JP2004502408A - 乳癌および膀胱癌において差次的に発現される遺伝子ならびにコードされるポリペプチド - Google Patents
乳癌および膀胱癌において差次的に発現される遺伝子ならびにコードされるポリペプチド Download PDFInfo
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Abstract
Description
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ヒト乳房癌腫および膀胱癌腫において示差的に発現する、新規なヒト遺伝子に関する。より詳細には、本発明は、C35と名付けられた新規なヒトポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、C35ポリペプチド、およびベクター、宿主細胞、C35ポリペプチドを指向する抗体、ならびにこれらを産生するための組換え方法に関する。本発明はさらに、ヒト乳房癌腫および膀胱癌腫を含む癌腫の検出のための診断方法に関する。本発明はさらに、C35遺伝子を発現する標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に対する抗体および細胞媒介性免疫を誘導するための、免疫原性組成物またはワクチンにおけるC35遺伝子およびポリペプチドの処方ならびに使用に関する。本発明はさらに、C35活性のアゴニストおよびアンタゴニストを同定するためのスクリーニング方法に関する。
【0002】
(背景技術)
癌は、年々、米国において約120万人を苦しめる。これらの癌の約50%は、手術、放射線療法、および化学療法で治癒可能である。これらの3つの型の処置における著しい技術の進歩にも関わらず、米国単独のみで、年々500,000人よりも多い人々が、癌で死亡する(Jaffee、E.M.,Ann.N.Y.Acad.Sci.886:67〜72(1999))。ほとんどの再発が、遠位の部位(例えば、肝臓、脳、骨および肺)であるので、改善された全身的な治療の緊急の必要性が存在する。
【0003】
癌治療の目的は、腫瘍細胞を特異的に標的化し、これによって、正常細胞に対する不必要な副作用を避ける様式を開発することである。免疫療法は、癌のほとんどの型についての代替的な全身療法を提供するための可能性を有する。放射線および化学療法を超える免疫療法の利点は、この免疫療法が正常組織の損傷を引き起こすことなしに腫瘍に対して特異的に作用し得ることである。免疫療法の型の1つである、ワクチンは、特に魅力的である。なぜなら、ワクチンはまた、活性な免疫化を提供し得、これは免疫応答の増幅を可能にするからである。さらに、ワクチンは、記憶免疫応答を生成し得る。
【0004】
変更された腫瘍細胞の特徴が、非自己として免疫系によって認識され、そして防御的免疫を誘導し得るという可能性は、癌ワクチンの開発するための試みの基礎である。これが実現的なストラテジーかどうかは、トランスフォーメーションされた細胞の特徴がどのように変更されるかということに依存する。腫瘍のトランスフォーメーションにおける変異の中心的役割の評価によって、遺伝的に不安定な細胞における無作為な変異の結果として腫瘍抗原が生じるという仮設が生じた。無作為な変異は免疫原性であると判明され得たが、これらは、それぞれの腫瘍に特有の特定の免疫を誘導することが予測される。これは、広く効果的な腫瘍ワクチンの開発に対して都合が悪い。しかし、代替的な仮説は、腫瘍抗原が、トランスフォーメーションプロセスに関連する全身性組織特異的遺伝子および生殖組織特異的遺伝子の調節解除の結果として生じ得るということである。これは、免疫治療に対して適切な標的であり得る腫瘍の特定の型において、共有された抗原の定性的または定量的な示差的発現を生じ得た。早期の結果は、いくつかの実験的な腫瘍の免疫原性が、無作為な変異に由来され得たことを実証し(De Plaenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2274〜2278(1988);Srivastava,& Old、Immunol.Today 9:78(1989))、これはあきらかに最初の仮説を支持する。しかし、なぜ無作為な変異および全身的な遺伝子の調節解除が、両方とも腫瘍における新しい免疫原性発現を生じ得なかったことの論理に基づいた理由は、存在しない。実際、実験的腫瘍(Sahasrabudheら、J.Immunol.151:6202〜6310(1993);Torigoeら、J.Immunol.147:3251(1991))、およびヒト黒色腫(van Der Bruggenら、Science 254:1643〜1647(1991);Brichardら、J.Exp.Med.178:489〜495(1993);Kawakamiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3515〜3519(1994);Boelら、Immunity 2:167〜175(1995);Van den Eyndeら、J.Exp.Med.182:689〜698(1995))の両方における、より最近の研究は、調節解除された正常遺伝子によってコードされる、共有された腫瘍抗原の発現を、明らかに実証している。このMAGE−1および異なるヒト黒色腫に一般的である他の抗原の同定は、複数の腫瘍ワクチンの将来の開発のための大きな保証を保持する。
【0005】
黒色腫における進歩にも関わらず、細胞傷害性T細胞によって認識される非常に少ない共有された抗原は、他のヒト腫瘍について記載されていない。主なチャレンジは技術的なものである。腫瘍細胞において特有に発現される免疫原性分子を同定する、最も広範かつ今日までで最も成功したアプローチは、腫瘍特異的なCTL(細胞傷害性Tリンパ球)でcDNAをスクリーニングすることである。このストラテジーの適用は、ヒト黒色腫において優勢に発現するいくつかの遺伝子ファミリーの同定を導いてきた。しかし、このアプローチの2つの主な限定は、以下である:(1)スクリーニングは、分離した標的集団への組換えDNAの多数の小プールの労働集約的トランスフェクションを必要とし、これはいくつかのプールの小さな成分によるT細胞刺激をアッセイするために、抗原提示に必要とされる1つ以上のMHC分子を発現するようにこれら自身が改変される必要性がしばしばある;ならびに(2)腎細胞癌腫をできる限り除いて、腫瘍特異的CTLは、腫瘍の他の型を有する患者の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)またはPBL(特にヒト腫瘍の80%より多くを構成する上皮細胞癌腫)のいずれかから単離が非常に困難であること。黒色腫において隔離される腫瘍特異的CTLを生じる、組織特異的な特性が存在し得るようである。
【0006】
腫瘍特異的遺伝子産物での直接的な免疫化は、いくつかの共有された腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発するために必須であり得る。腫瘍が強い抗原を発現した場合、この腫瘍は、臨床的徴候の前に根絶されるべきであることが議論されている。その上、おそらく、腫瘍は弱い抗原しか発現しない。免疫学者は、何が抗原を弱くまたは強くするのかという問題に、長い間興味を持っていた。2つ主要な仮説がある。弱い抗原は、あまりプロセスされ得ず、そしてT細胞に効果的に提示され得ない。あるいは、適切な特異性を有する器官におけるT細胞の数は、力強い応答のためには不適切であり得る(いわゆる「レパートリー中の穴(hole in the repertoire)」)。複合性細胞プロセス(これによって抗原ペプチドは、細胞表面への輸送およびT細胞への提示のためにMHC分子と関連する)の説明は、現代の免疫学の勝利の1つである。これらの実験は明らかに、プロセシングの欠損または他のペプチドからの競合に起因する提示の失敗が、特定のペプチドをより低い免疫原性にし得るということを確立した。対照的に、技術的な理由で、T細胞レパートリーにおけるクローンの提示の頻度が、低い応答性の重要な機構であるということを確立することは、より困難である。しかし、タンパク質抗原の免疫優勢ペプチドと潜在性ペプチドとの間の関係が、T細胞レセプタートランスジェニックマウスにおいて変化することを実証する現在の研究は、ペプチド特異的T細胞の相対的な頻度が、実際は、特定のペプチドがT細胞応答において潜在的または優勢的であるか否かという決定的な要素であり得ることを示唆する。これは、ワクチンの開発についての潜在的な重要性を助長する。現在の方法に関して、腫瘍の抗原ペプチドがプロセスされ、そしてT細胞に提示される方法を改変の実行は、複雑かつ困難である。しかし、特異的T細胞集団の相対的な頻度は、先のワクチン接種によって直接的かつ効果的に増加され得る。従って、これは、別なふうに潜在的応答を免疫防御的にするために必要とされる重要な操作であり得る。これらの潜在的または亜優勢(sub−dominant)抗原の考慮は、寛容の誘導を介する腫瘍による可能性のある免疫回避に関連する、特別の関連性を有する。腫瘍保有宿主中における腫瘍特異的T細胞が、おそらく非プロフェッショナルAPC(non−professional APC)上での抗原提示の結果として、アネルギーであることを示唆する証拠が示されている(Morgan,D.J.ら、J,Immunol.163:723〜27(1999);Sotomayor,E.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:11476〜81(1999);Lee,P.P.ら、Nature Medicine 5:677〜85(1999))。従って、腫瘍の免疫優勢抗原に特異的なT細胞の先の寛容は、癌の免疫療法についての成功したストラテジーの開発における困難性の原因である。これらの観察は、免疫優勢腫瘍抗原に特異的なT細胞は、確立された腫瘍の免疫療法に関してあまり効果的でないことを示唆する。なぜなら、それらのT細胞は、おそらく寛容されるからである。従って、亜優勢抗原に特異的なT細胞またはより低い頻度で最初に提示されるT細胞は、より効果的であることを証明する。なぜならこれらは、増殖している腫瘍の影響の寛容化を逃れているからである。
【0007】
広範に効果的なヒトワクチンの開発についての別の主な関心は、HLAクラスI分子の極端な多型である。クラスI MHC:細胞性ペプチド複合体は、特異的なCD8+CTLに対する標的抗原である。この細胞性ペプチド(内因的に合成されたタンパク質の分解によって誘導される)は、これらが細胞表面への輸送のためにクラスI MHC分子に結合する場合、プレゴルジ(pre−Golgi)区分中に転位する。CD8分子は、クラスI重鎖のα3ドメインへの結合によるT細胞と標的との間の相互作用のアビディティに寄与する。全ての内因性タンパク質が代謝回転するので、任意の細胞質タンパク質または核タンパク質由来のペプチドは、MHC分子に結合し得、そして細胞表面における提示のために輸送される。これは、T細胞が、細胞膜で分泌されるかまたは取り込まれるかいずれかであるタンパク質のみのコンフォメーション決定基を認識することが限定される抗体よりも、細胞タンパク質のより大きな提示を探索することを可能にする。
【0008】
T細胞レセプター抗原結合部位は、ペプチドおよび周囲のMHCの両方の決定基と相互作用する。従って、T細胞特異性は、MHC:ペプチド複合体に関して定義されなければならない。MHC分子に結合するペプチドの特異性は、非常に広く、そして特異的抗体の抗原結合部位と比較して、相対的に低い親和性の特異性である。クラスI結合ペプチドは、一般に8〜10残基長であり、そしてMHCペプチド結合部位におけるポケットと一致する特定の重要な位置で、制限された多様性のアミノ酸側鎖を適合させている。特定のMHC分子と結合するこれらの重要な特徴は、ペプチド結合モチーフを構成する。
【0009】
それゆえ、ヒト腫瘍、癌、および感染された細胞に特異的なT細胞の誘導ならびに単離を促進する方法、ならびに適切なMHCの状況においてこれらのT細胞によって認識される主な標的抗原をコードする遺伝子を効率的に選択する方法についての必要性がある。
【0010】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、新規のポリヌクレオチドであるC35に関し、これはヒト乳房癌腫および膀胱癌腫において示差的に発現され、そしてC35ポリペプチドをコードする。さらに、本発明はC35ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを産生するためのベクター、宿主細胞、抗体ならびに組換え方法に関する。本発明はさらに、C35遺伝子産物を発現する標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に対する抗体および細胞媒介性免疫を誘導するための、免疫原性組成物中のC35ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの処方ならびに使用に関する。また、C35遺伝子およびポリペプチドに関する障害を検出するための診断方法(癌腫(例えば、ヒト乳房癌腫)のための予後マーカーとしての使用を含む)、およびこのような障害を処置するための治療的方法が提供される。本発明はさらに、C35の結合パートナーを同定するためのスクリーニング方法に関する。
【0011】
(発明の詳細な説明)
(定義)
以下の定義は、本明細書全体を通して用いられる特定の用語の理解を容易にするために提供される。
【0012】
本発明において、「単離された」とは、物質のネイティブな環境(例えば、この物質が天然に存在する場合のその天然の環境)から取り出された、従って、その天然の状態から「人の手によって」変えられている物質のことをいう。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、ベクターもしくは組成物の一部であり得るか、または細胞内に含まれ得、そしてそれらのベクター、組成物または特定の細胞がそのポリヌクレオチドの本来の環境にはないので、なお単離された状態にあり得る。
【0013】
本発明において、「膜」C35タンパク質は、脂質二重層との直接的会合または間接的会合のいずれかにより(特に、カルボキシ末端アミノ酸モチーフのプレニル化を介する会合が挙げられる)細胞表面で発現されるものである。プレニル化は、ファルネシルイソプレノイドまたはゲラニルゲラニルイソプレノイドのいずれかの付加によるタンパク質の共有結合改変を含む。プレニル化は、タンパク質のカルボキシ末端付近に位置するシステイン残基で生じる。C35ポリペプチドは、112〜115位にアミノ酸Cys−Val−Ile−Leuを含み、このLeuは、このポリペプチドのC末端残基である。モチーフCys−X−X−Leu(ここで、Xは、任意の脂肪族アミノ酸を示す)は、Cys残基上に20炭素のゲラニルゲラニル基の付加を生じる。一般に、この脂質の付加後に、3つの末端アミノ酸残基がこのポリペプチドから切断され、そして脂質基がメチル化される。プレニル化は、大部分のタンパク質の膜局在を促進し、このポリペプチド中の配列モチーフは、細胞質膜、核膜、またはゴルジ膜へのプレニル化タンパク質の方向付けに関与する。プレニル化は、タンパク質間相互作用において役割を果たし、そして多くのプレニル化タンパク質は、シグナル伝達に関与する。プレニル化タンパク質の例としては、Rasおよび核ラミニンBが挙げられる(Zhang,F.L.and Casey,P.J.,Ann.Rev.Biochem.65:241−269(1996))。C35タンパク質は、一次試薬としてマウス抗ヒトC35抗血清を用いる蛍光分析により、2つの乳房腫瘍細胞株の表面で検出された(図4)。
【0014】
本発明において、「分泌(された)」C35タンパク質とは、シグナル配列の結果として、ER、分泌小胞、または細胞外空間に方向付けられ得るタンパク質、ならびにシグナル配列を必ずしも含まなくても細胞外空間に放出されるC35タンパク質をいう。C35分泌タンパク質が細胞外空間に放出されると、C35分泌タンパク質は、「成熟」C35タンパク質を精製するように細胞外でプロセシングを受け得る。細胞外空間への放出は、エキソサイトーシスおよびタンパク質分解性切断を含む多くの機構により生じ得る。
【0015】
本明細書中で用いられる場合、C35「ポリヌクレオチド」とは、配列番号1に含まれる核酸配列を有する分子をいう。例えば、C35ポリヌクレオチドは、全長cDNA配列(5’および3’非翻訳配列を含む)、コード領域(シグナル配列ありまたはなし)、分泌タンパク質コード領域、ならびにこの核酸配列のフラグメント、エピトープ、ドメイン、および改変体のヌクレオチド配列を含み得る。さらに、本明細書中で用いられる場合、C35「ポリペプチド」とは、広く定義されるように、このポリヌクレオチドから生成される翻訳されたアミノ酸配列を有する分子をいう。
【0016】
特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、長さが300nt、200nt、100nt、50nt、15nt、10nt、または7ntより短い。さらなる実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、C35コード配列の少なくとも15の連続するヌクレオチドを含むが、いずれかのC35イントロンの全てまたは一部分を含まない。別の実施形態において、C35コード配列を含む核酸は、ゲノム隣接遺伝子(すなわち、ゲノム中のC35遺伝子の5’側または3’側)のコード配列を含まない。
【0017】
本発明において、全長C35コード配列は、配列番号1として識別される。
【0018】
C35「ポリヌクレオチド」とはまた、C35ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド、およびこのポリヌクレオチドに密接に関連したポリヌクレオチドをいう。
【0019】
C35「ポリヌクレオチド」とはまた、配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチド、またはその生物学的に活性なフラグメントをいう。
【0020】
C35「ポリヌクレオチド」とはまた、配列番号1に含まれる配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチド、その相補体、または寄託されたクローン内のcDNAをいう。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10% 硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃での一晩のインキュベーション、続いて0.1×SSC中、約65℃でのフィルターの洗浄をいう。
【0021】
当然のことながら、ポリA+配列(例えば、cDNAの任意の3’末端ポリA+トラクト(tract))にのみハイブリダイズするポリヌクレオチド、またはT(またはU)残基の相補的なストレッチは、「ポリヌクレオチド」の定義に含まれない。なぜなら、このようなポリヌクレオチドは、ポリ(A)ストレッチを含む任意の核酸分子またはその相補体(例えば、実際には、任意の2本鎖cDNAクローン)にハイブリダイズするからである。
【0022】
C35ポリヌクレオチドは、任意のポリリボヌクレオチドもしくはポリデオキシリボヌクレオチドを含み得、改変されていないRNAもしくはDNA、または改変されたRNAもしくはDNAであり得る。例えば、C35ポリヌクレオチドは、1本鎖DNAおよび2本鎖DNA、ならびに1本鎖および2本鎖領域の混合物であるDNA、1本鎖RNAおよび2本鎖RNA、ならびに1本鎖および2本鎖領域の混合物であるRNA、1本鎖、(またはより代表的には)2本鎖であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子、または1本鎖領域および2本鎖領域の混合物を含み得る。さらに、C35ポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む3本鎖領域から構成され得る。C35ポリヌクレオチドはまた、安定性または他の理由のために、1以上の改変された塩基または改変DNAもしくはRNA骨格を含み得る。「改変された」塩基としては、例えば、トリチル化塩基、およびイノシンのような通常でない塩基が挙げられる。DNAおよびRNAに対して種々の改変が行われ得る;従って、「ポリヌクレオチド」は、化学的に、酵素的に、または代謝的に改変された形態を含む。
【0023】
C35ポリペプチドは、ペプチド結合、または改変されたペプチド結合により互いに結合されたアミノ酸(すなわち、ペプチドアイソスター(peptide isoster))から構成され得、そして遺伝子によりコードされる20のアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。C35ポリペプチドは、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシング)または当該分野で周知の化学的改変技術のいずれかにより改変され得る。このような改変は、基本的教科書およびより詳細なモノグラフ、ならびに多量の研究文献に十分に記載されている。改変は、C35ポリペプチド(ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含む)のいずれの場所においても生じ得る。同じ型の改変が所定のC35ポリペプチドにおけるいくつかの部位において同程度または種々の程度で存在し得ることが理解される。また、所定のC35ポリペプチドは、多くの型の改変を含み得る。C35ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として分枝状態になり得、そして分枝ありまたはなしの環状であり得る。環状のC35ポリペプチド、分枝したC35ポリペプチド、および分枝した環状のC35ポリペプチドは、天然の翻訳後プロセスにより生じて得るか、合成方法により作製され得る。改変としては、以下が挙げられる:アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介性付加(例えば、アルギニル化)、およびユビキチン化。例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993);Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.1−12(1983);Seifter et al.,Meth Enzymol 182:626−646(1990);Rattan et al.,Ann NY Acad Sci 663:48−62(1992)を参照のこと。
【0024】
「配列番号1」は、C35ポリヌクレオチド配列をさす一方、「配列番号2」は、C35ポリペプチド配列をさす。
【0025】
「生物学的活性を有する」C35ポリペプチドとは、特定の生物学的アッセイにおいて測定されるように、用量依存性か否かに拘らず、C35ポリペプチドの活性に類似の活性を示すが、必ずしもC35ポリペプチドの活性と同一ではないポリペプチド(成熟形態を含む)をいう。用量依存性が実際に存在する場合、これは、C35ポリペプチドの活性に同一である必要はなく、むしろC35ポリペプチドと比較して所定の活性における用量依存性に実質的に類似である(すなわち、候補ポリペプチドは、C35ポリペプチドに対して、約25分の1以上の活性、好ましくは10分の1以上の活性、そして最も好ましくは、3分の1以上の活性を示す)。
【0026】
(C35ポリヌクレオチドおよびポリペプチド)
C35の348塩基対フラグメントを、原発性かつ浸潤性の管内乳癌(intraductal mammary carcinoma)を有する同じ患者から得た腫瘍および正常乳腺上皮細胞株由来のポリRNAの差し引きハイブリダイゼーション(subtractive hybridization)により、最初に単離した。Band,V. et al.,Cancer Res.50:7351−7357(1990)。次いで、この配列および重複EST配列(登録番号W57569)の配列に基づくプライマーを用いて、全長C35コード配列を含むcDNAを増幅し、BT−20乳房腫瘍細胞株(ATCC,HTB−19)からクローニングした。このC35 cDNAは、配列番号1として識別されるコード領域全体を含む。C35クローンは、348bpのコード配列に加えて、3’非翻訳領域の167bpを含む。このオープンリーディングフレームは、ヌクレオチドの1位に位置するN末端メチオニンで始まり、ヌクレオチドの348位の終止コドンで終わる(図1)。配列番号1の配列の全てまたは大部分を含む代表的なクローンを、アメリカンタイプカルチャーコレクション(「ATCC」)に2000年8月1日に寄託し、ATCC受託番号PTA−2310を与えられた。ATCCは、10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209,USAに位置する。ATCCへの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に従って行われた。
【0027】
従って、配列番号1および翻訳された配列番号2は十分正確であり、そうでない場合は、当該分野で周知および以下にさらに記載される種々の使用に適切である。例えば、配列番号1は、配列番号1に含まれる核酸配列または寄託されたクローンに含まれるcDNAを検出する核酸ハイブリダイゼーションプローブを設計するために有用である。これらのプローブはまた、生物学的サンプル中の核酸分子にハイブリダイズし、それにより本発明の種々の法医学的方法および診断方法が可能になる。同様に、配列番号2から同定されるポリペプチドは、C35に特異的に結合する抗体を生成するため、または細胞表面上のMHC分子と会合したC35由来のペプチドに特異的なT細胞を刺激するために用いられ得る。
【0028】
それにも拘らず、配列決定反応により生成されたDNA配列は、配列決定誤差を含み得る。この誤差は、間違って認識されたヌクレオチドとして存在するか、または生成されたDNA配列におけるヌクレオチドの挿入もしくは欠失として存在する。間違って挿入または欠失されたヌクレオチドは、推定アミノ酸配列のリーディングフレームにおいてフレームシフトを生じる。これらの場合、推定アミノ酸配列は、生成されたDNA配列が実際のDNA配列と99.9%を超えて同一であり得る(例えば、1000塩基を超えるオープンリーディングフレームにおける1つの塩基挿入または欠失)としても、実際のアミノ酸配列から多様化する。
【0029】
従って、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列において正確さが必要とされる適用については、本発明は、配列番号1として同定される生成されたヌクレオチド配列および配列番号2として同定される推定の翻訳されたポリペプチド配列のみを提供するのではない。寄託されたC35クローンのヌクレオチド配列は、公知の方法に従って、寄託されたクローンを配列決定することにより容易に決定され得る。次いで、推定C35アミノ酸配列は、このような寄託物から確かめられ得る。さらに、寄託されたクローンによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列はまた、ペプチド配列決定により、または寄託されたヒトC35 cDNAを含む適切な宿主細胞においてこのタンパク質を発現させ、このタンパク質を収集し、その配列を決定することにより直接決定され得る。
【0030】
本発明はまた、配列番号1に対応するC35遺伝子または寄託されたクローンに関する。C35遺伝子は、本明細書中に開示される配列情報を用いて公知の方法に従って単離され得る。このような方法は、開示された配列からプローブまたはプライマーを調製する工程、およびゲノム材料の適切な供給源からC35遺伝子を同定または増幅する工程を包含する。
【0031】
C35の種ホモログもまた、本発明において提供される。種ホモログは、本明細書中に提供される配列から適切なプローブまたはプライマーを作製し、そして所望のホモログについての適切な核酸供給源をスクリーニングすることにより単離および同定され得る。
【0032】
「C35ポリペプチド」により、本明細書中に記載のC35タンパク質およびポリペプチドの全ての形態が意味される。C35ポリペプチドは、任意の適切な様式において調製され得る。このようなポリペプチドとしては、単離された天然に存在するポリペプチド、組換え生成されたポリペプチド、合成により生成されたポリペプチド、またはこれらの方法の組み合わせにより生成されたポリペプチドが挙げられる。このようなポリペプチドを調製するための手段は、当該分野で十分に理解されている。
【0033】
C35ポリペプチドは、膜タンパク質または分泌タンパク質の形態(成熟形態を含む)であり得るか、あるいはより大きなタンパク質(例えば、融合タンパク質)の一部であり得る(以下を参照のこと)。分泌配列またはリーダー配列、プロ配列、精製を補助する配列(例えば、複数のヒスチジン残基)を含むさらなるアミノ酸配列、または組換え生成の間の安定性のためのさらなる配列を含めることはしばしば有利である。
【0034】
C35ポリペプチドは、好ましくは単離された形態で提供され、そして好ましくは実質的に精製されている。組換え生成バージョンのC35ポリペプチド(分泌ポリペプチドを含む)は、Smith and Johnson,Gene 67:31−40(1988)に記載される1工程の方法により実質的に精製され得る。C35ポリペプチドはまた、当該分野で周知の方法で、C35タンパク質に対して惹起された本発明の抗体を用いて、天然の供給源または組換え供給源から精製され得る。
【0035】
(ポリヌクレオチドおよびポリペプチド改変体)
「改変体」とは、C35ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、その本質的な特性を保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドをいう。一般に、改変体は、C35ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに全体として密接に類似しており、そして多くの領域において、C35ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと同一である。
【0036】
例えば、本発明の参照ヌクレオチド配列に少なくとも95%「同一」のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにより、このポリヌクレオチド配列がC35ポリペプチドをコードする参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5つまでの点変異を含み得ることを除いて、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照配列に同一であることが意図される。言い換えると、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列におけるヌクレオチドの5%までが欠失または別のヌクレオチドと置換され得るか、あるいは参照ヌクレオチド配列における総ヌクレオチドの5%までの多くのヌクレオチドが参照配列に挿入され得る。問い合わせ配列は、配列番号1に示される配列全体、ORF(オープンリーディングフレーム)、または本明細書中に記載のように特定される任意のフラグメントであり得る。
【0037】
実際問題として、任意の特定の核酸分子またはポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かが、公知のコンピュータープログラムを用いて従来どおり決定され得る。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最も良好な全体の適合を決定するための好ましい方法(グローバル配列アラインメントといわれる)はまた、Brutlag et al.,Comp.App.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づいたFASTDBコンピュータープログラムを用いて決定され得る。配列アラインメントにおいて、問い合わせ配列および対象配列は、両方がDNA配列である。RNA配列はUをTに変換することにより比較され得る。この汎用性配列アラインメントの結果は、%同一性である。%同一性を計算するために、DNA配列のFASTDBアラインメントにおいて用いられる好ましいパラメーターは、以下である:Matrix=Unitary、k−tuple=4、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=30、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty 0.05、Window Size=500または対象ヌクレオチド配列の長さ(いずれか長い方)。
【0038】
対象配列が、5’または3’の欠失が原因で(内部欠失が原因ではない)問い合わせ配列より短い場合、結果に対して手動による較正が行われなければならない。これは、FASTDBプログラムが、%同一性を計算する際に対象配列の5’短縮および3’短縮を考慮していないからである。問い合わせ配列に対して、5’末端または3’末端で短縮された対象配列については、%同一性は、問い合わせ配列の総塩基の%として、対象配列(適合/アラインしない)の5’側および3’側にある問い合わせ配列の塩基数を計算することにより較正される。ヌクレオチドが適合/アラインするか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。次いで、このパーセンテージは、%同一性から差し引きされ、特定のパラメーターを用いて上記のFASTDBプログラムにより計算されて、最終的な%同一性スコアに達する。この較正されたスコアは、本発明の目的のために用いられるものである。FASTDBアラインメントにより示される対象配列(問い合わせ配列と適合/アラインしない)の5’塩基および3’塩基の外側にある塩基のみが%同一性スコアを手動で調節する目的で計算される。
【0039】
例えば、90塩基の対象配列は、100塩基の問い合わせ配列と整列させて、同一性パーセントを決定する。欠失は、対象配列の5’末端で起こり、従って、FASTDB整列化は、5’末端の最初の10塩基との一致/整列化を示さない。10個の不対塩基は、配列の10%(5’末端および3’末端の塩基の数は、問い合わせ配列における塩基の全数と一致しない)を示すので、10%は、FASTDBプログラムによって計算される同一性パーセントスコアから減算される。残存する90塩基が、完全に一致した場合、最終同一性パーセントは、90%である。別の例において、90塩基の対象配列は、100塩基の問い合わせ配列と比較される。この時、欠失は、内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/整列化しない対象配列の5’および3’において塩基が存在しない。この場合、FASTDBによって計算される同一性パーセントは、手動で訂正されない。もう1度、問い合わせ配列と一致/整列化しない対象配列の5’および3’の塩基のみ、手動で訂正される。他の手動の訂正以外に、本発明の目的に合ったものはない。
【0040】
本発明の問い合わせ配列に少なくとも、例えば、95%「同一な」アミノ酸配列を有するポリペプチドによって、問い合わせ配列に同一であることが意図される。対象ポリペプチドのアミノ酸配列が、対象ポリペプチドが、問い合わせアミノ酸配列の各100アミノ酸あたり5個のアミノ酸改変を含み得ることは除く。言い換えれば、問い合わせアミノ酸配列に少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列における5%までのアミノ酸残基が、挿入、欠失または別のアミノ酸と置換され得る。参照配列のこれらの改変は、参照アミノ酸配列のアミノ末端の位置またはカルボキシ末端の位置あるいはこれらの末端の位置間のどこか(参照配列における残基間に独立してか、もしくは参照配列内の1つ以上の連続基においてかのいずれかに分散される)において起き得る。
【0041】
実際的な様式において、任意の特定のポリペプチドが、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列または寄託されたDNAクローンによってコードされるアミノ酸配列に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかは、公知のコンピュータープログラムを従来的に使用して決定され得る。問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最高の全体的な一致を決定するための好ましい方法はまた、全体的な配列整列化として称され、Brutlagら,Comp.App.Biosci.6:237−245(1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータープログラムを使用して決定され得る。配列整列化において、問い合わせ配列および対象配列は、両ヌクレオチド配列かまたは両アミノ酸配列かのいずれかである。この全体的な配列整列化の結果は、同一性パーセントにおいてである。FASTDBアミノ酸配列化において使用される好ましいパラメーターは、マトリクス=PAM 0、kタプル=2、不一致ペナルティー=1、連結(joining)ペナルティー=20、無作為化基長(Randomaization Group Length)=0、カットオフスコア=1、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー=0.05、ウィンドウサイズ=500また対象アミノ酸配列の長さ(どちらか短い方)である。
【0042】
対象配列が、N末端欠失またはC末端欠失のせいで(内部欠失のせいではない)問い合わせ配列より短い場合、手動の訂正は、結果において行なわなければならない。これは、全体的な同一性パーセントを計算する場合、FASTDBプログラムが、対象配列のN末端切断およびC末端切断を考慮しないからである。N末端およびC末端において切断された対象配列に関して、問い合わせ配列に対する、同一性パーセントは、対象配列のN末端およびC末端である問い合わせ配列の残基の数を計算することによって訂正される。この対象配列のN末端およびC末端は、問い合わせ配列の全塩基のパーセントのように、対応する対象残基と一致/整列しない。残基が、一致/整列するか否かは、FASTDB配列整列化の結果によって決定される。次いで、このパーセントは、特定のパラメーターを使用する上記のFASTDBプログラムによって計算される、同一性パーセントから減算されて、最終同一性パーセントスコアに達する。この最終同一性パーセントスコアは、本発明の目的のために使用されるものである。対象配列のN末端およびC末端の残基のみ(問い合わせ配列に一致/整列化しない)が、同一性パーセントスコアを手動で調節する目的のために考えられる。すなわち、問い合わせ残基のみが、対象配列の最遠のN末端残基およびC末端残基の外側に位置する。
【0043】
例えば、90個のアミノ酸残基対象配列は、100残基の問い合わせ配列と整列させて、同一性パーセントを決定する。欠失は、対象配列のN末端において起こり、従って、FASTDB整列化は、N末端における第1の10個の残基と一致/整列を示さない。10個の不対塩基は、配列の10%(N末端およびC末端の残基の数は、問い合わせ配列における残基の全数と一致しない)を示すので、10%が、FASTDBプログラムによって計算される同一性パーセントスコアから減算される。残りの90塩基が、完全に一致した場合、最終同一性パーセントは、90%である。別の例において、90塩基の対象配列は、100塩基の問い合わせ配列と比較される。この時、欠失は、内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/整列しない対象配列のN末端およびC末端において残基が存在しない。この場合、FASTDBによって計算される同一性パーセントは、手動で訂正されない。もう1度、FASTDB整列において示される場合、対象配列のN末端およびC末端の外側に位置する残基のみが、手動で訂正される問い合わせ配列と一致/整列されない。手動の訂正以外に、本発明の目的に合ったものはない。
【0044】
C35改変体は、コード領域、非コード領域または両方における改変を含み得る。サイレント置換、付加または欠失を生じるが、コードされるポリペプチドの性質または活性を改変しない改変を含むポリヌクレオチド改変体が、特に好ましい。遺伝的なコードの縮重に起因するサイレント置換によって生成されるヌクレオチド改変体が、好ましい。さらに、5〜10個、1〜5個または1〜2個のアミノ酸が、任意の組み合わせにおいて置換、欠失または付加された改変体はまた、好ましい。C35ポリヌクレオチド改変体は、種々の理由(例えば、特定の宿主に関してコドン発現を最適化するために(細菌の宿主(例えば、E.coli)によってヒトmRNAにおけるコドンを好ましいコドンに改変する))のために産生され得る。
