JP2004360042A - 成形仕上り性に優れたマグネシウム合金およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重量比で、Al:10.0〜15.0%、Zn:0.3〜1.5%、Mn:0.1〜0.4%、Ca:3.0%以下、およびSr:1.2%以下を含有し(ただし、Ca0.8%以下でかつSr0.7%以下の範囲を除く)、残部がMgおよび不可避不純物からなる成形仕上り性に優れたマグネシウム合金。このマグネシウム合金を成形してなる成形品。
【選択図】 図8
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種ダイカストやスクイーズキャストなどの高速加圧鋳造における成形仕上り性を大幅に改善することができる新規マグネシウム合金と、このマグネシウム合金を成形してなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、家電製品の携帯化が急速に進み、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、PDAなどが大量生産されている。マグネシウム合金はその密度(比重)がプラスチックとほぼ同等であるにもかかわらず、強度は数倍高く、放熱性、電磁波シールド性などにも優れ、更にはリサイクルも可能であるなどの優れた利点を有し、これらの携帯機器の筐体や部材の構成材料としての需要を急速に伸ばしている。従来、これらの携帯機器用途のマグネシウム合金の成形方法としては、その高い生産性から、各種ダイカストや金属射出成形法、スクイーズキャストなどの高速加圧成形法が多く採用されている。また、これらの成形方法に適用されるマグネシウム合金は、その約90%がAZ91合金である。AZ91合金は引張り強度、伸び、耐食性、成形性などを含めバランスの取れた合金であり、その融点は約600℃である。
【0003】
ところで、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、PDAなどの携帯機器にあっては、より一層の薄肉、軽量化と、生産時のコストダウンが求められている。例えば、現状、ノートパソコンの筐体の厚さは0.7〜1.0mm程度、携帯電話の筐体の厚さは0.5〜0.7mm程度とされているが、これらを更に薄肉化することが望まれている。
【0004】
従来、AZ91合金のような汎用マグネシウム合金からより一層の薄肉成形品を得るためには、成形時の成形圧力や成形温度を上げることにより対応がなされてきた。しかしながら、工業的な生産においては、成形圧や成形温度の設定にも上限があり、成形圧を上げるためには、耐圧性に優れたより高級な成形機に切り替える必要がある。また、成形温度を上げると、成形機の内壁などの浸食を招き、成形機の故障の原因になるなど、コストアップを引き起こす結果となる。例えば、融点約600℃のAZ91合金の成形温度は通常620〜680℃が適当であるとされており、より一層の薄肉化のために、成形温度を上昇させようとしても、成形機の耐熱性等の面から、一般的には約700℃が上限であり、薄肉化にも限界がある。
【0005】
このため、成形圧力や成形温度を上げることなく、成形品のより一層の薄肉化を図るために、合金組成の改良が試みられ、より薄肉成形性に優れた合金組成の提案がなされている。例えば、特開2001−247926には、Al:10.0〜13.0%、Si:0.3〜1.5%、Mn:0.1〜1.0%、残部Mgおよび不可避不純物の、流動性に優れるマグネシウム合金が提案されている。また、特開2001−247925には、Al:5.0〜7.0%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.1〜1.0%、Zn:0.5%未満、残部Mgおよび不可避不純物の、流動性に優れたマグネシウム合金が提案されている。更に特開平10−204556には、Al:9.0〜11.0%、Zn:0〜1%、Mn:0〜1%、残部Mgおよび不可避不純物の、流動性に優れたマグネシウム合金が提案されている。この特開平10−204556では、引張り強度などの主特性値が大きく変化しない範囲で、Al含有量を微調整して流動性を改善する。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−247926
