JP2004505810A - 湿潤および乾燥状態で使用する摩擦制御物品 - Google Patents

Abstract

１平方インチ当り少なくとも１００の直立したステム（２６）の配列を有する第１の表面（２４）と、第２の表面（２５）とを有する裏当て層（２１）を含む摩擦制御物品（２０）。直立したステムの少なくとも一部は、エラストマー材料であり、ステムのアスペクト比は少なくとも１．２５である。第１の表面は、乾燥時の静摩擦係数が少なくとも０．６であり、湿潤時の静摩擦係数が、乾燥時の静摩擦係数の２０％以内である。第１の表面は、別の滑り制御物品と係合した時、剥離強さおよび引張り強さが実質的にゼロである。第１の表面は、別の滑り制御物品と係合した時、剪断強さが比較的高い。高い剪断力は、主にエラストマー材料の摩擦特性によるものであり、機械的ファスナーなどでのステムの機械的な相互噛み合いによるものではない。

Description

【０００１】
技術分野
本発明は、心地良く柔軟な手触り、高い摩擦特性、および、湿潤および乾燥状態で良好な性能を有する摩擦制御物品に関する。
【０００２】
発明の背景
向上したグリップおよび滑り止め表面の開発は、典型的には物品の材料および表面の位相幾何学に集中する。一般的な材料には、天然および合成ゴム、スチレン系ブロックコポリマー、ラテックス、エチレン酢酸ビニル、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタン、ポリエステルコポリマー、およびポリイミド等が挙げられる。表面の位相幾何学は、平滑なものから誇張された把持構造を有するものまでに及ぶことができる。
【０００３】
米国特許第３，５８５，１０１号は、改善された把持表面を提供するため、刻み目の付いた模様をエンボスしたアルミニウム、真鍮、又はプラスチックなどの柔軟で、延性、可撓性のある材料の薄いシートを開示している。このシートは、接着剤を使用して、固い物体に適用することができる。
【０００４】
米国特許第４，４８８，９１８号は、プラスチックフィルムと同時押出しされそれに接着される第２の熱可塑性材料で形成される、間隔を空けた不規則なパターンの硬質の尖端部および隆起部を設けてなる、ノンスリップの表面を有するプラスチックフィルムを開示している。表面は、比較的高く鋭い不規則なプラスチックの尖端部および隆起部のパターンを有し、十分に鋭く硬質で凸凹しているため他の表面を機械的に把持できる。
【０００５】
米国特許第５，２３４，７４０号は、構造表面を有する滑り制御表面開示している。構造表面には、突起、典型的には三角錐の突起の配列がある。この特許は、ソフトボール用バット、ゴルフクラブ、およびテニス、ラッケットボール、スカッシュ、バドミントンのラケットなどの競技用の用品の取っ手、並びに道具の取っ手に適用できることを開示している。
【０００６】
発明の概要
本発明は、心地良く柔軟な手触り、高い摩擦特性、および、湿潤および乾燥状態の両方で良好な把持性能を有する改善された摩擦制御表面または把持表面に関する。把持表面は、熱可塑性エラストマーから製造される様々な形状の、可撓性で直立したステムの配列を有する柔軟な微細構造表面である。ステムの寸法、空間的な分布、可撓性、ステムの配列パターン、およびエラストマー材料の特性は、全て、表面の柔軟な手触り、振動の減衰、および、湿潤および乾燥状態での把持性能に寄与する。本発明の摩擦または滑り制御表面の様々な実施態様には、微小溝、吸収層および親水性／疎水性領域があり、これらは全て流体を直立したステムから離れるように導いて、ステムを乾燥した状態のままとし、湿潤状態でも高い摩擦性能を実現する。本発明の滑り制御物品は、別の物品に適用することができるラップなどの、シート状の構造体に形成されてもよい。或いはまた、滑り制御物品は、ゴルフクラブ、野球用バット、ラケット、自転車のハンドル、運動用品のスポーツ用グリップ、家庭用物品、組立用工具、外科用器具、スイミングプールのデッキ、飛び込み台、浴槽用のノンスリップの歩行用表面などの様々な成形された、または製造された物品に組み込まれてもよい。
【０００７】
１実施態様では、滑り制御物品は、少なくとも１５．５ステム／平方センチメートル（１平方インチ当り１００ステム）、更に典型的には少なくとも５４ステム／平方センチメートル（１平方インチ当り３５０ステム）の配列を有する第１の表面と、第２の表面とを有する裏当て層を設けてなる。直立したステムの外部表面の少なくとも一部は、エラストマー材料である。ステムは、アスペクト比（ステムの高さ：ステムの直径）が少なくとも１．２５であり、好ましくは少なくとも１．５であり、更に好ましくは少なくとも２．０であり、最も好ましくは３．０より大きい。第１の表面は、乾燥時の静摩擦係数が少なくとも０．６であり、湿潤時の静摩擦係数が乾燥時の静摩擦係数の２０％以内である。従って、水が存在する時、摩擦特性は、あまり低下しない。第１の表面は、別の滑り制御表面と係合する時、剥離強さおよび引張り強さが、実質的にゼロである。
【０００８】
１実施態様では、エラストマー材料を含む直立したステムの配列は、第２の表面にも形成される。第２の表面は、乾燥時の静摩擦係数が少なくとも０．６であり、湿潤時の静摩擦係数が乾燥時の静摩擦係数の２０％以内である。第２の表面は、別の滑り制御表面と係合する時、剥離強さおよび引張り強さが、実質的にゼロである。
【０００９】
他の実施態様では、乾燥時の静摩擦係数は、少なくとも１．０又は少なくとも２．０である。第１の表面は、約５３グラム／６．４５平方センチメートル（１．８６オンス／平方インチ）の圧力で別の滑り制御表面と係合した時、動的剪断強さが少なくとも２３，２６８ダイン／平方センチメートル（５．４オンス／平方インチ）であり、好ましくは４３，０９０ダイン／平方センチメートル（１０オンス／平方インチ）より大きく、更に好ましくは少なくとも７７，５６２ダイン／平方センチメートル（１８オンス／平方インチ）であり、最も好ましくは少なくとも１０７，７２５ダイン／平方センチメートル（２５オンス／平方インチ）である。高い剪断力は、主にエラストマー材料の摩擦特性によるものであり、機械的ファスナなどでのステムの機械的な相互噛み合せによるものではない。
【００１０】
裏当て層は、滑り制御物品の用途に応じて、補強ウェブ、発泡体層、実質的に非弾性のポリマー層、又は接着剤又は発泡接着剤層などの、１つ又はそれより多くの層であってもよい。１実施態様では、裏当て層は、直立したステムと一体成形されるエラストマー材料であってもよい。裏当て層は、弾性であっても非弾性であっても、厚くても薄くても、多孔質であっても非多孔質であっても、接着剤の層があっても無くてもよい。１実施態様では、非弾性裏当て層は、直立したステムの一部を形成してもよい。裏当て層は、任意選択的に、極めて薄いものであってもよいため、本発明の滑り制御物品は、軽量の把持用途に使用するのに好適な非常に薄いラップ又は把持テープとして形成されてもよい。或いはまた、裏当て層は、成形された、押出された、または製造された物品の一部であってもよい。
【００１１】
上記図面の図は、本発明の好適な実施態様を述べているが、説明に記載されるように他の実施態様も想到される。全ての場合に於いて、この開示は本発明を典型例によって示すものであり、限定を示すものではない。当業者は他の数多くの変更および実施態様を考案することができるが、それらは本発明の原理の範囲および趣旨に入ることを理解されたい。
【００１２】
発明の詳細な説明
図１は、本発明による摩擦または滑り制御物品２０の側面断面図である。物品２０は、直立したステム２６の配列を有する第１の表面２４を有する裏当て層を含む。ステムは、規則的な配列に配置されても、不規則な配列に配置されてもよい。六角形、斜め方向、シヌソイドなど、ステムの様々なパターンを使用してもよい。直立したステム２６は、エラストマー材料で構成されている。直立したステム２６の外部表面全体が、エラストマー材料である。図１の実施態様では、裏当て層２１は、エラストマー材料の直立したステム２６と一体成形される。裏当て層２１と直立したステム２６との組合せは、時々ステムウェブと呼ばれる。図示された実施態様は、ステム２６を概ね円筒形であるものとして示しているが、ステム２６の側面は、典型的にはわずかにテーパ３５が付いており金型からの取り出しが容易になっている。先端を切った円錐または角錐、長方形、半球、正方形、六角形、八角形、およびガムドロップなどの様々な非円筒形の形状も使用することができる。
【００１３】
本発明の滑り制御物品２０は、エラストマー材料で構成される直立したステム２６、および構造体を一体に保持するための裏当て層２１を主に必要とする。しかし、裏当て層２１のエラストマーの特性は、滑り制御物品２０が把持ラップとして使用される場合など、幾つかの用途に対しては全ての要求を満たすわけではない。従って、裏当て層２１を補強するために、追加の裏当て層２２、３４、３６が任意選択的に第２の表面２５に適用される。追加の裏当て層２２は、滑り制御物品２０を安定化および補強するのに役立ち、引張りに抵抗し、他の様々な機能と同様に、引裂き抵抗も改善することができる。本発明の滑り制御物品２０を別の表面に取付けるため、接着剤層３４および離型ライナー３６が任意選択的に設けられる。本明細書で使用される場合、裏当て層は、直立したステムを支持する１つまたはそれより多くの層を有するアセンブリのことを言うが、典型的には、これらの層の多くても１つが直立したステムと一体成形される。
【００１４】
裏当て層は、典型的には厚さが、約０．０５ミリメートル〜約０．３８ミリメートル（０．００２インチ〜０．０１５インチ）である。幾つかの例では、裏当て層は、十分な厚さがあるため押出し成形中に布帛のシートなどの補強ウェブを接着することができ、引裂き抵抗および引張り強さを増大させる。補強ウェブは、滑り制御物品が可撓性基材に縫い付けられる場合、特に有用である。裏当て層は、発泡材料または中実のポリマー材料とすることができる。１実施態様では、裏当て層は、織られていても織られていなくてもよい、繊維材料または布帛スクリムの層などの、多孔質層および／又は吸収層を含んでもよい。多孔質の材料は、水分を吸収し、および／又は水分を直立したステムから離れるように導くのに有用である。１実施態様では、裏当て層は、滑り制御物品のネッキングまたは伸張を防ぐため実質的に非弾性の層を含む。
【００１５】
裏当て層は、滑り制御物品を一体に保つためエラストマー材料と十分に適合性があることが望ましい。好適な裏当て層材料には、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン（例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン）、ポリエステル（例えばポリエチレンテレフタレート）、ポリスチレン、ナイロン、アセタール、ブロックポリマー（例えば、ＫＲＡＴＯＮ^ＴＭの名称でテキサス州ヒューストンのＳｈｅｌｌ　Ｃｈｅｍｉｃａｌ　Ｃｏｍｐａｎｙから入手可能な、エラストマーセグメントを有するポリスチレン材料）、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー（例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系又はナイロン系）、およびこれらのコポリマーおよび混合物などが挙げられる。また、熱可塑性材料は、以下に限定されないが充填材、繊維、帯電防止剤、潤滑剤、湿潤剤、発泡剤、界面活性剤、顔料、染料、カップリング剤、可塑剤、沈殿防止剤、および親水性／疎水性添加剤などの添加剤を含んでもよい。
【００１６】
任意選択的な接着剤層は、典型的には、滑り制御表面を適用する基材物品に接着させるのに選択される接着剤、即ち、感圧接着剤、熱硬化性または熱可塑性接着剤、放射線硬化接着剤、溶媒により活性化される接着剤およびこれらのブレンドなどを含む。接着剤は、フィラメントを含んでもよい。裏当て層は、任意選択的に積層することができるか、または接着剤を含浸させることができる。本発明に有用な１つの接着剤は、Ｍｉｎｎｅｓｏｔａ　Ｍｉｎｉｎｇ　ａｎｄ　Ｍａｎｕｆａｃｔｕｒｉｎｇ　Ｃｏｍｐａｎｙから入手可能なＡｄｈｅｓｉｖｅ　Ｔｒａｎｓｆｅｒ　Ｔａｐｅ　９５０である。多くの好適なエポキシ、ウレタン、合成又は天然ベースのゴム、およびアクリル接着剤が市販され、この目的にも利用可能である。用途に応じて、接着剤は滑り制御物品を表面に取外し可能に接着しても、又は永久に接着してもよい。