【0045】
天然に存在するC35改変体は、「対立遺伝子改変体」と呼ばれ、そして生物体の染色体における所定の座位を占める遺伝子のいくつかの改変形態の1つと称される(Genes II,Lewin,B.,編,John Wiley&Sons,New York(1985))。また、対立遺伝子改変体は、生物体の染色体における異なる座位において存在する非常に相同的な配列である「タンデム対立遺伝子」として存在する。これらの対立遺伝子改変体は、ポリヌクレオチドレベルおよび/またはポリペプチドレベルのいずれかにおいて改変し得る。あるいは、天然に存在しない改変体は、変異誘発技術によってかまたは直接合成によって産生され得る。
【0046】
タンパク質操作および組換えDNA技術の公知の方法を使用して、改変体は、C35ポリヌクレオチドの特性を改善または改変するために産生され得る。例えば、1つ以上のアミノ酸は、生物学的な機能の本質的な消失なしに、分泌タンパク質のN末端またはC末端から欠失され得る。Ronら,J.Biol.Chem.268:2984〜2988(1993)の著者らは、3個、8個または27個のアミノ酸末端アミノ酸残基を欠失した後でさえ、ヘパリン結合活性を有する改変体KGFタンパク質を報告した。同様に、インターフェロンγは、このタンパク質のカルボキシ末端から8〜10個のアミノ酸残基を欠失した後、10倍高い活性を示した(Dobeliら,J.Biotechnology 7:199−216(1988))。
【0047】
さらに、十分な証拠は、改変体が、しばしば、天然に存在するタンパク質の生物学的活性と類似の生物学活性を保持することを実証する。例えば、Gayleおよび共同研究者ら(J.Biol.Chem.268:22105〜22111(1993))は、ヒトサイトカインIL−1aの大規模な変異分析を行なった。かれらは、ランダム突然変異誘発を使用して、3,500を超える個々のIL−1a変異体を産生した。これらの変異体は、分子の全長にわたり、改変体あたり平均2.5個のアミノ酸を改変した。複数の変異が、できる限りのアミノ酸位置において試験された。研究者らは、「分子の[多く]が([m]ost of molecule)、[結合活性または生物学的活性]のいずれかにほとんど影響を与えず改変され得る」ことを見出した。(要約を参照のこと)。事実、試験された3,500個より多いヌクレオチド配列から、23個の固有のアミノ酸配列のみが、野生型とは活性において有意に異なるタンパク質を産生した。
【0048】
さらに、ポリヌクレオチドのN末端またはC末端から1つ以上のアミノ酸を欠失することが、1つ以上の生物学的機能の改変または消失を生じるとしても、他の生物学的活性は、なお保持され得る。例えば、分泌形態の残基の大多数未満が、N末端またはC末端から除去される場合、分泌形態を認識する抗体を誘導または結合する欠失改変体の能力は、保持されるようである。タンパク質のN末端残基またはC末端残基を欠いた特定のポリペプチドが、このような免疫原性活性を保持するかどうかは、本明細書中に記載される慣用的な方法および当該分野で公知の他の慣用的な方法によって容易に決定され得る。
【0049】
従って、本発明は、実質的な生物学的活性を示すC35ポリペプチド改変体をさらに含む。このような改変体は、活性においてわずかな影響を有するように、当該分野で公知の一般的な法則に従って選択された欠失、挿入、転位、反復および置換を含む。例えば、サイレントなアミノ酸置換を表現型的に作製する方法に関するガイダンスは、Bowie,J.U.ら,Science 247:1306〜1310(1990)に提供され、ここで著者らは、アミノ酸配列の変化に対する寛容を研究するための2つの主要なストラテジーが存在することを示す。
【0050】
第1のストラテジーは、進化の過程の間、天然の選択によるアミノ酸置換の寛容性を開発する。異なる種のアミノ酸配列を比較することによって、保存されたアミノ酸を同定し得る。これらの保存されたアミノ酸は、タンパク質機能に重要であるようである。対照的に、置換が、天然の選択によって寛容化されるアミノ酸位置は、これらの位置が、タンパク質機能に重要でないこと示す。従って、アミノ酸置換に寛容性を示す位置は、改変され得るが、なおタンパク質の生物学的な活性を維持する。
【0051】
第2のストラテジーは、遺伝子操作を使用して、クローニングされた遺伝子の特定の位置にアミノ酸変化を導入して、タンパク質機能に重要な領域を同定する。例えば、部位指向性突然変異誘発またはアラニン走査突然変異誘発(分子中の各残基における単一のアラニン変異の誘導)が、使用され得る。(CunnighamおよびWells,Science 244:1081〜1085(1989))。次いで、得られた変異分子は、生物的活性に対して試験され得る。
【0052】
著者らが、言うことには、これらの2つのストラテジーは、驚いたことに、タンパク質が、アミノ酸置換に寛容性があることを明かにした。著者らは、さらに、アミノ酸変化が、タンパク質において特定のアミノ酸位置において許容的であるようであることを示す。例えば、多くの埋没した(タンパク質の三次構造内に)アミノ酸残基は、非極性側鎖を必要とするが、表面側鎖のわずかな特徴は、一般に保存されている。さらに、寛容性の保存的アミノ酸置換としては、脂肪族または疎水性のアミノ酸 Ala、Val、LeuおよびLleの置換;ヒドロキル残基 SerおよびThrの置換;酸性残基 AspおよびGluの置換;アミド残基 AsnおよびGlnの置換;塩基性残基 Lys、ArgおよびHisの置換;芳香族残基 Phe TyrおよびTrpの置換ならびに小サイズアミノ酸 Ala、Ser、Thr、MetおよびGlyの置換が挙げられる。
【0053】
保存的アミノ酸置換に加えて、C35の改変体は、以下を含む:(i)1つ以上の非保存的アミノ酸との置換、ここで、この置換されたアミノ酸残基は、遺伝的コードによってコードされる1つであってもよいし、なくてもよい、あるいは(ii)置換基を有する1つ以上のアミノ酸残基との置換、あるいは(iii)別の化合物(例えば、ポリペプチド(例えば、ポリエチレングリコール)の安定性および/または可溶性を増大した化合物)と成熟タンパク質との融合、あるいは(iv)さらなるアミノ酸(例えば、IgG Fc融合領域ペプチドまたはリーダー配列もしくは分泌配列または精製を促進する配列)とこのポリペプチドとの融合。このような改変体ポリペプチドは、本明細書中での教示から当該分野の範囲であると考えられる。
【0054】
例えば、荷電したアミノ酸が、他の荷電したアミノ酸または天然のアミノ酸とアミノ酸置換されたC35ポリペプチド改変体は、改善された特性を有するタンパク質(例えば、低い凝集性)を産生し得る。薬学的処方物の凝集は、凝集体の免疫原活性に起因する、活性の減少およびクリアランスを増大の両方を起こす。(Pinckardら,Clin.Exp.Immunol.2:331〜340(1967);Robbinsら,Diabetes 36:838〜845(1987);Clelandら,Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307〜377(1993))。
【0055】
(ポリヌクレオチドフラグメントおよびポリペプチドフラグメント)
本発明において、「ポリヌクレオチドフラグメント」は、寄託クローンに含まれる核酸配列また配列番号1に示される核酸配列を有する短いポリヌクレオチドをいう。短いヌクレオチドフラグメントは、好ましくは、少なくとも約15ヌクレオチド長およびさらに好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長、なおさらに好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド長、およびなお好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド長である。例えば、フラグメント「少なくとも20ヌクレオチド長」は、寄託クローンに含まれるcDNA配列または配列番号1に示されるヌクレオチド配列由来の20個以上の連続塩基を含むことを意図する。これらのヌクレオチドフラグメントは、本明細書中で議論される診断プローブおよびプライマーとして有用である。もちろん、より大きなポリヌクレオチド(例えば、少なくとも50、100、150、200、250、300ヌクレオチド)が、好ましい。
【0056】
さらに、C35ポリヌクレオチドフラグメントの代表的な例としては、例えば、約1〜50、51〜100、101〜150、151〜200、201〜250、251〜300もしくは301のヌクレオチド番号から配列番号1の末端までの配列または寄託クローンに含まれるcDNAを含むフラグメントを含む。文脈において「約」は、末端かまたは両末端のいずれかにおける特定の列挙される範囲(いくつかの(5、4、3、2または1)ヌクレオチドより多きいかまたは小さい)を含む。好ましくは、これらのフラグメントは、生物学的活性を有するポリペプチドをコードする。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、本明細書中で議論されるようにプローブまたはプライマーとして使用され得る。
【0057】
本発明において、「ポリペプチドフラグメント」は、配列番号2に含まれる短いアミノ酸配列または寄託クローンに含まれるcDNAによってコードされる短いアミノ酸配列を言う。タンパク質フラグメントは、「自由本位(free standing)」であり得、またはより大きなポリペプチドの一部または領域(最も好ましくは単一の連続領域として)を形成するフラグメント内に含まれ得る。本発明のポリペプチドフラグメントの代表的な例は、例えば、約1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100または101のアミノ酸番号からコード領域の末端までのフラグメントを含む。さらに、ポリペプチドフラグメントは、9、15、20、30、40、50、60、70、80、90または100アミノ酸長を含み得る。文脈において、「約」は、極端かまたは両極端かのいずれかにおいて特に列挙される範囲(幾つかの(5、4、3、2または1)アミノ酸より大きいまたは小さい)を含む。
【0058】
好ましいポリペプチドフラグメントは、分泌C35タンパク質および成熟形態を含む。さらに好ましいポリペプチドフラグメントは、アミノ末端もしくはカルボキシ末端または両末端からの連続した一連の欠失残基を有する分泌C35タンパク質または成熟形態を含む。
【0059】
上記されるように、タンパク質のN末端からの1つ以上のアミノ酸の欠失が、タンパク質の1つ以上の生物学的な機能の改変または消失を生じるとしても、他の生物学的活性は、なお保持され得る。従って、完全ポリペプチドまたは成熟ポリペプチドの大部分の残基未満はN末端から除去される場合、ポリペプチドの完全形態または成熟形態を認識する抗体を誘導および/または結合する短縮化C35ムテインの能力は、保持される。完全ポリペプチドのN末端残基を欠く特定のポリペプチドが、このような生物学的活性を保持するかどうかは、本明細書中に記載される慣用的な方法および当該分野の他の慣用的な方法によって容易に決定され得る。多数の欠失したN末端アミノ酸残基を有するC35ムテインは、幾らかの生物学的活性または免疫原活性を保持し得ないようである。事実、9個程にわずかなC35アミノ酸残基を含むペプチドは、しばしば、免疫応答を惹起し得る。
【0060】
従って、本発明は、さらに、配列番号2に示されるC35アミノ酸配列のアミノ末端から105番位のスレオニン残基までを欠いた1つ以上の残基を有するポリペプチドおよびこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0061】
また、上記されるように、タンパク質のC末端から1つ以上のアミノ酸の欠失が、タンパク質の1つ以上の生物学的機能の改変または消失を生じるとしても、他の生物学的活性は、なお保持され得る。従って、完全ポリペプチドまたは成熟ポリペプチドの大部分の残基未満がC末端から除去される場合、ポリペプチドの完全形態または成熟形態を認識する抗体を誘導および/または結合する短縮化C35ムテインの能力は、一般的に保持される。完全ポリペプチドのC末端残基を欠く特定のポリペプチドが、このような生物学的活性を保持するかどうかは、本明細書中に記載される慣用的な方法および当該分野で公知の他の慣用的な方法によって容易に決定され得る。多数の欠失C末端アミノ酸残基を有するC35ムテインは、幾らかの生物学的活性または免疫原活性を保持し得ないようである。
【0062】
従って、本発明は、さらに、配列番号2に示されるC35アミノ酸配列のカルボキシ末端から10番位のバリン残基までを欠いた1つ以上の残基を有するポリペプチドおよびこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0063】
さらに、本発明はまた、アミノ末端とカルボキシ末端の両方を欠失した1つ以上のアミノ酸を有するポリペプチドを提供する。好ましい実施形態において、本発明は、以下の残基を有するポリペプチドおよびこのようなポリペプチドにコードされるポリヌクレオチドに関する:配列番号2のS−9〜V−17;V−10〜V−17;E−16〜V−23;E−16〜R−24;E−16〜I−25;S−21〜F−35;C30〜T−38;E−31〜Y−39;E−36〜A−43;A−37〜A−45;A−37〜V−46;Y−39〜V−46;S−44〜I−53;A−45〜I−53;G−52〜L−59;E−54〜T−62;S−57〜F−75;R58〜I−67;G−61〜I−69;G−63〜F−83;E−66〜L−73;E−66〜V−74;F−83〜E103;D−88〜A−96;L−89〜A−96;A−92〜T−101;R−95〜L−102;A−96〜K−104;K−104〜V−113;I−105〜V−113;I−105〜I−114。
【0064】
多くのポリヌクレオチド配列(例えば、EST配列)は、配列データベースを介して公的に利用可能かつアクセス可能である。
【0065】
以下に言及されるヒトEST配列は、ESTデータベースのBLAST検索において同定された。これらの配列は、列挙されるGenBank受付番号において同定されるcDNAインサートの部分的配列であると考えられる。相同的配列は、注釈されるGenBankデータベースの検索において同定されなかった。この期待値(E)は、特定のサイズのデータベースを検索する場合、偶然によってすぐ見られることが「期待」し得るヒットの数を記載するパラメーターである。2つの配列間での一致を割り当てられるスコア(S)と共に指数関数的に減少する。基本的に、E値は、配列間の一致に存在する無作為なバックグランドノイズを示す。BLAST2.0において、期待値はまた、一致の有意さを示すP値(確立)の代わりに使用される。例えば、ヒットに割り当てられる1のE値は、現在のサイズのデータベースにおいて、単に偶然による類似のスコアとの1つの一致をみることを期待し得る意味として解釈され得る。
【0066】
例えば、以下の配列は、以下に関する:配列番号1、GenBank受付番号:AA971857(配列番号3);W57569(配列番号4);AI288765(配列番号5);W65390(配列番号6);W37432(配列番号7);N42748(配列番号8);AA971638(配列番号9);R22331(配列番号10);AA308370(配列番号11);AA285089(配列番号12);R68901(配列番号13);AA037285(配列番号14);H94832(配列番号15);H96058(配列番号16);H56522(配列番号17);AA935328(配列番号18);AW327450(配列番号19);AW406075(配列番号20);AW406223(配列番号21);AI909652(配列番号22);AA026773(配列番号23);H96055(配列番号24);H12836(配列番号25);R22401(配列番号26);N34596(配列番号27);W32121(配列番号28);T84927(配列番号29);R63575(配列番号30);R23139(配列番号31);AA337071(配列番号32);AA813244(配列番号33);AA313422(配列番号34);N31910(配列番号35);N42693(配列番号36);N32532(配列番号37);AA375119(配列番号38);R32153(配列番号39);R23369(配列番号40);AA393628(配列番号41);H12779(配列番号42);AI083674(配列番号43);AA284919(配列番号44);AA375286(配列番号45);AA830592(配列番号46);H95363(配列番号47);T92052(配列番号48);AI336555(配列番号49);AI285284(配列番号50);AA568537(配列番号51);AI041967(配列番号52);W44577(配列番号53);R22332(配列番号54);N27088(配列番号55);H96418(配列番号56);AI025384(配列番号57);AA707623(配列番号58);AI051009(配列番号59);AA026774(配列番号60);W51792(配列番号61);AI362693(配列番号62);AA911823(配列番号63);H96422(配列番号64);AI800991(配列番号65);AI525314(配列番号66);AI934846(配列番号67);AI937133(配列番号68);AW006797(配列番号69);AI914716(配列番号70);AI672936(配列番号71);W61294(配列番号72);AI199227(配列番号73);AI499727(配列番号74);R32154(配列番号75);AI439771(配列番号76);AA872671(配列番号77);AA502178(配列番号78);N26715(配列番号79);AA704668(配列番号80);R68799 配列番号81);H56704(配列番号82);AI360416(配列番号83)。
【0067】
従って、1つの実施形態において、本発明は、1つ以上の上に列挙されるESTを除いて、本明細書中に記載されるポリヌクレオチドフラグメントおよび全長ポリヌクレオチド(例えば、コード領域)を含むポリヌクレオチドに関する。
【0068】
構造的ドメインまたは機能的ドメインによって特徴付けられるC35ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドフラグメントはまた、好ましい。本発明の好ましい実施形態は、MHC結合エピトープおよびプレニル化部位を含むフラグメントを含む。
【0069】
他の好ましいフラグメントは、生物学的活性C35フラグメントである。生物学的活性フラグメントは、同様の活性を示す生物学的活性フラグメントであるが、C35ポリペプチドの活性と同一である必要はない。フラグメントの生物学的活性は、改善された所望の活性または減少した所望しない活性を含み得る。
【0070】
(エピトープおよび抗体)
内因的に合成されたタンパク質の分解によって誘導される細胞性ペプチドは、プレゴルジ画分に転座され、ここで、細胞性ペプチドは、細胞表面への移動のためにクラスI MHC分子に結合する。これらのクラスI MHC:ペプチド複合体は、特異的なCD8+細胞傷害性T細胞に対する標的抗原である。全ての内因性タンパク質は、「回転する」ので、任意の細胞質タンパク質または核タンパク質に由来するペプチドは、MHC分子に結合し得、そして細胞表面における提示のために移動され得る。これは、T細胞が、抗体よりも細胞のタンパク質の大きな提示を調査することを可能にする。この抗体は、細胞膜で分泌されるかまたは組み込まれるかのいずれかでこれらのタンパク質のみの立体配座的な決定因子を認識することを制限される。T細胞レセプター抗原結合部位は、ペプチドとMHCの周りの両方の決定因子に相互作用する。従って、T細胞の特異性は、MHC:ペプチド複合体によって規定される。MHC分子に結合するペプチドの特異性は、非常に広く、そして特異的な抗体の抗原結合部位と比較して相対的に低親和性である。クラスI結合ペプチドは、一般に、8〜10残基長である。これは、MHCペプチド結合部位におけるポケットに一致する特定のキー位置における制限された多様性のアミノ酸側鎖に適応する。特定のMHC分子に結合するペプチドのこれらの重要な特徴は、ペプチド結合モチーフを構成する。
【0071】
多くのコンピューターアルゴリズムは、より大きなタンパク質におけるペプチドの同定に関し記載されている。これは、特定のMHCクラスI分子またはMHCクラスII分子に対するペプチド結合モチーフの必要性を満たし得る。MHC分子の過剰な多形性のために、異なるペプチドは、しばしば、異なるMHC分子に結合する。表1〜3は、3つの異なるアルゴリズムを使用してMHC結合ペプチドであることが推定されるC35ペプチドを列挙する。詳細には、表1および表5は、SYFPEITHIウェブサイト(wysiwyg://35/http://134.2.96.221/scripts/hlaserver.dll/EpPredict.htm)において見られ、そしてRammensee,H.G.,Bachmann,J. およびStevanovic,S.による本「MHC Ligands and Peptide Motifs」(Chapman&Hall,New York 1997)に基づく法則を使用して推定されたC35 HLAクラスIエピトープおよびC35 HLAクラスIIエピトープを列挙する。表2は、ウェブ(http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi−bin/molbio/kenparker−comboform)において利用可能なNIH BIMASプログラムを使用するC35配列由来の推定MHC結合ペプチドを列挙する。最後に、表3および6は、Tエピトーププログラムによって同定されたC35ペプチドを列挙し、これは、複数の異なるMHCクラスII分子に結合し得るペプチドの推定のためのプログラムである。Tエピトープを使用して、4つのC35ペプチドは、種々のHLAクラスII分子に結合する候補であるようだとして同定された。一般に、これらのペプチドは、HLAクラスIに結合するペプチドよりも長く、そして複数のHLAクラスII分子への結合の点で、さらに重複する。
【0072】
【表1】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【表2】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
(表3)
重要:TエピトープをプログラムしてCys残基をAlaとして評価した。なぜならば、合成およびアッセイ限定について、Cysを含むペプチドを系統的に試験できなかったからである。予想配列がCys残基を含むときはいつでも、本発明者らは、Cys残基をAla残基と置換して、これらを合成することを提案する。
【0175】
【表3】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
(変化したペプチドリガンド)
特定のヒトT細胞株を用いるMHCクラスI抗原についてのC35の免疫優性エピトープの同定は、癌ワクチンにおけるそれらの首尾良い使用に対する重要な工程である。MHC結合残基でのアミノ酸置換を含む改変したC35ペプチドエピトープは、免疫機能を増強するために用いられる可能性を有する。このような変化したペプチドリガンド、または不規則変化の(heteroclitic)ペプチドは、本来のペプチドの濃度の100倍低い濃度でさえ、強力なT細胞アゴニストとなり得る(Dressel、A.ら、「Autoantigen recognition by human CD8 T Cell clones:enhanced agonist response induced by altered peptide ligand」、J.Immunol.159:4943−51(1997))。これらの変化したペプチドリガンドは、2つの形態のリガンドであり得る:ペプチドとのT細胞レセプターの接触を増加させる(実験により決定されなければならない)形態の改変、およびアンカー残基を改良することによりペプチドのHLA結合を増大する形態。表4は、好適なアンカー残基を導入することか、または有害な残基を置換することにより、HLAクラスI結合を増大させる改変を明記する。
【0180】
(表4 HLAクラスI結合を増大させる改変)
(他に示さない限り、例は、9アミノ酸残基のペプチドに適用する;10マーについて、5位のアミノ酸を無視し、そして得られた9マーを評価する(http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi−bin/molbio/hla_coefficient viewing_page)。以下に列挙する改変を、既存のデータベースにおける現在のデータに基づく例として提供し、そして現在のところ公知および未知の両方の、全ての潜在的HLA分子を結合するペプチドの全ての潜在的変化の排他的リストであることは全く意図しない。
【0181】
HLA A*0101
2位にSまたはTを有する任意の変化したペプチド
3位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
4位にPを有する任意の変化したペプチド
7位にA、F、I、L、M、P、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、K、R、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、F、G、H、K、M、N、P、Q、R、W、Y
P3:E、K、R、W
P4:K、R
P7:D、E、G、R
P9:D、E、P。
【0182】
HLA A*0201
1位にF、I、K、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにI、L、M、Q、またはVを有する任意の変化したペプチド
3位にF、L、M、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
5位にFを有する任意の変化したペプチド
6位の補助アンカーにF、I、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
7位にFまたはWを有する任意の変化したペプチド
8位にF、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、H、P
P2:C、F、H、K、N、P、R、S、W、Y
P3:D、E、K、R
P7:D、E、G、R
P8:I、V
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0183】
HLA−A*0205
1位にF、I、K、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにE、I、L、M、Q、またはVを有する任意の変化したペプチド
3位にF、L、M、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
5位にF、Yを有する任意の変化したペプチド
6位の補助アンカーにF、I、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
7位にFまたはWを有する任意の変化したペプチド
8位にF、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、P
P2:C、D、F、G、H、K、N、P、R、S、W、Y
P3:D、E、K、R
P7:D、E、R
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0184】
HLA−A*03
1位にGまたはKを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにI、L、M、Q、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にE、G、またはPを有する任意の変化したペプチド
5位にF、I、P、V、W、Yを有する任意の変化したペプチド
6位にF、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
7位にF、I、L、M、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、I、K、L、Q、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、P
P2:D、E、F、G、H、K、N、R、S、W、Y
P7:G、K、R
P9:D、E、G、H、N、P、Q、S、T。
【0185】
HLA−A*1101
1位にG、K、またはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにI、L、M、Q、T、V、Yを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、M、V、W、Yを有する任意の変化したペプチド
7位にF、I、L、M、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにKまたはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、P
P2:D、E、G、H、K、N、R、S、W
P7:K、R
P9:C、D、E、G、N、P、Q、S、T。
【0186】
HLA−A24
1位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにFまたはYを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、M、N、P、Q、またはVを有する任意の変化したペプチド
4位にD、E、またはPを有する任意の変化したペプチド
5位にI、L、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にFを有する任意の変化したペプチド
7位にNまたはQを有する任意の変化したペプチド
8位にEまたはKを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、I、L、またはMを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、H、K、R
P9:D、E、G、H、K、P、Q、R。
【0187】
HLA−A*3101
1位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにF、I、L、M、Q、T、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
6位にF、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
7位にF、I、L、M、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにKまたはRを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、P
P2:D、E、G、H、K、N、R、S
P7:K、R
P9:C、G、N、P、Q、S、T。
【0188】
HLA−A*3302
1位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにI、L、M、S、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにRを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:K、P、R
P2:D、E、K、R
P9:D、E、F、G、N、P、W、Y。
【0189】
HLA−B7
1位にAを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、P、またはVを有する任意の変化したペプチド
3位にMまたはRを有する任意の変化したペプチド
5位にPを有する任意の変化したペプチド
6位にRを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、F、H、K、R、W、Y
P3:D、E
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0190】
HLA−B8
1位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、C、L、またはPを有する任意の変化したペプチド
3位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
4位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
5位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:K、P、R
P2:D、E、F、G、H、K、Q、R、W、またはY
P3:D、E
P5:D、E
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0191】
HLA−B8(8マーペプチド)
1位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、C、L、またはPを有する任意の変化したペプチド
3位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
4位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
5位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
8位にI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:K、P、R
P2:D、E、F、G、H、K、Q、R、W、またはY
P3:D、E
P5:D、E
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0192】
HLA−B14
1位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにKまたはRを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、M、P、V、W、Yを有する任意の変化したペプチド
5位にHまたはRを有する任意の変化したペプチド
6位にI、L、M、RまたはVを有する任意の変化したペプチド
7位にTを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、F、W、またはY
P3:E、R
P5:E、W、Y
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R。
【0193】
HLA−B*2702
1位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにE、L、M、N、Q、またはRを有する任意の変化したペプチド
3位にF、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、I、L、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、P
P2:D、F、G、H、K、W、またはY
P7:K
P9:D、E、G、K、N、P、Q、R、S。
【0194】
HLA−B*27*05(8マーペプチド)
1位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにE、L、M、N、Q、またはRを有する任意の変化したペプチド
3位にF、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
8位のアンカーにF、I、K、L、M、R、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、P
P2:D、F、G、H、K、W、またはY
P7:K
P9:D、E、G、K、N、P、Q、R、S。
【0195】
HLA−B*3501(8マーペプチド)
1位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、P、またはSを有する任意の変化したペプチド
3位にKまたはRを有する任意の変化したペプチド
4位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
5位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
8位のアンカーにF、I、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、F、H、K、R、W、Y
P3:D、E
P9:D、E、F、G、H、K、P、Q、R。
【0196】
HLA−B*3701
2位のアンカーにDまたはEを有する任意の変化したペプチド
5位にIまたはVを有する任意の変化したペプチド
8位にF、L、またはMを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、I、L、M、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P9:D、E、G、H、K、P、Q、R。
【0197】
HLA−B*3801
2位のアンカーにF、H、P、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
3位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
4位にD、E、またはGを有する任意の変化したペプチド
5位にA、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
8位にKまたはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、K、R
P3:K、R
P9:D、E、G、H、K、P、Q、R。
【0198】
HLA−B*3901(8マーペプチド)
2位のアンカーにHまたはRを有する任意の変化したペプチド
3位にD、E、F、I、L、M、V、W、またはWを有する任意の変化したペプチド
4位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
6位にI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
8位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E
P3:K、R
P6:D、E、K、R
P8:D、E、G、H、K、P、Q、R。
【0199】
HLA−B*3902
2位のアンカーにKまたはQを有する任意の変化したペプチド
5位にF、I、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、L、またはMを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E
P3:K、R
P8:D、E、G、H、K、P、Q、R。
【0200】
HLA−B40
1位にAまたはGを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにDまたはEを有する任意の変化したペプチド
3位にA、F、I、L、M、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にPを有する任意の変化したペプチド
5位にPを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにA、L、M、またはWを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:F、H、I、K、L、M、Q、R、V、W、またはY
P3:D、E、K、R
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R。
【0201】
HLA−B44*03
1位にA、D、またはSを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにDまたはEを有する任意の変化したペプチド
3位にA、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
4位にF、I、またはPを有する任意の変化したペプチド
5位にA、K、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にA、L、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
