JP2004360044A - 溶鋼温度推定計算装置及び溶鋼温度推定計算方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製鋼プロセスにおける二次精錬設備の溶鋼温度を高精度に推定して、上記溶鋼温度を制御するための操業条件を容易に、且つ高精度に決定する。
【解決手段】二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定し、上記複数のパラメータ間において溶鋼温度の変化量がバランスするようにした連立方程式を立ててその近似解を求めることにより各パラメータ値を求め、上記求めた複数のパラメータ値に基づいて上記溶鋼の温度を推定するようにすることにより、目標温度に制御するための操業条件を、二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データを総合的に考慮して決定することができるようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定し、上記複数のパラメータ間において溶鋼温度の変化量がバランスするようにした連立方程式を立ててその近似解を求めることにより各パラメータ値を求め、上記求めた複数のパラメータ値に基づいて上記溶鋼の温度を推定するようにすることにより、目標温度に制御するための操業条件を、二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データを総合的に考慮して決定することができるようにする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶鋼温度推定計算装置及び溶鋼温度推定計算方法に関し、特に、二次精錬設備における溶鋼鍋内の溶鋼温度を適正に制御するために用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、金属精錬工程では、転炉や電気炉で溶鋼を製造した後、溶鋼中の各成分量やガス量を適切に調整するための二次精錬処理を行っている。上記二次精錬処理において、溶鋼鍋内に収容されている溶鋼の温度が大きく変化すると、鋼製品の品質に影響を与えることになってしまう。このため、高品質の鋼製品を製造するには、上記溶鋼鍋内の溶鋼の温度を適正に管理して温度制御を高精度に行うことが必要である。
【0003】
溶鋼の温度を制御する従来の方法には、例えば、過去の操業を通じて蓄積されたオペレータの操業ノウハウや標準作業指示書等に基づき、溶鋼温度に影響を及ぼす因子(操業条件)を決定して溶鋼温度を制御する方法がある。また、近似モデル式に基づいて温度制御させる方法としては、溶鋼の温度が推移する状態を単一の数式モデルで表し、上記単一の数式モデルに操業条件に相当する種々のパラメータを入力して溶鋼温度の近似値を算出して行う方法がある。
【0004】
また、二次精錬設備における溶鋼温度の推定技術及び操業条件決定技術としては、作業指示情報から決定される各プロセスの処理時間に基づいて二次精錬設備における溶鋼温度の降下量を推定し、この推定した温度降下量から逆算して求めた溶鋼温度と、目標値として設定した溶鋼温度との差から、目標の溶鋼温度が実現されるために必要な操業条件の決定を行うという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−251648号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶鋼温度は複数の操業条件が複雑に絡み合いながら推移していくため、上述したような操業ノウハウまたは単一の数式で表された近似モデル式によって溶鋼温度を推定する方法では、その推定精度が非常に低いという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された溶鋼温度の降下量に基づく溶鋼温度の推定技術は、二次精錬処理の開始後、更に3回の溶鋼温度の測定を行い、二次精錬処理開始時の溶鋼温度を補正するようにしているが、溶鋼温度と複数の操業条件との相関関係が明らかにされていなかった。このため、溶鋼温度の降下量に対して操業条件を適切に決定することができず、溶鋼温度を高精度に制御することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上述した問題点にかんがみ、製鋼プロセスにおける二次精錬設備の溶鋼温度を高精度に推定できるようにして、上記溶鋼温度を適正に制御するための操業条件を容易に、且つ高精度に決定できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶鋼温度推定計算装置は、金属精錬の溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定計算装置であって、上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定するパラメータ決定手段と、上記パラメータ決定手段により決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めるパラメータ値演算手段と、上記パラメータ値演算手段で求めたパラメータ値に基づいて上記溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定手段とを有することを特徴としている。
【0010】
本発明の溶鋼温度推定計算方法は、金属精錬の溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定計算方法であって、上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定するパラメータ決定処理と、上記パラメータ決定処理により決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めるパラメータ値演算処理と、上記パラメータ値演算処理で求めたパラメータ値に基づいて、上記溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定処理とを有することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶鋼温度推定計算装置及び溶鋼温度推定計算方法の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
本発明は、例えば、図1に示すような溶鋼温度推定計算装置1に適用される。
本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1が温度の推定計算を行う対象物として、製鋼炉で溶製された後に転炉から送られる溶鋼鍋内に収容されている溶鋼を例に挙げて説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、溶鋼温度推定計算装置1は、時間の経過に伴って溶鋼の温度が推移していく状態を表した溶鋼温度推移パターン特性図を生成して、溶鋼鍋内に収容されている溶鋼の温度を目標温度にするために必要な操業条件(例えば、酸素量または冷却材の投入量や処理時間など)をオペレータに決定させるようにしている。図2は、上記溶鋼温度推移パターン特性図の一例を示したものである。
【0014】
<溶鋼温度推定計算装置1の全体構成>
図1に示すように、本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1は、機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、溶鋼温度推定手段12b、及び推定結果表示手段13を備えている。
なお、本実施の形態の機器情報パラメータ決定手段10及び事例推論パラメータ決定手段11により、パラメータ決定手段が構成されている。
【0015】
機器情報パラメータ決定手段10は、(1)ビジコン情報、(2)電気/計測装置の実績情報、(3)システム定数情報、及び(4)システム計算情報等に基づいて溶鋼温度の変化に影響を与える複数のパラメータ値を決定する。
【0016】
(1)ビジコン情報とは、二次精錬の工程管理に応じて設定される溶鋼の作業指示情報であり、溶鋼温度を推定する計算のために精錬工程を管理する上位の計算機15から出力される。具体的には、例えば、鍋到着の要求時刻(T8)、二次精錬処理開始時刻(T0)、及び鍋到着時の要求温度(C8)、或いは処理開始前の炭素量や溶鋼量等の情報である。
【0017】
