JP2004504701A - 燃料電池電力設備用の周囲下圧力冷媒ループ - Google Patents

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Abstract

燃料電池装置(20)を有する燃料電池電力設備(10)は、燃料の流れが供給されるアノード(30)と、酸化剤の流れが供給されるカソード(40)と、このアノードとこのカソードとの間に配置されたイオン交換膜と、燃料電池装置と連通するように冷媒の流れを循環させる冷媒ループ(60)と、を含む。酸化剤供給源が、燃料電池装置に酸化剤の流れを所定の圧力で供給するのに使用され、一方、蓄積装置(64)、冷媒ポンプ(62)、圧力制御弁(66)が、冷媒ループに沿って配置され、冷媒の流れが燃料電池装置と連通する前に冷媒の流れを周囲下圧力に低下させる。

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、燃料電池電力設備の反応物を作動条件(operating parameter)内に維持するために必要な寄生エネルギーを実質的に低減させる、燃料電池電力設備のための周囲下圧力(subambient pressure)冷媒ループに関する。
【0002】
【背景技術】
電気化学的燃料電池は、アノード電極に供給された反応物燃料とカソード電極に供給された反応物酸化剤との相互作用を通して、これらの電極間に外部電流の流れを生成することで、電気とそれに伴う反応生成物を生成する。
【0003】
電気化学的燃料電池装置では、通常、燃料として水素に富んだ気体の流れを、酸化剤として酸素に富んだ気体の流れを使用し、それによって、結果として生じる反応生成物は、水である。燃料電池装置内の温度を制御するために、一般に、水冷媒が、燃料電池装置の周りを循環するように提供される。
【0004】
高分子交換膜(PEM)電解質を有する燃料電池の作動において、カソードにおいて水が生成される速度とカソードから水が除去される速度またはアノードへ水が供給される速度との間の適切な水バランスを維持することが重要である。水がアノード電極に十分に戻らないと、PEM電解質の隣接部分が乾燥してしまい、それによって、水素イオンがPEMを通って移動できる速度が低下し、さらに、還元性流体のクロスオーバが生じて局部的な過熱に繋がる。同様に、水がカソードから十分に除去されないと、カソード電極には水が溢れてしまい、カソードへの酸化剤の供給が実質的に制限され、それによって、電流の流れが減少する。さらに、カソードからあまりに大量の水が除去されると、PEMは乾燥してしまい、水素イオンがPEMを通過する能力が制限され、従って、電池の性能が低下する。
【0005】
燃料電池電力設備内で適切な水の平衡(water equilibrium)を維持する通常の方法は、燃料および酸化剤反応物と冷媒の流れとの間の圧力をバランスさせることである。燃料および酸化剤の流れを冷媒の流れの圧力より高い圧力において供給することにより、燃料電池装置内で生成された過剰な水の流れを、除去とそれに伴う再供給のために冷媒の流れの方へ向けることができる。
【0006】
このような圧力のバランスを用いる燃料電池電力設備の一例が、1988年9月6日にライザー(Reiser)らに付与された米国特許第4,769,297号に示されている。ライザー(Reiser)の水管理装置は、作動中に燃料電池電力設備を加湿しかつ冷却するのを助ける冷媒として、各燃料電池のアノード電極へ供給される水素燃料気体の流れの中に飛沫同伴される水を使用する。水素燃料および飛沫同伴される水は、アノード電極を加湿することになり、同時に、プロトンドラッグ(proton drag)効果によって、過剰の水が、イオン交換膜を横断してカソード電極へ移動し、それによって、イオン交換膜を加湿することにもなる。ライザー(Reiser)は、両方とも周囲圧力より高く維持されている、アノードの流れの場とカソードの流れの場との間に圧力差を維持し、それによって、各燃料電池のカソード電極に蓄積する水が、燃料電池電力設備のセルスタックアッセンブリ内のすぐ隣りのアノード電極へ分離プレート(separator plate)を横断して移動する。従って、ライザー(Reiser)の水管理装置は、単独の冷媒ループを用いていない。
