燃料電池システムは、低排出、高効率、および稼動の容易性のために、従来の発電技術に対する有望な代替技術であると考えられている。燃料電池は化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換するように動作する。固体高分子型燃料電池(proton exchange membrane fuel cells)は、アノード、カソード、および2つの電極の間に配置された選択的な電解膜を具備する。触媒反応では、水素のような燃料がアノードで酸化されて陽イオン(プロトン)を形成する。イオン交換膜は、アノードからカソードへのプロトンの移動を容易にする。電子はその膜を通過することができず、外部回路に流れさせられて、電流を発生する。アノードでは、酸素が触媒層と反応して、電子を電気回路から戻して、陰イオンを形成する。カソードで形成された陰イオンが、膜を横切ったプロトンと反応し、反応生成物として液体水を形成する。
プロトン交換膜は、アノードからカソードへのプロトンの伝導を容易にするために、およびそうでなければ膜を導電性に維持するために、湿った表面を必要とする。その膜を通過して移動する各プロトンは、それと一緒に少なくとも2つまたは3つの水分子を引き込むことが示唆されている(米国特許第5996976号)。米国特許第5786104号には、陽イオン(プロトン)を水分子と一緒に膜を通過して輸送することになる「水ポンピング」(water pumping)と呼ばれている機構について、より定性的に説明されている。電流密度が増加すると、膜を通過して移動される水分子の数も増加する。究極的には、プロトン束によって膜を通過して引っ張られる水の束が、拡散によって補充される度合いを超える。この時点で、少なくともアノード側で、膜が乾燥し始め、そしてそれの内部抵抗が増加する。この機構が、水をカソード側に駆動し、そしてさらに、反応によって生成される水がカード側で形成されることが理解されるであろう。それでもなお、カソード側を通るガスの流れがこの水を除去するのに十分となって、カソード側でも乾燥を生ずる可能性がある。したがって、膜の表面は常に湿気のある状態のままでなければならない。したがって、十分な効率を確保するためには、プロセス・ガスは、燃料電池に入ると、システム要件に基づいた適切な湿度と温度を有していなければならない。
他の考慮すべき事項は、輸送やその他の分野で、例えば自動車、バス、およびさらに大型の車両のための基本的な動力源として燃料電池を使用することへの関心が増加していることである。自動車の適用分野は、多くの静止した適用分野とはまったく異なっている。例えば、静止した適用分野では、電力源として燃料電池スタックが一般に使用されており、長期間のあいだ比較的一定の電力レベルで稼動することを期待されるにすぎない。それに対して、自動車の環境では、燃料電池スタックから必要とされる実際の電力は広く変化しうる。さらに、燃料電池スタック供給ユニットは、増大したまたは減少した電量の需要であるかどうかに関係なく、電力需要の変化に迅速に応答することが期待される。さらに、自動車の適用分野では、燃料電池電力装置は極端な範囲の周囲温度および湿度条件で稼動することを期待される。
これらの要件はすべて、非常に厳しいものであり、燃料電池スタックが可能なすべての範囲の稼動条件で効率良く稼動するようにすることを困難にする。重要な問題は、燃料電池電源装置が高い効率で高い電力レベルを常に供給できるようにし、かつ同時に、これらの要件に適合するのに必要な燃料電池電源装置内の湿度レベルを正確に制御して、それが長い寿命を有するようにすることである。さらに詳細には、酸化剤流および燃料ガス流の両方における湿度レベルを制御することが必要である。公知の加湿技術はほとんが、急激に変動する条件や温度等に応答するのには不適合な設計である。多くの公知システムは不十分な加湿レベルしか提供できず、高い熱慣性および/または大きい死容積(dead volumes)を有していて、変化する状態に対する迅速な応答を不可能にするおそれがある。
