JPH0668884A - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池

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JPH0668884A
JPH0668884A JP4223128A JP22312892A JPH0668884A JP H0668884 A JPH0668884 A JP H0668884A JP 4223128 A JP4223128 A JP 4223128A JP 22312892 A JP22312892 A JP 22312892A JP H0668884 A JPH0668884 A JP H0668884A
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cooling water
oxidant
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宜長 中山
Atsuo Muneuchi
篤夫 宗内
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謙二 村田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電池の動作温度において高分子電解質膜の加
湿を十分におこない電解質膜の劣化を防ぐ。 【構成】 親水性の金属または炭素などの導電性の多孔
質体の薄板から成る加湿水透過板20と緻密な金属または
炭素からなり冷却水流路の溝を設けた冷却水配流板21と
を溝面側を合わせて冷却板を構成し、燃料配流板4を親
水性の金属または炭素などの導電性で加湿水透過板とは
異なる気孔率の多孔質体として、加湿水透過板を介して
高分子電解質膜3を加湿するようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水素イオン伝導性を有
する高分子膜を電解質として用いた、あるいは水素イオ
ン伝導性を有する無機または有機材料粉末とこれに可撓
性と共に緻密性を付与する高分子材料を結着剤として用
いた複合剤を電解質として用いた固体高分子型燃料電池
に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池のうち、電解質として水素イオ
ン伝導性を有する高分子電解質膜(Polymer Electrolyt
e Membrane)をもちいた固体高分子型燃料電池(PEF
C)は、コンパクトで高出力密度が得られ、かつ簡略な
システムで運転が可能なことから、宇宙用や車両用等の
移動用電源として注目されている。
【0003】この高分子電解質膜としては、スルホン酸
基を持つポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカ
ーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混
合物質、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロ
エチレンをグラフト化したもの等が知られている。最近
ではパーフルオロカーボンスルホン酸膜(例えば、ナフ
ィオン:商品名、デュポン社製)等が用いられている。
このような高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電
池は、ガス拡散層および触媒層としての機能を有する一
対の多孔質電極である燃料極と酸化剤極とで高分子電解
質膜を挟持すると共に、両電極の外側に燃料流路と酸化
剤流路を形成する溝付きの集電体としての燃料配流板と
酸化剤配流板を配したものを単セルとし、このような単
セルを複数個、冷却板等を介して積層することにより構
成される。
【0004】図10に、従来の固体高分子型燃料電池の構
成を例示する。燃料極1と酸化剤極2とで高分子電解質
膜3を挟持し、集電体として機能する燃料配流板4を燃
料極側に、同じく集電体として機能する酸化剤配流板5
を酸化剤極側に積層したものを単セルとし、複数個の単
セルを繰り返し積層して、固体高分子型燃料電池が構成
される。各セルの配流板4、5の間に冷却板6が挿入さ
れ、起電反応によって発生する熱を取り除く。セル面に
垂直方向の熱伝導がある程度期待される場合には、冷却
板6は数セル毎に挿入されることもある。このような構
成の燃料電池では、冷却板6が挿入されていないセルの
配流板4、5は一体化されることがあり、そのような配
流板は燃料流路と酸化剤流路の間を隔離している機能に
注目して、セパレーターと呼ばれることがある。冷却板
6が配流板4、5の間に挿入されている場合には、冷却
板6と燃料配流板4、酸化剤配流板5が一体となってセ
パレーターの機能を果たす。
【0005】燃料流路と酸化剤流路は互いに直交してお
り、積層の4側面のうちの2組の対向する2面は、それ
ぞれ燃料流路か酸化剤流路かのどちらかのみが開孔して
いる。流路を形成する溝付き配流板4、5の端部7、8
には、溝を設けない部分を残す。積層側面の両側の端部
7、8と、複数積層されたセル面の両側に設けたエンド
プレート9の端面で構成される積層側面の外周に、例え
ば、ゴムなどの絶縁体からなるパッキング10をおいて、
積層の4側面にそれぞれマニホールド11を設け、燃料14
と酸化剤15をそれぞれ供給し、通過分を回収する。
【0006】冷却板6の中には、蛇行した金属管6aを
埋め込み、冷媒として水を流して電池の反応熱を取り除
く。高分子電解質膜は、90℃程度までは安定であり、数
万時間の耐久性を示すが、これ以上の温度(特に 100℃
以上)になると劣化が速くなる。このため、固体高分子
型燃料電池は80〜90℃の作動温度に保ちながら運転され
る。冷却水の供給と排出のためにもマニホールドが必要
であり、例えば、燃料入口と出口のマニホールド11を貫
通し、その中でそれぞれ一端が閉じた管状の冷却水マニ
ホールド12を設け、各冷却板6の金属管6aの入口と出
口をそれぞれ管状の冷却水マニホールド12に接続し、貫
通部から冷却水13を供給・排出する。
【0007】図10には示していないが、複数積層された
セル面の両面に重ねたエンドプレート9のさらに外側
に、エンドプレート9より大きい締め付け板を上下に設
け、締め付板間を締け付ロッドとバネを用いて引き合う
ようにして、積層された各セル部品の間の面積触を良好
に保ち、電気的・熱的面抵抗が小さくなるようにするの
が一般的である。また、電池性能向上のために、燃料、
酸化剤、および冷却水の供給圧力を高くし、電池の動作
圧力を上げることも一般的である。同様に図10には示さ