【0007】
別の燃料電池電力設備の作動装置が、1997年12月23日にライザー(Reiser)に付与された米国特許第5,700,595号に開示されている。この作動装置も、燃料電池電力設備全体に亘る水の適切な移動を助けるように、反応物気体と冷媒との間の圧力差を利用する。この圧力差によって、微細な孔を有する分離プレートを、燃料電池電力設備全体に亘って使用できる。
【0008】
上述した装置のそれぞれは、反応物気体の流れと冷媒の流れとの間に相対的な圧力差を維持することで、燃料電池電力設備全体に亘って効率的な水の移動を確実するけれども、これらの装置に必要な寄生電力は、広範に亘って変化し、全体として燃料電池電力設備の効率に影響を及ぼす。
【0009】
従って、本発明は、空気を供給するための寄生電力を結果として低減させる周囲下圧力において冷媒の流れを作動させることにより、燃料電池電力設備の作動装置全体での上述したこの寄生電力消耗を低減しようと努める。気体状の流れに比較して、水の流れを加圧するのに必要な電力は少ないので、本発明は、燃料電池電力設備の作動中により大幅なエネルギーの節約を促進するために、この関係を利用することを試みる。
【0010】
【発明の開示】
本発明は、燃料電池電力設備の反応物を作動条件内に維持するのに必要な寄生エネルギーを低減できる、燃料電池電力設備のための周囲下圧力冷媒ループを利用できる。本発明は、構成要素の数を低減することにより、燃料電池電力設備の複雑さを低減できる。本発明は、ほぼ周囲圧力において反応物気体を使用することを可能にする。
【0011】
一実施態様によれば、燃料電池装置を有する燃料電池電力設備は、燃料の流れが供給されるアノードと、酸化剤の流れが供給されるカソードと、このアノードとこのカソードとの間に配置されたイオン交換膜と、燃料電池装置と連通するように冷媒の流れを循環させる冷媒ループと、を含む。酸化剤供給源が、燃料電池装置に酸化剤の流れを所定の圧力で供給するのに使用され、一方、冷媒ループに沿って配置された冷媒調整器が、冷媒の流れが燃料電池装置と連通する前に冷媒の流れを周囲下圧力に低下させる。
【0012】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明による周囲下圧力冷媒ループを使用する燃料電池電力設備が、図1に概略例示されており、全体が参照番号10により示されている。以下に使用されるように、「周囲下(subambient)」という用語は、大気より、すなわち、約14.7lbs/in(101.4Kp)絶対より、下の圧力を参照するものと定め、一方、「周囲(ambient)」という用語は、大気圧とほぼ等しい圧力を参照する。燃料電池電力設備10は、図示されていないイオン交換膜の両側に配置されたアノード電極30とカソード電極40を有する少なくとも1つの燃料電池装置20を含む。アノード電極30に水素に富んだ燃料を、カソード電極40に酸素に富んだ酸化剤を供給することにより、燃料電池装置20は、当業技術内でよく知られた仕方で電気エネルギーを生成することになる。本発明の好ましい実施態様においては、図1の燃料電池装置20は、図示されていないイオン交換膜としてプロトン交換膜(「PEM」)を使用し、その両側は、既知のように、燃料電池装置20内で電気化学反応を促進するために使用される触媒層で、図示していないが、被覆される。
【0013】
図1は、単一の燃料電池装置20を示しているが、燃料電池電力設備10は、電気的に接続されそれによってセルスタックアッセンブリを形成する複数の平らな燃料電池装置と関連して代替として作動されることができ、このセルスタックアッセンブリは、図示されていないハウジング内に収容されており、全体として、水素に富んだ燃料の流れおよび酸素に富んだ酸化剤の流れをセルスタックアッセンブリへ導き、さらにそこから導き出すさまざまな反応物のマニホールドを規定している。
