JP2004510681A - Fc受容体の三次元構造およびモデル並びにその使用 - Google Patents
Fc受容体の三次元構造およびモデル並びにその使用 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004510681A JP2004510681A JP2000530545A JP2000530545A JP2004510681A JP 2004510681 A JP2004510681 A JP 2004510681A JP 2000530545 A JP2000530545 A JP 2000530545A JP 2000530545 A JP2000530545 A JP 2000530545A JP 2004510681 A JP2004510681 A JP 2004510681A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- protein
- fcr
- seq
- compound
- fcγriia
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/705—Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants
- C07K14/70503—Immunoglobulin superfamily
- C07K14/70535—Fc-receptors, e.g. CD16, CD32, CD64 (CD2314/705F)
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P29/00—Non-central analgesic, antipyretic or antiinflammatory agents, e.g. antirheumatic agents; Non-steroidal antiinflammatory drugs [NSAID]
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P37/00—Drugs for immunological or allergic disorders
- A61P37/02—Immunomodulators
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P43/00—Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K38/00—Medicinal preparations containing peptides
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K2299/00—Coordinates from 3D structures of peptides, e.g. proteins or enzymes
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N2799/00—Uses of viruses
- C12N2799/02—Uses of viruses as vector
- C12N2799/021—Uses of viruses as vector for the expression of a heterologous nucleic acid
- C12N2799/026—Uses of viruses as vector for the expression of a heterologous nucleic acid where the vector is derived from a baculovirus
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02A—TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
- Y02A90/00—Technologies having an indirect contribution to adaptation to climate change
- Y02A90/10—Information and communication technologies [ICT] supporting adaptation to climate change, e.g. for weather forecasting or climate simulation
Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
(発明の分野)
本発明は、結晶性RcγRIIa、結晶FcεRI、FcαRIIa蛋白質の三次元座標、FcγRIIaの三次元構造、FcR、特に、FcγRIIaの構造に由来するFcεRIおよびRcγRIIIbの三次元構造を含むFc受容体(FcR)の三次元構造、そのモデル、並びにかかる構造およびモデルの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
(発明の背景)
Rc受容体(FcR)は、免疫グロブリン(Ig)のFc部分に特異的な高度に関連している受容体のファミリーである。これらの受容体は通常の免疫性および感染に対する抵抗性において主要な役割を有し、細胞エフェクターアームを持つ体液性免疫系を提供する。受容体は免疫グロブリンクラスの各々について定義されており、それ自体、それらが結合するIgのクラスによって定義されている(すなわち、Fcガンマ受容体(FcγR)はガンマ免疫グロブリン(IgG)に結合し、Fcイプシロン受容体(FcεR)はイプシロン免疫グロブリン(IgE)に結合し、Fcアルファ受容体(FcαR)はアルファ免疫グロブリン(IgA)に結合する)。FcγR受容体の中に、3つのサブファミリーメンバーが定義されている;IgGに対する高い親和性受容体であるFcγRI;凝集免疫複合体に強力に結合するIgGに対する低親和性受容体であるFcγRII;および免疫複合体に結合する低親和性受容体であるFcγRIII。これらの受容体は構造的には高度に関連しているが、異なる機能を示す。FcγRIIの構造および機能は、免疫複合体との相互作用と、疾患とのその関連とによって興味深い。
【0003】
FcγRはほとんどの造血細胞で発現され、IgGの結合を介して免疫系および感染に対する宿主防御のホメオスタシスにおいて重要な役割を演じている。FcγRIIは、事実上、IgG免疫複合体のみに結合し、例えば、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、血小板およびBリンパ球を含めた多様な種類の細胞で発現されるIgGに対する低親和性受容体である。FcγRIIは、抗体依存性細胞媒介細胞毒性、免疫複合体のクリアランス、炎症メディエーターの放出および抗体生産の調節を含む、種々の免疫および炎症応答に関与する。IgGのFcγRに対する結合は、FcγRによる調節に関連する疾患の徴候を導き得る。例えば、自己免疫性疾患血小板減少症紫斑は、血小板のFcγR依存性IgG免疫複合体活性化またはFcγR+貪食細胞によるそれらの破壊に由来する組織(血小板)損傷に関連する。加えて、II型およびIII型過敏症反応を含む種々の炎症性疾患は、IgG免疫複合体に関係することが知られている(例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス等)。II型およびIII型過敏症反応はIgGによって媒介され、これは、補体の媒介または貪食細胞のエフェクターメカニズムのいずれかを活性化し、組織障害に導き得る。
【0004】
FcγRIIa、FcεRI、または事実いずれかのFcRの蛋白質構造の解明は、疾患の管理のための治療的および診断的試薬の処方において重要である。本発明の発見まで、免疫反応を調節するFcγRIIaの構造およびその結果得られるメカニズムは知られていなかった。従って、FcγIIaが一般的に多機能に機能しているにも拘わらず、疾患の治療または診断に有用な試薬の開発は、該受容体の構造的情報の欠如によって妨げられてきた。FcγRIIaの一次の核酸およびアミノ酸配列は従前に報告されている(Hibbsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,第85巻,2240−2244,1988)。ヒトFcγRIIa(Hulettら,Eur.J.Immunol.,第23巻,40−645頁,1993;Hulettら,J.Biol.Chem.,第69巻,15287−15293;およびHulettら,J.Biol.Chem.,第270巻,21188−21194,1995)、ヒトFcγRIIIb(Hibbsら,J.Immunol.,第152巻,4466,1994;およびTammら,J.Biol.Chem.,第271巻,3659,1996)およびマウスFcγRI(Hulettら,J.Immunol.,第148巻,1863−1868頁,1991)の領域を同定する突然変異体誘発実験は、FcγRに対するIgG結合の重要な領域を定義してきた。しかしながら、一次配列(線状配列;linear sequences)に基づく情報は、該蛋白質の三次元構造およびその機能的ドメインを正確には予測できない。ヒューバーら(Huberら、J.Mol.Biol.,第230巻,1077−1083頁,1993)は新生児ラットFc受容体蛋白質(FcRn)の結晶形成を記載している。バーミスターら(Burmeisterら、Nature,第372巻,336−343頁,1994;およびNature,第372巻,379−383頁,1994)はFcRn結晶の構造を記載している。しかしながら、FcRnは主要な組織適合蛋白質複合体に密接に関連し、機能または構造による白血球FcγRファミリーには関連してはいない。かくして、FcRnの蛋白質構造は本発明のFcR構造を予測するものではない。
【0005】
FcεRは肥満細胞において発現され、IgEの結合を介して、該肥満細胞の脱顆粒に際して主として炎症メディエーター(例えば、ヒスタミンおよびセロトニン等)の放出による炎症免疫応答を作動させる。これらのメディエーターの放出は、多形核細胞の当該部位への流入を含む、局所的な血管透過性および局所組織における流体の増加の原因となる。かくして、IgEのFcεRIに対する結合は、腸からの流体の放出および増大した粘液分泌並びに気管支収縮を含む、アレルギー性炎症を含む疾患に典型的に関連する疾患の兆候に至り得る。従って、FcεRIの蛋白質構造の解明は疾患の管理、特にアレルギー性炎症および他のTh2ベースの免疫反応に関連する疾患の管理に対する治療的および診断的な処方において重要である。前記したFcγRに関しては、ヒトFcεRIの一次核酸およびアミノ酸配列は従前に報告されている(Kochanら,1998,Nuc.Acid.Res.,16:3584)。しかしながら、本発明の発見まで、FcεRがそれによって免疫応答を調節する構造および得られたメカニズムは知られていない。かくして、FcεRIの一般的作用の知識にも拘わらず、アレルギー性炎症に関連した疾患等の病気の治療または診断のために有用な試薬の開発は、その受容体の構造情報の欠如によって妨げられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、当該分野では、Fc受容体の三次元構造およびモデルを解明し、薬物デザイン等の治療戦略において、かかる構造およびモデルを用いることへの要望が存在する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(発明の概要)
本発明は、結晶性FcγRIIaおよび結晶性FcεRI、FcγRIIa蛋白質の三次元座標、FcγIIaの三次元構造、FcεRIおよびFcγRIIIbを含めたFcγRIIaの該構造に由来するFc受容体(FcR)の三次元構造およびモデル、並びにかかる構造およびモデルの使用に関する。かかる結晶を得ることは、予測されなかった結果である。蛋白質の構造を決定するために十分な品質の結晶を得ることが予測できないことであることは、蛋白質結晶学分野ではよく知られていることである。特に、FcγRIIaの三次元(3−D)構造を決定するのに十分な品質の結晶を得ることは、本出願明細書に開示されたFcγIIaの結晶化まで達成されていなかった。それ自体、FcγRIIaの三次元構造決定は、本発明の発見まで可能なことではなかった。加えて、本発明の発見までは、他のFc受容体(FcR)蛋白質の三次元構造およびモデルの導出は可能ではなかった。また、本発明者らは三次元構造を限定し、FcεRIおよびFcγRIIIbについての薬物デザインのための三次元モデルを提供する最初の者である。
【0008】
従って、本発明の1つの目的は、高分解能にて、好ましくは約1.8オングストロームまで、FcγRIIaの三次元構造の測定を得るのに十分な品質の結晶を提供することである。また、本発明は、結晶性FcγRIIaを製造する方法を含む。
【0009】
本発明のさらにもう1つの方法は、好ましくは高分解能でFcεRIの三次元構造の決定を行うのに十分な品質のFcεRI蛋白質の結晶を提供することにある。また、本発明は、結晶性FcεRIを製造する方法を含む。
【0010】
FcγRIIaおよびFcεRIの結晶の値は、単にかかる結晶を得ることができるのを超えて拡大される。FcγRIIa結晶構造に関して得られた知識は、例えば、従来未知のFcγRIIa蛋白質の第三次構造を限定するために、従来未知のFcεRI蛋白質の三次元構造および従来未知のFcγRIIIb蛋白質の三次元構造についての原子座標をモデル化し誘導するために本発明によって用いられており、加えて、これを用いて、例えば、FcγR蛋白質ファミリーおよびFcαRI蛋白質の他のメンバーについて等の、実質的に関連する一次アミノ酸配列を有する他のFcR蛋白質の従来未知の第三次構造をモデル化することが可能である。蛋白質のFcγRファミリーには3つのメンバー、即ち、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIが存在し、その全ては免疫調節分子として作用し、且つその全てがIgGに対して結合する。受容体のFcγRファミリーの核酸およびアミノ酸配列の比較は、該受容体が高度に相同であることを示す。加えて、受容体のFcγRファミリーの各メンバーは分子がIgスーパーファミリーに属し、これはよく確立された判定基準に基づく帰属である(Hulettら,1994,前掲)。さらに、FcγRII、FcγRIII、FcεRIおよびFcαRIは各々Ig様ドメインを含み、これは、これらの受容体の間の類似性を示す。FcγIは3つのIg様ドメインを含む。しかしながら、FcγRIの第1および第2のドメインは、FcγRII、FcγRIII、FcεIおよびFcαRIのIg様ドメインに対して実質的に相同である。X−線解析技術に依存せず、かくして、該蛋白質の結晶化を要しない第三次構造決定の現在の方法(例えば、コンピュータモデリングおよび核磁気共鳴技術)は、FcγRIIa蛋白質の三次元構造から外挿された、他のFcγR蛋白質、FcεRIおよびFcαRI蛋白質のモデルの誘導および改善を可能とする。かくして、FcγRIIa蛋白質の三次元構造の知識が、これらの蛋白質の全ての構造への調査のための出発点を提供している。
【0011】
従って、本発明の第2の目的は、FcγRIIa蛋白質の構造、並びにの該FcγRファミリーの他のメンバーの蛋白質、FcεRIおよびFcαRI蛋白質のモデル、原子座標および誘導された三次元構造に関する情報を提供することにある。
【0012】
FcγRIIaの三次元構造および他のFcRのモデルの知識は、ヒトを含む動物において免疫機能および炎症を調節する化合物を設計し、且つ生産するための手段(即ち、構造ベースの薬物デザイン)を提供する。例えば、種々のコンピュータプログラムおよびモデルを用い、Fc受容体蛋白質に対する免疫グロブリンの結合をブロックするように化合物を設計することができる。
【0013】
本発明のもう1つの実施形態は、FcRの三次元構造の三次元コンピュータイメージを提供することである。
【0014】
本発明のもう1つの実施形態は、表1に表された三次元座標、表2に表された三次元座標、表3に表された三次元座標、表4に表された三次元座標、および表5に表された三次元座標よりなる群から選択される三次元座標の組で符号化されたコンピュータリーダブル媒体であって、ここで、グラフィックディスプレイソフトウェアプログラムを用い、該三次元座標は、三次元イメージとしてその電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で可視化され得る電子ファイルを作成するコンピュータリーダブル媒体を提供することである。
【0015】
従って、本発明の第3の目的は、FcR蛋白質に結合すること、若しくはFcR蛋白質の作用を模倣すること、免疫グロブリン(Ig)に結合すること、若しくは免疫グロブリン(Ig)の作用を模倣すること、例えば、2つのFcR蛋白質の二量体化を妨げることによってFcR蛋白質を介しての細胞シグナル変換を破壊すること、または例えば2つのFcR蛋白質の二量体化を強化することによって細胞シグナル変換を増強したり若しくはFcRに対して結合することなどによって、疾患を治療および診断するための試薬を設計するために、FcγRIIaなどのFcRの三次元構造、並びにかかる構造を用いて誘導される構造、座標およびモデルを使用する方法を提供することである。
【0016】
また、FcRの三次元構造の知識は、該蛋白質の構造と個々のアミノ酸の間の相互作用とを分析することによって利益をもたらす機能を変更した蛋白質を設計する手段を提供する。例えば、IgまたはIgの免疫複合体に対する改良された結合を有する治療用蛋白質を設計して、細胞に対する免疫複合体結合を防止するための、またはFcRのIg若しくはその複合体に対する結合に際して細胞シグナル変換などの生物学的応答を増強するための治療用化合物として使用することが可能である。かくして、改良を含むように設計された組換え可溶性FcRは、該三次元構造の知識を基礎にして作成することが可能である。
【0017】
従って、本発明の第4の目的は、改変された生物学的活性を有する組換え蛋白質を製作するためのFcRの三次元構造の外挿を提供することである。
【0018】
本発明の1つの実施形態はFcR蛋白質のモデルであり、ここで、該モデルはFcR蛋白質の三次元構造を表し、ここで、該構造は表1によって表された原子座標に実質的に一致する。本発明の他の実施形態は、表1によって表された原子座標に実質的に一致するFcγRIIa蛋白質の三次元構造;表2によって表された原子座標に実質的に一致するダイマーFcγRIIa蛋白質の三次元構造;表3によって表された原子座標に実質的に一致するモノマーFcεRI蛋白質の三次元構造;表4によって表された原子座標に実質的に一致するダイマーFcεRI蛋白質の三次元構造;表5によって表された原子座標に実質的に一致するダイマーFcγRIIIb蛋白質の三次元構造、およびかかる構造を表すモデルである。本発明のさらなる実施形態は、前記座標が表1で表されるFcγRIIa蛋白質の三次元座標の組;前記座標が表2で表されるダイマーFcγRIIa蛋白質の三次元座標の組;前記座標が表3で表されるFcεRI蛋白質の三次元座標の組;前記座標が表4で表されるFcεRI蛋白質の三次元座標の組;および前記座標が表5で表されるFcγRIIIbの三次元座標の組に関する。また、本発明は、構造ベースの薬物デザインを含むかかる構造を使用する方法、並びに標的FcR構造のモデルおよびイメージを誘導する方法を含む。
【0019】
本発明のもう1つの実施形態は、結晶性形態のFcγRIIa蛋白質を含む組成物である。本発明のさらにもう1つの実施形態は、結晶性形態のFcεRI蛋白質を含む組成物である。
【0020】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、FcγRIIa蛋白質を酢酸塩緩衝液および硫酸塩緩衝液よりなる群から選択される母液緩衝液と合わせることと、結晶形成を誘導して前記FcγRIIa結晶を形成することとを具備するFcγRIIaの結晶の製造する方法である。
【0021】
また、本発明は、FcεRI蛋白質を、酢酸塩緩衝液、カコジル酸緩衝液およびクエン酸ナトリウム緩衝液よりなる群から選択される母液緩衝液と合わせることと、結晶形成を誘導して前記FcεRI結晶を形成することとを具備するFcεRIの結晶の製造する方法を含む。
【0022】
また、本発明は、動物に投与すると、IgG媒介組織損傷を減少する治療用組成物であって、前記組成物はFcγRIIa蛋白質の活性を阻害する阻害性化合物を含有し、前記阻害性化合物が:(a)FcγIIa蛋白質の三次元構造を提供することと;(b)前記三次元構造を用いて、FcγRIIa蛋白質のIgGに対する結合を阻害する化合物と、FcγRIIa蛋白質の三次元構造を実質的に模倣する化合物と、およびFcγRIIa蛋白質を介して細胞シグナル変換を刺激する分子とFcγRIIa蛋白質との結合を阻害する化合物とよりなる群から選択される化合物を設計することと;(c)前記化合物を化学的に合成することと;並びに、(d)IgG媒介組織損傷を減少する前記合成された化合物の能力を評価することとを具備する方法;によって同定される治療用組成物を含む。
【0023】
本発明のもう1つの実施形態は、動物におけるIgG体液性免疫応答を刺激することができる治療用組成物である。本発明のさらにもう1つの実施形態は、動物に投与されて、オプシニゼーション(opsinization)またはFcγR依存性エフェクター機能(例えば、抗体依存性FcγR媒介細胞毒性、貪食作用または細胞メディエーターの放出等)により、これに限定されるものではないが癌または感染性疾患(例えば、HIV、ヘルペス、細菌感染、酵母感染または寄生虫感染等の経口感染など)を含む特定の疾患を治療する、抗体の治療学的作用を改良する治療用組成物である。かかる治療用組成物はIgGに対する増大された結合を有し、IgGのFcγRに対する結合を促進し、FcγRのダイマー形成を促進しおよび/またはFcγRを介したシグナル変換を増強する1以上の刺激性化合物を含む。また、体液性免疫応答を刺激するための方法が本発明に含まれる。該方法は本発明の治療用組成物を動物に投与する工程を含む。
【0024】
また、本発明は、動物に投与すると、IgG媒介組成損傷を減少させる治療用組成物であって、該治療用組成物がFcγRIIIb蛋白質の活性を阻害する阻害性化合物を含有し、該阻害性化合物が:(a)FcγRIIIb蛋白質の三次元構造を提供することと;(b)前記三次元構造を使用して、FcγRIIIb蛋白質のIgGに対する結合を阻害する化合物と、FcγRIIIb蛋白質の三次元構造を実質的に模倣する化合物と、およびFcγRIIIb蛋白質を介する細胞シグナル変換を刺激する分子とFcγRIIIb蛋白質との結合を阻害する化合物とよりなる群から選択される化合物を設計することと;(c)前記化合物を化学的に合成することと;並びに(d)IgG媒介組織損傷を減少させる前記合成された化合物の能力を評価することとを具備する方法によって同定される治療用組成物を含む。
【0025】
本発明の1つの実施形態は、IgE媒介応答を減少させることができる治療用組成物である。かかる治療用組成物はIgE媒介過敏症、炎症モジュレーターのIgE媒介放出またはFcεR蛋白質に関連する炎症細胞のIgE媒介漸増に関与する他の生物学的機能に由来するIgE媒介応答を減少させることができる。本発明のかかる治療用組成物は:(1)FcεR蛋白質のIgE結合部位を干渉することによるIgE免疫複合体に対するFcεR蛋白質を有する細胞(例えば、肥満細胞)上でのFcεR蛋白質の結合を阻害(すなわち、防止、ブロック)することと;(2)IgEまたはIgE免疫複合体の沈殿を阻害することと(すなわち、2つのIgEの間のFc:Fc相互作用を防止すること):(3)細胞表面受容体に対するIgEの結合に干渉することによって免疫グロブリン媒介細胞シグナル変換を阻害することと;および(4)細胞シグナル誘導分子(すなわち、FcεR蛋白質を介して細胞シグナル変換を誘導する分子)のFcεR蛋白質に対する結合を干渉することによってFcεR媒介細胞シグナル変換を阻害することができる。かかる治療用組成物はIgEのFcεR蛋白質に対する、IgEのIgEに対する、IgEの細胞表面受容体に対する、または細胞シグナル誘導分子のFcεR蛋白質に対する結合を阻害する1以上の阻害性化合物を含む。また、IgE媒介炎症等のIgE媒介応答を減少させる方法が本発明に含まれる。
【0026】
本発明のもう1つの実施形態は動物においてIgE液性免疫応答を刺激することができる治療用組成物である。本発明のさらにもう1つの実施形態は、動物に投与して、オプシナイゼーションまたはFcεR依存性エフェクター機能(例えば、貪食作用または細胞メディエーターの放出等)によって特定の疾患を治療する、抗体の治療作用を改良する治療用組成物である。かかる治療用組成物はIgEに対する増大した結合を有し、IgEのFcεRIに対する結合を増強し、FcεRIのダイマーの形成を増強し、および/または別にFcεRIを介してシグナル変換を増強する1以上の刺激性化合物を含む。また、体液性免疫応答を刺激する方法が本発明に含まれる。該方法は本発明の治療用組成物を動物に投与する工程を具備する。
【0027】
【発明の実施の形態】
(発明の詳細な説明)
本発明はFc受容体(FcR)蛋白質の三次元構造、かかる三次元構造のモデル、かかる構造を用いる構造ベースの薬物デザインの方法、かかる方法によって同定された化合物および治療用組成物におけるかかる化合物の使用の発見に関する。さらに詳しくは、本発明はFcガンマ受容体IIa(FcγRIIa)の新規結晶、Fcイプシロン受容体I(FcεRI)の新規結晶、かかる結晶の製造方法、FcγRIIa蛋白質の三次元座標、FcγRIIa蛋白質の三次元構造、FcεRIおよびFcγRIIbを含むFcγRIIa構造に由来するFcR構造およびモデル、並びに他のFcR構造を誘導するかかる構造およびモデルの使用、薬物デザイン戦略におけるかかる構造およびモデルの使用に関する。用語「ある」(「a」または「an」)の存在は1以上のその存在を言うことに注意されたい;例えば、化合物は1以上の化合物または少なくとも1つの化合物を言う。それ自体、用語「ある」(「a」または「an」)、「1以上」、および「少なくとも1つ」はここでは交換可能に用いることができる。また、用語「を含む」、「含めた」および「有する」は交換可能に用いることができることに注意すべきである。さらに、「よりなる群から選択される」化合物とは2以上の化合物の混合物(すなわち組合せ)を含めた後のリスト中の1以上の化合物を言う。本発明によると、単離されたまたは純粋な蛋白質はその天然環境から取り出された蛋白質である。それ自体、「単離された」および「生物学的に純粋な」とは、該蛋白質が精製された程度を必ずしも反映しない。本発明の単離された蛋白質はその天然源から得られ、組換えDNA技術を用いて製造することができるか、あるいは化学合成によって製造することができる。また、用語「三次」および「三次元」は交換可能に用いることができることに注意すべきである。また、「FcR蛋白質」への言及は単に「FcR」として言及することができ、かかる用語は完全なFcR蛋白質、ポリペプチドおよび/またはFcR蛋白質のモノマーまたはダイマーのごときFcR蛋白質の一部に言及するために用いることもできることに注意すべきである。特に言及がモノマーまたはダイマーに対してなされる場合、例えば、かかる用語は典型的にはFcR蛋白質名と組み合わせて用いられる。
