JP2004504851A - こうじかび菌及びコレステロール低下製品製造のためのその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、発酵食品製品で使用するための、毒素は生成することはできないが少なくとも1つの、血清コレステロール濃度を低下させることができる化合物をつくりだすことができる天然のこうじかび菌に関係している。本発明は食品の製造におけるそうしたかび菌の使用とも関係している。本発明による菌を農産物に接種することによるコレステロール低下特性を示す発酵食品製品製造の方法。本発明によるかび菌から生成される化合物を含むコレステロール低下特性を有する食品。
Description
【0001】
本発明はコレステロール低下化合物をつくりだす微生物、及び生物加水分解物、醤油あるいは調味料など、例えばコレステロールを低下させる性質を有する発酵食品製品の製造におけるこれら微生物の使用に関するものである。
【0002】
醤油などの生物加水分解物は従来2あるいは3工程のプロセスを通じてつくりだされ、その第1の工程はこうじ生成の工程である。この第1の工程においては、調理された大豆あるいは脱脂大豆粉を火であぶった小麦と混合して、この混合物をこうじかび菌の培養物で接種し、好気条件下で培養して、1日から4日間断続的に攪拌することでこうじが得られる。第2の工程は加水分解を開始するために水と塩を加えることでもろみを製造する段階である。このもろみをもろみイースト菌と共に6−8ヶ月間放置して発酵させる。最後の分離の工程で、固体から液体ソースが最終的につくられる。
【0003】
本発明においては、『こうじ』という用語は蛋白質供給源及び炭水化物供給源の混合物、より具体的には調理された豆類あるいは油性種子と調理あるいは焙煎された穀物の混合物、例えば調理された大豆やインゲンマメと調理あるいは火であぶった小麦又は米の混合物、をこうじ菌株を用いて発酵させた製品を意味している。
【0004】
本発明においては、こうじ菌株とは市販されているタイプで、特に『黄色アスペルギリ(yellow Aspergilli)』の胞子を含んだ菌株又はこうじ胞子として理解されるべきである。
【0005】
いずれかの他の蛋白源を発酵させると別の種類の生物加水分解物をつくりだすことができる。従って、例えば脂肪種子ケーキ、豆類あるいは穀物グルテンなどの好ましくはグルタミン酸に富んでいる素材が脱水又は液体スープ、ソース、あるいは調味料の組成における原料として加水分解された形態で広く使われている。
【0006】
液体調味料の製造に用いることができるこの種類の生物加水分解物は、それらが強く豊かな芳香性食味を示すことから非常に高く評価されており、従って、種々の食事で調味料として用いられている。これらの加水分解物は、芳香特性が大きなことから食品又は香料産業のための芳香性基礎素材としても有用である。
【0007】
最近の栄養に対する意識によって、食品業界は最適な嗅覚的特徴を有するだけでなく、さらに改善された栄養機能性を有する食品を提供するようになってきた。心臓及び末梢血管のアテローム性動脈硬化の主な危険要因として、血清コレステロール・レベルが高過ぎることの重要性が広く認識されている。大規模な臨床研究によって、冠状動脈性心臓疾患を患う危険を血清コレステロール・レベル、特に「低密度リポ蛋白」の低減によって減らすことが可能であるという結論がもたらされている。人体においてコレステロールの大部分は肝臓内のデノボ生合成に由来し、通例食品からの吸収に由来するものはより少ないため、コレステロール生合成の阻害は上昇した血漿コレステロール・レベルを下げるための特に魅力的な方法である。
【0008】
例えばアジア諸国においては、その健康上有益な性質からいくつかの発酵製品が用いられている。これらの食品は発酵性植物原料から誘導される場合が多い。1つの好例は、中国の”Red−Yeast−Rice”、つまりモナスカス(Monascus)属の菌で発酵された米である。この製品はコレステロール低下効果を持っていることが実証されているモナコリン(Monacolins)のクラス(綱)の代謝産物を含んでいる。『スタチンファミリー』の化合物に属するこれらモナコリンはHMG−CoAのメバロン酸塩への転化を担っているHMG−CoA−レダクターゼと呼ばれるコレステロール生合成における酵素の阻害剤として作用する。スタチン類はその主要機能がLDL−コレステロール(低密度リポ蛋白質コレステロール)・レベルを低下することである医薬製品中に純粋な形態で利用されて成功を収めている。実際、HMG−CoA−レダクターゼはコレステロールの生合成において重要な酵素として作用する。従って、例えばMERCK社からの製品MEVACOR(商標)は糸状菌アスペルゴルス・テレウスから単離精製されたロバスタチンを含んでいる。この化合物はスタチンファミリーとも関係しており、HMG−CoA−レダクターゼに対して阻害活性を示す。一方、PHARMANEXはモナコリンファミリーの分子を含んでおり、その内部で糸状菌モナスクス・プルプレウス(Monascus purpureus)によって活性代謝産物がつくりだされる『食餌補助食品』Cholestin(商標)を発売した。
【0009】
しかしながら、モナスクス・プルプレウスはシトリニン(citrinin)と呼ばれる腎毒性及び/又は変異原性化合物をつくり得る可能性を有していることが示されている(Sabar−Vilar M, Maas RF and Fink−Gremmels J. Mutat. Res. 1999 Jul 21; 4444(1): 7−16)。こうした理由から、この食餌補助Cholestineとこの菌を含んでいる可能性のあるすべての食品が米国と欧州では法律、安全性、そして毒性学的観点から激しい論争の対象となっている。同じ問題がシトリニンをつくりだす可能性を有していることが分かっているアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)についても起きる可能性がある。
【0010】
従って、Aspergillus terreus又はMonascus pupureusは食品加工あるいは間接的に食品に対して応用可能な微生物ではない。そこで、いくつかの繊維状かび菌はスタチンファミリーに属する化合物を生成することが可能だが、そのようなかび菌(mold)は毒素を生成する可能性があるため『食品グレード』ではなく、この理由によって食品の発酵加工及び関連食品に用いることはできないことが知られている。
【0011】
EP 556699 (NOVOPHARM)はAspergillus terreusゲノムDNAの導入によるロバスタチンを生成しないアスペルギルス菌株(Aspergillus oryzae)のロバスタチン生成菌株への形質転換について述べている。この特許は『食品グレード』の性質を有するスタチン生成繊維性かび菌を得る手段として遺伝子組み換えの使用を教示している。特許請求される菌種Aspergillus oryzaeの上記繊維性かび菌は、そのため「天然」ではなく遺伝子組み換え体に由来する。
【0012】
本発明の目的はコレステロールを低下させる性質を有する発酵食品に応用するための食品グレードの天然微生物を提供することである。
【0013】
天然微生物又は自然発生する微生物として、その微生物は遺伝子組み換えされておらず、環境中から選択することができると理解されている。
【0014】
この目的のため、本発明による上記微生物は毒素を生成することができず、血清コレステロール濃度を低下させることができる少なくとも1つの化合物をつくりだす単離された自然発生する微生物である。
【0015】
本発明の1つの目的は毒素を生成することができず、血清コレステロール濃度を低下させることができる少なくとも1つの化合物をつくりだす、発酵食品で使用するための自然発生する微生物を提供することである。
【0016】
毒素を生成することができないということは、上記微生物がどのような環境及び/又は増殖条件であろうと毒素を生成する能力を持たないことである理解されている。
【0017】
