き続きハイブリドーマ技術を使用した、または例えばモルフォシス(MorphoSys)社(マーティンスリード、ドイツ)のHuCAL(R)抗体バンクのような抗体バンクを介してのような組換え実験の試み、またはその他の当業者にはよく知られた組換え作製方法を介して入手することができる。抗体は、例えばFabフラグメントもしくはFab2フラグメント等のような抗体フラグメントの形状で使用することもできる。
【0060】
<VGFARPペプチド測定による治療の開発および監視>:
また別の実施例は、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病に対する開発中の療法の有効性を評価する目的での、上記のVGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質の定量法もしくは定性法である。本発明はさらにまた、これらの疾患、特にアルツハイマー病に対する治療法の開発を目的とした、臨床試験のために適切な患者を識別するためにも使用できる。このときの検査すべきサンプルからの定量結果は、対照集団および患者群から入手された測定値と比較される。これらの結果から、治療薬の有効性、ないしは臨床試験に対する患者の適格性を導き出すことができる。治療および臨床試験のための有効性試験および正しい患者の選択は、治療薬の使用および開発の成功にとって極めて重要であるが、これまではアルツハイマー病に対してこれを確実に可能にする臨床的に測定可能なパラメータは利用できなかった[12]。
【0061】
<VGFタンパク質、VGFARPペプチド、およびこれらの物質の発現および生物学的適合性を調節する物質の治療有効性についての精査>:
このための実施例は、細胞系のインキュベーションと、VGFタンパク質やVGFARPペプチドを用いたその処理、VGFタンパク質の発現を促進する例えばNGF、BNDFもしくはNT−3のようなVGFタンパク質の発現を促進する物質を用いた処理、または例えばプロホルモンコンバターゼのようなVGFタンパク質からVGFARPペプチドへのプロセッシングを促進する物質を用いた処理とを含んでいる。それによって、VGFタンパク質およびVGFARPペプチドの生物学的特性は神経疾患、特にアルツハイマー病と関連付けて確認することができる。融合タンパク質および融合ペプチドもまた細胞系の処理のために使用でき、例えばプロホルモンコンバターゼから構成される融合タンパク質は、細胞内部への融合タンパク質の輸送を促進するペプチド配列と融合する。例えばプロホルモンコンバターゼの考えられる融合パートナーの例は、HIV−TAT配列またはアンテナペディア配列等である。同様に、細胞系は、トランスフェクトされた細胞によってVGFタンパク質もしくはVGFARPペプチドの発現を直接的もしくは間接的に引き起こすような、発現ベクターを用いてトランスフェクトすることができる。これらの発現ベクターは、特にVGFARPペプチド、VGFタンパク質、NGF、BNDF、NT−3もしくはプロホルモンコンバターゼをコードすることができる。上記のタンパク質を組み合わせたトランスフェクションもまた実施できる。あるいはまた、適切な細胞系を抗VGFタンパク質抗体もしくは抗VGFARPペプチド抗体、またはVGFの発現を抑制する核酸、例えばVGFアンチセンス核酸、VGFトリプレックス核酸、またはVGF−mRNAに向けられたリボザイムを用いて処理することもできる。抗NGF、抗BNDFもしくは抗NT−3抗体を用いての処理も、VGFタンパク質発現を抑制するために実施できよう。特に神経モデル系としてVGFとの関連で適切であると思われる細胞系は、このような試験に援用することができる。これらの試験のための読み出し系としては、特に処理された細胞の増殖率、それらの代謝活性、細胞のアポトーシス率、細胞形態の変化、細胞固有のタンパク質もしくはレポーター遺伝子の発現、または細胞死に対するマーカーとしてのサイトゾル細胞成分の遊離を確認する検査を使用できる。その他の試験系として、例えば神経疾患のためのモデルとして、特にアルツハイマー病のモデルとして通用する、特にマウスもしくはラットのような実験動物の適切な系統を使用できる。これらの実験動物は、VGFARPペプチドもしくはVGFタンパク質の濃度の調節を目的にする治療戦術の有効性を試験するために援用できる。さらに、実験動物において、例えばVGFタンパク質、VGFARPペプチド、NGF、BNDF、NT−3、プロホルモンコンバターゼ等のようなタンパク質およびペプチドも試験できる。その場合、これらのペプチドおよびタンパク質は、状況によってはそれらが血液脳関門および/または血液髄関門を良好に通過できるように製剤学的に調製することができる。製剤学的調製方法としては、特にリポソーム封入タンパク質およびペプチド、例えばHIV−TAT配列のような輸送配列と融合しているタンパク質およびペプチド等を使用できる。さらに、ペプチドおよびタンパク質は脂肪親和性の特性を獲得して、より容易に細胞内へ侵入できるように化学修飾することができる。水溶液中で難溶性であるペプチドは逆に、それらが親水性になり、例えば静脈注射可能な治療薬として使用できるように化学修飾することができる。経口投与するための感受性物質を胃中で保護するためには、耐酸性カプセルを使用できる。
