JP2004502412A - 免疫グロブリンを介した再灌流障害を抑制するための方法および組成物 - Google Patents

免疫グロブリンを介した再灌流障害を抑制するための方法および組成物 Download PDF

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Abstract

対象における免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法および組成物を提供する。病原性免疫グロブリンと虚血抗原または補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質を同定するための方法を提供する。病原性免疫グロブリンおよびその変異型も開示する。

Description

【0001】
発明の背景
補体系は先天性免疫および適応免疫の両方に関与する(Muller−Eberhard, H.J.(1988)Ann. Rev. Biochem. 57、321〜347;Carroll, M.C.(1998)Ann. Rev. Immunol 16、545〜568;Fearonら(1995)Annu. Rev. Immunol 13、127〜149)。血清補体または補体受容体の特定の成分(例えば、CD21/CD35)が欠損したマウスを用いた最近の研究により、補体に関する既知の多くの役割が確認されただけでなく、自然免疫および適応免疫における重要な機構に対する新たな解明の糸口も得られている(Carroll, MC.(1998)前記)。例えば、T依存性抗原に対する記憶応答の発生を補体が増強する機序の一つは、CD21/CD19/Tapa−1補助受容体を介して胚中心(GC)のB細胞における生存シグナルを媒介することによる。また、欠損マウスは古典経路が障害の誘導に不可欠であることを特定するという重要な点を確かめる上でも重要なものとなっている(Weiserら(1996)J. Exp. Med. 1857〜1864)。
【0002】
虚血再灌流(I/R)障害とは、低酸素組織の再灌流後にみられる内皮および下層の実質組織に対する炎症性障害のことを指す。これは、例えば心筋、中枢神経系、後肢および腸を含む、種々の組織に対する急性障害および慢性障害の両方の原因となる一般的な症候群である。虚血再灌流障害は壊死および非可逆的細胞障害を引き起こす恐れがある。例えば、虚血性骨格筋の再灌流は透過性亢進型水腫を伴う血管漏出を特徴とする内皮細胞障害を引き起こし(Weiserら(1996)J. Exp. Med. 1857〜1864)、小腸の再灌流は粘膜の損傷を招く(Williamsら(1999)J. Appl. Physiol.、938〜942)。一般に、虚血期間が長いほど炎症反応が顕著である。I/R障害の程度は、虚血領域の大きさおよび具体的な罹患組織などの要因によっても決定される(Williamsら(1999)J. Appl. Physiol.、938〜942)。
【0003】
I/R障害を主に媒介するのは補体系である。ワイズマン(Weisman)らは、ラット心臓モデルにおいて補体C3b(sCR1)の可溶性阻害物質を用いて、I/R障害を部分的に阻止するための機構を報告している(Weismanら(1990)Science 249、146〜151)。可溶性CR1受容体は、C3転換酵素、すなわち自然状態のC3を活性C3b型に変換する酵素複合体を不活性化するのに非常に有効である。CR1受容体は、第I因子によるC3bの切断および転換酵素からのC3bの転位の両方において補助受容体としての役割を果たす。マウスに対して虚血誘導前にsCR1の静脈内注射を行ったところ、投与したマウスの再灌流後の障害は著しく軽減された。投与したマウスの組織検査により、心筋内の補体沈着レベルおよび組織障害の程度の低下が判明した(Weismanら(1990)前記)。下肢障害モデルのマウスに対するsCR1の前投与でも同様の結果が得られた(Hillら(1992)J. Immunol. 149、1723〜1730)。このモデルでは、下肢に駆血帯を装着することによって下腿部に対する血流を約2時間にわたり遮断した。組織への血流を回復させる前に、マウスに対して透過性のマーカーとして放射性ヨウ化アルブミンの静脈内投与を行った。
【0004】
これらの試験により、障害が補体によって媒介されることは確定したものの、彼らは障害の発生機序という問題には取り組まなかった。ワイザー(Weiser)らは、抗体の欠損したマウスが後肢モデルにおいて障害から部分的に防御されることを示した。正常マウス血清を再構成することによって障害が再び生じた。ウィリアムズ(Williams)らはこの観察所見を小腸モデルにまで拡大適用させ、抗体欠損マウスにおける障害を再生させるには精製IgMで十分であることを示した。
【0005】
発明の概要
本発明は一部には、虚血特異的抗原を認識する病原性免疫グロブリン(Ig)、特に病原性IgMの同定に基づく。理論に拘束されるものではないが、これらの病原性IgMと虚血特異的抗原との結合は特に補体経路の活性化を誘発し、これは最終的には再灌流障害または虚血障害を引き起こすと考えられている。本出願者らは、病原性IgMが、本明細書で「B−1細胞」と称するB細胞のサブポピュレーションによって産生されることも見いだした。
【0006】
したがって、本発明は、対象における免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、障害が抑制または軽減されるように、病原性免疫グロブリン、例えば病原性IgMと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質の有効量を対象に投与し、それによって虚血特異的抗原と結合した病原性免疫グロブリンの数を減少させることを含む方法を特徴とする。
【0007】
好ましい態様において、再灌流障害または虚血障害は、例えば脳卒中として、自然に発生した発作の後に結果として生じる。再灌流障害または虚血障害は外科的処置の最中および/または後に生じることもある。障害の原因となる外科的処置の例には、血管形成術、ステント処置、アテローム切除術およびバイパス手術からなる群から選択される血管矯正技術が含まれる。好ましい態様において、再灌流障害または虚血障害は心血管組織(例えば心臓)において生じる。
【0008】
好ましくは、本発明の阻害物質は、以下の活性の1つまたは複数により、病原性免疫グロブリンと拮抗する:(i)病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用(例えば、結合)を阻害もしくは抑制する;(ii)病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用(例えば、結合)を阻害もしくは抑制する;(iii)例えば免疫グロブリンの隔離および/もしくはその分解のターゲティングにより、病原性免疫グロブリンを中和する;または(iv)病原性免疫グロブリンの産生を阻害もしくは抑制する、例えば病原性抗体の合成、集合および/もしくは翻訳後修飾を阻止する。阻害物質は、タンパク質もしくはペプチド;低分子;抗体もしくはその断片、例えば抗イディオタイプ抗体;糖質;または糖タンパク質であってよい。別の好ましい態様において、阻害物質は本明細書に記載する改変抗体でもよい。好ましい態様において、阻害物質は1回、あるいは数時間、数日、数週、数カ月または数年という期間にわたる連続的な曝露として投与される。阻害物質は、障害の原因となる自然発生性の発作の前、最中および/または後のいずれに投与してもよい。また、阻害物質を外科的処置、例えば再灌流障害または虚血障害を招くことのある外科的処置の前、最中および/または後に投与することもできる。好ましい態様では、阻害物質を、他の治療薬、例えば抗凝固薬、補体阻害物質と組み合わせて投与する。
【0009】
もう1つの局面において、本発明は、対象における免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、障害が抑制または軽減されるように、病原性免疫グロブリン、例えば病原性IgMと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質の有効量を対象に投与し、それによって補体活性を活性化する病原性免疫グロブリンの数を減少させることを含む方法を特徴とする。
【0010】
好ましい態様において、病原性免疫グロブリンはIgMまたはIgG(例えば、IgG1およびIgG3)である。好ましくは、病原性免疫グロブリンはIgMであり、より好ましくはIgMのサブクラスである。別の好ましい態様において、病原性免疫グロブリンはB細胞のサブポピュレーション、例えばB−1細胞によって産生されるか、または病原性免疫グロブリンはATCCに寄託される予定であるアクセッション番号(ATCC寄託番号(patent deposit number)PTA−3507)のハイブリドーマによって産生される。病原性免疫グロブリンは、配列番号:2に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号:8に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有しうる。好ましい態様において、虚血特異的抗原は内皮細胞および/または実質組織の表面に存在する。
【0011】
好ましい態様において、補体経路は補体の古典経路であり、補体経路の成分はC1分子またはそのサブユニット(例えば、C1q)でありうる。もう1つの態様において、対象は哺乳動物、例えばげっ歯動物(例えば、マウス)または霊長動物(例えば、ヒト)である。
【0012】
好ましい態様において、再灌流障害または虚血障害は、例えば脳卒中として、自然に発生した発作の後に結果として生じる。再灌流障害または虚血障害は外科的処置の最中および/または後に生じることもある。障害の原因となる外科的処置の例には、血管形成術、ステント処置、アテローム切除術およびバイパス手術からなる群から選択される血管矯正術が含まれる。好ましい態様において、再灌流障害または虚血障害は心血管組織(例えば心臓)において生じる。
【0013】
好ましくは、本発明の阻害物質は、以下の活性の1つまたは複数により、病原性免疫グロブリンと拮抗する:(i)病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用(例えば、結合)を阻害もしくは抑制する;(ii)病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用(例えば、結合)を阻害もしくは抑制する;(iii)例えば免疫グロブリンの隔離および/もしくはその分解のターゲティングにより、病原性免疫グロブリンを中和する;または(iv)病原性免疫グロブリンの産生を阻害もしくは抑制する、例えば病原性抗体の合成、集合および/もしくは翻訳後修飾を阻止する。阻害物質は、タンパク質もしくはペプチド;低分子;抗体もしくはその断片、例えば抗イディオタイプ抗体;糖質;または糖タンパク質でありうる。別の好ましい態様において、阻害物質は本明細書に記載する改変抗体でありうる。好ましい態様において、阻害物質は1回、または数時間、数日、数週、数カ月もしくは数年という期間にわたる連続的な曝露として投与される。阻害物質は、障害の原因となる自然発生性の発作の前、最中および/または後のいずれに投与してもよい。また、阻害物質を外科的処置、例えば再灌流障害または虚血障害を招くことのある外科的処置の前、最中および/または後に投与することもできる。好ましい態様では、阻害物質を、他の治療薬、例えば抗凝固薬、補体阻害物質と組み合わせて投与する。
【0014】
もう1つの局面において、本発明は、対象における免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、病原性免疫グロブリン、例えば本明細書に記載の病原性IgM、および/もしくは病原性免疫グロブリンを産生するB細胞(例えば、本明細書に記載のB−1細胞)を対象から除去し、またはそれを不活性化し、それによって対象に存在する病原性免疫グロブリンおよび/またはB細胞の量を減らすことを含む方法を特徴とする。
【0015】
好ましい態様において、除去または不活性化の段階はエクスビボで行われる。1つの態様において、病原性免疫グロブリンまたはB細胞は血液灌流によって除去可能である。さらにもう1つの態様において、B細胞はB細胞特異的抗体(例えば、抗B−1抗体または抗CD5抗体または抗CD11G/CD18)を用いて除去しうる。病原性免疫グロブリン、例えばIgMは、対象からの血液を固定化抗原(例えば、虚血特異的抗原)または固定化した抗イディオタイプ抗体と接触させることによって除去しうる。好ましい態様において、病原性免疫グロブリンの除去または不活性化の段階は、抗イディオタイプ抗体を対象に投与することによって行われる。もう1つの態様において、B細胞の除去または不活性化の段階は、B細胞標的指向性部分(例えば、抗体もしくはその抗原結合断片、または抗原)を毒素、例えばリシンまたはジフテリア毒素と結合させたものを対象に投与することによって行われる。好ましい態様において、対象は哺乳動物、例えばげっ歯動物(例えば、マウス)または霊長動物(例えば、ヒト)である。好ましい態様において、再灌流障害または虚血障害は、例えば脳卒中として、自然に発生した発作の後に結果として生じる。除去の段階は、自然発生性の発作から数分以内、1〜5時間以内、5〜10時間以内、10〜20時間以内、1〜5日以内に行うことが好ましい。好ましい態様において、再灌流障害または虚血障害は心血管組織(例えば心臓)において生じる。
【0016】
もう1つの局面において、再灌流障害または虚血障害は、外科的処置の前、最中および/または後に病原性免疫グロブリンおよび/またはB細胞を対象から除去することによって予防および/または軽減される。例えば、除去の段階は、外科的処置の少なくとも1〜5時間前、5〜10時間前、10〜20時間前、または1、2もしくは3日前に行うことができる。また、除去の段階を外科的処置の最中および後に適した期間にわたって継続することもできる。もう1つの局面において、本発明は、単離された病原性免疫グロブリン、例えば本明細書に記載の病原性IgMを特徴とする。好ましくは、病原性免疫グロブリンは以下の特性のうち1つまたは複数を有する:(i)虚血特異的抗原との相互作用が可能である;(ii)補体を固定することができる;(iii)B細胞のサブポピュレーションによって産生される。好ましい態様において、病原性免疫グロブリンはB細胞のサブポピュレーション、例えばB−1細胞によって産生される。もう1つの態様において、病原性免疫グロブリンは、ATCCに寄託される予定であるアクセッション番号(ATCC寄託番号PTA−3507)のハイブリドーマによって産生される。病原性免疫グロブリンは、配列番号:8に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有しうる。もう1つの態様において、病原性免疫グロブリンは、配列番号:2に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有しうる。もう1つの態様において、病原性免疫グロブリンは、内皮細胞の表面に存在する虚血特異的抗原と相互作用する(例えば、結合する)。
【0017】
もう1つの局面において、本発明は、病原性免疫グロブリン(例えば本明細書に記載の病原性IgM)を特徴とする。好ましい態様において、病原性免疫グロブリンは虚血特異的抗原と相互作用する(例えば、結合する)。病原性免疫グロブリンは、補体を活性化する能力の低いことを特徴としうる。好ましい態様において、病原性免疫グロブリンは、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を有する。例えば、補体の結合および/または活性化に関与するアミノ酸残基の1つまたは複数が変異している。好ましい態様において、ATCCに寄託される予定であるアクセッション番号(ATCC寄託番号PTA−3507)のハイブリドーマによって産生される病原性免疫グロブリンである病原性免疫グロブリン。他の態様において、病原性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域またはその断片を有する。他の態様において、病原性抗体は、配列番号:10の少なくともCDR1領域もしくはその抗原結合部分;および/または配列番号:12の少なくとも1つのCDR2領域もしくはその抗原結合部分を含む。好ましくは、病原性抗体は少なくとも、配列番号:10のCDRl領域および配列番号:12のCDR2領域、またはそれらの抗原結合部分を含む。もう1つの態様において、病原性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域またはその断片を含む。他の態様において、病原性抗体は、配列番号:4の少なくともCDR1領域もしくはその抗原結合部分、および/または配列番号:6の少なくとも1つのCDR2領域もしくはその抗原結合部分を含む。好ましくは、病原性抗体は少なくとも、配列番号:4のCDR1領域および配列番号:6のCDR2領域、またはそれらの抗原結合部分を含む。
【0018】
もう1つの態様において、病原性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号:8に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域またはその抗原結合断片、および配列番号:2に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域またはその抗原結合断片を含む。病原性抗体は、虚血特異的抗原に対する結合親和性が、ATCCに寄託される予定であるアクセッション番号(ATCC寄託番号PTA−3507)のハイブリドーマによって産生される病原性抗体の結合親和性と同程度である、例えばそれよりも高い、低いまたは等しい、ヒト抗体でありうる。もう1つの態様において、病原性抗体は非ヒト抗体、例えばウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタまたはウサギのものでありうる。好ましくは、非ヒト抗体はマウス抗体である。病原性抗体が組換え抗体であってもよい。好ましい態様において、病原性抗体はヒト化抗体である。もう1つの態様において、単離された病原性免疫グロブリンは、ATCCに寄託される予定であるアクセッション番号(ATCC寄託番号PTA−3507)のハイブリドーマによって産生される免疫グロブリンと同じ抗原特異性を有する。
【0019】
