JP2004525614A - 精神分裂病に関連する電位作動性イオンチャンネル遺伝子およびタンパク質 - Google Patents

精神分裂病に関連する電位作動性イオンチャンネル遺伝子およびタンパク質 Download PDF

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Abstract

本発明は、CanIonのゲノムDNA、cDNA、およびポリペプチド配列、新規な電位作動性イオンチャネルタンパク質に関する。本発明は、CanIon遺伝子の2対立遺伝子マーカーにも関する。CanIon遺伝子は、精神分裂病、双極性障害、および他の疾患および症状の治療および診断に生物学的標的として使用することが可能である。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、電位作動性イオンチャンネル遺伝子およびタンパク質と、疾患におけるその役割に関する。本発明は、CanIonポリペプチドをコードするポリヌクレオチドならびに前記コード領域の5’−および3’−末端に位置する調節領域に関する。本発明はまた、CanIon遺伝子によってコードされるポリペプチドにも関係する。本発明は、CanIonチャンネルの修飾物質、例えば、拮抗薬をスクリーニングする方法、および種々の疾患または症状の治療または予防にかかる修飾物質を使用する方法もまた提供する。本発明はまた、診断用試薬として有用な、かかるポリペプチドに対して特異的に作られる抗体を論じる。本発明はさらに、遺伝分析で有用なCanIon遺伝子の2対立遺伝子マーカーを包含する。
【背景技術】
【0002】
基礎および臨床の研究者にとって利用可能な技術的設備の進歩によって、健康状態および疾患状態における脳および神経系機能をますます精密に研究することが可能となっている。神経生物学的および薬理学的両方の多数の仮説が、精神障害および神経変性疾患を含む、中枢神経系(CNS)障害に関与する神経化学的および遺伝的メカニズムに関して提起されている。しかしながら、CNS障害は原因が複雑であり、よく理解されていないばかりでなく、症状が重複しており、よく特徴付けられておらず測定するのが難しい。結果としては、今後の治療法および薬剤開発努力を、さらに精巧にし、複遺伝子性の原因に焦点を当てることが必要とされ、疾患集団をセグメントに分けて、CNA障害を患う患者に関する、より正確な診断および予後情報を得るために、新規なアッセイが必要とされると思われる。
【0003】
CNS障害は、広範囲の障害、およびそれに対応した広範囲の遺伝子因子もまた包含し得る。CNS障害の例には、神経変性疾患、精神病疾患、気分障害、自閉症、物質依存およびアルコール中毒、疼痛性障害、てんかん、精神遅滞、および認知障害、不安障害、摂食障害、衝動調節障害、および人格障害を含む他の精神疾患が含まれる。障害は、精神障害の診断・統計便覧第4版(Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders fourth edition )(DSM−IV)の分類を用いて定義することができる。
【0004】
CNS障害の単なる小さなサブセットを考察した場合でさえ、治療的発明のための新しい標的および改良された治療方法が必要であることは、精神分裂病および双極性障害の適切な治療および分子機序の理解の欠如から明らかである。精神分裂病および双極性障害のどちらの場合についても、それらの治療に使用されている現在既知の分子すべてが副作用を有し、その疾患症状に対してのみ作用する。したがって、付随する副作用を持たず、精神分裂病および双極性障害の原因となるメカニズムに関与する標的に対して作られる新規な分子が強く必要とされている。したがって、これらの標的の発見および特徴付けを容易にするツールが必要であり、有用である。
【0005】
[電位作動性イオンチャンネル]
電位作動性イオンチャンネルは巨大分子の大きなファミリーの一部であり、その機能は、膜間の電位の調節および維持、分泌およびシグナル伝達を含む。これらのチャンネルタンパク質は、ニューロンからの神経伝達物質放出の調節に関与し、膜興奮性、筋収縮およびシナプス伝達を含む様々な細胞機能の調節において重要な役割を果たす。Na+チャンネルの主なα−サブユニットおよびCa+チャンネルのα−1サブユニットは、約2000個のアミノ酸からなり、イオン伝導経路を含有する。生化学分析によって、生理活性イオンチャンネルが、いくつかの異なるサブユニットで構成されていることが明らかとなっている。Na+チャンネルのαサブユニット、β−1およびβ−2サブユニットと同時精製する2つの補助サブユニットが存在する。Ca+チャンネルについては、その他のサブユニット(α−2、β、γおよびσ)が修飾作用で同定されている。α−2およびβ−サブユニットは、Ca+チャンネルのα−1サブユニットの機能活性を高めると思われる。K+チャンネルのα−サブユニットは、1:1様式でβサブユニットと会合し、結果として(α)4(β)4化学量論を示すK+チャンネル複合体を生じる(Terlau 等, Naturwissenschaften 85:437-444 (1998))。カルシウムおよびナトリウムイオンチャンネルの基本構造および例は、例えばWilliams等 Science 257:389-395 (1992); Mori等, Nature 350:398-402 (1991); および Koch 等, J.Biol.Chem. 265 (29):17786-17791 (1990)にさらに記述されている。CanIonチャンネルと高レベルの配列相同性を共有するラット由来のCa+およびNa+イオンチャンネルの核酸配列が、Lee 等, FEBS Lett. 445 231:236 (1999)にさらに記述されている。
【0006】
αサブユニットは、すべての電位依存性カチオンチャンネルと配列特性を共有し、潜在的な膜貫通ドメインの6本ヘリックスバンドルを含む同一の構造モチーフを利用する。ナトリウムチャンネルおよびカルシウムチャンネルのどちらにおいても、このモチーフは、配列中で4回反復され、24−ヘリックスバンドルが得られる。そのアミノ酸配列は、種(例えば、ヒトおよびショウジョウバエ)の間で、かつ異なるイオンチャンネル間で高度に保存される。
【0007】
多重遺伝子族における個々の遺伝子によってコードされる、カルシウムチャンネルの組織特異的な、薬理学的かつ電気生理学的に異なるアイソフォームが存在する。骨格筋において、α、βおよびγサブユニットの密に結合した各集合は、他の4つと会合して、五量体巨大分子を形成する。例えば、ニューロンのカルシウムチャンネルα−1サブユニットは、α−1A〜Hと呼ばれる少なくとも7つの異なる遺伝子の産物である。免疫細胞化学的な研究から、α−1カルシウムチャンネルサブユニットの差次的分布が示されている。α−1Aおよびα−1Bは主に、樹状突起およびシナプス前終末で発現し、α−1Aは一般に、α−1Bよりも多数の神経終末に集中する。ラットおよびヒト神経筋接合部において、α−1Aはシナプス前性に局在化し、α−1Bおよびα−1Aはどちらも、軸索−会合したシュワン細胞に存在する。α−1Eは主に細胞体に局在化し、場合によっては、近位樹状突起、ならびにプルキンエ細胞の遠位分枝に局在化する。α−1Cおよびα−1Dは、細胞体に、および中枢ニューロンの近位樹状突起に局在化する。
【0008】
天然のカルシウムチャンネルは、それらの薬理学的かつ/または電気生理学的特性に基づいて分類されている。電位依存性カルシウムチャンネルの分類は、L−、N−、P−およびQ−型を含む高電位活性化型(HVA):中間(IVA、R型);低電位活性化型(LVA、T型)に分けられる。(Morena 等, Annals NY Acad. Sci. 102-117 (1999))。
【0009】
主要なサブユニット(α−1)は、異種発現系で発現した場合にそのメンバーが単独で機能的なチャンネルを形成することができる遺伝子族に属する。(参照により本明細書に組み込まれる、Zhang 等, Neuropharmacology 32 (11): 1075-1088 (1993))。天然の細胞において、α−1サブユニットは、α−1サブユニットの機能特性を変更する補助サブユニットとの多サブユニット複合体として発現する。多くの場合、補助サブユニットの同時発現は、チャンネルの生物物理学的性質に影響を及ぼす。特にβユニットは、α−1サブユニットに重要な影響を及ぼす傾向があり;βサブユニットは、活性化特性、定常状態の不活性化、不活性化の速度論およびピーク電流を変化させることが示されている。
【0010】
チャンネルの分子多様性の多くは、α−1サブユニットの複数の形態が存在することによって生じる。例えば、カルシウムチャンネルの選択的にスプライスされた形態が、選択的に発現し、セリン−トレオニンキナーゼによってリン酸に対して異なる感受性を有することが示されている(Hell 等, Annals N.Y. Acad. Sci. 747:282-293 (1994))。イオンチャンネル遺伝子における変異は、いくつかの中枢神経系疾患を含む広範な疾患に関与することが示されている。周期性麻痺、偶発性運動失調、片頭痛、遺伝性QT延長症候群および発作性ジスキネジアを含む、多数の偶発性疾患の原因となるイオンチャンネル変異の例が、Bulman 等, Hum. Mol. Gen. 6(10) 1679-1685 (1997) に記述されている。例えば、いくつかのCa+チャンネル変異の疾患を表A(Moreno、上記文献)に示す。
【0011】
【表1】
Figure 2004525614
カルシウムおよびナトリウムチャンネルの修飾物質も、一般に種々の疾患および症状の治療に使用される。例えば、カルシウムおよび/またはナトリウムチャンネル遮断薬は、様々な心臓疾患および症状(例えば、アンギナ、不整脈)、高血圧、片頭痛、発作の神経作用、躁病、神経弛緩薬性晩期ジスキネジー、双極性障害、疼痛、てんかん等の種種の疾患または状態に関連する1つまたは複数の症状を治療または予防するのに有用であることが示されている。
【0012】
異なるイオンチャンネル間に神経系の著しい機能上の違いが存在することが示されている。さらに、機能上の違いは、同一イオンチャンネル遺伝子における異なる変異の間に、ならびに同一イオンチャンネルのスプライス変異体の間に存在する。このように、CNS疾患におけるイオンチャンネルの影響にもかかわらず、どのイオンチャンネルが特定の疾患の治療的介入に対して有効な標的であるかを予測するのは困難である。1つの問題は、精神分裂病、双極性障害またはそれに関連する疾患に関係するイオンチャンネル遺伝子を提供することである。
【0013】
本発明は、これらの必要性および他の必要性に取り組む。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、CanIonと呼ばれる電位作動性イオンチャンネルタンパク質をコードする、新規なヒト遺伝子のゲノム配列を含む核酸分子に関する。CanIonのゲノム配列はまた、前記遺伝子の転写部分の上流(5’末端)および下流(3’末端)に位置する制御配列を含み、これらの制御配列もまた本発明の一部である。
【0015】
本発明は、CanIonタンパク質をコードする完全なcDNA配列、ならびにそれに対応する翻訳産物も提供する。
【0016】
CanIonゲノムまたはcDNA配列と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー、ならびに前記プライマーおよびプローブを用いたDNA増幅および検出方法もまた、本発明の一部である。
【0017】
本発明の更なる目的は、上記の核酸配列のいずれかを含む組換えベクターからなり、特にCanIon制御配列もしくはCanIonタンパク質をコードする配列を含む組換えベクターからなり、ならびに前記核酸配列もしくは組換えベクターを含む細胞宿主およびトランスジェニック非ヒト動物からなる。
【0018】
本発明は、CanIon遺伝子の2対立遺伝子マーカーおよびその使用にもまた関係する。
【0019】
最終的に、本発明は、CanIonの発現または活性を調節する物質または分子をスクリーニングする方法、ならびにCanIonポリペプチドと相互作用する物質または分子をスクリーニングする方法に関する。これらの方法において同定された物質を使用する方法もまた提供する。例えば、CanIonチャンネル拮抗薬を用いて、精神分裂病もしくは双極性障害を含む疾患または症状を治療または予防する方法を提供する。
【0020】
それに応じて、一態様において、本発明は、配列番号1〜4または6で示されるヌクレオチド配列のいずれか、またはこれらの配列のいずれかに相補的な配列を含む、単離、精製されたポリヌクレオチド、または組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0021】
他の態様では、本発明は、配列番号4の少なくとも50ヌクレオチドの隣接スパンを含む、単離、精製されたポリヌクレオチド、または組換えポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、生物活性CanIonポリペプチドをコードする。
【0022】
他の態様において、本発明は、配列番号5のアミノ酸配列を含むヒトCanIonポリペプチドまたはその生物活性断片をコードする、単離、精製されたポリヌクレオチド、または組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0023】
一実施形態において、本明細書に記述されるポリヌクレオチドのいずれかを固体支持体に付着させる。他の実施形態では、そのポリヌクレオチドは標識を含む。
【0024】
他の態様において、本発明は、本明細書に記述されるポリヌクレオチドの少なくとも1種類を含むポリヌクレオチドのアレイを提供する。一実施形態において、そのアレイはアドレス指定可能である。
【0025】
他の態様では、本発明は、作動可能にプロモーターに連結される、本発明に記述されるポリヌクレオチドのいずれかを含む組換えベクターを提供する。
【0026】
他の態様では、本発明は、細胞中にそのポリヌクレオチドが存在することによって、CanIon遺伝子の発現レベルの変化が生じるポリヌクレオチドを提供する。一実施形態では、そのポリヌクレオチドは、CanIon遺伝子に、またはCanIonゲノム領域に挿入される。一実施形態において、そのポリヌクレオチドは、CanIon遺伝子プロモーターに挿入される。一実施形態において、そのポリヌクレオチドは、相同的組換えによって、例えば内因性CanIonプロモーターまたはエンハンサー領域の1つまたは複数のエレメントを置換することによって挿入される。
【0027】
他の態様において、本発明は、本明細書に記述される組換えベクターまたはポリヌクレオチドのいずれかを含む、宿主細胞または非ヒト宿主動物を提供する。
【0028】
他の態様において、本発明は、ノックアウトベクターとの相同的組換えによって破壊されたCanIon遺伝子を含む、哺乳類の宿主細胞または非ヒト宿主哺乳類を提供する。一実施形態において、宿主細胞は、本明細書に記述されるポリヌクレオチドのいずれかを含む。
【0029】
他の態様において、本発明は、配列番号5で示されるアミノ酸配列またはその生物活性断片を含む、単離、精製されたポリヌクレオチド、または組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0030】
他の態様において、本発明は、a)作動可能にプロモーターに連結される、請求項13に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する細胞集団を提供する段階;b)前記細胞中の前記ポリペプチドを生成する助けとなる条件下で前記細胞集団を培養する段階;c)前記細胞集団から前記ポリペプチドを精製する段階;を含む、ポリペプチドを生成する方法を提供する。
【0031】
他の態様において、本発明は、CanIonポリペプチドに抗CanIon抗体を結合させる方法であって、その抗体が前記ポリペプチドに特異的に結合することができる条件下にて、本明細書に記述されるCanIonポリペプチドのいずれかと、前記抗体とを接触させることを含む方法を提供する。他の態様において、CanIonタンパク質またはエピトープを特異的に認識する、抗体またはその免疫活性断片もまた提供する。
【0032】
他の態様において、本発明は、細胞中のCanIon遺伝子の発現を検出する方法を提供し、前記方法は、a)前記細胞または前記細胞の抽出物を、i)厳密な条件下にて、本明細書に記述されるCanIonポリペプチドのいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチド;またはii)本明細書に記述されるCanIonポリペプチドのいずれかに特異的に結合するポリペプチド;のいずれかと接触させる段階と、b)前記細胞もしくは抽出物中の前記ポリヌクレオチドとRNA種との間のハイブリダイゼーションの存在または非存在、あるいは前記細胞もしくは抽出物中のタンパク質への前記ポリペプチドの結合の存在または非存在を検出する段階とを含み、前記ハイブリダイゼーションまたは前記結合の存在の検出によって、前記CanIon遺伝子が前記細胞中で発現することが示される。一実施形態において、前記ポリヌクレオチドはプライマーであり、前記ハイブリダイゼーションは、前記プライマーの配列を含有する増幅産物の存在を検出することによって検出される。他の実施形態において、前記ポリペプチドは、抗体、例えば、抗CanIon抗体である。
【0033】
他の態様において、本発明は、a)本明細書に記述されるCanIonポリペプチドのいずれかと試験化合物とを接触させる段階;b)前記化合物が前記ポリペプチドに特異的に結合するかどうかを決定する段階;を含む、CanIonポリペプチドの候補修飾物質を同定する方法であって、前記化合物が前記ポリペプチドに特異的に結合することの検出によって、前記化合物が前記CanIonポリペプチドの候補修飾物質であることが示される方法を提供する。
【0034】
一実施形態において、その方法はさらに、前記候補修飾物質の存在下にて、前記CanIonポリペプチドの生物活性を試験することを含み、前記候補修飾物質の非存在下での活性と比較して、前記候補修飾物質存在下での前記CanIonポリペプチドの生物活性の変化から、その候補修飾物質が前記CanIonポリペプチドの修飾物質であることが示される。
【0035】
他の態様において、本発明は、a)本明細書に記述されるCanIonポリペプチドのいずれかと試験化合物とを接触させる段階;b)前記化合物の存在下および非存在下における前記ポリペプチドの活性を検出する段階;を含む、CanIonポリペプチドの修飾物質を同定する方法であって、前記化合物の非存在下での活性と比較した、前記化合物の存在下での前記活性の差を検出することによって、前記化合物が前記CanIonポリペプチドの修飾物質であることが示される方法を提供する。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記ポリペプチドは、細胞または細胞膜に存在し、前記生物活性は、電位作動性イオンチャンネル活性を含む。
【0037】
他の態様では、本発明は、a)本明細書に記述される方法のいずれかを使用して、CanIonポリペプチドの修飾物質を同定する段階;b)前記修飾物質を生理学的に許容可能な担体と組み合わせる段階;を含む薬剤組成物の調製方法を提供する。薬剤組成物を使用する方法もまた提供する。
【0038】
例えばヒトの体を治療するための、または本明細書に記述される疾患もしくは状態のいずれかを治療するための薬物の製造における、本明細書に記述されるCanIon修飾物質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のいずれかの使用もまた提供する。
【0039】
インビトロもしくはインビボでCanIonポリヌクレオチドおよびポリペプチドの存在を検出するために使用するキットもまた提供する。
[配列表に提供される配列の簡単な説明]
配列番号1は、5’調節領域(上流の未転写領域)およびエクソン1〜7を含む、CanIonのゲノム配列を含有する。
【0040】
配列番号2は、エクソン8〜27を含む、CanIonのゲノム配列を含有する。
【0041】
配列番号3は、エクソン28〜44および3’調節領域(下流の未転写領域)を含む、CanIonのゲノム配列を含有する。
【0042】
配列番号4は、CanIonのcDNA配列を含有する。
【0043】
配列番号5は、配列番号4のcDNAによってコードされるアミノ酸配列を含有する。
【0044】
配列番号6は、2対立遺伝子マーカーA18を含む、アンプリコンのヌクレオチド配列を含有する。
【0045】
配列番号7は、実施例2にさらに記述される追加のPU5’配列を含むプライマーを含有する。
【0046】
配列番号8は、実施例2にさらに記述される追加のRP5’配列を含むプライマーを含有する。
【0047】
配列表に関する規則に従って、以下のコードが、配列中の2対立遺伝子マーカーの位置を示し、かつ多型塩基に存在する対立遺伝子それぞれを同定するために使用されている。配列においてコード「r」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がグアニンであり、他方の対立遺伝子がアデニンであることを示す。配列におけるコード「y」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がチミンであり、他方の対立遺伝子がシトシンであることを示す。配列におけるコード「m」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がアデニンであり、他方の対立遺伝子がシトシンであることを示す。配列におけるコード「k」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がグアニンであり、他方の対立遺伝子がチミンであることを示す。配列におけるコード「s」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がグアニンであり、他方の対立遺伝子がシトシンであることを示す。配列におけるコード「w」は、多型塩基の一方の対立遺伝子がアデニンであり、他方の対立遺伝子がチミンであることを示す。各2対立遺伝子マーカーの元の対立遺伝子のヌクレオチドコードは以下の通りである:
2対立遺伝子マーカー 元の対立遺伝子
5−124−273 A(例)
場合によっては、2対立遺伝子マーカーの多型塩基は、コードされたポリペプチドにおけるアミノ酸の同一性を変化させる。これは、変異体(VARIANT)という特徴の使用、多型アミノ酸の位置でのXaaの配置、および2つの選択的アミノ酸としてのXaaの定義によって添付の配列表に示される。例えば、2対立遺伝子マーカーの一方が、ヒスチジンをコードするコドンCACであり、2対立遺伝子マーカーの他方が、グルタミンをコードするCAAであり、コードされるポリペプチドの配列表は、多型アミノ酸の位置にXaaを含有するだろう。この場合には、Xaaは、ヒスチジンまたはグルタミンとして定義されると考えられる。
【0048】
他の場合、ヌクレオチド配列が曖昧であるため、Xaaは、その同一性が未知のアミノ酸を示す場合がある。この場合には、不確か(UNSURE)という特徴を使用し、未知のアミノ酸の位置でのXaaの配置およびXaaの定義は、20個のアミノ酸のいずれかまたは遺伝コードによって示唆される限定数のアミノ酸である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
家系における精神分裂病および双極性障害の集合、双生児および養子研究からの証拠、および世界中の発生頻度の変動が無いことから、環境的な危険因子もまた、必要な、十分な、または相互作用的な原因としてあるレベルで関与するが、精神分裂病および双極性障害は主に遺伝的条件によるものである。例えば、精神分裂病は、一般人口の1%で発生する。しかし、祖父(祖母)1人が精神分裂病である場合には、その病気になる危険性は約3%に上昇する;両親のうち1人が精神分裂病である場合、病気になる危険性は約10%に上昇する。両親共に精神分裂病であれば、その危険性は約40%に上昇する。
【0050】
精神分裂病のような特定の中枢神経系障害など、特定の形質に関与に関与する遺伝子の同定を、遺伝子地図作成に現在使用されている主な2つの方策:連鎖解析および関連研究によって行うことができる。連鎖解析には、多くの罹患者を有する家系の研究が必要であり、現在、一遺伝子性または主働遺伝子性の遺伝形質の検出に有用である。逆に、関連研究では、形質のネガティブ(T−)コントロールと比較して、関係のない形質(T+)の個体でのマーカー対立遺伝子の頻度が調べられ、ポリジーン遺伝の検出に一般に用いられている。
【0051】
遺伝的連鎖または「連鎖」は、染色体上の隣接する2つの配列のどちらが、減数分裂中の交叉による最小の組換えを含有するかについての分析に基づくものである。これを行うために、マイクロサテライトマーカーなどの染色体マーカーを、ゲノム上に正確に局在化させる。遺伝的連鎖解析では、系統樹、疾患の伝染、およびマーカーの伝達に従って、標的遺伝子上で使用される染色体マーカーとの組換えの確率を計算する。このように、所定のマーカーの特定の対立遺伝子が、考えられる確率よりも多く疾患を伝達する場合(組換えレベル0〜0.5)、問題の標的遺伝子がマーカー付近で見つけられると推論することが可能である。この技術を用いて、家系性癌の遺伝的素因を示す、いくつかの遺伝子を局在化することが可能である。遺伝的連鎖研究に包含できるようにするために、遺伝性の疾患にかかっている家系は、「情報価値のある」判定基準:世代当たりに数名の患者対象(およびその体質的なDNAが利用可能である)、最高でも多数の姉妹(兄弟)を満たさなければならない。
【0052】
連鎖研究の結果から、13番染色体は、精神分裂病羅病性遺伝子座を3q32上に有するらしいという仮説が支持された(Blouin JL 等, 1998, Nature Genetics, 20:70-73; Lin MW 等, Hum. Genet., 99(3) (1997):417-420; Brzustowicz 等, Am. J. Hum. Genet. 65:1096-1103 (1999))。しかしながら、連鎖解析は、形質に関与する遺伝子を検出する強力な方法である一方、分解能がメガベースレベルを超えることが不可能である場合が多く、この方法によって最初に同定された領域の分析を改良するには、相補的な研究が必要な場合が多い。
【0053】
染色体13q−31−q33遺伝子座の候補ゲノム領域をカバーするBACコンティグを、染色体13q31−q33領域に局在化された公知のSTSを用いて作成し、7個のゲノムに相当する、知的所有権下にあるBACライブラリーをスクリーニングした。これらの材料から、新たなSTSが生成され、その領域の高密度な物理的地図を作成することが可能となった。BACはあらゆる大きさであり、検証のためにin situ染色体ハイブリダイゼーションによってマッピングされる。最小限のセットのBACを同定し、完全にシークエンスし、その結果として、最終的に4Mbを超えるコンティグの作成につながる、いくつかのコンティグが得られた。この地図の作成によって、精神分裂病に有意な連関を示す、ゲノム領域内に位置するCanIon遺伝子が同定される。
【0054】
CanIonアミノ酸配列は、Caチャンネル(CACHANNEL)、カルシウムチャンネルのα−1サブユニットのサインを提供する7要素のフィンガープリントに特有である(R00167、BLOCKs+データベース参照)。フィンガープリントは、6配列の最初のアラインメントから得られた:そのモチーフは、これらのチャンネルと他のカチオンチャンネルを区別することができる保存ループ領域から引き出された;モチーフ1および2は、膜貫通セグメント4および5と、セグメント5および6との間のセグメントをコードし(第1内部反復);モチーフ3は、反復1のセグメント6と反復2のセグメント1の間のセグメントに対応し;モチーフ4は、反復2のセグメント5と6の間のセグメントをコードし、モチーフ5は、反復3のセグメント6と反復4のセグメント1との間のセグメントに対応し;モチーフ6および7は、反復4のセグメント4および5と、セグメント5および6との間のセグメントをコードする。
【0055】
図1は、CanIon遺伝子を含む対象の13番染色体領域をカバーするBACコンティグを示し、連鎖研究において最も高い有意性を示す遺伝子マーカーに対するCanIon遺伝子のゲノム位置を示す。特に、Blouin 等 (1998)は、54の複合系図上で452個のマイクロサテライトマーカーを使用して、精神分裂病罹病性についてのゲノムワイドスキャンを実施した。家系における精神分裂病の間の最も有意な関連性が、マーカーD13S174付近の染色体13q32で見出された。Brzustowics 等 (1999)は、21の広範囲なカナダ人家系において、8番染色体および13番染色体におよぶマイクロサテライトマーカーを評価した。染色体の13q領域におけるマーカーは、使用される各分析モデルにおいてポジティブなLODスコアを得た:精神分裂病の狭いまたは広い定義での常染色体優性および常染色体劣性。最大3ポイントのLODスコアが、劣性の広範なモデル下にてマーカーD13S793を用いて得られた:組換え率(θ)にて3.92。均一下では1、不均一下ではα=0.65およびθ=0の場合に4.42である。図1を参照すると、CanIon遺伝子は、コンティグ標識「領域E」上に一部位置し、コンティグ標識C0001A10上に一部位置する。CanIon遺伝子は、連鎖研究に最も高い有意性を示す2つのマーカーによってフランキングされる。マーカーD13S174もコンティグC0001A10上にあり、マーカーD13S793は、CanIon遺伝子にセントロメア(centromeric)な約3.5Mbに位置する。
【0056】
精神分裂病、双極性障害および他のCNSおよび心臓血管性疾患および症状に関与する遺伝子を同定することが強く必要とされている。疾患に関与する新規なイオンチャンネルを同定することも必要とされている。これらの遺伝子およびタンパク質は、精神分裂病、双極性障害、または他のCNS状態、ならびに心臓の異常および高血圧などの他の症状の治療において新たな介入ポイントを提供することが可能であり、CanIon遺伝子およびそれに関連する生物学的経路をさらに研究および特徴付けすることが可能となる。これらの疾患および症状に関与する、これらの遺伝子およびそれに関連する生物学的経路の知識によって、例えば精神分裂病および双極性障害の原因を研究者らが理解でき、疾患の原因に対して薬物および医薬品が導かれるだろう。例えば、CanIonチャンネルを遮断する化合物を使用して、多数の疾患または症状のいずれか、好ましくは精神分裂病または双極性障害を治療することができる。疼痛性障害、てんかん、および不整脈、アンギナ、高血圧などの種々の心臓血管性疾患もまた含まれる。精神分裂病、双極性障害および他の症状に対する罹病性を検出する新規な方法、ならびにこれらの疾患のいずれかの発症を予防または経過観察することも、非常に必要とされている。診断ツールも非常に有用であることを証明することができる。実際に、一例を挙げると、精神分裂病を発症する危険性について対象を早期に同定することによって、早期および/または予防的な治療を施すことが可能となるだろう。さらに、薬物の有効性ならびにそれに対する患者の耐性を正確に評価することによって、臨床医は精神分裂病および双極性障害の治療法の利点/危険性の比を高めることが可能となる。
【0057】
本発明は、CanIon遺伝子に関連するポリヌクレオチドおよびポリペプチドに関する。CanIonのゲノム配列またはcDNA配列と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーもまた、本発明の一部である。本発明の更なる目的は、本発明に記述される核酸配列のいずれかを含む組換えベクター、特にCanIonの調節領域またはCanIonタンパク質をコードする配列を含む組換えベクター、ならびに前記核酸配列もしくは組換えベクターを含む細胞宿主からなる。本発明は、CanIon遺伝子またはタンパク質の発現または活性を調節する能力に関して分子をスクリーニングする方法、ならびに精神分裂病、双極性障害、または多数の他の疾患もしくは症状のいずれかを治療または予防するために、かかる分子を使用する方法もまた包含する。本発明は、診断用試薬として有用なかかるポリペプチドに対して特異的に作られる抗体も取り扱う。
【0058】
本発明は、CanIon−関連2対立遺伝子マーカー、および家系における連鎖研究、集団における連鎖不平衡研究および症例対照集団における関連研究を含む、遺伝分析方法でのそれらの使用にも関する。本発明の重要な態様は、2対立遺伝子マーカーによって、関連研究を行い、複合形質に関与する遺伝子の役割を同定することが可能となることである。
【0059】
定義
本発明をさらに詳細に説明する前に、以下の定義を示し、本明細書において本発明を説明するために使用される用語の意味および範囲を説明かつ定義する。
【0060】
本明細書で使用される「CanIon遺伝子」という用語は、ゲノムDNAの非翻訳調節領域を含む、CanIonタンパク質をコードする、ゲノム、mRNAおよびcDNA配列を包含する。
【0061】
本明細書で使用される「異種タンパク質」という用語は、CanIonタンパク質以外のいずれかのタンパク質またはポリペプチドを示すことを意図するものである。例えば、異種タンパク質は、CanIon調節領域を用いた更なる実験において、マーカーとして使用することができる化合物である。
【0062】
単離(された)」という用語は、その元の環境(例えば、それが天然に存在する場合、自然環境)から物質が取り出されることを必要とする。例えば、生体動物に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然体系において共存する物質の一部またはすべてから分離されたポリヌクレオチドまたはDNAまたはポリペプチドは単離される。かかるポリヌクレオチドは、ベクターおよび/またはかかるポリヌクレオチドの一部であることが可能であり、あるいはポリペプチドは、組成物の一部であることが可能であり、さらに、ベクターまたは組成物がその自然環境の一部ではない点から単離することができる。
【0063】
例えば、生体動物に存在する天然ポリヌクレオチドは単離されないが、自然体系において共存する物質の一部またはすべてから分けられる同一ポリヌクレオチドは単離される。具体的には、「単離(された)」の定義から:天然の染色体(染色体拡散など)、人工的な染色体ライブラリー、ゲノムライブラリー、および核酸のインビトロ標本として、あるいはその宿主細胞が異質インビトロ標本であるか、または単一コロニーの異質集団としてプレーティングされる、移入/形質転換された宿主細胞標本として存在するcDNAライブラリーは除外される。具体的には、指定のポリヌクレオチドがベクター分子中の核酸インサート数の5%未満を占める、上記のライブラリーもまた除外される。さらに具体的には、全細胞のゲノムDNAまたは全細胞のRNA標本(機械的に切断または酵素で消化される前記全細胞標本を含む)は除外される。さらに具体的には、上記の全細胞標本は除外される。インビトロ標本としての、または電気泳動(それのブロットトランスファーを含む)によって分離された異質混合物としての上記全細胞標本は除外される。その電気泳動において、本発明のポリヌクレオチドは、電気泳動媒体中の異種ポリヌクレオチドからさらに分離されていない(例えば、アガロースゲルまたはナイロンブロットにおいて異質バンドから単一バンド集合を切り出すことによる更なる分離)。
【0064】
精製(された)」」という用語は、完全な精製を必要とするわけではなく;むしろ、それらは相対的な定義として意図される。少なくとも1桁、好ましくは2桁または3桁、さらに好ましくは4桁または5桁のオーダーに、出発物質または天然物質を精製することが特に企図される。例として、濃度0.1%から濃度10%への精製は2桁のオーダーである。説明すると、cDNAライブラリーから単離された個々のcDNAクローンは従来法で、電気泳動的な均一性に精製されている。これらのクローンから得られる配列は、ライブラリーまたはヒト全DNAから直接得ることはできなかった。cDNAクローンはそれ自体、天然に存在しないが、むしろ一部精製された天然物質(メッセンジャーRNA)の操作によって得られる。mRNAのcDNAライブラリーへの変換は、合成物質(cDNA)の生成を伴い、個々の純粋なcDNAクローンを、クローン選択によって合成ライブラリーから単離することができる。このように、メッセンジャーRNAからcDNAライブラリーを作成し、続いてそのライブラリーから個々のクローンを単離することによって、結果として、天然のメッセージが約104〜106倍精製される。
【0065】
さらに、本明細書において「精製(された)」という用語は、限定されないが、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド、炭水化物、脂質等を含む他の化合物から分離された本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを説明するために使用される。「精製(された)」という用語は、ホモもしくはヘテロ−二量体、三量体等のオリゴマーからの本発明の単一ポリペプチドの分離を示すのに使用する場合がある。「精製(された)」という用語はまた、共有結合により閉環状のポリヌクレオチドの線状ポリヌクレオチドからの分離を説明するために使用される場合がある。サンプルの少なくとも約50%、好ましくは60〜75%が単一ポリヌクレオチド配列および配座(線状に対して共有結合による閉環状)を示す場合、ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。実質的に純粋なポリペプチドまたはポリヌクレオチドは通常、それぞれポリペプチドまたはポリヌクレオチドサンプルの約50%(重量/重量)、好ましくは60〜90%、さらに通常約95%を占め、約99%を超える純度であることが好ましい。ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの純度、または均一性は、サンプルのアガロースゲルまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動などの当技術分野で公知の多数の手段によって、続いてゲルを染色して単一バンドを可視化することによって示される。特定の目的のために、HPLCまたは当技術分野で公知の他の手段を用いて、より高い分解能を提供することができる。代替の実施形態として、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの精製は、異質ポリペプチドおよびポリヌクレオチド(DNA、RNA、または両方)に対する「最低」純度%として表される。好ましい実施形態として、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、異質ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに対してそれぞれ、少なくとも;純度10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、96%、98%、99%、または100%である。さらに好ましい実施形態として、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、異質ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに対して、または担体に存在するもの以外のすべての化合物および分子に対する重量/重量比として、任意の位〜小数点以下第3位の範囲、90%〜100%(例えば、少なくとも純度99.995%)のポリペプチドまたはポリヌクレオチド)の純度を有する。小数点以下第3位までの純度%を表す各数字は、純度の個々の種類として主張することが可能である。
【0066】
ポリペプチド」という用語は、ポリマーの長さに無関係に、アミノ酸のポリマーを意味し;このため、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後の修飾を指定しないか、または除外する。例えばグリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基等の共有結合を含有するポリペプチドは、「ポリペプチド」という用語によって明確に包含される。アミノ酸(例えば、非天然のアミノ酸、無関係の生体系において天然にのみ存在するアミノ酸、哺乳類系からの修飾アミノ酸等を含む)の1つまたは複数の類似体を含有するポリペプチド、置換される結合ならびに当技術分野で公知の他の修飾を有する、天然および非天然両方のポリペプチドもまた定義内に含まれる。
【0067】
本明細書において「組換えポリペプチド」という用語は、人工的に設計されたポリペプチド、およびそれらの元の自然環境において隣接するポリペプチド配列として見出されない少なくとも2つのポリペプチド配列を含むポリペプチドを指すか、または組換えポリヌクレオチドから発現したポリペプチドを指すために使用される。
【0068】
本明細書において使用される「非ヒト動物」とは、非ヒトの脊椎動物、鳥類およびさらに一般的には動物、好ましくは霊長類、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、およびウマ、ウサギもしくは齧歯類などの家畜、さらに好ましくはラットまたはマウスを意味する。本明細書において使用される「動物」という用語は、脊椎動物、好ましくは哺乳類を指すために使用される。「動物」および「哺乳類」というどちらの用語も、「非ヒト」という用語で前述されていないかぎり、ヒトの対象を明確に含む。
【0069】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、少なくとも1つの結合ドメインから構成されるポリペプチドまたはポリペプチドのグループを意味し、抗体結合ドメインは抗体分子の可変ドメインの折り畳みから形成され、抗原の抗原決定基の特徴に相補的な内面形状および電荷分布を有する三次元結合空間が形成されて、抗原との免疫学的反応が可能となる。抗体には、結合ドメインならびにFab、Fab’、F(ab)2およびF(ab’)2断片を含む断片を含有する組換えタンパク質が含まれる。
【0070】
本明細書において使用される「抗原決定基」は、抗原分子の一部であり、この場合には、抗原−抗体反応の特異性を決定するCanIonポリペプチドである。「エピトープ」とは、ポリペプチドの抗原決定基を意味する。エピトープは、エピトープに固有な空間構造にわずか3個のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、かかるアミノ酸を少なくとも6個、さらに一般的にはかかるアミノ酸を少なくとも8個〜10個含む。エピトープを構成するアミノ酸を決定する方法には、例えばX線結晶構造解析、2次元核磁気共鳴、およびエピトープマッピング、例えばGeysen 等 1984;PCT公開番号WO84/03564;PCT公開番号WO84/03506に記載のペプスキャン(Pepscan)法が含まれる。
【0071】
本明細書全体を通して、「ヌクレオチド配列」という表現は、ポリヌクレオチドまたは核酸を示すために同義で使用される。さらに正確には、「ヌクレオチド配列」はそれ自体、核の物質を包含し、したがって特定のDNAまたはRNA分子を生物化学的に特徴付ける配列情報(つまり、4つの塩基文字の中で選択されるひと続きの文字)に制限されない。
【0072】
本明細書において同義で使用される「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、および「ポリヌクレオチド」には、単鎖または二重鎖状のRNA,DNA、または複数のヌクレオチドのRNA/DNAハイブリッド配列が含まれる。本明細書において形容詞として使用される「ヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二重鎖状の任意の長さのRNA、DNA、またはRNA/DNAハイブリッド配列を含む分子を意味する。本明細書において、「ヌクレオチド」という用語は、プリンまたはピリミジン、リボースまたはデオキシリボースの糖部位、およびリン酸基、あるいはオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの場合にはリン酸ジエステル結合を含む、分子または大きな核酸分子における個々のユニットを意味する、個々のヌクレオチドまたは種々のヌクレオチドを示すために名詞としても使用される。本明細書において「ヌクレオチド」という用語はまた、少なくとも1つの修飾:(a)選択的(alternative)結合基、(b)プリンの類似体、(c)ピリミジンの類似体、または(d)例えば類似結合基、プリン、ピリミジンの類似糖および糖を含む「修飾ヌクレオチド」を包含するために使用される。例えば、PCT公開番号:WO95/04064を参照のこと。本発明のポリヌクレオチド配列は、合成、組み換え、エクスビボでの生成、またはそれらの組み合わせを含む公知の方法によって、ならびに当技術分野で公知の精製方法を用いて作製することが可能である。
【0073】
プロモーターなどの制御配列に「作動可能に連結される」配列は、RNAポリメラーゼ開始および対象の核酸の発現を調節するために、前記調節エレメントが核酸に対して正しい位置および向きにあることを意味する。本明細書において使用される「作動可能に連結される」という用語は、機能上の関係におけるポリヌクレオチドエレメントの結合を意味する。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結する。
【0074】
形質」および「表現型」という用語は、本明細書では同義で使用され、可視の、検出可能な、または測定可能な生体の性質、例えば疾患の症状または疾患に対する感受性を意味する。通常、本明細書において「形質」および「表現型」という用語は、疾患の症状または疾患に対する感受性、治療に対して有利な反応、または治療に関連する副作用を意味する。好ましくは、前記形質は、制限されることなく、精神分裂病または双極性障害、他のCNS障害または神経性障害、例えば、てんかんもしくは疼痛性障害、ならびにアンギナ、高血圧、および不整脈などの心臓血管性疾患、ならびにいずれかの側面、特徴、またはこれらの疾患または症状のいずれかの特性である。
【0075】
本明細書において「対立遺伝子」という用語は、ヌクレオチド配列の変異体を示すために使用される。2対立遺伝子多型は2つの形を有する。二倍体生物は対立遺伝子型にホモ接合性またはヘテロ接合性である。
【0076】
本明細書において「ヘテロ接合率」という用語は、特定の対立遺伝子においてヘテロ接合性である集団における個々の出現率を示すために使用される。2対立遺伝子系において、ヘテロ接合率は、平均で2Pa(1−Pa)(Paは、頻度の最も低い対立遺伝子の頻度)に等しい。遺伝子研究において有用であるためには、遺伝子マーカーは、ランダムに選択された人がヘテロ接合性であるという妥当な確率を可能にするのに適切なレベルのヘテロ接合性を有するべきである。
【0077】
本明細書において使用される「遺伝子型」という用語は、個体またはサンプルに存在する対立遺伝子の同一性を意味する。本明細書のコンテクストにおいて、遺伝子型は、個体またはサンプル中に存在する2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子、例えばCanIon遺伝子またはゲノム領域内の2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子の詳細を意味することが好ましい。2対立遺伝子マーカーに対して、サンプルまたは個体の「ゲノタイピング」という用語は、2対立遺伝子マーカーにて個体によって保有される特異的な対立遺伝子または特異的なヌクレオチドを決定することを含む。
【0078】
本明細書における「変異」という用語は、1%未満の頻度を有する、異なるゲノムまたは個体間の、または異なるゲノムまたは個体中のDNA配列の差異を意味する。
【0079】
ハプロタイプ」という用語は、個体またはサンプル中に存在する対立遺伝子の組み合わせを意味する。本発明のコンテクストにおいて、ハプロタイプは好ましくは、所定の個体で見出される、かつ表現型と関連する2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子の組み合わせを意味する。
【0080】
本明細書において使用される「多型」という用語は、異なるゲノムまたは個体間または中の2つ以上の選択的なゲノム配列または対立遺伝子の出現を意味する。「多型性」とは、特異的なゲノム配列の2種類以上の変異体が集団において見つけられる条件を意味する。「多型部位」は、変異体が発生する遺伝子座である。単一ヌクレオチド多型は、多型部位での他のヌクレオチドによる1つのヌクレオチドの置換である。単一ヌクレオチドの欠失または単一ヌクレオチドの挿入もまた、単一ヌクレオチド多型を引き起こす。本発明のコンテクストにおいて、「単一ヌクレオチド多型」は好ましくは、単一ヌクレオチドの置換を意味する。通常、異なる個体間では、多型部位は、異なる2つのヌクレオチドによって占有される。
【0081】
本明細書において「2対立遺伝子多型」および「2対立遺伝子マーカー」という用語は、集団においてかなり高い頻度で2つの対立遺伝子を有する単一ヌクレオチド多型を示すために同義で用いられる。「2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子」とは、2対立遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチド変異体を意味する。通常、本発明の2対立遺伝子マーカーの頻度の低い対立遺伝子の頻度は、1%を超えると確認されており、好ましくはその頻度は10%を超え、さらに好ましくは少なくとも20%であり(つまり、少なくとも0.32のヘテロ接合率)、さらに好ましくは少なくとも30%である(つまり、少なくとも0.42のヘテロ接合率)。頻度の低い対立遺伝子の頻度が30%以上である2対立遺伝子マーカーは、「高品質の2対立遺伝子マーカー」と呼ばれる。
【0082】
ポリヌクレオチドの中心に対する、ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの位置は、本明細書において以下のように記述される。ポリヌクレオチドが奇数個のヌクレオチドを有する場合、ポリヌクレオチドの3’末端から5’末端の等しい距離にあるヌクレオチドは、「ポリヌクレオチドの中心にある」と見なされ、中心にあるヌクレオチドにすぐ横に隣接するヌクレオチド、またはそれ自体が中心のヌクレオチドは、「中心から1ヌクレオチド以内」であると見なされる。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドが奇数である場合、ポリヌクレオチド中央の5個のヌクレオチド位置のいずれも、「中心から2ヌクレオチド以内」であるなどと見なされるだろう。ポリヌクレオチドが偶数個のヌクレオチドを有する場合、結合があり、ポリヌクレオチドの中心にヌクレオチドは存在しないだろう。したがって、2個の中心ヌクレオチドのいずれかが、「中心から1ヌクレオチド以内」であると見なされ、ポリヌクレオチド中央の4個のヌクレオチドのいずれも、「中心から2ヌクレオチド以内」であるなどと見なされる。1つまたは複数のヌクレオチドの置換、挿入または欠失を含む多型については、多型の置換、挿入または欠失ポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの3’末端までの距離と、多型の置換、挿入または欠失ポリヌクレオチドからポリヌクレオチドの5’末端までの距離と、の差が0または1ヌクレオチドである場合には、多型、対立遺伝子または2対立遺伝子マーカーは、ポリヌクレオチドの「中心」にある。この差が0〜3である場合、次いで多型は、「中心から1ヌクレオチド以内」であると見なされる。その差が0〜5である場合、多型は、「中心から2ヌクレオチド以内」であると見なされる。その差が0〜7である場合、多型は「中心から3ヌクレオチド以内」であるなどと見なされる。
【0083】
本明細書において「上流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの5’末端方向である位置、遺伝子の場合、コード配列からプロモーターに伸びる方向にある位置を示すために使用される。
【0084】
本明細書において「塩基対」および「ワトソン−クリック型塩基対」という用語は、2つの水素結合によってアデニン残基に結合されるチミンまたはウラシル残基、および3つの水素結合によって結合されるシトシンおよびグアニン残基を有する二重らせんDNAにおいて見出されるように、それらの配列同一性によって互いに水素結合することができるヌクレオチドを示すために同義で使用される(Stryer, L., Biochemistry, 4th edition, 1995を参照のこと)。
【0085】
本明細書において「相補的」または「その補体」という用語は、相補領域全体を通して指定の他のポリヌクレオチドとワトソン−クリック型塩基対を形成することができる、ポリヌクレオチドの配列を示すために使用される。本発明の目的のために、第1ポリヌクレオチド中の各塩基がその相補的塩基と対を形成する場合、第1ポリヌクレオチドは第2ポリヌクレオチドに相補的であると考えられる。相補的塩基は一般に、AおよびT(またはAおよびU)、またはCおよびGである。本明細書において「補体」は、「相補的ポリヌクレオチド」、「相補的核酸」および「相補的ヌクレオチド配列」からの同義語として使用される。これらの用語は、単にそれらの配列に基づくポリヌクレオチドの対に適用され、2つのポリヌクレオチドが実際に結合すると考えられる条件の特定のセットには適用されない。
[変異体および断片]
1−ポリヌクレオチド
本発明は、本明細書に記述されるポリヌクレオチド、特に本発明による1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーを含有するCanIon遺伝子の変異体および断片にも関する。
【0086】
本明細書において使用される用語としてのポリヌクレオチドの変異体は、参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドの変異体は、自然発生の突然変異体などの自然発生の変異体であるか、または自然に発生することが知られていない変異体であることが可能である。かかる非自然発生のポリヌクレオチド変異体は、ポリヌクレオチド、細胞または生体に適用される技術を含む、突然変異誘発技術によって生成することが可能である。一般に差異は限られており、その結果、参照および変異体のヌクレオチドは配列が全体的に密接に類似しており、多くの領域において同一である。
【0087】
本発明によるポリヌクレオチドの変異体には、制限されないが、配列番号1〜4のヌクレオチド配列からなる群から選択されるポリヌクレオチドと、または配列番号1〜4のヌクレオチド配列からなる群から選択されるポリヌクレオチドの少なくとも12個の連続するヌクレオチドのポリヌクレオチド断片と、少なくとも95%同一である、好ましくは配列番号1〜4のヌクレオチド配列からなる群から選択されるポリヌクレオチドと、または配列番号1〜4のヌクレオチド配列からなる群から選択されるポリヌクレオチドの少なくとも12個の連続するヌクレオチドのポリヌクレオチド断片と、少なくとも99%同一である、さらに好ましくは少なくとも99.5%同一である、最も好ましくは少なくとも99.8%同一であるヌクレオチド配列が含まれる。
【0088】
変異体ポリヌクレオチドに存在するヌクレオチドの変化はサイレントである場合があり、それらがポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸を変化させないことを意味する。しかしながら、ヌクレオチドの変化によって、参照配列によってコードされるポリペプチドにおいて、アミノ酸が置換、付加、欠失、融合および切断される結果にもなる。置換、欠失または付加には、1つまたは複数のヌクレオチドを要する。変異体は、コード領域または非コード領域またはその両方において変化する。コード領域における変化によって、保存的または非保存的なアミノ酸の置換、欠失または付加が生じる。
