JP2004512258A - 生物系における細胞応答の調節のための方法および試薬 - Google Patents
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Abstract
本発明は、多価のリガンドを提供し、そのリガンドは直接的または間接的に細胞または他の生物的な粒子に結合するための、もしくはさらに一般的に任意の生物的な分子に結合することによって、少なくとも1つの認識エレメント(RE)、および好ましくは複数の認識エレメントを保有または提示する。提供される多価のリガンドは、細胞凝集、および概して生物的な巨大分子の巨大分子組立てに関して、最も一般的に、任意の生物的な粒子または生物的な分子に結合または標的にするために機能し得、そして特に、細胞または細胞の型またはウイルスを標的にするために機能し得る。本発明の多価のリガンドは、概して化学物質種または生物学的種(抗原、エピトープ、リガンド結合基、細胞レセプターのためのリガンド、種々の巨大分子が挙げられるが、これらに限定されない)の足場(集合)を作製するために適用可能である。
Description
【0001】
(発明の背景)
生物学のプロセスの多様性は、1つの化学物質種または生物学的種、巨大分子または微粒子(例えば、細胞、ウイルスまたはビリオン)の他の化学物質種または生物学的種、巨大分子または微粒子に対する結合によって媒介される。多くの場合において、結合価は、生物学のプロセスの媒介の機構の重要な局面であり得るという証拠がある。本発明は、多価のリガンドを用いている相互作用のような結合価を選択的に変化させるための化合物および方法に関し、このリガンドに関し、多様な化学物質種または生物学的種が、制御された方法に付随した他の化学物質種または生物学的種(概して、本明細書中で認識エレメント(RE)と称する)と結合することに関連し、REの数、REの配置およびREの相対的な方向性の制御を伴う。ある種の認識エレメントは、生物的なシグナル伝達プロセスにおいて直接的または間接的に関与し、他方の認識エレメントは、単に生物的なプロセスに関連した結合に関与するに過ぎない。従って本発明は、概してそのような多価のリガンドの構造を制御することによる生物学的なプロセスの制御に関している。本発明の多価のリガンドは、具体的には細胞のシグナル伝達プロセスにおいて、およびより一般には、生物的なプロセスに関与する認識エレメントの巨大分子の組立てにおいて用途を有する。
【0002】
細胞は、継続的な感覚を必要とし、そして細胞の環境における変化に応答する。この目的のために、細胞は、多数の細胞表面、膜貫通および細胞質のレセプターを使用する。これらのレセプターは代表的に、タンパク質,ペプチド、サッカリド、核酸または他の低分子を認識するが、いくつかの場合において、レセプターはまた、酸化還元電位、温度および浸透圧における変化を認識し得る。これらのレセプターに対するリガンドの結合は、移行、活性化、代謝、タンパク質生成、分化、増殖および細胞死のような細胞の活動における変化を生じる。これは、細胞生物学の中心概念であり、そしてこれらの細胞応答は、環境変化に適切に応答するための細胞(または多細胞生物)を与える。
【0003】
リガンドが細胞のプロセスの促進することによる機構は、細胞応答の調節におけるリガンドの役割をはっきりさせるために非常に興味深い。これらの系が調節がされることにおける1つの一般的な方法は、レセプターの配置的な体系によるものである。リガンド結合は、相対的な方向性および/または細胞表面のレセプターの立体構造、応答の活性化を変化し得る。とりわけ免疫認識、細胞結合および細胞移行、ならびに増殖からの生物的な応答範囲は、リガンド結合の際に上に起こる細胞表面のレセプター分布(例えば、局在)における再方向性または変化に依存する。リガンドの再方向性は、シグナルを伝達し、そして細胞応答を促進させる現象であり得る。
【0004】
この一般的な例は、成長因子レセプターにおいて見い出され、それは細胞増殖を支配する。エリスロポエチン(EPO)のようなある種の2価の成長因子は、同時に2つの細胞表面成長因子レセプター(EPOR)に結合し、そして近傍にこれらのレセプターを導く。このリガンド認識は、ダイマーにおいてレセプターの交差リン酸化を包含するシグナル伝達カスケードを誘引する。EPOの例において、1つのレセプターに唯一結合できるリガンドは、応答を誘発することが不可能である。
【0005】
いくつかのリガンドの特に興味深い特徴は、結合価であり、それは本明細書中では概して、レセプター(例えば、エピトープ)に結合するためのリガンド中の認識部位の正味の数と密度と、リガンド中の認識部位の配置との間での相互作用をいう。リガンドは、頻繁に多数のレセプター結合部位を保持する。これは、そのリガンドとリガンドに対する生物的な応答の種類と強度を決定し得る複数のレセプターとの間の多価の相互作用を可能にする。これらの系においては頻繁に、1価のリガンドは、任意の生物学的な活性を欠如する。研究者は、少なくとも認識部位の数を増加させるという意味において、結合価において変化するリガンドを探索している。代表的に実験されたリガンドは、小さく、低い結合価の化合物(例えば、抗体もしくはダイマー化因子)、または大きな異質な化合物(例えば、タンパク質結合体、ポリマー、もしくは官能化された表面)のいずれかであった。規定された低い結合価の化合物を用いた研究は、レセプターの方向性における変化による調節の程度の認識を導いており、そして、大きな規定されない多価のリガンドをともなう研究は、認識部位(例えば、エピトープ)の正味の数を増加することが、頻繁に多くの系において増加される影響をもたらし得ることを示した。
【0006】
細胞は、過剰な刺激または過小の刺激を避けるために、それらの細胞のプロセスに対する明確な制御を必要とする。免疫応答において、例えば、免疫細胞の機能は、好ましくない自己反応性またはクローン不応答を避けるために厳密に調節されなけれえばならない。細胞は、細胞の応答を調節するためのレセプターとリガンドとの相互作用の特徴を利用する。例えば、増加される合成リガンドの密度は、リガンドに対するある種の細胞の応答をさらに効果的に活性化することを示している。自然は、規定された方法において生物的な応答を制御するためにリガンドの結合価を利用し得る。従って、生物的な応答の選択的な制御は、リガンドの結合価の制御を経て達成され得る。しかし、これまでに記載された多価のリガンドは、生物学的な系においてこの微調整された制御の探索を可能にしていない。
【0007】
本発明は、明確な結合価、および制御された特徴を伴う合成リガンドの生成を提供し、それは細胞表面のレセプターとの結合によって開始または誘引される生物的な制御を体系的に変化および/または制御するために使用され得る。特に、本発明の合成リガンドは、天然のリガンドによって示されるさらに微細な制御に接近することを可能にする。合成リガンドにおけるこれらの特徴への接近は、これらの系の天然機能の本発明者らの理解を拡張するだけでなく、広い多様な生物的な応答を調節するための能力を利用する治療的または治療的でない応用における使用のために選択的に設計されたエフェクター分子(多価のリガンド)をもたらす。
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、多価のリガンドを提供し、そのリガンドは直接的または間接的に細胞または他の生物的な粒子に結合するための、もしくはさらに一般的に任意の生物的な分子に結合することによって、少なくとも1つの認識エレメント(RE)、および好ましくは多数の認識エレメントを保有または提示する。提供される多価のリガンドは、細胞凝集、および概して生物的な巨大分子の巨大分子の組立てに関して、最も一般的に、任意の生物的な粒子または生物的な分子に結合または標的にするために機能し得、そして特に、細胞または細胞の型またはウイルスを標的にするために機能し得る。本発明の多価のリガンドは、概して化学物質種または生物学的種(抗原、エピトープ、リガンド結合群、細胞レセプターのためのリガンド(細胞表面レセプター、膜貫通レセプターおよび細胞質レセプター)、種々の巨大分子(核酸、炭水化物、サッカリド、タンパク質、ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない)の足場(集合)を作製するために適用可能である。これらの足場において、認識エレメントの数、配置、相対的位置および相対的方向性が制御され得る。
【0009】
さらに具体的な実施形態において、多価のリガンドを提供し、これらのリガンドは、少なくとも1つのシグナル認識エレメント(SRE)、そして好ましくは多数のシグナル認識エレメントを保有または提示し、そして生物学的な系における生物的な応答を調整する。シグナル認識エレメントは、細胞表面のレセプターに結合することを提供し、そして単独または他のSREと組合わせて、生物学的な系における生物的な応答に影響する。SREは、細胞によるシグナルとして、つまり、1以上の細胞レセプター、特に1以上の細胞表面のレセプターと結合を通じ、認識される化学物質種または生物学的種を包含する。これらの多価リガンドは、概して生物学的な系において生物的な応答のエフェクターとして作用し得る。提供される多価リガンドは、生物的な応答を活性化、開始または誘引するために、応答を阻害するために、応答を増強または減弱するために、もしくは応答の性質を変化するために機能し得る。本発明の多価のリガンドはまた、細胞表面レセプター(このレセプターに対してリガンド自体は結合しない)を通じて媒介される応答に影響を及ぼす
本発明は、機能的なエレメント(FE)を有する細胞の標識、またはこの細胞を標的とするための方法を提供する。本発明はまた、細胞凝集を誘導または増強するための、もしくは代わりに細胞凝集を阻害または阻止するための方法を提供する。本発明はさらに、生物学的な系における生物的な応答を誘導、調製、および/または調節するための方法を提供する。これらの各々の方法は、多価のリガンドを用いる。本発明の好ましい多価のリガンドは、結合価を規定または制御しており、そのリガンドの構造的な特徴は、レセプターに結合するための認識エレメント(REおよびSRE)の数、密度、配置および方向性を包含し、細胞に単純に結合するために、もしくは所望される生物的な応答の型または応答のレベルを得るために選択または制御される。
【0010】
本発明の多価のリガンドの足場は、多数のRE、SRE、または随意的にFEと組合わせて両方を包含し、多様な診断的および臨床的な応用(特に血液型分類および病原体の検出)において用いられ得る。本明細書中の多価リガンドは、多様な生物的な分子および粒子(細胞およびウイルス)の検出ならびに多様なアッセイ方法(とりわけ組織学、ウエスタンブロット、PCRアッセイ、ELISAアッセイ、凝集アッセイ)において用いられ得る。一般に、そのようなリガンドにおいて増加された結合価は、アッセイまたは診断的な感受性における増加と関連される。
【0011】
多価のリガンドは、1以上の構造基または官能基を含み、その基は、随意的に1以上のシグナル認識エレメント(SRE)、または1以上の機能的なエレメント(FE)、または両方との組合せにおいて、細胞表面のレセプターに結合するための認識エレメント(RE)として作用する。SREは、多価のリガンドにおいて単独または他のSER(REまたFE)と組合わせて、細胞内および/または細胞間の生物的な応答を誘導し得るREの部分集合である。1以上のSRE(必要に応じて、1以上のRE、1以上の異なるSRE、または1以上のFEとの組合せにおいて)を保有する本発明の多価のリガンドは、細胞において生物的な応答を開始し得る。あるいは、これらの多価のリガンドは、1以上の天然の化学的または生物的シグナルの存在下において、例えば、応答を増強、減少または阻害することによって細胞の応答を調製し得る。具体的な実施形態において、本発明の多価のリガンドは、選択された化学的または生物的なシグナルによって細胞において誘導される応答のレベルまたは型を変化するように設計される。
【0012】
本発明の多価のリガンドは、最も一般的に、多数のRE,SRE、または両方必要に応じてFEと組合わせて、共有結合的相互作用または非共有結合的相互作用のいずれかによって結合されるための分子の足場を包含する。足場の上のRE,SREおよびFEの数、密度および配置は、代表的に、所望されるリガンドの選択的な合成によって制御され得る。その分子の足場は、細胞に対するREおよび/またはSREの種々の外形(geometry)提示を提供する直線状、分枝状または環式であり得る。好ましい実施形態において、分子の足場は、多数のモノマーを包含するポリマーである。本発明の多価のリガンドの分子の足場は、全てのモノマーが、同一モノマーまたは異なるモノマーの混合物を含むポリマーであるポリマーを包含する。分子の足場はまた、足場の異なる領域(または一部)が異なるモノマーから構成されるブロックコポリマーを包含し得る。本明細書中のいくつかの処方において例証されるように、ROMP方法によって調製される分子の足場は好ましい。
【0013】
分子の足場は、疎水性であり得るが、または−OHのような極性置換基を伴う置換(特にポリマー基幹の置換)によってさらに親水性になり得る。一般的にその足場は、REまたはSREの活性(例えば、レセプターへの結合)を干渉しない任意の基で置換され得る。足場の置換は、多価のリガンドの物理的な特性(例えば、溶解度)を調節するために制御され得る。RE、SREおよびFEは、直接的に足場に、またはリンカー基を介して足場に結合され得る。そのリンカー基は、足場に結合するための、およびRE,SREおよび/またはFEに結合するための官能基を提供し、そしてまた多価のリガンドの溶解度に影響し得る。そのリンカーはまた、RE,SREまたはFEとの間、もしくは結合されるエレメントと足場との間の所望しない相互作用を最小限にするため、または結合されるエレメントの方向性に関して構造的な自由度を提供するために規定されたスペーサーを提供し得る。
【0014】
具体的な実施形態において、分子の足場は、多数の繰返し単位(モノマー)を含み、この繰返し単位のそれぞれに対してREまたはSREが結合される。一般的に、分子の足場は、互いに近接したシグナルを保持するために機能し、そして生物的な応答の調製において直接的に相互作用しない。しかし、多価のリガンドの物理的特性(例えば、溶解度)または化学的特性(例えば、安定度)は、足場の構造を選択することによって、または足場に沿って置換基(例えば、極性、非極性)を導入することによって、変化され得る。
【0015】
1つの実施形態において、多価のリガンドは、リガンド中にわずか1つの型のREまたはSREを有する。これらの多価のリガンドは、ダイマー、トリマー、テトラマー、およびポリマー(5以上のモノマーを有する比較的短いオリゴマーを包含する)、または25、50、100以上のモノマーを有する長いポリマーを包含する。1つの型のREまたはSREを保有する好ましい多価のリガンドは、約10以上のそのようなREまたSREを保有する。この実施形態において、多価のリガンドの繰返し単位(または、モノマー)は、好ましくは同一である。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、1つの型のREより多く、1つの型のSREより多く、またはREとSREとの組合せを保有する多価のリガンドを提供する。これらの多価のリガンドはまた、ダイマー(各々がRE、もしくはSREのうち1つ、またはREおよびSREを保有する)、トリマー、テトラマー、およびブロックポリマー(5以上のモノマーを有する比較的短いオリゴマーを包含する)、または25、50、100以上のモノマーを有する長いポリマーを包含する。これらの多価のリガンドはまた、第二のREまたはSREを保有する領域から第一のREまたはSREを保有する領域を分離するために、足場に沿ってスペーサー領域(REまたはSRE群を保有しないモノマーを有する)を有し得る。スペーサー領域のモノマーは、機能的なエレメント(FE)を保有していても、置換されていなくても、非反応性の非官能基応答を保有してもよい。所定の多価のリガンドは、概して異なるRE,SREまたは両方をいくらでも包含し得るが、しかし2または3の異なるREまたはSREを保有するこれらのリガンドは、最も興味深いものである。
【0017】
他の実施形態において、本発明は、1以上のREまたはSREを保有する多価のリガンドを提供し、そのリガンドは同一であっても異なっていても良いが、REまたはSRE以外の機能的なエレメントを保有し得る。これらの機能的なエレメント(FE)は、例えば、多様な化学的または生物的な機能(REまたはSREの機能は異なる)を示し得る。例えば、機能的なエレメントは、1以上の蛍光または放射性同位元素標識、潜在性反応基を伴う1以上基、または1以上の酵素機能を提供し得る。FEでのモノマーの置換はまた、SREの配置を提供し得る。
【0018】
認識エレメント(RE)は、任意の化学物質種または生物学的種(例えば、分子またはその一部)であり、単独または1以上の他のREとの組合わせにおいて、細胞表面のレセプターを認識し、そして結合する。REは、例えば、細胞表面のレセプターに結合するための全てまたは一部の活性なリガンドを包含し得る。シグナル認識エレメント(SRE)は、任意の化学物質種または生物学的種であり、単独または1以上の他のSREとの組合わせにおいて、細胞における、または細胞から生物的な応答を誘導し、そしてこららの種は、生物的な分子(タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、サッカリド、サイトカイン、成長因子、ホルモン、およびそれらの多数の誘導体)を包含し、ならびにより大きな生物学的種(タンパク質フラグメント、エピトープ、抗原決定基等)の一部、および多様な化学物質種(ハプテン、天然に存在する薬物、合成薬物)、および生物学的な分子の機能的な模倣物として作用する種(例えば、ペプトイド、ホスホロチオエート)であり得る。SREは、代表的に細胞表面のレセプターに結合するREであるが、REとは対照的に、SREは細胞中の生物的な応答に影響する。
【0019】
本発明の多価のリガンドは、細胞レセプターを認識および/またはクラスター形成するために機能し得る。この点で、多価のリガンド上のREまたはSREは、細胞レセプターのリガンドである。ある種の場合において、レセプターのクラスター形成、またはレセプターの認識は、所定のSREに対する細胞の応答を調製する。本発明の多価のリガンドによるクラスター形成、またはレセプターの認識はまた、別のシグナル、または別のリガンドに対する細胞の応答を調製し得る。細胞表面のレセプターのクラスター形成、または他の構造的な再方向性、またはレセプターの認識を経て、本発明の多価のリガンドは、別のシグナルまたはリガンドに対する細胞の応答を増強または阻害し得る。例えば、本発明の多価のリガンド(化学誘引物質として機能する)は、別の化学誘引物質に対して細胞の応答を増強し得る。
【0020】
所定の細胞のレセプターは、1を超える生物的な応答を媒介し得る。与えられる細胞のレセプターに結合するが、レセプターによって媒介される生物的な応答を誘導しないリガンドを保有する本発明の多価のリガンドは、生物的な応答を阻害するために用いられ得る。
【0021】
1を超える型のSREを保有する多価のリガンドは使用されて、細胞における、または細胞からの1を超える生物的な応答を同時に、または連続的に誘導し得る。あるいは、1つのSREに対する細胞の応答は、別のSREに対する細胞応答によって改変され得る。2以上の異なるSREを保有する多価のリガンドは、例えば、細胞表面上の異なるレセプターを認識するために機能し得、それは1以上のSREに対する細胞の応答の調製をもたらし得る。同様に、FEを保有する多価のリガンドにおいて、1以上のSREに加えて、SREに対する応答は、FEの存在によって改変され得る。
【0022】
本発明の多価のリガンドは、原核生物細胞または真核生物細胞におけるシグナル伝達プロセス(すなわち、生物学的な系において、細胞の外側と内側との間、ならびに細胞と細胞との間の情報の伝達)を調製する方法において用いられ得る。その方法は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボ(細胞は、多細胞生物を包含する自然環境から取り除かれ、そしてその環境に戻させるためにいったん処理されることが意図される)で実行され得た。例えば、SREに対する走化性、または遊走性の応答が改変され得る。そのような方法は、原核生物微生物(例えば、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌)または真核生物微生物(哺乳動物を包含する種々の生物の真核生物の寄生体および病原体を包含するが、これらに限定しない)の両方、および哺乳動物の細胞、および特にヒトの細胞を包含する、真核生物細胞より大きな生物、(例えば、白血球、リンパ球、内皮細胞、上皮細胞)に適用可能である。細菌細胞、または真核生物細胞(真核生物の病原体、または寄生体を包含する)における応答を調製する多価のリガンドが使用されて、細菌、または真核生物の病原体または寄生体による増殖、コロニー化、遊走化、または生物膜の形成を阻害し得、結果として、そのような微生物による感染またはコロニー化を阻害し得る。
【0023】
多価のリガンドはまた、細胞分化、細胞増殖および/または細胞死(例えば、アポトーシス)を促進または阻害するために使用され得る。大きい生物の真核生物細胞において応答を調製する多価のリガンドは、多価のリガンドにおけるSREおよび他のFEの選択に依存し、所望しない細胞増殖、所望しない移行、および所望しない細胞間の接合の形成を阻害するために、もしくは所望される細胞増殖、所望される移行、および所望される細胞接合の形成を促進または増強するために使用され得る。
【0024】
薬学的に受容可能なキャリアならびに、細胞増殖、コロニー化、細胞移行、細胞間接合の形成、および/または真核生物細胞または原核生物細胞による生物膜の形成を調製するために有効な量の多価のリガンドの量を含む薬学的組成物および治療組成物は、本発明によって包含される。具体的な薬学的組成物または治療組成物は、所望しない細胞増殖、コロニー化、細胞移行、細胞間接合の形成、および/または真核生物細胞または原核生物細胞による生物膜の形成を阻害、もしくは妨害するために有効な量の多価のリガンドを包含するものを包含する。細菌あるいは真核生物の寄生体または病原体による感染を遅延または阻害する薬学的組成物は、特に興味深いものである。本発明の2以上の多価のリガンドは、複合の効果および利益を提供するためにそのような薬学的組成物において組合わされ得る。
【0025】
細胞移行、細胞接着、および細胞間接合の形成は、癌の成長または癌の転移に関与される。そのようなプロセスを調製する多価のリガンドは、癌の成長または癌の転移の阻害のための方法および薬学的組成物において用いられ得る。再度、そのような薬学的の組成物は、癌細胞増殖、細胞接着または細胞移行を阻害するために有効な量の多価のリガンドを含むものを包含する。本発明の2以上の多価のリガンドは、複合の効果および利益を提供するためにそのような薬学的組成物において組合わされ得る。
【0026】
本発明の多価のリガンドは、免疫系(例えば、白血球、およびリンパ球)において機能する細胞との結合価依存性相互作用によって、動物(哺乳動物、および特にヒトを包含する)における免疫応答を調製し得る。特に、本発明の多価のリガンドは、化学誘引物質(N−ホルミルペプチドおよびN−アシルペプチドのような誘導体化されたペプチドを包含する)に対する白血球(好中球を包含する)の応答を調製し得、そしてB細胞および/またはT細胞の活性化および不活性化を調製し得る。B細胞および/またはT細胞の活性化は、インビボ、インビトロ、および/またはエキソビボで実行され得る。
【0027】
本発明はまた、多価のリガンドのライブラリーを提供し、ライブラリーのメンバーは、例えば、REまたはSREの数および/または相対的な位置において、スペーサーの存在および/または位置において、反復単位またはモノマー(例えば、以下の式における、nまたはn+m)の数において、ならびにFEの存在または数において変化される。規定のサイズ、反復単位またはモノマーの数、REまたはSREの数、REまたはSREの組合せ、RE,SREおよびFEの組合せ、ならびに付随したエレメント(RE,SREおよび任意のFE)の配置の範囲にまたがる多価のリガンドのライブラリーが、特に興味深いものである。ROMP方法を使用して調製されたライブラリーは、特に興味深く、および応用である。当該分野において理解される多様な選択およびスクリーニングを方法を用いて、これらのライブラリーは、与えられる生物的な系において所望される調製を示すライブラリー中の多価のリガンドについて選択またはスクリーニングされ得る。さらになお、そのようなスクリーニングから得られた結果は、すなわち細胞凝集のために必要とされるREの数、誘導または阻害のために必要とされるSREの数、および他の構造/機能の関係は、さらなる多価のリガンドの設計および合成において使用され得る。
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明の多価のリガンドは、生産的な方法において機能的または構造的な基の表示を提示するために、多数の、特にREおよび/またはSREが結合される分子の足場である。その足場は、一般的に、所望される表示の方向性を提供する任意の化学物質種、または生物学的種から形成され得る。直線状アレイに加えて、その足場は、選択される非直線状の提示を有する官能基のアレイを提供するために選ばれ得る。例えば、図8に例証される多様な非直線状の足場構造を参照のこと。
【0029】
機能的または構造的な基は、対称または非対称のアレイにおいて、足場に結合され得る。その足場は、芳香族環系(ベンゼン、ナフタレン、および縮合または非縮合の芳香族環を包含する)のような比較的低分子の有機分子を包含し得る。多様な縮合芳香族環系は、環式系において選択される位置に結合される官能基を伴う広い範囲の異なる提示の方向性を提供し得る。あるいは、飽和の環式系(例えば、シクロヘキサン)、ヘテロ環(例えば、炭水化物)、または脂環式化合物(例えば、(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)もまた使用され得る。さらに代表的に分子の足場は、多数の反復単位または分子(例えば、ポリマーまたはオリゴマー)を包含する。次いで、そのモノマーの足場は、多数の反復単位またはモノマーに結合する多数の機能的または構造的な基を保有する。その官能基は、その足場に共有的または非共有的に結合され、そして多数の認識エレメント(RE)、またはシグナル認識エレメント(SRE)を包含し得、および随意的に他の機能エレメント(FE)を包含し得る。
【0030】
そのRE,SREおよび任意のFEは、分子の足場に対して無作為に、または事前に選択されるパターンに結合され得、ここで足場の長さに沿ったRE,SRE、およびFEの配置は、選択されたパターン(例えば、交互の異なるSREまたはRE,異なるSREまたはREの選択された配置など)と適合する。
【0031】
その分子の足場は、剛性または可撓性、親水性または疎水性、対称または非対称であり得、大きな表面領域または小さな表面領域を有し、そして細胞表面のレセプターとの相互作用するか、または相互作用しない。その分子の足場は、任意の多様なオリゴマーまたはポリマーであり得、これらのオリゴマー、またはポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリメタクリレート、ポリオール、およびポリアミノ酸、ならびに相当するオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。分子の足場は、一般的に、直線状ポリマー、分枝状ポリマー、または架橋結合のポリマーであり得る。好ましい分子の足場は、生体適合性である。本明細書中のいくつかの式で示されるように、ROMP法によって調製される分子の足場が好ましい。分子の足場は疎水性であり得、または−OHのような極性置換基での置換によってさらに親水性に作され得る。一般的に、その足場は、シグナル活性を干渉しない任意の基で置換され得、この基は所望可能な化学的および物理的特性を提供する。
【0032】
「認識エレメント」またはREという用語は、細胞レセプターに対して結合するために機能し、特に、細胞表面のレセプターに結合するために機能する化学物質種または生化学的種、基あるいは構造をいうために本明細書中で使用される。REは、本発明の多価のリガンド中の分子の足場に結合される。REは、細胞レセプターについてのリガンド、またはそのようなリガンドの一部のであり得、それは、レセプター結合のために機能的であり、そして分子の足場に結合することを可能にするために調製されている。REは、細胞レセプターのリガンドに対して化学的に同一であり得、またはREは足場に結合する結果として、または足場に結合することを促進するためにこのリガンドから改変され得る。
【0033】
「シグナル認識エレメント」またはSREという用語は、化学的または生化学的なシグナル(以下を参照のこと)として機能し、そして本発明の多価のリガンドに結合される化学または生化学の種類、基あるいは構造をいうために本明細書中で使用される。そのSREは、代表的には多価のリガンドの中に結合することを可能にするために改変されているシグナル(基または分子)である。SREは、シグナルと化学的に同一であり得、またはSREは足場に結合する結果として、または足場に結合することを促進するためにシグナルから改変され得る。そのSREは、好ましくは、基のシグナル機能が、最小限に影響されるように多価のリガンドの中に結合される。SREは細胞によって、代表的に細胞レセプターに結合することによって認識され、そして従ってREもまたそうである。REと対照的にSREは、細胞における、または細胞からの応答を誘導する。その応答は、細胞移行のような細胞内の応答、および/または他の細胞のための化学的なシグナルとして機能する細胞による化学物質種類の解放のような細胞間の応答であり得る。シグナル認識は、シグナル(またはシグナル群)が結合するための細胞表面上の細胞レセプターの存在によって媒介される。シグナル(またはSRE)単独の結合は、生物的な応答を誘導し得る。応答の誘導は、いくつかの場合において、多数のシグナルまたは(SRE)の存在を必要とし得る。その生物的な応答は、細胞表面のレセプターの認識、またはレセプターのクラスター形成によって調製され得る。
【0034】
「化学的または生化学的なシグナル」という用語は、細胞表面のレセプターとの相互作用によって最も代表的に細胞によって認識され、そして細胞における生物的な応答を誘導する多様な型(分子、オリゴマー、部分、基など)から選択される特定の化学物質種、または生化学的種をいうために本明細書中で使用される。シグナル自体は、細胞との相互作用に対して応答を誘導してもよいし、多数のシグナルが、細胞と相互作用するとき(例えば、多価で提示されるとき)応答を誘導するのみでもよい。シグナルは、天然のシグナルを包含し得、それは、細胞における応答または細胞による応答を誘導するための生物学的な系において、インビボで見出されたシグナルの種類である。天然のシグナルとしては、例えば、天然に存在する薬物、ホルモン、抗原、成長因子、サイトカイン、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド(例えば、硫酸化ペプチド、リン酸化ペプチド、アシル化ペプチド、またはNホルミル化ペプチド)、サッカリド、誘導体化サッカリド(例えば、硫酸化、アシル化、シアル化のサッカリド)核酸、多様な細胞栄養物、エピトープ、および多様な低分子有機化合物(それらの全ては、互いに限定的な群を提示し得るとは限らない)が挙げられる。シグナルはまた、天然の化学的なシグナルの機能を模倣することが見出された化学物質種を包含し得る。これらのシグナルの模倣物は、代表的に合成であり、そして例えば、合成薬物、および天然に存在するシグナルの多様な誘導体(例えば、ペプトイド、および核酸アナログ、または誘導体)が挙げられる。もちろん、異なる細胞が、異なるシグナルを認識し得る。異なる細胞は、同一の生物的な応答、または異なる生物的な応答を伴って、同一または類似のシグナルに対して応答し得る。単一の細胞は、同一の生物的な応答、または異なる生物的な応答を与えるための多様な異なるシグナルに応答し得る。シグナルとしては、例えば、相互に限定的な群ではない化学誘引物質、およびエピトープ(抗原決定基)が挙げられる。多価のリガンドに結合されるSREは、分子の足場に結合するために適合された化学的、または生化学的シグナルを包含し得る。SREは、とりわけ、化学誘引物質、エピトープ、サイトカイン、ホルモン、および関連物質である化学物質種、または生化学的種を包含し得る。
【0035】
化学誘引物質は、細胞移行に向けた化学または生物のシグナルである。その細胞は、化学誘引物質の増加する濃度を感知し、そして高い濃度に向かって移動する。化学誘引物質のための細胞の感知機構は、頻繁に非常に感受性である。あるいは、細胞は、他のシグナルに応答して、シグナルの低い濃度に移動し得る。細菌細胞は、ある種の栄養物(例えば、グルコースまたはガラクトースまたはセリンのようなアミノ酸)に向かって移動する。白血球(白血球細胞)は、N−ホルミルペプチドおよび他の誘導体化ペプチド、活性化されたCS(CSa)の成分、血小板活性化因子(PAF)、ロイコトリエンB4(LTB4)、または化学毒性のサイトカイン(つまり、α−ケモカイン、およびβ−ケモカインを包含するケモカイン)に向かって移動する(65)。N−ホルミル化ペプチドは、細菌のタンパク質合成の生成物であり、および細菌感染のシグナルの生成物である。N−ホルミル化ペプチドについてのレセプターはまた、N−アシルペプチドのような他の誘導体化ペプチドに結合し得る。従って、N−ホルミル化ペプチドレセプターの任意のリガンド(レセプター機能のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する種類を包含し得る)は、N−ホルミル化ペプチドレセプターに関連される適用のために用いられ得る。白血球の1つの型である、好中球は、N−ホルミル化ペプチドの低いレベルを感知することによって細菌感染の部位に案内される。一度は感染の部位で、食作用が起こり得る。化学誘引物質は、移行または走化性に加えて生物的な応答を誘導し得る。例えば、多様な型の白血球において、化学誘導物質は、毒性種の放出、または炎症性のサイトカイン、転写因子、および順に他の細胞のための化学のシグナルとして機能する他の化学物質種の放出を誘導し得る。
【0036】
エピトープという用語は、一般には、抗原決定基として機能する任意の化学物質種をいい、そして最も一般には、この用語は全ての抗原を包含するために本明細書中で使用される。エピトープは、抗体分子の上、またはリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)レセプターの上の抗原結合部位と組合わさる抗原の部分である。エピトープの結合は、例えば、抗体生成またはT細胞の応答を刺激し得る。エピトープは、免疫原性の異なるレベルを示し得る。他のものよりさらに免疫原性であり、そして全体の抗原応答に優性であるエピトープを、免疫優性エピトープと称した。ほとんどの非自己のタンパク質、および多くの炭水化物は、抗原であり、そのためにエピトープとしては、限定なくタンパク質フラグメント(例えば、ペプチド)、および炭水化物フラグメント(例えば、サッカリドおよびオリゴサッカリド)を包含する。抗原、エピトープまたは細胞に適用されるように、本明細書中で使用される用語「自己(self)」は、免疫細胞、免疫細胞の組合せ、または免疫系によって自己として認識される実体(entity)である。「自己」という用語はまた、免疫細胞、または細胞、または免疫系によって外来として認識される他の生物的な粒子に適用され得る。外来として認識されるいくつかの抗原、エピトープ、細胞、および粒子は、免疫細胞、細胞または免疫系に対して実際に外来であるが、そのように認識されない。抗原、エピトープまたは細胞に適用されるように、本明細書中で使用される用語「外来の(foreign)」は、免疫細胞、免疫細胞の組合せ、または外来としての免疫系によって認識される実体である。外来はまた、自己として認識されない任意のものである(つまり、非自己抗原など)。「外来の」という用語はまた、免疫細胞、または細胞、または免疫系によって異質として認識される他の生物的な粒子に適用され得る。異質として認識されるいくつかの抗原、エピトープ、細胞、および粒子は、免疫細胞、細胞または免疫系に実際に対して自己であるが、そのように認識されない。
【0037】
ハプテンという用語は、低分子のような当該領域において、その一般に認められた意味をとり、抗原の少なくとも1つ決定された基を有し、ハプテンは抗体と結合し得るが、ハプテンが担体分子との接合において作用しなければ、免疫原性ではない。ハプテンとしては、とりわけ、ヘモシアニン、およびニトロ−置換の芳香族環化合物(例えば、ジニトロフェニル基、トリニトロベンゼンスルフォニル基、ジニトロフルオロホニル基)が挙げられる。
【0038】