燃料電池システムの温度と湿度を制御するための装置および方法が、本出願人の同時係属米国特許出願第09/801,916号に開示されている。その方法は、第1の温度の燃料電池プロセス・ガス流を加湿して過剰湿度を有するプロセス・ガス流を提供し、第1の温度より低い第2の温度にプロセス・ガス流を冷却して過剰水分の凝結を生じさせ、プロセス・ガス流から凝結された過剰水分を除去し、プロセス・ガス流を既知の温度で輸送することよりなり、プロセス・ガス流における相対湿度レベルが第2のの飽和圧力と前記既知温度との比から決定されるようにする。特に、この方法は、燃料電池から生成された排気プロセス・ガスから湿度を回収し、そして燃料流と酸化剤流のうちの入来する少なくとも一方を加湿するために回収された水分を利用することを含む。しかし、この方法は、多数の構成要素を必要とし、したがって燃料電池システムの全体の効率を低減させる。
他の方法が米国特許第6013385号に開示されている。この特許には、燃料電池ガス管理システムが開示されている。このシステムは、燃料電池の第1の反応剤入口に第1の反応剤取り入れ流に供給し、そして燃料電池の第1の反応剤出口から第1の反応剤排出流を受け取るための第1の反応剤加湿サブシステムであって、第1の反応剤(酸化剤)排出流から水分を収集しかつ収集された水分の一部を転移させるエンタルピー・ホイールを具備する第1の反応剤加湿サブシステムと;燃料電池の第2の反応剤出口からの過剰の第2の反応剤を収集するための再循環ループと、反応剤供給源からの第2の反応剤を燃料電池の第2の反応剤出口から収集された第2の反応剤と混合するための第2の反応剤混合手段の供給源と、前記再循環ループ内で第2の反応剤を循環させかつ燃料電池の第2の反応剤入口に第2の反応剤を導入するための動力手段を具備した第2の反応剤(燃料)湿度保持サブシステムを具備している。しかし、この特許も燃料電池からの排熱と湿度をまだ十分に活用していない。
図1を参照すると、本発明による燃料電池ガス管理システム10の第1の実施形態の概略流れ図が示されている。この燃料電池ガス管理システム10は、燃料供給管路20、酸化剤供給管路30、カソード排気再循環管路40、およびアノード排気再循環管路60を具備しており、それらはすべて燃料電池12に接続されている。燃料電池12は複数の燃料電池よりなるものでも、あるいは1つのみの燃料電池よりなるものでもよいことを理解すべきである。簡単にするために、この明細書で説明される燃料電池は、燃料としての水素と酸化剤としての空気で動作するものであり、固体高分子型(PEM)燃料電池でありうる。しかし、本発明はこのタイプの燃料電池に限定されるものではなく、他のタイプの燃料電池にも適用可能である。
燃料供給管路20は、燃料電池12のアノードに水素を供給するために燃料供給源21に連結されている。燃料電池12の上流において燃料供給管路20に水素加湿器90が配置されており、かつ水素加湿器90と燃料電池12との間にはアノード水分離器95が配置されている。燃料電池12のカソードに空気を供給するために、酸化剤供給管路30は、酸化剤供給源31、例えば周囲空気に連結されている。燃料電池12の上流において酸化剤供給管路30とカソード再循環管路40に再生ドライヤー80が配置されている。再生ドライヤー80と燃料電池12の間にはカソード水分離器85が配置されている。再生ドライヤー80は乾燥剤とともに多孔質材料を具備していてもよく、本明細書に引用して援用する本譲受人の同時係属米国特許出願第10/223,706号に記載されているような燃料電池システムに適した市販されている任意のドライヤーであってもよい。再生ドライヤー80は、酸化剤供給流れ30とカソード再循環管路40で再循環される酸化剤との同時逆流の流れを生ずるようになされており、各流れはドライヤー80の別個の部分を流れる。さらに、再生ドライヤー80は、酸化剤供給管路30および酸化剤再循環管路40からのガスを再生ドライヤー80の異なる部分に交互に通させかつそれによって熱と湿気を交換させるためのスイッチ手段を有している。周囲空気が酸化剤供給管路30に入り、そしてまず不純物粒子をろ過するエアフィルタ32を通る。エアフィルタ32から空気を引きそしてその空気を再生ドライヤー80に通すようにするためのブロワ35が再生ドライヤー80の上流に配置されている。
