JP2004528368A - 抗egfr抗体と抗ホルモン剤を用いた組合せ療法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、抗EGFR(Her1)抗体および抗ホルモン剤を、任意選択で細胞障害剤/化学療法剤と一緒に投与することを含む、腫瘍および腫瘍転移、好ましくは乳房腫瘍および前立腺腫瘍を治療するための組合せ療法に関する。この方法および前記薬剤を含む薬剤組成物は、各治療薬の腫瘍細胞増殖阻害効果の相乗強化をもたらし、個々の成分を単体で投与するよりも効果的な治療をもたらす可能性がある。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗EGFR(Her1)抗体と抗ホルモン剤を、任意選択で細胞障害剤/化学療法剤と一緒に投与することを含む、腫瘍および腫瘍転移、好ましくは乳房腫瘍および前立腺腫瘍を治療するための組合せ療法に関する。この方法および前記薬剤を含む薬剤組成物は、各治療薬の腫瘍細胞増殖阻害効果の相乗強化をもたらし、個々の成分を単体で投与することに対して効果的な治療をもたらす可能性がある。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼは、アデノシン三リン酸の末端リン酸をタンパク質基質のチロシン残基に転移させる際に触媒として働く酵素のクラスである。チロシンキナーゼは、基質のリン酸化を通じて、いくつかの細胞機能のシグナル伝達で重大な役割を担っていると考えられている。シグナル伝達の正確な機構は依然として不明確であるが、チロシンキナーゼは、細胞増殖、発癌、および細胞分化に寄与する重要な因子であることが示されている。
【0003】
チロシンキナーゼは、受容体型または非受容体型として分類することができる。受容体型および非受容体型のどちらのチロシンキナーゼも、癌、乾癬、過免疫応答を含めて数々の発病状態をもたらす細胞性シグナル経路に関与している。多くのチロシンキナーゼが、細胞成長のみならず血管新生(angiogenesis)に関与している。
【0004】
受容体型でないチロシンキナーゼもまた、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、LIMKを含めた数多くのサブファミリーからなる。これらサブファミリーのそれぞれが、異なる受容体にさらに細分画される。たとえば、Srcサブファミリーは最も大きなものの1つであり、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、Yrkを含む。酵素であるSrcのサブファミリーは、発癌に関連付けられている。受容体型でないチロシンキナーゼのより詳細な議論は、Bolen、Oncogene、8:2025〜2031、1993を参照されたい。
【0005】
受容体型のチロシンキナーゼは、細胞外の部分、膜貫通部分及び細胞内部分を有しているが、受容体型でないチロシンキナーゼは完全に細胞内にある。受容体結合チロシンキナーゼは、細胞外リガンドが結合するドメイン、膜貫通配列、および細胞質内チロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体型のチロシンキナーゼは、多様な生物活性を有する多数の膜貫通受容体からなる。実際、受容体型のチロシンキナーゼの様々なサブファミリーが同定されている。関連するチロシンキナーゼには線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、ErbB主要クラスファミリーの上皮成長因子(EGF)受容体、および血小板由来成長因子(PDGF)受容体が含まれる。神経成長因子(NGF)受容体、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)受容体、ニューロトロフィン−3(NT−3)受容体、ニューロトロフィン−4(NT−4)受容体もまた、関連している。
【0006】
HERまたはErbBサブファミリーと命名された受容体型チロシンキナーゼの1サブファミリーは、EGFR(ErbB1)、HER2(ErbB2またはp185neu)、HER3(ErbB3)、およびHER4(ErbB4またはtyro2)からなる。この受容体サブファミリーのリガンドには、上皮成長因子(EGF)、TGF−a、アンフィレギュリン、HB−EGF、ベータセルリン(β−cellulin)、ヘレグリン(heregulin)が含まれる。PDGFサブファミリーには、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)からなるFLKファミリーが含まれる。
【0007】
erbB1遺伝子によってコードされるEGFRは、原因として、ヒト悪性腫瘍に関連づけられた。具体的には、乳房、膀胱、肺、頭部、頚部、および胃の癌だけでなくグリア芽細胞種(glioblastomas)でもEGFR発現の増大が観察された。EGFR受容体の発現の増大は、しばしば、オートクリン刺激性経路による受容体活性化をもたらす同じ腫瘍細胞によって生成される、トランスフォーミング成長因子(TGF−a)であるEGFRリガンドの生成の増大に関連している(BaselgaおよびMendelsohn、Pharmac.Ther.、64:127〜154、1994)。EGF受容体は、170,000の分子量を有し、多くの上皮細胞種で見つかる膜貫通糖タンパク質である。これは、少なくとも3つのリガンド、EGF、TGF−α(トランスフォーミング成長因子アルファ)、およびアンフィレギュリン(amhiregulin)によって活性化される。上皮成長因子(EGF)およびトランスフォーミング成長因子アルファ(TGF−a)は共にEGF受容体に結合し、細胞性増殖および腫瘍成長をもたらすことが実証されている。これらの成長因子はHER2に結合しない(UlrichおよびSchlesinger、1990、Cell、61、203)。二量体の性質をもつために受容体の二量体化を誘導する成長因子のいくつかのファミリー(たとえばPDGF)とは違って、EGFなど単量体成長因子は、その受容体用に2つの結合部位を含み、したがって、2つの近隣EGF受容体を架橋結合することができる(Lemmon他、1997、EMBO J.、16、281)。受容体の二量体化は、内因性触媒活性の刺激および成長因子受容体の自己リン酸化にとって重要である。受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)がホモおよびヘテロ二量体化を受けることができることに注意されたい。
【0008】
抗EGF受容体抗体が、EGFおよびTGF−aの受容体への結合を遮断しながら腫瘍細胞の増殖を阻害すると思われることが示された。これらの発見を受けて、抗EGF受容体に対するいくつかのネズミおよびラットモノクローナル抗体が開発され、in vitroおよびin vivoで腫瘍細胞の成長を阻害するその能力が試験された(ModjtahediおよびDean、1994、J.Oncology、4、227)。いずれもEGF受容体に対するヒト化モノクローナル抗体425(hMAb425、米国特許第5,558,864号、ヨーロッパ特許第0531 472号)およびキメラモノクローナル抗体225(cMAb225、米国特許第4,943,533号およびヨーロッパ特許第0359 282号)はいずれもEGF受容体に対するもので臨床試験においてこれらの効果が示された。C225抗体が、in vitroでEGF媒介腫瘍細胞成長を阻害し、ヌードマウスでin vivoでヒト腫瘍形成を阻害することが実証された。さらに、この抗体は、とりわけ、特定の化学療法薬(すなわち、ドキソルビシン、アドリアマイシン、タキソール、シスプラチン)と相乗作用して、異種移植マウスモデルでin vivoでヒト腫瘍を根絶させるように作用するように見えた。Ye他(1999、Oncogene、18、731)は、HER2受容体に対するcMAb225とヒト化MAb4D5の組合せを用いてヒト卵巣癌細胞をうまく治療することができると報告した。
【0009】
ErbBファミリーの第2のメンバーであるHER2(ErbB2およびp185neu)は最初、化学的に処置したラットの神経芽細胞種の形質転換遺伝子の産物として同定された。neuプロトオンコジーンの活性化された形は、コードされたタンパク質の膜貫通領域の点突然変異(バリンからグルタミン酸)から生じる。neuのヒト相同体の増幅が乳房および卵巣癌中で観察され、予後不良と関連している(Slamon他、Science、235:177〜182、1987;Slamon他、Science、244:707〜7 12、1989;米国特許第4,968,603号)。ErbB2(HER2)は約185,000の分子量を有し、EGF受容体(HER1)と相当な相同性を有するが、現在までにはまだ、HER2の特異的リガンドは明確に同定されていない。
【0010】
HER2受容体に対する抗体4D5は、ErbB2過剰発現乳房腫瘍細胞系をTNFαの細胞障害効果に対して感作させることがさらに見出された(米国特許第5,677,171号)。組換えヒト化した形のネズミ抗ErbB2抗体4D5(huMAb4D5−8、rhuMAb HER2またはHERCEPTIN(登録商標)米国特許第5,821,337号)は、大規模な事前の抗癌療法を受けた、ErbB2過剰発現転移性乳癌を有する患者で臨床的に活性がある(Baselga他、J.Clin.Oncol.、14:737〜744、1996)。HERCEPTIN(登録商標)は、腫瘍がErbB2タンパク質を過剰発現している転移性乳癌を有する患者の治療用に、1998年に市販許可を得ている。
【0011】
前立腺癌および乳癌は、男性/女性に最も頻繁に診断される癌であり、全世界で年間数十万人以上の死因となっている。初期段階の、器官の前立腺癌および乳癌は多くの場合、患者が関連性のない原因で死亡するまで手術または照射線治療で処置されている。乳癌、大腸癌、腺癌など癌腫は、急速な細胞分裂によって特徴づけられている。したがって、これらの癌には、急速な細胞分裂を阻害する化学療法剤を用いた治療があっている。一方、前立腺癌は急速な細胞分裂によって特徴づけられていない。したがって、従来の化学療法剤が前立腺癌腫に対して示す効果は一般的に低い。前立腺癌腫は多くの場合ホルモンの調節に感受性がある。現在承認されている前立腺癌の治療法には、外科的去勢、化学的去勢、または外科的去勢と化学的去勢の組合せが含まれる。
【0012】
主要なテストステロン生成器官である精巣を除去すると、循環アンドロゲンのレベルが通常の5%未満にまで低下する。このアンドロゲンレベルの低下により、前立腺腫瘍の増殖が阻害される。外科的去勢の抗腫瘍性効果は直接的であるが、この抗腫瘍性効果は一時的である可能性がある。外科的去勢は多くの場合、アンドロゲン依存性前立腺腫瘍細胞のクローン選択をもたらす。これは、テストステロンやDHT刺激なしに増殖する形の前立腺腫瘍の再発生をもたらす(Isaacs他、1981、Cancer Res.、41:5070〜5075;Crawford他、1989、IV.Eng.J.Med.、321:419〜424)。多くの場合は、最初の治療として外科的去勢の代わりに化学的去勢(または医学的去勢と呼ばれる)が行われる。
【0013】
前立腺癌および乳癌は、これらの多くがステロイド性ホルモン(それぞれ乳癌にはエストロゲン、前立腺癌にはアンドロゲン)によって増殖が刺激されるという独特の特徴を共有している。このステロイド性ホルモンは、特異的な受容体に結合することによってその刺激シグナルを送達する。
【0014】
エストロゲンおよびアンドロゲン受容体は、乳癌細胞の約75%、前立腺癌細胞のほぼ100%で見つけることができ、これらは、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、ビタミンAやDなど親油性ビタミンの受容体を含めた核ホルモン受容体スーパーファミリー、およびスーパーファミリーの他のメンバーと一致した構造を有するが同定されたリガンドを有さないオーファン受容体のメンバーである(Evans、1988、Science、240:889〜895)。この受容体は、標的遺伝子のプロモーター内の特定のDNA配列と相互作用することによって遺伝子の発現を制御する(Glass、1994、Endocr.Rev.、15:391〜407)。
【0015】
核受容体は、甲状腺/レチノイン酸/ビタミンD受容体(TRV)ファミリーとステロイド受容体(Rs)ファミリーの2つのサブファミリーに分類されている。ステロイドホルモン受容体は、それに対応するHREにリガンド依存的に結合するが、甲状腺ホルモン受容体(T3R)やレチノイン酸受容体(RAR/RXR)など一部の受容体はそれに対応する応答要素にリガンド依存的に結合する。ステロイド受容体は、正常な健康状態および癌、炎症、内分泌性疾患、および経口避妊を含めた疾病状態の範囲で役割を果たす。内分泌腺によって生成される天然ステロイドホルモンは、標的器官のステロイドホルモン受容体に結合する。
【0016】
天然ステロイドホルモンには、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドが含まれる。これらのホルモンは作用剤(agonist)として定義され、ホルモン−受容体複合体は、転写速度を加速または減速させることによって特異的遺伝子の転写を調節する。
【0017】
たとえばエストラジオールおよびプロゲステロンは腎臓、卵巣、子宮頚部、子宮、骨、皮膚、乳房、心臓、下垂体、脳での遺伝子転写を制御するなど、ステロイド作用剤はいくつかの組織で多面的な生理作用を有する。ステロイド受容体サブファミリーのホルモンは多くの疾患を治療するのに使用され、健康な人ではとりわけ経口避妊およびホルモン置換療法で使用される。
【0018】
ステロイドホルモン作用剤の作用を遮断することが医学的に望ましい場合が多い。
【0019】
このため、研究者らは、乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌の治療において癌の発生を予防するまたは異常増殖を遮断する薬剤として使用される、あるいは避妊剤として使用されるステロイド受容体に対する拮抗剤(antagonist)を合成してきた。これら拮抗剤はステロイド受容体のリガンドでもあるが、一般的に、作用剤によって生じる効果と逆の効果を有する。
【0020】
ステロイド受容体拮抗剤の作用は複雑である。多くの場合これらは二重の作用/拮抗効果を有する。たとえば、ある拮抗剤は部分的に作用剤としての生物活性を有する可能性がある。したがって、この拮抗剤は作用剤の活性を遮断し、相当低減された作用活性がもたらされる。拮抗剤はまた、ある組織(たとえば乳房)で所望する拮抗効果を有するが、別の組織(たとえば子宮)で作用効果を有する可能性がある。拮抗剤の作用効果は、望まれない副作用であったり、そうでない場合もある。
【0021】
同様に、癌の治療では、拮抗剤リガンドは最初、腫瘍に対する所望の阻害効果を有するが、時間と共にこのリガンドが作用剤様の効果に転換し、その結果癌が増殖を再開することがある。
【0022】
典型的な例はLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)である。LHRHの活性化合物を単一のより高い用量で投与するとホルモン生産が刺激されるが(作用剤作用)、前記化合物を連続的に低い用量で投与すると、ホルモン放出効果を阻害する拮抗剤として作用する。
【0023】
血管新生(脈管新生)は、または新血管形成と呼ばれるが、新しく発生中の血管が組織内に伸びることを要する組織血管形成のプロセスである。このプロセスは、内皮細胞および平滑筋細胞の浸潤によって媒介されている。このプロセスは、(1)血管が既存の血管から出芽することができる、(2)血管の新規発生は前駆細胞から生じることができる(脈管形成(vasculogenesis))、または(3)存在する細い血管の直径が拡大することができる(Blood他、1990、Bioch.Biophys.Acta、1032、89)ことの3つのうち任意の1つで進行すると考えられている。血管内皮細胞は、ビトロネクチン受容体(αVβ3またはαVβ5)、コラーゲンタイプIおよびIV受容体、ラミニン受容体、フィブロネクチン/ラミニン/コラーゲン受容体、フィブロネクチン受容体を含めて、少なくとも5つのRGD依存性インテグリンを含有することが知られている(Davis他、1993、J.Cell.Biochem.、51、206)。平滑筋細胞は、αVβ3αVβ5を含めて少なくとも6つのRGD依存性インテグリンを含有することが知られている。
【0024】
血管新生は新生児の生育における重要なプロセスであるが、創傷治癒、ならびに組織炎症、関節炎、乾癬、癌、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、および他の新血管形成性の眼疾患を含めた様々な臨床的に重要な疾病の発生においても重要である。血管新生に関連したこれらの病型は、血管新生病と呼ばれる(Folkman他、1987、Science、235、442)。
【0025】
様々なインテグリンのαまたはβサブユニットに免疫特異的なモノクローナル抗体を用いたin vitro細胞接着の阻害により、ビトロネクチン受容体αVβ3が微小血管内皮細胞を含めた様々な細胞種の細胞接着に関連付けられた(Davis他、1993、J.Cell.Biol.、51、206)。
【0026】
インテグリンは細胞外基質タンパク質と結合し、したがって一般的に細胞接着現象と呼ばれている細胞−細胞および細胞−細胞外基質(cell-extracellular matrix)の相互作用を媒介することが知られている、細胞性受容体のクラスである。このインテグリン受容体は、αおよびβサブユニットから形成される非共有結合性ヘテロ二量体糖タンパク質複合体の共通の構造特徴を有するタンパク質のファミリーを構成する。ビトロネクチンに優先的に結合する本来の特徴に因んで命名されたビトロネクチン受容体は、現在では、αVβ1、αVβ3、αVβ5と呼ばれる3つの異なるインテグリンを指すことが知られている。αVβ1は、フィブロネクチンおよびビトロネクチンと結合する。αVβ3は、フィブリン、フィブリノーゲン、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、フォンウィルブランド因子を含めた様々なリガンドと結合する。αVβ5は、ビトロネクチンと結合する。異なる生物学的機能を有する様々なインテグリンのみならず、共通の生物学的特異性を有する異なるインテグリンやサブユニットが存在することが明白である。多くのインテグリンを認識する、リガンド内の1つの重要な認識部位は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)トリペプチド配列である。上で同定したビトロネクチン受容体インテグリンのリガンドすべてで、RGDが見つかっている。
【0027】
このRGD認識部位は、RGD配列を含む直線状および環状(ポリ)ペプチドによって模倣することができる。このようなRGDペプチドは、それぞれインテグリン機能の阻害剤または拮抗剤であることが知られている。しかし、RGDペプチドの配列および構造に応じて、特異的なインテグリンを標的にするように阻害の特異性を改変できることに注目することが重要である。異なるインテグリン特異性の様々なRGDポリペプチドが、たとえばCheresh他、1989、Cell、58、945、Aumailley他、1991、FEBS Letts.、291、50、および数々の特許出願や特許(たとえば米国特許第4,517,686号、第4,578,079号、第4,589,881号、第4,614,517号、第4,661,111号、第4,792,525号、ヨーロッパ特許第0770 622号)に記載されている。
【0028】
新しい血管の生成、すなわち血管新生は、悪性腫瘍疾患の進展の主な役割を担っており、血管新生を阻害する薬剤の開発に多くの関心を集めてきた(たとえば、Holmgren他、1995、Nature Medicine、1、149;Folkman、1995、Nature Medicine、1,27;O’Reilly他、1994、Cell、79、315参照)。固形腫瘍への血液供給を減少させることによる固形腫瘍の成長を阻害する方法で血管新生を阻害するためにαVβ3インテグリン拮抗剤を使用することが知られている(たとえば、合成ポリペプチド、モノクローナル抗体、αVβ3受容体に結合して血管新生を阻害するαVβ3の模倣体など、αVβ3の拮抗剤の使用を記載している、米国特許第5,753,230号および米国特許第5,766,591号参照)。ビトロネクチン受容体αVβ5の拮抗剤を使用してαVβ5に媒介された組織の血管新生を阻害する方法および組成物は国際公開公報WO 97/45447号に開示されている。
【0029】
血管新生は、細胞の細胞外基質成分との相互作用に依存するプロセスである内皮細胞の浸潤、遊走(マイグレーション)、および増殖によって特徴づけられている。本記載では、インテグリンの細胞−基質受容体が細胞の拡散および遊走を媒介する。インテグリンαVβ3の内皮接着受容体は、抗血管新生治療戦略における血管特異的標的を提供する際に主要な役割を演じることが示された(Brooks他、1994、Science、264、569;Friedlander他、1995、Science、270)。血管新生における血管性インテグリンαVβ3の必要性は、いくつかのin vivoモデル、すなわち上述したようなインテグリンαVβ3およびαVβ5のペプチド拮抗剤の全身投与、または代わりに抗αVβ3抗体LM609によって、移植したヒト腫瘍による新しい血管の生成が完全に阻害されたモデルによって実証された(Brooks他、1994、Cell 79、1157;ATCC HB9537)。この抗体は、活性化されるとその天然リガンドにより増殖性血管新生血管細胞のアポトーシスを促進し、したがって腫瘍増殖に必須の現象である新しく形成中の血管の成熟を乱して、αVβ3インテグリンの受容体を遮断する。それにもかかわらず、内皮細胞が存在していなくても黒色腫細胞はクモの巣状のパターンの血管を形成できることが最近報告され(1999、Science、285、14)、これは、腫瘍が、内皮組織の存在下でのみ効果的である一部の抗血管新生剤を無効化することができる可能性を暗示している。
【0030】
VEGF、Ang1、およびbFGFを含めた数々の分子が、内皮の増殖、遊走、および集合を刺激し、これらは重要な生存因子である。VEGF(vascular endotherial groeth factor)血管内皮成長因子)は、内皮細胞の有糸分裂誘発を刺激することができる選択的血管新生成長因子として同定されている。特に、VEGFは、原発腫瘍の血管新生および虚血性眼球疾病における主要な媒体であると考えられている。VEGFは、内皮細胞に特異的な血管新生性因子(Ferrara他、1992、Endocrin.Rev.、13、18)および血管透過性因子である(Senger他、1986、Cancer Res.、465629)、チロシンキナーゼ活性を有する高親和性の膜結合受容体に結合するホモ二量体(MW:46,000)である(Jakeman他、1992、J.Clin.Invest.、89、244)。ヒト腫瘍バイオプシーでは、悪性腫瘍細胞によるVEGF mRNA、および近隣の内皮細胞中でVEGF受容体mRNAの発現の増強が示された。VEGFの発現は、血管壊死領域の近隣の腫瘍領域で最大であるように見える(総説はThomas他、1996、J.Biol.Chem.、271(2)、603;Folkman、1995、Nature Medicine、1、27参照)。国際公開公報WO 97/45447は、αVβ5インテグリンを特にVEGF、EGF、TGF−αに誘発される新血管形成に関連づけ、またαVβ5拮抗剤がVEGFに促進される血管新生を阻害することができることを開示している。効果的な抗腫瘍療法では、モノクローナル抗体を使用して血管新生を阻害するためにVEGF受容体を標的にすることを利用してもよい(Witte他、1998、Cancer Metastasis Rev.、17(2)、155)。MAb DC−101は、腫瘍細胞の血管新生を阻害することが知られている。
【0031】
本発明では以下で、EGF受容体(ErbB1、Her1)に対する特異的抗体は、抗ホルモン剤、特に核ホルモン受容体ファミリー(nuclear hormone receptor family)の阻害剤と一緒に投与した場合に、より効果的に特に前立腺癌および乳癌の腫瘍組織を死滅または縮小させることを説明する。抗血管新生剤および/または細胞障害剤と共にさらに投与することにより、前記組合せ療法の陽性効果および相乗効果が改善される可能性がある。
【0032】
(発明の概要)
本発明は初めて、EGF受容体を遮断または阻害する薬剤を抗ホルモン剤と一緒に個体に投与するという、腫瘍の治療における新しい概念を記載する。任意選択で、本発明による組成物は、好ましくは細胞障害剤(cytotoxic agent)、化学療法剤、ErbB受容体チロシンキナーゼファミリーの阻害剤または拮抗剤あるいは血管新生の阻害剤または拮抗剤からなる群から選択される、治療上活性のある化合物をさらに含む。
【0033】
したがって、本発明は、好ましい抗EGFR剤として抗EGFR抗体、好ましい抗ホルモン剤として核受容体、好ましくはステロイド受容体の阻害剤または拮抗剤を含む薬剤組成物に関する。
【0034】
本発明によれば、前記治療的に活性のある薬剤は、1つまたは複数の抗EGFR抗体、1つまたは複数の抗ホルモン剤、および任意選択で1つまたは複数の細胞障害剤/化学療法剤、抗ErbB剤、抗血管新生剤を単一パッケージまたは別の容器に含む、パッケージを含む製薬キットの手段によって提供することもできる。この組合せを用いた療法は、任意選択で放射線による治療を含んでもよい。
【0035】
ただし、本発明はさらに、抗EGFR活性および抗ホルモン性活性を有する単一の(融合)分子のみを、任意選択で1つまたは複数の細胞障害剤/化学療法剤と共に投与することを含む、組合せ療法に関する。例は、周知の組換え方法または化学的方法によってそのFc部分のC末端が抗ホルモン剤に融合されている、上記または下記のh425やc225など抗EGFR抗体である。さらなる例は、特異性の1つが核ホルモン受容体に対するものがあり、もう1つがEGF受容体に対するものがある二重特異性抗体である。
【0036】
主に、投与は放射性療法を伴って行うことができ、放射性処置は薬物投与と実質的に同時に、あるいはその前または後に行うことができる。本発明による組合せ療法の様々な薬剤の投与もまた、実質的に同時にまたは連続して行うことができる。腫瘍血管の発生に関与する受容体をその細胞表面に保有する腫瘍を、本発明の組合せ療法によりうまく処置することができる。
【0037】
腫瘍は、その発生および増殖の代替ルートを誘導することが知られている。1つの経路が遮断された場合、これらはしばしば、他の受容体を発現および使用し、他のシグナル経路を使用して別のルートに切り替える能力を有している。したがって、本発明の薬剤組合せでは、腫瘍のこのような可能な発生戦略のいくつかを遮断し、その結果、様々な利点を提供する。本発明による組合せは、腫瘍細胞の表面に存在する関連するホルモン受容体の活性化によって発生および増殖する腫瘍疾患、腫瘍様疾患、異常増殖疾患、腫瘍転移を治療および予防するのに有用である。好ましくは、本発明の様々な組み合わせた薬剤は、低用量、すなわち臨床の場で従来使用されてきた用量より低い用量での組合せで投与する。個体に投与する本発明の化合物、組成物、薬剤、および療法の用量を低下させる利点には、より高い用量に関連する副作用の発生率を低下させることが含まれる。たとえば、上記および下記の薬剤の用量を減らすことによって、より高い用量の場合に観察されるのに比べて、嘔気および嘔吐の頻度および重症度の軽減がもたらされる。副作用の発生率を低下させることによって、癌患者の生活の質(quality of life)の改善が予期される。副作用の発生率を低下させるさらなる利点には、患者コンプライアンスの改善、副作用の治療のために必要な入院回数の減少、副作用に関連する苦痛を治療するのに必要な鎮痛剤の投与の低減が含まれる。あるいは、本発明の方法および組合せは、より高い用量での治療効果を最大限にすることもできる。
