JP2004361332A - 光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムおよびその方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、簡易な構成で光ファイバーの一部に印加された振動を検出し振動位置の同定を行うシステムおよび方法を提供することにある。
【解決手段】光ファイバリング干渉計において、受光部6,11から出力される光干渉強度信号をサンプリングして離散データを取得し、前記離散データに一定幅のウィンドウを設定し、前記ウィンドウ内のデータから自己相関関数を求め、前記自己相関関数から所定値以上の極大値を検出し、相関時間がゼロ以外の極大値が存在する場合には、前記検出された極大値の相関時間および前記光ファイバを伝搬する光の伝搬速度に基づいて前記光ファイバーの位相変動が付与された位置を算出する相関器20を具備する。
【選択図】 図6
【解決手段】光ファイバリング干渉計において、受光部6,11から出力される光干渉強度信号をサンプリングして離散データを取得し、前記離散データに一定幅のウィンドウを設定し、前記ウィンドウ内のデータから自己相関関数を求め、前記自己相関関数から所定値以上の極大値を検出し、相関時間がゼロ以外の極大値が存在する場合には、前記検出された極大値の相関時間および前記光ファイバを伝搬する光の伝搬速度に基づいて前記光ファイバーの位相変動が付与された位置を算出する相関器20を具備する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバリングの一部に物理的外力が印加された場合にその外力の検出と外力が印加された位置を同定する光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムおよびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、防犯、道路や鉄道での落石検知手段として、可能な光ファイバとレーザ光を応用した干渉型センサが提案されている。たとえば振動等の物理的外力(力学的刺激)により光ファイバケーブルの一部が応力を受け伝搬する光の光路長が変化して位相等の物理的性質が変化することを利用した外力刺激の検出装置が知られている。
【0003】
図10において、レーザダイオード105から放射されたレーザ光Xは2分岐結合素子102によって分岐されてループ状の光ファイバ103の両端102cおよび102dに入射される。したがって、レーザ光はループ状の光ファイバ103を図の時計回り方向(第1の方向)に伝搬する第1の光Aと反時計回り方向(第2の方向)に伝搬する第2の光Bが両端102cおよび102dから相互に反対方向に同一経路を伝搬してそれぞれ両端102dおよび102cに達した後、分岐結合素子102において第1の光Aと第2の光Bが結合されて干渉波となってフォトダイオード106に到達する。検出された干渉波はフォトダイオード106で光電変換されて光強度に応じた電気信号として出力され、増幅器111で増幅される。
【0004】
光ファイバ103の点Pに振動刺激を印加すると、振動により光ファイバ103の振動位置Pが応力を受けて伝搬する光の光路長が変化する。その結果、図11(a)に示すように、第1の光Aと第2の光Bは同じ光ファイバ105を逆方向に伝搬する間に両者の相対的な位相差あるいは偏波面が変化する。第1の光Aと第2の光Bとは振動により位相変化を受ける時刻が異なるので分岐結合素子102を介して合波されると位相差(位相遅延)Δtにより図11(b)の包絡線Eで表される振幅変化を有する干渉波を生じる。その結果フォトダイオード106は図11(c)で示すように干渉強度変化に応じた電圧が出力されるので振動の印加を検出することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−46564号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2002−243454号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法や装置では干渉強度の変化を利用して落石等による振動の発生を検出することはできるが、振動位置Pの位置を同定することは困難であった。また2波長の光を入光して振動位置を推定する方法はあるがセンサ系が複雑になるという問題があり、簡易な構成で振動の検出および振動位置の同定を行うことが困難であった。
【0008】
【特許文献3】
特願2002−48485号
【0009】
【特許文献4】
特願2002−48486号
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、本発明によれば、光ファイバの一部に振動等の物理的外力が印加された場合に、その振動の発生および振動位置を検出する振動位置推定システムおよびその方法を提供することができる。
【0011】
すなわち、本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムは、少なくとも第1ポートと第2ポートに分岐する第1入出力ポート、および少なくとも第3ポートと第4ポートに分岐する第2入出力ポートを有する分岐光カプラーであって、コヒーレント光またはインコヒーレント光を発生する光源が前記第1ポートに光学的に結合され、受光部が前記第2ポートに光学的に結合されるものと、1本の光ファイバーであって、その一端が前記分岐光カプラーの第3ポートに光学的に結合され、その他端が前記分岐光カプラーの第4ポートに光学的に結合されるものと、前記受光部の出力信号の自己相関関数を演算する相関器であって、演算された自己相関関数の極大値の出現を検出し、前記極大値の相関時間に基づいて前記一端から前記他端に伝搬する第1の光および前記他端から前記一端に伝搬する第2の光に位相変動が付与された位置を算出するものとを具備する。
【0012】