もう1つの局面において、本発明は、虚血特異的抗原を単離するための方法であって、病原性免疫グロブリン(例えば本明細書に記載の病原性IgM)を提供すること、虚血特異的抗原を含む試料、例えば生化学的単離物(例えば、内皮細胞単離物)またはタンパク質の集成物(例えば、発現ライブラリー)を病原性免疫グロブリンと、病原性免疫グロブリンと試料との特異的結合が可能な条件下で接触させること、対照と比較して病原性抗体と試料との結合レベルの変化を検出することであって、試料の存在下における病原性免疫グロブリンの結合レベルに対照で検出されたものと比べて変化があることによって特異的結合が示されるような検出、および虚血特異的抗原を試料から単離すること、例えば精製することを含む方法を特徴とする。好ましい態様において、試料は虚血特異的抗原を豊富に含み、例えばこれは再灌流障害または虚血障害のある対象(例えば、ヒト患者)から得られるものである。他の態様において、試料は生化学的単離物、例えば内皮組織、または発現ライブラリー、例えば内皮組織由来のライブラリーである。好ましい態様では、接触の段階はインビトロで行われる。
【0020】
もう1つの局面において、本発明は、病原性免疫グロブリン、例えば病原性IgMと、虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質を1つまたは複数の(例えば、多数の)被験化合物から同定するための方法であって、病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原(例えば、再灌流障害または虚血障害のある対象(例えば、ヒト患者)から採取した内皮組織または可溶化物)を、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下で含む反応混合物を提供すること、病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原を1つまたは複数の被験化合物(例えば、コンビナトリアルライブラリーの構成要素)と接触させること、ならびに被験化合物の非存在下において検出されたものと比べて、所定の被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合の変化を検出することを含み、被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合レベルに被験化合物の非存在下において検出されたものと比べて変化(例えば、低下)があることによって、被験化合物が病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質であることが示されるような方法を特徴とする。好ましい態様において、接触の段階はインビボで行われる。本方法はさらに、病原性免疫グロブリンを1つまたは複数の被験化合物によって前処理することを含みうる。続いて、前処理した病原性免疫グロブリンを、病原性免疫グロブリンが欠損したマウスに注入することができる。
【0021】
もう1つの局面において、本発明は、病原性免疫グロブリン、例えば病原性IgMと、補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質を1つまたは複数の(例えば、多数の)被験化合物から同定するための方法であって、病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下で含む反応混合物を提供すること、病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を1つまたは複数の被験化合物(例えば、コンビナトリアルライブラリーの構成要素)と接触させること、ならびに被験化合物の非存在下において検出されたものと比べて、所定の被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合の変化を検出することを含み、被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合レベルに被験化合物の非存在下において検出されたものと比べて変化(例えば、低下)があることによって、被験化合物が病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質であることが示されるような方法を特徴とする。好ましい態様において、病原性免疫グロブリンは本明細書に記載の病原性IgMであり、虚血特異的抗原は再灌流障害または虚血障害のある対象(例えば、ヒト患者)から採取した内皮組織または可溶化物から得られる。もう1つの態様において、本方法はインビトロで行われる。好ましい態様では、病原性免疫グロブリンまたは虚血特異的抗原のいずれか(または両方)を、検出可能なシグナル、例えば、蛍光団、比色定量用酵素、放射性同位体、発光性化合物などによって標識する。本方法はさらに、少なくとも1つの段階、例えば接触の段階を、ライブラリーの第2の構成要素または次の1つもしくは複数の構成要素を用いて反復することを含む。好ましい態様では、多数の被験化合物、例えば、ライブラリーの複数の構成要素の試験を行う。多数の被験化合物、例えばライブラリーの構成要素は、少なくとも10、10、10、10、10、10、10種または10種の化合物を含みうる。好ましい態様において、多数の被験化合物、例えばライブラリーの構成要素は、共通の構造的または機能的な特徴を有する。被験化合物はペプチドまたは有機低分子でありうる。もう1つの態様において、補体経路は補体の古典経路である。好ましい態様において、補体経路の成分はC1分子またはそのサブユニット(例えば、C1q)である。
【0022】
もう1つの局面において、本発明は、病原性IgM抗体またはその断片をコードする単離された核酸を特徴とする。好ましい態様において、単離された核酸は配列番号:8の軽鎖可変領域をコードする。別の好ましい態様において、核酸配列は、配列番号:10のCDR1を含む軽鎖可変領域またはその抗原結合部分をコードする。別の好ましい態様において、核酸配列は、配列番号:12のCDR2を含む軽鎖可変領域またはその抗原結合部分をコードする。別の好ましい態様において、核酸配列は、配列番号:10のCDR1を含む軽鎖可変領域またはその抗原結合部分、および配列番号:12のCDR2またはその抗原結合部分をコードする。好ましい態様において、本核酸は、マウス由来、ヒト由来またはマウスおよびヒトのアミノ酸配列の組み合わせである軽鎖可変領域をコードする。例えば、本核酸は、配列番号:10のCDR1および/または配列番号:12のCDR2、ならびにヒトフレームワーク配列を含む軽鎖可変領域をコードしうる。
【0023】
さらに他の好ましい態様において、単離された核酸は配列番号:2の重鎖可変領域をコードする。別の好ましい態様において、核酸配列は、配列番号:4のCDR1を含む重鎖可変領域またはその抗原結合部分をコードする。別の好ましい態様において、核酸配列は、配列番号:6のCDR2を含む重鎖可変領域またはその抗原結合部分をコードする。別の好ましい態様において、核酸配列は、配列番号:4のCDR1を含む重鎖可変領域またはその抗原結合部分、および配列番号:6のCDR2またはその抗原結合部分をコードする。好ましい態様において、本核酸は、マウス由来、ヒト由来またはマウスおよびヒトのアミノ酸配列の組み合わせである軽鎖可変領域をコードする。例えば、本核酸は、配列番号:4のCDR1および/または配列番号:6のCDR2、ならびにヒトフレームワーク配列を含む重鎖可変領域をコードしうる。さらにもう1つの態様において、単離された核酸は、配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域の両方を含む。
【0024】
もう1つの局面において、本発明は、単離された核酸分子およびその断片を特徴とする。好ましい態様において、単離された核酸分子は配列番号:7の軽鎖ヌクレオチド配列を含む。もう1つの態様において、核酸分子は、配列番号:9の軽鎖CDR1ヌクレオチド配列またはその一部分を含む。別の好ましい態様において、核酸分子は、配列番号:11の軽鎖CDR2ヌクレオチド配列またはその部分を含む。別の好ましい態様において、核酸分子は配列番号:9の軽鎖CDR1ヌクレオチド配列またはその一部分、および配列番号:11の軽鎖CDR2ヌクレオチド配列またはその部分を含む。軽鎖配列、例えば配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11またはそれらの組み合わせを含む本発明の核酸分子には、それらに対する配列同一性が70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%であるヌクレオチドが含まれる。さらに、軽鎖配列、例えば配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11またはそれらの組み合わせを含む本発明の核酸分子には、ストリンジェントな条件下(例えば低い、中程度、高いまたは極めて高いストリンジェンシーの条件下)でそれらとハイブリダイズするヌクレオチドが含まれる。
【0025】
もう1つの態様において、本発明は、軽鎖ポリペプチド、例えば配列番号:8、配列番号:10および配列番号:12の軽鎖ポリペプチドをコードする核酸分子との配列同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%である核酸分子を特徴とする。もう1つの態様において、本発明は、病原性抗体の軽鎖可変領域またはその部分、例えば配列番号:8、配列番号:10および配列番号:12の軽鎖可変領域をコードする核酸配列とハイブリダイズする核酸分子を特徴とする。
【0026】
さらに他の好ましい態様において、核酸分子は配列番号:1の重鎖ヌクレオチド配列を含む。もう1つの態様において、核酸分子は、配列番号:3の重鎖CDR1ヌクレオチド配列またはその一部分を含む。別の好ましい態様において、核酸分子は、配列番号:5の重鎖CDR2ヌクレオチド配列またはその一部分を含む。別の好ましい態様において、核酸分子は、配列番号:3の重鎖CDR1ヌクレオチド配列またはその一部分、および配列番号:5の重鎖CDR2ヌクレオチド配列またはその一部分を含む。重鎖配列、例えば配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5またはそれらの組み合わせを含む本発明の核酸分子には、それらとの配列同一性が70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%であるヌクレオチドも含まれる。さらに、軽鎖配列、例えば配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5またはそれらの組み合わせを含む本発明の核酸分子には、ストリンジェントな条件下、例えば低い、中程度、高いまたは極めて高いストリンジェンシーの条件下でそれらとハイブリダイズするヌクレオチドが含まれる。
【0027】
もう1つの態様において、本発明は、重鎖ポリペプチド、例えば配列番号:2、配列番号:4および配列番号:6の重鎖ポリペプチドをコードする核酸分子との配列同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%である核酸分子を特徴とする。もう1つの態様において、本発明は、病原性抗体の重鎖可変領域またはその部分、例えば、配列番号:2、配列番号:4および配列番号:6の重鎖可変領域をコードする核酸分子とハイブリダイズする核酸分子を特徴とする。
【0028】
もう1つの局面において、本発明は単離されたポリペプチドおよびその断片を特徴とする。 好ましい態様において、単離されたポリペプチドは、例えば、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12またはそれらの断片もしくは組み合わせ;または配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6またはそれらの断片もしくは組み合わせであるアミノ酸配列を含む。本発明のポリペプチドには、配列番号:8、配列番号:10もしくは配列番号:12;または配列番号:2、配列番号:4もしくは配列番号:6との差異が少なくとも20、10、5、4、3、2または1アミノ酸であるがそれを上回ることはないポリペプチドが含まれる。好ましいポリペプチドは、生物活性、例えば虚血特異的抗原との結合能および/または補体との結合能を保っているポリペプチドである。もう1つの態様において、ポリペプチドには、軽鎖可変領域またはその部分、例えば配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12の軽鎖可変領域ポリペプチドとの配列同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%であるポリペプチドが含まれる。もう1つの態様において、ポリペプチドには、重鎖可変領域またはその部分、例えば配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6の重鎖可変領域ポリペプチドとの配列同一性が少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%および99%であるポリペプチドが含まれる。もう1つの態様において、本発明は、配列番号:8および配列番号:2のアミノ酸配列を含み、IRES配列をさらに含むポリペプチドを特徴とする。
【0029】
もう1つの局面において、本発明は、配列番号:8、配列番号:10もしくは配列番号:12またはそれらの断片もしくは組み合わせ;または配列番号:2、配列番号:4もしくは配列番号:6またはそれらの断片もしくは組み合わせをコードする本発明の核酸分子を含む発現ベクターを提供する。好ましい態様において、発現ベクターは、配列番号:8のアミノ酸配列を含む可変領域を有する抗体軽鎖またはその一部分をコードする核酸分子;および配列番号:2のアミノ酸配列を含む可変領域を有する抗体重鎖またはその一部分をコードするヌクレオチド配列を含む。もう1つの局面において、本発明は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。好ましい態様において、宿主細胞は少なくとも1つもしくは2つまたはそれ以上の発現ベクター、すなわち軽鎖、例えば配列番号:8またはその一部分をコードする1つの発現ベクターおよび重鎖、例えば配列番号:2またはその一部分をコードする1つの発現ベクターを含みうる。もう1つの態様において、宿主細胞は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の両方を発現しうる発現ベクターを含みうる。本明細書で用いる「ベクター」という用語は、それと結合した別の核酸を輸送しうる核酸分子のことを指し、これにはプラスミドベクター、コスミドベクターまたはウイルスベクターが含まれうる。ベクターは自律複製を行うことができるか、または宿主DNAの中に組み込まれうる。ウイルスベクターには例えば、複製能欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが含まれる。
【0030】
本明細書に記載の方法を用いて同定される、病原性免疫グロブリン/虚血抗原および/または病原性免疫グロブリン/補体成分の相互作用に対する阻害物質も本発明の範囲に含まれる。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は一部には、虚血特異的抗原を認識する病原性免疫グロブリン(Ig)、特に病原性IgMの同定に基づく。これらの病原性IgMと虚血特異的抗原との結合は特に補体経路の活性化を誘発し、これは最終的には再灌流障害または虚血障害を引き起こすと考えられている。また本出願者らは、病原性IgMが、本明細書で「B−1細胞」と称するB細胞のサブポピュレーションによって産生されることも見いだした。したがって、本発明は、対象における、病原性免疫グロブリン、例えば病原性IgMによって引き起こされる再灌流後の組織障害を治療または予防するために有用な方法および組成物を提供する。
【0032】
本発明をさらに説明する前に、明細書、実施例および添付する請求の範囲において用いる特定の用語を、便宜を図るためにここにまとめる。
【0033】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は本明細書で互換的に用いられる。
【0034】
本明細書で用いる「免疫グロブリン」(または略語形の「Ig」)および「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって互いに連結した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質のことを指す。各重鎖は、1つの重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記する)および1つの重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCR3という3つのドメインから構成されるか、またはIgMの場合には4つのドメイン、すなわちCH1、CH2、CH3およびCH4から構成される。各軽鎖は1つの軽鎖可変領域および1つの軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域はCLという1つの領域から構成される。VH領域およびVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域が、より保存性の高いフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域の間に散在するものとして細分することができる。各々のVHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順序に並んだ3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域が、免疫グロブリンと、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織または因子との結合を媒介することもある。
【0035】
主な重鎖の種類にはα、β、ε、γおよびμと呼ばれる5つのものがあり、g鎖はさらにγ1、γ2、γ3およびγ4に細分され、α鎖はα1およびα2に細分される。2つの代替的な軽鎖の種類はκおよびλと呼ばれる。重鎖の存在により、免疫グロブリンの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが生じる。IgGはさらにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のサブクラスに細分することができ、IgAはIgA1およびIgA2のサブクラスに細分することができる。
【0036】
本明細書で用いる「免疫グロブリンM」または「IgM」という用語は、5つのIgM単量体がJ鎖によって連結した五量体のことを指す。単量体IgM分子は、上記の免疫グロブリン分子と同じ基本構造を有する。IgMは抗体産生反応において合成される最初の免疫グロブリンである。これは五量体であるために多くの機能ドメインを有しており、このため、補体の強力な活性化物質である。
