JP2004508326A - 心臓疾患治療用のcarp阻害剤の使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ヒトCARPタンパク質またはCARP DNA/mRNAを阻害すると、心臓病、特にヒト心不全をうまく治療するという新しい発見に関する。したがって、本発明は、心臓CARPの活性に影響を及ぼす、好ましくは低分子量の物質を含有する医薬組成物に関する。さらに、本発明は、CARP阻害化合物を使用した心不全の治療方法、これらの阻害剤をスクリーニングする方法および診断手段としてのCARPの使用に関する。
Description
【0001】
本発明は、ヒトCARPタンパク質またはCARP DNA/RNAを阻害することにより、心臓病、特にヒト心不全をうまく治療するという新しい発見に関する。したがって、本発明は、心臓CARPの活性に影響を及ぼす、好ましくは低分子量の物質を含有する医薬組成物に関する。さらに、本発明は、CARP阻害化合物を使用した心不全の治療方法、これらの阻害剤をスクリーニングする方法および診断手段としてのCARPの使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
主に心筋細胞に発現する核蛋白質であるヒトCARP(心臓限定アンキリンリピート蛋白質(cardiac−restricted ankyrin repeat protein))は、ヒト内皮細胞をインターロイキン−1αまたはTNF−αで誘導すると強くアップレギュレートされるmRNAとして、1995年にChu、W.等によって最初に検出された(The Journal of Biological Chemistry 270、10236〜10245)。この著者らは、CARPは分子量36000の核局在性蛋白質であり、この蛋白質はDNAに結合して転写因子として作用できることを示した。CARPは、起源の異なる様々な細胞(上皮細胞、膀胱癌細胞、繊維芽細胞、メラノーマ細胞、および造血系由来の細胞)では発現しないことがわかった。しかし、繊維芽細胞では、細胞をTNF−αで処理することによってCARP mRNAの発現も誘導される。
【0003】
のち、Zou等は、1997年に心臓特異的転写因子を研究中に、ラットのCARP相同体を同定した(Development 124、793−804)。彼らは既に、遺伝子(HF−1a/MEF−2)を心室特異的に発現させるプロモーター要素およびこの要素に結合する遍在性転写因子、YB−1を同定している。彼らは、酵母のツーハイブリッドスクリーニングでYB−1を餌(bait)として使用してCARPを発見した。その後、CARP mRNAの発現は非常に限定されており、心臓において最も際立っていることを示した。多くの実験で、CARPおよびYB−1はin vivoでは物理的に二量体を形成することが示された。さらに、CARP自身はNKx2.5ホメオボックス遺伝子によって調節されることがわかった。心筋細胞並びに非心筋細胞において、HF−1a要素に制御されている遺伝子をCARPがダウンレギュレートすることがコトランスフェクション実験によって示された(Ross,R.S.et al.、1996、Development 122、1799−1809)。Jeyaseelan等は、心臓由来および心臓以外由来の細胞におけるANFプロモーターおよびcTNCプロモーターによる転写はCARPによってダウンレギュレートできることを1997年に発見した(The Journal of Biological Chemistry 272、22800−22808)。ANFプロモーターに関して、このプロモーターによる転写を強く誘導するNkX2.5遺伝子のアンタゴニストしてCARPは作用することが示された。
【0004】
Baumeister等は、除神経によって骨格筋において強く誘導される蛋白質としてCARPを発見した(The Journal of Cell Biology 139、1231−1242)。さらに彼らは、CARPがMLP欠損(筋肉LIM蛋白質)マウスの心臓でアップレギュレートされていることを示した。これらのマウスは拡張型心筋症および肥大を示す。彼らは、CARPが極初期遺伝子ではなかろうかと推測した。ラット、マウスおよびヒトのmRNAは3’UTRにATTTA分解モチーフを有し、この蛋白質には迅速に分解する蛋白質の特徴であるPEST様配列がある。しかし、除神経された筋肉では、CARP発現は少なくとも7日間(最長試験期間)増加する。
【0005】
CARPはドキソルビシンで処理した動物(ウサギおよびラット、Aihara,Y.et al.、1999、Biochimica et Biophysica Acta 1447、318〜324)の心臓ではアップレギュレートされているので、CARPがこの病理において役割を果たしていることがわかった。Kuo等は1999年に心臓肥大モデルマウス(大動脈弓狭窄)を使用して、CARP mRNAが術後4日目および7日目に強く誘導されることを発見した(Development 126、4223〜4234)。彼らはまた、ANF mRNAもまた上昇することを示した。この発見は、CARPがANFプロモーターによる転写をダウンレギュレートすることを発見したJeyaseelan等(前記引用文献中)の発見と多少矛盾している。これは、(i)CARPおよびANFの転写は器官の異なる細胞で上昇することによるか、または(ii)Jeyaseelan等が使用したANFプロモーター(700bp)がANFmRNA発現を制御する遺伝子要素のすべては含有していなかったことによるか、または(iii)CARPによるANF mRNA発現の阻害がさらに未知の機構によって解除されることによる可能性がある。
【0006】
(発明の一般的説明)
本発明は、いくつかの心臓病理モデルにおいてCARP mRNAの発現が上昇しており、このことはヒトの病理にも適用されるという発見を証明する実験を開示する。CARP mRNAに加えて、CARP蛋白質もまた、健康な対照心臓と比較してアップレギュレートされていることがまず示された。したがって、CARPがヒト心臓の病理学的症状において役割を担っていることははっきりしている。CARP発現の上昇が疾患の原因であるか、または病理学的状態に応答した細胞の適応過程であるかについてはさらに証明しなければならない。
【0007】
ヒトの心不全並びに動物の心不全および心臓肥大モデルでは、たとえば筋原繊維蛋白質の胚型が発現しており、成人型と置換しているという報告が数多くなされている。CARPは、cTNTのような収縮蛋白質の胎児型から成人型への転換を制御する役割を果たしていることが知られている。CARPは成人型の発現を阻害する転写抑制因子である。さらに、CARPは、心不全後期の特徴でもあるANFの発現を阻害することが報告されている。
【0008】