なかったが、電池の動作圧力を上げる場合には、従来技
術ではセル積層体を圧力容器にいれ、不活性ガスによっ
て圧力容器内の圧力も電池の動作圧力と同じにしてい
る。このようにすることで、積層内外の圧力差をなく
し、各セル部品の間の接触面から燃料と酸化剤がもれで
ることを防ぎ、積層内圧が締め付力を相殺することを防
いでいる。
【0008】酸化剤としては、純酸素あるいは空気が供
給される。燃料としては、純水素、あるいは天然ガスや
メタノールの改質ガスが供給される。苛性ソーダ工業な
どの副生水素を燃料として利用することもある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、高分子電解
質膜は吸湿性があり、水分を含んで水素イオン伝導性を
示す。乾燥すれば絶縁体となり、電解質の機能をはたさ
ない。飽和状態まで吸湿したとき、最も高い伝導性を示
す。従って、起電反応の継続のためには、高分子電解質
膜の乾燥を防ぎ、飽和状態まで加湿する必要がある。酸
化剤極側では、起電反応によって水が生成するので、高
分子電解質膜はつねに飽和蒸気圧のガスにさらされてお
り、高分子電解質膜の乾燥は起こらない。燃料極側には
反応生成水はないので、加湿が必要である。
【0010】そこで、燃料流の温度を電池作動温度より
高くし、その燃料流に水蒸気を混合し、高分子電解質膜
の表面で水蒸気を凝縮させて加湿している。しかし、燃
料流が電池入口から電池出口に向かう間に、起電反応熱
により加熱されて、燃料流の温度が上昇する。この温度
上昇の分だけ飽和蒸気圧が高くなり、高分子電解質膜の
乾燥を起こす。このため、電池出口温度も電池作動温度
より高くなければならず、かつ酸化剤極側から充分に冷
却する必要がある。燃料流の温度が低くなれば、そこで
の膜面からの加熱により局所的に飽和蒸気圧に達しない
蒸気分圧の燃料流となり、膜の水分を持ち去るからであ
る。このため、燃料流の電池入口温度は、電池作動温度
よりかなり高く設定している。こような加湿方法では、
水蒸気の凝縮熱はそのまま冷却負荷増となり、燃料流の
入口と出口の温度差分の顕熱も冷却負荷増となる、など
の問題がある。
【0011】さらに、膜表面に温度分布があると、温度
の高いところほど加湿が行われにくくなり、ますます加
湿されない部分が拡がり反応が一様に行われなくなって
性能が低下する問題がある。作動温度が 100℃以下のた
め、水を冷媒とする限り蒸発潜熱による冷却は行えな
い。顕熱のみによる冷却であれば、冷却板の温度は一様
でなくなり、冷媒の流れに沿って温度分布がつく。この
温度分布が反映されて、膜面にも温度分布が現れる。こ
のような温度分布があっても、加湿ができるだけ一様に
行われるように、冷媒と燃料の流れを対向させて、膜面
と燃料流の温度差をできるだけ一定にすることが工夫さ
れている。しかしながら、作動温度より低い温度で供給
する酸化剤も冷却に寄与し、しかも、燃料流、したがっ
て冷媒の流れと交差しているので、このような工夫にも
かかわらず、加湿の一様性が損なわれている。
【0012】ここで例示した構成とは逆に、冷媒と酸化
剤の流れを対向させることで、膜面の温度分布ができる
だけ一様になるよう工夫した例がある。しかし、この場
合にも燃料流と酸化剤とは交差しているので、加湿の一
様性が損なわれることに変わりはない。
【0013】各セルの面に温度分布があって、さらにこ
れらを積層してスタックとするとき、各セル毎に冷却板
を設けなければセル間の温度の違いが現れる。固体高分
子型燃料電池は出力密度が高く、反応層が薄いので、局
所的に反応層温度が高くなり、セル内の積層方向の温度
分布も現れる。
【0014】このように、燃料流に含まれる蒸気によっ
て加湿する方法では、燃料流の温度を電池作動温度より
高く設定しなければならず、各セル毎に冷却板を設け、
なおかつ各セル毎の冷却水流量を加減するなどの温度管
理を行わなければ、スタック内の各部を満足に加湿する
ことは極めて難しい。
【0015】このように、従来の固体高分子型燃料電池
においては、高分子膜電解質の導電性を安定に保つため
の加湿が極めて困難であり、加湿が行われない部分が現
れるなどによって、高分子電解質膜の劣化を誘発する問
題がある。また電池作動温度より高い温度の燃料を供給
しなければならないことから冷却負荷が増加し、発電シ
ステムとしたときの効率を損ねるとともに、燃料電池が
安定に動作できる、例えば、80〜90℃程度の温度に保つ
ことが困難になる問題もある。さらに、燃料と酸化剤の
供給をセル積層体の外部側面に設けるマニホールドから
行うために、燃料流路と酸化剤流路とが直交しており、
セル面に複雑な温度分布が現れて高温部と低温部の温度
差を広げ、加湿を困難にするとともに安定な動作を妨げ
る問題がある。
【0016】さらに、電池性能を向上するために電池の
動作圧力を上げる場合には、積層されたセルの全体を圧
力容器にいれる必要があり、直方体のセル積層体を円筒
形状の圧力容器に入れることからくる無駄な空間が生ず
る問題がある。このため、セル積層体を圧力容器にいれ
ることなく、動作圧力を上げて電池性能の向上がはか
れ、固体高分子燃料電池の構造と構成法の出現が強く望
まれている。
【0017】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、経時劣化等を防止し、長期間安定に
動作させ得る固体高分子型燃料電池を提供する事を目的
としており、具体的には、作動温度を安定に保持し得る
固体高分子型燃料電池、およびそのような作動温度でも
充分な加湿が行える固体高分子型燃料電池を提供するこ
とを目的とする。また、圧力容器の不要な、コンパクト
な固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために、以下の第1、第2、第3、第4、第
5、第6、第7、第8、第9、および第10の手段を講ず
る。
【0019】第1の手段では、燃料極と酸化剤極とで高
分子電解質膜を挟持し、燃料流路を形成する溝付き集電
体としての燃料配流板を燃料極側に設け、酸化剤流路す
る形成する溝付き集電体としての酸化剤配流板を酸化剤
極側に設けたものを単位セルとし、複数の単位セルを繰
り返し積層して各単位セル毎に、冷却板を燃料配流板と
酸化剤配流板の間に挿入し、起電反応によって発生する
熱を水冷却により取り除くようにしたものにおいて、親
水性の金属または炭素などの導電性の多孔質体の薄板か
らなる加湿水透過板と緻密な金属または炭素からなり冷
却水流路の溝を設けた冷却水配流板を溝面側を貼り合わ
されるように合わせて冷却板を構成し、燃料配流板を親
水性の金属または炭素などの導電性で加湿水透過板とは
異なる気孔率の多孔質体として、加湿水透過板の気孔率