【0038】
本発明による組合せは、驚くべき相乗効果を示す。この薬剤の組合せを投与すると、顕著な有害薬物反応は検出できなかったが、臨床研究中に現実の腫瘍縮小および分解を観察することができた。
【0039】
詳細には、本発明は以下に関する。
【0040】
・少なくとも(i)1つの抗EGFR抗体または免疫療法上有効なその断片、および(ii)1つの抗ホルモン剤を、治療有効量、任意選択で製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含む薬剤組成物;
・前記抗EGFR抗体または前記免疫療法上有効なその断片が、ネズミ、キメラ、またはヒト化したMab425(h425)あるいはキメラMab225(c225)阻害剤/拮抗剤である、対応する薬剤組成物;
・前記抗ホルモン剤が核ホルモン受容体ファミリーの阻害剤である、対応する薬剤組成物;
・前記抗ホルモン剤がステロイド受容体阻害剤/拮抗剤である、対応する薬剤組成物;
・抗血管新生剤をさらに含む、対応する薬剤組成物;
・細胞障害剤および/または化学療法剤をさらに含む、対応する薬剤組成物;
・抗HER2抗体または免疫療法上活性のあるその断片をさらに追加して含む、対応する薬剤組成物;
・抗EGFR活性および抗核ホルモン受容体活性を有する抗体を、任意選択で製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含む薬剤組成物;
・前記抗体が二重特異性抗体(bispecific antibody)である、対応する薬剤;
・少なくとも(i)1つの抗EGFR抗体または免疫療法上有効なその断片、および(ii)1つの抗ホルモン剤、、および任意選択で(iii)細胞障害剤および/または化学療法剤を含むパッケージを含む製薬キット;
・(i)モノクローナル抗体h425、および(ii)ステロイド受容体拮抗剤を含む、対応する製薬キット;
・(i)モノクローナル抗体h425、および(ii)LHRH拮抗剤を含む、対応する製薬キット;
・前記製薬的に活性のある薬剤が、前記パッケージの個別の容器内で提供される、対応する製薬キット;
・腫瘍および腫瘍転移、好ましくは乳癌および前立腺癌を治療する医薬品または医薬組成物を製造するための、上記および下記で定義した薬剤組成物または製薬キットの使用;
・ステロイド依存性でない乳癌および前立腺癌を治療するための、対応する使用;
・治療有効量の(i)抗EGFR抗体、および(ii)抗ホルモン剤を、同時または連続的に個体に投与することを含む、個体の腫瘍または腫瘍転移を治療する方法;
・前記EGFR抗体がモノクローナル抗体h425またはc225であり、前記抗ホルモン剤がステロイド受容体拮抗剤である、対応する方法;及び
・前記個体に治療有効量の細胞障害剤および/または化学療法剤、抗血管新生剤、あるいは別の抗ErbB受容体抗体をさらに投与することを含む、対応する方法。
【0041】
(発明の詳細な記述)
別段に指示しない限りは、本発明中で使用する用語および表現は、以下に与える意味および定義を有する。さらに、これらの定義および意味は、本発明をより詳細に説明し、これには好ましい実施形態が含められる。
【0042】
「生物学的分子」は、原則として約300より大きい分子量を有し、好ましくはポリ−およびオリゴ糖類、オリゴ−およびポリペプチド、タンパク質、ペプチド、ポリ−およびオリゴヌクレオチド、ならびにそれらをグリコシル化した脂質誘導体である、天然または合成した分子を含む。最も典型的には、生物学的分子は、免疫療法薬剤、上記すべての抗体やその断片、これら抗体の機能的誘導体、あるいは融合タンパク質を含む断片を含む。
【0043】
「受容体」または「受容体分子」とは、リガンドが結合して受容体−リガンド複合体を形成する1つまたは複数のドメインを含む、溶解性または膜結合/関連(associated)タンパク質または糖タンパク質である。受容体の作用剤または拮抗剤である可能性のあるリガンドと結合することで、受容体は活性化または不活性化され、経路シグナリングを開始または遮断し得る。
【0044】
「リガンド」または「受容体リガンド」とは、受容体分子と結合して受容体−リガンド複合体を形成する天然または合成化合物を意味する。用語リガンドは、作用剤、拮抗剤、および部分的な作用剤/拮抗剤作用を有する化合物を含む。
【0045】
「作用剤」または「受容体作用剤」とは、前記受容体および受容体−作用剤複合体をそれぞれ活性化させることによって、受容体と結合して受容体−作用剤複合体を形成し、経路シグナリングおよびさらなる生物学的プロセスを開始させる、天然または合成化合物である。
【0046】
「拮抗剤」または「受容体拮抗剤」とは、作用剤と反対の生物学的効果を有する天然または合成化合物を意味する。拮抗剤は受容体と結合して、受容体との結合に対して作用剤と競合することによって受容体作用剤の作用を遮断する。拮抗剤は、作用剤の作用を遮断するその能力によって定義される。受容体拮抗剤は、抗体や免疫療法上効果的なその断片であってもよい。本発明の好ましい拮抗剤を、以下に引用し考察する。
【0047】
用語「治療上有効」または「治療有効量」とは、哺乳動物中の疾患または傷害を治療するのに効果的な薬物量をいう。癌の場合、薬物の治療有効量は癌細胞の数を減らす、腫瘍の大きさを縮小させる、癌細胞の末梢組織への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる)、ある程度まで腫瘍増殖を阻害する、および/または癌細胞に関連する1つまたは複数の症状をある程度まで軽減させ得る。この薬物は、存在する癌細胞の増殖を阻止かつ/または死滅させる範囲では、これは細胞増殖抑制剤および/または細胞障害剤である可能性がある。癌の療法では、有効性は、たとえば疾病の進行の時間(TTP)および/または応答速度(RR)を決定することで測定することができる。
【0048】
用語「免疫療法上効果的」とは、哺乳動物内で免疫応答を引き起こす生物分子をいう。より具体的には、この用語は、抗原を認識して結合してもよい分子をいう。典型的には、その抗原結合部位(相補決定領域、CDR)を含む抗体、抗体断片、および抗体融合タンパク質は、免疫療法上効果的である。
【0049】
「抗血管新生剤」とは、血管の発生を遮断、またはある程度まで妨げる天然または合成化合物をいう。抗血管新生分子は、たとえば、血管新生増殖因子または増殖因子受容体に結合して遮断する生物分子にすることができる。本明細書中で好ましい抗血管新生分子は、受容体、好ましくはインテグリン受容体またはVEGF受容体に結合する。本発明によれば、この用語は前記血管新生剤のプロドラッグも含む。
【0050】
抗血管新生特性を誘発する、異なる構造および起源を有する多くの分子が存在する。最も関連性のある、本発明に適した血管新生阻害または遮断剤のクラスの例には以下がある。
(i)フルロウラシル、マイトマイシン−C、タキソールなど抗有糸分裂剤;
(ii)2−メトキシエストラジオールなどエストロゲン代謝産物;
(iii)亜鉛メタロプロテイナーゼ(メタロプロテアーゼ)(たとえばベチマスタット(betimastat)、BB16、TIMP、ミノサイクリン、GM6001、または「Inhibition of Matrix Metalloproteinases:Therapeutic Applications」(Golub、Annals of the New York Academy of Science、第878a巻、Greenwald、Zucker(編集)、1999)に記載のものを阻害する基質(マトリクス)メタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤;
(iv)IFNα(米国特許第4,530,901号、米国特許第4,503,035号、米国特許第5,231,176号)など抗血管新生性多機能薬剤および因子;アンギオスタチンおよびプラスミノーゲン断片(たとえばクリングル1−4、クリングル5、クリングル1−3(O’Reilly、M.S.他、Cell(マサチューセッツ州ケインブリッジ)、79(2):315〜328、1994;Cao他、J.Biol.Chem.、271:29461〜29467、1996;Cao他、J.Biol.Chem、272:22924〜22928、1997);エンドスタチン(O’Reilly,M.S.他、Cell、88(2)、277、1997および国際公開公報WO 97/15666号)、トロンボスポンジン(TSP−1;Frazier、1991、Curr Opin Cell Biol、3(5):792);血小板因子4(PF4);
(v)プラスミノーゲン活性化剤/ウロキナーゼ阻害剤;
(vi)ウロキナーゼ受容体拮抗剤;
(vii)ヘパリナーゼ;
(viii)TNP−470などフマギリン類似体;
(ix)SUI01などチロシンキナーゼ阻害剤(上記および下記のErbB受容体拮抗剤(EGFR/HER2拮抗剤)の多くもチロシンキナーゼ阻害剤であり、したがって、それぞれ血管および内皮細胞の発生の阻害をもたらす、腫瘍増殖の阻害および抗血管形新生活性をもたらす抗EGF受容体遮断活性を示すことができる);
(x)スラミンおよびスラミン類似体;
(xi)血管新生性ステロイド;
(xii)VEGFおよびbFGF拮抗剤;
(xiii)抗VEGF受容体抗体(DC−101)などVEGF受容体拮抗剤;
(xiv)flk−1およびflt−1拮抗剤;
(xv)COX−IIなどシクロオキシゲナーゼ−II阻害剤;
(xvi)αv拮抗剤およびαv受容体拮抗剤、たとえば抗αv受容体抗体およびRGDペプチドなどインテグリン拮抗剤およびインテグリン受容体拮抗剤。本発明によれば、インテグリン(受容体)拮抗剤が好ましい。
【0051】
用語「インテグリン拮抗剤/阻害剤」または「インテグリン受容体拮抗剤/阻害剤」とは、インテグリン受容体を遮断および阻害する天然または合成分子をいう。ある場合には、この用語には、前記インテグリン受容体のリガンドに対する拮抗剤を含む(たとえばαVβ3にはビトロネクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、フォンウィルブランド因子、トロンボスポンジン、ラミニン、αVβ5にはビトロネクチン、αVβ1にはフィブロネクチンおよびビトロネクチン、αVβ6にはフィブロネクチン)。
【0052】
本発明によれば、インテグリン受容体に対する拮抗剤が好ましい。インテグリン(受容体)拮抗剤は、抗体やその機能的断片または免疫複合体(融合タンパク質)など天然または合成ペプチド、非ペプチド、ペプチド擬態、免疫グロブリンであってよい。
【0053】
本発明の好ましいインテグリン阻害剤は、αVインテグリン(たとえばαVβ3、αVβ5、αVβ6、およびサブクラス)に対するものである。好ましいインテグリン阻害剤はαV拮抗剤、特にαVβ3拮抗剤である。本発明によるαV拮抗剤は、RGDペプチド、ペプチド擬態(非ペプチド)拮抗剤、およびαV受容体を遮断する抗体のような抗インテグリン受容体抗体である。
【0054】
例示的な非免疫性αVβ3拮抗剤は、米国特許第5,753,230号および米国特許第5,766,591号の教示に記載されている。好ましい拮抗剤は、直鎖および環状RGD含有ペプチドである。環状ペプチドは、一般的により安定であり、血清半減期の誘発が増強されている。しかし、本発明の最も好ましいインテグリン拮抗剤は、インテグリン受容体αVβ3、αVβ1、αVβ6、αVβ8、αIIbβ3を遮断するのに効果的なシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(EMD121974、Cilengitide(登録商標)、Merck KgaA、ドイツ;ヨーロッパ特許第0770 622号)である。
【0055】
αVβ3/αVβ5/αVβ6インテグリン受容体の適切なペプチジルおよびペプチド擬態(非ペプチド)拮抗剤は、科学文献および特許文献のどちらもに記載されている。たとえば、HoekstraおよびPoulter、1998、Curr.Med.Chem.、5、195;国際公開公報WO 95/32710号;国際公開公報WO 95/37655号;国際公開公報WO 97/01540号;国際公開公報WO 97/37655号;国際公開公報WO 97/45137号;国際公開公報WO 97/41844号;国際公開公報WO 98/08840号;国際公開公報WO 98/18460号;国際公開公報WO 98/18461号;国際公開公報WO 98/25892号;国際公開公報WO 98/31359号;国際公開公報WO 98/30542号;国際公開公報WO 99/15506号;国際公開公報WO 99/15507号;国際公開公報WO 99/31061号;国際公開公報WO 00/06169号;ヨーロッパ特許第0853 084号;ヨーロッパ特許第0854 140号;ヨーロッパ特許第0854 145号;米国特許第5,780,426号;および米国特許第6,048,861号を参照する。また、本発明中での使用に適したベンズアゼピン、ならびに関連するベンゾジアゼピンおよびベンゾシクロヘプテンαVβ3インテグリン受容体拮抗剤を開示する特許には、国際公開公報WO 96/00574号、国際公開公報WO 96/00730号、国際公開公報WO 96/06087号、国際公開公報WO 96/26190号、国際公開公報WO 97/24119号、国際公開公報WO 97/24122号、国際公開公報WO 97/24124号、国際公開公報WO 98/15278号、国際公開公報WO 99/05107号、国際公開公報WO 99/06049号、国際公開公報WO 99/15170号、国際公開公報WO 99/15178号、国際公開公報WO 97/34865号、国際公開公報WO 97/01540号、国際公開公報WO 98/30542号、国際公開公報WO 99/11626号、および国際公開公報WO 99/15508号が含まれる。主鎖高次構造環の強制を特徴とする他のインテグリン受容体拮抗剤は、国際公開公報WO 98/08840号;国際公開公報WO 99/30709号;国際公開公報WO 99/30713号;国際公開公報WO 99/31099号;国際公開公報WO 00/09503号;米国特許第5,919,792号;米国特許第5,925,655号;米国特許第5,981,546号;および米国特許第6,017,926号に開示されている。米国特許第6,048,861号および国際公開公報WO 00/72801号では、強力なαVβ3インテグリン受容体拮抗剤である一連のノナン酸誘導体が開示されている。他の化学的な低分子インテグリン拮抗剤(ほとんどはビトロネクチン拮抗剤)は、国際公開公報WO 00/38665号に記載されている。他のαVβ3受容体拮抗剤は、血管新生を阻害するのに効果的であることが示された。たとえば、合成受容体拮抗剤、(S)−10,11−ジヒドロ−3−[3−(ピリジン−2−イルアミノ)−1−プロピルオキシ]−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−10−酢酸(SB−265123として知られる)は、様々な哺乳動物モデルシステムで試験されてきた(Keenan他、1998、Bioorg.Med.Chem.Lett.、8(22)、3171;Ward他、1999、Drug Metab.Dispos.、27(11)、1232)。拮抗剤として使用するのに適したインテグリン拮抗剤を同定するためのアッセイは、たとえば、Smith他、1990、J.Biol.Chem.、265、12267および参考特許文献に記載されている。
【0056】
抗インテグリン受容体も、よく知られている。適切な抗インテグリン(たとえばαVβ3、αVβ5、αVβ6)モノクローナル抗体は、F(ab)2、F(ab)、および加工されたFvや単鎖抗体などその抗原結合断片を含むように改変することができる。インテグリン受容体αVβ3に対する、適切な、好んで使用されるモノクローナル抗体の1つは、LM609と同定された(Brooks他、1994、Cell、79、1157;ATCC HB9537)。強力な特異的抗αVβ5抗体、P1F6は、やはり本発明によって好ましい国際公開公報WO 97/45447号に開示されている。さらなる適切なαVβ6選択的抗体はMAb14D9.F8(国際公開公報WO 99/37683号、DSM ACC2331、Merck KGaA、ドイツ)、ならびにインテグリン受容体のαV鎖に選択的に向けられるMAb17.E6(ヨーロッパ特許第0719 859、DSM ACC2160、Merck KGaA)である。別の適切な抗インテグリン抗体は、Vitraxin(登録商標)として商品化されている。
【0057】
「血管新生増殖因子または増殖因子受容体」とは、その活性化によって血管の増殖および発生を促進する因子または受容体である。典型的には、血管内皮増殖因子(VEGF)およびその受容体がこの群に属する。
【0058】
本明細書中の用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、最も広い意味で使用され、具体的には、無処置(すなわち、産生時のまま状態)のモノクロナール抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無処置の抗体から形成された多特異的抗体(たとえば二重特異的抗体)、および、所望する生物活性を示す限りで抗体断片をカバーする。この用語は一般的に、連結された、異なる結合特異性の2つ以上の抗体からなるヘテロ抗体やその断片を含む。
【0059】
定常領域のアミノ酸配列に応じて、無処置の抗体を様々な「抗体(免疫グロブリン)クラス」に割り当てることができる。
【0060】
無処置の抗体には5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分けることができる。抗体の様々なクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれている。本発明による好ましい主要な抗体クラスは、IgG、より詳細にはIgG1およびIgG2である。
【0061】
抗体は、一般的に分子量約150,000からなり、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖を有する糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド連結の数は、様々な免疫グロブリンのアイソタイプの重鎖の間で異なる。各重鎖および軽鎖はまた、等間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインがそれに続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1定常ドメインと整列しており、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖および重鎖の可変ドメインの間で境界面を形成すると考えられている。任意の脊椎動物由来の抗体の「軽鎖」を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれている2つの明確に異なる種類に割り当てることができる。
【0062】
本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に同種な抗体の集団をいう。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性のある自然に存在する突然変異を除けば同一である。モノクローナル抗体は単一の抗原部位に向けられているので、高度に特異的である。
【0063】
さらに、様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含むポリクローナル抗体の調製と比較して、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられている。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体に汚染されることなく合成することができるという点で有利である。モノクローナル抗体を調製する方法には、KohlerおよびMilstein(1975、Nature、256、495)、ならびに「Monoclonal Antibody Technology, The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas」(1985、Burdon他、編集、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、第13巻、Elsevier Science Publishers、アムステルダム)に記載されたハイブリドーマ法が含まれ、または周知の組換えDNA法(たとえば、米国特許第4,816,567号参照)によって作成することができる。モノクローナル抗体はまた、たとえば、Clackson他、Nature、352:624〜628、1991、およびMarks他、J.Mol.Biol.、222:58、1〜597、1991に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0064】
用語「キメラ抗体」とは、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体内の対応する配列に同一または相同、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属するが、鎖の残りが、別の種由来の抗体内の対応する配列に同一または相同、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属している抗体、ならびに、所望する生物活性を示す限りはこのような抗体の断片を意味する(たとえば、米国特許第4,816,567号;Morrison他、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855、1984)。
【0065】
キメラ抗体およびヒト化抗体を作成する方法も、当分野で周知である。たとえば、キメラ抗体を作成する方法には、Boss(Celltech)およびCabilly(Genentech)(米国特許第4,816,397号;米国特許第4,816,567号)による特許に記載されているものを含む。
【0066】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限含む非ヒト(たとえばげっ歯類)キメラ抗体の形である。たいていは、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変性領域(hypervariable region:CDR)からの残基が、マウス、ラット、ウサギ、または所望の特異性、親和性、能力を有する、ヒトでない霊長類など非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域からの残基で置き換わっている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。
【0067】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体内には見つからない残基を含むこともできる。これらの改変は、抗体性能がさらに洗練されるように行う。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変領域の実質上全体を含み、高頻度可変性のループの全体または実質上全体が非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、FRの全体または実質上全体がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択で免疫グロブリン、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。ヒト化抗体を作成する方法は、たとえば、Winter(米国特許第5,225,539号)およびBoss(Celltech、米国特許第4,816,397号)に記載されている。
【0068】
用語「可変」または「FR」とは、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で大規模に異なっており、これらが特定の抗原に対する特定の各抗体の結合および特異性に使用されている事実をいう。
【0069】
しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン内に均等に分布されていない。これは、軽鎖および重鎖の可変ドメインのいずれもの中にある、高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメイン内のより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0070】
未変性重鎖および軽鎖はそれぞれ、βシート構造を連結するループを形成する、またはある場合にはβシート構造の一部を形成する3つの高頻度可変領域によって連結されており、概ねβシート立体配置の形をとっている4つのFR(FR1〜FR4)を含む。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近い近位で結合されており、他の鎖の高頻度可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセズダ、1991)。
【0071】
定常ドメインは、抗体を抗原に結合するのに直接関与していないが、抗体依存細胞障害(ADCC)における抗体の関与など様々な効果機能を示す。
【0072】
本明細書中で使用する場合の用語「高頻度可変領域」または「CDR」とは、抗原結合を担っている、抗体中のアミノ酸残基をいう。
【0073】
高頻度可変領域は一般的に、「相補性決定領域」または「CDR」(たとえば、軽鎖可変ドメイン内の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、および重鎖可変ドメイン内の残基31〜35(H1)、50〜65(H2)、95〜102(H3)、ならびに/または「高頻度可変ループ」の残基(たとえば、軽鎖可変ドメイン内の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)および重鎖可変ドメイン内の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、96〜101(H3)、ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917、1987)からのアミノ酸残基を含む。
【0074】
「フレームワーク領域」または「FR」残基とは、本明細書中で定義した高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0075】