繊維芽細胞におけるCARPの役割は、より詳細な調査をするべきである。Jeyseelan等(前記引用)は、CARP mRNAが心臓の繊維芽細胞では発現しておらず、TNF−αまたはLPSで処理してもこれらの細胞では誘導されないと主張している。反対に、CARPは繊維芽細胞株MRC−5では発現してないが、これらの細胞をTNF−αに曝露すると容易に誘導されることが報告された。正常ラットの心臓細胞におけるCARP mRNAの分布を明らかにするために、予備実験がいくつか実施された。CARPアンチセンスcRNAを使用した我々のin situハイブリダイゼーションの結果によると、繊維芽細胞のような細胞では発現するが心筋細胞では発現しないことが示された。このことは報告されたほとんどのデータと明らかに異なっており、より詳細に分析する必要がある。
【0009】
CARP機能を阻害すると収縮性蛋白質mRNAを成人表現型に戻すのに役立ち、ANF蛋白質発現の増加にもまた役立つものと考えられる。これらの遺伝子の制御に関与するYB−1などの他の転写因子とは対照的に、CARPはほとんど心臓に発現しており、その他の組織、すなわち骨格筋ではほんのわずかな量しか発現していない。このことから、副作用は認められたとしてもほんのわずかと思われるので、CARPに対する薬理学的処置は非常に魅力的である。
【0010】
本発明は、心臓肥大を引き起こすことが知られている慢性的ベータアドレナリン刺激によって、イン・ビボ(in vivo)およびイン・ビトロ(in vitro)におけるCARPの発現が変化するかどうかを研究した。変化する場合は、心臓疾患の治療に使用可能な薬物を製造するためにCARP蛋白質またはCARP mRNAの阻害剤を提供することが本発明の一目的である。
【0011】
本発明は、ヒト心不全においてCARPが著しくアップレギュレートされることを示す。本発明によるin vitroおよびin vivoの研究では、CARPはアルファMHC遺伝子発現に対する負の抑制因子として働く。ヒトの心不全では、CARP濃度の増加は遺伝子発現および収縮機能の変化の一因となる可能性がある。CARPは、in vivoではISOで誘導された心臓肥大の最中に増加し、in vitroでは心筋細胞のベータアドレナリン受容体の直接刺激によって増加する。このシグナル伝達過程にはERK/p42/p44MAPキナーゼ経路が関与しているようである。
【0012】
したがって、本発明の目的は心臓疾患、好ましくは心不全または心臓肥大の治療に使用できるCARPの阻害剤を提供することである。CARP発現のブロックに適したこれらの阻害剤の1つは、ERK阻害剤ファミリー(たとえば、U0126)である。
【0013】
詳細には、本発明は以下の点について開示する:
・心臓疾患の治療に使用できる薬物を製造するためのCARP蛋白質またはCARP mRNAの阻害剤またはアンタゴニストの使用、
・心臓疾患が心不全または心臓肥大である対応する使用、
・心臓肥大がイソプレナリンまたはフェニレフリンによって誘導される場合の対応する使用、
・阻害剤がCARP蛋白質および/またはCARP mRNAに結合できる場合の対応する使用、。
【0014】
・CARP蛋白質がYB−1に結合するのを阻害剤が妨害する場合の対応する使用、
・CARP/YB−1複合体がHF−1a/HF1−b/Mef−2DNA要素に結合するのを阻害剤が妨害する場合の対応する使用、
・CARPが心臓由来のANFまたはTNCをダウンレギュレートするのを阻害剤が妨害する場合の対応する使用、
・阻害剤が心臓でのANFの発現および/または分泌を促進することができる場合の対応する使用、。
【0015】
・以下の生物学的特徴、
(i)CARP蛋白質および/またはCARP mRNAの阻害、
(ii)CARP蛋白質および/またはCARP mRNAへの結合、
(iii)CARPのYB−1への結合、またはCARP/YB−1複合体のHF−1a/HF1−b/Mef−2DNA要素への結合の妨害、
(iv)CARP蛋白質による心臓ANFまたはTNCのダウンレギュレートの妨害、
(v)心臓でのANFの発現および/または分泌の促進、
の少なくとも1つの特徴を有する物質を含む心臓疾患治療用に使用することができる医薬組成物、
・CARPまたはCARP発現をブロックまたは阻害する物質をスクリーニングするためのCARP蛋白質またはCARP mRNA/DNAの使用、
・アルファ−ミオシン重鎖mRNA発現の負の制御因子としてのCARP蛋白質またはCARP mRNA/DNAの使用、。
【0016】
・CARP蛋白質および/またはCARP mRNAの阻害剤のスクリーニング方法であって、以下の段階を含む方法
(i)完全長ヒトCARP cDNAとともに強力なプロモーターおよび選択マーカーを含む第1発現ベクターを構築する段階、
(ii)HF−1a/HF1b/Mef−2の制御下にあるレポーター遺伝子とともに第1発現ベクターとは異なる選択マーカーを含む第2発現ベクターを構築する段階、
(iii)前記第1および前記第2発現ベクターを適切な真核細胞株にトランスフェクションする段階、および
(iv)CARP蛋白質およびCARP活性の指標となるレポーター遺伝子産物を発現するトランスフェクト細胞を阻害剤とともに培養して、前記レポーター遺伝子産物の活性減少を測定する段階、
・CARPおよびCARPの生物学的特性を有するCARPの修飾体または変異体を心不全などの心臓疾患のin vitroで検出する診断手段としての使用、および最後に、
・心臓疾患を治療する方法であって、心不全の患者に前述の医薬組成物を特定の心臓疾患、好ましくは心不全および心臓肥大に有効な量で投与することを含む方法。
【0017】
以下の実施例で本発明をより詳細に説明する。
【0018】
実施例1:ノーザンブロット
CARPはヒトの病理においても役割を担っているものと考えられている。ヒト心臓におけるCARP mRNAの発現を分析するために、CARP cDNAを使用したノーザンブロットを実施した。ノーザンブロット用のmRNAは、突発性拡張型心筋症(DCM、n=11)または虚血性心筋症(ICM、n=12)による慢性的心不全(NYHA III〜IV段階)の患者のヒト心臓から得た。対照として、欠陥のないドナーの心臓を使用した(n=11)。ノーザンブロットはGAPDHの分析によって正規化した。
【0019】
結果(任意の単位):
【0020】
【表1】
【0021】
これらの結果は明らかに、CARP mRNAがDCMまたはICMの患者の心臓で有意にアップレギュレートされていることを示している。
【0022】
実施例2:抗体産生
まず、免疫用に組換えCARPを生成した。この目的のために、CARP mRNAを誘導性E.coli発現ベクターに挿入した。その封入体から、CARPを1〜5Mのグアニジン−HClで可溶化して、数段階のクロマトグラフィーによってCARP蛋白質を精製した。最後に、PBSに対して透析することによってグアニジン−HClを除去した。CARP蛋白質を使用してウサギ2匹を免疫化した。これらの動物からCARP抗血清を集め、その活性を調べた。抗血清をELISAアッセイによって分析したところ、CARPに対して妥当な力価の抗体を有することがわかった。
【0023】
この抗体はまた、精製したCARPとヒトおよびラット心臓の蛋白質抽出物を使用したウェスタンブロットによって試験した。試料蛋白質をDTTで還元して、その後0.5Mヨードアセトアミドとインキュベーションすることによってカルボキシメチル化しなければならないことがわかった。CARPは分子間および分子内で共有結合を形成する傾向が強いシステイン残基をいくつか有するので、このことが必要であった。これが原因となって2量体および4量体が形成され、ゲル電気泳動中およびウェスタンブロット実験中に多数のバンドが検出されるようになる。この試料に前記の処理を施すと、ウェスタンブロットでは約35kDaの単一のバンドが検出される。この大きさは、CARPのアミノ酸配列から算出された大きさと一致する。