と親水性で決まる量の冷却水の一部が加湿のための水分
として毛細管現象により自律的に補給されるようにす
る。
【0020】第2の手段では、上記第1の手段の冷却板
を構成する緻密な金属または炭素などに冷却水流路の溝
を設けた冷却水配流板の裏面に、さらに酸化剤流路を形
成する溝も設けることで酸化剤配流板を兼用させ、セル
部品を一つ少なくする。
【0021】第3の手段では、第1の手段の冷却板を構
成する親水性の金属または炭素などの導電性の多孔質体
の薄板から成る加湿水透過板と、同じく第1の手段の親
水性の金属または炭素などの導電性の多孔質体とした燃
料配流板との二つを一体化し、冷却水側の表面の気孔率
や親水性をコントロールして加湿水透過量を加減するこ
とで、セル部品を一つ少なくする。
【0022】第4の手段では、第1の手段の親水性の金
属または炭素などの導電性の多孔質体から成る加湿水透
過板を溝が設けられる板厚とし、その酸化剤配流板側に
冷却水流路を設け、冷却水流路を設けた面を酸化剤配流
板に貼り付けて冷却板を構成することで第1の手段の緻
密な金属または炭素などに冷却水流路の溝を設けた冷却
水配流板を省略し、セル部品を一つ少なくする。
【0023】第5の手段では、第1、第2、第3または
第4の手段を講ずるとともに、積層したときにスタック
の側面に燃料、酸化剤および冷却水の流路溝が開孔しな
いように端部に溝を設けない部分を残し、流路と平行な
端部に残した溝を設けない部分とともにそれぞれ燃料、
酸化剤および冷却水のシール面を形成し、さらに各配流
板、加湿水透過板および冷却水流路の溝を設けた冷却水
配流板を共通に貫通する6個の孔をこの部分にあけ、そ
れぞれ別の2組の孔を燃料、酸化剤および冷却水の入口
・出口とし、燃料配流板、酸化剤配流板および冷却水配
流板のそれぞれの流路溝の一方が入口孔、他方が出口孔
につながるようにさらに溝をそれぞれ設け、燃料極と酸
化剤極とで高分子電解質膜を挟持した起電部品のうち少
なくとも燃料極と酸化剤極とには端部を残さずに置き、
燃料配流板と酸化剤配流板との間の端部に起電部品より
若干厚い、例えば、ゴム等から成るパッキングを挟んで
スタック全体を積層の両側から締め付け、ガスのシール
を行うとともに両極間の短絡を防ぎ、このパッキングに
も共通に貫通する6個の孔をあけることで、マニホール
ドの機能をセル部品で構成し、燃料、酸化剤および冷却
水の配流を行う。
【0024】第6の手段では、第5の手段を講ずるとと
もに、各セル部品を縦に置いて横方向に積層し、燃料、
酸化剤および冷却水の流路溝がすべて上下方向となるよ
うに重ね、共通に貫通する孔を上下の端部にそれぞれ3
個づつあけて、上下の組み合わせをそれぞれの燃料、酸
化剤および冷却水の出入口とし、例えば、すべてを下か
ら上への並行流とすることで、マニホールドの機能をセ
ル部品で構成と、燃料、酸化剤および冷却水の配流を行
う。
【0025】第7の手段では、第1の手段、第2の手
段、第3の手段、第4の手段、第5の手段または第6の
手段を講じた燃料電池において、多孔質からなる燃料配
流板と加湿水透過板について、積層したときにスタック
の側面に燃料と酸化剤の流路溝が開孔している場合には
燃料配流板の流路と平行な両端部と加湿水透過板の四辺
の端部とに、積層したときにスタックの側面に燃料と酸
化剤の流路溝が開孔していない場合には燃料配流板と加
湿水透過板の四辺の端部に熱可塑性の樹脂やを含浸し、
あるいはその部分の気孔率を非常に小さくするなどの方
法により端部板内にある空隙を辿って積層外などへ燃料
と冷却水が漏れ出さないようにする。
【0026】第8の手段では、第7の手段を講じた燃料
電池において、燃料配流板と加湿水透過板とが一体化し
ている場合にはこれと冷却水配流板および酸化剤配流板
を、冷却水配流板と酸化剤配流板が一体化している場合
にはこれと加湿水透過板および燃料配流板を、これらが
それぞれ独立している場合には燃料配流板、加湿水透過
板、冷却水配流板および酸化剤配流板を導電性のある接
着剤を用いるなどの方法により積層前にあらかじめ組み
合わせるで気体および冷却水の配流、加湿および冷却の
機能を備えた複合セパレータとし、この複合セパレータ
と燃料極と酸化剤極とで高分子電解質膜を挟持した起電
部品とを交互に積層する。
【0027】第9の手段では、第5の手段または第6の
手段と第7の手段を講じた燃料電池において、燃料配流
板の加湿水透過板に接する面に開孔している冷却水と酸
化剤の供給排出孔の周囲、加湿水透過板の冷却水配流板
に接する面に開孔している燃料と酸化剤の供給排出孔の
周囲および冷却水配流板の酸化剤流板に接する面に開孔
している燃料と冷却水の供給排出孔の周囲、あるいは逆
に面を用いて酸化剤配流板の冷却水配流板に接する面に
開孔している燃料と冷却水の供給排出孔の周囲、冷却水
配流板の加湿水透過板に接する面に開孔している燃料と
酸化剤の供給排出孔の周囲および加湿水透過板の燃料配
流板に接する面に開孔している冷却水と酸化剤の供給排
出孔の周囲とそれぞれの板面外周の内側にそれぞれパッ
キング用の溝を設けて例えばゴムオーリングなどを装着
して積層するで積層面間の間隙による漏れを防ぎ、各供
給排出孔の間で燃料と酸化剤の混合することや、積層外
への漏れ出すことを防止する。
【0028】第10の手段では、第5の手段または第6の
手段、第7の手段、および第8の手段または第9の手段
を講じた燃料電池において、セル積層体の軸方向端に締
め付力可変機構を付設し、電池性能をさらに上げるため
に燃料、酸化剤、および冷却水の供給圧力を高くし、電
池の動作圧力を上げるときに、セル積層体の圧力上昇に
より反力が締め付力に対して働くのを、締め付力を大き
くして反力を相殺するようにする。
【0029】
【作用】本発明の固体高分子型燃料電池においては、ま
ず加湿水透過板を燃料配流板と冷却水配流板との間に設
ける。この加湿水透過板はその気孔径、気孔率、板厚さ
などを適切にコントロールして製作し、その気孔径、気
孔率、板厚さなどによって決まる量の冷却水の一部を燃
料配流板に供給する。燃料配流板は、親水性の炭素の多
孔質体からなり、毛細管として働いて、加湿水透過板か
ら供給される水分を燃料極に送る。このようにして、高
分子電解質膜の乾燥を防ぎ飽和状態まで加湿するのに必
要な水分を、水の状態で燃料極の燃料ガス側から供給す
る。そして、高分子電解質膜の全面に常に一様に加湿水
が直接供給されるので、加湿されない部分が広がること
がなく、高分子電解質膜の劣化がなく、長期間安定に使
用することができる。
【0030】さらに、蒸気を混合した燃料流による加湿
は不要となり、燃料流の温度を電池作動温度より高く設
定する必要がない。したがって、冷却の負荷は起電反応