本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定方法は、分岐光カプラの第1ポートに光源および受光部が光学的に結合され、前記分岐光カプラの第2ポートに光ファイバの両端が光学的に結合された光ファイバリング干渉計において、(1)前記受光部から出力される光干渉強度信号をサンプリングして離散データを取得する第1のステップと、(2)前記離散データに一定幅のウィンドウを設定する第2のステップと、(3)前記ウィンドウ内のデータから自己相関関数を求める第3のステップと、(4)前記自己相関関数から所定値以上の極大値を検出する第4のステップと、(5)相関時間がゼロ以外の極大値が存在しない場合には前記第2のステップに進み、存在する場合には次のステップに進む第5のステップと、(6)前記検出された極大値の相関時間および前記光ファイバを伝搬する光の伝搬速度に基づいて前記光ファイバーの位相変動が付与された位置を算出する第6のステップとを有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施に形態を図面を参照して説明する。
【0014】
振動位置同定の原理
図1を参照して物理的外力が印加された光ファイバー3上の位置(以下振動位置という。)を同定する方法の原理を説明する。光ファイバ3はその両端部が光カプラー2の少なくとも2本に分岐した出力/入力ポート2cおよび2dに光結合されている。光カプラー2の反対側には少なくとも2本に分岐した入力/出力ポート2aおよび2bがありそれぞれ発光素子5および受光素子6が光結合されている。光源としての発光素子5から出力された光Xは、光カプラー2の第1ポート2aに入力し、そこで分岐されて光ファイバ3の第一端部2dからは第1方向(CW)に光Aが伝搬し、光ファイバ3の第2端部2cからは第2方向(CCW)に光Bが伝搬する。したがって、光ファイバー3、光カプラー3、発光素子5、および受光素子6は光ファイバー干渉計の構成を成している。
【0015】
発光素子5はレーザーダイオードのようなコヒーレントな光を発光する素子に限らず、インコヒーレントな光を発光するLEDやSLD(スーパールミネセンスダイオード)を使用することができる。受光素子6はフォトダイオードやピンフォトダイオードなど発光素子5が発光する光を受光できる検出器であればよい。
【0016】
また、光カプラー2は2分岐光カプラーであればよいが任意のn×m光カプラが利用できる。好ましくは3×3光カプラーである。光カプラー2において光が分岐する際に光A,B間に位相差が発生するが、3×3光カプラを使用すると波形の折り返しが低減される。なお、本実施形態では光カプラーは独立した光部品であって光ファイバー3と入出力ポートを介して結合することとしているが、光ファイバの一部に光ファイバカプラーを形成してもよい。
【0017】
図1にもどって、光ファイバ3の全長をLとして、光ファイバ3の主軸に沿って仮想的な座標軸zを考える。ここで、光ファイバ3の両端部の中点をz=0とする。さらに、この中点z=0からz軸に沿ってz=z0の距離に振動位置Pがあるとする。
【0018】
振動位置P(z=z0)に力学的刺激が印加されると、光ファイバ3の振動位置の部分は振動に伴う応力を受けて伝搬する光信号の光路長が変化する。その結果、光ファイバ3を第1方向に伝搬する光Aと第2方向に伝搬する光Bの相対的な位相差および偏波面が変化する。これらの変化はすでに述べたように光ファイバ3から光カプラー2を介して合波され、受光素子5で光干渉強度の変化として検出される。振動位置Pは力学的刺激により光路長を変化させて位相変動、偏波面変動などの物理的変動を付与する位置である。なお、物理的変動の原因としては衝撃による一過性の力学的刺激であってもよいし、一方向への応力(圧力)の付与であってもよいし、さらに定常的な振動であってもよい。
【0019】
図2は光カプラ2で分岐した光Aおよび光Bのそれぞれの伝搬方向をz軸の正方向としてz=0が一致するように並置した非折り返しモデルを示す。第1方向(CW方向)に伝搬する光Aに対して時刻t=t0に振動位置P(z=z0)において付加された位相変化は時刻t0から(L/2−z0)/cののちに受光端すなわち光カプラー2に到達する。一方、第2方向(CCW方向)に伝搬する光Bに対しては光Aと実質的に同一の位相変化が付与され、時刻t0から(L/2+z0)/cののちに受光端に到達する。
【0020】
したがって、インパルス状の衝撃が印加された場合には受光端における光Aと光Bの位相差Δφ(t)の時間変化は典型的には図3で示される。同図において、φ0は光カプラーで光が分岐する際に生じる初期位相差を表す。最初のピークを伴う変動は光Bが位相変調を受けたことによって生じる位相差を、二番目に現れるピークを伴う変動は光Aが位相変調を受けたことによって生じる位相差を表す。その結果図3で示される位相差に対応した光干渉強度の信号は同一インパルスに起因する変動が2つ存在し、それらには相互に相関があることを意味する。すなわち、光干渉強度信号の自己相関関数からピーク間の時間間隔τ=2z0/cに対応する相関時間が検出できればインパルスが印加された位置z0が同定されることを意味する。ここでは一番単純な例としてインパルス状の位相変化について説明したが、同一の光源から出射された光が同一の物理的変動(位相変動または偏波面変動)を付与されてそれらが合波されて得られた光干渉強度信号の相関時間が振動位置z0と密接に関わることを利用することが本発明の特徴であるから、力学的刺激の性質を問わずに適用可能である。同様の理由により光源から出力される光がコヒーレント光であるかインコヒーレント光であるかを問わない。
【0021】
図4、図5は、図2のモデルにおいて、光ファイバー3のケーブル長Lを20km、z0=6.5kmとして振動を印加した場合のシミュレーション結果である。物理的変動を与える関数としては図4に示すような0〜30kHzの周波数成分を含むsinc関数を採用し、ファイバーの屈折率をn=1.5、したがってファイバー中の光速をc=2.0×108mとした。以上の条件の下で自己相関関数を算出した結果を図5に示す。同図によれば、65μs付近に自己相関関数の極大値が現れている。これは振動位置Pがz=6.5kmの場合のτ=2z0/cに一致する。