【特許文献2】
特開2001−247925
【特許文献3】
特開平10−204556
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のマグネシウム合金は、いずれも流動性、即ち、成形時の湯流れ性の改善を目的とするものである。即ち、ダイカストやチクソモールディングなどの高速加圧鋳造法では、溶湯は極めて短時間に金型内で固まることとなるため、湯流れ性は、薄肉成形のためには重要な特性である。しかし、単に湯流れ性が良いだけでは、十分な薄肉成形性は得られず、湯流れ性が過度に良いと、溶湯が金型のオーバーフロー側から吹き出し易いといった問題も生じるようになる。
【0008】
また、上記従来のマグネシウム合金のうち、特開2001−247925および特開2001−247926に提案されるマグネシウム合金では、塩水噴霧試験における耐食性が、AZ91合金に比べて著しく劣ることが、本発明者らの研究により判明した。また、特開平10−204556に提案されるマグネシウム合金組成のAl含有量では、融点降下は5〜10℃程度であり、実用上十分な効果が得られているとは言えない。
【0009】
ところで、湯流れ性の改善を目的としてAZ91合金にAlを添加してゆくと、強度や耐食性が急激に劣化し、殆ど実用に耐えない合金となることは公知の技術事項である。
【0010】
一方で、携帯電話等の携帯家電にあっては、強度や耐食性も重要な特性ではあるが、人の手に触れる身近な機器であることから、外観に優れることが非常に重要な特性となり、表面仕上り性の良好な、商品価値の高い成形品が求められている。
【0011】
従って、本発明は、各種ダイカストやスクイーズキャストなどの高速加圧鋳造による薄肉成形品として成形性、強度、耐食性に優れると共に、成形仕上り性にも優れ、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、PDAなどの携帯機器の構成材として好適な新規マグネシウム合金と、このマグネシウム合金を成形してなる成形品を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形仕上り性に優れたマグネシウム合金は、重量比で、Al:10.0〜15.0%、Zn:0.3〜1.5%、Mn:0.1〜0.4%、Ca:3.0%以下、およびSr:1.2%以下を含有し(ただし、Ca0.8%以下でかつSr0.7%以下の範囲を除く)、残部がMgおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
【0013】
AZ91合金の湯流れ性改善を目的にAlを増した合金とすると強度や耐食性の劣化が起こるが、本発明では更に所定量のCaとSrを添加して結晶微細化させることにより、強度等の劣化を防ぎ、湯流れ性は改善しつつ、強度等の劣化の少ない成形品を得る。また、Alの添加を増しすぎると熱間割れを起こすので、本発明では、Al量を10.0〜15.0%の適領域とすることにより、成形仕上り性の良好な成形品を得る。
【0014】
本発明のマグネシウム品は、その結晶サイズ(結晶粒子の粒径)は5〜32μmの範囲で、融点は545〜595℃であることが好ましい。
【0015】
本発明の成形品は、このような本発明のマグネシウム合金を、好ましくは570〜670℃の成形温度で高速加圧鋳造法により成形してなるものである。
【0016】
本発明のマグネシウム合金およびその成形品は、不活性雰囲気下、370〜430℃の範囲で3〜30時間溶体化熱処理が施されていることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のマグネシウム合金およびその成形品の実施の形態を、本発明のマグネシウム合金組成に到る検討過程にそって詳細に説明する。なお、以下において、合金組成の「%」は「重量%」を示す。また、以下の検討で各種評価を行った各種合金組成は次の通りである。
【0018】
AZ91:Al=9.3%,Zn=0.59%,Mn=0.13%,Mg=残部
