JP2004525138A - 治療剤の改良された細胞内送達のためのリポソーム組成物 - Google Patents

治療剤の改良された細胞内送達のためのリポソーム組成物 Download PDF

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Abstract

【化1】
Figure 2004525138

リポソームに内包された薬剤の細胞内送達を達成するためのリポソーム組成物および同組成物の使用方法が記述される。リポソームはPH感受性脂質からなり、そしてリポソームを標的細胞に対向させるためのターゲティング・リガンドを含有する。またリポソームは、安定化成分、例えばポリマー誘導の脂質を含有し、この場合ポリマーは遊離可能な結合によって脂質に結合される。リポソームの投与は、内包された薬剤の細胞内送達のためにリポソームの細胞インターナリゼーションおよび不安定化をもたらす。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、内包された(entrapped)薬剤の改良された細胞内送達のために設計されたリポソーム組成物に関する。より具体的には、本発明は、リポソームに内包された薬剤の細胞内の細胞毒性を増強するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、長い間、治療剤の細胞内への送達のために可能な担体(vehicle)と考えられてきた。しかしながら、今日まで、リポソームに内包された薬剤の細胞内送達の達成における成功は種々の理由のために限定されている。1つの理由は、血流への全身的投与後にリポソームが細網内皮細胞系によって循環から急速に除去されることである。その他の理由は、分子、特に大きい分子または電荷をもつ分子を細胞の細胞質および/または核に送達する際の固有の困難性にある。
【0003】
リポソームに内包された薬剤の細胞内送達を改良するための1つのアプローチは、リポソーム二分子膜にポリエチレングリコール(PEG)誘導の脂質を包含させることによってリポソームの血液循環の寿命を延ばすことである(参照、例えば特許文献1)。リポソームが血流中に留まる時間の長さを延長することによって、細胞によって取り込まれる機会が改善される。
【0004】
リポソームに内包された薬剤の細胞内送達を改良するためのその他のアプローチは、リポソーム上にターゲティング分子もしくはリガンドを提供することである(非特許文献1)。標的細胞上のレセプターへのターゲティング分子の結合は、リポソームおよびその内包された薬剤の細胞内取り込みの機会を改善する。
【0005】
また、標的細胞と融合することができるリポソームも当該技術分野において記述されている(特許文献2)。融合誘導性リポソームは、典型的には、標的細胞膜中に侵入するためにリポソームの外部表面から伸びる疎水性セグメントを含む。
【0006】
弱酸性条件下で不安定化するリポソーム、いわゆる「pH−感受性」リポソームは、また、内包された薬剤の細胞内送達へのアプローチとして記述されている(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。これらのリポソームは、一定のpH範囲で脂質二重層を形成する脂質、例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から主としてなる。このpH範囲外では脂質二重層は不安定化する。そのようなリポソームがエンドサイトーシスを介して細胞に入った後、エンドソーム内の酸性pHがpH−感受性リポソームを不安定化させ、そして内包された薬剤を放出する。
【0007】
pH−感受性リポソームは、「通常の」、「非pH−感受性リポソーム」のように、短い循環寿命を有しているので、血液循環時間を延ばすためのPEG−誘導の脂質の添加が提案されていた(非特許文献2)。しかしながら、PEG−誘導のリポソームの添加は、リポソームのpH−感受性を弱めて、所望されるリポソーム二重層の急速な不安定化および付随する内包された薬剤の細胞内への急速な放出の欠如をもたらす。
【0008】
長い血液循環寿命を有し、かつ急速に不安定化するリポソームの機能を保持するpH−感受性リポソームを提供する1つのアプローチは、PEGが、化学的に開裂可能な結合、例えばジスルフィドによって脂質に結合しているPEG−誘導の脂質を使用することである(非特許文献5)。しかしながら、不安定化は、リポソームに内包された薬剤の高い細胞内濃度を達成するためには細胞内で起きることが望ましい。Kirpotinら(前出)によって記述されている長い間循環するpH−感受性リポソームは、PEG鎖の遊離によって細胞外で不安定化するよう設計された。このアプローチは内包された内容物を細胞外で放出するという短所を負っている。
【0009】
したがって、内包された薬剤の急速な細胞内放出を伴う標的細胞に特異的に結合することが可能なリポソーム組成物への技術上のニーズが残されている。
【特許文献1】
米国特許第5,013,556号
【特許文献2】
米国特許第5,891,468号
【非特許文献1】
Klibanov et al.,J.Liposome Res.,2(3):321(1992)
【非特許文献2】
Slepshkin et al.,J.Biol.Chem.,272(4):2382(1997)
【非特許文献3】
Wang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,84:7851(1987)
【非特許文献4】
Liu et al.,Biochim.Biophys.Acta,981:254(1989)
【非特許文献5】
Kirpotin et al.,FEBS Letters,388:115(1996)
【発明の開示】
【0010】
したがって、本発明の目的は、リポソームに内包された薬剤の細胞内送達が可能なリポソーム組成物を提供することである。
【0011】
さらなる本発明の目的は、リポソーム組成物ならびに種々の疾患を治療するため、特に血液学的悪性疾患を治療するために同組成物の使用方法を提供することである。
【0012】
したがって、1つの態様では、本発明は、治療剤の細胞内送達のためのリポソーム組成物を含む。本組成物は、(i)pH−感受性脂質;(ii)親水性ポリマーであって、実在するかまたは誘発される生理学的状態に応じて親水性ポリマー鎖を遊離するのに効果的な結合によって脂質に結合されたポリマーを用いて誘導された脂質1−20モル%;(iii)ターゲティングリガンド;および(iv)内包された治療剤、から形成されるリポソームからなる。組成物は標的細胞に結合し、そして内包された薬剤を放出して、遊離可能な結合および/またはターゲティングリガンドを欠如する類似のリポソームによって送達される薬物の細胞内濃度に比較した場合、薬物の細胞内濃度において少なくとも2倍の増加を達成するのに効果的である。
【0013】
1つの実施態様では、pH−感受性脂質はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)である。その他の実施態様では、リポソームは、安定化成分、例えばコレステリルヘミスクシネート(hemisuccinate)(CHEMS)をさらに含む。
【0014】
1つの実施態様では、脂質誘導のポリマーは、ポリエチレングリコールを用いて誘導されるホスファチジルエタノールアミンである。ターゲティングリガンドは抗体もしくは抗体フラグメントであってもよく、そしてある種の疾患の治療のためには、抗体抗CD19、抗CD20、抗CD22からの抗体もしくはフラグメントが好適である。
【0015】
1つの実施態様では、脂質に親水性ポリマー鎖を結合する遊離可能な結合はジスルフィド結合を含有する。1つの好適な実施態様では、ジスルフィド結合はジチオベンジル結合の1部である。
【0016】
その他の態様では、本発明は、リポソームに内包された薬剤の細胞内細胞毒性を増強する方法を含む。本方法は、上記組成を有するリポソームを提供すること、ならびにリポソームを投与して、(i)遊離可能な結合を開裂し、それによって親水性ポリマー鎖を放出すること;(ii)結合が開裂の前またはその後に起きる標的細胞に対するリガンドの結合;および(iii)標的細胞によるリポソームのインターナリゼーション、を達成することを含む。そのような投与は、遊離可能な結合および/またはターゲティングリガンドを欠如する類似のリポソームによって送達される薬物の細胞内濃度に比較して、少なくとも2倍高い薬剤の細胞内細胞毒性を達成するのに効果的である。
【0017】
1つの実施態様では、組成物を投与した後の遊離可能な結合の開裂は、1種以上の内因性作用物、例えば血液中もしくは細胞中に天然に存在している成分によって達成される。
【0018】
その他の態様では、本発明は、上記のようなリポソームを提供すること、ならびにリポソームを投与して、(i)遊離可能な結合を開裂し、それによって親水性ポリマー鎖の全部もしくは1部分を放出すること;(ii)結合が開裂の前またはその後に起きる標的細胞に対するリガンドの結合;および(iii)標的細胞によるリポソームのインターナリゼーションを達成することによって、細胞核における治療剤の蓄積を増大する方法に関する。そのような投与は、遊離可能な結合および/またはターゲティングリガンドを欠如する類似のリポソームによって送達される薬物の細胞内濃度に比較した場合、標的細胞の核において少なくとも2倍高い薬剤の蓄積を達成するために効果的である。
【0019】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、次に示す本発明の詳細な記述が添付する図面と併せて読まれる場合、より完全に理解できるであろう。
【0020】
本発明は、リポソーム組成物、ならびにリポソームに内包された薬剤の細胞内送達のために同組成物を使用する方法を提供する。リポソームは、標的部位、例えば細胞の内部領域もしくは細胞内オルガネラにおける生理学的pH以下の環境に応じて内包された薬剤を急速に放出するよう適合される。以下、リポソーム組成物が記述され、そしてリポソーム内容物の細胞内送達が示される。
【0021】
I.定義および略語
「誘発される生理学的状態」は、作用物もしくは状態が不安定な結合の開裂を惹起するのに効果的である本明細書で記述されるリポソームにより処置される被験者に投与される、外因性作用物もしくは状態、例えば熱、光、化学的作用物もしくは生物学的作用物を指す。
【0022】
「実在する生理学的状態」は、不安定な結合の開裂を惹起するのに効果的な、内因性作用物もしくは状態、例えば化学的作用物、生物学的作用物、pHレベルもしくは温度を指す。
【0023】
句「親水性ポリマー鎖を遊離するのに効果的な」は、ポリマー鎖の全部もしくは少なくとも1部の遊離を意図する。
【0024】
「pH−感受性」脂質は、脂質二重層の形態を形成するかまたは維持する能力が、周囲の環境のpHに少なくとも部分的に依存する脂質を指す。
【0025】
DOPEは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを指す。
【0026】
DSPEは、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを指す。
【0027】
mPEG−DSPEは、DSPEに共有結合したメトキシポリ(エチレングリコール)を指す。
【0028】
mPEG−S−S−DSPEは、N−[2−ω−メトキシポリ(エチレングリコール)−α−アミノカルボニルエチル−ジチオプロピオニル]−DSPEを指す。
【0029】
Mal−PEG−DSPEは、DSPEに共有結合したマレイミド末端のポリエチレングリコールを指す。
【0030】
CHEMSは、コレステリルヘミスクシネートを指す。
【0031】
CFEは、無細胞抽出液を指す。
【0032】
mAbは、モノクローナル抗体を指す。
【0033】
DXRは、ドキソルビシンを指す。
【0034】
HPTSは、8−ヒドロキシピレントリスルホン酸3ナトリウムを指す。
【0035】
HSCPは、水素化した大豆ホスファチジルコリンを指す。
【0036】
TIは、チラミニルイヌリンを指す。
【0037】
DPXは、臭化p−キシレン−ビス−ピリジニウムを指す。
【0038】
II.リポソーム組成物
本発明の方法における使用のためのリポソームは、pH−感受性脂質および親水性ポリマーを用いて誘導された脂質からなり、この場合ポリマーおよび脂質は開裂可能な結合によって結合される。また、リポソームは、リポソームが特定の細胞を標的とするのに効果的なリガンドもしくは部分を含む。細胞内送達のための治療剤はリポソーム内に内包される。これらの成分の各々がここに記述される。
【0039】
pH−感受性脂質成分
リポソームは、特定のpH範囲においてのみ安定化成分の不在下で二重層小胞(vesicle)を形成する脂質であるpH−感受性脂質を含む。これらの脂質は、典型的には、疎水性および極性のヘッドグループ(head group)部分を有する両親媒性脂質であり、そして二重層に配列される場合、疎水性部分が二分子膜の内部の疎水性領域に接し、そして極性ヘッドグループ部分が膜の外部の極性表面に向くように方向付けられる。pH−感受性の両親媒性脂質は、好ましくは、2種の炭化水素鎖、典型的には炭素原子約8−22個の長さのアシル鎖をもち、そして種々の不飽和度を有する。
【0040】