【0028】
FcγRIIaの結晶構造の製造は1998年2月6日に出願された米国仮出願番号60/073,972に詳細に説明されている。米国仮出願番号60/073,972の全体は参照することによりここに組み込まれる。
【0029】
本発明の1つの実施形態はFc受容体のモデルを含み、該モデルはFc受容体(FcR)蛋白質の三次元構造を表す。本発明のもう1つの実施形態はFcR蛋白質の三次元構造を含む。本発明に包含されるFcR蛋白質の三次元構造は表1ないし5のいずれか1つに表された原子座標に実質的に一致する。本発明によると、用語「実質的に一致する」の使用は、FcR蛋白質の三次元立体配置を定義する原子座標を決定するための基礎として原子座標の特定の組を用いてFcR蛋白質の三次元構造が(すなわち、分子置換によって)モデル化または計算されることを可能にするように、原子座標(例えば、表1等によって表されるもの)の特定の組の特定の三次元立体配置の少なくとも一部に対して十分に空間的に同様であるFcR蛋白質の三次元構造の少なくとも一部を言う。本発明によると、第1のFcRのダイマーの三次元構造は第2のFcRのモノマーの三次元構造を表す原子座標を実質的に一致させることができ、その逆も可能である。第1の例において、最初のFcR蛋白質の構造の少なくとも一部(すなわち、最初のFcR蛋白質のダイマーのモノマー)は第2のFcRモノマーの三次元立体配置を表す原子座標に実質的に一致する。第2の逆の場合において、最初のモノマーFcR蛋白質は第2のFcR蛋白質の少なくとも一部(すなわち、第2のFcR蛋白質ダイマーのモノマー)に実質的に一致する。同様に、最初のFcRの所与の1部または鎖の三次元構造は第2のFcRの三次元立体配置を表す原子座標の少なくとも一部に実質的に一致することができる。
【0030】
さらに詳しくは、原子座標の所与の組に実質的に一致する構造は、かかる構造の少なくとも約50%が各ドメインにおける二次構造要素中の主鎖原子(backbone atoms)につき約1.5オングストローム未満の、より好ましくは各ドメインにおける二次構造要素中の主鎖原子につき約1.3オングストローム未満、順次、より好ましくは、約1.0オングストローム未満、約0.7オングストローム未満、約0.5オングストローム未満、最も好ましくは各ドメインにおける二次構造要素中の主鎖原子につき約0.3オングストローム未満の平均二乗平均平方根偏差(RMSD)を有する構造である。より好ましい実施形態において、原子座標の所与の組に実質的に一致する構造は、かかる構造の少なくとも約75%が列挙された平均二乗平均平方根偏差(RMSD)値を有し、より好ましくはかかる構造の少なくとも約90%が列挙された平均二乗平均平方根偏差(RMSD)値を有し、最も好ましくはかかる構造の約100%が列挙された平均二乗平均平方根偏差(RMSD)値を有する構造である。さらにより好ましい実施形態において、「実質的に一致する」の前記定義はアミノ酸側鎖の原子を含めるように拡大することができる。本明細書中で用いるごとく語句「共通のアミノ酸側鎖」とは原子座標の所与の組に実質的に一致する構造と、およびかかる原子座標によって実際に表される構造との双方に共通するアミノ酸側鎖を言う。好ましくは、原子座標の所与の組に実質的に一致する三次元構造は、共通アミノ酸側鎖の少なくとも約50%が約1.5オングストローム未満、より好ましくは約1.3オングストローム未満、順次、より好ましくは、約1.0オングストローム未満、約0.7オングストローム未満、約0.5オングストローム未満、最も好ましくは約0.3未満の平均二乗平均平方根偏差(RMSD)を有する構造である。より好ましい実施形態において、原子座標の所与の組に実質的に一致する構造は、共通アミノ酸側鎖の少なくとも約75%が列挙された平均二乗平均平方根偏差(RMSD)値を有し、より好ましくは共通アミノ酸側鎖の少なくとも90%が列挙された平均二乗平均平方根偏差(RMSD)値を有し、最も好ましくは共通アミノ酸側鎖の約100%が列挙された平均二乗平均平方根偏差(RMSD)値を有する構造である。
【0031】
原子座標の特定の組に実質的に一致するFcR蛋白質の三次元構造は、例えば、以下のデーター:(1)FcR蛋白質のアミノ酸配列と;(2)三次元立体配置を有する原子座標の特定の組によって表された蛋白質の関連部分(単数または複数)のアミノ酸配列と;および(3)特定の三次元立体配置の原子座標と、に由来する情報を使用して、モデラー[MODELER、Insight II Homologyソフトウェアパッケージ(Insight II)(97.0),MSI,San Diego)で実施されているごときA.SaliおよびT.L.Blundell,J.Mol.Bio.,vol.234:779−815,1993]のような適切なモデリングコンピュータプログラムによってモデル化することができる。また、原子座標の特定の組に実質的に一致するFcR蛋白質の三次元構造も、後で詳細に記載する分子置換のごとき方法によって計算することができる。
【0032】
もう1つのFcR蛋白質の三次元構造をモデル化し、または計算するのに使用されるFcR蛋白質の適切な三次元構造は表1に表される原子座標の該組を含む。表1に記載された三次元座標の組は標準的なプロテイン・データ・バンク・フォーマット(Protein Data Bank format)で表される。本発明によると、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIb、FcεRIおよびFcαRIの群から選択されるFcR蛋白質は表1によって表される原子座標の組に実質的に一致する三次元構造を有する。本明細書で用いるごとく、三次元構造は最もありそうに、または顕著に、原子座標の組に対して適応(fit)するものでもある。本発明によると、最もありそうな(即ち、蓋然的な)または顕著な適応とは、特定のFcR蛋白質がその特定のFcR蛋白質に由来する原子座標の組とで有する適応性である。かかる原子座標は、例えば、ここに提供されるFcγRIIa構造につき決定される座標のような蛋白質の結晶構造から、またはFcεRIおよびFcγRIIIbにつきここに決定されるような蛋白質の構造のモデルから誘導される。例えば、天然に生じたまたは組換えにより生産されたFcγRIIa蛋白質を含むモノマーFcγRIIa蛋白質の三次元構造は表1の原子座標に実質的に一致し、それは該原子座標との最も可能性が高く適応または顕著に適応する。本発明によって決定されたFcγRIIaの三次元結晶構造は表1の原子座標を含む。また、その例として、FcεRI蛋白質の三次元構造は表1の原子座標に実質的に一致し、並びに、共に表3の原子座標に実質的に一致し、且つそれとの蓋然的な適応であり、本発明者らによって決定されたFcεRIモノマーのモデルの三次元構造は表3の原子座標を含む。この定義は同様に他のFcR蛋白質に適用することができる。
【0033】
本発明によるFcR蛋白質の好ましい構造は表1に表された原子座標、並びにB値および/または熱パラメーターに実質的に一致する。表1にリストされたかかる値は当業者によって解釈される。FcR蛋白質のより好ましい三次元構造は表1に表された三次元座標に実質的に一致する。FcR蛋白質のさらにより好ましい三次元構造は表1に表された三次元座標との最も蓋然的適応である。実質的に一致するおよび蓋然的な適応を決定する方法は当業者の技量内のものであり、例のセクションに記載する。
【0034】
表1によって表される原子座標に実質的に一致する三次元構造を有する好ましいFcR蛋白質は、DNAsisTMプログラム(Hitachi Software,San Bruno,CAから入手可能)またはMacVectorTMプログラム(Eastman Kodak Company,New Haven,CTから入手可能)またはGCγTMプログラム(「GCγ」,University of Wisconsin,Madison,WIから入手可能)のごとき配列アラインメントプログラムを例えば用いる場合にFcR配列の全長を横切って、FcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列、好ましくは配列番号3、配列番号10、配列番号11および/または配列番号12を含めたアミノ酸配列に対して少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%で同一であるアミノ酸配列を有するFcR蛋白質を含み、かかるアラインメントは例えばかかるアラインメントプログラムを伴う標準的な省略値(default values)を用いて行われる。
【0035】
本発明の1つの実施形態はFcγRIIa蛋白質の三次元構造を含む。FcγRIIa蛋白質の適切な三次元構造は表1に表された原子座標に実質的に一致する。FcγRIIaの適切な三次元構造は表2−5によって表される原子座標に一致する。また、FcγRIIa蛋白質の適切な三次元構造は表1に表される原子座標の組を含む。FcγRIIa蛋白質の三次元座標の組は標準的なプロテイン・データ・バンク・フォーマットで表される。FcγRIIa蛋白質の好ましい構造は表1(モノマーFcγRIIa)または表2(ダイマーFcγRIIa)に表された原子座標、並びにB値および/または熱パラメーターに実質的に一致する。表1にリストされたかかる値は当業者によって解釈される。FcγRIIa蛋白質のより好ましい三次元構造は表1に表された三次元座標との蓋然的な適応を有する。
【0036】
本発明の1つの実施形態はFcεRI蛋白質の三次元構造を含む。FcεRI蛋白質の適切な三次元構造は表1、表2、表3、表4または表5に表される原子座標と実質的に一致する。FcεRI蛋白質のより適切な三次元構造は表3(モノマーFcεRI)または表4(ダイマーFcεRI)に表された原子座標の組に実質的に一致する。また、FcεRI蛋白質の適切な三次元構造は表3または4に表された原子座標の組を含む。FcεRI蛋白質の三次元座標の組は標準的なプロテイン・データ・バンク・フォーマットで表される。表1ないし5にリストされたかかる座標は当業者によって解釈される。FcεRI蛋白質のより好ましい三次元構造は表3または表4に表された三次元座標との蓋然的な適応を有する。本発明の1つの実施形態はFcεRIIIb蛋白質の三次元構造を含む。FcεRIIIb蛋白質の適切な三次元構造は表1、表2、表3、表4または表5に表された原子座標に実質的に一致する。FcεRIIIb蛋白質のなおさらにより適切な三次元構造は表5に表された原子座標の組に実質的に一致する。また、FcεRIIIb蛋白質の適切な三次元構造は表5に表された原子座標の組を含む。FcεRIIIb蛋白質の三次元座標の組は標準的なプロテイン・データ・バンク・フォーマットで表される。FcγRIIIb蛋白質のより好ましい三次元構造は表5に表された三次元座標との最も適切な適応を有する。いずれかのFcR蛋白質の三次元構造は、FcγRIIa結晶の分析から、およびFcγRIIa結晶に由来する他のFcR構造から得られた情報に基づいて当該分野で一般的に用いられている方法でモデル化することができる。後記の例のセクションは、FcγRIIa結晶の製造、FcεRI結晶の製造、FcγRIIa結晶に由来するFcγRIIa蛋白質のモノマーおよびダイマーの三次元構造、およびFcγRIIa結晶の分析から得られた情報に基づいて当該分野で一般的に知られた方法を用いるFcεRI蛋白質のモノマーおよびダイマーの三次元構造のモデルを開示する。結晶性FcγRIIaのごとき結晶性FcRの三次元構造を用いてここに開示されたFcεRIのごときいずれかの他のFcRの三次元構造を誘導することができることは本発明の実施形態である。その結果、FcγRIIaの結晶性構造から誘導されたFcR(例えば、FcεRI)の誘導された三次元構造を用いて、FcRγIIIのごとき他のFcRの三次元構造を誘導することができる。従って、結晶性FcγRIIaのここにおける新規な発見およびFcγRIIaの三次元構造により、当業者は今やいずれかのFcRの三次元構造を誘導しそれをモデル化することができる。いずれかのFcRの構造の誘導は今やかかる他のFcRについての結晶構造データーが存在しない場合であってさえも達成することができ、もう1つのFcRの結晶構造が入手できる場合は、新しいFcRの三次元構造のモデリングは、FcγRIIa構造からすでに得られた知識を用いて仕上げることができる。他のFcRのアミノ酸配列における差を考慮し、他のFcRの蛋白質についての結晶構造データの不存在下で、他のFcR蛋白質の三次元構造をモデル化することができることが、本発明の利点である。事実、本出願の優先日に続いてのモノマーFcεRIの結晶化および該受容体のモデルの公表(Garmanら、1998年12月23日,Cell 95:951−961)する最近の報告は、表3に表された原子座標を含む本発明者らによって決定されたモノマーFcεRI蛋白質がガーマン(Garman)らよって報告された結晶性FcεRIの三次元構造の総合したかなりの構造的特徴を有することが確認された。ガーマンらの結晶性FcεRI構造の原子座標は現在公には入手できないが、ガーマンらにおける構造表示および考察の概要は、結晶性FcεRIの三次元構造が表3によって表される原子座標に実質的に一致すると予測されることを示す。さらに、本発明の新規な発見は、実質的にいずれものFcR、特にFcγRおよびFcεRIの活性に影響する化合物の構造ベースの薬物デザインを可能とする。
【0037】
結晶はPt、Hg、AuおよびPbの錯体または塩のごとき重原子化合物で誘導体化し、天然および誘導化結晶につきX線回折データーを測定する。天然結晶および誘導化結晶についての回折強度の差を用いて、MIR(マルチプル同型置換)またはSIRAS(異常散乱を有するシングル同型置換)の方法によってこれらのデーターにつき相を決定することができる。これらのデーターのフーリエ変換により、蛋白質についての低分解能電子密度マップが得られる。この電子密度はイメージ増強技術によって修飾することができる。次いで、該蛋白質についての分子モデルを電子密度に位置する。この初期の(部分的)構造は、蛋白質の公知の幾何学的および化学的特性に一致する該モデルを同時に拘束しつつ、測定され且つ計算された該回折パターンの間の差異を最小化するための構造を記載するパラメーターを修飾することによってコンピュータプログラム(XPLOR等)を用いて仕上げることができる。新しい相およびかくして新しい電子密度マップは蛋白質について計算され得る。このマップをガイドとして用い、構造の分子モデルを手動で改良することができる。この手法を反復して、表1中の原子座標の組としてFcγRIIaについて、ここに表した蛋白質の構造を与える。
【0038】
本発明の1つの実施形態はFcγRIIa蛋白質の三次元構造を含み、ここで、FcγRIIaの蛋白質の原子座標は:(a)結晶性形態のFcγRIIaの蛋白質を提供することと;(b)結晶性FcγRIIaタンパクの電子密度マップを作成することと;および、(c)電子密度マップを分析して原子座標を生じさせることとを具備する方法によって得られる。
【0039】
本発明によると、本発明のFcγRIIa蛋白質の三次元構造を用いて、もう1つのFcR蛋白質の三次元構造(すなわち、モデル化すべき構造)のモデルを誘導することができる。本明細書で用いる通り、蛋白質の「構造」とは該蛋白質を構成する成分と、および該成分の配置の様式を言う。本明細書で用いるごとく、用語「モデル」とは蛋白質、ポリペプチド、またはペプチドの三次元構造の有形媒体における表示を言う。例えば、モデルは、コンピュータスクリーン上で、紙片上(すなわち、二次元媒体上)で、および/または玉棒図形としての、電子ファイルにおける三次元構造の表示であってもよい。物理的三次元モデルは有形であり、限定されるものではないが、棒模型および空間実体模型を含む。語句「コンピュータスクリーン上でモデルをイメージする」とは、当業者に知られた適切なコンピュータハードウェアおよびソフトウェア技術を用いてコンピュータスクリーン上のモデルを表現し(または表し)、それを操作する能力を言う。かかる技術は、例えば、エバンス・アンド・スザーランド(Evans and Sutherland,Saltlake city,Utah,およびBiosym Technologies,San Diego,CA)を含めた種々の源から入手できる。語句「モデルの画像を提供する」とは、モデルの「ハードコピー」を生成させる能力を言う。ハードコピーは動画および静止画を共に含む。モデルのコンピュータスクリーンイメージおよび画像は空間実体模型表示、α炭素追跡、リボンダイアグラム(例えば、ヒトFcεRI蛋白質の三次元構造の二次元リボンダイアグラムモデルである図14参照されたい)および電子密度マップを含めた多数のフォーマットで可視化することができる。
【0040】
本発明の方法を用いるモデルに対する適切な標的FcR構造は、FcγRIIa蛋白質に実質的に構造的に関連するFcR蛋白質のモノマー、ダイマーおよびマルチマーを含めたいずれのFcR蛋白質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。FcμRIIa蛋白質に実質的に構造的に関連する好ましい標的FcR構造は、DNAsisTMプログラム(Hitachi Software,San Bruno,CAから入手可能)またはMacVectorTMプログラム(Eastman kodak Company,New Haven,CTから入手可能)またはGCγTMプログラム(「GCγ」,University of Wisconsin,Madison,WIから入手可能)等の配列アラインメントプログラムを例えば用いる場合に、標的FcR構造配列の全長を横切って、FcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列、好ましくは配列番号3、配列番号10、配列番号11,配列番号12、配列番号14および/または15を含めたアミノ酸配列に対して少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約36%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%で同一であるアミノ酸配列を有する標的FcR構造を含み、かかるアラインメントは、例えば、かかるアラインメントプログラムを伴う標準的な省略値を用いて行われる。モデルに対するより好ましい標的FcR構造は、該アミノ酸配列をアラインメントするのにここに開示したDNAアラインメントプログラムを用いた場合、該アミノ酸配列のいずれかのドメイン1またはドメイン2についてのアミノ酸配列等の配列の好ましい領域を比較すると、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13のアミノ酸配列に対して、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%で同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質を含む。モデルに対するより好ましい標的FcR構造は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIb、FcεRIまたはFcαRI蛋白質を含む構造、より好ましくはアミノ酸配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13を含む構造、より好ましくはアミノ酸配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13よりなる構造を含む。
【0041】
また、モデルに対する好ましい標的FcR構造は、限定されるものではないが、置換、欠失または付加された1以上のアミノ酸残基を有するFc受容体のごときFc受容体蛋白質の誘導体(ここではFc受容体突然変異体と言う)、またはFc受容体をコードする核酸分子の天然対立遺伝子変異体によってコードされる蛋白質を含む。モデルに対する好ましいFc受容体蛋白質はFcγRIIaγTm(すなわち、膜貫通ドメインが欠失したことによるFcγRIIa蛋白質)、およびFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIb、FcεRI、FcαRI蛋白質をコードする核酸分子の突然変異体または天然対立遺伝子変異体を含む。モデルに対するより好ましいFc受容体蛋白質は配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12若しくは配列番号13を含むアミノ酸配列を有するFc受容体蛋白質、または配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13の突然変異体若しくは天然対立遺伝子変異体を含む。本発明によると、FcγRIIbのアミノ酸配列は、ここでは配列番号5として表され、FcγRIIcについてのアミノ酸配列は配列番号6として表され、FcγRIについてのアミノ酸配列は配列番号7として表され、FcγRIIIについてのアミノ酸配列はここではアミノ酸配列番号8として表され、FcεRIについてのアミノ酸配列はここでは配列番号9として表され、且つ図13に記載され、FcαRIについてのアミノ酸配列はここでは配列番号13として表される。前記した公知のFcRの全てについてのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は公知であり、公に入手できることに注意されたい。モデルに対する好ましい対立遺伝子変異体は、限定されるものではないが、ここでは配列番号10として表される、配列番号3の残基27でのグルタミンと、配列番号3の残基131でのアルギニンを有した;ここでは配列番号11として表される、配列番号3の残基27のトリプトファンと配列番号3の残基131のヒスチジンと有した;ここでは配列番号12として表される、配列番号3の残基27でのトリプトファンおよび配列番号3の残基131でのアルギニンを有するFcγRIIa対立遺伝子変異体を含む。
【0042】
本明細書で用いるごとく、「天然対立遺伝子変異体」とは、相同染色体上の対応する遺伝子座を占める遺伝子の代替の形態を言う。対立遺伝子変異体は、典型的には、それらが比較される遺伝子によってコードされる蛋白質のものと同様の活性を有する蛋白質をコードする。また、対立遺伝子変異体は当該遺伝子の5’または3’非翻訳領域(例えば、調節制御領域)に改変を含む。対立遺伝子変異体は当業者によく知られ、動物の所与の種においてFc受容体をコードする遺伝子の所与の群内に見い出されることが予期されるであろう。
【0043】
本明細書で用いるごとく、「Fc受容体をコードする核酸分子の変異体」とは、ヌクレオチドの挿入、欠失および/または置換によって修飾された核酸分子を言う。好ましくは、Fc受容体核酸分子の突然変異体は、Fc受容体核酸分子の突然変異体によってコードされた蛋白質(すなわち、Fc受容体蛋白質突然変異体)が、非突然変異Fc受容体蛋白質に対する液性または細胞性免疫応答によって標的化できる1以上のエピトープを有するように修飾を含む。より好ましくは、突然変異体Fc受容体蛋白質をコードする核酸分子が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で非突然変異Fc受容体核酸分子をコードする核酸配列とで安定なハイブリッドを形成することができる。なおより好ましくは突然変異体Fc受容体蛋白質をコードする核酸分子はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13を含むアミノ酸配列をコードする核酸配列と安定なハイブリッドを形成することができる。
【0044】
本明細書で用いるごとく、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、核酸分子を用いて相似する核酸分子を同定する標準的なハイブリダイゼーション条件を言う。かかる標準的な条件は、例えば、サンブルックら(Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Labs Press 1989)によって開示されている。サンブルックら(前掲)の文献は、参照することにより、その全体をここに組み込む(特に、頁9.31−9.62、11.7および11.45−11.61を参照されたい)。加えて、ヌクレオチドのミスマッチの程度を変動することを可能とするハイブリダイゼーションを達成するための適切なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を計算するための式は、例えば、メインコスら(Meinkothら,1984,Anal.Biochem.138,267−284;前掲)に開示され、参照することにより、ここにその全体が組み込まれる。
【0045】
より詳しくは、ここに言及するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、ハイブリダイゼーション反応でプローブとして使用されるべき核酸分子と少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約75%、特に少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能とする条件をいう。かかる条件は、DNA:RNAまたはDNA:DNAハイブリッドが形成されるかに応じて変化するであろう。DNA:DNAハイブリッドについての計算された融解温度は、DNA:RNAハイブリッドについてよりも10℃低い。特別の実施形態において、DNA:DNAハイブリッドについてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約20℃と約35℃との間、より好ましくは約28℃と約40℃との間、さらにより好ましくは約35℃と約45℃との間の温度での、0.1×SSC(0.157M Na+)のイオン強度でのハイブリダイゼーションを含む。特に実施形態においては、DNA:RNAハイブリッドについてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、約30℃と約45℃との間、より好ましくは約38℃と約50℃との間、さらにより好ましくは約45℃と約55℃との間の温度で、0.1×SSC(0.157M Na+)のイオン強度でのハイブリダイゼーションを含む。これらの値は、約100ヌクレオチドよりも大きい分子についての融解温度の計算、0%ホルムアミドおよび約50%のG+C含有量に基づくものである。あるいは、Tmはサンブルックら(前掲,頁11.55ないし11.57に記載されているごとく経験的に計算することができる。