燃料電池カソード排出流は、余剰空気、生成水、およびアノード側から輸送される水を含んでおり、燃料電池12内の酸素の少なくとも一部が消費されることにより、その空気は窒素リッチである。カソード排出流は、燃料電池12のカソード出口に連結されたカソード排気再循環管路40中を再循環される。湿ったカソード排出流がまず水素加湿器90を通り、そこで熱と湿気が燃料供給管路20内の入来乾燥水素に転移される。水素加湿器90は、ニュージャージー州トムズ リバーのパーマ ピュア インコーポレイテッドから市販されているもののような任意適当な加湿器であってもよい。それは、膜加湿器や高いまたは低い飽和効率を有する他のタイプの加湿器であってもよい。つまり、水素加湿器90は、再生ドライヤーであってもよいが、アノード流とカソード流とではガスが異なることを考えると、再生ドライヤーまたはそれら2つのガス流の間で顕著な質量交換を許容する他の装置は使用できない。
水素加湿器90から、燃料電池カソード排出流が再循環管路40に沿って流れ続け、そして上述のように、再生ドライヤー80を通る。湿ったカソード排気が再生ドライヤー80を通ると、熱と湿気が再生ドライヤー80の多孔質ペーパまたはファイバ物質に保持され、そして再生ドライヤー80のスイッチ手段が再生ドライヤー80の連結をカソード排出流から入来空気流に切り替えると、その熱と湿気は、酸化剤供給管路30内で再生ドライヤーを通る入来乾燥空気流に転移される。さらに、カソード排出流が再循環管路40に沿って排気・水分離器へと流れ続け、その分離器で、入来水素流と空気流に転移されなかった、この場合にも液体である過剰水が排出流から分離される。そして、排出流が排出管路50を通じて周囲に排出される。
カソード出口ドレイン管路42が、残留したまたは凝結した液体水を除去するために、燃料電池のカソード出口に隣接して再循環管路40に必要に応じて設けられうる。このカソード出口ドレイン管路42は、ドレイン管路内のガス泡がカソード出口ドレイン管路内の水を実際に保持しかつ自動的に実施的に定期的に水を排出し、それによって、ガス流から水を除去するために現場で一般に用いられるドレイン弁を必要としなくするのに適当なサイズとなされうる。このようなドレイン管路は、液体水がガス流から除去される必要のあるシステム内の任意の場所で使用できる。通常、圧力はガス流量と常時生成または凝結される水とともに上昇するが、少量のガス流量はカソード排水ノックアウト・分離器やカソード出口ドレイン管路42のように有害ではない。
水素加湿器90からの加湿された水素が燃料供給管路20に沿ってアノード水分離器95に流れ、そこでその水素が燃料電池12に入る前に過剰水が分離される。同様に、再生ドライヤーからの加湿された空気が酸化剤供給管路30に沿ってカソード水分離器85に流れ、そこで、その空気が燃料電池12に入る前に、過剰液体水が分離される。
過剰水素と水からなる燃料電池アノード排気は、燃料電池12のアノード出口に連結されたアノード視亜循環管路60に沿って、再循環ポンプ64により再循環される。アノード再循環管路60は、アノード水分離器95から上流の第1の接合部62において燃料供給管路20に連結している。水蒸気と一緒に過剰水素を再循環させることによって、水素を可能な限り最大限活用して、反応場所への水素反応物輸送を液体水が阻止するのを防止するだけでなく、再循環される水素からの水蒸気が水素加湿器90からの入来水素を加湿するので、燃料流の自己加湿も達成される。このことは、加湿器90は本発明のシステムでは効率の高いものである必要はないから、この構成が水素加湿器90の選択におけるより多くの柔軟性を提供するので、非常に望ましい。水素再循環流量を適切に選択することによって、水素加湿器90の所要効率を最小限に抑えることができる。例えば、燃料電池が1単位の水素を必要とすると仮定すると、水素は3単位の量で水素供給源から供給することができ、その場合、2単位の過剰水素が水蒸気と一緒に再循環される。再循環ポンプ64の速度は、第1の接合部62から下流の水素の混合物における再循環水素の部分を調整するように変化させることができる。化学量論と再循環ポンプ64の速度を選定することによって、最終的には水素加湿器90を省略できるようになる。