「抗体断片」は、無処置の抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcの断片、二重抗体、直鎖抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成した多重特異性抗体が含まれる。「無処置」の抗体は、抗原結合可変領域のみならず、軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、CH3を含む抗体である。好ましくは、無処置の抗体は1つまたは複数の効果機能を有する。
【0076】
抗体をパパイン消化すると、「Fab」断片と呼ばれる、それぞれが単一の抗原結合部位とCLおよびCH1領域とを含む2つの同一の抗原結合断片、ならびに容易に結晶化する能力が命名に反映されている残留「Fc」断片が生成される。
【0077】
抗体の「Fc」領域は、原則として、CH2、CH3、およびIgG1またはIgG2抗体主要クラスのヒンジ領域を含む。ヒンジ領域とは、CH1領域をCH2〜CH3領域に結合させる約15アミノ酸残基の群である。
【0078】
ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有するが依然として抗原と交差結合することができる「F(ab’)2」断片が得られる。「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小抗原断片である。この領域は、1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインとの密な非共有結合二量体からなる。各可変ドメインの3つの高頻度可変領域(CDR)が相互作用してVH−VL二量体の表面の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置内である。集合的に、6つの高頻度可変領域は抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの高頻度可変領域しか含まない、Fvの半分)は、全結合部位に比べて、低い親和性でではあるが抗原を認識して結合する能力を有する。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含む。「Fab’」断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含めたいくつかの残基が付加されることによって、Fab断片と異なっている。F(ab’)2抗体断片は最初、間にシステインヒンジを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリング法も知られている(たとえば、Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press、1996;米国特許第4,342,566号参照)。
【0079】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片はVを含み、Vは、抗体のドメインであり、これらドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVHおよびVLドメインの間に、抗原結合に所望される構造をscFvが形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。単鎖FV抗体は、たとえばPluckthun(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、ニューヨーク、ページ269〜315、1994)、国際公開公報WO 93/16185、米国特許第5,571,894号、米国特許第5,587,458号、Huston他(1988、Proc.Natl.Acad.Sci.、85、5879)またはSkerraおよびPlueckthun(1988、Science、240、1038)から知られている。
【0080】
用語「二重抗体(diabody)」とは、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片をいい、断片は、同一ポリペプチド鎖(V,−V,)内に、可変軽鎖ドメイン(V,)に結合した可変重鎖ドメイン(V,)を含む。2つのドメイン間を対にするのには短すぎるリンカーを同一鎖に使用することによって、このドメインは、別の鎖の相補性ドメインと対になって二重抗原結合部位を作成することを強いられる。二重抗体は、たとえばヨーロッパ特許第404,097号、国際公開公報WO 93/11161号に全般的に記載されている。
【0081】
「二重特異性抗体」とは、2つの異なる特異的抗原結合部位を有する単一の2価の抗体(または免疫療法上効果的なその断片)である。たとえば、第1抗原結合部位は血管新生受容体(たとえばインテグリンやVEGF受容体)に向けられるが、第2抗原結合部位はErbB受容体(たとえばEGFRやHER2)に向けられる。
【0082】
二重特異性抗体は、すべてそれ自体で知られている、化学的技術(たとえば、Kranz他、1981、Proc.Natl.Acad/Sci.USA、78、5807参照)、「ポリドーマ」技術(米国特許第4,474,893号参照)、または組換えDNA技術によって生成することができる。さらなる方法は、国際公開公報WO 91/00360号、国際公開公報WO 92/05793号、および国際公開公報WO 96/04305号に記載されている。二重特異性抗体はまた、単鎖抗体から調製することもできる(たとえば、Huston他、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.、85、5879;SkerraおよびPlueckthun、1988、Science、240、1038)。単一ポリペプチド鎖として生成された抗体可変領域の類似体もある。二重特異性結合剤を形成するためには、単鎖抗体を当分野で既知の化学的方法または遺伝工学方法によってカップリングする。ロイシンジッパー配列を使用することによって、本発明による二重特異性抗体を生成することも可能である。利用した配列は、転写因子FosおよびJunのロイシンジッパー領域に由来する(Landschulz他、1988、Science、240、1759;総説には、ManiatisおよびAbel、1989、Nature、341、24参照)。ロイシンジッパーは、ロイシンが7残基毎に起こる、約20〜24残基長の特異的なアミノ酸配列である。このようなジッパー配列では、二量体形成のためにロイシン残基が疎水性側に並んで両親媒性のαへリックスを形成する。FosおよびJunタンパク質のロイシンジッパーに対応するペプチドは、優先的にヘテロ二量体を形成する(O’Shea他、1989、Science、245、646)。ジッパーを含む二重特異性抗体およびそれらを作成する方法も、国際公開公報WO 92/10209号および国際公開公報WO 93/11162号に開示されている。本発明による二重特異性抗体は、単一の特異性を有する抗体に関して上に記載したVEGF受容体およびαVβ3受容体に対する抗体にすることができる。
【0083】
用語「免疫複合体(immunoconjugate)」とは、免疫効果を有さない分子に共有結合によって融合されたそれぞれ抗体または免疫グロブリン、あるいは免疫学的に効果的なその断片をいう。好ましくは、この融合パートナーは、グリコシル化されていてもよいペプチドまたはタンパク質である。前記抗体でない分子は、抗体の定常重鎖のC末端あるいは可変軽鎖および/または重鎖のN末端に連結されていることができる。融合パートナーは、基本的に3〜15個のアミノ酸を含有するペプチドであるリンカー分子を介して連結されていることができる。本発明による免疫複合体は、好ましくは、血管新生受容体、好ましくはインテグリンまたはVEGF受容体およびTNFα、あるいは実質的にTNFαおよびIFNγまたは別の適切なサイトカインからなる融合タンパク質に対する免疫グロブリンまたは免疫療法上効果的なその断片からなる融合タンパク質であり、前記免疫グロブリンのC末端、好ましくはそのFc部分にそのN末端が連結されている。
【0084】
用語「融合タンパク質」とは、異なる特異性を有する1つまたは複数の免疫療法的な効果を有さない(抗体でない)タンパク質またはペプチドからなり、任意選択でリンカー分子によって融合されている天然または合成分子をいう。本発明による融合タンパク質は、たとえば、TNFαおよび/またはIFNγに融合されたシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)からなる分子でもよい。
【0085】
「ヘテロ抗体」とは、それぞれが異なる結合特異性を有する2つ以上の抗体または抗体結合断片が連結されたものである。ヘテロ抗体は、2つ以上の抗体または抗体断片を結合(conjugate)させることによって調製することができる。好ましいヘテロ抗体は、交差結合したFab/Fab’断片からなる。様々なカップリングまたは交差結合剤を使用して抗体を結合(conjugate)させることができる。この例は、プロテインA、カルボイイミド(carboiimide)、N−コハク酸イミジル−S−アセチル−チオ酢酸(SATA)、N−コハク酸イミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)(たとえば、Karpovsky他、1984、J.EXP.Med.、160、1686;Liu他、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、8648参照)である。他の方法には、Paulus、Behring Inst.Mitt.、第78号、118、1985;Brennan他、1985、Science、30m:81、またはGlennie他、1987、J.Immunol.、139、2367に記載されているものが含まれる。別の方法では、3つのFab’断片をカップリングするのにo−フェニレンジマレイン酸イミド(oPDM)を使用する(国際公開公報WO 91/03493号)。本発明の文脈中の多重特異性抗体もまた適切であり、国際公開公報WO 94/13804号および国際公開公報WO 98/50431号の教示に従って調製することができる。
【0086】
抗体「効果機能(effector function)」とは、抗体のFc領域(Fc領域の未変性配列または変異Fc領域のアミノ酸配列)に起因し得る生物活性をいう。抗体の効果機能の例には、相補性依存細胞障害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞障害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方制御(たとえばB細胞受容体)などが含まれる。
【0087】
用語「ADCC」(抗体依存性細胞媒介細胞障害)とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害細胞(たとえばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ)が結合された標的細胞上の抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を引き起こす、細胞に媒介された反応をいう。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。目的分子のADCC活性を評価するために、従来技術(米国特許第5,500,362号、米国特許第5,821,337号)に記載されているようなin vitroADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイに有用な効果細胞(effector cells)には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。
【0088】
「ヒト効果細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、効果機能を発現する白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCC効果機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単球細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞および好中球が含まれる。
【0089】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するのに使用される。好ましいFcRは、未変性(産生された状態の)配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合し(γ受容体)、それらの対立変異体および選択的スプライシングされた形を含めたFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcRは、たとえばRavatchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol、9:457〜92、1991の総説に記載されている。
【0090】
用語「サイトカイン」とは、細胞間媒体として別の細胞に作用する、一細胞集団から放出されたタンパク質の一般的な用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン:濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)など糖タンパク質ホルモン;肝成長ホルモン;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGFβなど神経成長因子;血小板成長因子;TGFαやTGFβなどトランスフォーミング成長因子(TGF);エリスロポエチン(EPO);INFα、IFNβ、IFNγなどインターフェロン;M−CSF、GM−CSF、G−CSFなどコロニー刺激因子;IL−1、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12などインターロイキン;およびTNFαやTNFβが含まれる。本発明による好ましいサイトカインは、インターフェロンおよびTNFaである。
【0091】
本明細書中で使用する用語「細胞障害剤」とは、細胞の機能を阻害または阻止かつ/あるいは細胞の破壊を引き起こす物質をいう。この用語は、放射性同位体、化学療法剤、、および細菌、真菌、植物、動物起源の酵素的に活性のある毒素など毒素またはその断片を含むことが企図されている。この用語はまた、サイトカインファミリー、好ましくはIFNγ、ならびにやはり細胞障害活性を有する抗腫瘍剤を含むことができる。
【0092】
用語「化学療法剤」または「抗異常増殖剤または抗腫瘍剤(anti-neoplastic agent)」には、本発明では、抗異常増殖性効果を及ぼす、すなわち、生物学的応答の改変など機構を介した間接的ではなく、たとえば細胞増殖抑制または細胞障害効果によって腫瘍細胞上で直接的に、異常増殖細胞の発生、成熟、拡散を阻止する化学薬剤が含まれる。本発明による適切な化学療法剤は、好ましくは天然または合成化学化合物であるが、タンパク質、ポリペプチドなど生物分子も明示的に排除されていない。TNFαおよび上に引用した抗血管新生剤を、任意選択でEGF受容体拮抗剤など他の薬剤と一緒に用いた組合せ治療による腫瘍/異常増殖の治療のために本発明に含めることができる市場で入手可能な、臨床評価および前臨床段階での展開において使用可能な、多数の抗異常増殖剤が存在する。化学療法剤を任意選択で上の前記薬物の組合せと一緒に投与することができることを指摘しておきたい。
【0093】
化学療法剤または薬剤の例には、アルキル化剤、たとえば、窒素マスタード、エチレンイミン化合物、アルキルスルホン酸、およびアルキル化作用を有するニトロソ尿素、シスプラチン、ダカルバジンなど他の化合物;抗代謝剤、たとえば、葉酸、プリンまたはピリミジン拮抗剤;有糸分裂阻害剤、たとえばビンカアルカロイドおよびポドフィロトキシン誘導体;細胞障害抗生物質およびカンプトセチン誘導体が含まれる。好ましい化学療法剤または化学療法には、amifostine(ethyol)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(窒素マスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルヌシチン(carrnustine)(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(doxil)、ゲムシタビン(gemzar)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(daunoxome)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトセシン(SN38)、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、pegaspargase、ペントスタチン、ピポブロマン、ピリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、およびそれらの組合せが含まれる。
【0094】
本発明による最も好ましい化学療法剤は、シスプラチン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、パクリタキセル(タキソール)およびブレオマイシンである。
【0095】
用語「癌」および「腫瘍」とは、通常は制御されない細胞増殖によって特徴づけられる、哺乳類の生理状態のことをいい、またはそのように記載される。乳房(breast)、心臓(heart)、肺(lung)、小腸(small intestine)、大腸(colon)、脾臓(spleen)、腎臓(kidney)、膀胱(bladder)、頭部(head)および頚部(neck)、卵巣(ovary)、前立腺(prostate)、脳(brain)、膵臓(pancreas)、皮膚(skin)、骨(bone)、骨髄(bone marrow)、血液(blood)、胸腺(thymus)、子宮(uterus)、精巣(testicles)、子宮頚部(cervix)、および肝臓(liver)の腫瘍などの腫瘍を本発明による薬剤組成物によって治療することができる。より具体的には、腫瘍は、腺腫(adenoma)、血管肉腫(angiosarcoma)、星状細胞腫(astrocytoma)、上皮癌腫(epithelial carcinoma)、胚細胞腫(germinoma)、グリア芽細胞腫(glioblastoma)、神経膠腫(glioma)、過誤腫(hamartoma)、血管内皮腫(hemangioendothelioma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、血腫(hematoma)、肝芽腫(hepatoblastoma)、白血病(leukemia)、リンパ腫(lymphoma)、髄芽腫(medulloblastoma)、黒色腫(melanoma)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)、肉腫(sarcoma)および奇形腫(eratoma)からなる群から選択される。
【0096】
詳細には、腫瘍は、末端黒子型黒色腫(acral lentiginous melanoma)、光線性角化症(actinic keratoses)、腺癌腫(adenocarcinoma)、腺様嚢胞癌腫(adenoid cycstic carcinoma)、脂肪腫(adenomas)、腺肉腫(adenosarcoma)、腺扁平上皮癌腫(adenosquamous carcinoma)、星状腫瘍(astrocytic tumors)、バルトリン腺癌腫(bartholin gland carcinoma)、基底細胞癌腫(basel call carcinoma)、気管支腺癌腫(bronchial gland carcinomas)、毛細血管capillary、癌様体(carcinoids)、癌腫(carcinoma)、癌肉腫(carcinosarcoma)、海綿状(cavernous)、胆管癌腫(cholangiocarcinoma)、軟骨芽肉腫(chondosarcoma)、脈絡叢乳頭腫/癌腫(choriod plexus papilloma/carcinoma)、明細胞癌腫(clear cell carcinoma)、嚢胞腺腫(cystadenoma)、内胚葉洞腫瘍(endodermal sinus tumor)、子宮内膜増殖症(endometrial hyperplasia)、子宮内膜間質部肉腫endometrial stromal sarcoma、子宮内膜様卵巣癌腫endometrioid adenocarcinoma、上衣(ependymal)、類上皮細胞(epitheloid)、ユーイング肉腫(Ewing's sarcoma)、繊維性層状(fibrolamellar)、巣状結節性過形成(focal nodular hyperplasia)、ガストリン産生腫瘍(gastrinoma)、生殖細胞腫瘍(germ cell tumors)、グリア細胞腫(glioblastoma)、グルカゴン産生腫瘍(glucagonoma)、血管芽細胞腫(hemangiblastomas)、血管内皮腫(hemandioendothelioma)、血管腫(hemangiomas)、肝細胞腺腫(hepatic adenoma)、肝細胞腺腫症(hepatic adenomatosis)、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)、膵島細胞腺腫(insulinoma)、上皮内異常増殖(intraepithelial neoplasia)、上皮間扁平細胞異常増殖(interepithelial squamous cell neoplasia)、浸潤性扁平細胞癌腫(invasive squamous cell sarcinoma)、大細胞癌腫(large cell carcinoma)、平滑筋肉腫(leiomyosarcoma)、悪性黒色黒色腫(lentigo mailgna melanomas)、悪性黒色腫(malignant melanoma)、悪性中皮腫瘍(malignant mesothelial tumors)、髄芽腫(medulloblastoma)、髄上皮腫(medulloepithelioma)、黒色腫(melanoma)、髄膜(meningeal)、中皮(mesothelial)、転移性癌腫(metastatic carcinoma)、粘膜表皮性癌腫(mucoepidermoid carcinoma)、神経細胞腫(neuroblastoma)、神経上皮腺癌腫結節性癌腫(neuroepithelial adenocarcinoma nodular melanoma)、燕麦細胞癌腫(oat cell carcinoma)、オリゴデンドログリア(oligodendroglial)、骨肉腫(osteosarcoma)、膵臓ポリペプチド(pancreatic polypeptide)、乳頭漿液腺癌腫(papillary serous adeno-carcinoma)、松果体細胞(pineal cell)、下垂体腫瘍(pituitary tumors)、プラズマ細胞腫(plasmacytoma)、偽肉腫(pseudosarcoma)、肺性細胞腫(pulmonary blastoma)、腎細胞癌腫(renal cell carcinoma)、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、横紋筋肉腫(habdomyosarcoma)、肉腫(sarcoma)、漿液癌腫(serous carcinoma)、小細胞癌腫(small cell carcinoma)、軟組織癌腫(soft tissue carcinoma)、ソマトスタチン分泌腫瘍(somatostatin-secreting tumor)、扁平上皮癌腫(squamous carcinoma)、扁平上皮細胞癌腫(squamous cell carcinoma)、中皮下(submesothelial)、表在性拡大型癌腫(superficial spreading melanoma)、未分化癌腫(undifferentiated carcinoma)、ブドウ膜黒色腫(uveal melanoma)、いぼ状癌腫(verrucous carcinoma)、ビポーマ(vipoma)、高分化癌腫(well differentiated carcinoma)、ウィルムス腫瘍(Wilm's tumor)からなる群から選択される。
【0097】
「ErbB受容体」とは、ErbB受容体ファミリーに属す受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR(ErbB1)、ErbB2、ErbB3、ErbB4受容体および将来同定されるこのファミリーの他のメンバーを含む。ErbB受容体は一般的に、ErbBリガンドと結合し得る細胞外ドメイン、親油性膜貫通ドメイン、保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン、リン酸化され得るいくつかのチロシン残基を有するカルボキシル末端シグナルドメインを含む。ErbB受容体は「未変性配列」(産生された状態の)ErbB受容体またはその「アミノ酸配列変異体」であってよい。
【0098】
好ましくは、ErbB受容体はヒトErbB受容体の未変性(産生された状態の)配列である。ErbB1は、EGFRタンパク質産物をコードする遺伝子をいう。最も好ましいのはEGF受容体(HER1)である。表現「ErbB1」と「HER1」は本明細書中で互換性があるように使用されており、ヒトHER1タンパク質を指す。表現「ErbB2」と「HER2」は本明細書中で互換性があるように使用されており、ヒトHER2タンパク質を指す。本発明によれば、ErbB1受容体(EGFR)が好ましい。
【0099】
「ErbBリガンド」とは、ErbB受容体に結合するかつ/または活性化させるポリペプチドである。EGFRと結合するErbBリガンドには、EGF、TGF−a、アンフィレギュリン、ベータセルリン、HB−EGF、エピレギュリンが含まれる。
【0100】
用語「ErbB受容体拮抗剤/阻害剤」とは、ErbB受容体に結合して遮断または阻害する天然または合成分子をいう。したがって、受容体を遮断することによって、拮抗剤は、ErbBリガンド(作用剤)の結合、および作用剤/リガンド受容体複合体の活性化を阻止する。ErbB拮抗剤は、HER1(EGFR)またはHER2に向けることができる。本発明の好ましい拮抗剤は、EGF受容体(EGFR、HER1)に向けられる。このErbB受容体拮抗剤は、抗体または免疫療法上効果的なその断片、あるいはペプチド、ポリペプチドタンパク質など非免疫生物学分子であってもよい。化学的分子も含まれるが、抗EGFR抗体および抗HER2抗体が、本発明による好ましい拮抗剤である。
【0101】
本発明の好ましい抗体は、抗Her1および抗Her2抗体、より好ましくは抗Her1抗体である。好ましい抗Her1抗体は、MAb425、好ましくはヒト化MAb425(hMAb425、米国特許第5,558,864号;ヨーロッパ特許第0531 472号)、およびキメラMAb225(cMAb225、米国特許第4,943,533号およびヨーロッパ特許第0359 282号)である。最も好ましいのは、単一薬物治療において高い効果と有害および副作用の減少とを示した、モノクローナル抗体h425である。最も好ましい抗HER2抗体は、Genentech/Rocheにより商品化されているHERCEPTIN(登録商標)である。