【0024】
実施例3:正常組織および疾患組織におけるCARP蛋白質発現の免疫学的分析
次に、CARP蛋白質の発現を分析して、蛋白質濃度が上昇したCARP mRNA濃度を反映していることを示した。この目的のために、ヒトの欠陥のない心臓、DCMおよびICMの心臓から得られた蛋白質試料を分析した。ウェスタンブロットは、カルセケストリンの分析値によって正規化した。以下の結果が得られた。
【0025】
【表2】
【0026】
これらの結果から、CARP蛋白質は病的なヒト心臓においても上昇することが明らかに示された。さらに、対照の心臓と比較すると、蛋白質はCARP mRNAよりもさらに上昇している。これは蛋白質よりもmRNAの代謝回転率が高いことによるものだろう。
【0027】
実施例4:診断手段としてのCARP誘導手段の使用
CARP cDNA/cRNA
CARP cDNAおよび/またはcRNAは、心臓にリスクのある患者から得られた心臓生検におけるCARP mRNA濃度の上昇を検出するために使用することができる。CARP発現状態はまた、移植用に使用するヒト心臓の心臓健康状態を分析するために使用することができる。CARP mRNA濃度は、ノーザンブロット法、ドットブロット法、リボヌクレアーゼ保護法または分析組織から得られた標的RNAに対するCARP cDNAまたはcRNAのハイブリダイゼーションによる同様の方法などの方法に基づいたハイブリダイゼーションによって測定することができる。
【0028】
CARP抗体
ヒトの由来の組み換えCARPに対する抗体は、診断目的にも使用することができる。心臓にリスクのある患者から得られた生検におけるCARP蛋白質の量は、ELISA、RIA、ウェスタンブロットまたは同様の技術によって測定することができる。CARP蛋白質の濃度の上昇によって、分析した心臓の病的状態を示すことができる。さらに、移植が計画されている心臓はまた、この項で説明した抗体に基づいた方法のいずれかによってその状態を分析することができる。
【0029】
CARP PCR
CARP mRNA定量用のPCRをベースとした方法に使用できるプライマーの設計に、配列から得られたCARP cDNAを使用できる。心不全のリスクがある患者の心臓から得られた生検におけるCARP mRNAの定量は、心不全に関連する変更された遺伝子発現を検出するための診断手段として使用することができる。この方法はまた、移植に使用する心臓に適用することができる。
【0030】
実施例5:CARP阻害物質のスクリーニング
・安定トランスフェクションアッセイ:ヒトCARPの生物作用を妨害する化合物のスクリーニング用細胞株を構築するための、ヒトCARP cDNAの使用。このようなアッセイは以下の通りに設定することができる。ネオマイシン、ゼオシン、ハイグロマイシン、またはその他の組換え細胞選択用物質のような選択マーカーを備えた(SV40、CMV、または誘導性プロモーター(たとえば、tet on−offシステム)などの強力なプロモーターの制御下にある)適切な真核細胞発現ベクターに完全長ヒトCARP cDNAを挿入する。この発現ベクターを標準的方法によって細胞株h9c2にトランスフェクションして、抗生物質を添加することによって安定な細胞株を選択する。この方法で、モノクローナルまたはポリクローナル細胞株が選択される。次に、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどのレポーター遺伝子またはRoss等VIIによって記載されたようなHF−1a/HF1−b/Mef−2によって制御された類似の容易に検出可能な遺伝子を含有する真核細胞発現プラスミドをこの細胞株にトランスフェクションする。この第2プラスミドは、CARP細胞株を構築するために使用したものとは異なる選択マーカーを含有していなければならない。この方法で、2種類の遺伝子を含有する細胞株を構築する。1種の遺伝子がCARPを構造的に発現し、第2の遺伝子がCARPの活性を検出するレポーター遺伝子である。この細胞株は、CARPの活性を妨害する試験物質を検出するために使用される。この目的のために、この細胞株を適切なMTPプレートで増殖させ、試験物質を添加する。6〜12時間インキュベーションした後、CARPの生物学的活性を妨害する物質をレポーター遺伝子の活性を測定することによって検出することができる。物質の活性がCARPの作用を妨害するとき、シグナルの減少が測定される。
【0031】
・安定なトランスフェクションのアッセイ:セクション1で使用したプラスミドをまた、他の標準的な細胞株、たとえばCOS−1、COS−7、HEK293、HEK293EBNA、CHO、BHK、HeLAまたはcDNA類発現用の同様の細胞株において使用できる。
【0032】
・一時的なトランスフェクションのアッセイ:セクション1およびセクション2で説明したアッセイを次のように少し変えて使用することができる。CARPおよびレポーター遺伝子を有するプラスミド類を混合して、標準的技法を使用してセクション1およびセクション2で説明した細胞株にトランスフェクションする。試験物質を添加して、24〜72時間後にレポーター遺伝子の活性を測定する。未処理の対照細胞と比較して、レポーター遺伝子の活性が低ければCARP活性を妨害する物質を検出することができる。
【0033】
・CARP−YB−1結合アッセイ(i):CARPは遍在性転写因子YB−1と相互作用することが知られている。YB−1をコードする完全長または部分cDNAをベクターに挿入して、N末端またはC末端にHisタグまたはGST蛋白質を有するYB−1を発現させる。組換え融合蛋白質の検出および/または精製を可能にする他の遺伝子またはアミノ酸配列もまた使用することができる。この融合蛋白質をE.coliまたはバキュロウイルス/Sf9系、またはin vitro翻訳系において発現させる。次に、精製または粗融合蛋白質を使用したタグに応じた適切なマトリックスに結合させる。試験物質を添加して、YB−1に結合させる。精製したCARPを添加して、このYB−1融合蛋白質に結合させる。未結合CARPを洗浄して、残存するCARPをヒト組換えCARPに対する抗体を使用して検出する。CARPのYB−1への結合を妨害する試験物質は、シグナルの低さによって検出する。
【0034】
・CARP−YB−1結合アッセイ(ii):CARPおよびYB−1を酵母のツーハイブリッドスクリーニングに使用することができる。CARPをDNA結合ドメイン結合蛋白質の構築に、およびYB−1をトランス活性化ドメイン融合蛋白質の構築に使用するか、またはその逆に使用する。標準的な市販の酵母ツーハイブリッドシステムを使用できる。組換え酵母株を構築した後、試験物質のYB−1/CARP相互反応の妨害についてスクリーニングすることができる。
【0035】
