JP2016099113A - 表面増強ラマン測定方法および表面増強ラマン測定装置 - Google Patents

表面増強ラマン測定方法および表面増強ラマン測定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高次ナノ構造を容易に形成し、かつ、高い検出感度を得ることができる表面増強ラマン測定方法および表面増強ラマン測定装置を提供する。【解決手段】基板上に一対の電極71,72を配設し、貴金属コロイド22および非金属コロイド23を混合した混合溶液24を作製し、基板および一対の電極71,72上に混合溶液24を滴下し、一対の電極71,72間に所定の電圧を印加して混合溶液24に含まれる粒子を電気泳動または誘電泳動させながら、一対の電極71,72のうちの少なくとも一方の電極上または周囲において混合溶液24を移流集積させて、電極上または周囲において貴金属コロイド22に含まれる貴金属ナノ粒子を含むナノ構造体21を形成させ、電極上または周囲において形成されたナノ構造体21に測定試料を含む溶液を含浸させて測定試料の表面増強ラマンスペクトルを測定する。【選択図】図2

Description

本発明は、表面増強ラマン測定方法および表面増強ラマン測定装置に関する。
医療分析、環境分析、食衛生分析等の分野で微量分子を検出するための方法として、表面増強ラマン(Surface Enhanced Raman Scattering:SERS)効果を用いる方法が研究されている。表面増強ラマンを測定するために、貴金属ナノ粒子に囲まれたナノ空隙を有するナノ構造体が用いられる。ナノ構造体は、貴金属ナノ粒子等によって形成された長さが数ナノメートル(10−9m)から数十ナノメートル程度である空隙構造である。貴金属ナノ粒子の被覆分子間力、静電気力、共有結合等を利用して1次元、2次元、もしくは3次元的に貴金属ナノ粒子を規則配列させることで、SERS活性を有するナノ構造体が複数かつ高密度に形成できるようになってきた。ここで、貴金属ナノ粒子が集積して多次元的な構造を形成した状態を高次ナノ構造体と定義する。所定領域にナノ構造体を形成し、ナノ構造体に測定試料を吸着させた上で当該測定試料(を含むナノ構造体)に光を照射することで、表面増強ラマンスペクトルを測定することができる。すなわち、測定試料に含まれる所定の検出物質からのラマン散乱がナノ構造体に存在する貴金属の表面プラズモンと吸着した分子との相互作用により増強されることにより、検出物質の検出が容易に行えるものである。
このように、表面増強ラマン測定においては、上記ナノ構造体の安定的な形成が不可欠である。いままでに知られているナノ構造体の形成態様としては、例えばコロイド粒子を利用して貴金属のナノ構造体を形成するコロイド型の形成態様(例えば非特許文献1参照)や、基板上に予め三次元のナノ構造体を形成するチップ型の形成態様(例えば非特許文献2参照)等が知られている。
M. Moskovits, "Surface-enhanced spectroscopy", Rev. Mod. Phys. 57 (1985) 783. T. Kondo, K. Nishio and H. Masuda, "Surface -Enhanced Raman Scattering in Multilayered Au Nanoparticles in Anodic Porous Alumina Matrix", Appl. Phys. Exp. 2 (2009) 032001.
しかしながら、上記形成態様では、光照射領域におけるナノ構造体の安定的な形成が十分にできない問題がある。例えばコロイド型のナノ構造体を用いる場合、測定試料を流通させる流路内の光照射領域に当該コロイド型のナノ構造体を固定するために、コロイド粒子を利用した貴金属のナノ構造体を凝集剤と混合する工程が必要である。さらに、コロイド粒子によりナノ構造体を形成した後で流路形成を行う必要が生じる。しかし、コロイド状態は、時間的に常に変化し、安定的にナノ構造体を形成させることが難しい。このため、コロイド粒子を所望の位置に誘導して、ナノ構造体を形成させ、ナノ構造体が有効に働く時間内に測定試料をナノ構造体に提供して測定を完了する必要がある。さらに流路形成時に既に形成されたコロイド粒子によるナノ構造体を破壊してしまう恐れもあり、光照射領域に凝集するコロイド粒子の量を定量的に制御することが難しい。一方で、チップ型のナノ構造体を用いる場合、形成されたナノ空間において表面増強ラマンが活性化する部位であるホットスポットの割合がコロイド型に比べて低いため、高い検出感度を得ることができない恐れがある。また、チップ型のナノ構造体を用いる場合、測定試料をナノ構造体に上から滴下して乾燥させるドロップ・アンド・ドライ法による測定が一般的である。より簡単な構成でより容易に測定するためには、溶液中での測定が好ましい。溶液中での表面増強ラマン散乱測定は、生体内の化学反応過程に直結するためバイオセンサーとしての活用が期待されている。また、環境分析においても、液体状態での分析は、その場検出や実際の化学反応過程に近い条件で分析が行えることから、溶液中での表面増強ラマン分光は非常に重要な測定技術であると考えられている。
