JP2004506439A - カリシン - Google Patents
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Abstract
本発明は、カリシンの使用、特に、基質に対するリガンドの輸送および/または結合におけるリポカリンの使用に関し、ここで、この基質は、髪でも皮膚でもなく;そしてまた、この基質および/またはリガンドに対するこのカリシンの特異性および/または親和性を変更するための、カリシンの改変に関する。改変されたカリシンマルチマーの使用であって、該カリシンマルチマーは、リガンドを結合するように適合された結合ドメイン;および基質を結合するように適合された標的化ドメイン、を含み、該改変されたカリシンマルチマーが基質に対してリガンドを標的化するために使用され、該基質は髪でも皮膚でもなく、かつ該リガンドは、天然には該基質に結合しないという点で特徴付けられる、使用。
Description
【0001】
本発明は、カリシン(calycin)の使用に関し、特に、基質に対するリガンドの輸送および/または結合におけるリポカリン(lipocalin)の使用に関し(ここで、この基質は、髪でも皮膚でもない);そしてまた、この基質および/またはリガンドに対するこのカリシンの特異性および/または親和性を変更するための、カリシンの改変に関する。
【0002】
リポカリンは、生物において見出される細胞外タンパク質の多様なファミリーである。これらは、リガンドの結合および輸送に関する種々の機能を示す。例えば、これらは、フェロモン活性、嗅覚、味覚、視覚、免疫調節、および細胞の恒常性に関する一般的機能の媒介に関与する。
【0003】
おそらく最も広く研究されたリポカリンは、レチノールを体中に輸送するレチノール結合タンパク質(RBP)である。レチノール(すなわちビタミンA)は、視覚の正常な機能、生殖系および免疫系、ならびに造血にとって必須の、非常に重要な物質である。レチノールの代謝物はまた、発生、分化および抗癌細胞において活性である。
【0004】
RBPの三次元構造は、1984年に決定され(Newcomer,M.E.、Jones,T.A.、Aqvist,J.、Sundelin,J.、Eriksson,U.、Rask,L.およびPeterson,P.A.(1984)EMBO J.3 1451−1454)、新規構造が明らかになった。多くのリポカリンが同定および特徴付けされるにつれ、この塩基性の8−β鎖構造が、アミノ酸配列同一性の全体的なレベルは低いものの、全ての構造的ホモログにおいて保存されていることが明らかになった。このファミリーのタンパク質は、リポカリン(ギリシャ語の単語、脂肪を意味するlipoおよび萼を意味するcalyxに由来する)として公知になった。10−β鎖の細胞内タンパク質の密接に関連するファミリーもまた見出され、この2つの群が一緒になってカリシンを構成する。
【0005】
リポカリンは、全生物で見出され、分子量は約18kDa〜45kDaの範囲である。しかし、これは、モノマー分子形態を示す;多くのリポカリンは、マルチマーとして存在する。例えば、ビリン結合タンパク質は、19.5kDaのモノマーサブユニットのホモテトラマーとして存在する。アポリポタンパク質Dは、ダイマーとして存在するが、他のタンパク質とも会合する。RBPは、1:1までの比で、TTRと複合体化して見出されるが、クラストシアニン(crustacyanin)は、その安定な分子形態において16個のサブユニットを含むようである。
【0006】
上記のように、リポカリンは、アミノ酸レベルではそれほど保存されていないが、これらをリポカリンとして認識可能にしている特定の構造的特徴を保持する。コア構造は、直交して配置されたβシートによって示され、これらのβ鎖は、互いに連結して、一方の端が閉じたバレル様構造を形成し、それによって、「萼形状」構造を生じる。このように生成される空洞は、リポカリンによるリガンド輸送/結合のための結合ポケットを示す。リポカリンとしてタンパク質を同定するための助けとなるいくつかの短い配列相同領域が存在する。GXWモチーフおよびTDYモチーフは、2つの最も決定的であるが必須ではないモチーフである。
【0007】
リポカリンの主要な機能は、(少なくとも1つは酵素活性を有するが)通常は小さい疎水性分子である特定のリガンドの結合および輸送である。結合の特異性は、リポカリンポケットの立体配座および構成側鎖によって決定される。多くのリポカリンが、インビトロで、通常、天然では出会うことのない範囲の疎水性分子に高親和性で結合し得ることが注目される。このことは、リポカリンが、特定の生物学的特性および構造的特性を有する分子に結合する固有の能力を示し得る。
【0008】
広く研究されてきたリポカリンの別の例は、β−ラクトグロブリンである。β−ラクトグロブリンは、哺乳動物の乳汁中に見出される非常に豊富なタンパク質である。ウシβ−ラクトグロブリンのモノマー分子量は、18kDaであり、162アミノ酸に相当する。多くの研究者が、β−ラクトグロブリンが、インビトロでレチノールおよび脂肪酸を結合することを示した。しかし、インビトロでβ−ラクトグロブリンが果たす正確な役割は、いまだ理解されていない。
【0009】
簡単にいうと、カリシンは、「結合ドメイン」と「標的化ドメイン」とに、機能的に分けられ得る。「結合ドメイン」は、リガンドと相互作用するように機能し、そして「標的化ドメイン」は、結合したリガンドを規定された部位に輸送する際の特異性を提供するように機能する。
【0010】
いくつかの例において、この結合ドメインはまた、標的化機構の一部であり得る。
【0011】
本発明者らの同時係属中の出願、PCT/GB00/00517において、本発明者らは、β−ラクトグロブリンが非天然の部位で脂肪酸を結合する能力を議論した。この用語、非天然は、リポカリンが天然には出会うことのない標的化部位として定義される。この結合ドメインおよび/または標的化ドメインが、このカリシンに対して内因性であり得ることが、当業者に明らかである。しかし、カリシンがこの薬剤を天然には結合しないいくつかの例において、対応する結合ドメインおよび/または標的化ドメインは、しかるべく適合される。この適合は、存在する結合ドメインおよび/または標的化ドメインの変更か、あるいは必要な機能性を有するドメインでの、これらのドメインの置換のいずれかを含み得る。
【0012】
毛小皮は、脂肪酸によって被覆されると考えられ、これらの脂肪酸は、水に対する疎水性障壁として機能し得、そしてまた、髪に天然の艶および風合いを与える。化粧品のヘアコンディショナーは、髪のこれらの特徴を強調するように機能する。しかし、コンディショナーは、現在、毛小皮との一時的な会合を有するもののみが入手可能であり、従って、使用者は、髪の艶および髪本体を維持するために、定期的にコンディショナーを適用しなければならない。本発明者らの同時係属中の出願、PCT/GB00/00517は、リポカリン(例えば、β−ラクトグロブリン、マウス尿タンパク質(MUP)および他種由来の等価物)は、髪に対するコンディショニング特性を提供するように適合され得ることを実証する。
【0013】
さらに、またはあるいは、リポカリンのマルチマー複合体は、1以上の薬剤を保有するように適合され得る。例えば、限定としてではなく、マルチマーリポカリン複合体は、髪に対するコンディショニング剤および香料の両方を保有するために使用され得る。香料分子は、一般に、揮発性である。リポカリンに対する香料分子の結合は、遅延された放出および/または制御された放出を提供する。このようなリポカリンの1つの例は、ピーマンの臭気物質(odourant)でる3−イソブチル−3−メトキシピラジンを結合する、ピラジン結合タンパク質である。他の例は、MUPおよび等価物である。
【0014】
あるいは、リポカリンは、選択された臭気物質を結合するように、ライブラリーから選択され得る。組換えDNA技術によって作製される、ランダムに変異したカリシンの膨大なライブラリーが、選択された遺伝子に変異を導入するように設計される。これらのライブラリーから、特定のリガンド(例えば、香料、薬物、抗生物質、色素)に対する特定の結合特異性が、検出および単離される。
【0015】
色素性リポカリン、クラスタシアニンは、本発明者らによって配列決定およびモデリングされた。この例において、リガンドは、カロチノイド、アスタキサンチンであり、このようなリポカイン−カロチノイド複合体が天然に多数存在する。カロチノイドとリポカインとの間の相互作用は、アスタキサンチンの吸光特徴に変化を生じ、その結果、この複合体は今や異なる色を装う。この系は、異なる波長で吸収し得、そして環境条件の変化(例えば、温度、時間、pH、微生物培養、薬剤の添加または除去)に対して感受性である、色に基づいたセンサーを提供する。上記のように生成される変異は、リガンドおよび環境条件に対する感受性を規定し得る。
【0016】
(発明の説明)
本発明に従って、以下:
i)リガンドに結合するように適合された結合ドメイン;および
ii)基材に対して結合するように適合された標的化ドメイン
を含む改変されたカリシンモノマーが提供され、ここで、改変されたカリシンモノマーが天然では結合しない基材に対してリガンドを標的化させるために使用される点で特徴付けられる。
【0017】
リガンド結合ドメインは、リガンド(代表的に、決して排他的にではなく、疎水性分子を含む)を結合する。このリガンドは、通常天然では遭遇しないリガンドであり得る。
【0018】
カリシンが配置される基材としては、髪または皮膚を除く任意の基材が挙げられ得る。例として、カリシンが配置される基材としては、衣服の繊維(特に、カリシンが芳香剤結合カリシンであり、かつ、粉末洗剤および他のこのような洗濯製品に使用される場合)が挙げられ得る。カリシンが治療分子の結合および送達に使用される場合、カリシンが配置され得る基材としては、細胞表面が挙げられ得る。
【0019】
他の潜在的な基材は、紙(セルロース)、キチン、コラーゲン、ガラス、金属、合成ポリマーなど(これら全ては、ネイティブリポカリンもしくは変異リポカリンによって結合され得る部分、またはリポカリンに結合する特異的な結合タンパク質/ドメインによって結合され得る部分を含む)によって提供されるような表面を含む。
【0020】