の発熱だけとなり、燃料流の温度を電池作動温度より低
く設定することで、酸化剤流と同様に燃料流も冷却に寄
与し、安定した運転が可能となる。
【0031】また、本発明の固体高分子型燃料電池にお
いては、燃料配流板、加湿水透過板、冷却水配流板およ
び酸化剤配流板の周辺の端部に溝を設けない部分を残
し、積層したときにスタックの側面に燃料、酸化剤およ
び冷却水の流路溝が開孔しないようにした。このように
することで、この部分はそれぞれのシール面を形成する
ことになり、燃料、酸化剤および冷却水が積層外に漏れ
ないようにしている。さらに、多孔質体からなる燃料配
流板と加湿水透過板について、燃料配流板と加湿水透過
板の端部に熱可塑性の樹脂を含浸する、あるいはその部
分の気孔率を非常に小さくするなどの方法により端部板
内にある空隙を辿って積層外などへ燃料と冷却水が漏れ
出さないようにすることができる。
【0032】さらに、本発明の固体高分子型燃料電池に
おいては、各配流板の流路に燃料、酸化剤および冷却水
を供給・排出するために、加湿水透過板および各配流板
を共通の貫通する6個の孔を周辺の端部にあけて、それ
ぞれ別の2組の孔を燃料、酸化剤および冷却水の入口・
出力とし、それぞれの流路溝の一方が入口孔、他方が出
口孔につながるようにさらに溝をそれぞれさらに設け
る。燃料極と酸化剤極とで高分子電解質膜が挟持された
起電部品にはこのような周辺の端部を設けずに、各配流
板の流路面と同じ大きさとする。起電部品の周囲の燃料
配流板と酸化剤配流板との間の端部には、起電部品より
若干厚い、例えば、ゴム等から成るパッキングを挟んで
スタック全体を積層の両側から締め付け、ガスのシール
を行うとともに両極間の短絡を防ぐ。このパッキングに
も共通の貫通する6個の孔をあける。このような構成に
することで、マニホールドを積層外に設けることなく、
燃料、酸化剤および冷却水の供給・排出と分配を行うこ
とができる。
【0033】加湿水透過板によって冷却水の一部を燃料
配流板に供給するために、冷却板の厚さを薄くすること
ができる。このため、各セル毎に冷却板を挿入すること
が可能となり、積層スタック全体が均一のセル性能とな
る。その結果として適切な温度範囲の動作が可能とな
り、安定で高性能な固体高分子型燃料電池を実現するこ
とができる。
【0034】電池性能をさらに上げるために、燃料、酸
化剤、および冷却水の供給圧力を高くし、電池の動作圧
力を上げるときに、セル積層体の圧力上昇により反力が
締め付力に対して働くのを、締め付力可変機構を付設
し、締め付力を大きくして反力を相殺する。このため、
セル積層体を圧力容器にいれることなく、動作圧力を上
げて電池性能の向上がはかれ、コンパクトな固体高分子
型燃料電池を実現することができる。
【0035】
【実施例】以下、本発明の固体高分子型燃料電池の実施
例について、図面を参照して説明する。
【0036】図1と図2は、本発明の第1の実施例の固
体高分子型燃料電池のセル構成と積層スタック外観を示
す。燃料極1と酸化剤極2は、多孔質のガス拡散電極で
あり、多孔質触媒層とガス拡散層としての機能を兼ね備
えている。これらの電極1、2は、白金、パラジュウ
ム、あるいはこれらの合金等の触媒を担持した導電性微
粒子をポリテトラフルオロエチレンのような樹脂結合剤
により結着させ保持した多孔質体により構成されてい
る。電極1と2で挟持されている高分子電解質膜3は、
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、例えば、ナフィ
オン(商品名、デュポン社製)等のイオン交換樹脂によ
り構成されている。
【0037】燃料極1、高分子電解質膜3、および酸化
剤極2は一体となって、セルの起電部品を構成し、その
外側の燃料極1面は、燃料配流板4に接しており、酸化
剤極2面は酸化剤配流板5に接している。燃料配流板4
と酸化剤配流板5には、それぞれ燃料流路と酸化剤流路
を形成する溝が削られており、それぞれの溝側がそれぞ
れの電極と接している。また燃料配流板4と酸化剤配流
板5は、集電体としての役割を担っており、導電性物
質、例えば金属や炭素などで構成されている。
【0038】この実施例では、高分子電解質膜3が配流
板4、5と同じ面形状であり、その中心部の両側に燃料
極1と酸化剤極2が形成され、反応面とならない端部の
高分子電解質膜が残されており、この部分は燃料と酸化
剤をセパレートするのに役立っている。積層したとき、
燃料極1が燃料配流板4の中に収納されるように、この
配流板の溝は山の部分も燃料極の厚さの分だけ削ってあ
る。図中19は、バイトンゴムなどのシートパッキングで
あり、酸化剤極2の厚さよりわずかに厚くしてある。積
層して締め付けたときに、端部に残された高分子電解質
膜3とともに燃料と酸化剤が混合することと積層外に漏
れ出すことを防ぎ、さらに、燃料配流板4と酸化剤配流
板5との間が電気的に短絡するのを防ぐ。
【0039】加湿水透過板20は金属または親水性の炭素
などの導電性の多孔質体の薄板から成る。冷却水配流板
21は緻密な金属または炭素などの板に、燃料配流板と同
様に、冷却水流路の溝を設けたものである。加湿水透過
板20と、冷却水配流板21の溝面側を貼り合わせて冷却水
が構成され、この冷却板が燃料配流板4と酸化剤配流板
5の間に挿入されて、起電反応によって発生する熱を水
冷却により取り除く。加湿水透過板20の気孔率と親水特
性で決まる量の冷却水の一部が、加湿のための水分とし
て毛細管現象により、燃料配流板4に供給される。燃料
配流板4は親水性の金属または炭素などの導電体で、加
湿水透過板20とは異なる気孔率の多孔質体とし、加湿水
透過板20を透過した一定量の加湿水がそのまま燃料極1
に送られる。このようにセルを構成することで、常に安
定に一定量の加湿水が燃料極1に補給される自律的機能
を、固体高分子型燃料電池に付与することができる。
【0040】酸化剤配流板5、シートパッキング19、酸
化剤極2、高分子電解質膜3、燃料極1、および燃料配
流板4がこの順序で積層されて、単セルを構成し、各セ
ル毎に加湿水透過板20と冷却水配流板21とで構成される
冷却板が挿入されて、図2の積層体22が構成されてい
る。酸化剤配流板5、燃料配流板4、冷却水配流板21に
は、積層したとき積層体の側面に燃料、酸化剤および冷
却水の流路溝が開孔しないように、端部に溝を設けない
部分を残してあり、高分子電解質膜3と加湿水透過板20
にも同じ形状の端部を残している。それぞれの燃料、酸
化剤および冷却水の流路溝を設けない端部とともにそれ
ぞれ燃料、酸化剤および冷却水のシール面を形成してい
る。
【0041】さらに、酸化剤配流板5、シートパッキン