【0046】
本発明のモデルはFcγRIIa等の1つのFcR蛋白質の公知の三次元構造ともう1つの標的FcR構造との間の保存された構造的特徴を用いて誘導することができる。かかる構造的特徴は、限定されるものではないが、免疫グロブリンのスーパーファミリーのメンバーに高度に保存されているアミノ酸配列、保存されたジスルフィド結合、およびβ−ストランドまたはβ−シートを含む。例えば、図5、11および12は種々のFc受容体蛋白質の一次アミノ酸配列をβ−ストランドとの関係を説明する。好ましくは、本発明のモデルは、FcγRIIa蛋白質の三次元構造の主鎖で出発することによって誘導される。次いで、個々の残基を、FcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列とは異なる残基での標的FcR構造のアミノ酸配列に従って置き換える。残基の置き換えは主鎖の三次構造を乱さないように注意する。標的FcR構造をモデル化するための手法は一般に当該分野で知られているが、本発明はFcγRIIa蛋白質の最初の三次元構造およびFcγR受容体のファミリーのメンバー、FcεRIおよびFcεRIIIbに実質的に関連する蛋白質の最初の三次元構造を提供する。かくして、本発明はFcεRI受容体およびFcαRI受容体の、FcγR受容体のファミリーのメンバーの正確で、従って有用なモデルを作成するための必須の情報を提供する。前記したごとく、一旦、第2のFcRの三次元構造が、ここに開示されたFcγRIIa等の最初のFcRの決定された三次元構造から誘導されたならば、該第2のFcR三次元構造を用いて、もう1つのFcRの三次元構造を誘導(すなわち、モデル化し、または計算)することができる。
【0047】
本発明によると、例えば、サリ(Sali、Current Opinion in Biotechnology,Vol.6,頁437−451,1995)によって一般的に記載された技術を用いて構造をモデル化することができ、アルゴリズムは、Homology95.0(Biosym/MSI,San Diego,CAから入手可能な,プログラム・Insight IIにおいて)等のプログラムパッケージで実施することができる。Homology95.0の使用は、モデル化すべき標的構造のアミノ酸配列を持つ公知の三次元構造を有する公知の構造のアミノ酸配列のアラインメントが必要である。該アラインメントは、精度を改良するための他の関連配列を含めた対様式のアラインメントまたはマルチプル配列アラインメントであってもよい(例えば、Rost,Meth.Enzymol.,vol.266,頁525−539,1996によって一般的に記載されている方法を用いる)。構造的に保存された領域は、関連する構造的特徴を比較することによって、または公知の構造と当該標的構造との間の配列相同性の程度を調査することによって同定される。当該標的構造についての正確な座標は、公知の構造を用いて公知の構造から割り当てられる。当該標的構造の他の領域についての座標は、ブルックヘイベン・ナショナル・ラボラトリー(BrookHaven National Laboratory,Upton,NY)によって維持されるプロテイン・データ・バンクに見いだされるような公知の構造から得られた断片から生成することができる。当該標的構造の側鎖の配座は、立体的配置に関して許容されるものを参照し、且つ回転異性体のライブラリーおよびそれらの発生頻度を用いて割り当てることができる(PonderおよびRichards,J.Mol.Biol.,vol.193,頁775−791,1987に一般的に記載されている)。
【0048】
当該標的構造の得られたモデルは、分子力学(例えば、Biosym/MSIから入手可能なプログラムDiscoverに具現化されている)によって改良されて、当該モデルが化学的且つ立体配置的に合理的であるように保証される。
【0049】
従って、本発明の1つの実施形態は標的FcRの三次元構造のモデルを誘導する方法であり、該方法は:(a)FcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列および標的FcR構造のアミノ酸配列を提供することと;(b)FCγRIIaアミノ酸配列と当該標的FcR構造アミノ酸配列との間に共有された構造的に保存された領域を同定することと;(c)表1に表された原子座標に実質的に一致する原子座標に基づいたFcγRIIa蛋白質の三次元構造を用いて当該標的FcR構造の前記構造的に保存された領域を三次元構造に対して割り当てることにより、当該標的FcR構造について原子座標を決定し、当該標的構造アミノ酸配列の三次元構造のモデルを誘導する工程を具備する。本発明のモデルは、本明細書において先に記載してきた。好ましくは、該モデルはコンピュータモデルを含む。該方法は、さらに、構造的帰属を電子的に刺激し、当該標的構造アミノ酸配列の三次元構造のコンピュータモデルを誘導する工程を具備する。モデル化するための適切な標的構造は、ここに開示したFc受容体の蛋白質、ポリペプチドおよびペプチドを含み、前記Fc受容体のモノマーおよびダイマーを含む。モデル化するための好ましいアミノ酸配列をここに開示する。
【0050】
本発明のもう1つの実施形態は、それにつき結晶が製造された標的FcR構造(ここでは「結晶化標的構造」と言う)の三次元構造のコンピュータモデルを誘導するための方法である。かかるモデルを生成させるための適切な方法は、分子置換を具備する方法を含む。分子置換の方法は一般に、当業者に知られており(一般に、Brunger,Meth.Enzyn.,Vol.276,頁558−580,1997,NavazaおよびSalubjian,Meth.Enzym.,Vol.276,頁584−594,1997,TongおよびRossmann,Meth.Enzym.,Vol.276,頁594−611,1997;およびBentley,Meth.Enzym.,Vol.276,頁611−619,1997に記載されており、その各々は参照することにより、その全体がここに組み込まれる)、例えばXplorを含めたソフトウェアプログラムで行われる。本発明によると、X線回折データーは結晶化標的構造の結晶から収集される。X線回折データーを変換してパターソン関数を計算する。当該結晶化標的構造のパターソン関数を既知の構造(ここではサーチ構造と言う)から計算されたパターソン関数と比較する。当該結晶化標的構造のパターソン関数を当該サーチ構造パターソン関数上で回転させて、当該結晶における結晶化標的構造の正しい配向を決定する。次いで、翻訳関数を計算し、当該結晶軸に関する当該標的構造の配向を決定する。一旦、当該結晶化標的構造が単位格子で正しく位置付けられれば、当該実験データについての初期相を計算することができる。これらの相は、それから構造の差異が観察される電子密度マップの計算されることと、および当該構造の改良とが必要である。好ましくは、当該サーチ分子の構造的特徴(例えば、アミノ酸配列、保存されたジスルフィド結合、およびβ−ストランドまたはβ−シート)を、結晶化標的構造に関連づける。好ましくは、本発明による分子置換の方法で有用な結晶化標的FcR構造は、ここに開示したDNAアラインメントプログラムを用いて、当該2つのアミノ酸配列を比較した場合に、該サーチ構造(例えば、FcγRIIa)のアミノ酸配列に対して少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%で同一であるアミノ酸配列を有する。本発明の好ましいサーチ構造は、配列番号3、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14または配列番号15を含むアミノ酸配列を含むFcγRIIa蛋白質を含む。本発明のより好ましいサーチ構造は、表1にリストした原子座標に実質的に一致する三次元構造を有するFcγRIIa蛋白質を含む。好ましくは、結晶性FcγRIIa蛋白質のパターソン関数は、本発明のFcγRIIa結晶のX線回折に由来する。本発明の分子置換戦略で使用する好ましい標的FcR構造は、FcγRI、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIII、FcεRIおよび/またはFcαRIを含み、最も好ましくはFcεRIおよびFcγRIIIbである。
【0051】
本発明の好ましい実施形態は、結晶化標的FcR構造(すなわち、結晶化FcR蛋白質)の三次元構造を誘導する方法を含み、該方法は:(a)結晶化標的FcR構造のパターソン関数を、結晶性FcγRIIa蛋白質のパターソン関数と比較し、前記結晶化標的FcR構造の電子密度マップを作成することと;および、(b)該電子密度マップを分析し、該結晶化標的FcR構造の三次元構造を形成することとの工程を含む。
【0052】
本発明のもう1つの実施形態は、標的構造の三次元構造を決定する方法であり、ここで、当該標的FcR構造の三次元構造は未知である。かかる方法は、当該標的構造の三次元構造のみをベースとするFcγRIIa蛋白質の三次元構造に関連する構造を同定するのに有用である。従って、本発明の方法は、FcγRIIa蛋白質との高いアミノ酸同一性を有してはいないが、三次元構造類似性は有する構造を同定することを可能にする。標的FcR構造の三次元構造を決定するための好ましい方法は:(a)標的構造のアミノ酸配列を提供することと[ここで、当該標的構造の三次元構造は未知である];(b)折り畳み認識によって三次元立体配座におけるアミノ酸配列の折り畳みのパターンを分析することと;および、(c)当該標的構造アミノ酸配列の折り畳みのパターンをFcγRIIa蛋白質の三次元構造と比較し、当該標的構造の三次元構造を決定することと[ここで、FcγRIIa蛋白質の三次元構造は表1に表した原子座標に実質的に一致する]を具備する。折り畳み認識の好ましい方法は一般に、ジョーンズにより記載される方法を含む(Johns,Curr.Opinion Struc.Biol.,vol.7,頁377−387,1997)。かかる折り畳みは、標的構造の疎水性および/または親水性特性に基づいて分析することが可能である。
【0053】
本発明の1つの実施形態は、FcR蛋白質の三次元構造の三次元コンピュータイメージを含む。その三次元コンピュータイメージを形成するための適切な構造をここに開示する。好ましくは、コンピュータイメージは、表1にリストされた三次元座標に実質的に一致する構造に対して作られる。本発明のコンピュータイメージは、これにより限定されるものではないが、MOLSCRIPT2.0(Avater Software AB,Heleneborgsgatan 21C,SE−11731 Stockholm,スウェーデン)、グラフィック・ディスプレイ・プログラム(Johnsら、Acta Crystallograthy、vol.A47,頁110、1991)またはグラフィック・ディスプレイ・プログラム・GRASPを含めたいずれの適切なソフトウェアプログラムを用いて、製作することが可能である。本発明のイメージを作成するために有用な適切なコンピュータハードウェアは当業者に知られている。好ましいコンピュータハードウェアは、シリコン・グラフィック・ワークステーション(Silicon Graphics Workstation)を含む。
【0054】
本発明のもう1つの実施形態は、表1に表された三次元座標、表2に表された三次元座標、表3に表された三次元座標、表4に表された三次元座標、表5に表された三次元座標よりなる群から選択された三次元座標の組で符号化されたコンピュータリーダブル媒体に関し、ここで、グラフィック・ディスプレイ・ソフトウェア・プログラムを用い、当該三次元座標は三次元イメージとしてその電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で可視化することができる電子ファイルを製作する。好ましくは、当該三次元構造は、FcγRIIa、FcεRIおよびFcγRIIIbよりなる群から選択されるFcR蛋白質である。
【0055】
本発明のさらにもう1つの実施形態は表1に表された三次元座標に実質的に一致する三次元構造の三次元座標の組で符号化されたコンピュータリーダブル媒体に関し、ここで、グラフィック・ディスプレイ・ソフトウェア・プログラムを使用して、当該三次元座標の組は、三次元イメージとしてその電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で可視化することができる電子ファイルを製作することができる。好ましくは、当該三次元構造は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIII、FcεRIおよびFcαRIよりなる群から選択されるFcR蛋白質のものである。
【0056】
本発明のもう1つの実施形態は図4、図6、図7、図8、図9、図10、図14、図15または図16に示されたものを含めたFcRの二次元イメージに関する。これらの図面のほとんどは、MOLSCRIPT2.0(Avater Software AB,Heleneborgsgatan 21C,SE−11731 Stockholm,スウェーデン)により描かれた。
【0057】
本発明の1つの実施形態は、表1に表された三次元座標を含む三次元座標の組を、グラフィックディスプレイソフトウェアプログラムを用いてコンピュータ上で分析して、前記イメージの電子ファイルを作成し、三次元イメージとして電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で前記電子ファイルを可視化するときに製作されるFcRタンパクのイメージを含む。適切なグラフィックソフトウェアディスプレイプログラムはMOLSCRIPT2.0、OおよびGRASPを含む。かかるイメージを可視化するための適切なコンピュータはシリコン・グラフィック・ワークステーション(Silicon Graphics Workstation)を含む。イメージに対する適切な構造およびモデルはここに開示される。好ましい三次元構造および/またはモデルは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIII、FcεRIおよびFcαRIよりなる群から選択されるFcR蛋白質である。
【0058】
また、本発明はFcγRI蛋白質、FcγRIIa、FcγRIIb蛋白質、FcγRIIc蛋白質、FcγRIIIb蛋白質、FcεRI蛋白質、およびFcαRI蛋白質を含めた標的構造の三次元構造の三次元モデルを含み、かかる三次元モデルは(a)FcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列および標的FcR構造のアミノ酸配列を提供することと;(b)FcγRIIaアミノ酸配列と該標的FcRアミノ酸配列との間で共有された構造的に保存された領域を同定することと;(c)表1に表された原子座標に実質的に一致する原子座標に基づいてFcγRIIa蛋白質の三次元構造を用いて該標的FcR構造の構造的に保存された領域を三次元構造に帰属させて、該標的FcR構造アミノ酸配列の三次元構造のモデルを誘導することによってFcR蛋白質につき原子座標を決定することとを具備する方法によって製作される。好ましくは、該モデルはコンピュータモデルを含む。好ましくは、該方法はさらに標的FcR構造アミノ酸配列の三次元構造のコンピュータモデルを誘導するために構造的帰属を電子的にシミュレートする工程を含む。FcγRI蛋白質、FcγRIIb蛋白質、FcγRIIc蛋白質、FcγRIIIb蛋白質、およびFcεRI蛋白質の好ましいアミノ酸配列はここに開示される。
【0059】
本発明の1つの実施形態は、FcγRIIa蛋白質を母液と合わせることと、および結晶形成を誘導してFcγRIIa結晶を生じさせることとを具備するFcγRIIaの結晶の生産方法を含む。本発明のもう1つの実施形態は、FcεRI蛋白質を母液と合わせることと、および結晶形成を誘導してFcεRI結晶を生じさせることとを具備するFcεRIの結晶の生産方法を含む。FcγRIIaおよびFcεRIの結晶の生産をここに具体的に記載したが、かかるプロセスはここに記載したごとく当業者によって適合されて、その三次元構造も本発明に含まれるような他のFc受容体(FcR)、特にFcγRI、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIbおよびFcαRIの結晶が得られることが理解されるべきである。
【0060】
好ましくは、FcγRIの結晶は、母液中で、約1mg/mlないし約20mg/ml、より好ましくは約2mg/mlないし約15mg/ml、さらにより好ましくは約3mg/mlないし約6mg/mlの範囲のFcγRIIa蛋白質としてFcγRIIa蛋白質を含有する溶液を用いて形成される。好ましくは、結晶は3μl液滴当たり約1μgないし約30μg、より好ましくは約5μgないし約25μg、より好ましくは約4.5μgないし約9μgのFcγRIIa蛋白質を含有する液滴を用いて形成される。
【0061】
本発明の適切な母液は酢酸塩緩衝液を含む。本発明の好ましい酢酸塩緩衝液は酢酸アンモニウムを含む。結晶化に先立っての緩衝液中の酢酸アンモニウムの濃度は約100mMないし約500mM酢酸アンモニウムの範囲とすることができる。好ましくは、該緩衝液中の酢酸アンモニウムの濃度は約150mMないし約300mM酢酸アンモニウムの範囲である。より好ましくは、緩衝液中の酢酸アンモニウムの濃度は200mM酢酸アンモニウムである。適切な酢酸塩緩衝液は好ましくは、約5ないし約7のpH、より好ましくは約5.5ないし約6.5、より好ましくは約5.6のpHを有する緩衝液を含む。好ましくは、本発明の酢酸塩緩衝液のpHはクエン酸ナトリウムを用いて調節される。適切な酢酸塩緩衝液は約0.01Mクエン酸ナトリウム、より好ましくは0.05Mクエン酸ナトリウム、より好ましくは0.1Mクエン酸ナトリウムを含有する。適切な酢酸塩緩衝液は、いずれかのポリエチレングリコール(PEG)を含有し、PEG4000がより好ましい。本発明の酢酸塩緩衝液中の適切なPEG4000濃度は、約20%、好ましくは約25%、より好ましくは約30%PEG4000を含む。
【0062】
本発明のもう1つの適切な母液は硫酸塩緩衝液を含む。本発明の好ましい硫酸塩は硫酸リチウムを含む。結晶化に先立っての緩衝液中の硫酸リチウムの濃度は約100mMないし約2.5M硫酸リチウムの範囲とすることができる。好ましくは、緩衝液中の硫酸リチウムの濃度は約500mMないし約2M硫酸リチウムの範囲である。より好ましくは、緩衝液中の硫酸リチウムの濃度は約1.5M硫酸リチウムである。適切な硫酸塩緩衝液は約5ないし約9、より好ましくは約6ないし約8、より好ましくは約7.5のpHを有する緩衝液を含む。好ましくは、本発明の硫酸塩緩衝液にpHはHEPESを用いて制御される。適切な硫酸塩緩衝液は約0.01M HEPES、より好ましくは0.05M HEPES、より好ましくは0.1M HEPESの濃度のHEPESを含有する。
【0063】
限定されるものではないが、蒸気拡散、液体拡散、バッチ結晶化、一定温度および温度誘導またはその組合せを含めたいくつかの方法によってFcγRIIa蛋白質の超飽和溶液を誘導して結晶化させることができる。好ましくは、FcγRIIa蛋白質の過飽和溶液を誘導して、蒸気拡散(すなわち、ハンギングドロップ方法)によって結晶化することができる。蒸気拡散方法において、FcγRIIa蛋白質を本発明の母液と組合わせて、FcγRIIa蛋白質溶液として、FcγRIIa蛋白質溶液を過飽和して、一定温度でFcγRIIa結晶を形成させるる。蒸気拡散は、好ましくは、約15℃ないし約30℃、より好ましくは約20℃ないし約25℃の範囲で、より好ましくは約22℃の一定した温度の制御された温度下で行う。
【0064】
好ましい実施形態において、本発明は、(a)酢酸塩緩衝液中のFcγRIIa蛋白質の約3mg/mlの溶液を調製して過飽調製物を形成することと[ここで、該緩衝液は約200mM酢酸アンモニウム、約100mMクエン酸ナトリウムおよび約30%PEGを含み、約pH5.8のpHを有する];(b)過飽和調製物の約3μl液滴をカバーグラス上に滴下し、約1mlの酢酸塩緩衝液を含有するウェル上に倒立することと;および、(c)FcγRIIa結晶が形成されるまでインキュベートすることとの工程を具備するFcγRIIaの結晶を産生じる方法を含む。
【0065】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明は:(a)硫酸塩緩衝液中のFCγRIIa蛋白質の約3mg/ml溶液を調製して過飽和調製物を形成することと[ここで、該緩衝液は約0.15M HEPESおよび約1.5M硫酸リチウムを含み、約pH7.5のpHを有する]:(b)過飽和調製物の約3μl液滴をカバーグラス上に滴下し、約1mlの硫酸塩溶液を含有するウェル上にこれを倒立することと;および、(c)FcγRIIaの結晶が形成されるまでインキュベートすることとの工程を具備するFcγRIIaの結晶を製造する方法を含む。
【0066】
簡単に前記で考察したごとく、本発明のもう1つの実施形態はFcεRI結晶の製造方法およびそれにより製造されたFcεRI結晶である。好ましくは、FcεRIの結晶は、母液中のFcεRI蛋白質を約1mg/mlないし約20mg/ml、より好ましくは約2mg/mlないし約15mg/ml、より好ましくは約3mg/mlないし約6mg/mlの範囲のFcεRI蛋白質を含有する溶液を用いて形成され、母液中で3/mlないし約6mg/mlの範囲のFcεRI蛋白質を含有する溶液を用いて形成されることがより好ましい。好ましくは、結晶は、3μl液滴当たり約1μgないし約30μg、より好ましくは約5μgないし約25μg、より好ましくは約4.5μgないし約9μgのFcεRI蛋白質を含有する液滴を用いて形成される。
【0067】
本発明の適切な母液は酢酸塩緩衝液を含む。本発明の好ましい酢酸塩緩衝液は酢酸カルシウムを含む。結晶化に先立っての緩衝液中の酢酸カルシウムの濃度は約100mMないし約500mM酢酸カルシウムの範囲とすることができる。好ましくは、緩衝液中の酢酸カルシウムの濃度は約150mMないし約300mM酢酸カルシウムの範囲である。より好ましくは、緩衝液中の酢酸カルシウムの濃度は200mM酢酸カルシウムである。適切な酢酸塩緩衝液は、好ましくは、約5.5ないし約7.5、より好ましくは約6.0ないし約7.0、より好ましくは約6.5のpHを有する緩衝液を含む。好ましくは、本発明の酢酸塩緩衝液のpHはカコジル酸ナトリウムを用いて調節される。適切な酢酸塩緩衝液は約0.01Mカコジル酸ナトリウム、より好ましくは0.05Mカコジル酸ナトリウム、より好ましくは0.1Mカコジル酸ナトリウムの濃度でカコジル酸ナトリウムを含有する。適切な酢酸塩緩衝液はいずれかのポリエチレングリコール(PEG)を含有し、PEG8000がより好ましい。本発明の酢酸塩緩衝液中の適切なPEG8000濃度は約10%w/v、好ましくは約15%、より好ましくは約20%W/v濃度のPEG8000を含む。
【0068】
本発明のもう1つの適切な母液は、2−プロパノールおよびポリエチレングリコールと共にカコジル酸ナトリウムを含む緩衝液を含む。本発明の好ましいカコジル酸ナトリウム緩衝液は、結晶化に先立っての緩衝液中で約0.01Mカコジル酸ナトリウム、より好ましくは0.05Mカコジル酸ナトリウム、より好ましくは0.1Mカコジル酸ナトリウムの濃度のカコジル酸ナトリウムを含む。適切なカコジル酸ナトリウム緩衝液は、好ましくは、約5ないし約7、より好ましくは約5.5ないし約6.5、より好ましくは約5.5ないし約6.0のpHを有する緩衝液を含む。適切なカコジル酸ナトリウム緩衝液は約5%v/v、より好ましくは7%v/v、より好ましくは10%v/vの濃度の2−プロパノールを含有する。適切なカコジル酸ナトリウム緩衝液はいずれかのポリエチレングリコール(PEG)を含有し、PEG4000がより好ましい。本発明の酢酸塩緩衝液中の適切なPEG4000濃度は、約10%w/v、好ましくは約15%、より好ましくは約20%w/v PEG4000を含む。
【0069】
本発明のもう1つの適切な母液は、カコジル酸ナトリウムおよび2−プロパノールと一緒にクエン酸三ナトリウム二水和物を含むクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。本発明の好ましいクエン酸ナトリウム緩衝液は、結晶化に先立っての緩衝液中にクエン酸三ナトリウム二水和物の濃度で、約0.05Mクエン酸三ナトリウム二水和物、より好ましくは約0.1Mクエン酸三ナトリウム二水和物、より好ましくは0.2Mクエン酸三ナトリウム二水和物を含む。適切なクエン酸ナトリウム緩衝液は、好ましくは、約5.5ないし約7、より好ましくは約6.0ないし約7.0、より好ましくは約6.5のpHを含む。本発明の好ましいクエン酸ナトリウム緩衝液は、結晶化に先立っての緩衝液中にカコジル酸ナトリウムの濃度で、約0.01Mカコジル酸ナトリウム、より好ましくは0.05Mカコジル酸ナトリウム、より好ましくは0.1Mカコジル酸ナトリウムの含む。適切なクエン酸ナトリウム緩衝液は約15%v/v、より好ましくは20%v/v、より好ましくは30%v/vの濃度の2−プロパノールを含有する。
【0070】
FcεRI蛋白質の過飽和溶液は、限定されるものではないが、蒸気拡散、液体拡散、バッチ結晶化、一定温度および温度誘導またはその組合せを含めたいくつかの方法によって誘導して結晶化させることができる。好ましくは、FcεRI蛋白質の過飽和溶液は蒸気拡散(すなわちハンギングドロップ方法)によって誘導化して結晶化させる。蒸気拡散方法においてFcεRI蛋白質を、FcεRI蛋白質溶液を本発明の母液と組合せ、FcεRI蛋白質溶液とし、過飽和にして、一定温度でFcεRI結晶を形成させる。蒸気拡散は、好ましくは、約15℃ないし約30℃、より好ましくは約20℃ないし約25℃、より好ましくは約22℃の一定温度の範囲の制御された温度下で行われる。
【0071】
好ましい実施形態において、本発明は:(a)酢酸塩緩衝液中のFcεRI蛋白質の約3mg/ml溶液を調製して過飽和処方を形成することと[ここで、該緩衝液は約200mM酢酸カルシウム、約100mMカコジル酸ナトリウムおよび約18%w/v PEG8000を含み、約pH6.5のpHを有する];(b)約3μl液滴の過飽和処方をカバーグラス上に滴下し、約1mlの酢酸塩緩衝液を含有するウェル上にこれを倒立することと;および、(c)FcεRIの結晶が形成されるまでインキュベートすることとの工程を具備するFcεRIの結晶を製造する方法を含む。
