JP2004360776A - プロペラシャフト部品およびプロペラシャフト - Google Patents
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Abstract
【課題】信頼性の高いプロペラシャフトを提供する。
【解決手段】プロペラシャフトは、一方端30aと他方端30bとを有し、一方端30aと他方端30bとの間に内部空間30iが形成されている第1の筒状体30と、第1の筒状体30の一方端30a側に係合して内部空間30iを封止するダストカバー60とを備える。第1の筒状体30には、ダストカバー60に係合する係合部としてのフランジ部33が設けられている。シャフトヨーク20は、第1の筒状体30の内部空間30iに摺動可能に嵌まりあって第1の筒状体30と一体となって回転する。
【選択図】 図1
【解決手段】プロペラシャフトは、一方端30aと他方端30bとを有し、一方端30aと他方端30bとの間に内部空間30iが形成されている第1の筒状体30と、第1の筒状体30の一方端30a側に係合して内部空間30iを封止するダストカバー60とを備える。第1の筒状体30には、ダストカバー60に係合する係合部としてのフランジ部33が設けられている。シャフトヨーク20は、第1の筒状体30の内部空間30iに摺動可能に嵌まりあって第1の筒状体30と一体となって回転する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、プロペラシャフト部品およびプロペラシャフトに関し、特に自動車等の動力伝達系に使用されるプロペラシャフト部品およびプロペラシャフトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロペラシャフトは、たとえば特開平8−232969号公報(特許文献1)、特公平6−65887号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−232969号公報
【0004】
【特許文献2】
特公平6−65887号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のプロペラシャフトでは、プロペラシャフトを構成する部品がその長さ方向に摺動して長さを変化するため、摺動部分の長さを長くとる必要があるため、摺動部分の質量アップまたプロペラシャフトの曲げ剛性低下という問題があった。
【0006】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされた摺動部構造変更に伴い、信頼性の高いプロペラシャフト部品およびプロペラシャフトを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に従ったプロペラシャフト部品は、一方端と他方端とを有し、一方端と他方端との間に内部空間が形成されている第1の筒状体と、第1の筒状体の一方端側に係合して内部空間を封止する封止部材とを備える。第1の筒状体には、封止部材に係合する係合部が設けられている。
【0008】
このように構成されたプロペラシャフト部品では、内部空間を封止する封止部材を備えるため、一方端側から内部空間へダストの侵入およびグリースの流出することがない。さらに、この封止部に係合するように、第1の筒状体には、係合部が設けられているため、封止部材が外れることを防止することができる。その結果、封止部材を確実に固定でき、封止部材の脱落を防止して信頼性の高いプロペラシャフト部品を提供することができる。
【0009】
また、好ましくは、係合部は、フランジ部を含む。フランジ部では、フランジ部近傍よりも内部空間の内径が小さい。
【0010】
このようなプロペラシャフト部品では、フランジ部の内径が小さくなるため、封止部材はこのフランジ部に係合してより確実に封止部材の脱落を防止することができる。
【0011】
さらに好ましくは、プロペラシャフト部品は、一方端に接続された第2の筒状体をさらに備える。フランジ部は第1および第2の筒状体を摩擦溶接することで形成される。この場合、第1および第2の筒状体を摩擦溶接する工程でフランジ部を形成することができるため、特にフランジ部を形成するための別段の工程を用いなくてもフランジ部を確実に一方端に形成することができる。その結果、特に製造工程を増加させることなくフランジ部を形成することができる。
【0012】
この発明に従ったプロペラシャフトは、上述のいずれかのプロペラシャフト部品と、第1の筒状体の内部空間に摺動可能に嵌まりあってプロペラシャフト部品と一体となって回転する棒状体とを備える。
【0013】
このように構成されたプロペラシャフトでは、内部空間で棒状体がプロペラシャフト部品に対して摺動しても、この内部空間へ一方端側からダストの侵入およびグリースの流出を防止することができる。その結果、信頼性の高いプロペラシャフトを提供することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従ったプロペラシャフトの一部断面を含む側面図である。図2は、図1中のII−II線に沿った断面図である。図1および図2を参照して、プロペラシャフト1は、ユニバーサルジョイント部品50aおよび60aと、ユニバーサルジョイント部品50aに接続されてユニバーサルジョイント部品50aと一体に回転するシャフトヨーク20と、シャフトヨーク20にスライド可能に取付けられた第1の筒状体30と、第1の筒状体30に接続された第2の筒状体40と、第2の筒状体40に接続されたユニバーサルジョイント部品50bおよび60bとを備える。