実際には、空気は酸化剤であるから、燃料電池のカソード側からアノード側への窒素の交差(crossover)が、例えばPEM燃料電池の膜を通じて生ずることが判明した。したがって、アノード排気は、ある程度の窒素と多分他の不純物とを実際に含んでいる。アノード排気の再循環は窒素の増量を来たし、燃料電池を汚染する。水素放逐管路70は燃料電池カソード出口に隣接した分岐点74で燃料再循環管路60から分岐することが好ましい。再循環管路60からアノード排気の一部を放逐するために、水素放逐管路70に放逐制御装置72が配置されている。放逐動作の頻度および流量は、燃料電池12が稼動する電力に依存する。燃料電池12が大電力で稼動している場合には、アノード排気のより多くの部分を放逐することが望ましい。放逐制御装置72は、ソレノイド弁または他の適当な装置でありうる。
水素放逐管路70は分岐点74から第2の接合部92に達しており、そこでカソード排気再循環管路40に接合している。そのようにして、放逐された水素と再生ドライヤー80からのカソード排気との混合物が排気・水分離器100を通る。水が水分離器100で凝結され、そして残存ガス混合物が放出管路50に沿って周囲に放出される。あるいは、カソード排気再循環管路40または放逐管路70が水分離器100に直接連結されてもよい。放逐された水素または再生ドライヤー80からのカソード排気は、それからの水を凝結させないで、別々に放出させてもよいことも当業者には知られている。
アノード水分離器95および排気・水分離器によって分離された水は放出されずに、むしろそれらの水は、種々の処理のために、アノード入口ドレイン管路96、カソード入口ドレイン管路84および放出ドレイン管路94に沿ってそれぞれ生成水タンク97に回収されることが好ましい。この目的のために、タンク97は、他の処理に連結するための管路98と、ドレイン99を有している。
当業者には知られているように、第1の冷却ループ14が燃料電池12を通っている。第1の冷却剤ポンプ13が、冷却剤を循環させるために第1の冷却ループ14に配設されている。冷却剤は、非導電性水、グリコール等のようなこの分野で一般に使用されている任意の冷却剤でよい。第1の膨張タンク11が公知の態様で配設されうる。第1の冷却ループ14には、冷却剤を適切な温度範囲に維持するために燃料電池12中を流れる冷却剤を冷却するために、第1の熱交換器15が配設されている。
図1は、1つの変形を示しており、そこでは、第2の冷却ループ16が、第2の冷却剤を循環させるために、第2の冷却剤ポンプ17を含んでいる。第2の冷却ループ内の冷却剤の温度を維持するために、第2の熱交換器18、例えばラジエータが配設されており、ここでも、必要な場合には、第2のタンク19が配設される。第2の冷却ループ16内の冷却剤は、第1の冷却ループ14と第2の冷却ループ16とは混合しないから、任意の種類の冷却剤であってもよい。
しかし、別個の第2の冷却ループは必要不可欠ではないことを理解すべきである。代わりに、図2に示されているように、第1の冷却ループ14内の冷却剤の温度を維持するために、第1の冷却ループ14にラジエータが配設される。この場合には、第2の冷却ループ16は省略される。図1の熱交換器15も、ある種の用途で望まれるように、「開」冷却ループに配置された隔離ろう付け板熱交換器でありうる。すなわち、第2の冷却ループ16は、冷却剤が大気、海等のような冷却剤溜から引かれそしてそれに戻される開冷却ループでありうる。
上記の変形のいずれかで水が冷却剤として使用される場合には、分離器95、85、100からの水は燃料電池からの生成水であるから純粋で非導電性であるから、その水が燃料電池の動作時に冷却剤として収集され、膨張タンク11または19、すなわち冷却剤溜めに送られる。
