JP2004359867A - 絶縁樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法 - Google Patents
絶縁樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】粗化の程度の低い導体箔に対しても十分強力に接着して導体張積層板を形成可能な絶縁樹脂組成物を提供する。
【解決手段】分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物と、の反応により得られる化合物であって、R−COO基を2以上有する化合物と、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有することを特徴とする絶縁樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物と、の反応により得られる化合物であって、R−COO基を2以上有する化合物と、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有することを特徴とする絶縁樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板の基板として用いられる積層板は、電気絶縁性を有する樹脂をマトリックスとするプリプレグ層等の絶縁体層を所定層数積層し、加熱圧着して一体化することにより得られる。導体回路をサブトラクティブ法により形成する場合は、通常、上記積層板の表面上にさらに金属箔(銅箔)等の導体箔を積層し加熱圧着することにより得られる導体張積層板が、プリント配線板の基板として用いられる。
【0003】
この導体箔の絶縁体層への接着について、通常は、導体箔の表面を粗化することにより、アンカー効果を利用した接着の強化を図っている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−211941号公報
【非特許文献1】
電子材料編集部編、「高密度プリント配線板技術」、工業調査会、昭和61年5月20日、p149−157
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献1に記載の従来の導体箔の接着方法について詳細に検討を行ったところ、このような従来の接着方法により得られた積層板は、エッチングにより導体箔の一部を除去しようとした場合、除去したい部分の導体箔が残存する可能性が高いことを見出した。
【0006】
すなわち、導体箔の表面が粗化されていることにより、エッチング液が導体箔表面の凹部にまで進入し難いため、その部分の導体箔を全て除去できない、或いは、除去できたとしても長時間のエッチングを行う必要があることを見出した。除去したい部分の導体箔が残存することは、回路の短絡を引き起こす可能性があり好ましくない。
【0007】
さらに、電子機器の処理の高速化に伴う信号の高周波化を実現すべく、いわゆる表皮効果による導体箔の電気抵抗を抑制する必要がある。ここで、「表皮効果」とは、導体を流れる信号の周波数が高くなるほど、その導体の中心部に生じる磁力線の干渉が大きくなるため、導体中心部では電流が流れ難くなる一方で、導体表面付近に流れる電流が増加することをいう。しかしながら、導体箔の表面が粗化されると、その表面付近においては電気抵抗が増加し電流が流れ難くなる傾向にあると一般に考えられているので、導体箔の表面を粗くするほど信号の高周波化を妨げることとなる。
【0008】
一方で、近年のプリント配線板における配線の高密度化に伴い、或いは、該配線板上に実装される素子の端子数増加及び端子幅狭小化に伴い、導体箔が積層板から容易に剥離する傾向にあるので、これを改善する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、粗化の程度の低い導体箔に対しても十分強力に接着して導体張積層板を形成可能な絶縁樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、本発明の絶縁樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、絶縁樹脂組成物に含有される化合物が有する特定の繰り返し単位が、該絶縁樹脂組成物から得られる絶縁体層と導体箔との接着性を向上させる効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の絶縁樹脂組成物は、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応により得られる化合物であってR−COO基を2以上有する化合物と、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有することを特徴とする。ここでRは芳香環を有する一価の有機基を示す。
【0013】
上記化合物は、絶縁樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂のエポキシ基と反応(開環挿入反応)することにより、該エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。また、その絶縁樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂硬化促進剤は、上記反応を加速させるために用いられる。
【0014】
このような化合物を含有する本発明の絶縁樹脂組成物は、加熱等により硬化し、粗化の程度の低い導体箔に対しても高い接着性を発揮する。
【0015】
また、このような化合物を含有する本発明の絶縁樹脂組成物は、従来のものと比較して、十分に低い比誘電率を有する絶縁体を提供できるので、かかる絶縁樹脂組成物を用いてプリント配線板を製造すれば、信号伝搬速度の速い電気特性に優れた電子回路を形成することができる。
【0016】
本発明の絶縁樹脂組成物は、上記化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物であると、より接着性に優れ、しかもより電気特性に優れた電子回路を形成できる。
【0017】
【化2】
ここで、式中、Rは芳香環を含む一価の有機基を示し、Xは水素原子又は一価の有機基を示し、Yは二価の有機基を示し、Zはn価の有機基を示す。なお、一般式(1)又は(2)で表される化合物はnが2以上であればよく、分子量の高低を問わない。
【0018】
本発明の絶縁体組成物は、Xが芳香環を含む一価の有機基であると好ましく、或いは、Yがメチレン基又はヒドロキシフェニルメチレン基であると好ましい。これにより、絶縁体組成物から得られる絶縁体層と導体箔との接着力をさらに高めることがでできる。
【0019】
また、該絶縁樹脂組成物は、一般式(1)又は(2)で表される化合物が、フェノール性水酸基を有する化合物と、ケトン又はヒドロキシフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドと、の付加縮合により得られる樹脂に、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物を反応させてなる化合物であると、より一層の接着性の向上を達成することができる。また、これにより、絶縁体としての優れた電気特性を絶縁体層に付与することができる。
【0020】
本発明の絶縁樹脂組成物は、R−COO基を2以上有する化合物が、3以上のR−COO基を有すると好ましい。これにより、その絶縁樹脂組成物から得られる絶縁体層と導体箔との接着性をさらに高めることができる。
【0021】
さらに、R−COO基中のRがフェニル基であると好ましい。このような化学種を有することで、該絶縁樹脂組成物は比較的安価に製造されるので、工業的に特に有用となる。
【0022】
また、絶縁樹脂組成物が、エポキシ樹脂硬化促進剤としてジメチルアミノピリジンを含有すると好ましい。このような化合物を用いることにより、該絶縁樹脂組成物は、優れた硬化性を発揮するので、それから得られる絶縁体層は良好な接着性と耐熱性を備えることができる。
【0023】
また、本発明のプリプレグは、上述したような絶縁樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とする。
【0024】
本発明の樹脂付導体箔は、導体箔と、該導体箔上に形成された上記絶縁樹脂組成物を含有する絶縁樹脂組成物層とを備えることを特徴とする。
【0025】
さらに、本発明の導体張積層板は、導体箔を上述したプリプレグの硬化物上に備えるものである。或いは、本発明の導体張積層板は、上述した樹脂付導体箔を、絶縁樹脂組成物層がプリプレグの硬化物又はプリプレグに接するように積層して積層物を得た後、該積層物を加熱して絶縁樹脂組成物層及び/又はプリプレグを硬化してなるものであってもよい。
【0026】
また、本発明の多層配線板は、絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを交互に備える多層配線板において、絶縁体層が上述した絶縁樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。
【0027】
さらに、本発明の別の多層配線板は、絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを交互に備える多層配線板において、絶縁体層が上述したプリプレグの硬化物であることを特徴とする。
【0028】
以上の各電子部品は、本発明の絶縁樹脂組成物を用いているので、そこに備えられる導体表面が比較的平滑であっても十分な絶縁体層−導体層間の接着力が得られ、その結果、微細回路の形成を可能とすることができるものである。
【0029】
本発明の多層配線板の製造方法は、絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを備える内層配線板の導体層上に、上記樹脂付導体箔を該導体箔の絶縁樹脂組成物層が導体層に接するように積層する積層工程と、該絶縁樹脂組成物層を硬化させ、表面に導体箔を備える積層基板を得る硬化工程と、該積層基板の導体箔を部分的に除去して、表面に回路パターンを形成させるパターニング工程とを含むものである。
【0030】
また、その多層配線板の製造方法において、パターニング工程で得られる回路パターンが形成された配線板を、積層工程の内層用配線板として用いることもできる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0032】