操作されたカリシンモノマーは、化学的方法または分子生物学的な方法によって融合された2つのネイティブモノマーで構成され得、それによって2つ以上の特異性を生成するか、または別のポリマー基材上の1つの実体/部分に結合し得る古典的なモノマー形態を生成する。本発明の好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーは、少なくとも2つのリガンドを結合するように適合され得る。好ましくは、これらのリガンドは同じである。あるいは、改変されたカリシンモノマーは、少なくとも2つの異なるリガンドを結合するように適合される。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーは、マルチマー複合体である。好ましくは、このマルチマー複合体は、同じカリシンモノマーを含む。あるいは、この複合体は、異なるカリシンモノマーを含む。
【0022】
カリシン複合体は、異なるリガンドを結合するが同じ標的化ドメインを含み、同一表面に対する異なるリガンドの標的化を促進するモノマーを含み得る。あるいは、この複合体は、同じリガンドを結合するが異なる標的化ドメインを含み、異なる表面に対する同じリガンドの標的化を促進するモノマーを含み得る。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーはさらに、複合体中のカリシンモノマーのマルチマー化を促進する相互作用ドメインを含む。例としては、サブユニット:サブユニット相互作用に関与するさらなるエレメントを有する、ウシOBPおよびクラスタシアニン(crustacyanin)様グル−プのメンバーが挙げられる。
【0024】
好ましくは、カリシンモノマーの複合体へのマルチマー化は、ペプチド連結を介して達成される。従って、相互作用ドメインの性質は、好ましくは、少なくとも2つのモノマー間のそのような連結の形成が促進されるような性質である。相互作用ドメインは、カリシンの天然に存在する部分であり得るか、または合成技術もしくは組換え技術(例えば、従来の技術)を用いて挿入され得る。
【0025】
本発明の代替の好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーは、架橋剤によってマルチマー化される。好ましくは、この架橋剤は、二官能性のタンパク質架橋剤である。架橋剤は、ホモ二官能性またはへテロ二官能性であり得る。
【0026】
DSS、DMA、EDCのような架橋剤は、当該分野で周知であり、そして官能基を介してタンパク質を互いに架橋させるために使用される。代表的に、架橋剤は、遊離のアミノ基を通してタンパク質を連結するか、またはシステインのような硫黄含有アミノ酸中のスルフヒドリル基の間を連結する。架橋剤は、共有結合連結または非共有結合連結のいずれか(これらは、架橋されたタンパク質複合体の周囲の環境を変更することによって(例えば、還元剤の添加によって)壊され得る)を生成し得る。
【0027】
本発明のさらなる局面に従って、以下の工程を包含する、改変されたカリシンモノマをマルチマー化させるための方法が提供される:
i)マルチマー複合体に改変されたカリシンモノマーを架橋させるのに十分な条件および架橋試薬と共に、改変されたカリシンモノマーを提供する工程;および必要に応じて、
ii)架橋された複合体を試薬混合物から精製する工程。
【0028】
本発明のさらなる局面において、少なくとも1アミノ酸残基の欠失、置換または付加によって変更された、改変されたカリシンモノマーが提供され、ここで、この変更は、少なくとも1つのリガンドに対する結合ドメインの特異性を変更する。あるいは、またはさらに、この変更は、少なくとも1つのリガンドに対するこの結合ドメインの親和性を変更する。
【0029】
図4は、天然の単離されたタンパク質であるrERAPBおよびrMUPのタンパク質マップを示す。これらのタンパク質は、示されるようないくつかの組換えタンパク質を構築するための鋳型として使用された。
【0030】
精巣上体レチノイン酸結合タンパク質(ERABP)におけるArg80およびGlu63のイソロイシンへの変異は、レチノイン酸に対する親和性を低減させ、そして変異体タンパク質のレチノールおよびレチナールへの結合を引き起こす。このネイティブタンパク質は、これら後者2つのリガンドに結合することができない(図5)。
【0031】
本発明のなおさらなる局面において、少なくとも1アミノ酸残基の欠失、置換または付加によって変更された、改変されたカリシンモノマーが提供され、ここで、この変更はいずれも、選択された表面に対するこの改変されたカリシンモノマーの標的化ドメインの特異性を変更する。あるいは、またはさらに、この変更は、選択された表面に対する標的化ドメインの親和性を変更する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、この変更された改変されたカリシンモノマーは、本発明の上記の実施形態のうちのいずれかに従って、複合体にマルチマー化される。
【0033】
上記の変更カリシンを作製するための方法は、当該分野で周知であり、そしてカリシンモノマーおよび融合タンパク質の作製における組換えDNA技術を含む。薬剤に対するカリシンの親和性が、例えば、結合ドメインを遺伝子改変し、その薬剤に対するより高い親和性を有する適合されたカリシンを作製することによって変更され得ることもまた、当業者に明らかである。さらに、結合ドメインは、薬剤結合の特異性を変更するように遺伝子改変され得る。標的化ドメインの特異性が、標的化の特異性を変更するか、あるいは選択された表面上のその結合部位に対する標的化ドメインの親和性を増大または低減させるかのいずれかで変更され得ることもまた、明らかである。この型の遺伝子改変は、当該分野で周知であり、そして例えば、薬剤結合部位および/または標的化ドメインの特性を変更するための点変異の導入が挙げられる。
【0034】
1つより多くの型の薬剤結合ドメインを有する分子複合体の産生が生成され得ることもまた、明らかである。これは、複数成分の遺伝子および遺伝子産物を生成するための適切な連結領域を用いて、カリシンに対する遺伝子の互いの融合によって達成され得る。あるいは、相互作用部位がカリシンの個々のモノマーに導入され得、その結果、個々のタンパク質を混合する際に、分子が、類似の官能基または異なる官能基を有する複数サブユニットの複合体に集合する。この型の遺伝子改変は、当該分野で周知であり、そしてタンパク質の特性を変更するための点変異、付加、欠失などの導入が挙げられる。
【0035】
本発明のさらなる局面に従って、本発明の上記の局面または実施形態のうちのいずれかに従う改変されたカリシンモノマーをコードする核酸を含むベクターが、提供される。例としてであり限定ではなく、pQE−30ベクターは、ネイティブカリシン配列または変異カリシン配列を含むE.Coli株(例えば、SG13009)における発現のために使用され得る。pPIC3.5ベクターは、ネイティブカリシン配列または変異カリシン配列を含む酵母株(例えば、Pichia pastoris株(例えば、MSD1168−his4またはGS115−his4))における発現のために使用され得る。これらは全て、市販のベクター/株である。
【0036】
好ましくは、上記のベクターは、上記改変されたカリシンモノマーの組換え産生に対して適合される。
【0037】
代表的に、上記適合としては、例としてであり限定ではないが、細胞/組織特異的発現を媒介する転写制御配列(プロモーター配列)の供給が挙げられる。これらのプロモーター配列は、誘導性、抑制性または構成性であり得る。適合としてはまた、選択マーカーおよび自律複製配列(これらの両方は、真核生物細胞または原核生物宿主のいずれかにおける上記ベクターの維持を促進する)の供給が挙げられる。遺伝子をコードするベクターの発現を促進する適合としては、転写終了配列/ポリアデニル化配列の提供が挙げられる。これはまた、二シストロン発現カセットまたは複数シストロン発現カセットに配置される遺伝子をコードするベクターの発現を最大化するように機能する内部リボソーム侵入部位(IRES)の供給を含む。
【0038】
これらの適合は、当該分野で周知である。一般的に、発現ベクター構築および組換えDNA技術に関する公開された文献は、有意な量で存在する。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbour,NYおよびその中に引用される参考文献;Marston,F(1987)DNA Cloning Techniques:A Practical Approach Vol III IRL Press,Oxford UK;DNA Cloning:F M Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照のこと。
【0039】
特定の部位特異定変異体は、Stratagene,La Jolla,CA,USAから入手可能であるQuikChangeTM部位指向型変異誘発と称される市販の方法論の使用によって作製される。
【0040】
変異体リポカリンライブラリーは、「DNAシャッフリング」(STEMMER,W.P.C.(1994)Nature 370 389−391、STEMMER,W.P.C.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91 10747−10751)として公知の公開された方法論によって作製される。
【0041】
特定の変異体リポカリンを特定のレセプターに標的化する目的のために、リポカリン分子の3つのループ領域(標的化を担う)が、オリゴヌクレオチドプライマー対を使用するPCRに基づく方法論を使用して変更され、このオリゴヌクレオチドプライマー対は、挿入されるループ領域に対する配列をその間に含む。このような反応において、取り出されるループの配列は、除去され、そしてオリゴヌクレオチドプライマー中にコードされる配列によって置換される。
【0042】
本発明のなおさらなる局面に従って、本発明に従ってベクターで形質転換またはトランスフェクトされる細胞または細胞株が、提供される。例示のためであり限定ではないが、E.coli株(SG13009を含む)および酵母菌株(Pichia pastorisを含む)が、使用され得る。
【0043】
本発明のなおさらなる局面において、以下の工程を包含する、本発明に従う改変されたカリシンモノマーを組み換え的に製造するための方法が提供される:
i)上記ポリペプチドの製造の助けとなる条件下で、本発明に従うベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトされた細胞または細胞株を増殖させる工程;および
ii)上記細胞または上記細胞の増殖環境から改変されたカリシンモノマーを精製する工程。
【0044】
本発明の好ましい方法において、ベクターは、分泌シグナルまたは親和性タグ(例えば、His6またはストレプトアビジンペプチド)をコードし、従って、この改変されたカリシンモノマーが、これらの分泌シグナルまたは親和性タグを伴なって提供され、モノマーの精製を促進する。
【0045】
本発明の上記の局面または実施形態のいずれかに従って、改変されたカリシンモノマーまたは改変されたカリシンマルチマーは、洗濯物の表面繊維に対して少なくとも1つの薬剤を標的化させる際の使用のために適合される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、薬剤は、洗濯物に所望の臭気を与える芳香を含む。使用される芳香分子は、図6に列挙され、そして単に例示として、β−イオノン、ジャスモン、ダマスコーン(damascone)および関連する分子が挙げられる。
【0047】
さらに好ましい実施形態において、薬剤は、洗濯物に心地よい風合いを与えるコンディショナー(例えば、シリコーン)を含む。
【0048】
なおさらなる好ましい実施形態において、薬剤は、洗濯物に対する保護特性を与える保護剤(例えば、殺虫剤、駆虫剤またはUV保護剤)を含む。
【0049】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、カリシンは、図7に列挙されるもののうちのいずれかから選択され、最も好ましくは、以下から選択される:マウス尿タンパク質(MUP)およびその等価物、ラットα2ミクログロブリン臭気結合タンパク質(OBP)、他の臭気結合タンパク質およびそれらの等価物、β−ラクトグロブリン、レチナールおよびレチノイド結合タンパク質、α1ミクログロブリン、脂肪酸結合タンパク質、細胞内レチノイド結合タンパク質のいずれかから選択され、これらは全て、疎水性リガンド結合に関与し、そして他の特異性を含むように改変され得る(例えば、抗生物質、薬物、顔料など)。クラスタシアニン(crustacyanin)、インセクタシアニン(insectacyanin)が、色素性リポカリンの好ましい例である。
【0050】
これらのうちのいずれかが、モノマーであり得、そして化学的方法論または分子生物学的方法論を用いてマルチマー形成に関与し得る。
【0051】
本発明の上記の局面または実施形態のうちのいずれかに従って、改変されたカリシンモノマーまたは改変されたカリシンマルチマーは、バイオセンサーとしての使用のためのものである。本明細書中において特に重要なものは、色素性リポカリン(ネイティブバージョンまたは変異バージョン)であり、これは、例として、熱感受性、光感受性または気体感受性であり、そしてその応答は、色の変化を含む。上記のように作製された変異体はまた、リガンドおよび環境条件に対する感度を規定し得る。
【0052】
本発明の上記の局面または実施形態のうちのいずれかに従って、改変されたカリシンモノマーまたは改変されたカリシンマルチマーは、少なくとも1つの表面(例えば、細胞表面)に対する少なくとも1つの治療剤の標的化における使用のためのものだる。次いで、治療剤は、細胞中に移され得、それによって薬物の標的化、送達および取り込みをもたらす。治療剤の性質は、非常に変化し得る。例としては、抗癌剤、抗生物質およびチャネル改変因子が挙げられる。
【0053】
標的化の特定の実施例は、以下;
(i)レセプター認識配列を通じた細胞表面への標的化、それによる、その表面を通じた治療因子(例えば、抗癌薬、抗生物質、神経薬、レセプター、およびイオンチャネルモジュレーター)の取り込みの促進、
(ii)生物学的に活性な因子(例えば、ビタミン、成長因子、抗生物質、およびシグナル分子)の緩やかな送達をもたらすパッチまたは創傷仕上げ材料(dressing)のような表面への接着、
を含む。
【0054】
リポカリン(例えば、MUP)の変異体のライブラリーから、規定された治療因子に対する特定の特異性を有するタンパク質が単離され得る。次いで、このリポカリンは、さらなる変異誘発に供され、その結果、RBPの残基30〜41、56〜69、および87〜101、またはMUPにおけるそれらの等価物が、上記ライブラリーから単離されたリポカリンに挿入される。次いで、これらの再構築されたリポカリンは、リガンドの送達のために使用される。これらのリポカリンは、適切なレセプターを含む生物学的膜に輸送する。
【0055】
従って、本発明は、(i)カリシン/リポカリンのその細胞膜レセプターおよび他のキャリアへの結合に影響を与えるためのカリシンの領域の変更、または(ii)異なるレセプターにリポカルシンコアを再度指示するためのキメラの生成(例えば、ERABPおよびRBPおよびMUPの生成)によるカリシンの領域の変更を包含する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態は、RBPに含まれる残基30〜41、56〜69、および87〜101による、ERABPにおけるそれぞれ、残基21〜37、54〜59、および77〜84の置換を包含する。この置換により、ここでは、リガンド依存的な様式で、トランスサイレチンおよびRBPレセプターと相互作用するERABP変異体が生じる。
【0057】
同様に、RBPに含まれる残基59〜68および87〜101による、MUPにおけるそれぞれ残基58〜63および82〜87の置換は、リガンド依存的な様式で、トランスサイレチンおよびRBPレセプターと相互作用するMUP/RBPキメラを生じる。リポカリンからリポカリンへ移され得るこれらの領域は、特異的な標的化の例である。
【0058】
本発明の実施形態を、ここで、単に例示として、以下の図面、方法、および材料を参照して記載する。
【0059】
(材料および方法)
(カリシンマルチマーを生成する方法)
カリシン分子のマルチマーを生成するための多くの可能性のあるアプローチが存在する。生成されるマルチマーは、ホモマーおよびヘテロマーであり得、そして2つのカリシン分子(ダイマー)またはより高次の複合体(トリマー以上)を含み得る。キメラ手段によりヘテロダイマーを生成するための好ましい経路を、以下に概説する。
【0060】
(N末端を通じたへテロダイマーの架橋)
(ジスクシンイミジル−スベリミデート(suberimidate)−ジヒドロクロリド(DSS))
DSSは、ホモ二官能性試薬(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)であり、N末端アミンまたは表面に露出したリジンアミノ基を通じてそれらに連結したタンパク質中の1級アミノ基と反応する。DSSを、氷冷した25mM Na2HPO4/1mM−MgCl2(pH8.0)中の20mg/mlの新鮮なストック溶液として調製し、そして同一の緩衝液中の1mg/mlカリシン調製物に添加して、0.5、2.0、および10mg/mlの使用濃度(working concentration)を与えた。この反応を、室温(21℃)にて1時間進行させ、そして反応混合物1ml当たり50μlの1.0M−酢酸アンモニウムを添加することによりクエンチした。
【0061】
(ジメチル−アジピミデート(adipimidate)−ジヒドロクロリド−(DMA))
条件を、DSS処理と同一にした。
【0062】
(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(DFDNB)
DFDNBを、1.0Mストック溶液として調製し、そして25mM Na2HPO4/1mM MgCl2(pH8.0)中のカリシン懸濁物に添加し、終濃度5.0mMを与えた。この反応を、室温にて30分間後、大量の0.1M酢酸アンモニウム(pH7.0)に対して透析することにより停止させた。
【0063】
(N−ヒドロキシスクシンイミジル2,3−ジブロモプロピオネート(SDBP)
SDBPは、カリシン間で架橋を形成するための連続反応において使用される、ヘテロ二官能性試薬(ジブロモプロピオネートおよびN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)である。SDBPを、製造者の説明書に従いストック溶液として調製した。1mg/mlの濃度の第1のカリシンを、SDBPの至適濃度で1時間の間、4℃にてpH7のリン酸緩衝液中で絶えず攪拌しながら添加したSDBPのN−ヒドロキシスクシンイミド部分と反応させた。過剰な架橋剤を、ゲル濾過により除去し、そして誘導体化したカリシン(ここでは、その表面にアルキルジブロミド基を含むカリシン)を、温度を21℃まで上昇させることにより第2のカリシン(総タンパク質濃度1mg/ml)と反応させた。この反応もまた、第1の反応と同一の緩衝液およびpH条件下で絶えず攪拌しながら実施した。
【0064】
(アミノ基およびカルボキシル基を通じたヘテロダイマーの架橋)
(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(EDC))
1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)は、所望のヘテロダイマーを形成するための、1つのカリシンのN末端アミノ基(またはリジンの側鎖アミノ基)と第2のカリシンのC末端カルボキシル基との間のアミド結合の形成を触媒するために使用される。EDCを、製造者の説明書に従い、ストック溶液として調製した。タンパク質を、1.0mg/mlの濃度で2−[N−モルホリノ]−エタンスルホン酸(MES)緩衝生理食塩水(pH4.5〜5.0)中に懸濁し、そして25℃にて16時間、EDCの至適濃度で攪拌しながらEDCを添加した。
【0065】
(1つのアミノ基および1つの遊離システイン残基を通じたへテロダイマーの架橋)
(スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC))
スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)は、1つのカリシンのN末端アミノ基(またはリジンの側鎖アミノ基)および他のカリシンの遊離スルヒドリル基と連続的に反応させるために使用される、ヘテロ二官能性架橋剤(N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびマレイミド)である。SMCCを、製造者の説明書に従いストック溶液として調製した。N−ヒドロキシスクシンイミド部分との反応を、4℃で60分間、SMCCの至適濃度で絶えず攪拌しながら、pH7.0のリン酸緩衝液中で実施した。過剰な架橋剤を、ゲル濾過により除去し、そして誘導体化したカリシン(ここでは、結合したマレイミド部分を有するカリシン)を、第2のカリシンにおける表面が露出したシステイン側鎖と反応させた。このマレイミド反応を、4℃で20時間、0.1〜1.0mg/mlの最終タンパク質濃度で絶えず攪拌しながら、pH6.5〜7.5のリン酸緩衝液中で実施した。この反応は、第1のカリシンが遊離のシステインを欠き、第2のカリシンがそれを含む場合に好ましい。
【0066】
望ましくないカリシンホモダイマーおよび所望のカリシンへテロダイマーの混合物を、両方のカリシンの結合特性を認識する2つのアフィニティークロマトグラフィー工程の組み合わせにより単離する。上述されるほとんどの架橋剤について、必要な場合使用され得る異なるスペーサーアーム長を有する類似物が利用可能である。
【0067】
一般的に、上述のほとんどの架橋反応について、架橋試薬は、タンパク質よりも2〜50倍モル過剰で用いられる;用いられる架橋剤の実際の濃度もまた、用いられるタンパク質濃度に依存する。当該分野で十分に確立された方法に従い、架橋反応の完了後、過剰の架橋剤または加水分解した架橋剤を、ゲル濾過、透析、または遠心分離濃縮によりクエンチおよび除去する。任意の特定の架橋反応の正確な条件(反応pH、温度、時間、ならびにタンパク質および架橋剤の濃度の面で)は、実験を通して特定の反応のために最適化される必要がある。
【0068】
(α−クラスタシアニン由来のホモダイマー、ヘテロダイマー、およびオリゴマーの形成)
ロブスター組織から単離したネイティブのα−クラスタシアニン(約0.3mg/mL)を、室温にて20時間、pH4.5で種々の濃度のEDC(20μM〜10mMの範囲)と共にインキュベートした。サンプルを、SDSゲル電気泳動により分析した。得られたクマシーブルー染色したゲルを、図3に示す。
【0069】
図3は、このカリシンが、非常に効果的に架橋されて、非常に大きなオリゴマー種を形成することを示し、これらは、そのネイティブタンパク質自体のオリゴマー性質を反映しているようである(すなわち、モノマー、C1およびA2を含むヘテロダイマーが非共有結合したオクトマーであると考えられる)。
【0070】
図3は、未処理サンプルにおける完全に分離した2つのモノマーを示し、そしてEDC架橋剤の濃度が増加するにつれて、A2モノマーが優先的に架橋され、その後C1サブユニットが増加したサイズのオリゴマーに架橋されることを示す。10mM EDCにより、実質的に全てのモノマーが架橋されており、そして少量のダイマーが見られる。
【0071】
本明細書に示されるデータは、カリシンモノマーが、ホモダイマー、ヘテロダイマー、およびよりより高次のオリゴマーに容易に架橋され得ることを示す。このような反応は、2つ以上の異なり、かつ特異的な結合ポケットを有するカリシン種の形成を可能にする。ホモダイマー、ヘテロダイマー、およびオリゴマーが形成される程度は、特定のカリシンに依存する。カリシンモノマーが、最初に、互いに非共有的に関連し合うほど近接している場合(α−クラスタシアニンの場合のように)、非常に効率的な架橋が達成され得る。
【0072】
(リガンド−リポカリン複合体の調製)
代表的に、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)中のリポカリンタンパク質を、2倍モル過剰のリガンドと共に、37℃で1時間インキュベートする。リガンド−リポカリン複合体を、例えば、2mM Tris−HCl、pH9.0で平衡化し、そして展開したSephadex G−25(20×1cmカラム)を用いたゲル濾過により、非結合リガンドから分離する。
【0073】
(細胞膜および細胞に結合する放射標識リポカリンの測定)
細胞膜および細胞への放射標識リポカリンの結合を、油遠心分離技術を用いてか、またはフィルターを通じた濾過および洗浄により測定する。油遠心分離について、PBS(オボアルブミンを含む)中の標的細胞膜(1〜2mgタンパク質/ml)または細胞(1〜2×106細胞/ml)を、放射標識リポカリン(2〜10nM)と共に、最終容量100μlでインキュベートする。所望の温度および所望の時間のインキュベーションの後、サンプルを、微量遠心分離において、2分間、12,500gで遠心分離する。次いで、サンプルに、ジブチルフタレートおよびジノニルフタレートの適切な混合物(代表的に、3:2、v/v)を上乗せし、そして12,500gで2分間、再度遠心分離する。このチューブをドライアイス中で凍結させ、そしてチューブの底(細胞または膜ペレットを含む)を切り取り、放射活性を測定する。放射標識リポカリンの非特異的結合を、少なくとも2μMの非標識リポカリンの存在下で測定する。
【0074】
膜濾過方法について、細胞膜または細胞を伴う放射標識リポカリンのインキュベーションの完了後、サンプルを、ガラス線維膜フィルターを通して吸引により濾過し、そしてフィルターを、数mlのPBSを用いて3〜4回同様に洗浄する。次いで、フィルターの放射活性を決定する。
【0075】
(リポカリンからのリガンド取り込みアッセイ)
膜小胞または細胞による放射標識リガンド−リポカリン複合体からのリガンドの取り込みアッセイを、上記と同様の油遠心分離法(今回は、リガンドを放射標識したことを除く)により実施した。トリチウム標識リガンドを使用したいくつかの場合、油混合物を、50μlアリコートの5%スクロース含有PBS上に重ね、そして標識した試験サンプルを、遠心分離前に油層上に置いた。ドライアイスで凍結させた後、チューブを油/スクロース界面で切断した。チューブの底を、室温にて一晩、200μlの10%(w/v)SDS中でインキュベートし、そしてそれらの放射標識リガンド含有量を測定した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、多くのカリシンにおいて見出される保存された特徴の概略図である。
【図2】図2は、EDCにより誘導されるβ−LG/rMUPヘテロダイマーの形成のさらなる証拠を示すオートラジオグラフを示す。ここで、レーン1は[35S]Met標識rMUP+β−LGおよび0.5mM EDCを表わし、レーン2は[35S]Met標識rMUPおよび0.5mM EDCを表わし、そしてレーン3は[35S]Met標識rMUP(未処理)を表わす。Mは、分子量マーカーを含むゲルのレーンを示す。
【図3】図3は、EDCにより誘導される、α−クラスタシアニンのオリゴマー化を示すタンパク質ゲルを示す。Mは、分子量マーカーを含むゲルのレーンを示す。
【図4】図4は、天然の単離されたタンパク質rERAPBおよびrMUPならびにいくつかの組換えタンパク質のタンパク質マップを示す。
【図5】図5は、選択されたリガンドについての種々のタンパク質のリガンド結合親和性を示す。
【図6】図6は、本発明の実施形態において用いられ得る例示的な芳香分子のリストを提供する。
【図7】図7は、本発明の実施形態において用いられ得る例示的なカリシンのリストを提供する。
本発明は、カリシン(calycin)の使用に関し、特に、基質に対するリガンドの輸送および/または結合におけるリポカリン(lipocalin)の使用に関し(ここで、この基質は、髪でも皮膚でもない);そしてまた、この基質および/またはリガンドに対するこのカリシンの特異性および/または親和性を変更するための、カリシンの改変に関する。
【0002】
リポカリンは、生物において見出される細胞外タンパク質の多様なファミリーである。これらは、リガンドの結合および輸送に関する種々の機能を示す。例えば、これらは、フェロモン活性、嗅覚、味覚、視覚、免疫調節、および細胞の恒常性に関する一般的機能の媒介に関与する。
【0003】
おそらく最も広く研究されたリポカリンは、レチノールを体中に輸送するレチノール結合タンパク質(RBP)である。レチノール(すなわちビタミンA)は、視覚の正常な機能、生殖系および免疫系、ならびに造血にとって必須の、非常に重要な物質である。レチノールの代謝物はまた、発生、分化および抗癌細胞において活性である。
【0004】
RBPの三次元構造は、1984年に決定され(Newcomer,M.E.、Jones,T.A.、Aqvist,J.、Sundelin,J.、Eriksson,U.、Rask,L.およびPeterson,P.A.(1984)EMBO J.3 1451−1454)、新規構造が明らかになった。多くのリポカリンが同定および特徴付けされるにつれ、この塩基性の8−β鎖構造が、アミノ酸配列同一性の全体的なレベルは低いものの、全ての構造的ホモログにおいて保存されていることが明らかになった。このファミリーのタンパク質は、リポカリン(ギリシャ語の単語、脂肪を意味するlipoおよび萼を意味するcalyxに由来する)として公知になった。10−β鎖の細胞内タンパク質の密接に関連するファミリーもまた見出され、この2つの群が一緒になってカリシンを構成する。
【0005】
リポカリンは、全生物で見出され、分子量は約18kDa〜45kDaの範囲である。しかし、これは、モノマー分子形態を示す;多くのリポカリンは、マルチマーとして存在する。例えば、ビリン結合タンパク質は、19.5kDaのモノマーサブユニットのホモテトラマーとして存在する。アポリポタンパク質Dは、ダイマーとして存在するが、他のタンパク質とも会合する。RBPは、1:1までの比で、TTRと複合体化して見出されるが、クラストシアニン(crustacyanin)は、その安定な分子形態において16個のサブユニットを含むようである。
【0006】
上記のように、リポカリンは、アミノ酸レベルではそれほど保存されていないが、これらをリポカリンとして認識可能にしている特定の構造的特徴を保持する。コア構造は、直交して配置されたβシートによって示され、これらのβ鎖は、互いに連結して、一方の端が閉じたバレル様構造を形成し、それによって、「萼形状」構造を生じる。このように生成される空洞は、リポカリンによるリガンド輸送/結合のための結合ポケットを示す。リポカリンとしてタンパク質を同定するための助けとなるいくつかの短い配列相同領域が存在する。GXWモチーフおよびTDYモチーフは、2つの最も決定的であるが必須ではないモチーフである。