本明細書中で使用される抗体という用語は、抗体として機能する任意のタンパク質またはタンパク質フラグメントを包含することが意図され、任意のタンパク質またはタンパク質フラグメントは抗体として機能し、そして具体的には、とりわけ、Fabフラグメントを含む抗体フラグメントを包含することが意図される。
赤血球凝集タンパク質の大きな群のいづれかのレクチンは、主に植物種子中で見出された。ある種のレクチンは、ある種の血液の赤血球の凝集を起こし、他のものは、リンパ球の増殖を刺激する。
【0039】
「生物学的な系」という用語は、シグナル伝達エレメント(例えば、応答を発生させるためのシグナルレセプター、および生化学的/生物学的なエレメント)を包含する任意のインビボまたはインビトロの系をいうために本明細書中で使用される。代表的に生物学的な系は、細胞が相互作用する任意の環境の中に少なくとも1つの細胞を含む。本発明の多価のリガンドの使用の状況における生物学的な系は、リガンドと相互作用し得る少なくとも1つのレセプターを含まなければならない。多価のリガンドの大部分の適用において、生物学的な系は、リガンドに応答し得る少なくとも1つの細胞を含まなければならない。リガンドに対する細胞のこの応答は、生物学的な系の中で起こり、そして上記で述べたように、細胞内の応答、細胞間の応答、または両方の応答であり得る。生物学的な系は、例えば、組織における細胞、器官または生物における細胞、細胞の混合物における細胞、組織培養における細胞、組織または生物学的な流体のサンプルにおける細胞であり得、そしてインビボ、およびインビトロの生物学的な系を包含し得る。
【0040】
「機能的なエレメント(FE)」は、REまたはSREと異なるいくつかの生物的または化学的な機能を示す化学物質種または生物学的種(分子、基、部分など)である。FEは、例えば、多価のリガンドに対して、別の化学基または生物的基を結合するための反応基または潜在的な反応基を提供し得る。例えば、FEは、多価のリガンドを固体表面に付着するために使用され得、その固体表面は、リガンド精製のために、または解析、もしくは診断アッセイに関する適用において有用であり得る。FEは、蛍光標識、放射能標識、およびリガンドに結合される金粒子のような高密度標識(例えば、金粒子で標識したストレプトアビジン)を包含する多様な検出可能な標識、またはレポーター群であり得る。検出可能な標識、またはレポーター群を組み込む多価のリガンドは、例えば、多様な解析または診断アッセイにおいて使用され得る。特別な目的は、可視化アッセイ(例えば、顕微鏡の適用において生物的な粒子または分子の検出のため)において有用である本発明の多価のリガンドである。FEはまた、多様な生物的な機能(例えば、酵素の機能、リガンド結合の機能など)を示し、それは、選択された多価のリガンドの適用を促進または増強し得る。
【0041】
RE,SREおよび/またはFEの付着は、多価のリガンドの分子の足場とシグナル基との間を干渉しているリンカー基の使用によって促進され得る。リンカー基は、所望されるような直線状または分枝状、剛性または可撓性、親水性または疎水性であり得る。当業者は、与えられた適用のための適切な種々の化学物質種からリンカーを選択し得る。さらに、当業者は、当該分野で周知である方法および材料の観点において、所望し得る特性を有するリンカーを用いて多価のリガンドを容易に調製し得る。
【0042】
本発明の多価のリガンドは、原核生物または真核生物におけるシグナル伝達を調製するために使用され得る。その方法は、多様なシグナル伝達プロセスにおいて機能する。原核生物は、高度に保存された細胞内シグナル伝達のシステム(二成分系(two component system))を有する。この系の主要な成分は、交互のヒスチジン−アスパラギン酸キナーゼ媒介のリン酸化事象(例えば、毒性、抗生物質に対する抵抗性、環境ストレスに対する応答、および環境感知に対する応答)の数量を変化している。二成分系の成分は、原核生物において高度に保存されている。対照的に、真核生物は、シグナル伝達のための二成分系をほとんど有していないようである。この直交性は、二成分シグナル伝達経路を細菌感染の制御のための治療設計における開発の第一標的とする。真核生物の主要なシグナル伝達系は、Gタンパク質結合レセプター、および酵素結合レセプターによって媒介される(レセプターグアニリルシクラーゼ、レセプターチロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ関連レセプター、レセプターチロシンリン酸化酵素、およびレセプターセリン/スレオニンキナーゼを包含する)。これらの経路においてシグナル伝達を調製または調節するための能力は、真核生物細胞、および真核生物(哺乳動物、特にヒトを包含する)における広く多様な生物的なプロセスの制御を可能にし、そして治療剤の設計のための重要な機会を提供する。
【0043】
図1は、本発明の多価のリガンドが生物的な応答のエフェクターとして機能し得ることによるいくつかの機構を例証する。多価のリガンドは、シグナル伝達に直接関与し得るので、多価のリガンド上のSREは、細胞表面レセプターモノマーリガンドに類似に結合し、そして応答を直接的に誘導(または阻害)する。SREが、分子の足場に結合される本発明の多価のリガンドの使用は、細胞表面上のレセプターのクラスター形成、または細胞表面上のレセプターの再局在化、セカンドメッセンジャーの局在を増加し得るが、セカンドメッセンジャーの局在を促進し得るが、または単にSRE(リガンド)の濃度の局所的な増加により親和性を増加し得る。直接的なシグナルを経て機能する多価のリガンドは、多様な適用(生物膜形成の妨害、細胞移行の妨害に基づくものを包含する)において用いられ得、ワクチン、ならびに他の治療剤(癌の処置および抗生物質)のために特に興味深いものである。
【0044】
本発明の多価のリガンドはまた、別のシグナル、またはリガンドに対する細胞の応答に影響するシグナル伝達(図1を参照のこと)を直接的に関与し得る。多価のリガンドは、別のリガンドに対する増強された応答のために細胞を敏感に、または感作するために機能する。間接的なシグナル伝達効果は、細胞表面のレセプターの他の型の局在または再組織化を効果的にもたらす細胞表面のレセプターの1つの型のクラスター形成または再組織化によって媒介され得る。間接的なシグナル伝達を経て機能する多価のリガンドはまた、多様な適用、特に生物的な応答の増強に基づく適用において有用であり得、そしてワクチンアジュバント、および免疫応答の修飾因子のために特に興味深いものである。
【0045】
本発明の多価のリガンドはまた、単純に細胞への結合、または細胞の標的化において適用を有する。細胞表面のレセプター(RE)へ結合し、および機能的なエレメント(FE)を包含するための少なくとも1つの認識エレメントを包含する多価のリガンドは、そのFEを伴う細胞を標的にする。FEが標識群またはレセプター群であるなら、多価のリガンドは細胞を標識するために作用する。FEが生物的な機能を有していたら、多価のリガンドはその機能を伴う細胞を標的にする。多数のRE(SREまたは両方)を包含する多価のリガンドは、生物的なシグナル伝達機能を必要としなくてもよい巨大分子の集合において機能し得る。そのような適用において、多価のリガンドは、SREを包含する必要がなく、多価のリガンドは、細胞表面のレセプター(認識エレメント、RE)、および好ましくは多数のREに対して結合するための1を超えるの認識エレメントを包含することのみが必要である。そのような適応において、多価のリガンドは、細胞凝集をもたらす1を超える細胞に直接的、または間接的に結合する。細胞凝集は、それ自体が生物的な応答(例えば、細胞によるシグナル分子の放出)を誘発し得るが、必要としない。多価のリガンドは、細胞凝集をもたらす細胞に順に結合するレクチン(例えば、コンカナバリンA)のような多数の生化学的種に対する結合によって細胞凝集を間接的に起こし得る。間接的な細胞凝集に対する多価のリガンドの効果は、リガンドの結合価、および細胞凝集を起こす種類に対する多価のリガンドの相対的な濃度に依存する。高い結合価を伴うより高い濃度の多価のリガンドでは、細胞凝集を起こす種類の結合部位を飽和させ、細胞凝集を阻害し得る。低い濃度の多価のリガンドでは、フリーの結合部位が残り、および細胞凝集が起こり得、そして多価のリガンドによって増強され得る。従って、本発明の多価のリガンドは、細胞凝集を阻害、または促進させるために選択的に設計され得る。巨大分子の集合のために機能する多価のリガンドは、多様な適用、特に細胞凝集に基づく適用に有用であり得、これらの適用としては、診断アッセイ、癌治療、および病原体の浄化が挙げられるが、これらに限らない。
【0046】
細胞表面の上のレセプターの再組織化は、細胞移行、接着、および細胞間連結の形成を包含する多くの重要な生物的な反応に関与する。本発明の多価のリガンド、上記で議論したように、特にレセプター間の距離にまたがり得るこれらのリガンドは、レセプターを再組織化するために使用するため、およびレセプターとここのシグナルとの相互作用によって応答を調製するために使用される。細胞表面の上のレセプターの再組織化としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:表面上の異なる細胞レセプターの相対的な位置、表面上のレセプターの側方への移動、細胞表面上の異なる部位に対するレセプターの局在を変化させること、レセプターに関連するシグナル伝達の機構の近傍での変化、レセプターに関連する細胞内物質の特性の近傍の変化、レセプター、レセプターのクラスター形成の近傍の変化、レセプターの立体構造の変化、およびレセプター−レセプター相互作用の開始。
【0047】
具体的な実施形態において、本発明の直線状の多価のリガンドは、環式開口複分解重合(ROMP)によって調製される(例えば、(54)を参照のこと)。この方法は、細胞機能の多価のインヒビターを調製するために使用されている(27,28)。ROMP法は、ポリグリコマーである多価のリガンドに関連する米国特許5,587,422号により詳細に記載されている。ブロックポリマー(および、オリゴマー)を生成させるため、ならびにROMPポリマー(および、オリゴマー)上の末端基を導入するためのROMP法の改善は、両方が1999年6月17日に出願された米国特許出願第09/335,420号、および同第09/336,121号において記載されている(これらの米国特許文書は、特にROMP法の説明に関して、米国特許文書の全体が、本明細書中に参考として援用される)。スキーム6は、ROMPの基幹の改変のための例示的な方法を例証し、その方法は、本発明の多価のリガンドを合成するための上記の列挙される特許、および特許出願において記載される合成方法と組合わせて適用され得る。スキーム6は、ROMPの足場の基幹において二重結合を還元するために用いられ得るジイミド還元(23,98,99)を例証する。スキーム6はまた、OsO4が触媒したジヒドロキシル化(dihydroylation)(100,101)を使用したOH基でのROMPの足場の基幹の置換を例証する。当業者は、本明細書中での記載、および当該分野で周知の方法を用いて、本発明の多価のリガンド、特に本明細書中の式で具体的に示される多価のリガンドを調製し得る。
【0048】
ROMP法により調製される本発明の多価のリガンドは、以下の一般構造によって例示される。
【0049】
【化5】
ここで:
nは、2以上である整数であり、そしてリガンド中にある括弧において反復単位の数を示す;
点線は、随意的な二重結合を示す;
「BB」は、骨格の反復単位を示し、それは、環式または非環式であり得、そして波線は、そのBB反復単位が、骨格においてシス(cis)またはトランス(trans)の立体構造の中にあり得ることを示し、無作為な配置、またはブロック配置において同一であってもよいし、異なっていてもよい;
R1およびR2は、H、有機性基、FE基、もしくは以下の基:−L−RE−または−L−SRE−であり得、ここでFEは、REまたはSRE以外の機能的なエレメントであり、Lは随意的なリンカー基を示し、REは認識エレメントであり、そしてSREはシグナル認識エレメントである;
R4およびR5は、Hまたは有機性基である;
R6およびR7は、H,有機性基、または末端基である;
Zは、ポリマー中の他のZとは独立して、H、OH、OR8、SH、ハライド化合物(F、Br、Cl、I)、NH2、またはN(R8)2であり、R8は、Hまたは有機性基であるか、あるいはAが結合される炭素で二重結合が存在する場合、Zは不在である。
【0050】
整数nは、ポリマー中の反復単位の平均数である。代表的に、nは、約10,000に至るまでの範囲であり得るが、それは実質的な限定ではない。好ましくは、本発明の多価のリガンドにおける反復単位の数は、規定され、そして概して、2から数百、数千に至るまでの範囲であり得る。好ましい多価のリガンドは、10から約100までの範囲であるnを有する。本発明の多価のリガンドはまた、nが、10から約25までの範囲、nが25以上であるもの、そしてnが50以上であるもの、これらを包含する。ROMPは、モノマー 対 ROMP触媒(つまり、イニシエーター)の比に依存して、種々の平均の長さ(つまり、種々の重合の程度(DP))のポリマーを提供し得る。本明細書中で言及される全てのポリマーの長さ(つまり、以下のnまたはn+m)は、重合反応において使用されるモノマー 対 イニシエーター比によって予測される長さである。
【0051】
BBは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびBBの部分における1以上のCH2が、−O−、−S−、−NR9−、または−CO−で置換され得、ここでR9は、Hまたは有機性基であり得る。好ましいBBは、10以下の炭素原子を有する。
【0052】
例示的なBB反復単位としては、とりわけ、以下:
【0053】
【化6】
が挙げられる。
【0054】
REは、上記で議論されたような認識エレメントであり、その認識エレメントは、細胞レセプター、特に膜貫通レセプター、および細胞表面レセプターによって認識され、そしてこれらに選択的に結合するる多様な化学物質種、または生化学的種のいずれかであり得る。SREは、上記に議論されたようなシグナル認識エレメントであり、そのシグナル認識エレメントは、1以上の細胞によって認識され、そして細胞による生物的な応答を誘導する多様な化学物質種、または生化学的種のいずれかであり得る;「L」は、ポリマー(オリゴマー)骨格に対するRE、SRE,またはFEの共有結合のための官能基を提供し得る随意的なリンカー基である。FEは、上記に議論されるように、SRE以外の化学的、または生化学的官能基である。他のROMの足場の例は、スキーム2および3に例証される。
【0055】
上記の式のその多価のリガンドは、n個のRE,SRE,または両方に至るものを包含する。具体的な実施形態において、モノマーの全ては、REまたはSRE(RE+SREの数はn)を保有する。他の具体的な実施形態において、REもSREも保有しないスペーサーモノマーの領域は、REまたはSREを保有するモノマーの領域の間に介在する。異なるモノマーに対して結合されるそのREおよびSREは、同一であっても異なっていてもよい。1つの実施形態において、多価のリガンドの中のREまたはSREは、全て同一である。別の実施形態において、多価のリガンドは、REまたはSREの1を超える型を包含する。具体的な実施形態において、多価のリガンドは、REもしくはSREの2つの異なる型、またはREおよびSREを含む。この実施形態において、REおよびSREは、リガンドにおいて作為的に位置付けされる。好ましくは、同一のRE、または同一のSREを保有するモノマーは、多価のリガンドの中でブロック(ブロックポリマーにおけるように)へとグループ化され、そしてスペーサーモノマーは、ブロック間に随意的に位置付けされる。他の実施形態において、R1およびR2はともに、REまたはSREを形成し得る。
【0056】
REおよびSREは、細胞レセプターに結合するため、またはシグナルとして、それぞれ機能を十分に保持するように、ポリマー(オリゴマー)の骨格に結合される。与えられるRE、またはSREのために、多価のリガンドの中に結合され得ることにおいて、いくつかの方法が有り得、各々の多価のリガンドは、結合親和性において異なるRE,あるいは結合親和性、または誘導される応答のレベル、もしくは型のいずれかが異なるSREをもたらし得る。例えば、ペプチドシグナルは、ペプチドのN末端、ペプチドのC末端を経て、またはリジン側鎖のような、アミノ酸側鎖を介した結合であり得る。多価のリガンドに対するREまたはSREの結合部位は、好ましくは、結合機能(RE)の喪失を最小にするか、または結合機能(SRE)の喪失を最小にするために選択され、あるいは、結合の部位は、シグナル機能(SRE)を最大にするために選択され得る。REまたはSREは、遊離のリガンド、または遊離のシグナル(例えば、細胞レセプターに対するSREの結合親和性は、誘導される、または模倣する遊離のシグナルの結合親和性とは異なり得る)と異なる特性を示し得るにもかかわらず、リガンドとしてのREの機能シグナルとしてのSREの機能も破壊しない。REは、多様な公知の細胞レセプターのリガンドを包含し得、そして特にレクチンを包含し得る。SREとしては、具体的にモノサッカリド(例えば、グルコース、ガラクトース)、ジサッカリド、ポリサッカリド(2を超える糖残基)、誘導体化サッカリド(例えば、アシル化サッカリド、シアル化サッカリド)、ペプチド、誘導体化ペプチド(例えば、N−ホルミルペプチド)、ペプトイド、多様な化学誘引物質、および多様なエピトープが挙げられ得る。ここで留意すべきことは、特に化学物質種、または生物学的種が、細胞の1つの型、または細胞の1つの種類に対してREとして,および細胞の別の型、または細胞の別の種類に対してSREとして機能し得ることである。
【0057】
リンカーは、骨格からRE基,SRE基,またはFE基の配置を提供し得、もしくは構造的な可撓性を提供し得る。リンカーは、ポリマー中の異なるポリマーについて同一であっても異なっていても良い。RE,SRE,またはFEに対して結合するためのモノマーの足場において使用されるリンカーはまた、全て同一、または異なり得る。RE基または、SRE基の1つの型を保有する与えられる多価のリガンドにおいて、そのリンカーは、好ましくはポリマーの全体にわたって同一である。リンカーは、概して、多価のリガンドの意図される適用と適合し得るように、そしてシグナル基の機能の干渉を避けるために選択される。そのリンカーは、好ましくは直線状であり、および好ましくは1から約20の原子の長さにおける範囲である。そのリンカーは、脂環式基(シクロヘキシル基のような)を包含し得る。そのリンカーは、リガンドの骨格、およびシグナルに対して結合するための官能基を保有するアルキル鎖であり得る。そのリンカーはまた、エーテル鎖、エステル鎖、ケトン鎖、アミン鎖、アミド鎖、またはチオエーテル鎖であり得る。具体的な実施形態において、そのリンカーは、長さにおいて1から約20の炭素原子を有する直線状のアルキル鎖として記載され得、その中で1以上の隣接しないCH2基は、−O−基、−S−基、−NH−基、−NR10−基、−CO−基、−NH−CO−基,−O−CO−基、−C=C−基、または−C≡C−基(R10はアルキル基、またはアリル基である)に随意的に置き換えられる。リンカーCH2基は、ハロゲン基、アルコキシ基、またはアルキル基と置換され得る。リンカー基がない場合、そのROMP骨格またはシグナル基自体は、骨格に対するシグナルの共有結合にために官能性を提供しなければならない。例示的なリンカーとしては、スキーム3において例証されるものを包含する。
【0058】
R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9は有機基であり得る。有機基は、アルキル基、アルケニル基、およびアリール基、ならびに置換されたアルキル基、置換されたアルケニル基、および置換されたアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基、アルケニル基、およびアリール基のための置換は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、−CN、−NO2、−OH、−SH、−NH2、−N(R10)2、−SR10、および−OR10を包含する(R10はアルキル基、またはアリール基)。アリール基はまた、アリキル基置換基またはアルケニル置換基を含み得る。有機基は、代表的に1から約20の炭素原子を有し、好ましくは、1から約10の炭素原子を有する。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、または環式鎖(または、環式の部分を包含する)であり得る。アルキル基またはアルケニル基の中の1以上の隣接しない−CH2−基は、−O−、−S−、−NH−、−NR10(R10はアルキル基、またはアリール基)に置き換わり得る。
【0059】
R6およびR7は、1999年6月17日に出願された米国特許出願第09/336,121号に記載される末端基のような、末端基であり得、この米国特許出願は、ROMP法を使用する末端基を有する多価のリガンドの合成の方法の記載に関して、本明細書中でその全てにおいて援用される。末端基は、この引用した特許出願において記載されるような、潜在的な反応性基、または非反応性官能基を包含し得る。潜在的な反応性基の存在は、末端基でのポリマーの多価のリガンドの後の官能化を可能にする。末端基は、固体表面に対して結合するために官能性を包み得る。末端基は、それ自体が固体の支持材に結合され得る。潜在的な反応性基としては:アジド、ニトロ基、ジスルフィド、シアノ基、アセタール基、ケタール、カルバメート、チオシアネート、活性化エステル、または活性化酸(活性化エステル、および活性化酸は、特に求核攻撃のために活性化される適切な遊離基を包含するためである)が挙げられる。非反応性末端基としては、天然の生成物、またはそれらのアナログ(例えば、ビオチン)、金属キレート(例えば、ニトリロトリ酢酸)、金属(例えば、Zn)、および蛍光標識(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボロ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオニルエチレンジアミドであるアミド誘導体化BODIPYL FL EDA)が挙げられる。末端基はFEを包含し得る。
【0060】
多価のリガンドは、SREではない1以上の機能的なエレメントを随意的に包含する。好ましい多価のリガンドは、SREと比較して有意により少ないFEを包含する。FEは、上記に列挙される、または1999年6月17日に「末端基」として出願された米国特許出願第09/336,121号において記載される反応性基、または非反応性基のいずれかであり得、またはこれらを包含し得る。FEはまた、酵素の機能、または他のタンパク質の機能を有し得る。
【0061】
ROMP法によって調製されたとき、ともに1999年6月17日に出願された米国特許出願第09/335,420号、および同第09/336,121号において記載されるROMP法のように(それは、多価のリガンドの合成の方法のためにその全体が、本明細書中に参考として援用される)、R4およびR5は、金属カルベン触媒から誘導される(つまり、R4およびR5は、金属カルベン触媒の金属カルベン炭素上の置換置であり、そして具体的な実施形態において、R4およびR5は、Hおよびフェニル基である)。ROMPを使用するとき、R6およびR7は、代表的にキャッピング因子から誘導される(つまり、R6およびR7は、エチルビニルエーテルの場合における水素のように、電子過多のアルケンキャッピング因子上での置換置である)。
【0062】
具体的な実施形態において、本発明の多価のリガンドは、以下の式のリガンド:
【0063】
【化7】
を含む。
ここで、BB、R1−2、R4−7は、上記で規定されるとおりである。具体的な実施形態において、R1またはR2のうちの1つはHであり、およびもう1つはL−REである。具体的な実施形態において、R1またはR2のうちの1つはHであり、およびもう1つはL−SREである。具体的な実施形態において、REは、レクチン、またはレクチンの中に包含される細胞レセプターのリガンドである。具体的な実施形態において、SREは、モノサッカリド、ジサッカリド、または約10糖残基までを有する比較的短いサッカリドである。他の具体的な実施形態において、SREは、ペプチドまたは誘導体化ペプチドである(例えば、N−ホルミルペプチド)。
【0064】
別の特定の実施形態において、本発明は、以下の式の多価リガンドに関する:
【0065】
【化8】
ここで、破線は、任意の二重結合を示し、そしてここで、Y(他のモノマー中のYとは独立して)、R1〜2(他のモノマー中のR1〜2とは独立して)、およびR4〜7は、上記に定義したとおりである。特定の実施形態において、Yは、−CH2−である。特定の実施形態において、R1またはR2の一方は、Hであり、そしてR1またはR2のもう一方は、−L−REである。特定の実施形態において、R1またはR2の一方は、Hであり、そしてR1またはR2のもう一方は、−L−SREである。R1またはR2は、一緒に−L−REまたは−L−SREを形成し得る。なお他の実施形態において、SREは、ペプチドまたは誘導体化されたペプチドである。二重結合が存在しない場合、環状炭素が、代表的に、さらなる水素を保持するが、これは、他の官能基(例えば、R1またはR2基のいずれの機能をも干渉しない1〜6個の炭素を有するアルキル基またはハロゲン化物)で置換され得る。
【0066】
なお別の特定の実施形態において、本発明は、以下の式の多価リガンドに関する:
【0067】
【化9】
ここで、mは、第一のSRE(SRE1)を保持するモノマーの数であり、nは、第二のSRE(SRE2)を保持するモノマーの数である。L1およびL2は、上記のようなリンカーであり、これらは、同じであっても異ってもよい。すべて他の変数は、以前の式で定義されたとおりであり、破線は、任意の二重結合を示す。mおよびnの両方は、最も一般的には、1〜約10,000までの範囲にあり得る整数であるが、これらは、より代表的には、1〜数百または数千の範囲にある。mの値は、nの値と同じであっても異なってもよい。好ましいリガンドにおいて、n+mは、5以上から約200の範囲にある。本発明の多価リガンドとしては、n+mが、約10と25との間の範囲にあるリガンド、n+mが25以上であるリガンド、n+mが50以上であるリガンド、およびn+mが100以上であるリガンドが挙げられる。
【0068】
他の例示的な多価リガンドとしては、以下の式のリガンドが挙げられる:
【0069】
【化10】
であって、ここで、n、mおよびpは、3より大きい値を有する整数であり、そして他の変数は、上記に定義したとおりである;および
【0070】
【化11】
であって、
ここで、n、m、pおよびxは、各々1より大きい値を有する整数であり、そして他の全ての変数は、上記に定義したとおりである。これらの式の多価リガンドは、同じREまたSREを有するモノマー領域の複数のブロックを含む。これらの式の多価リガンドは、1つのREまたはSREを含むモノマー領域の複数ブロック、および別のREまたはSREを含むモノマー領域の複数ブロックを含み得る。これらの式の多価リガンドはまた、REもSREも保持しない介在するスペーサー領域と共に、REまたはSREを保持するモノマー領域の複数のブロックを含み得る。
【0071】
本発明の多価リガンドは、生物学系における化学シグナルの効果を制御または調節するための方法において有用である。細菌性または真核生物細胞性の走化性、白血球(特に好中球)の移動、B細胞およびT細胞の免疫応答、細胞凝集、およびアポトーシスのシグナル伝達への多価リガンドの適用を、本明細書以下に例示する。
【0072】
細菌性化学誘引物質(bacterial chemoattractants)を保持する本発明の多価リガンドは、細菌による集落形成または生物膜(biofilm)形成を破壊するために用いられ得る。走化性は、その宿主への細菌集落形成を容易にする毒性因子である。宿主組織の集落形成の破壊は、宿主−細菌の相互作用を妨げ、集落形成を防げ、そして感染を阻害または遅延する。本発明の方法は、例えば、Staphylococus aureus(ブドウ球菌感染の処置のため)およびVibrio cholerae(コレラの処置のため)による集落形成の破壊に特異的に適用され得る。細菌の生存機構の一つは、機能的異質性(生物膜)を有する微小群集(microcommunities)の形成を包含する。生物膜の形成および維持は、可溶性の低分子に基づく因子によって調節される。これらの因子は、細菌にそれらの環境を感知させるシグナル伝達経路を制御し、そして生物膜形成への変換は、2成分のシグナル伝達系によって媒介される。生物膜形成の破壊は、細菌に宿主の防御および抗生物質処置に対するより高い感受性を与え、そして感染を阻害または遅延させ得る。生物膜形成を破壊する多価リガンドは、肺の感染の予防または処置(例えば、日和見病原体であるPseudomonas aeruginosaによる肺感染を処置または予防するため)に特に有用であり得る。この生物による感染は、嚢胞性線維症を有する患者を死にいたらしめる。細菌生存の別の機構は、細菌細胞密度の増加に際するビルレンス応答の誘導である。このビルレンス応答は、細胞密度の増加が感知される場合に、可溶性因子の放出によって誘導される。本発明の多価リガンドによる細胞密度の増加に対する細菌の応答の破壊は、細菌のビルレンスを制御するために用いられ得る。例えば、この方法は、Staphylococus aureusのビルレンスの制御に適用可能である。
【0073】
本発明の多価リガンドは、Trypanosoma cruzi(シャーガス病(chuga disease))、Trypanosoma brucei(睡眠病)、サナダムシ、鉤虫、およびPlasmodium falciparum(マラリア)等を含む、真核生物性の病原菌および寄生生物による感染を破壊するために同様にして用いられ得る。
【0074】
本発明の多価リガンドは、エピトープおよび抗原に対する免疫応答を(例えばこれらの種の免疫原性を調節することによって)調節するために用いられ得る。例えば、多価リガンドは、白血球の応答(移動を含む)を刺激または阻害するために設計され得る。このような応答の刺激は、感染の除去および処置のために非自己の細胞の認識を増強するために設計され得る。多価リガンドはまた、所望の免疫反応を改善および増強するための化学シグナルに応答してB細胞またはT細胞の活性化および/または不活性化を調節するために設計され得る。B細胞およびT細胞は、本発明の多価リガンドで、インビトロ、インビボおよびエキソビボで処置され得る。
【0075】
自己免疫疾患は、自己の細胞が排除に対して誤って標的される、細胞シグナル認識プロセスの異常な機能を含む。免疫系細胞のエピトープに対する細胞応答を調節する本発明の多価リガンドは、自己免疫疾患を阻害または減弱するために使用され得る。特定の実施形態において、「非−自己」として誤って認識される自己エピトープおよび特定のB細胞またはT細胞エピトープを保持するリガンドが、自己免疫応答を改善するための寛容プロセスに用いられ得る。
【0076】
本発明の多価リガンドはまた、所望でない細胞増殖(癌)および所望でない細胞移動(転移)の処置への適用も有する。癌細胞は、癌細胞と非癌細胞とを区別する明確な表面の特徴(例えば、エピトープ)を有する。本発明の多価リガンドは、癌細胞が免疫系によって排除されるように、免疫系による非−自己細胞としての癌特異的エピトープの認識を増強するよう設計され得る。癌細胞エピトープおよびB細胞またはT細胞のエピトープを保持する多価リガンドは、癌細胞の排除を増進するための感作プロセスに用いられ得る。癌転移は、異常な細胞移動である。癌細胞の運動、接着および結合形成は、少なくとも部分的に、癌細胞と多価細胞外マトリックスとの相互作用によって媒介される。多価リガンドは、運動、接着および結合形成を阻害または防止し、従って転移を阻害するように設計され得る。
【0077】
本発明は、ヒトにまたは獣医学での使用に適応される薬理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤との組み合わせで、治療的利益を提供するように選択されたSRE基を有する多価リガンドを含む薬学的組成物および治療的組成物を提供する。多価リガンドは、所望の薬学的応答を達成するために互いに合わされ得るか、または他の公知の薬物または治療剤(抗細菌剤および他の抗微生物剤が挙げられるが、これらに限定されない)と組み合わせて投与され得る。多価リガンドは、所望の治療的利益を得るのに十分な量で薬学的組成物に存在するか、または所望の治療的利益を得るのに十分な組み合わせの量で他のリガンド共に薬学的組成物に存在する。キャリアまたは賦形剤は、所望の投与手段との適合性のために、選択された多価リガンドとの適合性のために、および患者に対する有害な効果を最小化にするために、当該分野で公知のように選択される。
【0078】
本発明はまた、本明細書中に記載される種々の式および構造の多価リガンドの薬学的に受容可能なエステルおよび塩に関する酸付加塩は、塩基性基をその中に有する化合物を酸と接触させることによって調製され、この酸のアニオンは、ヒトまたは動物の消費に適切であると一般的に考えられている。薬理学的に受容可能な酸添加塩としては、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、および酒石酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。全てのこれらの塩は、従来の手段で、例えば、選択された酸を選択された塩基化合物と反応させることによって調製され得る。塩基付加塩は、酸性基をその中に有する化合物を陽イオンの塩基と接触させることによって同様に調製され、この塩基のカチオンは、ヒトまたは動物の消費に適切であると一般的に考えられている。薬理学的に受容可能な塩基付加塩としては、アンモニウム塩、アミン塩、およびアミド塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の化合物の薬学的に受容可能なエステルは、従来の方法で、例えば、選択された酸との反応によって調製される。薬学的に受容可能なエステルとしては、カルボン酸エステルRECOO−D(ここで、Dは、本発明の化合物のカチオン状態であり、そしてREは、H、アルキルまたはアリール基である)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明はまた、多価リガンドおよび誘導体のプロドラッグに関し、これらは、代謝される際に本発明の任意の多価リガンドを生じる。不安定な置換基は、代謝される際に除去され得る、従来の薬学的に受容可能な保護基を用いて保護され得る。薬学的に活性な化合物は、長期の代謝半減期を提供するために、所定のキャリアにおける溶解度を高めるために、ゆっくりした放出または時限放出(timed−release)を提供するかまたは容易にするために、あるいは他の薬物輸送特性を増強するかまたはこれらに影響を与えるために、従来の方法によって誘導体化され得る。
【0081】
本発明に従う多価リガンドは、経口投与、口腔投与、非経口投与、局所的投与または直腸投与のために処方され得る。特に、本発明に従うリガンドは、注射または注入のために処方され得、そしてアンプル中にかまたはさらなる保存剤を含む複数回用量の容器中に、単位投薬形態で提示され得る。これらの組成物は、油性または水性ビヒクル中で、懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態を取り得、そして懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に(例えば、滅菌された発熱物質フリーの水)適切なビヒクルで構成するための粉末形態であり得る。
【0082】
本発明に従う薬学的組成物はまた、抗微生物剤のような他の活性成分または保存剤を含み得る。一般的に、本発明の薬学的組成物は、0.001(重量)%〜99(重量)%の本明細書に記載された1以上の多価リガンドを含み得る。
【0083】
注射または注入による投与のために、およそ70kgの体重の成体ヒトの処置のために使用される一日の投薬量は、例えば、投与経路および患者の臨床状態に依存して、0.2mg〜10mg、好ましくは0.5mg〜5mgの範囲であり、これは、1〜4用量で投与され得る。これらの処方物はまた、投薬単位の処方物を包含する。これは、これらの処方物が、例えば、錠剤、糖衣剤、カプセル、キャプレッツ(caplets)、丸剤、座剤またはアンプルのように、個別の薬学単位の形態で存在することを意味する。各単位の活性化合物含量は、1個体の用量の一部かまたは複数の個体用量である。投薬単位は、例えば、1/2、1/3または1/4の個体用量について1、2、3または4個の個体用量を含み得る。個体用量は、好ましくは、一回の投与で与えられ、そして通常には1日の用量の全量、半分、3分の1または4分の1に対応する量の活性化合物を含む。特定の多価リガンドの予防学的または治療学的用量の程度は、勿論、処置される状態の重篤度、特定リガンド化合物およびその投与経路の特性により変化し得る。これはまた、個々の患者の年齢、体重および応答に従って変化し得る。
