JP2004360628A - エンジンの始動後空燃比制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】リッチ空燃比で始動を行い、始動直後に空燃比フィードバック制御を開始する場合に、空燃比を速やかにストイキ点に収束させる。
【解決手段】O2センサの活性を検出し、活性を検出した時点から、燃料増量率(α+KST)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理と、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間分の時間待ちとを繰り返す。O2センサがリーン判定した時点で、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する。
【選択図】 図7
【解決手段】O2センサの活性を検出し、活性を検出した時点から、燃料増量率(α+KST)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理と、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間分の時間待ちとを繰り返す。O2センサがリーン判定した時点で、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの始動後空燃比制御装置に関し、特に、リッチ空燃比で始動を行い、始動直後に空燃比フィードバック制御を開始する場合に、空燃比を速やかにストイキ点に収束させることのできる始動後空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術として、特許文献1には、始動直後に空燃比フィードバック制御を開始するときに、最初のリーン方向への積分制御に用いる積分定数を通常値よりも大きくし、制御速度を増大させて目標空燃比(ストイキ点)に対する収束を早める一方、これにより発生する回転落ちの防止のため、点火時期を進角補正することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−312428号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィードバック制御の積分定数を通常時よりも大きくするという構成では、オーバーシュートを考えると、大きくできる分には限界があり、過剰なオーバーシュートを生じない程度の傾きとなるような積分定数とせざるを得ないため、ストイキ点に収束させるための時間がかかるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、始動直後に空燃比フィードバック制御を開始する場合に、空燃比をより速やかにストイキ点に収束させることのできる始動後空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明では、燃料噴射量を増量して、リッチ空燃比で始動を行った後、O2センサの活性を検出した時点から、燃料増量率を回転落ちを発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理と、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間分の時間待ちとを繰り返す。そして、O2センサがリーン判定した時点で、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、回転落ちなどを発生させることなく、速やかにストイキ点に収束させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すエンジン(内燃機関)のシステム図である。
【0009】
エンジン1の各気筒の燃焼室には、エアクリーナ2から吸気ダクト3、スロットル弁4、吸気マニホールド5を経て空気が吸入される。吸気マニホールド5の各ブランチ部には各気筒毎に燃料噴射弁6が設けられている。但し、燃料噴射弁6は燃焼室内に直接臨ませる配置としてもよい。
【0010】
燃料噴射弁6は、ソレノイドに通電されて開弁し、通電停止されて閉弁する電磁式燃料噴射弁(インジェクタ)であって、後述するエンジンコントロールユニット(以下ECUという)12からの駆動パルス信号により通電されて開弁し、図示しない燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に調整された燃料を噴射供給する。従って、駆動パルス信号のパルス幅により燃料噴射量が制御される。
【0011】
エンジン1の各燃焼室には点火栓7が設けられており、これにより火花点火して混合気を着火燃焼させる。
エンジン1の各燃焼室からの排気は、排気マニホールド8を介して排出される。また、排気マニホールド8からEGR通路9が導出され、これによりEGR弁10を介して排気の一部を吸気マニホールド5に還流している。
【0012】
一方、排気通路には、排気マニホールド8の直下などに位置させて、排気浄化用触媒11が設けられている。
ECU12は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インターフェイス等を含んで構成されるマイクロコンピュータを備え、各種センサからの入力信号を受け、後述のごとく演算処理して、燃料噴射弁6の作動を制御する。
【0013】
前記各種センサとしては、エンジン1のクランク軸又はカム軸回転よりクランク角度と共にエンジン回転数Neを検出可能なクランク角センサ13、吸気ダクト3内で吸入空気量Qaを検出するエアフローメータ14、スロットル弁4の開度TVOを検出するスロットルセンサ15(スロットル弁4の全閉位置でONとなるアイドルスイッチを含む)、エンジン1の冷却水温Twを検出する水温センサ16、排気マニホールド8の集合部にて排気空燃比のリッチ・リーンに応じた信号を出力するO2センサ17などが設けられている。尚、O2センサ17はヒータを内蔵しており、始動時からヒータに通電して素子温度を上昇させることで早期活性化を図ることができる。ECU12には更にスタートスイッチ18などからも信号が入力されている。
【0014】
図2はECU12にて実行される燃料噴射量演算ルーチンのフローチャートである。
S1では、エアフローメータにより検出される吸入空気量Qaと、クランク角センサにより検出されるエンジン回転数Neとを読込む。尚、吸入空気量Qaについては、検出信号に基づいて平滑化処理を行うが、フローでは省略した。
【0015】
S2では、吸入空気量Qaとエンジン回転数Neとから、次式により、基本燃料噴射量(基本噴射パルス幅)Tpを演算する。
Tp=K*Qa/Ne 但し、Kは定数。
【0016】