【００１７】
図１Ａは、概ね図１に示されているものと同様であるが、追加の裏当て層２２、３４、３６がない両面滑り制御物品２０′の断面図である。物品２０′は、第１および第２の表面２４′、２５′の両方に直立したステム２６′の配列を有する裏当て層２１′を含む。直立したステム２６′は、単一のエラストマー材料で構成される。図１Ａの実施態様では、裏当て層２１′は、エラストマー材料の直立したステム２６′と一体成形される。別の実施態様では、上部部分および下部部分は、２つの異なるエラストマー材料から同時押出しされてもよい。本発明による両面滑り制御物品は、開示される様々な実施態様から形成されてもよい。
【００１８】
図２は、本発明による代替の滑り制御物品４０の側面断面図である。裏当て層４２は、ステム４６の下部部分４４を規定する。ステム４６の上部部分４８は、エラストマー材料で構成されている。裏当て層４２およびステムの下部部分４４は、滑り制御物品４０の用途に応じて、弾性又は非弾性の様々な材料で構成されてもよい。最低限、上部部分４８の外部表面は、エラストマー材料である。１実施態様では、ステム４４の上部部分４８は、疎水性の特性を有する。疎水性の特性は、上部部分４８を疎水性材料から構成するか、または疎水性の特性を生じさせるように上部部分４８を処理することにより得ることができる。非極性液体との接触を伴う用途には、ステム４６の上部部分４８を処理して親水性の特性を生じさせてもよい（例えば、コロナ処理）。
【００１９】
図３は、本発明による、同時押出しにより形成された別の代替の滑り制御物品５０の側面断面図である。裏当て層５２は、中央領域５４に突き出し、エラストマーのステム５６に構造的な一体性を加える。裏当て層５２は、典型的には、より剛性の高いポリマー材料である。
【００２０】
図３Ａは、本発明による同時押出しにより形成される代替の滑り制御物品５０′である。ステム５６′および裏当て層５２′は、エラストマー材料で構成される。ステム５６′は、追加の裏当て層５３′の中央領域５４′を貫通して突き出している。追加の裏当て層５３′は、構造的な安定性、疎水性／親水性の特性、又は他の様々な機能を付与する。１実施態様では、追加の裏当て層５３′は、ステム５６′を構成するのに使用されるものとは異なる特性を有するエラストマー材料であってもよい。
【００２１】
図４は、裏当て層７４を貫通し吸収層７６と流体連通している複数の孔７２を組み込んだ滑り制御物品７０の側面断面図である。吸収層７６は、エラストマーのステム７８から水分を吸い出し、湿潤状態で良好な摩擦特性を維持する。
【００２２】
図５Ａおよび５Ｂは、直立したエラストマーのステム８６間の裏当て層８４に微小溝８２を組み込んだ滑り制御物品８０を示す。微小溝８２は、毛管力を利用して流体を原動力の方向に迅速に移動させる。吸収層８８は、裏当て８４の第１の表面８９に沿って位置決めされ、原動力を供給する。或いはまた、原動力は、重力および／又はステム８６の親水性領域であってもよい。
【００２３】
多くの機構が組み合わされて、本発明の滑り制御物品に、湿潤および乾燥状態の両方で非常に優れた摩擦特性を付与する。図６は、ステム６４の疎水性の先端部６２に存在する個々の水滴６０の概略図である。水滴６０は、滑り制御物品６６を振る又は把持することによりステム６４から容易に取り除かれる。水の再分配は、また、ステムの密度にも影響を受ける。
【００２４】
図７に示されるように、大量の水６０が堆積するとステム６４の基部に液体が分配されるが、先端部６２は乾いた状態を維持する。水又は他の任意の極性液体が、滑り制御物品６６の表面に堆積する時、ステム６４の先端部６２は、熱可塑性エラストマーポリマーの疎水性の性質により、露出した状態を維持する。親水性の材料から裏当て層を構成することは、水６０を先端部６２から離れるように導くことを助ける。
【００２５】
直立したステム６４は、主にステムのエラストマー材料の摩擦特性により他の表面を把持する。摩擦性能は、ステム６４が他の表面に突き出すことを必要としない（例えば、２つの部分から成る機械的ファスナにおけるような、相互に噛み合う機械的係合を必要としない）。従って、柔軟な材料および硬質の材料の両方と、摩擦接触することができる。
【００２６】
本発明は、高い摩擦特性を有し、且つ触れると柔軟な手触りがするステムウェブの構成体に関する。本発明の構造体は、正方形に普遍的な間隔を空けた、又は不規則に間隔を空けた配列に配置された多数のステムを設けてなる。ステムの密度は、１３９〜４６５ステム／ｃｍ^２（９００から３，０００ステム／平方インチ）の範囲であり、ステムの直径は、概ね０．０２〜０．０２７センチメートル（８から１１ミル）であり、ステムのアスペクト比は約２であることが好ましい。水（又は、別の極性流体）が、本発明の摩擦制御物品のステムウェブ表面につけられたとき、流体は、ステム間のステムの付いた表面に均一に分配される。ステムが疎水性の外側表面を有する場合は、ステムの最も外側の先端部は、それらが作られている材料の疎水性により乾いた状態を維持する。ステムのテーパを付けた壁（任意選択的な）は、流体を最も外側の先端部から、ステムが取付けられそこから突出している裏当ての方へ下に押しやる、更なる毛管力を作り出す。水（又は、他の極性液体）とのこの特有な相互作用により、本発明の構造体は、把持用途に有用なものとなっている。
【００２７】
本発明の摩擦制御物品の柔軟な手触りは、柔軟な材料、ステムの幾何学的形状、およびステムの間隔の組み合わせによって作り出される。そのため、ステムを互いに人間の指の触点より近接した所に位置決めすると、手触りで個々のステムを区別することが難しくなる。ステムは、加えられた把持圧力で曲がるが、このことは構造体に更なる柔軟性を加える。ステムが、高い摩擦係数（例えば、０．８より高い）を有する、柔軟で低デュロメータ（例えば、ショア５０Ｄ未満）の材料で作られることも、重要な特徴である。構成体の大部分の「柔軟性」構成要素は、材料の圧縮からではなくステムの曲げから生じるものである。ステムは、引張りおよび圧縮硬化の値が非常に低い、高弾性のエラストマーポリマーから形成されることが好ましい。そのため、本発明のステムウェブ構成体は、何回も使用した後に、柔軟な触感を保つ。曲げられたステムは、摩擦に利用可能な追加の表面領域を露出させ、このため把持性能が高められる。把持荷重が取り除かれると、ステムは元の上向きに突き出した姿勢に戻る。
【００２８】
本発明の摩擦または滑り制御物品は、別の摩擦または滑り制御物品と係合する時に、最小限の圧力で高い剪断力を付与する。直立したステムは、可撓性の高いエラストマー材料から実質的に構成されるため、高い剪断力は、ステムの機械的な相互噛み合い（機械的ファスナなどでの）や、又は向かい合った硬質のステムからの単なる機械的ブロッキングから生じるものではない。２つの滑り制御物品が互いに係合する時、直立したステムの摩擦特性は、むしろ、ステムの寸法、ステムの密度、およびステムのパターンによって高められる。本発明の滑り制御物品の柔軟で高摩擦のステムは、曲がることができるため目的とする特性が得られる。可能な用途には、本発明の滑り制御物品が、この滑り制御物品を同様に含む表面を把持するように配置された手袋が挙げられる。
【００２９】
直立したステムは相互に噛み合わないため、本発明の滑り制御物品は、同じ又は類似のステムウェブ構造体と係合する時、剥離力および引張力が実質的にゼロである。使用者は、典型的には、本発明の滑り制御物品により発生したどのような剥離力又は引張力も克服する必要なく、把持される品物を随意に素早く離さなければならないため、この特徴は本発明の滑り制御物品を安全に使用するために重要である。例えば、本発明の滑り制御物品は、自転車のハンドルの周りに巻きつけることができ、且つ自転車用の手袋に適用することができる。使用者が自転車のハンドルを把持する時、２つの滑り制御物品は係合し、最小限の圧力で剪断力において優れた滑り制御特性を実現する。しかし、剥離力又は引張力の値が実質的にゼロであることにより、使用者は、２つの滑り制御物品から実質的にゼロの抵抗でハンドルを離すことができる。
【００３０】
本発明の２つの摩擦制御物品のステムウェブ表面が、向かい合わせに組み合わされる場合、機械的干渉と向かい合ったステム間のステム対ステムの摩擦との予め決められたブレンドにより、断定可能な且つ信頼性のある摩擦制御界面が作り出される。このような向かい合ったステムウェブは、同一のものであってもよいが、これが生じるのに、ステムウェブ表面は性質、材料、又はステムの間隔が同一である必要はない。そのため、１つの表面の４６５ステム／ｃｍ^２（３，０００ステム／平方インチ）のパターンでは、向かい合った表面の１５５、３１０、４６５ステム／ｃｍ^２（１，０００、２，０００、３，０００ステム／平方インチなど）のパターンとの有効な機械的干渉が得られるであろう。剪断性能は、ステムの密度に依存し、予測可能である。２つの向かい合ったステムウェブ表面間に、横方向に移動させる力がかけられると、各表面のステムは、他の表面のステムの各側面に沿って滑り、曲がる。この種の相互作用により、機械的な２つの部分からなるファスナなどでの向かい合ったステムの相互噛み合いと、全然同じではないステムの係合から生じる制御された摩擦力が作り出される。２つの摩擦制御物品間の有効な摩擦係数は、使用される相対的な材料、ステムの幾何学的形状、ステムの間隔、および摩擦表面に通常かけられる力の大きさに依存する。
【００３１】
図１０および１１は、向かい合って干渉する関係に配列された、２つの摩擦制御物品の向かい合って対になったステムウェブ間の関係を概ね示している。図１０は、向かい合った滑り制御物品９０ａおよび９０ｂを示す。滑り制御物品９０ａは、第１の表面９３ａおよび第２の表面９４ａを有する裏当て層９２ａを有する。直立したステム９５ａは、裏当て層９２ａの第１の表面９３ａから突き出している。別の裏当て層又は他の支持体構造９６ａは、裏当て層９２ａの第２の表面９４ａに貼り付けれている。同様に、滑り制御物品９０ｂは、第１の表面９３ｂおよび第２の表面９４ｂを有する裏当て層９２ｂを有する。直立したステム９５ｂの配列は、裏当て層９２ｂの第１の表面９３ｂから突き出している。別の裏当て層又は他の支持体構造９６ｂは、裏当て層９２ｂの第２の表面９４ｂに貼り付けれている。滑り制御物品９０ａおよび９０ｂは、ステムウェブが向かい合う配列に配列され（図１０におけるように）、そのステムウェブ配列に通常の力で圧接される時、ステムは図示のように機械的に干渉する。
【００３２】
図１１は、２つの向かい合った滑り制御物品９０ａおよび９０ｂ間に、横方向に移動させる力がかけられた時の、向かい合ったステム９５ａおよび９５ｂの接触係合を更に詳細に示す。係合したステムは曲がるが、向かい合った滑り制御物品９０ａおよび９０ｂの相対的な横方向の動きに抵抗し、そのため高剪断力抵抗が得られるが、向かい合った滑り制御物品９０ａおよび９０ｂを引き離すのに、剥離力抵抗をほとんど又は全く生じない。ステムの曲げの程度は、材料の特性および加えられる力に依存する。
【００３３】
２つの向かい合った本発明の摩擦制御物品の摩擦界面の最適化では、各摩擦制御物品の全ステム面積（図５Ｂの方向で考えられる時の、物品の全面積に対するステムの面積）が、約４５％未満であり、２つの向かい合った摩擦制御物品の表面のステムが容易に嵌合し一体になり得ることが好ましい。全ステム面積の約４５％未満が好ましいが、更に好ましい全ステム面積は、約４０％未満であり、更により好ましい全ステム面積は、約３５％未満である。１つの好ましい実施態様では、全ステム面積は約３０％である。全ステム面積に対して、ステム間にはこのようにかなりの空所面積がある。本発明の摩擦制御のステムの付いた表面２つは、互いに接触させられ（例えば、図１０）、ステムの空間的な干渉が、相対的な横方向の移動に抵抗する。その摩擦制御物品の１つ又は両方に対して更に横方向に移動させる力により、ステムは曲がり、互いにぶつかって摺動する（例えば、図１１を参照）。１つの摩擦制御把持表面が他方にぶつかって摺動することに対する抵抗は、２つの要因、即ち：（１）ステムを曲げて通路を開くのに必要な力、および（２）向かい合ったステムの壁の間の摩擦、に起因する。各要因を調節して、特定の摩擦制御用途に対処し、目的とする摩擦特性を得ることができる。従って、ステムを形成する材料の摩擦係数を変えることにより、摩擦要因が増す。ステムの形状を変えること、例えばそれらの断面を正方形にすることにより、ステム間の重なりが増し、ステムを曲げるのに必要な力が大きくなるであろう。材料の曲げ弾性率が高くなると、向かい合った表面を摺動させるのに必要な力が大きくなるという、同様の結果が生じるであろう。