本発明はまた、例えばこうじを生成するための本発明による微生物を有する蛋白質含有物質を接種し、上記調製物に水を加え、上記調製物を加水分解して加水分解物を得る工程を含み得る、蛋白質加水分解物のような発酵食品を製造するためのプロセスに関するものである。
【0018】
最後に、本発明はまた、血清コレステロール・レベルの調節又はコレステロール関連疾患の治療のための食品又は薬品の製造における本発明による微生物に由来する少なくとも1つの化合物の発酵食品における使用に関するものである。
【0019】
従って、本発明の1つの目的は本発明による微生物に由来する少なくとも1つの化合物を含んでいることを特徴とする血清コレステロールを低下させる性質を有する食品を提供することである。
【0020】
本明細書において、『発酵食品』という用語はその製造プロセスが少なくとも1つの本発明による微生物の使用を伴う少なくとも1つの発酵工程を含んでいる可食製品として理解されるべきである。さらに、『可食製品』とは、その摂取がヒトの健康に毒性、あるいは有害な二次的作用を及ぼさない製品として理解されるべきである。特にコレステロール低下化合物が存在しているので、そうした『発酵食品』は健康上有益な機能を提供することができる。実際、本発明による微生物はヒトによる摂取のための使用における安全性が歴史的に実証されている微生物から選択することができる。
【0021】
本発明による微生物の使用のおかげで得られるコレステロール低下効果はコレステロール生合成を阻害することで達成されることは注目に値する。
【0022】
本発明の1つの具体的な実施の形態で、上記コレステロール低下効果はHMG−CoA−レダクターゼの阻害によって達成される。実際、本発明による微生物によって生成されたHMG−CoA−レダクターゼ阻害を通じてコレステロール濃度を低下することができる上記コレステロール低下化合物の1つはロバスタチンである。
【0023】
しかしながら、本発明による微生物はロバスタチンでなく、コレステロール生合成も阻害することができる少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができる。HMG−CoA−レダクターゼはHMG−CoAのメバロン酸塩への転化を触媒するが、この工程は全体的なコレステロール生合成連鎖の1つの工程に過ぎない。本発明による微生物によってつくりだされる化合物の少なくとも1つは、メバロン酸塩から下流の少なくとも1つの工程を阻害する。そうした下流での阻害は、HMG−CoA/メバロン酸塩化工程をバイパスするためにメバロン酸塩を加えることで観察することができる。
【0024】
本発明による微生物の最も重要な特徴の1つは、それが毒素をつくりだすことができないこと、特にアフラトキシンをつくりだすことができない点である。
【0025】
毒素をつくりださずに少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができる前記微生物は、その製品の調製で用いられる微生物、例えば、その微生物がコレステロール低下化合物を合成することはできるが毒素はつくりだせない性質を基準として選ばれるのであれば、モナスカス、ペニシリウムなどの糸状かび菌、そしてより好ましくはアスペルギナス属に属するかび菌などである。そして、この微生物はヒトによる摂取における使用についてその安全性が歴史的に裏付けられている微生物、及び食品製造あるいは食品製品自体において使用することができるいろいろな微生物から選択することができる。
【0026】
本発明によるプロセスの1つの好ましい実施の形態において、本発明による微生物の使用を通じてつくられる食品製品は醤油などの液体調味料、あるいは調味料ペーストあるいは粉末などである。
【0027】
本発明による上記微生物は伝統的な醤油あるいは調味料製造プロセスにおいて実施することができる。さらに、EP0429760(フレーバ剤製造プロセス)、EP0829205(調味料製品)あるいはEP0824 873(調味料製造)に述べられているものなどいずれのプロセスにおいても、単独、あるいは他のこうじかび菌との組み合わせで用いることもできる。
【0028】
発酵食品あるいは血清コレステロール・レベル調節用又はコレステロール関連疾病の治療のための医薬品の製造において本発明による微生物を使用することも本発明の目的である。
【0029】
本発明の他の目的は、食品あるいは血清コレステロール・レベル調節用又はコレステロール関連疾病の治療のための医薬品の製造における、本発明による微生物から生じる少なくとも1つの化合物の使用である。
【0030】
このプロセスの種々の工程のうちで、1つの特徴的な工程は例えば、本発明による少なくとも1つの微生物、あるいは本発明による1つの微生物と、例えばコレステロール低下化合物をつくりださない従来の発酵微生物の組み合わせを用いての植物性素材の発酵である。この最初のこうじ工程は、例えば種々の発生源からの蛋白質分解酵素を加えて、その存在下で実施することもできる。
【0031】
プロセスが醤油などの液体調味料の製造に関係している1つの好ましい実施の形態においては、前記微生物はかび菌、好ましくは、例えば、既存の幅広い範囲のこうじかび菌株から、少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができるが、毒素をつくりだす能力は欠いていることを基準として選択的に選別、単離したアスペルギルス属に属するこうじかび菌である。この目的と、この好ましい実施の形態のために、例えば、2000年6月14日と2000年7月27日にブタペスト条約に従って、12種類のアスペルギルス属菌株がCNCM:collection Nationale de Culture de Micro−organismes、Institute Pasteur, Rue du Dr Roux, 75724 Paris, Franceに寄託されており、それらはNo CNCM I−2489、CNCM I−2490、CNCM I−2525、CNCM I−2526、CNCM I−2527、CNCM I−2528、CNCM I−2529、CNCM I−2530、CNCM I−2531、CNCM I−2532、CNCM I−2533、及びCNCM I−2534と命名されている。
【0032】
そうした1つの好ましい実施の形態で、上記蛋白質含有物質は小麦、大豆、米、トウモロコシ、脂肪種子などの植物性素材、あるいは小麦グルテン、ふすまなどの植物性素材の画分、あるいはそうした植物性素材と植物性素材画分の混合物などである。醤油製造のプロセスの種々の工程は醤油など発酵ソース製造の分野の当業者の伝統的ノウハウに従って用いることができる。主な特徴は本発明による微生物、好ましくはこうじかび菌の使用、あるいは添加である。
【0033】
上記大豆素材は砕いた大豆、つまり大豆ミールを数時間水に浸して、その後そのミールを、例えば約120℃から140℃の温度下に数分置くことによって調理することができる。調理された大豆ミールは砕いて火であぶった小麦、つまりロースト小麦ミールなどと混ぜあわせても差し支えない。
【0034】
冷却後、その混合物を本発明によるこうじかび菌胞子、あるいはこれらのかび菌胞子と市販されている通常のものの混合物と共に培養することができる。そしてこの混合物をトレイ、あるいは特にこの目的のために設計された市販の装置内で、断続的に攪拌し、持続的に一定の量の空気を供給することで発酵させる。この発酵工程はその混合物内に存在しているこうじかび菌によるプロテアーゼの生成と特にその混合物内に存在している本発明によるかび菌によるコレステロール濃度を低下することができる少なくとも1つの化合物の生成とを促進する。
【0035】
上記こうじ混合物は、例えば水と混合することによって懸濁させることができる。上記加水分解の工程は、例えば30℃から60℃の温度で数時間行なうことができる。
【0036】
その後の工程は当業者に周知の伝統的なプロセスによって実施することができる。そして、上記もろみ工程は塩及び、例えばCandida versatilis種あるいはSaccharomyces rouxii種の伝統的なもろみイースト菌の添加によって行なうことができる。このように接種された上記もろみは、例えば攪拌及び曝気して数日から数ヶ月発酵させるため放置することができる。