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、ナノ構造体を容易に形成し、かつ、高い検出感度を得ることができる表面増強ラマン測定方法および表面増強ラマン測定装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る表面増強ラマン測定方法は、基板上に一対の電極を配設し、貴金属コロイドおよび非金属コロイドを混合した混合溶液を作製し、前記基板および前記一対の電極上に前記混合溶液を滴下し、前記一対の電極間に所定の電圧を印加して前記混合溶液に含まれる粒子を電気泳動または誘電泳動させながら、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極上または周囲において前記混合溶液を移流集積させて、前記電極上または周囲において前記貴金属コロイドに含まれる貴金属ナノ粒子を含むナノ構造体を形成させ、前記電極上または周囲において形成された前記ナノ構造体に測定試料を含む溶液を含浸させて前記測定試料の表面増強ラマンスペクトルを測定するものである。
上記方法によれば、移流集積の際に電気泳動または誘電泳動を行うことにより、ナノ構造体を電極上または周囲の所定位置に精度よく形成することができる。また、電気泳動または誘電泳動のための電極をそのまま表面増強ラマン測定のための電極とすることができ、工程を複雑化させることなく電極にナノ構造体を実装することができる。したがって、高次ナノ構造を容易に形成し、かつ、高い検出感度を得ることができる。
前記一対の電極間に印加する前記所定の電圧は、周期的に変化する電圧であり、前記周期的に変化する電圧の周波数および前記一対の電極の幅のうちの少なくとも一方を変化させることにより、前記電極上または周囲において前記ナノ構造体が形成される位置を変化させてもよい。一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加し、当該印加する電圧の周波数および一対の電極の幅のうちの少なくとも一方を変化させることで電極上または周囲においてナノ構造体が形成される位置を制御することができるため、所望の位置にナノ構造体を容易に形成することができ、高い検出感度を得ることができる。
前記一対の電極は、互いに同心円となる2つの仮想円上に形成されてもよい。また、前記非金属コロイドに含まれる非金属微粒子は、ポリスチレンであり、前記貴金属コロイドに含まれる貴金属ナノ粒子は、金であってもよい。
前記ナノ構造体を形成する際に、前記電気泳動または誘電泳動と前記移流集積とによって前記電極上または周囲において凝集した前記貴金属ナノ粒子および前記非金属コロイドに含まれる非金属微粒子のうち前記非金属微粒子を除去してもよい。これにより、貴金属ナノ粒子のみのナノ構造体を形成することができる。
非金属微粒子に貴金属のナノ粒子を被覆したナノシェル構造体を生成し、前記ナノシェル構造体と測定試料とを、一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加して誘電泳動させることにより、前記ナノ構造体内およびその周囲にナノシェル構造体および前記測定試料の混合物を凝集させ、凝集した前記混合物の表面増強ラマンスペクトルを測定してもよい。ナノシェル構造体および測定試料を一対の電極を用いて誘電泳動させることにより、ナノシェル構造体および測定試料の混合物が一対の電極近傍に凝集される。この電極近傍にはナノ構造体が形成されているため、ナノ構造体上にナノシェル構造体を形成することができる。これにより電極の所定位置に表面積の大きい高次ナノ構造が形成される。したがって、特別な工程を要することなく高い検出感度を得ることができる高次ナノ構造を所定の領域上に形成することができる。また、一対の電極に印加する電圧の周波数に応じて誘電泳動を容易に制御できるため、ナノシェル構造体による高次ナノ構造を測定者の技量によらず容易かつ安定的に形成することができる。
本発明の他の態様に係る表面増強ラマン測定装置は、測定試料を収容するための収容部と、前記収容部内に配設された一対の電極と、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極上または周囲に形成された貴金属ナノ粒子を含むナノ構造体と、前記ナノ構造体の形成領域に所定の光を照射する光照射部と、前記ナノ構造体の形成領域で生じる表面増強ラマンスペクトルを測定する測定部と、前記一対の電極に所定の電圧を印加する電圧印加部と、を備え、前記ナノ構造体は、前記収容部に前記貴金属ナノ粒子が含まれる貴金属コロイドおよび非金属コロイドを混合した混合溶液を滴下した状態で、前記制御部により前記一対の電極間に所定の電圧を印加して前記混合溶液に含まれる粒子を電気泳動または誘電泳動させながら、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極上または周囲において前記混合溶液を移流集積させて形成されたものである。
上記構成によれば、移流集積の際に電気泳動または誘電泳動を行うことにより、ナノ構造体を電極上または周囲の所定位置に精度よく形成することができる。また、電気泳動または誘電泳動のための電極をそのまま表面増強ラマン測定のための電極とすることができ、工程を複雑化させることなく電極にナノ構造体を実装することができる。したがって、測定試料や測定条件等に応じて所望のナノ構造体を容易に実装することができるため、種々の表面増強ラマン測定を適切に行うことができる装置とすることができる。
前記一対の電極間に印加する前記所定の電圧は、周期的に変化する電圧であり、前記電圧印加部は、前記周期的に変化する電圧の周波数および前記一対の電極の幅のうちの少なくとも一方を変化させることにより、前記電極上または周囲において前記ナノ構造体が形成される位置を変更可能に構成されてもよい。一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加し、当該印加する電圧の周波数および一対の電極の幅のうちの少なくとも一方を変化させることで電極上または周囲においてナノ構造体が形成される位置を変更することができるため、所望の位置にナノ構造体を容易に形成することができる。