【００３４】
幾つかの実施態様では、摩擦制御材料の向かい合って対になっている表面は、両方のステムが同様に曲がるように同じ材料から形成されても、又は摩擦制御物品の１つが、他方より剛性が高く且つ可撓性が小さい（更に、又は硬質の）材料から形成されてもよい。上述のように、ステムの配列の１つが、ある程度まで曲がるくらい十分に可撓性がある限り、これらの要因を変化させて、対になった摩擦制御物品の目的とする摩擦特性を制御してもよい。一般に、摩擦係数は表面の特性であり、力に依存する。しかし、我々の発明では、ステムは垂直方向の荷重を加えると変形し、そのため有効な（測定された）摩擦係数が変化する。この後者の要因により摩擦は荷重依存となる。従って、見かけの摩擦係数の用語を導入するが、これは測定された係数を表わす。この後者の値は、横方向の力と物品に通常加えられる力との比として表わすことができる。
【００３５】
向かい合った摩擦制御物品の面している接触表面間の摩擦界面は、使用される相対的な材料、ステムの幾何学的形状、ステムの間隔および摩擦表面に通常加えられる力の大きさに応じて、設計で予め決めることができる。向かい合ったステム配列のステムは、通常の力が加えられる時、向かい合って接触し且つ相互に嵌合する関係（図１０に見られるような）に配列され、ステム配列間に相対的に横方向に移動させる力をかけると、少なくとも１つの配列のステムが曲がる。２つの向かい合った摩擦制御物品の相対的な横方向の動きは、それらのステムを曲げるのに必要な予測可能な力、および向かい合って接触しているステム間の摩擦干渉により抵抗を受ける。
【００３６】
本発明の滑り制御物品の柔軟な手触りは、主に、エラストマー材料の性質およびステムの幾何学的形状によるものである。エラストマー材料は、ショア硬度が好ましくは約７０Ｄ未満であり（Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８０９１）、更に好ましくは約９０Ａ未満であり、最も好ましくは約６０Ａ未満である。引張り弾性率は、好ましくは約１２ＭＰａ（１７４０ｐｓｉ）未満であり、更に好ましくは約６ＭＰａ（８７０ｐｓｉ）未満であり、最も好ましくは約４ＭＰａ（５８０ｐｓｉ）未満である。ステムの高さ、ステムの直径、およびステム間の間隔（ステムの幾何学的形状と呼ばれる）は、表面に柔軟な手触りをもたらす重要な要因である。一般に、ステムが長いほど、その可撓性のために手触りがより柔軟になる。ステムの間隔に関しては、指先の触点間の平均距離は、約１．２７ミリメートル（０．０５０インチ）である。物体間の間隔が、触点間の距離の半分未満である場合には、表面の突起を区別し難くなる。従って、最良の手触りは、典型的には、ステムの密度ができるだけ高いステムウェブで得られる。ステムの密度が３１０ステム／ｃｍ^２（２，０００ステム／平方インチ）を越えると、皮膚に接触すると柔軟で心地よい独特の手触りが作り出される。
【００３７】
再度、図１を参照すると、ステムは、滑り制御物品の性能を最適化するために、実質的に直立している必要がある。ステムは、ステムの直径およびエラストマー材料の性質により直立した状態に保たれる。直立したステムは、典型的には、高さ２８が約０．２５４ミリメートル〜約１．２７ミリメートル（０．０１０インチ〜約０．０５０インチ）の範囲であり、更に典型的には約０．５１ミリメートル〜約１．０２ミリメートル（０．０２０インチ〜０．０４０インチ）の範囲である。隣接するステム２６間の距離又は隙間３０は、一般に約０．２５４ミリメートル〜約２．５４ミリメートル（０．０１インチ〜約０．１インチ）の範囲であり、更に典型的には約０．４６ミリメートル〜約０．８４ミリメートル（０．０１８インチ〜約０．０３３インチ）の範囲である。ステム２６は、最大断面寸法２９が、約０．０７６ミリメートル〜約０．７６ミリメートル（０．００３インチ〜約０．０３０インチ）である。ステム２６は、１平方センチメートル当り少なくとも１５．５（１平方インチ当り１００）、更に典型的には１平方センチメートル当り約５４〜１平方センチメートル当り約１５５０（１平方インチ当り３５０〜１平方インチ当り約１０，０００）の密度で、裏当ての上に配置される。
【００３８】
ステムのアスペクト比は、少なくとも１．２５であり、好ましくは少なくとも１．５であり、更に好ましくは少なくとも２．０であり、最も好ましくは３．０より大きいが、幾つかの用途ではアスペクト比が３．０を超えることもあり得る。アスペクト比は、ピンの高さと最大断面寸法の比のことを言う。円形の断面を有するピンでは、最大断面寸法はピンの直径である。ステム又はピンがエラストマー材料から形成される時、ステムの直径が比較的小さいと、ステムウェブ表面の触ると柔軟な性質が高められる。
【００３９】
図８は、本発明による滑り制御表面１０２を組み込んだ代表的な物品１００の斜視図である。物品１００は、一方の端部に開口部１０４を有し、ゴルフクラブ、野球用バット、およびハンドルなどの様々な構造体に取付けるのに好適な、型成形されたグリップである。物品１００は、射出成形、プロファイル押出し、ロール式押出し成形などの様々なプロセスを使用して作られてもよい。
【００４０】
幾つかの実施態様では、摩擦制御物品に視覚的効果を付与することが望まれる場合がある。これは、裏当て層の１方又は両方の側面での更なるマイクロ複製技術により、および／又は、透明、半透明、偏光性などである材料から裏当て層を形成することにより達成されてもよい。例えば、図１の滑り制御物品２０を参照すると、透明な裏当て層２１により、裏当て層２１の第２の表面２５上の印刷は、滑り制御物品２０のステムウェブの側から見ることができるであろう。目的とする様々な視覚的効果を達成するために、ステム２６も透明とするか、又は代替の不透明な材料から形成されるか又は不透明な被覆剤で被覆されてもよい。或いは又、情報を与える目的、装飾的な目的、又は広告の目的など任意の所要の目的で、滑り制御物品２０の第１の表面２４に（ステム２６の間の平坦な部分に）、印刷を加えてもよい。特定の滑り制御物品は、必要に応じて完全に透明であっても、又は一部または複数の部分だけが透明であってもよい。
【００４１】
本発明の摩擦又は滑り制御物品の更に数多くの用途が想到される。これらには、摩擦制御物品単独で（１つの表面で）の使用、又は向かい合った摩擦制御物品と組合わせた使用（道具が握られる時、対になって係合するように、手袋の掌状部および向かい合った道具のハンドルに摩擦制御物品を設けることなど）がある。本発明の摩擦制御物品は、スポーツ、医療、家庭、輸送、軍事および工業用の用途など様々な分野の数多くの用途に更に有用性がある。多くのこのような用途では、本発明の摩擦制御物品は、本明細書に開示される１つ又はそれより多くの他の特徴（微小溝、多孔質裏当て層（例えば、接着剤）、吸収層、代替の押出しおよび成形技術および構造体（例えば、接着ラップとして）、および摩擦制御物品の疎水性または親水性の特性（および、特定的には、そのステムの疎水性または親水性の特性）を変化させることなど）を含んでもよい。
【００４２】
本発明の摩擦制御物品に対して想到される更なるスポーツ用の用途には、以下のものが挙げられる。
・カヌー又はカヤックのパドルなど、ボート漕ぎで使用されるパドルのハンドルに、
・すべりを減少させるためボートおよびパーソナルウォータークラフトの表面に（シート、ハンドル、グリップ、フットパッド、デッキの表面など、乗り手と係合する任意の表面に）
・使用者の足又はブーツと係合するスキー（水上又は雪上）のそれらの部分に
・滑りを防ぐため使用者と係合するスノーモービルのそれらの部分に（スノーモービルの座席、ハンドル、グリップ、足の接地部など）
・ウインドサーフィンのボードおよびハンドル、帆船およびセーリング用品の使用者と係合する表面に
・手綱、鞍、乗馬ズボン（例えば、タイパッチ（ｔｈｉｇｈ　ｐａｔｃｈ））、騎手の鞭、ブラシなどの乗馬用品に
・体操用品に（鞍馬、跳馬、床運動、および体育家と係合または接触する輪および取っ手）
・ボールの握り易さ、投げ易さ、捕まえ易さなどを高めるために、ボールの表面に
・ホッケー用スティックの取っ手又はパックを扱う表面に（シートの形状で適用されるか、又はテープの形状でスティックの周りに巻かれる）
・スケートボードの使用者と接触する表面に
・自転車のペダル、オートバイのペダル、自動車のペダルなどの、ペダルの使用者と係合する表面に
・ウォーターパークのインナーチューブ、他の水遊び用おもちゃ、いかだ、浮揚物品などの使用者と接触する表面に
・スキューバダイビングおよびシュノーケリングの用途に使用するアクアソックスの外側および／内側表面に、および／又はスキューバダイビング又はシュノーケリングに使用するフィンの内側表面に
・履物に対する使用者の足の滑りを最小限に抑えるため、ソックスの内側および／又は外側表面、および／又はブーツ又は履物の内側表面に
・摩擦制御および使用者によるボールの扱いをし易くするため、サッカーシューズなどの履物に係合するボールの外側表面に
・ユニフォームのパッドアセンブリ（フットボール、ホッケー又はラクロスのパッドなど）の露出した表面に、およびこのようなパッドの上に被さるジャージー、パンツ、ブリーザー（ｂｒｅｅｚｅｒ）又はソックスの内側の対になる部分に
・レスリングおよび体操などのスポーツ用の特殊な履物に
・ゴルフトレーニングマットおよびシューズなど、ゴルフクラブをスイングする時に、マットおよびシューズ上の向かい合った摩擦制御物品が、使用者に足を捻らないように教えることを助けるスポーツトレーニング用品に
・使用者に対するストラップの滑りを最小限に抑えるため、バックパックのストラップおよびカメラのストラップなどのストラップ用のパッチに（および、ストラップのパッチと対になることができる、向かい合った使用者の衣類上のパッチに）
・サンダル又は他の履物の足側および／又は床側に
・運動用品のグリップ又はハンドル、又は他のスポーツ用スティックのハンドル又はグリップ、又はハンドルバーに（例えば、フィールドホッケー用スティック、自転車モトクロス用自転車のハンドル、レース用乗り物のステアリングホイール、ローインググリップ、水上スキーのハンドル、プールのはしご又は階段の取っ手など）
・スプレースカートおよびグリッパーを含む、カヤックの使用者と係合する表面に
・ピストルのグリップ、ライフルの床尾などの消火器のグリップおよび柄、および、手袋および肩パッドなどの使用者が着用する向かい合った表面に
・座席クッションの表面に（その使用者に接触する側に、および／又は支持体に接触する側に）
・ライザーグリップおよび／又は弦および弓筈領域などの、アーチェリー用品に
・セーリング、スキー、ハンティング、登山、車椅子レース、ゴルフ、ラケットを用いるスポーツ、スティックを扱うスポーツ、ボールを扱うスポーツ、体操、いかだ競技、セーリング、スノーモービル、アーチェリー、サッカーのゴールキーパー用手袋などの、スポーツ用の用途に使用されるあらゆる種類の手袋に。
【００４３】
これらの用途の多くでは、目的とする摩擦および／又は把持特性を付与するのに、単一の摩擦制御物品で十分な場合がある。スポーツ用物品（その物品がボール、スポーツ用スティックの取っ手、又は設備であれ）と係合するように使用者が手袋を着用するどのような用途でも、手袋とボール、取っ手、又は設備などにも本発明の摩擦制御物品を設けて、向かい合って対になった摩擦制御物品間に高い剪断強さを与えることができるが、それらの間は素早く剥れる（即ち、離れる）ことが可能であり、そのため使用者のグリップが改善される。更に、摩擦制御物品は、これを特定の形状に成形するか、接着剤又は他の貼り付け手段を使用してそのパッチを付けるか、又は摩擦制御物品のテープで品物（スポーツ用スティックなど）を巻くことのいずれかにより、このようなスポーツ用の品物に適用することができる。
【００４４】
