JP2004361198A - 試料分離装置 - Google Patents

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直人 萩原
Masayuki Fujimoto
正之 藤本
Fukuzen To
福全 党
Mari Tabuchi
眞理 田渕
Yoshinobu Baba
嘉信 馬場
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Abstract

【課題】キャピラリーの長さが短くても試料の分離能が高く、しかも電気泳動時間を短くすることができる試料分離装置を提供する。
【解決手段】キャピラリー21内にゲル状の媒体を充填し、該ゲル状の媒体中で検出対象試料を電気泳動させることにより該試料を固有の集合に分離する試料分離装置において、前記ゲル状の媒体を一の方向に送液するゲル送液手段と、前記ゲル送液方向と対向する方向に前記試料を電気泳動させる電気泳動手段とを具備する。キャピラリーは円盤状ディスク基板1の内径から外径に向かって延びる遠心送液領域を有し、前記ゲル送液手段は前記ディスク基板の回転と前記遠心送液領域を利用して前記キャピラリー内にゲルの流れを形成し、前記電気泳動手段は前記ゲルの流れと逆行する方向に前記試料を泳動させることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、生化学、医科薬学に関連する生体関連高分子物質や薬剤等の分離検出に用いられる試料分離装置に関し、特にキャピラリー内にゲル状の媒体を充填し、該ゲル状の媒体中で検出対象試料を電気泳動させることにより該試料を固有の集合に分離する試料分離装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生命科学の分野ではヒトを始めとする様々な生物のゲノム(全遺伝子情報)の解読が急ピッチで進んでおり、その解読結果により新しい動植物品種の品種改良が期待されている。
【0003】
また、単一生物種の中でも、その多様性を反映して個体によってそのゲノムの塩基配列がわずかに異なっていることが知られており(このような多様性はゲノム多型又は単に多型と称されている。)、例えば、ヒトにおいては、個人によって塩基配列の異なる確率は0.1%程度とされている。これは1000塩基毎に1ヶ所で多型が見られることを意味しており、ヒトゲノム全体(約30億塩基)の中で300万塩基ほどに現れることになる。
【0004】
したがって、個々のヒトの遺伝子情報を解析することによって、これまでの対症療法の域を出ない医療技術を超えた、各自の遺伝情報に基づいた最も適切な治療・投薬を施す、いわゆるテーラーメード医療の実現が可能になり、投薬や治療の無駄をなくしつつ、極めて効果的な病気予防と投薬と治療が実現できると期待されている。例えば、1塩基だけが異なる1塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)は、遺伝子の発現量に影響を与えたり、アミノ酸変異を起こす場合があることから、膨大な塩基配列の中からSNPを検出・解析することにより、個人にあった治療や薬がわかり、テーラーメード医療の確立につながると期待されている。
【0005】
一方、ヒトゲノムのシークエンシングの技術発展の歴史は塩基解読の絶対量増大の歴史でもある。すなわち、70年代には世界中で年間100塩基以下しか解読できなかったにもかかわらず、わずか30年間に、サンガー法、キャピラリーアレイ電気泳動法等が開発され、世界中で年間ギガ(G=10)塩基のシークエンシングが可能になった。特にキャピラリー電気泳動法は、DNA解析を高速かつ高感度、高精度で行える解析法であり、しかも測定は簡便で複数の試料の同時解析が可能で自動化が容易であるという利点を有している。
【0006】
キャピラリー電気泳動法を利用した装置として、下記特許文献1には、蛍光標識された試料が泳動する泳動媒体を含む複数のキャピラリーと、前記複数のキャピラリーの前記試料の泳動方向の端部を、間隔をおいて直線上に配置して保持するキャピラリー保持手段と、前記端部がその内部に配置される光学セルと、前記端部の少なくとも近傍及び前記端部の下部にシースフローを形成するために、前記光学セルの内部にシース液を導入する手段と、前記光学セルから前記シース液を排出する排出口と、前記試料から蛍光を励起する励起光を、前記末端の下部で前記直線にほぼ平行に照射する手段と、前記蛍光を検出する手段とを有することを特徴とする電気泳動装置が開示されている。また、下記特許文献2,3,4にも同様な方式の電気泳動装置が開示されている。
【0007】
更に、下記特許文献5には、第1の平坦な二次元の面とそれに向かい合う第2の平坦な二次元の面を持つ基板を含み、第1面がその中に埋め込まれる複数のマイクロチャネルと検体入力手段を含み、検体入力手段とマイクロチャネルが接続され、流体接触し、プラットホームの第1の平坦な二次元の面に向かい合う第2の平坦な二次元の面が、プラットホームの回転の速度、期間、又は方向を制御するための電磁的に読取り可能な命令セットで符号化されるマイクロシステム・プラットホームと、回転手段がマイクロシステム・プラットホームに機能的に作用するように連結され、それと回転接触する、基部、回転手段、電源及びユーザ・インタフェースを含む微小操作装置と操作制御手段と、の組み合わせである向心的に動かされる流体微小操作機器であって、プラットホームのマイクロチャネル内の多量の流体が、流体をマイクロチャネルを通して移動させるのに十分な時間の間、及び回転速度でプラットホームの回転運動から生じる向心力によって前記マイクロチャネルを通して移動される、向心的に動かされる流体微小操作機器が開示され、マイクロシステム・プラットホームとして、約1cmから25cmの半径のディスクが用いられている。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−318494号公報
【特許文献2】
特開平6−138037号公報
【特許文献3】
特開平10−170480号公報
【特許文献4】
