JP2004501347A - 混合物の分析方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スペクトルの特徴の変化に基づいて混合物の変化を検出し定量する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
発光分光や反射分光を行って、状態特有のスペクトル線を参照基準と比較して分析するという方法により、混合物を分析できることが知られている。この方法は、熱的及び/又は電気的な励起を用いた発光分光法や、レーザ誘導プラズマ励起、又は一般的には光誘導プラズマ励起、を用いた発光分光法に適用できる。更にこの方法は、電磁波の全範囲における吸光光度法、反射分光法及び適切な伝達物質を用いた透過光分光法にも適用できる。このような分光測光法における問題点は、濃度変化や配座変化による非常に小さなスペクトルの特徴の変化を非常に大きなバックグラウンド信号の中で検出する必要があること、及び周囲の環境の影響によってスペクトルのバックグラウンド信号が大きく変化してしまうことである。このような例としては、濃度比が時間的に変化、又は状態に依存して変化する複雑な混合物の場合が挙げられる。これは、高濃度の基質又はバックグラウンド成分の存在下で、1つ以上の低濃度の鉛成分を検出する際などに良く見られる例である。検出すべき鉛成分の変化が、多成分から成る混合物や相当なバックグラウンド信号の統計的又は系統的ゆらぎと同程度又はそれ以下である場合には、高分解能の分光法を用いることは困難である。これは、実際の検出器ではスペクトルの帯域幅が狭く設定されているので、雑音信号比が高くなるからである。したがって、これまで、小さな相対濃度変化の検出に分光測光法を応用することはできなかった。
【0003】
したがって、本発明の目的は、シングルチャネル又はマルチチャネルの高分解能分光システムにおける上述の問題点を解決すると共に、選択性を維持したまま感度を向上させることが可能な方法を提案することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
フーリエ変換分光法をいわゆる化学分析法と組合せて用いることによって、又は、マルチチャネルスペクトルに対して多成分交差分析を行うことによって、高い妨害レベル下であっても、物質及び濃度の小さな変化を検出する感度が従来の吸光光度計に比して著しく向上することが知られている(例えば、米国特許5,857,462号を参照)。しかしながら、妨害バックグラウンドの信号強度、及びこれに伴うスペクトル強度の統計的及び系統的ゆらぎによって検出器の動作が影響を受ける場合には、一般に、これらの多重分光法を用いることができない。いわゆるジラード格子やアダマール変換を利用するなど他の方法を採っても、このような問題に対して満足できる結果は得られていない。
【0005】
最近では、スペクトル信号の広帯域検出に特に注目が集まっている(例えば、エル・エー・ソディクソン氏による「分光測定による多変量分析の進展」(モレキュラー・スペクトロスコピー誌、1997年12(7)号13〜21ページ)を参照)。検出器の帯域を狭めることを止めた結果、検出器の光強度レベルが高くなったため、信号雑音比が改良されている。濃度変化の検出精度が検出器のスペクトルフィルタとスペクトル感度とに大きく依存することは良く知られている。しかしながら、最適なフィルタリングパターンを決定する方法は知られていない。したがって、フィルタリングパターンを主観的に選択したり、フィルタリングパターンをパラメータ化して高度な最適化アルゴリズムを用いて決定している。その際、例えば図9に示したように滑らかな、すなわち徐々に増減するようなフィルタリングパターンが選択される。
【0006】