本発明は以上に説明したように構成され、高次ナノ構造を容易に形成し、かつ、高い検出感度を得ることができるという効果を奏する。
図1は本発明の一実施形態に係る表面増強ラマン測定装置を示す概略構成図である。 図2は本実施形態におけるナノ構造体の作製方法を例示するための概念図である。 図3は本実施形態における一対の電極の構造例を示す概略図である。 図4は交流電圧の周波数および一対の電極の幅に応じたナノ構造体の形成位置を示すSEM画像である。 図5は本発明の一変形例に係る表面増強ラマン測定方法に用いられるナノシェル構造体の概要を示す概念図である。 図6は図5に示すナノシェル構造体のSEM画像を示す図である。 図7は一対の電極の他の構成例を示す平面図である。 図8は本実施例において測定された表面増強ラマンスペクトルの測定試料の濃度による変化を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
図1は本発明の一実施形態に係る表面増強ラマン測定装置を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施形態の表面増強ラマン測定装置5は、測定試料Sを収容するための収容部6と、収容部6内に配設された一対の電極7と、一対の電極7のうちの少なくとも一方の電極上または周囲に形成された貴金属を含むナノ構造体21と、ナノ構造体21の形成領域に所定の光を照射する光照射部8と、ナノ構造体21の形成領域で生じる表面増強ラマンスペクトルを測定する測定部9と、一対の電極7に所定の電圧を印加する電圧印加部10と、電圧印加部10から出力される電圧を制御する制御部11と、を備えている。
ナノ構造体21は、ナノ粒子が集積して所定の構造が形成されたものとして定義される。ナノ構造体21には1次元のナノ構造体、2次元のナノ構造体、および3次元以上のナノ構造体(一般的に高次ナノ構造体と呼ばれる)が含まれる。収容部6には、測定試料Sを含む溶液が収納される。この溶液の溶媒は、例えば超純水、イオン液体、有機溶媒等、測定試料Sを分散できる溶媒であれば良い。ただし、溶媒自体のラマン信号を検出する可能性があるので、検出したい測定試料Sだけのラマン測定を行う際は、事前にバックグランドとなる溶媒からのラマンスペクトルを測定しておくことで、測定試料Sのみのラマン信号を取り出すことが可能である。あるいは、測定試料Sを分散できる溶媒で、測定試料Sとラマン信号が重複しない溶媒とを選択すれば、より高速かつ高感度に測定を行うことが可能となる。光照射部8は、例えば近赤外の波長を有するレーザ(例えば785nmの波長を有し、出力30mWのレーザ)等が適用できる。測定部9は、例えば顕微ラマン分光器等のラマン分光器等が適用できる。
本実施の形態において、一対の電極7は、後述するように同心円状の電極として構成される。図1において内側の電極を71、外側の電極を72で示す。収容部6は、例えば電極の形状に合わせて円筒形状を有している。
電圧印加部10は一対の電極7に電圧を印加する電力を供給する電源装置として構成される。制御部11は、電圧印加部10から出力される一対の電極7への所定の電圧の印加の実行を制御するよう構成される。本実施の形態において、一対の電極7間に印加する所定の電圧は、周期的に変化する電圧である。さらに具体的には、周期的に変化する電圧は、所定の周波数を有する交流電圧である。さらに、制御部11は、交流電圧の周波数を設定可能に構成される。制御部11は、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータが適用できる。
このような表面増強ラマン測定装置5において、収容部6内に測定試料Sを含む溶液を収納することにより、電極7上または周囲において形成されたナノ構造体21に当該溶液を含浸させる。これにより、ナノ構造体21に測定試料Sが吸着される。測定試料Sが吸着されたナノ構造体21に光照射部8からの光を照射することにより、ナノ構造体21の表面に吸着した検出物質によって表面増強ラマンスペクトルが発生し、これを測定部9で計測することにより、測定試料S中の検出物質が計測される。
表面増強ラマン測定の際、一対の電極7に電圧を印加してもよい。例えば、一対の電極7を、測定試料S中の検出物質の捕獲、分離等を行うための誘電泳動電極として用いることができる。電極にナノ構造体21が形成されているため、電場勾配が大きくなり、誘電泳動効果が向上することが期待できる。また、例えば、一対の電極7への電圧の印加によって捕獲した検出分子のHOMO、LUMO準位に電子を入れたり、抜いたりして、検出分子の電子状態の制御を行うことができる。表面増強ラマン効果によって、電子授与等によって変化した分子振動状態を検出することができる。さらに、一対の電極7に電圧を印加することにより、検出分子の立体構造を制御し、表面増強ラマン効果で検出することができる。検出分子の電子状態の制御や検出分子の立体構造を制御することにより、検体分子単位のオン/オフ操作が可能となり、メモリや論理素子の単位素子として利用できる可能性がある。また、一対の電極7は、測定試料Sを含む溶液のインピーダンスを計測するためにも用いられ得る。
以下、本実施形態におけるナノ構造体21の形成方法について説明する。図2は本実施形態におけるナノ構造体の作製方法を例示するための概念図である。図2における電極71,72は、図1に示す一対の電極7(71,72)のII−II断面に相当する。まず、図2(a)に示すように、平滑な底面を有する収容部6内に半導体微細加工技術を用いて一対の電極71,72を配設する。次に、図2(b)に示すように、一対の電極71,72が形成された収容部6内に所定の貴金属ナノ粒子が含まれる貴金属コロイド22および所定の非金属微粒子が含まれる非金属コロイド23を混合した混合溶液24を滴下する。
