JP2004502552A - ストリップ鋳造 - Google Patents

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Abstract

薄鋼ストリップを鋳造する双ロール鋳造装置を構成する、冷却される鋳造ロール(16)がロール支持部(104)に取付けられる。ロールの一方は固定され、他方は横方向に可動であり、可動ロール支持部(104)に作用する偏寄ユニット(119)により他方のロールの方へ偏寄される。溶融鋼の鋳造溜めがロール(16)上に支持され、ロールが回転されて、ロール間のロール間隙から下方に送給される凝固鋼ストリップを生み出す。未凝固の溶融金属が、形成するストリップの凝固殻の間のロール間隙を通ってロール間隙下方で凝固するよう、ほぼ一定のギャップがロール(16)間に維持される。偏寄ユニット(119)は、偏寄されたロールにほぼ一定の低偏寄力を加える効果を有する。偏寄力は、鋳造溜めの流体静力学的圧力を均衡させ、偏寄されたロールの移動に伴う機械的摩擦に打ち勝つのに必要な力と等しいと、わずかに大きいとの間でよい。これらの鋳造ロール分離力を制御することによりストリップのゲージ変動を減少できる。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属ストリップの鋳造及び鋳造鋼ストリップの製造に関する。特に、双ロール鋳造装置での連続鋳造による金属ストリップの鋳造に用途がある。
【0002】
【従来の技術】
双ロール鋳造装置では、冷却され、相互に回転する1対の水平鋳造ロール間に溶融金属を導き、動いているロール表面上に金属殻を凝固させ、それらの間のロール間隙にて合体させて、ロール間のロール間隙から下方に送給される凝固ストリップ品を生み出す。本明細書では「ロール間隙」(nip)という語をロール同士が最も接近する領域全般を指すものとして用いる。溶融金属は取鍋から1つ又は一連の小容器へ注ぐことができ、そこからロール間隙上方に位置した金属供給ノズルを介して流れることにより、ロール間隙直上のロール鋳造表面に支持されロール間隙長さ方向に延びる溶融金属の鋳造溜めを形成する。この鋳造溜めの端は、通常、ロール端面に摺動係合で保持されて鋳造溜めの両端からの溢流を堰き止める側板又は堰で構成されるが、電磁バリヤ等の代替手段も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
双ロール鋳造装置の鋳造ロールのセッティング及び調節は大問題である。鋳造ロールを正確にセットして、ロール間隙での鋳造ロールの適切な分離を、おおむね数mm又はそれ以下程度に正しく定めねばならない。特に立上げ時のストリップ厚の変動を受入れるよう、ロールの少なくとも一方が偏寄力に抗して外方に移動できるようにする何らかの手段をも講じなければならない。
【0004】
通常、ロールの一方が固定ジャーナル内に取付けられ、他方のロールを支持部上に回転可能に取付けられる。支持部は偏寄手段の作用に抗して移動でき、ロールを横方向に移動させて鋳造ロールの分離とストリップ厚変動を受入れることができる。偏寄手段は圧縮コイルばねの形であってよく、又は、1対の圧力流体シリンダユニットで構成してもよい。
【0005】
横方向可動ロールのばね偏寄を備えたストリップ鋳造装置がオーストラリア特許出願第85185/98号及び対応アメリカ出願第09/154213号に開示されている。その装置では、偏寄ばねはロール支持部と1対の推力反応構造との間に作用し、それらの位置は1対の動力付き機械ジャッキの操作によりセットでき、ばねの初期圧縮を調節してロール両端にて相等しい初期圧縮力をセットできる。一定輪郭のストリップを製造するため、ロール間のギャップをロール間隙幅方向にわたり一定にするよう、ロール支持部の位置をセットし、鋳造開始後に後調節する必要がある。しかしながら、鋳造が続くにつれて、ストリップ輪郭はロールの偏心により、そして、可変熱膨張等の動的効果による動的変化で必然的に変動する。
【0006】
鋳造ロールの偏心は、ストリップに沿ったストリップ厚変動の原因となり得る。斯かる偏心はロールの機械仕上げ及び組み立てにより、若しくは、不均一な熱流束分布等によりロールが高温になった場合の歪みにより、生じ得る。明細には、鋳造ロールの回転毎にロールの偏心に応じた厚変動パターンが生じ、このパターンが鋳造ロールの回転毎に繰返される。通常、繰返しパターンは全般的に正弦波であるが、全般的な正弦波パターン内に二次的又は付随的な変動があり得る。
【0007】