【0084】
本発明の化合物は、好ましくは、投与前に処方される。本発明の薬学的処方物は、周知かつ容易に入手可能な成分を用いて公知の方法によって調製される。本発明の組成物を調製する際に、活性成分は、通常、キャリアと混合されるか、またはキャリアで希釈されるか、あるいはカプセル、小包(sachets)、紙または他の容器の形態でなり得るキャリア内に封入される。キャリアが希釈剤として作用する場合は、それは、固体、半固体または液体物質であり得、それらは、活性成分のためのビヒクル、賦形剤または媒体として作用する。この組成物は、錠剤、丸剤、粉末、ロゼンジ、小包、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてかまたは液体溶媒中に)、軟膏剤(例えば、10重量%までの活性化合物を含む)、軟質および硬質ゼラチンカプセル、座剤、滅菌注射用溶液および滅菌され密閉された粉末の形態中で存在し得る。
【0085】
適切なキャリア、賦形剤および希釈剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシ安息香酸塩およびプロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油が挙げられる。これらの処方物はさらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、保存剤、甘味剤または香味剤を含み得る。本発明の組成物は、当該分野で周知の手順を用いることによって、患者への投与後に活性成分の迅速な、持続的なまたは遅延された放出を提供するように処方され得る。
【0086】
組成物は、好ましくは、単位投薬形態で処方され、各投薬量は、約0.5mg〜約150mg、より通常には約0.1mg〜10mgの活性成分を含む。用語「単位投薬形態」とは、ヒト被験体または他の哺乳動物に対する単位投薬量として適切な物理的に別個の単位をいい、各単位は、適切な薬学的キャリアと共に、所望される治療効果を生じるように計算された予め決められた量の活性物質を含む。
【0087】
本発明はさらに、本発明の薬学的組成物から治療的利点を誘導し得る個体へ、本発明の薬学的組成物を投与する工程を包含する治療方法に関する。
【0088】
本発明の多価リガンドは、非治療的な適用(例えば、選択された環境における生物付着(biofouling)の防止および阻害、または選択された環境での所望でない細胞の排除)に使用され得る。このような非治療的な使用のための本発明の組成物は、所望の機能を得るのに有効な(例えば、サンプルまたは生物学的な系において細菌性もしくは微生物性の走化性に影響を及ぼすのに有効であるか、または細胞を凝集するのに有効である)量あるいは組み合わせの量で、本発明の1以上の多価リガンドを含有する。組成物は、所望される機能が維持される限り、任意の適切な溶媒またはキャリア系(これは、水溶液、凍結乾燥化または噴霧凍結化された物質であり得る)を用いて処方され得る。
【0089】
以下の実施例は、本発明をさらに例示し、そしてさらに説明するが、本発明を制限することを全く意図されない。
【0090】
(実施例)
(細菌の走化性の調節)
細菌の走化性へと導く分子的な事象は、十分に研究されており、そしてこのプロセスは、レセプター媒介性応答の一般的なモデルとして使用されてきた[29〜32]。Escherichia coliでの走化性の間、化学誘引物質(例えば、糖およびアミノ酸)ならびに化学忌避物質(chemorepellent)は、この細菌の形質膜上の特異的レセプタによって認識される[33]。多価リガンド活性のこれらの研究のために、ガラクトースをモデル化学誘引物質として選択した。関連化合物であるβ−メチルガラクトピラノシドもまた化学誘引物質であり、このことは、ガラクトースのアノマー炭素に置換基が結合してもその走化性活性は失われないことを示している[34]。この観察は、ガラクトース残基がアノマー性リンカーを介して結合され得、多価的な提示を生み出すことを示唆する。ガラクトース媒介性シグナル伝達のために、サッカリドは、ペリプラズムの可溶性グルコース/ガラクトース結合タンパク質(GGBP)に結合しなければならず、このタンパク質は、次いでガラクトースを感知するケモレセプターであるTrgと相互作用する[34、35]。Trgへのガラクトース−GGBPの結合は、シグナル経路を開始し、その結果、鞭毛の回転の向きが逆転し、この細菌を栄養素に向かって遊泳させる[29、30、36]。
【0091】
細菌の走化性は、広い動的範囲を備える極めて高感度な感知系を必要とする。それらのケモレセプターを介して、細菌はかなりの規模にわたってリガンド濃度の非常に小さな変化を検出し得る[37、38]。この顕著な特質を説明するためにBrayらによって提唱された最近の数学的モデルは、シグナル変換がケモレセプターの側方向性のクラスター形成の変化によって調節されていることを示唆する[39〜41]。このモデルにおいて、細菌のケモレセプターのクラスターは、レセプターのクラスターが個々のレセプターよりもシグナルの産生において活性となるように、リガンド結合情報を交換する[39、41]。異なる原子価を有する本発明の多価リガンドは、このレセプターを示差的に再編成し得、そして、こうして走化性応答の調節を生じ得る側方性のレセプターの組織化を制御する。
【0092】
規定された種々の原子価を有するガラクトース保有リガンド1〜4は、ROMP法(スキーム1)を用いて生成された。多価リガンドのガラクトース残基は、短いリンカーを介して分子骨格(ポリマー性バックボーン)に結合される。モノマー1の相互作用は、少なくともインビトロの結合アッセイにおけるガラクトースの相互作用と同程度に有利であり、従ってリンカーの結合は、精製されたGGBPへのガラクトース結合を防止しなかった。
【0093】
ガラクトースで官能化されたリガンド(例えば、一価リガンド1および多価リガンド3)もまた、誘引物質としてインビボと同じように作用する。これは、これらのリガンドへのE.coliの行動応答をモニターすることによって証明された。E.coliの運動行動は、二つの様式(ランニング(running)およびタンブリング(tumbling))で生じる。これらは、鞭毛の回転の方向、および、究極的には、ケモレセプターとリガンドとの相互作用に起因するシグナル変換応答によって規定される[42]。誘引物質の存在下の細菌は、少ないタンブリング頻度で延長されたランニング応答を起こす[42、43]。タンブリング頻度に対する合成リガンドの効果を観察するために、Sagerらの方法[44]を用いて、E.coliを、ガラクトースまたはガラクトース保有リガンドで処理し、そして細菌の運動を記録および分析した。タンブリング頻度は、誘引物質の添加後初めの5〜15秒間で得られた経路の平均角速度(mean angular velocity)を平均化することによって評価された(図2A)。細菌を、漸増濃度のガラクトースで処理する場合、平均角速度は減少し、これはランニング応答を示す。図2BからEは、緩衝液単独、ガラクトース、化合物1および化合物3で処理された代表的な細菌についてのサンプル経路を例示している。一価化合物1による処理は、遊離の化学誘引物質(ガラクトース)の処理と同様の効果を生み出し、このことは、化合物1におけるアノマー性置換基が走化性活性を妨げなかったことを示している。多価化合物3は、一価化合物1または修飾されていないガラクトースよりも活性であった。多価化合物3は、非常に低いサッカリド残基濃度(例えば、0.001mM)でさえ低い平均角速度を誘導した。0.1mMのサッカリド残基濃度(約0.004mM濃度)での化合物3に対する細菌の応答は、10倍高い未修飾ガラクトース濃度(1mM)で得られた応答に匹敵した。モノマー1と多価化合物3との間において最大活性の濃度において観察された差異は、リガンドの原子価が、走化性活性に影響を及ぼすことを証明している。
【0094】
E.coliを毛細管蓄積アッセイ(capillary accumulation assay)[45]において化合物1〜4の濃度勾配に供し、最大走化性応答が達成される濃度、および、この最大値で蓄積する細菌数を決定した[34]。
【0095】
化合物1〜4を、毛細管蓄積アッセイにおける誘引物質として使用した場合、オリゴマー2は、一価化合物1と同様に活性でなかった;両者は、1mMで最大走化性応答を誘発した(図3A)。化合物2は、このレセプターに対してガラクトースの局所的な高濃度を示した。しかし、化合物1および化合物2についての活性の類似性は、誘引物質の局所高濃度が、単独では走化性活性の増加を生じさせないことを示している。化合物3および4について、最大走化性の濃度は、有意に低く、化合物3についての最大は、0.25mMのガラクトース残基濃度(約0.01mMのリガンド濃度、遊離のガラクトースの1/100倍)においてであり、そして化合物4についての最大は、0.10mMのガラクトース残基濃度(0.0002mMのリガンド濃度)においてである。化合物3および4の最大走化性の濃度は、それぞれ、遊離のガラクトースの1/100倍および1/5000倍であった(図3B)。従って、より高い原子価を有するリガンド(化合物3および4)は、極めて低濃度で走化性を誘導し得る。
【0096】
走化性のレセプターは、おおよそ90Å離れていることが見出された[46]。分子モデリング研究は、オリゴマー2の最大長は、おおよそ50Åであることを示している[23]。オリゴマー2の長さと比べてより長いオリゴマー3および4の有意に高い能力は、長いオリゴマーが走化性レセプターをクラスター化する能力に起因すると考えられる。化合物1は、E.coli変異体であるggbp(AW550およびAW543)またはtrg(AW701)に対する化学誘引物質ではかった。この得られた結果は、リガンド1から4はガラクトース感知機構を介して走化性に影響を及ぼすように特異的に作用することを示した。
【0097】
化合物1〜4を用いたアッセイで蓄積したE.coliの数(図3Aおよび3Bを参照のこと)は、ビデオアッセイ(図2Aを参照のこと)において観察されたこれらのリガンドの効力にもかかわらず、ガラクトースが誘引物質として使われた場合の数(120,000細菌[34])よりも少ない。毛細管蓄積アッセイは、収集のために毛細管へ移動するための細菌の適切な再配向に依存する。これらのリガンドの効力は、細菌が再配向する能力を破壊し得、蓄積した見かけの細菌数を減少させる。多価リガンドの所定のサッカリド残基濃度において、少数の分子は、レセプターを活性化するように提示される。そして、これらの分子は外膜を横断しなければならない。この系のこれらの特徴はまた、蓄積する細菌数の減少を担い得る。
【0098】
走化性活性において観察された原子価依存的な差異の普遍性を試験するために、そして本発明者らのリガンドに対する応答における膜透過性の役割を研究するために、B.subtilisにおける走化性実験を行った。B.subtilisは、グラム陰性E.coliと同様に、サッカリド化学誘引物質に応答し得るグラム陽性細菌である[47、48]。B.subtilisの場合、多価リガンドは、初めに外膜を横切る必要はなく、直接的にサッカリド感知レセプターと相互作用し得る。グルコースは、B.subtilisに対する化学誘引物質である[47]が、ガラクトースはB.subtilisに対する化学誘引物質ではない。グルコース保有リガンド(化合物5〜7、スキーム1)は、毛細管蓄積アッセイにおいて示されているように、B.subtilisに対する有効な化学誘引物質であった。さらに、グルコース保有リガンドへの走化性応答は、リガンドの原子価にも依存することが示された。図4で示されているように、モノマー5は1mMで最大活性を誘発し、一方オリゴマー6は、サッカリド残基濃度0.1mM(遊離グルコースの1/50倍のリガンド濃度)で最大活性を誘発し、そしてオリゴマー7は、サッカリド残基濃度0.01mM(グルコースの1/1250倍のリガンド濃度)で最大活性を誘発した。遊離の化学誘引物質シグナルであるグルコースは、0.5mMで化学誘引物質として最大活性を有した。E.coliとの観察と類似して、リガンドの原子価の増加とともに、最大走化性でのサッカリド残基濃度は減少する。重要なことに、オリゴマー5〜7に対して蓄積した細菌の数は、未修飾のグルコースが誘引物質として使用された場合に蓄積した数に匹敵した。ガラクトースの活性に関する以前の報告と一致して、ガラクトース保有リガンド(例えば、1)は、B.subtilisに対する化学誘引物質ではなかった[47]。このことはさらに、多価リガンドが特異的に作用したことを示している。観察されたこの結果は、進化的に分岐した細菌であるE.coliおよびB.Butilisにおいて、誘引物質の原子価は走化性応答に影響を及ぼすことを示す。
【0099】
サッカリド保有リガンドでの処理に際した走化性レセプターの構築化の変化を可視化するために、蛍光顕微鏡実験を行った。これらの実験は、多価リガンドがケモレセプターの再構築に影響を及ぼし得るか否かを直接的に決定し得る。野生型E.coliはそれらの極にケモレセプターを局在し、そして構造タンパク質であるCheWの不活性化は、細胞におけるケモレセプターのランダムな配置を生じさせることが示された[49]。ケモレセプターを局在化させるROMP由来のアレイの能力を、E.coli cheW変異体を用いて実験した。細菌を化合物1、3、または4で処理し、固定し、細菌性ケモレセプターに対する抗体(抗Tsr)で標識した。一価化合物1は、レセプターの分布に影響を与えなかったが、多価化合物3および4は、ケモレセプターの再組織化することが観察された。予期されたように、cheW細胞の局在化したレセプターは、見掛け上ランダムな位置で生じた。これは、野生型細菌において観察された極性のある局在化とは対照的である。レセプターのクラスター化は、化合物3よりも長いオリゴマーの4で処理された細胞の場合には、より明確になった。これらの実験の結果は、ROMP由来の多価化合物はレセプターの側方性再構築を誘導し得ることを示している。オリゴマーの長さの関数として多価リガンドの走化性活性において観察された差異、およびROMP由来の多価リガンドがレセプターの側方性の再構築を誘導し得るという観察は、レセプターの再構築が走化性応答の媒介に関与するという結論を支持する。この結果はさらに、レセプター局在化の変化が、走化性応答の変化を生じさせ得ることを示す。
【0100】
細菌の膜のケモレセプターの組織化を変える多価リガンドの能力を確認するために、E.coliを、蛍光標識を有するガラクトース保有多価リガンドである化合物8で処理した(スキーム1)。E.coliを化合物8またはフルオレセイン標識−抗Tsr抗体で処理した場合、観察された蛍光パターンは類似していた。両物質は細菌の極で結合することが観察され、これは、ROMP由来のリガンドが細菌性のケモレセプターに特異的に結合することを示している。レセプターを再構築するこれらの多価リガンドの能力に直接取り組むために、CheW変異体を両化合物で処理した。図6で例示するように、化合物8と共存する抗Tsr抗体標識化ケモレセプターの斑点を観察した。この結果は、多価リガンド8は細胞レセプター組織化において観察された変化を担うことを示している。
【0101】
この得られたデータは、多価リガンドが細胞表面のケモレセプターの組織化を変えることによって、走化性応答に影響を及ぼすことを示す。他の観点は、これらの変化が、多価提示に起因する機能的な親和性の増加に由来するというものである。このメカニズムは可能ではあるが、リガンドの親和性変化と走化性活性とを関連付ける証拠はない。様々なリガンドについての結合平衡定数は、しばしば、細菌の走化性アッセイにおいてリガンド活性と相関しない[34、35、50、51]。これとは逆に、多くの研究によって、走化性におけるレセプターの局在化が関連付けられている[38〜41、46、52]。例えば、アセンブルされたケモレセプター四量体Tarは、個々のレセプターまたは二量体よりもインビトロのシグナル伝達において活性であることが示された[53]。本データおよびこれらの結果を合わせると、一価化合物1対多価化合物3および4に対する走化性活性の差異は、レセプターのクラスターの原子価を制御するその能力に起因することを示唆する。これらの結果に基づいて、クラスターへさらなるレセプターを(図7A〜Dに例示されているように)組み込むことによって、リガンド原子価の系統的な増加が走化性応答の変化を導くというメカニズムが、提唱される。
【0102】
リガンドの密度または間隔とは異なり、リガンドの原子価のみ異なる合成分子をROMPを使用して作製することによって、リガンドの原子価は、ケモレセプターを組織化するその能力およびこれらのレセプターから走化性応答を引き出すその能力に影響を与えることが、示された。この結果は、本明細書に記載されているような異なる原子価(機能的部分の異なる数または規定された数)を保有する多価リガンドは、レセプターの組織化における変化を通して細胞応答を調整するために使用され得ることを証明する。さらに、リガンドの原子価は、多種の細菌(E.coliおよびBacillus subtilisの両方)の走化性応答を調整するために用いられ得、このことは、本発明の方法が一般的に多種の細胞型に適用可能であることを示している。多価アレイへのROMPに基づく合成経路は一般的であり[54]、そしてこれは、様々な多価リガンドまたはアレイを生成するために使用され得る。このアレイは、細胞レセプター(細胞表面レセプター、膜貫通レセプターおよび細胞質レセプター)に結合する種々の型および数の化学シグナルを有し、そしてレセプターの側方性再組織化により媒介されるように、結果的に、生物学的な応答を誘発する。多価リガンドに共有結合したシグナルの型の制御およびこのリガンドに存在するシグナルの間隔および数の制御は、誘発される応答の型および大きさを調整するために使用され得る。
【0103】
1種類のレセプターに結合する多価リガンドは、リガンドが別種のレセプターに結合することによって誘導される生物学的応答に影響を与え得ることもまた、見出された。セリンは、E.coliのような細菌に対する化学誘引物質として作用する(ガラクトースに加えて)別の低分子である。E.coli細胞をガラクトースSRE保有多価リガンドである化合物2および3と初めに接触させ、2分間の適応期間後、多種の濃度のセリンを加えた。平均中間速度(度(deg)/フレーム(frame))(図5AおよびBを参照のこと)として測定した場合、多価リガンドの非存在下におけるセリンと比べて多価リガンドの存在下において、セリンの化学誘引物質としての効果は、約30%増強された。多価リガンドによるガラクトース結合細胞レセプターのクラスター化は他の化学誘引物質であるセリンへの細胞応答の増強を引き起こすと、考えられる。図1を参照のこと。
【0104】
(好中球の走化性の調節)
好中球の移動は、細胞移動の例である。好中球は、多くの異なる内因性および外因性物質に向かって移動する。N−ホルミルペプチドは、好中球に対して化学誘引物質[65]となる一種の外因性物質であり[65]、これは、産物による細菌性の転写物である。好中球は、化学誘引物質に結合し、かつ化学誘引物質の濃度勾配の漸増を感知し得る細胞表面レセプターを有する。例えば,好中球は、化学誘引物質の高い濃度の方向へ移動することによって、感染部位に好中球を誘導することにより、化学誘引物質に応答する。加えて、そのような化学誘引物質に対する応答においてまた、好中球は、他の細胞、特に免疫系の他の細胞の応答に影響を与える細胞間シグナルを放出する。本発明の多価リガンドは、化学誘引物質に対する好中球の応答を増強するために、および感染性因子の免疫系によるクリアランスを増強するために使用され得る。スキーム2は、好中球の移動を調節する多価リガンドの使用のための、例示的なN−ホルミルペプチド20および例示的なN−ホルミルペプチド21に対する例示的なSREを例示する。これらのシグナル基(SRE)は、スキーム2[化合物22および23]に例示されているようなROMP骨格に共有結合的にまたは非共有結合的に結合され得る。スキーム3は、N−ホルミルペプチド保有多価リガンドに使用され得る例示的なリンカーを提供する。
【0105】
(免疫プロセスの調節)
免疫応答の発達は、本発明の多価リガンドと免疫系細胞との原子価依存的な相互作用を介して調節され得る。免疫系によるクリアランスのための外来(非−自己)エピトープ、細胞、ウイルスまたはウイルス粒子の認識は、エピトープ、細胞、ウイルスまたはウイルス粒子を外来物質として認識する細胞レセプターに部分的に基づく。外来シグナルは、クリアランスが生じるために認識されなければならず、そして外来シグナルに対するB細胞またはT細胞応答がなければならない。適切な免疫応答は、B細胞およびT細胞の活性化とそれに続く不活性化を必要とする。B細胞およびT細胞におけるレセプターのクラスター化は、免疫応答の産生に関連付けられている。
【0106】
一以上のREまたはSRE(これを通してリガンドがB細胞、T細胞または他の免疫細胞に結合し得る)を有し、かつ一以上の抗原、エピトープを有する本発明の多価リガンドは、免疫細胞の応答を調節する(抗原またはエピトープの免疫原性を増強または減少する)ために使用され得る。エピトープまたは抗原が、免疫細胞または免疫細胞が見出される免疫系によって外来物質(非−自己)と認識される場合、多価リガンドは、エピトープまたは抗原に対して免疫細胞または免疫系を寛容化するために使用され得る。この場合、エピトープまたは抗原は、有益な種または臨床的な種(細胞、粒子、核酸)または誤って外来物質(非−自己)として認識される自己細胞(または組織)のものである。これとは逆に、本発明の多価リガンドは、外来エピトープまたは抗原に対する免疫細胞または免疫系の感受性を感作または増加させるために用いられ得る。こうして、その免疫原性が高められ、そして外来エピトープまたは抗原に対する免疫応答を高める。この方法は、有用ではなかった(例えば、病原体に関連した)外来エピトープまたは抗原を用いて使用される。エピトープまたは抗原が、免疫細胞または免疫細胞が見出される免疫系によって自己として認識される場合、多価リガンドが、自己エピトープまたは抗原に対して免疫細胞または免疫系を感作するために使用され得る。この場合、このエピトープまたは抗原は、有用ではない自己細胞または高分子(例えば、癌細胞)のものであり得るか、または誤って自己として認識された外来エピトープまたは抗原であり得る。これと対照的に、本発明の多価リガンドは、誤って外来物質として認識された自己エピトープまたは抗原に対して免疫細胞または免疫系を寛容化するために使用され得る。寛容化および感作化の方法は以下に詳細に例示される。
【0107】
C3d補体フラグメントは、B細胞のCR2レセプタ−(CD21/CD19複合体)に結合する。クローン化されたC3d遺伝子フラグメントと鶏卵リゾチーム遺伝子のC末端領域の融合による融合産物の発現は、免疫原性を、強力なアジュバンドと組み合わせられたリゾチームで達成されたレベルよりも有意に(1,000倍)増加させ得た[62]。スキーム4は、異なるシグナルを選択的に共有結合させることによって、ROMPポリマー29から調製された二つの異なるシグナル群30を含む例示的な多価リガンドを例示する。シグナルの一つは、鶏卵リゾチーム(HEL)ペプチド(A20細胞株に特異的):103〜117NGMNAWVAWRNRCKG(配列番号:1)[63]であり、もう一方は、CR2への結合に関与する16マーのC3dペプチド:KNRWEDPGKQLYNVEA(配列番号;2)[62]である。このHELペプチドは、このペプチドの末端付近のリジン側鎖[41]、またはこのペプチドのN末端のアミンに位置するこのポリマーの骨格[40]に結合し得る:
40:*GDGNGMNAWVAWRNR−CONH2(配列番号:3)または、
41:DGNGMNAWVAWRNRGK*−CONH2(配列番号:4)
ここで、*は接着部位を示す。C3dペプチドは、ペプチド(42および43)のいずれかの末端に位置するシステインのチオールを介して多価リガンドに結合し得る:
42:*CKNRWEDPGKQLYNVEA(配列番号:5)または
43:KNRWEDPGKQLYNVEAC*(配列番号:6)。
【0108】
シグナル41を単独、または42もしくは43との組み合わせにおいてか、あるいは40を単独または42もしくは43との組み合わせにおいて含む多価リガンドは、HELそれ自体と比較して増強された免疫応答を誘導し得る。CR2レセプターに対するリガンドである複数のペプチドエレメントを含む多価リガンドは、B細胞の表面にあるCR2レセプターをクラスター化し得、そして走化性実験において証明された様にB細胞の他のリガンド(例えば、抗原)に対する応答を増強し得る。1以上の結合抗原と組み合わせて1以上の結合CR2リガンドを含む多価リガンドは、抗原を認識するレセプターを有するCR2レセプターをクラスター化し得、そしてそれにより、抗原に対するB細胞の応答を増強する。B細胞表面のHEL(例として)を認識するレセプターを有するCR2のクラスター化は、HEL抗原に対するB細胞の応答を増強し得、そしてHELエピトープに対する免疫応答の増強を生じ得る。この種の多価リガンドの構築において使用され得る別の鶏卵リゾチームペプチドは以下である:
44:ELAAAMKRHGLDNYRGYSLGNWVCA(配列番号:7)。
【0109】
CD22は、細胞接着および活性化に関与するB細胞表面糖タンパク質である[64]。CD22は、B細胞抗原レセプターのシグナル伝達において負の調節に重要である[74]。CD22によって認識される構造は、Sial2a6Galβ14GlcNAcβ(スキーム5、化合物50)である。このシグナルは、第一チオール基(化合物51)を介してスキーム5に例示されているようにROMPポリマーの骨格に結合され得る。1以上のHELエピトープと組み合わせてCD22(例えば、化合物51)に対する1以上のリガンドを有する多価リガンドは、HELエピトープ(例えば、42または43)に対する免疫応答を減弱させる。
【0110】
(細胞のクロスリンク(凝集))
多くのタンパク質(例えばレクチンおよび抗体)は複数のリガンド結合部位を有する。これらのタンパク質が、隣接した細胞表面に固定されたリガンドに結合する場合、細胞は凝集する。細胞凝集は容易にモニターされ得、そしてこの特質は、病原体検出の診断[75]、治療[76から78]、血液型検査[79]および他のバイオテクノロジーへの応用[80から82]の開発における用途を見出した。多くのレクチンは、レクチンの原子価に依存してマイトジェン活性を有することが示されてきた。これらのマイトジェン性レクチンは、コンカナバリンA(ConA)を含むが、標的細胞の表面にある糖タンパク質をクラスター化し、マイトジェン性シグナルを活性化し、そして細胞増殖を誘導すると考えられている[67,68]。レクチンは、シグナル伝達[69,70]および細胞増殖[71、72]を研究するための有用なツールであり、そしてそれらを用いた研究は、ガレクチン(galectin)およびセレクチン(selectin)の様な、哺乳動物のレクチンについての可能性のある機能的な役割を解明した。
【0111】
細胞凝集を起こす際の多価タンパク質の有効性は、どれだけ強固にそのタンパク質が細胞表面リガンドに結合するかによって決定される。これらの相互作用のアビディティを高める一つの有効な方法は、リガンドの結合部位数を増加させることである[83〜85]。研究努力は、レクチンに対して有利なオリゴマーの形成[86〜87]または抗体scFvフラグメントの新規マルチマーの生成[88]に向けられた。結合部位の数をさらに増加する方法、またはこれらの結合部位の至適な配向を有利にする方法は、多くの適用におけるこれらの物質の有用性を高める。
【0112】
レクチンは、サッカリド結合タンパク質の大きなクラスであり、その多くが、同一サブユニットの2個から4個のコピーからアセンブルされたホモオリゴマーである[89]。レクチンは、それらが、隣接細胞表面の糖タンパク質または糖脂質とクロスリンクする場合に細胞を凝集する。凝集は、レクチンオリゴマー内の活性モノマーの数を変えることで調節され得る。例えば、4価のマンノース結合型植物性レクチンであるコンカナバリンA(ConA)が赤血球を凝集させる能力は、このレクチンがスクシニル化(succinylation)によって低い原子価である二量体形態にされると著しく低下する[87]。レクチンの原子価の増加は、反対の効果を有し得る(すなわち、細胞凝集を増強する);しかし、より高次の原子価を有するレクチン複合体を生成するための方法は、容易で利用可能ではなかった。ROMP由来の物質の原子価は系統的に変えられ得るので、リガンドへ結合するサッカリド基(例えばマンノース)の数が、所定の骨格にアセンブルされるレクチン(例えば、ConA)の数に及ぼす影響が、研究され得る。
【0113】
ConAの沈殿は、ConAテトラマーのクラスター形成に依存し、そしてこの技術を、不溶性ConA−リガンド複合体の化学量論を決定するために使用し得る[90]。本発明の多価リガンドとのConAクラスターの形成を調査するために、スキーム1に示される、規定数のマンノース残基、モノマー9およびポリマー10〜13(それぞれ、10、25、50、または100であるnを有する)を含むROMPベースの足場を、ROMP法[54]を使用して調製した。化合物9〜13をConAと接触させた。モノマー化合物9は、沈殿を誘導できなかったが、多価化合物10〜13は、ConAの濃度依存性沈殿を生じた。沈殿の結果は、10(10マー)と複合体化したConAの化学量論が約2:1であること、そして11および12とConAとの複合体の化学量論が約4:1であることを、さらに示した。
【0114】
対照的に、ダイマースクシニル化ConAは、試験した最高価多価リガンド化合物(例えば、化合物12)とのみ沈殿し、そして形成した複合体は、その沈殿物において4:1(レセプター:足場)の化学量論を有した。従って、その足場により提示されるマンノース残基の数は、タンパク質−足場複合体の形成において重要である。沈殿の結果を、透過電子顕微鏡(TEM)技術を用いて実質的に確認した。この技術において、化合物10〜12とのビオチン化ConAのクラスターを、高密度ストレプトアビジン−金粒子で標識した。化合物10がダイマーのみ形成することを観察した一方、11は、ダイマーおよびトリマーの両方を形成することができ、そして化合物12もダイマーおよびトリマーの両方を形成したが、トリマークラスターの方をもう一方の足場よりも好んだ。
【0115】
溶液中でのConAクラスターのアセンブリーを、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によってモニターし得、このFRETにおいて、フルオレセインおよびテトラメチルローダミン(TMR)が、ドナー蛍光団およびアクセプター蛍光団として作用する[91、92]。これらの蛍光団が約80Å内にある場合、フルオレセインシグナルは消光し、その結果、標識ConAがアセンブルしてクラスターになった場合に、フルオレセインの蛍光が減少するはずである[93]。化合物9〜12を、フルオレセイン標識ConAおよびTMR標識ConAの溶液に添加した。フルオレセインの蛍光発光最大値をモニターして、どの足場がConAクラスターの形成を促進するのかを確認した。先の実験と一致して、ConAクラスターは、多価リガンド10〜12の存在下で形成したが、モノマー化合物9とは形成しなかった。蛍光消光は、足場価だけではなく、リガンド濃度にも依存した。消光はまず、足場濃度が増加すると増加し、その後、その足場濃度がさらに増加するとまた減少した。高足場(多価リガンド)濃度での消光が存在しないことは、おそらく部位飽和が原因で、ConAクラスターがこれらの濃度では支持されないことを示す。ConAと比較して高濃度の足場は、個々のポリマーによるConA上の各リガンド結合部位の占拠を好み、複数のレクチンのクラスター形成を排除する。
【0116】
ROMP誘導体ポリマー上に形成されたConAクラスターがJurkat細胞を凝集する能力を、最初に光学顕微鏡によって試験した(図10を参照のこと)。ConA単独では、低濃度(5μg/mL)であってさえ、いくらかのJurkat細胞凝集を誘導することができた。単価ConAリガンド(例えば、メチルα−D−マンノピラノシドまたは9)をConAと予め混合した場合、これらの多価ConAリガンドは、おそらくConA−細胞相互作用を不安定化することによって、凝集を阻害した。Jurkat細胞について、低濃度(0.5μM)の単価リガンドであってさえ、阻害が生じた。興味深いことに、多価化合物10〜12は、0.5μMではJurkat細胞凝集を阻害しなかった。0.5μMは、同様の条件下でConAクラスター形成の最適であることが示された濃度である。多価リガンドの濃度を10倍(5μM)増加させると、部位飽和と一致して、凝集活性を無にした。従って、足場価および多価リガンド濃度を変化させることによって、細胞表面−レクチン相互作用を二者択一的に阻害または促進することが可能である。多価リガンドと複合体化したConAが細胞表面と相互作用する能力は、このようにして変化可能であった。
【0117】
赤血球のConA媒介性凝集を多価リガンド(化合物9〜13)の添加により制御し得ることを示した、さらなる実験を行った。ConAと多価リガンドとの特定の組み合わせが、図11に示すように、ConA自体と比較して増加したこれらの細胞の凝集を示した。特に、ConAテトラマーと多価リガンド(化合物13)とを濃度比10:1(テトラマーConAベースおよびマンノース残基の数ベース)で組み合わせると、ConA単独と比較して有意に増加した凝集を示した。
【0118】
複数のConAテトラマーを含む複合体を、中間の多価リガンド濃度を使用した場合に化合物10〜13上で容易にアセンブルさせたが、足場の濃度が低すぎる場合または高すぎる場合のいずれかの場合では、複数のConAテトラマーを含む複合体は検出可能ではなかった。このような複合体が形成される濃度範囲は、ConAと多価リガンドの相対濃度(リガンド、REまたはSREの数ベース)に依存し、そして多価リガンドの価に依存する。このことは、任意のタンパク質との多価リガンドの任意の複合体について、一般的に真である。1つ以上のConAとの多価リガンドの複合体(または任意のレクチンとのこのような複合体、またはより一般的に任意のタンパク質とのこのような複合体)が形成される濃度範囲を、ConA(またはより一般的にはそのタンパク質もしくはレクチン)による機能の保持を評価することによって、特定の条件下での特定の適用について、容易に決定し得る。ConAとの多価リガンドの複合体は、そのリガンドの濃度範囲(SRE(例えば、マンノース)の数ベース)が約1:1〜100:1を超えるまでの範囲である場合、その多価リガンドの価および特定の実験条件に依存して、一般的に形成される。
【0119】
本明細書中の結果は、一般に、多価リガンドの価および濃度が、これらの多価リガンドの多価足場上へのレクチンのアセンブリーを制御するために変化され得ることを示す。より詳細には、ROMP誘導体物質の価および濃度を、図9A〜Cに示されるように、ConAクラスターの形成を制御するために変化させ得る。単価リガンド(および低濃度の多価リガンド)は、レクチンに結合するが、細胞凝集を阻害しない(図9A)。レクチン足場複合体形成を支持する条件(すなわち、中間濃度レベルの多価リガンド)下で、複数のレクチンを、その多価リガンド上にアセンブルさせ得、そしてそのレクチンは、細胞表面と相互作用できる遊離サッカリド結合部位を保持する(図9B)。多価リガンド濃度を増加させる場合、レクチン結合部位は、複数の多価リガンドへの結合によって飽和され、レクチンアセンブリーは支持されず、そしてレクチンは、細胞表面と相互作用できない(図9C)。従って、示されるように、足場価およびリガンド濃度を、多価リガンドとのレクチンクラスター(そのレクチンは、細胞結合活性を保持する)をアセンブルするために制御し得る。さらに、足場価およびより重要なことには多価リガンド濃度を、レクチンの細胞凝集機能を阻害するために制御し得る。
【0120】
これらの結果は、タンパク質(例えば、レクチン)が、ポリマー足場(例えば、本発明の多価リガンドにより提供されるもの)上にアセンブルされ得ること、およびそのアセンブルされたタンパク質(レクチンを含む)が、生物学的機能を保持することを、示す。本明細書中に記載される方法を、1つ以上レクチンのポリマーアセンブリー、および1つ以上の抗体もしくは抗体フラグメントのポリマーアセンブリー(リガンド(例えば、サッカリドまたはエピトープ)に結合する能力を保持する)を生成するために使用し得る。本明細書中の方法は、一般に、多価リガンド中の認識エレメントおよびシグナル認識エレメントへの結合を介する、種々の化学物質種および生物学的物質種(特に、高分子種(タンパク質、炭化水素、核酸を含む)のアセンブリーの生成に適用可能である。
【0121】
(多価リガンドを使用する細胞毒性の増強)