【0022】
振動位置同定システム
図1は本実施形態に係る光ファイバリング干渉型振動検知センサによる振動位置同定システム1の構成を表す。すでに述べたように、光カプラー2で合波されて発生した光干渉強度信号は光検出器としての受光素子6と増幅器11で構成される受光部で検出される。
【0023】
相関器20は受光素子6から出力される光干渉強度信号をアナログ信号のまま演算処理しても良いが、本実施形態では一端A/D変換してからディジタルデータに対して自己相関関数の演算処理を行う。また、相関器20は図1には図示しないが、A/D変換回路、制御回路のほか取得したデータを一時蓄積するための記憶装置(RAMやハードディスクなど)も含む。また前処理のためのローパスフィルターまたはバンドパスフィルターも図では割愛した。
【0024】
次に、図6を参照して相関器20における典型的な振動位置同定処理を説明する。相関器20は受光部からの信号をサンプリングするサンプリング部、自己相関関数を演算する演算部、演算結果から極大値を検出する検出部、極大値から振動位置を推定する判断部、および検出結果を表示する表示部を含んで構成される。
【0025】
サンプリング部では、受光素子6から増幅器11を介して相関器20に入力された光干渉強度信号のアナログデータは所定のサンプリング間隔でA/D変換される(ステップS10)。サンプリングされたデータ列はメモリに一時保管されるか、そのままステップ20以降で処理される。
【0026】
自己相関関数の演算は逐次行う必要があるので、演算部では、本実施形態による相関器20はサンプリングしたデータのうち1回に自己相関関数演算を行うデータ列(以下ウィンドウという。)の長さを設定し、そのウィンドウを逐次スライドさせながら演算を行う(ステップS20)。スライドの幅は任意に設定できるが、たとえば、ウィンドウの幅の半分をスライド幅にした場合には、サンプリング間隔を200ns、ウィンドウの幅を2msとして自己相関関数演算を行い、次回の演算は時間幅1msだけスライドした幅2msのウィンドウのデータに対して行う。サンプリング間隔(サンプリング周波数)、ウィンドウの幅、スライド幅は測定対象、要求される時間分解能、距離分解能により変更可能である。
【0027】
自己相関関数C(τ)はウィンドウのデータ列を{xj;j=1,2,・・・N}、サンプリング間隔をΔτとしたときに、相関時間τをτk=kΔτに対応させて、C(kΔτ)={1/(N−k)}×Σ(i:1,N−k)(xi×xi+k)から求められる(ステップS30)。ここで、Σ(i:1,N−k)はiについて1からN−kまでの総和であることを表す。なお、k=0の場合は、上記表現から、C(0)=(1/N)Σ(i:1,N)(xi 2)と表され、光干渉強度信号の分散σ2に等しい。
【0028】
自己相関関数の演算は主として制御回路が処理するが、高級言語を利用したCISC(Complex Instruction Set Computer)や単純命令を用いるRISC(Reduced Instruction Set Computer)によりソフトウェアで実現しても良いし、乗算器や積和演算器を備える専用あるいは汎用のDSP(Digital Signal Processor)を利用してハードウェア処理により実現しても良い。
【0029】
また、選択可能な処理として所定数の隣接するウィンドウに対するステップ20〜30における自己相関関数演算の結果を移動平均処理して演算結果とすることもできる(ステップ35)。この場合には所定回数の演算が完了するまでステップ20とステップ30を繰り返す。
【0030】
検出部はステップ30またはステップ35で処理された演算結果から自己相関関数の極大値を検出する(S50)。事前に検出するべき極大値の閾値を設定しておくことが好ましい。閾値は自己相関関数の絶対値C(k)に対して設定してもよいし、分散値σ2=C(0)で規格化した相対値C(k)/C(0)に対して設定することもできる。
【0031】
振動などの力学的刺激が存在しない場合には自己相関関数はτ=0の付近に大きな極大値を持つが、振動が光ファイバー3のいずれかで発生するとゼロでない相関時間τに極大値が出現する。したがって、判断部では、まず自己相関関数の演算処理結果から、τ=0近傍以外の相関時間τに所定値以上の値を持つ極大値が出現したかが判断される。新たに極大値が検出されると力学的刺激が光ファイバー3に付与されたと判断して振動位置算出のステップを実行し、検出されない場合にはステップS20以降の処理を繰り返す(ステップS70)。
【0032】
さらに判断部は、力学的刺激が発生したと判断された場合には、当該極大値の相関時間τ0から振動位置z0=τ0c/2を推定する(ステップS80)。
【0033】
そして、表示部は、力学的刺激の発生を検出したことの告知と振動位置z0を内蔵または外部のディスプレイに表示し、あるいは遠隔操作で本システムを動作させる場合には当該情報を遠隔にあるコントロールシステムに出力して表示する(ステップS100)。警告を要する場合には音響または光による表示を伴うことが好ましい。
【0034】
図7および図8は、本発明の振動位置同定システムを用いた振動位置検出実験の結果を示すものである。実験はファイバループの中点(z=0)から約6.5km離れた点Pにおいて、直径約1cmの鉄球を高さ落差約1cmで光ファイバ3に落下させた。発光素子5はSLDを使用してインコヒーレント光を発生させた。また、データのサンプリング周波数は5MHzに設定し、光干渉強度信号の直流成分や測定系で生じるグリッチを除去するために、A/D変換を行う前に10kHz〜2MHzの帯域制限をした。
【0035】