AZ91CaSr:Al=9.3%,Zn=0.82%,Mn=0.29%,Ca=1.07%,Sr=0.48%,Mg=残部
AZ121CaSr:Al=12.2%,Zn=0.78%,Mn=0.19%,Ca=1.14%,Sr=0.47%,Mg=残部
AZ141CaSr:Al=14.3%,Zn=0.75%,Mn=0.25%,Ca=0.95%,Sr=0.51%,Mg=残部
AZ161CaSr:Al=16.2%,Zn=0.78%,Mn=0.30%,Ca=1.00%,Sr=0.53%,Mg=残部
【0019】
溶湯が極めて短時間で金型内で凝固する高速加圧鋳造法により、表面仕上り性の良好な製品を効率良く生産するために、本発明者らは次のような検討を行った。一般的に成形性といっても、充填や凝固時間に関連するメカニカルな動的要因が作用する部分と、合金の融点や粘性や凝固後の結晶などが関与する材料特性が作用する部分とがあり、その評価用語も「成形しやすい」、「湯流れが良い」、「成形仕上り性が良い」、などまちまちである。本発明では、マグネシウム合金を高速加圧鋳造成形する際の、成形にかかわる要因を解明し、成形し易くかつ成形仕上り性に優れ、結果として生産性の高い、即ち、歩留りの高いマグネシウム合金を提供することを目的とする。
【0020】
前述の如く、AZ91合金の適当な成形温度は620〜680℃であり、薄肉成形のために成形温度を上げても700℃が限界である。従って、成形品の更なる薄肉化のためには、合金の融点を下げ、薄肉成形のための成形温度を下げることが考えられる。そこで、本発明者らは、まず、多数の合金の融点を測定し、Alを増していった場合、図1に示す如く、合金の融点(凝固開始温度)は、Al含有量に対してほぼ直線的に下がることを確認した。なお、図1において、AZ合金は、Alと、Zn0.7%を含み、残部Mgであり、AZCaSr合金は、AlとZn0.7%、Ca1.0%およびSr0.5%を含み、残部Mgである。
【0021】
しかし、Al含有量を増すと、引張り強度や伸びは低下する。そこで、AZ91合金よりも低下する傾向にある強度を、Ca,Srを添加することによってダイカスト品の結晶粒子を微細化させて復元することができないかを検討した。図2は、各種合金の、as−cast:鋳造品および溶体化:420℃,2時間処理後の、引張り強度を示し、図3は同as−castの伸び値(%)を示す。この引張り強度と伸び値の測定は、450トンダイカストマシンを用い成形温度620〜660℃で厚さ1.5mmのB5サイズ試験鋳型に鋳込んで得られたダイカスト品について行った。
【0022】
文献等では、結晶微細化剤は、重力鋳造などの際に有効であるとされ、ダイカスト鋳造の場合は、それ自体が急冷されるので、結晶は自ずと微細化されると記載されている。本発明者らは、Ca,Srをあえてダイカスト品に添加して、更なる微細化が進行するか否かを調べた。
【0023】
図8は、AZ121合金に微細化剤としてCa:1.0%とSr:0.5%を添加したAZ121CaSr合金インゴットをダイカスト成形した場合の成形品の断面顕微鏡写真であり、図9は、Ca,Srを加えていないAZ91合金の同じ金型による成形品の断面の顕微鏡写真である。このダイカスト成形は450トンダイカストマシンを使い、成形温度650℃で、厚さ1.5mmのB5サイズ試験鋳型に鋳込んで行った。図8,9から判るように、Ca,Srを複合添加したダイカスト成形品は、通常のAZ91品と比較して、結晶サイズが約1/2のおよそ10μmとなった。結晶サイズは、強度に反比例するため、Al添加によって強度劣化したAZ121合金にCa,Srを一定量添加することによって、ほぼAZ91合金並の強度を確保することができることが確認された。
【0024】
次に、Al量と成形仕上り性との関係を調べたところ、Alを16%以上の組成にすると、熱間割れが多数発生することが判明した。このときのダイカスト成形は、融点を基準に+25℃、+50℃、+75℃の成形温度条件で実施した。金型はノートパソコン用B5サイズ試験金型を用い、金型温度は200℃、製品肉厚は1.5mmで行った。この成形品を各30枚詳細に検討し、成形仕上り性評価を行った。この結果を図4に示す。