特開2002−257786号公報
【特許文献5】
特表2002−503331号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
キャピラリー電気泳動法においては、流路や電極など周辺の微細化が進んでいるが、試料の泳動距離は、それを短くすると、試料の分離能が十分に得られなくなってしまうため、ある程度の長さが必要とされる。すなわち、分子量の近いもの同士を分離するためには、原理的により長い距離を泳動しなければならない。
【0010】
上記特許文献1〜4の装置では、蛍光標識された試料が泳動する泳動媒体を含む複数のキャピラリーの前記試料の泳動方向の端部を、直線状に配列して光学セル内に配置し、光学セルの内部にシース液を流しながら、前記キャピラリーの端部から流出する試料に蛍光を励起する励起光を照射し、それによって発光する蛍光を検出する方法を採用しているが、キャピラリー中のゲルを固定した状態で電気泳動を行っており、試料の分離能を十分に得るためには、キャピラリーの長さを十分にとる必要があり、キャピラリーや装置の小型化には限度があった。
【0011】
また、上記特許文献5の装置では、ディスクの回転を利用してキャピラリー内にゲルを充填しているが、電気泳動を行う際には、ディスクの回転を停止させている。このため、試料の分離能を十分に得るためには、キャピラリーの長さを十分にとる必要があり、ディスクを大きくしなければならない。
【0012】
そして、キャピラリーの長さが長いということは、電気泳動に要する時間もそれだけ長くかかることを意味し、分析効率を向上させるネックとなる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、キャピラリーの長さが短くても試料の分離能が高く、しかも電気泳動時間を短くすることができる試料分離装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の試料分離装置は、キャピラリー内にゲル状の媒体を充填し、該ゲル状の媒体中で検出対象試料を電気泳動させることにより該試料を固有の集合に分離する試料分離装置において、前記ゲル状の媒体を一の方向に送液するゲル送液手段と、前記ゲル送液方向と対向する方向に前記試料を電気泳動させる電気泳動手段とを具備することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、ゲル状の媒体を一の方向に送液すると共に、ゲル送液方向と対向する方向に試料を電気泳動させることにより、ゲルに対して試料が相対的に泳動する距離を長くすることができる。その結果、ゲルを固定した状態で同じ長さのキャピラリーを用いて電気泳動を行う場合に比べて、試料の分離能力を高めることができる。また、ゲルを固定した状態でキャピラリーの長さを長くして同等の分離能力を付与する場合と比べて、電気泳動時間を短くすることができると共に、印加電圧を低減することができる。
【0016】
本発明の試料分離装置の好ましい態様においては、前記試料は負に帯電した試料であり、前記電気泳動手段は前記キャピラリー上の一の位置に正の電荷を印加すると共に、他の位置に負の電荷を印加することで、前記試料の泳動方向を決定し、前記ゲル送液手段は前記正の電荷が印加される位置から前記負の電荷が印加される位置に向けて前記ゲル状の媒体を送液する。
【0017】
これによれば、例えば、DNA断片、界面活性剤を用いて負に帯電させた蛋白質などの負に帯電した試料を効率よく分離することができる。
【0018】
本発明の試料分離装置の別の好ましい態様においては、前記試料は正に帯電した試料であり、前記電気泳動手段は前記キャピラリー上の一の位置に正の電荷を印加すると共に、他の位置に負の電荷を印加することで、前記試料の泳動方向を決定し、前記ゲル送液手段は前記負の電荷が印加される位置から前記正の電荷が印加される位置に向けて前記ゲル状の媒体を送液する。
【0019】
これによれば、例えば、蛋白質、アミノ酸、ペプチド、アミノ酸やその誘導体のポリマー、低分子の薬品成分などの正に帯電した試料を効率よく分離することができる。
【0020】
本発明の試料分離装置の更に好ましい態様によれば、前記キャピラリーは円盤状ディスク基板の内径から外径に向かって延びる遠心送液領域を有し、前記ゲル送液手段は前記ディスク基板の回転と前記遠心送液領域を利用して前記キャピラリー内にゲルの流れを形成し、前記電気泳動手段は前記ゲルの流れと逆行する方向に前記試料を泳動させる。
【0021】
これによれば、ディスク基板の回転によってキャピラリーの遠心送液領域にゲルの流れを形成し、電気泳動手段によってゲルの流れと逆行する方向に試料を泳動させることにより、キャピラリーの長さが短くても試料の分離能を高めることができ、泳動時間も比較的短くすることができる。また、ディスク基板を回転するだけでゲルの流れを形成できるので、装置が簡略化されると共に、分析操作も容易となる。
【0022】
本発明の試料分離装置の更に好ましい態様によれば、前記キャピラリーと交差する位置に連通接続された流路をさらに具備し、該流路に第2の媒体を送液させることで、前記ゲル状の媒体と該第2の媒体との混合界面を前記キャピラリー中に形成する。
【0023】
これによれば、試料を注入したときに、試料がゲル状の媒体と第2の媒体との混合界面に移動して濃縮されるので、その状態で電気泳動を開始することによって、分離された試料のシグナル(検出バンド)の幅を変化させずに、その検出強度を高めることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明において、試料とは、特に限定されないが、例えば、DNA・RNA断片、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖鎖、医薬成分等の生化学に関連した物質が好ましく適用される。
【0025】