【0102】
本発明による効果的なEGF受容体拮抗剤は、天然または合成の化学化合物であってもよい。この分類の好ましい分子の一例には、有機化合物、有機金属化合物、有機化合物および有機金属化合物の塩が含まれる。
【0103】
HER2受容体拮抗剤の例は、スチリル置換のヘテロアリール化合物(米国特許第 5,656,655号);ビス単環式および/または二環式アリールヘテロアリール、炭素環、およびヘテロ炭素環化合物(米国特許第5,646,153号);三環式ピリミジン化合物(米国特許第5,679,683号);受容体チロシンキナーゼ活性を有するキナゾリン誘導体(米国特許第5,616,582号);ヘテロアリールエテンジイルまたはヘテロアリールエテンジイルアリール化合物(米国特許第5,196,446号);受容体のEGFR、PDGFR、FGFRファミリーを阻害する6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(4−(2−ジエチル−アミノエトキシ)フェニルアミノ)−8−メチル−8H−ピリド(2,3)−5−ピリミジン−7−オン(Panek他、1997、J.Pharmacol.Exp.Therap.、283、1433)と命名された化合物である。
【0104】
用語「チロシンキナーゼ拮抗剤/阻害剤」とは、受容体チロシンキナーゼを含めたチロシンキナーゼを阻害または遮断することができる天然または合成薬剤をいう。上記および下記に言及している抗ErbB受容体抗体を除いては、より好ましいチロシンキナーゼ拮抗剤は、乳癌および前立腺癌の単一薬物療法において有効性が示された化学化合物である。適切なインドロカルバゾールタイプのチロシンキナーゼ阻害剤は、米国特許第5,516,771号;第5,654,427号;第5,461,146号;第5,650,407号などの文書中に見つかる情報を使用して得ることができる。米国特許第5,475,110号;第5,591,855号;第5,594,009号および国際公開公報WO 96/11933号は、ピロロカルバゾールタイプのチロシンキナーゼ阻害剤および前立腺癌を開示している。好ましくは、上で定義した化学チロシンキナーゼ阻害剤の用量は、1日あたり、体重1kgあたり1pg〜1gである。より好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤の用量は、1日あたり、体重1kgあたり0.01mg〜100mgである。
【0105】
本明細書中で使用する用語「抗ホルモン剤」には、腫瘍に対するホルモン作用を制御または阻害するように作用する、天然または合成の有機またはペプチド性化合物が含まれる。より詳細には、「抗ホルモン剤」は、(1)血清アンドロゲンの生成を阻害、(2)血清アンドロゲンがアンドロゲン受容体に結合するのを遮断、または(3)テストステロンがDHTに変換されるのを阻害する化合物、あるいは2つ以上のこのような化合物の組合せである。
【0106】
本発明による抗ホルモン剤には、一般的に、ステロイド受容体拮抗剤、より詳細には、たとえばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、トレミフェン(Fareston)を含めた抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリンなど抗アンドロゲン;および上記の任意の製薬的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。この用語は、濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)やLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)など糖タンパク質ホルモンの作用剤および/または拮抗剤をも含む。本発明で有用なLHRH作用剤は、ZOLADEX(C)(Zeneca)として市場で入手可能な酢酸ゴセレリンである。
【0107】
酢酸ゴセレリンの化学構造は、ピロ−Glu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Ser(But)−Leu−Arg−Pro−Azgly−NH,酢酸である。本発明中で有用なLHRH拮抗剤の例は、化学名がD−アラニンアミドN−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−NG−(3−ピリジニルカルボニル)−L−リジル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−D−リジル−L−ロイシル−N6−(l−メチルエチル)−L−リジル−L−プロリルである、ANTIDE(C)(Ares−Serono)である。別の有用なLHRH拮抗剤は、化学名がN−Ac−D−Nal,D−pCl−Phe,D−Pal,D−hArg(Et)2,hArg(Et)2,D−Alaである、GANIRELIX(C)(Roche/Akzo Nobel)である。ステロイド性抗アンドロゲンの例は、MEGACE(C)(Bristol−Myers Oncology)として市場で入手可能な酢酸シプロテロン(CPA)および酢酸メゲストロールである。ステロイド性抗アンドロゲンは、前立腺のアンドロゲン受容体を遮断すし得る。
【0108】
これらはまた、LHの放出を阻害し得る。CPAは、好ましくは100mg/日〜250mg/日の用量でヒト患者に投与する。非ステロイド性抗アンドロゲンは、アンドロゲン受容体を遮断する。これらはまた、血清LHレベルおよび血清テストステロンレベルの上昇を引き起こし得る。好ましい非ステロイド性抗アンドロゲンは、EULEXIN(C)(Schering Corp.)として市場で入手可能なフルタミド(2−メチル−N−[4−20ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルプロパンアミド)である。フルタミドは、アンドロゲンの取り込みを阻害することによって、標的組織内でアンドロゲンの核結合を阻害することによって、またはその両方によって、抗アンドロゲン作用を発揮する。別の非ステロイド性抗アンドロゲンは、化学名が5,5−ジメチル−3−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル−4’−ニトロフェニル)−4,4−ジメチル−イミダゾリジン−ジオンであるニルタミドである。
【0109】
本発明の一部の実施形態では、抗ホルモン剤は、酢酸ロイプロリドなどLHRH作用剤とフルタミドやニルタミドなど抗アンドロゲンとの組合せである。たとえば、酢酸ロイプロリドを皮下、筋肉内、または静脈内の注入によって投与することができ、同時に、フルタミドを経口投与することができる。
【0110】
本発明による抗ホルモン剤には、上で示したように、RAR、TR、VDRなどの拮抗剤など他の非許容(permissive)受容体の拮抗剤を含めたステロイド/甲状腺ホルモン受容体の拮抗剤が含まれる。当分野の技術者には容易に理解されるように、様々なレチノイン酸受容体(RAR)拮抗剤は、合成のものも天然に存在するものも、本発明に従って使用することができる。例示的なRAR拮抗剤には、ジカルバ−closo−ドデカボラン(Iijima他、Chem Pharm Bull、Tokyo、1999、47(3):398〜404)、ヒドロアントラセニル、ベンゾクロメニル、およびベンゾチオクロメニルレチノイド(Vuligonda他、Bioorg Med Chem Lett、1999、9(5):743〜8)、ジアリールアセチレン、安息香酸誘導体(たとえば、Kagechika,H、1994、Yakugaku Zasshi、114(11):847〜862;Eckhardt他、1994、Toxicol Lett、70(3):299〜308;Yoshimura他、1995、J Med Chem、38(16):3163〜3173;30Chen他、1995、EMBO、14(6):1187〜1197;Teng他、1997、J Med Chem、40(16):2445〜2451参照);ナフタレニル類似体(たとえば、Johnson他、1995、J Med Chem、38(24):4764〜4767;Agarwal他、J Biol Chem、271(21):12209〜12212:Umemiya他、1996、Yakugaku Zasshi、116(12):928〜941);アリール置換およびアリールと(3−オキソ−l−プロペニル)置換のベンゾピラン、ベンゾチオピラン、1,2−ジヒドロキノリン、5,6−ジヒドロナフタレン誘導体(Klein他、米国特許第5877,207号および第5,776,699号)、アダマンチル置換の二環芳香族化合物(BernardonおよびCharpentier、米国特許第5,877,342号)、1−フェニル−アダマンカン(adamancane)誘導体(BernardonおよびBernardon、ヨーロッパ特許第776885号)、多環芳香族へテロ環化合物(Charpentier他、米国特許第5,849,798号)、ジヒドロナフタレン誘導体(Beard他、米国特許第5,808,124号およびJohnson他、米国特許第5,773,594号)、4−フェニル(ベンゾピラノイルまたはナフトイル)アミド安息香酸誘導体(国際公開公報WO 98/US/13065号)、ジアゼピニル安息香酸誘導体(Umemiya他、J Med Chem、1997、40(26):4222〜34)、テトラヒドロナフタレン誘導体(米国特許第5,763,635号、第5,741,896号、および第5,723,666号)、アリールおよびヘテロアリールシクロヘキセニル置換のアルケン(米国特許第5,760,276号)、芳香族ジベンゾフラン化合物を含めたジベンゾフラン化合物(米国特許第5,702,710号、米国特許第5,747,530号)、N−アリール置換のテトラヒドロキノリン(米国特許第5,739,338号)、ベンゾ[1,2−g]−クロム−3−エンおよびベンゾ[1,2−g]−チオクロム−3−エン誘導体(米国特許第5,728,846号)などが含まれる。本明細書中での使用が企図される具体的なRAR拮抗剤には、LE135(Umemiya他、1996、Yakugaku Zasshi、116(12):928〜941)、LE511、LE540、LE550(Li他、J Biol Chem、1999、274(22):15360〜6;Umemiya他、1996、Yakugaku Zasshi、116(12):928〜941)、Ro41−5253(Keidel他、1994、Mol Gell Biol、14(1):287〜298)、SR11330、SR11334、SR11335(Lee他、1996、J.Biol Chem、271(20):11897〜11903)、BMS453、BMS411(Chen他、1995、EMBO、14(6):1187〜1197)、CD2366およびCD2665(Meister他、Anticancer Res.、1998、18(3A):1777〜1786)、ER27191(Uemo他、Leuk.Res.、1998、22(6):5 17〜525)、AGN193 109(Johnson他、Bioorg Med Chem Lett、1999、9(4):573〜6)、4−[4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,7,10,10−テトラメチル−1−(3−ピリジルメチル)アントラ[1,2−b]ピロロ−3−イル]安息香酸、4−[4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,7,10,10−テトラメチル−1−(3−ピリジルメチル)−5−チアアントラ[1,2−b]ピロロ−3−イル]安息香酸、4−[4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,7,10,10−テトラメチル−1−(3−ピリジルメチル)アントラ[2,1−d]ピラゾール−3−イル]安息香酸(Yoshimura他、1995、J Med Chem、38(16):3163〜3173)、AGN193109(Agarwal他、J Biol Chem、271(21):12209〜12212)などが含まれる。
【0111】
「ステロイド受容体」または「核ステロイド受容体」とは、リガンドに活性化される転写因子であり、核受容体のステロイド受容体サブファミリーに属するタンパク質を意味する。ステロイド受容体の定義には、ステロイドホルモンに活性化される転写因子の構造に類似しており、その生物活性を有するタンパク質が含まれる。ステロイド受容体は、DNA結合ドメインおよびホルモン(またはリガンド)結合ドメインのすべてまたは一部を含み、ステロイド受容体の構造に類似した構造を有する未知のリガンドのオーファン受容体を含む。
【0112】
「ステロイド受容体リガンド」とは、核ステロイド受容体と結合して、受容体−リガンド複合体を形成する天然または合成化合物を意味する。用語リガンドには、部分的な作用剤/拮抗剤作用を有する作用剤、拮抗剤、および化合物が含まれる。
【0113】
「ステロイド受容体作用剤」とは、核ステロイド受容体と結合して受容体−作用剤複合体を形成する化合物を意味する。この受容体−作用剤複合体は、ホルモン応答要素と呼ばれるDNAの特定の領域と結合する。作用剤には、ステロイドやステロイド様ホルモン、レチノイド、甲状腺ホルモン、製薬的に活性のある化合物などが含まれる。個々の作用剤は,複数の受容体に結合する能力を有する場合がある。天然のステロイドホルモン作用剤には、エストラジオール、プロゲステロン、アンドロゲン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドが含まれる。上で指摘したように、一部のステロイド受容体作用剤は、用量の関数として拮抗剤としてのある程度の効果を示し得る。したがって、このような「作用剤」は、本発明によって定義された抗ホルモン剤として有効であり得る。
【0114】
「ステロイド受容体拮抗剤」とは、作用剤とは反対の生物学的効果を有する化合物を意味する。拮抗剤は、核ステロイド受容体に結合し、受容体に対してステロイド作用剤と競合することによって、ステロイド受容体作用剤の作用を遮断する。「拮抗剤」は、作用剤の作用を遮断するその能力によって定義されている。ステロイド受容体拮抗剤には、「純粋な」拮抗剤だけでなく、部分的な作用剤/拮抗剤作用を有する化合物も含まれる。純粋な拮抗剤は、それ自体は作用剤作用を有さずに、受容体結合に対して作用剤と効果的に競合する。部分的拮抗剤は、受容体結合に対して作用剤と競合するのに効果がより低いことも、また受容体と結合するのに同等の有効性を有することも、競合する相手の作用剤の5〜10%の作用剤作用しか有さないこともある。したがって、拮抗剤は、競合する作用剤より低い有効性の作用効果を有することがある。
【0115】
「放射性療法」:本発明によれば腫瘍はさらに、放射線または放射性薬剤で治療することができる。放射源は、治療する患者の外部または内部のどちらでもよい。放射源が患者の外部の場合、この療法は外部照射放射性療法(EBRT)として知られている。放射源が患者の内部の場合、この療法は近接照射療法(BT)と呼ばれている。使用されてきた典型的な放射性原子には、ラジウム、セシウム−137、およびイリジウム−192、アメリシウム−241、および金−198、コバルト−57;銅−67;テクネチウム−99;ヨウ素−123;ヨウ素−131;およびインジウム−111が含まれる。本発明による薬剤を、放射性同位元素を用いて標識することも可能である。
【0116】
今日では、放射性療法は切除不能や手術不能の腫瘍および/または腫瘍転移の標準の治療法である。放射性治療を化学療法と組み合わせると改善された結果が見られる。放射性療法は、標的区域に与えた高用量の放射線が腫瘍組織と正常組織のどちらもの再生細胞の死滅をもたらすという原理に基づいている。
【0117】
放射線用量措置は一般的に、放射線吸収線量(rad)、時間、および画分の点から定義され、癌専門医によって注意深く定義されなければならない。患者が受ける放射線の量は様々な考慮事項に依存するが、最も重要な2つの考慮事項は、身体の他の重要な構造または組織に関連した腫瘍の位置、および腫瘍が拡散した範囲である。放射性療法を受ける患者の好ましい治療過程は、5〜6週間の期間にわたり、全用量50〜60Gyを、1.8〜2.0Gyの単一の一日画分を週に5日、患者に投与する治療スケジュールである。Gyはグレイの略記であり、100radの用量をいう。好ましい実施形態では、ヒト患者の腫瘍を血管新生拮抗剤およびTNFα/IFNγおよび放射線で治療した場合に相乗効果が起こる。言い換えれば、前記化合物による腫瘍増殖の阻害は、放射性および/または化学療法剤と組み合わせた場合に増強される。本発明に従って任意選択で放射性療法を使用することができる。これは、本発明の薬剤を十分な量患者に投与することができない場合に推奨され、好ましい。
【0118】
「薬剤治療」:本発明の方法は本発明を実施するためのステップとして、様々な形式を含む。たとえば、本発明の薬剤は、同時に、連続的に、または個別に投与することができる。さらに、この薬剤を、3週間までの間隔、すなわち、第1活性薬剤を投与した実質的に直後から、第1薬剤を投与した約3週間後までの間隔を空けて個別に投与することができる。この方法は、外科的手順に従って実施することができる。あるいは、第1活性薬剤と第2活性薬剤を投与する間に外科的手順を実施することができる。この方法の典型は、本発明の方法と外科的な腫瘍除去の組合せである。この方法による治療は一般的に、1つまたは複数の投与サイクル中での治療組成物の投与を含む。たとえば、同時投与を実施した場合、両方の薬剤を含む療法組成物を、約2日〜約3週間の期間をかけて、単一サイクルで投与する。
【0119】
その後は、治療サイクルを、医者の判断に従って、必要に応じて繰り返すことができる。同様に、連続的な施用が企図される場合、それぞれの個々の療法剤の投与時間が一般的に同じ期間に及ぶように調整する。サイクル間の間隔は、約0から2カ月まで変えることができる。
【0120】
本発明の薬剤を、非経口的に注入または時間をかけたゆっくりしたインフージョンによって投与することができる。一般的に治療する組織には通常全身投与によって身体内で接近することができ、したがって治療組成物の静脈内投与によって最も頻繁に治療されるが、組織標的が標的分子を含む可能性がある場合は、他の組織および送達手段も企図されている。したがって、本発明の薬剤は、眼内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、または正所位注入およびインフージョンによって投与することができ、または蠕動手段によって送達することもできる。たとえば本発明のインテグリン拮抗剤を含む治療的組成物は、従来、たとえば単位用量の注入として静脈内に投与されてきた。
【0121】
本発明の療法組成物は、生理的に許容される担体を、有効成分としてそれに溶解または分散させた、本明細書中に記載されている関連する薬剤と一緒に含む。本明細書中で使用する用語「製薬的に許容される」とは、嘔気、眩暈、胃のむかつきなど望ましくない生理効果を生じることなしに、哺乳動物内またはその表面に投与することが可能な物質を表す組成物、担体、希釈剤、および試薬をいう。この中に有効成分を溶解または分散させた薬理組成物の調製は当分野でよく理解されており、処方に基づいて限定する必要はない。通常、このような組成物は注射液として、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製されるが、使用前に液体中で溶液または懸濁液にするのに適した固体形を調製することもできる。この調製物を乳化することもできる。有効成分を、製薬的に許容され、有効成分に適合する、本明細書中に記載する治療方法での使用に適した量の賦形剤と共に混合することができる。適切な賦形剤は、たとえば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組合せである。さらに、所望する場合は、組成物に、有効成分の有効性を増強させる湿潤剤や乳化剤、pH緩衝剤など補助的な物質を少量含めることができる。本発明の療法組成物には、それに含まれる成分の製薬的に許容される塩を含めることができる。製薬的に許容される塩には、たとえば塩酸またはリン酸など無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸など有機酸を用いて形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基を用いて形成する)が含まれる。遊離カルボキシル基を用いて形成する塩も、たとえばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄など無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど有機酸から誘導することもできる。特に好ましいのは、環状ポリペプチドαv拮抗剤の調製に使用する場合のHCl塩である。生理的に許容される担体は当分野で周知である。液体担体の例は、有効成分と水以外の追加の物質を含まない、または生理的pH値のリン酸ナトリウムなど緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水など生理的食塩水やブロスを含む無菌水性溶液である。さらに、水性担体は1つ以上の緩衝塩だけでなく塩化ナトリウムや塩化カリウムなど塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含むことができる。液体組成物はまた、水に加えて、または水なしで、液相を含むこともできる。このような追加の液相の典型はグリセリン、綿実油など植物油、水−油乳化液である。
【0122】
典型的には、たとえばインテグリン受容体遮断抗体、抗体断片または抗体複合体、あるいは抗VEGF受容体遮断抗体、断片または複合体の形の免疫療法剤の治療有効量とは、生理的に許容される組成物中で投与した場合に、1ミリリットル(ml)あたり約0.01マイクログラム(μg)から約100μg/mlの血漿濃度、好ましくは約1μg/ml〜約5μg/ml、通常は約5μg/mlの血漿濃度を得るのに十分な量である。
【0123】
言い換えれば、用量は、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kg〜約200mg/kg、最も好ましくは約0.5mg/kg〜約20mg/kgの、1つまたは複数の用量投与を1日毎、一日または複数日に変動させて行うことができる。免疫療法剤がモノクローナル抗体の断片または複合体の場合、この量は、抗体全体の質量に対する断片/複合体の質量の比に基づいて容易に調節することができる。好ましい血漿のモル濃度は、約2マイクロモーラー(μM)〜約5ミリモーラー(mM)であり、好ましくは約100μM〜1mM抗体拮抗剤である。
【0124】
非免疫療法ペプチドまたはタンパク質ペプチド、あるいは他の類似の大きさの生物分子である、本発明による薬剤の療法的に有効な量は、典型的には、生理的に許容される組成物中で投与した場合に、1ミリリットル(ml)あたり約0.1マイクログラム(μg)から約200μg/mlの血漿濃度、好ましくは約1μg/ml〜約150μg/mlの血漿濃度を得るのに十分な量のポリペプチドである。1モルあたり約500グラムの質量を有するポリペプチドに基づいた場合、好ましい血漿モル濃度は約2マイクロモーラー(μM)〜約5ミリモーラー(mM)、好ましくは約100μM〜1mMポリペプチド拮抗剤である。
【0125】
好ましくは本発明による核ホルモン受容体拮抗剤または(化学的)化学療法剤(免疫療法剤でも非免疫療法ペプチド/タンパク質でもない)である活性薬剤の典型的な用量は、1日あたり、体重1キログラムあたり10mg〜1000mg、好ましくは約20〜200mg、より好ましくは50〜100mgである。
【0126】
本発明の薬剤組成物は、好ましくは乳癌および前立腺癌の治療に適している。
【0127】
乳癌には、以下の抗ホルモン剤および用量が好ましい。
乳癌には、以下の抗ホルモン剤および用量が好ましい。
上記抗ホルモン治療の主体の任意の類似物やさらなる開発物は、所定の用量に従って使用される。
【0128】
本発明の薬剤組成物には、それだけには限定されないが、たとえば、骨吸収阻害剤、心保護剤など抗癌剤の毒性効果を軽減させる薬剤を含む、本発明の組合せ療法(「アジュバント療法」)に関連する副作用を軽減または回避する薬剤を用いた対象の治療を包含するものを含めることができる。前記アジュバント剤は、化学療法、放射療法、手術に関連する嘔気や嘔吐の頻度を阻止または軽減する、あるいは骨髄抑制性抗癌剤の投与に関連する感染症の発生率を軽減させる。アジュバント剤は当分野で周知である。
【0129】
本発明による免疫療法剤はさらに、BCGや免疫系刺激剤などのアジュバントと一緒に投与することができる。
【0130】
さらに、この組成物に、細胞障害効果の放射標識同位元素や、細胞障害ペプチド(たとえばサイトカイン)、細胞障害薬剤など他の細胞傷害剤を含有する免疫療法剤または化学療法剤を含めてもよい。
【0131】
腫瘍または腫瘍転移を治療するための用語「製薬キット」とは、パッケージ、および原則として腫瘍および腫瘍転移を治療する方法において試薬を使用する指示書をいう。本発明のキット内の試薬は通常、本明細書中に記載の治療組成物として配合されており、従って、キットの配布に適した様々な形の任意のものにすることができる。このような形には、本発明の拮抗剤および/または融合タンパク質を提供するための液体、粉末、錠剤、懸濁液などの剤形が含まれる。試薬は、本発明の方法による個別の投与に適した個別の容器で提供することができ、あるいは、パッケージ内に単一の容器内に組成物として組み合わせて提供することができる。このパッケージは、本明細書中に記載の治療方法に従った1つまたは複数の用量に十分な量の試薬を含むことができる。本発明のキットはまた、パッケージに含まれる材料の「使用説明書」も含む。
【0001】
本発明は、抗EGFR(Her1)抗体と抗ホルモン剤を、任意選択で細胞障害剤/化学療法剤と一緒に投与することを含む、腫瘍および腫瘍転移、好ましくは乳房腫瘍および前立腺腫瘍を治療するための組合せ療法に関する。この方法および前記薬剤を含む薬剤組成物は、各治療薬の腫瘍細胞増殖阻害効果の相乗強化をもたらし、個々の成分を単体で投与することに対して効果的な治療をもたらす可能性がある。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼは、アデノシン三リン酸の末端リン酸をタンパク質基質のチロシン残基に転移させる際に触媒として働く酵素のクラスである。チロシンキナーゼは、基質のリン酸化を通じて、いくつかの細胞機能のシグナル伝達で重大な役割を担っていると考えられている。シグナル伝達の正確な機構は依然として不明確であるが、チロシンキナーゼは、細胞増殖、発癌、および細胞分化に寄与する重要な因子であることが示されている。
【0003】
チロシンキナーゼは、受容体型または非受容体型として分類することができる。受容体型および非受容体型のどちらのチロシンキナーゼも、癌、乾癬、過免疫応答を含めて数々の発病状態をもたらす細胞性シグナル経路に関与している。多くのチロシンキナーゼが、細胞成長のみならず血管新生(angiogenesis)に関与している。
【0004】