図7は、振動発生前後に増幅器11を介して出力された受光素子6の出力波形の一例を示す。図8は、ウィンドウの幅を2ms、スライド量1ms、移動平均回数を5回としてステップS10〜ステップS35を実行した結果を表す。その結果ステップS50で第1の極大値はτ=0にあるが第2の極大値がτ0=66μsに出現したことが判断されるので、ステップS70からステップS80以降の処理が実行される。ステップS80ではτ0からz0=6.6kmと算出される。この測定結果は2z0/c=65μsとよく一致している。
【0036】
同様の測定実験はz0=3.5km、9.0kmの場合についても実施され、それぞれの位置において50回測定をして平均値を求めた結果を図9に示す。平均値の真値からの偏差を見積もると、z0=3.5kmでは−0.2km、6.5kmでは−0.4km、9.0kmでは−1.2kmとなった。
【0037】
図6に示した振動位置同定処理方法は典型例であって検出対象によって種々の変更が可能である。たとえば、道路や鉄道への落石をいち早く検出するために、ウィンドウを設定するステップS20において、ウィンドウの幅を通常より小さめに設定するか、データ列を間引いてウィンドウを設定してステップS30で処理するデータの長さを短くすることで、落石等による振動の検出の時間分解能を上げることができる。この場合に、一端振動が検出されると直ちにその事実を表示または遠隔のコントロールシステムに通知し、メモリに保管されているサンプリングデータから通常のウィンドウを設定し直して振動位置の詳細な検出をおこなうことも可能である。なお、データ列を間引いてウィンドウを設定した場合にはそれに応じてサンプリング間隔が所定数倍に変更されたとみなして自己相関関数の演算を行えばよい。
【0038】
また、相関器20は逐次相関計算を行い、実質的にリアルタイムで振動等の検出を行うものとして説明したが、いったん所定のデータを全て取得してメモリやハードディスクなどの記憶装置に保管したあとで振動等の検出および振動位置の同定を行うことも可能である。
【0039】
また、本発明による振動位置同定方法ではz0=0の場合には有効な光干渉強度信号を検出することができないが、この場合には不感帯の幅Δを設定し、光ファイバーの中点z=0を含む幅Δの部分の両端を一致させるように配設することができる。すなわち、たとえば光ファイバのz=−Δ/2の部分とz=+Δ/2の部分を一致させるように配設すると−Δ/2<z<Δ/2の領域を検出の対象としないことができるので振動検出システムとしての不感領域を排除することができる。なお、Δzは振動位置検出の誤差程度以上に設定することが好ましい。
【0040】
【発明の効果】
本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムおよびその方法によれば、光ファイバリングを利用するので、無誘導で遠隔操作が可能であり、かつ敷設が容易であって、耐久性に優れるので広域な敷地の防犯、道路や鉄道の落石検知などに応用可能である。
【0041】
また、光ファイバ干渉計の構成に相関器のみを付加して振動等の力学的刺激の発生の検出および振動位置の同定を行うのでシステムの構成が簡単化され実質的にリアルタイムで振動の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサによる振動位置同定システムを示す図である。
【図2】第1方向(CW)に伝搬する光Aと第2方向(CCW)に伝搬する光Bを非折り返しモデルで表示した図である。
【図3】インパルス状の外力が振動位置Pに印加された場合の受光端における位相差を表す図である。
【図4】シミュレーションに用いた受光器出力波形を示す図である。
【図5】シミュレーションで得られた自己相関関数の演算処理結果を表す図である。
【図6】相関器における振動位置同定処理を示す流れ図である。
【図7】実験において受光器から出力された波形の一例である。
【図8】実験で得られた自己相関関数の演算処理結果である。
【図9】実験で得られた振動位置と真値を比較した図である。
【図10】従来の光ファイバリング型振動検知システムを示す図である。
【図11】従来の光ファイバリング型振動検知システムによる振動検出方法を示す図である。(a)は分岐結合部における第1の光Aと第2の光Bの位相の時間変化を示すもの、(b)は第1の光Aと第2の光Bの干渉波を示すもの、(c)はフォトダイオードで検出される干渉波の光強度変化を示すものである。
【符号の説明】
1 振動位置同定システム
2 光カプラー
3 光ファイバー
5 発光素子
6 受光素子
11 増幅器
20 相関器
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバリングの一部に物理的外力が印加された場合にその外力の検出と外力が印加された位置を同定する光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムおよびその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、防犯、道路や鉄道での落石検知手段として、可能な光ファイバとレーザ光を応用した干渉型センサが提案されている。たとえば振動等の物理的外力(力学的刺激)により光ファイバケーブルの一部が応力を受け伝搬する光の光路長が変化して位相等の物理的性質が変化することを利用した外力刺激の検出装置が知られている。
【0003】
図10において、レーザダイオード105から放射されたレーザ光Xは2分岐結合素子102によって分岐されてループ状の光ファイバ103の両端102cおよび102dに入射される。したがって、レーザ光はループ状の光ファイバ103を図の時計回り方向(第1の方向)に伝搬する第1の光Aと反時計回り方向(第2の方向)に伝搬する第2の光Bが両端102cおよび102dから相互に反対方向に同一経路を伝搬してそれぞれ両端102dおよび102cに達した後、分岐結合素子102において第1の光Aと第2の光Bが結合されて干渉波となってフォトダイオード106に到達する。検出された干渉波はフォトダイオード106で光電変換されて光強度に応じた電気信号として出力され、増幅器111で増幅される。
【0004】