本発明にかかる絶縁樹脂組成物は、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応により得られる化合物であってR−COO基を2以上有する化合物と、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有するものである。
【0033】
(R−COO基を2以上有する化合物)
R−COO基を2以上有する化合物は、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応により得られるものである。ここでRは芳香環を有する一価の有機基を示す。
【0034】
分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、ヒドロキノン若しくはカテコール等の二つのフェノール性水酸基を有する単環式のフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールS等の二官能フェノール化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂、或いは、ナフタレンジオールなどが挙げられる。
【0035】
芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物は、その分子内に芳香環を含む一価の有機基を有するものであれば、特に制限することなく採用することができる。これらのうち、製造コストの観点より、芳香環を含む一価の有機基Rがフェニル基である安息香酸若しくは安息香酸クロライド等の安息香酸ハロゲン化物を用いると好ましい。
【0036】
分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応として、芳香族カルボン酸を用いる場合は、例えば、250℃以上の温度下での該化合物と芳香族カルボン酸との脱水縮合反応が挙げられ、芳香族カルボン酸ハロゲン化物を用いる場合は、例えば、アミン類の存在下での該化合物と芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応が挙げられる。
【0037】
この反応によって得られる、R−COO基を2以上有する化合物としては、芳香環が直接カルボニル炭素に結合しているもの及び芳香環の側鎖がカルボニル炭素に結合しているものの両方を含み、1つの芳香環に2以上のR−COO基を有する化合物、又は、2以上の各芳香環に1以上のR−COO基を有する化合物などが挙げられる。
【0038】
本発明の絶縁性樹脂組成物は、それらの化合物のうち、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を含有すると、接着性等の観点から好ましい。
【0039】
【化3】
ここで、式中、Rは芳香環を含む一価の有機基を示し、Xは水素原子又は一価の有機基を示し、Yは二価の有機基を示し、Zはn価の有機基を示し、nは2以上の数を示す。
【0040】
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、種々の製造方法により得られ、その製造方法について特に限定はされない。例えば、まず、フェノール性水酸基を有する化合物と、ケトン又はヒドロキシルフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドとを付加縮合させてもよい。
【0041】
ここでのフェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール、クレゾール若しくはエチルフェノール等の一つのフェノール性水酸基を有する単環式のフェノール化合物、ヒドロキノン若しくはカテコール等の二つのフェノール性水酸基を有する単環式のフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールS等の二官能フェノール化合物、或いは、ナフタレンジオールなどが挙げられる。
【0042】
また、ヒドロキシフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド若しくはプロピレンアルデヒド等又はそれらのヒドロキシフェニル基で置換されているアルデヒド等が挙げられる。これらのうち、最終的に得られる絶縁体層の接着性の観点からホルムアルデヒド若しくはサリチルアルデヒドが好ましい。
【0043】
さらに、ケトンとしては、アセトン、エチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン若しくはアセトフェノン等が挙げられる。
【0044】
続いて、例えば、上述した付加縮合反応により得られた縮合化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物とを反応させることによって一般式(1)又は(2)で表される化合物が得られる。この反応としては上述した縮合化合物と芳香族カルボン酸等との反応と同様のものが挙げられる。
【0045】
この反応に用いられる縮合化合物は、上述した付加縮合反応により得られるものであり、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有し、しかも、水素原子又は一価の有機基X及び二価の有機基Yを有するもの、或いは、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有し、n価の有機基Zを有するものである。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の二官能フェノール類、或いは、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂等が挙げられる。
【0046】
これらのうち、絶縁体層の接着性を向上させる観点から、フェノール性水酸基を有する化合物としてビスフェノールAを用い、ヒドロキシフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドとしてホルムアルデヒド若しくはサリチルアルデヒドを用いることにより得られるビスフェノールAノボラック樹脂若しくはサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂が特に好ましい。
【0047】
このようにして得られたR−COO基を2以上有する化合物は、これを絶縁樹脂組成物に含有させることにより、最終的に接着力の強い絶縁体層を得ることを可能にする。したがって、例えば、従来、銅張積層板に用いられていた銅箔の表面粗さが十点平均粗さで6μm以上であったのに対し、本発明の絶縁樹脂組成物を採用すると、該銅箔の十点平均粗さを2μm以下としても、十分強力な銅箔−絶縁体層間の接着力を確保することができる。この結果、従来の比較的粗い表面を有する銅箔を用いると実現が困難であった20μm幅程度の配線幅を有する微細回路の作製も可能となる。
【0048】
(エポキシ樹脂)
本発明において用いられるエポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。したがって、該エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂若しくはエポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。これらのなかで、導体箔との接着性が特に良好であり、内層回路の充填性及び耐熱性の向上の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂或いはノボラック型エポキシ樹脂を本発明にかかるエポキシ樹脂として用いると好ましい。
【0049】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂若しくはビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂若しくはサリチルアルデヒドフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
これらの樹脂は、1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の分子量は特に限定されない。
【0051】
(エポキシ樹脂硬化促進剤)
エポキシ樹脂硬化促進剤は、上述したエポキシ樹脂の反応物(硬化物)の形成を促進させる化合物であれば、特に限定されることなく用いられる。具体的には、例えば、イミダゾール類、有機リン化合物、第三級アミン、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0052】
イミダゾール類としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール若しくは1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールなどを例示することができる。また、有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィンなどを挙げることができる。さらに、第三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン若しくはジメチルアミノピリジンなどを例示することができる。また、第四級アンモニウム塩としては、酢酸テトラブチルアンモニウム若しくは硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0053】
これらのなかで、エポキシ樹脂の硬化性が良好であり,優れた接着性と耐熱性を発現することが可能であることから、ジメチルアミノピリジンをエポキシ樹脂硬化促進剤として用いると好ましい。
【0054】
次に、本発明の絶縁樹脂組成物に含有される上記各成分の配合比について説明する。
【0055】
上述したR−COO基を2以上有する化合物の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、20〜300質量部とすることが好ましい。該化合物の配合量がエポキシ樹脂100質量部に対し20質量部未満であると、エポキシ樹脂の硬化性を確保できない傾向にある。また、該化合物の配合量がエポキシ樹脂100質量部に対し300質量部を越えると、その化合物が過剰に存在することになり、絶縁樹脂組成物から得られる樹脂に対し可塑剤として作用する傾向にある。