分光分析法における本発明に係る改良点は、連続スペクトルの代わりに、スペクトル上で制限した1つ又は複数のバンドパス応答信号を検出して、適切なアルゴリズムでこれらを組合せることにある。これが、不均質な気体、液体又は固体状の混合物における小さな濃度変化を検出する方法に関する本発明の請求範囲を構成している。本発明に係る方法では、複数の重なり得るスペクトルウィンドウを用いた検出において、濃度変化によって決まる吸光又は発光特性の個々のスペクトルウィンドウでの割合を適切な推定法によって検出し分析するためにアルゴリズムを利用できることを前提としている。
【0007】
物質濃度の変化と、発光、反射光又は透過光の信号のスペクトルパワーの変化との間に近似的な線形関係がある場合には、設定される最適なフィルタリング関数は常に2値的である。即ち、各バンドパススペクトル域に対して夫々設定される最適な検出器のフィルタリング関数は、常に1又は0である。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1の
【0009】
【数1】
【0010】
は混合物からの発光、反射光又は透過光のスペクトルパワーを示す。他の条件(放射パワー、装置構成等)が与えられると、これはN種類の物質の濃度C1,C2,…,CNと波長λとにのみ依存する。各濃度は、下式のようにいわゆる濃度ベクトルとして表現できる。
【0011】
【数2】
【0012】
スペクトルパワーが波長に対して不連続である場合には、スペクトルパワーを表現するベクトルは下式に従って与えられる。
【0013】
【数3】
【0014】
少なくとも濃度変化が充分に小さいとき、スペクトルパワーの濃度依存性は下式のようにテイラー展開によって好適に近似できる。
【0015】
【数4】
【0016】
したがって、濃度変化の関数であるスペクトルパワー変化は、以下に示す簡単な行列等式で表現できる。
【0017】
【数5】
【0018】
スペクトル応答0≦R(λ)≦1を有する光検出器を用いてスペクトルパワー
【0019】
【数6】
【0020】
を検出する場合には、このスペクトルパワーから得られる信号は下式で表される。
【0021】
【数7】
【0022】
ここで、スペクトル応答R(λ)は、波長に対して不連続にして下式のベクトルで表現できる。
【0023】
【数8】
【0024】
D個の検出器(D>1)を考える場合には、それらの信号を組合せた共通の信号ベクトル
【0025】
【数9】
【0026】
として表現できる。なお、この信号ベクトルのd番目の要素は、d番目の検出器の信号Sdに対応する。このとき、信号ベクトルと濃度ベクトルとの間の関数相関が下式で与えられる。
【0027】
【数10】
【0028】
ここで、d番目の行はd番目の検出器のスペクトル応答を表しており、要素Rdlはd番目の検出器の、波長λlにおける応答を表している。濃度ベクトルの変化は、下式に従って信号ベクトルを変化させる。
【0029】
【数11】
【0030】
これは、数学的には、次の行列で表現される、N次元濃度ベクトル変化からD次元信号ベクトル変化への写像と見なすことができる。
【0031】
【数12】
【0032】
本発明では、適切な数学的手法を用いて、信号ベクトル変化からこの変化の原因である濃度変化を求める。実際に得られる精度は応答行列R、すなわちD個の検出器のスペクトル応答に依存する。濃度ベクトルの変化は濃度空間におけるN次元占有体積として表現され、これによる信号ベクトルの変化はD次元信号ベクトル空間におけるN次元占有体積として表現される。したがって、濃度空間占有体積に対する信号空間占有体積の比を最大化することによって最適化条件が得られる。これは、数学的には、下式で表されるように写像を与える行列M=R・Eのグラム行列式の値を最大化することと同じである。
【0033】
【数13】
【0034】
簡単のために、検出器の個数を濃度変数の個数に等しく(D=N)設定すれば、行列Mは正方行列となり次の関係が得られる。
【0035】
【数14】
【0036】
したがって、グラム行列式を最大化することは、行列Mの行列式を最大化(又は最小化)することに帰着する。これにより最適応答行列Rの2値性が結論できる。つまり、この行列の全ての関連要素、すなわち最適化条件に影響を与える全ての要素は、常に1又は0となる。簡単のために、行列Rの非関連要素は常に0に設定して良い。