受容体型でないチロシンキナーゼもまた、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、LIMKを含めた数多くのサブファミリーからなる。これらサブファミリーのそれぞれが、異なる受容体にさらに細分画される。たとえば、Srcサブファミリーは最も大きなものの1つであり、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、Yrkを含む。酵素であるSrcのサブファミリーは、発癌に関連付けられている。受容体型でないチロシンキナーゼのより詳細な議論は、Bolen、Oncogene、8:2025〜2031、1993を参照されたい。
【0005】
受容体型のチロシンキナーゼは、細胞外の部分、膜貫通部分及び細胞内部分を有しているが、受容体型でないチロシンキナーゼは完全に細胞内にある。受容体結合チロシンキナーゼは、細胞外リガンドが結合するドメイン、膜貫通配列、および細胞質内チロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体型のチロシンキナーゼは、多様な生物活性を有する多数の膜貫通受容体からなる。実際、受容体型のチロシンキナーゼの様々なサブファミリーが同定されている。関連するチロシンキナーゼには線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、ErbB主要クラスファミリーの上皮成長因子(EGF)受容体、および血小板由来成長因子(PDGF)受容体が含まれる。神経成長因子(NGF)受容体、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor:BDNF)受容体、ニューロトロフィン−3(NT−3)受容体、ニューロトロフィン−4(NT−4)受容体もまた、関連している。
【0006】
HERまたはErbBサブファミリーと命名された受容体型チロシンキナーゼの1サブファミリーは、EGFR(ErbB1)、HER2(ErbB2またはp185neu)、HER3(ErbB3)、およびHER4(ErbB4またはtyro2)からなる。この受容体サブファミリーのリガンドには、上皮成長因子(EGF)、TGF−a、アンフィレギュリン、HB−EGF、ベータセルリン(β−cellulin)、ヘレグリン(heregulin)が含まれる。PDGFサブファミリーには、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)からなるFLKファミリーが含まれる。
【0007】
erbB1遺伝子によってコードされるEGFRは、原因として、ヒト悪性腫瘍に関連づけられた。具体的には、乳房、膀胱、肺、頭部、頚部、および胃の癌だけでなくグリア芽細胞種(glioblastomas)でもEGFR発現の増大が観察された。EGFR受容体の発現の増大は、しばしば、オートクリン刺激性経路による受容体活性化をもたらす同じ腫瘍細胞によって生成される、トランスフォーミング成長因子(TGF−a)であるEGFRリガンドの生成の増大に関連している(BaselgaおよびMendelsohn、Pharmac.Ther.、64:127〜154、1994)。EGF受容体は、170,000の分子量を有し、多くの上皮細胞種で見つかる膜貫通糖タンパク質である。これは、少なくとも3つのリガンド、EGF、TGF−α(トランスフォーミング成長因子アルファ)、およびアンフィレギュリン(amhiregulin)によって活性化される。上皮成長因子(EGF)およびトランスフォーミング成長因子アルファ(TGF−a)は共にEGF受容体に結合し、細胞性増殖および腫瘍成長をもたらすことが実証されている。これらの成長因子はHER2に結合しない(UlrichおよびSchlesinger、1990、Cell、61、203)。二量体の性質をもつために受容体の二量体化を誘導する成長因子のいくつかのファミリー(たとえばPDGF)とは違って、EGFなど単量体成長因子は、その受容体用に2つの結合部位を含み、したがって、2つの近隣EGF受容体を架橋結合することができる(Lemmon他、1997、EMBO J.、16、281)。受容体の二量体化は、内因性触媒活性の刺激および成長因子受容体の自己リン酸化にとって重要である。受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)がホモおよびヘテロ二量体化を受けることができることに注意されたい。
【0008】
抗EGF受容体抗体が、EGFおよびTGF−aの受容体への結合を遮断しながら腫瘍細胞の増殖を阻害すると思われることが示された。これらの発見を受けて、抗EGF受容体に対するいくつかのネズミおよびラットモノクローナル抗体が開発され、in vitroおよびin vivoで腫瘍細胞の成長を阻害するその能力が試験された(ModjtahediおよびDean、1994、J.Oncology、4、227)。いずれもEGF受容体に対するヒト化モノクローナル抗体425(hMAb425、米国特許第5,558,864号、ヨーロッパ特許第0531 472号)およびキメラモノクローナル抗体225(cMAb225、米国特許第4,943,533号およびヨーロッパ特許第0359 282号)はいずれもEGF受容体に対するもので臨床試験においてこれらの効果が示された。C225抗体が、in vitroでEGF媒介腫瘍細胞成長を阻害し、ヌードマウスでin vivoでヒト腫瘍形成を阻害することが実証された。さらに、この抗体は、とりわけ、特定の化学療法薬(すなわち、ドキソルビシン、アドリアマイシン、タキソール、シスプラチン)と相乗作用して、異種移植マウスモデルでin vivoでヒト腫瘍を根絶させるように作用するように見えた。Ye他(1999、Oncogene、18、731)は、HER2受容体に対するcMAb225とヒト化MAb4D5の組合せを用いてヒト卵巣癌細胞をうまく治療することができると報告した。
【0009】
ErbBファミリーの第2のメンバーであるHER2(ErbB2およびp185neu)は最初、化学的に処置したラットの神経芽細胞種の形質転換遺伝子の産物として同定された。neuプロトオンコジーンの活性化された形は、コードされたタンパク質の膜貫通領域の点突然変異(バリンからグルタミン酸)から生じる。neuのヒト相同体の増幅が乳房および卵巣癌中で観察され、予後不良と関連している(Slamon他、Science、235:177〜182、1987;Slamon他、Science、244:707〜7 12、1989;米国特許第4,968,603号)。ErbB2(HER2)は約185,000の分子量を有し、EGF受容体(HER1)と相当な相同性を有するが、現在までにはまだ、HER2の特異的リガンドは明確に同定されていない。
【0010】
HER2受容体に対する抗体4D5は、ErbB2過剰発現乳房腫瘍細胞系をTNFαの細胞障害効果に対して感作させることがさらに見出された(米国特許第5,677,171号)。組換えヒト化した形のネズミ抗ErbB2抗体4D5(huMAb4D5−8、rhuMAb HER2またはHERCEPTIN(登録商標)米国特許第5,821,337号)は、大規模な事前の抗癌療法を受けた、ErbB2過剰発現転移性乳癌を有する患者で臨床的に活性がある(Baselga他、J.Clin.Oncol.、14:737〜744、1996)。HERCEPTIN(登録商標)は、腫瘍がErbB2タンパク質を過剰発現している転移性乳癌を有する患者の治療用に、1998年に市販許可を得ている。
【0011】
前立腺癌および乳癌は、男性/女性に最も頻繁に診断される癌であり、全世界で年間数十万人以上の死因となっている。初期段階の、器官の前立腺癌および乳癌は多くの場合、患者が関連性のない原因で死亡するまで手術または照射線治療で処置されている。乳癌、大腸癌、腺癌など癌腫は、急速な細胞分裂によって特徴づけられている。したがって、これらの癌には、急速な細胞分裂を阻害する化学療法剤を用いた治療があっている。一方、前立腺癌は急速な細胞分裂によって特徴づけられていない。したがって、従来の化学療法剤が前立腺癌腫に対して示す効果は一般的に低い。前立腺癌腫は多くの場合ホルモンの調節に感受性がある。現在承認されている前立腺癌の治療法には、外科的去勢、化学的去勢、または外科的去勢と化学的去勢の組合せが含まれる。
【0012】
主要なテストステロン生成器官である精巣を除去すると、循環アンドロゲンのレベルが通常の5%未満にまで低下する。このアンドロゲンレベルの低下により、前立腺腫瘍の増殖が阻害される。外科的去勢の抗腫瘍性効果は直接的であるが、この抗腫瘍性効果は一時的である可能性がある。外科的去勢は多くの場合、アンドロゲン依存性前立腺腫瘍細胞のクローン選択をもたらす。これは、テストステロンやDHT刺激なしに増殖する形の前立腺腫瘍の再発生をもたらす(Isaacs他、1981、Cancer Res.、41:5070〜5075;Crawford他、1989、IV.Eng.J.Med.、321:419〜424)。多くの場合は、最初の治療として外科的去勢の代わりに化学的去勢(または医学的去勢と呼ばれる)が行われる。
【0013】
前立腺癌および乳癌は、これらの多くがステロイド性ホルモン(それぞれ乳癌にはエストロゲン、前立腺癌にはアンドロゲン)によって増殖が刺激されるという独特の特徴を共有している。このステロイド性ホルモンは、特異的な受容体に結合することによってその刺激シグナルを送達する。
【0014】
エストロゲンおよびアンドロゲン受容体は、乳癌細胞の約75%、前立腺癌細胞のほぼ100%で見つけることができ、これらは、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、ビタミンAやDなど親油性ビタミンの受容体を含めた核ホルモン受容体スーパーファミリー、およびスーパーファミリーの他のメンバーと一致した構造を有するが同定されたリガンドを有さないオーファン受容体のメンバーである(Evans、1988、Science、240:889〜895)。この受容体は、標的遺伝子のプロモーター内の特定のDNA配列と相互作用することによって遺伝子の発現を制御する(Glass、1994、Endocr.Rev.、15:391〜407)。
【0015】
核受容体は、甲状腺/レチノイン酸/ビタミンD受容体(TRV)ファミリーとステロイド受容体(Rs)ファミリーの2つのサブファミリーに分類されている。ステロイドホルモン受容体は、それに対応するHREにリガンド依存的に結合するが、甲状腺ホルモン受容体(T3R)やレチノイン酸受容体(RAR/RXR)など一部の受容体はそれに対応する応答要素にリガンド依存的に結合する。ステロイド受容体は、正常な健康状態および癌、炎症、内分泌性疾患、および経口避妊を含めた疾病状態の範囲で役割を果たす。内分泌腺によって生成される天然ステロイドホルモンは、標的器官のステロイドホルモン受容体に結合する。
【0016】
天然ステロイドホルモンには、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドが含まれる。これらのホルモンは作用剤(agonist)として定義され、ホルモン−受容体複合体は、転写速度を加速または減速させることによって特異的遺伝子の転写を調節する。
【0017】
たとえばエストラジオールおよびプロゲステロンは腎臓、卵巣、子宮頚部、子宮、骨、皮膚、乳房、心臓、下垂体、脳での遺伝子転写を制御するなど、ステロイド作用剤はいくつかの組織で多面的な生理作用を有する。ステロイド受容体サブファミリーのホルモンは多くの疾患を治療するのに使用され、健康な人ではとりわけ経口避妊およびホルモン置換療法で使用される。
【0018】
ステロイドホルモン作用剤の作用を遮断することが医学的に望ましい場合が多い。
【0019】
このため、研究者らは、乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌の治療において癌の発生を予防するまたは異常増殖を遮断する薬剤として使用される、あるいは避妊剤として使用されるステロイド受容体に対する拮抗剤(antagonist)を合成してきた。これら拮抗剤はステロイド受容体のリガンドでもあるが、一般的に、作用剤によって生じる効果と逆の効果を有する。
【0020】
ステロイド受容体拮抗剤の作用は複雑である。多くの場合これらは二重の作用/拮抗効果を有する。たとえば、ある拮抗剤は部分的に作用剤としての生物活性を有する可能性がある。したがって、この拮抗剤は作用剤の活性を遮断し、相当低減された作用活性がもたらされる。拮抗剤はまた、ある組織(たとえば乳房)で所望する拮抗効果を有するが、別の組織(たとえば子宮)で作用効果を有する可能性がある。拮抗剤の作用効果は、望まれない副作用であったり、そうでない場合もある。
【0021】
同様に、癌の治療では、拮抗剤リガンドは最初、腫瘍に対する所望の阻害効果を有するが、時間と共にこのリガンドが作用剤様の効果に転換し、その結果癌が増殖を再開することがある。
【0022】
典型的な例はLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)である。LHRHの活性化合物を単一のより高い用量で投与するとホルモン生産が刺激されるが(作用剤作用)、前記化合物を連続的に低い用量で投与すると、ホルモン放出効果を阻害する拮抗剤として作用する。
【0023】
血管新生(脈管新生)は、または新血管形成と呼ばれるが、新しく発生中の血管が組織内に伸びることを要する組織血管形成のプロセスである。このプロセスは、内皮細胞および平滑筋細胞の浸潤によって媒介されている。このプロセスは、(1)血管が既存の血管から出芽することができる、(2)血管の新規発生は前駆細胞から生じることができる(脈管形成(vasculogenesis))、または(3)存在する細い血管の直径が拡大することができる(Blood他、1990、Bioch.Biophys.Acta、1032、89)ことの3つのうち任意の1つで進行すると考えられている。血管内皮細胞は、ビトロネクチン受容体(αVβ3またはαVβ5)、コラーゲンタイプIおよびIV受容体、ラミニン受容体、フィブロネクチン/ラミニン/コラーゲン受容体、フィブロネクチン受容体を含めて、少なくとも5つのRGD依存性インテグリンを含有することが知られている(Davis他、1993、J.Cell.Biochem.、51、206)。平滑筋細胞は、αVβ3αVβ5を含めて少なくとも6つのRGD依存性インテグリンを含有することが知られている。
【0024】
血管新生は新生児の生育における重要なプロセスであるが、創傷治癒、ならびに組織炎症、関節炎、乾癬、癌、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、および他の新血管形成性の眼疾患を含めた様々な臨床的に重要な疾病の発生においても重要である。血管新生に関連したこれらの病型は、血管新生病と呼ばれる(Folkman他、1987、Science、235、442)。
【0025】
様々なインテグリンのαまたはβサブユニットに免疫特異的なモノクローナル抗体を用いたin vitro細胞接着の阻害により、ビトロネクチン受容体αVβ3が微小血管内皮細胞を含めた様々な細胞種の細胞接着に関連付けられた(Davis他、1993、J.Cell.Biol.、51、206)。
【0026】
インテグリンは細胞外基質タンパク質と結合し、したがって一般的に細胞接着現象と呼ばれている細胞−細胞および細胞−細胞外基質(cell-extracellular matrix)の相互作用を媒介することが知られている、細胞性受容体のクラスである。このインテグリン受容体は、αおよびβサブユニットから形成される非共有結合性ヘテロ二量体糖タンパク質複合体の共通の構造特徴を有するタンパク質のファミリーを構成する。ビトロネクチンに優先的に結合する本来の特徴に因んで命名されたビトロネクチン受容体は、現在では、αVβ1、αVβ3、αVβ5と呼ばれる3つの異なるインテグリンを指すことが知られている。αVβ1は、フィブロネクチンおよびビトロネクチンと結合する。αVβ3は、フィブリン、フィブリノーゲン、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、フォンウィルブランド因子を含めた様々なリガンドと結合する。αVβ5は、ビトロネクチンと結合する。異なる生物学的機能を有する様々なインテグリンのみならず、共通の生物学的特異性を有する異なるインテグリンやサブユニットが存在することが明白である。多くのインテグリンを認識する、リガンド内の1つの重要な認識部位は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)トリペプチド配列である。上で同定したビトロネクチン受容体インテグリンのリガンドすべてで、RGDが見つかっている。
【0027】
このRGD認識部位は、RGD配列を含む直線状および環状(ポリ)ペプチドによって模倣することができる。このようなRGDペプチドは、それぞれインテグリン機能の阻害剤または拮抗剤であることが知られている。しかし、RGDペプチドの配列および構造に応じて、特異的なインテグリンを標的にするように阻害の特異性を改変できることに注目することが重要である。異なるインテグリン特異性の様々なRGDポリペプチドが、たとえばCheresh他、1989、Cell、58、945、Aumailley他、1991、FEBS Letts.、291、50、および数々の特許出願や特許(たとえば米国特許第4,517,686号、第4,578,079号、第4,589,881号、第4,614,517号、第4,661,111号、第4,792,525号、ヨーロッパ特許第0770 622号)に記載されている。
【0028】
新しい血管の生成、すなわち血管新生は、悪性腫瘍疾患の進展の主な役割を担っており、血管新生を阻害する薬剤の開発に多くの関心を集めてきた(たとえば、Holmgren他、1995、Nature Medicine、1、149;Folkman、1995、Nature Medicine、1,27;O’Reilly他、1994、Cell、79、315参照)。固形腫瘍への血液供給を減少させることによる固形腫瘍の成長を阻害する方法で血管新生を阻害するためにαVβ3インテグリン拮抗剤を使用することが知られている(たとえば、合成ポリペプチド、モノクローナル抗体、αVβ3受容体に結合して血管新生を阻害するαVβ3の模倣体など、αVβ3の拮抗剤の使用を記載している、米国特許第5,753,230号および米国特許第5,766,591号参照)。ビトロネクチン受容体αVβ5の拮抗剤を使用してαVβ5に媒介された組織の血管新生を阻害する方法および組成物は国際公開公報WO 97/45447号に開示されている。
【0029】
血管新生は、細胞の細胞外基質成分との相互作用に依存するプロセスである内皮細胞の浸潤、遊走(マイグレーション)、および増殖によって特徴づけられている。本記載では、インテグリンの細胞−基質受容体が細胞の拡散および遊走を媒介する。インテグリンαVβ3の内皮接着受容体は、抗血管新生治療戦略における血管特異的標的を提供する際に主要な役割を演じることが示された(Brooks他、1994、Science、264、569;Friedlander他、1995、Science、270)。血管新生における血管性インテグリンαVβ3の必要性は、いくつかのin vivoモデル、すなわち上述したようなインテグリンαVβ3およびαVβ5のペプチド拮抗剤の全身投与、または代わりに抗αVβ3抗体LM609によって、移植したヒト腫瘍による新しい血管の生成が完全に阻害されたモデルによって実証された(Brooks他、1994、Cell 79、1157;ATCC HB9537)。この抗体は、活性化されるとその天然リガンドにより増殖性血管新生血管細胞のアポトーシスを促進し、したがって腫瘍増殖に必須の現象である新しく形成中の血管の成熟を乱して、αVβ3インテグリンの受容体を遮断する。それにもかかわらず、内皮細胞が存在していなくても黒色腫細胞はクモの巣状のパターンの血管を形成できることが最近報告され(1999、Science、285、14)、これは、腫瘍が、内皮組織の存在下でのみ効果的である一部の抗血管新生剤を無効化することができる可能性を暗示している。
【0030】
VEGF、Ang1、およびbFGFを含めた数々の分子が、内皮の増殖、遊走、および集合を刺激し、これらは重要な生存因子である。VEGF(vascular endotherial groeth factor)血管内皮成長因子)は、内皮細胞の有糸分裂誘発を刺激することができる選択的血管新生成長因子として同定されている。特に、VEGFは、原発腫瘍の血管新生および虚血性眼球疾病における主要な媒体であると考えられている。VEGFは、内皮細胞に特異的な血管新生性因子(Ferrara他、1992、Endocrin.Rev.、13、18)および血管透過性因子である(Senger他、1986、Cancer Res.、465629)、チロシンキナーゼ活性を有する高親和性の膜結合受容体に結合するホモ二量体(MW:46,000)である(Jakeman他、1992、J.Clin.Invest.、89、244)。ヒト腫瘍バイオプシーでは、悪性腫瘍細胞によるVEGF mRNA、および近隣の内皮細胞中でVEGF受容体mRNAの発現の増強が示された。VEGFの発現は、血管壊死領域の近隣の腫瘍領域で最大であるように見える(総説はThomas他、1996、J.Biol.Chem.、271(2)、603;Folkman、1995、Nature Medicine、1、27参照)。国際公開公報WO 97/45447は、αVβ5インテグリンを特にVEGF、EGF、TGF−αに誘発される新血管形成に関連づけ、またαVβ5拮抗剤がVEGFに促進される血管新生を阻害することができることを開示している。効果的な抗腫瘍療法では、モノクローナル抗体を使用して血管新生を阻害するためにVEGF受容体を標的にすることを利用してもよい(Witte他、1998、Cancer Metastasis Rev.、17(2)、155)。MAb DC−101は、腫瘍細胞の血管新生を阻害することが知られている。
【0031】
本発明では以下で、EGF受容体(ErbB1、Her1)に対する特異的抗体は、抗ホルモン剤、特に核ホルモン受容体ファミリー(nuclear hormone receptor family)の阻害剤と一緒に投与した場合に、より効果的に特に前立腺癌および乳癌の腫瘍組織を死滅または縮小させることを説明する。抗血管新生剤および/または細胞障害剤と共にさらに投与することにより、前記組合せ療法の陽性効果および相乗効果が改善される可能性がある。
【0032】
(発明の概要)
本発明は初めて、EGF受容体を遮断または阻害する薬剤を抗ホルモン剤と一緒に個体に投与するという、腫瘍の治療における新しい概念を記載する。任意選択で、本発明による組成物は、好ましくは細胞障害剤(cytotoxic agent)、化学療法剤、ErbB受容体チロシンキナーゼファミリーの阻害剤または拮抗剤あるいは血管新生の阻害剤または拮抗剤からなる群から選択される、治療上活性のある化合物をさらに含む。
【0033】
したがって、本発明は、好ましい抗EGFR剤として抗EGFR抗体、好ましい抗ホルモン剤として核受容体、好ましくはステロイド受容体の阻害剤または拮抗剤を含む薬剤組成物に関する。
【0034】
本発明によれば、前記治療的に活性のある薬剤は、1つまたは複数の抗EGFR抗体、1つまたは複数の抗ホルモン剤、および任意選択で1つまたは複数の細胞障害剤/化学療法剤、抗ErbB剤、抗血管新生剤を単一パッケージまたは別の容器に含む、パッケージを含む製薬キットの手段によって提供することもできる。この組合せを用いた療法は、任意選択で放射線による治療を含んでもよい。
【0035】
ただし、本発明はさらに、抗EGFR活性および抗ホルモン性活性を有する単一の(融合)分子のみを、任意選択で1つまたは複数の細胞障害剤/化学療法剤と共に投与することを含む、組合せ療法に関する。例は、周知の組換え方法または化学的方法によってそのFc部分のC末端が抗ホルモン剤に融合されている、上記または下記のh425やc225など抗EGFR抗体である。さらなる例は、特異性の1つが核ホルモン受容体に対するものがあり、もう1つがEGF受容体に対するものがある二重特異性抗体である。
【0036】
主に、投与は放射性療法を伴って行うことができ、放射性処置は薬物投与と実質的に同時に、あるいはその前または後に行うことができる。本発明による組合せ療法の様々な薬剤の投与もまた、実質的に同時にまたは連続して行うことができる。腫瘍血管の発生に関与する受容体をその細胞表面に保有する腫瘍を、本発明の組合せ療法によりうまく処置することができる。
【0037】
腫瘍は、その発生および増殖の代替ルートを誘導することが知られている。1つの経路が遮断された場合、これらはしばしば、他の受容体を発現および使用し、他のシグナル経路を使用して別のルートに切り替える能力を有している。したがって、本発明の薬剤組合せでは、腫瘍のこのような可能な発生戦略のいくつかを遮断し、その結果、様々な利点を提供する。本発明による組合せは、腫瘍細胞の表面に存在する関連するホルモン受容体の活性化によって発生および増殖する腫瘍疾患、腫瘍様疾患、異常増殖疾患、腫瘍転移を治療および予防するのに有用である。好ましくは、本発明の様々な組み合わせた薬剤は、低用量、すなわち臨床の場で従来使用されてきた用量より低い用量での組合せで投与する。個体に投与する本発明の化合物、組成物、薬剤、および療法の用量を低下させる利点には、より高い用量に関連する副作用の発生率を低下させることが含まれる。たとえば、上記および下記の薬剤の用量を減らすことによって、より高い用量の場合に観察されるのに比べて、嘔気および嘔吐の頻度および重症度の軽減がもたらされる。副作用の発生率を低下させることによって、癌患者の生活の質(quality of life)の改善が予期される。副作用の発生率を低下させるさらなる利点には、患者コンプライアンスの改善、副作用の治療のために必要な入院回数の減少、副作用に関連する苦痛を治療するのに必要な鎮痛剤の投与の低減が含まれる。あるいは、本発明の方法および組合せは、より高い用量での治療効果を最大限にすることもできる。
【0038】
本発明による組合せは、驚くべき相乗効果を示す。この薬剤の組合せを投与すると、顕著な有害薬物反応は検出できなかったが、臨床研究中に現実の腫瘍縮小および分解を観察することができた。
【0039】
詳細には、本発明は以下に関する。
【0040】
・少なくとも(i)1つの抗EGFR抗体または免疫療法上有効なその断片、および(ii)1つの抗ホルモン剤を、治療有効量、任意選択で製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含む薬剤組成物;
・前記抗EGFR抗体または前記免疫療法上有効なその断片が、ネズミ、キメラ、またはヒト化したMab425(h425)あるいはキメラMab225(c225)阻害剤/拮抗剤である、対応する薬剤組成物;
・前記抗ホルモン剤が核ホルモン受容体ファミリーの阻害剤である、対応する薬剤組成物;
・前記抗ホルモン剤がステロイド受容体阻害剤/拮抗剤である、対応する薬剤組成物;
・抗血管新生剤をさらに含む、対応する薬剤組成物;
・細胞障害剤および/または化学療法剤をさらに含む、対応する薬剤組成物;
・抗HER2抗体または免疫療法上活性のあるその断片をさらに追加して含む、対応する薬剤組成物;
・抗EGFR活性および抗核ホルモン受容体活性を有する抗体を、任意選択で製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含む薬剤組成物;
・前記抗体が二重特異性抗体(bispecific antibody)である、対応する薬剤;