S3では、別ルーチンにより設定される空燃比フィードバック補正係数α、始動時リッチ化補正係数KSTを読込み、次式により、最終的な燃料噴射量(噴射パルス幅)Tiを演算する。
【0017】
Ti=Tp*(α+KST)/100
空燃比フィードバック補正係数αは、基準値を100%とする。
始動時リッチ化補正係数KSTは、基準値を0%とし、KST≧0である。
【0018】
尚、燃料噴射量(噴射パルス幅)Tiの演算には、この他、スロットル開度TVOの変化に基づく過渡補正や、バッテリ電圧に基づく無効噴射パルス幅の加算等がなされるが、ここでは省略した。
【0019】
燃料噴射量Tiが演算されると、このTiに相当するパルス幅の駆動パルス信号がエンジン回転に同期して各気筒毎に所定のタイミングで燃料噴射弁6に出力されて、燃料噴射が行われる。
【0020】
次に空燃比フィードバック補正係数α、始動時リッチ化補正係数KSTの設定について説明する。
エンジンの始動時(スタートスイッチON時)は、空燃比フィードバック補正係数αは100%に固定するが、始動時リッチ化補正係数KSTを始動時水温Twに応じて0%より大きな値(始動時水温Twが低いほど大きな値)に設定し、リッチ空燃比で始動を行う。尚、トータルでの燃料増量率は、α+KST−100で表され、始動時は、α+KST−100>0%となる。
【0021】
エンジンの始動後(スタートスイッチON→OFF後)は、図3のルーチンにより、空燃比フィードバック補正係数α、始動時リッチ化補正係数KSTが設定される。
【0022】
図3はECU12にて始動後(スタートスイッチON→OFF後)に時間同期又は回転同期で実行される始動後空燃比制御ルーチンのフローチャートである。
S11では、スタートスイッチON→OFFの時点か否かを判定する。
【0023】
スタートスイッチON→OFFの時点の場合は、S12へ進む。
S12では、始動後空燃比制御を開始するために、制御フラグを1にセットする。次のS13では、空燃比フィードバック補正係数αを100%に固定する一方、始動時リッチ化補正係数KSTを水温Tw及び始動後経過時間に応じて0%より大きな値に設定する(但し、始動中よりは小さい)。もちろん、燃料増量率(α+KST−100)>0%である。
【0024】
S11での判定で、スタートスイッチON→OFFの時点でない場合、すなわち、スタートスイッチOFF後(2回目以降)の場合は、S14へ進む。
S14では、制御フラグ=1(始動後空燃比制御中)か否かを判定し、YESの場合は、S15へ進む。
【0025】
S15では、O2センサが活性したか否かを判定する。尚、活性判定は、O2センサ出力の変化に基づいて行ってもよいし、始動後経過時間の増大と共にヒータ加熱により素子温度が上昇するので、始動後経過時間に基づいても行ってもよい(図6参照)。
【0026】
O2センサが活性していない場合は、S13へ進み、空燃比フィードバック補正係数αを100%に固定する一方、始動時リッチ化補正係数KSTを水温Tw及び始動後経過時間に応じて0%より大きな値に設定する。但し、始動後経過時間の増大と共に、始動時リッチ化補正係数KSTは徐々に減少する。
【0027】
O2センサが活性した場合は、S16へ進む。
S16では、初めての活性判定か否かを判定し、初めての場合は、S17へ進む。
【0028】
S17では、O2センサがリーンと判定したか否かを判定し、NO(リッチ)の場合は、S18へ進む。
S18では、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理のための、減量分DECを、現時点での燃料増量率(α+KST−100)に応じて設定する。但し、現時点では、α=100%のため、α+KST−100=KSTであるので、減量分DECは、現時点での始動時空燃比補正係数KSTに応じて設定すればよい(次式参照)。
【0029】
減量分DEC=g(α+KST−100)=g(KST)
具体的には、後述する図5(b)のテーブルを用いて、設定する。
次のS19では、現時点での燃料増量率(α+KST−100)を減量分DEC減少させるために、現時点の始動時リッチ化補正係数KSTによる燃料増量率を空燃比フィードバック補正係数αに移行させた上で、減少処理するため、先ず、空燃比フィードバック補正係数αを、現在値(100%)に始動時リッチ化補正係数KSTを加算した後、減量分DECを減算することで、算出する。次いで、始動時リッチ化補正係数KSTを0とする(次式参照)。
【0030】
α=100+KST−DEC
KST=0
尚、O2センサ活性直前のKSTをKSTold とすれば、O2センサ活性直前の燃料増量率(α+KST−100)=KSTold であるのに対し、O2センサ活性直後の燃料増量率(α+KST−100)=KSTold −DECとなり、燃料増量率をDEC分減少させたことになる。
【0031】
次のS20では、O2センサ活性後経過時間に基づいて、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間(ディレイ時間)DTを算出する。具体的には、後述する図6(b)のテーブルを用いて、算出する。
【0032】
S17での判定で、YES、すなわち、O2センサが活性すると同時にリーン判定した場合は、S21へ進んで、P0フラグを0にした後、S22へ進む。S22では、始動後空燃比制御を終了させて、空燃比フィードバック制御へ移行するため、制御フラグを0にする。
【0033】
S16での判定で、NO、すなわち、初めての活性判定でない場合は、S23へ進む。
S23では、S17と同様に、O2センサがリーンと判定したか否かを判定し、NO(リッチ)の場合は、S24へ進む。
【0034】
S24では、S20(又はS28)にて初期設定したディレイ時間DTをカウントダウンする。
次のS25では、ディレイ時間DT=0となった(S20又はS28にて設定したディレイ時間が経過した)か否かを判定する。
【0035】
DT=0でない場合は、そのまま処理を終了し、時間待ちを行う。
DT=0になった場合は、S26へ進む。
S26では、S18と同様に、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理のための、減量分DECを、現時点での燃料増量率(α+KST−100)に応じて設定する。但し、現時点では、KST=0%のため、α+KST−100=α−100であるので、減量分DECは、α−100に応じて設定すればよい(次式参照)。
【0036】
減量分DEC=g(α+KST−100)=g(α−100)
ここでも、具体的には、後述する図5(b)のテーブルを用いて設定する。
次のS27では、現時点での燃料増量率(α+KST−100)を減量分DEC減少させるために、KST=0%のまま、空燃比フィードバック補正係数αの現在値から減量分DECを減算することで、空燃比フィードバック補正係数αを更新する(次式参照)。