光ファイバ103の点Pに振動刺激を印加すると、振動により光ファイバ103の振動位置Pが応力を受けて伝搬する光の光路長が変化する。その結果、図11(a)に示すように、第1の光Aと第2の光Bは同じ光ファイバ105を逆方向に伝搬する間に両者の相対的な位相差あるいは偏波面が変化する。第1の光Aと第2の光Bとは振動により位相変化を受ける時刻が異なるので分岐結合素子102を介して合波されると位相差(位相遅延)Δtにより図11(b)の包絡線Eで表される振幅変化を有する干渉波を生じる。その結果フォトダイオード106は図11(c)で示すように干渉強度変化に応じた電圧が出力されるので振動の印加を検出することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−46564号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2002−243454号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法や装置では干渉強度の変化を利用して落石等による振動の発生を検出することはできるが、振動位置Pの位置を同定することは困難であった。また2波長の光を入光して振動位置を推定する方法はあるがセンサ系が複雑になるという問題があり、簡易な構成で振動の検出および振動位置の同定を行うことが困難であった。
【0008】
【特許文献3】
特願2002−48485号
【0009】
【特許文献4】
特願2002−48486号
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、本発明によれば、光ファイバの一部に振動等の物理的外力が印加された場合に、その振動の発生および振動位置を検出する振動位置推定システムおよびその方法を提供することができる。
【0011】
すなわち、本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムは、少なくとも第1ポートと第2ポートに分岐する第1入出力ポート、および少なくとも第3ポートと第4ポートに分岐する第2入出力ポートを有する分岐光カプラーであって、コヒーレント光またはインコヒーレント光を発生する光源が前記第1ポートに光学的に結合され、受光部が前記第2ポートに光学的に結合されるものと、1本の光ファイバーであって、その一端が前記分岐光カプラーの第3ポートに光学的に結合され、その他端が前記分岐光カプラーの第4ポートに光学的に結合されるものと、前記受光部の出力信号の自己相関関数を演算する相関器であって、演算された自己相関関数の極大値の出現を検出し、前記極大値の相関時間に基づいて前記一端から前記他端に伝搬する第1の光および前記他端から前記一端に伝搬する第2の光に位相変動が付与された位置を算出するものとを具備する。
【0012】
本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定方法は、分岐光カプラの第1ポートに光源および受光部が光学的に結合され、前記分岐光カプラの第2ポートに光ファイバの両端が光学的に結合された光ファイバリング干渉計において、(1)前記受光部から出力される光干渉強度信号をサンプリングして離散データを取得する第1のステップと、(2)前記離散データに一定幅のウィンドウを設定する第2のステップと、(3)前記ウィンドウ内のデータから自己相関関数を求める第3のステップと、(4)前記自己相関関数から所定値以上の極大値を検出する第4のステップと、(5)相関時間がゼロ以外の極大値が存在しない場合には前記第2のステップに進み、存在する場合には次のステップに進む第5のステップと、(6)前記検出された極大値の相関時間および前記光ファイバを伝搬する光の伝搬速度に基づいて前記光ファイバーの位相変動が付与された位置を算出する第6のステップとを有する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施に形態を図面を参照して説明する。
【0014】
振動位置同定の原理
図1を参照して物理的外力が印加された光ファイバー3上の位置(以下振動位置という。)を同定する方法の原理を説明する。光ファイバ3はその両端部が光カプラー2の少なくとも2本に分岐した出力/入力ポート2cおよび2dに光結合されている。光カプラー2の反対側には少なくとも2本に分岐した入力/出力ポート2aおよび2bがありそれぞれ発光素子5および受光素子6が光結合されている。光源としての発光素子5から出力された光Xは、光カプラー2の第1ポート2aに入力し、そこで分岐されて光ファイバ3の第一端部2dからは第1方向(CW)に光Aが伝搬し、光ファイバ3の第2端部2cからは第2方向(CCW)に光Bが伝搬する。したがって、光ファイバー3、光カプラー3、発光素子5、および受光素子6は光ファイバー干渉計の構成を成している。
【0015】
発光素子5はレーザーダイオードのようなコヒーレントな光を発光する素子に限らず、インコヒーレントな光を発光するLEDやSLD(スーパールミネセンスダイオード)を使用することができる。受光素子6はフォトダイオードやピンフォトダイオードなど発光素子5が発光する光を受光できる検出器であればよい。
【0016】
また、光カプラー2は2分岐光カプラーであればよいが任意のn×m光カプラが利用できる。好ましくは3×3光カプラーである。光カプラー2において光が分岐する際に光A,B間に位相差が発生するが、3×3光カプラを使用すると波形の折り返しが低減される。なお、本実施形態では光カプラーは独立した光部品であって光ファイバー3と入出力ポートを介して結合することとしているが、光ファイバの一部に光ファイバカプラーを形成してもよい。
【0017】
図1にもどって、光ファイバ3の全長をLとして、光ファイバ3の主軸に沿って仮想的な座標軸zを考える。ここで、光ファイバ3の両端部の中点をz=0とする。さらに、この中点z=0からz軸に沿ってz=z0の距離に振動位置Pがあるとする。
【0018】