【0089】
本発明のコンテクストにおいて、特に好ましい実施形態は、そのポリヌクレオチドが、成熟CanIonタンパク質と実質的に同じ生物学的機能または生物活性を保持するポリペプチドをコードする実施形態、あるいはポリヌクレオチドが、特定の生物活性を保持または増大する一方、第2の生物活性を低減するポリペプチドをコードする実施形態である。
【0090】
ポリヌクレオチド断片は、所定のヌクレオチド配列、好ましくはCanIon遺伝子のヌクレオチド配列のすべてとではないが一部と完全に同一である配列を有するポリヌクレオチド、およびその変異体である。その断片は、CanIon遺伝子のイントロンまたはエクソンの一部であり得る。それはまた、CanIonの調節領域の一部であり得る。かかる断片は、2対立遺伝子マーカーA1〜A17の少なくとも1つまたはそれに対する補体、または2対立遺伝子マーカーA1〜A17の1つまたは複数と連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーを含むことが好ましい。
【0091】
かかる断片は「自立型」であり、つまり他のポリヌクレオチドの一部ではない、または他のポリヌクレオチドに融合しないか、あるいはそれらがその一部または領域を形成する、大きな単一ポリヌクレオチド内に含まれる。実際には、これらの断片のいくつかが、大きな単一ポリヌクレオチド内に存在する場合がある。
【0092】
任意に、かかる断片は、長さが少なくとも8、10、12、15、18、20、25、35、40、50、70、80、100、250、500または1000ヌクレオチドの隣接スパンからなる、またはから本質的になる。1セットの好ましい断片は、本明細書において記述されるCanIon遺伝子の2対立遺伝子マーカーA1〜A17の少なくとも1つまたはそれに対する補体を含有する。
2−ポリペプチド
本発明は、変異したCanIonタンパク質を含む、本明細書に記載のポリペプチドの変異体、断片、類似体および誘導体にもまた関する。
【0093】
その変異体は、1)アミノ酸残基の1つまたは複数が、保存または非保存アミノ酸残基で置換され、かかる置換されたアミノ酸残基が遺伝コードによってコードされたものである、またはそうでない変異体、または2)アミノ酸残基の1つまたは複数が置換基を含む変異体、または3)変異したCanIonが、例えばポリペプチドの半減期を増大する化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの他の化合物と融合する変異体、または4)追加のアミノ酸が、リーダー配列または分泌配列、または変異したCanIonの精製に使用される配列またはプレタンパク質配列などの、変異したCanIonに融合する変異体である。かかる変異体は、当業者の範囲内であると考えられる。
【0094】
ポリペプチド断片は、所定のポリペプチド配列のすべてではないが一部と完全に同一である配列を有するポリペプチド、好ましくは、CanIon遺伝子によってコードされるポリペプチドおよびその変異体である。
【0095】
本発明によるポリペプチドのアミノ酸配列におけるアミノ酸の置換の場合には、1つまたはいくつかのアミノ酸を、「同等の」アミノ酸によって置換することができる。本明細書において「同等の」アミノ酸という表現は、ペプチド化学分野の当業者であれば、ペプチドの第2構造およびハイドロパシー性質が実質的に変化しないと考えるような、同様な特性を有するアミノ酸の1つに対して置換することが可能ないずれかのアミノ酸を示すために用いられる。一般に、アミノ酸の以下の群:(1)Ala、Pro、Gly、Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Thr;(2)Cys、Ser、Tyr、Thr;(3)Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;(4)Lys、Arg、His;(5)Phe、Tyr、Trp、Hisは、同等の変化を表す。
本発明による対象の修飾CanIonペプチド分子の特定の実施形態には、制限されないが、タンパク質分解に対して耐性であるペプチドが含まれ、その−CONH−ペプチド結合が、(CH2NH)還元結合、(NHCO)逆結合(retro inverso bond)、(CH2−O)メチレン−オキシ結合、(CH2−S)チオメチレン結合、(CH2CH2)カルバ結合、(CO−CH2)セトメチレン結合、(CHOH−CH2)ヒドロキシエチレン結合、(N−N)結合、E−アルケン結合、または−CH=CH−結合によっても修飾かつ置換されるペプチドである。本発明は、少なくとも1つのペプチド結合が上述のように修飾される、ヒトCanIonポリペプチドまたは断片またはその変異体もまた包含する。
【0096】
かかる断片は「自立形」であり、つまり他のポリヌクレオチドの一部ではない、または他のポリヌクレオチドに融合しないか、あるいはそれらがその一部または領域を形成する、大きな単一ポリヌクレオチド内に含まれる。しかしながら、いくつかの断片が大きな単一ポリヌクレオチド内に含まれる場合がある。
【0097】
本発明のポリペプチド断片の代表的な例として、長さ約5、6、7、8、9または10〜15、10〜20、15〜40、または30〜55個のアミノ酸を有するアミノ酸が挙げられる。CanIonタンパク質中に少なくとも1つのアミノ酸変異を含有する断片が好ましい。
[核酸またはポリペプチド間の同一性]
本明細書において「配列同一性のパーセンテージ」および「同一性パーセンテージ」という用語は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド間の比較を示すために同義で用いられ、比較ウィンドウ上に最適にアラインメントされた2つの配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントに対して参照配列(付加または欠失を含まない)と比較すると、付加または欠失(つまり、ギャップ)を含む。そのパーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列で生じる位置の数を決定して、マッチ位置の数を得て、比較ウィンドウにおける位置の総数でマッチ位置数を割り、その結果を100倍することによって計算され、配列同一性のパーセンテージが得られる。相同性は、当技術分野で公知の様々な配列比較アルゴリズムのいずれかを用いて評価される。かかるアルゴリズムおよびプログラムには、限定されないが、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、およびCLUSTALWが含まれる(PearsonおよびLipman, 1988; Altschul 等, 1990; Thompson 等, 1994; Higgins 等, 1996; Altschul 等, 1990; Altschul 等, 1993)。特に好ましい実施形態において、当技術分野で公知のBasic Local Alignment Search Tool(「BLAST」)を用いて、タンパク質および核酸配列相同性を評価する(KarlinおよびAltschul, 1990; Altschul等, 1990, 1993,1997を参照のこと)。特に以下のタスクを実行するために、特定の5つのプログラムを使用する:
(1)アミノ酸問い合わせ配列をタンパク質配列データベースと比較するBLASTPおよびBLAST3;
(2)ヌクレオチド問い合わせ配列をヌクレオチド配列データベースと比較するBLASTN;
(3)問い合わせヌクレオチド配列(両方の鎖)の6つの枠の概念上の翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較するBLASTX;
(4)問い合わせタンパク質配列を、6つすべての読み枠において翻訳されたヌクレオチド配列(両方の鎖)データベースと比較するTBLASTN;
(5)ヌクレオチド問い合わせ配列の6つの枠の翻訳を、ヌクレオチド配列データベースの6つの枠の翻訳と比較するTBLASTX。
【0098】
BLASTプログラムは、問い合わせアミノ酸もしくは核酸配列と、タンパク質もしくは核酸配列データベースから得られることが好ましい試験配列との間の、本明細書において「スコアの高いセグメント対」と呼ばれる類似セグメントを同定することによって相同配列を同定する。その多くが当技術分野で公知であるスコアリングマトリックスを用いることによって、スコアの高いセグメント対を同定(つまり、アラインメント)することが好ましい。使用するスコアマトリックスは、BLOSUM62マトリックス(Gonnet 等, 1992; Henikoff and Henikoff, 1993)であることが好ましい。好ましさは低いが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用することができる(例えば、SchwartzおよびDayhoff, eds., 1978参照)。BLASTプログラムは、同定された高スコアのすべてのセグメント対の統計的有意性を評価し、好ましくはユーザーによって指定された相同性%など、ユーザーによって指定された有意性の閾値を満たすそれらのセグメントを選択する。高スコアのセグメント対の統計的有意性は、カーリンの統計的有意性の式(例えば、Karlin and Altschul, 1990参照)を用いて評価することが好ましい。BLASTプログラムは、ユーザーによって提供されるデフォルトパラメーターを用いて、または変更されたパラメーターを用いて使用することが可能である。
[厳密なハイブリダイゼーション条件]
本発明によるかかるハイブリダイズ核酸を定義する目的のために、厳密なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:
6×SCCバッファー、5×デンハルト液、0、5%SDSおよびサケ精子DNA100μg/mlの存在下にて、ハイブリダイゼーション段階を65℃で行う。
【0099】
そのハイブリダイゼーション段階は、4つの洗浄段階:
2×SSCおよび0.1%SDSバッファー中で好ましくは65℃で5分間、2回洗浄;
2×SSCおよび0.1%SDSバッファー中で好ましくは65℃で30分間、1回洗浄;
0.1×SSCおよび0.1%SDSバッファー中で好ましくは65℃で10分間、1回洗浄;を伴い、これらのハイブリダイゼーション条件は、長さ約20ヌクレオチドの核酸分子に適している。上述のハイブリダイゼーション条件は、所望の核酸の長さ、当業者に公知の以下の技術に応じて、適応させるべきである。適切なハイブリダイゼーション条件は例えば、HamesおよびHiggins (1985)の書物に開示されている技術に応じて適応させることが可能である。
[CanIon遺伝子のゲノム配列]
本発明は、CanIonのゲノム配列に関する。本発明は、CanIon遺伝子、または配列番号1〜3の配列からなる、から本質的になる、またはをその配列を含むCanIonゲノム配列、それに相補的な配列、ならびにその断片および変異体を包含する。これらのポリヌクレオチドは精製、単離ポリヌクレオチド、または組換えポリヌクレオチドである。
【0100】
本発明は、配列番号1〜3のヌクレオチド配列と少なくとも70、75、80、85、90、または95%のヌクレオチド同一性を有するヌクレオチド配列、またはそれに相補的な配列またはその断片を含む、精製、単離、または組換えポリヌクレオチドもまた包含する。配列番号1〜3のヌクレオチド配列に関して、ヌクレオチド差異は一般に、核酸全体にわたってランダムに分布する。それにもかかわらず、好ましい核酸は、配列番号1〜3のヌクレオチド配列に関して、ヌクレオチド差異が主に、エクソン中に含まれるコード配列の外部に位置する核酸である。試験サンプルにおけるCanIon遺伝子のコピーの存在を検出するため、あるいは一方、CanIon配列内の標的ヌクレオチド配列を増幅するために、これらの核酸ならびにそれらの断片および変異体を、オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブとして使用することができる。
【0101】
本発明の他の目的は、上記に定義される厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、配列番号1〜3のヌクレオチド配列またはそれに相補的な配列またはその変異体とハイブリダイズする精製、単離、または組換え核酸からなる。好ましい実施形態において、前記精製、単離、または組換え核酸は、ヒトCanIon遺伝子のポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズし、さらに好ましくは、前記核酸はヒトCanIon遺伝子のヌクレオチドとハイブリダイズすることができるが、ラットCanIon遺伝子のヌクレオチド配列と実質上ハイブリダイズすることができない。
【0102】
本発明の特に好ましい核酸には、配列番号1〜3の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または10000ヌクレオチドの隣接スパンまたはその補体を含む精製、単離、または組換えポリヌクレオチドが含まれる。任意のサイズおよび配列の核酸断片もまた、このセクションで記述されるポリヌクレオチドによって含まれることを留意されたい。
【0103】
CanIonゲノム核酸は44個のエクソンを含む。配列番号1〜3におけるエクソン位置を以下の表Bに列挙する。
【0104】
【表2】
Figure 2004525614
このように、本発明は、CanIon遺伝子の44個の各エクソンからなる群から選択されるヌクレオチド配列およびそれに相補的な各配列を含む、精製、単離、または組換えポリヌクレオチドを具体化する。本発明は、CanIon遺伝子の少なくとも2つのエクソンの組み合わせを含む、精製、単離、または組換え核酸もまた提供し、そのポリヌクレオチドは、配列番号1〜3と同じ順序で前記核酸の5’末端から3’末端の核酸内に配列されている。
【0105】
イントロン1は、エクソン1とエクソン2との間に位置するヌクレオチド配列等を指す。イントロンの位置を表Aに列挙する。このように、本発明は、CanIon遺伝子の43個のイントロンからなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれに相補的な配列を含む、精製、単離、または組換えポリヌクレオチドを具体化する。
【0106】
このセクションは「CanIonのゲノム配列」というタイトルがつけられているが、任意のサイズおよび配列の核酸断片もまた、2つ以上のかかるゲノム配列のどちらかの側またはそれらの間のCanIonのゲノム配列をフランキングする、このセクションに記述されるポリヌクレオチドによって含まれることを留意されたい。
[CanIonのcDNA配列]
CanIon遺伝子の発現は、少なくとも1つのmRNA種の産生を引き起こすことが示されており、その核酸配列は配列番号4で示される。
【0107】
本発明の他の目的は、配列番号4のヌクレオチド配列、それに相補的な配列、ならびに対立遺伝子の変異体、およびその断片を含む、精製、単離、または組換え核酸である。さらに、本発明の好ましいポリヌクレオチドには、配列番号4の配列からなる、から本質的になる、またはそれを含む精製、単離、または組換えCanIon cDNAが含まれる。本発明の特に好ましい核酸には、配列番号4の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または6000ヌクレオチドの隣接スパン、またはその補体を含む精製、単離、または組換えポリヌクレオチドが含まれる。好ましい実施形態において、前記隣接スパンは、好ましくはA12〜A16からなる群から選択されるCanIon−関連2対立遺伝子マーカーを含む。
【0108】
本発明はまた、配列番号4のポリヌクレオチドと少なくとも95%のヌクレオチド同一性、有利には、配列番号4のポリヌクレオチドと99%のヌクレオチド同一性、好ましくは99.5%のヌクレオチド同一性、最も好ましくは99.8%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれに相補的な配列またはその生物活性断片を含む、精製または単離された核酸に関する。
【0109】
本発明の他の目的は、本明細書で定義される厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、配列番号4のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド、またはそれに相補的な配列またはその変異体またはその生物活性断片を含む、精製、単離または組換え核酸に関する。
【0110】
本発明の更なる目的は、配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸の隣接スパンを含むCanIonポリペプチドをコードする、単離、精製、または組換えポリヌクレオチドに関するものであり、前記隣接スパンは、配列番号5のアミノ酸位置277、338、574、678、680、683、691、692、695、696、697、894、1480、1481、1483、1484、1485、1630、1631、1632、1636、1660、1667、1707、1709の少なくとも1、2、3、5または10を含む。配列番号5のアミノ酸配列を含むCanIonポリペプチド、またはその誘導体または生物活性断片をコードする、単離、精製、または組換えポリヌクレオチド、ならびに配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも0、85、90、95、98、99、99.5または99.8%同一なCanIonポリペプチドをコードする、単離、精製、または組換えポリヌクレオチドもまた包含される。
【0111】
配列番号4のcDNAは、位置1のヌクレオチドから開始し、配列番号4の位置65におけるヌクレオチドで終了する5’−UTR領域を含む。配列番号cDNAのcDNAは、位置5283のヌクレオチドから開始し、配列番号4の位置6799のヌクレオチドで終了する3’−UTR領域を含む。
【0112】
結果として、本発明は、CanIon cDNAの5’UTRのヌクレオチド配列、それに相補的な配列、またはその突然変異体を含む単離、精製、または組換え核酸に関する。本発明は、CanIon cDNAの3’UTRのヌクレオチド配列、それに相補的な配列、またはその突然変異体を含む単離、精製、または組換え核酸にも関するものである。
【0113】
このセクションは「CanIonのcDNA配列」というタイトルがつけられているが、2つ以上のかかるゲノム配列のどちらかの側またはそれらの間のCanIonゲノム配列をフランキングする、このセクションに記載のポリヌクレオチドによって、任意のサイズおよび配列の核酸断片もまた含まれることを留意されたい。
[コード領域]
CanIonオープンリーディングフレームは、配列番号cDNAの対応するmRNAに含まれる。さらに正確には、有効なCanIonコード配列(CDS)は、ヌクレオチド位置66(ATGコドンの第1ヌクレオチド)と配列番号4のヌクレオチド位置5282(TGAコドンの末端ヌクレオチド)との間の領域を含む。本発明はまた、配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8または10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500、700または1000個のアミノ酸の隣接スパンを含むポリペプチドをコードする、単離、精製、かつ組換えポリヌクレオチドを具体化する。
【0114】
CanIon遺伝子のコード配列を含有する、上記で開示したポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドが適切な発現シグナルの調節下におかれた場合には、所望の宿主細胞または所望の宿主生体において発現することが可能である。発現シグナルは本発明のCanIon遺伝子における調節領域中に含まれる発現シグナルであるか、またはそれと対照的に、そのシグナルは外因性核酸制御配列である。適切な発現シグナル下に置かれた場合、かかるポリヌクレオチドは、その発現および/または増幅のためにベクター中に挿入することも可能である。
[CanIonの制御配列]
上述のように、CanIon遺伝子のゲノム配列は、非コード5’−フランキング領域、およびこの遺伝子の44個のエクソンを含有するCanIonコード領域と境をなす非コード3’−フランキング領域の両方において制御配列を含有する。
【0115】
5’および3’調節領域から誘導されるポリヌクレオチドは、試験サンプル中のCanIonヌクレオチド配列の少なくともコピーまたはその断片の存在を検出するのに有用である。
【0116】
CanIonに含まれる5’調節領域のプロモーター活性を以下に記述するように評価することができる。配列番号1の関連する生物活性ポリヌクレオチド断片または変異体を同定するために、当業者は、マーカー遺伝子(つまり、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等)を保有する組換えベクターの使用が記述されているSambrook 等(1989)を参照することが可能であり、その発現は、配列番号1の生物活性ポリヌクレオチド断片または変異体の調節下に置いた場合に、検出することができる。CanIon遺伝子の第1エクソンの上流に位置するゲノム配列を、適切なプロモーターレポーターベクター、例えばClontech社から入手可能なpSEAP−Basic、pSEAP−Enhancer、pβgal−Basic、pβgal−Enhancer、もしくはpEGFP−1プロモーターレポーターベクター、またはPromega社から入手可能なpGL2−basicもしくはpGL3−basicのプロモーターレスルシフェラーゼレポーター遺伝子ベクター中にクローン化する。簡単に言えば、これらのプロモーターレポーターベクターそれぞれは、分泌性アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、もしくは緑色蛍光タンパク質などの容易にアッセイできるタンパク質をコードするレポーター遺伝子の上流に位置する複数のクローニング部位を含む。CanIonコード領域の上流の配列は、両方向でレポーター遺伝子の上流のクローニング部位中に挿入され、適切な宿主細胞に導入される。レポータータンパク質のレベルをアッセイし、クローニング部位においてインサートを欠くベクターから得られたレベルを比較する。対照ベクターにおけるレベルと比較して、インサートを含有するベクターにおいて高い発現レベルが存在することから、インサート中にプロモーターが存在することが示されている。必要な場合には、上流配列を、弱いプロモーター配列からの転写レベルを高めるエンハンサーを含有するベクター中にクローン化することができる。インサートを欠いているベクターで観察された上記の有意な発現のレベルから、プロモーター配列が挿入された上流配列中に存在することが示されている。
【0117】
上流のゲノムDNA内のプロモーター配列は、エキソヌクレアーゼIIIまたは適切な制限エンドヌクレアーゼ消化などの従来の技術を用いて、上流のDNA中の重複した5’および/または3’欠失を構成することによってさらに定義することができる。その結果得られた欠失断片をプロモーターレポーターベクター中に挿入して、例えばその開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるColes 等 (1998)により記述されているように、その欠失がプロモーター活性を低減または消失しているかどうかを決定することができる。このように、プロモーターの境界を定義することができる。所望の場合には、部位特異的突然変異誘発またはリンカースキャンを用いて、プロモーター内の潜在的な個々の調節部位を同定して、プロモーター個々内、またはプロモーターの組み合わせ内の潜在的な転写因子結合部位を除去することが可能である。転写レベルに対するこれらの変異の影響は、プロモーターレポーターベクターにおけるクローニング部位中に変異を挿入することによって決定される。この種類のアッセイは、当業者にはよく知られており、WO97/17359、米国特許第5,374,544号;欧州特許第582 796号;米国特許第5,698,389号;米国特許第5,643,746号;米国特許第5,502,176号;および米国特許第5,266,488号に記述されており;それらの開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
異なる種類の細胞および組織中でCanIonプロモーターに作動可能に(operably)連結される検出可能なポリヌクレオチドの発現レベルによって、CanIon遺伝子のプロモーターの強さおよび特異性を評価することができる。検出可能なポリヌクレオチドは、予め定義されたオリゴヌクレオチドプローブと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、またはCanIonポリペプチドもしくはその断片もしくはその変異体を含む検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドのいずれかである。この種類のアッセイは当業者にはよく知られており、米国特許第5,502,176号;米国特許第5,266,488号に記述されている;それらの開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。その方法の一部を以下にさらに詳細に述べる。
【0119】
CanIonコード領域の5’末端および3’末端に位置する調節エレメントを保有するポリヌクレオチドは、対象の異種ポリヌクレオチドの転写および翻訳活性を調節するのに有利に使用することが可能である。
【0120】
このように、本発明は、5’および3’調節領域からなる群から選択されるポリヌクレオチド、またはそれに相補的な配列またはその生物活性断片もしくは変異体を含む、精製または単離された核酸にもまた関する。好ましい実施形態において、「5’調節領域」は、配列番号1の位置1〜2000の間に位置するヌクレオチド配列中に位置する。「3’調節領域」は、配列番号3の位置45842〜47841の間に位置するヌクレオチド配列中に位置する。
【0121】
本発明はまた、5’および3’調節領域からなる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも95%のヌクレオチド同一性、有利には5’および3’調節領域からなる群から選択されるポリヌクレオチドと99%のヌクレオチド同一性、好ましくは99.5%のヌクレオチド同一性、最も好ましくは99.8%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチド、またはそれに相補的な配列またはその変異体またはその生物活性断片を含む、精製または単離された核酸に関する。
【0122】
本発明の他の目的は、本明細書で定義される厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、5’および3’調節領域のヌクレオチド配列からなる群から選択されるポリヌクレオチド、またはそれに相補的な配列またはその変異体またはその生物活性断片とハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、精製、単離または組換え核酸からなる。
【0123】
5’調節領域の好ましい断片は、約1500または1000ヌクレオチド、好ましくは約500ヌクレオチド、さらに好ましくは約400ヌクレオチド、またさらに好ましくは300ヌクレオチド、最も好ましくは約200ヌクレオチドの長さを有する。
【0124】
3’調節領域の好ましい断片は、少なくとも50、100、150、200、300または400塩基の長さである。
【0125】
配列番号1および3の「生物活性」ポリヌクレオチド誘導体は、組換え細胞宿主において組換えポリペプチドもしくは組換えポリヌクレオチドを発現するための調節領域として機能的である、前記ポリヌクレオチドの断片を含む、あるいはその断片にあるポリヌクレオチドである。それは、エンハンサーとして、またはリプレッサーとして働くことができる。
【0126】
本発明の目的のために、核酸またはポリヌクレオチドは、前記調節ポリヌクレオチドが転写および翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有する場合、組換えポリペプチドもしくは組換えポリヌクレオチドを発現するための調節領域として「機能的」であり、かかる配列は、所望のポリペプチドまたは所望のポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結」される。
【0127】
本発明の調節ポリヌクレオチドは、例えばSambrook 等(1989)の書籍に記述されているように、適切な制限酵素を使用して切断することによって配列番号1および3のヌクレオチド配列から作製することができる。Bal31(Wabiko 等, 1986)などのエキソヌクレアーゼ酵素により、配列番号1および3を消化することによって、調節ポリヌクレオチドを作製することもできる。これらの調節ポリヌクレオチドは、本明細書の他に記述される核酸化学合成によっても作製することができる。
【0128】
本発明による調節ポリヌクレオチドは、所望の宿主細胞または宿主生体においてコード配列を発現させるのに使用することができる組換え発現ベクターの一部である。本発明による組換え発現ベクターは、本明細書の他に記述されている。
【0129】
本発明の好ましい5’調節ポリヌクレオチドには、CanIon cDNAの5’非翻訳領域(5’−UTR)、またはその生物活性断片もしくは変異体が含まれる。
【0130】
本発明の好ましい3’調節ポリヌクレオチドには、CanIon cDNAの3’非翻訳領域(3’−UTR)、またはその生物活性断片もしくは変異体が含まれる。
【0131】
本発明の更なる目的は:
a)i)5’調節領域のポリヌクレオチドまたはそれに相補的な配列を含むヌクレオチド配列;
ii)5’調節領域のヌクレオチド配列と少なくとも95%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドまたはそれに相補的な配列を含むヌクレオチド配列;
iii)5’調節領域のヌクレオチド配列と厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはそれに相補的な配列を含むヌクレオチド配列;
iv)(i)、(ii)および(iii)におけるポリヌクレオチドの生物活性断片または変異体;からなる群から選択される調節ヌクレオチド配列を含む核酸と、
b)上記(a)で定義される核酸に作動可能に連結される、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは対象の核酸と、
c)任意に、3’調節ポリヌクレオチド、好ましくはCanIon遺伝子の3’調節ポリヌクレオチドを含む核酸と、を含む精製または単離された核酸からなる。
【0132】
上記で定義された核酸の特定の実施形態において、前記核酸は、CanIon遺伝子の5’非翻訳領域(5’−UTR)、またはその生物活性断片もしくは変異体を含む。
【0133】
上記で定義された核酸の特定の第2実施形態において、前記核酸は、CanIon遺伝子の3’非翻訳領域(3’−UTR)、またはその生物活性断片もしくは変異体を含む。
【0134】
5’調節領域の調節ポリヌクレオチド、またはその生物活性断片もしくは変異体は、所望のポリペプチドまたはポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドの5’末端で作動可能に結合する。
【0135】
3’調節領域の調節ポリヌクレオチド、またはその生物活性断片もしくは変異体は、所望のポリペプチドまたはポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドの3’末端で有利に、作動可能に結合する。
【0136】
上述の核酸によってコードされる所望のポリペプチドは、原核または真核起源のタンパク質を包含する、種々の性質または起源のポリペプチドである。CanIon調節領域の制御下で発現するポリペプチドの中では、細菌性、真菌性またはウイルス性抗原が含まれる。真核性タンパク質、例えば細胞内タンパク質、「ハウスキーピング」タンパク質など、膜結合タンパク質、受容体など、サイトカインなどの内因性メディエーターのような分泌タンパク質もまた包含される。所望のポリペプチドは、CanIonタンパク質、特に配列番号5のアミノ酸配列のタンパク質、またはその断片もしくは変異体であってもよい。
【0137】
上述のポリヌクレオチドによってコードされる所望の核酸、通常RNA分子は、所望のコードポリヌクレオチド、例えばCanIonコード配列に相補的であり、したがってアンチセンスポリヌクレオチドとして有用である。
【0138】
宿主細胞または宿主生体において所望のポリペプチドまたは所望の核酸を発現させるために、かかるポリヌクレオチドは組換え発現ベクターに含まれることが可能である。本明細書に記述されるようなポリヌクレオチドを含有する適切な組換えベクターは、本明細書の他に開示される。
[ポリヌクレオチド構築物]
「ポリヌクレオチド構築物」および「組換えポリヌクレオチド」という用語は、人工的にデザインされ、かつそれらの最初の自然環境において隣接ヌクレオチド配列として見出されない少なくとも2つのヌクレオチド配列を含有する、直鎖または環状の、精製または単離ポリヌクレオチドを指すために本明細書において同義で用いられる。
[組換え細胞宿主において、およびトランスジェニック動物において時間的かつ空間的なCanIon遺伝子発現を検出することを可能にするDNA構築物]
CanIonタンパク質合成の欠失の生理学的結果および表現型の結果を研究するために、細胞レベルおよび多細胞生物レベルの両方で、本発明は、DNA構築物および組換えベクターもまた包含する。CanIonゲノム配列もしくはcDNAの特定の対立遺伝子の条件発現、および配列番号1〜4のCanIonヌクレオチド配列もしくはその断片に関して1つまたは複数の塩基の置換、欠失、または付加を有するこのゲノム配列もしくはcDNAのコピーの条件発現もまた可能にするDNA構築物および組換えベクターもまた包含し、これらの塩基置換、欠失または付加は、エクソン、イントロンまたは制御配列のいずれかに位置するが、好ましくは5’制御配列またはCanIonゲノム配列のエクソンにおいて、または配列番号4のCanIon cDNA内に位置する。好ましい実施形態では、CanIon配列は、本発明の2対立遺伝子マーカーを含む。好ましい実施形態では、CanIon配列は、本発明の2対立遺伝子マーカー、好ましくは2対立遺伝子マーカーA1〜A17の1つを含む。
【0139】
本発明は、本発明に記述されるポリヌクレオチドのいずれか1つを含む組換えベクターを具体化する。特に、本発明によるポリヌクレオチド構築物は、「CanIon遺伝子のゲノム配列」のセクション、「CanIon cDNA配列」のセクション、「コード領域」のセクション、および「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」のセクションに記述されるポリヌクレオチドのいずれかを含むことができる。
【0140】
好ましいDNA構築物は、Gossen 等 (1992, 1995)およびFurth 等 (1994)により記述されているようにCanIon遺伝子発現を制御する大腸菌トランスポゾンTn10からのテトラサイクリン耐性オペロンtetに基づく。かかるDNA構築物は、最小プロモーターまたはCanIon遺伝子の5’制御配列のいずれかに融合するTn10(tetオペロン)からの7つのtetオペレーター配列を含有し、前記最小プロモーターまたは前記CanIon制御配列は、センスもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはCanIonポリペプチドもしくはそのペプチド断片を含むポリペプチドをコードする対象のポリヌクレオチドに作動可能に連結する。同じ細胞が、HCMVIE1エンハンサー/プロモーターもしくはMMTV−LTRなどのプロモーターの制御下に置かれた、単純疱疹ウイルスのウイルス性タンパク質VP16の活性化ドメインに融合した野型(tTA)または突然変異体(rTA)リプレッサーをコードするヌクレオチド配列も含有する場合、対象のヌクレオチド配列に対する条件発現系としてこのDNA構築物は機能的である。実際に、本発明の好ましいDNA構築物は、オペレーター配列を含有するポリヌクレオチドと、tTAもしくはrTAリプレッサーをコードする配列を含有するポリヌクレオチドのどちらも含む。
【0141】
特定の実施形態において、条件発現DNA構築物は、突然変異体テトラサイクリンリプレッサーrTAをコードする配列を含有し、対象のポリヌクレオチドの発現はテトラサイクリンの非存在下では無変化であり、その存在下では誘導される。
[相同的組換え:置換ベクターを可能にするDNA構築物]
好ましい第2DNA構築物は、5’末端から3’末端に:(a)CanIonゲノム配列中に含まれる第1ヌクレオチド配列;(b)ネオマイシン耐性(neo)に対するマーカーなど、正の選択マーカーを含むヌクレオチド配列;(c)CanIonゲノム配列中に含まれる第2ヌクレオチド配列;を含み、第1CanIonヌクレオチド配列(a)の下流のゲノム上に位置する。
【0142】
好ましい実施形態において、このDNA構築物は、ヌクレオチド配列(a)の上流またはヌクレオチド配列(c)の下流に位置する負の選択マーカーもまた含む。その負の選択マーカーは、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子(Thomas 等, 1986)、ハイグロマイシンβ遺伝子(Te Riele 等, 1990)、hprt遺伝子(Van der Lugt 等, 1991; Reid 等, 1990)またはジフテリア毒素A断片(Dt−A)遺伝子を含むことが好ましい。正の選択マーカーは、CanIonタンパク質をコードする配列を中断するようにCanIonエクソン配列内に位置することが好ましい。これらの置換ベクターは、例えばThomas 等 (1986; 1987)、Mansour 等 (1988) およびKoller 等 (1992)によって記述されている。
【0143】
第1および第2ヌクレオチド配列(a)および(c)は、CanIon制御配列、イントロン配列、エクソン配列または制御および/またはイントロンおよび/またはエクソン配列のどちらも含有する配列内に無関係に位置することが可能である。ヌクレオチド配列(a)および(c)のサイズは、1〜50kb、好ましくは1〜10kb、さらに好ましくは2〜6kb、最も好ましくは2〜4kbの範囲である。
[相同的組換えを可能にするDNA構築物:Cre−LoxP系]
これらの新規なDNA構築物は、P1ファージの部位特異的組換え系を利用する。P1ファージは、34塩基対のloxP部位と特異的に相互作用する、Creと呼ばれるリコンビナーゼを有する。そのloxP部位は、8bp保存配列によって分離される13bpの2つのパリンドローム配列で構成される(Hoess 等, 1986)。同一の向きを有する2つのloxP部位間のCre酵素による組換えによって、DNA断片の欠失が生じる。
【0144】
相同的組換えと組み合わせて使用されるCre−loxP系はGu 等 (1993, 1994)によって最初に記述されている。簡単に言えば、ゲノムの標的位置に挿入される対象のヌクレオチド配列は、同じ向きに少なくとも2つのloxP部位を有し、組換えゲノムから切り出されるべきヌクレオチド配列のそれぞれの末端に位置する。切り出し事象には、組換え細胞宿主の核内にリコンビナーゼ(Cre)酵素が存在することが必要である。リコンビナーゼ酵素は、(a)組換え細胞宿主をこの酵素を含有する培地中でインキュベートすることによって、Araki 等 (1995)により記述されているように所望の細胞中にCre酵素を直接注入することによって、またはBaubonis 等 (1993)によって記述されているように、細胞中に酵素をリポフェクションすることによって;(b)組換え細胞宿主において機能的なプロモーターに作動可能に連結するCreコード配列を含むベクターを細胞宿主に移入することによって(プロモーターが任意に誘導性であり、前記ベクターがGu 等 (1993)およびSauer 等 (1988)によって記述されるように組換え細胞宿主に導入される);(c)組換え細胞宿主において機能的なプロモーターに作動可能に連結するCreコード配列を含むポリヌクレオチドを細胞宿主のゲノムに移入することによって(プロモーターが任意に誘導性であり、前記ポリヌクレオチドがGu 等 (1993)よって記述されるように、ランダムな挿入事象または相同的組換え事象によって細胞宿主のゲノムに挿入される);所望の時点で導くことが可能である。
【0145】
特定の実施形態において、相同的組換えによってCanIon遺伝子に挿入されるべき配列を含有するベクターは、選択可能なマーカーが同じ向きのloxP部位によってフランクされるように構成され、Cre酵素による処理によって、相同的組換え事象により挿入されている対象のCanIon配列を残すと同時に選択可能なマーカーを除去することが可能である。再度、2つの選択可能なマーカー:組換え事象を選択するための正の選択マーカーおよび相同的組換え事象を選択するための負の選択マーカーが必要とされる。Cre−loxP系を用いたベクターおよび方法は、Zou 等 (1994)によって記述されている。
【0146】
したがって、本発明の第3の好ましいDNA構築物は、5’末端から3’末端に:(a)CanIonゲノム配列に含まれる第1ヌクレオチド配列;(b)正の選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含むヌクレオチド配列であって、loxP部位などのリコンビナーゼによって認識される部位を定義する2つの配列をさらに含み、その2つの部位が同じ向きに配置されているヌクレオチド配列;(c)CanIonゲノム配列に含まれ、かつ第1CanIonヌクレオチド配列(a)の下流にあるゲノム上に位置する第2ヌクレオチド配列;を含む。
【0147】
loxP部位などのリコンビナーゼによって認識される部位を定義する配列は、条件切り出しが求められるヌクレオチド配列を有する適切な位置でヌクレオチド配列(b)内に位置することが好ましい。特定の一実施形態において、相同的組換え事象の出現後の所望の時点でその切り出しを可能にするために、2つのloxP部位は正の選択マーカー配列の各側に位置する。
【0148】
上術の第3DNA構築物を用いた方法の好ましい実施形態において、リコンビナーゼによって認識される2つの部位、好ましくは2つのloxP部位によって境を接するポリヌクレオチド断片の切り出しは、プロモーター配列、好ましくは誘導性プロモーター、さらに好ましくは組織特異的プロモーター配列、最も好ましくは、Gu 等 (1994)によって記述されているような誘導性かつ組織特異的であるプロモーター配列に作動可能に連結するCre酵素をコードする配列の組換え宿主細胞のゲノム内に存在するために、所望の時点で行われる。
【0149】
組換え細胞宿主のゲノム内でのCre酵素の存在は、2種類のトランスジェニック動物、上述のようにloxp部位を含有する対象のCanIon誘導配列を有する第1トランスジェニック動物およびGu 等 (1994)によって記述されているように、適切なプロモーター配列に作動可能に連結するCreコード配列を有する第2トランスジェニックの繁殖に起因する。
【0150】
従ってAntonおよびGraham (1995)および Kanegae 等 (1995)によって記述されているように、Cre酵素発現の空間時間的制御もまた、Cre遺伝子を含有するアデノウイルスをベースとするベクターで達成することが可能であり、Cre酵素を送達するための、細胞の感染または臓器のインビトロでの感染が可能となる。
【0151】
上述のDNA構築物を使用して、本発明の所望のヌクレオチド配列、好ましくはCanIonゲノム配列またはCanIon cDNA配列、最も好ましくはCanIonゲノム配列またはcDNA配列の変更されたコピーを、標的ゲノムの所定の位置に導入し、標的遺伝子の変更されたコピーが産生されるか(ノックアウトの相同的組換え)、または相同的組換え事象を起こすのに十分に相同性の他のコピーによって標的遺伝子のコピーが置換される(ノックインの相同的組換え)。特定の実施形態において、上述のDNA構築物を使用して、CanIonゲノム配列、または本発明の少なくとも1つの2対立遺伝子マーカー、好ましくはA1〜A17からなる群から選択される少なくとも1つの2対立遺伝子マーカーを含むCanIon cDNA配列を導入することが可能である。
[核のアンチセンスDNA構築物]
配列番号4の核配列のオリゴヌクレオチド断片、好ましくはCanIon遺伝子の開始コドンを含む断片を、対応するCanIon遺伝子の発現を抑制するアンチセンスツールとして含有する、本発明のベクターを含有する他の組成物。本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドを用いた好ましい方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sczakiel 等 (1995)により記述されている手順またはPCT出願番号:WO95/24223に記述されている手順である。
【0152】
アンチセンスツールは、CanIon mRNAの5’末端に相補的なポリヌクレオチド(長さ15〜200bp)の中で選択することが好ましい。一実施形態では、所望の標的遺伝子の異なる部分に相補的な異なるアンチセンスポリヌクレオチドの組み合わせが使用される。
【0153】
本発明による好ましいアンチセンスポリヌクレオチドは、翻訳開始コドンATGまたはスプライシング部位を含有するCanIonのmRNAの配列に相補的である。本発明によるさらに好ましいアンチセンスポリヌクレオチドは、CanIon mRNAのスプライシング部位に相補的である。
【0154】
好ましくは、Liu 等 (1994)に記述されるように、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、自己切断リボザイムと置換されている3’ポリアデニル化シグナルを有し、その結果RNAポリメラーゼII転写物はそれらの3’末端でポリ(A)なしに生成され、これらのアンチセンスポリヌクレオチドは核から移出することができない。好ましい実施形態において、これらのCanIonアンチセンスポリヌクレオチドはまた、Eckner 等 (1991)に記述される構造など、3’〜5’ヌクレオチド鎖分解性(exonucleolytic)の分解に対して切断された転写物を安定化するヒストンのステムループ構造をリボザイムカセット内に含有する。
[オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー]
CanIon遺伝子に由来するポリヌクレオチドは、試験サンプルにおける配列番号1〜4のヌクレオチド配列の少なくともコピー、またはその断片、補体、または変異体の存在を検出するのに有用である。
【0155】
本発明の特に好ましいプローブおよびプライマーには、配列番号1〜3の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、5000、10000または20000ヌクレオチドの隣接スパン、またはその補体を含有する単離、精製、または組換えポリヌクレオチドが含まれる。本発明のさらに好ましいプローブおよびプライマーには、前記隣接スパンがA1〜A17からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーを含む、単離、精製、または組換えポリヌクレオチドが含まれる。
【0156】
本発明の他の目的は、配列番号4のヌクレオチド配列、それに相補的な配列、ならびにその突然変異体および断片を含む精製、単離、または組換え核酸である。さらに、本発明の好ましいプローブおよびプライマーには、配列番号4の配列からなる、その配列から本質的になる、またはその配列を含む、精製、単離、または組換えCanIon cDNAが含まれる。本発明の特に好ましいプローブおよびプライマーには、配列番号4の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または6000ヌクレオチドの隣接スパン、またはその補体を含有する、単離、精製、または組換えヌクレオチドが含まれる。本発明のさらに好ましいプローブおよびプライマーには、配列番号4の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または6000ヌクレオチドの隣接スパン、またはその補体を含有する、単離、精製、または組換えヌクレオチドが含まれ、前記隣接スパンは、A12〜A16からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーを含む。
【0157】
更なる実施形態において、本発明のプローブおよびプライマーには、配列番号6の少なくとも2、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300または400ヌクレオチドの隣接スパン、またはその補体を含有する、単離、精製、または組換えヌクレオチドが含まれる。好ましい実施形態において、配列番号6の前記隣接スパンは2対立遺伝子マーカーA18を含む。
【0158】
このように、本発明は、上記で定義された厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、配列番号1〜3のヒトCanIonヌクレオチド配列、またはそれの変異体またはそれに相補的な配列からなる群から選択される核酸と、それらが特異的にハイブリダイズすることを特徴とする核酸プローブにも関する。
【0159】
一実施形態において、本発明は、配列番号1〜4および配列番号6のいずれか1つの8〜50ヌクレオチドの隣接スパン、およびその補体からなる、またはその隣接スパンから本質的になる、単離、精製、および組換えポリヌクレオチドを包含し、前記スパンは、前記配列においてCanIon関連2対立遺伝子マーカーを含み;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択される。任意に、前記隣接スパンは、長さ18〜35ヌクレオチドであり、前記2対立遺伝子マーカーは、前記ポリヌクレオチドの中心から4ヌクレオチド以内であり;任意に、前記ポリヌクレオチドは前記隣接スパンからなり、前記隣接スパンは長さ25ヌクレオチドであり、前記2対立遺伝子マーカーは前記ポリヌクレオチドの中心にあり;任意に、前記隣接スパンの3’末端は、前記ポリヌクレオチドの3’末端に存在し;任意に、前記隣接スパンの3’末端は、前記ポリヌクレオチドの3’末端に位置し、前記前記2対立遺伝子マーカーは、前記ポリヌクレオチドの3’末端に存在する。好ましい実施形態において、前記プローブは、以下の配列:P1〜P18から選択される配列およびそれに相補的な配列を含む、からなる、またはから本質的になる。
【0160】
他の実施形態において、本発明は、配列番号1〜4の8〜50ヌクレオチドの隣接スパン、またはその補体を含む、からなる、またはから本質的になる、単離、精製および組換えポリヌクレオチドを包含し、前記隣接スパンの3’末端は、前記ポリヌクレオチドの3’末端に位置し、かつ前記ポリヌクレオチドの3’末端は、前記配列においてCanIon関連2対立遺伝子マーカーの上流にある20ヌクレオチド内に位置し;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記ポリヌクレオチドの3’末端は、前記配列において前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーの上流にある1ヌクレオチドに位置し;任意に、前記ポリヌクレオチドは、以下の配列:D1〜D18およびE1〜E18から選択される配列から本質的になる。
【0161】
更なる実施形態において、本発明は、以下の配列:B1〜B17およびC1〜C17から選択される配列を含む、からなる、またはから本質的になる、単離、精製、または組換えポリヌクレオチドを包含する。
【0162】
追加の実施形態では、本発明は、配列番号1〜4および配列番号6におけるCanIon関連2対立遺伝子マーカー、またはその補体でのヌクレオチドの同一性を決定するために、ハイブリダイゼーションアッセイ、シークエンシングアッセイ、酵素ベースのミスマッチ検出アッセイに使用されるポリヌクレオチド、ならびに配列番号1〜4および配列番号6におけるCanIon関連2対立遺伝子マーカー、またはその補体を含むヌクレオチドのセグメントを増幅するのに使用されるポリヌクレオチドを包含し;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択される。
【0163】
本発明は、CanIon関連2対立遺伝子マーカーでヌクレオチドの同一性を決定するための、好ましくはハイブリダイゼーションアッセイ、シークエンシングアッセイ、マイクロシークエンシングアッセイ、または酵素ベースのミスマッチ検出アッセイにおける、およびCanIon関連2対立遺伝子マーカーを含むヌクレオチドセグメントの増幅における、本発明によるポリヌクレオチドの使用に関する。
【0164】
本発明によるプローブまたはプライマーは、8〜1000ヌクレオチドの長さを有するか、または少なくとも12、15、18、20、25、35、40、50、60、70、80、100、250、500もしくは1000ヌクレオチドの長さであると指定される。さらに詳細には、これらのプローブおよびプライマーの長さは、8、10、15、20、または30〜100ヌクレオチド、好ましくは10〜50、さらに好ましくは15〜30ヌクレオチドの範囲である。より短いプローブおよびプライマーは、標的の核酸配列に対する特異性を欠く傾向があり、一般に、鋳型との十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためには、より低い温度が必要とされる。より長いプローブおよびプライマーは、作製するのにコストが高くつき、時として自己(self)ハイブリダイズして、ヘアピン構造を形成し得る。特定のセットのアッセイ条件下でのプライマーおよびプローブの適切な長さは、当業者によって経験的に決定される。好ましいプローブまたはプライマーは、P1〜P18、それに相補的な配列、B1〜B17、C1〜C17、D1〜C18、E1〜E18のヌクレオチド配列の群から選択されるポリヌクレオチドを含む核酸からなり、配列表におけるそれぞれの位置を表1、2、および3に示す。
【0165】
安定なハイブリッドの形成は、DNAの融解温度(Tm)に依存する。Tmは、プライマーもしくはプローブの長さ、溶液のイオン強度およびG+C含有率に応じて異なる。プライマーまたはプローブのG+C含有率が高いほど、融解温度は高くなる。G:C対は3つのH結合によって保持されるが、A:T対は2つのみ有するためである。本発明のプローブ中のGC含有率は通常、10〜75%、好ましくは35〜60%、さらに好ましくは40〜55%の範囲である。
【0166】
プライマーおよびプローブは、例えば適切な配列のクローニングおよび制限およびNarang 等 (1979)のリン酸ジエステル法、Beaucage 等 (1981)のジエチルホスホラミダイト法およびEP 0 707 592に記載の固体支持体法などの方法による直接的な化学合成を含む適切な方法によって作製することができる。
【0167】