なお、括弧内の記号は、図2に示す溶鋼温度推移パターン特性図における時刻または溶鋼温度の値を示している。また、図2において、時間を示す横軸に対して溶鋼の温度を示す縦軸を左右の両側に便宜上表すようにしたが、上記左右の縦軸のスケールは同一である。
【0018】
(2)電気/計測装置の実績情報とは、二次精錬設備における電気/計測装置16で測定して出力される操業実績値である。例えば、測温サンプリングの開始時刻(T1)、測温サンプリング開始時の溶鋼の温度(C1)、測温サンプリング開始時のサンプル資料情報(酸素濃度)、及び還流ガスの流量等の情報である。
【0019】
(3)システム定数情報とは、溶鋼温度推定計算装置1が内部の記憶手段19で管理する情報である。例えば、脱酸(Oxygen−Blowing、以下、OBと略す)の開始時刻(T2)、OB送酸速度、冷却速度、溶鋼補正温度、及び調整係数等の情報である。なお、上記冷却速度とは、二次精錬処理終了時刻(T7)から鍋到着時の要求時刻(T8)間における溶鋼温度の冷却速度を上記記憶手段19に記憶して管理している。
【0020】
(4)システム計算情報とは、溶鋼温度推定計算装置1の内部に設けられている上記記憶手段19に格納されているルックアップテーブルまたは上記システム定数情報を用いて決定される計算情報である。例えば、脱炭処理時間(T5―T0)の標準値、Al投入後の攪拌時間(T7―T5)、Al投入間隔における溶鋼温度変化量(C4―C5)、合金投入時の温度変化量(図2に示すd2)、及び合金投入無し時の温度変化量(図2に示すd1)等の情報である。
【0021】
事例推論パラメータ決定手段11は、事例ベース推論によって検索した操業事例を参照して、溶鋼温度の変化に影響を与えるパラメータを決定する。つまり、所定の評価関数値やキーワード等を検索キーとして、事例データベース17に蓄積された過去の膨大な操業事例の中から、今回の操業と同一或いは類似していると思われるものを推論して抽出している。
【0022】
そして、上記抽出した操業事例における所定の実績値を、溶鋼温度を推定計算するためのパラメータの一つとして決定している。事例推論パラメータ決定手段11により決定する上記所定のパラメータとは、例えば、Al脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)の情報である。
【0023】
パラメータ値演算手段12aは、上記機器情報パラメータ決定手段10及び事例推論パラメータ決定手段11より決定された複数の溶鋼温度パラメータを基にして、高次の連立方程式を立てる。そして、上記連立方程式を解くことにより、溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求める。
【0024】
上記パラメータ値演算手段12aにより求めるパラメータ値は、詳細は後述するが、例えば、Al脱炭後温度(昇温後温度)C8、二次精錬処理時間(T7―T0)、脱炭処理時間(T5―T0)、及び脱炭OB時間(T3―T2)等である。
【0025】
溶鋼温度推定手段12bは、上記パラメータ値演算手段12aにより求めたパラメータ値を基にして所定の時刻での溶鋼の温度を推定し、溶鋼温度推移パターン特性図を作成する。
【0026】
図2に示したように、推定結果表示手段13は、上述した機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、及び溶鋼温度推定手段12bにより求めた複数のパラメータ値から生成される溶鋼温度の推移パターン特性図をモニタ18の画面上に表示する。
【0027】
なお、本実施の形態では、溶鋼温度推定計算装置1は、機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、溶鋼温度推定手段12b、及び推定結果表示手段13により構成されているとしたが、これらに限定されずに他の構成を含んでよいことは言うまでもない。
【0028】
<溶鋼温度推定計算装置1の動作>
ここでは、溶鋼温度推定計算装置1の基本的な動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0029】
溶鋼温度推定計算装置1は、計測機器の測定によってビジコン情報、及び演算処理によってシステム計算情報等を取得するととともに、所定のパラメータに関しては事例ベース推論によって過去の操業事例から取得する。そして、パラメータ値演算手段12aによる近似計算によって、上記取得した複数のパラメータ間において、上記溶鋼の温度の変化量がバランスするようにした高次の連立方程式の解を求めることにより、二次精錬設備に搬入される溶鋼鍋内の溶鋼の温度に影響を与えるパラメータ値を決定している。
以下に、溶鋼温度推定計算装置1の動作を順に説明する。
【0030】
図3に示すように、最初のステップS301において、機器情報パラメータ決定手段10により、上述したビジコン情報、電気/計測装置16の実績情報、システム定数情報、及びシステム計算情報をパラメータ値として決定する。なお、図4に、本実施の形態で溶鋼温度推定計算装置1が決定するパラメータの一覧を示す。
【0031】
次に、ステップS302で、事例推論パラメータ決定手段11により、上記図2に示したAl脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)を事例ベース推論に基づいて決定する。ここで、上記Al脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)は、機器情報パラメータ決定手段10によって計測または演算処理して求めることが困難なパラメータ値である。つまり、事例推論パラメータ決定手段11は、機器情報パラメータ決定手段10が決定することのできないパラメータ値を、以下に示す推論方法によって決定するようにしている。
【0032】
以下に、事例推論パラメータ決定手段11が、どのような手順で推論してAl脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)を決定しているかを簡単に説明する。
「類似した問題は、類似した解を有する」という実世界における経験則からも裏づけられているように、事例ベース推論とは、与えられた問題に類似する過去の事例を利用(参照)して解を導く問題解決方式である。
【0033】
本実施の形態の事例推論パラメータ決定手段11は、今回の操業条件と過去の操業条件とがどの程度類似しているかを所定の検索条件を基に定量化して、これを類似度として表す。そして、最も高い類似度を有する操業条件の事例を、今回の操業条件に最も類似した事例であると推論する。
【0034】
本実施の形態においては、過去の操業事例の中でどの操業事例が今回の操業条件に最も類似しているかを定量化するのにあたり、以下に示す評価関数値Jによって決定している。
【0035】
【数1】
【0036】
すなわち、溶鋼温度の変化に影響を与える種々のパラメータの中から幾つかを選択して、上記選択したパラメータ値と今回の操業で対応するパラメータ値との差の総和を評価関数値Jにするようにした。事例推論パラメータ決定手段11は、上記評価関数値Jが最も小さい値を有する操業事例を抽出する。
【0037】
上記評価関数値Jの関数式の設定にあたり、上記溶鋼温度の変化に影響を与える種々のパラメータの中から任意のパラメータを選択することができるが、二次精錬工程の特徴に応じて溶鋼温度の変化と相関性がより大きなパラメータを評価関数値Jの決定のために選択することにしている。
【0038】
本実施の形態では、上記(数式1)における評価関数値Jを6個のパラメータ値の差によって求めている。具体的には、今回の操業における、測温サンプリング開始時の溶鋼温度(C1)をA、鍋区分をB、厚板処理後の操業回数をC、浸漬管交換後の使用操業回数をD、連続処理した操業回数をE、及び下部槽の使用回数をFとしている。
【0039】
一方、事例データベースに蓄積されている過去の操業における、測温サンプリング開始時の溶鋼の温度をai、鍋区分をbi、厚板処理後の操業回数をci、浸漬管交換後の使用操業回数をdi、連続処理した操業回数をei、及び下部槽の使用回数をfiとしている。
【0040】
ここで、事例データベースに蓄積された操業事例数をn個として、i=1〜nであるとしている。また、上記6つのパラメータ(A〜F)についての評価関数の重み係数をそれぞれα、β、γ、δ、ε、ζとし、上記重み係数を過去の操業におけるパラメータ値との差に対して乗じている。
【0041】
このように、事例ベース推論によって、今回の操業条件(A〜F)と、過去の操業条件(ai〜fi)とでそれぞれ対応するパラメータ値の差の絶対値の総和Jiが最も小さい評価関数値Jを有する過去の操業事例Jkを抽出する。そして、抽出した操業事例JkでのAl脱酸前の溶鋼温度の実績値C4 kを、今回の操業におけるAl脱酸前の溶鋼温度(C4)と推定している。