好適なpH−感受性脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジアシル鎖を有するリン脂質である。生理的なpHおよびイオン強度において、DOPEは二重層を形成することが不可能な逆ヘキサゴナル(HII)フェース(inverted hexagonal phase)において存在する。DOPEの二重層リポソームは、アミン基についてのpK以上のpH、すなわちpH約8.5において作成することができる(Allen T.M.et al.,Biochemistry,23:2976(1990))。しかしながら、酸が負に荷電されるpHでは、DOPEは、電荷排斥性(charge−repulsing)親水性部分を有する両親媒性物質の存在下で二重層状態において安定化することができる(Litzinger,L.H.Biochim.Biophys.Acta,1131:201(1992);Kirpotin et al.,FEBS Letters,388:115(1996))。両親媒性物質のpKにおける両親媒性物質のプロトン付加は、ヘキサゴナルフェース(HII)への逆行を促進することによってDOPE小胞の不安定化を加速する(Lai,M.Z.et al.,Biochemistry,24:1654(1985);Ellens,H.et al.,Biochemistry,23:1532(1984))。かくして、リポソームがその内容物を放出できるpHは、安定化する両親媒性物質の選択によって制御することができる。
【0041】
本発明の一つの態様では、DOPEは、大きいコレステリルヘミスクシネート(CHEMS)によって二重層状態で安定化される。CHEMSはpH7.4において純粋に負に荷電され、そして中性pHでは二重層状態でDOPEを安定化する。pHレベル約6.0およびそれ以下では、CHEMSはプロトン付加し、DOPE小胞の不安定化をもたらす。
【0042】
DOPEはまた、以下に記述するように、大きい親水性部分を有する両親媒性脂質、例えばPEG−脂質誘導体の少モル%の混在によってpH範囲5.5−7.4において二重層状態で安定化することができる。
【0043】
ポリマーで誘導される脂質成分
またリポソームは、親水性ポリマーを用いて誘導された脂質を含有する。ポリマーで誘導される脂質は、pH感受性脂質を安定化して二重層およびリポソーム形成を容易にし、そしてリポソーム表面上にポリマー鎖のコーティングを形成してリポソームの血液循環の寿命を延ばすのに役立つ。すなわち、親水性ポリマーコーティングはコロイドの安定性を与え、そして単核食細胞系による取り込みからリポソームを保護するよう働いて、生物体に分布するリポソームのためのより長い血液循環寿命を提供する。下記のようにリポソームのpH感受性を回復させるためには、ポリマー鎖は遊離可能な結合によって脂質に結合されてポリマー鎖を開裂および遊離させる。
【0044】
好ましくは、誘導体化可能な脂質は、pH非感受性小胞を形成する両親媒性脂質であり、これは水中で自然に二重層小胞を形成できる。この種の小胞形成性脂質は、好ましくは、いずれか極性もしくは非極性の2種の炭化水素鎖、典型的にはアシル鎖およびヘッドグループを有する脂質である。2種の炭化水素鎖が、典型的には、炭素原子約14−22個の長さであり、そして種々の不飽和度を有する、合成および天然に存在する小胞形成性の両親媒性脂質が存在し、そして限定されるものではないがリン脂質、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールおよびスフィンゴミエリンを含む。そのアシル鎖が種々の不飽和度を有する上記脂質およびリン脂質は、市販品を得ることもできるし、また公知の方法にしたがって製造することもできる。本発明における使用のための好適なジアシル鎖両親媒性脂質は、ジアシルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルグリセロール(PG)を含み、ホスファチジルエタノールアミンがもっとも好適である。本発明の1つの好適な実施態様では、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が使用される。
【0045】
両親媒性脂質を誘導するために適当な親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールおよびポリアスパルタミドを含む。
【0046】
好適な実施態様では、親水性ポリマーは、好ましくは分子量500−10,000ダルトン、より好ましくは2,000−10,000ダルトン、もっとも好ましくは1,000−5,000ダルトンを有するPEG鎖としてのポリエチレングリコール(PEG)である。
【0047】
遊離可能な結合
前記のように、親水性ポリマーは、特定の刺激、例えば熱、pHにおける変化または外因性の投与された化学的もしくは生物学的作用物への曝露により開裂する結合である遊離可能な結合を介して小胞形成性脂質に結合される。好適な実施態様では、本結合は、限定されるものではないが、細胞、血液(血漿)中の、または標的細胞表面の近傍における化学的もしくは生物学的作用物を含む、内因性のイン・ビボ刺激に応答する結合である。
【0048】
適当な遊離可能な結合は、例えば、ペプチド、エステルもしくはジスルフィド結合を含む。エステルおよびペプチド結合は、内因性もしくは外因性のエステラーゼもしくはペプチダーゼ酵素によって開裂することができる。ジスルフィド結合は、還元剤、例えばジチオトレイトール(DTT)、グルタチオンもしくはアスコルビン酸塩の投与によって、あるいはイン・ビボで還元剤、例えばシステインによるか、または血漿中および細胞内に存在する還元酵素によって開裂できる。
【0049】
好適な実施態様では、遊離可能な結合は、ジスルフィド結合であり、広くは、本明細書では硫黄含有結合を指すことを意図している。硫黄含有結合は、当該技術分野において既知であり、そして例えば米国特許第6,043,094号において記述されているように、選択される不安定度を達成するよう合成することができる。不安定度の可変性は、リポソーム表面から親水性ポリマーコーティングを遊離する割合の調整を可能にする。一般に、より長い循環寿命が必要である場合は、より少ない不安定結合が使用される。
【0050】
代表的なジスルフィド結合は、当該技術分野において記述されているようなジチオプロピオニル(DTP)である(Kirpotin et al.,FEBS Letters,388:115(1996))。DTPによって脂質ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)に結合されたポリエチレングリコール(PEG)の合成は、過剰のmPEG−NH2とジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のスクシンイミジルエステルの反応によって達成されて、N−スクシンイミジル−[2−(メトキシポリ(オキシエチレン)−α−アミノカルボニル)エチル−ジチオプロピオネート、mPEG−DTP−OSuを生成する。これはDSPEと反応して、所望の複合体、mPEG−DSPE(前出)を形成する。
【0051】
その他の好適な遊離可能な結合は、同時係属出願番号09/556,056および09/556,610に記述されたようなジチオベンジル(DTB)結合(Zalipsky et al.,Bioconjugate Chemistry,10(5):703(1999);WO00/64483およびWO00/64484)であり、両者とも本明細書に引用によって組み入れられている。この結合は、一般構造:
【0052】
【化1】
Figure 2004525138
【0053】
[式中、Rは、ジチオベンジル部分への結合のための結合を含んでなる親水性ポリマーであり;Rは、H,アルキルおよびアリールからなる群から選ばれ;Rは、O(C=O)R,S(C=O)RおよびO(C=S)Rからなる群から選ばれ;Rは、アミン含有の脂質、例えば前記の小胞形成性脂質を含有し;そしてRは、H,アルキルおよびアリールからなる群から選ばれ;そしてCH−Rの配向はオルト位およびパラ位から選ばれる]によって表される。
【0054】
図1Aは、本発明による代表的化合物の構造を示し、この場合、Rは親水性ポリマーメトキシ−ポリエチレングリコール、mPEG=CHO(CHCHO)[式中、nは約10〜約2300である]であって、分子量約440ダルトン〜約100,000ダルトンに対応する。ポリマーの分子量は、ある程度まではRの選択に依存する。Rがリポソームにおける使用のためのアミン含有脂質である実施態様では、PEG分子量の好適な範囲は、約750〜約10,000ダルトン、より好ましくは約2,000〜約5,000ダルトンである。この実施態様におけるmPEGはウレタン結合部分を含む。Rが種々の親水性ポリマーから選ばれ、そして代表的なポリマーが先に列挙されていることは評価できる。また、ポリマーの分子量が、リポソーム組成物中に含有されるポリマー−DTB−脂質複合体の量に依存し、ここで、より大きい分子量ポリマーが、しばしば組成物中のポリマー−DTB−脂質が少量である場合に選ばれて、少数のリポソームに結合されたポリマー鎖を生じることは評価される。
【0055】
図1Aへの参照を続ければ、この代表的な化合物におけるRおよびRは水素(H)であるが、RおよびRのいずれかまたは両方は、また直鎖もしくは分枝アルキルもしくはアリール基であってもよい。好適な実施態様では、RはHであり、そしてRはアルキルであり、そして数例が以下に示される。図1Aに示される化合物において、RはO(C=O)−(NH−リガンド)の一般式をとるが、この場合NH−リガンドはいかなるアミン含有脂質であってもよい。また、Rは式O(C=S)−(NH−リガンド)もしくはS(C=O)−(NH−リガンド)であってもよい。
【0056】
図1Bは、図1AのmPEG−DTB−(NH−脂質)化合物のチオール開裂のメカニズムを示す。カルバミン酸オルト−もしくはパラ−ジチオベンジル部分が、弱いチオール開裂条件下、例えばシステインもしくは他の天然に存在する還元剤の存在下で開裂される。開裂により、アミン含有脂質がその天然の未改変形態で再生される。下記の本発明を支持する研究は、イン・ビボでの天然の生理学的条件がDTB結合の開裂を開始し、そして達成するのに十分であることを示している。還元剤が化合物の開裂および分解のために十分なチオール開裂条件を人為的に誘導するよう投与されてもよいことは評価できる。
【0057】
ポリマー−DTB−脂質複合体における使用のために適当な脂質は、好ましくは、炭素原子を少なくとも約8個含有する少なくとも1個のアシル鎖、より好ましくは炭素原子約8−24個を含有するアシル鎖を有する水に不溶の分子である。好適な脂質は、アミン含有の極性ヘッドグループおよびアシル鎖を有する脂質である。代表的な脂質は、1本のアシル鎖、例えばステアロイルアミン、または2本のアシル鎖を有するリン脂質である。アミン含有ヘッドグループを有する好適なリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルセリンを含む。脂質テール(tail)は、炭素原子約12〜約24個を有し、そして完全に飽和されていても、または不飽和であってもよい。1種の好適な脂質は、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)であるが、当業者はこの記述内にはいる広範な脂質を評価できる。また、脂質が天然にアミン基を含有するか、またはアミン基を含有するよう誘導できることも評価できる。アシルテール、例えばコレステロールアシルをもたない他の脂質部分もまた適当である。
【0058】
ポリマー−DTB−脂質化合物の合成は各所に記述されている((Zalisky et al.,Bioconjugate Chemistry,10(5):703(1999);WO00/64483およびWO00/64484)および代表的な合成経路は図2において図によって示される。メトキシカルボニルジチオアルキル末端基を有するmPEG誘導体(MW2000および5000ダルトン)は、2−(メトキシカルボニルジチオ)エタンアミンをmPEG−クロロホルメートと反応させることによって製造され、これは、乾燥mPEG−OH溶液のホスゲネーションによって容易に製造される(Zalisky,S.,et a.,Biotechnol.Appl.Biochem.15:100−114(1992))。前者の化合物は、公表されている操作にしたがって当量の塩化メトキシカルボニルスルフェニルとの塩酸2−アミノエタンチオール反応をとおして得られる(Brois,S.J.,et al.,J.Amer.Chem.Soc.92:7629−7631(1970);Koneko,T.,et al.,Bioconjugate Chem.2:133−141(1991))。メルカプトベンジルアルコールの両パラおよびオルト異性体(Grice,R.,et al.,J.Chem.Soc.1947−1954(1963))は、得られるPEG結合したアシルジスルフィドと完全にカップリングして、ジチオベンジルアルコール末端基を担持するmPEGを生じる。活性カーボネート導入は未誘導のmPEG−OHを用いて進行して、炭酸パラ−ニトロフェニルを生成する。エタノールアミンにおけるDSPEの付加は所望のmPEG−DTB−DSPE生成物を形成する。両オルト−およびパラ−DTB−脂質化合物はこの方法によって製造され、次いで、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製され、そしてNMRおよびMALDI−TOFMSによって特性決定できる。
【0059】
図3は、mPEG−DTB−DSPE複合体のチオール開裂のメカニズムを示す。開裂により、ホスファチジルエタノールアミン脂質(DSPE)がその天然の未改変形態で再生される。
【0060】
末端官能化されたポリマー−脂質複合体