検出用プローブは一般に、核酸配列または無電荷核酸類似体、例えば国際特許出願番号WO92/20702に開示のペプチド核酸、米国特許第5,185,444号;同第5,034,506号および同第5,142,047号に記載のモルホリノ類似体である。プローブは、追加のdNTPをプローブに添加することができないという点で「伸長不可能」にしなければならない。それら自体において、およびそれら自体の中で、類似体は通常、伸長不可能であり、ヒドロキシル基がもはや伸長に関与することができないように、プローブの3’末端を修飾することによって核酸プローブを伸長不可能にすることができる。例えば、プローブの3’末端を捕獲もしくは検出標識で官能性を付与して、それによってヒドロキシル基を消費するか、またはそうでなければヒドロキシル基をブロックすることができる。代替方法としては、3’ヒドロキシル基を単に、切断、置換または修正することが可能であり、1993年4月19日出願の米国特許出願第07/049,061号には、プローブを伸長不可能にするために用いることができる修正形態が記述されている。
【0168】
本発明のポリヌクレオチドのいずれも、所望の場合には、分光学的、光化学的、生物化学的、免疫化学的、もしくは化学的手段によって検出可能なことが当技術分野で知られているいずれかの標識を組み込むことによって標識化することができる。例えば、有用な標識には、放射性物質(32P、35S、3H、125Iを含む)、蛍光染料(5−ブロモデスオキシウリジン、フルオレセイン、アセチルアミノフルオレン、ジゴキシゲニン)またはビオチンが含まれる。ポリヌクレオチドはそれらの3’および5’末端で標識化されることが好ましい。核酸断片の非放射性標識化の例が、フランス特許番号FR−7810975に、またはUrdea 等 (1988)もしくはSanchez-Pescador 等 (1988)によって記述されている。さらに、本発明によるプローブは、それらがシグナル増幅を可能にするような構造特性を有する場合があり、かかる構造特性は、例えばUrdea 等 (1991)によって記述されている、または欧州特許番号EP 0 225 807(Chiron)に記載のような分岐DNAプローブである。
【0169】
修飾DNAなどのプライマーまたはプライマー伸長産物のいずれかの固体支持体上への固定化を促進するために、標識を使用して、プライマーを捕獲することもできる。捕獲標識は、プライマーおよびプローブに取り付けられ、固相の試薬の特異的結合メンバー(例えば、ビオチンおよびストレプトアビジン)と結合対を形成する特異的結合メンバーであることが可能である。したがって、ポリヌクレオチドまたはプローブによって保有される標識の種類に応じて、捕獲するため、または標識DNAを検出するために、それを用いることができる。さらに、本明細書において提供されるポリヌクレオチド、プライマーまたはプローブはそれ自体が捕獲標識としての役割を果たすことを理解されよう。例えば、固相試薬の結合メンバーが核酸配列である場合には、プライマーもしくはプローブの相補的な部分を結合させて、それによってプライマーもしくはプローブが固相に固定化されるように、それが選択される。ポリヌクレオチドプローブ自体が結合メンバーとしての役割を果たす場合には、プローブが、標識に相補的でない配列または「テール(tail)」を含有するであろうことは当業者であれば認識されよう。ポリヌクレオチドプライマー自体が捕獲標識としての役割を果たす場合には、プライマーの少なくとも一部は、固相上で核酸と自由にハイブリダイズするだろう。DNA標識技術は当業者にはよく知られている。
【0170】
本発明のプローブは、多数の目的に有用である。それらは特に、ゲノムDNAとのサザンハイブリダイゼーションに使用することができる。プローブを使用して、PCR増幅産物を検出することもできる。他の技術を用いて、CanIon遺伝子またはmRNAにおけるミスマッチを検出するためにそれらを使用することもできる。例えば、ノーザンブロットにおいてCanIon遺伝子の発現を検出するために、それらを使用することもできる。
【0171】
本発明のポリヌクレオチド、プライマーおよびプローブのいずれも、固体支持体上に便利に固定化することができる。固体支持体は当業者には公知であり、反応トレイのウェルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、ニトロセルロース片、膜、ラテックス粒子などの微粒子、ヒツジ(または他の動物)の赤血球、duracytesなどが含まれる。固体支持体は重要ではなく、当業者によって選択することができる。このように、ラテックス粒子、微粒子、磁気もしくは非磁気ビーズ、膜、プラスチックチューブ、マイクロタイターウェルの壁、ガラスもしくはシリコンチップ、ヒツジ(または他の適切な動物)の赤血球およびduracytesはすべて適切な例である。固相上に核酸を固定化する適切な方法には、イオン性、疎水性、共有結合性相互作用等が含まれる。本明細書において使用されるような固体支持体は、不溶性のいずれかの材料を指すか、またはその後の反応によって不溶性にすることができる。固体支持体は、捕獲試薬を引き付け、固定化するその固有の能力に対して選択することができる。代わりに、固相は、捕獲試薬を引き付け、固定化する能力を有する追加の受容体を保持することができる。その追加の受容体は、捕獲試薬自体に対して、または捕獲試薬に結合した荷電物質に対して逆に帯電した荷電物質を含むことができる。さらに他の代替として、受容体分子は、固体支持体上に固定化され(付着され)、かつ特異的結合反応によって捕獲試薬を固定化する能力を有する特異的結合メンバーであり得る。受容体分子によって、アッセイを実施する前またはアッセイの実施中に、固体支持体材料の捕獲試薬を間接的に結合させることが可能となる。このように、固相は、プラスチック、誘導体化プラスチック、磁気もしくは非磁気金属、試験管、マイクロタイターウェルのガラスもしくはシリコン表面、ビーズ、微粒子、チップ、ヒツジ(または他の適切な動物)の赤血球およびduracytes(登録商標)および当業者に公知の他の構造である。本発明のポリヌクレオチドは、個々に、あるいは単一固体支持体に対して少なくとも2、5、8、10、12、15、20、または25個の本発明の別個のポリヌクレオチドのグループで、固体支持体に付けるかまたは固体支持体上に固定化することができる。さらに、本発明のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドを、本発明の1つまたは複数のポリヌクレオチドと同じ固体支持体に付けることができる。
【0172】
結果として、本発明は、サンプルにおける配列番号1〜4および配列番号6からなる群から選択されるヌクレオチド配列、その断片または変異体およびそれに相補的な配列を含む、核酸の存在を検出する方法もまた含み、前記方法は、以下の段階:
a)配列番号1〜4および配列番号6のヌクレオチド配列、その断片または変異体およびそれに相補的な配列からなる群から選択される核酸中に含まれるヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる1つの核酸プローブまたは複数の核酸プローブと、アッセイするサンプルとを接触させる段階;
b)サンプルにおいてプローブと核酸との間で形成されるハイブリッド複合体を検出する段階;を含む。
【0173】
本発明はさらに、サンプルにおける配列番号1〜4および配列番号6からなる群から選択されるヌクレオチド配列、その断片または変異体およびそれに相補的な配列を含む核酸の存在を検出するためのキットに関し、前記キットは:
a)配列番号1〜4および配列番号6のヌクレオチド配列、その断片または変異体およびそれに相補的な配列からなる群から選択される核酸中に含まれるヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる1種類の核酸プローブまたは複数の核酸プローブ;
b)任意に、ハイブリダイゼーション反応を実施するために必要な試薬;を備える。
【0174】
この検出方法およびキットの第1の好ましい実施形態において、前記核酸プローブまたは複数種の核酸プローブは検出可能な分子で標識化される。前記方法およびキットの第2の好ましい実施形態では、前記核酸プローブまたは複数の核酸プローブは基体上に固定化されている。第3の好ましい実施形態では、核酸プローブまたは複数の核酸プローブは、P1〜P18のヌクレオチド配列、それに相補的な配列、B1〜B17、C1〜C17、D1〜D18、E1〜E18からなる群から選択される配列、またはA1〜A18およびそれに相補的な配列からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーのいずれかを含む。
[オリゴヌクレオチドアレイ]
本発明の複数のオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを含む基体は、CanIon遺伝子における標的配列を検出または増幅するのに使用することが可能であり、CanIon遺伝子のコード配列もしくは非コード配列における変異を検出するのにもまた使用することができる。
【0175】
本明細書で提供される任意のポリヌクレオチドは、固体支持体上の重なり領域に、またはランダムな位置に付着することが可能である。代替方法として、本発明のポリヌクレオチドは、他のいずれかのポリヌクレオチドの付着部位と重ならない固体支持体の別の領域に各ポリヌクレオチドが付着される、順序付きアレイ中に付着させることが可能である。かかるポリヌクレオチドの順序付きアレイは、「アドレス指定可能」であるように設計されて、異なる位置が記録され、アッセイ手順の一部としてアクセスすることができることが好ましい。アドレス指定可能なポリヌクレオチドアレイは通常、異なる公知の位置で基体表面に結合する複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む。各ポリヌクレオチドの正確な位置の情報によって、これらは、ハイブリダイゼーションアッセイに特に有用な「アドレス指定可能な」アレイとなる。当技術分野で公知のいずれかのアドレス指定可能なアレイ技術を、本発明のポリヌクレオチドと共に用いることができる。これらのポリヌクレオチドアレイのある特定の実施形態は、Genechips(商標)として知られており、一般に米国特許第,143,854号;PCT公開番号WO90/15070および92/10092に記述されている。これらのアレイは一般に、機械的合成方法またはフォトリソグラフィ法と固相オリゴヌクレオチド合成との組み合わせを組み込んだ光直接的(light-directed)合成方法を用いて製造される(Fodor 等, 1991)。固体支持体上へのオリゴヌクレオチドアレイの固定化は、「非常に大きなスケールの固定化ポリマー合成」(VLSIPS(商標))と特定される技術の開発によって可能となっている。その技術では、通常、高密度アレイにおいてプローブをチップの固体表面上に固定化する。VLSIPS(商標)技術の例は、米国特許第5,143,854号;同第5,412,087号およびPCT公開番号WO90/15070、WO92/10092、WO95/11995に挙げられており、光直接的合成技術などの技術によってオリゴヌクレオチドアレイを形成する方法が記述されている。固体支持体上に固定化されたヌクレオチドのアレイの提供を目的とする方策の設計では、ハイブリダイゼーションパターンおよび配列情報を最大限にする試みで、チップ上にオリゴヌクレオチドアレイを配列し表示するために、更なる提示方策が開発された。かかる提示方策の例は、それらの開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開番号WO94/12305、WO94/11530、WO97/29212およびWO97/31256に開示されている。
【0176】
本発明のオリゴヌクレオチドアレイの他の実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブのマトリックスを有利に使用して、CanIon遺伝子において、好ましくはその調節領域で起こる変異を検出することができる。この特定の目的のために、公知の変異(1つまたはいくつかのヌクレオチドの欠失、挿入または置換による)を保有する遺伝子とのそれらのハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を有するように、プローブが特異的に設計される。公知の変異というのは、例えば、Huang 等 (1996)またはSamson 等 (1996)により使用されている技術に従って同定されたCanIon遺伝子上の変異を意味する。
【0177】
CanIon遺伝子における変異を検出するのに使用される他の技術は、高密度DNAアレイの使用である。高密度DNAアレイの単位要素を構成する各オリゴヌクレオチドプローブは、CanIonゲノムDNAまたはcDNAの特定の配列にマッチするように設計される。このように、標的の遺伝子配列のサブ配列に相補的なオリゴヌクレオチドからなるアレイを使用して、標的配列と野生型遺伝子との同一性を決定し、その量を測定し、標的配列とCanIon遺伝子の参照野生型配列との間の差異を検出する。かかる設計において、4Lタイルアレイと呼ばれる、4つのプローブのセット(A、C、G、T)、好ましくは15ヌクレオチドオリゴマーが実行される。4つのプローブの各セットにおいて、完全な補体は、ミスマッチのプローブよりも強くハイブリダイズするだろう。結果として、4Lプローブを含有するタイルアレイ、公知の野生型参照配列において可能性のあるすべての変異を含有するプローブセット全部を用いて、長さLの核酸標的を変異についてスキャンする。15merプローブセットのタイルアレイのハイブリダイゼーションシグナルは、標的配列における一塩基変化によって乱される。結果として、変異位置をフランキングするプローブに対して、シグナルの特有の減少または「フットプリント」が存在する。この技術はChee 等 (1996)によって記述されている。
【0178】
結果的に、プローブおよびプライマーとして上述の少なくとも1種類のポリヌクレオチドを含む核酸分子のアレイに関係する。好ましくは、本発明は、プローブおよびプライマーとして上述の少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含む核酸のアレイに関する。
【0179】
本発明の更なる目的は、P1〜P18、B1〜B17、C1〜C17、D1〜D18、E1〜E18、それに相補的な配列、その少なくとも8、10、12、15、18、20、25、30、もしくは40連続ヌクレオチドのその断片からなる群から選択される配列の少なくとも1つ、およびA1〜A18からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーおよびそれに対する補体を含む少なくとも1つの配列を含む、核酸配列のアレイからなる。
【0180】
本発明は、P1〜P18、B1〜B17、C1〜C17、D1〜D18、E1〜E18、それに相補的な配列、その少なくとも8連続ヌクレオチドのその断片からなる群から選択される配列の少なくとも2つ;およびA1〜A18からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーおよびそれの補体を含む少なくとも2つの配列を含む、核酸配列のアレイに関係する。
[CanIonタンパク質およびポリペプチド断片:]
「CanIonポリペプチド」という用語は、本発明のタンパク質およびポリペプチドのすべてを包含するために本明細書において用いられる。本発明のポリペプチド、ならびにかかるポリペプチドを含む融合ポリペプチドによってコードされるポリペプチドもまた、本発明の一部を形成する。本発明は、配列番号5の配列からなる、から本質的になる、またはその配列を含む、単離または精製されたCanIonタンパク質を含む、ヒトからのCanIonタンパク質を具体化する。
【0181】
本発明は、配列番号1〜4および配列番号からなる群から選択されるヌクレオチド配列、それに相補的な配列またはその断片から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに関する。本発明は、配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは、少なくとも12、15、20、25、30、40、50、100、150、200、300、400、500、700、1000、1200、1400、1600または1700個のアミノ酸の隣接スパンを含む、単離、精製、および組換えポリペプチドを具体化する。他の好ましい実施形態において、アミノ酸の隣接配列は、CanIonタンパク質配列におけるアミノ酸の欠失、付加、交換または切断を含む、変異または機能上の変異の部位を含む。
【0182】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは、少なくとも12、15、20、25、30、40、50、100、150、200、300、400、500、700、1000、1200、1400、1600または1700個のアミノ酸の隣接スパンを含有する、単離、精製、および組換えポリペプチドを具体化し、前記隣接スパンは、配列番号5のアミノ酸位置277、338、574、678、680、683、691、692、695、696、697、894、1480、1481、1483、1484、1485、1630、1631、1632、1636、1660、1667、1707、1709の少なくとも1、2、3、5または10を含む。配列番号5の前記隣接スパンは、位置277にアラニン残基;位置338にセリン;位置574にバリン;位置678にロイシン;位置680にセリン;位置683にトレオニン;位置691にヒスチジン;位置692にセリン;位置695にセリン;位置696にアラニン;位置697にイソロイシン;位置894にイソロイシン;位置1480にリジン;位置1481にアルギニン;位置1483にグリシン;位置1484にバリン;位置1485にイソロイシン;位置1630にアスパラギン;位置1631にセリン;位置1632にメチオニン;位置1636にトレオニン;位置1660にアラニン;位置1667にフェニルアラニン;位置1707にトレオニン;および/または1709位置にアラニンを含むことが好ましい。
【0183】
本発明は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70、75、80、85、90、95、98または99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列またはその断片を含む、精製、単離または組換えポリペプチドもまた包含する。
【0184】
CanIonタンパク質は、ヒトまたは哺乳類の組織サンプルから単離されるか、あるいはヒトまたは哺乳類の遺伝子から発現することが好ましい。本発明のCanIonポリペプチドは、当技術分野で公知の通常の発現方法を用いて作製することができる。所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、いずれかの簡便な宿主に適した発現ベクター中にライゲートする。真核性および原核性両方の宿主系を組換えポリペプチドの形成に使用する。より一般的な系のいくつかの概要。次いで、溶解された細胞または培地から、そのポリペプチドを単離し、意図する用途に必要な程度まで精製する。精製は、当技術分野で公知のいずれかの技術、例えば選択的抽出、塩析分画、クロマトグラフィー、遠心分離等による。例えば、Methods in Enzymology for a variety of methods for purifying Proteins(「タンパク質を精製する様々な方法のための酵素学における方法」)を参照のこと。
【0185】
さらに、短いタンパク質断片は、化学合成によって生成される。代替方法としては、本発明のタンパク質は、ヒトまたは非ヒトの動物の細胞または組織から抽出される。タンパク質を精製する方法は当技術分野で公知であり、粒子を破壊するための洗剤またはカオトロピック剤の使用、続いてイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーによるポリペプチドの選択的抽出および分離、密度による沈降、およびゲル電気泳動を含む。
【0186】
配列番号4を含むいずれかのCanIon cDNAを使用して、CanIonタンパク質およびポリペプチドを発現させることができる。発現するはずのCanIonタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸は、従来のクローニング技術を用いて発現ベクターにおいてプロモーターに作動可能に連結する。発現ベクターにおけるCanIonインサートは、CanIonタンパク質の完全なコード配列またはその一部を含む。
【0187】
発現ベクターは、当技術分野で知られている哺乳類、酵母、昆虫または細菌の発現系のいずれかである。市販のベクターおよび発現系は、Genetics Institute社(マサチューセッツ州ケンブリッジ)、Stratagene社(カリフォルニア州ラ・ホーヤ)、Promega社(ウィスコンシン州マディソン)、およびInvitrogen社(カリフォルニア州サンディエゴ)を含む、様々な供給元から入手可能である。所望の場合には、発現を高め、適切なタンパク質を促進するために、その開示内容全体が本明細書に組み込まれる、Hatfield, 等による米国特許第5,082,767号に説明されているように、配列のコドンコンテクストおよびコドン対を、発現ベクターが導入される特定の発現生物体に対して最適化する。
【0188】
一実施形態において、cDNAのポリAシグナルによるCanIon cDNAのコード配列全体は、発現ベクターにおけるプロモーターに作動可能に連結する。一方、CanIonタンパク質の一部をコードする核酸が開始部位として働くためのメチオニンを欠く場合、従来の技術を用いて、核酸の最初のコドンに隣接して開始メチオニンを導入することができる。同様に、CanIon cDNAからのインサートがポリAシグナルを欠く、例えばBglIおよびSalI制限エンドヌクレアーゼ酵素を用いてpSG5(Stratagene社)からポリAシグナルをスプライスし、哺乳類の発現ベクターpXT1(Stratagene社)にそれを組み込むことによって、この配列を構築物に付加することができる。pXT1は、LTRおよびモロニーマウス白血病ウイルスからのgag遺伝子の一部を含有する。構築物中のLTRのその位置は、効率的な安定なトランスフェクションを可能にする。そのベクターは、単純疱疹チミジンキナーゼプロモーターおよび選択可能なネオマイシン遺伝子を含む。CanIonタンパク質またはその一部をコードする核酸は、CanIoncDNAもしくはその一部に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、配列番号5のCanIon cDNAを含有する細菌ベクターからPCRによって得られ、5’プライマーに組み込まれたPst Iおよび対応するcDNA3’プライマーの5’末端のBglIIに対して制限エンドヌクレアーゼ配列を含有し、CanIonタンパク質またはその一部をコードする配列が確実にポリAシグナルに対して適切に位置するように注意を払う。その結果得られたPCR反応物から得られる精製された断片をPstIで消化し、エキソヌクレアーゼで平滑末端化し、BglIIで消化し、精製し、ここでポリAシグナルを含有するpXT1にライゲートし、BglIIで消化する。
【0189】
ライゲートされた生成物を、製品の仕様書に記載の条件下でリポフェクチン(Life Technologies社、ニューヨーク州グランドアイランド)を用いて、マウスNIH3T3細胞に移入する。正のトランスフェクタントが、移入された細胞をG418(Sigma社、ミズーリ州セントルイス)600ug/ml中で成長させた後に選択される。
【0190】
上記の手順を用いて、検出可能な表現型の要因である変異体CanIonタンパク質またはその一部を発現させることができる。
【0191】
硫酸アンモニウム沈殿またはサイズもしくは電荷に基づくクロマトグラフィー分離など、従来の精製技術を用いて、発現したタンパク質を精製することが可能である。核酸インサートによってコードされるタンパク質もまた、標準免疫クロマトグラフィー技術を用いて精製することが可能である。かかる手順において、細胞抽出物など、発現したCanIonタンパク質またはその一部を含有する溶液を、CanIonタンパク質またはその一部に対する抗体を有するカラムに適用し、クロマトグラフィーマトリックスに付着させる。発現したタンパク質を免疫クロマトグラフィーカラムに結合させる。その後、そのカラムを洗浄して、非特異的に結合したタンパク質を除去する。次いで、特異的に結合した発現タンパク質をカラムから放出し、標準技術を用いて回収する。
【0192】
CanIonタンパク質またはその一部の発現を確認するために、CanIonタンパク質またはその一部をコードするインサートを含有する発現ベクターを含有する宿主細胞から発現したタンパク質を、インサートを含まない発現ベクターを含有する宿主細胞で発現したタンパク質と比較することができる。インサートを含まない発現ベクターを含有する細胞からのサンプルに存在しない、インサートを有する発現ベクターを含有する細胞からのサンプルにおけるバンドの存在は、CanIonタンパク質またはその一部が発現していることを示している。一般に、バンドは、CanIonタンパク質またはその一部に対して考えられる移動性を有するだろう。しかしながら、バンドは、グリコシル化、ユビキチン結合、または酵素切断などの修飾の結果として考えられる移動性と異なる移動性を有する場合がある。
【0193】
発現したCanIonタンパク質またはその一部を特異的に認識することができる抗体を以下に説明する。
【0194】
抗体作製が不可能な場合には、CanIonタンパク質またはその一部をコードする核酸を、キメラポリペプチドを用いた精製スキームで使用するために設計された発現ベクターに組み込む。かかる方策において、CanIonタンパク質またはその一部をコードする核酸は、キメラのもう半分をコードする遺伝子を有するフレームに挿入される。キメラのもう半分は、β−グロブリンまたはニッケル結合ポリペプチドコード配列である。次いで、β−グロブリンに対する抗体またはそれに付着するニッケルを有するクロマトグラフィーマトリックスを使用して、キメラタンパク質を精製する。プロテアーゼ切断部位は、β−グロブリンまたはニッケル結合ポリペプチドとCanIonタンパク質またはその一部との間で操作される。したがって、キメラの2種類のポリペプチドは、プロテアーゼ消化によって互いに分離される。
【0195】
β−グロブリンキメラタンパク質を産生する有用な発現ベクターは、ウサギβ−グロブリンをコードするpSG5(Stratagene社)である。ウサギβ−グロブリン遺伝子のイントロンIIは、発現した転写物のスプライシングを促進し、構築物に組み込まれたポリアデニル化シグナルは発現のレベルを高める。これらの技術は、分子生物学の当業者には良く知られている。標準法は、Davis 等 (1986)などの方法テキストに公開されており、その方法の多くをStratagene社、Life Technologies社、またはPromega社から入手することができる。さらにポリペプチドは、In vitro Express(商標)Translationキット(Stratagene社)などのインビトロの翻訳システムを用いて構築物から生成することが可能である。
〈本発明のCanIonポリペプチドに結合する抗体〉
いずれかのCanIonポリペプチドまたは全タンパク質を使用して、記述される発現したCanIonタンパク質またはその断片に特異的に結合することができる抗体を産生することが可能である。
【0196】
本発明の抗体組成物は、配列番号5のCanIonタンパク質の変異体に特異的または選択的に結合することができる。CanIonの第1変異体に特異的に結合する抗体組成物に関しては、それは、ELISA、RIA、または他の抗体に基づく結合アッセイにおいて、CanIonタンパク質の全長第2変異体に対してよりもCanIonタンパク質の全長第1変異体に対する結合親和性のほうが少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、または100%高いことを示さなければならない。好ましい実施形態において、抗体組成物は、ヒトCanIonタンパク質に特異的に結合することができる。
【0197】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも2、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500、700または1000個のアミノ酸の隣接スパンを含む、エピトープ含有ポリペプチドに選択的に結合することができる、または選択的に結合するポリクローナルまたはモノクローナルの抗体組成物に関する。好ましい実施形態において、前記スパンは、配列番号5のアミノ酸位置の77、338、574、678、680、683、691、692、695、696、697、894、1480、1481、1483、1484、1485、1630、1631、1632、1636、1660、1667、1707、1709の少なくとも1、2、3、5または10を含む。
【0198】
いずれかのCanIonポリペプチドまたは全タンパク質を使用して、記述される発現したCanIonタンパク質またはその断片に特異的に結合することができる抗体を産生することが可能である。
【0199】
エピトープは、エピトープに固有の空間構造に3個と少ないアミノ酸を含む。一般に、エピトープは、少なくとも6個のかかるアミノ酸、およびさらに多くの場合少なくとも8〜10個のかかるアミノ酸からなる。好ましい実施形態において、抗原エピトープは、3〜50個の任意の整数である多数のアミノ酸を含有する。エピトープとして機能する断片を従来のいずれかの手段によって作製することが可能である。ジェームソン−ウルフの抗原分析によって決定することが可能であり、例えばデフォルトパラメーターを用いたコンピュータープログラムPROTEANを使用して実施することができる(Windows4.0、DNASTAR社、ウィスコンシン州マディソン、1228 South Park)。
【0200】
本発明は、変異したCanIonタンパク質に、または変異したCanIonタンパク質のエピトープを含むその断片もしくは変異体に特異的に結合することができる、精製または単離された抗体にもまた関する。他の好ましい実施形態では、本発明は、CanIonタンパク質の少なくとも10個の連続したアミノ酸を含み、変異を生じる形質によってコードされ得るアミノ酸の少なくとも1つを含むポリペプチドに結合することができる抗体に関する。
【0201】
野生型またはトランスジェニックであろうとなかろうと、それへの抗体結合が望まれる種と異なるCanIonの種を発現する非ヒト動物または哺乳類、およびCanIonを発現しない動物(つまり、本明細書で記述されるCanIonノックアウト動物)が、抗体を作製するのに特に有用である。CanIonノックアウト動物は、外来抗原としてCanIonタンパク質の露出領域のすべてまたは大部分を認識し、したがって、CanIonエピトープのより野生のアレイで抗体を産生するだろう。さらに、アミノ酸を10〜30個のみ有する小さなポリペプチドが、CanIonタンパク質のいずれか1つへの特異的な結合を得るのに有用である。さらに、抗原配列に類似しているCanIonの種を産生する動物の液性免疫系は、動物の天然CanIon種と抗原配列との差異を選択的に認識し、抗原配列におけるこれらの固有の部位に対する抗体を産生するだろう。かかる技術は特に、CanIonタンパク質のいずれか1つに特異的に結合する抗体を得るのに有用であるだろう。
【0202】
いずれかのプロトコルに従って作製した抗体標本は、生体サンプル中の抗原を有する物質の濃度を決定する定量的イムノアッセイで有用である;それらはまた、生体サンプル中の抗原の存在を同定するために半定量的または定量的に使用される。その抗体は、タンパク質を発現する細胞を殺すため、または体内のタンパク質のレベルを低減するために、治療用組成物においてもまた使用することができる。
【0203】
本発明の抗体は、当技術分野で公知の放射性、蛍光性、または酵素標識のいずれか1つによって標識化することが可能である。
【0204】
結果として、本発明は、生体サンプル中の本発明によるCanIonポリペプチドの存在を特異的に検出する方法にもまた関するものであり;前記方法は以下の段階:
a)配列番号5のアミノ酸配列を含有するCanIonポリペプチドに、またはそのペプチド断片もしくは変異体に特異的に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体と生体サンプルとを接触させる段階;
b)形成された抗原−抗体複合体を検出する段階;を含む。
【0205】
本発明はまた、生体サンプル中の本発明によるCanIonポリペプチドの存在をインビトロで検出する診断用キットに関し;前記キットは:
a)配列番号5のアミノ酸配列を含有するCanIonポリペプチドに、またはそのペプチド断片もしくは変異体に特異的に結合する、任意に標識化されるポリクローナルまたはモノクローナル抗体;
b)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬であって、任意に標識を保有するか、または特に上記のモノクローナルまたはポリクローナル抗体が単独で標識化されていない場合に、標識試薬によってそれ自体を認識することができる試薬;を備える。
【0206】
したがって、本発明は、ポリペプチドに特異的に結合する、さらに詳細には、制限されないがIgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、IgA(IgA1およびIgAを含む)、IgD、IgE、またはIgM、およびIgYを含む、本発明のポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体およびT細胞抗原受容体(TCR)に関する。好ましい実施形態において、抗体は、制限されないが本発明のヒト抗原結合抗体断片であり、制限されないが、Fab、Fab’F(ab)2およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)およびVLもしくはVHドメインのいずれかを含有する断片が含まれる。その抗体は、鳥類および哺乳類を含むいずれかの動物の起源に由来する。抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ヒツジ、モルモット、ウマまたはトリであることが好ましい。
【0207】
単鎖抗体を含む、抗原結合抗体断片は単独で、または以下の:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの全体または一部との組み合わせで、可変領域(1つまたは複数)を含む。可変領域(1つまたは複数)とヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインのいずれかの組み合わせもまた、本発明に含まれる。本発明はさらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合する、キメラ、ヒト化、およびヒトモノクローナルおよびポリクローナル抗体を含む。本発明はさらに、本発明の抗体に抗イディオタイプである抗体を含む。
【0208】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性であるか、またはより大きな多特異性を有することが可能である。多特異性抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、または本発明のポリペプチドの両方に対して、ならびに異種組成物、例えば異種ポリペプチドまたは固体支持体材料に特異的である。WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tutt等 (1991) J. Immunol. 147:60-69;米国特許第5,573,920号、同第4,474,893号、同第5,601,819号、同第4,714,681号、同第4,925,648号;Kostelny等 (1992) J. Immunol. 148:1547-1553を参照のこと。
【0209】
本発明の抗体は、抗体によって認識または特異的に結合される、本発明のポリペプチドのエピトープ(1つまたは複数)またはエピトープを有する部分(1つまたは複数)の面から説明または指定される。本発明のタンパク質の場合には、分泌タンパク質、抗体が、本発明の核酸によってコードされる完全長タンパク質、本発明の核酸によってコードされる成熟タンパク質(つまり、シグナルペプチドの切断によって生成されるタンパク質)、本発明の核酸によってコードされるシグナルペプチド、または本発明の他のいずれかのポリペプチドに特異的に結合する。したがって、エピトープ(1つまたは複数)またはエピトープを有するポリペプチド部分(1つまたは複数)は、本明細書で記述されるように、例えばN末端およびC末端位置によって、隣接アミノ酸残基におけるサイズによって指定されるか、または別の方法で本明細書において説明される(配列表を含む)。本発明のいずれかのエピトープまたはポリペプチドに特異的に結合する抗体はまた、個々の種としては除外される。したがって、本発明は、本発明の指定のポリペプチドに特異的に結合する抗体を含み、それの除外を考慮に入れる。
【0210】
本発明の抗体は、それらの交差反応性の面からも説明または指定される。本発明のポリペプチドの他のいずれかの類似体、オルソログ、または相同体に特異的に結合しない抗体が含まれる。本発明のポリペプチドに対して95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満の同一性(当技術分野で公知であり、かつ本明細書に記述されている方法を用いて計算された)を有するポリペプチドに結合しない抗体もまた、本発明に含まれる。厳密なハイブリダイゼーション条件下にて(本明細書で記述される)、本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのみに結合する抗体がさらに本発明に含まれる。本発明の抗体は、結合親和性の面からも説明または指定される。好ましい結合親和性には、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、および10-15M未満の乖離定数またはKdを有する結合親和性が含まれる。
【0211】
本発明の抗体は、制限されないが、インビトロおよびインビボでの診断方法および治療方法のどちらも含む、本発明のポリペプチドを生成、検出、および標的化するための当技術分野で公知の方法を含む用途を有する。例えば、抗体は、生体サンプルにおける本発明のポリペプチドのレベルを定性的かつ定量的に測定するための免疫アッセイでの用途を有する。例えば、Harlow 等, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)(その全体が参照により組み込まれる)を参照のこと。
【0212】
本発明の抗体は、単独でまたは他の組成物と組み合わせて使用してもよい。抗体はさらに、N末端もしくはC末端で異種ポリペプチドに組換えにより融合するか、またはポリペプチドもしくは他の組成物に化学的に結合することが可能である(共有および非共有結合を含む)。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイで標識として有用な分子および異種ポリペプチド、薬物、もしくは毒素などのエフェクター分子に組換えにより融合するか、または結合することが可能である。例えば、WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許第5,314,995号;およびEP 0 396 387を参照のこと。
【0213】
本発明の抗体は、当技術分野で公知の適切な方法によって作製することができる。例えば、本発明のポリペプチドまたはその抗原断片を、ポリクローナル抗体を含有する血清の生成を誘導するために動物に投与することができる。「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって作製された抗体に限定されない。「抗体」という用語は、少なくとも1つの結合ドメインで構成されるポリペプチドまたはポリペプチドのグループを意味し、結合ドメインは、抗体分子の可変ドメインの折り畳みから形成されて、内部表面形状および抗原の抗原決定基の特徴に相補的な電荷分布を有する三次元結合空間を形成し、それによって、抗原との免疫反応が可能となる。「モノクローナル抗体」という用語は、真核、原核、もしくはファージクローンを含む単一クローンから誘導される抗体を意味するものであり、それが作製される方法を意味するものではない。ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術を含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を用いて作製することができる。
【0214】
ハイブリドーマ技術には、当技術分野で公知の技術が含まれる(例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる、Harlow 等 (1998); Hammerling等 (1981))。FabおよびF(ab’)2断片は例えば、パパイン(Fab断片を作製するための)もしくはペプシン(F(ab’)2断片を作製するための)などの酵素を用いて、タンパク分解性切断によってハイブリドーマにより作製された抗体から作製することが可能である。
【0215】
代替方法としては、本発明の抗体は、組換えDNA技術の適用によって、または当技術分野で公知の方法を用いた合成化学によって作製することができる。例えば、本発明の抗体は、当技術分野で公知の種々のファージディスプレイ法を用いて作製することができる。ファージディスプレイ法では、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保有する、ファージ粒子の表面上に機能抗体ドメインを提示する。抗原、通常固体表面もしくはビーズに結合または捕獲される抗原を用いて直接選択することによって、所望の結合特性を有するファージが、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から選択される。これらの方法で使用されるファージは通常、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質に組換えによって融合する、Fab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するfdおよびM13を含む繊維状ファージである。本発明の抗体を作製するのに使用することができるファージディスプレイ法の例には、Brinkman等 (1995); Ames等(1995); Kettleborough, 等 (1994); Persic等(1997); Burton等 (1994);PCT/GB91/01134;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;および米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号および同第5,733,743号に開示の方法が含まれる(前記参考文献全体が参照により組み込まれる)。
【0216】
上記の参考文献に記述されているように、ファージ選択後、ファージから抗体コード領域を単離し、ヒト抗体、もしくは他のいずれかの所望の抗原結合断片を含む全抗体を作製するのに使用することが可能であり、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む所望の宿主で発現させることができる。例えば、Fab、Fab’F(ab)2およびF(ab’)2断片を組換えにより作製する技術もまた、WO92/22324;Mullinax等 (1992);Sawai等 (1995); Better等 (1988)(前記参考文献はその全体が参照により組み込まれる)に開示の方法など、当技術分野で公知の方法を用いて使用することができる。
【0217】
単鎖Fvsおよび抗体を作製するのに使用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号;Huston 等 (1991); Shu等 (1993);Skerra等 (1988)に記載の技術が含まれる。ヒトにおける抗体のインビボでの使用およびインビトロでの検出アッセイを含む一部の使用については、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を使用することが好ましい場合がある。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野で公知である。Morrison (1985); Oi 等, (1986); Gillies, S.D. 等 (1989); および米国特許第5,807,715号を参照のこと。CDRグラフティング(EP 0 239 400;WO91/09967;米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェシング(resurfacing)(EP 0 592 106;EP 0 519 596;Padlan E.A., (1991); Studnicka G.M. 等 (1994);Roguska M.A. 等 (1994))、チェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む様々な技術を用いて、抗体をヒト化することができる。ヒト抗体は、上述のファージディスプレイ法を含む、当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号、同第5,545,806号、同第5,814,318号;WO98/46645;WO98/50433;WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741を参照のこと(前記参考文献はその全体が参照により組み込まれる)。
【0218】
本発明のポリペプチドに組換え融合される、または化学結合(共有および非共有結合のどちらも含む)される抗体がさらに、本発明に含まれる。その抗体は、本発明のポリペプチド以外の抗原に特異的である。例えば、抗体を使用して、本発明のポリペプチドを特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に融合または結合させることによって、インビトロまたはインビボの特定の細胞型に対して本発明のポリペプチドを標的化することが可能である。本発明のポリペプチドに融合または結合した抗体は、インビトロ免疫アッセイおよび当技術分野で公知の方法を用いた精製法において使用することも可能である。例えば、上記のHarbor 等およびWO93/21232;EP 0 439 095; Naramura, M. 等 (1994);米国特許第5,474,981号; Gillies, S.O. 等 (1992); Fell, H.P. 等 (1991)を参照のこと(前記参考文献はそれらの全体が参照により組み込まれる)。
【0219】
本発明はさらに、可変領域以外の抗体ドメインに融合または結合した本発明のポリペプチドを含有する組成物を含む。例えば、本発明のポリペプチドは、抗体のFc領域、またはその一部に融合または結合することが可能である。本発明のポリペプチドに融合した抗体部分は、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、または全ドメインのいずれかの組み合わせまたはその一部を含む。本発明のポリペプチドは上記の抗体部分に融合または結合して、ポリペプチドのインビボでの半減期を増大するか、あるいは当技術分野で公知の方法を用いた免疫アッセイで使用することができる。そのポリペプチドを上記の抗体部分に融合または結合させて、多量体を形成することも可能である。例えば、本発明のポリペプチドに融合したFc部分は、Fc部分間のジスルフィド結合によって二量体を形成することができる。三量体以上の多量体形は、IgAおよびIgMの部分にポリペプチドを融合させることによって生成することができる。本発明のポリペプチドを抗体に融合または結合させる方法は、当技術分野では公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、同第5,112,946号;EP 0 307 434、EP 0 367 166;WO96/04388、WO91/06570; Ashkenazi, A. 等 (1991); Zheng, X.X. 等 (1995);Vil, H. 等 (1992)(前記参考文献はそれらの全体が参照により組み込まれる)を参照のこと。
【0220】
本発明は、本発明のポリペプチドの作動薬または拮抗薬として働く抗体に関する。例えば、本発明は、本発明のポリペプチドとの受容体/リガンド相互作用を一部または完全に阻害する抗体を含む。受容体特異的抗体およびリガンド特異的抗体のどちらも含まれる。リガンド結合を妨げないが、受容体活性化を妨げる受容体特異的抗体が含まれる。受容体活性化(つまり、シグナル伝達)は、本明細書に記述されるか、または当技術分野で公知の技術によって決定することができる。リガンド結合および受容体活性化のどちらも妨げる受容体特異的抗体もまた含まれる。同様に、リガンドに結合し、リガンドの受容体への結合を妨げる中和抗体、ならびにリガンドに結合し、それによって受容体活性化を妨げるが、リガンドが受容体に結合するのを妨げない抗体が含まれる。受容体を活性化する抗体がさらに含まれる。これらの抗体は、リガンドによって仲介される受容体活性化によって影響を受ける、すべてのまたはすべてとは限らない生物活性に対して作動薬として作用する。その抗体は、本明細書で開示される特異的活性を含む生物活性に対して作動薬または拮抗薬として指定される。上記の抗体作動薬は当技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。例えば、WO96/40281;米国特許第5,811,097;Deng, B. 等 (1998); Chen, Z. 等 (1998); Harrop, J.A. 等 (1998); Zhu, Z. 等 (1998); Yoon, D.Y. 等 (1998); Prat, M. 等 (1998); Pitard, V. 等 (1997); Liautard, J. 等 (1997); Carlson, N.G. 等 (1997); Taryman, R.E. 等 (1995); Muller, Y.A. 等 (1998); Bartunek, P. 等 (1996)を参照のこと(前記参考文献はそれらの全体が参照により組み込まれる)。
【0221】
上述のように、本発明のポリペプチドの抗体は次に、当業者によく知られている技術を用いて本発明のポリペプチドを「模倣」する、抗イディオタイプ抗体を作製するのに使用することができる。例えば、GreenspanおよびBona, (1989); Nissinoff, (1991)を参照のこと。例えば、本発明のポリペプチドに結合し、かつポリペプチド多重体化または本発明のポリペプチドのリガンドへの結合を競合的に抑制する抗体を使用して、ポリペプチド多重体化または結合ドメインを模倣し、結果として、ポリペプチドもしくはそのリガンドを中和する抗イディオタイプを産生することができる。かかる中和抗イディオタイプ抗体を使用して、本発明のポリペプチドに結合させるか、またはそのリガンド/受容体に結合させて、それによってその生物活性をブロックすることができる。
〈CanIon関連2対立遺伝子マーカー〉
[本発明の2対立遺伝子マーカーの利点]
本発明のCanIon関連2対立遺伝子マーカーは、RFLP(制限断片長多型)およびVNTR(可変数の直列型反復)マーカーなどの他の遺伝子マーカーと比較して、多数の重要な利点を提供する。
【0222】
マーカーの第1の生成は、制限断片の長さを変更する変異である、RFLPであった。しかしながら、RFLPを同定し、かつ分類するのに使用される方法は相対的に、材料、労力、および時間の無駄である。遺伝子マーカーの第2の生成は、ミニサテライトまたはマイクロサテライトとして分類することができるVNTRであった。ミニサテライトは、長さ0.1〜20キロ塩基の範囲のヒト染色体の領域に沿って分布する、5〜50反復の単位に存在する直列型反復のDNA配列である。それらは多くの可能性のある対立遺伝子を表すため、それらの情報含有量は非常に高い。ミニサテライトはサザンブロットを実施することによってスコアリングされて、試験される個体からの核酸サンプル中に存在する直列型反復の数が同定される。しかしながら、サザンブロットによって分類することができる、可能性のあるVNTRはわずか104種である。さらに、RFLPおよびVNTRマーカーのどちらも、多数を発生させ、かつアッセイするのはコストと時間がかかる。
【0223】
単一ヌクレオチド多型または2対立遺伝子マーカーをRFLPおよびVNTRと同一の手法で使用することができるが、いくつかの利点が得られる。SNPはヒトゲノムにおいて密な間隔であり、最も高い頻度の変異のタイプを表す。107を超える推定数の部位が、ヒトゲノムの3×109塩基対に沿って点在する。したがって、SNPはRFLPまたはVNTRマーカーよりも高い頻度で、かつ高い均一性で生じ、それは、かかるマーカーが対象の遺伝子座の近傍で見出される高い可能性があることを意味している。SNPはVNTRマーカーよりも可変性が低いが、変異的には安定性が高い。
【0224】
また、本発明の2対立遺伝子マーカーなど、特徴付けられた単一ヌクレオチド多型の異なる形は、区別するのが容易である場合が多く、したがって日常的に容易に分類することができる。2対立遺伝子マーカーは単一ヌクレオチドをベースとする対立遺伝子を有し、それらはわずか2つの共通の対立遺伝子を有し、それによって、高度に並行して検出し、自動スコアリングすることが可能となる。本発明の2対立遺伝子マーカーは、多数の個体の迅速な、高いハイスループットのゲノタイピングの可能性を提供する。
【0225】
2対立遺伝子マーカーはゲノムにおいて密な間隔であり、十分に情報価値があり、多数でアッセイすることができる。これらの利点を兼ね備えた効果によって、遺伝子研究において2対立遺伝子マーカーが非常に価値あるものとなる。2対立遺伝子マーカーは、家系における連鎖研究、対立遺伝子共有法において、集団における連鎖不平衡の研究において、症例対照集団の、または形質ポジティブおよび形質ネガティブの集団の関連研究において使用することができる。本発明の重要な態様は、2対立遺伝子マーカーによって、関連研究を行い、複合形質に関与する遺伝子を同定することが可能となることである。関連研究では、血縁関係のないケース集団およびコントロール集団におけるマーカー対立遺伝子の頻度を調べ、一般に、多遺伝子性もしくは散発性形質の検出に用いられる。関連研究は一般的な集団内で行うことが可能であり、罹患家系における関連する個体について行われる研究(連鎖研究)に限定されない。疾患との直接的な関連または治療に対する反応に対して、異なる遺伝子における2対立遺伝子マーカーを並行してスクリーニングすることができる。この同義遺伝子の手法は、特定の表現型に対する同義遺伝子因子の相乗効果、薬物反応、散発性形質、または複合遺伝子病因を調べるのに必要な統計能力を提供するため、様々なヒト遺伝学の研究の強力なツールである。
[本発明の候補遺伝子]
異なる手法を用いて、関連研究:ゲノムワイドな関連研究、候補領域の関連研究および候補遺伝子の関連研究を行うことができる。ゲノムワイドな関連研究は、均等に配置された遺伝子マーカーのスクリーニングおよび全ゲノムを網羅することに依拠する。候補遺伝子のアプローチは、対象の形質に関連する生物学的経路に潜在的に関与する遺伝子において特異的に位置する遺伝子マーカーの研究に基づく。本発明において、CanIonは候補遺伝子である。形質の生物学と関係する一部の情報が利用可能である場合には、候補遺伝子解析は明らかに、特定の形質に関連する遺伝子および遺伝子多型の同定への近道のアプローチを提供する。しかしながら、本出願で開示される2対立遺伝子マーカーのすべてを、ゲノムワイドな関連研究の一部として、または候補領域の関連研究の一部として使用することが可能であり、かかる使用は、本発明および特許請求の範囲に明確に企図されることを留意されたい。