【0042】
次に、事例推論パラメータ決定手段11は、推定したAl脱酸前の溶鋼温度(C4)を用いて、脱炭処理による温度変化量を決定する。
具体的には、機器情報パラメータ決定手段10により、電気/計測装置16の実績情報として測温サンプリング開始時の溶鋼温度(C1)を取得しているので、上記脱炭処理による温度変化量を次の式により決定する。
【0043】
脱炭処理による温度変化量(C1−4)
=測温サンプリング開始時の溶鋼の温度(C1)―Al脱酸前の溶鋼温度(C4)
【0044】
次に、ステップS303に進み、パラメータ値演算手段12aは、機器情報パラメータ決定手段10及び事例推論パラメータ決定手段11が決定した複数のパラメータ値を用いて、溶鋼の温度をバランスさせる連立方程式を立てる。
【0045】
この連立方程式は、複数の未知パラメータを一括して求めることから高次の連立方程式であるとともに、一つずつの方程式としては細分化した時間範囲の中でそれぞれが高精度に成立している関係にある。なお、本実施の形態では10元連立方程式としている。
【0046】
いま、パラメータ値演算手段12aにより求めるパラメータ値、すなわち、10元連立方程式を解くことによって決定するパラメータを、以下の11個のパラメータX1〜X11とする。なお、[ ]内の値は、各パラメータ値の単位を表す。また、以下において、11個のパラメータとなっているのは、1個のパラメータに0を代入して実質的に10個の未知パラメータの値を求めるためである。
【0047】
(1) X1 :Al脱酸後(昇熱後)温度 [℃]
(2) X2 :二次精錬処理時間 [min]
(3) X3 :脱炭処理時間 [min]
(4) X4 :脱炭OB時間 [min]
(5) X5 :脱炭OB量 [Nm3]
(6) X6 :Al脱酸前温度変化量 [℃]
(7) X7 :脱炭OB温度変化量 [℃]
(8) X8 :Al脱酸での温度変化量 [℃]
(9) X9 :Al脱酸前の脱酸量 [ppm]
(10)X10:脱炭での脱酸量 [ppm]
(11)X11:冷材投入量 [ton]
【0048】
上記(1)〜(10)の各パラメータに関し、下記の温度バランス関係式が成立する。なお、下記温度バランス関係式におけるTi(iは任意の数)は、図2で示した特性図における時刻を表し、同様に、Ciは温度値を表している。また、図2には、上記パラメータXiの値に相当する量を示している。
【0049】
(i)Al脱酸後(昇熱後)温度(X1)[℃]=鍋到着時の要求温度C8[℃]
+鍋到着時の補正温度[℃]
+冷却速度[℃/min]×(鍋到着の要求時刻T8―二次精錬処理開始時刻T0+二次精錬処理時間T7)[min]
+合金投入無しの時の温度変化量d1[℃]
+合金投入時の温度変化量d2[℃]
+調整係数1[℃/(kg/ton)]×(冷材投入量/溶鋼量)[ton]
【0050】
(ii)二次精錬処理時間(X2)[min]=脱炭処理時間(T5―T0)[min]
+脱酸後攪拌時間(T7―T5)[min]
【0051】
(iii)脱炭処理時間(X3)[min]=脱炭処理時間(T5―T0)の標準値[min]+脱炭OB時間X4[min]
【0052】
(iv)脱炭OB時間(X4)[min]=脱炭OB量[Nm3]/OB送酸速度[Nm3/min]
【0053】
(v)Al脱酸前の温度変化量(X6)[℃]=脱炭処理温度変化量[℃]
−脱炭OB温度変化量X7[℃]+Al投入間隔における温度変化量(C4―C5)[℃]
【0054】
(vi)脱炭OB温度変化量(X7)[℃]=調整係数2[℃/(Nm3/ton)]×脱炭OB量[Nm3]/溶鋼量[ton]
【0055】
(vii)Al脱酸後(昇熱後)温度(X1)[℃]=測温サンプリング開始時の溶鋼温度(C1)+Al脱酸前の温度変化量(X6)[℃]+Al脱酸での温度変化量X8[℃]
【0056】
(viii)Al脱酸での温度変化量(X8)[℃]=調整係数3×Al脱酸前の脱酸量X9[ppm]
【0057】
(ix)Al脱酸前の脱酸量(X9)[ppm]=処理開始時での脱酸量[ppm]
+調整係数4×(脱炭OB量[Nm3]/溶鋼量[ton])
−脱炭での脱酸量(X10)[ppm]
【0058】
(x)脱炭での脱酸量(X10)[ppm]=調整係数5×処理開始前の炭素量[ppm]
【0059】
図5は、上記(i)〜(x)に示した温度バランス関係式を行列式の形で表したものである。図5(a)は、冷材投入量(X11)をX11=0と設定したときの温度バランス関係式(i)〜(x)を表している。冷材投入量(X11)を0にしているので、図5(a)に示す行列式から求まるパラメータX1〜パラメータX10の値は、溶鋼鍋内の溶鋼温度を上げるときの各値である。
【0060】
一方、図5(b)は、脱炭OB量(X5)がX5<0の場合に、X5=0と設定したときの温度バランス関係式(i)〜(x)を表している。脱炭OB量(X5)を0にしているので、図5(b)に示す行列式から求まるパラメータX1〜パラメータX11(パラメータX5を除く)の値は、溶鋼鍋内の溶鋼温度を下げるときの各値である。
【0061】
例えば、上記図5(a)に示した行列式の5行目に着目すると、行列計算式はe1=X6+X7である。上述したように、X6はAl脱酸前の温度変化量、X7は脱炭OB温度変化量である。
また、上述した温度バランス関係式(v)によれば、
Al脱酸前温度変化量(X6)+脱炭OB温度変化量(X7)=脱炭処理温度変化量+Al投入間隔における温度変化量 ………(数式2)
である。
【0062】
したがって、上記(数式2)の右辺を整理して、
e1=脱炭処理温度変化量+Al投入間隔における溶鋼温度変化量
とすれば、図5(a)の行列式の5行目(e1=X6+X7)となる。同様な考え方で上記温度バランス関係式を整理して行列式に表したのが、図5(a)或いは図5(b)である。
【0063】
次に、ステップS304で、図5(a)または図5(b)で示した行列式におけるパラメータX1〜X11の値をパラメータ値演算手段12aによる近似値演算で求めていく。なお、図5に示した行列式における解の演算は特に限定するものではないが、本実施の形態では、行列式演算で一般的に用いられるGauss−Jordan法による掃き出し法により、パラメータX1〜X11の値の近似解を算出している。
【0064】
このように、パラメータ値演算手段12aで求めたパラメータX1〜X11の値、特にAl脱酸後(昇熱後)温度X1の値に基づいて、溶鋼温度推定手段12bは上記溶鋼の温度を推定することから、二次精錬設備を操業するオペレータは、二次精錬終了時の溶鋼温度を目標温度(C7)に制御させるための酸素または冷却材の投入量、投入時刻、及び投入後の処理時間というような操業条件を容易に、且つ高精度に判断することが可能となる。
【0065】
次に、ステップS305に進み、推定結果表示手段13は、上記のようにして求めたパラメータX1〜X11の値、及び機器情報パラメータ決定手段10または事例推論パラメータ決定手段11により決定した図4に示した種々のパラメータの値を基にして、溶鋼温度が時間の経過によってどのように推移していくかを一目で分かることができる溶鋼温度の推移パターン特性図を生成するとともに、このパターン特性図をモニタ18に表示する(ステップS306)。
【0066】
上記溶鋼温度の推移パターン特性図は、既に示した図2で表されるような温度変化の状況を示す特性図である。オペレータにとっては、溶鋼鍋内に酸素または冷却材を投入する量、投入時刻、及び投入後の処理時間といった操業条件が数値で提示されるのではなく、図2で示すような溶鋼温度の推移パターン特性図として提示された場合の方が判断ミスを格段に少なくすることができて好都合といえる。
【0067】
次に、ステップS307で、生成した溶鋼温度の推移パターン特性図で良ければ、上述した一連の動作を終了する。これに対して、生成した溶鋼温度の推移パターン特性図に不都合があると判断したときは、ステップS301及びステップS302で決定した種々のパラメータの値に対して適切な補正を加えて、上述した連立方程式による解の算出をやり直しながら、一連の動作を繰返し行う。
【0068】
なお、類似度を求めるための評価関数値Jは、上述した(数式1)によって計算される値に限られない。例えば、上述した今回の操業条件(A〜F)と、過去の操業条件(ai〜fi)との最小二乗和が最小になる値を類似度として用いるようにしてもよい。
【0069】