【0014】
微細な孔を有する水移動プレート50が、カソード電極40に隣接して配置され、燃料電池装置20と連通する。水移動プレート50は、燃料電池電力設備10内で適切な水バランスを維持するのに加えて、燃料電池電力設備10の温度を管理する、のを助ける統合された冷媒ループ60の一部である。
【0015】
本発明は、反応物気体の流れを周囲圧力より十分に高くまで加圧する結果として一般に招かれる寄生電力消耗を低減させることにより、燃料電池電力設備20の効率を向上させようと努める。この目的のために、本発明は、反応物気体の流れと冷媒の流れとの間の正の圧力差を維持しながら、周囲下冷媒ループを利用しようと努める。そのような構成では、ほぼ周囲圧力で酸化剤の気体状の流れを使用できるが、これは、電動式の輸送装置などの移動式の燃料電池の用途において好ましいであろう。気体状の1つの流れまたは複数の流れを供給するのに必要とされるより、冷媒水を供給するのに必要な電力は少ないので、酸化剤の気体状の流れの作動圧力の低減は、燃料電池電力設備20の全体の電力消費の実質的な低減となることが見出された。
【0016】
図1に示すように、燃料電池装置20のアノード電極30には、当業技術内で一般に知られるように、燃料処理装置32などから反応物燃料、通常、水素に富んだ気体の流れが供給される。燃料圧力弁34または他の手段が、アノード電極30へ供給される燃料の圧力を、手動または自動のいずれかで、制御するのに使用できる。同様に、燃料電池装置20のカソード電極40には、反応物酸化剤、通常、酸素に富んだ気体の流れが供給される。酸化剤は、燃料電池電力設備10と大気環境との間の相対的な移動によりカソード電極40に向かって導かれる酸素を含む大気とすることができる。図1に詳細に示すように、酸化剤の流れが、カソード電極40へ可変速酸化剤送風機42を介して供給され、その体積は、酸化剤流量制御弁44によって手動または自動のいずれかで制御され、それによって、酸化剤の流れは、ほぼ周囲圧力で燃料電池装置20に確実に供給される。代替として、流量制御弁44は、除去することができ、流量は、もっぱら可変速送風機42を用いて制御される。本発明の好ましい実施態様においては、燃料の流れは、酸化剤の作動圧力よりわずかに低くなるように制御される。
【0017】
先に示したように、冷媒の流れは、酸化剤の気体状の流れの周囲圧力より低い圧力で水移動プレート50内を流れるように設計される。冷媒ポンプ62が、冷媒ループ60内を通って冷媒の流れを循環させる推進力を与える。冷媒ポンプ62は、周囲圧力に開放されるように適合された蓄積装置64へ冷媒の流れを進ませ、それによって、冷媒ポンプ62から流出する冷媒の流れは、ほぼ周囲圧力に確実に維持される。蓄積装置64は、冷媒ポンプ62の吸入側または(図1に示すように)吐出側に配置できる。続いて、圧力制御弁66が、冷媒の流れの圧力を所望の入口周囲下圧力に低下させるのに使用される。次に、周囲下冷媒の流れは、燃料電池装置20から流出する前に、水移動プレート50に供給される。
【0018】
従って、共同して作動する蓄積装置64、冷媒ポンプ62、圧力制御弁66は、燃料電池装置20に周囲下冷媒の連続的に循環する流れを供給するための効果的な冷媒調整器として作用する。圧力制御弁66は、固定オリフィス、手動制御弁、自動制御弁などのどのような既知の圧力制御装置とすることもできる。弁は、よく知られるように、電気、液圧、空気圧などにより作動できる。
【0019】
燃料電池装置20から流出した後、周囲下冷媒の流れは、冷媒ループ60内を循環し続け、それによって、冷媒の流れの一部が、熱交換器68と脱塩装置70に、それぞれ熱放散と冷媒浄化のために導かれる。代替として、脱塩装置70は、既知のように、冷媒のほんの一部が脱塩装置70を通って流れるように構成することができる。温度制御弁72が、燃料電池装置20から排出される冷媒の流れの出口温度を監視するために、出口導管74に沿って配置される。流出する冷媒の流れ、または全体としての燃料電池装置20、の温度が、変動するにつれ、温度制御弁72は、より多くの量またはより少ない量の冷媒の流れを熱交換器68へ適切に分流させて、燃料電池装置20の温度を作動条件内に維持する。