7位にF、K、またはTを有する任意の変化したペプチド
8位にKを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:F、H、I、K、L、M、Q、R、V、W、Y
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R。
【0202】
HLA−B*5101(8マーペプチド)
1位にD、E、F、I、L、M、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、G、またはPを有する任意の変化したペプチド
3位にF、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にD、E、G、I、K、またはVを有する任意の変化したペプチド
5位にA、G、I、S、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にI、K、L、N、またはQを有する任意の変化したペプチド
7位にD、K、Q、またはRを有する任意の変化したペプチド
8位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:K、P、R
P2:D、E、H、K
P8:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0203】
HLA−B*5102
1位にFまたはYを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、G、またはPを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にE、G、H、K、L、N、Q、R、またはTを有する任意の変化したペプチド
5位にG、N、Q、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にI、N、Q、またはTを有する任意の変化したペプチド
7位にE、K、Q、またはRを有する任意の変化したペプチド
8位にK、R、T、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、H、K、R
P3:D、E、K、R
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0204】
HLA−B*5102(8マーペプチド)
1位にFまたはYを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、G、またはPを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にE、G、H、K、L、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
5位にG、N、Q、T、Vを有する任意の変化したペプチド
6位にI、N、またはQを有する任意の変化したペプチド
7位にQまたはRを有する任意の変化したペプチド
8位にI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、H、K、R
P3:D、E、K、R
P8:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0205】
HLA−B*5103
1位にD、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、G、またはPを有する任意の変化したペプチド
3位にD、F、L、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にE、G、L、N、Q、R、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
5位にA、G、M、N、Q、R、K、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にI、K、またはTを有する任意の変化したペプチド
7位にMまたはVを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、H、K、R
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0206】
HLA−B*5201(8マーペプチド)
1位にI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにG、P、またはQを有する任意の変化したペプチド
3位にD、F、I、L、P、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にA、E、I、K、L、P、またはVを有する任意の変化したペプチド
5位にA、F、G、I、L、M、T、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にK、L、N、S、またはTを有する任意の変化したペプチド
7位にE、K、Q、またはYを有する任意の変化したペプチド
8位のアンカーにF、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:H、K、R
P3:R
P8:D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S。
【0207】
HLA−B*5801
1位にI、K、またはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、S、またはTを有する任意の変化したペプチド
3位にDを有する任意の変化したペプチド
4位にE、K、またはPを有する任意の変化したペプチド
5位にF、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にF、I、L、またはVを有する任意の変化したペプチド
7位にL、M、N、またはYを有する任意の変化したペプチド
8位にK、N、R、またはTを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:D、E、P
P2:D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、V、W、Y
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S。
【0208】
HLA−B*60
2位のアンカーにDまたはEを有する任意の変化したペプチド
3位にA、I、L、M、S、またはVを有する任意の変化したペプチド
5位にL、I、またはVを有する任意の変化したペプチド
7位にI、L、M、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
8位にK、Q、またはRを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:F、H、I、K、L、M、Q、R、V、W、Y
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0209】
HLA−B*61
1位にGまたはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにDまたはEを有する任意の変化したペプチド
3位にA、F、I、L、M、T、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
6位にIを有する任意の変化したペプチド
7位にYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにA、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:F、H、I、K、L、M、Q、R、V、W、Y
P9:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0210】
HLA−B*61(8マーペプチド)
1位にGまたはRを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにDまたはEを有する任意の変化したペプチド
3位にA、F、I、L、M、T、V、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
6位にIを有する任意の変化したペプチド
7位にYを有する任意の変化したペプチド
8位のアンカーにA、I、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:F、H、I、K、L、M、Q、R、V、W、Y
P8:D、E、F、G、H、K、N、P、Q、R、S、W、Y。
【0211】
HLA−B*62
1位にIを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにI、L、Qを有する任意の変化したペプチド
3位にG、K、Rを有する任意の変化したペプチド
4位にD、E、G、またはPを有する任意の変化したペプチド
5位にF、G、I、L、またはVを有する任意の変化したペプチド
6位にI、L、T、Vを有する任意の変化したペプチド
7位にT、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、W、Yを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、F、H、K、N、R、S、W、Y
P3:D、E
P6:D、E、K、R
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S。
【0212】
HLA−Cw0301
2位のアンカーにAまたはRを有する任意の変化したペプチド
3位にF、I、L、M、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
4位にE、P、またはRを有する任意の変化したペプチド
5位にNを有する任意の変化したペプチド
6位にF、M、またはYを有する任意の変化したペプチド
7位にK、M、R、またはSを有する任意の変化したペプチド
8位にTを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、I、L、Mを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P3:D、K、R
P6:D、E、K、R
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S。
【0213】
HLA−Cw0401
2位のアンカーにF、P、W、またはYを有する任意の変化したペプチド
3位にDまたはHを有する任意の変化したペプチド
4位にDまたはEを有する任意の変化したペプチド
5位にA、H、M、R、またはTを有する任意の変化したペプチド
6位にI、L、M、またはVを有する任意の変化したペプチド
7位にAを有する任意の変化したペプチド
8位にH、K、またはSを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにF、I、L、M、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P2:D、E、H、K、R
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S。
【0214】
HLA−Cw0602
1位にF、I、K、またはYを有する任意の変化したペプチド
2位のアンカーにA、P、Q、またはRを有する任意の変化したペプチド
5位にF、I、K、L、またはMを有する任意の変化したペプチド
6位にI、L、またはVを有する任意の変化したペプチド
7位にK、N、Q、またはRを有する任意の変化したペプチド
9位のアンカーにI、L、M、V、またはYを有する任意の変化したペプチド
以下の位置の有害な残基が、置換される任意の変化したペプチド:
P1:P
P9:D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S。
【0215】
【表4】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【表5】
【0237】
【表6】
【0238】
【0239】
【0240】
本発明において、「エピトープ」は、動物、特にヒトにおいて、抗原性活性もしくは免疫原性活性を有するか、または動物、好ましくはヒトにおいて、Tリンパ球応答を誘発し得る、C35ポリペプチドフラグメントをいう。本発明の好ましい実施形態は、エピトープを含むC35ポリペプチドフラグメント、およびこのフラグメントをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明のさらに好ましい実施形態は、エピトープからなるC35ポリペプチドフラグメントおよびこのフラグメントをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明の特定の好ましい実施形態において、このエピトープは、表1〜6のいずれかに列挙したC35フラグメントを含む。本発明の別の好ましい実施形態において、このエピトープは、表1〜6のいずれかに列挙したC35フラグメントからなる。抗体が結合し得るタンパク質分子の領域は、「抗原性エピトープ」として定義される。対照的に、「免疫原性エピトープ」は、抗体応答を誘発するタンパク質の一部として定義される。(例えば、Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002(1983)を参照のこと)。従って、本発明のさらに好ましい実施形態は、MHC分子のペプチド結合溝(cleft)に結合した場合に、T細胞応答を誘発し得る免疫原性C35ペプチドフラグメントである。特定の好ましい実施形態において、この免疫原性35ペプチドフラグメントは、表1〜6のいずれかに列挙したエピトープを含む。別の好ましい実施形態において、この免疫原性C35ペプチドフラグメントは、表1〜6のいずれかに列挙したエピトープからなる。本発明のさらなる実施形態は、これらの免疫原性C35ペプチドフラグメントまたはこれらをコードするポリヌクレオチドを含む、薬学的処方物およびワクチン組成物に関する。
【0241】
エピトープとして機能するフラグメントは、任意の従来の手段によって作製され得る。(例えば、米国特許第4,631,211号にさらに記載されるHoughten,R.A.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5131−5135(1985)を参照のこと)。
【0242】
特定のMCH分子に結合することが公知のペプチドエピトープの配列は、MHC結合親和性を増大させるように作用する予測可能な方法で、既知のペプチドアンカー位置で改変され得る。このような「エピトープ増強」は、多数の異なるMCHクラスIまたはMHCクラスII結合ペプチドエピトープの免疫原性を改善するために使用されてきた(Berzofsky,J.A.ら、Immunol.Rev.170:151−72(1999);Ahlers,J.D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:10856−61(1997);Overwijkら、J.Exp.Med.188:277−86(1998);Parkhurst,M.R.ら、J.Immunol.157:2539−48(1996))。従って、本発明のさらなる実施形態は、このような増強されたC35エピトープ、およびこのような増強されたエピトープをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0243】
本発明において、抗原性エピトープは、好ましくは少なくとも7アミノ酸、より好ましくは少なくとも9アミノ酸、そして最も好ましくは約15〜約30アミノ酸の間の配列を含む。抗原性エピトープは、抗体(エピトープに特異的に結合するモノクローナル抗体を含む)を惹起するために有用である(例えば、Wilsonら、Cell 37:767−778(1984);Sutcliffe,J.G.ら、Science 219:660−666(1983)を参照のこと)。
【0244】
同様に、免疫原性エピトープは、当業者に公知の方法に従ってB細胞およびT細胞を誘導するために使用され得る。(例えば、Sutcliffeら、前出;Wilsonら、前出;Chow,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910−914;およびBittle,F.J.ら、J.Gen.Virol.66:2347−2354(1985)を参照のこと)。好ましい免疫原性エピトープは、分泌タンパク質を含む。この免疫原性エピトープは、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)と共に動物系(例えば、ウサギまたはマウス)に提示され得るか、または十分に長い(少なくとも約25アミノ酸)場合にはキャリアなしで提示され得る。しかし、9アミノ酸の少ないアミノ酸を含む免疫原性エピトープが、変性ポリペプチド(例えば、ウェスタンブロットにおける)における直線状エピトープに、まさに少なくとも結合し得る抗体を惹起するのに十分であることが示されている。
【0245】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)は、タンパク質に特異的に結合し得るインタクトな分子および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメントのような)を含むと意味される。インタクトな抗体のFcフラグメントを欠くFabおよびF(ab’)2フラグメントは、循環からより迅速に除去され、そしてインタクトな抗体よりも非特異性の低い組織結合を有し得る。(Walhら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983))。従って、いくつかの適用について、これらのフラグメントおよびFabまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物が好ましい。さらに、本発明の抗体は、キメラ、単鎖、およびヒト化抗体を含む。
【0246】
(抗体の診断的使用および治療的使用)
本発明は、C35抗体、C35抗体フラグメントおよび抗体結合体ならびにヒト癌細胞、特にヒト乳癌細胞および膀胱癌細胞と反応性の単鎖免疫毒素にさらに関する。
【0247】
表7は、異なる適用における使用のために単離され特徴付けられたC35特異的モノクローナル抗体の表を提供する。
【0248】
【表7】
【0249】
細菌合成C35に対するELISAアッセイ
空欄=決定されていない
本実施例において使用される場合、以下の単語または句は、特定の意味を有する。
【0250】
本実施例において使用される場合、「結合される(joined)」は、いずれかの手段によって(例えば、共有結合、非共有結合、イオン結合、非イオン結合によって)、1つの分子を一方の分子と直接的または間接的に連結することを意味する。共有結合は、種々のリンカー(例えば、チオエーテルリンカーまたはチオエステルリンカー)による結合を含む。直接的な連結は、目的の分子に結合される1つの分子を含む。非直接的な連結は、目的でない別の分子に結合され、次いで、目的の分子に直接的または間接的に連結された1つの分子を含む。
【0251】
本実施例において使用される場合、「組換え分子」は、遺伝子操作方法によって作製された分子を意味する。
【0252】
本実施例において使用される場合、「フラグメント」は、標的(すなわち、抗原結合領域)に結合する免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも一部として定義される。免疫グロブリンの定常領域のいくらかは、含まれ得る。
【0253】
本実施例において使用される場合、「免疫結合体」は、細胞毒素、放射性因子、抗腫瘍薬物もしくは治療剤に化学的または生物学的に連結される抗体もしくは増殖因子のような、任意の分子またはリガンドを意味する。この抗体または増殖因子は、標的に結合し得る限り、分子に沿った任意の位置で細胞毒素、放射性因子、抗腫瘍薬物または治療剤に連結され得る。免疫結合体の例としては、免疫毒素および抗体結合体が挙げられる。
【0254】
本実施例において使用される場合、「選択的に殺す(こと)」は、抗体が結合した細胞を殺すことを意味する。
【0255】
本実施例において使用される場合、「癌」の例としては、膀胱癌、乳癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、および膵臓癌が挙げられる。
【0256】
本実施例において使用される場合、「免疫毒素」は、細胞毒素または細胞毒性因子に化学的または生物学的に結合された抗体または増殖因子を意味する。
【0257】
本実施例において使用される場合、「有効量」は、細胞を殺すかまたは細胞の増殖を阻害する抗体、免疫結合体、組換え分子の量である。
【0258】
本実施例において使用される場合、「競合的に阻害する」は、別の分子と同じ標的に結合し得ることを意味する。抗体に関して、競合的に阻害するとは、この抗体が、別の抗体が指向するのと同じ抗原結合領域を認識して結合し得ることを意味する。
【0259】
本実施例において使用される場合、「抗原結合領域」は、抗体、組換え分子、融合タンパク質、または標的もしくはその部分を認識する本発明の免疫結合体を意味する。
【0260】
本実施例において使用される場合、「治療剤」は、抗腫瘍薬物、細胞毒素、細胞毒性因子および放射性因子を含む、治療のために有用な任意の因子を意味する。
【0261】
本実施例において使用される場合、「抗腫瘍薬物」は、以下を含むがこれらに限定されない、癌と戦うために有用な任意の因子を意味する:細胞毒素ならびに抗代謝剤、アルキル化剤、アントラサイクリン(anthracycline)、抗生物質、抗有糸分裂剤、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P’−(DDD))、インターフェロンおよび放射性因子のような因子。
【0262】
本実施例において使用される場合、「細胞毒素または細胞毒性因子」は、細胞にとって有害な任意の因子を意味する。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロパノロール(propranolol)、およびピューロマイシンならびにこれらのアナログまたはホモログが挙げられる。
【0263】
本実施例において使用される場合、「放射性同位体」は、腫瘍の破壊において効果的な任意の放射性同位体を含む。例としては、コバルト−60およびX線が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、代表的には放射性同位体の混合物を示す、ウラン、ラジウムおよびトリウムのような天然に存在する放射性元素が、放射性因子の適切な例である。
【0264】
本実施例において使用される場合、「投与する(こと)」は、被験体に対する、経口投与、坐剤としての投与、局所的接触、静脈内投与、腹膜内投与、筋内投与もしくは皮下投与、または徐放性デバイス(例えば、小浸透圧(miniosmotic)ポンプ)の移植を意味する。
【0265】
本実施例において使用される場合、「直接的に」は、標識に結合された抗体の使用を意味する。この検体は標識抗体と共にインキュベートされ、未標識の抗体は洗浄によって除去され、そしてこの検体は試験され得る。
【0266】
本実施例において使用される場合、「非直接的に」は、非結合体化抗体と共に検体をインキュベートし、洗浄し、そして蛍光色素結合体化抗体と共にインキュベートすることを意味する。従って、第二または「サンドイッチ」抗体は、第一の抗体の存在を明らかにする。
【0267】
本実施例において使用される場合、「反応する(こと)」は、標的を認識しかつ結合することを意味する。この結合は、非特異的であり得る。特異的な結合が好ましい。
【0268】
本実施例において使用される場合、「治癒する(こと)」は、実質的に完全な腫瘍の後退を提供し、その結果、この腫瘍がある期間(すなわち、>/=10腫瘍体積二倍化遅延(tumor volume doubling delay)(TVDD=コントロール腫瘍の大きさが二倍になる日数単位の時間)にわたって明白でなくなることを意味する。
【0269】
本実施例において使用される場合、「腫瘍標的化抗体」は、腫瘍(すなわち、癌)細胞上のC35抗原を認識する任意の抗体を意味する。
【0270】
本実施例において使用される場合、「増殖を阻害する」は、いずれかの手段によって細胞の増殖を妨害することを意味する。
【0271】
本実施例において使用される場合、「哺乳動物腫瘍細胞」は、動物(例えば、ヒト、ヒツジ、ブタ、マウス、ウシ動物)由来の細胞を含む。
【0272】
本実施例において使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、抗体の免疫原性を保持し、そして抗体と組み合わされた場合に被験体の免疫系と非反応性である任意の材料を含む。例としては、任意の標準的な薬学的キャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩溶液、水、乳濁液(例えば、油/水乳濁液)および種々の型の加湿剤)が挙げられるが、これらに限定されない。他のキャリアはまた、滅菌溶液、錠剤(被覆錠剤およびカプセルを含む)を含み得る。
【0273】
代表的には、このようなキャリアは、賦形剤(例えば、デンプン、乳、糖、特定の型の粘土、ゼラチン、ステアリン酸もしくはその塩、ステリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、タルク、植物性脂質もしくは植物性油脂、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤)を含み得る。このようなキャリアはまた、香料添加物および色素添加物または他の成分を含み得る。このようなキャリアを含む組成物は、周知の従来の方法によって処方される。
【0274】
本発明は、癌細胞に非常に特異的なC35抗体に関する。より詳細には、この抗体は、癌(例えば、乳癌、膀胱癌、肺癌、卵巣癌および結腸癌)の範囲と反応するが、一方で、正常なヒト組織または他の型の腫瘍(例えば、肉腫またはリンパ腫)とは反応性を示さないかあるいは制限された反応性を示す。
【0275】
本実施例において使用される場合、用語「C35抗体」は、全体のインタクトなポリクローナル抗体物質およびモノクローナル抗体物質、ならびにキメラ抗体分子を含む。上記のC35抗体は、当該分野で十分確立された技術[例えば、Rousseauxら、「Optimal Conditions For The Preparation of Proteolytic Fragments From Monoclonal IgG of Different Rat IgG Subclasses」、Methods Enzymol.、121:663−69(Academic Press 1986)を参照のこと]を使用した、抗体の活性な抗原結合領域(例えば、Fab、F(ab’)2およびFvフラグメント)を含む、C35抗体の任意のフラグメントを含む。本発明のC35抗体はまた、融合タンパク質を含む。
【0276】
本発明のC35抗体に対する抗イディオタイプ抗体がまた、本発明の範囲内に含まれる。これらの抗イディオタイプ抗体は、免疫原としてC35抗体および/またはそのフラグメントを使用して作製され得、腫瘍に対する体液性応答の検出および治療的適用において(例えば、患者において抗腫瘍応答を誘導するためのワクチンにおいて)診断目的のために有用である[例えば、Nepomら、「Anti−Idiotypic Antibodies And The Induction Of Specific Tumor Immunity」、Cancer And Metastasis Reviews、6:487−501(1987)を参照のこと]。
【0277】
さらに、本発明は、C35抗体と同じ抗原決定基に結合し得、そしてこの部位での結合について抗体と競合し得る抗体を包含する。これらは、C35抗体と同じ抗原特異性を有するが、起源の種、アイソタイプ、結合親和性または生物学的機能(例えば、細胞毒性)が異なる抗体を含む。例えば、クラス、アイソタイプ、およびC35抗原の抗原結合領域を有する本発明の抗体の他の改変体は、当該分野で公知の組換えクラススイッチ技術および融合技術[例えば、Thammanaら、「Immunoglobulin Heavy Chain Class Switch From IgM to IgG In A Hybridoma」、Eur.J.Immunol.、13:614(1983);Spiraら、「The Identification Of Monoclonal Class Switch Variants By Subselection And ELISA Assay」、J.Immunol.Meth.74:307−15(1984);Neubergerら、「Recombinant Antibodies Possessing Novel Effector Functions」、Nature 312:614−608(1984);およびOiら、「Chimeric Antibodies」、Biotechniques 4(3):214−21(1986)を参照のこと]を使用して構築され得る。従って、C35特異的抗体と同じ結合特異性を有する他のキメラ抗体または他の組換え抗体(例えば、抗体が、リンホカインまたは腫瘍阻害増殖因子のような第二のタンパク質と組み合わされる融合タンパク質)が、本発明の範囲内である。
【0278】
当該分野で公知の遺伝子操作技術を、本明細書中に記載のように使用して、DNAレベルでの治療剤または細胞毒性因子に対する抗体C35の抗原結合領域を融合し、そしてキメラタンパク質のような細胞毒性分子を生成することによって生成される組換え免疫毒素を調製し得る。治療剤の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗代謝剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質および抗有糸分裂剤。抗代謝剤としては、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン(decarbazine)が挙げられる。アルキル化剤としては、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、マイトマイシンC、ならびにシス−ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)シスプラチンが挙げられる。アントラサイクリンとしては、ダウノルビシン(以前にはダウノマイシン)およびドキソルビシン(本明細書中でアドリアマイシンとまたいう)が挙げられる。さらなる例としては、ミトザントロンおよびビサントレン(bisantrene)が挙げられる。抗生物質としては、ダクチノマイシン(以前にはアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(anthramycin)(AMC)が挙げられる。抗有糸分裂剤としては、ビンクリスチンおよびビンブラスチン(これらは一般に、ビンカアルカロイドといわれる)が挙げられる。他の細胞毒性因子としては、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P’−(DDD))、インターフェロンが挙げられる。細胞毒性因子のさらなる例としては、リシン、ドキソルビシン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エトポシド、テノポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、1−デヒドロテストステロン、およびグルココルチコイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0279】
このような治療剤および細胞毒性因子のアナログおよびホモログは、明らかに本発明によって包含される。例えば、化学療法剤であるアミノプテリンは、相関関係のある改善されたアナログ、すなわち、メトトレキサートを有する。さらに、ドキソルビシンの改善されたアナログは、Feキレートである。また、1−メチルニトロソウレアについての改善されたアナログは、ロムスチンである。さらに、ビンブラスチンの改善されたアナログは、ビンクリスチンである。また、メクロレタミンの改善されたアナログは、シクロホスファミドである。
【0280】
組換え免疫毒素、特に、単鎖免疫毒素は、薬物/抗体結合体よりもより迅速に生成され、そして均一な分子の集団(すなわち、同じアミノ酸残基から構成される単一のペプチド)を生成するという点で、この結合体を超えた利点を有する。C35単鎖免疫毒素に対応するアミノ酸配列をコードするDNA配列をクローニングし、そして発現させるための技術(例えば、オリゴヌクレオチドの合成、PCR、形質転換細胞、構築ベクター、発現系など)は、当該分野で十分確立され、そしてほとんどの実行者は、特定の条件および手順のための標準的な資源材料に通じている[例えば、Sambrookら、編、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)を参照のこと]。
【0281】
以下は、本発明の免疫結合体の好ましい実施形態を含む。当該分野で公知の他の実施形態は、本発明によって包含される。本発明は、これらの特定の免疫結合体に限定されないが、本発明に従う抗体および/または抗体フラグメントを取り込む他の免疫結合体をまた含む。
【0282】
これらの結合体は、本発明のリンカーによって所望の標的細胞集団と反応する標的リガンド分子に連結された、少なくとも1つの薬物分子を含む。このリガンド分子は、免疫活性タンパク質(例えば、抗体またはそのフラグメント)、非免疫活性タンパク質またはペプチドリガンド(例えば、ボンベシン)あるいはレクチンまたはステロイド分子のような細胞関連レセプターを認識する結合リガンドであり得る。
【0283】
さらに、本発明の結合体が、所定の生物学的応答を改変するために使用され得ることから、この薬物部分は、古典的な化学的治療剤に限定されるとは解釈されるべきではない。例えば、この薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス体外毒素、またはジフテリア毒素);タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノゲン活性化因子)、または生物学的応答改変因子(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)または他の増殖因子)が挙げられ得る。
【0284】
本発明における使用のために好ましい薬物は、細胞毒性薬物、特に、癌治療に使用される細胞毒性薬物である。このような薬物としては、一般に、アルキル化剤、抗増殖剤、チューブリン結合剤などが挙げられる。好ましいクラスの細胞毒製剤としては、例えば、アントラサイクリンファミリーの薬物、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、プテリジンファミリーの薬物、ジイネネス(diynenes)およびポドフィロトキシン(podophyllotoxine)が挙げられる。これらのクラスの特に有用なメンバーは、例えば、アドリアマイシン、カルミノマイシン(carminomycin)、ダウロルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体(例えば、エトポシドまたはリン酸エトポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、リューロシジン(leurosidine)、ビンデシン、リューロシン(leurosine)などが挙げられる。先に注目したように、当業者は、本発明の結合体を調製する目的のためにより簡便な化合物を反応させるために、所望の化合物に対する化学的改変をなし得る。
【0285】
注目したように、当業者は、本発明がまた抗原認識免疫グロブリンフラグメントの使用を包含することを理解する。このような免疫グロブリンフラグメントとしては、例えば、Fab’、F(ab’)2、F[v]またはFabフラグメント、あるいは他の抗原認識免疫グロブリンフラグメントが挙げられる。このような免疫グロブリンフラグメントは、例えば、タンパク質分解酵素消化(例えば、ペプシンまたはパパイン消化による)、還元的アルキル化、または組換え技術によって調製され得る。このような免疫グロブリンフラグメントの調製のための材料および方法は、当業者に周知である。一般には、Parham、J.Immunology、131:2895(1983);Lamoyiら、J.Immunological Methods、56、235(1983);Parham id.、53、133(1982);およびMatthewら、id.、50、239(1982)を参照のこと。
【0286】
この免疫グロブリンは、当該分野で認識される用語同様の「キメラ抗体」であり得る。この免疫グロブリンはまた、「二機能性」または「ハイブリッド」抗体、すなわち、1つの免疫原性部位(例えば、腫瘍関連抗原)に対して特異性を有する1つのアームを有し得、一方、他のアームは、異なる標的(例えば、抗原保有腫瘍細胞にとって致死の因子であるかまたはこの因子に結合したハプテン)を認識する。あるいは、二機能性の抗体は、各アームが、治療的または生物学的に改変されるべき細胞の、腫瘍に関連する抗原の異なるエピトープに対して特異性を有するものであり得る。いずれの場合にも、ハイブリッド抗体は二重の特異性を有し、好ましくは、選択されたハプテンに対して特異的な1以上の結合部位を有するか、または標的抗原(例えば、腫瘍、感染性生物、または他の疾患状態に関連する抗原)に対して特異的な1以上の結合部位を有する。
【0287】
生物学的に二機能性の抗体は、例えば、欧州特許公開EPA 0 105 360(当業者はこれを参照する)に記載される。このようなハイブリッド抗体または二機能性の抗体は、記載したように、細胞融合技術によって生物学的にか、または特に架橋剤もしくはジスルフィド形成試薬を用いて化学的にかのいずれかで誘導され得、そしてそれらの抗体および/またはそのフラグメントから構成され得る。このようなハイブリッド抗体を得るための方法は、例えば、PCT公開W083/03679(1983年10月27日公開)、および公開された欧州出願EPA 0 217 577(1987年4月8日公開)に開示される。特に好ましい二機能性の抗体は、「ポリドーム(polydome)」または「クアドローマ(quadroma)」から生物学的に調製される抗体であるか、あるいはこれは、ビス−(マレイミド)−メチルエーテル(bis−(maleimideo)−methyl ether)(「BMME」)のような架橋剤または当業者が精通した他の架橋剤を用いて合成的に調製される。
【0288】
さらに、免疫グロブリンは、単鎖抗体(「SCA」)であり得る。これらは、可変軽(「V[L]」)ドメインおよび可変重(「V[H]」)ドメインがペプチド結合またはジスルフィド結合によって連結された、単鎖Fvフラグメント(「scFv」)からなり得る。また、免疫グロブリンは、抗原結合活性を保有する単一V[H]ドメイン(dAb)からなり得る。例えば、G.WinterおよびC.Milstein,Nature 349:295(1991);R.Glockshuberら,Biochemistry 29:1362(1990);ならびにE.S.Wardら,Nature 341:544(1989)を参照のこと。
【0289】
本発明における使用に特に好ましいのは、キメラモノクローナル抗体、好ましくは、腫瘍関連抗原に対して特異性を有するキメラ抗体である。この例で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、1つの供給源または種由来の可変領域(すなわち、結合領域)と、異なる供給源もしくは種由来の定常領域の少なくとも一部を含む、通常は組み換えDNA技術によって調製されるモノクローナル抗体をいう。マウス可変領域およびヒト定常領域を含むキメラ抗体が、本発明の特定の適用(特に、ヒト治療)に好ましい。なぜなら、このような抗体は、容易に調製され、そして純粋にマウスのモノクローナル抗体よりも免疫原性が低いからであり得る。このようなマウス/ヒトキメラ抗体は、マウス免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントおよびヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む、発現された免疫グロブリン遺伝子の産物である。本発明によって含まれる他の形態のキメラ抗体は、本来の抗体のクラスまたはサブクラスから改変または変更されたクラスまたはサブクラスのキメラ抗体である。このような「キメラ」抗体はまた、「クラススイッチされた抗体」と呼ばれる。キメラ抗体を産生するための方法は、従来の組換えDNAおよび現在当該分野で周知である遺伝子トランスフェクション技術を含む。例えば、Morrison,S.L.ら,Proc.Nat’l Acad.Sci.,81,6851(1984)を参照のこと。