本発明の摩擦制御物品を家庭で使用する用途も数多くあり、以下のものが挙げられる。
・所定の位置に保つため、掛け布団又は毛布のパッチに
・水鉄砲、水ポンプ、およびペイントボール用品の取っ手を含む、おもちゃおよびボードゲームの使用者と係合する表面に、又は床と係合するプレイマットの表面に
・椅子、座席、および台所用品、および特にベビーシート、ベビーチェアおよび用品に関連するこのような品物、および子供に食べさせるために使用される食事用の品物の使用者と係合する表面に、および赤ちゃんが滑らないようにするため、ハイチェアおよびおむつ交換テーブルの表面に、
・エアマットレスと寝袋との間の相対的な滑りを防ぐため、エアマットレスおよび／又は寝袋に適用されるパッチに
・園芸用道具およびホースに
・プレイスマットに（その上部表面および／又は下部表面に）
・台所用品、設備、および機器の取っ手に
・バイオリンの顎当てなどの楽器の使用者と係合する表面に
・ヘアピースおよび／又は帽子を着用者の頭の所定の位置に保持するため、１つ又はそれより多くの向かい合った表面に
・引き出しのライナー又は道具箱のライナーとして
・滑らないようにするため小型じゅうたんの下に置く、木又はビニール又は他の平滑な床の上のノンスリップ層として
・浴槽のライニングマット、又は浴室、化粧室、台所、又は洗濯室のノンスリップ表面として
・ホットパッド用の被覆材料として
・眼鏡の鼻当ての滑り止め表面として
・ＡＶリモートコントロール維持用のパッドなど、物品が滑らないように物品を置くパッド又は表面に
・（土台表面、関連する他の家具のピース、上掛け、又は使用者に接触する）家具の表面に
・握り易さ、通気性、および柔軟性を改善するため、着用衣服の上のパッチとして
・猫の登り棒、ペット用ブーツ（内側および外側の両方）などのペットの用品に、ゴミ箱の滑り止めパッド、ペット用ボウルの滑り止めパッド、および／又はゴミ箱又はボウル自体の滑り止め表面に。
【００４５】
これらの家庭用の用途の多くでは、目的とする摩擦および把持特性を付与するのに、単一の摩擦制御物品で十分な場合がある。他の用途では、２つの向かい合った摩擦制御物品を協同して使用し、向かい合って対になった摩擦制御物品間に高い剪断強さを与えることができるが、それらの間（例えば、エアマットレスおよび寝袋上の摩擦制御物品の向かい合ったパッチの上などに）は素早く剥れる（即ち、離れる）ことができる。更に、摩擦制御物品は、これを特定の形状に成形するか、接着剤又は他の貼り付け手段を使用してそのパッチを付けるか、又は摩擦制御物品のテープで品物（台所用品の取っ手など）を巻くことのいずれかにより、このような家庭用の品物に適用することができる。
【００４６】
医療の分野でも、単一での用途か、又は対にした用途のいずれかで使用される本発明の摩擦制御物品には、数多くの使用法が可能である。これらには、以下のものが挙げられる。
・治療中に器具が滑り動かないようにするための滅菌マットに
・歯科用の椅子、診察台の表面、昇降段、カイロプラクティック用の台のカバーなど、座る又はリクライニングする領域に
・車椅子の座席、クッションおよび牽引表面に
・松葉杖および歩行器の、使用者および／又は床と係合する表面に
・歯科用器具の取っ手の表面に、および歯科用器具のトレイおよびマットに
・整形外科用および他の外科用の器具の取っ手に、および／又はそれらを使用するための執刀者又は外科医用手袋に
・コンドーム又はコンドームカテーテルに（それらの内側および／又は外側表面などに）
・他の材料のラップを所定の位置に保持するための摩擦表面として
・容易に開けられる処方薬の瓶を含む、医薬用容器を開けることを容易にする材料として
・中で滑らないようにするため、救急車又は他の医療用緊急輸送手段（例えば、負傷兵輸送用ヘリコプター）内の表面に、および使用者の握り易さを高めるために、および／又はそれらによって輸送される物品用のノンスリップ表面に
・医療施設内のフロアーマットとして
・摩擦特性を改善するため、および／又は使用者の触感を高めるために、手術用手袋（それらの内側および／又は外側表面）に
・医療用ブーツに（それらの内側および／又は外側表面）
・病室用又は病院のシャワー用の使い捨てマット又はパッドに
・空気の循環を改善し、絶えず摩擦して動くことによる傷を減少させるために、ナーシングホームのベッド用パッド又はパッチとして
・高流体手術（例えば、関節鏡検査、泌尿器科など）に使用するための使い捨て摩擦マットとして。
【００４７】
これらの医療用の用途の多くでは、目的とする摩擦および／又は把持特性を付与するのに、単一の摩擦制御物品で十分な場合がある。上述の他の分野で使用する用途と同様に、２つの摩擦制御物品を向かい合った表面（道具の取っ手と手袋との間、又は道具の取っ手と保持トレーとの間など）に使用することにより、向かい合って対になった摩擦制御物品間で高い剪断強さが得られる。更に、摩擦制御物品は、これを特定の形状に成形するか、接着剤又は他の貼り付け手段を使用してそのパッチを付けるか、又は摩擦制御物品のテープで品物（外科用器具の取っ手など）を巻くことのいずれかにより、このような医療品に適用することができる。
【００４８】
輸送関係の用途でも、本発明の摩擦制御物品の数多くの使用法が想到される。上述のものに加えて、本発明の摩擦制御物品は、更に多くの方法で使用することができ、以下のものが挙げられる。
・タイヤの表面に
・ステアリングホイール、ステアリングホイールのカバー、運転者用のノブ、ハンドル、およびレバーなどに、および／又は運転用手袋、機械作業用手袋、などに
・運転者又は乗客の座席、又はどのような乗り物のシートカバーにも（例えば、自動車、トラック、バス、飛行機、ボート、列車、オートバイのゴーカートなど）
・小荷物又は用品が滑り動かないように、容器保管表面に（例えば、自動車のトランクのパッドとして）
・道具が乗り物の表面で滑り動かないようにするため、および／又は乗り物の表面を擦らないようにするため、乗り物のメンテナンス中のフェンダー又はボディの掛け布として
・乗り物用のフロアマットとして（自動車のフロアマットなど）
・スキーの輸送のためスキーと係合するスキーラックの表面に、又は取外し可能なルーフラック、スキーラック、又は荷物台の乗り物に係合する表面に
・レクレーション用の乗り物、ボート、飛行機などの乗り物の中の引き出し、戸棚、および他の保管容器用のライナーとして。
【００４９】
これらの輸送用の用途の多くでは、目的とする摩擦および／又は把持特性を付与するのに、単一の摩擦制御物品で十分な場合がある。しかし、幾つかの用途では、２つの向かい合った摩擦制御物品を使用し、向かい合って対になった摩擦制御物品の間に高い剪断強さを与えるが、それらの間（例えば、ステアリングホイールのカバーおよび運転用手袋などに）は素早く剥れる（即ち、離れる）ことができる。更に、摩擦制御物品は、これを特定の形状に成形するか、接着剤又は他の貼り付け手段を使用してそのパッチを付けるか、又は摩擦制御物品のテープで品物（ステアリングホイールなど）を巻くことのいずれかにより、このような輸送用の品物に適用することができる。
【００５０】
本発明の摩擦制御物品は、前記で引用したその他記載の軍用に適用可能な使用法に加えて、軍用の分野にも用途がある。更なる軍用の用途には、以下のものが挙げられる。
・乗り物のシートクッション、バックパック、および衣服のパッチなどに
・ライフルの床尾、ピストルのグリップ、引き金などの使用者に係合する武器の表面に
・オペレータが摩擦制御物品の付いた手袋を着用する砲弾装填の用途、オペレータの手袋と対になるように本発明の摩擦制御物品の付いた砲弾の部分又は砲弾のライナーに。
【００５１】
これらの軍用の特殊な用途の多くでは、目的とする摩擦および／又は把持特性を付与するのに、単一の摩擦制御物品で十分な場合がある。しかし、幾つかの用途では、２つの向かい合った摩擦制御物品が設けられ、向かい合って対になった摩擦制御物品の間に高い剪断強さを与えるが、それらの間（例えば、砲弾を装填するオペレータ用の手袋と砲弾のライナーとの間など）は素早く剥れる（即ち、離れる）ことができる。更に、摩擦制御物品は、これを特定の形状に成形するか、接着剤又は他の貼り付け手段を使用してそのパッチを付けるか、又は摩擦制御物品のテープで品物（ピストルのグリップなど）を巻くことのいずれかにより、このような軍用の品物に適用することができる。
【００５２】
本発明の摩擦制御物品を使用する他の用途には、以下のものなどの工業的な又は商業的な用途が挙げられる。
・はしご段および／又は靴の表面に
・有害物質の取扱いを容易にする際の使用に（物質の容器、このような容器を取り扱う際に使用する手袋の摩擦制御表面など）
・オペレータが操作をするため、ホースの取り外し表面に
・オペレータの操作を必要とするノブ、ダイアル、およびハンドルに
・精密部品の配置が容易になる、コンベヤーベルトの表面又は組立配置システムに
・コンピュータのマウスパッドの裏側に（即ち、マウスパッドの両面のマイクロ複製された表面）
・ベルトおよびベルト車の向かい合った表面に
・理学療法、手すり、プール、足場の横木、安全柵などの、欄干又はグリップ表面に
・デッキ表面、工業用床張り材、キャットウォークなどの足踏み表面に
・消防用品に（例えば、階段、接地部、エプロン、ハンドル、グリップ、手袋、ヘルメットのストラップ、着用衣服などに）
・フードサービスのトレイ、又は他のフードサービスの表面に（例えば、航空会社の給仕トレイ、カート、座席の折り畳み式トレイ、カップの底部など）
・衣類物品上の有利な場所に位置決めされる、向かい合った又は単一の本発明の摩擦制御物品のパッチにより、衣類物品を所定の位置に維持するために
・工業用の用途の、高剪断摩擦の設備取付け台
・保管又は輸送のために積み上げられる時、関係のある箱の間又は容器の間（又は、パレットとその上の物質との間）の滑り制御を防止するために。この用途では、容器全体が本発明の摩擦制御物品又はその選択的に適用されるパッチ（例えば、単独で、又は他の容器表面にある向かい合った本発明の摩擦制御物品のパッチと対に組み合わせて使用するように、主な面又は角に）で覆われてもよい。本発明の摩擦制御物品は、容器自体の上に形成されるか、又は圧感接着剤又は他の固定機構などの好適な手段で適用することができる。本発明の摩擦制御物品は、積重ねられる容器の間に置かれる別々の接着されていないシートとして、このような方法で使用することもできるが、ここで、シートはその１方の又は両方の面から延びるステムを有している。
・宝飾品陳列ケースなどの陳列ケース用のパッド、又はマットとして
・電子部品又は易燃性物質などのデリケートな構成要素用の保管又は発送表面として（電子部品では、任意選択的な帯電防止特性を含む）
・電動工具、ブラシ、手動の道具、ホイールバーレル、バルブのハンドルなどのハンドルに
・ノンスキッド基壇カバー又は表面として
・輸送中の横滑りを防ぐため、又は、使用者又は取扱者による取扱いを向上させるために、旅行かばん、ケース類、ハンドバッグ、バックストラップの表面又はパッチとして（それらの底面、側面、又はサポートストラップ表面に）
・単独で、又は手袋の着用者が操作する装置上の対になった本発明の摩擦制御物品と組合わせて使用される、表面を把持する特殊な摩擦手袋が望まれる、任意の工業的な目的用の手袋に。
【００５３】
これらの工業的／商業的用途の多くでは、目的とする摩擦および／又は把持特性を付与するのに、単一の摩擦制御物品で十分な場合がある。他の何か（道具の取っ手又はバルブのハンドルなど）と係合するように、使用者が手袋を着用するどのような用途でも、手袋およびハンドルの両方に本発明の摩擦制御物品を設けて、向かい合って対になった摩擦制御物品の間に高い剪断強さを与えることができるが、それらの間は素早く剥れる（即ち、離れる）ことができ、使用者のグリップが改善される。更に、摩擦制御物品は、これを特定の形状に成形するか、接着剤又は他の貼り付け手段を使用してそのパッチを付けるか、又は摩擦制御物品のテープで品物（道具の取っ手など）を巻くことのいずれかにより、このような工業用／商業用の品物に適用することができる。
【００５４】