【0037】
α=α−DEC
次のS28では、S20と同様に、O2センサ活性後経過時間に基づいて、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間(ディレイ時間)DTを算出する。ここでも、具体的には、後述する図6(b)のテーブルを用いて算出する。
【0038】
S23での判定で、YES、すなわち、O2センサがリーン判定した場合は、S29へ進む。
S29では、空燃比フィードバック制御開始時に、比例分として、直前(前回)の減量量DECより小さい増量分P0を付加するために、その増量分P0を算出する。
【0039】
具体的には、直前の減量分DECに一定の比率a(例えば1/2)を乗じて、比例分P0を算出する(次式参照)。
増量分P0=a*DEC
そして、S30へ進んで、P0フラグを1にした後、S31へ進む。S31では、始動後空燃比制御を終了させて、空燃比フィードバック制御へ移行するため、制御フラグを0にする。
【0040】
S14での判定で、制御フラグ=0の場合は、S32へ進み、空燃比フィードバック制御(λ制御)に移行する。
図4は図3のルーチンのS32にて実行される空燃比フィードバック制御(λ制御)ルーチンのフローチャートである。
【0041】
S41では、O2センサ出力に基づいてリーン/リッチを判定する。
リーンの場合は、後述するS51を経て、S42へ進み、リッチ→リーンへの反転時(前回リッチ)か否かを判定する。リッチ→リーンへの反転時の場合は、S43へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを比較的大きく設定した比例分(比例定数)P増加させて、更新する(α=α+P)。リーン状態継続中の場合は、S44へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを微小の積分分(積分定数)I増加させて、更新する(α=α+I)。
【0042】
リッチの場合は、S45へ進み、リーン→リッチへの反転時(前回リーン)か否かを判定する。リーン→リッチへの反転時の場合は、S46へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを比較的大きく設定した比例分P減少させて、更新する(α=α−P)。リッチ状態継続中の場合は、S47へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを微小の積分分I減少させて、更新する(α=α−I)。
【0043】
一方、S51では、リーン判定の場合に、初回(空燃比フィードバック制御開始時)か否かを判定している。初回の場合のみ、S52へ分岐して、P0フラグの値を判定する。P0フラグ=1の場合は、S53へ進み、空燃比フィードバック制御開始時に、通常の比例分Pの代わりに、図3のルーチンのS29にて算出した増量分P0を付加する(α=α+P0)。P0フラグ=0の場合(O2センサが活性すると同時にリーン判定した場合)は、S43へ進み、空燃比フィードバック制御開始時に、通常の比例分Pを付加する(α=α+P)。
【0044】
以上にフローチャートで説明したように、エンジン始動後、O2センサ活性までは、水温及び始動後経過時間に応じて、燃料増量を行う。
O2センサ活性後は、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分DEC減少させる。そして、O2センサ活性後経過時間に応じて、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間に相当するディレイ時間DTを設定し、このディレイ時間DTの間、減少後の燃料増量率を維持する。
【0045】
このディレイ時間DTの間に、O2センサがリーン判定しない場合は、ディレイ時間DTの経過後に、燃料増量率(α+KST−100)を更に所定の減量分DEC減少させる。そして、再びディレイ時間DTの間、減少後の燃料増量率を維持する。
【0046】
ディレイ時間DTの間に、O2センサがリーン判定した場合は、その時点より、空燃比フィードバック制御に移行するが、空燃比フィードバック制御開始時には、比例分として、直前の減量分DECに対して一定の比率a(例えば1/2)を乗じた増量分P0を付加する。
【0047】
一方、O2センサの活性と同時にリーン判定した場合は、通常の比例分Pを付加して、空燃比フィードバック制御を開始する。
図5に直前の燃料増量率(α+KST−100)に対する減量分DECの関係を示す。減量した際の回転落ちは、減量したことで生じるトルク落ちにより大きく左右される。図5(a)を参照し、トルクは空燃比がリッチ側の12〜13前後で最大となり、ストイキ前後で落ち代が大きくなってくる。減量による回転落ちを防ぐためには、トルクの落ちを一定以下にする必要があり、早くストイキ点に到達させるには、回転落ちが発生するぎりぎりの最大トルク幅で落としていく必要がある。これを整理すると、図5(b)のような関係となる。
【0048】
すなわち、燃料増量率が大きいほど、減量分DECを大きくし、燃料増量率が低下するに従って、減量分DECを小さくすることで、一度に減少させる減量分DECを、減少処理を繰り返す毎に、小さくしていくが、毎回の減量分でのトルク変化が同一となるようにする。
【0049】
また、この場合の空燃比制御はオープンループで行っているため、空燃比ばらつきを考慮して、実際の空燃比がリーン側にシフトしていても回転落ちが生じないようにする必要がある。この空燃比ばらつきを考慮した線を図5(b)に点線で示す。この関係に従って、減量分を設定する。これにより、ストイキ点を誤って学習した際にも、トルク落ちが発生せず、速やかに収束させることが可能となる。この場合、図5(b)の点線に従って、燃料増量率から減量分を設定してもよいし、図5(a)の実線に従って、燃料増量率を減少側に補正した(所定値を引いた)値から減量分を設定してもよい。
【0050】
図6に始動後経過時間(又はO2センサ活性後経過時間)とO2センサ応答遅れ時間(ディレイ時間)との関係を示す。始動後の時間が経過するにつれ、O2センサの素子温が上昇し、それにしたがって、O2センサ応答遅れ時間が短くなってくる。従って、ディレイ時間DTは、O2センサの活性度合に応じて変化させるべく、始動後経過時間(又はO2センサ活性後経過時間)によって、決定する。これより、ディレイ時間TDは、減少処理を繰り返す毎に、小さくなっていく。
【0051】
図7にタイムチャートを示す。