振動位置P(z=z0)に力学的刺激が印加されると、光ファイバ3の振動位置の部分は振動に伴う応力を受けて伝搬する光信号の光路長が変化する。その結果、光ファイバ3を第1方向に伝搬する光Aと第2方向に伝搬する光Bの相対的な位相差および偏波面が変化する。これらの変化はすでに述べたように光ファイバ3から光カプラー2を介して合波され、受光素子5で光干渉強度の変化として検出される。振動位置Pは力学的刺激により光路長を変化させて位相変動、偏波面変動などの物理的変動を付与する位置である。なお、物理的変動の原因としては衝撃による一過性の力学的刺激であってもよいし、一方向への応力(圧力)の付与であってもよいし、さらに定常的な振動であってもよい。
【0019】
図2は光カプラ2で分岐した光Aおよび光Bのそれぞれの伝搬方向をz軸の正方向としてz=0が一致するように並置した非折り返しモデルを示す。第1方向(CW方向)に伝搬する光Aに対して時刻t=t0に振動位置P(z=z0)において付加された位相変化は時刻t0から(L/2−z0)/cののちに受光端すなわち光カプラー2に到達する。一方、第2方向(CCW方向)に伝搬する光Bに対しては光Aと実質的に同一の位相変化が付与され、時刻t0から(L/2+z0)/cののちに受光端に到達する。
【0020】
したがって、インパルス状の衝撃が印加された場合には受光端における光Aと光Bの位相差Δφ(t)の時間変化は典型的には図3で示される。同図において、φ0は光カプラーで光が分岐する際に生じる初期位相差を表す。最初のピークを伴う変動は光Bが位相変調を受けたことによって生じる位相差を、二番目に現れるピークを伴う変動は光Aが位相変調を受けたことによって生じる位相差を表す。その結果図3で示される位相差に対応した光干渉強度の信号は同一インパルスに起因する変動が2つ存在し、それらには相互に相関があることを意味する。すなわち、光干渉強度信号の自己相関関数からピーク間の時間間隔τ=2z0/cに対応する相関時間が検出できればインパルスが印加された位置z0が同定されることを意味する。ここでは一番単純な例としてインパルス状の位相変化について説明したが、同一の光源から出射された光が同一の物理的変動(位相変動または偏波面変動)を付与されてそれらが合波されて得られた光干渉強度信号の相関時間が振動位置z0と密接に関わることを利用することが本発明の特徴であるから、力学的刺激の性質を問わずに適用可能である。同様の理由により光源から出力される光がコヒーレント光であるかインコヒーレント光であるかを問わない。
【0021】
図4、図5は、図2のモデルにおいて、光ファイバー3のケーブル長Lを20km、z0=6.5kmとして振動を印加した場合のシミュレーション結果である。物理的変動を与える関数としては図4に示すような0〜30kHzの周波数成分を含むsinc関数を採用し、ファイバーの屈折率をn=1.5、したがってファイバー中の光速をc=2.0×108mとした。以上の条件の下で自己相関関数を算出した結果を図5に示す。同図によれば、65μs付近に自己相関関数の極大値が現れている。これは振動位置Pがz=6.5kmの場合のτ=2z0/cに一致する。
【0022】
振動位置同定システム
図1は本実施形態に係る光ファイバリング干渉型振動検知センサによる振動位置同定システム1の構成を表す。すでに述べたように、光カプラー2で合波されて発生した光干渉強度信号は光検出器としての受光素子6と増幅器11で構成される受光部で検出される。
【0023】
相関器20は受光素子6から出力される光干渉強度信号をアナログ信号のまま演算処理しても良いが、本実施形態では一端A/D変換してからディジタルデータに対して自己相関関数の演算処理を行う。また、相関器20は図1には図示しないが、A/D変換回路、制御回路のほか取得したデータを一時蓄積するための記憶装置(RAMやハードディスクなど)も含む。また前処理のためのローパスフィルターまたはバンドパスフィルターも図では割愛した。
【0024】
次に、図6を参照して相関器20における典型的な振動位置同定処理を説明する。相関器20は受光部からの信号をサンプリングするサンプリング部、自己相関関数を演算する演算部、演算結果から極大値を検出する検出部、極大値から振動位置を推定する判断部、および検出結果を表示する表示部を含んで構成される。
【0025】
サンプリング部では、受光素子6から増幅器11を介して相関器20に入力された光干渉強度信号のアナログデータは所定のサンプリング間隔でA/D変換される(ステップS10)。サンプリングされたデータ列はメモリに一時保管されるか、そのままステップ20以降で処理される。
【0026】
自己相関関数の演算は逐次行う必要があるので、演算部では、本実施形態による相関器20はサンプリングしたデータのうち1回に自己相関関数演算を行うデータ列(以下ウィンドウという。)の長さを設定し、そのウィンドウを逐次スライドさせながら演算を行う(ステップS20)。スライドの幅は任意に設定できるが、たとえば、ウィンドウの幅の半分をスライド幅にした場合には、サンプリング間隔を200ns、ウィンドウの幅を2msとして自己相関関数演算を行い、次回の演算は時間幅1msだけスライドした幅2msのウィンドウのデータに対して行う。サンプリング間隔(サンプリング周波数)、ウィンドウの幅、スライド幅は測定対象、要求される時間分解能、距離分解能により変更可能である。
【0027】
自己相関関数C(τ)はウィンドウのデータ列を{xj;j=1,2,・・・N}、サンプリング間隔をΔτとしたときに、相関時間τをτk=kΔτに対応させて、C(kΔτ)={1/(N−k)}×Σ(i:1,N−k)(xi×xi+k)から求められる(ステップS30)。ここで、Σ(i:1,N−k)はiについて1からN−kまでの総和であることを表す。なお、k=0の場合は、上記表現から、C(0)=(1/N)Σ(i:1,N)(xi 2)と表され、光干渉強度信号の分散σ2に等しい。
【0028】