なお、本実施形態においては、収容部6の底面に直接一対の電極7を配設したが、平滑な表面を有する基板上に電極71,72を形成することとしてもよい。この場合、混合溶液24を電極7上に滴下した際に、混合溶液24が流れてしまわないように、電極71,72の周囲の基板上に例えばPDMS(poly(dimethylsiloxane))等により井戸構造を形成してもよい。
図2(c)に示すように、収容部6内にナノ構造体21を形成するための貴金属コロイド22および非金属コロイド23を混合した混合溶液24を滴下した状態で、制御部10は、一対の電極71,72間に所定の電圧Eを印加する。
所定の電圧Eは、直流電圧でもよいし、周期的に変化する電圧でもよい。周期的に変化する電圧の波形は、正弦波(いわゆる交流電圧)、三角波、鋸波等、当該波形が周期的に繰り返される限りいかなる波形でもよい。また、周期的に変化する電圧の波形は、基準電圧(周期の始点および終点の電圧)が0であってもよいし0でなくても(直流成分を含んでも)よい。さらに、周期的に変化する電圧の波形は、周期的に繰り返される波形が基準電圧より高い部分の波形と基準電圧より低い部分の波形とが同じ形または対称形でなくてもよい。例えば半波整流波形および全波整流波形のように基準電圧より低い部分が存在しない波形でもよい。また、例えば基準電圧より高い部分の期間と基準電圧より低い部分の期間との周期に占める割合が異なる(すなわち、デューティ比が50%ではない)波形でもよい。これにより、混合溶液24に含まれる粒子は電気泳動または誘電泳動する。直流電圧のみ印加した場合には電気泳動が生じ、周期的に変化する電圧を印加した場合には誘電泳動が生じる。
以下、所定の電圧Eとして周期的に変化する電圧の例である交流電圧を印加した場合について説明する。なお、周期的に変化する電圧に直流成分が含まれる場合には誘電泳動に加えて電気泳動が生じるが、本明細書においてはこの場合についても広い意味で誘電泳動が生じるとして説明する。図2(c)においては誘電泳動による混合溶液24に含まれる粒子の流れを矢符Fで示す。誘電泳動は、混合溶液24中の非金属コロイド23や貴金属コロイド22の材料に依存するが、材料を固定すれば、電極71,72に印加する電圧の電界強度と周波数とによって、その集積構造を制御することができる。このため、印加電圧の電界強度と周波数とを制御することによって、誘電泳動により移動する混合溶液24中の非金属コロイド23および貴金属コロイド22を、一対の電極7上(電極71上および電極72上)、一対の電極7の近位側端部(電極71の外側、電極72の内側)、および、一対の電極7の遠位側端部(電極71の内側、電極72の外側)の何れかに集積させることができる。また、一対の電極71,72間に交流電圧Eを印加することにより、混合溶液24内に熱対流が生じることにより、後述する移流集積も促進される。
収容部6内に滴下された混合溶液24の溶媒は、自然乾燥していき、それに伴って混合溶液24に含まれる貴金属コロイド22の貴金属ナノ粒子および非金属コロイド23の非金属微粒子が収容部6の底面上で移流集積される。図2(c)においては移流集積による混合溶液24の流れを矢符D1で示し、溶媒の蒸発を矢符D2で示す。移流集積効果(例えば、形成されるナノ構造体21の高さ、密度、非金属微粒子に対する貴金属ナノ粒子の割合等)は、混合溶液24の蒸気圧と大気圧の差によって生じる。移流集積効果は、溶液の濃度等で制御することができる。
この結果、図1の例においては、一対の電極7のうち外側の電極72の外側にナノ構造体21が形成される。本実施の形態においては、一対の電極7が同心円状の電極であるため、外側の電極72と内側の電極71との間で空間的な非対称性が生じる。このような空間的な非対称性を一因として移流集積の効果が一対の電極7間で非対称になることにより、印加する電圧の電界強度および周波数によっては一対の電極7のうちの何れか一方にのみナノ構造体21が形成される場合があるものと推察される。
このように、誘電泳動および移流集積は、電極7等の濡れ性(表面張力)、溶媒の蒸発D2による混合溶液24の対流、一対の電極7間に交流電圧Eを印加することによって生じる混合溶液24の熱対流、DVLO理論に基づく各要素間(粒子間、粒子と電極7との間、粒子と基板との間等)に働く相互作用(引力または斥力相互作用)、および誘電泳動の各原理のバランスによって電極7上またはその周囲にナノ構造体21を形成する作用を奏する。そして、混合溶液24に含まれる粒子を誘電泳動させつつ移流集積させることにより、図2(d)に示すように、一対の電極7のうちの少なくとも一方の電極上またはその周囲の所望の位置に、貴金属コロイド22の貴金属ナノ粒子および非金属微粒子23の非金属微粒子によるナノ構造体21が形成される。さらに、形成されたナノ構造体21を乾燥機などを用いて乾燥させることによりナノ構造体21を電極7上またはその周囲に定着させる。
本実施形態におけるナノ構造体21の形成方法によれば、移流集積の際に電気泳動または誘電泳動を行っている。電圧を印加せずに、移流集積を行うだけでもナノ構造体の形成自体は可能であるが、ナノ構造体が形成される位置を所望の位置に制御することが困難である。そこで、一対の電極7に所定の電圧を印加することにより、混合溶液24を移流集積させるとともに混合溶液24に含まれる粒子を電気泳動または誘電泳動させている。これにより、ナノ構造体21を電極7上または周囲の所定位置に精度よく形成することができる。