【0037】
上記もろみをその後、例えば圧濾器で圧搾し、不溶物を除去し、得られた液汁に低温殺菌を行うことができる。
【0038】
その結果、この特別なプロセスによって風味及び香りが従来のプロセスによって得られる発酵醤油に匹敵するこの醤油のような発酵液体調味料が得られる。その香り以上に、優れたこの醤油の主要な特徴は、例えばアフラトキシンのようないかなる毒素も微量も存在しない上での、少なくとも1つのコレステロール低下化合物を含むことによる健康上の有益な機能である。
【0039】
そして、この発酵液体調味料は調味料及び/又はコレステロール低下のための栄養補助食品のいずれとしても利用することができる。
【0040】
いかなる食品微生物であってもよいが、特に発酵食品の製造に利用される本発明による上記微生物は少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができるが、毒素を生成する能力を欠いており、従ってどんな発酵食品材料の製造にも利用可能である。本発明による上記微生物は、コレステロール低下化合物を合成することはできるが毒素はつくりださないという能力を基準としてあらゆる現存する天然微生物の中から選択され、単離されるのであれば、現存する糸状菌又は芳香のある発酵製品(酒、醤油、植物性調味料、ピーナツ・ソースなど)の製造に用いられる糸状菌であり得る。
【0041】
そして、前記条件に対応する微生物を選択・同定するために種々の供給源から種々の微生物が検討され、例えば以下の例に説明されるようなひとつの選択方法に付すことができる。下記の例は本発明による微生物を同定するための選択方法の例証として挙げられる。この特定の選択方法は成長倍地上で微生物を培養し、上記培養粗製抽出物を調製・精製し、上記培養粗製抽出物をロバスタチン及び毒素分析、及びコレステロール合成阻害を測定する検査にかける工程を含む。そのような方法はその微生物が望ましい基準を満たすか調べるためにいかなる種類の微生物にも適用することができる。さらに、微生物を培養し、ロバスタチン及び/又は毒素を単離・検出し、コレステロール生合成に関する上記発酵性抽出物の影響を評価するためのいかなる他の同等の方法も、上記基準を満たし、本発明による上記微生物の特徴に該当する微生物を同定するために用いることができる。
【0042】
本発明による微生物を選択するための方法が以下の例で説明される。この方法はスクリーンされた上記微生物に限定されるものではない。上記毒素検出及び同定方法は現在のところアフラトキシンのクラスの化合物に関するものであるが、どんな種類の毒素化合物にも変更及び適用が可能である。
【0043】
例1
微生物成長条件
テスト対象の微生物の分生子柄約107個を用いて250mlバッフル無しエーレンメイヤ・フラスコ内で40ミリリットル(ml)の培地(A)に接種し、一次種培養を行った。この種培地(培地A)は1リットル当たり:10gのグルコース、5gのコーン・スティープ・リカー(corn steep liquor)、40gのトマト・ペースト、10gのオートミル、そして微量要素としては:1gのFeSO4.7H2O、1gのMnSO4.4H2O、200mgのZnSO4.7H2O、100mgのCaCl2.2H2O、25mgのCuCl2.2H2O、56mgのH3BO3、及び19mgの(NH4)5MO7O24.4H2Oを含んでいた。これら培養物は、200rpmの軌道シェーカー中、30℃で24時間インキュベートした。
【0044】
第2次培養物は200mlの生産用培地(B)を入れた1lバッフル無しエーレンメイヤ・フラスコに6mlの一次種培養物を添加して調製した。
生産用培地(B)の方は1リットルあたり:45gのグルコースまたはラクトース、24gのペプトン化ミルク、2.5gのイースト抽出物、そして2.5gのポリエチレン・グリコール P2000(pH6.5)を含んでいた。フラスコは、軌道シェーカーで200rpmの回転速度で12日間、28℃の温度で震動させた。
【0045】
抽出及び精製
発酵(280時間)後、培養物(200ml)を80%メタノール(200ml)に2時間浸した。この混合物をろ紙でろ過して、ろ液を蒸発させた。粗抽出物を水で回収して、この溶液を酸性化し、3N塩酸(HCl)でpH3に調節した。水性抽出物は酢酸エチル(v−v)を用いて数回抽出させた。有機相を無水Na2SO4で乾燥させて、真空中(30℃)で蒸発させて、有機溶剤を除去した。残留物を10ml MeOHに入れて、分析クロマトグラフィ(HPLC及びTLC)、分光学(LC、MS及びLC/MS/MS)、及びin−vitroテスト(酵素3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aレダクターゼ[HMG−CoAレダクターゼ;メバロン酸塩:NADP+オキシドレダクターゼ(CoA−アクリル化)、EC1.1.1.34]の阻害)を行い、ロバスタチンの同定及び定量を行った。アフラトキシンの生成はHPLCでテストした。
【0046】
ロバスタチン分析:
ロバスタチンは高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)及び質量分光学で判定した。
【0047】
HPLC分析:ヌクレオシル100−5C18カラム(250x4mm)(Macherey & Nagel)をポスト・カラム(Lichrospher 100 RP−18 (Merck)と共に用いた。溶媒A:0.05%H3PO4水溶液、溶媒B:アセトニトリル。95%A及び5%Bから直線勾配で開始して、45分後に50%A及び50%B、46分後に30%A及び70%B、そして48分後に10%A及び90%B、そして50分後に0%A及び100%Bとなるようにして、さらに定組成での操作を4分間継続した。最初の条件を6分間持続させて、カラムを再均衡させた。流量は1ml/分であった。用いられた検出装置はHewlett Packard G1315 A、serie 1100で、波長検出はλmax=254nmで行われた。
【0048】
HPLC/MS及びHPLC/MS/MS分析:タイプ757オートサンプラ、システム制御装置付600−MSポンプ、及びタイプ486−MS UV検出装置で構成されるWaters HPLCシステムを用いて、分離を行った。258nmでのUV吸収を質量分析計のデータ・システムに対するアナログ入力装置を用いて記録した。質量分析計にかける前に、ヌクレオシル100−C18 HPLCカラム(250mm x 4mm I.D.,Macherey & Nagel)をポスト・カラム・スプリッタ1/10と共に用いた。溶媒Aは0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、溶媒Bはアセトニトリルであった。1ml/分の流量で、95%A及び5%Bから直線勾配で分離を開始して、30分後に50%A及び50%B、31分後に30%A及び70%B、そして33分後に10%A及び90%B、そして35分後に0%A及び100%Bとなるようにして、さらに定組成での操作を5分間継続した。最初の条件は5分以内に到達され、5分間その状態を維持して、カラムを再均衡させた。
【0049】
この質量分析計は電子スプレー・イオン化源を装備したFinnigan TSQ 700 トリプル四重極質量分析計(San Jose, CA, USA)であった。データ獲得はFininnganソフトウエア・パッケージ ICIS2、バージョン7.0を用いるUltrix 4.2A(Digital Equipment, USA)の制御下で作動するDECstation 2100を用いて行われた。移送用キャピラリーは200℃に設定され、スプレーは4.2kVに設定された。1秒間にm/z50からm/z600の範囲で走査して、全面走査質量スペクトルをポジティブ・モードで得た。衝突ガスとして1mTorrの圧力でアルゴンを用いて実験室規模で−15eVの衝突エネルギーでm/z20からm/z450の範囲で娘イオン・スペクトルを得た。m/z405での陽子化親イオンからのm/z199、285及びm/z303での娘イオンをモニターする選択的反応を行った後、同じ条件を用いてロバスタチンの検出を行った。これら密接な構造関係を有する娘イオンのLC/MS/MSを検出することで、サンプル中のロバスタチンを個別に判定することができる。