【0037】
2値性を与えるために、最適応答行列Roptが既に得られていると仮定する。定義により、この最適応答行列は行列M=R・Eの行列式を最大化するので、行列Rの偏微分は全ての要素に関してゼロとなる。行列Mの行列式は、行列Rの列ベクトルと行列Eの行ベクトルとを用いて下式で与えられる。
【0038】
【数15】
【0039】
ここで、総和は数1からNまでの全ての置換πに関して行う。
【0040】
任意の検出器dのスペクトル応答に対する行列式の依存性から、次の関係が得られる。
【0041】
【数16】
【0042】
ここでベクトルVdは、システム行列Eと、その他の全ての検出器のスペクトル感度とを用いて下式によって与えられる。
【0043】
【数17】
【0044】
更に、応答ベクトルの任意のn番目の要素に関する式(17)の偏微分は下式で与えられる。
【0045】
【数18】
【0046】
式(19)の右辺がゼロであれば、要素Rd,nは行列式とは無関係である。そうでなければ式(19)は前提と矛盾して、行列Rは最適応答行列ではないことになる。したがって、この行列の全ての関連要素は、範囲の境界に値を取らなければならない。すなわち、0又は1に等しい。
【0047】
この結果を用いれば、与えられたシステム行列Eから最適応答行列を反復法による数値計算によって求めることができる。この計算は、全ての要素が0である行列とは異なる何らかの応答行列Rを用いて始める。この行列と行列Eとを用いて式(18)に従ってベクトルV1を演算する。このベクトルの値を用いて、行列Rの第1行の各要素の値を新たに設定する。その際、ベクトルV1のi番目の成分が0より大きい場合には、行列Rの第1行におけるi番目の要素の値を1に設定し、その他の場合には0に設定する。すなわち、下式のように設定する。
【0048】
【数19】
【0049】
次に、行列Rの新たな値を用いてベクトルV2を演算し、これを用いて行列Rの第2行の各要素の値を新たに設定する。この操作を行列Rの最終行まで続ける。更に最初の行に戻って、この一連の操作を、行列Rの値が変化しなくなるまで反復する。こうして得られた応答行列Rは最適行列であり、この行列によって濃度ベクトル変化が最大の信号ベクトル変化に写像される。
【0050】
こうして、決定された応答行列に基づく2値フィルタを備えた検出器構成を用いて物質濃度の測定を行う。この検出器構成を用いて測定した個々の検出器の信号から構成した信号ベクトルを用いて式(10)を解くことにより、所望の濃度が決定できる。すなわち、下式に従って演算する。
【0051】
【数20】
【0052】
この手法では、濃度変化を調べられるだけでなく、温度や圧力等の環境パラメータを充分な精度で線形近似できれば、それらの変化を調べることもできる。これは例えば、温度Tに対するスペクトルパワーPの依存性を示す下式により明らかである。
【0053】
【数21】
【0054】
式(4)を拡張することにより、線形近似は下式で与えられる。
【0055】
【数22】
【0056】
したがって、濃度変化及び温度変化の関数としてのスペクトルパワー変化が、以下に示す簡単な行列等式で表現できる。
【0057】
【数23】
【0058】
したがって、変動し得る環境パラメータの効果は、仮想的な追加の物質の濃度変化として捉えることもできる。拡張システム行列を用いて最適応答行列を求めるための更なるステップは、上述のものと同じである。
【0059】
以上の例では、変化する物質の数と環境パラメータの個数、またこれらのパラメータと検出すべきスペクトルパワーとの関数関係は、既知であると仮定してきた。但し実際には、そうでない場合が多い。
【0060】