ナノ構造体21が電極7の所定の位置に形成できることにより、表面増強ラマン測定の用途に応じて、ナノ構造体21を最適な位置に形成することができる。例えば、電極7上にナノ構造体21を形成した場合には、ナノ構造体21において捕獲した検体分子に電圧を印加して電子状態を変化させることができ、その状態で表面増強ラマン測定を行うことにより、様々な物性を評価できたり、検体分子の制御を行うことができる。また、一対の電極7のうちの一方の電極において他方の電極と対向する側にナノ構造体21を形成した場合には、電気的応答と光の応答とを分離した検体分子の誘電泳動構造として使用できる。また、測定装置の構造に合わせて適切な表面増強ラマン測定を行うためにナノ構造体21の形成位置を制御できることは有用である。
また、電気泳動または誘電泳動のための電極7をそのまま表面増強ラマン測定のための電極7(例えば上述した誘電泳動電極等)とすることができるため、別途ナノ構造体21を形成する土台となるウエルを形成する必要がない。したがって、工程を複雑化させることなく電極にナノ構造体21を実装することができる。このようにして、高次ナノ構造を容易に形成し、かつ、高い検出感度を得ることができる。
なお、周波数に加えて電極7に印加される電圧または電流の大きさを変えることによって、電極7上またはその周囲に形成されるナノ構造体21の位置をより複雑に制御することも可能である。
貴金属コロイド22には、例えば金、銀等の少なくとも1種類の貴金属ナノ粒子が含まれる。例えば金ナノ粒子の粒子径は20nmであり、粒子個数は1.17×10個/μlである。金コロイド以外にも銀や銅等のコロイドも採用可能である。さらに、混合溶液24中に複数種類の貴金属が含まれてもよい。例えば安定性の高い金と表面増強ラマン活性の高い銀とを混合することにより、形成されるナノ構造体21の安定性および活性度を相補的に高めることができると考えられる。また、複数の貴金属を用いることにより、互いに異なる電子移動度により、光照射部8として用いられるレーザの波長領域を相補的に拡張できると考えられる。複数種類の貴金属を用いる場合には、一対の電極7のそれぞれの電極に互いに異なる貴金属が含まれるナノ構造体21を形成することとしてもよいし、同じ電極箇所に複数種類の貴金属が含まれるナノ構造体21を形成することとしてもよい。
また、非金属コロイド23に含まれる非金属微粒子は、例えば、粒子径1000nm、粒子個数7.28×10個/μlのポリスチレン等が用いられる。非金属コロイド23の非金属微粒子には、抗体やタンパク質等の測定試料Sを固定化するための官能基が接続されていてもよい。官能基は、所望の検出物質に応じて定められる。例えば、検出物質が4bpy(4, 4’-ビピリジン:4, 4’-bipyridine)である場合、官能基は、例えばアミジン(amidine)が用いられる。
なお、非金属コロイド23の非金属は、ポリスチレンに限られない。例えば、非金属微粒子23として、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、カーボン、フラーレン、グラファイト、酸化チタン(TiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛PbTiO3、ヒドロキシアパタイト、ポリマーラテックス、硫化ポリスチレンラテックス、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンド、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等を採用可能である。
また、官能基は、アミジンに限られない。例えば、官能基として、Poly(anetholesulfonic acid, sodium salt)、Poly(sodium 4-styrenesulfonate)、Poly(4-styrenesulfonic acid), Poly(allylamine hydrocholoride)、Poly(diallydimethylammonium chloride)、ポリエチレンイミン(Polyethylenimine)、ポリエチレングリコール(Poly(ethyleneglycol)、PEG)、PEG-aniIgG、ポリ(γ-メチル-L-グルタメート-co-L-グルタミン酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、bis-4,4’-(dithiobutylbenzeyl)-N,N,N’,N’-tetraethylamine(TBA)、ペプチド鎖、DNAまたはRNA、レドックス反応を起こす官能基を接続したDNAまたはRNA、チオール基等を採用可能である。例えば、刺激応答性のポリペプチドは、周囲の条件により、α―へリックス構造、βシート構造、ランダムコイル構造をとることが知られており、周囲にある環境との相互作用による表面増強ラマンスペクトルの変化が期待される。
上記非金属微粒子および官能基を適宜組み合わせることにより、貴金属ナノ粒子とともにナノ構造体21を形成することができる。例えば、上記ポリスチレンにアミジンが接続されたナノ構造体21の他に、負帯電のシリカにカチオン性高分子電解質であるポリエチレンイミンが接続されたナノ構造体21を形成することができる。
また、ナノ構造体21の形成に際しては、電気泳動または誘電泳動と移流集積とによって電極7上または周囲において凝集した貴金属コロイド22の貴金属ナノ粒子および非金属コロイド23の非金属微粒子のうち、非金属微粒子を除去することとしてもよい。この場合、ナノ構造体21は、貴金属のみのナノ構造体となる。例えば、ポリスチレンを非金属微粒子23に用いる場合には、ナノ構造体21を乾燥させた後に、ナノ構造体21をジクロロメタンに10分間浸漬させることにより、ポリスチレンを除去することができる。