【0290】
用語「キメラ抗体」によって、「ヒト化抗体」の概念が含まれ、この「ヒト化抗体」は、フレームワークまたは「相補性」決定領域(「CDR」)が、親の免疫グロブリンの特異性と比較して異なる特異性の免疫グロブリンのCDRを含むように改変されている。好ましい実施形態において、マウスCDRは、「ヒト化抗体」を調製するためにヒト抗体のフレームワーク領域に移植される。例えば、L.Riechmannら,Nature 332:323(1988);M.S.Neubergerら,Nature 314:268(1985)を参照のこと。特に好ましいCDRは、キメラ抗体および二機能性の抗体に関して上記される抗原を認識する配列を提示するCDRに対応する。読者は、CDR改変抗体のその教示に関して、EPA 0 239 400(1987年9月30日公開)の教示を参照する。
【0291】
当業者は、二機能性−キメラ抗体が、調製され得ることを認識する。この抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体のより低い免疫原性の利点、ならびに上記の二機能性抗体の柔軟性(特に、治療的な処置に関して)の利点を有する。このような二機能性−キメラ抗体は、例えば、架橋剤を用いた化学合成によっておよび/または上記の型の組み換え方法によって、合成され得る。いずれの場合も、本発明は、抗体(二機能性抗体、キメラ抗体、二機能性−キメラ抗体、ヒト化抗体、またはその抗原認識フラグメントもしくは誘導体のいずれか)の任意の特定の産生方法によって範囲を限定されるとして解釈されるべきではない。
【0292】
さらに、本発明は、その範囲内に、免疫グロブリン(上記に規定されるような)または免疫グロブリンフラグメントを含み、これらは、活性なタンパク質(例えば、Neubergerら,PCT出願W086/01533(1986年3月13日公開)に開示される型の酵素)を融合している。このような生成物の開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0293】
上記のように「二機能性」抗体構築物、「融合」抗体構築物、「キメラ」(ヒト化を含む)抗体構築物、および「二機能性−キメラ」(ヒト化を含む)抗体構築物にはまた、その個々の状況内において、抗原認識フラグメントを含む構築物が挙げられる。当業者が認識するように、このようなフラグメントは、インタクトな二機能性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはキメラ−二機能性抗体の従来の酵素学的切断によって、調製され得る。しかし、インタクトな抗体が、含まれる構築物の性質に起因してこのような切断を受けにくい場合、上記の構築物は、出発材料として使用された免疫グロブリンフラグメントを用いて調製され得るか;あるいは、組換え技術が使用される場合、そのDNA配列はそれ自体、所望の「フラグメント」(このフラグメントは、発現される場合、最終的な所望のインタクトな免疫グロブリン「フラグメント」を調製するために、化学手段または生物学的手段によって、インビボまたはインビトロで組み換えら得る)をコードするために調整され得る。従って、この状況において、用語「フラグメント」が使用される。
【0294】
さらに、上記のように、本発明において使用される免疫グロブリン(抗体)またはそのフラグメントは、性質においてポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。しかし、モノクローナル抗体が、好ましい免疫グロブリンである。このようなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の調製は、現在当業者に周知であり、当然、当業者は、本発明において使用され得る有用な免疫グロブリンを完全に産生し得る。例えば、G.KohlerおよびC.Milstein,Nature 256:495(1975)を参照のこと。さらに、ハイブリドーマおよび/またはこのようなハイブリドーマによって調製され、かつ本発明の実施において有用であるモノクローナル抗体は、American Type Culture Collection(「ATCC」)10801 University Blvd.,Manassas,VA.20110のような供給源から公に利用可能である。
【0295】
本発明における使用のための特に好ましいモノクローナル抗体は、腫瘍関連抗原を認識する抗体である。
【0296】
(診断技術)
血清学的診断技術は、癌腫を罹患していると考えられる患者の血清または他の生物学的流体中に分泌または「流出」された腫瘍関連抗原の、検出および定量を含む。このような抗原は、放射線免疫アッセイ(RIA)または酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような当該分野で公知の技術を用いて、体液中で検出され得、ここで、「流出」された抗原と反応性の抗体が、流体サンプル中の抗原の存在を検出するために使用される[例えば、Uotilaら「Two−Site Sandwich ELISA With Monoclonal Antibodies To Human AFP」J.Immunol.Methods,42:11(1981)およびAllumら、前出、48−51頁を参照のこと]。従ってこれらのアッセイは、本明細書中に開示されるC35抗体を用いて、C35抗体が反応する抗原の生物学的流体中での検出のため、そして故に、患者中のヒト癌腫の検出に使用され得る。従って、上記より、本発明のC35抗体が、抗原−抗体反応を含むほとんどのアッセイにおいて使用され得ることが明らかである。これらのアッセイとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:標準的なRIA技術(液相および固相の両方)、ならびにELISAアッセイ、ELISPOT、免疫蛍光技術、および他の免疫細胞化学アッセイ[例えば、Sikoraら(編)Monoclonal Antibodies,32−52頁(Blackwell Scientific Publications 1984)を参照のこと]。
【0297】
本発明はまた、上記のアッセイを実行するための診断キットを含む。1つの実施形態において、この診断キットは、C35モノクローナル抗体、そのフラグメント、本発明の融合タンパク質もしくはキメラ抗体、ならびにC35抗体に対して特異的な結合パートナーと検出可能なシグナルを生成し得る標識とを含む結合体を備える。これらの試薬はまた、緩衝剤およびタンパク質安定剤(例えば、多糖)のような補助的な薬剤を含み得る。診断キットはさらに、必要な場合、バックグラウンドの干渉を減少するための薬剤を含むシグナル生成系の他の成分、コントロール試薬または試験を実行するための装置もしくは容器を供え得る。
【0298】
別の実施形態において、この診断キットは、本発明のC35抗体と検出可能なシグナルを生成し得る標識との結合体を備える。上記のような補助的な薬剤がまた、存在し得る。
【0299】
本発明のC35抗体はまた、ヒト癌腫の検出のためのインビボ診断適用に有用である。このような手段の1つとしては、腫瘍画像化技術によるインビボでの腫瘍の検出が挙げられる。この手段に従って、C35抗体は、検出可能なシグナルを生成する適切な画像化試薬で標識される。使用され得る画像化試薬の例としては、以下のような試薬が挙げられるが、これらに限定されない:<131>I、<111>In、<123>I、<99m>Tc、<32>P、<125>I、<3>H、および<14>Cのような放射性標識、フルオレセインおよびローダミンのような蛍光標識、ならびにルシフェリンのような化学発光剤(chemiluninescer)。この抗体は、当該分野で公知の技術を用いてこのような試薬で標識され得る。例えば、抗体の放射性標識に関する技術について、WenselおよびMeares,Radioimmunoimaging And Radioimmunotherapy,Elsevier,New York(1983)を参照のこと[Colcherら「Use Of Monoclonal Antibodies As Radiopharmaceuticals For The Localization Of Human Carcinoma Xenografts In Athymic Mice」Meth.Enzymol.121:802−16(1986)もまた参照のこと]。
【0300】
放射線標識した抗体の場合、この抗体は、患者に投与され、抗体が反応する抗原を保有する腫瘍に局在し、そして例えば、γカメラまたはエミッション断層撮影法を用いる放射線核走査のような公知の技術を用いてインビボで検出または「画像化」される[例えば、Bradwellら「Developments In Antibody Imaging」Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(編)65−85頁(Academic Press 1985)を参照のこと]。この抗体は、水、生理食塩水、リンガー溶液、ハンクス溶液のような薬学的に受容可能なキャリア、または不揮発性油のような非水性のキャリア中で、患者に投与される。これらのキャリアはまた、抗体の等張性および化学安定性を増強する物質(例えば、緩衝剤または防腐剤)を含み得る。抗体処方物は、例えば、腫瘍標的部位の可視化を可能にする十分なγ線の放射を提供するのに十分な投薬量で、静脈内投与される。十分な時間が、腫瘍標的への局在を可能にするために、抗体の投与と検出との間に許容されるべきである。腫瘍画像化の一般的な議論に関しては、Allumら、前出、51−55頁を参照のこと。
【0301】
(C35抗体の治療適用)
C35抗体の特性によって、多数のインビボ治療適用が示唆される。
【0302】
最初に、C35抗体が単独で使用されて、インビボで腫瘍細胞を標的化し、そしてこの腫瘍細胞を殺傷し得る。この抗体はまた、ヒト癌腫を処置するために適切な治療剤と組合わせて使用され得る。例えば、抗体は、癌腫の部位への治療剤の送達のために、化学療法、放射線治療のような標準的または従来の処置方法と組合わせて使用され得るか、あるいは、治療薬物または毒素、ならびにリンホカインまたは腫瘍阻害増殖因子に結合体化または連結され得る。
【0303】
このような治療剤を抗体に結合体化するための技術は、周知である[例えば、Arnonら「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(編)243−56頁(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら「Antibodies For Drug Delivery」Controlled Drug Delivery(第2版)Robinsonら(編)623−53頁(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(編)475−506頁(1985);ならびにThorpeら「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと]。
【0304】
あるいは、C35抗体は、高エネルギー放射線(例えば、<131>Iのような放射線同位体)に結合され得、これは、腫瘍部位に局在した場合、いくらかの細胞直径の減少(killing)を引き起こす[例えば、Order「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwinら(編)303−16頁(Academic Press 1985)を参照のこと]。さらに別の実施形態に従って、C35抗体は、米国特許第4,676,980号にSegalによって記載されるように、腫瘍細胞の処置のための抗体ヘテロ結合体を形成するために2次抗体に結合体化され得る。
【0305】
本発明のC35抗体のさらに他の治療適用としては、プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換し得る酵素への結合体化または連結(例えば、組換えDNA技術による)、および腫瘍部位においてプロドラッグを細胞傷害性薬剤に変換するための、プロドラッグを組合わせた抗体−酵素結合体の使用が挙げられる[例えば、Senterら「Anti−Tumor Effects Of Antibody−alkaline Phosphatase」Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:4842−46(1988);「Enhancement of the in vitro and in vivo Antitumor Activites of Phosphorylated Mitocycin C and Etoposide Derivatives by Monoclonal Antibody−Alkaline Phosphatase Conjugates」Cancer Research 49:5789−5792(1989);およびSenter「Activation of Prodrugs by Antibody−Enzyme Conjugates:A New Approach to Cancer Therapy「FASEB J.4:188−193(1990)を参照のこと]。
【0306】
C35抗体に関するさらに別の治療用途としては、補体または抗体−薬物結合体もしくは抗体−毒素結合体の一部のいずれかの存在下での、癌患者の骨髄から腫瘍細胞を除去するための使用が挙げられる。この手段に従って、自家骨髄は、抗体を用いた処理によってエキソビボでパージされ得、そしてこの骨髄は患者に注入によって戻され得る[例えば、Ramsayら「Bone Marrow Purging Using Monoclonal Antibodies」J.Clin.Immunol.,8(2):81−88 (1988)を参照のこと]。
【0307】
さらに、前に記載したように、キメラC35、組み換え免疫毒素およびC35モノクローナル抗体の抗原結合領域の特異性を含む本発明の他の組み換え構築物は、治療的に使用され得る。例えば、本発明の単鎖免疫毒素は、インビボにおいてヒト癌腫を処置するために使用され得る。
【0308】
同様に、C35抗体の少なくとも抗原結合領域(これは、抗腫瘍活性を有する第2のタンパク質(例えば、リンホカインまたはオンコスタチン)の少なくとも機能的に活性な部分に連結されている)を含む融合タンパク質は、インビボにおいてヒト癌腫を処置するために使用され得る。さらに、当該分野で公知の組み換え技術は、二重特異的抗体を構築するために使用され得、ここで、この抗体の結合特異性の1つは、C35の結合特異性であるが、この抗体の他の結合特異性は、C35以外の分子の特異性である。
【0309】
最後に、C35抗体の抗イディオタイプ抗体が、活性な腫瘍免疫化および腫瘍治療において治療的に使用され得る[例えば、Hellstromら「Immunological Approaches To Tumor Therapy:Monoclonal Antibodies,Tumor Vaccines,And Anti−Idiotypes」Covalently Modified Antigens And Antibodies In Diagnosis And Therapy,前出,35−41頁を参照のこと]。
【0310】
本発明は、C35モノクローナル抗体または機能的等価物に特異的に結合する抗原を発現する腫瘍細胞を選択的に殺傷するための方法を提供する。この方法は、本発明の免疫結合体(例えば、免疫毒素)を上記の腫瘍細胞と反応させる工程を包含する。これらの腫瘍細胞は、ヒト癌腫由来の腫瘍細胞であり得る。
【0311】
さらに、本発明は、インビボにおいて癌腫(例えば、ヒト癌腫)を処置する方法を提供する。この方法は、本発明の免疫結合体(例えば、免疫毒素)の少なくとも1つを含む組成物の薬学的有効量を被験体に投与する工程を包含する。
【0312】
本発明の実施に従って、被験体は、ヒト被験体、ウマ被験体、ブタ被験体、ウシ被験体、マウス被験体、イヌ被験体、ネコ被験体、および鳥類被験体であり得る。他の温血動物もまた、本発明に含まれる。
【0313】
本発明はまた、癌を罹患する被験体を治癒させるための方法を提供する。この被験体は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ニワトリであり得る。癌は、乳癌、膀胱癌、網膜芽細胞腫、卵巣の乳頭状嚢胞腺癌(papillary cystadenocarcinoma)、ウィルムス腫瘍、または小細胞肺癌腫として同定され得、そして一般的に、その細胞表面上に腫瘍関連抗原を有する細胞の群として特徴付けられる。この方法は、細胞傷害性薬剤に結合された癌を殺傷する量の腫瘍標的化抗体を、被験体に投与する工程を包含する。一般的に、腫瘍標的化抗体の細胞傷害性薬剤との結合は、結合される抗体が細胞表面上のその標的に結合することを可能にする条件下でなされる。その標的を結合することによって、腫瘍標的化抗体は、直接的または間接的に、結合される細胞の殺傷を引き起こすかまたはこの殺傷に寄与するために作用し、それによって被験体を治癒させる。
【0314】
哺乳動物の腫瘍細胞の増殖を阻害する方法がまた、提供され、この方法は、この哺乳動物の腫瘍細胞の増殖を阻害するように、この哺乳動物の腫瘍細胞を十分な濃度の本発明の免疫結合体と接触させる工程を包含する。
【0315】
本発明はさらに、ヒト腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法、被験体において腫瘍を処置するための方法、および被験体において増殖型疾患を処置するための方法を提供する。これらの方法は、有効量の本発明の組成物を患者に投与する工程を包含する。
【0316】
従って、本発明がヒト癌腫を処置するための薬学的な組成物、組み合わせおよび方法を含むことは、明らかである。例えば、本発明は、薬学的有効量のC35抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、ヒト癌腫の処置における使用のための薬学的組成物を含む。
【0317】
この組成物は、C35抗体もしくはそのフラグメント(これらは、改変されずに治療剤(例えば、薬物、毒素、酵素または第2の抗体)と結合されているか、または組換え形態(例えば、キメラC35、キメラC35のフラグメント、二重特異的C35または単鎖免疫毒素C35)のいずれかである)を含み得る。この組成物は、癌腫を処置するための他の抗体または結合体(例えば、抗体カクテル)をさらに含み得る。
【0318】
本発明の抗体、抗体結合体および免疫毒素組成物は、以下の従来の投与形態を用いて投与され得るが、これらに限定されない:静脈内投与、腹腔内投与、経口投与、リンパ内投与または腫瘍中への直接的な投与。静脈内投与が、好ましい。
【0319】
本発明の組成物は、種々の投薬形態であり得、この投薬形態としては、液体溶液または懸濁液、錠剤、丸薬、粉剤、坐剤、ポリマー性マイクロカプセルもしくはポリマー性微小小胞、リポソーム、および注射可能な溶液もしくは注入可能な溶液が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい形態は、投与様式および治療適用に依存する。
【0320】
本発明の組成物はまた、好ましくは、当該分野で公知の、従来の薬学的に受容可能なキャリアおよびアジュバント(例えば、ヒト血清アルブミン、イオン交換体、アルミナ、レクチン、ホスフェートのような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、および塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン))を含む。
【0321】
投与の最も効果的な様式および本発明の組成物についての投薬量レジメンは、疾患の重篤度および経過、患者の健康、ならびに処置をする医師の処置に対する応答およびその医師の判断に依存する。従って、この組成物の投薬量は、個々の患者に対して滴定されるべきである。それにもかかわらず、本発明の組成物の有効用量は、約1〜約2000mg/kgの範囲であり得る。
【0322】
本明細書中に記載される分子は、種々の投薬形態であり得、この投薬形態としては、液体溶液または懸濁液、錠剤、丸薬、粉剤、坐剤、ポリマー性マイクロカプセルもしくはポリマー性微小小胞、リポソーム、および注射可能な溶液もしくは注入可能な溶液が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい形態は、投与様式および治療適用に依存する。
【0323】
投与の最も効果的な様式および本発明の分子についての投薬量レジメンは、処置される腫瘍の位置、癌の重篤度および経過、被験体の健康、ならびに処置をする医師の処置に対する応答およびその医師の判断に依存する。従って、この分子の投薬量は、個々の被験体に対して滴定されるべきである。
【0324】
表面積のmg/kgに基づく、種々のサイズおよび種の動物ならびにヒトに対する投薬量の相互関係は、Freireich,E.J.ら,Cancer Chemother.,Rep.50(4):219−244(1966)によって記載される。投薬量レジメンにおける調整は、応答を阻害および消滅させる腫瘍細胞増殖を最適化するためのなされ得、例えば、投与は、分割され、かつ毎日の基礎量(daily basis)で投与され得るか、または投与は、状況に応じて比例的に減少される(例えば、いくつかの分割した投与は、毎日投与され得るか、または特定の治療状況に応じて比例的に減少される)。
【0325】
治癒を達成するために必要とされる本発明の組成物の用量が、スケジュールの最適化によってさらに減少され得ることは、明らかである。
【0326】
本発明の実施に従って、薬学的キャリアは、脂質キャリアであり得る。脂質キャリアは、リン脂質であり得る。さらに、脂質キャリアは、脂肪酸であり得る。また、脂質キャリアは、界面活性剤であり得る。本明細書中に使用される場合、界面活性剤は、液体の表面張力を変更(一般的には、液体の表面張力を低下)させる任意の物質である。
【0327】
本発明の1つの例において、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であり得る。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリソルベート80(Tween 80または(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートとしても公知)、Brij、およびTriton(例えば、Triton WR−1339およびTriton A−20)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0328】
あるいは、界面活性剤は、イオン性界面活性剤であり得る。イオン性界面活性剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイドが挙げられるが、これに限定されない。
【0329】
さらに、本発明に従って、脂質キャリアは、リポソームであり得る。この適用において使用される場合、「リポソーム」は、本発明の任意の分子またはその組み合わせを含む、任意の膜結合小胞である。
【0330】
(ワクチン処方物)
C35エピトープは、組換えDNA方法によって大量に産生され得、そして細胞媒介性免疫応答を促進するアジュバントと共に処方され得る。本発明は、真核生物組み換え発現ベクターまたは原核生物組み換え発現ベクターのいずれかにおける、C35ポリペプチド、またはC35エピトープ(エピトープを誘発する細胞傷害性T細胞またはヘルパーT細胞を含む)の発現;ならびに免疫原性組成物および/または抗原性組成物としてのこれらの処方物を含む。このような組成物は、例えば、米国特許出願番号第08/935,377号(この内容全体は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。本発明に従って、組み換え発現されたC35エピトープは、サブユニットワクチンとして発現され、精製され、そして処方され得る。好ましくは、C35エピトープをコードするDNAはまた、ワクチンにおける使用のために、ウイルスベクター(好ましくはポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアルファウイルスベクター)中に構築され得る。この点において、生きた組み換えウイルスワクチン、不活化された組み換えウイルスワクチン、または殺傷された組み換えウイルスワクチンのいずれかが、処方され得る。
【0331】
((i)原核および真核発現系におけるC35の発現)
本発明は、真核および原核発現ベクターの両方の発現系を含み、これらは、C35エピトープを発現するために使用され得る。このC35エピトープは、短縮形態または全長形態の両方で、特にサブユニットワクチンの形成のために発現され得る。
【0332】
本発明は、C35ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および免疫学的に等価なフラグメントの発現を含む。このような免疫学的に等価なフラグメントは、この配列の5’および/または3’末端で短縮され、そして/または1つ以上の内部欠損を有する、同定されたエピトープをコードするヌクレオチド配列のアナログを作製し、このアナログヌクレオチド配列を発現し、そして免疫学的に得られたフラグメントが、エピトープ特異的Tリンパ球によって認識され、そして細胞媒介免疫応答を誘導するか否か、または体液免疫応答の誘導のためのエピトープ特異的Bリンパ球によって認識されるか否かを決定することによって、同定され得る。
【0333】
本発明は、コード配列の発現を指向する調節エレメントに作動可能に結合された上記のコード配列のいずれかを含むDNA発現ベクター、および宿主細胞中のコード配列の発現を指向する調節エレメントに作動可能に結合された上記のコード配列のいずれかを含む遺伝子操作された宿主細胞を含む。本明細書中で使用される場合、調節エレメントとしては、誘導性および非誘導性のプロモーター、エンハンサー、オペレーターおよび発現を駆動しそして調節することが当業者に公知の他のエレメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0334】
C35エピトープ遺伝子産物またはそのペプチドフラグメントは、当該分野で周知の技術を使用して、組換えDNA技術によって生成され得る。従って、エピトープ遺伝子配列を含む核酸を発現することによって、本発明のC35エピトープ遺伝子ポリペプチドおよびペプチドを調製する方法が、本明細書中に記載される。当業者に周知の方法は、エピトープ遺伝子産物コード配列および適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築するために使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えが挙げられる。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press、およびAusubelら,1989,前出に記載の技術を参照のこと。あるいは、糖タンパク質エピトープ遺伝子産物配列をコードし得るRNAは、例えば合成機を使用して、化学的に合成され得る。例えば、「Oligonucleotide Synthesis」,1984,Gait,M.J.編,IRL Press,Oxford(これは、本明細書中でその全体において参考として援用される)に記載の技術を参照のこと。
【0335】
本発明はまた、C35エピトープ遺伝子産物のペプチドフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む。例えば、C35エピトープの細胞外ドメインに対応するポリペプチドまたはペプチドは、分泌を促進する「溶解性」タンパク質として有用であり得、特に、サブユニットワクチンの生成において有用である。市販の抗体によって認識される異種エピトープに連結され得るこのC35エピトープ遺伝子産物またはそのペプチドフラグメントもまた、本発明に含まれる。耐久性の融合タンパク質もまた、操作され得る;すなわち、選択されたC35が、この異種部分から切り離され得るように、C35エピトープ配列と異種タンパク質配列との間に位置する切断部位を有する融合タンパク質。例えば、コラゲナーゼ切断認識コンセンサス配列は、C35エピトープタンパク質またはペプチドと異種ペプチドまたはタンパク質との間で操作され得る。このエピトープドメインは、コラゲナーゼでの処置によって、この融合タンパク質から放出され得る。本発明の好ましい実施形態において、グルタチオン−S−トランスフェラーゼの融合タンパク質およびC35エピトープタンパク質は、操作され得る。
【0336】
ワクチンの調製(特に、サブユニットワクチンの調製)において使用するための本発明のC35エピトープタンパク質は、実質的に純粋かまたは均一である。このタンパク質は、このサンプルの少なくとも60〜75%が単一のポリペプチド配列を示す場合に、実質的に純粋であるかまたは均一であるとみなされる。実質的に純粋なタンパク質は、好ましくは、タンパク質サンプルの60〜90%、より好ましくは約95%、および最も好ましくは99%を構成する。当業者に周知の方法(例えば、サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動、続いて染色ゲル上での単一ポリペプチドバンドの可視化)は、タンパク質の純度または均一性を決定するために使用され得る。より高い分解能は、HPLCまたは当該分野で周知の他の類似の方法によって決定され得る。
【0337】
本発明は、代表的には、これらのタンパク質をコードする組換えヌクレオチド配列を発現する宿主細胞から精製されるC35ポリペプチドを含む。このようなタンパク質の精製は、当該分野で周知の種々の方法によって達成され得る。好ましい実施形態において、本発明のC35エピトープタンパク質は、グルタチオンS−トランスフェラーゼを有する融合タンパク質として発現される。アフィニティークロマトグラフィーによって精製された、得られた組換え融合タンパク質およびエピトープタンパク質ドメインは、この異種部分から切り離されて、実質的に純粋なタンパク質サンプルを生じる。当業者に公知の他の方法が、使用され得る;例えば、「Methods In Enzymology」,1990,Academic Press,Inc.,San Diego,「Protein Purification:Principles and Practice」,1982,Springer Verlag,New York(これらは、本明細書中で、その全体において参考として援用される)に記載される技術を参照のこと。
【0338】
((ii)真核および原核発現ベクター)
本発明は、真核および原核発現ベクターの両方の発現系を含み、これらは、C35エピトープを発現するために使用され得る。種々の宿主発現ベクター系が、本発明のC35エピトープ遺伝子を発現するために利用され得る。このような宿主発現系は、ビヒクルを表し、このビヒクルによって、C35コード配列が生成され得、そして引き続いて精製され得るが、C35ヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされる場合に、インサイチュで本発明のC35エピトープ遺伝子産物を示し得る細胞もまた表す。これらとしては、微生物(例えば、C35エピトープ遺伝子産物コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E.coli,B.subtilis);C35エピトープ遺伝子産物コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces,Pichia);C35エピトープ遺伝子産物コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;C35エピトープ遺伝子産物コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したかまたは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を有する、哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3))が挙げられるがこれらに限定されない。
【0339】
((iii)宿主細胞)
本発明は、動物および昆虫の細胞株におけるC35エピトープの発現を含む。本発明の好ましい実施形態において、C35エピトープは、昆虫細胞株中のバキュロウイルスベクターにおいて発現されて、グリコシル化されていない抗原を生成する。本発明の別の好ましい実施形態において、C35エピトープは、安定にトランスフェクトされた哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞株)において発現されて、グリコシル化抗原を生成する。これらの細胞株によって組換え的に発現されるC35エピトープは、サブユニットワクチンとして処方され得る。本発明はさらに、C35遺伝子産物を過剰発現する宿主細胞に関する。この細胞は、任意の適切なベクター(これは、C35ポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド配列を含む)、ならびにC35遺伝子産物の過剰発現を指向する適切なプロモーターおよびエンハンサー配列で過渡的または安定にトランスフェクトされたかまたは形質転換された宿主細胞であり得る。しかし、この過剰発現細胞はまた、内因性のC35遺伝子の過剰発現を指向する異種のプロモーターまたはエンハンサーの挿入(例えば、相同組換えを介する)の産物であり得る。用語「過剰発現」とは、他の同一の条件下で所定の細胞を代表的に特徴付ける基礎的な発現レベルよりも高い発現レベルをいう。
【0340】
挿入された配列の発現を調節するか、または所望の特定の様式でC35遺伝子産物を改変およびプロセシングする宿主細胞菌株が、選択され得る。タンパク質産物のこのような改変(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、このタンパク質の機能に重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび改変のための特性および特定の機構を有する。適切な細胞株または宿主系は、発現される外来タンパク質の正確な改変を保証するように選択され得る。このために、一次転写物の適切なプロセシング、C35遺伝子産物のグリコシル化、リン酸化、およびプレニル化のための細胞機構を有する真核宿主細胞が、使用され得る。このような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38細胞株が挙げられるがこれらに限定されない。
【0341】
長期にわたる、組換えタンパク質の高収率の産生、安定な発現が好ましい。例えば、C35標的エピトープを安定に発現する細胞株は、操作され得る。ウイルスの複製起源を含む発現ベクターの使用ではなく、宿主細胞が、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写終結因子、ポリアデニル化部位など)および選択マーカーによって制御されるDNAで形質転換され得る。外来DNAの導入後に、操作された細胞は、富化培地において1〜2日間増殖され得、次いで選択培地に切り替えられ得る。組換えプラスミドにおける選択マーカーは、この選択に対する耐性を付与し、そして細胞は、プラスミドをその染色体に安定に組み込み、そして増殖して病巣を形成し、そしてこの病巣は、次に、クローニングされ得、そして細胞株へと拡大され得る。この方法は、細胞株を操作するために有利に使用され得る。この方法は、C35エピトープ遺伝子産物を発現する細胞株を操作するために有利に使用され得る。このような細胞株は、C35エピトープ遺伝子産物の内因性の活性に影響する化合物のスクリーニングおよび評価において特に有用である。
【0342】
多くの選択系が使用され得、これらとしては、単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら,1977,Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski,1962,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら,1980,Cell 22:817)が挙げられるがこれらに限定されず、遺伝子は、それぞれ、tk−、hgprt−またはaprt−細胞において利用され得る。また、代謝拮抗物質耐性は、以下の遺伝子の選択の基礎として使用され得る:dhfr(これは、メトトレキセートに対する耐性を付与する)(Wiglerら,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:3567;O’Hare,ら,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527);gpt(これは、ミコフェノール酸に対する耐性を付与する)(Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072);neo(これは、アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与する)(Colberre−Garapinら,1981,J.Mol.Biol.150:1);およびhygro(これは、ハイグロマイシンに対する耐性を付与する)(Santerre,ら,1984,Gene 30:147)。
【0343】
あるいは、任意の融合タンパク質が、発現される融合タンパク質に特異的な抗体を利用して、容易に精製され得る。例えば、Janknechtらによって記載される系は、ヒト細胞株において発現する非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknechtら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8972−8976)。この系において、目的の遺伝子は、この遺伝子のオープンリーディングフレームが、6個のヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳的に融合されるように、ワクシニア組換えプラスミド中にサブクローニングされる。組換えワクシニアウイルスで感染した細胞由来の抽出物は、Ni2+ニトリロ酢酸−アガロースカラム上にロードされ、そしてヒスチジンでタグ化されたタンパク質が、イミダゾール含有緩衝液を用いて選択的に溶出される。
【0344】
((iv)組換えウイルスワクチン中でのC35エピトープの発現)
本発明の別の実施形態において、C35エピトープを発現する生きている組換えウイルスワクチンまたは不活化組換えウイルスワクチンのいずれかが、操作され得る。生ワクチンが、好ましくあり得る。なぜなら、宿主における増殖が、天然の感染において生じるのと同様の種類および大きさの長期の刺激をもたらし、したがって、実質的な持続性の免疫を付与するからである。このような生きた組換えウイルスワクチン処方物の生成は、細胞培養物またはニワトリ胚の尿膜におけるウイルスの増殖、続く精製を含む従来の方法を使用して、達成され得る。
【0345】
この点について、種々のウイルスが、C35エピトープを発現するために遺伝的に操作され得る。ワクチンの目的のために、組換えウイルスが、弱毒化特性を示すことが要求され得る。ヒトにおける使用のための現在の生きているウイルスワクチン候補は、寒冷適応性であるか、温度感受性であるか、または弱毒化されたかのいずれかである。トランスフェクションのために使用されるテンプレートへの適切な変異(例えば、欠失)の導入は、弱毒化特性を有する新規なウイルスを提供し得る。例えば、温度感受性または寒冷適応性に関連する特定の複数のミスセンス変異が、欠失変異体になされ得、そして/または複数の変異が、個々のウイルス遺伝子に導入され得る。これらの変異体は、単一の点変異を含む寒冷または温度感受性の変異体よりもより安定であるはずであり、そして逆転の頻度は、非常に低いはずである。あるいは、「自殺」特性を有する組換えウイルスが、構築され得る。このようなウイルスは、宿主における1回または数回のみの複製を経る。
【0346】
本発明の目的のために、任意のウイルスが本発明に従って使用され得、このウイルスは、(a)弱毒化表現型を示すか、または弱毒化された特性を示すように操作さえれ得;(b)哺乳動物(特に、ヒト)についての向性を示すか、またはこのような向性を示すように操作され得;そして(c)本発明のC35エピトープを発現するように操作され得る。