【0050】
アフラトキシン分析:
メタノールによる抽出物内の個々のアフラトキシンの濃度をオンライン電気化学的に発生させた臭素及び蛍光検出によるポストカラム誘導体化を用いた定組成HPLCによって測定した。両方ともMethorohm−Bischoff AG (Leonberg, Germany)で製造された逆相ODS Hypersil・カラム(3μm、125mm x4.6mm内径)とODS Hypersilガード・カラム(3μm、25mm x4.6mm内径)を共に用いた。可動相は水/アセトニトリル/メタノール(60:5:35)v/v/vの混合物でできており、1リットルあたり119mgの臭化カリウムと100μlの65%硝酸を含んでいた。溶出は1.0ml/分の流量と室温で行われた。このポストカラム誘導体化システムは可変制御電流源(Rhone Diagnostics Technologies Ltd., Glasgow, Sotland)を装備したKOBRAセルで構成されていた。電流は100μAに設定された。個々のアフラトキシンをWatersモデル470走査蛍光検出装置(励起波長365nm、放射波長428nm)でモニターした。
【0051】
陽性の培養物の上澄液中のアフラトキシンの存在を、Trucksessらによって(1991)開示された手順に従って免疫親和性カラム構成に基づくより選択的な方法を用いて確認した。メタノールによる抽出物の1ml画分を50mlの蒸留水内に希釈させて、アフラトキシンB1、B2、G1及びG2に対して特異性を示すモノクローナル抗体を含むAflaTest−P免疫親和性カラム(Vicam, Watertown, MA, USA)にかけた。それらの毒素をカラム上で単離、精製、濃縮して、純粋なメタノールを用いて抗体から除去し、そして、上に述べたのと同じ条件で、ポストカラム誘導体化及び蛍光検出を用いる逆相HPLCで定量した。
【0052】
コレステロール合成阻害テスト:
ヒト肝臓T9A4細胞を3.5%CO2下、37℃の温度で、無血清LCM培地(Biofluids, Rockville, MD, USA)中で成長させた。これらの細胞を24ウェル・プレートに入れて、発酵された抽出物画分を含んでいない状態(比較対照)とそれが存在している状態で、20時間、1mM 14C−酢酸塩(1mCi/mmol、Amersham)と共にインキュベーションした。さらに、テストする微生物から発生する化合物がHMG−CoA−>メバロン酸塩転化工程の下流に阻害効果を示すかどうかを調べるために、細胞を1.17mM 14C−メバロン酸塩(0.85mCi/mmol,Amersham)と共にインキュベーションした。
【0053】
脂質抽出はヘキサン:イソプロパノール(3:2)を用いて室温で30分間の培養で2回行った。それらの抽出物をまとめてN2下で乾燥し、ヘキサンに再溶解してヘキサン:ジエチル・エーテル:酢酸(75:25:1)の溶媒混合物中で高性能薄層クロマトグラフィ(Merck, Darmstadt, Germany)にかけた。コレステロールの新合成はインスタント・イメージャー(Camberra Packard, Zurich, Switzerland)を用いての14C酢酸塩のコレステロール内への取り込みを測定することで判定し、対照に対する割合で示した。
【0054】
表1は14C酢酸塩の存在下でそれら抽出物のヒト肝臓T9A4細胞内でのインビトロの低コレステロール血活性を示している。本発明による微生物を用いての培養によって得られた抽出物をそれらの細胞とインキュベーションすると、ヒト肝臓T9A4細胞内でのコレステロール合成が低下することが容易に分かるであろう。A4及びA27菌株から得られた抽出物内のロバスタチン含有量は0.1μg/ml以下であることから、観察されたコレステロール合成阻害効果はそれら抽出物中のロバスタチンの存在が原因である可能性があるが、他の非ロバスタチン生成菌株によってつくりだされたものと類似した他の化合物もその一因であると考えられる。
【0055】
菌株A12、A21、A34、A39、A45、A50、A51、A53、FJ2及びFJ5を用いて得られた抽出物にはロバスタチンは微量も含まれなかったが(MSグラフ図示せず)、表1に示すように、これらの抽出物はロバスタチンを含んでいないにもかかわらず、強いコレステロール生合成阻害活性を示す。このことは、本発明によるそうした微生物がHMG−CoA−レダクターゼによって触媒される工程の下流の少なくとも1つの工程の阻害薬として作用する、血清コレステロール濃度を低下させることができるロバスタチン以外の化合物をつくりだすことを示唆している。
【0056】
図1はロバスタチン標準を用いて得られたMSグラフを示している。図2と3は本発明による微生物、菌株A−27とA−4による発酵で得られた抽出物のMSグラフをそれぞれ示している。これらの菌株で得られた抽出物のロバスタチン含量は0.1μg/ml以下である。
もちろん、本発明による微生物で得られた抽出物のいずれも、アフラトキシンはまったく含んでいない。
【0057】
表2は14Cメバロン酸塩存在下での抽出物のヒト肝臓T9A4細胞におけるインビトロのコレステロール合成阻害活性を示している。この場合、菌株A21、A34、A39、FJ2、及びFJ5を用いて得られた発酵抽出物がコレステロール生合成に対する阻害効果の証拠を示しているのにも関わらず、ロバスタチンの存在がコレステロール生物合成を阻害しないことが分かる。
【0058】
【0059】
【0060】
例2
大豆こうじ発酵
脱脂大豆(75%w/w)と火であぶった小麦(25%w/w)の混合物175gをオートクレーブ内で蓋を閉めた状態で7分間蒸して、その後、40℃以下まで温度を下げさせた。蒸された大豆−小麦混合物をSP2(20mM KH2PO4−HCl,pH2.0、0.9%NaCl)中の本発明による微生物(菌株A27)の分生子柄懸濁液109cfuと共に接種した。接種混合物を3リットル・マッシュルーム・スポーン・バッグ(多孔性、25cc/分、160mmフィルター、Van Leer, United Kingdom)に移して、Lab−Term培養器(Kuhner, Switzerland)内で30℃の温度で最大70時間培養した。こうじ床内の温度は34℃を超えないように監視した。
【0061】
得られたこうじは例1で用いられた方法による液体細胞培養物からの抽出物を調製するために用いられる。
固体こうじ発酵から得られた抽出物がコレステロール合成阻害特性を示すことが、表3から容易に分かるであろう。
【0062】
例3
ふすまこうじ発酵
大豆と火であぶった小麦の混合物の代わりに、120gふすま(乾燥物:86%)120g+水73g+酢酸100μlの混合物を用いたことを除いて、例2と同じ方法を用いた。
上に述べたのと同様の方法を用いて抽出物を得た。
表3から、固体こうじ発酵から得られた抽出物がコレステロール合成阻害特性を示すことが容易に分かるであろう。
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】
ロバスタチン標準を用いて得られたMSグラフを示す。
【図2】
A−27菌株を用いた発酵により得られた抽出物のMSグラフである。
【図3】
A−4菌株を用いた発酵により得られた抽出物のMSグラフである。
本発明はコレステロール低下化合物をつくりだす微生物、及び生物加水分解物、醤油あるいは調味料など、例えばコレステロールを低下させる性質を有する発酵食品製品の製造におけるこれら微生物の使用に関するものである。
【0002】
醤油などの生物加水分解物は従来2あるいは3工程のプロセスを通じてつくりだされ、その第1の工程はこうじ生成の工程である。この第1の工程においては、調理された大豆あるいは脱脂大豆粉を火であぶった小麦と混合して、この混合物をこうじかび菌の培養物で接種し、好気条件下で培養して、1日から4日間断続的に攪拌することでこうじが得られる。第2の工程は加水分解を開始するために水と塩を加えることでもろみを製造する段階である。このもろみをもろみイースト菌と共に6−8ヶ月間放置して発酵させる。最後の分離の工程で、固体から液体ソースが最終的につくられる。