・CARP−YB−1結合アッセイ(iii):CARPおよびYB−1をほ乳類のツーハイブリッドスクリーニングに使用することができる。CARPをDNA結合ドメイン結合蛋白質の構築に、およびYB−1を活性化ドメイン融合蛋白質の構築に使用するか、またはその逆に使用する。標準的な市販のほ乳類ツーハイブリッドシステムが使用できる。組換えほ乳類細胞株を構築した後、試験物質のYB−1/CARP相互反応の妨害についてスクリーニングすることができる。
【0036】
・CARP−YB−1結合アッセイ(vi):組換え体精製CARPおよびYB−1蛋白質を蛋白質−蛋白質相互反応アッセイに使用することができる。この目的のために、2種の蛋白質の1種を反応容器の修飾表面に固定するか、または融合蛋白質として蛋白質が発現したとき、適切なマトリックスに結合することによって固定する。mRNAまたはcRNAのin vitro翻訳によって生成したときは、2種の蛋白質のもう1方を125Iまたは35Sで標識する。標識蛋白質を固定蛋白質とともにインキュベートして、未結合蛋白質を洗浄後、放射活性を測定することによって結合を検出する。2種の蛋白質の結合を妨害する物質を添加したとき、測定される放射活性の量は少ない。別法として、標識蛋白質を蛍光色素で標識して、洗浄後残存する蛍光を測定することによって結合を検出することができる。結合はまた、蛍光偏光度の変化を測定することによって検出することができる。蛋白質はまた、ユーロピウムクリプタートおよび蛍光色素または同様の色素によって標識して、結合現象を蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)で検出することができる。このような種類のアッセイは均一で、洗浄段階を必要としない。結合現象はまた、電気化学発光法によって測定することができる。この目的のために、蛋白質の1種をHis(6)またはGSTまたは同種のタグによって磁気ビーズに固定することができる。他方の蛋白質をルテニウムトリス−ビピリジル化合物(Ru(bpy)3 2+)によって標識する。結合は蛋白質複合体を有する磁気ビーズを捕捉した電極上で検出する。
【0037】
実施例6:CARPの発現および精製
CARP cDNAは、E.coli、Sf9細胞、または例えばIXなどの標準的文献に記載された真核細胞において蛋白質を発現させるのに適したベクターに挿入することができる。cDNAは、His(6)、GST、FLAGまたは類似のタグによって変更して蛋白質の精製に使用することが可能である。
【0038】
実施例7:
薬剤開発用の標的遺伝子の同定をねらった差引きハイブリダイゼーション技術によって、イヌの実験的心不全において心臓のアンキリン蛋白質(CARP)mRNAがアップレギュレートされていることが示された。
【0039】
ここで、欠陥のないドナーの心臓(NF)および拡張型(DCM)または虚血性心筋症(ICM)の患者の心臓の心筋におけるCARP発現をノーザンおよびウェスタンブロット分析によって測定した。mRNA濃度(CARP/GAPDH mRNA NF:0.7±0.14、n=11、DCM:1.2±0.09、n=11、ICM:1.1±0.08、n=12)および蛋白質濃度(カルセケストリン発現に対して、NF:1.0±0.23、n=11、DCM:1.8±0.l2、n=11、ICM:1.8±0.20、n=8)は病因に関わりなく心不全の患者の左心室心筋において有意に増加していた。心房心筋では、欠陥のある心臓と欠陥のない心臓(n=8)の間にCARP発現の有意な差は認められなかった。CARP機能に対する認識をさらに深めるために、ヒトCARP cDNAを含有するアデノウイルスベクター(Ad.CARP)を創出した。新生子ラットから単離した心筋細胞にMOIの増加したAd.CARPを感染させると、用量に関連してCARPの過剰発現が引き起こされた。CARPがサルコメア蛋白質遺伝子発現の制御因子として働くかという疑問に取り組むために、アクチンおよびミオシン重鎖(MHC)アイソフォームのmRNA濃度を定量的RT−PCRによって測定した。Ad.CARP(MOI 50)に感染した筋細胞におけるアルファ−MHC mRNA濃度は、対照ウイルスに感染した筋細胞のmRNA濃度の25%に減少していた(n=10、p<0.05)。
【0040】
実施例8:
雄のWistarラットをイソプレナリン(ISO、2.4mg/kg/d、Alzet mini pump)で4日間処理した。対照にはNaClを注入した。ISOで処理したラットは、心臓重量/体重比が40%増加しており著しい心臓肥大が認められた。ISO処理ラットでは、ノーザンブロット分析によって評価したところ、CARP mRNA発現が左心室(LV)心筋層において140%増加していた(CARP mRNA/GAPDH mRNA:ISO 3.1±0.5、n=6、NaCl:1.3±0.12、n=11、p<0.05)。ウェスタンブロット分析によって、CARP蛋白質が50%増加していることが確認された(CARP/カルセケストリン、ISO 0.61±0.07、n=6、NaCl:0.41±0.03、n=10、p<0.05)。CARP発現制御機構に対する認識をさらに深めるために、単離した筋細胞をISO(1μM)およびフェニレフリン(PE、50μM)で処理した。対照としてアルファ−アドレナリン受容体アゴニストフェニレフリン(PE、50μM)の影響を調べた。CARP蛋白質およびmRNA濃度はISO(CARP/CSQ 対照の161±10%、n=4、p<0.05、CARP mRNA/GAPDH mRNA 対照の148±10%、n=9、p<0.05)およびPE(CARP/CSQ 172±7%、n=4、p<0.05、CARP mRNA/GAPDH mRNA 178±20%、n=11、p<0.05)によって有意に増加した。CARP mRNA発現に対するISOおよびPEの効果は、ERK阻害剤U0126(p<0.05)によって完全にうち消されたが、p38キナーゼ阻害剤SB203580によってはうち消されなかった。興味深いことに、CARP mRNA発現は筋細胞に限定されなかった。CARP mRNAは、筋細胞以外よりも単離された筋細胞により豊富であった(比6.6:1、p<0.05)。
本発明は、ヒトCARPタンパク質またはCARP DNA/RNAを阻害することにより、心臓病、特にヒト心不全をうまく治療するという新しい発見に関する。したがって、本発明は、心臓CARPの活性に影響を及ぼす、好ましくは低分子量の物質を含有する医薬組成物に関する。さらに、本発明は、CARP阻害化合物を使用した心不全の治療方法、これらの阻害剤をスクリーニングする方法および診断手段としてのCARPの使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
主に心筋細胞に発現する核蛋白質であるヒトCARP(心臓限定アンキリンリピート蛋白質(cardiac−restricted ankyrin repeat protein))は、ヒト内皮細胞をインターロイキン−1αまたはTNF−αで誘導すると強くアップレギュレートされるmRNAとして、1995年にChu、W.等によって最初に検出された(The Journal of Biological Chemistry 270、10236〜10245)。この著者らは、CARPは分子量36000の核局在性蛋白質であり、この蛋白質はDNAに結合して転写因子として作用できることを示した。CARPは、起源の異なる様々な細胞(上皮細胞、膀胱癌細胞、繊維芽細胞、メラノーマ細胞、および造血系由来の細胞)では発現しないことがわかった。しかし、繊維芽細胞では、細胞をTNF−αで処理することによってCARP mRNAの発現も誘導される。