【0072】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明は:(a)カコジル酸ナトリウム緩衝液中のFcεRI蛋白質の約3mg/ml溶液を調製して過飽和処方を形成することと[ここで、該緩衝液は約100mMカコジル酸ナトリウム、約10%v/vの2−プロパノールおよび20%v/vPEG4000を含み、約pH5.5−6.0のpHを有する];(b)約3μl液滴の過飽和処方をカバーグラス上に滴下し、約1mlの硫酸塩緩衝液を含有するウェル上にこれを倒立させるすることと;および、(c)FcεRIの結晶が形成されるまでインキュベートすることとの工程を含むFcεRIの結晶を製造する方法を含む。
【0073】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明は:(a)クエン酸ナトリウム緩衝液中のFcεRI蛋白質の約3mg/ml溶液を調製して過飽和処方を形成することと[ここで、該緩衝液は約200mMクエン酸三ナトリウム二水和物、約100mMカコジル酸ナトリウムおよび約30%v/vの2−プロパノールを含み、約pH6.5のpHを有する];(b)約3μl液滴の過飽和処方をカバーグラス上に滴下し、約1mlの硫酸塩緩衝液を含有するウェル上にこれを倒立することと;および、(c)FcεRIの結晶が形成されるまでインキュベートすることとの工程を含むFcεRIの結晶を製造する方法を含む。
【0074】
いずれの単離されたFcR蛋白質も本発明の方法で用いることができる。単離されたFcR蛋白質はその中性媒体から単離されても、あるいは組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を用いて製造されてもよい。組換えFcR蛋白質を製造するには、FcR蛋白質をコードする分子を、宿主細胞に核酸分子を送達することができるいずれのベクターに挿入することもできる。本発明の組換えベクターに含ませるべき適当で好ましい核酸分子をここに開示する。本発明の好ましい核酸分子はヒトFcR蛋白質、より好ましくはヒトFcγRIIa蛋白質、ヒトFcεRI蛋白質またはヒトFcγRIIIb蛋白質をコードする。本発明の核酸分子はFcR蛋白質のいずれかの一部、好ましくは全長FcR蛋白質、より好ましくはFcR蛋白質の可溶性形態(すなわち、かかる蛋白質を生産する細胞によって分泌され得るFcR蛋白質の形態)をコードすることができる。組換えベクター、特に組換え分子に含ませるべきより好ましい核酸分子は、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13によって表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする核酸分子を含む。組換え分子に含ませるべき好ましい核酸分子はsFcγRIIaおよびsFcεRIを含み、その生産は例のセクションに記載する。
【0075】
本発明の組換えベクターはRNAまたはDNAいずれか、原核生物または真核生物いずれかとすることができ、典型的にはウィルスまたはプラスミドである。好ましくは、FcR蛋白質をコードする核酸分子を発現ベクターを含むベクターに挿入して組換え分子を形成させる。本明細書で用いるごとく、発現ベクターは宿主細胞を形質転換でき、特定の核酸分子の発現に影響することができるDNAまたはRNAベクターである。本発明の発現ベクターは細菌、菌類、内寄生性生物、昆虫、他の動物および植物細胞を含めた本発明の組換え細胞において機能する(すなわち、遺伝子発現を指令する)いずれかのベクターを含む。本発明の好ましい発現ベクターは昆虫細胞中での発現を指令する。本発明のより好ましい発現ベクターはpVL1392バクロウィルスシャトルプラスミドを含む。本発明の好ましい組換え分子はpVL−sFcγRIIa(a)、pVL−sFcγRIIa(b)およびpVL−sFcεRIを含む。
【0076】
本発明の発現ベクターをいずれかの適切な宿主細胞に形質転換して組換え細胞を形成することができる。適切な宿主細胞は発現ベクターに挿入された核酸分子を発現することができるいずれの細胞も含む。例えば、原核細胞発現ベクターを細菌宿主細胞に形質転換することができる。本発明の好ましい宿主細胞は特に昆虫細胞においてバクロウィルスを発現することができる細胞を含み、Spoboptera frugiperbaまたはTrichoplusia ni細胞が好ましい。本発明の好ましい組換え細胞はs.frugiterba:pVL−sFcγRIIa(a)/pVL−sFcγRIIa(b)細胞およびS.frugiperba:pVL−sFcεRIを含み、その生産をここに記載する。
【0077】
FcR結晶を生産するのに有用なFcR蛋白質を単離する1つの方法は、かかるFcR蛋白質を発現する組換え細胞の細胞培養物から組換え蛋白質からの組換え蛋白質の回収を含む。1つの実施形態において、本発明の単離された組換えFcR蛋白質は、当該蛋白質を生産するのに効果的な条件下で該蛋白質を発現することができる細胞を培養し、該蛋白質を回収することによって生産される。培養するための好ましい細胞は本発明の組換え細胞である。効果的な培養条件は、限定されるものではないが、効果的な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件並びに蛋白質生産を可能とする培養培地を含む。かかる培養条件は当業者の技量内のものである。適切な条件の例は例のセクションに含まれる。
【0078】
好ましくは、本発明の組換え細胞はFcR蛋白質の分泌された形態を発現する。本発明のFcR蛋白質は、限定されるものではないが、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、クロマトフォーカシングおよび分別可溶化のごとき種々の標準的な蛋白質精製技術を用いて精製することができる。好ましくは、FcR蛋白質が、FcR蛋白質の三次元構造に関連した情報を得るのに有用な結晶の形成のために十分に精製される方法で精製される。好ましくは、FcR蛋白質の組成物は約70%、より好ましくは75%、より好ましくは80%、より好ましくは85%およびより好ましくは90%純度である。
【0079】
1つの実施形態において、組換えFcR蛋白質は感染後約20時間および約60時間の間、好ましくは感染後約30時間および約50時間の間、より好ましくは感染後約40時間に収穫された細胞培養上澄みから精製される。好ましくは、FcγRIIa蛋白質は、:(a)S.frugiperba:pVL−sFcγRIIa(a)/pVL−sFcγRIIa(b)細胞からの上澄みをイオン交換カラムに適用することと:(b)イオン交換カラムから未結合蛋白質を収集し、該未結合蛋白質を免疫アフィニティクロマトグラフィカラムに適用することと;(c)免疫アフィニティクロマトグラフィカラムに結合した蛋白質を溶出させ、溶出した蛋白質をゲル濾過カラムに適用することと:および、(d)ゲル濾過カラムからの濾過された蛋白質を回収してFcγRIIa蛋白質を得ることとの工程を具備する方法によって上澄みから精製される。好ましくは、FcεRI蛋白質は:(a)S.frugiperba:pVL−sFcεRI細胞からの上清をイオン交換カラムに適用することと;(b)イオン交換カラムからの未結合蛋白質を回収し、該蛋白質を免疫アフィニティクロマトグラフィカラムに適用することと;(c)免疫アフィニティクロマトグラフィカラムに結合した蛋白質を溶出させ、溶出した蛋白質をゲル濾過カラムに適用することと;および、(d)ゲル濾過カラムからの濾過された蛋白質を回収してFcεRI蛋白質を得ることとの工程を具備する方法によって上澄みから精製される。
【0080】
ヒトFcγR蛋白質と蛋白質のFcγRファミリーの他のメンバーとの間で高度のアミノ酸配列相同性を考慮すると、本発明の精製の方法はFcγRファミリーの各メンバーに適用することができる。加えて、当業者であれば、本発明の精製方法は一般に、免疫アフィニティクロマトグラフィ精製の工程のためにIgGよりもむしろIgEを用いる以外、FcεRI蛋白質のごとき、および精製工程のためにIgGよりもむしろIgAを用いる以外はFcαRI蛋白質のごときいずれかのFcR蛋白質を精製するのに一般的に有用である。蛋白質のFcγRファミリーのメンバー、FcεR蛋白質およびFcαR蛋白質の単離された蛋白質は組換えDNA技術を得てもよく、あるいは限定されるものではないが、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、血小板およびDリンパ球(すなわち、B細胞)を含めた天然源から精製してもよい。単離されたFcγRIIaおよびFcεRI蛋白質の組換え生産の記載は、例のセクションに記載する。
【0081】
本発明のもう1つの実施形態は結晶形態のFcR蛋白質(すなわち、FcR結晶)を含む組成物を含む。本明細書で用いるごとく、用語「結晶性FcR」および「FcR結晶」は共に結晶化されたFcR蛋白質を言い、相互に交換的して用いてもよいことを意図する。好ましくは、結晶性FcRは、特に例6または例9に開示された方法に従って、ここに記載された結晶形成方法を用いて製造される。本発明のFcR結晶はいずれの結晶構造も含み、好ましくは斜方系結晶として沈殿する。本発明の適切な結晶性FcRはFcR蛋白質のモノマーまたはマルチマーを含む。好ましい結晶性FcRは非対称ユニット中に1つのFcR蛋白質を含む。より好ましい結晶性FcRはFcR蛋白質のダイマーを含む。
【0082】
本発明の特別の実施形態は、結晶性形態のFcγRIIa蛋白質(すなわち、FcγRIIa結晶)を含む組成物を含む。本明細書中で用いるごとく、用語「結晶性FcγRIIa」および「FcγRIIa結晶」は共に結晶化されたFcγRIIa蛋白質を言い、相互に交換して使用することを意図する。好ましくは、結晶FcγRIIaは、例6に開示された方法に特に従って、ここに記載された結晶形成方法を用いて生産される。本発明のFcγRIIa結晶はいずれの結晶構造をも含み得るが、好ましくは斜方系結晶として沈殿する。好ましくは、本発明の組成物は、寸法a=78.80オングストローム、b=100.55オングストローム、c=27.85オングストロームの単位格子を形成するように空間群P21212の結晶様式に配置されたFcγRIIa蛋白質分子を含む。本発明の好ましい結晶は約3.0オングストローム、好ましくは2.4オングストローム、より好ましくは約1.8オングストロームの分解能までのFcγRIIa蛋白質の原子座標の測定のためのX線回折データーを提供する。
【0083】
本発明の適切な結晶性FcγRIIaは、FcγRIIa蛋白質のモノマーまたはマルチマーを含む。好ましい結晶性FCγRIIaは非対称ユニット中に1つのFcγRIIa蛋白質を含む。より好ましい結晶性FcγRIIaは、FcγRIIa蛋白質のダイマーを含む。
【0084】
本発明のもう1つの特別の実施形態は、結晶性形態のFcεRI蛋白質(すなわち、FcεRI結晶)を含む組成物を含む。本明細書で用いるごとく、用語「結晶性FcεRI」および「FcεRI結晶」は共に結晶化されたFcεRI蛋白質を言い、相互交換的に用いることを意図する。好ましくは、結晶FcεRIは特に例9に開示された方法に従って本明細書に記載された結晶形成方法を用いて生産される。本発明のFcεRI結晶はいずれの結晶構造をも含むことができ、好ましくは斜方系結晶として沈殿する。本発明の適切な結晶性FcεRI結晶は、FcεRI蛋白質のモノマーまたはマルチマーを含む。好ましい結晶性FcεRIは非対称ユニット中に1つのFcεRI蛋白質を含む。より好ましい結晶性FcεRIはFcεRI蛋白質のダイマーを含む。
【0085】
本発明によると、結晶性FcRを用いて、本発明の構造ベースの薬物デザインによって予測される様式のFcγRIIa蛋白質に対して結合する本発明の化合物の能力を測定することができる。好ましくは、FcγRIIa結晶は本発明の化合物を含有する溶液に浸漬される。次いで、化合物の該結晶への結合は当該分野で標準的な方法によって測定される。
【0086】
本発明の1つの実施形態は治療用組成物である。本発明の治療用組成物は1以上の治療化合物を含む。本発明の好ましい治療化合物は阻害性化合物および刺激性化合物を含む。
【0087】
本発明の1つの実施形態はIgG媒介組織損傷を減少させることができる治療用組成物である。適切な治療用組成物はIgG媒介過敏症またはFcγR蛋白質を含む炎症細胞のIgG媒介漸増に関与する他の生物学的メカニズムに由来するIgG媒介損傷を減少させることができる。例えば、本発明の治療用組成物は、(1)FcγR蛋白質のIgG結合部位に干渉することによって、FcγR蛋白質を有する細胞(例えばB細胞、マクロファージ、好中球、好酸球または血小板細胞)上のFcγR蛋白質のIgG免疫複合体に対する結合を阻害すること(すなわち、防止、ブロックし);(2)Fc蛋白質のIgGへの結合して、IgG分子の補体結合部位に干渉することによって、IgG免疫複合体による補体結合を阻害することと;(3)IgGまたはIgG免疫複合体の沈殿を阻害すること(すなわち、2つのIgGの間のFc:Fc相互作用を妨ぐ);(4)IgGの細胞表面受容体への結合に干渉することによって、免疫グロブリン媒介細胞シグナルを阻害すること;(5)細胞シグナル誘導分子(すなわち、FcγR蛋白質を介して細胞シグナル変換を誘導する分子)のFcγR蛋白質に対する結合に干渉することによってFcγR媒介細胞シグナル変換を阻害すること;(6)病原体に結合したIgGの、貪食細胞上のFcγR蛋白質に対する結合を阻害することによって病原体のオプシン化を阻害すること(例えば、フラビウイルスおよびデングウイルスのごときウイルス感染の抗体依存性増強(ADE)を防止するために);および(7)FcγR蛋白質(例えば、麻疹ウイルスヌクレオキャプシド蛋白質)に対するウイルス原子の結合を阻害することができる。本明細書で用いるごとく、用語「免疫複合体」とは、可溶性抗原に抗体が結合する場合に形成される複合体を言う。本明細書で用いるごとく、用語「補体結合」とは、典型的にはC3aおよびC5aを含む複合体の集合、または切断されたC4の生成によって、炎症性細胞の漸増の結果となる抗原:抗体複合体による補体活性化を言う。本明細書で用いるごとく、用語「結合部位」とは、それにもう1つの分子が特異的に結合する分子(例えば、蛋白質)の領域を言う。かかる治療用組成物はIgGのFcγR蛋白質への、IgGの補体への、IgGのIgGへの、IgGの細胞表面受容体への、細胞シグナル誘導分子のFcγR蛋白質への、FcγR蛋白質ウイルスへの結合を阻害する、あるいはオプシン化を阻害する1以上の阻害性化合物を含む。また、本発明にはIgG媒介組織損傷を減少させる方法が含まれる。該方法は本発明の治療用組成物を動物に投与する工程を具備する。
【0088】
本発明のもう1つの実施形態は、動物においてIgG液性免疫応答を刺激することができる治療用組成物である。本発明のさらにもう1つの実施形態は、オプシン化またはFcγR−依存性エフェクター機能(例えば、抗体−依存性FcγR媒介細胞毒性、貪食作用または細胞メディエーターの放出等)によって、しかしながらこれに限定されるものではないが、癌または感染病(例えば、HIV、ヘルペス、細菌感染、酵母感染または寄生虫感染等の経口感染)を含めた特定の疾患を治療するために動物に投与される抗体の治療効果を改良する治療用組成物である。かかる治療用組成物は増大したIgGへの結合を有し、IgGのFcγRへの結合を増強し、FcγRのダイマー形成を促進し、および/またはFcγRを介したシグナル変換を増強する1以上の刺激性化合物を含む。また、本発明には、液性免疫応答を刺激する方法が含まれる。該方法は、本発明の治療用組成物を動物に投与する工程を含む。
【0089】
本発明の適切な阻害性化合物は、FcγR蛋白質、好ましくはFcγRIIa蛋白質またはFcγRIIIb蛋白質と直接的に相互作用し、FcγRのIgG結合部位(ここでは基質アナログという)をブロックするか(例えば、アロステリック相互作用によって)、あるいはIgGがFcγRに結合できないように、FcγR蛋白質の他の領域(例えば、FcγRダイマーのモノマー間のIgG結合割目の上方溝において、該ダイマーインターフェースで、各モノマー上のD1およびD2の間の割目またはヒンジ領域中において、および/またはFcγRダイマーの該モノマーによって形成された下方溝中のIgG結合割目直下において等)を修飾することによって、それにより、IgGのFcγR蛋白質への結合を阻害する化合物である。FcγR基質アナログとは、FcγR蛋白質のIgG結合部位と相互作用(例えば、結合、会合、修飾)する化合物をいう。FcγR基質アナログは、例えばIgGのFc部分を模倣するか、またはFcγRのIgG結合部位に特異的に結合するがIgGのFc部分を模倣しない化合物を含むことができる。また、本発明の阻害性化合物は、IgGに結合するFcγRIIa蛋白質の少なくとも一部分を実質的に模倣する化合物(ここではペプチドミメティック化合物と言う)を含むことができる。本発明の他の適切な阻害性動物は、FcγR蛋白質の、IgG以外の細胞シグナル誘導分子への結合を阻害する化合物を含む。かかる細胞シグナル誘導分子の例は(すなわち、FcγR蛋白質のダイマーを形成するための)もう1つのFcγRまたは細胞表面アクセサリー分子、細胞内アクセサリー分子またはウイルス(例えば、麻疹ウイルスヌクレオキャプシド蛋白質)を含む。
【0090】
本発明の1つの実施形態はIgE媒介応答を減少させることができる治療用組成物である。適切な治療用組成物はIgE媒介過敏症、炎症モジュレーターのIgE媒介放出またはFcεR蛋白質を含む炎症細胞のIgE媒介漸増に関与する他の生物学的メカニズムによって、IgE媒介応答を減少させることができる。例えば、本発明の治療用組成物は(1)FcεR蛋白質のIgE結合部位に干渉することによって、FcεR蛋白質を有する細胞(例えば、肥満細胞)上のFcεR蛋白質のIgE免疫複合体への結合を阻害(すなわち、防止、ブロック)すること;(2)IgEまたはIgE免疫複合体の沈殿を阻害(すなわち、2つのIgEの間のFc:Fc相互作用を阻害)すること;(3)IgEの細胞表面受容体への結合に干渉することによって免疫グロブリン媒介細胞シグナル変換を阻害すること;および(4)細胞シグナル誘導分子(FcεR蛋白質を介する細胞シグナル変換を誘導する分子)のFcεR蛋白質への結合に干渉することによってFcε媒介細胞シグナル変換を阻害することができる。かかる治療用組成物はIgEのFcεR蛋白質への、IgEのIgEへの、IgEの細胞表面受容体への、または細胞シグナル誘導分子のFcεR蛋白質への結合を阻害する1以上の阻害性化合物を含む。また、IgE媒介炎症のごときIgE媒介応答を減少させる方法が本発明に含まれる。該方法は本発明の治療用組成物を動物に投与する工程を含む。
【0091】
本発明のもう1つの実施形態は動物においてIgE液性免疫応答を刺激することができる治療用組成物である。本発明のさらにもう1つの実施形態はオプシン化またはFcεR−依存性エフェクター機能(例えば、貪食作用または細胞メディエーターの放出)によって特定の病気を治療するために動物に投与される抗体の治療効果を改良する治療用組成物である。かかる治療用組成物は増大したIgEへの結合を有し、IgEのFcεRIへの結合を増強させ、FcεRIのダイマー形成を増強しおよび/または他の手段でFcεRIを介したシグナル変換を増強する1以上の刺激性化合物を含む。また、液性免疫応答を刺激する方法が本発明に含まれる。該方法は本発明の治療用組成物を動物に投与する工程を含む。
【0092】
本発明の適切な阻害性化合物は、FcεR蛋白質と直接的に相互作用し、FcεRのIgE結合部位(ここでは基質アナログという)をブロックすることによって、あるいはIgEがFcεRに結合できないように(例えば、アロステリック相互作用によって)FcεR蛋白質の他の領域を修飾することによって(FcεRダイマーの該モノマー間のIgE結合割目の上方溝において、該ダイマーインターフェースにおいて、各モノマー上のD1およびD2の間の割目またはヒンジ領域において、および/またはFcεRダイマーの該モノマーによって形成された下方溝におけるIgG結合割目直下において等)、それにより、IgEのFcεR蛋白質への結合を阻害する化合物である。FcεR基質アナログとは、Fcε蛋白質のIgE結合部位と相互作用(例えば、結合、会合、修飾)する化合物をいう。FcεR基質アナログは、例えばIgEのFc部分を模倣するか、あるいはFcεRのIgE結合部位に特異的に結合するがIgEのFc部分を模倣しない化合物を含むことができる。また、本発明の阻害性化合物はIgEに結合するFcεRIIa蛋白質の少なくとも一部分を実質的に模倣する化合物(ここではペプチドミメティック化合物と言う)を含むことができる。本発明の他の適切な阻害性動物は、FcεR蛋白質の、IgE以外の細胞シグナル誘導分子への結合を阻害する化合物を含む。かかる細胞シグナル誘導分子の例はもう1つのFcεR(すなわち、FcεR蛋白質のダイマーを形成するための)、または細胞表面アクセサリー分子、細胞内アクセサリー分子またはウイルス(例えば、麻疹ウイルスヌクレオキャプシド蛋白質)を含む。
【0093】
本発明の阻害性化合物は当業者によって知られた種々の手段によって同定することができる。例えば、阻害性化合物のFcR蛋白質への結合、またはそれとの他の相互作用は、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)若しくはラジオイムノアッセイ(RIA)等の免疫アッセイ、またはバイアコアアッセイ(biacore assay)等の結合試験等を用いて、溶液中または細胞上のFcR蛋白質で測定することができる。細胞ベースのアッセイは例えば、サイトカイン(例えば、IL−4、IL−6またはIL−12)分泌アッセイ、または例えば蛋白質または脂質リン酸化、細胞シグナル誘導分子へのFcR結合に際してのメディエーター放出または細胞内Ca++動態化を測定する細胞内シグナル変換アッセイを含む。
【0094】
本発明の適切な刺激性治療化合物はIgに結合する天然FcR蛋白質(例えば、その天然環境から単離されたFcR蛋白質)の能力と比較した場合、改良されたIgへの結合を呈する化合物であり、また、IgのそのFcRへの結合を増強するか、あるいはFcRを介するシグナル変換を増強する化合物を含む。本発明の刺激性化合物は:(1)例えば天然FcR蛋白質よりも高いレベルでIgに結合するか、若しくはそれと他の相互作用すること;(2)IgのそのFcRへの結合を増強すること;(3)FcRへの、FcRに結合するIgへの、またはFcRに結合したIgの組合せへの、いずれかへの結合によるFcRのダイマー形成を増強すること;および/または(4)FcRを介するシグナル変換を増強することに対するそれらの能力によって同定される。例えば、天然FcR蛋白質と比較した本発明の刺激性化合物に対するIgの改良された結合を測定する方法は、Igが刺激性化合物および天然FcR蛋白質に結合する際の結合の安定性、親和性または動態学を測定する結合アッセイを含む。かかる方法は当業者によく知られており、ここでは例のセクションで開示する。また、本発明の刺激性化合物はIgまたはFcR蛋白質に結合する化合物を含むことができ、従って、FcRのIg結合部位またはFcR蛋白質に結合するIgのFc部分を修飾するアロステリック相互作用によりFcRまたはIgの他の領域を修飾することによって、IgのFcR蛋白質への結合の間またはその後のIgのFcR蛋白質への結合を増強するか、あるいは細胞シグナル変換を改良する。本発明のもう1つの刺激性化合物は、Igの不在において、例えば、FcR媒介細胞シグナル変換を刺激する様式で、FcR蛋白質に対して結合する化合物を含むことが可能である。
【0095】
当業者であれば、FcγR蛋白質およびIgG、並びにFcεRIおよびIgEにつき前記したごとく、阻害性または刺激性化合物はいずれかのFcRおよびそのIgリガンドの構造に基づいて開発することができることを理解するであろう。
【0096】
本発明によると、本発明の適切な治療化合物は、ペプチドまたは他の有機分子、および無機分子を含む。適切な有機分子は小有機分子を含む。好ましくは、本発明の治療化合物は、かかる化合物を動物に投与した場合、動物に対して有害(例えば、毒性)ではない。ペプチドとは分子量が小さくて、加水分解に際して2個以上のアミノ酸を生じる化合物の種類を言う。ポリペプチドは2以上のペプチドよりなる。本明細書で用いるごとく、蛋白質は1以上のポリペプチドよりなる。設計すべき好ましい治療化合物は、直鎖または分岐鎖状の立体配置において、正常またはレトロインベルソペプチド(retroinverso peptides)として形成された「L」および/または「D」アミノ酸よりなるペプチド、ペプチドミメティック化合物、小有機分子、そのホモ−またはヘテロ−ポリマーを含む。
【0097】
本発明の治療化合物は構造ベースの薬物デザインを用いて設計することができる。本発明の三次元構造の発見までは、FcR蛋白質の構造に基づく治療化合物の構造ベースの開発のために情報は入手できなかった。かかる合理的な開発は、従来、入手可能な一次アミノ酸配列情報からは新たに実行できなった。構造ベースの薬物デザインとは、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質の立体配座、またはペプチド若しくはポリペプチドと治療化合物との間の立体配座を予測するコンピュターシミュレーションの使用を言う。例えば、一般的には、治療化合物と効果的に相互作用する蛋白質には、治療化合物の三次元構造が、結合に際して所望の結果が得られるような様式等で、当該化合物を当該蛋白質に結合させることを可能にする適合性の配座を推測することが必要である。該蛋白質の三次元構造の知識により、当業者は、かかる適合性の配座を有する治療化合物を設計することができる。例えば、FcγRIIa蛋白質のIgG結合部位の三次元構造の知識により、当業者は、FcγRIIaに結合する、安定な、かかる結合に際してFcγRを有する細胞へのIgG結合のごとき生物学的応答、または細胞シグナル変換を阻害する治療化合物を設計することができる。加えて、例えば、FcγRIIa蛋白質のIgG結合部位の三次元構造の知識により、当業者は、FcγRIIa蛋白質の基質アナログを設計することができる。
【0098】
構造ベースの薬物デザインで有用な適切な構造およびモデルを本明細書中に開示する。構造ベースの薬物デザインの方法で用いるべき好ましい構造は、FcγRIIa蛋白質の構造、FcεRI蛋白質の構造、FcγRIIIb蛋白質の構造、および標的FcR構造のモデルを含む。構造ベースの薬物デザインの方法で用いるべき標的構造の好ましいモデルは、分子置換および折り畳み認識関連方法を含めた、本明細書中に開示したいずれのモデリング方法によって生成されたモデルをも含む。