【0025】
成形仕上り性の評価は、欠点の度合いを調べるもので、表面の欠陥を「湯じわ」、「ショート(湯が満ちていないもの)」、「クラック」に分け、それぞれ詳細に検分した。湯じわは修正可能だが、ショートとクラックはダイカスト品にとって致命的な欠陥であるため、欠点値を下記表1の幅に設定し、観察により、大きな湯じわは3点、小さなものは1点というように採点し、積算した。欠陥が多く、かつ各々の欠陥が大きなものほど点数が大きくなる。図4の数値は、成形した板1枚当りの平均値である。
【0026】
【表1】
【0027】
次に、仕上がり性評価を行ったテストピースにつき、各々水置換法によって見掛けの密度を求め、元素の密度値を元に配合量で積算した理論密度値との比から、成形充填率を求め、この結果を図5に示した。
【0028】
これらの結果、AZ91やAZ91CaSr合金は引張り強度が高く、充填率も高いにもかかわらず、外観仕上り性では、それぞれ欠点7.4,7.2と仕上り性が劣る問題を抱えていることが判った。これに対し、AZ121CaSr合金は、強度がAZ91合金とAZ91CaSr合金の中間の強度を示し、充填率が若干低いにもかかわらず、成形仕上り性は欠点値2.7と優れており、AZ141CaSr合金は、欠点値が5.8と中間の値を示した。なお、AZ161CaSr合金の厚さ0.7mm成形品は、熱間割れが多数発生し、外観仕上り性がスケールアウトした。
【0029】
従って、Al量が10〜15%の範囲の組成に、目的の成形仕上り性の高い領域が存在することが判った。このことから、AZ91合金やAZ91CaSr合金は、比較的強度指向の高い部品には向いているが、成形品の表面性状は若干劣り、手触りや外観性などを指向する部品には、AZ121CaSr合金やAZ141CaSr合金が好ましいことが判った。
【0030】
また、高速加圧鋳造における金型への充填と成形仕上り性との関係を表2に示した。表2はIからVIに向け湯流れ性が良くなった時の充填状態をまとめたものである。IIからVの充填良好域の前後に充填不良域を持つが、充填良好域についても、IIはIの傾向を反映し、VはVIの傾向を反映して、多少の欠点がある。最良の充填良好域はIIIとIVであるが、IIIでは表面を詳細に調べると細かな欠陥を持つ。IIIよりも湯流れ性が高いIVでは、表面欠陥が全く見られない程で、金型に全く忠実に成形されるが、湯流れ性が高いために、成形品内部に気泡を含みはじめる。V以降はこの傾向がさらに強まり、VIでついには吹き出しに至ってしまう。
【0031】
I〜VIの状態を合金に当てはめると、AZ91はII,AZ91CaSrはIII,AZ121CaSrはIV,AZ141CaSrはV,…に相当する。AZ91CaSrは、強度、充填率が高いのに成形仕上り性が良くない。一方、AZ121CaSrは、成形仕上り性が良いが充填率が低いのは、以上のように湯流れ性が大きく関与しているものと考えられる。また、強度、充填率の最適域と、成形仕上り性の最適域がAl量によって若干ずれていることが湯流れ性から説明がつく。
【0032】
【表2】
【0033】
以上のような検討の結果、本発明のマグネシウム合金のうち、Al量については、成形仕上り性の欠点値が、Al量10%で4.0と下がり始めたため、10.0%を下限とし、16%を超えると成形割れが出てくるため、15.0%を上限とした。
【0034】
Ca,Srの添加量の範囲については、ベースとなるAZ91合金、AZ121合金、AZ141合金にCa,Srを所定量ずつ加えて合金とし、25mmφ、50mmHの小型金型に重力鋳造して結晶粒径を測定し、以下のような測定結果(図6および図7)から決定した。即ち、最初に小型金型とダイカスト品の結晶サイズを比較したところ、小型金型に重力鋳造したときの結晶粒径が41μmのとき、ダイカスト品の方は30μmであった。図6は、本発明合金を溶製した場合の各添加金属の結晶微細化効果が判るように、添加の都度、結晶粒径を測定した値を示すものである。サンプルはサンプリング温度680℃で小型金型に採り、結晶粒界が明確になるように、溶体化処理を420℃で2時間行った。Mnを添加したところで、AZ91合金が完成し、通常AZ合金の結晶粒径となる。9%Alを12%Alに修正するために、3%のAlを加えると、結晶は粗大化してしまう。結晶粒径と強度は逆比例するので、AZ121合金は強度の低い合金であることがこれでも分るが、本発明合金はこれにCa,Srを添加したものであり、Ca,Srの添加により、合金の結晶粒径が微細化側に転じていくことが明らかであり、最終組成合金の結晶粒径はAZ91合金の半分以下になった。