また、試料の電気泳動を行うために、マイクロキャピラリー内に注入するゲルとしては、例えばメチルセルロース(MC)、ハイドロキシエチルセルロース(HEC)、ハイドロキシプロピルセルロース(HPC)、ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、アガロース、アクリルアミド誘導体のポリマー等を含む緩衝液が好ましく用いられる。緩衝液としては、10〜100mM Tris溶液をリン酸、酢酸、ホウ酸等でpH 8〜9に調整し、またEDTA等を1〜10mMの濃度で加え試料成分を安定に保持できるよう調整したものなどが好ましく用いられる。
【0026】
更に、ゲル送液手段としては、マイクロシリンジや圧電ポンプ等、基板の外部あるいは内部に形成された送液装置を用いることができる。また、基板の回転によって生じる遠心力を利用してゲルの貯蔵溝からキャピラリー内へゲルを送液する手段を採用することもできる。
【0027】
本発明においては、ゲル送液手段によってゲル状の媒体を一の方向に送液すると共に、電気泳動手段によってゲルの送液方向と対向する方向に試料を電気泳動させることにより、ゲルに対して試料が相対的に泳動する距離を長くして、試料の分離能力を高めると共に、電気泳動時間を短くし、印加電圧を低減するようにしている。
【0028】
試料が負に帯電した試料である場合には、ゲル送液手段は正の電荷が印加される位置から負の電荷が印加される位置に向けてゲル状の媒体を送液する。負に帯電した試料としては、例えば、DNA断片、界面活性剤を用いて負に帯電させた蛋白質などの負に帯電した試料などが挙げられる。
【0029】
試料が正に帯電した試料である場合には、ゲル送液手段は負の電荷が印加される位置から正の電荷が印加される位置に向けてゲル状の媒体を送液する。正に帯電した試料としては、例えば、蛋白質、アミノ酸、ペプチド、アミノ酸やその誘導体のポリマー、低分子の薬品成分などが挙げられる。
【0030】
試料分離用キャビラリーと交差する別のキャピラリーを設け、この別のキャピラリーから、送液装置や基板の回転によって生じる遠心力によって、試料分離用キャピラリーに、濃度の薄いゲルや、緩衝液や、純水などからなる第2の媒体(以下、濃縮用溶液という)を送液することによって、ゲル濃/淡界面もしくは水層/ゲル層界面を試料分離用キャピラリー内に形成することができる。
【0031】
これによれば、試料を注入したときに、試料が上記ゲル濃/淡界面もしくは水層/ゲル層界面に移動して濃縮されるので、その状態で電気泳動を開始することによって、分離された試料のシグナル(検出バンド)の幅を変化させずに、その検出強度を高めることができる。
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1〜9には、本発明の試料分離装置の一実施形態が示されている。図1はディスク基板の平面図、図2は同ディスク基板の部分断面図、図3は同ディスク基板のマイクロキャピラリー部を示す説明図、図4は同ディスク基板の上基板を示す底面図、図5は同ディスク基板の下基板を示す平面図、図6は同ディスク基板の下基板を示す底面図、図7は電力供給機構の一例を示す説明図、図8は電力供給機構の他の例を示す説明図、図9は試料分離装置の全体構成を示す説明図である。
【0033】
図1、2に示すように、このディスク基板1は、上基板11aと、下基板11bとを接合して構成されている。下基板11bは、ディスク基板1を保持するための中心穴12を有している。上基板11aは、上記中心穴12よりも大きな内径の中心穴12aを有し、この中心穴12a内周に露出する下基板11b上面には、保持部13が形成されている。
【0034】
図4を併せて参照すると、上基板11aの底面には、マイクロキャピラリー21を形成するための溝31が形成されている。この溝31は、下基板11bで覆われて上記マイクロキャピラリー21を構成する。溝31の両端部は、拡径された円形の凹部をなし、その一部にゲル注入口兼空気孔32が形成されている。上記円形の凹部は下基板11bで覆われて、一端がゲルリザーバー24、他端がゲルレシーバー23を構成している。更に、マイクロキャピラリー21のゲルレシーバー23の近傍には、試料注入口22が形成されている。
【0035】
こうして構成されるマイクロキャピラリー22は、基板11a、11bに対して、その中心から外周方向に向けて放射状に複数個形成されている。ここで放射状とは、図示する実施形態に示されるように半径方向外方に直線状に向かう形状だけでなく、半径方向に対して傾斜した角度で外方に向かう形状や、螺旋状をなして外方に向かう形状なども含む意味である。
【0036】
そして、ゲルリザーバー24のゲル注入口兼空気孔32からゲルを注入し、ディスク基板1を回転させると、遠心力によってゲルリザーバー24に貯えられたゲルが、マイクロキャピラリー22を通ってゲルレシーバー23へ流れ込むようになっている。
【0037】
また、図5に示すように、下基板11bの上面には、マイクロキャピラリー21の両端部に接する環状の電気泳動用電極25、26が形成され、それらが下基板11bを貫通しているビア33a、33bを介して前記下基板11bの裏面に導出され、そこから更に配線25a、26aを介してビア33c、33dに連結されている。更に、ビア33c、33dは、再び下基板11bを貫通して、前記保持部13上に形成された環状電極28,27に接続されている。環状電極28,27は、下基板11bを上から押さえる後述する基板支持具70(図7参照)によって、電極端子71に当接するようになっている。そして、前記試料注入口22から試料を注入し、前記上記電気泳動用電極25、26間に電圧を印加すると、試料が前記マイクロキャピラリー22内のゲル中を電気泳動するようになっている。
【0038】
なお、前記上下の基板11a、11bの材料は、耐熱性、耐薬品性に優れ、かつ微細な構造を形成できる加工性を保持するものが好ましく、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂、ガラス、石英、シリコンなどが好ましい。また、基板上で用いられる薬品、試料成分の性質に応じ、前記マイクロキャピラリーを形成後に適当な表面処理を施すことが好ましい。例えば、マイクロキャピラリー形成後、該基板11a、11b表面を薄いポリエチレン、ポリプロピレン等でコートすることによってDNA、蛋白質等が該基板11a、11bへ表面吸着することを抑制し、かつエタノール等有機溶媒への耐性を向上させることが好ましい。
