JP2007051941A - 微粒子集合体配列基板およびその製造方法、並びに当該基板を用いた微量物質の分析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 この微粒子集合体配列基板は、ナノ粒子が配列して形成されたナノ粒子配列構造領域が少なくとも1以上存在しており、当該ナノ粒子配列構造領域においては、ナノ粒子が列をなした状態で配置されている。ナノ粒子としては、粒子径10〜100nmの金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることが望ましく、SERS基質として機能し物質の分析に利用することができる。上記の基板は、粒子径が大きい方の第一の粒子の下方側に、溶媒中に分散された粒子径が小さい方の第二の粒子が自己集合するという現象を利用して製造可能である。
【選択図】 図1
Description
M.Fleischmann, P.J. Hendra, and A.J. McQuillan, Chem. Phys. Lett., 26,163 (1974)
福岡隆夫、森康維、ケミカル・エンジニヤリング、36〜39ページ(2004年8月号) John C. Hulteen et al.,Nanosphere Lithography: Size-Tunable Silver Nanoparticle and Surface ClusterArrays, J. Phys. Chem. B 1999, 103, 3854-3863 Traci R. Jensen et al.,Nanosphere Lithography: Tunable Localized Surface Plasmon Resonance Spectra ofSilver Nanoparticles, J. Phys. Chem. B 2000, 104, 10549-10556
第2に、本発明の課題は、このようなナノ粒子配列構造領域が基板上に形成された微粒子集合体配列基板を、比較的簡便に製造するのに適した方法を提供することでもある。
第3に本発明は、上記の微粒子集合体配列基板を用いて、測定対象物中に存在する微量物質を高分解能・高感度で分析するための方法を提供することを課題とするものでもある。
更に、本発明は、上記の特徴を有した微粒子集合体配列基板において、前記基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成された複数のナノ粒子配列構造領域が、互いに接触せず離散的に形成されていることを特徴とするものでもある。
又、本発明は、上記の特徴を有した微粒子集合体配列基板において、前記ナノ粒子が、粒子径10〜100nmの金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることを特徴とするものでもある。
又、本発明は、上記の特徴を有した微粒子集合体配列基板の製造方法において、前記工程Cにおける第一の粒子の除去を、加熱による焼成処理又は、有機溶媒を用いた溶解処理によって行うことを特徴とするものである。本発明では、前記第一の粒子と前記基板との当接点を中心とする円状に、第二のナノ粒子が列をなした状態が、鎖状あるいはリング状であってもよい。
又、本発明の製造方法は、前記基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成された複数のナノ粒子配列構造領域が、互いに接触せず離散的に形成されていることを特徴とするものでもある。
更に、本発明の製造方法は、前記ナノ粒子が、粒子径10〜100nmの金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることを特徴とするものでもある。
又、本発明は、上記の分析方法において、前記基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成された複数のナノ粒子配列構造領域が、互いに接触せず離散的に形成されていることを特徴とするものでもある。
更に、本発明は、上記の分析方法において、前記ナノ粒子が、粒子径10〜100nmの金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることを特徴とするものでもある。
又、第一の粒子と第二の粒子を同時に展開させるという簡便なウエットプロセスで、第二の粒子の配列構造領域が規則的に配列された基板を製造することは従来知られておらず、第一の粒子と第二の粒子の粒子径及び混合比率を適宜選択することによって、第二の粒子の配列状態(粒子同士の間隔および密接状態)を種々変化させることが可能であり、第二の粒子の種類に応じて、多様な基板を再現性良く、大がかりな装置を必要とせずに、簡便に製造することができる。