【0003】
本発明においては、『こうじ』という用語は蛋白質供給源及び炭水化物供給源の混合物、より具体的には調理された豆類あるいは油性種子と調理あるいは焙煎された穀物の混合物、例えば調理された大豆やインゲンマメと調理あるいは火であぶった小麦又は米の混合物、をこうじ菌株を用いて発酵させた製品を意味している。
【0004】
本発明においては、こうじ菌株とは市販されているタイプで、特に『黄色アスペルギリ(yellow Aspergilli)』の胞子を含んだ菌株又はこうじ胞子として理解されるべきである。
【0005】
いずれかの他の蛋白源を発酵させると別の種類の生物加水分解物をつくりだすことができる。従って、例えば脂肪種子ケーキ、豆類あるいは穀物グルテンなどの好ましくはグルタミン酸に富んでいる素材が脱水又は液体スープ、ソース、あるいは調味料の組成における原料として加水分解された形態で広く使われている。
【0006】
液体調味料の製造に用いることができるこの種類の生物加水分解物は、それらが強く豊かな芳香性食味を示すことから非常に高く評価されており、従って、種々の食事で調味料として用いられている。これらの加水分解物は、芳香特性が大きなことから食品又は香料産業のための芳香性基礎素材としても有用である。
【0007】
最近の栄養に対する意識によって、食品業界は最適な嗅覚的特徴を有するだけでなく、さらに改善された栄養機能性を有する食品を提供するようになってきた。心臓及び末梢血管のアテローム性動脈硬化の主な危険要因として、血清コレステロール・レベルが高過ぎることの重要性が広く認識されている。大規模な臨床研究によって、冠状動脈性心臓疾患を患う危険を血清コレステロール・レベル、特に「低密度リポ蛋白」の低減によって減らすことが可能であるという結論がもたらされている。人体においてコレステロールの大部分は肝臓内のデノボ生合成に由来し、通例食品からの吸収に由来するものはより少ないため、コレステロール生合成の阻害は上昇した血漿コレステロール・レベルを下げるための特に魅力的な方法である。
【0008】
例えばアジア諸国においては、その健康上有益な性質からいくつかの発酵製品が用いられている。これらの食品は発酵性植物原料から誘導される場合が多い。1つの好例は、中国の”Red−Yeast−Rice”、つまりモナスカス(Monascus)属の菌で発酵された米である。この製品はコレステロール低下効果を持っていることが実証されているモナコリン(Monacolins)のクラス(綱)の代謝産物を含んでいる。『スタチンファミリー』の化合物に属するこれらモナコリンはHMG−CoAのメバロン酸塩への転化を担っているHMG−CoA−レダクターゼと呼ばれるコレステロール生合成における酵素の阻害剤として作用する。スタチン類はその主要機能がLDL−コレステロール(低密度リポ蛋白質コレステロール)・レベルを低下することである医薬製品中に純粋な形態で利用されて成功を収めている。実際、HMG−CoA−レダクターゼはコレステロールの生合成において重要な酵素として作用する。従って、例えばMERCK社からの製品MEVACOR(商標)は糸状菌アスペルゴルス・テレウスから単離精製されたロバスタチンを含んでいる。この化合物はスタチンファミリーとも関係しており、HMG−CoA−レダクターゼに対して阻害活性を示す。一方、PHARMANEXはモナコリンファミリーの分子を含んでおり、その内部で糸状菌モナスクス・プルプレウス(Monascus purpureus)によって活性代謝産物がつくりだされる『食餌補助食品』Cholestin(商標)を発売した。
【0009】
しかしながら、モナスクス・プルプレウスはシトリニン(citrinin)と呼ばれる腎毒性及び/又は変異原性化合物をつくり得る可能性を有していることが示されている(Sabar−Vilar M, Maas RF and Fink−Gremmels J. Mutat. Res. 1999 Jul 21; 4444(1): 7−16)。こうした理由から、この食餌補助Cholestineとこの菌を含んでいる可能性のあるすべての食品が米国と欧州では法律、安全性、そして毒性学的観点から激しい論争の対象となっている。同じ問題がシトリニンをつくりだす可能性を有していることが分かっているアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)についても起きる可能性がある。
【0010】
従って、Aspergillus terreus又はMonascus pupureusは食品加工あるいは間接的に食品に対して応用可能な微生物ではない。そこで、いくつかの繊維状かび菌はスタチンファミリーに属する化合物を生成することが可能だが、そのようなかび菌(mold)は毒素を生成する可能性があるため『食品グレード』ではなく、この理由によって食品の発酵加工及び関連食品に用いることはできないことが知られている。
【0011】
EP 556699 (NOVOPHARM)はAspergillus terreusゲノムDNAの導入によるロバスタチンを生成しないアスペルギルス菌株(Aspergillus oryzae)のロバスタチン生成菌株への形質転換について述べている。この特許は『食品グレード』の性質を有するスタチン生成繊維性かび菌を得る手段として遺伝子組み換えの使用を教示している。特許請求される菌種Aspergillus oryzaeの上記繊維性かび菌は、そのため「天然」ではなく遺伝子組み換え体に由来する。
【0012】
本発明の目的はコレステロールを低下させる性質を有する発酵食品に応用するための食品グレードの天然微生物を提供することである。
【0013】
天然微生物又は自然発生する微生物として、その微生物は遺伝子組み換えされておらず、環境中から選択することができると理解されている。
【0014】
この目的のため、本発明による上記微生物は毒素を生成することができず、血清コレステロール濃度を低下させることができる少なくとも1つの化合物をつくりだす単離された自然発生する微生物である。
【0015】
本発明の1つの目的は毒素を生成することができず、血清コレステロール濃度を低下させることができる少なくとも1つの化合物をつくりだす、発酵食品で使用するための自然発生する微生物を提供することである。
【0016】
毒素を生成することができないということは、上記微生物がどのような環境及び/又は増殖条件であろうと毒素を生成する能力を持たないことである理解されている。
【0017】
本発明はまた、例えばこうじを生成するための本発明による微生物を有する蛋白質含有物質を接種し、上記調製物に水を加え、上記調製物を加水分解して加水分解物を得る工程を含み得る、蛋白質加水分解物のような発酵食品を製造するためのプロセスに関するものである。
【0018】
最後に、本発明はまた、血清コレステロール・レベルの調節又はコレステロール関連疾患の治療のための食品又は薬品の製造における本発明による微生物に由来する少なくとも1つの化合物の発酵食品における使用に関するものである。
【0019】
従って、本発明の1つの目的は本発明による微生物に由来する少なくとも1つの化合物を含んでいることを特徴とする血清コレステロールを低下させる性質を有する食品を提供することである。
【0020】
本明細書において、『発酵食品』という用語はその製造プロセスが少なくとも1つの本発明による微生物の使用を伴う少なくとも1つの発酵工程を含んでいる可食製品として理解されるべきである。さらに、『可食製品』とは、その摂取がヒトの健康に毒性、あるいは有害な二次的作用を及ぼさない製品として理解されるべきである。特にコレステロール低下化合物が存在しているので、そうした『発酵食品』は健康上有益な機能を提供することができる。実際、本発明による微生物はヒトによる摂取のための使用における安全性が歴史的に実証されている微生物から選択することができる。
【0021】