レクチン(例えば、ConA)ならびに凝集素および植物性赤血球凝集素は一般に、特定の種の細胞において毒性効果を示し得る。サッカリド基を保有する多価リガンドは、上記のように、レクチン(例えば、ConA)と複合体形成し得る。適切に置換された多価リガンドに対して複合体形成したいくつかのレクチン分子を含む複合体は、そのレクチン上の結合部位がリガンド基への結合によって飽和されていない場合に、細胞を凝集するように機能し得る。より高い多価リガンド濃度(特定の条件および適用に依存し、そしてリガンド価に依存する)が使用される場合、レクチン結合部位が飽和された状態になり得、その後、そのレクチンによる細胞凝集が阻害される。所定の多価リガンドによる所定のレクチンの飽和を、経験的に容易に決定し得る。さらに、所定の多価リガンドによる任意のタンパク質の機能の飽和を、その複合体形成したタンパク質の機能を評価することによって決定し得る。
【0122】
多価リガンドとのレクチンの複合体は、そのレクチン自体の細胞毒性を超えて増強された細胞毒性を示すことが見出されている。図12に示されるように、0.1μMのConAで(48時間)処理されたPC12細胞は、生存能力の明らかな喪失を示さなかった。対照的に、同じ条件下で0.1μMのConAと4μMの化合物11との組み合わせで処理されたPC12細胞は、ほぼ30%の生存能力の喪失を示す。レクチンに対するリガンドの濃度の比がそのレクチンのリガンド結合部位を飽和するに十分に高い、本発明の多価リガンドとのレクチンの複合体が、細胞におけるアポトーシスを誘発し得ることを、これらの結果は示す。
【0123】
(多価ポリマーの生成)
ROMPを使用して、以前に記載された[55]ように、1をオリゴマー2〜4のシリーズへと変換した。同様の条件を、オリゴマー6および7の合成において使用した[54]。蛍光ポリマー8を、二官能性キャップ剤を用いる特異的末端標識[スキーム7]、その後の蛍光BODIPY−TR(Molecular Probesから市販されている)への結合[56]によって生成した。化合物9〜12は、参照にて調製および試験したサンプルである[54]。各化合物についてのポリマー化の程度(dp)を、1H NMRによって決定した。価(n)は、ポリマー化の程度(DP)の近似値であり、ここでDPは、ROMP中で使用される触媒に対するモノマーの比である。
【0124】
(画像顕微鏡法)
一晩培養からのE.coli AW405(野生型走化性応答を示す)を、LB(Luria Bertaniブロス)においてOD550が0.4〜0.6になるまで増殖させ、その後、誘引物質を含まない走化性緩衝液(10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、10μM EDTA)で2回洗浄した。OD550が0.1である部分透過性細菌(25μM EDTAで室温で3分間、その後50μM CaCl2でクエンチ(quench))を、Sagerらの方法[44]においてさらなるカバーガラスによって支持されたカバーガラス下に配置した。(透過化は、ガラクトースまたは1への細菌の走化性に対して何の効果も有さなかったが、4への走化性のために必要であった[57])。細菌を、ガラス表面と1〜2分間接触するように調整させた。誘引物質を、5μL最終体積で示される最終濃度を達成するように添加した。28℃での細菌の動作を記録し、そして経路を、ExpertVisionシステムを使用して分析した。誘引物質の導入後の最初の5〜15秒に誘導された経路を、分析した。平均角速度は、異なる日に実施された実験間で約14%変化した。データを、Q検定およびスチューデント検定を使用して分析した。
【0125】
(毛細管蓄積アッセイ)
一晩培養からのE.coliを、LBにおいてOD550が0.4〜0.6になるまで増殖させ、E.coli走化性緩衝液で2回洗浄し、その後部分透過化した。細菌を、走化性緩衝液中にOD550が0.1になるまで再懸濁し、そしてそれを、以前に記載された[45]ように、30℃で60分間の毛細管蓄積アッセイにおいて使用した。B.subtilis OI1085を、10mMグルコースおよび0.5%グリセロールを補充したTブロス(1%トリプトン、0.2mM MgCl2、0.5% NaCl、0.01mM MnCl2)での一晩培養から増殖させ、B.subtilis走化性緩衝液(10mMリン酸緩衝液(pH7.0)、10μM EDTA、0.5%グリセロール、0.3mM (NH4)2SO4)で洗浄し、そして毛細管アッセイを、37℃で30分間、最終OD550 0.01にて実施した[47]。蓄積したB.subtilisの数を、緩衝液単独に対して蓄積した500の細菌に対して正規化した。毛細管アッセイの結果は、誘引物質の活性以外の要因(例えば、基質の代謝または毒性)により影響され得る[45、58]。この可能性を排除するために、本発明者らは、E.coliが1を唯一の炭素源として使用する能力を試験した。これらの実験によって、1〜4が毒性でないこと、およびモノマー1が代謝されないこと(データは示さず)が明らかになった。データを、Q検定およびスチューデント検定を使用して分析した。
【0126】
(免疫蛍光顕微鏡法)
E.coli AW405またはRP1078(cheW)を、緩衝液単独で事前処理するか、または10μL総容量の走化性緩衝液中5mMの化合物1、3、4、もしくは8で事前処理した。30℃で10分間のインキュベーション後、その細菌を固定し(HEPES(pH7.0)中の2%パラホルムアルデヒド(PFA)で、30分間、4℃)、6ウェルプレートの底にあるポリ−L−リジン処理したカバーガラス上に配置し、メタノールで透過性にし、そしてMaddockおよびShapiro[49]の手順に従って、抗Tsr抗体(1:250)およびフルオレセイン標識ヤギ抗ウサギ抗体(1:500)で標識した。抗Tsr抗体は、保存的化学受容器細胞質ドメインを認識し、したがって複数の化学受容器と交差反応性である。いくつかの結合の排除(極で独占的な530nmまたは590nmの蛍光)が、抗体および8の両方を使用する二重標識実験にて観察された。蛍光顕微鏡法を、油浸レンズを使用して、1000×でZeiss Axioscope上で実施した。画像を、IPLab Spectra 3.2およびAdobe PhotoShop 5.0を使用して捕捉した。
【0127】
(定量的沈殿)
定量的沈殿および分析を、Khanら[90]により以前に記載された方法から改変した方法によって実行した。簡単に述べると、ConA(Vector Laboratories,Burlingame,CA)および足場を、沈殿緩衝液(0.1M Tris−HCl(pH7.5)、90μM NaCl、1mM CaCl2、1mM MnCl2)中に溶解し、短くボルテックスして混合し、その後、室温で5時間(またはスクシニル化ConAに関しては4℃で2日間)インキュベートした。ConAテトラマーの最終濃度は、30μMであり(モノマー重量が104,000であるConAテトラマーと仮定する)、そしてスクシニル化ConAダイマーは44μMであった(質量52,000であるダイマーと仮定する)。白色沈殿物を、5000×gで2分間の遠心分離によってペレットにした。上清をピペットにより除去し、そしてペレットを、冷たい緩衝液で2回穏やかに洗浄した。その後、ペレットを、600μLの100mMメチルα−D−マンノピラノシド(スクシニルConAに関しては100μL)中に再懸濁し、そして室温で10分間のインキュベーションの後、完全に溶解した。タンパク質含量を、100μL容積水晶キュベットを使用するVarian Cary 50 Bio上で、280nmでの吸光度をUV−可視分光光度法により測定することによって決定した。測定値は、3回の独立した実験の平均である。
【0128】
(透過型電子顕微鏡)
TEM法を、本質的に以前に記載された[96]ように実施した。ConAテトラマーを、1〜2コピーのビオチン残基の付着を支持する条件を使用して、ビオチンで標識した。ビオチン化ConAテトラマーを、溶液中で目的のリガンドと混合し、その後、ストレプトアビジン結合体化した過剰の10nm金粒子と接触させた。サンプルを、コントラストを増強するために2%ホスホタングステン酸(pH7.0)で処理(30秒)し得る。ランダムな視野の画像を各処理について得、そしてConA複合体の形成について分析した。互いに25nm以下の内にある金粒子は、複合体の一部であると見なした。この距離は、使用した合成多価リガンドのモデル化した長さ「23]、およびX線結晶解析により決定したテトラマーConAの構造[97]に基づく。
【0129】
詳細には、PBS(pH7.2)中のビオチン化ConA(2.3μM)および足場(0.75μM、マンノース濃度)を、ストレプトアビジン−10nm金(Sigma,St.Louis,MO)を最終濃度3.0μMまで添加する前に、室温で15分間インキュベートした。複合体を、15分間室温でインキュベートし、その後、炭素コートしたFormvar処理グリッド上に配置した。グリッドを風乾し、そしてLEO Omega 912 Energy Filtering Electron Microscope(EFTEM)上で観察した。画像は、12,500×の倍率であった。その画像を、ProScan Slow Scan CCDカメラ上で収集し、そしてAdobe PhotoShop 5.0にて分析した。視野は、平均して5個と50個との間の金粒子であり、そして15〜20個の視野を、各処理について各々の日に収集した。結果は、3つの別個の日に独立したサンプルに対して実施した3つの別個の実験において得られた結果の平均である。各々の日に収集した金粒子の総数は、約80から400を超えるまで変動した。
【0130】
(蛍光共鳴エネルギー移動)
リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.2)中のフルオレセイン−ConA(Vector Laboratories,Burlingame,CA)およびTMR−ConA(Sigma,St.Louis,MO)を、最終濃度4μg/mLおよび0.4μg/mLをそれぞれ得るまで混合した。足場をPBS中に、示される最終濃度まで添加し、最終容量200μLにした。この溶液を短くボルテックスし、その後、少なくとも15分間室温でインキュベートした。これらのサンプルのいずれにおいても、沈殿物は観察されなかった。200μ容積水晶キュベット、励起波長492nm、放射波長515nm、および10nmスリット幅を使用して、Hitachi F−4500蛍光分光光度計上で、蛍光を決定した。放射強度は、各実験の間に実施した3回のスキャンによる、3〜5回の独立した実験の平均である。化合物9〜12は、515nmにて無視できる蛍光を有した。曲線を、等式:
%F=(%Fmax×L)/(L+IC50)
を使用してフィットさせた。ここで%Fは、未処理に対する蛍光の変化であり、%Fmaxは、蛍光の最大回復であり、Lは、足場のμMマンノース濃度であり、そしてIC50は、クラスター形成の半分最大阻害濃度(half−maximal concentration for inhibition)である。
【0131】
(Jurkat細胞凝集)
Jurkat細胞を、以前に記載された[94]ように培養し、そして維持した。細胞を、冷たいPBSで3回洗浄し、次いで、Hoescht 33342(100μg/mL)で30℃にて30分間処理した。細胞を、冷たいPBSで2回洗浄し、その後、HEPES(pH7.4)中の2%パラホルムアルデヒドで4℃にて30分間固定した。固定した細胞を2回洗浄し、その後、ConAと足場との事前混合溶液で、200μLの最終容量にて処理した。ConAおよび足場の2×溶液を、PBS(pH7.2)中で調製し、短くボルテックスし、その後、細胞に添加する前に22℃で30分間インキュベートした。細胞、ConA溶液、および100μg/mL DNAse(核酸による細胞凝集を防止するため)を、22℃で30分間インキュベートした。細胞を、400×gでペレットにし、50μL PBS中に穏やかに再懸濁し、その後、適切なフィルターセットを備えたZeiss Axioscope上で200×の倍率での可視化のためにスライドに加えた。約100〜200の細胞が、各々の日にランダムな視野から計数された。クラスターを、互いに直接接触した少なくとも2つの細胞についてスコア付けし、そして計数した対象物(個々の細胞およびクラスター)の総数のパーセンテージとして表した。結果を、図10にまとめる。ROMP誘導体リガンド9〜12単独は、細胞凝集を引き起こすことができなかった。画像を、IPlab Spectra 3.2にて捕捉し、そしてAdobe Photoshop 5.0にて調製した。
【0132】
(赤血球凝集)
ConA(53nM、5μg/mL)およびリガンド化合物13(530nM;サッカリドベース(basis)につき)を、96ウェルプレート中で、最終容量100μLのPBS(pH7.2)中に添加した。この複合体を、室温で15分間インキュベートした。
【0133】
(細胞毒性実験)
HBS緩衝液は、pH=7.4のHEPES(10mM)、NaCl(150mM)およびCaCl2(1mM)を含んだ。コンカナバリンA(ConA)を、Vector Labs(Burlington,CA)から入手し、そしてすべての実験について新たに希釈した。このConAストック溶液の濃度を、
【0134】
【化12】
(95)を使用して決定した。その後、ConAの1回希釈物を作製し、そして各サンプル用に分割した。その後、適切なストック溶液から、所望の最終濃度の5倍でリガンドを添加した。すべてのサンプルは、各濃度について6つのレプリカを有した。HBS単独、HBS中のConAおよびHBS中に最高濃度のリガンドを含むコントロールサンプルを、各実行において使用した。溶解コントロールを、HBS緩衝液単独を添加すること、および48時間のサンプルインキュべーションの後に溶解緩衝液を添加することによって、作製した。
【0135】
(細胞培養)すべての細胞培養試薬を、他のように注記しない限りは、GIBCO BRLから入手した。84%(v/v)RPMI 1640(L−グルタミンを含む)、5%(v/v)熱非働化ウシ胎仔血清、10%(v/v)熱非働化ウマ血清、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(10000ユニット/ml)を含む培地中で、37℃および5% CO2の加湿インキュベーター中で、PC12細胞(ATCC:CRL−1721)を増殖させた。低血清培地は、97.5%(v/v)RPMI 1640(L−グルタミンを含む)、0.5%非働化ウシ胎仔血清、1%(v/v)熱非働化ウマ血清、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(10000ユニット/ml)を含んだ。細胞を、コラーゲンで処理したT型フラスコ中で増殖させ、そしてトリプシン処理(0.05%トリプシンおよび0.4mM EDTA)によりコンフルエントで収集し、その後、新鮮な培地でクエンチした。細胞を濃縮してペレットにし(2100rpmで10分間)、吸引し、その後新鮮な培地中に再懸濁した。その数を、血球計およびトリパンブルーでの処理によって決定し、その後、細胞を、96ウェルプレート(組織培養処理した)(CoStar,Corning,NYから入手した)に約15,000細胞/ウェルで配置した。その後、プレートを、34時間インキュベートして、細胞を接着させた。
【0136】
その後、その培地を除去し、そして低血清培地(80μL)で置換した。その後、HBS(20μL)中のサンプルおよびコントロールを添加し、そして37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、低血清RPMI培地中5mg/mLのMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(Sigma/Aldrich,Milwaukee,WI))溶液10μLを、各ウェルに添加した。
【0137】
4時間後、100μLの溶解緩衝液(HBS(pH=4.7)中50%ジメチルホルムアミド/20%ドデシル硫酸ナトリウム)を添加し、そしてその細胞を一晩インキュベートした。その後、そのプレートを、570nmにてプレートリーダー(Biostar)上で読んだ。細胞生存能パーセントを、以下の等式:
【0138】
【化13】
を使用して決定した。ここで、G0は溶解した細胞コントロールであり、Gconは、ビヒクルでのみ処理したコントロール細胞であり、そしてG1は、ペプチドおよびビヒクルで処理したサンプルである。細胞を多価ポリマー化合物11でまず処理し、その後ConAおよび適切なコントロールで処理した実験からの結果を、図11に示す。
【0139】
本明細書中の記載を考慮して、特に例証されたもの以外の本発明の実施に容易に適用または適合され得る種々の代替的構造、方法、手順および技術が存在することを、当業者は認識する。本明細書中に記載されるような特性を有する多価リガンドの調製のための、広範な種類の設計および方法が存在することが、認識される。SREの豊富な提示のために利用可能な広範な種類の分子足場、および本明細書中に記載される方法に適用または適合され得る広範な種類のSREが存在することもまた、認識される。
【0140】
(参考文献)
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
【表7】
【0148】
【表8】
本明細書中に列挙される参考文献の全ては、その全体において、そしてそれらが本明細書中の開示と矛盾しない程度まで、本明細書中で参考として援用される。列挙される参考文献は、特に、多価リガンドの合成、および特にROMP法による合成についての任意の記載について、および所定の用途についてのシグナルグループの選択、特に化学誘引物質またはエピトープについての記載において、本明細書中で参考として援用される。
【0149】
【化14】
【0150】
【化15】
【0151】
【化16】
【0152】
【化17】
【0153】
【化18】
【0154】
【化19】
【0155】
【化20】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明の多価のリガンドが、巨大分子の集合において、および生物的な応答のエフェクターとして機能し得るいくつかの方法を図解的に例証する。
【図2】
図2Aは、ビデオ顕微鏡動作解析実験の結果(I)である。細菌(Escherichia coli)を、緩衝液のみ、ガラクトース、または示されたサッカリド濃度で化合物1または3(スキーム1)を用いて処理した。その結果を、3連で実行される少なくとも5回の独立実験からの平均で示す。エラー棒を、10秒の間隔中での毎秒の平均の間の偏差を示す。
図2B−Eは、緩衝液のみ(B);1mMガラクトース(C);または1mM化合物1(D);または1mM化合物3(E)で処理された細菌(グラム陰性菌、E.coli)のために選択されたサンプル経路である。サンプル経路は、処理された細菌集団からのそれぞれの細菌の運動に由来する。
【図3】
図3Aおよび3Bは、E.coliのキャピラリー累積アッセイの結果である。累積した細菌の数を、サッカリド残基上で計算された誘引物(ガラクトースまたは化合物1−4、スキーム1)の濃度に対してプロットした。(A):結果を、示された濃度で緩衝液のみ(0)、化合物1(1)、および化合物2(2)、または(B):緩衝液のみ(0)、化合物3(3)、および化合物4(4)で満たされたキャピラリーに関して示した。1mMでの垂直線は、モノマーの化合物1に関する最大の走化性の濃度を示す。このアッセイにおいて使用される濃度は、運動分析実験(図2Aを参照のこと)において使用されるこれらと直接的には比較可能でない、なぜならキャピラリーアッセイにおいて形成される勾配は規定されないからである。結果を、2連で実行される3から6回の実験の平均とし、そしてエラー棒を、単一の標準偏差で示した。部分的な透過化処理が、4に対する走化性を得るために必要であり、そして全ての実験に関して利用した[57]。
【図4】
図4は、ROMP誘導グルコースリガンド(化合物5−7、スキーム1)を使用するB.subtilisのキャピラリー累積アッセイの結果である。緩衝液のみ、グルコース、またはグルコース伴有化合物5−7を、キャピラリー累積アッセイにおいて誘引物として使用した。結果を、グルコース(G)、化合物5(5)、化合物(6)、および化合物7(7)で示した。結果を、2連で実行される少なくとも4回の試みの平均とし、エラー棒を、単一の標準偏差で示す。
【図5A】
図5Aは、(A):細菌(E.coli)を、緩衝液のみ(黒四角)もしくは10μM誘引物:ガラクトース(黒丸)、化合物1(10マー、黒三角)、または化合物3(25マー、黒ひし形)を用いた最初の処理(その後、2分の適応期間が続く)後、セリンの漸増濃度(μM)で処理した;ビデオ顕微鏡動作解析実験の結果(II)である。
【図5B】
図5Bは、(B)セリン濃度1μMで図6Aからとられた角平均速度のデータに関する棒グラフ。化合物3を用いた最初の処理は、セリンに対する細菌応答の有用な増強をもたらす。角平均速度は、異なる日に実行された実験間で約14%変化したビデオ顕微鏡動作解析実験の結果(II)である。
【図6】
図6:多価のリガンドを、特異的に化学レセプターに結合し、そしてレセプターの再組織化を誘導する。図解の例証は、GGBP(12)を介したTrg(11)に結合して蛍光標識された8(10,590nm発光)を模式的に示す。Trgを、抗Tsr抗体(13,530nm発光)で標識した。
【図7】
図7A−Dは、合成リガンドによるレセプター認識のモデルである。(A)化学レセプターは、E.coliの細胞質膜においてダイマー(またはマルチマー)(20)を形成することが観察され、そしてそれぞれのダイマーは、単一のペリプラズム結合タンパク質(21)[59,60]と相互作用するようである。ガラクトースおよび化合物1(22)のような1価のガラクトースのリガンドは、GGBP結合を経てTrgと化学レセプターのダイマーからのシグナル伝達を誘導する;(B)化合物2のような、多価のガラクトース化合物(レセプターを認識するために必要な距離をまたぐことができない)は、(A)についてのように個々のダイマーからシグナルを発生する;(C)化合物3または化合物4のような、十分な長さの多価のリガンドは、細胞質膜で分散型のクラスター(25)へと化学レセプターを再組織化し得る;(D)多価のリガンドの結合価の拡大(26)は、再組織化、および、それゆえに細菌の応答の程度をおそらく増加させる。
【図8】
図8は、本発明の多価のリガンドにおいて用いられ得る分子の足場のための種々の設計を示す。こららの型の足場は、例えば、脂環式環、芳香族環(ヘテロ芳香族環を包含する)、およびそららの組合わせを用いることにより構築され得る。足場は、2以上のRE,SRE、または両方の提示の外形を提供する。リンカーは、変化する構造を有し得、そして例えば、剛性、可撓性または分枝状であり得る。例証された構造のそれぞれにおいて、任意の強固、可撓性または分枝状リンカーが、用いられ得る。それぞれの分枝状リンカーは、1を超えるRE,SRE(またはFE)に結合され得る。それぞれの構造において、1以上のFE(少なくとも1つのREまたSREがは残存する限り)は、1以上のREまたはSREと置き換り得る。
【図9】
図9A−C:結合価依存様式、または濃度依存様式において、細胞凝集を活性化または阻害するための多価のリガンドの能力の例証モデルである;(A)、1価のリガンドが(31)(9のような)、ConA(30)に結合するとき、1価のリガンドは、必然的に阻害性である。;(B)十分に低濃度、およびConAを伴う随意的な化学量論での多価のリガンド32(12のような)は、ConAの結合部位の占有にもかかわらず、細胞凝縮を可能にし得る(34);(C)多価のリガンド32の増加される濃度(10−12の場合において、約5μM)で、ConA部位は飽和になり(35)、クラスターを分解、および細胞凝集を阻害する。
【図10】
図10は、ROMP誘導の足場上で組合されるConAのクラスターがジャーカット(Jurkat)細胞の凝集を形成し得ることを例証する棒グラフである。凝集物で存在するジャーカット細胞の割合を、処理に対してプロットする。100μg/mLまたは5μg/mLでのConAは、凝集を形成し得る。凝集形成は、50mMのメチルα−D−マンノピラノシド(α man)の添加によって、阻害され得る。化合物9−12を、5μg/mLのConAの最終の濃度に加えて、最終の0.5μMまたは5μMのマンノースの濃度に添加する。結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均であり、そしてエラー棒は単一標準偏差で示す。
【図11】
図11は、ConA媒介の赤血球の凝集の制御である。ConA単独、またはリガンド化合物13(スキーム1、n=100でのマンノース含有リガンド)との組合せにおけるConAとの処理のために、細胞と接触させた後の時間(秒)の関数としての肉眼凝集指標(%MAI)のグラフ。使用されるConAの濃度は、5μg/mL(53nM ConAテトラマーに基づく)、およびリガンド(530nM、サッカリドに基づく)であった。従って、実験においてConAテトラマーに対するマンノース(リガンド中)の比率は、10:1である。多価のリガンドの添加は、有意に赤血球の凝集を増強した。
【図12】
図12は、多価のリガンドによるConAの細胞毒性の増強である。多様な関数の機能としてPC12細胞の細胞生存度割合(%)を示す棒グラフ。「HBS」は、培地コントロールであり;「ConA」は、HBS培地において0.1μMのConA(ConAテトラマーに基づく)での処理であり、「化合物11」は、HBS中の4μMの化合物11(サッカリドに基づく濃度)での処理であり;「ConA+化合物11」は、HBS中の0.1μMのConAおよび4μMの化合物11での処理である。ConAに結合する多価のリガンドの添加は、ConA毒性を有意に増強する。
(発明の背景)
生物学のプロセスの多様性は、1つの化学物質種または生物学的種、巨大分子または微粒子(例えば、細胞、ウイルスまたはビリオン)の他の化学物質種または生物学的種、巨大分子または微粒子に対する結合によって媒介される。多くの場合において、結合価は、生物学のプロセスの媒介の機構の重要な局面であり得るという証拠がある。本発明は、多価のリガンドを用いている相互作用のような結合価を選択的に変化させるための化合物および方法に関し、このリガンドに関し、多様な化学物質種または生物学的種が、制御された方法に付随した他の化学物質種または生物学的種(概して、本明細書中で認識エレメント(RE)と称する)と結合することに関連し、REの数、REの配置およびREの相対的な方向性の制御を伴う。ある種の認識エレメントは、生物的なシグナル伝達プロセスにおいて直接的または間接的に関与し、他方の認識エレメントは、単に生物的なプロセスに関連した結合に関与するに過ぎない。従って本発明は、概してそのような多価のリガンドの構造を制御することによる生物学的なプロセスの制御に関している。本発明の多価のリガンドは、具体的には細胞のシグナル伝達プロセスにおいて、およびより一般には、生物的なプロセスに関与する認識エレメントの巨大分子の組立てにおいて用途を有する。
【0002】
細胞は、継続的な感覚を必要とし、そして細胞の環境における変化に応答する。この目的のために、細胞は、多数の細胞表面、膜貫通および細胞質のレセプターを使用する。これらのレセプターは代表的に、タンパク質,ペプチド、サッカリド、核酸または他の低分子を認識するが、いくつかの場合において、レセプターはまた、酸化還元電位、温度および浸透圧における変化を認識し得る。これらのレセプターに対するリガンドの結合は、移行、活性化、代謝、タンパク質生成、分化、増殖および細胞死のような細胞の活動における変化を生じる。これは、細胞生物学の中心概念であり、そしてこれらの細胞応答は、環境変化に適切に応答するための細胞(または多細胞生物)を与える。
【0003】
リガンドが細胞のプロセスの促進することによる機構は、細胞応答の調節におけるリガンドの役割をはっきりさせるために非常に興味深い。これらの系が調節がされることにおける1つの一般的な方法は、レセプターの配置的な体系によるものである。リガンド結合は、相対的な方向性および/または細胞表面のレセプターの立体構造、応答の活性化を変化し得る。とりわけ免疫認識、細胞結合および細胞移行、ならびに増殖からの生物的な応答範囲は、リガンド結合の際に上に起こる細胞表面のレセプター分布(例えば、局在)における再方向性または変化に依存する。リガンドの再方向性は、シグナルを伝達し、そして細胞応答を促進させる現象であり得る。
【0004】
この一般的な例は、成長因子レセプターにおいて見い出され、それは細胞増殖を支配する。エリスロポエチン(EPO)のようなある種の2価の成長因子は、同時に2つの細胞表面成長因子レセプター(EPOR)に結合し、そして近傍にこれらのレセプターを導く。このリガンド認識は、ダイマーにおいてレセプターの交差リン酸化を包含するシグナル伝達カスケードを誘引する。EPOの例において、1つのレセプターに唯一結合できるリガンドは、応答を誘発することが不可能である。
【0005】
いくつかのリガンドの特に興味深い特徴は、結合価であり、それは本明細書中では概して、レセプター(例えば、エピトープ)に結合するためのリガンド中の認識部位の正味の数と密度と、リガンド中の認識部位の配置との間での相互作用をいう。リガンドは、頻繁に多数のレセプター結合部位を保持する。これは、そのリガンドとリガンドに対する生物的な応答の種類と強度を決定し得る複数のレセプターとの間の多価の相互作用を可能にする。これらの系においては頻繁に、1価のリガンドは、任意の生物学的な活性を欠如する。研究者は、少なくとも認識部位の数を増加させるという意味において、結合価において変化するリガンドを探索している。代表的に実験されたリガンドは、小さく、低い結合価の化合物(例えば、抗体もしくはダイマー化因子)、または大きな異質な化合物(例えば、タンパク質結合体、ポリマー、もしくは官能化された表面)のいずれかであった。規定された低い結合価の化合物を用いた研究は、レセプターの方向性における変化による調節の程度の認識を導いており、そして、大きな規定されない多価のリガンドをともなう研究は、認識部位(例えば、エピトープ)の正味の数を増加することが、頻繁に多くの系において増加される影響をもたらし得ることを示した。
【0006】
細胞は、過剰な刺激または過小の刺激を避けるために、それらの細胞のプロセスに対する明確な制御を必要とする。免疫応答において、例えば、免疫細胞の機能は、好ましくない自己反応性またはクローン不応答を避けるために厳密に調節されなけれえばならない。細胞は、細胞の応答を調節するためのレセプターとリガンドとの相互作用の特徴を利用する。例えば、増加される合成リガンドの密度は、リガンドに対するある種の細胞の応答をさらに効果的に活性化することを示している。自然は、規定された方法において生物的な応答を制御するためにリガンドの結合価を利用し得る。従って、生物的な応答の選択的な制御は、リガンドの結合価の制御を経て達成され得る。しかし、これまでに記載された多価のリガンドは、生物学的な系においてこの微調整された制御の探索を可能にしていない。
【0007】
本発明は、明確な結合価、および制御された特徴を伴う合成リガンドの生成を提供し、それは細胞表面のレセプターとの結合によって開始または誘引される生物的な制御を体系的に変化および/または制御するために使用され得る。特に、本発明の合成リガンドは、天然のリガンドによって示されるさらに微細な制御に接近することを可能にする。合成リガンドにおけるこれらの特徴への接近は、これらの系の天然機能の本発明者らの理解を拡張するだけでなく、広い多様な生物的な応答を調節するための能力を利用する治療的または治療的でない応用における使用のために選択的に設計されたエフェクター分子(多価のリガンド)をもたらす。
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、多価のリガンドを提供し、そのリガンドは直接的または間接的に細胞または他の生物的な粒子に結合するための、もしくはさらに一般的に任意の生物的な分子に結合することによって、少なくとも1つの認識エレメント(RE)、および好ましくは多数の認識エレメントを保有または提示する。提供される多価のリガンドは、細胞凝集、および概して生物的な巨大分子の巨大分子の組立てに関して、最も一般的に、任意の生物的な粒子または生物的な分子に結合または標的にするために機能し得、そして特に、細胞または細胞の型またはウイルスを標的にするために機能し得る。本発明の多価のリガンドは、概して化学物質種または生物学的種(抗原、エピトープ、リガンド結合群、細胞レセプターのためのリガンド(細胞表面レセプター、膜貫通レセプターおよび細胞質レセプター)、種々の巨大分子(核酸、炭水化物、サッカリド、タンパク質、ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない)の足場(集合)を作製するために適用可能である。これらの足場において、認識エレメントの数、配置、相対的位置および相対的方向性が制御され得る。
【0009】
さらに具体的な実施形態において、多価のリガンドを提供し、これらのリガンドは、少なくとも1つのシグナル認識エレメント(SRE)、そして好ましくは多数のシグナル認識エレメントを保有または提示し、そして生物学的な系における生物的な応答を調整する。シグナル認識エレメントは、細胞表面のレセプターに結合することを提供し、そして単独または他のSREと組合わせて、生物学的な系における生物的な応答に影響する。SREは、細胞によるシグナルとして、つまり、1以上の細胞レセプター、特に1以上の細胞表面のレセプターと結合を通じ、認識される化学物質種または生物学的種を包含する。これらの多価リガンドは、概して生物学的な系において生物的な応答のエフェクターとして作用し得る。提供される多価リガンドは、生物的な応答を活性化、開始または誘引するために、応答を阻害するために、応答を増強または減弱するために、もしくは応答の性質を変化するために機能し得る。本発明の多価のリガンドはまた、細胞表面レセプター(このレセプターに対してリガンド自体は結合しない)を通じて媒介される応答に影響を及ぼす
本発明は、機能的なエレメント(FE)を有する細胞の標識、またはこの細胞を標的とするための方法を提供する。本発明はまた、細胞凝集を誘導または増強するための、もしくは代わりに細胞凝集を阻害または阻止するための方法を提供する。本発明はさらに、生物学的な系における生物的な応答を誘導、調製、および/または調節するための方法を提供する。これらの各々の方法は、多価のリガンドを用いる。本発明の好ましい多価のリガンドは、結合価を規定または制御しており、そのリガンドの構造的な特徴は、レセプターに結合するための認識エレメント(REおよびSRE)の数、密度、配置および方向性を包含し、細胞に単純に結合するために、もしくは所望される生物的な応答の型または応答のレベルを得るために選択または制御される。
【0010】
本発明の多価のリガンドの足場は、多数のRE、SRE、または随意的にFEと組合わせて両方を包含し、多様な診断的および臨床的な応用(特に血液型分類および病原体の検出)において用いられ得る。本明細書中の多価リガンドは、多様な生物的な分子および粒子(細胞およびウイルス)の検出ならびに多様なアッセイ方法(とりわけ組織学、ウエスタンブロット、PCRアッセイ、ELISAアッセイ、凝集アッセイ)において用いられ得る。一般に、そのようなリガンドにおいて増加された結合価は、アッセイまたは診断的な感受性における増加と関連される。
【0011】
多価のリガンドは、1以上の構造基または官能基を含み、その基は、随意的に1以上のシグナル認識エレメント(SRE)、または1以上の機能的なエレメント(FE)、または両方との組合せにおいて、細胞表面のレセプターに結合するための認識エレメント(RE)として作用する。SREは、多価のリガンドにおいて単独または他のSER(REまたFE)と組合わせて、細胞内および/または細胞間の生物的な応答を誘導し得るREの部分集合である。1以上のSRE(必要に応じて、1以上のRE、1以上の異なるSRE、または1以上のFEとの組合せにおいて)を保有する本発明の多価のリガンドは、細胞において生物的な応答を開始し得る。あるいは、これらの多価のリガンドは、1以上の天然の化学的または生物的シグナルの存在下において、例えば、応答を増強、減少または阻害することによって細胞の応答を調製し得る。具体的な実施形態において、本発明の多価のリガンドは、選択された化学的または生物的なシグナルによって細胞において誘導される応答のレベルまたは型を変化するように設計される。
【0012】
本発明の多価のリガンドは、最も一般的に、多数のRE,SRE、または両方必要に応じてFEと組合わせて、共有結合的相互作用または非共有結合的相互作用のいずれかによって結合されるための分子の足場を包含する。足場の上のRE,SREおよびFEの数、密度および配置は、代表的に、所望されるリガンドの選択的な合成によって制御され得る。その分子の足場は、細胞に対するREおよび/またはSREの種々の外形(geometry)提示を提供する直線状、分枝状または環式であり得る。好ましい実施形態において、分子の足場は、多数のモノマーを包含するポリマーである。本発明の多価のリガンドの分子の足場は、全てのモノマーが、同一モノマーまたは異なるモノマーの混合物を含むポリマーであるポリマーを包含する。分子の足場はまた、足場の異なる領域(または一部)が異なるモノマーから構成されるブロックコポリマーを包含し得る。本明細書中のいくつかの処方において例証されるように、ROMP方法によって調製される分子の足場は好ましい。