【0056】
また、その化合物中にあるR−COO基当量は、エポキシ樹脂中のエポキシ当量との比(エポキシ当量/R−COO基当量)で0.8〜1.2となるように調整することが好ましい。これにより該絶縁樹脂組成物を硬化して得られる樹脂は、耐熱性と導体箔に対する良好な接着性とを有することができる。
【0057】
エポキシ樹脂硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好ましい。このエポキシ樹脂硬化促進剤の配合量が0.01質量部未満になると、エポキシ樹脂が十分に硬化されない傾向にあり、10質量部を越えると、得られる樹脂の耐熱性が低下する傾向にある。
【0058】
本発明の絶縁樹脂組成物は、必要に応じて、さらに種々の添加剤を含有してもよく、例えば無機フィラー等をさらに含んでもよい。無機フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、溶融シリカ、ガラス粉、石英粉、シラスバルーン等が例示できる。なお、これらの添加剤はそれぞれ1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明の絶縁樹脂組成物は、各成分を混合し塗布可能な状態にする、すなわちワニス化するために、必要に応じて溶剤を含有することもできる。該溶剤は、上述したような各成分を溶解できるものであって、得られる樹脂の接着性に影響を与えないようなものであれば、特に限定されることなく用いることができる。具体的には、例えば、各種のアルコール、アセトン、トルエン、キシレン、ケトン、アミド、エーテル若しくはピロリドン等が挙げられる。これらのなかで、エポキシ樹脂の溶解性及び沸点等の観点から、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル若しくはN−メチルピロリドンなどが好ましい。これらの溶剤は1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
本発明の絶縁樹脂組成物は、多層化用のプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板若しくはビルドアップ法による多層配線板等に用いることができる。
【0061】
絶縁樹脂組成物を多層化用のプリプレグに用いる場合は、その絶縁樹脂組成物を、基材に含浸させることにより該プリプレグを形成する。基材としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス若しくはQガラス等からなるガラス繊維、ポリイミド、ポリエステル若しくはテトラフルオロエチレン等からなる有機繊維、及びこれらを混合した繊維が例示できる。これらの繊維は、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット若しくはサーフェシングマット等の形状で基材として用いることができる。基材の厚みは、例えば、0.03〜0.5mm程度のものを用いることができ、また、耐熱性、耐湿性又は加工性向上の観点から、接着性に影響を与えない程度でシランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理したもの等を用いることが好ましい。
【0062】
絶縁樹脂組成物を基材に含浸させる方法としては、例えば、ウェット方式又はドライ方式等の樹脂液に基材を浸漬させる方法、或いは基材に絶縁樹脂組成物を塗工する方法等が挙げられる。基材に含浸させる絶縁樹脂組成物の量は、乾燥後のプリプレグの全質量中に絶縁樹脂組成物が20〜90質量%含まれると好ましく、30〜80質量%含まれるとより好ましい。そして、熱硬化性樹脂組成物が含浸された基材を、100〜200℃で1〜30分加熱し溶媒を除去させることにより、熱硬化性樹脂組成物が半硬化の状態であるプリプレグを得ることができる。
【0063】
このようにして得られたプリプレグは、導体成形物との接着性に優れているので、その表面或いは導体成形物の表面を粗化しなくても、耐剥離性のある電子材料に備えられるものとして用いることができる。
【0064】
絶縁樹脂組成物を樹脂付導体箔に用いる場合は、導体箔と本発明の絶縁樹脂組成物を含有する絶縁樹脂組成物層とを備えるものである。このような樹脂付導体箔は、例えば、上述の絶縁樹脂組成物を含有するワニス(プライマー)を導体箔上に塗布し、その後100〜200℃の温度で1〜30分加熱して溶媒を除去することにより得ることができる。
【0065】
導体箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔若しくはニッケル箔等が例示できる。樹脂付導体箔を製造する際には、通常厚みが10〜50μmである導体箔を用いるが、以下の方法によって1〜10μmの厚みを有する導体箔に樹脂が密着した樹脂付導体箔を作製することができる。すなわち、絶縁樹脂組成物層を形成させる導体箔として、エッチング又は引き剥がしによる除去が可能な支持導体箔と極薄導体箔との2層からなる導体箔を準備する。そして、当該導体箔の極薄導体箔上に絶縁樹脂組成物層を形成させ、支持導体箔をエッチング又は引き剥がしによって除去する。樹脂付導体箔における絶縁樹脂組成物層の厚さは、加熱後の厚さで10〜150μmであることが好ましく、該層中の残存溶剤量としては、0.2〜10%程度であることが適当である。
【0066】
絶縁樹脂組成物を導体張積層板に用いる場合、該導体張積層板は、通常の導体箔を上述したような本発明の絶縁樹脂組成物を用いて形成したプリプレグの硬化物上に備えるものであってもよい。または、上述した本発明の樹脂付導体箔を、絶縁樹脂組成物層がプリプレグの硬化物又はプリプレグに接するように積層して積層物を得た後、該積層物を加熱して前記絶縁樹脂組成物層及び/又はプリプレグを硬化してなるものであってもよい。
【0067】
その製造方法は以下の通りである。まず、上述したプリプレグを例えば1〜20枚、公知の方法により積層させた後、必要に応じて、加熱及び加圧により硬化させる。成形は通常、多段プレス、多段真空プレス、連続成形又はオートクレーブ成形機等を使用し、加熱及び加圧は温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2及び0.1〜5時間の範囲の条件で行うことができる。そして、積層したプリプレグの片面又は両面に、導体箔が樹脂付きでない場合は導体箔の表面を、導体箔が樹脂付導体箔である場合はその樹脂を、密着させ、全体を加熱及び/又は加圧することにより、導体張積層板を得ることができる。
【0068】
絶縁樹脂組成物を多層配線板に用いる場合は、例えば以下のようにして用いることができる。すなわち、まず、片面又は両面に回路パターンが形成された導体層を備える配線板を内層用配線板とし、かかる内層用配線板の導体層上に、絶縁体層として本発明の絶縁樹脂組成物からなる絶縁樹脂組成物層を形成させたのちに硬化させ、内層用配線板と、絶縁体層を有する絶縁体層付配線板を得る。
【0069】
次に、得られた絶縁体層付配線板に、ドリル又はレーザー等により穴あけを行う。次いで、穴あけの際に生じた樹脂残渣の除去を行う。なお、本発明の絶縁樹脂組成物を用いることで、絶縁体層と導体層との間の接着力を高めることができるので、表面を粗化する工程は必ずしも要しないが、それらの接着性をさらに高めたい場合は、サンドブラスト処理、プラズマ処理、過マンガン酸塩又は重クロム酸塩等の酸化剤による薬品処理等を施す。
【0070】
更に、無電解銅めっき、金属蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティング等によりビアホールの形成を行い、めっき又はエッチング等の公知の方法により絶縁樹脂組成物層上に回路パターンを形成させ、表面に回路パターンが形成された導体層を有する積層体を得る。そして、得られた積層体を内層用配線板として用い、上記の絶縁樹脂組成物層の形成から回路パターンの形成までの工程を繰り返すことにより多層配線板を得ることができる。なお、プリプレグの硬化物を備えた多層配線板は以上の方法における絶縁樹脂組成物をプリプレグで置き換えることにより製造可能である。
【0071】
配線板上への絶縁樹脂組成物層の形成は、配線板の導体層上に本発明の絶縁樹脂組成物を塗布した後、加熱硬化させることによってなされる。なお、絶縁樹脂組成物(又はプリプレグ)の硬化は、120℃以上の温度で15分以上、好ましくは170〜220℃の温度で60〜150分の加熱を行うことにより行うことができる。
【0072】
なお、内層用配線板に用いる基板としてはガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、BTレジン基板又は熱硬化型PPE基板等が例示できる。
【0073】
また、多層配線板の製造は、上述した樹脂付導体箔を用いることによって行うこともできる。このような方法を以下に示す。すなわち、まず、片面又は両面に回路パターンが形成された導体層を有する配線板を内層配線板とし、内層配線板における導体層上に、上述した樹脂付導体箔を、加熱及び/又は加圧条件下でラミネート又はプレスすることにより、該樹脂付導体箔における樹脂が接するように積層させる積層工程を実施する。次に樹脂部分を加熱することにより樹脂の硬化を行い、表面に導体箔を備える積層基板を得る硬化工程を実施する。
【0074】
更に、得られた積層基板の導体箔面をエッチング等の公知の方法により部分的に除去して、表面に回路パターンを形成させるパターニング工程を実施する。
【0075】
そして、表面に回路パターンが形成された配線板を、内層配線板として用い、上記積層工程、硬化工程及びパターニング工程を含む3工程を1回又は2回以上実施することにより多層配線板を得ることができる。
【0076】
なお、硬化工程の後、積層基板にビアホール等の形成を行ってもよい。ビアホール形成のためには積層基板の穴あけが必要となるが、積層基板における導体箔が薄い場合には、ドリル又はレーザーによって直接穴あけが可能であり、導体箔が厚い場合には、コンフォーマルマスク法又はラージウインド法により窓穴を形成した後に、ドリル又はレーザーにより穴あけを行うことにより形成が可能である。ここで、積層基板における導体箔表面に、サンドブラスト処理、プラズマ処理或いは過マンガン酸塩若しくは重クロム酸塩等の酸化剤等による薬品処理等により粗化を施すことが好ましい。このような粗化は穴あけ前に行ってもよく、穴あけ後に行ってもよい。