【0035】
図7には、図6と同様にして求めた最終結晶サイズをCaとSrの添加量の相互関係で示した。同図から、CaとSrは単独でも微細化効果があるが、最も細かくなる領域は複合添加したところにあることがわかる。そして、図7から、Caは0.8%以下でかつSrは0.7%以下を除いた範囲に結晶が細かくなるところがあるが、Ca,Srを多目に添加すれば合金価格も高価となるので、上限値をCaは3.0%、Srは1.2%とした。従って、本発明では、Ca:3.0%以下およびSr:1.2%以下、ただし、Ca0.8%以下でかつSr0.7%以下の範囲を除く範囲とした。
【0036】
Znについては、0.3%未満となると、引張り強度が下がり、1.5%を超えると、伸び値が下がってくるために、0.3〜1.5%とした。
【0037】
Mnについては、0.1%未満では図6に示した結晶粒微細化効果が低減してしまうこと、0.4%を超えると溶解時にドロスの発生が多く、成形機内にも異結晶が生成し易くなるためか、動きが極端に低下し、トラブルが多発することから、0.1〜0.4%とした。
【0038】
以上の検討結果から、
Al:10.0〜15.0%、好ましくは10.0〜14.0%
Zn:0.3〜1.5%、好ましくは0.5〜1.0%
Mn:0.1〜0.4%、好ましくは0.2〜0.3%
Ca,SrはCa3.0%以下およびSr1.2%以下、ただし、Ca0.8%以下でかつSr0.7%以下の範囲を除く、とし、好ましくは、Ca1.7〜3.0%およびSr1.2%以下と、Ca0.7〜1.7%およびSr0.7〜1.2%の範囲で、残部がMgおよび不可避不純物の本発明の新規マグネシウム合金組成に到った。
【0039】
なお、本発明の成形品は、本発明のマグネシウム合金を、低圧鋳造法や溶湯鍛造法などでも十分効果を発揮するが、好ましくは金属射出成形や、各種ダイカスト、チクソモールディング、スクイーズキャストなどの高速加圧鋳造法で成形してなるものである。本発明のマグネシウム合金は、その合金組成によっても異なるが、通常、融点(凝固開始温度)が545〜595℃程度であるため、この高速加圧鋳造における成形温度は、570〜670℃で行うことが好ましく、このような700℃以下の比較的低い温度で、0.3〜1.0mm程度の薄肉成形品であっても、適度な湯流れ性のもとに、良好な成形仕上り性を得ることができ、成形歩留りだけでなく、最終的な製品の外観検査における歩留りも極めて良好である。
【0040】
なお、本発明のマグネシウム合金およびその成形品は、不活性雰囲気下、370〜430℃の範囲で3〜30時間溶体化熱処理を施すことが好ましく、これにより、成形時の結晶ひずみが除去されて耐食性が改善される。
【0041】
溶体化の条件は、430℃を超えると結晶の粗大化が開始され、370℃未満では結晶粒界に金属間化合物が多数残ったままである。時間についても430℃、3時間未満では溶体化が不十分であり、30時間を超えると不経済である。
【0042】
本発明の成形品は、近年、より一層の薄肉軽量化が求められていると共に、製品外観についても高度な要求がなされている、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、PDAなどの携帯家電の筐体、各種部品の構成材料をはじめとして、各種用途に工業的に極めて有用である。
【0043】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0044】
実施例1
AZ91合金に、Alと金属Ca、および10%Sr−Al合金を添加して、ノンフラックス法で溶製することにより、下記組成のAZ121CaSr合金の5kg塊インゴットを鋳造した。
【0045】
[AZ121CaSr合金組成]
Al:11.5%
Zn:0.75%
Mn:0.25%