グ19、高分子電解質膜3、燃料配流板4、加湿水透過板
20、および冷却水配流板21を共通に貫通する6個の孔
を、これらの溝を設けないで残した周辺の端部にあけて
ある。6個の孔は、それぞれ燃料、酸化剤および冷却水
の入口・出口となっている。燃料配流板4、酸化剤配流
板5および冷却水配流板21のそれぞれの流路溝の一方が
入口孔、他方が出口孔につながるように連絡溝23をそれ
ぞれ設けてある。
【0042】積層体22の両側を導電性材料からなるエン
ドプレート9で挟み、エンドプレート9には電力を取り
出す端子9aを設ける。さらに、絶縁物からなる締め付
板6をエンドプレート9の外側に配し、四組の締付ロッ
ド17とバネ18を用いて、全体を両側から締め付ける。締
め付板16を金属とすることもでき、このときには締め付
板16とエンドプレート9とが電気的に結合しないよう
に、この間に絶縁物のシートをさらに挿入する。積層体
22の両側とエンドプレート9の間には導電性のシートパ
ッキングを挿入してあり、面間の間隙から燃料、酸化
剤、および冷却水が漏れ出るのを防ぐ。片側のエンドプ
レート9と締め付板16との間にも導電性のシートパッキ
ングを挿入し、さらに、エンドプレート9、締め付板16
およびシートパッキングにも、セル部品と同様に、共通
に貫通する6個の孔を開け、ここから冷却水13、燃料14
および酸化剤の例えば空気を供給・排出する。
【0043】図3は、図1に示した本実施例をさらに補
足説明するためのものであり、図1に矢印と記号A、
B、Cで記したそれぞれの矢視面を示している。燃料配
流板4の溝形状と、その回りに配した6個の貫通孔のな
かの2組と配流板の流路溝の一方が入口孔、他方が出口
孔につながるようにさらに加えた溝23を(A矢視)図
に、冷却水配流板21について同様に(B矢視)図に、さ
らに酸化剤配流板5の配流面を(C矢視)図に示す。
【0044】図1に示す単位セルを積層して、図2に示
す積層体22が構成されるが、単位セルの部品の中で、燃
料配流板4と加湿水透過板20は前述のように多孔質体で
構成する。このため積層しても、反応面に接する燃料配
流板4の燃料流路溝で形成されている燃料室から、燃料
が板内にある空隙を辿って積層外へ漏れ出したり、ある
いは共通に貫通する孔に漏れ出して酸化剤と混合する恐
れがある。加湿水透過板20についても同様に、積層外や
酸化剤側へのリークの恐れがある。そこで、本実施例で
は、燃料配流板4と加湿水透過板20の反応面に接する中
心部を除き、四辺の端部に熱可塑性の樹脂を含浸して、
この様なリークを防止する。また、燃料配流板4と加湿
水透過板20を成型するときに、その部分の素材料の粒径
を非常に小さくし、気孔率が非常に小さくなるようにす
る。このような方法を採っても、端部板内にある空隙を
辿って積層外などへ燃料と冷却水が漏れ出さないように
するのに効果がある。
【0045】酸化剤配流板5、燃料配流板4、加湿水透
過板20、および冷却水配流板21には、溝を設けない端部
を残してあり、積層されたとき、これらの端部面はこの
順序で互いに向かい合っている。本実施例では、酸化剤
配流板5と燃料配流板4の間の面では、絶縁物からなる
シートパッキング19と高分子電解質膜3が挿入されてお
り、積層時の面間の間隙から燃料と酸化剤が積層外へ漏
れ出ることや、共通に貫通する孔に漏れ出して混合する
ことを防いでいる。燃料配流板4と加湿水透過板20との
間、加湿水透過板20と冷却水配流板21、および冷却水配
流板21と酸化剤配流板5との間の面間でも、向かい合っ
て積層されることでシール面が形成される。そして積層
体を締め付けることによって面間の間隙から燃料と酸化
剤が積層外へ漏れ出ることや、共通に貫通する孔に漏れ
出して混合することを防ぐ。さらにシール性を高め、面
間の電気的・熱的接触を良くするためには、導電性のあ
る接着剤やグリースを用いる。接着剤を用いる場合、燃
料配流板4、加湿水透過板20、冷却水配流板21、および
酸化剤配流板5を、この順序で積層前にあらかじめ組み
合わせ、複合セパレータとして一体化する。このように
して、気体および冷却水の配流、加湿および冷却の機能
を備えた複合セパレータと、燃料極と酸化剤極とで固体
高分子膜が挟持された形で一体化された起電部品との、
二種の部品を交互に積層して、固体高分子型燃料電池を
構成することができる。次に、本発明の第2の実施例に
ついて、第4を参照して説明する。
【0046】この実施例の固体高分子型燃料電池は、緻
密な金風または炭素などに冷却水流路の溝を設けた冷却
水配流板21を、先に説明した実施例より厚くし、その裏
面にさらに酸化剤流路を形成する溝も設けることで酸化
剤配流板を兼用させ、単位セルを構成する部品を一つ少
なくしたものである。図4のA、B、C矢視図は上記の
図3と同じである。配流板の溝と、その回りに配した6
個の貫通孔と、そのなかの2組と配流板の流路溝の一方
が入口孔、他方が出口孔につながらようにさらに加えた
連絡溝23が図3のように形成してある。
【0047】また、本発明の第3の実施例では、第1、
第2の実施例の加湿水透過板20が金属または親水性の炭
素などの導電性の多孔質体の薄板で構成されていたもの
を、ニッケル、銀、ステンレスなどの金属の薄板、ある
いは金属箔に代える。これらの金属の薄板、あるいは金
属箔に、レーザー加工等により多数のピンホールを設
け、加湿水透過板20として用いる。このような加湿水透
過板でセルを構成することで、常に安定に一定量の加湿
水が燃料極1に補給される自律的機能を、固体高分子型
燃料電池に付与することができる。
【0048】第4の実施例として、親水性の金属または
炭素などの導電性の多孔質体から成る加湿水透過板20を
溝が設けられる板厚とし、その酸化剤配流板側に冷却水
流路を設け、冷却水流路を設けた面を酸化剤配流板に貼
り付けて冷却板を構成する。このようにしても、図4に
示した第2の実施例と同様に、単位セルを構成する部品
を一つ少なくすることができる。この第4の実施例を図
4を使って説明すれば、冷却水配流のための流路溝は図
4の加湿水透過板20の裏面に設けられており、図3の
(B矢視)図がその裏面に映されたような、(B矢視)
図の左右反転の形状をしている。図4の冷却水配流板21
が酸化剤配流板を兼用している配流板は、酸化剤配流板
5のみとなり、この図の(B矢視)面に示さてるいる溝
は不要となる。さらに、本発明の第5の実施例につい
て、図5、図6および図7を参照して説明する。
【0049】この実施例においては、燃料極1、高分子
電解質膜3、および酸化剤極2からなる起電部品には、
図5には示してないが、高分子電解質膜3の反応にあず
からない端部をわずかに残してある。19のシートパッキ
ングは、同様に図5には示しいないが、2枚のシリコン