双ロール鋳造装置の鋳造ロールのデザインを改良し、特に、鋳造ロールと鋳造溜めとの界面での熱流束制御を可能にする肌理付け表面を提供することで、ストリップ鋳造速度を劇的に増加させることが達成可能であった。しかしながら、高い鋳造速度で薄ストリップを鋳造すると、高低周波数両方のゲージ変動(gauge variations)の生じる傾向が増加する。
【0008】
鋳造ロール分離力を減らすことにより鋳造ストリップのゲージ変動が軽減できること、ロール分離力を最小にすれば欠陥が事実上除去できることを、我々は見出した。実際には、流体静力学的溜め圧力を平衡させ、ロールを動かすのに伴う機械的摩擦に打ち勝つため、少なくともある程度の力が必要である。ある量の粥状又は溶融金属をロール間隙を介しストリップの2つの凝固殻間に通すことでロール間隙の領域でストリップ剛性を減らすことにより、ロール間隙でのロールギャップを凝固殻厚全体で決まるギャップよりわずかに大きく維持することにより、高周波ゲージ変動に打ち勝つことができ、独自の鋳造鋼ストリップを製造できることも我々は見出した。これらの目的のためには、鋳造ロールの相互動に伴う機械的摩擦力が最小であるのが望ましい。非常に低いストリップ剛性を達成することにより、ストリップについてのロールの動的相互作用を解放し、その結果、周期的なゲージ変動の再発を、除去はしなくとも、大幅に減らすことができる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一定の鋳造ロール分離力(小さくてよい)を加えるという特徴と、溶融金属をロール間隙を介し通すことができるようにしてストリップ剛性を更に減らす一定のロールギャップを確立するという特徴とを組合わせている。一定のロールギャップ並びに一定の分離力を維持するために、本発明ではロール偏心補償もできるようにしている。
【0010】
本発明によれば、冷却され、間にロール間隙を形成する1対の鋳造ロール間に溶融金属を導入してロール上に支持された溶融金属の鋳造溜めを形成し、溜め限定クロージャによりロール間隙の端で溜めを囲込み、ロールを回転させることにより金属の殻が鋳造溜めから鋳造ロール上へと凝固しロール間隙で接し合わされてロール間隙から下方に送給される 凝固ストリップを生み出すことを含む、金属ストリップ鋳造方法が提供される。鋳造ロールは、好ましくはほぼ一定の偏寄力のもとに、全体的に互いに偏寄され、ロール間隙での両者間にほぼ一定のギャップを有して保持される。このギャップはロール間隙での凝固殻間の分離を維持するためのものであるので、溶融金属はロール間隙を介し両者間の空間を通り、ロール間隙下方で、少なくとも部分的に、ストリップ内の凝固殻間でほぼ凝固される。
【0011】
溶融金属は溶鋼であってよく、その方法により少なくとも30m/分の鋳造速度で凝固鋼ストリップを製造できる。鋳造速度は少なくとも60m/分であってもよい。好ましくは、ロール間隙での凝固殻の分離間隔は0〜50ミクロンの範囲である。この分離により、小さな偏寄力でほぼ一定のギャップが維持される。
【0012】
好ましくは更に、前記偏寄力は、鋳造溜めの流体静力学的圧力を平衡し、偏寄されたロールを動かすことに伴う機械的摩擦に打ち勝つのに必要な最小力にほぼ等しいか、又は、わずかに大きい。幅が1350mm、溜めが175mmの500mmロールでは、小さく保つべき機械的摩擦は別にして、溶融鋳造溜めの流体静力学的力は約0.75kNである。従って、偏寄力は1チャック当たり(per chuck)(即ち、1側当たり(per side))0.75〜2kNの範囲とすることができ、相応するロール分離力はほぼ0〜1.25kNの範囲である。ロール分離力はストリップに働く正味力(net force)である。
【0013】
より好ましくは、ロール偏寄力は0.75〜1.2kNの範囲であり、相応するロール分離力はほぼ0から0.45kNまでである。好ましくは、1mmを超えるストリップ厚ではロール分離力は0.45kN以下である。例えば、1.6mm厚のストリップでは、ロール分離力は約0.45kNである。
【0014】
少なくとも1つの鋳造ロールを1対の可動ロール支持部に取付けることができ、可動ロール支持部は鋳造ロールの少なくとも一方を、他方の鋳造ロールに対し前記全体動をさせるよう可動であり、前記偏寄力を1対の偏寄ユニットによりロール支持部に加えることができる。各偏寄ユニットは推力発生器を含むことができ、推力発生器は、相応のロール支持部に接続された推力伝達構造と、推力反応構造と推力伝達構造との間隙に応じてロール支持部に推力を発生させる推力反応構造との間に作用する。推力発生器は圧縮ばね又は圧力流体シリンダユニットで構成することができる。