図3は本実施形態における一対の電極の構造例を示す概略図である。図3に示すように、一対の電極7は、例えば互いに同心円となる2つの仮想円C1,C2上にそれぞれ形成された電極71,72を有する。一対の電極7の作製方法は、例えばガラス製の収容部6上に、フォトレジストを塗布し、電極形成用のマスクを用いてフォトレジストを露光および現像し、その上にクロム(Cr)等の密着層および金(Au)等の導電層をそれぞれスパッタにより形成した上で、フォトレジストならびにフォトレジスト上の密着層および導電層を除去することにより、同心円状の電極構造を形成する。
電極71の内周面の半径は例えば3mmであり、電極幅(反径方向の長さ)は例えば50μm〜150μmであり、電極の厚みは例えば5μm〜10μmである。図3において、内側の電極71の外周面とこれに対向する外側の電極72の内周面との間隔が電極幅より大きい例が示されているが、電極幅より小さくてもよいし、電極幅と同じに設定されてもよい。
このような電極構造において、ナノ構造体21は、2つの電極71,72の少なくとも何れか1つの電極上またはその周囲に形成される。すなわち、電極71の内側、電極71上、電極71の外側、電極72の内側、電極72上、および電極72の外側のうちの少なくとも何れか1箇所に、ナノ構造体21が形成される。
なお、電極71,72に加えて、2つの仮想円C1,C2と同心円となる仮想円上に第3の電極を設けてもよい。これにより、3端子プローバを構成する3つの電極として構成される。例えば最も外側に位置する電極をグランド電極とし、他の2つの電極71,72を信号電極とする。この場合、所望の電界分布を得るために、3つの電極のうちの少なくとも2つの電極の電極幅を異ならせてもよい。
ナノ構造体21の形成位置は、一対の電極7間に印加する交流電圧の周波数および一対の電極7の幅のうちの少なくとも一方を変化させることにより、変化する。図4は交流電圧の周波数および一対の電極7の幅に応じたナノ構造体21の形成位置を示すSEM画像である。図4の例においては、貴金属コロイドとして金コロイド、非金属コロイドとしてポリスチレンコロイド、溶媒として超純水に測定試料Sである4bpyを分散させたものを用いて誘電泳動および移流集積を行った結果を示す。なお、図4の例においては、非金属微粒子23であるポリスチレンを除去し、金ナノ粒子のみのナノ構造体21を形成している。また、一対の電極7として図3に示したのと同様の同心円状の電極71,72を用いた。
図4(a)は、電極7(71,72)の幅Wを150μmとし、電極7間に印加する交流電圧の周波数fを10kHzとしたときのSEM画像であり、図4(b)は、電極7(71,72)の幅Wを100μmとし、電極7間に印加する交流電圧の周波数fを1kHzとしたときのSEM画像であり、図4(c)は、電極7(71,72)の幅Wを50μmとし、電極7間に印加する交流電圧の周波数fを100kHzとしたときのSEM画像である。図4(a)〜図4(b)は、それぞれ、左側に示す電極部分のうち、ナノ構造体21が形成された箇所を右側に拡大して示す。
図4(a)においては、電極7(71)の内側(仮想円C1の中心側)にナノ構造体21が形成され、図4(b)においては、電極7(71,72)上にナノ構造体21が形成され、図4(c)においては、電極7(72)の外側(仮想円C2の外側)にナノ構造体21が形成される結果となった。
なお、図4(a)に示される電極の内側にナノ構造体21が形成された場合および図4(c)に示される電極の外側にナノ構造体21が形成された場合において一対の電極7の一方にだけナノ構造体21が形成された要因は、電極7の空間的な非対称性による移流集積の非対称性が直接作用したことだけでなく、一対の電極7の双方の周囲(内側または外側)にナノ構造体21が凝集した場合であっても、本例のように非金属微粒子であるポリスチレンを除去することによって一対の電極7のうちの他方における凝集状態が崩れ、結果として一対の電極7のうちの他方のみにナノ構造体21が形成されたことも、その一因として推察される。非金属微粒子の除去によって凝集状態が崩れるのは、電極7の周囲に凝集した非金属微粒子(ポリスチレン)および貴金属ナノ粒子(金ナノ粒子)が、非金属微粒子の間に貴金属ナノ粒子が非金属微粒子間の隙間を埋めるように位置した状態となっていないからであることが考えられる。非金属微粒子の間に貴金属ナノ粒子が位置しない凝集態様となるのは、移流集積の非対称性が一因であると思われる。
このように、一対の電極7間に印加する交流電圧の周波数および一対の電極7の幅のうちの少なくとも一方を変化させることで電極7上または周囲においてナノ構造体21が形成される位置を制御することができるため、所望の位置にナノ構造体21を容易に形成することができ、高い検出感度を得ることができる。
なお、図4の結果(それぞれの位置にナノ構造体21が形成される電極幅Wと周波数fとの組み合わせ)は、貴金属コロイド、非金属コロイド、溶媒の材料等によって変化し得る。
[変形例]
上記実施形態においては、予め電極上または周囲にナノ構造体21を形成し、測定試料Sの測定時においては、検出物質を含む測定試料Sと表面増強ラマンに影響を与えない溶媒との溶液を収容部6内に滴下して表面増強ラマン測定を行っている。
これに代えて、表面増強ラマン測定時において、非金属微粒子2に貴金属ナノ粒子3を被覆したナノシェル構造体1を生成し、ナノシェル構造体1と測定試料Sとを、所定位置に上記ナノ構造体21が形成された表面増強ラマン測定装置5の収容部6内に滴下し、一対の電極7間に交流電圧を印加して誘電泳動させることとしてもよい。これにより、ナノ構造体21内およびその周囲にナノシェル構造体1および測定試料Sの混合物が凝集される。測定部9は、凝集した混合物の表面増強ラマンスペクトルを測定する。