また、事例推論パラメータ決定手段11は、条件部と結論部とから構成されるルールによって記述されたルールベース推論を上述した事例ベース推論に組み合わせて互いの推論を補完し、最適な検索条件を設定するようにしてもよい。さらに、事例推論パラメータ決定手段11の替わりに、ルールベース推論を行うルールベース推論パラメータ決定手段にしても本発明は適用できるものである。
【0070】
機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、及び溶鋼温度推定手段12bにより決定される種々のパラメータを上述したが、これらは本実施の形態として設定したパラメータの一例である。溶鋼温度の変化に影響を与えるパラメータの種類は二次精錬工程の特徴に応じて異なり、これら任意のパラメータに対して本発明が適用されるものである。
【0071】
図6は、上述した本実施の形態における溶鋼温度推定計算装置1を構成可能なコンピュータシステムの内部構成を示すブロック図である。
本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1は図6に示すようなコンピュータ機能600を有しており、そのCPUが所定のプログラムを読み出して実行することで、本実施の形態における溶鋼温度の推定計算処理を実施する。
【0072】
コンピュータ機能600は、上記図6に示すように、CPU601と、ROM602と、RAM603と、キーボード(KB)609のキーボードコントローラ(KBC)605と、表示部としてのCRTディスプレイ(CRT)610のCRTコントローラ(CRTC)606と、ハードディスク(HD)611及びフレキシブルディスク(FD)612のディスクコントローラ(DKC)607と、ネットワーク300との接続のためのネットワークインターフェースコントローラ(NIC)608とが、システムバス604を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
【0073】
CPU601は、ROM602或いはHD611に記憶されたソフトウェア、或いはFD612より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス604に接続された各構成部を総括的に制御する。
すなわち、CPU601は、所定の処理シーケンスに従った処理プログラムを、ROM602、HD611、或いはFD612から読み出して実行することで、本実施の形態における機能を実現するための制御を行う。
【0074】
RAM603は、CPU601の主メモリ或いはワークエリア等として機能する。
KBC605は、KB609や図示していないポインティングデバイス等からの指示入力を制御する。
CRTC606は、CRT610の表示を制御する。
DKC607は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び本実施の形態における所定の処理プログラム等を記憶するHD611及びFD612とのアクセスを制御する。
NIC608は、ネットワーク300上の装置或いはシステムと双方向のデータのやりとりを制御する。
【0075】
また、ネットワーク300を介した通信によるデータのやり取りに限られることはなく、例えば、任意の通信回線や記憶媒体を用いた方法等でデータのやり取りを行うように構成してもよい。
【0076】
また、本発明の目的は、本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読みだして実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0077】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本実施の形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体及び当該プログラムコードは本発明を構成することとなる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0078】
また、コンピュータが読みだしたプログラムコードを実行することにより、本実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって本実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0079】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定するに際し、上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定し、上記決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求め、上記求めたパラメータ値に基づいて上記溶鋼の温度を推定するようにしたので、上記二次精錬設備の稼動情報により決定することが困難なパラメータについては、対象の操業条件に類似した過去の操業事例に基づいて決定することが可能となり、上記溶鋼温度を容易に、且つ高精度に推定することができる。
【0080】
また、本発明の他の特徴によれば、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータ間において、上記溶鋼温度の変化量がバランスするように上記複数のパラメータを用いた連立方程式を立て、その近似解によって上記溶鋼温度を推定するようにしたので、溶鋼温度と溶鋼温度に影響を与えるパラメータとの関係を細分化しながらそれぞれ1つずつの方程式の精度を向上させることができるとともに、全体のパラメータ間の関係を整合させながら一括して決定することができる。
これにより、任意時点の溶鋼温度を推定することが可能となり、二次精錬処理の終了時点における溶鋼温度を所定の目標値に制御可能にする操業条件(酸素量または冷却材の投入量や処理時間)を容易に、且つ高精度に決定することができる。
【0081】
また、本発明の他の特徴によれば、時間の経過に伴って上記溶鋼の温度が推移していく状態を表した溶鋼温度推移パターン特性図を生成するようにしたので、溶鋼温度の将来の変化を上記生成した溶鋼温度推移パターン特性図から予測することが可能となり、操業オペレータの判断ミスまたは操作ミスを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示し、溶鋼温度推定計算装置の概略構成の一例を示した図である。
【図2】溶鋼温度推移パターン特性図の一例を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態である溶鋼温度推定計算装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態である溶鋼温度推定計算装置の決定する種々のパラメータの種類を表した図である。
【図5】温度変化がバランスする連立方程式を行列式の形で表した図である。
【図6】本発明の溶鋼温度推定計算装置を構成可能なコンピュータシステムの内部構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 溶鋼温度推定計算装置
10 機器情報パラメータ決定手段
11 事例推論パラメータ決定手段
12a パラメータ値演算手段
12b 溶鋼温度推定手段
13 推定結果表示手段
15 上位計算機
16 電気/計装装置
17 事例データベース
18 モニタ
【発明の属する技術分野】
本発明は溶鋼温度推定計算装置及び溶鋼温度推定計算方法に関し、特に、二次精錬設備における溶鋼鍋内の溶鋼温度を適正に制御するために用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、金属精錬工程では、転炉や電気炉で溶鋼を製造した後、溶鋼中の各成分量やガス量を適切に調整するための二次精錬処理を行っている。上記二次精錬処理において、溶鋼鍋内に収容されている溶鋼の温度が大きく変化すると、鋼製品の品質に影響を与えることになってしまう。このため、高品質の鋼製品を製造するには、上記溶鋼鍋内の溶鋼の温度を適正に管理して温度制御を高精度に行うことが必要である。
【0003】
溶鋼の温度を制御する従来の方法には、例えば、過去の操業を通じて蓄積されたオペレータの操業ノウハウや標準作業指示書等に基づき、溶鋼温度に影響を及ぼす因子(操業条件)を決定して溶鋼温度を制御する方法がある。また、近似モデル式に基づいて温度制御させる方法としては、溶鋼の温度が推移する状態を単一の数式モデルで表し、上記単一の数式モデルに操業条件に相当する種々のパラメータを入力して溶鋼温度の近似値を算出して行う方法がある。
【0004】