・少なくとも(i)1つの抗EGFR抗体または免疫療法上有効なその断片、および(ii)1つの抗ホルモン剤、、および任意選択で(iii)細胞障害剤および/または化学療法剤を含むパッケージを含む製薬キット;
・(i)モノクローナル抗体h425、および(ii)ステロイド受容体拮抗剤を含む、対応する製薬キット;
・(i)モノクローナル抗体h425、および(ii)LHRH拮抗剤を含む、対応する製薬キット;
・前記製薬的に活性のある薬剤が、前記パッケージの個別の容器内で提供される、対応する製薬キット;
・腫瘍および腫瘍転移、好ましくは乳癌および前立腺癌を治療する医薬品または医薬組成物を製造するための、上記および下記で定義した薬剤組成物または製薬キットの使用;
・ステロイド依存性でない乳癌および前立腺癌を治療するための、対応する使用;
・治療有効量の(i)抗EGFR抗体、および(ii)抗ホルモン剤を、同時または連続的に個体に投与することを含む、個体の腫瘍または腫瘍転移を治療する方法;
・前記EGFR抗体がモノクローナル抗体h425またはc225であり、前記抗ホルモン剤がステロイド受容体拮抗剤である、対応する方法;及び
・前記個体に治療有効量の細胞障害剤および/または化学療法剤、抗血管新生剤、あるいは別の抗ErbB受容体抗体をさらに投与することを含む、対応する方法。
【0041】
(発明の詳細な記述)
別段に指示しない限りは、本発明中で使用する用語および表現は、以下に与える意味および定義を有する。さらに、これらの定義および意味は、本発明をより詳細に説明し、これには好ましい実施形態が含められる。
【0042】
「生物学的分子」は、原則として約300より大きい分子量を有し、好ましくはポリ−およびオリゴ糖類、オリゴ−およびポリペプチド、タンパク質、ペプチド、ポリ−およびオリゴヌクレオチド、ならびにそれらをグリコシル化した脂質誘導体である、天然または合成した分子を含む。最も典型的には、生物学的分子は、免疫療法薬剤、上記すべての抗体やその断片、これら抗体の機能的誘導体、あるいは融合タンパク質を含む断片を含む。
【0043】
「受容体」または「受容体分子」とは、リガンドが結合して受容体−リガンド複合体を形成する1つまたは複数のドメインを含む、溶解性または膜結合/関連(associated)タンパク質または糖タンパク質である。受容体の作用剤または拮抗剤である可能性のあるリガンドと結合することで、受容体は活性化または不活性化され、経路シグナリングを開始または遮断し得る。
【0044】
「リガンド」または「受容体リガンド」とは、受容体分子と結合して受容体−リガンド複合体を形成する天然または合成化合物を意味する。用語リガンドは、作用剤、拮抗剤、および部分的な作用剤/拮抗剤作用を有する化合物を含む。
【0045】
「作用剤」または「受容体作用剤」とは、前記受容体および受容体−作用剤複合体をそれぞれ活性化させることによって、受容体と結合して受容体−作用剤複合体を形成し、経路シグナリングおよびさらなる生物学的プロセスを開始させる、天然または合成化合物である。
【0046】
「拮抗剤」または「受容体拮抗剤」とは、作用剤と反対の生物学的効果を有する天然または合成化合物を意味する。拮抗剤は受容体と結合して、受容体との結合に対して作用剤と競合することによって受容体作用剤の作用を遮断する。拮抗剤は、作用剤の作用を遮断するその能力によって定義される。受容体拮抗剤は、抗体や免疫療法上効果的なその断片であってもよい。本発明の好ましい拮抗剤を、以下に引用し考察する。
【0047】
用語「治療上有効」または「治療有効量」とは、哺乳動物中の疾患または傷害を治療するのに効果的な薬物量をいう。癌の場合、薬物の治療有効量は癌細胞の数を減らす、腫瘍の大きさを縮小させる、癌細胞の末梢組織への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度まで減速させ、好ましくは停止させる)、ある程度まで腫瘍増殖を阻害する、および/または癌細胞に関連する1つまたは複数の症状をある程度まで軽減させ得る。この薬物は、存在する癌細胞の増殖を阻止かつ/または死滅させる範囲では、これは細胞増殖抑制剤および/または細胞障害剤である可能性がある。癌の療法では、有効性は、たとえば疾病の進行の時間(TTP)および/または応答速度(RR)を決定することで測定することができる。
【0048】
用語「免疫療法上効果的」とは、哺乳動物内で免疫応答を引き起こす生物分子をいう。より具体的には、この用語は、抗原を認識して結合してもよい分子をいう。典型的には、その抗原結合部位(相補決定領域、CDR)を含む抗体、抗体断片、および抗体融合タンパク質は、免疫療法上効果的である。
【0049】
「抗血管新生剤」とは、血管の発生を遮断、またはある程度まで妨げる天然または合成化合物をいう。抗血管新生分子は、たとえば、血管新生増殖因子または増殖因子受容体に結合して遮断する生物分子にすることができる。本明細書中で好ましい抗血管新生分子は、受容体、好ましくはインテグリン受容体またはVEGF受容体に結合する。本発明によれば、この用語は前記血管新生剤のプロドラッグも含む。
【0050】
抗血管新生特性を誘発する、異なる構造および起源を有する多くの分子が存在する。最も関連性のある、本発明に適した血管新生阻害または遮断剤のクラスの例には以下がある。
(i)フルロウラシル、マイトマイシン−C、タキソールなど抗有糸分裂剤;
(ii)2−メトキシエストラジオールなどエストロゲン代謝産物;
(iii)亜鉛メタロプロテイナーゼ(メタロプロテアーゼ)(たとえばベチマスタット(betimastat)、BB16、TIMP、ミノサイクリン、GM6001、または「Inhibition of Matrix Metalloproteinases:Therapeutic Applications」(Golub、Annals of the New York Academy of Science、第878a巻、Greenwald、Zucker(編集)、1999)に記載のものを阻害する基質(マトリクス)メタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤;
(iv)IFNα(米国特許第4,530,901号、米国特許第4,503,035号、米国特許第5,231,176号)など抗血管新生性多機能薬剤および因子;アンギオスタチンおよびプラスミノーゲン断片(たとえばクリングル1−4、クリングル5、クリングル1−3(O’Reilly、M.S.他、Cell(マサチューセッツ州ケインブリッジ)、79(2):315〜328、1994;Cao他、J.Biol.Chem.、271:29461〜29467、1996;Cao他、J.Biol.Chem、272:22924〜22928、1997);エンドスタチン(O’Reilly,M.S.他、Cell、88(2)、277、1997および国際公開公報WO 97/15666号)、トロンボスポンジン(TSP−1;Frazier、1991、Curr Opin Cell Biol、3(5):792);血小板因子4(PF4);
(v)プラスミノーゲン活性化剤/ウロキナーゼ阻害剤;
(vi)ウロキナーゼ受容体拮抗剤;
(vii)ヘパリナーゼ;
(viii)TNP−470などフマギリン類似体;
(ix)SUI01などチロシンキナーゼ阻害剤(上記および下記のErbB受容体拮抗剤(EGFR/HER2拮抗剤)の多くもチロシンキナーゼ阻害剤であり、したがって、それぞれ血管および内皮細胞の発生の阻害をもたらす、腫瘍増殖の阻害および抗血管形新生活性をもたらす抗EGF受容体遮断活性を示すことができる);
(x)スラミンおよびスラミン類似体;
(xi)血管新生性ステロイド;
(xii)VEGFおよびbFGF拮抗剤;
(xiii)抗VEGF受容体抗体(DC−101)などVEGF受容体拮抗剤;
(xiv)flk−1およびflt−1拮抗剤;
(xv)COX−IIなどシクロオキシゲナーゼ−II阻害剤;
(xvi)αv拮抗剤およびαv受容体拮抗剤、たとえば抗αv受容体抗体およびRGDペプチドなどインテグリン拮抗剤およびインテグリン受容体拮抗剤。本発明によれば、インテグリン(受容体)拮抗剤が好ましい。
【0051】
用語「インテグリン拮抗剤/阻害剤」または「インテグリン受容体拮抗剤/阻害剤」とは、インテグリン受容体を遮断および阻害する天然または合成分子をいう。ある場合には、この用語には、前記インテグリン受容体のリガンドに対する拮抗剤を含む(たとえばαVβ3にはビトロネクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、フォンウィルブランド因子、トロンボスポンジン、ラミニン、αVβ5にはビトロネクチン、αVβ1にはフィブロネクチンおよびビトロネクチン、αVβ6にはフィブロネクチン)。
【0052】
本発明によれば、インテグリン受容体に対する拮抗剤が好ましい。インテグリン(受容体)拮抗剤は、抗体やその機能的断片または免疫複合体(融合タンパク質)など天然または合成ペプチド、非ペプチド、ペプチド擬態、免疫グロブリンであってよい。
【0053】
本発明の好ましいインテグリン阻害剤は、αVインテグリン(たとえばαVβ3、αVβ5、αVβ6、およびサブクラス)に対するものである。好ましいインテグリン阻害剤はαV拮抗剤、特にαVβ3拮抗剤である。本発明によるαV拮抗剤は、RGDペプチド、ペプチド擬態(非ペプチド)拮抗剤、およびαV受容体を遮断する抗体のような抗インテグリン受容体抗体である。
【0054】
例示的な非免疫性αVβ3拮抗剤は、米国特許第5,753,230号および米国特許第5,766,591号の教示に記載されている。好ましい拮抗剤は、直鎖および環状RGD含有ペプチドである。環状ペプチドは、一般的により安定であり、血清半減期の誘発が増強されている。しかし、本発明の最も好ましいインテグリン拮抗剤は、インテグリン受容体αVβ3、αVβ1、αVβ6、αVβ8、αIIbβ3を遮断するのに効果的なシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(EMD121974、Cilengitide(登録商標)、Merck KgaA、ドイツ;ヨーロッパ特許第0770 622号)である。
【0055】
αVβ3/αVβ5/αVβ6インテグリン受容体の適切なペプチジルおよびペプチド擬態(非ペプチド)拮抗剤は、科学文献および特許文献のどちらもに記載されている。たとえば、HoekstraおよびPoulter、1998、Curr.Med.Chem.、5、195;国際公開公報WO 95/32710号;国際公開公報WO 95/37655号;国際公開公報WO 97/01540号;国際公開公報WO 97/37655号;国際公開公報WO 97/45137号;国際公開公報WO 97/41844号;国際公開公報WO 98/08840号;国際公開公報WO 98/18460号;国際公開公報WO 98/18461号;国際公開公報WO 98/25892号;国際公開公報WO 98/31359号;国際公開公報WO 98/30542号;国際公開公報WO 99/15506号;国際公開公報WO 99/15507号;国際公開公報WO 99/31061号;国際公開公報WO 00/06169号;ヨーロッパ特許第0853 084号;ヨーロッパ特許第0854 140号;ヨーロッパ特許第0854 145号;米国特許第5,780,426号;および米国特許第6,048,861号を参照する。また、本発明中での使用に適したベンズアゼピン、ならびに関連するベンゾジアゼピンおよびベンゾシクロヘプテンαVβ3インテグリン受容体拮抗剤を開示する特許には、国際公開公報WO 96/00574号、国際公開公報WO 96/00730号、国際公開公報WO 96/06087号、国際公開公報WO 96/26190号、国際公開公報WO 97/24119号、国際公開公報WO 97/24122号、国際公開公報WO 97/24124号、国際公開公報WO 98/15278号、国際公開公報WO 99/05107号、国際公開公報WO 99/06049号、国際公開公報WO 99/15170号、国際公開公報WO 99/15178号、国際公開公報WO 97/34865号、国際公開公報WO 97/01540号、国際公開公報WO 98/30542号、国際公開公報WO 99/11626号、および国際公開公報WO 99/15508号が含まれる。主鎖高次構造環の強制を特徴とする他のインテグリン受容体拮抗剤は、国際公開公報WO 98/08840号;国際公開公報WO 99/30709号;国際公開公報WO 99/30713号;国際公開公報WO 99/31099号;国際公開公報WO 00/09503号;米国特許第5,919,792号;米国特許第5,925,655号;米国特許第5,981,546号;および米国特許第6,017,926号に開示されている。米国特許第6,048,861号および国際公開公報WO 00/72801号では、強力なαVβ3インテグリン受容体拮抗剤である一連のノナン酸誘導体が開示されている。他の化学的な低分子インテグリン拮抗剤(ほとんどはビトロネクチン拮抗剤)は、国際公開公報WO 00/38665号に記載されている。他のαVβ3受容体拮抗剤は、血管新生を阻害するのに効果的であることが示された。たとえば、合成受容体拮抗剤、(S)−10,11−ジヒドロ−3−[3−(ピリジン−2−イルアミノ)−1−プロピルオキシ]−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−10−酢酸(SB−265123として知られる)は、様々な哺乳動物モデルシステムで試験されてきた(Keenan他、1998、Bioorg.Med.Chem.Lett.、8(22)、3171;Ward他、1999、Drug Metab.Dispos.、27(11)、1232)。拮抗剤として使用するのに適したインテグリン拮抗剤を同定するためのアッセイは、たとえば、Smith他、1990、J.Biol.Chem.、265、12267および参考特許文献に記載されている。
【0056】
抗インテグリン受容体も、よく知られている。適切な抗インテグリン(たとえばαVβ3、αVβ5、αVβ6)モノクローナル抗体は、F(ab)2、F(ab)、および加工されたFvや単鎖抗体などその抗原結合断片を含むように改変することができる。インテグリン受容体αVβ3に対する、適切な、好んで使用されるモノクローナル抗体の1つは、LM609と同定された(Brooks他、1994、Cell、79、1157;ATCC HB9537)。強力な特異的抗αVβ5抗体、P1F6は、やはり本発明によって好ましい国際公開公報WO 97/45447号に開示されている。さらなる適切なαVβ6選択的抗体はMAb14D9.F8(国際公開公報WO 99/37683号、DSM ACC2331、Merck KGaA、ドイツ)、ならびにインテグリン受容体のαV鎖に選択的に向けられるMAb17.E6(ヨーロッパ特許第0719 859、DSM ACC2160、Merck KGaA)である。別の適切な抗インテグリン抗体は、Vitraxin(登録商標)として商品化されている。
【0057】
「血管新生増殖因子または増殖因子受容体」とは、その活性化によって血管の増殖および発生を促進する因子または受容体である。典型的には、血管内皮増殖因子(VEGF)およびその受容体がこの群に属する。
【0058】
本明細書中の用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、最も広い意味で使用され、具体的には、無処置(すなわち、産生時のまま状態)のモノクロナール抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無処置の抗体から形成された多特異的抗体(たとえば二重特異的抗体)、および、所望する生物活性を示す限りで抗体断片をカバーする。この用語は一般的に、連結された、異なる結合特異性の2つ以上の抗体からなるヘテロ抗体やその断片を含む。
【0059】
定常領域のアミノ酸配列に応じて、無処置の抗体を様々な「抗体(免疫グロブリン)クラス」に割り当てることができる。
【0060】
無処置の抗体には5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分けることができる。抗体の様々なクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれている。本発明による好ましい主要な抗体クラスは、IgG、より詳細にはIgG1およびIgG2である。
【0061】
抗体は、一般的に分子量約150,000からなり、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖を有する糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド連結の数は、様々な免疫グロブリンのアイソタイプの重鎖の間で異なる。各重鎖および軽鎖はまた、等間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、いくつかの定常ドメインがそれに続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1定常ドメインと整列しており、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖および重鎖の可変ドメインの間で境界面を形成すると考えられている。任意の脊椎動物由来の抗体の「軽鎖」を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれている2つの明確に異なる種類に割り当てることができる。
【0062】
本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に同種な抗体の集団をいう。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性のある自然に存在する突然変異を除けば同一である。モノクローナル抗体は単一の抗原部位に向けられているので、高度に特異的である。
【0063】
さらに、様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含むポリクローナル抗体の調製と比較して、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられている。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体に汚染されることなく合成することができるという点で有利である。モノクローナル抗体を調製する方法には、KohlerおよびMilstein(1975、Nature、256、495)、ならびに「Monoclonal Antibody Technology, The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas」(1985、Burdon他、編集、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、第13巻、Elsevier Science Publishers、アムステルダム)に記載されたハイブリドーマ法が含まれ、または周知の組換えDNA法(たとえば、米国特許第4,816,567号参照)によって作成することができる。モノクローナル抗体はまた、たとえば、Clackson他、Nature、352:624〜628、1991、およびMarks他、J.Mol.Biol.、222:58、1〜597、1991に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0064】
用語「キメラ抗体」とは、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体内の対応する配列に同一または相同、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属するが、鎖の残りが、別の種由来の抗体内の対応する配列に同一または相同、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属している抗体、ならびに、所望する生物活性を示す限りはこのような抗体の断片を意味する(たとえば、米国特許第4,816,567号;Morrison他、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855、1984)。
【0065】
キメラ抗体およびヒト化抗体を作成する方法も、当分野で周知である。たとえば、キメラ抗体を作成する方法には、Boss(Celltech)およびCabilly(Genentech)(米国特許第4,816,397号;米国特許第4,816,567号)による特許に記載されているものを含む。
【0066】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限含む非ヒト(たとえばげっ歯類)キメラ抗体の形である。たいていは、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変性領域(hypervariable region:CDR)からの残基が、マウス、ラット、ウサギ、または所望の特異性、親和性、能力を有する、ヒトでない霊長類など非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域からの残基で置き換わっている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。
【0067】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体内には見つからない残基を含むこともできる。これらの改変は、抗体性能がさらに洗練されるように行う。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変領域の実質上全体を含み、高頻度可変性のループの全体または実質上全体が非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、FRの全体または実質上全体がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択で免疫グロブリン、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。ヒト化抗体を作成する方法は、たとえば、Winter(米国特許第5,225,539号)およびBoss(Celltech、米国特許第4,816,397号)に記載されている。
【0068】
用語「可変」または「FR」とは、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で大規模に異なっており、これらが特定の抗原に対する特定の各抗体の結合および特異性に使用されている事実をいう。
【0069】
しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン内に均等に分布されていない。これは、軽鎖および重鎖の可変ドメインのいずれもの中にある、高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメイン内のより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0070】
未変性重鎖および軽鎖はそれぞれ、βシート構造を連結するループを形成する、またはある場合にはβシート構造の一部を形成する3つの高頻度可変領域によって連結されており、概ねβシート立体配置の形をとっている4つのFR(FR1〜FR4)を含む。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近い近位で結合されており、他の鎖の高頻度可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセズダ、1991)。
【0071】
定常ドメインは、抗体を抗原に結合するのに直接関与していないが、抗体依存細胞障害(ADCC)における抗体の関与など様々な効果機能を示す。
【0072】
本明細書中で使用する場合の用語「高頻度可変領域」または「CDR」とは、抗原結合を担っている、抗体中のアミノ酸残基をいう。
【0073】
高頻度可変領域は一般的に、「相補性決定領域」または「CDR」(たとえば、軽鎖可変ドメイン内の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、および重鎖可変ドメイン内の残基31〜35(H1)、50〜65(H2)、95〜102(H3)、ならびに/または「高頻度可変ループ」の残基(たとえば、軽鎖可変ドメイン内の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)および重鎖可変ドメイン内の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)、96〜101(H3)、ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917、1987)からのアミノ酸残基を含む。
【0074】
「フレームワーク領域」または「FR」残基とは、本明細書中で定義した高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0075】
「抗体断片」は、無処置の抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcの断片、二重抗体、直鎖抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成した多重特異性抗体が含まれる。「無処置」の抗体は、抗原結合可変領域のみならず、軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、CH3を含む抗体である。好ましくは、無処置の抗体は1つまたは複数の効果機能を有する。
【0076】
抗体をパパイン消化すると、「Fab」断片と呼ばれる、それぞれが単一の抗原結合部位とCLおよびCH1領域とを含む2つの同一の抗原結合断片、ならびに容易に結晶化する能力が命名に反映されている残留「Fc」断片が生成される。
【0077】
抗体の「Fc」領域は、原則として、CH2、CH3、およびIgG1またはIgG2抗体主要クラスのヒンジ領域を含む。ヒンジ領域とは、CH1領域をCH2〜CH3領域に結合させる約15アミノ酸残基の群である。
【0078】
ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有するが依然として抗原と交差結合することができる「F(ab’)2」断片が得られる。「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小抗原断片である。この領域は、1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインとの密な非共有結合二量体からなる。各可変ドメインの3つの高頻度可変領域(CDR)が相互作用してVH−VL二量体の表面の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置内である。集合的に、6つの高頻度可変領域は抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの高頻度可変領域しか含まない、Fvの半分)は、全結合部位に比べて、低い親和性でではあるが抗原を認識して結合する能力を有する。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含む。「Fab’」断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含めたいくつかの残基が付加されることによって、Fab断片と異なっている。F(ab’)2抗体断片は最初、間にシステインヒンジを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的カップリング法も知られている(たとえば、Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press、1996;米国特許第4,342,566号参照)。