図5は本発明の一変形例に係る表面増強ラマン測定方法に用いられるナノシェル構造体の概要を示す概念図であり、図6は図5に示すナノシェル構造体のSEM画像を示す図である。図5に示すように、本変形例における表面増強ラマン測定に用いるナノシェル構造体1は、非金属微粒子2に貴金属ナノ粒子3を被覆した構造を有している。非金属微粒子2および貴金属ナノ粒子3は、ナノ構造体21の形成時に用いた非金属微粒子(例えばポリスチレン粒子)および貴金属ナノ粒子(例えば金ナノ粒子)である。
この貴金属ナノ粒子を予め50倍に濃縮する。この結果、貴金属ナノ粒子の粒子個数は5.85×1010μlとなる。この後、非金属微粒子2と貴金属ナノ粒子3とを混合し、非金属微粒子2に貴金属ナノ粒子3が被覆されたナノシェル構造体1を形成する。非金属微粒子2は、表面がプラスにチャージされている一方、貴金属ナノ粒子3は、表面がマイナスにチャージされている。したがって、これらを混合すると両者の間でクーロン力およびファンデルワールス力が働き、非金属微粒子2の表面に貴金属ナノ粒子3が吸着し、被膜される。なお、非金属微粒子2は、官能基4によってチャージ状態を制御することができる。また、貴金属ナノ粒子3は、その作製過程においてチャージ状態を制御することができる。官能基4についてもナノ構造体21において示したものと同様の材料を使用可能である。
被覆率に応じて非金属微粒子2と貴金属ナノ粒子3との混合比が適宜調整される。被覆率100%の場合、図5に示すように、1つのポリスチレン粒子に対して複数層の金ナノ粒子を被覆する必要があり、結果として約25000個の金ナノ粒子が必要となる。このため、例えば被覆率100%のナノシェル構造体1を形成するために、ポリスチレンに対する金の混合比をAu/PS=100/1とする。なお、被覆率は、複数の貴金属ナノ粒子3により形成されるナノ粒子間ギャップとナノシェル構造体1に吸着する検出物質との関係に応じて適宜設定される。また、貴金属ナノ粒子3の粒子個数が少ないと非金属微粒子2同士が凝集するため、貴金属ナノ粒子3の混合率は被覆率に基づいて計算される理論値より多くなるようにすることが好ましい。これにより、1つの非金属微粒子2に複数層の貴金属ナノ粒子3が被覆され、検出物質が吸着するホットスポットの数を増やしたり、ナノシェル構造体1をより安定的に形成することができる。
制御部10は、収容部6にナノシェル構造体1および測定試料Sを収納した状態で、一対の電極7間に所定の周波数を有する交流電圧等の周期的に変化する電圧を印加することにより、ナノシェル構造体1と測定試料Sとを誘電泳動させる。これにより、一対の電極7のうちの少なくとも一方の電極上または周囲においてナノシェル構造体1および測定試料Sの混合物が凝集する。
一対の電極7近傍におけるナノシェル構造体1および測定試料Sの混合物の凝集態様は、測定試料Sの電気的特性と一対の電極7へ印加する電圧の周波数とに関連して変化する。制御部10は、一対の電極7に印加する電圧の周波数を変更することによりナノシェル構造体1および測定試料Sの混合物を凝集させる位置を制御可能に構成される。このように、制御部10により一対の電極に印加する電圧の周波数を変更することで、一対の電極7近傍に凝集されるナノシェル構造体1を容易に制御することができる。
上記構成の表面増強ラマン測定装置5によれば、ナノシェル構造体1および測定試料Sを収容部6内で一対の電極7を用いて誘電泳動させることにより、ナノシェル構造体1および測定試料Sの混合物が一対の電極7近傍に凝集される。
この電極7近傍には上述したナノ構造体21が形成されている。一方、上述したように、ナノシェル構造体1は誘電泳動時に印加する電圧の周波数で制御可能である。したがって、ナノ構造体21が形成されている位置にナノシェル構造体1が凝集するような周波数の電圧を印加することにより、ナノ構造体21上にナノシェル構造体1が形成される。これにより電極7の所定位置に表面積の大きい高次ナノ構造が形成される。
したがって、特別な工程を要することなく高い検出感度を得ることができる高次ナノ構造を所定の領域上に形成することができる。また、一対の電極7に印加する電圧の周波数に応じて誘電泳動を容易に制御できるため、ナノシェル構造体1による高次ナノ構造を測定者の技量によらず容易かつ安定的に形成することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
例えば、上記実施形態においては、一対の電極7として互いに同心円となる円形電極構造を有する構成について説明したが、これに限られない。例えば、一対の電極7は櫛歯電極構造を有していてもよい。図7は一対の電極の他の構成例を示す平面図である。図7に示す例において、一対の電極7のそれぞれは、幹電極部11と、幹電極部11から延び、それぞれが互いに平行な複数の枝電極部12と、を含む櫛歯電極構造を有している。一対の電極7のうちの一方の電極における複数の枝電極部12が、他方の電極における複数の枝電極部12間に配置される。一対の電極7として上記のような櫛歯電極構造を採用することにより、ナノシェル構造体1をより安定的に電極上または周囲に凝集させることができる。枝電極部12の幅は例えば50〜150μmである。
[実施例]
以下に、電気泳動または誘電泳動と移流集積とによって形成されたナノ構造体21を備えた表面増強ラマン測定装置5を用いた表面増強ラマン測定の効果についての評価実験の結果を示す。図8は本実施例において測定された表面増強ラマンスペクトルの測定試料の濃度による変化を示すグラフである。