【0077】
穴あけ終了後、導体箔表面やスルーホール等に樹脂残渣が残存している場合にはその除去を行い、無電解銅めっき、金属蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティング等によりビアホールを形成することができる。
【0078】
このようにして得られた上記各電子部品は、そこに備えられる樹脂と導体とが本来的に接着性に優れているので、アンカー効果を利用するために導体箔の表面を十分に粗化させる必要はなく、より微細な回路を提供することができる。
【0079】
さらに、該樹脂は比誘電率等の電気特性に優れた性質を有しているので、これを用いた上記各電子部品は、例えば、処理速度を高める必要のある電子機器に有効に備えられる。
【0080】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
まず、温度計、冷却管、窒素導入管及び攪拌棒を備えた2Lの4つ口フラスコに、ビスフェノールAノボラック樹脂(VH−4170、大日本インキ化学工業株式会社製、フェノール性水酸基当量:117g/eq、商品名)250g及びシクロヘキサノン700gを入れ、窒素気流下攪拌して溶解させた後、150℃で還流して、ディーンスターク分留器を用いて水分を除去した。次いで、トリエチルアミン400gを添加し、氷浴により反応系内を10℃以下まで冷却後、反応系が10℃を越えないように注意しながら安息香酸クロライド400gを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに常温で2時間攪拌して反応させた。
【0082】
反応終了後、吸引ろ過によりトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、得られたろ液をメタノール中に沈殿させた。そして、沈殿物を120℃で1時間減圧乾燥し粗生成物を得た。続いて、粗生成物を200gのアセトンに溶解させ、不溶成分を減圧ろ過により除去し、メタノール中に再沈殿させ生成物を得た。その後、生成物120℃で6時間減圧乾燥して実施例1の樹脂を得た。
【0083】
得られた樹脂の13C−NMRスペクトル(装置:ブルカー・バイオスピン社製AC300P、溶媒:アセトンD6、濃度:10質量%)を図1に示す。この13C−NMRスペクトルには165ppmにエステルのカルボニル炭素を示すピークの存在が認められた。また、原料のビスフェノールAノボラック樹脂の13C−NMRスペクトルでは存在が認められた水酸基結合炭素のピーク(152ppm)は確認されなかった。以上のことから、得られた生成物が目的としたアリールエステル付加ビスフェノールAノボラック樹脂(BPANov−AR)であることが確認できた。
【0084】
[ガラス転移温度の測定]
得られた樹脂(BPANov−AR)のガラス転移温度(Tg)をTAインスツルメンツ社製TMA2940を用いて昇温温度10℃/分、引張モードで測定した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
[両面銅張積層板の作製]
実施例1により得られたBPANov−AR55gに対し、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬株式会社製、エポキシ当量:294g/eq、商品名)80g及びジメチルアミノピリジン1gをメチルエチルケトン60gに溶解し、絶縁樹脂組成物ワニスを得た。次いで、このワニスをポリエチレンテレフタレート製シート上に乾燥後の厚みが50μmになるように調整して塗布した。そして、塗布したワニスを150℃で7分間乾燥させた後、解して未硬化の絶縁樹脂層粉を作製した。
【0087】
続いて、1mm厚の四フッ化エチレン樹脂板をスペーサに用い、両側に低粗化銅箔(F0−WS18、古河サーキットフォイル株式会社製、Rz:1.4μm、商品名)の接着処理面を重ね、ステンレス製の鏡板を用いて、温度170℃、成形圧力3MPaで1時間積層成形を行うことにより、実施例1にかかる両面銅箔張積層板を得た。
【0088】
[銅箔引き剥がし強さの測定]
接着性の評価方法として、得られた両面銅張積層板上の1cm幅の銅箔を、5cm/分の速度で引き剥がすことによって銅箔引き剥がし強さを測定した。結果を表1に示す。
【0089】
[比誘電率の測定]
得られた両面銅張積層板の1GHzにおける比誘電率をトリプレート構造直線線路共振法により測定した。結果を表1に示す。
【0090】
[誘電正接の測定]
得られた両面銅張積層板の1GHzにおける誘電正接をトリプレート構造直線線路共振法により測定した。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例2)
ビスフェノールAノボラック樹脂に代えて、サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂(YL−6065、ジャパンエポキシレジン株式会社製、フェノール性水酸基当量117g/eq、商品名)を用いた以外は、合成例1と同様にして合成を行い、実施例2の樹脂を得た。
【0092】
得られた樹脂の13C−NMRスペクトル(装置:ブルカー・バイオスピン社社製AC300P、溶媒:アセトンD6、濃度:10質量%)を図2に示す。13C−NMRスペクトルには165ppmにエステルのカルボニル炭素を示すピークの存在が確認された。また、原料のサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂には存在した水酸基結合炭素のピーク(152ppm)は認められなかった。以上のことから、得られた生成物が目的としたアリールエステル付加サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂(SAN−AR)であることが確認できた。
【0093】
得られた樹脂(SAN−AR)のガラス転移温度を実施例1の樹脂と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0094】
また、BPANov−ARに代えて、実施例2で製造したSAN−ARを用いた以外は、実施例1にかかるものと同様にして両面銅張積層板を作製した。得られた両面銅張積層板の銅箔引き剥がし強さ、比誘電率及び誘電正接を実施例1にかかる両面銅張積層板と同様の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0095】
(比較例1)
比較例1の樹脂としてビスフェノールAノボラック樹脂(VH−4170、大日本インキ化学工業株式会社製、フェノール性水酸基当量:117g/eq、商品名)を用いた。この樹脂のガラス転移温度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0096】
また、BPANov−ARに代えて、上述したビスフェノールAノボラック樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして両面銅張積層板を作製した。得られた両面銅張積層板の銅箔引き剥がし強さ、比誘電率及び誘電正接を実施例1にかかる両面銅張積層板と同様の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例2)
比較例2の樹脂としてサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂(YL−6065、ジャパンエポキシレジン株式会社製、フェノール性水酸基当量:117g/eq、商品名)を用いた。この樹脂のガラス転移温度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0098】
また、SAN−ARに代えて、上述したサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂を用いた以外は、実施例2と同様にして両面銅張積層板を作製した。得られた両面銅張積層板の銅箔引き剥がし強さ、比誘電率及び誘電正接を実施例1にかかる両面銅張積層板と同様の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、粗化の程度の低い導体箔に対しても十分強力に接着して導体張積層板を形成可能な絶縁樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのような絶縁樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の樹脂の13C−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2の樹脂の13C−NMRスペクトルである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁樹脂組成物、これを用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板の基板として用いられる積層板は、電気絶縁性を有する樹脂をマトリックスとするプリプレグ層等の絶縁体層を所定層数積層し、加熱圧着して一体化することにより得られる。導体回路をサブトラクティブ法により形成する場合は、通常、上記積層板の表面上にさらに金属箔(銅箔)等の導体箔を積層し加熱圧着することにより得られる導体張積層板が、プリント配線板の基板として用いられる。
【0003】
この導体箔の絶縁体層への接着について、通常は、導体箔の表面を粗化することにより、アンカー効果を利用した接着の強化を図っている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−211941号公報
【非特許文献1】
電子材料編集部編、「高密度プリント配線板技術」、工業調査会、昭和61年5月20日、p149−157
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献1に記載の従来の導体箔の接着方法について詳細に検討を行ったところ、このような従来の接着方法により得られた積層板は、エッチングにより導体箔の一部を除去しようとした場合、除去したい部分の導体箔が残存する可能性が高いことを見出した。
【0006】