本発明による微生物の使用のおかげで得られるコレステロール低下効果はコレステロール生合成を阻害することで達成されることは注目に値する。
【0022】
本発明の1つの具体的な実施の形態で、上記コレステロール低下効果はHMG−CoA−レダクターゼの阻害によって達成される。実際、本発明による微生物によって生成されたHMG−CoA−レダクターゼ阻害を通じてコレステロール濃度を低下することができる上記コレステロール低下化合物の1つはロバスタチンである。
【0023】
しかしながら、本発明による微生物はロバスタチンでなく、コレステロール生合成も阻害することができる少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができる。HMG−CoA−レダクターゼはHMG−CoAのメバロン酸塩への転化を触媒するが、この工程は全体的なコレステロール生合成連鎖の1つの工程に過ぎない。本発明による微生物によってつくりだされる化合物の少なくとも1つは、メバロン酸塩から下流の少なくとも1つの工程を阻害する。そうした下流での阻害は、HMG−CoA/メバロン酸塩化工程をバイパスするためにメバロン酸塩を加えることで観察することができる。
【0024】
本発明による微生物の最も重要な特徴の1つは、それが毒素をつくりだすことができないこと、特にアフラトキシンをつくりだすことができない点である。
【0025】
毒素をつくりださずに少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができる前記微生物は、その製品の調製で用いられる微生物、例えば、その微生物がコレステロール低下化合物を合成することはできるが毒素はつくりだせない性質を基準として選ばれるのであれば、モナスカス、ペニシリウムなどの糸状かび菌、そしてより好ましくはアスペルギナス属に属するかび菌などである。そして、この微生物はヒトによる摂取における使用についてその安全性が歴史的に裏付けられている微生物、及び食品製造あるいは食品製品自体において使用することができるいろいろな微生物から選択することができる。
【0026】
本発明によるプロセスの1つの好ましい実施の形態において、本発明による微生物の使用を通じてつくられる食品製品は醤油などの液体調味料、あるいは調味料ペーストあるいは粉末などである。
【0027】
本発明による上記微生物は伝統的な醤油あるいは調味料製造プロセスにおいて実施することができる。さらに、EP0429760(フレーバ剤製造プロセス)、EP0829205(調味料製品)あるいはEP0824 873(調味料製造)に述べられているものなどいずれのプロセスにおいても、単独、あるいは他のこうじかび菌との組み合わせで用いることもできる。
【0028】
発酵食品あるいは血清コレステロール・レベル調節用又はコレステロール関連疾病の治療のための医薬品の製造において本発明による微生物を使用することも本発明の目的である。
【0029】
本発明の他の目的は、食品あるいは血清コレステロール・レベル調節用又はコレステロール関連疾病の治療のための医薬品の製造における、本発明による微生物から生じる少なくとも1つの化合物の使用である。
【0030】
このプロセスの種々の工程のうちで、1つの特徴的な工程は例えば、本発明による少なくとも1つの微生物、あるいは本発明による1つの微生物と、例えばコレステロール低下化合物をつくりださない従来の発酵微生物の組み合わせを用いての植物性素材の発酵である。この最初のこうじ工程は、例えば種々の発生源からの蛋白質分解酵素を加えて、その存在下で実施することもできる。
【0031】
プロセスが醤油などの液体調味料の製造に関係している1つの好ましい実施の形態においては、前記微生物はかび菌、好ましくは、例えば、既存の幅広い範囲のこうじかび菌株から、少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができるが、毒素をつくりだす能力は欠いていることを基準として選択的に選別、単離したアスペルギルス属に属するこうじかび菌である。この目的と、この好ましい実施の形態のために、例えば、2000年6月14日と2000年7月27日にブタペスト条約に従って、12種類のアスペルギルス属菌株がCNCM:collection Nationale de Culture de Micro−organismes、Institute Pasteur, Rue du Dr Roux, 75724 Paris, Franceに寄託されており、それらはNo CNCM I−2489、CNCM I−2490、CNCM I−2525、CNCM I−2526、CNCM I−2527、CNCM I−2528、CNCM I−2529、CNCM I−2530、CNCM I−2531、CNCM I−2532、CNCM I−2533、及びCNCM I−2534と命名されている。
【0032】
そうした1つの好ましい実施の形態で、上記蛋白質含有物質は小麦、大豆、米、トウモロコシ、脂肪種子などの植物性素材、あるいは小麦グルテン、ふすまなどの植物性素材の画分、あるいはそうした植物性素材と植物性素材画分の混合物などである。醤油製造のプロセスの種々の工程は醤油など発酵ソース製造の分野の当業者の伝統的ノウハウに従って用いることができる。主な特徴は本発明による微生物、好ましくはこうじかび菌の使用、あるいは添加である。
【0033】
上記大豆素材は砕いた大豆、つまり大豆ミールを数時間水に浸して、その後そのミールを、例えば約120℃から140℃の温度下に数分置くことによって調理することができる。調理された大豆ミールは砕いて火であぶった小麦、つまりロースト小麦ミールなどと混ぜあわせても差し支えない。
【0034】
冷却後、その混合物を本発明によるこうじかび菌胞子、あるいはこれらのかび菌胞子と市販されている通常のものの混合物と共に培養することができる。そしてこの混合物をトレイ、あるいは特にこの目的のために設計された市販の装置内で、断続的に攪拌し、持続的に一定の量の空気を供給することで発酵させる。この発酵工程はその混合物内に存在しているこうじかび菌によるプロテアーゼの生成と特にその混合物内に存在している本発明によるかび菌によるコレステロール濃度を低下することができる少なくとも1つの化合物の生成とを促進する。
【0035】
上記こうじ混合物は、例えば水と混合することによって懸濁させることができる。上記加水分解の工程は、例えば30℃から60℃の温度で数時間行なうことができる。
【0036】
その後の工程は当業者に周知の伝統的なプロセスによって実施することができる。そして、上記もろみ工程は塩及び、例えばCandida versatilis種あるいはSaccharomyces rouxii種の伝統的なもろみイースト菌の添加によって行なうことができる。このように接種された上記もろみは、例えば攪拌及び曝気して数日から数ヶ月発酵させるため放置することができる。
【0037】
上記もろみをその後、例えば圧濾器で圧搾し、不溶物を除去し、得られた液汁に低温殺菌を行うことができる。
【0038】
その結果、この特別なプロセスによって風味及び香りが従来のプロセスによって得られる発酵醤油に匹敵するこの醤油のような発酵液体調味料が得られる。その香り以上に、優れたこの醤油の主要な特徴は、例えばアフラトキシンのようないかなる毒素も微量も存在しない上での、少なくとも1つのコレステロール低下化合物を含むことによる健康上の有益な機能である。
【0039】
そして、この発酵液体調味料は調味料及び/又はコレステロール低下のための栄養補助食品のいずれとしても利用することができる。
【0040】
いかなる食品微生物であってもよいが、特に発酵食品の製造に利用される本発明による上記微生物は少なくとも1つのコレステロール低下化合物をつくりだすことができるが、毒素を生成する能力を欠いており、従ってどんな発酵食品材料の製造にも利用可能である。本発明による上記微生物は、コレステロール低下化合物を合成することはできるが毒素はつくりださないという能力を基準としてあらゆる現存する天然微生物の中から選択され、単離されるのであれば、現存する糸状菌又は芳香のある発酵製品(酒、醤油、植物性調味料、ピーナツ・ソースなど)の製造に用いられる糸状菌であり得る。