【0037】
「病原性免疫グロブリン」という用語は、再灌流後の組織障害を媒介する上記の免疫グロブリン分子のことを指す。1つの態様において、病原性免疫グロブリンは、例えば内皮細胞表面または実質組織上に存在する抗原(例えば、虚血特異的抗原)との結合により、内皮表面または実質組織に局在してもよい。内皮表面または実質組織表面に局在すると、病原性免疫グロブリンは免疫細胞(例えば、エフェクター細胞)または古典的補体系の成分、例えばC1qの結合を媒介し、これによって組織障害を誘発する可能性がある。抗体は、IgG(例えば、IgGI、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA1、IgA2、IgA.sub.sec、IgD、またはIgEを含む、種々のアイソタイプのものでありうる。病原性免疫グロブリンは、補体の活性化物質である抗体アイソタイプであることが好ましい。好ましくは、病原性免疫グロブリンはIgMである。病原性免疫グロブリンは好ましくは完全長である(例えば、IgMまたはIgG(例えば、IgG1およびIgG3)抗体)。
【0038】
本明細書で用いる、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」または「断片」)という用語は、抗原(例えば、標的抗原、例えば、虚血抗原)と特異的に結合する能力を保っている、抗体の1つまたは複数の断片のことを指す。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例には、(i) VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)2つのFab断片がヒンジ領域でジスルフィド結合によって結合したものを含む二価断片であるF(ab’)断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;(v)1つのVHドメインからなるdAb断片(Wardら,(1989)Nature 341:544〜546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるものの、それらを組換え法を用いて、VL領域およびVH領域の対が一価分子を形成した一本鎖タンパク質として作製することを可能にする合成リンカーによって連結することもできる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423〜426;およびHustonら(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879〜5883を参照)。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲に含まれるものとする。これらの抗体断片は当業者に知られた従来の技法を用いて得られ、断片の有用性に関するスクリーニングは完全な抗体と同じ様式で行われる。
【0039】
本明細書で用いる「再灌流」とは、例えば虚血の場合のように、血流の狭窄または閉塞の後に血管内の血流が再開することを指す。
【0040】
「虚血再灌流」という用語は、虚血組織の再灌流後に起こる急性炎症反応のことを指す。再灌流は、脳卒中などの自然発生性の発作の後、または血管内の血流を意図的に遮断する外科的処置の最中に生じうる。血管の狭窄または閉塞は、例えば、血管内の血流を遮断する血塊の結果として誘発されることがある。このような状況では内皮の完全性が損なわれ、その結果として凝固カスケードが始まり、新たな塊が生じて、最初に塊が閉塞した部分の下流のより細い毛細血管に詰まる可能性がある。組織障害が起こるのはこの血流再開時である。
【0041】
「免疫グロブリンを介した再灌流障害」とは、免疫グロブリン、例えば病原性免疫グロブリンによって直接的または間接的に媒介される、内皮の完全性の破壊のことを指す。理論に拘束されるものではないが、虚血時には新たな抗原(例えば、虚血特異的抗原)が内皮細胞表面に発現または露出されると考えられている。これらの新たな抗原はその後、障害部位の付近に蓄積した病原性免疫グロブリンによって認識される。この局在性の免疫グロブリンは、例えばエフェクター細胞機能または補体経路の活性化により、内皮組織障害を誘発しうる。
【0042】
本明細書で用いる「虚血」という用語は、臓器または組織への血流の一時的または永続的な欠乏のことを指す。心血管組織では、虚血によって少なくとも2つの心疾患―狭心症および急性心筋梗塞(心発作)が生じる可能性がある。心筋にかかわる虚血は、アテローム性動脈硬化または攣縮などの冠動脈疾患の結果として生じることが典型的である。「虚血障害」という用語は、組織または臓器への血流の一時的または永続的な欠乏によって生じる、例えば組織または臓器における、内皮の完全性の破壊のことを指す。
【0043】
本明細書で用いる「虚血特異的抗原」という用語は、内皮細胞の表面に存在する抗原のことを指す。虚血特異的抗原は、発作、例えば虚血発作に対する反応として発現または露出されることが好ましい。
【0044】
本明細書で用いる「B−1細胞」とは、病原性免疫グロブリンを産生するB細胞のサブポピュレーションのことを指す。一般にB−1細胞はIgDおよびCD23を低レベルで発現し、これらの細胞のかなりの割合は細胞表面タンパク質CD5を発現する(Hardyら(1994)Immunol. Rev. 137、91;Kantorら(1993)Annu. Rev. Immunol. 11、501〜538)。それらは一般に腹膜組織および腸間膜組織に存在し、少なくともマウスでは循環しないように思われる(Herzenbergら(1986)Immunol. Rev. 93:81〜102;Martinら、Cur Op. Immunol. 13:195〜201)。通常のB細胞とは異なり、それらは体細胞超変異および親和性成熟を起こさない。それらは胎児および新生児の発生期間中に生じるようにと思われ、成体骨髄を移植しても容易には再生しない。これらの細胞はさらに、末梢リンパ節および脾臓における頻度が低いこと、ならびに腹腔に主として局在することによっても識別できる。
【0045】
「補体」という用語は、20種を上回るタンパク質(調節因子を含む)から構成されるタンパク質カスケードのことを指す。血液凝固系と同様に、この系の活性化により、プロ酵素がタンパク質分解によって逐次的に活性化されて、細胞表面受容体のリガンド、強力な生理活性ペプチド、および細胞膜に介入して細胞死を招く最終段階複合体が生成される一連のイベントが開始される。その中心的な成分は第三成分すなわちC3である。これは3つの異なる経路、すなわち古典経路、レクチン経路または第二経路によって活性化されうる(Reidら(1981)Semin. Immunopathol. 15:307〜326;Muller−Eberhard(1988)Ann. Rev. Biochem. 57:321〜347)。
【0046】
ある態様において、病原性免疫グロブリンは古典補体経路を介して作用しうる。古典経路は、免疫複合体を形成する抗原と抗体との相互作用によって活性化される。抗体は、自らの抗原と反応した後にのみ、補体との結合または「固定」が可能である。この複合体の形成によって抗体分子のコンフォメーション変化が誘発され、補体第一成分C1の結合部位が露出される。C1は、C1qと命名された3種のポリペプチドの鎖がそれぞれ6本ずつ、ならびに各2本ずつのC1sおよびC1rから構成される多量体化合物である。6本のC1q鎖はそれ自体で「束」状に配列し、4本のC1rおよびC1s分子はカルシウム依存的な相互作用によって結合する。抗体がC1qの2つまたはそれ以上の頭部に結合すると、C1rが切断されて活性型C1r分子が生じ、それがC1sを切断する。C1sは次の補体成分C4を、反応プロセスを継続させるC4b、およびC4aに切断することによって活性化プロセスを進展させる。C4のC4bへの切断によって内部チオエステル結合が露出され、これは水分子の結合によって速やかに不活性化されるが、それが起こらない場合にはこれは細胞表面タンパク質または炭水化物と共有結合を形成することができる。これが起こるとC4bは比較的安定となり、マグネシウム依存的な反応によってC2と結合する。続いてC2はC1sによって切断され、古典経路C3転換酵素として知られる複合体C4b2aを形成する。C3はC4と類似した分子であり、内部チオエステル結合を有する。C3切断によって2つの断片が生じる。このうち小さい方であるC3aには強力な生物特性がある。大きい方のC3bには、この分子とC4b2aとの結合を可能とする不安定な結合部位がある。C3bのC4b2aとの結合は、古典経路の最後の酵素であり、膜侵襲経路の成分であるC5を切断する古典経路C5転換酵素として知られるC4b2a3bの生成をもたらす。
【0047】
もう1つの態様において、病原性免疫グロブリンは補体第二経路を介して作用しうる。第二経路では、C3がC3b、C3bBおよびC3bBbを生じ、C3bBbが続いてC3を切断する。このプロセスは、活性酵素を細菌細胞壁上に安定化させた場合、またはより多くのC3bが古典経路によって生成された場合に加速される。これにより、第二経路C5転換酵素C3bBb3bが生成される。
【0048】
本明細書で用いる「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含むものとする。好ましいヒト動物には、虚血再灌流障害のあるヒト患者が含まれる。本発明の「非ヒト動物」または「非ヒト」には、すべての脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、げっ歯動物、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳動物および非哺乳動物が含まれる。
【0049】
本明細書で用いる「阻害物質」とは、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用を(完全または部分的に)抑制もしくは遮断する;または病原性免疫グロブリンと補体経路の構成要素(例えばC1q)との相互作用を抑制または遮断する、作用物質のことを指す。「相互作用」という用語は、2つまたはそれ以上の分子の物理的結びつき、例えば結合のことを指す。相互作用は直接的でも間接的でもよい。好ましくは、阻害物質は病原性免疫グロブリンの以下の活性のうち1つまたは複数と拮抗する:(i)病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用(例えば、結合)を阻害もしくは抑制する;(ii)病原性免疫グロブリンと補体経路の成分、例えばC1qとの相互作用(例えば、結合)を阻害もしくは抑制する;(iii)例えば免疫グロブリンの隔離および/もしくはその分解のターゲティングにより、病原性免疫グロブリンを中和する;または(iv)病原性免疫グロブリンの産生を阻害もしくは抑制する、例えば病原性抗体の合成、集合および/もしくは翻訳後修飾を阻止する。阻害物質は、タンパク質(例えば、抗体、例えば抗イディオタイプ抗体またはその断片など)、ペプチドまたは有機低分子でありうる。「阻害物質」および「作用物質」という用語は本明細書で互換的に用いられる。
【0050】
本明細書で用いる、阻害物質の「有効量」とは、患者などの対象に対して単回投与または多回投与を行った場合に再灌流障害または虚血障害の軽減または除去に有効な、作用物質の量のことを指す。再灌流障害のこのような軽減または除去は、患者などの対象の生存期間がこのような治療を行わない場合に予想されるよりも延長すること、または対象の予後がこのような治療を行わない場合よりも改善されることに反映されうる。阻害物質を再灌流障害または虚血障害の治療(例えば、既存の障害の軽減または除去)のために用いることもでき、または予防(例えば、発現または再発の発生を遅らせること)のために用いることもできる。当業者は、疾患または障害の重症度、過去の治療、全般的健康状態および/または対象の年齢、ならびに存在する他の疾患を非制限的に含む特定の要因が、対象を効果的に治療するために必要な投与量および時期に影響を及ぼすことを認識していると考えられる。
【0051】
本明細書で用いる「コンセンサス配列」という用語は、関連配列のファミリーにおいて最も高い頻度でみられるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列のことを指す(例えば、Winnaker、「遺伝子からクローンまで(From Genes to Clones)」(Verlagsgesellschaft、Weinheim、Germany 1987を参照)。タンパク質のファミリーにおいて、コンセンサス配列内の各位置は、そのファミリーでその位置に最も高い頻度でみられるアミノ酸によって占められる。2種のアミノ酸が同じ頻度でみられる場合には、そのいずれをコンセンサス配列に含めることもできる。「コンセンサスフレームワーク」とは、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域のことを指す。
【0052】
本明細書で用いる「低ストリンジェンシー条件、中程度のストリンジェンシー条件、高ストリンジェンシー条件または極めて高いストリンジェンシーの条件の下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件のことを指す。ハイブリダイゼーション反応の実施に関する手引きは、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons、N.Y.(1989)、6.3.1〜6.3.6に記載があり、これは参照として組み入れられる。水系および非水系による方法がこの参考文献には記載されており、そのいずれを用いることもできる。本明細書で言及する具体的なハイブリダイゼーション条件は以下の通りである:1)低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、約45℃の6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)に続いて、少なくとも50℃(低ストリンジェンシー条件の場合は洗浄時の温度を55℃まで高めることができる)の0.2X SSC、0.1%SDS中で2回の洗浄;2)中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、約45℃の6X SSCに続いて、60℃の0.2X SSC、0.1%SDS中で1回または複数回の洗浄;3)高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、約45℃の6X SSCに続いて、65℃の0.2X SSC、0.1%SDS中で1回または複数回の洗浄;および好ましくは、4)極めて高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、65℃の0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSに続いて、65℃の0.2X SSC、1%SDS中で1回または複数回の洗浄。極めて高いストリンジェンシーの条件(4)が好ましい条件であり、別に特定しない場合に用いるべきものである。
【0053】
配列間の相同性または配列同一性(これらの用語は本明細書において互換的に用いられる)の算出は、以下の通りに行われる。
【0054】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の一致率を決定するには、最適な比較がなされるように配列を整列化する(例えば、最適な整列化が得られるように、第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列にギャップを挿入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。好ましい態様において、比較のために整列化する参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%であり、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。続いて、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置でアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列のある位置を、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドが占めている場合には、2つの分子はその位置で同一である(本明細書で用いる場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同義である)。
【0055】
2つの配列間の一致率は、2つの配列の最適な整列化を行うために導入する必要のあるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた上で、2つの配列が共有する同一な位置の数の関数である。
【0056】
配列の比較および2つの配列間の一致率の決定は、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。好ましい態様では、2つのアミノ酸配列の間の一致率を、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれているニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)((1970)J. Mol. Biol. 48:444〜453)のアルゴリズムを用い、ブロッサム62行列(Blossum 62 matrix)またはPAM250行列、およびギャップ加重(gap weight)として16、14、12、10、8、6または4、長さ加重(length weight)として1、2、3、4、5または6を用いて決定する。さらに別の好ましい態様では、2つのヌクレオチド配列の間の一致率を、GCGソフトウエアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)を用い、NWSgapdna.CMP行列、およびギャップ加重(gap weight)として40、50、60、70または80、長さ加重(length weight)として1、2、3、4、5または6を用いて決定する。特に好ましいパラメーターのセット(別に特定しない場合に用いるべきもの)としては、ブロッサム62スコア行列を、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4およびフレームシフトギャップペナルティ5で用いる。
【0057】