[CanIon関連2対立遺伝子マーカーおよびそれに関連するポリヌクレオチド]
本発明は、CanIon関連2対立遺伝子マーカーにも関連する。本明細書で使用される「CanIon関連2対立遺伝子マーカー」という用語は、CanIon遺伝子と連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーのセットに関する。CanIon関連2対立遺伝子マーカーという用語は、A1〜A17と表される2対立遺伝子マーカーを含む。
【0226】
本発明の2対立遺伝子マーカーの一部を表2に開示する。それらは、関連する配列番号1〜4および配列番号6の特徴において一塩基多型としても記述される。1つのCanIon2対立遺伝子マーカーの多型塩基を含有する核酸を増幅させるプライマー対を実施例2の表1に列挙する。17個のCanIon関連2対立遺伝子マーカー、A1〜A17は、CanIonのゲノム配列に位置する。2対立遺伝子マーカーA12およびA16は、CanIonのエクソンに位置する。2対立遺伝子マーカーA18は、CanIon遺伝子をフランキングする。
【0227】
本発明は、CanIon関連2対立遺伝子マーカーの多型塩基を含む、精製かつ/または単離されたヌクレオチド配列にも関する。好ましい実施形態において、2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18およびその補体からなる群から選択される。その配列は、8〜1000ヌクレオチドの長さを有し、好ましくは、配列番号1〜4および配列番号6からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはその変異体またはそれに相補的な配列の少なくとも8,10,12,15,18,20,25,35,40,50,60,70,80,100,250,500または1000個の隣接ヌクレオチドを含む。これらのヌクレオチド配列は、考えられる2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子1または対立遺伝子2のいずれかの多型塩基を含む。任意に、前記2対立遺伝子マーカーは、前記ポリヌクレオチドの中心から6、5、4、3、2、もしくは1ヌクレオチド内、または前記ポリヌクレオチドの中心にある。任意に、前記隣接スパンの3’末端は、前記ポリヌクレオチドの3’末端に存在する。任意に、2対立遺伝子マーカーは、前記ポリヌクレオチドの3’末端に存在する。任意に、前記ポリヌクレオチドはさらに、標識を含む。任意に、前記ポリヌクレオチドを固体支持体に付着させることができる。更なる実施形態において、上記で定義されるポリヌクレオチドは単独で、またはいずれかの組み合わせで使用することができる。
【0228】
本発明は、8〜1000個の隣接ヌクレオチド、および/または好ましくは、配列番号1〜4および配列番号6からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはその変異体またはそれに相補的な配列の少なくとも8、10、12、15、18、20、25、35、40、50、60、70、80、100、250、500または1000個の隣接ヌクレオチドを含む、精製かつ/または単離されたヌクレオチド配列にも関する。任意に、前記ポリヌクレオチドは、前記配列におけるCanIon関連2対立遺伝子マーカーの上流にある少なくとも2、4、6、8、10、12、15、18、20、25、50、100、250、500、もしくは1000ヌクレオチド内または2、4、6、8、10、12、15、18、20、25、50、100、250、500、もしくは1000ヌクレオチドに位置する。任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17からなる群から選択され;任意に、ポリヌクレオチドの3’末端は、前記配列におけるCanIon関連2対立遺伝子マーカーの上流にある少なくとも2、4、6、8、10、12、15、18、20、25、50、100、250、500、もしくは1000ヌクレオチド内または2、4、6、8、10、12、15、18、20、25、50、100、250、500、もしくは1000ヌクレオチドに位置する。任意に、前記ポリヌクレオチドの3’末端は、前記配列におけるCanIon関連2対立遺伝子マーカーの上流の1ヌクレオチドに位置する。任意に、前記ポリヌクレオチドはさらに、標識を含む。任意に、前記ポリヌクレオチドを固体支持体に付着させることができる。更なる実施形態において、上記で定義されたポリヌクレオチドを単独、またはいずれかの組み合わせで使用することができる。
【0229】
好ましい実施形態において、表2に示す2対立遺伝子マーカーの1つの多型塩基を含む配列は、表1に列挙されるアンプリコンとして示される配列またはその変異体またはそれに相補的な配列の核酸からなる群から選択されるポリヌクレオチドの隣接スパンを有する、そのポリヌクレオチドからなる、において構成される、またはそのポリヌクレオチドを含むヌクレオチド配列からなる群から選択される。
【0230】
本発明はさらに、CanIonタンパク質をコードする核酸に関係し、前記核酸は、A12およびA16およびその補体からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーの多型塩基を含む。
【0231】
本発明は、CanIon関連2対立遺伝子マーカーにおける1つまたは複数のヌクレオチドの同一性を決定するのに使用される、いずれかのポリヌクレオチドの使用、またはいずれかのポリヌクレオチドもまた包含する。さらに、CanIon関連2対立遺伝子マーカーでの1つまたは複数のヌクレオチドの同一性を決定するのに使用される本発明のポリヌクレオチドは、この開示に、または以下に記述される、単独または組み合わせて指定される更なる制限を有するポリヌクレオチドを包含する。任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A12およびA16およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に前記ポリヌクレオチドは、本明細書に開示される配列を含み;任意に、前記ポリヌクレオチドは、本明細書に記述されるいずれかのポリヌクレオチドからなる、またはから本質的になり;任意に、前記決定は、ハイブリダイゼーションアッセイ、シーケンシングアッセイ、マイクロシーケンシングアッセイ、または酵素に基づくミスマッチ検出アッセイにおいて行われ;任意に、前記ポリヌクレオチドは、固体支持体、アレイまたはアドレス指定可能なアレイに付着され;任意に、前記ポリヌクレオチドは標識化される。好ましいポリヌクレオチドは、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドの同一性を検出するためにハイブリダイゼーションアッセイに使用することが可能である。CanIon関連2対立遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドの同一性を決定するために、シークエンシングまたはマイクロシークエンシングアッセイに、他の好ましいポリヌクレオチドを使用することが可能である。第3の好ましいポリヌクレオチドは、CanIon関連2対立遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドの同一性を決定するために、酵素に基づくミスマッチ検出アッセイに使用することが可能である。第4の好ましいポリヌクレオチドは、CanIon関連2対立遺伝子マーカーを含むポリヌクレオチドのセグメントを増幅するのに使用することができる。任意に、上述のポリヌクレオチドのいずれも、固体支持体、アレイ、またはアドレス指定可能なアレイに付着させることが可能であり;任意に、前記ポリヌクレオチドを標識化することができる。
【0232】
さらに、本発明は、CanIon関連2対立遺伝子マーカーを含むヌクレオチドのセグメントを増幅するためのいずれかのポリヌクレオチド、またはそのセグメントを増幅する際に使用されるいずれかのポリヌクレオチドを包含する。さらに、CanIon関連2対立遺伝子マーカーを含むヌクレオチドのセグメントを増幅する際に使用される本発明のポリヌクレオチドは、この開示に、または以下に記述される、単独または組み合わせて指定される更なる制限を有するポリヌクレオチドを包含し;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A12およびA16およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記ポリヌクレオチドは、本明細書に開示される配列を含み;任意に、前記ポリヌクレオチドは、本明細書に記述されるいずれかのポリヌクレオチドからなる、またはから本質的になり;任意に、前記増幅は、PCRまたはLCRによって行われる。任意に、前記ポリヌクレオチドは、固体支持体、アレイ、またはアドレス指定可能なアレイに付着される。任意に、前記ポリヌクレオチドを標識化することが可能である。
【0233】
本発明の2対立遺伝子マーカーを含むポリヌクレオチドの増幅またはシークエンシング反応用のプライマーは、当技術分野で公知のいずれかの方法によって開示された配列から設計することができる。プライマーの好ましいセットは、配列番号1〜4および配列番号6からなる群から選択される配列またはそれに相補的は配列またはその変異体と同一性の隣接スパンの3’末端が、プライマーの3’末端に存在するように作製される。かかる構造は、プライマーの3’末端の選択された核酸配列とハイブリダイズすることを可能にし、増幅またはシークエンシング反応に対するプライマーの効率を劇的に増大する。対立遺伝子特異的プライマーは、2対立遺伝子マーカーの多型塩基が隣接スパンの3’末端に位置し、かつ隣接スパンがプライマーの3’末端に存在するように設計される。かかる対立遺伝子特異的プライマーは、2対立遺伝子マーカーに存在する2つの対立遺伝子の1つを含有する核酸と共にそれらが使用される限り、増幅またはシーケンシング反応を選択的にプライミングする傾向がある。本発明のプライマーの3’末端は、前記配列におけるCanIon関連2対立遺伝子マーカーの上流にある少なくとも2、4、6、8、10、12、15、18、20、25、50、100、250、500、もしくは1000ヌクレオチド内または少なくとも2、4、6、8、10、12、15、18、20、25、50、100、250、500、もしくは1000ヌクレオチドに、またはシーケンシング、増幅での使用目的に適切である他のいずれかの位置、または新規な配列もしくはマーカーの位置に位置する。このように、好ましい増幅用プライマーの別のセットは、配列番号1〜4および配列番号6からなる群から選択される配列またはそれに相補的は配列またはそれの変異体における8〜50ヌクレオチドの隣接スパンから本質的になる単離されたポリヌクレオチドを含み、前記スパンの3’末端は、前記ポリヌクレオチドの3’末端に位置し、かつ前記ポリヌクレオチドの3’末端は、前記配列におけるCanIon関連2対立遺伝子マーカーの上流に位置する。好ましくは、それらの増幅用プライマーは、配列B1〜B17およびC1〜C17からなる群から選択される配列を含む。CanaIonの2対立遺伝子マーカーの上流1ヌクレオチドに位置するそれらの3’末端を有するプライマーは、マイクロシーケンシングアッセイで特別な有用性を有する。好ましいマイクロシーケンシングプライマーを表4に示す。任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A16、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、マイクロシーケンシングプライマーは、ヌクレオチド配列D1〜D18およびE1〜E18からなる群から選択される。
【0234】
本発明のプローブは、当技術分野で公知のいずれかの方法、特に本明細書で開示されているマーカーが存在する場合に、試験することを可能にする方法に対して、開示されている配列から設計することが可能である。プローブの好ましいセットは、それらが2対立遺伝子マーカーの一方の対立遺伝子に特異的に結合するが、いずれかの特定のセットのアッセイ条件下では他方の対立遺伝子に特異的に結合しないように、当技術分野で公知のいずれかの手法において本発明のハイブリダイゼーションアッセイで使用するために設計される。好ましいハイブリダイゼーションプローブは、考えられる2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子1または対立遺伝子2の多型塩基を含む。任意に、前記2対立遺伝子のマーカーは、ハイブリダイゼーションプローブの中心から6、5、4、3、2、もしくは1ヌクレオチド内に、または前記プローブの中心に位置する。好ましい実施形態では、プローブは、配列P1〜P18のそれぞれおよびそれに相補的な配列のそれぞれからなる群から選択される。
【0235】
本発明のポリヌクレオチドは、配列表に列挙されている多型塩基を取り囲む正確なフランキング配列を有することに限定されないことに留意されたい。むしろ、2対立遺伝子マーカーを取り囲むフランキング配列は、意図される用途と適合する程度に延長するか、短縮することが可能であり、本発明はかかる配列を特に企図することを理解されよう。隣接スパンの外側のフランキング領域は、ヒト対象で実際に生じる天然のフランキング配列に相同的である必要はない。ヌクレオチドの意図する用途と適合する、いずれかのヌクレオチド配列を付加することが特に企図される。
【0236】
プライマーおよびプローブを標識化するか、または「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」に記述されているように固体支持体上に固定化することが可能である。
【0237】
固体支持体に付着される本発明のポリヌクレオチドは、この開示に、または以下に記述される、単独またはいずれかの組み合わせで指定される更なる制限を有するポリヌクレオチドを包含し;任意に、前記ポリヌクレオチドは、個々に、または本発明の少なくとも2、5、8、10、12、15、20、もしくは25個の別個のポリヌクレオチドのグループで、単一固体支持体に付着されるように指定することが可能である。任意に、本発明のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドを、本発明のポリヌクレオチドと同じ固体支持体に付着させてもよい。任意に、複数のポリヌクレオチドが固体支持体に付着される場合、それらは、ランダムな位置に、または順序付きアレイで付着される。任意に、前記順序付きアレイはアドレス指定可能である。
【0238】
本発明は、CanIon関連2対立遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドの同一性を決定することにより試験対象をゲノタイピングするために必要な試薬および説明書の一部またはすべてと共に、本発明の1つまたは複数種のポリヌクレオチドを備える、診断キットもまた包含する。そのキットは、限定されないが、シーケンシングアッセイ法、マイクロシーケンシングアッセイ法、ハイブリダイゼーションアッセイ法、または酵素に基づくミスマッチ検出アッセイ法を含む当業者に公知のいずれかの方法による、マーカー位置におけるヌクレオチドの同一性の決定を提供する。
[2対立遺伝子マーカーを新規に同定する方法]
ポリヌクレオチドプローブとのディファレンシャルハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動により測定される移動度の変化の検出または増幅された核酸の直接シーケンシングなど、様々な方法のいずれかを使用して、単一ヌクレオチド多型に対してゲノム断片をスクリーニングすることができる。2対立遺伝子マーカーを同定するための好ましい方法は、適切な数の血縁関係のない個体からのゲノムDNA断片を比較によりシーケンシングすることを含む。
【0239】
第1の実施形態において、血縁関係のない個体からのDNAサンプルを共にプールし、それに続いて、対象のゲノムDNAを増幅し、シーケンスする。このようにして得られたヌクレオチド配列を次に分析して、有意な多型を同定する。この方法の主な利点の1つは、DNAサンプルのプールによって、行わなければならないDNA増幅反応およびシーケンシング反応の回数が実質的に減少するという事実にある。さらに、この方法は十分高感度であり、そのため、それによって得られた2対立遺伝子マーカーは通常、その頻度の低い対立遺伝子の十分な頻度が、関連研究を行うのに有用であることを実証する。
【0240】
第2の実施形態では、DNAサンプルをプールせず、このため個々に増幅かつシークエンスする。この方法は通常、候補遺伝子内で関連研究を実施するために2対立遺伝子マーカーを同定する必要がある場合に好ましい。プロモーター領域もしくはエクソン領域などの高い関連性の遺伝子領域を2対立遺伝子マーカーに対してスクリーニングすることが好ましい。この方法を用いて得られた2対立遺伝子マーカーは、例えば、その頻度の低い対立遺伝子の頻度が約10%未満である場合には、関連研究を実施するには情報価値の程度が低い。しかしながら、かかる2対立遺伝子マーカーは、関連研究を行うのに十分に情報価値があると考えられ、さらに、本発明の遺伝分析研究において低い情報価値の2対立遺伝子マーカーを含むことによって、場合によっては、それらの浸透度に応じて、稀な変異である偶然の変異を直接同定することが可能となるということがさらに理解されよう。
【0241】
本発明の2対立遺伝子マーカーを同定するために、本発明によって使用される好ましい方法の種々のパラメーターを以下に説明する。
[ゲノムDNAサンプル]
本発明の2対立遺伝子マーカーが産生されるゲノムDNAサンプルは、公知の民族的背景の異質集団に相当する血縁関係のない個体から得ることが好ましい。DNAサンプルを得る個体の数は、好ましくは約10〜約1000、好ましくは約50〜約200個体と実質的に変動する。通常、できる限り多くのマーカーを同定し、かつ統計学的に有意な結果を得るために、所定の集団において十分な多型多様性を有するように、少なくとも100個体からDNAサンプルを回収することが好ましい。
【0242】
解析にかけられるゲノムDNAのソースに関しては、特定の制限無く、いずれかの試験サンプルを予測することができる。これらの試験サンプルには、本明細書に記述される本発明の方法によって試験することができる生体材料が含まれ、ヒトおよび動物の体液、例えば全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液および呼吸器、腸管および尿生殖路の種々の外分泌、涙、唾液、乳汁、白血球、骨髄腫等;細胞培養液の上清などの生物体液;腫瘍および非腫瘍組織およびリンパ節組織を含む固定組織標本;骨髄穿刺および固定細胞標本が含まれる。本発明で使用されるゲノムDNAの好ましいソースは、各ドナーの末梢静脈血に由来する。
生体サンプルからゲノムDNAを作製する技術は、当業者にはよく知られている。好ましい実施形態の詳細を実施例1に示す。当業者であれば、プールされた、またはプールされていないDNAサンプルを増幅することを選択できる。
[DNA増幅]
ゲノムDNAのサンプルにおける2対立遺伝子マーカーの同定は、DNA増幅方法を使用することによって容易になる。増幅段階のために、DNAサンプルをプールすることができるし、またはしなくてもよい。DNA増幅技術は当業者にはよく知られている。
【0243】
本発明のコンテクストで使用できる増幅技術には、限定されないが、EP−A−320 308、WO9320227およびEP−A−439 182に記載のリガーゼ連鎖反応(LCR)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR,RT−PCR)、Guatelli J.C., 等 (1990)およびCompton J. (1991)に記載の核酸配列に基づく核酸配列ベース増幅(NABSA)などの技術、欧州特許出願第544610号に記載のQ−β増幅、Walker 等 (1996)およびEP A 684 315に記載の鎖置換増幅および、PCT公開番号WO9322461に記載の標的仲介増幅が含まれる。
【0244】
LCRおよびギャップLCRは指数関数的増幅技術であり、どちらも、DNA分子にアニールした隣接プライマーを結合させるDNAリガーゼに依存する。リガーゼ連鎖反応(LCR)では、2つの一次(第1および第2)プローブおよび2つの二次(第3および第4)プローブを含むプローブ対が使用され、それらすべてがモル過剰量で標的に使用される。第1プローブは、標的の鎖の第1セグメントとハイブリダイズし、第2プローブは、標的の鎖の第2セグメントとハイブリダイズし、第1および第2セグメントは、一次プローブが5’リン酸エステル−3’ヒドロキシル関係において互いに隣接するように、かつリガーゼが2つのプローブを共有結的に融合させるか、または2つのプローブを融合産物にライゲートすることができるように隣接している。さらに、第3(二次)プローブは、第1プローブの一部とハイブリダイズすることができ、第4(二次)プローブは、同様の隣接形式で第2プローブの一部とハイブリダイズすることができる。当然、標的が最初に二本鎖である場合には、二次プローブは、最初の場合には標的補体ともまたハイブリダイズするだろう。一次プローブのライゲーションした鎖が標的の鎖から分離されると、ライゲーションして相補的な二次ライゲーション産物を形成することができる、第3および第4プローブとハイブリダイズするだろう。ライゲーション産物が標的またはその補体に対して機能的に同等であることを理解することは重要である。ハイブリダイゼーションおよびライゲーションの反復サイクルによって、標的配列の増幅が達成される。多重LCRの方法もまた記述されている(WO9320227)。ギャップLCR(GLCR)は、プローブが隣接せず、2塩基ないし3塩基ごとに離れているLCRの種類である。
【0245】
mRNAの増幅の場合、mRNAをcDNAに逆転写し、続いてポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行うこと;または米国特許第5,322,770号に記述されているように両方の段階に単一の酵素を使用すること、またはMarshall 等(1994)によって記述されるように非対称性ギャップLCR(RT−AGLCR)を使用することは本発明の範囲内である。AGLCRは、RNAの増幅を可能にするGLCRの改良である。
【0246】
PCR技術は、本発明で使用するのに好ましい増幅技術である。様々なPCR技術が当業者には知られている。PCR技術を調べるために、White (1997) および「PCR Methods and Applications」という題名の出版物(1991, Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照のこと。これらのPCR方法のそれぞれにおいて、増幅すべき核酸配列のいずれかの側のPCRプライマーを、dNTPおよびTaqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、もしくはVentポリメラーゼなどの耐熱性ポリメラーゼと共に、適切に作製された核酸サンプルに添加する。サンプル中の核酸が変性し、PCRプライマーは、サンプル中の相補的な核酸配列に特異的にハイブリダイズする。そのハイブリダイズしたプライマーは伸長する。その後、変性、ハイブリダイゼーション、および伸長の別のサイクルが開始される。そのサイクルを複数回繰り返して、プライマー部位間の核酸配列を含有する増幅断片を作製する。PCRはさらに、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,965,188号を含むいくつかの特許に記述されており、それらの開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0247】
PCR技術は、新規な2対立遺伝子マーカーを同定するために使用されるに好ましい増幅技術である。本発明の目的に適したPCR反応の一般的な例を実施例2に示す。
【0248】
本発明の態様の1つは、好ましくはPCRを用いた、試験サンプルにおけるヒトCanIon遺伝子、特に配列番号1〜3のゲノム配列の断片、または配列番号4のcDNA配列、またはその断片もしくは変異体の増幅方法である。
【0249】
この方法は以下の段階:
a)上述されており、かつ増幅するべきポリヌクレオチド領域のいずれかの側に位置する、1対の増幅用プライマーを含む増幅反応試薬と、試験サンプルとを接触させる段階;
b)任意に、増幅産物を検出する段階;を含む。
【0250】
本発明は、試験サンプルにおけるCanIon遺伝子配列、特に配列番号1〜3のゲノム配列の一部または配列番号4のcDNA配列の一部、またはその変異体を増幅するためのキットにもまた関係し、前記キットは:
a)増幅すべきCanIon遺伝子のいずれかの側に位置する1対のポリヌクレオチドプライマー;
b)任意に、増幅反応を行うのに必要な試薬;を備える。
【0251】
上記の増幅方法およびキットの一実施形態において、増幅産物は、増幅された領域に相補的な配列を有する標識プローブとのハイブリダイゼーションによって検出される。上記の増幅方法およびキットの他の実施形態において、プライマーは、B1〜B17、C1〜C17、D1〜D18、およびE1〜E18のヌクレオチド配列からなる群から選択される配列を含む。
【0252】
本発明の第1の実施形態において、2対立遺伝子マーカーは、本発明者らによって産生されたゲノム配列情報を用いて同定される。シーケンスされたゲノムDNA断片を使用して、500bp断片を増幅するためにプライマーを設計する。これらの500bp断片をゲノムDNAから増幅し、2対立遺伝子マーカーについて調査する。OSPソフトウェアを用いて、プライマーを設計することが可能である(Hillier L. および Green P., 1991)。すべてのプライマーが、特定の標的塩基の上流に、シーケンシングプライマーとしての役割を果たす共通のオリゴヌクレオチド末端(tale)を含有する。これらの目的に使用することができるプライマー伸長法は、当業者にはよく知られている。
【0253】
CanIon遺伝子をコードするゲノム配列の増幅に有用な好ましいプライマーは、遺伝子のプロモーター、エクソンおよびスプライス部位に焦点を合わせる。2対立遺伝子マーカーは、遺伝子のこれらの機能領域に位置する場合、最終的な偶然の変異である高い可能性を表す。本発明の好ましい増幅用プライマーには、実施例2、表1にさらに詳述されるB1〜B17、C1〜C17のヌクレオチド配列が含まれる。
[増幅されたゲノムDNAのシーケンシングおよび単一ヌクレオチド多型の同定]
次いで、当業者に公知であり、かつ利用可能ないずれかの方法を用いて、上述のように産生された増幅産物をシーケンスする。ジデオキシ仲介法(サンガー法)またはマクサム・ギルバート法を用いてDNAをシーケンスする方法は、当業者には広く知られている。かかる方法は、例えばSambrook 等 (1989)に開示されている。代替のアプローチは、Chee 等 (1996)に記述されているように、高密度DNAプローブアレイとのハイブリダイゼーションを含む。
【0254】
増幅されたDNAは、ダイプライマー・サイクルシーケンシングプロトコルを用いて、自動化ジデオキシターミネーター・シーケンシング反応にかけることが好ましい。シーケンシング反応の産物はシーケンシング用ゲル上に流され、ゲル画像解析を用いて、その配列が決定される。多型検索は、同じ位置で生じる、異なる塩基から得られる電気泳動パターンの重なり合ったピークの存在に基づく。各ジデオキシターミネーターは異なる蛍光分子で標識されるため、2対立遺伝子部位に相当する2つのピークは、配列上の同じ位置における2つの異なるヌクレオチドに相当する、異なる色を表す。しかしながら、2つのピークの存在は、背景のノイズのために人為的結果であり得る。かかる人為的結果を排除するために、2つのDNA鎖をシーケンスし、そのピーク間の比較を行う。多型配列として記録するために、その多型は、両方の鎖で検出されなければならない。
【0255】
上記の手順によって、2対立遺伝子マーカーを含有するそれらの増幅産物を同定することができる。100個体のシーケンシングプールによって検出される2対立遺伝子多型の頻度の検出限界は、公知の2対立遺伝子頻度のシーケンシングプールによって検証されるように、マイナーな対立遺伝子に対して約0.1である。しかしながら、プーリング法(pooling method)によって検出される90%を超える2対立遺伝子多型は、マイナーな対立遺伝子に対して0.25よりも高い頻度を有する。したがって、この方法によって選択された2対立遺伝子マーカーは、マイナー対立遺伝子に対して少なくとも0.1の頻度を有し、メジャーな対立遺伝子に対して0.9未満の頻度を有する。好ましくはマイナー対立遺伝子に対して少なくとも0.2、メジャー対立遺伝子に対して0.8未満、さらに好ましくはマイナー対立遺伝子に対して少なくとも0.3、メジャー対立遺伝子に対して0.7未満、このため、0.18よりも高いヘテロ接合率、好ましくは0.32よりも高い、さらに好ましくは0.42よりも高い接合率である。
【0256】
他の実施形態において、2対立遺伝子マーカーは、個々のDNAサンプルをシーケンスすることによって検出され、かかる2対立遺伝子マーカーのマイナー対立遺伝子の頻度は0.1未満である。
[本発明の2対立遺伝子マーカーの確認]
両方の対立遺伝子が集団に存在することを確認することによって、遺伝子マーカーとしてのそれらの有用性について、多型を評価する。2対立遺伝子マーカーの確認は、本発明の方法により個体のグループをゲノタイピングし、両方の対立遺伝子が存在することを実証することによって達成される。マイクロシーケンシングが、対立遺伝子をゲノタイピングするのに好ましい方法である。ゲノタイピング段階による確認は、グループにおける各個体に由来する個々のサンプルで、または複数の個体に由来するプールされたサンプルをゲノタイピングすることによって行われる。その個体が問題の対立遺伝子に対してヘテロ接合性である場合には、そのグループは1個体と同程度に小さい場合がある。好ましくは、そのグループは、少なくとも3個体を含有し、さらに好ましくはそのグループは5個体または6個体を含有し、その結果単一確認試験では、試験される2対立遺伝子マーカーがさらに多く確認される結果となる可能性が高いだろう。しかしながら、確認試験が小さなグループで行われる場合、サンプリング誤差として、試験された個体のいずれも2つの対立遺伝子の一方を保有していない場合には、偽陰性の結果を生じる可能性があることに留意されたい。このように、その確認プロセスは、配列における特定の位置に本当の2対立遺伝子マーカーが存在することを実証するのに比べて、特定の最初の結果が人為的結果であることを実証するのには有用性が低い。本発明のゲノタイピング、ハプロタイピング、関連研究、および相互作用研究法のすべては任意に、確認された2対立遺伝子マーカーを用いて単独で行われる。
[本発明の2対立遺伝子マーカーの頻度の評価]
確認された2対立遺伝子マーカーをさらに、2対立遺伝子マーカー部位における頻度の最も低い対立遺伝子の頻度を決定することによって、遺伝子マーカーとしてのそれらの有用性について評価する。頻度の最も低い対立遺伝子の頻度が高いほど、2対立遺伝子マーカーの関連および相互作用研究での有用性は高くなる。頻度の最も低い対立遺伝子の決定は、本発明の方法によって個体のグループをゲノタイピングし、どちらの対立遺伝子も存在することを実証することによって行われる。ゲノタイピング段階の頻度の決定は、グループ中の各個体から得られる個々のサンプル上で、または複数の個体から得られるプールされたサンプルをゲノタイピングすることによって行うこともできる。そのグループは、全体として集団を代表するのに十分に大きくなければならない。好ましくは、そのグループは少なくとも20個体を含有し、さらに好ましくは、そのグループは少なくとも50個体を含有し、最も好ましくは、そのグループは少なくとも100個体を含有する。当然グループが大きいほど、サンプリング誤差が減るため、頻度決定の精度が高くなる。頻度の最も低い対立遺伝子の頻度が30%以上である2対立遺伝子マーカーは、「高品質の2対立遺伝子マーカー」と呼ばれる。本発明のゲノタイピング、ハプロタイピング、関連研究、および相互作用研究法のすべては任意に、高品質の2対立遺伝子マーカーを用いて単独で行われる。
〈2対立遺伝子マーカーに対して個体をゲノタイピングする方法〉
本発明の1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーに対して生体サンプルをゲノタイピングする方法が提供され、それらすべてはインビトロで行われる。ゲノタイピングのかかる方法は、当技術分野で公知のいずれかの方法によってCanIon2対立遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドの同一性を決定することを含む。これらの方法は、関連研究における症例対照集団、ならびに所定の形質と関連することが知られている2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子検出のコンテクストにおいて個体をゲノタイピングする際に使用されることが見出されており、そのケースでは、個体のゲノムに存在する2対立遺伝子マーカーの両方のコピーが決定され、その結果、特定の対立遺伝子に対してホモ接合性もしくはヘテロ接合性として分類される。
【0257】
これらのゲノタイピング法は、単一個体から得られた核酸サンプルまたはプールされたDNAサンプルで行うことができる。
【0258】
2対立遺伝子マーカーを同定するために、上述の方法と同様な方法を用いて、または以下にさらに記述する方法などの他のゲノタイピング法を用いて、ゲノタイピングを行うことができる。好ましい実施形態では、異なる個体から増幅されたゲノム断片の配列の比較を用いて、新規な2対立遺伝子マーカーを同定し、診断および関連研究用途において公知の2対立遺伝子マーカーをゲノタイピングするために、マイクロシーケンシングを用いる。
【0259】
一実施形態において、本発明は、生体サンプル中のCanIon関連2対立遺伝子マーカーまたはその補体におけるヌクレオチドの同一性を決定することを含むゲノタイピングの方法を包含し;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A12およびA16、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記生体サンプルは、単一対象に由来するものであり;任意に、前記2対立遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドの同一性が、個体のゲノムに存在する前記2対立遺伝子マーカーの両方のコピーに対して決定され;任意に、前記生体サンプルが、複数の対象に由来するものであり;任意に、本発明のゲノタイピング法は、この開示に、または以下に記述される、単独またはいずれかの組み合わせで指定される更なる制限を有する方法を包含し;任意に、前記方法はインビトロで行われ;任意に、前記決定段階前に、2対立遺伝子マーカーを含む前記配列の一部を増幅することをさらに含み;任意に、前記増幅が、PCR、LCR、または複製開始点含有する組換えベクターおよび宿主細胞中の前記断片の複製によって行われ;任意に、前記決定が、ハイブリダイゼーションアッセイ、シーケンシングアッセイ、マイクロシーケンシングアッセイ、または酵素に基づくミスマッチ検出アッセイによって行われる。
[ゲノタイピングに使用される核酸のソース]
精製または未精製状態の核酸のいずれかのソースを、所望の特定の核酸配列を含有するか、または含有すると考えられるという条件で、開始核酸として用いることができる。DNAまたはRNAは、上述のように細胞、組織、体液等から抽出することができる。本発明のゲノタイピング法で使用される核酸は、いずれかの哺乳類のソースから得ることができるが、核酸サンプルが採取される試験対象および個体は一般にヒトであると理解される。
[2対立遺伝子マーカーを含有するDNA断片の増幅]
本発明の1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーを含有するヌクレオチドのセグメントを増幅するための方法およびポリヌクレオチドを提供する。2対立遺伝子マーカーを含有するDNA断片の増幅は、様々な方法において、および様々な目的で用いられ、ゲノタイピングに制限されないことは理解されよう。それにもかかわらず、すべてではないが、多くのゲノタイピング法では、対象の2対立遺伝子マーカーを保有するDNA領域を先に増幅する必要がある。かかる方法は、2対立遺伝子マーカーに及ぶ、またはそれの遠位もしくは近位に位置する部位および配列を含む配列の濃度または総数を特異的に増大する。診断アッセイは、本発明の2対立遺伝子マーカーを保有するDNAセグメントの増幅にも依拠する。DNAの増幅は、当技術分野で公知のいずれかの方法によって達成される。増幅技術は、「DNA増幅」という題名のセクションに記述されている。
【0260】
これらの増幅法の一部は特に、単一ヌクレオチド多型の検出に適しており、以下にさらに記述されているように、標的配列の同時増幅および多型ヌクレオチドの同定が可能となる。
【0261】
上述の2対立遺伝子マーカーの同定によって、本発明の2対立遺伝子マーカーを含有するDNA断片を増幅するためにプライマーとして使用することができる、適切なポリヌクレオチドを設計することが可能となる。本明細書で記述される新規な2対立遺伝子マーカーを発見するために最初に使用されるプライマー、または本発明の2対立遺伝子マーカーを含有するDNA断片の増幅を可能にするプライマーの任意のセットを用いて、増幅を行うことができる。
【0262】
一部の実施形態において、本発明は、本発明の1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーを含有するDNA断片を増幅するためのプライマーを提供する。好ましい増幅用プライマーを実施例2に列挙する。列挙するプライマーは単に例示的なものであり、本発明の1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーを含有する増幅産物を産生する他のセットもまた有用であることは理解されよう。
【0263】
プライマーの間隔によって、増幅すべきセグメントの長さが決定される。本発明のコンテクストにおいて、2対立遺伝子マーカーを保有する増幅されたセグメントは、少なくとも約25bp〜35kbpの範囲のサイズである。25〜3000bpの増幅断片が一般的であり、50〜1000bpの断片が好ましく、100〜600bpの断片が非常に好ましい。2対立遺伝子マーカーの増幅用プライマーは、マーカーを保有するいずれかのDNA断片の特異的な増幅を可能にする、いずれかの配列であることは理解されよう。増幅用プライマーは、「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」に記述するように、標識化するか、または固体支持体上に固定化することが可能である。
[2対立遺伝子マーカーに対してDNAサンプルをゲノタイピングする方法]
当技術分野で公知のいずれかの方法を用いて、2対立遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチドを同定することができる。検出すべき2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子が本発明において同定かつ指定されているため、多数の技術のいずれかを使用することによって、当業者には検出が簡単であることが分かるだろう。多くのゲノタイピング法では、対象の2対立遺伝子マーカーを保有するDNA領域を予め増幅する必要がある。標的またはシグナルの増幅は、現在のところ好ましい場合が多いが、増幅を必要としない超高感度検出法もまた、本発明のゲノタイピング法によって包含される。2対立遺伝子多型を検出するのに使用できる、当業者にはよく知られている方法には、従来のドットブロット分析、Orita 等 (1989)により記述されている1本鎖高次構造多型解析、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)、ヘテロ二本鎖分析、ミスマッチ切断検出、およびSheffield 等 (1991), White 等 (1992), Grompe 等 (1989および1993)に記述されている従来の他の技術などの方法が含まれる。特定の多型部位に存在するヌクレオチドの同一性を決定する別の方法では、米国特許第4,656,127号に記載されている、特定化されたエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体が用いられる。
【0264】
好ましい方法は、シーケンシングアッセイ、酵素に基づくミスマッチ検出アッセイ、またはハイブリダイゼーションアッセイによって、2対立遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチドの同一性を直接決定することを含む。一部の好ましい方法の詳細を以下に示す。非常に好ましい方法は、マイクロシーケンシング技術である。「シーケンシング」という用語は、二重鎖のプライマー/鋳型複合体のポリメラーゼ伸長を指すために本明細書中で一般に使用され、従来のシーケンシングおよびマイクロシーケンシングのどちらも含む。
(1)シーケンシングアッセイ
多型部位に存在するヌクレオチドは、シーケンシング法によって決定することができる。好ましい実施形態において、DNAサンプルは、上述のシーケンシング前にPCR増幅にかけられる。DNAシーケンシング法は、「増幅されたゲノムDNAのシーケンシングおよび単一ヌクレオチド多型の同定」に記述されている。増幅されたDNAは、ダイプライマー・サイクルシーケンシングプロトコルを用いて、自動化ジデオキシターミネーター・シーケンシング反応にかけることが好ましい。配列解析によって、2対立遺伝子マーカー部位に存在する塩基を同定することができる。
(2)マイクロシーケンシングアッセイ
マイクロシーケンシング法では、標的DNA中の多型部位におけるヌクレオチドを、単一ヌクレオチドプライマー伸長反応によって検出する。この方法は、標的の核酸における対象の多型塩基のすぐ上流でハイブリダイズする適切なマイクロシーケンシングプライマーを要する。ポリメラーゼを使用して、多型部位におけるヌクレオチドに相補的な1つの単一ddNTP(チェーンターミネーター)でプライマーの3’末端を特異的に伸長する。次に、取り込まれたヌクレオチドの同一性をいずれかの適切な方法で決定する。
【0265】
通常、マイクロシーケンシング反応は、蛍光ddNTPを用いて行われ、ABI377シーケンシング機器で電気泳動によって、伸長されたマイクロシーケンシングプライマーを分析して、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるEP 412 883に記述されているように、取り込まれたヌクレオチドの同一性を決定する。代替方法としては、より多くのアッセイを同時に処理するために、キャピラリー電気泳動を用いることができる。本発明のコンテクストで使用することができる、通常のマイクロシーケンシング手順の例を実施例4に示す。
【0266】
異なるアプローチをddNTPの標識化および検出に用いることができる。蛍光共鳴エネルギー移動に基づく均一相検出法が、ChenおよびKwok (1997) およびChen 等 (1997)によって記述されている。この方法では、多型部位を含有する増幅されたゲノムDNA断片を、対立遺伝子の染料標識化ジデオキシリボヌクレオチド三リン酸および修飾Taqポリメラーゼの存在下にて、5’−蛍光標識されたプライマーと共にインキュベートする。その染料標識されたプライマーは、鋳型上に存在する対立遺伝子に特異的なダイターミネーターによって1塩基伸長される。ゲノタイピング反応の終わりに、反応混合物中の2種類の染料の強度を、分離または精製することなく直接的に分析する。これらのすべての段階は、同一チューブにおいて行うことが可能であり、蛍光の変化をリアルタイムでモニターすることができる。代替方法として、その伸長されたプライマーを、MALDI−TOF質量分析法によって分析することができる。多型部位における塩基は、マイクロシーケンシングプライマー上に加えられた質量によって同定される(HaffおよびSmirnov, 1997を参照のこと)。
【0267】
確立されたマイクロシーケンシング法によって、またはその発達もしくは派生物によって、マイクロシーケンシングを達成することが可能である。代替方法には、いくつかの固相マイクロシーケンシング技術が含まれる。その方法が、プライマーもしくは標的分子が固体支持体上に固定化または捕獲される、不均一相アッセイとして行われることを除いては、基本的なマイクロシーケンシングプロトコルは上述と同じである。プライマーの分離または末端ヌクレオチドの付加を単純化するために、オリゴヌクレオチドを固体支持体に付着させるか、またはアフィニティー分離ならびにポリメラーゼ伸長を可能にするように修飾する。合成オリゴヌクレオチドの5’末端および内部ヌクレオチドを、異なるアフィニティー分離アプローチを可能にするような多数の異なる方法、例えばビオチン化で修飾することができる。単一の親和性基がオリゴヌクレオチド上に用いられた場合、そのオリゴヌクレオチドは、取り込まれたターミネーター試薬から分離することができる。これによって、物理的分離またはサイズ分離の必要がなくなる。複数の親和性基が使用された場合には、複数のオリゴヌクレオチドをターミネーター試薬から分離し、同時に分析することができる。これによって、伸長反応につき、いくつかの核酸種またはより多くの核酸配列情報を解析することが可能となる。その親和性基はプライミングオリゴヌクレオチド上にある必要はないが、代わりに、鋳型上に存在することが可能である。例えば、ビオチン化DNAおよびストレプトアビジン−コートミクロ滴定ウェルもしくはアビジン−コートポリスチレン粒子との間の相互作用を介して、固定化を行うことができる。同じ手法で、オリゴヌクレオチドまたは鋳型を高密度フォーマットで固体支持体に付着させることが可能である。かかる固相マイクロシーケンシング反応では、取り込まれたddNTPを標識化するか(Syvanen, 1994)、またはフルオレセインに連結させることができる(Livakおよび Hainer, 1994)。放射標識されたddNTPの検出は、シンチレーションに基づく技術によって達成することができる。フルオレセイン連結ddNTPの検出は、アルカリホスファターゼと結合した抗フルオレセイン抗体の結合、それに続く、発色性基質(p−ニトロフェニルホスフェートなど)とのインキュベーションに基づく。可能性のある他のレポーター−検出対には:基質としてのo−フェニレンジアミンと共に、ジニトロフェニル(DNP)に連結するddNTPおよび抗DNPアルカリホスファターゼ複合体(Harju 等, 1993)またはビオチン化ddNTPおよびホースラディッシュペルオキシダーゼ−結合ストレプトアビジンが含まれる(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO92/15712参照)。さらに他の代替の固相マイクロシーケンシング手順としては、Nyren 等 (1993)が、酵素的光度測定無機ピロリン酸検出アッセイ(enzymatic luminometric inorganic pyrophosphate detection assay)(ELIDA)によるDNAポリメラーゼ活性の検出に依拠する方法を記述している。
【0268】
固相ミニシーケンシング原理がオリゴヌクレオチドアレイフォーマットに適用される、単一ヌクレオチド多型の多重検出の方法がPastinen 等 (1997)により、記述されている。固体支持体(DNAチップ)に付着されるDNAプローブの高密度アレイを以下でさらに説明する。
【0269】
一態様において、本発明は、マイクロシーケンシングアッセイを実施することによって、本発明の1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーをゲノタイピングするためのポリヌクレオチドおよび方法を提供する。好ましいマイクロシーケンシングプライマーは、ヌクレオチド配列D1〜D18およびE1〜E18を含む。実施例4に列挙するマイクロシーケンシングプライマーは単に例示的なものであり、多型性ヌクレオチドのすぐ横に隣接する3’末端を有するいずれかのプライマーを使用してもよいことは理解されよう。同様に、マイクロシーケンシング解析は、本発明のいずれかの2対立遺伝子マーカーまたは本発明の2対立遺伝子マーカーのいずれかの組み合わせについて行うことが可能であることは理解されよう。本発明の一態様は、2対立遺伝子マーカー部位におけるヌクレオチドの同一性を決定するための、実施例4に列挙する1つまたは複数のマイクロシーケンシングプライマー、またはかかる長さが記載のプライマーと一致する範囲で、少なくとも8、12、15、20、25、30、40、または50個のその連続ヌクレオチドを含有し、対応する2対立遺伝子マーカーのすぐ上流の3’末端を有する断片を含む固体支持体である。
(3)ポリメラーゼおよびリガーゼに基づくミスマッチ検出アッセイ
一態様において、本発明は、ポリメラーゼおよび/またはリガーゼに基づくミスマッチ検出アッセイによって、生体サンプルにおける本発明の1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子を決定するためのポリヌクレオチドおよび方法を提供する。これらのアッセイは、ポリメラーゼおよびリガーゼの特異性に基づく。重合反応は、増幅用プライマーの3’末端の正確な塩基対上で特に厳密な必定条件で起こり、標的DNA配列とハイブリダイズした2つのオリゴヌクレオチドの結合は、ライゲーション部位、特に3’末端に近いミスマッチに対してかなり感受性が高い。本発明の2対立遺伝子マーカーを含有するDNA断片を増幅するための方法、プライマーおよび様々なパラメーターは、上記の「2対立遺伝子マーカーを含むDNA断片の増幅」でさらに説明される。
[対立遺伝子特異的な増幅用プライマー]
2対立遺伝子マーカーの2つの対立遺伝子間の識別もまた、対立遺伝子特異的な増幅、選択的方策によって達成することが可能であり、それによって対立遺伝子の一方が、他方の対立遺伝子の増幅をすることなく増幅される。対立遺伝子特異的な増幅については、プライマー対の少なくとも一方のメンバーが、それとハイブリダイズし、かつ増幅を開始させるのに、本発明の2対立遺伝子マーカーの多型塩基を含むCanIon遺伝子の領域と十分に相補的である。かかるプライマーは、2対立遺伝子マーカーの2つの対立遺伝子を識別することができる。
【0270】
これは、増幅用プライマーの一方の3’末端に多型塩基を配置することによって達成される。伸長はプライマーの3’末端から形成するため、この位置におけるミスマッチまたはこの位置付近のミスマッチは増幅に抑制作用を及ぼす。したがって、適切な増幅条件下にて、これらのプライマーは単に、それらの相補的対立遺伝子対して増幅を向ける。ミスマッチの正確な位置および対応するアッセイ条件の決定は、当業者には良く知られている。
[ライゲーション/増幅に基づく方法]
「オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ」(OLA)では、標的分子の一本鎖の隣接配列とハイブリダイズすることができるように設計される2つのオリゴヌクレオチドを使用する。そのオリゴヌクレオチドの一方をビオチン化し、他方を検出可能に標識する。正確な相補的配列が標的分子で見つけられる場合、そのオリゴヌクレオチドは、それらの末端が隣接するようにハイブリダイズし、捕獲かつ検出できるライゲーション基質を生じるだろう。OLAは、単一ヌクレオチド多型を検出することができ、Nickerson 等 (1990)によって記述されているように、PCRと有利に組み合わせることが可能である。この方法において、PCRを使用して、標的DNAの指数関数的増幅が達成され、次いで、OLAを用いて検出される。
【0271】
単一ヌクレオチド多型の検出に特に適している他の増幅方法には、「DNAの増幅」で上述のLCR(リガーゼ連鎖反応)、ギャップLCR(GLCR)が含まれる。LCRでは、特定の標的を指数関数的に増幅するために2対のプローブを使用する。オリゴヌクレオチドの各対の配列は、標的の同じ鎖の隣接配列とその対がハイブリダイズするのが可能なように選択される。かかるハイブリダイゼーションによって、鋳型依存性リガーゼに対して基質が形成される。本発明に従って、LCRは、2対立遺伝子マーカー部位の同じ鎖の近位および遠位配列を有するオリゴヌクレオチドで行うことができる。一実施形態において、いずれかのオリゴヌクレオチドが、2対立遺伝子マーカー部位を含むように設計されるだろう。かかる実施形態では、標的がオリゴヌクレオチド上の2対立遺伝子マーカーに相補的な特定のヌクレオチドを含有するか、または欠いている場合のみ、オリゴヌクレオチドが共にライゲートすることができるように、反応条件が選択される。代替の実施形態では、オリゴヌクレオチドは2対立遺伝子マーカーを含まず、そのため、それらが標的分子とハイブリダイズした場合、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるWO90/01069に記載のように「ギャップ」が生じる。次いで、このギャップは、相補的なdNTP(DNAポリメラーゼによって仲介される)で、またはオリゴヌクレオチドの追加の対によって「充填」される。したがって、各サイクルの終わりでは、各一本鎖は、次のサイクル中に標的としての働きをすることができる補体を有し、所望の配列の指数関数的な対立遺伝子特異的な増幅が得られる。
【0272】
リガーゼ/ポリメラーゼ仲介遺伝子ビット解析(Ligase/Polymerase-mediated Genetic Bit Analysis)(商標)は、核酸分子中の予め選択された部位におけるヌクレオチドの同一性を決定するもう1つの方法である(WO95/21271)。この方法は、プライマー分子の末端上の予め選択された部位に存在するヌクレオチドに相補的なヌクレオシド三リン酸の取り込み、その後のそれらの第2オリゴヌクレオチドへのライゲーションを含む。その反応は、反応の固相に付けられた特異的標識を検出することによって、または溶液中での検出によってモニターされる。
(4)ハイブリダイゼーションアッセイの方法
2対立遺伝子マーカー部位に存在するヌクレオチドの同一性を決定する好ましい方法は、核酸のハイブリダイゼーションを含む。かかる反応に便利に使用することができるハイブリダイゼーションプローブには、好ましくは本明細書で定義されるプローブが含まれる。サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロットハイブリダイゼーションおよび固相ハイブリダイゼーションを含む、いずれかのハイブリダイゼーションアッセイを用いることが可能である(Sambrook 等, 1989を参照のこと)。ハイブリダイゼーションは、相補的塩基対が原因の2本の一本鎖核酸による二重鎖構造の形成を意味する。ハイブリダイゼーションは、正確に相補的な核酸鎖間またはミスマッチのマイナー領域を含有する核酸鎖間で起こり得る。2対立遺伝子マーカーの一方の形とハイブリダイズし、他方とはハイブリダイズしない特異的プローブを設計することが可能であり、したがって、異なる対立形質間で識別することができる。対立遺伝子特異的なプローブは、対で使用される場合が多く、1対の一方のメンバーは、元の対立遺伝子を含有する標的配列に対して完全な一致を示し、他方のメンバーは、代替の対立遺伝子を含有する標的配列に対して完全な一致を示す。ハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子間でのハイブリダイゼーション強度の有意な差異が存在し、好ましくは本質的に2つの応答が存在し、それによってプローブ対立遺伝子の一方のみとハイブリダイズするように十分厳密であるべきである。プローブが正確に相補的な標的配列とのみハイブリダイズするであろう、厳密な、配列特異的なハイブリダイゼーション条件は、当技術分野ではよく知られている(Sambrook 等, 1989)。厳密な条件は配列依存的であり、異なる環境では違いがあるだろう。一般に、厳密な条件は、定義されたイオン強度およびpHにおいて特定の配列に対する融点(Tm)よりも約5℃低い温度であるように選択される。かかるハイブリダイゼーションは溶液中で行うことができるが、固相ハイブリダイゼーションアッセイを用いることが好ましい。本発明の2対立遺伝子マーカーを含有する標的DNAは、ハイブリダイゼーション反応前に増幅してもよい。サンプル中の特定の対立遺伝子の存在は、プローブと標的DNAとの間で形成される安定なハイブリッド二重鎖の存在または非存在を検出することによって決定される。ハイブリッド二重鎖の検出は、多数の方法によって行うことができる。標的またはプローブに結合する検出可能な標識を用いて、ハイブリッド二重鎖の検出を可能にする、種々の検出アッセイ方式がよく知られている。通常、ハイブリダイゼーション二重鎖は、ハイブリダイズしていない核酸から分離され、次いで、二重鎖に結合した標識が検出される。当業者であれば、洗浄段階を用いて、余分な標的DNAまたはプローブならびに未結合の複合体を洗い流すことができることは認識されよう。さらに、標準不均一アッセイ方式は、プライマーおよびプローブ上に存在する標識を用いてハイブリッドを検出するのに適している。