上記用途の多くに共通の１つの行動は、把持する必要があることである（例えば、スポーツでは、掴む、保持する、握り締める、捕まえる、振り回す、回転させる必要がある）。本発明のマイクロ複製された把持表面は、把持性能を増すことでこの必要を満たすのに役立ち、乾燥および湿潤状態の両方で把持性能を向上させることができる。特有の摩擦制御物品表面を形成するステム又は「ピン」は、可撓性があり、向かい合った表面の小さい様々な凹部および割れ目に嵌合して、確実に把持することができる。更に、材料は、湿潤環境でもうまく機能する。本発明の摩擦制御物品が対になって、同じ種類の摩擦制御物品を有する別の構成要素と摩擦干渉を形成するとき、本発明の摩擦制御物品は、性能が顕著に改善することに寄与する。ステムは干渉し、高い剪断強さを与えるが、他方から摩擦制御物品の１つの層を容易に「剥がす」又は持ち上げて離すことができる。ほとんどの用途では、このような種類の把持特性は重要である。本発明の滑り制御物品（１枚のシートと対になった２枚のシートの両方の用途で）の使用者は、把持および摩擦関係の特性における顕著な差に気付く。この点に、および特に本発明の材料に非常に柔軟な手触りを作り出すことに寄与する重要な要因は、ステムの直径（丸い場合）が小さいこと、又はステムの最大断面寸法（その他の形状で形成される場合）が小さいことである。
【００５５】
エラストマー材料
エラストマー材料は、Ｇ．Ｈｏｌｄｅｎらの「Ｔｈｅｒｍｏｐｌａｓｔｉｃ　Ｅｌａｓｔｏｍｅｒｓ」（１９９６年、第２版）に記載されているような、流動し成形され得る状態まで加熱することができる任意の熱可塑性エラストマーとすることができる。積層された又はブレンドされた形態のいずれかである、２つ又はそれより多くの異なる熱可塑性エラストマー材料を使用して、滑り制御物品のその部分を規定することも、本発明の範囲内である。
【００５６】
「エラストマー」又は「エラストマーの」という用語は、ゴムのものと類似の弾性特性を有するゴム又はポリマーのことを言うのに使用される。特に、エラストマーという用語は、十分に伸長された後、エラストマーを伸長させる応力を解放すると元の寸法まで戻る材料の特性を反映する。全ての場合、エラストマーは、少なくとも１０％伸長され（厚さ０．５ｍｍ（０．０２インチ）で）、更に好ましくは少なくとも３０％伸長され、その伸長状態で２秒間保持された後に、１分間弛緩させられた後、少なくとも５０％回復の状態に戻ることができなければならない。更に典型的には、エラストマーは、その弾性限界を超えることなく２５％伸長することができる。幾つかの場合、エラストマーは、引裂したり又は組成物の弾性限界を超えることなく、元の寸法の３００％も又はそれを超えて伸長することができる。エラストマーは、弱い応力により十分に変形して、その応力を解放した後、室温で急速にほぼ元の寸法および形状に戻る高分子材料として、ＡＳＴＭ名称Ｄ８８３−９６にあるように、この弾性を反映するように典型的には定義される。ＡＳＴＭ名称Ｄ４１２−９８Ａは、エラストマーの特性を評価するための、張力下におけるゴム特性を試験する適切な手順とすることができる。
【００５７】
幾つかの用途では、熱硬化性エラストマーを使用してもよい。一般に、このような組成物は、硬化すると一体化したネットワーク又は構造を形成する、比較的高分子量の化合物を含む。硬化は、化学硬化剤、触媒、および／又は照射を含む、様々な方法で行うことができる。
【００５８】
材料の最終的な物理的特性は、様々な要因の関数であり、特に、数平均ポリマー分子量および重量平均ポリマー分子量、エラストマーの強化領域（ハードセグメント）の溶融点又は軟化点（例えば、ＡＳＴＭ名称Ｄ１２３８−８６に従い測定することができる）、ハードセグメント領域を含むエラストマー組成物の重量パーセント、エラストマー組成物の高靭性化セグメント又はソフトセグメント（低ガラス転移点）部分の構造、架橋密度（架橋間の平均分子量）、および添加剤又は補助剤の性質および濃度、などのの関数である。
【００５９】
エラストマーの種類の例には、アニオントリブロックコポリマー、ポリオレフィンをベースとする熱可塑性エラストマー、ハロゲン含有ポリオレフィンをベースとする熱可塑性エラストマー、動力学的に加硫したエラストマー−熱可塑性樹脂のブレンドをベースにした熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリエーテルエステル又はポリエステルをベースにしたエラストマー、ポリアミド又はポリイミドをベースにした熱可塑性エラストマー、イオノマー熱可塑性エラストマー、熱可塑性エラストマー相互貫入ポリマーネットワーク中の水素化ブロックコポリマー、カルボカチオン重合による熱可塑性エラストマー、スチレン／水素化ブタジエンブロックコポリマーを含有するポリマーブレンド、およびポリアクリレートをベースにした熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。エラストマーの幾つかの具体的な例は、天然ゴム、ブチルゴム、ＥＰＤＭゴム、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン／プロピレン／ジエンターポリマーエラストマー、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンコポリマー（ランダム又はブロック）、スチレン−イソプレンコポリマー（ランダム又はブロック）、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、これらの混合物、およびこれらのコポリマーである。ブロックコポリマーは、線状、放射状又は星形の配置であってもよく、ジブロック（ＡＢ）又はトリブロック（ＡＢＡ）コポリマー、又はこれらの混合物であってもよい。これらのエラストマー同士のブレンド又は変性非エラストマーとのブレンドも想到される。市販のエラストマーには、ＫＲＡＴＯＮ^ＴＭの名称で、Ｈｏｕｓｔｏｎ、ＴｅｘａｓのＳｈｅｌｌ　Ｃｈｅｍｉｃａｌ　Ｃｏｍｐａｎｙから入手可能なブロックポリマー（例えば、エラストマーセグメントを有するポリスチレン材料）が挙げられる。
【００６０】
製造方法
図９に示されるプロセスは、溶融熱可塑性材料１５４の１つ又はそれより多くの層を金型１５６に押出すように適合された押出機および押出ダイ１５２を含む、３つのロールを垂直に積重ねた成形装置１５０を示す。この場合、金型１５６は、ロール１５８であり、このロールはその外側の円筒状表面に、溶融熱可塑性材料１５４がロール１５８の円筒状の表面上を通る時にその溶融熱可塑性材料に移される目的とする表面パターンを有する。図示された実施態様では、ロール１５８の表面は、同様に複数の直立したステム１６２を形成するように適合された、複数の配列されたキャビティ１６０を有する。キャビティは、熱可塑性材料１５４から好適な表面ステム構造を形成するように、必要に応じた配列、寸法、および形状に作られてもよい。１実施態様では、量を十分に追加した溶融熱可塑性材料１５４を金型１５６に押出して、裏当て層の一部を形成する（図１および３を参照）。
【００６１】
ロール１５８は、回転可能であり、向かい合ったロール１６８と共にニップ１６６を形成する。ロール１５８と向かい合ったロール１６８との間のニップ１６６は、溶融熱可塑性材料１５４をキャビティ１６０に流し込むのを助け、その上に均一な裏当て層が設けられる。ニップ１６６を形成する隙間の間隔を調節して、予め決められた厚さの熱可塑性材料１５４の裏当て層を形成するのを助けることができる。任意選択的に、裏当て層１６４は、ニップ１６６に同時に運ばれる。裏当て層１６４は、エラストマー材料の組成および直立したステム１６２の幾何学的形状によって、滑り制御物品１７２を金型１５６から効率的に取り出すのに有用な場合がある。
【００６２】
図９に示されるように、滑り制御物品１７２は、ロール１５８を出た後、第３のロール１７０を通って移動してもよい。このプロセスでは、１５８、１６８、１７０の３つのロール全ての温度を選択的に制御し、熱可塑性材料１５４の目的とする冷却を達成してもよい。第３のロール１７０は、滑り制御物品１７２が移動する後の経路を決めるのにも役立つ。
【００６３】
金型１５８は、連続処理（テープ、円筒状ドラム、又はベルトなど）又はバッチ処理（射出成形または圧縮成形など）に使用される種類のものとすることができる。直立したステム１６２を形成する金型１５８を作る場合、金型１５８のキャビティ１６０は、穴明け、切削、レーザー穴明け、ウォータージェット切削、鋳造、エッチング、ダイ打ち抜き、ダイヤモンド旋削、型彫り、およびローレット切りなどの任意の好適な方法で形成されてもよい。キャビティの配置は、滑り制御物品の間隔および向きを決定する。ステム１６２は、典型的には、キャビティ１６０の形状に対応した形状を有する。金型キャビティは、キャビティに熱可塑性材料を注入することを容易にするため、溶融熱可塑性材料が適用される表面の反対側のキャビティの端部が開いているものとすることができる。キャビティが閉じている場合は、キャビティに真空圧力をかけて、溶融熱可塑性材料がキャビティ全体を十分に満たすようにすることができる。或いはまた、注入された材料がキャビティ内の空気を圧縮できるように、閉じたキャビティは、形成されるステムの構造体の長さより長いものとすることができる。金型キャビティは、表面ステム構造体がそこから離型しやすいように設計されなければならず、従って、勾配のついた側壁、又はキャビティ壁に離型コーティング（テフロン（登録商標）材料層など）を含んでもよい。金型から熱可塑性材料裏当て層が離型し易いように、金型表面も離型コーティングを含んでもよい。幾つかの実施態様では、ロールの表面に対してキャビティに勾配をつけることができる。
【００６４】
金型は、硬質又は可撓性の好適な材料から作ることができる。金型の構成要素は、金属、スチール、セラミック、ポリマー材料（シリコーンゴムなど、熱硬化性および熱可塑性ポリマーの両方を含む）又はこれらの組み合わせで作ることができる。金型を形成する材料は、裏当て層および表面の形態を形成するのに使用される特定の流動性の熱可塑性材料に関連する熱エネルギーに耐える十分な一体性および耐久性を有していなければならない。更に、金型を形成する材料は、様々な方法でキャビティを形成されることができ、安価で、長い実用寿命があり、許容できる品質の材料を一貫して製造し、処理パラメータの変更が可能であることが好ましい。
【００６５】
溶融熱可塑性材料は、金型キャビティに、および金型の表面上に流し込まれ、被覆材料の層を形成する。溶融熱可塑性材料の流動を促進するため、熱可塑性材料は、典型的には、適切な温度まで加熱された後、キャビティにコーティングされなければならない。このコーティング技術は、カレンダーコーティング、キャストコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、押出し、グラビアコーティング、ナイフコーティング、又はスプレーコーティングなどの任意の慣用的な技術とすることができる。図９には、単一の押出機および押出ダイ配置が示されてる。しかし、２つ（又はそれより多く）の押出機および関連する押出ダイを使用して、ニップ１６６に複数の熱可塑性材料を同時押出しし、複合成分の（積層された又はブレンドされた）ラミネート被覆材料を得ることができる。
【００６６】
溶融熱可塑性材料１５４の金型１５８への流入は、また、向かい合うロール１５８と１６８との間に圧力をかけることにより促進されてもよい。裏当て層１６４が、多孔質材料を含む場合、３ロールの垂直型成形装置１５０は、溶融熱可塑性材料１５４の貫通の程度を制御する。このように、溶融熱可塑性材料１５４の量を制御して、裏当て層１６４の表面コーティングをかろうじて貫通するか、又は、裏当て層１６４をほぼ包み込むように、熱可塑性材料１５４の注入と反対側の多孔質裏当て層１６４を貫通することができる。溶融熱可塑性材料１５４の多孔質裏当て層１６４への貫入は、また、溶融熱可塑性材料１５４の温度、ニップ１６６内の熱可塑性材料１５４の量、および／又は金型キャビティのライン速度と関連した押出機のフローレートにより制御されてもよい。
【００６７】
溶融熱可塑性材料１５４が、金型キャビティ１６０の中に、および金型表面１５６上にコーティングされた後、熱可塑性材料は冷却されて固化し、そこに目的とする外部表面の形態（例えば、直立したステム１６２）を形成する。次いで、固化された熱可塑性材料は、金型１５８から分離される。熱可塑性材料１５４は、固化される時、収縮することが多く、このため、材料（例えば、表面ステム構造および裏当て層）および一体化フィルム層が金型から離型するのが容易になる（図１参照）。表面ステム構造および裏当て層を固化させるのを助けるため、金型の一部又は全部を冷却してもよい。冷却は、水、強制気流、熱伝達液体又は他の冷却プロセスを使用することにより行うことができる。