【0016】
ユニバーサルジョイント部品60aおよび50aがユニバーサルジョイントを構成しており、ユニバーサルジョイント部品60aおよび50aの回転軸はさまざまに角度をなすことが可能である。ユニバーサルジョイント部品50aとシャフトヨーク20とは摩擦溶接により接続されて、摩擦溶接された部分にはフランジ部53および23が形成されている。中空の棒状体としてのシャフトヨーク20はスライディングシャフト21を有する。シャフトヨーク20およびスライディングシャフト21は中実であってもよい。スライディングシャフト21は、図2で示すように、外側(外周面)にはスプライン歯25が形成されている。棒状体としてのスライディングシャフト21の外周面には潤滑材70が塗布されている。潤滑材70はグリースにより構成され、スライディングシャフト21の摺動面を潤滑する。シャフトヨーク20には、カバー22が取付けられ、スプライン歯25部へのダストの侵入を防止している。
【0017】
第1の筒状体30は一方端30aから他方端30bまで延びており、その一方端30aと他方端30bとの間に円筒形状の内部空間30iが形成されている。第1の筒状体30はスライディングシャフト21に対して摺動するスライディングスリーブ31を有する。スライディングスリーブ31の内表面にはスプライン歯35が形成されている。
【0018】
なお、スプライン歯35のうち1つが欠歯36となっている。スプライン歯35および25が互いに噛み合うことにより、スライディングシャフト21の回転がスプライン歯25および35を介してスライディングスリーブ31へ伝わる。欠歯36の数は図2では1つであるが、複数の欠歯36が設けられてもよい。
【0019】
欠歯36を設けるのは、第1の筒状体30とシャフトヨーク20とが互いに軸方向に摺動して長さが変化したときに、内部空間30i内の空気を、欠歯36部分を介して外部へ放出するためである。すなわち、欠歯36は、外部と内部空間30iとの間の空気の通路の役割を果たす。内部空間30iを封止するように封止部材としてのダストカバー60が設けられている。ダストカバー60はフランジ部33に係合している。
【0020】
第2の筒状体40は摩擦溶接(突き合わせ溶接)により第1の筒状体30に接続される。なお、摩擦溶接を行なうことにより、第1の筒状体30および第2の筒状体40には、それぞれフランジ部33および43が形成されている。
【0021】
ユニバーサルジョイント部品50bと第2の筒状体40とが摩擦溶接により接合されており、摩擦溶接された部分にはフランジ部44および53が形成されている。
【0022】
図1では、ユニバーサルジョイント部品60aにエンジンからの動力が入力される。ユニバーサルジョイント部品60bから車輪への動力が出力される。これとは逆に、ユニバーサルジョイント部品60bへエンジンからの動力が入力されて、ユニバーサルジョイント部品60aから車輪への動力が出力されてもよい。
【0023】
実施の形態1に従ったプロペラシャフト部品は、一方端30aと他方端30bとを有し、一方端30aと他方端30bとの間に内部空間30iが形成されている第1の筒状体30と、第1の筒状体30の一方端30a側に係合して、内部空間30iを封止する封止部材としてのダストカバー60とを備える。第1の筒状体30には、ダストカバー60に係合する係合部としてのフランジ部33が設けられている。
【0024】
プロペラシャフト1は、上記のプロペラシャフト部品と、内部空間30iに摺動可能に嵌まりあってプロペラシャフト部品と一体となって回転する棒状体としてのシャフトヨーク20とを備える。
【0025】
図3は、図1中のIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図3を参照して、第1の筒状体30の一方端30a近傍には、フランジ部33が設けられている。フランジ部33において、内部空間30iの内径はR1であり、その近傍部分の内径R2よりも小さくなっている。このため、ダストカバー60はフランジ部33に引っ掛かり外側へ抜けるのを防止することができる。フランジ部33は「T」字状(錨状)であり、外側および内側へ張り出した構造となっている。フランジ部33での内部空間30iの内径はR1であり、フランジ部33近傍での内部空間30iの内径R2よりも小さい。
【0026】
図4は、軸方向に伸縮するプロペラシャフトを示す一部断面を含む側面図である。図4の(a)は伸びたプロペラシャフトを示し、図4の(b)は縮んだプロペラシャフトを示す。図4で示すように、プロペラシャフト1は軸方向に伸縮することが可能である。この場合、スライディングスリーブ31とスライディングシャフト21が互いに摺動することで、全体の長さが調節される。なお、このようにプロペラシャフト1に伸縮機能を設けるのは、通常自動車が走行すると、リアアクスルが車体の進行方向に移動し、このリアアクスルの移動をプロペラシャフト1で吸収するためである。図4で示すようにプロペラシャフト1が軸方向に伸縮すると、内部空間30i内の空気が外部へ放出され、または内部空間30iへ外部から空気が流入する。このとき、図2で示した欠歯36の部分を空気が通過する。プロペラシャフト1の伸縮量は特に制限されるものではなく、その車種に応じて適宜設定される。
【0027】
次に、図1から図3で示すプロペラシャフトの第1の筒状体30と第2の筒状体40の接合方法について説明する。図5および図6は、第1および第2の筒状体30および40の接合方法を説明するための図である。図5を参照して、まず、第1の筒状体30の内部空間30i内にダストカバー60を挿入する。