【0003】
のち、Zou等は、1997年に心臓特異的転写因子を研究中に、ラットのCARP相同体を同定した(Development 124、793−804)。彼らは既に、遺伝子(HF−1a/MEF−2)を心室特異的に発現させるプロモーター要素およびこの要素に結合する遍在性転写因子、YB−1を同定している。彼らは、酵母のツーハイブリッドスクリーニングでYB−1を餌(bait)として使用してCARPを発見した。その後、CARP mRNAの発現は非常に限定されており、心臓において最も際立っていることを示した。多くの実験で、CARPおよびYB−1はin vivoでは物理的に二量体を形成することが示された。さらに、CARP自身はNKx2.5ホメオボックス遺伝子によって調節されることがわかった。心筋細胞並びに非心筋細胞において、HF−1a要素に制御されている遺伝子をCARPがダウンレギュレートすることがコトランスフェクション実験によって示された(Ross,R.S.et al.、1996、Development 122、1799−1809)。Jeyaseelan等は、心臓由来および心臓以外由来の細胞におけるANFプロモーターおよびcTNCプロモーターによる転写はCARPによってダウンレギュレートできることを1997年に発見した(The Journal of Biological Chemistry 272、22800−22808)。ANFプロモーターに関して、このプロモーターによる転写を強く誘導するNkX2.5遺伝子のアンタゴニストしてCARPは作用することが示された。
【0004】
Baumeister等は、除神経によって骨格筋において強く誘導される蛋白質としてCARPを発見した(The Journal of Cell Biology 139、1231−1242)。さらに彼らは、CARPがMLP欠損(筋肉LIM蛋白質)マウスの心臓でアップレギュレートされていることを示した。これらのマウスは拡張型心筋症および肥大を示す。彼らは、CARPが極初期遺伝子ではなかろうかと推測した。ラット、マウスおよびヒトのmRNAは3’UTRにATTTA分解モチーフを有し、この蛋白質には迅速に分解する蛋白質の特徴であるPEST様配列がある。しかし、除神経された筋肉では、CARP発現は少なくとも7日間(最長試験期間)増加する。
【0005】
CARPはドキソルビシンで処理した動物(ウサギおよびラット、Aihara,Y.et al.、1999、Biochimica et Biophysica Acta 1447、318〜324)の心臓ではアップレギュレートされているので、CARPがこの病理において役割を果たしていることがわかった。Kuo等は1999年に心臓肥大モデルマウス(大動脈弓狭窄)を使用して、CARP mRNAが術後4日目および7日目に強く誘導されることを発見した(Development 126、4223〜4234)。彼らはまた、ANF mRNAもまた上昇することを示した。この発見は、CARPがANFプロモーターによる転写をダウンレギュレートすることを発見したJeyaseelan等(前記引用文献中)の発見と多少矛盾している。これは、(i)CARPおよびANFの転写は器官の異なる細胞で上昇することによるか、または(ii)Jeyaseelan等が使用したANFプロモーター(700bp)がANFmRNA発現を制御する遺伝子要素のすべては含有していなかったことによるか、または(iii)CARPによるANF mRNA発現の阻害がさらに未知の機構によって解除されることによる可能性がある。
【0006】
(発明の一般的説明)
本発明は、いくつかの心臓病理モデルにおいてCARP mRNAの発現が上昇しており、このことはヒトの病理にも適用されるという発見を証明する実験を開示する。CARP mRNAに加えて、CARP蛋白質もまた、健康な対照心臓と比較してアップレギュレートされていることがまず示された。したがって、CARPがヒト心臓の病理学的症状において役割を担っていることははっきりしている。CARP発現の上昇が疾患の原因であるか、または病理学的状態に応答した細胞の適応過程であるかについてはさらに証明しなければならない。
【0007】
ヒトの心不全並びに動物の心不全および心臓肥大モデルでは、たとえば筋原繊維蛋白質の胚型が発現しており、成人型と置換しているという報告が数多くなされている。CARPは、cTNTのような収縮蛋白質の胎児型から成人型への転換を制御する役割を果たしていることが知られている。CARPは成人型の発現を阻害する転写抑制因子である。さらに、CARPは、心不全後期の特徴でもあるANFの発現を阻害することが報告されている。
【0008】
繊維芽細胞におけるCARPの役割は、より詳細な調査をするべきである。Jeyseelan等(前記引用)は、CARP mRNAが心臓の繊維芽細胞では発現しておらず、TNF−αまたはLPSで処理してもこれらの細胞では誘導されないと主張している。反対に、CARPは繊維芽細胞株MRC−5では発現してないが、これらの細胞をTNF−αに曝露すると容易に誘導されることが報告された。正常ラットの心臓細胞におけるCARP mRNAの分布を明らかにするために、予備実験がいくつか実施された。CARPアンチセンスcRNAを使用した我々のin situハイブリダイゼーションの結果によると、繊維芽細胞のような細胞では発現するが心筋細胞では発現しないことが示された。このことは報告されたほとんどのデータと明らかに異なっており、より詳細に分析する必要がある。
【0009】
CARP機能を阻害すると収縮性蛋白質mRNAを成人表現型に戻すのに役立ち、ANF蛋白質発現の増加にもまた役立つものと考えられる。これらの遺伝子の制御に関与するYB−1などの他の転写因子とは対照的に、CARPはほとんど心臓に発現しており、その他の組織、すなわち骨格筋ではほんのわずかな量しか発現していない。このことから、副作用は認められたとしてもほんのわずかと思われるので、CARPに対する薬理学的処置は非常に魅力的である。
【0010】
本発明は、心臓肥大を引き起こすことが知られている慢性的ベータアドレナリン刺激によって、イン・ビボ(in vivo)およびイン・ビトロ(in vitro)におけるCARPの発現が変化するかどうかを研究した。変化する場合は、心臓疾患の治療に使用可能な薬物を製造するためにCARP蛋白質またはCARP mRNAの阻害剤を提供することが本発明の一目的である。
【0011】
本発明は、ヒト心不全においてCARPが著しくアップレギュレートされることを示す。本発明によるin vitroおよびin vivoの研究では、CARPはアルファMHC遺伝子発現に対する負の抑制因子として働く。ヒトの心不全では、CARP濃度の増加は遺伝子発現および収縮機能の変化の一因となる可能性がある。CARPは、in vivoではISOで誘導された心臓肥大の最中に増加し、in vitroでは心筋細胞のベータアドレナリン受容体の直接刺激によって増加する。このシグナル伝達過程にはERK/p42/p44MAPキナーゼ経路が関与しているようである。