本発明のリポソーム組成物はターゲティング部分をさらに含む。好適な実施態様では、ターゲティングリガンドは、リポソームに固定される親水性ポリマー鎖の末端に共有結合される。例えば、前述の脂質−DTB−ポリマーにおけるポリマーの遊離末端は、末端の反応性基(末端官能化された)を含むように改変されて、ターゲティング部分分子内の官能基とカップリングされる。そのようなポリマー末端の反応性基は当該技術分野において既知であり、そして結合されるターゲティングリガンドにしたがって選択される。例えば、ターゲティング部分が抗体もしくは抗体フラグメントである場合、ポリマー鎖は、例えば、抗体に存在するスルフヒドリル、アミノ基、およびアルデヒドもしくはケトン(典型的には、抗体の炭水化物部分の弱い酸化より得られる)とのカップリングに適する反応性基を含有するよう官能化される。そのようなPEG−末端の反応性基の例は、マレイミド(スルフヒドリル基との反応のため)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)もしくはNHS−炭酸エステル(1級アミンとの反応のため)、ヒドラジドもしくはヒドラジン(アルデヒドもしくはケトンとの反応のため)、ヨードアセチル(スルフヒドリル基と優先して反応性)およびジチオピリジン(チオール−反応性)を含む。
【0061】
他の適当な反応性末端基は、マレイミドおよびヒドラジンを含む。マレイミドは広く使用されるタンパク質改変試薬であり、そしてマレイミドがヘテロ−二官能性架橋試薬における2つの官能基の1つである場合に特に有用である。マレイミドのスルフヒドリル基との反応は、活性化された二重結合へのメルカプタン基のマイケル(Michael)付加を含む。アミノ基との反応は同じメカニズムによるが、はるかに遅い速度で生じる。メルカプタンは、特に中性pHではもっとも反応性の種であるので、マレイミド基は、ターゲティング部分におけるスルフヒドリル基を標的とするために使用でき、そして良好な選択性が通常達成される。
【0062】
ヒドラジドもしくはヒドラジン基はアルデヒド基に対して反応性である。また、ヒドラジドは活性エステルもしくはカルボジイミド−活性化カルボキシル基によってアシル化することができる。アシル化種として反応性であるアシルアジド基はヒドラジドから容易に得ることができ、そしてアミノ含有分子の結合を可能にする。
【0063】
末端を官能化されたポリマー−脂質複合体の製造方法は当該技術分野において一般に周知である。例えば、同時共有権のある米国特許第5,620,689号は、抗体もしくは抗体フラグメントのポリマー鎖への結合のためのマレイミド、ヒドラジドおよび2−ピリジルジチオプロピオンアミド末端基の製造および使用方法を開示している;この開示は引用によって本明細書に組み入れられている。
【0064】
ターゲティングリガンドがまた、脂質およびポリマーを結合している遊離不可能な結合をもつ脂質−ポリマー複合体を用いてリポソーム中に包含されてもよいことは評価できる。また、前記リポソームの親水性ポリマーコーティングを形成するのに適当ないかなる脂質も、改変されたポリマー−脂質複合体を形成するために使用されてもよく、そして前記親水性ポリマーのいかなるものも適当であることは評価である。好ましくは、ターゲティング部分のPEG−官能化脂質への結合では、ターゲティング部分はいかなる活性の損失をも受けない。
【0065】
ターゲティング部分は、リポソーム中に末端を官能化されたポリマー−脂質複合体を含有させ、次いでリポソームの形成後に、予め形成されたリポソームにおいて所望のリガンドを反応性ポリマー末端と反応させることによってリポソーム表面に結合されてもよい。あるいはまた、リガンド−ポリマー−脂質は、リポソーム形成時に脂質組成物中に含有されてもよい。リガンド−ポリマー−脂質複合体を予め形成されたリポソーム中に挿入によって組み入れることもまた可能であり、この場合、リガンド−ポリマー−脂質複合体は、リポソーム脂質二重層中に複合体を組み入れさせるのに適当な条件下で、予め形成されたリポソームとインキュベートされる。挿入技術は、当該技術分野において、例えば米国特許第6,056,973号に記述されている。
【0066】
ターゲティング部分
広範なターゲティング部分が使用のために企図され、そして代表的な部分は、例えば、米国特許第5,891,468号に記述されている部分を含み、そしてリガンドを記述しているこの特許の一部は引用によって本明細書に組み入れられている。一般に、ターゲティング部分は、標的細胞上の細胞表面レセプターと特異的に結合するのに効果的なリガンドである。
【0067】
好適な実施態様では、リガンドは、標的細胞上のレセプターに特異的な抗原を標的にする抗体もしくは抗体フラグメントである。抗体はモノクローナル抗体もしくは抗体フラグメントであってもよく、これは標的に特異的である。好適な実施態様では、リポソームに結合された抗体は、B細胞抗原決定基に特異的に結合するための抗CD19、抗CD20もしくは抗CD22である。これらの抗体もしくは抗体フラグメントは、典型的には、影響を受けるB細胞に対してポジティブな反応性を示すハイブリドーマから得られる。体内のすべての他の細胞をも標的とする他の抗体もしくは抗体フラグメントが同様に使用できることが考えられる。
【0068】
本発明を支持するために実施された研究において、抗CD19抗体は、内包された薬剤を含有するリポソームが悪性B細胞を標的とするために使用された。抗体はB細胞上の独特な抗原決定基、CD19表面抗原を認識する。以下に記述されるように、ターゲティング部分を有するpH−感受性リポソームは、内包された薬剤を細胞内に送達するために効果的であった。
【0069】
リポソームに内包された治療剤
標的細胞へ細胞内送達するための治療剤はリポソームに内包される。小胞の水性コンパートメント(compartment)中に安定に被包化できる水溶性薬剤、小胞の脂質相に安定に分配する親水性化合物、または例えば、外部小胞表面への静電接着によって安定に結合できる薬剤を含む、種々の治療剤が脂質小胞中に内包することができる。代表的な水溶性化合物は、低分子の水溶性有機化合物、ペプチド、タンパク質、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチドおよび遺伝子フラグメントを含む。
【0070】
リポソームに内包される化合物はまた疾病の進行をたどるための造影(imaging)剤であってもよい。造影剤は、放射性核種、例えばテクネチウム99、インジウム111およびヨウ素125のキレートを含む。
【0071】
また、内包される作用物は、イン・ビトロの診断アッセイに使用するためのレポーター分子、例えば酵素もしくは蛍光団であってもよい。そのような内包されたレポーター分子を有するリポソームは、いずれか標的細胞もしくはレセプターを含有するリポソームに融合することによって送達されてもよい。
【0072】
一つの態様では、化合物は、Bリンパ球系統細胞の新生物を特徴とする血漿細胞疾患、例えば多発性骨髄腫の治療のために有用である。多発性骨髄腫の治療のために好適な治療剤は、メルファラン、シクロホスファミド、プレドニソン、クロラムブシル、カルムスチン、デキサメタソン、ドキソルビシン、シスプラチン、パクリタキセル、ビンクリスチン、ロムスチンおよびインターフェロンを含む。これらの若干の薬物の標準化学療法処置について典型的な用量は次のとおりである:メルファラン,1日当たり8mg/m体表面積;シクロホスファミド,1日当たり200mg/m;クロラムブシル,1日当たり8mg/m;プレドニソン,1日当たり25−60mg/m;ビンクリスチン,(1.4mg/m)およびドキソルビシン(60−75mg/m)。
【0073】
がんおよびウイルス感染症の治療のためにプラスミド、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムの細胞質内送達もまた考えられる。
【0074】
本発明において、治療剤は、被験者への非経口的投与のために以下に議論される方法によってリポソーム中に内包される。リポソーム投与に使用される用量は、最初は標準化学療法での用量に基づき、そして疾病の進行を監視することによって治療コースにわたって逐次調節される。
【0075】
III.pH感受性のターゲティングリポソームの製造
内包された作用物を含有しているリポソームは、周知の方法、例えば脂質膜の水和、逆相蒸発および溶媒注入により製造することができる。送達される化合物は、親油性化合物の場合に脂質膜に包含されるか、または水溶性治療剤の場合に水和媒質に包含されるかいずれかである。あるいはまた、治療剤は、例えば、イオン勾配に対してイオン化可能な化合物を充填することによって、予め形成された小胞中に充填されてもよい。
【0076】
多重膜小胞(MLV)の形成のための1つの周知の操作は単一脂質膜水和技術である。この操作では、リポソーム形成脂質の混合物が適当な有機溶媒に溶解され、次いでこれが蒸発されて薄い脂質膜を形成する。脂質膜は、次に水性媒質により水和されて、典型的にはサイズ約0.1〜10ミクロンをもつMLVを形成する。
【0077】
送達される治療化合物は、形成されたリポソームに薬物を内包するために、リポソーム形成前に小胞形成脂質に薬物を添加することによってリポソーム中に組み入れられてもよい。薬物が疎水性である場合、それは疎水性混合物に直接添加されてもよく、一方、親水性薬物は乾燥脂質の薄膜を覆う水性媒質に添加されてもよい。あるいはまた、薬物は、能動輸送機構によって、例えば、化合物が硫酸アンモニウム勾配のような勾配(米国特許第5,192,549号明細書、Bolotin et al.,J.Liposome Res .,4:455(1994))またはカリウムもしくは水素イオン濃度に応じてリポソームに取り込まれる遠隔(remote)充填によって、予め形成されたリポソーム中に組み入れられてもよい。
【0078】
形成後、リポソームは大きさを整えられる。MLVのための1つの効果的なサイズを整える方法は、範囲0.03〜0.2ミクロン、典型的には0.05,0.08,0.1もしくは0.2ミクロンの選ばれた均一な孔径を有する一連のポリカーボネートメンブランをとおしてリポソームの水性懸濁液を押し出すことを含む。メンブランの孔径は、特に同じメンブランをとおして調製物が2回以上押し出される、メンブランをとおしての押し出しによって製造されたリポソームの最大サイズにほぼ対応する。またホモジナイゼーション法は大きさ100nm以下にリポソームのサイズを小さく整えるためにも有用である。本発明の好適な実施態様では、リポソームは、範囲0.2〜0.08μmの孔径を有する一連のポリカーボネートフィルターをとおして押し出されて、範囲ほぼ120±10nmの直径を有するリポソームをもたらす。
【0079】
本発明のリポソームは、典型的には、小胞形成脂質約70−90%、遊離可能なポリマー鎖の表面コーティングを形成するためのポリマー−脂質複合体1−20%、およびターゲティング部分のカップリングのための末端官能化されたポリマー脂質複合体0.1−5%のモル比において存在する脂質成分を用いて製造される。遊離可能な結合を含有するポリマー−脂質複合体が末端を官能化されてターゲティングリガンドを結合してもよく、あるいはリポソームが2種の異なるポリマー−脂質種、遊離可能な結合を有する1つのポリマー−脂質複合体および遊離可能な結合を含有しないが結合されたターゲティング部分を有するその他のポリマー−脂質複合体を含んでもよいことが評価できる。
【0080】
本発明の支持に際して実施された研究では、両pH−感受性およびpH−非感受性リポソームは実施例1において記述されるように製造された。いずれか標的指向化または標的非指向化の、そしていずれか遊離可能または遊離不可能なコーティングを有する、pH−感受性の、立体的に安定化されたリポソームが、DOPEもしくはDOPE/CHEM(モル比6:4)の混合物から、そしていずれかmPEG−DSPE(遊離不可能な)またはmPEG−S−S−DSPE(遊離可能なコーティング)およびある場合には、ターゲティングリガンドの結合が可能な、DSPEにカップリングされたマレイミド−末端のポリエチレングリコール、Mal−PEG−DSPEを含んで製造された。種々の製剤の脂質モル比は、各実験についての図の説明および記述において指示される。
【0081】
pH−非感受性リポソームは、水素化した大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール(CHOL)、mPEG−DSPEおよびいずれかマレイミド−PEG−DSPE(標的指向化)または不在(標的非指向化)から、モル比それぞれ2:1:0.08:0.02のHSPC/CHOL/mPEG−DSPE/マレイミド−PEG−DSPEまたは2:1:0.08のHSPC/CHOL/mPEG−DSPEを含有して製造された。リポソームは、脂質成分をクロロホルム中に溶解することによって水和技術により形成された。成分の混合後、クロロホルムが除去され、そして乾燥脂質フィルムが適当なバッファーで水和され、連続して孔径範囲0.2〜0.08μmの一連のポリカーボネートフィルターをとおして押し出された。
【0082】
治療薬ドキソルビシン(DXR)は、実施例1において記述されるように、硫酸アンモニウム勾配にしたがう遠隔充填によって予め形成されたリポソーム中に被包化された。若干の研究では、PH−感受性リポソームはまた、リポソーム二重層の安定性を調査するために、8−ヒドロキシピレントリスルホン酸3ナトリウム−p−キシレン−ビス−ピリジニウム(HPTS−DPX)、蛍光染料を充填されるか、または放射能標識されたチラミニルイヌリン([125I]TI)を充填された。HPTS−DPXもしくは[125I]TIの被包化は、実施例1において記述されるように、所望の化合物の溶液(pH9.0)を用いて薄い脂質膜を水和することによって達成された。
【0083】
以下に記述される若干の研究では、Mal−PEG−DSPEのマレイミド−末端にカップリングされたCD19抗体を有する標的指向化リポソームが、実施例2に記される操作にしたがって製造された。
【0084】