【0020】
熱交換器68は、ラジエータ要素とファンの組み合わせとして示されているけれども、他の知られた熱交換器が、本発明のより広い態様から逸脱することなく代替として使用できるので、本発明は、この点に関して制限されない。同様に、脱塩装置70は、燃料電池装置20に再供給する前に冷媒の流れから溶解している気体および懸濁している固体が効果的にストリッピング(stripping)されるならば、既知の物質移動装置を含む、脱気装置と脱塩装置の両方から実際、構成できる。同様に、温度制御弁およびバイパスラインは、随意であるかまたは本発明のより広い態様から逸脱することなくさまざまな代替の方法で実施できる。
【0021】
作動においては、燃料電池装置20内で起こる電気化学反応により、生成物水が、カソード電極40において生成される。付加的な水も、アノード電極30をカソード電極40から分離する図示されていないPEMを横断するプロトンドラッグ、すなわち、PEMとアノード電極30の両方からカソード電極40へ水をともに持ち運ぶイオンの移動、の結果として、カソード電極40へ供給される。一般に、液体の水または水蒸気が、PEMを加湿するようにアノード電極30に供給される。
【0022】
カソード電極40内の酸化剤の流れと周囲下冷媒の流れとの間の圧力差は、多孔質カソード電極40を通りかつ微細な孔を有する水移動プレート50内の周囲下冷媒の流れの中への、水分子の移動に影響を及ぼすように正の供給力を与える。結果として、カソード電極40の溢流は、効果的に防止される。さらに、複数の燃料電池装置が、セルスタックアッセンブリのように互いに積層される関係になるように構成される用途においては、多孔質アノード電極30の微細な孔は、微細な孔を有する水移動プレート50内を循環する冷媒に毛管効果を及ぼす。このようにして、水は、微細な孔の中へ移動(wick)し、アノード電極30の乾燥を防止するような仕方でアノード電極30に供給される。
【0023】
燃料圧力弁34などを介して反応物燃料の圧力を操作することが、対応して、アノード電極30の微細な孔の中へ水が移動する速度に影響を及ぼすことによりアノード電極30の濡れを増加させることになることは、容易に理解されるであろう。すなわち、反応物燃料の流れの圧力を上昇または低下させることにより、アノード電極30は、それぞれ、より少ないまたはより多い水の流入を経験することになる。従って、アノード電極30に水が確実に溢れないようにしながら、アノード電極30を加湿することができる。
【0024】
カソード電極40から排気される酸化剤が、燃料処理装置32へ、または、既知のように、図示していないが燃料電池電力設備10がそのように備え付けていれば水回収装置へ、供給することができ、あるいは、逆に、排気される酸化剤が、周囲の環境へ単に排出できることは、留意する必要がある。同様に、アノード電極30から排気される燃料の流れが、燃料処理装置32へ、または、既知のように、図示していないが飛沫同伴される水または水蒸気が後での使用のために凝縮されかつ回収できる水回収装置へ、導入することができる。
【0025】
従って、本発明の重要な態様は、燃料電池電力設備10の効率的な水管理が、反応物の気体状の流れと冷媒の流れとの間の圧力差を用いる受動的な方法で実現されることである。
【0026】
本発明の別の重要な態様は、反応物の気体状の流れを加圧するより、液体冷媒の圧力を上昇させることにより、燃料電池電力設備10の寄生電力消費を低減することである。
【0027】
電動式の輸送装置と関連する使用などの移動式の独立型の用途において、酸化剤送風機42が、燃料電池電力設備10と大気環境との相互作用がほぼ周囲圧力において燃料電池電力装置20を通して酸化剤気体を流すのに十分でない時はその間に限り、作動するように自動的に制御されることは、容易に明らかになるであろう。従って、本発明の別の重要な態様は、全体としての燃料電池電力設備10の寄生電力消耗の対応する節約とともに、酸化剤送風機42の間欠的な作動にある。