また、二次精錬設備における溶鋼温度の推定技術及び操業条件決定技術としては、作業指示情報から決定される各プロセスの処理時間に基づいて二次精錬設備における溶鋼温度の降下量を推定し、この推定した温度降下量から逆算して求めた溶鋼温度と、目標値として設定した溶鋼温度との差から、目標の溶鋼温度が実現されるために必要な操業条件の決定を行うという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−251648号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶鋼温度は複数の操業条件が複雑に絡み合いながら推移していくため、上述したような操業ノウハウまたは単一の数式で表された近似モデル式によって溶鋼温度を推定する方法では、その推定精度が非常に低いという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された溶鋼温度の降下量に基づく溶鋼温度の推定技術は、二次精錬処理の開始後、更に3回の溶鋼温度の測定を行い、二次精錬処理開始時の溶鋼温度を補正するようにしているが、溶鋼温度と複数の操業条件との相関関係が明らかにされていなかった。このため、溶鋼温度の降下量に対して操業条件を適切に決定することができず、溶鋼温度を高精度に制御することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上述した問題点にかんがみ、製鋼プロセスにおける二次精錬設備の溶鋼温度を高精度に推定できるようにして、上記溶鋼温度を適正に制御するための操業条件を容易に、且つ高精度に決定できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶鋼温度推定計算装置は、金属精錬の溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定計算装置であって、上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定するパラメータ決定手段と、上記パラメータ決定手段により決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めるパラメータ値演算手段と、上記パラメータ値演算手段で求めたパラメータ値に基づいて上記溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定手段とを有することを特徴としている。
【0010】
本発明の溶鋼温度推定計算方法は、金属精錬の溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定計算方法であって、上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定するパラメータ決定処理と、上記パラメータ決定処理により決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めるパラメータ値演算処理と、上記パラメータ値演算処理で求めたパラメータ値に基づいて、上記溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定処理とを有することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の溶鋼温度推定計算装置及び溶鋼温度推定計算方法の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0012】
本発明は、例えば、図1に示すような溶鋼温度推定計算装置1に適用される。
本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1が温度の推定計算を行う対象物として、製鋼炉で溶製された後に転炉から送られる溶鋼鍋内に収容されている溶鋼を例に挙げて説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、溶鋼温度推定計算装置1は、時間の経過に伴って溶鋼の温度が推移していく状態を表した溶鋼温度推移パターン特性図を生成して、溶鋼鍋内に収容されている溶鋼の温度を目標温度にするために必要な操業条件(例えば、酸素量または冷却材の投入量や処理時間など)をオペレータに決定させるようにしている。図2は、上記溶鋼温度推移パターン特性図の一例を示したものである。
【0014】
<溶鋼温度推定計算装置1の全体構成>
図1に示すように、本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1は、機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、溶鋼温度推定手段12b、及び推定結果表示手段13を備えている。
なお、本実施の形態の機器情報パラメータ決定手段10及び事例推論パラメータ決定手段11により、パラメータ決定手段が構成されている。
【0015】
機器情報パラメータ決定手段10は、(1)ビジコン情報、(2)電気/計測装置の実績情報、(3)システム定数情報、及び(4)システム計算情報等に基づいて溶鋼温度の変化に影響を与える複数のパラメータ値を決定する。
【0016】
(1)ビジコン情報とは、二次精錬の工程管理に応じて設定される溶鋼の作業指示情報であり、溶鋼温度を推定する計算のために精錬工程を管理する上位の計算機15から出力される。具体的には、例えば、鍋到着の要求時刻(T8)、二次精錬処理開始時刻(T0)、及び鍋到着時の要求温度(C8)、或いは処理開始前の炭素量や溶鋼量等の情報である。
【0017】
なお、括弧内の記号は、図2に示す溶鋼温度推移パターン特性図における時刻または溶鋼温度の値を示している。また、図2において、時間を示す横軸に対して溶鋼の温度を示す縦軸を左右の両側に便宜上表すようにしたが、上記左右の縦軸のスケールは同一である。
【0018】
(2)電気/計測装置の実績情報とは、二次精錬設備における電気/計測装置16で測定して出力される操業実績値である。例えば、測温サンプリングの開始時刻(T1)、測温サンプリング開始時の溶鋼の温度(C1)、測温サンプリング開始時のサンプル資料情報(酸素濃度)、及び還流ガスの流量等の情報である。
【0019】
(3)システム定数情報とは、溶鋼温度推定計算装置1が内部の記憶手段19で管理する情報である。例えば、脱酸(Oxygen−Blowing、以下、OBと略す)の開始時刻(T2)、OB送酸速度、冷却速度、溶鋼補正温度、及び調整係数等の情報である。なお、上記冷却速度とは、二次精錬処理終了時刻(T7)から鍋到着時の要求時刻(T8)間における溶鋼温度の冷却速度を上記記憶手段19に記憶して管理している。
【0020】
(4)システム計算情報とは、溶鋼温度推定計算装置1の内部に設けられている上記記憶手段19に格納されているルックアップテーブルまたは上記システム定数情報を用いて決定される計算情報である。例えば、脱炭処理時間(T5―T0)の標準値、Al投入後の攪拌時間(T7―T5)、Al投入間隔における溶鋼温度変化量(C4―C5)、合金投入時の温度変化量(図2に示すd2)、及び合金投入無し時の温度変化量(図2に示すd1)等の情報である。
【0021】
事例推論パラメータ決定手段11は、事例ベース推論によって検索した操業事例を参照して、溶鋼温度の変化に影響を与えるパラメータを決定する。つまり、所定の評価関数値やキーワード等を検索キーとして、事例データベース17に蓄積された過去の膨大な操業事例の中から、今回の操業と同一或いは類似していると思われるものを推論して抽出している。
【0022】
そして、上記抽出した操業事例における所定の実績値を、溶鋼温度を推定計算するためのパラメータの一つとして決定している。事例推論パラメータ決定手段11により決定する上記所定のパラメータとは、例えば、Al脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)の情報である。
【0023】
パラメータ値演算手段12aは、上記機器情報パラメータ決定手段10及び事例推論パラメータ決定手段11より決定された複数の溶鋼温度パラメータを基にして、高次の連立方程式を立てる。そして、上記連立方程式を解くことにより、溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求める。
【0024】
上記パラメータ値演算手段12aにより求めるパラメータ値は、詳細は後述するが、例えば、Al脱炭後温度(昇温後温度)C8、二次精錬処理時間(T7―T0)、脱炭処理時間(T5―T0)、及び脱炭OB時間(T3―T2)等である。
【0025】