ゴムで構成しており、一枚は燃料極1の厚さよりわずか
に厚くしてあり、他の一枚は酸化剤極2の厚さよりわず
かに厚くしてある。さらに、それぞれの両極がシートパ
ッキング19の中心部に隙間なく収まるよう中心部が打ち
抜かけている。本実施例で用いる高分子電解質膜3は約
100μの薄膜であり、わずかに残された反応にあずから
ない端部は、図7に示すように、二枚のシートパッキン
グ19で挟み込まれ、19の中心部には両電極が収められて
いる。起電部品の燃料極面は4の燃料配流板に接してお
り、酸化剤極面は5の酸化剤配流板に接している。酸化
剤配流板5、シートパッキング19に収められた酸化剤極
2、高分子電解質膜3および燃料極1からなる起電部
品、および燃料配流板4がこの順序で積層されて、単位
セルを構成し、単位セル毎に加湿水透過板20と冷却水配
流板21とで構成される冷却板が挿入され、繰り返し積層
されて、図2の積層体22が構成される。
【0050】本実施例を示す図5には、繰り返される単
位セルの部品構成のみを示した。図2に示した先の実施
例と同様に、エンドプレートとその端子、締め付板、四
組の締付ロッドとバネ、積層体の両側とエンドプレート
間の導電性シートパッキング、片側のエンドプレートと
締め付板との間の導電性シートパッキングを用いて積層
し、固体高分子型燃料電池を構成する。さらに、片側の
エンドプレート、締め付板およびシートパッキングに
も、セル部品と同様に、共通に貫通する6個の孔を開
け、ここから冷却水、燃料および酸化剤、例えば空気を
供給・排出することも同様である。
【0051】図6には、図5の矢印と記号D、E、F、
G、Hで記したそれぞれの矢視図を示す。燃料配流板4
の溝形状と、その回りに配した6個の貫通孔のなかの2
組と配流板の流路溝の一方が入口孔、他方が出口孔につ
ながるようにさらに加えた溝23を(D矢視)図に、冷却
水配流板21について同様に(F矢視)図に、酸化剤配流
板5の配流面を(H矢視)図に示した。このように本実
施例では、各セル部品を縦に置いて横方向に積層し、燃
料、酸化剤および冷却水の流路溝がすべて上下方向とな
るように重ねる。また、共通に貫通する孔を上下の端部
にそれぞれ3個ずつあけて、上下の組み合わせをそれぞ
れ燃料、酸化剤および冷却水の出入口とし、例えば、す
べてを上から下への並行流として、温度分布を改善す
る。さらに、起電反応によって生成する水や、加湿のた
めに直接加える水が余分となった場合にも、これらの水
を重力により速やかに除去することができる。
【0052】本実施例では、図5〜7に示すように、親
水性の金属または炭素などの導電性の多孔質体からなる
燃料配流板4と、同じく親水性の金属または炭素などの
導電性の多孔質体の薄板からなる加湿水透過板20を一体
化する。同じ素材で、粒径の異なる材料を用意し、まず
粒径の大きい粉体材料を敷きつめ、その上に粒径の小さ
い粉体材料を薄く敷きつめ、これを固めて気孔率が両面
で異なる多孔質体の板とする。続いて気孔率の大きい方
の面に、燃料流路溝を削ることで、一体型の燃料配流板
4および加湿水透過板20を構成する。また、気孔率が大
きめの多孔質体で燃料配流板4を構成し、燃料流路の溝
加工を行なったのち、その裏面に粒径の小さい粉体材料
を圧入することで表面の気孔率を小さくし、さらに撥水
剤を塗布して親水性をコントロールして、加湿水透過板
20の機能を燃料配流板4に付与するようにしてもよい。
このようにすると、セル部品を一つ少なくすることがで
きる。
【0053】積層時の面間の間隙から燃料と酸化剤が積
層外へ漏れ出ることや、共通に貫通する孔に漏れ出して
混合することを防ぐために、この実施例では、図6の
(E矢視)図と(G矢視)図に示すようにパッキング用
の溝24を燃料と酸化剤の供給排出孔の周囲に設け、パッ
キング用の溝25を板面外周の内側に設けて、ゴムオーリ
ングなどを装着して積層する。(E矢視)図は、燃料配
流板4と加湿水透過板20とが一体化された部品の冷却水
配流板21に接する面の形状を示し、(G矢視)図は、冷
却水配流板21の酸化剤配流板5に接する面を示してい
る。さらに、本発明の第6の実施例について、図8を参
照して説明する。
【0054】この実施例の固体高分子型燃料電池におい
て、積層体22はこれまで説明した実施例と同じものであ
り、この他にもエンドプレート9とその端子9a、締め
付板16が図中に示されている。これらは立面図で示して
いるので、締付ロッド17とバネ18については、四組中の
二組が図中に示されている。積層体の両側とエンドプレ
ート間の導電性シートパッキング、片側のエンドプレー
トと締め付板との間の導電性シートパッキングを用いて
積層していることや、さらに、片側のエンドプレート、
締め付板およびシートパッキングにも、セル部品と同様
に、共通に貫通する6個の孔を開け、ここから冷却水、
燃料および酸化剤の例えば空気を供給・排出しているこ
とも同様である。また、図中には酸化剤15の供給・排出
口を例示した。
【0055】この第6の実施例では、供給・排出口が設
けられていない片側の締め付板16の外側に、締め付力可
変機構を付設した。この例の締め付力可変機構は、締め
付力を変えるために摺動する摺動板26、この機構を取り
付けるための固定板27、摺動板26を動かすためのスクリ
ューロッド28とモーター29からなる。締付ロッド17は、
片側の締め付板16と摺動板26を貫通して固定板27に固定
され、締め付板16と摺動板26のガイドの役割も兼ねる。
摺動板26の中心には、スクリューロッド28のネジ山に合
ったネジが切られており、スクリューロッド28の回転に
応じて摺動板26が移動する。スクリューロッド28の固定
板27側には歯車が取り付けられており、モーター29に取
り付けられた歯車と噛合っている。
【0056】モーター29には、パルスモーターを用い、
電源及び制御装置30により駆動する。締め付力は、組み
立て時にこのモーターを回し、0.5atgの面圧力になるよ
うに調節する。加圧することで性能向上を図るために、
燃料、酸化剤及び冷却水を、図中には酸化剤供給装置31
のみを例示したが、これらの供給装置からともに圧力3
ata で供給して運転する。起動前は常圧の1ata に保た
れている積層体22の内圧は、起動とともに上昇する。こ
のままでは内圧が1.5ataになったとき締め付力は零とな
るので、内圧上昇分を補償して締め付力が常に一定にな
るよう、摺動板26を積層体側に変位する必要がある。こ
のため、酸化剤供給装置31の供給圧力信号を電源及び制
御装置30に送り、この信号に基づいて摺動板26の必要変
位長さを演算し、これをさらにモーターの回転量に変換
して、締め付力が常に一定になるよう制御する。