【0015】
本発明の方法は、凝固殻をロール間隙にて合わせることにより決まるロール間のギャップでストリップ鋳造を開始し、前記一方のロールが全体的に動くようにして鋳造ロール偏心によるストリップ厚変動に追従させてこれらの偏心によるロール移動のパターンを確立し、同じパターンの動きを偏寄ユニットの推力反応構造に加えて一定の偏寄力を維持し、鋳造ロール間のギャップを増加させて溶融金属が凝固殻間のロール間隙を通るようにし、増加したギャップをほぼ一定に維持してストリップ鋳造を続け、前記パターンの動きを推力反応構造に加えてほぼ一定のロール偏寄力を維持する、という段階を含むことができる。
【0016】
本発明は更に、間にロール間隙を形成する1対の平行鋳造ロールと、溶融金属をロール間のロール間隙へと送給して、ロール間隙直上の鋳造ロール表面に支持される溶融金属の鋳造溜めを形成する金属供給手段と、ロール間隙の端から溢流しないよう鋳造溜め内に溶融金属を囲込む溜め囲込み手段と、相互回転方向に鋳造ロールを駆動して、ロール間隙から下方に送給される金属の凝固ストリップを生み出すロール駆動装置とで構成し、鋳造ロールの少なくとも一方が、その一方のロールを全体的に他方のロールに接近・離反動させる1対の可動ロール台車に取付けられ、対の可動ロール台車の各々に1つずつ作用して前記一方のロールを全体的に他方のロールの方へと偏寄させる1対のロール偏寄ユニットを設け、各ロール偏寄ユニットを、相応のロール台車に接続された推力伝達構造と、推力反応構造と、推力反応構造と推力伝達構造との間に作用して推力伝達構造と相応のロール台車に推力を及ぼす推力発生器と、推力反応構造の位置を変えるよう作動可能な推力反応構造セット手段と、ロール偏心によるロール支持部の動きのパターンを推力反応構造の動きの適用パターンとして複製して一定のロール偏寄力を維持するようセット手段の作動を制御する制御手段と、前記動きの適用パターンが確立された後にロール間のギャップを増加させるよう作動可能なロールギャップ制御手段とで構成した、金属ストリップ連続鋳造装置を提供する。
【0017】
好ましくは、ロールギャップ制御手段は0〜50ミクロンの範囲のロールギャップの付加的増加を生み出すよう作動可能である。ロールギャップ制御手段は前記一方のロールを動かすよう作動可能である。又は、他方の鋳造ロールを動かすよう作動可能である。他の実施の態様では、小さなロール分離力を提供するため、ロールギャップを固定し、所要の分離力に達するまで鋳造速度を変更できる。その場合、偏心補償は速度調節する前に加えることができる。
【0018】
本発明は、以下の好適な実施の態様の記述においてより詳細に記述した組成を有する独自の鋳造鋼ストリップを提供する。
【0019】
本発明を充分に説明するため、特定の実施の形態及び可能な改変例を、添付図面を参照して幾分詳細に記述する。
【0020】
【発明の実施の形態】
図示した鋳造装置は、工場床(図示せず)から起立して鋳造ロールモジュールを支持する主機械フレーム11で構成され、鋳造ロールモジュールは、一体として鋳造装置内の作動位置に導入でき、しかも、ロールを交換すべき時には容易に取外すことができるカセット13の形をしている。カセット13が担持する、冷却される1対の平行な鋳造ロール16は間にロール間隙16Aを有し、鋳造作業時はそのロール間隙へと溶融金属が取鍋(図示せず)からタンディッシュ17、分配器18及び供給ノズル19を介して供給されて鋳造溜め30を創る。鋳造ロール16は水冷されるので、動いているロール表面上へと凝固殻が形成し、それらが間のロール間隙16Aにて合体され、ロール出口で凝固ストリップ品20を造る。この品は標準コイラに送ることができる。
【0021】
鋳造ロール16は主機械フレームに取付けられた電動モータ及びトランスミッションからの駆動軸41を介し相互方向に回転される。駆動軸はカセットを取外すべき時にはトランスミッションから切り離しできる。ロール16の銅周壁に形成され、縦方向に延び、周方向に離間した一連の水冷通路には、回転グランド43を介して給水ホース42に接続されたロール駆動軸41内の給水導管からロール端を介し冷却水が供給される。ほぼロール幅のストリップ品を造ることができるよう、ロールは典型的には径が約500mm、長さが最大2000mmである。
【0022】
取鍋は全く従来の構成であり、回転タレット上に支持され、そこからタンディッシュ17上方の位置へと運ばれ、タンディッシュを満たすことができる。タンディッシュに装着されたスライドゲート弁47はサーボシリンダで動かすことができ、溶融金属をタンディッシュ17から弁47と耐火シュラウド48とを介し分配器18へ流すことができる。