すなわち、導体箔の表面が粗化されていることにより、エッチング液が導体箔表面の凹部にまで進入し難いため、その部分の導体箔を全て除去できない、或いは、除去できたとしても長時間のエッチングを行う必要があることを見出した。除去したい部分の導体箔が残存することは、回路の短絡を引き起こす可能性があり好ましくない。
【0007】
さらに、電子機器の処理の高速化に伴う信号の高周波化を実現すべく、いわゆる表皮効果による導体箔の電気抵抗を抑制する必要がある。ここで、「表皮効果」とは、導体を流れる信号の周波数が高くなるほど、その導体の中心部に生じる磁力線の干渉が大きくなるため、導体中心部では電流が流れ難くなる一方で、導体表面付近に流れる電流が増加することをいう。しかしながら、導体箔の表面が粗化されると、その表面付近においては電気抵抗が増加し電流が流れ難くなる傾向にあると一般に考えられているので、導体箔の表面を粗くするほど信号の高周波化を妨げることとなる。
【0008】
一方で、近年のプリント配線板における配線の高密度化に伴い、或いは、該配線板上に実装される素子の端子数増加及び端子幅狭小化に伴い、導体箔が積層板から容易に剥離する傾向にあるので、これを改善する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、粗化の程度の低い導体箔に対しても十分強力に接着して導体張積層板を形成可能な絶縁樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、本発明の絶縁樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、絶縁樹脂組成物に含有される化合物が有する特定の繰り返し単位が、該絶縁樹脂組成物から得られる絶縁体層と導体箔との接着性を向上させる効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の絶縁樹脂組成物は、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応により得られる化合物であってR−COO基を2以上有する化合物と、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有することを特徴とする。ここでRは芳香環を有する一価の有機基を示す。
【0013】
上記化合物は、絶縁樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂のエポキシ基と反応(開環挿入反応)することにより、該エポキシ樹脂の硬化剤として作用する。また、その絶縁樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂硬化促進剤は、上記反応を加速させるために用いられる。
【0014】
このような化合物を含有する本発明の絶縁樹脂組成物は、加熱等により硬化し、粗化の程度の低い導体箔に対しても高い接着性を発揮する。
【0015】
また、このような化合物を含有する本発明の絶縁樹脂組成物は、従来のものと比較して、十分に低い比誘電率を有する絶縁体を提供できるので、かかる絶縁樹脂組成物を用いてプリント配線板を製造すれば、信号伝搬速度の速い電気特性に優れた電子回路を形成することができる。
【0016】
本発明の絶縁樹脂組成物は、上記化合物が、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物であると、より接着性に優れ、しかもより電気特性に優れた電子回路を形成できる。
【0017】
【化2】
ここで、式中、Rは芳香環を含む一価の有機基を示し、Xは水素原子又は一価の有機基を示し、Yは二価の有機基を示し、Zはn価の有機基を示す。なお、一般式(1)又は(2)で表される化合物はnが2以上であればよく、分子量の高低を問わない。
【0018】
本発明の絶縁体組成物は、Xが芳香環を含む一価の有機基であると好ましく、或いは、Yがメチレン基又はヒドロキシフェニルメチレン基であると好ましい。これにより、絶縁体組成物から得られる絶縁体層と導体箔との接着力をさらに高めることがでできる。
【0019】
また、該絶縁樹脂組成物は、一般式(1)又は(2)で表される化合物が、フェノール性水酸基を有する化合物と、ケトン又はヒドロキシフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドと、の付加縮合により得られる樹脂に、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物を反応させてなる化合物であると、より一層の接着性の向上を達成することができる。また、これにより、絶縁体としての優れた電気特性を絶縁体層に付与することができる。
【0020】
本発明の絶縁樹脂組成物は、R−COO基を2以上有する化合物が、3以上のR−COO基を有すると好ましい。これにより、その絶縁樹脂組成物から得られる絶縁体層と導体箔との接着性をさらに高めることができる。
【0021】
さらに、R−COO基中のRがフェニル基であると好ましい。このような化学種を有することで、該絶縁樹脂組成物は比較的安価に製造されるので、工業的に特に有用となる。
【0022】
また、絶縁樹脂組成物が、エポキシ樹脂硬化促進剤としてジメチルアミノピリジンを含有すると好ましい。このような化合物を用いることにより、該絶縁樹脂組成物は、優れた硬化性を発揮するので、それから得られる絶縁体層は良好な接着性と耐熱性を備えることができる。
【0023】
また、本発明のプリプレグは、上述したような絶縁樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とする。
【0024】
本発明の樹脂付導体箔は、導体箔と、該導体箔上に形成された上記絶縁樹脂組成物を含有する絶縁樹脂組成物層とを備えることを特徴とする。
【0025】
さらに、本発明の導体張積層板は、導体箔を上述したプリプレグの硬化物上に備えるものである。或いは、本発明の導体張積層板は、上述した樹脂付導体箔を、絶縁樹脂組成物層がプリプレグの硬化物又はプリプレグに接するように積層して積層物を得た後、該積層物を加熱して絶縁樹脂組成物層及び/又はプリプレグを硬化してなるものであってもよい。
【0026】
また、本発明の多層配線板は、絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを交互に備える多層配線板において、絶縁体層が上述した絶縁樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。
【0027】
さらに、本発明の別の多層配線板は、絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを交互に備える多層配線板において、絶縁体層が上述したプリプレグの硬化物であることを特徴とする。
【0028】
以上の各電子部品は、本発明の絶縁樹脂組成物を用いているので、そこに備えられる導体表面が比較的平滑であっても十分な絶縁体層−導体層間の接着力が得られ、その結果、微細回路の形成を可能とすることができるものである。
【0029】
本発明の多層配線板の製造方法は、絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを備える内層配線板の導体層上に、上記樹脂付導体箔を該導体箔の絶縁樹脂組成物層が導体層に接するように積層する積層工程と、該絶縁樹脂組成物層を硬化させ、表面に導体箔を備える積層基板を得る硬化工程と、該積層基板の導体箔を部分的に除去して、表面に回路パターンを形成させるパターニング工程とを含むものである。
【0030】
また、その多層配線板の製造方法において、パターニング工程で得られる回路パターンが形成された配線板を、積層工程の内層用配線板として用いることもできる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0032】
本発明にかかる絶縁樹脂組成物は、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応により得られる化合物であってR−COO基を2以上有する化合物と、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化促進剤とを含有するものである。
【0033】
(R−COO基を2以上有する化合物)
R−COO基を2以上有する化合物は、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応により得られるものである。ここでRは芳香環を有する一価の有機基を示す。
【0034】
分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、ヒドロキノン若しくはカテコール等の二つのフェノール性水酸基を有する単環式のフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールS等の二官能フェノール化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂、或いは、ナフタレンジオールなどが挙げられる。
【0035】
芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物は、その分子内に芳香環を含む一価の有機基を有するものであれば、特に制限することなく採用することができる。これらのうち、製造コストの観点より、芳香環を含む一価の有機基Rがフェニル基である安息香酸若しくは安息香酸クロライド等の安息香酸ハロゲン化物を用いると好ましい。
【0036】
分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応として、芳香族カルボン酸を用いる場合は、例えば、250℃以上の温度下での該化合物と芳香族カルボン酸との脱水縮合反応が挙げられ、芳香族カルボン酸ハロゲン化物を用いる場合は、例えば、アミン類の存在下での該化合物と芳香族カルボン酸ハロゲン化物との反応が挙げられる。
【0037】
この反応によって得られる、R−COO基を2以上有する化合物としては、芳香環が直接カルボニル炭素に結合しているもの及び芳香環の側鎖がカルボニル炭素に結合しているものの両方を含み、1つの芳香環に2以上のR−COO基を有する化合物、又は、2以上の各芳香環に1以上のR−COO基を有する化合物などが挙げられる。
【0038】