【0013】
分子の足場は、疎水性であり得るが、または−OHのような極性置換基を伴う置換(特にポリマー基幹の置換)によってさらに親水性になり得る。一般的にその足場は、REまたはSREの活性(例えば、レセプターへの結合)を干渉しない任意の基で置換され得る。足場の置換は、多価のリガンドの物理的な特性(例えば、溶解度)を調節するために制御され得る。RE、SREおよびFEは、直接的に足場に、またはリンカー基を介して足場に結合され得る。そのリンカー基は、足場に結合するための、およびRE,SREおよび/またはFEに結合するための官能基を提供し、そしてまた多価のリガンドの溶解度に影響し得る。そのリンカーはまた、RE,SREまたはFEとの間、もしくは結合されるエレメントと足場との間の所望しない相互作用を最小限にするため、または結合されるエレメントの方向性に関して構造的な自由度を提供するために規定されたスペーサーを提供し得る。
【0014】
具体的な実施形態において、分子の足場は、多数の繰返し単位(モノマー)を含み、この繰返し単位のそれぞれに対してREまたはSREが結合される。一般的に、分子の足場は、互いに近接したシグナルを保持するために機能し、そして生物的な応答の調製において直接的に相互作用しない。しかし、多価のリガンドの物理的特性(例えば、溶解度)または化学的特性(例えば、安定度)は、足場の構造を選択することによって、または足場に沿って置換基(例えば、極性、非極性)を導入することによって、変化され得る。
【0015】
1つの実施形態において、多価のリガンドは、リガンド中にわずか1つの型のREまたはSREを有する。これらの多価のリガンドは、ダイマー、トリマー、テトラマー、およびポリマー(5以上のモノマーを有する比較的短いオリゴマーを包含する)、または25、50、100以上のモノマーを有する長いポリマーを包含する。1つの型のREまたはSREを保有する好ましい多価のリガンドは、約10以上のそのようなREまたSREを保有する。この実施形態において、多価のリガンドの繰返し単位(または、モノマー)は、好ましくは同一である。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、1つの型のREより多く、1つの型のSREより多く、またはREとSREとの組合せを保有する多価のリガンドを提供する。これらの多価のリガンドはまた、ダイマー(各々がRE、もしくはSREのうち1つ、またはREおよびSREを保有する)、トリマー、テトラマー、およびブロックポリマー(5以上のモノマーを有する比較的短いオリゴマーを包含する)、または25、50、100以上のモノマーを有する長いポリマーを包含する。これらの多価のリガンドはまた、第二のREまたはSREを保有する領域から第一のREまたはSREを保有する領域を分離するために、足場に沿ってスペーサー領域(REまたはSRE群を保有しないモノマーを有する)を有し得る。スペーサー領域のモノマーは、機能的なエレメント(FE)を保有していても、置換されていなくても、非反応性の非官能基応答を保有してもよい。所定の多価のリガンドは、概して異なるRE,SREまたは両方をいくらでも包含し得るが、しかし2または3の異なるREまたはSREを保有するこれらのリガンドは、最も興味深いものである。
【0017】
他の実施形態において、本発明は、1以上のREまたはSREを保有する多価のリガンドを提供し、そのリガンドは同一であっても異なっていても良いが、REまたはSRE以外の機能的なエレメントを保有し得る。これらの機能的なエレメント(FE)は、例えば、多様な化学的または生物的な機能(REまたはSREの機能は異なる)を示し得る。例えば、機能的なエレメントは、1以上の蛍光または放射性同位元素標識、潜在性反応基を伴う1以上基、または1以上の酵素機能を提供し得る。FEでのモノマーの置換はまた、SREの配置を提供し得る。
【0018】
認識エレメント(RE)は、任意の化学物質種または生物学的種(例えば、分子またはその一部)であり、単独または1以上の他のREとの組合わせにおいて、細胞表面のレセプターを認識し、そして結合する。REは、例えば、細胞表面のレセプターに結合するための全てまたは一部の活性なリガンドを包含し得る。シグナル認識エレメント(SRE)は、任意の化学物質種または生物学的種であり、単独または1以上の他のSREとの組合わせにおいて、細胞における、または細胞から生物的な応答を誘導し、そしてこららの種は、生物的な分子(タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、サッカリド、サイトカイン、成長因子、ホルモン、およびそれらの多数の誘導体)を包含し、ならびにより大きな生物学的種(タンパク質フラグメント、エピトープ、抗原決定基等)の一部、および多様な化学物質種(ハプテン、天然に存在する薬物、合成薬物)、および生物学的な分子の機能的な模倣物として作用する種(例えば、ペプトイド、ホスホロチオエート)であり得る。SREは、代表的に細胞表面のレセプターに結合するREであるが、REとは対照的に、SREは細胞中の生物的な応答に影響する。
【0019】
本発明の多価のリガンドは、細胞レセプターを認識および/またはクラスター形成するために機能し得る。この点で、多価のリガンド上のREまたはSREは、細胞レセプターのリガンドである。ある種の場合において、レセプターのクラスター形成、またはレセプターの認識は、所定のSREに対する細胞の応答を調製する。本発明の多価のリガンドによるクラスター形成、またはレセプターの認識はまた、別のシグナル、または別のリガンドに対する細胞の応答を調製し得る。細胞表面のレセプターのクラスター形成、または他の構造的な再方向性、またはレセプターの認識を経て、本発明の多価のリガンドは、別のシグナルまたはリガンドに対する細胞の応答を増強または阻害し得る。例えば、本発明の多価のリガンド(化学誘引物質として機能する)は、別の化学誘引物質に対して細胞の応答を増強し得る。
【0020】
所定の細胞のレセプターは、1を超える生物的な応答を媒介し得る。与えられる細胞のレセプターに結合するが、レセプターによって媒介される生物的な応答を誘導しないリガンドを保有する本発明の多価のリガンドは、生物的な応答を阻害するために用いられ得る。
【0021】
1を超える型のSREを保有する多価のリガンドは使用されて、細胞における、または細胞からの1を超える生物的な応答を同時に、または連続的に誘導し得る。あるいは、1つのSREに対する細胞の応答は、別のSREに対する細胞応答によって改変され得る。2以上の異なるSREを保有する多価のリガンドは、例えば、細胞表面上の異なるレセプターを認識するために機能し得、それは1以上のSREに対する細胞の応答の調製をもたらし得る。同様に、FEを保有する多価のリガンドにおいて、1以上のSREに加えて、SREに対する応答は、FEの存在によって改変され得る。
【0022】
本発明の多価のリガンドは、原核生物細胞または真核生物細胞におけるシグナル伝達プロセス(すなわち、生物学的な系において、細胞の外側と内側との間、ならびに細胞と細胞との間の情報の伝達)を調製する方法において用いられ得る。その方法は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボ(細胞は、多細胞生物を包含する自然環境から取り除かれ、そしてその環境に戻させるためにいったん処理されることが意図される)で実行され得た。例えば、SREに対する走化性、または遊走性の応答が改変され得る。そのような方法は、原核生物微生物(例えば、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌)または真核生物微生物(哺乳動物を包含する種々の生物の真核生物の寄生体および病原体を包含するが、これらに限定しない)の両方、および哺乳動物の細胞、および特にヒトの細胞を包含する、真核生物細胞より大きな生物、(例えば、白血球、リンパ球、内皮細胞、上皮細胞)に適用可能である。細菌細胞、または真核生物細胞(真核生物の病原体、または寄生体を包含する)における応答を調製する多価のリガンドが使用されて、細菌、または真核生物の病原体または寄生体による増殖、コロニー化、遊走化、または生物膜の形成を阻害し得、結果として、そのような微生物による感染またはコロニー化を阻害し得る。
【0023】
多価のリガンドはまた、細胞分化、細胞増殖および/または細胞死(例えば、アポトーシス)を促進または阻害するために使用され得る。大きい生物の真核生物細胞において応答を調製する多価のリガンドは、多価のリガンドにおけるSREおよび他のFEの選択に依存し、所望しない細胞増殖、所望しない移行、および所望しない細胞間の接合の形成を阻害するために、もしくは所望される細胞増殖、所望される移行、および所望される細胞接合の形成を促進または増強するために使用され得る。
【0024】
薬学的に受容可能なキャリアならびに、細胞増殖、コロニー化、細胞移行、細胞間接合の形成、および/または真核生物細胞または原核生物細胞による生物膜の形成を調製するために有効な量の多価のリガンドの量を含む薬学的組成物および治療組成物は、本発明によって包含される。具体的な薬学的組成物または治療組成物は、所望しない細胞増殖、コロニー化、細胞移行、細胞間接合の形成、および/または真核生物細胞または原核生物細胞による生物膜の形成を阻害、もしくは妨害するために有効な量の多価のリガンドを包含するものを包含する。細菌あるいは真核生物の寄生体または病原体による感染を遅延または阻害する薬学的組成物は、特に興味深いものである。本発明の2以上の多価のリガンドは、複合の効果および利益を提供するためにそのような薬学的組成物において組合わされ得る。
【0025】
細胞移行、細胞接着、および細胞間接合の形成は、癌の成長または癌の転移に関与される。そのようなプロセスを調製する多価のリガンドは、癌の成長または癌の転移の阻害のための方法および薬学的組成物において用いられ得る。再度、そのような薬学的の組成物は、癌細胞増殖、細胞接着または細胞移行を阻害するために有効な量の多価のリガンドを含むものを包含する。本発明の2以上の多価のリガンドは、複合の効果および利益を提供するためにそのような薬学的組成物において組合わされ得る。
【0026】
本発明の多価のリガンドは、免疫系(例えば、白血球、およびリンパ球)において機能する細胞との結合価依存性相互作用によって、動物(哺乳動物、および特にヒトを包含する)における免疫応答を調製し得る。特に、本発明の多価のリガンドは、化学誘引物質(N−ホルミルペプチドおよびN−アシルペプチドのような誘導体化されたペプチドを包含する)に対する白血球(好中球を包含する)の応答を調製し得、そしてB細胞および/またはT細胞の活性化および不活性化を調製し得る。B細胞および/またはT細胞の活性化は、インビボ、インビトロ、および/またはエキソビボで実行され得る。
【0027】
本発明はまた、多価のリガンドのライブラリーを提供し、ライブラリーのメンバーは、例えば、REまたはSREの数および/または相対的な位置において、スペーサーの存在および/または位置において、反復単位またはモノマー(例えば、以下の式における、nまたはn+m)の数において、ならびにFEの存在または数において変化される。規定のサイズ、反復単位またはモノマーの数、REまたはSREの数、REまたはSREの組合せ、RE,SREおよびFEの組合せ、ならびに付随したエレメント(RE,SREおよび任意のFE)の配置の範囲にまたがる多価のリガンドのライブラリーが、特に興味深いものである。ROMP方法を使用して調製されたライブラリーは、特に興味深く、および応用である。当該分野において理解される多様な選択およびスクリーニングを方法を用いて、これらのライブラリーは、与えられる生物的な系において所望される調製を示すライブラリー中の多価のリガンドについて選択またはスクリーニングされ得る。さらになお、そのようなスクリーニングから得られた結果は、すなわち細胞凝集のために必要とされるREの数、誘導または阻害のために必要とされるSREの数、および他の構造/機能の関係は、さらなる多価のリガンドの設計および合成において使用され得る。
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明の多価のリガンドは、生産的な方法において機能的または構造的な基の表示を提示するために、多数の、特にREおよび/またはSREが結合される分子の足場である。その足場は、一般的に、所望される表示の方向性を提供する任意の化学物質種、または生物学的種から形成され得る。直線状アレイに加えて、その足場は、選択される非直線状の提示を有する官能基のアレイを提供するために選ばれ得る。例えば、図8に例証される多様な非直線状の足場構造を参照のこと。
【0029】
機能的または構造的な基は、対称または非対称のアレイにおいて、足場に結合され得る。その足場は、芳香族環系(ベンゼン、ナフタレン、および縮合または非縮合の芳香族環を包含する)のような比較的低分子の有機分子を包含し得る。多様な縮合芳香族環系は、環式系において選択される位置に結合される官能基を伴う広い範囲の異なる提示の方向性を提供し得る。あるいは、飽和の環式系(例えば、シクロヘキサン)、ヘテロ環(例えば、炭水化物)、または脂環式化合物(例えば、(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)もまた使用され得る。さらに代表的に分子の足場は、多数の反復単位または分子(例えば、ポリマーまたはオリゴマー)を包含する。次いで、そのモノマーの足場は、多数の反復単位またはモノマーに結合する多数の機能的または構造的な基を保有する。その官能基は、その足場に共有的または非共有的に結合され、そして多数の認識エレメント(RE)、またはシグナル認識エレメント(SRE)を包含し得、および随意的に他の機能エレメント(FE)を包含し得る。
【0030】
そのRE,SREおよび任意のFEは、分子の足場に対して無作為に、または事前に選択されるパターンに結合され得、ここで足場の長さに沿ったRE,SRE、およびFEの配置は、選択されたパターン(例えば、交互の異なるSREまたはRE,異なるSREまたはREの選択された配置など)と適合する。
【0031】
その分子の足場は、剛性または可撓性、親水性または疎水性、対称または非対称であり得、大きな表面領域または小さな表面領域を有し、そして細胞表面のレセプターとの相互作用するか、または相互作用しない。その分子の足場は、任意の多様なオリゴマーまたはポリマーであり得、これらのオリゴマー、またはポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリメタクリレート、ポリオール、およびポリアミノ酸、ならびに相当するオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。分子の足場は、一般的に、直線状ポリマー、分枝状ポリマー、または架橋結合のポリマーであり得る。好ましい分子の足場は、生体適合性である。本明細書中のいくつかの式で示されるように、ROMP法によって調製される分子の足場が好ましい。分子の足場は疎水性であり得、または−OHのような極性置換基での置換によってさらに親水性に作され得る。一般的に、その足場は、シグナル活性を干渉しない任意の基で置換され得、この基は所望可能な化学的および物理的特性を提供する。
【0032】
「認識エレメント」またはREという用語は、細胞レセプターに対して結合するために機能し、特に、細胞表面のレセプターに結合するために機能する化学物質種または生化学的種、基あるいは構造をいうために本明細書中で使用される。REは、本発明の多価のリガンド中の分子の足場に結合される。REは、細胞レセプターについてのリガンド、またはそのようなリガンドの一部のであり得、それは、レセプター結合のために機能的であり、そして分子の足場に結合することを可能にするために調製されている。REは、細胞レセプターのリガンドに対して化学的に同一であり得、またはREは足場に結合する結果として、または足場に結合することを促進するためにこのリガンドから改変され得る。
【0033】
「シグナル認識エレメント」またはSREという用語は、化学的または生化学的なシグナル(以下を参照のこと)として機能し、そして本発明の多価のリガンドに結合される化学または生化学の種類、基あるいは構造をいうために本明細書中で使用される。そのSREは、代表的には多価のリガンドの中に結合することを可能にするために改変されているシグナル(基または分子)である。SREは、シグナルと化学的に同一であり得、またはSREは足場に結合する結果として、または足場に結合することを促進するためにシグナルから改変され得る。そのSREは、好ましくは、基のシグナル機能が、最小限に影響されるように多価のリガンドの中に結合される。SREは細胞によって、代表的に細胞レセプターに結合することによって認識され、そして従ってREもまたそうである。REと対照的にSREは、細胞における、または細胞からの応答を誘導する。その応答は、細胞移行のような細胞内の応答、および/または他の細胞のための化学的なシグナルとして機能する細胞による化学物質種類の解放のような細胞間の応答であり得る。シグナル認識は、シグナル(またはシグナル群)が結合するための細胞表面上の細胞レセプターの存在によって媒介される。シグナル(またはSRE)単独の結合は、生物的な応答を誘導し得る。応答の誘導は、いくつかの場合において、多数のシグナルまたは(SRE)の存在を必要とし得る。その生物的な応答は、細胞表面のレセプターの認識、またはレセプターのクラスター形成によって調製され得る。
【0034】
「化学的または生化学的なシグナル」という用語は、細胞表面のレセプターとの相互作用によって最も代表的に細胞によって認識され、そして細胞における生物的な応答を誘導する多様な型(分子、オリゴマー、部分、基など)から選択される特定の化学物質種、または生化学的種をいうために本明細書中で使用される。シグナル自体は、細胞との相互作用に対して応答を誘導してもよいし、多数のシグナルが、細胞と相互作用するとき(例えば、多価で提示されるとき)応答を誘導するのみでもよい。シグナルは、天然のシグナルを包含し得、それは、細胞における応答または細胞による応答を誘導するための生物学的な系において、インビボで見出されたシグナルの種類である。天然のシグナルとしては、例えば、天然に存在する薬物、ホルモン、抗原、成長因子、サイトカイン、タンパク質、ペプチド、誘導体化ペプチド(例えば、硫酸化ペプチド、リン酸化ペプチド、アシル化ペプチド、またはNホルミル化ペプチド)、サッカリド、誘導体化サッカリド(例えば、硫酸化、アシル化、シアル化のサッカリド)核酸、多様な細胞栄養物、エピトープ、および多様な低分子有機化合物(それらの全ては、互いに限定的な群を提示し得るとは限らない)が挙げられる。シグナルはまた、天然の化学的なシグナルの機能を模倣することが見出された化学物質種を包含し得る。これらのシグナルの模倣物は、代表的に合成であり、そして例えば、合成薬物、および天然に存在するシグナルの多様な誘導体(例えば、ペプトイド、および核酸アナログ、または誘導体)が挙げられる。もちろん、異なる細胞が、異なるシグナルを認識し得る。異なる細胞は、同一の生物的な応答、または異なる生物的な応答を伴って、同一または類似のシグナルに対して応答し得る。単一の細胞は、同一の生物的な応答、または異なる生物的な応答を与えるための多様な異なるシグナルに応答し得る。シグナルとしては、例えば、相互に限定的な群ではない化学誘引物質、およびエピトープ(抗原決定基)が挙げられる。多価のリガンドに結合されるSREは、分子の足場に結合するために適合された化学的、または生化学的シグナルを包含し得る。SREは、とりわけ、化学誘引物質、エピトープ、サイトカイン、ホルモン、および関連物質である化学物質種、または生化学的種を包含し得る。
【0035】
化学誘引物質は、細胞移行に向けた化学または生物のシグナルである。その細胞は、化学誘引物質の増加する濃度を感知し、そして高い濃度に向かって移動する。化学誘引物質のための細胞の感知機構は、頻繁に非常に感受性である。あるいは、細胞は、他のシグナルに応答して、シグナルの低い濃度に移動し得る。細菌細胞は、ある種の栄養物(例えば、グルコースまたはガラクトースまたはセリンのようなアミノ酸)に向かって移動する。白血球(白血球細胞)は、N−ホルミルペプチドおよび他の誘導体化ペプチド、活性化されたCS(CSa)の成分、血小板活性化因子(PAF)、ロイコトリエンB4(LTB4)、または化学毒性のサイトカイン(つまり、α−ケモカイン、およびβ−ケモカインを包含するケモカイン)に向かって移動する(65)。N−ホルミル化ペプチドは、細菌のタンパク質合成の生成物であり、および細菌感染のシグナルの生成物である。N−ホルミル化ペプチドについてのレセプターはまた、N−アシルペプチドのような他の誘導体化ペプチドに結合し得る。従って、N−ホルミル化ペプチドレセプターの任意のリガンド(レセプター機能のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する種類を包含し得る)は、N−ホルミル化ペプチドレセプターに関連される適用のために用いられ得る。白血球の1つの型である、好中球は、N−ホルミル化ペプチドの低いレベルを感知することによって細菌感染の部位に案内される。一度は感染の部位で、食作用が起こり得る。化学誘引物質は、移行または走化性に加えて生物的な応答を誘導し得る。例えば、多様な型の白血球において、化学誘導物質は、毒性種の放出、または炎症性のサイトカイン、転写因子、および順に他の細胞のための化学のシグナルとして機能する他の化学物質種の放出を誘導し得る。
【0036】
エピトープという用語は、一般には、抗原決定基として機能する任意の化学物質種をいい、そして最も一般には、この用語は全ての抗原を包含するために本明細書中で使用される。エピトープは、抗体分子の上、またはリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)レセプターの上の抗原結合部位と組合わさる抗原の部分である。エピトープの結合は、例えば、抗体生成またはT細胞の応答を刺激し得る。エピトープは、免疫原性の異なるレベルを示し得る。他のものよりさらに免疫原性であり、そして全体の抗原応答に優性であるエピトープを、免疫優性エピトープと称した。ほとんどの非自己のタンパク質、および多くの炭水化物は、抗原であり、そのためにエピトープとしては、限定なくタンパク質フラグメント(例えば、ペプチド)、および炭水化物フラグメント(例えば、サッカリドおよびオリゴサッカリド)を包含する。抗原、エピトープまたは細胞に適用されるように、本明細書中で使用される用語「自己(self)」は、免疫細胞、免疫細胞の組合せ、または免疫系によって自己として認識される実体(entity)である。「自己」という用語はまた、免疫細胞、または細胞、または免疫系によって外来として認識される他の生物的な粒子に適用され得る。外来として認識されるいくつかの抗原、エピトープ、細胞、および粒子は、免疫細胞、細胞または免疫系に対して実際に外来であるが、そのように認識されない。抗原、エピトープまたは細胞に適用されるように、本明細書中で使用される用語「外来の(foreign)」は、免疫細胞、免疫細胞の組合せ、または外来としての免疫系によって認識される実体である。外来はまた、自己として認識されない任意のものである(つまり、非自己抗原など)。「外来の」という用語はまた、免疫細胞、または細胞、または免疫系によって異質として認識される他の生物的な粒子に適用され得る。異質として認識されるいくつかの抗原、エピトープ、細胞、および粒子は、免疫細胞、細胞または免疫系に実際に対して自己であるが、そのように認識されない。
【0037】
ハプテンという用語は、低分子のような当該領域において、その一般に認められた意味をとり、抗原の少なくとも1つ決定された基を有し、ハプテンは抗体と結合し得るが、ハプテンが担体分子との接合において作用しなければ、免疫原性ではない。ハプテンとしては、とりわけ、ヘモシアニン、およびニトロ−置換の芳香族環化合物(例えば、ジニトロフェニル基、トリニトロベンゼンスルフォニル基、ジニトロフルオロホニル基)が挙げられる。
【0038】
本明細書中で使用される抗体という用語は、抗体として機能する任意のタンパク質またはタンパク質フラグメントを包含することが意図され、任意のタンパク質またはタンパク質フラグメントは抗体として機能し、そして具体的には、とりわけ、Fabフラグメントを含む抗体フラグメントを包含することが意図される。
赤血球凝集タンパク質の大きな群のいづれかのレクチンは、主に植物種子中で見出された。ある種のレクチンは、ある種の血液の赤血球の凝集を起こし、他のものは、リンパ球の増殖を刺激する。
【0039】
「生物学的な系」という用語は、シグナル伝達エレメント(例えば、応答を発生させるためのシグナルレセプター、および生化学的/生物学的なエレメント)を包含する任意のインビボまたはインビトロの系をいうために本明細書中で使用される。代表的に生物学的な系は、細胞が相互作用する任意の環境の中に少なくとも1つの細胞を含む。本発明の多価のリガンドの使用の状況における生物学的な系は、リガンドと相互作用し得る少なくとも1つのレセプターを含まなければならない。多価のリガンドの大部分の適用において、生物学的な系は、リガンドに応答し得る少なくとも1つの細胞を含まなければならない。リガンドに対する細胞のこの応答は、生物学的な系の中で起こり、そして上記で述べたように、細胞内の応答、細胞間の応答、または両方の応答であり得る。生物学的な系は、例えば、組織における細胞、器官または生物における細胞、細胞の混合物における細胞、組織培養における細胞、組織または生物学的な流体のサンプルにおける細胞であり得、そしてインビボ、およびインビトロの生物学的な系を包含し得る。
【0040】
「機能的なエレメント(FE)」は、REまたはSREと異なるいくつかの生物的または化学的な機能を示す化学物質種または生物学的種(分子、基、部分など)である。FEは、例えば、多価のリガンドに対して、別の化学基または生物的基を結合するための反応基または潜在的な反応基を提供し得る。例えば、FEは、多価のリガンドを固体表面に付着するために使用され得、その固体表面は、リガンド精製のために、または解析、もしくは診断アッセイに関する適用において有用であり得る。FEは、蛍光標識、放射能標識、およびリガンドに結合される金粒子のような高密度標識(例えば、金粒子で標識したストレプトアビジン)を包含する多様な検出可能な標識、またはレポーター群であり得る。検出可能な標識、またはレポーター群を組み込む多価のリガンドは、例えば、多様な解析または診断アッセイにおいて使用され得る。特別な目的は、可視化アッセイ(例えば、顕微鏡の適用において生物的な粒子または分子の検出のため)において有用である本発明の多価のリガンドである。FEはまた、多様な生物的な機能(例えば、酵素の機能、リガンド結合の機能など)を示し、それは、選択された多価のリガンドの適用を促進または増強し得る。
【0041】
RE,SREおよび/またはFEの付着は、多価のリガンドの分子の足場とシグナル基との間を干渉しているリンカー基の使用によって促進され得る。リンカー基は、所望されるような直線状または分枝状、剛性または可撓性、親水性または疎水性であり得る。当業者は、与えられた適用のための適切な種々の化学物質種からリンカーを選択し得る。さらに、当業者は、当該分野で周知である方法および材料の観点において、所望し得る特性を有するリンカーを用いて多価のリガンドを容易に調製し得る。
【0042】
本発明の多価のリガンドは、原核生物または真核生物におけるシグナル伝達を調製するために使用され得る。その方法は、多様なシグナル伝達プロセスにおいて機能する。原核生物は、高度に保存された細胞内シグナル伝達のシステム(二成分系(two component system))を有する。この系の主要な成分は、交互のヒスチジン−アスパラギン酸キナーゼ媒介のリン酸化事象(例えば、毒性、抗生物質に対する抵抗性、環境ストレスに対する応答、および環境感知に対する応答)の数量を変化している。二成分系の成分は、原核生物において高度に保存されている。対照的に、真核生物は、シグナル伝達のための二成分系をほとんど有していないようである。この直交性は、二成分シグナル伝達経路を細菌感染の制御のための治療設計における開発の第一標的とする。真核生物の主要なシグナル伝達系は、Gタンパク質結合レセプター、および酵素結合レセプターによって媒介される(レセプターグアニリルシクラーゼ、レセプターチロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ関連レセプター、レセプターチロシンリン酸化酵素、およびレセプターセリン/スレオニンキナーゼを包含する)。これらの経路においてシグナル伝達を調製または調節するための能力は、真核生物細胞、および真核生物(哺乳動物、特にヒトを包含する)における広く多様な生物的なプロセスの制御を可能にし、そして治療剤の設計のための重要な機会を提供する。
【0043】
図1は、本発明の多価のリガンドが生物的な応答のエフェクターとして機能し得ることによるいくつかの機構を例証する。多価のリガンドは、シグナル伝達に直接関与し得るので、多価のリガンド上のSREは、細胞表面レセプターモノマーリガンドに類似に結合し、そして応答を直接的に誘導(または阻害)する。SREが、分子の足場に結合される本発明の多価のリガンドの使用は、細胞表面上のレセプターのクラスター形成、または細胞表面上のレセプターの再局在化、セカンドメッセンジャーの局在を増加し得るが、セカンドメッセンジャーの局在を促進し得るが、または単にSRE(リガンド)の濃度の局所的な増加により親和性を増加し得る。直接的なシグナルを経て機能する多価のリガンドは、多様な適用(生物膜形成の妨害、細胞移行の妨害に基づくものを包含する)において用いられ得、ワクチン、ならびに他の治療剤(癌の処置および抗生物質)のために特に興味深いものである。
【0044】
本発明の多価のリガンドはまた、別のシグナル、またはリガンドに対する細胞の応答に影響するシグナル伝達(図1を参照のこと)を直接的に関与し得る。多価のリガンドは、別のリガンドに対する増強された応答のために細胞を敏感に、または感作するために機能する。間接的なシグナル伝達効果は、細胞表面のレセプターの他の型の局在または再組織化を効果的にもたらす細胞表面のレセプターの1つの型のクラスター形成または再組織化によって媒介され得る。間接的なシグナル伝達を経て機能する多価のリガンドはまた、多様な適用、特に生物的な応答の増強に基づく適用において有用であり得、そしてワクチンアジュバント、および免疫応答の修飾因子のために特に興味深いものである。
【0045】
本発明の多価のリガンドはまた、単純に細胞への結合、または細胞の標的化において適用を有する。細胞表面のレセプター(RE)へ結合し、および機能的なエレメント(FE)を包含するための少なくとも1つの認識エレメントを包含する多価のリガンドは、そのFEを伴う細胞を標的にする。FEが標識群またはレセプター群であるなら、多価のリガンドは細胞を標識するために作用する。FEが生物的な機能を有していたら、多価のリガンドはその機能を伴う細胞を標的にする。多数のRE(SREまたは両方)を包含する多価のリガンドは、生物的なシグナル伝達機能を必要としなくてもよい巨大分子の集合において機能し得る。そのような適用において、多価のリガンドは、SREを包含する必要がなく、多価のリガンドは、細胞表面のレセプター(認識エレメント、RE)、および好ましくは多数のREに対して結合するための1を超えるの認識エレメントを包含することのみが必要である。そのような適応において、多価のリガンドは、細胞凝集をもたらす1を超える細胞に直接的、または間接的に結合する。細胞凝集は、それ自体が生物的な応答(例えば、細胞によるシグナル分子の放出)を誘発し得るが、必要としない。多価のリガンドは、細胞凝集をもたらす細胞に順に結合するレクチン(例えば、コンカナバリンA)のような多数の生化学的種に対する結合によって細胞凝集を間接的に起こし得る。間接的な細胞凝集に対する多価のリガンドの効果は、リガンドの結合価、および細胞凝集を起こす種類に対する多価のリガンドの相対的な濃度に依存する。高い結合価を伴うより高い濃度の多価のリガンドでは、細胞凝集を起こす種類の結合部位を飽和させ、細胞凝集を阻害し得る。低い濃度の多価のリガンドでは、フリーの結合部位が残り、および細胞凝集が起こり得、そして多価のリガンドによって増強され得る。従って、本発明の多価のリガンドは、細胞凝集を阻害、または促進させるために選択的に設計され得る。巨大分子の集合のために機能する多価のリガンドは、多様な適用、特に細胞凝集に基づく適用に有用であり得、これらの適用としては、診断アッセイ、癌治療、および病原体の浄化が挙げられるが、これらに限らない。
【0046】
細胞表面の上のレセプターの再組織化は、細胞移行、接着、および細胞間連結の形成を包含する多くの重要な生物的な反応に関与する。本発明の多価のリガンド、上記で議論したように、特にレセプター間の距離にまたがり得るこれらのリガンドは、レセプターを再組織化するために使用するため、およびレセプターとここのシグナルとの相互作用によって応答を調製するために使用される。細胞表面の上のレセプターの再組織化としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:表面上の異なる細胞レセプターの相対的な位置、表面上のレセプターの側方への移動、細胞表面上の異なる部位に対するレセプターの局在を変化させること、レセプターに関連するシグナル伝達の機構の近傍での変化、レセプターに関連する細胞内物質の特性の近傍の変化、レセプター、レセプターのクラスター形成の近傍の変化、レセプターの立体構造の変化、およびレセプター−レセプター相互作用の開始。
【0047】
具体的な実施形態において、本発明の直線状の多価のリガンドは、環式開口複分解重合(ROMP)によって調製される(例えば、(54)を参照のこと)。この方法は、細胞機能の多価のインヒビターを調製するために使用されている(27,28)。ROMP法は、ポリグリコマーである多価のリガンドに関連する米国特許5,587,422号により詳細に記載されている。ブロックポリマー(および、オリゴマー)を生成させるため、ならびにROMPポリマー(および、オリゴマー)上の末端基を導入するためのROMP法の改善は、両方が1999年6月17日に出願された米国特許出願第09/335,420号、および同第09/336,121号において記載されている(これらの米国特許文書は、特にROMP法の説明に関して、米国特許文書の全体が、本明細書中に参考として援用される)。スキーム6は、ROMPの基幹の改変のための例示的な方法を例証し、その方法は、本発明の多価のリガンドを合成するための上記の列挙される特許、および特許出願において記載される合成方法と組合わせて適用され得る。スキーム6は、ROMPの足場の基幹において二重結合を還元するために用いられ得るジイミド還元(23,98,99)を例証する。スキーム6はまた、OsO4が触媒したジヒドロキシル化(dihydroylation)(100,101)を使用したOH基でのROMPの足場の基幹の置換を例証する。当業者は、本明細書中での記載、および当該分野で周知の方法を用いて、本発明の多価のリガンド、特に本明細書中の式で具体的に示される多価のリガンドを調製し得る。
【0048】
ROMP法により調製される本発明の多価のリガンドは、以下の一般構造によって例示される。
【0049】
【化5】
ここで:
nは、2以上である整数であり、そしてリガンド中にある括弧において反復単位の数を示す;
点線は、随意的な二重結合を示す;
「BB」は、骨格の反復単位を示し、それは、環式または非環式であり得、そして波線は、そのBB反復単位が、骨格においてシス(cis)またはトランス(trans)の立体構造の中にあり得ることを示し、無作為な配置、またはブロック配置において同一であってもよいし、異なっていてもよい;
R1およびR2は、H、有機性基、FE基、もしくは以下の基:−L−RE−または−L−SRE−であり得、ここでFEは、REまたはSRE以外の機能的なエレメントであり、Lは随意的なリンカー基を示し、REは認識エレメントであり、そしてSREはシグナル認識エレメントである;
R4およびR5は、Hまたは有機性基である;
R6およびR7は、H,有機性基、または末端基である;
Zは、ポリマー中の他のZとは独立して、H、OH、OR8、SH、ハライド化合物(F、Br、Cl、I)、NH2、またはN(R8)2であり、R8は、Hまたは有機性基であるか、あるいはAが結合される炭素で二重結合が存在する場合、Zは不在である。
【0050】