IV.リポソーム組成物のイン・ビトロの安定性
本明細書において記述されるpH−感受性リポソームは、遊離可能なポリマーコーティングによって安定化され、その結果、リポソームは酸性pHにおいてさえ被包化された化合物を保持することを可能にする。リポソームのpH感受性、したがって酸性pHにおける不安定化は、ポリマーコーティングの全部もしくは一部を開裂することによって回復されて、リポソームの不安定化と同時にリポソーム内容物の放出を惹起する。リポソーム組成物のこの特徴は実施例3−5において記述されるイン・ビトロの漏出実験によって例証された。pH−感受性リポソームの安定性が、無細胞抽出液(CFE)、ヒト血漿中および10%胎児ウシ血清(FBS)を含有する細胞培養液において、ジチオトレイトール(DTT)を含有するかまたは含有しない、pH7.4もしくは5.5のバッファー中で、pH−非感受性リポソームの安定性と比較された。リポソームからの、内包された溶質、いずれか8−ヒドロキシピレントリスルホン酸3ナトリウム−臭化p−キシレン−ビス−ピリジニウム(HPTS−DPX,蛍光染料)またはドキソルビシン(DXR)の放出もしくは漏出が、蛍光−デクェンチング(dequenching)アッセイを用いて測定された。
【0085】
バッファー中のpH−感受性リポソームの安定性
mPEG−DSPE(図4Aおよび5A)もしくはmPEG−S−S−DSPE(図4Bおよび5B)により安定化され、そして37℃においてpH7.5およびpH5.5のバッファー中でインキュベートされたDOPE(図4A−4B)およびDOPE/CHEMS(図5A−5B)リポソームからのHPTSの漏出が、実施例3に記述される操作によって評価された。さらに、ジチオトレイトール(DTT)(100nM)の存在下、pH7.4およびpH5.5によってインキュベートされたmPEG−S−S−DSPEを含有するリポソームからのHPTSの漏出が評価された(図5B)。DTTはジスルフィド結合の開裂を誘導し、そして安定化するポリマーコーティングの遊離を惹起する。
【0086】
図4Aおよび4Bにおいて示されるように、pH−感受性リポソームは、少モル%の大きいヘッドグループを有する分子の包含によって二重層状態で安定化することができる。すなわち、PEG−脂質誘導体は、pH5.5−7.4の範囲で二重層状態においてDOPEもしくはDOPE/CHEMSを安定化でき、そしてリポソームのpH感受性はコーティングが遊離される場合に回復される。DOPEのみから形成されたリポソームは、pH7.4バッファー(●)またはpH5.5バッファー(○)においてインキュベートされた場合それらの内容物を放出する(図4A)。DOPE製剤中への5モル%mPEG−DSPE(図4A)またはmPEG−S−S−DSPE(図4B)の組み入れは、pH7.4バッファー(▲,5モル%のmPEG−DSPE(図4A)および■,5モル%のmPEG−S−S−DSPE(図4B))において,またはpH5.5バッファー(△,5モル%のmPEG−DSPE(図4A)および▼,5モル%のmPEG−S−S−DSPE(図4B))において、24時間にわたってインキュベートされた場合に漏出しなかったリポソームの形成をもたらした。
【0087】
ジチオトレイトール(DTT)によるリポソームの処理は、脂質膜アンカー(DSPE)からのmPEG−S−S−DSPEのチオール開裂を誘導する。5モル%mPEG−S−S−DSPEを含有するDOPEリポソームは、pH7.4ではDTTの存在下で24時間にわたってほとんど内容物を放出しなかった(■,図4B)が;pH5.5では、DTTによる処理が、約10時間内に約50%のHPTSの段階的放出をもたらした(▽,図4B)。pH5.5において、3モル%mPEG−S−S−DSPEを含有するDOPE製剤は、より一層急速な内容物の放出をもたらした(2時間で100%放出、データ未掲載)。
【0088】
図5A−5Bに図示されるように、DOPEリポソームはまた、大きい、そして/または電荷を拒絶する親水性部分を有する両親媒性物質によって二重層状態で安定化することができる。mPEG−DSPEを含有しないDOPE/CHEMS製剤は、pH7.4ではほとんど漏出しなかった(●,図5A)が、pH5.5では被包化された染料を急速に放出した(○,図5A)。pH5.5もしくは7.4において、これらのリポソームが、いずれか5モル%mPEG−DSPE(図5A:△,pH5.5および▲,pH7.4において)、または5モル%のmPEG−S−S−DSPE(図5B:▼,pH5.5および■,pH7.4において)で安定化された場合には24時間にわたって10%未満の漏出が起きた。DTTの存在下では、5モル%のmPEG−S−S−DSPEを含有するDOPE/CHEMSは、pH5.5では約8時間の放出半減期を有した(▽,図5B)が、一方pH7.4ではほとんど放出は起きなかった(□,図5B)。3モル%mPEG−S−S−DSPEで安定化されたDOPE/CHEMSリポソームのDTT処理は、中間的な漏出速度をもたらした(データ未掲載)。
【0089】
図4Bおよび5Bにおいて見られるように、mPEG−S−S−DSPEを含有するpH−感受性リポソーム(▼,両図4Bおよび5Bにおいて)は、pH5.5では内容物放出速度を増大したが、内容物放出は類似のPEGを欠如するリポソームについて見られたものよりも急速ではなかった(○,図4Aおよび5A)。この比較的遅い放出は、一部は、mPEG−S−S−DSPEの不完全な開裂によるようであり、内包された作用物の放出速度を変えたり調整するのに有利に利用できる特徴である。例えば、完全な放出を受けることができない遊離可能な結合の選択は、内容物放出速度を遅くするために使用できるが、これに対して、選ばれた刺激に応じて容易に開裂する結合の選択は、内包された作用物の総体的に急速な放出を達成するために使用することができる。
【0090】
無細胞抽出液(CFE)中のpH感受性リポソームの安定性
無細胞抽出液(CFE)は、mPEG−S−S−DSPEの開裂においてジチオトレイトール(DTT)の作用を模倣できる細胞質およびリソソーム酵素を含有している。したがって、CFEに接触した製剤からの、親水性の膜不透過性染料8−ヒドロキシピレントリスルホン酸3ナトリウム(HPTS)の漏出は、いずれかmPEG−DSPEもしくはmPEG−S−S−DSPEにより安定化されたpH−感受性リポソームの細胞内環境における不安定化の過程を示している。
【0091】
図6A−6Bは、37℃においてpH5.5(ほぼリポソームのpH5〜6.5)に調節された無細胞抽出液中でインキュベートされた脂質混合物において、種々の割合のmPEG−S−S−DSPEを用いて安定化されたDOPEもしくはDOPE/CHEMSリポソームからの時間の関数としての被包化されたHPTSの漏出を示す。研究は、実施例4に記述された操作にしたがって実施された。漏出は、TritonX−100で処理されたプレインキュベーションサンプルの蛍光(100%放出)をおおうサンプルの蛍光における増加パーセントとして決定された;結果は、代表的な実験からのものであり、そして3並列分析の平均値±S.D.である。
【0092】
図6Aは、DOPE(●)、3モル%mPEG−S−S−DSPE(▲)および5モル%mPEG−S−S−DSPE(■)で安定化されたDOPEからなるリポソームについての時間の関数としてのHPTS染料の放出%を示す。DOPE単独または3モル%mPEG−S−S−DSPEで安定化されたDOPEから作成されたリポソームは、半減期1.7時間をもつそれらの内容物の急速な放出を受けた。5モル%mPEG−S−S−DSPE(■)を含有するDOPE製剤のCFEにおける放出速度は、24時間にわたって被包化染料の40%を放出する遅いものであった。
【0093】
図6Bは、DOPE/CHEMS(○)、DOPE/CHEMS/1.8モル%mPEG−S−S−DSPE(△);およびDOPE/CHEMS/3モル%mPEG−S−S−DSPE(□)から作成されたリポソーム中に被包化されたHPTSの放出%を示す。3種の製剤は、pH5.5のCFE中でそれらの内容物を急速に放出し、8時間でほぼ完全に放出した。pH7.4に調整されたCFE中でインキュベートされたDOPE/CHEMSおよびDOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE製剤は、はるかに遅い速度でHPTSを放出した(データ未掲載)。
【0094】
ヒト血漿中のpH−感受性リポソームの安定性
実施例5に記述されるその他の研究では、種々のリポソーム製剤からの親水性染料の漏出速度が、37℃での90%ヒト血漿(pH7.4)中および37℃での10%FBSを含有する細胞培養培地中で評価された。HPTSは、水溶性(しかし蛍光−消光された)複合体、HPTS−DPXとしてリポソーム中に受動的に充填された。HPTS−DPXがリポソームから漏出する場合、それは遊離HPTSとDPXに解離し、413nmで励起されるとHPTS蛍光を増強する。被包化されたHPTSの20%が、DOPE/mPEG−DSPE、DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE、DOPE/mPEG−S−S−DSPEもしくはDOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE製剤からヒト血漿中で24時間にわたって漏出した(未掲載)。
【0095】
ドキソルビシン(DXR)は、リポソーム内部で沈殿((DXR−NHSO)を形成する硫酸アンモニウム勾配を用いて、pH約5.5においてリポソーム中に普通は能動的に充填される(Bolotin et al.,J.Liposome Res.,4:455(1994))。このリポソームのドキソルビシン製剤は、遅い速度の薬物放出をもち非常に安定である。しかしながら、リポソーム中にDOPEもしくはDOPE/CHEMS脂質を集中させるのに必要な一層高いpHでは、DXRが、能動的な充填の間にリポソーム内部で沈殿を形成するか否か、そしてpH−感受性リポソームからのDXRの放出速度が如何なるものであるかは、これまで知られていなかった。図7A−7Bに見られるように、ヒト血漿中でのDXRの漏出が、DOPE/4モル%mPEG−DSPE,(●);DOPE/CHEMS/2モル%mPEG−DSPE,(▲)、DOPE/4モル%mPEG−S−S−DSPE(■)およびDOPE/CHEMS/2モル%mPEG−S−S−DSPE(▼)からなる抗CD19で標的指向化されたpH−感受性リポソームについて試験された。DXRは、若干遅いが、なお速い放出速度を有するDOPE/CHEMS/mPEG−DSPE(▲,図7A)を除いて、すべての製剤から急速に放出された。ヒト血漿の存在下では抗CD19で標的指向化された製剤と類似の標的非指向化製剤(5モル%mPEG含有)との間にDXR放出の速度において有意な差はなかった(データ未掲載)。
【0096】
10%FBSを含有する細胞培養培地における種々のpH−感受性リポソーム組成物の安定性もまた評価された。試験されたすべてのリポソームが抗CD19ターゲティングリガンドを含み、そして内部コンパートメント中に内包されたDXRを含有した。リポソーム脂質組成物は、DOPE/4モル%mPEG−DSPE,DOPE/CHEMS/2モル%mPEG−DSPE,DOPE/4モル%mPEG−S−S−DSPEおよびDOPE/CHEMS/2モル%mPEG−S−S−DSPEからなった。リポソーム組成物のすべては安定しており、37℃で24時間にわたるインキュベーションで10%未満の漏出があった(データ未掲載)。
【0097】
V.リポソーム組成物の薬物送達効力
本発明にしたがって、前記リポソームは、標的細胞の中もしくはすぐ外側の低いpH条件に応じてその内容物を急速に放出することができ、その結果、pH非感受性の標的指向化リポソームまたはpH非感受性の標的非指向化リポソームに比較した場合、薬物の細胞内濃度の増大を達成する。この増大した細胞内濃度は、以下のA部に記述される本発明を支持するために実施された研究において例証された。これらの研究では、標的指向化リポソームのインターナリゼーションに続いてリソソーム装置から細胞核へのリポソームに被包化されたドキソルビシンの放出速度が、リポソームに封入されたドキソルビシンの細胞毒性についての決定因子であるので、細胞核中のドキソルビシンの蓄積速度が決定された。ドキソルビシンの核蓄積アッセイの結果は、B部に記述される。C部は、マウスモデルにおけるリポソームの血液排除の研究を記述し、そしてD部は、本発明の処置方法によって達成できる改善された治療効果をイン・ビボ研究により具体的に示す。
【0098】
標的指向化され、安定化されたpH−感受性リポソームのイン・ビトロの細胞毒性
遊離DXRおよび種々のリポソーム製剤のイン・ビトロ細胞毒性が、実施例6に記述されるようにイン・ビトロの増殖アッセイによりNamalwa細胞を用いて評価された。評価されるリポソーム製剤は表1に列挙される。標的指向化されたpH−感受性リポソームに加えて、慣用のpH−非感受性の立体的に安定なリポソーム(DXR−SL)および遊離形態のドキソルビシンもまた評価された。試験製剤の各々が制御条件下で48時間Namalwa細胞とともに培養された。培養時間の終了時に、細胞毒性が、細胞増殖の50%阻害(IC50)のために要求される濃度である阻害濃度として表された。結果は表1に示される。
【0099】
【表1】
Figure 2004525138
【0100】