【0062】
動物モデルを使用した試験における読み出しパラメータは、動物の余命期間、それらの挙動およびそれらの短期的記憶能力であってよい。実験動物のために適合する記憶テストの例は、「モリス水迷路(Morris water maze)検査」である。その他のパラメータとしては、例えば血液検査、脳血流量の測定、代謝試験のような身体機能の測定、VGFタンパク質およびVGFARPペプチドの発現率および疾患と関連して存在する他のタンパク質、並びに例えば脳のような組織での形態学的および組織学的検査を援用することができる。
【0063】
本発明を下記では実施例を手掛りに図を参照しながら詳細に説明する。
【0064】
図1は、本発明によるペプチドと、図においてデータバンク受託番号NM_003378およびY12661と称されているVGFタンパク質の2つの既知の変種との間の整列を示している。VGFタンパク質の2つの変種において同一である配列位置は、NM_003378の配列では星印を付けて示されている。配列における相違は、アミノ酸コードによって黒い背景上の白い字で示されている。VGFARP−12、−13および−34の部分配列の終端もしくは始端の矢印は、特定配列が2列に渡って整列していることを示している。
【0065】
図2は、脳脊髄液からVGFRPペプチドを分離および濃縮するための、実施例2による逆相クロマトグラフィーを用いて記録されたクロマトグラムを示している。
【0066】
図3は、実施例2によるヒト脳脊髄液の逆相クロマトグラフィーを実施した後に、3986ダルトンの理論単一同位体質量を用いてVGFARP−7の実施例3によるMALDI質量分析測定によって発生したスペクトルを示している。VGFARP−7は、アミノ酸26〜62のVGF配列(受託番号Y12661)に対応する。
【0067】
図4は、相対定量質量分析法としてのMALDIにより得られたデータを示している。サンプルは様々な量の様々な標準ペプチドと混合され、これらの標準信号の強度も代表的なサンプル信号の強度も確認された。標準物質の全信号強度は0.64μM(=1)の濃度での信号強度へ標準化された。各ペプチドは、信号強度対濃度の個別の典型的比率を示しており、これはこの図において曲線の傾斜に基づいて読み取ることができる。
【0068】
図5は、本発明によるペプチドVGFARP−13の、実施例4に従ったMS/MSフラグメントスペクトルを示している。
【0069】
上方の図形:測定の生データ。
【0070】
下方の図形:VGFARP−13の転換され、逆重畳化された質量スペクトル。
【0071】
ピークパターンはVGFARP−13に特徴的である。VGFARP−13はアミノ酸421〜479のVGF配列(受託番号Y12661)に対応する。
【0072】
図6A〜6cは、対照群患者における信号強度とアルツハイマー病患者のサンプル中の信号強度とを比較した、統合MALDI質量分析測定による様々なVGFARPペプチドの比較を「箱ひげ図(Box−Whisker−Plots)」の形で示している。
【実施例1】
【0073】
VGFARPペプチドを測定するための脳脊髄液の入手
髄液もしくは脳脊髄液は4つの脳室およびクモ膜下腔に含まれている液体であり、特に側室の脈絡叢内で形成される。脳脊髄液の採取はほとんどは腰椎穿刺によって、まれには後頭下穿刺または脳室穿刺によって行う。脳脊髄液を採取するために腰椎穿刺(脊椎穿刺)を行う場合は、長い中空針を用いて第3〜4腰椎または第4〜5腰椎棘突起間での脊髄クモ膜下腔を穿刺して髄液を入手する。引き続きサンプルを2000×gで10分間遠心し、上清を−80℃で保存する。
【実施例2】
【0074】
VGFARPペプチドの質量分析測定を行うための脳脊髄液(CSF)中のペプチドの分離