【0007】
リポカリンの主要な機能は、(少なくとも1つは酵素活性を有するが)通常は小さい疎水性分子である特定のリガンドの結合および輸送である。結合の特異性は、リポカリンポケットの立体配座および構成側鎖によって決定される。多くのリポカリンが、インビトロで、通常、天然では出会うことのない範囲の疎水性分子に高親和性で結合し得ることが注目される。このことは、リポカリンが、特定の生物学的特性および構造的特性を有する分子に結合する固有の能力を示し得る。
【0008】
広く研究されてきたリポカリンの別の例は、β−ラクトグロブリンである。β−ラクトグロブリンは、哺乳動物の乳汁中に見出される非常に豊富なタンパク質である。ウシβ−ラクトグロブリンのモノマー分子量は、18kDaであり、162アミノ酸に相当する。多くの研究者が、β−ラクトグロブリンが、インビトロでレチノールおよび脂肪酸を結合することを示した。しかし、インビトロでβ−ラクトグロブリンが果たす正確な役割は、いまだ理解されていない。
【0009】
簡単にいうと、カリシンは、「結合ドメイン」と「標的化ドメイン」とに、機能的に分けられ得る。「結合ドメイン」は、リガンドと相互作用するように機能し、そして「標的化ドメイン」は、結合したリガンドを規定された部位に輸送する際の特異性を提供するように機能する。
【0010】
いくつかの例において、この結合ドメインはまた、標的化機構の一部であり得る。
【0011】
本発明者らの同時係属中の出願、PCT/GB00/00517において、本発明者らは、β−ラクトグロブリンが非天然の部位で脂肪酸を結合する能力を議論した。この用語、非天然は、リポカリンが天然には出会うことのない標的化部位として定義される。この結合ドメインおよび/または標的化ドメインが、このカリシンに対して内因性であり得ることが、当業者に明らかである。しかし、カリシンがこの薬剤を天然には結合しないいくつかの例において、対応する結合ドメインおよび/または標的化ドメインは、しかるべく適合される。この適合は、存在する結合ドメインおよび/または標的化ドメインの変更か、あるいは必要な機能性を有するドメインでの、これらのドメインの置換のいずれかを含み得る。
【0012】
毛小皮は、脂肪酸によって被覆されると考えられ、これらの脂肪酸は、水に対する疎水性障壁として機能し得、そしてまた、髪に天然の艶および風合いを与える。化粧品のヘアコンディショナーは、髪のこれらの特徴を強調するように機能する。しかし、コンディショナーは、現在、毛小皮との一時的な会合を有するもののみが入手可能であり、従って、使用者は、髪の艶および髪本体を維持するために、定期的にコンディショナーを適用しなければならない。本発明者らの同時係属中の出願、PCT/GB00/00517は、リポカリン(例えば、β−ラクトグロブリン、マウス尿タンパク質(MUP)および他種由来の等価物)は、髪に対するコンディショニング特性を提供するように適合され得ることを実証する。
【0013】
さらに、またはあるいは、リポカリンのマルチマー複合体は、1以上の薬剤を保有するように適合され得る。例えば、限定としてではなく、マルチマーリポカリン複合体は、髪に対するコンディショニング剤および香料の両方を保有するために使用され得る。香料分子は、一般に、揮発性である。リポカリンに対する香料分子の結合は、遅延された放出および/または制御された放出を提供する。このようなリポカリンの1つの例は、ピーマンの臭気物質(odourant)でる3−イソブチル−3−メトキシピラジンを結合する、ピラジン結合タンパク質である。他の例は、MUPおよび等価物である。
【0014】
あるいは、リポカリンは、選択された臭気物質を結合するように、ライブラリーから選択され得る。組換えDNA技術によって作製される、ランダムに変異したカリシンの膨大なライブラリーが、選択された遺伝子に変異を導入するように設計される。これらのライブラリーから、特定のリガンド(例えば、香料、薬物、抗生物質、色素)に対する特定の結合特異性が、検出および単離される。
【0015】
色素性リポカリン、クラスタシアニンは、本発明者らによって配列決定およびモデリングされた。この例において、リガンドは、カロチノイド、アスタキサンチンであり、このようなリポカイン−カロチノイド複合体が天然に多数存在する。カロチノイドとリポカインとの間の相互作用は、アスタキサンチンの吸光特徴に変化を生じ、その結果、この複合体は今や異なる色を装う。この系は、異なる波長で吸収し得、そして環境条件の変化(例えば、温度、時間、pH、微生物培養、薬剤の添加または除去)に対して感受性である、色に基づいたセンサーを提供する。上記のように生成される変異は、リガンドおよび環境条件に対する感受性を規定し得る。
【0016】
(発明の説明)
本発明に従って、以下:
i)リガンドに結合するように適合された結合ドメイン;および
ii)基材に対して結合するように適合された標的化ドメイン
を含む改変されたカリシンモノマーが提供され、ここで、改変されたカリシンモノマーが天然では結合しない基材に対してリガンドを標的化させるために使用される点で特徴付けられる。
【0017】
リガンド結合ドメインは、リガンド(代表的に、決して排他的にではなく、疎水性分子を含む)を結合する。このリガンドは、通常天然では遭遇しないリガンドであり得る。
【0018】
カリシンが配置される基材としては、髪または皮膚を除く任意の基材が挙げられ得る。例として、カリシンが配置される基材としては、衣服の繊維(特に、カリシンが芳香剤結合カリシンであり、かつ、粉末洗剤および他のこのような洗濯製品に使用される場合)が挙げられ得る。カリシンが治療分子の結合および送達に使用される場合、カリシンが配置され得る基材としては、細胞表面が挙げられ得る。
【0019】
他の潜在的な基材は、紙(セルロース)、キチン、コラーゲン、ガラス、金属、合成ポリマーなど(これら全ては、ネイティブリポカリンもしくは変異リポカリンによって結合され得る部分、またはリポカリンに結合する特異的な結合タンパク質/ドメインによって結合され得る部分を含む)によって提供されるような表面を含む。
【0020】
操作されたカリシンモノマーは、化学的方法または分子生物学的な方法によって融合された2つのネイティブモノマーで構成され得、それによって2つ以上の特異性を生成するか、または別のポリマー基材上の1つの実体/部分に結合し得る古典的なモノマー形態を生成する。本発明の好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーは、少なくとも2つのリガンドを結合するように適合され得る。好ましくは、これらのリガンドは同じである。あるいは、改変されたカリシンモノマーは、少なくとも2つの異なるリガンドを結合するように適合される。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーは、マルチマー複合体である。好ましくは、このマルチマー複合体は、同じカリシンモノマーを含む。あるいは、この複合体は、異なるカリシンモノマーを含む。
【0022】
カリシン複合体は、異なるリガンドを結合するが同じ標的化ドメインを含み、同一表面に対する異なるリガンドの標的化を促進するモノマーを含み得る。あるいは、この複合体は、同じリガンドを結合するが異なる標的化ドメインを含み、異なる表面に対する同じリガンドの標的化を促進するモノマーを含み得る。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーはさらに、複合体中のカリシンモノマーのマルチマー化を促進する相互作用ドメインを含む。例としては、サブユニット:サブユニット相互作用に関与するさらなるエレメントを有する、ウシOBPおよびクラスタシアニン(crustacyanin)様グル−プのメンバーが挙げられる。
【0024】
好ましくは、カリシンモノマーの複合体へのマルチマー化は、ペプチド連結を介して達成される。従って、相互作用ドメインの性質は、好ましくは、少なくとも2つのモノマー間のそのような連結の形成が促進されるような性質である。相互作用ドメインは、カリシンの天然に存在する部分であり得るか、または合成技術もしくは組換え技術(例えば、従来の技術)を用いて挿入され得る。
【0025】
本発明の代替の好ましい実施形態において、改変されたカリシンモノマーは、架橋剤によってマルチマー化される。好ましくは、この架橋剤は、二官能性のタンパク質架橋剤である。架橋剤は、ホモ二官能性またはへテロ二官能性であり得る。
【0026】
DSS、DMA、EDCのような架橋剤は、当該分野で周知であり、そして官能基を介してタンパク質を互いに架橋させるために使用される。代表的に、架橋剤は、遊離のアミノ基を通してタンパク質を連結するか、またはシステインのような硫黄含有アミノ酸中のスルフヒドリル基の間を連結する。架橋剤は、共有結合連結または非共有結合連結のいずれか(これらは、架橋されたタンパク質複合体の周囲の環境を変更することによって(例えば、還元剤の添加によって)壊され得る)を生成し得る。
【0027】
本発明のさらなる局面に従って、以下の工程を包含する、改変されたカリシンモノマをマルチマー化させるための方法が提供される:
i)マルチマー複合体に改変されたカリシンモノマーを架橋させるのに十分な条件および架橋試薬と共に、改変されたカリシンモノマーを提供する工程;および必要に応じて、
ii)架橋された複合体を試薬混合物から精製する工程。
【0028】
本発明のさらなる局面において、少なくとも1アミノ酸残基の欠失、置換または付加によって変更された、改変されたカリシンモノマーが提供され、ここで、この変更は、少なくとも1つのリガンドに対する結合ドメインの特異性を変更する。あるいは、またはさらに、この変更は、少なくとも1つのリガンドに対するこの結合ドメインの親和性を変更する。
【0029】
図4は、天然の単離されたタンパク質であるrERAPBおよびrMUPのタンパク質マップを示す。これらのタンパク質は、示されるようないくつかの組換えタンパク質を構築するための鋳型として使用された。
【0030】
精巣上体レチノイン酸結合タンパク質(ERABP)におけるArg80およびGlu63のイソロイシンへの変異は、レチノイン酸に対する親和性を低減させ、そして変異体タンパク質のレチノールおよびレチナールへの結合を引き起こす。このネイティブタンパク質は、これら後者2つのリガンドに結合することができない(図5)。
【0031】