【0099】
本発明の1つの実施形態は:(a)FcR蛋白質の三次元構造を含めた蛋白質の構造または本発明のモデルを提供することと;(b)三次元構造またはモデルを用いて化合物を設計することと;および、当該化合物を化学的に合成することとを具備する生物活性化合物の構造ベース薬物デザインのコンピュータに援助された方法である。かかる方法は、加えて、(d)合成された化合物の生物活性を評価する工程を具備する。本発明で用いるべき適切な三次元構造FcR蛋白質およびモデルを本明細書中に開示する。本発明によると、設計する工程は、新しい化合物を製造するか、または既知の化合物(例えば、既知の化合物の三次元構造を含むコンピュータスクリーニングデーターベースにリストされた化合物等)のライブラリーのデーターベースをサーチすることを含む。また、設計は、ある構造的な特徴において置換モイエティ(moieties)を有する化合物をシミュレートすることによって行うことができる。設計する工程は化合物の既知の機能に基づいて化合物を選択することを含むことも可能である。設計する好ましい工程は、化合物の1以上のデーターベースのコンピュータスクリーニングを含み、ここで該化合物の三次元構造は公知であってもよく、コンピュータによってFcR蛋白質の三次元構造と相互作用(例えば、ドッキング、整列、マッチング、接続)してもよい(例えば、HumbletおよびDunbar,Animal Reports in Medicinal Chemistry,vol.28,頁275−283,1993,M.Venuti編,Academic Press によって記載されている)。適切な化合物を合成する方法は当業者に知られており、合成すべき化合物の構造に依存する。合成された化合物の生物活性を評価する方法は、該化合物の生物活性(例えば、阻害性または刺激性)に依存し、それは本明細書中に開示される。
【0100】
構造ベースの薬物デザインの種々の他の方法は、マウリック(Maulikら,1997,Maulik Biotechnology:Therapeutic Applications and Strategies,Wiley−Liss,Inc.)により開示されており、参照することによりその全体をここに組み込む。マウリックらは、例えば、指向性デザイン[ここにおいて、使用者は適当に選択された断片の断片ライブラリーから新規分子を作成するプロセスを方向付ける];ランダムデザイン[ここにおいて、使用者は、候補リガンドの適合性を評価するために、選択基準を適用しつつ、それと同時に断片およびそれらの組合せをランダムに突然変異させるために遺伝または他のアルゴリズムを使用する];およびグリッドべースのアプローチ[ここにおいて、使用者は、三次元受容体構造と小断片プローブとの間の相互作用エネルギーを計算し、続いて好都合なプローブ部位と共に結合する]等の方法を開示する。
【0101】
好ましくは、FcR蛋白質のIg結合部位に結合する本発明の化合物は、FcR蛋白質および/またはIgとの化学的および/または立体化学的相補性を有する化合物に由来することが知られている。かかる相補性は、化学基の形状または分布の何れかにおいて受容体の表面にマッチし、且つ、FcR蛋白質に結合してFcR蛋白質へのIg結合を促進または阻害し、あるいはFcR蛋白質への結合に際して細胞シグナル変換を誘導する化合物の特徴的である。より好ましくは、FcR蛋白質のIg結合部位に結合する化合物は、少なくとも約10−6Mの親和性を持って、好ましくは少なくとも約10−8の親和性を持って結合する。
【0102】
好ましくは、FcR蛋白質の5つの部位は構造ベースの薬物デザインのための標的である。これらの部位はFcR蛋白質のIg結合部位、2つのFcRモノマー間の上方溝、2つのFcR蛋白質モノマー間の二量体化インターフェース、2つのFcRモノマー間の下方溝、FcR蛋白質のドメイン1および2の間のインターフェース、割目またはヒンジ領域、およびこれらの部位のいずれかの組合せ(例えば、Ig結合部位およびモノマー間の上方溝と同時に相互作用するもの)を含む。これらの部位の模式的表示を図17に示し、「a」はFcR蛋白質のIg結合部位を表し、「b」は2つのFcRモノマー間の上方溝を表し、「c」は2つのFcRモノマー間の二量体化インターフェースを表し、「d」はFcR蛋白質のドメイン1および2間のインターフェース、割目またはヒンジ領域を表し、並びに「e」は2つのFcRモノマー間の下方溝を表す。以下の考察は、FcRの標的部位を用いる薬物デザインについての具体的詳細を提供し、その例として、FcγRIIa構造上の好ましい標的部位に言及する。しかしながら、当業者であれば、ここに提供したFcεRI構造およびFcγRIIIb構造の記載を用いて、構造ベースの薬物デザインのためにFcεRI蛋白質モノマーおよびダイマー上の同様の標的部位を効果的に選択することができるのは理解されるべきである。加えて、当業者であれば、今や、ここに提供された情報に基づいて他のFcR蛋白質をモデル化することができるので、構造ベースの薬物デザインのために他のFcR蛋白質上の同様の標的部位を効果的に選択することができるであろう。
【0103】
Ig結合部位(図17;「a」)を標的化して、FcRのIgへの結合に直接的に影響(すなわち、阻害または増強)させる。FcγRIIa蛋白質のIgG結合部位は、例えば、限定されるものではないが、配列番号3の残基155、156、158−160、113−116、129、131、133および134を含み、また、前記した第2の部位の少なくとも一部(図17;「b」)、FcγRIIa蛋白質の二量体化に際して形成される2つのIgG結合部位の間の溝を含む。IgG結合に含まれる部位「b」からの残基は、限定されるものではないが、配列番号3の残基117−121、125−129、150−154および157−161を含む。FcγRIIa蛋白質のIgG結合部位を含む構造ベースの薬物デザインのための適切な標的部位は図7に示す。より具体的には、突然変異誘発研究はIgGの結合において影響を有するいくつかの残基を同定しており、ここに開示する三次元構造はいずれの残基が表面に露出されたことを明瞭に同定している(すなわち、おそらくIgGの結合に参画し、且つ、アロステリック効果をまさに有してはいない)。これらの残基は3つの空間群:(1)Phe129、His131、Lys113、Pro114、Leu115、Val116;(2)Pro134およびAsp133;および(3)Leu159およびSer161に分類することができる。群(1)は結合表面「a」(図17)を横切って溝「b」(図17)のリップから導かれる連続表面を形成し、IgG結合の部位におけるデザインワークの最も好ましい標的を表す。群(2)はLeu132によって群(1)から分離されており、これは、該IgGの結合で現在未知の重要性のものであり、該表面露出残基の一部と十分になり得る。群(3)は他の2つの群から離れ、該ダイマー構造によってIgGの結合に参画するために利用可能であるようには見えない残基を含む。
【0104】
また、FcRの2つのモノマー間の上方溝(図17;「b」)を標的化して、FcRのIgへの結合に直接的に影響させる(すなわち、阻害または増強する)。該上方溝は平坦な蛋白質表面を標的化するのとは対称的に、ビルトインすべき誘因的部位を提供する。FcγRIIa蛋白質のダイマー構造は、C2またはシュードC2対称阻害剤をターゲティングすることを示唆する。FcγRIIa蛋白質における標的に対する好ましい残基はLys117、His131、Phe129、Asn154、Ser161、Leu159、Thr152およびPhe121を含み、Phe129、Lys117およびHis131が最も好ましい。1つの実施形態において、上方溝「b」およびIgG結合表面「a」の両者と同時に相互作用する化合物を設定することができる。例えば、当該溝から流出し、前記したごとく「a」の結合表面に結合する調節化合物を設計することによって改良されたIg調製化合物を得ることができる。加えて、「b」に結合する調節化合物は、「a」結合表面とは現実には相互作用することなくIgGの「a」への結合を立体的に障害し得る。
【0105】
受容体ダイマーインターフェース(図17;「c」)を標的化して、2つのFcR蛋白質の能力に直接的に影響し、ダイマーを形成し、それによりFcR蛋白質の一方または双方を介した細胞シグナル変換に影響する。理論に拘束されるつもりはないが、本発明者らは、ダイマー形成は細胞シグナル変換に影響するか、あるいはダイマーに関与するFcR蛋白質の一方または双方のIg結合の立体配座に影響でき、それにより細胞シグナル変換に影響すると考える。加えて、ダイマーインターフェースは優れた標的部位を表し、これは、1つのモノマーは他のモノマーについてのリガンド情報を提供し、またその逆も成立するからである。2つのFcγRIIa蛋白質の間の二量体化インターフェースを含む構造ベースの薬物デザインのための適切な標的部位を図10に示す。より具体的には、残基117−131および残基150−164はFcγRIIaダイマーのインターフェース領域を成し、これらの配列またはそれらのミミックからのペプチドは結合性阻害剤である。FcγRIIaの結晶構造からの水素結合相互作用の試験は、インターフェース領域中のモノマー間の比較的少ない相互作用を示すが、顕著なクラスターは、ヘキサペプチドPhe121−Gln122−Asn123−Gly124−Lys125−Ser126に亘る。加えて、Gly124−Ser561およびSer126−Leu559を含むモノマー間に水素結合がある。また、Lys125側鎖によって、およびPhe121フェニル環によって成されるいくつかの疎水性接触がある。
【0106】
ドメイン1および2間のインターフェース(図17;「d」)を標的化して、FcγRIIa蛋白質へのIgG結合に影響する。本発明者らは、FcγRIIa蛋白質の三次元構造において、ドメイン1がドメイン2と密接な接触をなすことを発見した。特に、ドメイン1における配列番号3の残基17−20を含むループはドメインのループ近くに存在してIgG−結合部位の少なくとも一部を形成する。IgGとの相互作用はD1D2インターフェース近くで起こると考えられ、従って、この部位における変化はIg結合に影響し得る。加えて、割目は残基12−14(ベース)、6−10および77−80(D1フェース)および93−96および101(D2フェース)によって否定され、それ自体は阻害剤デザインのための優れた部位を表す。FcγRIIa蛋白質のドメイン1およびドメイン2の間のインターフェースを含む構造ベースの薬物デザインのための適切な標的部位は図5に示す。
【0107】
また、FcRの2つのモノマー間の下方溝(図17;「e」)を標的化して、FcRのIgへの結合に直接的に影響させる(すなわち、阻害または増強する)。この部位に結合する化合物は阻害性であるのか、あるいはより可能性が高くはFcγRへのIgG結合を増強するのかは、明瞭ではないが、上方溝「d」には前記したごとくこの部位で同様のデザイン戦略を用いることができる。
【0108】
FcγRIIaモノマーおよびダイマーの残基および領域に関して具体的に前記した薬物デザイン戦略を、ここに開示したFcγRIIIbおよびFcεRI構造を含めた他のFcR構造に同様に適用することができる。当業者であれば、その多くがここに記載された当該分野で認識されたモデリングプログラムおよび薬物デザイン方法を用い、例えば、他のFcRにおいてアミノ酸配列の差異およびより好都合な構造に従ってFcγRIIaデザイン戦略を修飾して、他のFcR作用を調節する化合物を同様に設計することができる。加えて、当業者であれば、FcγRIIa蛋白質のごとき1つのFcRから誘導されたリード化合物構造を用い、FcεRIのごときもう1つのFcR蛋白質中のアミノ酸残基の差異を考慮して、FcγRIIaリード化合物を修飾して、FcεRI蛋白質の調節のためのリード化合物構造を設計できるであろう。例えば、上方溝ファルマコフォア(pharmacophore)中のHis131>Tyr131は、FcγRIIaリード化合物構造中の酸性部位を電子結合ケトン部位に変化させることによって収容することができるであろう。
【0109】
構造ベースの薬物デザインのこの方法において、候補化合物(すなわち、例えば、本発明のコンピュータスクリーニング方法で分析されるべき化合物)を標的部位中の各残基に整列させる必要はない。適切な候補化合物を標的部位について記載した残基のサブセットに整列させることができる。好ましくは、候補化合物は、標的部位と候補化合物との間の共有結合または非共有結合架橋の形成を促進する立体配座を含む。好ましくは、候補化合物は標的部位に隣接した表面に結合して、複合体中に相互作用のさらなる部位を提供する。アンタゴニスト(すなわち、結合部位またはインターフェースをブロックすることによってリガンドのFcR蛋白質への結合を阻害する化合物)を設計する場合、該アンタゴニストは、結合部位に対する十分な親和性を持って結合するか、またはリガンド(すなわち、標的部位に特異的に結合する分子)が標的領域に結合するのを実質的に妨ぐべきである。候補化合物と標的部位との間の相補性は全てのここに特定する残基にわたって拡大してリガンドの結合を阻害または促進する必要はないことは当業者によって認識されるところであろう。
【0110】
一般に、立体化学相補性を保有する化合物の設計は化合物および標的部位の間の「適応」を化学的にまたは幾何学的に最適化する技術によって達成することができる。かかる技術は、例えば、シェリダンおよびベンカタラガヴァン等(Sheridan and Venkataraghavan,Acc.Chem.Res.,Vol.20,頁322,1987:Goodford,J.Med.Chem.,vol.27,頁557、1984;Beddall,Chem.Soc.Reviews,vol.279,1985;Hol,Angew.Chem.,vol.25,頁767,1986;およびVerlinde and Hol,Structure,vol.2,頁577,1994)に開示されたおり、それらは参照することにより、その全体がここに組み込まれる。
【0111】
構造ベースの薬物デザインのための本発明の1つの実施形態は、FcR蛋白質の形状またはFcR蛋白質に関連する構造を補足する化合物を同定することを含む。かかる方法をここでは「幾何学的アプローチ」と言う。本発明の幾何学的アプローチにおいて、内部自由度(および分子立体配座空間における対応する局所最小)の数は、2つの剛性体の幾何学的(硬球)相互作用のみを考慮することによって減少し、ここで、1つの体(活性部位)は第2の体(リガンドのごとき相補的分子)のための結合部位を形成する「ポケット」または「溝」を含有する。
【0112】
幾何学的アプローチは、クンツら(Kuntzら、J.Mol.Biol.,vol.161,頁269,1982)によって記載されており、その全体が参照することによりここに組み込まれる。化合物設計のためのアルゴリズムは、ソフトウェアプログラムDOCK Package,Version1.0(Regents of the University of Californiaから入手可能な)を用いて実行することができる。クンツ(Kuntz)のアルゴリズムに従い、結合部位またはインターフェースにおける構造(例えば、FcγRIIa蛋白質)の表面上のキャビティーまたは溝の形状は異なる半径の一連の重複する球として定義される。次いで、結晶学データーの1以上の現存データーベース(例えば、University Chemical Laboratory,Cambridge University,Lensfield Road,Cambridge CB2 1EW,英国によって維持されるCambridge Structual Database System)またはブルックヘイベン・ナショナル・ラボラトリー(Brookhaven National Laboratory)によって維持されたプロテイン・データ・バンク(Protein Data Bank)で、各規定された形状に近似する化合物についてサーチする。
【0113】
幾何学的アプローチによって同定された化合物を修飾して、水素結合、イオン相互作用またはファンデルワールス相互作用のごとき化学的相補性に関連する基準を満足させることができる。
【0114】
構造ベースの薬物デザインのための本発明のもう1つの実施形態は、結合部位またはインターフェース内およびその回りの試料位置での化学基(「プローブ」)と活性部位との相互作用を測定し、その結果、選択されたエネルギーレベルでの三次元輪郭表面を得ることができるエネルギー値のアレイを得ることを含む。この方法をここでは「化学プローブアプローチ」と言う。本発明の化合物の設計に対する化学プローブアプローチは、例えば、グッドフォード(Goodford,J.Med.Chem.,vol.28,頁849,1985によって記載されており、これは参照することにより、ここにその全体が組み込まれ、並びに、これは、例えば、GRID(Molecular Discovery Ltd.,Oxford OX2 9LL,英国から入手可能)を含めた適切なソフトウェアパッケージを用いて実行される。部位−相補的分子のための化学的要件は、例えば、異なる化学プローブ、例えば、水、メチル基、アミン窒素、カルボキシル酸素および/またはヒドロキシルで、FcγRIIa蛋白質の活性部位をプロービングすることによって最初に同定することができる(表1に示される原子座標によって表される)。活性部位およびプローブの間の相互作用のための好ましい部位が決定される。推定相補的化合物はかかる部位の得られた三次元パターンを用いて生成させることができる。
【0115】
本発明の治療用組成物は本発明の1以上の治療化合物を含む。治療用組成物は、さらに、Ig媒介応答を減少させるかまたは液性免疫応答を増加させることができる他の化合物を含むことができる。例えば、組織損傷を減少させるのに有用な本発明の治療用組成物は、例えば、補体固定化、血管外遊出をブロックすること等により、炎症細胞の漸増をブロックし、ウイルス蛋白質のFcRへの結合をブロックし、オプシン化をブロックし、または正常および受動抗体免疫性を増強する化合物も含むことができる。Ig媒介炎症を減少させるのに有用な本発明の治療用組成物は、炎症細胞の漸増をブロックしおよび/または炎症メディエーターの放出に至るシグナル変換経路をブロックする化合物を含むことができる。
【0116】
体液性応答を増大させるのに有用な本発明の治療用組成物は、限定されるものではないが、サイトカイン、ケモカイン、およびサイトカインおよびケモカインの生産を誘導する化合物[例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエジン(EPO)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン8(IL−8)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン12(IL−12)、インターフェロンガンマー、インターフェロンガンマー誘導因子I(IGIF)、トランスフォーミング成長因子ベータ、RATES(活性化に際して調節される、発現されおそらくは分泌される正常T細胞)、マクロファージ炎症蛋白質(例えば、MIP−1アルファおよびMIP−1ベータ)、細菌成分(例えば、エンドトキシン、特にスーパー抗原、エキソトキシンおよび細胞壁成分);アルミニウムベースの塩;カルシウムベースの塩;シリカ;ポリヌクレオチド;トキソイド;血清蛋白質、ウイルスコート蛋白質;ブロックコポリマーアジュバント(例えば、Hunter’s Titermax TMアジュバント(VaxcelTM,Inc.Norcross,GA)、Ribiアジュバント(Ribi ImmunoChem Research,Inc.,Hamilton,MT);およびサポニンおよびそれらの誘導体(例えば、Quil A(Superfos Biosector A/S,デンマーク国)]を含めた抗原に対する抗体生産を増加させる化合物(例えば、アジュバント)を含むこともできる。
【0117】
x
本発明の治療用組成物を用いて、所望の治療効果が得られるようにかかる組成物を動物に投与することによって動物における疾患を治療することができる。治療すべき好ましい動物は、哺乳動物、有袋類、爬虫類および鳥類であり、ヒト、愛玩動物、食用動物、動物園動物および他の経済的に重要な動物(例えば、レース用のウマ、並びにチンチラおよびミンク等の毛皮が高価な動物等)を含む。治療すべきより好ましい動物はヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、ダチョウ、エミュ、シチメンチョウ、コアラおよびカンガルーを含む。保護すべき特に好ましい動物はヒト、イヌおよびネコである。
【0118】
本発明の好ましい治療用組成物は、賦形剤、アジュバントおよび/または担体を含む。適切な賦形剤は、治療すべき動物が許容できる化合物を含む。かかる賦形剤の例は、水、塩類溶液、リンガー液、デキストロース溶液、ハンクスの溶液、および他の生理学的平衡塩水溶液を含む。不揮発性油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドのごとき非水ビヒクルを用いることもできる。他の有用な処方は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのごとき増粘剤を含有する懸濁液を含む。賦形剤は、等張性および化学的安定性を増強する物質のごとき少量の添加剤を含むこともできる。緩衝剤の例は、リン酸塩緩衝液、炭酸水素塩緩衝液およびトリス緩衝液を含み、他方、防腐剤の例は、チメロサール、o−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールを含む。標準的な処方は、液体注射剤、あるいは注射用の懸濁液または溶液として適切な液体中に取ることができる固体いずれかであり得る。かくして、非液体処方において、賦形剤は、投与に先立って、滅菌した水または塩類溶液等を添加することができ、テキストロース、ヒト血清アルブミン、防腐剤を含むことができる。
【0119】
本発明の1つの実施形態において、治療用組成物は担体を含むことができる。担体は治療された動物において治療用組成物の半減期を増加させる化合物を含む。適切な担体は、以下に限定されるものではないが、ポリマー制御放出ビヒクル、生分解性インプラント、リポソーム、細菌、ウイルス、他の細胞、油、エステルおよびグリコールを含む。
【0120】
本発明の治療用組成物を効果的に投与するための許容されるプロトコールは、個々の投与量サイズ、投与の回数、用量投与の頻度、および投与様式を含む。かかるプロトコールの決定は当業者によって達成することができる。投与の様式は、以下に限定されるものではないが、皮下、皮内、静脈内、鼻孔内、経口、経皮、眼内および筋肉内経路を含む。
【0121】
本発明のもう1つの実施形態は、改変されたFcR蛋白質を検出することができる、あるいは異常免疫性または炎症を有する患者から得られた細胞から単離された診断化合物である。ここに記載された構造ベースの薬物デザインの方法を用いて、FcR蛋白質の三次元を用いてFcR蛋白質に結合する診断試薬を開発することができる。本発明の好ましい診断試薬は、Igに結合することができるFcR蛋白質のIg結合部位に結合することができる分子、および炎症を持つ患者から得られた循環性FcR蛋白質に結合することができる分子を含む。好ましい診断試薬は、免疫原性である分子であるか、あるいは放射性同位体、酵素、色素またはビオチンのごとき、検出可能な化合物に化学的に結合することができる分子である。
【0122】
好ましい実施形態において、本発明の治療化合物または診断化合物は、組換えDNA技術によって作成される蛋白質を含む。
【0123】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【表46】
【表47】
【表48】
【表49】
【表50】
【表51】
【表52】
【表53】
【表54】
【表55】
【表56】
【表57】
【表58】
【表59】
【表60】
【表61】
【表62】
【表63】
【表64】
【表65】
【表66】
【表67】
【表68】
【表69】
【表70】
【表71】
【表72】
【表73】
【表74】
【表75】
【表76】
【表77】
【表78】
【表79】
【表80】
【表81】
【表82】
【表83】
【表84】
【表85】
【表86】
【表87】
【表88】
【表89】
【表90】
【表91】
【表92】
【表93】
【表94】
【表95】
【表96】
【表97】
【表98】
【表99】
【表100】
【表101】
【表102】
【表103】
【表104】
【表105】
【表106】
【表107】
【表108】
【表109】
【表110】
【表111】
【表112】
【表113】
【表114】
【表115】
【表116】
【表117】
【表118】
【表119】
【表120】
【表121】
【表122】
【表123】
【表124】
【表125】
【表126】
【表127】
【表128】
【表129】
【表130】
【表131】
【表132】
【表133】
【表134】
【表135】
【表136】
【表137】
【表138】
【表139】
【表140】
【表141】
【表142】
【表143】
【表144】
【表145】
【表146】
【表147】
【表148】
【表149】
【表150】
【表151】
【表152】
【表153】
【表154】
【表155】
【表156】
【表157】
【表158】
【表159】
【表160】
【表161】
【表162】
【表163】
【表164】
【表165】
【表166】
【表167】
【表168】
【表169】
【表170】
【表171】
【表172】
【表173】
【表174】
【表175】
【表176】
【表177】
【表178】
【表179】
【表180】
【表181】
【表182】
【表183】
【表184】
【表185】
【表186】
【表187】
【表188】
【表189】
【表190】
【表191】
【表192】
【表193】
【表194】
【表195】
【表196】
【表197】
【表198】
【表199】
【表200】
【表201】
【表202】
【表203】
【表204】
【表205】
【表206】
【表207】
【表208】
【表209】
【表210】
【表211】
【表212】
【表213】
【表214】
【表215】
【表216】
【表217】
【表218】
【表219】
【表220】
【表221】
【表222】
【表223】
【表224】
【表225】
【表226】
【表227】