【００６８】
射出成形などの幾つかの成形プロセスは、熱硬化性エラストマーポリマーを使用してもよい。熱硬化性樹脂が溶融材料として使用される場合、樹脂は未硬化の又は未重合状態の液体として金型に適用される。樹脂が金型にコーティングされた後、樹脂は固体となるまで、重合又は硬化される。一般に、重合プロセスは、重合を促進するために、硬化時間又はエネルギー源への曝露のいずれか、又はその両方を必要とする。エネルギー源は、与えられる場合には、熱、又は、電子ビーム、紫外線、又は可視光線などの放射線エネルギーとすることができる。樹脂は硬化した後、金型から取り出される。幾つかの場合では、表面ステム構造が金型から取り出された後、熱硬化性樹脂を更に重合又は硬化するのが望ましいことがある。好適な熱可塑性樹脂の例には、メラミン、ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびウレタン樹脂などが挙げられる。少なくとも１方の面に直立したステム構造を有する裏当て層の形成は、米国特許第４，２９０，１７４号（Ｋａｌｌｅｂｅｒｇ）、同第５，０７７，８７０号（Ｍｅｌｂｙｅら）、および同第５，２０１，１０１号（Ｒｏｕｓｅｒら）に開示されるように、射出成形又はプロファイル押出しにより行うことができる。
【００６９】
静摩擦係数および動摩擦係数を測定するための試験手順
各フィルムサンプルの静摩擦係数および動摩擦係数は、Ｐｈｉｌａｄｅｌｐｈｉａ、ＰｅｎｎｓｙｌｖａｎｉａのＴｈｗｉｎｇ−Ａｌｂｅｒｔ　Ｉｎｓｔｒｕｍｅｎｔ　Ｃｏｍｐａｎｙから入手可能な、Ｔｈｗｉｎｇ−Ａｌｂｅｒｔ　Ｍｏｄｅｌ　２２５−１摩擦／剥離試験機で測定された。装置の操作は、Ｔｈｗｉｎｇ−Ａｌｂｅｒｔ使用説明書、摩擦／剥離試験機、型番２２５−１、１９９４年５月改訂、Ｓｏｆｔｗａｒｅ　ｖｅｒｓｉｏｎ２．４に明記されている。この静摩擦係数の分析では、加重した５．０８ｃｍ×５．０８ｃｍ（２インチ×２インチ）の滑り制御物品のサンプルを、Ｍａｎｈａｔｔａｎ、ＮＹ所在のＴｏｒａｙ　Ｕｌｔｒａｓｕｅｄｅ　Ａｍｅｒｉｃａから入手可能なＵｌｔｒａｓｕｅｄｅ^ＴＭＨＰの名称で販売されている人工皮革のサンプルに当てて動かすのに必要な水平方向の力を測定した。
【００７０】
５．０８ｃｍ×５．０８ｃｍ（２インチ×２インチ）の滑り制御物品のサンプルを５．０８ｃｍ×５．０８ｃｍ（２インチ×２インチ）の金属製の試験用そりに固定することにより、摩擦試験試料を準備した。試験試料を、Ｓｔ．Ｐａｕｌ、ＭｉｎｎｅｓｏｔａのＭｉｎｎｅｓｏｔａ　Ｍｉｎｉｎｇ　ａｎｄ　Ｍａｎｕｆａｃｔｕｒｉｎｇ　Ｃｏｍｐａｎｙから入手可能なＳＣＯＴＣＨ９８５１などの両面感圧接着剤でそりに取付けた。金属製の試験用そりは、重さが２００グラム（１７．６オンス）であった。
【００７１】
摩擦試験用の人工皮革サンプルを準備するために、約１０．１６ｃｍ×３０．４８ｃｍ（４インチ×１２インチ）のサンプルをＳＣＯＴＣＨ９８５１などの両面感圧接着テープで金属板に固定し、試験中にサンプルが動いたり皺がよらないようにした。
【００７２】
サンプルを接着させた金属板を、準備されたばね挟みで金属テーブルの試験用表面にしっかりと固定した。底面にフィルムサンプルを付けた金属製の試験用そりは、総重量が２００グラム（３５．２オンス）であり、これを布帛の上に置き、使用説明書に明記されている指示に従って、布帛を横切り１分間に５．１ｃｍ（２インチ）の速度で１０秒間引張った。次いで、機械で静摩擦係数を計算したが、この計算では、サンプルで滑りを引き起こす測定された水平方向の力を２００グラム（３５．２オンス）という、そりの通常の力で割った。各摩擦試験サンプルおよび滑り制御物品に対して、少なくとも５回の測定を記録した。摩擦／剥離試験機で算術平均を計算した。
【００７３】
動的剪断強さの試験方法
Ｉ−ｍａｓｓ剥離試験機で動的剪断強さを測定した。試験機を１８０°剥離モードに設定した。約３．８ｃｍ×１２．７ｃｍ（１．５インチ×５インチ）のステムウェブのサンプルを、厚さ約１．６ｍｍ（１／１６インチ）、６．３５ｃｍ×２２．９ｃｍ（２．５インチ幅×９インチ長さ）のアルミニウム製試験パネルに３Ｍ　４０４などの両面テープを使用して取り付け、その中央に長さ方向に置いた。同様に、約２．５４ｃｍ×２．５４ｃｍ（１インチ×１インチ）のステムウェブのサンプルを、厚さ約１．６ｍｍ（１／１６インチ）、６．３５ｃｍ×２２．９ｃｍ（２．５インチ幅×９インチ長さ）のアルミニウム製試験パネルの中央に取り付けた。次いで、各サンプルのステムが互いに接触した状態でパネルを合わせて置いた。全く圧力をかけない状態の、アルミニウムパネルを含む２つのサンプルの係合した厚さをデジタルキャリパーゲージを使用して測定した。上部パネルの重量は、約５３グラム（１．７６オンス）であった。
【００７４】
ステムウェブの大きい方のサンプルの付いたアルミニウムパネルを、ステムウェブの面を上にしてＩ−ｍａｓｓ試験機の可動プラットホームに取付けた。約２．５４ｃｍ×２．５４ｃｍ（１インチ×１インチ）のステムウェブのサンプルの付いたアルミニウムパネルを、ステムウェブが係合する位置となるように上面に置いた。上部パネルのサンプルが下部のサンプルを通して引張られるように、ステムウェブは、フォースゲージ（ｆｏｒｃｅ　ｇａｕｇｅ）から最も離れた端部にあるように位置決めされた。係合した対の上に、係合した厚さより約０．１３ｍｍ〜０．２５４ｍｍ（０．００５〜０．０１０インチ）大きい隙間を開けてバーを置いた。このバーは、２つのステムウェブサンプルを係合させる過剰な圧力を加えることなく、サンプルが離れることを防ぐように設計されている。フォースゲージが可動プラットホームに対して真直ぐ平行な力を測定するような位置で上部のアルミニウムパネルの端部を、フォースゲージに取付けた。
【００７５】
Ｉ−ｍａｓｓ試験機の釣合いをとり、ゼロ合わせをし、平均２秒間の測定をするように調節した。平均２秒間、スペーシングバーがステムウェブサンプルの真上にあるようにスペーシングバーの位置を調節した。プラットホームの速度を、３０．５ｃｍ／分（１２インチ／分）に設定した。各サンプルに対し、最高、最低、および平均の力を測定した。各サンプルを３回試験し、平均値を計算した。
【００７６】
実施例に使用される材料
様々なエラストマー材料を実施例のサンプルの調製に使用した。これらの材料を表１に要約する。幾つかのサンプルの幾つかの特性を表２に要約する。
【００７７】
【表１】

【００７８】
【表２】

【００７９】
ブレンドのレオロジーおよびモルフォロジー
ＤＳＲおよびキャピラリレオメーター（ＣＲ）の両方を使用し、ステムウェブの押出しで使用された温度である２０４℃（４００°Ｆ）で、数十にわたる剪断速度でＥｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１およびＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１の両方の粘度を測定した。より高い剪断速度（＞１０ｓ−１）では、Ｖｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１の粘度および弾性率が、Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１のものの約２倍であることが分かる。
【００８０】
走査電子顕微鏡（ＳＥＭ）を使用して、様々な組成物のブレンドのモルフォロジーを調べた。Ｂｒａｂｅｎｄｅｒミキサーを使用してブレンドを混合し、約２１６℃（４２０°Ｆ）、６．９ＭＰａ（１０００ｐｓｉ）で６０秒間、ホットプレス法を用いてシリコーン型に圧入した。材料を入れた金型をドライアイス上で冷却した。サンプルを金型から剥がした。下記のホットプレスブレンドのみを調べた。サンプルの表面近くで顕微鏡写真を撮った。ほとんどどのサンプルにも分散したモルフォロジーが存在した。６０／４０のＥｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１／Ｖｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１サンプルにのみ、共連続構造が幾らか存在した。
【００８１】
実施例
実施例１
重量で５０：５０の、ポリウレタン樹脂Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１とスチレン系トリブロックコポリマーＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１をペレットとしてドライブレンドした。ポリウレタンは、構造の耐久性および弾性を付与し、Ｖｅｃｔｏｒは摩擦特性を改善した。Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１を約８２．３℃（１８０°Ｆ）で少なくとも４時間乾燥した。ペレットの混合物を、カーボンブラック／ポリウレタンブレンド約２重量％と混合した。最終ブレンド中のカーボンブラックの含量は、１重量％を越えなかった。
【００８２】
ツーリングがロールではなくベルトとして構成されていることを除いて、図９に概ね示されているように、混合物は押出される。押出機は、ポリオレフィン加工用に設計されたスクリュ直径が約６．３５ｃｍ（２．５インチ）のＤａｖｉｓ　Ｓｔａｎｄａｒｄ単一スクリュ押出機であった。毎分約８回転（ｒｐｍ）で、約１３．８ＭＰａ（２０００ｐｓｉ）の溶融圧力で溶融物をダイから吐出した。押出機の最終ゾーンの温度は、約２１６℃（４２０°Ｆ）であった。ダイの温度は、約２３２℃（４５０°Ｆ）であった。ダイリップの開口部は、約０．５１ミリメートル（０．０２０インチ）であった。
【００８３】
ニップ圧力約３４５，７０５Ｐａ（５０ｐｓｉ）で、溶融物を金属ロールを用いてシリコーンベルト／金型に圧入した。ロールの１つは、約６５．６℃（１５０°Ｆ）に加熱される成形された表面を有していた。表面には、直径が約０．２５４ｍｍ（０．０１０インチ）で、互いに約０．４６ｃｍ（０．０１８インチ）離れた穴の配列があった。４０４の製品名でＭｉｎｎｅｓｏｔａ　Ｍｉｎｉｎｇ　ａｎｄ　Ｍａｎｕｆａｃｔｕｒｉｎｇ　Ｃｏｍｐａｎｙから入手可能な二重被覆テープの裏当てをニップに導入し、直立したステムの反対側のウェブの面に接着した。ウェブおよび二重被覆テープを、１．５メーター／分（毎分５フィート）の速度で成形された表面から取り出した。
【００８４】
得られたステムウェブは、約４９０ステム／ｃｍ^２（３１５９ステム／平方インチ）であった。ステムの中心から中心までの間隔は、ｘ方向に約０．４３９ｍｍ（０．０１７３インチ）であり、ｙ方向に約０．４６５ｍｍ（０．０１８３インチ）であった。ステムの直径は、約０．１５ｍｍ（０．００５９インチ）であり、ステムの高さは、約０．６２５ｍｍ（０．０２４６インチ）であった。隣接するステム間の隙間は、約０．１２７ｍｍ（０．００５インチ）であった。金型の穴の直径の寸法（０．０２５４ｃｍ（０．０１０インチ））を使用して、できるたけ大きい個々のステムの断面積（０．０００５０６７ｃｍ^２（０．００００７８５４５平方インチ））を求めると、ステム（約４９０ステム／ｃｍ^２（３１５９ステム／平方インチ））で作られているステムウェブの平方インチ当りの面積は、従って全面積の約２４．８％以下であった。
【００８５】
水滴と、ステムウェブと同じ組成を有する平坦な基材との間の接触角を測定することにより、水の湿潤能力を推定した。接触角を測定すると約６５°であり、これは疎水性材料に期待されるものであった（概ね、図６を参照）。大量の水をステムウェブの構造表面につけ、光学顕微鏡で観察した。水は、ステムの間の間隙を完全に満たした。ステムの先端は、図７のように、エラストマーの疎水性の性質のため露出していた。先端が露出していたため、同じ条件下で試験した時、平坦なシートの性能と比較して、摩擦特性が改善されていた。
【００８６】