【0039】
また、前記マイクロキャピラリー21は、該ディスク基板1の回転による遠心力によって試料や緩衝液を滞り無く移送するために、マイクロキャピラリー21全体にわたって均一な深さを有することが好ましく、また経路の幅も均一であることが好ましい。具体的には幅:100〜300μm、深さ:100〜300μmが好ましく、幅:150〜200μm、深さ:150〜200μmがより好ましい。
【0040】
更に、ゲルリザーバー24及びゲルレシーバー23の大きさと深さは、該ディスクの回転の遠心力によって試料や緩衝液を滞り無く移送するために、マイクロキャピラリーと同じ均一な深さを有することが好ましく、またゲルを保持あるいは流入させるため1〜4μlの容積を有することが好ましい。より具体的には、深さ:150〜200μm、半径:1.5mm〜3mmの円筒形が好ましい。
【0041】
次に、前記下基板1bの保持部13に形成された環状電極28,27に電力を供給する機構について説明する。
【0042】
図7に示すように、下基板1bの保持部13を上から押さえる基板支持具70には、該環状電極27、28にそれぞれ接続される複数の支持具側電極端子71が形成されており、基板支持具70が下基板1bを押さえる際に、環状電極27、28と支持具側電極端子71とが接触することによって電気的に接続される。更に、支持具側電極端子71は、基板支持具70の内部もしくは外部を通って支持軸72の外周あるいは内周に形成された支持具側環状電極73へと配線されている。支持具側電極端子71の一つ一つはそれぞれ独立して支持具側環状電極73の一つへと接続し、支持具側環状電極73はブラシ電極75によって図示しない外部回路へと接続されている。
【0043】
したがって、図7に示すように、下基板1bと基板支持具70が接続された状態では、電気泳動用電極25、26からの配線が、環状電極27、28、支持具側電極端子71を経て支持具側環状電極73へと接続され、更に支持具側環状電極73からブラシ電極75を経て外部回路へと接続されているため、ディスク基板1を回転させたままでも電気泳動用電極25、26等に電力を供給することができる。
【0044】
また、図8にはディスク基板1を回転させたまま電気泳動用電極25、26等に電力を供給するための別形態が示されている。図7と同様、前記マイクロキャピラリー21の両端部の電気泳動用電極25,26等が前記下基板1bの保持部13に形成された電力供給のための環状電極27,28等へと配線によって引き出されている。なお、この例では、環状電極が合計4本同心円状に形成されており、4つのラインに電極が供給されるようになっている。
【0045】
そして、基板11bの保持部13上に形成された該環状電極27、28は、図7に示すような支持具70を介した接続ではなく、直接ブラシ電極75を経て図示しない外部回路へと接続されている。なお、該環状電極27、28は該基板11の中央部に形成することによって回転半径を小さくし、環状電極27、28の回転速度をなるべく低くすることが好ましい。
【0046】
次に、図9を参照して本発明の試料分離装置の全体構成について説明する。
本発明の試料分離装置は、上記のディスク基板1を用いて試料成分の分離、検出を行うものであり、基板1を支持して回転させる図示しないターンテーブルと、この基板1にレーザー光を照射して、その反射光を取り出し、検出を行う光検出手段50を有している。
【0047】
光検出手段50は、基板1に対して、半径方向に移動可能に取付けられている。この光検出手段50は、レーザー駆動回路60によってレーザー光を射出するレーザー光源51と、このレーザー光を平行ビームとするマルチレンズ52と、レーザー射出光を通過させ、反射光を取り出すためのビームスプリッタ53と、コリメータ54と、対物レンズ55と、ビームスプリッタ53で分岐された反射光を集光するする集光レンズ56と、集光レンズ56で集光された反射光を受光する光検出素子57と、光検出素子57で検出された光信号を増幅させる増幅回路58と、この増幅回路を通して入力された光信号を処理するサーボ・信号処理LSI59とから構成されている。
【0048】
また、基板1の上下面の所定位置を撮像するように指向されたCCD(電荷結合型)カメラ61が設置されている。
【0049】
したがって、レーザー光源51から射出されたレーザー光は、マルチレンズ52、ビームスプリッタ53、コリメータ54、及び対物レンズ55を通して、基板1の所定位置に照射される。このレーザー光は、例えば、マイクロキャピラリー21で分離された成分を発光させる光源として利用される。
【0050】
この試料分離装置により試料成分を分離する際には、基板1を回転してゲルリザーバー24からゲルレシーバー23に向けてマイクロキャピラリー21にゲルを送液しながら、前記ゲルの送液方向とは反対方向に試料成分が泳動するように電極25,26間に電圧を印加する。この状態で試料注入口22から試料を添加し、試料成分を分離させた後、該マイクロキャピラリー21にレーザー光を照射して、レーザー光によって発光したパターンをCCDカメラ61で撮像し、その発光パターンを図示しないコンピューターによって画像解析することによって成分の検出を行うことができる。
【0051】
次に、図10,11を参照して、本発明で用いられるディスク基板の他の実施形態について説明する。なお、前記図1〜9に示した実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略することにする。
【0052】
この実施形態では、前記マイクロキャピラリー21と所定の角度で交差する試料輸送用マイクロキャピラリー21’が形成されている。その交差部分は、マイクロキャピラリー21の外周側端部に近い部分に設けられている。試料輸送用マイクロキャピラリー21’は、その一端にゲルリザーバー24’が形成されており、他端には及びゲルレシーバー23’が形成されている。そして、基板11a、11bの回転に伴う遠心力によって、ゲルリザーバー24’から試料移送用キャピラリー21’にゲルが注入でき、かつ、試料移送用キャピラリー21’から押し出されたゲルはゲルレシーバー23’に流れ込むことができるようになっている。