以下の例は説明の目的で提供したものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0124】
[例]
例1
本例は、可溶性FcγRIIa蛋白質を発現する組換えバクロウイルスの構築およびかかる蛋白質の生産を記載する。
【0125】
バクロウイルス多面的転写制御配列に作動可能に連結したヒトFcγRII(sFcγRIIa)の可溶性形態をコードする核酸分子を含有する組換え分子pFcγRIIaを以下のごとくに製造した。核酸分子sFcγRIIaは、標準的なポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと称す)法を用い、核酸配列5’−TAC GAA TTC CTA TGG AGA CCC AAA TGT CTC−3’(配列番号1で示す)を有する約100ngのプライマーNR1および核酸配列5’−CAT TCT AGA CTA TTG GAC AGT GAT GGT CAC−3’(配列番号2で示す)を有するプライマーFI2を用い、(Ierinoら,J.Exp.Med.,vol.178,頁1617−1628,1993に記載された)約10ナノグラム(ng)のFcγRIIaTMcDNAからPCR増幅した。得られたPCR産物は510塩基対(ここではsFcγRIIa(a)という)であり、配列番号3によってここでは表されるアミノ酸をコードする。例7に記載された質量分析実験で得られた結果に基づき、第2の蛋白質産物は本例のPCR産物を含む組換え分子の発現に際して存在する。このデータは、2つのPCR産物が本方法から産生されたことを示唆する。該第2のPCR産物は513塩基対であることが予測され(ここではsFcγRIIa(b)という)、配列番号12によってここでは表されるアミノ酸配列をコードする。PCR産物を制限エンドヌクレアーゼEcoRIおよびXbaIで消化し、およびpVL1392バクロウイルスシャトルプラスミド(Pharmingen,San Diego,CAから入手可能)のユニークなEcoRIおよびXbaI部位に連結させて、ここではpVL−sFcγRIIa(a)およびpVL−sFcγRIIa(b)という組換え分子を得る。
【0126】
組換え分子pVL−sFcγRIIa(a)およびpVL−sFcγRIIa(b)を、バクロウイルス株AcMNPV(Pharmingenから入手可能)でスポドプテラ・フルギペルダ21(Spodoptera frugiperda 21;Sf−21)細胞(Invitrogen Corp.,San Diego,CA)に共トランスフェクトしてS.frugiperda:pVL−sFcγRIIa(a)/sFcγRIIa(b)細胞を得た。β−ガラクトシダーゼのオクルージョン(occlusion)についてX−ガラクトシダーゼプレート上でスクリーニングすることによって、推定組換えウイルス単離体を選択した。無血清Sf900−II培地(Gibco,New Yorkから入手可能)を用いて感染のために、選択された単離体をSf−21細胞の単層上で増殖させ、上清を感染後約40時間で採取した。該上清中の、ここではPsFcγRIIaと呼ぶ組換え蛋白質の存在を、標準的な方法を用い、(Ierinoら,前掲に詳細に記載された)抗FcγRIIモノクローナル抗体8.26および8.7を用いてELISAによって測定した。例7に記載された結果に基づき、組換え蛋白質PsFcγRIIaは配列番号3および配列番号12を有する2種類の蛋白質を含む。
【0127】
例2
本例は該蛋白質の結晶化のためにPsFcγRIIaの精製を記載する。
【0128】
例1に前記したS.frugiperda:pVL−sFcγRIIa(a)/sFcγRIIa(b)細胞からの上清を採取し、次いで、約×2000rpmで遠心して細胞夾雑物を除去した。Minitana超遠心系(Millipore,Bedford,MAから入手可能)を用いて、遠心沈殿法からの上清を約5倍濃縮し、次いで、10mMトリス−HCl pH8.5および50mM NaClを含有する緩衝液に対して十分に透析した。透析された溶液をQ−セファロース高速流動(fast−flow)イオン交換カラム(Pharmacia,Uppsala,スウェーデン、から入手可能)に適用した。該カラムを10mM トリス−HCl、pH8.5で洗浄し、次いで、0ないし約500mM NaClの塩勾配を用いて該カラムから蛋白質を溶出させ、4時間にわたって該カラムに通した。PsFcγRIIaをほぼ150mM NaClで該カラムから溶離させた。部分的に精製された生成物を20mMトリス−HCl、pH7.4および30mM NaClを含有する緩衝液に対して透析した。該透析物を(Ierinoら,前掲に詳細に記載された)HAGG免疫アフィニティクロマトグラフィに適用した。該カラムを20mMトリス−HCl pH7.4および30mM NaClを含有する緩衝液で洗浄した。0.1M酢酸ナトリウムpH4.0、および0.5M NaClを含有する緩衝液を用いてPsFcγRIIaをカラムから溶離させた。溶出物を3mトリス pH8.0を用いて中和し、PBS(3.5mM NaH2PO4・2H2O、16mM Na2HPO4、150mM NaCl)に対して透析した。次いで、(Filtron,Northborough,MAから入手可能な)マクロおよびナノセプ10限外濾過濃縮デバイスを用いて該透析物をほぼ50倍濃縮し、(Pharmacia,Uppsala.スウェーデン、から入手可能な)PBS中で平衡化したG75 セファデックスゲル濾過カラムに適用した。濾過されたPsFcγRIIaを1mM トリス−HCl pH7.4に対して透析し、マクロおよびナノセプ10限外濾過濃縮デバイスを用いて約6ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)蛋白質に濃縮した。PsFcγRIIaの純度は、SDS−PAGEによって濃縮された蛋白質を解像し、該蛋白質をクロセインスカーレットで染色することによって評価した。得られたゲルの電子スキャンは図1に示され、ここで、レーンAはイオン交換工程に先立ってS.frugiperda:pVL−sFcγRIIa(a)/sFcγRIIa(b)細胞培養から採取した上清を含有し、レーンBはアフィニティカラムから溶離した蛋白質を含有し、レーンCはゲル濾過クロマトグラフィ工程から単離された蛋白質を含有し、レーンDは6mg/mlに濃縮したPsFcγRIIaの試料を含有し、これをさらに結晶化実験で使用した。分子量マーカーは図面の左側に示される。結果は、精製されたPsFcγRIIaが約90%純度であり、見掛けの分子量は25,000ダルトンであった。
【0129】
例3
本例は精製されたPsFcγRIIaの二次元非平衡pHゲル電気泳動分析を記載する。
【0130】
S.frugiperda:pVL−sFcγRIIa(a)/sFcγRIIa(b)からの上清を、抗FcγRIIモノクローナル抗体8.26(IgG2b)のF(ab’)断片(その製造はJ.Immunol.,vol.150,頁1−10,1993に記載されている)を結合した約20マイクロリットル(ml)の充填セファロース 4Bビーズと共に4℃で約1時間インキュベートした。次いで、該ビーズを、10mMトリス−Hcl pH7.4、2%wt/volウシ血清アルブミン(Commonwealth Serum Laboratories,Melbourne,Australiaから入手可能な)、1mM PMSF(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)、0.1% vol/volアプロチニン(Sigma Chemica)を含有する緩衝液で洗浄し、次いで、10mMトリス−HCl,pH7.4で洗浄した。該ビーズを約50mlの等電点電気泳動変性緩衝液(9.5M尿素、4%アクリルアミド、2%wt/vol NP−40、2%全アンフォリンおよび50mMジチオスレイトール)に再懸濁し、約×13,000rpmにて約2分間回転し4%チューブゲルに付加し、約10mlの重層緩衝液(9M尿素、1%全アンフォリン)およびアノード緩衝液(0.01Mリン酸)で重層し、約550ボルトで約5時間電気泳動に付した。次いで、該ゲルをガラスチューブから取り出し、SDS−PAGE試料緩衝液(62.5mM トリス−HCl、pH6.8、50mMジチオスレイトールおよび10%グリセロール)中で室温にて約2時間平衡化させ、SDS−PAGEのために13%スラブゲルの頂部に付着させた。
【0131】
半乾燥トランスファー・セル(transfer cell)(Biorad,オーストラリア国)を用いて20mA電流下にて電気泳動蛋白質を(Milliporeから入手可能な)Immobilon−P PVDF膜に約30分間で移した。5%wt/vol脱脂粉乳を含有するPBS緩衝液中で該膜を約1時間ブロックした。次いで、(5%wt/vol脱脂粉乳を含有するPBS中に1:10,000希釈した)ウサギ抗FcγRIIポリプローナル抗血清と共に該膜を一晩インキュベートし、次いで、緩衝液(10mMトリス−HCl、pH8.0 150mM NaCl、0.05%Tween−20)で十分に洗浄した。組換えFcγRII蛋白質での免疫化によって該ポリクローナル抗血清をウサギにおいて生起させた。該動物を約1mgのFcγRII蛋白質で免疫化した。最初の免疫化では、FcγRII蛋白質をフロイントの完全アジュバント中に乳化させた。フロイントの不完全アジュバント中に乳化させたFcγRII蛋白質を用いて引き続いての免疫化を行った。次いで、(Dako Corp.デンアーク国より入手可能な)(10mMトリス−HCl、pH8.0、150mM NaClおよび0.05%Tween−20に1:5000に希釈した)ペルオキシダーゼ結合ブタ抗ウサギ抗血清と共に該膜を室温にて約1時間インキュベートした。増強された化学ルミネセンス系(Amershal International、オーストラリア国から入手可能な)を用いる移した蛋白質の検出前に、該膜を洗浄した。
【0132】
得られたゲルの電子スキャンを図2Aおよび2Bに示す。図2Aは34時間後にS.frugiperda:pVL−sFcγRIIa(a)/sFcγRIIa(b)細胞培養物から採取した上澄みから単離された蛋白質の泳動を示す。図2Bは、73時間後にS.frugiperda:pVL−sFcγRIIa(a)/sFcγRIIa(b)細胞培養物から採取した上澄みから単離された蛋白質の泳動を示す。分子量マーカーを図面の左側に示す。結果は、精製されたPSFcγRIIaが25,000ダルトンの見掛けの分子量と約pH6のpIを有することを示す。
【0133】
例4
本例はPsFcγRIIaのN末端ペプチド配列を記載する。
【0134】
(Applied Biosystems,CAから入手可能な)最初の8個のアミノ酸の自動オンライン分析のためにApplied Biosystems130分離系に連結したApplied Biosystems470Aガス層シーケネーターを用いる標準的な連続エドマン分解方法を用いての例2に記載された精製PsFcγRIIaのアミノ酸配列決定。N末端配列はAla−Pro−Pro−Lys−Ala−Val−Leu−Lys(配列番号4と示す)であると決定された。
【0135】
例5
本例はPsFcγRIIaのモノマー免疫グロブリンへの結合を記載する。
【0136】
HEPES緩衝化食塩水(HBS;10mM HEPES[N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸、CommonWealth Serum Laboratories,Parkville,オーストラリア国、から入手可能]、pH7.4、150mM NaCl、3.4mM EDTAおよび0.005%インターフェース活性剤、Pharmaciaから入手可能)中で、約22℃のBIAcorea2000バイオセンサー(Pharmacia Biotech,Uppsala,スウェーデン国から入手可能)を用いてPsFcγRIIaとモノマー免疫グロブリンとの間の相互作用の分析を行った。製造業者の方法に従って(BIAcoreから入手可能な)アミンカップリングキットを用い、モノマーヒト免疫グロブリンのサブクラスIgG1、IgG2、IgG3およびIgE(各々50μg/ml)の約4000ないし約6000応答ユニット(RU)を、各CM5センサーチップ(BIAcore,Uppsala,スウェーデン国から入手可能な)の別々のカルボキシメチル化デキルトラン表面に共有結合カップリングさせた。一連のPsFcγRIIa濃度(約0.001ないし約1mg/ml蛋白質)を約20μl/分にて約1分間、各センサーチップ表面に注射し、続いて約3分間、相を解離した。該蛋白質の投与に続き、50mMジエチルアミンpH11.5および1M NaClを含有する緩衝液を用いて免疫グロブリン表面を各チップ上で再生処理した。単一部位結合方程式[結合したRU=(B1max・C)/(KD1+C)];または2部位結合方程式[結合したRU=((B1max・C)/(KD1+C))+((B2max・C)/(KD2+C))](ここで、B1maxとは部位1での表面の最大結合容量をいい;B2maxとは部位2での表面の最大結合容量をいい;CとはPsFcγRIIaの濃度を言う)の非線形曲線適合によって、およびスカッチャードプロットに対する線形曲線適合によって、PsFcγRIIaと免疫グロブリンとの間の相互作用についての平衡解離定数(KD)が得られた。IgEチャンネルから得られたデーター点を差し引いて屈折率の差を修正した。50秒および60秒の間のデーター点を平均して、各PsFcγRIIa結合についての平衡時の結合したPsFcγRIIaの量を得た。
【0137】
PsFcγRIIaと固定化免疫グロブリンとの間の相互作用の特性を決定するために、過剰のモノマーIgG(サンダグロブリン;Sandaglobulin、Sandoz,Basel,スイス国から入手可能な)の存在によって、PsFcγRIIaとモノマー免疫グロブリンとの間の相互作用を阻害した。固定した最大用量の半分のPsFcγRIIa(50μg/ml)を用い、IgG1を被覆したセンサーチップ表面にPsFcγRIIaを通す前に約22℃にて約1時間、濃度を増やしながらモノマーIgG(0ないし2mg/ml IgG)をPsFcγRIIaと混合した。
【0138】
結果は、IgG3およびIgG1へのPsFcγRIIaの結合は広い範囲の蛋白質濃度にわたって飽和可能であることを示した。蛋白質濃度当たりの最大応答ユニットを、蛋白質のモル濃度と、保証された曲線適合分析に対してプロットした。最良の適合曲線は、IgG3と相互作用するPsFcγRIIaの2つの領域があることを示唆した。該部位の50%において、IgG3に対する親和性は約2.7×106M−1であり、残りの50%の部位においては、該親和性は約1.2×104M−1であった(図3A)。PsFcγRIIaとIgG1との間の相互作用は、2つの領域においても生じたが、該相互作用は、IgG3とは異なった。さらに、該リガンド結合部位の約90%において、IgG1についてのPsFcγRIIaの親和性は約2.1×106M−1であり、残りの10%の部位においては該親和性は約2.3×104M−1であった(図3B)。6倍モル過剰のIgGはIgGに対するPsFcγRIIaの結合を完全に阻害したことから、該相互作用はPsFcγRIIaに特異的であった。また、IgG2結合の分析も行ったところ、約8×10−5M−1のKd値が得られた(図3C)。
【0139】
例6
本例はPsFcγRIIaの結晶化とX線回折を記載する。
【0140】
A.結晶性PsFcγRIIaの製造
一連の代替する緩衝液を用いて、ハンギングドロップ蒸気拡散によってPsFcγRIIaの結晶を製造することを試みた。表6は用いた異なる母液の処方と得られた結果とをまとめたものである。
【0141】
【表228】
【表229】
a.リストした結果を達成するのに用いた沈殿剤の最終濃度
b.条件9は単一液滴中に2つの結晶を生じた。
【0142】
c.条件16は液滴内の多数の核形成点から生じた破片のシャワーを生じた。
【0143】
d.条件25は以上な結晶を生じた。多数の結晶性プレートが一緒に接合してこの結晶を形成するように見える。この結晶のX線回折分析は成功しなかった。
【0144】
迅速なスクリーニング方法を用いた(McPherson,1982,In:Preparation and Analysis of Protein Crystals,1982,Page 94−97,John Wiley and Sons 出版社;およびJ.Crystal Growth,vol.122,Page161−167,1992に一般的に記載されている)。略言すれば、24ウェル培養プレートを用いハンギングドロップ蒸気拡散実験を行った。等用量の母液中の約3mg/mlのPsFcγRIIaを含有する液滴(約3μl)を、24ウェル組織培養プレートウェルに倒立したシリコン処理カバーグラスから懸濁させた。約1mlの母液に対して液滴を約22℃で平衡化させた。温度を制御したインキュベーションを20℃のチャンバー(Linbro Incから入手可能であり、ICN Inc,Costa Mesa CAによって提供された)内で行った。母液0.2M酢酸アンモニウム、0.1Mクエン酸塩pH5.6および30%PEG4000を用い、22℃で、PsFcγRIIaの純度および濃度に応じて約3ないし約9日間の間、または9カ月まで、成功したPsFcγRIIa結晶化を行い、斜方系結晶が生産された。
【0145】
また、1.5M硫酸リチウムを含む母液0.1M HEPES pH7.5を用い、PsFcγRIIaの純度および濃度に応じて約3ないし約9日間の間で、または9カ月まで、成功したPsFcγRIIa結晶化を22℃で行い、結果として、規定された構造の一連の棒状破片が製造された。該棒状破片はX線回折によって分析した。
【0146】
B.結晶性PsFcγRIIaのX線回折および電子密度マップの測定
セクションAで前記したごとく製造されたPsFcγRIIa結晶をレーヨンループに取り付け、20%グリセロールを含有する母液中で−165℃まで低温冷却した。広い範囲の活性をサンプリングした12の重い原子の化合物を、PsFcγRIIaに対する結合について試験した。PIP(ジ−μ−ヨードビス[エチレンジアミン]ジ白金(II)硝酸塩)は反応性であることが判明した。約5mM PIPを含有する母液中に一晩浸漬することによって結晶を誘導した。約40KVおよび約50mMで作動するM18XHF回転アノード発生器(Siemens,ドイツ)により、NiフィルターCuKγ照射を用いて、回折測定を行った。該発生器にはFranksミラー(Molecular Structure Corporation,米国)、低温計(Molecular Structure Corporation,米国)およびRAXIS IICおよびIVイメージプレート検出器(Rigaku,日本)を装備した。
【0147】
該結晶は空間群P21212(a=78.80オングストローム,b=100.55オングストローム,c=27.85オングストローム)に属し、0.065のR(merge)で約2.4オングストローム分解能に回折された。R(merge)=全ての独立した反射にわたって合計したS(Ii−(IS))/Ii(ここで、I=強度である)。天然および誘導体データは、約1゜の振動範囲で45分間露出で収集した。回折強度はDENZO(Otwinowskiら,Methods in Enzymology,vol.276,頁307,1996)を用いて積分し、SCALEPACK(Otwinowskiら,前掲)で計った。単一の重原子結合部位は、PROTEINシステム(Steigeman,Ph.D.Thesis,Technical University,Munich,1974)で計算した同形体および異常差パターソンマップ(anomalous difference Patterson maps、Blundellら,In:Protein Crystallography.,Horecker,B.,Kaplan,N.O.,Marmur,J.,Scherage,H.A編,Academic Press,New York,1976)の調査によって位置決定した。重原子パラメーターを改良し、プログラムSHARP(Statistical Heavy−Atom Refinement and Phasing 、de La Fortelleら,Methods in Enzymology,vol.276,頁472,1996)を用い、異常散乱を有するシングル同型置換の方法(Single Isomorphous Replacement with Anomalous Scattering)で相を測定した。約18ないし約2.7オングストローム分解能の範囲のマージデータ(merged data)は、約0.162の同形体R因子、中心反射0.308および中心をはずれた反射0.247に対する良さの指数、並びに中心反射についての1.127および中心をはずれた反射についての1.081の整相力を有した(Blundell,前掲)。プログラムのCCP4(Cowtan,後出)スート中の密度修飾パッケージDM(Cowtan,Joint CCCP4 and ESF−EACBM Newsletter on Protein Crystallography,vol.31,頁34,1994)において溶媒フラットニング(Wang,Methods in Enzymology,vol.115,頁90,1985)およびヒストグラムマッピング(Zhangら,Acta Crystallography,vol.A46,頁377,1990)のプロトコールにて相を修飾した。グラフィックディスプレイプログラムO(Jonesら,Acta Crystallography,vol.A47,頁110,1991)を用いて2F0−Fc電子密度マップを表示した。二次構造特徴はこの段階で同定できたが、該マップは、該ポリペプチドの十分な解釈および追跡が困難であった。電子密度の単純化された表示を得るために、プログラムBONES(Jonesら,前掲)を用い、該マップの骨組みを作成した(Greer,J.Mol.Biol.,vol.82,頁279,1974)。キラー阻害性受容体(Fanら,Nature,vol.389,頁96,1997)の座標を参照として用いて、該ポリペプチドを追跡し、部分的モデルを得た。引き続いてのマップを計算するために、密度修飾相およびモデルから計算した相をFree−Sim法(Sim,Acta Crystallography,vol.13,頁511,1960)によって組み合わせた。
【0148】
ブルックヘイベン・ナショナル・ラボラトリー(Brookhaven National Laboratory、Upton,New York)のナショナル・シンクロトロン・ライト・ソース(National Synchrotron Light Source)のビームラインX4Aで、構造改良についての更なるデータを回収した。約1.058オングストロームの波長での照射を用い、約100秒の露出および約1゜の振動範囲としてデータをフジイメージプレートで回収した。回折イメージをBAS2000スキャナー(Fuji,日本)でデジタル化し、前記したごとくに加工して、約10オングストロームおよび約1.7オングストローム分解能の間のデータについての0.038のR(merge)を得た。個々の温度因子、エネルギー最小化およびバルク溶媒校正での徐冷却誘導アニーリング改良を含めたプロトコールを用い、構造改良をXPLORシステム(Brungerら,Science,vol.235,頁458,1987)で行った。
【0149】
PsFcγRIIaの改良された構造は、33の溶媒と共に、1ないし170の全てのアミノ酸残基を含有する。結晶学的残留R因子および自由R因子は、約7オングストロームないし約2.0オングストローム分解能のデータにつき、各々、約0.253および約0.326である(Brunger,1987,前掲)。結合長の理想的性質から、平均二乗平均平方根偏差は角度につき約0.01オングストロームおよび約1.45゜であった(Brungerら,Nature,vol.355,頁472,1992)。PsFcγRIIaについての原子座標の得られたデータ組を図4に示す。
【0150】
C.PsFcγRIIa構造
表1にリストした原子座標を用い、PsFcγRIIaのダイマーの構造を誘導した。MOLSCRIPT2.0プログラム(Avatar Software AB,Heleneborgsgatan 21C,SE−11731 Stockholm,スウェーデンから入手可能)を用いて、該構造をコンピュータにより作成した。該結晶構造は2つの170個のアミノ酸モノマーを有するダイマー形態のPsFcγRIIaを明らかにする。該2つのモノマーは構造学的に同一である。
【0151】
PsFcγRIIa残基1ないし170の構造は、2つの免疫グロブリン不変領域2(C2)タイプ免疫グロブリンドメインよりなり、各ドメインは、ジスルフィド結合によって共に拘束された2つの逆平行β−シートよりなる。各ドメインの最初のストランド(Aストランド)は、シートIを形成する部分(ABEストランド)およびシートIIを形成する部分(A’GFCC’ストランド)で中央で分断されている。この構造特徴は免疫グロブリン可変領域(V)タイプドメインにおいて、およびナチュラルキラー阻害性受容体(KIR)において起こるが、他のC2ドメインでは生じない。PsFcγRIIaの2つの免疫グロブリン様ドメインは相互に非常に類似しており、Ca位置におけるrms差異は68残基につき1.28オングストロームである。主要な差異は分子のN末端でのループ(BC、C’EおよびFGループ)およびC’ストランド上の位置にある。これらのループのいくつかはFcの結合に関係付けられてきた。
【0152】
PsFcγRIIa構造における2つのドメインの結合領域はかなり曲がっており、ドメインの主要軸の間の角度はほぼ52゜である。この曲がりはKIRについての60゜を含む、他の免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーよりも過酷である。該ドメインのインターフェースはドメイン1からのストランドA’並びにドメイン2からのA&Bから構成され、ここで、各ドメインからのシートIIが該インターフェースを形成する。その非水素原子が他のドメインの4オングストローム内にある残基。また、水分子201、211、217−220、227および232はインターフェース領域にある。
【0153】
ある種の構造特徴は、該結晶中の2つのPsFcγRIIaの分子の間のダイマー形成が好ましい相互作用であることを示す。該結晶の唯一のPsFcγRIIa分子(残基1ないし170)の構造は決定されているが、該結晶中のダイマーよりなる各PsFcγRIIa分子は2倍結晶軸によって該結晶中の他のPsFcγRIIa分子に関係している。該変換:
(−1 0 0)(x)(0.)
(0 −1 0).(y)+(100.55)
(0 0 1)(z)(0.)