【0041】
そして、前記条件に対応する微生物を選択・同定するために種々の供給源から種々の微生物が検討され、例えば以下の例に説明されるようなひとつの選択方法に付すことができる。下記の例は本発明による微生物を同定するための選択方法の例証として挙げられる。この特定の選択方法は成長倍地上で微生物を培養し、上記培養粗製抽出物を調製・精製し、上記培養粗製抽出物をロバスタチン及び毒素分析、及びコレステロール合成阻害を測定する検査にかける工程を含む。そのような方法はその微生物が望ましい基準を満たすか調べるためにいかなる種類の微生物にも適用することができる。さらに、微生物を培養し、ロバスタチン及び/又は毒素を単離・検出し、コレステロール生合成に関する上記発酵性抽出物の影響を評価するためのいかなる他の同等の方法も、上記基準を満たし、本発明による上記微生物の特徴に該当する微生物を同定するために用いることができる。
【0042】
本発明による微生物を選択するための方法が以下の例で説明される。この方法はスクリーンされた上記微生物に限定されるものではない。上記毒素検出及び同定方法は現在のところアフラトキシンのクラスの化合物に関するものであるが、どんな種類の毒素化合物にも変更及び適用が可能である。
【0043】
例1
微生物成長条件
テスト対象の微生物の分生子柄約107個を用いて250mlバッフル無しエーレンメイヤ・フラスコ内で40ミリリットル(ml)の培地(A)に接種し、一次種培養を行った。この種培地(培地A)は1リットル当たり:10gのグルコース、5gのコーン・スティープ・リカー(corn steep liquor)、40gのトマト・ペースト、10gのオートミル、そして微量要素としては:1gのFeSO4.7H2O、1gのMnSO4.4H2O、200mgのZnSO4.7H2O、100mgのCaCl2.2H2O、25mgのCuCl2.2H2O、56mgのH3BO3、及び19mgの(NH4)5MO7O24.4H2Oを含んでいた。これら培養物は、200rpmの軌道シェーカー中、30℃で24時間インキュベートした。
【0044】
第2次培養物は200mlの生産用培地(B)を入れた1lバッフル無しエーレンメイヤ・フラスコに6mlの一次種培養物を添加して調製した。
生産用培地(B)の方は1リットルあたり:45gのグルコースまたはラクトース、24gのペプトン化ミルク、2.5gのイースト抽出物、そして2.5gのポリエチレン・グリコール P2000(pH6.5)を含んでいた。フラスコは、軌道シェーカーで200rpmの回転速度で12日間、28℃の温度で震動させた。
【0045】
抽出及び精製
発酵(280時間)後、培養物(200ml)を80%メタノール(200ml)に2時間浸した。この混合物をろ紙でろ過して、ろ液を蒸発させた。粗抽出物を水で回収して、この溶液を酸性化し、3N塩酸(HCl)でpH3に調節した。水性抽出物は酢酸エチル(v−v)を用いて数回抽出させた。有機相を無水Na2SO4で乾燥させて、真空中(30℃)で蒸発させて、有機溶剤を除去した。残留物を10ml MeOHに入れて、分析クロマトグラフィ(HPLC及びTLC)、分光学(LC、MS及びLC/MS/MS)、及びin−vitroテスト(酵素3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aレダクターゼ[HMG−CoAレダクターゼ;メバロン酸塩:NADP+オキシドレダクターゼ(CoA−アクリル化)、EC1.1.1.34]の阻害)を行い、ロバスタチンの同定及び定量を行った。アフラトキシンの生成はHPLCでテストした。
【0046】
ロバスタチン分析:
ロバスタチンは高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)及び質量分光学で判定した。
【0047】
HPLC分析:ヌクレオシル100−5C18カラム(250x4mm)(Macherey & Nagel)をポスト・カラム(Lichrospher 100 RP−18 (Merck)と共に用いた。溶媒A:0.05%H3PO4水溶液、溶媒B:アセトニトリル。95%A及び5%Bから直線勾配で開始して、45分後に50%A及び50%B、46分後に30%A及び70%B、そして48分後に10%A及び90%B、そして50分後に0%A及び100%Bとなるようにして、さらに定組成での操作を4分間継続した。最初の条件を6分間持続させて、カラムを再均衡させた。流量は1ml/分であった。用いられた検出装置はHewlett Packard G1315 A、serie 1100で、波長検出はλmax=254nmで行われた。
【0048】
HPLC/MS及びHPLC/MS/MS分析:タイプ757オートサンプラ、システム制御装置付600−MSポンプ、及びタイプ486−MS UV検出装置で構成されるWaters HPLCシステムを用いて、分離を行った。258nmでのUV吸収を質量分析計のデータ・システムに対するアナログ入力装置を用いて記録した。質量分析計にかける前に、ヌクレオシル100−C18 HPLCカラム(250mm x 4mm I.D.,Macherey & Nagel)をポスト・カラム・スプリッタ1/10と共に用いた。溶媒Aは0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、溶媒Bはアセトニトリルであった。1ml/分の流量で、95%A及び5%Bから直線勾配で分離を開始して、30分後に50%A及び50%B、31分後に30%A及び70%B、そして33分後に10%A及び90%B、そして35分後に0%A及び100%Bとなるようにして、さらに定組成での操作を5分間継続した。最初の条件は5分以内に到達され、5分間その状態を維持して、カラムを再均衡させた。
【0049】
この質量分析計は電子スプレー・イオン化源を装備したFinnigan TSQ 700 トリプル四重極質量分析計(San Jose, CA, USA)であった。データ獲得はFininnganソフトウエア・パッケージ ICIS2、バージョン7.0を用いるUltrix 4.2A(Digital Equipment, USA)の制御下で作動するDECstation 2100を用いて行われた。移送用キャピラリーは200℃に設定され、スプレーは4.2kVに設定された。1秒間にm/z50からm/z600の範囲で走査して、全面走査質量スペクトルをポジティブ・モードで得た。衝突ガスとして1mTorrの圧力でアルゴンを用いて実験室規模で−15eVの衝突エネルギーでm/z20からm/z450の範囲で娘イオン・スペクトルを得た。m/z405での陽子化親イオンからのm/z199、285及びm/z303での娘イオンをモニターする選択的反応を行った後、同じ条件を用いてロバスタチンの検出を行った。これら密接な構造関係を有する娘イオンのLC/MS/MSを検出することで、サンプル中のロバスタチンを個別に判定することができる。
【0050】
アフラトキシン分析:
メタノールによる抽出物内の個々のアフラトキシンの濃度をオンライン電気化学的に発生させた臭素及び蛍光検出によるポストカラム誘導体化を用いた定組成HPLCによって測定した。両方ともMethorohm−Bischoff AG (Leonberg, Germany)で製造された逆相ODS Hypersil・カラム(3μm、125mm x4.6mm内径)とODS Hypersilガード・カラム(3μm、25mm x4.6mm内径)を共に用いた。可動相は水/アセトニトリル/メタノール(60:5:35)v/v/vの混合物でできており、1リットルあたり119mgの臭化カリウムと100μlの65%硝酸を含んでいた。溶出は1.0ml/分の流量と室温で行われた。このポストカラム誘導体化システムは可変制御電流源(Rhone Diagnostics Technologies Ltd., Glasgow, Sotland)を装備したKOBRAセルで構成されていた。電流は100μAに設定された。個々のアフラトキシンをWatersモデル470走査蛍光検出装置(励起波長365nm、放射波長428nm)でモニターした。