【0057】第7の実施例として、第6の実施例と同じ
機構を用い、起動とともにプログラムされたスケジュー
ルで摺動板26を積層体側に変位させるようにしてもよ
い。変位長さに応じた積層体22の内圧上昇の必要量を演
算するように、電源及び制御装置30を変更し、さらに演
算された内圧上昇の必要量によって、例えば酸化剤供給
装置31などの供給圧力を制御する。この実施例によって
も、締め付力が常に一定になるようにすることができ
る。
【0058】図8には記さなかったが、この図で説明し
た第6、第7の実施例では、燃料、酸化剤及び冷却水の
圧力検出器と締め付力検出器を備えており、これらの圧
力のスケジュールされた設定値と検出値との偏差によっ
ても制御されている。また、停止時にも同様に制御さ
れ、積層体22の内圧は起動前の常圧に戻される。
【0059】さらに第8の実施例として、図8の機構と
同様のスクリューロッドとモーターの3組を固定板に取
り付け、複数個の締め付圧力検出器によって検出された
締め付圧力分布が一様となるように、それぞれの回転量
を制御するようにしてもよい。本発明の第9の実施例に
ついて、図9を参照して説明する。
【0060】この実施例の固体高分子型燃料電池におい
て、積層体22は、これまで説明した実施例と同じもので
あり、この他にもエンドプレートとその端子9a、締め
付板16、第8の実施例と同様の固定板27および酸化剤供
給装置31が図中に示されている。セル積層体ほかのアセ
ンブリーは立面図で示しているので、締付ロッド17は四
組中の二組が図中に示されている。積層体の両側とエン
ドプレート間の導電性シートパッキング、片側のエンド
プレートと締め付板との間の導電性シートパッキングを
用いて積層していることや、さらに、片側のエンドプレ
ート、締め付板およびシートパッキングにも、セル部品
と同様に、共通に貫通する6個の孔を開け、ここから冷
却水、燃料および酸化剤の例えば空気を供給・排出して
いることも同様である。また、図中には、酸化剤15の供
給・排出口を例示した。
【0061】この実施例では、締め付力可変機構とし
て、セル積層体の軸方向端で供給・排出口が設けられて
いない片側の締め付板16の外側と固定板27との間に、ベ
ローズ32を気密溶接構成で付設した。ベローズ32の室内
には、固定板27を貫通している加圧媒体出入口33を介し
て、圧力容器34から加圧媒体、例えば圧縮空気が供給・
封入される。起動時に、積層体22の内圧上昇とともに締
め付力を変えるために、酸化剤供給装置31の供給圧力を
差気調整弁35に導き、ベローズ32の室内の圧力が酸化剤
供給装置31の供給圧力を0.50atg だけ常に上回るよう、
圧力容器34から下限差圧調整弁36を介して圧縮空気が供
給されるようにする。さらに、下限差圧調整弁36にも酸
化剤供給装置31の供給圧力を導き、停止時の積層体22の
内圧降下とともに、ベローズ室内の圧力が酸化剤供給装
置の供給圧力より0.55atg だけ高い状態を保って、ベロ
ーズ室内の圧縮空気が差圧調整弁36から大気に放出され
るようにする。このようにして、0.50〜0.55atg の差圧
で常に積層体が締め付けられるようにする。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、高
分子電解質膜の全面につねに加湿水が供給され、電解質
膜の劣化を防ぐことができる。電池作動温度より低い温
度の燃料流とすることができ、安定した運転が可能とな
る。積層外などへ燃料と冷却水が漏れ出さないようガス
のシールを行うとともに、マニホールドを積層外に設け
ることなく、燃料、酸化剤および冷却水の供給・排出と
分配を行うことができる。冷却板の厚さを薄くすること
ができ、単位セル毎に冷却板を挿入することが可能とな
り、積層スタック全体が均一で高性能のセル性能とする
ことができる。セル積層体を圧力容器にいれることな
く、動作圧力を上げて電池性能の向上がはかることがで
きる。このようにして、安定、高性能、しかもコンパク
トな固体高分子型燃料電池を提供することが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の固体高分子型燃料電池
の単位セルの構成を示す分解斜視図。
【図2】上記第1の実施例の固体高分子型燃料電池の組
立を示す図。
【図3】図1におけるA矢視、B矢視およびC矢視を示
す図。
【図4】本発明の第2の実施例の固体高分子型燃料電池
の単位セルの構成を示す図。
【図5】本発明の第5の実施例の固体高分子型燃料電池
の単位セルの構成を示す図。
【図6】図5におけるD矢視、E矢視、F矢視、G矢視
およびH矢視を示す図。
【図7】本発明の第5の実施例の固体高分子型燃料電池
の単位セルの要部を示す図。
【図8】本発明の第6の実施例の固体高分子型燃料電池
の構成を示す図。
【図9】本発明の第9の実施例の固体高分子型燃料電池
の構成を示す図。
【図10】従来の固体高分子型燃料電池の構成を示す分
解斜視図。
【符号の説明】
1…燃料極 2…酸化剤極 3…高分子電解質膜 4…燃料配流板 5…酸化剤配流板 6…冷却板 6a…蛇行した金属管 7…燃料配流板の端
部 8…酸化剤配流板の端部 9…エンドプレート 9a…端子 10…パッキング 11…マニホールド 12…冷却水マニホー
ルド 13…冷却水 14…燃料 15…酸化剤 16…締め付板 17…締め付ロッド 18…バネ 19…シートパッキング 20…加湿水透過板 21…冷却水配流板 22…積層体 23…入口孔、出口孔につながるように加えた連絡溝 24…燃料および酸化剤の供給排出孔の周囲に設けたゴム
オーリング溝 25…板面外周に設けたゴムオーリング溝 26…摺動板 27…固定板 28…スクリューロッド 29…モーター 30…電源および制御装置 31…酸化剤供給装置 32…ベローズ 33…加圧媒体出入口 34…圧力容器 35…差圧調整弁 36…下限差圧調整弁

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃料極と酸化剤極とで高分子電解質膜を
    挟持し、燃料流路を形成する溝付き集電体としての燃料
    配流板を燃料極側に設け、酸化剤流路する形成する溝付
    き集電体としての酸化剤配流板を酸化剤極側に設けたも
    のを単位セルとし、複数の単位セルを繰り返し積層して
    各単位セル毎に、冷却板を燃料配流板と酸化剤配流板の
    間に挿入した燃料電池において、親水性の金属または炭
    素などの導電性の多孔質体の薄板から成る加湿水透過板
    と緻密な金属または炭素からなり冷却水流路の溝を設け
    た冷却水配流板とを溝面側を合わせて冷却板を構成し、