を表1中に与えた座標に適用することによって、ダイマーが形成される(図4)、該インターフェースは各PsFcγRIIa分子からのシートIIよりなる。FcγRIIaダイマーの座標は表2に表される。接触領域が重要であり(〜400オングストローム)、このインターフェースはドメイン1−ドメイン2のインターフェースよりも疎水性特徴を有する。その非水素原子が他の分子または軸の水分子207の4オングストローム内にある残基は、119、121、124−126、150、152および158−161であり、残基148、163および164は密接なアプローチをなす。このタイプのドメイン相互作用は免疫グロブリンについては新規ではなく、これは、抗体のV領域は同じ様式で対をなすからである。しかしながら、このタイプの相互作用はC2ドメインでは観察されていなかった。この接触のサイズおよび特徴により、この従来では予見できなかった相互作用が生理学的な関連性を有することを示唆する。
【0154】
さらなる構造的考慮がこの結論をサポートする。上述した結晶構造は、仮に、FcγRIIa分子が、該受容体を含有する細胞膜に向けてC末端で方向付けられるのであれば、従って、該受容体の推定Fc結合領域は細胞から外れないが、1つの側では遠くに離れることが示唆される。従って、細胞膜における2つのFcγRIIa分子の間にダイマーを形成し、該2つの可能なFc結合領域を相互に近づけ、且つ、ダイマー軸が細胞から離れるので、該細胞から離れる。この配向は、リガンド(すなわち、IgG)との相互作用のために、可能なFc結合部位を理想的に位置付け、該リガンド結合部位が2つの受容体分子からの領域からなるようにする。結合事象において2つの受容体分子を関係付けることは、細胞シグナル変換につき密接な関係を有し、何故ならば、細胞外ドメインの二量体化は2つの受容体の細胞質ドメインを一緒にして細胞シグナル変換応答を開始するためである。
【0155】
図4はPFcγRIIaのダイマーのグラフィック表示を示す。2つのIg様ドメイン(ドメイン1および2)は、各ダイマーの各モノマーに示される。該蛋白質のアミノ(NH2)末端の最初のアミノ酸残基は残基番号0によって示される。該蛋白質のカルボキシル(COOH)末端の最後のアミノ酸残基は残基170によって示される。NH2末端からCOOH末端へのアミノ酸残基のナンバリングは可能な場合に示される。ある残基は明瞭性のために省略した。図5は、PFcγRIIaのドメイン1およびドメイン2の各ベータシートよりなるアミノ酸残基を示す。ドメイン1において、ストランドAは残基5−10を含み、ストランドA’は残基14−17を含み、ストランドBは残基20−28を含み、ストランドCは残基37−41を含み、残基C’は残基44−46を含み、ストランドEは残基52−28を含み、ストランドFは残基63−70を含み、ストランドFは残基63−70を含み、およびストランドGは残基78−84を含む。ドメイン2において、ストランドAは残基87−92を含み、ストランドA’は残基95−97を含み、ストランドBは残基102−110を含み、ストランドCは残基117−122を含み、ストランドC’は残基125−131を含み、ストランドEは残基134−139を含み、ストランドFは残基146−155を含み、ストランドGは残基158−162を含み、およびストランドG’は残基163−169を含む。図6は立体で図4で示した該ポリペプチドの構造の立体図を示す。
【0156】
図4に示した三次元構造のグラフ表示を用いて、FcγRIIaのIgGへの結合に関与するアミノ酸残基の位置を決定した。図7はFcγRIIaのIgGへの結合の喪失に関与する突然変異したアラニン残基の位置(黒色球によって示された)を示す。図7に示された残基はFcγRIIaの組換え突然変異体を用いて同定し、ここで、残基はアラニンで置き換えられ、且つFcγRIIaに対するIgGの結合を分断または減少することが判明した(Hulettら,1994,前掲;Hulettら,1995,前掲)。図8は、IgGへの減少した結合を有するFcγRIIa蛋白質をコードする領域における突然変異を有する核酸分子の産生によって示されるごとく、FcγRIIaへのIgG結合に関与するアミノ酸の位置および側鎖を示すIgG結合領域の拡大図を示す。
【0157】
図9はIgG結合領域およびアミノ酸残基(これはアラニンに突然変異された場合にIgG結合を改良する)の拡大図を示す。
【0158】
図4に示される三次元構造のグラフ表示に示された2つのダイマーの間のインターフェースをさらに分析した。図10は該ダイマーインターフェースに寄与する1つのFcγRIIaモノマーの領域の拡大図を示す。図10において、当該領域はxにおいて約90℃回転されており、ここでxは頁に対して水平である。インターフェースに寄与するアミノ酸残基のγ炭素は黒色球として示され、配列番号3の残基ナンバーリングに従って番号が付される。
【0159】
例7
本例は電子スプレーイオン化質量分析によるPsFcγRIIa蛋白質のN末端配列の分析を記載する。
【0160】
PsFcγRIIa蛋白質のN末端アミノ酸配列を決定するために、N結合グリコシル化質量分光分析の不均一性を以下のごとく行った。0.1%酢酸を含有する50%CH3CNの約2μlないし約4μl中に、約1ないし約100ピコモーラー(pmol)のPsFcγRIIa蛋白質を合わせることによって種々の試料を調製した。ミクロイオンスプレーのイオン源を装備し、Q1スキャンモードで作動するパーキン・エルマー・サイエックス(Perkin Eemer Sciex)Api−300三重四極質量分光計に、約0.2μl/分の流速で試料を注入した。単一に荷電したポリ(プロピレングリコール)イオンを用い、±0.01%に等しい精度まで、3000u質量範囲にわたって8つの点で質量スケールを較正した。0.6uの一定のピーク幅(半分の高さにおけるピーク幅)で、質量スペクトル(典型的には30−100スキャン)を、質量ランドn/z200uないし3000uにわたって記録し、PE−サイエックス・バイオマルチビュー(PE−Sciex Biomultiview)ソフトウェアを用いて単一平均化、手動質量測定および変換によって加工した。結果は、異なるN末端配列を有する蛋白質の主要な2種類が精製されたPsFcγRIIa蛋白質の溶液中に存在することを示した。1種類は、配列番号4を含むN末端配列を有し、且つ他種類は該蛋白質の5’末端にでの更なるAlaを持つN末端配列を有した(例えば、Ala−Ala−Pro−)。
【0161】
例8
本例はモノマーおよびダイマー両形態のFcε受容体I(FcεRI)の三次元構造のモデリングを記載する。
【0162】
ヒトFcイプシロン受容体タイプI(FcεRI)およびヒトFcガンマ受容体タイプIIa(FcγRIIa)の細胞外領域は約38%(172残基につき)の配列同一性を示す。このモデリングワークで用いる最終配列アラインメントを図13に示す。ヒトFcγRIIaのX線結晶学構造は本発明者らによって決定された(表1)。表1中のFcγRIIa三次元座標は、His108のイミダール環の配向および1ラウンドの改良によって、ヒトFcεRIの三次元モデルを構築するための鋳型として用いたものとは異なる。
【0163】
FcεRIで行った二次構造予測により図13に与えられたアラインメントの有効性が確認され、βストランドのパターンがFcεRIおよびFcγRIIaの双方で同一であることを示した。用いた二次構造予測方法はPHD(B.Rostら,CABIOS,vol.10,266−275(1994))およびPREDATOR(D.FrishmanおよびP.Argos,Proteins,vol.27,327−335(1997))であった。
【0164】
インサイトII・ホモロジー・ソフトウェア・パッケージ(InsightII Homology Software Package、Insight II(97.0),MSI,San Diego)を実行して、モデラー(MODELER、A.SaliおよびT.L.、Blundell,J.Mol.Biol.,vol.234,779−815(1993))を用いて、多数の異なる初期配列アラインメントおよびFcγRIIaの2つの構造鋳型を使用してFcεRIの三次元モデルを得た。構造鋳型のうちの1つはFcγRIIaの三次元座標であり、ここで、代替側鎖立体配座を有した残基(残基番号10、21、33、57、60、61、65および89)については、「A」で標識した立体配座を選択し、他方、他の鋳型においては「B」で標識した立体配座を選択した。各モデラー実行において、FcεRIの5つの構造モデルが生じた。以下のパラメーター値またはオプションを用いた:1の「library schdule」、300の「max var iterations」、「refinel」の「md level」、3の「repeat optimization」、および1e6の「max molpdf」。これらの実行からの最良のモデルは図13に与えた配列アラインメントを有し、FcγRIIaの構造鋳型を用い、ここで、残基10、21、33、57、60、61、65および89は「A」立体配座において側鎖を有した。「最良」モデルを判断する基準はモデラー目的関数の最小値(または−1.0×ln(分子確率密度関数=Mpdf))、モデルに対する「well−behaved」PROSAII(M.Sippl,Proteins,vol.17,355−362(1993))残基エネルギープロット(例えば、該配列を通じて負の残基エネルギースコア)、および「well−behaved」PROFILES−3D(J.U.Bowieら,Science,vol.253,164−170(1991))局所3D−1D適合性スコアプロット(例えば、配列を通じて正のプロットスコア)を含んだ。
【0165】
次に、前記で選択した配列アラインメントおよび鋳型を用い、および前記でリストしたパラメーター値およびオプションを用い、モデラーを用いてFcεRIの20の異なる構造モデルを得た。次いで、最小の−ln(Mpdf)値(すなわち957.2)を持つモデルを鋳型として選択して、モデラーの実行の次のサイクルにおいてFcεRI配列の構造モデルを得た。4つのかかるサイクルの最後に、FcεRI構造の「最良の」三次元モデルは643.2の−ln(Mpdf)値を有した。これをFcεRIモノマーの最終構造モデルとして選択し、対応する重(非水素)原子デカルト座標を表3に示す。該構造の「ワーム(worm)」表示を図14に示す。この構造はプログラムPROSAII、PROFILES−3D、およびPROCHECK(R.M.Laskowskiら,J.Appl.Cryst.vol.26,283−291(1993))で有効化された。
【0166】
最後に、FcγRIIaモノマーからダイマーを生じる同一座標変換をFcεRIモノマーの前記モノマーの上記モデルに適用した。インサイトII・ホモロジー(InsightII Homology)モジュール(MSI,San Diego)のオート・ロータマー(Auto Rotamer)オプションでGlu161およびTyr150残基につき代替回転異性体を選択し、ついで、水素原子を該ダイマーモデルに水素原子を加え、およびエネルギーを最小化して全ての重原子を固定して保持する(該主鎖原子のみが固定して維持される場合はTyr150およびGlu161は除く)ことにより、得られたダイマーのインターフェースを最適化した。CFF91の力の場および1.0×rの距離依存性誘電率でエネルギーの最小化のために、プログラムディスカバー(Discover)v.2.98(MSI,San Diego)を使用し、且つ最大エネルギー勾配が0.10kcal/オングストローム未満となるまで共役勾配方法で最小化を行った。FcεRIダイマーの得られたモデルのデカルト座標を表4に表し、該ダイマーモデルの「ワーム(worm)」表示は図15に示す。該FcεRIダイマーのこのモデルは形状相補性、または0.64のモノマー−モノマーインターフェースでのSc値(M.C.LawrenceおよびP.M.Colman,J.Mol.Biol.,vol.234,946−950(1993)を参照されたい)、および静電的相補性値、[十分に溶媒和化した場合には、スピアマンの階数相関係数(A.J.McCoy,V.C.Epa,およびP.M.Colman,J Mol.Biol.,vol.268,570−584(1997)参照されたい)を使用する]、または0.08のモノマー−モノマーインターフェースにおけるECSFSを有する。これらを、FcγRIIaダイマーにつき、各々、0.80および0.32に匹敵する。FcγRIIaダイマーと比較したFcεRIダイマーについてのこれらの減少した相補性値は、ここにおける形成(built)として、FcεRIダイマーの形成がFcγRIIaの場合におけるよりもエネルギー的に不都合であることを示す。しかしながら、我々は、FcεRIのβまたはγ鎖との該相互作用が考慮されてなかったことを注記する。図16はFcεRIダイマーモデルの分子表面表示を示す。
【0167】
ここで、FcγRIIaの結晶学的座標につき記載したのと同様に、表3における該座標によって表されるFcεRIモノマー、または表4における該座標によって表されるFcεRIダイマーの三次元構造のモデルを薬物デザインの基礎として用いることができる。
【0168】
例9
以下の例はFcε受容体I(FcεRI)の結晶化を示す。
【0169】
バクロウイルス多面的転写制御配列に作動可能に連結したヒトFcεRIの可溶性形態(sFcεRI)をコードする核酸分子を含有する組換え分子pFcεRIを例1−3においてpFcγRIIa分子につき記載したごとくに生産した。即ち、Proを通常はコードする位置173の翻訳終止コドンを、図13に表わした配列に記載した第2のドメインのC−末端での配列Ile、Lys、Ala、Proに入れることによって、該組換え可溶性FcεRIを得た。可溶性FcεRIは、ギブコ(GIBCO)によって供給されたバクロウイルス発現系「Bac to Bac」で発現させた。SF21またはSf9細胞の感染は製造業者によって記載されているごとくに行った。即ち、該組換えFcεRIIa分子をpVL1392バクロウイルスシャトルプラスミド(Pharmingen,San Diego,CA)に連結して、ここではpVL−sFcεRIと称する組換え分子を作成した。引き続いて、組換え分子pVL−sFcεRIを、バクロウイルス株AcMNPW(Pharmingenから入手可能な)でスポドプテラ・フルギペルダ21細胞(Spodoptera frugiperda21 cell;Sf−21、Invitrogen Corp.,San Diego,CAから入手可能な)に共トランスフェクトしてS.フルギペルダ:pVL−sFcεRI細胞(S.frugiperda:pVL−sFcεRI cell)を作成した。感染後65−70時間に、上澄みを収穫し、例5においてFcγRIIaにつき記載したプロセスと同様に、抗FcεRI抗体(3B4)モノクローナル抗体−セファロース 4Bアフィニティカラム上のアフィニティクロマトグラフィによって可溶性受容体を精製した。該カラムを10mMトリスpH7.5で洗浄し、0.1M酢酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH4.0で溶離した。その精製した蛋白質を濃縮し、FcγRIIaにつき記載したごとくに結晶化トライアルで用いた(例6)。結晶を以下のごとくにいくつかの条件下で生成した:
(a)0.2M酢酸カルシウム;0.1Mカコジル酸ナトリウム、pH6.5;18%w/vポリエチレングリコール(PEG)8000;
(b)0.1Mカコジル酸ナトリウム、pH6.0またはpH5.5;10%v/v 2−プロパノール;20%w/v PEG4000;
(c)0.2Mクエン酸三ナトリウム二水和物;0.1Mカコジル酸ナトリウムpH6.5;30%v/v 2−プロパノール。
【0170】
本明細書中で記載したごとく、これらの実験によって得られたFcεRI結晶の構造は、X線回折分析および/または分子置換およびモデリング戦略で用いることができる。
【0171】
例10
本例はモノマー形態のFcγ受容体III(FcγRIIIb)の三次元構造のモデリングを記載する。
【0172】
ヒトFcガンマ受容体タイプIII(FcγRIIIb)およびヒトFcガンマ受容体タイプIIa(FcγRIIa)の細胞外領域は約53%(174残基につき)の配列同一性を示す。このモデリングワークで用いた最終配列アラインメントを図18に示す。ヒトFcγRIIaのX線結晶学的構造は、例1−7に記載したごとく本発明者らによって測定された(表1)。表1中のFcγRIIaの三次元座標は、His108のイミダゾール環の配向および1ラウンドの改良によって、ヒトFcγRIIIbの三次元モデルを形成するために鋳型として用いたものとは異なる。
【0173】
FcγRIIaの多数の異なる初期配列アラインメントおよび2つの構造鋳型を用い、インサイトII・ホモロジー(InsightII Homology)ソフトウェアパッケージ(Insight II(97.0),MSI,San Diego)で実施したモデラー(MODELER、A.SaliおよびT.L.Blundell,J.Mol.Biol.,vol.234,779−815(1993))を用いてFcγRIIIbの三次元モデルを作成した。用いた構造鋳型はFcγRIIaの三次元座標であり、ここで、代替側鎖立体配座(残基番号10、21、33、57、60、61、65および89)を有した残基については、「A」で標識した立体配座を選択した。各モデラーの実行において、FcγRIIIbの5つの構造モデルが生成された。以下のパラメーター値またはオプションを用いた:1の「library schedule」、300の「max var iterations」、「refinel」の「md level」、3の「repeat optimization」、および1e6の「max molpdf」。これらの実行からの最良のモデルは図18に与えた配列アラインメントを有し、FcγRIIaの構造鋳型を用い、ここで、残基10、21、33、57、60、61、65および89は「A」立体配座における側鎖を有した。「最良」モデルを判断する基準は該モデラー目的関数の最小値(または−1.0×ln(分子確率密度関数=Mpdf))、モデルに対する「well−behaved」PROSAII(M.Sippl,Proteins,vol.17,355−362(1993))残基エネルギープロット(例えば、配列を通じて負の残基エネルギースコア)、および「well−behaved」PROFILES−3D(J.U.Bowieら,Science,vol.253,164−170(1991))局所3D−1D適合性スコアプロット(例えば、配列を通じて正のプロットスコア)を含んだ。
【0174】
次に、前記で選択した配列アラインメントおよび鋳型を用い、および前記でリストしたパラメーター値およびオプションを用い、モデラーを用いてFcγRIIIbの20の異なる構造モデルを得た。次いで、最小の−ln(Mpdf)値(すなわち933.3)を持つモデルをFcγRIIIbモノマーの最終構造モデルとして選択し、対応する重(非水素)原子デカルト座標を表5に表す。この構造はプログラムPROSAII、PROFILES−3D、およびPROCHECK(R.M.Laskowskiら,J.Appl.Cryst.vol.26,283−291(1993))で有効化された。
【0175】
ここでは、FcγRIIaの結晶学的座標につき記載したものと同様にして、表5における座標によって表されたFcγRIIIbモノマーの三次元構造のモデルを薬物デザインのための基礎として用いることができる。
【0176】
本発明の種々の実施形態を詳細に記載してきたが、それらの実施形態の修飾および適合は当業者によりなされることは明白である。しかしながら、かかる修飾および適合は請求の範囲に記載した本発明の範囲内にあることははっきりと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は精製プロセスの間のPsFcγRIIa蛋白質のSDS−PAGE分析のスキャンイメージである。
【図2】
図2は精製したPsFcγRIIa蛋白質の二次元NEPHGE分析のスキャンイメージである。
【図3】
図3はヒト免疫グロブリンGの異なるアイソタイプに結合する精製PsFcγRIIa蛋白質のラングミュアプロットを示す。
【図4】
図4はPFcγRIIaのダイマーのグラフを示す。
【図5】
図5はFcγRIIaドメイン1および2におけるベーターシートの位置を示し、FcγRIIの同形体のアミノ酸配列を比較する。
【図6】
図6は図4に示したFcγRIIa構造の立体図を示す。
【図7】
図7はFcγRIIaのIgGへの結合に関与するアミノ酸の位置を示す。
【図8】
図8は関係するアミノ酸の位置および側鎖を示すIgG結合領域の拡大図を示す。
【図9】
図9はアラニンに突然変異した場合にFcγRIIaに対するIgG結合が改良するアミノ酸を示すIgG結合領域の拡大図を示す。
【図10】
図10はダイマーインターフェースに寄与する1つのFcγRIIaモノマーの領域の拡大図を示す。
【図11】
図11はFcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列とFcγRI、FcγRIIIbおよびFcεRI蛋白質のアミノ酸配列との比較を示す。
【図12】
図12はFcγRIIa、FcγRI、FcγRIIIbおよびFcεRI蛋白質によって共有される構造特徴の比較を示す。
【図13】
図13はFcγRIIIaおよびFcεRIのアミノ酸配列の配列アラインメントを示す。
【図14】
図14はFcεRIモノマーの構造のワーム表示を示すスキャンイメージである。
【図15】
図15はFcεRIダイマーの構造のワーム表示を示すスキャンイメージである。
【図16】
図16はFcεRIダイマーモデルの分子表面表示を示すスキャンイメージである。
【図17】
図17は薬物デザインのためのFcR構造における標的部位の模式図である。
【図18】
図18はFcγRIIaおよびFcγRIIIbのアミノ酸配列の配列アラインメントを示す。
Claims (81)
- Fcレセプター(FcR)蛋白質のモデルであって、前記モデルが表1の原子座標に実質的に一致する三次元構造を表すモデル。
- 前記構造が表1によって表された原子座標およびB値に実質的に一致する請求項1のモデル。
- 前記構造がモノマーである請求項のモデル。
- 前記構造がダイマーである請求項1のモデル。
- 前記構造が表2、表3、表4および表5よりなる群から選択される表の原子座標に実質的に一致する請求項1のモデル。
- 前記構造の少なくとも約50%が前記構造の各ドメイン中の二次構造要素における主鎖原子について約1.5オングストローム未満の平均二乗平均平方根偏差(RMSD)を有する請求項1のモデル。
- 前記構造と前記原子座標を含む構造との間に共通するアミノ酸側鎖の少なくとも約50%が約1.5オングストローム未満の平均二乗平均平方根偏差(RMSD)を有する請求項1のモデル。
- 前記FcR蛋白質が、配列番号3、配列番号10、配列番号11および配列番号12よりなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約25%で同一であるアミノ酸配列を含む請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質が、配列番号3、配列番号10、配列番号11および配列番号12よりなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約40%で同一であるアミノ酸配列を含む請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質が、配列番号3、配列番号10、配列番号11および配列番号12よりなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約60%で同一であるアミノ酸配列を含む請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質が、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、前記アミノ酸配列のいずれかの突然変異体、および前記アミノ酸配列のいずれかの対立遺伝子変異体よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質が、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13よりなる群から選択されるアミノ酸;配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13の突然変異体;および配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13の対立遺伝子変異体よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含む請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質が、FcγRI蛋白質、FcγRIIa蛋白質、FcγRIIb蛋白質、FcγRIIc蛋白質、FcγRIII蛋白質、FcεRI蛋白質、FcαRI蛋白質および前記FcR蛋白質のいずれかの構造相同体よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質が、FcγRI蛋白質、FcγRIIa蛋白質、FcγRIIb蛋白質、FcγRIIc蛋白質、FcγRIII蛋白質、FcεRI蛋白質およびFcγRI蛋白質よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質がFcγRIIa蛋白質モノマー、FcγRIIa蛋白質ダイマーおよび前記FcγRIIa蛋白質の構造相同体よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質がFcεRI蛋白質ダイマー、FcεRI蛋白質モノマーおよび前記FcεRI蛋白質の構造相同体よりなる群から選択される請求項1記載モデル。
- 前記FcR蛋白質がFcγRI蛋白質ダイマー、FcγRI蛋白質モノマーおよび前記FcγRI蛋白質の構造類似体よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質がFcγRIIb蛋白質ダイマー、FcγRIIb蛋白質モノマーおよび前記FcγRIIb蛋白質の構造類似体よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質がFcγRIIc蛋白質ダイマー、FcγRIIc蛋白質モノマーおよび前記FcγRIIc蛋白質の構造類似体よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質がFcγRIIIb蛋白質ダイマー、FcγRIIIb蛋白質モノマーおよび前記FcγRIIIb蛋白質の構造類似体よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記FcR蛋白質がFcαRI蛋白質ダイマー、FcαRI蛋白質モノマーおよび前記FcαRI蛋白質の構造類似体よりなる群から選択される請求項1記載のモデル。
- 前記原子座標が:
(a)結晶性形態のFcγRIIa蛋白質を提供することと;
(b)前記結晶性FcγRIIa蛋白質の電子密度マップを生成させることと;および、
(c)前記電子密度マップを分析して前記原子座標を生じることとを具備する方法によって得られる請求項1記載のモデル。 - 前記結晶性FcγRIIa蛋白質が、FcγRIIa蛋白質と酢酸塩緩衝液および硫酸塩緩衝液よりなる群から選択される母液緩衝液と合わせ、および結晶形成を誘導して前記結晶性FcγRIIa蛋白質を生じさせる方法によって生成される請求項22記載のモデル。
- 前記酢酸塩緩衝液が約200mMの酢酸アンモニウム、約100mMのクエン酸ナトリウムおよび約30%のPEG4000を含み、前記緩衝液が約5.6のpHを有する請求項23記載のモデル。
- 前記硫酸塩緩衝液が約0.1MのHEPESおよび約1.5Mの硫酸リチウムを含み、前記緩衝液が約7.5のpHを有する請求項23記載のモデル。
- 電子密度マップを生じさせる前記工程がX線回折によって前記結晶性FcγRIIa蛋白質を分析することを具備する請求項22記載のモデル。
- 前記結晶性FcγRIIa蛋白質が前記X線回折に先立ってジ−γ−ヨードビス{エチレンジアミン}ジ白金(II)硝酸塩において誘導体化される請求項22記載のモデル。
- 前記結晶性FcγRIIa蛋白質が前記X線回折に先立って約5mMのジ−γ−ヨードビス[エチレンジアミン]ジ白金(II)硝酸塩において誘導体化される請求項22記載のモデル。
- 前記モデルが前記三次元構造の三次元座標の組で符号化されたコンピュータリーダブル媒体によって生成されたコンピュータイメージである[ここで、グラフィックディスプレイソフトウェアプログラムを用い、前記三次元座標が、三次元イメージとして前記電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で可視化できる電子ファイルを作成する]請求項1記載のモデル。
- a.Fc受容体(FcR)蛋白質のモデルを提供することと[ここで、前記モデルは表1の原子座標に対して実質的に一致する三次元構造を表す];
b.前記モデルを用いて化合物を設計することと;および、
c.前記化合物を化学的に合成することと
具備するコンピュータに援助された生物活性化合物の構造ベースの薬物デザイン方法。 - 前記方法が、さらに:
d.前記合成された化合物の生物活性を評価することを具備する請求項30に記載の方法。 - 前記三次元構造が表1にリストされた原子座標を含む請求項30に記載の方法。
- 前記三次元構造がダイマーである請求項30に記載の方法。
- 前記三次元構造が表2、表3、表4および表5よりなる群から選択される表にリストされた原子座標を含む請求項30記載の方法。
- 表1にリストされた該原子座が、前記イメージの電子ファイルを生じさせためにグラフィックディスプレイソフトウェアプログラムを使用し、および三次元イメージとしての前記電子ファイルを表すことができるコンピュータにおいて前記電子ファイルを可視化するコンピュータにおいて分析されるときに生じるコンピュータイメージを、前記モデルが具備する請求項30記載の方法。
- 設計の前記工程が、化合物の1以上のデーターベースをコンピュータスクリーニングすることを含み、ここにおいて、前記化合物の三次元構造が既知である請求項30記載の方法。
- さらに、前記スクリーニング工程によって同定された化合物をコンピュータによる前記モデルと相互作用させることを具備する請求項36記載の方法。
- 前記設計の工程が指向性薬物デザインを具備する請求項30記載の方法。
- 前記設計の工程がランダム薬物デザインを具備する請求項30記載の方法。
- 前記設計の工程がグリッドベースの薬物デザインを具備する請求項30記載の方法。
- 前記設計の工程が、前記FcR蛋白質の前記三次元構造を模倣することを予測される化合物を選択することを具備する請求項30記載の方法。
- 前記設計の工程が、前記FcR蛋白質の前記三次元構造に結合することが予測される化合物を選択することを具備する請求項30記載の方法。
- 前記生物活性が、前記FcR蛋白質の免疫グロブリン蛋白質への結合を阻害すること、前記FcR蛋白質に対して結合すること、前記FcR蛋白質に結合することができる免疫グロブリンに対して結合すること、前記免疫グロブリン蛋白質の貪食作用を阻害すること、前記FcR蛋白質の二量体化を阻害すること、前記FcR蛋白質を介した細胞シグナル変換を刺激すること、および前記FcR蛋白質を介したサイトカインの放出を刺激することとよりなる群から選択される請求項30記載の方法。
- 前記FcR蛋白質がFcγRIIaであり、並びに前記生物活性が、FcγRIIa蛋白質のIgGへの結合を阻害すること、IgGの貪食作用を阻害すること、FcγRIIa蛋白質の二量体化を阻害すること、FcγRIIa蛋白質を介した細胞シグナル変換を刺激すること、IL−6およびIL−12よりなる群から選択されるサイトカインの放出を刺激することからなる群から選択される請求項30記載の方法。
- 前記FcR蛋白質がFcγRIIIbであり、並びに前記生物活性が、FcγRIIIb蛋白質のIgGへの結合を阻害することと、IgGの貪食作用を阻害することと、FcγRIIIb蛋白質の二量体化を阻害することと、FcγRIIIb蛋白質を介した細胞シグナル変換を刺激することと、IL−6およびIL−12よりなる群から選択されるサイトカインの放出を刺激することとよりなる群から選択される請求項30記載の方法。
- 前記FcR蛋白質がFcεRIであり、更に前記生物活性がFcεRI蛋白質のIgEへの結合を阻害することと、IgEの貪食作用を阻害することと、FcεRI蛋白質の二量体化を阻害することと、FcεRI蛋白質を介した細胞シグナル変換を刺激することと、肥満細胞によるヒスタミンおよびセロトニンの放出を刺激することと、並びに肥満細胞によるヒスタミンおよびセロトニンの放出を阻害することとよりなる群から選択される請求項30記載の方法。
- Fc受容体(FcR)蛋白質のモデルを提供することと[ここで、前記モデルは、表1によって表される原子座標;表2によって表される原子座標;表3によって表される原子座標;表4によって表される原子座標;および表5によって表される原子座標よりなる群から選択される原子座標に対して実質的に一致する三次元構造を表す];
b.前記モデルを用いて化合物を設計することと;および、
c.前記化合物を化学的に合成することと
を具備するコンピュータに援助された生物活性化合物の構造ベースの薬物デザイン方法。 - a.FcγRIIa、FcγRIIIbおよびFcεRIよりなる群から選択されるFc受容体(FcR)蛋白質の三次元構造のモデルを提供することと;
b.前記モデルを用いて化合物を設計することと;および、
c.前記化合物を化学的に合成することと
を具備するコンピュータに援助された生物活性化合物の構造ベースの薬物デザインの方法。 - FcR蛋白質の三次元構造の三次元コンピュータイメージ。
- 前記構造が、表1にリストされた三次元座標;表2にリストされた三次元座標;表3にリストされた三次元座標;表4にリストされた三次元座標;および表5にリストされた三次元座標よりなる群から選択される三次元座標に実質的に一致する請求項49記載のイメージ。
- 前記イメージの電子ファイルを作成するためにグラフィックディスプレイソフトウェアプログラムを用い、且つ三次元イメージとして電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で前記電子ファイルを可視化するコンピュータ上で前記三次元座標を含む三次元座標の組を分析するときに、前記コンピュータイメージが生じる請求項49記載のイメージ。
- 前記三次元コンピュータイメージが図4、図6、図7、図8、図9、図10、図14、図15および図16よりなる群から選択される二次元イメージによって表される請求項49記載のイメージ。
- 前記三次元コンピュータイメージを用いて治療化合物を設計する請求項49記載のイメージ。
- 表1の原子座標に実質的に一致する三次元構造を有するFcR蛋白質の三次元座標の組で符号化されたコンピュータリーダブル媒体であって、グラフィックディスプレイソフトウェアプログラムを用いて、前記三次元座標が三次元イメージとして前記電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で可視化することができる電子ファイルを作成するコンピュータリーダブル媒体。
- 表1に表された三次元座標、表2に表された三次元座標、表3に表された三次元座標、表4に表された三次元座標および表5に表された三次元座標よりなる群から選択される三次元座標の組で符号化されたコンピュータリーダブル媒体であって、グラフィックディスプレイソフトウェアプログラムを用いて、前記三次元座標が三次元イメージとして前記電子ファイルを表すことができるコンピュータ上で可視化することができる電子ファイルを作成するコンピュータリーダブル媒体。
- FcγRI蛋白質、FcγRIIb蛋白質、FcγRIIc蛋白質、FcγRIIIb蛋白質、FcεRI蛋白質およびFcαRI蛋白質よりなる群から選択されるFcR蛋白質の三次元構造のモデルであって、
前記モデルが、
(a)FcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列および前記FcR蛋白質のアミノ酸配列を提供することと;
(b)前記FcγRIIaアミノ酸配列と前記FcR蛋白質アミノ酸配列との間で共有された構造的に保存された領域を同定することと;および、
(c)表1に表された原子座標に実質的に一致する前記FcγRIIa蛋白質の三次元構造を用いて、前記FcR蛋白質の前記構造的に保存された領域を三次元構造に割り当てることによって、前記FcR蛋白質について原子座標を決定して、前記FcR蛋白質アミノ酸配列の前記三次元構造のモデルを誘導することと
を具備する方法によって産生された三次元構造のモデル。 - 請求項56に記載のモデルであって、前記FcγRI蛋白質アミノ配列が配列番号7を含み;前記FcγRIIb蛋白質アミノ酸配列が配列番号5を含み;前記FcγRIIc蛋白質アミノ酸配列が配列番号6を含み;前記FcγRIIIb蛋白質アミノ酸配列が配列番号8を含み;前記FcεRI蛋白質アミノ酸配列が配列番号9を含み;および、前記FcαRI蛋白質アミノ酸配列が配列番号13を含むモデル。