2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の間の一致率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているマイヤーズ(E. Meyers)およびミラー(W. Miller)のアルゴリズム((1989)CABIOS、4:11〜17)を用い、PAM120加重残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて決定することができる。
【0058】
病原性免疫グロブリンの阻害物質を同定するための方法
1つの局面において、本発明は、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用または病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質を、1つまたは複数の(例えば、多数の)被験化合物から同定するための方法を提供する。阻害物質は、タンパク質(例えば、抗体またはその断片);ペプチド;糖質;糖タンパク質;または有機低分子でありうる。
【0059】
被験化合物のライブラリー
阻害物質は有機低分子、例えばコンビナトリアルライブラリーの構成要素でありうる。
【0060】
1つの態様において、本発明は阻害物質のライブラリーを提供する。コンビナトリアルライブラリーの合成は当技術分野で周知であり、総説もなされている(例えば、E.M. Gordonら、J. Med. Chem.(1994)37:1385〜1401;DeWitt, S. H.;Czarnik, A. W. Acc. Chem. Res.(1996)29:114;Armstrong, R. W.;Combs, A. P.;Tempest, P. A.;Brown, S. D.;Keating, T. A. Acc. Chem. Res.(1996)29:123;Ellman, J. A. Acc. Chem. Res.(1996)29:132;Gordon, E. M.;Gallop, M. A.;Patel, D. V. Acc. Chem. Res.(1996)29、144;Lowe, G. Chem. Soc. Rev.(1995)309、Blondelleら、Trends Anal. Chem.(1995)14:83;Chenら、J. Am. Chem. Soc.(1994)116:2661;米国特許第5,359,115号、第5,362,899号および第5,288,514号;PCT公報・国際公開公報第92/10092号、国際公開公報第93/09668号、国際公開公報第91/07087号、国際公開公報第93/20242号、国際公開公報第94/08051号を参照されたい)。
【0061】
本発明の化合物のライブラリーは、さまざまな方法を用いて調製することができ、そのいくつかは当技術分野で知られている。例えば、「スプリットプール(split−pool)」法を以下のようにして実施することができる:官能基を付与したポリマー性支持体のビーズを多数の反応容器内に入れる;固相ペプチド合成に適したさまざまなポリマー性支持体が知られており、そのいくつかは市販されている(例えば、M. Bodansky「ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis)」第2版、Springer−Verlag、Berlin(1993)を参照されたい)。ビーズのアリコートのそれぞれに対して種々の活性化アミノ酸溶液を添加し、反応を進行させて、多数の固定化したアミノ酸を各反応容器に1つずつ生成させる。続いて、誘導体化したビーズのアリコートを洗浄し、「プール」して(すなわち、まとめて)、ビーズのプールを再び分割し、各アリコートを別々の反応容器に入れる。続いて、ビーズの各アリコートに別の活性化アミノ酸を添加する。この合成サイクルを望ましいペプチド長が得られるまで繰り返す。各合成サイクルに添加するアミノ酸残基は無作為に選択することができる;または、抗体と相互作用しうる既知のペプチド、例えば抗イディオタイプ抗体の抗原結合部位との構造的類似性または相同性があることが知られた阻害物質を得るために、「偏りのある(biased)」ライブラリー、例えば阻害物質の特定の部分が作為的に選択されたライブラリーが得られるようにアミノ酸を選択することもできる。非常に広範囲にわたるペプチド性、ペプチド模倣性または非ペプチド性の化合物が、この方法によって容易に生成されることは理解されるであろう。
【0062】
この「スプリットスプール」法により、本発明の被験化合物のライブラリーの調製に用いうる、ペプチド、例えば阻害物質のライブラリーが得られる。もう1つの例示的な合成においては、ホッブス・デウィット(Hobbs DeWitt)らの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 90:6909(1993))によって「ダイバーソマー(diversomer)ライブラリー」を作製する。ホーテン(Houghten)の「ティーバッグ(teabag)」法(例えば、Houghtenら、Nature 354:84〜86(1991))を含む他の合成法を、本発明による化合物のライブラリーを合成するために用いることもできる。
【0063】
ライブラリーのいずれかの構成要素が望ましい活性を有するか否かを判定するため、および仮に有する場合にはそのような活性種を同定するために、化合物のライブラリーをスクリーニングすることができる。コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングの方法は記載されている(例えば、Gordonら、J. Med. Chem.、前記を参照)。受容体のリガンドを単離するのに適した受容体を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって可溶性化合物のライブラリーをスクリーニングした後に、単離したリガンドを従来の技法(例えば、質量分析、NMRなど)によって同定することができる。固定化した化合物は、化合物を可溶性受容体と接触させることによってスクリーニングが可能である;可溶性受容体は、その検出によってリガンド結合が示される標識(例えば、蛍光団、比色定量用酵素、放射性同位体、発光性化合物など)と結合させることが好ましい。または、固定化した化合物を選択的に遊離させ、膜を通して拡散させて、受容体と相互作用させることもできる。本発明のライブラリーのスクリーニングに有用なアッセイの例は以下に述べる。
【0064】
1つの態様では、本発明の化合物が病原性免疫グロブリンと相互作用する能力に関するスクリーニングを、例えば、標準的な96穴マイクロタイタープレートなどのマルチウェルプレートの1つのウェル内で、被験化合物を免疫グロブリンおよび可溶化物、例えば内皮細胞可溶化物とインキュベートすることにより、各化合物が免疫グロブリンと直接結合する活性または免疫グロブリンと虚血抗原との相互作用を阻害する活性をアッセイすることによって行うことができる。この態様では、個々の化合物のそれぞれの活性を決定することができる。被験化合物を加えていない1つまたは複数のウェルを対照として用いうる。インキュベーションの後に各ウェルをアッセイすることにより、各被験化合物の活性を決定することができる。このようにして、多数の被験化合物の活性を平行して決定することが可能である。
【0065】
タンパク質またはペプチドの阻害物質
タンパク質またはペプチドの阻害物質は、例えば、上記のコンビナトリアルシステムを用いて同定可能である。または、病原性免疫グロブリン、標的抗原または補体経路の成分のいずれかの断片またはペプチドを用いて、これらのタンパク質の間の相互作用を遮断することもできる。
【0066】
「非必須」アミノ酸置換を含む、病原性免疫グロブリン、標的抗原または補体経路の成分のいずれかの断片またはペプチドの変種も本発明の範囲に含まれる。非必須アミノ酸置換とは、生物活性を消失させずに、または好ましくは実質的に変化させずに野生型配列を変更することであり、一方、「必須」アミノ酸残基はこのような変化を引き起こす。
【0067】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されたもののことである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。このため、病原性免疫グロブリン内部の予想される非必須アミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーに属する別のアミノ酸残基によって選好的に置換することができる。または、もう1つの態様では、飽和変異誘発法などにより、病原性免疫グロブリンのコード配列の全体または一部に沿って変異を無作為に導入し、その結果得られた変異体を生物活性に関してスクリーニングすることができる。
【0068】
もう1つの局面において、本発明は、例えばアゴニストまたはアンタゴニストとして機能する、改変された病原性免疫グロブリンも特徴とする。改変された病原性免疫グロブリンは、補体活性化に対するアンタゴニストとして機能することが好ましい。病原性免疫グロブリンの変種は、変異誘発、例えば離散的点変異、配列の挿入もしくは除去または病原性免疫グロブリンの切断によって作製することができる。病原性免疫グロブリンのアゴニストは、天然型のタンパク質と実質的に同じ生物活性、またはそのサブセットを保持しうる。病原性免疫グロブリンのアンタゴニストは、例えば、虚血特異的抗原との結合は可能であるが補体経路を活性化することはできないことにより、天然型の病原性免疫グロブリンの1つまたは複数の活性を阻害しうる。このように、機能が限定された変種を投与することにより、特定の生物学的作用を誘発させることができる。
【0069】
1つの態様では、C1qと結合する病原性免疫グロブリン(例えば、病原性IgM)内部の部位を変異させ、C1qと結合できないようにすることができる。例えば、C1qの結合部位を含むことが知られているIgGのC2ドメインおよびIgMのC4ドメインを変異させることが可能である(国際公開公報第94/29351号を参照)。例えば、C1q結合およびその後の補体活性化を媒介すると思われるIgGのC2ドメインのカルボキシル末端側の半分(残基231〜239、好ましくは234〜239の内部)を変異させることができる。別の例として、ライト(Wright)らは、IgM定常領域ドメイン内の単一ヌクレオチドの変化により、抗体が補体依存性細胞溶解を惹起する能力を失うことを示した。この単一ヌクレオチドの変化は、第3の定常ドメイン内のアミノ酸位置436に正常なプロリン残基の代わりにセリン残基を生じさせる(Wrightら1988、J. Biol. Chem. 263:11221)。補体結合性または活性を変化させる目的で抗体に加えることができるアミノ酸置換は当技術分野で周知である(例えば、Wrightら、1988、J. Biol. Chem. 263:11221;Shulmanら(1986)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7678〜7682;Aryaら(1994)J. Immunol. 253:1206〜1212;Poonら(1995)J Biol. Chem. 270:8571〜8577を参照されたい。これらのすべての内容は参照として本明細書に組み入れられる)。したがって、1つの態様において、本発明の抗体は補体結合性または活性を変化させる変異を有する。アミノ酸が付加、除去または置換された抗体を、本明細書では改変された抗体(modified antibody)または改変抗体(altered antibody)と呼ぶ。当業者には理解されると思われるが、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列にこのような変化を生じさせるために用いられる方法は、求める結果に応じてさまざまであると考えられる。
【0070】
病原性免疫グロブリンの変種は、病原性免疫グロブリンの変異体、例えば切断変異体のコンビナトリアルライブラリーを、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性に関してスクリーニングすることによって同定可能である。
【0071】
病原性免疫グロブリンコード配列のN末端、C末端または内部断片などの断片のライブラリーは、本タンパク質の変種のスクリーニングおよびその後の選択を目的として断片の多様化した集団を作製するために用いることができる。システイン残基が付加もしくは除去された変種、またはグリコシル化された残基が付加もしくは除去された変種が特に好ましい。
【0072】
点変異または切断によって作製したコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物のスクリーニングのため、および選択した特性を有する遺伝子産物に関するDNAライブラリーのスクリーニングのための方法。機能的変異体の頻度を高める技法である反復帰納的変異誘発法(recursive ensemble mutagenesis)(REM)を、変種を同定するためのスクリーニングアッセイ法と併用することができる(ArkinおよびYourvan(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7811〜7815;Delgraveら(1993)Protein Engineering 6(3):327〜331)。
【0073】
細胞系アッセイを多様化ライブラリーの分析に用いることができる。例えば、発現ベクターのライブラリーを細胞系、例えば、タンパク質に対して基質依存的な様式で通常反応する細胞系に対してトランスフェクトする。続いて、病原性免疫グロブリン−基質によるシグナル伝達の阻害または増強が認められる細胞からプラスミドDNAを収集し、個々のクローンの特徴をさらに調べることができる。
【0074】
もう1つの局面において、本発明は、病原性免疫グロブリン、例えば野生型と異なる活性を有する病原性免疫グロブリン、例えば天然の病原性免疫グロブリンのアンタゴニスト、アゴニストまたはスーパーアゴニストの作製方法を特徴とする。本方法は以下を含む:病原性免疫グロブリンの配列を、例えば本明細書に開示する非保存的領域、ドメインまたは残基の1つまたは複数の残基の置換または除去によって改変すること、および改変ポリペプチドを望ましい活性に関して試験すること。
【0075】
もう1つの局面において、本発明は、天然の病原性免疫グロブリンとは変化した生物活性を有する、病原性免疫グロブリンの断片または類似体の作製方法を特徴とする。本方法は以下を含む:病原性免疫グロブリンの配列を、例えばその1つまたは複数の残基の配列の置換または除去によって改変すること、例えば本明細書に記載の非保存的領域、またはドメインもしくは残基の配列を改変すること、および改変ポリペプチドを望ましい活性に関して試験すること。
【0076】
免疫グロブリンの作製
他の態様において、阻害物質は抗体またはその断片、例えば抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合部分でありうる。
【0077】
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、単一の分子組成からなる抗体分子のことを指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体のことを指す。1つの態様において、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を不死化細胞と融合させたものを含むハイブリドーマによって産生される。
【0078】
抗体の作製の方法は当技術分野で周知である。例えば、ある標的(例えば、病原性免疫グロブリンまたは細胞上の虚血特異的抗原)に対するモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えばケーラー(Kohler)およびミルシュタイン(Milstein)、Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション法を含む、さまざまな技法によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーションの手順が好ましいものの、原理的には、モノクローナル抗体を作製するための他の技法、例えば、Bリンパ球のウイルストランスフォーメーションまたは発癌トランスフォーメーションも用いうる。ハイブリドーマの調製のために好ましい動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマの作製は非常に確立した手順である。免疫処置のプロトコール、および免疫処置を受けた融合用の脾細胞の単離のための技法は当技術分野で知られている。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順も知られている。
【0079】
ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスをマウス系の代わりに用いて作製することができる。関心対象の抗原による免疫処置を行ったこれらのトランスジェニックマウスからの脾細胞を、ヒトタンパク質由来のエピトープに対する特異的親和性を備えたヒトmAbを分泌するハイブリドーマの作製に用いうる(例えば、Woodら、国際出願・国際公開公報第91/00906号、Kucherlapatiら、PCT公報・国際公開公報第91/10741号;Lonbergら、国際出願・国際公開公報第92/03918号;Kayら、国際出願第92/03917号;Lonberg, N.ら、1994、Nature 368:856〜859;Green, L.L.ら、1994、Nature Genet. 7:13〜21;Morrison, S.L.ら、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851〜6855;Bruggemanら、1993、Year Immunol 7:33〜40;Tuaillonら、1993、PNAS 90:3720〜3724;Bruggemanら、1991、Eur J Immunol 21:1323〜1326を参照)。
【0080】
1つの態様においては、ハイブリドーマをヒトCD5+、B−1細胞から作製することができる。または、交差反応性「虚血抗原」を認識する「ヒト化」マウスハイブリドーマを用いることもできる。
【0081】