自己相関関数の演算は主として制御回路が処理するが、高級言語を利用したCISC(Complex Instruction Set Computer)や単純命令を用いるRISC(Reduced Instruction Set Computer)によりソフトウェアで実現しても良いし、乗算器や積和演算器を備える専用あるいは汎用のDSP(Digital Signal Processor)を利用してハードウェア処理により実現しても良い。
【0029】
また、選択可能な処理として所定数の隣接するウィンドウに対するステップ20〜30における自己相関関数演算の結果を移動平均処理して演算結果とすることもできる(ステップ35)。この場合には所定回数の演算が完了するまでステップ20とステップ30を繰り返す。
【0030】
検出部はステップ30またはステップ35で処理された演算結果から自己相関関数の極大値を検出する(S50)。事前に検出するべき極大値の閾値を設定しておくことが好ましい。閾値は自己相関関数の絶対値C(k)に対して設定してもよいし、分散値σ2=C(0)で規格化した相対値C(k)/C(0)に対して設定することもできる。
【0031】
振動などの力学的刺激が存在しない場合には自己相関関数はτ=0の付近に大きな極大値を持つが、振動が光ファイバー3のいずれかで発生するとゼロでない相関時間τに極大値が出現する。したがって、判断部では、まず自己相関関数の演算処理結果から、τ=0近傍以外の相関時間τに所定値以上の値を持つ極大値が出現したかが判断される。新たに極大値が検出されると力学的刺激が光ファイバー3に付与されたと判断して振動位置算出のステップを実行し、検出されない場合にはステップS20以降の処理を繰り返す(ステップS70)。
【0032】
さらに判断部は、力学的刺激が発生したと判断された場合には、当該極大値の相関時間τ0から振動位置z0=τ0c/2を推定する(ステップS80)。
【0033】
そして、表示部は、力学的刺激の発生を検出したことの告知と振動位置z0を内蔵または外部のディスプレイに表示し、あるいは遠隔操作で本システムを動作させる場合には当該情報を遠隔にあるコントロールシステムに出力して表示する(ステップS100)。警告を要する場合には音響または光による表示を伴うことが好ましい。
【0034】
図7および図8は、本発明の振動位置同定システムを用いた振動位置検出実験の結果を示すものである。実験はファイバループの中点(z=0)から約6.5km離れた点Pにおいて、直径約1cmの鉄球を高さ落差約1cmで光ファイバ3に落下させた。発光素子5はSLDを使用してインコヒーレント光を発生させた。また、データのサンプリング周波数は5MHzに設定し、光干渉強度信号の直流成分や測定系で生じるグリッチを除去するために、A/D変換を行う前に10kHz〜2MHzの帯域制限をした。
【0035】
図7は、振動発生前後に増幅器11を介して出力された受光素子6の出力波形の一例を示す。図8は、ウィンドウの幅を2ms、スライド量1ms、移動平均回数を5回としてステップS10〜ステップS35を実行した結果を表す。その結果ステップS50で第1の極大値はτ=0にあるが第2の極大値がτ0=66μsに出現したことが判断されるので、ステップS70からステップS80以降の処理が実行される。ステップS80ではτ0からz0=6.6kmと算出される。この測定結果は2z0/c=65μsとよく一致している。
【0036】
同様の測定実験はz0=3.5km、9.0kmの場合についても実施され、それぞれの位置において50回測定をして平均値を求めた結果を図9に示す。平均値の真値からの偏差を見積もると、z0=3.5kmでは−0.2km、6.5kmでは−0.4km、9.0kmでは−1.2kmとなった。
【0037】
図6に示した振動位置同定処理方法は典型例であって検出対象によって種々の変更が可能である。たとえば、道路や鉄道への落石をいち早く検出するために、ウィンドウを設定するステップS20において、ウィンドウの幅を通常より小さめに設定するか、データ列を間引いてウィンドウを設定してステップS30で処理するデータの長さを短くすることで、落石等による振動の検出の時間分解能を上げることができる。この場合に、一端振動が検出されると直ちにその事実を表示または遠隔のコントロールシステムに通知し、メモリに保管されているサンプリングデータから通常のウィンドウを設定し直して振動位置の詳細な検出をおこなうことも可能である。なお、データ列を間引いてウィンドウを設定した場合にはそれに応じてサンプリング間隔が所定数倍に変更されたとみなして自己相関関数の演算を行えばよい。
【0038】
また、相関器20は逐次相関計算を行い、実質的にリアルタイムで振動等の検出を行うものとして説明したが、いったん所定のデータを全て取得してメモリやハードディスクなどの記憶装置に保管したあとで振動等の検出および振動位置の同定を行うことも可能である。
【0039】
また、本発明による振動位置同定方法ではz0=0の場合には有効な光干渉強度信号を検出することができないが、この場合には不感帯の幅Δを設定し、光ファイバーの中点z=0を含む幅Δの部分の両端を一致させるように配設することができる。すなわち、たとえば光ファイバのz=−Δ/2の部分とz=+Δ/2の部分を一致させるように配設すると−Δ/2<z<Δ/2の領域を検出の対象としないことができるので振動検出システムとしての不感領域を排除することができる。なお、Δzは振動位置検出の誤差程度以上に設定することが好ましい。
【0040】
【発明の効果】
本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムおよびその方法によれば、光ファイバリングを利用するので、無誘導で遠隔操作が可能であり、かつ敷設が容易であって、耐久性に優れるので広域な敷地の防犯、道路や鉄道の落石検知などに応用可能である。
【0041】
また、光ファイバ干渉計の構成に相関器のみを付加して振動等の力学的刺激の発生の検出および振動位置の同定を行うのでシステムの構成が簡単化され実質的にリアルタイムで振動の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバリング干渉型振動検知センサによる振動位置同定システムを示す図である。