整数nは、ポリマー中の反復単位の平均数である。代表的に、nは、約10,000に至るまでの範囲であり得るが、それは実質的な限定ではない。好ましくは、本発明の多価のリガンドにおける反復単位の数は、規定され、そして概して、2から数百、数千に至るまでの範囲であり得る。好ましい多価のリガンドは、10から約100までの範囲であるnを有する。本発明の多価のリガンドはまた、nが、10から約25までの範囲、nが25以上であるもの、そしてnが50以上であるもの、これらを包含する。ROMPは、モノマー 対 ROMP触媒(つまり、イニシエーター)の比に依存して、種々の平均の長さ(つまり、種々の重合の程度(DP))のポリマーを提供し得る。本明細書中で言及される全てのポリマーの長さ(つまり、以下のnまたはn+m)は、重合反応において使用されるモノマー 対 イニシエーター比によって予測される長さである。
【0051】
BBは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびBBの部分における1以上のCH2が、−O−、−S−、−NR9−、または−CO−で置換され得、ここでR9は、Hまたは有機性基であり得る。好ましいBBは、10以下の炭素原子を有する。
【0052】
例示的なBB反復単位としては、とりわけ、以下:
【0053】
【化6】
が挙げられる。
【0054】
REは、上記で議論されたような認識エレメントであり、その認識エレメントは、細胞レセプター、特に膜貫通レセプター、および細胞表面レセプターによって認識され、そしてこれらに選択的に結合するる多様な化学物質種、または生化学的種のいずれかであり得る。SREは、上記に議論されたようなシグナル認識エレメントであり、そのシグナル認識エレメントは、1以上の細胞によって認識され、そして細胞による生物的な応答を誘導する多様な化学物質種、または生化学的種のいずれかであり得る;「L」は、ポリマー(オリゴマー)骨格に対するRE、SRE,またはFEの共有結合のための官能基を提供し得る随意的なリンカー基である。FEは、上記に議論されるように、SRE以外の化学的、または生化学的官能基である。他のROMの足場の例は、スキーム2および3に例証される。
【0055】
上記の式のその多価のリガンドは、n個のRE,SRE,または両方に至るものを包含する。具体的な実施形態において、モノマーの全ては、REまたはSRE(RE+SREの数はn)を保有する。他の具体的な実施形態において、REもSREも保有しないスペーサーモノマーの領域は、REまたはSREを保有するモノマーの領域の間に介在する。異なるモノマーに対して結合されるそのREおよびSREは、同一であっても異なっていてもよい。1つの実施形態において、多価のリガンドの中のREまたはSREは、全て同一である。別の実施形態において、多価のリガンドは、REまたはSREの1を超える型を包含する。具体的な実施形態において、多価のリガンドは、REもしくはSREの2つの異なる型、またはREおよびSREを含む。この実施形態において、REおよびSREは、リガンドにおいて作為的に位置付けされる。好ましくは、同一のRE、または同一のSREを保有するモノマーは、多価のリガンドの中でブロック(ブロックポリマーにおけるように)へとグループ化され、そしてスペーサーモノマーは、ブロック間に随意的に位置付けされる。他の実施形態において、R1およびR2はともに、REまたはSREを形成し得る。
【0056】
REおよびSREは、細胞レセプターに結合するため、またはシグナルとして、それぞれ機能を十分に保持するように、ポリマー(オリゴマー)の骨格に結合される。与えられるRE、またはSREのために、多価のリガンドの中に結合され得ることにおいて、いくつかの方法が有り得、各々の多価のリガンドは、結合親和性において異なるRE,あるいは結合親和性、または誘導される応答のレベル、もしくは型のいずれかが異なるSREをもたらし得る。例えば、ペプチドシグナルは、ペプチドのN末端、ペプチドのC末端を経て、またはリジン側鎖のような、アミノ酸側鎖を介した結合であり得る。多価のリガンドに対するREまたはSREの結合部位は、好ましくは、結合機能(RE)の喪失を最小にするか、または結合機能(SRE)の喪失を最小にするために選択され、あるいは、結合の部位は、シグナル機能(SRE)を最大にするために選択され得る。REまたはSREは、遊離のリガンド、または遊離のシグナル(例えば、細胞レセプターに対するSREの結合親和性は、誘導される、または模倣する遊離のシグナルの結合親和性とは異なり得る)と異なる特性を示し得るにもかかわらず、リガンドとしてのREの機能シグナルとしてのSREの機能も破壊しない。REは、多様な公知の細胞レセプターのリガンドを包含し得、そして特にレクチンを包含し得る。SREとしては、具体的にモノサッカリド(例えば、グルコース、ガラクトース)、ジサッカリド、ポリサッカリド(2を超える糖残基)、誘導体化サッカリド(例えば、アシル化サッカリド、シアル化サッカリド)、ペプチド、誘導体化ペプチド(例えば、N−ホルミルペプチド)、ペプトイド、多様な化学誘引物質、および多様なエピトープが挙げられ得る。ここで留意すべきことは、特に化学物質種、または生物学的種が、細胞の1つの型、または細胞の1つの種類に対してREとして,および細胞の別の型、または細胞の別の種類に対してSREとして機能し得ることである。
【0057】
リンカーは、骨格からRE基,SRE基,またはFE基の配置を提供し得、もしくは構造的な可撓性を提供し得る。リンカーは、ポリマー中の異なるポリマーについて同一であっても異なっていても良い。RE,SRE,またはFEに対して結合するためのモノマーの足場において使用されるリンカーはまた、全て同一、または異なり得る。RE基または、SRE基の1つの型を保有する与えられる多価のリガンドにおいて、そのリンカーは、好ましくはポリマーの全体にわたって同一である。リンカーは、概して、多価のリガンドの意図される適用と適合し得るように、そしてシグナル基の機能の干渉を避けるために選択される。そのリンカーは、好ましくは直線状であり、および好ましくは1から約20の原子の長さにおける範囲である。そのリンカーは、脂環式基(シクロヘキシル基のような)を包含し得る。そのリンカーは、リガンドの骨格、およびシグナルに対して結合するための官能基を保有するアルキル鎖であり得る。そのリンカーはまた、エーテル鎖、エステル鎖、ケトン鎖、アミン鎖、アミド鎖、またはチオエーテル鎖であり得る。具体的な実施形態において、そのリンカーは、長さにおいて1から約20の炭素原子を有する直線状のアルキル鎖として記載され得、その中で1以上の隣接しないCH2基は、−O−基、−S−基、−NH−基、−NR10−基、−CO−基、−NH−CO−基,−O−CO−基、−C=C−基、または−C≡C−基(R10はアルキル基、またはアリル基である)に随意的に置き換えられる。リンカーCH2基は、ハロゲン基、アルコキシ基、またはアルキル基と置換され得る。リンカー基がない場合、そのROMP骨格またはシグナル基自体は、骨格に対するシグナルの共有結合にために官能性を提供しなければならない。例示的なリンカーとしては、スキーム3において例証されるものを包含する。
【0058】
R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9は有機基であり得る。有機基は、アルキル基、アルケニル基、およびアリール基、ならびに置換されたアルキル基、置換されたアルケニル基、および置換されたアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基、アルケニル基、およびアリール基のための置換は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、−CN、−NO2、−OH、−SH、−NH2、−N(R10)2、−SR10、および−OR10を包含する(R10はアルキル基、またはアリール基)。アリール基はまた、アリキル基置換基またはアルケニル置換基を含み得る。有機基は、代表的に1から約20の炭素原子を有し、好ましくは、1から約10の炭素原子を有する。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、または環式鎖(または、環式の部分を包含する)であり得る。アルキル基またはアルケニル基の中の1以上の隣接しない−CH2−基は、−O−、−S−、−NH−、−NR10(R10はアルキル基、またはアリール基)に置き換わり得る。
【0059】
R6およびR7は、1999年6月17日に出願された米国特許出願第09/336,121号に記載される末端基のような、末端基であり得、この米国特許出願は、ROMP法を使用する末端基を有する多価のリガンドの合成の方法の記載に関して、本明細書中でその全てにおいて援用される。末端基は、この引用した特許出願において記載されるような、潜在的な反応性基、または非反応性官能基を包含し得る。潜在的な反応性基の存在は、末端基でのポリマーの多価のリガンドの後の官能化を可能にする。末端基は、固体表面に対して結合するために官能性を包み得る。末端基は、それ自体が固体の支持材に結合され得る。潜在的な反応性基としては:アジド、ニトロ基、ジスルフィド、シアノ基、アセタール基、ケタール、カルバメート、チオシアネート、活性化エステル、または活性化酸(活性化エステル、および活性化酸は、特に求核攻撃のために活性化される適切な遊離基を包含するためである)が挙げられる。非反応性末端基としては、天然の生成物、またはそれらのアナログ(例えば、ビオチン)、金属キレート(例えば、ニトリロトリ酢酸)、金属(例えば、Zn)、および蛍光標識(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボロ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオニルエチレンジアミドであるアミド誘導体化BODIPYL FL EDA)が挙げられる。末端基はFEを包含し得る。
【0060】
多価のリガンドは、SREではない1以上の機能的なエレメントを随意的に包含する。好ましい多価のリガンドは、SREと比較して有意により少ないFEを包含する。FEは、上記に列挙される、または1999年6月17日に「末端基」として出願された米国特許出願第09/336,121号において記載される反応性基、または非反応性基のいずれかであり得、またはこれらを包含し得る。FEはまた、酵素の機能、または他のタンパク質の機能を有し得る。
【0061】
ROMP法によって調製されたとき、ともに1999年6月17日に出願された米国特許出願第09/335,420号、および同第09/336,121号において記載されるROMP法のように(それは、多価のリガンドの合成の方法のためにその全体が、本明細書中に参考として援用される)、R4およびR5は、金属カルベン触媒から誘導される(つまり、R4およびR5は、金属カルベン触媒の金属カルベン炭素上の置換置であり、そして具体的な実施形態において、R4およびR5は、Hおよびフェニル基である)。ROMPを使用するとき、R6およびR7は、代表的にキャッピング因子から誘導される(つまり、R6およびR7は、エチルビニルエーテルの場合における水素のように、電子過多のアルケンキャッピング因子上での置換置である)。
【0062】
具体的な実施形態において、本発明の多価のリガンドは、以下の式のリガンド:
【0063】
【化7】
を含む。
ここで、BB、R1−2、R4−7は、上記で規定されるとおりである。具体的な実施形態において、R1またはR2のうちの1つはHであり、およびもう1つはL−REである。具体的な実施形態において、R1またはR2のうちの1つはHであり、およびもう1つはL−SREである。具体的な実施形態において、REは、レクチン、またはレクチンの中に包含される細胞レセプターのリガンドである。具体的な実施形態において、SREは、モノサッカリド、ジサッカリド、または約10糖残基までを有する比較的短いサッカリドである。他の具体的な実施形態において、SREは、ペプチドまたは誘導体化ペプチドである(例えば、N−ホルミルペプチド)。
【0064】
別の特定の実施形態において、本発明は、以下の式の多価リガンドに関する:
【0065】
【化8】
ここで、破線は、任意の二重結合を示し、そしてここで、Y(他のモノマー中のYとは独立して)、R1〜2(他のモノマー中のR1〜2とは独立して)、およびR4〜7は、上記に定義したとおりである。特定の実施形態において、Yは、−CH2−である。特定の実施形態において、R1またはR2の一方は、Hであり、そしてR1またはR2のもう一方は、−L−REである。特定の実施形態において、R1またはR2の一方は、Hであり、そしてR1またはR2のもう一方は、−L−SREである。R1またはR2は、一緒に−L−REまたは−L−SREを形成し得る。なお他の実施形態において、SREは、ペプチドまたは誘導体化されたペプチドである。二重結合が存在しない場合、環状炭素が、代表的に、さらなる水素を保持するが、これは、他の官能基(例えば、R1またはR2基のいずれの機能をも干渉しない1〜6個の炭素を有するアルキル基またはハロゲン化物)で置換され得る。
【0066】
なお別の特定の実施形態において、本発明は、以下の式の多価リガンドに関する:
【0067】
【化9】
ここで、mは、第一のSRE(SRE1)を保持するモノマーの数であり、nは、第二のSRE(SRE2)を保持するモノマーの数である。L1およびL2は、上記のようなリンカーであり、これらは、同じであっても異ってもよい。すべて他の変数は、以前の式で定義されたとおりであり、破線は、任意の二重結合を示す。mおよびnの両方は、最も一般的には、1〜約10,000までの範囲にあり得る整数であるが、これらは、より代表的には、1〜数百または数千の範囲にある。mの値は、nの値と同じであっても異なってもよい。好ましいリガンドにおいて、n+mは、5以上から約200の範囲にある。本発明の多価リガンドとしては、n+mが、約10と25との間の範囲にあるリガンド、n+mが25以上であるリガンド、n+mが50以上であるリガンド、およびn+mが100以上であるリガンドが挙げられる。
【0068】
他の例示的な多価リガンドとしては、以下の式のリガンドが挙げられる:
【0069】
【化10】
であって、ここで、n、mおよびpは、3より大きい値を有する整数であり、そして他の変数は、上記に定義したとおりである;および
【0070】
【化11】
であって、
ここで、n、m、pおよびxは、各々1より大きい値を有する整数であり、そして他の全ての変数は、上記に定義したとおりである。これらの式の多価リガンドは、同じREまたSREを有するモノマー領域の複数のブロックを含む。これらの式の多価リガンドは、1つのREまたはSREを含むモノマー領域の複数ブロック、および別のREまたはSREを含むモノマー領域の複数ブロックを含み得る。これらの式の多価リガンドはまた、REもSREも保持しない介在するスペーサー領域と共に、REまたはSREを保持するモノマー領域の複数のブロックを含み得る。
【0071】
本発明の多価リガンドは、生物学系における化学シグナルの効果を制御または調節するための方法において有用である。細菌性または真核生物細胞性の走化性、白血球(特に好中球)の移動、B細胞およびT細胞の免疫応答、細胞凝集、およびアポトーシスのシグナル伝達への多価リガンドの適用を、本明細書以下に例示する。
【0072】
細菌性化学誘引物質(bacterial chemoattractants)を保持する本発明の多価リガンドは、細菌による集落形成または生物膜(biofilm)形成を破壊するために用いられ得る。走化性は、その宿主への細菌集落形成を容易にする毒性因子である。宿主組織の集落形成の破壊は、宿主−細菌の相互作用を妨げ、集落形成を防げ、そして感染を阻害または遅延する。本発明の方法は、例えば、Staphylococus aureus(ブドウ球菌感染の処置のため)およびVibrio cholerae(コレラの処置のため)による集落形成の破壊に特異的に適用され得る。細菌の生存機構の一つは、機能的異質性(生物膜)を有する微小群集(microcommunities)の形成を包含する。生物膜の形成および維持は、可溶性の低分子に基づく因子によって調節される。これらの因子は、細菌にそれらの環境を感知させるシグナル伝達経路を制御し、そして生物膜形成への変換は、2成分のシグナル伝達系によって媒介される。生物膜形成の破壊は、細菌に宿主の防御および抗生物質処置に対するより高い感受性を与え、そして感染を阻害または遅延させ得る。生物膜形成を破壊する多価リガンドは、肺の感染の予防または処置(例えば、日和見病原体であるPseudomonas aeruginosaによる肺感染を処置または予防するため)に特に有用であり得る。この生物による感染は、嚢胞性線維症を有する患者を死にいたらしめる。細菌生存の別の機構は、細菌細胞密度の増加に際するビルレンス応答の誘導である。このビルレンス応答は、細胞密度の増加が感知される場合に、可溶性因子の放出によって誘導される。本発明の多価リガンドによる細胞密度の増加に対する細菌の応答の破壊は、細菌のビルレンスを制御するために用いられ得る。例えば、この方法は、Staphylococus aureusのビルレンスの制御に適用可能である。
【0073】
本発明の多価リガンドは、Trypanosoma cruzi(シャーガス病(chuga disease))、Trypanosoma brucei(睡眠病)、サナダムシ、鉤虫、およびPlasmodium falciparum(マラリア)等を含む、真核生物性の病原菌および寄生生物による感染を破壊するために同様にして用いられ得る。
【0074】
本発明の多価リガンドは、エピトープおよび抗原に対する免疫応答を(例えばこれらの種の免疫原性を調節することによって)調節するために用いられ得る。例えば、多価リガンドは、白血球の応答(移動を含む)を刺激または阻害するために設計され得る。このような応答の刺激は、感染の除去および処置のために非自己の細胞の認識を増強するために設計され得る。多価リガンドはまた、所望の免疫反応を改善および増強するための化学シグナルに応答してB細胞またはT細胞の活性化および/または不活性化を調節するために設計され得る。B細胞およびT細胞は、本発明の多価リガンドで、インビトロ、インビボおよびエキソビボで処置され得る。
【0075】
自己免疫疾患は、自己の細胞が排除に対して誤って標的される、細胞シグナル認識プロセスの異常な機能を含む。免疫系細胞のエピトープに対する細胞応答を調節する本発明の多価リガンドは、自己免疫疾患を阻害または減弱するために使用され得る。特定の実施形態において、「非−自己」として誤って認識される自己エピトープおよび特定のB細胞またはT細胞エピトープを保持するリガンドが、自己免疫応答を改善するための寛容プロセスに用いられ得る。
【0076】
本発明の多価リガンドはまた、所望でない細胞増殖(癌)および所望でない細胞移動(転移)の処置への適用も有する。癌細胞は、癌細胞と非癌細胞とを区別する明確な表面の特徴(例えば、エピトープ)を有する。本発明の多価リガンドは、癌細胞が免疫系によって排除されるように、免疫系による非−自己細胞としての癌特異的エピトープの認識を増強するよう設計され得る。癌細胞エピトープおよびB細胞またはT細胞のエピトープを保持する多価リガンドは、癌細胞の排除を増進するための感作プロセスに用いられ得る。癌転移は、異常な細胞移動である。癌細胞の運動、接着および結合形成は、少なくとも部分的に、癌細胞と多価細胞外マトリックスとの相互作用によって媒介される。多価リガンドは、運動、接着および結合形成を阻害または防止し、従って転移を阻害するように設計され得る。
【0077】
本発明は、ヒトにまたは獣医学での使用に適応される薬理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤との組み合わせで、治療的利益を提供するように選択されたSRE基を有する多価リガンドを含む薬学的組成物および治療的組成物を提供する。多価リガンドは、所望の薬学的応答を達成するために互いに合わされ得るか、または他の公知の薬物または治療剤(抗細菌剤および他の抗微生物剤が挙げられるが、これらに限定されない)と組み合わせて投与され得る。多価リガンドは、所望の治療的利益を得るのに十分な量で薬学的組成物に存在するか、または所望の治療的利益を得るのに十分な組み合わせの量で他のリガンド共に薬学的組成物に存在する。キャリアまたは賦形剤は、所望の投与手段との適合性のために、選択された多価リガンドとの適合性のために、および患者に対する有害な効果を最小化にするために、当該分野で公知のように選択される。
【0078】
本発明はまた、本明細書中に記載される種々の式および構造の多価リガンドの薬学的に受容可能なエステルおよび塩に関する酸付加塩は、塩基性基をその中に有する化合物を酸と接触させることによって調製され、この酸のアニオンは、ヒトまたは動物の消費に適切であると一般的に考えられている。薬理学的に受容可能な酸添加塩としては、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、および酒石酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。全てのこれらの塩は、従来の手段で、例えば、選択された酸を選択された塩基化合物と反応させることによって調製され得る。塩基付加塩は、酸性基をその中に有する化合物を陽イオンの塩基と接触させることによって同様に調製され、この塩基のカチオンは、ヒトまたは動物の消費に適切であると一般的に考えられている。薬理学的に受容可能な塩基付加塩としては、アンモニウム塩、アミン塩、およびアミド塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の化合物の薬学的に受容可能なエステルは、従来の方法で、例えば、選択された酸との反応によって調製される。薬学的に受容可能なエステルとしては、カルボン酸エステルRECOO−D(ここで、Dは、本発明の化合物のカチオン状態であり、そしてREは、H、アルキルまたはアリール基である)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明はまた、多価リガンドおよび誘導体のプロドラッグに関し、これらは、代謝される際に本発明の任意の多価リガンドを生じる。不安定な置換基は、代謝される際に除去され得る、従来の薬学的に受容可能な保護基を用いて保護され得る。薬学的に活性な化合物は、長期の代謝半減期を提供するために、所定のキャリアにおける溶解度を高めるために、ゆっくりした放出または時限放出(timed−release)を提供するかまたは容易にするために、あるいは他の薬物輸送特性を増強するかまたはこれらに影響を与えるために、従来の方法によって誘導体化され得る。
【0081】
本発明に従う多価リガンドは、経口投与、口腔投与、非経口投与、局所的投与または直腸投与のために処方され得る。特に、本発明に従うリガンドは、注射または注入のために処方され得、そしてアンプル中にかまたはさらなる保存剤を含む複数回用量の容器中に、単位投薬形態で提示され得る。これらの組成物は、油性または水性ビヒクル中で、懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態を取り得、そして懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような処方剤を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に(例えば、滅菌された発熱物質フリーの水)適切なビヒクルで構成するための粉末形態であり得る。
【0082】
本発明に従う薬学的組成物はまた、抗微生物剤のような他の活性成分または保存剤を含み得る。一般的に、本発明の薬学的組成物は、0.001(重量)%〜99(重量)%の本明細書に記載された1以上の多価リガンドを含み得る。
【0083】
注射または注入による投与のために、およそ70kgの体重の成体ヒトの処置のために使用される一日の投薬量は、例えば、投与経路および患者の臨床状態に依存して、0.2mg〜10mg、好ましくは0.5mg〜5mgの範囲であり、これは、1〜4用量で投与され得る。これらの処方物はまた、投薬単位の処方物を包含する。これは、これらの処方物が、例えば、錠剤、糖衣剤、カプセル、キャプレッツ(caplets)、丸剤、座剤またはアンプルのように、個別の薬学単位の形態で存在することを意味する。各単位の活性化合物含量は、1個体の用量の一部かまたは複数の個体用量である。投薬単位は、例えば、1/2、1/3または1/4の個体用量について1、2、3または4個の個体用量を含み得る。個体用量は、好ましくは、一回の投与で与えられ、そして通常には1日の用量の全量、半分、3分の1または4分の1に対応する量の活性化合物を含む。特定の多価リガンドの予防学的または治療学的用量の程度は、勿論、処置される状態の重篤度、特定リガンド化合物およびその投与経路の特性により変化し得る。これはまた、個々の患者の年齢、体重および応答に従って変化し得る。
【0084】
本発明の化合物は、好ましくは、投与前に処方される。本発明の薬学的処方物は、周知かつ容易に入手可能な成分を用いて公知の方法によって調製される。本発明の組成物を調製する際に、活性成分は、通常、キャリアと混合されるか、またはキャリアで希釈されるか、あるいはカプセル、小包(sachets)、紙または他の容器の形態でなり得るキャリア内に封入される。キャリアが希釈剤として作用する場合は、それは、固体、半固体または液体物質であり得、それらは、活性成分のためのビヒクル、賦形剤または媒体として作用する。この組成物は、錠剤、丸剤、粉末、ロゼンジ、小包、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてかまたは液体溶媒中に)、軟膏剤(例えば、10重量%までの活性化合物を含む)、軟質および硬質ゼラチンカプセル、座剤、滅菌注射用溶液および滅菌され密閉された粉末の形態中で存在し得る。
【0085】
適切なキャリア、賦形剤および希釈剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシ安息香酸塩およびプロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油が挙げられる。これらの処方物はさらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、保存剤、甘味剤または香味剤を含み得る。本発明の組成物は、当該分野で周知の手順を用いることによって、患者への投与後に活性成分の迅速な、持続的なまたは遅延された放出を提供するように処方され得る。
【0086】
組成物は、好ましくは、単位投薬形態で処方され、各投薬量は、約0.5mg〜約150mg、より通常には約0.1mg〜10mgの活性成分を含む。用語「単位投薬形態」とは、ヒト被験体または他の哺乳動物に対する単位投薬量として適切な物理的に別個の単位をいい、各単位は、適切な薬学的キャリアと共に、所望される治療効果を生じるように計算された予め決められた量の活性物質を含む。
【0087】
本発明はさらに、本発明の薬学的組成物から治療的利点を誘導し得る個体へ、本発明の薬学的組成物を投与する工程を包含する治療方法に関する。
【0088】
本発明の多価リガンドは、非治療的な適用(例えば、選択された環境における生物付着(biofouling)の防止および阻害、または選択された環境での所望でない細胞の排除)に使用され得る。このような非治療的な使用のための本発明の組成物は、所望の機能を得るのに有効な(例えば、サンプルまたは生物学的な系において細菌性もしくは微生物性の走化性に影響を及ぼすのに有効であるか、または細胞を凝集するのに有効である)量あるいは組み合わせの量で、本発明の1以上の多価リガンドを含有する。組成物は、所望される機能が維持される限り、任意の適切な溶媒またはキャリア系(これは、水溶液、凍結乾燥化または噴霧凍結化された物質であり得る)を用いて処方され得る。
【0089】
以下の実施例は、本発明をさらに例示し、そしてさらに説明するが、本発明を制限することを全く意図されない。
【0090】
(実施例)
(細菌の走化性の調節)
細菌の走化性へと導く分子的な事象は、十分に研究されており、そしてこのプロセスは、レセプター媒介性応答の一般的なモデルとして使用されてきた[29〜32]。Escherichia coliでの走化性の間、化学誘引物質(例えば、糖およびアミノ酸)ならびに化学忌避物質(chemorepellent)は、この細菌の形質膜上の特異的レセプタによって認識される[33]。多価リガンド活性のこれらの研究のために、ガラクトースをモデル化学誘引物質として選択した。関連化合物であるβ−メチルガラクトピラノシドもまた化学誘引物質であり、このことは、ガラクトースのアノマー炭素に置換基が結合してもその走化性活性は失われないことを示している[34]。この観察は、ガラクトース残基がアノマー性リンカーを介して結合され得、多価的な提示を生み出すことを示唆する。ガラクトース媒介性シグナル伝達のために、サッカリドは、ペリプラズムの可溶性グルコース/ガラクトース結合タンパク質(GGBP)に結合しなければならず、このタンパク質は、次いでガラクトースを感知するケモレセプターであるTrgと相互作用する[34、35]。Trgへのガラクトース−GGBPの結合は、シグナル経路を開始し、その結果、鞭毛の回転の向きが逆転し、この細菌を栄養素に向かって遊泳させる[29、30、36]。
【0091】
細菌の走化性は、広い動的範囲を備える極めて高感度な感知系を必要とする。それらのケモレセプターを介して、細菌はかなりの規模にわたってリガンド濃度の非常に小さな変化を検出し得る[37、38]。この顕著な特質を説明するためにBrayらによって提唱された最近の数学的モデルは、シグナル変換がケモレセプターの側方向性のクラスター形成の変化によって調節されていることを示唆する[39〜41]。このモデルにおいて、細菌のケモレセプターのクラスターは、レセプターのクラスターが個々のレセプターよりもシグナルの産生において活性となるように、リガンド結合情報を交換する[39、41]。異なる原子価を有する本発明の多価リガンドは、このレセプターを示差的に再編成し得、そして、こうして走化性応答の調節を生じ得る側方性のレセプターの組織化を制御する。
【0092】
規定された種々の原子価を有するガラクトース保有リガンド1〜4は、ROMP法(スキーム1)を用いて生成された。多価リガンドのガラクトース残基は、短いリンカーを介して分子骨格(ポリマー性バックボーン)に結合される。モノマー1の相互作用は、少なくともインビトロの結合アッセイにおけるガラクトースの相互作用と同程度に有利であり、従ってリンカーの結合は、精製されたGGBPへのガラクトース結合を防止しなかった。
【0093】
ガラクトースで官能化されたリガンド(例えば、一価リガンド1および多価リガンド3)もまた、誘引物質としてインビボと同じように作用する。これは、これらのリガンドへのE.coliの行動応答をモニターすることによって証明された。E.coliの運動行動は、二つの様式(ランニング(running)およびタンブリング(tumbling))で生じる。これらは、鞭毛の回転の方向、および、究極的には、ケモレセプターとリガンドとの相互作用に起因するシグナル変換応答によって規定される[42]。誘引物質の存在下の細菌は、少ないタンブリング頻度で延長されたランニング応答を起こす[42、43]。タンブリング頻度に対する合成リガンドの効果を観察するために、Sagerらの方法[44]を用いて、E.coliを、ガラクトースまたはガラクトース保有リガンドで処理し、そして細菌の運動を記録および分析した。タンブリング頻度は、誘引物質の添加後初めの5〜15秒間で得られた経路の平均角速度(mean angular velocity)を平均化することによって評価された(図2A)。細菌を、漸増濃度のガラクトースで処理する場合、平均角速度は減少し、これはランニング応答を示す。図2BからEは、緩衝液単独、ガラクトース、化合物1および化合物3で処理された代表的な細菌についてのサンプル経路を例示している。一価化合物1による処理は、遊離の化学誘引物質(ガラクトース)の処理と同様の効果を生み出し、このことは、化合物1におけるアノマー性置換基が走化性活性を妨げなかったことを示している。多価化合物3は、一価化合物1または修飾されていないガラクトースよりも活性であった。多価化合物3は、非常に低いサッカリド残基濃度(例えば、0.001mM)でさえ低い平均角速度を誘導した。0.1mMのサッカリド残基濃度(約0.004mM濃度)での化合物3に対する細菌の応答は、10倍高い未修飾ガラクトース濃度(1mM)で得られた応答に匹敵した。モノマー1と多価化合物3との間において最大活性の濃度において観察された差異は、リガンドの原子価が、走化性活性に影響を及ぼすことを証明している。
【0094】
E.coliを毛細管蓄積アッセイ(capillary accumulation assay)[45]において化合物1〜4の濃度勾配に供し、最大走化性応答が達成される濃度、および、この最大値で蓄積する細菌数を決定した[34]。
【0095】
化合物1〜4を、毛細管蓄積アッセイにおける誘引物質として使用した場合、オリゴマー2は、一価化合物1と同様に活性でなかった;両者は、1mMで最大走化性応答を誘発した(図3A)。化合物2は、このレセプターに対してガラクトースの局所的な高濃度を示した。しかし、化合物1および化合物2についての活性の類似性は、誘引物質の局所高濃度が、単独では走化性活性の増加を生じさせないことを示している。化合物3および4について、最大走化性の濃度は、有意に低く、化合物3についての最大は、0.25mMのガラクトース残基濃度(約0.01mMのリガンド濃度、遊離のガラクトースの1/100倍)においてであり、そして化合物4についての最大は、0.10mMのガラクトース残基濃度(0.0002mMのリガンド濃度)においてである。化合物3および4の最大走化性の濃度は、それぞれ、遊離のガラクトースの1/100倍および1/5000倍であった(図3B)。従って、より高い原子価を有するリガンド(化合物3および4)は、極めて低濃度で走化性を誘導し得る。
【0096】
走化性のレセプターは、おおよそ90Å離れていることが見出された[46]。分子モデリング研究は、オリゴマー2の最大長は、おおよそ50Åであることを示している[23]。オリゴマー2の長さと比べてより長いオリゴマー3および4の有意に高い能力は、長いオリゴマーが走化性レセプターをクラスター化する能力に起因すると考えられる。化合物1は、E.coli変異体であるggbp(AW550およびAW543)またはtrg(AW701)に対する化学誘引物質ではかった。この得られた結果は、リガンド1から4はガラクトース感知機構を介して走化性に影響を及ぼすように特異的に作用することを示した。
【0097】
化合物1〜4を用いたアッセイで蓄積したE.coliの数(図3Aおよび3Bを参照のこと)は、ビデオアッセイ(図2Aを参照のこと)において観察されたこれらのリガンドの効力にもかかわらず、ガラクトースが誘引物質として使われた場合の数(120,000細菌[34])よりも少ない。毛細管蓄積アッセイは、収集のために毛細管へ移動するための細菌の適切な再配向に依存する。これらのリガンドの効力は、細菌が再配向する能力を破壊し得、蓄積した見かけの細菌数を減少させる。多価リガンドの所定のサッカリド残基濃度において、少数の分子は、レセプターを活性化するように提示される。そして、これらの分子は外膜を横断しなければならない。この系のこれらの特徴はまた、蓄積する細菌数の減少を担い得る。
【0098】
走化性活性において観察された原子価依存的な差異の普遍性を試験するために、そして本発明者らのリガンドに対する応答における膜透過性の役割を研究するために、B.subtilisにおける走化性実験を行った。B.subtilisは、グラム陰性E.coliと同様に、サッカリド化学誘引物質に応答し得るグラム陽性細菌である[47、48]。B.subtilisの場合、多価リガンドは、初めに外膜を横切る必要はなく、直接的にサッカリド感知レセプターと相互作用し得る。グルコースは、B.subtilisに対する化学誘引物質である[47]が、ガラクトースはB.subtilisに対する化学誘引物質ではない。グルコース保有リガンド(化合物5〜7、スキーム1)は、毛細管蓄積アッセイにおいて示されているように、B.subtilisに対する有効な化学誘引物質であった。さらに、グルコース保有リガンドへの走化性応答は、リガンドの原子価にも依存することが示された。図4で示されているように、モノマー5は1mMで最大活性を誘発し、一方オリゴマー6は、サッカリド残基濃度0.1mM(遊離グルコースの1/50倍のリガンド濃度)で最大活性を誘発し、そしてオリゴマー7は、サッカリド残基濃度0.01mM(グルコースの1/1250倍のリガンド濃度)で最大活性を誘発した。遊離の化学誘引物質シグナルであるグルコースは、0.5mMで化学誘引物質として最大活性を有した。E.coliとの観察と類似して、リガンドの原子価の増加とともに、最大走化性でのサッカリド残基濃度は減少する。重要なことに、オリゴマー5〜7に対して蓄積した細菌の数は、未修飾のグルコースが誘引物質として使用された場合に蓄積した数に匹敵した。ガラクトースの活性に関する以前の報告と一致して、ガラクトース保有リガンド(例えば、1)は、B.subtilisに対する化学誘引物質ではなかった[47]。このことはさらに、多価リガンドが特異的に作用したことを示している。観察されたこの結果は、進化的に分岐した細菌であるE.coliおよびB.Butilisにおいて、誘引物質の原子価は走化性応答に影響を及ぼすことを示す。