モノクローナル抗体を、組換えDNA技術の分野の当業者に知られた他の方法によって作製することもできる。特定の抗原特異性を有する抗体断片の同定および単離のために「コンビナトリアル抗体ディスプレイ」法と呼ばれる1つの代替的な方法が開発されており、これをモノクローナル抗体の作製に用いることができる(コンビナトリアル抗体ディスプレイ法の説明については、例えば、Sastryら、1989、PNAS 86:5728;Huseら、1989、Science 246:1275;およびOrlandiら、1989、PNAS 86:3833を参照されたい)。上記の免疫原を動物に接種した後に、その結果得られたB細胞プールの抗体レパートリーのクローニングを行う。免疫グロブリン分子の多様な集団の可変領域のDNA配列を、オリゴマープライマーの混合物およびPCRを用いることによって入手するための方法は一般に知られている。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列に対応する混合オリゴヌクレオチドプライマー、ならびに保存的な3’定常領域プライマーに対するプライマーを用いて、さまざまなマウス抗体から重鎖および軽鎖可変領域のPCR増幅を行うことができる(Larrickら、1991、Biotechniques 11:152〜156)。同様の手法を用いて、ヒト抗体からヒト重鎖および軽鎖可変領域を増幅することもできる(Larrickら、1991、Methods:Companion to Methods in Enzymology 2:106〜110)。
【0082】
1つの例示的な態様では、標準的なプロトコール(例えば、米国特許第4,683,202号;Orlandiら、PNAS(1989)86:3833〜3837;Sastryら、PNAS(1989)86:5728〜5732;およびHuseら(1989)Science 246:1275〜1281)を用いて、Bリンパ球、例えば末梢血細胞、骨髄または脾臓調製物からRNAを単離する。重鎖の定常領域ならびにκおよびλ軽鎖のそれぞれに対して特異的なプライマー、さらにはシグナル配列に対するプライマーを用いて、第一鎖cDNAを合成する。可変領域PCRプライマーを用いて、重鎖および軽鎖の双方の可変領域をそれぞれ単独でまたは組み合わせとして増幅し、ディスプレイパッケージの作製における操作をさらに行うために適切なベクター中に連結する。増幅プロトコールにおいて有用なオリゴヌクレオチドプライマーは一意的なものでも縮重性のものでもよく、または縮重した位置にイノシンを組み込んだものでもよい。増幅断片を発現のためにベクター中の所定のリーディングフレーム内にクローニングすることが可能となるように、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をプライマーに組み入れてもよい。
【0083】
免疫処置に由来する抗体レパートリーからクローニングしたV−遺伝子ライブラリーを、好ましくは繊維状ファージに由来するディスプレイパッケージの集団により発現させ、抗体ディスプレイライブラリーを生成させることができる。理想的には、ディスプレイパッケージは、極めて大規模な多様化抗体ディスプレイライブラリーのサンプリング、各々の親和性分離の工程後の迅速な選別、および精製したディスプレイパッケージからの抗体遺伝子の容易な単離を可能とするシステムを含む。ファージディスプレイライブラリーを作製するための市販のキット(例えば、Pharmacia社の組換えファージ抗体システム、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene社のSurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)のほかに、多様化抗体ディスプレイライブラリーの作製における使用に特に適した方法および試薬の例は、例えば、ラドナー(Ladner)ら、米国特許第5,223,409号;カン(Kang)ら、国際公開公報第92/18619号;ダワー(Dower)ら、国際公開公報第91/17271号;ウィンター(Winter)ら、国際公開公報第92/20791号;マークランド(Markland)ら、国際公開公報第92/15679号;ブライトリング(Breitling)ら、国際公開公報第93/01288号;マッカファティ(McCafferty)ら、国際公開公報第92/01047号;ガラード(Garrard)ら、国際公開公報第92/09690号;ラドナー(Ladner)ら、国際公開公報第90/02809号;フックス(Fuchs)ら(1991)Bio/Technology :1370〜1372;ヘイ(Hay)ら(1992)Hum Antibod Hybridomas :81〜85;ヒューズ(Huse)ら(1989)Science 246:1275〜1281;グリフィス(Griffths)ら(1993)EMBO J 12:725〜734;ホーキンス(Hawkins)ら(1992)J Mol Biol 226:889〜896;クラックソン(Clackson)ら(1991)Nature 352:624〜628;グラム(Gram)ら(1992)PNAS 89:3576〜3580;ガラード(Garrad)ら(1991)Bio/Technology :1373〜1377;フーゲンブーム(Hoogenboom)ら(1991)Nuc Acid Res 19:4133〜4137;およびバーバス(Barbas)ら(1991)PNAS 88:7978〜7982に記載されている。
【0084】
ある種の態様では、重鎖および軽鎖のV領域ドメインを柔軟なリンカーにより連結した同一ポリペプチド上で発現させて一本鎖Fv断片を形成させ、その後にこの一本鎖Fv断片(scFV)遺伝子を望ましい発現ベクターまたはファージゲノム中にクローニングすることができる。マッカファティ(McCafferty)ら、Nature(1990)348:552〜554に一般的に記載された通り、柔軟な(Gly−Ser)リンカーによって連結した抗体の完全なVおよびVドメインを用いて、ディスプレイパッケージを抗原親和性に基づいて分離できるようにする一本鎖抗体を作製することができる。続いて、抗原に対する免疫反応性のある単離されたscFV抗体を、本方法に用いるための薬学的調製物として製剤化することができる。
【0085】
ディスプレイパッケージ(例えば、繊維状ファージ)の表面に提示されたところで、標的抗原に対する特異性を有する抗体を発現するパッケージの同定および単離のために、抗体ライブラリーを標的抗原またはそのペプチド断片を用いてスクリーニングする。選択した抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージ(例えば、ファージゲノム)から回収し、標準的な組換えDNA法によって他の発現ベクターへのサブクローニングを行うことができる。
【0086】
表面タンパク質に対する高い親和性を有する特異的抗体分子は、当技術分野で知られた方法、例えばライブラリーのスクリーニングを用いる方法に従って作製することができる(Ladner, R.C.ら、米国特許第5,233,409号;Ladner, R.C.ら、米国特許第5,403,484号)。さらに、これらのライブラリーの方法を、抗体の構造決定基の模倣物である結合性決定基を入手するためのスクリーニングに用いることもできる。
【0087】
特に、個々の抗体分子のFv結合表面はタンパク質間相互作用の原理に従ってその標的リガンドと相互作用するため、VおよびV(後者はκ鎖のものでもλ鎖のものでもよい)に関する配列データは、当業者に知られたタンパク質工学の技法の基盤となる。結合性決定基を含むタンパク質表面に関する詳細は、NMR試験または結晶学的データから得られた他の抗体の以前に決定された三次元構造を用いるモデル化手順により、抗体の配列情報から得ることができる。例えば、バジョラス(Bajorath, J.)およびシェリフ(S. Sheriff) 、1996、Proteins:Struct., Funct., および Genet. 24(2)、152〜157;ウェブスター(Webster, D.M.)およびリース(A. R. Rees)、1995、「抗体結合部位の分子モデリング(Molecular modeling of antibody−combining sites)、ポール(S. Paul)編、Methods in Molecular Biol. 51、「抗体工学のプロトコール(Antibody Engineering Protocols)」、Humana Press、Totowa、NJ、pp 17〜49;ならびにジョンソン(Johnson, G.)、ウー(Wu, T.T.)およびカバット(E.A. Kabat)、1995、「Seqhunt:整列化したヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のスクリーニング用のプログラム(Seqhunt:A program to screen aligned nucleotide and amino acid sequences)」、Methods in Molecular Biol. 51、前掲書中、pp 1〜15を参照されたい。
【0088】
1つの態様では、多様化したペプチドライブラリーをディスプレイパッケージの集団により発現させて、ペプチドディスプレイライブラリーを生成させる。理想的には、ディスプレイパッケージは、極めて大規模な多様化抗体ディスプレイライブラリーのサンプリング、各々の親和性分離の工程後の迅速な選別、および精製したディスプレイパッケージからの抗体遺伝子の容易な単離を可能とするシステムを含む。ペプチドディスプレイライブラリーは例えば、迅速増幅が可能であり、操作が比較的容易であって、多数のクローンの作製が可能な原核生物およびウイルスでありうる。好ましいディスプレイパッケージには例えば、増殖性細菌細胞、細菌胞子、および最も好ましくは細菌ウイルス(特にDNAウイルス)が含まれる。しかし、本発明は、酵母およびその胞子を含む真核細胞をディスプレイパッケージの可能性があるものとして用いることも考えている。ファージディスプレイライブラリーについては先に述べた。
【0089】
他の技法には、適した「受容体」、例えば標的抗原を用いるアフィニティークロマトグラフィーの後に、単離された結合性物質またはリガンドを従来の技法(例えば、質量分析およびNMR)によって同定することが含まれる。好ましくは、可溶性受容体を、その検出によってリガンド結合が示されるような標識(例えば、蛍光団、比色定量用酵素、放射性同位体または発光性化合物)と結合させる。または、固定化した化合物を選択的に遊離させ、膜を通して拡散させて、受容体と相互作用させることもできる。
【0090】
化合物のコンビナトリアルライブラリーを、ライブラリーの各構成要素の実体を符号化するための「タグ」付きで合成することもできる(例えば、W.C. Stillら、国際出願・国際公開公報第94/08051号を参照)。本方法は一般に、固体支持体または化合物に結合させた、不活性ではあるが容易に検出可能なタグを用いることを特徴する。活性化合物が検出された場合には、一意的な随伴タグの同定によって化合物の実体を決定する。このタグ標識法により、極めて低いレベルでもライブラリーのすべての化合物の全集合からの同定が可能な化合物の大規模ライブラリーを合成することが可能となる。
【0091】
「改変された抗体」という用語は、抗体の部分の除去、付加または置換などによって改変された、モノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体を含むものとする。例えば、抗体は、ヒンジ領域を除去し、それにより一価抗体を作製することによって改変しうる。本発明の抗体は、可変領域またはその一部、例えば相補性決定領域(1つまたは複数のCDR)が、非ヒト生物、例えばラットまたはマウスにおいて産生されるものでありうる。キメラ抗体、CDRグラフト(CDR−grafted)抗体およびヒト化抗体は本発明の範囲に含まれる。非ヒト生物(例えばラットまたはマウス)において産生され、その後、ヒトにおける抗原性を低下させるために、例えば可変フレームワークまたは定常領域抗体に改変がなされた抗体は、本発明の範囲に含まれる。抗体が少なくとも1つの抗原結合部分を有する限り、あらゆる改変が本発明の範囲に含まれる。
【0092】
キメラ抗体(例えば、マウス−ヒトモノクローナル抗体)は、当技術分野で知られた組換えDNA技術によって作製可能である。例えば、マウス(または他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を、マウスFcをコードする領域を除去するために制限酵素で消化し、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の同等な部分によって置換する(Robinsonら、国際特許公報PCT/US86/02269号;Akiraら、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi, M.、欧州特許出願第171,496号;Morrisonら、欧州特許出願第173,494号;Neubergerら、国際出願・国際公開公報第86/01533号;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許出願第125,023号;Betterら(1988、Science 240:1041〜1043);Liuら(1987)PNAS 84:3439〜3443;Liuら、1987、J. Immunol. 139:3521〜3526;Sunら(1987)PNAS 84:214〜218;Nishimuraら、1987、Canc. Res. 47:999〜1005;Woodら(1985)Nature 314:446〜449;およびShawら、1988、J Natl Cancer Inst. 80:1553〜1559を参照のこと)。
【0093】
抗原結合に直接には関与しないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域由来の同等な配列によって置換することにより、キメラ抗体をさらにヒト化することができる。ヒト化抗体を作製するための一般的な方法は、モリソン(Morrison, S. L.)、1985、Science 229:1202〜1207、オイ(Oi)ら、1986、Biotechniques 4:214、およびクイーン(Queen)ら、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号および米国特許第5,693,762号に提示されており、これらのすべての内容は参照として本明細書に組み入れられる。このような方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つに由来する免疫グロブリンFv可変領域の全体または一部をコードする核酸配列を単離し、操作し、発現させることを含む。このような核酸の源は当業者に周知であり、例えば、抗GPIIIII抗体を産生するハイブリドーマである7E3から入手可能である。続いて、キメラ抗体またはその断片をコードする組換えDNAを適切な発現ベクター中にクローニングすることができる。または、適したヒト化抗体をCDR置換によって作製することもできる。米国特許第5,225,539号;ジョーンズ(Jones)ら、1986、Nature 321:552〜525;バーホエアン(Verhoeyan)ら、1988、Science 239:1534;およびバイドラー(Beidler)ら、1988、J. Immunol. 141:4053〜4060。
【0094】
ヒト化抗体またはCDRグラフト抗体は、免疫グロブリン鎖の1つ、2つまたはすべてのCDRを置換することが可能なCDRグラフト法またはCDR置換によって作製することができる。例えば、米国特許第5,225,539号;ジョーンズ(Jones)ら、1986、Nature 321:552〜525;バーホエアン(Verhoeyan)ら、1988、Science 239:1534;およびバイドラー(Beidler)ら、1988、J. Immunol. 141:4053〜4060;ウィンター(Winter)、米国特許第5,225,539号を参照されたい。これらのすべての内容は参照として本明細書に明示的に組み入れられる。ウィンター(Winter)は、本発明のヒト化抗体の調製に用いうるCDRグラフト法を記載しており(1987年3月26日に提出された英国特許出願第GB 2188638A号、Winter、米国特許第5,225,539号)、その内容は参照として明白に開示される。
【0095】
ヒト化抗体またはCDRグラフト抗体は、少なくとも1つまたは2つの、しかし一般的にはすべてのレシピエントCDR(免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の)がドナーCDRによって置換されていると考えられる。ドナーは齧歯類抗体、例えば、ラットまたはマウスの抗体であり、レシピエントはヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークであることが好ましい。一般に、CDRを提供する免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供する免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。1つの態様において、ドナー免疫グロブリンは非ヒト(例えば、齧歯類)のものである。アクセプターのフレームワークは天然(例えば、ヒト)のフレームワークまたはコンセンサスフレームワークでもよく、それとの同一性が約85%またはそれ以上、好ましくは90%、95%、99%またはそれ以上である配列でもよい。
【0096】
特定の抗体のすべてのCDRを非ヒトCDRの少なくとも一部によって置換してもよく、CDRのいくつかのみを非ヒトCDRによって置換してもよい。必要なのは、ヒト化抗体のFc受容体との結合に必要な数のCDRを置換することのみである。
【0097】
特定のアミノ酸が置換、除去または付加されたキメラ抗体およびヒト化抗体も本発明の範囲に含まれる。特に、好ましいヒト化抗体は、抗原との結合性を改善するためにフレームワーク領域にアミノ酸置換を有する。例えば、ヒト化抗体は、ドナーのフレームワーク残基またはレシピエントのフレームワーク残基以外の別のアミノ酸と同一なフレームワーク残基を有すると考えられる。もう1つの例として、マウスCDRを有するヒト化抗体の場合には、ヒトフレームワーク領域に位置するアミノ酸を、マウス抗体の対応する位置にあるアミノ酸によって置換することができる。ある種の場合には、このような置換がヒト化抗体の抗原との結合性を改善させることが知られている。
【0098】
本明細書で用いる「抗原結合部分」または「抗体部分」または「断片」という用語は、抗原(例えば、標的抗原、例えば、虚血抗原)と特異的に結合する能力を保っている、抗体の1つまたは複数の断片のことを指す。本発明の抗体断片は、当業者に知られた従来の手順を用いて得られる。例えば、ペプシンで抗体を消化すると、F(ab’)断片および多数の小さな断片が得られる。抗体のメルカプトエタノール還元により、個々の重鎖および軽鎖が得られる。抗体をパパインで消化すると、個々のFab断片およびFc断片が得られる。上記の通り、抗体断片の有用性に関するスクリーニングは完全な抗体と同じ様式で行う。