CSF中のVGFARPペプチドを質量分析測定により検出するためには、本実施例においてペプチド性内容物を分離することが必要である。このサンプル前処理は、本発明によるペプチドを濃縮するため、および測定を妨害する可能性のある成分から分離するために役立つ。分離方法として逆相クロマトグラフィーを実施する。この場合、様々なRPクロマトグラフィー樹脂および溶離剤は同等に適合する。下記では例として、バイダック(Vydac)社製の4mm×250mmサイズのC18逆相クロマトグラフィーカラムを使用したVGFペプチドの分離を説明する。次の組成の展開剤を使用した:展開剤A:0.06%(v/v)トリフルオロ酢酸、展開剤B:0.05(v/v)トリフルオロ酢酸、80%(v/v)アセトニトリル。クロマトグラフィーはアジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies)社製のマイクロフローセルを備えたアジレント・テクノロジーズ社製HP−ChemStation1100を使用して33℃で実施した。サンプルにはヒト脳脊髄液を使用した。髄液440μLに水を添加して1650μLへ希釈し、pHを2〜3へ調整し、サンプルを18000×gで10分間遠心し、最後にこのように前調製したサンプル1500μLをクロマトグラフィーカラムに添加した。クロマトグラフィー条件は次の通りであった:時点0分までは5%展開剤Bを使用し、時点1〜45分までは展開剤Bの濃度を50%まで持続的に増加させ、時点45〜49分までは展開剤Bの濃度を持続的に100%まで増加させ、引き続き時点53分までは一定の100%緩衝液Bを使用する。クロマトグラフィー開始10分後に、各0.5mLずつの96フラクションの収集を開始する。ここに記載した試験条件下で作製した脳脊髄液サンプルのクロマトグラムは図2に示した。
【実施例3】
【0075】
MALDI質量分析を用いたペプチドの質量の確認
質量分析のためにはMALDI(マトリックス支援レーザー吸着イオン化)−TOF−質量分析計においてペプチドの典型的陽イオンスペクトルを作成する。適切なMALDI−TOF−質量分析計は、パーセプティブ・バイオシステムズ(PerSeptive Biosystemz、フラミンガム)社(Voyager−DE、Voyager−DE PROもしくはVoyager−DE STR)またはブルーカー・ダルトニック(Bruker Daltonik、ブレーメン)(BIFLEX)社によって製造されている。サンプルを調製するためには、サンプルを典型的には有機酸から構成されるマトリックス物質と混合する。ペプチドのために適している典型的なマトリックス物質は、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸および2,5−ジヒドロキシ安息香酸である。本発明によるVGFARPペプチドを測定するためには、凍結乾燥させた500μLヒト脳脊髄液に対応する逆相クロマトグラフィー後に得られる等量を使用する。クロマトグラフィーにかけたサンプルを15μLのマトリックス液に溶解させる。このマトリックス液は例えば49:49:1:1の容積比のアセトニトリル、水、トリフルオロ酢酸およびアセトンから構成される混合溶媒中に溶解させた10g/Lのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸および10g/L L(−)フコースを含有している。この溶液から0.3μLをMALDI担体板に移し、乾燥させたサンプルをパーセプティブ・バイオシステムズ製のMALDI質量分析計Voyager−DE STR内で分析する。測定は「ディレイド・エクストラクション(遅延引き出し)」(TM)を用いる「リニアモード」で行われる。本発明によるVGFARPペプチドを測定するための実施例は図3に示した。
【0076】
MALDI−TOF質量分析法は、例えば本発明によるVGFARPペプチドのようなペプチドがそれによって検出器飽和が回避される質量分析計の動的測定範囲内にある濃度で存在する場合は、これらのペプチドを定量するために使用できる。これはマトリックス液1μL当たり33.3μLの髄液当量濃度において脳脊髄液中の本発明によるVGFARPペプチドを測定する場合に該当する。各ペプチドに対して測定信号と濃度との間に特異的比率があるが、これはMALDI質量分析法を主としてペプチドの相対定量に援用できることを意味する。この実態は図4に示した。サンプルを相違する量の様々な標準ペプチドと混合すると、これらの標準信号の強度もサンプル信号の強度も確認することができる。例えば図4は相対定量MS法としてのMALDI測定を示している。標準物質の全信号強度は0.64μMの濃度(=1)で標準化した。各ペプチドは曲線の傾斜に基づいて読み取ることができる信号強度対濃度の個別の典型的な比率を示している。
【実施例4】
【0077】