表1に示されるように、すべてのDOPEもしくはDOPE/CHEMS製剤は、標的指向化でも非指向化でも、DXR−SL(HSPC/CHOL/mPEG−DSPE)またはDXR−SIL[抗CD19](HSPC/CHOL/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE[抗CD19]製剤よりも有意に低いIC50を有した(P<0.001)。有意に低いIC50は、かなり低い薬物の遊離速度を有するDXR−SLもしくはDXR−SIL[抗CD19]からのドキソルビシンの遊離(Lopes de Menezes et al.,Cancer Res.,58:3320(1998))に較べてDOPEもしくはDOPE/CHEMS製剤からのドキソルビシンの急速な遊離速度によるものと考えられる。標的指向化DOPEおよびDOPE/CHEMS製剤は、大部分の例において遊離ドキソルビシンに匹敵するIC50を有した(表1)。いずれかDOPEもしくはDOPE/CHEMS(mPEG−DSPEもしくはmPEG−S−S−DSPEで安定化された)のドキソルビシンを充填され標的指向化された製剤のIC50は、標的指向化されてない製剤のIC50よりも有意に低かった(P<0.05〜P<0.001)。注目すべきは、mPEG−DSPEを含有する製剤では、標的指向化でも非指向化でもmPEG−S−S−DSPEを含有する製剤よりもやや高い細胞毒性がある傾向であった。被包化されたドキソルビシンを含有しない標的指向化製剤は、0.06μMDOPE以下の濃度では毒性はなく、製剤がドキソルビシンを含有しなかった場合の34.5μMのドキソルビシン濃度に対応する(未掲載)。
【0101】
pH−感受性リポソームは、標的指向化でも非指向化でも、pH−非感受性リポソーム(例えば、HSPC/CHOL/mPEG−DSPEから製造されたリポソーム)よりも有意に低いIC50を有することが表1のデータから明らかである。pH−非感受性リポソームのIC50は、標的非指向化および標的指向化製剤について、それぞれ200μMドキソルビシンおよび35μMドキソルビシンであった。HPSC/CHOLよりむしろpH−感受性脂質DOPEもしくはDOPE/CHEMSの使用が、IC50における22−48倍の低下をもたらした。細胞毒性におけるこの大幅な増強は予期されず、したがって本発明は、pH−感受性リポソーム中に内包することによって、リポソームに内包された薬物の細胞毒性を少なくとも約10倍、より好ましくは約20倍、もっとも好ましくは約40倍増強する方法を意図する。また表1のデータから、pH−感受性リポソームへのターゲティングリガンドを含有することによって達成される細胞毒性の増強が理解される。かくして、本発明は、リポソーム上にターゲティングリガンドを含有することによって、pH−感受性リポソーム中に内包された薬物の細胞毒性を増強することを意図する。ターゲティングリガンドは、ターゲティングリガンドを欠如しているpH−感受性リポソームに較べたIC50の低下によって測定されるように、細胞毒性において少なくとも2倍、好ましくは4倍、より好ましくは6倍、そしてもっとも好ましくは10倍の増強を達成するために効果的である。
【0102】
核蓄積アッセイ
ドキソルビシンの核蓄積が実施例7の記述のように決定された。簡単に言えば、対数増殖条件下で維持されたNamalwa細胞が、ドキソルビシン濃度8μMにおけるドキソルビシン内包リポソーム製剤により処理された。種々の時点(0,2,4,8,12時間)で、一定分量の処理された細胞が破壊されて核を回収した。核内のDNAが酵素により消化され、そしてドキソルビシンの蛍光が測定された。結果が図8A−8Cに示される。
【0103】
図8Aは、遊離のドキソルビシン(●);ドキソルビシン封入、標的非指向化、pH−非感受性リポソーム(■)(HSPC/CHOL/mPEG−DSPE,2:1:0.1モル比);およびドキソルビシン封入、標的指向化、pH−非感受性リポソーム(▲)(HSPC/CHOL/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE,2:1:0.08:0.02モル比)により処理されたNamalwa細胞における、ドキソルビシン蛍光によって測定されたドキソルビシンの核蓄積を比較している。見られるように、ほとんど測定不可能なドキソルビシンがpH−非感受性リポソームからの投与後の核内に見いだされる。
【0104】
図8Bは、DOPE/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE,1:0.04:0.01モル比からなるドキソルビシン内包の抗CD19ターゲティング部分をもつリポソーム(●);DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE,6:4:0.24:0.06モル比からなるドキソルビシン内包の抗CD19ターゲティング部分をもつリポソーム(▲);DOPE/mPEG−DSPE,1:0.05モル比からなるドキソルビシン内包のリポソーム(○);DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE,6:4:0.3モル比からなるドキソルビシン内包のリポソーム(□)により処理されたNamalwa細胞におけるドキソルビシンの核蓄積を比較している。見られるように、pH−感受性リポソームは、より高い蓄積レベルを達成するのに効果的なターゲティングリガンドの付加による核内の薬物の蓄積(図8Aに示されるpH−非感受性リポソームと比較して)をもたらす。
【0105】
図8Cは、DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE,6:4:0.12:0.06モル比からなるドキソルビシン内包の抗CD19ターゲティング部分をもつリポソーム(▼);DOPE/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE,1:0.02:0.01モル比からなる抗CD19ターゲティング部分をもつリポソーム(■);DOPE/mPEG−S−S−DSPE,1:0.03モル比からなるターゲティング部分をもたないリポソーム(□);DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE,6:4:0.18モル比からなるターゲティング部分をもたないリポソーム(▽)により処理されたNamalwa細胞におけるドキソルビシンの核蓄積を示す。見られるように、遊離可能なPEG鎖とターゲティングリガンドを有するpH−感受性リポソームは、細胞核内のリポソーム内包薬物の蓄積を達成する。
【0106】
図8A−8Cに提示されるデータは、遊離ドキソルビシンがもっとも速い速度で核内に蓄積したことを示す(図8A)。標的指向化されmPEG−DSPEで安定化される(図8B)か、またはmPEG−S−S−DSPEで安定化される(図8C)DOPE又はDOPE/CHEMS製剤についてのドキソルビシン放出速度は、標的指向化されたpH−非感受性リポソーム(図8A)よりもさらに速かった。リポソーム製剤からのドキソルビシンの核蓄積の順序は、遊離薬物>標的指向化pH−感受性mPEG−S−S−DSPE>標的指向化pH−感受性mPEG−DSPE>標的非指向化pH−感受性mPEG−S−S−DSPE>標的非指向化pH−感受性mPEG−DSPE>標的指向化pH−非感受性>pH−非感受性であった。興味あることは、mPEG−含有製剤よりも細胞毒性は高くはない(表1)が、mPEG−S−S−DSPEを含有する製剤は、これらの実験の時間経過にわたってドキソルビシンの比較的速い核蓄積をもたらすと考えられる。
【0107】
表1において報告された細胞毒性(IC50)値は核蓄積データと並行しており、このことは、リポソーム薬物の取り込みの総量ならびに封入された薬物の放出速度がリポソーム薬物の細胞毒性を支配することを示している。リポソーム薬物の細胞取り込み総量はレセプター媒介のインターナリゼーションのメカニズムを介して増強でき、そして細胞内薬物の放出は、ここに記述されたpH−感受性の引き金をもつ放出メカニズムのようなメカニズムをとおして増強できる。かくして、本データは、pH−感受性脂質、遊離可能なポリマー鎖のコーティングおよびターゲティング部分からなる本明細書に記述されるリポソームを提供し、そして本リポソームを投与することによって細胞核内への治療剤の蓄積を増強する方法を支持する。本投与は、(i)親水性ポリマー鎖の全部もしくは1部分を放出するための遊離可能な結合の開裂;(ii)結合がポリマー鎖の開裂の前またはその後に起きる、リポソームに結合されたリガンドと標的細胞間の結合;および(iii)標的細胞中へのリポソームのインターナリゼーション、を達成するのに効果的である。リポソームのインターナリゼーションはリポソームの不安定化を惹起するのに効果的な条件へのpH−感受性脂質の曝露を惹起できる。本投与は、pH−感受性脂質、遊離可能な結合および/またはターゲティングリガンドを欠如するリポソームによって達成される細胞核におけるリポソームに内包された薬剤の少なくとも2倍高い薬剤の蓄積を効果的に達成する。
【0108】
血液薬動学
マウスにおけるリポソーム調製物の薬動学が、本発明にしたがって製造され、そして放射能標識された[125I]TIを含有するリポソームを用いて評価された。実施例8に記述されるように、マウスは、種々のリポソーム製剤中に被包化された[125I]TI0.2mlの単一用量を尾静脈をとおしてi.v.注射された(0.5μmolPL/マウス)。選ばれた時間に、注射後の血液サンプルが採取され、そして125I標識について分析された。血液からのリポソームのクリアランス/排除は放射能の減少によって測定された。結果は図9A−9Dに示される。
【0109】
図9Aは、種々の含有量のmPEG−DSPEを有する4種のリポソーム組成物について、時間(hr)の関数として1分当たりのイン・ビボのカウント(cpm)のパーセントとして表されるDOPEリポソームの排除を示す。リポソーム組成物は:DOPEのみ(◆);DOPE/mPEG−DSPE、1.0:0.03モル比(■);DOPE/mPEG−DSPE、1.0:0.05モル比(▲);DOPE/mPEG−DSPE、1.0:0.1モル比(●)であった。血液排除プロフィルは、リポソーム中のmPEG−DSPE量が変化するにつれて変化し、より高いmPEG−DSPE含量は血流からのリポソーム排除の遅延をもたらす。
【0110】
図9Bは、DOPE/CHEMSから製造され、そして種々の含有量のmPEG−DSPEを有するリポソームについての類似プロットである。リポソーム製剤は:DOPE/CHEMS6:4モル比(□);DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE、6:4:0.18モル比(◇);DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE、6:4:0.3モル比(△);DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE、6:4:0.6モル比(○)であった。血液排除プロフィルは、リポソーム中のmPEG−DSPE量が変化するにつれて変化し、より高いmPEG−DSPE含量は血流からのリポソーム排除の遅延をもたらす。
【0111】
図9Cは、時間の関数として種々の含有量のmPEG−S−S−DSPEを有するDOPEリポソームについての排除プロフィルである。DOPE/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、1.0:0.02:0.01モル比(■);DOPE/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、1.0:0.04:0.01モル比(▲);DOPE/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、1.0:0.09:0.01モル比(●)からなるリポソームが実施例8記述のようにマウスに投与された。ここでは、mPEG−S−S−DSPEの量の増加とともに循環寿命への依存性が低下し、製剤は本質的に同じ排除プロフィルを有した。
【0112】
同様の観察が、時間の関数として種々の含有量のmPEG−S−S−DSPEを有するDOPE/CHEMSリポソームの排除を示す図9Dにおいてもまた見られる。ここでは、製剤は、DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、6:4:0.012:0.06モル比(□);DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、6:4:0.024:0.06モル比(△);DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、6:4:0.054:0.06モル比(○)からなった。再び、すべての製剤は、本質的に同じ排除プロフィルを有し、遊離可能なPEG(mPEG−S−S−DSPE)量の増加は、循環時間には測定しうる効果を示さなかった。
【0113】
総括すると、循環時間は、いずれかDOPEもしくはDOPE/CHEMSリポソーム製剤においてmPEG−DSPEの濃度増加とともに増加した(図9A−9B)。10モル%mPEG−DSPEを含有するリポソームの注射後24時間には、注射されたリポソームの約5−10%が、なお血液中に残留した。mPEG−DSPEにより安定化されなかったDOPEもしくはDOPE/CHEMSリポソームの注射はリポソームの急速なクリアランスをもたらした。2〜9モル%mPEG−S−S−DSPEの含有は、DOPE(図9C)もしくはDOPE/CHEMS(図9D)製剤のいずれについても循環時間を増加しなかった。すべてのmPEG−S−S−DSPE製剤は、ターゲティング実験において製剤に1モル%カップリング脂質を付加する効果を模倣するために1モル%mPEG/DSPEを含有した。製剤におけるmPEG−S−S−DSPE量の増加は、いかなる有意な程度にも製剤の循環半減期を増加しなかった(図9A−9B)。
【0114】