【0028】
本発明による周囲下圧力冷媒ループを用いる燃料電池電力設備の別の実施態様は、図2に概略例示されており、全体が参照番号100により示されている。燃料電池電力設備100は、図示されていない電解質の両側に配置されたアノード電極130とカソード電極140を有する少なくとも1つの燃料電池装置120を含む。アノード電極130に水素に富んだ燃料を、カソード電極140に酸素に富んだ酸化剤を供給することにより、燃料電池装置120は、当業技術内でよく知られた仕方で電気エネルギーを生成することになる。図2の燃料電池装置120は、PEMも使用し、その両側は、燃料電池装置120内で電気化学反応を促進するために使用される触媒層で、図示していないが、被覆される。
【0029】
図2は、単一の燃料電池装置120を示しているが、燃料電池電力設備100は、電気的に接続されそれによってセルスタックアッセンブリを形成する複数の平らな燃料電池装置と関連して代替として作動されることができ、このセルスタックアッセンブリは、図示されていないハウジング内に収容されており、全体として、水素に富んだ燃料の流れおよび酸素に富んだ酸化剤の流れをセルスタックアッセンブリへ導き、さらにそこから導き出すさまざまな反応物のマニホールドを規定している。
【0030】
微細な孔を有する水移動プレート150が、カソード電極140に隣接して配置され、燃料電池装置120と連通する。水移動プレート150は、燃料電池電力設備100内で適切な水バランスを維持するのに加えて、燃料電池電力設備100の温度を管理する、のを助ける統合された冷媒ループ160の一部である。
【0031】
図2に示される燃料電池電力設備100は、周囲下冷媒ループ160を統合するための別の実施態様を例示する。図1に示される実施態様と同様に、燃料電池装置120のアノード電極130には、当業技術内で一般に知られるように、燃料処理装置132などから反応物燃料、通常、水素に富んだ気体の流れが供給される。燃料圧力弁134または他の手段が、アノード電極130へ供給される燃料の圧力を、手動または自動のいずれかで、制御するのに使用できる。同様に、燃料電池装置120のカソード電極140には、反応物酸化剤、通常、酸素に富んだ気体の流れが供給される。酸化剤は、燃料電池電力設備100と環境との間の相対的な移動によりカソード電極140に向かって導かれる酸素を含む大気とすることができる。図2にも示すように、酸化剤の流れが、カソード電極140へ酸化剤送風機142を介して供給され、その体積は、酸化剤流量制御弁144によって手動または自動のいずれかで制御され、それによって、酸化剤の流れは、ほぼ周囲圧力で燃料電池装置120に確実に供給される。燃料の流れは、酸化剤の作動圧力よりわずかに低くなるように制御される。
【0032】
先に示したように、冷媒の流れは、酸化剤の気体状の流れの周囲圧力より低い圧力で水移動プレート150内を流れるように設計される。この目的のために、真空ポンプ162が、冷媒貯蔵器タンク164内の圧力を周囲より下(below−ambient)の圧力に低下させるように冷媒ループ160に沿って配置される。この構成において、冷媒ポンプ166が、貯蔵器タンク164から引き出される冷媒の流れを循環させる推進力を与え、それによって、本来の冷媒ループの圧力降下に打ち勝つ。冷媒ポンプ166は、燃料電池装置120から流出する前に、周囲下冷媒の流れを水移動プレート150へ進ませる。従って、貯蔵器タンク164、真空ポンプ162は、共同して、燃料電池装置120に周囲下圧力冷媒の連続的に循環する流れを供給するための効果的な冷媒調整器として作用する。
【0033】
燃料電池装置120から流出した後、周囲下冷媒の流れは、冷媒ループ160内を循環し続け、それによって、冷媒の流れの一部が、熱交換器168と脱塩装置170に、それぞれ熱放散と冷媒浄化のために導かれる。温度制御弁172が、燃料電池装置120から排出される冷媒の流れの出口温度を監視するために、出口導管174に沿って配置される。流出する冷媒の流れ、または全体としての燃料電池装置120、の温度が、変動するにつれ、温度制御弁172は、より多くの量またはより少ない量の冷媒の流れを熱交換器168へ適切に分流させて、燃料電池装置120の温度を作動条件内に維持する。