【0347】
ワクシニアウイルスベクターは、DNAの大きなフラグメントが、そのゲノム中に容易にクローニングされるので、本発明に従って使用され得、そして組換え弱毒化ワクシニア改変体が記載される(Meyerら,1991,J.Gen.Virol.72:1031−1038)。オルトミクソウイルス(インフルエンザを含む);パラミクソウイルス(RSウイルスおよびセンダイウイルスを含む);ならびにラブドウイルスは、弱毒化された表現型を生じる変異体を発現するために操作され得る(1996年11月26日発行の米国特許出願番号5,578,473を参照のこと)。これらのウイルスゲノムはまた、外来ヌクレオチド配列(例えば、本発明のC35エピトープ)を発現するように操作され得る(1992年11月24日発行の米国特許出願番号5,166,057(その全体において本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。逆転遺伝子技術は、インフルエンザウイルス、単純疱疹ウイルス、サイトメガロウイルスおよびエプスタイン−バーウイルス、シンドビスウイルスおよびポリオウイルスにおいて実証されるような、弱毒化表現型を生じる変異をネガティブおよびポジティブ鎖RNAウイルスゲノムに導入するよう操作するために適用され得る(Paleseら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11354−11358を参照のこと)。これらの技術はまた、本発明に従うワクチンとして使用される組換えウイルスベクターを生成するために、外来DNA(すなわち、C35エピトープ)に導入するために利用され得る。例えば、米国特許出願番号08/935,377を参照のこと(この内容全体は、本明細書中に参考として援用される)。さらに、弱毒化されたアデノウイルスおよびレトロウイルスは、C35エピトープを発現するように操作され得る。従って、広範な種々のウイルスが、本発明のワクチンを設計するために操作され得るが、例として、そして限定ではなく、ワクチンとして使用するためのC35エピトープを発現する組換え弱毒化ワクシニアベクターが、本明細書中に記載される。
【0348】
1つの実施形態において、組換え改変ワクシニア改変体、改変ウイルスAnkara(MVA)が、ワクチンの処方において使用される。この改変ウイルスは、鳥類細胞中で500サイクル継代され、そしてこれは哺乳動物細胞中での完全な感染性サイクルを起こし得ない(Meyerら,1991,J.Gen.Virol.72:1031−1038)。ワクチンとして使用される場合、この組換えウイルスは、単一の複製サイクルを経、そして十分なレベルの免疫応答を誘導するが、ヒト宿主においてはさらなる複製サイクルを経ず、そして疾患を引き起こす。必須ワクシニアウイルス遺伝子のうちの1つ以上を欠失する組換えウイルスは、連続的な複製の回転を起こし得ない。このような欠損ウイルスは、ウイルスの複製に必要な特定の遺伝子を欠失するワクシニアベクターを、この遺伝子を持続的に発現する細胞株に同時トランスフェクトすることによって生成され得る。必須遺伝子を欠失するウイルスは、これらの細胞株において複製されるが、ヒト宿主に投与される場合、複製の1回転を完了できない。このような調製物は、この不完全なサイクルにおいて、免疫応答を誘導するために十分な数の遺伝子を、転写および翻訳し得る。
【0349】
あるいは、より多量の菌株が投与され得、その結果、これらの調節物は、不活化(死亡した)ウイルス、ワクチンとして役立つ。不活化ワクチンについて、異種のC35遺伝子産物がウイルス成分として発現され、その結果、このC35遺伝子産物が、このビリオンに結合することが好ましい。このような調製物の利点は、これらがネイティブのタンパク質を含み、そしてホルマリンまたは死滅させたウイルスワクチンの製造において使用される他の因子での処置による不活化を起こさせない。
【0350】
本発明の別の実施形態において、不活化ワクチン処方物は、組換えウイルスを「死滅させる」ための従来の技術を使用して調製される。不活化ワクチンは、その感染力が破壊されているという意味で、「死滅して」いる。理想的には、このウイルスの感染力は、免疫原性に影響することなく破壊される。不活化ワクチンを調製するために、この組換えウイルスは、細胞培地またはニワトリ胚の尿膜において増殖され得、帯状超遠心分離によって精製され得、ホルムアルデヒドまたはβ−プロピオラクトンによって不活化され得、そしてプールされる。得られたワクチンは、通常、筋肉内接種される。
【0351】
不活化ウイルスは、免疫学的応答を増大するために、適切なアジュバントを用いて処方され得る。このようなアジュバントとしては、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム);界面活性剤(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン);ペプチド;オリゴヌクレオチド;油乳濁液;ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント(例えば、BCGおよびCorynebacterium parvum)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0352】
((v)処置および/またはワクチン接種の方法)
本発明のC35エピトープは、大量に生成され得るので、従って、生成および精製されたこの抗原は、ワクチン調製物における用途を有する。このC35エピトープは、サブユニットワクチン調製物に処方され得るか、またはウイルスベクターに操作され、そしてワクチン調製物へと処方され得る。あるいは、C35エピトープをコードするDNAは、ワクチン処方物として直接投与され得る。「裸の」プラスミドDNAは、一旦被験体に投与されると、細胞を侵襲し、発現され、ペプチドフラグメントにプロセシングされ、このうちいくつかは、この侵襲された細胞の表面上のMHC分子に結合して示され得、そしてTリンパ球がこのC35エピトープを示す細胞を攻撃するように、細胞の免疫応答を誘発する。このC35エピトープはまた、例えば、被験体由来の体液のサンプル中の、C35を発現する腫瘍の存在、またはC35を発現する腫瘍によって誘導される抗体またはT細胞の存在を検出または測定するための、そして従って、癌および腫瘍を診断するための、そして/またはワクチン接種に続いて被験体の細胞免疫応答をモニターするための、診断における有用性を有する。
【0353】
本発明の組換えウイルスは、腫瘍細胞に対する免疫応答を生成するために、腫瘍保有哺乳動物(ヒトを含む)を処置するために使用され得る。適切かつ適正な免疫応答の生成は、インビボでの腫瘍の退行をもたらす。このような「ワクチン」は、単独で、または腫瘍の処置のための他の治療レジメン(化学療法、放射線療法、手術、骨髄移植などが挙げられるがこれらに限定されない)と組合せてのいずれかで、使用され得る。例えば、外科的技術または放射線技術は、腫瘍塊の体積を減らす(debulk)ために使用され得、この後、本発明のワクチン処方物は、身体における残りの腫瘍塊または微小転移巣の進行の退行および予防を保証ために、投与され得る。あるいは、「ワクチン」の投与は、このような外科的処置、放射線処置または化学療法処置に先行し得る。
【0354】
あるいは、本発明の組換えウイルスは、腫瘍の形成を予防するために、腫瘍を有さない被験体に免疫または「ワクチン接種」するために使用され得る。遺伝子検査の出現によって、特定の癌についての被験体の素因を予測することが現在では可能である。従って、このような被験体は、C35抗原を発現する組換えワクシニアウイルスを使用して免疫され得る。
【0355】
C35エピトープワクチン処方物の免疫力価は、免疫後の試験動物の免疫応答をモニターすることによって、または当該分野で公知の任意のイムノアッセイを使用することによって、決定され得る。細胞媒介性および/または体液性の免疫応答の生成は、免疫応答の徴候として解され得る。試験動物としては、マウス、ハムスター、イヌ、ネコ、サル、ウサギ、チンパンジーなど、および最終的には、ヒト被験体が含まれ得る。
【0356】
このようなワクチンの適切な調製物としては、注入可能な、液体溶液または懸濁液のいずれかが含まれる;注射前の、液体中の溶液または懸濁液に適切な固体形態もまた、調製され得る。この調製物はまた、乳化され得るか、またはリポソーム中にカプセル化されたポリペプチドであり得る。この活性な免疫原性成分は、しばしば、賦形剤(これは、薬学的に受容可能であり、かつこの活性成分と適合性である)と混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、およびその組合せである。さらに、所望の場合、このワクチン調製物はまた、少量の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはアジュバント(これは、このワクチンの有効性を増大する))を含み得る。
【0357】
有効であり得るアジュバントの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン、GM−CSF、QS−21(治験の薬物、Progenics Pharmaceuticals、Inc.)、DETOX(治験の薬物、Ribi Pharmaceuticals)、BCG、およびCpG富化オリゴヌクレオチド。
【0358】
アジュバントの有効性は、C35エピトープ(epitome)に対する細胞免疫応答を誘導を測定することによって決定され得る。
【0359】
本発明のワクチンは、多価または一価であり得る。多価ワクチンは、1つより多い抗原の発現を指向する組換えウイルスから作製される。複数のT細胞エピトープ(epitome)(細胞傷害性およびヘルパーの両方)から構成される多価ワクチンが好ましい。
【0360】
所望ならば、この組成物はまた、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝化剤を含み得る。この組成物は、液体、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性処方物、または粉末であり得る。経口処方物は、標準的なキャリア(例えば、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。
【0361】
一般に、これらの成分は、活性薬剤の量を示す密封容器(例えば、アンプルまたはサシェ)中の単位用量形態(例えば、凍結乾燥された乾燥粉末または水を含まない濃縮物)で、別個に供給されるか、または一緒に混合されるかのいずれかである。この組成物が、注入によって投与される場合、滅菌希釈剤のアンプルが、これらの成分が投与の前に混合され得るように提供され得る。
【0362】
特定の実施形態において、凍結乾燥された本発明のC35エピトープが、第一の容器に提供され;第二の容器は、50%グリセリンの水溶液、0.25%フェノール、および防腐薬(例えば、0.005%ブリリアントグリーン)からなる希釈剤を含む。
【0363】
精製されたC35抗原のワクチン調製物としての使用は、標準的な方法によって実施され得る。例えば、精製されたC35エピトープは、適切な濃度に調節され、任意の適切なワクチンアジュバントとともに処方され、そして使用のために包装されるべきである。適切なアジュバントとしては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム);表面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニック(pluronic)ポリオール);ポリアニオン;ペプチド;オイルエマルジョン;ミョウバンおよびMDP。免疫原がまた、ワクチン処方物における使用のために、リポソームに組み込まれるか、または多糖類および/または他のポリマーと結合され得る。例えば、組換え抗原がハプテン(すなわち、同族抗体と選択的に反応し得る点で抗原性であるが、免疫応答を惹起し得ないという点で免疫原性ではない、分子)である場合、このハプテンは、キャリアまたは免疫原性分子に共有結合され得る;例えば、血清アルブミンのような大きなタンパク質は、それに結合したハプテンに免疫原性を付与する。ハプテン−キャリアは、ワクチンとしての使用のために処方され得る。
【0364】
多くの方法が、上記のワクチン処方物を患者に導入するために使用され得る。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されえない:経口、真皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、経皮、硬膜外、肺、胃、腸、直腸、腟または尿道経路。処置方法が本発明の生きたワクシニアワクチン処方物を使用する場合、ワクシニアウイルスの天然の感染経路(すなわち、粘膜または表面(例えば、経口、経鼻、胃、腸、直腸、膣または尿道経路あるいは皮膚を介して))を介して、処方物を導入することが所望され得る。CTL応答を誘導するために、粘膜投与経路は、口咽頭膜または鼻の膜を介し得る。あるいは、投与の筋肉内経路または腹腔内経路が使用され得る。好ましくは、106〜107PFU(プラーク形成単位)の用量の寒さに適合された組換えワクチンウイルスが、ヒト患者に与えられる。
【0365】
処方物に使用されるワクチン調製物の正確な用量はまた、投与経路および患者の性質に依存し、そして医師の判断および各患者の環境にしたがって標準的な臨床技術によって決定されるべきである。有効最小量は、このワクチン組成物が投与された宿主中で抗原に対する免疫応答を生成するに十分な量である。
【0366】
引く続く用量またはブースト用量が、必要とされる場合、改変されたワクチンウイルス(例えば、MVA)が、組換え体を生成するために使用される親ウイルスとして選択され得る。あるいは、他のウイルス(例えば、アデノウイルス、カナリア痘ウイルス)、またはサブユニット調製物が、ブーストするために使用され得る。免疫および/または癌免疫療法は、組み合わせた免疫レジメン(例えば、本発明の組換えワクシニアウイルスワクチンでの免疫および組換えアデノウイルスワクチンのブースト)を使用して達成され得る。このような実施形態において、強力な第二のCD8+T細胞応答が、同じエピトープを発現する異なるウイルスを用いてプライミングおよびブーストした後に、誘導される(このような免疫およびブーストの方法については、例えば、Murataら、Cellular Immunol.173:96−107を参照のこと)。例えば、患者を、最初に、エピトープ(例えば、選択された腫瘍関連抗原またはそのフラグメント)を発現する組換えワクチンを含む本発明のワクチン処方物でプライムされる。患者は、次いで、同じエピトープを発現するワクチン以外の組換えウイルスを含むワクチン組成物を用いて、例えば、21日後、ブーストする。このようなプライミング、続くブーストは、強力な二次T細胞応答を誘導する。このようなプライミングおよびブースト免疫レジメンは、好ましくは、腫瘍、転移または腫瘍会合体(例えば、C35抗原)を発現する腫瘍性増殖を有する患者を処置するために使用される。
【0367】
なお別の実施形態において、組換えワクシニアウイルスは、不活性型腫瘍細胞での1次免疫に続くブースト免疫として、C35抗原またはそのエピトープを含むサブユニットワクチンとして、または別の組換えウイルスワクチン(例えば、アデノウイルス、カナリア痘ウイルスまたはMVA)として使用され得る。
【0368】
代替の実施形態において、C35エピトープまたはそのフラグメントをコードする組換えワクシニアウイルスが、患者と組織適合性であり、そしてC35抗原に特異的であるTリンパ球の活性化のための関連する免疫療法において使用され得る(関連する免疫療法の方法については、例えば、Rosenberg、米国特許第4,690,915号、1987年9月1日発行;Zarlingら、米国特許第5,081,029号、1992年1月14日に発行を参照のこと)。このようなTリンパ球は、患者または組織適合性のドナーから単離され得る。これらのTリンパ球は、本発明の組換えワクシニウイルスに曝露することによって、インビトロで活性化され得る。活性化されたTリンパ球は、拡大され、そしてC35抗原エピトープ(epitome)に対するT細胞免疫性を移すために、患者に接種される。
【0369】
本発明はまた、本発明のワクチン処方物の成分の1つ以上を含む1つ以上の容器を備える、薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通告が、このような容器にも適用され、この通告は、ヒト投与について、製造、使用または販売の機関による承認を反映する。
【0370】
(癌診断および予後)
腫瘍発達に影響を与える遺伝子の2つのクラスが存在する。DNAレベルでの変化(例えば、変異)の結果として直接作用する癌の表現型(例えば、BRCA1、BRCA2、およびp53)に影響を及ぼす遺伝子は、1つのクラスの遺伝子である。別のクラスの遺伝子は、発現レベルでの調節によって表現型に影響を与える。乳癌の発症および引く続く悪性進行は、両方のクラスの種々の遺伝子の改変に関係する。悪性乳腺において生じる遺伝子発現の定量的な変化の同定は、十分に特徴付けられる場合、ヒト乳癌の診断および処置において有用であり得る新規な分子マーカーを生じ得る。
【0371】
本発明は、新しい謬癌マーカーC35を同定し、このマーカーC35は、原発性浸潤管内乳房癌細胞において示差的に発現される。正常な乳房上皮細胞におけるC35の低い発現レベルは、C35の過剰発現が、乳癌の悪性進行を示すことを示唆する。おそらく、C35はまた、膀胱および肺を含む他の特定の組織型の腫瘍において過剰発現され得る。
【0372】
本発明は、癌を有する哺乳動物における特定の組織が、対応する「標準的な」哺乳動物(すなわち、癌を有さない同じ種の哺乳動物)と比較した場合に、有意に増加したレベルのC35タンパク質およびC35タンパク質をコードするmRNAを発現することを立証した。さらに、増加したレベルのC35タンパク質、またはC35タンパク質に特異的抗体もしくはリンパ球は、癌を有さない同じ腫の哺乳動物由来の血清と比較した場合、癌を有する哺乳動物由来の特定の体液(例えば、血清、血漿、尿、および脊髄液)において検出され得る。
【0373】
従って、本発明は、腫瘍診断に有用な診断方法を提供し、この方法は、哺乳動物細胞または体液中のC35タンパク質をコードする遺伝子のレベルをアッセイする工程およびこの遺伝子発現レベルを標準的なC35遺伝子発現レベルと比較する工程を包含し、それによって、標準を越えるこの遺伝子の発現レベルの増加が、特定の腫瘍の指標となる。あるいは、C35タンパク質またはC35ポリペプチドに特異的な抗体またはリンパ球の発現レベルが、血液または他の体液において決定され得、そしてC35特異的抗体またはリンパ球の発現の標準と比較され得ると考えられる。
【0374】
腫瘍診断が、従来の方法に従って既になされた場合、本発明は、予後指標として有用であり、それによって、増加したC35遺伝子発現を示す患者が、より低い発現レベルでこの遺伝子を発現する患者と比べて、より悪い臨床的な結果を経験し得る。
【0375】
「C35タンパク質をコードする遺伝子の発現レベルをアッセイする」とは、直接的に(例えば、絶対的なタンパク質レベルまたはmRNAレベルを決定または評価することによって)か、または相対的に(例えば、第二の生物学的サンプル中のC35タンパク質レベルまたはmRNAレベルと比較することによって)かのいずれかで、第一の生物学的サンプル中の、C35タンパク質のレベルまたはC35タンパク質をコードするmRNAのレベルを、定性的にまたは定量的に、決定または評価することが意図される。
【0376】
好ましくは、第一の生物学的サンプル中のC35タンパク質レベルまたはmRNAレベルが、測定または評価され、そして標準的なC35タンパク質レベルまたはmRNAレベルと比較され、ここで、この標準は、癌を有さない個体から得られた第二の生物学的サンプルから取られる。当該分野で理解されるように、一旦、標準的なC35タンパク質レベルまたはmRNAレベルが知られると、これは、比較のための標準として繰返し使用され得る。
【0377】
「生物学的サンプル」は、個体、細胞株、組織培養物、またはC35タンパク質もしくはmRNAを含む他の供給源から得られた任意の生物学的サンプルを意図する。生物学的サンプルとしては、哺乳動物の体液(例えば、血清、血漿、尿、滑液および脊椎液)(これは、分泌成熟C35タンパク質を含む)、ならびに卵巣、前立腺、心臓、胎盤、膵臓、肝臓、脾臓、肺、乳房、膀胱および臍帯組織(これらは、C35の前駆体または成熟形態を含み得る)が挙げられる。
【0378】
本発明は、哺乳動物における癌を検出するために有用である。特に、本発明は、哺乳動物における以下の型の癌の診断の間に有用である:乳癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌、骨の癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌および脾臓癌。好ましい哺乳動物としては、サル(monkey)、サル(ape)、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、およびヒトが挙げられる。特に好ましいのは、ヒトである。
【0379】
総細胞RNAは、1工程のグアニジウム−チオシアネート−フェノール−クロロホルム法(Chomczynski and Sacchi、Anal.Biochem.162:156−159(1987)に記載される)を使用して、生物学的サンプルから単離され得る。次いで、C35タンパク質をコードするmRNAのレベルが、任意の適切な方法を使用して、アッセイされ得る。これらには、ノーザンブロット分析(Haradaら、Cell 63:303−312(1990))、S1ヌクレアーゼマッピング(Fujitaら、Cell 49:357−367(1987))、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT−PCR)(Makinoら、Technique 2:295−301(1990))、およびリガーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT−LCR)が挙げられる。
【0380】
生物学的サンプル中のC35タンパク質レベルをアッセイすることは、抗体ベースの技術を使用して行い得る。例えば、組織におけるC35タンパク質発現は、古典的な免疫組織学的方法を用いて研究され得る(Jalkanen、M.ら、J.Cell.Biol.101:976−985(1985);Jalkanen、M.ら、J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987))。
【0381】
C35タンパク質発現を検出するために有用な他の抗体ベースの方法としては、免疫アッセイ(例えば、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ELISPOT、およびラジオイムノアッセイ(RIA))が挙げられる。
【0382】
適切な標識は当該分野で公知であり、以下が挙げられる:酵素標識(例えば、グルコースオキシダー)、および放射性同位体(例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、おおびテクネチウム(99mTc))、ならびに蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、ならびにビオチン。
【0383】
C35特異的T細胞は、当該分野で公知の方法に従う抗原提示細胞によって提示されるC35による活性化に続いて、種々の増殖アッセイおよびリンホカイン分泌アッセイにおいて検出され得る。可溶性MHC分子に結合するC35ペプチドエピトープのテトラマー複合体を使用して、細胞の集団中のC35特異的T細胞を直接染色し、そして数えることができる(Lee,P.P.ら、Nature Medicine 5:677−85(1999)(この全内容が、本明細書中で参考として援用される))。
【0384】
生物学的サンプル中の分泌されたタンパク質のレベルをアッセイすることに加えて、タンパク質がまた、画像化によってインビボで検出され得る。タンパク質のインビボ画像化のための抗体標識またはマーカーとしては、X線撮影法、NMRまたはESRによって検出可能なものが挙げられる。X線撮影法について、適切な標識としては、バリウムまたはセシウムのような放射性同位体が挙げられ、これらは、検出可能な放射線を放射するが、被検体に対しては、明白に有害ではない。NMRおよびESRのために適切なマーカーとしては、検出可能で特徴的なスピンを有するマーカーが挙げられ、これには、重水素が挙げられ、これは、関連するハイブリドーマの栄養物の標識化によって抗体に組み込まれ得る。
【0385】
適切な検出可能な画像化部分(例えば、放射性同位体(例えば、131I、112In、99mTc)、放射線不透明物質または核磁気共鳴によって検出可能な物質)で標識されたタンパク質特異的抗体または抗体フラグメントが、哺乳動物に導入される(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に)。被検体のサイズおよび使用される画像化システムによって、診断画像を生成するために必要とされる画像化部分の量が決定されることは、当該分野で理解される。放射性同位体部分の場合において、ヒト被検体について、注入される放射線の量は、通常、約5〜20ミリキューリーの範囲の99mTcである。次いで、標識された抗体または抗体フラグメントは、特定のタンパク質を含む細胞の位置に優先的に蓄積する。インビボ腫瘍画像化は、S.W.Burchielら、「Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments.」(Tumor Imagingの第13章:The Radiochemical Detection of cancer、S.W.Burchiel and B.A.Rhodes、編、Masson Publishing Inc.(1982))に記載される。
【0386】
(融合タンパク質)
任意のC35ポリペプチドは、融合タンパク質を生成するために使用され得る。例えば、このC35ポリペプチドは、第二のタンパク質に融合される場合、抗原性タグとして使用され得る。このC35ポリペプチドに対して惹起される抗体は、C35に結合することによって第二のタンパク質を間接的に検出するために使用され得る。さらに、分泌タンパク質は、輸送シグナルに基づいて細胞位置を標的化するので、このC35ポリペプチドは、一旦他のタンパク質に融合されると、標的化分子として使用され得る。
【0387】
C35ポリペプチドに融合され得るドメインの例としては、異種シグナル配列だけでなく、他の異種の機能的領域もまた挙げられる。この融合は、必ずしも直接的である必要はないが、リンカー配列を介して生じ得る。
【0388】
特定の好ましい実施形態において、さらなるN末端および/またはC末端のアミノ酸残基を含むC35融合ポリペプチドが構築され得る。特に、本明細書中に開示された任意のN末端またはC末端が欠失したC35ポリペプチドは、N末端でのさらなるアミノ酸残基の包含によって改変されて、C35融合ポリペプチドを生成し得る。さらに、上記のようなN末端欠失およびC末端欠失の任意の組み合せを含むC35ポリペプチドに融合されたさらなるN末端および/またはC末端アミノ酸残基を含む、C35融合ポリペプチドが、考慮される。
【0389】
さらに、融合タンパク質はまた、C35の特徴を改善するように操作され得る。例えば、さらなるアミノ酸(特に荷電したアミノ酸)の領域は、C35ポリペプチドのN末端に付加されて、宿主細胞からの精製または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善し得る。また、ペプチド部分が、C35ポリペプチドに付加されて、精製を容易にし得る。このような領域は、C35ポリペプチドの最終的な調製の前に、除去され得る。ポリペプチドの取り扱いを容易にするためのペプチド部分の付加は、当該分野でよく知られた慣用的な技術である。
【0390】
さらに、C35ポリペプチド(フラグメントを含む)、および特定のエピトープは、免疫グロブリン(IgG)の定常領域の一部分と組み合され得、キメラポリペプチドを生じる。これらの融合タンパク質は、精製を容易にし、そしてインビボでの増加した半減期を示す。1つの報告された例は、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメインと、哺乳動物免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の種々のドメインとからなるキメラタンパク質を記載する(EP A 394,827;Trauneckerら、Nature 331:84−86(1988))。ジスルフィド連結ダイマー構造(IgGに起因する)を有する融合タンパク質はまた、モノマー性分泌タンパク質またはタンパク質フラグメント単独よりも、他の分子を結合および中和する際に効率であり得る。(Fountoulakisら、J.Biochem.270:3958−3964(1995))。
【0391】
同様に、EP−A−O 464 533(カナダの対応物2045869)は、別のヒトタンパク質またはその一部分とともに、免疫グロブリン分子の定常領域の種々の部分を含む融合タンパク質を開示する。多くの場合において、融合タンパク質中のFc部分は、治療および診断において有益であり、従って、例えば、改善された薬物動態学特性を生じ得る。(EP−A 0232 262)。あるいは、融合タンパク質が発現され、検出され、そして精製された後に、Fc部分を欠失することが、所望される。例えば、Fc部分は、融合タンパク質が、免疫のための抗原として使用される場合、治療および診断の妨げになり得る。薬物発見において、例えば、ヒトタンパク質(例えば、hIL−5)は、hIL−5のアンタゴニストを同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイの目的のために、Fc部分と融合された。(D.Bennettら、J.Molecular Recognition 8:52−58(1995);K.Johansonら、J.Biol.Chem.270:9459−9471(1995)を参照のこと)。
【0392】
さらに、C35ポリペプチドは、マーカー配列(例えば、C35の精製を容易にするペプチド)に融合され得る。好ましい形態において、マーカーアミノ酸配列は、ヘキサヒスチジン配列(例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,CA,91311)に提供されるタグ)であり、この中でも、これらの多くが市販されている。Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)に記載されるように、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の好都合な精製を提供する。精製のために有用な別のペプチドタグ(「HA」タグ)は、インフルエンザ血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する。(Wilsonら、Cell 37:767(1984))。
【0393】
従って、これらの上記の融合物のいずれかが、C35ポリヌクレオチドまたはC35ポリペプチドを使用して、操作され得る。
【0394】
(ベクター、宿主細胞、およびタンパク質の産生)
本発明はまた、C35ポリヌクレオチドを含むベクター、宿主細胞、および組換え技術によるC35ポリペプチドの産生に関する。このベクターは、例えば、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターであり得る。レトロウイルスベクターは、複製可能(replication competent)であってもよいし、複製不完全性(replication defective)であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、相補宿主細胞においてのみ起こる。
【0395】
C35ポリヌクレオチドは、宿主における増殖のための選択マーカーを含むベクターに結合され得る。一般に、プラスミドベクターは、沈澱物(例えば、リン酸カルシウム沈澱)に導入されるか、または荷電した脂質との複合体に導入される。このベクターがウイルスである場合、このベクターは、適切なパッケージング細胞株を使用して、インビトロでパッケージングされ得、次いで宿主細胞に形質導入され得る。
【0396】
C35ポリヌクレオチド挿入物は、適切なプロモーター(多少列挙すると、例えばファージλPLプロモーター、E.coli lac、trp、phoAおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモーター)に作動可能に連結されるべきである。他の適切なプロモーターは、当業者に公知である。発現構築物は、さらに、転写開始、終結のための部位、ならびに転写された領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位を含む。これらの構築物によって発現された転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリペプチドの始めに翻訳開始コドンそして末端に適切に位置する終止コドン(UAA、UGA、またはUAG)を含む。
【0397】
示されたように、発現ベクターは、好ましくは、少なくとも1つの選択カーカーを含む。このような選択マーカーとしては、以下が挙げられる:真核生物細胞培養のための、ジヒドロ葉酸還元酵素、G418またはネオマイシン耐性、ならびにE.coliおよび他の細菌を培養するための、テトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピリシン耐性遺伝子。適切な宿主の代表的な例としては、以下が挙げられるがこれらの限定されない:細菌細胞(例えば、E.coli、StreptomycesおよびSalmonella typhimurium細胞);真菌細胞(例えば、酵母細胞);昆虫細胞(例えば、Drosophila S2およびSpodoptera Sf9細胞);動物細胞(例えば、CHO、COS、293、およびBowes黒色腫細胞);ならびに植物細胞。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は、当該分野で公知である。
【0398】
細菌における使用のために好ましいベクターとしては、pHE−4(およびその改変体);pQE70、pQE60およびpQE−9(QIAGEN,Inc.から入手可能);pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene Cloning Systems,Inc.から入手可能);ならびにptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia Biotech,Inc.から入手可能)が挙げられる。中でも好ましい真核生物ベクターは、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1およびpSG(Stratageneから入手可能);ならびにpSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL(Pharmaciaから入手可能)である。他の適切なベクターが当業者に容易に明らかである。好ましいベクターは、ポックスウイルスベクター、特に、ワクシニアウイルスベクター(例えば、米国特許第08/935,577号(この内容は本明細書中で参考として援用される)に記載されるベクター)である。
【0399】
構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、カチオン性脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染または他の方法によって行われ得る。このような方法は、多くの標準的な研究マニュアル(例えば、Davisら、Basic Methods In Molecular Biology(1986))に記載される。
【0400】
C35ポリペプチドは、周知の方法(硫酸アンモニウム沈降またはエタノール沈降、酸抽出、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ならびにレクチンクロマトグラフィーを含む)によって組換え細胞培養物から回収および精製され得る。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。
【0401】
C35ポリペプチドはまた、以下から回収され得る:天然の供給源(体液、組織および細胞を含む)から精製される産物(直接単離されていても培養されていても);化学合成手順の産物;および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を含む)から組み替え技術により産生される産物。組換え産生手順で用いられる宿主に依存して、C35ポリペプチドは、グリコシル化され得るかまたは非グリコシル化され得る。さらに、C35ポリペプチドはまた、いくつかの場合において、宿主媒介プロセスの結果として、初期改変メチオニン残基を含む。従って、翻訳開始コドンによりコードされるN末端メチオニンは、一般に、全ての真核生物細胞における翻訳後の任意のタンパク質から高効率で回収されることが当該分野で周知である。ほとんどのタンパク質のN末端メチオニンはまた、ほとんどの原核生物において効率的に取り出されるが、いくつかのタンパク質について、この原核生物の取り出しプロセスは、N末端メチオニンが共有結合されるアミノ酸の特徴に依存して効果が小さい。
【0402】
本明細書中で議論されるベクター構築物を含む宿主細胞を含むことに加えて、本発明はまた、脊椎動物起源、特に、哺乳動物起源の一次、二次および不死化宿主細胞を含み、この動物起源は、内在性遺伝物質(例えば、C35コード配列)を欠失または置換するように操作され、そして/または本発明のC35ポリヌクレオチドに作動可能に連結される遺伝物質(例えば、異種ポリヌクレオチド配列)を含み、そして内在性C35ポリヌクレオチドを活性化、変更、および/または増幅する。例えば、当該分野で公知の技術を使用して、相同組換えにより、異種制御領域(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)および内在性C35ポリヌクレオチド配列を作動可能に連結し得る(例えば、米国特許第5,641,670号(1997年6月24日発行);国際公開WO96/29411(1996年9月26日公開);国際公開WO94/12650(1994年8月4日公開);Kollerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932〜8935(1989);およびZijlstraら、Nature 342:435〜438(1989)(これら各々の開示は、本明細書中でその全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0403】
本発明を一般的に記載してきたが、本発明は、例示の目的であり制限することを意図しない以下の実施例を参照して容易に理解される。
【0404】
(実施例)
(実施例1)
(ヒト乳癌におけるC35の差次的発現)
本発明者らは、ヒト乳癌およびヒト膀胱癌において差次的に発現される遺伝子であるC35を提示する全長cDNAを特徴付けた(図1)。C35の348塩基対DNAフラグメントを、腫瘍および一次浸潤性管内乳癌を有する同じ患者由来の正常な乳房上皮細胞株から、ポリA RNAの減法ハイブリダイゼーションによって初めに単離した(Band,V.ら、Cancer Res.50:7351〜7357(1990))。この配列および重複EST配列(登録番号 W57569)の配列に基づくプライマーを用いて、全長C35コード配列を含むcDNAを、次いで、増幅し、そしてSKBR3乳房腫瘍細胞株(ATCC、HTB−19)からクローニングした。このC35 cDNAは、348bpコード配列に加えて、167bpの3’非翻訳領域を含む。
【0405】