水素加湿器90の上流において燃料供給管路20に流量調整装置22が配置されることが好ましい。流量調整装置または弁22は、燃料供給管路20内の圧力低下に応答して水素供給源21から燃料電池への水素の流れを許容する。流量調整装置22は、設定点を有する前方圧力調整器であり、燃料電池12内の水素消費により燃料供給管路20内の圧力が設定点より低くなった場合に水素を燃料電池12に供給できるようにする。この前方圧力調整器は、高価な質量流量制御器の必要性を回避し、かつより迅速な応答と正確な流量制御を提供する。図4を参照すると、より一層の制御柔軟性を提供するための、流量調整手段22は、異なる設定点を有する各前方圧力調整器と並列に配列された複数の予め設定された前方圧力調整器を具備するものでよい。例えば、第1の前方圧力調整器22aは10Psigの設定点を有するものであってもよく、第2の前方圧力調整器22bは20Psigの設定点を有するものであってもよく、第3の前方圧力調整器22cは30Psigの設定点を有するものであってもよい等である。これにより、前方圧力調整器の動作を中断したり設定点を変更したりする必要なしに、異なる圧力でかつ各圧力において異なる流量で供給される燃料で燃料電池12を動作させることができる。
この実施形態では、まず入来水素を、次に入来空気を加湿するためにカソード排気が用いられるが、この順序は必須要件ではないことを理解すべきである。それに代えて、まず入来空気を、そして次に入来水素を加湿するためにカソード排気を用いてもよい。あるいは、図5aに示されているように、水素加湿器90と再生ドライヤー80とをカソード排気再循環管路60に直列ではなくて並列に配置して、水素と空気の両方の加湿が同時生ずるようにしてもよい。必要に応じて、燃料電池12の動作状態に基づき、直列加湿が用いられる場合には、カソード排出流の一部が水素加湿器を通らないで再生ドライヤー80に流れるように水素加湿器90をバイパスするために、図5bに示されているように、バイパス管路82がさらに配設されうる。
しかし、実際には、水が燃料電池12のアノードからカソードに自然と転送されるからアノード露点温度がカソード露点温度より高いことが望ましいので、水素流を最初に加湿することが望ましいであろう。水素の望ましい相対湿度も、燃料電池12が溢れないように、燃料電池12内の空気の相対湿度より高いことが多い。したがって、熱と湿度をまず入来水素流と交換するためにカソード排出流を用いることが好ましい。
公知の態様で、燃料電池12に供給される燃料、酸化剤、および冷却剤の流れのパラメータを測定するために、種々のセンサーが配設されうる。本発明の他の態様は、反応剤の温度だけを測定し、湿度は既知の温度・湿度特性から、すなわち湿度を直接測定しないで、決定ることによるものである。
本発明では、本出願人の同時係属米国特許出願第09/801,916号のように、プロセス・ガスを過飽和させ、100%相対湿度を得るために水を凝結させ、そしてプロセス・ガスが燃料電池12に入る前に、所望の相対湿度を得るために所定の温度でプロセス・ガスを輸送することは必要でないことが理解されるであろう。本発明のシステムは、燃料および酸化剤の流れが100%相対湿度を有しているか有していない場合に、燃料電池システムに適用可能である。燃料電池12が100%相対湿度を有する燃料または酸化剤で動作できない場合に燃料および酸化剤の湿度を制御するために、アノード露点熱交換器とカソード露点熱交換器を配設することができる。しかし、これは、プロトン交換膜の動作条件のような燃料電池12の特性に完全に依存する。
本発明による燃料電池システムのこの第1の実施形態は周囲圧力またはそれに近い圧力で動作することも理解されるべきである。さて、図3を参照すると、高圧で、すなわち大気圧より高い圧力で動作する本発明の第2の実施形態で使用するための冷却ループを示している。
第2の実施形態では、同様の構成要素は同じ参照番号で示されており、簡単かつ簡潔のために、これらの構成要素についての説明は反復しない。