【0034】
熱交換器168は、ラジエータ要素とファンの組み合わせとして示されているけれども、他の知られた熱交換器が、本発明のより広い態様から逸脱することなく代替として使用できるので、本発明は、この点に関して制限されない。同様に、脱塩装置170は、燃料電池装置120に再供給する前に冷媒の流れから溶解している気体および懸濁している固体が効果的にストリッピングされるならば、既知の物質移動装置を含む、脱気装置と脱塩装置の両方から実際、構成できる。同様に、温度制御弁およびバイパスラインは、随意であるかまたはさまざまな方法で実施できる。
【0035】
作動においては、燃料電池装置120内で起こる電気化学反応により、生成物水が、カソード電極140において生成される。付加的な水も、アノード電極130をカソード電極140から分離する図示されていないPEMを横断するプロトンドラッグ、すなわち、PEMとアノード電極130の両方からカソード電極140へ水をともに持ち運ぶイオンの移動、の結果として、カソード電極140へ供給される。一般に、液体の水または水蒸気が、PEMを加湿するようにアノード電極30に供給される。
【0036】
カソード電極140内の酸化剤の流れと周囲下冷媒の流れとの間の圧力差は、多孔質カソード電極140を通りかつ微細な孔を有する水移動プレート150内の周囲下冷媒の流れの中への、水分子の移動に影響を及ぼすように正の供給力を与える。結果として、カソード電極140の溢流は、効果的に防止される。さらに、複数の燃料電池装置が、セルスタックアッセンブリのように互いに積層される関係になるように構成される用途においては、多孔質アノード電極130の微細な孔は、微細な孔を有する水移動プレート150内を循環する冷媒に毛管効果を及ぼす。このようにして、水は、アノード電極130の乾燥を防止するような仕方でアノード電極130に供給される。
【0037】
上述したように、燃料圧力弁134などを介して反応物燃料の圧力を操作することが、対応して、アノード電極130の微細な孔の中へ水が移動する速度に影響を及ぼすことによりアノード電極130の濡れを増加させることになる。すなわち、反応物燃料の流れの圧力を上昇または低下させることにより、アノード電極130は、それぞれ、より少ないまたはより多い水の流入を経験することになる。従って、アノード電極130に水が確実に溢れないようにしながら、アノード電極130を加湿することができる。
【0038】
一旦、反応物気体の流れと冷媒の流れとの間に適切な圧力差が確立されると、図1、図2それぞれの燃料電池電力設備10、100の適切な水管理が、結果的に自動的に起こり、複雑な機械的な配置を必要とせずに受動的に維持される。電力出力、電池性能、温度などの変化を含む、燃料電池電力設備の作動条件のどのような変更も、燃料電池電力設備に供給される燃料および酸化剤の圧力、冷媒の流れの流量、冷媒の流れの圧力などへの調整、あるいは、これらの条件のどのような組み合わせに行われる調整によっても、対応できる。
【0039】
従って、本発明は、燃料電池電力設備の受動的な水管理を行うのを助けながら、燃料電池電力設備の寄生電力消耗を低減させるのに、これまでは知られていなかった周囲下冷媒の流れを用いる。
【0040】
上述した開示および組み合わされた構成から理解できるように、有利なことには、周囲下冷媒の流れとともに使用するために構成された燃料電池電力設備は、限定されるものではないが、燃料電池電力設備の寄生電力消費を低減させかつPEMばかりでなくアノード電極およびカソード電極が局部的に水で溢れるのを防止しながら、これらの要素を加湿することを含む燃料電池電力設備の受動的な水管理を含む、複数の有益な作動特性を備える。これらの特性の全ては、燃料電池電力設備の効率的な作動に寄与し、高い性能、信頼性、エネルギー効率を必要とする、電動式の輸送装置の製造などの用途に特に有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施態様による、周囲下圧力冷媒ループを使用する燃料電池電力設備の概略図。