図7(a)は、O2センサ活性後の1回の減量でリーン判定した場合であり、ストイキ点への収束を早めることができる。これに対し、図示点線のように、O2センサ活性直後よりリーン側への比例分を付加して空燃比フィードバック制御を開始した場合は、減量分が大きすぎて、空燃比変化が大となり、制御上の増量0ラインが実際にはリーンになっていた場合などに、リーン側のオーバーシュートを生じる。リーン側のオーバーシュートを生じると、エンジン回転が不安定となり、最悪の場合にはエンジンストールを起こす。
【0052】
図7(b)は、O2センサ活性後の2回の減量でリーン判定した場合であり、この場合でもストイキ点への収束を早めることができる。これに対し、図示点線は、O2センサ活性後に積分制御で減量した場合であり、ストイキ点への収束(フィードバック制御開始)が遅れている。
【0053】
図8は、積分制御(I分)で減少させる場合と、減量とディレイとの繰り返しで減少させる場合とを比較したものである。この例のように、傾きは同じにしても、燃料増量率がストイキ点に達した後、同じ応答遅れ時間DTの後に、リーン判定に至るとすると、リーン判定までの時間を、図示L分短縮することができると共に、オーバーシュートを小さくすることができる。
【0054】
図9は、積分制御(I分)で減少させる場合と、減量とディレイとの繰り返しで減少させ、かつ減量分を最初に大きくし、次第に小さくした場合とを比較したものである。この場合、更に、リーン判定までの時間を、図示L分短縮することができると共に、オーバーシュートを小さくすることができる。
【0055】
本実施形態によれば、O2センサの活性を検出した時点から、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分(DEC)減少させる処理と、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間分の時間待ち(ディレイ)とを繰り返し、O2センサがリーン判定した時点で、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する構成としたため、回転落ちなどを発生することなく、また排温低下も発生させることなく、速やかにストイキ点に収束した後に、ストイキ点を中心とした空燃比フィードバック制御を行うことができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、一度に減少させる減量分(DEC)を、減少処理を繰り返す毎に、小さくして、初めに落とす量を大きくすることで、ストイキ点に収束させる速度をより早くすることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態によれば、毎回の減量分(DEC)を、各減少処理によるトルク変化が同一となるように定めることにより、滑らか、かつ、速やかに、ストイキ点に収束させることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、一度に減少させる減量分(DEC)を、その時点での(減少処理前の)燃料増量率に応じて設定することにより、減少処理を繰り返す毎に減量分を小さくしたり、トルク変化が同一となるようにすることが容易となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、待ち時間(ディレイ時間)は、O2センサの活性度合に応じて変化させることにより、活性度合に合わせて限界まで短くできるので、ストイキ点に収束させる速度をより早くすることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、待ち時間(ディレイ時間)は、減少処理を繰り返す毎に、小さくしていくことにより、ストイキ点に収束させる速度をより早くすることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、待ち時間(ディレイ時間)は、始動後経過時間又はO2センサ活性後経過時間に応じて設定することにより、活性度合に応じた設定等を簡単に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、リーン判定後の空燃比フィードバック制御開始時に、比例分として、直前の減量分(DEC)より小さい増量分(P0)を付加することにより、リーン判定後の適度なリッチ化により、ストイキ点への収束性を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、前記増量分(P0)を直前の減量分(DEC)の約半分とすることにより、すなわち、リーン判定直前の減量分の半分位の点がストイキ点であると推定して制御することにより、ストイキ点への収束性を高めることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、O2センサが活性すると同時にリーン判定した場合は、前記増量分(P0)より大きい通常の比例分(P)を付加して、空燃比フィードバック制御を開始することにより、速やかにリッチ側へ制御して、リーン側のオーバーシュート大の状態を回避し、ストイキ点への収束性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエンジンのシステム図
【図2】燃料噴射量演算ルーチンのフローチャート
【図3】始動後空燃比制御ルーチンのフローチャート
【図4】空燃比フィードバック制御ルーチンのフローチャート
【図5】減量分設定用の特性図
【図6】ディレイ時間設定用の特性図
【図7】タイムチャート
【図8】比較例を示す図
【図9】比較例を示す図
【符号の説明】
1 エンジン
6 燃料噴射弁
12 ECU
17 O2センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの始動後空燃比制御装置に関し、特に、リッチ空燃比で始動を行い、始動直後に空燃比フィードバック制御を開始する場合に、空燃比を速やかにストイキ点に収束させることのできる始動後空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術として、特許文献1には、始動直後に空燃比フィードバック制御を開始するときに、最初のリーン方向への積分制御に用いる積分定数を通常値よりも大きくし、制御速度を増大させて目標空燃比(ストイキ点)に対する収束を早める一方、これにより発生する回転落ちの防止のため、点火時期を進角補正することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−312428号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィードバック制御の積分定数を通常時よりも大きくするという構成では、オーバーシュートを考えると、大きくできる分には限界があり、過剰なオーバーシュートを生じない程度の傾きとなるような積分定数とせざるを得ないため、ストイキ点に収束させるための時間がかかるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、始動直後に空燃比フィードバック制御を開始する場合に、空燃比をより速やかにストイキ点に収束させることのできる始動後空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明では、燃料噴射量を増量して、リッチ空燃比で始動を行った後、O2センサの活性を検出した時点から、燃料増量率を回転落ちを発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理と、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間分の時間待ちとを繰り返す。