C35配列の差次的発現は、図2のパネルAに示され、これは、正常な乳房上皮由来の細胞株、2つの一次乳房腫瘍小節由来の細胞株、および同じ患者から約1年後に単離した2つの転移性肺腫瘍小節由来の細胞株、由来のポリA RNAにおけるクローンC35の発現レベルを比較する(Band,V.ら、Cancer Res.50:7351〜7357(1990))。定量分析は、この配列が、正常な乳房上皮のレベルより10倍高いレベルで腫瘍細胞において発現されることを示す。他の正常な組織のパネルにおける低い発現レベルは、図2のパネルBのノーザンハイブリダイゼーション結果により示される。腫瘍細胞株より3倍多くのポリA RNAが正常組織から負荷されたとしても、比較可能な15時間の暴露後には、C35に対して相同なRNAの発現はほとんどかまたは全く検出されなかった。延長した96時間の暴露後にのみ、いくつかの相同配列の低レベルの発現が、正常な脾臓組織および腎臓組織において検出された。異なる患者由来の3つの一次浸潤性管性乳癌由来のポリA RNAならびに正常な乳房上皮のサンプルにおけるC35相同配列の発現の分析を、図2のパネルCに示す。正常な乳房上皮との比較において、C35に対して相同な配列は、3つの一次乳房腫瘍のうちの2つにおいて45倍および25倍多く過剰発現される。
【0406】
本発明者らは、いくつかの独立的に誘導されたマウス腫瘍において発現され、そして正常なマウス組織においてより減少したレベルで発現される免疫保護腫瘍抗原の分析を以前に行った(2000年3月28日に出願された、タイトル「Methods of Producing a Library and Methods of Directly Selecting Cells Expressing Inserts of Interest」の米国特許出願(この内容全体は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。この場合、腫瘍組織および正常組織における発現レベル間の第9因子の差違は、免疫保護性腫瘍特異的応答の誘導に関連した。上で議論されるように、第9因子を越える正常組織に対するいくつかのヒト乳癌におけるC35の発現レベルは、C35もまた、これらの個体における乳癌に対して免疫保護性であり得ることを示唆する。
【0407】
(実施例2)
(C35特異的CTLは、C35陽性乳房腫瘍細胞に対して細胞溶解性である)
遺伝子産物は、C35の倍と同様に、腫瘍細胞において過剰発現され得るが、この遺伝子産物は、この遺伝子産物由来のペプチドが腫瘍細胞のMHC分子と関連して処理および提示され得る場合にのみ、免疫学的に関連する。任意の所定の遺伝子産物について、この腫瘍により発現されるMHC分子に結合するための要件を満たす細胞分解プロセスの間にペプチドが産生されないか、またはたとえこのようなペプチドが生成されても、他の腫瘍ペプチドによるMHC分子の輸送または競合における欠失が、この特定の遺伝子産物由来の任意のペプチドの提示を防止することが考えられる。たとえ関連の腫瘍ペプチドが、腫瘍細胞におけるヒトMHCに関連して処理および提示されても、全ての場合において、これらのペプチドと反応性のヒトT細胞が、レパートリーにおいて十分に示されるか否か、またはT細胞が、おそらくいくつかの他の非相同性正常組織における同一または関連の抗原の発現に起因して、耐性にされ得たか否かが決定されなければならない。従って、これら両方の理由のために、MHC制限されたヒト腫瘍抗原特異的T細胞が、C35によって誘導され得、そしてこの細胞が、ヒト腫瘍細胞において実際に交差反応性であることを確認することが重要である。この点についての関連の情報は、自系抗原提示細胞により提示される組換えC35またはC35ペプチドを用いる、ヒトT細胞応答のインビトロ刺激により得られ得る。
【0408】
組換え遺伝子産物に対するT細胞応答を評価する際の主な技術的問題点は、発現ベクターに対する強い免疫応答が組換え体特異的応答をブロックするかまたは分かりにくくし得ることである。これは、特に、複数のサイクルのインビトロ刺激を必要とし得る一次応答を伴う問題である。ベクター特異的応答を最小化するために、同じ遺伝子産物について異なるウイルスベクター組換え体を感染した抗原提示細胞による刺激を変更することが可能である。便利なベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルスおよびポックスウイルスが挙げられる。
【0409】
ヒトPBMCを、Ficoll−Paqueを使用して精製し、そしてノイラミニダーゼで処理したヒツジ赤血球を用いるロゼッティングに供して、単核細胞(赤血球ロゼット陰性、ER−)およびTリンパ球(ER+)を単離した。樹状細胞を、新鮮培地を用いてrhGM−CSF(1000U/ml)およびrhIL−4(1000U/ml)中で、一日おきにサイトカインを添加しながら7日間培養することにより、ER−画分から生成した。7日目に、未熟樹状細胞を、ポリブレン(1μg/ml)の存在下で、レトロウイルス発現ヒトC35で6時間形質導入した。細胞を洗浄し、そして12.5%単核細胞馴化培地、1000U/mlのrhGM−CSFおよび1000rhU/mlのIL−4、ならびに1%自系血清の存在下で、4日間、成熟条件下でインキュベートした。この時点で、この樹状細胞を、自系Tリンパ球(凍結保存したER+画分)と共に、1 CD:50 T細胞の比で、14日間インキュベートした。サイトカインIL−2(20U/ml)、IL−12(20U/ml)およびIL−18(10ng/ml)の存在下、一晩(16時間)の感染効率で、ワクシニア組換え発現ヒトC35で感染された自系の放射EBV−B B細胞を用いて、生存T細胞を再刺激した。細胞を、IL−2およびIL−7(10ng/ml)の存在下、C35保有レトロウイルスで感染した自系EBV−B細胞で2回以上再刺激した。細胞毒性活性を、4時間のアッセイ中、5000標的/ウェルを使用する51Cr放出アッセイによる合計4回の刺激の後に測定した。以下の表8に示す結果は、正常な形質転換されていない上皮細胞と同じ低いレベルのC35を発現するMDA−MB−231腫瘍細胞に対してではなく、比較的高いレベルのC35を発現する21NT乳房腫瘍細胞に対する、C35刺激T細胞の特異的細胞毒性活性を示す。
【0410】
【表8】
【0411】
(実施例3)
(乳癌細胞の膜におけるC35発現)
C35ポリペプチド産物が腫瘍細胞の表面で発現されるか否かを決定するために、C35特異的孔血清を調整した。BALB/cマウスを、レトロウイルスコードヒトC35で形質転換した同系株1のマウス腫瘍細胞で免疫した。一連の2回以上の免疫の後に、マウスを出血させた。免疫血清を用いて、ノーザンブロットにおいて、C35転写の高いレベル(21NT)、中程度のレベル(SKBR3)および低いレベル(MDA−MB−231)の発現を示す3つの乳房腫瘍細胞株について、フローサイトメトリーによりC35タンパク質の表面発現を検出した(図4を参照のこと)。1×105の乳房腫瘍細胞を、3.5マイクロリットルのC35特異的抗血清、またはコントロールの予め出血させたBALB/c血清で染色した。30分間のインキュベーションの後、細胞を染色緩衝液(PAB)で2回洗浄し、そしてFITC−ヤギ抗マウスIgG(1μg/サンプル)と共に30分間インキュベートした。サンプルを洗浄し、そしてEPICS Eliteフローサイトメーターで分析した。図4に示される結果は、腫瘍株21NTについて高レベル(パネルA)、腫瘍株SKBR3について中程度のレベル(パネルB)、および腫瘍株MDA−MB−231について検出不能なレベル(パネルC)の特定の免疫血清により認識されるC35抗原の膜発現を示す。高レベルのC35転写物を発現する腫瘍細胞の膜に対する抗体の高レベルの反応性は、C35特異的抗体が、この遺伝子産物を過剰発現する多数の乳癌に対して効果的な免疫治療因子として働き得ることを示唆する(図2および3を参照のこと)。
【0412】
(実施例4)
(調節解除されたリボソームタンパク質L3遺伝子は、共有マウス腫瘍拒絶抗原をコードする)
本発明者らは、ポックスウイルスにおいて構築されるcDNAライブラリ由来のCTLエピトープをコードする遺伝子の選択を可能にする、新規の抗原発見技術を開発した。この技術を使用して、本発明者らは、共有マウス腫瘍抗原がリボソームタンパク質L3遺伝子の代替の対立遺伝子によってコードされることを示した。免疫原性L3遺伝子は、胸腺を含む正常な組織において、有意に減少したレベルではあるが発現される。免疫原性L3 cDNAのワクシニア組換え体による免疫は、腫瘍チャレンジに対する保護免疫を誘導する。ハウスキーピング遺伝子の調節解除された対立遺伝子は、免疫予後抗原として働き得、そして胸腺の発現はアップレギュレートされた腫瘍産物の免疫原性を阻止しないことに特に興味が持たれる。これらの知見は、自己タンパク質に対する耐性は絶対的ではないが、発現の定量的レベルに関して規定されなければならないことを強調する。記載されるリボソームタンパク質は、正常組織に対する免疫耐性を損なうことなく、自己タンパク質の調節解除された発現の結果として生じる共有腫瘍抗原のクラスを示し得る。このような抗原は、重要な器官の癌の免疫治療に適切である。
【0413】
(方法)
総RNAを、Perfect RNA Total RNA Isolation Kit(5 Prime 3 Prime,Inc.、Boulder、CO)を使用して、BCA 39腫瘍細胞から単離した。ポリA+mRNAを、Dynabead(Dynal、Lake Success、NY)を使用して、この総RNAから単離した。2μgのポリA+mRNAを、Great Lengths cDNA Synthesis Kit(Clontech,Palo Alto、CA)を使用して、二本鎖cDNAに変換した。次いで、この二本鎖cDNAを、ワクシニアウイルスベクターv7.5/tkに挿入した。
【0414】
Balb/cByJ(Jackson Labs)マウスを、2×106の照射した(6,500cGy)BCA34細胞で腹腔内免疫した。2週間後、このマウスを、2×106の照射BCA34細胞の皮下注射によりブーストした。2回目の免疫の1週間後、脾細胞を収集し、12個に分け、そして1ウェルにつき6×106の照射した(10,000cGy)マイトマイシンC処理したBCA34細胞と共に1ウェルプレート中で培養した。1週間間隔で、生存T細胞を、Lympholyte−M(Accurate Chemical、Westbury、NY)を使用して精製し、そして1ウェルにつき1.5×106のT細胞で、12のウェルプレート中で培養した。各ウェルに、6×105の照射したマイトマイシンCで処理したBCA34細胞と共に、4×106の照射した(5000cGy)Balb/c脾臓もまた添加した。
【0415】
H−2Kbに関連して免疫優性であるウェルの特徴的なオボアルブミン257−264ペプチド(SIINFEKL)をコードする特定のワクシニア組換え体を、この組換え体が全ウイルスpfuの0.2%、0.01%または0.001%のいずれかを最初に較正するように、非組換えウイルスで希釈した。MC57G細胞(H−2b)の接着性単層を、m.o.i.=1(約5×105細胞/ウェル)で、このウイルスミックスで感染させた。感染の12時間後、オボアルブミンペプチド特異的CTL(免疫優性SIINFEKLペプチドでのオボアルブミンプライム化脾臓T細胞の反復インビトロ刺激によって誘導される)を添加した。このインキュベーションの間、オボアルブミンペプチドを発現する組換え体粒子に感染し、T細胞を単層から放出させる溶解現象を受ける接着性細胞を、特定の細胞障害性T細胞で標的化する。CTLでのインキュベーションの後、この単層を穏やかに洗浄し、そして移動性細胞および残りの接着性細胞の両方を、別々に収集する。各細胞集団から抽出したウイルスを、組換え(BRdU耐性)ウイルスpfuの頻度について力価測定した。移動性細胞から抽出したウイルスを、次いで、新鮮な接着性MC57C細胞およびオボアルブミンペプチド特異性CTLを用いる、別の濃縮サイクルへのインプットとして使用した。全ウイルスの10%を越えるまでのVV卵子の濃縮後、次のサイクルの際に、m.o.i.が1から0.1に減少する場合、組換えウイルスのさらなる濃縮が早められることが観察された。
【0416】
12ウェルプレートのウェル内のBCNの融合性単層を、moi=1.0のワクシニアBCA39 cDNAライブラリで感染した。感染の12時間後、この単層を培養液で3回洗浄し、そして2.5×106のCTLを、250μlの容量でこのウェルに添加した。T細胞および標的を、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、上清を収集し、そして単層を250μlの培養液で3回穏やかに洗浄した。ウイルスを、凍結/解凍により細胞から放出し、そしてBSC1細胞についてのプラークアッセイによって力価を決定した。選択したウイルス集団(特定のT細胞を受けた培養物中の移動性細胞)を、12ウェルプレートの1ウェル中、2日間、BSC1細胞上で増幅した。次いで、このウイルスを収集し、そして力価測定した。このウイルスストックを、3つのさらなる濃縮サイクルに供した。選択したウイルス集団は、次のサイクルの前には増幅しなかった。
【0417】
第4の濃縮サイクル由来のウイルスを、それぞれ5pfuの40のプールに分けた。各プールを、1プール/ウェルで、96ウェルプレート中、BSC1細胞上で増幅した。4日後、このウイルスを回収し(P1)、そしてmoi=5、1プール/ウェルで、96ウェルプレート中にてBCNの単層を感染するために使用した。コントロールとして、BCNの単層を、moi=5のvNotI/tk(Merschlinskyら、Virology 190:522(1992))で感染した。感染の5時間後、2×104の洗浄したCTLを各ウェルに添加した。各ウェルの最終容量は、225μlであった。これらの細胞を、37℃で18時間インキュベートした。次いで、これらの細胞を、遠心分離によってペレット化し、150μlの上清を収集し、そしてELISAによって、IFNgについて試験した。5pfuの40のプールのうち27個が、CTLを刺激する能力について陽性であった。Poisson分析によって、特定の組換え体は、20%より大きく濃縮されたことが示唆された。個々のクローンを、5個の陽性プールから選択し、そして上記のようにアッセイした。
【0418】
6ウェルプレートのB/C.Nの単層を、moi=1.0のv7.5/tk、vF5.8、またはvH2.16で感染した。感染の14時間後、細胞を、コントロール標的:B/C.N、BCA 34およびBCA 39と共に収集した。この標的細胞を、100マイクロキュリーの51クロム(Dupont、Boston、MA)で、37℃で1時間標識し、そして104の細胞を、4つ組の96ウェル丸底プレートに添加した。指定された比で、腫瘍特異性CTLをこの標的細胞に添加した。細胞を37℃で4時間インキュベートした。上清を収集し、51Cr放出を決定した。標的細胞を培地のみと共にインキュベートすることによって、自発的な放出を誘導した。標的細胞を5%Triton×100と共にインキュベーションすることによって、最大放出を決定した。特異的溶解の割合は、以下の式を使用して計算した:%特異的溶解=((実験的放出−自発的放出)/最大放出−自発的放出))×100。各場合において、4つ組ウェルの平均値を、上記の式において使用した。
【0419】
2μgの総RNAを、dTプライマーおよびSuperscript II Reverse Transcriptase(BRL、Gaithersburg、MD)を使用して、cDNAに変換した。cDNAを、L3特異的プライマー;L3.F1.S(CGGCGAGATGTCTCACAGGA)およびL3.F1.AS(ACCCCACCATCTGCACAAAG);および20μlの最終容量のKlentaq DNA Polymerase Mix(Clontech)を使用するPCRのテンプレートとして使用した。反応条件は、94℃で3分間の最初の変性工程、続いて、94℃で30秒間、60℃で30秒間、68℃で2分間の30回のサイクルを含んだ。これらのPCR産物は、3位と1252位との間にL3の領域を含んだ。PCR産物を、Centricon 100カラム(Amicon、Beverly、MA)を使用して精製し、Sau3AIで消化し、そして3%アガロース/エチジウムブロミドゲルで分離した。
【0420】
成体雌性Balb/cByJマウス(1グループにつき2匹のマウス)を、5×106pfuのvH2.16またはv7.5/tkの皮下注射によって免疫した。免疫の7日後、脾細胞を収集し、そして1μmolのペプチドL348−56(I54)と共に、12ウェルプレート中で培養した。7日後、生存T細胞を、リンパ球Mを使用して精製し、そして1×106のT細胞を、1ウェルあたり1μmolのペプチドおよび4×106の照射した(5000cGy)Balb/c脾臓細胞と共に、12ウェルプレートのウェルに添加した。
【0421】
成体雌性Balb/cByJマウスを、10×106pfuのvH2.16、vPKIa、v7.5/tkまたはリン酸緩衝化生理食塩水を皮下注射することに持って免疫した。第2の免疫は、21日後に行った。2×105のBCA 34細胞を、免疫の21日後(一次免疫のみ)または14日後に皮下注射することによりマウスを腫瘍でチャレンジした。
【0422】
(結果および考察)
広範に有効な腫瘍ワクチンの開発のための予測は、いくつかの自己タンパク質が、免疫T細胞により腫瘍抗原として認識され得るという証拠により進歩してきた(Van den Eyndeら、J.Exp.Med.173:1373(1991);M.B.Bloomら、J.Exp.Med.185:453(1997);Van Der Bruggenら、Science 254:1643(1991);Gauglerら、J.Exp.Med.179:921(1994);Boelら、Immunity 2:167(1995);Van Den Eyndeら、J.Exp.Med.182:689(1995);Kawakamiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:3515(1994);Kawakamiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:6458(1994);Brichardら、J.Exp.Med.178:489(1993))。このような正常な変異していない遺伝子産物は、異なる個体において生じる特定のタイプの腫瘍における共通の標的抗原として働き得る。このような共有腫瘍抗原でのワクチン化の後の保護免疫性の誘発についての臨床的証拠は、現在非常に限定されている(Marchandら、Int.J.Cancer 80:219(1999);Rosenbergら、Nat.Med.4:321(1998);Overwijkら、Proc.Natl.Acad.Sci.96:2982(1999);Brandleら、Eur.J.Immunol.28:4010(1998))。さらに、これらの自己タンパク質に対するT細胞応答が、免疫学的耐性の驚くべき崩壊を示すか、または腫瘍細胞における自己タンパク質の発現の定性的または定量的な変化の結果であるかは、ほとんど明らかではない。後者の場合、正常組織の耐性は維持され、そして自己タンパク質(この発現は、腫瘍において系統的に変更される)に対するワクチン誘導性免疫性は、重要な器官の癌に対してさらに適用可能であり得る。
【0423】
本発明者らは、形質転換プロセスの間に複数のマウスの腫瘍中で系統的に調節解除されるリボソームタンパク質対立遺伝子が腫瘍拒絶抗原であること、および免疫原性の重要な相関が正常な組織および胸腺に関連する腫瘍中での定量的な発現の劇的な変化であることを示す。
【0424】
以前に、本発明者らは、交差保護免疫が、3匹の独立して誘導されたマウス腫瘍細胞株中で誘導されることを報告した(Sahasrabudheら、J.Immunology 151:6302(1993))。これらの腫瘍(BCA22、BCA34およびBCA39)は、B/C.N株(Balb/c胎芽から誘導された、クローン化され、不朽化され、足場依存性の、接触阻止された、非腫瘍形成性の細胞株)の独立した継代培養のインビトロ変異誘発により誘導される(Collinsら、Nature 299:169(1982);Linら、JNCI 74:1025(1985))。これらの腫瘍細胞株のいずれかを用いるが、B/C.Nを用いない著しい免疫により、同種組織腫瘍でのチャレンジだけでなく、異種組織腫瘍株でのチャレンジに対する保護を提供した。これらの3種の腫瘍細胞株を用いる免疫に続いて、これらが誘導される非腫瘍形成性B/C.N細胞に対してでなく、同一の三種の腫瘍に対して特異的な交差反応をインビトロで示す、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)株およびクローンを産生し得る。
【0425】
免疫学的規定から共有腫瘍抗原の分子規定に移動するために、本発明は、CTL標的エピトープをコードする遺伝子の識別のための新規な方法および効果的な方法を開発した。このアプローチにおいて、BCA39腫瘍細胞株由来のcDNAライブラリは、改変されたワクチンウイルス発現ベクターにおいて構築された(Merchlinskyら、Virology238:444(1997);E.Smithら、原稿作成中)。本ライブラリの50万個のプラーク形成ユニット(pfu)を使用して、1の感染効率(moi)で、抗原ネガティブB/N.N細胞の単層を感染した。12時間の感染後、BCA34腫瘍に特異的なCTLを、標準的な51Cr放出アッセイにおいて、約50%の溶解を与える標的に対するエフェクターの比で標的細胞の単層に添加した。異種BCA34腫瘍細胞株に対するCTLを、これらの2種の腫瘍細胞株間で共有される、抗原の識別を容易にするために使用した。粘着性はエネルギー依存性プロセスであるので、CTL媒介溶解事象を起こす細胞が、単層から除去され、そして上清中で回収された。浮遊している細胞からウイルスを収集し、次いで、細胞媒介性リンパ球傷害反応(CML)により、宿主細胞を溶解物に感作させたウイルス組換え体を富化することが可能であった。この手順の本質的な特徴は、この手順自体で複製するのに役立つことである。富化の1サイクル後に収集したウイルスは、所望のレベルの富化が達成されるまで、新鮮な単層および新鮮なCTLを使用する選択のさらなるサイクルのための入力として使用され得る。公知の組換え体に特異的なCTLを用いるモデル実験において、特定の組換え体が、0.001%の初期希釈から、選択の6サイクルにおいて約20%(表9)に富化され得る特定の組換え体を実施することが可能であった。このレベルにおいて、さらなる特異性に対する、個々のプラークを選び取るために単一の様式である。
【0426】
(表9)
(VVovaに対する富化のマルチサイクル)
示された濃度のVVova(tk−)でスパイクされた野生型vNotl/tk(tk+)から構成されるワクチンカクテルをCML選択に供した(12)。
【0427】
【表9】
【0428】
%VVova=(BudRを含む滴定濃度/BudRを含まない滴定濃度)×100
nd=検出されない。
【0429】
ポックスウイルス発現ライブラリは、腫瘍特異的CTLを用いる4サイクルの選択に供した。選択されたウイルス組換えの個々のプラークを、B/C.N細胞の別個の培養物を感染するために拡張し、そして使用した。これらの細胞を、インターフェロンγ(IFN−γ)を分泌するのに特異的なCTLを刺激するための能力(図5A)について、または腫瘍特異的なCTLによって溶解するための感作(図5B)について、アッセイした。10種のウイルスクローンを単離し、これらの全てについて、B/C.N上において、IFNγを分泌するのに腫瘍特異的なCTLの株を刺激するための能力を与えた。全て十種のクローンは、同一サイズ(1,300bp)の挿入物を含んだ(Smithら、未公開のデータ)。配列分析により、クローンF5.8およびH2.16が同一の全長cDNAを含むことを確認した。従って、全ての十種のクローンが、同一のcDNAの組換え体であるようであった。BCA34で免疫することで産生された6種のCTL株の全6種が、この抗原に対して特異的であることを実証した。
【0430】
GenBankの検索により、このcDNAが、マウスのリボソームタンパク質L3遺伝子に対して高い相同性を有することを明らかにした(Peckhamら、Genes and Development 3:2062(1989))。H2.16クローンの全体の配列決定は、単一のヌクレオチド置換のみを示した。この置換は、刊行されたL3遺伝子配列と比較した場合、1つのアミノ酸の変化をコードした。このC170T置換は、アミノ酸位54でのトレオニンからイソロイシンへの置換を産生した。F5.8クローンはまた、このヌクレオチド置換を含んだ。
【0431】
CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子によって提示されるペプチドとして、抗原を認識するので、これらのクラスI MHC制限腫瘍特異的CD8+T細胞によって認識されるペプチドエピトープを同定することが、目的であった。改変されたアミノ酸(Ile54)が、CTLによって認識されたペプチド中に含まれることが、恐らく考えられた。この仮説が、H2.16(vH2199)の第1の199bp(63個のアミノ酸)に対してのみ、ワクチンウイルスクローン組換え体が、腫瘍特異的CTL(Smithら、未公開のデータ)によって溶解するために、B/C.Nを感作し得たことを、実証により支持された。ペプチド結合モチーフのコンピュータスクリーニングにより、クラスI MHC分子に対して高い親和性で結合し得る(Kd)(図12)、この領域内でコードされた2つのエピトープが存在することを提案した(Parkerら、J.Immunology 152:163(1994))。これらの2つのペプチドであるL345−54(I54)およびL348−56(I54)を合成し、そして腫瘍特異的CTLによって溶解するようにB/C.Nを感作するための能力について試験した。図7Aに示されるように、ペプチドL348−56(I54)を、溶解するようにB/C.Nを感作する一方で、L345−54(I54)および野生型L348−56(T54)は、感作しなかった。10nMのL348−56(I54)は、CTLによって溶解するように標的を感作するのに十分である一方で、100mMのL348−56(T54)は、そうではないことを決定した(図7B)。これらの結果により、ペプチドL348−56(I54)は、腫瘍特異的CTLによって認識される標的エピトープであることを実証する。
【0432】
異なるL3遺伝子産物の発現を分析するために、オリゴdTプライム化cDNAを、腫瘍およびそれらから誘導されたB/C.N細胞株の、RNAから合成した。第1鎖cDNAを、1対のプライマーを使用するPCR増幅に供し、このプライマーを、全マウスL3mRNA近傍で増幅した。これらのPCR産物の配列分析により、B/C.NおよびBCB13 L3 cDNAが170位にCを含むことを示した(公開された配列と同一)。BCB13は、B/C.N細胞株から誘導された腫瘍細胞株であるが、このBCB13は、BCA腫瘍細胞株で免疫学的に交差保護されていない(Sahasrabudheら、J.Immunology 151:6302(1993))。交差反応性BCA39、BCA34、およびBCA22腫瘍由来のPCR産物の配列分析により、これらの細胞株がL3mRNAの2種の異なる種を発現することを提案した。1方の種は170にCを含み、そしてH2.16クローンにおけるように、他方の種は170にTを含む。全てのL3 cDNAの配列は、この1つの塩基置換を除いて同一であった。
【0433】
腫瘍細胞中の新規なL3RNAの方向について説明するために、2つの可能な方法が存在する。これらの腫瘍において発現されたL3(C170T)遺伝子のいずれかは、野生型遺伝子の体細胞性変異体であり、L3の複数の生殖系列対立遺伝子が存在し、これらの少なくとも1つは、腫瘍形質転換のプロセスの間に調節解除される場合、免疫原性産物を生じる。意外にも、交差反応性BCA39、BCA34、およびBCA22腫瘍は、独立して誘導されるので、本研究者は、第1の仮説を考えた。同一の変異エピトープが全ての3つの腫瘍において産生された場合、注目すべきである。一方で、BCA39およびB/C.N由来のゲノムDNAの異なる制限消化のサザンブロットにより、マウスの遺伝子中にL3遺伝子の複数のコピーが存在することを示した(Smithら、未公開のデータ)。L3遺伝子がまた、ラットおよびウシの両方において、複数の対立遺伝子であると報告されている(Kuwanoら、Biochemical and Biophysical Reaearch Communications 187:58(1992);Simonicら Biochmica et Biophysica Acta1219:706(1994))。この仮説を試験するために必要とされるさらなる分析は、生殖系列中の異なるL3対立遺伝子が腫瘍細胞および正常細胞中のことなる制御に供せられることである。
【0434】
公開されたL3の168位から171位のヌクレオチド配列は、GACCである。この同一の領域中のH2.16の配列は、GATC(図8A)である。この新規なパリンドロームは、Sau3AIを含む、多数の制限エンドヌクレアーゼに対する制限配列である。図8Aの制限マップにおいて示されるように、L3のSau3A Iの消化により、200、355、348、289および84塩基対のフラグメントを産生すると期待される一方で、H2.16のSau 3A Iの消化により、200bpフラグメントの変わりに168bpフラグメントを産生する。Sau 3AIの消化産物の違いを使用して、これらのBCA細胞株が少なくとも2つの異なるL3対立遺伝子を発現することを確認した。全5つの細胞株および胸腺RNA由来のL3 RT−PCR産物を、Sau 3AIで消化し、そしてアガロースゲルで分析した。図8Bにおいて示されるように、全3つのBCA株は、L3の両方のバージョンを発現する。驚くべきことには、このアッセイを、より多くの量の出発材料を使用して繰り返す場合、168bpのフラグメントはまた、B/C.N、BCB13、および正常の胸腺cDNAの消化において検出可能であった(Smithら、未公開のデータ)。このアッセイの感度を増強するために、PCRを、P32末端標識5’L3特異的プライマーを使用して繰り返した。放射標識したPCR産物を、Sau3AIで消化し、そしてアガロースゲル上に溶解した。図8C、B/C.N、BCB13および胸腺において示されるように、168bpフラグメントを含む。定量的な分析により、BCA腫瘍中の200bp:168bpフラグメントの比が、2:1である一方で、B/C.N、BCB13、および胸腺において検出された同一のフラグメントは、約20:1であることを示す。この免疫原性L3対立遺伝子の低いレベルの発現がまた、腎臓、心臓および骨格筋由来のRNAが分析される場合に観測された(Smithら、未公開のデータ)。これらの結果は、交差反応性腫瘍における形質転換プロセスに関連する遺伝子の調節解除は、より高いレベルのこの生殖系列L3(C170T)対立遺伝子の発現に導き、そしてこの改変されたL3遺伝子は、正常の組織において優先的に発現されるL3遺伝子の体細胞変異によって産生されないことを示唆する。本発明者らは、この新規なL3対立遺伝子(C170T)を、免疫原性L3対立遺伝子(iL3)と呼んだ。
【0435】
免疫原性L3対立遺伝子がまた、例えば、10倍減少したレベルにおいてでも、正常な胸腺において、発現されることに、特に興味がある。このレベルの発現は、いくつかの腫瘍において発現される、調節解除されたiL3のレベルについて、機能活性を用いて全てのT細胞を寛容化するのに明らかに十分ではない。しかし、B/C.NおよびBCB13が、低レベルのiL3を発現するが、これらは、腫瘍特異的なCTLによって溶解するのに感受性でないという観測は、より高度な親和性T細胞が寛容化されたことを示唆する。このことは、腫瘍抗原が胸腺中で発現されると報告された最初の報告であるようだ。これらの観測は、自己タンパク質に対する寛容性が絶対ではないが、発現の定量的なレベルに相関して規定されるべきであることを強調する(Targoniら、J.Exp.Med.187:2055(1988);C.J.Harringtonら、Immunity 8:571(1998))。
【0436】
広範に有効なワクチンが、共有の腫瘍抗原の発現に基づいて開発される場合、このような抗原が免疫保護され得ることを実証することは、重要である。最も多くの数の共有抗原が、ヒトの腫瘍について同定されているが、これらの抗原を使用する免疫治療の臨床試験は、最適なワクチン戦略に関する一部の不特定さのために、これまで確証的ではなかった(Pardoll,D.M.,Nat.Med.4:525(1998))。マウスにおいて、免疫治療戦略がより全体的に調査されて得る場合、非常にわずかな共有腫瘍抗原が同定される。従って、iL3組換えワクチンウイルスでの免疫で、腫瘍特異的CTLを誘導し、そして腫瘍チャレンジ由来のマウスを保護するかどうかを決定することは注目すべき目的である(Overwijkら、Proc.Natl.Acad.Sci.96:2982(1999);Moss,B.,Science 252:1662(1991);Irvineら、J.Immunology 154:4651(1995);McCabeら、Cancer Research 55:1741(1995);Estinら、Proc.Natl.Acad.Sci.85:1052(1988);J.Kantorら、JNCI84:1084(1992);V.Bronteら、Proc.Natl.Acad.Sci.94:3183(1997))。iL3遺伝子(H2.16)についてワクチンウイルス組換え体でのBalb/cマウスの免疫により、インビトロにおいて、BCA34およびBCA39腫瘍細胞の両方を溶解し得るが、B/C.Nを溶解し得ないCTLを産生した(図9A)。iL3について、ワクチンウイルス組換え体で2回またはさらに1回免疫したマウスは、BCA34腫瘍細胞でのチャレンジを拒絶し得た(図9Bおよび9C)。空きウイルスベクター、またはcAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKIa)のインヒビタタンパク質についての制御ワクチン組換えで免疫されたマウスは、この腫瘍チャレンジを拒絶し得なかった(Olsen,S.R.およびUhler,M.D.,J.Biol.Chem.266:11158(1991);Muellerら,原稿作成中)。これらの結果により、iL3自己タンパク質が免疫保護腫瘍抗原であることを実証した。
【0437】
本発明者は、改変されたワクチンウイルスベクター中の腫瘍cDNAライブラリ由来のCTL−媒介選択に基づくCTLエピトープをコードする遺伝子を同定するための、新規な戦略を開発した(Merchlinskyら、Virology238:444(1997);E.Smithら、原稿作成中)。本発明者は、3種の独立して誘導されたマウスの腫瘍によって共有される腫瘍拒絶抗原をコードする、調節解除されたハウスキーピング遺伝子を同定するための戦略を適用した。このリボソームタンパク質は、代表的なより大きなクラスの免疫保護共有腫瘍抗原であり得、この抗原は、正常な組織に対して免疫耐性を含まない自己タンパク質の調節解除された発現の結果として免疫原性となる。このような抗原は、ウイルス性の器官中の癌の免疫治療に十分適している。
【0438】
(実施例5)
(C35腫瘍抗原の発現および免疫原性)
新規なC35腫瘍遺伝子のRNA転写は、正常なヒト組織における発現と比較した場合、試験された原発性ヒト乳癌の70%(12/17)において、そして試験された膀胱癌の50%(5/10)において過剰発現する。全長遺伝子は、未知の機能の新規な115個のアミノ酸タンパク質をコードする。フローサイトメトリー分析によって、C35を発現する細胞の表面膜を染色する、モノクローナル抗体(2C3)を選択した。さらに、C35+乳癌および膀胱癌を特異的に溶解する、ヒト細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を、インビトロで産生した。インビトロにおいて、正常なヒトドナー由来のC35特異的CTLを産生するための能力は、過剰に発現したタンパク質に対する寛容性の欠如を示唆する。異なる固体の腫瘍におけるC35の過剰な発現ならびに体液性免疫応答および細胞性免疫応答を誘導するための能力は、C35(免疫治療のための有望な候補物)を作製する。
【0439】
(材料および方法)
(細胞株:)ヒト乳癌細胞株(BT20、BT474、MCF7、MDA−MD231、SKBR3、T47D(ATCCにより供給される))を、10%のウシ胎児血清(Biofluids,Rockville,MD)で補充された、RPMI−1640(BioWhitaker,Walkersville,MD)中で増殖した。正常な胸部の上皮由来の不死化株、H16N2、2種の転移性腫瘍、21−MT1および21−MT2、ならびに全て同一の患者由来で、DFCI培地中で増殖した2種の原発性腫瘍(21−NTおよび21−PT)(Band,V.およびSanger,R.,「Tumor Progression in Breast Cancer」in Neoplastic Transformation in Human Cell Culture,J.S.RhimおよびA.Dritschilo編、The Human Press Inc.,Totowa,NJ.(1991)、第169から78頁)は、Dr.Vimla Band,New England−Tufts Medical Centerによって豊富に提供された。膀胱腫瘍細胞株ppT11A3を、免疫化非腫瘍化細胞株SV−HUCから誘導した。これらの膀胱細胞株は、Dr.Catherine Reznikoff,University of Wisconsin Clinical Cancer Centerによって豊富に提供され、そして500ml中に、1%のFBS、0.025ユニットのインシュリン、1μgのヒドロコルチゾン、5μgのトランスフェリン、2.7gのデキストロース、0.1μMの非必須アミノ酸、2mMのL−グルタミン、100ユニットのペニシリン、および100μgのストレプトマイシンを充填した、F12培地中で増殖した。正常に増殖する胸部上皮細胞(MEC)を、Clonetics(BioWhittaker)から購入し、そして供給者の指示に従って維持した。
【0440】
(RNAの抽出およびノーザンブロット分析:)細胞株を、約80%のコンフルエンシーでRNA抽出のために収集した。細胞を収集し、そしてQiagen RNAeasyキットのQG緩衝液中に溶解した。総RNAを、製造業者のプロトコールにより抽出し、そしてGITCおよびアルコールと共に沈殿物として−80度で貯蔵した。組織サンプルを、スナップ凍結サンプルとしてCooperative Human Tissue Networkによって提供され、このサンプルを、RNAeasyプロトコールでの使用のために溶解緩衝液中でホモジェナイズした。ノーザンブロットのために、mRNAを、Dynal(Lake Success,NY)オリゴdT25磁性ビーズを使用する総RNAから抽出し(30μg 総RNA/ウェル)、そして3%のホルムアルデヒドを含む0.8%のSeaKemLE(FMC Bioproducts)中で電気泳動した。mRNAを、Genescreen Plus(NEN)(10×SSC中)上にキャピラリーブロットによって一晩かけてブロットし、次いで80℃で2時間ベーキングした。膜を、製造業者のプロトコールにより、68℃、106cpm/mlのQuickhyb溶液(Stratagene)で、ランダムにプライム化した32P標識cDNAプローブ(Prime−It,Stratagene,LaJolla,CA)を用いてプローブした。ブロットをX線フィルムおよび/または光現像(phosphorimage)スクリーンに一晩曝した。全てのブロット上での発現を、ハウスキーピング遺伝子(例えば、GAPDHまたはβアクチン)に規格化した。
【0441】
(差引きハイブリダイゼーション:)Lisitsynらによって最初に記載(Lisitsyn,NおよびWigler,N.M.,Science 259:946−51(1993))されたようなRepresentational Difference Analysisに基づく、PCR Select cDNA Subtraction Kit(Clontech,Palo Alto,CA)を、製造業者のプロトコールを使用して、正常な胸部細胞株と比較して、腫瘍で過剰発現した遺伝子に対して富化されたcDNAを産生した。簡潔には、オリゴ−dTプライム化二重鎖cDNAを、腫瘍細胞および正常な細胞由来の、高質のDNase処理したmRNA(2μg)から合成した。アダプターを、短い平滑末端(Rsalで消化した)腫瘍配列に連結して、そして過剰のRsalで消化した正常なフラグメントでハイブリダイズした。32時間のハイブリダイゼーション後に、抑圧(suppression)PCR(Clontech)により、プライマーとしてアダプター配列を使用して、過剰発現した腫瘍配列の優先的な増殖を可能にした。PCR増幅の産物を、pT7Blue3(Novagen,Madison,WI)中にクローニングして、差引きされたライブラリを産生した。クローンを、96ウェルフォーマット中でLB/アンピシリン(100μg/ml)において増殖し、挿入物を、一晩の培養物からPCR増幅し、そしてPCR産物を、BioDotマニホルド(BioRad,Hercules,CA)を使用するGenescreen Plus上にスポットした。次いで、二連のドットプロットを、ランダムにプライム化した腫瘍または正常なcDNAまたは順方向および逆方向の差引きハイブリダイゼーションのPCR産物でプローブした。腫瘍cDNAと順方向cDNAとを差し引いた物(腫瘍−正常)において過剰発現したようであるクローンを、ノーザンブロットによって(上記のように)分析し、ディファレンシャル遺伝子発現を確認した。