溶鋼温度推定手段12bは、上記パラメータ値演算手段12aにより求めたパラメータ値を基にして所定の時刻での溶鋼の温度を推定し、溶鋼温度推移パターン特性図を作成する。
【0026】
図2に示したように、推定結果表示手段13は、上述した機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、及び溶鋼温度推定手段12bにより求めた複数のパラメータ値から生成される溶鋼温度の推移パターン特性図をモニタ18の画面上に表示する。
【0027】
なお、本実施の形態では、溶鋼温度推定計算装置1は、機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、溶鋼温度推定手段12b、及び推定結果表示手段13により構成されているとしたが、これらに限定されずに他の構成を含んでよいことは言うまでもない。
【0028】
<溶鋼温度推定計算装置1の動作>
ここでは、溶鋼温度推定計算装置1の基本的な動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0029】
溶鋼温度推定計算装置1は、計測機器の測定によってビジコン情報、及び演算処理によってシステム計算情報等を取得するととともに、所定のパラメータに関しては事例ベース推論によって過去の操業事例から取得する。そして、パラメータ値演算手段12aによる近似計算によって、上記取得した複数のパラメータ間において、上記溶鋼の温度の変化量がバランスするようにした高次の連立方程式の解を求めることにより、二次精錬設備に搬入される溶鋼鍋内の溶鋼の温度に影響を与えるパラメータ値を決定している。
以下に、溶鋼温度推定計算装置1の動作を順に説明する。
【0030】
図3に示すように、最初のステップS301において、機器情報パラメータ決定手段10により、上述したビジコン情報、電気/計測装置16の実績情報、システム定数情報、及びシステム計算情報をパラメータ値として決定する。なお、図4に、本実施の形態で溶鋼温度推定計算装置1が決定するパラメータの一覧を示す。
【0031】
次に、ステップS302で、事例推論パラメータ決定手段11により、上記図2に示したAl脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)を事例ベース推論に基づいて決定する。ここで、上記Al脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)は、機器情報パラメータ決定手段10によって計測または演算処理して求めることが困難なパラメータ値である。つまり、事例推論パラメータ決定手段11は、機器情報パラメータ決定手段10が決定することのできないパラメータ値を、以下に示す推論方法によって決定するようにしている。
【0032】
以下に、事例推論パラメータ決定手段11が、どのような手順で推論してAl脱酸前の溶鋼温度(C4)及び脱炭処理温度変化量(C1―C4)を決定しているかを簡単に説明する。
「類似した問題は、類似した解を有する」という実世界における経験則からも裏づけられているように、事例ベース推論とは、与えられた問題に類似する過去の事例を利用(参照)して解を導く問題解決方式である。
【0033】
本実施の形態の事例推論パラメータ決定手段11は、今回の操業条件と過去の操業条件とがどの程度類似しているかを所定の検索条件を基に定量化して、これを類似度として表す。そして、最も高い類似度を有する操業条件の事例を、今回の操業条件に最も類似した事例であると推論する。
【0034】
本実施の形態においては、過去の操業事例の中でどの操業事例が今回の操業条件に最も類似しているかを定量化するのにあたり、以下に示す評価関数値Jによって決定している。
【0035】
【数1】
【0036】
すなわち、溶鋼温度の変化に影響を与える種々のパラメータの中から幾つかを選択して、上記選択したパラメータ値と今回の操業で対応するパラメータ値との差の総和を評価関数値Jにするようにした。事例推論パラメータ決定手段11は、上記評価関数値Jが最も小さい値を有する操業事例を抽出する。
【0037】
上記評価関数値Jの関数式の設定にあたり、上記溶鋼温度の変化に影響を与える種々のパラメータの中から任意のパラメータを選択することができるが、二次精錬工程の特徴に応じて溶鋼温度の変化と相関性がより大きなパラメータを評価関数値Jの決定のために選択することにしている。
【0038】
本実施の形態では、上記(数式1)における評価関数値Jを6個のパラメータ値の差によって求めている。具体的には、今回の操業における、測温サンプリング開始時の溶鋼温度(C1)をA、鍋区分をB、厚板処理後の操業回数をC、浸漬管交換後の使用操業回数をD、連続処理した操業回数をE、及び下部槽の使用回数をFとしている。
【0039】
一方、事例データベースに蓄積されている過去の操業における、測温サンプリング開始時の溶鋼の温度をai、鍋区分をbi、厚板処理後の操業回数をci、浸漬管交換後の使用操業回数をdi、連続処理した操業回数をei、及び下部槽の使用回数をfiとしている。
【0040】
ここで、事例データベースに蓄積された操業事例数をn個として、i=1〜nであるとしている。また、上記6つのパラメータ(A〜F)についての評価関数の重み係数をそれぞれα、β、γ、δ、ε、ζとし、上記重み係数を過去の操業におけるパラメータ値との差に対して乗じている。
【0041】
このように、事例ベース推論によって、今回の操業条件(A〜F)と、過去の操業条件(ai〜fi)とでそれぞれ対応するパラメータ値の差の絶対値の総和Jiが最も小さい評価関数値Jを有する過去の操業事例Jkを抽出する。そして、抽出した操業事例JkでのAl脱酸前の溶鋼温度の実績値C4 kを、今回の操業におけるAl脱酸前の溶鋼温度(C4)と推定している。
【0042】
次に、事例推論パラメータ決定手段11は、推定したAl脱酸前の溶鋼温度(C4)を用いて、脱炭処理による温度変化量を決定する。
具体的には、機器情報パラメータ決定手段10により、電気/計測装置16の実績情報として測温サンプリング開始時の溶鋼温度(C1)を取得しているので、上記脱炭処理による温度変化量を次の式により決定する。
【0043】
脱炭処理による温度変化量(C1−4)
=測温サンプリング開始時の溶鋼の温度(C1)―Al脱酸前の溶鋼温度(C4)
【0044】
次に、ステップS303に進み、パラメータ値演算手段12aは、機器情報パラメータ決定手段10及び事例推論パラメータ決定手段11が決定した複数のパラメータ値を用いて、溶鋼の温度をバランスさせる連立方程式を立てる。
【0045】
この連立方程式は、複数の未知パラメータを一括して求めることから高次の連立方程式であるとともに、一つずつの方程式としては細分化した時間範囲の中でそれぞれが高精度に成立している関係にある。なお、本実施の形態では10元連立方程式としている。
【0046】
いま、パラメータ値演算手段12aにより求めるパラメータ値、すなわち、10元連立方程式を解くことによって決定するパラメータを、以下の11個のパラメータX1〜X11とする。なお、[ ]内の値は、各パラメータ値の単位を表す。また、以下において、11個のパラメータとなっているのは、1個のパラメータに0を代入して実質的に10個の未知パラメータの値を求めるためである。
【0047】
(1) X1 :Al脱酸後(昇熱後)温度 [℃]
(2) X2 :二次精錬処理時間 [min]
(3) X3 :脱炭処理時間 [min]
(4) X4 :脱炭OB時間 [min]
(5) X5 :脱炭OB量 [Nm3]
(6) X6 :Al脱酸前温度変化量 [℃]
(7) X7 :脱炭OB温度変化量 [℃]
(8) X8 :Al脱酸での温度変化量 [℃]
(9) X9 :Al脱酸前の脱酸量 [ppm]
(10)X10:脱炭での脱酸量 [ppm]
(11)X11:冷材投入量 [ton]
【0048】
上記(1)〜(10)の各パラメータに関し、下記の温度バランス関係式が成立する。なお、下記温度バランス関係式におけるTi(iは任意の数)は、図2で示した特性図における時刻を表し、同様に、Ciは温度値を表している。また、図2には、上記パラメータXiの値に相当する量を示している。
【0049】
(i)Al脱酸後(昇熱後)温度(X1)[℃]=鍋到着時の要求温度C8[℃]
+鍋到着時の補正温度[℃]
+冷却速度[℃/min]×(鍋到着の要求時刻T8―二次精錬処理開始時刻T0+二次精錬処理時間T7)[min]
+合金投入無しの時の温度変化量d1[℃]
+合金投入時の温度変化量d2[℃]
+調整係数1[℃/(kg/ton)]×(冷材投入量/溶鋼量)[ton]
【0050】