【0099】
サッカリド保有リガンドでの処理に際した走化性レセプターの構築化の変化を可視化するために、蛍光顕微鏡実験を行った。これらの実験は、多価リガンドがケモレセプターの再構築に影響を及ぼし得るか否かを直接的に決定し得る。野生型E.coliはそれらの極にケモレセプターを局在し、そして構造タンパク質であるCheWの不活性化は、細胞におけるケモレセプターのランダムな配置を生じさせることが示された[49]。ケモレセプターを局在化させるROMP由来のアレイの能力を、E.coli cheW変異体を用いて実験した。細菌を化合物1、3、または4で処理し、固定し、細菌性ケモレセプターに対する抗体(抗Tsr)で標識した。一価化合物1は、レセプターの分布に影響を与えなかったが、多価化合物3および4は、ケモレセプターの再組織化することが観察された。予期されたように、cheW細胞の局在化したレセプターは、見掛け上ランダムな位置で生じた。これは、野生型細菌において観察された極性のある局在化とは対照的である。レセプターのクラスター化は、化合物3よりも長いオリゴマーの4で処理された細胞の場合には、より明確になった。これらの実験の結果は、ROMP由来の多価化合物はレセプターの側方性再構築を誘導し得ることを示している。オリゴマーの長さの関数として多価リガンドの走化性活性において観察された差異、およびROMP由来の多価リガンドがレセプターの側方性の再構築を誘導し得るという観察は、レセプターの再構築が走化性応答の媒介に関与するという結論を支持する。この結果はさらに、レセプター局在化の変化が、走化性応答の変化を生じさせ得ることを示す。
【0100】
細菌の膜のケモレセプターの組織化を変える多価リガンドの能力を確認するために、E.coliを、蛍光標識を有するガラクトース保有多価リガンドである化合物8で処理した(スキーム1)。E.coliを化合物8またはフルオレセイン標識−抗Tsr抗体で処理した場合、観察された蛍光パターンは類似していた。両物質は細菌の極で結合することが観察され、これは、ROMP由来のリガンドが細菌性のケモレセプターに特異的に結合することを示している。レセプターを再構築するこれらの多価リガンドの能力に直接取り組むために、CheW変異体を両化合物で処理した。図6で例示するように、化合物8と共存する抗Tsr抗体標識化ケモレセプターの斑点を観察した。この結果は、多価リガンド8は細胞レセプター組織化において観察された変化を担うことを示している。
【0101】
この得られたデータは、多価リガンドが細胞表面のケモレセプターの組織化を変えることによって、走化性応答に影響を及ぼすことを示す。他の観点は、これらの変化が、多価提示に起因する機能的な親和性の増加に由来するというものである。このメカニズムは可能ではあるが、リガンドの親和性変化と走化性活性とを関連付ける証拠はない。様々なリガンドについての結合平衡定数は、しばしば、細菌の走化性アッセイにおいてリガンド活性と相関しない[34、35、50、51]。これとは逆に、多くの研究によって、走化性におけるレセプターの局在化が関連付けられている[38〜41、46、52]。例えば、アセンブルされたケモレセプター四量体Tarは、個々のレセプターまたは二量体よりもインビトロのシグナル伝達において活性であることが示された[53]。本データおよびこれらの結果を合わせると、一価化合物1対多価化合物3および4に対する走化性活性の差異は、レセプターのクラスターの原子価を制御するその能力に起因することを示唆する。これらの結果に基づいて、クラスターへさらなるレセプターを(図7A〜Dに例示されているように)組み込むことによって、リガンド原子価の系統的な増加が走化性応答の変化を導くというメカニズムが、提唱される。
【0102】
リガンドの密度または間隔とは異なり、リガンドの原子価のみ異なる合成分子をROMPを使用して作製することによって、リガンドの原子価は、ケモレセプターを組織化するその能力およびこれらのレセプターから走化性応答を引き出すその能力に影響を与えることが、示された。この結果は、本明細書に記載されているような異なる原子価(機能的部分の異なる数または規定された数)を保有する多価リガンドは、レセプターの組織化における変化を通して細胞応答を調整するために使用され得ることを証明する。さらに、リガンドの原子価は、多種の細菌(E.coliおよびBacillus subtilisの両方)の走化性応答を調整するために用いられ得、このことは、本発明の方法が一般的に多種の細胞型に適用可能であることを示している。多価アレイへのROMPに基づく合成経路は一般的であり[54]、そしてこれは、様々な多価リガンドまたはアレイを生成するために使用され得る。このアレイは、細胞レセプター(細胞表面レセプター、膜貫通レセプターおよび細胞質レセプター)に結合する種々の型および数の化学シグナルを有し、そしてレセプターの側方性再組織化により媒介されるように、結果的に、生物学的な応答を誘発する。多価リガンドに共有結合したシグナルの型の制御およびこのリガンドに存在するシグナルの間隔および数の制御は、誘発される応答の型および大きさを調整するために使用され得る。
【0103】
1種類のレセプターに結合する多価リガンドは、リガンドが別種のレセプターに結合することによって誘導される生物学的応答に影響を与え得ることもまた、見出された。セリンは、E.coliのような細菌に対する化学誘引物質として作用する(ガラクトースに加えて)別の低分子である。E.coli細胞をガラクトースSRE保有多価リガンドである化合物2および3と初めに接触させ、2分間の適応期間後、多種の濃度のセリンを加えた。平均中間速度(度(deg)/フレーム(frame))(図5AおよびBを参照のこと)として測定した場合、多価リガンドの非存在下におけるセリンと比べて多価リガンドの存在下において、セリンの化学誘引物質としての効果は、約30%増強された。多価リガンドによるガラクトース結合細胞レセプターのクラスター化は他の化学誘引物質であるセリンへの細胞応答の増強を引き起こすと、考えられる。図1を参照のこと。
【0104】
(好中球の走化性の調節)
好中球の移動は、細胞移動の例である。好中球は、多くの異なる内因性および外因性物質に向かって移動する。N−ホルミルペプチドは、好中球に対して化学誘引物質[65]となる一種の外因性物質であり[65]、これは、産物による細菌性の転写物である。好中球は、化学誘引物質に結合し、かつ化学誘引物質の濃度勾配の漸増を感知し得る細胞表面レセプターを有する。例えば,好中球は、化学誘引物質の高い濃度の方向へ移動することによって、感染部位に好中球を誘導することにより、化学誘引物質に応答する。加えて、そのような化学誘引物質に対する応答においてまた、好中球は、他の細胞、特に免疫系の他の細胞の応答に影響を与える細胞間シグナルを放出する。本発明の多価リガンドは、化学誘引物質に対する好中球の応答を増強するために、および感染性因子の免疫系によるクリアランスを増強するために使用され得る。スキーム2は、好中球の移動を調節する多価リガンドの使用のための、例示的なN−ホルミルペプチド20および例示的なN−ホルミルペプチド21に対する例示的なSREを例示する。これらのシグナル基(SRE)は、スキーム2[化合物22および23]に例示されているようなROMP骨格に共有結合的にまたは非共有結合的に結合され得る。スキーム3は、N−ホルミルペプチド保有多価リガンドに使用され得る例示的なリンカーを提供する。
【0105】
(免疫プロセスの調節)
免疫応答の発達は、本発明の多価リガンドと免疫系細胞との原子価依存的な相互作用を介して調節され得る。免疫系によるクリアランスのための外来(非−自己)エピトープ、細胞、ウイルスまたはウイルス粒子の認識は、エピトープ、細胞、ウイルスまたはウイルス粒子を外来物質として認識する細胞レセプターに部分的に基づく。外来シグナルは、クリアランスが生じるために認識されなければならず、そして外来シグナルに対するB細胞またはT細胞応答がなければならない。適切な免疫応答は、B細胞およびT細胞の活性化とそれに続く不活性化を必要とする。B細胞およびT細胞におけるレセプターのクラスター化は、免疫応答の産生に関連付けられている。
【0106】
一以上のREまたはSRE(これを通してリガンドがB細胞、T細胞または他の免疫細胞に結合し得る)を有し、かつ一以上の抗原、エピトープを有する本発明の多価リガンドは、免疫細胞の応答を調節する(抗原またはエピトープの免疫原性を増強または減少する)ために使用され得る。エピトープまたは抗原が、免疫細胞または免疫細胞が見出される免疫系によって外来物質(非−自己)と認識される場合、多価リガンドは、エピトープまたは抗原に対して免疫細胞または免疫系を寛容化するために使用され得る。この場合、エピトープまたは抗原は、有益な種または臨床的な種(細胞、粒子、核酸)または誤って外来物質(非−自己)として認識される自己細胞(または組織)のものである。これとは逆に、本発明の多価リガンドは、外来エピトープまたは抗原に対する免疫細胞または免疫系の感受性を感作または増加させるために用いられ得る。こうして、その免疫原性が高められ、そして外来エピトープまたは抗原に対する免疫応答を高める。この方法は、有用ではなかった(例えば、病原体に関連した)外来エピトープまたは抗原を用いて使用される。エピトープまたは抗原が、免疫細胞または免疫細胞が見出される免疫系によって自己として認識される場合、多価リガンドが、自己エピトープまたは抗原に対して免疫細胞または免疫系を感作するために使用され得る。この場合、このエピトープまたは抗原は、有用ではない自己細胞または高分子(例えば、癌細胞)のものであり得るか、または誤って自己として認識された外来エピトープまたは抗原であり得る。これと対照的に、本発明の多価リガンドは、誤って外来物質として認識された自己エピトープまたは抗原に対して免疫細胞または免疫系を寛容化するために使用され得る。寛容化および感作化の方法は以下に詳細に例示される。
【0107】
C3d補体フラグメントは、B細胞のCR2レセプタ−(CD21/CD19複合体)に結合する。クローン化されたC3d遺伝子フラグメントと鶏卵リゾチーム遺伝子のC末端領域の融合による融合産物の発現は、免疫原性を、強力なアジュバンドと組み合わせられたリゾチームで達成されたレベルよりも有意に(1,000倍)増加させ得た[62]。スキーム4は、異なるシグナルを選択的に共有結合させることによって、ROMPポリマー29から調製された二つの異なるシグナル群30を含む例示的な多価リガンドを例示する。シグナルの一つは、鶏卵リゾチーム(HEL)ペプチド(A20細胞株に特異的):103〜117NGMNAWVAWRNRCKG(配列番号:1)[63]であり、もう一方は、CR2への結合に関与する16マーのC3dペプチド:KNRWEDPGKQLYNVEA(配列番号;2)[62]である。このHELペプチドは、このペプチドの末端付近のリジン側鎖[41]、またはこのペプチドのN末端のアミンに位置するこのポリマーの骨格[40]に結合し得る:
40:*GDGNGMNAWVAWRNR−CONH2(配列番号:3)または、
41:DGNGMNAWVAWRNRGK*−CONH2(配列番号:4)
ここで、*は接着部位を示す。C3dペプチドは、ペプチド(42および43)のいずれかの末端に位置するシステインのチオールを介して多価リガンドに結合し得る:
42:*CKNRWEDPGKQLYNVEA(配列番号:5)または
43:KNRWEDPGKQLYNVEAC*(配列番号:6)。
【0108】
シグナル41を単独、または42もしくは43との組み合わせにおいてか、あるいは40を単独または42もしくは43との組み合わせにおいて含む多価リガンドは、HELそれ自体と比較して増強された免疫応答を誘導し得る。CR2レセプターに対するリガンドである複数のペプチドエレメントを含む多価リガンドは、B細胞の表面にあるCR2レセプターをクラスター化し得、そして走化性実験において証明された様にB細胞の他のリガンド(例えば、抗原)に対する応答を増強し得る。1以上の結合抗原と組み合わせて1以上の結合CR2リガンドを含む多価リガンドは、抗原を認識するレセプターを有するCR2レセプターをクラスター化し得、そしてそれにより、抗原に対するB細胞の応答を増強する。B細胞表面のHEL(例として)を認識するレセプターを有するCR2のクラスター化は、HEL抗原に対するB細胞の応答を増強し得、そしてHELエピトープに対する免疫応答の増強を生じ得る。この種の多価リガンドの構築において使用され得る別の鶏卵リゾチームペプチドは以下である:
44:ELAAAMKRHGLDNYRGYSLGNWVCA(配列番号:7)。
【0109】
CD22は、細胞接着および活性化に関与するB細胞表面糖タンパク質である[64]。CD22は、B細胞抗原レセプターのシグナル伝達において負の調節に重要である[74]。CD22によって認識される構造は、Sial2a6Galβ14GlcNAcβ(スキーム5、化合物50)である。このシグナルは、第一チオール基(化合物51)を介してスキーム5に例示されているようにROMPポリマーの骨格に結合され得る。1以上のHELエピトープと組み合わせてCD22(例えば、化合物51)に対する1以上のリガンドを有する多価リガンドは、HELエピトープ(例えば、42または43)に対する免疫応答を減弱させる。
【0110】
(細胞のクロスリンク(凝集))
多くのタンパク質(例えばレクチンおよび抗体)は複数のリガンド結合部位を有する。これらのタンパク質が、隣接した細胞表面に固定されたリガンドに結合する場合、細胞は凝集する。細胞凝集は容易にモニターされ得、そしてこの特質は、病原体検出の診断[75]、治療[76から78]、血液型検査[79]および他のバイオテクノロジーへの応用[80から82]の開発における用途を見出した。多くのレクチンは、レクチンの原子価に依存してマイトジェン活性を有することが示されてきた。これらのマイトジェン性レクチンは、コンカナバリンA(ConA)を含むが、標的細胞の表面にある糖タンパク質をクラスター化し、マイトジェン性シグナルを活性化し、そして細胞増殖を誘導すると考えられている[67,68]。レクチンは、シグナル伝達[69,70]および細胞増殖[71、72]を研究するための有用なツールであり、そしてそれらを用いた研究は、ガレクチン(galectin)およびセレクチン(selectin)の様な、哺乳動物のレクチンについての可能性のある機能的な役割を解明した。
【0111】
細胞凝集を起こす際の多価タンパク質の有効性は、どれだけ強固にそのタンパク質が細胞表面リガンドに結合するかによって決定される。これらの相互作用のアビディティを高める一つの有効な方法は、リガンドの結合部位数を増加させることである[83〜85]。研究努力は、レクチンに対して有利なオリゴマーの形成[86〜87]または抗体scFvフラグメントの新規マルチマーの生成[88]に向けられた。結合部位の数をさらに増加する方法、またはこれらの結合部位の至適な配向を有利にする方法は、多くの適用におけるこれらの物質の有用性を高める。
【0112】
レクチンは、サッカリド結合タンパク質の大きなクラスであり、その多くが、同一サブユニットの2個から4個のコピーからアセンブルされたホモオリゴマーである[89]。レクチンは、それらが、隣接細胞表面の糖タンパク質または糖脂質とクロスリンクする場合に細胞を凝集する。凝集は、レクチンオリゴマー内の活性モノマーの数を変えることで調節され得る。例えば、4価のマンノース結合型植物性レクチンであるコンカナバリンA(ConA)が赤血球を凝集させる能力は、このレクチンがスクシニル化(succinylation)によって低い原子価である二量体形態にされると著しく低下する[87]。レクチンの原子価の増加は、反対の効果を有し得る(すなわち、細胞凝集を増強する);しかし、より高次の原子価を有するレクチン複合体を生成するための方法は、容易で利用可能ではなかった。ROMP由来の物質の原子価は系統的に変えられ得るので、リガンドへ結合するサッカリド基(例えばマンノース)の数が、所定の骨格にアセンブルされるレクチン(例えば、ConA)の数に及ぼす影響が、研究され得る。
【0113】
ConAの沈殿は、ConAテトラマーのクラスター形成に依存し、そしてこの技術を、不溶性ConA−リガンド複合体の化学量論を決定するために使用し得る[90]。本発明の多価リガンドとのConAクラスターの形成を調査するために、スキーム1に示される、規定数のマンノース残基、モノマー9およびポリマー10〜13(それぞれ、10、25、50、または100であるnを有する)を含むROMPベースの足場を、ROMP法[54]を使用して調製した。化合物9〜13をConAと接触させた。モノマー化合物9は、沈殿を誘導できなかったが、多価化合物10〜13は、ConAの濃度依存性沈殿を生じた。沈殿の結果は、10(10マー)と複合体化したConAの化学量論が約2:1であること、そして11および12とConAとの複合体の化学量論が約4:1であることを、さらに示した。
【0114】
対照的に、ダイマースクシニル化ConAは、試験した最高価多価リガンド化合物(例えば、化合物12)とのみ沈殿し、そして形成した複合体は、その沈殿物において4:1(レセプター:足場)の化学量論を有した。従って、その足場により提示されるマンノース残基の数は、タンパク質−足場複合体の形成において重要である。沈殿の結果を、透過電子顕微鏡(TEM)技術を用いて実質的に確認した。この技術において、化合物10〜12とのビオチン化ConAのクラスターを、高密度ストレプトアビジン−金粒子で標識した。化合物10がダイマーのみ形成することを観察した一方、11は、ダイマーおよびトリマーの両方を形成することができ、そして化合物12もダイマーおよびトリマーの両方を形成したが、トリマークラスターの方をもう一方の足場よりも好んだ。
【0115】
溶液中でのConAクラスターのアセンブリーを、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によってモニターし得、このFRETにおいて、フルオレセインおよびテトラメチルローダミン(TMR)が、ドナー蛍光団およびアクセプター蛍光団として作用する[91、92]。これらの蛍光団が約80Å内にある場合、フルオレセインシグナルは消光し、その結果、標識ConAがアセンブルしてクラスターになった場合に、フルオレセインの蛍光が減少するはずである[93]。化合物9〜12を、フルオレセイン標識ConAおよびTMR標識ConAの溶液に添加した。フルオレセインの蛍光発光最大値をモニターして、どの足場がConAクラスターの形成を促進するのかを確認した。先の実験と一致して、ConAクラスターは、多価リガンド10〜12の存在下で形成したが、モノマー化合物9とは形成しなかった。蛍光消光は、足場価だけではなく、リガンド濃度にも依存した。消光はまず、足場濃度が増加すると増加し、その後、その足場濃度がさらに増加するとまた減少した。高足場(多価リガンド)濃度での消光が存在しないことは、おそらく部位飽和が原因で、ConAクラスターがこれらの濃度では支持されないことを示す。ConAと比較して高濃度の足場は、個々のポリマーによるConA上の各リガンド結合部位の占拠を好み、複数のレクチンのクラスター形成を排除する。
【0116】
ROMP誘導体ポリマー上に形成されたConAクラスターがJurkat細胞を凝集する能力を、最初に光学顕微鏡によって試験した(図10を参照のこと)。ConA単独では、低濃度(5μg/mL)であってさえ、いくらかのJurkat細胞凝集を誘導することができた。単価ConAリガンド(例えば、メチルα−D−マンノピラノシドまたは9)をConAと予め混合した場合、これらの多価ConAリガンドは、おそらくConA−細胞相互作用を不安定化することによって、凝集を阻害した。Jurkat細胞について、低濃度(0.5μM)の単価リガンドであってさえ、阻害が生じた。興味深いことに、多価化合物10〜12は、0.5μMではJurkat細胞凝集を阻害しなかった。0.5μMは、同様の条件下でConAクラスター形成の最適であることが示された濃度である。多価リガンドの濃度を10倍(5μM)増加させると、部位飽和と一致して、凝集活性を無にした。従って、足場価および多価リガンド濃度を変化させることによって、細胞表面−レクチン相互作用を二者択一的に阻害または促進することが可能である。多価リガンドと複合体化したConAが細胞表面と相互作用する能力は、このようにして変化可能であった。
【0117】
赤血球のConA媒介性凝集を多価リガンド(化合物9〜13)の添加により制御し得ることを示した、さらなる実験を行った。ConAと多価リガンドとの特定の組み合わせが、図11に示すように、ConA自体と比較して増加したこれらの細胞の凝集を示した。特に、ConAテトラマーと多価リガンド(化合物13)とを濃度比10:1(テトラマーConAベースおよびマンノース残基の数ベース)で組み合わせると、ConA単独と比較して有意に増加した凝集を示した。
【0118】
複数のConAテトラマーを含む複合体を、中間の多価リガンド濃度を使用した場合に化合物10〜13上で容易にアセンブルさせたが、足場の濃度が低すぎる場合または高すぎる場合のいずれかの場合では、複数のConAテトラマーを含む複合体は検出可能ではなかった。このような複合体が形成される濃度範囲は、ConAと多価リガンドの相対濃度(リガンド、REまたはSREの数ベース)に依存し、そして多価リガンドの価に依存する。このことは、任意のタンパク質との多価リガンドの任意の複合体について、一般的に真である。1つ以上のConAとの多価リガンドの複合体(または任意のレクチンとのこのような複合体、またはより一般的に任意のタンパク質とのこのような複合体)が形成される濃度範囲を、ConA(またはより一般的にはそのタンパク質もしくはレクチン)による機能の保持を評価することによって、特定の条件下での特定の適用について、容易に決定し得る。ConAとの多価リガンドの複合体は、そのリガンドの濃度範囲(SRE(例えば、マンノース)の数ベース)が約1:1〜100:1を超えるまでの範囲である場合、その多価リガンドの価および特定の実験条件に依存して、一般的に形成される。
【0119】
本明細書中の結果は、一般に、多価リガンドの価および濃度が、これらの多価リガンドの多価足場上へのレクチンのアセンブリーを制御するために変化され得ることを示す。より詳細には、ROMP誘導体物質の価および濃度を、図9A〜Cに示されるように、ConAクラスターの形成を制御するために変化させ得る。単価リガンド(および低濃度の多価リガンド)は、レクチンに結合するが、細胞凝集を阻害しない(図9A)。レクチン足場複合体形成を支持する条件(すなわち、中間濃度レベルの多価リガンド)下で、複数のレクチンを、その多価リガンド上にアセンブルさせ得、そしてそのレクチンは、細胞表面と相互作用できる遊離サッカリド結合部位を保持する(図9B)。多価リガンド濃度を増加させる場合、レクチン結合部位は、複数の多価リガンドへの結合によって飽和され、レクチンアセンブリーは支持されず、そしてレクチンは、細胞表面と相互作用できない(図9C)。従って、示されるように、足場価およびリガンド濃度を、多価リガンドとのレクチンクラスター(そのレクチンは、細胞結合活性を保持する)をアセンブルするために制御し得る。さらに、足場価およびより重要なことには多価リガンド濃度を、レクチンの細胞凝集機能を阻害するために制御し得る。
【0120】
これらの結果は、タンパク質(例えば、レクチン)が、ポリマー足場(例えば、本発明の多価リガンドにより提供されるもの)上にアセンブルされ得ること、およびそのアセンブルされたタンパク質(レクチンを含む)が、生物学的機能を保持することを、示す。本明細書中に記載される方法を、1つ以上レクチンのポリマーアセンブリー、および1つ以上の抗体もしくは抗体フラグメントのポリマーアセンブリー(リガンド(例えば、サッカリドまたはエピトープ)に結合する能力を保持する)を生成するために使用し得る。本明細書中の方法は、一般に、多価リガンド中の認識エレメントおよびシグナル認識エレメントへの結合を介する、種々の化学物質種および生物学的物質種(特に、高分子種(タンパク質、炭化水素、核酸を含む)のアセンブリーの生成に適用可能である。
【0121】
(多価リガンドを使用する細胞毒性の増強)
レクチン(例えば、ConA)ならびに凝集素および植物性赤血球凝集素は一般に、特定の種の細胞において毒性効果を示し得る。サッカリド基を保有する多価リガンドは、上記のように、レクチン(例えば、ConA)と複合体形成し得る。適切に置換された多価リガンドに対して複合体形成したいくつかのレクチン分子を含む複合体は、そのレクチン上の結合部位がリガンド基への結合によって飽和されていない場合に、細胞を凝集するように機能し得る。より高い多価リガンド濃度(特定の条件および適用に依存し、そしてリガンド価に依存する)が使用される場合、レクチン結合部位が飽和された状態になり得、その後、そのレクチンによる細胞凝集が阻害される。所定の多価リガンドによる所定のレクチンの飽和を、経験的に容易に決定し得る。さらに、所定の多価リガンドによる任意のタンパク質の機能の飽和を、その複合体形成したタンパク質の機能を評価することによって決定し得る。
【0122】
多価リガンドとのレクチンの複合体は、そのレクチン自体の細胞毒性を超えて増強された細胞毒性を示すことが見出されている。図12に示されるように、0.1μMのConAで(48時間)処理されたPC12細胞は、生存能力の明らかな喪失を示さなかった。対照的に、同じ条件下で0.1μMのConAと4μMの化合物11との組み合わせで処理されたPC12細胞は、ほぼ30%の生存能力の喪失を示す。レクチンに対するリガンドの濃度の比がそのレクチンのリガンド結合部位を飽和するに十分に高い、本発明の多価リガンドとのレクチンの複合体が、細胞におけるアポトーシスを誘発し得ることを、これらの結果は示す。
【0123】
(多価ポリマーの生成)
ROMPを使用して、以前に記載された[55]ように、1をオリゴマー2〜4のシリーズへと変換した。同様の条件を、オリゴマー6および7の合成において使用した[54]。蛍光ポリマー8を、二官能性キャップ剤を用いる特異的末端標識[スキーム7]、その後の蛍光BODIPY−TR(Molecular Probesから市販されている)への結合[56]によって生成した。化合物9〜12は、参照にて調製および試験したサンプルである[54]。各化合物についてのポリマー化の程度(dp)を、1H NMRによって決定した。価(n)は、ポリマー化の程度(DP)の近似値であり、ここでDPは、ROMP中で使用される触媒に対するモノマーの比である。
【0124】
(画像顕微鏡法)
一晩培養からのE.coli AW405(野生型走化性応答を示す)を、LB(Luria Bertaniブロス)においてOD550が0.4〜0.6になるまで増殖させ、その後、誘引物質を含まない走化性緩衝液(10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、10μM EDTA)で2回洗浄した。OD550が0.1である部分透過性細菌(25μM EDTAで室温で3分間、その後50μM CaCl2でクエンチ(quench))を、Sagerらの方法[44]においてさらなるカバーガラスによって支持されたカバーガラス下に配置した。(透過化は、ガラクトースまたは1への細菌の走化性に対して何の効果も有さなかったが、4への走化性のために必要であった[57])。細菌を、ガラス表面と1〜2分間接触するように調整させた。誘引物質を、5μL最終体積で示される最終濃度を達成するように添加した。28℃での細菌の動作を記録し、そして経路を、ExpertVisionシステムを使用して分析した。誘引物質の導入後の最初の5〜15秒に誘導された経路を、分析した。平均角速度は、異なる日に実施された実験間で約14%変化した。データを、Q検定およびスチューデント検定を使用して分析した。
【0125】
(毛細管蓄積アッセイ)
一晩培養からのE.coliを、LBにおいてOD550が0.4〜0.6になるまで増殖させ、E.coli走化性緩衝液で2回洗浄し、その後部分透過化した。細菌を、走化性緩衝液中にOD550が0.1になるまで再懸濁し、そしてそれを、以前に記載された[45]ように、30℃で60分間の毛細管蓄積アッセイにおいて使用した。B.subtilis OI1085を、10mMグルコースおよび0.5%グリセロールを補充したTブロス(1%トリプトン、0.2mM MgCl2、0.5% NaCl、0.01mM MnCl2)での一晩培養から増殖させ、B.subtilis走化性緩衝液(10mMリン酸緩衝液(pH7.0)、10μM EDTA、0.5%グリセロール、0.3mM (NH4)2SO4)で洗浄し、そして毛細管アッセイを、37℃で30分間、最終OD550 0.01にて実施した[47]。蓄積したB.subtilisの数を、緩衝液単独に対して蓄積した500の細菌に対して正規化した。毛細管アッセイの結果は、誘引物質の活性以外の要因(例えば、基質の代謝または毒性)により影響され得る[45、58]。この可能性を排除するために、本発明者らは、E.coliが1を唯一の炭素源として使用する能力を試験した。これらの実験によって、1〜4が毒性でないこと、およびモノマー1が代謝されないこと(データは示さず)が明らかになった。データを、Q検定およびスチューデント検定を使用して分析した。
【0126】
(免疫蛍光顕微鏡法)
E.coli AW405またはRP1078(cheW)を、緩衝液単独で事前処理するか、または10μL総容量の走化性緩衝液中5mMの化合物1、3、4、もしくは8で事前処理した。30℃で10分間のインキュベーション後、その細菌を固定し(HEPES(pH7.0)中の2%パラホルムアルデヒド(PFA)で、30分間、4℃)、6ウェルプレートの底にあるポリ−L−リジン処理したカバーガラス上に配置し、メタノールで透過性にし、そしてMaddockおよびShapiro[49]の手順に従って、抗Tsr抗体(1:250)およびフルオレセイン標識ヤギ抗ウサギ抗体(1:500)で標識した。抗Tsr抗体は、保存的化学受容器細胞質ドメインを認識し、したがって複数の化学受容器と交差反応性である。いくつかの結合の排除(極で独占的な530nmまたは590nmの蛍光)が、抗体および8の両方を使用する二重標識実験にて観察された。蛍光顕微鏡法を、油浸レンズを使用して、1000×でZeiss Axioscope上で実施した。画像を、IPLab Spectra 3.2およびAdobe PhotoShop 5.0を使用して捕捉した。
【0127】
(定量的沈殿)
定量的沈殿および分析を、Khanら[90]により以前に記載された方法から改変した方法によって実行した。簡単に述べると、ConA(Vector Laboratories,Burlingame,CA)および足場を、沈殿緩衝液(0.1M Tris−HCl(pH7.5)、90μM NaCl、1mM CaCl2、1mM MnCl2)中に溶解し、短くボルテックスして混合し、その後、室温で5時間(またはスクシニル化ConAに関しては4℃で2日間)インキュベートした。ConAテトラマーの最終濃度は、30μMであり(モノマー重量が104,000であるConAテトラマーと仮定する)、そしてスクシニル化ConAダイマーは44μMであった(質量52,000であるダイマーと仮定する)。白色沈殿物を、5000×gで2分間の遠心分離によってペレットにした。上清をピペットにより除去し、そしてペレットを、冷たい緩衝液で2回穏やかに洗浄した。その後、ペレットを、600μLの100mMメチルα−D−マンノピラノシド(スクシニルConAに関しては100μL)中に再懸濁し、そして室温で10分間のインキュベーションの後、完全に溶解した。タンパク質含量を、100μL容積水晶キュベットを使用するVarian Cary 50 Bio上で、280nmでの吸光度をUV−可視分光光度法により測定することによって決定した。測定値は、3回の独立した実験の平均である。
【0128】
(透過型電子顕微鏡)
TEM法を、本質的に以前に記載された[96]ように実施した。ConAテトラマーを、1〜2コピーのビオチン残基の付着を支持する条件を使用して、ビオチンで標識した。ビオチン化ConAテトラマーを、溶液中で目的のリガンドと混合し、その後、ストレプトアビジン結合体化した過剰の10nm金粒子と接触させた。サンプルを、コントラストを増強するために2%ホスホタングステン酸(pH7.0)で処理(30秒)し得る。ランダムな視野の画像を各処理について得、そしてConA複合体の形成について分析した。互いに25nm以下の内にある金粒子は、複合体の一部であると見なした。この距離は、使用した合成多価リガンドのモデル化した長さ「23]、およびX線結晶解析により決定したテトラマーConAの構造[97]に基づく。
【0129】
詳細には、PBS(pH7.2)中のビオチン化ConA(2.3μM)および足場(0.75μM、マンノース濃度)を、ストレプトアビジン−10nm金(Sigma,St.Louis,MO)を最終濃度3.0μMまで添加する前に、室温で15分間インキュベートした。複合体を、15分間室温でインキュベートし、その後、炭素コートしたFormvar処理グリッド上に配置した。グリッドを風乾し、そしてLEO Omega 912 Energy Filtering Electron Microscope(EFTEM)上で観察した。画像は、12,500×の倍率であった。その画像を、ProScan Slow Scan CCDカメラ上で収集し、そしてAdobe PhotoShop 5.0にて分析した。視野は、平均して5個と50個との間の金粒子であり、そして15〜20個の視野を、各処理について各々の日に収集した。結果は、3つの別個の日に独立したサンプルに対して実施した3つの別個の実験において得られた結果の平均である。各々の日に収集した金粒子の総数は、約80から400を超えるまで変動した。
【0130】
(蛍光共鳴エネルギー移動)
リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.2)中のフルオレセイン−ConA(Vector Laboratories,Burlingame,CA)およびTMR−ConA(Sigma,St.Louis,MO)を、最終濃度4μg/mLおよび0.4μg/mLをそれぞれ得るまで混合した。足場をPBS中に、示される最終濃度まで添加し、最終容量200μLにした。この溶液を短くボルテックスし、その後、少なくとも15分間室温でインキュベートした。これらのサンプルのいずれにおいても、沈殿物は観察されなかった。200μ容積水晶キュベット、励起波長492nm、放射波長515nm、および10nmスリット幅を使用して、Hitachi F−4500蛍光分光光度計上で、蛍光を決定した。放射強度は、各実験の間に実施した3回のスキャンによる、3〜5回の独立した実験の平均である。化合物9〜12は、515nmにて無視できる蛍光を有した。曲線を、等式:
%F=(%Fmax×L)/(L+IC50)
を使用してフィットさせた。ここで%Fは、未処理に対する蛍光の変化であり、%Fmaxは、蛍光の最大回復であり、Lは、足場のμMマンノース濃度であり、そしてIC50は、クラスター形成の半分最大阻害濃度(half−maximal concentration for inhibition)である。
【0131】
(Jurkat細胞凝集)
Jurkat細胞を、以前に記載された[94]ように培養し、そして維持した。細胞を、冷たいPBSで3回洗浄し、次いで、Hoescht 33342(100μg/mL)で30℃にて30分間処理した。細胞を、冷たいPBSで2回洗浄し、その後、HEPES(pH7.4)中の2%パラホルムアルデヒドで4℃にて30分間固定した。固定した細胞を2回洗浄し、その後、ConAと足場との事前混合溶液で、200μLの最終容量にて処理した。ConAおよび足場の2×溶液を、PBS(pH7.2)中で調製し、短くボルテックスし、その後、細胞に添加する前に22℃で30分間インキュベートした。細胞、ConA溶液、および100μg/mL DNAse(核酸による細胞凝集を防止するため)を、22℃で30分間インキュベートした。細胞を、400×gでペレットにし、50μL PBS中に穏やかに再懸濁し、その後、適切なフィルターセットを備えたZeiss Axioscope上で200×の倍率での可視化のためにスライドに加えた。約100〜200の細胞が、各々の日にランダムな視野から計数された。クラスターを、互いに直接接触した少なくとも2つの細胞についてスコア付けし、そして計数した対象物(個々の細胞およびクラスター)の総数のパーセンテージとして表した。結果を、図10にまとめる。ROMP誘導体リガンド9〜12単独は、細胞凝集を引き起こすことができなかった。画像を、IPlab Spectra 3.2にて捕捉し、そしてAdobe Photoshop 5.0にて調製した。
【0132】
(赤血球凝集)