【0099】
22A5 IgM重鎖可変領域のヌクレオチド配列を図4A(配列番号:1)に示し、22A5 IgM重鎖可変領域のアミノ酸配列を図5Aに示す(配列番号:2)。重鎖可変領域のCDR1ドメインは配列番号:2のアミノ酸約30番目〜34番目(配列番号:4)に対応しており、配列番号:1のヌクレオチド約91位〜105位(配列番号:3)を含み、重鎖可変領域のCDR2ドメインは配列番号:2のアミノ酸49番目〜65番目(配列番号:6)に対応しており、配列番号:1のヌクレオチド148位〜198位(配列番号:5)を含む。
【0100】
22A5 IgM軽鎖可変領域のヌクレオチド配列図4B(配列番号:7)に示し、22A5 IgM軽鎖可変領域のアミノ酸配列を図5B(配列番号:8)に示す。軽鎖可変領域のCDR1ドメインは配列番号:8のアミノ酸約23番目〜33番目(配列番号:10)に対応しており、配列番号:7ヌクレオチド約71位〜103位(配列番号:9)を含み、軽鎖可変領域のCDR2ドメインは配列番号:8のアミノ酸約49番目〜55番目(配列番号:12)に対応しており、配列番号:7のヌクレオチド約149位〜169位(配列番号:11)を含む。
【0101】
本発明の抗体またはその断片(例えば、CDR2ドメインなどのCDRドメイン、または断片)をコードするヌクレオチド配列を、遺伝暗号および標準的な分子生物学の技法を用いて、本出願に記載のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列から導き出せることを当業者は理解すると考えられる。さらに、当業者は、遺伝暗号の縮重性のために、他のヌクレオチド配列が本明細書に挙げたアミノ酸配列を列挙しうることも理解すると考えられる。
【0102】
本発明の核酸組成物は、天然の配列(改変された制限部位などを除く)であることがしばしばであるが、遺伝子配列を得るための標準的な技法に従ってcDNA、ゲノムまたは混合物から変異させてもよい。コード配列の場合、これらの変異はアミノ酸配列に要望通りの影響を及ぼすことがある。特に、天然のV、D、J、定常領域、スイッチおよび本明細書に記載の他のこのような配列と実質的に同一な、またはそれらに由来するヌクレオチド配列を考えている(ここで「由来する」とは、配列が他の配列と同一であるか、またはそれから改変されたことを意味する)。
【0103】
1つの態様において、単離された核酸は、図4Aに示したヌクレオチド配列を有する22A5 IgM重鎖可変領域ヌクレオチド配列(配列番号:1)、またはそれとの同一性が少なくとも96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上である配列を含む。もう1つの態様において、単離された核酸は、図4Bに示したヌクレオチド配列を有する22A5 IgM軽鎖可変領域ヌクレオチド配列(配列番号:7)、またはそれとの同一性が少なくとも96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上である配列を含む。
【0104】
もう1つの態様において、本発明は、配列番号:4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1ドメイン、またはその断片もしくは改変型をコードする、単離された核酸を提供する。本核酸はCDR1領域のみをコードすることもでき、または抗体重鎖可変領域全体をコードすることもできる。例えば、本核酸は、配列番号:6のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインを有する重鎖可変領域をコードしうる。さらにもう1つの態様において、本発明は、配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2ドメイン、またはその断片もしくは改変型をコードする、単離された核酸を提供する。本核酸はCDR2領域のみをコードすることもでき、または抗体重鎖可変領域全体をコードすることもできる。例えば、本核酸は、配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメインを有する軽鎖可変領域をコードしうる。
【0105】
さらにもう1つの態様において、本発明は、配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1ドメイン、またはその断片もしくは改変型をコードする、単離された核酸を提供する。本核酸はCDR1領域のみをコードすることもでき、または抗体軽鎖可変領域全体をコードすることもできる。例えば、本核酸は、配列番号:12のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインを有する軽鎖可変領域をコードしうる。さらにもう1つの態様において、本発明は、配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2ドメイン、またはその断片もしくは改変型をコードする、単離された核酸を提供する。本核酸はCDR2領域のみをコードすることもでき、または抗体軽鎖可変領域全体をコードすることもできる。例えば、本核酸は、配列番号:10のアミノ酸配列を含むCDR1ドメインを有する軽鎖可変領域をコードしうる。
【0106】
薬学的組成物および投与
本発明の阻害物質を、対象への投与に適した薬学的組成物に組み入れることができる。典型的な例として、薬学的組成物は、本発明の阻害物質(例えば、改変された病原性免疫グロブリン)および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いる「薬学的に許容される担体」には、生理的な適合性のある任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張液および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される担体の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせのうち1つまたは複数が含まれる。多くの場合には、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコ−ル、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましいと考えられる。薬学的に許容される担体が、抗体または抗体部分の貯蔵寿命または有効性を増大させる、湿潤剤もしくは乳化剤、保存料または緩衝剤などの微量の補助物質をさらに含んでもよい。
【0107】
薬学的組成物は、その意図する投与経路と適合しうるように製剤化される。投与経路の例には、静脈内、皮内、皮下、経口(吸入など)、経皮(局所)、経粘膜および直腸内投与などの非経口的なものが含まれる。このように、本発明の組成物はさまざまな剤形をとりうる。これらには例えば、溶液(例えば、注射用および注入用の液剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、粉剤、リポソームおよび坐剤などの液体、半固体、固体の剤形が含まれる。好ましい剤形は、意図する投与様式および治療用途に応じて決まる。典型的な好ましい組成物は、ヒトに対する他の抗体による受動免疫処置に用いられるものと類似した組成物などの注射用および注入用の液剤の剤形である。好ましい投与様式は、非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)なものである。好ましい態様では、抗体を静脈内注入または注射によって投与する。別の好ましい態様では、抗体を筋肉内注射または皮下注射によって投与する。
【0108】
非経口的、皮内または皮下適用のために用いられる液剤または懸濁剤は以下の成分を含みうる:注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈液;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または重硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸鉛、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性を調整するための薬剤。pHは塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調整しうる。非経口製剤は、アンプル、ディスポーザルシリンジまたはガラスもしくは合成樹脂製の多回投与用バイアル中に封入することができる。
【0109】
注射用に適した薬学的組成物には、滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の要時調合用製剤(extemporaneous preparation)のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために適した担体には、生理食塩水、滅菌精製水、クレモフォア(Cremophor)EL(商標)(BASF;Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、シリンジ注入が容易に行える程度に流動的である必要がある。それは製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護される必要がある。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびその適した混合物などを含む溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合には必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持しうる。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌薬および抗真菌薬によって実現しうる。多くの場合には、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコ−ル、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる薬剤を組成物中に含めることによって実現しうる。
【0110】
治療的組成物は一般に、無菌である上、製造および保存の条件下で安定性がある必要がある。本組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散系、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序立った構造として製剤化することができる。滅菌注射用溶液は、必要な量の活性化合物(すなわち、抗体または抗体部分)を、必要に応じて上に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに適した溶媒中に組み入れた後に濾過滅菌を行うことによって調製しうる。分散液は一般に、基本的な分散媒、および上記に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌媒体中に活性化合物を含めることによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、好ましい調製の方法は、活性成分の粉末に加えて、あらかじめ滅菌濾過された溶液から望ましい任意の付加的な成分が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用により、分散系の場合には必要な粒径を保つことにより、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0111】
本発明の阻害物質は、当技術分野で知られたさまざまな方法によって投与することができるが、多くの治療的用途に対して好ましい投与の経路/様式は静脈内への注射または注入である。当業者は理解すると考えられるが、投与の経路および/または様式は求める結果に応じて異なると考えられる。ある種の態様においては、活性化合物を、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル封入送達系を含む制御放出型製剤などの、急速放出から化合物を保護すると思われる担体とともに調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性の重合体を用いることもできる。このような製剤を調製するための多くの方法は特許が取得されており、当業者に広く知られている。例えば、徐放性および制御放出型の薬物送達系(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)、ロビンソン(J.R. Robinson)編、Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0112】
ある種の態様では、本発明の阻害物質を、例えば不活性希釈剤または可食担体とともに経口投与してもよい。化合物(および必要に応じて他の成分)を硬もしくは軟ゼラチンカプセル内に封入すること、圧縮して錠剤にすること、または対象の食事に直接組み入れることも可能である。経口的治療投与の目的には、化合物を賦形剤とともに組み入れ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、カシェ剤などの形態で用いることができる。非経口的投与以外によって本発明の化合物を投与するためには、化合物をその失活を防ぐ物質でコーティングすること、または化合物をそれとともに同時投与することが必要なことがある。吸入による投与のためには、化合物は、二酸化炭素などのガスなどの適した噴霧剤を含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾル噴霧の形態で送達される。
【0113】
本発明の阻害物質は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル封入送達系を含む制御放出型製剤などの、身体からの急速放出から化合物を保護すると思われる担体とともに調製することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性の重合体を用いることもできる。このような製剤を調製するための方法は当業者には明らかであると考えられる。これらの物質を、アルザ社(Alza Corporation)およびノバファーマシューティカルズ社(Nova Pharmaceuticals, Inc.)から購入することもできる。リポソーム懸濁液を薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは当業者に知られた方法、例えば米国特許第4,522,811号の記載に従って調製することができる。
【0114】
本薬学的組成物は、投与のための指示とともに、容器、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
【0115】
実施例
実施例1:虚血再灌流障害の機序
本実施例では、補体系に欠損のあるマウスが虚血再灌流障害に対して抵抗性であったことを示す。
【0116】
虚血再灌流障害の機序を検討するために、補体C3が欠損したマウスに対して後肢モデルとしての処置を行った。C3−/−マウスは、透過性指数が約50%低下したという根拠により、障害から部分的に防御された(Weiserら(1996)J. Exp. Med. 1857〜1864を参照)。したがって、補体C3はこのマウスモデルにおける完全な障害の誘導に必須である。
【0117】
ワイザー(Weiser)らの実験では、補体がいかにして活性化されるかは特定されていない。血清補体系は、古典経路、レクチン経路または第二経路という少なくとも3つの異なる経路によって活性化されうる。どの経路が関与するかを知ることは、これによって障害の機序が推定されるため重要である。例えば、古典経路は免疫グロブリンのIgMおよびIgGアイソタイプにより、または血清認識タンパク質であるC反応性タンパク質により、非常に効率的に活性化される。これに対して、レクチン経路はマンナン結合レクチン(MBL)によるマンナンの認識などの特定の糖質の認識後に活性化される(Epsteinら(1996)Immunol 8、29〜35)。いずれの経路においても、補体C4は中心的成分であるC3の切断を触媒するC2との酵素複合体の形成に必要である。これに対して、第二経路は自発的に活性化し、C3の活性型(C3b)への変換、および異物または自己の組織への結合をもたらす。すべての宿主細胞が、C3転換酵素の不活性化または変位による補体経路の増幅に対する阻害物質を発現することからみて、この経路は厳密に調節されている(Muller−Eberhard, H.J.,(1988)Ann. Rev. Biochem. 57. 321〜347)。関与する経路を決定するための1つのアプローチは、C4が欠損したマウス、すなわち古典経路またはレクチン経路を介してC3転換酵素を形成することができないマウスを用いることである。C3またはC4のいずれかが欠損したマウスおよび野生型(WT)対照の後肢モデルにおける比較により、C4も完全な障害の誘導に必要なことが判明した(Weiserら、前記)。この所見は、抗体またはMBLが関与している可能性を示唆する点で重要である。
【0118】
実施例2:自然IgMは虚血再灌流(I/R)障害を媒介する
本実施例では、免疫グロブリンが欠損したマウスが虚血再灌流障害に対して抵抗性であったことを示す。
【0119】
抗体がI/R障害の媒介に関与するか否かを明らかにするために、免疫グロブリンが完全に欠損したマウスであるRAG2−/−(リコンビナーゼ活性化遺伝子−2の欠損)の腸管モデルにおける特徴分析を補体欠損マウスとともにおいて行った。重要なことに、RAG−2−/−マウスは補体欠損マウスに観察されたものと同程度のレベルで防御された(Weiserら、前記)。RAG2−/−マウスには成熟リンパ球も存在しないため、病原性作用が抗体依存的であるかを明らかにすることは重要であった(Shinkaiら(1992)Cell 68、855〜867)。障害が血清抗体によって媒介されることを確認するために、欠損マウスに対して正常マウス血清(Weiserら、前記)または精製IgM(Williamsら(1999)J. Appl Physiol 86;938〜42)の再構成を行った。いずれの場合にも、再構成したRAG−2−/−マウスは防御されなくなり、障害が再び生じた。後者の実験では、腸管障害のモデルをこのモデルと同じように用いており、障害は主として補体によって媒介されると考えられる。
【0120】