【0053】
また、試料輸送用マイクロキャピラリー21’の両端部には、それらに電圧を印加するための電極25’、26’が形成され、これらの電極25’、26’は、ビア33e、33fを介して下基板11bの裏面に導出され、更に配線25a’、26a’を介して、下基板11bの保持部13上に形成された環状電極27’28’に接続されている。
【0054】
更に、前記マイクロキャピラリー21の両端部には、それらに電圧を印加するための電極25,26が形成され、これらの電極25,26は、前記実施形態と同様に、ビア33a、33bを介して下基板11bの裏面側に同移出され、更に配線25a、26aを介して、下基板11bの保持部13上に形成された環状電極27,28に接続されている。したがって、この実施形態の場合は、保持部13上の環状電極が4本形成されている。
【0055】
この実施形態においては、試料注入口22が試料移送用キャピラリー21’のゲルリザーバー24’近傍に形成されている。そして、試料注入口22から試料移送用キャピラリー21’に注入された試料は、該試料移送用キャピラリー21’に印加される電圧によって該試料が有する電荷に従ってゲル中を泳動することができる。
【0056】
このようにして、試料移送用キャピラリー21’によってマイクロキャピラリー21へ試料を移送し、所定の時間後に電圧をマイクロキャピラリー21の両端で印加することによって、該試料移送用キャピラリー21’に流れていた試料を切り取り、マイクロキャピラリー21で電気泳動することができる。また、この場合も、前述の実施形態と同様、基板1を回転させることによって生じる遠心力で、ゲルリザーバー24からゲルレシーバー23に向けてゲルを送液しながら電気泳動を行うことができ、基板1の回転数に従って分離能を制御することができる。
【0057】
次に、図12、13を参照して、本発明で用いられるディスク基板の他の実施形態について説明する。
【0058】
図12に示すように、この実施形態では、水バンド形成用キャピラリー29が、試料分離用キャピラリー21と試料移送用キャピラリー21’の交点から上流側に所定の角度で交差するように形成されており、前記基板1の回転によって生じる遠心力によって、水バンド形成用キャピラリー29内に充填された水を移送し、試料分離用キャピラリー21の途中で、ゲルと水の界面を形成することができるようになっている。また、前記実施形態と同様に、基板1の回転による遠心力によってゲルを送液出来るように、前記試料分離用キャピラリー21は前記基板上に放射状に複数個形成されている。
【0059】
また、図13に示すように、試料分離用キャピラリー21の途中にゲルと水の界面を形成するにあたっては、前記基板の回転によって生じる遠心力C1、C2で試料分離用キャピラリー21中のゲルおよび水バンド形成用キャピラリー29の水が下流へと送液されることによって、ゲル・水界面の平坦な水バンドの形成が妨げられてしまうため、前記電極26以外の電極25、25’、26’に正の電圧を印加して、ゲルリザーバー24へ向かう電気浸透流Pを生じさせ、基板の回転によって生じる遠心力によるゲルの流れを相殺することによって、ゲル・水界面Sを平坦に形成することが好ましい。
【0060】
更に、該水バンド形成用キャピラリー29の端部E1は、前記ゲルリザーバー24の端部E2よりも前記基板における内周側にあり、前記試料分離用キャピラリー21よりも該水バンド形成用キャピラリー29の方が基板の回転によって生じる圧力が高くなって、ゲルが該水バンド形成用キャピラリー29に逆流することを防ぐようになっていることが好ましい。
【0061】
図14には、本発明の試料分離装置の他の実施形態を示す概略構成図が示されている。
【0062】
図14において、基板110は、図示しない上記テーブルによって支持される。この基板110に対して、x−y方向に移動可能に、図示しない光検出手段が設置されている。該光検出手段の構成は、前述した試料分離装置の実施形態と同様である。また、マイクロシリンジ等の送液手段63によって送液管62を通って、基板110に形成された図示しないマイクロキャピラリーにゲルを送液できるようになっている。更に、マイクロキャピラリーには、前記実施形態と同様に電圧を印加して試料成分を電気泳動できるようになっている。
【0063】
したがって、送液手段63によってマイクロキャピラリーにゲルを送液しながら、マイクロキャピラリーに電圧を印加して、試料を前記ゲルの送液方向とは反対方向に電気泳動させることにより、試料を分離することができる。そして、該マイクロキャピラリーにレーザー光を照射して、レーザー光によって発光したパターンをCCDカメラで撮像し、その発光パターンを図示しないコンピューターによって画像解析することによって成分の検出を行うことができる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例において使用したディスクは、予め基板の所定領域に機械加工によりキャピラリー等を形成して用いた。
【0065】
実施例1
図10、11に示す構造の基板(基本構造は図1〜6に示した基板と同じなので、図1〜6に記載された符号を援用して説明する)を用いてDNA断片を分離、検出した。
【0066】
ポリカーボネート製の基板は、所定の領域にキャピラリーを形成するための溝31を形成した上基板11aと、該上基板11aと同じ形状で溝を含まない下基板11bとを貼り合わせることによって形成した。
【0067】
図11に示すように試料移送用キャピラリー21’(長さ3.5mm、幅100μm、深さ150μm)と、試料分離用キャピラリー21(長さ20.5mm、幅100μm、深さ150μm)は、90度の角度で交差し、試料分離用キャピラリー21のディスク内径側端部にゲルリザーバー24、外径側端部にゲルレシーバー23を形成した。また、試料移送用キャピラリー21’の両端には、ゲルリザーバー24’及びゲルレシーバー23’を形成した。また、上基板11aには、ゲルリザーバー24’の近傍に試料注入口22を形成した。また、前記各リザーバー及びレシーバーに相当する位置にはゲル注入口兼空気孔32を形成した。