本発明の絶縁性樹脂組成物は、それらの化合物のうち、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を含有すると、接着性等の観点から好ましい。
【0039】
【化3】
ここで、式中、Rは芳香環を含む一価の有機基を示し、Xは水素原子又は一価の有機基を示し、Yは二価の有機基を示し、Zはn価の有機基を示し、nは2以上の数を示す。
【0040】
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物は、種々の製造方法により得られ、その製造方法について特に限定はされない。例えば、まず、フェノール性水酸基を有する化合物と、ケトン又はヒドロキシルフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドとを付加縮合させてもよい。
【0041】
ここでのフェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール、クレゾール若しくはエチルフェノール等の一つのフェノール性水酸基を有する単環式のフェノール化合物、ヒドロキノン若しくはカテコール等の二つのフェノール性水酸基を有する単環式のフェノール化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールS等の二官能フェノール化合物、或いは、ナフタレンジオールなどが挙げられる。
【0042】
また、ヒドロキシフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド若しくはプロピレンアルデヒド等又はそれらのヒドロキシフェニル基で置換されているアルデヒド等が挙げられる。これらのうち、最終的に得られる絶縁体層の接着性の観点からホルムアルデヒド若しくはサリチルアルデヒドが好ましい。
【0043】
さらに、ケトンとしては、アセトン、エチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン若しくはアセトフェノン等が挙げられる。
【0044】
続いて、例えば、上述した付加縮合反応により得られた縮合化合物と芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物とを反応させることによって一般式(1)又は(2)で表される化合物が得られる。この反応としては上述した縮合化合物と芳香族カルボン酸等との反応と同様のものが挙げられる。
【0045】
この反応に用いられる縮合化合物は、上述した付加縮合反応により得られるものであり、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有し、しかも、水素原子又は一価の有機基X及び二価の有機基Yを有するもの、或いは、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有し、n価の有機基Zを有するものである。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の二官能フェノール類、或いは、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂等が挙げられる。
【0046】
これらのうち、絶縁体層の接着性を向上させる観点から、フェノール性水酸基を有する化合物としてビスフェノールAを用い、ヒドロキシフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドとしてホルムアルデヒド若しくはサリチルアルデヒドを用いることにより得られるビスフェノールAノボラック樹脂若しくはサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂が特に好ましい。
【0047】
このようにして得られたR−COO基を2以上有する化合物は、これを絶縁樹脂組成物に含有させることにより、最終的に接着力の強い絶縁体層を得ることを可能にする。したがって、例えば、従来、銅張積層板に用いられていた銅箔の表面粗さが十点平均粗さで6μm以上であったのに対し、本発明の絶縁樹脂組成物を採用すると、該銅箔の十点平均粗さを2μm以下としても、十分強力な銅箔−絶縁体層間の接着力を確保することができる。この結果、従来の比較的粗い表面を有する銅箔を用いると実現が困難であった20μm幅程度の配線幅を有する微細回路の作製も可能となる。
【0048】
(エポキシ樹脂)
本発明において用いられるエポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。したがって、該エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂若しくはエポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。これらのなかで、導体箔との接着性が特に良好であり、内層回路の充填性及び耐熱性の向上の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂或いはノボラック型エポキシ樹脂を本発明にかかるエポキシ樹脂として用いると好ましい。
【0049】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂若しくはビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂若しくはサリチルアルデヒドフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0050】
これらの樹脂は、1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の分子量は特に限定されない。
【0051】
(エポキシ樹脂硬化促進剤)
エポキシ樹脂硬化促進剤は、上述したエポキシ樹脂の反応物(硬化物)の形成を促進させる化合物であれば、特に限定されることなく用いられる。具体的には、例えば、イミダゾール類、有機リン化合物、第三級アミン、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0052】
イミダゾール類としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール若しくは1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールなどを例示することができる。また、有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィンなどを挙げることができる。さらに、第三級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン若しくはジメチルアミノピリジンなどを例示することができる。また、第四級アンモニウム塩としては、酢酸テトラブチルアンモニウム若しくは硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0053】
これらのなかで、エポキシ樹脂の硬化性が良好であり,優れた接着性と耐熱性を発現することが可能であることから、ジメチルアミノピリジンをエポキシ樹脂硬化促進剤として用いると好ましい。
【0054】
次に、本発明の絶縁樹脂組成物に含有される上記各成分の配合比について説明する。
【0055】
上述したR−COO基を2以上有する化合物の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、20〜300質量部とすることが好ましい。該化合物の配合量がエポキシ樹脂100質量部に対し20質量部未満であると、エポキシ樹脂の硬化性を確保できない傾向にある。また、該化合物の配合量がエポキシ樹脂100質量部に対し300質量部を越えると、その化合物が過剰に存在することになり、絶縁樹脂組成物から得られる樹脂に対し可塑剤として作用する傾向にある。
【0056】
また、その化合物中にあるR−COO基当量は、エポキシ樹脂中のエポキシ当量との比(エポキシ当量/R−COO基当量)で0.8〜1.2となるように調整することが好ましい。これにより該絶縁樹脂組成物を硬化して得られる樹脂は、耐熱性と導体箔に対する良好な接着性とを有することができる。
【0057】
エポキシ樹脂硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好ましい。このエポキシ樹脂硬化促進剤の配合量が0.01質量部未満になると、エポキシ樹脂が十分に硬化されない傾向にあり、10質量部を越えると、得られる樹脂の耐熱性が低下する傾向にある。
【0058】
本発明の絶縁樹脂組成物は、必要に応じて、さらに種々の添加剤を含有してもよく、例えば無機フィラー等をさらに含んでもよい。無機フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、溶融シリカ、ガラス粉、石英粉、シラスバルーン等が例示できる。なお、これらの添加剤はそれぞれ1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明の絶縁樹脂組成物は、各成分を混合し塗布可能な状態にする、すなわちワニス化するために、必要に応じて溶剤を含有することもできる。該溶剤は、上述したような各成分を溶解できるものであって、得られる樹脂の接着性に影響を与えないようなものであれば、特に限定されることなく用いることができる。具体的には、例えば、各種のアルコール、アセトン、トルエン、キシレン、ケトン、アミド、エーテル若しくはピロリドン等が挙げられる。これらのなかで、エポキシ樹脂の溶解性及び沸点等の観点から、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテル若しくはN−メチルピロリドンなどが好ましい。これらの溶剤は1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
本発明の絶縁樹脂組成物は、多層化用のプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板若しくはビルドアップ法による多層配線板等に用いることができる。
【0061】