２つの方法を使用して把持性能を評価した。第１組の実験では、ステムウェブの摩擦特性を直接測定した。その結果を、ステムウェブと同じポリマーブレンドで作られた平坦な基材の性能と比較した。第２の方法では、ステムウェブを物品に直接適用した。６８．６ｃｍ×２．５４ｃｍ（２７インチ×１インチ）のウェブのストリップをゴルフのシャフトの周りに巻きつけ、湿潤および乾燥状態の両方で、現存のゴルフのグリップの性能と比較した。評価者の一団は、新規なグリップを有するゴルフクラブで一連のスイングをした。本発明の性能は、湿潤状態で、対照サンプルより優れていると思われた。同様の試験をテニスラケットで行った。
【００８７】
実施例２
成形された表面からステムウェブをより一貫して取り外し、物品に均一に適用するために、同時押出しプロセスを使用して、２層の構成体を作り出した。金型および加工パラメータは、別途記載されていなければ実施例１に記載の通りである。実施例１の二重被覆テープの裏当て層ではなく、８０：２０重量％の、ポリウレタンＥｓｔａｎｅ^ＴＭ５８１３７とＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１とのブレンドで作成される裏当て層をステムウェブと同時押出しした。ポリウレタンは、硬度がデュロメータで７０、弾性率が約２２ＭＰａ（３２００ｐｓｉ）であった。より剛性のある裏当て層は、直径が約６．３５ｃｍ（２．５インチ）のスクリュを使用して約５ｒｐｍで押出された。約１５ｒｐｍで運転し、直径が約３．２ｃｍ（１．２５インチ）のスクリュ押出機を使用して、構成体のステムのついた部分を形成する上部層を押出した。温度プロフィールは、実施例１に記載のものと同じであった。ポリマー溶融物を、最低圧力約６．９ＭＰａ（１０００ｐｓｉ）およびフロントゾーンの温度約２１６℃（４２０°Ｆ）で吐出した。両方の溶融物をＣｌｏｅｒｅｎフィードブロック型番８６−１２０−３９８中、約２３２℃（４５０°Ｆ）で合わせた。型番８９−１２９３９のデッケルシステムを有するＣｌｏｅｒｅｎ押出ダイを使用した。約１．５メートル／分および約３メートル／分（５ｆｐｍおよび１０ｆｐｍ）で、成形された表面から構成体を取り出した。約１．５メートル／分（５ｆｐｍ）の巻揚げ速度で、得られた各層の厚さ（ステムを含まない）は、約０．２５４ｍｍ（０．０１０インチ）であった。
【００８８】
実施例３
異なるステムの幾何学的形状を有する金型を使用して、約６８，９４１Ｐａ（１０ｐｓｉ）の圧力で、概ね実施例２に従ってステムウェブを作成し、より短いステムが得られた。ステムウェブは、重量で８０：２０のポリウレタン樹脂Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１とスチレン系トリブロックコポリマーＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１であった。裏当て層は、８０：２０重量％の、ポリウレタンＥｓｔａｎｅ^ＴＭ５８１３７とＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１とのブレンドで作成し、実施例２のようにステムウェブと同時押出しした。
【００８９】
得られたステムウェブは、約２３５ステム／ｃｍ^２（１５１６ステム／平方インチ）であった。ステムの中心から中心までの間隔は、ｘ方向に約０．６７６ｍｍ（０．０２６６インチ）であり、ｙ方向に約０．６３０ｍｍ（０．０２４８インチ）であった。ステムの直径は、約０．１９８ｍｍ（０．００７８インチ）であり、ステムの高さは、約０．３０７ｍｍ（０．０１２１インチ）であった。隣接するステム間の隙間は、約０．１２７ｍｍ（０．００５インチ）であった。金型の穴の直径の寸法（０．０２５４ｃｍ（０．０１０インチ））を使用して、できるたけ大きい個々のステムの断面積（０．０００５０６７ｃｍ^２（０．００００７８５４平方インチ））を求めると、ステム（約２３５ステム／ｃｍ^２（１５１６ステム／平方インチ））で作られるステムウェブの平方インチ当りの面積は、従って全面積の約１１．９％以下であった。
【００９０】
実施例４
異なるステム幾何学的形状を有する金型、および実施例１と同じ加工条件およびポリマーブレンド配合物を使用して、単一層の構成体を有し、密度が約１３９ステム／ｃｍ^２（９００ステム／平方インチ）のステムウェブが作り出された。ステムは、実施例１の約４６５ステム／ｃｍ^２（３０００ステム／平方インチ）の構成体上のステムより直径が約５０％大きく、このため構成体の耐久性は向上した。ステムの高さは、約０．５６ｍｍ〜約０．６１ｍｍ（０．０２２インチ〜０．０２４インチ）であった。ピンの間の距離が約０．８４ｍｍ（０．０３３インチ）では、個々のピンを感知することができた。また、ピンが太くなると、可撓性が小さくなり、これも表面がより凸凹した又は粗い手触となる一因であった。この表面は、皮膚以外のものと接触する用途に最適である。金型の穴の直径の寸法（０．０１０インチ）を使用して、できるたけ大きい個々のステムの断面積（０．００００７８５４平方インチ）を求めると、ステム（約９００ステム／平方インチ）で作られるステムウェブの平方インチ当りの面積は、従って全面積の約７．１％以下であった。
【００９１】
実施例５
異なるステムの幾何学的形状を有する金型、および重量で８０：２０のポリウレタン樹脂Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１とスチレン系トリブロックコポリマーＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１を用いる実施例１に実質的に従ってステムウェブを作成した。得られたステムウェブは、約４６ステム／ｃｍ^２（２９９ステム／平方インチ^２）であった。ステムの中心から中心までの間隔は、ｘ方向に約１．６８ｍｍ（０．０６６インチ）であり、ｙ方向に約１．２９ｍｍ（０．０５０７インチ）であった。ステムの直径は、約０．４５９ｍｍ（０．０１９５インチ）であり、ステムの高さは、約０．６１７ｍｍ（０．０２４３インチ）であった。隣接するステム間の隙間は、約０．２５４ｍｍ（０．０１０インチ）であった。ポリウレタンのパーセンテージが高いほど、得られる滑り制御物品の耐久性が増した。金型の穴の直径の寸法（０．０５０８ｃｍ（０．０２０インチ））を使用して、できるたけ大きい個々のステムの断面積（０．００２０２６８ｃｍ^２（０．０００３１４１６平方インチ））を求めると、ステム（約４６ステム／ｃｍ^２（２９９ステム／平方インチ））で作られるステムウェブの平方インチ当りの面積は、従って全面積の約８．９％以下であった。
【００９２】
実施例６
ステムウェブのシートを、実施例１と類似のシリコーンツーリングおよび上記のホットプレス法を使用して作成した。配合物を表３に示すが、ここで比率は、Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１対Ｖｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１のパーセンテージのことを言う。得られたステムウェブは、約４９０ステム／ｃｍ^２（３１５９ステム／平方インチ^２）であった。ステムの中心から中心までの間隔は、ｘ方向に約０．４３９ｍｍ（０．０１７３インチ）であり、ｙ方向に約０．４６５ｍｍ（０．０１８３インチ）であった。ステムの直径は、約０．１５ｍｍ（０．００５９インチ）であり、ステムの高さは、約０．６２５ｍｍ（０．０２４６インチ）であった。隣接するステム間の隙間は、約０．１２７ｍｍ（０．００５インチ）であった。
【００９３】
湿潤および乾燥状態での様々なブレンド組成物のグループ特性を定量的に比較するために、Ｔｈｗｉｎｇ−Ａｌｂｅｒｔ摩擦／剥離試験機を使用して、静摩擦（ＳＦＣ）および動摩擦（ＤＦＣ）の両方を測定した。更に、幾つかのブレンド組成物については、平坦なシート、即ちステムウェブのもう一方の面の摩擦係数も測定した。加熱プレスを使用してバッチプロセスで調製した、様々な配合物のステムウェブのＳＦＣおよびＤＦＣの平均値を表３に示す。
【００９４】
【表３】

【００９５】
純粋なＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１から作成されるステムサンプルは、ＤＦＣおよびＳＦＣが最高であり、純粋なＥｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１ステムサンプルは、ＤＦＣおよびＳＦＣが最低である。混合物はそれらの間であり、ほぼ直線関係がある。更に、ステムとＵｌｔｒａｓｕｅｄｅ^ＴＭ基材との間に水を加えると、各ブレンドのＳＦＣおよびＤＦＣが低下する。実際には、どのブレンド組成物でもステムウェブ摩擦は、水を加えても約７％しか低下しない。５０／５０および６０／４０ブレンドでは、摩擦性能において小さい差が見られる。摩擦性能に基づくと、６０／４０配合物の方がポリウレタンの分量が多いため、６０／４０配合物の方が磨耗特性はよくなるであろう。
【００９６】
実施例７
重量で５０：５０のポリウレタン樹脂Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１とスチレン系トリブロックコポリマーＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１のステムウェブを実施例１に従って作成した。ステムの幾何学的形状は、実施例１に記載の通りである。平坦なシートも、この配合物を使用して作成した。ステムウェブおよび平坦なシートのＳＦＣおよびＤＦＣの平均値を表４に示す。
【００９７】
【表４】

【００９８】
表４から、乾燥状態で測定した時、ステムウェブ（Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８６６１が６０％と、Ｖｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１が４０％）および平坦なシートの静摩擦係数および動摩擦係数が共に、同等であることが明らかである。しかし、ステムウェブに幾らか水を加えた時、平坦なシートの摩擦係数は３０％減少したが、ステムウェブは、実験誤差の範囲内でその高い摩擦を維持した。この結果は、図６および７に記載される湿潤機構と一致している。
【００９９】
実施例８
上記の試験方法を使用して、実施例１、３および５のステムウェブの３つのサンプルの動的剪断強さを調べた。結果の要約を表５に示す。
【０１００】
【表５】

【０１０１】
実施例１および５に従って作成されたステムウェブは、動的剪断強さが最も強かった。実施例１および３のサンプルは、実施例５のサンプルよりステム密度およびステム直径が類似していた。しかし、実施例３のサンプルのステムの高さは、実施例１および５のステムの高さの約半分であった。実施例５の比較的密度の低いステムウェブでさえ、実施例３のサンプルより優れていた。従って、ステムの高さは、動的剪断強さの重要な要因であると思われる。
【０１０２】
実施例９
異なるステムの幾何学的形状を有する金型、およびそれぞれ重量で７８：２：２０のポリウレタンＥｓｔａｎｅ^ＴＭ２８２３８、黒色着色剤（Ｅｓｔａｎｅ^ＴＭ５８２３８をベースにする）、およびスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマーＶｅｃｔｏｒ^ＴＭ４１１１のブレンドを用いる実施例１に実質的に従ってステムウェブを作成した。得られたステムウェブは、約４８１ステム／ｃｍ^２（３，１００ステム／平方インチ）であり、ステムの直径は、約０．０２５ｃｍ（１０ミル）であり、ステムの高さは、約０．０４８ｃｍ（１９ミル）であった。ステムは、ｘ方向およびｙ方向で隣接するステム間の間隔が等しい、正方形のパターンに配列された。この実施例の摩擦制御物品の製品仕様は、ステム密度が３８７−５４２ステム／ｃｍ^２（２，５００−３，５００ステム／平方インチ）であり、ステムの直径は、０．０２−０．０２７ｃｍ（９−１１ミル）であり、ステムの高さは、０．０３５−０．０６ｃｍ（１４−２４ミル）であった。この実施例の摩擦制御物品は、自転車のハンドルグリップおよび対になる自転車用手袋などの用途に好適な高い摩擦特性（１００グラム／ｃｍ^２（２２．７２オンス／平方インチ）の荷重における見かけの摩擦係数が、少なくとも６であった）、および触ると柔軟な手触りをステムウェブの構成体に与える。ステムは比較的可撓性があって曲げやすく、そのため、このような手袋とグリップとの間に目的とするおよび予想される摩擦関係が作り出される。金型の穴の直径の寸法（０．０２５４ｃｍ（０．０１０インチ））を使用して、できるたけ大きい個々のステムの断面積（０．０００５０６７ｃｍ^２（０．００００７８５４平方インチ））を求めると、ステム（約４８１ステム／ｃｍ^２（３１００ステム／平方インチ））で作られるステムウェブの平方インチ当りの面積は、従って全面積の約２３．４％以下であった。記載された最大のステム直径（０．０２７９ｃｍ（１１ミル））および、実施例９のできるだけ密なステムウェブ（５４２ステム／ｃｍ^２（３，５００ステム／平方インチ^２））を使用すると、ステムウェブの最大となり得る面積は、従って、全面積の約３３．３％である（０．００６１２８ｃｍ^２／ステム（０．００００９５０３平方インチ／ステムで３５００ステム＝１平方インチ当り０．３３３平方インチ）で、５４２ステム）。