【0068】
また、下基板11bの表面には図11に示すような配線を白金スパッタによって形成した。そして、図2に示すように、溝を形成した上基板11aと、配線を形成した下基板11bとを、紫外線硬化接着剤を用いて接着した。
【0069】
本実施例中において使用した検体、及び試薬(以下において製造元の記載がない試料は関東化学株式会社製)を以下に示した。
【0070】
試料:20bpラダーDNA(2ng/μl)(Life Technologies 製)
泳動用ゲル:0.7%メチルセルロース(Sigma Chemical Co. 製)、50mM Tris−ホウ酸、0.1% TOTO−3(Molecular Probes, Inc.製)
キャピラリーの各注入口より泳動用ゲルを充填した後、前記試料注入口22より前記試料をマイクロピペットで1μl注入し、下記の実験条件1にて電気泳動を行った。
【0071】
DNAは緩衝液に含まれるTOTO−3によって染色し、試料分離用キャピラリー24上の所定の位置でレーザー光により励起し、蛍光をCCDカメラ61によって検出した。得られた結果を図15に示した。
【0072】
<実験条件1>
(電圧印加)
試料移送時
23’:80V
23・24・24’:ground
分離時
23’・24’:40V
23:ground
24:200V
(基板回転)
試料移送時
0 rpm
分離時
550 rpm
(検出)
レーザー:励起波長 635nm 検出波長 680nm
【0073】
なお、試料の泳動速度に対して最適な送液速度を得るため、下記のハーゲン・ポアズイユの式の変形式(1)に従って送液速度を最適化した回転数で回転させた。
【0074】
【数1】
Figure 2004361198
【0075】
即ち、本実施例における各パラメータを代入することによって送液速度と回転数の関係式(2)を得る。
【0076】
【数2】
Figure 2004361198
【0077】
550rpmの回転数は、毎秒9.2回転であり、従ってこのときゲルの送液速度は下記式で求められる。
【0078】
【数3】
Figure 2004361198
【0079】
比較例1
ゲルを送液し試料の泳動速度を制御することによって分離能が向上できることを明確に示すため、実施例1と同条件で基板回転をかけないことを唯一の条件変更とし、下記実験条件2によって電気泳動を行った場合の実験結果を、図16に示した。
【0080】
<実験条件2>
(電圧印加)
試料移送時
23’:80V
23・24・24’:ground
分離時
23’・24’:40V
23:ground
24:200V
(基板回転)
試料移送時
0 rpm
分離時
0 rpm
(検出)
レーザー:励起波長 635nm 検出波長 680nm
【0081】
図15と図16比較すると、図15は検出された各ピークの時間間隔が広く、また500bp以上の鎖長のDNAも分離することができており、従って実施例1に記載した条件で試料を前記分離用キャピラリー21で電気泳動させながら基板1を回転させてゲルを送液することによってゲルの送液速度分だけ試料の泳動速度が減速され、速度に差がある成分同士の速度の比を大きくすることによって、分離能を向上することが可能であることが実施例1と比較例1の比較によって明らかとなった。
【0082】
比較例2
ゲルを送液し試料の泳動速度を制御することによって、キャピラリー自体の長さを長くした場合と同等の分離能を得ながら泳動にかかる時間はキャピラリーを長くした場合よりも短縮することができ、さらに印加電圧はキャピラリーを長くした場合よりも小さくできることを明確に示すため、分離用キャピラリーの長さを37.5mmに変え、それに伴って印加電圧を下記の通りに変更し、かつ電気泳動中に遠心力を印加しないで、下記実験条件3によって電気泳動を行った場合の実験結果を図17に示した。図17において縦軸は時間(単位:秒)であり、横軸はDNA分子の大きさ(単位:bp)である。
【0083】
<実験条件3>
(電圧印加)
試料移送時
23’:80V
23・24・24’:ground
分離時
23’・24’:40V
23:ground
24:500V
(基板回転)
試料移送時
0 rpm
分離時
0 rpm
(検出)
レーザー:励起波長 635nm 検出波長 680nm
【0084】
図17中の系列2(図15のデータをプロットしたもの)、系列3(比較例2の実験条件3で行った実験結果をプロットしたもの)を比較すると、系列2は、500bpのDNAが検出されるまでにかかる時間は150秒であるのに対し、系列3は同じく500bpのDNAが検出されるまでに210秒かかった。系列2及び系列3は、いずれも20bpのDNAと500bpのDNAが検出される時間間隔が100秒程度で、両者の分離能が同程度であることを示している。
【0085】
更に、本比較例2では、実験条件1や実験条件2で用いた15mmの分離用キャピラリーと同じ電界を印加するために印加電圧が500Vとなっており、分離用キャピラリーの長さを長くすることによって、印加電圧が大幅に上昇している。
【0086】
図17では、系列1(図16のデータをプロットしたもの)も併せて示してあり、20bpのDNAと500bpのDNAが検出される時間間隔が40秒程しかなく、系列2と比較すると分離能の面で劣っていることを示している。すなわち、試料の泳動分離時、分離用キャピラリーに遠心力を印加しゲルを送液してゲルの送液速度分だけ試料の泳動速度を減速し、速度に差がある成分同士の速度の比を大きくすることによって、キャピラリー自体の長さを長くした場合と同等の分離能を得ながら泳動にかかる時間はキャピラリーを長くした場合よりも短縮することができ、さらに印加電圧はキャピラリーを長くした場合よりも小さくできることが、本比較例を持って明確に示された。
【0087】
実施例2
本実施例では、実施例1と同じ基板を用い、ゲルの送液に基板の回転ではなく、マイクロシリンジによる送液を用いた。それ以外の条件は全て同じとした。
【0088】