更に、金や銀のナノ粒子が列をなした状態で配置されたナノ粒子配列構造領域は、効率的に光を受けるアンテナとなり、表面増強ラマン散乱の基質として機能し、有効な分析デバイスとなる。
本発明の微量物質の分析方法を用いることにより、測定対象物中に存在する微量物質を高感度で分析することができ、従来の蛍光計測では困難な物質の同定や、干渉の少ない近赤外光による分光測定や、色素標識が不要な分光測定が可能である。
図1(a)は、本発明の微粒子集合体配列基板(基板の材質:マイカ)の表面に形成されたナノ粒子配列構造領域(金ナノ粒子集合体)の配置状態を示す顕微鏡写真であり、この顕微鏡写真は、走査型レーザー顕微鏡(オリンパス社製、OLS3000)を用いて撮影されたものである。又、図1(b)は、図1(a)の基板上に形成されたナノ粒子配列構造領域における第二の粒子(金ナノ粒子)の配列状態及び集合状態を示す顕微鏡写真(走査範囲:15μm×15μm)であり、この顕微鏡写真は、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所社製、SPM−9500J3)を用いて撮影されたものである。
図1(a)に示されるようにして、本発明の微粒子集合体配列基板においては、基板上に、ナノ粒子配列構造領域が規則正しく配置されて複数箇所に離散的に存在しているが、本発明はこのような配列に限定されるものではなく、ナノ粒子配列構造領域は、基板上に少なくとも1以上存在すればよい。そして、本発明の微粒子集合体配列基板におけるナノ粒子配列構造領域においては、図1(b)に示されるようにして、金ナノ粒子(粒子径:50nm)が、二次元的に列をなした状態で配置されている。第二のナノ粒子は、鎖状あるいはリング状に列をなして配列していてもよい。
尚、基板としては、水系分散液との親和性に優れた材質のものであればよいが、特にガラス板やマイカ板が好ましく、本発明における基板は、酸処理やプラズマ処理や紫外線照射などの公知の方法にて親水化処理されてもよい。
まず最初に、粒子径が1〜10μmである第一の粒子と、粒子径が10〜100nmの第二のナノ粒子とを準備する。第一の粒子としては、例えば、ポリスチレン粒子やポリメタクリレート粒子等の高分子物質粒子やシリカ等の無機物質粒子を用いることができる。第二のナノ粒子としては、前記のような各種の金属ナノ粒子、無機物ナノ粒子、高分子物質ナノ粒子等を使用することができ、SERS基質として用いる場合には、金ナノ粒子や銀ナノ粒子を用いる。準備した前記第一の粒子と前記第二の粒子とを適切な混合比率にて溶媒中に分散させて分散液を調製する(工程A)。そして、この分散液を基板上に展開塗布して乾燥を行うと、基板上において、第一の粒子が互いに密接した状態で配列した単層膜を形成する一方、粒子径が小さい方の第二のナノ粒子が、各第一の粒子の下側周面において、第一の粒子と基板との当接点を中心とする円状に自己集合し(図2参照)、溶媒が蒸発した際には、第二のナノ粒子が列をなした状態で配列した状態となる(工程B)。このとき、円状に自己集合する第二のナノ粒子は、鎖状あるいはリング状に列をなして配列することがある。最後に、上記工程Bで得られた基板上に存在している第一の粒子を、加熱による焼成処理や有機溶媒を用いた溶解処理等によって除去し、基板上に、第二の粒子が列をなした状態で配列したナノ粒子配列構造領域を形成させる(工程C)。
上記工程Aにて分散液を調製する際、第一の粒子がポリスチレン粒子で、第二のナノ粒子が金ナノ粒子である場合には、市販のポリスチレン粒子と金ナノ粒子とを水に分散させて調製することもできるが、市販の金コロイド溶液中にポリスチレン粒子を分散させてもよい。又、溶媒は水が一般的ではあるが、これに限定されるものではない。
この工程Bにおいては、図2に示されるようにして、コーティングした直後には分散液中にナノ粒子は分散しているが、溶媒の蒸発に伴い、溶液と大気との界面の低下(メニスカスの形成)に伴う分散液の流れのためにナノ粒子も移動し、最終的に第一の粒子の下側に入り込んで、ナノ粒子が列をなした状態に配列し、乾燥により基板上に固定される。
加熱による焼成処理
第一の粒子としてポリスチレン粒子を用いた場合の最適加熱温度を調べるために、熱分析装置システム(WS002、マックサイエンス社製)を用いてポリスチレン粒子の熱分析を行った結果、完全燃焼温度は約450℃であることが確認された。従って、この温度よりも低い温度においてはポリスチレン粒子が基板上に残存することになり、逆に、ナノ粒子として金ナノ粒子を用いて600℃以上の温度で加熱を行った場合には、金ナノ粒子の溶融が起こる。これらのことから、焼成処理によりポリスチレン粒子を除去する場合には、500℃前後の温度が好ましい。
有機溶媒を用いた溶解処理