mPEG−S−S−DSPEを含有するリポソームは、開裂不能なmPEG−DSPEからなるリポソームに比較して短い血液循環寿命を有し、これは、イン・ビボで血液成分、例えばシステインによるジスルフィド結合の急速な開裂による。リポソームからのPEGの欠如による立体障害の喪失は、血液中でのそれらの安定性を低下し、MPSによるリポソームの取り込みを増加するであろう。抗体で標的指向化されたリポソームは、標的細胞に急速に結合し、それによってインターナリゼーションを受ける(Lopes de Menezes et al.,Liposome Res.,9:199(1999);Lopes de Menezes et al.,Cancer Res.,58:3320(1998))。かくして、本発明は、開裂可能なポリマー鎖を含有する標的指向化されたpH−感受性リポソームを投与して、ターゲティングリガンドと標的細胞間の結合、リポソームのインターナリゼーション、ポリマー鎖の開裂、続いて、細胞内でリポソームの内容物を放出するための脂質二重層の崩壊を達成することを意図する。
【0115】
イン・ビボの治療処置
本発明の支持において実施されたその他の研究では、マウスが開裂可能なPEG鎖を有する標的指向化されたpH−感受性リポソームにより処置された。治療剤ドキソルビシン(DXR)がリポソーム中に内包された。実施例9に記述されるように、マウスは、遊離形態か、またはリポソーム中に内包された3mgDXR/kgの単一用量により処理された。リポソーム製剤は表2において総括され、そして実施例8において詳述される。
【0116】
【表2】
Figure 2004525138
【0117】
表2は、各処理群についての平均生存時間および対照動物の平均生存時間(MST)に基づいて算出された寿命の増加を示す。薬物毒性の証拠は試験動物のいずれにおいても明らかではなかった。標的非指向化リポソーム製剤により処理された動物(群(3)−(5))は、対照群以上の改善された治療効能をほとんど示さなかった(P>0.05)。しかしながら、標的指向化リポソーム製剤により処理された試験群(群(6)−(8))は、対照群または標的非指向化製剤により処理された群より有意に増加した寿命(>100%ILS)を有した(P>0.001)。DXR−DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE[抗CD19]により処理された群(7)は、他の標的指向化処理群、群6および群8に較べて有意に増加した%ILSを有した。
【0118】
表2および図において提示されるデータは、開裂可能なPEGを有する標的指向化されたpH−感受性リポソームが標的非指向性またはpH−非感受性リポソームよりも高い治療効能を有することを示している。すなわち、mPEG−S−S−DSPEで安定化された標的指向化pH−感受性製剤は、封入されたドキソルビシンを標的細胞の細胞質中に有効に送達し、そして引き金放出特性を欠如した標的指向化製剤、すなわちDXR−HSPC/CHOL/mPEG−DSPE[抗CD19]に較べて、イン・ビトロで被包化されたドキソルビシンの細胞毒性を改善した。標的指向化、pH−感受性、開裂可能なポリマー鎖の製剤は、リポソームに内包された薬剤の細胞内送達の増大を達成する。
【0119】
VI.実施例
次の実施例は本明細書に記述される本発明をさらに具体的説明するものであり、本発明の範囲をいかなる点でも限定することを意図しない。
【0120】
材料
水素化した大豆ホスファチジルコリン(HSPC)はLipoid KG(Ludwigshafen,Germany)から得られ、mPEG2000−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(mPEG2000−DSPE、またmPEG−DSPEと略記される)は標準的な方法により合成することができる(Zalipsky,S.,et al.,in Poly(Ethylene Glycol) Chemistry:Biotechnical and Biomedical Applications(J.M.Harris,Ed.)Plenum Press,p.347−370(1992))。ドキソルビシン(DXR)はSigma Chemical Company,St.Louis,MOから購入した。マレイミドを誘導したPEG2000−DSPE(Mal−PEG−DSPE)(Kirpotin,D. et al.,Biochemistry,36:66(1997))はShearwater Polymers(Huntsville,AL)によって注文合成された。コレステロール(CHOL)およびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)はAvanti Polar Lipids(Alabaster,AL)から購入した。N−[2−ω−メトキシポリ(エチレングリコール)−α−アミノカルボニルエチル−ジチオプロピオニル]−DSPE(mPEG−S−S−DSPE,ジスルフィド−リンカー)は前述のように合成された。SephadexG−50およびSepharoseCL−4BはPharmacia Biotech(Uppsala,Sweden)から購入した。Na125Iおよびコレステリルー[1,2−[H](N)]−ヘキサデシルエーテル([H]CHE)はMandel Scintific(Guelph,ON)から購入した。コレステリルヘミスクシネート(CHEMS)、臭化3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)およびイミノチオランはSigma Chemicals(Oakville,ON)から購入した。臭化p−キシレン−ビス−ピリジニウム(DPX)および8−ヒドロキシピレントリスルホン酸3ナトリウム(HPTS)はMolecular Probes(Eugene,OR)から購入した。IgGのヨウ素化は各所に記述される方法にしたがって合成した(Lopes de Menzes et al.,Cancer Res.,58:3320(1998))。チラミニルイヌリン(TI)合成および[125I]TIの製造は既に記述されている(Sommerman,E.F.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,122:319(1984))。マウス・モノクローナル抗体(mAb)抗−CD19は、Dr.H.Zola(Children’s Health Research Institute,Australia)から得られたFMC−63マウス・抗−CD19ハイブリドーマ細胞系から調製された。ヒトBリンパ腫細胞系Namalwa(ATCC CRL 1432)はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(MD,USA)から得られた。ヒト血漿は、アルバータ大学薬理学部の健康なボランティアから得られた。Nucleporeポリカーボネートメンブラン(0.08,0.1および0.2μm孔径)はNorthern Lipids(Vancouver,BC)から購入した。すべての他の化学薬品は分析級のものであった。
【実施例1】
【0121】
pH−感受性およびpH−非感受性リポソームの製造
立体的に安定化したpH−感受性リポソームは、所望の製剤の脂質モル比にしたがってジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)もしくはDOPE/CHEMS(コレステリルヘミスクシネート)およびいずれかmPEG−DSPEもしくはmPEG−S−S−DSPE(Kirpotin et al.に記述されるように製造)およびDSPE−PEG−マレイミド(Mal−PEG−DSPE;米国特許第6,326,353号に記述されるように製造)の混合物から製造された。所望の脂質混合物がクロロホルム中に溶解され、そしてロータリーエバポレーターを用いて減圧下の回転によって薄膜として乾燥された。乾燥した脂質膜を水性バッファーの添加によって水和してリポソームを形成させた。リポソームは、Lipex Extruder(Lipex Biomembranes,Vancouver,BC)を使用して、孔径範囲0.2〜0.08μmをもつ一連のNucleoporeポリカーボネートフィルターを通す連続押し出しによってサイズを調整した。リポソームの平均直径はBrookhaven BI−90 Particle Sizer(Brookhaven Instruments,Holtsville,NY)を用いる動的光散乱によって決定した。押し出したリポソームの直径は120±10nmの範囲内にあった。
【0122】
いずれかHPTS−DPXもしくは[125I]TIを充填されるリポソームでは、脂質膜はHPTS−DPX溶液(30mM HPTS,30mM DPX,pH9.0,NaClで290mosmolに調節される)もしくは[125I]TI溶液(pH9.0,)により水和された。押し出し後、内包された染料もしくは[125I]TIを、HEPESバッファー,pH7.4(25mM HEPES,140mMNaCl)で溶出するSephadexG−50もしくはSepharoseCL−4Bカラムにおけるクロマトグラフィーによってそれぞれ除去した。
【0123】
治療剤、ドキソルビシン(DXR)は、小改変をしたBolotin et al.(J.Liposome Res.,4:455(1994))に記述されたような硫酸アンモニウム勾配を用いて遠隔充填によって充填された。簡単に言えば、脂質膜を、DOPE/CHEMSをコーティングする製剤ではpH8.5において、またはDOPEをコーティングする製剤ではpH9.0において250mM硫酸アンモニウム中で水和した。ある場合には、少量のNaOHを添加して脂質膜の完全な水和を得た。押し出し後、外部のバッファーを、二重層形成を達成するために適当なpH8.5もしくはpH9.0における10%スクロース、25mMTrizma塩基で平衡化したSephadexG−50カラムをとおして溶出することによって交換した。DXRは、DXR/脂質比0.2:1(w/w)において予め形成されたリポソームに添加され、そしてリポソームが22℃で15分間インキュベートされた。リポソームに封入されたDXRは、脱気したHEPESバッファーで溶出されるSephadexG−50カラムでのクロマトグラフィーによって遊離DXRと分離された。リポソームに内包されたDXRの濃度はメタノール抽出後の分光測定(λ=490nm)によって決定された。リン脂質濃度はFiske−Subbarow比色アッセイ(Bartlett,G.R.,J.Biol.Chem.234:466(1959))を用いて決定された。
【実施例2】
【0124】
予め形成されたリポソームへの抗体カップリング
リポソーム上のマレイミド(Mal)−PEG−DSPEへの抗CD19mAbのカップリングは、既に記述された方法(Lopes de Menezes et al.,J.Liposome Res.,9:199(1999))にしたがって、125I標識した抗CD19mAbをトレーサーとして用いて実施された。
【0125】
抗体は、最初に、HEPESバッファー,pH8.0(25mMHEPES,140mMNaCl)中で1時間25℃において濃度10mgIgG/mlバッファーにおいて、モル比20:1(Traut’s:IgG)でTraut’s試薬を用いて活性化された。未反応のTraut’s試薬をG−50カラムを用いて除去した。カップリング反応は、25℃で18時間アルゴン雰囲気下で、IgG対リン脂質モル比1:2000において実施した。カップリングしなかったAbは、カップリング混合液をHEPESバッファー,pH7.4においてSepharoseCL−4Bカラムを通過させることによってリポソームから除去した。カップリング効率は平均80%であった。
【0126】
全mAb密度は、日常的には、イン・ビボ実験ではリン脂質1μmol当たり抗CD19 30−60μgの範囲、およびイン・ビトロ実験ではPL1μmol当たり抗CD19 65−80μgの範囲であった。
【実施例3】
【0127】
バッファー中でのリポソームに内包された蛍光染料またはリポソームに内包されたドキソルビシンの漏出
DOPEもしくはDOPE/CHEMSリポソームの種々の製剤からの内包されたHPTS−DPXの漏出が、蛍光−デクェンチングアッセイを用いて内包溶質の漏出をモニターすることによって評価された。HPTSは、水溶性(しかし、蛍光−消光された)複合体、HPTS−DPXとしてリポソーム中に受動的に充填された。HPTS−DPXがリポソームから漏出する場合;それは遊離HPTSとDPXに解離し、413nmで励起されるとHPTS蛍光を増加する。試験されたDOPEおよびDOPE/CHEMS製剤は次のとおりであった。
【0128】
【表3】
Figure 2004525138
【0129】
内包されたHPTS−DPXを含有するリポソームは、使用する直前にSephadexG−50カラムを通過させて、すべての残留遊離染料もしくは薬物を除去した。内包された染料(HPTS−DPX)もしくはドキソルビシンを含有するリポソーム50μlをいずれかpH5.5もしくはpH7.4バッファー450μl中37℃で0.5mM最終PL濃度においてインキュベートした。またmPEG−S−S−DSPEを含有するpH感受性リポソームは、両pH5.5もしくはpH7.4バッファー中でジチオトレイトール(DTT)(100nM)とともにインキュベートした。種々の時点で、放出されたHPTSのパーセントを、インキュベーション混合液の一定分量において、SLM−Aminco Model8100蛍光測定計(Spectronic Instruments,Rochester,NY)を用いて、発光波長512nmおよび励起波長413nmにおけるサンプル発光(Daleke,K.et al.,Biochim.Biophys.Acta,1024:352(1990))における増大をプレインキュベーションサンプルの発光と比較して測定することによって決定した;値は、10%TritonX−100によるプレインキュベーションサンプルの溶解後に得られる蛍光(100%放出)(Kirpotin et al.,FEBS Letters,388:115(1996))における増大に対して基準化された。