【0442】
(cDNAライブラリおよび全長遺伝子:)オリゴ−dTでプライム化した二重鎖cDNAを、SMART cDNA合成を使用する、SKBR3細胞株(Clontech Laboratories)から産生し、続いて、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコールで抽出した。プライマーを合成し(C35センス:5’−GCGATGACGGGGGAGCC、およびC35アンチセンス:5’−CCACGGAATCTTCTATTCTTTCT;Fisher Oligos,The Woodlands,TX)、特にESTホモログ,登録番号W57569から推論されるオープンリーディングフレームに基づいて、C35のコード領域を増幅した。PCR産物を、pT7Blue3(Novagen)中にクローニングした。
【0443】
(ワクシニアおよびレトロウイルスのC35組換え体:)C35のクローニング配列を、BamHI/SalI部位において、ライブラリからワクシニアトランスファープラスミド(pVTK0)に、規定された方向にサブクローニングした。組換えウイルスを、NotIおよびApaIで消化したV7.5/TKウイルスDNAと共にpVTK0.C35の、鶏痘ウイルスで感染させたBSC−1細胞へのトランスフェクションによって産生した。他(米国特許出願08/935,377;PCT/US98/24029;標的抗原およびそれに基づくワクチン)に記載される場合、これは、ワクチンウイルス組換え構築のための有効な方法である。このC35遺伝子をまた、レトロウイルスベクターpLXSNにクローニングし、そしてウイルスストックを、偽型のためにpVSVgを用いて293−GP細胞と同時トランスフェクションすることによって産生した。感染ウイルスを含む上清を、48時間後に収集した。
【0444】
(C35特異的2C3モノクローナル抗体の産生およびFACS分析:)ライン1のマウスの小細胞の肺癌細胞を、C35レトロウイルスで感染し、そして103〜2×104の細胞を、3匹のBALB/cByJマウスに注射した。21日後に、血清を、レトロオービタル(retro−orbital)血液から採取し、そして低いレベルのC35mRNA(MDA−MD−231)または非常に高いレベルのC35mRNA(21NT)を発現することが公知のヒト腫瘍細胞との反応性をチェックした。脾臓をまた、標準的なマウスハイブリドーマ技術を使用するP3黒色腫細胞での脾臓細胞の融合により、ハイブリドーマの産物を採取した。ELISAを使用して、Igの存在について、HAT耐性クローンをスクリーニングした。大量の産物を、アイソタイプ化し、定量し、そしてフローサイトメトリーによってC35+細胞株およびC35−細胞株をスクリーングした。1μgのIgGを含むハイブリドーマクローンの上清を、PAB(PBS、1%のBSA、0.1%のアジド)中の106個の細胞を、氷上で30分間インキュベートし、続いて、PABを用いて3回洗浄し、そしてFITC(Southern Biotechnology,Birmingham,AL)に結合体化したヤギ抗マウスIgGと共に、氷上で30分間インキュベートした。一つのハイブリドーマクローン(2C3)を、免疫血清に見られる表面染色を再利用し(図14)、そして展開および抗体精製のために選択した(BioExpress,West Lebanon,NY)。
【0445】
(ヒトC35特異的T細胞株の生成):健康な女性ドナー由来の末梢血(HLA A2、11、B35、44)は、赤血球ロゼット陽性画分(全Tリンパ球の供給源)および陰性画分(単球の供給源)に分離した。Tリンパ球は、単球が樹状細胞(DC)を生成するための条件下でインキュベートされる間、後の使用のために凍結保存された。DCの変異は、いくらか改変して、Bhardwajおよび同僚(Bender,A.ら、J.Immunol.Meth.196:121−35(1996);Reddy,A.ら、Blood 90:3640−46(1997);Engelmayer,J.ら、J.Immunology 163:6762−68(1999))によって記載されるように誘導した。hGM−CSFおよびhIL−4(1000U/ml)を一日おきに加えた。7日目に、非粘着性未成熟DCをGM−CSFおよびIL−4の存在下で6時間、C35についてレトロウイルス組換え体とともにインキュベートした。この時点で、レトロウイルス上清を洗浄し、そして未成熟樹状細胞を変異条件(これは、再び、GM−CSF、IL−4ならびに12.5%単球馴化培地(MCM)を含んだ)に供された。4日後、これらの成熟C35発現DCを使用して自己T細胞を14日間、1DC:50 T細胞の比で刺激した。自己DCの新鮮なプールを、T細胞の再刺激のために生成したが、このとき、これらは、C35についてのワクシニアウイルス組換え体とともにMCM中で、48時間の成熟の後に感染した。サイトカインIL−2(20U/ml)、IL−12(20U/ml)およびIL−18(10ng/ml)を加え、そして1:50の比のDC:T細胞を維持した。12日間の培養に続いて、T細胞をさらに7日間、C35組換えレトロウイルスに感染したEBV−B細胞とともに、IL−2(20U/ml)およびIL−7(10ng/ml)を添加して、刺激した。サイトカインをすべてR&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した。この時点で、細胞は>90%のCD8+であり、そして標準的な51Cr放出アッセイで活性について試験した。手短には、百万の標的細胞を100μCiの51Crとともにインキュベートし、洗浄し、次いで、RPMI−1640中で4時間、CTLエフェクターとともにインキュベートし、10%ヒトAB血清(BioWittaker)を補充した。CTLの活性は、(CTLによって標識標的の溶解時に上清に放出された51Cr−自発的放出)/(最大放出−自発的放出)として測定された特異的放出の割合として表現された。
【0446】
(結果)
(C35の特徴付け):クローンC35の配列は、ヒト乳房腫瘍細胞において差次的に発現され、Genbankにおいていずれの公知配列とも相同ではないが、相同なEST配列(プロトタイプ寄託番号W57569)が同定された。相同なヒトESTフラグメントは、脳、肺および腎臓(A# AA954696)、Soares 卵巣(A# AA285089)および副甲状腺腫瘍(A# W37432)、子宮内膜腫瘍(A#AA337071)、および結腸癌腫(A# AA313422)を含む、NCI CGAP (Cancer Genome Anatomy Project)ライブラリーに存在する。115アミノ酸タンパク質(図10)をコードするオープンリーディングフレームを同定した。全長遺伝子を、乳房線腫細胞株SKBR3のcDNAライブラリーから単離した。細胞株SKBR3、21MT2−D、およびH16N2由来の全長転写物の配列決定は、cDNAに点変異がないこと;転写物がC35hi細胞株ならびにC35lo細胞株において100%相同であることを確認した。C35遺伝子は、ヒト染色体17q12(A# AC040933)およびマウス染色体11(A# AC064803)に整列する。エキソンは、cDNA EST配列との相同性、ならびにGRAIL予測から推定した。興味深いことに、C35の遺伝子は、Her2/neu発癌遺伝子の1000塩基対以内であり、成長因子レセプター結合タンパク質7(GRB7)(細胞サイクルを活性化することに関与し、そして食道癌腫において過剰発現されるチロシンキナーゼ)についての遺伝子の2000bp以内である(Tanaka,S.ら、J.Clin.Invest.102:821−27(1998))(図10B)。Her2/neuタンパク質過剰発現は、30%乳房腫瘍における遺伝子増幅と相関しており、そして乏しい臨床的予後と関連する(Slamon,D.J.ら、Science 235:177−82(1987))。
【0447】
C35アミノ酸配列における推定タンパク質モチーフとしては、以下が挙げられる:アミノ酸38〜41(TYLE)におけるカゼインキナーゼIIリン酸化部位、76〜79(SKLE)、および97〜100(SNGE);アミノ酸60〜65(GGTGAF)におけるN−ミリストイル化部位;ならびにアミノ酸94〜97(RRAS)におけるcAMP−およびcGMP−依存性タンパク質キナーゼリン酸化部位。最後に、C35タンパク質は、COOH末端におけるプレニル化モチーフ、アミノ酸112〜115(CVIL)を含む。プレニル化(疎水性イソプレノイド部分の共有結合)は、膜会合を促進する翻訳後修飾であり、タンパク質−タンパク質相互作用を媒介することが明かである(Fu,H.−W. and Casey,P.J.,Recent Progress in Hormone Research 54:315−43(1999))。プレニル化は、細胞表面への発癌遺伝子Rasファミリータンパク質の可能性を局在化および形質転換するために必要とされることが示された(Jackson,J.H.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:3042−46(1990);Hancock,J.F.ら、Cell 57:1167−77(1989))。プレニル化のインヒビターは、腫瘍増殖を遅らせること(Garcia,A.M.ら、J.Biol.Chem.268:18415−18(1993))および動物モデルにおける拒絶を促進すること(Kohl,N.E.ら、Nature Med.1:792−97(1995))のような抗腫瘍活性を有することが示された。3つのOグリコシル化部位は、アミノ末端(NetOGlyc2.0を使用してthr8、ser2、およびser9)において推定される。
【0448】
(C35転写物は、乳房癌腫および膀胱癌腫において過剰発現される):腫瘍免疫療法に対する理想的な標的抗原は、複数の独立した癌腫において豊富に発現され、そして正常な増殖する生きた組織において存在しないかまたは最小に発現される。C35の差次的発現は、ノザンブロット分析によって確認された。C35は、7/10ヒト腫瘍細胞株において、正常な不死化乳房上皮細胞株H16N2(図11A)における発現よりも10〜25倍高いレベルで発現する。重要なことに、C35発現は、一次(21NT、21PT)病変および転移性(21MT1、21MT2)病変との両方に由来する株の間で共有され、これは、その発現が腫瘍形質転換のプロセスにおいて初期の事象と関連し得ることを示唆する。さらに、C35の過剰発現は、独立して誘導されるヒト哺乳動物癌腫細胞株(SKBR3、T47D、およびBT474を含む)の間で共有される。興味深いことに、SKBR3、MDA MB231、H16N2および同じ患者由来の腫瘍におけるC35発現パターンは、Her2/neu発現と相関し、これは、2つの遺伝子の密接なゲノム近さおよびHER2/neu遺伝子増幅の発生と関連し得る。
【0449】
患者由来の腫瘍におけるC35発現が癌ワクチンの発生に臨床的に関連するかいなかを調査するために、mRNAを、Cooperative Human Tissue Network(CHTN)から得たスナップ凍結ヒト組織から抽出した。一次乳房腫瘍サンプルの70%は、C35転写物を過剰発現し(図11B)、そしてこれらの乳房腺腫の35%(7/20)が正常な乳房の10〜70倍高いレベルで過剰発現する。C35の過剰発現はまた、試験された膀胱腺腫一次試料の50%において観察され(図12)、一方、一次膀胱癌腫の20%(3/14)は、正常な膀胱よりも10倍高いレベルでよりも高く発現する。C35の過剰発現(9倍以上のレベル)は、卵巣(0/7)、前立腺(0/5)、または結腸(0/15)癌腫において検出されなかった(データは示さない)。
【0450】
(2C3モノクローナル抗体はC35+細胞と反応する):C35によってコードされる遺伝子産物の差次的発現を確認するために、共有される腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体が選択される。ハイブリドーマを、乏しい免疫原性BALB/cByJ腫瘍細胞株(これは、レトロウイルスヒトC35組換え体を用いて形質導入されている)を用いてマウスを免疫することによって産生した。ハイブリドーマクローンを、それらがC35++乳房腫瘍細胞株および膀胱腫瘍細胞株(図13Aおよび13B)を染色する能力についてスクリーニングした。非腫瘍形成性の乳房H16N2上皮細胞株および膀胱SV−HUC上皮細胞株は、アイソタイプコントロールと比較した場合、蛍光強度の有意な移動を示さなかった。対照的に、2C3モノクローナル抗体は、C35+乳房腫瘍、SKBR3および21−NT−D、および膀胱腫瘍ppT11A3を特異的に染色した。染色は、固定も透過もされなかった細胞で行われ、これは、2C3抗体が表面分子を認識することを示す。
【0451】
(C35抗体を用いる腫瘍増殖の阻害):
抗体は、癌の診断マーカーを検出するための有用なツールであるが、これらはまた、治療的適用についての可能な使用を有し得る。ヒト化Her2/neu特異的抗体(Herceptin)は、いくつかの乳癌の処置のために首尾良く使用されている。Herceptinは、HER2/neuに結合し、そして増殖因子レセプターからの信号伝達を下方調節する。増殖阻害研究は、C35特異的2C3抗体を用いて行われた。21NT−D乳房腫瘍およびH16N2「正常」乳房細胞株は、種々の抗体濃度の存在下でインビトロで増殖した。72時間で細胞増殖を評価するためにXTTアッセイを行った。図14に示される結果は、2C3が、1μg/ml程度の低い濃度で約50%、21NT腫瘍細胞の増殖を阻害することを示す。
【0452】
(C35クラスIエピトープはHLA−A2制限される):
自己寛容の確立は、自己タンパク質に基づくワクチンの開発に対する主要な障害である。しかし、寛容は、定量的レベルの発現の点で規定されなければならない。高い親和性抗原特異的T細胞が寛容化される場合でさえ、低い濃度の抗原に対する機能的アビディティを有さない低い親和性レセプターを有するT細胞が寛容誘導を逃れることが可能である。しかし、これらの同じT細胞は、引き続いて、標的抗原の過剰発現と関連する顕著な増加したアビディティ−がある場合、機能的に有意になり得る。これらが数が少ない場合でさえ、このようなT細胞は、免疫学的操作、ワクチン接種の大部分の基礎によって増殖され得る。
【0453】
C35は、正常なヒト組織において低い基礎的なレベルで発現される自己タンパク質である。従って、ヒトT細胞が癌腫に特徴的な発現のレベルにおいてヒトT細胞がC35に対して耐性がある場合に決定することが必要であった。寛容を排除するための唯一の方法は、応答を示すことにより、そして臨床試験の短い応答を示すための唯一の方法は、インビトロ刺激による。ヒトT細胞および自己樹状細胞は、正常なドナー由来のPBLから誘導された。T細胞を、C35 cDNAのレトロウイルスまたはポックスウイルス組換え体に感染した自己樹状細胞を用いた代替の刺激によってプライムされた。刺激のいくつかのサイクルに続くインビトロで回収されるCTLを、それらがC35+標的腫瘍細胞(図15)を溶解する能力について(図15)かまたは抗原誘導活性化に応答してサイトカインを分泌する能力について(図16)分析される。標的は、C35および/またはHLA−A2.1を内因的に発現するか、またはC35組換え哺乳動物発現ベクターを用いた標準的なトランスフェクションによって、またはC35組換えワクシニアウイルスで感染によってこれらのタンパク質を発現するように操作されたかのいずれかである。以前の研究は、ワクシニアウイルスによるタンパク質発現が、ペプチドをMHC−Iプロセシング経路に標的化させる効率的な手段であることを示した(Moss,B.,Science 252:1662−67(1991)。
【0454】
いくつかの回の刺激に続いて、51Cr放出アッセイ(図15AおよびB)におけるC35loH16N2正常乳房上皮細胞株に対するC35+腫瘍細胞を差次的に溶解するバルクT細胞株およびT細胞クローンの両方が選択される。HLA−A2制限C35特異的CTLクローン10G3は、HLA−A2トランスフェクト腫瘍形成細胞株、21−NT−A2(これは、H16N2よりも15倍高いレベルでC35抗原を発現し、そして2C3モノクローナル抗体で染色される)を効率的に溶解した。特異的溶解はまた、HLA−A2+膀胱腫瘍細胞株ppT11A3が誘導される非腫瘍形成性膀胱細胞株SV−HUCに比較した、そのHLA−A2+膀胱腫瘍細胞株ppT11A3を用いてであった(図15B)。このデータは、C35lo非腫瘍形成性不死化細胞株の最小の溶解を有する高レベルのC35を発現する腫瘍のC35CTL感受性を示す。重要なことには、同じCTLは、MEC、有意なレベルでC35を発現しない非不死化、非形質転換HLA−A2+乳房上皮細胞と反応性ではない。T細胞によるC35+腫瘍認識を支持するためのさらなる証拠は、図16Aおよび16Bに示される。T細胞は、C35+、HLA−A2+刺激物質に応答するIFNγおよびTNFαを分泌する。再び、非腫瘍形成性C35lo細胞株H16N2.A2は、C35特異的T細胞によるサイトカイン分泌を誘導しなかった。しかし、C35に対するワクシニアウイルス組換え体を用いるこの株の感染は、T細胞を活性化する能力を与える。T細胞が無関係なタンパク質L3を用いて形質導入されたH16N2.A2に応答してIFNγまたはTNFαを分泌しないので、これは、この応答が、C35タンパク質発現に特異的であることを示す(図16AおよびB)。
【0455】
いくつかの回の刺激に続いて、51Cr放出アッセイにおいてC35+、HLA−A2+腫瘍細胞を差次的に溶解するバルクT細胞株およびT細胞クローンの両方が、選択された。C35特異的CTLは、HLA−A2トランスフェクトされた非腫瘍形成性乳房上皮細胞株、H16N2.A2を溶解しなかった(図15AおよびB)が、この細胞株は、図11Aに示されるノザンブロットデータに基づいて低いレベルでC35を発現する。しかし、C35特異的CTLは、HLA−A2トランスフェクトされた腫瘍形成性細胞株、21−NT.A2(H16N2の15倍より高いレベルでC35抗原を発現し、そして2C3モノクローナル抗体で染色される)を効果的に溶解した。C35+腫瘍特異的溶解はまた、膀胱腫瘍細胞株ppT11A3が誘導される非腫瘍形成性膀胱細胞株SV−HUCと比較して、膀胱腫瘍細胞株ppT11A3を用いて示された。このデータは、C35lo非腫瘍形成性不死化細胞株の最小の溶解を伴う高レベルのC35を発現する腫瘍のCTL感受性を示す。重要なことには、同じCTLは、MEC、有意なレベルでC35を発現しない非不死化非形質転換HLA−A2+乳房上皮細胞の一次培養物と反応性ではない。T細胞によるC35+腫瘍認識を支持するためのさらなる証拠を、図16AおよびBに示す。T細胞は、C35+、HLA−A2+刺激物質に応答してIFNγおよびTNFαを分泌する。また、非腫瘍形成性C35lo細胞株H16N2.A2は、C35特異的T細胞によるサイトカイン分泌を誘導しなかった。しかし、C35に対するワクシニアウイルス組換え体を用いるこの株の感染は、T細胞を活性化する能力を与える。T細胞が無関係なタンパク質L3を用いて形質導入されたH16N2.A2に応答してIFNγまたはTNFαを分泌しないので、これは、この応答が、C35タンパク質発現に特異的であることを示す。
【0456】
C35特異的T細胞は、HLAハプロタイプA2、A11、B8、B35を用いてドナーから生成された。膀胱細胞株、SV−HUCおよびppT11A3は、ハプロタイプHLA−A2、B18、B44を用いてドナーから誘導された。しかし、H16N2不死化乳房上皮細胞株ならびに21−NTおよび21−MT乳房腫瘍細胞株が同じHLA−A2陰性ドナーから誘導されたので、これら細胞株は、HLA−A2制限10G3 T細胞クローンによる認識のための必要とされるMHC制限エレメントを提供するためにHLA−A2.1をトランスフェクトされなければならなかった(図16AおよびB)。T細胞は、C35およびHLA−A2の両方を発現する乳房株によってこれらのリンホカインを分泌するために強力に刺激された(21−MT2を21−MT2.vvA2と比較する)。このデータは、C35の少なくとも1つのHLA−A2.1規定エピトープがあることを示す。
【0457】
C35コード領域の欠失変異は、CTLによって認識されるペプチドエピトープをコードするcDNAセグメントを同定するために構築された。図15AおよびBは、全長C35または最初の50個のアミノ酸のみを含む短縮変異体を用いて刺激されたT細胞による、ほとんど等価なIFNγおよびTNFα分泌を示す。
【0458】
(考察)
C35は、乳房癌腫および膀胱癌腫において過剰発現される新規な腫瘍抗原である。この遺伝子は、それを腫瘍免疫療法に対する有望な候補にする性質を有する。この遺伝子は、異なる個体から誘導される有意な数の腫瘍において発現される。生きた正常な組織における発現は、比較的低く、自己免疫反応の危険を減少させ、そして等しく重要であり、免疫細胞が遺伝子産物に対して寛容にされないようにする。C35は、「腫瘍抗原」として特徴付けられる。なぜなら、C35発現樹状細胞が、インビトロで自己腫瘍特異的ヒト細胞傷害性Tリンパ球を誘導するからである。
【0459】
C35は、未知の機能の新規な遺伝子産物である。しかし、モノクローナル抗体を用いた本発明者らの研究は、タンパク質の局在化に対するいくつかの見識を提供した。C35免疫マウスから誘導される血清およびモノクローナル抗体の両方が、C35を発現する非固定細胞を非特異的に染色する。これは、この抗体が腫瘍表面膜タンパク質を認識することを示唆する。タンパク質配列が疎水性に基づいた公知の膜貫通モチーフと適合しないが、COOH末端のプレニル化部位の存在が、膜への挿入を示唆する。プレニル化は、膜に対して高い親和性を有する、実質的により疎水性のタンパク質を産生する翻訳後脂質改変である(Fu,H.−W.and Casey,P.J.,Recent Progress in Hormone Research 54:315−43(1999))。プレニル化部位を含む他のタンパク質は、Ras発癌遺伝子ファミリーを含む。Ras GTPaseが、細胞分裂および増殖を誘導するためにMAPKを用いるシグナル伝達カスケードで作用する。Rasタンパク質は、プレニル化を介して形質膜に係留されるが、タンパク質は、膜の細胞質表面に残る。従って、C35がまた膜の細胞質側に残るが、特異的抗体で検出されるのに十分な、外側表面への十分な輸送が存在し得る。
【0460】
C35特異的抗体は、ノザンブロットを実証するため、およびウェスタンブロットおよび免疫組織化学のようなアッセイにおける使用のためのC35のタンパク質発現を研究するための価値のあるツールである。さらに、これらの抗体は、治療的利益を有し得、例えば、最近、Herceptin(Baselga,J.ら、J.Clin.Oncol.14:737−44(1996);Pegram,M.D.ら、J.Clin.Oncol.16:2659−71(1998))、腫瘍関連抗原HER2−neu(c−erB−2)に対する抗体(Schechter,A.L.ら、Nature 312:513−16(1984)について示された。Herceptinの抗腫瘍効果は、腫瘍増殖を阻害する上皮増殖因子レセプターを結合すること、および抗体依存性細胞媒介細胞傷害を誘発することを包含する(Dillman,R.O.,Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 14:5−10(1999)。
【0461】
(実施例6)
(腫瘍の標的抗原に特異的な細胞傷害性T細胞の誘導)
ヒト腫瘍特異的T細胞は、腫瘍溶解物を用いてパルスされた自己腫瘍または自己抗原提示細胞を用いるPBLの刺激によりインビトロで誘導された(van Der Bruggen,P.ら、Science 254:1643−1647(1991);Yasumura,S.ら、Cancer Res.53:1461−68(1993);Yasumura,S.ら、Int.J.Cancer 57:297−305(1994);Simons,J.W.ら、Cancer Res.57:1537−46(1997);Jacob,L.ら、Int.J.Cancer 71:325−332(1997);Chaux,P.ら、J.Immunol.163:2928−2936(1999))。PBLは、腫瘍を用いて、免疫原性を増強するように改変された腫瘍を用いて、または腫瘍抽出物を用いて故意に免疫された患者あるいは先の刺激のみが疾患の自然な過程にある患者のいずれかから誘導された。感染性因子に対する反応性を有するT細胞は、感染性因子に対する曝露の自然な過程の間、インビトロで感染されたか、またはインビボで感染されたかのいずれかである自己細胞を用いてT細胞のインビトロ刺激によって同様に誘導され得る。腫瘍細胞またはウイルス、真菌、もしくはミコバクテリアのいずれかに感染した細胞または自己免疫疾患の標的抗原に特異的なT細胞もしくは抗体のいずれかに特異的なこれらまたは他の条件下で選択されたCD4+およびCD8+T細胞または抗体は、これらの標的抗原をコードし、そして代表的なcDNAライブラリーに組み込まれたcDNAを検出しそして単離するために、本発明の選択およびスクリーニング方法において使用され得る。
【0462】
腫瘍および感染細胞の多くの抗原に対するインビトロでのヒトT細胞応答の誘導における示された成功にもかかわらず、これらがインビボで誘導され得る応答の完全なレポーターを表すことは確かではない。安全性の考慮は、人々における実験的免疫化の可能性を制限し、ヒト疾患抗原に対する免疫応答を研究するための代替の動物モデルの必要性がある。このようなモデルを開発するための障害は、正常なヒト細胞において発現される多くの分子が他の種において強力な免疫原であることである。従って、任意のヒト疾患特異的抗原に対する免疫応答を明かにするために別の種における正常なヒト抗原に対する寛容を誘導する手段を考え出すことが必要である。ここで、抗原特異的Tリンパ球の活性化が2つのシグナル(1つがT細胞抗原に対する特異的抗原性複合体の提示を含み、そして第2が抗原提示細胞の表面上のB7ファミリーの分子とT細胞膜上のCD28分子との相互作用によって通常媒介される独立した同時刺激因子シグナルである)を必要とする。同時刺激因子シグナルの非存在下での抗原特異的シグナルの送達は、T細胞免疫を誘導しないだけでなく、引き続く刺激に対するT細胞非応答性を生じる(Lenschow,D.J.ら、Ann.Rev.Immunol.14:233−258(1996))。さらなる研究は、抗原提示細胞上のCD40分子とT細胞上のCD40リガンドとの間の相互作用の別の対についての重要な役割を明かにした。この相互作用は、B7同時刺激因子分子の上方制御を生じる(Roy,M.ら、Eur.J.Immunol.25:596−603(1995))。インビボまたはインビトロのいずれかで、抗CD40リガンド抗体の存在下で、CD40との相互作用は、遮断され、B7同時刺激因子は、上方制御されず、そして特異的抗原性複合体での刺激は、T細胞免疫よりもT細胞寛容性を生じる(Bluestone,J.A.ら、Immunol.Rev.165:5−12(1998))。CD40/CD40リガンド相互作用およびB7/CD28相互作用のいずれかまたは両方を遮断するための種々のプロトコルは、移植寛容性を効果的に導入することが示されている(Larsen,C.ら、Nature 381:434−438(1996);Kirk ら、Nature Medicine 5:686−693(1999))。特異的移植抗原に対するマウスT細胞の反応性を遮断する際の抗CD40リガンド抗体(抗CD154)の効果の例は、図17に示される。DBA/2(H−2d)マウスは、107C57Bl/6(H−2b)脾細胞で腹腔内で免疫され、そしてさらに、生理食塩水または0.5mgモノクローナル抗CD40リガンド抗体(MR1、抗CD154、Pharmingen 09021D)のいずれかを用いて注射し、免疫の時および二日後の両方に投与した。免疫の10日後に、これらのマウス由来の脾細胞を取り除き、そしてC57Bl/6またはコントロール同種異系C3H(H−2k)脾細胞(照射された(20Gy)のいずれかでインビトロで刺激した。インビトロ刺激の5日後、C57Bl/6およびC3H特異的細胞溶解性応答が、特異的標識化標的からの51Cr放出アッセイ(この場合、同系の細胞溶解物でパルスされたC3H樹状細胞またはC57Bl/6樹状細胞のいずれか)による種々のエフェクター:標的の比でアッセイされた。図17の結果は、有意な細胞傷害性が生理食塩水と抗CD154処理マウスとの両方でコントロールC3H同種抗原に対して誘導されたが、C57B1/6に対する細胞傷害性応答が生理食塩水処理されたマウスで誘導されたが、抗CD154処理されたマウスでは誘導されなかったことを示す。これは、CD40/CD40リガンド相互作用が抗CD154によって遮断された時点での免疫刺激に使用される抗原に対する特異的な寛容性誘導を示す。
【0463】
抗CD154単独、または抗CD154および抗B7もしくは抗CD28の組み合わせのいずれかを使用する、上記と類似の寛容化プロトコールを使用して、ヒト腫瘍での免疫の前に、マウスにおいて正常なヒト異種抗原に対する寛容を誘導し得る。1つの実施形態において、この正常な抗原は、腫瘍細胞株が由来するのと同じ個体および組織由来の不死化された正常細胞上で発現される。別の実施形態において、正常抗原および腫瘍抗原は、インビボおよびインビトロの両方で、同系マウスT細胞への提示のために、抗原提示細胞上に各々溶解物でパルスした、同じ個体の正常組織および腫瘍組織の細胞溶解物由来である。好ましい実施形態において、腫瘍は、不死化され、接触阻害された、足場依存性の、非腫瘍形成細胞株から、インビトロ変異誘発または癌遺伝子形質転換によって誘導され、その結果、寛容誘導のために、非常によく適合した非腫瘍形成性細胞が利用可能である。
【0464】
寛容化プロトコールに対する別の方法は、腫瘍での免疫の前に、正常な抗原によって活性化されるT細胞を枯渇することである。活性化T細胞は、刺激後24時間〜48時間の間にピーク発現としてCD69およびCD25を一過性に発現する。正常細胞または正常細胞溶解物を用いた活性化後、これらのマーカーを発現するT細胞を、磁気ビーズのようなマトリックスに直接または間接的に結合された抗CD69抗体および抗CD25抗体を用いて枯渇し得る。養子移入後、インビトロまたはインビボのいずれかで腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解物を用いる、残りのT細胞の引き続く免疫によって、優先的に腫瘍特異的応答を生じる。
【0465】
1つの実施形態において、正常ヒト細胞または溶解物に対して寛容化され、引き続いて腫瘍細胞または溶解物で免疫されるべきマウスは、種々の市販されている、近交系、または非近交系のいずれかである。マウスT細胞は、ヒト細胞によっては発現されないマウスMHC分子に会合するペプチド抗原を認識するように拘束されているので、有効な寛容化または刺激には、マウスMHC分子を用いたヒト細胞のトランスフェクション、またはマウスの抗原提示細胞によるヒト正常抗原および腫瘍抗原の再提示のどちらかが必要である。樹状細胞は、クラスIおよびクラスIIの両方のMHC経路において、抗原性ペプチドを再提示する能力のおかげで、抗原提示細胞として特に好ましい(Huangら、Science 264:961〜965(1994);Inabaら、J.Exp.Med.176:1702(1992);Inabaら、J.Exp.Med.178:479〜488(1993))。別の実施形態において、ヒトHLAおよびヒトCD8またはCD4について二重にトランスジェニックであるマウスを使用する。HLA導入遺伝子によって、マウス胸腺においてHLA拘束T細胞レパートリーの高い親和性の選択が可能になる。さらに、ヒトCD8またはCD4導入遺伝子が、必要である。なぜなら、マウスCD8およびCD4は、同属のヒトクラスIまたはクラスII MHC分子と効率的に相互作用しないからである。ヒト腫瘍特異的T細胞を生成するための非トランスジェニックマウスの使用によって、マウスMHC分子と会合してプロセシングされ得る任意のヒト腫瘍抗原の同定がもたらされる。多様なMHC分子を有する複数のマウス系統が利用可能であるので、これは広範な抗原を包含し得る。しかし、これらの腫瘍特異的抗原がまた、ヒトHLAに会合してプロセシングされ、そして提示され得るペプチドを発現するか否かは、自系の抗原提示細胞を用いたヒトT細胞の刺激によって別々に決定されなければならない。このようなペプチドは、マウスMHC分子と会合して最初に検出されたペプチドと重複しても重複しなくてもよいが、同じセットのタンパク質に由来する。HLAトランスジェニックマウスを使用することによって、ヒトMHCに対する抗原性ペプチドの関連性にさらに直接的に取り組むことが可能である。しかし、ペプチドプロセシングが、マウスおよびヒトの抗原提示細胞において同一であることは保証できない。従って、HLA拘束されたヒト腫瘍抗原特異的T細胞が、実際にまた、ヒト腫瘍細胞上で交差反応性であることを確認することが重要である。結局、ヒトHLAに会合した状態でのプロセシングおよび提示の問題にどんなに取り組んでも、どんな場合においても、ヒトT細胞が同定された抗原に反応性であるか否か、またはヒト細胞が、おそらく、いくつかの他の同種でない正常組織における同じもしくは関連の抗原の発現に起因して、寛容性を付与されたか否かが決定されなければならない。この点における関連の情報は、自系の抗原提示細胞によって提示された、同定された抗原または抗原性ペプチドを用いた、ヒトT細胞応答のインビトロ刺激を通じて得られ得る。理想的には、抗原陽性の腫瘍を有する患者では、腫瘍特異的抗原と言われている抗原と反応性のT細胞の頻度が増大していることが示される。誘導された抗原特異的ヒトT細胞が、腫瘍を根絶するのに有効であり得ることを実証するため、選択されたヒトT細胞を、Renner、Cら、Science 264:833〜835(1994)に記載のような、ヒト腫瘍異種移植片を保有するSCIDマウス中に養子移入し得る。しかし、臨床上の関連に関する決定的な証拠は、ヒト臨床試験の結果を待つものである。
【0466】
初代ヒトT細胞応答のインビトロ刺激のための条件は、実施例2に記載されており、そしてCD4+およびCD8+応答の両方に対して適用可能である。ヒト腫瘍に特異的なヒトT細胞または抗体の応答の誘導に関して記載されたストラテジーは、ウイルス、真菌、またはミコバクテリアのいずれかで感染されたヒト細胞の標的抗原に対するT細胞または抗体の応答の誘導に、等しく適用可能である。実際に、この場合、同じ感染していない細胞集団が、寛容誘導のために、そして感染特異性を確認するために、直ちに利用可能な正常コントロール集団を提供する。
【0467】
トランスジェニックマウスの構築は、当該分野で周知であり、そして例えば、Manipulating the Mouse Embroy:A laboratory Manual,Hoganら、Cold Spring Harbor Press,第二版(1994)に記載されている。ヒトCD8トランスジェニックマウスは、LaFaceら、J.Exp.Med.182:1315〜25(1995)の方法によって構築され得る。ヒトCD8αおよびCD8βのサブユニットを発現する、新しい系列のトランスジェニックマウスの構築は、対応するヒトcDNAを、トランスジェニックマウスにおけるT細胞特異的発現のための、ヒトCD2ミニ遺伝子ベースのベクター中に挿入することによってなされ得る(Zhumabekovら、J.Immunol.Methods 185:133〜140(1995))。HLAクラスIトランスジェニックマウスは、Chamberlainら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7690〜7694(1988)、またはBernhardら、J.Exp.Med.168:1157〜1162(1988)、またはVitielloら、J.Exp.Med.173:1007〜1015(1991)、またはBarraら、J.Immunol.150:3681〜3689(1993)の方法によって構築され得る。
【0468】
さらなるHLAクラスIトランスジェニックマウスの構築は、遺伝子調節に以前に関与した最初の2つのイントロンと一緒に2kbの上流調節領域を含むH−2Kbカセットの構築によって達成され得る(Kralovaら、1992、EMBO J.11:4591〜4600)。内因性翻訳開始部位を、この領域から排除し、そしてHLA cDNAの挿入のための制限部位を、第3エキソン、それに続くポリA付加部位に導入する。この構築物の3’末端でゲノムH−2Kb配列のさらなる3kbを含むことにより、このクラスI遺伝子を、胚性幹細胞におけるH−2Kb遺伝子座で相同組み換えのために標的し得る。これは、導入遺伝子が、マウスのクラスI発現と適合性であることが公知の規定された遺伝子座で発現される可能性が高いという利点、およびこれらのマウスが細胞膜でのH−2Kb発現による可能性のある競合について不十分である可能性が高いという利点を有する。これによって同じ構築物に導入された多様なヒトHLAクラスI cDNAの比較的再現可能な発現が生じると考えられる。
【0469】
(実施例7)
(N末端欠失変異体および/またはC末端欠失変異体の構築)
以下の一般的アプローチを用いて、N末端欠失またはC末端欠失のC35欠失変異体をクローニングし得る。一般に、約15〜25ヌクレオチドの2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、配列番号1のポリヌクレオチドの所望の5’位および3’位から誘導する。このプライマーの5’および3’位置を、所望のC35ポリヌクレオチドフラグメントに基づいて決定する。開始コドンおよび終止コドンを、必要な場合、それぞれ5’プライマーおよび3’プライマーに付加して、このポリヌクレオチドフラグメントによってコードされた、C35ポリヌクレオチドフラグメントを発現する。好ましいC35ポリヌクレオチドフラグメントは、本明細書の「ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのフラグメント」の節において上記で開示された候補のMHCクラスIおよびMHCクラスII結合ペプチドをコードするポリヌクレオチドフラグメントである。
【0470】
所望のベクターにおけるC35ポリヌクレオチドフラグメントのクローニングを容易にするために制限部位を含むさらなるヌクレオチドをまた、この5’プライマーおよび3’プライマーの配列に付加し得る。このC35ポリヌクレオチドフラグメントを、本明細書中で考察されるかまたは当該分野で公知の、適切なPCRオリゴヌクレオチドプライマーおよび条件を用いて、ゲノムDNAから、またはcDNAクローンから増幅する。本発明のC35ポリヌクレオチドフラグメントによってコードされるC35ポリペプチドフラグメントは、全長ポリペプチドと同じ一般的様式で発現および精製され得るが、特定のフラグメントと全長ポリペプチドとの間の化学的な特性および物理的な特性における差異に起因して、慣用的な改変が必要であり得る。
【0471】
本発明の例示であって限定ではない手段として、C35ポリペプチドフラグメントをコードするポリヌクレオチドを、以下のように増幅し、クローニングする:5’プライマーを生成し、これは、制限酵素部位、それに続いて、表1〜6のいずれかに挙げられるMHC結合ペプチドエピトープのN末端部分をコードするポリヌクレオチド配列とインフレームで、開始コドンを含む。相補的な3’プライマーを生成し、これは、制限酵素部位、それに続いて、表1〜6のいずれかに挙げられるC35 MHC結合ペプチドエピトープのC末端部分をコードするポリヌクレオチド配列とインフレームで、停止コドンを含む。
【0472】
増幅されたポリヌクレオチドフラグメントおよび発現ベクターを、このプライマー中の部位を認識する制限酵素で消化する。次いで消化されたポリヌクレオチドは一緒に連結される。好ましくは、プロモーターの下流にC35ポリペプチドフラグメントコード領域を配置する様式で、C35ポリヌクレオチドフラグメントを、制限された発現ベクター中に挿入する。このライゲーションミックス(連結混合物)を標準的な手順および本明細書の実施例に記載の手順を用いて、コンピテントなE.coli細胞中に形質転換する。プラスミドDNAを、耐性コロニーから単離し、そしてクローニングしたDNAの同一性を、制限分析、PCR、およびDNA配列決定によって確認する。
【0473】
(実施例8)
(C35のタンパク質融合)