【図2】第1方向(CW)に伝搬する光Aと第2方向(CCW)に伝搬する光Bを非折り返しモデルで表示した図である。
【図3】インパルス状の外力が振動位置Pに印加された場合の受光端における位相差を表す図である。
【図4】シミュレーションに用いた受光器出力波形を示す図である。
【図5】シミュレーションで得られた自己相関関数の演算処理結果を表す図である。
【図6】相関器における振動位置同定処理を示す流れ図である。
【図7】実験において受光器から出力された波形の一例である。
【図8】実験で得られた自己相関関数の演算処理結果である。
【図9】実験で得られた振動位置と真値を比較した図である。
【図10】従来の光ファイバリング型振動検知システムを示す図である。
【図11】従来の光ファイバリング型振動検知システムによる振動検出方法を示す図である。(a)は分岐結合部における第1の光Aと第2の光Bの位相の時間変化を示すもの、(b)は第1の光Aと第2の光Bの干渉波を示すもの、(c)はフォトダイオードで検出される干渉波の光強度変化を示すものである。
【符号の説明】
1 振動位置同定システム
2 光カプラー
3 光ファイバー
5 発光素子
6 受光素子
11 増幅器
20 相関器
Claims (4)
- 少なくとも第1ポートと第2ポートに分岐する第1入出力ポート、および少なくとも第3ポートと第4ポートに分岐する第2入出力ポートを有する分岐光カプラーであって、コヒーレント光またはインコヒーレント光を発生する光源が前記第1ポートに光学的に結合され、受光部が前記第2ポートに光学的に結合されるものと、
1本の光ファイバーであって、その一端が前記分岐光カプラーの第3ポートに光学的に結合され、その他端が前記分岐光カプラーの第4ポートに光学的に結合されるものと、
前記受光部の出力信号の自己相関関数を演算する相関器であって、演算された自己相関関数の極大値の出現を検出し、前記極大値の相関時間に基づいて前記一端から前記他端に伝搬する第1の光および前記他端から前記一端に伝搬する第2の光に位相変動が付与された位置を算出するものと
を具備することを特徴とする光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システム。 - 前記相関器はさらに、
前記受光部から出力される光干渉強度信号をサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリングされた光干渉強度信号データの自己相関関数を演算する演算部と、
前記自己相関関すから所定値以上の極大値を検出する検出部と、
相関時間がゼロ以外の極大値が存在する場合には前記極大値の相関時間に基づいて前記位相変動が付与された位置を算出する判断部と
を具備することを特徴とする請求項1に記載のシステム。 - 前記分岐光カプラーは3×3ファイバカプラーであることを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
- 分岐光カプラの第1ポートに光源および受光部が光学的に結合され、前記分岐光カプラの第2ポートに光ファイバの両端が光学的に結合された光ファイバリング干渉計において、
(1)前記受光部から出力される光干渉強度信号をサンプリングして離散データを取得する第1のステップと、
(2)前記離散データに一定幅のウィンドウを設定する第2のステップと、
(3)前記ウィンドウ内のデータから自己相関関数を求める第3のステップと、
(4)前記自己相関関数から所定値以上の極大値を検出する第4のステップと、
(5)相関時間がゼロ以外の極大値が存在しない場合には前記第2のステップに進み、存在する場合には次のステップに進む第5のステップと、
(6)前記検出された極大値の相関時間および前記光ファイバを伝搬する光の伝搬速度に基づいて前記光ファイバーの位相変動が付与された位置を算出する第6のステップと
を有することを特徴とする光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定方法。
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---|---|---|---|
JP2003162374A JP2004361332A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムおよびその方法 |
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ID=34054544
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003162374A Withdrawn JP2004361332A (ja) | 2003-06-06 | 2003-06-06 | 光ファイバリング干渉型振動検知センサを用いた振動位置同定システムおよびその方法 |
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JP (1) | JP2004361332A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010127705A (ja) * | 2008-11-26 | 2010-06-10 | Furukawa Electric Co Ltd:The | 光ファイバセンサ |
CN107941253A (zh) * | 2017-10-27 | 2018-04-20 | 周燕红 | 一种光纤环传感系统及实现方法 |
CN112562237A (zh) * | 2020-12-11 | 2021-03-26 | 无锡科晟光子科技有限公司 | 一种应用于围栏上的光纤振动系统定位精度优化方法 |
-
2003
- 2003-06-06 JP JP2003162374A patent/JP2004361332A/ja not_active Withdrawn
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