図2に示したゲルリザーバー24に形成されたゲル注入口兼空気孔32に図13に示したマイクロシリンジ63からの送液管62を接続し、ゲルを送液した。
【0089】
本実施例中において使用した検体、及び試薬を以下に示した。
試料:20bpラダーDNA(2ng/μl)
泳動用ゲル:0.7%メチルセルロース、50mM Tris−ホウ酸、0.1% TOTO−3
【0090】
キャピラリーの各注入口より泳動用ゲルを充填した後、前記試料注入口22より前記試料をマイクロピペットで1μl注入し、下記実験条件4にて電気泳動を行った。
【0091】
DNAは緩衝液に含まれるTOTO−3によって染色され、試料分離用キャピラリー24上の所定の位置でレーザー光により励起し、蛍光をCCDカメラ61によって検出した。
【0092】
<実験条件4>
(電圧印加)
試料移送時
23’:80V
23・24・24’:ground
分離時
23’・24’:40V
23:ground
24:200V
(マイクロシリンジによる送液)
試料移送時
0 mm/s
分離時
0.09 mm/s
(検出)
レーザー:励起波長 635nm 検出波長 680nm
【0093】
測定の結果、図15とほぼ同様の結果が得られた。従って、ゲルの送液を行わなかった比較例1の結果や、キャピラリーの長さを長くした比較例2の結果と比較することによって、ゲルの送液手段によらずマイクロシリンジによる送液も遠心力による送液と同様、ゲルの送液速度分だけ試料の泳動速度を減速し、速度に差がある成分同士の速度の比を大きくすることができ、キャピラリー自体の長さを長くした場合と同等の分離能を得ながら泳動にかかる時間はキャピラリーを長くした場合よりも短縮することができ、さらに印加電圧はキャピラリーを長くした場合よりも小さくできることが、本実施例を持って明確に示された。
【0094】
実施例3
以下に、キャピラリー中に水の層を形成して、水/ゲル界面で試料を濃縮する効果が得られ、かつその水の層が基板の回転による遠心力を利用して形成することができることを示す。
【0095】
図12に示す構造の基板を用いてDNA断片を分離、検出した。基板1上に各キャピラリー等を形成する手段は実施例1と同様であり、本実施例における構造上の変更点は、試料分離用キャピラリー21の途中の図12に示すような位置、すなわち試料分離用キャピラリー21と試料移送用キャピラリー21’の交差点から基板中央方向側、かつゲルリザーバー24よりも基板の中心に近い位置までに水リザーバー29(経路の長さ18mm、幅70μm、深さ30μm)が形成されていることである。
【0096】
本実施例中において使用した検体、及び試薬を以下に示した。
試料:2 μg/ml fx174−Hae III(2ng/μl)
泳動用ゲル:0.3%メチルセルロース、50mM Tris−ホウ酸、0.1% TOTO−3
【0097】
水リザーバーの注入口より純水を、またキャピラリーの各注入口より泳動用ゲルを充填した後、前記試料注入口22より前記試料をマイクロピペットで1μl注入し、下記の実験条件5にて電気泳動を行った。
【0098】
DNAは緩衝液に含まれるTOTO−3によって染色され、試料分離用キャピラリー24上の所定の位置でレーザー光により励起し、蛍光をCCDカメラ61によって検出した。得られた結果を図18(a)に示した。
【0099】
<実験条件5>
(電圧印加)
水バンド形成時
23’・24’・23:100V
24:ground
試料移送時
23’:80V
23・24・24’:ground
水バンドにおいて試料濃縮時
正方向
23’・24’:40V
23:ground
24:200V
逆方向
23’・24’:40V
23:200V
24:ground
分離時
23’・24’:40V
23:ground
24:200V
(基板回転)
水バンド形成時
300 rpm
試料移送時
0 rpm
水バンドにおいて試料濃縮時
0 rpm
分離時
550 rpm
(検出)
レーザー:励起波長 635nm 検出波長 680nm
【0100】
比較例3
試料の泳動路に水バンドを形成し、ゲル/水の界面で試料を濃縮することによって感度と分離能の向上を行うことが出来ることを明確に示すため、実施例2のマイクロキャピラリーと同一の構造で、水バンドの形成過程及びゲル/水界面での濃縮過程を行わず、それ以外の条件は実施例2と全く同じ下記実験条件6により、試料の分離・検出を行った。
【0101】
本比較例中において使用した検体、及び試薬を以下に示した。
試料:2 μg/ml fx174−Hae III(2ng/μl)
泳動用ゲル:0.3%メチルセルロース、50mM Tris−ホウ酸、0.1% TOTO−3
キャピラリーの各注入口より泳動用ゲルを充填した後、前記試料注入口22より前記試料をマイクロピペットで1μl注入し、下記の実験条件6にて電気泳動を行った。
【0102】
DNAは緩衝液に含まれるTOTO−3によって染色され、試料分離用キャピラリー24上の所定の位置でレーザー光により励起し、蛍光をCCDカメラ61によって検出した。得られた結果を図18(b)に示した。
【0103】
<実験条件6>
(電圧印加)
試料移送時
23’:80V
23・24・24’:ground
水バンド形成部通過時
23’・24’:40V
23:ground
24:200V
分離時
23’・24’:40V
23:ground
24:200V
(基板回転)
試料移送時
0 rpm
水バンド形成部通過時
0 rpm
分離時
550 rpm
(検出)
レーザー:励起波長 635nm 検出波長 680nm
【0104】
実施例3において、水バンド形成時に実験条件5に示したような電圧印加を行うのは、電気浸透流の力を利用し、水バンド形成時に水とゲルが水バンド形成部よりも下流へ流れないようにするためである。試料がゲル/水界面に濃縮され、電界によって界面よりも上流へ泳動された後は、ゲルや水が基板回転による遠心力で基板の外側へ向かって流れるが試料の泳動には影響しない。
【0105】