【0023】
分配器18は酸化マグネシウム(MgO)等の耐火材利用で造られた広皿状に形成される。分配器18の一側はタンディッシュ17からの溶融金属を受け、分配器18の他側には縦方向に離間した一連の金属出口開口52が備えられる。分配器18下部が担持する取付ブラケット53はカセット13を作動位置へ据付ける際、分配器18を主機械フレーム11に取付けるためのものである。
【0024】
供給ノズル19はアルミナグラファイト等の耐火材利用で造られた細長体として形成される。その下部は内方下方にすぼまるようテーパ状になっていて鋳造ロール16間のロール間隙16Aへと突入でき、上部には外方に突出する側部フランジ55が形成されて、主フレーム11の一部をなす取付ブラケット60に位置する。
【0025】
ノズル19は、水平方向に離間してほぼ上下に延びる一連の流路を有することができ、溶融金属をロール幅全体にわたって適宜に低速排出し、初期凝固の起きるロール表面に直接衝突することなく溶融金属をロール間のロール間隙16Aへと送給する。又は、ノズル19には単一の連続長孔出口を設けることができ、溶融金属の低速カーテン流を直接鋳造ロール16間のロール間隙16Aに送給し、且つ/又は、鋳造ロール16間の溶融金属溜めに浸漬させてもよい。
【0026】
溜めをロール両端で囲込むのが1対の側部クロージャ(閉止)板又は堰56であり、ロールカセットが作動位置にあるときにロールの段付き端57に当接保持される。側部クロージャ板56は強耐火材料で造られ、ロール段付き端の湾曲に合ったスカロップ(scalloped)側端を有する。側部クロージャ板56を中に取付けることのできる板ホルダ82は1対の流体圧シリンダユニット83の作動により可動であり、鋳造ロールの段付き端に側板を係合させて、鋳造作業中に鋳造ロールに形成される金属溶融溜めの端クロージャを形成する。側部クロージャ板56はロール間隙16Aの端に隣接し、鋳造ロール16間に形成される鋳造溜めを囲込む。
【0027】
鋳造作業ではスライドゲート弁47を作動させて溶融金属をタンディッシュ17から分配器18へと注ぎ、金属供給ノズル19を介し鋳造ロール上へと流下させて、側部クロージャ板56で囲込んだ鋳造溜めを形成する。ストリップ品20の頭端をエプロンテーブル96の作動によりピンチロールへとガイドし、更にそこから巻取りステーション(図示せず)へとガイドする。エプロンテーブル96は主フレーム上のピボット取付具97から吊下がり、きれいな頭端が形成された後に流体圧シリンダユニット(図示せず)の作動によりピンチロールの方へと旋回できる。
【0028】
取外し可能なロールカセット13は、カセットを鋳造装置内の所定位置に据付ける前に鋳造ロール16をセットしてロール間のロール間隙16Aのギャップを調節できる構成になっている。一般に、組み立てのこの時点での鋳造ロール間のギャップは、鋳造ロールが互いに接触することのない、できるだけ小さなものにすべきである。更に又、カセット13据付け時に、主機械フレーム11上に取付けられている2対のロール偏寄ユニット110,111をカセット13のロール支持部に迅速に接続してロールの分離に抗する偏寄力を提供できる。
【0029】
ロールカセット13を構成する大きなフレーム102は、鋳造ロール16と、ロール間隙16A下方で鋳造ストリップを囲む耐火エンクロージャの上部103とを担持する。ロール16が取付けられるロール支持部104は、1対のロール端支持構造90(図4)で構成され、ロールが互いに平行な関係で長手軸線まわりに回転するよう取付けられるロール端軸受100を担持する。前記2対のロール支持部104は線形軸受106によりロールカセットフレーム102に取付けられるのでカセットフレームの横方向に摺動でき、ロール全体の相互への接近・離反動を提供でき、従って、2本の平行鋳造ロール16間の分離・閉止が可能になる。
【0030】
ロールカセットフレーム102は2つの調節可能な止め手段107も担持し、止め手段は鋳造ロール16下方、ロール間の中央垂直平面付近、前記2対のロール支持部104間に位置していて2つのロール支持部104の内方動を制限する止めとして働くことにより、ロール16間のロール間隙16Aでのギャップ最小幅を限定する。以下で説明するように、ロール偏寄ユニット110,111はこれら中央の調節可能な止め手段に抗してロール支持部104を内方に動かすよう動作可能であるが、予めセットした偏寄力に抗し鋳造ロール16の一方が外方にばね動することは可能にしている。
【0031】