【0012】
したがって、本発明の目的は心臓疾患、好ましくは心不全または心臓肥大の治療に使用できるCARPの阻害剤を提供することである。CARP発現のブロックに適したこれらの阻害剤の1つは、ERK阻害剤ファミリー(たとえば、U0126)である。
【0013】
詳細には、本発明は以下の点について開示する:
・心臓疾患の治療に使用できる薬物を製造するためのCARP蛋白質またはCARP mRNAの阻害剤またはアンタゴニストの使用、
・心臓疾患が心不全または心臓肥大である対応する使用、
・心臓肥大がイソプレナリンまたはフェニレフリンによって誘導される場合の対応する使用、
・阻害剤がCARP蛋白質および/またはCARP mRNAに結合できる場合の対応する使用、。
【0014】
・CARP蛋白質がYB−1に結合するのを阻害剤が妨害する場合の対応する使用、
・CARP/YB−1複合体がHF−1a/HF1−b/Mef−2DNA要素に結合するのを阻害剤が妨害する場合の対応する使用、
・CARPが心臓由来のANFまたはTNCをダウンレギュレートするのを阻害剤が妨害する場合の対応する使用、
・阻害剤が心臓でのANFの発現および/または分泌を促進することができる場合の対応する使用、。
【0015】
・以下の生物学的特徴、
(i)CARP蛋白質および/またはCARP mRNAの阻害、
(ii)CARP蛋白質および/またはCARP mRNAへの結合、
(iii)CARPのYB−1への結合、またはCARP/YB−1複合体のHF−1a/HF1−b/Mef−2DNA要素への結合の妨害、
(iv)CARP蛋白質による心臓ANFまたはTNCのダウンレギュレートの妨害、
(v)心臓でのANFの発現および/または分泌の促進、
の少なくとも1つの特徴を有する物質を含む心臓疾患治療用に使用することができる医薬組成物、
・CARPまたはCARP発現をブロックまたは阻害する物質をスクリーニングするためのCARP蛋白質またはCARP mRNA/DNAの使用、
・アルファ−ミオシン重鎖mRNA発現の負の制御因子としてのCARP蛋白質またはCARP mRNA/DNAの使用、。
【0016】
・CARP蛋白質および/またはCARP mRNAの阻害剤のスクリーニング方法であって、以下の段階を含む方法
(i)完全長ヒトCARP cDNAとともに強力なプロモーターおよび選択マーカーを含む第1発現ベクターを構築する段階、
(ii)HF−1a/HF1b/Mef−2の制御下にあるレポーター遺伝子とともに第1発現ベクターとは異なる選択マーカーを含む第2発現ベクターを構築する段階、
(iii)前記第1および前記第2発現ベクターを適切な真核細胞株にトランスフェクションする段階、および
(iv)CARP蛋白質およびCARP活性の指標となるレポーター遺伝子産物を発現するトランスフェクト細胞を阻害剤とともに培養して、前記レポーター遺伝子産物の活性減少を測定する段階、
・CARPおよびCARPの生物学的特性を有するCARPの修飾体または変異体を心不全などの心臓疾患のin vitroで検出する診断手段としての使用、および最後に、
・心臓疾患を治療する方法であって、心不全の患者に前述の医薬組成物を特定の心臓疾患、好ましくは心不全および心臓肥大に有効な量で投与することを含む方法。
【0017】
以下の実施例で本発明をより詳細に説明する。
【0018】
実施例1:ノーザンブロット
CARPはヒトの病理においても役割を担っているものと考えられている。ヒト心臓におけるCARP mRNAの発現を分析するために、CARP cDNAを使用したノーザンブロットを実施した。ノーザンブロット用のmRNAは、突発性拡張型心筋症(DCM、n=11)または虚血性心筋症(ICM、n=12)による慢性的心不全(NYHA III〜IV段階)の患者のヒト心臓から得た。対照として、欠陥のないドナーの心臓を使用した(n=11)。ノーザンブロットはGAPDHの分析によって正規化した。
【0019】
結果(任意の単位):
【0020】
【表1】
【0021】
これらの結果は明らかに、CARP mRNAがDCMまたはICMの患者の心臓で有意にアップレギュレートされていることを示している。
【0022】
実施例2:抗体産生
まず、免疫用に組換えCARPを生成した。この目的のために、CARP mRNAを誘導性E.coli発現ベクターに挿入した。その封入体から、CARPを1〜5Mのグアニジン−HClで可溶化して、数段階のクロマトグラフィーによってCARP蛋白質を精製した。最後に、PBSに対して透析することによってグアニジン−HClを除去した。CARP蛋白質を使用してウサギ2匹を免疫化した。これらの動物からCARP抗血清を集め、その活性を調べた。抗血清をELISAアッセイによって分析したところ、CARPに対して妥当な力価の抗体を有することがわかった。
【0023】
この抗体はまた、精製したCARPとヒトおよびラット心臓の蛋白質抽出物を使用したウェスタンブロットによって試験した。試料蛋白質をDTTで還元して、その後0.5Mヨードアセトアミドとインキュベーションすることによってカルボキシメチル化しなければならないことがわかった。CARPは分子間および分子内で共有結合を形成する傾向が強いシステイン残基をいくつか有するので、このことが必要であった。これが原因となって2量体および4量体が形成され、ゲル電気泳動中およびウェスタンブロット実験中に多数のバンドが検出されるようになる。この試料に前記の処理を施すと、ウェスタンブロットでは約35kDaの単一のバンドが検出される。この大きさは、CARPのアミノ酸配列から算出された大きさと一致する。
【0024】
実施例3:正常組織および疾患組織におけるCARP蛋白質発現の免疫学的分析
次に、CARP蛋白質の発現を分析して、蛋白質濃度が上昇したCARP mRNA濃度を反映していることを示した。この目的のために、ヒトの欠陥のない心臓、DCMおよびICMの心臓から得られた蛋白質試料を分析した。ウェスタンブロットは、カルセケストリンの分析値によって正規化した。以下の結果が得られた。
【0025】
【表2】
【0026】
これらの結果から、CARP蛋白質は病的なヒト心臓においても上昇することが明らかに示された。さらに、対照の心臓と比較すると、蛋白質はCARP mRNAよりもさらに上昇している。これは蛋白質よりもmRNAの代謝回転率が高いことによるものだろう。
【0027】
実施例4:診断手段としてのCARP誘導手段の使用
CARP cDNA/cRNA
CARP cDNAおよび/またはcRNAは、心臓にリスクのある患者から得られた心臓生検におけるCARP mRNA濃度の上昇を検出するために使用することができる。CARP発現状態はまた、移植用に使用するヒト心臓の心臓健康状態を分析するために使用することができる。CARP mRNA濃度は、ノーザンブロット法、ドットブロット法、リボヌクレアーゼ保護法または分析組織から得られた標的RNAに対するCARP cDNAまたはcRNAのハイブリダイゼーションによる同様の方法などの方法に基づいたハイブリダイゼーションによって測定することができる。
【0028】
CARP抗体