【0028】
図6を参照して、第1の筒状体30に、矢印130で示す方向に力を加える。第2の筒状体40には、矢印140で示す方向に力を加える。これにより、第1の筒状体30と第2の筒状体40の端部同士が接触する。この状態で、第1の筒状体30に対して第2の筒状体40を回転させる。回転により、第1の筒状体30と第2の筒状体40との接触面で摩擦熱が生じる。この摩擦熱が第1の筒状体30と第2の筒状体40の端部を溶融させ、溶融した端部同士が互いに固相拡散することにより接合される。
【0029】
また、接合過程において、それぞれの端部が矢印130および140で示す方向に力が加えられ、さらに溶融によりそれらを構成する材質が内部および外部へ移動することにより、図3で示されるフランジ部33および43が形成される。このようにして第1および第2の筒状体30および40が接合される。すなわち、フランジ部33は第1および第2の筒状体30および40を摩擦溶接することで形成される。
【0030】
なお、第1および第2の筒状体30および40の接合方法は、摩擦溶接に限られず、電気溶接またはガス溶接などの、外部からの熱を加える溶接としてもよい。
【0031】
さらに、第1の筒状体30に第2の筒状体40をかしめて固定してもよい。また、第1および第2の筒状体30および40をボルトやリベットなどの締結手段を用いて接合してもよい。
【0032】
このように構成された、この発明の実施の形態1に従ってプロペラシャフト1では、係合部としてのフランジ部33を設け、このフランジ部33によりダストカバー60を係合させているため、ダストカバー60の脱落を防止できる。その結果、信頼性の高いプロペラシャフトを提供することができる。また、フランジ部33を形成する工程は、第1の筒状体30と第2の筒状体40とを摩擦溶接する工程でフランジ部33が形成されるため、フランジ部33を形成するために新たに別の工程を設ける必要がない。その結果、製造工程の増加を抑えて信頼性の高いプロペラシャフト部品を提供することができる。
【0033】
(実施の形態2)
図7は、この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。図7を参照して、この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフト1では、第1の筒状体30に係合部としてのかしめ部30cが設けられている点で、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと異なる。係合部としてのかしめ部30cは、第1の筒状体30の一部分に矢印201で示す方向に力を加えることにより形成される。このかしめ部30cがダストカバー60を固定し、ダストカバー60が第1の筒状体30から脱落することを防止することができる。かしめ部30cを形成する場合には、第1の筒状体30を構成する材料としては、特にかしめに適した材料を用いる。
【0034】
このように構成された、この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフト1でも、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと同様の効果がある。
【0035】
(実施の形態3)
図8は、この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。図8を参照して、この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフト1では、第1の筒状体30にかしめ部30cが設けられている点で、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと異なる。かしめ部30cは、第1の筒状体30に矢印202で示す方向から力を加えることで形成される。
【0036】
係合部としてのかしめ部30cは、ダストカバー60に係合するため、ダストカバー60がかしめ部30cにより固定される。これにより、ダストカバー60の脱落を防止することができる。
【0037】
このように構成された、この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフト1でも、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと同様の効果がある。
【0038】
(実施の形態4)
図9は、この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。図9を参照して、この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフト1では、第1の筒状体30の一部分に、矢印230で示す方向に圧力を加えて、第1の筒状体30に絞り加工を施すことで、この部分がダストカバー60に係合する。すなわち、絞り加工を加えられた部分は、内側へ変形しようとする。この変形しようとする応力により、第1の筒状体30の一部分とダストカバー60とが係合する。
【0039】
このように構成された、この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフト1では、実施の形態1に従ったプロペラシャフト1と同様の効果がある。