【0273】
最近開発された2種類のアッセイは、分離または洗浄の必要なく、ハイブリダイゼーションに基づいて対立遺伝子の識別をすることができる(Landegren U. 等, 1998参照)。TaqManアッセイは、TaqDNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用して、蓄積する増幅産物に特異的にアニールするDNAプローブを消化する。TaqManプローブは、蛍光エネルギー移動を介して相互作用するドナー−アクセプター染料対で標識化される。増幅中に進むポリメラーゼによるTaqManプローブの切断は、消光しているドナー染料からアクセプター染料を解離し、ドナーの蛍光が大幅に増大される。2つの突然変異体を検出するのに必要なすべての試薬を、反応の最初に評価することが可能であり、その結果はリアルタイムでモニターされる(Livak 等, 1995参照)。選択的な(alternative)均一ハイブリダイゼーションに基づく手順において、分子ビーコンが対立遺伝子の識別に使用される。分子ビーコンは、均一溶液中で特定の核酸の存在を報告するヘアピン形のオリゴヌクレオチドプローブである。それらがそれらの標的に結合した場合、内部で消光されたフルオロフォアの蛍光を戻す高次構造再構築を受ける(Tyagi 等, 1998)。
【0274】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドを使用して、生体サンプル中の2対立遺伝子マーカーを検出するためのハイブリダイゼーションアッセイで使用できるプローブを作製することができる。これらのプローブは、それらが好ましくは8〜50ヌクレオチドを含有し、かつそれにハイブリダイズするのに本発明の2対立遺伝子マーカーを含む配列に十分相補的であり、好ましくは、ただ1つのヌクレオチド変異に対して標的化された配列を識別することができるのに十分に特異的であることを特徴とする。特に好ましいプローブは、長さが25ヌクレオチドである。2対立遺伝子マーカーは、ポリヌクレオチドプローブの中心から4ヌクレオチド以内であることが好ましい。特に好ましいプローブにおいて、2対立遺伝子マーカーは、前記ポリヌクレオチドの中心にある。好ましいプローブは、表1に列挙するアンプリコンからなる群から選択されるヌクレオチド配列およびそれに相補的な配列またはその断片を含み、前記断片は、少なくとも約8個の連続ヌクレオチド、好ましくは10、15、20個、さらに好ましくは25、30、40、47、または50個の連続ヌクレオチドを含み、多型塩基を含有する。好ましいプローブは、P1〜P18からなる群から選択されるヌクレオチド配列およびそれに相補的な配列を含む。好ましい実施形態において、多型塩基(1つまたは複数)は、前記ポリヌクレオチドの中心から5、4、3、2、1ヌクレオチド以内、さらに好ましくは前記ポリヌクレオチドの中心にある。
【0275】
本発明のプローブは標識化するか、または固体支持体上に固定化することが好ましい。標識および固体支持体については、「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」でさらに説明される。プローブは、「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」で記述されているように伸長不可能であることが可能である。
【0276】
対立遺伝子特異的なプローブとのハイブリダイゼーションをアッセイすることによって、所定のサンプルにおける2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子の存在または非存在を検出することができる。アレイ方式におけるハイスループットの並行ハイブリダイゼーションは特に、「ハイブリダイゼーションアッセイ」内に包含され、以下に説明される。
(5)オリゴヌクレオチドのアドレス指定可能なアレイとのハイブリダイゼーション
オリゴヌクレオチドアレイに基づくハイブリダイゼーションアッセイは、完全にマッチする、かつミスマッチの標的配列変異体に対する、短いオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション安定性の差異に依拠する。多型情報への効率的なアクセスが、選択された位置で固体支持体(例えば、チップ)へ付着されたオリゴヌクレオチドプローブの高密度アレイを含む基本構造によって得られる。各DNAチップは、格子状に配列され、10セントサイズに小型化された何千から何百万の個々の合成DNAプローブを含有する。
【0277】
チップ技術は既に、多数のケースで適用されて成果をおさめている。例えば、変異のスクリーニングは、BRCA1遺伝子において、酵母変異株において、およびHIV−1ウイルスのプロテアーゼ遺伝子において着手されている(Hacia 等, 1996; Shoemaker 等, 1996; Kozal 等, 1996)。2対立遺伝子多型を検出するのに使用される様々な形式のチップは、Affymetrix社(GeneChip(商標))、Hyseq社(HyChipおよびHyGnostics)、およびProtogene Laboratories社によって受託で製造することができる。
【0278】
一般に、これらの方法では、個体からの標的核酸配列セグメントに相補的なオリゴヌクレオチドプローブのアレイを用い、標的配列は多型性マーカーを含む。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるEP 785280には、単一ヌクレオチド多型を検出するためのタイリング方法が記述されている。簡単に言えば、アレイは一般に、多数の特定の多型に対して「タイリング」される(タイルのように並べられる)。「タイリング」とは通常、対象の標的配列に相補的な配列、ならびにその配列の予め選択された変異、例えば、ヌクレオチドの基本セットの1つまたは複数のメンバーでの1つまたは複数の所定の位置の置換で構成される、定義されたセットのオリゴヌクレオチドプローブの合成を意味する。タイリング法はさらに、PCT出願番号WO95/11995に記述されている。特定の態様において、アレイは、多数の特定の、同定された2対立遺伝子マーカー配列に対してタイリングされる。特に、アレイは多数の検出ブロックを含むようにタイリングされ、各検出ブロックは、特定の2対立遺伝子マーカーまたは一組の2対立遺伝子マーカーに特異的である。例えば、検出ブロックは、特定の多型を含む配列セグメントに及ぶ、多数のプローブを含むようにタイリングされる。各対立遺伝子に相補的なプローブを確実にするために、プローブは、2対立遺伝子マーカーにおいて異なる対で合成される。多型塩基において異なるプローブに加えて、一置換プローブもまた一般に、検出ブロック内でタイリングされる。これらの一置換プローブは、多型からいずれかの方向に、一定数の塩基以下の塩基を有し、残存するヌクレオチド(A、T、G、CおよびUから選択される)で置換される。通常、タイリングされた検出ブロックにおけるプローブは、2対立遺伝子マーカーから5塩基離れた位置までの、およびその位置を含む配列位置の置換を含むだろう。一置換プローブは、タイリングされたアレイに対して内部標準を提供し、実際のハイブリダイゼーションと人為結果のクロスハイブリダイゼーションを区別する。標的配列とのハイブリダイゼーションおよびアレイの洗浄が完了したら、アレイをスキャンして、標的配列がハイブリダイズするアレイ上の位置を決定する。次いで、スキャンしたアレイからのハイブリダイゼーションデータを解析し、2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子(1つまたは複数)がサンプル中に存在するかどうかを同定する。ハイブリダイゼーションおよびスキャンは、PCT出願番号WO92/10092およびWO95/11995および米国特許第5,424,186号に記述されているように行われる。
【0279】
このように一部の実施形態では、チップは、長さ約15ヌクレオチドの断片の核酸配列アレイを含む。更なる実施形態では、チップは、表1に列挙されるアンプリコンからなる群から選択される配列およびそれに相補的な配列、またはその断片の少なくとも1つを含むアレイを含み、前記断片は、少なくとも約8個の連続ヌクレオチド、好ましくは10、15、20個、さらに好ましくは25、30、40、47、もしくは50個の連続ヌクレオチドを含み、多型塩基を含有する。好ましい実施形態において、多型塩基は、前記ポリヌクレオチドの中心から5、4、3、2、1ヌクレオチド以内、さらに好ましくは前記ポリヌクレオチドの中心にある。一部の実施形態では、チップは、本発明のこれらのポリヌクレオチドの少なくとも2、3、4、5、6、7、8個以上のアレイを含む。固体支持体および固体支持体に付着される本発明のポリヌクレオチドについては、「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」にさらに記述される。
(6)集積システム
多型を解析するのに使用される他の技術には、単機能デバイスにおける、PCRおよびキャピラリー電気泳動反応などのプロセスを縮小化し、区分化するマルチコンポーネント集積システムが含まれる。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,589,136号に、かかる技術の例が開示されており、そこには、チップにおけるPCR増幅とキャピラリー電気泳動の集積化が記述されている。
【0280】
集積システムは、マイクロ流体システムが使用される場合に主に考えることができる。これらのシステムは、マイクロチップ上に含まれるガラス、シリコン、石英、またはプラスチック製のウエハ上に設計されたマイクロチャンネルのパターンを含む。サンプルの移動は、マイクロチップの異なる領域にわたってかけられる電気的、電気浸透の、または静水学的力によって制御され、可動部を有さない機能的な微小バルブおよびポンプが作製される。
【0281】
2対立遺伝子マーカーをゲノタイピングするために、マイクロ流体システムによって、核酸増幅、マイクロシークエンシング、キャピラリー電気泳動およびレーザー誘導蛍光検出などの検出方法を集積化することが可能である。
〈本発明の2対立遺伝子マーカーを用いた遺伝分析の方法〉
異なる方法を、複合形質の遺伝分析に利用することができる(LanderおよびSchork, 1994参照)。罹病性遺伝子の検索は、2つの主要な方法;家系研究を用いた、遺伝子座と推定上の形質遺伝子座との間の同時分離に対して証拠が求められる連鎖アプローチ;および対立遺伝子と形質もしくは対立遺伝子を生じる形質との間の統計的に有意な関連に対して証拠が求められる関連アプローチ;を用いて行われる(Khoury 等, 1993)。一般に、本発明の2対立遺伝子マーカーは、当技術分野で公知のいずれかの方法における使用が見出され、遺伝子型と表現型との間の統計学的に有意な相関性が実証される。2対立遺伝子マーカーは、パラメトリックおよびノンパラメトリックな連鎖解析法に使用することが可能である。好ましくは、本発明の2対立遺伝子マーカーを使用して、罹患家系を用いる必要なく、かつ複合および散発性形質と関連する遺伝子の同定を可能にする、関連研究、アプローチを用いて、検出可能な形質に関連する遺伝子を同定する。
【0282】
本発明の2対立遺伝子マーカーを用いた遺伝分析は、任意のスケールで行うことが可能である。本発明の2対立遺伝子マーカーの全セット、または候補遺伝子に対応する、本発明の2対立遺伝子の任意のサブセットが使用される。さらに、本発明の2対立遺伝子マーカーを含む任意のセットの遺伝子マーカーが使用される。本発明の2対立遺伝子マーカーと組み合わせて、遺伝子マーカーとして使用できる1セットの2対立遺伝子多型が、WO98/20165に記述されている。上述のように、本発明の2対立遺伝子マーカーは、ヒトゲノムの完全なまたは部分的な遺伝子地図に含まれる。これらの異なる使用は、本発明および特許請求の範囲において具体的に企図される。
[連鎖解析]
連鎖解析は、家系内の世代を通じて遺伝子マーカーの伝達と特定の形質の伝達との間の相関性を確立することに基づく。したがって、連鎖解析の目的は、系統における対象の形質で同時分離を示すマーカー遺伝子座を検出することである。
【0283】
パラメトリックな方法
データが連続世代から入手可能な場合、遺伝子座対間の連鎖の程度を研究する機会がある。組換え画分を推定することによって、遺伝子座を遺伝子地図上に順序付けて、配置することができる。遺伝子マーカーである遺伝子座位を用いて、遺伝子マップを確立することができ、マーカーと形質との間の連鎖の強さを計算し、それを使用して、それらの形質に影響を及ぼすマーカーおよび遺伝子の相対位置を示すことができる(Weir, 1996)。連鎖解析の古典的な方法は、オッズ(ロッド)スコア法の対数である(Morton, 1955; Ott, 1991参照)。ロッドスコアの計算には、疾患の遺伝様式の特定化が必要である(パラメトリックな方法)。一般に、連鎖解析を用いて同定された候補領域の長さは2〜20Mbである。候補領域を上述のように同定したら、更なるマーカーを用いて組換え個体の解析を行うことによって、候補領域をさらに描写することが可能となる。連鎖解析の研究は一般的に、最高で5,000個のマイクロサテライトマーカーの使用に依拠しており、したがって、連鎖解析の理論的に達成可能な最大限の解明は平均で約600kBに制限される。
【0284】
連鎖解析は、明らかなメンデル遺伝パターンを示し、かつ高い浸透度を有する単純な遺伝形質をマッピングするためにうまく適用されている(つまり、対立遺伝子の形質ポジティブなキャリアの数と、集団におけるキャリアの総数との比)。しかしながら、パラメトリックな連鎖解析には様々な欠点がある。第一に、研究された各形質に適切な遺伝モデルの選択へのそれらの依存によって制限される。さらに、既に言及されているように、連鎖解析を用いて達成可能な解明は制限され、連鎖解析によって最初に同定される通常2Mb〜20Mbの領域の解析を改良するために、補足的な研究が必要とされる。さらに、パラメトリックな連鎖解析のアプローチは、同義遺伝子および/または環境因子を合わせた作用が原因の形質など、複合遺伝形質に適用される場合には、難しいことが分かっている。ロッドスコア解析でこれらの因子を適切にモデリングするのは非常に困難である。かかる場合では、RischおよびMerikangas (1996)によって最近論述されているように、これらの状況に連鎖解析を適用するのに必要な、適切な数の罹患家族を集めるのに、多大な労力および費用が必要である。
【0285】
ノンパラメトリックな方法
連鎖解析に対する、いわゆるノンパラメトリックな方法の利点は、疾患の遺伝様式の特定化が必要なく、複合形質の解析にさらに有用である傾向があることである。ノンパラメトリックな方法では、罹患した親族が期せずして予想よりも多くの場合に領域の同一コピーを受け継ぐことを示すことによって、染色体領域の遺伝パターンがランダムなメンデル分離と一致しないことを証明しようと試みている。罹患親族は、不完全な浸透度およびポリジーン遺伝子の存在下においてでさえ、過剰な「対立遺伝子共有」を示すはずである。ノンパラメトリックな連鎖解析において、2個体でのマーカー遺伝子座における一致の程度は、状態同一(IBS)の対立遺伝子数によって、または同祖同一(IBD)の対立遺伝子数によって測定することができる。罹患同胞対解析はよく知られている特別のケースであり、これらの方法の中で最も単純な形式である。
【0286】
本発明の2対立遺伝子マーカーは、パラメトリックな連鎖解析とノンパラメトリックな連鎖解析のどちらでも使用することができる。2対立遺伝子マーカーは、複合形質に関与する遺伝子のマッピングを可能にするノンパラメトリックな方法で使用することが好ましい。本発明の2対立遺伝子マーカーは、複合形質に影響を及ぼす遺伝子をマッピングするのためのIBD−およびIBS−法のどちらでも使用することができる。かかる研究において、2対立遺伝子マーカーの高密度を利用して、隣接するいくつかの2対立遺伝子マーカー座位をプールし、多数の対立遺伝子マーカーによって得られる効率を達成することが可能である(Zhao 等, 1998)。
[集団の関連研究]
本発明は、CanIon遺伝子が検出可能な形質と関連するかどうかを同定するための、本発明の2対立遺伝子マーカーを用いた方法を含む。一実施形態において、本発明は、2対立マーカー対立遺伝子もしくは2対立遺伝子マーカーハプロタイプと形質との間の関連性を検出する方法を含む。さらに、本発明は、本発明のいずれかの2対立遺伝子マーカー対立遺伝子と連鎖不平衡にある対立遺伝子を生じる形質を同定する方法を含む。
【0287】
上述のように、代替のアプローチを用いて、関連研究;ゲノムワイドな関連研究、候補領域関連研究および候補遺伝子関連研究を行うことができる。好ましい実施形態において、本発明の2対立遺伝子マーカーを使用して、候補遺伝子関連研究が行われる。候補遺伝子解析は明らかに、形質の生物学に関する一部の情報が入手可能である場合、特定の形質に関連する遺伝子および遺伝子多型の同定への近道のアプローチを提供する。さらに、本発明の2対立遺伝子マーカーは、ゲノムワイドな関連研究を実施するために、ヒトゲノムの遺伝子マーカーのいずれかの地図に組み込むことが可能である。2対立遺伝子マーカーの高密度地図を作製する方法は、米国特許仮出願第60/082,614号に記述されている。本発明の2対立遺伝子マーカーはさらに、ゲノムの特定の候補領域(例えば、特定の染色体または特定の染色体セグメント)のいずれかの地図に組み込むことが可能である。
【0288】
上述のように、関連研究は一般集団内で行うことが可能であり、罹患家系の関連個体で行われる研究に限定されない。関連研究は、散発性または多因子形質の解析を可能にすることから、非常に価値がある。さらに、関連研究は、連鎖研究よりも対立遺伝子を生じる形質をかなり精密にマッピングすることを可能にする、精密スケールのマッピングの強力な方法である。系統に基づく研究は単に、対立遺伝子を生じる形質の位置をしぼるだけである場合が多い。したがって、本発明の2対立遺伝子マーカーを用いた関連研究を用いて、連鎖解析法により同定された候補領域における対立遺伝子を生じる形質の位置をリファインすることができる。さらに、対象の染色体セグメントが同定されていれば、対象の領域における本発明の候補遺伝子などの候補遺伝子の存在によって、対立遺伝子を生じる形質の同定への近道が得られる。本発明の2対立遺伝子マーカーを使用して、候補遺伝子が形質に関連することを実証することができる。かかる使用は本発明において具体的に企図される。
[集団における2対立遺伝子マーカー対立遺伝子または2対立遺伝子マーカーハプロタイプの頻度の決定]
関連研究は、遺伝子座間の対立遺伝子のセットに対する頻度間の関係を探索する。
【0289】
集団における対立遺伝子の頻度の決定
集団での2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子頻度を、「2対立遺伝子マーカーに対して個体をゲノタイピングする方法」という表題で上述されている方法の1つ、またはこの意図される目的に適したいずれかのゲノタイピング手順を用いて決定することができる。プールされた、または個々のゲノタイピングサンプルによって、集団における2対立遺伝子マーカー対立遺伝子の頻度を決定することができる。必要とされるゲノタイピングの回数を減らす1つの方法は、プールしたサンプルを使用することである。プールしたサンプルを使用することでの主な障害は、プールをセットアップする際に正確なDNA濃度を決定する精度および再現性の点である。個々のサンプルをゲノタイピングすることによって、より高い感度、再現性および精度が得られ;それが本発明で使用するのに好ましい方法である。各個体は別々にゲノタイピングし、単一遺伝子の計数を適用して、所定の集団における遺伝子型の、または2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子の頻度を決定することが好ましい。
【0290】
本発明は、集団における対立遺伝子の頻度を推定する方法であって:
a)本発明による前記2対立遺伝子マーカーに対して前記集団からの個体をゲノタイピングする段階;b)前記集団における前記2対立遺伝子マーカーの比例的表現(representation)を決定する段階;を含む方法にもまた関する。さらに、本発明の集団における対立遺伝子の頻度を推定する方法は、この開示に、または以下に記述される、単独またはいずれかの組み合わせで指定される更なる制限を有する方法を包含し;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A12およびA16、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、集団における2対立遺伝子マーカー対立遺伝子の頻度の決定は、前記集団における各個体のゲノムに存在する前記2対立遺伝子マーカーの両方のコピーに対してヌクレオチドの同一性を決定し、集団に対して前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーにおける前記ヌクレオチドの比例的表現を計算することによって達成され;任意に、比例的表現の決定は、前記集団における、代表数の個体または各個体から得たプールされた生体サンプルで本発明のゲノタイピング法を実施し、全体と比較した前記ヌクレオチドの比例的な量を計算することによって達成される。
集団におけるハプロタイプの頻度の決定
2倍体個体が複数の遺伝子座においてヘテロ接合性である場合、ハプロタイプの配偶子相は不明である。家系における系統情報を用いて、時として配偶子相を推論することができる(Perlin 等, 1994)。系統情報が入手可能でない場合、異なる方策を使用してもよい。ある可能性は、複数部位のヘテロ接合性2倍体を分析から排除し、ホモ接合体および単一部位のヘテロ接合体のみを保持することができることであるが、このアプローチは、起こり得るサンプルの偏り、低頻度のハプロタイプの過小評価につながる場合がある。他の可能性は、例えば、非対称PCR増幅によって(Newton等1989; Wu 等, 1989参照)、または限界希釈による単一染色体の単離によって、続いてPCR増幅(Ruano 等, 1990参照)によって、単一染色体を別々に研究することができることである。さらに、特定の対立遺伝子を二重PCR増幅することによって、十分に近い2対立遺伝子マーカーに対して、サンプルをハプロタイピングすることが可能である(Sarkar, G.およびSommer S. S., 1991)。これらのアプローチは、技術的に複雑であり、追加の費用がかかり、大きなスケールでの一般化を欠いており、または偏りを生じる可能性があることから、完全に満足のいくものではない。これらの困難を克服するために、Clark, A.G. (1990)により紹介されているPCR増幅されたDNA遺伝子型の相を推定するアルゴリズムを使用することが可能である。簡単に言えば、その原則は、明瞭な個体、つまり完全なホモ接合体および単一部位のヘテロ接合体を調べることによって、サンプルに存在するハプロタイプの予備リストを埋めることを開始することである。次いで、同一サンプルにおける他の個体を、先に認識されたハプロタイプの可能性のある出現に対してスクリーニングする。それぞれのポジティブの同定のために、すべての個体の相情報が解決されるか、または未解決として識別されるまで、認識されたハプロタイプのリストに、相補的なハプロタイプを加える。この方法では、各マルチヘテロ接合性個体に単一ハプロタイプを割り当て、いくつかのハプロタイプは、複数のヘテロ接合性部位がある場合には可能である。代替方法として、各個体にハプロタイプを割り当てることなく、集団におけるハプロタイプ頻度を推定する方法を使用することができる。ハーディ・ワインベルグ平衡(任意交配)の仮定の下でハプロタイプ頻度の最尤推定値を導く、期待値最大化(EM)アルゴリズムに基づく方法(pster 等, 1977)を使用することが好ましい。EMアルゴリズムは、データが不明瞭および/または不完全である場合に有用である推定への、一般化された反復最尤法アプローチである。EMアルゴリズムを用いて、ヘテロ接合体をハプロタイプに分ける。ハプロタイプの推定は、「統計学的方法」という表題で以下にさらに記述される。集団におけるハプロタイプの頻度を決定または推定するための当技術分野で公知の他のいずれかの方法を使用することができる。
【0291】
本発明は、集団において1セットの2対立遺伝子マーカーに対してハプロタイプの頻度を推定する方法であって、a)前記集団における各個体に対して、本発明による少なくとも1つのCanIon関連2対立遺伝子マーカーをゲノタイピングする段階;b)前記集団における各個体のゲノムに存在する第2の2対立遺伝子マーカーの両方のコピーに対して、前記第2の2対立遺伝子マーカーにおけるヌクレオチドの同一性を決定することによって、第2の2対立遺伝子マーカーをゲノタイピングする段階;c)段階a)およびb)で決定されたヌクレオチドの同一性にハプロタイプ決定方法を適用し、前記頻度の推定値を得る段階;を含む方法もまた包含する。さらに、本発明のハプロタイプの頻度を推定する方法は、この開示に、または以下に記述される、単独またはいずれかの組み合わせで指定される制限を有する方法を包含し;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A12およびA16、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記ハプロタイプ決定法は、特定の対立遺伝子の非対称PCR増幅、二重PCR増幅、クラーク(Clark)アルゴリズム、または期待値最大化アルゴリズムによって行われる。
[連鎖不平衡解析]
連鎖不平衡は、2つ以上の座位における対立遺伝子の非ランダムな関係であり、疾患形質に関与する遺伝子をマッピングする強力なツールである(Ajioka R.S. 等, 1997参照)。2対立遺伝子マーカーは、ヒトゲノムで密な間隔であり、かつ遺伝子マーカーの他の種類(RFLPまたはVNTRマーカーなどの)よりも多数でゲノタイピングすることができるため、連鎖不平衡に基づく遺伝分析で特に有用である。
【0292】
疾患変異が最初に(新たな変異または変異キャリアの移動によって)集団に導入された場合、それは必然的に、単一染色体上に、したがって連結したマーカーの単一「背景」または「祖先」のハプロタイプ上に存在する。結果として、これらのマーカーと疾患変異との間には完全な不平衡が存在し:特定のセットのマーカー対立遺伝子の存在下でのみ疾患変異が見つけられる。続く世代を通して、組換え事象が疾患変異とこれらのマーカーの多型との間に起こり、不平衡は次第に散逸する。この散逸のペースは、組換え頻度の関数であり、そのため、疾患遺伝子に最も近いマーカーは、さらに離れているマーカーよりも高いレベルの不平衡を表すだろう。組換えによって破壊されていない場合、「祖先」のハプロタイプおよび異なる遺伝子座におけるマーカー対立遺伝子間の連鎖不平衡を、系統のみならず、集団によってもまた追跡することができる。連鎖不平衡は通常、1つの遺伝子座における1つの特定の対立遺伝子と、第2遺伝座におけるもう1つの特定の対立遺伝子との間の関連性として見なされる。
【0293】
疾患とマーカー遺伝子座との間のパターンまたは曲線は、疾患遺伝子座で起こる最大を示すと考えられる。結果として、疾患対立遺伝子と、密に連結した遺伝子マーカーとの間の連鎖不平衡の量から、疾患遺伝子の位置に関する価値ある情報が得られる。疾患遺伝子座の精密スケールのマッピングには、研究領域におけるマーカー間に存在する連鎖不平衡パターンのいくつかの知識を有することが有用である。上述のように、連鎖不平衡解析によって達成されたマッピングの分解能は、連鎖研究よりもはるかに高い。連鎖不平衡解析と組み合わせた2対立遺伝子マーカーの密度が高いことによって、精密スケールのマッピングに強力なツールが得られる。連鎖不平衡を計算するための異なる方法は、「統計学的方法」という表題の下で以下に記述される。
[形質−マーカー関連の集団に基づく症例対照研究]
上述のように、同一染色体上の異なる遺伝子座における特定の対立遺伝子対の出現はランダムではなく、ランダムからのずれは連鎖不平衡と呼ばれる。関連研究は集団頻度に焦点を合わせており、連鎖不平衡の現象に依拠している。所定の遺伝子における特定の対立遺伝子が、特定の形質を生じることに直接関与している場合、その頻度は統計的に、形質ネガティブな集団またはランダムな対照集団における頻度と比較して、罹患した(形質ポジティブ)集団では増大するだろう。連鎖不平衡が存在する結果として、形質の原因となる対立遺伝子を保有するハプロタイプに存在する他のすべての対立遺伝子の頻度もまた、形質ネガティブな個体またはランダム対照と比較して、形質ポジティブな個体において増大するだろう。したがって、形質と、形質の原因となる対立遺伝子と連鎖不平衡にある対立遺伝子(特に、2対立遺伝子マーカー対立遺伝子)との間の関連は、その特定領域における形質関連遺伝子の存在を示唆するのに十分であるだろう。2対立遺伝子マーカーに対して、症例対照集団をゲノタイピングして、形質の原因となる対立遺伝子を厳密に位置付ける関連性を同定することができる。形質と関連する所定の1つのマーカーと連鎖不平衡にある任意のマーカーは形質と関連するだろう。限定数の遺伝子多型(特に、2対立遺伝子マーカー)の症例対照集団における相対頻度を、形質の原因となる対立遺伝子を見つけるために、すべての可能性のある機能的多型をスクリーニングする代替として解析することが、連鎖不平衡によって可能となる。関連研究では、血縁関係のない症例対照集団においてマーカー対立遺伝子の頻度を比較し、関連研究は、複合形質を検出するための強力なツールである。
症例対照集団(選択基準)
集団に基づく関連研究は、家族性遺伝に関係せず、症例対照集団において特定の遺伝子マーカーまたは1セットのマーカーの罹患率を比較する。それらは、血縁関係のないケース(罹患した、または形質ポジティブな)個体および血縁関係のない対照(罹患していない、形質ネガティブまたはランダムな)個体の比較に基づく症例対照研究である。対照群は、罹患していない、または形質ネガティブな個体で構成されることが好ましい。さらに、対照群は、ケース集団と民族的に一致する。さらに、対照群は、研究中の形質の主要な公知の混乱因子に関してケース集団と一致することが好ましい(例えば、年齢依存性形質に対しては年齢一致)。理想的には、2つのサンプルにおける個体が、それらの疾患症状でのみ異なると考えられるように対をなす。「形質ポジティブな集団」、「ケース集団」および「罹患した集団」という用語は、本明細書において同義で用いられる。
【0294】
関連研究を用いた複合形質の解析における重要な段階は、症例対照集団の選択である(LanderおよびSchork, 1994参照)。症例対照集団の選択での主要な段階は、所定の形質または表現型の臨床的定義である。本明細書で提案された関連研究によって、形質ポジティブおよび形質ネガティブな表現型群に含まれる個体を注意深く選択することによって、いずれの遺伝形質も解析することができる。4つの基準:臨床的表現型、発病年齢、家族歴および重症度が有用である場合が多い。連続的または量的形質(例えば、血圧など)の選択手順は、非重複の表現型を有するこれらの形質ポジティブおよび形質ネガティブな集団の個体に含めるために、研究中の形質の表現型分布の反対端における個体を選択することを含む。症例対照集団は、表現型的に均一な集団を含むことが好ましい。形質ポジティブおよび形質ネガティブな集団は、それぞれ、研究中の全集団の1〜98%、好ましくは1〜80%、さらに好ましくは1〜50%、さらに好ましくは1〜30%、最も好ましくは1〜20%に相当し、かつ、好ましくは非重複の表現型を示す個体の中で選択される、個体の表現型的に均一な集団を含む。2つの形質表現型間の差異が明らかであるほど、2対立遺伝子マーカーとの関連性を検出する確率も高くなる。これらの劇的に異なるが、比較的均一な表現型の選択により、研究中の集団のサンプルサイズが十分有意であるという条件で、関連研究での効率的な比較および遺伝子レベルでの著しい差異の可能性のある検出が可能となる。
【0295】
好ましい実施形態では、50〜300の形質ポジティブな個体、好ましくは約100個体の第1群が、それらの表現型に従って集められる。同様な数の対照個体もかかる研究に含まれる。
関連解析
本発明は、以下の段階:a)本発明のゲノタイピング法に従って、形質ポジティブな集団において少なくとも1つのCanIon関連2対立遺伝子マーカーの頻度を決定する段階;b)本発明のゲノタイピング法に従って、対照集団において前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーの頻度を決定する段階;c)統計的に有意な関連性が前記遺伝子型と前記表現型との間に存在するかどうかを決定する段階;を含む、遺伝子型と表現型との関連性を検出する方法もまた包含する。さらに、遺伝子型と表現型との関連性を検出する本発明の方法は、この開示に、または以下に記述される、単独またはいずれかの組み合わせで指定される制限を有する方法を包含し:任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A12およびA16、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記対照集団は、形質ネガティブな集団、またはランダムな集団であり;任意に、前記ゲノタイピング段階a)およびb)それぞれは、前記集団それぞれに由来のプールされた生体サンプルで行われ;任意に、前記ゲノタイピング段階a)およびb)それぞれは、前記集団における各個体に由来する生体サンプルまたはそのサブサンプルで別々に行われる。
【0296】
候補遺伝子を保有する領域に由来する2対立遺伝子マーカーを用いて、関連研究を実施する一般的な方策は、両方の群において本発明の2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子頻度を測定し、かつ統計的に比較するために、個体の2つの群(症例対照集団)をスキャンすることである。
【0297】
統計的に有意な形質との関連性が、解析された2対立遺伝子マーカーの少なくとも1つまたは複数に関して同定された場合、どちらかの関連する対立遺伝子が形質を生じる直接的な原因であるか(つまり、関連性のある対立遺伝子が形質の原因となる対立遺伝子)、あるいは関連する対立遺伝子が形質の原因となる対立遺伝子と連鎖不平衡である可能性が高いと仮定することができる。候補遺伝子の機能に関して、関連する対立遺伝子の特異性は通常、関連する対立遺伝子と形質との間の関係(因果的または連鎖不平衡)への更なる洞察を与える。証拠から、候補遺伝子内の関連する対立遺伝子が最もおそらく、形質の原因となる対立遺伝子ではなく、実際の形質の原因となる対立遺伝子と連鎖不平衡である場合、次いで、関連マーカーの近傍をシーケンシングし、反復法で明らかにされる多型で更なる関連研究を行うことによって、形質の原因となる対立遺伝子を見つけることができる。
【0298】
関連研究は通常、2つの連続段階で行われる。第1段階では、候補遺伝子からの減少した数の2対立遺伝子マーカーの頻度が、形質ポジティブおよび対照集団で決定される。解析の第2段階では、所定の形質の原因となる遺伝子座の位置が、関連領域からの高密度マーカーを用いてさらにリファインされる。しかしながら、研究中の候補遺伝子の長さが比較的短い場合には、CanIonの場合と同様に、単一段階は有意な関連性を確立するのに十分である。
ハプロタイプ解析
上述のように、疾患対立遺伝子を保有する染色体が最初に、変異または移入の結果として集団において現れる場合、変異体対立遺伝子は必然的に、1セットの連結したマーカーを有する染色体:祖先ハプロタイプ上に存在する。このハプロタイプを集団によって追跡することが可能であり、所定の形質とのその統計学的関連性を解析することができる。ハプロタイプ研究とも呼ばれる多点関連研究で単一ポイント(対立遺伝子)関連研究を補足することによって、関連研究の統計学的能力が向上する。このように、ハプロタイプの関連研究によって、祖先キャリアのハプロタイプの頻度および種類を定義することが可能となる。ハプロタイプ解析は、それによって個々のマーカーを要する解析の統計学的能力が向上するという点で重要である。
【0299】
ハプロタイプ頻度解析の第1段階において、本発明の同定された2対立遺伝子マーカーの種々の組み合わせに基づく、可能性のあるハプロタイプの頻度が決定される。次いで、ハプロタイプ頻度を、形質ポジティブな個体および対照個体の異なる集団に関して比較する。統計的に有意な結果を得るためにこの解析にかけられるべき形質ポジティブな個体の数は、通常30〜300の範囲であり、個体の好ましい数は50〜150の範囲である。同じ考慮事項が、研究に使用される、罹患していない個体(またはランダム対照)の数に当てはまる。第1の解析の結果から、症例対照集団におけるハプロタイプ頻度が得られ、値が求められた各ハプロタイプ頻度に対して、p値およびオッズ比が計算される。統計学的に有意な関連性が見出された場合、研究中の形質で影響を受ける所定のハプロタイプを保有する個体に対して、相対危険を近似することができる。
【0300】
本発明のその他の実施形態は、以下の段階:a)ハプロタイプの頻度を推定するために、本発明の方法に従って、形質ポジティブな集団において少なくとも1つのハプロタイプの頻度を推定する段階;b)ハプロタイプの頻度を推定するために、本発明の方法に従って、対照集団において前記ハプロタイプの頻度を推定する段階;c)統計的に有意な関連性が前記ハプロタイプと前記表現型との間に存在するかどうかを決定する段階;を含む、ハプロタイプと表現型との間の関連性を検出する方法を包含する。さらに、ハプロタイプと表現型との関連性を検出する本発明の方法は、この開示に、または以下に記述される制限を有する方法を包含し:任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A1〜A17、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記CanIon関連2対立遺伝子マーカーは、A12およびA16、およびその補体、または任意にそれと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーからなる群から選択され;任意に、前記対照集団は、形質ネガティブな集団、またはランダムな集団である。任意に、前記方法は、段階c)の前に前記形質ポジティブな集団および前記対照集団において表現型を決定する追加の段階を含む。
相互作用解析
本発明の2対立遺伝子マーカーは、ポリジーンの相互作用から生じる検出可能な形質と関連する2対立遺伝子マーカーのパターンを同定するのにも使用することができる。連鎖していない遺伝子座における対立遺伝子間の遺伝的相互作用の解析には、本明細書で記述される技術を用いた個々のゲノタイピングが必要である。適切なレベルの統計的有意性を有する2対立遺伝子マーカーの選択されたセット間での対立遺伝子相互作用の解析は、ハプロタイプ解析と見なすことができる。相互作用解析は、第1遺伝子座に対する所定のハプロタイプに関して症例対照集団を層別化し、各分集団において第2遺伝子座についてハプロタイプ解析を実施することを含む。
【0301】
関連研究で使用される統計学的方法をさらに以下に記述する。
[関連性の存在下での連鎖の試験]
本発明の2対立遺伝子マーカーはさらに、TDT(伝達/不平衡試験)で使用することが可能である。TDTでは、連鎖および関連性の両方について試験し、TDTは集団の層別化によって影響を受けない。TDTには、罹患した個体およびそれらの親のデータまたは親の代わりに、罹患していない兄弟姉妹からのデータが必要である(Spielmann S. 等, 1993; Schaid D.J. 等, 1996, Spielmann S. および Ewens W.J., 1998を参照のこと)。一般に、このように組み合わされた試験によって、別々の解析によって生じる偽陽性のエラーが低減される。
〈統計学的方法〉
一般に、形質および遺伝子型が統計学的に有意な相関性を示すかどうかを試験するための当技術分野で公知の方法を使用することが可能である。
【0302】
(1)連鎖解析における方法
連鎖解析に有用な統計学的方法およびコンピュータープログラムは、当業者にはよく知られている(Terwilliger J.D. and Ott J., 1994; Ott J., 1991参照)
(2)集団におけるハプロタイプ頻度を推定する方法
上述のように、遺伝子型をスコアリングする場合、ヘテロ接合体を区別することが可能でないことが多く、そのため、ハプロタイプ頻度を容易に推測することができない。配偶子相が未知の場合には、ハプロタイプ頻度を多遺伝子座の遺伝子型データから推定することができる。当業者に公知のいずれかの方法を用いて、ハプロタイプ頻度を推定することができる(Lange K., 1997; Weir, B.S., 1996参照)。好ましくは、最尤ハプロタイプ頻度を期待値最大化(EM)アルゴリズムを用いてコンピューターで計算する(Dempster 等, 1977; Excoffier L. およびSlatkin M., 1995参照)。この手順は、配偶子相が未知の場合に、多遺伝子座の遺伝子型データからハプロタイプ頻度の最尤推定値を得ることを目的とする反復プロセスである。ハプロタイプの推定は通常、例えばEM−HAPLOプログラム(Hawley M. E. 等, 1994)またはArlequinプログラム(Schneider 等, 1997)を用いたEMアルゴリズムを適用することによって実施される。EMアルゴリズムは、推定への、一般化された反復最尤法アプローチであり、それを以下に簡潔に説明する。
【0303】
「集団におけるハプロタイプ頻度を推定する方法」という本発明のセクションで、表現型とは、未知のハプロタイプ相を有する多遺伝子座の遺伝子型を意味すると考えられることを留意されたい。遺伝子型とは、公知のハプロタイプ相を有する多遺伝子座の遺伝子型を意味すると考えられる。
【0304】
Kマーカーに対して分類されるN個の血縁関係のない個体のサンプルを有すると仮定する。観察されたデータは、Fの異なる表現型で分類することができる未知相のK個の遺伝子座の表現型である。さらに、H個の可能性のあるハプロタイプを有すると仮定する(K個の2対立遺伝子マーカーの場合には、可能性のあるハプロタイプの最大数H=2Kを有する)。
【0305】
j個の可能性のある遺伝子型を有する表現型jについては:
【0306】
【数1】
Figure 2004525614
(式中、Pjは、jth表現型の確率であり、P(hk、hl)は、ハプロタイプhkおよびhlで構成されるith遺伝子型の確率である)を有する。任意交配(ハーディ−ワインベルク平衡)下では、P(hkl)は:
【0307】
【数2】
Figure 2004525614
と表される。
【0308】
E−Mアルゴリズムは以下の段階で構成される:最初に、ハプロタイプ頻度の1セットの初期値から遺伝子型頻度を推定する。これらのハプロタイプ頻度は、P1 (0)、P2 (0)、P3 (0)、…、PH (0)で示される。ハプロタイプ頻度の初期値は、乱数発生から、または当技術分野でよく知られている他のいくつかの方法で得られる。この段階を期待値段階と呼ぶ。最大化段階と呼ばれる、この方法での次の段階は、遺伝子型頻度の測定値を用いて、ハプロタイプ頻度を再計算することからなる。最初の反復ハプロタイプ頻度推定値は、P1 (1)、P2 (1)、P3 (1)、…、PH (1)によって示される。一般に、sth反復での期待値段階は、前の反復のハプロタイプ頻度に基づいて、可能性のある異なる遺伝子型に各表現型を配置する確率を計算することからなる:
【0309】
【数3】
Figure 2004525614
式中、njは、jth表現型を有する個体の数であり、Pj(hk、hl)は、表現型jにおける遺伝子型hk、hlの確率である。遺伝子計数法(Smith, Ann. Hum. Genet., 21:254-276, 1957)に等しい最大化段階では、遺伝子型推定値に基づいて、ハプロタイプ頻度を再推定する:
【0310】
【数4】
Figure 2004525614
式中、δitは、ith遺伝子型に存在するハプロタイプtの出現数を計数する、可変の指標であり;それは、0、1、および2の値をとる。
【0311】
E−M反復は、以下の判定基準に達している場合に停止する。最尤推定(MLE)理論を用いて、表現型jは多項分布であると仮定する。各反復にて、尤度関数Lをコンピューターで計算することができる。2つの連続した反復間の対数尤度の差が、いくつかの小さい数よりも小さい場合、好ましくは10-7である場合に収束が達成される。
(3)マーカー間の連鎖不平衡を計算する方法
多数の方法を用いて、2つの遺伝子位置間の連鎖不平衡を計算することが可能であり、実際には、集団から採取したハプロタイプのデータに統計学的関連試験を適用することによって、連鎖不平衡が測定される。
【0312】
マーカーMiにおける対立遺伝子(ai/bi)およびマーカーMjにおける対立遺伝子(aj/bj)を有する、本発明の2対立遺伝子マーカー(Mi、Mj)の少なくとも1つを含む2対立遺伝子マーカーの任意の対間の連鎖不平衡を、ピアッツァの式:
【0313】
【数5】
Figure 2004525614
(式中、(4= − − =Miで対立遺伝子aiを有さない、かつMjで対立遺伝子ajを有さない遺伝子型の頻度
(3= − + =Miで対立遺伝子aiを有さない、かつMjで対立遺伝子ajを有する遺伝子型の頻度
(2= + − =Miで対立遺伝子aiを有する、かつMjで対立遺伝子ajを有さない遺伝子型の頻度)
に従って、対立遺伝子のすべての組み合わせ(ai、aj;ai、bj;bi、bjおよびbi、bj)について計算することができる。
【0314】
2対立遺伝子マーカー(Mi、Mj)対間の連鎖不平衡(LD)も、Weir (Weir B. S., 1996) によって記述されているようにデルタの最尤推定値(MLE)(複合遺伝子型不平衡係数)に従って、対立遺伝子のすべての組み合わせ(ai、aj;ai、bj;bi、bjおよびbi、bj)に対して計算することができる。複合連鎖不平衡のMLEは:
【0315】
【数6】
Figure 2004525614
式中、n1=Σ表現型(ai/ai、aj/aj)、n2=Σ表現型(ai/ai、aj/bj)、n3=Σ表現型(ai/bi、aj/aj)、n4=Σ表現型(ai/bi、aj/bj)であり、Nはサンプル中の個体数である。
【0316】
この式によって、ハプロタイプではなく、遺伝子型のデータのみが入手可能であれば、対立遺伝子間の連鎖不平衡を推定することが可能となる。
【0317】
マーカー間の連鎖不平衡を計算する他の方法は以下のとおりである。1組の2対立遺伝子マーカーMi(ai/bi)およびMj(aj/bj)に対して、ハーディ・ワインベルク平衡をあてはめると、上述の手法に従って、所定の集団における可能性のある4つのハプロタイプの頻度を推定することができる。
【0318】
iおよびaj間の配偶子不平衡の推定は単に:
【0319】
【数7】
Figure 2004525614
であり、
式中、pr(ai)は対立遺伝子aiの確率であり、pr(aj)は対立遺伝子ajの確率であり、pr(ハプロタイプ(ai、aj))は上記の式3と同様に推定される。
【0320】
1組の2対立遺伝子マーカーに関しては、MiとMjとの間の関連性を説明するのに必要な不平衡の測定は、1回のみである。
【0321】
次いで、上記の正規化値は以下のように計算される:
【0322】
【数8】
Figure 2004525614
当業者であれば、他の連鎖不平衡の計算法を使用することができることは容易に理解されよう。
【0323】
適切なヘテロ接合率を有する1組の2対立遺伝子マーカーの間の連鎖不平衡は、50〜1000の血縁関係のない個体、好ましくは75〜200、さらに好ましくは約100の血縁関係のない個体間でゲノタイピングすることによって決定することができる。
(4)関連性についての試験
2対立遺伝子マーカーにおける対立遺伝子またはかかる対立遺伝子で構成されるハプロタイプの場合には、表現型と遺伝子型との間の相関性の統計的有意性を決定する方法は、当技術分野で公知の統計学的試験および必要とされる統計的有意性の許容閾値で決定される。特定の方法の適用および有意性の閾値は、当業者にはよく知られている。
【0324】
ケースおよび対照集団において2対立遺伝子マーカー対立遺伝子の頻度を決定し、研究中の形質および2対立遺伝子マーカー対立遺伝子との間の相関性を示すと考えられる、統計学的に有意な頻度の差が存在するかどうかを決定するために統計学的試験でこれらの頻度を比較することによって、関連性についての試験が行われる。同様に、ケースおよび対照集団において、所定の組の2対立遺伝子マーカーの可能性のあるすべてのハプロタイプの頻度を推定し、研究中のハプロタイプと表現型(形質)との間の統計学的に有意な相関性が存在するかどうかを決定するために統計学的試験でこれらの頻度を比較することによって、ハプロタイプ解析を行う。遺伝子型と表現型との間の統計学的に有意な関連性について試験するのに有用な統計学的ツールを使用することができる。用いられる統計学的試験は、1つの自由度を有するカイ2乗検定であることが好ましい。P値は計算される(P値は、観測値以上の統計値が偶然生じる確率である)。
【0325】
統計学的有意性
好ましい実施形態において、更なる診断試験の正の基準としての、または早期の予防的治療の先行開始点としての診断目的のための有意性、2対立遺伝子マーカーの関連性に関するp値は、単一2対立遺伝子マーカー解析に関しては、好ましくは約1×10-2以下、さらに好ましくは約1×10-4以下であり、2種類以上のマーカーを要するハプロタイプ解析に関しては、約1×10-3以下、さらに好ましくは1×10-6以下、最も好ましくは約1×10-8以下である。これらの値は、単一マーカーまたは複数のマーカーの組み合わせを要するいずれの関連研究にも適用可能であると考えられる。
【0326】
当業者は、本発明の2対立遺伝子マーカーで関連研究を行うために、開始点として上記に示す値の範囲を用いることができる。そうすることで、本発明の2対立遺伝子マーカーと形質との間の有意な関連性を明らかにし、診断および薬物スクリーニングの目的に使用することができる。
表現型順列
上述の第1段階のハプロタイプ解析の統計学的有意性を確認するために、症例対照個体からのゲノタイピングデータをプールし、形質表現型に対してランダム化する、更なる解析を行うことが適切である可能性がある。第1段階で得られたデータをコンパイルするのに使用される症例対照集団として同数の個体を含む2つの群に各個体のゲノタイピングデータをランダムに割り当てる。第2段階のハプロタイプ解析は、好ましくは、最も高い相対危険係数を示す第一段階の解析のハプロタイプに含まれるマーカーに対して、これらの人為的な群で行われることが好ましい。この実験は、少なくとも100〜1000回繰り返し行うことが好ましい。その繰り返される反復法によって、試験されたハプロタイプを偶然に得る確率を決定することが可能となる。
【0327】
統計学的関連性の評価
偽陽性の問題に取り組むために、ランダムなゲノム領域における同じ症例対照集団で同様な解析が行われる。ランダム領域および候補領域における結果は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、「Methods, Software And Apparati For Identifying Genomic Regions Harboring A Gene Associated With A Dtectable Trait」という名称の係属中の米国特許仮出願、1998年11月10日出願の米国特許第60/107,986号に記載のように比較される。
(5)危険因子の評価
危険因子(遺伝子疫学において、危険因子は、マーカー遺伝子座における特定の対立遺伝子またはハプロタイプの存在または非存在である)と、疾患との関連性は、オッズ比(OR)および相対危険(RR)によって測定される。P(R+)が個体に対する疾患を発生する確率であり、RおよびP(R+)が危険因子に暴露されない個体に対する疾患を発生する確率であるとすると、次いで、相対危険は単に2つの確率の比であり、つまり:
【0328】
【数9】
Figure 2004525614
である。
【0329】
症例対照研究では、相対危険の直接的な測定値は、サンプリングデザインのために得ることができない。しかしながら、オッズ比によって、低発生率の相対危険をうまく近似することが可能となり、オッズ比を計算することができる:
【0330】
【数10】
Figure 2004525614
+は、症例群における危険因子への暴露の頻度であり、F-は、対照群における危険因子への暴露の頻度である。F+およびF-は、研究の対立遺伝子頻度またはハプロタイプ頻度を用いて計算され、さらに根底にある遺伝モデル(優性、劣性、付加的・・・)によって異なる。所定の危険因子が原因の形質を示す集団における個体の比率を表す寄与危険(AR)をさらに推定することができる。この測定値は、疾患病因における特定の因子の役割を定量化する点で、かつ危険因子の公衆衛生上の影響の面で重要である。この測定値の公衆衛生上の関連性は、対象の暴露が存在しない場合に防ぐことができる、集団における疾患の症例の比率を推定することにある。ARは以下のとおり決定される:
【0331】
【数11】
Figure 2004525614
ARは、2対立遺伝子マーカー対立遺伝子または2対立遺伝子マーカーハプロタイプに起因し得る危険である。PEは、一般の集団内の対立遺伝子またはハプロタイプへの暴露の頻度であり;RRは、研究中の形質が一般集団において比較的低い発生率を有する場合、オッズ比で近似される相対危険である。
〈本発明の2対立遺伝子マーカーと連鎖不平衡にある2対立遺伝子マーカーの同定〉
第1の2対立遺伝子マーカーが対象のゲノム領域で同定されていれば、本発明の教示を用いて、当業者はこの第1マーカーと連鎖不平衡にあるその他の2対立遺伝子マーカーを容易に同定することができる。上述のように、形質に関連する第1マーカーと連鎖不平衡にあるマーカーは形質と関連するだろう。したがって、所定の遺伝子マーカーと形質との間の関連性が実証されれば、この特定の領域における2対立遺伝子マーカーの密度を高めるために、この形質に関連するその他の2対立遺伝子マーカーの発見は大いに興味深い。原因の遺伝子または変異が、形質との最も高い相関性を示すマーカーまたはマーカーのセットの付近で見つけられるだろう。所定のマーカーと連鎖不平衡にあるその他のマーカーの同定は:(a)複数の個体からの第1の2対立遺伝子マーカーを含むゲノム断片を増幅する段階;(b)前記第1の2対立遺伝子マーカーを有するゲノム領域における第2の2対立遺伝子マーカーを同定する段階;(c)前記第1の2対立遺伝子マーカーおよび第2の2対立遺伝子マーカーとの間の連鎖不平衡解析を行う段階;(d)前記第1マーカーとの連鎖不平衡にある前記第2の2対立遺伝子マーカーを選択する段階;を含む。段階(b)および(c)を含むサブコンビネーションもまた企図される。
【0332】