ヒトの由来の組み換えCARPに対する抗体は、診断目的にも使用することができる。心臓にリスクのある患者から得られた生検におけるCARP蛋白質の量は、ELISA、RIA、ウェスタンブロットまたは同様の技術によって測定することができる。CARP蛋白質の濃度の上昇によって、分析した心臓の病的状態を示すことができる。さらに、移植が計画されている心臓はまた、この項で説明した抗体に基づいた方法のいずれかによってその状態を分析することができる。
【0029】
CARP PCR
CARP mRNA定量用のPCRをベースとした方法に使用できるプライマーの設計に、配列から得られたCARP cDNAを使用できる。心不全のリスクがある患者の心臓から得られた生検におけるCARP mRNAの定量は、心不全に関連する変更された遺伝子発現を検出するための診断手段として使用することができる。この方法はまた、移植に使用する心臓に適用することができる。
【0030】
実施例5:CARP阻害物質のスクリーニング
・安定トランスフェクションアッセイ:ヒトCARPの生物作用を妨害する化合物のスクリーニング用細胞株を構築するための、ヒトCARP cDNAの使用。このようなアッセイは以下の通りに設定することができる。ネオマイシン、ゼオシン、ハイグロマイシン、またはその他の組換え細胞選択用物質のような選択マーカーを備えた(SV40、CMV、または誘導性プロモーター(たとえば、tet on−offシステム)などの強力なプロモーターの制御下にある)適切な真核細胞発現ベクターに完全長ヒトCARP cDNAを挿入する。この発現ベクターを標準的方法によって細胞株h9c2にトランスフェクションして、抗生物質を添加することによって安定な細胞株を選択する。この方法で、モノクローナルまたはポリクローナル細胞株が選択される。次に、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどのレポーター遺伝子またはRoss等VIIによって記載されたようなHF−1a/HF1−b/Mef−2によって制御された類似の容易に検出可能な遺伝子を含有する真核細胞発現プラスミドをこの細胞株にトランスフェクションする。この第2プラスミドは、CARP細胞株を構築するために使用したものとは異なる選択マーカーを含有していなければならない。この方法で、2種類の遺伝子を含有する細胞株を構築する。1種の遺伝子がCARPを構造的に発現し、第2の遺伝子がCARPの活性を検出するレポーター遺伝子である。この細胞株は、CARPの活性を妨害する試験物質を検出するために使用される。この目的のために、この細胞株を適切なMTPプレートで増殖させ、試験物質を添加する。6〜12時間インキュベーションした後、CARPの生物学的活性を妨害する物質をレポーター遺伝子の活性を測定することによって検出することができる。物質の活性がCARPの作用を妨害するとき、シグナルの減少が測定される。
【0031】
・安定なトランスフェクションのアッセイ:セクション1で使用したプラスミドをまた、他の標準的な細胞株、たとえばCOS−1、COS−7、HEK293、HEK293EBNA、CHO、BHK、HeLAまたはcDNA類発現用の同様の細胞株において使用できる。
【0032】
・一時的なトランスフェクションのアッセイ:セクション1およびセクション2で説明したアッセイを次のように少し変えて使用することができる。CARPおよびレポーター遺伝子を有するプラスミド類を混合して、標準的技法を使用してセクション1およびセクション2で説明した細胞株にトランスフェクションする。試験物質を添加して、24〜72時間後にレポーター遺伝子の活性を測定する。未処理の対照細胞と比較して、レポーター遺伝子の活性が低ければCARP活性を妨害する物質を検出することができる。
【0033】
・CARP−YB−1結合アッセイ(i):CARPは遍在性転写因子YB−1と相互作用することが知られている。YB−1をコードする完全長または部分cDNAをベクターに挿入して、N末端またはC末端にHisタグまたはGST蛋白質を有するYB−1を発現させる。組換え融合蛋白質の検出および/または精製を可能にする他の遺伝子またはアミノ酸配列もまた使用することができる。この融合蛋白質をE.coliまたはバキュロウイルス/Sf9系、またはin vitro翻訳系において発現させる。次に、精製または粗融合蛋白質を使用したタグに応じた適切なマトリックスに結合させる。試験物質を添加して、YB−1に結合させる。精製したCARPを添加して、このYB−1融合蛋白質に結合させる。未結合CARPを洗浄して、残存するCARPをヒト組換えCARPに対する抗体を使用して検出する。CARPのYB−1への結合を妨害する試験物質は、シグナルの低さによって検出する。
【0034】
・CARP−YB−1結合アッセイ(ii):CARPおよびYB−1を酵母のツーハイブリッドスクリーニングに使用することができる。CARPをDNA結合ドメイン結合蛋白質の構築に、およびYB−1をトランス活性化ドメイン融合蛋白質の構築に使用するか、またはその逆に使用する。標準的な市販の酵母ツーハイブリッドシステムを使用できる。組換え酵母株を構築した後、試験物質のYB−1/CARP相互反応の妨害についてスクリーニングすることができる。
【0035】
・CARP−YB−1結合アッセイ(iii):CARPおよびYB−1をほ乳類のツーハイブリッドスクリーニングに使用することができる。CARPをDNA結合ドメイン結合蛋白質の構築に、およびYB−1を活性化ドメイン融合蛋白質の構築に使用するか、またはその逆に使用する。標準的な市販のほ乳類ツーハイブリッドシステムが使用できる。組換えほ乳類細胞株を構築した後、試験物質のYB−1/CARP相互反応の妨害についてスクリーニングすることができる。
【0036】
・CARP−YB−1結合アッセイ(vi):組換え体精製CARPおよびYB−1蛋白質を蛋白質−蛋白質相互反応アッセイに使用することができる。この目的のために、2種の蛋白質の1種を反応容器の修飾表面に固定するか、または融合蛋白質として蛋白質が発現したとき、適切なマトリックスに結合することによって固定する。mRNAまたはcRNAのin vitro翻訳によって生成したときは、2種の蛋白質のもう1方を125Iまたは35Sで標識する。標識蛋白質を固定蛋白質とともにインキュベートして、未結合蛋白質を洗浄後、放射活性を測定することによって結合を検出する。2種の蛋白質の結合を妨害する物質を添加したとき、測定される放射活性の量は少ない。別法として、標識蛋白質を蛍光色素で標識して、洗浄後残存する蛍光を測定することによって結合を検出することができる。結合はまた、蛍光偏光度の変化を測定することによって検出することができる。蛋白質はまた、ユーロピウムクリプタートおよび蛍光色素または同様の色素によって標識して、結合現象を蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)で検出することができる。このような種類のアッセイは均一で、洗浄段階を必要としない。結合現象はまた、電気化学発光法によって測定することができる。この目的のために、蛋白質の1種をHis(6)またはGSTまたは同種のタグによって磁気ビーズに固定することができる。他方の蛋白質をルテニウムトリス−ビピリジル化合物(Ru(bpy)3 2+)によって標識する。結合は蛋白質複合体を有する磁気ビーズを捕捉した電極上で検出する。