本発明のなおさらなる局面において、少なくとも1アミノ酸残基の欠失、置換または付加によって変更された、改変されたカリシンモノマーが提供され、ここで、この変更はいずれも、選択された表面に対するこの改変されたカリシンモノマーの標的化ドメインの特異性を変更する。あるいは、またはさらに、この変更は、選択された表面に対する標的化ドメインの親和性を変更する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、この変更された改変されたカリシンモノマーは、本発明の上記の実施形態のうちのいずれかに従って、複合体にマルチマー化される。
【0033】
上記の変更カリシンを作製するための方法は、当該分野で周知であり、そしてカリシンモノマーおよび融合タンパク質の作製における組換えDNA技術を含む。薬剤に対するカリシンの親和性が、例えば、結合ドメインを遺伝子改変し、その薬剤に対するより高い親和性を有する適合されたカリシンを作製することによって変更され得ることもまた、当業者に明らかである。さらに、結合ドメインは、薬剤結合の特異性を変更するように遺伝子改変され得る。標的化ドメインの特異性が、標的化の特異性を変更するか、あるいは選択された表面上のその結合部位に対する標的化ドメインの親和性を増大または低減させるかのいずれかで変更され得ることもまた、明らかである。この型の遺伝子改変は、当該分野で周知であり、そして例えば、薬剤結合部位および/または標的化ドメインの特性を変更するための点変異の導入が挙げられる。
【0034】
1つより多くの型の薬剤結合ドメインを有する分子複合体の産生が生成され得ることもまた、明らかである。これは、複数成分の遺伝子および遺伝子産物を生成するための適切な連結領域を用いて、カリシンに対する遺伝子の互いの融合によって達成され得る。あるいは、相互作用部位がカリシンの個々のモノマーに導入され得、その結果、個々のタンパク質を混合する際に、分子が、類似の官能基または異なる官能基を有する複数サブユニットの複合体に集合する。この型の遺伝子改変は、当該分野で周知であり、そしてタンパク質の特性を変更するための点変異、付加、欠失などの導入が挙げられる。
【0035】
本発明のさらなる局面に従って、本発明の上記の局面または実施形態のうちのいずれかに従う改変されたカリシンモノマーをコードする核酸を含むベクターが、提供される。例としてであり限定ではなく、pQE−30ベクターは、ネイティブカリシン配列または変異カリシン配列を含むE.Coli株(例えば、SG13009)における発現のために使用され得る。pPIC3.5ベクターは、ネイティブカリシン配列または変異カリシン配列を含む酵母株(例えば、Pichia pastoris株(例えば、MSD1168−his4またはGS115−his4))における発現のために使用され得る。これらは全て、市販のベクター/株である。
【0036】
好ましくは、上記のベクターは、上記改変されたカリシンモノマーの組換え産生に対して適合される。
【0037】
代表的に、上記適合としては、例としてであり限定ではないが、細胞/組織特異的発現を媒介する転写制御配列(プロモーター配列)の供給が挙げられる。これらのプロモーター配列は、誘導性、抑制性または構成性であり得る。適合としてはまた、選択マーカーおよび自律複製配列(これらの両方は、真核生物細胞または原核生物宿主のいずれかにおける上記ベクターの維持を促進する)の供給が挙げられる。遺伝子をコードするベクターの発現を促進する適合としては、転写終了配列/ポリアデニル化配列の提供が挙げられる。これはまた、二シストロン発現カセットまたは複数シストロン発現カセットに配置される遺伝子をコードするベクターの発現を最大化するように機能する内部リボソーム侵入部位(IRES)の供給を含む。
【0038】
これらの適合は、当該分野で周知である。一般的に、発現ベクター構築および組換えDNA技術に関する公開された文献は、有意な量で存在する。Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbour,NYおよびその中に引用される参考文献;Marston,F(1987)DNA Cloning Techniques:A Practical Approach Vol III IRL Press,Oxford UK;DNA Cloning:F M Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照のこと。
【0039】
特定の部位特異定変異体は、Stratagene,La Jolla,CA,USAから入手可能であるQuikChangeTM部位指向型変異誘発と称される市販の方法論の使用によって作製される。
【0040】
変異体リポカリンライブラリーは、「DNAシャッフリング」(STEMMER,W.P.C.(1994)Nature 370 389−391、STEMMER,W.P.C.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91 10747−10751)として公知の公開された方法論によって作製される。
【0041】
特定の変異体リポカリンを特定のレセプターに標的化する目的のために、リポカリン分子の3つのループ領域(標的化を担う)が、オリゴヌクレオチドプライマー対を使用するPCRに基づく方法論を使用して変更され、このオリゴヌクレオチドプライマー対は、挿入されるループ領域に対する配列をその間に含む。このような反応において、取り出されるループの配列は、除去され、そしてオリゴヌクレオチドプライマー中にコードされる配列によって置換される。
【0042】
本発明のなおさらなる局面に従って、本発明に従ってベクターで形質転換またはトランスフェクトされる細胞または細胞株が、提供される。例示のためであり限定ではないが、E.coli株(SG13009を含む)および酵母菌株(Pichia pastorisを含む)が、使用され得る。
【0043】
本発明のなおさらなる局面において、以下の工程を包含する、本発明に従う改変されたカリシンモノマーを組み換え的に製造するための方法が提供される:
i)上記ポリペプチドの製造の助けとなる条件下で、本発明に従うベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトされた細胞または細胞株を増殖させる工程;および
ii)上記細胞または上記細胞の増殖環境から改変されたカリシンモノマーを精製する工程。
【0044】
本発明の好ましい方法において、ベクターは、分泌シグナルまたは親和性タグ(例えば、His6またはストレプトアビジンペプチド)をコードし、従って、この改変されたカリシンモノマーが、これらの分泌シグナルまたは親和性タグを伴なって提供され、モノマーの精製を促進する。
【0045】
本発明の上記の局面または実施形態のいずれかに従って、改変されたカリシンモノマーまたは改変されたカリシンマルチマーは、洗濯物の表面繊維に対して少なくとも1つの薬剤を標的化させる際の使用のために適合される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、薬剤は、洗濯物に所望の臭気を与える芳香を含む。使用される芳香分子は、図6に列挙され、そして単に例示として、β−イオノン、ジャスモン、ダマスコーン(damascone)および関連する分子が挙げられる。
【0047】
さらに好ましい実施形態において、薬剤は、洗濯物に心地よい風合いを与えるコンディショナー(例えば、シリコーン)を含む。
【0048】
なおさらなる好ましい実施形態において、薬剤は、洗濯物に対する保護特性を与える保護剤(例えば、殺虫剤、駆虫剤またはUV保護剤)を含む。
【0049】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、カリシンは、図7に列挙されるもののうちのいずれかから選択され、最も好ましくは、以下から選択される:マウス尿タンパク質(MUP)およびその等価物、ラットα2ミクログロブリン臭気結合タンパク質(OBP)、他の臭気結合タンパク質およびそれらの等価物、β−ラクトグロブリン、レチナールおよびレチノイド結合タンパク質、α1ミクログロブリン、脂肪酸結合タンパク質、細胞内レチノイド結合タンパク質のいずれかから選択され、これらは全て、疎水性リガンド結合に関与し、そして他の特異性を含むように改変され得る(例えば、抗生物質、薬物、顔料など)。クラスタシアニン(crustacyanin)、インセクタシアニン(insectacyanin)が、色素性リポカリンの好ましい例である。
【0050】
これらのうちのいずれかが、モノマーであり得、そして化学的方法論または分子生物学的方法論を用いてマルチマー形成に関与し得る。
【0051】
本発明の上記の局面または実施形態のうちのいずれかに従って、改変されたカリシンモノマーまたは改変されたカリシンマルチマーは、バイオセンサーとしての使用のためのものである。本明細書中において特に重要なものは、色素性リポカリン(ネイティブバージョンまたは変異バージョン)であり、これは、例として、熱感受性、光感受性または気体感受性であり、そしてその応答は、色の変化を含む。上記のように作製された変異体はまた、リガンドおよび環境条件に対する感度を規定し得る。
【0052】
本発明の上記の局面または実施形態のうちのいずれかに従って、改変されたカリシンモノマーまたは改変されたカリシンマルチマーは、少なくとも1つの表面(例えば、細胞表面)に対する少なくとも1つの治療剤の標的化における使用のためのものだる。次いで、治療剤は、細胞中に移され得、それによって薬物の標的化、送達および取り込みをもたらす。治療剤の性質は、非常に変化し得る。例としては、抗癌剤、抗生物質およびチャネル改変因子が挙げられる。
【0053】
標的化の特定の実施例は、以下;
(i)レセプター認識配列を通じた細胞表面への標的化、それによる、その表面を通じた治療因子(例えば、抗癌薬、抗生物質、神経薬、レセプター、およびイオンチャネルモジュレーター)の取り込みの促進、
(ii)生物学的に活性な因子(例えば、ビタミン、成長因子、抗生物質、およびシグナル分子)の緩やかな送達をもたらすパッチまたは創傷仕上げ材料(dressing)のような表面への接着、
を含む。
【0054】