【0079】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片はVを含み、Vは、抗体のドメインであり、これらドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはVHおよびVLドメインの間に、抗原結合に所望される構造をscFvが形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。単鎖FV抗体は、たとえばPluckthun(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、ニューヨーク、ページ269〜315、1994)、国際公開公報WO 93/16185、米国特許第5,571,894号、米国特許第5,587,458号、Huston他(1988、Proc.Natl.Acad.Sci.、85、5879)またはSkerraおよびPlueckthun(1988、Science、240、1038)から知られている。
【0080】
用語「二重抗体(diabody)」とは、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片をいい、断片は、同一ポリペプチド鎖(V,−V,)内に、可変軽鎖ドメイン(V,)に結合した可変重鎖ドメイン(V,)を含む。2つのドメイン間を対にするのには短すぎるリンカーを同一鎖に使用することによって、このドメインは、別の鎖の相補性ドメインと対になって二重抗原結合部位を作成することを強いられる。二重抗体は、たとえばヨーロッパ特許第404,097号、国際公開公報WO 93/11161号に全般的に記載されている。
【0081】
「二重特異性抗体」とは、2つの異なる特異的抗原結合部位を有する単一の2価の抗体(または免疫療法上効果的なその断片)である。たとえば、第1抗原結合部位は血管新生受容体(たとえばインテグリンやVEGF受容体)に向けられるが、第2抗原結合部位はErbB受容体(たとえばEGFRやHER2)に向けられる。
【0082】
二重特異性抗体は、すべてそれ自体で知られている、化学的技術(たとえば、Kranz他、1981、Proc.Natl.Acad/Sci.USA、78、5807参照)、「ポリドーマ」技術(米国特許第4,474,893号参照)、または組換えDNA技術によって生成することができる。さらなる方法は、国際公開公報WO 91/00360号、国際公開公報WO 92/05793号、および国際公開公報WO 96/04305号に記載されている。二重特異性抗体はまた、単鎖抗体から調製することもできる(たとえば、Huston他、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.、85、5879;SkerraおよびPlueckthun、1988、Science、240、1038)。単一ポリペプチド鎖として生成された抗体可変領域の類似体もある。二重特異性結合剤を形成するためには、単鎖抗体を当分野で既知の化学的方法または遺伝工学方法によってカップリングする。ロイシンジッパー配列を使用することによって、本発明による二重特異性抗体を生成することも可能である。利用した配列は、転写因子FosおよびJunのロイシンジッパー領域に由来する(Landschulz他、1988、Science、240、1759;総説には、ManiatisおよびAbel、1989、Nature、341、24参照)。ロイシンジッパーは、ロイシンが7残基毎に起こる、約20〜24残基長の特異的なアミノ酸配列である。このようなジッパー配列では、二量体形成のためにロイシン残基が疎水性側に並んで両親媒性のαへリックスを形成する。FosおよびJunタンパク質のロイシンジッパーに対応するペプチドは、優先的にヘテロ二量体を形成する(O’Shea他、1989、Science、245、646)。ジッパーを含む二重特異性抗体およびそれらを作成する方法も、国際公開公報WO 92/10209号および国際公開公報WO 93/11162号に開示されている。本発明による二重特異性抗体は、単一の特異性を有する抗体に関して上に記載したVEGF受容体およびαVβ3受容体に対する抗体にすることができる。
【0083】
用語「免疫複合体(immunoconjugate)」とは、免疫効果を有さない分子に共有結合によって融合されたそれぞれ抗体または免疫グロブリン、あるいは免疫学的に効果的なその断片をいう。好ましくは、この融合パートナーは、グリコシル化されていてもよいペプチドまたはタンパク質である。前記抗体でない分子は、抗体の定常重鎖のC末端あるいは可変軽鎖および/または重鎖のN末端に連結されていることができる。融合パートナーは、基本的に3〜15個のアミノ酸を含有するペプチドであるリンカー分子を介して連結されていることができる。本発明による免疫複合体は、好ましくは、血管新生受容体、好ましくはインテグリンまたはVEGF受容体およびTNFα、あるいは実質的にTNFαおよびIFNγまたは別の適切なサイトカインからなる融合タンパク質に対する免疫グロブリンまたは免疫療法上効果的なその断片からなる融合タンパク質であり、前記免疫グロブリンのC末端、好ましくはそのFc部分にそのN末端が連結されている。
【0084】
用語「融合タンパク質」とは、異なる特異性を有する1つまたは複数の免疫療法的な効果を有さない(抗体でない)タンパク質またはペプチドからなり、任意選択でリンカー分子によって融合されている天然または合成分子をいう。本発明による融合タンパク質は、たとえば、TNFαおよび/またはIFNγに融合されたシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)からなる分子でもよい。
【0085】
「ヘテロ抗体」とは、それぞれが異なる結合特異性を有する2つ以上の抗体または抗体結合断片が連結されたものである。ヘテロ抗体は、2つ以上の抗体または抗体断片を結合(conjugate)させることによって調製することができる。好ましいヘテロ抗体は、交差結合したFab/Fab’断片からなる。様々なカップリングまたは交差結合剤を使用して抗体を結合(conjugate)させることができる。この例は、プロテインA、カルボイイミド(carboiimide)、N−コハク酸イミジル−S−アセチル−チオ酢酸(SATA)、N−コハク酸イミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)(たとえば、Karpovsky他、1984、J.EXP.Med.、160、1686;Liu他、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、8648参照)である。他の方法には、Paulus、Behring Inst.Mitt.、第78号、118、1985;Brennan他、1985、Science、30m:81、またはGlennie他、1987、J.Immunol.、139、2367に記載されているものが含まれる。別の方法では、3つのFab’断片をカップリングするのにo−フェニレンジマレイン酸イミド(oPDM)を使用する(国際公開公報WO 91/03493号)。本発明の文脈中の多重特異性抗体もまた適切であり、国際公開公報WO 94/13804号および国際公開公報WO 98/50431号の教示に従って調製することができる。
【0086】
抗体「効果機能(effector function)」とは、抗体のFc領域(Fc領域の未変性配列または変異Fc領域のアミノ酸配列)に起因し得る生物活性をいう。抗体の効果機能の例には、相補性依存細胞障害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞障害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方制御(たとえばB細胞受容体)などが含まれる。
【0087】
用語「ADCC」(抗体依存性細胞媒介細胞障害)とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的な細胞傷害細胞(たとえばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージ)が結合された標的細胞上の抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を引き起こす、細胞に媒介された反応をいう。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。目的分子のADCC活性を評価するために、従来技術(米国特許第5,500,362号、米国特許第5,821,337号)に記載されているようなin vitroADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイに有用な効果細胞(effector cells)には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。
【0088】
「ヒト効果細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、効果機能を発現する白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCC効果機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単球細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞および好中球が含まれる。
【0089】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するのに使用される。好ましいFcRは、未変性(産生された状態の)配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体と結合し(γ受容体)、それらの対立変異体および選択的スプライシングされた形を含めたFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcRは、たとえばRavatchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol、9:457〜92、1991の総説に記載されている。
【0090】
用語「サイトカイン」とは、細胞間媒体として別の細胞に作用する、一細胞集団から放出されたタンパク質の一般的な用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン:濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)など糖タンパク質ホルモン;肝成長ホルモン;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGFβなど神経成長因子;血小板成長因子;TGFαやTGFβなどトランスフォーミング成長因子(TGF);エリスロポエチン(EPO);INFα、IFNβ、IFNγなどインターフェロン;M−CSF、GM−CSF、G−CSFなどコロニー刺激因子;IL−1、IL−1a、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12などインターロイキン;およびTNFαやTNFβが含まれる。本発明による好ましいサイトカインは、インターフェロンおよびTNFaである。
【0091】
本明細書中で使用する用語「細胞障害剤」とは、細胞の機能を阻害または阻止かつ/あるいは細胞の破壊を引き起こす物質をいう。この用語は、放射性同位体、化学療法剤、、および細菌、真菌、植物、動物起源の酵素的に活性のある毒素など毒素またはその断片を含むことが企図されている。この用語はまた、サイトカインファミリー、好ましくはIFNγ、ならびにやはり細胞障害活性を有する抗腫瘍剤を含むことができる。
【0092】
用語「化学療法剤」または「抗異常増殖剤または抗腫瘍剤(anti-neoplastic agent)」には、本発明では、抗異常増殖性効果を及ぼす、すなわち、生物学的応答の改変など機構を介した間接的ではなく、たとえば細胞増殖抑制または細胞障害効果によって腫瘍細胞上で直接的に、異常増殖細胞の発生、成熟、拡散を阻止する化学薬剤が含まれる。本発明による適切な化学療法剤は、好ましくは天然または合成化学化合物であるが、タンパク質、ポリペプチドなど生物分子も明示的に排除されていない。TNFαおよび上に引用した抗血管新生剤を、任意選択でEGF受容体拮抗剤など他の薬剤と一緒に用いた組合せ治療による腫瘍/異常増殖の治療のために本発明に含めることができる市場で入手可能な、臨床評価および前臨床段階での展開において使用可能な、多数の抗異常増殖剤が存在する。化学療法剤を任意選択で上の前記薬物の組合せと一緒に投与することができることを指摘しておきたい。
【0093】
化学療法剤または薬剤の例には、アルキル化剤、たとえば、窒素マスタード、エチレンイミン化合物、アルキルスルホン酸、およびアルキル化作用を有するニトロソ尿素、シスプラチン、ダカルバジンなど他の化合物;抗代謝剤、たとえば、葉酸、プリンまたはピリミジン拮抗剤;有糸分裂阻害剤、たとえばビンカアルカロイドおよびポドフィロトキシン誘導体;細胞障害抗生物質およびカンプトセチン誘導体が含まれる。好ましい化学療法剤または化学療法には、amifostine(ethyol)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(窒素マスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルヌシチン(carrnustine)(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(doxil)、ゲムシタビン(gemzar)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(daunoxome)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン(aldesleukin)、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトセシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトセシン(SN38)、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンα、インターフェロンβ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、pegaspargase、ペントスタチン、ピポブロマン、ピリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、およびそれらの組合せが含まれる。
【0094】
本発明による最も好ましい化学療法剤は、シスプラチン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、パクリタキセル(タキソール)およびブレオマイシンである。
【0095】
用語「癌」および「腫瘍」とは、通常は制御されない細胞増殖によって特徴づけられる、哺乳類の生理状態のことをいい、またはそのように記載される。乳房(breast)、心臓(heart)、肺(lung)、小腸(small intestine)、大腸(colon)、脾臓(spleen)、腎臓(kidney)、膀胱(bladder)、頭部(head)および頚部(neck)、卵巣(ovary)、前立腺(prostate)、脳(brain)、膵臓(pancreas)、皮膚(skin)、骨(bone)、骨髄(bone marrow)、血液(blood)、胸腺(thymus)、子宮(uterus)、精巣(testicles)、子宮頚部(cervix)、および肝臓(liver)の腫瘍などの腫瘍を本発明による薬剤組成物によって治療することができる。より具体的には、腫瘍は、腺腫(adenoma)、血管肉腫(angiosarcoma)、星状細胞腫(astrocytoma)、上皮癌腫(epithelial carcinoma)、胚細胞腫(germinoma)、グリア芽細胞腫(glioblastoma)、神経膠腫(glioma)、過誤腫(hamartoma)、血管内皮腫(hemangioendothelioma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、血腫(hematoma)、肝芽腫(hepatoblastoma)、白血病(leukemia)、リンパ腫(lymphoma)、髄芽腫(medulloblastoma)、黒色腫(melanoma)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)、肉腫(sarcoma)および奇形腫(eratoma)からなる群から選択される。
【0096】
詳細には、腫瘍は、末端黒子型黒色腫(acral lentiginous melanoma)、光線性角化症(actinic keratoses)、腺癌腫(adenocarcinoma)、腺様嚢胞癌腫(adenoid cycstic carcinoma)、脂肪腫(adenomas)、腺肉腫(adenosarcoma)、腺扁平上皮癌腫(adenosquamous carcinoma)、星状腫瘍(astrocytic tumors)、バルトリン腺癌腫(bartholin gland carcinoma)、基底細胞癌腫(basel call carcinoma)、気管支腺癌腫(bronchial gland carcinomas)、毛細血管capillary、癌様体(carcinoids)、癌腫(carcinoma)、癌肉腫(carcinosarcoma)、海綿状(cavernous)、胆管癌腫(cholangiocarcinoma)、軟骨芽肉腫(chondosarcoma)、脈絡叢乳頭腫/癌腫(choriod plexus papilloma/carcinoma)、明細胞癌腫(clear cell carcinoma)、嚢胞腺腫(cystadenoma)、内胚葉洞腫瘍(endodermal sinus tumor)、子宮内膜増殖症(endometrial hyperplasia)、子宮内膜間質部肉腫endometrial stromal sarcoma、子宮内膜様卵巣癌腫endometrioid adenocarcinoma、上衣(ependymal)、類上皮細胞(epitheloid)、ユーイング肉腫(Ewing's sarcoma)、繊維性層状(fibrolamellar)、巣状結節性過形成(focal nodular hyperplasia)、ガストリン産生腫瘍(gastrinoma)、生殖細胞腫瘍(germ cell tumors)、グリア細胞腫(glioblastoma)、グルカゴン産生腫瘍(glucagonoma)、血管芽細胞腫(hemangiblastomas)、血管内皮腫(hemandioendothelioma)、血管腫(hemangiomas)、肝細胞腺腫(hepatic adenoma)、肝細胞腺腫症(hepatic adenomatosis)、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)、膵島細胞腺腫(insulinoma)、上皮内異常増殖(intraepithelial neoplasia)、上皮間扁平細胞異常増殖(interepithelial squamous cell neoplasia)、浸潤性扁平細胞癌腫(invasive squamous cell sarcinoma)、大細胞癌腫(large cell carcinoma)、平滑筋肉腫(leiomyosarcoma)、悪性黒色黒色腫(lentigo mailgna melanomas)、悪性黒色腫(malignant melanoma)、悪性中皮腫瘍(malignant mesothelial tumors)、髄芽腫(medulloblastoma)、髄上皮腫(medulloepithelioma)、黒色腫(melanoma)、髄膜(meningeal)、中皮(mesothelial)、転移性癌腫(metastatic carcinoma)、粘膜表皮性癌腫(mucoepidermoid carcinoma)、神経細胞腫(neuroblastoma)、神経上皮腺癌腫結節性癌腫(neuroepithelial adenocarcinoma nodular melanoma)、燕麦細胞癌腫(oat cell carcinoma)、オリゴデンドログリア(oligodendroglial)、骨肉腫(osteosarcoma)、膵臓ポリペプチド(pancreatic polypeptide)、乳頭漿液腺癌腫(papillary serous adeno-carcinoma)、松果体細胞(pineal cell)、下垂体腫瘍(pituitary tumors)、プラズマ細胞腫(plasmacytoma)、偽肉腫(pseudosarcoma)、肺性細胞腫(pulmonary blastoma)、腎細胞癌腫(renal cell carcinoma)、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、横紋筋肉腫(habdomyosarcoma)、肉腫(sarcoma)、漿液癌腫(serous carcinoma)、小細胞癌腫(small cell carcinoma)、軟組織癌腫(soft tissue carcinoma)、ソマトスタチン分泌腫瘍(somatostatin-secreting tumor)、扁平上皮癌腫(squamous carcinoma)、扁平上皮細胞癌腫(squamous cell carcinoma)、中皮下(submesothelial)、表在性拡大型癌腫(superficial spreading melanoma)、未分化癌腫(undifferentiated carcinoma)、ブドウ膜黒色腫(uveal melanoma)、いぼ状癌腫(verrucous carcinoma)、ビポーマ(vipoma)、高分化癌腫(well differentiated carcinoma)、ウィルムス腫瘍(Wilm's tumor)からなる群から選択される。
【0097】
「ErbB受容体」とは、ErbB受容体ファミリーに属す受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR(ErbB1)、ErbB2、ErbB3、ErbB4受容体および将来同定されるこのファミリーの他のメンバーを含む。ErbB受容体は一般的に、ErbBリガンドと結合し得る細胞外ドメイン、親油性膜貫通ドメイン、保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン、リン酸化され得るいくつかのチロシン残基を有するカルボキシル末端シグナルドメインを含む。ErbB受容体は「未変性配列」(産生された状態の)ErbB受容体またはその「アミノ酸配列変異体」であってよい。
【0098】
好ましくは、ErbB受容体はヒトErbB受容体の未変性(産生された状態の)配列である。ErbB1は、EGFRタンパク質産物をコードする遺伝子をいう。最も好ましいのはEGF受容体(HER1)である。表現「ErbB1」と「HER1」は本明細書中で互換性があるように使用されており、ヒトHER1タンパク質を指す。表現「ErbB2」と「HER2」は本明細書中で互換性があるように使用されており、ヒトHER2タンパク質を指す。本発明によれば、ErbB1受容体(EGFR)が好ましい。
【0099】
「ErbBリガンド」とは、ErbB受容体に結合するかつ/または活性化させるポリペプチドである。EGFRと結合するErbBリガンドには、EGF、TGF−a、アンフィレギュリン、ベータセルリン、HB−EGF、エピレギュリンが含まれる。
【0100】
用語「ErbB受容体拮抗剤/阻害剤」とは、ErbB受容体に結合して遮断または阻害する天然または合成分子をいう。したがって、受容体を遮断することによって、拮抗剤は、ErbBリガンド(作用剤)の結合、および作用剤/リガンド受容体複合体の活性化を阻止する。ErbB拮抗剤は、HER1(EGFR)またはHER2に向けることができる。本発明の好ましい拮抗剤は、EGF受容体(EGFR、HER1)に向けられる。このErbB受容体拮抗剤は、抗体または免疫療法上効果的なその断片、あるいはペプチド、ポリペプチドタンパク質など非免疫生物学分子であってもよい。化学的分子も含まれるが、抗EGFR抗体および抗HER2抗体が、本発明による好ましい拮抗剤である。
【0101】
本発明の好ましい抗体は、抗Her1および抗Her2抗体、より好ましくは抗Her1抗体である。好ましい抗Her1抗体は、MAb425、好ましくはヒト化MAb425(hMAb425、米国特許第5,558,864号;ヨーロッパ特許第0531 472号)、およびキメラMAb225(cMAb225、米国特許第4,943,533号およびヨーロッパ特許第0359 282号)である。最も好ましいのは、単一薬物治療において高い効果と有害および副作用の減少とを示した、モノクローナル抗体h425である。最も好ましい抗HER2抗体は、Genentech/Rocheにより商品化されているHERCEPTIN(登録商標)である。
【0102】
本発明による効果的なEGF受容体拮抗剤は、天然または合成の化学化合物であってもよい。この分類の好ましい分子の一例には、有機化合物、有機金属化合物、有機化合物および有機金属化合物の塩が含まれる。
【0103】
HER2受容体拮抗剤の例は、スチリル置換のヘテロアリール化合物(米国特許第 5,656,655号);ビス単環式および/または二環式アリールヘテロアリール、炭素環、およびヘテロ炭素環化合物(米国特許第5,646,153号);三環式ピリミジン化合物(米国特許第5,679,683号);受容体チロシンキナーゼ活性を有するキナゾリン誘導体(米国特許第5,616,582号);ヘテロアリールエテンジイルまたはヘテロアリールエテンジイルアリール化合物(米国特許第5,196,446号);受容体のEGFR、PDGFR、FGFRファミリーを阻害する6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(4−(2−ジエチル−アミノエトキシ)フェニルアミノ)−8−メチル−8H−ピリド(2,3)−5−ピリミジン−7−オン(Panek他、1997、J.Pharmacol.Exp.Therap.、283、1433)と命名された化合物である。
【0104】