【0130】
いずれかpH5.5もしくはpH7.4のバッファー中で、いずれかmPEG−S−S−DSPEもしくはmPEG−DSPEで安定化されたDOPEおよびDOPE/CHEMSリポソームからの封入HPTSの漏出は、図4A−4Bおよび図5A−5Bにおいて時間の関数としてプロットされている。結果は、代表的な実験からのものであり、3並列の分析の平均値±S.D.である。
【実施例4】
【0131】
リポソームに内包された蛍光染料の無細胞抽出液中への放出
A.無細胞抽出液の調製
Namalwa細胞は、5%COを含有する加湿雰囲気中、37℃で10%FBSを補足されたRPMI 1640において対数増殖条件下で維持された。細胞(1.0x10)は遠心(10分間1000rpm)によって回収し、そしてTEAバッファー(10mMトリエタノールアミン,0.25Mスクロース,10mM酢酸および1mMEDTA,pH7.4)20mlで洗浄した。洗浄細胞は、TEAバッファー4ml中に再懸濁され、そして哺乳細胞抽出液用に製剤化されたプロテアーゼ阻害剤カクテル(フッ化4−(2−アミノ−エチル)−ベンゼンスルホニル、ペプスタチンA、トランス−エポキシスクシニル−L−ロイシルアミノ(4−グアニジノ)ブタン、ベスタチン、ロイペプチンおよびアプロチニン;Sigma,MO,USA)が細胞1g当たり100μlで添加された。細胞をタイト・フィッティング(tight−fitting)Dounceホモジナイザーにより40firmストロークを用いて4℃で破壊した。未破壊細胞は4℃で1000rpm10分間の遠心によって沈殿させた。CFEは細胞沈殿物から注意して除去し、次いでTEAバッファーの添加により6mlに希釈した。CFEをpH5.5、ほぼリソソームのpH5〜6.5に調節した(Tycko,B.et al.,Cell,28:643(1982);Tycko B et al.,J.Cell Biol.,97:1762(1983))。
【0132】
HPTS−DPXを含有するリポソームを使用する直前にSephadexG−50カラムを通過させて、すべての残留遊離染料を除去した。内包された溶質の放出が蛍光−デクェンチングアッセイを用いて研究された。
【0133】
内包された染料(HPTS−DPX)を含有するリポソーム50mlを無細胞抽出液450ml中37℃で0.5mM最終リン脂質濃度においてインキュベートした。リポソーム製剤は、脂質混合物において、安定化されないか、または3%もしくは5%のmPEG−S−S−DSPEにより安定化されるかいずれかのDOPEリポソーム、および安定化されないか、または1.8モル%もしくは3モル%のmPEG−S−S−DSPEにより安定化されるかいずれかのDOPE/CHEMSリポソームからなった。漏出は、TritonX−100により処理されたプレインキュベーションサンプルの蛍光(100%放出)をおおうサンプルの蛍光における増大%として決定された。時間の関数としてプロットされた代表的な実験からの結果が図6A−6Bにおいて示されている。各データポイントは3並列の分析の平均値±S.D.である。
【実施例5】
【0134】
ヒト血漿においてインキュベートされたpH−感受性リポソームからのドキソルビシンの漏出
ヒト血漿におけるドキソルビシン(DXR)の漏出が、DOPE/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE(1:0.04:0.01)、DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE(6:4:0.2:01)、DOPE/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE(1:0.04:0.01)もしくはDOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE(6:4:02:0.1)の抗CD19で標的指向化されたリポソームについて試験された。
【0135】
内包されたDXRを含有するリポソーム50μlを、ヒト血漿450μl中37℃で0.05mM最終リン脂質濃度においてインキュベートした。種々の時点で、インキュベーション混合液の一定分量を採取し、HEPESバッファー(pH7.4)において希釈した。リポソーム中に含有されるドキソルビシンの蛍光は、硫酸アンモニウム法によって、充填された場合のその自己会合により消光された。ドキソルビシンの漏出は、励起および発光波長それぞれ485および590nmにおける蛍光デクェンチングによって決定された。放出されたDXRは、10%TritonX−100により処理されたプレインキュベーションサンプルの蛍光(100%放出)をおおうサンプルの蛍光における増大%として決定された。代表的な実験の結果は時間の関数としてプロットされ、図7A−7Bにおいて示されている。各データポイントは3並列の分析の平均値である。
【実施例6】
【0136】
標的指向化され、PEG−DSPEで安定化されたpH−感受性リポソームのイン・ビトロ細胞毒性
遊離ドキソルビシンおよび種々のリポソーム製剤のイン・ビトロ細胞毒性の比較(表1)が、Lopes de Menezes et al.,Cancer Res.,58:3320(1998)に記述されるように,テトラゾリウム染料(MTT,臭化3−(4,5−ジメチルチアゾル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム;Mosmann,J.J.Immunol.Methods,65:55(1983))を用いて、イン・ビトロの増殖アッセイによりNamalwa細胞において実施された。
【0137】
簡単に言えば、5x10Namalwa細胞が96穴プレートに塗布され、そしていずれか遊離DXRまたは抗CD19mAbを含有または不含のリポソームに内包されたドキソルビシンの種々の製剤とともに培養された。モノクローナル抗体はマレイミド−末端のPEG−DSPEにカップリングされて65−80μgmAb/μmolリン脂質を有するリポソームを形成した。リポソームは、140−160μgドキソルビシン/μmolリン脂質(0.24−0.28μmolドキソルビシン/μmolリン脂質)の充填レベルにおいてドキソルビシンを遠隔充填された。細胞は、98%湿度および5%COの雰囲気中37℃で1,24,48時間培養された。1時間および24時間の培養時間に、細胞は、新しい培地により置換前に2回洗浄し、そしてさらに47時間および24時間それぞれ培養した。全プレートが総計48時間培養された。培養時間の終了時に、テトラゾリウム染料を添加し、そしてプレートを570と650nmの2波長においてTitertek Multiskan Plus(Flow Laboratories,Inc.Mississauga,Ontario,Canada)を用いて読み取った。種々のリポソーム製剤の細胞毒性は、細胞増殖を50%阻害するのに有効な平均濃度(IC ,μMDXR)±S.D.(n=3−6)として表され、そして表1に列挙される。
【実施例7】
【0138】
核蓄積アッセイ
ドキソルビシンの核蓄積が,Kirchmeler et al.(J.Liposome Res.,11:15(2001))の方法にしたがって決定された。簡単に言えば、10%FBSを補足されたRPMI 1640において対数増殖条件下で維持されたNamalwa細胞4.5x10/500mlが、DXR濃度8μMにおいていずれか遊離DXRもしくは種々のリポソームDXR製剤により処理された。
【0139】
種々の時点(0,2,4,8,12時間)で、細胞100mlを10分間1000rpmの遠心によって沈殿させ、そしてTEAバッファー20mlで洗浄した。洗浄細胞は、TEAバッファー3ml中に再懸濁され、そしてタイト・フィッティングDounceホモジナイザーにより40firmストロークを用いて4℃で破壊した。未破壊細胞を沈殿させ、そして核を含有するCFEを細胞ペレットから注意して除去した。より完全なホモジネーションを得るために、未破壊のペレットをTEAバッファー(3ml)に懸濁し、そして第2回の破壊を実施し、その後再び未破壊細胞を除去した。合わせた上澄液を10分間1000rpmで遠心してすべての残っている未破壊細胞を除去した。この遠心段階からの上澄液を4℃で2.5分間2000rpmで回転させて核を沈殿させた。上澄液の除去後、ペレットをTEAバッファーで1mlに希釈し、次いで回転させ、そして肉眼観察によって決定されるように、核が均一に分散するまで音波処理した。
【0140】
各時点で、核画分の一定量3つ(各0.2ml)をTEA1.3mlに入れた。DNAは、ジギトニン溶液(無菌PBS中25mg/ml,Sigma,St.Louis,MO)10μl、MgCl溶液(無菌PBS中57mg/ml)10μlおよびDNアーゼ1溶液(無菌PBS中3mg/ml,Sigma)50μlの添加によって酵素的に消化した。22℃で2時間消化後、ドキソルビシン蛍光を記録した(480nmで励起および595nmで発光)。核画分の純度は種々の細胞オルガネラに関する酵素マーカーのレベルを決定することによってチェックした(Lopes de Menezes et al.,J.Liposome Res.,9:199(1999))。
【0141】
結果が図8A−8Cにおいて示されている。
【実施例8】
【0142】
BALB/c(近交系)マウスにおけるリポソームの血液排除
メスのBALB/c Cr Alt B/Mマウス、体重範囲17−22gは、University of Alberta Health Sciences Laboratory Animal Servicesから得られ、そして封入された[125I]TIを含有する種々の製剤のリポソーム0.2mlの単一大用量を尾静脈をとおして注射された(0.5μmolPL/マウス)。リポソーム製剤は、DOPEのみ、いずれか3mol%、5mol%もしくは10mol%mPEG−DSPEを含有するDOPE、DOPE/CHEMSのみ、およびいずれか1.8mol%、3mol%もしくは6mol%mPEG−DSPEを含有するDOPE/CHEMS;いずれか2mol%、4mol%もしくは9mol%mPEG−S−S−DSPEを含有するDOPE/1mol%PEG−DSPE、およびいずれか1mol%、2mol%もしくは5mol%mPEG−S−S−DSPEを含有するDOPE/CHEMS/mPEG−DSPE(6:4:0.06)からなった。
【0143】
注射後選ばれた時間に、マウスはハロタンで麻酔され、そして頸部脱臼によって犠牲にされた。血液サンプル(100μl)が心臓穿刺によって採取された。血液サンプル、種々の臓器および死体が、Beckman 8000ガンマ計数器において125I標識についてカウントされた。データはPKAnalyst(MicroMath Scientific Software)を用いて解析された。
【0144】
代表的実験からの結果は図9A−9Dに示される。データポイントは3並列分析の平均値±S.D.である。
【実施例9】
【0145】
Namalwa細胞をCB−17/ICR Tac SCIDマウス(Charles River Laboratories,Quebec,Canada)においてi.p.継代して、再生可能な腫瘍生着を有するさらに強力な株を開発した(Lopes de Menezes et al.,Cancer Res.,58:3320(1998))。Namalwa細胞を無菌PBS中に収穫し、そしてSCIDマウス中に移植した。細胞の生存率は、移植過程の前後にTrypan Blue染料を用いる染料排除によって調査された。
【0146】
SCIDマウス(5マウス/群)(Charles River Laboratories)、6−8週齢はNamalwa細胞(5x10)をi.v.移植され、そして移植後24時間に、いずれか遊離ドキソルビシン、いずれかmPEG−DSPEもしくはmPEG−S−S−DSPEにより安定化されたドキソルビシン−SIL[抗CD19]もしくは標的指向化されたDXRを充填したDOPE/CHEMS製剤として、ドキソルビシン3mg/kgの単一用量を用いてi.v.治療された。治療プログラムは次のとおりであった;
Figure 2004525138
全リポソーム製剤がドキソルビシンを含有した。
【0147】
全治療群がドキソルビシン3mgを受けた。マウスは、日常的に体重損失についてモニターされ、そしてそれらが瀕死状態になった時点で安楽死させられた;生存時間が記録された。薬物毒性の証拠はいかなる実験群においても観察されなかった。全動物実験がthe Health Sciences Animal Policy and Welfare Committee of the University of Alberta(Edmonton,Alberta,Canada)によって承認された。平均生存時間(MST)および対照マウスのMST以上の寿命の増加%(ILS)が決定され、そして表2に示されている。
【0148】
本発明は、特定の実施態様に関して記述されているけれども、種々の変更および改変が本発明から逸脱することなく作成できることは当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1A】ジチオベンジル(DTB)がメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)部分とアミン含有リガンドを結合する場合の本発明の実施態様を示す。