リポカリン(例えば、MUP)の変異体のライブラリーから、規定された治療因子に対する特定の特異性を有するタンパク質が単離され得る。次いで、このリポカリンは、さらなる変異誘発に供され、その結果、RBPの残基30〜41、56〜69、および87〜101、またはMUPにおけるそれらの等価物が、上記ライブラリーから単離されたリポカリンに挿入される。次いで、これらの再構築されたリポカリンは、リガンドの送達のために使用される。これらのリポカリンは、適切なレセプターを含む生物学的膜に輸送する。
【0055】
従って、本発明は、(i)カリシン/リポカリンのその細胞膜レセプターおよび他のキャリアへの結合に影響を与えるためのカリシンの領域の変更、または(ii)異なるレセプターにリポカルシンコアを再度指示するためのキメラの生成(例えば、ERABPおよびRBPおよびMUPの生成)によるカリシンの領域の変更を包含する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態は、RBPに含まれる残基30〜41、56〜69、および87〜101による、ERABPにおけるそれぞれ、残基21〜37、54〜59、および77〜84の置換を包含する。この置換により、ここでは、リガンド依存的な様式で、トランスサイレチンおよびRBPレセプターと相互作用するERABP変異体が生じる。
【0057】
同様に、RBPに含まれる残基59〜68および87〜101による、MUPにおけるそれぞれ残基58〜63および82〜87の置換は、リガンド依存的な様式で、トランスサイレチンおよびRBPレセプターと相互作用するMUP/RBPキメラを生じる。リポカリンからリポカリンへ移され得るこれらの領域は、特異的な標的化の例である。
【0058】
本発明の実施形態を、ここで、単に例示として、以下の図面、方法、および材料を参照して記載する。
【0059】
(材料および方法)
(カリシンマルチマーを生成する方法)
カリシン分子のマルチマーを生成するための多くの可能性のあるアプローチが存在する。生成されるマルチマーは、ホモマーおよびヘテロマーであり得、そして2つのカリシン分子(ダイマー)またはより高次の複合体(トリマー以上)を含み得る。キメラ手段によりヘテロダイマーを生成するための好ましい経路を、以下に概説する。
【0060】
(N末端を通じたへテロダイマーの架橋)
(ジスクシンイミジル−スベリミデート(suberimidate)−ジヒドロクロリド(DSS))
DSSは、ホモ二官能性試薬(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)であり、N末端アミンまたは表面に露出したリジンアミノ基を通じてそれらに連結したタンパク質中の1級アミノ基と反応する。DSSを、氷冷した25mM Na2HPO4/1mM−MgCl2(pH8.0)中の20mg/mlの新鮮なストック溶液として調製し、そして同一の緩衝液中の1mg/mlカリシン調製物に添加して、0.5、2.0、および10mg/mlの使用濃度(working concentration)を与えた。この反応を、室温(21℃)にて1時間進行させ、そして反応混合物1ml当たり50μlの1.0M−酢酸アンモニウムを添加することによりクエンチした。
【0061】
(ジメチル−アジピミデート(adipimidate)−ジヒドロクロリド−(DMA))
条件を、DSS処理と同一にした。
【0062】
(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(DFDNB)
DFDNBを、1.0Mストック溶液として調製し、そして25mM Na2HPO4/1mM MgCl2(pH8.0)中のカリシン懸濁物に添加し、終濃度5.0mMを与えた。この反応を、室温にて30分間後、大量の0.1M酢酸アンモニウム(pH7.0)に対して透析することにより停止させた。
【0063】
(N−ヒドロキシスクシンイミジル2,3−ジブロモプロピオネート(SDBP)
SDBPは、カリシン間で架橋を形成するための連続反応において使用される、ヘテロ二官能性試薬(ジブロモプロピオネートおよびN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)である。SDBPを、製造者の説明書に従いストック溶液として調製した。1mg/mlの濃度の第1のカリシンを、SDBPの至適濃度で1時間の間、4℃にてpH7のリン酸緩衝液中で絶えず攪拌しながら添加したSDBPのN−ヒドロキシスクシンイミド部分と反応させた。過剰な架橋剤を、ゲル濾過により除去し、そして誘導体化したカリシン(ここでは、その表面にアルキルジブロミド基を含むカリシン)を、温度を21℃まで上昇させることにより第2のカリシン(総タンパク質濃度1mg/ml)と反応させた。この反応もまた、第1の反応と同一の緩衝液およびpH条件下で絶えず攪拌しながら実施した。
【0064】
(アミノ基およびカルボキシル基を通じたヘテロダイマーの架橋)
(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(EDC))
1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)は、所望のヘテロダイマーを形成するための、1つのカリシンのN末端アミノ基(またはリジンの側鎖アミノ基)と第2のカリシンのC末端カルボキシル基との間のアミド結合の形成を触媒するために使用される。EDCを、製造者の説明書に従い、ストック溶液として調製した。タンパク質を、1.0mg/mlの濃度で2−[N−モルホリノ]−エタンスルホン酸(MES)緩衝生理食塩水(pH4.5〜5.0)中に懸濁し、そして25℃にて16時間、EDCの至適濃度で攪拌しながらEDCを添加した。
【0065】
(1つのアミノ基および1つの遊離システイン残基を通じたへテロダイマーの架橋)
(スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC))
スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)は、1つのカリシンのN末端アミノ基(またはリジンの側鎖アミノ基)および他のカリシンの遊離スルヒドリル基と連続的に反応させるために使用される、ヘテロ二官能性架橋剤(N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびマレイミド)である。SMCCを、製造者の説明書に従いストック溶液として調製した。N−ヒドロキシスクシンイミド部分との反応を、4℃で60分間、SMCCの至適濃度で絶えず攪拌しながら、pH7.0のリン酸緩衝液中で実施した。過剰な架橋剤を、ゲル濾過により除去し、そして誘導体化したカリシン(ここでは、結合したマレイミド部分を有するカリシン)を、第2のカリシンにおける表面が露出したシステイン側鎖と反応させた。このマレイミド反応を、4℃で20時間、0.1〜1.0mg/mlの最終タンパク質濃度で絶えず攪拌しながら、pH6.5〜7.5のリン酸緩衝液中で実施した。この反応は、第1のカリシンが遊離のシステインを欠き、第2のカリシンがそれを含む場合に好ましい。
【0066】
望ましくないカリシンホモダイマーおよび所望のカリシンへテロダイマーの混合物を、両方のカリシンの結合特性を認識する2つのアフィニティークロマトグラフィー工程の組み合わせにより単離する。上述されるほとんどの架橋剤について、必要な場合使用され得る異なるスペーサーアーム長を有する類似物が利用可能である。
【0067】
一般的に、上述のほとんどの架橋反応について、架橋試薬は、タンパク質よりも2〜50倍モル過剰で用いられる;用いられる架橋剤の実際の濃度もまた、用いられるタンパク質濃度に依存する。当該分野で十分に確立された方法に従い、架橋反応の完了後、過剰の架橋剤または加水分解した架橋剤を、ゲル濾過、透析、または遠心分離濃縮によりクエンチおよび除去する。任意の特定の架橋反応の正確な条件(反応pH、温度、時間、ならびにタンパク質および架橋剤の濃度の面で)は、実験を通して特定の反応のために最適化される必要がある。
【0068】
(α−クラスタシアニン由来のホモダイマー、ヘテロダイマー、およびオリゴマーの形成)
ロブスター組織から単離したネイティブのα−クラスタシアニン(約0.3mg/mL)を、室温にて20時間、pH4.5で種々の濃度のEDC(20μM〜10mMの範囲)と共にインキュベートした。サンプルを、SDSゲル電気泳動により分析した。得られたクマシーブルー染色したゲルを、図3に示す。
【0069】
図3は、このカリシンが、非常に効果的に架橋されて、非常に大きなオリゴマー種を形成することを示し、これらは、そのネイティブタンパク質自体のオリゴマー性質を反映しているようである(すなわち、モノマー、C1およびA2を含むヘテロダイマーが非共有結合したオクトマーであると考えられる)。
【0070】
図3は、未処理サンプルにおける完全に分離した2つのモノマーを示し、そしてEDC架橋剤の濃度が増加するにつれて、A2モノマーが優先的に架橋され、その後C1サブユニットが増加したサイズのオリゴマーに架橋されることを示す。10mM EDCにより、実質的に全てのモノマーが架橋されており、そして少量のダイマーが見られる。
【0071】
本明細書に示されるデータは、カリシンモノマーが、ホモダイマー、ヘテロダイマー、およびよりより高次のオリゴマーに容易に架橋され得ることを示す。このような反応は、2つ以上の異なり、かつ特異的な結合ポケットを有するカリシン種の形成を可能にする。ホモダイマー、ヘテロダイマー、およびオリゴマーが形成される程度は、特定のカリシンに依存する。カリシンモノマーが、最初に、互いに非共有的に関連し合うほど近接している場合(α−クラスタシアニンの場合のように)、非常に効率的な架橋が達成され得る。
【0072】
(リガンド−リポカリン複合体の調製)
代表的に、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)中のリポカリンタンパク質を、2倍モル過剰のリガンドと共に、37℃で1時間インキュベートする。リガンド−リポカリン複合体を、例えば、2mM Tris−HCl、pH9.0で平衡化し、そして展開したSephadex G−25(20×1cmカラム)を用いたゲル濾過により、非結合リガンドから分離する。
【0073】
(細胞膜および細胞に結合する放射標識リポカリンの測定)