これらの結果から、虚血期間中には内皮細胞表面に新たな抗原が発現されることも露出されることもないと解釈される。流血中IgMが新たな決定基を認識して結合し、補体の古典経路を活性化するように思われる。抗原の性質は明らかでないが、プールしたIgGを欠損マウスに対して再構成してもマウスの障害の明らかな再生は起こらなかったため、主として補体の活性化の原因となるのはIgGではなくIgMであるように思われる。これと別の仮説は、変化した内皮表面を認識して低レベルの補体活性化を誘導し、新たな抗原性部位を露出させるMBL経路などの別の初期イベントが存在し、IgMの結合によってこの経路が増幅されるというものである。
【0121】
実施例3:病原性IgMはB−1細胞の産物である:
流血中IgMのかなりの割合は天然の抗体、すなわち再配列が起こった生殖系列遺伝子の産物であると考えられているため、リンパ球のB−1画分に欠損のあるマウスも防御される可能性がある。B−1細胞は、IgDおよびCD23を低レベルで発現し、かなりの割合が細胞表面タンパク質CD5を発現するという点で、通常のB−2細胞とは明確に異なる表現型を有する(Hardyら(1994)Immunol. Rev.:137、91;Kantorら(1993)Annu. Rev. Immunol. 11、501〜538、1993)。B1細胞は、マウスでは循環量が少ないこと、末梢リンパ節および脾臓における頻度が低いこと、ならびに腹腔に主として局在することによっても識別できる。病原性IgMの源としてのB−1細胞の役割を検討するために、抗体欠損マウス(RAG−2−/−)に対して5×10個の腹腔B−1細胞の再構成を行い、処置の前に約30日の安静期間をおいた。養子移入から1カ月以内に流血中IgMレベルはほぼ正常範囲に達した。B−1細胞の再構成を行ったマウスの腸管虚血モデルにおける特徴分析により、B−1細胞が病原性IgMの主な源であることが確かめられた(Williamsら(1999)、前記を参照)。B−1細胞の自然抗体レパートリーは従来のB−2細胞に対して予想されるよりもかなり少ないため、これは重要な観察所見であった。このため、この病原性抗体は生殖系列の産物である可能性がある。
【0122】
実施例4:Cr2−/−マウスは虚血再灌流障害から防御される:
Cr2−/−ノックアウトマウスの最初の特徴分析により、B−1aまたはCD5+B−1細胞の頻度が約50%低下していることが判明している(Ahearnら(1996)Immunity 4:251〜262)。しかし、Cr2欠損マウスの別の系統の特徴分析では同様の低下は特定されなかった(Molinaら(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93、3357〜3361)。CD5+細胞の頻度の低下が系統バックグラウンドまたは環境の違いに起因するか否かは不明である。Cr2−/−マウスにおけるB−1a細胞の頻度は低いにもかかわらず、IgMの流血中レベルは正常範囲にあった。これらの所見により、Cr2欠損マウスにおけるIgMのレパートリーが異なる可能性が示唆された。この仮説を検証するために、マウスの腸管I/Rモデルにおける特徴分析を行った。驚いたことに、Cr2−/−マウスは抗体完全欠損マウスと同程度に防御された(図1)。処置後の腸管モデルにおける5日間の生存率の比較により、WTの方がCr2欠損マウスよりも死亡率が有意に高いことが示された。死亡率の高さと一致して、処置を行ったWTまたはCr2−/−欠損マウスから採取した組織切片においても障害の劇的な軽減が観察された。
【0123】
WTマウス、またはプールしたIgMもしくはB−1細胞の再構成を行ったCr2−/−マウスでは、腸粘膜層の広範囲にわたる障害が認められた。これに対して、処置を行ったCr2−/−マウスから単離した組織切片は偽処置対照のものと類似していた。このように、IgMの流血中レベルは正常であるものの、Cr2欠損マウスは障害から防御された。これらの結果により、B−1細胞が病原性抗体の源として重要なことだけでなく、補体系が自然抗体のレパートリーの形成または維持にも何らかの関与を行っていることが示唆された。例えば、補体はB−1細胞の陽性選択に関与している可能性がある。
【0124】
実施例5:病原性IgMの同定
本実施例には、正常B−1細胞からの特定のハイブリドーマクローンの作製、および病原性IgMを産生するクローンの同定について述べる。病原性IgMは抗体欠損マウスにおけるインビボでの障害を再び生じさせることが示された。
【0125】
補体受容体CD21/CD35が欠損したマウスの検討により、このマウスには病原性抗体がないことが判明した。それらの血中のIgMレベルは正常であったため、この所見は予想外であった。これらの所見から、B−1細胞と呼ばれるB細胞の特定の集団が病原性IgMを分泌する原因であるという仮説が導かれた。例えば、受容体欠損マウス(Cr2−/−)に正常マウス由来のB−1細胞を移植することによって障害が再生し、B−1細胞の重要性が裏づけられた。障害の原因となる特定の1つまたは複数の抗体を同定するために、正常マウスから採取した腹腔B−1細胞の集積プールから一群のハイブリドーマクローンを作製した。腹腔細胞の集積画分からハイブリドーマを調製するための一般的なアプローチには、7日前にIL−10を投与したマウスから腹腔細胞を採取し、その後に磁気ビーズを用いる陰性選択によってCD23+ B細胞を集積させることが含まれる。集積したB細胞を、IgM、Mac−1およびCD23特異的Mabで染色した後にFACSにより分析する。この集積集団をLPSの存在下で24時間培養することによってさらに活性化する。活性化された細胞を、PEGの存在下で融合パートナーである骨髄腫細胞とハイブリダイズさせ、HAT選択培地中で増殖させる。ハイブリドーマをELISAによってIgM分泌性クローンに関してスクリーニングし、IgMの精製のために陽性ウェルを増殖させる。
【0126】
22種のIgM分泌性ハイブリドーマクローンを、各々のクローンから同量のIgM産物をプールすることによって分析した。抗体欠損マウスにプールしたIgMを投与したところ、血清由来のプールIgMで認められたものと類似の障害が再び生じた。この所見により、作製した22種のハイブリドーマの中に病原性IgMがあることが確認された。プールを2つの画分、すなわち1〜11および12〜22に分割し、マウスにこの2つの画分を投与したところ、病原性抗体はクローン#22を含むプールに分画されることがわかった。さらに、マウスに対してクローン17または22の再構成を行った。クローン22は障害を再生させたが、他のクローンは再生させなかった(図3Aおよび3B参照)。
【0127】
実施例6:B−1細胞の選択における補体の関与:
B−1細胞の発生に関しては2つの異なるモデルが提唱されている。系譜仮説では、B−1細胞が初期胎児において明確な集団として発生すると提唱している(Kantorら(1993)前記)。または、B−1細胞は通常のB細胞と同じ前駆細胞から発生するが、環境に応じて、すなわち抗原との遭遇により、それらがB−1に分化するか、またはB−2細胞の表現型を維持するという説もある(Wortis, H.H.(1992)Int. Rev. Immunol. 8、235;Clarke, J.(1998)Exp. Med. 187、1325〜1334)。その由来にかかわらず、B−1細胞は成体骨髄からはB−2細胞と同じ頻度では補充されず、その表現型は初期胎児肝B細胞または新生児骨髄(BM)細胞のものの方に類似している。初期に由来することに一致して、そのレパートリーはより近位側のVH遺伝子の発現に偏る傾向があり、N−ヌクレオチド付加は少ない(Guら(1990)EMBO J 9、2133;Feeney, J.(1990)Exp. Med. 172、1377)。成体BM幹細胞による補充が少ないと想定すれば、B−1細胞が自己再生し、抗原刺激がその再生、増殖またはさらに初期選択に重要と思われることは妥当と思われる(Hayakawaら(1986)Eur. J. Immunol. 16、1313)。実際に従来のモデルに備わっているように、B−1細胞は抗原により選択される必要がある。
【0128】
B−1細胞の陽性選択にB細胞受容体(BCR)シグナル伝達が必要なことを裏づける証拠が、BCRシグナル伝達を変化させる変異を有するマウスから得られている。例えば、CD19(19、20)、vav(21)またはBtk(22)によるBCRシグナル伝達の障害はB−1細胞の発生に重大な影響を及ぼす。これに対して、CD22−またはSHP−1欠損マウスなどの場合のように陰性選択がなされないと、B−1細胞の頻度が高くなる(O’Keefeら(1996)Science 274、798〜801;Shultzら(1993)Cell 73、1445)。最近、V12(B−1細胞表現型)またはVB1−8(B−2細胞表現型)という2つの異なるIg導入遺伝子を有するマウスを用いたエレガントな研究により、B−1細胞が自己抗原によって選択されるとの見解が裏づけられた。例えば、V12を単独で、またはB1−8とともに発現するB細胞からはB−1細胞表現型が生じた。一方、B1−8tgのみを発現するB細胞は、同定された場合でもわずかであった。このように、これらの結果から、トランスジェニックB細胞の自己PtCとの遭遇により、V12を発現するものの増殖が起こることが示唆された。B−1細胞の選択は、ハーディ(Hardy)ら(1994)Immunol. Rev. 137、91)によって最近報告されている。彼らのモデルでは、Thy 1.1に対して特異的な免疫グロブリン導入遺伝子を発現するB細胞が、コグネイト抗原を発現するマウスにおいて選択されて増殖した。これに対して、導入遺伝子+B−1細胞は、代替的なアロタイプであるThy 1.2を発現するマウスには認められなかった。
【0129】
補体はどこでB−1細胞の発生に組み込まれるのであろうか。B−1a細胞の頻度の全体的な低下、およびI/R障害に関与するIgMを発現するB−1細胞のより特異的な減少から、B−1a細胞の陽性選択または維持におけるCD21/CD35の役割が示唆される。補体に関して考えられる1つの役割は、コグネイト抗原と遭遇するとBCRシグナル伝達を増強させるというものである。CD21/CD35欠損マウスの生化学的検討および分析により、通常のB細胞の活性化および生存における補助受容体シグナル伝達の重要性が示されている(Carroll, M.C.,(1998)Ann. Rev. Immunol 16、545〜568;Fearonら(1995)Annu. Rev. Immunol 13、127〜149)。B−1細胞も同じようにBCRシグナルの増強に補助受容体シグナル伝達を利用している可能性が非常に高い。例えば、細菌はホスホリルコリンなどの典型的なB−1細胞抗原を発現しており、細菌が補体リガンドC3dによって覆われると補助受容体とBCRとの架橋が増大して全体的なシグナル伝達が増強されるという考えは不当とは言えない。このため、比較的低い濃度で発現される抗原の場合、コグネイトB細胞がそれを認識して増殖するため、または陽性選択されるためには、補体による増強が必要と考えられる。補体受容体に関するもう1つの役割は、抗原をリンパ系区画内部の濾胞樹状細胞(FDC)上に局在させることである。しかし、B−1細胞の集団の大半は腹腔組織に存在するため、それらがリンパ系構造の内部でFDCと遭遇するかどうかは明確でない。B−1細胞が陽性選択を受ける1つまたは複数の実際の部位はわかっていない。それらは初期胎児発生時または新生児BMにおいてコグネイト抗原に遭遇する必要がある。もしそうであれば、これらの区画内の実質細胞の表面にある補体受容体は抗原と結合してそれをB細胞に提示することが予想される。補体受容体は発生の両方の段階に関与する可能性がある。第一に、それらは初期陽性選択における抗原シグナル伝達を増強する可能性がある。第二に、選択されたB−1細胞が末梢部位に補充される際に、補体受容体は再びBCRシグナル伝達の増強に関与する可能性がある。
【0130】
図2は、腹腔B−1リンパ球の陽性選択における補体および補体受容体の役割を提唱した模式図である。補体−リガンドで覆われた抗原(自己および非自己)の相互作用によって、細胞表面でCD21/CD19補助受容体およびBCRの共連結(co−ligation)が起こり、これがシグナル伝達の増強および陽性選択をもたらす。
【0131】
等価物
当業者は、日常的な実験により、本明細書に記載された特定の態様の等価物を認識する、または確認することができるだろう。このような等価物は添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】腸管虚血および再灌流後の、または障害を加えなかった(偽処置)近交系マウスの腸管透過性の変化を示した棒グラフである。WTはCr2−/−マウスの親系統を表す。Cr2−/−はプールしたIgGもしくはIgMまたは生理食塩水対照を用いて再構成した。プールしたIgMまたはIgG(0.5mg)を処置の約1時間前に静脈内に投与した。各値は平均+標準誤差である;n=実験群におけるマウスの数。
【図2】腹腔B−1リンパ球の陽性選択における補体および補体受容体の役割を提唱した模式図である。
【図3A】22種の個別のB−1細胞ハイブリドーマクローンからプールしたIgMによる、抗体欠損マウス(RAG−1)におけるI/R障害の再構成を示す。24μgの各ハイブリドーマIgMをプールし、最初の腹腔切開を行う30分前に静脈内に注射した。再灌流を終えた時点で血液を採取し、乾燥腸管と血液との125Iカウントの比として透過性指数を算出する。各値は平均±SEを表す;n=実験群に用いたマウスの数。1=生理食塩水;2=プールしたハイブリドーマ;3=50μgのハイブリドーマ22A5;4=400μgのプールしたIgM。
【図3B】ハイブリドーマクローン22A5からのIgMによってRAG−1マウスにおけるI/R障害が再び生じることを示す。IgMによる再構成を行ったマウスには総血清IgM(400μg)または22A5ハイブリドーマIgM(各50μg)を投与している。各値は平均±SEを表す;n=実験群に用いたマウスの数。1=生理食塩水;2=プールしたハイブリドーマ;3=50μgのハイブリドーマ22A5;4=400μgのプールしたIgM。
【図4A】B−1ハイブリドーマ22A5のIgM配列解析を示す。22A5 IgMの重鎖核酸配列を示す(配列番号:1)。RNAを22A5ハイブリドーマ細胞から精製し、逆転写を行ってcDNAとした。免疫グロブリン重鎖cDNAの増幅には、5’ VHおよび3’ Cmに対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いるセミネステッド(semi−nested)PCRを用いた。cDNA産物をアガロースゲルで精製し、ヌクレオチド配列を自動シークエンシングによって決定した。フレームワーク領域(FWR)および相補性決定領域(CDR)をヌクレオチドの上方に示す。NCBIヌクレオチドデータベースの検索により、22A5重鎖の免疫グロブリン配列VMU−3.2(アクセッション番号X03088)との相同性が95%であることが明らかになった。
【図4B】B−1ハイブリドーマ22A5のIgM配列解析を示す。22A5 IgMの軽鎖核酸配列を示す(配列番号:7)。RNAを22A5ハイブリドーマ細胞から精製し、逆転写を行ってcDNAとした。免疫グロブリン軽鎖cDNAの増幅には、5’ Vkおよび3’ Ckに対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いるセミネステッドPCRを用いた。cDNA産物をアガロースゲルで精製し、ヌクレオチド配列を自動シークエンシングによって決定した。フレームワーク領域(FWR)および相補性決定領域(CDR)をヌクレオチドの上方に示す。NCBIヌクレオチドデータベースの検索により、22A5軽鎖の免疫グロブリン配列Vk 19−23遺伝子(アクセッション番号AJ235961)との相同性が明らかになった。
【図5A】配列番号:1の重鎖核酸配列に対応するアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。フレームワーク領域(FWR)および相補性決定領域(CDR)をアミノ酸残基の上方に示す。
【図5B】配列番号:7の軽鎖核酸配列に対応するアミノ酸配列(配列番号:8)を示す。フレームワーク領域(FWR)および相補性決定領域(CDR)をアミノ酸残基の上方に示す。

Claims (81)

  1. 対象における免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、
    障害が抑制または軽減されるように、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質の有効量を対象に投与し、それによって虚血特異的抗原と結合した病原性免疫グロブリンの数を減少させることを含む方法。
  2. 対象における免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、
    障害が抑制または軽減されるように、病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質の有効量を対象に投与し、その結果、補体活性を活性化する病原性免疫グロブリンの数を減少させることを含む方法。
  3. 病原性免疫グロブリンがIgMである、請求項1または2記載の方法。
  4. 病原性免疫グロブリンがIgMのサブクラスである、請求項1または2記載の方法。
  5. 病原性免疫グロブリンがB細胞のサブポピュレーションによって産生される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
  6. 虚血特異的抗原が内皮細胞または実質組織の表面に存在する、請求項1記載の方法。
  7. 対象が哺乳動物である、請求項1または2記載の方法。
  8. 哺乳動物がヒトである、請求項7記載の方法。
  9. 再灌流障害または虚血障害が自然発生性の発作の後に結果として生じる、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
  10. 再灌流障害または虚血障害が外科的処置の最中または後に生じる、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
  11. 外科的処置が、血管形成術、ステント処置、アテローム切除術およびバイパス手術からなる群から選択される、請求項10記載の方法。
  12. 阻害物質が、タンパク質、ペプチド、有機低分子、抗体またはその断片、糖質および糖タンパク質からなる群から選択される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
  13. 障害が心血管組織において生じる、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
  14. 対象における免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、