この第2の実施例では、エアフィルター32からの入来空気を加圧するために再生ドライヤー80の上流で酸化剤供給管路30に高圧コンプレッサー105が配設されている。高い温度を有する圧縮空気を冷却するために、コンプレッサー105と再生ドライヤー80との間にアフタークーラー熱交換器(after cooler heat exchanger)110が配設されている。したがって、燃料電池12に対する第1の冷却ループ14に加えて、水‐水熱交換器の形態のアフタークーラー熱交換器110を含む第3の冷却ループ114が配設されている。第3の冷却ループ114は、コンプレッサー・モーター106、コンプレッサー・モーター・コントローラー107、および配電盤108を冷却するために、これらの構成要素を通っていてもよい。第1および第3の両冷却ループ14および114は第1の冷却剤ポンプ13によって駆動される。第2の冷却ループのラジエーター18に対するように、電動ファンを有するラジエーター116が第3の冷却ループ114に配設されており、この場合にも、熱交換器15に対するのと同じ代替案がラジエーター116にも適用される。
この燃料電池システムが動作する圧力に関係なく、燃料電池12に供給される燃料流と酸化剤流との両方の圧力を平衡させるのが好ましいことが多い。これにより、燃料電池内に大きな勾配圧力が存在しないようにし、したがって、燃料電池の損傷を防止するとともに、勾配圧力によって惹起される望ましくない方向における反応剤と冷却剤の流れを防止する。さらに、これにより、適切な化学量の燃料と酸化剤が燃料電池に供給されて反応するようにもする。
本発明では、図6に示されているように、燃料供給管路10と酸化剤供給管路30との間に平衡圧力調整器22´と圧力平衡管路25を設けることによって、これが行われる。圧力平衡管路25は、水素加湿器90の上流で燃料供給管路20に配置された平衡圧力調整器22´と、再生ドライヤー80の上流における酸化剤供給管路30の第3の接合部102を流体的に連結する。平衡圧力調整器22´は前方圧力調整器であってもよい。しかし、それは、2つの流体流れに作用するようになされていなければならず、それら2つの流れの間で圧力を平衡させるように機能する。この平衡圧力調整器22´の一例が、本明細書に引用して援用する本出願人の同時係属米国特許出願第09/961,092号に開示されている。一般に、このような平衡圧力調整器22´は、圧力平衡管路25によって導入された空気流の圧力に応答して水素流を調整し、かつ水素流れの圧力が調整されて空気流の圧力に等しくなるまで機械的平衡を得る。
この圧力平衡器を酸化剤供給管路30に配置して、空気流の圧力が水素流の圧力に応答して調整されうるようにしてもよいことが理解されうる。しかし、実際には、ブロワーまたはコンプレッサーの適当な速度または容量を選定することによって空気流の圧力を設定し、そしてそれに対応して水素流の圧力を変更するのが好都合である。したがって、水素流の圧力を空気流の圧力に追従させることが好ましい。ある種のシステムでは、2つの反応剤入来流の間の圧力平衡が手動でまたはコントローラーによって設定される。しかし、本発明の構成は、この圧力平衡を自動的に確保する。
本発明は、先行技術と対比して多くの利点を有する。燃料と酸化剤を加湿するために使用される水がすべて、燃料電池12それ自体によって生成される。これにより、システム内の構成要素の重量と個数を減少させ、システム全体をコンパクトにかつ高性能にする。このシステムは、電力需要に対する迅速な応答が可能である。これらの特徴はすべて、車両用として特に望ましい。
上記の説明は好ましい実施形態を構成するが、本発明は、添付請求項の適切な範囲の適正な意味から逸脱することなしに修正および変更をなされることが理解されるであろう。例えば、本発明は、固体酸化物、アルカリ性の溶融炭酸塩、およびリン酸を含むがそれに限定されない種々のタイプの燃料電池に適用できる。特に、本発明は、非常に高い温度で動作する燃料電池に適用できる。加湿の要件は、使用される電解質と燃料電池の動作温度および圧力に対する依存度が高いことが当業者には理解されるであろう。したがって、本発明は多くのタイプの燃料電池には適用可能ではないであろうことが理解されるであろう。
本発明についてのさらに良好な理解のため、および本発明がどのように実施されるのかをさらに明瞭に示すために、本発明の好ましい実施形態を示す添付図面を例示として参照することにしよう。