2対立遺伝子マーカーを同定し、連鎖不平衡解析を行う方法は本明細書に記述されており、不当な実験を行うことなく当業者によって実施することができる。次いで、本発明は、2対立遺伝子マーカーA1〜A18と連鎖不平衡にあり、かつ所定の形質とのそれらのそれぞれの関連の面から同様の特性を示すと考えられる2対立遺伝子マーカーにも関する。
〈機能変異の同定〉
検出可能な表現型または形質の原因であるCanIon遺伝子における変異は、形質ポジティブな個体および対照個体からのCanIon遺伝子の配列と比較することによって同定することができる。正の関連性が本発明の2対立遺伝子マーカーで確認されれば、同定された遺伝子座を変異についてスキャンすることができる。好ましい実施形態において、CanIon遺伝子のエクソンおよびスプライス部位などの機能領域、プロモーターおよび他の調節領域を、変異についてスキャンする。好ましい実施形態では、形質ポジティブな個体および対照個体において、CanIon遺伝子の配列を比較する。形質ポジティブな個体は、形質と関連すると示されるハプロタイプを保有し、形質ネガティブな個体は、形質と関連するハプロタイプまたは対立遺伝子を保有しないことが好ましい。検出可能な形質または表現型は、変更されたCanIon機能の様々な発現を含む場合がある。
【0333】
変異の検出手順は、2対立遺伝子マーカーの同定に使用される手順と本質的に同様である。かかる変異を検出するのに使用される方法は一般に、以下の段階:
−形質ポジティブな患者および形質ネガティブな対照のDNAサンプルからの形質と関連する2対立遺伝子マーカーまたは2対立遺伝子マーカーの群を含むCanIon遺伝子の領域の増幅;
−その増幅された領域のシーケンシング;
−形質ポジティブな個体および対照個体に由来するDNA配列の比較;
−形質ポジティブな患者に特異的な変異の決定;
を含む。
【0334】
一実施形態において、前記2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体からなる群から選択される。次いで、本明細書に記載の手順などのゲノタイピング手順を用いて、好ましくは個々の試験形式でマイクロシーケンシング技術を用いて、症例および対照のより大きな集団をスクリーニングすることによって、候補多型を検証することが好ましい。多型は、予想される関連性の結果と適合する頻度で症例および対照において存在する場合には、候補変異と見なされる。多型は、検出可能な表現型との統計学的に有意な相関性を示す場合には、候補「形質の原因となる」変異と見なされる。
〈遺伝子診断の方法における本発明の2対立遺伝子マーカー〉
本発明のCanIon核酸配列および2対立遺伝子マーカーを使用して、特定の遺伝子型の結果として検出可能な形質を表す個体、またはその遺伝子型がその後の時点で検出可能な形質を発生する危険にそれらをさらす個体を同定することができる診断試験を開発することもできる。かかる診断は、精神分裂病、双極性障害、および他のCNS障害、例えばてんかんおよび疼痛性障害、心疾患、高血圧、不整脈などの心臓血管性疾患、および多数の他の疾患および症状を含む、多数の疾患または症状の段階的、モニタリング、予後および/または予防的または治療的な療法に有用であり得る。
【0335】
本発明の診断技術には、試験対象が検出可能な形質を発生する増大した危険性と関連する2対立遺伝子マーカーパターンを有するかどうか、あるいはその個体が特定の変異の結果としての検出可能な形質を有するかどうかを決定するために、家系研究、単一精子DNA解析もしくは体細胞雑種などのハプロタイピングのための個々の染色体の解析を可能にする方法を含む、様々な方法論を用いることが可能である。
【0336】
本発明は、個体が、CanIon遺伝子における変異または多型から生じる疾患を発生する危険性があるかどうか、またはその疾患を患っているかどうかを決定する診断方法を提供する。本発明は、個体が、精神分裂病および双極性障害に対する、あるいは当技術分野で公知の、または本明細書に記述される他のカルシウムチャンネルに関連する症状のいずれかに対する罹病性を有するかどうかを決定する方法も提供する。
【0337】
これらの方法は、個体から核酸サンプルを採取することと、その核酸サンプルが、特定のCanIon多型または変異(形質の原因となる対立遺伝子)を有する結果として、個体が形質を表現することを示す、または形質を発生する危険性を示す、少なくとも1つの対立遺伝子または少なくとも1つの2対立遺伝子マーカーハプロタイプを含有するかどうかを決定することを含む。
【0338】
かかる診断法において、核酸サンプルを個体から採取し、「2対立遺伝子マーカーに対してDNAサンプルをゲノタイピングする方法」に上述されている方法を用いて、このサンプルをゲノタイピングすることが好ましい。その診断法は、単一の2対立遺伝子マーカーまたは2対立遺伝子マーカーのグループに基づく。
【0339】
これらの方法それぞれにおいて、核酸サンプルは試験対象から採取され、2対立遺伝子マーカーA1〜A18のうち1つまたは複数の2対立遺伝子マーカーパターンが決定される。
【0340】
一実施形態において、PCR増幅を核酸サンプルで行い、検出可能な表現型に関連する多型が同定されている領域を増幅する。増幅産物をシークエンスして、個体が検出可能な表現型に関連する1種または複数種のCanIon多型を保持するかどうかを決定する。増幅産物を産生するのに使用されるプライマーは、表1に列挙するプライマーを含む。代替方法として、核酸サンプルを上述のようにマイクロシーケンシング反応にかけて、CanIon遺伝子における変異または多型から生じる検出可能な表現型と関連する1種または複数種のCanIon多型を、個体が保持するかどうかを決定する。マイクロシーケンシング反応に使用されるプライマーは、表4に列挙するプライマーを含む。他の実施形態では、検出可能な表現型に関連する1種または複数種のCanIon対立遺伝子と特異的にハイブリダイズする、1つまたは複数の対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプローブと、核酸サンプルとを接触させる。ハイブリダイゼーションアッセイに使用されるプローブには、表3に列挙されるプローブが含まれる。他の実施形態において、増幅反応において対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドと共に使用される場合に、増幅産物を生成することができる第2CanIonオリゴヌクレオチドと、核酸サンプルとを接触させる。増幅反応において増幅産物が存在することから、個体が検出可能な表現型と関連する1つまたは複数のCanIon対立遺伝子を保持することが示される。
【0341】
好ましい実施形態において、A1〜A18およびその補体からなる群から選択される少なくとも1つの2対立遺伝子マーカーに存在するヌクレオチドの同一性を決定し、その検出可能な形質は精神分裂病および双極性障害である。診断用キットは、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを備える。
【0342】
これらの診断方法は、特定の状況において使用して、予防治療を開始、または有意なハプロタイプを保持する個体が軽微な症状などの危険信号を予見することができるため、非常に価値がある。
【0343】
薬物に対する反応または薬物に対する副作用を分析かつ予測する診断は、個体を特定の薬物で治療すべきかどうかを決定するのに使用することも可能である。例えば、個体が特定の薬物を用いた治療にポジティブに反応する見込みが診断から示される場合、その薬物を個体に投与することが可能である。逆に言えば、個体が特定の薬物を用いた治療にネガティブに反応する可能性があることが、診断により示された場合には、治療の代わりの過程が指示される。ネガティブな反応は、有効な反応の非存在または有毒な副作用の存在として定義される。
【0344】
臨床薬物試験によって、本発明のマーカーの別の用途が表される。精神分裂病または双極性障害または他のカルシウムチャンネルに関連する症状に対して作用する作用薬に対する反応、あるいは精神分裂病または双極性障害または他のカルシウムチャンネルに関連する症状に対して作用する作用薬に対する副作用を示す、1種または複数種のマーカーを上述の方法を用いて同定することが可能である。その後、かかる作用薬の臨床試験における潜在的な参加者をスクリーニングして、薬物に有利に反応する可能性の高い個体を同定し、副作用を経験する可能性のある個体を排除する。そのように、研究においてポジティブに反応する見込みのない個体を包含した結果として、測定を低下させることなく、かつ望ましくない安全上問題の危険を冒すことなく、薬物にポジティブに反応する個体において薬物治療の有効性が測定される。
【0345】
特に好ましい実施形態において、本発明の診断法を用いて解析した形質は、精神分裂病または双極性障害である。しかしながら、本発明はまた、関連する障害、特に関連するCNS障害を予防、診断、管理および治療する方法において、本発明の2対立遺伝子マーカーを使用して、本明細書に記述される予防、診断、予後および治療のいずれも含む。例としては、関連する障害は、精神障害の診断・統計便覧第4版(Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders fourth edition )(DSM−IV)の分類を用いて定義される、精神異常、気分障害、自閉症、物質依存およびアルコール中毒、疼痛性障害、てんかん、精神遅滞、および認知障害、不安障害、摂食障害、衝動調節障害、および人格障害を含む他の精神障害を含む。他の疾患には、アンギナ、高血圧、または不整脈などの心臓血管性疾患が含まれる。
【0346】
〈組換えベクター〉
本明細書において「ベクター」という用語は、二本鎖または一本鎖のいずれかであり、かつ細胞宿主または単細胞もしくは多細胞宿主生物に導入されることが求められる対象の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、環状もしくは直鎖のDNAまたはRNA分子を指すために使用される。
【0347】
本発明は、CanIonゲノム配列に由来する調節ポリヌクレオチド、および/またはCanIonゲノム配列もしくはcDNA配列に由来するコードポリヌクレオチドを含む組換えベクターのファミリーを包含する。
【0348】
一般に、本発明の組換えベクターは、制御配列、コード配列およびポリヌクレオチド構築物を含む、本明細書で記述されるポリヌクレオチドのいずれか、ならびに上記で定義される任意のCanIonプライマーもしくはプローブを含む。特に、本発明の組換えベクターは、「CanIon遺伝子のゲノム配列」のセクション、「CanIon cDNA配列」のセクション、「コード領域」のセクション、「ポリヌクレオチド構築物」のセクション、および「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」のセクションに記述されるポリヌクレオチドのいずれかを含み得る。
【0349】
第1の好ましい実施形態において、本発明の組換えベクターを使用して、配列番号1〜3または配列番号6のゲノム配列に由来する、挿入されたポリヌクレオチド、またはCanIoncDNA、例えば適切な細胞宿主中で配列番号4のcDNAを増幅する。このポリヌクレオチドは組換えベクターが複製する毎に増幅される。
【0350】
本発明による組換えベクターの好ましい実施形態は、本発明の調節ポリヌクレオチドまたはコード核酸のいずれか、またはどちらも含む発現ベクターを含む。特定の実施形態内で、CanIonタンパク質に対して作られる特異的抗体を産生するために、次いで精製され、リガンドスクリーニングアッセイにおいて、または免疫原として使用することができるCanIonポリペプチドを発現させるために、発現ベクターが用いられる。他の実施形態では、その発現ベクターは、トランスジェニック動物を作製するために使用され、また遺伝子治療にも使用される。発現には、適切なシグナルがベクターにおいて提供されることが必要であり、前記シグナルは、宿主細胞中で対照の遺伝子の発現を操作する、ウイルスおよび哺乳類ソース両方からのエンハンサー/プロモーターなどの種々の調節エレメントを含む。産物を発現する永続的な、安定な細胞クローンを確立するための優性(dominant)薬物選択マーカーは、ポリペプチドの発現に薬物選択マーカーの発現を結びつけるエレメントであることから、一般に本発明の発現ベクターに含まれる。
【0351】
特に、本発明は、CanIonタンパク質、好ましくは配列番号5のアミノ酸配列のCanIonタンパク質またはその変異体もしくは断片をコードする核酸を含む発現ベクターに関する。
【0352】
本発明は、CanIonコード配列の発現に有用な組換えベクターに関し、前記ベクターは配列番号4の核酸を含む。
【0353】
CanIon関連2対立遺伝子マーカーを含有する核酸を含む組換えベクターもまた、本発明の一部である。好ましい実施形態では、前記2対立遺伝子マーカーは、A1〜A18、およびその補体からなる群から選択される。
【0354】
本発明のベクターにおいて見出すことができるエレメントの一部を以下のセクションでさらに詳細に説明する。
【0355】
本発明は、a)標的にされた遺伝子の内在性染色体DNA中に外来性(異種)ポリヌクレオチドを挿入し、b)内在性染色体DNAを除去し、かつ/またはc)内在性染色体DNAを外来性ポリヌクレオチドと置き換えるために操作されている、脊椎動物起源、好ましくは哺乳類起源および特にヒト起源の一次、二次、および不死化された相同的組換え宿主細胞もまた包含する。ポリヌクレオチド配列の挿入、欠失、および/または置換は、標的遺伝子と作動可能に関連する、標的遺伝子のコード配列および/または調節領域、例えばプロモーターおよびエンハンサー配列に対するものである。
【0356】
本発明はさらに、細胞中で正常に発現しない標的遺伝子の発現を変化させる、インビトロまたはインビボで相同的組換え宿主細胞を作製する方法に関する。その変化によって、正常な成長条件下または標的遺伝子によってコードされるポリペプチドを生成するのに適切な条件下にて、標的遺伝子の発現が起こることが好ましい。その方法は、以下の段階:(a)ポリヌクレオチド構築物をインビボまたはインビトロで細胞に移入する段階であって、そのポリヌクレオチド構築物が:(i)ターゲティング配列;(ii)制御配列および/またはコード配列;および(iii)必要な場合には、不対のスプライスドナー部位を含み、それによって移入細胞が生成される段階と、(b)相同的組換えに適切な条件下にて、インビトロまたはインビボで移入細胞を保持する段階と、を含む。
【0357】
本発明はさらに、細胞中で正常に発現しない標的遺伝子の発現をインビボまたはインビトロにて細胞中で変化させる方法であって、以下の段階:(a)ポリヌクレオチド構築物をインビボまたはインビトロで細胞に移入する段階であって、そのポリヌクレオチド構築物が:(i)ターゲティング配列;(ii)制御配列および/またはコード配列;および(iii)必要な場合には、不対のスプライスドナー部位を含み、それによって移入細胞が生成される段階と、(b)相同的組換えに適切な条件下にて、インビトロまたはインビボで移入細胞を保持し、それによって相同的組換え細胞が生成される段階と、(c)遺伝子の発現に適切な条件下にて、インビボまたはインビトロで相同的組換え細胞を保持する段階と、を含む方法に関する。
【0358】
本発明はさらに、細胞中で正常に発現しない標的内在性遺伝子の発現をインビボまたはインビトロにて細胞中で変化させることによって本発明のポリペプチドを生成する方法であって、以下の段階:(a)ポリヌクレオチド構築物をインビボまたはインビトロで細胞に移入する段階であって、そのポリヌクレオチド構築物が:(i)ターゲティング配列;(ii)制御配列および/またはコード配列;および(iii)必要な場合には、不対のスプライスドナー部位を含み、それによって移入細胞が生成される段階と、(b)相同的組換えに適切な条件下にて、インビトロまたはインビボで移入細胞を保持し、それによって相同的組換え細胞が生成される段階と、(c)遺伝子の発現に適切な条件下にて、インビボまたはインビトロで相同的組換え細胞を保持し、それによってポリペプチドが生成される段階と、を含む方法に関する。
【0359】
本発明はさらに、遺伝子が正常に発現しない細胞型において標的遺伝子の発現を変化させるポリヌクレオチド構築物に関する。これは、ポリヌクレオチド構築物が標的細胞の染色体DNAに挿入された場合に起こり、そのポリヌクレオチド構築物は:(a)ターゲティング配列;(b)制御配列および/またはコード配列;および(c)必要な場合には、不対のスプライスドナー部位;を含む。上述のようなポリヌクレオチド構築物がさらに含まれ、その構築物はさらに、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、染色体DNAとの相同的組換え後、標的内在性遺伝子とインフレームである。
【0360】
その組成物は、米国特許第6,054,288号;同第6,048,729号;同第6,048,724号;同第6,048,524号;同第5,994,127号;同第5,968,502号;同第5,965,125号;同第 5,869,239号;同第5,817,789号;同第5,783,385号;同第 5,733,761号;同第5,641,670号;同第5,580,734号;国際特許公開番号:WO96/29411、WO94/12650;およびKoller 等, PNAS 86:8932-8935 (1989)を含む化学論文に記載ような、当技術分野での技術によって行われる方法によって生成される。
1.本発明の発現ベクターの一般的な特徴
本発明による組換えベクターは、制限されないが、YAC (酵母人工染色体)、 BAC(細菌人工染色体)、ファージ、ファージミド、コスミド、プラスミドまたは染色体、非染色体を含み、半合成DNAおよび合成DNAを含む直鎖DNA分子でさえ含む。かかる組換えベクターは:
(1)遺伝子発現において調節の役割を有する1つまたは複数の遺伝子エレメント、例えばプロモーターまたはエンハンサー(エンハンサーは、転写を高めるプロモーターに作用する、DNAのシス作用エレメントであり、通常約10〜300bpの長さである);
(2)mRNAに転写され、最終的にポリペプチドに翻訳される構造またはコード配列であって、前記構造またはコード配列が(1)に記載の調節エレメントに作動可能に連結される配列;
(3)適切な転写開始および終止配列;
の集合を含む転写ユニットを含み得る。酵母または真核発現系での使用が意図される構造ユニットは、宿主細胞によって翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含むことが好ましい。一方、組換えタンパク質がリーダー配列または輸送(transport)配列なしで表現する場合、N末端残基を含む。最終産物を得るために、この残基は、発現された組換えタンパク質から実質的に切断してもよいし、しなくてもよい。
【0361】
一般に、組換え発現ベクターは、複製開始点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択可能なマーカー、および下流の構造配列の直接転写を指示する、高度に発現した遺伝子に由来するプロモーターを含むだろう。その異種構造配列は、翻訳開始および終止配列、および好ましくは、翻訳されたタンパク質の分泌を細胞膜周辺腔または細胞外媒体に指示することができるリーダー配列で適切な相において組み立てられる。ベクターが哺乳類宿主細胞において所望の配列を移入し、発現させるために適応される特定の実施形態において、好ましいベクターは、所望の宿主において複製開始点、適切なプロモーターおよびエンハンサー、また必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終止配列、および5’フランキング非転写配列を含むだろう。SV40ウイルスゲノム、例えばSV40起源に由来するDNA配列、初期プロモーター、エンハンサー、スプライスおよびポリアデニル化シグナルを用いて、必要とされる非転写遺伝子エレメントを提供することが可能である。
【0362】
配列番号5のCanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体のインビトロでの発現は、宿主生物における天然遺伝子の発現に、または生物学的に不活性なCanIonタンパク質の生成に関連する遺伝的欠陥を正すために有用である。結果として、本発明は、治療すべき患者の生物体中の適切な遺伝物質を導入することにより、配列番号5のCanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体をインビトロで産生するために主に設計された組換え発現ベクターもまた含む。生物体から予め抽出された遺伝物質は、細胞中にインビトロで導入し、その修飾された細胞は続いて、前記生物体における適切な組織中にインビボで直接再導入される。
2.調節エレメント
プロモーター
本発明による発現ベクターで使用される適切なプロモーター領域は、異種遺伝子が発現されなければならない細胞宿主を考慮に入れて選択される。対象の核酸配列の発現を調節するのに用いられる特定のプロモーターは、標的にされた細胞中での核酸の発現を検出することができる限り、重要であるとは考えられない。したがって、ヒト細胞が標的にされる場合、例えばヒトもしくはウイルスプロモーターなどの、ヒト細胞中で発現させることができるプロモーターに隣接し、そのプロモーターの制御下に核酸コード領域を位置付けることが好ましい。
【0363】
適切なプロモーターは、それが発現を調節する核酸に対して異種であるか、またはその代わりに、発現されるコード配列を含有する天然ポリヌクレオチドに内在性であり得る。さらに、プロモーターは、その中に構築物プロモーター/コード配列が挿入されている組換えベクターに対しては一般に異種である。
【0364】
プロモーター領域は、例えばCAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクター、さらに好ましくはpKK232−8およびbpCM7を用いて、望ましい遺伝子から選択することができる。
【0365】
好ましい細菌プロモーターは、LacI、LacZ、T3〜T7バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター、gpt、ラムダPR、PLおよびtrpプロモーター(EP0036776)、ポリヘドリンプロモーター、またはバキュロウイルスからのp10タンパク質プロモーター(Kit Novagen) (Smith 等, 1983; O'Reilly 等, 1992)、ラムダPRプロモーター、またはさらにtrcプロモーターである。
【0366】
真核性プロモーターには、CMV前初期、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルスからのLTR、およびマウスのメタロチオネイン−Lが含まれる。便利なベクターおよびプロモーターの選択は、当業者のレベル内で十分である。
【0367】
プロモーターの選択は、遺伝子工学分野の業者の能力内で十分である。例えば、Sambrook 等 (1989)またはFuller 等 (1996)により記述されている手順もまた参照のこと。
他の調節エレメント
cDNAインサートが使用される場合、通常、遺伝子転写物の適切なポリアデニル化をもたらすための、ポリアデニル化シグナルを含むことが望まれるだろう。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功には重要でないと考えられ、ヒト成長ホルモンおよびSV40ポリアデニル化シグナルなど、かかる配列が使用される。発現カセットのエレメントとして、ターミネーターもまた企図される。これらのエレメントは、メッセージレベルを高め、かつカセットから他の配列への読み過し(read through)を最小限にする役割を果たし得る。
3.選択可能なマーカー
かかるマーカーは細胞に同定可能な変化を与え、それによって発現構築物を含有する細胞を容易に同定することが可能となるだろう。形質転換された宿主細胞を選択するための選択可能なマーカー遺伝子は、真核細胞培養にはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、酵母にはTPR1、または大腸菌においてテトラサイクリン、リファマイシンもしくはアンピシリン耐性、またはマイクバクテリアにはレバンスクラーゼであることが好ましく、後者のマーカーは、ネガティブ選択用マーカーである。
4.好ましいベクター
細菌ベクター
非制限的ではあるが代表的な例として、細菌使用に有用な発現ベクターは、選択可能なマーカーと、pBR322(ATCC 37017)の遺伝子エレメントを含む市販のプラスミドに由来する細菌複製開始点とを含み得る。かかる市販のベクターには、例えばpKK223−3(Pharmacia社、スウェーデン、Uppsala)およびGEM1(Promega Biotec社、米国、ウィスコンシン州マディソン)が含まれる。
【0368】
多数の他の適切なベクターは、当業者には公知であり、以下の細菌ベクター:pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen社)、pbs、pD10、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(Stratagene社);ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia社);pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene社);pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia社);pQE−30(QIAexpress社)などの市販されているベクターである。
バクテリオファージベクター
P1バクテリオファージベクターは、範囲約80〜約100kbの大きなインサートを含有する。p158またはp158/neo8などのP1バクテリオファージベクターの作製は、とりわけSternberg (1992, 1994)によって記述されている。CanIonヌクレオチド配列を含む組換えP1クローンが、40kbを超える大きさのポリヌクレオチドを挿入するために設計される(Linton 等, 1993)。トランスジェニックの実験でP1 DNAを産生するために、好ましいプロトコルは、McCormick 等 (1994)によって記述されているプロトコルである。簡単には、P1プラスミドを有する大腸菌(好ましくは株NS3529)は、カナマイシン25μg/mlを含有する適切な肉汁培地中で一晩成長させる。製造元の説明書に従って、Qiagen Plasmid Maxi kit(Qiagen社、米国カリフォルニア州チャッツワース)を用いてアルカリ溶解によって、P1 DNAを大腸菌から作製する。キットに含まれる洗浄および溶出バッファーを使用して、2つのQiagen−tip 500カラム上で、そのP1 DNAを細菌ライセートから精製する。次いで、70%エタノールでDNAを沈殿させる前に、フェノール/クロロホルム抽出を行う。TE(10mMトリスHCl、pH7.4、1mM EDTA)中でDNAを可溶化した後、そのDNA濃度を分光測定法によって評価する。
【0369】
目標が、トランスジェニック動物、通常トランスジェニックマウスにおいてCanIonヌクレオチド配列を含むP1クローンを発現することである場合、例えば、P1ポリリンカー内のレアカット(rare-cutting)部位でP1 DNAを切断することによって(SfiI、NotIまたはSalI)、P1 DNA断片からベクター配列を除去することが望ましい。次いで、YACからのDNAの単離のための、元々報告されている方法と同様な方法を用いて、パルスフィールドアガロースゲル上でベクター配列からP1インサートを精製する(Schedl 等, 1993a; Peterson 等, 1993)。この段階で、必要な場合には、Millipore Ultrafree−MCフィルターユニット(分子量限界30,000、Millipore社、米国、マサチューセッツ州ベッドフォード)上で得られた精製インサートDNAを濃縮し、次いで、微小透析膜(Millipore社、VS型、0.025μM)上で100mM NaCl、30μMスペルミン、70 μMスペルミジンを含有する微量注入バッファー(10mMトリスHCl、pH 7.4;250μM EDTA)に対して透析することができる。1%アガロース(Sea Kem GTG;FMC Bio−products)パルスフィールドゲル上で電気泳動し、臭化エチジウムで染色することによって、精製したP1 DNAの完全性を評価する。
バキュロウイルスベクター
配列番号5のCanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体の発現に適切なベクターは、昆虫細胞および昆虫細胞系において増殖することができるバキュロウイルスベクターである。特定の適切な宿主ベクター系は、Spodoptera frugiperdaに由来するSF9細胞系(ATCC N°CRL 1711)を移入するのに使用される、pVL1392/1393バキュロウイルストランスファーベクター(Pharmingen社)である。
【0370】
バキュロウイルス発現系における、配列番号5のCanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体の発現に適切な他のベクターには、Chai 等 (1993), Vlasak 等 (1983) and Lenhard 等 (1996)によって記述されているベクターが含まれる。
ウイルスベクター
特定の一実施形態において、ベクターはアデノウイルスに由来する。本発明による好ましいアデノウイルスベクターは、FeldmanおよびSteg (1996)またはOhno 等 (1994)によって記述されているベクターである。本発明のこの特定の実施形態による、他の好ましい組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス2型または5型(Ad2またはAd5)または動物起源のアデノウイルス(フランス特許出願N°FR−93.05954参照)である。
【0371】
レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、外来性ポリヌクレオチドをインビトロで、特にヒトを含む哺乳類に導入するために選択される組換え遺伝子送達システムであると一般に理解される。これらのベクターによって、細胞中に遺伝子が効率的に送達され、導入された核酸は、宿主の染色体DNAに安定に組み込まれる。
【0372】
本発明のレトロウイルスのインビトロまたはインビボ遺伝子送達媒体の調製または作製に、特に好ましいレトロウイルスには、ミンク細胞増殖巣誘導ウイルス、マウス肉腫ウイルス、細網内皮症ウイルスおよびラウス肉腫ウイルスからなる群から選択されるレトロウイルスが含まれる。特に好ましいマウス白血病ウイルスには、4070Aおよび1504Aウイルス、アベルソン(ATCC番号 VR−999)、フレンド(ATCC番号 VR−245)、グロス(ATCC番号 VR−590)、ラウシャー(ATCC番号 VR−998)およびモロニーマウス白血病ウイルス(ATCC番号 VR−190;PCT出願番号WO94/24298)が含まれる。特に好ましいラウス肉腫ウイルスには、ブライアン高力価(ATCC番号 VR−334、VR−657、VR−726、VR−659およびVR−728)が含まれる。他の好ましいレトロウイルスベクターは、Roth 等 (1996)、PCT出願第WO93/25234、PCT出願第WO94/06920、Roux 等, 1989, Julan 等, 1992およびNeda 等, 1991に記述されているベクターである。
【0373】
本発明によって企図される、さらに他のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を含む。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および生産的な生活環のためにヘルパーウイルスとしてアデノウイルスもしくはヘルペスウイルスなどの他のウイルスを必要とする、天然に存在する欠陥ウイルスである(Muzyczka 等, 1992)。それは、非分裂細胞中にそのDNAを組み込むことが可能であり、かつ高頻度の安定な組み込みを示す、わずかなウイルスのうちの1つでもある(Flotte 等, 1992; Samulski 等, 1989; McLaughlin 等, 1989)。AAVの1つの有利な特徴は、形質転換された細胞に対して一次細胞を形質導入する有効性が低下していることに由来する。
BACベクター
細菌人工染色体(BAC)クローニングシステム(Shizuya 等, 1992)は、大腸菌中でゲノムDNAの大きな断片(100〜300kb)を安定に維持するように開発されている。好ましいBACベクターは、Kim 等 (1996)によって記述されているpBeloBAC11ベクターを含む。BACライブラリーは、ベクターにおいてBamHIまたはHindIII部位にライゲーションすることを可能にする酵素を用いて一部消化されているサイズ選択されたゲノムDNAを使用して、このベクターで作製される。フランキングするこれらのクローニング部位は、RNA転写またはPCR法によって末端のプローブを産生するために使用することができる、T7およびSP6RNAポリメラーゼ転写開始部位である。大腸菌におけるBACライブラリーの構築後、BAC DNAを宿主細胞から超らせんサークルとして精製する。これらの環状分子の直線状への変換は、サイズ決定およびBACの受容細胞への導入のどちらよりも前に起こる。クローニング部位は、2つのNotI部位によってフランキングされ、クローン化されたセグメントをNotI消化によってベクターから切り出すことが可能となる。代替方法としては、pBeloBAC11ベクター中に含まれるDNAインサートは、固有のcosN部位で切断を導く市販の酵素ラムダターミナーゼ(terminase)でBACベクターを処理することによって直鎖化することが可能であるが、この切断方法によって、インサートDNAおよびBAC配列のどちらも含有する完全長BACクローンが生じる結果となる。
5.組換えベクターの送達
本発明のポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチド構築物の発現を起こすために、これらの構築物を細胞中に送達しなければならない。この送達は、細胞系を形質転換するための実験手順と同様にインビボで、または特定の疾患状態の治療と同様にインビトロもしくはエクスビボで達成される。
【0374】
1つのメカニズムは、発現構築物が感染性ウイルス粒子中にカプセル化されるウイルス感染である。
【0375】
培養された哺乳類細胞にポリヌクレオチドを導入する、いくつかの非ウイルス的な方法もまた本発明によって企図され、限定されないが、リン酸カルシウム沈殿(Graham 等, 1973; Chen 等, 1987)、DEAE−デキストラン(Gopal, 1985)、電気穿孔法(Tur-Kaspa 等, 1986; Potter 等, 1984)、 直接微量注入(Harland 等, 1985)、DNA−添加リポソーム(Nicolau 等, 1982; Fraley 等, 1979)、および受容体−仲介移入(Wu および Wu, 1987; 1988)が含まれる。これらの技術の一部は、インビボまたはエクスビボでの用途に上手く適応させることができる。
【0376】
発現ポリヌクレオチドが細胞中に送達されたら、それは、受容細胞のゲノムに安定に組み込まれる。この組み込みは、相同的組換えによって同族(cognate)位置および向きにあるか(遺伝子置換)、またはランダム、非特異的な位置に組み込まれる(遺伝子増強)。更なる実施形態において、DNAの別々のエピソームセグメントとして、核酸を細胞中に安定に維持する。かかる核酸セグメントまたは「エピソーム」は、宿主細胞サイクルと無関係に、または宿主細胞サイクルと同期して、維持および複製することを可能にするのに十分な配列をコードする。
【0377】
脊椎動物の細胞内部にインビボでタンパク質またはペプチドを送達するための方法についての特定の実施形態は、生理学的に許容可能な担体と、対象のポリペプチドを操作的にコードする裸のポリヌクレオチドとを含む標本を、細胞を含有する組織の間質空間に導入する段階を含み、それによって、裸のポリヌクレオチドは細胞内部に取り込まれ、生理的効果を有する。これは特に、インビトロでの伝達に適用可能であるが、インビボでも適用することができる。
【0378】
「裸の」ポリヌクレオチドを含むインビトロおよびインビボで使用される組成物は、PCT出願番号WO90/11092(Vical社)およびPCT出願番号WO95/11307(Institut Pasteur, INSERM, Universite d'Ottawa)ならびにTacson 等 (1996)およびHuygen 等 (1996)の文献にも記述されている。
【0379】
本発明のさらに他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチド構築物を含む、本発明の裸のポリヌクレオチドの細胞中への伝達は、粒子照射(微粒子発射物)で進められ、Klein 等 (1987)に記述されているように、前記粒子は、細胞膜を貫通し、それらを殺すことなく細胞に入ることが可能となる高速に加速されたDNAコーティング微粒子発射物である。
【0380】
更なる実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはリポソーム中に閉じ込められる(GhoshおよびBacchawat, 1991; Wong 等, 1980; Nicolau 等, 1987)。
【0381】
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記述されるCanIonタンパク質またはポリペプチドをインビボで生成するための組成物を提供する。その組成物は、生理学的に許容可能な担体中に溶液中に、かつ組織細胞に前記タンパク質またはポリペプチドを発現させるために組織中に導入するのに適している、このポリペプチドを操作的にコードする裸のポリヌクレオチドを含有する。
【0382】
所望の宿主生物に注入されるベクターの量は、注入部位に応じて異なる。指示用量として、動物体内、好ましくは哺乳類体内、例えばマウス体内に、ベクター0.1〜100μgが注入されるだろう。本発明によるベクターの他の実施形態では、それは、宿主細胞中にインビトロで、処理される動物から予め収集された宿主細胞中に、さらに好ましくは筋細胞などの体細胞中に導入される。続く段階では、体内に組換えタンパク質を局所的または全身的に送達するために、所望のCanIonポリペプチドまたは所望のその断片をコードするベクターで形質転換された細胞を動物体内に再導入する。
〈細胞宿主〉
本発明の別の目的は、本明細書に記述されるポリヌクレオチドの1つ、特にCanIon調節ポリヌクレオチドまたは配列番号1〜4からなる群から選択されるCanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体を形質転換または移入した宿主細胞を含む。上述のベクターの1つなどの組換えベクターを、形質転換した宿主細胞(原核細胞)または移入した宿主細胞(真核細胞)もまた含まれる。特に、本発明の細胞宿主は、「CanIon遺伝子のゲノム配列」のセクション、「CanIon cDNA配列」のセクション、「コード領域」のセクション、「ポリヌクレオチド構築物」のセクション、および「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」のセクションに記述されるポリヌクレオチドのいずれかを含み得る。
【0383】
本発明による更なる組換え細胞宿主は、A1〜A18およびその補体からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーを含有するポリヌクレオチドを含む。
【0384】
本発明によるその他の組換え細胞宿主は、本明細書に記述されるベクターのいずれか、特に「組換えベクター」セクションで記述されるベクターのいずれかを含む。
【0385】
本発明の発現ベクターのレシピエントとして使用される好ましい宿主細胞は以下のとおりである:
a)原核宿主細胞:大腸菌株(I.E.DH5−α株)、枯草菌、ネズミチフス菌、およびシュードモナス属、ストレプトマイセス属およびブドウ球菌などの種からの株。
【0386】
b)真核宿主細胞:HeLa細胞(ATCC N°CCL2;N°CCL2.1;N°CCL2.2)、Cv1細胞(ATCC N°CCL70)、COS細胞 (ATCC N°CRL1650;N°CRL1651)、Sf−9細胞(ATCC N°CRL1711)、C127細胞(ATCC N° CRL−1804)、3T3(ATCC N° CRL−6361)、CHO(ATCC N°CCL−61)、ヒト腎293(ATCC N°45504;N°CRL−1573)およびBHK(ECACC N°84100501;N°84111301)。
【0387】
c)他の哺乳類宿主細胞。
【0388】
哺乳類、および通常ヒトの細胞におけるCanIon遺伝子発現は欠陥のある状態にするか、またはその代わりに、本発明によるCanIonポリヌクレオチドによって動物細胞のゲノム中のCanIon遺伝子対応物が置換された、CanIonゲノムまたはcDNA配列の挿入で進行させることが可能である。これらの遺伝子の変化は、上述されている特定のDNA構築物を用いた相同的組換え事象によって引き起こされる。
【0389】
使用することができる細胞宿主の種類は、マウス接合体などの哺乳類接合体である。例えば、マウス接合体に、例えば10mMトリスHCl、pH7.4、 100mM NaClを含有する250μM EDTA、30μM スペルミン、 70μMスペルミジン中で、BACインサートに対しては1ng/ml、P1バクテリオファージインサートに対しては3ng/μlの濃度範囲に予め調節された対象の精製DNA分子を微量注入する。微量注入するDNAのサイズが大きい場合、Schedl 等 (1993b)よって記述されているように、このDNAの機械的な破損を避けるために、ポリアミドおよび高い塩濃度を使用することができる。
【0390】
本明細書に記述されるDNA構築物を含む本発明のポリヌクレオチドのいずれか1つは、胚幹(ES)細胞系、好ましくはマウスES細胞系に導入することが可能である。ES細胞系は、着床前胚盤胞の内部細胞塊の多能性の、未委任(uncommitted)細胞に由来する。好ましいES細胞系は、以下の:ES−E14TG2a(ATCC n°CRL−1821)、ES−D3(ATCC n°CRL1934およびn°CRL−11632)、YS001(ATCC n°CRL−11776)、36.5(ATCC n°CRL−11116)である。未委託状態でES細胞を維持するために、この胚の表現型を保存する適切なシグナルを提供し、かつES細胞接着のための基質としての役割を果たす成長抑制されたフィーダー細胞の存在下で、それらは培養される。好ましいフィーダー細胞は、実質的に任意のマウス細胞株の13日目から14日目の胚の組織から樹立され、Abbondanzo 等(1993)によって記述されているように培養液中で維持され、Robertson (1987)により記述のように照射によって、またはPease and Williams (1990)によって記述されているように抑制濃度のLIFの存在によって成長を抑制された胚線維芽細胞である。
【0391】
宿主細胞中の構築物を従来の手法で使用して、組換え配列によってコードされる遺伝子産物を産生することができる。
【0392】
適切な宿主を形質転換し、その宿主を適切な細胞密度に成長させた後に、温度変化または化学誘導などの適切な手段によって、選択されたプロモーターを誘導し、細胞を更なる期間培養する。
【0393】
細胞は通常、遠心分離によって収集され、物理的または化学的手段によって破壊され、その結果得られた粗抽出物をさらに精製するために保持する。
【0394】
タンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクリング、音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む、いずれかの簡便な方法によって破壊することができる。かかる方法は、当技術者にはよく知られている。
〈トランスジェニック動物〉
本明細書において「トランスジェニック動物」または「宿主動物」という用語は、本発明による核酸のうちの1つを含ませるために遺伝子的または人工的に操作されたそれらのゲノムを有する動物を指すために使用される。好ましい動物は非ヒト動物であり、本発明による核酸の挿入によって人工的かつ遺伝子的に改変されたそれらのゲノムを有するMus(例えば、マウス)、クマネズミ属(例えば、ラット)およびOryctogalus(例えば、ウサギ)から選択される属に属する動物が含まれる。一実施形態において、本発明は、非ヒト宿主動物と、本発明の組換えベクターまたはノックアウトベクターを用いた相同的組換えによって破壊されたCanIon遺伝子を含む動物とを包含する。
【0395】
本発明のトランスジェニック動物はすべて、複数のそれらの細胞内に、クローン化された組換えまたは合成DNA配列、さらに詳細には、CanIonコード配列、CanIon調節ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド構築物、または本明細書に記述されるようなアンチセンスポリヌクレオチドをコードするDNA配列を含む、精製または単離された核酸の1つを含む。
【0396】
一般に、本発明によるトランスジェニック動物は、本発明に記述されるポリヌクレオチド、組換えベクターおよび細胞宿主のいずれか1つを含む。特に、本発明のトランスジェニック動物は、「CanIon遺伝子のゲノム配列」のセクション、「CanIon cDNA配列」のセクション、「コード領域」のセクション、「ポリヌクレオチド構築物」のセクション、および「オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマー」のセクション、「組換えベクター」のセクションおよび「細胞宿主」のセクションに記述されるポリヌクレオチドのいずれかを含み得る。
【0397】
本発明の更なるトランスジェニック動物は、それらの体細胞および/またはそれらの生殖系列細胞中に、A1〜A18、およびその補体からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーを含むポリヌクレオチドを含有する。
【0398】
第1の好ましい実施形態において、トランスジェニック動物は、特に天然CanIonタンパク質、もしくはその代わりとして変異体CanIonタンパク質をコードするポリヌクレオチドの1つまたはいくつかのコピーが挿入されたゲノム内のトランスジェニック動物に関して、細胞分化に関連する多様な病理を研究するのに良い実験モデルである。
【0399】
第2の好ましい実施形態において、これらのトランスジェニック動物は、対象のこのタンパク質の合成で良好な収量を導き、最終的に対象のこのタンパク質の組織特異的な発現を導く、CanIon遺伝子の調節ポリヌクレオチドの制御下にて対象の所望のポリペプチドを発現する。
【0400】
本発明のトランスジェニック動物の設計は、当業者によく知られている従来の技術に従って行われる。トランスジェニック動物、および特にトランスジェニックマウスの作製に関するその他の詳細は、例えば、それが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,873,191号;同第5,464,764号; および同第5,789,215号で見つけることができる。本発明のトランスジェニック動物は、外来性遺伝物質を組み込んだゲノムを有する動物をもたらす手順を適用することによって作製される。その手順は、CanIonコード配列、CanIon調節ポリヌクレオチドまたは本明細書に記述するようにアンチセンスポリヌクレオチドをコードするDNA配列をコードする、遺伝物質、またはその一部を得ることを含む。
【0401】
本発明のポリヌクレオチドは、胚またはES幹細胞系に挿入される。その挿入は、Thomas 等 (1987)によって記述されるように、電気穿孔法を用いて行うことが好ましい。電気穿孔法にかけられた細胞をスクリーニングして(例えば選択可能なマーカーによる選択によって、PCRによって、またはサザンブロット分析によって)、好ましくは相同的組換え事象を介して、外来性組換えポリヌクレオチドがそれらのゲノムに組み込まれたポジティブな細胞を見つける。本発明に従って使用することが可能な、実例となるポジティブ−ネガティブ選択手順は、Mansour 等 (1988)によって記述されている。
【0402】
次いで、Bradley (1987)によって記述されているように、ポジティブな細胞を単離し、クローン化し、マウス由来の3.5日目の胚盤胞に注入する。次いで、その胚盤胞を雌の宿主動物に挿入し、期間まで成長させる。
【0403】
代替方法として、Wood 等 (1993) またはNagy 等 (1993)によって記述されているように、ポジティブなES細胞を2.5日目の8〜16細胞期(桑実胚)における胚と接触させる。そのES細胞は内部に取り入れられて、生殖系列を生じるであろう細胞を含む胚盤胞を広範囲にコロニー形成する。
【0404】
雌の宿主の子を試験して、どの動物が、例えば挿入された外来性DNA配列を含むトランスジェニックであるか、どれが野生型であるかを決定する。
【0405】
このように、本発明は、核酸、組換え発現ベクターまたは本発明による組換え宿主細胞にも関係する。
[本発明のトランスジェニック動物に由来する組換え細胞系]
本発明の更なる目的は、本明細書に記述されるトランスジェニック動物から得られる組換え宿主細胞を含む。一実施形態では、本発明は、本発明の組換えベクターまたはノックアウトベクターでの相同的組換えによって破壊されたCanIon遺伝子を含む非ヒト宿主動物および動物に由来する細胞を包含する。
【0406】
組換え細胞系は、例えばChou (1989) およびShay 等 (1991)によって記述されているように、SV40ラージT抗原などのオンコジーンを発現するベクターを初代細胞培養に移入することによって、本発明によるトランスジェニック動物のいずれかの組織から得られる細胞からインビトロで樹立される。
CanIon修飾物質および相互作用物質のスクリーニング方法
多数の実施形態において、本発明は、CanIonポリペプチド、チャンネル、およびポリヌクレオチドの発現と相互作用する、その発現に結合する、またはその発現を活性化または抑制する化合物を提供する。かかる化合物は有機または無機化合物であることが可能であり、制限されないが、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、ヌクレオチド、アミノ酸、または小分子抑制剤または活性化剤が含まれる。本出願において他で記述されているように、かかる化合物は、多数の疾患または症状のいずれかを治療または予防するのに有用である。CanIon活性または発現の抑制剤は、精神分裂病または双極性障害などの精神障害の治療または予防に使用することが好ましい。
〈CanIonチャンネル修飾物質のスクリーニング方法〉
CanIonに結合することができる化合物およびCanIon機能を調節することができる化合物は、疾患の治療において重要な用途を有する。電位作動性イオンチャンネルは一般的に、薬理学的に到達可能であり、様々な遺伝子によってコードされ、通常多量体タンパク質集合として作動し、結果として機能的かつ解剖学的な高い程度の特異性を生じることから、薬物標的として十分に確立されている。さらに、荷電電位感受性アミノ酸の移動を含むイオンチャンネルの開閉によって、コンフォメーションに変化が生じるため、イオンチャンネルによって、例えば伝導(活性化)または非伝導(不活性化)状態にあるチャンネルのみに結合する状態依存性分子を設計することが可能となる。
【0407】
さらに、多数のカルシウムチャンネル修飾物質が、多数の疾患または症状の治療または予防に有効であると実証されている。さらに、カルシウムチャンネル抑制剤は、種々の心臓血管疾患および症状(例えば、アンギナ、不整脈、高血圧)ならびにCNAおよび神経細胞障害(例えば、片頭痛、脳卒中、神経遮断薬により誘導される遅発性ジスキネジア、精神分裂病、双極性障害、疼痛、てんかん等)に対して効果的であることが示されている。さらに、カルシウムチャンネル作動薬は、局所麻酔の持続時間を短くする場合、また他の点では局所麻酔の効果を減弱する場合など、種々の用途に有効であることが示されている。CanIonチャンネルの拮抗薬および作動薬は、これらの疾患および他の疾患および症状の治療または予防に同様に有用である。例えば、CanIon拮抗薬は、精神分裂病および双極性障害の治療または予防に有用である。
【0408】
電位作動性イオンチャンネルは活性化するために作動薬の結合が必要でないため、機能CanIonチャンネルに対して化合物をスクリーニングすることが好ましい。アッセイには、天然のもしくはクローン化されたチャンネルを発現する細胞(小胞または膜)に、または全細胞アッセイに適用される機能および放射リガンド結合アプローチが含まれる。全細胞の機能アッセイでは、パッチクランプ法などの電気生理学的技術が使用される。アッセイは、いずれかの電位作動性チャンネル型、好ましくはL、N、およびT型チャンネルを含む。チャンネルを介した運動論的イオンフラックスもまた、蛍光、終点放射性トレーサーまたは細胞生死判別技術を用いて測定される。
【0409】
アッセイには、チャンネルに結合し、チャンネルを開口または閉口させる、種々の毒素、毒液または化合物(その開示内容全が参照により本明細書に組み込まれる、Denyer 等, Drug Disc. Today 3(7): 323-332 (1998))を利用することが可能である。一実施形態において、本発明のアッセイは、例えばポジティブまたはネガティブコントロールとしての、多数の公知のカルシウムチャンネル作動薬および拮抗薬のいずれかの使用を含む。適切な公知のカルシウムチャンネル拮抗薬の例には、フェニルアルキルアミン(例えば、ベラパミル)、ベンゾチアゼピン(例えば、ジルチアゼム)、およびジヒドロピリジン(例えば、ニフェジピン)が含まれ;カルシウムチャンネル作動薬には、FPL−64176およびBAY K8644が含まれ;ナトリウムチャンネル作動薬には、バトラコトキシンが含まれ;ナトリウムチャンネル拮抗薬には、スピラドリン(spiradoline)、メキシレチン、U−54494A(+/−)−シス−3,4−ジクロロ−N−メチル−N−[2−(1−ピロリジニル)−シクロヘキシル]−ベンズアミド)が含まれる。かかる化合物は、「リード」化合物として、つまりCanIonチャンネルに特異的に結合する、またはCanIonチャンネルを調節する誘導体分子を設計または発見するための出発分子としての役割を果たす化合物としても使用される。
【0410】
好ましい実施形態において、本発明のアッセイは、以下の段階:
a)(i)CanIonタンパク質またはその断片を含む、から本質的になる、またはからなるポリペプチドを含有するサンプルまたは宿主細胞、または(ii)CanIonタンパク質またはその断片を含む、から本質的になる、またはからなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する組換え宿主細胞を提供する段階;
b)候補物質を得る段階;
c)前記宿主細胞を前記候補物質と接触させる段階;
d)CanIon活性への前記候補物質の効果を決定する段階;
を含む、候補物質をスクリーニングする方法を含む。
【0411】
CanIon活性への候補物質の効果の決定は、よく知られている方法に従って達成することができる。CanIon活性への候補物質の効果は、作動薬または拮抗薬の効果であることが好ましい。一般に、イオン(例えば、Ca2+または Na+)を輸送する能力が減少した場合、化合物はCanIonを抑制する。イオンを輸送する能力が増大した場合には、化合物はCanIonを刺激する。
【0412】