【図1B】図1Aにおける化合物のチオール開裂後の生成物を示す。
【図2】アミン−脂質が脂質ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である場合のmPEG−DTB−アミン−脂質の合成のための合成反応スキームを具体的に説明する。
【図3】パラ−ジチオベンジルウレタン(DTB)−結合mPEG−DSPE複合体のチオール開裂機構を具体的に説明する。
【図4A−4B】ジチオトレイトール(DTT)の存在または不在下37℃において、pH7.4もしくはpH5.5のいずれかのバッファー中種々のPEG−DSPE複合体(開裂可能もしくは開裂不可能)を用いて安定化されたジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)リポソームからの、TritonX−100で処理されたプレインキュベーションサンプルの蛍光(100%放出)をおおうサンプルの蛍光における増加パーセントとして決定された時間(hr)の関数としての被包化された蛍光染料の漏出を具体的に説明する;結果は、代表的な実験からのものであり、そして3並列分析の平均値±S.D.(誤差バーは多くの場合マーカーより小さい)である;(A)では、●,DOPE、PEG−DSPEなし,pH7.4;○,DOPE、PEG−DSPEなし,pH5.5;▲,DOPE/mPEG−DSPE,pH7.4;△,DOPE/mPEG−DSPE,pH5.5;(B)では、■,DOPE/mPEG−S−S−DSPE,pH7.4;▼,DOPE/mPEG−S−S−DSPE,pH5.5;□,DOPE/mPEG−S−S−DSPE+DTT,pH7.4;▽,DOPE/mPEG−S−S−DSPE+DTT,pH5.5。
【図5A−5B】ジチオトレイトール(DTT)の存在または不在下37℃において、pH7.4もしくはpH5.5のいずれかのバッファー中5mol%mPEG−DSPEもしくは5mol%mPEG−S−S−DSPE複合体(開裂可能もしくは開裂不可能)を用いて安定化されたDOPE/CHEMSリポソームからの、TritonX−100で処理されたプレインキュベーションサンプルの蛍光(100%放出)をおおうサンプルの蛍光における増加パーセントとして決定された時間(hr)の関数としての被包化された蛍光染料の漏出を具体的に説明する;結果は、代表的な実験からのものであり、そして3並列分析の平均値±S.D.(誤差バーは多くの場合マーカーより小さい)である;(A)では、●,DOPE/CHEMSのみ,pH7.4;○,DOPE/CHEMSのみ,pH5.5;▲,DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE,pH7.4;△,DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE,pH5.5;(B)では、■,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE,pH7.4;▼,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE,pH5.5;□,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE+DTT,pH7.4;▽,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE+DTT,pH5.5。
【図6A−6B】37℃においてpH5.5に調節された無細胞抽出液中でインキュベートされた、脂質混合物において安定化されないか、または種々の割合のmPEG−S−S−DSPEを用いて安定化されたいずれかのDOPEリポソーム(A)もしくはDOPE/CHEMSリポソーム(B)からの、時間(hr)の関数としての被包化された蛍光染料の漏出を具体的に説明する;漏出はTritonX−100で処理されたプレインキュベーションサンプルの蛍光(100%放出)をおおうサンプルの蛍光における増加パーセントとして決定される;結果は、代表的な実験からのものであり、そして3並列分析の平均値±S.D.である;(A)では、●,DOPE単独;▲,DOPE/mPEG−S−S−DSPE(1:0.03);■,DOPE/mPEG−S−S−DSPE(1:0.05);(B)では、○,DOPE/CHEMS(6:4);△,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE(6:4:0.18);□,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE(6:4:0.3)。
【図7A−7B】ターゲティング部分としての抗CD19およびいずれかmPEG−DSPEもしくはmPEG−S−S−DSPEを含有するDOPEもしくはDOPE/CHEMSリポソームからの被包化されたドキソルビシンの、37℃においてヒト血漿(pH7.4)中でインキュベートされ後の、時間(hr)の関数としての漏出を具体的に説明する;放出されるDXRはTritonX−100とともにプレインキュベートされたサンプルの蛍光をおおうサンプルの蛍光における増加パーセントとして決定された;結果は、代表的な実験からのものであり、そして3並列分析の平均値±S.D.である;(A)、●,抗CD19ターゲティング部分をもつDXR充填されたDOPE/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE(1:0.04:0.01);▲,抗CD19ターゲティング部分をもつDXR充填されたDOPE/CHEMS/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE(6:4:0.2:0.1);(B)、■,抗CD19ターゲティング部分をもつDXR充填されたDOPE/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE(1:0.04:0.01);▼,抗CD19ターゲティング部分をもつDXR充填されたDOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE(6:4:0.2:0.1)。
【図8A−8C】リポソーム中に被包化されたドキソルビシンによる処理の後、時間とともにNamalwa細胞におけるドキソルビシンのイン・ビトロ核蓄積を具体的に説明する;結果は、代表的な実験からのものであり、そして3並列分析の平均値±S.D.である;(A)では、●,ドキソルビシン不含;■,HSPC/CHOL/mPEG−DSPE,2:1:0.1のドキソルビシン含有リポソーム;▲,抗CD19ターゲティング部分をもつHSPC/CHOL/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE,2:1:0.08:0.02のドキソルビシン含有リポソーム;(B)では、●,抗CD19ターゲティング部分をもつDOPE/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE,1:0.04:0.01のドキソルビシン含有リポソーム;▲,抗CD19ターゲティング部分をもつDOPE/CHEMS/mPEG−DSPE/Mal−PEG−DSPE,6:4:0.24:0.06のドキソルビシン含有リポソーム;○,DOPE/mPEG−DSPE,1:0.05のドキソルビシン含有リポソーム;△,DXR−DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE,6:4:0.3のドキソルビシン含有リポソーム;(C)では、▼,抗CD19ターゲティング部分をもつDOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE,6:4:0.12:0.06のドキソルビシン含有リポソーム;■,抗CD19ターゲティング部分をもつDOPE/mPEG−S−S−DSPE/Mal−PEG−DSPE,1:0.02:0.01のドキソルビシン含有リポソーム;□,ターゲティング部分をもたないDOPE/mPEG−S−S−DSPE,1:0.03のドキソルビシン含有リポソーム;▽,ターゲティング部分をもたないDOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE,6:4:0.18のドキソルビシン含有リポソーム。
【図9A−9D】種々のリポソーム製剤中に被包化された[125I]TIの取り込みによって測定されるような、BALB/cマウスにおけるDOPEもしくはDOPE/CHEMSリポソームの薬動学を具体的に説明する;結果は、代表的な実験からのものであり、そして3並列分析の平均値±S.D.である;(A)では、◆,DOPE;■,DOPE/mPEG−DSPE、1.0:0.03;▲,DOPE/mPEG−DSPE、1.0:0.05;●,DOPE/mPEG−DSPE、1.0:0.1;(B)では、◇,DOPE/CHEMS;□,DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE、6:4:0.18;△,DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE、6:4:0.3;○,DOPE/CHEMS/mPEG−DSPE、6:4:0.6;(C)では、■,DOPE/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、1.0:0.02:0.01;▲,DOPE/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、1.0:0.04:0.01;●,DOPE/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、1.0:0.09:0.01;(D)では、□,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、6:4:0.012:0.06;△,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、6:4:0.024:0.06;○,DOPE/CHEMS/mPEG−S−S−DSPE/mPEG−DSPE、6:4:0.054:0.06。

Claims (13)

  1. (i)pH−感受性脂質;(ii)親水性ポリマーであって、実在するかまたは誘発される生理学的状態に応じて親水性ポリマー鎖を遊離するのに効果的な結合によって該脂質に結合された該ポリマーを用いて誘導された脂質1−20モル%;(iii)ターゲティングリガンド;および(iv)内包された治療剤、から形成されるリポソームを含んでなる、治療剤の細胞内送達のためのリポソーム組成物であって、標的細胞に結合し、そして該内包された薬剤を放出して、該遊離可能な結合および/または該ターゲティングリガンドを欠如する類似のリポソームによって送達される薬剤の細胞内濃度に比較した場合、薬剤の細胞内濃度において少なくとも2倍の増加を達成するように適合化された該組成物。
  2. 該pH−感受性脂質がジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)である、請求項1の組成物。
  3. 該リポソームが安定化成分をさらに含む、請求項1の組成物。
  4. 該安定化成分がコレステリルヘミスクシネート(CHEMS)である、請求項3の組成物。
  5. 該脂質誘導のポリマーが、ポリエチレングリコールを用いて誘導されるホスファチジルエタノールアミンである、請求項1の組成物。
  6. 該ターゲティングリガンドが抗体もしくは抗体フラグメントである、請求項1の組成物。
  7. 該抗体フラグメントが、抗CD19、抗CD20、抗CD22からなる群から選ばれる、請求項6の組成物。
  8. 該遊離可能な結合がジスルフィド結合を含有する、請求項1の組成物。
  9. 該ジスルフィド結合がジチオベンジル結合である、請求項8の組成物。
  10. 請求項2−8のいずれか1つに記載のリポソームであって、投与された場合、(i)遊離可能な結合を開裂し、それによって該親水性ポリマー鎖を放出すること;(ii)該開裂の前またはその後に起きる標的細胞に対する該リガンドの該結合;および(iii)該標的細胞による該リポソームのインターナリゼーション、を達成し、それによって、該遊離可能な結合および/または該ターゲティングリガンドを欠如する類似のリポソームによって送達される薬剤の細胞内濃度に比較して、少なくとも2倍高い該薬剤の細胞内細胞毒性を達成するために効果的な該リポソームを含んでなる、リポソームに内包された薬剤の細胞内細胞毒性を増強するための組成物。
  11. 遊離可能な結合の該開裂が、天然に存在する血液成分によって達成される、請求項10記載の組成物。
  12. 投与された場合の該リポソームが(i)遊離可能な結合を開裂し、それによって該親水性ポリマー鎖を放出すること;(ii)該開裂の前またはその後に起きる標的細胞に対する該リガンドの該結合;および(iii)該標的細胞による該リポソームのインターナリゼーションを達成して、該遊離可能な結合および/または該ターゲティングリガンドを欠如する類似のリポソームによって送達される薬剤の細胞内濃度に比較した場合、該標的細胞の核において少なくとも2倍高い該薬剤の蓄積を達成するために効果的である、請求項2−8のいずれか1つに記載の、細胞核中への治療剤の蓄積を増大するための組成物。
  13. 遊離可能な結合の該開裂が、天然に存在する血液成分によって達成される、請求項12記載の組成物。
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