調節可能な各止め手段107はウォーム又はねじ被動ジャッキの形をしており、鋳造装置中央垂直平面に対し固定された本体108と、被動ジャッキ作動時に相等しく相反方向に動かし得る2端109とを有することにより、ジャッキの伸縮で、鋳造装置の中央垂直平面からロール16を等間隔に維持すると共に鋳造ロール16間のほぼ一定のギャップをも維持しつつロール間隙16Aでのギャップ幅を調節できるようになっている。
【0032】
鋳造装置は、各対が各ロール16の支持部104に接続された、2対のロール偏寄ユニット110,111を備えている。機械一側のロール偏寄ユニット110は本発明に従い構成され、作動する。これらのユニットには偏寄コイルばね112が嵌着され、各ロール支持部104に偏寄力を提供する。機械他側の偏寄ユニット111は流体圧アクチュエータ113を組入れている。これらのアクチュエータは一方のロールの各ロール支持部104を中央止めに対し堅く保持するよう動作可能であり、他方のロールは偏寄ユニット110の偏寄ばね112の作用に抗して自由に横方向に動いて鋳造ロールを相互方向へと偏寄させる。
【0033】
偏寄ユニット110の詳細な構造を図8に示す。その図に示されているように、偏寄ユニットを構成するのは、固定ボルト117により主鋳造装置フレーム116に固定された外ハウジング115内に配したばね胴ハウジング114である。
【0034】
ばねハウジング114には外ハウジング115内を走行するピストン118が形成される。ばねハウジング114はシリンダ118に作動流体を流入出させることにより図8に示したような伸び位置と縮み位置とに択一的にセットできる。ばねハウジング114の外端により担持される圧力流体作動可能手段は流体圧シリンダユニット119の形であり、接続ロッド130によりユニット119のピストンに接続されたばね反応プランジャ121の位置をセットするよう作動可能である。
【0035】
ばね112の内端が推力伝達構造122に作用し、推力伝達構造はロードセル125を介し相応のロール支持部104に接続される。推力構造は最初は引かれ、コネクタ124によりロール支持部と堅く結合する。コネクタは、偏寄ユニットを外すべき時には、流体圧シリンダ123の作動により伸長できる。
【0036】
図8に示すようにばねハウジング114を伸長状態にセットし、偏寄ユニット110を相応のロール支持部104に接続する場合、ばねハウジング114とシリンダユニット119の位置は機械フレームに対し固定であり、ばね反応プランジャ121の位置をセットして反応プランジャと推力伝達構造122のばね当接部との間の有効ギャップを調節できる。それにより、ばね112の圧縮を調節して推力伝達構造122及び相応するロール支持部104に加えられる推力を変更できる。この構造では、鋳造作業中の相対動は偏寄ばねに対するロール支持部104とスラスタ構造122の一体的な動きのみである。偏寄ユニットが作用して止めに抗しロール支持部104を内方に偏寄させるので、金属が実際に鋳造ロール間を通る前に所要のばね偏寄力をロール支持部に予荷重するよう調節でき、その偏寄力は後の鋳造作業中、維持される。
【0037】
流体圧シリンダユニット119を継続的に操作してばね反応プランジャの位置を変え、ロール支持部104の横方向動きによる推力伝達構造122の動きを複製する。ロール支持部104を内方又は外方に動かすことによりシリンダユニット119のシリンダの、ひいてはばね反応プランジャ121の内方又は外方の動きが対応して引起こされて圧縮ばね112の一定の圧縮を維持する。従って、鋳造ロール16に対しロール各端での一定の偏寄力を、ロール取付け部の動きに関わらず維持できる。継続的に作動可能なばねセット手段により、一定の偏寄力を非常に正確にセットでき、鋳造作業中終始維持できる。又、剛性の非常に低いばねを用いることが可能であり、ロール2端での2つの補償又は制御システムが全く独立して働くので、両者間にクロストーク(cross−talk)は必要ない。従って、本発明によるこの装置ではロール偏寄力を非常に低いレベルに減らすことができる。鋳造溜めの流体静力学的圧力(500mm径の双ロール鋳造装置、1350mmのロール幅で、一側につきほぼ0.75kN)を平衡し、ロールを動かすのに伴う機械的摩擦(500mm径の双ロール鋳造装置の一側につきほぼ0.6kN以下)に打ち勝つのに必要な最小力でる。これが実際の低偏寄力レベルとなり、好ましくは0.75〜2kNの範囲内とすることができる。
【0038】