CanIon活性は、いずれかの適切な手段を用いて検出することができる。好ましい例では、CanIon活性は、シグナル伝達事象を測定することによって検出される。シグナル伝達事象が、細胞に特有の分子または細胞のパラメーターの適切な変化を含むと同時に、シグナル伝達事象の非制限的な例には、イオンフラックスの変化、例えばCa2+もしくはNa+の変化または生成、あるいはK+フラックスまたは酵素活性化が含まれる。
【0413】
一態様において、例えば、単一細胞からの、または膜パッチにおける細胞全体の電流を測定する技術を用いて、CanIonチャンネルの電気生理学的性質を測定することによって、イオンフラックスをモニターすることができる。他の実施例では、蛍光または放射標識を使用して、公知のCanIon結合化合物の置換を検出するか、または細胞全体にわたるイオンフラックスを検出することができる(例えば、標識されたCa2+またはNa+)。細胞生死判別のための蛍光指示薬など、細胞の生理学的パラメーターに対する指示薬を使用することができる。他の実施例において、蛍光活性化細胞選別の使用などで、指示薬の物理的位置の変化を検出して、生理学的指示薬の排除または取込みを同定することができる。
【0414】
本発明のアッセイで使用されるサンプルは、CanIonタンパク質またはその断片を含む、から本質的になる、またはからなるポリペプチドまたはポリペプチドを発現する宿主細胞、または(ii)CanIonタンパク質またはその断片を含む、から本質的になる、またはからなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する組換え宿主細胞を含有する。本発明のCanIonアッセイは、機能CanIonポリペプチドを発現する組換え宿主細胞の使用を含むことが好ましい。宿主細胞は、CanIonチャンネルの機能αサブユニットを発現するか、または含むか、あるいは1つまたは複数のその他のイオンチャンネルサブユニット、もしくはCanIonを含むイオンチャンネル複合体を発現するか、または含むことが可能である。低い内因性イオンチャンネル発現または低い背景イオン、特にCa2+および/またはNa+伝導度を有する、宿主細胞を使用することが好ましい。
〔放射リガンド結合〕
一態様において、CanIonの対象の部位に結合し、かつ好ましくは所望の修飾作用を有する高親和性リガンドを同定し、前記の標識されたリガンドを置換する試験化合物の能力を検出することによって、CanIonチャンネルがスクリーニングされる。電位作動性(Ca2+、Na+およびK+)チャンネルアッセイで使用される毒物学的/薬理学的作用薬のリストは、Denyer 等 (上記)に示されている。この方法は一般に、標識化リガンドとして、同一部位に結合するか、またはその部位とアロステリックに結合する化合物を検出するのに適しているが、化合物の作動薬または拮抗薬の性質に関する情報は得られない。
〔細胞に基づく蛍光および放射性トレーサーアッセイ〕
他のアッセイにおいて、蛍光イオン試薬または放射標識されたイオンを用いて、浸透イオンの細胞内濃度の変化を測定することによって、CanIon機能をモニターすることができる。
【0415】
通常、Na+チャンネルなどのイオンチャンネルは、電位刺激後にミリ秒で不活性化する。Ca2+チャンネルは、不活性化を全く示さないか、または低い程度の不活性化を示し、高いK+脱分極によって開口することができる。細胞に基づく蛍光および放射性トレーサーアッセイにおいて、CanIonチャンネルは一般に、毒素もしくはいずれかの試験化合物、または高いK+脱分極によって活性化することが可能であり、その結果、そのチャンネルは長時間(何分かまで)開口する。
【0416】
蛍光に基づくアッセイにおいて、蛍光Ca2+染料を使用することができる(例えば、フルオ−3、カルシウムグリーン−1、分子プローブ、OR、米国)。Ca2+チャンネルは、等張液で膜を脱分極することによって、または毒素もしくは他の化合物でNa+チャンネルを脱分極することによって活性化することが可能であり、その結果として生じる細胞中の蛍光の過渡的な移動を20〜60秒にわたって測定することができる。蛍光測定システムおよび装置については、Denyer 等 (上記)にさらに記述されている。一般的に、放射性トレーサー22Na+および14C−グアニジンがNa+チャンネル分析に使用され、Ca2+チャンネル分析には45Ca2+が使用される。Denyer 等 (上記)に記載の好ましい実施形態において、Cytostar−Tシンチレーションマイクロプレート(Amersham International社、英国)を使用して、CanIon細胞に基づくハイスループットアッセイを実施する。
【0417】
更なるアッセイにおいて、イオンチャンネルのCa2+機能を、膜電位指示薬を用いて膜電位を測定することによってモニターする。生体膜の電気抵抗が高いと、原形質膜全体にわたるわずかなイオン電流によって、膜電位の大きな変化が生じる。したがって、電位アッセイを便利に用いて、膜全体にわたる一般的なイオンフラックスを検出することができる。細胞系は一般に、内因性イオンチャンネルからの影響を最小限に抑えるように選択される。ある範囲の染料が、膜電位指示薬染料として利用可能であり、反応の速い染料と反応の遅い染料、ならびにFRETに基づく電位センサー染料に分けられる。(Aurora Biosciences, CA, USA; Gonzalez 等, Drug Disc. Today 4(9): 431:439 (1999)に概説されている)
〔細胞生死判別〕
細胞生死判別アッセイにおいて、イオンチャンネル活性およびイオンフラックスは、細胞生死判別に直接関係する。酵母および哺乳類細胞系のどちらも、イオンチャンネル標的を試験するのに利用可能である。例えば、イオン特異的なK+取込みが欠乏しているサッカロミセス−セレビジエ細胞系を用いた酵母系を使用しなければならず、その系では、対象の機能K+チャンネルが細胞系において発現し、それによってK+取り込みが回復し、細胞生存が促進される(Anderson 等, Symp. Soc. Exp. Biol. 48: 85-97 (1994))。Ca2+またはNa+チャンネルのかかるアッセイを用いて、CanIon機能をブロックすることができる化合物を同定することが可能である。比色細胞生死判別読出しに、哺乳類神経芽細胞腫細胞を使用するNa+チャンネルアッセイなど、哺乳類細胞系もまた利用可能である。致死的な細胞内Na+過負荷を促進するために、Na+チャンネルオープナーおよびNa+/K+ポンプ阻害剤で細胞を処理する。チャンネルをブロックすることができる試験化合物での処理によって、細胞生存度が向上し、チャンネル開口を高めるその化合物はさらに、細胞死を促進するだろう(Manger 等, Anal. Biochem. 214: 190-194 (1993)。
〔電気生理学〕
電気生理学的な電位固定技術は、1つまたは多数のチャンネルを通って流れるイオン電流の測定を含む。単一微小電極が膜電位を調節し、単一細胞または膜パッチを通る電流の流れを測定する(Hamill, Pfugers Arch. 391, 85-100 (1981)。このように、対象の試験化合物の存在下または非存在下にて、イオン電流を測定することができる。大きなスケールの化合物スクリーニングシステムが設計されている(Neurosearch A/S, Glostrup, Denmark; Olesen 等, Voltage gated channel modulators, 7-8 December , Philadelphia PA, USA (1995); Denyer 等,上記文献)。
〈CanIonポリペプチドと相互作用する物質をスクリーニングする方法〉
本発明の目的では、リガンドは、CanIonタンパク質またはその断片もしくは変異体の1つに結合することができる、あるいはCanIonまたはその断片もしくは変異体をコードするポリヌクレオチドの発現を調節する、タンパク質、ペプチド、抗体、またはいずれかの合成的な化学化合物などの分子を意味する。
【0418】
本発明によるリガンドのスクリーニング法では、生体サンプルまたはCanIonタンパク質の推定上のリガンドとして試験すべき定義された分子を、このタンパク質と試験すべき推定上のリガンド分子との間に複合体を形成するために、対応する精製CanIonタンパク質、例えば上述の組換え細胞宿主によって生成された、対応する精製組換えCanIonタンパク質と接触させる。
【0419】
説明となる例として、CanIonタンパク質、または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも2、15、20、25、30、40、50、100、200、300、400、500または1000個のアミノ酸の隣接スパンを含む断片と、コンビナトリアル化学アプローチによって生成された分子などの薬物または小分子との相互作用を研究するために、Wang 等 (1997)によって記述されているHPLC法と対となる微小透析またはBush 等 (1997)により記述されているアフィニティーキャピラリー電気泳動法を使用することが可能である。上記文献の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0420】
更なる方法では、CanIonタンパク質、または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも2、15、20、25、30、40、50、100個のアミノ酸の隣接スパンを含む断片と相互作用する、ペプチド、薬物、脂肪酸、リポタンパク質、または小分子は、以下のようなアッセイを用いて同定される。結合について試験すべき分子は、蛍光、放射性、もしくは酵素タグなどの酵素検出可能な標識で標識され、特異的結合を生じさせる条件下にて固定化されたCanIonタンパク質またはその断片と接触して置かれる。非特異的に結合した分子を除去した後、適切な手段を用いて、結合分子を検出する。
【0421】
本発明の他の目的は、CanIonポリペプチドと相互作用する候補物質をスクリーニングする方法およびキットを含む。
【0422】
本発明は、CanIonタンパク質またはその1つの断片もしくは変異体と相互作用する対象の物質をスクリーニングする方法に関係する。CanIonタンパク質に、またはその断片もしくは変異体に共有結合または非共有結合するそれらの能力によって、これらの物質または分子は、インビトロおよびインビボのどちらでも有利に使用することができる。
【0423】
インビトロでは、前記相互作用分子は、サンプル中、好ましくは生体サンプル中のCanIonタンパク質の存在を同定するために検出手段として使用することができる。
【0424】
候補物質をスクリーニングする方法は、以下の段階:
a)CanIonタンパク質または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、または100個のアミノ酸の隣接スパンを含む断片を含む、から本質的になる、またはからなるポリペプチドを提供する段階;
b)候補物質を得る段階;
c)前記ポリペプチドと前記候補物質を接触させる段階;
d)前記ポリペプチドと前記候補物質との間に形成された複合体を検出する段階;を含む。
【0425】
本発明はさらに、CanIonポリペプチドと相互作用する候補物質のスクリーニング用のキットに関し、前記キットは:
a)配列番号5のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCanIonタンパク質、または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、または100個のアミノ酸の隣接スパンを含むペプチド断片;
b)任意に、CanIonタンパク質またはそのペプチド断片もしくは変異体と、候補物質との間に形成された複合体を検出するのに有用な手段;を含む。
【0426】
上述のキットの好ましい実施形態において、検出手段は、CanIonタンパク質またはそのペプチド断片もしくは変異体に対して作られるモノクローナルまたはポリクローナル抗体を含む。
【0427】
CanIonポリペプチドとの相互作用について、種々の候補物質または分子をアッセイすることができる。これらの物質または分子には、限定されないが、ポリペプチドなどの生物起源の天然もしくは合成有機化合物または分子が含まれる。候補物質または分子がポリペプチドを含む場合、このポリペプチドは、ファージに基づくランダムペプチドライブラリーに属するファージクローンの結果としての発現産物であるか、あるいは代わりに、そのポリペプチドは、2ハイブリッドスクリーニングアッセイを実施するのに適したベクター中でクローン化されたcDNAライブラリーの結果として得られた発現産物である。
【0428】
本発明は、上述のスクリーニング法を実施するのに有用なキットにも関係する。かかるキットは、CanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体と、任意にCanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体と候補物質との間に形成された複合体を検出するのに有用な手段と、を備えることが好ましい。好ましい実施形態において、検出手段は、相当するCanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体に対して作られるモノクローナルまたはポリクローナル抗体を含む。
A.ランダムペプチドライブラリーから得られる候補リガンド
スクリーニング方法の特定の実施形態において、推定上のリガンドは、ファージベクターに含まれるDNAインサートの発現産物である(ParmleyおよびSmith, 1988)。特に、ランダムペプチドファージライブラリーが使用される。そのランダムDNAインサートは、アミノ酸8〜20個の長さのペプチドをコードする(Oldenburg K.R. 等, 1992; Valadon P., 等, 1996; Lucas A.H., 1994; Westerink M.A.J., 1995; Felici F. 等, 1991)。この特定の実施形態に従って、固定化CanIonタンパク質に結合する、タンパク質を発現する組換えファージを保持し、続いて、CanIonタンパク質と組換えファージとの間に形成された複合体を、CanIonタンパク質に対して作られるポリクローナルまたはモノクローナル抗体によって免疫沈降させる。
【0429】
組換えファージにおけるリガンドライブラリーが構築されたら、ファージ集団を固定化CanIonタンパク質と接触させる。次いで、非特異的に結合した組換えファージを除去するために、複合体標本を洗浄する。次いで、CanIon タンパク質に特異的に結合するファージをバッファー(酸性pH)によって溶出するか、ハイブリドーマ抗CanIonによって作製されたモノクローナル抗体によって免疫沈降させ、続いてこのファージ集団を、細菌(例えば、大腸菌)の過剰感染によって増幅する。さらに特異的な組換えファージクローンを選択するために、選択段階は、数回、好ましくは2〜4回繰り返し行われる。最後の段階は、感染細菌中での発現および単離によって、選択された組換えファージクローンによって生成されたペプチドを特徴付けることと、別の宿主ベクター系においてファージインサートを発現させること、または選択された組換えファージに含まれるインサートをシーケンスすることを含む。
B.競合実験によって得られる候補リガンド
代替方法としては、CanIonタンパク質、または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、または100個のアミノ酸の隣接スパンを含む断片に結合するペプチド、薬物または小分子を、競合実験で同定することが可能である。かかるアッセイにおいて、CanIonタンパク質またはその断片を、プラスチックプレートなどの表面に固定化する。検出可能な標識された公知のCanIonタンパク質リガンドの存在下にて、増加量のペプチド、薬物または小分子を、CanIonタンパク質またはその断片と接触して置く。例えば、CanIonリガンドは、蛍光、放射性、または酵素タグで検出可能に標識される。CanIonタンパク質またはその断片に結合する試験分子の能力は、試験分子の存在下で結合した、検出可能に標識された公知のリガンドの量を測定することによって決定される。試験分子が存在する場合、CanIonタンパク質またはその断片に結合した公知のリガンドの量の減少から、試験分子がCanIonタンパク質またはその断片に結合することができることが示される。
C.アフィニティークロマトグラフィーによって得られる候補リガンド
CanIonタンパク質、または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、または100個のアミノ酸の隣接スパンを含むその断片と相互作用するタンパク質または他の分子。アガロース、Affi Gel(登録商標)、もしくは当技術者に公知の他のマトリックスなど適切なカラムマトリックスへの化学結合を含む従来の技術を用いて、CanIonタンパク質またはその断片をカラムに付着させる。この方法の一部の実施形態では、アフィニティーカラムはキメラタンパク質を含有し、そこでCanIonタンパク質またはその断片はグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)に融合する。上述のような細胞タンパク質の混合物または発現タンパク質のプールをアフィニティーカラムに適用する。次いで、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Ramunsen 等 (1997)で記述されているように、カラムに付着されたCanIonタンパク質またはその断片と相互作用するタンパク質または他の分子を単離し、2−D電気泳動ゲル上で分析することができる。代替方法として、アフィニティーカラム上に保持されたタンパク質を、電気泳動に基づく方法によって精製し、シーケンスすることができる。同じ方法を用いて、個体を単離し、ファージディスプレイ産物をスクリーニングし、またはファージディスプレイのヒト抗体をスクリーニングすることができる。
D.光学バイオセンサー法により得られる候補リガンド
その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、EdwardsおよびLeatherbarrow (1997) 、 Szabo 等 (1995)にもまた記載の光学バイオセンサーを使用することによっても、CanIonタンパク質、または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、または100個のアミノ酸の隣接スパンを含むその断片と相互作用するタンパク質をスクリーニングすることができる。この技術によって、標識された分子を必要とすることなく、リアルタイムで分子間の相互作用を検出することが可能となる。この技術は、表面プラズモン共鳴(SPR)現象に基づく。簡単に言えば、試験すべき候補リガンド分子を表面(カルボキシメチルデキストランマトリックス)に付着させる。光線は、試験するサンプルを含有しない表面側に向けられ、前記表面によって反射される。SPR現象は、角度および波長と特定の関連を有する、反射光の強度の減少をもたらす。候補リガンド分子の結合によって、表面上の屈折率の変化が生じ、その変化はSPRシグナルの変化として検出される。CanIonタンパク質またはその断片と相互作用することができる候補リガンド分子または物質をスクリーニングするために、CanIonタンパク質またはその断片を表面上に固定化する。この表面は、アッセイすべき候補分子が流れる細胞の一方の側を含む。CanIonタンパク質またはその断片上への候補分子の結合は、SPRシグナルの変化として検出される。試験される候補分子は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、またはコンビナトリアル化学によって生成された小分子であることが可能である。この技術は、それらの表面に内因性または組換え発現CanIonタンパク質を示す真核もしくは原核細胞または脂質小胞を固定化することによっても実施することができる。
【0430】
その方法の主な利点は、CanIonタンパク質と、CanIonタンパク質と相互作用する分子との間の会合速度を決定することが可能となることである。したがって、強いまたは逆に弱い会合定数によって、CanIonタンパク質またはその断片と相互作用するリガンド分子を特異的に選択することが可能である。
E.2ハイブリッドスクリーニングアッセイにより得られる候補リガンド
酵母2ハイブリッド系は、インビボでのタンパク質−タンパク質相互作用を研究するために設計され(Fieldsおよび Song, 1989)、酵母Gal4タンパク質のDNA結合ドメインへのベイトタンパク質の融合に依拠する。この技術は、米国特許第5,667,973号および同第5,283,173号(Fields 等)にもまた記述されており、どちらの特許の技術的教示も参照により本明細書に組み込まれる。
【0431】
Harper 等 (1993), Cho 等 (1998), またはFromont-Racine 等 (1997)によって記述されているように、2ハイブリッドアッセイによるライブラリースクリーニングの一般手順を行うことが可能である。
【0432】
ベイト(bait)タンパク質またはポリペプチドは、CanIonポリペプチド,
または配列番号5の少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、または100個のアミノ酸の隣接スパンを含む断片を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0433】
さらに正確には、CanIonポリペプチドまたはその断片もしくは変異体をコードするヌクレオチド配列が、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインをコードするポリヌクレオチドに融合し、その融合したヌクレオチド配列は、適切な発現ベクター、例えばpAS2またはpM3中に挿入される。
【0434】
次いで、ヒトcDNAライブラリーは、ヒトcDNAインサートがGAL4タンパク質の転写ドメインをコードするベクター中でヌクレオチド配列に融合するように特別に設計されたベクターにおいて構築される。使用するベクターはpACTベクターであることが好ましい。ヒトcDNAライブラリーのヌクレオチドインサートによってコードされるポリペプチドは、「プレイ(prey)」ポリペプチドと呼ばれる。
【0435】
第3ベクターは、転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインのどちらも含有する完全なGal4タンパク質の結合に反応性である制御配列の制御下に置かれる、βガラクトシダーゼまたはCAT遺伝子などの検出可能なマーカー遺伝子を含有する。例えば、ベクターpG5ECを使用することが可能である。
【0436】
2種類の異なる酵母株もまた使用される。説明のためであり非制限的な例として、2種類の異なる酵母株は、以下の:
−その表現型が(MATa、Leu2−3、112ura3−12、trp1−901、his3−D200、ade2−101、gal4Dgal180D URA3 GAL−LacZ、LYS GAL−HIS3、cyhr)である、Y190;
−その表現型が(MATa gal4 gal80 his3 trp1−901 ade2−101 ura3−52 leu2−3、−112 URA3 GAL−lacZmet−)であり、Y190の逆の交配型である、Y187;
であることが可能である。
【0437】
簡単に言えば、pAS2/CanIon20μgおよびpACT−cDNA ライブラリー20μgを、酵母株Y190中に同時形質転換する。その形質転換体は、ヒスチジン、ロイシンおよびトリプトファンを欠くが、ヒスチジン合成阻害剤3−AT(50mM)を含有する最少培地上で成長させるために選択される。フィルターリフトアッセイによって、βガラクトシダーゼに対してポジティブコロニーをスクリーニングする。次いで、ダブルポジティブコロニー(His+、β−gal+)を、ヒスチジン、ロイシンを欠くが、トリプトファンおよびシクロヘキシミド(10 mg/ml)を含有するプレート上で成長させて、pAS2/CanIonプラスミドの損失およびpACT−cDNAライブラリープラスミドの保持率に対して選択する。得られたY190株は、Harper 等 (1993) および Bram 等 (Bram RJ 等, 1993)に記述されているようにGal4融合として、CanIonタンパク質または関連しない対照タンパク質;例えばサイクロフィリンB、ラミン、またはSNF1などを発現するY187株と交配し、フィルターリフトアッセイによって、βガラクトシダーゼに対してスクリーニングする。対照Gal4融合と交配した後、βgal−である酵母クローンは、偽陽性と見なされる。
【0438】
本発明による2ハイブリッド法の他の実施形態において、CanIonまたはその断片もしくは変異体との細胞タンパク質との相互作用を、Matchmaker Two Hybrid System 2(カタログ晩番号K1604−1、Clontech社)を使用して評価することが可能である。その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Matchmaker Two Hybrid System 2(カタログ晩番号K1604−1、Clontech社)に添付されるマニュアルに記載のように、CanIonタンパク質またはその一部をコードする核酸は、それらが酵母転写活性化因子GAL4のDNA結合ドメインをコードするDNAとインフレームであるように、発現ベクター中に挿入する。所望のcDNA、好ましくはヒトcDNAを、それらがGAL4の活性化ドメインをコードするDNAとインフレームであるように、第2発現ベクター中に挿入する。2つの発現プラスミドを酵母に形質転換し、その酵母を、HIS3遺伝子の発現ベクターならびにGAL4依存性発現のそれぞれに対して選択可能なマーカーの発現を選択する選択培地上にプレーティングする。ヒスチジンを欠く培地で成長させることができる形質転換体を、GAL4依存性lacZ発現についてスクリーニングする。ヒスチジン選択およびlacZアッセイの両方でポジティブである細胞は、CanIonと、最初に選択されたcDNAインサートによってコードされるタンパク質またはペプチドとの間の相互作用を含有する。
〈CanIon遺伝子の制御配列と相互作用する物質をスクリーニングする方法〉
本発明は、例えばプロモーターもしくはエンハンサー配列などのCanIon遺伝子の制御配列と相互作用することができる物質または分子をスクリーニングする方法にも関する。
【0439】
CanIon遺伝子の制御配列、特に5’および3’調節領域のポリヌクレオチドまたはその断片もしくは変異体、好ましくは本発明の2対立遺伝子マーカーの1つを含む変異体からなる群から選択されるヌクレオチド配列と相互作用することができるタンパク質をコードする核酸は、その技術的な教示が参照により本明細書に組み込まれる、Clontech社のMatchmaker One−Hybrid System kitに同封されている冊子(カタログ参照n° K1603−1)に記述されているように、1−ハイブリッド系を使用することによって同定することが可能である。簡単に言えば、標的ヌクレオチド配列を選択可能なレポーター配列の上流でクローン化し、その結果得られたDNA構築物を酵母ゲノム(サッカロミセス−セレビジエ)中に組み込む。次いで、CanIon遺伝子の制御配列上に結合する候補タンパク質をコードするcDNAと、GAL4などの酵母転写因子の活性化因子ドメインをコードする配列との間に融合分子を含むライブラリーで、それらのゲノム中にレポーター配列を含有する酵母細胞を形質転換する。レポーター配列を発現する細胞を選択するために、その組換え酵母細胞を肉汁培養中にプレーティングする。このように選択された組換え酵母細胞は、CanIon遺伝子の標的配列上に結合することができる融合タンパク質を含有する。次いで、融合タンパク質をコードするcDNAをシーケンスし、インビトロで発現するか、または転写ベクター中にクローン化することが可能である。コードされたポリペプチドのCanIon遺伝子の標的制御配列への結合は、ゲル遅延アッセイまたはDNAse保護アッセイなどの当業者に公知の技術によって確認することができる。
【0440】
これらの出版物の教示内容が参照により本明細書に組み込まれる、FriedおよびCrothers (1981)、Garnerおよび Revzin (1981) 、 DentおよびbLatchman (1993)によって記述されているように、CanIon遺伝子の制御配列と相互作用することができる候補分子をスクリーニングするために、ゲル遅延アッセイを別々に実施してもよい。これらの技術は、タンパク質に結合するDNA断片が、未結合の同じDNA断片よりもゆっくりと移動することによる原理に基づく。簡単には、標的ヌクレオチド配列を標識する。次いで、標識された標的ヌクレオチド配列を、転写因子を含有する細胞に由来する全核抽出物、または試験すべき異なる候補分子と接触させる。CanIon遺伝子の標的制御配列と、候補分子または転写因子との間の相互作用は、移動の遅延によりゲルもしくはキャピラリー電気泳動後に検出される。
〈CanIon遺伝子の発現を調節するリガンドをスクリーニングする方法〉
本発明の別の目的は、CanIonタンパク質の発現を調節する分子をスクリーニングする方法である。かかるスクリーニング方法は、以下の段階:
a)CanIonタンパク質またはその変異体もしくは断片をコードするヌクレオチド配列を形質移入された原核細胞または真核細胞を培養し、それ自体のプロモーターの制御下に配置する段階;
b)培養した細胞を試験すべき分子と接触させる段階;
c)CanIonタンパク質またはその変異体もしくは断片の発現を定量化する段階;を含む。
【0441】
実施形態において、CanIonタンパク質またはその変異体もしくは断片をコードするヌクレオチド配列は、2対立遺伝子マーカーA12またはA16の少なくとも1つの対立遺伝子、およびその補体を含む。
【0442】
当業者によく知られているDNA組換え技術を用いて、CanIonタンパク質をコードするDNA配列を、そのプロモーター配列の下流で発現ベクター中に挿入する。実例として、CanIon遺伝子のプロモーター配列は、5’調節領域の核酸中に含まれる。CanIonタンパク質の発現の定量化は、mRNAレベルまたはタンパク質レベルで実現される。後者の場合には、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を使用して、例えばELISAまたはRIAアッセイにおいて、生成されたCanIonタンパク質の量を定量化することが可能である。
【0443】
好ましい実施形態では、CanIonのmRNAの定量化は、CanIonに特異的な1組のプライマーを用いて、培養されたCanIon形質移入宿主細胞の全mRNAの逆転写によって得られたcDNAを定量的PCR増幅することによって実現される。
【0444】
本発明は、CanIon遺伝子の発現レベルを増大または減少することができる物質または分子をスクリーニングする方法にも関する。かかる方法によって、CanIon遺伝子の発現レベルに制御効果を及ぼし、かつ本明細書に記述する疾患のいずれかを患う患者を治療するための薬剤組成物に含まれる活性成分として有用である可能性のある物質を当業者が選択することが可能となる。
【0445】
したがって、本発明は、CanIon遺伝子の発現を調節する候補物質または分子をスクリーニングする方法もまた提供し、この方法は以下の段階:
−核酸を含有する組換え細胞宿主を提供する段階であって、前記核酸が、検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドの上流に位置する、5’調節領域またはその生物活性断片もしくはその変異体のヌクレオチド配列を含む段階;
−候補物質を得る段階;
−検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現レベルを調節する候補物質の能力を決定する段階;を含む。
【0446】
更なる実施形態において、5’調節領域またはその生物活性断片もしくはその変異体のヌクレオチド配列を含む核酸はまた、配列番号4のCanIon cDNAの5’UTR領域、またはその生物活性断片もしくはその変異体の1つを含む。
【0447】
検出可能なタンパク質をコードする好ましいポリヌクレオチドの中でも、βガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
【0448】
本発明は、本明細書に記述されるスクリーニング法を実施するのに有用なキットにも関係する。かかるキットは、検出可能なタンパク質またはCanIonタンパク質またはその断片もしくは変異体をコードするポリヌクレオチドの上流に位置し、作動可能に連結する5’調節領域またはその生物活性断片もしくはその変異体のヌクレオチド配列の発現を可能にする組換えベクターを備えることが好ましい。
【0449】
CanIon遺伝子の発現を調節する候補物質または分子をスクリーニングする他の方法において、その方法は以下の段階:
a)核酸を含有する組換え宿主細胞を提供する段階であって、前記核酸が、配列番号4のCanIon cDNAの5’UTR配列、またはその生物活性断片もしくはその変異体の1つを含み、5’UTR配列またはその生物活性断片もしくはその変異体が、検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される段階;
b)候補物質を得る段階;
c)検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現レベルを調節する候補物質の能力を決定する段階;を含む。
【0450】
上記のスクリーニング法の特定の実施形態において、配列番号4のCanIon cDNAの5’UTR配列またはその生物活性断片もしくはその変異体の1つからなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸は、CanIon5’UTR配列に関して内因性であるプロモーター配列を含む。
【0451】
上記のスクリーニング法の別の特定の実施形態において、配列番号4のCanIon cDNAの5’UTR配列またはその生物活性断片もしくはその変異体の1つからなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸は、そこで定義されるCanIon5’UTR配列に関して外因性であるプロモーター配列を含む。
【0452】
さらに好ましい実施形態では、CanIon cDNAもしくは配列番号4の5’−UTR配列またはその生物活性断片を含む核酸は、A12またはA16またはその補体からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーを含む。
【0453】
本発明はさらに、CanIon遺伝子の発現を調節する候補物質をスクリーニングするためのキットを含み、前記キットは、配列番号4のCanIon cDNAの5’−UTR配列、またはその生物活性断片もしくは変異体を含む核酸を含有する組換えベクターを備え、5’UTR配列またはその生物活性断片もしくは変異体は、検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結する。
【0454】
CanIonの発現レベルおよび発現パターンは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開番号WO97/05277に記載の長いプローブとの溶液ハイブリダイゼーションによって解析される。簡単に言えば、CanIon cDNAまたは上述のCanIonゲノムDNA、またはその断片を、バクテリオファージ(T3、T7またはSP6)RNAポリメラーゼプロモーターのすぐ上流のクローニング部位で挿入して、アンチセンスRNAを生成する。CanIonインサートは、ゲノムDNA配列またはcDNA配列の少なくとも100個以上の連続したヌクレオチドを含むことが好ましい。プラスミドは、修飾リボヌクレオチド(つまり、ビオチン−UTPおよびDIG−UTP)を含むリボヌクレオチドの存在下にて直鎖化され、転写される。二重標識された過剰量のRNAを、対象の細胞または組織から単離されたmRNAと溶液中でハイブリダイズさせる。そのハイブリダイゼーションは、厳密な標準条件下(80%ホルムアミド、0.4M NaClバッファー、pH7〜8中、40〜50℃で16時間)にて行われる。一本鎖RNAに特異的なリボヌクレアーゼ(つまり、RNase CL3、T1、Phy M、U2またはA)で消化することによって、ハイブリダイズしていないプローブを除去する。ビオチン−UTP修飾の存在によって、ストレプトアビジンでコートされたミクロ滴定プレート上でハイブリッドを捕獲することが可能となる。DIG修飾が存在することによって、アルカリホスファターゼに結合する抗DIG抗体を用いたELISAでハイブリッドを検出かつ定量化することが可能となる。
【0455】
CanIon遺伝子発現の定量分析も、アレイを使用して実施することが可能である。本明細書で使用される「アレイ」という用語は、それにハイブリダイズすることができるmRNAの発現の特異的な検出を可能にするのに十分な長さがある複数の核酸の一次元、二次元、または多次元の配列を意味する。例えば、アレイは、その発現レベルが評価される遺伝子に由来する複数の核酸を含有する。アレイは、CanIonゲノムDNA、CanIon cDNA配列またはそれに相補的な配列またはその断片、特に本発明による2対立遺伝子マーカーの少なくとも1つ、好ましくは2対立遺伝子マーカーA1〜A17の少なくとも1つを含む配列を含む。その断片は、少なくとも15ヌクレオチドの長さであることが好ましい。他の実施形態において、その断片の長さは、少なくとも25ヌクレオチドである。一部の実施形態では、その断片の長さは、少なくとも50ヌクレオチドである。その断片の長さは、少なくとも100ヌクレオチドであることがさらに好ましい。他の好ましい実施形態では、その断片は、100ヌクレオチドを超える長さである。一部の実施形態では、その断片は、500ヌクレオチドを超える長さである。
【0456】
例えば、CanIon遺伝子発現の定量分析は、Schena 等 (1995および1996)によって記述されているように相補DNAマイクロアレイで実施することが可能である。完全長CanIon cDNAまたはその断片をPCRによって増幅し、高速ロボティクスを用いて、シリル化された(silylated)顕微鏡スライド上に96穴マイクロタイタープレートから配列する。加湿チャンバー内でプリントされたアレイをインキュベートし、アレイエレメントを再水和させ、0.2%SDS中で1分間1回、水中で1分間2回、水素化ホウ素ナトリウム溶液中で5分間1回すすぐ。そのアレイを水に95℃で2分間浸し、0.2%SDSに1分間移し、水で2回すすぎ、空気乾燥させ、25℃にて暗所で保存する。
【0457】
細胞または組織のmRNAを単離するか、または市販のものを入手し、1回の逆転写によってプローブを作製する。プローブは、14×14mmカバーガラス下の1cm2マイクロアレイに60℃で6〜12時間ハイブリダイズさせる。厳密性の低い洗浄バッファー(1×SSC/0.2%SDS)中、25℃で5分間アレイを洗浄し、次いで厳密性の高い洗浄バッファー(0.1×SSC/0.2% SDS)中で室温にて10分間洗浄する。カスタムフィルターセットを備えた蛍光レーザースキャン装置を使用して、アレイを0.1×SSC中でスキャンする。正確な差次的発現測定値が、2つの独立したハイブリダイゼーションの比の平均を取ることによって得られる。
【0458】
Pietu 等 (1996)によって記述されているように、CanIon遺伝子発現の定量分析は、相補DNAアレイにおいて、完全長CanIon cDNAまたはその断片を用いて実施することも可能である。完全長CanIon cDNAまたはその断片をPCR増幅し、膜上にスポットする。次いで、種々の組織または細胞から生じるmRNAを放射性ヌクレオチドで標識する。制御条件でハイブリダイゼーションおよび洗浄した後、ハイブリダイズしたmRNAは、ホスホ−イメージングまたはオートラジオグラフィーによって検出される。重複実験を行い、次いで、差次的に発現したmRNAの定量分析を行う。
【0459】
代替方法としては、Lockhart 等 (1996) およびSosnowsky 等 (1997)によって記述されているように、CanIonゲノムDNA、CanIon cDNA、またはその断片を使用した発現分析を高密度ヌクレオチドアレイによって行うことができる。CanIonゲノムDNAの配列またはCanIon cDNA配列、特に本発明による2対立遺伝子マーカーの少なくとも1つ、好ましくはA1〜A17、またはそれに相補的な配列からなる群から選択される少なくとも1つの2対立遺伝子マーカー、からの15〜50ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドをチップ上に直接合成するか(Lockhart 等, 上記)、あるいは合成し、次いでチップにアドレスする (Sosnowski 等, 上記)。そのオリゴヌクレオチドの長さは約20ヌクレオチドであることが好ましい。
【0460】
ビオチン、ジゴキシゲニンもしくは蛍光染料などの適切な化合物で標識されたCanIon cDNAプローブを適切なmRNA集団から合成し、次いで平均50〜100ヌクレオチドにランダムに断片化する。次いで、そのプローブをチップにハイブリダイズする。上記のLockhart等に記載のように洗浄し、異なる電界をかけた(Sosnowsky 等, 1997)後、染料または標識化化合物を検出し、定量化する。重複ハイブリダイゼーションを行う。異なるcDNAサンプル中の同じ標的オリゴヌクレオチド上のcDNAプローブから生じるシグナル強度の比較分析によって、CanIon mRNAの差次的発現発現が示される。
〈CanIon遺伝子の発現を抑制する方法〉
本発明による他の治療用組成物は有利に、アンチセンスツールまたは対応するCanIon遺伝子の発現を抑制する三重らせんツールとして、CanIonの核配列のオリゴヌクレオチド断片を含む。CanIonの核配列の好ましい断片は、2対立遺伝子マーカーA1〜A17の少なくとも1つの対立遺伝子を含む。
[アンチセンスアプローチ]
本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドを使用する好ましい方法は、Sczakiel 等 (1995)によって記述されている手順である。
【0461】
アンチセンスツールは、CanIon mRNAの5’末端に相補的なポリヌクレオチド(長さ15〜200bp)の中で選択されることが好ましい。他の実施形態では、所望の標的遺伝子の異なる部分に相補的な異なるアンチセンスポリヌクレオチドの組み合わせが使用される。
【0462】
本発明による好ましいアンチセンスポリヌクレオチドは、翻訳開始コドンATGまたはスプラスドナーもしくはアクセプター部位を含有するCanIonのmRNAの配列に相補的である。
【0463】
そのアンチセンス核酸は、二重鎖におけるCanIon mRNAの発現を抑制するのに十分な安定性を有する細胞内二重鎖の形成を可能にするのに十分な長さおよび融解温度を有するはずである。遺伝子治療で使用するのに適したアンチセンス核酸を設計する方策は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Green 等 (1986) 、IzantおよびWeintraub (1984)に開示されている。
【0464】
一部の方策において、アンチセンス分子は、細胞で正常に転写された鎖と逆の鎖を転写するために、プロモーターに対してCanIonコード領域の向きを逆にすることによって得られる。そのアンチセンス分子は、T7もしくはSP6ポリメラーゼを用いた転写系など、インビトロ転写系を使用して転写され、転写物が産生される。他のアプローチは、適切な発現ベクターにおけるプロモーターに、アンチセンス配列を含有するDNAを作動可能に連結することによって、インビボでCanIonアンチセンス核酸を転写することを含む。
【0465】
代替方法として、適切なアンチセンス方法は、Rossi 等 (1991)によって記述されている方法、国際特許出願番号WO94/23026、WO95/04141、WO92/18522および欧州特許出願番号EP0 572 287 A2に記述されている方法である。
【0466】
本発明に従って使用されるアンチセンス技術の代替方法は、それらの相補的なポリヌクレオチド末端(tail)を介して標的配列に結合し、かつその標的部位をハイブリダイズすることによって対応するRNAを切断するであろうリボザイム(つまり、「ハンマーヘッド型リボザイム」)を使用することを含む。簡単に言えば、ハンマーヘッド型リボザイムの単純化されたサイクルは、(1)相補的なアンチセンス配列を介した標的RNAへの配列特異的な結合;(2)標的鎖の切断可能なモチーフの部位特異的な加水分解;および(3)別の触媒サイクルを生じさせる、切断産物の放出;を含む。実際に、長鎖アンチセンスポリヌクレオチド(少なくとも30塩基の長さ)または長いアンチセンスアームを有するリボザイムの使用が有利である。アンチセンスリボザイムの好ましい送達システムは、これらのリボザイムを親油基に共有結合することによって、または簡便なベクターとしてリポソームを使用することによって達成される。本発明による好ましいアンチセンスリボザイムは、Sczakiel 等(1995)によって記述されているように作製され、特定の作製手順が、参照により本明細書に組み込まれる前記論文に参照される。
[三重らせんアプローチ]
CanIonゲノムDNAを使用して、細胞内三重らせん形成に基づくCanIon遺伝子の発現を抑制することも可能である。
【0467】
三重らせんオリゴヌクレオチドを使用して、ゲノムからの転写が抑制される。細胞活性の変化が特定の遺伝子に関連する場合に、その変化を研究するのに特に有用である。
【0468】
同様に、CanIonゲノムDNAの一部を使用して、細胞内のCanIon転写を抑制する効果を研究することができる。従来から、ホモプリン配列は、三重らせんに最も有用であると見なされていた。しかしながら、ホモピリミジン配列もまた、遺伝子発現を抑制することができる。かかるホモピリミジンオリゴヌクレオチドは、ホモプリン:ホモピリミジン配列中の主溝に結合する。したがって、CanIonゲノムDNAからの配列のどちらのタイプも、本発明の範囲内で企図される。
【0469】
三重らせんアプローチを用いた遺伝子治療法を実施するために、CanIonゲノムDANの配列を最初にスキャンして、CanIon発現を抑制するための三重らせんに基づく方法で使用することが可能な10mer〜20merのホモピリミジンまたはホモプリンの伸びを同定する。候補ホモピリミジンまたはホモプリン伸びの同定後、CanIon遺伝子を発現する組織培養細胞中に、候補配列を含有する様々な量のオリゴヌクレオチドを導入することによって、CanIon発現の抑制におけるそれらの効率を評価する。
【0470】
そのオリゴヌクレオチドは、制限されないが、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン、電気穿孔法、リポソーム仲介移入または天然取り込み(native uptake)を含む、当業者に公知のさまざまな方法を用いて細胞中に導入することができる。
【0471】
ノーザンブロット、RNアーゼ保護アッセイ、もしくはPCRに基づく方法などの技術を用いて、変化した細胞機能または低減したCanIon発現について、処理した細胞をモニターし、オリゴヌクレオチドで処理してある細胞中のCanIon遺伝子の転写レベルをモニターする。
【0472】
次いで、アンチセンスアプローチで記述されているようにインビトロでの結果に基づいて計算された用量で、組織細胞培養細胞中の遺伝子の発現を抑制するのに有効なオリゴヌクレオチドを、アンチセンスアプローチにおいて上述の技術を用いてインビボで導入することが可能である。
【0473】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドユニットの天然(β)アノマーをαアノマーと置換して、オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼに対してさらに耐性にする。さらに、臭化エチジウム等の介入性作用薬をαオリゴヌクレオチドの3’末端に付着して、三重らせんを安定化することができる。三重らせんの形成に適したオリゴヌクレオチドの産生の情報については、参照により本明細書に組み込まれるGriffin 等 (1989)を参照のこと。
〈薬剤組成物および製剤〉
CanIon調節化合物
本明細書に開示の方法を用いて、インビトロおよびインビボでCanIon活性を選択的に調節するCanIon作動薬または拮抗薬化合物を同定することが可能である。したがって、本発明は、患者における精神分裂病、双極性障害、または本明細書に記述される他の疾患または症状のいずれかを治療する方法であって、有効量のCanIon調節化合物を投与することを含む方法を包含する。前記化合物は、選択的なCanIon調節化合物であることが好ましい。本発明の方法によって同定される化合物には、例えばヒトCanIonポリペプチドに対する結合特性を有する抗体が含まれる。CanIonの相同体は、CanIon仲介活性および精神分裂病または双極性障害に付随する関連のある生理的症状を調節するのに有用であることもまた期待される。一般に、中枢神経系障害でのCanIonの役割に基づく本発明のアッセイ法を使用して、本発明のアッセイカスケードにおいて介入することができる化合物を同定することがさらに期待されている。好ましい実施形態において、治療有効量のCanIon拮抗薬を含む薬剤組成物を患者に投与することによって、精神分裂病または双極性障害を患う患者を治療する。
適応
CanIonは精神分裂病および双極性障害に関連するゲノム領域に連結し、CanIonを含む適応症は、種々の中枢神経系疾患を含む。神経系障害は、複合遺伝子塩基を有し、特定の症状を共有する場合が多いと期待される。特に本明細書に記述されるように、適応症は、精神障害の診断・統計便覧第4版(Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders fourth edition )(DSM−IV)の分類を用いて定義される、精神分裂病 および他の精神異常、気分障害、自閉症、物質依存およびアルコール中毒、てんかん、疼痛性障害、精神遅滞、および認知障害、不安障害、摂食障害、衝動調節障害、および人格障害を含む他の精神障害を含む。さらに、アンギナ、高血圧、または不整脈を含む多数の心臓血管性疾患もまた、CanIon修飾物質、好ましくは拮抗薬を使用して治療することが可能である。
医薬製剤および投与経路
本発明の方法を用いて同定された化合物を、単独で、または治療有効用量で適切な担体または賦形剤(1つまたは複数)と混合された薬剤組成物の状態で、ヒト患者を含む哺乳類に投与して、精神分裂病または双極性障害に関連する障害を治療または回復することができる。治療有効用量はさらに、本明細書で記載の方法によって決定されるように、症状を回復させるのに十分な化合物の量を意味する。治療有効用量は、連続する定期的な使用または投与に適していることが好ましい。本出願の化合物の配合および投与に関する技術は、「Remington's Pharmaceutaical Sciences」Mack Publishing Co., Easton, PA, latest editionに記載されている。
投与経路
適切な投与経路には、経口、直腸、経粘膜、または腸内投与、筋肉内注入、皮下注入、髄内注入ならびにくも膜下注入、直接脳室内注入、静脈内注入、腹腔内注入、鼻腔内もしくは眼内注入を含む非経口的送達が含まれる。中枢神経系疾患を治療する化合物を投与する特に有用な方法は、長時間にわたって化合物を送達する装置の外科的な埋め込みを要する。発明された薬物の徐放性製剤が企図される。
組成物/製剤
本発明に従って使用される薬剤組成物および薬物は、賦形剤および添加剤を含む1種または複数種の生理学的に許容可能な担体を用いて従来の手法で配合することが可能である。適切な処方は、選択される投与経路によって異なる。
【0474】
注入のために、本発明の作用薬は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液などの生理学的に適合性のバッファー、またはリン酸もしくは重炭酸バッファーなどの生理食塩水中で配合することが可能である。経粘膜投与のために、透過すべきバリヤに適した浸透剤を製剤に使用する。かかる浸透剤は一般に、当技術分野で公知である。経口的に使用できる医薬製剤には、ゼラチンで作られた押込み嵌め(push-fit)カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールもしくはソルビトールで作られた密封カプセルが含まれる。押込み嵌めカプセルは、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤との混合物中に活性成分を含有し得る。ソフトカプセル中では、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、もしくは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解または懸濁される。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のためのすべての製剤は、かかる投与に適した用量であるべきである。
【0475】
口腔投与用に、組成物は、従来の手法で配合された錠剤またはトローチ剤の形を取ることが可能である。
【0476】
吸入による投与のために、本発明に従って使用される化合物は、適切な気体噴射剤、つまり二酸化炭素を使用して加圧したパックまたは噴霧器からエアゾールスプレー状で便利に送達される。加圧されたエアゾールの場合には、用量単位は、計量された量を送達する値を求めることによって決定される。化合物の粉末混合物およびラクトースもしくはデンプンなどの適切な粉末ベースを含有する、吸入器または注入器で使用される、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジが配合される。
【0477】
その化合物は、注入、例えば静脈内ボーラスもしくは持続注入による非経口投与のために配合することが可能である。注入用の製剤は、添加された保存剤と共に、単位用量の形で、例えばアンプルまたは容器の形で提供される。その組成物は、水性媒体中の懸濁液、溶液または乳濁液としてのかかる形状を取り、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの配合剤を含有することが可能である。
【0478】
非経口投与に用いられる医薬製剤には、水溶性の活性化合物の水溶液が含まれる。水性懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有してもよい。任意に、その懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能とする、化合物の溶解性を増大する適切な安定剤または物質を含有することも可能である。
【0479】
代替方法としては、活性成分は、使用前に発熱物質を含有しない滅菌水などの適切な媒体と構成するために粉末状または親液性であることが可能である。
【0480】
前述の製剤の他に、その化合物はデポ製剤として配合することも可能である。かかる長時間作用性製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内に)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えばその化合物は、適切な高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容可能なオイル中の乳濁液として)またはイオン交換樹脂と、またはやや可溶性の誘導体、例えばやや可溶性の塩として配合することが可能である。