【図2】
本発明の別の実施態様による、周囲下圧力冷媒ループを使用する燃料電池電力設備の概略図。

Claims (20)

  1. 燃料の流れが供給されるアノードと、酸化剤の流れが供給されるカソードと、このアノードとこのカソードとの間に配置されたイオン交換膜と、燃料電池装置と連通するように冷媒の流れを循環させる冷媒ループと、を含む、燃料電池装置を有する燃料電池電力設備であって、
    燃料電池装置に酸化剤の流れを所定の圧力で供給するための酸化剤供給源と、
    冷媒ループに沿って配置され、冷媒の流れが燃料電池装置と連通する前に冷媒の流れを周囲下圧力に低下させる冷媒調整器と、
    を備えることを特徴とする燃料電池電力設備。
  2. 前記所定の圧力は、ほぼ周囲圧力であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池電力設備。
  3. 前記冷媒ループは、カソードと連通する、微細な孔を有する水移動プレートを含み、冷媒の流れは、この水移動プレート内を流れ、
    前記冷媒調整器は、水移動プレートに周囲下冷媒の流れを供給する、
    ことを特徴とする請求項2記載の燃料電池電力設備。
  4. 前記冷媒ループは、熱交換器と冷媒清浄器をさらに備え、この熱交換器とこの冷媒清浄器は、水移動プレートから流出する冷媒の流れの第1の部分を処理し、
    前記冷媒調整器は、冷媒の流れの処理された部分が供給されるように、熱交換器と冷媒清浄器の下流に配置される、
    ことを特徴とする請求項3記載の燃料電池電力設備。
  5. 前記冷媒ループは、冷媒の流れが水移動プレートから流出する位置の後であって熱交換器と冷媒清浄器の前の位置に冷媒ループに沿って配置された冷媒ループ弁をさらに備え、
    この冷媒ループ弁は、水移動プレートから流出する冷媒の流れの第2の部分を冷媒調整器へ選択的に分流させ、この第2の部分は、熱交換器と冷媒清浄器を通って循環しない、
    ことを特徴とする請求項4記載の燃料電池電力設備。
  6. 前記冷媒ループ弁は、燃料電池装置の作動温度に依存して、冷媒の流れの第1および第2の部分の一方を増加させることを特徴とする請求項5記載の燃料電池電力設備。
  7. 前記冷媒調整器は、ほぼ周囲圧力に曝された蓄積装置と、冷媒圧力弁とを備え、この冷媒圧力弁は、蓄積装置と水移動プレートとの間に配置され、
    蓄積装置は、冷媒圧力弁に冷媒の流れをほぼ周囲圧力で供給し、
    冷媒圧力弁は、冷媒圧力弁から流出する冷媒の流れを周囲下圧力に低下させるように作動する、
    ことを特徴とする請求項3記載の燃料電池電力設備。
  8. 前記冷媒調整器は、所定量の冷媒の流れを周囲下圧力で貯蔵するための貯蔵器タンクと、冷媒ポンプとを備え、この冷媒ポンプは、貯蔵器タンクと水移動プレートとの間に配置され、
    貯蔵器タンクは、冷媒ポンプに冷媒の流れを周囲下圧力で供給し、
    冷媒ポンプは、周囲下冷媒の流れを水移動プレートに供給するように作動する、
    ことを特徴とする請求項3記載の燃料電池電力設備。
  9. 前記冷媒調整器は、貯蔵器タンクを周囲下圧力に低下させるための真空ポンプをさらに備えることを特徴とする請求項8記載の燃料電池電力設備。
  10. 互いに電気的に連通する複数の燃料電池装置を有するセルスタックアッセンブリを含む燃料電池電力設備であって、燃料電池装置のそれぞれは、燃料の流れが供給されるアノードと、酸化剤の流れが供給されるカソードと、このアノードとこのカソードとの間に配置されたイオン交換膜と、を含み、燃料電池電力設備は、セルスタックアッセンブリと連通するように冷媒の流れを循環させる冷媒ループをさらに含み、
    セルスタックアッセンブリに酸化剤の流れを所定の圧力で供給するための酸化剤供給源と、