図9に略示するように、制御手段は、推力伝達構造122の位置を検出する位置センサ150で構成でき、シリンダユニット119の作動を制御する制御回路に接続されるので、推力伝達構造122の動きがユニット119のシリンダにより複製される。制御回路はコントローラ151で構成して、推力伝達構造122の動きを複製するようにシリンダ119を操作するため、センサ150及びシリンダユニット119に接続できる。コントローラ151がシリンダ動作を制御するのは、鋳造前にロール支持部の初期セットをするためでもあり、後の調節で、ステップコントローラ160を介してシリンダ119に類似の付加動を加えて一定の偏寄力を維持し、ロール16間、ロール間隙16Aでのギャップを増加させることにより、鋳造における凝固殻厚で決まるギャップよりも大きなギャップをロール16間、ロール間隙16Aに生み出すためである。ステップコントローラは161に設定点入力を有する。
【0039】
典型的には本発明によれば、システムを操作して、凝固殻厚で決まるギャップよりも大きな、鋳造ロール16間、ロール間隙16Aでのギャップを維持できる。システム操作において、鋳造は凝固殻厚により初めに決まるギャップで始まる。この厚みを図11に示すが、ストリップ凝固殻の樹状突起が、形成されたストリップ内に加わっている。残っているロール偏心によるロール支持部の動きがセンサ150により検出され、制御ユニットは偏心によるロール動のパターンを覚える。偏心により引起こされた力変動を補償するため、ロールチョック軌跡が位置制御システムによりばね反応構造にて複製され、それらの補償的な動きが続けられる。そしてばね反応構造の動きのパターンが続けられつつ、ロールギャップが少量(例えば0〜50ミクロン等)増加される。このことにより、ロール偏心補償により引起こされる力変動をたとえ除去しなくとも更に減少させることにより、鋳造ロール間に既に形成されたほぼ一定のギャップが更にいっそう高められる。
【0040】
図9に示した制御システムでは、鋳造ロール16間のロール間隙16Aでギャップを増加させる段階が、ばね偏寄したロールを支持するロール台車を動かすことにより達成され、他方のロール用の流体作動される偏寄ユニットが操作されて他方のロールを固定位置に施錠する。本発明のシステムは我々の同時係属オーストラリア特許出願14901/00に記述された偏心制御システムとの組合わせで使うことができ、その記述を言及したことによりここに組入れる。そのシステムでは、ロール偏心による厚み変動は、ロール回転速度に速度変動パターンを課することにより非常に大幅に減少できる。このような補償が可能なのは小さな変動でさえも、凝固する金属殻が鋳造溜め内で鋳造ロール上に接触する時間を変え、従ってストリップ厚とロール熱負荷に影響を与えて一定厚のストリップの製造を容易にする。この形の偏心制御が採用されると、これにより本発明の最小力/一定ギャップシステム内での初期ロール支持変動の振幅と補償動の必要性が減る。本発明は生産性の向上をも提供する。
【0041】
図10に関し、目下記述した方法により造られる独自の鋼品を説明する。独自の鋳造鋼ストリップは以下の段階、即ち、間にロール間隙を有し、ロール間隙の端に隣接した囲込みクロージャを有する、冷却される1対の鋳造ロールを組み立て、前記対の鋳造ロール間に溶融金属を導入してロール間に鋳造溜めを、ロール間隙の端に隣接してクロージャが溜めを囲い込むことで形成し、ロールを回転させることにより金属の殻が鋳造溜めから凝固して鋳造ロール上に形成しロール間隙で接し合わせられてロール間隙から下方に送給される凝固ストリップを造り、偏寄力のもとに対の鋳造ロールの少なくとも一方を対の他方のロールへと偏寄させて、ロール間隙で凝固殻間に分離を提供するのに充分なほぼ一定のギャップがロール間隙でのロール間に維持し、好ましくは偏寄力は0.45kN以下のロール分離力を創り出す力であり、溶融金属をロール間隙を介し凝固殻間に通して、前記溶融金属の少なくとも一部がロール間隙下方でストリップ内で凝固される、ことにより造られる。鋳造ロール16上への凝固殻内に形成された鋼の柱状樹状突起構造は集結しない。このことが図11に比較で示され、従来記述のストリップ鋳造方法により造られる鋼ストリップの構造が示される。そこでは、凝固殻が集結するにつれて、形成されるストリップ中に凝固殻の柱状樹状突起構造が加わる。しかしながら、本発明により造られる鋼ストリップでは、鋼ストリップ内、凝固殻間に中央域があって、それはストリップがロール間隙16Aで鋳造ロール16間のギャップを通った後に凝固する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明により構成されるストリップ鋳造装置の垂直断面図である。
【図2】