VGFARPペプチドの質量分析法による同定
本発明によるVGFARPペプチドを定量するためには、実施例2にしたがって脳脊髄液の逆相クロマトグラフィーによって入手したフラクション内のペプチドの分析対象の質量信号が実際に本発明によるVGFARPペプチドであることを確証しなければならない。
【0078】
これらのフラクションでの本発明によるペプチドの同定は、例えばナノスプレーMS/MSを用いて行われる[11]。質量分析計内のVGFARPペプチドイオンは、特異的m/z(質量/負荷)に基づいて質量分析計内で当業者によく知られた方法で選択される。この選択されたイオンは、引き続いて例えばヘリウムもしくは窒素のような衝撃ガスを用いた衝突エネルギーを供給することによってフラグメント化され、結果として生じたVGFARPペプチド/フラグメトが統合分析装置内の質量分析計で検出され、対応するm/z値が測定される(タンデム−質量分析計の原理)[13]。ペプチドのフラグメント化挙動は、例えば50ppmの質量精度においてその中にVGFタンパク質の配列が登録された配列データバンクにおけるコンピュータ支援検索方法[14]を使用する本発明によるVGFARPペプチドの著明な同定を可能にする。この特殊な例では、アプライド・バイオシステムズ・サイエックス(Applied Biosystems−Sciex、米国)社製の四重極TOF装置のモデル「キュースター・パルサ(QStar−Pulsar)」を用いて質量分析を実施した。典型的なMS/MSフラグメントスペクトルを図5に示した。
【実施例5】
【0079】
患者サンプル中の相対濃度と対照サンプル中の相対濃度とを比較するためのVGFARPペプチドの質量分析による同定
222例の臨床サンプル、すなわち対照サンプル82例およびアルツハイマー病に罹患している患者のサンプル130例に対して、実施例1および2にしたがったサンプル前調製後に実施例3にしたがって本発明によるVGFARPペプチドの流動式MALDI測定を実施した。典型的MALDI信号強度は、図6A〜6Cに「箱ひげ図(Box−Whisker−Plots)」の形で描出した。図6に示した「箱ひげ図」は、アルツハイマー病の29〜45例のサンプル、ないしは13〜44例の対照サンプル各々について各実験が実施された測定値に基づいている。表示した「箱ひげ図」は、対照サンプル中の様々なVGFARPペプチドの統合MALDI質量分析法による信号強度とアルツハイマー病患者のサンプルにおけるMALDI信号強度との比較を可能にする。このとき、「箱」、即ち図6A〜6Cのグラフ中の柱は各々がその中に各MALDI信号強度の50%が存在するMALDI信号強度の範囲を含んでおり、「箱」から出て上方および下方を指している線(「ひげ」)は、各々が最高信号強度(上方四分位)を示している測定値の25%が存在する、ないしは各々が最低信号強度(下方四分位)を示している測定値の25%が存在する範囲を示している。柱を横断している線は中央値を示し、柱内の破線は平均値を示している。
【0080】
本文書の見出しは単に本文を構造化するためだけに決定した。これらは、記載された実情を限定するまたは制限することを目的に決定したものではない。すべての実施例は本発明の考えを詳細に特徴付けることを意図しているが、本発明の範囲を限定することを意図してはいない。
【参考文献】
【0081】
Figure 2004531250
Figure 2004531250

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1A】VGFARPペプチドとデータバンク受託番号NM_003378およびY12661に対応する2つの既知のVGFタンパク質とを整列させた図である。
【図1B】VGFARPペプチドとデータバンク受託番号NM_003378およびY12661に対応する2つの既知のVGFタンパク質とを整列させた図である(続き)。
【図2】脳脊髄液からVGFARPペプチドを分離および濃縮するための逆相クロマトグラフィーの図である。
【図3】VGFARP−7の実施例での質量分析測定(MALDI)の図である。
【図4】相対定量質量分析法としてのMALDIの図である。
【図5】ペプチドVGFARP−13の実施例でのMS/MSフラグメントスペクトルの図である。
【図6A】アルツハイマー病患者および対照群患者におけるVGFARP−1、VGFARP−2、VGFARP−18、VGFARP−3、VGFARP−4、VGFARP−5、VGFARP−6、およびVGFARP−7の濃度を定量的に比較するための「箱ひげ図(Box−Whisker−Plots)」である。