第一の粒子としてポリスチレン粒子を用いた場合、この粒子を溶解除去するには、トルエンやジクロロメタン等の有機溶媒が好ましく、特にジクロロメタンが好ましい。しかしこれに限定されるものではない。尚、この溶解処理は、基板を有機溶媒中に浸漬させた状態で静置させるだけでよい。
本発明では、この工程Cによって、第一の粒子を除去され、基板上に、第二の粒子が列をなした状態で配列したナノ粒子配列構造領域が離散的に形成された微粒子集合体配列基板が製造される。
本発明の微量物質分析法においては、微粒子集合体配列基板をSERS基質として用い、通常のラマン散乱強度に比べて104〜1014倍も増大する表面増強ラマン散乱(SERS)を利用する。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
工程A:
第一の粒子としてポリスチレンラテックス(粒子径6μm,2.6wt%,3.0×108粒子個数/ml,Polysciences, Inc.社製)、第二のナノ粒子として、金コロイド溶液(粒子径50nm,4.5×1010粒子個数/ml,British BioCell社製)を用いた。これらを、ポリスチレン粒子と金ナノ粒子との粒子個数比が1:18となるように混合したものを試料溶液として用いた。
工程B:
基板には、ガラス板とマイカ板を用いた。ガラス板には、直径15mmのカバーガラス(MATSUNAMI社製)を硝酸(特級、含有量61%、和光純薬工業社製)中で一晩静置することによって親水化処理し、その後 MILLI-Q水で洗い流したものを乾燥させて用いた。マイカ板(応研商事社製)は1.5cm×1.5cmの大きさに鋏で切り、実験直前にテープでへき開してその内側の面を使用した。
そして、市販のスピンコーター(1H−DX2,ミカサ社製)を用いて、上記基板を200rpmの回転速度にて回転させ、その上から上記の試料溶液約75mlを滴下し、塗布・乾燥させた。尚、回転時間は試料溶液が乾くまでとし、約7分間とした。このようにして得られた基板の表面を、走査型電子顕微鏡(S−4300、日立製作所)を用いて観察したところ、約1500μm×1700μmの単層膜が得られ、そのうち50μm×100μm程度の面積においては、全く欠陥のない単層膜であることが確認された。
工程C:
その後、上記基板をそれぞれジクロロメタン(和光純薬工業社製)中に5分間静置し、ポリスチレン粒子を溶解除去することによって、基板上に金ナノ粒子が配列して形成されたナノ粒子配列構造領域が存在し、当該ナノ粒子配列構造領域において、金ナノ粒子が列をなした状態で鎖状あるいはリング状に配置された構造の本発明の微粒子集合体配列基板が製造できた。
尚、このようにして得られた微粒子集合体配列基板の表面を、走査型レーザー顕微鏡(オリンパス社製、OLS3000)を用いて撮影したところ、図1(a)に示されるような画像が得られ、この画像から、金の集合体と考えられるナノ粒子配列構造領域の中心間距離は約6μmであることがわかり、この距離は、使用したポリスチレン粒子の粒子径(6μm)と一致している。従って、ナノ粒子配列構造領域の配置から、各集合体は、ポリスチレン粒子が基板(図1(a)の基板はマイカ板である)に接していた部分に点在していると考えられ、ポリスチレン粒子単層膜を鋳型として金ナノ粒子の集合体を基板上に規則的に配列できることが確認できた。
1mMの4,4‘−ビピリジン(BiPy)水溶液を調製し、この水溶液を、上記実施例1で得られた本発明の微粒子集合体配列基板のナノ粒子配列構造領域面に滴下して付着させ、測定試料とし、測定装置としてジョバンイボン社製顕微ラマン分光器LabRam1Bを用いてSERSを測定した。図3に、この測定試料のSERSスペクトルを、マイカ板上に上記水溶液を滴下して得た比較試料のラマン散乱スペクトル、及び通常のラマン散乱スペクトルとともに示す。
図3に示されるように、マイカ板上に上記BiPy水溶液を滴下して得た比較試料のラマン散乱スペクトルと、通常のラマン散乱スペクトルの場合には、ピリジン環に由来するラマンシフトが観察されなかったが、本発明の微粒子集合体配列基板を用いて得られた測定試料においては、金ナノ粒子表面上でのBiPyのラマンシフトが観察され、SERSによる高感度の分析ができることがわかった。
尚、図3のラマンスペクトルは、S.-W Joo, Surface-enhanced
Raman scattering of 4,4’-bipyridine on gold nanoparticle surfaces, Vibration
Spectroscopy, 34, 269-272 (2004)の表1に示されている既知の結果とよく一致した。
又、本発明の製法は、大がかりな装置を必要とせずに、上記の微粒子集合体配列基板を再現性良く、安定して、比較的低コストにて製造するのに適している。また貴金属ナノ粒子を用いたとき、表面増強ラマン散乱の基質として機能し、有効な分析デバイスとなり、測定対象物中に微量存在する微量物質の分析が高感度で行える。