    病原性免疫グロブリンまたは病原性免疫グロブリンを産生するB細胞を対象から除去し、またはそれを不活性化し、それによって対象に存在する病原性免疫グロブリンまたはB細胞の量を減らすことを含む方法。
  15. 除去または不活性化の段階がエクスビボで行われる、請求項14記載の方法。
  16. 病原性免疫グロブリンの除去または不活性化の段階が、抗イディオタイプ抗体を対象に投与することによって行われる、請求項15記載の方法。
  17. B細胞の除去または不活性化の段階が、B細胞標的指向性部分を毒素と結合させたものを対象に投与することによって行われる、請求項16記載の方法。
  18. 対象が哺乳動物である、請求項14記載の方法。
  19. 哺乳動物がヒトである、請求項18記載の方法。
  20. 障害がインビボで生じる、請求項14記載の方法。
  21. 障害が心血管組織において生じる、請求項14記載の方法。
  22. 以下の特性のうち1つまたは複数を有する、単離された病原性免疫グロブリンまたはその抗原結合部分:(i)虚血特異的抗原との相互作用が可能である;(ii)補体を固定することができる;または(iii)B細胞のサブポピュレーションによって産生される。
  23. IgMである、請求項22記載の病原性免疫グロブリン。
  24. 補体結合性または活性を変化させる変異を有する、改変された病原性免疫グロブリン。
  25. 虚血特異的抗原との相互作用が可能である、請求項24記載の改変された病原性免疫グロブリン。
  26. IgMである、請求項24記載の改変された病原性免疫グロブリン。
  27. 虚血特異的抗原を単離するための方法であって、
    病原性免疫グロブリンを提供する工程;
    虚血特異的抗原を含む試料を病原性免疫グロブリンと、病原性免疫グロブリンと試料との特異的結合が可能な条件下で接触させる工程;
    対照と比較して病原性抗体と試料との結合レベルの変化を検出する工程であって、試料の存在下における病原性免疫グロブリンの結合レベルに対照で検出されたものと比較して変化があることによって特異的結合が示される、工程;および 虚血特異的抗原を試料から単離する工程
    を含む方法。
  28. 試料が虚血特異的抗原を豊富に含む、請求項27記載の方法。
  29. 試料が再灌流障害または虚血障害のある対象から得られる、請求項27記載の方法。
  30. 試料が生化学的単離物である、請求項27記載の方法。
  31. 試料が発現ライブラリーである、請求項27記載の方法。
  32. 病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質を多数の被験化合物から同定するための方法であって、
    病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下において、病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原を含む反応混合物を提供する工程;
    病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原を1つまたは複数の被験化合物と接触させる工程;ならびに
    被験化合物の非存在下において検出されたものと比較して、被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合のいかなる変化も検出する工程、を含み、
    被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合レベルに被験化合物の非存在下において検出されたものと比較して変化があることによって、被験化合物が病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質であることが示される、方法。
  33. 病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質を多数の被験化合物から同定するための方法であって、
    病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下で、病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を含む反応混合物を提供する工程;
    病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を1つまたは複数の被験化合物と接触させる工程;ならびに
    被験化合物の非存在下において検出されたものと比較して、被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合のいかなる変化も検出する工程、を含み、
    被験化合物の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合レベルに被験化合物の非存在下において検出されたものと比較して変化があることによって、被験化合物が病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質であることが示される、方法。
  34. 病原性免疫グロブリンが病原性IgMである、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  35. 虚血特異的抗原が内皮組織または内皮性の溶解産物から得られる、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  36. インビトロで行われる、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  37. 病原性免疫グロブリンを検出可能なシグナルによって標識する、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  38. 虚血特異的抗原を検出可能なシグナルによって標識する、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  39. 少なくとも1つの段階を反復することをさらに含む請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  40. 多数の被験化合物が、少なくとも10、10、10、10、10、10、10種または10種の化合物を含む、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  41. 被験化合物がペプチドまたは有機低分子である、請求項32または33のいずれかに記載の方法。
  42. 請求項32記載の方法によって同定された、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質。
  43. 請求項33記載の方法によって同定された、病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質。
  44. 免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、
    病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用を阻害する特性を有することが以下の方法によって決定された作用物質を対象に投与することを含む方法:
    病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下で病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原を含む反応混合物を提供する工程;
    病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原を作用物質と接触させる工程;ならびに
    作用物質の非存在下において検出されたものと比較して、作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合の変化を検出する工程を含み、
    作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合レベルに作用物質の非存在下において検出されたものと比較して変化があることによって、作用物質が病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質であることが示されるような方法。
  45. 免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、
    病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用を阻害する特性を有することが以下の方法によって決定された作用物質を対象に投与することを含む方法:
    病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下で含む反応混合物を提供すること;
    病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を作用物質と接触させること;ならびに
    作用物質の非存在下において検出されたものと比較して、作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合の変化を検出することを含み、
    作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合レベルに作用物質の非存在下において検出されたものと比較して変化があることによって、作用物質が病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質であることが示されるような方法。
  46. 免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、
    以下のアッセイ法において試験した際に病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用を阻害することができる作用物質を対象に投与することを含む方法:
    病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原を、病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下で含む反応混合物を提供すること;
    病原性免疫グロブリンおよび虚血特異的抗原を作用物質と接触させること;ならびに
    作用物質の非存在下において検出されたものと比較して、作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合の変化を検出することを含み、
    作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合レベルが作用物質の非存在下において検出されたものと比較して阻害されていることによって、作用物質が病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用に対する阻害物質であることが示されるようなアッセイ法。
  47. 免疫グロブリンを介した再灌流障害または虚血障害を治療または予防するための方法であって、
    以下のアッセイ法において試験した際に病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との相互作用を阻害することができる作用物質を対象に投与することを含む方法:
    病原性免疫グロブリンと虚血特異的抗原との結合が生じうる条件下で、病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を含む反応混合物を提供すること;
    病原性免疫グロブリンおよび補体経路の成分を作用物質と接触させること;ならびに
    作用物質の非存在下において検出されたものと比較して、作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合の変化を検出することを含み、
    作用物質の存在下における病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との結合レベルが作用物質の非存在下において検出されたものと比較して阻害されていることによって、作用物質が病原性免疫グロブリンと補体経路の成分との相互作用に対する阻害物質であることが示されるようなアッセイ法。
  48. 免疫グロブリンがB−1細胞によって産生される、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  49. ATCCに寄託される予定であるアクセッション番号(ATCC寄託番号PTA−3507)のハイブリドーマによって産生される、請求項22記載の単離された病原性抗体。
  50. 配列番号:8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  51. 配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  52. 配列番号:10に示したアミノ酸配列を含むCDR1領域を含む軽鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  53. 配列番号:12に示したアミノ酸配列を含むCDR2領域を含む軽鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  54. 配列番号:4のアミノ酸配列を含むCDRl領域を含む重鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  55. 配列番号:6に示したアミノ酸配列を含むCDR2領域を含む重鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性抗体。
  56. 配列番号:8に示したアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および配列番号:2に示したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  57. ヒト免疫グロブリンである、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  58. 免疫グロブリンが非ヒト免疫グロブリンである、請求項22記載の単離された病原性抗体。
  59. 非ヒト抗体が哺乳動物由来である、請求項58記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  60. 哺乳動物がウシ、ヤギ、マウス、ラット、ヒツジ、ブタおよびウサギからなる群から選択される、請求項59記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  61. 組換え抗体である、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  62. 配列番号:4および配列番号:6に示した重鎖CDR1およびCDR2領域またはその抗原結合断片、ならびに配列番号:10および配列番号:12に示した軽鎖CDR1およびCDR2領域またはその抗原結合断片を含む、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  63. 免疫グロブリンがヒトフレームワーク領域を含む、請求項62記載の単離された病原性抗体。
  64. 以下のものからなる群から選択される、単離された核酸分子:
    a)配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも96%であるヌクレオチド配列を含む核酸分子;
    b)配列番号:1、配列番号:3または配列番号:5のヌクレオチド配列を含む核酸分子;および
    c)配列番号:1のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
  65. 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
  66. ベクター核酸配列をさらに含む、請求項64記載の核酸分子。
  67. 請求項64記載の核酸分子を含む宿主細胞。
  68. 哺乳動物宿主細胞である、請求項66記載の宿主細胞。
  69. 以下のものからなる群から選択される、単離された核酸分子:
    a)配列番号:7、配列番号:9または配列番号:11のヌクレオチド配列との同一性が少なくとも96%であるヌクレオチド配列を含む核酸分子;
    b)配列番号:7、配列番号:9または配列番号:11のヌクレオチド配列を含む核酸分子;および
    c)配列番号:7のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子。
  70. 配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、単離された核酸分子。
  71. ベクター核酸配列をさらに含む、請求項69記載の核酸分子。
  72. 請求項69記載の核酸分子を含む宿主細胞。
  73. 哺乳動物宿主細胞である、請求項72記載の宿主細胞。
  74. 配列番号:2、配列番号:4または配列番号:6のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
  75. 配列番号:2のアミノ酸配列を含む、請求項74記載のポリペプチド。
  76. 配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
  77. 配列番号:8のアミノ酸配列を含む、請求項76記載のポリペプチド。
  78. ポリペプチドを生産するための方法であって、請求項67記載の宿主細胞を、核酸分子が発現される条件下で培養することを含む方法。
  79. ポリペプチドを生産するための方法であって、請求項72記載の宿主細胞を、核酸分子が発現される条件下で培養することを含む方法。
  80. 配列番号:12に示したアミノ酸配列および配列番号:10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
  81. 配列番号:4に示したアミノ酸配列および配列番号:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する、請求項22記載の単離された病原性免疫グロブリン。
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