【図6B】アルツハイマー病患者および対照群患者におけるVGFARP−19、VGFARP−20、VGFARP−21、VGFARP−10、VGFARP−22、VGFARP−28、VGFARP−29、VGFARP−30/32、およびVGFARP−31の濃度を定量的に比較するための「箱ひげ図(Box−Whisker−Plots)」である。
【図6C】アルツハイマー病患者および対照群患者におけるVGFARP−12、VGFARP−13、VGFARP−36、およびVGFARP−37の濃度を定量的に比較するための「箱ひげ図(Box−Whisker−Plots)」である。

Claims (43)

  1. 少なくとも1つのマーカーペプチドの相対濃度を測定して対照サンプル中の該マーカーペプチドの濃度と比較することにより、慢性痴呆疾患または慢性痴呆疾患の素因の存在を検出する方法において:
    a)マーカーペプチドとして日本DNAデータバンク(DDBJ)からの受託番号Y12661を備える配列から誘導したペプチドが使用されことと;
    b)サンプル中の特定マーカーペプチドに対して特異的な濃度変化を対照サンプルと比較して確認されることと;
    c)b)に挙げた方法における該マーカーペプチドの有意な濃度変化が、慢性痴呆疾患についての陽性検出結果であると評価されることとを特徴とする方法。
  2. 少なくとも1つのマーカーペプチドの相対濃度を測定して対照サンプル中の該マーカーペプチドの濃度と比較することにより、慢性痴呆疾患または慢性痴呆疾患の素因の存在を検出する方法において:
    a)マーカーペプチドとしてジーンバンク(Gene Bank)受託番号NM_003378を備える配列から誘導したペプチドが使用されることと;
    b)サンプル中の特定マーカーペプチドに対して特異的な濃度変化が対照サンプルと比較して確認されることと;
    c)b)に挙げた方法における該マーカーペプチドの有意な濃度変化が、慢性痴呆疾患についての陽性検出結果であると評価されることとを特徴とする方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法において、前記少なくとも1つのペプチドが、
    a)VGFARPペプチドであるか、または
    b)DDBJの受託番号Y12661に対応するペプチドであるか、または
    c)Gene Bank受託番号NM_003378に対応するペプチドであるか、または
    d)a)〜c)に挙げたペプチドの自然に発生する対立遺伝子誘導体であるか、または
    e)対応する非突然変異VGFARP配列とは最高2アミノ酸が相違するVGFARP突然変異体であるか、または
    f)アミノ酸配列がb)もしくはc)に挙げたアミノ酸配列とは最高20%相違する、b)〜c)に挙げたペプチドの突然変異体であるか、または
    g)化学修飾もしくは翻訳後修飾された、a)〜f)に対応するペプチドであることを特徴とする方法。
  4. 請求項1、2または3に記載の慢性痴呆疾患を検出する方法において、それらの感度および/または特異性を上昇させるために、慢性痴呆疾患のための他の診断方法と組み合わせて実施されることを特徴とする方法。
  5. 請求項1、2、3または4に記載の方法において、前記痴呆疾患がアルツハイマー病または関連神経疾患、特にレヴィー小体痴呆もしくは血管性痴呆であることを特徴とする方法。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の方法において、少なくとも1つの同定されたVGFARPペプチドが選択されるが、このとき該ペプチドは、好ましくは酸化ペプチドとしての翻訳後修飾形もしくは化学修飾形と共に、非修飾形で存在することを特徴とする方法。
  7. 請求項1〜6何れか1項に記載の方法において、前記疾患の陽性検出のために、前記ペプチド濃度は、対照サンプル中の特定ペプチドの濃度に比較して特定方向に上昇または低下していることを特徴とする方法。
  8. 請求項1〜7何れか1項に記載の方法において、疾患の重症度の測定、経過の予後診断のため、または神経疾患の前段階、特に「軽度認識障害(MCI)」の診断に援用されることを特徴とする方法。
  9. 請求項1〜8何れか1項に記載の方法において、前記生物学的サンプルが脳脊髄液、血清、血漿、尿、滑液、便、涙液、喀痰または組織ホモジネートであることを特徴とする方法。
  10. 請求項1〜9の何れか1項に記載の方法において、前記ペプチドの同定が質量分析測定法を用いて実施されることを特徴とする方法。