そして、O2センサがリーン判定した時点で、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、回転落ちなどを発生させることなく、速やかにストイキ点に収束させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すエンジン(内燃機関)のシステム図である。
【0009】
エンジン1の各気筒の燃焼室には、エアクリーナ2から吸気ダクト3、スロットル弁4、吸気マニホールド5を経て空気が吸入される。吸気マニホールド5の各ブランチ部には各気筒毎に燃料噴射弁6が設けられている。但し、燃料噴射弁6は燃焼室内に直接臨ませる配置としてもよい。
【0010】
燃料噴射弁6は、ソレノイドに通電されて開弁し、通電停止されて閉弁する電磁式燃料噴射弁(インジェクタ)であって、後述するエンジンコントロールユニット(以下ECUという)12からの駆動パルス信号により通電されて開弁し、図示しない燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定圧力に調整された燃料を噴射供給する。従って、駆動パルス信号のパルス幅により燃料噴射量が制御される。
【0011】
エンジン1の各燃焼室には点火栓7が設けられており、これにより火花点火して混合気を着火燃焼させる。
エンジン1の各燃焼室からの排気は、排気マニホールド8を介して排出される。また、排気マニホールド8からEGR通路9が導出され、これによりEGR弁10を介して排気の一部を吸気マニホールド5に還流している。
【0012】
一方、排気通路には、排気マニホールド8の直下などに位置させて、排気浄化用触媒11が設けられている。
ECU12は、CPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インターフェイス等を含んで構成されるマイクロコンピュータを備え、各種センサからの入力信号を受け、後述のごとく演算処理して、燃料噴射弁6の作動を制御する。
【0013】
前記各種センサとしては、エンジン1のクランク軸又はカム軸回転よりクランク角度と共にエンジン回転数Neを検出可能なクランク角センサ13、吸気ダクト3内で吸入空気量Qaを検出するエアフローメータ14、スロットル弁4の開度TVOを検出するスロットルセンサ15(スロットル弁4の全閉位置でONとなるアイドルスイッチを含む)、エンジン1の冷却水温Twを検出する水温センサ16、排気マニホールド8の集合部にて排気空燃比のリッチ・リーンに応じた信号を出力するO2センサ17などが設けられている。尚、O2センサ17はヒータを内蔵しており、始動時からヒータに通電して素子温度を上昇させることで早期活性化を図ることができる。ECU12には更にスタートスイッチ18などからも信号が入力されている。
【0014】
図2はECU12にて実行される燃料噴射量演算ルーチンのフローチャートである。
S1では、エアフローメータにより検出される吸入空気量Qaと、クランク角センサにより検出されるエンジン回転数Neとを読込む。尚、吸入空気量Qaについては、検出信号に基づいて平滑化処理を行うが、フローでは省略した。
【0015】
S2では、吸入空気量Qaとエンジン回転数Neとから、次式により、基本燃料噴射量(基本噴射パルス幅)Tpを演算する。
Tp=K*Qa/Ne 但し、Kは定数。
【0016】
S3では、別ルーチンにより設定される空燃比フィードバック補正係数α、始動時リッチ化補正係数KSTを読込み、次式により、最終的な燃料噴射量(噴射パルス幅)Tiを演算する。
【0017】
Ti=Tp*(α+KST)/100
空燃比フィードバック補正係数αは、基準値を100%とする。
始動時リッチ化補正係数KSTは、基準値を0%とし、KST≧0である。
【0018】
尚、燃料噴射量(噴射パルス幅)Tiの演算には、この他、スロットル開度TVOの変化に基づく過渡補正や、バッテリ電圧に基づく無効噴射パルス幅の加算等がなされるが、ここでは省略した。
【0019】
燃料噴射量Tiが演算されると、このTiに相当するパルス幅の駆動パルス信号がエンジン回転に同期して各気筒毎に所定のタイミングで燃料噴射弁6に出力されて、燃料噴射が行われる。
【0020】
次に空燃比フィードバック補正係数α、始動時リッチ化補正係数KSTの設定について説明する。
エンジンの始動時(スタートスイッチON時)は、空燃比フィードバック補正係数αは100%に固定するが、始動時リッチ化補正係数KSTを始動時水温Twに応じて0%より大きな値(始動時水温Twが低いほど大きな値)に設定し、リッチ空燃比で始動を行う。尚、トータルでの燃料増量率は、α+KST−100で表され、始動時は、α+KST−100>0%となる。
【0021】
エンジンの始動後(スタートスイッチON→OFF後)は、図3のルーチンにより、空燃比フィードバック補正係数α、始動時リッチ化補正係数KSTが設定される。
【0022】
図3はECU12にて始動後(スタートスイッチON→OFF後)に時間同期又は回転同期で実行される始動後空燃比制御ルーチンのフローチャートである。
S11では、スタートスイッチON→OFFの時点か否かを判定する。
【0023】
スタートスイッチON→OFFの時点の場合は、S12へ進む。
S12では、始動後空燃比制御を開始するために、制御フラグを1にセットする。次のS13では、空燃比フィードバック補正係数αを100%に固定する一方、始動時リッチ化補正係数KSTを水温Tw及び始動後経過時間に応じて0%より大きな値に設定する(但し、始動中よりは小さい)。もちろん、燃料増量率(α+KST−100)>0%である。
【0024】
S11での判定で、スタートスイッチON→OFFの時点でない場合、すなわち、スタートスイッチOFF後(2回目以降)の場合は、S14へ進む。