鋳造装置の重要な構成要素を示す、図1の部分拡大図である。
【図3】
鋳造装置の要部の長手方向断面図である
【図4】
鋳造装置の立面図である
【図5】
鋳造時にロールモジュールを鋳造装置から外す際の種々の状態のうちの1つでの鋳造装置を示す。
【図6】
鋳造時にロールモジュールを鋳造装置から外す際の種々の状態のうちの1つでの鋳造装置を示す。
【図7】
鋳造時にロールモジュールを鋳造装置から外す際の種々の状態のうちの1つでの鋳造装置を示す。
【図8】
ロール偏寄ばねを組込んだロール偏寄ユニットの垂直断面図である。
【図9】
鋳造装置の本質的な構成要素の概略図である。
【図10】
本発明で記述の如く造られた鋳造鋼ストリップの断面図である。
【図11】
本発明の説明で比較のために示した先行技術の鋳造鋼ストリップの断面図である。

Claims (20)

  1. 間にロール間隙を有し、ロール間隙の端に隣接した囲込みクロージャを有する、冷却される1対の鋳造ロールを組み立て、
    前記対の鋳造ロール間に溶融金属を導入してロール間に鋳造溜めを、ロール間隙の端に隣接してクロージャが溜めを囲込むことで形成し、
    ロールを回転させることにより金属の殻が鋳造溜めから凝固して鋳造ロール上に形成しロール間隙で接し合わせられてロール間隙から下方に送給される凝固ストリップを造り、
    偏寄力のもとに対の鋳造ロールの少なくとも一方を対の他方のロールへと偏寄させることにより、ロール間隙で凝固殻間に分離を提供するのに充分なほぼ一定のギャップがロール間隙でのロール間に維持されるようにし、
    溶融金属をロール間隙を介し凝固殻間に通すことにより前記溶融金属の少なくとも一部がロール間隙下方でストリップ内で凝固できるようにしてなる、
    金属ストリップ鋳造方法。
  2. 溶融金属が鋼である、請求項1で請求の方法。
  3. 鋳造ロールを回転して少なくとも30m/分の鋳造速度で凝固鋼ストリップを造る、請求項2で請求の方法。
  4. 鋳造速度が少なくとも60m/分である、請求項3で請求の方法。
  5. 偏寄力が、鋳造溜めの流体静力学的圧力と鋳造ロールを相互方向へ偏寄させる際の動きに伴う機械的摩擦とを平衡させるのに必要な力に略等しいと、わずかに大きいとの間の力である、請求項5で請求の方法。
  6. 前記偏寄力が0〜1.25kNの範囲のロール分離力を生み出す、請求項6で請求の方法。
  7. 前記偏寄力が9〜1.25kNの範囲のロール分離力を生み出す、請求項6で請求の方法。
  8. 間にロール間隙を有し、ロール間隙の端に隣接した囲込みクロージャを有する、冷却される1対の鋳造ロールを組み立て、
    前記対の鋳造ロール間に溶融金属を導入してロール間に鋳造溜めを、ロール間隙の端に隣接してクロージャが溜めを囲い込むことで形成し、
    ロールを回転させることにより金属の殻が鋳造溜めから凝固して鋳造ロール上に形成しロール間隙で接し合わせられてロール間隙から下方に送給される凝固ストリップを造り、
    ほぼ一定の偏寄力のもとに対の鋳造ロールの少なくとも一方を対の他方のロールへと偏寄させることにより、ロール間隙で凝固殻間に分離を提供するのに充分なほぼ一定のギャップがロール間隙でのロール間に維持されるようにし、偏寄力が0.45kN以下のロール分離力を創り出す力であり
    溶融金属をロール間隙を介し凝固殻間に通して、前記溶融金属の少なくとも一部がロール間隙下方でストリップ内で凝固できることからなる、
    金属ストリップ鋳造方法。
  9. 偏寄力が、鋳造溜めの流体静力学的圧力と鋳造ロールを相互方向へ偏寄させる際の動きに伴う機械的摩擦とを平衡させるのに必要な力に略等しいと、わずかに大きいとの間の力である、請求項8で請求の方法。
  10. 鋳造ロールの少なくとも一方を可動ロール支持部に取付けて鋳造ロールの相互方向への動きを提供し、1対の偏寄ユニットにより前記偏寄力をロール支持部に加えるという追加の段階からなる、請求項8で請求の方法。
  11. ロール支持部に接続された推力伝達構造間に作用する推力発生器を偏寄ユニット内に含み、推力反応構造と推力伝達構造との間の間隔に応じてロール支持部上に推力を発生させる推力反応構造を含むという追加の段階からなる、請求項10で請求の方法。
  12. 推力発生器が圧縮ばね又は圧力流体シリンダユニットを含む、請求項11で請求の方法。
  13. ロール間隙で合うことができる凝固殻で決まるロール間のギャップでストリップの鋳造を開始し、
    前記鋳造ロールを相互へと相対動できるようにして鋳造ロールを回転させることにより鋳造ロール偏心によるストリップ厚変動に追従してこれらの偏心によるロールの動きのパターンを確立し、