  11. 請求項10に記載の方法において、前記同定が、3666,8278/3950,9875/3567,7594/3595,7907/3879,9504/3401,6852/3614,8077/3685,8448/3302,6167/3173,5741/3955,9889/1336,6735/2503,1827/≧727,3501/≧851,4137/≧730,3246/3745,7343/1235,5782/≧833,4395/7518,2744/2031,8981/2418,0419/4806,0408/3456,5513/4806,0408/4058,7043/5776,6294/6618,0363/1380,7249/≧946,4468/≧862,3192/≧961,4063/3903,0180/3787,9911/≧920,4828の少なくとも1つの理論単一同位体質量ピークの質量分析測定を含んでいることを特徴とする方法。
  12. 請求項1〜9の何れか1項に記載の方法において、前記ペプチドの同定が免疫学的、分子生物学的、物理的または化学的試験を用いて行われることを特徴とする方法。
  13. 請求項12に記載の方法において、前記免疫学的試験がELISA(酵素免疫吸着法)、ラジオイムノアッセイもしくはウェスタンブロット法であることを特徴とする方法。
  14. 請求項12に記載の方法において、前記ペプチドの同定が、1つのペプチドもしくは1つのペプチドフラグメントに付された抗体、抗体フラグメント、PNAsもしくは親和性マトリックスを用いて行われることを特徴とする方法。
  15. 請求項1〜14の何れか1項に記載の方法において、前記サンプルが、同定の前に好ましくは逆相クロマトグラフィーを用いて、さらに好ましくは高分解能逆相クロマトグラフィーを用いて、クロマトグラフィーにより分別されることを特徴とする方法。
  16. 請求項1〜14の何れか1項に記載の方法において、前記サンプルが、同定の前に沈降反応または液相分離法によって分別されることを特徴とする方法。
  17. 下記のa)〜e)からなる群から選択される少なくとも一つのペプチド:
    a)VGFARPペプチド;
    b)VGFタンパク質のVGFARP誘導体、特にNM_003378もしくはY12661の誘導体;
    c)VGF対立遺伝子のVGFARP誘導体;
    d)好ましくは対応する非突然変異VGFARP配列とは最高2アミノ酸が相違するVGFARP突然変異体である;および
    e)化学修飾もしくは翻訳後修飾された、a)〜f)に対応するペプチド。
  18. 請求項17に記載のペプチドの少なくとも1つの使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を検出するため、抗体を入手するため、または診断用試薬を開発するための使用。
  19. 請求項17に記載のペプチドに結合する抗体。
  20. VGFに対する抗体または請求項19に記載の抗体の使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を診断するための使用。
  21. 関連するタンパク質およびペプチドを間接的に測定および同定するために適合された、VGFARPペプチドまたはVGFタンパク質に対応する核酸の使用。
  22. 請求項21に記載の方法の使用において、前記VGF核酸がノーザンブロット法、逆転写酵素PCRまたは定量PCRを使用して検出される方法。
  23. 請求項1〜16または請求項20〜22の何れか1項に記載の方法の使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病のための治療法の有効性を測定するための使用。
  24. 請求項1〜16または請求項20〜22の何れか1項に記載の方法の使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病の治療または臨床試験に適合する患者を階層化するための使用。
  25. VGFARPペプチドに対応する核酸。
  26. VGF特異的アンチセンス核酸として、VGF特異的リボザイムとして、またはVGF特異的トリプレックス核酸として適合された核酸。
  27. 請求項3に列記したVGFペプチドの合成アゴニストまたはアンタゴニスト。
  28. ペプチド、核酸、アゴニストおよびアンタゴニストが血液脳関門および/または血液髄液関門を通過できるような方法で製剤学的に調製されている、または化学修飾もしくは生物学修飾されている、請求項3記載のペプチドまたは請求項25〜27記載の物質。