    冷媒ループに沿って配置され、冷媒の流れがセルスタックアッセンブリと連通する前に冷媒の流れを周囲下圧力に低下させる冷媒調整器と、
    を備えることを特徴とする燃料電池電力設備。
  11. 前記所定の圧力は、ほぼ周囲圧力であることを特徴とする請求項10記載の燃料電池電力設備。
  12. 前記冷媒ループは、セルスタックアッセンブリと連通する、微細な孔を有する水移動プレートを含み、冷媒の流れは、この水移動プレート内を流れ、
    前記冷媒調整器は、水移動プレートに周囲下冷媒の流れを供給する、
    ことを特徴とする請求項11記載の燃料電池電力設備。
  13. 前記冷媒ループは、熱交換器と冷媒清浄器をさらに備え、この熱交換器とこの冷媒清浄器は、水移動プレートから流出する冷媒の流れの第1の部分を処理し、
    前記冷媒調整器は、冷媒の流れの処理された部分が供給されるように、熱交換器と冷媒清浄器の下流に配置される、
    ことを特徴とする請求項12記載の燃料電池電力設備。
  14. 前記冷媒ループは、冷媒の流れが水移動プレートから流出する位置の後であって熱交換器と冷媒清浄器の前の位置に冷媒ループに沿って配置された冷媒ループ弁をさらに備え、
    この冷媒ループ弁は、水移動プレートから流出する冷媒の流れの第2の部分を冷媒調整器へ選択的に分流させ、この第2の部分は、熱交換器と冷媒清浄器を通って循環しない、
    ことを特徴とする請求項13記載の燃料電池電力設備。
  15. 前記冷媒ループ弁は、セルスタックアッセンブリの作動温度に依存して、冷媒の流れの第1および第2の部分の一方を増加させることを特徴とする請求項14記載の燃料電池電力設備。
  16. 前記冷媒調整器は、ほぼ周囲圧力に曝された蓄積装置と、冷媒圧力弁とを備え、この冷媒圧力弁は、蓄積装置と水移動プレートとの間に配置され、
    蓄積装置は、冷媒圧力弁に冷媒の流れをほぼ周囲圧力で供給し、
    冷媒圧力弁は、冷媒圧力弁から流出する冷媒の流れを周囲下圧力に低下させるように作動する、
    ことを特徴とする請求項12記載の燃料電池電力設備。
  17. 前記冷媒調整器は、所定量の冷媒の流れを周囲下圧力で貯蔵するための貯蔵器タンクと、冷媒ポンプとを備え、この冷媒ポンプは、貯蔵器タンクと水移動プレートとの間に配置され、
    貯蔵器タンクは、冷媒ポンプに冷媒の流れを周囲下圧力で供給し、
    冷媒ポンプは、周囲下冷媒の流れを水移動プレートに供給するように作動する、
    ことを特徴とする請求項12記載の燃料電池電力設備。
  18. 前記冷媒調整器は、貯蔵器タンクを周囲下圧力に低下させるための真空ポンプをさらに備えることを特徴とする請求項17記載の燃料電池電力設備。
  19. 互いに電気的に連通する複数の燃料電池装置を有するセルスタックアッセンブリを含む燃料電池電力設備を作動させる方法であって、燃料電池装置のそれぞれは、燃料の流れが供給されるアノードと、酸化剤の流れが供給されるカソードと、このアノードとこのカソードとの間に配置されたイオン交換膜と、を含み、燃料電池電力設備は、セルスタックアッセンブリと連通するように冷媒の流れを循環させる冷媒ループをさらに含み、この方法は、
    セルスタックアッセンブリに酸化剤の流れをほぼ周囲圧力で供給し、
    冷媒の流れがセルスタックアッセンブリと連通する前に冷媒の流れを周囲下圧力に低下させるように冷媒ループに沿って配置された冷媒調整器を使用する、
    ことを含むことを特徴とする方法。
  20. 前記冷媒調整器を、共同して作動する蓄積装置と圧力弁から構成し、この蓄積装置は、所定量の冷媒の流れを蓄積しかつほぼ周囲圧力に開放されており、
    冷媒の流れを受け取るように蓄積装置の下流に圧力弁を配置し、かつ、圧力弁から流出する冷媒の流れを周囲下圧力に低下させるように圧力弁を作動させる、
    ことを含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
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