【０１０３】
本明細書に記載されている特許、および特許出願は、本明細書に引用として組み込まれている。本発明の他の実施形態は可能である。上記説明は、説明をするためのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。他に想到される本発明の発明物品の用途には、着用衣服用の見た目に美しいおよびファッション用のパッチ、身体用軽防護具を作るのに使用する材料として、スキージ又はシャモアクロス材料（材料が多孔質および吸水性であってもよい）として、静電気を帯びたフィルター要素又はダクトライナー（任意選択的に抗菌特性を有する）として、振動減衰又は緩衝用途の太陽熱収集器外装材として、腕の袖口留め用カバー又は材料として、およびエアベッド用の外装表面として（そこでは、裏当て層が、裏当て層を通る穴、又は裏当て層を通って圧縮空気を導入するためにステムを通り縦方向に延びる穴を有する）としての用途が挙げられる。これらの用途、並びに上記に開示されたおよび提案された用途では、液体を素早く分散させることを助け、そのため湿潤時に物品の目的とする摩擦制御特性を向上させる微小溝を、裏当て層の表面の１つに沿って有することなど、本明細書に記載される様々な実施態様の特徴の１つ又はそれ以上を、本発明の摩擦制御物品は含むことができる。上記説明を再考すると、当業者には他の多くの実施態様が明らかであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきであり、このような特許請求の範囲は、同等物の範囲全体にも及ぶものとすべきである。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明による摩擦または滑り制御物品の側面断面図である。
【図１Ａ】本発明による両面滑り制御物品の側面断面図である。
【図２】本発明による代替の滑り制御物品の側面断面図である。
【図３】本発明による同時押出しされた滑り制御物品の側面断面図である。
【図３Ａ】本発明による代替の同時押出しされた滑り制御物品の側面断面図である。
【図４】本発明による、第２の表面に吸収層を有する滑り制御物品の側面断面図である。
【図５Ａ】本発明による、微小溝および吸収性材料を含む滑り制御物品の側面断面図である。
【図５Ｂ】図５Ａの滑り制御物品の上面図である。
【図６】本発明による滑り制御物品と相互作用をする水滴の概略図である。
【図７】本発明による滑り制御物品上の直立したステムから溝を流れて離れる水の概略図である。
【図８】本発明の滑り制御物品を組み込んだ代表的な物品の斜視図である。
【図９】本発明の滑り制御物品を製造する代表的な方法の概略図である。
【図１０】それぞれ本発明の物品を貼付けられた手袋とハンドルとの間などで、対になって接触している２つの本発明の滑り制御物品の側面断面図である。
【図１１】ステムの干渉を克服し、向かい合った表面が互いを通り過ぎて移動する時の、図１０の領域Ａの一部の拡大図である。

Claims (14)

1. 向かい合った第１の表面と第２の表面との間に摩擦界面を規定する方法であって、
   第１の表面を、第２の表面と接触するように配列させる段階であって、裏当て層と少なくとも部分的に一体成形され、前記第１の表面の全面積の約３分の１以下を占める、１平方インチ当り約３５００の直立したステムの配列により規定されるステムウェブとして、前記第１の表面が形成され、各ステムはショア硬度が約９０Ａ未満のエラストマー材料から形成され、最大断面寸法が約０．０１１インチであり、アスペクト比が約２であるため、各ステムは可撓性が高く、このようなエラストマーのステムの配列は、皮膚と接触すると柔軟で心地よい手触りとなり、更に、ステムウェブは、乾燥時の静摩擦係数が少なくとも０．６であり、湿潤時の静摩擦係数が、乾燥時の静摩擦係数の２０％以内であり、ステムウェブは、上記と同様の特徴を有するステムウェブと係合する時、動的剪断強さが１平方センチメートル当り少なくとも１６，８０５ダインであり、剥離強さが実質的にゼロであり、引張り強さが実質的にゼロである段階と、
   圧力をかけて前記第１および第２の表面を圧接し、圧力下にあるステムウェブの可撓性ステムを曲げることにより、前記第２の表面に対して摩擦係合する追加のステム表面を露出させる段階と、
   前記第１の表面と第２の表面との間にかけられた圧力を解放することによって、曲げられた可撓性ステムがその元の直立した姿勢を回復する段階と、
   を含む方法。
2. 前記第２の表面が、前記第１の表面のステムウェブと同様の特徴を有するステムウェブである、請求項１に記載の方法であって、
   前記第１および第２の表面のステムウェブが圧接される時、それらのそれぞれの向かい合ったステムを相互嵌合させる段階と、
   ステムウェブが圧接されている間に、１つの表面に対してもう一方の表面が横方向に移動する力をかけ、相互嵌合している向かい合ったステムは、互いの機械的な干渉により、ステムを曲げるのに必要な力により、および向かい合って曲げられたステムの側面の間の摩擦係合により、２つの表面の相対的な動きに抵抗する状態である段階と、
   を更に含む方法。
3. 前記第１の表面のステムウェブと同じ範囲の制限を有するが、実際の構造および組成が必ずしも同一でないステムウェブとして、前記第２の表面を規定する段階を更に含む、請求項１に記載の方法。
4. 前記第１の表面が、ハンドル、グリップ、フットパッド、シート又はスポーツ用品の機能表面などの、使用者と接触する表面の少なくとも一部である、請求項１に記載の方法であり、前記スポーツ用品は、
   ゴルフクラブ、モーターボート、帆船、カヌー又はカヤック、スケートボード、サーフィン用品、ウインドサーフィン用品、運動用品、ゴルフトレーニングマットなどのスポーツトレーニング用品、水上スキー又は雪上スキー、スノーモービル、乗馬用品、体操用品、スポーツサンダル、ホッケー用スティック、ホッケー用アイスローラー、卓球用ゴム、パーソナルウォータークラフト、ウォーターパーク用品又はおもちゃ、スキューバダイビングおよびシュノーケリングで使用するアクアソックスおよびフィン、消火器のグリップおよびハンドル、アーチェリー用品、およびボール、グローブ、グリップ、フットウェア又はスポーツ用途に使用される靴の中敷、
   からなる群より選択される、方法。
5. 前記第１の表面は、１００グラム／平方インチの荷重において、見かけの摩擦係数が少なくとも６である、請求項１に記載の方法。
6. ２つの向かい合って接触する表面間に目的とする表面接触を生じさせる方法であって、
   １平方インチ当り３１００又はそれより多い直立したステムの配列により規定され、第１の主要な表面の全面積の約３分の１以下を占めるステムウェブを有する前記第１の主要な表面を設ける段階を含み、
   各ステムは、直立した外周を定める側面と、前記第１の主要な表面とは反対の方を向いた上部表面と、を有し、
   各ステムは、ショア硬度が約９０Ａ未満のエラストマー材料から形成されており、最大断面寸法が０．００９〜０．０１１インチであり、アスペクト比が約２であるため、各ステムは可撓性が高く、
   ステムウェブは、乾燥時の静摩擦係数が少なくとも０．６であり、湿潤時の静摩擦係数が、乾燥時の静摩擦係数の２０％以内であり、ステムウェブは、上記と同様の特徴を有するステムウェブと係合する時、動的剪断強さが１平方センチメートル当り少なくとも１６，８０５ダインであり、ステムウェブは皮膚と接触すると柔軟で心地よい手触りとなり、
   当該方法は、さらに、
   第２の主要な表面と前記第１の主要な表面との接触部に、相対的に横方向に移動する力をかけて、ステムの幾つかを曲げる段階であって、ステムの曲りは、第２の主要な表面とこれらステムの側部表面の少なくとも一部との間の直接の局部的な接触を促進し、当該局部的接触は、対応する各ステム上に、前記第１の主要な表面に垂直な方向から測定可能な角度で傾斜した摩擦表面を作り出す段階、および
   前記第１および前記第２の主要な表面の相対的な横方向の動きが抵抗を受けるように相対的に横方向に移動させる力をかけて、対応するステムによるそれぞれの局部的な接触で、前記第２の主要な表面に反作用力を加える段階であって、第２の主要な表面に加えられる反作用力は、主に、ステムを曲げるのに必要な抵抗力、および摩擦表面に沿った摩擦力によるものである段階、を含む方法。
7. 前記第２の主要な表面に加えられる反作用力が、主に摩擦表面に沿った摩擦力によるものである、請求項６に記載の方法。
8. 前記第２の主要な表面と前記第１の主要な表面との接触部に、相対的に横方向に移動させる力をかけると、向かい合って接触した表面は、剥離力が実質的にゼロであり、引張り強さが実質的にゼロである、請求項６に記載の方法。
9. 前記第２の主要な表面にステムウェブを設ける段階をさらに含む請求項６に記載の方法であって、
   前記ステムウェブは、前記第１の主要な表面のステムウェブと同じ範囲の制限を有するが、実際の構造および組成は前記第１の主要な表面のステムウェブと必ずしも同一でない、方法。
10. 前記第１の表面は、１００グラム／平方インチの荷重において、見かけの摩擦係数が少なくとも６である、請求項６に記載の方法。
11. 使用者が、使用者の手袋と把持される物品の表面との間に改善された摩擦界面を作り出すために滑り制御抑制手袋を着用する、手による把持行動における改善であって、
    前記手袋と把持される物品の向かい合って接触する表面に、同一の材料表面を配置し、湿潤および乾燥状態の両方でそれらの間に有効な摩擦界面を規定することと、
    各表面が、裏当て層の少なくとも部分的に一体成形される約３５００の直立したステム／平方インチの配列により規定されるステムウェブであって、当該ステムは、裏当て層の第１の表面の全面積の約３分の１以下を占めていることと、
    各直立したステムは、ショア硬度が約９０Ａ未満であるエラストマー材料から形成され、最大断面寸法が０．００９〜０．０１１インチであり、アスペクト比が約２であるため、各ステムは可撓性が高いことと、
    各ステムウェブは、乾燥時の静摩擦係数が少なくとも０．６であり、湿潤時の静摩擦係数が、乾燥時の静摩擦係数の２０％以内であり、各ステムウェブは個々に、皮膚と接触すると柔軟で心地よい手触りを有することと、
    前記手袋および前記把持される物品の向かい合って接触する表面が係合する時、各ステムウェブは、動的剪断強さが少なくとも１６，８０５ダイン／平方センチメートルであり、剥離強さが実質的にゼロであり、引張り強さが実質的にゼロであることと、
    を含む、改善。
12. 前記把持される物品の向かい合って接触する表面が、型成形されたグリップである、請求項１１に記載の改善。
13. 各ステムウェブの裏当て層が、その上のステムと反対側に裏側表面を有する、請求項１１に記載の改善であって、
    前記ステムウェブのうち第１のステムウェブの少なくとも一部の裏当て層が透明であることと、
    像が、前記透明な裏当て層を通してそのステム側で観察者に見えるように、前記透明な裏当て層の裏側表面に配置された像と、
    を更に含む、改善。
14. 各材料の表面は、１００グラム／平方インチの荷重において、見かけの摩擦係数が少なくとも６である、請求項１１に記載の改善。