  29. 請求項3に列記したペプチドまたは請求項25〜27記載の物質であって、該ペプチドまたは前記物質は特別な投与経路、特に血液循環内、消化管内、尿生殖管内、リンパ系内、クモ膜下腔内への投与、吸入、または例えば筋組織、脂肪組織、脳等のような組織内への直接注射のために最適化されるように、製剤学的に調製され、または化学修飾もしくは生物学的修飾を施されているペプチドまたは物質。
  30. 請求項3記載のペプチドまたは請求項25〜27の何れか1項に記載の核酸、ペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストのうちの少なくとも1つの使用であって、薬剤または薬剤有効成分としての使用。
  31. 請求項3記載のペプチドまたは請求項25〜27の何れか1項に記載の核酸、ペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストのうちの少なくとも1つの使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を予防または治療するための医薬品を製造における使用。
  32. 神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を予防または治療するための医薬品を製造するための例えばNGF、BNDFまたはNT−3のようなVGFタンパク質の発現を修飾する物質のうちの少なくとも1つの使用。
  33. 個々のVGF遺伝子変種、特にNM_003378もしくはY12661の転写または発現を選択的に阻害または刺激する少なくとも1つの物質の使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を予防または治療するための医薬品を製造するための使用。
  34. 請求項3記載のペプチドに結合する少なくとも1つの物質、特に抗体、抗体フラグメント、PNAsまたは親和性マトリックスの使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を予防または治療するための医薬品を製造するための使用。
  35. 請求項3記載のペプチドまたは請求項25〜27の何れか1項に記載の核酸、ペプチド、アゴニストまたはアンタゴニストのうちの少なくとも1つの使用であって、神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を治療するための使用。
  36. 神経疾患、特に慢性痴呆疾患、特にアルツハイマー病を有する患者のために、請求項3に記載のペプチドまたは請求項25記載の核酸のうち少なくとも1つの濃度を治療的に調節する方法。
  37. 請求項36に記載の方法であって、前記VGFペプチドまたは核酸の濃度を低下させるように著節する方法。
  38. 請求項36に記載の方法であって、VGFタンパク質またはVGFARPペプチドの濃度を上昇させるように調節する方法。
  39. 請求項37に記載の方法であって、患者に対して、
    a)VGFタンパク質、VGFARPペプチド、NGF、BNDFもしくはNT−3に対して生じた抗体が投与されるか、または
    b)VGFタンパク質、VGFARPペプチド、NGF、BNDFもしくはNT−3の発現を低下させるために、アンチセンス核酸、トリプレックス核酸もしくはリボザイムが投与されるか、または
    c)VGFタンパク質のプロセッシングを阻害する物質が投与されるか、または
    d)請求項3に列記したVGFペプチドのアンタゴニストが投与される方法。
  40. 請求項38に記載の方法であって、患者に対して、
    a)VGFタンパク質、VGFARPペプチド、NGF、BNDFもしくはNT−3が投与されるか、または
    b)VGFタンパク質、VGFARPペプチド、NGF、BNDFもしくはNT−3をコードする核酸が投与されるか、または
    c)VGFタンパク質のプロセッシングを促進する物質が投与されるか、または
    d)請求項3に列記したVGFペプチドのアゴニストが投与される方法。
  41. 請求項3に列記したペプチドの少なくとも1つの発現を抑制または増強することができる物質を同定するためのスクリーニング方法。
  42. 請求項3に列記したペプチドの少なくとも1つに結合する受容体または阻害剤を同定するためのスクリーニング方法。
  43. 請求項3に列記したペプチドの少なくとも1つのアゴニストまたはアンタゴニストを同定するためのスクリーニング方法。
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