【0040】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態はさまざまに変形することが可能である。まず、この発明で用いられるプロペラシャフトは、後輪駆動車のトランスミッションからリアデファレンシャルギアの間で用いられるプロペラシャフトに限られず、四輪駆動車においてトランスファーからリアデファレンシャルギアの間で用いられるリアプロペラシャフトおよびトランスファーからフロントデファレンシャルギアの間で用いられるフロントプロペラシャフトのいずれにも採用することが可能である。
【0041】
また、プロペラシャフトの各部材を構成する材質としては、金属だけでなく、樹脂をも用いることができる。ただし、樹脂を用いた場合には、摩擦溶接が困難となるため、別の方法で2つの部材を接合する必要がある。
【0042】
さらに、プロペラシャフト1の端部にはユニバーサルジョイントが用いられたが、このユニバーサルジョイントを、公知の等速ジョイントに変更することも可能である。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0044】
【発明の効果】
この発明に従えば、信頼性の高いプロペラシャフトおよびプロペラシャフト部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に従ったプロペラシャフトの一部断面を含む側面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1中のIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【図4】軸方向に伸縮するプロペラシャフトを示す一部断面を含む側面図である。
【図5】第1および第2の筒状体30および40の接合方法の第1工程を説明するための図である。
【図6】第1および第2の筒状体30および40の接合方法の第2工程を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。
【図8】この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。
【図9】この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。
【符号の説明】
1 プロペラシャフト、20 シャフトヨーク、21 スライディングシャフト、22 カバー、25,35 スプライン歯、30 第1の筒状体、30a 一方端、30b 他方端、30i 内部空間、31 スライディングスリーブ、23,33,43,53 フランジ部、40 第2の筒状体、50a,50b,60a,60b、ユニバーサルジョイント部品、60 ダストカバー、70 潤滑材。
【発明の属する技術分野】
この発明は、プロペラシャフト部品およびプロペラシャフトに関し、特に自動車等の動力伝達系に使用されるプロペラシャフト部品およびプロペラシャフトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロペラシャフトは、たとえば特開平8−232969号公報(特許文献1)、特公平6−65887号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−232969号公報
【0004】
【特許文献2】
特公平6−65887号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のプロペラシャフトでは、プロペラシャフトを構成する部品がその長さ方向に摺動して長さを変化するため、摺動部分の長さを長くとる必要があるため、摺動部分の質量アップまたプロペラシャフトの曲げ剛性低下という問題があった。
【0006】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされた摺動部構造変更に伴い、信頼性の高いプロペラシャフト部品およびプロペラシャフトを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に従ったプロペラシャフト部品は、一方端と他方端とを有し、一方端と他方端との間に内部空間が形成されている第1の筒状体と、第1の筒状体の一方端側に係合して内部空間を封止する封止部材とを備える。第1の筒状体には、封止部材に係合する係合部が設けられている。
【0008】
このように構成されたプロペラシャフト部品では、内部空間を封止する封止部材を備えるため、一方端側から内部空間へダストの侵入およびグリースの流出することがない。さらに、この封止部に係合するように、第1の筒状体には、係合部が設けられているため、封止部材が外れることを防止することができる。その結果、封止部材を確実に固定でき、封止部材の脱落を防止して信頼性の高いプロペラシャフト部品を提供することができる。
【0009】
また、好ましくは、係合部は、フランジ部を含む。フランジ部では、フランジ部近傍よりも内部空間の内径が小さい。
【0010】
このようなプロペラシャフト部品では、フランジ部の内径が小さくなるため、封止部材はこのフランジ部に係合してより確実に封止部材の脱落を防止することができる。
【0011】
さらに好ましくは、プロペラシャフト部品は、一方端に接続された第2の筒状体をさらに備える。フランジ部は第1および第2の筒状体を摩擦溶接することで形成される。この場合、第1および第2の筒状体を摩擦溶接する工程でフランジ部を形成することができるため、特にフランジ部を形成するための別段の工程を用いなくてもフランジ部を確実に一方端に形成することができる。その結果、特に製造工程を増加させることなくフランジ部を形成することができる。