    同じパターンの動きを偏寄ユニットの推力反応構造に加えて鋳造ロールの回転で前記偏寄力をほぼ一定に維持し、
    鋳造ロール間のギャップを増加させて溶融金属がロール間隙を介しストリップの凝固殻間を通るようにし、
    前記パターンの動きを推力反応構造に加え続けてほぼ一定のロール偏寄力を維持しつつ、増加させたギャップをほぼ一定に保持して凝固ストリップ鋳造を続けるという追加の段階を含む、請求項11で請求の方法。
  14. 前記ギャップの増加が0〜50ミクロンの範囲である、請求項13で請求の方法。
  15. 前記ギャップの増加が鋳造ロールの相対動によりなされる、請求項13で請求の方法。
  16. 間にロール間隙を形成する1対の平行鋳造ロールと、
    溶融金属をロール間のロール間隙へと送給して、ロール間隙直上の鋳造ロール表面に支持される溶融金属の鋳造溜めを形成する金属供給手段と、
    溢流しないよう鋳造溜めの溶融金属を囲い込む、ロール間隙の端に隣接した溜め囲込み手段と、
    鋳造ロールを相互回転方向に駆動してロール間隙から下方に送給される金属の凝固ストリップを生み出すロール駆動装置と、
    当該ロールが他方のロールに接近・離反できるよう1対の可動ロール台車に取付けられた鋳造ロールの少なくとも一方と、
    対の可動ロール台車の各々に1つずつ作用して前記一方のロールを他方ロールの方へと偏寄させる1対のロール偏寄ユニットと、
    相応のロール台車に接続された推力伝達構造と、推力反応構造と、推力反応構造と推力との間に作用する推力発生器とで構成された各ロール偏寄ユニットと、
    推力伝達構造と相応のロール台車に推力を掛ける伝達構造と、推力反応構造の位置を変えるよう操作可能な推力反応構造セット手段と、ロール偏心によるロール支持部の動きのパターンを推力反応構造の動きの適用パターンとして複製して一定のロール偏寄力を維持するようセット手段の操作を制御する制御手段と、動きの前記適用パターンが確立された後にロール間のギャップを増加させるよう操作可能なロールギャップ制御手段とで構成される金属ストリップ連続鋳造装置。
  17. ロールギャップ制御手段が0〜50ミクロンの範囲のロールギャップ付加増加を生み出すよう制御可能である、請求項16で請求の装置。
  18. ロールギャップ制御手段が前記一方のロールを動かすよう制御可能である、請求項16で請求の装置。
  19. 以下の段階、即ち、
    間にロール間隙を有し、ロール間隙の端に隣接した囲込みクロージャを有する1対の冷却される鋳造ロールを組み立て、
    前記対の鋳造ロール間に溶融金属を導入してロール間に鋳造溜めを、ロール間隙の端に隣接してクロージャが溜めを囲い込むことで形成し、
    ロールを回転させることにより金属の殻が鋳造溜めから凝固して鋳造ロール上に形成しロール間隙で接し合わせられてロール間隙から下方へ送給される凝固ストリップを造り、
    偏寄力のもとに対の鋳造ロールの少なくとも一方を対の他方のロールへと偏寄させることにより、ロール間隙で凝固殻間に分離を提供するのに充分なほぼ一定のギャップがロール間隙でのロール間に維持されるようにし、
    溶融金属をロール間隙を介し凝固殻間に通して前記溶融金属の少なくとも一部がロール間隙下方でストリップ内で凝固されることにより造られる鋳造鋼ストリップ。
  20. 以下の段階、即ち、
    間にロール間隙を有し、ロール間隙の端に隣接した囲込みクロージャを有する、冷却される1対の鋳造ロールを組み立て、
    前記対の鋳造ロール間に溶融金属を導入してロール間に鋳造溜めを、ロール間隙の端に隣接してクロージャが溜めを囲い込むことで形成し、
    ロールを回転させることにより金属の殻が鋳造溜めから凝固して鋳造ロール上に形成しロール間隙で接し合わせられてロール間隙から下方に送給される凝固ストリップを造り、
    ほぼ一定の偏寄力のもとに対の鋳造ロールの少なくとも一方を対の他方のロールへと偏寄させることにより、ロール間隙で凝固殻間に分離を提供するのに充分なほぼ一定のギャップがロール間隙でのロール間に維持されるようにし、偏寄力が0.45kN以下のロール分離力を創り出す力であり、
    溶融金属をロール間隙を介し凝固殻間に通して、前記溶融金属の少なくとも一部がロール間隙下方でストリップ内で凝固されることにより造られる鋳造鋼ストリップ。
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