しかしながら、化学分析法で知られているようなシステム較正用の測定を行うことによって最適フィルタリング曲線を求めることもできる。発光、反射光又は透過光の形で混合物から送られてくるパワーを、問題とする波長域全体に亘り、様々なテスト条件下で繰返し測定する。その際に重要な点は、1つ又は複数の物質の濃度を決定するために続いて行う本発明に係る測定において予期される物質濃度及び環境パラメータの全ての変化を、較正データセットに再現しなければならないということである。これらの変化を意図的に導入する必要はなく、無作為の又は統計的なゆらぎとして導入すれば良い。しかしながら、本発明において、続いて求める物質の濃度は既知でなければならない。これらの物質の濃度は、意図的に調製しても良く、また、信頼できる標準測定法を用いて決定しても良い。このような化学分析法による較正測定を評価する方法としては、いわゆる主成分回帰分析法や部分最小2乗回帰分析法が知られている。これらの回帰分析法は、本来、測定スペクトルから物質濃度を決定する際のモデルを作成するためのものであるが、最適応答行列を決定する際にも適用できる。その一例は、良く知られた主成分回帰分析法である。較正データを得るためには、充分な種類数Kの混合物を調製する必要がある。各混合物に対して、分光検出器を用いて発光スペクトル又は反射光スペクトルを測定する。こうして、測定スペクトルデータを列ベクトルとして用いて行列Bを作成する。下式に従って、この行列の中心を線形近似で調整する。
【0061】
【数24】
【0062】
こうして得られた行列Bから、下式に従って共分散行列Hを決定する。
【0063】
【数25】
【0064】
この式から、固有ベクトルと固有値とを決定する。最大固有値を有するK個の固有ベクトルを列ベクトルとして用いて行列Xを作成する。ここで数Kは、システム内の変数の個数が既知ならばその数に対応し、既知でない場合には、化学分析の分野で良く知られている方法によって決定される。行列Xの列は、システムの既知の主成分を表す。行列Xは、ローディング行列とも呼ばれ、上述の応答行列Rの演算における未知のシステム行列Eの代わりに用いられる。ローディング行列Xは、一般には実際のシステム行列Eと等しくないが、代用しても正しい最適応答行列が得られる。
【0065】
以上のような分光分析法に関する知見に基づいて、好適な一つの実施の形態では、N個の最適フィルタの組を用い、上述のアルゴリズムに従って、実際の装置の状況に応じて順次処理又は同時並行処理で微少な濃度差を分析する。最も簡単な例では、波長選択性ビームスプリッタ又は反射フィルタを、適切なスペクトル域を有するN個の検出器の組と共に用いてこの測定を行う。本発明では、光ファイババンドルを介して有効な信号を検出することも可能である。この場合には、個別のファイバ又はファイバの組が、夫々の適合するスペクトルフィルタを介して、本発明に従って構成された検出器に供給される。
【0066】
本発明によれば、測定信号の時間的ゆらぎが小さい場合には、最適な分光フィルタを通した個々の信号強度を順次処理で測定することが可能である。
【0067】
本発明の1つの観点では、求めたフィルタ行列Rとシステム行列Eとの行列積の行列式を、決定したフィルタ行列Rの個々の要素で偏微分することにより、この個々の要素が信号変化の最大化に関係することをチェックする。この偏微分の値は、対応する行列要素の関連性と同等の量である。これらのフィルタの実施を容易にするためには、対応する行列要素の相対的な関連性に従って実際に演算したフィルタ行列の値とは異なる値を有するフィルタを用いても良い。
【0068】
このような2値バンドパス最適化フィルタリング法は、紫外光、可視光又は赤外光の波長域で濃度変化や配座変化を高精度に分光分析する際に利用できるばかりでなく、電磁波の全てのスペクトル域で一般的に適用できる。したがって、同じ基本原理を、可視光、赤外光、遠赤外光から、X線やγ線などの高い周波数の電磁波にも適用できる。本発明においては、このような場合にも、適切な最適フィルタリング関数が上述のアルゴリズムに従って決定できる。
【0069】