【0012】
この発明に従ったプロペラシャフトは、上述のいずれかのプロペラシャフト部品と、第1の筒状体の内部空間に摺動可能に嵌まりあってプロペラシャフト部品と一体となって回転する棒状体とを備える。
【0013】
このように構成されたプロペラシャフトでは、内部空間で棒状体がプロペラシャフト部品に対して摺動しても、この内部空間へ一方端側からダストの侵入およびグリースの流出を防止することができる。その結果、信頼性の高いプロペラシャフトを提供することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従ったプロペラシャフトの一部断面を含む側面図である。図2は、図1中のII−II線に沿った断面図である。図1および図2を参照して、プロペラシャフト1は、ユニバーサルジョイント部品50aおよび60aと、ユニバーサルジョイント部品50aに接続されてユニバーサルジョイント部品50aと一体に回転するシャフトヨーク20と、シャフトヨーク20にスライド可能に取付けられた第1の筒状体30と、第1の筒状体30に接続された第2の筒状体40と、第2の筒状体40に接続されたユニバーサルジョイント部品50bおよび60bとを備える。
【0016】
ユニバーサルジョイント部品60aおよび50aがユニバーサルジョイントを構成しており、ユニバーサルジョイント部品60aおよび50aの回転軸はさまざまに角度をなすことが可能である。ユニバーサルジョイント部品50aとシャフトヨーク20とは摩擦溶接により接続されて、摩擦溶接された部分にはフランジ部53および23が形成されている。中空の棒状体としてのシャフトヨーク20はスライディングシャフト21を有する。シャフトヨーク20およびスライディングシャフト21は中実であってもよい。スライディングシャフト21は、図2で示すように、外側(外周面)にはスプライン歯25が形成されている。棒状体としてのスライディングシャフト21の外周面には潤滑材70が塗布されている。潤滑材70はグリースにより構成され、スライディングシャフト21の摺動面を潤滑する。シャフトヨーク20には、カバー22が取付けられ、スプライン歯25部へのダストの侵入を防止している。
【0017】
第1の筒状体30は一方端30aから他方端30bまで延びており、その一方端30aと他方端30bとの間に円筒形状の内部空間30iが形成されている。第1の筒状体30はスライディングシャフト21に対して摺動するスライディングスリーブ31を有する。スライディングスリーブ31の内表面にはスプライン歯35が形成されている。
【0018】
なお、スプライン歯35のうち1つが欠歯36となっている。スプライン歯35および25が互いに噛み合うことにより、スライディングシャフト21の回転がスプライン歯25および35を介してスライディングスリーブ31へ伝わる。欠歯36の数は図2では1つであるが、複数の欠歯36が設けられてもよい。
【0019】
欠歯36を設けるのは、第1の筒状体30とシャフトヨーク20とが互いに軸方向に摺動して長さが変化したときに、内部空間30i内の空気を、欠歯36部分を介して外部へ放出するためである。すなわち、欠歯36は、外部と内部空間30iとの間の空気の通路の役割を果たす。内部空間30iを封止するように封止部材としてのダストカバー60が設けられている。ダストカバー60はフランジ部33に係合している。
【0020】
第2の筒状体40は摩擦溶接(突き合わせ溶接)により第1の筒状体30に接続される。なお、摩擦溶接を行なうことにより、第1の筒状体30および第2の筒状体40には、それぞれフランジ部33および43が形成されている。
【0021】
ユニバーサルジョイント部品50bと第2の筒状体40とが摩擦溶接により接合されており、摩擦溶接された部分にはフランジ部44および53が形成されている。
【0022】
図1では、ユニバーサルジョイント部品60aにエンジンからの動力が入力される。ユニバーサルジョイント部品60bから車輪への動力が出力される。これとは逆に、ユニバーサルジョイント部品60bへエンジンからの動力が入力されて、ユニバーサルジョイント部品60aから車輪への動力が出力されてもよい。
【0023】
実施の形態1に従ったプロペラシャフト部品は、一方端30aと他方端30bとを有し、一方端30aと他方端30bとの間に内部空間30iが形成されている第1の筒状体30と、第1の筒状体30の一方端30a側に係合して、内部空間30iを封止する封止部材としてのダストカバー60とを備える。第1の筒状体30には、ダストカバー60に係合する係合部としてのフランジ部33が設けられている。
【0024】
プロペラシャフト1は、上記のプロペラシャフト部品と、内部空間30iに摺動可能に嵌まりあってプロペラシャフト部品と一体となって回転する棒状体としてのシャフトヨーク20とを備える。
【0025】
図3は、図1中のIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図3を参照して、第1の筒状体30の一方端30a近傍には、フランジ部33が設けられている。フランジ部33において、内部空間30iの内径はR1であり、その近傍部分の内径R2よりも小さくなっている。このため、ダストカバー60はフランジ部33に引っ掛かり外側へ抜けるのを防止することができる。フランジ部33は「T」字状(錨状)であり、外側および内側へ張り出した構造となっている。フランジ部33での内部空間30iの内径はR1であり、フランジ部33近傍での内部空間30iの内径R2よりも小さい。