用語「チロシンキナーゼ拮抗剤/阻害剤」とは、受容体チロシンキナーゼを含めたチロシンキナーゼを阻害または遮断することができる天然または合成薬剤をいう。上記および下記に言及している抗ErbB受容体抗体を除いては、より好ましいチロシンキナーゼ拮抗剤は、乳癌および前立腺癌の単一薬物療法において有効性が示された化学化合物である。適切なインドロカルバゾールタイプのチロシンキナーゼ阻害剤は、米国特許第5,516,771号;第5,654,427号;第5,461,146号;第5,650,407号などの文書中に見つかる情報を使用して得ることができる。米国特許第5,475,110号;第5,591,855号;第5,594,009号および国際公開公報WO 96/11933号は、ピロロカルバゾールタイプのチロシンキナーゼ阻害剤および前立腺癌を開示している。好ましくは、上で定義した化学チロシンキナーゼ阻害剤の用量は、1日あたり、体重1kgあたり1pg〜1gである。より好ましくは、チロシンキナーゼ阻害剤の用量は、1日あたり、体重1kgあたり0.01mg〜100mgである。
【0105】
本明細書中で使用する用語「抗ホルモン剤」には、腫瘍に対するホルモン作用を制御または阻害するように作用する、天然または合成の有機またはペプチド性化合物が含まれる。より詳細には、「抗ホルモン剤」は、(1)血清アンドロゲンの生成を阻害、(2)血清アンドロゲンがアンドロゲン受容体に結合するのを遮断、または(3)テストステロンがDHTに変換されるのを阻害する化合物、あるいは2つ以上のこのような化合物の組合せである。
【0106】
本発明による抗ホルモン剤には、一般的に、ステロイド受容体拮抗剤、より詳細には、たとえばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、トレミフェン(Fareston)を含めた抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、ゴセレリンなど抗アンドロゲン;および上記の任意の製薬的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。この用語は、濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)やLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)など糖タンパク質ホルモンの作用剤および/または拮抗剤をも含む。本発明で有用なLHRH作用剤は、ZOLADEX(C)(Zeneca)として市場で入手可能な酢酸ゴセレリンである。
【0107】
酢酸ゴセレリンの化学構造は、ピロ−Glu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Ser(But)−Leu−Arg−Pro−Azgly−NH,酢酸である。本発明中で有用なLHRH拮抗剤の例は、化学名がD−アラニンアミドN−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−NG−(3−ピリジニルカルボニル)−L−リジル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−D−リジル−L−ロイシル−N6−(l−メチルエチル)−L−リジル−L−プロリルである、ANTIDE(C)(Ares−Serono)である。別の有用なLHRH拮抗剤は、化学名がN−Ac−D−Nal,D−pCl−Phe,D−Pal,D−hArg(Et)2,hArg(Et)2,D−Alaである、GANIRELIX(C)(Roche/Akzo Nobel)である。ステロイド性抗アンドロゲンの例は、MEGACE(C)(Bristol−Myers Oncology)として市場で入手可能な酢酸シプロテロン(CPA)および酢酸メゲストロールである。ステロイド性抗アンドロゲンは、前立腺のアンドロゲン受容体を遮断すし得る。
【0108】
これらはまた、LHの放出を阻害し得る。CPAは、好ましくは100mg/日〜250mg/日の用量でヒト患者に投与する。非ステロイド性抗アンドロゲンは、アンドロゲン受容体を遮断する。これらはまた、血清LHレベルおよび血清テストステロンレベルの上昇を引き起こし得る。好ましい非ステロイド性抗アンドロゲンは、EULEXIN(C)(Schering Corp.)として市場で入手可能なフルタミド(2−メチル−N−[4−20ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルプロパンアミド)である。フルタミドは、アンドロゲンの取り込みを阻害することによって、標的組織内でアンドロゲンの核結合を阻害することによって、またはその両方によって、抗アンドロゲン作用を発揮する。別の非ステロイド性抗アンドロゲンは、化学名が5,5−ジメチル−3−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル−4’−ニトロフェニル)−4,4−ジメチル−イミダゾリジン−ジオンであるニルタミドである。
【0109】
本発明の一部の実施形態では、抗ホルモン剤は、酢酸ロイプロリドなどLHRH作用剤とフルタミドやニルタミドなど抗アンドロゲンとの組合せである。たとえば、酢酸ロイプロリドを皮下、筋肉内、または静脈内の注入によって投与することができ、同時に、フルタミドを経口投与することができる。
【0110】
本発明による抗ホルモン剤には、上で示したように、RAR、TR、VDRなどの拮抗剤など他の非許容(permissive)受容体の拮抗剤を含めたステロイド/甲状腺ホルモン受容体の拮抗剤が含まれる。当分野の技術者には容易に理解されるように、様々なレチノイン酸受容体(RAR)拮抗剤は、合成のものも天然に存在するものも、本発明に従って使用することができる。例示的なRAR拮抗剤には、ジカルバ−closo−ドデカボラン(Iijima他、Chem Pharm Bull、Tokyo、1999、47(3):398〜404)、ヒドロアントラセニル、ベンゾクロメニル、およびベンゾチオクロメニルレチノイド(Vuligonda他、Bioorg Med Chem Lett、1999、9(5):743〜8)、ジアリールアセチレン、安息香酸誘導体(たとえば、Kagechika,H、1994、Yakugaku Zasshi、114(11):847〜862;Eckhardt他、1994、Toxicol Lett、70(3):299〜308;Yoshimura他、1995、J Med Chem、38(16):3163〜3173;30Chen他、1995、EMBO、14(6):1187〜1197;Teng他、1997、J Med Chem、40(16):2445〜2451参照);ナフタレニル類似体(たとえば、Johnson他、1995、J Med Chem、38(24):4764〜4767;Agarwal他、J Biol Chem、271(21):12209〜12212:Umemiya他、1996、Yakugaku Zasshi、116(12):928〜941);アリール置換およびアリールと(3−オキソ−l−プロペニル)置換のベンゾピラン、ベンゾチオピラン、1,2−ジヒドロキノリン、5,6−ジヒドロナフタレン誘導体(Klein他、米国特許第5877,207号および第5,776,699号)、アダマンチル置換の二環芳香族化合物(BernardonおよびCharpentier、米国特許第5,877,342号)、1−フェニル−アダマンカン(adamancane)誘導体(BernardonおよびBernardon、ヨーロッパ特許第776885号)、多環芳香族へテロ環化合物(Charpentier他、米国特許第5,849,798号)、ジヒドロナフタレン誘導体(Beard他、米国特許第5,808,124号およびJohnson他、米国特許第5,773,594号)、4−フェニル(ベンゾピラノイルまたはナフトイル)アミド安息香酸誘導体(国際公開公報WO 98/US/13065号)、ジアゼピニル安息香酸誘導体(Umemiya他、J Med Chem、1997、40(26):4222〜34)、テトラヒドロナフタレン誘導体(米国特許第5,763,635号、第5,741,896号、および第5,723,666号)、アリールおよびヘテロアリールシクロヘキセニル置換のアルケン(米国特許第5,760,276号)、芳香族ジベンゾフラン化合物を含めたジベンゾフラン化合物(米国特許第5,702,710号、米国特許第5,747,530号)、N−アリール置換のテトラヒドロキノリン(米国特許第5,739,338号)、ベンゾ[1,2−g]−クロム−3−エンおよびベンゾ[1,2−g]−チオクロム−3−エン誘導体(米国特許第5,728,846号)などが含まれる。本明細書中での使用が企図される具体的なRAR拮抗剤には、LE135(Umemiya他、1996、Yakugaku Zasshi、116(12):928〜941)、LE511、LE540、LE550(Li他、J Biol Chem、1999、274(22):15360〜6;Umemiya他、1996、Yakugaku Zasshi、116(12):928〜941)、Ro41−5253(Keidel他、1994、Mol Gell Biol、14(1):287〜298)、SR11330、SR11334、SR11335(Lee他、1996、J.Biol Chem、271(20):11897〜11903)、BMS453、BMS411(Chen他、1995、EMBO、14(6):1187〜1197)、CD2366およびCD2665(Meister他、Anticancer Res.、1998、18(3A):1777〜1786)、ER27191(Uemo他、Leuk.Res.、1998、22(6):5 17〜525)、AGN193 109(Johnson他、Bioorg Med Chem Lett、1999、9(4):573〜6)、4−[4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,7,10,10−テトラメチル−1−(3−ピリジルメチル)アントラ[1,2−b]ピロロ−3−イル]安息香酸、4−[4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,7,10,10−テトラメチル−1−(3−ピリジルメチル)−5−チアアントラ[1,2−b]ピロロ−3−イル]安息香酸、4−[4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,7,10,10−テトラメチル−1−(3−ピリジルメチル)アントラ[2,1−d]ピラゾール−3−イル]安息香酸(Yoshimura他、1995、J Med Chem、38(16):3163〜3173)、AGN193109(Agarwal他、J Biol Chem、271(21):12209〜12212)などが含まれる。
【0111】
「ステロイド受容体」または「核ステロイド受容体」とは、リガンドに活性化される転写因子であり、核受容体のステロイド受容体サブファミリーに属するタンパク質を意味する。ステロイド受容体の定義には、ステロイドホルモンに活性化される転写因子の構造に類似しており、その生物活性を有するタンパク質が含まれる。ステロイド受容体は、DNA結合ドメインおよびホルモン(またはリガンド)結合ドメインのすべてまたは一部を含み、ステロイド受容体の構造に類似した構造を有する未知のリガンドのオーファン受容体を含む。
【0112】
「ステロイド受容体リガンド」とは、核ステロイド受容体と結合して、受容体−リガンド複合体を形成する天然または合成化合物を意味する。用語リガンドには、部分的な作用剤/拮抗剤作用を有する作用剤、拮抗剤、および化合物が含まれる。
【0113】
「ステロイド受容体作用剤」とは、核ステロイド受容体と結合して受容体−作用剤複合体を形成する化合物を意味する。この受容体−作用剤複合体は、ホルモン応答要素と呼ばれるDNAの特定の領域と結合する。作用剤には、ステロイドやステロイド様ホルモン、レチノイド、甲状腺ホルモン、製薬的に活性のある化合物などが含まれる。個々の作用剤は,複数の受容体に結合する能力を有する場合がある。天然のステロイドホルモン作用剤には、エストラジオール、プロゲステロン、アンドロゲン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドが含まれる。上で指摘したように、一部のステロイド受容体作用剤は、用量の関数として拮抗剤としてのある程度の効果を示し得る。したがって、このような「作用剤」は、本発明によって定義された抗ホルモン剤として有効であり得る。
【0114】
「ステロイド受容体拮抗剤」とは、作用剤とは反対の生物学的効果を有する化合物を意味する。拮抗剤は、核ステロイド受容体に結合し、受容体に対してステロイド作用剤と競合することによって、ステロイド受容体作用剤の作用を遮断する。「拮抗剤」は、作用剤の作用を遮断するその能力によって定義されている。ステロイド受容体拮抗剤には、「純粋な」拮抗剤だけでなく、部分的な作用剤/拮抗剤作用を有する化合物も含まれる。純粋な拮抗剤は、それ自体は作用剤作用を有さずに、受容体結合に対して作用剤と効果的に競合する。部分的拮抗剤は、受容体結合に対して作用剤と競合するのに効果がより低いことも、また受容体と結合するのに同等の有効性を有することも、競合する相手の作用剤の5〜10%の作用剤作用しか有さないこともある。したがって、拮抗剤は、競合する作用剤より低い有効性の作用効果を有することがある。
【0115】
「放射性療法」:本発明によれば腫瘍はさらに、放射線または放射性薬剤で治療することができる。放射源は、治療する患者の外部または内部のどちらでもよい。放射源が患者の外部の場合、この療法は外部照射放射性療法(EBRT)として知られている。放射源が患者の内部の場合、この療法は近接照射療法(BT)と呼ばれている。使用されてきた典型的な放射性原子には、ラジウム、セシウム−137、およびイリジウム−192、アメリシウム−241、および金−198、コバルト−57;銅−67;テクネチウム−99;ヨウ素−123;ヨウ素−131;およびインジウム−111が含まれる。本発明による薬剤を、放射性同位元素を用いて標識することも可能である。
【0116】
今日では、放射性療法は切除不能や手術不能の腫瘍および/または腫瘍転移の標準の治療法である。放射性治療を化学療法と組み合わせると改善された結果が見られる。放射性療法は、標的区域に与えた高用量の放射線が腫瘍組織と正常組織のどちらもの再生細胞の死滅をもたらすという原理に基づいている。
【0117】
放射線用量措置は一般的に、放射線吸収線量(rad)、時間、および画分の点から定義され、癌専門医によって注意深く定義されなければならない。患者が受ける放射線の量は様々な考慮事項に依存するが、最も重要な2つの考慮事項は、身体の他の重要な構造または組織に関連した腫瘍の位置、および腫瘍が拡散した範囲である。放射性療法を受ける患者の好ましい治療過程は、5〜6週間の期間にわたり、全用量50〜60Gyを、1.8〜2.0Gyの単一の一日画分を週に5日、患者に投与する治療スケジュールである。Gyはグレイの略記であり、100radの用量をいう。好ましい実施形態では、ヒト患者の腫瘍を血管新生拮抗剤およびTNFα/IFNγおよび放射線で治療した場合に相乗効果が起こる。言い換えれば、前記化合物による腫瘍増殖の阻害は、放射性および/または化学療法剤と組み合わせた場合に増強される。本発明に従って任意選択で放射性療法を使用することができる。これは、本発明の薬剤を十分な量患者に投与することができない場合に推奨され、好ましい。
【0118】
「薬剤治療」:本発明の方法は本発明を実施するためのステップとして、様々な形式を含む。たとえば、本発明の薬剤は、同時に、連続的に、または個別に投与することができる。さらに、この薬剤を、3週間までの間隔、すなわち、第1活性薬剤を投与した実質的に直後から、第1薬剤を投与した約3週間後までの間隔を空けて個別に投与することができる。この方法は、外科的手順に従って実施することができる。あるいは、第1活性薬剤と第2活性薬剤を投与する間に外科的手順を実施することができる。この方法の典型は、本発明の方法と外科的な腫瘍除去の組合せである。この方法による治療は一般的に、1つまたは複数の投与サイクル中での治療組成物の投与を含む。たとえば、同時投与を実施した場合、両方の薬剤を含む療法組成物を、約2日〜約3週間の期間をかけて、単一サイクルで投与する。
【0119】
その後は、治療サイクルを、医者の判断に従って、必要に応じて繰り返すことができる。同様に、連続的な施用が企図される場合、それぞれの個々の療法剤の投与時間が一般的に同じ期間に及ぶように調整する。サイクル間の間隔は、約0から2カ月まで変えることができる。
【0120】
本発明の薬剤を、非経口的に注入または時間をかけたゆっくりしたインフージョンによって投与することができる。一般的に治療する組織には通常全身投与によって身体内で接近することができ、したがって治療組成物の静脈内投与によって最も頻繁に治療されるが、組織標的が標的分子を含む可能性がある場合は、他の組織および送達手段も企図されている。したがって、本発明の薬剤は、眼内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、または正所位注入およびインフージョンによって投与することができ、または蠕動手段によって送達することもできる。たとえば本発明のインテグリン拮抗剤を含む治療的組成物は、従来、たとえば単位用量の注入として静脈内に投与されてきた。
【0121】
本発明の療法組成物は、生理的に許容される担体を、有効成分としてそれに溶解または分散させた、本明細書中に記載されている関連する薬剤と一緒に含む。本明細書中で使用する用語「製薬的に許容される」とは、嘔気、眩暈、胃のむかつきなど望ましくない生理効果を生じることなしに、哺乳動物内またはその表面に投与することが可能な物質を表す組成物、担体、希釈剤、および試薬をいう。この中に有効成分を溶解または分散させた薬理組成物の調製は当分野でよく理解されており、処方に基づいて限定する必要はない。通常、このような組成物は注射液として、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製されるが、使用前に液体中で溶液または懸濁液にするのに適した固体形を調製することもできる。この調製物を乳化することもできる。有効成分を、製薬的に許容され、有効成分に適合する、本明細書中に記載する治療方法での使用に適した量の賦形剤と共に混合することができる。適切な賦形剤は、たとえば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組合せである。さらに、所望する場合は、組成物に、有効成分の有効性を増強させる湿潤剤や乳化剤、pH緩衝剤など補助的な物質を少量含めることができる。本発明の療法組成物には、それに含まれる成分の製薬的に許容される塩を含めることができる。製薬的に許容される塩には、たとえば塩酸またはリン酸など無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸など有機酸を用いて形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基を用いて形成する)が含まれる。遊離カルボキシル基を用いて形成する塩も、たとえばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄など無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど有機酸から誘導することもできる。特に好ましいのは、環状ポリペプチドαv拮抗剤の調製に使用する場合のHCl塩である。生理的に許容される担体は当分野で周知である。液体担体の例は、有効成分と水以外の追加の物質を含まない、または生理的pH値のリン酸ナトリウムなど緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水など生理的食塩水やブロスを含む無菌水性溶液である。さらに、水性担体は1つ以上の緩衝塩だけでなく塩化ナトリウムや塩化カリウムなど塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含むことができる。液体組成物はまた、水に加えて、または水なしで、液相を含むこともできる。このような追加の液相の典型はグリセリン、綿実油など植物油、水−油乳化液である。
【0122】
典型的には、たとえばインテグリン受容体遮断抗体、抗体断片または抗体複合体、あるいは抗VEGF受容体遮断抗体、断片または複合体の形の免疫療法剤の治療有効量とは、生理的に許容される組成物中で投与した場合に、1ミリリットル(ml)あたり約0.01マイクログラム(μg)から約100μg/mlの血漿濃度、好ましくは約1μg/ml〜約5μg/ml、通常は約5μg/mlの血漿濃度を得るのに十分な量である。
【0123】
言い換えれば、用量は、約0.1mg/kg〜約300mg/kg、好ましくは約0.2mg/kg〜約200mg/kg、最も好ましくは約0.5mg/kg〜約20mg/kgの、1つまたは複数の用量投与を1日毎、一日または複数日に変動させて行うことができる。免疫療法剤がモノクローナル抗体の断片または複合体の場合、この量は、抗体全体の質量に対する断片/複合体の質量の比に基づいて容易に調節することができる。好ましい血漿のモル濃度は、約2マイクロモーラー(μM)〜約5ミリモーラー(mM)であり、好ましくは約100μM〜1mM抗体拮抗剤である。
【0124】
非免疫療法ペプチドまたはタンパク質ペプチド、あるいは他の類似の大きさの生物分子である、本発明による薬剤の療法的に有効な量は、典型的には、生理的に許容される組成物中で投与した場合に、1ミリリットル(ml)あたり約0.1マイクログラム(μg)から約200μg/mlの血漿濃度、好ましくは約1μg/ml〜約150μg/mlの血漿濃度を得るのに十分な量のポリペプチドである。1モルあたり約500グラムの質量を有するポリペプチドに基づいた場合、好ましい血漿モル濃度は約2マイクロモーラー(μM)〜約5ミリモーラー(mM)、好ましくは約100μM〜1mMポリペプチド拮抗剤である。
【0125】
好ましくは本発明による核ホルモン受容体拮抗剤または(化学的)化学療法剤(免疫療法剤でも非免疫療法ペプチド/タンパク質でもない)である活性薬剤の典型的な用量は、1日あたり、体重1キログラムあたり10mg〜1000mg、好ましくは約20〜200mg、より好ましくは50〜100mgである。
【0126】
本発明の薬剤組成物は、好ましくは乳癌および前立腺癌の治療に適している。
【0127】
乳癌には、以下の抗ホルモン剤および用量が好ましい。
乳癌には、以下の抗ホルモン剤および用量が好ましい。
上記抗ホルモン治療の主体の任意の類似物やさらなる開発物は、所定の用量に従って使用される。
【0128】
本発明の薬剤組成物には、それだけには限定されないが、たとえば、骨吸収阻害剤、心保護剤など抗癌剤の毒性効果を軽減させる薬剤を含む、本発明の組合せ療法(「アジュバント療法」)に関連する副作用を軽減または回避する薬剤を用いた対象の治療を包含するものを含めることができる。前記アジュバント剤は、化学療法、放射療法、手術に関連する嘔気や嘔吐の頻度を阻止または軽減する、あるいは骨髄抑制性抗癌剤の投与に関連する感染症の発生率を軽減させる。アジュバント剤は当分野で周知である。
【0129】
本発明による免疫療法剤はさらに、BCGや免疫系刺激剤などのアジュバントと一緒に投与することができる。
【0130】
さらに、この組成物に、細胞障害効果の放射標識同位元素や、細胞障害ペプチド(たとえばサイトカイン)、細胞障害薬剤など他の細胞傷害剤を含有する免疫療法剤または化学療法剤を含めてもよい。
【0131】
腫瘍または腫瘍転移を治療するための用語「製薬キット」とは、パッケージ、および原則として腫瘍および腫瘍転移を治療する方法において試薬を使用する指示書をいう。本発明のキット内の試薬は通常、本明細書中に記載の治療組成物として配合されており、従って、キットの配布に適した様々な形の任意のものにすることができる。このような形には、本発明の拮抗剤および/または融合タンパク質を提供するための液体、粉末、錠剤、懸濁液などの剤形が含まれる。試薬は、本発明の方法による個別の投与に適した個別の容器で提供することができ、あるいは、パッケージ内に単一の容器内に組成物として組み合わせて提供することができる。このパッケージは、本明細書中に記載の治療方法に従った1つまたは複数の用量に十分な量の試薬を含むことができる。本発明のキットはまた、パッケージに含まれる材料の「使用説明書」も含む。
Claims (20)
- 少なくとも(i)1つの抗EGFR抗体または免疫療法上有効なその断片、および(ii)1つの抗ホルモン剤の治療有効量を任意選択で製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含む薬剤組成物。
- 前記抗EGFR抗体または前記免疫療法上有効なその断片が、ネズミ、キメラ、またはヒト化したMab425(h425)あるいはキメラMab225(c225)の阻害剤/拮抗剤である、請求項1に記載の薬剤組成物。
- 前記抗ホルモン剤が核ホルモン受容体ファミリーの阻害剤である、請求項1に記載の薬剤組成物。
- 前記抗ホルモン剤がステロイド受容体阻害剤/拮抗剤である、請求項3に記載の薬剤組成物。
- 抗血管新生剤をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の薬剤組成物。
- 細胞障害剤および/または化学療法剤をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の薬剤組成物。
- 抗HER2抗体または免疫療法上活性のあるその断片をさらに追加で含む、請求項1から4のいずれかに記載の薬剤組成物。
- 抗EGFR活性および抗核ホルモン受容体活性を有する抗体を、任意選択で製薬的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含む薬剤組成物。
- 前記抗体が二重特異性抗体である、請求項8に記載の薬剤組成物。
- 少なくとも(i)1つの抗EGFR抗体または免疫療法上有効なその断片、
(ii)1つの抗ホルモン剤、および任意選択で
(iii)細胞障害剤および/または化学療法剤
を含むパッケージを含む製薬キット。 - (i)モノクローナル抗体h425、および
(ii)ステロイド受容体拮抗剤
を含む、請求項10に記載の製薬キット。 - (i)モノクローナル抗体h425、および
(ii)LHRH拮抗剤
を含む、請求項11に記載の製薬キット。 - 前記製薬的に活性のある薬剤が、前記パッケージの個別の容器に入れて提供される、請求項10から12のいずれかに記載の製薬キット。
- 腫瘍および腫瘍転移を治療する医薬品または医薬組成物を製造するための、請求項1から9のいずれかに定義した薬剤組成物の使用、または請求項10から13のいずれかに定義した製薬キット。
- 乳癌を治療するための請求項14に記載の使用。
- 前立腺癌を治療するための請求項14に記載の使用。
- ステロイド依存性でない乳癌および前立腺癌を治療するための請求項15または16に記載の使用。
- 治療有効量の(i)抗EGFR抗体、および
(ii)抗ホルモン剤
を、同時または連続的に個体に投与することを含む、個体の腫瘍または腫瘍転移を治療する方法。 - 前記抗EGFR抗体がモノクローナル抗体h425またはc225であり、前記抗ホルモン剤がステロイド受容体拮抗剤である、請求項18に記載の方法。
- 前記個体に治療有効量の細胞障害剤および/または化学療法剤、抗血管新生剤、あるいは別の抗ErbB受容体抗体をさらに投与することを含む、請求項18または19に記載の方法。
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