【0481】
さらに、その化合物は、治療薬を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性システムを用いて送達することが可能である。種々の徐放性材料が確立されており、当業者にはよく知られている。徐放性カプセルは、それらの化学的性質に応じて、数週間から100日を超える期間まで化合物を放出することができる。
【0482】
治療薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質を安定化するためのその他の方法を用いることも可能である。
【0483】
その薬剤組成物は、適切な固体もしくはゲル相の担体または賦形剤を含有してもよい。かかる担体または賦形剤の例には、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれる。
有効用量
本発明で使用するのに適した薬剤組成物には、活性成分が意図する目的を達成するのに有効な量で含まれている組成物が含まれる。さらに詳細には、治療有効量とは、治療される対象の発症を予防する、または現在の症状を軽減するのに有効な量を意味する。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示内容に照らして、当業者の能力内で十分である。
【0484】
本発明の方法で使用されるいずれかの化合物について、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定し、用量は動物モデルで処方することができる。かかる情報を用いて、ヒトにおいて有用な用量をさらに正確に決定することができる。
【0485】
治療有効用量とは、患者において症状の改善をもたらす化合物の量を意味する。かかる化合物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(試験集団の50%致死量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準薬剤手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比は治療指数であり、LD50とED50との比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0486】
これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを、ヒトで使用される範囲の薬用量を処方するのに使用することができる。かかる化合物の薬用量は、ほとんどまたは全く毒性を有さず、ED50を含む濃度を循環する範囲内にあることが好ましい。薬用量は、用いられる剤形および用いられる投与経路に応じて、この範囲内で変動する。正確な配合、投与経路および薬用量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択することができる(例えば、Fingl 等, 1975,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」, Ch. 1参照)。
〈コンピューターに関連する実施形態〉
本発明で使用される「本発明の核酸コード」という用語は、以下の:a)配列番号1〜3の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または10000個のヌクレオチドの隣接スパン;b)配列番号4の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または6000個のヌクレオチドの隣接スパンまたはその補体;c)配列番号1〜3の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または10000個のヌクレオチドの隣接スパンであって、A1〜A17からなる群から選択される2対立遺伝子マーカーを含む隣接スパン;d)配列番号6の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300または400個のヌクレオチドの隣接スパン;e)配列番号6の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300または400個のヌクレオチドの隣接スパンであって、2対立遺伝子マーカーA18を含む隣接スパン;f)上記のヌクレオチド配列のいずれか1つの相補的なヌクレオチド配列;のいずれか1つを含む、から本質的になる、またはからなるヌクレオチド配列を包含する。
【0487】
「本発明の核酸コード」はさらに、a)配列番号1〜3の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または10000個のヌクレオチドの隣接スパン;b)配列番号4の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、1000、2000、3000、4000、5000または6000個のヌクレオチドの隣接スパン;c)配列番号6の少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200,300または400個のヌクレオチドの隣接スパン;およびd)上記の配列のいずれか1つに相補的な配列;に相同的なヌクレオチド配列を包含する。相同配列は、これらの隣接スパンに少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、または75%の相同性を有する配列を意味する。相同性は、デフォルトパラメーターまたはいずれかの変更された(modified)パラメーターを用いたBLAST2Nを含む、本明細書に記載のいずれかの方法を使用して決定することが可能である。相同的配列は、ウリジンが本発明の核酸コードにおけるチミンと置き換わるRNA配列も含む。本発明の核酸コードは、従来の1文字形式(the inside back cover of Stryer, Lubert. Biochemistry, 3rd edition. W. H Freeman & Co., New York参照)、または配列におけるヌクレオチドの同一性を記録する他の形式またはコードで表すことができることを理解されよう。
【0488】
本明細書で使用される「本発明のポリペプチドコード」という用語は、配列番号5の少なくとも6、8、10、12、15、20、25、30、40、50、100、150、200、300、400、500、700、1000、1200、1400、1600または1700個のアミノ酸の隣接スパンを含有するポリペプチド配列を包含する。好ましい実施形態において、前記隣接スパンは、配列番号5のアミノ酸位置277、338、574、678、680、683、691、692、695、696、697、894、1480、1481、1483、1484、1485、1630、1631、1632、1636、1660、1667、1707、1709のうちの少なくとも1、2、3、5 または10を含む。本発明のポリペプチドコードは、従来の1文字形式または3文字形式(the inside back cover of Stryer, Lubert. Biochemistry, 3rd edition. W. H Freeman & Co., New York参照)、または配列におけるヌクレオチドの同一性を記録する他の形式またはコードで表すことができることを理解されよう。
【0489】
本発明の核酸コードおよび本発明のポリペプチドコードは、コンピューターによって読み取り、アクセスすることができるいずれかの媒体上に保存、記録し、処理することができることは理解されよう。本明細書で使用される「記録された」および「保存された」という言葉は、コンピューター媒体上に情報を保存するプロセスを意味する。当業者であれば、コンピューターで読み取り可能な媒体上の情報を記録する、現在公知の方法のいずれかを容易に採り入れて、本発明の核酸コードの1つまたは複数、あるいは本発明のポリペプチドコードの1つまたは複数を含む製品を作製することができる。本発明の他の態様は、本発明の少なくとも 2、5、10、15、20、25、30、または50個の核酸コードをその上に記録してあるコンピューターで読み取り可能な媒体である。本発明の他の態様は、本発明の少なくとも2、5、10、15、20、25、30、または50個のポリペプチドコードをその上に記録してあるコンピューターで読み取り可能な媒体である。
【0490】
コンピューターで読み取り可能な媒体には、磁気的に読み取り可能な媒体、光学的に読み取り可能な媒体、電子的に読み取り可能な媒体および磁気/光学媒体が含まれる。例えば、コンピューターで読み取り可能な媒体は、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープ、CD−ROM、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、または読み出し専用メモリー(ROM)ならびに当業者に公知の他の種類の媒体である。
【0491】
本発明の実施形態は、システム、特に本明細書に記載の配列情報を保存かつ処理するコンピューターシステムを含む。コンピューターシステム100の一例を、図2においてロック線図で図示する。本明細書で使用される「コンピューターシステム」とは、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列を解析するのに使用される、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、およびデータ記憶構成要素を意味する。一実施形態において、コンピューターシステム100は、Sun Enterprise1000サーバー(Sun Microsystems社、カリフォルニア州 パロアルト)である。コンピューターシステム100は、配列データを処理し、そのデータにアクセスし、データを操作するプロセッサーを備える。プロセッサー105は、Intel社から市販のPentiumIIIまたはMotorola社、Compaq社もしくはInternational Business Machines社から市販の同様のプロセッサーなど、よく知られている種類の中央処理装置であることが可能である。
【0492】
コンピューターシステム100は、プロセッサー105と、データを保存するための1つまたは複数の内部データ記憶構成要素110と、データ記憶構成要素上に保存されたデータを検索するための1つまたは複数のデータ検索素子を備える汎用システムであることが好ましい。当業者ならば、現在市販されているコンピューターシステムのいずれかが適していることは容易に理解することができるだろう。
【0493】
特定の一実施形態において、コンピューターシステム100は、メインメモリー115(好ましくは、RAMとして実装される)に接続されるバスに接続されたプロセッサー105、およびハードドライブなどの1つまたは複数の内部データ記憶素子110、および/またはその上に記録されたデータを有するコンピューターで読み取り可能な他の媒体を備える。一部の実施形態では、コンピューターシステム100はさらに、内部データ記憶素子110上に保存されたデータを読み取る、1つまたは複数のデータ検索素子118を備える。
【0494】
そのデータ検索素子118は、例えばフロッピーディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、磁気テープドライブ等である。一部の実施形態において、内部データ記憶素子110は、制御論理および/またはその上に記録されたデータを含む、フロッピーディスク、コンパクトディスク、磁気テープ等の、取り外し可能であり、コンピューターで読み取り可能な媒体である。コンピューターシステム100は有利なことに、データ検索素子に挿入したら、制御論理および/またはデータ記憶構成要素からのデータを読み取る適切なソフトウェアを備えるか、あるいはそのソフトウェアによってプログラムされる。
【0495】
コンピューターシステム100は、コンピューターユーザーにアウトプットを表示するために使用されるディスプレイ120を備える。コンピューターシステム100を、ネットワークまたはワイドエリアネットワークにおける他のコンピューターシステム125a〜cにリンクして、コンピューターシステム100への集中アクセスを提供することができることにも留意されたい。
【0496】
本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列にアクセスかつ処理するソフトウェア(検索ツール、比較ツール、およびモデリングツール等)は、実行中にメインメモリー115に常駐する。
【0497】
一部の実施形態では、コンピューターシステム100はさらに、コンピューターで読み取り可能な媒体上に保存された本発明の上述の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードをコンピューターで読み取り可能な媒体上に保存された参照ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列と比較するための配列コンペアラ(comparer)を備える。「配列コンペアラ」とは、ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を、他のヌクレオチドまたはポリペプチド配列および/または制限されないが、データ記憶手段内に保存されたペプチド、ペプチド擬態化合物、および化学物質を含む化合物と比較するために、コンピューターシステム100上に実装される1つまたは複数のプログラムを意味する。例えば、配列コンペアラは、コンピューターで読み取り可能な媒体上に保存された本発明の核酸コードのヌクレオチド配列および本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列を、コンピューターで読み取り可能な媒体上に保存された参照配列と比較して、相同性、生物学的機能に間係するモチーフ、または構造モチーフを同定することが可能である。この特許明細書の他で同定される種々の配列コンペアラのプログラムは特に、本発明のこの態様での使用に企図される。
【0498】
図3は、新規な配列とデータベースにおける配列との間の相同性レベルを決定するために、新規なヌクレオチド配列またはタンパク質配列を配列のデータベースと比較するプロセス200の一実施形態を図示するフローチャートである。配列のそのデータベースは、コンピューターシステム100内に保存された個人のデータベース、またはインターネットを通じて入手可能なGENBANK、PIR OR SWISSPROTなどの公開データベースである。
【0499】
プロセス200は開始状態201で開始し、次いで状態202に移動し、そこで比較すべき新規な配列がコンピューターシステム100におけるメモリーに保存される。上述のように、そのメモリーは、RAMもしくは内部記憶素子を含むいずれかの種類のメモリーであることが可能である。
【0500】
次いで、プロセス200は、配列のデータベースが解析および比較のために開かれている状態204に移動する。次いで、プロセス200は、データベースに保存された第1配列がコンピューター上のメモリーに読み込まれる状態206に移動する。次いで、第1配列が第2配列と同じであるかどうかを決定するために、状態210で比較を行う。この段階は、新規な配列とデータベースにおける第1配列との間の正確な比較を実施することに限定されないことを留意することは重要である。たとえ同一ではないとしても、2つのヌクレオチドまたはタンパク質配列を比較するための公知の方法は、当業者には公知である。例えば、試験すべき2つの配列間の相同性レベルを上げるために、一方の配列にギャップを導入することができる。比較中、配列にギャップまたは他の特徴が導入されるかどうかを制御するパラメーターは通常、コンピューターシステムのユーザーによって入力される。
【0501】
2つの配列の比較が状態210で実施されたら、2つの配列が同じかどうかの決定が決定状態でなされる。当然、「同じ」という用語は、完全に同一である配列に限定されない。ユーザーによって入力された相同性パラメーター内にある配列は、プロセス200において「同じ」と記録されるだろう。
【0502】
2つの配列が同じであることの決定がなされた場合、プロセス200は、データベースからの配列の名称がユーザーに表示される状態214に移る。この状態では、表示された名称を有する配列が入力された相同性の制約を満たすかどうかをユーザーに知らせる。保存された配列の名称がユーザーに表示されたら、プロセス200は、更なる配列がデータベースに存在するかどうかの決定をなす決定状態219に移る。更なる配列がデータベースに存在しない場合には、次いで、プロセス200は、最終状態220で終了する。しかしながら、更なる配列がデータベースに存在する場合、次いでプロセス200は、ポインタがデータベース中の次の配列に移動する状態224に移り、その結果、それを新規な配列と比較することができる。この手法において、新規な配列は整列され、データベース中のすべての配列と比較される。
【0503】
その配列が相同ではない決定が決定状態212でなされた場合、次いで、他のいずれかの配列が比較のためにデータベースで利用可能であるかどうかを決定するために、プロセス200は、決定状態218に即座に移るであろうことを留意されたい。
【0504】
したがって、本発明の一態様は、プロセッサー、本発明の核酸コードもしくは本発明のポリペプチドコードをその上に保存してあるデータ記憶素子、本発明の核酸コードもしくは本発明のポリペプチドコードと比較すべき、参照核酸配列もしくはポリペプチド配列をその上に検索可能に保存してあるデータ記憶素子、および比較を行うための配列コンペアラを備えるコンピューターシステムである。その配列コンペアラは、比較される配列間の相同性レベルを示すこと、または本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードおいて生物学的機能に関係するモチーフおよび構造モチーフを同定することが可能であり、あるいはこれらの核酸コードおよびポリペプチドコードと比較される配列において構造モチーフを同定することが可能である。一部の実施形態において、データ記憶素子は、本発明の核酸コードもしくは本発明のポリペプチドコードの少なくとも2、5、10、15、20、25、30、または50の配列をその上に保存してある。
【0505】
本発明の他の態様は、本発明の核酸コードと参照ヌクレオチド配列との間の相同性のレベルを決定する方法であって、相同性レベルを決定するコンピュータープログラムを使用することによって、核酸コードおよび参照ヌクレオチド配列を読み取る段階と、そのコンピュータープログラムで核酸コードと参照ヌクレオチド配列との間の相同性を決定する段階とを含む方法である。そのコンピュータープログラムは、デフォルトパラメーターまたはいずれかの変更されたパラメーターを用いたBLAST2Nが含まれる、本明細書に具体的に列挙されているプログラムを含む、相同性レベルを決定するための多数のコンピュータープログラムのいずれかであることが可能である。その方法は、上述のコンピューターシステムを用いて実行することができる。その方法はまた、コンピュータープログラムを使用して、本発明の上述の核酸コードの2、5、10、15、20、25、30、または50を読み取り、かつ核酸コードと参照ヌクレオチド配列との間の相同性を決定することによって実施される。
【0506】
図4は、2つの配列が相同であるかどうかを決定するための、コンピューターにおけるプロセス250の一実施形態を図示するフローチャートである。プロセス250は開始状態252で開始し、次いで、比較すべき第1配列がメモリーに保存される状態254に移る。次いで、比較すべき第2配列が状態256でメモリーに保存される。次いで、プロセス250は、第1配列における第1文字が読み取られる状態260に移り、次いで、第2配列の第1文字が読み取られる状態262に移る。その配列がヌクレオチド配列である場合には、次いでその文字は通常、A、T、C、GまたはUであると考えられることを理解されたい。その配列がタンパク質配列である場合には、次いでそれは1文字アミノ酸コードであるはずであり、そのため第1および第2配列が容易に比較できる。
【0507】
次いで、2つの文字が同じであるかどうかの決定が、決定状態264でなされる。それらが同じ場合には、次いでプロセス250は、第1および第2配列における次の文字が読み取られる状態268に移る。次いで、その次の文字が同じであるかどうかの決定がなされる。それらが同じである場合には、次いでプロセス250は、2つの文字が同じでなくなるまでこのループを続ける。その次の2つの文字が同じでないという決定がなされた場合、プロセス250は決定状態274に移り、読み取るべきいずれかの配列の更なる文字が存在するかどうかを決定する。
【0508】
読み取るべき、更なる文字が全く存在しない場合、次いでプロセス250は、第1配列と第2配列との間の相同性レベルがユーザーに表示される状態276に移る。相同性のレベルは、第1配列における配列の総数の中から、同じであった配列間の文字の比率を計算することによって決定される。したがって、第1の100ヌクレオチド配列におけるすべての文字が第2配列におけるすべての文字と整列した場合には、相同性レベルは100%であると考えられる。
【0509】
代替方法として、そのコンピュータープログラムは、本発明の核酸コードが1つまたは複数の位置で参照核酸配列と異なるかどうかを決定するために、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列を参照ヌクレオチド配列と比較するコンピュータープログラムであることが可能である。任意に、かかるプログラムは、参照ポリヌクレオチドまたは本発明の核酸コードのいずれかの配列に対して、挿入、欠失、または置換されたヌクレオチドの長さおよび同一性を記録する。一実施形態において、コンピュータープログラムは、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列に対して、1つまたは複数の単一ヌクレオチド多型(SNP)を含有するかどうかを決定するプログラムであることが可能である。これらの単一ヌクレオチド多型はそれぞれ、一塩基の置換、挿入、または欠失を含む場合がある。
【0510】
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドコード配列と参照ポリペプチド配列との間の相同性レベルを決定する方法であって、相同性レベルを決定するコンピュータープログラムを使用することによって、本発明のポリペプチドコード配列および参照ポリペプチド配列を読み取る段階と、そのコンピュータープログラムを使用してポリペプチドコード配列と参照ポリペプチド配列との間の相同性を決定する段階と、を含む方法である。
【0511】
したがって、本発明の別の態様は、本発明の核酸コードが参照ヌクレオチド配列と1つまたは複数のヌクレオチドにおいて異なるかどうかを決定する方法であって、核酸配列間の差異を同定するコンピュータープログラムを使用することによって、核酸コード配列および参照ヌクレオチド配列を読み取る段階と、そのコンピュータープログラムを使用して核酸コード配列と参照ヌクレオチド配列との間の差異を同定する段階と、を含む方法である。一部の実施形態において、そのコンピュータープログラムは、単一ヌクレオチド多型を同定するプログラムである。その方法は、上述のコンピューターシステムおよび図4に示す方法によって実行される。その方法は、コンピュータープログラムを使用することによって、本発明の核酸コードの少なくとも2、5、10、15、20、25、30、または50および参照ヌクレオチド配列を読み取り、その核酸コードと参照ヌクレオチド配列との差異をコンピューターシステムで同定することによってもまた行われる。
【0512】
他の実施形態では、コンピューターに基づくシステムはさらに、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列内の特徴を同定するための識別子を含む。
【0513】
「識別子」とは、上述の本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列内の特定の特徴を同定する1つまたは複数のプログラムを意味する。一実施形態において、その識別子は、本発明のcDNAコードにおけるオープンリーディングフレームを同定するプログラムを含む。
【0514】
図5は、配列における特徴の存在を検出する識別子プロセス300の一実施形態を図示するフローチャートである。プロセス300は開始状態302で開始し、次いで、特徴についてチェックすべき第1配列がコンピューターシステム100におけるメモリー115に保存される状態304に移る。次いで、プロセス300は、配列特徴のデータベースが開かれている状態306に移る。かかるデータベースは、特徴の名称と共に各特徴の属性のリストを含むであろう。例えば、特徴の名称が「開始コドン」であり、属性が「ATG]であり得る。別の例は、特徴の名称が「TAATAA ボックス」である場合、特徴の属性は「TAATAA」と考えられる。かかるデータベースの例は、University of Wisconsin Genetics Computer Group (www.gcg.com)によって作られている。
【0515】
特徴のデータベースが状態306で開かれたら、プロセス300は、第1の特徴がデータベースから読み取られる状態308に移る。第1特長の属性と第1配列との比較は、状態310で行われる。次いで、特徴の属性が第1配列で見出されるかどうかの決定が、決定状態316でなされる。その属性が見出された場合、プロセス300は、その見出された特徴の名称がユーザーに表示される状態318に移る。
【0516】
次いで、プロセス300は、特徴がデータベースに存在するかどうかの決定がなされる決定状態320に移る。更なる特徴が存在しない場合、次いでプロセス300は、最終状態324で終了する。しかしながら、更なる特徴がデータベースに存在する場合には、次いでプロセス300は、状態326で次の配列特徴を読み取り、次の特徴の属性が第1配列に対して比較される状態310にループバックする。
【0517】
特徴の属性が、決定状態316にて第1配列において見出されない場合、プロセス300は、さらなる特徴がデータベースに存在するかどうかを決定するために決定状態320に直接移動することを留意されたい。
【0518】
他の実施形態では、識別子は、本発明のポリペプチドコードの3次元構造を決定する分子モデリングプログラムを含む。一部の実施形態では、その分子モデリングプログラムは、公知の3次元タンパク質における残基の構造環境を表すプロファイルと最も適合性のある標的配列を同定する。(例えば、米国特許第5,436,850号参照)。他の技術では、所定のファミリーにおけるタンパク質の公知の3次元構造を重ね合わせて、そのファミリーにおける構造的に保存された領域を定義する。このタンパク質モデリング技術では、本発明のポリペプチドコードの構造に近づけるために相同的タンパク質の公知の3次元構造も使用する。(例えば、米国特許第5,557,535号参照)。従来の相同性モデリング技術は、プロテアーゼおよび抗体のモデルを構築するために日常的に用いられている。(Sowdhamini 等, (1997))。対照のタンパク質が鋳型タンパク質に対して不十分な配列同一性を有する場合、3次元タンパク質モデルを作るために、比較アプローチもまた用いることができる。場合によっては、非常に弱い配列同一性を有するにもかかわらず、タンパク質は同様な3次元構造に折り畳む。例えば、多数のらせん状サイトカインの3次元構造は、配列相同性が弱いにもかかわらず、同様な3次元トポロジーに折り畳む。
【0519】
現在、スレッディング法の最近の発達によって、標的と鋳型(1つまたは複数)との間の構造的関連性が配列レベルで検出可能ではない多数の状況において、有望な折り畳みパターンの同定が可能である。多重配列スレッディング(MST)、構造同値(structural equivalencies)を用いて、折り畳みの認識が実行されるハイブリッド法は、ディスタンスジオメトリーのプログラムDRAGONを用いてスレッディングの結果から推論されて、低解像度のモデルが構築され、QUANTAなどの分子モデリングパッケージを使用して、全原子の画像が作られる。
【0520】
この3段階のアプローチに従って、最初に、1つまたは複数の3D構造上に複数の整列配列を同時にスレッディングすることができる、新規な折り畳み認識アルゴリズムMSTを用いることによって、候補鋳型を同定する。第2段階において、MSTの結果から得られた構造同値を、残基間距離拘束に転換し、二次構造予測から得られた補助的情報と共に、ディスタンスジオメトリープログラムDRAGONに入力する。そのプログラムは不偏手法で拘束を組み合わせ、多数の低解像度モデルのコンフォメーションを迅速に形成する。第3段階において、これらの低解像度モデルのコンフォメーションは、全原子モデルに変換され、分子モデリングパッケージQUANTAを使用したエネルギーの最小化にかけられる(例えば、Aszodi 等, (1997)参照)。
【0521】
次いで、分子モデリング解析の結果を薬物設計技術に用いて、本発明のポリペプチドコードの活性を調節する作用薬を同定することが可能である。
【0522】
したがって、本発明の他の態様は、本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコード内の特徴を同定する方法であって、その中の特徴を同定するコンピュータープログラムを使用することによって、核酸コード(1つまたは複数)またはポリペプチドコード(1つまたは複数)を読み込み、その核酸コード(1つまたは複数)またはポリペプチドコード(1つまたは複数)内の特徴をコンピュータープログラムで同定することを含む方法である。一実施形態では、コンピュータープログラムは、オープンリーディングフレームを同定するコンピュータープログラムを含む。更なる実施形態において、コンピュータープログラムは、ポリペプチド配列における構造モチーフを同定する。他の実施形態では、コンピュータープログラムは、分子モデリングプログラムを含む。その方法は、コンピュータープログラムを使用することによって、本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドの単一配列または少なくとも、5、10、15、20、25、30,もしくは50を読み込み、コンピュータープログラムでその核酸コードまたはポリペプチド内の特徴を同定することによって行われる。
【0523】
本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドを保存して、様々な形式で様様なデータ処理装置を用いて処理することが可能である。例えば、それらは、Microsoft WORDもしくはWORDPERFECTなどの文書作成ファイルに、またはDB2、SYBASE、もしくはORACLEなどの当業者に公知の様々なデータベースプログラムにASCIIファイルとして保存することが可能である。さらに、多くのコンピュータープログラムおよびデータベースは、配列コンペアラ、識別子、または参照ヌクレオチドもしくはポリペプチド配列のソースとして使用され、本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードと比較される。以下のリストは、本発明を制限するものではないが、本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードに関して有用なプログラムおよびデータベースへのガイダンスを提供する。使用することが可能なプログラムおよびデータベースには、制限されないが、MacPattern(EMBL)、DiscoveryBase(Molecular Applications Group)、GeneMine(Molecular Applications Group)、Look(Molecular Applications Group)、MacLook(Molecular Applications Group)、BLASTおよびBLAST2(NCBI)、BLASTNおよびBLASTX(Altschul等1990)、FASTA(Pearson および Lipman, 1988)、FASTDB(Brutlag 等, 1990)、Catalyst(Molecular Simulations社)、Catalyst/SHAPE(Molecular Simulations社)、Cerius2.DBAccess(Molecular Simulations社)、HypoGen(Molecular Simulations社)、InsightII(Molecular Simulations社)、Discover(Molecular Simulations社)、CHARMm(Molecular Simulations社)、Felix(Molecular Simulations社)、DelPhi(Molecular Simulations社)、QuanteMM(Molecular Simulations社)、Homology(Molecular Simulations社)、Modeler(Molecular Simulations社)、ISIS(Molecular Simulations社)、Quanta/Protein Design(Molecular Simulations社)、WebLab(Molecular Simulations社)、WebLab Diversity Explorer(Molecular Simulations社)、Gene Explorer(Molecular Simulations社)、SeqFold(Molecular Simulations社)、EMBL/Swissproteinデータベース、MDL Available Chemicals Directoryデータベース、MDL Drug Data Reportデータベース、Comprehensive Medicinal Chemistryデータベース、Derwents’s World Drug Index データベース、BioByteMasterFileデータベース、Genbankデータベース、およびGenseqnデータベースが含まれる。他の多くのプログラムおよびデータベースも、示された本発明の開示内容において当業者には明らかであるだろう。
【0524】
上記のプログラムを使用して検出することができるモチーフは、ロイシンジッパー、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフ、グリコシル化部位、ユビキチン結合、αヘリックス、およびβシートをコードする配列、ホメオボックス、酸性ストレッチ(stretch)、酵素活性部位、基質結合部位、および酵素切断部位などの転写調節に関係するコードされたタンパク質、配列の分泌を方向付ける単一ペプチドをコードする単一配列を含む。
【0525】
本出願全体にわたり、様々な出版物、特許および公開特許出願が記載されている。本出願に参照されているこれらの出版物、特許および公開特許明細書の開示内容は、本発明の開示内容に参照として組み込まれ、本発明が関係する現況技術がより完全に説明される。
《実施例》
【実施例1】
【0526】
〈2対立遺伝子マーカーの同定−DNA抽出〉
ドナーは血縁関係がなく健康であった。それらは、フランス人異質集団を表す十分な多様性を示した。100個体からのDNAを抽出し、2対立遺伝子マーカーを検出するために試験した。
【0527】
EDTAの存在下にて、末梢静脈血30mlを各ドナーから採取した。細胞(ペレット)を2000rpmで10分間遠心分離した後、回収した。溶解溶液(最終体積50ml:10mMトリス、pH7.6;5mM MgCl2;10mM NaCl)によって、赤血球を溶解した。溶解溶液中にペレットを再懸濁した後、上清中に存在する残留赤血球を除去するのに必要な回数、その溶液を遠心分離した(10分、2000rpm)。
【0528】
−3mlのTE10−2(10mMトリス−HCl、2mM EDTA)/04M NaCl
−200μlの10%SDS
−500μlのK−プロテイナーゼ(TE10−2/0.4M NaCl中にK−プロテイナーゼ2mg)から構成される溶解溶液3.7mlで、白血球のペレットを42℃で一晩溶解した。
【0529】
タンパク質を抽出するために、飽和NaCl(6M)(1/3.5v/v)1mlを添加した。激しく攪拌した後、その溶液を10000rpmで20分間遠心分離した。
【0530】
DNAを沈殿させるために、100%エタノール2〜3容積を前の上清に添加し、その溶液を2000rpmで30分間遠心分離した。そのDNA溶液を70%エタノールで3回すすぎ、塩を除去し、2000rpmで20分間遠心分離した。そのペレットを37℃で乾燥させて、TE10−1 1mlまたは水1ml中で再懸濁した。260nmにてODを測定することによって、DNA濃度を評価した(1単位OD=50μg/mlDNA)。
【0531】
DNA溶液中のタンパク質の存在を決定するために、OD260/OD280比を決定した。1.8〜2のOD260/OD280比を有するDNA標本のみを、以下に記述するその後の実施例で使用した。各個人からの等量のDNAを混合することによって、そのプールを構成した。
【実施例2】
【0532】
〈2対立遺伝子のマーカーの同定:PCRによるゲノムDNAの増幅〉
実施例1のDNAサンプルの特定のゲノム配列の増幅を、予め得られたDNAのプール上で行った。さらに、50個体のサンプルを同様に増幅した。
CRアッセイを以下のプロトコルを用いて行った:
Figure 2004525614
第1プライマーの各対を、本明細書に開示されるCanIon遺伝子の配列情報およびOSPソフトウェア(Hillier & Green, 1991)を用いて設計した。この第1プライマー対は長さ約20ヌクレオチドであり、標識されたPUおよびRPカラムにおいて、以下の表に開示される配列を有した。
【0533】
【表3】
Figure 2004525614
好ましくは、プライマーは、シーケンシングに有用である増幅に対して標的化された特定の塩基の上流にある共通のオリゴヌクレオチド末端を含有した。
【0534】
プライマーPUは、以下の更なるPU5’配列:TGTAAAACGACGGCCAGTを含有し、プライマーRPは、以下のRP5’配列:CAGGAAACAGCTATGACCを含有する。追加のPU5’配列を含有するプライマーは配列番号7に示される。追加のRP5’配列を含有するプライマーは配列番号8に示される。
【0535】
これらのプライマーの合成は、ホスホラミダイト法に従ってGENSET UFPS24.1シンセサイザーで実施した。
【0536】
DNAの増幅は、Genius IIサーモサイクラーで行った。95℃で10分間加熱した後、40サイクルを実施した。各サイクルは:95℃で30秒間、54℃で1分間、72℃で30秒間を含む。最終の伸長に関しては、72℃で10分間により、増幅を終了した。得られた増幅産物の量を、挿入原子剤(分子プローブ)として蛍光光度計およびピコグリーンを用いて、96穴マイクロタイタープレート上で決定した。
【実施例3】
【0537】
〈2対立遺伝子マーカーの同定−増幅されたゲノムDNAのシーケンシングおよび多型の同定〉
実施例2で得られた増幅されたDNAのシーケンシングをABI377シーケンサーで行った。増幅産物の配列は、染料ターミネーターサイクルシーケンシングプロトコルと共に自動ジデオキシターミネーターシーケンシング反応を用いて決定した。シーケンシング反応の産物をシーケンシングゲル上に流し、ゲル画像解析(ABI Prism DNAシーケンシング解析ソフトウェア(2.1.2バージョン))を使用して、その配列を決定した。
【0538】
その配列データをさらに評価して、増幅断片内の2対立遺伝子マーカーの存在を検出した。多型検索は、上述の同一位置で生じる、異なる塩基から生じる電気泳動パターンの重なり合ったピークの存在に基づいた。
【0539】
増幅の17個の断片において、18個の2対立遺伝子マーカーが検出された。これらの2対立遺伝子マーカーの局在は、以下の表に示すとおりである。
【0540】
【表4】
Figure 2004525614
BMとは、「2対立遺伝子マーカー」を指す。All1およびall2はそれぞれ、2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子1および対立遺伝子2を意味する。
【0541】
【表5】
Figure 2004525614
【実施例4】
【0542】
〈マイクロシーケンシングによる多型のバリデーション〉
実施例3において同定された2対立遺伝子マーカーをさらに確認し、それらのそれぞれの頻度をマイクロシーケンシングによって決定した。マイクロシーケンシングは、実施例1に記載の個々のDNAサンプルについて行った。
【0543】
PCRプライマーの同じセット(表1)を用いた2対立遺伝子マーカーの検出のために、上述のようにPCRによって、個体のゲノムDNAからの増幅を実施した。
【0544】
マイクロシーケンシングで使用される好ましいプライマーは、長さ約19ヌクレオチドであり、考えられる多型塩基のすぐ上流でハイブリダイズした。本発明に従って、マイクロシーケンシングに使用されるプライマーを以下の表に列挙する。
【0545】
【表6】
Figure 2004525614
Mis1およびMis2はそれぞれ、CanIon遺伝子の非コード鎖と、またはCanIon遺伝子のコード鎖と、ハイブリダイズするマイクロシーケンシング用プライマーを意味する。
【0546】
そのマイクロシーケンシング反応を以下の通り実施した:
増幅産物の精製後、製造元の助言に従って、10pmolマイクロシーケンシングオリゴヌクレオチド、1U Thermosequenase(Amersham E79000G)、Thermosequenaseバッファー1.25μl(260mMトリスHCl、pH9.5、65mM MgCl2)、および試験される各2対立遺伝子マーカーの多型部位におけるヌクレオチドに相補的な2つの適切な蛍光ddNTP(Perkin Elmer社、Dye Terminator Set 401095)を最終体積20μlで添加することによって、マイクロシーケンシング反応混合物を調製した。94℃で4分後、55℃で15秒、72℃で5秒、94℃で10秒のPCRの20サイクルを、Tetrad PTC−225サーモサイクラー(MJ Research社)において行った。次いで、取り込まれなかった染料ターミネーターをエタノール沈殿によって除去した。サンプルを最終的に、ホルムアミド−EDTAローディングバッファー中に再懸濁し、ポリアクリルアミドシーケンシングゲル上にローディングする前に95℃で2分間加熱した。ABI PRISM377 DNAシーケンサーによって、データを回収し、CanIonSCANソフトウェア(Perkin Elmer社)を使用して処理した。
【0547】
ゲル解析に続いて、増幅された各断片に存在する2対立遺伝子マーカーの対立遺伝子の決定を可能にするソフトウェアで、データを自動的に処理した。
【0548】
そのソフトウェアによって、上記のマイクロシーケンシング手順から得られるシグナルの強度が弱い、正常、または飽和しているかどうか、またはシグナルが不明瞭であるかどうかなどの因子が評価される。さらに、ソフトウェアによって、有意なピークが同定される(形状および高さの基準に従って)。有意なピークの中で、標的にされた部位に相当するピークが、それらの位置に基づいて同定される。2つの有意なピークが同じ位置に対して検出された場合、各サンプルは、高さの比に基づくホモ接合型またはヘテロ接合型として分類される。
【実施例5】
【0549】
〈CanIonタンパク質に対する抗体組成物の調製〉
実質的に純粋なタンパク質またはポリペプチドを、CanIonタンパク質またはその一部をコードする発現ベクターを含有する形質移入または形質転換された細胞から単離する。最終標本におけるタンパク質の濃度を、Amiconフィルターデバイス上で数マイクログラム/mlのレベルまで濃縮することによって調整する。次いで、そのタンパク質に対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を以下のように作製することができる:
A.ハイブリドーマ融合によるモノクローナル抗体の作製
CanIonタンパク質またはその一部におけるエピトープに対するモノクローナル抗体を、Kohler, G. および Milstein, C., (1975)の伝統的方法またはその派生的方法に従って、マウスハイブリドーマから作製することができる。Harlow, E., および D. Lane. 1988もまた参照のこと。
【0550】
簡潔には、数週間にわたって、数マイクログラムのCanIonタンパク質またはその一部をマウスに繰り返し接種する。次いで、そのマウスを屠殺し、抗体を生成する脾臓細胞を単離する。ポリエチレングリコールを使用して、その脾臓細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させ、融合していない余分な細胞を、アミノプテリンを含有する選択培地(HAT培地)上でその系の成長によって破壊する。うまく融合された細胞を希釈し、その希釈液のアリコートを、培養物の成長が続けられるマイクロタイタープレートのウェル中に入れる。抗体生成クローンは、最初Engvall (1980)によって記述されているようにELISAなどのイムノアッセイ、およびその派生的方法によって、ウェルの上清液中の抗体を検出することによって同定される。選択されたポジティブなクローンを拡大し、それらのモノクローナル抗体産物を使用するために収集することができる。モノクローナル抗体作製の詳細な手順は、L. 等 Basic Methods in Molecular Biology Elsevier, New York. Section 21-2に記述されている。
B.免疫化によるポリクローナル抗体の作製
未修飾であるか、または修飾して免疫原性を高めることができる、CanIonタンパク質またはその一部で適切な非ヒト動物を免疫化することによって、CanIonタンパク質またはその一部における異質エピトープに対する抗体を含有するポリクローナル抗血清を作製することができる。適切な非ヒト動物は、好ましくは非ヒト哺乳類であることが好ましい。通常マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはウマである。代わりに、CanIon濃度に対して濃縮された未精製標本を使用して、抗体を生成することができる。当技術分野で公知の適切なアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、RIBI等)の存在下にて、かかるタンパク質、断片または標本を非ヒト哺乳類に導入する。さらに、そのタンパク質、断片または標本を、免疫原性を高めるであろう薬剤で前処理することが可能であり、かかる薬剤は、例えばメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、B型肝炎表面抗原、およびキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)を含む当技術分野で公知の薬剤である。免疫化された動物からの血清を回収し、処理し、公知の手順に従って試験する。その血清が不要なエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する場合、そのポリクローナル抗体をイムノアフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
【0551】
有効なポリクローナル抗体生成は、抗原および宿主種の両方に関係する多くの因子によって影響を受ける。また、宿主動物は、接種部位および用量に応じて異なり、不適切な用量または過剰用量の抗原によって、血清の力価が低くなる。複数の皮内部位に投与された少用量(ngレベル)の抗原が、最も信頼性が高いと思われる。ポリクローナル抗血清を生成かつ処理する技術は当技術分野で公知であり、例えばMayerおよびWalker (1987)を参照のこと。ウサギに対する有効な免疫化プロトコルが、Vaitukaitis, J. 等 (1971)で見出すことができる。
【0552】
一定間隔を空けて追加抗原注射をし、例えば抗原の公知の濃度に対する寒天中での二重免疫拡散によって半定量的に決定される、その抗体力価が下がり始めた時に、抗血清を収集することができる。例えば、Ouchterlony, O. 等 (1973)を参照のこと。抗体のプラトー濃度は通常、血清の0.1〜0.2mg/mlの範囲にある(約12μM)。抗原に対する抗血清の親和性は、例えばFisher, D. (1980)によって記述されているように競合結合曲線を作成することによって決定される。
【0553】
モノクローナルまたはポリクローナルプロトコルのいずれかに従って作製された抗体標本は、生体における抗原を有する物質の濃度を決定する定量的イムノアッセイにおいて有用であり;それらはまた、生体サンプルにおける抗原の存在を同定するために半定量的または定性的に使用される。その抗体は、タンパク質を発現する細胞を殺すため、または体内のタンパク質レベルを低減するために治療用組成物において使用することも可能である。
【0554】
本発明の好ましい実施形態が例証かつ説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な変更を加えることができることは理解されよう。
【0555】
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【図面の簡単な説明】
【0556】
【図1】Canlon遺伝子を含有する染色体13qのBACマップを示す図である。
【図2】例示的なコンピューターシステムのブロック図である。
【図3】新規な配列とデータベースの配列との間の相同性レベルを決定するための、新規なヌクレオチド配列またはタンパク質配列を配列のデータベースと比較する、プロセス200の一実施形態を示すフローチャートである。
【図4】2つの配列が相同的であるかどうかを決定するための、コンピューターにおけるプロセス250の一実施形態を示すフローチャートである。
【図5】配列中の特徴の存在を検出するための、識別子プロセス300の一実施形態を示すフローチャートである。

Claims (23)

  1. 配列番号1〜4または配列番号6で示されるヌクレオチド配列のいずれか、もしくはこれらの配列のいずれかに相補的な配列を含む、単離、精製された、または組換えポリヌクレオチド。
  2. 配列番号4の少なくとも50ヌクレオチドの隣接スパンを含有する、単離、精製された、または組換えポリヌクレオチドであって、生物活性CanIonポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  3. 配列番号5のアミノ酸配列を含有するヒトCanIonポリペプチド、またはその生物活性断片をコードする、単離、精製された、または組換えポリヌクレオチド。
  4. 固体支持体に付着される、請求項1から3のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
  5. 請求項4に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドのアレイ。
  6. アドレス指定可能である、請求項5に記載のアレイ。
  7. さらに標識を含む、請求項1から4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
  8. 請求項1から3のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  9. プロモーターに作動可能に連結する、請求項2または3に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  10. 請求項8または9に記載の組換えベクターを含有する宿主細胞。
  11. 請求項8または9に記載の組換えベクターを含有する非ヒト宿主動物または哺乳類。
  12. ノックアウトベクターとの相同的組換えによって破壊されたCanIon遺伝子を含有する、哺乳類宿主細胞または非ヒト宿主哺乳類。
  13. 配列番号5で示されるアミノ酸配列、またはその生物活性断片を含有する、単離、精製された、または組換えポリペプチド。
  14. a)プロモーターに作動可能に連結する、請求項13に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する細胞集団を提供する段階;
    b)前記細胞内の前記ポリペプチドを生成する助けとなる条件下にて、前記細胞集団を培養する段階;
    c)前記細胞集団から前記ポリペプチドを精製する段階;を含む、ポリペプチドを作製する方法。
  15. 請求項1に記載のポリペプチドに抗CanIon抗体を結合させる方法であって、前記抗体が前記ポリペプチドに特異的に結合することができる条件下にて、前記抗体を前記ポリペプチドと接触させることを含む方法。
  16. 細胞内のCanIon遺伝子の発現を検出する方法であって、
    a)前記細胞または前記細胞からの抽出物を、
    i)厳密な条件下にて、請求項1、2、もしくは3に記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド;
    ii)請求項13に記載のポリペプチドに特異的に結合するポリペプチド;のいずれかと接触させる段階と、
    b)前記ポリヌクレオチドと前記細胞もしくは抽出物内のRNA種との間のハイブリダイゼーションの存在または非存在、あるいは前記細胞もしくは抽出物内のタンパク質への前記ポリペプチドの結合の存在または非存在を検出する段階と、
    を含み、前記ハイブリダイゼーションまたは前記結合の存在の検出によって、前記CanIon遺伝子が前記細胞内で発現することが示される方法。
  17. 前記ポリヌクレオチドがオリゴヌクレオチドプライマーであり、かつ前記ハイブリダイゼーションが、前記プライマーの配列を含有する増幅産物の存在を検出することによって検出される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記ポリペプチドが抗CanIon抗体である、請求項16に記載の方法。
  19. a)請求項13に記載のポリペプチドを試験化合物と接触させる段階;
    b)前記化合物が、前記ポリペプチドに特異的に結合するかどうかを決定する段階;を含む、CanIonポリペプチドの候補修飾物質を同定する方法であって、
    前記化合物が前記ポリペプチドに特異的に結合することの検出によって、前記化合物が前記CanIonポリペプチドの候補修飾物質であることが示される方法。
  20. 前記候補修飾物質の存在下にて、前記CanIonポリペプチドの活性を試験することをさらに含む、請求項19に記載の方法であって、前記候補修飾物質の非存在下での活性と比較した、前記候補修飾物質の存在下における前記CanIonポリペプチドの活性の差によって、その候補修飾物質が前記CanIonポリペプチドの修飾物質であることが示される方法。
  21. a)請求項13に記載のポリペプチドを試験化合物と接触させる段階;
    b)前記化合物の存在下または非存在下における前記ポリペプチドの活性を検出する段階;を含む、CanIonポリペプチドの修飾物質を同定する方法であって、
    前記化合物の非存在下での活性と比較した、前記化合物の存在下における前記活性の差を検出することによって、前記化合物が前記CanIonポリペプチドの修飾物質であることが示される方法。
  22. 前記ポリペプチドが細胞または細胞膜中に存在し、かつ前記活性が電位作動性イオンチャネル活性を含む、請求項20または21に記載の方法。
  23. a)請求項19から22のいずれか一項に記載の方法を用いて、CanIonポリペプチドの修飾物質を同定する段階;
    b)前記修飾物質を生理学的に許容可能な担体と組み合わせる段階;を含む、薬剤組成物の調製方法。
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