【0026】
図4は、軸方向に伸縮するプロペラシャフトを示す一部断面を含む側面図である。図4の(a)は伸びたプロペラシャフトを示し、図4の(b)は縮んだプロペラシャフトを示す。図4で示すように、プロペラシャフト1は軸方向に伸縮することが可能である。この場合、スライディングスリーブ31とスライディングシャフト21が互いに摺動することで、全体の長さが調節される。なお、このようにプロペラシャフト1に伸縮機能を設けるのは、通常自動車が走行すると、リアアクスルが車体の進行方向に移動し、このリアアクスルの移動をプロペラシャフト1で吸収するためである。図4で示すようにプロペラシャフト1が軸方向に伸縮すると、内部空間30i内の空気が外部へ放出され、または内部空間30iへ外部から空気が流入する。このとき、図2で示した欠歯36の部分を空気が通過する。プロペラシャフト1の伸縮量は特に制限されるものではなく、その車種に応じて適宜設定される。
【0027】
次に、図1から図3で示すプロペラシャフトの第1の筒状体30と第2の筒状体40の接合方法について説明する。図5および図6は、第1および第2の筒状体30および40の接合方法を説明するための図である。図5を参照して、まず、第1の筒状体30の内部空間30i内にダストカバー60を挿入する。
【0028】
図6を参照して、第1の筒状体30に、矢印130で示す方向に力を加える。第2の筒状体40には、矢印140で示す方向に力を加える。これにより、第1の筒状体30と第2の筒状体40の端部同士が接触する。この状態で、第1の筒状体30に対して第2の筒状体40を回転させる。回転により、第1の筒状体30と第2の筒状体40との接触面で摩擦熱が生じる。この摩擦熱が第1の筒状体30と第2の筒状体40の端部を溶融させ、溶融した端部同士が互いに固相拡散することにより接合される。
【0029】
また、接合過程において、それぞれの端部が矢印130および140で示す方向に力が加えられ、さらに溶融によりそれらを構成する材質が内部および外部へ移動することにより、図3で示されるフランジ部33および43が形成される。このようにして第1および第2の筒状体30および40が接合される。すなわち、フランジ部33は第1および第2の筒状体30および40を摩擦溶接することで形成される。
【0030】
なお、第1および第2の筒状体30および40の接合方法は、摩擦溶接に限られず、電気溶接またはガス溶接などの、外部からの熱を加える溶接としてもよい。
【0031】
さらに、第1の筒状体30に第2の筒状体40をかしめて固定してもよい。また、第1および第2の筒状体30および40をボルトやリベットなどの締結手段を用いて接合してもよい。
【0032】
このように構成された、この発明の実施の形態1に従ってプロペラシャフト1では、係合部としてのフランジ部33を設け、このフランジ部33によりダストカバー60を係合させているため、ダストカバー60の脱落を防止できる。その結果、信頼性の高いプロペラシャフトを提供することができる。また、フランジ部33を形成する工程は、第1の筒状体30と第2の筒状体40とを摩擦溶接する工程でフランジ部33が形成されるため、フランジ部33を形成するために新たに別の工程を設ける必要がない。その結果、製造工程の増加を抑えて信頼性の高いプロペラシャフト部品を提供することができる。
【0033】
(実施の形態2)
図7は、この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。図7を参照して、この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフト1では、第1の筒状体30に係合部としてのかしめ部30cが設けられている点で、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと異なる。係合部としてのかしめ部30cは、第1の筒状体30の一部分に矢印201で示す方向に力を加えることにより形成される。このかしめ部30cがダストカバー60を固定し、ダストカバー60が第1の筒状体30から脱落することを防止することができる。かしめ部30cを形成する場合には、第1の筒状体30を構成する材料としては、特にかしめに適した材料を用いる。
【0034】
このように構成された、この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフト1でも、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと同様の効果がある。
【0035】
(実施の形態3)
図8は、この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。図8を参照して、この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフト1では、第1の筒状体30にかしめ部30cが設けられている点で、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと異なる。かしめ部30cは、第1の筒状体30に矢印202で示す方向から力を加えることで形成される。
【0036】
係合部としてのかしめ部30cは、ダストカバー60に係合するため、ダストカバー60がかしめ部30cにより固定される。これにより、ダストカバー60の脱落を防止することができる。
【0037】