Ca:1.03%
Sr:0.48%
Mg:残部
【0046】
なお、鋳造直前に、直径25mmφの小金型に注湯してサンプルを採取して420℃で2時間溶体化処理し、断面を研磨エッチングして切片法で結晶粒径を測定したところ、21μmであった。また、溶解炉側において、冷却過程を測温することにより融点・凝固点を測定したところ、575℃であった。
【0047】
このAZ121CaSr合金のインゴットを用いて、450トンのコールドチャンバーダイカストマシンで、厚さ0.7mmの薄肉部を有するA4のノートパソコンの筐体を、620℃と650℃の各成形温度で成形し、各々200ピースの成形仕上り性を調べ、結果を表3に示した。
【0048】
比較例1
比較合金として、AZ91合金を用い、実施例1と同様にして、溶製および溶体化処理を行い、結晶サイズと融点・凝固点を調べたところ、結晶サイズは40μmで、融点・凝固点は599℃であった。
【0049】
このAZ91D合金のインゴットを用いて、実施例1と同様にダイカスト成形を行い、同様に成形仕上り性を調べ、結果を表3に示した。
【0050】
【表3】
【0051】
表3より明らかなように、本発明によれば、成形品の合格率が向上するので、従来品に比べて12.5〜15.0%のコストダウンが可能である。即ち、本発明によれば、Al,Ca,Srを配合することによる原料コストの上昇分を十分に吸収した上で、コストダウンを図ることができる。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のマグネシウム合金およびその成形品によれば、
▲1▼ 湯流れ性が改善されるため、成形作業時のトラブルが減少し、成形品の合格率が向上する。
▲2▼ 従来より低い加工温度域での成形条件を採用することができるため、成形機や金型への負荷が軽減され、設備の故障や劣化が防止される。
▲3▼ 成形仕上り性が大幅に向上するため、最終検査での製品歩留りも向上する。
▲4▼ 強度や耐食性は、従来品に比べて遜色がない。
といった効果のもとに、薄肉、複雑形状の成形品であっても生産性が高く、低コストで効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】AZ合金のAl量と凝固開始温度との関係を示すグラフである。
【図2】各種AZ合金ダイカスト品の引張り強度を示すグラフである。
【図3】各種AZ合金ダイカスト品の伸び値を示すグラフである。
【図4】各種AZ合金ダイカスト品の成形仕上り性(欠点値)を示すグラフである。
【図5】各種AZ合金ダイカスト品の充填率(%)を示すグラフである。
【図6】本発明合金の溶製過程別結晶サイズを示すグラフである。
【図7】結晶サイズに及ぼすCa,Srの添加効果を示すグラフである。
【図8】本発明合金(AZ121Ca1.0Sr0.5)ダイカスト品の断面の顕微鏡写真である。
【図9】従来合金(AZ91)ダイカスト品の断面の顕微鏡写真である。
Claims (7)
- 重量比で、Al:10.0〜15.0%、Zn:0.3〜1.5%、Mn:0.1〜0.4%、Ca:3.0%以下、およびSr:1.2%以下を含有し(ただし、Ca0.8%以下でかつSr0.7%以下の範囲を除く)、残部がMgおよび不可避不純物からなることを特徴とする成形仕上り性に優れたマグネシウム合金。
- 請求項1において、該合金を高速加圧成形した際の結晶サイズが5〜32μmであることを特徴とする成形仕上り性に優れたマグネシウム合金。
- 請求項1又は2において、融点が545〜595℃であることを特徴とする成形仕上り性に優れたマグネシウム合金。
- 請求項1ないし3のいずれか1項のマグネシウム合金を成形してなることを特徴とする成形品。
- 請求項4において、高速加圧鋳造法により成形してなることを特徴とする成形品。
- 請求項4又は5において、成形温度が570〜670℃であることを特徴とする成形品。
- 請求項4ないし6のいずれか1項において、不活性雰囲気下、370〜430℃の範囲で3〜30時間溶体化熱処理が施されていることを特徴とする成形品。
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