本実施例におけるナノ構造体21は、図3に示す電極7(71,72)の幅Wを100μmとし、電極7間に印加する交流電圧の周波数fを1kHzとしたときに、電極7(71)上に形成されたものである。すなわち、図4(b)に示したのと同様のナノ構造体21が形成されたものである。なお、本実施例においても、非金属コロイド23の非金属微粒子であるポリスチレンを除去し、金ナノ粒子のみのナノ構造体21を形成している。本実施例における測定試料Sは、100μMの濃度の4bpyおよび100nMの濃度の4bpyを用いた。併せて測定試料Sがない場合(超純水のみの場合)の表面増強ラマンスペクトルの測定も行った。
図8に示すように、4bpyに由来する1600cm−1の表面増強ラマンスペクトルは、検体濃度が100nMであっても確認できている。測定試料Sが存在しない場合のラマン強度はノイズとみなせるので、100nMの測定試料Sであっても、当該ノイズとは十分判別可能な強度を検出することができ、測定試料Sが4bpyであることを十分に同定可能と言える。
以上より、本実施例の測定装置において、測定試料Sにおける検出物が非常に低い濃度であっても、表面増強ラマンスペクトルを計測することが可能であることが示された。したがって、本実施例の測定装置において表面増強ラマンスペクトルを高感度に測定できることが示される結果となった。
本発明の表面増強ラマン測定方法および表面増強ラマン測定装置は、高次ナノ構造を容易に形成し、かつ、高い検出感度を得るために有用である。
1 ナノシェル構造体
2 非金属微粒子
3 貴金属ナノ粒子
5 表面増強ラマン測定装置
6 収容部
7,71,72 電極
8 光照射部
9 測定部
10 電圧印加部
11 制御部
21 ナノ構造体
22 貴金属コロイド
23 非金属コロイド
24 混合溶液

Claims (8)

  1. 基板上に一対の電極を配設し、
    貴金属コロイドおよび非金属コロイドを混合した混合溶液を作製し、
    前記基板および前記一対の電極上に前記混合溶液を滴下し、前記一対の電極間に所定の電圧を印加して前記混合溶液に含まれる粒子を電気泳動または誘電泳動させながら、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極上または周囲において前記混合溶液を移流集積させて、前記電極上または周囲において前記貴金属コロイドに含まれる貴金属ナノ粒子を含むナノ構造体を形成させ、
    前記電極上または周囲において形成された前記ナノ構造体に測定試料を含む溶液を含浸させて前記測定試料の表面増強ラマンスペクトルを測定する、表面増強ラマン測定方法。
  2. 前記一対の電極間に印加する前記所定の電圧は、周期的に変化する電圧であり、
    前記周期的に変化する電圧の周波数および前記一対の電極の幅のうちの少なくとも一方を変化させることにより、前記電極上または周囲において前記ナノ構造体が形成される位置を変化させる、請求項1に記載の表面増強ラマン測定方法。
  3. 前記一対の電極は、互いに同心円となる2つの仮想円上に形成される、請求項1または2に記載の表面増強ラマン測定方法。
  4. 前記非金属コロイドに含まれる非金属微粒子は、ポリスチレンであり、前記貴金属コロイドに含まれる貴金属ナノ粒子は、金である、請求項1から3の何れかに記載の表面増強ラマン測定方法。
  5. 前記ナノ構造体を形成する際に、前記電気泳動または誘電泳動と前記移流集積とによって前記電極上または周囲において凝集した前記貴金属ナノ粒子および前記非金属コロイドに含まれる非金属微粒子のうち前記非金属微粒子を除去する、請求項1から4の何れかに記載の表面増強ラマン測定方法。
  6. 非金属微粒子に貴金属ナノ粒子を被覆したナノシェル構造体を生成し、
    前記ナノシェル構造体と測定試料とを、一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加して誘電泳動させることにより、前記ナノ構造体内およびその周囲にナノシェル構造体および前記測定試料の混合物を凝集させ、
    凝集した前記混合物の表面増強ラマンスペクトルを測定する、請求項1から5の何れかに記載の表面増強ラマン測定方法。
  7. 測定試料を収容するための収容部と、
    前記収容部内に配設された一対の電極と、
    前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極上または周囲に形成された貴金属ナノ粒子を含むナノ構造体と、
    前記ナノ構造体の形成領域に所定の光を照射する光照射部と、
    前記ナノ構造体の形成領域で生じる表面増強ラマンスペクトルを測定する測定部と、
    前記一対の電極間に所定の電圧を印加する電圧印加部と、を備え、
    前記ナノ構造体は、前記収容部に前記貴金属ナノ粒子が含まれる貴金属コロイドおよび非金属コロイドを混合した混合溶液を滴下した状態で、前記電圧印加部により前記一対の電極間に所定の電圧を印加して前記混合溶液に含まれる粒子を電気泳動または誘電泳動させながら、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極上または周囲において前記混合溶液を移流集積させて形成されたものである、表面増強ラマン測定装置。
  8. 前記一対の電極間に印加する前記所定の電圧は、周期的に変化する電圧であり、
    前記電圧印加部は、前記周期的に変化する電圧の周波数および前記一対の電極の幅のうちの少なくとも一方を変化させることにより、前記電極上または周囲において前記ナノ構造体が形成される位置を変更可能に構成される、請求項7に記載の表面増強ラマン測定装置。

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