このように構成された、この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフト1でも、実施の形態1に従ったプロペラシャフトと同様の効果がある。
【0038】
(実施の形態4)
図9は、この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。図9を参照して、この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフト1では、第1の筒状体30の一部分に、矢印230で示す方向に圧力を加えて、第1の筒状体30に絞り加工を施すことで、この部分がダストカバー60に係合する。すなわち、絞り加工を加えられた部分は、内側へ変形しようとする。この変形しようとする応力により、第1の筒状体30の一部分とダストカバー60とが係合する。
【0039】
このように構成された、この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフト1では、実施の形態1に従ったプロペラシャフト1と同様の効果がある。
【0040】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態はさまざまに変形することが可能である。まず、この発明で用いられるプロペラシャフトは、後輪駆動車のトランスミッションからリアデファレンシャルギアの間で用いられるプロペラシャフトに限られず、四輪駆動車においてトランスファーからリアデファレンシャルギアの間で用いられるリアプロペラシャフトおよびトランスファーからフロントデファレンシャルギアの間で用いられるフロントプロペラシャフトのいずれにも採用することが可能である。
【0041】
また、プロペラシャフトの各部材を構成する材質としては、金属だけでなく、樹脂をも用いることができる。ただし、樹脂を用いた場合には、摩擦溶接が困難となるため、別の方法で2つの部材を接合する必要がある。
【0042】
さらに、プロペラシャフト1の端部にはユニバーサルジョイントが用いられたが、このユニバーサルジョイントを、公知の等速ジョイントに変更することも可能である。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0044】
【発明の効果】
この発明に従えば、信頼性の高いプロペラシャフトおよびプロペラシャフト部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に従ったプロペラシャフトの一部断面を含む側面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1中のIIIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【図4】軸方向に伸縮するプロペラシャフトを示す一部断面を含む側面図である。
【図5】第1および第2の筒状体30および40の接合方法の第1工程を説明するための図である。
【図6】第1および第2の筒状体30および40の接合方法の第2工程を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。
【図8】この発明の実施の形態3に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。
【図9】この発明の実施の形態4に従ったプロペラシャフトの一部断面図である。
【符号の説明】
1 プロペラシャフト、20 シャフトヨーク、21 スライディングシャフト、22 カバー、25,35 スプライン歯、30 第1の筒状体、30a 一方端、30b 他方端、30i 内部空間、31 スライディングスリーブ、23,33,43,53 フランジ部、40 第2の筒状体、50a,50b,60a,60b、ユニバーサルジョイント部品、60 ダストカバー、70 潤滑材。
Claims (4)
- 一方端と他方端とを有し、一方端と他方端との間に内部空間が形成されている第1の筒状体と、
前記第1の筒状体の一方端側に係合して前記内部空間を封止する封止部材とを備え、
前記第1の筒状体は、封止部材に係合する係合部を含む、プロペラシャフト部品。 - 前記係合部は、フランジ部を含み、前記フランジ部では、前記フランジ部近傍よりも前記内部空間の内径が小さい、請求項1に記載のプロペラシャフト部品。
- 前記一方端に接続された第2の筒状体をさらに備え、前記フランジ部は、前記第1および第2の筒状体を摩擦溶接することで形成される、請求項2に記載のプロペラシャフト部品。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のプロペラシャフト部品と、
前記第1の筒状体の内部空間に摺動可能に嵌まりあって前記プロペラシャフト部品と一体となって回転する棒状体とを備えた、プロペラシャフト。
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JP2003158877A JP2004360776A (ja) | 2003-06-04 | 2003-06-04 | プロペラシャフト部品およびプロペラシャフト |
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- 2003-06-04 JP JP2003158877A patent/JP2004360776A/ja active Pending
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