また、比較例3において、水バンド形成部を試料が通過するまで基板回転を行わないのは、基板回転による遠心力で試料泳動用マイクロキャピラリー21に水が流入することを防ぐためである。この操作は実施例3との比較を行うために行ったものであり、実施例3において水バンドを形成してゲル/水界面に試料を濃縮する際の試料の移動分に相当するだけの泳動を行ったものである。
【0106】
図18(a)は実施例3における水バンド形成時、図18(b)は比較例3における水バンドを形成しなかった場合の電気泳動の結果である。図18(b)と比較して図18(a)は明らかにシグナル強度が増大し、それにも関わらずシグナルの幅はほとんど変化していない。仮に図18(b)において試料濃度を高くしたとしても、シグナル強度は増大するが、それに伴いシグナルの幅も大きくなり、結果として分離能は低下することは自明である。また、図18(a)では検出時間90秒の前後にシグナルが2つ存在していることが非常に明らかであるが、図18(b)ではその存在は不確かである。
【0107】
以上のような観点で図18(a)と図18(b)とを比較することによって、ゲル/水界面における濃縮効果によって感度と分離能が向上していることが示され、本発明は感度と分離能の向上に置いて好ましいゲル/水界面を基板の遠心力によって容易に形成することができることが示された。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ゲル状の媒体を一の方向に送液すると共に、ゲル送液方向と対向する方向に試料を電気泳動させることにより、ゲルに対して試料が相対的に泳動する距離を長くすることができる。その結果、ゲルを固定した状態で同じ長さのキャピラリーを用いて電気泳動を行う場合に比べて、試料の分離能力を高めることができる。また、ゲルを固定した状態でキャピラリーの長さを長くして同等の分離能力を付与する場合と比べて、電気泳動時間を短くすることができると共に、印加電圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試料分離装置に用いられるディスク基板の平面図である。
【図2】同ディスク基板の部分断面図である。
【図3】同ディスク基板のマイクロキャピラリー部を示す説明図である。
【図4】同ディスク基板の上基板を示す底面図である。
【図5】同ディスク基板の下基板を示す平面図である。
【図6】同ディスク基板の下基板を示す底面図である。
【図7】本発明の試料分離装置に用いられる電力供給機構の一例を示す説明図である。
【図8】電力供給機構の他の例を示す説明図である。
【図9】試料分離装置の全体構成を示す説明図である。
【図10】本発明で用いられるディスク基板の他の実施形態を示す平面図である。
【図11】同ディスク基板のマイクロキャピラリー部を示す説明図である。
【図12】本発明で用いられるディスク基板の更に他の実施形態におけるマイクロキャピラリー部を示す説明図である。
【図13】同ディスク基板において試料分離用キャピラリー21の途中にゲルと水の界面を形成する状態を示す説明図である。
【図14】本発明の試料分離装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図15】実施例1の方法によりDNA断片を分離、検出した結果を示す図表である。
【図16】比較例1の方法によりDNA断片を分離、検出した結果を示す図表である。
【図17】実施例1、比較例1、2の方法によりDNA断片を分離、検出した場合の泳動時間とDNA分子の大きさとの関係を示す図表である。
【図18】実施例3と比較例3の方法でDNA断片を分離、検出した結果を示す図表である。
【符号の説明】
1 ディスク基板
11a 上基板
11b 下基板
12 中心穴
13 ディスク保持部
21 マイクロキャピラリー
22 試料注入口
23 ゲルレシーバー
24 ゲルリザーバー
25,26 電気泳動用電極
25a、26a 配線
28,27 環状電極
31 溝
32 ゲル注入口兼空気孔
33a、33b、33c、33d ビア
51 レーザー光源
52 マルチレンズ
53 ビームスプリッタ
54 コリメータ
55 対物レンズ
56 集光レンズ
57 光検出素子
58 増幅回路
59 サーボ・信号処理LSI
60 レーザ駆動回路
61 CCDカメラ
70 基板支持具
71 電極端子

Claims (5)

  1. キャピラリー内にゲル状の媒体を充填し、該ゲル状の媒体中で検出対象試料を電気泳動させることにより該試料を固有の集合に分離する試料分離装置において、
    前記ゲル状の媒体を一の方向に送液するゲル送液手段と、
    前記ゲル送液方向と対向する方向に前記試料を電気泳動させる電気泳動手段とを具備することを特徴とする試料分離装置。
  2. 前記試料は負に帯電した試料であり、前記電気泳動手段は前記キャピラリー上の一の位置に正の電荷を印加すると共に、他の位置に負の電荷を印加することで、前記試料の泳動方向を決定し、前記ゲル送液手段は前記正の電荷が印加される位置から前記負の電荷が印加される位置に向けて前記ゲル状の媒体を送液することを特徴とする請求項1記載の試料分離装置。
  3. 前記試料は正に帯電した試料であり、前記電気泳動手段は前記キャピラリー上の一の位置に正の電荷を印加すると共に、他の位置に負の電荷を印加することで、前記試料の泳動方向を決定し、前記ゲル送液手段は前記負の電荷が印加される位置から前記正の電荷が印加される位置に向けて前記ゲル状の媒体を送液することを特徴とする請求項1記載の試料分離装置。
  4. 前記キャピラリーは円盤状ディスク基板の内径から外径に向かって延びる遠心送液領域を有し、前記ゲル送液手段は前記ディスク基板の回転と前記遠心送液領域を利用して前記キャピラリー内にゲルの流れを形成し、前記電気泳動手段は前記ゲルの流れと逆行する方向に前記試料を泳動させることを特徴とする請求項1記載の試料分離装置。
  5. 前記キャピラリーと交差する位置に連通接続された流路をさらに具備し、該流路に第2の媒体を送液させることで、前記ゲル状の媒体と該第2の媒体との混合界面を前記キャピラリー中に形成することを特徴とする請求項1記載の試料分離装置。
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