ConA(53nM、5μg/mL)およびリガンド化合物13(530nM;サッカリドベース(basis)につき)を、96ウェルプレート中で、最終容量100μLのPBS(pH7.2)中に添加した。この複合体を、室温で15分間インキュベートした。
【0133】
(細胞毒性実験)
HBS緩衝液は、pH=7.4のHEPES(10mM)、NaCl(150mM)およびCaCl2(1mM)を含んだ。コンカナバリンA(ConA)を、Vector Labs(Burlington,CA)から入手し、そしてすべての実験について新たに希釈した。このConAストック溶液の濃度を、
【0134】
【化12】
(95)を使用して決定した。その後、ConAの1回希釈物を作製し、そして各サンプル用に分割した。その後、適切なストック溶液から、所望の最終濃度の5倍でリガンドを添加した。すべてのサンプルは、各濃度について6つのレプリカを有した。HBS単独、HBS中のConAおよびHBS中に最高濃度のリガンドを含むコントロールサンプルを、各実行において使用した。溶解コントロールを、HBS緩衝液単独を添加すること、および48時間のサンプルインキュべーションの後に溶解緩衝液を添加することによって、作製した。
【0135】
(細胞培養)すべての細胞培養試薬を、他のように注記しない限りは、GIBCO BRLから入手した。84%(v/v)RPMI 1640(L−グルタミンを含む)、5%(v/v)熱非働化ウシ胎仔血清、10%(v/v)熱非働化ウマ血清、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(10000ユニット/ml)を含む培地中で、37℃および5% CO2の加湿インキュベーター中で、PC12細胞(ATCC:CRL−1721)を増殖させた。低血清培地は、97.5%(v/v)RPMI 1640(L−グルタミンを含む)、0.5%非働化ウシ胎仔血清、1%(v/v)熱非働化ウマ血清、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(10000ユニット/ml)を含んだ。細胞を、コラーゲンで処理したT型フラスコ中で増殖させ、そしてトリプシン処理(0.05%トリプシンおよび0.4mM EDTA)によりコンフルエントで収集し、その後、新鮮な培地でクエンチした。細胞を濃縮してペレットにし(2100rpmで10分間)、吸引し、その後新鮮な培地中に再懸濁した。その数を、血球計およびトリパンブルーでの処理によって決定し、その後、細胞を、96ウェルプレート(組織培養処理した)(CoStar,Corning,NYから入手した)に約15,000細胞/ウェルで配置した。その後、プレートを、34時間インキュベートして、細胞を接着させた。
【0136】
その後、その培地を除去し、そして低血清培地(80μL)で置換した。その後、HBS(20μL)中のサンプルおよびコントロールを添加し、そして37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、低血清RPMI培地中5mg/mLのMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(Sigma/Aldrich,Milwaukee,WI))溶液10μLを、各ウェルに添加した。
【0137】
4時間後、100μLの溶解緩衝液(HBS(pH=4.7)中50%ジメチルホルムアミド/20%ドデシル硫酸ナトリウム)を添加し、そしてその細胞を一晩インキュベートした。その後、そのプレートを、570nmにてプレートリーダー(Biostar)上で読んだ。細胞生存能パーセントを、以下の等式:
【0138】
【化13】
を使用して決定した。ここで、G0は溶解した細胞コントロールであり、Gconは、ビヒクルでのみ処理したコントロール細胞であり、そしてG1は、ペプチドおよびビヒクルで処理したサンプルである。細胞を多価ポリマー化合物11でまず処理し、その後ConAおよび適切なコントロールで処理した実験からの結果を、図11に示す。
【0139】
本明細書中の記載を考慮して、特に例証されたもの以外の本発明の実施に容易に適用または適合され得る種々の代替的構造、方法、手順および技術が存在することを、当業者は認識する。本明細書中に記載されるような特性を有する多価リガンドの調製のための、広範な種類の設計および方法が存在することが、認識される。SREの豊富な提示のために利用可能な広範な種類の分子足場、および本明細書中に記載される方法に適用または適合され得る広範な種類のSREが存在することもまた、認識される。
【0140】
(参考文献)
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
【表7】
【0148】
【表8】
本明細書中に列挙される参考文献の全ては、その全体において、そしてそれらが本明細書中の開示と矛盾しない程度まで、本明細書中で参考として援用される。列挙される参考文献は、特に、多価リガンドの合成、および特にROMP法による合成についての任意の記載について、および所定の用途についてのシグナルグループの選択、特に化学誘引物質またはエピトープについての記載において、本明細書中で参考として援用される。
【0149】
【化14】
【0150】
【化15】
【0151】
【化16】
【0152】
【化17】
【0153】
【化18】
【0154】
【化19】
【0155】
【化20】
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明の多価のリガンドが、巨大分子の集合において、および生物的な応答のエフェクターとして機能し得るいくつかの方法を図解的に例証する。
【図2】
図2Aは、ビデオ顕微鏡動作解析実験の結果(I)である。細菌(Escherichia coli)を、緩衝液のみ、ガラクトース、または示されたサッカリド濃度で化合物1または3(スキーム1)を用いて処理した。その結果を、3連で実行される少なくとも5回の独立実験からの平均で示す。エラー棒を、10秒の間隔中での毎秒の平均の間の偏差を示す。
図2B−Eは、緩衝液のみ(B);1mMガラクトース(C);または1mM化合物1(D);または1mM化合物3(E)で処理された細菌(グラム陰性菌、E.coli)のために選択されたサンプル経路である。サンプル経路は、処理された細菌集団からのそれぞれの細菌の運動に由来する。
【図3】
図3Aおよび3Bは、E.coliのキャピラリー累積アッセイの結果である。累積した細菌の数を、サッカリド残基上で計算された誘引物(ガラクトースまたは化合物1−4、スキーム1)の濃度に対してプロットした。(A):結果を、示された濃度で緩衝液のみ(0)、化合物1(1)、および化合物2(2)、または(B):緩衝液のみ(0)、化合物3(3)、および化合物4(4)で満たされたキャピラリーに関して示した。1mMでの垂直線は、モノマーの化合物1に関する最大の走化性の濃度を示す。このアッセイにおいて使用される濃度は、運動分析実験(図2Aを参照のこと)において使用されるこれらと直接的には比較可能でない、なぜならキャピラリーアッセイにおいて形成される勾配は規定されないからである。結果を、2連で実行される3から6回の実験の平均とし、そしてエラー棒を、単一の標準偏差で示した。部分的な透過化処理が、4に対する走化性を得るために必要であり、そして全ての実験に関して利用した[57]。
【図4】
図4は、ROMP誘導グルコースリガンド(化合物5−7、スキーム1)を使用するB.subtilisのキャピラリー累積アッセイの結果である。緩衝液のみ、グルコース、またはグルコース伴有化合物5−7を、キャピラリー累積アッセイにおいて誘引物として使用した。結果を、グルコース(G)、化合物5(5)、化合物(6)、および化合物7(7)で示した。結果を、2連で実行される少なくとも4回の試みの平均とし、エラー棒を、単一の標準偏差で示す。
【図5A】
図5Aは、(A):細菌(E.coli)を、緩衝液のみ(黒四角)もしくは10μM誘引物:ガラクトース(黒丸)、化合物1(10マー、黒三角)、または化合物3(25マー、黒ひし形)を用いた最初の処理(その後、2分の適応期間が続く)後、セリンの漸増濃度(μM)で処理した;ビデオ顕微鏡動作解析実験の結果(II)である。
【図5B】
図5Bは、(B)セリン濃度1μMで図6Aからとられた角平均速度のデータに関する棒グラフ。化合物3を用いた最初の処理は、セリンに対する細菌応答の有用な増強をもたらす。角平均速度は、異なる日に実行された実験間で約14%変化したビデオ顕微鏡動作解析実験の結果(II)である。
【図6】
図6:多価のリガンドを、特異的に化学レセプターに結合し、そしてレセプターの再組織化を誘導する。図解の例証は、GGBP(12)を介したTrg(11)に結合して蛍光標識された8(10,590nm発光)を模式的に示す。Trgを、抗Tsr抗体(13,530nm発光)で標識した。
【図7】
図7A−Dは、合成リガンドによるレセプター認識のモデルである。(A)化学レセプターは、E.coliの細胞質膜においてダイマー(またはマルチマー)(20)を形成することが観察され、そしてそれぞれのダイマーは、単一のペリプラズム結合タンパク質(21)[59,60]と相互作用するようである。ガラクトースおよび化合物1(22)のような1価のガラクトースのリガンドは、GGBP結合を経てTrgと化学レセプターのダイマーからのシグナル伝達を誘導する;(B)化合物2のような、多価のガラクトース化合物(レセプターを認識するために必要な距離をまたぐことができない)は、(A)についてのように個々のダイマーからシグナルを発生する;(C)化合物3または化合物4のような、十分な長さの多価のリガンドは、細胞質膜で分散型のクラスター(25)へと化学レセプターを再組織化し得る;(D)多価のリガンドの結合価の拡大(26)は、再組織化、および、それゆえに細菌の応答の程度をおそらく増加させる。
【図8】
図8は、本発明の多価のリガンドにおいて用いられ得る分子の足場のための種々の設計を示す。こららの型の足場は、例えば、脂環式環、芳香族環(ヘテロ芳香族環を包含する)、およびそららの組合わせを用いることにより構築され得る。足場は、2以上のRE,SRE、または両方の提示の外形を提供する。リンカーは、変化する構造を有し得、そして例えば、剛性、可撓性または分枝状であり得る。例証された構造のそれぞれにおいて、任意の強固、可撓性または分枝状リンカーが、用いられ得る。それぞれの分枝状リンカーは、1を超えるRE,SRE(またはFE)に結合され得る。それぞれの構造において、1以上のFE(少なくとも1つのREまたSREがは残存する限り)は、1以上のREまたはSREと置き換り得る。
【図9】
図9A−C:結合価依存様式、または濃度依存様式において、細胞凝集を活性化または阻害するための多価のリガンドの能力の例証モデルである;(A)、1価のリガンドが(31)(9のような)、ConA(30)に結合するとき、1価のリガンドは、必然的に阻害性である。;(B)十分に低濃度、およびConAを伴う随意的な化学量論での多価のリガンド32(12のような)は、ConAの結合部位の占有にもかかわらず、細胞凝縮を可能にし得る(34);(C)多価のリガンド32の増加される濃度(10−12の場合において、約5μM)で、ConA部位は飽和になり(35)、クラスターを分解、および細胞凝集を阻害する。
【図10】
図10は、ROMP誘導の足場上で組合されるConAのクラスターがジャーカット(Jurkat)細胞の凝集を形成し得ることを例証する棒グラフである。凝集物で存在するジャーカット細胞の割合を、処理に対してプロットする。100μg/mLまたは5μg/mLでのConAは、凝集を形成し得る。凝集形成は、50mMのメチルα−D−マンノピラノシド(α man)の添加によって、阻害され得る。化合物9−12を、5μg/mLのConAの最終の濃度に加えて、最終の0.5μMまたは5μMのマンノースの濃度に添加する。結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均であり、そしてエラー棒は単一標準偏差で示す。
【図11】
図11は、ConA媒介の赤血球の凝集の制御である。ConA単独、またはリガンド化合物13(スキーム1、n=100でのマンノース含有リガンド)との組合せにおけるConAとの処理のために、細胞と接触させた後の時間(秒)の関数としての肉眼凝集指標(%MAI)のグラフ。使用されるConAの濃度は、5μg/mL(53nM ConAテトラマーに基づく)、およびリガンド(530nM、サッカリドに基づく)であった。従って、実験においてConAテトラマーに対するマンノース(リガンド中)の比率は、10:1である。多価のリガンドの添加は、有意に赤血球の凝集を増強した。
【図12】
図12は、多価のリガンドによるConAの細胞毒性の増強である。多様な関数の機能としてPC12細胞の細胞生存度割合(%)を示す棒グラフ。「HBS」は、培地コントロールであり;「ConA」は、HBS培地において0.1μMのConA(ConAテトラマーに基づく)での処理であり、「化合物11」は、HBS中の4μMの化合物11(サッカリドに基づく濃度)での処理であり;「ConA+化合物11」は、HBS中の0.1μMのConAおよび4μMの化合物11での処理である。ConAに結合する多価のリガンドの添加は、ConA毒性を有意に増強する。
Claims (131)
- 1つ以上のレセプターを含む生物系において生物学的応答を誘導するための方法であって、該方法は、該レセプターの少なくとも1つによって認識され、そして分子足場に結合した複数のシグナル認識エレメントを含む多価リガンドを、該生物系に導入する工程を包含する、方法。
- 前記生物系が、前記シグナル認識エレメントのうちの少なくとも1つが結合する1つ以上の細胞レセプターを有する細胞を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの前記レセプターへの結合が、細胞内応答および/または細胞間応答を誘導する、請求項2に記載の方法。
- 前記細胞が原核細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、2成分系によって媒介されるシグナル伝達を調節する、請求項4に記載の方法。
- 前記生物学的応答が走化性である、請求項5に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントが糖類であり、そして前記多価リガンドが、分子足場に共有結合した化学誘引物質として機能する複数の該糖類を含む、請求項6に記載の方法。
- 前記糖類がグルコースまたはガラクトースである、請求項7に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記原核細胞の走化性を増大する、請求項6に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記原核細胞の走化性を阻害する、請求項6に記載の方法。
- 前記生物学的応答が、バイオフィルムの形成である、請求項5に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、バイオフィルム形成を阻害する、請求項11に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、バイオフィルム形成を増大する、請求項11に記載の方法。
- 前記生物学的応答が、栄養分の取り込みである、請求項5に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、栄養分の取り込みを防止または阻害する、請求項14に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、栄養分の取り込みを増大する、請求項14に記載の方法。
- 前記細胞が真核生物細胞である、請求項2に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、Gタンパク質結合レセプターによって媒介されるシグナル伝達を調節する、請求項17に記載の方法。
- シグナル伝達がレセプターによって媒介される、請求項18に記載の方法。
- 前記真核生物細胞が、上皮細胞または内皮細胞である、請求項17に記載の方法。
- 前記真核生物細胞が、免疫系の細胞である、請求項17に記載の方法。
- 前記真核生物細胞が、リンパ球または白血球である、請求項21に記載の方法。
- 前記真核生物細胞が好中球である、請求項21に記載の方法。
- 前記応答が走化性である、請求項23に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの1つ以上がホルミル化ペプチドであり、そして前記多価リガンドが、分子足場に共有結合した複数のホルミル化ペプチドを含む、請求項24に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、好中球の走化性を阻害する、請求項25に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、好中球の走化性を増大する、請求項25に記載の方法。
- 前記生物学的応答が、前記細胞による細胞内シグナルの放出である、請求項17に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記細胞内シグナルの放出を開始または増大する、請求項28に記載の方法。
- 前記細胞が、B細胞またはT細胞である、請求項21に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記B細胞またはT細胞が生じる前記生物体に対して外来のエピトープであるシグナル認識エレメントを含む、請求項30に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、B細胞またはT細胞の細胞表面レセプターに結合するシグナル認識エレメントをさらに含む、請求項31に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記外来エピトープの免疫原性を増大するように機能する、請求項32に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記B細胞またはT細胞によって自己のエピトープであると認識されるエピトープであるシグナル認識エレメントを含む、請求項30に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、B細胞またはT細胞の細胞表面レセプターに結合するシグナル認識エレメントをさらに含む、請求項34に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記細胞を前記自己エピトープに対して感作するように機能する、請求項35に記載の方法。
- 前記エピトープが、癌細胞に特徴的なエピトープである、請求項36に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記B細胞またはT細胞によって外来エピトープであると認識される自己エピトープである少なくとも1つのシグナル認識エレメントを含む、請求項30に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、B細胞またはT細胞の細胞表面レセプターに結合するシグナル認識エレメントをさらに含む、請求項38に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記細胞を、前記B細胞またはT細胞によって外来エピトープであると認識される前記自己エピトープに対して寛容化するように機能する、請求項39に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記生物学的応答を調節するために、細胞表面上の前記レセプターを認識する、請求項1に記載の方法。
- 前記細胞表面上の異なるレセプターの前記相対位置が、前記応答を調節するために変化される、請求項41に記載の方法。
- 細胞表面レセプター間の相互作用が、前記応答を調節するために変化される、請求項42に記載の方法。
- 前記生物学的応答が、前記生物学的系に対して外来である抗原またはエピトープに対する免疫応答である、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記外来抗原またはエピトープに対する免疫応答を改変し、そして該多価リガンドが、該免疫応答を調節する免疫細胞、細胞または免疫系によって外来であると認識されるエピトープまたは抗原であるシグナル認識エレメントを含む、請求項44に記載の方法。
- 前記生物学的応答が、前記生物系において自己であると認識される抗原またはエピトープに対する免疫応答である、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、自己であると認識される抗原またはエピトープに対する免疫応答を改変し、そして該多価リガンドが、前記免疫細胞、細胞または免疫系によって自己であると認識されるエピトープまたは抗原であるシグナル認識エレメントを含む、請求項46に記載の方法。
- 前記生物系が動物である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物系が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
- 前記生物系がヒトである、請求項1に記載の方法。
- 細菌感染を処置するための方法であって、該方法は、治療有効量の多価リガンドを、細菌感染を有する個体に投与する工程を包含し、ここで、該多価リガンドが、分子足場に共有結合した化学誘引物質シグナルである複数のシグナル認識エレメントを含む、方法。
- 細菌感染を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、該細菌における走化性応答を阻害するのに有効な量の多価リガンドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含み、ここで該多価リガンドは、分子足場に共有結合した化学誘引物質シグナルである複数のシグナル認識エレメントを含む、薬学的組成物。
- 真核生物細胞の走化性応答を調節するための方法であって、該方法は、該真核生物細胞を、該真核生物細胞の化学誘引物質である複数のシグナル認識エレメントを含む多価リガンドに接触させる工程を包含する、方法。
- 真核生物の病原または寄生生物の感染を処置するための方法であって、該方法は、治療有効量の多価リガンドを、感染を有する個体に投与する工程であって、ここで、該多価リガンドは、分子足場に共有結合した該病原または寄生生物の化学誘引物質である複数のシグナル認識エレメントを含む、工程、を包含する、方法。
- 真核生物の病原または寄生生物の感染を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、該病原または寄生生物における走化性応答を阻害するために有効な量の多価リガンドおよび薬学的に受容可能なキャリアを含み、該多価リガンドは、分子足場に共有結合した化学誘引物質である複数のシグナル認識エレメントを含む、薬学的組成物。
- 前記応答が、細胞遊走、細胞接着、または細胞−細胞接合部の形成である、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、細胞遊走、細胞接着、または細胞−細胞接合部の形成を阻害する、請求項56に記載の方法。
- 前記細胞が、動物における癌細胞である、請求項57に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、1つ以上の認識エレメント、1つ以上の機能的エレメント、またはその両方をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記認識エレメントの1つ以上が、タンパク質に結合している請求項59に記載の方法。
- 前記機能的エレメントの1つ以上が、標識またはレポーター基である、請求項59に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの1つ以上が、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、誘導体化されたペプチド、単糖類、二糖類、多糖類、核酸、細胞栄養分、エピトープ、抗原性決定基、ハプテン、または細胞表面レセプターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの1つ以上が、糖類または誘導体化糖類である、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの1つ以上が、ペプチドまたは誘導体化ペプチドである、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの1つ以上がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの1つ以上がN−ホルミルペプチドである、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントの1つ以上がエピトープである、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、規定数のシグナル認識エレメントを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、2〜約10のシグナル認識エレメントを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、約10〜25のシグナル認識エレメントを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、約25以上のシグナル認識エレメントを含む。請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、約50以上のシグナル認識エレメントを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、約100以上のシグナル認識エレメントを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントが、前記分子足場に共有結合している、請求項1に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントが、前記分子足場に非共有結合的に結合している、請求項1に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、前記足場に共有結合している複数の認識エレメントをさらに含み、ここで、前記シグナル認識エレメントが、次に1つ以上の認識エレメントに非共有結合的に結合している、請求項75に記載の方法。
- 前記認識エレメントが糖類であり、そして前記シグナル認識エレメントが、該糖類に非共有結合的に結合しているペプチドである、請求項76に記載の方法。
- 前記シグナル認識エレメントがレクチンである、請求項77に記載の方法。
- 前記レクチンがコンカナバリンAである、請求項78に記載の方法。
- 前記分子足場が、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリメタクリレート、ポリオール、およびポリアミノ酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 前記分子足場がROMP足場である、請求項1に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記多価リガンドが、以下の構造:
nは、該リガンドにおける括弧内の反復単位の数を表す2以上の整数であり;
破線は、任意の二重結合を表し;
「BB」は、骨格の反復単位を表し、これは環式であっても非環式であってもよく、そしてランダム配置またはブロック配置で同じであっても異なってもよく、該波線は、BB単位が、該リガンド骨格においてシス配置またはトランス配置のいずれかであり得ることを示し;
各R1およびR2は、該リガンドにおける他のR1およびR2とは独立して、Hまたは有機基、認識エレメント −L2−RE、機能的エレメント −L3−FEまたはシグナル認識エレメント −L1−SREであり得るか、あるいはR1およびR2の両方は、−L1−SRE基であり得;
ここで、L1−3は、独立して、任意のリンカー基を表し、これは異なる反復単位において同じであっても異なっていてもよく;
R4およびR5は、H、または有機基であり;
R6およびR7は、H、有機基または末端基であり;そして
Zは、該リガンドにおける他のZとは独立して、H、OH、OR8、SH、ハライド(F,Br,Cl,I)、NH2、またはN(R8)2であり、ここでR8は、Hまたは有機基であるか、あるいはZは、任意の二重結合が存在する場合には存在しない、
方法。 - SREが、ペプチドまたは誘導体化ペプチドである、請求項82に記載の方法。
- SREが、N−ホルミルペプチドである、請求項83に記載の方法。
- SREが化学誘引物質である、請求項82に記載の方法。
- SREがエピトープである、請求項82に記載の方法。
- SREの少なくとも1つがエピトープであり、そして他のSREの少なくとも1つが、免疫細胞の細胞表面レセプターに結合している、請求項82に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの他のSREが、B細胞またはT細胞の細胞表面レセプターに結合している、請求項87に記載の方法。
- 少なくとも1つのR1またはR2が、−L3−FE基であり、該基が検出可能な標識またはレポーター基である、請求項82に記載の方法。
- 少なくとも1つのR1またはR2が、−L2−RE基である、請求項82に記載の方法。
- 請求項82に記載の方法であって、ここで、前記多価リガンドが、以下の構造:
m+nは、2以上であり;
破線は、任意の二重結合の存在を表し;
「BB」は、骨格の反復単位を表し、これは環式であっても非環式であってもよく、そしてランダム配置またはブロック配置で同じであっても異なってもよく、該波線は、BB単位が、該反復単位の骨格においてシス配置またはトランス配置であり得ることを示し;
各R1は、該リガンドにおける他のR1とは独立して、Hまたは有機基であり得;
L1およびL2は、同じであっても異なってもよく、任意のリンカー基を表し;
SRE1およびSRE2は、2つの異なるシグナル基を表し;
R4およびR5は、H、有機基または末端基であり;
R6およびR7は、H、有機基または末端基であり;そして
Zは、該ポリマーにおける他のZとは独立して、H、OH、OR8、SH、ハライド(F,Br,Cl,I)、NH2、またはN(R8)2であり、ここでR8は、Hまたは有機基であるか、あるいはZは、二重結合が存在する場合には存在しない、
方法。 - SRE1およびSRE2の1つまたは両方が、ペプチドまたは誘導体化ペプチドである、請求項91に記載の方法。
- SRE1またはSRE2の1つまたは両方が、糖類または誘導体化糖類である、請求項91に記載の方法。
- SRE1またはSRE2の1つまたは両方がエピトープである、請求項91に記載の方法。
- SRE1またはSRE2の1つがエピトープであり、SRE1またはSRE2の他方が、免疫細胞の細胞表面レセプターに結合している、請求項91に記載の方法。
- 以下の構造:
nは、該リガンドにおける括弧内の反復単位の数を表す2以上の整数であり;
破線は、任意の二重結合を表し;
各Yは、該リガンドにおける他のYとは独立して、−O−、−S−、−NR8、または−CH2−基であり、ここでR8はHまたは有機基であり;
各R1およびR2は、該リガンドにおける他のR1およびR2とは独立して、H、有機基、シグナル認識エレメント −L1−SRE、認識エレメント −L2−REまたは機能的エレメント −L3−FEであり得、ここで、該リガンドにおけるR1およびR2基のうち少なくとも1つは、−L3−SREであり;
ここで、L1−3は、任意のリンカー基を表し;
R4およびR5は、H、有機基または末端基であり;そして
R6およびR7は、H、有機基または末端基である、
多価リガンド。 - 前記リガンドの各反復単位における前記R1またはR2基の1つが−L1−SREである、請求項96に記載の多価リガンド。
- 前記リガンドの前記R1またはR2基の少なくとも1つが−L2−REである、請求項96に記載の多価リガンド。
- 前記リガンドにおけるR1またはR2基の少なくとも1つが−L2−FEである、請求項96に記載の多価リガンド。
- 前記リガンドにおける少なくとも1つの−L2−FE基における該FEが、検出可能な標識またはレポーター基である、請求項99に記載の多価リガンド。
- 前記リガンドにおける少なくとも1つの−L2−FE基の該FEが酵素である、請求項99に記載の多価リガンド。
- SREの少なくとも1つがペプチドまたは誘導体化ペプチドである、請求項96に記載の多価リガンド。
- SREの少なくとも1つがN−ホルミルペプチドである、請求項102に記載の多価リガンド。
- SREの少なくとも1つがエピトープである、請求項96に記載の多価リガンド。
- SREの少なくとも1つが、免疫細胞上の細胞表面レセプターに結合している、請求項104に記載の多価リガンド。
- SREの少なくとも1つが、B細胞またはT細胞の細胞表面レセプターに結合している、請求項104に記載の多価リガンド。
- SRE1またはSRE2の1つがペプチドまたは誘導体化ペプチドであり、そしてSRE1またはSRE2の他方が糖類である、請求項107に記載の多価リガンド。
- SRE1またはSRE2が、2つの異なるペプチドまたは誘導体化ペプチドである、請求項108に記載の多価リガンド。
- SRE1またはSRE2の1つがエピトープであり、そしてSRE1またはSRE2の他方が免疫細胞に結合している、請求項107に記載の多価リガンド。
- 前記免疫細胞が、B細胞またはT細胞である、請求項110に記載の多価リガンド。
- SRE1またはSRE2の1つが、B細胞またはT細胞によって外来であると認識されるエピトープである、請求項111に記載の多価リガンド。
- SRE1またはSRE2の1つが、B細胞またはT細胞によって自己であると認識されるエピトープである、請求項112に記載の多価リガンド。
- SRE1またはSRE2の1つが、B細胞上のCR2レセプターに結合している、請求項113に記載の多価リガンド。
- SRE1またはSRE2の1つが、B細胞上のCD22レセプターに結合している、請求項114に記載の多価リガンド。
- 1つ以上のタンパク質と請求項96に記載の多価リガンドとの複合体であって、ここで、該多価リガンドにおいて、少なくとも1つのSRE基が該タンパク質に結合している、複合体。
- 前記多価リガンドが、前記タンパク質に結合している複数のSRE基を含む、請求項116に記載の複合体。
- 前記タンパク質がレクチンである、請求項116に記載の複合体。
- 前記SRE基が単糖類である、請求項118に記載の複合体。
- 前記多価リガンドが、2つ以上のレクチン分子と複合体化されている、請求項118に記載の複合体。
- 前記多価リガンドが、2つ以上のコンカナバリンA分子と複合体化されている、請求項120に記載の複合体。
- 生物学的粒子の凝集を増大するための方法であって、該方法は、以下の工程:
複数の認識エレメントを含む多価リガンドを提供する工程であって、該認識エレメントの各々は、該生物学的粒子の1つ以上の凝集を誘導する、工程、および
該生物学的粒子を該複合体と接触させる工程、
を包含する、方法。 - 前記認識エレメントが、抗体またはレクチンである、請求項122に記載の方法。
- 前記生物学的粒子が、細胞、ウイルスまたはビリオンである請求項122に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、ROMP誘導リガンドである、請求項122に記載の方法。
- 細胞におけるアポトーシスの誘発を誘導または増大するための方法であって、
該方法は、以下の工程:
複数のシグナル認識エレメントを含む多価リガンドを形成する工程であって、該シグナル認識エレメントが、該細胞に結合し、そして該細胞におけるアポトーシスを誘導する、工程、および
該細胞を該多価リガンドと接触させる工程、
を包含する、方法。 - 前記シグナル認識エレメントの1つ以上が、レクチンである、請求項126に記載の方法。
- 前記多価リガンドが、ROMP誘導リガンドである、請求項126に記載の方法。
- 複数の、2つ以上の異なるSREを含む、請求項96に記載の多価リガンド。
- 前記SREが、前記分子足場にランダムに結合している、請求項129に記載の多価リガンド。
- 前記SREが、前記分子足場に選択されたパターンで結合している、請求項129に記載の多価リガンド。
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2007
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