【0037】
実施例6:CARPの発現および精製
CARP cDNAは、E.coli、Sf9細胞、または例えばIXなどの標準的文献に記載された真核細胞において蛋白質を発現させるのに適したベクターに挿入することができる。cDNAは、His(6)、GST、FLAGまたは類似のタグによって変更して蛋白質の精製に使用することが可能である。
【0038】
実施例7:
薬剤開発用の標的遺伝子の同定をねらった差引きハイブリダイゼーション技術によって、イヌの実験的心不全において心臓のアンキリン蛋白質(CARP)mRNAがアップレギュレートされていることが示された。
【0039】
ここで、欠陥のないドナーの心臓(NF)および拡張型(DCM)または虚血性心筋症(ICM)の患者の心臓の心筋におけるCARP発現をノーザンおよびウェスタンブロット分析によって測定した。mRNA濃度(CARP/GAPDH mRNA NF:0.7±0.14、n=11、DCM:1.2±0.09、n=11、ICM:1.1±0.08、n=12)および蛋白質濃度(カルセケストリン発現に対して、NF:1.0±0.23、n=11、DCM:1.8±0.l2、n=11、ICM:1.8±0.20、n=8)は病因に関わりなく心不全の患者の左心室心筋において有意に増加していた。心房心筋では、欠陥のある心臓と欠陥のない心臓(n=8)の間にCARP発現の有意な差は認められなかった。CARP機能に対する認識をさらに深めるために、ヒトCARP cDNAを含有するアデノウイルスベクター(Ad.CARP)を創出した。新生子ラットから単離した心筋細胞にMOIの増加したAd.CARPを感染させると、用量に関連してCARPの過剰発現が引き起こされた。CARPがサルコメア蛋白質遺伝子発現の制御因子として働くかという疑問に取り組むために、アクチンおよびミオシン重鎖(MHC)アイソフォームのmRNA濃度を定量的RT−PCRによって測定した。Ad.CARP(MOI 50)に感染した筋細胞におけるアルファ−MHC mRNA濃度は、対照ウイルスに感染した筋細胞のmRNA濃度の25%に減少していた(n=10、p<0.05)。
【0040】
実施例8:
雄のWistarラットをイソプレナリン(ISO、2.4mg/kg/d、Alzet mini pump)で4日間処理した。対照にはNaClを注入した。ISOで処理したラットは、心臓重量/体重比が40%増加しており著しい心臓肥大が認められた。ISO処理ラットでは、ノーザンブロット分析によって評価したところ、CARP mRNA発現が左心室(LV)心筋層において140%増加していた(CARP mRNA/GAPDH mRNA:ISO 3.1±0.5、n=6、NaCl:1.3±0.12、n=11、p<0.05)。ウェスタンブロット分析によって、CARP蛋白質が50%増加していることが確認された(CARP/カルセケストリン、ISO 0.61±0.07、n=6、NaCl:0.41±0.03、n=10、p<0.05)。CARP発現制御機構に対する認識をさらに深めるために、単離した筋細胞をISO(1μM)およびフェニレフリン(PE、50μM)で処理した。対照としてアルファ−アドレナリン受容体アゴニストフェニレフリン(PE、50μM)の影響を調べた。CARP蛋白質およびmRNA濃度はISO(CARP/CSQ 対照の161±10%、n=4、p<0.05、CARP mRNA/GAPDH mRNA 対照の148±10%、n=9、p<0.05)およびPE(CARP/CSQ 172±7%、n=4、p<0.05、CARP mRNA/GAPDH mRNA 178±20%、n=11、p<0.05)によって有意に増加した。CARP mRNA発現に対するISOおよびPEの効果は、ERK阻害剤U0126(p<0.05)によって完全にうち消されたが、p38キナーゼ阻害剤SB203580によってはうち消されなかった。興味深いことに、CARP mRNA発現は筋細胞に限定されなかった。CARP mRNAは、筋細胞以外よりも単離された筋細胞により豊富であった(比6.6:1、p<0.05)。
Claims (14)
- 心臓疾患治療に使用できる薬剤を製造するためのCARP蛋白質またはCARP mRNAの阻害剤またはアンタゴニストの使用。
- 心臓疾患が心不全または心臓肥大である請求項1に記載の使用。
- 心臓肥大がイソプレナリンまたはフェニレフリンによって誘導された請求項2に記載の使用。
- 阻害剤がCARP蛋白質および/またはCARP mRNAに結合できる請求項1から3のいずれかに記載の使用。
- CARP蛋白質がYB−1に結合するのを阻害剤が妨害する請求項1から3のいずれかに記載の使用。
- CARP/YB−1複合体がHF−1a/HF1−b/Mef−2DNA要素に結合するのを阻害剤が妨害する請求項1から3のいずれかに記載の使用。
- CARP蛋白質が心臓由来のANFまたはTNCをダウンレギュレートするのを阻害剤が妨害する請求項1から3のいずれかに記載の使用。
- 阻害剤が心臓でのANFの発現および/または分泌を促進することができる請求項1から3のいずれかに記載の使用。
- 以下の生物学的特徴であって、
(i)CARP蛋白質および/またはCARP mRNAの阻害、
(ii)CARP蛋白質および/またはCARP mRNAとの結合、
(iii)CARPのYB−1との結合、またはCARP/YB−1複合体のF−1a/HF1−b/Mef−2DNA要素との結合の妨害、
(iv)CARP蛋白質による心臓ANFまたはTNCのダウンレギュレーションの妨害、
(v)心臓でのANFの発現および/または分泌の促進、
の少なくとも1つの特性を有する物質を含む心臓疾患治療用に適用可能な医薬組成物。 - CARPまたはCARP発現をブロックまたは阻害する物質をスクリーニングするためのCARP蛋白質またはCARP mRNA/DNAの使用。
- アルファ−ミオシン重鎖mRNA発現の負の制御因子としてのCARP蛋白質またはCARP mRNA/DNAの使用。
- CARP蛋白質および/またはCARP mRNAの阻害剤のスクリーニング方法であって、以下の段階を含む方法。
(i)完全長ヒトCARP cDNAとともに強力なプロモーターおよび選択マーカーを含む第1発現ベクターを構築する段階、
(ii)HF−1a/HF1b/Mef−2の制御下にあるレポーター遺伝子とともに第1発現ベクターとは異なる選択マーカーを含む第2発現ベクターを構築する段階、
(iii)前記第1および前記第2発現ベクターを適切な真核細胞株にトランスフェクションする段階、および
(iv)CARP蛋白質およびCARP活性の指標となるレポーター遺伝子産物を発現するトランスフェクションした細胞を前記阻害剤とともに培養して、該レポーター遺伝子産物の活性減少を測定する段階。 - CARPあるいはCARPの生物学的特性を有するCARPの修飾体または変異体の、心不全などの心臓障害をin vitroで検出する診断手段としての使用。
- 心臓疾患を治療する方法であって、心不全の患者に請求項9で記載した医薬組成物を特定の心臓疾患に有効な量で投与することを含む方法。
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