- 動物に投与すると、IgG媒介組織障害を減少する治療用組成物であって、前記治療用組成物はFcγ受容体(FcγR)蛋白質の活性を阻害する阻害性化合物を含み、前記阻害性化合物は:
(a)FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIcおよびFcγRIIIbよりなる群から選択されるFcγR蛋白質の三次元構造を提供することと[ここで、前記FcγR蛋白質の前記三次元構造は表1によって表された原子座標に実質的に一致する];
(b)前記FcγR蛋白質の前記三次元構造を用いて、FcγR蛋白質のIgGへの結合を阻害する化合物、FcγR蛋白質の三次元構造を実質的に模倣する化合物およびFcγR蛋白質を介した細胞信号変換を刺激する分子とのFcγR蛋白質の結合を阻害する化合物よりなる群から選択される化合物を設計することと;
(c)前記化合物を化学的に合成することと;および
(d)IgG媒介組織障害を減少させる前記合成された化合物の能力を評価することと
を具備する方法によって同定される前記治療用組成物。 - 前記IgG媒介組織障害がIgG媒介過敏症、炎症細胞のIgG媒介漸増および炎症モジュレーターのIgG媒介放出よりなる群から選択される生物学的応答に由来する請求項58記載の組成物。
- 前記構造が表1に表される原子座標に実質的に一致する請求項58記載の組成物。
- 前記化合物が無機化合物および有機化合物よりなる群から選択される請求項58記載の組成物。
- 前記化合物がオリゴヌクレオチド、ペプチド、ペプチドミメティック化合物および小有機分子よりなる群から選択される請求項58記載の組成物。
- 前記化合物が前記FcγR蛋白質のアナログ、前記FcγR蛋白質の基質アナログおよび前記FcγR蛋白質のペプチドミメティック化合物よりなる群から選択される請求項58記載の組成物。
- 前記組成物がさらに賦形剤、アジュバントおよび担体よりなる群から選択される成分を含む請求項58記載の組成物。
- 動物に投与すると、IgG媒介応答を増強する治療用組成物であって、前記治療用組成物は、Fcγ受容体(FcγR)蛋白質の活性を刺激する刺激性化合物を含み、前記刺激性化合物は:
(a)FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIcおよびFcγRIIIdよりなる群から選択されるFcγR蛋白質の三次元構造を提供することと[ここで、前記FcγR蛋白質の前記三次元構造は表1によって表される原子座標に実質的に一致する];
(b)前記FcγR蛋白質の前記三次元構造を用いて、FcγR蛋白質のIgGへの結合を刺激する化合物、FcγR蛋白質の三次元構造を実質的に模倣する化合物、およびFcγR蛋白質を介した細胞シグナル変換を刺激する分子とFcγR蛋白質との結合を刺激する化合物よりなる群から選択される化合物を設計することと;
(c)前記化合物を化学的に合成することと;および
(d)IgG媒介応答を増強する前記合成された化合物の能力を評価することと
を具備する方法によって同定される治療用組成物。 - 動物に投与すると、IgE媒介応答を減少させる治療用組成物であって、前記治療用組成物は、Fcε受容体I(FcεRI)蛋白質の活性を阻害する阻害性化合物を含み、前記阻害性化合物は:
(a)FcεRI蛋白質の三次元構造を提供することと[ここで、前記FcεRI蛋白質の前記三次元構造は、表1によって表される原子座標、表2によって表される原子座標、表3によって表される原子座標、表4によって表される原子座標および表5によって表される原子座標よりなる群から選択される原子座標に実質的に一致する];
(b)前記FcεRI蛋白質の前記三次元構造を用いて、FcεRI蛋白質のIgEへの結合を阻害する化合物、FcεRI蛋白質の三次元構造を実質的に模倣する化合物、およびFcεRI蛋白質を介した細胞シグナル変換を刺激する分子とFcεRI蛋白質との結合を阻害する化合物よりなる群から選択される化合物を設計することと;
(c)前記化合物を化学的に合成することと;および
(d)IgE媒介応答を減少する前記合成された化合物の能力を評価すること
を具備する方法によって同定される治療用組成物。 - 前記IgE媒介応答がIgE媒介過敏症、炎症細胞のIgE媒介漸増および炎症モジュレーターのIgE媒介放出からなる群から選択される生物学的応答に由来する請求項66記載の組成物。
- 前記構造が表3に表される原子座標を含む請求項66記載の組成物。
- 前記構造が表4に表される原子座標を含む請求項66記載の組成物。
- 前記化合物が無機化合物および有機化合物よりなる群から選択される請求項66記載の組成物。
- 前記化合物がオリゴヌクレオチド、ペプチド、ペプチドミメティック化合物および小有機分子よりなる群から選択される請求項66記載の組成物。
- 前記化合物が前記FcεR蛋白質のアナログ、前記FcεRI蛋白質の基質アナログおよび前記FcεRI蛋白質のペプチドミメティック化合物よりなる群から選択される請求項66記載の組成物。
- 前記組成物がさらに賦形剤、アジュバントおよび担体よりなる群から選択される成分を含む請求項66記載の組成物。
- 動物に投与すると、IgE媒介応答を増強する治療用組成物であって、前記治療用組成物が、Fcε受容体I(FcεRI)蛋白質の活性を刺激する刺激性化合物を含み、前記刺激性化合物は:
(a)FcεRI蛋白質の三次元構造を提供することと[ここで、前記FcεRI蛋白質の前記三次元構造は、表1によって表される原子座標、表2によって表される原子座標、表3によって表される原子座標、表4によって表される原子座標および表5によって表される原子座標よりなる群から選択される原子座標に実質的に一致する];
(b)前記FcεRI蛋白質の前記三次元構造を用いて、FcεRI蛋白質のIgEへの結合を刺激する化合物、FcεRI蛋白質の三次元構造を実質的に模倣する化合物およびFcεR蛋白質を介した細胞シグナル変換を刺激する分子とFcεRI蛋白質との結合を刺激する化合物よりなる群から選択される化合物を設計することと;
(c)前記化合物を化学的に合成することと;および
(d)IgE媒介応答を増強する前記合成された化合物の能力を評価することと
を具備する方法によって同定される治療用組成物。 - FcR蛋白質の三次元構造を決定するための方法であって、前記方法が、
(a)FcγRI蛋白質、FcγRIIb蛋白質、FcγRIIc蛋白質、FcγRIIIb蛋白質、FcεRI蛋白質およびFcαRI蛋白質よりなる群から選択されるFcR蛋白質のアミノ酸配列を提供することと[ここで、前記FcR蛋白質の三次元構造は公知ではない];
(b)折り畳み認識によって三次元立体配座における前記アミノ酸配列の折り畳みのパターンを分析することと;および
(c)前記FcR蛋白質アミノ酸配列の折り畳みの前記パターンを、FcγRIIa蛋白質の三次元構造と比較し、前記FcR蛋白質の三次元構造を決定することと[ここで、前記FcγRIIa蛋白質の前記三次元構造は表1に表した原子座標に実質的に一致する]、
を具備する方法。 - FcR蛋白質の三次元構造を誘導するための方法であって、前記方法が、
(a)FcγRIIa蛋白質のアミノ酸配列およびFcR蛋白質のアミノ配列を提供する工程と;
(b)前記FcγRIIaアミノ酸配列と前記FcR蛋白質のアミノ配列との間で共有された構造的に保存された領域を同定する工程と;
(c)表1に表された原子座標に実質的に一致する原子座標に基づいてFcγRIIa蛋白質の三次元構造を用いて、前記FcR蛋白質の前記構造的に保存された領域を三次元構造に対して割り当てることによって、前記標的構造について原子座標を決定し、前記FcR蛋白質アミノ酸配列の三次元構造のモデルを誘導する工程と
を具備する方法。 - さらに、回転異性体のライブラリーを用いて立体的に許容される位置を決定することによって前記FcR蛋白質の側鎖につき原子座標を割り当てることを含む請求項76記載の方法。
- 結晶化されたFcR蛋白質の三次元構造を誘導する方法であって、前記方法が、
(a)結晶化されたFcR蛋白質のパターソン関数と結晶性FcγRIIa蛋白質のパターソン機能と比較して前記結晶化されたFcR蛋白質の電子密度マップを作成する工程と;および、
(b)前記電子密度マップを分析して前記結晶化されたFcR蛋白質の前記三次元構造を生じさせる工程と
を具備する方法。 - さらに、前記結晶化されたFcR蛋白質の前記三次元構造を電子的に刺激して前記結晶化されたFcR蛋白質の前記三次元構造のコンピュータイメージを誘導する工程を具備する請求項78記載の方法。
- さらに、前記結晶性FcγRIIa蛋白質のパターソン関数上に前記結晶化されたFcR蛋白質の前記パターソン関数を回転させて、前記結晶化されたFcR蛋白質の結晶において前記結晶化されたFcR蛋白質の正しい配位を決定し、前記結晶化されたFcR蛋白質の初期相を同定する工程を具備する請求項78記載の方法。
- 結晶性形態のFcγRIIa蛋白質を含む組成物。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US7397298P | 1998-02-06 | 1998-02-06 | |
US9999498P | 1998-09-11 | 1998-09-11 | |
PCT/IB1999/000367 WO1999040117A1 (en) | 1998-02-06 | 1999-02-04 | THREE-DIMENSIONAL STRUCTURES AND MODELS OF Fc RECEPTORS AND USES THEREOF |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004510681A true JP2004510681A (ja) | 2004-04-08 |
JP2004510681A5 JP2004510681A5 (ja) | 2006-05-25 |
Family
ID=26755120
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000530545A Pending JP2004510681A (ja) | 1998-02-06 | 1999-02-04 | Fc受容体の三次元構造およびモデル並びにその使用 |
Country Status (16)
Country | Link |
---|---|
US (2) | US6675105B2 (ja) |
EP (1) | EP1053255A4 (ja) |
JP (1) | JP2004510681A (ja) |
KR (1) | KR20010024899A (ja) |
CN (1) | CN1291198A (ja) |
AP (1) | AP2000001876A0 (ja) |
AU (1) | AU759378B2 (ja) |
BR (1) | BR9907964A (ja) |
CA (1) | CA2316860A1 (ja) |
EA (1) | EA200000746A1 (ja) |
IL (1) | IL137583A0 (ja) |
NO (1) | NO20003964L (ja) |
NZ (1) | NZ505914A (ja) |
PL (1) | PL342297A1 (ja) |
TR (1) | TR200002271T2 (ja) |
WO (1) | WO1999040117A1 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020528269A (ja) * | 2017-09-15 | 2020-09-24 | 国民大学校産学協力団Kookimin University Industry Academy Cooperation Foundation | Fcガンマ受容体変異体 |
Families Citing this family (49)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7553809B2 (en) | 1998-02-06 | 2009-06-30 | Ilexus Pty Limited | Fc receptor modulators and uses thereof |
JP2002524504A (ja) * | 1998-09-11 | 2002-08-06 | イレクサス・ピーティーワイ・リミテッド | Fc受容体調節剤およびそれの使用 |
CA2349410A1 (en) * | 1998-11-05 | 2000-05-11 | Heska Corporation | Crystallized form of fc epsilon receptor alpha chain, its 3-d model and uses thereof |
EP1006183A1 (en) | 1998-12-03 | 2000-06-07 | Max-Planck-Gesellschaft zur Förderung der Wissenschaften e.V. | Recombinant soluble Fc receptors |
US7912689B1 (en) | 1999-02-11 | 2011-03-22 | Cambridgesoft Corporation | Enhancing structure diagram generation through use of symmetry |
US7295931B1 (en) * | 1999-02-18 | 2007-11-13 | Cambridgesoft Corporation | Deriving fixed bond information |
US6850876B1 (en) * | 1999-05-04 | 2005-02-01 | Smithkline Beecham Corporation | Cell based binning methods and cell coverage system for molecule selection |
US6889145B1 (en) | 2000-03-15 | 2005-05-03 | Northwestern University | Three-dimensional model of a Fc region of an IgE antibody and uses thereof |
US7356419B1 (en) | 2000-05-05 | 2008-04-08 | Cambridgesoft Corporation | Deriving product information |
US7272509B1 (en) * | 2000-05-05 | 2007-09-18 | Cambridgesoft Corporation | Managing product information |
GB0029870D0 (en) * | 2000-07-14 | 2001-01-24 | Medical Res Council | Crystal structure (IV) |
IL144082A0 (en) * | 2000-07-14 | 2002-05-23 | Medical Res Council | Crystal structure of antibiotics bound to the 30s ribosome and its use |
EP1201681A1 (en) * | 2000-10-30 | 2002-05-02 | Millennium Pharmaceuticals, Inc. | "Fail" molecules and uses thereof |
CN1245215C (zh) | 2001-02-28 | 2006-03-15 | 四川省生物工程研究中心 | 重组高效复合干扰素用作乙型肝炎表面抗原和e抗原抑制剂 |
US7803982B2 (en) | 2001-04-20 | 2010-09-28 | The Mount Sinai School Of Medicine Of New York University | T1R3 transgenic animals, cells and related methods |
JP2005501519A (ja) * | 2001-04-20 | 2005-01-20 | マウント シナイ スクール オブ メディスン | 新規な味覚受容体t1r3 |
US20100056762A1 (en) | 2001-05-11 | 2010-03-04 | Old Lloyd J | Specific binding proteins and uses thereof |
DK2163256T3 (en) * | 2001-05-11 | 2015-12-07 | Ludwig Inst For Cancer Res Ltd | Specific binding proteins and use thereof |
DE10157290A1 (de) * | 2001-11-22 | 2003-06-05 | Max Planck Gesellschaft | Pharmazeutische Zusammensetzung enthaltend sFcRgamma IIb oder sFcRgamma III |
WO2003088125A2 (en) * | 2002-04-10 | 2003-10-23 | Transtech Pharma, Inc. | System and method for integrated computer-aided molecular discovery |
AU2002953533A0 (en) | 2002-12-24 | 2003-01-16 | Arthron Limited | Fc receptor modulating compounds and compositions |
EP2052713A3 (en) | 2003-01-13 | 2009-05-20 | Macrogenics, Inc. | Soluble FcgammaR fusion proteins and methods of use thereof |
EP1633861B1 (en) * | 2003-05-26 | 2009-11-04 | Biotie Therapies Corp. | Crystalline vap-1 and uses thereof |
US7585647B2 (en) | 2003-08-28 | 2009-09-08 | Guangwen Wei | Nucleic acid encoding recombinant interferon |
WO2005075512A1 (en) * | 2004-02-10 | 2005-08-18 | The Austin Research Institute | Crystal structures and models for fc receptors and uses thereof in the design or identification of fc receptor modulator compounds |
WO2006133486A1 (en) * | 2005-06-14 | 2006-12-21 | The Macfarlane Burnet Institute For Medical Research And Public Health Limited | CRYSTAL STRUCTURES AND MODELS FOR Fc RECEPTOR:Fc COMPLEXES AND USES THEREOF |
BRPI0807952A2 (pt) | 2007-02-20 | 2014-06-10 | Anaptysbio Inc | Sistemas de hipermutação somática |
WO2011140148A1 (en) * | 2010-05-03 | 2011-11-10 | Cambridgesoft Corporation | Method and apparatus for processing documents to identify chemical structures |
RU2641256C2 (ru) | 2011-06-30 | 2018-01-16 | Чугаи Сейяку Кабусики Кайся | Гетеродимеризованный полипептид |
US9977876B2 (en) | 2012-02-24 | 2018-05-22 | Perkinelmer Informatics, Inc. | Systems, methods, and apparatus for drawing chemical structures using touch and gestures |
WO2013187495A1 (ja) | 2012-06-14 | 2013-12-19 | 中外製薬株式会社 | 改変されたFc領域を含む抗原結合分子 |
TWI717591B (zh) | 2012-08-24 | 2021-02-01 | 日商中外製藥股份有限公司 | FcγRIIb特異性Fc區域變異體 |
US9535583B2 (en) | 2012-12-13 | 2017-01-03 | Perkinelmer Informatics, Inc. | Draw-ahead feature for chemical structure drawing applications |
WO2014104165A1 (ja) * | 2012-12-27 | 2014-07-03 | 中外製薬株式会社 | ヘテロ二量化ポリペプチド |
US8854361B1 (en) | 2013-03-13 | 2014-10-07 | Cambridgesoft Corporation | Visually augmenting a graphical rendering of a chemical structure representation or biological sequence representation with multi-dimensional information |
EP2973005A1 (en) | 2013-03-13 | 2016-01-20 | Perkinelmer Informatics, Inc. | Systems and methods for gesture-based sharing of data between separate electronic devices |
SG11201508170TA (en) | 2013-04-02 | 2015-11-27 | Chugai Pharmaceutical Co Ltd | Fc REGION VARIANT |
US9430127B2 (en) | 2013-05-08 | 2016-08-30 | Cambridgesoft Corporation | Systems and methods for providing feedback cues for touch screen interface interaction with chemical and biological structure drawing applications |
US9751294B2 (en) | 2013-05-09 | 2017-09-05 | Perkinelmer Informatics, Inc. | Systems and methods for translating three dimensional graphic molecular models to computer aided design format |
CA3041717A1 (en) | 2016-11-09 | 2018-05-17 | North Carolina State University | Treatment of allergic diseases with chimeric protein |
US10572545B2 (en) | 2017-03-03 | 2020-02-25 | Perkinelmer Informatics, Inc | Systems and methods for searching and indexing documents comprising chemical information |
KR101986252B1 (ko) * | 2017-09-15 | 2019-06-05 | 국민대학교 산학협력단 | Fc 감마 수용체 변이체 MG2A28 |
KR101987268B1 (ko) * | 2017-10-12 | 2019-06-10 | 국민대학교 산학협력단 | Fc 감마 수용체 변이체 MG2A45 |
KR101986250B1 (ko) * | 2017-09-15 | 2019-06-05 | 국민대학교 산학협력단 | Fc 감마 수용체 변이체 SH2A40 |
KR101987272B1 (ko) * | 2017-09-15 | 2019-06-10 | 국민대학교 산학협력단 | Fc 감마 수용체 변이체 MG2A28.1 |
KR101987279B1 (ko) * | 2017-10-12 | 2019-06-10 | 국민대학교 산학협력단 | Fc 감마 수용체 변이체 MG2A45.1 |
KR101987292B1 (ko) * | 2017-10-12 | 2019-06-10 | 국민대학교 산학협력단 | Fc 감마 수용체 변이체 MG2B45.1 |
WO2019183437A1 (en) * | 2018-03-23 | 2019-09-26 | North Carolina State University | Methods and compositions for antibody to high affinity receptor for ige |
CN115035947B (zh) * | 2022-06-10 | 2023-03-10 | 水木未来(北京)科技有限公司 | 蛋白质结构建模方法及装置、电子设备和存储介质 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5858981A (en) * | 1993-09-30 | 1999-01-12 | University Of Pennsylvania | Method of inhibiting phagocytosis |
JP2002524504A (ja) * | 1998-09-11 | 2002-08-06 | イレクサス・ピーティーワイ・リミテッド | Fc受容体調節剤およびそれの使用 |
AU2001278771A1 (en) * | 2000-08-22 | 2002-03-04 | Ono Pharmaceutical Co. Ltd. | Carboxylic acid derivatives, process for producing the same and drugs containingthe same as the active ingredient |
-
1999
- 1999-02-04 CA CA002316860A patent/CA2316860A1/en not_active Abandoned
- 1999-02-04 NZ NZ505914A patent/NZ505914A/xx unknown
- 1999-02-04 WO PCT/IB1999/000367 patent/WO1999040117A1/en not_active Application Discontinuation
- 1999-02-04 EP EP99903878A patent/EP1053255A4/en not_active Withdrawn
- 1999-02-04 EA EA200000746A patent/EA200000746A1/ru unknown
- 1999-02-04 JP JP2000530545A patent/JP2004510681A/ja active Pending
- 1999-02-04 TR TR2000/02271T patent/TR200002271T2/xx unknown
- 1999-02-04 CN CN99802768A patent/CN1291198A/zh active Pending
- 1999-02-04 KR KR1020007008582A patent/KR20010024899A/ko not_active Application Discontinuation
- 1999-02-04 BR BR9907964-0A patent/BR9907964A/pt not_active IP Right Cessation
- 1999-02-04 PL PL99342297A patent/PL342297A1/xx not_active Application Discontinuation
- 1999-02-04 AP APAP/P/2000/001876A patent/AP2000001876A0/en unknown
- 1999-02-04 AU AU24382/99A patent/AU759378B2/en not_active Ceased
- 1999-02-04 IL IL13758399A patent/IL137583A0/xx unknown
- 1999-02-05 US US09/245,764 patent/US6675105B2/en not_active Expired - Fee Related
-
2000
- 2000-08-04 NO NO20003964A patent/NO20003964L/no not_active Application Discontinuation
-
2003
- 2003-10-15 US US10/687,109 patent/US20040054480A1/en not_active Abandoned
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020528269A (ja) * | 2017-09-15 | 2020-09-24 | 国民大学校産学協力団Kookimin University Industry Academy Cooperation Foundation | Fcガンマ受容体変異体 |
JP7055434B2 (ja) | 2017-09-15 | 2022-04-18 | 国民大学校産学協力団 | Fcガンマ受容体変異体 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
EP1053255A1 (en) | 2000-11-22 |
US20020107359A1 (en) | 2002-08-08 |
WO1999040117A1 (en) | 1999-08-12 |
US20040054480A1 (en) | 2004-03-18 |
EA200000746A1 (ru) | 2001-04-23 |
IL137583A0 (en) | 2001-07-24 |
TR200002271T2 (tr) | 2000-11-21 |
CA2316860A1 (en) | 1999-08-12 |
CN1291198A (zh) | 2001-04-11 |
KR20010024899A (ko) | 2001-03-26 |
BR9907964A (pt) | 2000-10-17 |
EP1053255A4 (en) | 2003-01-02 |
PL342297A1 (en) | 2001-06-04 |
NO20003964L (no) | 2000-10-04 |
US6675105B2 (en) | 2004-01-06 |
AU2438299A (en) | 1999-08-23 |
AU759378B2 (en) | 2003-04-10 |
AP2000001876A0 (en) | 2000-09-30 |
NZ505914A (en) | 2004-03-26 |
NO20003964D0 (no) | 2000-08-04 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2004510681A (ja) | Fc受容体の三次元構造およびモデル並びにその使用 | |
Bodian et al. | Crystal structure of the extracellular region of the human cell adhesion molecule CD2 at 2.5 Å resolution | |
US8465737B2 (en) | Three-dimensional structure of complement receptor type 2 and uses thereof | |
US8945561B2 (en) | Receptor modulators | |
Burmeister et al. | Crystal structure at 2.2 Å resolution of the MHC-related neonatal Fc receptor | |
US6184354B1 (en) | Soluble extracellular domain of human M-CSF receptor | |
Rossjohn et al. | Structure of the activation domain of the GM-CSF/IL-3/IL-5 receptor common β-chain bound to an antagonist | |
CN102648002A (zh) | Il-17家族细胞因子组合物及用途 | |
KR20070047327A (ko) | 항-cd154 항체 | |
US20060241285A1 (en) | Crystals and structure of Synagis Fab | |
US20040002586A1 (en) | Crystal structure of interleukin-22 and uses thereof | |
JPH09502725A (ja) | Il8阻害剤 | |
Layton et al. | Identification of a ligand-binding site on the granulocyte colony-stimulating factor receptor by molecular modeling and mutagenesis | |
US20180141994A1 (en) | Toll-like receptor 2 binding epitope and binding member thereto | |
US7553809B2 (en) | Fc receptor modulators and uses thereof | |
US20120094935A1 (en) | Methods for creating or identifying compounds that bind tumor necrosis factor alpha | |
Shore et al. | The crystal structure of CD8 in complex with YTS156. 7.7 Fab and interaction with other CD8 antibodies define the binding mode of CD8 αβ to MHC class I | |
WO2009117640A2 (en) | Antibodies against interleukin-10 like cytokines and uses therefor | |
CN112079922B (zh) | 抗人p40蛋白域抗体及其用途 | |
Bjorkman et al. | Determination of the Crystal Structure of Human Zn-Alpha 2-Gylcoprotein, A Protein Implicated in Breast Cancer | |
US20070043208A1 (en) | Crystal structure of erythrocyte binding domain of EBA-175 | |
Chirino | DKG QÜÄL1BT INSPECTED 1 2ÖÖ1Ö220 (\2ft | |
MXPA00007545A (en) | THREE-DIMENSIONAL STRUCTURES AND MODELS OF Fc RECEPTORS AND USES THEREOF |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060206 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060206 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060329 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090407 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20091020 |