絶縁樹脂組成物を多層化用のプリプレグに用いる場合は、その絶縁樹脂組成物を、基材に含浸させることにより該プリプレグを形成する。基材としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス若しくはQガラス等からなるガラス繊維、ポリイミド、ポリエステル若しくはテトラフルオロエチレン等からなる有機繊維、及びこれらを混合した繊維が例示できる。これらの繊維は、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット若しくはサーフェシングマット等の形状で基材として用いることができる。基材の厚みは、例えば、0.03〜0.5mm程度のものを用いることができ、また、耐熱性、耐湿性又は加工性向上の観点から、接着性に影響を与えない程度でシランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理したもの等を用いることが好ましい。
【0062】
絶縁樹脂組成物を基材に含浸させる方法としては、例えば、ウェット方式又はドライ方式等の樹脂液に基材を浸漬させる方法、或いは基材に絶縁樹脂組成物を塗工する方法等が挙げられる。基材に含浸させる絶縁樹脂組成物の量は、乾燥後のプリプレグの全質量中に絶縁樹脂組成物が20〜90質量%含まれると好ましく、30〜80質量%含まれるとより好ましい。そして、熱硬化性樹脂組成物が含浸された基材を、100〜200℃で1〜30分加熱し溶媒を除去させることにより、熱硬化性樹脂組成物が半硬化の状態であるプリプレグを得ることができる。
【0063】
このようにして得られたプリプレグは、導体成形物との接着性に優れているので、その表面或いは導体成形物の表面を粗化しなくても、耐剥離性のある電子材料に備えられるものとして用いることができる。
【0064】
絶縁樹脂組成物を樹脂付導体箔に用いる場合は、導体箔と本発明の絶縁樹脂組成物を含有する絶縁樹脂組成物層とを備えるものである。このような樹脂付導体箔は、例えば、上述の絶縁樹脂組成物を含有するワニス(プライマー)を導体箔上に塗布し、その後100〜200℃の温度で1〜30分加熱して溶媒を除去することにより得ることができる。
【0065】
導体箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔若しくはニッケル箔等が例示できる。樹脂付導体箔を製造する際には、通常厚みが10〜50μmである導体箔を用いるが、以下の方法によって1〜10μmの厚みを有する導体箔に樹脂が密着した樹脂付導体箔を作製することができる。すなわち、絶縁樹脂組成物層を形成させる導体箔として、エッチング又は引き剥がしによる除去が可能な支持導体箔と極薄導体箔との2層からなる導体箔を準備する。そして、当該導体箔の極薄導体箔上に絶縁樹脂組成物層を形成させ、支持導体箔をエッチング又は引き剥がしによって除去する。樹脂付導体箔における絶縁樹脂組成物層の厚さは、加熱後の厚さで10〜150μmであることが好ましく、該層中の残存溶剤量としては、0.2〜10%程度であることが適当である。
【0066】
絶縁樹脂組成物を導体張積層板に用いる場合、該導体張積層板は、通常の導体箔を上述したような本発明の絶縁樹脂組成物を用いて形成したプリプレグの硬化物上に備えるものであってもよい。または、上述した本発明の樹脂付導体箔を、絶縁樹脂組成物層がプリプレグの硬化物又はプリプレグに接するように積層して積層物を得た後、該積層物を加熱して前記絶縁樹脂組成物層及び/又はプリプレグを硬化してなるものであってもよい。
【0067】
その製造方法は以下の通りである。まず、上述したプリプレグを例えば1〜20枚、公知の方法により積層させた後、必要に応じて、加熱及び加圧により硬化させる。成形は通常、多段プレス、多段真空プレス、連続成形又はオートクレーブ成形機等を使用し、加熱及び加圧は温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2及び0.1〜5時間の範囲の条件で行うことができる。そして、積層したプリプレグの片面又は両面に、導体箔が樹脂付きでない場合は導体箔の表面を、導体箔が樹脂付導体箔である場合はその樹脂を、密着させ、全体を加熱及び/又は加圧することにより、導体張積層板を得ることができる。
【0068】
絶縁樹脂組成物を多層配線板に用いる場合は、例えば以下のようにして用いることができる。すなわち、まず、片面又は両面に回路パターンが形成された導体層を備える配線板を内層用配線板とし、かかる内層用配線板の導体層上に、絶縁体層として本発明の絶縁樹脂組成物からなる絶縁樹脂組成物層を形成させたのちに硬化させ、内層用配線板と、絶縁体層を有する絶縁体層付配線板を得る。
【0069】
次に、得られた絶縁体層付配線板に、ドリル又はレーザー等により穴あけを行う。次いで、穴あけの際に生じた樹脂残渣の除去を行う。なお、本発明の絶縁樹脂組成物を用いることで、絶縁体層と導体層との間の接着力を高めることができるので、表面を粗化する工程は必ずしも要しないが、それらの接着性をさらに高めたい場合は、サンドブラスト処理、プラズマ処理、過マンガン酸塩又は重クロム酸塩等の酸化剤による薬品処理等を施す。
【0070】
更に、無電解銅めっき、金属蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティング等によりビアホールの形成を行い、めっき又はエッチング等の公知の方法により絶縁樹脂組成物層上に回路パターンを形成させ、表面に回路パターンが形成された導体層を有する積層体を得る。そして、得られた積層体を内層用配線板として用い、上記の絶縁樹脂組成物層の形成から回路パターンの形成までの工程を繰り返すことにより多層配線板を得ることができる。なお、プリプレグの硬化物を備えた多層配線板は以上の方法における絶縁樹脂組成物をプリプレグで置き換えることにより製造可能である。
【0071】
配線板上への絶縁樹脂組成物層の形成は、配線板の導体層上に本発明の絶縁樹脂組成物を塗布した後、加熱硬化させることによってなされる。なお、絶縁樹脂組成物(又はプリプレグ)の硬化は、120℃以上の温度で15分以上、好ましくは170〜220℃の温度で60〜150分の加熱を行うことにより行うことができる。
【0072】
なお、内層用配線板に用いる基板としてはガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、BTレジン基板又は熱硬化型PPE基板等が例示できる。
【0073】
また、多層配線板の製造は、上述した樹脂付導体箔を用いることによって行うこともできる。このような方法を以下に示す。すなわち、まず、片面又は両面に回路パターンが形成された導体層を有する配線板を内層配線板とし、内層配線板における導体層上に、上述した樹脂付導体箔を、加熱及び/又は加圧条件下でラミネート又はプレスすることにより、該樹脂付導体箔における樹脂が接するように積層させる積層工程を実施する。次に樹脂部分を加熱することにより樹脂の硬化を行い、表面に導体箔を備える積層基板を得る硬化工程を実施する。
【0074】
更に、得られた積層基板の導体箔面をエッチング等の公知の方法により部分的に除去して、表面に回路パターンを形成させるパターニング工程を実施する。
【0075】
そして、表面に回路パターンが形成された配線板を、内層配線板として用い、上記積層工程、硬化工程及びパターニング工程を含む3工程を1回又は2回以上実施することにより多層配線板を得ることができる。
【0076】
なお、硬化工程の後、積層基板にビアホール等の形成を行ってもよい。ビアホール形成のためには積層基板の穴あけが必要となるが、積層基板における導体箔が薄い場合には、ドリル又はレーザーによって直接穴あけが可能であり、導体箔が厚い場合には、コンフォーマルマスク法又はラージウインド法により窓穴を形成した後に、ドリル又はレーザーにより穴あけを行うことにより形成が可能である。ここで、積層基板における導体箔表面に、サンドブラスト処理、プラズマ処理或いは過マンガン酸塩若しくは重クロム酸塩等の酸化剤等による薬品処理等により粗化を施すことが好ましい。このような粗化は穴あけ前に行ってもよく、穴あけ後に行ってもよい。
【0077】
穴あけ終了後、導体箔表面やスルーホール等に樹脂残渣が残存している場合にはその除去を行い、無電解銅めっき、金属蒸着、スパッタリング又はイオンプレーティング等によりビアホールを形成することができる。
【0078】
このようにして得られた上記各電子部品は、そこに備えられる樹脂と導体とが本来的に接着性に優れているので、アンカー効果を利用するために導体箔の表面を十分に粗化させる必要はなく、より微細な回路を提供することができる。
【0079】
さらに、該樹脂は比誘電率等の電気特性に優れた性質を有しているので、これを用いた上記各電子部品は、例えば、処理速度を高める必要のある電子機器に有効に備えられる。
【0080】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
まず、温度計、冷却管、窒素導入管及び攪拌棒を備えた2Lの4つ口フラスコに、ビスフェノールAノボラック樹脂(VH−4170、大日本インキ化学工業株式会社製、フェノール性水酸基当量:117g/eq、商品名)250g及びシクロヘキサノン700gを入れ、窒素気流下攪拌して溶解させた後、150℃で還流して、ディーンスターク分留器を用いて水分を除去した。次いで、トリエチルアミン400gを添加し、氷浴により反応系内を10℃以下まで冷却後、反応系が10℃を越えないように注意しながら安息香酸クロライド400gを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに常温で2時間攪拌して反応させた。
【0082】
反応終了後、吸引ろ過によりトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、得られたろ液をメタノール中に沈殿させた。そして、沈殿物を120℃で1時間減圧乾燥し粗生成物を得た。続いて、粗生成物を200gのアセトンに溶解させ、不溶成分を減圧ろ過により除去し、メタノール中に再沈殿させ生成物を得た。その後、生成物120℃で6時間減圧乾燥して実施例1の樹脂を得た。
【0083】
得られた樹脂の13C−NMRスペクトル(装置:ブルカー・バイオスピン社製AC300P、溶媒:アセトンD6、濃度:10質量%)を図1に示す。この13C−NMRスペクトルには165ppmにエステルのカルボニル炭素を示すピークの存在が認められた。また、原料のビスフェノールAノボラック樹脂の13C−NMRスペクトルでは存在が認められた水酸基結合炭素のピーク(152ppm)は確認されなかった。以上のことから、得られた生成物が目的としたアリールエステル付加ビスフェノールAノボラック樹脂(BPANov−AR)であることが確認できた。