    燃料配流板を親水性の金属または炭素などの導電性で加
    湿水透過板とは異なる気孔率の多孔質体として、加湿水
    透過板を介して高分子電解質膜を加湿するようにしたこ
    とを特徴とする固体高分子型燃料電池。
  2. 【請求項2】 冷却板を構成する緻密な金属または炭素
    などに冷却水流路の溝を設けた冷却水配流板の裏面に、
    さらに酸化剤流路を形成する溝も設けて酸化剤配流板を
    兼用させたことを特徴とする請求項1記載の固体高分子
    型燃料電池。
  3. 【請求項3】 冷却板を構成する親水性の炭素などの導
    電性の多孔体の薄板から成る加湿水透過板と、親水性の
    金属または炭素などの導電性の多孔質体とした燃料配流
    板との二つを一体化し、冷却水側の表面の気孔率や親水
    性をコントロールして加湿水透過量を加減するようにし
    たことを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電
    池。
  4. 【請求項4】 親水性の金属または炭素などの導電性の
    多孔質体から成る加湿水透過板を溝が設けられる板厚と
    し、その酸化剤配流板側に冷却水流路を設け、冷却水流
    路を設けた面を酸化剤配流板に貼り付けて冷却板を構成
    したことを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料
    電池。
  5. 【請求項5】 積層したときにスタックの側面に燃料、
    酸化剤および冷却水の流路溝が開孔しないように端部に
    溝を設けない部分を残し、流路と平行な端部に残した溝
    を設けない部分とともにそれぞれ燃料、酸化剤および冷
    却水のシール面を形成し、さらに各配流板、加湿水透過
    板および冷却水流路の溝を設けた冷却水配流板を共通に
    貫通する6個の孔をこの端部にあけ、それぞれ別の2組
    の孔を燃料、酸化剤および冷却水の入口・出口とし、燃
    料配流板、酸化剤配流板および冷却水配流板のそれぞれ
    の流路溝の一方が入口孔、他方が出口孔につながるよう
    にさらに連絡溝をそれぞれ設け、燃料極と酸化剤極とで
    高分子電解質膜を挟持した起電部品のうち少なくとも燃
    料極と酸化剤極とには端部を残さずに置き、燃料配流板
    と酸化剤配流板との間の端部に起電部品より厚い、ゴム
    等から成るパッキングを挟んでスタック全体を積層の両
    側から締め付け、ガスのシールを行うとともに両極間の
    短絡を防ぎ、このパッキングにも共通に貫通する6個の
    孔をあけて、マニホールドの機能をセル部品で構成し、
    燃料、酸化剤および冷却水の配流を行うようにしたこと
    を特徴とする請求項1、2、3または4記載の固体高分
    子型燃料電池。
  6. 【請求項6】 各セル部品を縦に置いて横方向に積層
    し、燃料、酸化剤および冷却水の流路溝がすべて上下方
    向となるように重ね、共通に貫通する孔を上下の端部に
    それぞれ3個づつあけて、上下の組み合わせをそれぞれ
    の燃料、酸化剤および冷却水の出入口とし、すべてを下
    から上への並行流とすることで、マニホールドの機能を
    セル部品で構成し、燃料、酸化剤および冷却水の配流を
    行ったことを特徴とする請求項5記載の固体高分子型燃
    料電池。
  7. 【請求項7】 多孔質体からなる燃料配流板と加湿水透
    過板について、積層したときにスタックの側面に燃料と
    酸化剤の流路溝が開孔している場合には燃料配流板の流
    路と平行な両端部と加湿水透過板の四辺の端部とに、積
    層したときにスタックの側面に燃料と酸化剤の流路溝が
    開孔していない場合には燃料配流板と加湿水透過板の四
    辺の端部に熱可塑性の樹脂や接着剤を含浸し、あるいは
    その部分の気孔率を非常に小さくすることにより端部板
    内にある空隙を辿って積層外へ燃料と冷却水が漏れ出さ
    ないようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、
    4、5または6記載の固体高分子型燃料電池。
  8. 【請求項8】 燃料配流板と加湿水透過板とが一体化し
    ている場合にはこれと冷却水配流板および酸化剤配流板
    を、冷却水配流板と酸化剤配流板が一体化している場合
    にはこれと加湿水透過板および燃料配流板を、これらが
    それぞれ独立している場合には燃料配流板、加湿水透過
    板、冷却水配流板および酸化剤配流板を導電性のある接
    着剤を用いるなどの方法により積層前にあらかじめ組み
    合わせることによって気体および冷却水の配流、加湿お
    よび冷却の機能を備えた複合セパレータとし、この複合
    セパレータと燃料極と酸化剤極とで高分子電解質膜を挟
    持した起電部品とを交互に積層したことを特徴とする請
    求項7記載の固体高分子型燃料電池。
  9. 【請求項9】 燃料配流板の加湿水透過板に接する面に
    開孔している冷却水と酸化剤の供給排出孔の周囲、加湿
    水透過板の冷却水配流板に接する面に開孔している燃料
    と酸化剤の供給排出孔の周囲および冷却水流板の酸化剤
    配流板に接する面に開孔している燃料と冷却水の供給排
    出孔の周囲、あるいは逆の面を用いて酸化剤配流板の冷
    却水配流板に接する面に開孔している燃料と冷却水の供
    給排出孔の周囲、冷却水配流板の加湿水透過板に接する
    面に開孔している燃料と酸化剤の供給排出孔の周囲およ
    び加湿水透過板の燃料配流板に接する面に開孔している
    冷却水と酸化剤の供給排出孔の周囲とそれぞれの板面外
    周の内側にそれぞれパッキング用の溝を設けてゴムオー
    リングなどを装着して積層することにより積層面間の間
    隙による漏れを防ぎ、各供給排出孔の間での燃料と酸化
    剤の混合や、積層外への漏れ出しを防止したことを特徴
    とする請求項5、6または7記載の固体高分子型燃料電
    池。
  10. 【請求項10】 セル積層体の軸方向端に締め付力可変
    機構を設け、燃料、酸化剤、および冷却水の供給圧力を
    高くし電池の動作圧力を上げたときにセル積層体の圧力
    上昇により働く反力を相殺するようにしたことを特徴と
    する請求項5、6、7、8または9記載の固体高分子型
    燃料電池。
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