好適な一つの実施の形態では、生体内の代謝による血糖値(血中グルコース濃度)の変化を経皮的に測定する。このために、図12に示したように温度に依存しない水の振動バンドである1380nm用にバンドパスフィルタを設けた。また、図11に示したようにグルコースの既知の最大吸収波長である1400nm用と最小吸収波長である1900nm用とに夫々1つのバンドパスフィルタを設けた。この、温度に依存しない水の振動バンドの信号は内部標準として用いる。オンバンドのグルコース用フィルタとオフバンドのグルコース用フィルタとの信号差は、動的に変化するバックグラウンド信号と比して、物質特異的な変化として検出する。バンドパスフィルタのスペクトル幅に関しては、得られる信号強度が検出器の線形ダイナミックレンジ内に収まるように、光学くさびを用いて選択する。その際、光源の波長ゆらぎや量子ノイズ、その他の妨害ノイズによる統計的ノイズを、検出信号中の予期される測定変数の変化より小さく抑えることにも留意する。好適な本実施の形態では、血糖濃度は脈拍に伴って時間変化する。これに対して、細胞間液中や細胞内のグルコース濃度は、比較的安定なバックグラウンド量である。具体的には、その部分の血糖値は、血流ストップ法(圧迫により血流を止めた状態から圧迫解除状態にした際の増加を測定する)、又はロックイン法(脈拍の周期で測定する)、又は交差相関法で測定することになる。本発明では、対象スペクトル域600nm乃至2.5μmに対しては白熱ランプを光源として使用するが、充分に広い波長域の光を放出するレーザ光源や、充分に広い波長域の光を放出できるように組合せた複数のレーザ光源を用いても良い。光を測定部位に導くためには適切な光学装置を用いる。本発明では、図8に示したようにガラスファイバケーブルを用いて光を導くこともできる。
【0070】
反射光又は透過光を検出するためには、収束レンズ等の適切な光学装置を用いる。図示のように、この光を1つ又は複数のビームスプリッタを用いて分割し、個々の光検出器に導く。また、本発明では、ガラスファイババンドルを用いて反射光又は透過光を受光しても良い。この場合には、図8に示したように、バンドルの個々のファイバ又は複数のファイバを各検出器に導くことができるので、ビームスプリッタを使用する必要はない。好適な一つの実施の形態では、単一のファイババンドルを用いて反射光を測定する間の光照射と検出とを行う。この場合には、バンドル内の1つ又は複数のファイバが光源から測定部位まで光を導き、バンドル内の残りのファイバが反射光を各検出器に導く。
【0071】
本発明の別の観点に基づいて行った実験からは、血糖値の経皮測定の場合には、温度依存性と散乱とを考慮に入れて、夫々3つ乃至4つの相異なった透過光スペクトル部分域を有する5つ乃至8つの検出器の使用が最適であることが示された。別の好適な実施の形態では7つの検出器を使用する。個々の検出器のフィルタリングパターンは、図13に示したように各透過光スペクトル部分域において2値的である。図13の水平線は、7つの検出器の夫々のスペクトル部分域を示している。この部分では、各フィルタの透過率は実質的に1である。その他の部分では、各フィルタの透過率は実質的に0である。図示したフィルタリングパターンを用いれば、血糖値の変化から得られる検出器の信号変化が最大となる。
【0072】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る、物質濃度の微少な変化を決定する測定方法を示す図である。混合物1から発したスペクトルパワーP(λ)はビームスプリッタ2によってN本の部分ビームに分割される。各スペクトルフィルタ3を透過した後、残った放射パワーは広帯域検出器4を用いて測定される。スペクトルフィルタ3は、本質的に2値特性を有している。つまり、スペクトルフィルタ3の透過率は、波長に応じて、実質的に0又は1に等しい値のみをとる。透過光部分域の決定は上述のアルゴリズムに基づいて行う。結果として、個々の検出器から得られる信号から構成した信号ベクトルに対して混合物の変化が引き起こす変化は最大となる。
【図2】