C35ポリペプチドを、好ましくは他のタンパク質に融合する。これらの融合タンパク質を種々の適用に用い得る。例えば、His−タグ、HA−タグ、プロテインA、IgGドメイン、およびマルトース結合タンパク質へのC35ポリペプチドの融合によって精製が容易になる。(実施例5を参照のこと;また、EP A 394,827;Trauneckerら、Nature 331:84〜86(1988)を参照のこと)。同様に、IgG−1、IgG−3およびアルブミンに対する融合によって、インビボでの半減期が延びる。C35ポリペプチドに融合された核局在化シグナルは、このタンパク質を特定の細胞下位置に標的し得るが、共有的異種二量体または同種二量体が、融合タンパク質の活性を増大または減少し得る。融合タンパク質はまた、複数の機能を有するキメラ分子を作製し得る。結局、融合タンパク質は、融合されていないタンパク質に比べて、融合したタンパク質の可溶性および/または安定性を増大し得る。上記のこのタイプの融合タンパク質の全てが、以下のプロトコールを改変することによってなされ得る。以下のプロトコールは、IgG分子へのポリペプチドの融合を概説する。
【0474】
要するに、IgG分子のヒトFc部分は、以下に記載される配列の5’末端および3’末端にまたがるプライマーを用いて、PCR増幅され得る。これらのプライマーはまた、発現ベクター、好ましくは哺乳動物発現ベクター中へのクローニングを容易にする、好都合の制限酵素部位を有するべきである。
【0475】
例えば、pC4(登録番号209646)を用いる場合、ヒトFc部分を、BamHIクローニング部位中に連結し得る。3’BamHI部位は、破壊されるべきであることに注意のこと。次に、ヒトFc部分を含むベクターを、BamHIで再度制限消化し、このベクターを直線化し、そして実施例1に記載のPCRプロトコールによって単離したC35ポリヌクレオチドを、このBamHI部位に連結する。このC35ポリヌクレオチドが、終止コドンなしにクローニングされ、そうでなければ融合タンパク質は精製されないことに注意のこと。
【0476】
天然に存在するシグナル配列が、分泌されたタンパク質を生成するために用いられる場合、pC4は、第二のシグナルペプチドを必要としない。あるいは、天然に存在するシグナル配列が用いられない場合、このベクターは、異種シグナル配列を含むように改変され得る。(例えば、WO96/34891を参照のこと)。
【0477】
【表10】
【0478】
好ましい融合産物は、MHC分子のアミノ末端へのC35ペプチドの融合物であり、この融合は、このペプチドがMHCペプチド結合グルーブ(溝)を天然に占有するような様式である。Kang,Xら、Cancer Res.57:202〜5(1997)は、このような融合タンパク質が、特定のT細胞の刺激に特に有効であるワクチン組成物において使用され得ることを報告している。
【0479】
(実施例9)
(生物学的サンプルにおけるC35の異常なレベルを検出する方法)
C35ポリペプチドは、生物学的サンプルにおいて検出され得る、そしてC35のレベルの上昇および低下が検出される場合、このポリペプチドは、特定の表現型のマーカーである。検出の方法は多いので、当業者は以下のアッセイを改変して、特定のニーズに適合し得ることが理解される。
【0480】
例えば、抗体サンドッチELISAを用いて、サンプル、好ましくは生物学的サンプル中のC35を検出する。マイクロタータープレートのウェルを、C35に対する特定の抗体を、0.2〜10μg/mlの最終濃度で用いてコーティングする。抗体はモノクローナル抗体か、またはポリクローナル抗体のいずれかである。このウェルに対するC35の非特異的結合が低下するように、このウェルをブロックする。
【0481】
次いで、このコートされたウェルを、C35を含有するサンプルとともにRT(室温)で>2時間インキュベートする。好ましくは、このサンプルの階段希釈を用いて、結果を確証(バリデート)すべきである。次いで、このプレートを生理食塩水で3回洗浄して、未結合のC35を除去する。
【0482】
次に、50μlの特異的な、プレート結合抗体によって認識されたものとは重複しない、C35抗原決定基を認識する、抗体−アルカリホスファターゼ結合体を、25〜400ngの濃度で添加し、そして室温で2時間インキュベートする。このプレートを、再度、脱イオン水または蒸留水で3回洗浄して未結合の結合体を除去する。
【0483】
75μlの4−メチルウンベリフェリルホスフェート(MUP)またはp−ニトロフェニルホスフェート(NPP)の基質溶液を、各ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートする。マイクロタイタープレートリーダーによって反応を測定する。コントロールサンプルの階段希釈を用いて標準曲線を作成して、C35ポリペプチド濃度をX軸(対数目盛)上に、そして、Y軸上(均等目盛)上に蛍光または吸光度をプロットする。標準曲線を用いてサンプル中のC35の濃度を補間する。
【0484】
(実施例10)
(ポリペプチドの処方)
C35組成物は、個々の患者の臨床状態(特に、C35ポリペプチド単独を用いた処置の副作用)、送達部位、投与の方法、投与の計画、ならびに開業医に公知の他の因子を考慮に入れて、良好な医療実施基準(good medical practice)と一致した様式において、処方および投薬される。従って、本明細書中での目的のための「有効量」は、このような考慮によって、決定される。
【0485】
一般的な提案として、一用量あたりに非経口的に投与されるC35ポリペプチドの薬学的に有効な総量は、患者の体重の約1μg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲であるが、上記で述べたように、これは治療上の裁量を受ける。より好ましくは、この用量は、少なくとも0.01mg/kg/日であり、そしてヒトに関して最も好ましくは、約0.01mg/kg/日と1mg/kg/日との間である。連続して投与される場合、C35は、代表的に、1日あたり1〜4回の注射によるか、または、例えば、ミニポンプを使用する連続皮下注入のいずれかにより、約1μg/kg/時間〜約50μg/kg/時間の投薬速度で投与される。静脈内バッグ溶液もまた、使用され得る。変化を観察するために必要である処置の長さ、および応答が生じるための処置後の間隔は、所望の効果に依存して変動するようである。
【0486】
C35を含有する薬学的組成物は、経口的に、直腸に、非経口的に、槽内に(intracistemally)、膣内に、腹腔内に、局所的に(粉末、軟膏、ゲル、ドロップまたは経皮性パッチによるように)、頬側に(bucally)、または経口スプレーもしくは鼻内スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液状充填剤、希釈剤、カプセル化材料または任意の型の処方補助物を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「非経口的(な)」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内(intrasternal)、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0487】
C35はまた、持続放出系によって適切に投与される。持続放出性の組成物の適切な例としては、成形品の形態(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)の半透性のポリマーマトリクスが挙げられる。持続放出マトリクスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとの共重合体(Sidman,Dら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(R.Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981)およびR.Langer,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(R.Langerら)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が挙げられる。持続放出性組成物また、リポソームに封入された(liposomally entrapped)C35ポリペプチドを含む。C35を含むリポソームは、それ自体、公知の方法により調製される:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030−4034(1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本国特許出願83−118008;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;およびEP 102,324。通常、リポソームは、脂質含有量が約30molパーセントコレステロールより多い小さな(約200〜800Å)単層型であり、選択された割合は、最適な分泌ポリペプチド療法について調整される。
【0488】
非経口的な投与に関して、1つの実施形態において、C35は、一般に、薬学的に受容可能なキャリア(すなわち、使用される投薬量および濃度でレシピエントに非毒性であり、そしてこの処方の他の成分と適合性であるもの)と共に単位投薬量注入可能形態(溶液、懸濁液または乳濁液)において、所望の程度の純度でそれらをそれぞれ混合することによって処方される。例えば、処方物は、好ましくは、酸化剤およびポリペプチドに対して有害であることが公知である他の化合物を含まない。
【0489】
一般に、処方物は、C35を、液体キャリアもしくは細かく粉砕した固体キャリアまたは両方と、均一およびじかに接触させることにより調製される。次いで、必要である場合、産物は、所望の処方物へと成形される。好ましくは、このキャリアは、非経口的なキャリアであり、より好ましくは、レシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液が挙げられる。非水溶性ビヒクル(例えば、不揮発性油およびオレイン酸エチル)はまた、リポソームと同様に、本明細書中で有用である。
【0490】
キャリアは、微量の添加物(例えば、等張性および化学的安定性を増強する物質)を適宜含む。このような物質は、使用される投薬量および濃度において、レシピエントに非毒性であり、そして緩衝剤(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩類);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);低分子量(約10残基よりも小さい)のポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖、二糖、および他の糖質(セルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポロキサマー(poloxamers)、またはPEG)を含む。
【0491】
C35は、このようなビヒクル中で、約3〜8のpHで、代表的に、約0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度、好ましくは1〜10mg/mlの濃度で処方される。上記の賦形剤、キャリア、または安定化剤の特定のものの使用は、ポリペプチド塩の形成をもたらすことが理解される。
【0492】
治療的な投与のために使用されるC35は、無菌であり得る。無菌性は、滅菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)による濾過により容易に達成される。治療ポリペプチド組成物は、一般に、無菌(滅菌)アクセスポートを有する容器(例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する点滴溶液バッグまたはバイアル)に配置される。
【0493】
C35ポリペプチドは、通常、単位用量容器または多用量容器(例えば、密封アンプルまたは密封バイアル)中に水溶液としてか、または再構成のための凍結乾燥した処方物として保存される。凍結乾燥した処方物の例として、10mlバイアルを、5mlの滅菌濾過した1%(w/v)水性C35ポリペプチド溶液で満たし、そして得られる混合物を凍結乾燥する。その注入溶液は、静菌注射用水を使用して、凍結乾燥したC35ポリペプチドを再構成することにより調製される。
【0494】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で満たされた1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制している政府機関により規定される形式における通告が、このような容器に伴い得る。この通告は、ヒトの投与のための製造、使用または販売の、この機関による認可を反映する。さらに、C35は、他の治療的化合物とともに使用され得る。
【0495】
本発明を、前述の説明および実施例に詳細に記載された以外の方法で実施し得ることは、明らかである。本発明の多数の改変およびバリエーションが、上記の教示を考慮して可能であり、従って、それは、添付の特許請求の範囲の範囲内にあり、本発明は、特に記載された以外の方法で実施され得る。
【0496】
発明の背景、詳細な説明、実施例、および配列表において引用された各文書の全開示(特許、特許出願、学術文献、要約、実験マニュアル、書籍または他の開示を含む)は、本明細書中に参考として援用される。
【0497】
本発明を、前述の説明および実施例に詳細に記載された以外の方法で実施し得ることは、明らかである。本発明の多数の改変およびバリエーションが、上記の教示を考慮して可能であり、従って、それは、添付の特許請求の範囲の範囲内にあり、本発明は、特に記載された以外の方法で実施され得る。
【0498】
発明の背景、詳細な説明、実施例、および配列表において引用された各文書の全開示(特許、特許出願、学術文献、要約、実験マニュアル、書籍または他の開示を含む)は、本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
(パネルA〜B)。パネルAは、C35のDNAコード配列(配列番号1)を示す。推定ATG開始コドンの直ぐ上流の配列を小文字で示し、そしてこれは、Kozak,M.,J.Biol.Chem.266(30):19867〜19870(1991)によって記載される、予期される特徴に一致する。パネルBは、C35の推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図2A】
パネルA:C35は、乳癌細胞株において過剰発現される。上部パネル:3週齢のヒト胸腺、患者21由来の正常乳房上皮細胞株H16N2、および同じ患者21由来の1年離れた原発性小節または転移性小節から誘導された4つの乳癌細胞株(21NT、21PT、21MT1および21MT2)由来の300ngのポリA−RNAを、1%アガロース/ホルムアルデヒドゲルで分離し、そしてGeneScreen膜に転写した。このブロットを32P標識C35プローブでハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションを、15時間フィルムにブロットを曝露することによって検出した。下部パネル:RNA充填量を定量するために、同じブロットをストリッピングし、そしてグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)についての32P標識プローブで再ハイブリダイズした。それぞれのサンプルについて、C35シグナルをGAPDHシグナルで標準化した。数値は、それぞれのサンプルにおいてH16N2と比較した、C35の発現の倍数を示す。
【図2B】
パネルB:C35は、正常細胞において低いレベルで発現される。それぞれの示された成体正常組織由来の1μgのポリA−RNAを含むブロット(Clontech)を、32P標識C35プローブでハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションを、15時間(上部パネル)または96時間(下部パネル)フィルムにブロットを曝露することによって検出した。
【図2C】
パネルC。C35は、原発性乳癌において過剰発現される。3つの原性浸潤乳管癌腫(ductal mammary carcinoma)、T1、T2、T3および1つの正常乳房上皮、N由来の2μgのポリA RNAを含むブロット(Invitrogen)を、32P標識C35プローブでハイブリダイズした。充填量を標準化するために、32P標識β−アクチンプローブをハイブリダイゼーションミックス中に含めた。ハイブリダイゼーションを、6時間フィルムにブロットを曝露することによって検出した。数値は、それぞれのサンプルにおいて正常乳房上皮と比較した、C35の発現の倍数を示す。
【図3】
乳癌細胞株におけるC35の発現。C35は、異なる乳癌細胞株において、過剰発現される。上部パネル:BT474(ATCC HYB−20、乳管癌腫)、SKBR3(ATCC HTB−30、乳房腺癌)、T47D(ATCC HTB−133、乳管癌腫)、患者21由来の正常乳房上皮細胞株H16N2、および同じ患者21由来の原発性腫瘍小節由来の21−NT乳癌細胞株由来の、300ngのポリA RNAを、1%アガロース/ホルムアルデヒドゲルで分離し、そしてGeneScreen膜に転写した。このブロットを32P標識C35プローブでハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションを、15時間フィルムにブロットを曝露することによって検出した。下部パネル:RNA充填量を定量するために、同じブロットをストリッピングし、そしてβ−アクチンについての32P標識プローブで再ハイブリダイズした。それぞれのサンプルについて、C35シグナルをアクチンシグナルで標準化した。数値は、それぞれのサンプルにおいてH16N2と比較した、C35の発現の倍数を示す。
【図4】
(パネルA〜C):フローサイトメトリーによって検出したC35タンパク質の表面発現。1×105乳癌細胞を、ヒトC35をコードするレトロウイルスで形質転換された系統1マウス腫瘍細胞に対してBALB/cマウスにおいて惹起された3.5μlの抗血清またはコントロール(採血前BALB/c血清)を用いて染色した。30分間のインキュベーションの後、細胞を2回、染色緩衝液(PAB)を用いて洗浄し、そしてFITC−ヤギ抗マウスIgG(1μg/サンプル)を用いて30分間インキュベートした。サンプルを洗浄し、そしてEPICS Eliteフローサイトメーターで分析した。パネルA:21NT。パネルB:SKBR3。パネルC:MDA−MB−231。これらの3つの乳癌株を選択して、高い、中間、そして低いレベルのC35 RNAを発現する腫瘍細胞を、ノーザンブロットにおいて示した(図3を参照のこと)。省略:nms、ns;正常マウス血清;C35;C35免疫血清。
【図5A】
(パネルAおよびB)。CML選択された組換えワクシニアcDNAクローンは、腫瘍特異的CTLを刺激する。パネルA:CML選択されたワクシニアクローンを、B/C.Nの感染後にその能力についてアッセイし、腫瘍特異的CTLがインターフェロンγを分泌することを刺激した。サイトカインの量をELISAによって測定し、そしてOD490として示す(14)。1.4のOD490は、4ng/mlのIFNgとおよそ等しく、そして0.65のOD490は、1ng/mlのIFNgとおよそ等しい。
【図5B】
(パネルAおよびB)。CML選択された組換えワクシニアcDNAクローンは、腫瘍特異的CTLを刺激する。パネルB:CML選択されたクローンを、宿主細胞に感作して、腫瘍特異的CTLによって溶解させた。6ウェルプレートのウェル中のB/C.Nの単層を、moi=1の示されたワクシニアウイルスクローンで感染させた。感染の14時間後、感染した細胞を、51Crで標識した示したコントロールと共に収集した。標的細胞を、腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ細胞の示した割合で、4時間37℃でインキュベートし、そして特異的溶解の割合を決定した(15)。この実験を少なくとも3回繰り返し、同様の結果を伴なった。
【図6】
(パネルAおよびB)。腫瘍抗原は、リボソームタンパク質L3遺伝子によってコードされる。45位〜56位のアミノ酸由来のH2.16およびrpL3の配列。パネルA:cDNAクローンrpL3のアミノ酸(1文字コード)およびヌクレオチド配列(GenBank登録番号Y00225)。パネルB:H2.16腫瘍cDNAのC170Tでの単一ヌクレオチド置換は、公開されたL3リボソーム対立遺伝子と比較して単に配列の変化である。この置換は、タンパク質におけるT54Iアミノ酸置換を生じる。
【図7A】
(パネルAおよびB)。腫瘍特異的CTLによって認識されるペプチドエピトープの同定。パネルA:腫瘍特異的CTLによって認識されるペプチドを同定するためのCMLアッセイ。標的細胞を51Crで標識した(15)。51Crインキュベーションの間、B/C.N細胞のサンプルを1μMのペプチドL348〜56(I54)、100μMのL348〜56(T54)または100μMのペプチドL345〜54(I54)とインキュベートした。標的細胞を腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球の示した割合で、4時間37℃でインキュベートし、そして特異的な溶解の割合を決定した。この実験を少なくとも3回繰り返し、類似の結果を伴なった。
【図7B】
(パネルAおよびB)。腫瘍特異的CTLによって認識されるペプチドエピトープの同定。パネルB:ペプチドL348〜56(I54)の滴定。標的細胞を、51Crで標識した。51Crインキュベーションの間に、B/C.N細胞のサンプルを、ペプチドを加えないか(D)、または示した濃度(1μM、10nM、1nM)のL348〜56(I54)(黒四角)を加えてかのいずれかでインキュベートし、BCA39細胞を陽性コントロールとして含んだ(黒三角)。標的細胞を、腫瘍特異的細胞傷害性リンパ球の示した割合で、4時間37℃でインキュベートし、そして特異的な溶解の割合を決定した。この実験を2回繰り返し、同様の結果を伴なった。
【図8A】
(パネルA〜C)。それぞれの細胞株によって発現されるL3の分析を示す。パネルA:公開されたrpL3およびH2.16のSau3AI地図。上に示すのは、公開されたリボソームタンパク質L3遺伝子(頂部)、およびH2.16(下部)についてのSau3AI制限地図である。公開されたL3配列についてのcDNA消化は、200、355、348、289および84bpのフラグメントを産生する。H2.16についてのパターンは、C170Tによって引き起こされる168位での超過のSauAi部位以外は、同一である。これは、200bpフラグメントの代わりに、168bp消化産物を生じる。
【図8B】
(パネルA〜C)。それぞれの細胞株によって発現されるL3の分析を示す。パネルB:BCA腫瘍は両方のL3対立遺伝子を発現する。それぞれの細胞株またはvH2.16から産生したRT−PCR産物を、L3特異的プライマーを使用して生成し、次いでSau3AIで消化し、そして3%アガロースゲルに、2時間80ボルトで分離した。
【図8C】
(パネルA〜C)。それぞれの細胞株によって発現されるL3の分析を示す。パネルC:免疫原性L3対立遺伝子は、B/C.N、BCB13および胸腺において大きく減少したレベルで発現した。それぞれ同定されたサンプル由来のL3特異的RT−PCR産物を、32P末端標識5プライムPCRプライマーを使用して生成した。それぞれのサンプルについてのRNAがcDNAの合成無しにPCRの鋳型として使用される場合、PCR産物は、観察されず、これはゲノムDNAで夾雑されたサンプルがないことを示す。このPCR産物を、ゲル精製して純度を確実にし、Sau3AIで消化し、そして3%アガロースゲルで15時間60ボルトで分離した。鋳型を添加しないコントールPCRサンプルにおいて、PCR産物は観察されなかった。この結果を合計3回再現した。
【図9A】
図9Aは、iL3での免疫が免疫防御的であることを示す。パネルA:H2.16での免疫は、腫瘍特異的CTLを誘導する。Balb/cマウス(2匹/群)を5×106pfuのvH2.16またはコントロールベクターv7.5/tkでの皮下注射により免疫した。7日間後に、脾細胞を採取し、そしてペプチドL348−56(I54)で再刺激した(26)。2回目に再刺激して5日間後に、図11に記載のように、リンパ球をクロム放出アッセイにおいて試験した。L348−56(I54)ペプチドを1μM濃度で用い、そしてL348−56(T54)ペプチドを100μM濃度で用いた。免疫実験を繰り返すと、同様の結果が観察された。
【図9B】
図9Bは、iL3での免疫が免疫防御的であることを示す。パネルB:雌性Balb/cByJマウスを示されたように免疫した(27)。このマウスを、200,000の生存可能なBCA34腫瘍細胞を腹壁にSC注射することによりチャレンジした。データは、チャレンジして35日後のものである。これらのデータは、4回の独立した実験の代表である。
【図9C】
図9Cは、iL3での免疫が免疫防御的であることを示す。パネルC:雌性Balb/cvByJマウスを示されたように免疫した(27)。このマウスを、200,000の生存可能なBCA34腫瘍細胞を腹壁にSC注射することによりチャレンジした。データは、チャレンジして35日後のものである。これらのデータは、4回の独立した実験の代表値である。
【図10A】
図10Aは、翻訳を伴ったC35コード配列である;5’および3’非翻訳領域を小文字で示す。3’末端における推定プレニル化部位(CVIL)をボックスで囲む。
【図10B】
図10Bは、第17染色体上のC35遺伝子のゲノムアラインメントである。
【図11A】
図11(パネルAおよびB)は、乳房癌腫におけるC35発現である。C35をランダムプライミング反応で32Pを用いて標識し、106cpm/mlでノーザンブロットにハイブリダイズさせた。各ブロットを細片にし、GAPDHまたはβ−アクチンで再プローブして、mRNAの量(load)を正規化した。数字は、GAPDH/β−アクチンに対して正規化したデンシトメトリー比を示す。値1を、正常細胞株H16N2に割り当て、全ての値は正常細胞株における発現のレベルとの相対である。パネルA:乳房上皮細胞株におけるC35発現である。
【図11B】
図11(パネルAおよびB)は、乳房癌腫におけるC35発現である。C35をランダムプライミング反応で32Pを用いて標識し、106cpm/mlでノーザンブロットにハイブリダイズさせた。各ブロットを細片にし、GAPDHまたはβ−アクチンで再プローブして、mRNAの量(load)を正規化した。数字は、GAPDH/β−アクチンに対して正規化したデンシトメトリー比を示す。値1を、正常細胞株H16N2に割り当て、全ての値は正常細胞株における発現のレベルとの相対である。パネルB:原発性乳房組織/腫瘍におけるC35発現である。300ngのmRNAを0.8%アルカリ性アガロースゲル上で電気泳動し、次いで、Genescreen Plusにブロットした(Bの最も左のパネルに、3つの原発性腫瘍および1つの正常組織コントロール(Real Tumor Blots,Invitrogen)に由来する1μg mRNAをロードしたことを除く)。同様の曝露を、全てのブロットについて示す。
【図12】
図12は、膀胱癌腫におけるC35発現である。C35をランダムプライミング反応で32Pを用いて標識し、106cpm/mlで腫瘍および正常RNAのノーザンブロットにハイブリダイズさせた。このブロットを細片にし、β−アクチンで再プローブして、mRNAの量を正規化した。数字は、β−アクチンに対して正規化したデンシトメトリー比を示す。値は、正常膀胱サンプルにおける発現のレベルとの相対である。300ngのmRNAを、0.8%アルカリ性アガロースゲル上で電気泳動し、次いで、Genescreen Plusにブロットした。
【図13A】
図13A(パネルAおよびB)は、抗C35抗体を用いたFACS分析である。パネルA:乳房細胞株を、C35組換えレトロウイルスに感染させたLine1細胞で免疫したマウスに由来する血清(上部パネル)、および2C3精製モノクローナル抗体またはアイソタイプコントロール(下部パネル)で染色した。
【図13B】
図13B(パネルAおよびB)は、抗C35抗体を用いたFACS分析である。パネルB:膀胱細胞株を2C3精製モノクローナル抗体またはアイソタイプコントロールで染色した。
【図14】
図14は、2C3抗体の存在下での腫瘍増殖の阻害を示す。21NT乳房腫瘍細胞またはH16N2正常乳房上皮細胞を、示された濃度の2C3抗C35モノクローナル抗体または非特異的アイソタイプコントロール抗体とともにインキュベートした。細胞増殖を、抗体の存在下および非存在下で72時間インキュベートした後に、XTTアッセイにより測定した。
【図15】
図15(パネルAおよびB)は、C35発現樹状細胞で刺激したCTLが、C35+乳房腫瘍細胞株(21NT)および膀胱腫瘍細胞株(ppT11A3)を特異的に溶解し、正常乳房(MBC)、不死化した非腫瘍形成性乳房細胞株(H16N2)および膀胱細胞株(SV−HUC)またはNK感受性細胞株(K562)に対しては、最小の活性であることを示す。パネルA:T細胞株4を正常ヒトPBLから生成した。パネルB:T細胞クローン10G3を、C35特異的活性について株4から選択した。標的細胞株MEC、ppT11A3およびSV−HUCは、天然にHLA−A2陽性である。標的細胞株21NTおよびH16N2を、HLA−A2でトランスフェクト(transect)し、必要なMHC拘束エレメントを提供した。
【図16A】
図16(パネルAおよびB)は、標的での刺激に際するT細胞クローン10G3からのサイトカイン放出を示す。パネルA:IFN−γ分泌。乳房および膀胱標的細胞株を、HLA−A2およびC35腫瘍抗原、C35のアミノ末端の50アミノ酸フラグメント(C35−50aa)または無関係のマウスL3リボソームタンパク質の発現の存在および非存在により区別した。各マーカーは、内因的に発現されたか、またはHLA−A2.1構築物(pSV2.A2)、もしくはC35(vv.C35、vv.C35−50aa)、L3(vv.L3)もしくはHLA−A2(vv.A2)の組換えワクシニアの感染により導入されたかのいずれかであった。
【図16B】
図16(パネルAおよびB)は、標的での刺激に対するT細胞クローン10G3からのサイトカイン放出を示す。パネルB:TNF−α分泌。乳房および膀胱標的細胞株を、HLA−A2およびC35腫瘍抗原、C35のアミノ末端の50アミノ酸フラグメント(C35−50aa)または無関係のマウスL3リボソームタンパク質の発現の存在および非存在により区別した。各マーカーは、内因的に発現されたか、またはHLA−A2.1構築物(pSV2.A2)、もしくはC35(vv.C35、vv.C35−50aa)、L3(vv.L3)もしくはHLA−A2(vv.A2)の組換えワクシニアの感染により導入されたかのいずれかであった。
【図17】
図17は、抗原および抗CD40リガンド抗体の存在下で誘導されたアロ抗原に対する寛容を示す。
Claims (37)
- 単離された核酸分子であって、以下:
(a)配列番号1のポリヌクレオチドフラグメント;
(b)配列番号2のポリペプチドフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(c)配列番号2のポリペプチドドメインをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号2のポリペプチドエピトープをコードする、ポリヌクレオチド;
(e)生物学的活性を有する、配列番号2のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)配列番号1の改変体であるポリヌクレオチド;
(g)配列番号1の対立遺伝子改変体であるポリヌクレオチド;
(h)配列番号2の種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(i)(a)〜(h)において特定されるポリヌクレオチドのいずれか1つにストリンジェント条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであって、ここで、該ポリヌクレオチドは、A残基のみまたはT残基のみのヌクレオチド配列を有する核酸分子に、ストリンジェント条件下でハイブリダイズしない、ポリヌクレオチド、
からなる群より選択される配列に少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。 - 前記ポリヌクレオチドフラグメントが、成熟形態または分泌タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドフラグメントが、配列番号2として同定される配列をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドフラグメントが、配列番号1の全体のヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 前記ヌクレオチド配列が、C末端もしくはN末端のいずれかまたは両方からの連続するヌクレオチド欠失を含む、請求項2に記載の単離された核酸分子。
- 前記ヌクレオチド配列が、C末端もしくはN末端のいずれかまたは両方からの連続するヌクレオチド欠失を含む、請求項3に記載の単離された核酸分子。
- 請求項1に記載の単離された核酸分子を含む、組換えベクター。
- 請求項1に記載の単離された核酸分子を含む組換え宿主細胞を、作製する方法。
- 請求項8に記載の方法によって産生される、組換え宿主細胞。
- ベクター配列を含む、請求項9に記載の組換え宿主細胞。
- 単離されたポリペプチドであって、以下:
(a)配列番号2のポリペプチドフラグメント;
(b)生物学的活性を有する、配列番号2のポリペプチドフラグメント;
(c)配列番号2のポリペプチドドメイン;
(d)配列番号2のポリペプチドエピトープ;
(e)分泌タンパク質の成熟形態;
(f)全長分泌タンパク質;
(g)配列番号2の改変体;
(h)配列番号2の対立遺伝子改変体;または
(i)配列番号2の種相同体、
からなる群より選択される配列に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。 - 前記成熟形態または前記全長分泌タンパク質が、C末端もしくはN末端のいずれかまたは両方からの連続するアミノ酸欠失を含む、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
- 請求項11に記載の単離されたポリペプチドに特異的に結合する、単離された抗体。
- 請求項11に記載の単離されたポリペプチドを発現する、組換え宿主細胞。
- 単離されたポリペプチドを作製する方法であって、
(a)該ポリペプチドが発現されるような条件下で、請求項14に記載の組換え宿主細胞を培養する工程;および
(b)該ポリペプチドを回収する工程、
を包含する、方法。 - 請求項15に記載の方法によって産生される、ポリペプチド。
- 医学的状態を予防、処置、または緩和する方法であって、治療有効量の、請求項11に記載のポリペプチドまたは請求項1に記載のポリヌクレオチドまたは請求項13に記載の抗体を、哺乳動物被験体に投与する工程を包含する、方法。
- 被験体において、分泌タンパク質の発現または活性に関する病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、
(a)請求項1に記載のポリヌクレオチドにおいて変異の存在または非存在を決定する工程;および
(b)該変異の存在または非存在に基づいて病理学的状態、または病理学的状態に対する感受性を診断する工程、
を包含する、方法。 - 被験体において、分泌タンパク質の発現または活性に関する病理学的状態または病理学的状態に対する感受性を診断する方法であって、
(a)生物学的サンプルにおいて請求項11に記載のポリペプチドの発現の存在または量を決定する工程、および
(b)該ポリペプチドの発現の存在または量に基づいて病理学的状態、または病理学的状態に対する感受性を診断する工程、
を包含する、方法。 - 請求項11に記載のポリペプチドに対する結合パートナーを同定する方法であって、
(a)請求項11に記載のポリペプチドを結合パートナーと接触させる工程;および
(b)該結合パートナーが該ポリペプチドの活性をもたらすかどうかを決定する工程、
を包含する、方法。 - 配列番号1のcDNA配列に対応する、遺伝子。
- 生物学的アッセイにおいて活性を同定する方法であって、ここで該方法が、以下:
(a)細胞において配列番号1を発現させる工程;
(b)その上清を単離する工程;
(c)生物学的アッセイにおいて活性を検出する工程;および
(d)該活性を有する該上清においてタンパク質を同定する工程、
を包含する、方法。 - 請求項22に記載の方法によって産生される、産物。
- 単離された核酸分子であって、以下:
(a)配列番号1のポリヌクレオチドフラグメント;
(b)配列番号2のポリペプチドフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(c)配列番号2のポリペプチドドメインをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号2のポリペプチドエピトープをコードする、ポリヌクレオチド;
(e)生物学的活性を有する、配列番号2のポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)配列番号2の改変体であるポリヌクレオチド;
(g)配列番号1の対立遺伝子改変体であるポリヌクレオチド;
(h)配列番号2の種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(i)(a)〜(h)において特定されるポリヌクレオチドのいずれか1つにストリンジェント条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであって、ここで、該ポリヌクレオチドは、A残基のみまたはT残基のみのヌクレオチド配列を有する核酸分子に、ストリンジェント条件下でハイブリダイズしない、ポリヌクレオチド、
からなる群より選択される配列に少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。 - 単離されたポリペプチドであって、以下:
(a)配列番号2のポリヌクレオチドフラグメント;
(b)生物学的活性を有する、配列番号2のポリペプチドフラグメント;
(c)配列番号2のポリペプチドドメイン;
(d)配列番号2のポリペプチドエピトープ;
(e)配列番号2のポリペプチドの分泌形態の成熟形態;
(f)配列番号2の全長の分泌形態;
(g)配列番号2の改変体;
(h)配列番号2の対立遺伝子改変体;または
(i)配列番号2の種相同体、
からなる群より選択される配列に少なくとも95%同一のアミノ酸を含む、単離されたポリペプチド。 - 個体における腫瘍診断のための方法であって、該方法は、該個体の細胞または体液中のC35タンパク質をコードする該遺伝子の発現レベルをアッセイする工程、および該遺伝子発現レベルと標準的なC35遺伝子発現レベルとを比較する工程であって、これにより、該標準と比べた該遺伝子発現レベルにおける増加が悪性腫瘍を示す、工程を包含する、方法。
- 前記腫瘍がヒト乳癌である、請求項26に記載の方法。
- 薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、請求項11に記載の単離されたポリペプチドを包含する、薬学的組成物。
- さらにアジュバントを包含する、請求項28に記載の薬学的組成物。
- 宿主における免疫応答を生成するための方法であって、該宿主に請求項28または請求項29に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
- 前記宿主がヒトである、請求項30に記載の方法。
- 宿主における特異的抗体および/またはT細胞を生成するための方法であって、該方法は、特異的抗体および/またはT細胞の生成を刺激するために、該宿主細胞に十分な量のウイルスベクターを導入する工程であって、ここで、該ウイルスベクターが、該宿主において発現し得るプロモーターに作動可能に連結されるC35抗原をコードするポリヌクレオチドを含む、工程を包含する、方法。
- 前記宿主がヒトである、請求項32に記載の方法。
- 前記抗体および/T細胞がヒト癌に対して特異的である、請求項33に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターがワクシニアウイルスである、請求項32に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターが生きている、請求項32に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターが弱毒化されている、請求項32に記載の方法。
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