【0084】
[ガラス転移温度の測定]
得られた樹脂(BPANov−AR)のガラス転移温度(Tg)をTAインスツルメンツ社製TMA2940を用いて昇温温度10℃/分、引張モードで測定した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
[両面銅張積層板の作製]
実施例1により得られたBPANov−AR55gに対し、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬株式会社製、エポキシ当量:294g/eq、商品名)80g及びジメチルアミノピリジン1gをメチルエチルケトン60gに溶解し、絶縁樹脂組成物ワニスを得た。次いで、このワニスをポリエチレンテレフタレート製シート上に乾燥後の厚みが50μmになるように調整して塗布した。そして、塗布したワニスを150℃で7分間乾燥させた後、解して未硬化の絶縁樹脂層粉を作製した。
【0087】
続いて、1mm厚の四フッ化エチレン樹脂板をスペーサに用い、両側に低粗化銅箔(F0−WS18、古河サーキットフォイル株式会社製、Rz:1.4μm、商品名)の接着処理面を重ね、ステンレス製の鏡板を用いて、温度170℃、成形圧力3MPaで1時間積層成形を行うことにより、実施例1にかかる両面銅箔張積層板を得た。
【0088】
[銅箔引き剥がし強さの測定]
接着性の評価方法として、得られた両面銅張積層板上の1cm幅の銅箔を、5cm/分の速度で引き剥がすことによって銅箔引き剥がし強さを測定した。結果を表1に示す。
【0089】
[比誘電率の測定]
得られた両面銅張積層板の1GHzにおける比誘電率をトリプレート構造直線線路共振法により測定した。結果を表1に示す。
【0090】
[誘電正接の測定]
得られた両面銅張積層板の1GHzにおける誘電正接をトリプレート構造直線線路共振法により測定した。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例2)
ビスフェノールAノボラック樹脂に代えて、サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂(YL−6065、ジャパンエポキシレジン株式会社製、フェノール性水酸基当量117g/eq、商品名)を用いた以外は、合成例1と同様にして合成を行い、実施例2の樹脂を得た。
【0092】
得られた樹脂の13C−NMRスペクトル(装置:ブルカー・バイオスピン社社製AC300P、溶媒:アセトンD6、濃度:10質量%)を図2に示す。13C−NMRスペクトルには165ppmにエステルのカルボニル炭素を示すピークの存在が確認された。また、原料のサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂には存在した水酸基結合炭素のピーク(152ppm)は認められなかった。以上のことから、得られた生成物が目的としたアリールエステル付加サリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂(SAN−AR)であることが確認できた。
【0093】
得られた樹脂(SAN−AR)のガラス転移温度を実施例1の樹脂と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0094】
また、BPANov−ARに代えて、実施例2で製造したSAN−ARを用いた以外は、実施例1にかかるものと同様にして両面銅張積層板を作製した。得られた両面銅張積層板の銅箔引き剥がし強さ、比誘電率及び誘電正接を実施例1にかかる両面銅張積層板と同様の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0095】
(比較例1)
比較例1の樹脂としてビスフェノールAノボラック樹脂(VH−4170、大日本インキ化学工業株式会社製、フェノール性水酸基当量:117g/eq、商品名)を用いた。この樹脂のガラス転移温度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0096】
また、BPANov−ARに代えて、上述したビスフェノールAノボラック樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして両面銅張積層板を作製した。得られた両面銅張積層板の銅箔引き剥がし強さ、比誘電率及び誘電正接を実施例1にかかる両面銅張積層板と同様の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例2)
比較例2の樹脂としてサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂(YL−6065、ジャパンエポキシレジン株式会社製、フェノール性水酸基当量:117g/eq、商品名)を用いた。この樹脂のガラス転移温度を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0098】
また、SAN−ARに代えて、上述したサリチルアルデヒドフェノールノボラック樹脂を用いた以外は、実施例2と同様にして両面銅張積層板を作製した。得られた両面銅張積層板の銅箔引き剥がし強さ、比誘電率及び誘電正接を実施例1にかかる両面銅張積層板と同様の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、粗化の程度の低い導体箔に対しても十分強力に接着して導体張積層板を形成可能な絶縁樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのような絶縁樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付導体箔、導体張積層板及び多層配線板並びに多層配線板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の樹脂の13C−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2の樹脂の13C−NMRスペクトルである。
Claims (15)
- 分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物と、の反応により得られる化合物であって、R−COO基(Rは芳香環を有する一価の有機基を示す。)を2以上有する化合物と、
分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、
エポキシ樹脂硬化促進剤と、
を含有することを特徴とする絶縁樹脂組成物。 - 前記Xが芳香環を含む一価の有機基であることを特徴とする請求項2記載の絶縁樹脂組成物。
- 前記Yがメチレン基又はヒドロキシフェニルメチレン基であることを特徴とする請求項2又は3記載の絶縁樹脂組成物。
- 前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が、フェノール性水酸基を有する化合物と、ケトン又はヒドロキシフェニル基で置換されていてもよいアルデヒドと、の付加縮合により得られる樹脂に、芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物を反応させてなる化合物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の絶縁樹脂組成物。
- 前記R−COO基中のRがフェニル基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶縁樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂硬化促進剤がジメチルアミノピリジンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁樹脂組成物を、基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
- 導体箔と、該導体箔上に形成された請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁樹脂組成物を含有する絶縁樹脂組成物層と、を備えることを特徴とする樹脂付導体箔。
- 導体箔を請求項8記載のプリプレグの硬化物上に備えることを特徴とする導体張積層板。
- 請求項9記載の樹脂付導体箔を、前記絶縁樹脂組成物層がプリプレグの硬化物又はプリプレグに接するように積層して積層物を得た後、該積層物を加熱して前記絶縁樹脂組成物層及び/又はプリプレグを硬化してなることを特徴とする導体張積層板。
- 絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを交互に備える多層配線板において、
前記絶縁体層が請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする多層配線板。 - 絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを交互に備える多層配線板において、
前記絶縁体層が請求項8記載のプリプレグの硬化物であることを特徴とする多層配線板。 - 絶縁体層と回路パターンが形成された導体層とを備える内層用配線板の前記導体層上に、請求項9記載の樹脂付導体箔を該導体箔の絶縁樹脂組成物層が前記導体層に接するように積層する積層工程と、
前記絶縁樹脂組成物層を硬化させ、表面に前記導体箔を備える積層基板を得る硬化工程と、
前記積層基板の前記導体箔を部分的に除去して、表面に回路パターンを形成させるパターニング工程と、を含むことを特徴とする多層配線板の製造方法。 - パターニング工程で得られる回路パターンが形成された配線板を、積層工程の内層用配線板として用いることを特徴とする請求項14記載の多層配線板の製造方法。
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2003
- 2003-06-05 JP JP2003161189A patent/JP2004359867A/ja active Pending
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