本発明に係る、光を透過する混合物の微少な変化を決定する測定方法を示す図である。光源5から発した光のスペクトルパワーは、混合物1を透過することによって変化する。透過光のスペクトルはこの物質の濃度と環境パラメータとに依存する。ビームスプリッタ2はこのビームをN本の部分ビームに分割する。部分ビームは、夫々、相異なる広帯域2値検出フィルタ3を透過した後、検出器4で検出される。2値フィルタの使用によって光子収率が最大となり、最適な信号雑音比が得られる。各バンドパスフィルタのスペクトル帯域幅は、混合物の濃度変化が検出信号に対して引き起こす変化が最大となるように選択する。
【図3】
本発明に係る、光を散乱する混合物の微少な変化を決定する測定方法を示す図である。光源5から発した光のスペクトルパワーは、混合物1によって散乱及び反射されることによって変化する。ビームスプリッタ2はこのビームをN本の部分ビームに分割する。部分ビームは、夫々、検出フィルタ3を透過した後、検出器4で検出される。
【図4】
本発明の別の観点である順次処理によって行う測定を示す図である。混合物1からの透過光又は反射光は、検出器4で検出される。検出器4の上流側には、上述のアルゴリズムに基づいて演算した広帯域フィルタ3を順次配置してある。
【図5】
本発明に基づいて演算した3成分系用の最適フィルタを説明する図である。図の上の部分には、3成分のスペクトル特性を示してある。3本の曲線は、システム行列Eを構成する3つの列に対応する。図の下の部分には、最適フィルタの透過部分域を水平線で示してある。図示の如く、各フィルタはいずれも、3つの物質のうちの2つの信号を実質的に検出している。フィルタリング関数を決定する上述のアルゴリズムによって、物質のうちの1つ又は複数の濃度の変化が検出信号に最大の変化を引き起こす。式(21)に対応する行列等式に従って、信号ベクトルから物質濃度を決定できる。
【図6】
本発明に係る、フィルタ行列Rを決定するアルゴリズムを示す図である。この行列の各行は2値透過フィルタの1つを表現している。
【図7】
上述のアルゴリズムを示すフロー図である。
【図8】
本発明に係る別の構成を示す図である。1つ又は複数のガラスファイバ6を用いて測定部位2に光を導く。測定部位からの散乱光は、複数のガラスファイバ7を用いて検出器に導かれる。この構成ではビームスプリッタを用いない。
【図9】
広帯域分光の分野で従来より利用されている広帯域非2値性フィルタリング関数の一例を示す図である。関連のあるスペクトル域にはフィルタ透過率が1より小さい部分があるので、光子収率が下がる。また、関連のないスペクトル域にはフィルタ透過率が0より大きい部分があるので信号雑音比が下がる。この2つの現象から、微少な物質濃度を測定する際の検出精度は最適にはならない。
【図10】
本発明に係る広帯域フィルタリング関数の一例を示す図である。従来技術とは異なり、1つ又は複数のスペクトル部分域におけるフィルタ透過率は略1であり、その他のスペクトル部分域でのフィルタ透過率は略0である。
【図11】
グルコースの典型的な吸収極大及び吸収極小を水に対する比として示した図である。血糖値の測定では、少なくとも1つのフィルタの透過域を吸収極大の範囲内に設定し、別の少なくとも1つのフィルタの透過域を吸収極小の範囲内に設定する。これにより、グルコース濃度の変化が検出信号に最大の変化を引き起こす。結果として最高の検出精度が得られる。
【図12】
波長域1.2乃至2.5μmでの水の透過率の温度依存性を示す図である。水の吸収スペクトルは温度に依存してシフトすることが知られている。このスペクトルシフトによって検出信号に望ましくない変化が引き起こされる。1.38μm近辺の波長域では温度依存性シフトが最小となる。水溶液での物質濃度の決定では、少なくとも1つの検出器の透過域をこの波長域に設定して、この検出器の信号を温度に依存しない参照信号として用いるようにする。
【図13】