細胞膜および細胞への放射標識リポカリンの結合を、油遠心分離技術を用いてか、またはフィルターを通じた濾過および洗浄により測定する。油遠心分離について、PBS(オボアルブミンを含む)中の標的細胞膜(1〜2mgタンパク質/ml)または細胞(1〜2×106細胞/ml)を、放射標識リポカリン(2〜10nM)と共に、最終容量100μlでインキュベートする。所望の温度および所望の時間のインキュベーションの後、サンプルを、微量遠心分離において、2分間、12,500gで遠心分離する。次いで、サンプルに、ジブチルフタレートおよびジノニルフタレートの適切な混合物(代表的に、3:2、v/v)を上乗せし、そして12,500gで2分間、再度遠心分離する。このチューブをドライアイス中で凍結させ、そしてチューブの底(細胞または膜ペレットを含む)を切り取り、放射活性を測定する。放射標識リポカリンの非特異的結合を、少なくとも2μMの非標識リポカリンの存在下で測定する。
【0074】
膜濾過方法について、細胞膜または細胞を伴う放射標識リポカリンのインキュベーションの完了後、サンプルを、ガラス線維膜フィルターを通して吸引により濾過し、そしてフィルターを、数mlのPBSを用いて3〜4回同様に洗浄する。次いで、フィルターの放射活性を決定する。
【0075】
(リポカリンからのリガンド取り込みアッセイ)
膜小胞または細胞による放射標識リガンド−リポカリン複合体からのリガンドの取り込みアッセイを、上記と同様の油遠心分離法(今回は、リガンドを放射標識したことを除く)により実施した。トリチウム標識リガンドを使用したいくつかの場合、油混合物を、50μlアリコートの5%スクロース含有PBS上に重ね、そして標識した試験サンプルを、遠心分離前に油層上に置いた。ドライアイスで凍結させた後、チューブを油/スクロース界面で切断した。チューブの底を、室温にて一晩、200μlの10%(w/v)SDS中でインキュベートし、そしてそれらの放射標識リガンド含有量を測定した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、多くのカリシンにおいて見出される保存された特徴の概略図である。
【図2】図2は、EDCにより誘導されるβ−LG/rMUPヘテロダイマーの形成のさらなる証拠を示すオートラジオグラフを示す。ここで、レーン1は[35S]Met標識rMUP+β−LGおよび0.5mM EDCを表わし、レーン2は[35S]Met標識rMUPおよび0.5mM EDCを表わし、そしてレーン3は[35S]Met標識rMUP(未処理)を表わす。Mは、分子量マーカーを含むゲルのレーンを示す。
【図3】図3は、EDCにより誘導される、α−クラスタシアニンのオリゴマー化を示すタンパク質ゲルを示す。Mは、分子量マーカーを含むゲルのレーンを示す。
【図4】図4は、天然の単離されたタンパク質rERAPBおよびrMUPならびにいくつかの組換えタンパク質のタンパク質マップを示す。
【図5】図5は、選択されたリガンドについての種々のタンパク質のリガンド結合親和性を示す。
【図6】図6は、本発明の実施形態において用いられ得る例示的な芳香分子のリストを提供する。
【図7】図7は、本発明の実施形態において用いられ得る例示的なカリシンのリストを提供する。
Claims (34)
- 改変されたカリシンマルチマーの使用であって、該カリシンマルチマーは、以下:
i)リガンドを結合するように適合された結合ドメイン;および
ii)基質を結合するように適合された標的化ドメイン、を含み、
該改変されたカリシンマルチマーが基質に対してリガンドを標的化するために使用され、該基質は髪でも皮膚でもなく、かつ該リガンドは、天然には該基質に結合しないという点で特徴付けられる、使用。 - 前記改変されたカリシンマルチマーが、少なくとも2つのリガンドに結合するように適合される、請求項1に記載の使用。
- 前記リガンドが同じである、請求項2に記載の使用。
- 前記リガンドが、2つの異なるリガンドである、請求項2に記載の使用。
- 前記マルチマーが、同一のカリシンモノマーを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
- 前記マルチマーが、異なるカリシンモノマーを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
- 前記改変されたカリシンマルチマーが、カリシンモノマーの複合体へのマルチマー化を容易にする相互作用ドメインをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
- 前記改変されたカリシンモノマーが、架橋剤によってマルチマー化される、請求項7に記載の使用。
- 前記架橋剤が、二官能性のタンパク質架橋剤である、請求項8に記載の使用。
- 前記架橋剤が、ホモ二官能性である、請求項9に記載の使用。
- 前記架橋剤が、ヘテロ二官能性である、請求項9に記載の使用。
- 請求項10に記載の使用であって、前記架橋剤が、以下:ジスクシンイミジル−スベリミデート−ジヒドロクロリド;ジメチル−アジピミデート−ジヒドロクロリド;1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンからなる群より選択される、使用。
- 請求項11に記載の使用であって、前記架橋剤が、以下:N−ヒドロキシスクシンイミジル2,3−ジブロモプロピオネート;1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド;スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレートからなる群より選択される、使用。
- 少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、置換または付加によって変更された、改変されたカリシンマルチマーであって、該変更が、少なくとも1つのリガンドに対する前記結合ドメインの特異性を変更する点で特徴付けられる、改変されたカリシンマルチマー。
- 前記改変が、少なくとも1つのリガンドに対する前記結合ドメインの親和性を変更する点で特徴付けられる、請求項14に記載の改変されたカリシンマルチマー。
- 少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、置換または付加によって変更された、改変されたカリシンマルチマーであって、該変更が、選択された表面に対する前記標的化ドメインの特異性を変更する点で特徴付けられる、改変されたカリシンマルチマー。
- 前記改変が、選択された表面に対する前記標的化ドメインの親和性を変更する点で特徴付けられる、請求項16に記載の改変されたカリシンマルチマー。
- 請求項14〜17のいずれかに記載の改変されたカリシンマルチマーをコードする核酸を含む、ベクター。
- 前記ベクターが、前記改変されたカリシンマルチマーの組換え的産生のために適合される、請求項18に記載のベクター。
- 請求項18または19に記載のベクターによって形質転換またはトランスフェクトされた、細胞。
- 請求項14〜17のいずれかに記載の改変されたカリシンを製造するための方法であって、該方法は、以下:
i)請求項20に記載の細胞を、該カリシンの製造をもたらす条件下で増殖させる工程;および
ii)該細胞またはその増殖環境から該カリシンを精製する工程、
を包含する、方法。 - 前記ベクターが、前記モノマーの精製を容易にするための分泌シグナルまたは親和性タグをコードし、従って、前記カリシンが、該分泌シグナルまたは親和性タグと共に提供される、請求項21に記載の方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の使用、または請求項14〜17のいずれかに記載のカリシンであって、前記カリシンが、洗濯物の表面繊維に対する少なくとも1つの薬剤の標的化のために適合される、使用またはカリシン。
- 改変されたカリシンモノマーの使用であって、該カリシンモノマーは、以下:
i)リガンドを結合するために適合された結合ドメイン;および
ii)基質を結合するために適合された標的化ドメイン、を含み、
該改変されたカリシンモノマーが、洗濯物の表面繊維に対して少なくとも1つの薬剤を標的化するために使用される点で特徴付けられる、使用。 - 前記薬剤が、前記洗濯物に所望の香りを付与する香料を含む、請求項23および/または24に記載の使用。
- 前記薬剤が、前記洗濯物に所望の風合いを付与するコンディショナーを含む、請求項23〜25のいずれかに記載の使用。
- 前記薬剤が、前記洗濯物に保護特性を付与する保護剤を含む、請求項23〜26のいずれかに記載の使用。
- 請求項23〜27のいずれかに記載の使用であって、前記改変されたカリシンが、以下:マウス尿タンパク質(MUP)およびその等価物、ラットα2ミクログロブリン臭気物質結合タンパク質(OBP)、他の臭気物質結合タンパク質およびその等価物、β−ラクトグロブリン、レチナール結合タンパク質およびレチノイド結合タンパク質、α1ミクログロブリン、脂肪酸結合タンパク質、細胞内レチノイド結合タンパク質ならびに色素性リポカリン、からなる群より選択される、使用。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の使用、または請求項14〜17のいずれかに記載のカリシンであって、前記カリシンマルチマーが、バイオセンサーである、使用またはカリシン。
- 前記カリシンが、色素性リポカリンである、請求項29に記載の使用。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の使用、または請求項14〜17のいずれかに記載のカリシンマルチマーであって、少なくとも1つの表面に対する少なくとも1つの治療剤の標的化のための、使用またはカリシンマルチマー。
- 前記治療剤が、薬物の標的化、送達および取り込みをもたらすために細胞内に移入される、請求項31に記載の使用。
- 前記治療剤が、以下:化学療法剤、抗生物質、神経学的薬剤、レセプターおよびイオンチャネルモジュレーターからなる群より選択される、請求項31または請求項32に記載の使用。
- 改変されたカリシンモノマーをマルチマー化するための方法であって、該方法は、以下:
i)モノマーをマルチマー複合体に架橋するために十分な条件および架橋試薬と共に、カリシンモノマーを提供する工程;および、必要に応じて、
ii)該試薬混合物から該架橋複合体を精製する工程、
を包含する、方法。
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