S14では、制御フラグ=1(始動後空燃比制御中)か否かを判定し、YESの場合は、S15へ進む。
【0025】
S15では、O2センサが活性したか否かを判定する。尚、活性判定は、O2センサ出力の変化に基づいて行ってもよいし、始動後経過時間の増大と共にヒータ加熱により素子温度が上昇するので、始動後経過時間に基づいても行ってもよい(図6参照)。
【0026】
O2センサが活性していない場合は、S13へ進み、空燃比フィードバック補正係数αを100%に固定する一方、始動時リッチ化補正係数KSTを水温Tw及び始動後経過時間に応じて0%より大きな値に設定する。但し、始動後経過時間の増大と共に、始動時リッチ化補正係数KSTは徐々に減少する。
【0027】
O2センサが活性した場合は、S16へ進む。
S16では、初めての活性判定か否かを判定し、初めての場合は、S17へ進む。
【0028】
S17では、O2センサがリーンと判定したか否かを判定し、NO(リッチ)の場合は、S18へ進む。
S18では、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理のための、減量分DECを、現時点での燃料増量率(α+KST−100)に応じて設定する。但し、現時点では、α=100%のため、α+KST−100=KSTであるので、減量分DECは、現時点での始動時空燃比補正係数KSTに応じて設定すればよい(次式参照)。
【0029】
減量分DEC=g(α+KST−100)=g(KST)
具体的には、後述する図5(b)のテーブルを用いて、設定する。
次のS19では、現時点での燃料増量率(α+KST−100)を減量分DEC減少させるために、現時点の始動時リッチ化補正係数KSTによる燃料増量率を空燃比フィードバック補正係数αに移行させた上で、減少処理するため、先ず、空燃比フィードバック補正係数αを、現在値(100%)に始動時リッチ化補正係数KSTを加算した後、減量分DECを減算することで、算出する。次いで、始動時リッチ化補正係数KSTを0とする(次式参照)。
【0030】
α=100+KST−DEC
KST=0
尚、O2センサ活性直前のKSTをKSTold とすれば、O2センサ活性直前の燃料増量率(α+KST−100)=KSTold であるのに対し、O2センサ活性直後の燃料増量率(α+KST−100)=KSTold −DECとなり、燃料増量率をDEC分減少させたことになる。
【0031】
次のS20では、O2センサ活性後経過時間に基づいて、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間(ディレイ時間)DTを算出する。具体的には、後述する図6(b)のテーブルを用いて、算出する。
【0032】
S17での判定で、YES、すなわち、O2センサが活性すると同時にリーン判定した場合は、S21へ進んで、P0フラグを0にした後、S22へ進む。S22では、始動後空燃比制御を終了させて、空燃比フィードバック制御へ移行するため、制御フラグを0にする。
【0033】
S16での判定で、NO、すなわち、初めての活性判定でない場合は、S23へ進む。
S23では、S17と同様に、O2センサがリーンと判定したか否かを判定し、NO(リッチ)の場合は、S24へ進む。
【0034】
S24では、S20(又はS28)にて初期設定したディレイ時間DTをカウントダウンする。
次のS25では、ディレイ時間DT=0となった(S20又はS28にて設定したディレイ時間が経過した)か否かを判定する。
【0035】
DT=0でない場合は、そのまま処理を終了し、時間待ちを行う。
DT=0になった場合は、S26へ進む。
S26では、S18と同様に、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理のための、減量分DECを、現時点での燃料増量率(α+KST−100)に応じて設定する。但し、現時点では、KST=0%のため、α+KST−100=α−100であるので、減量分DECは、α−100に応じて設定すればよい(次式参照)。
【0036】
減量分DEC=g(α+KST−100)=g(α−100)
ここでも、具体的には、後述する図5(b)のテーブルを用いて設定する。
次のS27では、現時点での燃料増量率(α+KST−100)を減量分DEC減少させるために、KST=0%のまま、空燃比フィードバック補正係数αの現在値から減量分DECを減算することで、空燃比フィードバック補正係数αを更新する(次式参照)。
【0037】
α=α−DEC
次のS28では、S20と同様に、O2センサ活性後経過時間に基づいて、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間(ディレイ時間)DTを算出する。ここでも、具体的には、後述する図6(b)のテーブルを用いて算出する。
【0038】
S23での判定で、YES、すなわち、O2センサがリーン判定した場合は、S29へ進む。
S29では、空燃比フィードバック制御開始時に、比例分として、直前(前回)の減量量DECより小さい増量分P0を付加するために、その増量分P0を算出する。
【0039】
具体的には、直前の減量分DECに一定の比率a(例えば1/2)を乗じて、比例分P0を算出する(次式参照)。
増量分P0=a*DEC
そして、S30へ進んで、P0フラグを1にした後、S31へ進む。S31では、始動後空燃比制御を終了させて、空燃比フィードバック制御へ移行するため、制御フラグを0にする。
【0040】
S14での判定で、制御フラグ=0の場合は、S32へ進み、空燃比フィードバック制御(λ制御)に移行する。
図4は図3のルーチンのS32にて実行される空燃比フィードバック制御(λ制御)ルーチンのフローチャートである。
【0041】
S41では、O2センサ出力に基づいてリーン/リッチを判定する。
リーンの場合は、後述するS51を経て、S42へ進み、リッチ→リーンへの反転時(前回リッチ)か否かを判定する。リッチ→リーンへの反転時の場合は、S43へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを比較的大きく設定した比例分(比例定数)P増加させて、更新する(α=α+P)。リーン状態継続中の場合は、S44へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを微小の積分分(積分定数)I増加させて、更新する(α=α+I)。
【0042】
リッチの場合は、S45へ進み、リーン→リッチへの反転時(前回リーン)か否かを判定する。リーン→リッチへの反転時の場合は、S46へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを比較的大きく設定した比例分P減少させて、更新する(α=α−P)。リッチ状態継続中の場合は、S47へ進んで、空燃比フィードバック補正係数αを微小の積分分I減少させて、更新する(α=α−I)。