血糖値の経皮測定用の7つの2値フィルタリングパターンを示す図である。各フィルタの透過スペクトルを水平線で表現してある。この線と重なるスペクトル部分域では、各フィルタの透過率は実質的に1であり、それ以外の部分では実質的に0である。このフィルタリングパターンを用いれば、血糖値の変化によって引き起こされる検出信号の変化が最大になる。
Claims (17)
- 混合物における濃度変化を光学的に決定する方法であって、 実質的に1又は0の値のみをとる透過率を有する2値スペクトルフィルタ(3)を用いて、複数の検出器(4)の信号から濃度変化を決定することを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の方法であって、課題を解決できるように配置した相異なる2値スペクトルフィルタを用いて、順次得られる検出器(4)の信号に基づいて準定常的な濃度変化が決定されることを特徴とする方法。
- 請求項1又は2に記載の方法であって、物質濃度変化によって検出信号に最大の変化が得られるように前記スペクトルフィルタの透過スペクトル域が選択されることを特徴とする方法。
- 請求項1乃至3の何れかに記載の方法であって、使用する2値スペクトルフィルタの個数は少なくともシステムの関連変数パラメータの個数に対応することを特徴とする方法。
- 請求項1乃至4の何れかに記載の方法であって、システム行列が未知である場合、前記2値スペクトルフィルタはスペクトル分光較正測定から決定されることを特徴とする方法。
- 前記2値スペクトルフィルタは図6に示した演算方式に基づいてシステム行列Eから決定されることを特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
- 請求項1乃至6の何れかに記載の方法であって、システム行列Eが未知である場合、2値最適フィルタは図6に示した演算方式に基づいて決定され、またこの行列Eは、その後の主成分回帰分析によって較正測定から得られるローディング行列Xによって置換えられることを特徴とする方法。
- 前記2値フィルタは反射フィルタとして構成されていることを特徴とする、請求項1乃至7の何れかに記載の方法。
- 請求項1又は2に記載の方法であって、少なくとも1つのフィルタが目標物質の既知の吸収帯域に位置し、少なくとも1つの別のフィルタがこの吸収帯域の外のごく近傍に位置し、また少なくとも1つの更に別のフィルタがスペクトル上で大きく離れた部分、好ましくは吸収が動的に変動しない部分に位置するように、広帯域フィルタが選択されることを特徴とする方法。
- 請求項1乃至9の何れかに記載の方法であって、物質濃度変化及び環境パラメータ変化によって検出信号に最大の変化が得られるようにフィルタの透過スペクトル部分域が選択されることを特徴とする方法。
- 前記混合物は白熱ランプ光源によって光照射されることを特徴とする、請求項1乃至10の何れかに記載の方法。
- 光源からの光は1つ又は複数のガラスファイバによって測定部位に導かれることを特徴とする、請求項1乃至11の何れかに記載の方法。
- 反射光又は透過光はガラスファイババンドルによって測定部位から複数の検出器に導かれることを特徴とする、請求項1乃至12の何れかに記載の方法。
- バンドパスフィルタの透過帯域は0.6乃至2.5μmの間のスペクトル域に位置することを特徴とする、請求項1乃至12の何れかに記載の方法。
- 請求項1乃至14の何れかに記載の方法であって、水性環境での物質濃度を決定するために、内部基準フィルタとして機能する少なくとも1つのバンドパスフィルタは1.38μmに位置することを特徴とする方法。
- 請求項1乃至15の何れかに記載の方法であって、血中グルコース濃度を決定するために、2値スペクトルフィルタを備えると共に3つ乃至4つの透過スペクトル部分域を有する5つ乃至8つの検出器を使用することを特徴とする方法。
- 血中グルコース濃度を決定するために7つの検出器を使用することを特徴とする、請求項1乃至16の何れかに記載の方法。
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