(ii)二次精錬処理時間(X2)[min]=脱炭処理時間(T5―T0)[min]
+脱酸後攪拌時間(T7―T5)[min]
【0051】
(iii)脱炭処理時間(X3)[min]=脱炭処理時間(T5―T0)の標準値[min]+脱炭OB時間X4[min]
【0052】
(iv)脱炭OB時間(X4)[min]=脱炭OB量[Nm3]/OB送酸速度[Nm3/min]
【0053】
(v)Al脱酸前の温度変化量(X6)[℃]=脱炭処理温度変化量[℃]
−脱炭OB温度変化量X7[℃]+Al投入間隔における温度変化量(C4―C5)[℃]
【0054】
(vi)脱炭OB温度変化量(X7)[℃]=調整係数2[℃/(Nm3/ton)]×脱炭OB量[Nm3]/溶鋼量[ton]
【0055】
(vii)Al脱酸後(昇熱後)温度(X1)[℃]=測温サンプリング開始時の溶鋼温度(C1)+Al脱酸前の温度変化量(X6)[℃]+Al脱酸での温度変化量X8[℃]
【0056】
(viii)Al脱酸での温度変化量(X8)[℃]=調整係数3×Al脱酸前の脱酸量X9[ppm]
【0057】
(ix)Al脱酸前の脱酸量(X9)[ppm]=処理開始時での脱酸量[ppm]
+調整係数4×(脱炭OB量[Nm3]/溶鋼量[ton])
−脱炭での脱酸量(X10)[ppm]
【0058】
(x)脱炭での脱酸量(X10)[ppm]=調整係数5×処理開始前の炭素量[ppm]
【0059】
図5は、上記(i)〜(x)に示した温度バランス関係式を行列式の形で表したものである。図5(a)は、冷材投入量(X11)をX11=0と設定したときの温度バランス関係式(i)〜(x)を表している。冷材投入量(X11)を0にしているので、図5(a)に示す行列式から求まるパラメータX1〜パラメータX10の値は、溶鋼鍋内の溶鋼温度を上げるときの各値である。
【0060】
一方、図5(b)は、脱炭OB量(X5)がX5<0の場合に、X5=0と設定したときの温度バランス関係式(i)〜(x)を表している。脱炭OB量(X5)を0にしているので、図5(b)に示す行列式から求まるパラメータX1〜パラメータX11(パラメータX5を除く)の値は、溶鋼鍋内の溶鋼温度を下げるときの各値である。
【0061】
例えば、上記図5(a)に示した行列式の5行目に着目すると、行列計算式はe1=X6+X7である。上述したように、X6はAl脱酸前の温度変化量、X7は脱炭OB温度変化量である。
また、上述した温度バランス関係式(v)によれば、
Al脱酸前温度変化量(X6)+脱炭OB温度変化量(X7)=脱炭処理温度変化量+Al投入間隔における温度変化量 ………(数式2)
である。
【0062】
したがって、上記(数式2)の右辺を整理して、
e1=脱炭処理温度変化量+Al投入間隔における溶鋼温度変化量
とすれば、図5(a)の行列式の5行目(e1=X6+X7)となる。同様な考え方で上記温度バランス関係式を整理して行列式に表したのが、図5(a)或いは図5(b)である。
【0063】
次に、ステップS304で、図5(a)または図5(b)で示した行列式におけるパラメータX1〜X11の値をパラメータ値演算手段12aによる近似値演算で求めていく。なお、図5に示した行列式における解の演算は特に限定するものではないが、本実施の形態では、行列式演算で一般的に用いられるGauss−Jordan法による掃き出し法により、パラメータX1〜X11の値の近似解を算出している。
【0064】
このように、パラメータ値演算手段12aで求めたパラメータX1〜X11の値、特にAl脱酸後(昇熱後)温度X1の値に基づいて、溶鋼温度推定手段12bは上記溶鋼の温度を推定することから、二次精錬設備を操業するオペレータは、二次精錬終了時の溶鋼温度を目標温度(C7)に制御させるための酸素または冷却材の投入量、投入時刻、及び投入後の処理時間というような操業条件を容易に、且つ高精度に判断することが可能となる。
【0065】
次に、ステップS305に進み、推定結果表示手段13は、上記のようにして求めたパラメータX1〜X11の値、及び機器情報パラメータ決定手段10または事例推論パラメータ決定手段11により決定した図4に示した種々のパラメータの値を基にして、溶鋼温度が時間の経過によってどのように推移していくかを一目で分かることができる溶鋼温度の推移パターン特性図を生成するとともに、このパターン特性図をモニタ18に表示する(ステップS306)。
【0066】
上記溶鋼温度の推移パターン特性図は、既に示した図2で表されるような温度変化の状況を示す特性図である。オペレータにとっては、溶鋼鍋内に酸素または冷却材を投入する量、投入時刻、及び投入後の処理時間といった操業条件が数値で提示されるのではなく、図2で示すような溶鋼温度の推移パターン特性図として提示された場合の方が判断ミスを格段に少なくすることができて好都合といえる。
【0067】
次に、ステップS307で、生成した溶鋼温度の推移パターン特性図で良ければ、上述した一連の動作を終了する。これに対して、生成した溶鋼温度の推移パターン特性図に不都合があると判断したときは、ステップS301及びステップS302で決定した種々のパラメータの値に対して適切な補正を加えて、上述した連立方程式による解の算出をやり直しながら、一連の動作を繰返し行う。
【0068】
なお、類似度を求めるための評価関数値Jは、上述した(数式1)によって計算される値に限られない。例えば、上述した今回の操業条件(A〜F)と、過去の操業条件(ai〜fi)との最小二乗和が最小になる値を類似度として用いるようにしてもよい。
【0069】
また、事例推論パラメータ決定手段11は、条件部と結論部とから構成されるルールによって記述されたルールベース推論を上述した事例ベース推論に組み合わせて互いの推論を補完し、最適な検索条件を設定するようにしてもよい。さらに、事例推論パラメータ決定手段11の替わりに、ルールベース推論を行うルールベース推論パラメータ決定手段にしても本発明は適用できるものである。
【0070】
機器情報パラメータ決定手段10、事例推論パラメータ決定手段11、パラメータ値演算手段12a、及び溶鋼温度推定手段12bにより決定される種々のパラメータを上述したが、これらは本実施の形態として設定したパラメータの一例である。溶鋼温度の変化に影響を与えるパラメータの種類は二次精錬工程の特徴に応じて異なり、これら任意のパラメータに対して本発明が適用されるものである。
【0071】
図6は、上述した本実施の形態における溶鋼温度推定計算装置1を構成可能なコンピュータシステムの内部構成を示すブロック図である。
本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1は図6に示すようなコンピュータ機能600を有しており、そのCPUが所定のプログラムを読み出して実行することで、本実施の形態における溶鋼温度の推定計算処理を実施する。
【0072】
コンピュータ機能600は、上記図6に示すように、CPU601と、ROM602と、RAM603と、キーボード(KB)609のキーボードコントローラ(KBC)605と、表示部としてのCRTディスプレイ(CRT)610のCRTコントローラ(CRTC)606と、ハードディスク(HD)611及びフレキシブルディスク(FD)612のディスクコントローラ(DKC)607と、ネットワーク300との接続のためのネットワークインターフェースコントローラ(NIC)608とが、システムバス604を介して互いに通信可能に接続された構成としている。
【0073】
CPU601は、ROM602或いはHD611に記憶されたソフトウェア、或いはFD612より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス604に接続された各構成部を総括的に制御する。
すなわち、CPU601は、所定の処理シーケンスに従った処理プログラムを、ROM602、HD611、或いはFD612から読み出して実行することで、本実施の形態における機能を実現するための制御を行う。
【0074】
RAM603は、CPU601の主メモリ或いはワークエリア等として機能する。
KBC605は、KB609や図示していないポインティングデバイス等からの指示入力を制御する。
CRTC606は、CRT610の表示を制御する。
DKC607は、ブートプログラム、種々のアプリケーション、編集ファイル、ユーザファイル、ネットワーク管理プログラム、及び本実施の形態における所定の処理プログラム等を記憶するHD611及びFD612とのアクセスを制御する。
NIC608は、ネットワーク300上の装置或いはシステムと双方向のデータのやりとりを制御する。
【0075】