【0051】
陽性の培養物の上澄液中のアフラトキシンの存在を、Trucksessらによって(1991)開示された手順に従って免疫親和性カラム構成に基づくより選択的な方法を用いて確認した。メタノールによる抽出物の1ml画分を50mlの蒸留水内に希釈させて、アフラトキシンB1、B2、G1及びG2に対して特異性を示すモノクローナル抗体を含むAflaTest−P免疫親和性カラム(Vicam, Watertown, MA, USA)にかけた。それらの毒素をカラム上で単離、精製、濃縮して、純粋なメタノールを用いて抗体から除去し、そして、上に述べたのと同じ条件で、ポストカラム誘導体化及び蛍光検出を用いる逆相HPLCで定量した。
【0052】
コレステロール合成阻害テスト:
ヒト肝臓T9A4細胞を3.5%CO2下、37℃の温度で、無血清LCM培地(Biofluids, Rockville, MD, USA)中で成長させた。これらの細胞を24ウェル・プレートに入れて、発酵された抽出物画分を含んでいない状態(比較対照)とそれが存在している状態で、20時間、1mM 14C−酢酸塩(1mCi/mmol、Amersham)と共にインキュベーションした。さらに、テストする微生物から発生する化合物がHMG−CoA−>メバロン酸塩転化工程の下流に阻害効果を示すかどうかを調べるために、細胞を1.17mM 14C−メバロン酸塩(0.85mCi/mmol,Amersham)と共にインキュベーションした。
【0053】
脂質抽出はヘキサン:イソプロパノール(3:2)を用いて室温で30分間の培養で2回行った。それらの抽出物をまとめてN2下で乾燥し、ヘキサンに再溶解してヘキサン:ジエチル・エーテル:酢酸(75:25:1)の溶媒混合物中で高性能薄層クロマトグラフィ(Merck, Darmstadt, Germany)にかけた。コレステロールの新合成はインスタント・イメージャー(Camberra Packard, Zurich, Switzerland)を用いての14C酢酸塩のコレステロール内への取り込みを測定することで判定し、対照に対する割合で示した。
【0054】
表1は14C酢酸塩の存在下でそれら抽出物のヒト肝臓T9A4細胞内でのインビトロの低コレステロール血活性を示している。本発明による微生物を用いての培養によって得られた抽出物をそれらの細胞とインキュベーションすると、ヒト肝臓T9A4細胞内でのコレステロール合成が低下することが容易に分かるであろう。A4及びA27菌株から得られた抽出物内のロバスタチン含有量は0.1μg/ml以下であることから、観察されたコレステロール合成阻害効果はそれら抽出物中のロバスタチンの存在が原因である可能性があるが、他の非ロバスタチン生成菌株によってつくりだされたものと類似した他の化合物もその一因であると考えられる。
【0055】
菌株A12、A21、A34、A39、A45、A50、A51、A53、FJ2及びFJ5を用いて得られた抽出物にはロバスタチンは微量も含まれなかったが(MSグラフ図示せず)、表1に示すように、これらの抽出物はロバスタチンを含んでいないにもかかわらず、強いコレステロール生合成阻害活性を示す。このことは、本発明によるそうした微生物がHMG−CoA−レダクターゼによって触媒される工程の下流の少なくとも1つの工程の阻害薬として作用する、血清コレステロール濃度を低下させることができるロバスタチン以外の化合物をつくりだすことを示唆している。
【0056】
図1はロバスタチン標準を用いて得られたMSグラフを示している。図2と3は本発明による微生物、菌株A−27とA−4による発酵で得られた抽出物のMSグラフをそれぞれ示している。これらの菌株で得られた抽出物のロバスタチン含量は0.1μg/ml以下である。
もちろん、本発明による微生物で得られた抽出物のいずれも、アフラトキシンはまったく含んでいない。
【0057】
表2は14Cメバロン酸塩存在下での抽出物のヒト肝臓T9A4細胞におけるインビトロのコレステロール合成阻害活性を示している。この場合、菌株A21、A34、A39、FJ2、及びFJ5を用いて得られた発酵抽出物がコレステロール生合成に対する阻害効果の証拠を示しているのにも関わらず、ロバスタチンの存在がコレステロール生物合成を阻害しないことが分かる。
【0058】
【0059】
【0060】
例2
大豆こうじ発酵
脱脂大豆(75%w/w)と火であぶった小麦(25%w/w)の混合物175gをオートクレーブ内で蓋を閉めた状態で7分間蒸して、その後、40℃以下まで温度を下げさせた。蒸された大豆−小麦混合物をSP2(20mM KH2PO4−HCl,pH2.0、0.9%NaCl)中の本発明による微生物(菌株A27)の分生子柄懸濁液109cfuと共に接種した。接種混合物を3リットル・マッシュルーム・スポーン・バッグ(多孔性、25cc/分、160mmフィルター、Van Leer, United Kingdom)に移して、Lab−Term培養器(Kuhner, Switzerland)内で30℃の温度で最大70時間培養した。こうじ床内の温度は34℃を超えないように監視した。
【0061】
得られたこうじは例1で用いられた方法による液体細胞培養物からの抽出物を調製するために用いられる。
固体こうじ発酵から得られた抽出物がコレステロール合成阻害特性を示すことが、表3から容易に分かるであろう。
【0062】
例3
ふすまこうじ発酵
大豆と火であぶった小麦の混合物の代わりに、120gふすま(乾燥物:86%)120g+水73g+酢酸100μlの混合物を用いたことを除いて、例2と同じ方法を用いた。
上に述べたのと同様の方法を用いて抽出物を得た。
表3から、固体こうじ発酵から得られた抽出物がコレステロール合成阻害特性を示すことが容易に分かるであろう。
【0063】
【図面の簡単な説明】
【図1】
ロバスタチン標準を用いて得られたMSグラフを示す。
【図2】
A−27菌株を用いた発酵により得られた抽出物のMSグラフである。
【図3】
A−4菌株を用いた発酵により得られた抽出物のMSグラフである。
Claims (12)
- 毒素を生成することができず、血清コレステロール濃度を低下させることができる少なくとも1つの化合物をつくりだす単離された天然微生物。
- 毒素を生成することができず、血清コレステロール濃度を低下させることができる少なくとも1つの化合物をつくりだす、発酵食品で使用するための天然微生物。
- 上記コレステロールを低下させる効果がコレステロール生合成の阻害によって達成されることを特徴とする、請求項1又は2記載の微生物。
- 上記コレステロールを低下させる効果がHMG−CoAレダクターゼ酵素の阻害によって達成されることを特徴とする、請求項1から3記載の微生物。
- コレステロール濃度を低下させることができる上記化合物がロバスタチンであることを特徴とする、請求項1から4記載の微生物。
- 微生物がアフラトキシンを生成することができないことを特徴とする、請求項1から5記載の微生物。
- アスペルギルス属、モナスカス属、又はペニシリウム属からなる群から選択される、請求項1から6記載の微生物。
- コレステロール濃度を低下させることができる上記化合物がメバロン酸の少なくとも1つの下流工程を阻害することを特徴とする、請求項1又は2記載の微生物。
- 血清コレステロール・レベルの調節又はコレステロール関連疾患の治療のための食品又は薬品の製造における、請求項1〜8のいずれか一項に記載の微生物の利用。
- 血清コレステロール・レベルの調節又はコレステロール関連疾患の治療のための食品又は薬品の製造における請求項1から8記載の微生物に由来する少なくとも1つの化合物の利用。
- 発酵を行なうために少なくとも1つの請求項1又は2記載の微生物を含む接種物を穀物材料に接種すること、
加水分解物を得るために上記生成物を加水分解すること、
を含む発酵食品の製造方法。 - 請求項1から8記載の微生物に由来する少なくとも1つの化合物を含んでいることを特徴とする、血清コレステロール濃度を低下させる性質を有する食品。
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