更に、本発明では、ナノ粒子が分散された溶液の粒子個数濃度を変えることによりその集合体の大きさの制御が可能で、また鋳型として用いるポリスチレン粒子の粒子径を変えることによりその集合体間距離の制御が可能で、分析対象物質に応じた微粒子集合体配列基板が製造可能である。
Claims (13)
- 基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成されたナノ粒子配列構造領域が少なくとも1以上存在しており、当該ナノ粒子配列構造領域においては、前記ナノ粒子が列をなした状態で配置されていることを特徴とする微粒子集合体配列基板。
- 前記ナノ粒子配列構造領域において、前記ナノ粒子が列をなした状態が、鎖状あるいはリング状であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子集合体配列基板。
- 前記基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成された複数のナノ粒子配列構造領域が、互いに接触せず離散的に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒子集合体配列基板。
- 前記ナノ粒子が、粒子径10〜100nmの金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子集合体配列基板。
- 微粒子集合体配列基板を製造するための方法であって、当該方法が、1〜10μmの粒子径を有する第一の粒子と、粒子径10〜100nmの第二のナノ粒子とを準備し、前記第一の粒子と前記第二の粒子とを溶媒中に分散させて分散液を調製する工程Aと、前記工程Aで得られた分散液を基板上に塗布することにより、当該基板上に、前記第一の粒子が互いに密接した状態で配列した単層膜を形成させると共に、前記第二のナノ粒子を、前記第一の粒子と前記基板との当接点を中心とする円状に、第二のナノ粒子が列をなした状態で配列させる工程Bと、前記工程Bで得られた基板上に存在している第一の粒子を除去することによって、前記基板上に、前記第二の粒子が、列をなした状態で配列したナノ粒子配列構造領域を少なくとも1以上形成させる工程Cとを含むことを特徴とする微粒子集合体配列基板の製造方法。
- 前記工程Cにおける第一の粒子の除去を、加熱による焼成処理又は、有機溶媒を用いた溶解処理によって行うことを特徴とする請求項5に記載の微粒子集合体配列基板の製造方法。
- 前記ナノ粒子配列構造領域において、前記ナノ粒子が列をなした状態が、鎖状あるいはリング状であることを特徴とする請求項5又は6に記載の微粒子集合体配列基板の製造方法。
- 前記基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成された複数のナノ粒子配列構造領域が、互いに接触せず離散的に形成されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の微粒子集合体配列基板の製造方法。
- 前記ナノ粒子が、粒子径10〜100nmの金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の微粒子集合体配列基板の製造方法。
- 測定対象物中に存在する微量物質の分析を行うための方法であって、当該方法が、基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成されたナノ粒子配列構造領域が少なくとも1以上存在し、当該ナノ粒子配列構造領域において、前記ナノ粒子が列をなした状態で配置されている微粒子集合体配列基板を準備する工程A’と、前記微粒子集合体配列基板上に形成されたナノ粒子配列構造領域に存在する前記ナノ粒子に前記測定対象物を付着させ、当該ナノ粒子配列構造領域にレーザ光を照射し、この際に観察されるラマン散乱光から前記微量物質を計測する工程B’を含むことを特徴とする微量物質の分析方法。
- 前記ナノ粒子配列構造領域において、前記ナノ粒子が列をなした状態が、鎖状あるいはリング状であることを特徴とする請求項10に記載の分析方法。
- 前記基板上に、ナノ粒子が配列されることによって形成された複数のナノ粒子配列構造領域が、互いに接触せず離散的に形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の分析方法。
- 前記ナノ粒子が、粒子径10〜100nmの金ナノ粒子又は銀ナノ粒子であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の分析方法。
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