また、ネットワーク300を介した通信によるデータのやり取りに限られることはなく、例えば、任意の通信回線や記憶媒体を用いた方法等でデータのやり取りを行うように構成してもよい。
【0076】
また、本発明の目的は、本実施の形態の溶鋼温度推定計算装置1の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読みだして実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0077】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本実施の形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体及び当該プログラムコードは本発明を構成することとなる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0078】
また、コンピュータが読みだしたプログラムコードを実行することにより、本実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって本実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0079】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定するに際し、上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定し、上記決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求め、上記求めたパラメータ値に基づいて上記溶鋼の温度を推定するようにしたので、上記二次精錬設備の稼動情報により決定することが困難なパラメータについては、対象の操業条件に類似した過去の操業事例に基づいて決定することが可能となり、上記溶鋼温度を容易に、且つ高精度に推定することができる。
【0080】
また、本発明の他の特徴によれば、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータ間において、上記溶鋼温度の変化量がバランスするように上記複数のパラメータを用いた連立方程式を立て、その近似解によって上記溶鋼温度を推定するようにしたので、溶鋼温度と溶鋼温度に影響を与えるパラメータとの関係を細分化しながらそれぞれ1つずつの方程式の精度を向上させることができるとともに、全体のパラメータ間の関係を整合させながら一括して決定することができる。
これにより、任意時点の溶鋼温度を推定することが可能となり、二次精錬処理の終了時点における溶鋼温度を所定の目標値に制御可能にする操業条件(酸素量または冷却材の投入量や処理時間)を容易に、且つ高精度に決定することができる。
【0081】
また、本発明の他の特徴によれば、時間の経過に伴って上記溶鋼の温度が推移していく状態を表した溶鋼温度推移パターン特性図を生成するようにしたので、溶鋼温度の将来の変化を上記生成した溶鋼温度推移パターン特性図から予測することが可能となり、操業オペレータの判断ミスまたは操作ミスを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示し、溶鋼温度推定計算装置の概略構成の一例を示した図である。
【図2】溶鋼温度推移パターン特性図の一例を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態である溶鋼温度推定計算装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態である溶鋼温度推定計算装置の決定する種々のパラメータの種類を表した図である。
【図5】温度変化がバランスする連立方程式を行列式の形で表した図である。
【図6】本発明の溶鋼温度推定計算装置を構成可能なコンピュータシステムの内部構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 溶鋼温度推定計算装置
10 機器情報パラメータ決定手段
11 事例推論パラメータ決定手段
12a パラメータ値演算手段
12b 溶鋼温度推定手段
13 推定結果表示手段
15 上位計算機
16 電気/計装装置
17 事例データベース
18 モニタ
Claims (8)
- 金属精錬の溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定計算装置であって、
上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定するパラメータ決定手段と、
上記パラメータ決定手段により決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めるパラメータ値演算手段と、
上記パラメータ値演算手段で求めたパラメータ値に基づいて上記溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定手段とを有することを特徴とする溶鋼温度推定計算装置。 - 上記パラメータ決定手段は、上記二次精錬設備の稼動情報から決定することが困難な溶鋼の温度変化に起因する所定のパラメータを、事例ベース推論により過去の操業事例から決定することを特徴とする請求項1に記載の溶鋼温度推定計算装置。
- 上記パラメータ値演算手段は、上記パラメータ決定手段により決定した複数のパラメータ間において上記溶鋼の温度の変化量がバランスするようにした連立方程式を立て、上記連立方程式の近似解を求めることにより上記溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の溶鋼温度推定計算装置。
- 上記溶鋼温度推定手段により推定した溶鋼温度をモニタ画面に出力する推定結果表示手段を有し、
上記溶鋼温度推定手段は、上記推定した溶鋼温度に基づいて、時間の経過に伴って上記溶鋼の温度が推移していく状態を表した溶鋼温度推移パターン特性図を生成し、
上記推定結果表示手段は、上記溶鋼温度推定手段により生成された溶鋼温度推移パターン特性図をモニタ装置に出力することで、上記溶鋼の温度を目標温度に制御するための操業条件をオペレータに提示することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の溶鋼温度推定計算装置。 - 金属精錬の溶融金属精錬工程における二次精錬設備の溶鋼鍋に収容された溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定計算方法であって、
上記二次精錬設備の稼動情報及び過去の操業データに基づいて、上記溶鋼の温度変化に起因する複数のパラメータを決定するパラメータ決定処理と、
上記パラメータ決定処理により決定した複数のパラメータから溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めるパラメータ値演算処理と、
上記パラメータ値演算処理で求めたパラメータ値に基づいて、上記溶鋼の温度を推定する溶鋼温度推定処理とを有することを特徴とする溶鋼温度推定計算方法。 - 上記パラメータ決定処理は、上記二次精錬設備の稼動情報から決定することが困難な溶鋼の温度変化に起因する所定のパラメータを、事例ベース推論により過去の操業事例から決定することを特徴とする請求項5に記載の溶鋼温度推定計算方法。
- 上記パラメータ値演算処理は、上記パラメータ決定処理により決定した複数のパラメータ間において上記溶鋼の温度の変化量がバランスするようにした連立方程式を立て、上記連立方程式の近似解を求めることにより上記溶鋼温度の変化に影響を与える所定のパラメータ値を求めることを特徴とする請求項5または6に記載の溶鋼温度推定計算方法。
- 上記溶鋼温度推定処理により推定した溶鋼温度をモニタ画面に出力する推定結果表示処理を有し、
上記溶鋼温度推定処理は、上記推定した溶鋼温度に基づいて、時間の経過に伴って上記溶鋼の温度が推移していく状態を表した溶鋼温度推移パターン特性図を生成し、
上記推定結果表示処理は、上記溶鋼温度推定処理により生成された溶鋼温度推移パターン特性図をモニタ装置に出力することで、上記溶鋼の温度を目標温度に制御するための操業条件をオペレータに提示することを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の溶鋼温度推定計算方法。
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-
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