【0043】
一方、S51では、リーン判定の場合に、初回(空燃比フィードバック制御開始時)か否かを判定している。初回の場合のみ、S52へ分岐して、P0フラグの値を判定する。P0フラグ=1の場合は、S53へ進み、空燃比フィードバック制御開始時に、通常の比例分Pの代わりに、図3のルーチンのS29にて算出した増量分P0を付加する(α=α+P0)。P0フラグ=0の場合(O2センサが活性すると同時にリーン判定した場合)は、S43へ進み、空燃比フィードバック制御開始時に、通常の比例分Pを付加する(α=α+P)。
【0044】
以上にフローチャートで説明したように、エンジン始動後、O2センサ活性までは、水温及び始動後経過時間に応じて、燃料増量を行う。
O2センサ活性後は、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分DEC減少させる。そして、O2センサ活性後経過時間に応じて、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間に相当するディレイ時間DTを設定し、このディレイ時間DTの間、減少後の燃料増量率を維持する。
【0045】
このディレイ時間DTの間に、O2センサがリーン判定しない場合は、ディレイ時間DTの経過後に、燃料増量率(α+KST−100)を更に所定の減量分DEC減少させる。そして、再びディレイ時間DTの間、減少後の燃料増量率を維持する。
【0046】
ディレイ時間DTの間に、O2センサがリーン判定した場合は、その時点より、空燃比フィードバック制御に移行するが、空燃比フィードバック制御開始時には、比例分として、直前の減量分DECに対して一定の比率a(例えば1/2)を乗じた増量分P0を付加する。
【0047】
一方、O2センサの活性と同時にリーン判定した場合は、通常の比例分Pを付加して、空燃比フィードバック制御を開始する。
図5に直前の燃料増量率(α+KST−100)に対する減量分DECの関係を示す。減量した際の回転落ちは、減量したことで生じるトルク落ちにより大きく左右される。図5(a)を参照し、トルクは空燃比がリッチ側の12〜13前後で最大となり、ストイキ前後で落ち代が大きくなってくる。減量による回転落ちを防ぐためには、トルクの落ちを一定以下にする必要があり、早くストイキ点に到達させるには、回転落ちが発生するぎりぎりの最大トルク幅で落としていく必要がある。これを整理すると、図5(b)のような関係となる。
【0048】
すなわち、燃料増量率が大きいほど、減量分DECを大きくし、燃料増量率が低下するに従って、減量分DECを小さくすることで、一度に減少させる減量分DECを、減少処理を繰り返す毎に、小さくしていくが、毎回の減量分でのトルク変化が同一となるようにする。
【0049】
また、この場合の空燃比制御はオープンループで行っているため、空燃比ばらつきを考慮して、実際の空燃比がリーン側にシフトしていても回転落ちが生じないようにする必要がある。この空燃比ばらつきを考慮した線を図5(b)に点線で示す。この関係に従って、減量分を設定する。これにより、ストイキ点を誤って学習した際にも、トルク落ちが発生せず、速やかに収束させることが可能となる。この場合、図5(b)の点線に従って、燃料増量率から減量分を設定してもよいし、図5(a)の実線に従って、燃料増量率を減少側に補正した(所定値を引いた)値から減量分を設定してもよい。
【0050】
図6に始動後経過時間(又はO2センサ活性後経過時間)とO2センサ応答遅れ時間(ディレイ時間)との関係を示す。始動後の時間が経過するにつれ、O2センサの素子温が上昇し、それにしたがって、O2センサ応答遅れ時間が短くなってくる。従って、ディレイ時間DTは、O2センサの活性度合に応じて変化させるべく、始動後経過時間(又はO2センサ活性後経過時間)によって、決定する。これより、ディレイ時間TDは、減少処理を繰り返す毎に、小さくなっていく。
【0051】
図7にタイムチャートを示す。
図7(a)は、O2センサ活性後の1回の減量でリーン判定した場合であり、ストイキ点への収束を早めることができる。これに対し、図示点線のように、O2センサ活性直後よりリーン側への比例分を付加して空燃比フィードバック制御を開始した場合は、減量分が大きすぎて、空燃比変化が大となり、制御上の増量0ラインが実際にはリーンになっていた場合などに、リーン側のオーバーシュートを生じる。リーン側のオーバーシュートを生じると、エンジン回転が不安定となり、最悪の場合にはエンジンストールを起こす。
【0052】
図7(b)は、O2センサ活性後の2回の減量でリーン判定した場合であり、この場合でもストイキ点への収束を早めることができる。これに対し、図示点線は、O2センサ活性後に積分制御で減量した場合であり、ストイキ点への収束(フィードバック制御開始)が遅れている。
【0053】
図8は、積分制御(I分)で減少させる場合と、減量とディレイとの繰り返しで減少させる場合とを比較したものである。この例のように、傾きは同じにしても、燃料増量率がストイキ点に達した後、同じ応答遅れ時間DTの後に、リーン判定に至るとすると、リーン判定までの時間を、図示L分短縮することができると共に、オーバーシュートを小さくすることができる。
【0054】
図9は、積分制御(I分)で減少させる場合と、減量とディレイとの繰り返しで減少させ、かつ減量分を最初に大きくし、次第に小さくした場合とを比較したものである。この場合、更に、リーン判定までの時間を、図示L分短縮することができると共に、オーバーシュートを小さくすることができる。
【0055】
本実施形態によれば、O2センサの活性を検出した時点から、燃料増量率(α+KST−100)を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分(DEC)減少させる処理と、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間分の時間待ち(ディレイ)とを繰り返し、O2センサがリーン判定した時点で、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する構成としたため、回転落ちなどを発生することなく、また排温低下も発生させることなく、速やかにストイキ点に収束した後に、ストイキ点を中心とした空燃比フィードバック制御を行うことができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、一度に減少させる減量分(DEC)を、減少処理を繰り返す毎に、小さくして、初めに落とす量を大きくすることで、ストイキ点に収束させる速度をより早くすることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態によれば、毎回の減量分(DEC)を、各減少処理によるトルク変化が同一となるように定めることにより、滑らか、かつ、速やかに、ストイキ点に収束させることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、一度に減少させる減量分(DEC)を、その時点での(減少処理前の)燃料増量率に応じて設定することにより、減少処理を繰り返す毎に減量分を小さくしたり、トルク変化が同一となるようにすることが容易となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、待ち時間(ディレイ時間)は、O2センサの活性度合に応じて変化させることにより、活性度合に合わせて限界まで短くできるので、ストイキ点に収束させる速度をより早くすることが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によれば、待ち時間(ディレイ時間)は、減少処理を繰り返す毎に、小さくしていくことにより、ストイキ点に収束させる速度をより早くすることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、待ち時間(ディレイ時間)は、始動後経過時間又はO2センサ活性後経過時間に応じて設定することにより、活性度合に応じた設定等を簡単に行うことができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、リーン判定後の空燃比フィードバック制御開始時に、比例分として、直前の減量分(DEC)より小さい増量分(P0)を付加することにより、リーン判定後の適度なリッチ化により、ストイキ点への収束性を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、前記増量分(P0)を直前の減量分(DEC)の約半分とすることにより、すなわち、リーン判定直前の減量分の半分位の点がストイキ点であると推定して制御することにより、ストイキ点への収束性を高めることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、O2センサが活性すると同時にリーン判定した場合は、前記増量分(P0)より大きい通常の比例分(P)を付加して、空燃比フィードバック制御を開始することにより、速やかにリッチ側へ制御して、リーン側のオーバーシュート大の状態を回避し、ストイキ点への収束性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエンジンのシステム図
【図2】燃料噴射量演算ルーチンのフローチャート
【図3】始動後空燃比制御ルーチンのフローチャート
【図4】空燃比フィードバック制御ルーチンのフローチャート
【図5】減量分設定用の特性図
【図6】ディレイ時間設定用の特性図
【図7】タイムチャート
【図8】比較例を示す図
【図9】比較例を示す図
【符号の説明】
1 エンジン
6 燃料噴射弁
12 ECU
17 O2センサ
Claims (10)
- 燃料噴射量を増量して、リッチ空燃比で始動を行うエンジンにおいて、
O2センサの活性を検出し、
活性を検出した時点から、燃料増量率を回転落ちが発生しない程度まで一度に所定の減量分減少させる処理と、空燃比のリッチ→リーン変化に対するO2センサ出力の応答遅れ時間分の時間待ちとを繰り返し、
O2センサがリーン判定した時点で、O2センサ出力に基づく空燃比フィードバック制御を開始する構成としたことを特徴とするエンジンの始動後空燃比制御装置。 - 一度に減少させる減量分を、減少処理を繰り返す毎に、小さくしていくことを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- 毎回の減量分を、各減少処理によるトルク変化が同一となるように定めることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- 一度に減少させる減量分を、その時点での燃料増量率に応じて設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- 待ち時間は、O2センサの活性度合に応じて変化させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- 待ち時間は、減少処理を繰り返す毎に、小さくしていくことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- 待ち時間は、始動後経過時間又はO2センサ活性後経過時間に応じて設定することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- リーン判定後の空燃比フィードバック制御開始時に、比例分として、直前の減量分より小さい増量分を付加することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- 前記増量分を直前の減量分の約半分とすることを特徴とする請求項8記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
- O2センサが活性すると同時にリーン判定した場合は、前記増量分より大きい通常の比例分を付加して、空燃比フィードバック制御を開始することを特徴とする請求項7又は請求項8記載のエンジンの始動後空燃比制御装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN101294517B (zh) * | 2007-04-26 | 2011-03-30 | 株式会社电装 | 空燃比控制装置及发动机控制系统 |
CN110700955A (zh) * | 2018-12-28 | 2020-01-17 | 长城汽车股份有限公司 | 汽油发动机催化器的过量空气系数控制方法及装置 |
-
2003
- 2003-06-06 JP JP2003162028A patent/JP2004360628A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN101294517B (zh) * | 2007-04-26 | 2011-03-30 | 株式会社电装 | 空燃比控制装置及发动机控制系统 |
CN110700955A (zh) * | 2018-12-28 | 2020-01-17 | 长城汽车股份有限公司 | 汽油发动机催化器的过量空气系数控制方法及装置 |
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